(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(54)【発明の名称】サイトカインを分泌するように改変されたPDC株
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20220202BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20220202BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220202BHJP
C12N 5/0784 20100101ALN20220202BHJP
C12P 21/02 20060101ALN20220202BHJP
C07K 14/52 20060101ALN20220202BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20220202BHJP
C12N 7/01 20060101ALN20220202BHJP
【FI】
C12N5/10
A61K39/00 Z
A61P35/02
C12N5/0784 ZNA
C12P21/02 C
C07K14/52
C07K14/705
C12N7/01
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021523162
(86)(22)【出願日】2019-10-23
(85)【翻訳文提出日】2021-06-14
(86)【国際出願番号】 EP2019078845
(87)【国際公開番号】W WO2020083974
(87)【国際公開日】2020-04-30
(32)【優先日】2018-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521173085
【氏名又は名称】ペデセ リヌ ファルマ
【氏名又は名称原語表記】PDC LINE PHARMA
(71)【出願人】
【識別番号】512217400
【氏名又は名称】エタブリスマン フランセ デュ サン
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】ハナニ、デリル
(72)【発明者】
【氏名】プリュマ、ジョエル
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG02
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA45
4C085AA03
4C085BB01
4C085CC03
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045DA04
4H045DA86
4H045EA31
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、サイトカインを分泌するように遺伝子改変されたPDC(形質細胞様樹状細胞)株、および免疫療法において抗原特異的細胞の増殖を増加させるためのその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターロイキン15(IL15)およびインターロイキン2(IL2)から選択されるサイトカインを発現するように遺伝子改変されてなるPDC株。
【請求項2】
初期PDC株が、白血病性形質細胞様樹状細胞から得られることを特徴とする、請求項1に記載の遺伝子改変株。
【請求項3】
前記改変が、ウイルス粒子を用いて行われることを特徴する、請求項1または2のいずれか一項に記載の遺伝子改変株。
【請求項4】
前記サイトカインが単独で発現されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の遺伝子改変株。
【請求項5】
1つ以上の抗原で負荷されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の遺伝子改変株。
【請求項6】
1つ以上の抗原を発現するようにさらに遺伝子改変されてなることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の遺伝子改変株。
【請求項7】
前記抗原がペプチド抗原であることを特徴とする、請求項5または6のいずれか一項に記載の遺伝子改変株。
【請求項8】
放射線照射されてなるものであることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の遺伝子改変株。
【請求項9】
抗原特異的細胞のインビトロ増幅のための、請求項1~8のいずれか一項に記載の遺伝子改変株の使用。
【請求項10】
治療における使用のための、請求項1~8のいずれか一項に記載の遺伝子改変株。
【請求項11】
一方に請求項1~8のいずれか一項に記載の遺伝子改変PDC株、および他方に抗原特異的細胞を含む、組み合わせ物またはキット。
【請求項12】
免疫療法による疾患の治療における併用のための、請求項11に記載の組み合わせ物。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか一項に記載の遺伝子改変PDC株、およびその投与のための適切なビヒクルを含む、ワクチン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイトカインを分泌するように遺伝子改変された形質細胞様樹状細胞(PDC)株、および免疫療法において抗原特異的細胞の増殖を増加させるためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
抗原特異的細胞の産生を促進させることを試みる免疫療法アプローチは公知である。ドナー単核細胞(MNC)、特に、末梢血単核細胞(PBMC)から抗原特異的細胞傷害性細胞を誘導するために形質細胞様樹状細胞(PDC)株(「PDC*株」と呼ぶ)を使用するアプローチは、本発明者らによって開発されている(WO2009/138489)。このアプローチは、放射線照射および抗原負荷された「PDC*株」の存在下でMNCを培養することからなり、単核細胞は、「PDC*株」と少なくとも1つのHLA分子を共有する(例えば、HLA-A2)。
【0003】
本出願人によって実施された研究は、この治療アプローチの魅力、およびメラノーマまたは肺がんなどのがんの免疫療法治療におけるその注目に値する可能性を示した(Aspordら,2012年、未公表データ)。
【0004】
抗原特異的細胞の増殖を誘導する能力は、これらの新たな治療アプローチの実行における決定因子である。特に、WO2009/138489の出願から、サイトカインの存在がこの増殖のために必要であることが公知である。開示された実験プロトコールは、第1週目に、サイトカインなしで行われる放射線照射および抗原負荷されたPDC*株とMNCとの共培養、次いで、第2週目に、放射線照射された抗原負荷されたPDC*株およびIL-2による新たな刺激で構成される。
【0005】
さまざまな免疫応答の発達メカニズムにおけるサイトカインの重要性は、特にIL-2およびIL15について、当業者に周知である(Waldmann,Nat Rev 2006年)。IL-2は、活性化されたT細胞によって主に産生されるが、IL-15およびその関連する受容体IL-15Ra(Dubois,2002年)は、単球または骨髄樹状細胞(MDC)によって産生される(Jakobisiakら,2011年)。抗腫瘍応答の誘導において(NK、抗体または抗原特異的T)、細胞機能を増強する目的のために、IL15を産生するインビトロで発生したMDCを一過的または持続的に改変することが記載されている(van den Berghら,2015年、Steelら(2010年)またはZhangら(2014年))。
【0006】
MDCおよびPDC両方が抗原提示細胞であるとしても、病原体または抗原の起源、および一般に、多くの特徴:とりわけ、起源、組織局在性、トール様受容体発現、サイトカイン産生によって分化させられる環境状況に依存して、異なる種類の免疫応答を誘導することができる2つの異なる細胞型が存在する。IL15を発現するように改変されたMDCに関するこれらの論文は、PDCを使用する可能性について言及しておらず、あるいはIL15またはさらにIL2によるPDCに対する少なくとも同等の効果について考慮すらしていない。
【0007】
WO2009/138489に記載の従来の活性化および増殖方法は、特に高レベルの増殖を既に達成しているが(Aspordら,2010年)、抗原特異的細胞の増殖のレベルでこの新たな治療アプローチを改善することは依然として有利である。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明は、インターロイキン15(IL15)およびインターロイキン2(IL2)から選択されるサイトカインを発現するように遺伝子改変された新たなPDC株に関する。
【0009】
特に、本発明による遺伝子改変PDC細胞は、ペプチド形態の1つ以上の抗原で負荷される。
【0010】
本発明は、抗原特異的細胞、具体的には、単核細胞(MNC)、より具体的には、末梢血単核細胞(PBMC)を増幅するための新たな遺伝子改変PDC株の使用にも関する。
【0011】
本発明は、特に、免疫療法による疾患の治療における併用のための、一方に本発明による遺伝子改変PDC株、および他方に単核細胞(MNC)を含む、組み合わせ物またはキットにも関する。
【0012】
本発明は、本発明による遺伝子改変PDC株、およびその投与のための適切なビヒクルを含む、ワクチン組成物にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、非形質導入PDC
*株(左)またはIL-2もしくはIL-15をコードするレトロウイルス上清で形質導入されたPDC
*株におけるCD34分子の発現の測定値を表す。
【
図2】
図2は、IL2またはIL15レトロウイルス上清で形質導入されたPDC
*株によるIL2またはIL15の発現を表す。各サイトカインは、メッセンジャーRNAのレベル(A、G6PDHに対して正規化)、または形質導入された細胞の上清中(B、pg/ml)で検出される。
【
図3】
図3は、未改変の、またはIL2もしくはIL15で遺伝子改変された、Melan-A抗原で負荷されたPDC株、および3人の健康なドナー由来の単核細胞の14日間の共培養後の抗Melan-A CD8+ T細胞の増殖を表す。抗Melan-A CD8+ T細胞は、HLA-A2/Melan-A多量体を使用するフローサイトメトリーによって検出される。Aにおいて、代表的な実験を示し、Bにおいて、3つの実験の結果を表す(%CD8+多量体細胞)。
【
図4】
図4は、14日間の共培養からのCD8+細胞の機能を表す。細胞傷害性細胞の機能は、使用されるMelan-A由来ペプチドで負荷された標的株(T2)による刺激後に、細胞質内IFNγの検出によって具体化される。Aに、異なる株を用いて得られるすべての特異的および非特異的CD8+細胞におけるサイトカインの細胞質内検出を示す。Bに、それぞれの株を用いて発生した非特異的(多量体-)および特異的(多量体+)細胞中のIFNγ陽性CD8+細胞のパーセンテージを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
したがって、本発明は、IL15およびIL2から選択されるサイトカインを発現するように遺伝子改変された新規PDC株に関する。
【0015】
遺伝子改変するためにおいて有用なPDC株は、初期PDC株とも呼ばれ、当業者に周知であり、特にEP1572989およびWO2009/138489に記載されている。特に、これらはPDC白血病細胞から得られる細胞である。特に、CNCM(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes、Institut Pasteur、25 rue du Docteur Roux、75015 パリ)に寄託番号2938および3110で寄託されるGEN2.2およびGEN3株、ならびにPDC白血病細胞に由来するすべての株が挙げられる。
【0016】
「PDC白血病細胞に由来する株」は、免疫不全マウスへのPDC白血病細胞の注射後の腫瘍小結節に由来する株を意味し、これらの小結節は、引き裂かれて、前記株の成長を促進する合成培地中で培養される細胞懸濁液が得られる。
【0017】
「IL15およびIL2から選択されるサイトカインの発現」は、本発明によれば、遺伝子改変株によるサイトカインの分泌を意味する。
【0018】
サイトカインの配列は、当業者に周知である。特に、IL2について、UniProtKBエントリーP60568で特定されるタンパク質配列およびEnsemblエントリーENSG00000109471で特定されるコード配列、またIL-15について、UniProtKBエントリーP40933で特定されるタンパク質配列およびEnsemblエントリーENSG00000164136で特定されるコード配列が挙げられる。上記の配列と同じ活性を有するこれらのサイトカインの改変体または断片も本発明の一部である。好ましくは、サイトカインは、上記で特定されたヒトサイトカインである。
【0019】
「遺伝子改変PDC株」は、本発明によれば、株のゲノムへの遺伝子の組み込みを可能にするウイルス粒子で形質導入された任意の株を意味し、このウイルスは、アデノウイルス、レンチウイルスまたはレトロウイルスであってよい。好ましくは、モロニーマウス白血病ウイルス(Mo-MLV)型のレトロウイルスが使用される。これらのレトロウイルス粒子は、HEK293Tカプセル化株によって産生され、自然に、またはトランスフェクション後にレトロウイルスのgag/polおよびenv配列を発現する。
【0020】
当業者にとって、目的遺伝子についてのコード配列、および調節要素、特に、遺伝子改変哺乳動物細胞においてサイトカインの発現を可能にするために使用される配列を含むウイルス粒子を調製するための方法は公知であろう。特に、4070A、MK-G、HA、LCMV、RD114、HIV、VSV、MLV、GALV、BAEVなどの細胞へのウイルスの侵入を可能にするウイルスエンベロープ配列、長い末端反復(LTR)配列、改変または改変されていないPGK、EF-1、CMV、SFFV、RSVもしくはSV40などの目的遺伝子の転写の開始を可能にするプロモーター配列、cPPTなどの形質導入効率を増強する配列、配列内リボソーム進入部位(IRES)配列(Pelletier,Nature 1988年)またはKozak配列(Kozak,Nucl acid Res 1991年)などの翻訳を容易にするまたは開始する配列、WPRE配列(Donelloら,J. Virol 1998年)などのタンパク質発現を促進する配列が挙げられる。好ましくは、LTR、IRES、KozakおよびWPRE配列が使用される。
【0021】
PDC細胞をウイルス粒子で形質導入し、IL15およびIL2から選択されるサイトカインを発現するように遺伝子改変された新規PDC株を得るための方法も当業者に公知である。特に、ポリブレンまたはDOGS(ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン)などのポリカチオン剤、またはウイルスおよび目的細胞間の接触を促進する薬剤、例えばフィブロネクチン断片(RetroNectin)の使用が挙げられる。好ましくは、RetroNectinを使用する方法が使用される。
【0022】
好ましくは、サイトカインは単独で発現される。ある特定の場合において、特に、IL15について、PDC株は、サイトカイン受容体、特にIL15Ra受容体も発現する。IL15Ra受容体、特にそのタンパク質配列は、当業者に周知である。
【0023】
本発明による改変されたPCD株が前記受容体を発現しない場合において、PDC株はまた、本分野の通常の方法により、前記受容体を発現するように改変されてもよい。
【0024】
本発明による改変PCDは、抗原特異的細胞、具体的には単核細胞(MNC)、より具体的には末梢血単核細胞(PBMC)の増幅のために特に有用である。
【0025】
これらは直接使用することができるが、本発明による改変PDC細胞は、好ましくは、抗原、特にペプチド抗原と併せられる。
【0026】
本発明の文脈において、「抗原」という用語は、免疫系の細胞によって認識され、細胞媒介性免疫反応を引き起こすことができる、分子または分子の部分と定義される。本発明において抗原は、ペプチド、タンパク質、糖ペプチド、糖タンパク質、リン酸化タンパク質などの、天然または改変された、腫瘍または微生物(特に、細菌またはウイルス)の抗原であり得る。
【0027】
当業者は、治療される疾患にしたがって、改変PDC株に関連する抗原を選択するであろう。
【0028】
本発明の好ましい実施形態において、抗原は、腫瘍またはウイルス起源の抗原性タンパク質から得られ得るペプチドである。これらのペプチドは、当業者に周知であり、特に、多数の特許出願または特許、特に、EP1485719、EP2113253、US7,087,712、US7,528,224、WO94/020127、WO95/02553、WO98/22589、WO2000/003693、WO2000/020445、WO2000/052163、WO2000/078806、WO2004/067023、WO2007/036638、WO2007/039192、WO2008/045286、WO2011/012720、WO2015/0965572およびWO2016/179573に記載されている。
【0029】
使用され得る多くの腫瘍抗原は、オンラインで利用可能なデータベース、例えば、アドレスhttp://cvc.dfci.harvard.edu/tadb/もしくはhttps://docs.google.com/spreadsheets/u/1/d/1BFn5_mu7ogUh35NsLUozj9EB2rbLtj7XjMyt7BoYNxg/pubhtml?widget=true&headers=false#gid=1609210712などに、またはDjureinovicら(JCI Insight.2016年;1(10):e86837)などの刊行物にも記載されている。
【0030】
同様に、使用され得る多くのウイルス抗原は、オンラインで利用可能なデータベース、例えば、アドレスhttps://www.iedb.org/またはhttp://crdd.osdd.net/raghava/antigendb/などにも記載されている。
【0031】
本発明の特定の実施形態によれば、腫瘍抗原から得られ得るペプチドは、抗原CEA、NY-BR1、Her-2/Neu、PSA、RAGE-1、PRAME、TRP-2、MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A9、MAGE-A10、MAGE-C1、MAGE-C2、Multi-MAGE、MUC-1、p53、hTERT、サバイビン、melan-A/MART-1、GP100、チロシナーゼ、CAMELまたはNY-ESO1の配列に含まれるペプチドから、改変または未改変を問わず、また単独または組み合わせで、選択することができる。同様に、変異したタンパク質、または核酸配列の新しいリーディングフレームによって発生したメッセンジャーRNAの転写から生じるタンパク質(ネオ抗原)の中から選択される任意の抗原であってよい。
【0032】
本発明の別の実施形態によれば、ウイルス抗原から得られ得るペプチドは、抗原HIVウイルスのenv、nef、gp41、gp120、gagもしくはpol、HBVウイルスのHBcもしくはHBs、HCVウイルスのcore、NS3もしくはNS5、インフルエンザウイルスのFlu M1、CMVウイルスのCMVpp65、EBVウイルスのBMLF1、LMP2、EBNA-2もしくはEBNA-3a、BKVウイルスのLTAもしくはVOP1、Hatanウイルスの核タンパク質、デングウイルスのNS3、HPVウイルスのE6およびE7、西ナイルウイルスのプロテインE、NS3もしくはBS4bの配列に含まれるペプチドから、改変または未改変を問わず、また単独または組み合わせで、選択することができる。
【0033】
好ましくは、Melan-A、gp100、チロシナーゼ、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A10、Multi-MAGE、CTAG2、CTAG1、サバイビン、Her-2/Neu、hTERTおよびMUC1が挙げられる。
【0034】
本発明の第1の好ましい実施形態によれば、遺伝子改変PDC細胞は、1つ以上の抗原で負荷される。これらは、パルスするとも言われ、すなわち、1つ以上の抗原とともにインキュベートされる。
【0035】
本発明は、したがって、上記に定義される遺伝子改変PDC株に、例では、上記に列挙された抗原の1つで負荷された遺伝子改変PDC株に関する。
【0036】
本発明の別の実施形態によれば、細胞はまた、前記抗原を発現するように遺伝子改変される。遺伝子改変ツールは、サイトカインを発現するようにPDC細胞を改変するために使用されるものと同じである。抗原の場合において、当業者は、遺伝要素が、エピトープに形質転換され、HLA分子によって、インビトロまたはインビボで提示されるように、抗原が細胞レベルで発現することを可能にする遺伝要素も選択する。このような要素は、当業者にも周知である(Hu,Immunological review 2011年)。
【0037】
治療的使用のために、上記および下記に定義される本発明による遺伝子改変PDC株は、放射線照射された株である。
【0038】
本発明による形質転換PCD株の成長および増殖の能力を阻害するための放射線照射方法および条件は、当業者に周知であり、特に、WO2009/138489に記載されている。
【0039】
本発明は、抗原特異的細胞、具体的には単核細胞(MNC)、より具体的には末梢血単核細胞(PBMC)を増幅するための新規遺伝子改変PDC株の使用にも関する。
【0040】
本発明は、治療における使用のための、特に、免疫療法による疾患の治療のための、新規遺伝子改変PDC株にも関する。
【0041】
本発明は、特に、免疫療法による疾患の治療における併用のための、一方に本発明による遺伝子改変PDC株、および他方に単核細胞(MNC)を含む、組み合わせ物またはキットにも関する。
【0042】
治療される疾患は、本発明による株に関連する抗原、例えば、がんの治療のために使用される腫瘍抗原およびウイルス感染症の治療のためのウイルス抗原に本質的に依存する。
【0043】
本発明は、本発明による遺伝子改変PDC株、およびその投与のための適切なビヒクルを含む、ワクチン組成物にも関する。
【0044】
本発明は、がんおよび/または感染性疾患を予防および/または治療するための方法であって、本発明による放射線照射およびパルスされた遺伝子改変PDC株が、治療を必要とする患者に注射され、前記患者の抗原特異的細胞およびPDCが、少なくとも1つの主要組織適合遺伝子複合体(MHC)アレルを共有することを特徴とする、方法にも関する。
【0045】
本発明は、がんおよび/または感染性疾患を予防および/または治療するための方法であって、本発明によるPDC株を少なくとも1つの抗原とともにインキュベートすることによって得られる特異的エフェクターが、治療を必要とする患者に注射され、次いで、パルスされ、場合により放射線照射されたPDCを、前記患者の抗原特異的細胞と接触させ、培養し、PDCおよび抗原特異的細胞が、少なくとも1つの主要組織適合遺伝子複合体(MHC)アレルを共有することを特徴とする方法にも関する。
【0046】
「特異的エフェクター」は、本発明によれば、特異的抗原、またはこの抗原に由来する産物を認識することができる免疫細胞、具体的には細胞傷害性エフェクター、より具体的には使用される抗原に特異的なT細胞、特にCD8+T細胞を意味する。
【0047】
これらの方法は、特に、WO2009/138489に記載されている。
【実施例】
【0048】
実施例1:IL-2またはIL15を発現するように遺伝子改変されたPDC*株の発生
IL2(配列番号1)およびIL15(配列番号2)をコードする目的遺伝子配列を、ThermoFischer(https://www.thermofisher.com/fr/fr/home/life-science/cloning/gene-synthesis/geneart-gene-synthesis.html)によって合成し、プラスミド中に導入して、DH5アルファ細菌(NEB)の形質転換後にプラスミドの増幅を可能にした。その後、目的配列(IL2またはIL15)をギブソン・アッセンブリー技術(NEB)を使用して、Sal-IおよびMul-I制限部位の間のプラスミドSFGΔCD34(Quintarelli,Blood 2007,寛大にもM.Pule博士によって提供された)にサブクローニングした。SFGΔCD34プラスミド(細胞質内ドメインなし)中のトランケートされたCD34配列の存在は、目的遺伝子を発現する細胞の選択を可能にする。その後、GeneJuice(VWR)の存在下で、SFGΔCD34-IL2またはSFGΔCD34-IL15プラスミドならびにMoMLV gag-pol pEQ-PAM3(-E)およびRD114 env発現プラスミド(M.Pule博士およびM.Collins博士によって寛大にも提供された(Cosset,J Virol 1995年))を用いたHEK-293T株の三重トランスフェクションによってレトロウイルス懸濁液を得た。
【0049】
その後、PDC株の細胞を、RetroNectin(Takara)の存在下で、IL2またはIL15に対応するレトロウイルス上清で形質導入し、形質導入効率を反映するCD24発現を測定した。この株は、GEN2.2およびGEN3株が由来する患者であるPDC白血病(Chaperot,Blood 2001年)を有する患者の細胞に由来した。
【0050】
図1に示されるように、90%を超えるPDC
*株が形質導入された。
【0051】
このCD34の発現は、IL2またはIL15遺伝子の発現と相関する。実際に、RT-qPCR分析(TaqMan法、Roche)は、G6PDH遺伝子と比較して、IL2またはIL15について、それぞれ20または30より多くの因子によって、高い相対発現を示す(
図2A)。また、CBA(BD)またはELISA(R&D)法を使用して、両方のサイトカインが、対応する遺伝子改変株の上清中に、IL2およびIL15について、それぞれ、20000pg/mlおよび2500pg/mlの濃度で、可溶な形態で産生されることが確認される(
図2B)。
【0052】
実施例2:MNCと腫瘍ペプチドで負荷された形質導入株との共培養後のCD8+リンパ球の増殖
次いで、改変株の能力を、HLA-A2+健康ドナー単核細胞(MNC)との共培養を使用して、評価した。簡潔には、遺伝子改変PDC株および未改変PDC株からの細胞を、Melan-A26L-35ペプチドで負荷し、放射線照射し、次いで、24ウェルプレート中で、14日間、MNCとともに培養した。異なる量のPDC株細胞を、ウェルあたり200万個のMNC(10/1または20/1)に添加した。7日目に、細胞を、可溶性IL-2の存在下、Melan-A負荷PDC株で再刺激した。14日目に、抗Melan-A CD8+リンパ球の増殖を、蛍光色素標識Melan-A/A2デキストラマー(多量体)ならびに抗CD3およびCD8抗体(Beckman Coulter)を使用して、測定した。
【0053】
図3に表される結果は、PDC株によるIL2またはIL15の発現が、未改変株よりも強い増殖を可能にすることを示す。この増加は、平均して3.7以上の係数である。
【0054】
実施例3:IL2またはIL15によって改変されたPDC株または改変されていないPDC株により発生するエフェクターの機能性:細胞質内IFNγ発現
IL-2またはIL15によって形質導入されたまたは形質導入されていないMelan-A負荷PDC株の存在下での共培養の14日後に増幅されたT細胞を、Melan-A/A2デキストラマー(多量体)で負荷し、脱顆粒阻害剤であるGolgiSTOP(Beckton Dickinson)の存在下で、Melan-A負荷T2標的株で4時間再刺激した。次いで、細胞を、抗IFNγ抗体(Beckton Dickinson)ならびに抗CD3およびCD8抗体で標識した。
図4Aは、得られた表現型が多量体標識細胞によるIFNγ陽性細胞の情報を表すことを表す。
図4Bは、Melan-A特異的細胞(多量体+)のみが、T2/Melan-A系統で再刺激された場合に、IFNγを産生することを示す。結果は、IL2またはIL15を発現するように改変されたPDC株の存在下で増幅されたMelan-A特異的リンパ球が、未改変株で増幅されたMelan-A特異的リンパ球よりも、1.8~2.1倍よりも高いIFNγを分泌することを示す。
【0055】
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【配列表】
【国際調査報告】