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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-08
(54)【発明の名称】複数の光学チャネルを有する器械
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/00 20060101AFI20220201BHJP
   G01J 3/36 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
G02B13/00
G01J3/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535186
(86)(22)【出願日】2019-12-13
(85)【翻訳文提出日】2021-08-17
(86)【国際出願番号】 EP2019085045
(87)【国際公開番号】W WO2020126888
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】1873292
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517092787
【氏名又は名称】オネラ(オフィス ナシオナル デチュドゥ エ ドゥ ルシェルシュ アエロスパシアル)
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ドゥルアール,ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ ラ バリエール,フロランス
【テーマコード(参考)】
2G020
2H087
【Fターム(参考)】
2G020AA03
2G020CB06
2G020CC28
2G020CC46
2G020CC49
2G020CC63
2G020CD06
2G020CD24
2H087LA21
2H087NA03
2H087RA01
2H087RA26
2H087RA43
2H087RA44
2H087RA47
2H087UA01
2H087UA02
(57)【要約】
器械は、マルチパスモノリシック光学部品(1)を備える。前記マルチパスモノリシック光学部品(1)は、前記部品の相対する2つの面の間の透明な一材料の部分から構成されている。前記部品の前記2つの面のうちの一方の面は、第1の屈折面(S)により形成されており、他方の面は、並置された複数の第2の屈折面(S)を備える。前記部品の各光路は、前記第1の屈折面の対応する一部分と共に、前記複数の第2の屈折面のうちの1つの第2の屈折面により形成されている。かかる一部品は、前記器械内において、前記複数の光路によって共有されるマトリックス光検出器と共に、平行に配列(配置)されている複数の光路を有する検出モジュールの部材であることに適している。かかる検出モジュールは、検出モジュールの冷却を改善するクライオスタットコールドスクリーンへと一体化される(組み合わされる)のに十分にコンパクトであり得る。そうして、かかる検出モジュールは、対物レンズと組み合わされ得、その結果、複数の光路を有する器械を形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光路を有する器械(100)であって、前記複数の光路によって共有される視野を有し、前記複数の光路はそれぞれ、前記複数の光路によって共有される前記器械の光入口(E20)と、前記複数の光路によって共有されるマトリックス光検出器(14)との間に平行に配列されており、他の任意の光路とは別に各光路に専用である前記マトリックス光検出器の部分(14a、14b、・・・)を有し、
前記器械(100)は、使用される放射に対して透明な一材料の部分から構成されるマルチパスモノリシック光学部品(1)を備え、前記部分は、それぞれ他方の面の反対側に向けられた前記部品の2つの面の間に含まれており、その結果、前記2つの面のうちの一方の面上に入射する前記放射は、両側面の間の前記部分を通過して他方の面から出射し、
前記部品(1)の前記2つの面のうちの第1の面は、光軸(A)を有する第1の屈折面(S)によって形成されており、
第2の面と称される前記部品(1)のもう一方の面は、前記第2の面において重なり合うことなく並置される複数の第2の屈折面(S)を備え、各第2の屈折面は、互いに別々に別の光軸(A)を有し、前記複数の第2の屈折面のうちの少なくとも1つの第2の屈折面の前記光軸は、前記第1の屈折面(S)の前記光軸(A)に対してずれており、
前記複数の第2の屈折面(S)は、前記第1の屈折面(S)を通過する光線が前記複数の第2の屈折面のうちの多くとも1つの第2の屈折面を通過して前記部品から出射するように、前記部品(1)の前記第2の面において分布しており、各第2の屈折面は、前記第1の屈折面の一部分のそれぞれと共に、透過のための互いに別々の光路を形成しており、
前記部品(1)の前記第1の屈折面(S)および各第2の屈折面(S)の曲率値のそれぞれは、前記第1および前記複数の第2の屈折面の各々の少なくとも1つのそれぞれの点においてゼロではなく、その結果、前記第1および前記複数の第2の屈折面の各々は、ゼロではない曲率に対応する前記点において前記第1または前記複数の第2の屈折面を通過する放射ビームの集束を個々に変更し、
前記第2の屈折面(S)の前記光軸(A)が前記第1の屈折面(S)の前記光軸(A)に対してずれている、前記光学部品(1)の各光路は、前記部品の2つの側面の間を前記光路を通じて透過する前記放射ビームに対してもまた有効であるゼロではないプリズム偏向パワーを生じ、前記プリズム偏向パワーの値および向きのうちの少なくとも一方は、前記部品の前記複数の光路のうちの少なくとも2つの光路の間で異なっており、
前記マルチパスモノリシック光学部品(1)は、前記部品の各透過光路が前記器械(100)の前記複数の光路のうちの1つの光路に専用であるように構成されており、
前記器械(100)はさらに、対物レンズ(20)と、複数の光路(1a、1b、・・・)を有する検出モジュール(10)と、を備え、前記対物レンズは、前記検出モジュールの全ての前記光路によって共有される少なくとも1つのレンズ(21~23)を備え、前記検出モジュールは、前記光学部品(1)と、前記マトリックス光検出器(14)と、を備え、前記光学部品が前記対物レンズの射出ひとみ内に位置するように、前記対物レンズに結合しており、その結果、前記器械の前記視野内に含まれるシーンは、各光路について、前記光学部品の前記対物レンズを通って前記マトリックス光検出器上に結像される、器械(100)。
【請求項2】
前記モノリシック光学部品(1)の前記第1の屈折面(S)および各第2の屈折面(S)の曲率値のそれぞれは、前記部品の両側面の間の前記光路を通じて透過される前記放射ビームに対して有効であるゼロではない光学パワーを、各光路について別々に前記部品が有するような曲率値である、請求項1に記載の器械(100)。
【請求項3】
前記モノリシック光学部品(1)の前記第1の屈折面(S)および前記複数の第2の屈折面(S)のうちの少なくとも1つは自由表面型である、すなわち、いかなる回転対称軸もなく、かついかなる対称中心もない、請求項1または2に記載の器械(100)。
【請求項4】
前記複数の第2の屈折面(S)の複数の前記光軸(A)のそれぞれが前記第1の屈折面(S)の前記光軸(A)に対して対称的にずれている、前記光学部品(1)の前記複数の光路のうちの2つの光路は、等しい光学パワーと、前記第1の屈折面の前記光軸に対して対称な向きをもち、かつ絶対値が等しいプリズム偏向パワーと、を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の器械(100)。
【請求項5】
前記モノリシック光学部品(1)の前記複数の第2の屈折面(S)は、前記部品の前記第2の面に並置されており、その結果、2×2、2×3、3×3、3×4または4×4マトリックスを形成している、請求項1~4のいずれか1項に記載の器械(100)。
【請求項6】
以下の複数の素子:
‐画角リミッタ(15)であって、前記モノリシック光学部品(1)を通過する複数の光線を、前記部品の前記第1の屈折面(S)の前記光軸(A)に対するその傾きにしたがってフィルタリングするために配置され、その結果、前記光学部品に入射する前記複数の光線の前記傾きは、前記画角リミッタ(15)によって設定された傾きのしきい値よりも選択的に小さい、前記画角リミッタ(15);
‐少なくとも1組の分割壁(19)であって、前記モノリシック光学部品(1)とマトリックス光検出器(14)との間に配置され、その結果、異なる複数の光路(1a、1b、・・・)を通じて透過される放射を分離する、前記少なくとも1組の分割壁(19);および、
‐複数の開口部を有するマスク(15’)であって、前記マスクは、1つの光路(1a、1b、・・・)につき1つの開口部を有し、その結果、前記光路の横断面を限り、および/または前記器械(100)の結像機能にとって有用でない前記モノリシック光学部品(1)の複数のゾーンを覆い、および/または前記モノリシック光学部品の有用な複数のゾーンを通過しなかった放射によって形成される寄生像を除去し、および/または前記器械の前記複数の光路の複数のひとみのそれぞれを設定する、前記複数の開口部を有するマスク(15’)、
のうちの少なくとも1つの素子をさらに備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の器械(100)。
【請求項7】
前記モノリシック光学部品(1)の前記複数の第2の屈折面(S)のうちの少なくとも2つの第2の屈折面は、複数のスペクトルフィルタのそれぞれを、1つの第2の屈折面につき1つずつ担持しており、これら複数のフィルタは、前記複数の第2の屈折面のうちの2つの第2の屈折面の間で異なるスペクトルフィルタリング特徴を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の器械(100)。
【請求項8】
前記器械の各光路は、前記マトリックス光検出器(14)の対応する前記部分(14a、14b、・・・)および前記モノリシック光学部品(1)の対応する経路に加えて、少なくとも1つのフィルタ(13a、13b、・・・)を備え、前記フィルタは、前記器械の前記光路のスペクトル透過帯域を決定し、当該スペクトル透過帯域は、前記器械の他の前記複数の光路のうちの少なくとも1つの光路の前記スペクトル透過帯域とは異なる、請求項1~6のいずれか1項に記載の器械(100)。
【請求項9】
前記複数の第2の屈折面(S)のうちの2つの第2の屈折面は、前記複数の光路のそれぞれの中の異なるフィルタ(13a、13b、・・・)に関連付けられており、複数の前記フィルタのうちの1つのフィルタを通じてそれぞれ別々に透過される放射の2つの波長の間で有効である縦色収差を補正するために、異なる曲率を有する、請求項8に記載の器械(100)。
【請求項10】
クライオスタットと冷却機との組み合わせをさらに備え、前記クライオスタットの内部において、前記マトリックス光検出器(14)は前記冷却機に熱的に結合された支持体(16)上に配置されており、前記マルチパスモノリシック光学部品(1)は、前記マトリックス光検出器の前記支持体と熱的に接触しているスクリーン(17)によって横側を取り囲まれている、請求項1~9のいずれか1項に記載の器械(100)。
【請求項11】
マルチスペクトルイメージキャプチャユニット、または分光計の一部、または三次元結像系の一部を形成している、請求項1~10のいずれか1項に記載の器械(100)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、さまざまな方向に偏向した(deflected)複数の新たに生じる(出現した)ビーム(emerging beam)へと入射光のビームを分割することを可能にする、マルチパスモノリシック部品を組み込んだ、複数の光路を有する器械に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの結像および分光分析の用途には、単一の光入射ひとみと単一のイメージセンサ(image sensor)との間に平行な複数の光路を有することが必要とされる。かかる構成は、使用される光学系の大きさ、使いやすさ、その製造中の組立ての省力(節約)、および/または単価についての制約により、動機付けられ得る。実際、光学系はそのため、単一のブロック(single-block)で、コンパクトで、かつ結像されおよび/またはスペクトル分析されるシーンに向けるのに容易であり得る。
【0003】
かかる構成には、単一のイメージセンサの面上に横方向のずれ(transverse offset)を有する単一の像部分を再現することが必要とされる。ここで、かかる像のずれ(オフセット)は、複数の方法により、特に文献WO2016/092236に記載されているとおりミラーを配列することによって、生成され得ることが知られている。しかし、かかるミラー系のビーム分割器の配列(構成)には、光学系の寸法を増大させることが必要とされる。別のアプローチは、光学系のひとみ(pupil)内においてプリズム系のビーム分割器を使用するものである。これには、ビーム分割器を、ビームが平面波の状態で到達する位置、すなわち、系の入射ひとみ(entrance pupil)の近傍、または、無限焦点系(afocal system)の出口のいずれかに配置することが必要とされる。これらの条件下では、ビーム分割機能を生ずる部品は、各光学系ごとに特別に設計されなければならない。なぜならば、入射ひとみの直径がこの光学系の焦点距離に依存するか、または無限焦点系の追加のために光学系がかさばるからである。球面波ビームがかかるビーム分割器部品を通過する場合には、光検出器(photodetector)上に生成される像ははっきりと結ばれる(集束される)(focused)ことができない。なぜならば、これらの像の各々を含む表面が光検出器の表面と角(angle)をなし、この角度が像間で異なるからである。特に、球面波―したがって平面波ではない―によって照射されるプリズムは、像面湾曲収差(field curvature aberration)を生ずる。これは、各像の鮮鋭度(sharpness)の劣化を、そのかなりの部分にわたって引き起こす。最後に、別の解決策は、互いに横方向にずれた球面波ビームの経路内においてレンズを使用することであろう。これに関しては、各レンズの光学パワーは、最良の焦点の平面をより近づけ、異なるレンズを通過したビームを光検出器の表面内における別々の領域に向かわせることを可能にし得る。しかし、十分な横方向の像のずれを得るためには、ゼロではない光学パワーを有するレンズの使用には、光学系の同一の全体焦点距離を維持するために、該光学系の対物レンズの焦点距離を著しく変化させることが必要とされる。これにはさらに、球面波ビームを生成する光学系の部分の長さ、すなわち対物レンズの長さを増大させることが必要とされる。これはより大きなバルクの原因となり、より大きな直径を有する光学系が必要となる。そのため、該光学系はもはや、多くの用途におけるコンパクトさの要件を満たしていない。
【発明の概要】
【0004】
これらの状況において、本発明の目的は、上述の欠点を有しないか、またはこれらの欠点が低減された新たなビーム分割器(beam divider)を提供することにある。より具体的には、本発明は、長すぎる焦点距離値と、全ての光路によって共有される光検出器の表面における影響の大きすぎる像面湾曲(field curvature)との間に、より良いトレードオフを提供することを目的とする。
【0005】
本発明の他の目的は、複数の光路と、その全ての経路によって共有される単一のイメージセンサと、を有する器械であって、コンパクトであり、かつ取り扱いおよび較正が容易である前記器械を提供することである。
【0006】
これらの目的または他の目的のうちの少なくとも1つの目的を達するために、本発明の一態様は、複数の光路を有する器械を提供し、当該複数の光路を有する器械は、これら複数の光路によって共有される視野(field of view)を有し、前記複数の光路はそれぞれ、前記複数の光路によって共有される前記器械の光入口(entrance)と、前記複数の光路によって共有されるマトリックス光検出器との間に平行に配列(構成)されており、他の任意の光路とは別に各光路に専用であるこのマトリックス光検出器の部分を有する。そうして、シーン(scene)の複数の像(image)は、前記マトリックス光検出器上に、前記器械によって同時に形成される:各光路に対して別々に1つの像である。本発明の器械は、使用される放射に対して透明な一材料の部分から構成されるマルチパスモノリシック光学部品(multipath, monolithic optical component)を備え、この部分は、それぞれ他方の面の反対側に向けられた前記部品の2つの面の間に含まれており、その結果、前記2つの面のうちの一方の面上に入射する前記放射は、これら2つの側面の間の前記部分を通過して他方の面から出射する(出る)。言い換えれば、本発明の部品は、透過性のプレートの構成(transmissive plate configuration)を有する。前記部品の前記2つの面(face)のうちの第1の面は、光軸を有する第1の屈折(表)面(refracting surface)によって形成されている。第2の面と称される前記部品のもう一方の面は、その部分に対して、この第2の面において重なり合うことなく並置される複数の第2の屈折(表)面を備える。各第2の屈折面は、互いに別々に別の光軸を有し、これら複数の第2の屈折面のうちの少なくとも1つの第2の屈折面の前記光軸は、前記第1の屈折面の前記光軸に対してずれている。加えて、前記複数の第2の屈折面は、前記第1の屈折面を通過する光線が前記複数の第2の屈折面のうちの多くとも1つの第2の屈折面を通過して前記部品から出射するように、前記部品の前記第2の面において分布しており、各第2の屈折面は、前記第1の屈折面の一部分のそれぞれと共に、透過のための互いに別々の光路を形成している。前記マルチパスモノリシック光学部品は、この部品の各透過光路が前記器械の前記複数の光路のうちの1つの光路に専用であるように、構成(配置)されている。
【0007】
前記器械はさらに、対物レンズと、マルチパス検出モジュール(multipath detection module)と、を備え、前記対物レンズは、前記検出モジュールの全ての前記光路によって共有される少なくとも1つのレンズを備え、前記検出モジュールは、前記光学部品と、前記マトリックス光検出器と、を備え、前記検出モジュールは、前記光学部品が前記対物レンズの射出ひとみ(exit pupil)内に位置するように、前記対物レンズに結合しており、その結果、前記器械の前記視野内に含まれるシーンは、各光路について、前記光学部品の前記対物レンズを通って前記マトリックス光検出器上に結像される。
【0008】
本発明に適合する器械において、前記モノリシック光学部品の前記第1の屈折面の側は、放射ビームの到達側であり得、この部品の前記複数の第2の屈折面の側は、全ての前記光路に対して、複数の前記放射ビームのそれぞれの出射側であり得る。しかしながら、本発明にやはり適合する他の器械において、前記複数の第2の屈折面の側は反対に、前記放射ビームの到達側であり得、前記第1の屈折面の側はそれゆえ、全ての光路の、複数の前記放射ビームの出射側であり得る。
【0009】
本発明の第1の特徴によれば、前記モノリシック光学部品の前記第1の屈折面および各第2の屈折面の曲率値のそれぞれは、前記第1および前記複数の第2の屈折面の各々の少なくとも1つのそれぞれの点においてゼロではなく、その結果、前記第1および前記複数の第2の屈折面の各々は、ゼロではない曲率に対応する前記点においてそれ(ら)を通過する放射ビームの集束を個々に変更する。
【0010】
また、本発明の第2の特徴によれば、前記第2の屈折面の光軸が前記第1の屈折面の前記光軸に対してずれている、前記モノリシック光学部品の各光路は、前記部品の両側面の間をこの光路を通じて透過する前記放射ビームに対してもまた有効なゼロではないプリズム偏向パワー(prismatic deflecting power)を生ずる。また、前記プリズム偏向パワーの値および向きのうちの少なくとも一方は、前記部品の前記複数の光路のうちの少なくとも2つの光路の間で異なっている。
【0011】
そうして、本発明の器械において使用される前記マルチパスモノリシック光学部品は、以下、簡潔のため「光学部品」と称されるが、これはビーム分割器として使用され得る。特に、この光学部品の前記第1または前記第2の面上に入射し、かつ全ての光路に対して共通のビームは、球面波を有し得る、すなわち、波面が球面部分である放射ビームであり得る。
【0012】
前記光学部品の前記複数の第2の屈折面のうちの1つの第2の屈折面が、前記複数の光路のうちの1つの光路において、前記第1の屈折面の曲率と同一の曲率を有する場合、前記部品は、この光路についてゼロである光学パワー(屈折力)(optical power)を有する。しかしそれは、それにもかかわらず、この同じ光路についてゼロでないプリズム偏向パワーを有し得る。
【0013】
好ましくは、前記光学部品の前記第1の屈折面および各第2の屈折面の曲率値のそれぞれは、前記部品の両側面の間のこの光路を通じて透過される前記放射ビームに対して有効であるゼロではない光学パワーを、各光路について別々にこの部品が有するような曲率値であり得る。
【0014】
当業者に知られているように、光学部品の前記光学パワーは、放射ビームの集束または発散に対して変更の効果を有するが、これは前記部品の入口と出口との間において有効である。前記光学パワーは、各光線が通過する前記複数の屈折面の曲率値に関連する光の屈折の効果から生ずる。
【0015】
光学パワーの原理は、光学部品のプリズム偏向パワーのそれとは異なっている。前記プリズム偏向パワーは、前記放射ビームの傾き(傾角)(inclination)を変更する効果であり、やはり前記部品の前記入口と前記出口との間において有効である。前記プリズム偏向パワーもまた、光の屈折の効果から生ずるが、しかし、互いに平行でない前記複数の屈折面の中央平面とそれが組み合わされた場合においてである。
【0016】
本発明の器械の前記光学部品においては、前記第1の屈折面の前記光軸に対して横方向にずれている(offset)前記複数の光路のうちの少なくとも1つの光路について、その光路における前記第2の屈折面での前記中央平面は、同じ光路において有効な部分における前記第1の屈折面で決定される中央平面に対して、ゼロではない角度をなしていてもよい。そうして、前記プリズム偏向パワーは、複数の前記中央平面の間のこの角度の差から生じ、関係のある前記光路内の前記部品のゼロではない光学パワーの値は、この光路(経路)内の前記第1の屈折面と前記第2の屈折面との間の曲率の差から生ずる。
【0017】
このように、前記光学部品は、前記第1の屈折面の前記光軸に対してずれているその前記複数の光路のそれぞれについて、ゼロではない光学パワーとゼロではない前記プリズム偏向パワーとを併有し得る。この組み合わせにより、前記部品を組み込んだ結像系(imaging system)にとって長すぎないような焦点距離値と、全ての光路によって共有される像平面(image plane)における影響の大きすぎないような像面湾曲(field curvature)との間に、各光路について、トレードオフが達成され得る。この最後の特徴のため、前記光学部品は、前記器械の前記マルチパス検出モジュールにおいて、全ての光路によって共有される前記マトリックス光検出器と組み合わされ(combined)得る。そうして、前記検出モジュールは、複数の光路を有する一方で、コンパクトであり得る。
【0018】
さらに、かかる検出モジュールは、種々の対物レンズと組み合わされ得る。それは、例えば、異なる焦点距離値を有するような対物レンズの範囲(一連の対物レンズ)をなす。この目的のために、前記検出モジュールは、毎回、本発明の前記光学部品が前記対物レンズの射出ひとみ内に位置するように、前記対物レンズの各々と交換可能に組み合わせられ(assembled)得る。
【0019】
一般に、本発明では、前記光学部品の前記第1の屈折面および各第2の屈折面のうちの少なくとも1つは、フレネル面(Fresnel surface)であり得る。あるいは、これは飛び(jump)および角の線(angle line)のない面、すなわち、連続(continuous)であり、かつ連続な導関数(微分係数)(continuous derivative)を有する面であり得る。さらに、前記光学部品の前記第1の屈折面、および/または前記複数の第2の屈折面のうちの少なくとも1つの第2の屈折面は、非球面(aspherical)であり得る。かかる非球面形状では、前記第2の屈折面の光軸が前記第1の屈折面のそれに対して横方向にずれている(オフセットされている)各光路から出射する前記放射ビームの前記傾きによって生ずる、光学収差(optical aberration)および/またはオフセンタリング収差(off-centering aberration)は、特に低減され得る。
【0020】
一般に、前記モノリシック光学部品の前記第1の屈折面および前記複数の第2の屈折面のうちの少なくとも1つは自由表面型であり得る、すなわち、いかなる回転対称軸もなく、かついかなる対称中心もないものであり得る。かかる表面は自由表面(free surface)と呼ばれ、Freeform(登録商標)という名称で知られている。
【0021】
あるいは、前記光学部品の各第1および/または第2の屈折面は、円対称であり得る、特に一球面部分(a sphere portion)であり得、または円錐面の一部分であり得る。
【0022】
好ましくは、前記光学部品の前記第1の屈折面および各第2の屈折面は、前記部品の同じ側上に位置するそれぞれの曲率中心を有し得る。例えば、それぞれの曲率中心が前記部品の前記第1の屈折面の側にあるとき、この第1の屈折面は、この第1の屈折面上に入射する放射ビームに対して発散レンズ効果(divergent lens effect)を有し、各第2の屈折面は、集束レンズ効果を有する。さらに、前記第1の屈折面および各第2の屈折面の各曲率値は、前記部品がその前記複数の光路のそれぞれにおいて集束レンズ効果を生ずるように、選択され得る。
【0023】
前記光学部品はモノリシック(一体構造)(monolithic)であるので、前記マルチパス光学器械内におけるその組み付け(組立て)(assembly)は、迅速かつ簡単であり得る。特に、関係する前記複数の光路について同一となるような焦点合わせは、前記複数の第2の屈折面のうちの1つ以上の第2の屈折面の形状の特定の調節によって達成され得る。そのように、前記光学器械の単価は低減され得る。
【0024】
さらに、前記光学部品は寸法を小さくし得、特に厚さを小さくし得、その結果、それが小さな発熱能力を有するようにし得る。したがって、特に熱赤外線範囲(thermal infrared range)内において感度のよい(影響を受けやすい)(sensitive)検出器械内における使用のために、それは容易に冷却され得る。
【0025】
最後に、本発明の器械内において使用される前記光学部品は、その材料、およびその前記複数の屈折面の形状に基づいて、ダイヤモンド機械加工法(diamond machining method)によって、成形(モールディング)(molding)によってまたはフォトリソグラフィ(photolithography)によって作製され得る。
【0026】
本発明のさまざまな実施形態では、以下の複数の付加的な特徴のうちの少なくとも1つが、単独で、またはそれらのうちの複数のものの組み合わせにおいて、使用され得る:
‐前記光学部品の各第2の屈折面の前記光軸は、その前記第1の屈折面の前記光軸に対して平行であり得る;
‐前記複数の第2の屈折面の前記複数の光軸のそれぞれが前記第1の屈折面の前記光軸に対して対称的にずれている、前記光学部品の前記複数の光路のうちの2つの光路は、等しい光学パワーと、前記第1の屈折面の前記光軸に対して対称な向きをもち、かつ絶対値が等しいプリズム偏向パワーと、を有し得る;
‐前記光学部品の前記複数の第2の屈折面は、前記部品の前記第2の面に並置され得、その結果、2×2、2×3、3×3、3×4または4×4マトリックスを形成し得る;
‐前記光学部品を形成する前記材料は、特にポリカーボネート(polycarbonate)、ポリメチルメタクリレート(polymethyl-methacrylate)、シクロオレフィンコポリマー(cyclo-olefin copolymer)、ポリエチレンイミン(polyethylenimine)、ポリエーテルスルホン(polyether-sulfone)またはポリアミド12(polyamide-12)系の有機化合物であり得る、または溶融シリカ(melted silica)系の有機化合物であり得るが、それは、使用される前記放射が0.36μm(マイクロメートル)~2μmの波長を有するスペクトル成分を含む場合においてである;
‐使用される前記放射が0.36μm~14μmの波長を有するスペクトル成分を含む場合、前記光学部品を形成する前記材料は、例えば臭化カリウム(potassium bromide)等の、「アルカリド(alkalide)」としても知られるハロゲン化アルカリ(alkali halide)であり得る;
‐前記光学部品を形成する前記材料は、例えばゲルマニウム(germanium)、ケイ素(silicon)、硫化亜鉛(zinc sulfide)、セレン化亜鉛(zinc selenide)、ヒ化ガリウム(gallium arsenide)等の非鉄材料(non-ferrous materials)系であり得る、またはカルコゲニド系ガラス(chalcogenide-based glass)であり得る、またはポリエチレン(polyethylene)系であり得るが、それは、使用される前記放射が0.36μm~14μmの波長を有するスペクトル成分を含む場合においてである;
‐前記光学部品の前記第1の屈折面の曲率半径は、絶対値において30mm(ミリメートル)~600mmの間に含まれ得る、かつ前記部品の各第2の屈折面の曲率半径は、絶対値において5mm~300mmの間に含まれ得る;
‐前記第2の屈折面の前記光軸が前記第1の屈折面の前記光軸に対してずれている(オフセットされている)ことによる前記光学部品の各光路の前記プリズム偏向パワーは、絶対値において1°(度)~40°の間に含まれ得る;
‐前記光学部品の各第2の屈折面は、7mm~900mmの間に含まれる面積を有し得る;
‐前記光学部品はさらに、前記複数の光路のうちの1つの光路を通じて透過される複数の前記光線をフィルタリングするように配置(構成)された少なくとも1つのスペクトルフィルタ(spectral filter)を備え得る。有利には、このスペクトルフィルタは、問題の(関心の)前記光路の前記第2の屈折面上に配置され得る。好ましくは、前記複数の第2の屈折面のうちの少なくとも2つの第2の屈折面は、複数のスペクトルフィルタのそれぞれを、1つの第2の屈折面につき1つずつ担持し得、これら複数のフィルタは、これら複数の第2の屈折面のうちの2つの第2の屈折面の間で異なるスペクトルフィルタリング特徴(spectral filtering feature)を有する。
【0027】
本発明による前記器械は特に、マルチスペクトルイメージキャプチャユニット(multispectral image capture unit)、または分光計(スペクトロメータ)(spectrometer)の一部、または三次元結像系(three-dimensional imaging system)の一部を形成し得る。
【0028】
有利には、前記対物レンズおよび前記検出モジュールは、互いに取り外し可能に(removably)連結され得、その結果、前記対物レンズは、特に前記器械の全体焦点距離(overall focal length)を変化させるために、別のものと置き換えられ得る。
【0029】
前記器械の前記視野内に位置する単一の物体の複数の像を前記器械が前記マトリックス光検出器上に形成するとき、この物体の一点から生ずる放射は、前記対物レンズに向けられた前記光学部品の前記第1および第2の面のそれの近傍において湾曲した波面を有し得る。
【0030】
前記器械はさらに、画角リミッタ(angular field limiter)であって、前記光学部品を通過する複数の光線を、前記第1の屈折面の前記光軸に対するその傾きにしたがってフィルタリングするために配置され、その結果、前記光学部品に入射する前記複数の光線の前記傾きは、前記画角リミッタによって設定された傾きのしきい値よりも選択的に小さい、前記画角リミッタを備え得る。その代わりに、またはそれとの組み合わせにおいて、前記器械は、少なくとも1組の分割壁(separating wall)であって、前記光学部品とマトリックス光検出器との間に配置され、その結果、異なる複数の光路を通じて透過される放射を分離する、前記少なくとも1組の分割壁を備え得る。
【0031】
いくつかの用途にとって有利には、複数の開口部を有するマスクが前記器械において付加的に使用され得る。このマスクは、1つの光路につき1つの開口部を有し、その結果、この光路の横断面を限り、および/または前記器械の結像機能にとって有用でない前記光学部品の複数のゾーンを覆い、および/または前記光学部品の有用な複数のゾーンを通過しなかった放射によって形成される寄生像(parasitic image)を除去し、および/または前記器械の前記複数の光路の複数のひとみのそれぞれを設定する。前記光学部品の有用な複数のゾーン(useful zones)とは、前記複数の第2の屈折面を意味しており、この第2の面に隣接する複数の第2の屈折面の間の前記光学部品の前記第2の面内に存在し得る複数の分割(区画)ゾーン(separation zones)を除くものと理解される。したがって、これら複数の分割ゾーンは、前記器械の前記結像機能にとって使用に適さぬゾーンであり、同様に、周縁ゾーン(peripheral zone)は、前記光学部品の前記第2の面内において、一組の前記複数の第2の屈折面の周りに存在し得る。前記光学部品が前記対物レンズの前記射出ひとみに位置しているとき、このマスクの各開口部は、問題の前記光路に対して開口部絞り機能を有する。
【0032】
本発明の器械のいくつかの用途に対しては、その前記複数の光路の各々は、前記マトリックス光検出器の対応する前記部分および前記モノリシック光学部品の対応する経路に加えて、少なくとも1つのフィルタを備え得る。このフィルタは、前記器械の問題の光路のスペクトル透過帯域(spectral transmission band)を決定し得るが、当該スペクトル透過帯域は、前記器械の他の前記複数の光路のうちの少なくとも1つの光路の前記スペクトル透過帯域とは異なっている。そうして、この場合、前記複数の第2の屈折面のうちの2つの第2の屈折面は、その複数の光路のそれぞれの中の異なるフィルタに関連付けられており、2つの前記フィルタのうちの1つのフィルタを通じてそれぞれ別々に透過される放射の2つの波長の間で有効である縦色収差を補正するために、異なる曲率を有し得る。
【0033】
やはり用途に応じて、本発明の器械は、クライオスタットと冷却機との組み合わせをさらに備え得る。前記クライオスタットの内部において、前記マトリックス光検出器は、前記冷却機に熱的に結合された、一般にコールドテーブルまたはコールドフィンガと称される支持体上に配置されている。前記マルチパスモノリシック光学部品は、前記マトリックス光検出器の前記支持体と熱的に接触している、コールドスクリーンと称されるスクリーンによって横側を取り囲まれ得る。このコールドスクリーンは、複数の前記分割壁、および/または使用される各フィルタ、および/または前記マスク、および/または前記部品のための取り付け支持体として機能し得る。それはまた、前記画角リミッタを形成し得る。
【0034】
本発明の他の詳細および利点は、添付の図面を参照して与えられる非限定的な実施形態の例の以下の説明において明らかになるだろう:
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1a】本発明による器械に使用され得る光学部品の、前記部品の相対する2つの側からの2つの斜視図である。
図1b】本発明による器械に使用され得る光学部品の、前記部品の相対する2つの側からの2つの斜視図である。
図2】本発明による器械に使用され得る他の光学部品の平面図である。
図3a】それぞれ図2に適合する光学部品を組み込んだ、本発明による2つの器械の断面図である。
図3b】それぞれ図2に適合する光学部品を組み込んだ、本発明による2つの器械の断面図である。
図4図3aおよび図3bの器械の一部の詳細な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
明確さのために、これらの図に表される要素の寸法は、実際の寸法または実際の寸法の比率のいずれにも対応しない。さらに、異なる図面に示される同一の参照符号は、同一であるか、または同一の機能を有する要素を示す。
【0037】
図1aおよび図1bを参照すると、本発明に使用される光学部品1は、2μm~14μmの間に含まれる波長を有する電磁放射に対して透明である(電磁放射を通す)ために、ゲルマニウムで作製され得る。部品1は、2つの対向する面を有し、それらは周縁リブ2によって接続され得る。例示として、図1aおよび図1bの部品1は、正方形の周囲を有している。部品1の第1の面は、図1a上に直接見えているが、屈折面Sにより形成されている。当該屈折面Sは、例えば球面または非球面であり得る。Aは、屈折面Sの光軸を示す。部品1の第2の面は、図1b上に直接見えているが、2×2マトリックス内に並置され、かつ、やはり一実施例としてそれぞれ球面または非球面であり得る、4つの屈折面Sによって形成され得る。Aは、各屈折面Sのそれぞれの光軸を示す。各光軸Aは、光軸Aに対して平行であってもよく、かつそれに対して横方向にずれていてもよい。面Sおよび面Sの各々が一球面部分(a sphere portion)であり、かつ対応する光軸Aまたは光軸A上に球面中心が位置しているとき、各屈折面Sは、この面Sを通過する放射ビームと同じ放射ビームが通過する屈折面Sの部分の中央平面(midplane)に対して平行でない中央平面を有する。このため、各屈折面S、および屈折面Sの対応する部分は共に、それらを通過する放射ビームに対してプリズム偏向パワーを生ずる。したがって、かかるプリズム偏向パワーは、異なる2つの屈折面の平均の傾きから生ずる。図示の部品1では、屈折面Sは凹面かつ実質的に球面であり、各屈折面Sは凸面かつ実質的に球面である。よって、屈折面Sの対応する部分とともに複数の屈折面Sのうちの1つの屈折面Sによって形成される各光路のプリズム偏向は、屈折面Sの光軸Aに対して平行に入射する平面波ビームの平均の伝播方向を、この光軸から分離する効果を有する。
【0038】
屈折面S、および複数の屈折面Sのうちの1つの屈折面Sが同一の曲率を有する場合、図1aおよび図1bの部品1については、放射ビームがこれらの2つの面を通過するとき、当該放射ビームの集束または発散は変化しない。逆に、屈折面Sおよび屈折面Sが異なる曲率を有する場合、放射ビームがその2つの面を通過するとき、当該放射ビームの集束または発散が変化する。言い換えれば、これら2つの屈折面によって形成される光路は、ゼロではない光学パワー値を有する。特に、部品1の各光路の光学パワーは正であり、これは集束レンズ効果(converging lens effect)に対応する。ただし、対応する屈折面Sの曲率半径が屈折面Sの曲率半径よりも小さいときである(これらの曲率半径は絶対値において考えられている)。
【0039】
図2に示す部品1の実施形態の変形例は、直線エッジセグメントBとは別に円形のリブ2を有する。屈折面Sおよび屈折面Sはそれぞれ、円形の周縁境界(限界)を有する。さらに、屈折面Sは、屈折面Sに対して、x方向およびy方向に沿ってさまざまな位置を有する:y方向に沿って隣り合う2つの屈折面Sは接しており、x方向に沿って隣り合う2つの屈折面Sは離れており、全屈折面Sは、光軸Aに対して対称的に分布している。
【0040】
一例として、以下の寸法が使用され得る:
‐x-y平面に対して平行であるリブ2の外側半径R:約8.4mm;
‐x-y平面に対して平行である屈折面Sの周縁境界の半径R:約6.75mm;
‐x-y平面に対して平行である各屈折面Sの周縁境界の半径R:約2.5mm;
‐x方向に沿って隣り合う2つの屈折面Sの光軸A間の距離D:約6.25mm;
‐y方向に沿って隣り合う2つの屈折面Sの光軸A間の距離:約5.0mm;
‐屈折面Sの曲率半径(略球面および凹面と仮定):約160mm;
‐各屈折面Sの曲率半径(略球面および凸面と仮定):約83mm;
‐部品1の厚さ(屈折面Sの周縁と各屈折面Sの中心との間で、光軸Aに対して平行に測定):約0.50mm;
‐直線エッジセグメントBと光軸Aとの間の距離W:約5.95mm。
【0041】
これらの寸法から出発して、当業者は、近似計算(approximate calculation)または光線追跡法(ray-tracing method)のいずれかによって、部品1の各光路の光学パワーおよびプリズム偏向パワーの値を決定する方法を知っている。これらの値は、上記に示した特定の寸法に対して、ゼロではない。
【0042】
図3aによれば、光学器械100は図示されていない方法によって、例えば、マウンティングリング(mounting ring)または他の任意の接続装置によって、互いに組み立てられる対物レンズ20および検出モジュール10を備える。
【0043】
対物レンズ20は図3aに示すとおり、焦点距離が39.5mmであるレトロフォーカス広視野モデルであり得る。しかしながら、対物レンズ20は図3bに示すとおり、例えば焦点距離が158mmである狭視野リイメージャ型(re-imager type)対物レンズ20’のような、他のモデルに交換可能であり得る。当業者は、図3aに示される対物レンズ20のレンズ21、22および23に対する数値データ、または図3bに示される対物レンズ20’のレンズ21’~26’に対する数値データを決定することができる。同様に、検出モジュール10と共に代替的に使用されることが意図される他の任意の対物レンズモデルのレンズに対して、その数値データを決定することができる。E20は、対物レンズ20または20’の光の入口(optical entrance)を示す。
【0044】
図3aおよび図3bに示す検出モジュール10は、対物レンズ20または20’を透過する放射の伝播方向に沿った順序において、窓11、広帯域スペクトルフィルタ(wideband spectral filter)12、図2の光学部品1、狭帯域スペクトルフィルタ(narrowband spectral filter)13a、13b等、およびマトリックス光検出器14を備える。検出モジュール10、および対物レンズ20または20’のそれぞれは、器械100が使用可能であるようにそれらが一緒に組み立てられたときに、光学部品1が対物レンズ20または20’の射出ひとみに位置するように設計される。加えて、対物レンズ20のレンズ21~23、または対物レンズ20’のレンズ21’~26’は、光学部品1の屈折面Sの光軸Aと一致するそれぞれの光軸を有し、その軸は、好ましくはマトリックス光検出器14の感光面の幾何学的中心の近くを通る。
【0045】
検出モジュール10内では、光学部品1はその屈折面Sが対物レンズ20または20’を向くように配置されてもよく、屈折面Sは器械100の光路を決定する。対物レンズ20のレンズ21~23または対物レンズ20’のレンズ21’~26’、窓11、広帯域スペクトルフィルタ12およびマトリックス光検出器14は、4つの光路に対して共通である。マトリックス光検出器14の感光面は光軸Aに対して垂直であり、光学部品1の約21.5mm後ろに位置する。その結果、マトリックス光検出器14の感光面の部分14aは、光路1aに専用であり、マトリックス光検出器14の感光面の別の部分14bは、部分14aとは別個であり、光路1bに専用である。やはりマトリックス光検出器14の感光面の他の2つの部分は、互いに別個であり、かつ、部分14aおよび部分14bと別個であり、他の2つの光路(図示せず)に専用である。フィルタ13aは光路1a上に選択的に配置され、フィルタ13bは光路1b上に選択的に配置され、そうして、他の2つの光路に対しては他の2つの狭帯域スペクトルフィルタ(図示せず)が、1つの光路につき1つ、選択的に配置されている。狭帯域スペクトルフィルタ13a、13b等は、有利には、検出モジュール10に取り付けるのが容易である単一の剛性部品内において、2×2マトリックスに組み立てられ得る。特に、フィルタ13a、13b等は、共用の取り付け部内において個々に保持されるか、または、接着剤を使用して突合せ接合されて(butt-joined)プレート全体を形成するか、または、これらのフィルタのための共通の基層として機能するプレート上の薄層堆積(thin layer deposition)およびフォトリソグラフィによって作製され得る。例えば、各スペクトルフィルタ13a、13b等は、約0.5mmの厚さを有し得る。しかし、器械100の用途に応じてより適切であり得る代替実施形態では、各スペクトルフィルタ13a、13b等は、部品1の複数の屈折面Sのうちの1つの屈折面Sにより担持されることによって、部品1に固定され得る。
【0046】
そうして、4つの光路1a、1b等は、マトリックス光検出器14の感光面の対応する部分14a、14b等の上に、器械100の視野内の単一の内容物(content)のそれぞれの像を、同時に形成する。1つの光路につき1つ、4つのスペクトル成分を有するマルチスペクトルイメージを共に形成するこれらの像は、マトリックス光検出器14の単一の動作シーケンスの間に同時に捕捉(capture)される。光学部品1を使用しているため、4つの像は同時に鮮明である。図2を参照して引用された数値では、焦点距離が39.5mmであるレトロフォーカス型(retrofocus type)広視野対物レンズ20が使用されたとき、器械100は25mmの全体焦点距離を有し、焦点距離が158mmであるリイメージャ型狭視野対物レンズ20’が使用されたとき、器械100は100mmの全体焦点距離を有する。窓11の前面(front face)とマトリックス光検出器14の感光面との間の距離は、約26.37mmである。光学部品1の屈折面Sの形状は、この光路のフィルタ13a、13b等の狭スペクトル帯域にしたがって、異なる光路間で異なるように調節され得るだろう。特に、この追加の調節は、放射の波長に対する部品1の屈折率の値のバリエーションおよびレンズ21~23または21’~26’の材料の屈折率の値のバリエーションに対して補正を加え得る。図3aおよび図3bはそれぞれ、光の入口E20によって器械100に入射し、そうして光検出器14の部分14a、14b等に同時に集束される(焦点を有する)(focused)、平面波放射ビームをさらに示している。
【0047】
100のような器械は、SWIR領域、NIR(near-infrared)の頭字語によって知られる近赤外線領域、または可視スペクトル領域のうちの1つにおいて動作するように設計され得る。これらの場合において、検出モジュール10に対する冷却は与えられる必要がないかもしれない。
【0048】
あるいは、器械100は、MWIRまたはLWIRによって示されるスペクトル領域のうちの1つにおいて動作するように設計され得る。これらの他の場合には、検出モジュール10のための冷却系を設ける必要があり得る。図4は、冷却されることが意図された、かかる検出モジュール10に対する可能な構成を示す。マトリックス光検出器14は、光検出器14と支持体16との間に良好な熱的接触を生じさせられるように、当業者の専門用語において一般にコールドテーブル(cold table)またはコールドフィンガ(cold finger)と呼ばれる支持体16上に、例えば接着剤によって固定される。支持体16は、熱伝導性材料を材料とするものであり、冷却機(cooling machine)(図示せず)に連結されている。側壁17は、検出モジュール10の光学部材を取り囲んでいる。すなわち、側壁17は、部品1、スペクトルフィルタ、特に各光路1a、1b等に個々に専用であるフィルタ13a、13b等、および、例えば光路間の分割壁、マスク(mask)、絞り(ダイアフラム)(diaphragm)等といったモジュール10の他の任意の(optional)部品を取り囲んでいる。側壁17の後端部は、コールドテーブル16と同時に冷却されるために、当該コールドテーブル16と熱的に接触している。このため、側壁17は一般に、コールドスクリーン(cold screen)と呼ばれている。さらに、冷却されるよう意図された今述べたアセンブリは、クライオスタット(cryostat)を構成する空のエンクロージャ内に収容され得る。クライオスタットの側壁18は、今述べたとおり冷却されるよう意図された部材と熱的に接触していない。それは、対物レンズ20の側の窓11によって密閉されている。窓11は、器械100の動作スペクトル領域に対して透明である(transparent)材料で作られている。
【0049】
光路1a、1b等により光検出器14上に形成される像の質を劣化させ得る寄生放射(parasitic radiation)および/または寄生像を低減するために、検出モジュール10はさらに、以下の追加的な素子のうちの少なくとも1つを備えてもよい:
‐器械100内の放射の伝播方向に沿って光学部品1のまさに上流に配置され得る画角リミッタ15。かかる画角リミッタは、光軸Aと同軸である円錐胴部(conic trunk)またはチューブセグメント(tube segment)の形状を有し得る。それは、光学部品1から上流のコールドスクリーン17の延長部によって形成され得る;
‐隣り合う2つの屈折面Sの間の中間にある光学部品1の部分を掩蔽する(隠す)ための、かつ場合によってはリブ2の曝される部分も掩蔽するための、例えば光学部品1と狭帯域スペクトルフィルタ13a、13b等との間にある、複数の開口部を有するマスク15’。マスク15’は、各光路1a、1b等に対して異なる開口部を有し得る。それは、他のそれぞれの光路に専用である開口部と別々になっている。仮に光学部品1が対物レンズ20または20’の射出ひとみ内に配置されているとし、かつ複数の開口部を有するマスク15’が光学部品1の近傍にあるときには、その複数の開口部の各々は、器械100の対応する光路に対するひとみを決定する;
‐分割壁のマトリックス19であって、光学部品1とマトリックス光検出器14との間に、または、一方の端部の狭帯域スペクトルフィルタ13a、13b等と他方の端部の光検出器14との間に、各壁19が長手方向に配置されており、分割壁は、光学部品1の第2の屈折面Sのマトリックスの複数の方向のうちの任意の1つの方向に沿って隣り合う2つの光路1a、1b等の間にある、分割壁のマトリックス19。
【0050】
上記で詳細に説明した複数の実施形態に対して、本発明の第2の特徴を適合させることによって、本発明が再現され得ることが理解される。特に、所与の屈折面Sの数および全ての数値は、例示のためにのみ示されたものである。
【0051】
最後に、図3a、図3bおよび図4を参照して先に説明したもののようなマルチスペクトルイメージキャプチャユニット以外の光学器械も、本発明を再現し得る。特に、かかる異なる器械は特に、マルチパス分光計(multipath spectrometer)において使用され得る。例えば、例えば本発明に適合する光学部品1によって決定されるというような分光計の光路の各々は、それぞれのスペクトル間隔(spectral interval)に専用であり得、その結果、このスペクトル間隔からの放射をその間隔に適合する回折ネットワークに向けてもよい。
【0052】
本発明はまた、三次元結像系に対してもまた使用され得る。かかる系は図3aまたは図3bの器械100の構造と類似の構造を有し得るが、狭帯域スペクトルフィルタ13a、13b等は三次元結像の動作(働き)にとって必要ではない。さらに、対物レンズの前における限定的な分離距離(separation-distance)間隔内に位置する結像されるべき複数のシーン要素(scene elements)に対して、当該器械は焦点が合わされる。全ての光路は、器械の入射光の視野(entrance optical field)内に含まれる単一のシーン要素から来る光線を、同時に集める。しかし、器械の異なる光路に有効なひとみは、互いに横方向にずれている。このため、それぞれ複数の光路により形成される、同一のシーン要素からの複数の像はそれぞれ、関わりのある光路に対応する光検出器の感光面の部分の内部に、シーン要素の距離に依存する感光面のこの部分の領域内において位置している。全ての光路によって形成されるこれら複数の要素のそれぞれの位置を比較することによって、器械に対するシーン要素の分離距離の推定値を得ることが可能である。本発明に適合する器械がこのように可能とする三次元結像機能は、立体像取得型(stereoscopic image acquisition type)である。

図1a
図1b
図2
図3a
図3b
図4
【国際調査報告】