IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クリスパー セラピューティクス アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧 ▶ バイエル ヘルスケア リミティド ライアビリティ カンパニーの特許一覧

特表2022-513657LNPでの使用に最適化された、CAS9をコードするmRNA
<>
  • 特表-LNPでの使用に最適化された、CAS9をコードするmRNA 図1A
  • 特表-LNPでの使用に最適化された、CAS9をコードするmRNA 図1B
  • 特表-LNPでの使用に最適化された、CAS9をコードするmRNA 図1C
  • 特表-LNPでの使用に最適化された、CAS9をコードするmRNA 図1D
  • 特表-LNPでの使用に最適化された、CAS9をコードするmRNA 図1E
  • 特表-LNPでの使用に最適化された、CAS9をコードするmRNA 図2
  • 特表-LNPでの使用に最適化された、CAS9をコードするmRNA 図3
  • 特表-LNPでの使用に最適化された、CAS9をコードするmRNA 図4
  • 特表-LNPでの使用に最適化された、CAS9をコードするmRNA 図5
  • 特表-LNPでの使用に最適化された、CAS9をコードするmRNA 図6
  • 特表-LNPでの使用に最適化された、CAS9をコードするmRNA 図7
  • 特表-LNPでの使用に最適化された、CAS9をコードするmRNA 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(54)【発明の名称】LNPでの使用に最適化された、CAS9をコードするmRNA
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/88 20060101AFI20220202BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20220202BHJP
   C12N 15/55 20060101ALN20220202BHJP
   C12N 15/31 20060101ALN20220202BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20220202BHJP
【FI】
C12N15/88 ZNA
C12N15/09 110
C12N15/55
C12N15/31
C12N15/11 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021530251
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(85)【翻訳文提出日】2021-07-27
(86)【国際出願番号】 US2019063456
(87)【国際公開番号】W WO2020112908
(87)【国際公開日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】62/772,278
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518370079
【氏名又は名称】クリスパー セラピューティクス アクチェンゲゼルシャフト
(71)【出願人】
【識別番号】520135736
【氏名又は名称】バイエル ヘルスケア リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100166165
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 英直
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー ジェイ.チョン
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー スカレンバーグ
(72)【発明者】
【氏名】コイ ワン
(72)【発明者】
【氏名】シャイレンドラ セーン
(57)【要約】
本開示は、概して、例えば部位特異的エンドヌクレアーゼ又はこれをコードする核酸分子の標的細胞中への送達に有用な、新規の脂質ナノ粒子(LNP)ベースの組成物に関する。本開示のいくつかの実施形態は、細胞のゲノムを編集するための組成物及び方法であって、この細胞と、本願で説明されているLNP組成物とを接触させることを含む、組成物及び方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質ベースのナノ粒子(LNP)組成物であって、
部位特異的エンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子と、
アミノ脂質、イオン化可能な脂質、中性脂質、PEG脂質、ヘルパー脂質、及びコレステロール又はコレステロール誘導体からなる群から選択される1つ又は複数の脂質部分と
を含み、
前記核酸分子は、約3.8kb以下の長さである、
LNP組成物。
【請求項2】
前記核酸分子は、約3.7kb以下の長さである、請求項1に記載のLNP組成物。
【請求項3】
前記核酸分子は、約3.5kb以下の長さである、請求項1又は2に記載のLNP組成物。
【請求項4】
前記核酸分子は、メッセンジャーRNA(mRNA)である、請求項1~3のいずれか一項に記載のLNP組成物。
【請求項5】
前記部位特異的エンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列は、少なくとも1つの追加のヌクレオチド配列に作動可能に連結されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のLNP組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つの追加のヌクレオチド配列は、非翻訳末端領域(UTR)、コンセンサスKozakシグナル、核局在化シグナル(NLS)をコードするヌクレオチド配列、リンカーペプチドをコードするヌクレオチド配列、タグペプチドをコードするヌクレオチド配列、又はこれらの内のいずれかの組み合わせを含む、請求項5に記載のLNP組成物。
【請求項7】
前記核局在化シグナル(NLS)は、ヌクレオプラスミンNLS又はSV40 NLSを含む、請求項6に記載のLNP組成物。
【請求項8】
前記部位特異的エンドヌクレアーゼは、Cas9タンパク質又はその機能性誘導体である、請求項1~7のいずれか一項に記載のLNP組成物。
【請求項9】
前記部位特異的エンドヌクレアーゼは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のLNP組成物。
【請求項10】
前記核酸分子は、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のLNP組成物。
【請求項11】
前記ヌクレオチド配列は、宿主細胞中での発現にコドン最適化されている、請求項1~10のいずれか一項に記載のLNP組成物。
【請求項12】
前記宿主細胞は、哺乳類細胞である、請求項11に記載のLNP組成物。
【請求項13】
前記哺乳類細胞は、ヒト細胞、マウス細胞、又は非ヒト霊長類(NHP)細胞である、請求項12に記載のLNP組成物。
【請求項14】
CRISPRシステムの1種又は複数種の追加の成分をさらに含む請求項1~13のいずれか一項に記載のLNP組成物。
【請求項15】
前記CRISPRシステムの前記1種又は複数種の追加の成分は、ガイドRNA(gRNA)、又は前記gRNAをコードする核酸分子を含む、請求項14に記載のLNP組成物。
【請求項16】
前記LNP組成物の前記LNPは、C12-200を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載のLNP組成物。
【請求項17】
前記LNP組成物の前記LNPは、コレステロールを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のLNP組成物。
【請求項18】
前記LNP組成物の前記LNPは、DOPEを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載のLNP組成物。
【請求項19】
前記LNP組成物の前記LNPは、PEG-DMPEを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載のLNP組成物。
【請求項20】
前記LNP組成物の前記LNPは、部位特異的エンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む参照LNP組成物のLNPと比較した場合に物理化学的特性の変化率が低く、前記核酸分子は、約4kb超である、請求項1~19のいずれか一項に記載のLNP組成物。
【請求項21】
前記LNP組成物の前記LNPは、物理化学的特性の変化率が、前記参照LNP組成物の前記LNPの対応する率と比べて少なくとも約5%低い、請求項20に記載のLNP組成物。
【請求項22】
前記LNP組成物は、部位特異的エンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む参照LNP組成物のLNPと比較した場合に機能性の低下率が低く、前記核酸分子は、約4kb超である、請求項1~21のいずれか一項に記載のLNP組成物。
【請求項23】
前記LNP組成物は、機能性の低下率が、前記参照LNP組成物の対応する率と比べて少なくとも約5%低い、請求項22に記載のLNP組成物。
【請求項24】
前記LNP組成物の前記LNPは、平均粒径が、部位特異的エンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む参照LNP組成物のLNPの平均粒径と比べて大きく、前記核酸分子は、約4.0kb超である、請求項1~23のいずれか一項に記載のLNP組成物。
【請求項25】
前記LNP組成物の前記LNPは、平均粒径が、前記参照LNP組成物のLNPの平均粒径と比べて少なくとも10%大きい、請求項24に記載のLNP組成物。
【請求項26】
前記参照LNP組成物は、約4.0kb以上の長さの核酸分子を含む、請求項20~25のいずれか一項に記載のLNP組成物。
【請求項27】
核酸分子を細胞中に送達する方法であって、前記細胞と、請求項1~26のいずれか一項に記載のLNP組成物とを接触させることを含み、前記LNP組成物は、核酸分子を含む、方法。
【請求項28】
細胞のゲノムを編集する方法であって、前記細胞に、請求項1~26のいずれか一項に記載のLNP組成物を提供することを含む方法。
【請求項29】
前記LNP組成物の編集効率は、部位特異的エンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む参照LNP組成物の編集効率と比べて高く、前記核酸分子は、約4kb超である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記LNP組成物の編集効率は、前記参照LNP組成物の参照効率と比べて少なくとも5%高い、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記細胞は、哺乳類細胞である、請求項27~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記哺乳類細胞は、ヒト細胞、マウス細胞、又は非ヒト霊長類細胞である、請求項31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年11月28日に出願された米国仮特許出願第62/772,278号明細書に対する優先権の利益を主張するものであり、この明細書は、あらゆる図面を含めて全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
配列表の組み込み
添付の配列表の資料は、参照により本出願に組み込まれる。052984-536001WO_SequenceListing_ST25.txtと命名されている添付の配列表テキストファイルは、2019年11月21日作成されており、229,434バイトである。
【0003】
本開示は、分子(例えば核酸)を標的細胞に送達するための組成物及び方法に関する。そのような粒子は、例えば、ゲノム編集の成分の送達に有用である。具体的には、本出願は、RNA-脂質ナノ粒子組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
ゲノム配列決定技術及び分析方法の近年の進歩により、多様な生物学的機能及び疾患と関連する遺伝子要素の特定及びマッピングの能力が著しく加速されている。個々の遺伝要素の選択的摂動を可能にすることにより原因の遺伝的変異の逆行分析を可能にするためには、並びに合成生物学的応用、バイオテクノロジー的応用、及び医学応用を進めるためには、精密なゲノムターゲティング技術が必要とされている。近年では、操作されたヌクレアーゼを使用する標的化ゲノム編集技術は、ニッチな技術から、多くの生物学研究者により使用される高度な方法へと進歩している。この採用は、新規のクラスの部位特異的エンドヌクレアーゼ(例えば、有名なジンクフィンガー、転写活性化因子様エフェクター(TALE)、ホーミングメガヌクレアーゼ、及びクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)技術の開発)の出現により大きく加速されている。
【0005】
しかしながら、大きい生物学的活性剤(例えば、部位特異的エンドヌクレアーゼ、又はこれをコードする核酸)の標的細胞又は標的組織への送達は、この薬剤が標的の生体細胞又は生体組織に到達する困難さにより妨げられることが多い。具体的には、多くの生物学的活性剤の生体細胞への輸送は、この細胞の膜系により制限される可能性がある。実際には、細胞への送達が特に困難な生物学的活性剤の1つのクラスは大きな生体分子(例えば、タンパク質、核酸ベースの治療薬、及びこれらの誘導体)であることが広く報告されている。ある特定の核酸及びタンパク質は、細胞中又は血漿中では限られた期間でのみ安定しており、且つ高度に荷電している場合があり、そのため、細胞膜を超えた送達が困難になる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのため、部位特異的エンドヌクラーゼを標的生体細胞に送達するための組成物及び方法が必要とされている。具体的には、安定性を改善し得、特に興味深い生体細胞及び生体組織へのそのような生体分子の効率的な送達を可能にするための組成物及び方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このセクションは、本開示の一般的な概要を提供し、その全貌又はその特徴の全ての包括ではない。
【0008】
本開示は、新規の脂質ナノ粒子(LNP)ベースの組成物であって、部位特異的エンドヌクレアーゼをコードする核酸の標的細胞への送達に利用され得る、約3.8kb以下の長さの核酸分子を含む組成物(これ以降、「smLNP組成物」と称される)の発明に関する。いくつかの実施形態では、本開示は、細胞のゲノムを編集する方法であって、そのような細胞と、本明細書で説明されているLNP組成物とを接触させることを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書で説明されている組成物及び/又は方法を使用して疾患を処置する方法を提供する。
【0009】
一態様では、本開示のいくつかの実施形態は、脂質ベースのナノ粒子(LNP)組成物であって、(a)部位特異的エンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子と;(b)アミノ脂質、イオン化可能な脂質、中性脂質、PEG脂質、ヘルパー脂質、及びコレステロール又はコレステロール誘導体からなる群から選択される1つ又は複数の脂質部分とを含み;この核酸分子は、約3.8kb以下の長さである、LNP組成物に関する。そのようなLNP組成物は、これ以降は「smLNP組成物」と称される。
【0010】
本開示のsmLNP組成物の実施形態の実行は、下記の特徴の内の1つ又は複数を含み得る。いくつかの実施形態では、核酸分子は、約3.7kb以下の長さである。いくつかの実施形態では、核酸分子は、約3.5kb以下の長さである。いくつかの実施形態では、核酸分子は、メッセンジャーRNA(mRNA)である。いくつかの実施形態では、部位特異的エンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列は、少なくとも1つの追加のヌクレオチド配列に作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加のヌクレオチド配列は、非翻訳末端領域(UTR)、コンセンサスKozakシグナル、核局在化シグナル(NLS)をコードするヌクレオチド配列、リンカーペプチドをコードするヌクレオチド配列、タグペプチドをコードするヌクレオチド配列、又はこれらの内のいずれかの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、核局在化シグナル(NLS)は、ヌクレオプラスミンNLS又はSV40 NLSを含む。
【0011】
本開示のいくつかの実施形態では、部位特異的エンドヌクレアーゼは、Cas9タンパク質又はその機能性誘導体である。いくつかの実施形態では、部位特異的エンドヌクレアーゼは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0012】
本開示のいくつかの実施形態では、部位特異的エンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列は、宿主細胞中での発現にコドン最適化されている。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、哺乳類細胞である。いくつかの実施形態では、哺乳類細胞は、ヒト細胞、マウス細胞、又は非ヒト霊長類細胞である。
【0013】
いくつかの実施形態では、本開示のsmLNP組成物は、CRISPRシステムの1種又は複数種の追加の成分をさらに含む。いくつかの実施形態では、CRISPRシステムの1種又は複数種の追加の成分は、ガイドRNA(gRNA)、又はgRNAをコードする核酸分子を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているsmLNP組成物のsmLNPは、アミノ脂質を含む。いくつかの実施形態では、アミノ脂質は、C12-200を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているsmLNP組成物のsmLNPは、構造的脂質を含む。いくつかの実施形態では、構造的脂質は、コレステロールを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているsmLNP組成物のsmLNPは、ヘルパー脂質を含む。いくつかの実施形態では、ヘルパー脂質は、DOPEを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているsmLNP組成物のsmLNPは、PEG脂質を含む。いくつかの実施形態では、PEG脂質は、PEG-DMPEを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているsmLNP組成物のsmLNPは、C12-200、コレステロール、DOPE、及びPEG-DMPEの内の1つ又は複数を含む。いくつかの実施形態では、smLNPは、C12-200、コレステロール、DOPE、及びPEG-DMPEを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているsmLNP組成物のsmLNPは、部位特異的エンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む参照LNP組成物のLNPと比較した場合に物理化学的特性の変化率が低く、この核酸分子は、約4kb超である。いくつかの実施形態では、smLNP組成物のsmLNPは、物理化学的特性の変化率が、参照LNP組成物のLNPの対応する率と比べて少なくとも約5%低い。いくつかの実施形態では、smLNP組成物は、部位特異的エンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む参照LNP組成物のLNPと比較した場合に機能性の低下率が低く、この核酸分子は、約4kb超である。いくつかの実施形態では、smLNP組成物は、機能性の低下率が、参照LNP組成物の対応する率と比べて少なくとも約5%低い。
【0020】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているsmLNP組成物のsmLNPは、平均粒径が、部位特異的エンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む参照LNP組成物のLNPの平均粒径と比べて大きく、この核酸分子は、約4.4kb超である。いくつかの実施形態では、smLNP組成物のsmLNPは、平均粒径が、参照LNP組成物のLNPの平均粒径と比べて少なくとも約10%(例えば、少なくとも約11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、又はより大きいの内のいずれか)大きい。本開示のいくつかの実施形態では、参照LNP組成物は、約4.4kb以上の長さの核酸分子を含む。
【0021】
一態様では、本開示のいくつかの実施形態は、核酸分子を細胞中に送達する方法であって、この細胞と、本明細書で開示されているsmLNP組成物とを接触させることを含み、このsmLNP組成物は、核酸分子を含む、方法に関する。
【0022】
一態様では、本開示のいくつかの実施形態は、細胞のゲノムを編集する方法であって、この細胞に、本明細書で開示されているsmLNP組成物を提供することを含む、方法に関する。
【0023】
本開示の方法の実施形態の実行は、下記の特徴の内の1つ又は複数を含み得る。いくつかの実施形態では、smLNP組成物の編集効率は、部位特異的エンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む参照LNP組成物の編集効率と比べて高く、核酸分子は、約4kb超である。いくつかの実施形態では、smLNP組成物の編集効率は、参照LNP組成物の参照効率と比べて少なくとも5%高い。本明細書で開示されている方法のいくつかの実施形態では、細胞は、哺乳類細胞である。いくつかの実施形態では、哺乳類細胞は、ヒト細胞、マウス細胞、又は非ヒト霊長類細胞である。
【0024】
前述の概要は例示にすぎず、いかなる限定も意図されていない。本明細書で説明されている例示的な実施形態及び特徴に加えて、本開示の更なる態様、実施形態、目的、及び特徴は、図面、及び詳細な説明、及び特許請求の範囲から完全に明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1A】脂質ベースのナノ粒子(LNP)の特徴を明らかにするために実施した実験の結果の概要を示すグラフであり、SpCas9を含むLNP(即ち、参照LNP)と、smCas9を含むLNP(即ち、smLNP)との間のサイズの差違が示唆されている。図1Aは、動的光散乱(DLS)によりアッセイした場合のLNPの粒径を示す棒グラフである。
図1B図1Bは、多分散指数(PDI)で特徴付けた場合の混合LNP集団の不均一性を示す棒グラフである。
図1C図1Cは、ナノ粒子追跡分析(NTA)により測定した場合のLNPのサイズを示す棒グラフである。
図1D図1Dは、LNPのmRNA封入効率を示す棒グラフである。
図1E図1Eは、粒径と関連して粒子とRNAとの比の分布を示すグラフである。
図2】本開示のいくつかの実施形態に従った多くの例示的mRNA-LNP組成物(即ち、smLNP組成物)を使用することにより、マウス細胞に送達された様々な部位特異的エンドヌクレアーゼの編集効率を評価するために実施した実験の結果の概要を示すグラフである。この実験では、MessengerMAX(商標)トランスフェクション後に、マウスHepa 1-6細胞中の内在性アルブミン遺伝子座が、いくつかのエンドヌクレアーゼ(例えば、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)由来の参照Cas9タンパク質(SpCas9)、小さいCas9バリアント(smCas9);Gib11Spa3、Gib11Spa1、Slu、F8、E2、及びP2H12)によりターゲティングされる。
図3】本開示のいくつかの実施形態に従ったmRNA-LNP組成物を使用して細胞中に送達された場合に、Gib11Spa1 smCas9バリアント又はGib11Spa3 smCas9バリアントのいずれかを含むsmLNP組成物が、インビボで、SpCas9を含むLNP組成物と比べて強力であることを実証するために実施した実験の結果の概要を示すグラフである。
図4】C57BL/6マウスに静脈内投与された場合での、smCas9 GST3-K、smCas9 GST3、smCas9 GST3-v1、smCas9 GST1-v1をコードするmRNAを含むsmLNP、又は参照SpCas9を含むLNPの編集効率を表すグラフである。この実験の標的遺伝子座は、アルブミン遺伝子座であった。各点は、1匹の動物の全肝臓TIDE分析を表す。これらの結果から、本開示に係るmRNA-LNP製剤で送達された場合に、前述のsmCas9バリアントの全てが、SpCas9と比べて良好に機能することが実証された。
図5】未改変であるか又はN1-メチル-プソイドウリジン塩基で改変された場合での、smCas9 GST3-v1、smCas9 GST1-v1をコードするmRNAを含むsmLNP、又はSpCas9をコードする参照mRNAを含むLNPのINDEL効率を示す棒グラフである。この実験では、C57BL/6マウスにおいて、mRNA-LNPを、2mpkの単回用量で静脈内投与した。この結果から、(i)N1-メチル-プソイドウリジン改変により、SpCas9の場合に性能が改善されるが、GST3-v1又はGST1-v1の場合には改善されないこと、及び(ii)未改変mRNA及び塩基改変mRNAは、smCas9 mRNA-LNPの場合に良好に機能することが実証された。
図6】ナノ粒子追跡分析(NTA)により測定した場合の、保存中におけるmRNA-LNPの物理化学的特性(例えば安定性)の変化を評価するために実施した実験の結果の概要を示すグラフである。この実験では、mRNA-LNP濃度の変化を、2~8℃での7日間保存後に測定した。このグラフは、溶液1mL当たりのナノ粒子の数を示し、試験したナノ粒子は、約30~約500nmの範囲のサイズであり、且つ様々なRNA成分を含んだ。この結果から、粒子の濃度は、2~8℃で7日間にわたり保存された後のSpCas9の場合に低下するが、そのような濃度の低下は、smCas9バリアントのそれぞれをコードするmRNAを含むsmLNPの場合には観察されないことが実証された。
図7】本開示のいくつかの例示的な実施形態に従ったsmLNPの形態学的均一性を評価するために実施した実験の結果の概要を示す図である。この実験では、SpCas9 mRNA又はsmCas9 Gib11Spa3 mRNAのいずれかを含むLNPの画像を、クライオ透過型電子顕微鏡(クライオTEM)を使用して撮影した。
図8】本開示のいくつかの実施形態に従ったmRNA-LNP組成物を使用して細胞中に送達されたSmCas9は、SpCas9と比較して2~8℃での9日間の保存後に機能的安定性の改善を示すことを実証するために実施した実験の結果の概要を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書で提供されるのは、CRISPR/Cas遺伝子編集成分の細胞への送達のための新規の脂質ベースのナノ粒子(LNP)組成物及び方法である。本開示のいくつかの実施形態は、部位特異的エンドヌクレアーゼ(例えば、小さいCas9(smCas9)エンドヌクレアーゼ)をコードするか、又は1種若しくは複数種のsmCas9に由来する部位特異的エンドヌクラーゼをコードするmRNAを封入するLNPを使用してインビボでゲノム編集成分を送達するための組成物及び方法を提供する。SmCas9をコードするか又は1種若しくは複数種のsmCas9に由来する部位特異的エンドヌクレアーゼをコードするそのようなmRNAも、本明細書では「smCas9 mRNA」と称される。任意の特定の理論に拘束されないが、封入されたmRNAのサイズの小ささ(例えば、約3.8kb未満の長さ)は、4.0kb超の長さの核酸分子を含む対応するLNP組成物と比較して、smLNPへのパッケージング上の利点を付与すると考えられる。下記でより詳細に説明するように、本開示のいくつかの実施形態に従ったsmLNPは、対応するLNPと比較した場合に、ゲノム編集性能の改善及び安定性の改善の両方を示している。
【0027】
本明細書で開示されている組成物及び方法は、商業的に及び/又は臨床的に重要な適用性を有することが期待されており、なぜならば、LNP送達技術は、多くのインビボ遺伝子編集アプローチの重要な構成要素だからである。商業的に及び/又は臨床的に使用されているほとんどのLNPシステムは、現在、siRNAペイロードを担持しており、このsiRNAペイロードは、mRNAペイロードと比べて小さくあり得、安定であり得、及び/又は安全であり得る。大型で複雑なペイロードと考えられている部位特異的エンドヌクレアーゼ(例えばCas9)をコードする核酸(例えばmRNA)を送達するための安定したLNPの開発は、当該技術分野では依然として課題のままである。
【0028】
smCax9をコードするか又は1種若しくは複数種のsmCas9に由来する部位特異的エンドヌクレアーゼをコードするmRNAの、LNP送達用のペイロードとしての利用により、インビボでの遺伝子編集ヌクレアーゼの送達のためのLNP技術が可能となり得る。本明細書で開示されている組成物及び方法の重要な利点として下記が挙げられるが、これらに限定されない:(1)smCas9 mRNAをコードするか又は1種若しくは複数種のsmCas9に由来する部位特異的エンドヌクレアーゼをコードするmRNAを送達するLNPは、これまでのところ、SpCas9をコードするmRNAを送達するLNPと比べて強力であることが分かっており、この性能の改善により、患者での安全な投与が可能となり得る;(2)このLNPは、SpCas9 mRNA担持LNPと比べて安定しており、そのため、このLNPは、より実行可能な薬物製剤である;並びに(3)より小さいサイズに起因して、SmCas9をコードするか又は1種若しくは複数種のsmCas9に由来する部位特異的エンドフクレーゼをコードするmRNAは、ScCas9 mRNAと比べて製造が容易である。
【0029】
下記でより詳細に説明するように、LNPベースの送達システムを、全身投与後に肝臓中の肝細胞を標的とするように操作し得る。smCas9 mRNAのsmLNP中への封入は、肝細胞ターゲティングに悪影響を及ぼすとは予想されず;実際には、smCas9 mRNA LNPは、LNPの安定性の増強に起因して、SpCas9 mRNA LNPと比較して薬物動態が改善され得る。smCas9 mRNAを送達するためのLNP技術の重要な特性は、エンドヌクレアーゼ発現の一過性(エンドヌクレアーゼレベルは、注射後1週間でベースラインに達すると予想される)と、目標とする効果まで徐々に増量するために複数回のLNP用量を投与する能力とである。
【0030】
定義
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての専門用語、標記、及び他の科学用語又は専門用語は、本開示が関連する技術分野の当業者に一般に理解されている意味を有することが意図されている。場合によっては、本明細書では、明確にするために及び/又は容易に参照するために、一般に理解されている意味を有する用語が定義されており、本明細書でのそのような定義の包含は、必ずしも、当該技術分野で一般に理解されているものとの実質的な違いを表すと解釈されるべきではない。本明細書で説明されているか又は言及されている技術及び手順の多くは、当業者により従来の方法論を使用して、良好に理解され且つ一般に採用される。
【0031】
単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、別途文脈が明確に指示しない限り、複数の参照を含む。例えば、用語「細胞(a cell)」は、1つ又は複数の細胞を含み、これらの混合も含む。「A及び/又はB」は、本明細書では、下記の選択肢:「A」、「B」、「A又はB」、並びに「A及びB」の全ての含むように使用される。
【0032】
用語「約(about)」は、本明細書で使用される場合、約(approximateliy)という通常の意味を有する。約の程度が、別途文脈から明確でない場合には、「約」は、記載されている値の±10%以内を意味するか、又は最も近い有効数字への丸めを意味しており、全ての場合において、記載された値を含む。範囲が記載されている場合には、この範囲は境界値が含まれる。
【0033】
本明細書で説明されている本開示の態様及び実施形態は、「含む」、「からなる」、及び「から本質的になる」態様及び実施形態を含むことが理解される。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「送達の増強」は、コントロールLNPによる核酸分子の目的の標的細胞又は標的組織への送達のレベルと比較して、LNPによる核酸分子の目的の標的組織(例えば哺乳類肝臓)への多い(例えば、少なくとも1.5倍多い、少なくとも2倍多い、少なくとも3倍多い、少なくとも4倍多い、少なくとも5倍多い、少なくとも6倍多い、少なくとも7倍多い、少なくとも8倍多い、少なくとも9倍多い、少なくとも10倍多い)送達を意味する。組織へのLNPの送達レベルを、(i)細胞中で若しくは組織中で産生されたタンパク質の量と、前記細胞若しくは組織の重量とを比較することによるか;(ii)細胞中の若しくは組織中の核酸分子の量と、前記細胞若しくは組織の重量とを比較することによるか;(iii)細胞中で若しくは組織中で産生されたタンパク質の量と、前記細胞中の若しくは組織中のタンパク質の総量とを比較することによるか;又は(iv)細胞中の若しくは組織中のポリヌクレオチドの量と、前記細胞中の若しくは組織中の核酸分子の総量とを比較することにより、測定し得る。
【0035】
用語「個体」、「対象」、「宿主」、及び「患者」は、本明細書では互換的に使用され、且つ診断、処置、又は治療が望まれている任意の哺乳類対象(例えば、ヒト(例えばヒト対象)、非ヒト哺乳類、及び非ヒト霊長類)を指し、特にヒトを指す。
【0036】
用語「核酸分子」及び「ポリヌクレオチド」は、本明細書では互換的に使用され、且つRNA分子及びDNA分子の両方(例えば、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA、及び核酸類似体を含むDNA分子又はRNA分子を含む核酸分子)を指す。核酸分子は、二本鎖又は一本鎖(例えば、センス鎖若しくはアンチセンス鎖)であり得る。核酸分子は、非定型の又は改変されたヌクレオチドを含み得る。用語「ポリヌクレオチド配列」及び「核酸配列」は、本明細書で使用される場合、ポリヌクレオチド分子の配列を互換的に指す。本明細書では、37 CFR §1.822に記載されているようなヌクレオチド塩基に関する命名法が使用されている。本開示のいくつかの実施形態では、本明細書で開示されているsmLNP組成物の核酸分子は、メッセンジャーRNA(mRNA)である。
【0037】
用語「組換え」核酸分子は、本明細書で使用される場合、人間の介入により変更されている核酸分子を指す。非限定的な例として、cDNAは、インビトロでのポリメラーゼ反応により生成されているか若しくはリンカーが付着している任意の核酸分子、又はクローニングベクター若しくは発現ベクター等のベクターに組み込まれている任意の核酸分子のような組換えDNA分子である。非限定的な例として、組換え核酸分子は、1)例えば、核酸分子の化学技術又は酵素技術を使用して(例えば、化学核酸合成の使用により、又は複製、重合、エキソヌクレアーゼによる消化、エンドヌクレアーゼによる消化、ライゲーション、逆転写、転写、塩基改変(例えばメチル化等)、若しくは組換え(例えば、相同組み換え及び部位特異的組換え)に関する酵素の使用により)、インビトロで合成されているか又は改変されており;2)天然ではコンジュゲートしていないコンジュゲートヌクレオチド配列を含み;3)天然に存在する核酸分子配列に対して1つ若しくは複数のヌクレオチドを欠くように、分子クローニング技術を使用して操作されており、及び/又は4)天然に存在する核酸配列に対して1つ若しくは複数の配列の変化若しくは再配列を有するように、分子クローニング技術を使用して操作されている。
【0038】
用語「作動可能に連結されている」は、本明細書で使用される場合、2つ以上の要素(例えば、ポリペプチド配列又はポリヌクレオチド配列)の間の物理的な又は機能的な連結であって、これらの要素が、意図された様式で作動することを可能にする連結を指す。例えば、目的のポリヌクレオチドと調節配列(例えばプロモーター)との間の作動可能な連結は、目的のポリヌクレオチドの発現を可能にする機能的連結である。この意味では、用語「作動可能に連結されている」は、調節領域と、転写されるコード配列との位置決めであって、この調節領域が、目的のコード配列の転写又は翻訳の調節に有効であるような位置決めを指す。本明細書で開示されているいくつかの実施形態では、用語「作動可能に連結されている」は、ポリペプチド又は機能性RNAをコードする配列に対して適切な位置に調節配列が配置されている配置であって、この制御配列が、ポリペプチドをコードするmRNA、ポリペプチド、及び/又は機能性RNAの発現又は細胞内局在化を指示するか又は調節するような配置を示す。そのため、プロモーターは、核酸配列の転写を媒介し得る場合には、この核酸配列と作動可能に連結されている。作動可能に連結されている要素は、連続しているか、又は連続していない。
【0039】
用語「組換え」は、本明細書で使用される場合、2つのポリヌクレオチドの間の遺伝情報の交換のプロセスを指す。本明細書で使用される場合、「相同組み換え修復(homology-directed repair)(HDR)」は、例えば細胞中での二本鎖切断の修復中に起こる特殊な形のDNA修復を指す。このプロセスは、ヌクレオチド配列の相同性を必要とし、「ドナー」分子を使用して「標的」分子(例えば、二本鎖切断を経験したもの)の修復をテンプレート化し、ドナーから標的へと遺伝情報を伝達させる。相同組み換え修復は、ドナーポリヌクレオチドが標的分子と異なり、且つドナーポリヌクレオチドの配列の一部又は全てが標的DNAに組み込まれる場合には、標的分子の配列の変更(例えば、挿入、欠失、変異)をもたらし得る。いくつかの実施形態では、ドナーポリヌクレオチド、ドナーポリヌクレオチドの一部、ドナーポリヌクレオチドのコピー、又はドナーポリヌクレオチドのコピーの一部が、標的DNAに組み込まれる。
【0040】
用語「非相同末端結合(NHEJ)」は、(修復を導くために相同配列を必要とする相同組み換え修復とは対照的に)相同テンプレートを必要とすることなく切断末端を互いに直接ライゲートすることによるDNA中の二本鎖切断の修復を指す。NHEJは、二本鎖切断の部位付近のヌクレオチド配列が失われる(欠失する)ことが多い。
【0041】
「ヌクレアーゼ」及び「エンドヌクレアーゼ」は、本明細書では、ポリヌクレオチドを開裂するためにヌクレオチド鎖切断触媒活性を有する酵素を意味するために互換的に使用される。この用語は、部位特異的エンドヌクレアーゼを含み、例えば、有名なジンクフィンガー、転写活性化因子様エフェクター(TALE)、ホーミングメガヌクレアーゼ、及びクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)システムの部位特異的エンドヌクレアーゼ、例えばCasタンパク質等を含む。
【0042】
用語「部位特異的改変酵素」又は「RNA結合部位特異的改変酵素」は、本明細書で使用される場合、RNAに結合し且つ特定のDNA配列を標的とするポリペプチド(例えばCas9ポリペプチド)を意味する。部位特異的改変酵素は、本明細書で使用される場合、この部位特異的改変酵素に結合しているRNA分子により特定のDNA配列を標的とする。RNA分子は、標的DNA内の標的配列に結合するか、ハイブリダイズするか、又は相補的な配列を含み、そのため、結合したポリペプチドの標的が、標的DNA内の特定の位置(標的配列)に定められる。
【0043】
「開裂」は、DNA分子の共有結合性骨格の破壊を意味する。開裂を、ホスホジエステル結合の酵素的な又は化学的な加水分解が挙げられるがこれに限定されない様々な方法により開始させ得る。一本鎖開裂及び二本鎖開裂の両方が可能であり、二本鎖開裂は、2つの異なる一本鎖開裂事象の結果として起こり得る。DNA開裂により、平坦な末端又は千鳥状の末端のいずれかが生じ得る。いくつかの実施形態では、ガイドRNA及び部位特異的改変酵素を含む複合体を使用して、標的とする二本鎖DNAを開裂する。
【0044】
ヌクレアーゼの「開裂ドメイン」、又は「活性ドメイン」、又は「ヌクレアーゼドメイン」は、DNA開裂の触媒活性を有するヌクレアーゼ内のポリペプチド配列又はドメインを意味する。開裂ドメインは、単一ポリペプチド鎖に含まれ得るか、又は開裂活性は、2つ(又はより多く)のポリペプチドの会合により生じ得る。単一のヌクレアーゼドメインは、所与のポリペプチド内のアミノ酸の複数の孤立したストレッチからなり得る。
【0045】
用語「処置」、及び「処置する」等は、本明細書では、所望される薬理学的効果及び/又は生理学的効果を得ることを概して意味するために使用される。この効果は、疾患若しくはその症状を完全に若しくは部分的に予防するという点で予防的であり、並びに/又は疾患及び/若しくはこの疾患に起因する副作用を部分的に若しくは完全に治癒するという点で治療的である。「処置」は、本明細書で使用される場合、哺乳類の疾患又は症状のあらゆる処置を包含し、(a)この疾患若しくは症状にかかりやすいがこの疾患若しくは症状とまだ診断されていない対象において、この疾患若しくは症状が発症することを予防すること;(b)この疾患若しくは症状を阻害すること(例えば、この疾患若しくは症状の進展を停止させること);又は(c)この疾患を緩和すること(例えば、この疾患の退行を引き起こすこと)を含む。治療薬を、疾患又は障害の発症前、発症中、又は発症後に投与する。進行中の疾患の処置(この処置により、患者の望ましくない臨床症状が安定化されるか又は軽減される)が、特に目的である。そのような処置を、影響を受けた組織の機能が完全に失われる前に実施することが望ましい。この治療を、望ましくは、疾患の症候段階中に施し、場合によっては、疾患の症候段階後に施す。
【0046】
見出し(例えば、(a)、(b)、(i)等)は、単に明細書及び特許請求の範囲の読み取りを容易にするために提示される。明細書又は特許請求の範囲で見出しが使用されていても、工程又は要素を、アルファベット順に若しくは番号順に実施する必要はないか、又は提示されている順に実施する必要はない。
【0047】
本開示の脂質ベースのナノ粒子組成物
一態様では、本明細書で提供されるのは、脂質ベースのナノ粒子(LNP)組成物であって、(a)部位特異的エンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子と;(b)アミノ脂質、イオン化可能な脂質、中性脂質、PEG脂質、ヘルパー脂質、及びコレステロール又はコレステロール誘導体からなる群から選択される1つ又は複数の脂質部分とを含み;この核酸分子は、約3.8kb以下の長さである(smLNP)、組成物である。いくつかの実施形態では、部位特異的エンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列は、少なくとも1つの追加のヌクレオチド配列に作動可能に連結されている。本開示のいくつかの実施形態では、部位特異的エンドヌクレアーゼは、Cas9タンパク質又はその機能性誘導体である。本開示のいくつかの実施形態では、部位特異的エンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列は、宿主細胞中での発現にコドン最適化されている。いくつかの実施形態では、本開示のsmLNP組成物は、CRISPRシステムの1種又は複数種の追加の成分をさらに含む。いくつかの実施形態では、CRISPRシステムの1種又は複数種の追加の成分は、ガイドRNA(gRNA)、又はgRNAをコードする核酸分子を含む。
【0048】
核酸分子
本開示のsmLNP組成物のいくつかの実施形態に従った核酸分子は、約3.8kb、約3.7kb、約3.6kb、約3.5kb、約3.4kb、約3.3kb、約3.2kb、約3.1kb、又は約3.0kbの長さ(これらの値の間の任意の範囲を含む)である。いくつかの実施形態では、この核酸分子は、約2.9kb、約2.8kb、約2.7kb、約2.6kb、約2.5kb、約2.4kb、約2.3kb、約2.2kb、約2.1kb、又は約2.0kbの長さ(これらの値の間の任意の範囲を含む)である。いくつかの実施形態では、この核酸分子は、約3.8kb未満、約3.7kb未満、約3.6kb未満、約3.5kb未満、約3.4kb未満、約3.3kb未満、約3.2kb未満、約3.1kb未満、又は約3.0kb未満の長さである。いくつかの実施形態では、この核酸分子は、約2.9kb未満、約2.8kb未満、約2.7kb未満、約2.6kb未満、約2.5kb未満、約2.4kb未満、約2.3kb未満、約2.2kb未満、約2.1kb未満、又は約2.0kb未満の長さである。いくつかの実施形態では、このsmLNP組成物の核酸分子は、約3.8kb~約2.0kb、例えば、約3.7kb~約2.5kb、約3.5kb~約2.6kb、約3.2kb~約2.4kb、又は約3.0kb~約2.0kb、例えば、約2.9kb~2.2kb、約2.8kb~約2.3kb、約2.7kb~約2.4kb、約2.6kb~約2.5kb、又は約3.0kb~約2.5kbの長さである。いくつかの実施形態では、このsmLNP組成物の核酸分子は、約3.5kbの長さである。
【0049】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されているsmLNP組成物の内のいずれかによれば、部位特異的エンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列は、少なくとも1つの追加のヌクレオチド配列に作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加のヌクレオチド配列は、非翻訳末端領域(UTR)、コンセンサスKozakシグナル、核局在化シグナル(NLS)をコードするヌクレオチド配列、リンカーペプチドをコードするヌクレオチド配列、タグペプチドをコードするヌクレオチド配列、又はこれらの内のいずれかの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、コンセンサスKozakシグナルは、リボソームへのmRNAの初期結合を促進し、それにより、このmRNAのポリペプチド産物への翻訳が増強される。
【0050】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されているsmLNP組成物の内のいずれかによれば、smLNP組成物の核酸分子は、3’及び/又は5’非翻訳領域(UTR)をさらに含む。いくつかの実施形態では、3’UTR又は5’UTRは、ヒト遺伝子配列に由来する。非限定的な例示的3’UTR及び5’UTRとして、a-及びβ-グロビン、アルブミン、HSD17B4、及び真核生物伸長因子laが挙げられる。加えて、ウイルス由来の5’UTR及び3’UTRも使用され得、オルソポックスウイルスUTR配列及びサイトメガロウイルスUTR配列が挙げられる。いくつかの実施形態では、5’UTRは、配列番号20のポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、3’UTRは、配列番号21のポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、mRNAは、5’キャップ(例えばm7G(5’)ppp(5’)N)を含む。加えて、このキャップは、キャップ-0(ここで、ヌクレオチドNは2’OMeを含まない)、又はキャップ-1(ここで、ヌクレオチドNは2’OMeを含む)、又はキャップ-2(ここで、ヌクレオチドN及びN+lは2’OMeを含む)である。このキャップはまた、抗リバースキャップ類似体(ARCA)により組み込まれたような構造m2 7’3 “G(5’)Nであってもよく、同様に、同様のキャップ-0、キャップ-1、及びキャップ2等の構造が挙げられ得る。いくつかの実施形態では、5’キャップは、核外輸送を調節し得;エキソヌクレアーゼによる分解を防止し得;翻訳を促進し得;且つ5’近位のイントロンの切除を促進し得る。キャップの安定化要素として、ホスホロチオエート連結、ボラノホスフェート改変、及びメチレン架橋が挙げられる。加えて、キャップはまた、真核生物の翻訳開始因子4EであるeIF4Eの結合要素として作用する非核酸実体も含み得る。いくつかの実施形態では、mRNAは、ポリ(A)テールを含む。このテールは、約40~約300個のヌクレオチドの長さであり得る。いくつかの実施形態では、このテールは、約40~約100個のヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、このテールは、約100~約300個のヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、このテールは、約100~約200個のヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、このテールは、約50~約200個のヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、このテールは、約50~約250個のヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、このテールは、約100、150、又は200個のヌクレオチドの長さである。このポリ(A)テールは、エキソヌクレアーゼによる分解を防止するために、改変(例えば、ホスホロチオエート連結及び核酸塩基に対する改変)を含み得る。加えて、このポリ(A)テールは、改変されたか若しくは非天然の核酸塩基又は他の合成部分を含む可能性がある3’「キャップ」を含み得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されているsmLNP組成物の内のいずれかによれば、smLNP組成物の核酸分子は、核局在化シグナル(NLS)をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、このNLSは、ヌクレオプラスミンNLS又はSV40 NLSを含む。いくつかの実施形態では、ヌクレオプラスミンNLSは、配列番号23のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ヌクレオプラスミンNLSは、配列番号22のポリヌクレオチド配列によりコードされる。いくつかの実施形態では、SV40 NLSは、配列番号25のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、SV40 NLSは、配列番号24のポリヌクレオチド配列によりコードされる。いくつかの実施形態では、核酸分子は、ヌクレオプラスミンNLSをコードするヌクレオチド配列と、SV40 NLSをコードするヌクレオチド配列とを含む。
【0052】
本明細書で使用される場合、用語「部位特異的エンドヌクレアーゼ」は、ゲノムDNAを開裂するためのゲノム編集で使用されるヌクレアーゼを指す。
【0053】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されているsmLNP組成物の内のいずれかによれば、smLNP組成物の核酸分子(例えば、mRNA等のRNA)は、Casタンパク質(例えばCas9)又はその機能性誘導体である部位特異的エンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、天然に存在するCasタンパク質の「機能性誘導体」である。天然配列のポリペプチドの用語「機能性誘導体」は、天然配列のポリペプチドと共通の定性的な生物学的特性を有する化合物を指す。本明細書で使用される場合、「機能性誘導体」として、対応する天然配列のポリペプチドと共通の生物学的活性を有するという条件で、天然配列の断片、並びに天然配列のポリペプチドの誘導体及びその断片が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で企図される非限定的な例示的生物学的活性は、機能性誘導体のDNA基質を加水分解して断片化する能力である。用語「誘導体」は、ポリペプチドのアミノ酸配列バリアント、共有結合性改変、及びその融合体の両方を包含する。
【0054】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されているsmLNP組成物の内のいずれかによれば、本明細書で開示されているsmLNP組成物の核酸分子成分(例えば、mRNA等のRNA)は、1種又は複数種のsmCas9に由来する部位特異的エンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む。配列番号1のアミノ酸配列を含むGib11Spa1エンドヌクレーゼ、又はその、配列番号1に対して少なくとも90%の配列同一性を有するバリアント。いくつかの実施形態では、部位特異的エンドヌクレアーゼは、配列番号2のアミノ酸配列を含むGib11Spa3エンドヌクレアーゼ、又はその、配列番号2に対して少なくとも90%の配列同一性を有するバリアントである。いくつかの実施形態では、部位特異的エンドヌクレアーゼは、配列番号3のアミノ酸配列を含むE2Cas9エンドヌクレアーゼ、又はその、配列番号3に対して少なくとも90%の配列同一性を有するバリアントである。いくつかの実施形態では、部位特異的エンドヌクレアーゼは、配列番号4のアミノ酸配列を含むF8Cas9エンドヌクレアーゼ、又はその、配列番号4に対して少なくとも90%の配列同一性を有するバリアントである。いくつかの実施形態では、部位特異的エンドヌクレアーゼは、配列番号5のアミノ酸配列を含むP2H12Cas9エンドヌクレアーゼ、又はその、配列番号5に対して少なくとも90%の配列同一性を有するバリアントである。いくつかの実施形態では、部位特異的エンドヌクレアーゼは、配列番号6のアミノ酸配列を含むSluCas9エンドヌクレアーゼ、又はその、配列番号6に対して少なくとも90%の配列同一性を有するバリアントである。
【0055】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されているsmLNP組成物の内のいずれかによれば、smLNP組成物の核酸分子は、CasヌクレアーゼをコードするmRNA(本明細書ではCasヌクレアーゼmRNAとも称される)である。このmRNAを、安定性及び/又は免疫原性の改善のために改変し得る。この改変を、mRNA内の1つ又は複数のヌクレオシドに行い得る。mRNA核酸塩基への化学改変の例として、プソイドウリジン、1-メチル-プソイドウリジン(又はN1-メチルプソイドウリジン)、5-メトキシウリジン、及び5-メチル-シチジンが挙げられる。いくつかの実施形態では、このmRNAは、N1-メチルプソイドウリジン塩基改変を含む。いくつかの実施形態では、このmRNAは、プソイドウリジン塩基改変を含む。安定性、発現、及び免疫原性を改善するための追加の既知の改変が企図される。CasヌクレアーゼをコードするmRNAは、特定の細胞型(例えば、真核細胞、哺乳類細胞、又はより具体的にはヒト細胞)での発現にコドン最適化され得る。いくつかの実施形態では、このmRNAは、ヒトコドン最適化されたCas9ヌクレアーゼをコードする。いくつかの実施形態では、このmRNAは、ウリジン枯渇によりさらに改変されている。いくつかの実施形態では、このmRNAは、(例えば、Geneious(登録商標)ソフトウェアプラットフォームを使用して)ウリジン枯渇及びコドン最適化の両方により改変されている。いくつかの実施形態では、このmRNAは精製されている。いくつかの実施形態では、このmRNAは、沈殿法を使用して精製されている。いくつかの実施形態では、このmRNAは、クロマトグラフィーベースの方法(例えば、HPLCベースの方法又は同等の方法)を使用して精製されている。いくつかの実施形態では、このmRNAは、沈殿法及びHPLCベースの方法の両方を使用して精製されている。
【0056】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されているsmLNP組成物の内のいずれかによれば、部位特異的エンドヌクレアーゼは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する部位特異的エンドヌクレアーゼに対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。用語「%の同一性」は、2つ以上の核酸又はタンパク質の文脈において本明細書で使用される場合、下記で説明するデフォルトパラメータを有するBLAST又はBLAST 2.0配列比較アルゴリズムを使用して測定したか又は手動によるアラインメント及び目視検査により測定した際に、同一であるか、又は同一であるヌクレオチド若しくはアミノ酸の指定の割合(例えば、比較ウィンドウ又は指定の領域にわたり一致が最大となるように比較してアラインした場合に、指定の領域にわたり約60%の配列同一性、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくはより高い同一性)を有する2つ以上の配列又は部分配列を指す。例えば、ncbi.nlm.nih.gov/BLASTでのNCBIウェブサイトを参照されたい。次いで、そのような配列は、「実質的に同一」であると言われる。この定義はまた、試験配列の補完も指すか、又はこの補完にも適用される。この定義はまた、欠失及び/又は付加を有する配列、並びに置換を有する配列も含む。配列同一性は、典型的には、少なくとも約20個のアミノ酸若しくはヌクレオチドの長さの領域にわたり存在するか、又は10~100個のアミノ酸若しくはヌクレオチドの長さの領域にわたり存在するか、又は所与の配列の全長にわたり存在する。
【0057】
必要に応じて、公開されている技術及び広く利用可能なコンピュータプログラム(例えば、GCSプログラムパッケージ(Devereux et al,Nucleic Acids Res.12:387,1984)、BLASTP、BLASTN、FASTA(Atschul et al.,J.Molecular Biol.215:403,1990))を使用して、配列同一性を算出し得る。配列同一性を、デフォルトパラメータを有する配列分析ソフトウェア(例えば、Genetics Computer Group at the University of Wisconsin Biotechnology Center(1710 University Avenue,Madison,Wis.53705)のSequence Analysis Software Package)を使用して測定し得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されているsmLNP組成物の内のいずれかによれば、部位特異的エンドヌクレアーゼは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、部位特異的エンドヌクレアーゼは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されているsmLNP組成物の内のいずれかによれば、smLNP組成物の核酸分子は、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているsmLNP組成物の核酸分子は、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているsmLNP組成物の核酸分子は、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されているsmLNP組成物の内のいずれかによれば、smLNP組成物の核酸分子は、配列番号35、37、39、41、43、45、47、及び49の内のいずれか1つのアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。
【0061】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されているsmLNP組成物の内のいずれかによれば、smLNP組成物の核酸分子は、配列番号34、36、38、40、42、44、46、及び48の内のいずれか1つのポリヌクレオチド配列を含む。
【0062】
ヌクレオチド配列の配列最適化
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されているsmLNP組成物の内のいずれかによれば、smLNP組成物の核酸分子(例えば、mRNA等のRNA)は、配列最適化されているヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているsmLNP組成物の核酸分子は、標的細胞中での発現に配列最適化されている部位特異的エンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む。配列最適化されたヌクレオチド配列(例えば、部位特異的エンドヌクレアーゼをコードする、コドン最適化されたmRNA配列)は、典型的には、参照配列(例えば、部位特異的エンドヌクレアーゼをコードする野生型ヌクレオチド配列)に対して少なくとも1つの同義の核酸塩基置換を含む配列である。配列最適化されているヌクレオチド配列は、参照配列と配列が部分的に又は完全に異なり得る。例えば、TCTコドンで一様にコードされるポリセリンをコードする参照配列を、核酸塩基の100%を置換する(各コドンに関して、1位のTがAに置き換えられ、2位のCがGに置き換えられ、3位のTがCに置き換えられる)ことにより配列最適化して、AGCコドンで一様にコードされるであろうポリセリンをコードする配列を得ることができる。参照ポリセリン核酸配列と、配列最適化されているポリセリン核酸配列との間のグローバルペアワイズアラインメント(global pairwise alignment)から得られた配列同一性の割合は、0%であるだろう。しかしながら、両方の配列からのタンパク質産物は、100%同一であるだろう。いくつかの配列最適化(コドン最適化と称される場合もある)方法が当該技術分野で既知であり、1つ又は複数の望ましい結果を達成するのに有用であり得る。この結果として、例えば下記が挙げられ得る:適切なフォールディングを確保するために、ある特定の組織標的及び/若しくは宿主生物でのコドン頻度を一致させること;ウリジンの枯渇;mRNAの安定性を増加させるか若しくは二次構造を減少させるために、G/C含有量を偏らせること;遺伝子の構築若しくは発現を損なう可能性があるタンデム反復コドン若しくは塩基ラン(base run)を最小限に抑えること;転写及び翻訳の制御領域をカスタマイズすること;タンパク質輸送配列を挿入するか若しくは除去すること;コードされたタンパク質において翻訳後改変部位(例えばグリコシル化部位)を除去する/付加すること;タンパク質ドメインを付加するか、除去するか、若しくはシャッフルすること;制限部位を挿入するか若しくは欠失させること;リボソーム結合部位及びmRNA分解部位を改変すること;タンパク質の様々なドメインが適切に折り畳むことを可能にするように翻訳速度を調整すること;並びに/又はポリヌクレオチド内の問題となる二次構造を減少させるか若しくは排除すること。
【0063】
配列最適化のツール、アルゴリズム、及びサービスは、当該技術分野で既知である。非限定的な例として、GeneArt(Life Technologies)、DNA2.0(Menlo Park CA)、Geneious(登録商標)、及び/又は独自方法からのサービスが挙げられる。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているsmLNP組成物の核酸分子(例えば、mRNA等のRNA)は、部位特異的エンドヌクレアーゼ又はその機能性誘導体をコードする、配列最適化されているヌクレオチド配列(例えばORF)を含み、この部位特異性エンドヌクレアーゼ又はその機能性誘導体は、(例えば、配列最適化されていない参照ヌクレオチド配列によりコードされる部位特異的エンドヌクレアーゼ又はその機能性誘導体と比較して)特性が改善されている(例えば、インビボでの投与後に発現有効性に関する特性が改善されている)配列最適化されているヌクレオチド配列によりコードされる。そのような特性として、下記の内の1つ又は複数が挙げられ得るが、これらに限定されない:核酸の安定性(例えばmRNAの安定性)を改善すること、標的組織中での翻訳有効性を高めること、発現されたトランケート型タンパク質の数を減少させること、発現されたタンパク質のフォールディングを改善するか又はミスフォールディングを防ぐこと、発現産物の毒性を減少させること、発現産物により引き起こされる細胞死を減少させること、並びにタンパク質凝集を増加させること及び/又は減少させること。いくつかの実施形態では、配列最適化されているヌクレオチド配列は、ヒト対象での発現にコドン最適化されており、当該技術分野で既知の問題の内の1つ又は複数を回避するか又は軽減する構造的特徴及び/又は化学的特徴を有しており、例えば下記を有している:構造及び機能の完全性を保持しつつ核酸ベースの治療薬の製剤化及び送達を最適化するのに有用な特徴;発現の閾値を克服するのに有用な特徴;発現速度;半減期、及び/又はタンパク質濃度を改善するのに有用な特徴;タンパク質の局在化を最適化するのに有用な特徴;並びに免疫反応及び/又は分解経路等の有害な生体反応を回避するのに有用な特徴。いくつかの実施形態では、配列最適化されているヌクレオチド配列は、ウリジンが枯渇している。いくつかの実施形態では、配列最適化されているヌクレオチド配列は、コドン最適化されており、且つウリジンが枯渇している。
【0064】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されているsmLNP組成物の内のいずれかによれば、smLNP組成物の核酸分子(例えば、mRNA等のRNA)は、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、及び配列番号19からなる群から選択される最適化配列を含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されているsmLNP組成物の内のいずれかによれば、smLNP組成物の核酸分子(例えば、mRNA等のRNA)は、哺乳類細胞中での発現にコドン最適化されているヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、哺乳類細胞は、ヒト細胞、マウス細胞、又は非ヒト霊長類(NHP)細胞である。
【0066】
CRISPR/Casシステムの追加の成分
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されているsmLNP組成物の内のいずれかによれば、smLNP組成物は、CRISPR/Casシステムの1種又は複数種の追加の成分をさらに含む。原理上、CRISPR/Casシステムの1種又は複数種の追加の成分に関しては特に限定されず、従って、この追加の成分は、CRISPRシステムのあらゆる既知の成分から選択され得る。いくつかの実施形態では、CRISPRシステムの1種又は複数種の追加の成分は、ガイドRNA(gRNA)を含む。いくつかの実施形態では、CRISPRシステムの1種又は複数種の追加の成分は、gRNAをコードする核酸分子を含む。
【0067】
gRNAは、目的の標的核酸配列にハイブリダイズするスペーサー配列と、CRISPR反復配列(例えば、CRISPR反復配列は、「tracr mate配列」とも称される)とを少なくとも有する。II型システムでは、gRNAはまた、tracrRNA配列と呼ばれる第2のRNAも有する。II型ガイドRNA(gRNA)では、CRISPR反復配列及びtracrRNA配列は、互いにハイブリダイズして二重鎖を形成する。この二重鎖は、部位特異的なポリペプチドに結合し、その結果、ガイドRNA及び部位特異的なエンドヌクレアーゼが複合体を形成する。この場合、ガイドRNA及び部位特異的なエンドヌクレアーゼは、リボ核タンパク質複合体を形成し得る(例えば、非共有結合的相互作用により結合し得る)。この複合体のガイドRNAは、標的DNAの配列に相補的なヌクレオチド配列を含むことにより、この複合体に標的特異性を付与し、この複合体の部位特異的エンドヌクレアーゼは、エンドヌクレアーゼ活性を付与する。換言すると、部位特異的エンドヌクレアーゼは、ガイドRNAのタンパク質結合セグメントとの会合により、標的DNA配列(例えば、染色体核酸中の標的配列;染色体外核酸(例えば、エピソーム核酸、ミニサークル等)中の標的配列;ミトコンドリア核酸中の標的配列;葉緑体核酸中の標的配列;プラスミド中の標的配列;等)に誘導される。
【0068】
ガイドRNAは、本明細書において単一ガイドRNA(sgRNA)とも称される単一分子ガイドRNAであり得る。いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、2つのRNA分子を含み得、「二重ガイドRNA」又は「dgRNA」と称される。いくつかの実施形態では、dgRNAは、CRISPR RNA(crRNA)を含む第1のRNA分子と、tracr RNAを含む第2のRNA分子とを含み得る。第1のRNA分子及び第2のRNA分子は、crRNA上のフラッグポール(flagpole)とtracr RNAとの間の塩基対形成により、RNA二重鎖を形成し得る。二重分子ガイドRNAは、RNAの二本鎖を有する。第1の鎖は、5’から3’の方向で、任意選択的なスペーサー延長配列、スペーサー配列、及び最小CRISPR反復配列を有する。第2の鎖は、最小tracrRNA配列(最小CRISPR反復配列に相補的)、3’tracrRNA配列、及び任意選択的なtracrRNA延長配列を有する。
【0069】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されているsmLNP組成物の内のいずれかによれば、ガイドRNAは、単一RNA分子を含み、「単一ガイドRNA」又は「sgRNA」と称される。いくつかの実施形態では、sgRNAは、tracr RNAに共有結合的に連結されたcrRNAを含む。いくつかの実施形態では、crRNA及びtracr RNAは、リンカーを介して共有結合的に連結されている。いくつかの実施形態では、単一分子ガイドRNAは、crRNA上のフラッグポールとtracr RNAとの間の塩基対形成によるステム-ループ構造を含む。
【0070】
II型システムにおける単一分子ガイドRNA(sgRNA)は、5’から3’の方向で、任意選択的なスペーサー延長配列、スペーサー配列、最小CRISPR反復配列、単一分子ガイドリンカー、最小tracrRNA配列、3’tracrRNA配列、及び任意選択的なtracrRNA延長配列を有する。任意選択的なtracrRNA延長は、ガイドRNAに追加の機能性(例えば安定性)を付与する要素を有し得る。単一分子ガイドリンカーは、最小CRISPR反復と最小tracrRNA配列とを連結してヘアピン構造を形成する。任意選択的なtracrRNA延長は、1つ又は複数のヘアピンを有する。
【0071】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されているsmLNP組成物の内のいずれかによれば、本明細書で開示されているsmLNP組成物の核酸分子は、CasヌクレアーゼをコードするmRNAであり、本明細書ではCasヌクレアーゼmRNAとも称される。このmRNAを、安定性及び/又は免疫原性の改善のために改変し得る。この改変を、mRNA内の1つ又は複数のヌクレオシドに行い得る。mRNA核酸塩基に対する化学的改変の例として、プソイドウリジン、1-メチル-プソイドウリジン(又はN1-メチルプソイドウリジン)、5-メトキシウリジン、及び5-メチル-シチジンが挙げられる。いくつかの実施形態では、このmRNAは、N1-メチルプソイドウリジン塩基改変を含む。いくつかの実施形態では、このmRNAは、プソイドウリジン塩基改変を含む。安定性、発現、及び免疫原性を改善するための追加の既知の改変が企図される。CasヌクレアーゼをコードするmRNAは、特定の細胞型(例えば、真核細胞、哺乳類細胞、又はより具体的にはヒト細胞)での発現にコドン最適化され得る。いくつかの実施形態では、このmRNAは、ヒトコドン最適化されたCas9ヌクレアーゼをコードする。いくつかの実施形態では、このmRNAは、ウリジン枯渇によりさらに改変されている。いくつかの実施形態では、このmRNAは、(例えば、Geneious(登録商標)ソフトウェアプラットフォームを使用して)ウリジン枯渇及びコドン最適化の両方により改変されている。いくつかの実施形態では、このmRNAは精製されている。いくつかの実施形態では、このmRNAは、沈殿法(例えば、LiCl沈殿、アルコール沈殿、又は例えば本明細書で説明されている同等の方法)を使用して精製されている。いくつかの実施形態では、このmRNAは、クロマトグラフィーベースの方法(例えば、HPLCベースの方法又は(例えば本明細書で説明されている)同等の方法)を使用して精製されている。いくつかの実施形態では、このmRNAは、沈殿法(例えばLiCl沈殿)及びHPLCベースの方法の両方を使用して精製されている。
【0072】
アミノ脂質
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているsmLNP組成物は、1種又は複数種のアミノ脂質を含み得る。用語「アミノ脂質」及び「陽イオン性脂質」は、本明細書では、1つ、2つ、3つ、又はより多い脂肪酸又は脂肪アルキル鎖と、pH滴定可能なアミノ頭部基(例えば、アルキルアミノ頭部基又はジアルキルアミノ頭部基)とを有する脂質及びその塩を含むように互換的に使用される。原理上、本明細書で開示されているsmLNP組成物のアミノ脂質に関しては特に限定されない。陽イオン性脂質は、典型的には、この陽イオン性脂質のpKa未満のpHでプロトン化されており(即ち、正に荷電しており)、このpKaを超えるpHで実質的に中性である。本開示の陽イオン性脂質はまた、滴定可能な陽イオン性脂質とも呼ばれ得る。いくつかの実施形態では、1種又は複数種の陽イオン性脂質として下記が挙げられる:プロトン化可能な第三級アミン(例えばpH滴定可能な)頭部基;アルキル鎖(ここで、各アルキル鎖は、独立して、0~3個(例えば、0個、1個、2個、又は3個)の二重結合を有する);頭部基とアルキル鎖との間のエーテル連結、エステル連結、又はケタール連結。そのような陽イオン性脂質として下記が挙げられるが、これらに限定されない:DSDMA、DODMA、DOTMA、DLinDMA、DLenDMA、γ-DLenDMA、DLin-K-DMA、DLin-K-C2-DMA(DLin-C2K-DMA、XTC2、及びC2Kとしても既知である)、DLin-K-C3-DMA、DLin-K-C4-DMA、DLen-C2K-DMA、y-DLen-C2-DMA、C12-200、cKK-E12、cKK-A12、cKK-O12、DLin-MC2-DMA(MC2としても既知である)、並びにDLin-MC3-DMA(MC3としても既知である)。
【0073】
ヘルパー脂質
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているsmLNP組成物は、1種又は複数種のヘルパー脂質を含む。用語「ヘルパー脂質」は、本明細書で使用される場合、トランスフェクション(例えば、部位特異的エンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含むナノ粒子のトランスフェクション)を増強する脂質を指す。原理上、本明細書で開示されているsmLNP組成物のヘルパー脂質に関しては特に限定されない。任意の特定の理論に拘束されることなく、ヘルパー脂質がトランスフェクションを増強するメカニズムには、粒子の安定性を増強することが含まれると考えられる。いくつかの実施形態では、ヘルパー脂質は、膜融合性を増強する。一般的に、本明細書で開示されているsmLNP組成物のヘルパー脂質は、当該技術分野で既知の任意のヘルパー脂質であり得る。本開示の組成物及び方法に適したヘルパー脂質の非限定的な例として、ステロイド、ステロール、及びアルキルレゾルシノールが挙げられる。本開示での使用に適した具体的なヘルパー脂質として下記が挙げられるが、これらに限定されない:飽和ホスファチジルコリン(PC)、例えば、ジステアロイル-PC(DSPC)及びジパリミトイル-PC(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC)、コレステロール、5-ヘプタデシルレゾルシノール、並びにコレステロールヘミスクシネート。いくつかの実施形態では、smLNP組成物のヘルパー脂質は、コレステロールを含む。
【0074】
構造的脂質
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているsmLNP組成物は、1種又は複数種の構造的脂質を含み得る。本明細書で使用される場合、用語「構造的脂質」は、ステロールを指し、ステロール部分を含む脂質も指す。任意の特定の理論に拘束されることなく、本開示のsmLNP中での構造的脂質の組み込みは、本粒子中の他の脂質の凝集の緩和に役立ち得ると考えられる。構造的脂質は、下記を含むがこれらに限定されない群から選択され得る:コレステロール、フェコステロール、シトステロール、エルゴステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、トマチジン、トマチン、ウルソール酸、アルファ-トコフェロール、ホパノイド、フィトステロール、ステロイド、及びこれらの混合物。いくつかの実施形態では、構造的脂質は、コレステロールである。
【0075】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているsmLNP組成物中の構造的脂質(例えば、コレステロール等のnステロール)の量は、約10mol%~約80mol%、約20mol%~約70mol%、約30mol%~約60mol%、又は約40mol%~約50mol%の範囲である。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているsmLNP組成物中の構造的脂質の量は、約25mol%~約30mol%、約30mol%~約35mol%、又は約35mol%~約40mol%の範囲である。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されている脂質組成物中の構造的脂質(例えば、コレステロール等のステロール)の量は、約24mol%、約29mol%、約34mol%、又は約39mol%である。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているsmLNP組成物中の構造的脂質の量は、少なくとも約10、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、又は80mol%である。
【0076】
リン脂質
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているsmLNP組成物は、1種又は複数種のリン脂質を含む。いくつかの実施形態では、リン脂質は、下記からなる群から選択される:1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジウンデカノイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DUPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:0ジエーテルPC)、1-オレオイル-2-コレステリルヘミスクシノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(OChemsPC)、1-ヘキサデシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(C16 Lyso PC)、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(ME 16:0 PE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセロール)ナトリウム塩(DOPG)、スフィンゴミエリン、及びこれらの任意の混合物。
【0077】
イオン化可能な脂質
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているsmLNP組成物は、1種又は複数種のイオン化可能な脂質を含む。原理上、本明細書で開示されているsmLNP組成物のイオン化可能な脂質に関しては特に限定されない。いくつかの実施形態では、この1種又は複数種のイオン化可能な脂質は、下記からなる群から選択される:3-(ジドデシルアミノ)-N1,N1,4-トリドデシル-1-ピペラジンエタンアミン(KL10)、N1-[2-(ジドデシルアミノ)エチル]-N1,N4,N4-トリドデシル-1,4-ピペラジンジエタンアミン(KL22)、14,25-ジトリデシル-15,18,21,24-テトラアザ-オクタトリアコンタン(KL25)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLin-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)、ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル 4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(DLin-MC3-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)、1,2-ジオレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DODMA)、2-({8-[(3u)-コレスタ-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-1-アミン(Octyl-CLinDMA)、(2R)-2-({8-[(3u)-コレスタ-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-1-アミン(Octyl-CLinDMA(2R))、及び(2S)-2-({8-[(3u)-コレスタ-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-1-アミン(Octyl-CLinDMA(2S))。
【0078】
PEG-脂質
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているsmLNP組成物は、1種又は複数種のポリエチレングリコール(PEG)脂質を含む。用語「PEG-脂質」は、ポリエチレングリコール(PEG)で改変されている脂質を指す。そのような脂質はまた、PEG化脂質とも称される。PEG-脂質の非限定的な例として、PEGで改変されているホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジン酸、PEG-セラミドコンジュゲート(例えば、PEG-CerC14又はPEG-CerC20)、PEGで改変されているジアルキルアミン、並びにPEGで改変されている1,2-ジアシルオキシプロパン-3-アミンが挙げられる。例えば、PEG脂質は、PEG-c-DOMG、PEG-DMG、PEG-DLPE、PEG-DMPE、PEG-DPPC、又はPEG-DSPE脂質であり得る。いくつかの実施形態では、PEG-脂質として下記が挙げられるが、これらに限定されない:1,2-ジミリストイル-sn-グリセロール メトキシポリエチレングリコール(PEG-DMG)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[アミノ(ポリエチレングリコール)](PEG-DSPE)、PEG-ジステリルグリセロール(PEG-DSG)、PEG-ジパルメトレイル、PEG-ジオレイル、PEG-ジステアリル、PEG-ジアシルグリカミド(PEG-DAG)、PEG-ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(PEG-DPPE)、又はPEG-l,2-ジミリスチルオキシルプロピル-3-アミン(PEG-c-DMA)。いくつかの実施形態では、PEG-脂質は、PEGで改変されているホスファチジルエタノールアミン、PEGで改変されているホスファチジン酸、PEGで改変されているセラミド、PEGで改変されているジアルキルアミン、PEGで改変されているジアシルグリセロール、PEGで改変されているジアルキルグリセロール及びこれらの混合物からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、PEG-脂質の脂質部分として、長さが約C14~約C22であり、好ましくは約C14~約C16であるものが挙げられる。いくつかの実施形態では、PEG部分(例えばmPEG-NH2)は、サイズが約1000、2000、5000、10,000、15,000、又は20,000ダルトンである。いくつかの実施形態では、PEG-脂質は、PEG2k-DMGである。いくつかの実施形態では、smLNP組成物の1種又は複数種のPEG脂質は、PEG-DMPEを含む。いくつかの実施形態では、smLNP組成物の1種又は複数種のPEG脂質は、PEG-DMGを含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているsmLNP組成物中のPEG-脂質の量は、約0.1mol%~約5mol%、約0.5mol%~約5mol%、約1mol%~約5mol%、約1.5mol%~約5mol%、約2mol%~約5mol%、約0.1mol%~約4mol%、約0.5mol%~約4mol%、約1mol%~約4mol%、約1.5mol%~約4mol%、約2mol%~約4mol%、約0.1mol%~約3mol%、約0.5mol%~約3mol%、約1mol%~約3mol%、約1.5mol%~約3mol%、約2mol%~約3mol%、約0.1mol%~約2mol%、約0.5mol%~約2mol%、約1mol%~約2mol%、約1.5mol%~約2mol%、約0.1mol%~約1.5mol%、約0.5mol%~約1.5mol%、又は約1mol%~約1.5mol%の範囲である。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されている脂質組成物中のPEG-脂質の量は、約2mol%である。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されている脂質組成物中のPEG-脂質の量は、約1.5mol%である。
【0080】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているsmLNP組成物中のPEG-脂質の量は、少なくとも約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、又は6mol%である。PEG-脂質は当該技術分野で既知であり、その追加の情報に関しては、例えば、米国特許第8158601号明細書及び国際公開第2015/130584A2号パンフレットで見出され得る。
【0081】
いくつかの特定の実施形態では、本明細書で説明されているsmLNP組成物は、下記の脂質を含む:C12-200アミノ脂質;1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE);コレステロール;及びPEG-DMPE。いくつかの実施形態では、本明細書で説明されているLNP組成物は、下記の脂質を含む:DLin-M-C3-DMA(MC3としても既知である)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロールメトキシポリエチレングリコール(PEG-DMG)、及び/又は1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)。
【0082】
本明細書で開示されているsmLNP組成物の脂質成分と部位特異的エンドヌクレアーゼをコードする核酸分子との比は、約10:1~約100:1(wt/wt)、例えば、10:1~約90:1、20:1~約80:1、30:1~約70:1、40:1~約60:1、又は10:1~約50:1、例えば、10:1~約45:1、15:1~約40:1、20:1~約35:1、25:1~約30:1、又は10:1~約40:1、15:1~約50:1、20:1~約30:1、又は10:1~約30:1の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、脂質成分と部位特異的エンドヌクレアーゼをコードする核酸分子との比は、約10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1、55:1、60:1、65:1、70:1、75:1、80:1、85:1、90:1、95:1、100:1である。いくつかの実施形態では、脂質成分と部位特異的エンドヌクレアーゼをコードする核酸分子とのwt/wt比は、約20:1又は約15:1である。
【0083】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているsmLNP組成物は、複数種の核酸分子であって、それぞれが部位特異的エンドヌクレアーゼをコードする、核酸分子を含み得る。例えば、本明細書で開示されている医薬組成物は、2種以上の核酸分子(例えば、mRNA等のRNA)であって、それぞれが部位特異的エンドヌクレアーゼをコードする、核酸分子を含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書で説明されているsmLNP組成物は、5:1、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1、55:1、60:1、若しくは70:1の脂質:ポリヌクレオチド重量比で、又はこれらの比の内の範囲又はいずれか(例えば、限定されないが、5:1~約10:1、約5:1~約15:1、約5:1~約20:1、約5:1~約25:1、約5:1~約30:1、約5:1~約35:1、約5:1~約40:1、約5:1~約45:1、約5:1~約50:1、約5:1~約55:1、約5:1~約60:1、約5:1~約70:1、約10:1~約15:1、約10:1~約20:1、約10:1~約25:1、約10:1~約30:1、約10:1~約35:1、約10:1~約40:1、約10:1~約45:1、約10:1~約50:1、約10:1~約55:1、約10:1~約60:1、約10:1~約70:1、約15:1~約20:1、約15:1~約25:1、約15:1~約30:1、約15:1~約35:1、約15:1~約40:1、約15:1~約45:1、約15:1~約50:1、約15:1~約55:1、約15:1~約60:1、若しくは約15:1~約70:1)で、核酸分子(例えばmRNA)を含み得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されている脂質ナノ粒子は、約0.1mg/mL~2mg/mL(例えば、限定されないが、0.1mg/mL、0.2mg/mL、0.3mg/mL、0.4mg/mL、0.5mg/mL、0.6mg/mL、0.7mg/mL、0.8mg/mL、0.9mg/mL、1.0mg/mL、1.1mg/mL、1.2mg/mL、1.3mg/mL、1.4mg/mL、1.5mg/mL、1.6mg/mL、1.7mg/mL、1.8mg/mL、1.9mg/mL、2.0mg/mL、又は2.0mg/mL超)の濃度で核酸分子を含む。
【0085】
LNPの調製
本開示の脂質ナノ粒子(核酸分子(例えばmRNA)が、この粒子の脂質部分内に封入されており、分解から保護されている)を、当該技術分野で既知の任意の方法(例えば、限定されないが、連続混合法、直接希釈プロセス、及びインライン希釈プロセス)により形成し得る。本明細書で説明されている脂質ナノ粒子の調製に適した追加の技術及び方法として、コアセルベーション、マイクロエマルション、超臨界流体技術、相反転温度(PIT)技術が挙げられる。
【0086】
いくつかの実施形態では、本開示のsmLNPを、連続混合法により製造し、例えば、第1の貯蔵器中に、核酸分子(例えばmRNA)を含む水溶液を準備すること、第2の貯蔵器中に、有機脂質溶液を準備すること(この有機脂質溶液中に存在する脂質は、有機溶媒(例えば、エタノール等の低級アルカノール)に可溶化されている)、及びこの水溶液と、この有機脂質溶液とを混合して、脂質小胞(例えばリポソーム)であって、この脂質小胞内に核酸分子を封入する脂質ビヒクルが実質的に瞬時に製造されるように、この有機脂質溶液と、この水溶液とが混合することを含むプロセスにより製造する。このプロセス、及びこのプロセスを実行するための装置は、当該技術分野で既知である。これに関するさらなる情報を、例えば米国特許出願公開第20040142025号明細書で見出し得、この明細書の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。脂質溶液及び緩衝液を混合チャンバ等の混合環境に連続的に導入する作用により、脂質溶液が緩衝液で連続的に希釈され、それにより、混合時に脂質小胞が実質的に瞬時に製造される。核酸分子を含む水溶液と、有機脂質溶液とを混合することにより、緩衝液(例えば水溶液)の存在下で有機脂質溶液が連続的に段階希釈され、核酸-脂質粒子が製造される。
【0087】
いくつかの実施形態では、本開示のsmLNPを、直接希釈プロセスであって、脂質小胞(例えばリポソーム)溶液を形成すること、及びこの脂質小胞溶液を、量が制御されている希釈緩衝液が入った回収容器に即時に且つ直接導入することを含む直接希釈プロセスにより製造する。いくつかの実施形態では、この回収容器は、希釈を容易にするために回収容器の内容物を撹拌するように構成されている1つ又は複数の要素を含む。いくつかの実施形態では、この回収容器中に存在する希釈緩衝液の量は、この回収容器に導入される脂質小胞溶液の量と実質的に等しい。
【0088】
いくつかの実施形態では、本開示のsmLNPを、インライン希釈プロセスであって、希釈緩衝液が入った第3の貯蔵器が第2の混合領域に流動的に連結されている、インライン希釈プロセスにより製造する。これらの実施形態では、第1の混合領域中で形成された脂質小胞(例えばリポソーム)溶液は、第2の混合領域中の希釈緩衝液と即時に且つ直接混合される。これらのプロセス、並びに直接希釈プロセス及びインライン希釈プロセスを実行するための装置は、当該技術分野で既知である。これに関するさらなる情報を、例えば米国特許出願公開第20070042031号明細書で見出し得、この明細書の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0089】
本開示のsmLNPの物理化学的特性
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているsmLNP組成物のsmLNPは、部位特異的エンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む参照LNP組成物のLNPと比較した場合に物理化学的特性の変化率が低く、この核酸分子は、約4kb超である。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているsmLNP組成物のsmLNPの物理化学的特性の変化率は、参照LNP組成物のLNPの対応する率と比べて少なくも約5%低い。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているsmLNP組成物のsmLNPの物理化学的特性の変化率は、参照LNP組成物のLNPの対応する率と比べて、少なくとも約5%低いか、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は少なくとも約100%低い。いくつかの実施形態では、物理化学的特性の変化は、経時的なsmLN組成物中のsmLNPの濃度及び/又はサイズにより決定されたsmLNP組成物のsmLNPの分解率である。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているsmLNP組成物のsmLNPの分解率は、参照LNP組成物のLNPの対応する率と比べて少なくも約5%低い。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているsmLNP組成物のsmLNPの分解率は、参照LNP組成物のLNPの対応する率と比べて、少なくとも約5%低いか、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は少なくとも約100%低い。
【0090】
本開示のLNPの機能性
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているsmLNP組成物のsmLNPは、部位特異的エンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む参照LNP組成物のLNPと比較した場合に機能性の低下率が低く、この核酸分子は、約4kb超である。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているsmLNP組成物のsmLNPの機能性の低下率は、参照LNP組成物のLNPの対応する率と比べて少なくも約5%低い。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているsmLNP組成物のsmLNPの機能性の低下率は、参照LNP組成物のLNPの対応する率と比べて、少なくとも約5%低いか、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は少なくとも約100%低い。
【0091】
いくつかの実施形態では、機能性の低下率は、部位特異的エンドヌクレアーゼをコードするsmLNPのゲノム編集効率により決定される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているsmLNP組成物のsmLNPの編集効率は、参照LNP組成物のLNPの対応する効率と比べて少なくとも約5%低い。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているsmLNP組成物のsmLNPの編集効率は、参照LNP組成物のLNPの対応する効率と比べて、少なくとも約5%低いか、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は少なくとも約100%低い。
【0092】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているsmLNP組成物のsmLNPは、平均粒径が、部位特異的エンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む参照LNP組成物のLNPの平均粒径と比べて大きく、この核酸分子は、約4.0kb超である。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているsmLNP組成物のsmLNPは、平均粒径が、参照LNP組成物のLNPの平均粒径と比べて少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%大きい。
【0093】
医薬組成物
一態様では、本明細書で開示されているsmLNPは、組成物(例えば医薬組成物)に組み込まれている。そのような組成物は、典型的には、smLNPと、薬学的に許容される担体とを含む。本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される担体」は下記を含むが、これらに限定されない:薬学的投与に適合する生理食塩水、溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤等。この組成物には、補助的な活性化合物(例えば抗癌剤)も組み込まれ得る。従って、本開示のいくつかの実施形態は、本明細書で説明されているsmLNP組成物と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。
【0094】
本開示のいくつかの実施形態は、生体分子(例えば、部位特異的エンドヌクレーゼ又はこれをコードする核酸分子)の標的細胞中への送達で使用される本明細書で説明されているsmLNP組成物を含む医薬組成物に関する。関連する態様では、本開示のいくつかの実施形態は、細胞のゲノムの編集で使用される本明細書で説明されているsmLNP組成物を含む医薬組成物に関する。さらに関連する態様では、本開示のいくつかの実施形態は、ヒト等の哺乳類の健康状態又は疾患の処置で使用されるsmLNP又は組成物(例えば医薬組成物)を提供する。
【0095】
本開示の方法
形成されると、本開示のsmLNPは、例えば部位特異的エンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子の対象又は生物の細胞への導入に特に有用である。従って、本開示のいくつかの実施形態は、核酸分子を細胞中に送達する方法であって、この細胞と、本明細書で開示されているsmLNP組成物又は医薬組成物とを接触させることを含み、このLNP組成物は、核酸分子を含む、方法に関する。この方法を、最初に、smLNPを上記で説明したように形成し、次いで、このsmLNPと細胞とを接触させることであって、この細胞への核酸分子の送達が起こるのに十分な期間にわたり接触させることにより、インビトロ又はインビボで実行し得る。
【0096】
いくつかの実施形態では、この方法は、生物学的に活性な分子成分(例えば核酸分子)の対象又は生物の細胞への送達に適した条件下で、本明細書で開示されているsmLNP又は医薬組成物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、smLNP又は医薬組成物を、例えば、投与を容易にするための添加剤を含むか又は含まない製剤化された分子組成物の親投与(例えば、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与)により、当該技術分野で一般に既知であるように、対象又は生物の細胞と接触させる。
【0097】
別の態様では、本開示のいくつかの実施形態は、細胞のゲノムを編集する方法であって、この細胞に、本明細書で開示されているsmLNP組成物又は医薬組成物を与えることを含む方法に関する。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているsmLNP又は組成物は、宿主細胞又は宿主生物中での遺伝子編集効率を改善する。いくつかの実施形態では、本開示のLNP組成物は、部位特異的エンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む参照LNP組成物の遺伝子編集効率と比べて高い遺伝子編集効率を付与し、この核酸分子は、約4kb超である。いくつかの実施形態では、smLNP組成物の編集効率は、参照LNP組成物の編集効率と比べて少なくとも約5%高い。いくつかの実施形態では、smLNP組成物の編集効率は、参照LNP組成物の編集効率と比べて少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は少なくとも約100%高い。いくつかの実施形態では、smLNP組成物の編集効率は、参照LNP組成物の編集効率と比べて少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、又は少なくとも7倍高い。いくつかの実施形態では、smLNP組成物の編集効率は、参照LNP組成物の編集効率と比べて少なくとも8倍、少なくとも9倍、又は少なくとも10倍高い。
【0098】
本開示の方法を、様々な宿主細胞及び宿主生物で実施し得る。適切な宿主として、哺乳類種等の動物種が挙げられ、例えば、霊長類(例えば、ヒト、及びチンパンジー、並びに他の非ヒト霊長類)、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ウシ、齧歯類(例えば、ラット及びマウス)、ウサギ、並びにブタが挙げられる。本明細書で開示されている方法のいくつかの実施形態では、宿主細胞は、哺乳類細胞である。いくつかの実施形態では、この哺乳類細胞は、ヒト細胞、マウス細胞、又は非ヒト霊長類細胞である。
【0099】
処置方法
一態様では、本開示のいくつかの実施形態は、必要な哺乳類(例えばヒト)の健康状態又は疾患と関連する1種又は複数種の症状を処置し、この症状を予防し、この症状を発症するリスク若しくは可能性を低減し(例えば、この症状に対する感受性を低減し)、この症状の発症を遅延させ、及び/又はこの症状を寛解させる方法であって、この哺乳類に、目的の遺伝子を標的とする、本明細書で説明されている部位特異的エンドヌクレアーゼをコードする核酸分子を含むsmLNP組成物の治療上有効な量を投与することを含む方法に関する。
【0100】
用語「投与」及び「投与する」は、本明細書で使用される場合、経口投与、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、皮下投与、筋肉内投与、及び局所投与、又はこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない投与経路による、生物活性の組成物又は製剤の送達を指す。この用語は、医療専門家による投与、及び自己投与を含むが、これらに限定されない。
【0101】
いくつかの実施形態では、健康状態又は疾患は、血友病Aである。いくつかの実施形態では、健康状態又は疾患は、循環器疾患である。
【0102】
血友病A
本開示のいくつかの実施形態は、必要な哺乳類(例えばヒト)の健康状態又は疾患と関連する1種又は複数種の症状を処置し、この症状を予防し、この症状を発症するリスク若しくは可能性を低減し、この症状の発症を遅延させ、及び/又はこの症状を寛解させる方法であって、この健康状態又は疾患は、血友病Aである、方法に関する。
【0103】
血友病A(HemA)は、血液中のFVIIIタンパク質を低レベルにするか又は検出不能なレベルにする第VIII因子(FVIII)遺伝子の遺伝的欠失により引き起こされる。これにより、組織の損傷部位で血栓が形成されず、時間とともに関節の損傷及び血液障害が引き起こされることが多い。他の存在的に重度の出血問題として、頭蓋内出血、及び処置されない場合には致命的であり得る潜在的に制御不能な出血が挙げられる。
【0104】
FVIII遺伝子は、肝臓及び身体中の他の部位に存在する類洞内皮細胞で主に発現される。外来性FVIIIは、循環血中でFVIIIを生成する肝臓の肝細胞中で発現されてこの肝細胞から分泌され得、そのため疾患の治癒に影響を及ぼす。
【0105】
ゲノム編集による血友病A疾患への対処の原理
現在では、多くの遺伝子治療アプローチが開発中であるか又は臨床中であるが、これらには望ましくない特徴がある。アデノ随伴ウイルス(AAV)を使用するウイルスベースの遺伝子治療は、前臨床の動物モデル及び患者では有力視されているが、これには多くの欠点がある。AAVベースの遺伝子治療では、肝臓特異的プロモーターにより駆動されるFVIII遺伝子が使用され、このFVIII遺伝子は、(典型的には、とりわけ血清型AAV5、AAV8、AAV9、又はAAVrh10を使用して)AAVウイルスカプシド内に封入されている。遺伝子治療に使用される全てのAAVウイルスは、パッケージ化された遺伝子カセットを、形質導入細胞の核中に送達し、この遺伝子カセットは、ほぼエピソーム性のみのままであり、治療用タンパク質を生じる治療用遺伝子のエピソームコピーである。AAVは、封入されたDNAを宿主細胞のゲノムに組み込むためのメカニズムを有していないが、代わりにエピソームとして維持され、従って宿主細胞が分裂する場合に複製されない。エピソームDNAはまた、時間とともに分解され得る。AAVエピソームを含む肝細胞が分裂するように誘導される場合には、AAVゲノムは複製されないが代わりに希釈されることが実証されている。その結果、AAVベースの遺伝子治療は、肝臓が成人サイズにまだ達していない子供に施された場合には有効ではないと予想される。加えて、AAVベースの遺伝子治療は、成人のヒトに施された場合にはどれくらいの長さにわたり持続するかは現時点では不明であるが、動物のデータから、10年ほどの期間にわたり治療効果の低下はごくわずかであることが実証されている。特に、正常範囲内のFVIIIレベルが達成され得る場合には、HemAの恒久的な治癒が強く望まれる。しかしながら、現在利用可能なHemAの処置には、多くの限界がある。例えば、欠損しているFMタンパク質の補充は、HemA患者にとって有効な処置であり、現在の標準的な治療である。しかしながら、タンパク質補充治療では、FVIIIタンパク質の頻繁な静脈内注射が必要であり、これは、成人では不便であり、子供では問題があり、コストが法外に高く、且つ処置レジメンがしっかりと守られない場合には出血事象が引き起こされる可能性がある。別の例では、新規の二重特異性抗体であるHemlibraが近年承認されており、HemAを処置するための最初の抗体ベースの治療薬となっている。この分子は、FVIIIa模倣物として機能し、1ヶ月の潜在的な処置持続期間で皮下投与され得る。臨床試験中に、破綻的な出血を処置するためにHemlibra(登録商標)をFEIBAバイパス剤と組み合わせた場合に、死亡例があった。加えて、最近では、1例の患者での抗体薬物抗体が報告されている。
【0106】
従って、ゲノム編集により達成され得る新規の有効な且つ恒久的なHemAの処置の開発が切実に求められている。本出願人は、ヒトアルブミン遺伝子座でのゲノム編集を目的とする実験を実施することを企図する。染色体4q13.3に位置するヒトアルブミンイントロン1-アルブミンは、肝細胞から発現される豊富な肝臓タンパク質であり、血漿中に見出される最も多く発現されるタンパク質である。任意の特定の理論に拘束されることなく、アルブミン遺伝子の1%に目標を定めた組み込みにより、アルブミン発現レベルは影響を受けず、さらには活性を正常化するのに十分なFVIIIの発現がもたされるだろうと考えられる。
【0107】
いくつかの実施形態では、本開示のいつかの実施形態に従ったsmLNP組成物は、肝細胞中でのFVIII遺伝子の挿入のために配置される。この例では、smLNP組成物は、肝細胞(liver cell)(例えば肝細胞(hepatocyte))に優先的に取り込まれる。いくつかの実施形態では、血友病Aを処置する方法で使用されるsmLNP組成物は、治療上有効な用量にてインビボで細胞毒性レベルまで蓄積しないという点で生分解性である。いくつかの実施形態では、血友病Aを処置する方法で使用されるsmLNP組成物は、治療用量レベルで、実質的な副作用につながる自然免疫反応を引き起こさない。いくつかの実施形態では、smLNP組成物は、治療用量レベルで毒性を生じない。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているsmLNP組成物は、血液中のアポリポタンパク質(例えばアポリポタンパク質E(ApoE))に特異的に結合する。アポリポタンパク質は、脂質輸送の制御で重要な、血漿中を循環するタンパク質である。ApoEは、リポタンパク質の取り込み中に肝臓中で細胞表面のヘパリン硫酸プロテオグリカンと相互作用する、アポリポタンパク質の1クラスを表す。
【0108】
循環器疾患
本開示のいくつかの実施形態は、必要な哺乳類(例えばヒト)の健康状態又は疾患と関連する1種又は複数種の症状を処置し、この症状を予防し、この症状を発症するリスク若しくは可能性を低減し、この症状の発症を遅延させ、及び/又はこの症状を寛解させる方法であって、この健康状態又は疾患は、循環器疾患である、方法に関する。
【0109】
高レベルのリポタンパク質粒子(Lp(a))は、循環器疾患と関連しているか、又は循環器疾患を発症するリスクと関連している。例えば、高血漿レベルのLp(a)は、石灰沈着性の大動脈弁疾患、冠動脈心疾患、アテローム性動脈硬化症、血栓症、及び脳卒中の独立した危険因子である。興味深いのは、個体間で1000倍異なるヒトの血漿Lp(a)レベルの範囲である。この広い範囲は、血漿中Lp(a)を有意に減少させるのに有害ではない場合があり、従って、潜在的な抗Lp(a)剤は広い治療域を有し得ることを示唆する。
【0110】
Lp(a)レベルを確実に且つ安定的に低下させる処置が存在しないために、Lp(a)レベルを恒久的に低下させる治療が強く望まれている。肝細胞はアポ(a)の主な供給源であることから、アポ(a)の「標的を定めたノックアウト」のために肝臓を対象とする遺伝子編集アプローチは、魅力的なアプローチであるだろう。
【0111】
LDLとは異なり、Lp(a)レベルは、環境、食事、又はスタチンのような既存の脂質低下剤により調節され得ず、そのため、厳密に遺伝的に引き起こされる疾患の危険因子となる。アポ(B)に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、Lp(a)を25%減少し得た(Santos et al.,Arterioscler Thromb Vasc Biol.2015;35(3):689-699)。その後、アポ(a)mRNAに特異的なアンチセンス治療が臨床試験で試験されており、血漿中Lp(a)レベルを、80%を超えて有意に減少させることが分かった(Viney et al.,Lancet 2016;388:2239-53)。残念ながら、アンチセンス治療は、有効であるためには頻繁に投与する必要がある。
【0112】
従って、ゲノム編集により達成され得る新規の有効な且つ恒久的な循環器疾患の処置の開発が切実に求められている。本開示のいくつかの実施形態では、本出願人は、染色体6q25.3-q26に位置するヒトリポタンパク質(a)(LPA)遺伝子座でのゲノム編集を目的とする実験を実施することを企図する。リポタンパク質(a)は、低密度リポタンパク質(LDL)粒子のアポリポタンパク質B-100(アポB)成分に共有結合したアポリポタンパク質(a)[アポ(a)]というタンパク質からなるアテローム形成リポタンパク質である。アポ(a)タンパク質は、LPA遺伝子によりコードされ、肝細胞中で作られて循環血中に分泌される。Lp(a)の発症メカニズムは、このLp(a)のアテローム生成促進特性、炎症促進特性、及び血栓形成促進特性を介して媒介される。アポ(a)とLP(a)のLDL成分との組み合わせは、循環器系に複合的な影響を及ぼす。LDLのみで、リン脂質が酸化されることになる血管壁へのLDLの侵入により、アテローム性動脈硬化症を特徴とする免疫反応及び炎症反応を引き起こし得る。Lp(a)は循環し、血漿中の酸化したリン脂質に結合し、それにより炎症促進反応が引き起こされる。アポ(a)自体は、損傷した血管壁上の曝露された表面に結合し得る部位を含み、このアポ(a)の侵入及びこの位置での蓄積が媒介される。アポ(a)の小さいアイソフォームは、線維素溶解を阻害することにより血栓症を促進することが分かっている。いくつかの実施形態では、本開示のいくつかの実施形態に従ったLNP組成物は、肝細胞中のLPA遺伝子の欠失用に設計されている。
【0113】
本開示の方法の実施形態の実行は、下記の特徴の内の1つ又は複数を含み得る。
【0114】
「投与」及び「投与する」は、本明細書で使用される場合、経口投与、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、皮下投与、筋肉内投与、及び局所投与、又はこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない投与経路による、生物活性の組成物又は製剤の送達を指す。この用語は、医療専門家による投与、及び自己投与を含むが、これらに限定されない。従って、本明細書で開示されている方法のいくつかの実施形態では、本明細書で説明されているLNP又は組成物(例えば医薬組成物)を、下記の投与経路の内の1つにより投与する:経口、経鼻、静脈内、腹腔内、筋肉内、関節内、病変内、気管内、皮下、及び皮膚内。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているLNP又は組成物を、例えば腸内投与経路又は非経口投与経路により、全身投与する。
【0115】
本明細書で開示されているsmLNP又は組成物は、典型的には、その意図した投与経路と適合するように製剤化される。本開示のsmLNP及び組成物を、経口で又は吸入により投与するが、非経口経路により投与する可能性がより高い。非経口投与経路の例として、例えば、静脈内投与、皮内投与、皮下投与、経皮(局所)投与、経粘膜投与、及び直腸投与が挙げられる。非経口適用に使用される溶液又は懸濁液は、下記の成分を含み得る:滅菌希釈液、例えば、注射用水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、又は他の合成溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコール又はメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA);緩衝液、例えば、酢酸塩、クエン酸塩、又はリン酸塩、及び浸透圧の調整剤、例えば、塩化ナトリウム又はブドウ糖。pHを、酸又は塩基(例えば、一塩基性及び/又は二塩基性のリン酸ナトリウム、塩酸、又は水酸化ナトリウム)で(例えば約7.2~7.8、例えば7.5のpHに)調整し得る。非経口調製物を、ガラス又はプラスチックで作られたアンプル、ディスポーサブルシリンジ、又はマルチプルドーズバイアルに封入し得る。
【0116】
本開示のそのような主題のsmLNP又は組成物の投与量、毒性、及び治療効果を、例えば、LD50(集団の50%に致死的な用量)及びED50(集団の50%で治療上有効な用量)を決定するための、細胞培養又は実験動物での標準的な薬学的手順により決定し得る。毒性と治療効果との間の用量比は、治療指数であり、比LD50/ED50として表され得る。高い治療指数を示す化合物が好ましい。毒性の副作用を示す化合物を使用する場合には、感染していない細胞への潜在的な損傷を最小限に抑え、それにより副作用を軽減するために、そのような化合物の標的を罹患した組織の部位に定める送達システムを設計するように注意すべきである。
【0117】
細胞培養アッセイ及び動物実験から得られたデータを、ヒトでの使用のための様々な投与量の製剤化で使用し得る。そのような化合物の投与量は、好ましくは、ED50を含む循環濃度の範囲内であり、毒性はほとんどないか又は全くない。この投与量は、用いる剤形及び利用する投与経路に応じて、この範囲内で変動し得る。本開示の方法で使用される任意の化合物に関して、治療上有効な用量は、細胞培養アッセイから最初に推定され得る。動物モデルでは、用量は、細胞培養で決定されたIC50(例えば、症状の最大半量の阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように製剤化される。そのような情報を使用して、ヒトでの有用な用量をより正確に決定し得る。血漿中のレベルを、例えば高速液体クロマトグラフィーで測定する。
【0118】
本明細書で定義されるように、本開示の主題のsmLNP又は組成物の「治療上有効な量」(例えば有効な投与量)は、選択されるLNP又は組成物に依存する。例えば、約0.001~0.1mg/患者の体重kgの範囲の単回用量を投与し得;いくつかの実施形態では、約0.005、0.01、0.05mg/kgを投与する。いくつかの実施形態では、600,000IU/kgを投与する(IUは、リンパ球増殖バイオアッセイにより決定され得、インターロイキン-2(ヒト)に関してWorld Health Organization 1st International Standardにより確立された国際単位(IU)で表される)。このsmLNP又は組成物を、1日に1回又は複数回から1週間に1回又は複数回(1日おきに1回を含む)で投与し得る。当業者は、ある特定の因子が、対象を効果的に処置するのに必要な投与量及びタイミングに影響を及ぼす場合があり、この因子として、疾患又は障害の重症度、過去の処置、対象の全体的な健康及び/又は年齢、並びに存在する他の疾患が挙げられるが、これらに限定されないことを理解するだろう。さらに、本開示の主題のsmLNP又は組成物の治療上有効な量による対象の処置は、単一の処置を含み得るか、又は一連の処置を含み得る。いくつかの実施形態では、この組成物を、5日にわたり8時間毎に投与し、続いて2~14日(例えば9日)にわたる休息期間を置き、続いてさらなる5日にわたり8時間毎に投与する。
【0119】
いくつかの実施形態では、smLNP組成物を、インビボでの送達用に製剤化する。いくつかの実施形態では、smLNP組成物を、エクスビボでの送達用に製剤化する。本開示のLNPは、このLNPが混合されるか又は接触するほぼ全ての細胞型に吸着され得る。吸着されると、smLNPは、細胞の一部に取り込まれ得るか、脂質と細胞膜とを交換し得るか、又は細胞と融合し得る。粒子の核酸分子タンパク質の移動又は取り込みは、これらの経路の内の任意の1つを介して起こり得る。具体的には、融合が起こる場合には、粒子の膜が細胞膜に組み込まれ、この粒子の内容物が細胞内の液体と組み合わさる。
【0120】
インビボでの投与
循環等の身体系による、遠位の標的細胞への、本明細書で説明されている部位特異的ヌクレアーゼをコードする核酸分子のインビボでの送達用の全身送達を、本明細書で開示されているsmLNP組成物を使用して達成し得る。加えて、1種又は複数種の核酸分子を、本開示のsmLNP組成物で単独で投与し得るか、又はペプチド、ポリペプチド、若しくは従来の薬物等の小分子を含む1種若しくは複数種の追加のsmLNP組成物と組み合わせて投与し得る(例えば共投与し得る)。
【0121】
インビボでの投与のために、投与は、(例えば、注射、経口投与、吸入(例えば、経皮若しくは気管内)、経皮適用、又は直腸投与による)当該技術分野で既知の任意の方法であり得る。インビボでの投与を、単一の用量又は分割した用量により達成し得る。smLNP組成物を、非経口(即ち、関節内、静脈内、腹腔内、皮下、又は筋肉内)投与し得る。いくつかの実施形態では、smLNP組成物を、ボーラス注射により静脈内投与するか又は腹腔内投与する。いくつかの実施形態では、本開示のsmLNP組成物を、非経口投与するか又は腹腔内投与する。加えて、又は或いは、本開示のsmLNP組成物を、単独で又は他の適切な成分と組み合わせて、吸入(例えば、鼻腔内又は気管内)により投与されるエアロゾル製剤にし得る(即ち、「噴霧」し得る)。エアロゾル製剤を、加圧された許容可能な噴霧剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素等)に入れることができる。
【0122】
当業者は、投与される粒子の量が、核酸分子と脂質との比、使用される特定の核酸分子に依存するが、一般的には、体重1キログラム当たり約0.01~約50mg(好ましくは、約0.1~約5mg/体重kg)又は投与(例えば注射)当たり約10~10個の粒子であることを理解するだろう。
【0123】
エクスビボでの投与
エクスビボ用途の場合には、本開示のsmLNP組成物の送達を、培養で増殖した任意の細胞に投与し得る。いくつかの実施形態では、この細胞は、動物細胞であり、より好ましくは哺乳類細胞であり、最も好ましくはヒト細胞である。細胞とsmLNPとの接触は、エクスビボで実行された場合には、生物学的に適合する媒体中で起こる。smLNP組成物中のsmLNPの濃度は、具体的な用途に応じて変動するが、一般的には約1μmol~約10mmolである。smLNPによる細胞の処理を、一般的には、約1~72時間、好ましくは約2~約5時間、約2~約4時間、約1~約3時間の期間にわたり、生理学的温度(約37℃)で実行し得る。
【0124】
遺伝子シャッフルされた部位特異的エンドヌクレアーゼ
Gib11SpaCas9は、4種の異なるスタフィロコッカス(Staphylococcus)種(スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス(Staphylococcus lugdunensis)、スタフィロコッカス・パステウリ(Staphylococcus pasteuri)、スタフィロコッカス・マイクロティ(Staphylococcus microti)、及びスタフィロコッカス・ヒカス(Staphylococcus hyicus))のCRISPR-Cas9エンドヌクレアーゼの配列断片の相同性ベースの遺伝子ファミリシャッフリングを使用して生成された合成RNA誘導型エンドヌクレアーゼ(RGEN)である。簡潔に説明すると、4種全てのCas9エンドヌクレアーゼの配列を比較して、アンカーポイントとしての役割を果たす相同性が高い領域を同定し、Cas9エンドヌクレアーゼのそれぞれを、8個の対応するミニドメインに分割した。スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス(Staphylococcus lugdunensis)Cas9由来のPAM相互作用(PI)ドメインとして選択されたC末端ミニドメインを除いて、各ミニドメインを、4種のオリジナルのCas9エンドヌクレアーゼの内の1つに由来するように無作為に割り当てることにより、遺伝子ファミリがシャッフルされた合成Cas9エンドヌクレアーゼのライブラリを調製した。得られたライブラリは、理論上の複雑さが8192であった。このライブラリを、細菌の生存/死亡アッセイを使用してCas9エンドヌクレアーゼ活性に関して最初にスクリーニングし、候補合成Cas9エンドヌクレアーゼを、HEK細胞においてBFP破壊アッセイを使用してさらにスクリーニングした。その結果、Gib11Cas9は、高いCas9エンドヌクレアーゼ活性を有する候補合成Cas9エンドヌクレアーゼとして同定された。PIドメインを含むGib11Cas9のC末端部分を、スタフィロコッカス・パステウリ(Staphylococcus pasteuri)由来のPIドメインを含むポリペプチドに置き換えることにより、Gib11SpaCas9を生成した。
【0125】
F8Cas9は、4種の異なるスタフィロコッカス(Staphylococcus)種(スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス(Staphylococcus lugdunensis)、スタフィロコッカス・パステウリ(Staphylococcus pasteuri)、スタフィロコッカス・マイクロティ(Staphylococcus microti)、及びスタフィロコッカス・ヒカス(Staphylococcus hyicus))のCRISPR-Cas9エンドヌクレアーゼの配列断片の相同性ベースの遺伝子ファミリシャッフリングを使用して生成された合成RNA誘導型エンドヌクレアーゼ(RGEN)である。簡潔に説明すると、4種全てのCas9エンドヌクレアーゼの配列を比較して、アンカーポイントとしての役割を果たす相同性が高い領域を同定し、Cas9エンドヌクレアーゼのそれぞれを、12個の対応するミニドメインに分割した。スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス(Staphylococcus lugdunensis)Cas9由来のPAM相互作用(PI)ドメインとして選択されたC末端ミニドメインを除いて、各ミニドメインを、4種のオリジナルのCas9エンドヌクレアーゼの内の1つに由来するように無作為に割り当てることにより、遺伝子ファミリがシャッフルされた合成Cas9エンドヌクレアーゼのライブラリを調製した。得られたライブラリは、理論上の複雑さが1.3×105であった。このライブラリを、細菌の生存/死亡アッセイを使用してCas9エンドヌクレアーゼ活性に関して最初にスクリーニングし、候補合成Cas9エンドヌクレアーゼを、HEK細胞においてBFP破壊アッセイを使用してさらにスクリーニングした。その結果、F8Cas9は、高いCas9エンドヌクレアーゼ活性を有する候補合成Cas9エンドヌクレアーゼとして同定された。
【0126】
E2Cas9は、4種の異なるスタフィロコッカス(Staphylococcus)種(スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス(Staphylococcus lugdunensis)、スタフィロコッカス・パステウリ(Staphylococcus pasteuri)、スタフィロコッカス・マイクロティ(Staphylococcus microti)、及びスタフィロコッカス・ヒカス(Staphylococcus hyicus))のCRISPR-Cas9エンドヌクレアーゼの配列断片の相同性ベースの遺伝子ファミリシャッフリングを使用して生成された合成RNA誘導型エンドヌクレアーゼ(RGEN)である。簡潔に説明すると、4種全てのCas9エンドヌクレアーゼの配列を比較して、アンカーポイントとしての役割を果たす相同性が高い領域を同定し、Cas9エンドヌクレアーゼのそれぞれを、8個の対応するミニドメインに分割した。スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス(Staphylococcus lugdunensis)Cas9由来のPAM相互作用(PI)ドメインとして選択されたC末端ミニドメインを除いて、各ミニドメインを、4種のオリジナルのCas9エンドヌクレアーゼの内の1つに由来するように無作為に割り当てることにより、遺伝子ファミリがシャッフルされた合成Cas9エンドヌクレアーゼのライブラリを調製した。得られたライブラリは、理論上の複雑さが8192であった。このライブラリを、細菌の生存/死亡アッセイを使用してCas9エンドヌクレアーゼ活性に関して最初にスクリーニングし、候補合成Cas9エンドヌクレアーゼを、HEK細胞においてBFP破壊アッセイを使用してさらにスクリーニングした。その結果、E2Cas9は、高いCas9エンドヌクレアーゼ活性を有する候補合成Cas9エンドヌクレアーゼとして同定された。
【0127】
P2H12Cas9は、4種の異なるスタフィロコッカス(Staphylococcus)種(スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス(Staphylococcus lugdunensis)、スタフィロコッカス・パステウリ(Staphylococcus pasteuri)、スタフィロコッカス・マイクロティ(Staphylococcus microti)、及びスタフィロコッカス・ヒカス(Staphylococcus hyicus))のCRISPR-Cas9エンドヌクレアーゼの配列断片の相同性ベースの遺伝子ファミリシャッフリングを使用して生成された合成RNA誘導型エンドヌクレアーゼ(RGEN)である。簡潔に説明すると、4種全てのCas9エンドヌクレアーゼの配列を比較して、アンカーポイントとしての役割を果たす相同性が高い領域を同定し、Cas9エンドヌクレアーゼのそれぞれを、8個の対応するミニドメインに分割した。スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス(Staphylococcus lugdunensis)Cas9由来のPAM相互作用(PI)ドメインとして選択されたC末端ミニドメインを除いて、各ミニドメインを、4種のオリジナルのCas9エンドヌクレアーゼの内の1つに由来するように無作為に割り当てることにより、遺伝子ファミリがシャッフルされた合成Cas9エンドヌクレアーゼのライブラリを調製した。得られたライブラリは、理論上の複雑さが8192であった。このライブラリを、細菌の生存/死亡アッセイを使用してCas9エンドヌクレアーゼ活性に関して最初にスクリーニングし、候補合成Cas9エンドヌクレアーゼを、HEK細胞においてBFP破壊アッセイを使用してさらにスクリーニングした。その結果、P2H12Cas9は、高いCas9エンドヌクレアーゼ活性を有する候補合成Cas9エンドヌクレアーゼとして同定された。
【0128】
本開示で言及されている全ての刊行物及び特許出願は、個々の刊行物又は特許出願が参照により組み込まれると明確に且つ個別に示されている場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0129】
本明細書で引用されているいかなる文献も先行技術を構成すると認めるものではない。参考文献の考察は、その著者が主張する内容を述べたものであり、本発明者らは、引用文献の正確さ及び妥当性に異議を申し立てる権利を保留する。本明細書では多くの情報源(例えば、科学雑誌の記事、特許文書、及び教科書)が参照されているが;この参照は、これらの文書のいずれかが当該技術分野の一般的な知識の一部を形成すると認めるものでないことが明確に理解されるだろう。
【0130】
本明細書で示される一般的な方法の考察は、例示目的のみが意図されている。他の代替方法及び代替物は、本開示の再検討により当業者に明らかであり、且つ本出願の趣旨及び範囲に含まれることが明らかであるだろう。
【実施例
【0131】
追加の実施形態が、下記の実施例でさらに詳細に開示されており、この実施例は、説明を目的として記載されており、本開示又は特許請求の範囲の範囲を限定することは決して意図されていない。
【0132】
実施例1:全体的な実験手順
本開示の実施では、別途示さない限り、当業者に既知の分子生物学、微生物学、細胞生物学、生化学、核酸化学、及び免疫学の技術が用いられるだろう。そのような技術は文献で説明されており、例えば下記で説明されている:Molecular Cloning:A Laboratory Manual,fourth edition(Sambrook et al.,2012)及びMolecular Cloning:A Laboratory Manual,third edition(Sambrook and Russel,2001),(本明細書では、まとめて「Sambrook」と称される);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel et al.,eds.,1987、2014年までの増補を含む);PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullis et al.,eds.,1994);Beaucage et al.eds.,Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry,John Wiley & Sons,Inc.,New York,2000(2014年までの増補を含む)、Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells(Makrides,ed.,Elsevier Sciences B.V.,Amsterdam,2003);並びにCurrent Protocols in Immunology(Horgan K and S.Shaw(1994)、2014年までの増補を含む)。必要に応じて、市販のキット及び試薬の使用を伴う手順は概して、別途注記されていない限り、製造業者により定義されたプロトコル及び/又はパラメータに従って実行する。
【0133】
実施例2:例示的な部位特異的エンドヌクレアーゼをコードするmRNAを含む、脂質ベースのナノ粒子のキャラクタリゼーション
この実施例は、本開示のいくつかの実施形態に従った例示的なLNP組成物の物理的特性をキャラクタライズするために実施した実験を説明する。この実験では、部位特異的エンドヌクレアーゼをコードするmRNA分子をそれぞれ含む11種のLNP組成物の粒径を評価し、且つSpCas9をコードするmRNAを含む参照LNP組成物と比較した。図1A~1Eに示すように、本開示のsmCas9 mRNA-LNPは、動的光散乱(DLS)によりアッセイした場合に、サイズがわずかに増加することを観察した(図1A)。簡潔に説明すると、LNPを、PBSで1μg/mLのRNA濃度まで希釈し、次いで、384ウェルプレート中で2倍希釈により連続的に希釈した。次いで、この試料を、Wyatt DynaPro Plate Reader IIを使用して分析して、粒径のz平均を測定した。
【0134】
また、いくつかのsmCas9 mRNA-LNPは、多分散指数(PDI)により決定した場合に、混合LNP集団の不均一性が増加していることも観察しており、このことは、いくつかのより大きいLNPを含むより不均一なサイズ集団を示唆する(図1B)。LNPを、PBSで1μg/mLのRNA濃度まで希釈し、次いで、384ウェルプレート中で2倍希釈により連続的に希釈した。次いで、この試料を、Wyatt DynaPro Plate Reader IIを使用して分析して、多分散性を測定した。
【0135】
さらに、ナノ粒子追跡分析(NTA)の結果は、参照SpCas9-LNPと比較した場合に、smCas9 GST3-K-LNPのより不均一なサイズ分布を示唆した。NTAを、PBSで適切な作業濃度までLNPを希釈し、次いで、Malvern Nanosight機器を使用して試料の平均粒径(図1Cを参照されたい)を測定することにより実施した。NTAにより測定した場合のLNPサイズを、Ribogreen試験により決定した場合の封入RNAの濃度に対して正規化することにより、粒径と関連した粒子とRNAとの比率の分布のさらなるキャラクタリゼーションを算出した(図1Eを参照されたい)。最後に、図1Dに示すように、この実験では、LNPへのmRNA封入効率の変化を観察しなかった。封入効率を、Quant-iT Ribogreen RNA Assay Kit,Life Technologies Cat# R11490を使用するRibogreen分析により決定した。簡潔に説明すると、LNPを、1%最終希釈でのTriton(登録商標)X-100の存在下又は非存在下で、1μg/mLの濃度まで希釈した。次いで、この試料に、RNA含有量を測定するためのRibogreen蛍光色素(LNPに対して非透過性である)を添加し、適切な標準曲線と比べて、製造業者の推奨に従って評価した。封入効率を、Triton(登録商標)X-100を含まない試料でのRibogreen蛍光シグナルとTriton(登録商標)X-100を含む試料のRibogreen蛍光シグナルとの比を減算することにより算出した。
【0136】
mRNAフォーマットのsmCas9バリアントのインビトロでの試験
この実施例は、本開示のいくつかの実施形態に従った例示的なLNP組成物のインビトロでの編集効率を評価するために実施した実験を説明する。この実験では、部位特異的エンドヌクレアーゼをコードするmRNA分子をそれぞれ含む6種のLNP組成物のインビトロでの編集効率を評価し、SpCas9をコードするmRNAを含む参照LNP組成物と比較した。この実験で使用する部位特異的エンドヌクレアーゼは、Gib11Spa3、Gib11Spa1、Slu、F8、E2、及びP2H12であった(図2を参照されたい)。この実験では、このmRNAを、製造業者の指示に従って、市販のシステムであるリポフェクタミンMessengerMax(Thermo Fisher Scientific Cat #LMRNA003)を使用して、マウスHepa 1-6細胞にトランスフェクトした。標的とする遺伝子座は、アルブミン遺伝子座であった。示した全ての細胞実験で使用した、アルブミン遺伝子を標的とするgRNAは、下記の配列:
【化1】
の100merであり、この配列中、小文字は、ホスホロチオエート連結を示す。編集効率を、細胞溶解、並びにQiagen DNeasy Blood and Tissue Kit(Cat# 69506)を使用するゲノムDNAの抽出及びその後のアルブミン遺伝子座の標的領域のPCR増幅、配列決定、並びにBrinkman et al.,Nucleic Acids Res.2014 Dec 16;42(22):e168で説明されているようなTIDE分析により算出した。試験したLNP組成物の遺伝子編集効率が参照LNP組成物の遺伝子編集効率と同等であることを観察した。驚くべきことに、少なくとも、部位特異的エンドヌクレアーゼGib11Spa3を含むLNP組成物及び部位特異的エンドヌクレアーゼGib11Spa1を含むLNP組成物の2種は、参照ポリペプチドSpCas9を超える有意に優れた効率を有するように思われた。
【0137】
mRNA-LNPとして送達されたsmCas9バリアントのインビボでの試験
この実施例は、本開示のいくつかの実施形態に従った例示的なLNP組成物のC57BL/6マウスにおけるインビボでの編集効率を評価するために実施した実験を説明する。この実験では、部位特異的エンドヌクレアーゼをコードするmRNA分子をそれぞれ含む2種のLNP組成物のインビトロでの編集効率を評価し、SpCas9をコードするmRNAを含む参照LNP組成物と比較した。これらのLNP組成物を、様々な投与量で、単回用量としての静脈内投与によりC57BL/6マウスに投与した。図3では、投与量を、体重1kg当たりの投与された封入RNAのmg又は「mpk」で表す。この実験で標的とされた遺伝子座は、アルブミン遺伝子座である。Gib11Spa3は、1.5mpk用量又は2mpk用量で投与された場合に、SpCas9と比べて有意に高い編集効率を有することを観察した。さらに、Gib11Spa1の両方の投与量(即ち、1.5及び2mpk)は、SpCas9の2mpk用量と比べて高い編集効率を有することを観察した。全てのマウス実験に関する編集効率を、肝臓組織の均質化、並びにQiagen DNeasy Blood and Tissue Kit(Cat# 69506)を使用するゲノムDNAの抽出及びその後のアルブミン遺伝子座の標的領域のPCR増幅、配列決定、並びにBrinkman et al.,Nucleic Acids Res.2014 Dec 16;42(22):e168で説明されているようなTIDE分析により算出した。
【0138】
mRNA配列及び化学改変の評価
この実施例は、2mpkの用量でC57BL/6マウスに静脈内投与された場合の、下記の部位特異的エンドヌクレアーゼをコードするmRNA分子をそれぞれ含む例示的なLNP試料の編集効率を説明するために実施した実験を説明する:smCas9 GST3(GST3 mRNA、配列番号34;GST3ポリペプチド、配列番号35)、smCas9 GST3-K(GST3-K mRNA、配列番号36;GST3-Kポリペプチド、配列番号37)、smCas9 GST3-v1(GST3-v1 mRNA、配列番号38;GST3-v1ポリペプチド、配列番号39)、smCas9 GST1-v1(GST1-v1 mRNA、配列番号40;GST1-v1ポリペプチド、配列番号41)、又は参照ヌクレアーゼSpCas9。この実験の標的遺伝子座は、C57BL/6マウスのアルブミン遺伝子座であった。示した全てのインビボでのマウス実験で使用した、アルブミン遺伝子を標的とするgRNAは、下記の配列:
【化2】
の100merであり、この配列中、小文字は、ホスホロチオエート連結を示す。GST3バリアントは、前述したGib11Spa3バリアントであった。GST3-Kは、コンセンサスKozakコンセンサス配列を有するGib11Spa3バリアントであった。GST3-v1は、SpCas9 NLS(各局在化配列)/リンカーを有するGib11Spa3バリアントである。GST1-v1は、SpCas9 NLS/リンカーを有するGib11Spa1バリアントである。図6を参照されたい。mRNA-LNPフォーマットでは、試験した全てのsmCas9バリアントは、SpCas9と比べて良好な性能を示すことを観察した。この結果はまた、Gib11Spa3構築物デザインの変動は機能性に有意な影響を及ぼさないと思われることも示唆した。図4を参照されたい。この実験で使用する全ての実験パラメータは、インビボでのマウス試験に関して上記で説明したものと同様であった。
【0139】
この実験は、単回静脈内2mpk用量によりC57BL/6マウスにおいてインビボでmRNA-LNPとして送達した場合の編集効率(INDEL頻度で示す)に関して、smCas9及びSpCas9 mRNAへのN1-メチルプソイドウリジン塩基改変の影響を説明する実験をさらに説明する。図5を参照されたい。この実験で使用する全ての実験パラメータは、インビボでのマウス試験に関して上記で説明したものと同様であった。ここで、SpCas9、smCas9 GST3-v1、及びsmCas9 GST1-v1に関するmRNAを、N1-メチルプソイドウリジン塩基で改変し、これらのmRNAを含むLNPの編集効率を測定し、同一のmRNAの未改変バージョンを含むLNPの編集効率と比較した。N1-メチルプソイドウリジン塩基改変は、SpCas9 mRNA-LNPの場合にのみ編集効率に影響を及ぼすように思われ、性能を改善させた。
【0140】
LNPの安定性の改善
この実施例は、2~8℃での1週間の保存前後の溶液1mL当たりのmRNA-LNP(mRNAは、SpCas9又はsmCas9バリアントをコードする)の数を測定するために実施した実験を説明する。この実験では、mRNA-LNPの数は、mRNAがSpCas9をコードする場合に有意に減少するが、他の組成(即ち、mRNAがsmCas9バリアントをコードする)の場合には有意な変化を観察しないことを観察した。LNP濃度の変化は、粒子の凝集及び融合を示す。図6を参照されたい。保存前及び保存後1週間で、LNP濃度を、Malvern Nanosight機器を使用する試料のNTA分析により測定した。1日目の測定~7日目の測定の間、LNPを2~8℃で保存した。
【0141】
この実施例は、SpCas9 mRNA又はsmCas9 Gib11Spa3 mRNAのいずれかで調製した場合にmRNA-LNPを透過型電子顕微鏡(cryoTEM)で観察するために実施した実験をさらに説明する。図7を参照されたい。smCas9 mRNAを担持するLNPは、SpCas9をコードするmRNAを担持するmRNA-LNPと比べて形態的な不規則さが少ないこと観察した。CryoTEM分析を、semi-Cryoplunge 3 Systemを使用してLNPをプランジ凍結させ、JEOL 2100F 200 kV Field Emission Electron Microscopeで撮影することにより実施した。
【0142】
この実施例は、各群で使用した同一のLNPバッチとともに、製剤の調製及び2~8℃での保存後1日又は9日のいずれかで2mpkの用量にてC57BL/6マウスに静脈内注射した場合の、SpCas9又はsmCas9バリアントGib11Spa3のいずれかをコードするmRNAを担持するmRNA-LNPの製剤の編集効率を測定するために実施した実験をさらに説明する。図8を参照されたい。mRNAペイロードとしてのsmCas9は、SpCas9と比べてLNPを安定化させ、調製後1日で注射した製剤と調製後9日で注射した製剤との間では、SpCas9の場合は編集効率の約3.6倍の低下を観察するが、smCas9の場合には、この低下はわずか約1.3倍であることを観察した。この実験で使用する全ての実験パラメータは、インビボでのマウス試験に関して上記で説明したものと同様であった。
【0143】
実施例3:血友病Aを処置する方法及び循環器疾患を処置する方法でのLNPの評価
本出願人は、smCas9 mRNA LNPの有効性及び安全性を評価するために、下記の動物モデルを使用することを企図する:C57BL/6マウス、HemAノックアウトマウス、スプラーグドーリーラット、及びカニクイザル。任意の特定の理論に拘束されることなく、これらの前臨床モデルの全てにおいて、smCas9 mRNA LNPは、少なくともSpCas9 mRNA LNPと同程度に有効であり得ると考えられる。
【0144】
この実験では、smCas9 mRNA LNP(特に、Gib11Spalバリアント及びGib11Spa3バリアント)は、C57BL/6マウスにおけるアルブミン遺伝子座での遺伝子編集を効率的に行い得る。このモデルでの追加の実験は、下記を含む:様々なタイプのLNP製剤でのsmCas9 mRNAの試験、Sluバリアント、E2バリアント、F8バリアント、及びP2H12バリアントの評価、smCas9 mRNAの有効性に対する塩基及び配列の改変の影響の評価、用量反応及び複数回投与の性能の評価、並びに安全性試験中でのsmCas9 mRNA LNP機能のさらなる評価。
【0145】
本出願人はまた、下記も企図する:HemAノックマウスを使用して、アルブミン遺伝子座へのFVIIIの標的を定めた組み込みを評価すること;Sprague Dawleyラットを使用して、肝臓毒性及び免疫反応の評価によりsmCas9 mRNA LNPの安全性を評価すること;並びにカニクイザルを使用して、遺伝子編集の有効性、生体内分布、及び安全性を評価すること。smCas9 mRNA LNPのオフターゲット効果を評価するために、初代ヒト肝細胞でのガイド配列試験が企図される。
【0146】
LNP技術は、臨床での安全性プロファイルが証明されており、smCas9 mRNAを含むLNP製剤は、spCas9 mRNAを含む現在のLNP製剤と比較して治療指数が改善され得ると考えられる。smCas9 mRNA LNPの臨床安全性及び有効性を、例えば、血清臨床化学、CBC、Cas9及びLNPに対する中和抗体、注射部位の炎症反応、サイトカイン誘導、並びに標的バイオマーカーの活性の内の1つ又は複数を試験することにより、評価し得る。
【0147】
実施例4:非ヒト霊長類細胞での、smCas9をコードするmRNAを含むLNP組成物の評価
実施例2及び3で説明されているsmCas9-mRNA-LNP製剤の遺伝子編集の有効性、生体内分布、及び安全性をさらに評価するために、カニクイザル(cynos)モデルを使用する。
【0148】
この実験では、本明細書(例えば実施例2及び3)で説明されているsmCas9-mRNA-LNPを、投与のために製剤化する。製剤を、IV注入により、1~2mg/kgの範囲の用量で、約3kgの雄のcynosに投与する。その後、このcynosを、安全上の懸念に関してモニタリングし、注入後8日以内に安楽死させ、肝臓及び脾臓の遺伝子編集、生体内分布、及び忍容性の読み取りに関して評価した。マウスでは高い編集効率を達成することが実証されているsmCas9 mRNAを送達するLNP製剤は、非ヒト霊長類種等の種を超えて同様に良好に機能し得ることが予想される。任意の特定の理論に拘束されると意図することなく、本開示のsmCas9-mRNA-LNPにより観察される送達及び安全性での利点は、特定の試験モデルに固有のものでないと考えられる。
【0149】
実施例5:ラットにおける、smCas9をコードするmRNAを含むLNP組成物のインビボでの安全性
本開示のいくつかの実施形態に従った例示的なsmCas9-mRNA-LNP製剤の安全性を評価するために、ラット毒性研究を実行した。
【0150】
この実験では、ラットに、2mg/kgのsmCas9 GST1 mRNA-LNP又はSpCas9 mRNA-LNP(各条件に関してn=3)を注射し、これらのLNP製剤間の差違は核酸成分のみである。SpCas9 mRNA-LNPを注射したラットは急性毒性反応を示し、用量投与後12時間以内のコホートでは、生存を観察しなかった。対照的に、smCas9 GST1 mRNA-LNPを注射したラットは、このコホートの全てのラットが注射後7日目での研究終了まで生存していたことにより実証されるように、忍容性の改善を示した。SpCas9 mRNA-LNPにより観察された毒性の急速な発現を考慮すると、このことが、発現するまで12時間よりも長くかかると予想されるであろうLNPによる遺伝子編集のなんらかの影響に起因した可能性は低い。これらの結果は、他の点では同様に製剤化されたLNPに関して、smCas9 mRNAを含むものが、より大きいSpCas9 mRNAを含むものと比べて毒性が低いことを示唆する。これらの結果は驚くべきことであり、なぜならば、多くのsmCas9-mRNA-LNPでの脂質とmRNAとの重量比は、対応するSpCas9-mRNA-LNPの場合と比べて大きいことが分かっており、総LNP脂質含有量がLNP毒性の要因と考えられるからである。
【0151】
実施例6:様々な塩基改変を有するmRNAを含むLNP組成物のインビボでの編集効率
smCas9 mRNA-LNP及びSpCas9 mRNA-LNPに対する様々な塩基改変の影響をさらに評価するために、マウスでのインビボINDEL分析を実行した。
【0152】
C57BL/6マウスに、下記のmRNA-LNPの内の1つの単回の1mg/kg用量を注射した:Gib11Spa3(N1-メチルプソイドウリジン;Geneious(登録商標)ウリジン枯渇/コドン最適化が行われているか又は行われていない)、及びGib11Spa1(未改変、N1-メチルプソイドウリジン、プソイドウリジン、又は5-メトキシウリジン;Geneious(登録商標)ウリジン枯渇/コドン最適化が行われているか又は行われていない)。LNPは、マウスゲノム中の異なる遺伝子座を標的とする下記の2種の異なるgRNAの内の1つを含んだ:gRNA T1(全ての改変)又はgRNA T2(N1-メチルプソイドウリジン改変のみ)。INDEL頻度の結果を、表1に示す。ほとんどのGib11Spa1 mRNA-LNPは、mRNAがウリジンを枯渇しており且つコドン最適化されている場合に、編集効率の改善を示した。プソイドウリジン改変により、未改変条件と比較した場合にGib11Spa1 mRNA-LNPの編集効率が改善されたが、この効果は、mRNAがウリジンを枯渇し且つコドン最適化された場合に減少した。対照的に、5-メトキシウリジンは、ウリジン枯渇及びコドン最適化のあり及びなしの両方で、Gib11Spa1 mRNA-LNPの編集効率を低下させた。
【0153】
【表1】
【0154】
本開示の特定の代替が開示されているが、添付の特許請求の範囲の真の趣旨及び範囲内で、様々な改変及び組み合わせが可能であり且つ企図されることを理解すべきである。従って、本明細書で表されている正確な要約及び開示に限定されることは意図されていない。
【0155】
【表2】
【0156】
【表3】
【0157】
【表4】
【0158】
【表5】
【0159】
【表6】
【0160】
【表7】
【0161】
【表8】
【0162】
【表9】
【0163】
【表10】
【0164】
【表11】
【0165】
【表12】
【0166】
【表13】
【0167】
【表14】
【0168】
【表15】
【0169】
【表16】
【0170】
【表17】
【0171】
【表18】
【0172】
【表19】
【0173】
【表20】
【0174】
【表21】
【0175】
【表22】
【0176】
【表23】
【0177】
【表24】
【0178】
【表25】
【0179】
【表26】
【0180】
【表27】
【0181】
【表28】
【0182】
【表29】
【0183】
【表30】
【0184】
【表31】
【0185】
【表32】
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
2022513657000001.app
【国際調査報告】