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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(54)【発明の名称】低粘度潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/04 20060101AFI20220202BHJP
   C10M 125/26 20060101ALI20220202BHJP
   C10M 159/22 20060101ALI20220202BHJP
   C10M 159/24 20060101ALI20220202BHJP
   C10M 129/10 20060101ALI20220202BHJP
   C10M 129/54 20060101ALI20220202BHJP
   C10M 135/10 20060101ALI20220202BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20220202BHJP
   C10N 30/08 20060101ALN20220202BHJP
   C10N 30/04 20060101ALN20220202BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20220202BHJP
   C10N 10/04 20060101ALN20220202BHJP
   C10N 10/02 20060101ALN20220202BHJP
   C10N 10/12 20060101ALN20220202BHJP
【FI】
C10M169/04
C10M125/26
C10M159/22
C10M159/24
C10M129/10
C10M129/54
C10M135/10
C10N30:06
C10N30:08
C10N30:04
C10N40:25
C10N10:04
C10N10:02
C10N10:12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021526698
(86)(22)【出願日】2019-11-13
(85)【翻訳文提出日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 IB2019059726
(87)【国際公開番号】W WO2020100045
(87)【国際公開日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】16/193,440
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391050525
【氏名又は名称】シェブロンジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 浩一
(72)【発明者】
【氏名】竹内 佳尚
(72)【発明者】
【氏名】服部 大輝
(72)【発明者】
【氏名】曽根 智尋
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104AA26C
4H104BA02A
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BB05C
4H104BB08A
4H104BB24C
4H104BB33A
4H104BB34A
4H104BG06C
4H104BH07C
4H104CA04A
4H104CB14A
4H104DB06C
4H104DB07C
4H104EA02A
4H104FA01
4H104FA02
4H104FA06
4H104LA02
4H104LA03
4H104LA04
4H104PA41
(57)【要約】
約1.7~約3.2mPa sの範囲の、150℃におけるHTHS粘度及び-20℃における7,000mPa s未満の低温コールドクランキング粘度を有する潤滑油組成物であって、(a)0.03重量%未満の硫黄含有量を有し、3.5mm/s~20mm/sの100℃における動粘度及び120を超える粘度指数を有する、主要量の潤滑粘度の油であって、APIグループIII、IV又はVベースストックカテゴリに分類され、5%未満の芳香族含有量(C)を有する、主要量の潤滑粘度の油、(b)有機モリブデン化合物、(c)分散水和アルカリ金属ボレート化合物、(e)1つ以上の分散剤、(f)1つ以上のカルシウム系金属清浄剤、及び(g)場合により、1つ以上のマグネシウム系金属清浄剤を含む、潤滑油組成物が提供される。
エンジンの摩耗、高温清浄性及び熱安定性を改善する方法であって、前記潤滑油組成物で前記エンジンを運転することを含む方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
150℃におけるHTHS粘度が約1.7~約3.2mPa sの範囲であり、-20℃における低温コールドクランキング粘度が7000mPa s未満の潤滑油組成物であって、
(a)0.03重量%未満の硫黄含有量を有し、3.5mm/s~20mm/sの100℃における動粘度及び120を超える粘度指数を有する、主要量の潤滑粘度の油であって、APIグループIII、IV又はVベースストックカテゴリに分類され、5%未満の芳香族含有量(C)を有する、主要量の潤滑粘度の油、
(b)前記潤滑油組成物に0.0050重量%を超えるモリブデンを供給する、有機モリブデン化合物、
(c)前記潤滑油組成物に0.0050重量%超~約0.060重量%のアルカリ金属を供給する、分散水和アルカリ金属ボレート化合物、
(d)前記潤滑油組成物に0~約0.06重量%のリンを供給する、硫黄リン耐摩耗化合物、
(e)前記潤滑油組成物に0.0050重量%超~約0.040重量%の窒素を供給する、1つ以上の分散剤、並びに
(f)サリチレート、スルホネート及びフェネートから選択される、1つ以上のカルシウム系金属清浄剤、
(g)場合により、サリチレート、スルホネート及びフェネートから選択される、1つ以上のマグネシウム系金属清浄剤
を含み、
前記潤滑油組成物が、約0.14~約0.30重量%のカルシウム含有量、約0.0005から約0.060重量%のマグネシウム含有量、0.0050~約0.090重量%の全窒素量、0.13重量%未満の硫黄含有量及び約0.6~約1.1重量%の硫酸灰分レベルを有する、
潤滑油組成物。
【請求項2】
前記有機モリブデン化合物が、前記潤滑油組成物に約0.0050~約0.050重量%のモリブデンを供給する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
前記分散水和アルカリ金属ボレート化合物が、前記潤滑油組成物に約0.0050~約0.10重量%のホウ素を供給する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
リンが、前記潤滑油組成物の総重量に対して0~約0.04重量%存在する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
リンが、前記潤滑油組成物の総重量に対して0~約0.03重量%存在する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
前記潤滑油組成物がリンを含まない、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
硫黄が、前記潤滑油組成物の総重量に対して約0.01~約0.4重量%存在する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
硫酸灰分が、前記潤滑油組成物の総重量に対して約1.1~約0.6重量%存在する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
前記潤滑油組成物が、0W-8、0W-12、0W-16又は0W-20 SAE粘度グレードである、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
前記潤滑油組成物が、約2.0~約3.6mPa sの範囲の、150℃におけるHTHS粘度を有する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
前記潤滑油組成物が、3.5mm/s~12mm/sの、100℃における動粘度を有する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
前記潤滑油が、APIグループIII、IV及びVのうちの1つ以上から選択される、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項13】
エンジンの摩耗、高温清浄性及び熱安定性を改善するための、約1.7~約3.2mPaの範囲の、150℃におけるHTHS粘度及び-20℃における7,000mPa s未満の低温コールドクランキング粘度を有する潤滑油組成物を用いて前記エンジンを運転することを含む、方法であって、前記潤滑油組成物が
(a)0.03重量%未満の硫黄含有量を有し、3.5mm/s~20mm/sの100℃における動粘度及び120を超える粘度指数を有する、主要量の潤滑粘度の油であって、APIグループIII、IV又はVベースストックカテゴリに分類され、5%未満の芳香族含有量(C)を有する、主要量の潤滑粘度の油、
(b)前記潤滑油組成物に0.0050重量%を超えるモリブデンを供給する、有機モリブデン化合物、
(c)前記潤滑油組成物に0.0050重量%超~約0.060重量%のアルカリ金属を供給する、分散水和アルカリ金属ボレート化合物、
(d)前記潤滑油組成物に0~約0.06重量%のリンを供給する、硫黄リン耐摩耗化合物、
(e)前記潤滑油組成物に0.005重量%超~約0.040重量%の窒素を供給する、1つ以上の分散剤、並びに
(f)サリチレート、スルホネート及びフェネートから選択される、1つ以上のカルシウム系金属清浄剤、
(g)場合により、サリチレート、スルホネート及びフェネートから選択される、1つ以上のマグネシウム系金属清浄剤
を含み、
前記潤滑油組成物が、約0.14~約0.30重量%のカルシウム含有量、約0.0005から約0.060重量%のマグネシウム含有量、0.0050~約0.090重量%の全窒素量、0.13重量%未満の硫黄含有量及び約0.6~約1.1重量%の硫酸灰分レベルを有する、方法。
【請求項14】
前記有機モリブデン化合物が、前記潤滑油組成物に約0.0050~約0.050重量%のモリブデンを供給する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記分散水和アルカリ金属ボレート化合物が、前記潤滑油組成物に約0.0050~約0.10重量%のホウ素を供給する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
リンが、前記潤滑油組成物の総重量に対して0~約0.04重量%存在する、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
リンが、前記潤滑油組成物の総重量に対して0~約0.03重量%存在する、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記潤滑油組成物がリンを含まない、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
硫黄が、前記潤滑油組成物の総重量に対して約0.01~約0.4重量%存在する、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
硫酸灰分が、前記潤滑油組成物の総重量に対して約1.1~約0.6重量%存在する、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記潤滑油組成物が、0W-8、0W-12、0W-16又は0W-20 SAE粘度グレードである、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記潤滑油組成物が、約2.0~約3.6mPa sの範囲の、150℃におけるHTHS粘度を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項23】
前記潤滑油組成物が、3.5mm/s~12mm/sの、100℃における動粘度を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
前記潤滑油が、APIグループIII、IV及びVのうちの1つ以上から選択される、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
エンジン油は、通常、様々な性能要件を満たすために、様々な添加剤とブレンドされる。燃費を向上させる1つの周知の方法は、潤滑油の粘度を低下させることである。優れた燃費性能を示す大半の内燃エンジン油は、通常、低温下での粘性抵抗から流体摩擦を低下させるための増粘剤を含む低粘度油となるように配合される。燃料効率を改善させるために、多くの相手先ブランド製造者(OEM)は、燃料効率改善のための小型ターボディーゼル(DE)及びガソリン直接噴射(GDI)エンジンへの移行を検討している。この欠点は、特に過酷な動作温度及びオイル条件におけるすすを伴う低粘度のために、摩耗及びエンジン耐久性が低いことである。
【0002】
さらに、排出規制を満たすために、リン、硫黄、及び/又は亜鉛ジアルキルジチオホスフェート(ZnDTP)などの金属を含む耐摩耗性添加剤系を低減する必要がある。ZnDTPは、過酷な条件下で良好な摩耗及び良好な酸化保護を与える汎用耐摩耗/酸化防止成分である。しかし、ZnDTPは元素亜鉛、硫黄及びリンを含み、これらは全て排気後処理装置に悪影響を有する。
【0003】
本発明者らは、ZnDTPのレベルが低下した場合、又は亜鉛及びリンを含まない場合でも、SAE粘度グレードの低い油を含む、良好な燃料効率及び耐摩耗特性を有する潤滑油組成物を発見した。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、一般に、約1.7~約3.2mPa sの範囲の、150℃におけるHTHS粘度及び7000mPa s未満の-20℃における低温コールドクランキング粘度を有する、潤滑油組成物であって、
(a)0.03重量%未満の硫黄含有量を有し、3.5mm/s~20mm/sの100℃における動粘度及び120を超える粘度指数を有する、主要量の潤滑粘度の油であって、APIグループIII、IV又はVベースストックカテゴリに分類され、5%未満の芳香族含有量(C)を有する、主要量の潤滑粘度の油、
(b)潤滑油組成物に0.0050重量%を超えるモリブデンを供給する、有機モリブデン化合物、
(c)潤滑油組成物に0.0050重量%超~約0.060重量%のアルカリ金属を供給する、分散水和アルカリ金属ボレート化合物、
(d)潤滑油組成物に0~約0.06重量%のリンを供給する、硫黄リン耐摩耗化合物、
(e)潤滑油組成物に0.0050重量%超~約0.040重量%の窒素を供給する、1つ以上の分散剤、並びに
(f)サリチレート、スルホネート及びフェネートから選択される、1つ以上のカルシウム系金属清浄剤、
(g)場合により、サリチレート、スルホネート及びフェネートから選択される、1つ以上のマグネシウム系金属清浄剤
を含み、
潤滑油組成物は、約0.14~約0.30重量%のカルシウム含有量、約0.0005から約0.060重量%のマグネシウム含有量、0.0050~約0.090重量%の全窒素量、0.13重量%未満の硫黄含有量及び約0.6~約1.1重量%の硫酸灰分レベルを有する、
潤滑油組成物に関する。
【0005】
また、エンジンの摩耗、高温清浄性及び熱安定性を改善するための、約1.7~約3.2mPaの範囲の、150℃におけるHTHS粘度及び-20℃における7,000mPa s未満の低温コールドクランキング粘度を有する潤滑油組成物を用いて前記エンジンを運転することを含む、方法であって、潤滑油組成物は
(a)0.03重量%未満の硫黄含有量を有し、3.5mm/s~20mm/sの100℃における動粘度及び120を超える粘度指数を有する、主要量の潤滑粘度の油であって、APIグループIII、IV又はVベースストックカテゴリに分類され、5%未満の芳香族含有量(C)を有する、主要量の潤滑粘度の油、
(b)潤滑油組成物に0.0050重量%を超えるモリブデンを供給する、有機モリブデン化合物、
(c)潤滑油組成物に0.0050重量%超~約0.060重量%のアルカリ金属を供給する、分散水和アルカリ金属ボレート化合物、
(d)潤滑油組成物に0~約0.06重量%のリンを供給する、硫黄リン耐摩耗化合物、
(e)潤滑油組成物に0.0050重量%超~約0.040重量%の窒素を供給する、1つ以上の分散剤、並びに
(f)サリチレート、スルホネート及びフェネートから選択される、1つ以上のカルシウム系金属清浄剤、
(g)場合により、サリチレート、スルホネート及びフェネートから選択される、1つ以上のマグネシウム系金属清浄剤
を含み、
潤滑油組成物は、約0.14~約0.30重量%のカルシウム含有量、約0.0005から約0.060重量%のマグネシウム含有量、0.0050~約0.090重量%の全窒素量、0.13重量%未満の硫黄含有量及び約0.6~約1.1重量%の硫酸灰分レベルを有する、方法も提供される。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書に開示する主題の理解を容易にするために、本明細書で使用するいくつかの用語、略語又は他の省略形を以下に定義する。定義されていない任意の用語、略語又は省略形は、本出願の提出と同時期に当業者によって使用される通常の意味を有すると理解される。
【0007】
定義:
本明細書において、以下の用語及び表現は、使用される場合、以下に示す意味を有する。
【0008】
「主要量」とは、組成物の50重量%を超えることを意味する。
【0009】
「少量」とは、組成物の50重量%より少ないことを意味し、記載された添加剤に関して、及び組成物中に存在する全ての添加剤の全質量に関して表され、1種又は複数種の添加剤の有効成分と見なされる。
【0010】
「有効成分」又は「有効物質」は、希釈剤又は溶媒ではない添加物質を示す。
【0011】
報告される全てのパーセンテージは、別途明記しない限り、有効成分ベースの重量%(即ち、担体又は希釈油に関係なく)である。
【0012】
略語「ppm」は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、重量百万分率を意味する。
【0013】
150℃における高温高剪断(HTHS)粘度を、ASTM D4683に従って測定した。
【0014】
ASTM D445に準拠して、100℃における動粘度(KV100)を求めた。
【0015】
金属-「金属」という用語は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はその混合物を示す。
【0016】
本明細書及び特許請求の範囲を通して、油溶性又は油分散性という表現が使用される。油溶性又は油分散性とは、所望のレベルの活性又は性能を提供するのに必要な量を、潤滑粘度の油に溶解、分散又は懸濁させることにより組み入れることができることを意味する。通常、これは、材料の少なくとも約0.001重量%を潤滑油組成物に組み入れることができることを意味する。油溶性及び分散性、特に「安定した分散性」という用語のさらなる議論については、この点に関連する教示については、参照により明示的に本明細書に組み入れられている、米国特許第4,320,019号を参照されたい。
【0017】
本明細書で使用される「硫酸灰分」という用語は、潤滑油中の清浄剤及び金属添加剤から生じる不燃性残留物を示す。硫酸灰分は、ASTM試験D874を使用して測定され得る。
【0018】
本明細書で使用される「全塩基価」又は「TBN」という用語は、1グラムの試料中のKOHのミリグラム数に相当する塩基の量を示す。したがって、より高いTBN数は、より多くのアルカリ性生成物、したがってより高いアルカリ度を反映する。TBNは、ASTM D 2896試験を使用して測定した。
【0019】
ホウ素、カルシウム、マグネシウム、モリブデン、リン、硫黄及び亜鉛の含有量は、ASTM D5185に従って測定した。
【0020】
本明細書で言及される全てのASTM規格は、本出願の出願日時点の最新版である。
【0021】
本開示については、様々な修正及び代替形態が可能であるが、その具体的な実施形態を本明細書で詳細に説明する。しかし、具体的な実施形態の本明細書における記載は、本開示を開示された特定の形態に限定することを意図するものではなく、反対に、意図するところは、添付の特許請求の範囲によって定義される開示の精神及び範囲内にある全ての修正、同等物及び代替物を網羅するものであると理解されるべきである。
【0022】
一般的な説明又は例に記載した作業全てが必要なわけではなく、特定の作業の一部が不要である場合があり、記載した作業に加えて1つ以上の作業が実施され得ることに留意されたい。さらに、作業を示した順序は、必ずしも作業を実施する順序ではない。
【0023】
特定の実施形態に関して、利益、他の利点及び問題の解決策を本明細書に記載した。ただし、利益、利点、問題の解決策並びに利益、利点又は解決策を生じさせ得る、又はより顕著にし得るいずれの特徴も、特許請求の範囲の一部又は全部の極めて重要な、所要の又は本質的な特徴と見なすべきものではない。
【0024】
本明細書に記載の実施形態の明細書及び例示は、様々な実施形態の構造の一般的な理解を提供することを意図する。
【0025】
本明細書で使用する場合、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」という用語又はその他の任意の変形は、非排他的包含を含むものとする。例えば、特徴のリストを含むプロセス、方法、物品又は装置は、それらの特徴だけに必ずしも限定されないが、明示的に列挙されない他の特徴又はそのようなプロセス、方法、物品又は装置に固有の他の特徴を含み得る。さらに、それとは反対に明示的に記述されない限り、「又は」は、包括的論理和(inclusive-or)を示し、排他的論理和(exclusive-or)を示さない。例えば、条件A又はBは、次のいずれか一項によって満足される:Aは真である(又は存在する)かつBは偽である(又は存在しない)、Aは偽である(又は存在しない)かつBは真である(又は存在する)、並びにA及びBの両方が真である(又は存在する)。
【0026】
「a」又は「an」の使用は、本明細書で説明される要素及び構成要素を説明するために用いられる。これは単に便宜のために、及び本開示の実施形態の範囲の一般的な意味を与えるために行われる。この説明は、1つ又は少なくとも1つを含むことが読み取られるべきであり、別途それが意味していることが明確ではない限り、単数形は複数形も含むか、逆もまた同様である。「平均」という用語は、値を指す場合、平均、幾何平均又は中央値を意味するものとする。元素の周期表内の列に対応する族番号は、CRC化学・物理学ハンドブック(CRC Handbook of Chemistry and Physics)第81版(2000-2001)に見られる「新しい表記法」(New Notation)の規則を使用している。
【0027】
別途定義しない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。材料、方法、及び例は例示に過ぎず、限定することを意図するものではない。本明細書に記載されていない範囲で、特定の材料及び処理加工行為に関する多くの詳細は慣用的なものであり、潤滑剤並びに石油及びガス産業内のテキスト及び他の情報源で見出され得る。
【0028】
明細書及び例示は、本明細書に記載の構造又は方法を使用する配合物、組成物、装置及びシステムの要素及び特徴の全ての徹底的及び包括的説明として機能することを意図しない。別個の実施形態はまた、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよく、反対に、簡潔さのために単一の実施形態の文脈に記載の様々な特徴もまた、別個に又は任意の下位組み合わせで提供されてもよい。さらに、範囲内に記載の値への言及は、その範囲内の各値及び全ての値を含む。多数の他の実施形態は、本明細書を読んだ後にのみ当業者に明らかとなり得る。構造的置換、論理的置換、又は別の変更が本開示の範囲から逸脱することなくなされることができるように、他の実施形態が使用され、かつそれから派生してもよい。したがって、本開示は、制限的であるよりも、むしろ例証的であると見なされるべきである。
【0029】
一態様において、本開示は、約1.7~約3.7mPa sの範囲の、150℃におけるHTHS粘度及び7000mPa s未満の-20℃における低温コールドクランキング粘度を有する潤滑油組成物であって、
(a)3.5mm/s~20mm/sの100℃における動粘度及び120を超える粘度指数を有する、主要量の潤滑粘度の油であって、APIグループIII、IV又はVベースストックカテゴリに分類される、主要量の潤滑粘度の油、
(b)潤滑油組成物に0.0050重量%を超えるモリブデンを供給する、有機モリブデン化合物、
(c)潤滑油組成物に0.0050重量%を超えるホウ素を供給する、分散水和アルカリ金属ボレート化合物、
(d)潤滑油組成物に0~約0.06重量%のリンを提供する硫黄リン耐摩耗化合物、
(e)潤滑油組成物に0.008重量%超の窒素を提供する1つ以上の分散剤、並びに
(f)サリチレート、スルホネート及びフェネートから選択される、1つ以上のカルシウム系金属清浄剤、
(g)場合により、サリチレート、スルホネート及びフェネートから選択される、1つ以上のマグネシウム系金属清浄剤を含み、
潤滑油組成物は、約0.12重量%~約0.30重量%のカルシウム含有量、存在する場合、約0.0005重量%~約0.060重量%のマグネシウム含有量、0.3重量%未満の硫黄含有量及び約0.6重量%~約1.1重量%の硫酸灰分レベルを有する、潤滑油組成物を提供する。
【0030】
潤滑粘度の油
潤滑粘度の油(「ベースストック」又は「基油」と呼ばれる場合がある)は、潤滑剤の主要な液体成分であり、例えば最終的な潤滑剤(又は潤滑剤組成物)を製造するために、添加剤及び場合によっては他の油がブレンドされる。基油は、濃縮物の製造並びにそれからの潤滑油組成物の製造に有用であり、天然及び合成潤滑油並びにその組み合わせから選択され得る。
【0031】
天然油には、動物油及び植物油、液状石油系油分(liquid petroleum oil)並びにパラフィン系、ナフテン系及び混合パラフィン-ナフテン系の水素化精製され、溶媒処理された鉱物潤滑油が含まれる。石炭又はシェール由来の潤滑粘度の油も、有用な基油である。
【0032】
合成潤滑油としては、炭化水素油、例えば重合及び共重合オレフィン(例えばポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン-イソブチレンコポリマー、塩素化ポリブチレン、ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、ポリ(1-デセン);アルキルベンゼン(例えばドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2-エチルヘキシル)ベンゼン、アルキル化ナフタレン;ポリフェノール(例えばビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェノール);並びにアルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化ジフェニルスルフィド並びにその誘導体、類似体及び同族体が挙げられる。
【0033】
別の好適なクラスの合成潤滑油には、ジカルボン酸(例えばマロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、アジピン酸、リノール酸二量体、フタル酸)と種々のアルコール(例えばブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール)とのエステルが含まれる。これらのエステルの具体例としては、ジブチルアジペート、ジ(2-エチルヘキシル)セバケート、ジ-n-ヘキシルフマレート、ジオクチルセバケート、ジイソオクチルアゼレート、ジイソデシルアゼレート、ジオクチルフタレート、ジデシルフタレート、ジエイコシルセバケート、リノール酸二量体の2-エチルヘキシルジエステル並びに1モルのセバシン酸と2モルのテトラエチレングリコール及び2モルの2-エチルヘキサン酸を反応させて形成される複合エステルが挙げられる。
【0034】
合成油として有用なエステルには、C~C12モノカルボン酸及びポリオール、並びにポリオールエーテル、例えばネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及びトリペンタエリスリトールから作られるものも挙げられる。
【0035】
基油は、フィッシャー-トロプシュ合成炭化水素から誘導され得る。フィッシャー-トロプシュ合成炭化水素は、フィッシャー-トロプシュ触媒を使用して、H及びCOを含有する合成ガスから作られる。そのような炭化水素は、通例、基油として有用であるためには、さらなる処理を必要とする。例えば、炭化水素は、当業者に既知のプロセスを使用して、水素異性化;水素化分解及び水素異性化;脱ろう;又は水素異性化及び脱ろうに供してよい。
【0036】
本潤滑油組成物には、未精製油、精製油及び再精製油を使用することができる。未精製油は、さらなる精製処理をせずに天然又は合成源から直接得られるものである。例えば、レトルト操作から直接得られるシェール油、蒸留から直接得られる石油、又はエステル化プロセスから直接得られ、さらなる処理なしで使用されるエステル油が未精製油である。精製油は、1つ以上の特性を改善するために1つ以上の精製ステップでさらに処理されていることを除いて、未精製油に似ている。蒸留、溶媒抽出、酸又は塩基抽出、濾過及び浸透などの多くのこのような精製技術は、当業者に既知である。
【0037】
再精製油は、既に使用されている精製油に適用される、精製油を得るために使用されるプロセスと類似のプロセスによって得られる。このような再精製油は、再生油又は再処理油としても既知であり、使用済みの添加剤及び油分解生成物の承認のための技術によってさらに処理されることが多い。
【0038】
したがって、本潤滑油組成物を製造するのに使用できる基油は、米国石油協会(API)Base Oil Interchangeability Guidelines(基油互換性ガイドライン)(API Publication 1509)に規定されているグループI-Vの基油のいずれかから選択できる。このような基油グループを以下の表1にまとめる。
【表1】
【0039】
一実施形態において、本明細書での使用に好適な基油は、その並外れた揮発性、安定性、粘度測定特徴及び清浄性特徴のために、APIグループIII、グループIV及びグループVの油並びにその組み合わせである。
【0040】
別の実施形態において、基油は、5%未満の芳香族含有量(C)を有する。他の実施形態において、基油は、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満の芳香族含有量(C)を有する。基油とも呼ばれる、本開示の潤滑油組成物に使用するための潤滑粘度の油は通例、主要量で、例えば、組成物の総重量に対して50重量%を超える、好ましくは約70重量%を超える、より好ましくは約80~約99.5重量%の、最も好ましくは約85~約98重量%の量で存在する。本明細書で使用する「基油」という表現は、単一の製造者により同じ仕様で(供給源や製造者の所在地とは無関係に)製造され、同じ製造者の仕様を満足し、且つ独自の配合、製品識別番号、又はその両方によって識別される潤滑剤成分であるベースストック又はベースストックのブレンドを意味すると理解されるものとする。本明細書で使用するための基油は、例えばエンジン油、船舶用シリンダー油、機能性流体、例えば油圧油、ギア油、トランスミッション流体などのありとあらゆるこのような用途のために、潤滑油組成物を配合する際に使用される、任意の現在既知の又は後に発見される潤滑粘度の油であることができる。さらに、本明細書で使用するための基油は、場合により粘度指数向上剤、例えばポリマー性アルキルメタクリレート、オレフィン系コポリマー、例えばエチレン-プロピレンコポリマー又はスチレン-ブタジエンコポリマー及びこれらの混合物を含有する。粘度調整剤のトポロジーには、線形、分岐形、超分岐形、星形又は櫛形のトポロジーが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0041】
当業者が容易に理解するように、基油の粘度は用途によって異なる。したがって、本明細書で使用するための基油の粘度は、通常は、摂氏100度(100℃)にて約2~約2000センチストークス(cSt)の範囲である。一般に、個々にエンジン油として使用される基油は、100℃にて約2cSt~約30cSt、好ましくは約3cSt~約16cSt、最も好ましくは約4cSt~約12cStの動粘度範囲を有し、所望の最終用途及び完成油中の添加剤に応じて選択又はブレンドされて、所望のグレードのエンジン油、例えば0W、0W-8、0W-12、0W-16、0W-20、0W-30、0W-40、5W、5W-16、5W-20、5W-30、5W-40、10W、10W-20、10W-30、10W-40、15W、15W-20、15W-30、15W-40などのSAE粘度グレードを有する潤滑油組成物が得られる。
【0042】
好ましくは、基油は、120を超える(例えば125を超える、130を超える、135を超える又は140を超える)粘度指数を有する。粘度指数が120未満であると、粘度-温度特性、熱及び酸化安定性並びに耐揮発性が低下するだけでなく、摩擦係数が上昇しがちであり、耐摩耗性が低下しがちである。
【0043】
好ましくは、基油の硫黄含有量は0.03重量%以下(例えば0.02重量%未満、0.01重量%未満又は0.005重量%未満)である。硫黄含有量が0.03重量%を超える場合、熱安定性及び酸化安定性が低下するだけでなく、高温でのCu及びその合金などの非鉄金属に対する腐食もより強くなる。
【0044】
潤滑油組成物は、少なくとも135(例えば135~400又は135~250)、少なくとも150(例えば150~400、150~250)、少なくとも160(例えば160~400又は160~250)の粘度指数を有する。潤滑油組成物の粘度指数が135未満である場合、150℃にてHTHS粘度を維持しながら燃料効率を改善することは困難であり得る。潤滑油組成物の粘度指数が400を超えると、蒸発特性が低下し得て、添加剤の不十分な溶解性とシール材料とのマッチング特性による欠陥が引き起こされ得る。
【0045】
潤滑油組成物は、150℃にて約1.7~約3.2mPa s、約2.0~3.1mPa a、約2.0~約3.0又は約2.0~約2.9の高温剪断(HTHS)粘度を有する。
【0046】
潤滑油組成物は、で3.5~20mm/s(例えば3.5~20mm/s、3.8~20mm/s、3.8~16.3mm/s、4~12.5mm/s又は4~9.3mm/s)の範囲の100℃における動粘度を有する。
【0047】
潤滑油組成物は、-20℃にて7000mPa s未満(例えば-25℃にて7000mPa s未満、-30℃にて6600mPa s未満又は-35℃にて6200mPa s未満)の低温コールドクランキング粘度を有する。
【0048】
モリブデン含有化合物
有機モリブデン化合物は、少なくともモリブデン、炭素原子及び水素原子を含有するが、硫黄原子、リン原子、窒素原子及び/又は酸素原子も含有し得る。適切な有機モリブデン化合物としては、モリブデンジチオカルバメート、モリブデンジチオホスフェート及び種々の有機モリブデン錯体、例えばモリブデンカルボキシレート、モリブデンエステル、モリブデンアミン、モリブデンアミドが挙げられ、これらは酸化モリブデン又はアンモニウムモリブデートを脂肪、グリセリド若しくは脂肪酸又は脂肪酸誘導体(例えば、エステル、アミン、アミド)と反応させることによって得ることができる。「脂肪」という用語は、10~22個の炭素原子を有する炭素鎖、通例、直鎖炭素鎖を意味する。
【0049】
モリブデートエステルは、米国特許第4,889,647号及び米国特許第6,806,241B2号に開示されている方法によって調製することができる。市販の例は、R.T.Vanderbilt Company,Inc.製のMOLYVAN(いずれかの国における登録商標)855添加剤である。
【0050】
モリブデンジチオカルバメート(MoDTC)は、下記構造(I):
【化1】

で表される有機モリブデン化合物であり、式中、R、R、R及びRは、互いに独立して、4~18個の炭素原子(例えば8~13個の炭素原子)を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基である。
【0051】
これらの化合物の調製は、文献において周知であり、米国特許第3,356,702号及び第4,098,705号は、参照により本明細書に組み入れられている。市販品としては、R.T.Vanderbilt Company Inc.製のMOLYVAN(いずれかの国における登録商標)807、MOLYVAN(いずれかの国における登録商標)822、MOLYVAN(いずれかの国における登録商標)2000、ADEKA製のサクラルーブ(いずれかの国における登録商標)165、サクラルーブ(いずれかの国における登録商標)515、Chemtura Corporation製のNaugalube(いずれかの国における登録商標)MolyFMが挙げられる。
【0052】
参照により本明細書に組み入れられている、米国特許第5,888,945号及び第6,010,987号に教示されているように、三核モリブデンジアルキルジチオカルバメートも当分野で公知である。三核モリブデン化合物、好ましくは式Mo(dtc)及びMo(dtc)(式中、dtcは独立に選択された有機基を含む独立に選択されるジオルガノジチオカルバミン酸塩配位子を表し、その配位子は、化合物の配位子の全ての有機基の中で十分な数の炭素原子を有する)を有するもの及びそれらの混合物は、化合物を潤滑油に可溶性又は分散性にするために存在する。
【0053】
モリブデンジチオホスフェート(MoDTP)は、下記構造(II)
【化2】

で表される有機モリブデン化合物であり、式中、R、R、R及びRは互いに独立して、4~18個(例えば8から13個の炭素原子)の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基である。
【0054】
モリブデンカルボキシレートは、参照により本明細書に組み入れられている、米国再発行特許番号RE38,929号及び米国特許第6,174,842号に記載されている。モリブデンカルボキシレートは、任意の油溶性カルボン酸から誘導することができる。代表的なカルボン酸としては、ナフテン酸、2-エチルヘキサン酸及びリノレン酸が挙げられる。これらの特定の酸から生成されるカルボキシレートの市販供給源は、それぞれMOLYBDENUM NAP-ALL、MOLYBDENUM HEX-CEM及びMOLYBDENUM LIN-ALLである。これらの製品の製造者は、OMG OM Groupである。
【0055】
アンモニウムモリブデートは、若干挙げれば硫黄、無機スルフィド及びポリスルフィド並びにカーボンジスルフィドなどの硫黄源の存在下で、三酸化モリブデン、モリブデン酸及びアンモニウムモリブデート並びにアンモニウムチオモリブデートなどの酸性モリブデン源と油溶性アミンとの酸/塩基反応によって調製される。好ましいアミン化合物は、一般に使用されるエンジン油組成物であるポリアミン分散剤である。このような分散剤の例は、スクシンイミド及びマンニッヒ型である。これらの調製物については、米国特許第4,259,194号、第4,259,195号、第4,265,773号、第4,265,843号、第4,727,387号、第4,283,295号及び第4,285,822号に記載されている。
【0056】
一実施形態において、モリブデンアミンはモリブデン-スクシンイミド錯体である。適切なモリブデン-スクシンイミド錯体は、例えば米国特許第8,076,275号に記載されている。これらの錯体は、酸性モリブデン化合物と、構造(III)又は(IV):
【化3】

のポリアミンのアルキル若しくはアルケニルスクシンイミド又はその混合物と反応させることを含むプロセスによって調製され、式中、RはC24~C350(例えばC70~C128)アルキル基又はアルケニル基であり、R’は、2~3個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキレン基であり、xは1~11であり、yは1~10である。
【0057】
モリブデン-スクシンイミド錯体の調製に使用されるモリブデン化合物は、酸性モリブデン化合物又は酸性モリブデン化合物の塩である。「酸性の」とは、ASTM D664又はD2896によって測定されるように、モリブデン化合物が塩基性窒素化合物と反応することを意味する。一般に、酸性モリブデン化合物は六価である。好適なモリブデン化合物の代表例としては、三酸化モリブデン、モリブデン酸、アンモニウムモリブデート、ナトリウムモリブデート、カリウムモリブデート及び他のアルカリ金属モリブデート並びに水素塩(例えば水素ナトリウムモリブデート)、MoOCl、MoOBr、MoClなどの他のモリブデン塩が挙げられる。
【0058】
モリブデン-スクシンイミド錯体の調製に使用することができるスクシンイミドは、多数の参考文献に開示され、当分野で周知である。「スクシンイミド」という技術用語に含まれる、ある基本的なタイプのスクシンイミド及び関連物質は、米国特許第3,172,892号、第3,219,666号及び第3,272,746号に教示されている。「スクシンイミド」という用語は、当分野では、また形成され得るアミド、イミド、及びアミジン種の多くを含むとして理解される。しかし、主な生成物はスクシンイミドであり、この用語は、アルキル又はアルケニル置換コハク酸又は無水物と窒素含有化合物との反応の生成物を意味するものとして一般に受け入れられている。好ましいスクシンイミドは、約70~128個の炭素原子のポリイソブテニルコハク酸無水物を、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン及びその混合物から選択されるポリアルキレンポリアミンと反応させることによって調製されるものである。
【0059】
モリブデン-スクシンイミド錯体は、好適な圧力及び120℃を超えない温度にて硫黄供給源により後処理して、硫化モリブデン-スクシンイミド錯体を提供することができる。硫化ステップは、約0.5~5時間(例えば0.5~2時間)にわたって実施され得る。好適な硫黄源としては、元素硫黄、硫化水素、五硫化リン、式Rの有機ポリスルフィド(式中、Rはヒドロカルビル(例えばC~C10アルキル)であり、xは少なくとも3である。)、C~C10メルカプタン、無機スルフィド及びポリスルフィド、チオアセトアミド並びにチオ尿素が挙げられる。
【0060】
本発明の潤滑油組成物は、1つ以上の油溶性又は分散した油安定性モリブデン含有化合物から供給される、組成物の総質量に対して、少なくとも約0.0050重量%、少なくとも約0.0060重量%、少なくとも約0.0070重量%、少なくとも約0.080重量%、少なくとも約0.0090重量%、少なくとも約0.010重量%、少なくとも約0.011重量%のモリブデンを含有する。一実施形態において、本発明の潤滑油組成物は、1つ以上の油溶性又は分散した油安定性モリブデン含有化合物から供給される、組成物の総質量に対して、約0.0050重量%~約0.10重量%、約0.0050重量%~約0.050重量%、約0.0050重量%~約0.040重量%、約0.0060重量%~約0.030重量%、約0.0080重量%~約0.020重量%、約0.010重量%~約0.018重量%のモリブデンを含有する。
【0061】
分散アルカリ金属ボレート化合物
水和粒状アルカリ金属ボレートは、当分野において周知であり、市販されている。水和粒状アルカリ金属ボレート及び製造方法の代表的な例としては、例えば、その内容が参照により本明細書に組み入れられている、米国特許第3,313,727号、第3,819,521号、第3,853,772号、第3,907,601号、第3,997,454号、第4,089,790号、第6,737,387号及び第6,534,450号に開示されているものが挙げられる。水和アルカリ金属ボレートは、以下の式:MO・mB・nHOによって表すことができ、式中、Mは約11~約19の範囲の原子番号のアルカリ金属、例えばナトリウム及びカリウムであり、mは約2.5~約4.5の数である(整数及び分数の両方)であり、nは約1.0~約4.8の数である。水和ボレート粒子は、一般に約1ミクロン未満の平均粒径を有する。
【0062】
本発明の潤滑油組成物は、1つ以上のアルカリ金属ボレート化合物から供給される、組成物の総質量に対して約50ppm超のホウ素を含有する。一実施形態において、本発明の潤滑油組成物は、1つ以上のアルカリ金属ボレート化合物から供給される、組成物の総質量に対して少なくとも約0.0060重量%のホウ素を含有する。別の実施形態において、本発明の潤滑油組成物は、1つ以上のアルカリ金属ボレート化合物から供給される、組成物の総質量に対して少なくとも約0.0070重量%のホウ素を含有する。また別の実施形態において、本発明の潤滑油組成物は、1つ以上のアルカリ金属ボレート化合物から供給される、組成物の総質量に対して少なくとも約0.0080重量%のホウ素を含有する。また別の実施形態において、本発明の潤滑油組成物は、1つ以上のアルカリ金属ボレート化合物から供給される、組成物の総質量に対して少なくとも約0.010重量%のホウ素を含有する。また別の実施形態において、本発明の潤滑油組成物は、1つ以上のアルカリ金属ボレート化合物から供給される、組成物の総質量に対して少なくとも約0.0080重量%のホウ素を含有する。他の実施形態において、本発明の潤滑油組成物は、1つ以上のアルカリ金属ボレート化合物から供給される、組成物の総質量に対して約0.0050重量%~約0.20重量%以下、約0.0050重量%~約0.15重量%以下、約0.0050重量%~約0.10重量以下、約0.0050重量%~約0.060重量%以下、約0.010重量%~約0.15重量%以下、約0.010重量%~約0.12重量%以下、約0.010重量%~約0.10重量%以下、約0.010重量%~約0.060重量%以下を含有する。
【0063】
本開示の一態様において、本発明で用いるアルカリ金属ボレートは、0.0050~0.060重量%のアルカリ金属を潤滑油組成物に供給する。他の実施形態において、本発明の潤滑油組成物は、1つ以上のアルカリ金属ボレート化化合物から供給される、組成物の総質量に対して約0.0050重量%~約0.050重量%以下、約0.010重量%~約0.050重量%以下、約0.010重量%~0.040重量%以下、約0.010重量%~0.030重量%以下を含有する。
【0064】
本開示の一態様において、本発明で用いるアルカリ金属ボレートは、約2.5:1~約4.5:1の範囲のホウ素対アルカリ金属の比で存在する。
【0065】
水和アルカリ金属ボレートの油分散物は、一般に、脱イオン水中で、場合により少量の対応するアルカリ金属カーボネートの存在下で、アルカリ金属水酸化物及びホウ酸の溶液を形成することによって調製される。次いで溶液を、潤滑粘度の油、分散剤及びその中に含まれる任意の添加剤(例えば清浄剤又は他の任意の添加剤)を含む潤滑剤組成物に添加して、次いで脱水されるエマルジョンを形成する。
【0066】
ボレート錯体にヒドロキシル基が保持されるため、これらの錯体は「水和アルカリ金属ボレート」と呼ばれ、これらの水和アルカリ金属ボレートの油/水エマルジョンを含有する組成物は「水和アルカリ金属ボレートの油分散物」と呼ばれる。
【0067】
本開示の別の態様において、水和アルカリ金属ボレート粒子は、一般に1ミクロン未満の平均粒径を有する。これに関して、本発明で用いる水和アルカリ金属ボレートは、好ましくは粒子の90%以上が0.6ミクロン未満である粒径を有することが見出されている。
【0068】
水和アルカリ金属ボレートの油分散物において、水和アルカリ金属ボレートは一般に、水和ボレートの油分散物の総重量の約10~75重量パーセント、好ましくは25~50重量パーセント、より好ましくは約30~40重量パーセントを構成する。(別途明記しない限り、全てのパーセンテージは重量パーセントである。)この組成物又は濃縮物は、多くの場合、添加剤パッケージの形態で用いられ、完成潤滑剤組成物を形成する。完成潤滑剤組成物が好ましくは潤滑剤組成物の総重量の約0.2~約5重量%、さらにより好ましくは約0.5~2重量%を構成するように、十分な量の濃縮物を添加する。
【0069】
本発明の潤滑油組成物は、1つ以上のアルカリ金属ボレートから供給される、組成物の総質量に対して約0.0050重量%超のホウ素を含有する。いくつかの実施形態において、本発明の潤滑油組成物は、1つ以上のアルカリ金属ボレートから供給される、組成物の総質量に対して約0.0050重量%~~約0.050重量%、約0.0050重量%~約0.040重量%、約0.0050重量%~約0.030重量%、約0.0075重量%~約0.025重量%のホウ素を含有する。
【0070】
硫黄リン耐摩耗化合物
一実施形態において、硫黄リン耐摩耗化合物は、亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェート(ZDDP)である。
【0071】
耐摩耗剤は、金属部品の摩耗を低減する。適切な耐摩耗剤としては、式(V)の亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェート(ZDDP)などのジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩が挙げられる。
Zn[S-P(=S)(OR)(OR)](V)
【0072】
式中、R及びRは、1~18個(例えば2~12個)の炭素原子を有し、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルカリール及び脂環式ラジカルなどのラジカルを含む、同じ又は異なるヒドロカルビル基であってよい。R及びR基として特に好ましいのは、2~8個の炭素原子を有するアルキル基である(例えばアルキルラジカルは、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、2-エチルヘキシルであってよい。)。油溶性を得るために、炭素原子の総数(即ち、R+R)は少なくとも5になる。したがって、亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェートは、亜鉛ジアルキルジチオホスフェートを含むことができる。亜鉛ジアルキルジチオホスフェートは、第一級又は第二級亜鉛ジアルキルジチオホスフェートであることができる。
【0073】
ZDDPは、潤滑油組成物の3重量%以下(例えば0.1~1.5重量%又は0.5~1.0重量%)で存在し得る。
【0074】
いくつかの実施形態において、ZDDPは、潤滑油組成物に0~0.06重量%のリンを供給する。他の実施形態において、ZDDPは、潤滑油組成物に0~0.05重量%、0~0.04重量%、0~0.03重量%、0~0.02重量%、0~0.01重量%、0~0.009、0~0.006、0~0.004、0~0.002重量%、0重量%のリンを供給する。
【0075】
いくつかの実施形態において、ZDDPは、潤滑油組成物の重量に対して、潤滑油組成物に0~0.12重量%の硫黄を供給する。他の実施形態において、ZDDPは、潤滑油組成物の重量に対して、潤滑油組成物に0~0.10重量%、0~0.08重量%、0~0.06重量%、0~0.04重量%、0~0.02重量%、0~0.018、0~0.012、0~0.008、0~0.004重量%、0重量%の硫黄を供給する。
【0076】
窒素含有分散剤
分散剤は、油に不溶性である、エンジン運転中の酸化から生じる物質を懸濁して維持して、このためスラッジの凝集及び沈殿又は金属部品上の付着を防止する。本明細書で有用な分散剤としては、ガソリンエンジン及びディーゼルエンジンでの使用時に沈殿物の形成を低減させるのに有効であることが既知である窒素含有無灰(金属不含有)分散剤が挙げられる。
【0077】
好適な分散剤としては、ヒドロカルビルスクシンイミド、ヒドロカルビルスクシンアミド、ヒドロカルビル置換コハク酸の混合エステル/アミド、ヒドロカルビル置換コハク酸のヒドロキシエステル並びにヒドロカルビル置換フェノール、ホルムアルデヒド及びポリアミンのマンニッヒ縮合生成物が挙げられる。ポリアミン及びヒドロカルビル置換フェニル酸の縮合生成物も好適である。これらの分散剤の混合物も使用することができる。
【0078】
塩基性窒素含有無灰分散剤は周知の潤滑油添加剤であり、その調製方法は特許文献に広く記載されている。好ましい分散剤は、アルケニル置換基が好ましくは炭素原子40個を超える長鎖である、アルケニルスクシンイミド及びスクシンアミドである。これらの材料は、ヒドロカルビル置換ジカルボン酸材料をアミン官能基を含有する分子と反応させることによって容易に製造される。好適なアミンの例としては、ポリアルキレンポリアミン、ヒドロキシ置換ポリアミン及びポリオキシアルキレンポリアミンなどのポリアミンである。
【0079】
特に好ましい無灰分散剤は、ポリイソブテニルコハク酸無水物及びポリアルキレンポリアミン、例えば式:
NH(CHCHNH)
から形成される、ポリイソブテニルスクシンイミドであり、式中、zは1~11である。ポリイソブテニル基は、ポリイソブテンから誘導され、好ましくは700~3000ダルトン(例えば900~2500ダルトン)の範囲の数平均分子量(M)を有する。例えばポリイソブテニルスクシンイミドは、900~2500ダルトンのMを有するポリイソブテニル基から誘導されるビススクシンイミドであり得る。
【0080】
当分野で既知であるように、分散剤は(例えばホウ素化剤又は環状カーボネートによって)後処理されてよい。
窒素含有無灰(金属不含有)分散剤は塩基性であり、追加の硫酸灰分を導入せずに、分散剤が添加される潤滑油組成物のTBNに寄与する。
【0081】
分散剤は、潤滑油組成物の0.1~10重量%(例えば2~5重量%)で存在し得る。
【0082】
分散剤からの窒素は、完成油中の分散剤の重量に対して0.0050重量%超~0.30重量%(例えば0.0050重量%超~0.10重量%、0.0050重量%~0.080重量%、0.0050重量%~0.060重量%、0.0050重量%~0.050重量%、0.0050重量%~0.040重量%、0.0050重量%~0.030重量%)で存在する。
【0083】
清浄剤
本発明の潤滑油組成物は、1つ以上の清浄剤をさらに含有することができる。
【0084】
使用され得る清浄剤としては、油溶性過塩基性スルホネート、硫黄不含有フェネート、硫化フェネート、サリキサレート、サリチレート、サリゲニン、複合清浄剤及びナフテネート清浄剤並びに金属、特にアルカリ又はアルカリ土類金属、例えばバリウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム及びマグネシウムの他の油溶性アルキルヒドロキシベンゾエートが挙げられる。最も一般的に使用される金属は、カルシウム及びマグネシウムであり、潤滑剤に使用される清浄剤中に個別に又は組み合わせて存在し得る。
【0085】
いくつかの実施形態において、清浄剤はカルシウム清浄剤である。一実施形態において、カルシウム含有清浄剤は、潤滑油組成物に0.14~0.30重量%のカルシウムを供給する量で使用され得る。他の実施形態において、カルシウム含有清浄剤は、潤滑油組成物に0.15~0.28重量%のカルシウムを供給する量で使用され得る。
【0086】
他の実施形態において、清浄剤はマグネシウム清浄剤である。一実施形態において、マグネシウム含有清浄剤は、潤滑油組成物に0.0005~0.060重量%のマグネシウムを供給する量で使用され得る。一部の実施形態において、マグネシウム含有清浄剤は、潤滑油組成物に0.0005~0.050、0.001~0.050、0.001~0.040重量%のマグネシウムを供給する量で使用され得る。
【0087】
過塩基性金属清浄剤は、一般に炭化水素、清浄剤酸、例えば:スルホン酸、アルキルヒドロキシベンゾエートなど、金属酸化物又は水酸化物(例えば酸化カルシウム又は水酸化カルシウム)並びにキシレン、メタノール及び水等の促進剤の混合物を炭酸化することによって生成される。例えば過塩基化カルシウムスルホネートを調製するために、炭酸化において、酸化カルシウム又は水酸化カルシウムがガス状二酸化炭素と反応して、炭酸カルシウムを形成する。スルホン酸は、過剰のCaO又はCa(OH)で中和され、スルホネートを形成する。
【0088】
過塩基性清浄剤は、低過塩基性、例えば、有効物質基準で100未満のTBNを有する過塩基性塩であり得る。一実施形態において、低過塩基性塩のTBNは約30~約100であり得る。別の実施形態において、低過塩基性塩のTBNは約30~約80であり得る。過塩基性清浄剤は、中過塩基性、例えば、約100~約250のTBNを有する過塩基性塩であり得る。一実施形態において、中過塩基性塩のTBNは約100~約200であり得る。別の実施形態において、中過塩基性塩のTBNは約125~約175であり得る。過塩基性清浄剤は、高過塩基性、例えば250を超えるTBNを有する過塩基性塩であり得る。一実施形態において、高過塩基性塩のTBNは有効物質基準で約250~約800であり得る。
【0089】
一般に清浄剤の量は、潤滑油組成物の総重量に対して約0.001重量%~約50重量%、又は約0.05重量%~約25重量%、又は約0.1重量%~約20重量%、又は約0.01~15重量%であることができる。
【0090】
一般に本発明の潤滑油組成物中の硫黄のレベルは、潤滑油組成物の総重量に対して約0.30重量%以下、例えば、潤滑油組成物の総重量に対して約0.01~約0.30重量%の硫黄レベル、約0.01~約0.25重量%、約0.01~約0.24重量%、約0.01~約0.23重量%、約0.01~約0.22重量%、約0.01~約0.21重量%、約0.01~約0.20重量%、約0.01~約0.19重量%、約0.01~約0.18重量%、約0.01~約0.17重量%、約0.01~約0.16重量%の硫黄である。
【0091】
いくつかの実施形態において、本発明の潤滑油組成物は、いずれのリン含有量も実質的に含まない。いくつかの実施形態において、本発明の潤滑油組成物中のリンのレベルは、潤滑油組成物の総重量に対して約0.005重量%~約0.06重量%、0.010重量%~約0.06重量%、0.010重量%。%~約0.055重量%、0.010重量%~約0.05重量%、0.010重量%~約0.05重量%、0.010重量%~約0.045重量%、0.010重量%~約0.04重量%、0.010重量%~約0.035重量%、0.010重量%~約0.03重量%である。一実施形態において、本発明の潤滑油組成物は、亜鉛ジアルキルジチオホスフェートを実質的に含まない。
【0092】
一実施形態において、本発明の潤滑油組成物によって生成される硫酸灰分のレベルは、ASTM D 874によって求められるように、約1.1重量%以下、例えばASTM D 874によって求められるように約0.6~約1.1重量%の硫酸灰分のレベルである。一実施形態において、本発明の潤滑油組成物によって生成される硫酸灰分のレベルは、ASTM D 874によって求められるように、約1.0重量%以下、例えばASTM D 874によって求められるように約0.6~約1.0重量%の硫酸灰分のレベルである。一実施形態において、本発明の潤滑油組成物によって生成される硫酸灰分のレベルは、ASTM D 874によって求められるように、潤滑油組成物の総重量に対して約0.9重量%以下、例えばASTM D 874によって求められるように約0.6~約0.9重量%の硫酸灰分のレベルである。
【0093】
その他の潤滑油添加剤
本開示の潤滑油組成物は、これらの添加剤が分散又は溶解された潤滑油組成物の任意の望ましい特性を付与又は改善することができる他の従来の添加剤を、潤滑油組成物に分散又は溶解させて含有することもできる。当業者に既知の任意の添加剤を、本明細書に開示している潤滑油組成物に使用することができる。いくつかの好適な添加剤は、Mortierら、’’Chemistry and Technology of Lubricants’’,2nd Edition,London,Springer,(1996)及びLeslie R.Rudnick,’’Lubricant Additives:Chemistry and Applications’’,New York,Marcel Dekker(2003)に記載され、そのどちらも参照により本明細書に組み入れられている。例えば潤滑油組成物は、酸化防止剤、耐摩耗剤、追加の金属清浄剤、防錆剤、曇り除去剤、解乳化剤、金属不活性化剤、摩擦調整剤、流動点降下剤、消泡剤、共溶媒、防錆剤、追加の無灰分散剤、多機能剤、染料、極圧剤など及びその混合物とブレンドすることができる。様々な添加剤が既知であり、市販されている。これらの添加剤又はその類似化合物は、通常のブレンド手順によって本開示の潤滑油組成物の調製に使用することができる。
【0094】
摩擦調整剤
本発明の潤滑油組成物は、可動部品間の摩擦を低下させることができる、1つ以上の摩擦調整剤を含有することができる。当業者に既知の任意の摩擦調整剤を潤滑油組成物に使用することができる。好適な摩擦調整剤の非限定的な例としては、脂肪カルボン酸、脂肪カルボン酸の誘導体(例えばアルコール、エステル、ボレート化エステル、アミド、金属塩など);モノ-、ジ-又はトリ-アルキル置換リン酸又はホスホン酸;モノ-、ジ-又はトリアルキル置換リン酸又はホスホン酸の誘導体(例えばエステル、アミド、金属塩など);モノ-、ジ-又はトリ-アルキル置換アミン;モノ-又はジ-アルキル置換アミド及びその組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態において、摩擦調整剤の例としては、これに限定されるわけではないが、アルコキシル化脂肪アミン、ボレート化脂肪エポキシド;脂肪ホスファイト、脂肪エポキシド、脂肪アミン、ボレート化アルコキシル化脂肪アミン、脂肪酸の金属塩、脂肪酸アミド、グリセロールエステル、ボレート化グリセロールエステル;及びその内容が参照により本明細書に組み入れられている、米国特許第6,372,696号に開示されている脂肪イミダゾリン;C~C75又はC~C24又はC~C20の脂肪酸エステルとアンモニア及びアルカノールアミンなどからなる群から選択される窒素含有化合物との反応生成物から得られる摩擦調整剤、並びにその混合物が挙げられる。摩擦調整剤の量は、潤滑油組成物の総重量に対して約0.01重量%~約10重量%、約0.05重量%~約5重量%又は約0.1重量%~約3重量%で変動し得る。
【0095】
酸化防止剤
酸化防止剤は、使用中に鉱油が劣化する傾向を低減する。酸化劣化は、潤滑剤中のスラッジ、金属表面上のワニス状の堆積物及び粘度成長によって証明することができる。好適な酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、芳香族アミン及び硫化アルキルフェノール並びにそのアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が挙げられる。
【0096】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の例としては、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(6-t-ブチル-o-クレゾール)、4,4’-イソプロピルリデンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、4,4’-ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(2-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクチル3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート及びオクチル3-(3,54ブチル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロピオネート、並びにこれに限定されるわけではないが、Irganox L 135(いずれかの国における登録商標)(BASF)、Naugalube 531(いずれかの国における登録商標)(Chemtura)及びEthanox 376(いずれかの国における登録商標)(SI Group)などの市販品が挙げられる。
【0097】
本発明の潤滑油組成物は、アミン酸化防止剤を含むことができる。一実施形態において、酸化防止剤はジフェニルアミン酸化防止剤である。ジフェニルアミン酸化防止剤の例としては、モノアルキル化ジフェニルアミン、ジアルキル化ジフェニルアミン、トリアルキル化ジフェニルアミン及びそれの混合物が挙げられる。これらのいくつかとしては、ブチルジフェニルアミン、ジブチルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジオクチルジフェニルアミン、ノニルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、t-ブチル-t-オクチルジフェニルアミン、ビス-ノニル化ジフェニルアミン、ビス-オクチル化ジフェニルアミン、及びフェニル-α-ナフチルアミン、アルキル又はアリールアルキル置換フェニル-α-ナフチルアミン、アルキル化p-フェニレンジアミン、テトラメチル-ジアミノジフェニルアミンなどが挙げられる。
【0098】
酸化防止剤は、潤滑油組成物の0.01~5重量%(例えば0.1~2重量%)で存在し得る。
【0099】
防錆剤
防錆剤は、潤滑金属表面を水又は他の汚染物質による化学的攻撃から保護する。好適な防錆剤としては、ポリオキシアルキレンポリオール及びそのエステル、ポリオキシアルキレンフェノール、チアジアゾール及びアニオン性アルキルスルホン酸が挙げられる。このような添加剤は、潤滑油組成物の0.01~5重量%(例えば0.1~1.5重量%)で存在し得る。
【0100】
抑泡剤
ポリシロキサン型の抑泡剤(例えばシリコーン油又はポリジメチルシロキサン)を含む多くの化合物によって、発泡制御を提供することができる。抑泡剤は、潤滑油組成物の0.1重量%未満(例えば0.0001~0.01重量%)で存在し得る。
【0101】
流動点降下剤
流動点降下剤は、流体が流れる、又は注がれることができる最低温度を低下させる。好適な流動点降下剤としては、C~C18ジアルキルフマレート/ビニルアセテートコポリマー、ポリアルキルメタクリレートなどが挙げられる。このような添加剤は、潤滑油組成物の0.01~5重量%(例えば0.1~1.5重量%)で存在し得る。
【0102】
粘度調整剤
潤滑油組成物は、粘度調整剤をさらに含むことができる。
【0103】
粘度調整剤は、潤滑油に高温及び低温操作性を付与するように機能する。使用される粘度調整剤は、その単独の機能を有してもよく、又は多機能性であってもよい。分散剤としても機能する多官能性粘度調整剤も既知である。好適な粘度調整剤としては、ポリイソブチレン、エチレンとプロピレンと高級α-オレフィンとのコポリマー、ポリメタクリレート、ポリアルキルメタクリレート、メタクリレートコポリマー、不飽和ジカルボン酸とビニル化合物とのコポリマー、スチレンとアクリル酸エステルとのインターポリマー、並びにスチレン/イソプレン、スチレン/ブタジエン及びイソプレン/ブタジエンの部分水素化コポリマー、並びにブタジエンとイソプレンとイソプレン/ジビニルベンゼンとの部分水素化ホモポリマーが挙げられる。一実施形態において、粘度調整剤はポリアルキルメタクリレートである。粘度調整剤のトポロジーには、線形、分岐形、超分岐形、星形又は櫛形のトポロジーが含まれ得るが、これらに限定されない。粘度調整剤は、非分散剤型又は分散剤型であることができる。一実施形態において、粘度調整剤は分散剤ポリメタクリレートである。
【0104】
好適な粘度調整剤は、30以下(例えば10以下、5以下、又はさらに2以下)の永久剪断安定性指数(PSSI)を有する。PSSIは、添加剤が寄与する油の粘度の剪断から生じる不可逆的減少の尺度である。PSSIは、ASTM D6022に従って求められる。本開示の潤滑油組成物は、ステイ-イン-グレード能力(stay-in-grade capacity)を示す。新鮮な油及びその剪断バージョンが単一のSAE粘度グレード分類内で100℃における動粘度を保持していることは、油のステイ-イン-グレード能力の証拠である。
【0105】
粘度調整剤は、潤滑油組成物の総重量に対して0.5~15.0重量%(例えば0.5~10重量%、0.5~5重量%、1.0~15重量%、1.0~10重量%又は1.0~5重量%)の量で使用され得る。
【0106】
一般に、潤滑油組成物中の各添加剤の濃度は、使用される場合、潤滑油組成物の総重量に対して約0.001重量%~約20重量%、約0.01重量%~約15重量%又は約0.1重量%~約10重量%、約0.005重量%~約5重量%、又は約0.1重量%~約2.5重量%の範囲に及び得る。さらに、潤滑油組成物中の添加剤の総量は、潤滑油組成物の総重量に対して約0.001重量%~約20重量%、約0.01重量%~約10重量%、又は約0.1重量%~約5重量%の範囲に及び得る。
【0107】
潤滑油配合物の調製において、炭化水素油、例えば鉱物潤滑油、又は他の好適な溶媒中に、10~80重量%有効成分濃縮物の形態で添加剤を導入することが一般の慣行である。
【0108】
通例、これらの濃縮物は、完成潤滑剤、例えばクランクケースモータ油を形成する際に、添加剤パッケージの1重量部あたり3~100重量部、例えば5~40重量部の潤滑油で希釈され得る。もちろん、濃縮物の目的は、様々な材料の取り扱いをより容易かつ便利にし、並びに最終ブレンドでの溶解又は分散を容易にすることである。
【0109】
潤滑油組成物を調製するプロセス
本明細書に開示する潤滑油組成物は、潤滑油を製造するための当業者に既知の任意の方法によって調製することができる。いくつかの実施形態において、基油は、本明細書に記載の添加化合物とブレンド又は混合することができる。当業者に既知の任意の混合又は分散装置は、成分のブレンド、混合又は可溶化に使用され得る。ブレンド、混合又は可溶化は、ブレンダー、撹拌機、分散機、ミキサー(例えばプラネタリーミキサ及びダブルプラネタリーミキサ)、ホモジナイザ(例えばGaulinホモジナイザ及びRannieホモジナイザ)、ミル(例えばコロイドミル、ボールミル及びサンドミル)又は当分野で既知の任意の他の混合又は分散装置を用いて行われ得る。
【0110】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示する潤滑油組成物は、圧縮点火エンジン又は火花点火内燃エンジン、特に直接噴射ブーストエンジンにおけるモータ油(即ちエンジン油又はクランクケースオイル)としての使用に適し得る。
【0111】
以下の例は、本開示の実施形態を例示するために提示されるが、本開示を記載の特定の実施形態に限定することを意図するものではない。そうでないと指摘しない限り、全ての部及びパーセンテージは重量による。全ての数値は近似値である。数値範囲が与えられる場合、記載された範囲外の実施形態が依然として本開示の範囲内に含まれ得ることを理解されたい。各例に記載された具体的詳細は、本開示の必要な特徴として解釈されるべきではない。
【0112】
本明細書に開示した実施形態に対して様々な修正を行われ得ることが理解されよう。したがって、上記の説明は、限定として解釈されるべきではなく、好ましい実施形態の単なる例示として解釈されるべきである。例えば、上述し、本開示を動作させるための最良の形態として実施される機能は、例示のみを目的としている。本開示の範囲及び精神から逸脱することなく、他の構成及び方法が当業者によって実施され得る。さらに、当業者は、本明細書に添付の特許請求の範囲及び精神の範囲内で他の修正を想定するであろう。
【0113】

以下の例は、例示のみを目的としており、本開示の範囲を決して限定するものではない。
【0114】
参考例1
主要量の潤滑粘度の基油及び以下の添加剤を含有する、10W-30潤滑油組成物を調製した:
(1)エチレンカーボネートで後処理したビススクシンイミド及びボレート化ビススクシンイミド、
例1の分散剤からの総窒素含有量は0.028重量%である。
(2)表2に示すカルシウム含有量を供給する量の、カルシウムフェネート、スルホネート及びサリチレート清浄剤の混合物、
(3)表2に示すリン含有量を供給する量の、1級ZnDTP、
(4)表2に示すモリブデン含有量を供給する量の、モリブデンスクシンイミド酸化防止剤、
(5)表2に示すカリウム含有量を供給する量の、水和カリウムボレート分散物、
(6)アルキル化ジフェニルアミン、
(7)ケイ素含有量換算で5ppmの抑泡剤、
(8)適正な粘度グレードを与える量の、エチレンプロピレン粘度調整剤、及び
(9)ポリメタクリレートPPD
(10)残量、グループI基油。
【0115】
例2
主要量の潤滑粘度の基油及び以下の添加剤を含有する、5W-30潤滑油組成物を調製した:
(1)エチレンカーボネートで後処理したビススクシンイミド及びボレート化ビススクシンイミド、
例2の分散剤からの総窒素含有量は0.028重量%である。
(2)表2に示すカルシウム含有量を供給する量の、カルシウムフェネート、スルホネート及びサリチレート清浄剤の混合物、
(3)表2に示すリン含有量を供給する量の、1級ZnDTP、
(4)表2に示すモリブデン含有量を供給する量の、モリブデンスクシンイミド酸化防止剤、
(5)表2に示すカリウム含有量を供給する量の、水和カリウムボレート分散物、
(6)アルキル化ジフェニルアミン、
(7)ケイ素含有量換算で5ppmの抑泡剤、
(8)適正な粘度グレードを与える量の、エチレンプロピレン粘度調整剤、及び
(9)ポリメタクリレートPPD
(10)残量、グループIII基油。
【0116】
例3
主要量の潤滑粘度の基油及び以下の添加剤を含有する、0W-30潤滑油組成物を調製した:
(1)エチレンカーボネートで後処理したビススクシンイミド及びボレート化ビススクシンイミド、
例3の分散剤からの総窒素含有量は0.028重量%である。
(2)表2に示すカルシウム含有量を供給する量の、カルシウムフェネート、スルホネート及びサリチレート清浄剤の混合物、
(3)表2に示すリン含有量を供給する量の、1級ZnDTP、
(4)表2に示すモリブデン含有量を供給する量の、モリブデンスクシンイミド酸化防止剤、
(5)表2に示すカリウム含有量を供給する量の、水和カリウムボレート分散物、
(6)アルキル化ジフェニルアミン、
(7)ケイ素含有量換算で5ppmの抑泡剤、
(8)適正な粘度グレードを与える量の、エチレンプロピレン粘度調整剤、及び
(9)ポリメタクリレートPPD
(10)残量、グループIII基油。
【0117】
例4
主要量の潤滑粘度の基油及び以下の添加剤を含有する、5W-20潤滑油組成物を調製した:
(1)エチレンカーボネートで後処理したビススクシンイミド及びボレート化ビススクシンイミド、
例4の分散剤からの総窒素含有量は0.028重量%である。
(2)表2に示すカルシウム含有量を供給する量の、カルシウムフェネート、スルホネート及びサリチレート清浄剤の混合物、
(3)表2に示すリン含有量を供給する量の、1級ZnDTP、
(4)表2に示すモリブデン含有量を供給する量の、モリブデンスクシンイミド酸化防止剤、
(5)表2に示すカリウム含有量を供給する量の、水和カリウムボレート分散物、
(6)アルキル化ジフェニルアミン、
(7)ケイ素含有量換算で5ppmの抑泡剤、
(8)適正な粘度グレードを与える量の、エチレンプロピレン粘度調整剤、及び
(9)ポリメタクリレートPPD
(10)残量、グループIII基油。
【0118】
例5
主要量の潤滑粘度の基油及び以下の添加剤を含有する、0W-20潤滑油組成物を調製した:
(1)エチレンカーボネートで後処理したビススクシンイミド及びボレート化ビススクシンイミド、
例5の分散剤からの総窒素含有量は0.028重量%である。
(2)表2に示すカルシウム含有量を供給する量の、カルシウムフェネート、スルホネート及びサリチレート清浄剤の混合物、
(3)表2に示すリン含有量を供給する量の、1級ZnDTP、
(4)表2に示すモリブデン含有量を供給する量の、モリブデンスクシンイミド酸化防止剤、
(5)表2に示すカリウム含有量を供給する量の、水和カリウムボレート分散物、
(6)アルキル化ジフェニルアミン、
(7)ケイ素含有量換算で5ppmの抑泡剤、
(8)適正な粘度グレードを与える量の、エチレンプロピレン粘度調整剤、及び
(9)ポリメタクリレートPPD
(10)残量、グループIII基油。
【0119】
例6
主要量の潤滑粘度の基油及び以下の添加剤を含有する、0W-20潤滑油組成物を調製した:
(1)エチレンカーボネートで後処理したビススクシンイミド及びボレート化ビススクシンイミド、
例6の分散剤からの総窒素含有量は0.028重量%である。
(2)表2に示すカルシウム含有量を供給する量の、カルシウムフェネート、スルホネート及びサリチレート清浄剤の混合物、
(3)表2に示すリン含有量を供給する量の、1級ZnDTP、
(4)表2に示すモリブデン含有量を供給する量の、モリブデンスクシンイミド酸化防止剤、
(5)表2に示すカリウム含有量を供給する量の、水和カリウムボレート分散物、
(6)アルキル化ジフェニルアミン、
(7)ケイ素含有量換算で5ppmの抑泡剤、
(8)適正な粘度グレードを与える量の、エチレンプロピレン粘度調整剤、及び
(9)ポリメタクリレートPPD
(10)残量、グループIII基油。
【0120】
例7
主要量の潤滑粘度の基油及び以下の添加剤を含有する、0W-16潤滑油組成物を調製した:
(1)エチレンカーボネートで後処理したビススクシンイミド及びボレート化ビススクシンイミド、
例7の分散剤からの総窒素含有量は0.028重量%である。
(2)表2に示すカルシウム含有量を供給する量の、カルシウムフェネート、スルホネート及びサリチレート清浄剤の混合物、
(3)表2に示すリン含有量を供給する量の、1級ZnDTP、
(4)表2に示すモリブデン含有量を供給する量の、モリブデンスクシンイミド酸化防止剤、
(5)表2に示すカリウム含有量を供給する量の、水和カリウムボレート分散物、
(6)アルキル化ジフェニルアミン、
(7)ケイ素含有量換算で5ppmの抑泡剤、
(8)適正な粘度グレードを与える量の、エチレンプロピレン粘度調整剤、及び
(9)ポリメタクリレートPPD
(10)残量、グループIII基油。
【0121】
例8
主要量の潤滑粘度の基油及び以下の添加剤を含有する、0W-16潤滑油組成物を調製した:
(1)エチレンカーボネートで後処理したビススクシンイミド及びボレート化ビススクシンイミド、
例8の分散剤からの総窒素含有量は0.028重量%である。
(2)表2に示すカルシウム含有量を供給する量の、カルシウムフェネート、スルホネート及びサリチレート清浄剤の混合物、
(3)表2に示すリン含有量を供給する量の、1級ZnDTP、
(4)表2に示すモリブデン含有量を供給する量の、モリブデンスクシンイミド酸化防止剤、
(5)表2に示すカリウム含有量を供給する量の、水和カリウムボレート分散物、
(6)アルキル化ジフェニルアミン、
(7)ケイ素含有量換算で5ppmの抑泡剤、
(8)適正な粘度グレードを与える量の、エチレンプロピレン粘度調整剤、及び
(9)ポリメタクリレートPPD
(10)残量、グループIII基油。
【0122】
例9
主要量の潤滑粘度の基油及び以下の添加剤を含有する、0W-16潤滑油組成物を調製した:
(1)エチレンカーボネートで後処理したビススクシンイミド及びボレート化ビススクシンイミド、
例9の分散剤からの総窒素含有量は0.028重量%である。
(2)表2に示すカルシウム含有量を供給する量の、カルシウムフェネート、スルホネート及びサリチレート清浄剤の混合物、
(3)表2に示すマグネシウム含有量を供給する量の、マグネシウムスルホネート清浄剤、
(4)表2に示すリン含有量を供給する量の、1級ZnDTP、
(5)表2に示すモリブデン含有量を供給する量の、モリブデンスクシンイミド酸化防止剤、
(6)表2に示すカリウム含有量を供給する量の、水和カリウムボレート分散物、
(7)アルキル化ジフェニルアミン、
(8)ケイ素含有量換算で5ppmの抑泡剤、
(9)適正な粘度グレードを与える量の、エチレンプロピレン粘度調整剤、及び
(10)ポリメタクリレートPPD
(11)残量、グループIII基油。
【0123】
例10
主要量の潤滑粘度の基油及び以下の添加剤を含有する、5W-30潤滑油組成物を調製した:
(1)エチレンカーボネートで後処理したビススクシンイミド及びボレート化ビススクシンイミド、
例10の分散剤からの総窒素含有量は0.028重量%である。
(2)表2に示すカルシウム含有量を供給する量の、カルシウムフェネート、スルホネート及びサリチレート清浄剤の混合物、
(3)表2に示すリン含有量を供給する量の、1級ZnDTP、
(4)表2に示すモリブデン含有量を供給する量の、モリブデンスクシンイミド酸化防止剤、
(5)表2に示すカリウム含有量を供給する量の、水和カリウムボレート分散物、
(6)アルキル化ジフェニルアミン、
(7)ケイ素含有量換算で5ppmの抑泡剤、
(8)適正な粘度グレードを与える量の、エチレンプロピレン粘度調整剤、及び
(9)ポリメタクリレートPPD
(10)残量、グループIII基油。
【0124】
例11
主要量の潤滑粘度の基油及び以下の添加剤を含有する、亜鉛及びリン不含有の5W-30潤滑油組成物を調製した:
(1)エチレンカーボネートで後処理したビススクシンイミド及びボレート化ビススクシンイミド、
例11の分散剤からの総窒素含有量は0.028重量%である。
(2)表2に示すカルシウム含有量を供給する量の、カルシウムフェネート、スルホネート及びサリチレート清浄剤の混合物、
(3)表2に示すモリブデン含有量を供給する量の、モリブデンスクシンイミド酸化防止剤、
(4)表2に示すカリウム含有量を供給する量の、水和カリウムボレート分散物、
(5)アルキル化ジフェニルアミン、
(6)ケイ素含有量換算で5ppmの抑泡剤、
(7)適正な粘度グレードを与える量の、エチレンプロピレン粘度調整剤、及び
(8)ポリメタクリレートPPD
(9)残量、グループIII基油。
【0125】
例12
主要量の潤滑粘度の基油及び以下の添加剤を含有する、亜鉛及びリン不含有の0W-20潤滑油組成物を調製した:
(1)エチレンカーボネートで後処理したビススクシンイミド及びボレート化ビススクシンイミド、
例12の分散剤からの総窒素含有量は0.028重量%である。
(2)表2に示すカルシウム含有量を供給する量の、カルシウムフェネート、スルホネート及びサリチレート清浄剤の混合物、
(3)表2に示すモリブデン含有量を供給する量の、モリブデンスクシンイミド酸化防止剤、
(4)表2に示すカリウム含有量を供給する量の、水和カリウムボレート分散物、
(5)アルキル化ジフェニルアミン、
(6)ケイ素含有量換算で5ppmの抑泡剤、
(7)適正な粘度グレードを与える量の、エチレンプロピレン粘度調整剤、及び
(8)ポリメタクリレートPPD
(9)残量、グループIII基油。
【0126】
例13
主要量の潤滑粘度の基油及び以下の添加剤を含有する、亜鉛及びリン不含有の0W-20潤滑油組成物を調製した:
(1)エチレンカーボネートで後処理したビススクシンイミド及びボレート化ビススクシンイミド、
例13の分散剤からの総窒素含有量は0.028重量%である。
(2)表2に示すカルシウム含有量を供給する量の、カルシウムフェネート、スルホネート及びサリチレート清浄剤の混合物、
(3)表2に示すモリブデン含有量を供給する量の、モリブデンスクシンイミド酸化防止剤、
(4)表2に示すカリウム含有量を供給する量の、水和カリウムボレート分散物、
(5)アルキル化ジフェニルアミン、
(6)ケイ素含有量換算で5ppmの抑泡剤、
(7)適正な粘度グレードを与える量の、エチレンプロピレン粘度調整剤、及び
(8)ポリメタクリレートPPD
(9)残量、グループIII基油。
【0127】
例14
主要量の潤滑粘度の基油及び以下の添加剤を含有する、亜鉛及びリン不含有の0W-20潤滑油組成物を調製した:
(1)エチレンカーボネートで後処理したビススクシンイミド及びボレート化ビススクシンイミド、
例14の分散剤からの総窒素含有量は0.028重量%である。
(2)表2に示すカルシウム含有量を供給する量の、カルシウムフェネート、スルホネート及びサリチレート清浄剤の混合物、
(3)表2に示すマグネシウム含有量を供給する量の、マグネシウムスルホネート清浄剤、
(4)表2に示すモリブデン含有量を供給する量の、モリブデンスクシンイミド酸化防止剤、
(5)表2に示すカリウム含有量を供給する量の、水和カリウムボレート分散物、
(6)アルキル化ジフェニルアミン、
(7)ケイ素含有量換算で5ppmの抑泡剤、
(8)適正な粘度グレードを与える量の、エチレンプロピレン粘度調整剤、及び
(9)ポリメタクリレートPPD
(10)残量、グループIII基油。
【0128】
比較例1
主要量の潤滑粘度の基油及び以下の添加剤を含有する、0W-16潤滑油組成物を調製した:
(1)エチレンカーボネートで後処理したビススクシンイミド及びボレート化ビススクシンイミド、
比較例1の分散剤からの総窒素含有量は0.028重量%である。
(2)表2に示すカルシウム含有量を供給する量の、カルシウムフェネート、スルホネート及びサリチレート清浄剤の混合物、
(3)表2に示すリン含有量を供給する量の、1級ZnDTP、
(4)アルキル化ジフェニルアミン、
(5)ケイ素含有量換算で5ppmの抑泡剤、
(6)適正な粘度グレードを与える量の、エチレンプロピレン粘度調整剤、及び
(7)ポリメタクリレートPPD
(8)残量、グループIII基油。
【0129】
比較例2
主要量の潤滑粘度の基油及び以下の添加剤を含有する、0W-16潤滑油組成物を調製した:
(1)エチレンカーボネートで後処理したビススクシンイミド及びボレート化ビススクシンイミド、
比較例2の分散剤からの総窒素含有量は0.028重量%である。
(2)表2に示すカルシウム含有量を供給する量の、カルシウムフェネート、スルホネート及びサリチレート清浄剤の混合物、
(3)表2に示すリン含有量を供給する量の、1級ZnDTP、
(4)表2に示すモリブデン含有量を供給する量の、モリブデンスクシンイミド酸化防止剤、
(5)アルキル化ジフェニルアミン、
(6)ケイ素含有量換算で5ppmの抑泡剤、
(7)適正な粘度グレードを与える量の、エチレンプロピレン粘度調整剤、及び
(8)ポリメタクリレートPPD
(9)残量、グループIII基油。
【0130】
比較例3
主要量の潤滑粘度の基油及び以下の添加剤を含有する、0W-16潤滑油組成物を調製した:
(1)エチレンカーボネートで後処理したビススクシンイミド及びボレート化ビススクシンイミド、
比較例3の分散剤からの総窒素含有量は0.028重量%である。
(2)表2に示すカルシウム含有量を供給する量の、カルシウムフェネート、スルホネート及びサリチレート清浄剤の混合物、
(3)表2に示すリン含有量を供給する量の、1級ZnDTP、
(4)表2に示すカリウム含有量を供給する量の、水和カリウムボレート分散物、
(5)アルキル化ジフェニルアミン、
(6)ケイ素含有量換算で5ppmの抑泡剤、
(7)適正な粘度グレードを与える量の、エチレンプロピレン粘度調整剤、及び
(8)ポリメタクリレートPPD
(9)残量、グループIII基油。
【0131】
比較例4
主要量の潤滑粘度の基油及び以下の添加剤を含有する、亜鉛及びリン不含有の5W-30潤滑油組成物を調製した:
(1)エチレンカーボネートで後処理したビススクシンイミド及びボレート化ビススクシンイミド、
比較例4の分散剤からの総窒素含有量は0.028重量%である。
(2)表2に示すカルシウム含有量を供給する量の、カルシウムフェネート、スルホネート及びサリチレート清浄剤の混合物、
(3)アルキル化ジフェニルアミン、
(4)ケイ素含有量換算で5ppmの抑泡剤、
(5)適正な粘度グレードを与える量の、エチレンプロピレン粘度調整剤、及び
(6)ポリメタクリレートPPD
(7)残量、グループIII基油。
【0132】
比較例5
主要量の潤滑粘度の基油及び以下の添加剤を含有する、亜鉛及びリン不含有の5W-30潤滑油組成物を調製した:
(1)エチレンカーボネートで後処理したビススクシンイミド及びボレート化ビススクシンイミド、
比較例5の分散剤からの総窒素含有量は0.028重量%である。
(2)表2に示すカルシウム含有量を供給する量の、カルシウムフェネート、スルホネート及びサリチレート清浄剤の混合物、
(3)表2に示すモリブデン含有量を供給する量の、モリブデンスクシンイミド酸化防止剤、
(4)アルキル化ジフェニルアミン、
(5)ケイ素含有量換算で5ppmの抑泡剤、
(6)適正な粘度グレードを与える量の、エチレンプロピレン粘度調整剤、及び
(7)ポリメタクリレートPPD
(8)残量、グループIII基油。
【0133】
比較例6
主要量の潤滑粘度の基油及び以下の添加剤を含有する、亜鉛及びリン不含有の5W-30潤滑油組成物を調製した:
(1)エチレンカーボネートで後処理したビススクシンイミド及びボレート化ビススクシンイミド、
比較例6の分散剤からの総窒素含有量は0.028重量%である。
(2)表2に示すカルシウム含有量を供給する量の、カルシウムフェネート、スルホネート及びサリチレート清浄剤の混合物、
(3)表2に示すカリウム含有量を供給する量の、水和カリウムボレート分散物、
(4)アルキル化ジフェニルアミン、
(5)ケイ素含有量換算で5ppmの抑泡剤、
(6)適正な粘度グレードを与える量の、エチレンプロピレン粘度調整剤、及び
(7)ポリメタクリレートPPD
(8)残量、グループIII基油。
【0134】
試験
潤滑油組成物を、コマツホットチューブ試験、エンジンベンチ試験及びシェル四球式摩耗試験で評価して、その性能を判定した。
【0135】
コマツホットチューブ試験
清浄性並びに熱安定性及び酸化安定性は、潤滑油の満足のいく全体的性能に不可欠であるとして業界で一般に受け入れられている性能領域である。コマツホットチューブ試験は、潤滑油の清浄性並びに熱安定性及び酸化安定性を測定する潤滑工業ベンチ試験(JPI 5S-55-99)である。試験中、特定の温度に設定したオーブン内に配置したガラス管を通じて、規定量の試験油が上方に圧送される。油がガラス管に入る前に、空気は油流中に導入され、油と共に上方に流れる。潤滑油の評価は、280℃の温度にて行った。ガラス試験管に堆積したラッカーの量を、1.0(非常に黒い)から10.0(完全にクリーン)の範囲の評定尺度と比較することによって、試験結果を求める。
【0136】
シェル四球式摩耗試験
各潤滑油組成物の摩耗防止性能は、ASTM D4172に従って、1800rpm、油温80℃及び荷重30kgの条件下で30分間にわたって測定した。試験後、試験球を取り出し、摩耗跡を測定し、摩耗跡の直径を結果として示した。
【0137】
エンジンベンチ試験
ディーゼルエンジン試験JASO(日本自動車技術会規格)清浄性試験:JASO M336-14):加重総デメリットは740を超えてはならず、リングの膠着は許容されない。ディーゼルエンジン試験(JASO動弁系摩耗試験:JASO M354-15):タペットの摩耗の評価。
【0138】
例及び比較例で調製した潤滑油組成物の性能を、2800rpmで120kWを生成する水冷4気筒4 LディーゼルHino N04 C-VHを使用して試験した。エンジンは、EGRを備えた直接噴射ターボチャージエンジンである。正確な手順は、https://www.swri.org/sites/default/files/jaso-m336-m354-m362.pdfに記載されている。
【表2】

【表3】

【表4】
【0139】
表2に示すように、有機モリブデン化合物及び分散水和アルカリ金属ボレート化合物を含有する潤滑油組成物は、リン含有量がより低い濃度又は0であっても、非常に低い粘度のグレードの従来の分散剤及びアルカリ土類金属清浄剤を含有する潤滑油組成物と同等又はそれより優れた耐摩耗性及び高温清浄性及び熱安定性を提供する。
【国際調査報告】