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特表2022-513669メカニカルアロイングされた金属溶射コーティング材料および同材料を利用した溶射コーティング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(54)【発明の名称】メカニカルアロイングされた金属溶射コーティング材料および同材料を利用した溶射コーティング方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 4/06 20160101AFI20220202BHJP
   C23C 24/04 20060101ALI20220202BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20220202BHJP
   B22F 1/17 20220101ALI20220202BHJP
   B22F 1/16 20220101ALI20220202BHJP
   B22F 1/10 20220101ALI20220202BHJP
   B22F 1/102 20220101ALI20220202BHJP
   B22F 1/105 20220101ALI20220202BHJP
   B22F 1/14 20220101ALI20220202BHJP
   C22C 21/02 20060101ALN20220202BHJP
   C22C 23/04 20060101ALN20220202BHJP
   C22C 14/00 20060101ALN20220202BHJP
【FI】
C23C4/06
C23C24/04
B22F1/00 N
B22F1/00 R
B22F1/17
B22F1/16
B22F1/10
B22F1/102
B22F1/105
B22F1/14 400
B22F1/14 500
C22C21/02
C22C23/04
C22C14/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021530890
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(85)【翻訳文提出日】2021-05-28
(86)【国際出願番号】 US2019066049
(87)【国際公開番号】W WO2020123848
(87)【国際公開日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】62/779,227
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515195347
【氏名又は名称】エリコン メテコ(ユーエス)インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジンデルマン、グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン、スコット
【テーマコード(参考)】
4K018
4K031
4K044
【Fターム(参考)】
4K018AA06
4K018AA13
4K018AA14
4K018BA03
4K018BA07
4K018BA08
4K018BB04
4K018BC12
4K018BC16
4K018BC22
4K018BC29
4K018BC30
4K018BD09
4K018CA07
4K031AA02
4K031AB08
4K031CB04
4K031CB09
4K031CB31
4K031CB37
4K031DA01
4K031DA03
4K031DA04
4K044AA06
4K044AB01
4K044BA02
4K044BB11
(57)【要約】
遷移金属にメカニカルアロイングされた、アルミニウム含有粒子、マグネシウム含有粒子、およびチタン含有粒子のうちの少なくとも1つを含む溶射粉末材料から得られる溶射コーティング。コーティングには、遷移金属に合金化された、アルミニウム、マグネシウム、またはチタン合金部分が含まれる。溶射粉末は、遷移金属にメカニカルアロイングされた粒子を含む、アルミニウム、マグネシウム、またはチタンから得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遷移金属にメカニカルアロイングされた金属含有粒子であって、アルミニウム、マグネシウム、およびチタンのうちの少なくとも1つを含む金属含有粒子を含む、溶射コーティング。
【請求項2】
前記金属含有粒子のそれぞれは、コアを含み、前記コアの周囲に前記遷移金属がメカニカルアロイングされている、請求項1に記載の溶射コーティング。
【請求項3】
前記溶射コーティングは、
前記金属含有粒子とブレンド若しくは混合、または前記金属含有粒子で被覆された有機材料、および、
前記金属含有粒子とブレンド若しくは混合、または前記金属含有粒子で被覆された無機固体潤滑剤
のうちの少なくとも一つを含む組成物を溶射することによって形成される、請求項1に記載の溶射コーティング。
【請求項4】
前記金属含有粒子は、純アルミニウムのコアを含む、請求項1に記載の溶射コーティング。
【請求項5】
前記金属含有粒子は、アルミニウム合金のコアを含む、請求項1に記載の溶射コーティング。
【請求項6】
前記金属含有粒子は、純マグネシウムのコアを含む、請求項1に記載の溶射コーティング。
【請求項7】
前記金属含有粒子は、マグネシウム合金のコアを含む、請求項1に記載の溶射コーティング。
【請求項8】
前記金属含有粒子は、純チタンのコアを含む、請求項1に記載の溶射コーティング。
【請求項9】
前記金属含有粒子は、チタン合金のコアを含む、請求項1に記載の溶射コーティング。
【請求項10】
前記遷移金属は、
モリブデン、
クロム、
ジルコニウム、
チタン、
ケイ素、および
それらの混合物のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の溶射コーティング。
【請求項11】
前記遷移金属は、モリブデンを含む、請求項10に記載の溶射コーティング。
【請求項12】
前記遷移金属は、クロムを含む、請求項10に記載の溶射コーティング。
【請求項13】
前記遷移金属は、クロムおよびモリブデンを含む、請求項10に記載の溶射コーティング。
【請求項14】
前記アロイングされた遷移金属は、50μm未満の粒子サイズを有する、請求項1に記載の溶射コーティング。
【請求項15】
遷移金属にメカニカルアロイングされたアルミニウム含有粒子を含む溶射粉末。
【請求項16】
遷移金属にメカニカルアロイングされたマグネシウム含有粒子を含む溶射粉末。
【請求項17】
遷移金属にメカニカルアロイングされたチタン含有粒子を含む溶射粉末。
【請求項18】
前記アルミニウム含有粒子のそれぞれは、アルミニウムコアまたはアルミニウム合金コアを含み、前記コアはメカニカルアロイングされた前記遷移金属によって囲まれている前記、請求項15に記載の溶射粉末。
【請求項19】
前記アルミニウム含有粒子とブレンド若しくは混合、または前記アルミニウム含有粒子で被覆された有機材料または無機固体潤滑剤をさらに含む、請求項15に記載の溶射粉末。
【請求項20】
前記遷移金属は、
モリブデン、
クロム、
ジルコニウム、
チタン、
ケイ素、および
それらの混合物のうちの1つである、請求項15に記載の溶射粉末。
【請求項21】
前記遷移金属は、モリブデンを含む、請求項15に記載の溶射粉末。
【請求項22】
前記遷移金属は、クロムを含む、請求項15に記載の溶射粉末。
【請求項23】
前記遷移金属は、クロムおよびモリブデンを含む、請求項15に記載の溶射粉末。
【請求項24】
前記メカニカルアロイングされた遷移金属は、1μm未満の粒子サイズを有する、請求項15に記載の溶射粉末。
【請求項25】
前記アルミニウム含有粒子は、
20~70重量パーセントの有機材料とブレンドされている、および
20~70重量パーセントの有機材料で被覆されている、
のうちの少なくとも一つである、請求項15に記載の溶射粉末。
【請求項26】
前記アルミニウム含有粒子は、
30~50重量パーセントの有機材料とブレンドされている、および
30~50重量パーセントの有機材料で被覆されている、
のうちの少なくとも一つである、請求項15に記載の溶射粉末。
【請求項27】
前記有機材料は、
芳香族ポリエステルおよび液晶ポリエステルのうちの少なくとも1つを含むポリエステル、
少なくともメタクリル酸メチルを含むポリマー、および
有機固体潤滑剤の
うちの少なくとも1つを含む、請求項25に記載の溶射粉末。
【請求項28】
前記有機材料は、ポリマーを含む、請求項25に記載の溶射粉末。
【請求項29】
前記アルミニウム含有粒子は、
5~50重量パーセントの固体潤滑剤とブレンドされている、および
5~50重量パーセントの固体潤滑剤で被覆されている、
のうちの少なくとも一つである、請求項15に記載の溶射粉末。
【請求項30】
前記アルミニウム含有粒子は、
15~25重量パーセントの固体潤滑剤とブレンドされている、または
15~25重量パーセントの固体潤滑剤で被覆されている、
のうちの少なくとも一方である、請求項15に記載の溶射粉末。
【請求項31】
前記固体潤滑剤は、
六方晶窒化ホウ素、
フッ化カルシウム、
グラファイト、
タルク、および
二硫化モリブデン
のうちの少なくとも1つである、請求項29に記載の溶射粉末。
【請求項32】
請求項15に記載の溶射粉末で基板をコーティングする方法であって、
前記溶射粉末を前記基板上に溶射することを含み、
溶射は、
プラズマ溶射、
高速フレーム(HVOF)溶射、
ガス式溶射、および
アークワイヤー溶射
のうちの1つを含む、方法。
【請求項33】
アルミニウム含有粒子、マグネシウム含有粒子、およびチタン含有粒子のうちの少なくとも1つを含む溶射粉末を製造する方法であって、
遷移金属を、アルミニウム、マグネシウム、およびチタンの少なくとも1つを含む金属粉末粒子にメカニカルアロイングすることを含む、方法。
【請求項34】
前記遷移金属は、モリブデンを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記遷移金属は、クロムを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記遷移金属は、クロムおよびモリブデンを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記メカニカルアロイングされた遷移金属は、50μm未満の粒子サイズを有する、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
アルミニウム含有粒子、マグネシウム含有粒子、およびチタン含有粒子のうちの前記少なくとも1つを有機材料とブレンドする、または有機材料で被覆することをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
アルミニウム含有粒子、マグネシウム含有粒子、およびチタン含有粒子のうちの前記少なくとも1つを、
金属被覆ポリエステル、芳香族ポリエステル、および液晶ポリエステルのうちの少なくとも1つを含むポリエステル、
メタクリル酸メチルを含むポリマー、
金属被覆固体潤滑剤を含む固体潤滑剤、および
噴霧乾燥された金属凝集体
のうちの少なくとも1つとブレンドするか、またはそれで被覆することをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
アルミニウム含有粒子、マグネシウム含有粒子、およびチタン含有粒子のうちの前記少なくとも1つを固体潤滑剤とブレンド若しくは混合、または固体潤滑剤で被覆することをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項41】
前記メカニカルアロイングは、
アトリッションミリング、
ボールミリング、および
クライオミリング
のうちの少なくとも1つを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項42】
モリブデンにメカニカルアロイングされたアルミニウム含有粒子を含む溶射粉末材料から得られ、前記モリブデンにアロイングされたアルミニウム合金部分を含む溶射摩耗性コーティング。
【請求項43】
前記アルミニウム含有粒子のそれぞれは、アルミニウムまたはアルミニウム合金のコアを含み、前記コアはメカニカルアロイングされたモリブデン金属によって囲まれている、請求項42に記載の溶射摩耗性コーティング。
【請求項44】
前記溶射粉末材料は、アルミニウム含有粒子とブレンド若しくは混合、またはアルミニウム含有粒子で被覆された有機材料または無機固体潤滑剤を含む、請求項42に記載のコーティング。
【請求項45】
モリブデンにメカニカルアロイングされたアルミニウム含有粒子を含む溶射粉末摩耗性コーティング材料。
【請求項46】
前記アルミニウム含有粒子のそれぞれは、アルミニウムまたはアルミニウム合金のコアを含み、前記コアはメカニカルアロイングされたモリブデンによって囲まれている、請求項45に記載の溶射粉末摩耗性コーティング材料。
【請求項47】
アルミニウム含有粒子とブレンド若しくは混合、またはアルミニウム含有粒子で被覆された有機材料または無機固体潤滑剤を含む、請求項45に記載の溶射粉末摩耗性コーティング材料。
【請求項48】
モリブデンにアロイングされた前記アルミニウム合金部分は、エンジン部品の一部である、請求項42に記載の溶射摩耗性コーティング。
【請求項49】
前記エンジン部品は、
タービンブレード、
ピストンリング、
エンジンシュラウド、
エンジンシリンダーライナー、
エンジンケーシング、および
ベアリング
のうちの少なくとも1つである、請求項48に記載の溶射摩耗性コーティング。
【請求項50】
遷移金属にメカニカルアロイングされたコア材料の粒子を含む溶射粉末材料を含む組成物を溶射することによって形成された溶射コーティングであって、前記コア材料は、アルミニウム、チタン、マグネシウム、またはそれらの合金のうちの少なくとも1つであり、前記コア材料の一部は、前記遷移金属にアロイングされている、溶射コーティング。
【請求項51】
遷移金属にメカニカルアロイングされた、アルミニウム含有粒子、マグネシウム含有粒子、およびチタン含有粒子のうちの少なくとも1つを含む溶射粉末コーティング材料。
【請求項52】
前記アルミニウム含有粒子は、遷移金属にメカニカルアロイングされたケイ素の個別のセクションを含む、請求項15に記載の溶射粉末コーティング材料。
【請求項53】
前記遷移金属は、モリブデンを含む、請求項52に記載のコーティング材料。
【請求項54】
前記遷移金属は、クロムを含む、請求項52に記載のコーティング材料。
【請求項55】
前記遷移金属は、モリブデンおよびクロムを含む、請求項52に記載のコーティング材料。
【請求項56】
遷移金属にメカニカルアロイングされた金属含有粒子を含み、前記金属含有粒子は、アルミニウム、チタン、またはマグネシウムのうちの少なくとも1つを含む、溶射粉末コーティング材料。
【請求項57】
前記遷移金属にメカニカルアロイングされた金属およびケイ素の粉末粒子をさらに含み、前記金属は、アルミニウム、チタン、またはマグネシウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項15に記載の溶射粉末コーティング材料。
【請求項58】
ポリマーの第1の粒子と、
金属およびケイ素を含む第2の粒子との混合物、ブレンド、または被覆を含み、
前記第2の粒子の外面は、遷移金属にメカニカルアロイングされている、溶射粉末。
【請求項59】
前記金属は、アルミニウム、チタン、またはマグネシウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項58に記載の溶射粉末。
【請求項60】
前記溶射粉末は、前記第1の粒子よりも大きな重量パーセントの前記第2の粒子を含む、請求項58に記載の溶射粉末。
【請求項61】
前記アロイングされた遷移金属は、10μm未満の粒子サイズを有する、請求項1に記載のコーティング。
【請求項62】
前記メカニカルアロイングされた遷移金属は、1μm~10μmの間の粒子サイズを有する、請求項15に記載の溶射粉末。
【請求項63】
前記メカニカルアロイングされた遷移金属は、10μm未満の粒子サイズを有する、請求項15に記載の溶射粉末。
【請求項64】
前記メカニカルアロイングされた遷移金属は、10μm未満の粒子サイズを有する、請求項33に記載の方法。
【請求項65】
遷移金属にメカニカルアロイングされた金属含有粒子を含むコーティング前駆体であって、前記金属含有粒子は、アルミニウム、マグネシウム、およびチタンのうちの少なくとも1つを含む、コーティング前駆体と、
アルミニウム金属、
アルミニウムと前記遷移金属との第1の合金、
マグネシウム金属、
マグネシウムと前記遷移金属との第2の合金、
チタン金属、および
チタンと前記遷移金属との第3の合金のうちの少なくとも1つを含む溶射コーティングと
を含む、溶射コーティング構成。
【請求項66】
前記金属含有粒子のそれぞれは金属コアを含み、前記金属コアはメカニカルアロイングされた前記遷移金属によって囲まれている、請求項65に記載の溶射コーティング。
【請求項67】
前記金属含有粒子は、有機材料とブレンド若しくは混合、または有機材料で被覆されている、および
前記金属含有粒子は、無機固体潤滑剤とブレンド若しくは混合、または無機固体潤滑剤で被覆されている、
のうちの少なくとも一つである、請求項65に記載の溶射コーティング。
【請求項68】
前記金属コアは、純アルミニウムを含む、請求項66に記載の溶射コーティング。
【請求項69】
前記金属コアは、アルミニウム合金を含む、請求項66に記載の溶射コーティング。
【請求項70】
前記金属コアは、純マグネシウムを含む、請求項66に記載の溶射コーティング。
【請求項71】
前記金属コアは、マグネシウム合金を含む、請求項66に記載の溶射コーティング。
【請求項72】
前記金属コアは、純チタンを含む、請求項66に記載の溶射コーティング。
【請求項73】
前記金属コアは、チタン合金を含む、請求項66に記載の溶射コーティング。
【請求項74】
前記遷移金属は、
モリブデン、
クロム、
ジルコニウム、
チタン、
ケイ素、および
それらの混合物
のうちの少なくとも1つを含む、請求項65に記載の溶射コーティング。
【請求項75】
前記遷移金属は、モリブデンを含む、請求項74に記載の溶射コーティング。
【請求項76】
前記遷移金属は、クロムを含む、請求項74に記載の溶射コーティング。
【請求項77】
前記遷移金属は、クロムおよびモリブデンを含む、請求項74に記載の溶射コーティング。
【請求項78】
前記アルミニウム含有粒子、マグネシウム含有粒子、およびチタン含有粒子のうちの少なくとも一部は、前記遷移金属にアロイングされていない、請求項1に記載の溶射コーティング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的な実施形態は、広く言えば、改善された滑り特性および摩耗特性を有する金属ベースの溶射コーティング、および溶射コーティングのコーティング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
溶射は、溶融または加熱された材料が表面上にスプレーされるコーティングプロセスである。供給原料、またはコーティング前駆体は、電気的プロセス、例えば、プラズマまたはアークによって、または化学的プロセス、例えば、燃焼炎によって加熱され得る。溶射は、スプレー溶接とも呼ばれ、熱源と、熱源によって小さな液滴に溶けて表面上にスプレーされる粉末またはワイヤーの形態のコーティング材料で構成される。スプレー溶接は、プラズマ溶射、高速フレーム溶射(HVOF)、アーク溶射、フレーム溶射、および蒸着とも呼ばれる。溶射コーティングは、金属または非金属基板に適用できる。
【0003】
溶射は、電気めっきなどの他のコーティングプロセスと比較して、高い堆積速度で広い面積にわたって厚いコーティングを提供することができる。溶射に利用できるコーティング材料には、金属、合金、セラミックス、プラスチック、および複合材料が含まれ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
溶射コーティング材料は、一般的に、金属および/またはセラミックスの粉末材料である。これらの粉末材料のいくつかは、溶射コーティングを形成するために使用されると、耐摩耗性および耐食性を提供する。コーティング材料の腐食は、鋼、ステンレス鋼、チタン合金、ニッケル合金などの材料の場合、塩化物ならびにガルバニック対の存在によって観察され得る。一般的な腐食の種類には、ガルバニック腐食、応力腐食割れ、大気腐食、および水性腐食が含まれ、これらはすべて、コーティングの膨れおよび破砕などの壊滅的な障害につながる可能性がある。摩耗による損傷は、例えば、過度の摩擦力(高い摩擦係数)および摩擦による加熱によって発生する可能性がある。損傷は、金属の移動およびすり減り、極端なバルク塑性変形、さらには破壊の形態をとる可能性がある。金属粉末と遷移金属のメカニカルアロイングは、焼結圧密処理を介して部品を製造するためによく使用される。遷移金属のメカニカルアロイングの使用は、例えば、アルミニウム合金、マグネシウム合金、またはチタン合金におけるそのような遷移元素の濃度の増加を可能にし、これは事実上の固溶体を生成することができる。
【0005】
粉末粒子のブレンドは、例えば圧力下の型内に制限されながら金属粉末を圧縮することを含み、卑金属または合金、任意の追加の元素、および/または粉末潤滑剤がブレンダーに供給され、そこでこれらの材料がブレンドされて混合物になる。粉末粒子の被覆は、別のコア材料上への別個の材料の機能的な一層(または複数の層)の追加を伴う。これらの層は、バインダー(有機または無機)によってコア上に共に結合された微粉末粒子であり得るか、または電解的または化学的(例えば、化学蒸着-CVD)または物理的(プラズマ蒸着-PVD)に堆積され得る。
【0006】
ボールミリングは、材料を粉末に粉砕する粉砕方法である。ボールミリングプロセス中に、材料と、容器内のセラミックス、フリント小石、および/またはステンレス鋼の小さな剛性のあるボールとの間に繰り返し衝突が発生し、材料を粉末に分解する局所的な圧力を生成する。
【0007】
メカニカルアロイングは、材料、例えば均質な材料を製造するために、例えば、高エネルギーボールミル内でブレンドされた粉末粒子の繰り返しの冷間溶接、破砕、および再溶接を含む固体および粉末処理技術である。メカニカルアロイングは、粉砕される材料のスラリーと粗い粉砕媒体の激しい攪拌によって固体粒子のサイズを機械的に縮小することを含むアトリッションミリング、または材料を冷却し、続いて材料のサイズを、例えば粉末に、縮小することを含むクライオミリングによっても実行され得る。
【0008】
アルミニウム合金ベースの粉末コーティングは、例えば、7パーセントのケイ素(Si)および40パーセントのポリエステルを有するアルミニウム(Al)を含むMETCO(登録商標)601NS、および10パーセントのケイ素(Si)と20パーセントの六方晶窒化ホウ素(hBN)を有するアルミニウム(Al)を含むMETCO(登録商標)320NSなどの摩耗性粉末コーティング材料を含み得る。クリアランス制御用途向けの摩耗性コーティングを製造するためのアルミニウム合金ベースの溶射粉末は、例えば、設計意図または操作上のサージの結果として回転部品がコーティングと接触する場合に使用することができる。このようなコーティングは、シール領域のクリアランス制御を提供することによってガス経路効率を最大化しながら、回転部品の摩耗を最小化するのに有用であり得る。このようなコーティングは、軟質剪断性および耐熱性ポリエステルなどのポリマー材料の所望の特性を、より高強度の剪断性合金(例えば、アルミニウム青銅+ポリエステルであるMETCO(登録商標)601NSまたはM610NS)と組み合わせることができる。別のコーティングコンセプトは、Al-SiとhBNを組み合わせたもので、セラミックスのhBN相が切削性能を促進し、耐熱性を高める(METCO(登録商標)320NS)。これらのコーティングは、鋼、ニッケル合金、またはチタン合金の圧縮機ブレード、ナイフ、またはラビリンスシールストリップのいずれかに対する摩擦侵入に適している。しかしながら、アルミニウム合金マトリックスを使用した摩耗性コーティングは、海塩および湿気に富む環境にさらされると、一般的な腐食(白色水酸化アルミニウムの生成)、周期的な腐食、ブリスター腐食、ならびに応力腐食割れによる損傷を受けやすい場合がある。
【0009】
アルミニウムまたはアルミニウム合金、マグネシウムまたはマグネシウム合金、チタンまたはチタン合金などの金属ベースの材料にメカニカルアロイングされた1つまたは複数の遷移金属、例えば、モリブデンまたはモリブデンおよびクロムを含む溶射粉末またはその粉末を使用するコーティング方法から得られる、改善された滑り特性および摩耗特性を有する金属ベースの溶射コーティングに対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の問題および満たされていないニーズに照らして、例示的な実施形態は、Al、Mg、および/またはTi合金成分とメカニカルアロイングされ、改善された耐摩耗性および耐食性を有利に示すことができる摩耗性コーティングを形成するために使用できる、Mo、Cr、Zr、Ti、Si、またはそれらの混合物などの遷移金属を組み込んだ、アルミニウム、マグネシウム、またはチタンベースの溶射コーティング粉末を含む。
【0011】
例示的な実施形態は、遷移金属にメカニカルアロイングされた金属含有粒子を含むコーティング前駆体であって、金属含有粒子は、アルミニウム、マグネシウム、およびチタンのうちの少なくとも1つを含む、コーティング前駆体と、アルミニウム金属、アルミニウムと前記遷移金属との第1の合金、マグネシウム金属、マグネシウムと前記遷移金属との第2の合金、チタン金属、およびチタンと前記遷移金属との第3の合金のうちの少なくとも1つを含む溶射コーティングとを含む、溶射コーティング構成に関するものである。金属含有粒子のそれぞれは、金属コアにメカニカルアロイングされた遷移金属によって囲まれた金属コアを含み得る。金属含有粒子は、有機材料とブレンド、混合、または有機材料で被覆される、および/または金属含有粒子は、無機固体潤滑剤とブレンド、混合、または無機固体潤滑剤で被覆される。
【0012】
例示的な実施形態は、遷移金属にメカニカルアロイングされた金属含有粒子を含み、金属含有粒子は、アルミニウム、マグネシウム、およびチタンのうちの少なくとも1つを含む溶射コーティングに関する。例示的な実施形態では、アルミニウム含有粒子、マグネシウム含有粒子、およびチタン含有粒子のうちの少なくとも一部は、遷移金属に合金化されていない。
【0013】
例示的な実施形態は、遷移金属に合金化され、アルミニウム、マグネシウム、およびチタンのうちの少なくとも1つを含む金属含有粒子を含む溶射コーティングに関するものである。他の例示的な実施形態では、溶射コーティングは、遷移金属に合金化されたアルミニウムまたはアルミニウム合金部分、遷移金属に合金化されたマグネシウムまたはマグネシウム合金部分、および遷移金属に合金化されたチタンまたはチタン合金部分のうちの少なくとも1つを含む。
【0014】
例示的な実施形態は、改善された滑り特性および摩耗特性を備えた金属ベースの溶射コーティングであって、コーティングは、アルミニウムまたはアルミニウム合金、マグネシウムまたはマグネシウム合金、チタンまたはチタン合金などの金属ベースの材料にメカニカルアロイングされている1つまたは複数の遷移金属、例えば、モリブデンおよび/またはクロムを含む溶射粉末から得られる、金属ベースの溶射コーティングに関するものである。
【0015】
例示的な実施形態は、ポリマーの第1の粒子と、金属およびケイ素を含む第2の粒子との混合物、ブレンド、または被覆を含み、第2の粒子の外面は、遷移金属にメカニカルアロイングされている、溶射粉末に関するものである。金属には、アルミニウム、チタン、またはマグネシウムのうちの少なくとも1つが含まれる。溶射粉末は、第1の粒子よりも大きな重量パーセントの第2の粒子を含む。
【0016】
メカニカルアロイングされた遷移金属およびアルミニウム合金粉末を使用して得られたアルミニウム合金ベースの摩耗性コーティングは、改善された耐食性を示し、これは追加の利点としてである。メカニカルアロイングされた粉末の溶射は、塗布されたコーティングが、アトマイズ粉末から得られる現在の溶射コーティングよりも改善された特性を示すように、溶射された粉末の合金化を強化する。これは、マグネシウム合金またはチタン合金ベースの摩耗性コーティングにも当てはまり得る。
【0017】
本発明の実施形態は、改善された滑り特性および摩耗特性を有する金属ベースの溶射コーティングを含み、コーティング材料は、金属粉末を1つまたは複数の遷移金属とメカニカルアロイングすることによって得られる。コーティング材料の実施形態は、純アルミニウムまたは合金化されたアルミニウム、例えば、METCO(登録商標)54NSなどの99%の純アルミニウム、または98%以上の純度を有するアルミニウムを含む。他の例では、純度は90%以上または95%以上のいずれかであり得る。1つまたは複数の遷移金属の実施形態には、モリブデン、クロム、ジルコニウム、チタン、ケイ素、およびそれらの混合物が含まれる。コーティング材料の実施形態は、純チタンまたは合金化されたチタン、例えば、99%の純チタン、または98%以上の純度を有するチタンを含む。他の例では、チタンの純度は85%以上であり得る(Ti6-2-4-2またはTi6-4グレード5の例)。
【0018】
例示的な実施形態はまた、遷移金属にメカニカルアロイングされたアルミニウム含有粒子を含む溶射粉末材料から得られる溶射コーティングであって、遷移金属に合金化されたアルミニウム合金部分を含むコーティングに関する。これは、マグネシウム合金またはチタン合金ベースの溶射コーティングにも当てはまり得る。
【0019】
例示的な実施形態は、コアにメカニカルアロイングされた遷移金属によって囲まれたアルミニウムまたはアルミニウム合金のコアをそれぞれ有するアルミニウム含有粒子を含む。溶射粉末は、アルミニウム含有粒子とブレンドまたは混合された有機材料および/または有機または無機の固体潤滑剤を含み得る。アルミニウム含有粒子は、純アルミニウムのコアを含み得る。アルミニウム含有粒子は、アルミニウム合金のコアを含み得る。他の例示的な実施形態は、コアにメカニカルアロイングされた遷移金属によって囲まれたマグネシウムまたはチタン(またはマグネシウム合金またはチタン合金)コアを含むマグネシウム含有粒子またはチタン含有粒子を含む。溶射粉末は、マグネシウム含有粒子またはチタン含有粒子とブレンドまたは混合された有機材料または無機固体潤滑剤を含み得る。マグネシウム含有粒子、またはチタン含有粒子は、純マグネシウムのコア、または純チタンのコアをそれぞれ含み得る。マグネシウム含有粒子またはチタン含有粒子は、それぞれ、マグネシウム合金のコア、またはチタン合金のコアを含み得る。
【0020】
例示的な実施形態では、遷移金属は、モリブデン、クロム、ジルコニウム、チタン、ケイ素、またはそれらの混合物のうちの少なくとも1つであり得る。遷移金属は、モリブデンのみであり得る。遷移金属はクロムのみであり得る。遷移金属は、MoとCrの両方であり得る。メカニカルアロイングされた遷移金属は、50μm未満(フィッシャーモデル95サブシーブサイザー(FSSS)測定)、または10μm未満(FSSS測定)、または1μm未満(FSSS測定)の粒子サイズを有し得る。
【0021】
例示的な実施形態はまた、遷移金属にメカニカルアロイングされた、アルミニウム含有粒子、マグネシウム含有粒子、またはチタン含有粒子を含む溶射粉末コーティング材料を含む。例示的な実施形態では、アルミニウム含有粒子はそれぞれ、コアにメカニカルアロイングされた遷移金属によって囲まれたアルミニウムまたはアルミニウム合金コアを含む。溶射粉末は、アルミニウム含有粒子とブレンド、混合、またはアルミニウム含有粒子で被覆された有機材料または無機固体潤滑剤を含み得る。アルミニウム含有粒子は、純アルミニウムのコアを含み得る。アルミニウム含有粒子は、アルミニウム合金のコアを含み得る。
【0022】
他の例示的な実施形態では、マグネシウム含有粒子はそれぞれ、コアにメカニカルアロイングされた遷移金属によって囲まれたマグネシウムまたはマグネシウム合金コアを含む。溶射粉末は、マグネシウム含有粒子とブレンド、混合、またはマグネシウム含有粒子で被覆された有機材料または固体潤滑剤を含み得る。マグネシウム含有粒子は、純マグネシウムのコアを含み得る。マグネシウム含有粒子は、マグネシウム合金のコアを含み得る。
【0023】
さらなる例示的な実施形態では、チタン含有粒子はそれぞれ、コアにメカニカルアロイングされた遷移金属によって囲まれたチタンまたはチタン合金コアを含む。溶射粉末は、チタン含有粒子とブレンド、混合、またはチタン含有粒子で被覆された有機材料または固体潤滑剤を含み得る。チタン含有粒子は、純チタンのコアを含み得る。チタン含有粒子は、チタン合金のコアを含み得る。
【0024】
例示的な実施形態では、アルミニウム含有粒子、マグネシウム含有粒子、またはチタン含有粒子は、20~70重量パーセントの有機材料とブレンドまたはそれで被覆され得る。他の例示的な実施形態では、アルミニウム含有粒子、マグネシウム含有粒子、またはチタン含有粒子は、30~50重量パーセントの有機材料とブレンドまたはそれで被覆され得る。有機材料のタイプは重要ではなく、例えば、液晶ポリエステルなどのポリエステル、またはメタクリル酸メチルなどのポリマー、または上記の金属粒子とブレンドまたはそれで被覆することができる任意の他の有機材料であり得る。
【0025】
さらなる例示的な実施形態では、アルミニウム含有粒子、マグネシウム含有粒子、またはチタン含有粒子は、5~50重量パーセントの固体潤滑剤とブレンドまたはそれで被覆され得る。アルミニウム含有粒子、マグネシウム含有粒子、またはチタン含有粒子は、15~25重量パーセントの固体潤滑剤とブレンドまたはそれで被覆され得る。固体潤滑剤は、六方晶窒化ホウ素(hBN)、フッ化カルシウム、グラファイト、タルク、または二硫化モリブデンのうちの少なくとも1つであり得る。
【0026】
例示的な実施形態はまた、上記の溶射粉末コーティング材料で基板をコーティングする方法を提供し、この方法は、粉末材料を基板上に溶射することを含み、溶射法は、プラズマ溶射、HVOF溶射、ガス式溶射、またはアークワイヤー溶射を含む。
【0027】
例示的な実施形態はまた、上記の溶射粉末コーティング材料を作製する方法を提供し、この方法は、遷移金属を、アルミニウム、マグネシウム、チタンのうちの少なくとも1つを含む粉末粒子にメカニカルアロイングすることを含む。実施形態では、遷移金属は、Moである。遷移金属は、Crであり得る。遷移金属は、MoとCrの両方であり得る。遷移金属は、Zr、Ti、Si、およびそれらの混合物のいずれか1つであり得る。メカニカルアロイングされた遷移金属は、50μm未満(FSSS測定)、または10μm未満(FSSS測定)、または1μm未満(FSSS測定)の粒子サイズを有し得る。
【0028】
例示的な実施形態では、アルミニウム、マグネシウム、またはチタンを含む粉末粒子は、有機材料とブレンドまたは有機材料で被覆され得る。有機材料の種類は重要ではない。粉末粒子は、例えば、金属被覆ポリエステル、芳香族ポリエステル、または液晶ポリエステルなどのポリエステル、メタクリル酸メチル、固体潤滑剤、金属被覆固体潤滑剤、噴霧乾燥金属凝集体、または金属粒子とブレンドまたは金属粒子で被覆することができる任意の他の有機材料とブレンドまたはそれで被覆され得る。粉末粒子は、固体潤滑剤とブレンド、混合、または固体潤滑剤で被覆され得る。
【0029】
例示的な実施形態はまた、Moにメカニカルアロイングされた、アルミニウム含有粒子含有粒子、マグネシウム、またはチタン含有粒子を含む溶射粉末材料から得られる溶射摩耗性コーティングを提供し、このコーティングは、Moに合金化されたアルミニウム合金部分を含む。粒子はそれぞれ、コアにメカニカルアロイングされたMo金属によって囲まれたコアを含み得る。溶射粉末材料は、アルミニウム含有粒子とブレンドまたは混合またはアルミニウム含有粒子で被覆された有機材料または固体潤滑剤を含み得る。
【0030】
例示的な実施形態はまた、Moにメカニカルアロイングされた、アルミニウム含有粒子、マグネシウム含有粒子、またはチタン含有粒子を含む溶射粉末摩耗性コーティング材料を提供する。粒子はそれぞれ、コアにメカニカルアロイングされたMo金属によって囲まれた、Al、Mg、またはTi合金コアを含み得る。溶射粉末摩耗性コーティング材料は、Al、Mg、またはTi合金粒子とブレンドまたは混合またはそれで被覆された有機材料または固体潤滑剤を含み得る。
【0031】
例示的な実施形態はまた、Mo、またはMoおよびCrのいずれかである遷移金属にメカニカルアロイングされた、アルミニウム含有粒子、マグネシウム含有粒子、またはチタン含有粒子を含む溶射粉末コーティング材料を含む。例示的な実施形態では、粒子はそれぞれ、コアにメカニカルアロイングされた遷移金属によって囲まれた、Al、Mg、またはTi合金コアを含む。溶射粉末はまた、アルミニウム含有粒子、マグネシウム含有粒子、またはチタン含有粒子と事前に合金化、ブレンド、混合、またはそれで被覆されたSiを含み得る。粉末組成物は、以下に記載される表Bに成分Aとして記載されている項目のうちの1つであり得る。表Bの粉末組成物は、以下に記載される表Cに成分Bとして記載されている項目のうちの1つとブレンドされ得る。
【0032】
これらの例示的な実施形態の追加の利点および新規の構成は、部分的には以下の説明に記載され、部分的には、以下を検討するか、または実施形態の実践によって学習することにより当業者により明らかになるであろう。
【0033】
添付の図面は、本発明のさらなる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する。添付の図面は、本発明の実施形態を示し、説明と共に、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】例示的な実施形態に係る、アルミニウムコアおよびコアにメカニカルアロイングされた遷移金属を有する例示的な粉末コーティング粒子を示す。
図2】例示的な実施形態に係る、図1のコーティング粒子を合成樹脂材料の粒子と組み合わせるか、または混合するコーティング材料を示す。
図3】例示的な実施形態に係る、アルミニウムおよびケイ素のコア、およびコアにメカニカルアロイングされた遷移金属を有する例示的な粉末コーティング粒子を示す。
図4】例示的な実施形態に係る、図3のコーティング粒子を合成樹脂材料の粒子と組み合わせるか、または混合するコーティング材料を示す。
図5】例示的な実施形態に係る、モリブデンおよびクロムなどの1つまたは複数の遷移金属とメカニカルアロイングされ、有機材料とメカニカルブレンドされたAl-12Si合金コアの粉末形態の第1のスケールでのSEM写真を示す。
図6】例示的な実施形態に係る、モリブデンおよびクロムなどの1つまたは複数の遷移金属とメカニカルアロイングされ、有機材料とメカニカルブレンドされたAl-12Si合金コアの粉末形態の第2のスケールでのSEM写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、コーティング材料が1つまたは複数の遷移金属を含むメカニカルアロイングされた金属粉末から得られる、改善された滑り特性および摩耗特性を備えた金属ベースの溶射コーティングを含む。コーティング方法も開示されている。
【0036】
金属間移動現象は、軽量タービンクリアランス制御コーティング(摩耗材)の主成分として使用されるアルミニウム合金でも観察される可能性があり、一般的に、いくつかのタービンローター侵入条件下において、シュラウド材料(摩耗材)に生成される不要な溝または「グラモフォニング」効果をもたらす。ここでの「移動」という用語は、アルミニウム合金が他の表面、この場合はチタンまたはステンレス鋼合金から製造されたタービンブレードに付着して蓄積する傾向を意味する。移動に対して一般的に使用される他の工学用語は、「かじり」または「冷間溶接」、またはより大きく産業的に重要な規模では「摩擦溶接」である。他の表面と接触したときに金属および合金のかじりを促進する2つの主な要因は、(a)高い化学活性を有する金属および合金と、(b)低い剪断弾性率および剪断強度を有する金属および合金である。
【0037】
より低い剪断強度のアルミニウムおよびその合金は、より高い強度の金属表面(例えば、アルミニウムによるクリアランス制御の場合のチタン合金タービンエンジンブレード先端)に移動する傾向がある。アルミニウム合金とチタン合金はどちらも比較的高い化学活性を有し、急速に酸化する。どちらも表面に保護酸化物層を形成し、材料の移動効果を阻害する傾向があるが、特に柔らかく、剪断強度の低いアルミニウム合金では、表面が摩擦接触で変形すると、保護酸化物層は破壊されて除去される可能性がある。保護酸化物層およびその他の吸着ガス層(水など)の破壊は、保護されていない合金を高ひずみ速度の塑性変形、摩擦溶接、および接触界面での機械的混合にさらすことにより、粘着性の移動(かじり)プロセスを支援する。これは、酸化物層の形成および補充が抑制され、移動およびかじり現象を防ぐための保護酸化物または吸着ガス層がない高真空下での金属の摩擦挙動を観察することによっても実証されている。
【0038】
高速回転タービンローターブレード先端(例えば、100~400m/sの先端速度範囲)の場合、移動したアルミニウム合金の塊または凹凸が反対側のブレード先端表面に付着すると、塊または凹凸は、ブレード先端の延長として振る舞う可能性があり、シュラウドへの次のブレード侵入ステップで、反対側の摩耗性表面に溝を生成する可能性がある。その結果、ブレード先端界面における、または移動層自体の内部における剪断応力が高くなりすぎると、アルミニウム合金の剪断変形および局在化、機械的混合、発熱、酸化、摩耗、移動、さらなる溝形成および切削、および移動層の除去の動的プロセスが発生する可能性がある。結果として生じる定常状態メカニズムは、これらの異なるメカニズムのそれぞれの間の複雑なバランスであり、それは、タービンローターの摩耗性シュラウドへの侵入条件によって全体的に決定される。低いローター先端速度条件(例えば、100~200m/s)は、アルミニウム合金の移動速度が先端の剪断切削応力によるアルミニウム合金の除去速度よりも速い移動現象と溝形成(グラモフォニング)を助長し、切削力によって引き起こされる剪断応力は、ブレード先端の金属に摩擦溶接されているアルミニウムの界面を破壊するには不十分である。
【0039】
溝形成およびグラモフォン現象の望ましくない効果は、それがシュラウドおよびブレード先端の両方の表面粗さを増加させ、先端-シュラウドギャップクリアランスを開き、それによってタービン密閉効率に悪影響を与えることである。侵入イベントまたはエンジンサイクル後のタービンブレード先端の周囲温度までのその後の冷却は、一般的に、熱膨張の不一致応力および大変形プロセス中に移動したアルミニウム層に与えられた残留応力の緩和のために、移動したアルミニウムがチップを破壊する結果をもたらす。これにより、密閉効率の損失がさらに大きくなる。シュラウドとブレード先端の両方のより滑らかな表面は、密閉効率とガス流の空気力学を改善するのに有利である。
【0040】
金属から金属への移動プロセスを阻害または低減することにより、上記で論じた溝形成またはグラモフォン現象を低減することができる。金属間の移動プロセスを抑制するために様々な方法を導入することができ、最も一般的なのは、グラファイトまたは六方晶窒化ホウ素(hBN)などの固体潤滑材料、または他の同様の材料をコーティング微細構造に含めることによる。これらの方法はある程度まで助長するのに効果的であるが、露出したアルミニウム合金マトリックスを単に部分的かつ非効率的に潤滑および保護する微細構造的に大きな粒子として主に取り扱われ得る点で、金属間の移動を抑制または低減するにはやや非効率的である。また、グラファイトおよびhBNなどの固体潤滑剤はよく知られている粘着防止材料であるが、可燃性で砕けやすく、溶射堆積プロセスでの金属間結合の形成を抑制または低減する傾向があり、その結果、微細構造の制御が困難になる可能性がある。
【0041】
使用される他のアプローチは、ブレード先端表面上の材料の微細研磨性除去によって、アルミニウムのブレード先端への移動を阻害するのを助長するアルミニウム合金へのより硬い微細構造相の導入を含む。これは通常、アルミニウム合金のケイ素含有量を低共晶からほぼ共晶の組成に増やすことによって行われる。ケイ素の硬度は900~1000HVであるため、より柔らかい材料に対して研磨性がある。しかしながら、タービンブレードの摩耗が多すぎるリスクがあるため、ケイ素含有量を増やすことができる量には限度がある。
【0042】
さらなるアプローチは、高い潤滑性を有する材料から得られ、次に金属間移動効果(かじり)を抑制するのを助長するアルミニウム合金粉末粒子上に機械的に安定な薄層を導入することによって、アルミニウム合金粉末粒子の表面を改質することであり得る。したがって、潤滑性の高い固体の薄層は、物理蒸着(PVD)、例えばスパッタコーティング、イオン注入、またはレーザー加熱などの多くの技術を使用してアルミニウム合金上に堆積させることができる。しかしながら、これらの技術は、大量生産規模でアルミニウム合金粒子をコーティングするために実用的または経済的に実現可能ではない可能性がある。
【0043】
別のアプローチは、有機または無機バインダーを使用して、微細に粉砕された潤滑性材料をアルミニウム合金粒子上に被覆することである。しかしながら、微粒子の被覆層の接着は、使用されるバインダーの接着強度に依存し、それは弱く、より高い温度によって影響を受ける可能性がある。理想的には、潤滑材料層を粒子の表面に物理的に溶接または合金化できれば、溶射の処理と流れ、溶射堆積の両方に対する機械的安定性が向上し、例えばタービンブレードとの接触において、機械的に安定した潤滑層としてのそれらの機能も向上する。1つのアプローチは、メカニカルアロイング技術を使用して、潤滑性材料粒子の薄層をアルミニウム合金粒子に合金化することである。これは、六方晶窒化ホウ素(hBN)またはグラファイトなどのよく知られた潤滑材料を使用して実行できるが、これらの材料は剪断強度が低く、粒子表面に溶接または合金化できない可能性がある。別のアプローチは、アルミニウム合金にも容易に溶接する潤滑性材料で粒子表面をメカニカルアロイングすることである。この点で、モリブデン金属は、優れた潤滑性を有する点で際立っており、アルミニウム合金と容易にメカニカルアロイングする材料である。
【0044】
モリブデンは、その潤滑性と、すべり摩耗およびフレッチング摩耗の用途での使用でよく知られており、例えば、タービンブレード、ピストンリング、エンジンシュラウド、エンジンシリンダーライナー、エンジンケーシング、およびベアリングなどの、例えば自動車エンジン部品などの多くのエンジニアリングシステムのコーティングの摩擦を低減する。モリブデンは、高い硬度によって与えられた優れた摩耗特性を有すると認められている。
【0045】
約230HVの(粉末から焼結された)バルク状態の純モリブデンの硬度は、「非常に耐摩耗性のある」材料としては比較的柔らかい。しかしながら、モリブデンベースのコーティングの耐摩耗性は、純モリブデンを青銅および/またはAl-12Si粉末および/またはそれらの混合物とブレンドすると、さらに改善することができる。モリブデンをコーティングとして溶射(ワイヤーアーク、HVOF、プラズマなど)すると、モリブデンは部分的に酸化する傾向があり、その結果、酸素と酸化物の含有物が著しく硬化して、600~950HVの範囲の硬度を容易に生成し、それによって改善された耐摩耗性を与える。
【0046】
純度が低く、酸素含有量が低い状態で硬度が低く、高融点金属に対してなど固有の脆性があるため、このようなモリブデンは、高エネルギー入力を必要とせずに、実質的に微細なサブミクロン粉末へのメカニカルミリングに理想的である。高エネルギーミリングを使用した元素アルミニウムとモリブデンの合金化と、それに続く圧縮および焼結などの圧密処理により、耐食性の過飽和アルミニウム合金を製造することが示された。しかしながら、バルク材料を生成するためのこれらの圧密処理では、高エネルギーボールミリングによって形成された耐食性の微細構造が維持されない可能性がある。
【0047】
メカニカルアロイングとそれに続く高周波誘導熱焼結もまた、3.5%NaCl溶液中での耐食性が改善されたナノ結晶遷移金属含有アルミニウム合金を製造するための実行可能な技術であり得る。アルミニウムと遷移金属とのメカニカルアロイングには、より高い強度と改善された耐食性および耐摩耗性を備えたバルクアルミニウム合金を製造するためにメカニカルアロイングされ圧密された元素粉末が含まれ得る。
【0048】
高周波マグネトロンスパッタリングは、異なるモリブデン含有量を有する合金化されたアルミニウムおよびモリブデンの金属膜が生成された場合に使用することができる。生成されたAl-Mo合金金属膜を塩化物溶液に浸漬することにより、モリブデンとの合金化は、陰極半反応を触媒し、腐食電位を急速に増加させて、臨界孔食電位をより正電位にする効果を有する。
【0049】
アルミニウム-モリブデン合金の耐食性の増加は、電着を使用して製造された合金のより高い腐食電位によっても説明された。他の研究では、遷移金属(例えば、コバルトおよびモリブデン)および希土類(例えば、セリウム)金属合金を含むアルミニウム合金は、腐食防止剤として作用するCe、Co、および/またはMoイオンの放出により耐食性が向上することが示されている。
【0050】
溶射によって堆積されたコーティングの一形態は、耐食性の摩耗性アルミニウム合金であり、浸潤によっておよび/または大気圧プラズマ共溶射法を使用することによって希土類および遷移金属がコーティングに組み込まれる溶射アルミニウム合金コーティングが含まれる。
【0051】
図1は、実施形態に係る、アルミニウム、マグネシウム、またはチタンのコア2、およびコア2にメカニカルアロイングされた遷移金属3を有する例示的な粉末コーティング粒子1を示す。本発明の例示的な一実施形態は、図1に示されるタイプの粉末粒子1から得られ、改善された切削性能を示し、航空エンジンまたは陸上のガスまたは蒸気タービンの圧縮機セクションなどにおけるチタン合金圧縮機ブレード、および航空エンジンまたは陸上のガスまたは蒸気タービンの圧縮機セクションなどにおける鋼ベースの圧縮機ブレードなどの部品の摩耗損傷を低減または排除する摩耗性溶射コーティング粉末である。
【0052】
摩耗性シールは、例示的な実施形態に係るコーティングから利益を得ることができる。このようなシールは、ターボ機械で使用して、ブレードおよびラビリンスシールナイフエッジなどの回転部品とエンジンケーシングとの間のクリアランスを減らすことができる。クリアランスを減らすと、設計者は壊滅的なブレード/ケースの摩擦の可能性を減らすか排除することでクリアランスの安全マージンを減らすことができるため、タービンエンジンの効率が向上し、燃料消費量が削減される。圧縮機シールは、エンジンの静止部分に摩耗性コーティングを塗布し、回転部分(ブレード、ナイフ)をコーティングにこすりつけることによって生成される。
【0053】
図1に示す粉末材料を使用して上記の部品に摩耗性コーティングを形成することにより、かじりならびにいわゆるブレードピックアップの傾向が減少する。
【0054】
上記の例示的な実施形態の別の利点は、改善された腐食性能である。上記のように、アルミニウム合金ベースの摩耗性コーティングは、特に海塩水分環境において、一般的な腐食、周期的な腐食(白色水酸化物の生成)、ブリスター腐食、ならびに応力腐食割れによる損傷を受けやすい可能性がある。しかしながら、例示的な実施形態では、メカニカルアロイングされた遷移金属(例えば、モリブデンおよび/またはクロム)を使用して得られるアルミニウム合金ベースの摩耗性コーティングは、改善された耐食性を示し、これは追加の利点である。同様に、上記の例示的な実施形態に係るマグネシウム合金ベースのコーティングおよびチタンベースのコーティングは、改善された耐食性を示す。
【0055】
例示的な実施形態に係るコーティングの耐摩耗性の改善は、腐食、かじり、フレッチング、および全体的なすべり摩耗による損傷を受ける圧縮機ブレードの状況でも実証されている。例示的な実施形態は、アルミニウムベースの材料(METCO(登録商標)54NS、METCO(登録商標)52C-NS、Amdry 355)、チタンベースの材料(エリコンメトコポートフォリオから入手可能な純チタンおよび合金粉末)、マグネシウムベースの材料、ならびに銅ベースの材料(DIAMALLOY(登録商標)1007、METCO(登録商標)445、METCO(登録商標)51F-NS、DIAMALLOY(登録商標)54、METCO(登録商標)57NS、METCO(登録商標)58NS)などのコーティングに対して改善された耐摩耗性を提供する。これらの溶射コーティング材料は、摩耗損傷を受けやすい可能性があるが、上記の例示的な実施形態は、摩耗損傷を受けにくい。
【0056】
再び図1を参照し、アルミニウムベースの粒子の例では、溶射コーティング材料を形成し得る粉末粒子1は、Moなどの遷移金属3でコーティングされたアルミニウムコア2を含む。遷移金属3は、はるかに微細またはより小さなサイズの粒子の形態で、メカニカルアロイングによってコア2上にコーティングされる。メカニカルアロイングは、粉末粒子上に表面層を生成する効率的で低コストの合金化プロセスであり得る。マグネシウムベースまたはチタンベースの粒子の場合、粉末粒子1は、溶射コーティング材料を形成し、遷移金属3でコーティングされたマグネシウムまたはチタンのコア2を含む。
【0057】
例示的な実施形態では、コア2および遷移金属3の合金化は、溶射を使用することによって強化され得る。上記のメカニカルアロイングされた粉末材料が溶射に供されると、プラズマ溶射から入力されたエネルギーが部分的に溶融し、金属粒子を遷移金属と合金化する(急速凝固溶解)。この部分的な合金化は、これらの元素が、アルミニウムの融点(例:661℃)およびアルミニウムケイ素合金の融点よりも低い温度で、所与の金属マトリックス(例えばAl)への溶解度が実質的に低いという事実によるものである。
【0058】
例示的な実施形態では、コーティングは、したがって、2段階合金化プロセスを使用する。第1の段階では、Moなどの遷移金属の微粒子がメカニカルアロイングプロセスを介してAlなどの金属粒子の外面とメカニカルアロイングされ、こうして遷移金属のメカニカルアロイングされた薄い外層に囲まれた金属または金属合金のコアを有する金属粒子が得られる。このような粉末粒子がプラズマ溶射などからの熱にさらされると、熱からのエネルギーが金属粒子を遷移金属の薄層と溶融する。そのような粒子がコーティングとして堆積されるとき、それらは、図5および図6に示されるものと同様の合金化された部分のコーティングを形成する。具体的には、図5は、遷移金属(複数可)とメカニカルアロイングされたAl-12Siの粉末形態の第1のスケールでのSEM画像を示し、モリブデンの遷移金属(粒子を囲むより明るい陰影)に囲まれたアルミニウム粒子を示し、その後メカニカルブレンドされるポリエステル粒子(より暗い陰影)を示し、図6は、遷移金属(複数可)とメカニカルアロイングされたAl-12Siの粉末形態の第2のスケールでのSEM画像を示し、モリブデンの遷移金属(粒子を囲むより明るい陰影)に囲まれたアルミニウム粒子を示し、ポリエステル粒子(より暗い陰影)を示す。
【0059】
融点が著しく低いアルミニウムコアを有する高融点遷移金属の溶解度は低いため、粒子コアをコーティングするために使用される遷移元素の量は、溶射プラズマによって提供される熱エネルギーを使用することによりコア粒子の表面への遷移金属の溶解を助長するために実用的に可能な限り低く保つことができる。例えば、遷移元素の量は、約0.5重量%~2重量%の範囲であり得る。逆に、大量の遷移元素は10重量%を超える可能性がある。厚すぎる、または粗すぎる粒子を含む、コア上の遷移元素層は、硬すぎて研磨性がありすぎて、摩耗材として有用ではない合金または複合材料を生成する可能性がある。
【0060】
したがって、溶射は、メカニカルアロイングされた粒子がプラズマの高温プルームジェットを通過するときに、さらなる合金化を強化するための効率的な方法である。例示的な実施形態では、メカニカルアロイングは、コア2および遷移金属3の合金化の第1の段階であり、溶射は、固溶体または部分的に過飽和の固溶体を生成するためのコア2および遷移金属3の合金化の第2の段階または最終段階である。
【0061】
図2は、例示的な実施形態に係る、図1のコーティング粒子を合成樹脂材料の粒子と組み合わせるか、または混合することによって、コーティング材料をどのように得ることができるかを示している。図2を参照すると、例示的な実施形態では、粒子1は、例えば、ポリエステル、金属被覆ポリエステル、芳香族ポリエステル、液晶ポリエステル、メタクリル酸メチル、または金属粒子とブレンドまたは金属粒子で被覆され得る任意の他の有機材料などのポリマー粒子10と混合され得る。この混合物の例示的な重量パーセントは、約20重量%~最大60重量%、好ましくは約30重量%~最大50重量%のポリマーであり、残りがメカニカルアロイングされた粉末であり得る。次に、この混合粉末を基板にプラズマ溶射してコーティングを形成することができる。上記の粉末タイプを使用して製造される溶射は、改善された水腐食耐性、改善された固体粒子浸食耐性、および改善された摩擦侵入挙動などのコーティング特性の最適なバランスを示す。
【0062】
図3は、例示的な実施形態に係る、アルミニウム2’およびケイ素4’のコアと、コア2’にメカニカルアロイングされた遷移金属3’とを有する例示的な粉末コーティング粒子を示す。図3において、溶射コーティング材料を形成する粒子1’は、ケイ素4’の個別のセクションを有するアルミニウムコア2’を含むことができ、コア2’は、例えば、Moなどの遷移金属3’でコーティングされる。遷移金属3’は、メカニカルアロイングによってコア2’/4’上にコーティングすることができる。メカニカルアロイングは、粉末粒子上に表面層を生成する効率的で低コストの合金化プロセスである。ケイ素は、純アルミニウムとの前合金化プロセス中に、つまりガスアトマイズを介して形成され得るか、または純アルミニウムコアとのメカニカルアロイングによって形成され得る。
【0063】
図4は、例示的な実施形態に係る、図3のコーティング粒子と合成樹脂材料の粒子との混合によるコーティング材料の形成の組み合わせを示している。図4では、粒子1’は、例えば、ポリエステル、または金属粒子とブレンドまたは金属粒子で被覆することができる任意の他の有機材料などのポリマーの粒子10’と混合することができる。この混合物の非限定的な重量パーセントは、20重量%~最大60重量%、好ましくは約30重量%~最大50重量%のポリマーと、残りがSiを含むメカニカルアロイングされた粉末であり得る。上記の粉末タイプを使用して製造される溶射は、例えば、改善された水腐食耐性、改善された固体粒子浸食耐性、および改善された摩擦侵入挙動などのコーティング特性の改善されたバランスを示す。
【0064】
モリブデン含有固溶体合金とメカニカルアロイングされるように改質された、図3に記載の構成と同様の構成を有するAl―12Siベースのコーティング粉末を用いて実験が行われた。Al-12Siにケイ素が存在すると、MoはSiと反応してMoケイ化物を形成した。溶射コーティングは、改善された耐摩耗性と耐食性を示した。
【0065】
低圧圧縮機(LPC)セクションの部品、すなわちタービンエンジンのLPCで使用される部品用の摩耗性コーティング粉末組成物を研究するために、実験も実施された。LPCセクションで観測される温度は最大350℃の範囲であるが、次世代のタービンエンジンではこの範囲を超える可能性もある。
【0066】
次の溶射粉末材料を分析した。
【0067】
実施例A-7重量パーセントのSi、3重量パーセントのMo、3重量パーセントのCr、40重量パーセントのポリマー、および残りのAlを含む。
【0068】
実施例B-6重量パーセントのSi、2.7重量パーセントのMo、2.7重量パーセントのCr、46重量パーセントのポリマー、および残りのAlを含む。
【0069】
実施例C-7重量パーセントのSi、6重量パーセントのMo、40重量パーセントのポリマー、および残りのAlを含む。
【0070】
実施例D-7重量パーセントのSi、1重量パーセントのMo、1重量パーセントのCr、40重量パーセントのポリマー、および残りのAlを含む。
【0071】
上記の実験用粉末は、メカニカルアロイング(ボールミリング)機を使用して調製された。アルミニウムケイ素合金のアトマイズ粉末を、1つまたは複数の遷移金属またはそれらの混合物とともにミリングした。遷移金属(モリブデンおよびクロム)のフィッシャーサブシーブサイザー(FSSS)の粒子サイズは10μm未満であった。
【0072】
次に、実施例A~Dを、Metco 601NS:Al 7Si 40ポリエステル、Metco 320NS:Al 10Si 20hBN、およびMetco 52C-NS:Al―12Siなどの異なる材料と比較した。
【0073】
実施例A~Dを使用して、以下のように摩耗性コーティングを形成した。摩耗性粉末A~Dは、ボンドコートがステンレス鋼(17-4PH)またはチタン合金のいずれかの基板に塗布された後、Metco 450NS(NiAl)のボンドコート層上に堆積された。すべてのボンドコートを150~200μmの厚さにスプレーし、摩耗性コーティングの各トップコートを合計コーティング厚さ2.0mmにスプレーし、続いてミリングした。すべての試験はミリングされた表面で実行され、それ以上の表面処理は実行されなかった。粉末の種類ごとに、硬度、金属組織学、侵食、接着強度、侵入(摩耗性)の試験用にいくつかのクーポンが用意された。
【0074】
例示的なコーティングA~Dで実施された異なる試験は、上記のMetco製品と比較され、上記のMetco製品と比較して改善された特性を有するコーティングを生成することが見出された。これらの特性には、改善された摩耗性(かじりとブレードのピックアップが減少し、ならびにチタン合金ブレードの摩耗がない)と耐食性(NaCl湿潤腐食環境)が含まれていた。追加の詳細については、以下に示す表Aで説明する。
【0075】
このような実験の結果は、遷移金属と金属ベースの合金粉末とのメカニカルアロイングが、これらの元素の異なる金属マトリックス(例えば、アルミニウム、マグネシウム、またはチタン)への溶解度を増加させることを実証している。このような合金粉末の溶射は、合金化と溶解性を高め、さらに改善されたすべり特性と全体的な摩耗および腐食特性をもたらす。これらの改善は、チタン合金圧縮機ブレードによってこすられたときのそのようなコーティングの切削性能が既存のアルミニウムベースの摩耗性コーティングの切削性能に対して著しく改善されることが見出されたアルミニウムベースの摩耗性コーティングについて実証された。遷移金属含有メカニカルアロイング粉末から得られた金属摩耗性コーティングの使用はまた、本発明の摩耗性コーティングのかじり挙動を低減し、いわゆるブレードピックアップの傾向を低減することが見出された。もう1つの実証された利点は、特に海塩水分環境において、通常は一般的な腐食(白色の水酸化アルミニウムの生成)、周期的腐食、ブリスター腐食、ならびに応力腐食割れによる損傷を受けやすいアルミニウム合金ベースの摩耗性コーティングの腐食性能の向上である。アルミニウム合金粉末を含むメカニカルアロイングされた遷移金属(モリブデンおよびクロムなど)を使用して得られたアルミニウム合金ベースの摩耗性コーティングは、大幅に改善された耐食性を示すことが実証された。
【0076】
実施例A
図3および図4を参照すると、粉末コーティング材料は、粒子1’が粒子10’とブレンドされた、金属粒子1’およびポリマー粒子10’から得られた。粒子1’は、7重量パーセントのSi(Si部分4’)と残りがAlのコア2’を有する。遷移金属3’は、3重量パーセントのMoと3重量パーセントのCrを有する。粒子10’は、40重量パーセントのポリマーを構成する。粒子1’のサイズは、11μm~150μmの範囲である。粒子10’のサイズは、45μm~150μmの範囲である。
【0077】
実施例B
粉末コーティング材料は、粒子1’が6重量パーセントのSi(Si部分4’)および残りがAlのコア2’を有する、粒子10’とブレンドされた粒子1’から得られた。遷移金属3’は、2.7重量パーセントのMoと2.7重量パーセントのCrを有する。粒子10’は、46重量パーセントのポリマーを構成する。粒子1’のサイズは、11μm~150μmの範囲である。粒子10’のサイズは、45μm~150μmの範囲である。
【0078】
実施例C
粉末コーティング材料は、粒子1’が7重量パーセントのSi(Si部分4’)および残りがAlのコア2’を有する、粒子10’とブレンドされた粒子1’から得られた。遷移金属3’は、6重量パーセントのMoを有する。粒子10’は、40重量パーセントのポリマーを構成する。粒子1’のサイズは、11μm~150μmの範囲である。粒子10’のサイズは、45μm~150μmの範囲である。
【0079】
実施例D
粉末コーティング材料は、粒子1’が7重量パーセントのSi(Si部分4’)および残りがAlのコア2’を有する、粒子10’とブレンドされた粒子1’から得られた。遷移金属3’は、1重量パーセントのMoと1重量パーセントのCrを有する。粒子10’は40重量パーセントのポリマーを構成する。粒子1’のサイズは11μm~150μmの範囲である。粒子10’のサイズは、45μm~150μmの範囲である。
【0080】
【表1】
【0081】
追加の実施例
粉末コーティング材料は、粒子1’が7重量パーセントのSi(Si部分4’)および残りがAlのコア2’を有する、粒子10’とブレンドされた粒子1’から得られた。遷移金属3’は、1重量パーセントのMoと1重量パーセントのCrを有する。粒子10’は、40重量パーセントの噴霧乾燥された凝集金属を構成する。粒子1’のサイズは11μm~150μmの範囲である。粒子10’のサイズは、45μm~150μmの範囲である。
【0082】
粉末コーティング材料は、5重量パーセントのZnおよび残りがMgのコア2’を有する粒子1’から得られた。遷移金属3’は、10重量パーセントのMoを有する。粒子1’のサイズは、11μm~150μmの範囲である。
【0083】
粉末コーティング材料は、4重量パーセントのAl、3重量パーセントのV、および残りがTiのコア2’を有する粒子1’から得られた。遷移金属3’は、30重量パーセントのMoを有する。粒子1’のサイズは11μm~150μmの範囲である。
【0084】
粉末コーティング材料は、3重量パーセント(重量%)のAl、2重量パーセントのZr、2重量パーセントのSn、1重量パーセントのMo、および残りがTiのコア2’を有する粒子1’から得られた。遷移金属3’は、25重量パーセントのMoと25重量パーセントのCrを有する。粒子1’のサイズは、11μm~150μmの範囲である。
【0085】
【表2】
【0086】
遷移元素:周期表のIV~XI族の元素であり、フェロモリブデンを含み得る。
【0087】
Al合金:Al―12Si、Al6Si
【0088】
遷移金属のサイズ:20μm未満、好ましくは10μm未満、より好ましくは5μm未満。コーティング形態では、成分Aは一次マトリックス合金として機能し、金属コーティング骨格に対応する。この一次マトリックス合金は、コーティングの機械的完全性と関連する熱サイクル抵抗を保証する。
【0089】
【表3】
【0090】
コーティングにおいて、上記の成分Bの機能は、ターボ機械のブレードによって容易に切断されることであり、したがって、成分Aに対応する一次マトリックス材料と比較して成分Bに対応する材料の弱さのために、「疑似空孔」または脆弱な「転位」として機能する。
【0091】
例示的な実施形態では、粉末は、改善された摩擦特性を備えたコーティングを生成する、すなわち、粉末は、摩耗性、耐食性、および硬度の所望の特性の間で、例えば、最適なバランスなどの改善されたバランスを提供することができる。それらは、クリアランス制御コーティングに対する現在のガスタービンの相手先ブランド供給(OEM)の仕様を満たしている。表BおよびCの成分AおよびBを含む粉末材料から得られるそのようなコーティングは、大気圧プラズマ溶射プロセスを使用して塗布することができる。使用および用途には、航空宇宙タービンエンジンの低圧圧縮機、自動車、および産業用ターボチャージャー用の軽量クリアランス制御コーティングが含まれる。摩耗性コーティングは、325℃(615°F)までの使用温度で、先端の無いチタン合金およびニッケル合金および鋼のブレードに対して使用でき、先端の無いアルミニウム合金のラジアルインペラーブレードに対しても使用できる。それらは、不規則で丸みを帯びた形態を有することができ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるMetco 601NSまたはMetco 1602Aの特徴/特性のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0092】
他の実施例/使用
ガスアトマイズされた近共晶アルミニウムケイ素粉末は、モリブデンおよびクロム層が粉末表面上にメカニカルアロイングされる合金化プロセスによって、サブミクロンの微細な純モリブデンおよび純クロム粉末とメカニカルアロイングされる。この組成物はワイヤーの製造に使用され、ワイヤーはワイヤー溶射(アークまたは燃焼)プロセスを使用して溶射に供される。このコーティングは、摩耗性コーティングおよび/または耐食性アルミニウム合金コーティングとして使用することができる。
【0093】
例示的な実施形態では、少なくとも、本発明は、例えば、単純化または効率のためなど、特定の例示的な実施形態の開示のおかげで、それを作成および使用することを可能にするように本明細書に開示されるので、本発明は、本明細書に具体的に開示されていない追加の要素または追加の構造がなくても実施することができる。
【0094】
前述の実施例は、単に説明の目的で提供されたものであり、本発明を限定するものとして解釈されるものではないことに留意されたい。本発明は、例示的な一実施形態を参照して説明されてきたが、本明細書で使用された単語は、限定の単語ではなく、説明および例示の単語であることが理解される。その態様において本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、現在述べられているように、および補正されたように、添付の特許請求の範囲内で変更を得ることができる。本発明は、特定の手段、材料、および実施形態を参照して本明細書に記載されてきたが、本発明は、本明細書に開示された詳細に限定されることを意図するものではなく、むしろ、本発明は、添付の特許請求の範囲内にあるような、すべての機能的に均等な構造、方法、および使用に及ぶ。
【0095】
以下は、参照によりその全体が本明細書に援用される刊行物のリストである。
【0096】
Buckley, Donald H., Journal of Colloid and Interface Science, 58 (1), p.36-53, 1977年1月, “The metal-to-metal interface and its effect on adhesion and friction”(「金属間界面およびその接着および摩擦への影響」)。
【0097】
Buckley, Donald H., Thin Solid Films, 53 (3), p.271-283, 1978年9月, “Tribological properties of surfaces”(「表面のトライボロジー特性」)。
【0098】
Miyoshi, Kazuhisa; Buckley, Donald H., Wear, 82 (2), p.197-211, 1982年11月, “Tribological properties of Silicon carbide in the metal removal process”(「金属除去プロセスにおける炭化ケイ素のトライボロジー特性」)。
【0099】
Miyoshi, Kazuhisa; Buckley, Donald H, Wear, 77, Issue 2, 1982年4月, Pages 253-264 “Adhesion and friction of transition metals in contact with non-metallic hard materials”(「非金属硬質材料と接触する遷移金属の接着と摩擦」)。
【0100】
S. Wilson; The Future of Gas Turbine Technology(ガスタービン技術の未来), 6th International Conference(第6回国際会議), 2012年10月17―18日, ブリュッセル, ベルギー, Paper ID Number 51 “Thermally sprayed abradable coating technology for sealing in gas turbines”(「ガスタービンを密閉するための溶射された摩耗性コーティング技術」)。
【0101】
R.J. Rodrguez, A. Sanz; A. Medrano, Ja. Garcia-Lorente Vacuum Volume 52, Issues 1-2, 1999年1月1日, Pages 187-192 “Tribological properties of ion implanted Aluminum alloys”(「イオン注入されたアルミニウム合金のトライボロジー特性」)。
【0102】
J.R. Davis Handbook of Thermal Spray Technology ASM International, 2004年, P157 “Material Production Techniques for Producing Unique Geometries of Compositions”(「組成物の独特の形状を製造するための材料製造技術」)。
【0103】
M. Zdujic, D. Poleti; Lj. Karanovic; K.F. Kobayashi; P.H. Shingu, Materials Science and engineering, A185 (1994) 77-86 “Intermetallic phases produced by the heat treatment of mechanically alloyed Al-Mo powders”(「メカニカルアロイングされたAl-Mo粉末の熱処理によって生成された金属間化合物相」)。
【0104】
V. Anand, S. Sampath, C.D. Davis, D.L. Houck 米国特許第5,063,021号, “Method for preparing powders of nickel alloy and Molybdenum for thermal spray coatings”(「ニッケル合金とモリブデンの粉末を溶射コーティング用に調製する方法」)。
【0105】
M. Laribi, A.B. Vannes, D. Treheux Wear Volume 262, Issues 11-12, 10 May 2007, Pages 1330-1336 “Study of mechanical behavior of Molybdenum coating using sliding wear and impact tests”(「すべり摩耗および衝撃試験を使用したモリブデンコーティングの機械的挙動の研究」)。
【0106】
T.S. Srivatsan, B.G. Ravi, A.S. Naruka, L. Riester, M. Petraroli, T.S. Sudarshan, Powder Technology 114, 2001年. 136-144 “The microstructure and hardness of Molybdenum powders consolidated by plasma pressure compaction”(「プラズマ圧力圧縮によって固められたモリブデン粉末の微細構造と硬度」)。
【0107】
J. Ahn, B. Hwang, S. Lee, Journal of Thermal Spray Technology, Volume 14(2) 2005年6月-251 “Improvement of Wear Resistance of Plasma-Sprayed Molybdenum Blend Coatings”(「プラズマ溶射モリブデンブレンドコーティングの耐摩耗性の改善」)。
【0108】
S. Tailor, A. Modi, S. C. Modi, J Therm Spray Tech, 2018年4月, Volume 27, Issue 4, pp 757-768, “High-Performance Molybdenum Coating by Wire-HVOF Thermal Spray Process”(「ワイヤ-HVOF溶射プロセスによる高性能モリブデンコーティング」)。
【0109】
M. Zdujic, D. Poleti, Lj. Karanovic, K.F. Kobayashi, P.H. Shingu Materials Science and engineering, A185 (1994) 77-86 “Intermetallic phases produced by the heat treatment of mechanically alloyed Al-Mo powders”(「メカニカルアロイングされたAl-Mo粉末の熱処理によって生成された金属間化合物相」)。
【0110】
W.C. Rodriguesa, F.R. Mallqui Espinoza, L. Schaeffer, G. Knornschild, Materials Research, Vol. 12, No. 2, 211-218, 2009 “A Study of Al-Mo Powder Processing as a Possible Way to Corrosion Resistant Aluminum-Alloys”(「耐食性アルミニウム合金への可能な方法としてのAl-Mo粉末処理の研究」)。
【0111】
A.H. Seikh, M. Baig, H.R. Ammar, M. Asif Alam “The influence of transition metals addition on the corrosion resistance of nanocrystalline Al alloys produced by mechanical alloying”(「メカニカルアロイングによって製造されたナノ結晶Al合金の耐食性に対する遷移金属添加の影響」)。
【0112】
W.C. Moshier, G.D. Davis, J.S. Ahearn, H.F. Hough “Corrosion Behavior of Aluminum-Molybdenum Alloys in Chloride Solutions”(「塩化物溶液中のアルミニウム-モリブデン合金の腐食挙動」)。
【0113】
T. Tsuda, C.L. Hussey, G.R. Stafford 2004 The Electrochemical Society “Electrodeposition of Al-Mo Alloys from the Lewis Acidic Aluminum Chloride-1-ethyl-3-methylimidazolium Chloride Molten Salt”(「ルイス酸性塩化アルミニウム-1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド溶融塩からのAl-Mo合金の電着」)。
【0114】
M.A. Jakab, J.R. Scully “Cerium, Cobalt and Molybdate Cation Storage States, Release and Corrosion Inhibition when delivered from Al-Transition Metal-Rare Earth Metal Alloys”(「セリウム、コバルト、およびモリブデン酸塩カチオンの貯蔵状態、Al遷移金属-希土類金属合金から送達された場合の放出および腐食抑制」。
【0115】
C.W. Strock; M.R. Jaworoski; F.W. Mase, 米国特許出願公開第2016/0251975A1号 “Aluminum alloy coating with rare earth and transition metal corrosion inhibitors”(「希土類および遷移金属腐食防止剤を使用したアルミニウム合金コーティング」)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2021-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遷移金属にメカニカルアロイングされた金属含有粒子であって、アルミニウム、マグネシウム、およびチタンのうちの少なくとも1つを含む金属含有粒子を含む、溶射コーティング。
【請求項2】
前記金属含有粒子のそれぞれは、コアを含み、前記コアの周囲に前記遷移金属がメカニカルアロイングされている、請求項1に記載の溶射コーティング。
【請求項3】
前記溶射コーティングは、
前記金属含有粒子とブレンド若しくは混合、または前記金属含有粒子で被覆された有機材料、および、
前記金属含有粒子とブレンド若しくは混合、または前記金属含有粒子で被覆された無機固体潤滑剤
のうちの少なくとも一つを含む組成物を溶射することによって形成される、請求項1に記載の溶射コーティング。
【請求項4】
前記金属含有粒子は、純アルミニウムのコア、アルミニウム合金のコア、純マグネシウムのコア、マグネシウム合金のコア、純チタンのコア、チタン合金のコアのうちの1つを含む、請求項1に記載の溶射コーティング。
【請求項5】
前記遷移金属は、
モリブデン、
クロム、
ジルコニウム、
チタン、
ケイ素、および
それらの混合物のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の溶射コーティング。
【請求項6】
前記アロイングされた遷移金属は、50μm未満、好ましくは10μm未満の粒子サイズを有する、請求項1に記載の溶射コーティング。
【請求項7】
前記アルミニウム含有粒子、マグネシウム含有粒子、およびチタン含有粒子のうちの少なくとも一部は、前記遷移金属にアロイングされていない、請求項1に記載の溶射コーティング。
【請求項8】
遷移金属にメカニカルアロイングされた金属含有粒子を含む溶射粉末であって、該金属含有粒子は、アルミニウム、マグネシウム、チタンのうちの少なくとも1つを含有する、溶射粉末
【請求項9】
前記アルミニウム含有粒子のそれぞれは、アルミニウムコアまたはアルミニウム合金コアを含み、前記コアはメカニカルアロイングされた前記遷移金属によって囲まれている前記、請求項に記載の溶射粉末。
【請求項10】
前記アルミニウム含有粒子とブレンド若しくは混合、または前記アルミニウム含有粒子で被覆された有機材料または無機固体潤滑剤をさらに含む、請求項に記載の溶射粉末。
【請求項11】
前記遷移金属は、
モリブデン、
クロム、
ジルコニウム、
チタン、
ケイ素、および
それらの混合物のうちの1つである、請求項に記載の溶射粉末。
【請求項12】
前記遷移金属は、モリブデンおよびクロムのうちの少なくとも1つを含む、請求項に記載の溶射粉末。
【請求項13】
前記遷移金属にメカニカルアロイングされた金属およびケイ素の粉末粒子をさらに含み、前記金属は、アルミニウム、チタン、マグネシウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項8に記載の溶射粉末コーティング材料。
【請求項14】
前記メカニカルアロイングされた遷移金属は、10μm未満の粒子サイズ、好ましくは1μmと10μmの間のサイズ、好ましくは1μm未満の粒子サイズを有する、請求項に記載の溶射粉末。
【請求項15】
前記アルミニウム含有粒子は、
20~70重量パーセントの有機材料とブレンドされている、および
20~70重量パーセントの有機材料で被覆されている、
のうちの少なくとも一つである、請求項に記載の溶射粉末。
【請求項16】
前記アルミニウム含有粒子は、
30~50重量パーセントの有機材料とブレンドされている、および
30~50重量パーセントの有機材料で被覆されている、
のうちの少なくとも一つである、請求項に記載の溶射粉末。
【請求項17】
前記有機材料は、
芳香族ポリエステルおよび液晶ポリエステルのうちの少なくとも1つを含むポリエステル、
少なくともメタクリル酸メチルを含むポリマー、および
有機固体潤滑剤の
うちの少なくとも1つを含む、請求項15に記載の溶射粉末。
【請求項18】
前記有機材料は、ポリマーを含む、請求項15に記載の溶射粉末。
【請求項19】
前記アルミニウム含有粒子は、
5~50重量パーセントの固体潤滑剤とブレンドされている、および
5~50重量パーセントの固体潤滑剤で被覆されている、
のうちの少なくとも一つである、請求項に記載の溶射粉末。
【請求項20】
前記アルミニウム含有粒子は、
15~25重量パーセントの固体潤滑剤とブレンドされている、または
15~25重量パーセントの固体潤滑剤で被覆されている、
のうちの少なくとも一方である、請求項に記載の溶射粉末。
【請求項21】
前記固体潤滑剤は、
六方晶窒化ホウ素、
フッ化カルシウム、
グラファイト、
タルク、および
二硫化モリブデン
のうちの少なくとも1つである、請求項19に記載の溶射粉末。
【請求項22】
請求項8から請求項21までのいずれか1項に記載の溶射粉末で基板をコーティングする方法であって、
前記溶射粉末を前記基板上に溶射することを含み、
溶射は、
プラズマ溶射、
高速フレーム(HVOF)溶射、
ガス式溶射、および
アークワイヤー溶射
のうちの1つを含む、方法。
【請求項23】
アルミニウム含有粒子、マグネシウム含有粒子、およびチタン含有粒子のうちの少なくとも1つを含む溶射粉末を製造する方法であって、
遷移金属を、アルミニウム、マグネシウム、およびチタンの少なくとも1つを含む金属粉末粒子にメカニカルアロイングすることを含む、方法。
【請求項24】
前記遷移金属は、モリブデンおよびクロムのうちの少なくとも1つを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
アルミニウム含有粒子、マグネシウム含有粒子、およびチタン含有粒子のうちの前記少なくとも1つを有機材料とブレンドする、または有機材料で被覆することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
アルミニウム含有粒子、マグネシウム含有粒子、およびチタン含有粒子のうちの前記少なくとも1つを、
金属被覆ポリエステル、芳香族ポリエステル、および液晶ポリエステルのうちの少なくとも1つを含むポリエステル、
メタクリル酸メチルを含むポリマー、
金属被覆固体潤滑剤を含む固体潤滑剤、および
噴霧乾燥された金属凝集体
のうちの少なくとも1つとブレンドするか、またはそれで被覆することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
アルミニウム含有粒子、マグネシウム含有粒子、およびチタン含有粒子のうちの前記少なくとも1つを固体潤滑剤とブレンド若しくは混合、または固体潤滑剤で被覆することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記メカニカルアロイングは、
アトリッションミリング、
ボールミリング、および
クライオミリング
のうちの少なくとも1つを含む、請求項23に記載の方法。
【国際調査報告】