(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(54)【発明の名称】対称性ボラフォームソホロシドの生産の改善
(51)【国際特許分類】
C12P 7/64 20220101AFI20220202BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220202BHJP
C12N 15/90 20060101ALN20220202BHJP
【FI】
C12P7/64 ZNA
C12N1/19
C12N15/90 102Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021529127
(86)(22)【出願日】2019-11-21
(85)【翻訳文提出日】2021-07-09
(86)【国際出願番号】 EP2019082063
(87)【国際公開番号】W WO2020104582
(87)【国際公開日】2020-05-28
(32)【優先日】2018-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500454046
【氏名又は名称】ウニベルズィタイト・ヘント
(71)【出願人】
【識別番号】521221548
【氏名又は名称】バイオ・ベース・ヨーロッパ・パイロット・プラント
【氏名又は名称原語表記】BIO BASE EUROPE PILOT PLANT
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ローランツ,ソフィー
(72)【発明者】
【氏名】ファン・レンテルヘム,リサ
(72)【発明者】
【氏名】ソータルト,ビム
(72)【発明者】
【氏名】レメリー,イェレ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AD85
4B064CA06
4B064CA19
4B064CE08
4B064CE10
4B065AA73X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BB06
4B065CA13
4B065CA60
(57)【要約】
本発明は、新規のバイオサーファクタントの微生物生産の分野に関する。より具体的には、本発明は、2つのソホロース部位が疎水性リンカーに末端グリコシド結合を介して付着しているいわゆる「対称性ボラフォームソホロシド」を大量生産するための、機能異常のCYP52M1チトクロームP450モノオキシゲナーゼおよび機能異常のFAO1脂肪族アルコールオキシダーゼを有する酵母Starmerellabombicolaなどの真菌株の使用を開示する。加えて、本発明はさらに、当該酵母をアルキルソホロシドおよび対称性ボラフォームグルコシドの生産にも使用できることを開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソホロ脂質を含有する混入脂肪酸を含まない完全対称性ボラソホロシドの生産方法であって、脂肪族尾部の鎖長が少なくとも炭素6個である脂肪族アルコールを変異した真菌株に供給する工程を含み、前記真菌株は機能異常のCYP52M1チトクロームP450モノオキシゲナーゼおよび機能異常のFAO1脂肪族アルコールオキシダーゼを有し、前記真菌株は、Starmerella(Candida) bombicola、Candida apicola、Candida batistae、Candida floricola、Candida riodocensis、Candida stellate、Candida kuoi、Candida sp.NRRL Y-27208、Rhodotorulabogoriensis sp.、Wickerhamiella domericqiae、およびStarmerellaクレードのソホロ脂質生産株からなる群より選択される酵母である、方法。
【請求項2】
前記CYP52M1チトクロームP450モノオキシゲナーゼをコードする遺伝子および前記FAO1脂肪族アルコールオキシダーゼをコードする遺伝子はノックアウトされている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脂肪族尾部の鎖長が少なくとも炭素6個である脂肪族アルコールは、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、パルミトレイルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ノナデシルアルコール、アラキジルアルコール、またはこれらの混合物である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記対称性ボラソホロシドはアセチル化されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
機能異常のCYP52M1チトクロームP450モノオキシゲナーゼおよび機能異常のFAO1脂肪族アルコールオキシダーゼを有する変異した真菌株であって、前記真菌株は、Starmerella(Candida) bombicola、Candida apicola、Candida batistae、Candida floricola、Candida riodocensis、Candida stellate、Candida kuoi、Candida sp.NRRL Y-27208、Rhodotorulabogoriensis sp.、Wickerhamiella domericqiae、およびStarmerellaクレードのソホロ脂質生産株からなる群より選択される酵母である、真菌株。
【請求項6】
前記CYP52M1チトクロームP450モノオキシゲナーゼをコードする遺伝子および前記FAO1脂肪族アルコールオキシダーゼをコードする遺伝子はノックアウトされている、請求項5に記載の変異した真菌株。
【請求項7】
酸性ソホロ脂質、ラクトン酸ソホロ脂質、またはボラソホロ脂質などのソホロ脂質を含有する混入脂肪酸を含まない完全対称性ボラソホロシドを生産するための、請求項5または6に記載の変異した真菌株の使用。
【請求項8】
完全対称性末端ジオールを生産するための、請求項5または6に記載の変異した真菌株の使用。
【請求項9】
前記対称性ボラソホロシドは、アルキルソホロシドをさらに含む混合物の一部である、請求項7に記載の変異した真菌株の使用。
【請求項10】
アルキルソホロシドを生産するための、請求項5または6に記載の変異した真菌株の使用。
【請求項11】
前記真菌株は、ソホロ脂質生合成経路における第2のグルコシル化工程を担う機能異常のグルコシルトランスフェラーゼUGTB1をさらに含む、請求項5に記載の変異した真菌株。
【請求項12】
対称性ボラグルコシドを生産するための、請求項11に記載の変異した真菌株の使用。
【請求項13】
前記対称性ボラグルコシドはアセチル化されている、請求項12に記載の変異した真菌株の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、新規のバイオサーファクタントの微生物生産の分野に関する。より具体的には、本発明は、2つのソホロース部位がグリコシド結合によって疎水性リンカーに結合しているいわゆる「対称性(アセチル化)ボラフォーム(bolaform)ソホロシド」を大量生産するための、機能異常のCYP52M1チトクロームP450モノオキシゲナーゼおよび機能異常のFAO1脂肪族アルコールオキシダーゼを有する酵母Starmerella bombicolaなどの真菌株の使用を開示する。加えて、本発明はさらに、当該酵母を(アセチル化)アルキルソホロシドの生産にも使用できることを開示する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
糖脂質およびその他の生化学物質を生産するための基盤的な生物として、工業用のソホロ脂質生産酵母Starmerella bombicolaを利用できることが示されている(Roelantsら、2013;Roelantsら、2016)。この点における最新の功績の1つとして、いわゆるボラソホロシド(bola sophoroside(SS))の生産を目的とした当該酵母の再設計が記載されている(Van Renterghemら、2018)(
図1)。このボラSSは、以前に記載されたボラソホロ脂質(SL)に代わる、より良好な化学的安定性を有する新たな種類の糖脂質である(Soetaertら、2013;Van Bogaertら、2016)。実際、Van Renterghemら(2018)は、アセチルトランスフェラーゼ(at)、ラクトナーゼエステラーゼ(sble)、およびアルコールオキシダーゼ1(fao1)を欠損しているS.bombicola株に脂肪族アルコールを供給するとボラ-ソホロシドを生産することを開示している。しかしながら、このボラ-ソホロシドは、ボラ-ソホロシドに加えて、相当量のボラフォームソホロ脂質を含む。このため、ボラフォームソホロ脂質の生産をソホロシド化合物の生産へとさらにシフトさせるために、株のさらなる改善が依然として必要とされている。また、Van Renterghemにより生産されたボラソホロシドは、非対称性ボラソホロシド(すなわち、1つのソホロース部位が末端付近に結合し、もう1つが末端に結合している)と対称性ボラソホロシド(2つのソホロースが末端に結合している)の混合物である。Van Renterghemによって記載される分子は、at遺伝子(アセチルトランスフェラーゼ)が欠失しているために、アセチル化されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
Takahashiら(2016)は、fao1遺伝子を欠失させたS.bombicola株に脂肪族アルコールを供給した際、野生型よりもアルキルソホロシド生産が増加したことを記載している。しかしながら、この生産増加は、依然として、望ましくない酸性ソホロ脂質およびラクトン酸ソホロ脂質の生産を伴う。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の記載
本発明は、混入ソホロ脂質(酸性、ラクトン酸、ボラ)を含まない完全対称性ボラソホロシドの生産方法であって、脂肪族尾部の鎖長が少なくとも炭素6個である脂肪族アルコールをStarmerella bombicola株などの変異した真菌株に供給する工程を含み、当該真菌株は機能異常のCYP52M1チトクロームP450モノオキシゲナーゼおよび機能異常のFAO1脂肪族アルコールオキシダーゼを有する、方法に関する。
【0005】
用語「完全対称性ボラソホロシド」は、2つのソホロース体またはソホロース単位が脂肪族疎水性リンカーの末端位置(ω位)のみに付着しているボラソホロシド(すなわち、Van Renterghemら(2018)により記載される通り、脂肪族疎水性リンカーまたは脂肪族尾部の各側にそれぞれ位置する2つのソホロース単位からなるソホロシド)を指す。
【0006】
脂肪族(疎水性)リンカーまたは脂肪族鎖は、少なくとも6個(すなわち、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれ以上)の炭素原子を含有し得て、分枝状であり得て、かつ/または不飽和(insaturation)を含有し得る。
【0007】
用語「混入ソホロ脂質を含まない」は、混入副生成物としての酸性ソホロ脂質、ボラソホロ脂質、および/またはラクトン酸ソホロ脂質が測定可能な量で生産されないような完全対称性ボラソホロシドの生産を指す。
【0008】
用語「真菌株」は、ソホロ脂質を生産できる酵母株などの特定の真菌の任意の遺伝子バリアントまたはサブタイプを指す。言い換えると、本発明は、当該真菌株が内因的にまたは遺伝子改変後にソホロ脂質を生産できる真菌株である、上述される使用に関する。より具体的には、この真菌株は、以下(これらに限定されない)を含む真菌種である:C.magnoliaとして最初に同定されたCandida apicola(Gorinら、1961)、C.bombicola(Spencerら、1970)、Wickerhamiella domericqiae(Chenら、2006)、Rhodotorula bogoriensis(Tullochら、1968)、Candida batistae(Konishiら、2008)、Candida floricola(Imuraら、2010)、Candida riodocensis、Candida stellate、およびCandida sp.NRRL Y-27208(Kurzmanら、2010)、Candida kuoi(Kurtzman、2012)、およびStarmerellaクレードのその他の任意の株。より具体的には、本発明は、当該Starmerella(Candida) bombicolaがStarmerella(Candida) bombicola ATCC 22214(CBS 6009)株またはこれに由来する株である、上述される使用に関する。
【0009】
用語「変異した真菌株」は、上記に定義されるとおりの真菌株であって、当該株を変異させて酵素CYP52M1およびFAO1を機能不能または機能異常としたものに関する。CYP52M1の場合には、これは脂肪族アルコール基質のヒドロキシル化が生じ得ないということを意味し、FAO1の場合には、脂肪族アルコール上に存在するOH基の対応アルデヒドへの酸化が生じ得ないということを意味する。
【0010】
用語「機能異常の」は、概して、「正常に」機能していない、および/または機能が存在しないもしくは損なわれている、遺伝子またはタンパク質を意味する。したがって、この用語は、a)機能が存在しないために機能不能となっている、b)機能は存在するが機能不能となっている、またはc)機能は存在するがその機能が弱くなっているもしくは低下している、遺伝子またはタンパク質を指す。用語「機能異常の」は、具体的に、完全な機能を有する酵素CYP52M1およびFAO1をコードする能力を失った遺伝子、またはそのCYP52M1活性およびFAO1活性を完全にもしくは部分的に失ったポリペプチドおよび/もしくはタンパク質を指す。「部分的に」は、当該酵素の活性(当技術分野において周知される任意の方法により測定される)が当該酵素の野生型の活性と比較して有意に低い(p<0.05)ことを意味する。
【0011】
上記に定義される「機能異常の」核酸分子は、当該核酸の転写または翻訳を静めるための変異または任意の周知の手段によって得ることができる。当該手段は、核酸断片、マーカー遺伝子、もしくはその他の任意の分子を標的遺伝子の機能性翻訳領域部分もしくは非翻訳領域部分に挿入すること、標的遺伝子の機能性翻訳領域部分もしくは非翻訳領域部分を変異もしくは除去すること、特定のsiRNA、miRNA、もしくはこれらの組み合わせを使用すること、または当業者に周知されるその他の任意の手段を含む。
【0012】
用語「変異」は、当該真菌株のゲノムにおける自然変異および/または誘発変異を指す。当該変異は、点変異、欠失、挿入、またはその他の任意の種類の変異で有り得る。
【0013】
同様に、上記に定義される「機能異常の」ポリペプチドは、本発明に係る標的遺伝子の機能を弱くするまたは破壊する任意の(小さな)化合物またはその他の手段によって得ることができる。転写もしくは翻訳を静めるための手段、または本発明に係る標的遺伝子の機能を破壊するための手段、または標的遺伝子の必要なレギュレーター/アクチベータータンパク質の機能を破壊するための手段は、抗体、アミノ酸、ペプチド、小分子、アプタマー、リボザイム、RNA干渉(RNAi)の開始に使用されるdsRNAなどのオリゴリボヌクレオチド配列、またはアンチセンス核酸など(これらに限定されない)の任意の分子の使用を含む。したがって、このような分子は、標的タンパク質もしくはそのアクチベーター/レギュレータータンパク質に結合できる、または、たとえば標的タンパク質もしくはそのアクチベーター/レギュレーターをコードするmRNAへの結合およびその分解によって標的酵素もしくはそのアクチベーター/レギュレーターの細胞合成を妨げることができる。
【0014】
「機能異常の」CYP52M1およびFAO1は、当業者に周知される任意の方法によって得られる、活性が低下した酵素を指す。こうした方法の例としては、点変異の導入、切断したまたは変異させた酵素の使用、阻害剤または抗体の使用、および上述される方法のうち任意のものがあるが、これらに限定されない。
【0015】
したがって、用語「機能異常の」は、適用される真菌株のゲノム中に上述される特定の遺伝子(cyp52M1およびfao1)が存在しないことをも指す。
【0016】
当該遺伝子ならびにこれらにコードされる酵素CYP52M1およびFAO1は、当技術分野において周知されており、たとえばWO2011154523(CYP52M1)およびTakahashiら(2016)(FAO1)に記載されている。
【0017】
よって、より具体的には、本発明は、CYP52M1チトクロームP450モノオキシゲナーゼをコードする遺伝子およびFAO1脂肪族アルコールオキシダーゼをコードする遺伝子がノックアウトされている、上述される方法に関する。
【0018】
さらに、本発明は、脂肪族尾部の鎖長が少なくとも炭素6個であるアルコールがヘキサノール、オクタノール、デカノール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、パルミトレイルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ノナデシルアルコール、アラキジルアルコール、またはこれらの混合物である、上述される方法に関する。
【0019】
また、本発明は、完全対称性ボラソホロシドが(テトラ、トリ、ジ、またはモノ)アセチル化されている、上述される方法にも関する。
【0020】
用語「アセチル化」は、具体的に、ボラソホロシドまたはアルキルソホロシド中に存在する2つのソホロース部位のうち一方または両方における6’位または6’’位に「アセチル」官能性を含有するボラソホロシドまたはアルキルソホロシドを意味する。用語「アセチル化」(またはエタノイル化(ethanoylation))は、より一般的には、化学化合物にアセチル官能基を導入してアセトキシ基とする反応、すなわち、活性水素原子をアセチル基に置換することを表す。ヒドロキシル基の水素原子をアセチル基(CH3CO)で置き換えることを伴う反応によって、特定のエステル(アセテート)が生成する。
【0021】
また、本発明は、機能異常のCYP52M1チトクロームP450モノオキシゲナーゼおよび機能異常のFAO1脂肪族アルコールオキシダーゼを有するStarmerella bombicola株などの変異した真菌株にも関する。
【0022】
この株は、当技術分野において周知される任意の方法によって作製でき、上述される。CYP52M1チトクロームP450モノオキシゲナーゼとFAO1のノックアウト株を作製するための具体的な方法は、「実施例」部分の「材料および方法」部分にさらに記載されるが、これらに限定されない。
【0023】
よって、より具体的には、本発明は、CYP52M1チトクロームP450モノオキシゲナーゼをコードする遺伝子およびFAO1脂肪族アルコールオキシダーゼをコードする遺伝子がノックアウトされている、上述されるStarmerella bombicola株などの変異した真菌株に関する。
【0024】
さらに、本発明は、上述される通り、ソホロ脂質を含有する混入脂肪酸を含まない完全対称性ボラソホロシドを生産するための、上述されるStarmerella bombicola株などの変異した真菌株の使用に関する。
【0025】
また、本発明は、完全対称性ジオールを生産するための、上述されるStarmerella bombicola株などの変異した真菌株の使用にも関する。当該ジオールは、
図6中に示されるとおり、対称性ボラソホロシドの前駆体である。
【0026】
さらに、本発明は、当該対称性ボラソホロシドが、アルキルソホロシドをさらに含む混合物の一部である、上述されるStarmerella bombicola株などの変異した真菌株の使用に関する。
【0027】
当該混合物ができる理由は、供給した脂肪族アルコールがヒドロキシル化され得るよりも前にいくつかの脂肪族アルコール分子が後の酵素UGTA1およびUGTB1(また、さらに参照)の作用でグリコシル化され、次いで分泌されるためである。このために、ボラソホロシドの生産と共に、「未完成」のボラソホロシドまたはその他のボラソホロシド中間生成物としてのアルキルソホロシドが生産される。
【0028】
よって、本発明は、アルキルソホロシドを生産するための、上述されるStarmerella bombicola株などの変異した真菌株の使用にも関する。
【0029】
実際、当該アルキルソホロシドは、供給した脂肪族アルコールの脂肪族鎖のもう一方の側がヒドロキシル化されず、グリコシル化されて、アルキルソホロシドとして分泌された場合に生産される。
【0030】
さらに、本発明は、当該真菌株が、ソホロ脂質/ソホロシド生合成経路における第2のグルコシル化工程を担う機能異常のグルコシルトランスフェラーゼ(UGTB1)をさらに含む、上述される変異した真菌株に関する。
【0031】
用語「ソホロ脂質生合成経路における第2のグルコシル化工程を担うグルコシルトランスフェラーゼ」は、WO2011154523中に詳細に記載される。実際、WO2011154523は、ソホロ脂質経路においては第1のグリコシル化(WO2011154523の実施例2を参照)および第2のグリコシル化工程(WO2011154523の実施例3を参照)があり、「第1」のグリコシルトランスフェラーゼ(すなわちUGTA1)および「第2」のグリコシルトランスフェラーゼ(すなわちGenbank受入番号HM440974のUGTB1、およびSaerensら、2011中にも詳細に記載される(Yeast:279-292))が関与していることを開示する。
【0032】
用語「機能異常の」は上述される。
また、本発明は、対称性ボラグルコシドを生産するための、上述される変異した真菌株の使用にも関する。
【0033】
用語「対称性ボラグルコシド」は、上述されるとおり、脂肪族疎水性リンカーまたは脂肪族尾部(または鎖)の両側に、2つの末端(ω)グリコシド結合を介してグルコース分子を1つずつ有するグルコシドに関する。
【0034】
本発明は、「アセチル化」対称性ボラグルコシドおよび「非アセチル化」対称性ボラグルコシドの両方に関するが、具体的には、当該対称性ボラグルコシドがアセチル化されている、上述される変異した真菌株の使用に関する。
【0035】
用語「アセチル化」は上述される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】ソホロ脂質(SL)(左)およびソホロシド(SS)(右、灰色で囲ってある)の化学構造。比較としてボラSLおよび酸性SLが示されている。ボラソホロ脂質とソホロシドとの間の違いを強調するためにグリコシド結合およびエステル結合が示されており、カルボキシル基を有する酸性SLとの違いを強調するためにアルキルSSのメチル基が示されている。R基は、Hまたはアセチル(COCH3)基を表す。
【
図2】脂肪族アルコールオキシダーゼ(fao1)ノックアウトカセット、ならびにura3栄養要求性Δcyp52M1株のfao1座へのその組み込みを示す概略図。ura3遺伝子をマーカー遺伝子として使用した。fao1ノックアウトカセットの正確な組み込みを調べるためのコロニーPCRに用いる各プライマー対が、オレンジ色で示される。
【
図3】振とうフラスコにおいて親Δcyp52M1株(○)と比較してΔcyp52M1Δfao1株(●)を特徴づけするための重要なパラメータ。A)log(CFU/mL)、B)pH、およびC)グルコース濃度(g/L)について、平均値とそれぞれの標準偏差が示される。培養48時間後に、疎水性基質として1.8(w/v)%のオレイルアルコールを添加した。
【
図4】A)Δcyp52M1Δfao1株とB)Δcyp52M1株とにそれぞれ1.8(w/v)%のオレイルアルコールを供給したもの(いずれも3倍希釈)を比較した、振とうフラスコ実験の最終試料のUPLC-ELSDクロマトグラム。UPLC-MSで求めた各質量が、各ピークの上に示される。太字は、アルキルSSに対応する質量を示す。生じ得る糖脂質の質量の全体像が表2に与えられる。
【
図5】オレイルアルコールを供給した際のΔcyp52M1Δfao1株におけるアルキルソホロシド(SS)の生産について提案される経路。(1)脂肪族アルコールオキシダーゼfao1、(2)脂肪族アルデヒド脱水素酵素FAD、(3)チトクロームP450モノオキシゲナーゼCYP52M1、(4)グルコシルトランスフェラーゼUGTA1、(5)グルコシルトランスフェラーゼUGTB1、(6)アセチルトランスフェラーゼAT、および(7)SLトランスポーターMDR。fao1遺伝子およびcyp52M1遺伝子をノックアウトすると(図中の×印)、脂肪族アルコールが、対応する脂肪族アルデヒドにも、対応するジオール(この場合、1,18-オクタデセンジオール)にも変換されず、また、新たな脂肪酸がヒドロキシル化されることもなく(図中の×印)、次いでSL生合成に入ることもない。このようにして、蓄積されるアルコールはグルコシルトランスフェラーゼUGTA1およびUGTB1によって直接グルコシル化され、これらは逐次的に、脂肪族アルコールとアルキルグルコシドバックボーンとのそれぞれにグルコース分子を付加する。非アセチル化アルキルSSが得られ、これは、アセチルトランスフェラーゼATによってアセチル化されて非アセチル化、モノアセチル化、およびジアセチル化のアルキルSSの混合物を生じるべきである。最後に、これらの糖脂質は、おそらくは、野生型SLの分泌を担うMDRトランスポーターによって、細胞外に輸送されると考えられる(Van Bogaertら、2013)。
【
図6】Δcyp52M1Δfao1株を使用しこれにオレイルアルコールを供給する生産経路の全体像。cyp52M1遺伝子をノックアウトすることによって、経路Aにおいて示唆されるとおりグリコシル化のみが生じ得てアルキルSSのアセチル化混合物が生じ得ることが予期され(アセチル化は2つまで)、アセチル化はR基として表される。しかしながら、S.bombicolaにおけるおそらくはCYP52酵素の、別の未知かつ予想外の活性のために、ヒドロキシル化が観察され、これによって、グリコシル化後にアセチル化ボラSSが生じた(アセチル化は4つまで)。最終的に、主としてボラSSと微量のアルキルSSとの混合物がみられた。ヒドロキシル化は、Van Renterghemら(2018)により報告されたΔatΔsbleΔfao1株とは異なり、末端のみにおいて生じた。
【
図7】Δcyp52M1Δfao1株により生産され精製されたオレイルアルコールに基づく(C18:1)ボラSSについて確認された構造組成。100%末端(ω)ヒドロキシル化化合物のみがみられた。
【
図8】異なる第1級アルコール(ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、またはオレイルアルコール)を供給した場合の、培養時間の関数としてのΔcyp52M1Δfao1株の、A)log(CFU/mL)、およびB)グルコース濃度。平均値およびそれぞれの標準偏差が示される。培養48時間後に、1.8(w/v)%のアルコールをそれぞれ添加した。
【
図9】培養48時間後に1.8(w/v)%の(A)ラウリルアルコール、(B)ミリスチルアルコール、(C)パルミチルアルコール、(D)ステアリルアルコール、または(E)オレイルアルコールを供給したΔcyp52M1Δfao1株についてのエンドUPLC-ELSDクロマトグラム。すべてのエンドブロスは3倍希釈される。アルキルSS(アセチル化は2つまで可能)およびボラSS(アセチル化は4つまで可能)についての保持時間が示される。太字は、供給した各アルコールがボラSS(濃い灰色)およびアルキルSS(黒)、アルコールおよびアルキルGS(薄い灰色)に組み込まれた場合の糖脂質化合物を示す。保持時間が1分未満のピークは、試料中に糖、タンパク質、および塩として存在する強い親水性の化合物の混合物に対応する。
【
図10】培養48時間後に1.8(w/v)%の各第1級アルコールを供給した場合の、Δcyp52M1Δfao1株によるボラSSの生産(A)およびアルキルSSの生産(B)と培養時間との相関。生産は、UPLC-ELSDによって求めたピーク領域の合計(V.秒)として示される。(C)培養48時間後に1.8(w/v)%のラウリルアルコール(黒)、ミリスチルアルコール(濃い灰色)、パルミチルアルコール(中程度の灰色)、ステアリルアルコール(薄い灰色)、またはオレイルアルコール(白色)を供給したS.bombicola Δcyp52M1Δfao1株のエンドブロスの、異なる種類の糖脂質についての相対的なピーク領域(%)を、UPLC-ELSDで求めたもの。
【
図11】三重ノックアウト株(ΔCYP52M1 ΔFAO1 ΔUGTB1)は、(アセチル化)対称性ボラグルコシド(GS)を生産する。図は、(アセチル化)対称性ボラグルコシドを合成する経路を示す。下図は、実際の(アセチル化)対称性ボラグルコシドC18:1を示す。R=COCH3またはH。
【発明を実施するための形態】
【0037】
実施例
材料および方法
株、培地、および培養条件
親株として、SL欠損Δcyp52M1株S.bombicolaを使用した(Van Bogaertら、2013a)。Van Renterghem(2018)による記載と同様にして、ura3遺伝子を、自身のプロモーターおよびチロシンキナーゼ(tk)ターミネーターの制御下でΔcyp52M1株の個々のfao1座に組み込むことによって、S.bombicolaの脂肪族アルコールオキシダーゼfao1ノックアウトを得た。新しい株の形質転換コロニー3つを、Δcyp52M1親株と平行して、増殖および糖脂質生産の観点において評価した。培養、選択、および形質転換は、Lodensら(2018)により記載されるとおりに行なった。
【0038】
S.bombicolaを使用する生産実験を、Langら(2000)により記載される生産用培地を使用して行なった。振とうフラスコ実験のために、5mLの試験管培養を24時間(30℃)行い、その後、振とうフラスコに移した(4%接種)。脂肪族アルコール(オレイルアルコール、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、またはセチルアルコール、これらを48時間の培養後に添加)を供給して、生産実験を行なった。また、疎水性アルコールを添加しない場合についても、Δcyp52M1Δfao1株を評価した。各生産実験について、培地からグルコースが枯渇した際に培養を停止した。実験を2回行ない、平均値と標準偏差が示される。
【0039】
分子技術
一般的な技術
GreenおよびSambrook(2012)により記載されるとおりに、一般的な分子技術を用いた。pGEM-T(Promega)ベクターおよびpJET(Thermo Fisher)ベクターに基づく、E.coliでクローニングおよび維持したベクターバックボーンから、線形欠失カセットを作製し、クローニング工程は以下に記載される。すべてのプライマー配列が表1中に示され、株構築の視覚的表現が
図2中に示される。
【0040】
表1:Δcyp52M1株におけるS.bombicola脂肪族アルコールオキシダーゼ遺伝子(fao1)のノックアウト株の作製に使用したプライマー。
【0041】
【0042】
Δcyp52M1Δfao1ノックアウト株の作製
fao1ノックアウトカセットの作製はVan Renterghemら(2018)により記載され、これを使用してS.bombicola Δura3::0Δcyp52M1::Pgapd_hph_Ttk株(または、以下、Δura3Δcyp52M1株とよばれる)を形質転換した。hph遺伝子をStreptomyces hygroscopusから単離し、これはハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ耐性をコードする(Gritz&Davies、1983)。形質転換後、選択SD培地上でura3陽性コロニーを選択した。カセットが正確に組み込めていることを、コロニーPCRによって確認した。新たに作製したΔura3::0 Δcyp52M1::Pgapd_hph_tTK Δfao1::Pura3_ura3_Ttk株(以下、Δcyp52M1Δfao1とよばれる)について、成功したコロニーを3つずつ選択した。
【0043】
下流のプロセスおよび特徴づけ
オレイルを供給した場合にΔcyp52M1Δfao1株が生産した産物の精製をアルカリ加水分解(pH12、5M NaOH、37℃、1時間)によって行なって、糖脂質を十分に脱アセチル化し、より均一な産物を得た。精製および乾燥させた産物を、NMR分析(以下を参照)に供するために、分取液体クロマトグラフィー(PLC)によってさらに分画した。
【0044】
分取用層クロマトグラフィー(PLC)
緑色蛍光指標(F254)(Analtech)を含浸させたシリカゲルを2mm被覆したUniplate 20×20cm PLCプレートを使用した。まず、試料100mgをMilliQ水に溶解した。続いて、この溶液を、プレートの底から2cmのところに、長い線状に塗布した。SL混合溶媒(クロロホルム/メタノール/水、65/15/2、v/v/v)を入れた溶媒チャンバーに、このPLCプレートを入れた(Asmerら、1988)。溶媒が展開されてそれぞれ蒸発した後、254nmの紫外光下にプレートを置いた。続いて、明確に示されている対象領域をメスでこそげ取り、こそげ取ったシリカゲルを集めた。続いて、MilliQ水 20mLをファルコン(falcon)に添加することによってこの化合物を分解(resolve)し、4500rpmで10分間遠心分離した。上清を集め、プロセスを繰り返した。ボラSS産物を含有する全上清をろ過して(カットオフ 0.22μm、Millex(登録商標) GV)、残留しているシリカゲル粒子を除去した。最後に、Alpha 1-4凍結乾燥機(Christ)を使用して水を除去し、NMR分析に用いるのに好適な高純度の乾燥産物を得た。
【0045】
分析技術
増殖の追跡
試料1mLを生理溶液(9g/L NaCl)で希釈したものについて、Jasco V 630 バイオ分光光度計(Jasco Europe)を使用して培養物の光学濃度(OD)を600nmにおいて測定した。コロニー形成単位(CFU)(培養物体積あたりのCFUの対数平均log(CFU/mL)として表す)を求めることによって、培養実験における酵母細胞の生存能力を評価した(Saerensら、2011)。一方、風袋を量ったエッペンドルフチューブに入れた発酵試料1mLを14000rpmで5分間遠心分離し、続いて、細胞ペレットを生理溶液1mLで2回洗浄することによって、細胞の乾燥重量(CDW)を求めた。残った細胞ペレットを70℃のオーブンに5日間入れた後、秤量した。空のエッペンドルフチューブの重量を差し引いて、CDW(g/L)を計算した。
【0046】
グルコース濃度の追跡
2700 Select Biochemistry Analyser(YSI Inc.)を使用し、または超高性能液体クロマトグラフィー(Waters Acquity H-Class UPLC)を使用し、これを蒸発光散乱検出器(Waters Acquity ELSD Detector)(UPLC-ELSD)に接続して、グルコース濃度を求めた。UPLC分析には、Acquity UPLC BEH Amide カラム(130Å、1.7μm、2.1×100mm)(Waters)を35℃で使用し、75%アセトニトリルおよび0.2%トリエチルアミン(TEA)の均一(isocratic)の流速(0.5mL/分)を適用した(5分/試料)。ELS検出のために、噴霧器を15℃に冷却し、ドリフト管の温度を50℃に維持した。ELS検出における増加(gain)を100としたところ、グルコース0g/Lと5g/Lとの間に線形の範囲がみられた(Empower software)。グルコース消費を表現するために、UPLC-ELSDによって得たグルコース濃度に線形の曲線をフィットさせ、個々の傾きをとってグルコース消費率(g/L.時間)として示した。
【0047】
糖脂質の分析
純粋エタノール1mLと発酵ブロス0.5mLとの混合物を5分間激しく振とうすることによって、糖脂質分析用の試料を調製した。続いて、15000rpmで5分間遠心分離した後、細胞ペレットを除去し、PTFEフィルタ(カットオフ 0.22μm、Novolab)を使用して上清をろ過し、50%エタノール(特記しない限り)中に十分に希釈し、その後、(超)高圧液体クロマトグラフィー質量分析((U)HPLC-MS)および(U)HPLC-ELSD(蒸発光散乱検出器)で分析した。
【0048】
LC(島津)をMS(Micromass Quattro LC)検出システムに接続して使用して、HPLC-MSを行なった。Chromolith Performance RP-18 Endcapped 100-4.6mmカラム(Merck KGaA)を30℃で用いて、異なる成分を極性によって分離した。LC-MS法では、0.5%酢酸を含むMilliQと純粋アセトニトリル(ACN)との2種の溶媒に基づく勾配溶出を用いる。分析の間、流速1mL/分を適用した。勾配は5%アセトニトリルから開始して、40分かけて95%まで線形に増加させる。この後、95%アセトニトリルをさらに10分間維持し、その後5分間で5%アセトニトリルに戻す。試料1つあたりの総分析時間は60分間/試料である。MSのスキャン範囲は215~1100g/molに設定した。HPLC-MSについて記載したものと同様の条件を用い、Varian ProStar HPLC(ThermoScientific)を2000ES ELSD(Alltech)と接続したものを使用して、40℃においてHPLC-ELSD分析を行なった。その他の条件はすべて、HPLC-MSについて記載したものと同様である。
【0049】
Acquity H-Class UPLC(Waters)およびAcquity ELSD Detector(Waters)を使用し、UPLC-MSの場合と同じカラムおよび分析方法を用いて、UPLC-ELSD分析を行なった。ELSD検出のために、噴霧器を12℃に冷却し、ドリフト管の温度を50℃に維持し、増加を200に設定した。糖脂質を定量するために、精製産物の希釈系列を調製した。入手可能なC18:1アセチル化ボラSS精製バッチ(バッチ番号 SL24A)および精製アセチル化C16:0アルキルSSバッチ(バッチ番号 aAlkC16_2)を使用して、ボラSSおよびアルキルSSをそれぞれ定量した。
【0050】
一方、Accela(ThermoFisher Scientific)およびExactive Plus Orbitrap Mass Spectrometer(ThermoFisher Scientific)を用いて、UPLC-MSを行なった。糖脂質分析には、Acquity UPLC CSH C18カラム(130Å、1.7μm、2.1mm×50mm)(Waters)と、流速0.6mL/分において、0.5%酢酸(MilliQ中)(A)および100%アセトニトリル(B)に基づく勾配溶出系とを適用した。方法は以下の通りである:最初の6.8分間で初濃度5% B(95% A)を95% B(5% A)まで線形に増加させ、次の1.8分間で線形に減少させて5% B(95% A)に戻す。続いて、流れが終了するまで5% B(95% A)を維持する(10分/試料)。陰イオンモードを用い、試料2μLを注入した。加熱エレクトロスプレーイオン化(HESI)源を用いてMS検出を行ない、条件は、215~1300m/zの範囲の質量を定性的に検出できるように設定した。
【0051】
1H/BB z-勾配プローブ(BBO、5mm)を備えるBruker Avance IIIを使用して、すべての1Hおよび13CのNMRスペクトルを400MHzおよび100.6MHzのそれぞれにおいて記録した。DMSO-[D6]を、溶媒として、および内部化学シフト標準(1Hには2.50ppm、13Cには39.52ppm)として使用した。TOPSPIN 3.2ソフトウェアを使用して、すべてのスペクトルを処理した。Brukerパルスプログラムライブラリにおいて入手可能な標準配列から、アタッチドプロトンテスト(Attached Proton Test、APT)、13C、COSY、およびHSQCのスペクトルを得た。文献(Gheysen、Mihai、Conrath、&Martins、2008;Petersenら、2006)に従って、個別仕様の設定を使用した(HMBC(32スキャン)、TOCSY(MLEVスピンロック 100ミリ秒、混合時間(mixing time) 0.1秒、待ち時間(relaxation delay) 1.27秒、16スキャン)、およびH2BC(混合時間 21.8ミリ秒、待ち時間 1.5秒、16スキャン))。
【0052】
統計学的分析
2つの異なる群を比較する際には、GraphPad Prism 7.04ソフトウェアを使用し、信頼水準95%にて、ウェルチの検定を行なった。複数の群の比較には、分散の分析(ANOVA)を使用し、ボンフェローニの多重比較検定補正を用い、信頼水準95%にて、GraphPad Prism 7.04ソフトウェアを使用した。pH、CFU、OD、およびグルコース消費といったパラメータには、酵母細胞を静止期に取得した際(48時間の培養後)の平均値をとった。一般的に、グラフ中に示されるデータは、実験を2回繰り返した平均および標準偏差である(特記しない限り)。
【0053】
結果
ノックアウト株の構築
脂肪族アルコールオキシダーゼfao1ノックアウトカセット(Van Renterghemら(2018)中に記載される)を使用して、S.bombicola Δcyp52M1Δura3株を形質転換した。選択用SDプレート上でura3+コロニーを選択した後、2つのプライマー組み合わせ(表1を参照)を使用するコロニーPCRを行なうことによって、ノックアウトカセットの両側における正確な組み込みを制御した。さらなる特徴づけのために、新たに作製したΔcyp52M1Δfao1株の正確なコロニーを3つ選択した。当該新たな株の、選択した3つの形質転換体は、OD、CFU、グルコース消費、および糖脂質生産の観点において互いに類似する挙動を示した。したがって、次のセクションでは、増殖、pH、グルコース消費、および糖脂質生産の観点からの親Δcyp52M1株との比較について、1つのコロニーのみについて検討する。
【0054】
ノックアウト株の最初の特徴づけ
野生型S.bombicolaについては、ナタネ油(colza oil)(オレイン酸60~80%)または純粋オレイン酸のSLタイターが最も良好である(Asmerら、1988;Rauら、2001)(すなわち、炭素鎖長C18の疎水性基質)。よって、新たに作製したfao1ノックアウト株を、まず、C18脂肪族アルコール(すなわち、オレイルアルコール(C18:1)、疎水性基質として)を入れた振とうフラスコで評価した。
【0055】
増殖、pH、およびグルコース消費
log(CFU/mL)、pH、およびグルコース消費などの重要なパラメータが
図3中に示される。評価した2回分の平均値および標準偏差が示される。OD
600の展開は示されていない、というのは、測定におけるオレイルアルコール基質との干渉のためである。培養時間の関数としてのlog(CFU/mL)値の観点において(
図3A)、新たな株と参照株との間で有意に異なるCFU値は得られなかった。観察されたpHの低下は等しかった(
図3B)。
図3C中に示されるとおり、Δcyp52M1Δfao1株および親株のグルコース消費率は類似している(0.47±0.06g/L.時間、および0.47±0.01g/L.時間)。
【0056】
糖脂質生産
図4中に示される、評価した株の糖脂質生産をみると、Δcyp52M1Δfao1株について、Δcyp52M1親株とは明らかに異なる生産プロファイルが観察できる。
【0057】
親Δcyp52M1株(
図4B)は、糖脂質を全く生産しなかった(または、生産したが非常に少量であった)(<7分)。それより後の保持時間(>7分間)では、オレイン酸に対応する小さなピーク(282g/mol)が確認できる(Δcyp52M1Δfao1株で観察されるものと類似)。アルキルSSはほとんど検出されず、このことは、供給したオレイルアルコールが、大体、依然として機能できている(FAOがノックアウトされていないため)ω酸化経路によって酸化されて、対応するオレイン酸となっていることを示す。続いて、cyp52M1ノックアウトによりオレイン酸のヒドロキシル化が阻害されているためにグルコシルトランスフェラーゼはこの脂肪酸をグリコシル化できず、そのため、オレイン酸が蓄積する、またはβ酸化によって分解される。
【0058】
親株とは異なり、Δcyp52M1Δfao1株(
図4A)については、糖脂質生産が明らかに観察される。保持時間3.0~4.5分で顕著な量の糖脂質がみられ、5.5~6.5分では微量がみられた。UPLC-MS分析後、驚くべきことに、初期の保持範囲(3~4.5分間)における質量は、目的としていたアルキルSS(550~700g/molの範囲)ではなく、実際にはボラSS(900~1100g/molの範囲)に対応することがわかった。実際、アルキルSSが検出されたが、上述されるように5.5~6.5分において微量のみであった。こうしたボラSSの合成は、理論的には(先行技術に基づけば)この株では起こり得ない、というのは、cyp52M1遺伝子が欠失しているために、供給した脂肪族アルコールのヒドロキシル化を経由するジオール形成(
図5を参照)(ボラSSの合成に必要)が起こり得ないためである。実際、親株ではこうした作用は観察されず(
図4Bを参照)、当技術分野において言及されるとおり、実際、オレイルアルコール(
図4Bを参照)またはオレイン酸および/もしくはナタネ油(rapeseed oil)(Van Bogaertら、2013)に対する酸化/ヒドロキシル化活性を全く示さない。
【0059】
よって、驚くべきことに、Δcyp52M1Δfao1株は、オレイルアルコールを供給した場合に主として、初期の保持時間(3.0~4.5分)に対応するボラSSを生産する(
図6)。この株ではAT遺伝子をノックアウトしていないため(ボラSSを生産するよう設計された株(Soetaertら、2013;Van Renterghemら、2018)とは対照的である)、上述されるこの新しい株についてはボラSSのアセチル化も観察される。4.4分のテトラアセチル化C18:1ボラSS(1100g/mol)はボラSSに最も豊富に含まれる成分であり、続いて豊富なのはトリアセチル化物およびジアセチル化物(それぞれ、1016g/mol、および1058g/mol)である。また、非アセチル化およびモノアセチル化のC18:1ボラSSも検出された(それぞれ、932g/mol、および974g/mol)。モノアセチル化、ジアセチル化、およびトリアセチル化のボラSSが4.05分および4.15分という2つの異なるピークで現れたが、このことは恐らく、文献(Davilaら、1993;Saerensら、2011;Saerens、2012)中に示される酸性SLについて示されるのと同様に、この分子のアセチル化パターンが異なることによって説明される。また、C18:1ボラSSに加えて、供給したオレイルアルコール基質のC16の量から生じた、C16:0に基づくSS(906g/mol)が検出される(基質中に混入量2~10%のセチルアルコールまたは1-ヘキサデカノールが存在する)。また、微量のアルキルSSも生産され、主としてC18:1の非アセチル化、モノアセチル化、およびジアセチル化のアルキルSSが検出され(それぞれ、592/634/676 g/mol)、また、極微量のC16:0アルキルSSもみられた(それぞれ、566/608/650 g/mol)。
【0060】
よって、供給したアルコールは、単に蓄積してアルキルSSとなるのではなく、有利なことに、対応するジオールにヒドロキシル化され、2回のUGTA1およびUGTB1のグリコシル化サイクルを経てボラSSを生じるようである(
図6を参照)。アルコールを供給した親株はオレイルアルコールを供給した際にこれらの化合物を生産しなかったことから、cyp52M1およびfao1のノックアウト組み合わせが非常に重要であるようである。
【0061】
生産された化合物を詳細に特徴づけするために、記載されるように、混合物からボラSSおよびアルキルSSを精製した。
【0062】
NMR構造分析
Δcyp52M1Δfao1株のブロスに由来する精製した非アセチル化C18:1ボラSSの標準について、NMR分析を行なった。
【0063】
驚くべきことに、NMR分析により、
図7中に示されるように、生産されたボラSSにおいて2つのソホロース部位が疎水性リンカーに末端(ω)のみで結合していることが示された。よって、化学式がC
42H
76O
22である完全対称性の糖脂質分子が得られる。
【0064】
鎖長の異なる脂肪族アルコールの供給
予期しないことに、Δcyp52M1Δfao1株にオレイルアルコールを供給した場合に、ボラSSまたはアルキルSSのいずれも均一には生産されなかった。その代わりに、この2つの混合物がみられ、新たな糖脂質の大部分は(アセチル化)ボラSSであり、アルキルSSはごく微量生産された。テトラアセチル化ボラSSの生産は予期していなかった、というのは、今まで、S.bombicolaでの糖脂質生産に関与する唯一の酵素がCYP52M1酵素であると考えられていたためである。第1級アルコールの鎖長が糖脂質生産に及ぼす影響を評価するために、異なる基質をΔcyp52M1Δfao1株に供給した。平行して親株Δcyp52M1についても評価した。Davilaら(1994)がアルカンについて報告しているのと同様に、鎖長12~18の中鎖アルコールおよび長鎖アルコールを選択した。上述される実験と同様に、48時間培養した後で疎水性基質を添加した。
【0065】
増殖、pH、およびグルコース消費
ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、またはオレイルアルコールを添加しても、Δcyp52M1株のCFU値にはΔcyp52M1Δfao1株ほど大きな影響を及ぼさなかった(
図8)。しかしながら、ラウリルアルコールを添加した場合には、その他の供給した基質のいずれとも異なって、CFUの著しい低下が認められた(
図8A)。セチルアルコールまたはステアリルアルコール(0.48g/L.時間 対 0.38g/L.時間)と比較して、ミリスチルアルコールまたはオレイルアルコールを供給した場合に著しく高いグルコース消費率がみられた。ラウリルアルコールの添加後(接種の48時間)、グルコース消費が停止した。Δcyp52M1Δfao1株についてのみ、基質添加後100時間でグルコース消費が再度開始し(0.33g/L.時間)、グルコースの全量が枯渇するまで継続した。これは、CFUの展開に準じる(
図8A)。
【0066】
また、疎水性基質を添加しない場合のΔcyp52M1Δfao1株についても調べた。CFUおよびグルコース消費は、アルコール(ラウリルアルコールを除く)を供給した培養物と比べて著しく異なるものではなかった。
【0067】
糖脂質生産
第1級アルコールの添加前、Δcyp52M1Δfao1培養物およびΔcyp52M1培養物のいずれも、定量可能な糖脂質生産を示さなかった。これは予期されたことであった、というのは、cyp52M1がノックアウトされているために、新たな脂肪酸が糖脂質生産経路に入ることはできず、新たな糖脂質生産を開始するためにはこのアルコールを供給しなければならないためである。
【0068】
Δcyp52M1株については、疎水性基質を添加した後、ELSDでの分析後にピークは確認できず、このことは、予期されたことと、以前(Van Bogaert、2010)に記載されたこととに準じるものであった。供給した異なる第1級アルコールについてのΔcyp52M1Δfao1株の糖脂質最終生産プロファイルをUPLC-ELSDで分析したものが、
図9中に示される。供給した各アルコールについて、アセチル化のボラSSおよびアルキルSSの混合物が生産された。予期されたように、生産されたすべての糖脂質は、供給したアルコールに直接由来していた。これはcyp52M1遺伝子がノックアウトされていることにより、任意の新たな脂肪酸(主としてC16~C18)または発生させた脂肪酸(アルコールの酸化が起こり得る)の実施が除かれるためである。
【0069】
ラウリルアルコールについては、非アセチル化からテトラアセチル化までのC12:0ボラSSが検出され得た(580/934/976/1018 g/mol)。C12:0ボラSSに加えて、それより後の保持時間において非アセチル化からジアセチル化のC12:0アルキルSS(510/552/594 g/mol)もみられた。しかしながら、クロマトグラムにおける最も豊富なピークは、モノアセチル化アルキルSSのピークとジアセチル化アルキルSSのピークの間にあるC12:0アルキルグルコシド(GS)(348g/mol)に対応していた。
【0070】
ミリスチルアルコールおよびセチルアルコールについては、非常に類似する生産プロファイルが観察された。C14:0またはC16:0のボラSS(3.00~4.00分、および3.00~4.3分)およびC14:0またはC16:0のアルキルSS(4.5~5.8分、および5.2~6.5分)に対応する明瞭な保持時間を、それぞれのアセチル化とともに見分けることができた。MSにより、C14:0およびC16:0の非アセチル化アルキルGS(376g/mol、および404g/mol)が検出された。微量のジアセチル化のC14:0またはC16:0のアルコールSS(またはボラGL)(638g/mol、または666g/mol)が検出できた。
【0071】
Δcyp52M1Δfao1株にステアリルアルコールを供給した場合、アセチル化C18:0ボラSS(934/976/1018/1060/1102 g/mol)およびC18:0アルキルSS(594/636/678 g/mol)の混ざった生産が再度観察される。さらに、微量のC18:0アルキルGS(432g/mol)が検出された。同様に、ミリスチルアルコールおよびセチルアルコールについては、ジアセチル化C18:0アルコールSS(またはボラGL)(694g/mol)が検出された。
【0072】
オレイルアルコールを添加した結果、上述される糖脂質生産プロファイルが得られた。また、非アセチル化、モノアセチル化、およびジアセチル化のC16:0およびC18:1のアルキルSS(それぞれ、566/608/650 g/mol、および592/634/676 g/mol)ならびに非アセチル化のC16:0およびC18:1のアルキルGS(404g/mol、および430g/mol)も検出された。同様に、その他のアルコールについては、ジアセチル化C18:1アルコールSS(またはボラGL)(692g/mol)も検出された。
【0073】
対称性ボラグルコシドを生産するための三重ノックアウト株(ΔCYP52M1 ΔFAO1 ΔUGTB1)の作製。
【0074】
三重ノックアウト株(ΔCYP52M1 ΔFAO1 ΔUGTB1)を作製するために、Lodensら(2019)(Biotechnology and Bioengineering:1-13)により記載される通りに、まず、二重ノックアウト株(ΔCYP52M1 ΔFAO1)からura3マーカーを除去した。Saerensら(2011)により記載されるプラスミド「pGKO ugtB1」から、PfuUltra High Fidelity PCR(Stratagene)ならびにプライマー対としてGTII-472FおよびGTII+239R(GTII-472(順方向:5’-GAGAGTGGGACCTGATTC-3’(配列番号19))/GTII+239(逆方向:5’-CTGCTCTCAACACCGAGTGTAG-3’(配列番号20)))を使用して、ura3マーカーを有する線形のUGTB1ノックアウトカセットを作製した。この欠失カセットをura3陰性ΔCYP52M1 ΔFAO1株中に形質転換して、正確な形質転換体を選択した。
図11中に示すように、得られる株は(アセチル化)対称性ボラグルコシドを生産する。
【0075】
引用文献
Asmer, H.-J. J., Lang, S. S., Wagner, F., & Wray, V. (1988). Microbial production, structure elucidation and bioconversion of sophorose lipids. American Oil Chemists' Society, 65(9), 1460-1466.
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【国際調査報告】