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特表2022-513524低FODMAP食を使用してヒトを治療するための組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-08
(54)【発明の名称】低FODMAP食を使用してヒトを治療するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/125 20160101AFI20220201BHJP
   A61K 31/702 20060101ALI20220201BHJP
   A61K 35/745 20150101ALI20220201BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20220201BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
A23L33/125
A61K31/702
A61K35/745
A61P1/00
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535575
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(85)【翻訳文提出日】2021-07-01
(86)【国際出願番号】 IB2019061096
(87)【国際公開番号】W WO2020128947
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】PA201801022
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508278309
【氏名又は名称】グリコム・アクティーゼルスカブ
【氏名又は名称原語表記】Glycom A/S
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(72)【発明者】
【氏名】マコンネル,ブルース
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクスネス,ルイーセ クリスティーネ
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018MD14
4B018MD20
4B018MD27
4B018MD31
4B018MD87
4B018ME11
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA01
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA66
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC59
4C087BC60
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA66
4C087ZC75
(57)【要約】
低FODMAP食を摂取するヒトにオリゴ糖の供給源を提供すること、低FODMAP食を摂取するヒトの結腸におけるビフィズス菌の存在量を増加させること、および/または低FODMAP食を摂取するヒトの食事にFODMAPを再導入すること、における使用のための合成組成物および方法。組成物は、一種以上のヒトミルクオリゴ糖を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトに胃腸症状を誘発することなく、低FODMAP食を摂取しているヒトにオリゴ糖の供給源を提供すること;
低FODMAP食を摂取しているヒトの結腸におけるビフィズス菌の存在量を増加させること;
ヒトに胃腸症状を誘発することなく、低FODMAP食を摂取しているヒトの食事へFODMAPの再導入を可能にすること;および/または
低FODMAP食を漸減または終了するヒトの胃腸症状の軽減を引き延ばすこと;
における使用のための一種以上のヒトミルクオリゴ糖(HMO)。
【請求項2】
ヒトに胃腸症状を誘発することなく、低FODMAP食を摂取しているヒトにオリゴ糖の供給源を提供すること;
低FODMAP食を摂取しているヒトの結腸におけるビフィズス菌の存在量を増加させること;
ヒトに胃腸症状を誘発することなく、低FODMAP食を摂取しているヒトの食事へFODMAPを再導入すること;および/または
低FODMAP食を漸減または終了するヒトの胃腸症状の軽減を引き延ばすこと;
における使用のための合成組成物であって、
ヒトミルクオリゴ糖(HMO)を含む組成物。
【請求項3】
タンパク質の供給源、脂質の供給源、およびFODMAPが少ない消化可能な炭水化物の供給源をさらに含む、請求項2に記載の使用のための合成組成物。
【請求項4】
0.5 g~15 g、好ましくは、1 g~10 gの量の一種以上のHMOを含む、請求項2または3に記載の使用のための合成組成物。
【請求項5】
ビフィズス菌、たとえば、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・インファンティスおよび/またはビフィドバクテリウム・ビフィダムをさらに含む、請求項2~4のいずれかに記載の使用のための合成組成物。
【請求項6】
ヒトに胃腸症状を誘発することなく、低FODMAP食を摂取しているヒトにオリゴ糖の供給源を提供すること;
低FODMAP食を摂取しているヒトの結腸におけるビフィズス菌の存在量を増加させること;および/または
ヒトに胃腸症状を誘発することなく、低FODMAP食を摂取しているヒトの食事へFODMAPの再導入を可能にすること;および/または
低FODMAP食を漸減または終了するヒトの胃腸症状の軽減を引き延ばすこと;
における使用のためのパックであって、
有効量の一種以上のヒトミルクオリゴ糖(HMO)の少なくとも14個の個別の1日用量を含むパック。
【請求項7】
ビフィズス菌、たとえば、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・インファンティスおよび/またはビフィドバクテリウム・ビフィダムをさらに含む、請求項6に記載の使用のためのパック。
【請求項8】
個別の1日用量が、0.5 g~15 g、より好ましくは、1 g~10 g、たとえば、2 g~7.5 gの量を含む、請求項6または7に記載の使用のためのパック。
【請求項9】
少なくとも約21個の個別の1日用量、たとえば、約28個の1日用量を含む、請求項6~8のいずれかに記載の使用のためのパック。
【請求項10】
低FODMAP食を摂取しているヒトの食事管理における、
ヒトミルクオリゴ糖(HMO)、
HMOを含む合成組成物、または
有効量の一種以上のヒトミルクオリゴ糖の少なくとも14個の個別の1日用量を含むパック、の使用。
【請求項11】
合成組成物が請求項3~5のいずれかに定義されるか、またはパックが請求項7~9のいずれかに定義される、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記請求項のいずれかに記載の使用のためのHMO、使用のための合成組成物、使用のためのパックまたは使用であって、HMOが、
中性HMO、好ましくは、フコシル化中性HMO、より好ましくは、2’-FL、3-FLおよびDFLからなる群から選択されるフコシル化ラクトース、特に、2’-FLである単一のHMOであるか、または
HMOの混合物、好ましくは、中性HMOの混合物、より好ましくは、フコシル化中性HMOと非フコシル化中性HMOの混合物である、使用のためのHMO、使用のための合成組成物、使用のためのパックまたは使用。
【請求項13】
請求項12に記載の使用のためのHMO、使用のための合成組成物、使用のためのパックまたは使用であって、
HMOの混合物において、フコシル化HMOが2’-FL、3-FLおよびDFLからなる群から選択され、非フコシル化中性HMOがLNTおよびLNnTからなる群から選択される、使用のためのHMO、使用のための合成組成物、使用のためのパックまたは使用。
【請求項14】
請求項13に記載の使用のためのHMO、使用のための合成組成物、使用のためのパックまたは使用であって、
混合物が、
2’-FL、およびLNnTおよびLNTの少なくとも1つ;
2’-FLおよびDFLの少なくとも1つ、およびLNnTおよびLNTの少なくとも1つ;または
2’-FL、DFL、およびLNnTおよびLNTの少なくとも1つ;
を含むか、それらからなるか、または本質的にそれらからなる、使用のためのHMO、使用のための合成組成物、使用のためのパックまたは使用。
【請求項15】
請求項14に記載の使用のためのHMO、使用のための合成組成物、使用のためのパックまたは使用であって、
混合物が、2’-FL、およびLNnTおよびLNTの少なくとも1つを含むか、それらからなるか、または本質的にそれらからなり;および混合物中の2’-FL:LNnTおよび/またはLNTの質量比が、約1.5~約4.5、好ましくは、約3.5~約4.5、たとえば、約4:1である;使用のためのHMO、使用のための合成組成物、使用のためのパックまたは使用。
【請求項16】
低FODMAP食を摂取しているヒトに胃腸症状を誘発することなく、該ヒトにオリゴ糖の供給源を提供する方法であって、該ヒトに一種以上のヒトミルクオリゴ糖(HMO)を投与することを含む方法。
【請求項17】
低FODMAP食を摂取しているヒトの結腸におけるビフィズス菌の存在量を増加させる方法であって、該ヒトに一種以上のヒトミルクオリゴ糖(HMO)を投与することを含む方法。
【請求項18】
ヒトが、少なくとも1週間、好ましくは、少なくとも2週間、一種以上のHMOを投与される、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
ヒトが、0.5 g~15 g/日、好ましくは1 g~10 g/日、の量の一種以上のHMOを投与される、請求項16~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
低FODMAP食を摂取しているヒトの食事へFODMAPの供給源を再導入するための方法であって、
(i)FODMAPの供給源の再導入前に、該ヒトに一種以上のヒトミルクオリゴ糖(HMO)を投与すること、および
(ii)FODMAPの供給源の再導入中に、該ヒトに一種以上のHMOを投与することを投与すること、を含む方法。
【請求項21】
低FODMAP食へFODMAPの供給源を再導入しているヒトにおける胃腸症状の二次予防のための方法であって、
(i)FODMAPの供給源の再導入前に、該ヒトに一種以上のヒトミルクオリゴ糖を投与すること、および
(ii)FODMAPの供給源の再導入中に、該ヒトに一種以上のヒトミルクオリゴ糖を投与することを投与すること、を含む方法。
【請求項22】
ヒトの食事へFODMAPの供給源を再導入しているヒトにおける低FODMAP食の胃腸的利点を延長する方法であって、
FODMAPの供給源の再導入前に、該ヒトに一種以上のヒトミルクオリゴ糖投与することを含む方法。
【請求項23】
ヒトが、FODMAPの供給源の再導入中に、一種以上のHMOをさらに投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ヒトが、好ましくは、FODMAPの供給源の再導入中に、少なくとも1週間、好ましくは、少なくとも2週間、たとえば、少なくとも4週間、一種以上のHMOを投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ヒトは、FODMAPの供給源の再導入の前に高用量の一種以上のHMOを投与され、FODMAPの供給源の再導入の後に低用量の一種以上のHMOを投与される、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
高用量が約3 g~約10 g/日であり、低用量が好ましくは、約2 g~約7.5 g/日である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ヒトが、FODMAPの供給源の再導入の前に、少なくとも1週間、好ましくは、少なくとも2週間、一種以上のHMOを投与される、請求項20~26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
一種以上のHMOに加えて、ビフィズス菌を投与することを含む、請求項16~27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
ヒトが、IBS患者または非セリアック小麦および/またはグルテン過敏症の患者である、請求項16~28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
HMOが、
中性HMO、好ましくは、フコシル化中性HMO、より好ましくは、2’-FL、3-FLおよびDFLからなる群から選択されるフコシル化ラクトース、特に、2’-FLである単一のHMOであるか、または
HMOの混合物、好ましくは、中性HMOの混合物、より好ましくは、フコシル化中性HMOと非フコシル化中性HMOの混合物である、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
HMOの混合物において、フコシル化HMOが2’-FL、3-FLおよびDFLからなる群から選択され、非フコシル化中性HMOがLNTおよびLNnTからなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
混合物が、
2’-FL、およびLNnTおよびLNTの少なくとも1つ;
2’-FLおよびDFLの少なくとも1つ、およびLNnTおよびLNTの少なくとも1つ;または
2’-FL、DFL、およびLNnTおよびLNTの少なくとも1つ;
を含むか、それらからなるか、または本質的にそれらからなる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
混合物が、2’-FL、およびLNnTおよびLNTの少なくとも1つを含むか、それらからなるか、または本質的にそれらからなり;および混合物中の2’-FL:LNnTおよび/またはLNTの質量比が、約1.5~約4.5、好ましくは、約3.5~約4.5、たとえば、約4:1である;請求項32に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、低FODMAP食を使用するヒト、特に、症状を管理するために低FODMAP食を使用する過敏性腸症候群患者の管理および/または治療のための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
過敏性腸症候群は、腹痛、腹部不快感、腹部膨満、倦怠感、ならびに緩いか、またはより頻繁な便通パターン、下痢および便秘などの便通パターンの変化などの慢性症状を伴う臨床的に不均一な障害である。患者における所定の臨床検査では、通常、異常は見られないが、バルーン通気検査などの特定の刺激に対して腸がより敏感になる場合がある。IBSの世界的な有病率は約10-20%であるが(Longstreth et al. Gastroenterology 130、1480(2006))、特定の国々ではより高くなる場合がある。IBSの原因は不明であるが、IBSの病態生理学の現在の見解は、腸と脳の乱された相互作用の障害であり、胃腸の運動性の変化、内臓の過敏性、腸透過性の増加、免疫活性化および腸内細菌叢の変化などの腸と脳の軸に沿ったさまざまな部位に関連する異常を伴う(Simren et al. Nat. Rev. Gastroenterol. Hepatol. 15、589(2018))。IBSを引き起こす可能性のある要因には、急性胃腸感染症、小腸細菌異常増殖、抗生物質の使用、腸内毒素症などが含まれ、それらは重要な危険因子であると考えられている(Kim et al. Digest. Dis. Sci. 57、3213(2012))。他の危険因子は、若い年齢、長引く発熱、不安、およびうつ病である。慢性の軽度の炎症は一般的にIBS患者に発生するが、それ以外の場合、観察可能な臨床症状はほとんどまたはまったくない。
【0003】
IBSの診断は困難である。IBSを診断するためにバイオマーカー系のテストを実行することはできない。診断は一般に、IBSのような症状を引き起こす状態を除外し、その後、患者の症状を分類する手順に従うことを含む。IBSの診断がなされる前に、寄生虫感染症、乳糖不耐症、およびセリアック病を除外することをすべての患者に推奨される。いったん診断されると、患者は通常、Rome IV基準に従って、腹部便通に基づいて3つの主要なサブタイプに分類される:下痢優勢(IBS-D)、便秘優勢(IBS-C)、および下痢と便秘の両方のエピソードが交互に起こる混合サブタイプ(IBS-M)。IBSの診断基準を満たしているが、3つの主要なサブタイプに分類されない患者は、IBS未分類(IBS-U)と見なされる。
【0004】
IBSの治療法はなく、現在、効果的な治療の選択肢は限られている。ほとんどの治療オプションは、全体的な病気の負担ではなく、個々の症状を対象としている。このアプローチは、IBSの根底にある病態生理学の不完全な理解に関連している部分がある。IBSの現在の第一選択療法は、主な症状を対象としており、主に症状複合体のうちの1つの症状に影響を及ぼす。IBS-Dの患者には、μ-オピオイド受容体アゴニストであるロペラミドが推奨されるが、有効性のエビデンスは限られている。IBS-Cの患者には、特に、オオバコやイスパキュラハスクなどの可溶性繊維などの、食物繊維の摂取量を増やすことが推奨されることが多い。この推奨事項は、便秘への有益な効果に関連しているが、他のIBS症状への影響はそれほど顕著ではない。ポリエチレングリコール(PEG)などの浸透圧性緩下薬も使用される。痛みが優勢なIBS患者の場合、鎮痙薬が一第一選択治療として使用されることが多い。これらの薬物は主に抗コリン作用またはカルシウム拮抗作用を伴い、胃腸管の平滑筋の弛緩をもたらし、それにより痛みを軽減する。
【0005】
過敏性腸症候群のほとんどの患者は、食物摂取後の症状の悪化を報告している。たとえば、不完全に吸収された炭水化物が豊富な食品、脂肪の多い食品、高カロリーの食事が問題を引き起こすことが多い。食事療法のアドバイスは通常、「健康的な食事」のアドバイスの形をとる。現在の推奨事項は、アルコール、カフェイン、脂肪、スパイシーな食品およびガスを生成する食品の摂取量を変更して、1日当たりの食事量と回数に焦点を当て、食物、特に牛乳および乳糖に対する不耐症の可能性を評価することである。さらに、膨満感が主な特徴である場合、食物繊維の摂取量を減少させてもよい。
【0006】
これらのアプローチは通常、完全に満足のいくものではなく、適切な症状のコントロールをもたらさない。このため、多くの患者は、発酵性オリゴ糖、二糖、単糖およびポリオール(FODMAP)の少ない食事を採用している。これらの炭水化物は、小腸で不完全にしか吸収されずに大腸に入り、そこで腸内細菌によって発酵され、ガスの生成と膨満感を引き起こしうる。また、それらは、内腔への正味の水の流れを引き起こすことによって運動性を刺激する可能性がある。いくつかの臨床試験の結果は、IBSの一部の患者が低FODMAP食に対して好ましい短期間の反応を示すことを示唆する。しかしながら、低FODMAP食の短期間の使用でさえ、腸内細菌叢の組成の潜在的に好ましくない変化と関連している。また、食事療法は長期的に順守するのが難しく、適切な適用には、FODMAPの供給源(たとえば、果物や野菜など)の多くが健康的な栄養にとって重要であるため、いくつかの源を徐々に再導入する必要がある。FODMAPを再導入すると、症状が再発することが多い。したがって、患者は、長期にわたって不健康になる可能性のある困難な食事を続けるか、または症状を引き起こす可能性のある食品を再導入するかを選択する必要がある。
【0007】
WO 2016/066175は、細菌の異常増殖、腸内毒素症および腸バリア機能不全に苦しむ患者のIBSを治療するための一種以上のヒトミルクオリゴ糖(HMO)を含む組成物を開示している。EP-A-2451462は、一種以上のHMOを含む炎症性腸疾患または過敏性腸症候群を治療するための組成物を開示している。HMOは炎症を抑制すると述べられている。どちらの文書も低FODMAP食に関連する問題に対処していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、実質的な胃腸症状を誘発することなく、低FODMAP食を摂取している患者の栄養不足および腸内毒素症に対処するためのアプローチの必要性が依然として存在する。また、低FODMAP食を摂取しているが、FODMAPの供給源を食事に再導入したい患者の症状を軽減または予防するためのアプローチの必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概略
1つの態様では、本発明は、以下:
1.ヒトに胃腸症状を誘発することなく、低FODMAP食を摂取しているヒトにオリゴ糖の供給源を提供すること;
2.低FODMAP食を摂取しているヒトの結腸におけるビフィズス菌の存在量を増加させること;
3.ヒトに胃腸症状を誘発することなく、低FODMAP食を摂取しているヒトの食事へFODMAPの再導入を可能にすること;および/または
4.低FODMAP食を漸減または終了するヒトの胃腸症状の軽減を引き延ばすこと;
における使用のための一種以上のヒトミルクオリゴ糖を提供する。
【0010】
本発明の第2の態様は、以下:
1.ヒトに胃腸症状を誘発することなく、低FODMAP食を摂取しているヒトにオリゴ糖の供給源を提供すること;
2.低FODMAP食を摂取しているヒトの結腸におけるビフィズス菌の存在量を増加させること;
3.ヒトに胃腸症状を誘発することなく、低FODMAP食を摂取しているヒトの食事へFODMAPの再導入を可能にすること;および/または
4.低FODMAP食を漸減または終了するヒトの胃腸症状の軽減を引き延ばすこと;
における使用のための合成組成物に関し、該組成物は、有効量の一種以上のヒトミルクオリゴ糖を含む。
【0011】
合成組成物は、タンパク質の供給源、脂質の供給源、およびFODMAPが少ない炭水化物の供給源を含むことができる。
【0012】
一種以上のヒトミルクオリゴ糖の量は、好ましくは、ヒトの結腸におけるビフィズス菌および/または酪酸産生細菌の存在量および/または相対的な存在量を増加させるのに効果的である。さらに、一種以上のヒトミルクオリゴ糖の量は、好ましくは、ヒト、特に結腸における腸のバリア特性を改善するのに有効である。好ましくは、合成組成物は、0.5 g~15 g、より好ましくは、1 g~10 gの量の一種以上のヒトミルクオリゴ糖を含む。たとえば、合成組成物は、2 g~7.5 gの一種以上のヒトミルクオリゴ糖を含みうる。
【0013】
合成組成物は、ビフィズス菌、たとえば、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・インファンティスおよび/またはビフィドバクテリウム・ビフィダムを含みうる。
【0014】
本発明の第3の態様は、以下:
1.ヒトに胃腸症状を誘発することなく、低FODMAP食を摂取しているヒトにオリゴ糖の供給源を提供すること;
2.低FODMAP食を摂取しているヒトの結腸におけるビフィズス菌の存在量を増加させること;および/または
3.ヒトに胃腸症状を誘発することなく、低FODMAP食を摂取しているヒトの食事へFODMAPの再導入を可能にすること;および/または
4.低FODMAP食を漸減または終了するヒトの胃腸症状の軽減を引き延ばすこと;
における使用のためのパックであり、該パックは、有効量の一種以上のヒトミルクオリゴ糖の少なくとも14個の個別の1日用量を含む。
【0015】
パック中の個別の1日用量は、好ましくは、0.5 g~15 g、より好ましくは1 g~10 gの量の一種以上のヒトミルクオリゴ糖を含む。たとえば、パックは、2 g~7.5 gの一種以上のヒトミルクオリゴ糖を含みうる。さらに、パックは、好ましくは、少なくとも約21個の個別の1日用量、たとえば、約28個の1日用量を含む。
【0016】
本発明の第4の態様は、低FODMAP食を摂取しているヒトの食事管理における、
- ヒトミルクオリゴ糖(HMO)、
- HMOを含む合成組成物、または
- 有効量の一種以上のヒトミルクオリゴ糖の少なくとも14個の個別の1日用量を含むパック、
の使用である。
【0017】
本発明の第5の態様は、ヒトに胃腸症状を誘発することなく、低FODMAP食を摂取しているヒトに一種以上のヒトミルクオリゴ糖を投与することを含む、該ヒトにオリゴ糖の供給源を提供する方法を提供する。
【0018】
本発明の第6の態様は、低FODMAP食を摂取しているヒトに一種以上のヒトミルクオリゴ糖を投与することを含む、該ヒトの結腸におけるビフィズス菌の存在量を増加させる方法である。HMOが、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス系統発生グループ、ビフィドバクテリウム・ロンガムおよび/またはビフィドバクテリウム・ビフィダムであるビフィズス菌の存在量および/または相対存在量を増加させることが好ましい。
【0019】
好ましくは、たとえば、ヒトは、少なくとも1週間、より好ましくは、少なくとも2週間、一種以上のヒトミルクオリゴ糖を投与される。たとえば、ヒトは、一種以上のヒトミルクオリゴ糖を少なくとも4週間投与されうる。
【0020】
好ましくは、ヒトは、0.5 g~15 g/日、より好ましくは、1 g~10 g/日の量の一種以上のヒトミルクオリゴ糖を投与される。たとえば、ヒトは2 g~7.5 g/日を投与されうる。
【0021】
ヒトは、最初に高用量を投与され、続いて、低用量を投与されうる。高用量は、好ましくは、約3 g~約10 g/日(たとえば、約4 g~約7.5 g/日)であり、低用量は、好ましくは、約2 g~約7.5 g/日(たとえば、約2 g~約5 g/日)である。
【0022】
本発明の第7の態様は、低FODMAP食を摂取しているヒトの食事へFODMAPの供給源を再導入するための方法であって、(i)FODMAPの供給源の再導入前に、該ヒトに一種以上のヒトミルクオリゴ糖を投与すること、および(ii)FODMAPの供給源の再導入中に、該ヒトに一種以上のヒトミルクオリゴ糖を投与することを投与すること、を含む方法。
【0023】
本発明の第8の態様は、低FODMAP食へFODMAPの供給源を再導入しているヒトにおける胃腸症状の二次予防のための方法であって、(i)FODMAPの供給源の再導入前に、該ヒトに一種以上のヒトミルクオリゴ糖を投与すること、および(ii)FODMAPの供給源の再導入中に、該ヒトに一種以上のヒトミルクオリゴ糖を投与することを投与すること、を含む方法。
【0024】
本発明の第9の態様は、ヒトの食事へFODMAPの供給源を再導入しているヒトにおける低FODMAP食の胃腸的利点を延長する方法であって、FODMAPの供給源の再導入前に、該ヒトに一種以上のヒトミルクオリゴ糖投与することを含む方法。好ましくは、ヒトは、ODMAPの供給源の再導入中に、一種以上のヒトミルクオリゴ糖をさらに投与される。
【0025】
第7~第9の態様では、ヒトは、好ましくは、FODMAPの供給源の再導入前に、少なくとも1週間、より好ましくは、少なくとも2週間、たとえば、少なくとも4週間、一種以上のヒトミルクオリゴ糖を投与される。FODMAPの供給源の再導入中に、ヒトは、好ましくは、一種以上のヒトミルクオリゴ糖を少なくとも1週間、より好ましくは、少なくとも2週間、たとえば、少なくとも4週間投与される。
【0026】
ヒトは、FODMAPの供給源の再導入の前に高用量を投与されてもよく、FODMAPの供給源の再導入の後に低用量を投与されてもよい。高用量は、好ましくは、約3 g~約10 g/日(たとえば、約4 g~約7.5 g/日)であり、低用量は、好ましくは、約2 g~約7.5 g/日(たとえば、約2 g~約5 g/日)である。
【0027】
ヒトは、一種以上のヒトミルクオリゴ糖に加えて、ビフィズス菌を投与されてもよい。ビフィズス菌は、たとえば、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・インファンティスおよび/またはビフィドバクテリウム・ビフィダムでありうる。
【0028】
ヒトは、IBS患者または非セリアック小麦および/またはグルテン過敏症の患者でありうる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明の詳細な記載
驚くべきことに、低FODMAP食を摂取しているヒトに一種以上のヒトミルクオリゴ糖(HMOs)を経口または経腸投与すると、ヒトは、重大な胃腸症状を誘発することなく、食事のオリゴ糖含有量を増加させうることが見出された。これにより、ヒトは、低FODMAP食の栄養不足に対処することができるようになる。さらに、それは、重大な胃腸症状を誘発することなく、ヒトの結腸におけるビフィズス菌の存在量を増加させることを可能にする。通常、低FODMAP食を摂取しているヒトは、ビフィズス菌の存在量を減少させており、これは長期的な健康への影響をもたらす可能性がある。低FODMAP食では、食事からオリゴ糖を減量または除去する必要があるため、驚くべきことに、HMOを低FODMAP食においてヒトに投与しても、重大な胃腸症状を引き起こすことはない。
【0030】
驚くべきことに、低FODMAP食を摂取しているヒトへの一種以上のHMOの経口または経腸投与は、ヒトが、彼または彼女の食事にFODMAPを再導入することを可能にすることが見出された。したがって、FODMAPの供給源が食事に再導入されると、HMOが、再発性胃腸症状を軽減または予防する。通常、FODMAPの再導入は症状の再開につながる。長期的に栄養の合併症を回避するためにFODMAPを選択的に再導入する必要があるため、このことは、問題である。
【0031】
本明細書では、次の用語は、以下の意味を有する。
【0032】
「ビフィドバクテリウム・アドレセンティス系統発生グループのビフィズス菌」は、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス、ビフィドバクテリウム・アングラタム、ビフィドバクテリウム・カテヌラタム、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラタム、ビフィドバクテリウム・カシワノヘンス、ビフィドバクテリウム・デンタムおよびビフィドバクテリウム・ステルコリスからなる群から選択される細菌を意味する(Duranti et al. Appl. Environ. Microbiol. 79、336(2013)、Bottacini et al. Microbial Cell Fact. 13:S4(2014))。ビフィドバクテリウム・アドレセンティス系統発生グループが、ビフィドバクテリウム・アドレセンティスおよび/またはビフィドバクテリウム・シュードカテヌラタムのビフィドバクテリウムであるのが好ましい。
【0033】
「食事管理」とは、疾患、障害または病状のせいで、
- 通常の食品またはそれに含まれる特定の栄養素、または代謝物を摂取、消化、吸収、代謝または排泄する能力が限られるか、損なわれるか、または妨げられること、あるいは
- 他の医学的に決定された栄養素の要件を有すること、
に苦しんでいる患者の排他的または部分的な摂食を意味する。
(Commission Notice on the classification of Food for Special Medical Purposes of the European Commission、Official Journal of the European Union C 401、25.11.2017、p. 10-11を参照)。
【0034】
「経腸投与」とは、胃腸管(胃を含む)に組成物の沈着を引き起こす、組成物をヒトに送達するための任意の従来の形態を意味する。経腸投与の方法には、経鼻胃管または空腸管、経口、舌下および直腸を介した摂取が含まれる。
【0035】
「有効量」とは、ヒトにおいて所望の治療結果をもたらすのに十分な量のHMOを提供する組成物の量を意味する。有効量は、所望の治療結果を達成するために、1つ以上の用量で投与することができる。
【0036】
「FODMAP」とは、発酵性オリゴ糖、二糖、単糖またはポリオールを意味する。それらは小腸で吸収されにくい短鎖炭水化物であり、フルクトース(フルクタン)とガラクトオリゴ糖(GOS、スタキオース、ラフィノース)、二糖(ラクトース)、単糖(フルクトース)、およびソルビトール、マンニトール、キシリトール、マルチトールなどの糖アルコール(ポリオール)の短鎖ポリマーが含まれる。FODMAPの供給源には、穀物、野菜、果物、豆類、牛乳、および食品および飲料用甘味料が含まれる。
【0037】
「胃腸症状」とは、膨満感、ガス産生、痛み、過敏症、および排便の変化などの胃腸の不快感の症状を意味する。
【0038】
「ヒトミルクオリゴ糖」または「HMO」は、ヒトの母乳に含まれる複雑な炭水化物を意味する(Urashima et al.: Milk Oligosaccharides. Nova Science Publisher(2011);Chen Adv. Carbohydr. Chem. Biochem. 72、113(2015))。HMOは、1つ以上のβ-N-アセチル-ラクトサミニルおよび/または1つ以上のβ-ラクト-N-ビオシルユニットによって伸長することができる、還元末端にラクトースユニットを含むコア構造を有し、コア構造は、αL-フコピラノシルおよび/またはα-N-アセチル-ノイラミニル(シアリル)部分で置換されうる。これに関して、それらの構造中に、非酸性(または中性)HMOはシアリル残基を欠いており、酸性HMOは少なくとも1つのシアリル残基を有する。非酸性(または中性)HMOは、フコシル化または非フコシル化することができる。そのような中性非フコシル化HMOの例には、ラクト-N-テトラオース(LNT)、ラクト-N-ネオテトラオース(LNnT)、ラクト-N-ネオヘキサオース(LNnH)、パラ-ラクト-N-ネオヘキサオース(pLNnH)、パラ-ラクト-N-ヘキサオース(pLNH)およびラクト-N-ヘキサオース(LNH)が含まれる。中性フコシル化HMOの例には、2’-フコシルラクトース(2’-FL)、ラクト-N-フコペンタオース I(LNFP-I)、ラクト-N-ジフコヘキサオース I(LNDFH-I)、3-フコシルラクトース(3-FL)、ジフコシルラクトース(DFL)、ラクト-N-フコペンタオース II(LNFP-II)、ラクト-N-フコペンタオース III(LNFP-III)、ラクト-N-ジフコヘキサオース III(LNDFH-III)、フコシル-ラクト-N-ヘキサオース II(FLNH-II)、ラクト-N-フコペンタオース V(LNFP-V)、ラクト-N-フコペンタオース VI(LNFP-VI)、ラクト-N-ジフコヘキサオース II(LNDFH-II)、フコシル-ラクト-N-ヘキサオース I(FLNH-I)、フコシル-パラ-ラクト-N-ヘキサオース I(FpLNH-I)、フコシル-パラ-ラクト-N-ネオヘキサオース II(FpLNnH II)およびフコシル-ラクト-N-ネオヘキサオース(FLNnH)が含まれる。酸性HMOの例には、3’-シアリルラクトース(3’-SL)、6’-シアリルラクトース(6’-SL)、3-フコシル-3’-シアリルラクトース(FSL)、LST a、フコシル-LST a(FLST a)、LST b、フコシル-LST b(FLST b)、LST c、フコシル-LST c(FLST c)、シアリル-LNH(SLNH)、シアリル-ラクト-N-ヘキサオース(SLNH)、シアリル-ラクト-N-ネオヘキサオース I(SLNH-I)、シアリル-ラクト-N-ネオヘキサオース II(SLNH-II)およびジシアリル-ラクト-N-テトラオース(DSLNT)が含まれる。
【0039】
「過敏性腸症候群」および「IBS」は、腹痛、腹部不快感、腹部膨満、倦怠感、ならびに緩いか、またはより頻繁な便通パターン、下痢および便秘などの便通パターンの変化などの1つ以上の慢性症状を特徴とする、ヒト、特に成人の機能性腸疾患のグループを意味する。どの症状が優勢であるかに応じて、IBSには少なくとも3つの形態がある:(1)下痢優勢(IBS-D)、(2)便秘優勢(IBS-C)、および(3)交互便パターンを伴うIBS(IBS-M)。感染後のIBS(IBS-PI)など、IBSにはさまざまな臨床サブタイプもある。
【0040】
「マイクロバイオータ」、「マイクロフローラ」および「マイクロバイオーム」は、典型的には身体器官または部分、特にヒトの消化器官に生息する生きている微生物の集団を意味する。胃腸のマイクロバイオータの最も優勢なメンバーには、フィルミクテス、バクテロイデス、放線菌、プロテオバクテリア、シネルギステス、ウェルコミクロビウム、フソバクテリア、およびユーリ古細菌の門、属レベルでは、バクテロイデス、フェカリバクテリウム、ビフィズス菌、ローズブリア、アリスティペス、コリンセラ、ブラウティア、コプロコッカス、ルミノコッカス、ユーバクテリウムおよびドレア、種レベルでは、バクテロイデス・ユニフォーム、アリスチペス・プトレディニス、パラバクテロイデス・メルダエ、ルミノコッカス・ブロミ、ドレア・ロンギカテナ、バクテロイデス・カッカエ、バクテロイデス・テタイオタオミクロン、ユーバクテリウム・ハリイ、ルミノコッカス・トルク、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ、ルミノコッカス・ラクタリス、コリンセラ・アエロファシエンス、ドレア・フォルミシゲネランス、バクテロイデス・ブルガタスおよびロゼブリア・インテスティナリスの微生物が含まれる。胃腸内マイクロバイオータには、胃腸管の上皮を覆う粘液層に位置するか付着している粘膜関連マイクロバイオータと、胃腸管の内腔に見出される管腔関連マイクロバイオータが含まれる。
【0041】
「マイクロバイオータの調節」とは、マイクロバイオータに改変または制御の影響、たとえば、ビフィズス菌、バルネシエラ、フィーカリバクテリウムおよび/または酪酸産生細菌の固有の腸内存在量の増加につながる影響を与えることを意味する。もう1つの例では、影響は、ルミノコッカス・グナバスおよび/またはプロテオバクテリアの腸内存在量の減少につながる可能性がある。「プロテオバクテリア」はグラム陰性菌の門であり、エシェリキア属、サルモネラ属、ビブリオ属、ヘリコバクター属、エルシニア属、および他の多くの注目すべき属など、多種多様な病原菌が含まれる。
【0042】
「非セリアック小麦過敏症」は、セリアック病や小麦アレルギーの影響を受けない対象における、グルテン含有食品の摂取に関連する腸および腸外の症状を特徴とする症候群を意味する。「非セリアックグルテン過敏症」は同じ意味であり、2つの用語は互換的に使用される。グルテン含有食品には通常、小麦、大麦、ライ麦などのグルテン含有穀物が含まれる。
【0043】
「乳幼児以外のヒト」または「乳幼児以外」とは、3歳以上の人間を意味する。乳幼児以外のヒトは、子供、ティーンエイジャー、成人、または高齢者でありうる。
【0044】
「経口投与」は、口を通してヒトに組成物を送達するための任意の従来の形態を意味する。したがって、経口投与は経腸投与の一形態である。
【0045】
「予防的治療」または「予防」とは、疾患の発症または再発のリスクを低減するために与えられた治療または取られた措置を意味する。
【0046】
「細菌の相対的存在量」とは、ヒトの胃腸管のマイクロバイオータにおける他の細菌と比較したその細菌の存在量を意味する。
【0047】
「細菌の相対的増殖」とは、ヒトの胃腸管内のマイクロバイオータにおける他の細菌と比較した細菌の増殖を意味する。
【0048】
「二次予防」とは、リスクの高い患者の症状の発症の予防、またはすでに症状を持っている患者の症状の再発の予防を意味する。「高リスク」患者とは、病状を発症する素因のある個人、たとえば、病状の家族歴のある人のことである。
【0049】
「合成組成物」は、人工的に製造された組成物を意味し、好ましくは、エクスビボで化学的に、および/または生物学的に、たとえば、化学反応、酵素反応または組換えによっ、生成される少なくとも1つの化合物を含む組成物を意味する。いくつかの実施態様では、本発明の合成組成物は、天然に存在する組成物と同一ではない。合成組成物は、典型的には、一種以上のHMOを含む。また、いくつかの実施態様では、合成組成物は、HMOの効力に悪影響を及ぼさない、一種以上の栄養的または薬学的に活性な成分を含みうる。本発明の合成組成物のいくつかの非限定的な実施態様を以下に記載する。
【0050】
「療法」とは、疾患または病的状態の症状を軽減または排除するために与えられた治療または取られた措置を意味する。
【0051】
「治療する」とは、治療されている人の転帰を改善または安定させること、または根底にある栄養上の必要性に対処することを目的として、病状または疾患に対処することを意味する。したがって、治療には、治療されている人の栄養的必要性に対処することによる、病状または疾患の食事療法または栄養管理が含まれる。「治療すること」と「治療」は、文法的に対応する意味を有する。
【0052】
HMOは、ヒト、ウシ、ヒツジ、ブタ、またはヤギ種を含むがこれらに限定されない哺乳動物によって分泌されるミルクから、周知のプロセスによって単離または濃縮することができる。HMOは、微生物発酵、酵素プロセス、化学合成、またはこれらの技術の組み合わせを使用する周知のプロセスによっても製造することができる。たとえば、化学を用いて、LNnTは、WO 2011/100980およびWO 2013/044928に記載のようにして製造することができ、LNTは、WO 2012/155916およびWO 2013/044928に記載のようにして合成することができ、LNTとLNnTの混合物は、WO 2013/091660に記載のようにして製造することができ、2’-FLは、WO 2010/115934およびWO 2010/115935に記載のようにして製造することができ、3-FLは、WO 2013/139344に記載のようにして製造することができ、6’-SLおよびその塩は、WO 2010/100979に記載のようにして製造することができ、シアリル化オリゴ糖は、WO 2012/113404に記載のようにして製造することができ、ヒトミルクオリゴ糖の混合物は、WO 2012/113405に記載のようにして製造することができる。酵素産生の例として、シアリル化オリゴ糖は、WO 2012/007588に記載のようにして製造することができ、フコシル化オリゴ糖は、WO 2012/127410に記載のようにして製造することができ、ヒトミルクオリゴ糖の有利に多様化されたブレンドは、WO 2012/156897およびWO 2012/156898に記載のようにして製造することができる。遺伝子改変大腸菌を使用して、任意にフコースまたはシアル酸で置換されたコア(非フコシル化中性)ヒトミルクオリゴ糖を作成する方法を記載する生物工学的方法は、WO 01/04341およびWO 2007/101862に見出すことができる。
【0053】
HMOは、本発明の目的に適した単一のHMOまたは任意のHMOの混合物でありうる。1つの実施態様では、HMOは、中性HMO、好ましくは、フコシル化中性HMO、より好ましくは、2'-FL、3-FLおよびDFLからなる群から選択されるフコシル化ラクトース、特に2'-FLを含むか、または本質的にそれらからなる。他の実施態様では、混合物は、中性HMO、好ましくは、少なくとも第1の中性HMOおよび少なくとも第2の中性HMOを含む。第1の中性HMOは、フコシル化中性HMOであり、第2の中性HMOは、コアHMO(非フコシル化中性HMOとも称される)である。特に、HMOの混合物は、2’-FL、3-FL、DFL、LNFP-I、LNFP-II、LNFP-III、LNFP-V、LNDFH-I、LNDFH-II、LNDFH-III、FLNH-I、FLNH-II、FLNnH、FpLNH-IおよびF-pLNnH IIからなるリストから選択されるフコシル化HMO、ならびにLNT、LNnT、LNH、LNnH、pLNHおよびpLNnHからなるリストから選択されるコアHMOを含みうる。より好ましくは、中性HMOの混合物は、2’-FL、3-FLおよびDFLからなるリストから選択されるフコシル化HMO、ならびにLNTおよびLNnTからなるリストから選択されるコアHMOを含むか、それらからなるか、または本質的にそれらからなり、有利には、混合物は、2’-FLおよびLNnTおよびLNTの少なくとも1つ、または2’-FLおよびDFLの少なくとも1つ、ならびにLNnTおよびLNTの少なくとも1つ、または2’-FL、DFL、およびLNnTおよびLNTの少なくとも1つを含むか、それらからなるか、または本質的にそれらからなる。
【0054】
2’-FL、およびLNnTおよびLNTの少なくとも1つを含むか、それらからなるか、または本質的にそれらからなる混合物では、混合物は、LNnTおよび/またはLNTよりも多くの2’-FLを含む。好ましくは、2’-FL:LNnTおよび/またはLNTの質量比は、約1.5~約4.5である。1つの実施態様では、混合物中の2’-FL:LNnTおよび/またはLNTの質量比は、約1.5~約2.5、たとえば、約2:1である。もう1つの実施態様では、混合物中の2’-FL:LNnTおよび/またはLNTの質量比は、約3.5~約4.5、たとえば、約4:1である。
【0055】
他の実施態様では、混合物は、少なくとも第1の(酸性)HMOおよび少なくとも第2の(中性)HMOを含み、ここで、第1の(酸性)HMOは、3’-SL、6’-SLおよびFSLからなるリストから選択され、第2の(中性)HMOは、2’-FL、3-FL、DFL、LNTおよびLNnTからなるリストから選択される。有利には、混合物は、2’-FLおよび6’-SL、または6’-SL、および2’-FLおよびDFLの少なくとも1つ、または2’-FL、6’-SL、およびLNnTおよびLNTの少なくとも1つ、または2’-FL、DFL、6’-SL、およびLNnTおよびLNTの少なくとも1つを含む。
【0056】
HMO(一種)またはHMO(複数種)は、担体および/または希釈剤なしで、そのまま(原液)で使用することができる。他の実施態様では、HMO(一種)/HMO(複数種)は、栄養組成物または医薬組成物で許容される一種以上の不活性担体/希釈剤、たとえば、溶媒(たとえば、水、水/エタノール、油、水/油)、分散剤、コーティング、吸収促進剤、制御放出剤、不活性賦形剤(たとえば、デンプン、ポリオール、造粒剤、微結晶性セルロース、希釈剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤)を含む合成組成物で使用される。これらの組成物は、プレバイオティクスおよび/またはプロバイオティクスを含まない。他の実施態様では、HMO(一種)/HMO(複数種)は、プレバイオティクスおよび/またはプロバイオティクスを含みうる合成医薬品または栄養組成物で使用される。
【0057】
合成組成物は、栄養組成物の形態でありうる。たとえば、栄養組成物は、食品組成物、再水和溶液、医療用食品または特別な医療目的のための食品、栄養補助食品などでありうる。栄養組成物は、タンパク質、脂質、および/または消化可能な炭水化物の供給源を含むことができ、粉末または液体の形態でありうる。組成物は、唯一の栄養源であるか、または栄養補助食品として設計することができる。
【0058】
適切なタンパク質源には、乳タンパク質、大豆タンパク質、米タンパク質、エンドウ豆タンパク質およびオート麦タンパク質、またはそれらの混合物が含まれる。乳タンパク質は、乳タンパク質濃縮物、乳タンパク質分離物、乳清タンパク質またはカゼイン、または両方の混合物の形態でありうる。タンパク質は、総タンパク質または加水分解タンパク質でありえ、部分的に加水分解されているか、または広範囲に加水分解されているかのいずれかである。加水分解されたタンパク質は、消化が容易であるという利点を提供し、これは、胃腸管が炎症を起こしているか、または損なわれているヒトにとって重要でありうる。タンパク質はまた、遊離アミノ酸の形態で提供することができる。タンパク質は、栄養組成物のエネルギーの約5 %~約30 %、通常は、約10 %~20 %を構成することができる。
【0059】
タンパク質源は、グルタミン、トレオニン、システイン、セリン、プロリン、またはこれらのアミノ酸の組み合わせの供給源でありうる。グルタミン源は、グルタミンジペプチドおよび/またはグルタミン濃縮タンパク質でありうる。グルタミンは、エネルギー源として腸細胞がグルタミンを使用するので、含めることができる。トレオニン、セリンおよびプロリンはムチンの生成にとって重要なアミノ酸である。ムチンは、胃腸管を被覆し、腸のバリア機能と粘膜の治癒を改善することができる。システインは、グルタチオンの主要な前駆体であり、身体の抗酸化防御の鍵である。
【0060】
適切な消化可能な炭水化物には、マルトデキストリン、加水分解または修飾デンプンまたはトウモロコシデンプン、グルコースポリマー、コーンシロップ、コーンシロップ固形物、高フルクトースコーンシロップ、米由来炭水化物、エンドウ豆由来炭水化物、ジャガイモ由来炭水化物、タピオカ、スクロース、グルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース、ハチミツ、糖アルコール(たとえば、マルチトール、エリスリトール、ソルビトール)、またはそれらの混合物が含まれる。好ましくは、組成物は、添加されたラクトースまたは他のFODMAP炭水化物が少ないか、またはそれらを含まない。一般的に消化可能な炭水化物は、栄養成分のエネルギーの約35 %~約55 %を提供する。特に適切な消化可能な炭水化物は、低デキストロース当量(DE)マルトデキストリンである。
【0061】
適切な脂質には、中鎖トリグリセリド(MCT)および長鎖トリグリセリド(LCT)が含まれる。好ましくは、脂質は、MCTおよびLCTの混合物である。たとえば、MCTは、脂質の約30重量%~約70重量%、より具体的には約50重量%~約60重量%を含むことができる。MCTは、胃腸管が炎症を起こしているか、または損なわれているヒトにとって重要でありうる、消化が容易であるという利点を提供する。一般的に、脂質は、栄養成分のエネルギーの約35 %~約50 %を提供する。脂質は必須脂肪酸(オメガ-3およびオメガ-6脂肪酸)を含むことができる。好ましくは、これらの多価不飽和脂肪酸は、脂質源の総エネルギーの約30%未満を提供する。
【0062】
長鎖トリグリセリドの適切な供給源は、菜種油、ひまわり種子油、パーム油、大豆油、乳脂肪、コーン油、高オレイン酸油、および大豆レシチンである。分別されたココナッツオイルは、中鎖トリグリセリドの適切な供給源である。栄養組成物の脂質プロファイルは、好ましくは、多価不飽和脂肪酸オメガ-6(n-6):オメガ-3(n-3)比が、約4:1~約10:1となるように設計される。たとえば、n-6:n-3脂肪酸比は、約6:1~約9:1でありうる。
【0063】
栄養成分には、ビタミンやミネラルも含まれてもよい。栄養組成物が唯一の栄養源となることを意図する場合、それは完全なビタミンおよびミネラルプロファイルを含むのが好ましい。ビタミンの例として、ビタミンA、B複合体(B1、B2、B6およびB12など)、C、D、EおよびK、ナイアシンおよびパントテン酸、葉酸およびビオチンなどの酸性ビタミンが挙げられる。ミネラルの例として、カルシウム、鉄、亜鉛、マグネシウム、ヨウ素、銅、リン、マンガン、カリウム、クロム、モリブデン、セレン、ニッケル、スズ、シリコン、バナジウムおよびホウ素が挙げられる。
【0064】
栄養組成物は、ルテイン、リコピン、ゼアキサンチン、およびベータカロチンなどのカロテノイドも含みうる。含まれるカロテノイドの総量は、約0.001 μg/ml~約10 μg/mlで変化しうる。ルテインは、約0.001 μg/ml~約10 μg/ml、好ましくは、約0.044 μg/ml~約5 μg/mlのルテインの量で含まれうる。リコピンは、約0.001 μg/ml~約10 μg/ml、好ましくは、約0.0185 μg/ml~約5 μg/mlのリコピンの量で含まれうる。ベータカロチンは、約0.001 μg/ml~約10 mg/ml、たとえば、約0.034 μg/ml~約5 μg/mlのベータカロチンを含みうる。
【0065】
栄養組成物は、好ましくは、低濃度、たとえば、約300 mg/l~約400 mg/lのナトリウムも含む。残りの電解質は、腎機能に過度の腎溶質負荷を提供することなく、要求を満たすように設定された濃度で存在することができる。たとえば、カリウムは、約1180~約1300 mg/lの範囲で存在するのが好ましく、塩化物は、約680~約800 mg/lの範囲で存在するのが好ましい。
【0066】
栄養組成物は、保存剤、乳化剤、増粘剤、緩衝液、繊維およびプレバイオティクス(たとえば、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖)、プロバイオティクス(たとえば、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス BB-12、ビフィドバクテリウム・ラクティス HN019、ビフィドバクテリウム・ラクティス Bi07、ビフィドバクテリウム・インファンティス ATCC 15697、ラクトバチルス・ラムノサス GG、ラクトバチルス・ラムノサス HNOOl、ラクトバチルス・アシドフィルス LA-5、ラクトバチルス・アシドフィルス NCFM、ラクトバチルス・ファーメンタム CECT5716、ビフィドバクテリウム・ロンガム BB536、ビフィドバクテリウム・ロンガム AH1205、ビフィドバクテリウム・ロンガム AH1206、ビフィドバクテリウム・ブレーベ M-16V、ラクトバチルス・ロイテリ ATCC 55730、ラクトバチルス・ロイテリ ATCC PTA-6485、ラクトバチルス・ロイテリ DSM 17938)、トコフェロール、カロテノイド、アスコルビン酸塩/ビタミンC、パルミチン酸アスコルビル、ポリフェノール、グルタチオン、およびスーパーオキシドジスムターゼ(メロン)などの抗酸化/抗炎症化合物、その他の生物活性因子(たとえば、成長ホルモン、サイトカイン、TFG-β)、着色剤、香味剤、および安定剤、潤滑剤などのさまざまな他の従来の成分も含みうる。
【0067】
栄養組成物は、可溶性粉末、液体濃縮物、またはすぐに使用することができる製剤として製剤することができる。組成物は、経鼻胃管を介して、または経口で、必要としているヒトに供給することができる。さまざまな香味剤、繊維および他の添加物も存在することができる。
【0068】
栄養組成物は、固体または液体の形態で栄養組成物を調製するために一般的に使用される任意の製造技術によって調製することができる。たとえば、組成物は、さまざまな供給溶液を組み合わせることによって調製することができる。脂肪中タンパク質供給溶液は、脂質源を加熱および混合し、次に、加熱および撹拌しながら乳化剤(たとえば、レシチン)、脂溶性ビタミン、およびタンパク質源の少なくとも一部を添加することによって調製することができる。次に、炭水化物供給溶液は、加熱および攪拌しながら、ミネラル、微量および超微量ミネラル、増粘剤または懸濁剤を水に加えることによって調製される。加熱および攪拌を続けながら、得られた溶液を10分間保持した後、炭水化物(たとえば、HMOおよび消化可能な炭水化物源)を加える。次に、得られた供給溶液を加熱および撹拌しながら一緒にブレンドし、pHを6.6~7.0に調整し、その後、組成物を高温短時間処理に付し、その間に組成物を熱処理し、乳化し、均質化し、次に、放冷する。水溶性ビタミンおよびアスコルビン酸を添加し、必要に応じてpHを所望の範囲に調整し、香味剤を添加し、水を添加して、所望の総固形分レベルを達成する。
【0069】
液体製品については、得られる溶液を無菌的に充填して、無菌的に包装された栄養組成物を形成することができる。この形態では、栄養組成物は、すぐに供給することができる形態または濃縮された液体形態でありうる。あるいは、組成物は、噴霧乾燥され、加工され、再構成可能な粉末として包装されうる。
【0070】
栄養組成物が、すぐに供給することができる液体である場合、液体中のHMOの層濃度は、液体重量の約0.2 %~約1.0 %、たとえば、約0.3 %~約0.7 %などの約0.1 %~約1.5 %であるのが好ましい。栄養組成物が、濃縮栄養液体である場合、液体中のHMOの層濃度は、液体重量の約0.4 %~約2.0 %、たとえば、約0.6 %~約1.5 %などの約0.2 %~約3.0 %であるのが好ましい。
【0071】
別の実施態様では、栄養組成物は単位剤形である。単位剤形は、許容可能な食品グレードの担体、たとえば、リン酸緩衝生理食塩水、水中のエタノールの混合物、水、および油/水または水/油エマルジョンなどのエマルジョン、ならびにさまざまな湿潤剤または賦形剤を含むことができる。単位剤形はまた、ヒトに投与されたときに有害な、アレルギー性の、またはその他の望ましくない反応を引き起こさない他の材料を含むことができる。担体および他の材料には、溶媒、分散剤、コーティング、吸収促進剤、制御放出剤、ならびにデンプン、造粒剤、微結晶性セルロース、希釈剤、滑沢剤、結合剤、および崩壊剤などの1つ以上の不活性賦形剤が含まれうる。担体および他の材料が、FODMAPが少ないか、またはFODMAPを含まないのが好ましい。単位剤形が、主にHMOと、最小量の結合剤および/または賦形剤とを含むのが好ましい。単位剤形は、唯一の栄養源として栄養的に不完全であるか、または唯一の栄養源として意図されていない場合に、特に適している。
【0072】
本発明の単位剤形は、たとえば、所定濃度の混合物を含む錠剤、カプセル、または所定量の混合物を含むペレットとして、または所定の濃度の混合物を含む粉末または顆粒として経口で、あるいは所定の濃度の混合物を含む水性または非水性液体中のゲル、ペースト、溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップ、ボーラス、舐剤、またはスラリーを投与することができる。経口投与される組成物は、一種以上の結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、香味剤、および保湿剤を含むことができる。錠剤などの経口投与される組成物は、任意にコーティングすることができ、HMOの持続放出、遅延放出、または制御放出を提供するように製剤することができる。
【0073】
本発明の単位剤形はまた、経鼻胃管または消化管もしくは胃への直接注入によって投与することができる。
【0074】
本発明の単位剤形はまた、抗生物質、プロバイオティクス、鎮痛薬、および抗炎症剤などの治療薬を含むことができる。ヒトに対するそのような組成物の適切な投与量は、ヒトの状態、免疫状態、体重および年齢などの因子に基づいて、従来の方法で決定することができる。場合によっては、投与量は、ヒト母乳中の組成物のHMOに見られる濃度と同様の濃度になるであろう。必要な量は、一般に、約0.5 g~約15 g/日、特定の実施態様では、約1 g~約10 g/日、たとえば、約2 g~約7.5 g/日の範囲である。適切な投与計画は、当業者に知られている方法によって決定することができる。
【0075】
さらなる実施態様において、HMOは、医薬組成物として製剤することができる。医薬組成物は、薬学的に許容される担体、たとえば、リン酸緩衝生理食塩水、水中のエタノールの混合物、水、および油/水または水/油エマルジョンなどのエマルジョン、ならびにさまざまな湿潤剤または賦形剤を含むことができる。医薬組成物はまた、ヒトに投与されたときに有害な、アレルギー性の、またはその他の望ましくない反応を引き起こさない他の材料を含むことができる。担体および他の材料には、溶媒、分散剤、コーティング、吸収促進剤、制御放出剤、ならびにデンプン、造粒剤、微結晶性セルロース、希釈剤、滑沢剤、結合剤、および崩壊剤などの1つ以上の不活性賦形剤が含まれうる。担体および他の材料が、FODMAPが少ないか、またはFODMAPを含まないのが好ましい。
【0076】
医薬組成物は、たとえば、所定濃度の混合物を含む錠剤、カプセル、または所定量の混合物を含むペレットとして、または所定の濃度の混合物を含む粉末または顆粒として経口で、あるいは所定の濃度の混合物を含む水性または非水性液体中のゲル、ペースト、溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップ、ボーラス、舐剤、またはスラリーを投与することができる。経口投与される組成物は、結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、香味剤、および保湿剤を含むことができる。錠剤などの経口投与される組成物は、任意にコーティングすることができ、その中の混合物の持続放出、遅延放出、または制御放出を提供するように製剤することができる。
【0077】
医薬組成物はまた、直腸坐剤、エアロゾルチューブ、経鼻胃管または消化管もしくは胃への直接注入によって投与することができる。
【0078】
医薬組成物はまた、抗生物質、プロバイオティクス、鎮痛薬、および抗炎症剤などの治療薬を含むことができる。ヒトに対するこれらの組成物の適切な投与量は、健康状態、免疫状態、体重および年齢などの因子に基づいて、従来の方法で決定することができる。場合によっては、投与量は、ヒト母乳中の組成物のHMOに見られる濃度と同様の濃度になるであろう。必要な量は、一般に、約0.5 g~約15 g/日、特定の実施態様では、約1 g~約10 g/日、たとえば、約2 g~約7.5 g/日の範囲である。適切な投与計画は、当業者に知られている方法によって決定することができる。
【0079】
(i)低FODMAP食を摂取するヒトにオリゴ糖の供給源を提供する、(ii)低FODMAP食を摂取するヒトの結腸におけるビフィズス菌の存在量を増加させる、(iii)低FODMAP食を摂取するヒトの食事にFODMAPを再導入する、および/または(iv)低FODMAP食を漸減または終了するヒトの胃腸症状の軽減を引き延ばす、ために投与するのに必要なHMOの量は、低FODMAP食の使用を必要とする基礎疾患のリスクおよび重症度、その他の病状または疾患、年齢、組成物の形態、および投与される他の薬剤などの因子によって変化する。さらに、その量は、HMOが直接効果をもたらすために使用されているか(用量が高い場合)、またはHMOが二次予防/維持として使用されているか(用量が低い場合)によって変化しうる。しかしながら、必要な量は、開業医によって容易に設定することができ、一般に、約0.5 g~約15 g/日、特定の実施態様では、約1 g~約10 g/日、たとえば、約2 g~約7.5 g/日の範囲である。適切な用量は、たとえば、体重および/または状態、治療または予防されている基礎疾患の重症度、他の病気および/または疾患、副作用の発生率および/または重症度ならびに投与方法を含むいくつかの要因に基づいて決定することができる。適切な用量範囲は、当業者に知られている方法によって決定することができる。初期治療段階では、投与量をより多くすることができる(たとえば、3 g~15 g/日、好ましくは、4 g~7.5 g/日)。維持段階では、投与量を減らすことができる(たとえば、1 g~10 g/日、好ましくは、2 g~7.5 g/日、より好ましくは、約2 g~約5 g/日))。
【実施例
【0080】
次に、本発明をさらに説明するために実施例を記載する。
【0081】
実施例1-臨床試験
合計60人の男性と女性のIBS患者が、試験に参加するために採用される。スクリーニング来院と1~2週間の慣らし期間の後、患者を選択する。患者をそれぞれ30人の患者からなる2つのグループにランダム化し、1つのグループは治療製品を摂取し、1つのグループはプラセボ製品を摂取する。治療製品には、2'-FLとLNnTの組み合わせが4:1の比率で5グラム含まれており、プラセボ製品には、5グラムのグルコースが含まれている。両方の製品は、単位用量容器内の粉末形態である。
【0082】
患者は、年齢が18~60歳であり、IBSのRome IV基準に従って、IBS-D、IBS-C、またはIBS-Mの定義を満たし、2週間の慣らし運転期間中にグローバルIBS-SSSスコアが>174である場合に、参加する資格がある。採用されたすべての患者は、試験手順を理解し、遵守することができ、その意思がある。以下の場合、患者は排除される:患者が症状を引き起こしたり、試験結果を妨害したりする可能性のある既知の胃腸疾患、特に、ラクトース不耐性およびセリアック病を有する;患者が、スクリーニング来院の1か月前に臨床試験に参加していた;患者が、試験参加に臨床的に関連するスクリーニング試験で異常な結果を有する;患者が、悪性腫瘍、糖尿病、重度の冠動脈疾患、腎臓病、神経疾患、または重度の精神疾患などの重度の疾患あるいは研究結果を混乱させる可能性のある任意の状態に苦しんでいる;患者が、試験前の1か月間、高用量のプロバイオティクスサプリメント(許可されたヨーグルト)を使用していた;患者が、試験の1ヶ月前に抗生物質を摂取していた;患者が、試験の2週間前に、症状の評価を妨げる可能性のある薬を定期的に摂取していた;患者が、10年以上IBSと診断され治療されている;および、患者が、妊娠中または授乳中である。
【0083】
スクリーニング来院(来院1)では、病歴および医療歴および併用薬が登録される。IBS診断基準が評価され、IBS-SSS質問票のパート2が完了する。
【0084】
糞便サンプルキットは、ブリストル便性状スケール(BSFS)および2回目の来院直前の7日間に記入されるべき便通日記(BMD)と一緒に配布される。患者は、来院2の3日前に食事を登録することを求められ、試験中は通常の食事を変更しないように注意される。
【0085】
2回目の来院(来院2)では、適格基準がチェックされ、適格な被験者が試験の2つの治療群にランダム化される。身体検査が行われ、いくつかの質問票(GSRS-IBS、IBS-SSS、HADS、NRS-11、VSI、IBS-QOLおよびPHQ-15スケール)が回答される。質問票は電子的に記入される。電子システムを使用することができないか、または使用したくない人は、紙の質問票に記入する。臨床症状および質問票からのデータに基づいて、患者は次の3つのグループの1つに分類される:下痢優勢(IBS-D)、便秘優勢(IBS-C)または混合(IBS-M)。これにより、各サブグループから介入グループへの患者の割り当てが可能になる。患者は、有害事象や通常の投薬の変更について質問される。BSFSおよびBMDが回収され、介入期間中に毎日記入される新しいフォームが配布される。糞便サンプルを回収し、新しいサンプル用の機器が配布される。血液サンプルは、日常的な臨床化学および血液学およびバイオマーカー分析のために回収され、唾液サンプルは、FUT2分泌状態を分析するために回収される。食事記録を回収し、新しいフォームが配布される。次に、ランダム化された患者には、ランダム化されたグループに応じて、プラセボ製品または治療製品が4週間供給される。患者および臨床スタッフは、どちらの製品を受け取るか知らされていない。患者は、朝に朝食と一緒に介入製品を摂取するように指示される。次に、ランダム化された患者は、訓練を受けた研究栄養士によって低FODMAP食についてカウンセリングを受ける。食事記録は、低FODMAP食へのコンプライアンスを監視するために使用される。
【0086】
4週間後の3回目の来院(来院3)では、身体検査が行われ、いくつかの質問票(GSRS-IBS、IBS-SSS、HADS、NRS-11、VSI、IBS-QOLおよびPHQ-15スケール)が回答される。質問票は電子的に記入される。電子システムを使用することができないか、または使用したくない人は、紙の質問票に記入する。食品およびコンプライアンスの日記は、コンプライアンスをチェックするために回収される。血液サンプルは、日常的な臨床化学および血液学およびバイオマーカー分析のために回収される。患者は、有害事象および通常の薬物療法の変更について質問される。糞便サンプルが回収され、新しいサンプルを回収するための機器が配布される。BSFSおよびBMDが回収され、来院4の直前の7日間に記入されるべき新しいフォームが配布される。食事記録が回収され、新しいフォームが配布される。次に、患者は、訓練を受けた研究栄養士によって、FODMAP食の中止についてカウンセリングを受ける。
【0087】
来院3の2週間後の4回目の来院(来院4)で、各患者は医療チームとの終了来院を行う。糞便サンプルおよび血液サンプルは、以前と同様に回収および分析される。いくつかの質問票(GSRS-IBS、IBS-SSS、HADS、NRS-11、VSI、IBS-QOLおよびPHQ-15スケール)が回答される。質問票は電子的に記入される。電子システムを使用することができないか、または使用したくない人は、紙の質問票に記入する。患者は、有害事象および通常の薬物療法の変更について質問され、BSFSおよびBMDが回収される。
【0088】
マイクロバイオータプロファイルを評価するために、96ウェルPowerSoil DNA単離キット(MO-BIO)を使用して糞便サンプルからDNAを抽出する。PCR中のネガティブコントロールとして機能するように、プレートごとに最低1つのサンプルウェルを空に保つ。PCRは、イルミナアダプターとともに、フォワードプライマーSD-Bact-0341-bS-17とリバースプライマーSD-Bact-0785-aA-21を使用して行われる(Klindworth et al. Nucleic Acids Res. 41、e1(2013))。これらは、V3-V4領域をターゲットとするユニバーサルバクテリア16SrDNAプライマーである。以下のPCRプログラムを使用する:98℃で30秒、25x(98℃で10秒、55℃で20秒、72℃で20秒)、72℃で5分間。増幅は、1%アガロースゲルで製品を泳動することによって確認される。次のPCRプログラムでNextera Index Kit V2(Illumina)を使用し、ネステッドPCRにバーコードを加える:98℃で30秒、8x(98℃で10秒、55℃で20秒、72℃で20秒)、72℃で5分間。プライマーの付着は、1%アガロースゲルで製品を泳動することにより確認される。ネステッドPCRの産物は、SequalPrep Normalization Plate Kitを使用して正規化され、プールされる。プールされたライブラリは蒸発によって濃縮され、プールされたライブラリのDNA濃度は、Qubit High Sensitivity Assay Kit(Thermo Fisher Scientific)を使用してQubit蛍光光度計で測定される。シーケンシングは、2 x 300bpペアエンドシーケンシングのためのMiSeq Reagent Kit V3(Illumina)を使用して、MiSeqデスクトップシーケンサーで行う。USEARCHの64ビットバージョンは、シーケンスデータのバイオインフォマティック分析に使用される。
【0089】
来院2と来院3の間、すべての患者はグループ間で耐性に差がなく、低FODMAP食に耐える。すべての患者が胃腸の症状を改善する。治療製品を投与された患者は、来院3のプラセボ群と比較してビフィズス菌レベルが上昇している。来院4では、来院2と3の間に治療製品を投与された患者は、胃腸症状の改善を示し続ける。来院2と3の間にプラセボ製品を投与された患者は、胃腸症状の悪化を示す。
【0090】
来院4では、すべての患者が試験の非盲検延長に参加するよう招待されている。参加に同意した患者には、48日間の治療製品が提供される。48日後、患者は、Webベースのデータ回収システムでGSRS-IBSおよびIBS-SSS質問票に回答する。
【0091】
来院2と3の間に治療製品を摂取した患者は、FODMAPの供給源を食事に再導入したにもかかわらず、胃腸症状の悪化を示さない。
【0092】
実施例2-栄養製品
すぐに摂取することができる栄養組成物は、水、乳タンパク質濃縮物、マルトデキストリン、砂糖、ミルクタンパク質濃縮物、カノーラ油、大豆タンパク質単離物、カゼイン塩、HMO(2'-FL)、セルロースゲルおよびガム、香味剤、大豆レシチン、カラギーナンガム、ならびにビタミンおよびミネラルから調製される。製品は、無菌的に200mlのボトルに充填され、密封される。
【0093】
この組成物は、タンパク質、2'-FLの形態のオリゴ糖、ビタミン、ミネラルおよび抗酸化剤の優れた供給源であり、脂肪が少なく、FODMAP基準を満たす、栄養補助食品を提供する。
【0094】
実施例3-臨床試験
興味のある健康な個人が試験のために採用される。個人は、18歳~65歳の間であり、BMIが18.5~30 kg/m2であり、書面によるインフォームドコンセントを提供することができるかどうかを判断するためにスクリーニングされる。個人は、浣腸、下剤、プロトンポンプ阻害剤、または過去3か月以内の抗生物質の使用、過去または現在の胃腸の状態の履歴、高繊維摂取、および朝食および/または昼食を定期的にスキップすることに基づいて除外される。治療製品中の成分に対する既知のアレルギーを持つ個人、または別の食事療法介入試験に最近参加した個人も除外される。包含基準および除外基準のすべてを満たす合計20人の健康な成人が試験に登録される。試験開始前に各参加者からインフォームドコンセントを得た。
【0095】
参加者は、低繊維食に従い、治療来院前の24時間は糖アルコールおよびその他のFODMAPの供給源を避けることを求められる。また、参加者は治療来院の前に一晩絶食する必要がある。治療訪来院時に、個人は、陽性対照または治療製品のいずれかを200ml摂取するように求められた。陽性対照は、5gのフルクトオリゴ糖を含むラクトースフリーミルクである。治療製品は、実施例2の製品である。参加者は、胃腸の症状を判断するためにGSRS質問票に記入するよう求められる。
【0096】
呼気中水素は、ベースラインにて測定され、次に、陽性対照または治療製品の摂取後1、2、3、および4時間にて測定される。これは、参加者に呼気収集バッグに息を吹き込むように指示することによって行われ、20mlの呼気終末空気が除去され、試験された。サンプルは、Quintron GaSampler システムを使用して水素とメタンの含有量を分析する。GSRSは、ベースラインで完了し、その後、介入製品の摂取後1、2、3、および4時間で完了する。
【0097】
両方の介入製品は、健康な参加者に十分に許容される。治療製品は、陽性対照と比較して、より低い呼気中水素応答を生成した。
【0098】
実施例4-カプセル組成物
充填機を使用して、約1 gのHMOを000ゼラチンカプセルに充填することによって、カプセルを調製する。次に、カプセルを閉じる。HMOは自由流動性の粉末形状である。
【0099】
実施例5-栄養組成物
HMO 2’-FLおよびLNnTを、4:1の質量比でロータリーブレンダーに導入する。0.25 w%の量の二酸化ケイ素をブレンダーに導入し、混合物を10分間混合する。次に、混合物を流動床で凝集させ、5グラムのスティックパックに充填し、パックを密封する。
【国際調査報告】