(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-08
(54)【発明の名称】光活性基を含む架橋性電気活性フルオロポリマー
(51)【国際特許分類】
C08F 214/22 20060101AFI20220201BHJP
【FI】
C08F214/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534710
(86)(22)【出願日】2019-12-16
(85)【翻訳文提出日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 FR2019053074
(87)【国際公開番号】W WO2020128265
(87)【国際公開日】2020-06-25
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(71)【出願人】
【識別番号】514058706
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・ボルドー
(71)【出願人】
【識別番号】513277212
【氏名又は名称】アンスティチュ ポリテクニーク ドゥ ボルドー
(71)【出願人】
【識別番号】311016455
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アドジオアヌー,ジョルジュ
(72)【発明者】
【氏名】クルテ,エリク
(72)【発明者】
【氏名】ブロション,シリル
(72)【発明者】
【氏名】カリトシス,コンスタンティノス
(72)【発明者】
【氏名】ドミンゲス・ドス・サントス,ファブリス
(72)【発明者】
【氏名】スレスタン,ティボー
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AC24P
4J100AC25P
4J100AC26Q
4J100CA04
4J100FA03
4J100FA20
4J100FA21
4J100JA46
(57)【要約】
本発明は、式(I)のフルオロモノマーに由来する単位を含むコポリマーであって、
(I)CX1X2=CX3X4
(式中、X1、X2、X3及びX4はそれぞれ、H、F、及び1~3個の炭素原子を含む、任意選択的に部分的又は全体的にフッ素化されているアルキル基から独立して選択され、このフルオロモノマー中のH原子及び/又はF原子は、コポリマー中で式-Y-Ar-R(式中、Yは、酸素原子又はNH基又は硫黄原子を表し、Arはアリール基、好ましくはフェニル基を表し、Rは、1~30個の炭素原子を含む単座基又は二座基である)の光活性基により部分的に置換されている)コポリマーに関する。コポリマーの式(I)のフルオロモノマーは、フッ化ビニリデン及びトリフルオロエチレンを含む。
本発明はまた、このコポリマーを調製する方法、このコポリマーを含む組成物、及び前記コポリマーから得られるフィルムに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のフルオロモノマーに由来する単位を含むコポリマーであって、
(I)CX
1X
2=CX
3X
4
(式中、X
1、X
2、X
3及びX
4はそれぞれ、H、F、及び1~3個の炭素原子を含む、任意選択的に部分的又は全体的にフッ素化されているアルキル基から独立して選択され、前記フルオロモノマー中のH原子及び/又はF原子は、前記コポリマー中で式-Y-Ar-R(式中、Yは、O原子又はS原子又はNH基を表し、Arは、アリール基、好ましくはフェニル基を表し、Rは、1~30個の炭素原子を含む単座基又は二座基である)の光活性基により部分的に置換されている)、
前記式(I)のフルオロモノマーが、フッ化ビニリデン及びトリフルオロエチレンを含む、コポリマー。
【請求項2】
式(I)のフルオロモノマーが、フッ化ビニリデン及びトリフルオロエチレンからなる、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
フッ化ビニリデンモノマーから得られる単位及びトリフルオロエチレンモノマーに由来する単位の両方を含み、トリフルオロエチレンモノマーに由来する単位の割合が、フッ化ビニリデンモノマー及びトリフルオロエチレンモノマーに由来する単位の合計に対して、好ましくは15~55mol%である、請求項1又は2に記載のコポリマー。
【請求項4】
基Arが、Yに対してオルト位、及び/又はYに対してメタ位、及び/又はYに対してパラ位で基Rにより置換される、請求項1~3の一項に記載のコポリマー。
【請求項5】
基Rが、カルボニル官能基を含み、好ましくは、アセチル基、置換又は非置換のベンゾイル基、置換又は非置換のフェニルアセチル基、フタロイル基、及びホスフィンオキシドアシル基(ホスフィンは、メチル基、エチル基及びフェニル基から選択される1つ以上の基で置換されている)から選択される、請求項1~4の一項に記載のコポリマー。
【請求項6】
基Arがメタ位で置換されたフェニルであり、基Rが非置換ベンゾイル基であるか、又は基Arがパラ位で置換されたフェニルであり、基Rが非置換ベンゾイル基であるか、又はArがパラ位で置換されたフェニルであり、基Rがヒドロキシル基でパラ位で置換されたベンゾイル基であるか、又は基Arがメタ位で置換されたフェニルであり、基Rがアセチル基であるか、又は基Arがパラ位で置換されたフェニルであり、基Rはアセチル基であるか、又は基Arがオルト位で置換されたフェニルであり、基Rがヒドロキシル基でカルボニル基にα置換されたフェニルアセチル基であるか、又は基Arがメタ位で置換されたフェニルであり、基Rがヒドロキシル基でカルボニル基に対してα置換されたフェニルアセチル基であるか、又は基Arがオルト位で置換されたフェニルであり、基Rがホスフィンオキシドアシル基であるか、又は基Arがメタ位で置換されたフェニルであり、基Rがホスフィンオキシドアシル基であるか、又は基Arがパラ位で置換されたフェニルであり、基Rがホスフィンオキシドアシル基であるか、又は基Arがオルト位及びメタ位で置換されたフェニルであり、基Rがフタロイル基である、請求項5に記載のコポリマー。
【請求項7】
式-Y-Ar-Rの光活性基で置換された前記コポリマー中の式(I)のフルオロモノマーのH原子及びF原子のモル割合が、0.1%~20%、好ましくは1%~10%、より好ましくは2%~8%である、請求項1~6の一項に記載のコポリマー。
【請求項8】
請求項1~7の一項に記載のコポリマーの調製方法であって、
式(I)のフルオロモノマー:
CX
1X
2=CX
3X
4(式中、X
1、X
2、X
3及びX
4はそれぞれ、H、F、及び1~3個の炭素原子を含む、任意選択的に部分的又は全体的にフッ素化されているアルキル基から独立して選択される)に由来する単位を含み、
前記式(I)のフルオロモノマーがフッ化ビニリデン及びトリフルオロエチレンを含む、
出発コポリマーを提供することと、
前記出発コポリマーを、式-Y-Ar-R(式中、Yは、O原子又はS原子又はNH基を表し、Arは、アリール基、好ましくはフェニル基を表し、Rは、1~30個の炭素原子を含む単座基又は二座基である)の光活性分子と接触させることと
を含む調製方法。
【請求項9】
前記接触させることが、好ましくは、ジメチルスルホキシド;ジメチルホルムアミド;ジメチルアセトアミド;ケトン、特に、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロペンタノン;フラン、特にテトラヒドロフラン;エステル、特に、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテート;カーボネート、特にジメチルカーボネート;及びホスフェート、特にリン酸トリエチルから選択される溶媒中で行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記出発コポリマーを前記光活性分子と接触させる前に、前記光活性分子を塩基と反応させる工程をさらに含み、前記塩基が、好ましくは炭酸カリウムである、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記出発コポリマーを前記光活性分子と接触させることが、20~120℃、好ましくは30~90℃の温度で行われる、請求項8~10の一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~7のいずれかに記載のコポリマーを含み、液体ビヒクル中の前記コポリマーの溶液又は分散液である組成物。
【請求項13】
式(I)のフルオロモノマー:
(I)CX
1X
2=CX
3X
4
(式中、X
1、X
2、X
3及びX
4はそれぞれ、H、F、及び1~3個の炭素原子を含む、任意選択的に部分的又は全体的にフッ素化されているアルキル基から独立して選択される)
に由来する単位を含む第2のコポリマーをさらに含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
第2のコポリマーの式(I)のフルオロモノマーが、フッ化ビニリデン及び/又はトリフルオロエチレンを含み、好ましくはフッ化ビニリデン及びトリフルオロエチレンからなる、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
第2のコポリマーが、フッ化ビニリデンモノマーに由来する単位及びトリフルオロエチレンモノマーに由来する単位の両方を含み、トリフルオロエチレンモノマーに由来する単位の割合が、フッ化ビニリデンモノマー及びトリフルオロエチレンモノマーに由来する単位の合計に対して、好ましくは15~55mol%である、請求項13又は14に記載の組成物。
【請求項16】
含有量を請求項1~7の一項に記載のコポリマー及び第2のコポリマーの合計に対して表して、5%~95重量%の請求項1~7の一項に記載のコポリマー及び5%~95重量%の第2のコポリマーを含み、好ましくは30%~70重量%の請求項1~7の一項に記載のコポリマー及び30%~70重量%の第2のコポリマーを含む、請求項13~15の一項に記載の組成物。
【請求項17】
反応性二重結合に関して二官能性又は多官能性である少なくとも1種の(メタ)アクリルモノマーを含む、請求項12~16の一項に記載の組成物。
【請求項18】
反応性二重結合に関して二官能性又は多官能性である前記(メタ)アクリルモノマーが、(メタ)アクリル型の少なくとも2つの反応性二重結合を含有するモノマー若しくはオリゴマー、又は、ジオール、トリオール若しくはポリオール、ポリエステル、エーテル、ポリエーテル、ポリウレタン、エポキシ、シアヌレート若しくはイソシアヌレートから選択される二官能性又は多官能性の(メタ)アクリルモノマー若しくはオリゴマーである、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記(メタ)アクリルモノマーが、以下の化合物のリストから選択される、請求項18に記載の組成物:ドデカンジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ドデシルジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、直鎖アルカンジ(メタ)アクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレートエステル、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アルコキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ドデカンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシル化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、及びそれらの組み合わせ。
【請求項20】
フィルムを製造する方法であって、
請求項1~7の一項に記載のコポリマー又は請求項12~19の一項に記載の組成物を基材上に堆積させることと、
前記コポリマー又は前記組成物を架橋することと
を含む方法。
【請求項21】
前記架橋することが、所定のパターンに従って実施され、続いて、コポリマー又は組成物の架橋されていない部分を、それらを溶媒と接触させることによって除去することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
請求項20又は21に記載の方法を介して得られたフィルム。
【請求項23】
請求項22に記載のフィルムを含む電子デバイスであって、好ましくは、電界効果トランジスタ、メモリデバイス、コンデンサ、センサ、アクチュエータ、電気機械マイクロシステム及び触覚デバイスから選択される、電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光活性基を含む架橋性電気活性フルオロポリマー、その調製方法、及びそれから製造されたフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気活性フルオロポリマー又はEAFPは、主にポリフッ化ビニリデン(PVDF)の誘導体である。これに関しては、論文、Vinylidene fluoride-and trifluoroethylene-containing fluorinated electroactive copolymers.How does chemistry impact properties? by Soulestin et al., in Prog.Polym.Sci.2017(DOI:10.1016/j.progpolymsci.2017.04.004)を参照されたい。これらのポリマーは、特に興味深い誘電特性及び電気機械特性を有する。フッ化ビニリデン(VDF)及びトリフルオロエチレン(TrFE)モノマーから形成されたフッ素化コポリマーは、それらの圧電特性、焦電特性及び強誘電特性のために特に興味深い。それらは、特に、機械的又は熱的エネルギーの電気エネルギーへの変換、又はその逆を可能にする。
【0003】
電気活性フルオロポリマーは、一般にインク配合物を使用した堆積によってフィルムに成形される。電気活性デバイスの製造中、所定のパターンに従ってフィルムの一部又は全部を不溶性にすることが必要な場合がある。その理由は、所望のデバイスを製造するために、ポリマーフィルム上に他の層を堆積させることがしばしば必要であるからである。他の層のこの堆積は、溶媒の使用を伴うことが多い。電気活性フルオロポリマーが架橋されていない場合、他の層の堆積中にこの溶媒によって分解され得る。
【0004】
フルオロポリマーを架橋するためのいくつかの方法が提案されている。最も一般的に用いられる架橋方法としては、熱処理、電子ビーム照射、X線照射、及びUV照射が挙げられる。
【0005】
Tan et al.in J.Mat.Chem.A 2013(pages 10353-10361)の論文は、過酸化化合物の存在下での熱処理によるP(VDF-TrFE)コポリマーの架橋を記載している。
【0006】
Shin et al.in Appl.Mater.Inter.2011(pages 582-589)の論文は、別の架橋剤、すなわち2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミンの存在下での熱処理によるP(VDF-TrFE)コポリマーの架橋を記載している。
【0007】
しかしながら、熱処理による架橋は、加熱によるデバイスの処理のために、多層電子デバイスの1つ以上の層を破壊する危険性を有する。さらに、この架橋方法は選択的架橋を不可能にするので、熱処理は、規定のパターンを有するフィルムの製造が可能でなくなる。
【0008】
Desheng et al.in Ferroelectrics 2001(pages 21-26)、及びYang et al.in Polymer 2013(pages 1709-1728)の論文は、電子ビームの照射を用いたフルオロポリマーの架橋を記載している。
【0009】
Mandal et al.in Appl.Surf.Sci.2012(pages 209-213)の論文は、X線照射を用いたフルオロポリマーの架橋を記載している。
【0010】
そのような照射は高エネルギーであり、したがって、ポリマー鎖の構造に影響を及ぼす化学的副反応を生じさせる可能性がある。
【0011】
US2007/0166838は、ビスアジド光開始剤の存在下でのUV照射によってフルオロポリマーを架橋する方法を記載している。
【0012】
同様の技術は、van Breemen et al.in Appl.Phys.Lett.2011(No.183302)、及びChen et al.in Macromol.Rapid.Comm.2011(pages 94-99)の論文に記載されている。
【0013】
WO2015/200872は、フッ化ビニリデンに基づくポリマーと、非求核性感光性基材と、架橋剤とを含む架橋組成物を記載している。
【0014】
Hou et al.in Polym.J.2008(pages 228-232)の論文は、光開始剤としての4-メトキシベンゾフェノンメタクリレート及び光開始剤を活性化するための助剤の存在下におけるUV照射によるアクリレートポリマーの架橋を記載している。
【0015】
これらの文献の全てにおいて、架橋は、ポリマーに加えて架橋剤の存在を必要とする。この薬剤を添加すると、ポリマーフィルムの作製がより複雑になり、電気活性特性の低下を引き起こす可能性がある。ポリマーフィルムを調製するための配合物に使用される成分の数を減らすことが一般に望ましい。
【0016】
Kim et al.in Science 2012(pages 1201-1205)の論文は、ベンゾフェノン分子を含む非フルオロポリマーのUV照射による架橋を記載している。
【0017】
WO2013/087500は、VDF、TrFE、及びアジド基を含有する第3のモノマーを重合することによって製造されたフルオロポリマーを記載している。このフルオロポリマーを、続いて、好ましくは架橋剤の存在下で架橋することもできる。
【0018】
WO2013/087501は、VDF及びTrFEに由来する単位を含むフルオロポリマーと、アジド基を含む架橋剤とを含む組成物に関する。
【0019】
WO2015/128337は、VDF、TrFE、及び第3の(メタ)アクリルモノマーを重合することによって製造されたフルオロポリマーを記載している。このフルオロポリマーを、続いて、好ましくは架橋剤の存在下で架橋することもできる。
【0020】
WO2010/021962は、アジド基を含むフルオロポリマーを記載しており、これは、フルオロポリマーをアジド化合物と反応させることによって、又はアジド化合物の存在下でモノマーを重合することによって得ることができる。この文献に示されているフルオロポリマーの例は、アジ化ナトリウムと反応する、VDF及びHFP(ヘキサフルオロプロピレン)に基づくコポリマー、又はヨード末端ポリマー(PVDF-I及び1-ヨードペルフルオロオクタン)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0166838号明細書
【特許文献2】国際公開第2015/200872号
【特許文献3】国際公開第2013/087500号
【特許文献4】国際公開第2013/087501号
【特許文献5】国際公開第2015/128337号
【特許文献6】国際公開第2010/021962号
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Vinylidene fluoride- and trifluoroethylene-containing fluorinated electroactive copolymers.How does chemistry impact properties? by Soulestin et al., in Prog.Polym.Sci.2017(DOI:10.1016/j.progpolymsci.2017.04.004)
【非特許文献2】Tan et al.in J.Mat.Chem.A 2013(pages 10353-10361)
【非特許文献3】Shin et al.in Appl.Mater.Inter.2011(pages 582-589)
【非特許文献4】Desheng et al.in Ferroelectrics 2001(pages21-26)
【非特許文献5】Yang et al.in Polymer 2013(pages 1709-1728)
【非特許文献6】Mandal et al.in Appl.Surf.Sci.2012(pages 209-213)
【非特許文献7】van Breemen et al.in Appl.Phys.Lett.2011(No.183302)
【非特許文献8】Chen et al.in Macromol.Rapid.Comm.2011(pages 94-99)
【非特許文献9】Hou et al.in Polym.J.2008(pages228-232)
【非特許文献10】Kim et al.in Science 2012(pages1201-1205)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
したがって、上記の有用な特性(特に、圧電性、焦電性及び強誘電性)を有し、その後、効率的に架橋することができると同時に、架橋後にこれらの有用な特性を本質的に保存している電気活性フルオロポリマーを提供することが実際に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、第1に、式(I)のフルオロモノマーに由来する単位を含むコポリマーであって、
(I)CX1X2=CX3X4
(式中、X1、X2、X3及びX4はそれぞれ、H、F、及び1~3個の炭素原子を含む、任意選択的に部分的又は全体的にフッ素化されているアルキル基から独立して選択され、このフルオロモノマー中のH原子及び/又はF原子は、コポリマー中で式-Y-Ar-R(式中、Yは、O原子又はS原子又はNH基を表し、Arは、アリール基、好ましくはフェニル基を表し、Rは、1~30個の炭素原子を含む単座基又は二座基である)の光活性基により部分的に置換されている)コポリマーに関する。
【0025】
特定の実施形態では、式(I)のフルオロモノマーは、フッ化ビニリデン及び/又はトリフルオロエチレンを含み、好ましくはフッ化ビニリデン及びトリフルオロエチレンからなる。
【0026】
特定の実施形態では、コポリマーは、フッ化ビニリデンモノマーから得られる単位及びトリフルオロエチレンモノマーに由来する単位の両方を含み、トリフルオロエチレンモノマーに由来する単位の割合は、フッ化ビニリデンモノマー及びトリフルオロエチレンモノマーに由来する単位の合計に対して、好ましくは15~55mol%である。
【0027】
特定の実施形態では、基Arは、Yに対してオルト位、及び/又はYに対してメタ位、及び/又はYに対してパラ位で基Rにより置換される。
【0028】
特定の実施形態では、基Rはカルボニル官能基を含み、好ましくは、アセチル基、置換又は非置換のベンゾイル基、置換又は非置換のフェニルアセチル基、フタロイル基、及びホスフィンオキシドアシル基(ホスフィンは、メチル基、エチル基及びフェニル基から選択される1つ以上の基で置換されている)から選択される。
【0029】
特定の実施形態では、基Arはメタ位で置換されたフェニルであり、基Rは非置換のベンゾイル基であるか、又は基Arはパラ位で置換されたフェニルであり、基Rは非置換のベンゾイル基であるか、又はArはパラ位で置換されたフェニルであり、基Rはヒドロキシル基でパラ位で置換されたベンゾイル基であるか、又は基Arはメタ位で置換されたフェニルであり、基Rはアセチル基であるか、又は基Arはパラ位で置換されたフェニルであり、基Rはアセチル基であるか、又は基Arはオルト位で置換されたフェニルであり、基Rはヒドロキシル基でカルボニル基にα置換されたフェニルアセチル基であるか、又は基Arはメタ位で置換されたフェニルであり、基Rはヒドロキシル基でカルボニル基に対してα置換されたフェニルアセチル基であるか、又は基Arはオルト位で置換されたフェニルであり、基Rはホスフィンオキシドアシル基であるか、又は基Arはメタ位で置換されたフェニルであり、基Rはホスフィンオキシドアシル基であるか、又は基Arはパラ位で置換されたフェニルであり、基Rはホスフィンオキシドアシル基であるか、又は基Arはオルト位及びメタ位で置換されたフェニルであり、基Rはフタロイル基である。
【0030】
特定の実施形態では、式-Y-Ar-Rの光活性基で置換されたコポリマー中の式(I)のフルオロモノマーのH原子及びF原子のモル割合は、0.1%~20%、好ましくは1%~10%、より好ましくは2%~8%である。
【0031】
本発明はまた、上記のコポリマーの調製方法であって、
式(I)のフルオロモノマー:CX1X2=CX3X4(式中、X1、X2、X3及びX4はそれぞれ、H、F、及び1~3個の炭素原子を含む、任意選択的に部分的又は全体的にフッ素化されているアルキル基から独立して選択される)に由来する単位を含み、出発コポリマーを提供することと、
前記出発コポリマーを、式-Y-Ar-R(式中、Yは、O原子又はS原子又はNH基を表し、Arは、アリール基、好ましくはフェニル基を表し、Rは、1~30個の炭素原子を含む単座基又は二座基である)の光活性分子と接触させることとを含む調製方法。
【0032】
特定の実施形態では、接触させることは、好ましくは、ジメチルスルホキシド;ジメチルホルムアミド;ジメチルアセトアミド;ケトン、特に、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロペンタノン;フラン、特に、テトラヒドロフラン;エステル、特に酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテート;カーボネート、特にジメチルカーボネート;及びホスフェート、特にリン酸トリエチルから選択される溶媒中で行われる。
【0033】
特定の実施形態では、本方法は出発コポリマーを光活性分子と接触させる前に、この光活性分子を塩基と反応させる工程をさらに含み、該塩基は好ましくは炭酸カリウムである。
【0034】
特定の実施形態では、出発コポリマーを光活性分子と接触させることは、20~120℃、好ましくは30~90℃の温度で行われる。
【0035】
本発明はまた、上記のコポリマーを含み、液体ビヒクル中の該コポリマーの溶液又は分散液である組成物に関する。
【0036】
特定の実施形態では、組成物はまた、式(I)のフルオロモノマー:
(I)CX1X2=CX3X4
(式中、X1、X2、X3及びX4はそれぞれ、H、F、及び1~3個の炭素原子を含む、任意選択的に部分的又は全体的にフッ素化されているアルキル基から独立して選択される)
に由来する単位を含む第2のコポリマーをさらに含む。
【0037】
特定の実施形態では、第2のコポリマーの式(I)のフルオロモノマーは、フッ化ビニリデン及び/又はトリフルオロエチレンを含み、好ましくはフッ化ビニリデン及びトリフルオロエチレンからなる。
【0038】
特定の実施形態では、第2のコポリマーは、フッ化ビニリデンモノマーに由来する単位及びトリフルオロエチレンモノマーに由来する単位の両方を含み、トリフルオロエチレンモノマーに由来する単位の割合は、フッ化ビニリデンモノマー及びトリフルオロエチレンモノマーに由来する単位の合計に対して、好ましくは15~55mol%である。
【0039】
特定の実施形態では、組成物は、含有量を上記コポリマー及び第2のコポリマーの合計に対して表して、5%~95重量%の上記コポリマー及び5%~95重量%の第2のコポリマーを含み、好ましくは30%~70重量%の上記コポリマー及び30%~70重量%の第2のコポリマーを含む。
【0040】
特定の実施形態では、組成物は、反応性二重結合に関して二官能性又は多官能性である少なくとも1種の(メタ)アクリルモノマーをさらに含む。
【0041】
特定の実施形態では、反応性二重結合に関して二官能性又は多官能性である前記(メタ)アクリルモノマーは、(メタ)アクリル型の少なくとも2つの反応性二重結合を含有するモノマー若しくはオリゴマー、又はジオール、トリオール若しくはポリオール、ポリエステル、エーテル、ポリエーテル、ポリウレタン、エポキシ、シアヌレート若しくはイソシアヌレートから選択される二官能性又は多官能性の(メタ)アクリルモノマー若しくはオリゴマーである。
【0042】
特定の実施形態では、前記(メタ)アクリルモノマーは、以下の化合物のリストから選択される:ドデカンジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ドデシルジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、直鎖アルカンジ(メタ)アクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレートエステル、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アルコキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ドデカンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシル化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、及びそれらの組み合わせ。
【0043】
本発明はまた、フィルムを製造する方法であって、
上記コポリマー又は上記組成物を基材上に堆積させることと、
該コポリマー又は該組成物を架橋することと
を含む方法。
【0044】
特定の実施形態では、架橋することは、所定のパターンに従って実施され、本方法は、続いて、コポリマー又は組成物の架橋されていない部分を、それらを溶媒と接触させることによって除去することを含む。
【0045】
本発明はまた、上記方法を介して得られるフィルムに関する。
【0046】
本発明はまた、上記フィルムを含む電子デバイスであって、この電子デバイスは、好ましくは、電界効果トランジスタ、メモリデバイス、コンデンサ、センサ、アクチュエータ、電気機械マイクロシステム及び触覚デバイスから選択される電子デバイスに関する。
【0047】
本発明は、先行技術の欠点を克服可能にする。より具体的には、本発明は、上記の有用な特性(圧電性、焦電性及び強誘電性)を有し、その後、効率的に架橋することができると同時に、架橋後にこれらの有用な特性を本質的に保存している電気活性フルオロポリマーを提供する。架橋後、本発明は、所定のパターンを有する不溶性ポリマーフィルムを得ることを可能にする。これらの所定のパターンは、例えば、ポリマーフィルムの一部の架橋を可能にするUV照射、続いて非架橋部分を除去するための現像(developing)工程によって得ることができる。
【0048】
さらに、本発明は、過剰なエネルギー照射に頼ることなく架橋を達成することを可能にし、したがって、多層電気デバイスの他の層の劣化を回避し、必ずしも架橋剤を添加することなく架橋を達成することを可能にする。
【0049】
しかしながら、本発明の特定の変形例では、コポリマー中に存在する光活性基がラジカル重合反応の開始を可能にできることを考慮すると、架橋助剤(crosslinking coagent)の存在が有利であり得る。
【0050】
本発明は、式(I)のフルオロモノマーに由来する単位を含むコポリマーの使用に基づく。コポリマーのH原子及び/又はF原子の一部は、架橋を可能にする式-Y-Ar-Rの光活性基で置換される。この置換は、コポリマーと、光活性基を含む光活性分子とを反応させるだけでよい。H原子及び/又はF原子の残りの部分は保存されている。
【0051】
本発明の1つの利点は、合成が完全に支配された既存のポリマーの範囲から架橋性ポリマーを得ることを可能にし、したがって新しい重合方法の開発を必要としないことである。
【0052】
本発明を実施するために、2つの実施形態が特に想定され得る:
-単一のフルオロポリマーを使用し、それを光活性分子で処理して、フルオロポリマーのH原子及び/又はF原子を光活性基で部分的に置換し、次いでこのフルオロポリマーを架橋することが可能である;
-1種のみが光活性基で置換されたH原子及び/又はF原子を有するフルオロポリマーのブレンドを使用し、次いでこのフルオロポリマーのブレンドを架橋することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】式-O-Ar-Rの光活性基による変性の前(A)及び後(B)の、実施例1に従ったポリマーの赤外吸収スペクトルを示すグラフである。波数(cm
-1)を、x軸上に示す。
【
図2】式-O-Ar-Rの光活性基による変性の前(A)及び後(B)の、実施例1に従ったポリマーの
1H NMRスペクトルを示すグラフである。化学シフト(ppm)を、x軸上に示す。
【
図3】実施例2による架橋変性ポリマー層の光学顕微鏡写真である。
【
図4】実施例2による架橋変性ポリマー層の、20℃、0.1Hz及び2000Vで測定した強誘電ヒステリシスを示す図である。y軸はシフト(μC.cm
-2)に対応し、x軸は電圧(V)に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明を、以下の説明において、非限定的に、より詳細に説明する。
【0055】
本発明は、これ以降FPポリマーと呼ばれるフルオロポリマーの使用に基づく。これらのFPポリマーは、式-Y-Ar-Rの光活性基をグラフト化するために変性される出発ポリマーとして使用することができ、このように変性されたフルオロポリマーを、これ以降、MFPポリマーと称する。
【0056】
FPポリマー
本発明によれば、FPポリマーは、式(I)のフルオロモノマー:
(I)CX1X2=CX3X4
(式中、X1、X2、X3及びX4はそれぞれ、H、F、及び1~3個の炭素原子を含む、任意選択的に部分的又は全体的にフッ素化されているアルキル基から独立して選択される)
に由来する単位を含む。
【0057】
式(I)のフルオロモノマーは、少なくとも1つのフッ素原子を含む。
【0058】
式(I)のフルオロモノマーは、好ましくは5個以下の炭素原子、より好ましくは4個以下の炭素原子、より好ましくは3個以下の炭素原子を含み、及びより好ましくは2個の炭素原子を含む。
【0059】
ある特定の実施形態では、X1、X2、X3及びX4の各基は、独立して、H原子若しくはF原子、又はH原子及びF原子から選択される1つ以上の置換基を任意選択的に含むメチル基を表す。
【0060】
ある特定の実施形態では、X1、X2、X3及びX4の各基は、独立して、H原子又はF原子を表す。
【0061】
特に好ましくは、式(I)のフルオロモノマーは、フッ化ビニル(VF)、フッ化ビニリデン(VDF)、トリフルオロエチレン(TrFE)、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、トリフルオロプロペン、特に3,3,3-トリフルオロプロペン、テトラフルオロプロペン、特に2,3,3,3-テトラフルオロプロペン又は1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、ヘキサフルオロイソブチレン、パーフルオロブチルエチレン、ペンタフルオロプロペン、特に1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペン又は1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペンから選択される。
【0062】
式(I)の最も好ましいフルオロモノマーは、フッ化ビニリデン(VDF)及びトリフルオロエチレン(TrFE)である。
【0063】
特定の変形例では、FPポリマーはP(VDF)ポリマーである。
【0064】
特定の変形例では、FPポリマーはP(TrFE)ポリマーである。
【0065】
さらに他の変形例では、式(I)の2つ以上の異なるフルオロモノマーに由来する単位がFPポリマー中に存在してもよい。
【0066】
FPポリマーは、好ましくは、VDF及びTrFEに同時に由来する単位を含む。
【0067】
特定の好ましい変形例では、FPポリマーはP(VDF-TrFE)コポリマーである。
【0068】
TrFEに由来する単位の割合は、VDF及びTrFEに由来する単位の合計に対して、好ましくは5~95mol%であり、特に5~10mol%、又は10~15mol%、又は15~20mol%;又は20~25mol%、又は25~30mol%;又は30~35mol%、又は35~40mol%、又は40~45mol%、又は45~50mol%、又は50~55mol%、又は55~60mol%、又は60~65mol%、又は65~70mol%、又は70~75mol%、又は75~80mol%、又は80~85mol%、又は85~90mol%、又は90~95mol%である。15~55mol%の範囲が特に好ましい。
【0069】
特定の変形例では、FPポリマーは、式(I)のフルオロモノマーに由来する単位からなる。
【0070】
FPポリマー中の単位のモル組成は、赤外分光法又はRaman分光法などの様々な手段によって決定することができる。蛍光X線分光法などの炭素又はフッ素元素の元素分析の従来の方法は、ポリマーの質量組成を明確に計算可能にし、それによってモル組成を推定することができる。
【0071】
適切な重溶媒中のポリマー溶液の分析によって、多核、特にプロトン(1H)及びフッ素(19F)、NMR技術を使用することもできる。NMRスペクトルは、多核プローブを備えたFT-NMR分光計で記録される。次いで、1つ又は他の核によって生成されたスペクトル中の、様々なモノマーによって示される特定のシグナルが同定される。したがって、例えば、TrFEに由来する単位は、プロトンNMRにおいて、CFH基に特異的な特定のシグナル(約5ppm)を示す。同じことがVDFのCH2基(3ppmを中心とする広い未分解ピーク)にも当てはまる。2つのシグナルの相対積分は、2つのモノマーの相対的存在量、すなわちVDF/TrFEモル比を示す。
【0072】
同様に、例えば、TrFEの-CFH基は、フッ素NMRにおいて特徴的で十分に単離されたシグナルを示す。プロトンNMR及びフッ素NMRで得られた様々なシグナルの相対積分の組み合わせは、その解が様々なモノマーに由来する単位のモル濃度を提供する連立方程式をもたらす。
【0073】
したがって、当業者は、あいまいさなく、必要な精度でFPポリマーの組成を決定可能にする一連の方法又は方法の組み合わせを利用可能である。
【0074】
FPポリマーは、好ましくはランダムで線状である。
【0075】
これは有利には熱可塑性であり、(フルオロエラストマーとは対照的に)エラストマー性ではないか、又はあまりエラストマー性ではない。
【0076】
FPポリマーは、均一であっても不均一であってもよい。均一なポリマーは均一な鎖構造を有し、様々なモノマーに由来する単位の統計的分布は鎖間でほとんど変化しない。不均一ポリマーでは、鎖は、多峰性又は拡散型の、様々なモノマーに由来する単位の分布を有する。したがって、不均一ポリマーは、所与の単位においてより豊富である鎖を含み、及びこの単位においてより乏しい鎖を含む。不均一ポリマーの例は、WO2007/080338に見られる。
【0077】
FPポリマーは電気活性ポリマーである。
【0078】
特に好ましくは、0~150℃、好ましくは10~140℃の誘電率最大値を有する。強誘電ポリマーの場合、この最大値は「キュリー温度」と呼ばれ、強誘電相から常誘電相への転移に相当する。この温度最大値又は転移温度は、示差走査熱量測定又は誘電分光法によって測定することができる。
【0079】
ポリマーは、好ましくは90~180℃、より詳細には100~170℃の融点を有する。融点は、規格ASTM D3418に従って示差走査熱量測定によって測定することができる。
【0080】
FPポリマーの製造
FPポリマーは、乳化重合、懸濁重合及び溶液重合などの任意の公知の方法を使用して製造することができる。
【0081】
ポリマーの重量平均モル質量Mwは、好ましくは少なくとも100000g.mol-1、好ましくは少なくとも200000g.mol-1、より好ましくは少なくとも300000g.mol-1、又は少なくとも400000g.mol-1である。これは、反応器内の温度などの特定の方法パラメータを変更することによって、又は移動剤を添加することによって調整することができる。
【0082】
分子量分布は、多孔度が漸増する3つのカラムのセットを用いて、溶離液としてジメチルホルムアミド(DMF)中のSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)によって推定することができる。固定相はスチレン-DVBゲルである。検出方法は、屈折率の測定に基づいており、ポリスチレン標準を用いて較正が行われる。サンプルをDMFに0.5g/lで溶解し、0.45μmナイロンフィルターに通して濾過する。
【0083】
MFPポリマー
MFPポリマーは、式-Y-Ar-R(式中、Yは、O原子又はS原子又はNH基を表し、Arは、アリール基、好ましくはフェニル基を表し、R、は1~30個の炭素原子を含む単座基又は二座基である)の光活性基をポリマー鎖に組み込むように、式HY-Ar-Rの光活性分子と反応させることによってFPポリマーから製造することができる。
【0084】
「単座基」という用語は、この基Rの1個の原子のみを介して基Arに結合する基を意味する。
【0085】
「二座基」という用語は、この基Rの2つの異なる原子を介して、好ましくは基Arの2つの異なる位置で基Arに結合する基を意味する。
【0086】
特定の実施形態では、基Arは、Yに対してオルト位、及び/又はYに対してメタ位、及び/又はYに対してパラ位で基Rで置換されてもよい。
【0087】
基Rは、特に、2~20個の炭素原子、又は3~15個の炭素原子、又は4~10個の炭素原子、より好ましくは6~8個の炭素原子を含み得る。
【0088】
基Rは、置換又は非置換であり得るアルキル又はアリール又はアリールアルキル又はアルキルアリール鎖を含み得る。基Rは、O、N、S、P、F、Cl、Br、Iから選択される1つ以上のヘテロ原子を含み得る。
【0089】
基Rは好ましくはカルボニル官能基を含み、好ましくは、アセチル基、置換又は非置換のベンゾイル基、置換又は非置換のフェニルアセチル基、フタロイル基、及びホスフィンオキシドアシル基(ホスフィンは、特に、メチル基、エチル基及びフェニル基から選択される1つ以上の基で任意選択的に置換されている)から選択することができる。
【0090】
特定の実施形態では、基Ar上の唯一の置換基は基Rである。他の実施形態では、1~30個の炭素原子を含む1つ(又はそれ以上)の追加の置換基を含んでもよい。追加の置換基は、O、N、S、P、F、Cl、Br、Iから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでもよい。さらに、追加の置換基は、例えば、脂肪族炭素系鎖であってもよい。又は、追加の置換基は、置換若しくは非置換のアリール基、好ましくはフェニル基、又は芳香族若しくは非芳香族複素環であってもよい。
【0091】
特定の実施形態では、基Arはメタ位で置換されたフェニルであり、基Rは非置換のベンゾイル基であるか、又は基Arはパラ位で置換されたフェニルであり、基Rは非置換のベンゾイル基であるか、又はArはパラ位で置換されたフェニルであり、基Rはヒドロキシル基でパラ位で置換されたベンゾイル基であるか、又は基Arはメタ位で置換されたフェニルであり、基Rはアセチル基であるか、又は基Arはパラ位で置換されたフェニルであり、基Rはアセチル基であるか、又は基Arはオルト位で置換されたフェニルであり、基Rはヒドロキシル基でカルボニル基にα置換されたフェニルアセチル基であるか、又は基Arはメタ位で置換されたフェニルであり、基Rはヒドロキシル基でカルボニル基に対してα置換されたフェニルアセチル基であるか、又は基Arはオルト位で置換されたフェニルであり、基Rはホスフィンオキシドアシル基であるか、又は基Arはメタ位で置換されたフェニルであり、基Rはホスフィンオキシドアシル基であるか、又は基Arはパラ位で置換されたフェニルであり、基Rはホスフィンオキシドアシル基であるか、又は基Arはオルト位及びメタ位で置換されたフェニルであり、基Rはフタロイル基である。
【0092】
好ましくは、Yは酸素原子である。
【0093】
したがって、光活性分子は、例えば、3-ヒドロキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシベンゾフェノン、1-ヒドロキシアントラキノン、2-ヒドロキシアントラキノン、3-ヒドロキシアセトフェノン、4-ヒドロキシアセトフェノン、4,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシベンゾイン、4-ヒドロキシベンゾイン、エチル-(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート及び(4-ヒドロキシ-4,6-トリメチルベンゾイル)(2,4,6トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドから選択され得る。
【0094】
光活性分子はまた、以下から選択することもできる:2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(フェニル基もまたカルボニル基に対してオルト、メタ又はパラ位でヒドロキシル基で置換されている);2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(フェニル基もまた、カルボニル基に対してメタ位でヒドロキシル基で置換されている);2,4,6-トリメチルベンゾイルエチルフェニルホスフィネート(フェニル基もまた、カルボニル基に対してメタ位でヒドロキシル基で置換されている);1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(フェニル基もまた、カルボニル基に対してオルト、メタ又はパラ位でヒドロキシル基で置換されている);ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド(フェニル基もまた、カルボニル基に対してメタ又はパラ位でヒドロキシル基で置換されている);1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(フェニル基もまた、カルボニル基に対してオルト又はメタ位でヒドロキシル基で置換されている);2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(フェニル基もまた、カルボニル基に対してオルト、メタ又はパラ位でヒドロキシル基で置換されている);2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン(フェニル基もまた、カルボニル基に対してオルト又はメタ位でヒドロキシル基で置換されている);2,4-ジエチルチオキサントン(チオキサントン基もヒドロキシル基で置換されている)。
【0095】
又は、YはNH基であってもよい。
【0096】
したがって、光活性分子はまた、以下から選択することもできる:2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(フェニル基もまたカルボニル基に対してオルト、メタ又はパラ位でアミン基で置換されている);2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(フェニル基もまた、カルボニル基に対してメタ位でアミン基で置換されている);2,4,6-トリメチルベンゾイルエチルフェニルホスフィネート(フェニル基もまた、カルボニル基に対してメタ位でアミン基で置換されている);1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(フェニル基もまた、カルボニル基に対してオルト、メタ又はパラ位でアミン基で置換されている);ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド(フェニル基もまた、カルボニル基に対してメタ又はパラ位でアミン基で置換されている);1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(フェニル基もまた、カルボニル基に対してオルト又はメタ位でアミン基で置換されている);2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(フェニル基もまた、カルボニル基に対してオルト、メタ又はパラ位でアミン基で置換されている);2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン(フェニル基もまた、カルボニル基に対してオルト又はメタ位でアミン基で置換されている);2,4-ジエチルチオキサントン(チオキサントン基もアミン基で置換されている)。
【0097】
又は、Yは硫黄原子であってもよい。
【0098】
したがって、光活性分子はまた、以下から選択することもできる:2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(フェニル基もまたカルボニル基に対してオルト、メタ又はパラ位でチオール基で置換されている);2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(フェニル基もまた、カルボニル基に対してメタ位でチオール基で置換されている);2,4,6-トリメチルベンゾイルエチルフェニルホスフィネート(フェニル基もまた、カルボニル基に対してメタ位でチオール基で置換されている);1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(フェニル基もまた、カルボニル基に対してオルト、メタ又はパラ位でチオール基で置換されている);ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド(フェニル基もまた、カルボニル基に対してメタ又はパラ位でチオール基で置換されている);1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(フェニル基もまた、カルボニル基に対してオルト又はメタ位でチオール基で置換されている);2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(フェニル基もまた、カルボニル基に対してオルト、メタ又はパラ位でチオール基で置換されている);2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン(フェニル基もまた、カルボニル基に対してオルト又はメタ位でチオール基で置換されている);2,4-ジエチルチオキサントン(チオキサントン基もチオール基で置換されている)。
【0099】
FPポリマーは、FPポリマーが溶解された溶媒中でFPポリマーと光活性分子とを組み合わせることによってMFPポリマーに変換され得る。
【0100】
使用される溶媒は、特に、ジメチルホルムアミド;ジメチルアセトアミド;ジメチルスルホキシド;ケトン、特にアセトン、メチルエチルケトン(又はブタン-2-オン)、メチルイソブチルケトン及びシクロペンタノン;フラン、特にテトラヒドロフラン;エステル、特に酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテート;カーボネート、特にジメチルカーボネート;及びホスフェート、特にリン酸トリエチルであってよい。これらの化合物の混合物も使用することができる。
【0101】
光活性分子を脱プロトン化し、式-Y-Ar-R(式中、Y、Ar及びRは上記で定義した通りである)の光活性アニオンを形成するために、光活性分子を溶媒中のFPポリマーと接触させる前に塩基と反応させてもよい。
【0102】
光活性分子を脱プロトン化するために使用される塩基は、9~12.5、好ましくは10~12のpKaを有し得る。
【0103】
光活性分子を脱プロトン化するために使用される塩基は、好ましくは炭酸カリウム、炭酸カルシウム及び炭酸ナトリウムから選択され、好ましくは炭酸カリウムである。
【0104】
塩基は、光活性分子に対して1~1.25当量、又は1.25~1.5当量、又は1.5~2.0当量、又は2.0~3.0当量、又は3.0~4.0当量、又は4.0~5.0当量、又は5.0~6.0当量、又は6.0~7.0当量、又は7.0~8.0当量のモル量で使用され得る。
【0105】
光活性分子と塩基との反応は、上述のように、溶媒中で行うことができる。
【0106】
光活性分子と塩基との反応に使用される溶媒は、FPポリマーを光活性分子と接触させるために使用される溶媒と同じであっても、異なっていてもよい。好ましくは、光活性分子と塩基との反応に使用される溶媒は、FPポリマーを光活性分子と接触させるために使用される溶媒と同じである。
【0107】
光活性分子と塩基との反応は、20~80℃、より好ましくは30~70℃の温度で行うことができる。
【0108】
光活性分子と塩基との反応の持続時間は、例えば、5分~5時間、好ましくは15分~2時間、より好ましくは30分~1時間であり得る。
【0109】
特定の実施形態では、光活性分子を塩基と反応させる工程の後に、過剰の塩基を除去する工程を行ってもよい。
【0110】
反応媒体中に導入されるFPポリマーの濃度は、例えば1~200g/l、好ましくは5~100g/l、より好ましくは10~50g/lであり得る。
【0111】
反応混合物に導入される光活性分子の量は、H原子及び/又はF原子の光活性基による所望の置換度に応じて調整することができる。したがって、この量は、0.1~0.2モル当量(FPポリマー中に存在するH原子及び/又はF原子に対して、反応媒体中に導入された光活性基);又は0.2~0.3モル当量;又は0.3~0.4モル当量;又は0.4~0.5モル当量;又は0.5~0.6モル当量;又は0.6~0.7モル当量;又は0.7~0.8モル当量;又は0.8~0.9モル当量;又は0.9~1.0モル当量;又は1.0~1.5モル当量;又は1.5~2モル当量;又は2~5モル当量;又は5~10モル当量;又は10~50モル当量であり得る。
【0112】
FPポリマーと光活性分子との反応は、撹拌しながら行うことが好ましい。
【0113】
FPポリマーと光活性分子との反応は、好ましくは20~120℃、より好ましくは30~90℃、より詳細には40~70℃の温度で行われる。
【0114】
FPポリマーと光活性分子との反応の持続時間は、例えば、15分~96時間、好ましくは1時間~84時間、より好ましくは2時間~72時間であり得る。
【0115】
所望の反応時間に達したら、MFPポリマーを非溶媒、例えば脱イオン水から沈殿させることができる。その後、これを濾過し、乾燥させることができる。
【0116】
MFPポリマーの組成は、上述のように元素分析及びNMRによって、また赤外分光法によっても特徴付けることができる。特に、芳香族及びカルボニル官能基に特徴的な原子価振動バンドが1500~1900cm-1で観察される。
【0117】
出発FPポリマーのH原子及び/又はF原子は、MFPポリマーでは部分的にのみ光活性基で置換される。
【0118】
FPポリマーの有利な特性(特に、圧電特性、焦電特性及び強誘電特性)を維持するために、光活性基で置換されたH原子及び/又はF原子のモル割合は、0.1%~20%、好ましくは1%~10%、好ましくは2%~8%であることが好ましい。
【0119】
したがって、光活性基で置換されたH原子及び/又はF原子のモル割合は、0.1~0.5mol%;又は0.5~1mol%;又は1~2mol%;又は2~4mol%;又は4~6mol%;又は6~8mol%;又は8~10mol%;又は10~15mol%;又は15~20mol%であり得る。
【0120】
MFPポリマーでは、光活性基を含む構造単位の割合は、例えば、0.1~0.5mol%;又は0.5~1mol%;又は1~2mol%;又は2~4mol%;又は4~6mol%;又は6~8mol%;又は8~10mol%;又は10~15mol%;又は15~20mol%であり得る。
【0121】
フィルムの作製
本発明によるフルオロポリマーフィルムは、基材上に、1種以上のMFPポリマーのみ、又は少なくとも1種のFPポリマー及び少なくとも1種のMFPポリマーのいずれかを堆積させることによって調製することができる。特に、FPポリマーは、検討中のFPポリマーから得られたMFPポリマーと組み合わせることができる。
【0122】
少なくとも1種のFPポリマーが少なくとも1種のMFPポリマーと組み合わされる場合、FPポリマー及びMFPポリマーの全体に対するFPポリマーの質量割合は、特に5%~10%;又は10%~20%;又は20%~30%;又は30%~40%;又は40%~50%;又は50%~60%;又は60%~70%;又は70%~80%;又は80%~90%;又は90%~95%。であり得る。
【0123】
フィルムの製造は、MFP(又はMFP及びFP)ポリマーを基材上に堆積させる工程、及びそれに続く架橋工程とを含み得る。
【0124】
MFP(又はMFP及びFP)ポリマーはまた、1つ以上の他のポリマー、特にフルオロポリマーと組み合わされてもよい。
【0125】
基材は、特に、ガラス、シリコン、ポリマー材料又は金属表面であってもよい。
【0126】
堆積を行うために、1つの好ましい方法は、ポリマーを液体ビヒクルに溶解又は懸濁させて、その後基材上に堆積されるインク組成物を形成することからなる。
【0127】
液体ビヒクルは、好ましくは溶媒である。この溶媒は、好ましくは以下から選択される:ジメチルホルムアミド;ジメチルアセトアミド;ジメチルスルホキシド;ケトン、特にアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロペンタノン;フラン、特にテトラヒドロフラン;エステル、特に酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル及びプロピレングリコールメチルエチルアセテート;カーボネート、特にジメチルカーボネート;及びホスフェート、特にリン酸トリエチル。これらの化合物の混合物も使用することができる。
【0128】
液体ビヒクル中のポリマーの総質量濃度は、特に0.1%~30%、好ましくは0.5%~20%であり得る。
【0129】
インクは、特に表面張力調整剤、レオロジー調整剤、耐老化性調整剤、接着調整剤、顔料又は染料、及びフィラー(ナノフィラーを含む)から選択される1種以上の添加剤を、任意選択的に含んでもよい。好ましい添加剤は、特に、インクの表面張力を変更する共溶媒である。特に、溶液の場合、この化合物は、使用される溶媒と混和性の有機化合物であり得る。インク組成物はまた、ポリマーの合成に使用された1種以上の添加剤を含有してもよい。
【0130】
有利には、本発明は、いかなる光開始添加剤も使用しない。MFPポリマーに光活性基が存在することにより、光開始添加剤の添加が不要となるからである。
【0131】
特定の実施形態では、インクは、少なくとも1種の架橋補助剤(crosslinking adjuvant)、好ましくは架橋剤を含む。
【0132】
架橋剤の存在は、ポリマーと共有結合を形成するという利点を有し、その結果、溶媒に対するポリマーの耐性が改善される。
【0133】
架橋剤は、例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、ポリブタジエンなどの少なくとも2つの反応性二重結合を有する分子、オリゴマー及びポリマー;トリプロパルギルアミンなどの少なくとも2つの反応性炭素-炭素又は炭素-窒素三重結合を有する化合物;それらの誘導体、及びそれらの混合物から選択することができる。
【0134】
架橋剤はまた、優先的には、反応性二重結合に関して二官能性又は多官能性である(メタ)アクリルモノマーであり得る。架橋性組成物は、この型の1種以上のモノマーを含有してもよい。
【0135】
反応性二重結合に関して二官能性又は多官能性である前記(メタ)アクリルモノマーは、二官能性又は多官能性の(メタ)アクリルモノマー又はオリゴマーであり得る。本発明で使用されるモノマーに関しては、(メタ)アクリル型の少なくとも2つの反応性二重結合を含有するモノマー及びオリゴマーを挙げることができる。ラジカル重合開始剤によって、[電気活性フッ素化コポリマー-(メタ)アクリル架橋ネットワーク]構造内の(メタ)アクリルネットワークの重合及び架橋を可能にするのは、これらの反応性二重結合である。結果として、任意の純粋な(メタ)アクリル二官能性又は多官能性モノマー、例えばドデカンジメタクリレートが本発明において有用である。
【0136】
しかしながら、通常、(メタ)アクリルモノマー又はオリゴマーは、ジオール、トリオール又はポリオール、ポリエステル、エーテル、ポリエーテル、ポリウレタン、エポキシ、シアヌレート又はイソシアヌレートなどの純粋なアルカン化学以外の官能基に由来する化学構造を有する。混合された結果として(純粋に炭化水素系の性質:アルカン型ではない)それらの化学構造において、これらのモノマーがラジカル重合において反応性である少なくとも2つの(メタ)アクリル官能基を含むならば、それらは本発明に使用されるようになる。したがって、例えば、以下の化合物を挙げることができる:1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ドデシルジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、直鎖アルカンジ(メタ)アクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレートエステル、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アルコキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ドデカンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシル化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、及びそれらの組み合わせ。
【0137】
好ましくは、二官能性又は多官能性の(メタ)アクリルモノマー又はオリゴマーは、トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば、参照番号SR351でSartomer社によって販売されている製品)、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば、参照番号SR454でSartomer社によって販売されている製品)、ポリアクリレート変性脂肪族ウレタン(例えば、参照番号CN927でSartomer社によって販売されている製品)から選択されてもよい。
【0138】
他の(好ましい)実施形態では、基材上に堆積されたインク中に、架橋剤などの架橋補助剤は存在しない。
【0139】
堆積は、特に、スピンコーティング、スプレーコーティング、バーコーティング、ディップコーティング、ロールツーロール印刷、スクリーン印刷、平版印刷又はインクジェット印刷によって行われ得る。
【0140】
堆積後、液体ビヒクルを蒸発させる。
【0141】
このように構成されたフルオロポリマー層は、特に、10nm~1mm、好ましくは100nm~500μm、より好ましくは150nm~250μm、より好ましくは50nm~50μmの厚さを有し得る。
【0142】
架橋工程は、特に、熱処理及び/又は電磁放射線への曝露、好ましくはUV照射によって行われてもよい。好ましくは、ポリマーフィルムの一部のみが所定のパターンに従って架橋され、架橋されることを意図しないフィルムの部分を保護するためにマスクを使用することが可能である。
【0143】
いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、架橋工程中に、光活性基は分解を受けて遊離基(radical)を形成する傾向があると考えられる。これらの遊離基は、C-F又はC-H基と反応することができ、及び/又は一緒に再結合することができ、ポリマーの架橋をもたらす。
【0144】
いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、本発明の1つの変形によれば、架橋助剤が存在する場合、光活性基は分解を受けて遊離基を形成する傾向があると考えられる。これらの遊離基は、ラジカル重合機構を介して架橋助剤と反応することができ、ポリマーの架橋をもたらす。
【0145】
熱処理は、例えば、換気オーブン中又はホットプレート上で、フィルムを例えば40℃~200℃、好ましくは50~150℃、好ましくは60~140℃の温度に供することによって行うことができる。熱処理時間は、特に1分~4時間、好ましくは2分~2時間、好ましくは5~20分であってもよい。
【0146】
「UV照射」という用語は、200~650nm、好ましくは220~500nmの波長の電磁放射線による照射を意味する。250~450nmの波長が特に好ましい。放射線は単色又は多色であり得る。
【0147】
総UV照射量は、好ましくは40J/cm2以下、より好ましくは20J/cm2以下、より好ましくは10J/cm2以下、より好ましくは5J/cm2以下、より好ましくは3J/cm2以下である。低線量は、フィルムの表面の劣化を回避するのに有利である。
【0148】
好ましくは、この処理は、この場合もまたフィルムの劣化を防止する目的で、本質的に酸素の非存在下で行われる。例えば、処理は、真空下で、又は不活性雰囲気下で、又は酸素を通さない物理的障壁(例えば、ガラス板又はポリマーフィルム)を用いて周囲空気からフィルムを保護して実施することができる。
【0149】
本発明の1つの変形によれば、UV照射の前及び/又は後に、熱前処理及び/又は熱後処理を行うことができる。
【0150】
熱前処理及び熱後処理は、特に、20~250℃、好ましくは30~150℃、好ましくは40~110℃の温度で、例えば約100℃において30分未満、好ましくは15分未満、より好ましくは10分未満の時間行われてもよい。
【0151】
これらの処理は、架橋反応の効率を改善(フィルムの厚さの損失の低減、必要なUV線量の低下、フィルムの粗さの向上)する。
【0152】
フィルム全体に架橋が行われていない場合には、続いて現像工程を行って、フィルムの架橋されていない部分を除去し、フィルムに所望の幾何学的パターンを明らかにしてもよい。現像は、フィルムを溶媒と接触させることによって、好ましくは溶媒浴に浸漬することによって行うことができる。溶媒は、好ましくは以下から選択することができる:ジメチルホルムアミド;ジメチルアセトアミド;ジメチルスルホキシド;ケトン、特にアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロペンタノン;フラン、特にテトラヒドロフラン;エステル、特に酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル及びプロピレングリコールメチルエチルアセテート;カーボネート、特にジメチルカーボネート;及びホスフェート、特にリン酸トリエチル。これらの化合物の混合物も使用することができる。
【0153】
この溶媒には、溶媒及び非溶媒の合計に対して好ましくは50%~80質量%の、溶媒と混和性である一定量の非溶媒液体を添加することができる。非溶媒液体は、特に、以下の溶媒以外の任意の溶媒であってもよい:ジメチルホルムアミド;ジメチルアセトアミド;ジメチルスルホキシド;ケトン;フラン;エステル;カーボネート;ホスフェート。非溶媒液体は、特にプロトン性溶媒、すなわちO原子又はN原子に結合した少なくとも1つのH原子を含む溶媒であってもよい。好ましくは、アルコール(エタノール又はイソプロパノールなど)又は脱塩水を使用することができる。非溶媒の混合物も使用することができる。溶媒と組み合わせた非溶媒の存在は、すすぎの際に非溶媒のみが使用される仮想の場合と比較して、得られるパターンの鮮鋭性のさらなる改善を可能にし得る。
【0154】
現像は、好ましくは10~100℃、好ましくは15~80℃、より好ましくは20~60℃の温度で行うことができる。現像時間は15分未満が好ましく、10分未満がより好ましい。
【0155】
現像後、フィルムは、溶媒又は溶媒/非溶媒混合物と混和性の、フルオロポリマーのための非溶媒である液体ですすいでもよい。非溶媒液体は、特にプロトン性溶媒、すなわちO原子又はN原子に結合した少なくとも1つのH原子を含む溶媒であってもよい。好ましくは、アルコール(エタノール又はイソプロパノールなど)又は脱塩水を使用することができる。非溶媒の混合物も使用することができる。このすすぎ工程により、フィルムパターンの鮮鋭性及び表面の粗さが向上する。
【0156】
すすぎは、特に、非溶媒を架橋フィルムに噴霧することによって行うことができる。すすぎは、非溶媒の浴に浸漬することによっても行うことができる。好ましくは、すすぎ中の温度は、5~80℃、より好ましくは10~70℃、特に15~35℃の周囲温度であり得る。すすぎ工程の時間は、好ましくは10分未満、より好ましくは5分未満、特に1分未満である。
【0157】
任意選択的なすすぎの後、フィルムは空気中で乾燥されてもよく、任意選択的に、例えば30~150℃、好ましくは50~140℃の範囲の温度にそれを曝露することによって、後架橋熱処理を受けてもよい。
【0158】
本発明によるフィルムは、好ましくは、1kHz及び25℃において8以上、好ましくは10以上の比誘電率(dielectric constant又はrelative permittivity)を特徴とする。
【0159】
比誘電率は、幾何学的寸法(厚さ及び対向面)の情報を用いて材料の静電容量を測定することができるインピーダンスメータを使用して測定することができる。前記材料は、2つの導電性電極の間に配置される。
【0160】
本発明によるフィルムは、15pC/N超、好ましくは20pC/N超の圧電係数d33を特徴とし得る。
【0161】
圧電係数の測定は、PM300圧電計を用いて行うことができる。
【0162】
特定の実施形態では、本発明によるフィルムは、40~60MV/mの抗電界を特徴とする。
【0163】
本発明によるフィルムはまた、150MV/mの電界、25℃で測定して、30mC/m2超の、好ましくは50mC/m2超の、好ましくは65mC/m2超の残留分極を特徴とし得る。
【0164】
抗電界及び残留分極の測定値は、材料の分極曲線を測定することによって得ることができる。前記フィルムを2つの導電性電極の間に配置し、次いで正弦波電界を印加する。前記フィルムを通過する電流を測定することにより、分極曲線にアクセスすることができる。
【0165】
電子デバイスの製造
本発明によるフィルムは、電子デバイスの層として使用することができる。
【0166】
したがって、1つ以上の追加の層、例えばポリマー、半導体材料又は金属の1つ以上の層を、それ自体公知の方法で、本発明のフィルムを備えた基材上に堆積させることができる。
【0167】
「電子デバイス」という用語は、電子回路において1つ以上の機能を実行することができる単一の電子部品、又は電子部品のセットのいずれかを意味する。
【0168】
特定の変形例によれば、電子デバイスは、より具体的には、光電子デバイス、すなわち、電磁放射線を放射、検出、又は制御することができるデバイスである。
【0169】
本発明が関連する電子デバイス又は適切な場合には光電子デバイスの例は、トランジスタ(特に電界効果トランジスタ)、チップ、バッテリ、光起電力電池、発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)、センサ、アクチュエータ、変圧器、触覚デバイス、電気機械マイクロシステム、電気熱量デバイス、及び検出器である。
【0170】
好ましい変形例によれば、本発明によるフィルムは、2つの金属電極又はポリマー電極の間に含まれる活性層として、センサ、特に圧電センサに使用することができる。
【0171】
電子デバイス及び光電子デバイスは、多数の電子デバイス、機器又はサブアセンブリのアイテム、並びにテレビ、携帯電話、剛性又は可撓性スクリーン、薄膜光起電力モジュール、光源、エネルギー変換器、及びセンサなどの多数の物体及び用途において使用され、それらに統合される。
【実施例】
【0172】
以下の実施例は、本発明を限定することなく例示する。
[実施例1]
0.6gの、モル組成75/25のP(VDF-TrFE)コポリマーを第一シュレンクチューブに入れ、続いて10mLのアセトンを入れた。ポリマーが溶解するまで混合物を撹拌した。4-ヒドロキシベンゾフェノン(0.79g、4.0mmol)、炭酸カリウム(0.83g、6.0mmol)及び15mLのアセトンを、第2のシュレンクチューブ内で不活性雰囲気下、50℃において1時間撹拌した。第2の溶液を室温に冷却した後、第2のシュレンクチューブの内容物を1μmのPTFEフィルターを通して濾過し、第1のシュレンクチューブに移し、第1のシュレンクチューブを50℃で3日間加熱した。次いで、溶液を冷却し、数滴の塩酸で酸性化した水から2回沈殿させた。次いで、綿状白色固体をエタノールで2回及びクロロホルムで2回洗浄した。変性ポリマーを60℃の真空オーブン中で一晩乾燥させた。
【0173】
最終生成物を、FTIR、SEC及び液体1H NMRによって特徴付けた。最終ポリマーは、4.4mol%のベンゾフェノン基を含む。
【0174】
ポリマーの赤外スペクトルを、(A)変性の前及び(B)変性の後に測定した。
【0175】
結果は、
図1のグラフに見ることができる。ポリマーの変性後、1500~1900cm
-1のベンゾフェノンの特徴的なバンドの出現が観察される。
【0176】
ポリマーの液体1H NMRスペクトルを、(A)変性の前及び(B)後にも測定した。
【0177】
結果は、
図2のグラフに見ることができる。ポリマーの変性後、ポリマーの変性後の芳香族核のプロトンに対応する8~10ppmの特徴的なシグナルの出現が観察される。
【0178】
[実施例2]
実施例1による変性コポリマーを、シクロペンタノン中に含有量4質量%となるように室温で磁気撹拌しながら24時間溶解させた。
【0179】
変性コポリマーのフィルムを、シリコンウェハ上に1000rpmでスピンコーティングすることによって調製した。堆積物を125℃で5分間乾燥させ、次いで、マスクを介して選択的に、窒素流下、6J.cm-2の線量で水銀ランプを用いて照射した。その後、110℃で5分間アニーリングした。
【0180】
次いで、生成物をアセトン浴中で1分間現像し、次いでイソプロパノールですすいだ。架橋された照射領域は不溶性である。非照射領域は可溶性であり、基材から除去された。
【0181】
図3は、架橋変性ポリマー層の光学顕微鏡写真である。明るいゾーンは照射され架橋されたゾーンであり、暗いゾーンは基材に対応する。マスクに対応するパターンが実際に作製された。
【0182】
図4は、架橋変性ポリマー層の、20℃、0.1Hz及び2000Vで測定した強誘電ヒステリシスを示す図である。架橋変性ポリマー層は、4μC.cm
-2超の残留分極を有することが観察される。したがって、これらのことから、架橋変性ポリマーは良好な電気活性特性を保存すると結論付けられる。
【国際調査報告】