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特表2022-513670放出アルデヒドが低減化されたフォームの製造に適した反応混合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(54)【発明の名称】放出アルデヒドが低減化されたフォームの製造に適した反応混合物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20220202BHJP
   C08G 18/28 20060101ALI20220202BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20220202BHJP
【FI】
C08G18/00 F
C08G18/28 015
C08G101:00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021530906
(86)(22)【出願日】2018-12-21
(85)【翻訳文提出日】2021-06-22
(86)【国際出願番号】 CN2018122735
(87)【国際公開番号】W WO2020124569
(87)【国際公開日】2020-06-25
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500030150
【氏名又は名称】ハンツマン・インターナショナル・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】ルアン,バオ
(72)【発明者】
【氏名】ロン,チューシア
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ユエファン
(72)【発明者】
【氏名】ボナミ,ライズ
(72)【発明者】
【氏名】ボスマン,ヨリス
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA03
4J034BA08
4J034CA02
4J034CB01
4J034CC02
4J034CC22
4J034CC26
4J034CC37
4J034CC44
4J034CC45
4J034CC53
4J034CC61
4J034CC65
4J034CD05
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB05
4J034DB07
4J034DD05
4J034DF12
4J034DF16
4J034DF20
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG08
4J034DG09
4J034DG14
4J034DQ16
4J034DQ18
4J034DR06
4J034EA11
4J034HA01
4J034HA06
4J034HA07
4J034HB03
4J034HB05
4J034HB06
4J034HB07
4J034HB08
4J034HB09
4J034HB17
4J034HC03
4J034HC07
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC35
4J034HC45
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC54
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC65
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034KA02
4J034KB02
4J034KB05
4J034KD07
4J034KD12
4J034KE02
4J034NA01
4J034NA03
4J034NA08
4J034QA01
4J034QB01
4J034QB13
4J034QB14
4J034QB15
4J034QB17
4J034QB19
4J034QC01
4J034RA12
(57)【要約】
開示されているのは、ポリウレタンフォームを製造するための反応混合物であって、本混合物は、スカベンジャーと少なくとも1つの触媒の存在下で多官能イソシアネートとイソシアネート反応性化合物とを反応させることにより得られ、このような混合物を硬化させることで、輸送手段において特に有用な、放出アルデヒドを低減させたフォーム(例えば自動車内装品)を得ることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンフォームを製造するための反応混合物であって、スカベンジャーと少なくとも1つの触媒の存在下で多官能イソシアネートとイソシアネート反応性化合物とを反応させることによって得られ、スカベンジャーが式(I)
【化1】
〔式中、R1とR2は、互いに独立していて、-OR3とR4から選ばれるか、あるいはヒドロキシ基、エーテル基、ハロゲン基、カルボニル基、カルボキシル基、イソシアネート基、ニトロ基、及び/又はアミン基からなる基から選ばれ;R3とR4は、互いに独立していて、直鎖もしくは分岐鎖で飽和もしくは不飽和の環状及び/又は非環状炭素鎖、脂肪族炭化水素、アリール脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ならびにこれらの混じり合い、の組み合わせから選ばれ、必要に応じて1つ以上の酸素原子、窒素原子、及び/又はイオウ原子が介在し、必要に応じてヒドロキシ基、エーテル基、ハロゲン基、カルボニル基、カルボキシル基、イソシアネート基、ニトロ基、及び/又はアミン基から選ばれる任意の官能基を含み;R1とR2は、実質的に互いに結合して、少なくとも1つの環構造(好ましくは少なくとも2つの環構造)を形成してよい〕
の化合物を含む、前記反応混合物。
【請求項2】
前記スカベンジャーが、水性状態にて反応混合物に加えたときに、主として前記式(I)の化合物を含有する、請求項1に記載の反応混合物。
【請求項3】
前記スカベンジャーを18~45℃の温度にて反応混合物に加える、請求項1または2に記載の反応混合物。
【請求項4】
R1が-OR3である、請求項1~3のいずれか一項に記載の反応混合物。
【請求項5】
前記スカベンジャーが、前記スカベンジャーの総重量を基準として少なくとも90重量%の、好ましくは少なくとも95重量%の、さらに好ましくは約99重量%の前記式(I)の化合物で構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の反応混合物。
【請求項6】
R1とR2が、互いに結合して5~12員の環構造を形成し、不飽和、芳香環、及び/又はヘテロ原子を、好ましくは少なくとも2つの環構造含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の反応混合物。
【請求項7】
前記スカベンジャーが、高くても3000g/モルの、好ましくは1500g/モル未満の、さらに好ましくは500g/モル未満の分子量を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の反応混合物。
【請求項8】
発泡剤を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の反応混合物。
【請求項9】
多官能イソシアネートが、ポリマーメチレンジフェニルジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート異性体混合物、またはこれらの混合物から選ばれる、請求項1~8のいずれか一項に記載の反応混合物。
【請求項10】
イソシアネート反応性化合物が、多官能ポリオールまたは多官能アミンであり、好ましくは多官能ポリオールであり、さらに好ましくはポリエーテルポリオールである、請求項1~9のいずれか一項に記載の反応混合物。
【請求項11】
(a) 多官能イソシアネートとイソシアネート反応性化合物を含む反応混合物を供給する工程;
(b) 前記反応混合物にスカベンジャーと少なくとも1つの触媒を加え、最後に少なくとも1つの発泡剤と共に加える工程;
(c) 前記ポリイソシアネートと前記イソシアネート反応性化合物との少なくとも反応生成物を含む前記反応混合物を、前記スカベンジャーと前記少なくとも1つの触媒の存在下で硬化させ、これによりポリウレタンフォームを形成させる工程;
を含むポリウレタンフォームの製造方法であって、ここで、前記スカベンジャーが、式(I)
【化2】
〔式中、R1とR2は、互いに独立していて、-OR3とR4から選ばれるか、あるいはヒドロキシ基、エーテル基、ハロゲン基、カルボニル基、カルボキシル基、イソシアネート基、ニトロ基、及び/又はアミン基からなる基から選ばれ;R3とR4は、互いに独立していて、直鎖もしくは分岐鎖で飽和もしくは不飽和の環状及び/又は非環状炭素鎖、脂肪族炭化水素、アリール脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、及びこれらの混じり合い、の組み合わせから選ばれ、必要に応じて1つ以上の酸素原子、窒素原子、及び/又はイオウ原子が介在し、必要に応じてヒドロキシ基、エーテル基、ハロゲン基、カルボニル基、カルボキシル基、イソシアネート基、ニトロ基、及び/又はアミン基から選ばれる任意の官能基を含み;R1とR2は、実質的に互いに結合して、少なくとも1つの環構造(好ましくは少なくとも2つの環構造)を形成してよい〕
の化合物を含む、上記方法。
【請求項12】
前記スカベンジャーが、水性状態にて反応混合物に加えたときに、主として前記式(I)の化合物を含有する、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記反応混合物が、約0.6~約1.5の範囲の、好ましくは約0.8~約1.3の範囲のNCOインデックスを有する、請求項11または12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
反応混合物のNCOインデックスが約1.05~約10の範囲、好ましくは約1.05~約4の範囲にある、請求項11または12のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放出アルデヒドが低減化されたポリウレタン(硬質または軟質)フォームの製造に関し、さらに詳細には、輸送手段において有用なポリウレタン(PU)フォーム(例えば自動車内装品)に関する。
【背景技術】
【0002】
ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドが放出されると、不快臭や健康関連の問題が生じることがある。スカベンジャー添加剤を使用することによりポリウレタン組成物やポリウレア組成物における放出ホルムアルデヒドを低減させる方法は、当業界に既知である。
して酸性化合物を使用することを開示しているが、これらの化合物は、放出ホルムアルデヒドだけを低減させるのに有効である。
【0003】
国際公開第2017/207687号は、PUフォームにおける放出アルデヒドを低減させるためにアルデヒドスカベンジャー(アミン化合物)を使用することを開示しているが、アミン化合物によっては、強い変色を引き起こすことがある。
【0004】
米国特許出願第2009/326089号は、少なくとも1つのカルボンアミド基と1つのニトリル基を有する化合物をポリウレタンにおけるアルデヒドスカベンジャーとして使用することを開示しているが、これらの化合物は、放出ホルムアルデヒドだけを低減させるのに有効である。
【0005】
米国特許出願第2006/0141236号は、ヒドラジン化合物をポリウレタンにおけるアルデヒドスカベンジャーとして使用することを開示しているが、これらの化合物を使用すると、組成物の粘度がかなり高くなる。
【0006】
しかしながら、これまでに知られている解決策では、放出ホルムアルデヒド、放出アセトアルデヒド、及び放出プロピオンアルデヒドを効果的に低減させることのできるPUフォームをもたらすことができない。
【0007】
したがって、シンプルでコスト効率の高い改良されたプロセスにてPUフォームを製造するのに適した反応混合物を提供することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願第2016/0304686号
【特許文献2】国際公開第2017/207687号
【特許文献3】米国特許出願第2009/326089号
【特許文献4】米国特許出願第2006/0141236号
【発明の概要】
【0009】
驚くべきことに、本発明の反応混合物は、これに限定されるものではないが、
(1) 放出アルデヒド(特に、放出ホルムアルデヒド、放出アセトアルテヒド、及び放出プロピオンアルデヒド)が低減されること、
(2) 低コストであること、及び
(3) フォームの機械的特性に及ぼす明らかな影響が無いこと、
を始めとする幾つかの利点を有するフォームの提供を可能にするということが見出された。
【0010】
本発明は、PUフォームの製造に適した反応混合物、及び本発明の反応混合物を使用することによるPUフォームの製造方法、に関する。
【0011】
本発明は、ポリウレタンフォームを製造するための反応混合物に関し、ここで前記反応混合物は、スカベンジャーと少なくとも1つの触媒の存在下で多官能イソシアネートとイソシアネート反応性化合物とを反応させることによって得ることができ、前記スカベンジャーは、式(I)
【0012】
【化1】
〔式中、R1とR2は、互いに独立していて、-OR3とR4から選ばれるか、あるいはヒドロキシ基、エーテル基、ハロゲン基、カルボニル基、カルボキシル基、イソシアネート基、ニトロ基、及び/又はアミン基からなる基から選ばれ;R3とR4は、互いに独立していて、直鎖もしくは分岐鎖で飽和もしくは不飽和の環状及び/又は非環状炭素鎖、脂肪族炭化水素、アリール脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ならびにこれらの混じり合い、の組み合わせから選ばれ、必要に応じて1つ以上の酸素原子、窒素原子、及び/又はイオウ原子が介在し、必要に応じてヒドロキシ基、エーテル基、ハロゲン基、カルボニル基、カルボキシル基、イソシアネート基、ニトロ基、及び/又はアミン基から選ばれる任意の官能基を含み;R1とR2は、実質的に互いに結合して、少なくとも1つの環構造(好ましくは少なくとも2つの環構造)を形成してよい〕の化合物を含む。
【0013】
他の実施態様では、本発明は、フォーム組成物の調製方法を提供する。
【0014】
さらに他の実施態様では、本発明は、フォーム組成物を使用して輸送手段の内装品を製造する方法を提供する。
【0015】
好都合なことに、前記スカベンジャーは、水性状態にて反応混合物に加えたときに、主として前記式(I)の化合物を含有する。
【0016】
この点は、スカベンジャー(固形にて存在するのが好ましい)が水性状態にて反応混合物に加えることができ、このときスカベンジャーが主として式(I)の化合物を含有するので有利である。式(I)の化合物は、最終組成物において安定であり、アルデヒドに対する反応性が充分に高い、ということが観察されている。
【0017】
さらに有利なことに、前記スカベンジャーは、18℃~45℃の温度で反応混合物に加えられる。
【0018】
本発明の好ましい実施態様では、R1が-OR3であり、これにより放出アルデヒド低減の効率が高まる。
【0019】
本発明の特定の実施態様によれば、前記スカベンジャーは、前記スカベンジャーの総重量を基準として少なくとも90重量%(好ましくは少なくとも95重量%、さらに好ましくは約99重量%)の前記式(I)の化合物で構成される。
【0020】
R1とR2は、互いに結合して5~12員の環構造(好ましくは少なくとも2つの環構造)を形成し、不飽和、芳香環、及び/又はヘテロ原子を含むのが好ましい。
【0021】
前記スカベンジャーは、高くても3000g/モルの分子量を有し、1500g/モル未満の分子量を有するのが好ましく、500g/モル未満の分子量を有するのがさらに好ましい。
【0022】
さらに、反応混合物は発泡剤を含んでよい。
【0023】
多官能イソシアネートは、ポリマーメチレンジフェニルジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート異性体混合物、またはこれらの混合物から選ばれるのが好ましい。
【0024】
イソシアネート反応性化合物は多官能ポリオールまたは多官能アミンであるのが有利であり、好ましくは多官能ポリオールであり、さらに好ましくはポリエーテルポリオールである。
【0025】
好ましい実施態様では、反応混合物は、鎖延長剤及び/又は架橋剤を含んでよい。
【0026】
本発明の反応混合物の特定の実施態様については後述する。
【0027】
本発明はさらに、
(1) 多官能イソシアネートとイソシアネート反応性化合物を含む反応混合物を供給する工程;
(2) 前記反応混合物にスカベンジャーと少なくとも1つの触媒を加え、最後に少なくとも1つの発泡剤と共に加える工程;
(3) 前記ポリイソシアネートと前記イソシアネート反応性化合物との少なくとも反応生成物を含む前記反応混合物を、前記スカベンジャーと前記少なくとも1つの触媒の存在下で硬化させ、これによりポリウレタンフォームを形成させる工程;
を含むポリウレタンフォームの製造方法に関し、ここで、前記スカベンジャーは、式(I)
【0028】
【化2】
の化合物を含んでなり、式中、R1とR2は、互いに独立していて、-OR3とR4から選ばれるか、あるいはヒドロキシ基、エーテル基、ハロゲン基、カルボニル基、カルボキシル基、イソシアネート基、ニトロ基、及び/又はアミン基からなる基から選ばれ;R3とR4は、互いに独立していて、直鎖もしくは分岐鎖で飽和もしくは不飽和の環状及び/又は非環状炭素鎖、脂肪族炭化水素、アリール脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、及びこれらの混じり合い、の組み合わせから選ばれ、必要に応じて1つ以上の酸素原子、窒素原子、及び/又はイオウ原子が介在し、必要に応じてヒドロキシ基、エーテル基、ハロゲン基、カルボニル基、カルボキシル基、イソシアネート基、ニトロ基、及び/又はアミン基から選ばれる任意の官能基を含み;R1とR2は、実質的に互いに結合して、少なくとも1つの環構造(好ましくは少なくとも2つの環構造)を形成してよい。
【0029】
前記スカベンジャーは、水性状態にて反応混合物に加えたときに前記式(I)の化合物を主として含有するのが好ましい。
【0030】
前記反応混合物は、約0.6~約1.5の範囲のNCOインデックスを有するのが好ましく、約0.8~約1.3の範囲のNCOインデックスを有するのがさらに好ましい。
【0031】
反応混合物のNCOインデックスは、約1.05~約10の範囲であるのが有利であり、約1.05~約4の範囲であるのが好ましい。
【0032】
さらに、反応混合物に関して上記の技術的特徴はいずれも、本発明の製造方法に関して記載の前記技術的特徴と組み合わせることができる。
【0033】
本発明はさらに、本発明の反応混合物を使用することによって得られるフォームを、輸送手段の内装品を製造すべく使用する方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
「含む」(comprising)という用語やその派生語が本明細書中に出てきた場合、これらの用語は、明細書中に同じ事物が開示されていようがいまいが、任意の追加の成分、工程、または手順の存在を除外するようには意図されていない。不確かさを避けるため、「含む」(comprising)という用語を使用して本明細書にて特許請求されている組成物はいずれも、それとは反対の記述がない限り、任意の追加の添加剤、アジュバント、または化合物を含んでよい。これとは対照的に、「から実質的になる」(consisting essentially of)という用語が出てきた場合、この用語は、後続する記載の範囲から、他のいかなる成分、工程、または手順も除外すること(但し、操作性にとって必須ではない事物は除く)を表し、「からなる」(consisting of)という用語が使用された場合、この用語は、明確に記載されていない任意の成分、工程、または手順を除外することを表す。「または」(or)という用語は、特に明記しない限り、記載の個別の要素ならびに要素の任意の組み合わせも表す。
【0035】
冠詞「a」や「an」は、本明細書では、1つの又は1つより多い(すなわち少なくとも1つの) 冠詞の文法的目的語を表すのに使用される。例えば「1つの樹脂」(a resin)は、1種の樹脂又は2種以上の樹脂を意味する。
【0036】
「一実施態様では」(in one embodiment)、「一実施態様によれば」(according to one embodiment)というフレーズ、及び類似のフレーズは、一般には、該フレーズの後に続く特定の特徴、構造、もしくは特性が、本発明の少なくとも1つの実施態様中に含まれること、そして本発明の2つ以上の実施態様中に含まれてよい、ということを意味している。重要なことは、このようなフレーズは必ずしも同じ実施態様に言及しているわけではない、という点である。
【0037】
ある成分または特徴が含まれてよい、あるいはある成分または特徴がある特性を有してよいと明細書が述べている場合、その特定の成分または特徴が含まれる必要はないし、また該特性を有する必要もない。
【0038】
本発明の文脈において、「反応混合物」という表現は、多官能イソシアネートがイソシアネート反応性化合物と反応している状態の混合物であると理解すべきである。この工程は、幾つかの実施態様に従って行うことができる。
【0039】
この文脈においては、これに限定されないが、下記のようなオプションを挙げることができる:
・スカベンジャーを水溶液にて供給し、この水溶液をイソシアネート反応性化合物に加え、次いでこれを多官能イソシアネートと混合すること;
・スカベンジャーを水溶液にて供給し、この水溶液を、多官能イソシアネートとイソシアネート反応性化合物を含んでよい反応混合物に加えること;
・スカベンジャーとイソシアネート反応性化合物を混合して最終的に水性状態にしてから、これを多官能イソシアネートに加えること。
【0040】
一実施態様によれば、多官能イソシアネートは式Q(NCO)nで示されるイソシアネートを含み、ここでnは2~5(好ましくは2~3)の数であり、Qは、2~18個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5~10個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、8~13個の炭素原子を有するアリール脂肪族炭化水素基、または6~15個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基であって、一般には芳香族炭化水素基が好ましい。
【0041】
多官能イソシアネートの例としては、エチレンジイソシアネート;1,4-テトラメチレンジイソシアネート;1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート;1,12-ドデカンジイソシアネート;シクロブタン-1,3-ジイソシアネート;シクロヘキサン-1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、およびこれら異性体の混合物;イソホロンジイソシアネート;2,4-ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、2,6-ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、およびこれら異性体の混合物;ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート(水素化MDIまたはHMDI);1,3-フェニレンジイソシアネートおよび1,4-フェニレンジイソシアネート;2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネート、及びこれら異性体の混合物(TDI);ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート及び/又はジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI);ナフチレン-1,5-ジイソシアネート;トリフェニルメタン-4,4’,4’’
-トリイソシアネート;アニリンとホルムアルデヒドを縮合させ、次いでホスゲン化することによって得ることができるタイプのポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート(ポリマーMDI);ノルボルナンジイソシアネート;m-イソシアナートフェニルスルホニルイソシアネートおよびp-イソシアナートフェニルスルホニルイソシアネート;過塩素化アリールポリイソシアネート;カルボジイミド基、ウレタン基、アロファネート基、イソシアヌレート基、ウレア基、又はビウレット基を有する変性多官能イソシアネート;三量化反応によって得られる多官能イソシアネート;エステル基を有する多官能イソシアネート;ならびに高分子量脂肪酸基を有する多官能イソシアネート;などがあるが、これらに限定されない。当業者であれば、上記多官能イソシアネートの混合物も使用できること、そしてポリマーMDIの混合物やMDI異性体の混合物を使用するのが好ましいことも明らかであろう。
【0042】
別の実施態様では、MDIのプレポリマーも、MDIの代替品として使用できる。MDIのプレポリマーは、多官能ポリオールと過剰の上記多官能イソシアネート(例えばMDI)との反応によって製造される。プレポリマーは、10~30重量%のNCO価を有するのが好ましい。MDIプレポリマーの合成法は、当業界に知られている(例えば「Polyurethanes Handbook 第2版,G.Oertel,1994」を参照)。
【0043】
本発明での使用に適したイソシアネート反応性組成物は、多官能ポリオールや多官能アミンを含んでよい。
【0044】
本発明での使用に適した多官能ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、生物再生可能ポリオール、ポリマーポリオール、または難燃性ポリオール(例えば、リン含有ポリオールやハロゲン含有ポリオール)などがあるが、これらに限定されない。このようなポリオールは、単独でも、あるいは混合物としての適切な組み合わせでも使用することができる。
【0045】
本発明において使用される多官能ポリオールの一般的な官能価は2~6である。ポリオールの分子量は200~10000、好ましくは400~7000である。
【0046】
分子量(Mw)は、ポリスチレンを内部標準としたゲル透過クロマトグラフィー(GPC)法によって定められる重量平均分子量である。
【0047】
前記多官能ポリオールの割合は、反応混合物の総重量を基準として、一般には10重量%~90重量%であり、好ましくは30重量%~80重量%である。
【0048】
本発明での使用に適したポリエーテルポリオールとしては、ジオールやトリオールを含む多価化合物(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、グリセロール、ジグリセロール、トリメチロールプロパン、および類似の低分子量ポリオール)から誘導される末端ヒドロキシル基を有するエチレンオキシドポリエーテルポリオール、プロピレンオキシドポリエーテルポリオール、及びエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマー等のアルキレンオキシドポリエーテルポリオールがある。
【0049】
本発明での使用に適したポリエステルポリオールとしては、ジカルボン酸と過剰のジオールとの反応(例えば、アジピン酸とエチレングリコールもしくはブタンジオールとの反応)によって、またはラクトンと過剰のジオールとの反応(例えば、カプロラクトンとプロピレングリコールとの反応)によって得られるポリエステルポリオールがあるが、これらに限定されない。本発明での使用に適したポリエステルポリオールはさらに、末端ヒドロキシル基を有する直鎖もしくは低分岐鎖脂肪族(主としてアジペート)ポリオール、低分子量芳香族ポリエステル、ポリカプロラクトン、およびポリカーボネートポリオールを含んでよい。末端ヒドロキシル基を有する直鎖もしくは低分岐鎖脂肪族(主としてアジペート)ポリオールは、ジカルボン酸と過剰のジオール、トリオール、もしくはこれらの混合物とを反応させることによって得られ;前記のジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸やAGS混合酸(AGS mixed acid)等があるが、これらに限定されず;前記のジオールやトリオールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトール等があるが、これらに限定されない。前記の低分子量芳香族ポリエステルとしては、ジメチルテレフタレート(DMT)製造のプロセス残留物(一般にはDMT蒸留塔底液と呼ばれる)から誘導される生成物;再利用ポリ(エチレンテレフタレート、PET)ボトルもしくは磁気テープのグリコリシスと、その後の二酸との再エステル化またはアルキレンオキシドとの反応から誘導される生成物;および無水フタル酸の直接エステル化によって誘導される生成物;等がある。ポリカプロラクトンは、開始剤と触媒の存在下でのカプロラクトンの開環によって製造される。開始剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトール等がある。ポリカーボネートポリオールは、ジオールとホスゲンとの重縮合反応により得られる炭酸から誘導される〔しかしながら、ジオール(一般にはヘキサンジオール)と炭酸エステル(例えばジフェニルカーボネート)とのエステル交換反応が起こる〕。
【0050】
本発明での使用に適した生物再生可能ポリオールとしては、ヒマシ油、ひまわり油、パーム核油、パーム油、キャノーラ油、菜種油、大豆油、トウモロコシ油、ピーナッツ油、オリーブ油、藻油、およびこれらの混合物等がある。
【0051】
多官能ポリオールの例としてはさらに、グラフトポリオールやポリウレア変性ポリオール等があるが、これらに限定されない。グラフトポリオールは、ビニルモノマーがグラフト共重合されたトリオールを含む。適切なビニルモノマーとしては、例えば、スチレンやアクリロニトリル等がある。ポリウレア変性ポリオールは、ポリオールの存在下でのジアミンとジイソシアネートとの反応によって形成されるポリウレア分散液を含有するポリオールである。ポリウレア変性ポリオールの変異体がポリイソシアネート重付加(PIPA)ポリオールであり、これはポリオール中でのイソシアネートとアルカノールアミンとのその場反応によって形成される。
【0052】
難燃性ポリオールは、例えば、リン酸化合物にアルキレンオキシドを付加させることによって得られるリン含有ポリオールであってよい。ハロゲン含有ポリオールは、例えば、エピクロロヒドリンやトリクロロブチレンオキシドの開環重合によって得られるポリオールであってよい。
【0053】
本発明での使用に適した多官能アミンは、ポリエーテルポリアミンやポリエステルポリアミンを含んでよい。
【0054】
好ましい実施態様では、イソシアネート反応性組成物はポリエーテルポリオールである。
【0055】
本発明では、多官能イソシアネートと多官能ポリオールとの反応を促進するために触媒〔例えば、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジメチル-N’,N’-ジ(2-ヒドロキシプロピル)-1,3-プロパンジアミン、2-((2-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)エチル)メチルアミノ)エタノール、ジメチルシクロヘキシルアミン、およびトリエチレンジアミン等のアミン触媒〕を使用することができる。
【0056】
一実施態様では、本発明の組成物中に存在する触媒の割合は、反応混合物の総重量を基準として0.001重量%~10重量%であり、好ましくは0.1重量%~5重量%である。
【0057】
本発明の反応混合物中にスカベンジャーを加えると、最終生成物(硬質フォームや軟質フォームであってよい)における放出アルデヒドを低減させることができる、ということが見出された。
【0058】
本発明のスカベンジャーは、例えば式(I)の化合物から製造されるのが好ましいが、これらに限定されない。
【0059】
【化3】
留意しておかねばならないことは、スカベンジャーは固形にて供給されるのが好ましく、主として式(I)の化合物を含有する、という点である。スカベンジャーが水性状態にあるとき、スカベンジャーは、反応混合物中において主として式(I)の化合物を含有するのが好ましい。この式(I)の化合物は、既知のスカベンジャーより安定であって、アルデヒドに対する反応性が充分に高い、ということが観察されている。このことは、放出アルデヒドの低減を確実に果たすことになるので、本発明の文脈において特に有利である
本発明の好ましい実施態様によれば、スカベンジャーは、反応混合物の総重量を基準として反応混合物中に、約0.001重量%~約10重量%の量にて存在し、約0.01重量%~約5重量%の量にて存在するのが好ましく、約0.05重量%~約2重量%の量にて存在するのがさらに好ましい。
【0060】
イソシアネートインデックス、NCOインデックスまたはインデックスは、配合物中に存在するイソシアネート反応性水素原子に対するNCO基の比([NCO]/[活性水素])である。
【0061】
言い換えると、NCOインデックスは、配合物において使用されるイソシアネート反応性水素の量と反応させるのに理論的に必要とされるイソシアネートの量に対する、配合物において実際に使用されるイソシアネートの量を表す。
【0062】
他の実施態様では、本発明の反応混合物は、必要に応じてさらに、難燃剤、酸化防止剤、界面活性剤、物理的もしくは化学的発泡剤、鎖延長剤、架橋剤、整泡剤、フィラー、顔料、またはPU材料において使用される他のいかなる代表的添加剤を含んでもよい。
【0063】
本発明の組成物の利点としては、(1)放出アルデヒド(特に、放出ホルムアルデヒド、放出アセトアルデヒド、および放出プロピオンアルデヒド)が低減されること;(2)低コストであること;および(3)反応混合物を硬化させた後に得られる最終フォームの機械的特性に及ぼす明らかな影響が無いこと;などがある。
【0064】
本発明はさらに、フォーム組成物を使用して輸送手段の内装品(好ましくは 、ルーフクラッディング、カーペット裏地フォーム、ドアクラッディング、ステアリングリング、コントロールノブ、およびシートクッション等の自動車内装クラッディング)を製造する方法を提供する。
【0065】
本発明の実施態様はさらに、PUフォームが使用される他の産業分野にも応用することができる。こうしたPUフォームとしては、軟質PUフォーム、半硬質PUフォーム、硬質PUフォーム、粘弾性PUフォーム、インテグラルスキンPUフォーム、および水耕栽培用PUフォーム等がある。
【0066】
以下に記載の実施例は、本発明の代表的なものであって、決して限定的なものではないと見なすべきである。
【実施例
【0067】
原材料
・多官能イソシアネート: スプラセク(SUPRASEC;登録商標)7007(ポリマーMDI);供給業者:米国ハンツマン社(Huntsman)
・ポリオールA: グリセロールから誘導されて末端ヒドロキシル基を有する、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの三官能コポリマー(約5000の分子量を有する)
・ポリオールB: エチレングリコールをベースとする三官能ポリエーテルポリオール(;分子量:約1300)
・整泡剤: テゴスタブ(TEGOSTAB;登録商標)B8734LF2ポリマー添加剤(シロキサンベースの界面活性剤、供給業者:エボニック社)
・触媒A: ジェフキャット(JEFFCAT;登録商標)ZF10触媒(アミン触媒、供給業者:米国ハンツマン社)
・触媒B: ジェフキャットDPA触媒(アミン触媒、供給業者:米国ハンツマン社)
・触媒C: ジメチルエタノールアミン
・スカベンジャーA: 4-ヒドロキシクマリン
・スカベンジャーB: 2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン
・スカベンジャーC: 4-ヒドロキシ-6-メチル-2-ピロン
・スカベンジャーD: 4-ヒドロキシ-2,5-ジヒドロフラン-2-オン
・鎖延長剤: ジエタノールアミン
実験例1~5
実験例1~5は、多官能イソシアネートをA成分として使用して作製した。実験例1~5に対するB成分を表1に示す。表1に記載の値は全て、B成分の重量部を表す。実験例5は、アルデヒドスカベンジャーを含有しない比較例である。
【0068】
【表1】
手順
実験例1~5では、A:B=67.4:100の重量比および1のNCOインデックスにてA成分とB成分を混合し、ポリエチレン容器中にて撹拌してポリウレタンフォームを作製した。得られたフォーム組成物をポリエチレン袋中に速やかに注ぎ込んだ。発泡反応が進行し、フォームがフリーライズした。得られたフォームを、試験に付す前に室温にて少なくとも15分硬化させた。各処方に関して約1kgのフォームを手混合発泡手順によって作成し、ミクロスケールチャンバー分析またはVDA276放出試験に付した。試験時のテストチャンバーの温度は65℃であった。VDA276(2005年版)は、ドイツ自動車工業会(ウェブサイト:https://www.vda.de/de)で規定された試験法である。
【0069】
結果
ホルムアルデヒドの低減と機械的特性
【0070】
【表2】
表2は、ISO 12219-3:2012法に従って試験したときの、実験例1~4に対する放出ホルムアルデヒドの低減を示す。アルデヒドスカベンジャーが存在すると(実験例1~4)、スカベンジャーなし(実験例5)と比較して放出ホルムアルデヒドが大幅に減少する。そしてフォームの機械的特性に及ぼす明らかな影響は認められない。
【0071】
ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、およびプロピオンアルデヒドの低減
【0072】
【表3】
表3は、VDA276法に従って試験したときの、実験例1、3および5に対する放出ホルムアルデヒド、放出アセトアルデヒド、および放出プロピオンアルデヒドの低減を示す。本発明の実験例1と3は、放出ホルムアルデヒド、放出アセトアルデヒド、および放出プロピオンアルデヒドが、アルデヒドスカベンジャーなし(実験例5)と比較して減少していることを示す。
【国際調査報告】