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特表2022-513548ミクロバクテリウム・パラオキシダンス、その広域スペクトルのポリ塩化ビフェニル酵素製剤の調製方法、及び応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(54)【発明の名称】ミクロバクテリウム・パラオキシダンス、その広域スペクトルのポリ塩化ビフェニル酵素製剤の調製方法、及び応用
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20220202BHJP
   C05G 3/00 20200101ALI20220202BHJP
   C12N 9/00 20060101ALN20220202BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
C12N1/20 D
C12N1/20 F
C05G3/00 Z
C12N9/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021501333
(86)(22)【出願日】2019-07-02
(85)【翻訳文提出日】2021-01-08
(86)【国際出願番号】 CN2019094295
(87)【国際公開番号】W WO2020011052
(87)【国際公開日】2020-01-16
(31)【優先権主張番号】201810747535.3
(32)【優先日】2018-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521014711
【氏名又は名称】山東省科学院生態研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】季 蕾
(72)【発明者】
【氏名】張 強
(72)【発明者】
【氏名】傅 暁文
(72)【発明者】
【氏名】王 加寧
(72)【発明者】
【氏名】陳 貫虹
【テーマコード(参考)】
4B050
4B065
4H061
【Fターム(参考)】
4B050DD02
4B050EE10
4B050LL05
4B065AA32X
4B065AC14
4B065CA27
4B065CA54
4H061AA01
4H061EE66
4H061FF02
4H061GG48
4H061JJ03
(57)【要約】
ミクロバクテリウム・パラオキシダンス、その広域スペクトルのポリ塩化ビフェニル酵素製剤の調製方法、及び応用に関する。ミクロバクテリウム・パラオキシダンス(Microbacterium paraoxydans)ECO-2は、2018年06月01日に、中国微生物菌種保蔵管理委員会普通微生物センターに預けられ、菌種の受託番号がCGMCC No.15836である。ミクロバクテリウム・パラオキシダンスECO-2株をビフェニルである単一基質で誘導培養して得た細胞内複合酵素が、好気性条件で、PCB28、PCB101及び/又はPCB114などの低塩素化・過塩素化PCBsを分解することができ、酵素製剤は、分解スペクトルが広く、単一誘導培養では単一の成分しか分解できないという従来の公知のものと明らかに異なり、応用の将来性が期待できる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2018年06月01日に中国微生物菌種保蔵管理委員会普通微生物センター(住所:北京市朝陽区北辰西路1号院3号中国科学院微生物研究所)に預けられた菌種(受託番号:CGMCC No.15836)である
ことを特徴とするミクロバクテリウム・パラオキシダンス(Microbacterium paraoxydans)ECO-2。
【請求項2】
請求項1に記載のミクロバクテリウム・パラオキシダンス(Microbacterium paraoxydans)ECO-2の培養方法であって、
ミクロバクテリウム・パラオキシダンス(Microbacterium paraoxydans)ECO-2株を固体活性化培地に画線し、活性化培養して、活性化済み株を得るステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた活性化済み株を液体培地に接種し、振とう培養して、種液を得るステップ(2)と、
ステップ(2)で得られた種液を、2%~10%の体積パーセントで拡大培地に移し替え、拡大培養して、菌液を得るステップ(3)とを含む
ことを特徴とする培養方法。
【請求項3】
前記ステップ(1)において、固体活性化培地はLB固体培地であり、組成は、
ペプトン10g、酵母エキス5g、塩化ナトリウム10g、寒天20gであり、水で1Lに定容し、自然な状態でのpHであり、
好ましくは、前記ステップ(1)において、活性化条件は、28~37℃で、1~2日間倒置培養することである
請求項2に記載の培養方法。
【請求項4】
前記ステップ(2)における液体培地とステップ(3)における拡大培地はいずれもLB液体培地であり、組成は、
ペプトン10g、酵母エキス5g、塩化ナトリウム10gであり、水で1Lに定容し、自然な状態でのpHであり、
好ましくは、前記ステップ(2)における振とう培養条件は、28~37℃で、回転速度100~200回転/分の条件で、1~2日間振とう培養することである
請求項2に記載の培養方法。
【請求項5】
前記ステップ(3)における拡大培養条件は、28~37℃で、溶存酸素20~70%の条件で、1~2日間拡大培養することである
請求項2に記載の培養方法。
【請求項6】
請求項1に記載のミクロバクテリウム・パラオキシダンス(Microbacterium paraoxydans)ECO-2の応用であって、
ポリ塩化ビフェニル汚染土壌を修復する酵素製剤の調製における応用である
ことを特徴とする応用。
【請求項7】
ミクロバクテリウム・パラオキシダンス(Microbacterium paraoxydans)ECO-2の菌液を、1~10%の体積パーセントで、濃度0.3~0.8g/Lのビフェニルを含む無機塩培地である無機塩誘導培地に接種し、温度28~37℃、回転速度100~200回転/分の条件で、3~5日間誘導培養して、誘導済みミクロバクテリウム・パラオキシダンス(Microbacterium paraoxydans)ECO-2菌液を得るステップ(i)と、
ステップ(i)で得られた誘導済みミクロバクテリウム・パラオキシダンス(Microbacterium paraoxydans)ECO-2菌液を固液分離し、菌体をリン酸緩衝液に懸濁し、細胞破砕を行い、さらに4~25℃の条件で固液分離し、上澄み液を採取して、酵素製剤を得るステップ(ii)とを含む
請求項6に記載の応用。
【請求項8】
前記ステップ(i)において、1リットルあたりの無機塩培地の組成は、
リン酸二水素カリウム0.5g、リン酸水素二ナトリウム0.5g、硫酸マグネシウム0.2g、塩化カルシウム0.1g、塩化ナトリウム0.2g、硫酸アンモニウム1.0g、ペプトン2.0gで、pH7.0であり、
好ましくは、前記ステップ(ii)において、固液分離は3000~10000回転/分の条件で2~10分間遠心分離することであり、
好ましくは、前記ステップ(ii)において、細胞破砕は高圧ホモジナイズ細胞破砕法を採用することであり、
好ましくは、前記ステップ(ii)において、リン酸緩衝液はpH5.0~8.0のリン酸緩衝液であり、好ましくは、リン酸緩衝液の使用量は5~50倍容量である
請求項7に記載の応用。
【請求項9】
請求項8で得られた酵素製剤の応用であって、
ポリ塩化ビフェニル汚染土壌の修復における応答である
ことを特徴とする応用。
【請求項10】
前記ポリ塩化ビフェニルは、2,4,4’-トリクロロビフェニル、2,2’,4,5,5’-ペンタクロロビフェニル及び/又は2,3,4,4’,5-ペンタクロロビフェニルである
請求項9に記載の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミクロバクテリウム・パラオキシダンス、その広域スペクトルのポリ塩化ビフェニル酵素製剤の調製方法、及び応用に関し、微生物の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
持続性有機汚染物質であるポリ塩化ビフェニル(PCBs)は、高毒性、生物蓄積性及び長距離移動性を有し、半減期が長く、土壌、水生生態系や飲用水源をひどく汚染し、奇形や癌の原因となる。PCBs汚染に引き起こされた台湾油症事件や日本カネミ油症事件はいずれも深刻な生命と財産の損失をもたらした。PCBsは熱的・化学的安定性、難燃性、絶縁性及び耐酸化性のため、化学工業、電力、電子及び機械の産業に広く応用されており、現在、中国のPCBs及びその汚染物質の現存量は多く、電子廃棄物や工業用地移転により大量のPCBs汚染用地が生じている。2015年、環境保護部は国家環境保護基準(HJ743-2015)『土壌及び堆積物中のポリ塩化ビフェニル測定用のガスクロマトグラフィー-質量分析法』を発表し、土壌及び堆積物中のPCBsの測定方法を規範化した。PCBs汚染を適時かつ効果的に処置し、環境を保護し、人体の健康を保障することはすでに急務となっている。PCBs異性体は多様性を有し、コプレーナ構造のPCBsはダイオキシンと類似した毒性を有し、指標となるPCBsは国連GEMS/FOODにPCBs汚染状況をモニタリングするための指標として規定されているモノマーであり、環境中の主なPCBs汚染物質であるトリクロロビフェニルPCB28、ペンタクロロビフェニルPCB101はいずれもその代表的な化合物である。
【0003】
ポリ塩化ビフェニル(PCBs)は熱的・化学的安定性、難燃性、絶縁性及び耐酸化性を持っているので、化学工業、電力、電子及び機械の産業に広く応用されており、用途は主に絶縁油、難燃剤、熱伝導剤、作動油、可塑剤、鉄道用変圧器、鉱山用設備、電磁設備、カーボンレス炭化紙、顔料、ワックス添加剤、除塵剤、殺虫剤添加剤、潤滑剤、切削油、シーリング剤、閉塞剤を含む。中国では、ポリ塩化ビフェニルの長年にわたる累積生産量は1万トン近くであり、80年代の初めに中国国内は基本的にその生産を停止したが、一部の先進国からPCBsを含む電力コンデンサ、電力変圧器を輸入し、また90年代後に国外は主に電子廃棄物を通じて中国にポリ塩化ビフェニルを輸入したため、現在、中国のPCBs及びその汚染物の現存量は依然として非常に多く、工業用地移転のため大量のPCBs汚染用地が存在している。PCBsは廃棄物の排出、貯油タンクの漏れ、揮発や乾式、湿式沈降などの原因で土壌や水環境に侵入し、土壌、水生生態系や飲用水源に深刻な汚染をもたらし、また、PCBsに対する管理が不十分で、処置や保管が不適切であると相まって、PCBsの二次汚染及び持続性汚染の問題はかなり深刻である。
【0004】
特許文献1;中国特許107287134A(出願番号201710508652.X)には、シュードモナス(Pseudomonas sp.)ECO-1株が開示されており、2017年3月31日に中国微生物菌種保蔵管理委員会普通微生物センターに預けられ、寄託番号がCGMCC No.13960である。本発明は、POPs汚染土壌からシュードモナス(Pseudomonas sp.)ECO-1株を初めて単離し、この株を用いて、ポリ塩化ビフェニル、アトラジンを効率よく分解することができる二機能性酵素製剤を初めて製造し、この酵素製剤は、特に好気性条件では分解しにくい高塩素化ポリ塩化ビフェニルに対して分解活性が顕著であり、従来知られているシュードモナス(Pseudomonas sp.)やその酵素製剤とは全く機能が異なり、大量生産への応用が期待される。
【0005】
しかし、上記株は、処理速度及び処理できるポリ塩化ビフェニルの種類に関しては、まだ実際の処理のニーズを満たすことができず、好気性条件でPCBs複合汚染に対する迅速な修復は、現在の研究の焦点となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中国特許107287134A(出願番号201710508652.X)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来技術の欠陥に対して、ミクロバクテリウム・パラオキシダンス、その広域スペクトルのポリ塩化ビフェニル酵素製剤の調製方法、及び応用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の技術案は以下のとおりである。
【0009】
2018年06月01日に、中国微生物菌種保蔵管理委員会普通微生物センター(住所:北京市朝陽区北辰西路1号院3号中国科学院微生物研究所)に預けられ、菌種の受託番号がCGMCC No.15836であるミクロバクテリウム・パラオキシダンス(Microbacterium paraoxydans)ECO-2。
【0010】
この株の純培養されたモノクローナルの形態としては、図1に示すように、コロニーは黄色であり、且つエッジや表面が滑らかであり、円形をしている。
【0011】
上記株の培養方法は、
ミクロバクテリウム・パラオキシダンス(Microbacterium paraoxydans)ECO-2株を固体活性化培地に画線し、活性化培養して、活性化済み株を得るステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた活性化済み株を液体培地に接種し、振とう培養して、種液を得るステップ(2)と、
ステップ(2)で得られた種液を、2%~10%の体積パーセントで拡大培地に移し替え、拡大培養して、菌液を得るステップ(3)とを含む。
【0012】
本発明によれば、好ましくは、前記ステップ(1)において、固体活性化培地はLB固体培地であり、組成は、
ペプトン10g、酵母エキス5g、塩化ナトリウム10g、寒天20gであり、水で1Lに定容し、自然な状態でのpHである。
【0013】
本発明によれば、好ましくは、前記ステップ(1)において、活性化条件は、28~37℃で、1~2日間倒置培養することである。
【0014】
本発明によれば、好ましくは、前記ステップ(2)における液体培地とステップ(3)における拡大培地はいずれもLB液体培地であり、組成は、
ペプトン10g、酵母エキス5g、塩化ナトリウム10gであり、水で1Lに定容し、自然な状態でのpHである。
【0015】
本発明によれば、好ましくは、前記ステップ(2)における振とう培養条件は、28~37℃で、回転速度100~200回転/分の条件で、1~2日間振とう培養することである。
【0016】
本発明によれば、好ましくは、前記ステップ(3)における拡大培養条件は、28~37℃で、溶存酸素20~70%の条件で、1~2日間拡大培養することである。
【0017】
ポリ塩化ビフェニル汚染土壌を修復する酵素製剤の調製における、上記ミクロバクテリウム・パラオキシダンス(Microbacterium paraoxydans)ECO-2の応用。
【0018】
上記応用は、
ミクロバクテリウム・パラオキシダンス(Microbacterium paraoxydans)ECO-2の菌液を、1~10%の体積パーセントで、濃度0.3~0.8g/Lのビフェニルを含む無機塩培地である無機塩誘導培地に接種し、温度28~37℃、回転速度100~200回転/分の条件で、3~5日間誘導培養して、誘導済みミクロバクテリウム・パラオキシダンス(Microbacterium paraoxydans)ECO-2菌液を得るステップ(i)と、
ステップ(i)で得られた誘導済みミクロバクテリウム・パラオキシダンス(Microbacterium paraoxydans)ECO-2菌液を固液分離し、菌体をリン酸緩衝液に懸濁し、細胞破砕を行い、さらに4~25℃の条件で固液分離し、上澄み液を採取して、酵素製剤を得るステップ(ii)とを含む。
【0019】
本発明によれば、好ましくは、前記ステップ(i)において、1リットルあたりの無機塩培地の組成は、
リン酸二水素カリウム0.5g、リン酸水素二ナトリウム0.5g、硫酸マグネシウム0.2g、塩化カルシウム0.1g、塩化ナトリウム0.2g、硫酸アンモニウム1.0g、ペプトン2.0gで、pH7.0である。
【0020】
本発明によれば、好ましくは、前記ステップ(ii)において、固液分離は3000~10000回転/分の条件で2~10分間遠心分離することである。
【0021】
本発明によれば、好ましくは、前記ステップ(ii)において、細胞破砕は高圧ホモジナイズ細胞破砕法を採用することである。
【0022】
本発明によれば、好ましくは、前記ステップ(ii)において、リン酸緩衝液はpH5.0~8.0のリン酸緩衝液であり、好ましくは、リン酸緩衝液の使用量は5~50倍容量である。
【0023】
ポリ塩化ビフェニル汚染土壌の修復における、上記酵素製剤の応用。
【0024】
本発明によれば、好ましくは、前記ポリ塩化ビフェニルは、2,4,4’-トリクロロビフェニル(PCB28)、2,2’,4,5,5’-ペンタクロロビフェニル(PCB101)及び/又は2,3,4,4’,5-ペンタクロロビフェニル(PCB114)である。
【発明の効果】
【0025】
1、本発明では、ミクロバクテリウム・パラオキシダンス(Microbacterium paraoxydans)ECO-2株が初めて開示されており、ビフェニルである単一基質で誘導培養して得た細胞内複合酵素は、好気性条件で、PCB28、PCB101及び/又はPCB114などの低塩素化・過塩素化PCBsを分解することができ、酵素製剤は、分解スペクトルが広く、単一誘導培養では単一の成分しか分解できないという従来の公知のものと明らかに異なり、物理的・化学的処理方法に比べて、環境により優しく、そして大規模で取り扱うのが便利であり、微生物方法に比べて、分解速度が高く、修復周期を短縮させ、分解効率を高め、応用の将来性が期待できる。
2、ミクロバクテリウム・パラオキシダンス(Microbacterium paraoxydans)ECO-2を用いて調製した広域スペクトルのポリ塩化ビフェニル酵素製剤は、コプレーナ構造のPCB114、及び環境汚染指標であるトリクロロビフェニルPCB28、ペンタクロロビフェニルPCB101のいずれに対しても分解活性が高く、ペンタクロロビフェニルPCB101に対する分解率が100%に達し、適用範囲が広く、しかも、調製時に毒性のより高い過塩素化PCBsを誘導のために用いる必要がなく、このため、調製プロセスがシンプルであり、大量生産への応用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】ミクロバクテリウム・パラオキシダンス(Microbacterium paraoxydans)ECO-2株の純培養されたモノクローナル形態の写真
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、実施例にて本発明の技術案をさらに説明するが、本発明の特許範囲はそれに制限されない。
【0028】
生物の由来
ミクロバクテリウム・パラオキシダンス(Microbacterium paraoxydans)ECO-2は、2018年06月01日に、中国微生物菌種保蔵管理委員会普通微生物センター(住所:北京市朝陽区北辰西路1号院3号中国科学院微生物研究所)に預けられ、菌種の受託番号がCGMCC No.15836である。
【0029】
培地
LB固体培地では、1リットルあたりの組成は以下のとおりである。
ペプトン10g、酵母エキス5g、塩化ナトリウム10g、寒天20g、水で1Lに定容、自然な状態でのpH
LB液体培地では、1リットルあたりの組成は以下のとおりである。
ペプトン10g、酵母エキス5g、塩化ナトリウム10g、水で1Lに定容、自然な状態でのpH
無機塩培地では、1リットルあたりの組成は以下のとおりである。
リン酸二水素カリウム0.5g、リン酸水素二ナトリウム0.5g、硫酸マグネシウム0.2g、塩化カルシウム0.1g、塩化ナトリウム0.2g、硫酸アンモニウム1.0g、ペプトン2.0g、水で1Lに定容、pH7.0。
【0030】
実施例1
POPs汚染土壤浸出液を準備し、それぞれ濃度10-1、10-2、10-3、10-4、10-5という5つの濃度勾配に希釈した。希釈した菌懸濁液をビフェニル含有固体培地に塗布し、30℃で1~3日間培養した。成長速度が高く、典型的な形態を持っている細菌コロニーを選択して、3回の平板画線により分離精製した后、単一コロニーを無機塩液体培地に取り、30℃、150回転/分で3日間培養し、培養物1.5mLにグリセリン0.5mLを加えて均一に混合した後、-80℃の冷蔵庫で長期的に保管した。
【0031】
菌懸濁液が塗布される固体培地はLB固体培地であり、組成は以下のとおりである。
ペプトン10g、酵母エキス5g、塩化ナトリウム10g、寒天20g、水で1Lに定容、自然な状態でのpH。
【0032】
単一コロニーを培養するための無機塩液体培地の組成は以下のとおりである。
リン酸二水素カリウム0.5g、リン酸水素二ナトリウム0.5g、硫酸マグネシウム0.2g、塩化カルシウム0.1g、塩化ナトリウム0.2g、硫酸アンモニウム1.0g、ペプトン2.0g、水で1Lに定容、pH7.0。
【0033】
上記で得られた株を、それぞれ濃度25mg/Lのポリ塩化ビフェニルPCB28(2,4,4’-トリクロロビフェニル)、PCB101(2,2’,4,5,5’-ペンタクロロビフェニル)、PCB114(2,3,4,4’,5-ペンタクロロビフェニル)を含有する無機塩液体培地に接種し、150回転/分、30℃で72h培養し、菌液の濁りの状況を観察し、菌懸濁液について600nmでの吸光値を検出した。上記指標に基づいて酵素産生株を選択した。吸光値が最高の株をLB固体培地に取って培養し、ECO-2として保存した。
【0034】
モノクローナルを青島▲チン▼科梓熙生物技術有限公司に送ってシーケンシングを行い、検出したところ、16S rDNA配列が1357bp含有され、ヌクレオチド配列がSEQ ID NO.1に示すとおりであり、菌種を同定したところ、Microbacterium paraoxydansであり、ミクロバクテリウム・パラオキシダンス(Microbacterium paraoxydans)ECO-2と命名し、2018年06月01日に、中国微生物菌種保蔵管理委員会普通微生物センター(住所:北京市朝陽区北辰西路1号院3号中国科学院微生物研究所)に預け、菌種の受託号をCGMCC No.15836とした。
【0035】
菌種の同定は以下のとおりである。
サンプル:細菌の菌液
細菌ゲノムのDNA抽出キット:天根生化科技(北京)有限公司、DP302
TAE緩衝液(50×、1L):Tris 242g、氷酢酸57.1ml、Na2EDTA.2H2O 37.2g、1Lまで水添加
アガロース:BIOWET、AGAROSE G-10
2×Pfu PCR MasterMix、D2000DNA Marker、核酸染料、loading buffer等:天根生化科技(北京)有限公司
DNA精製回収キット:天根生化科技(北京)有限公司、DP214
遠心チューブ、ピペットチップなどの消耗品:米国Gene Era Biotech社(GEB)
【0036】
プライマー:青島▲チン▼科梓熙生物技術有限公司により合成。合成取扱書に従ってddHOを加えて、10μM溶液とした。
1、DP302キットに従ってゲノムDNA抽出を行った。
2、PCR増幅
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
2.3 PCRサイクルのパラメータ
予備変性:94℃、3min、変性94℃、30s、アニーリング55、30s、伸長、72℃、1.5min(合計35サイクル)、伸長72℃、10min;4℃で保存。
【0040】
3、アガロースゲル電気泳動検出
1.0%のアガロースゲルを調製し、電気泳動には電圧を18V/cm、電気泳動時間を20minとした。
【0041】
4、精製回収
一般的なアガロースゲルDNA回収キットを用いて、目標断片に対してアガロースゲルを回収し、青島▲チン▼科梓熙生物技術有限公司にて回収産物をシーケンシングした。
【0042】
【表3】
【0043】
実施例2
実施例1の前記ミクロバクテリウム・パラオキシダンス(Microbacterium paraoxydans)ECO-2を用いて、広域スペクトルのポリ塩化ビフェニル分解酵素製剤を調製する方法のステップは以下のとおりである。
(1)ミクロバクテリウム・パラオキシダンス(Microbacterium paraoxydans)ECO-2をLB固体培地に画線し、35℃で倒置活性化培養を2日間行い、活性化済み株を得た。
(2)ステップ(1)で得られた活性化済み株をLB液体培地に接種し、35℃、回転速度200回転/分の条件で、2日間振とう培養し、種液を得た。
(3)ステップ(2)で得られた種液を、10%の体積パーセントでビフェニル0.5g/Lを含有する無機塩培地に移し替え、35℃、溶存酸素70%の条件で、2日間拡大培養して、菌液を得た。
(4)ステップ(3)で得られた菌液を、3000回転/分の条件で、10分間遠心分離して、菌体を収集し、30倍容積のpH7.0のリン酸緩衝液に懸濁し、高圧ホモジナイズ細胞破砕を行った後、4℃、3000回転/分の条件で、2分間遠心分離して、上澄み液を収集し、広域スペクトルのポリ塩化ビフェニル分解酵素製剤を得た。
【0044】
比較例1
遺伝的関係が最も類似したミクロバクテリウム・パラオキシダンスMicrobacterium paraoxydans strain MA25を用いて、実施例2の方法により酵素製剤を調製し、ステップ(3)の無機塩培地で培養したところ、菌液の濁りが認められておらず、また、菌懸濁液について600nmでの吸光値を検出したところ、OD600nmの値がゼロであり、このことから、ステップ(3)の無機塩培地ではミクロバクテリウム・パラオキシダンスMicrobacteriumparaoxydans strain MA25が生存できないことが明らかになった。
【0045】
比較例2
(Pseudomonas sp.)ECO-1株を用いて、実施例2の方法により酵素製剤を調製した。ステップ(3)の無機塩培地で培養したところ、菌液の濁りが認められ、また、菌懸濁液について600nmでの吸光値を検出したところ、OD600nmの値が1.05であり、このことから、ステップ(3)の無機塩培地ではシュードモナス(Pseudomonas sp.)ECO-1が生存できることが明らかになった。
【0046】
実験例
濃度25mg/LのペンタクロロビフェニルPCB114、PCB101、トリクロロビフェニルPCB28のそれぞれを、広域スペクトルのポリ塩化ビフェニル酵素製剤及びPBS緩衝液と1:5:19(体積比)の割合で混合した後、30℃、pH7.0でそれぞれ10h、13h、10h反応させ、n-ヘキサン10mLを加えて3回抽出し、抽出液について、GC-MS法により上記ポリ塩化ビフェニルの分解率を検出した。
検出した結果、実施例2で得られた広域スペクトルのポリ塩化ビフェニル分解酵素製剤は、好気性条件で、トリクロロビフェニルPCB28に対する分解率が10h内で90%に達し、ダイオキシン様ペンタクロロビフェニルPCB114に対する分解率が10h内で57.1%に達し、指標となるペンタクロロビフェニルPCB101に対する分解率が13h内で100%に達した。
【0047】
比較例2では、ダイオキシン様ペンタクロロビフェニルPCB114だけに対して、分解率が10h内で60.3%に達し、他のものに対しては、分解率がゼロであった。
【0048】
以上のデータから分かるように、本発明の前記ミクロバクテリウム・パラオキシダンス(Microbacteriumparaoxydans)ECO-2は、単一基質で誘導すると、PCB114、PCB101、PCB28に対する広域スペクトルのポリ塩化ビフェニル酵素製剤を産生することができ、単一基質で誘導すると単一分解しかできない従来の公知の酵素製剤に比べて、高い応用価値があった。
図1
【配列表】
2022513548000001.app
【国際調査報告】