(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(54)【発明の名称】脱カルボキシル化によりヒドロキシ化合物を製造する方法
(51)【国際特許分類】
C07C 37/50 20060101AFI20220202BHJP
C07C 39/04 20060101ALI20220202BHJP
B01J 29/08 20060101ALI20220202BHJP
C08G 64/20 20060101ALI20220202BHJP
C07C 37/20 20060101ALN20220202BHJP
C07C 39/16 20060101ALN20220202BHJP
C07C 68/02 20060101ALN20220202BHJP
C07C 69/96 20060101ALN20220202BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220202BHJP
【FI】
C07C37/50
C07C39/04
B01J29/08 Z
C08G64/20
C07C37/20
C07C39/16
C07C68/02 Z
C07C69/96 Z
C07B61/00 300
C07C68/02 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021531680
(86)(22)【出願日】2019-12-02
(85)【翻訳文提出日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 EP2019083215
(87)【国際公開番号】W WO2020114928
(87)【国際公開日】2020-06-11
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520204744
【氏名又は名称】コベストロ・インテレクチュアル・プロパティ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・アンド・コー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビットナー ナターリエ
(72)【発明者】
【氏名】ランガンケ イェンス
(72)【発明者】
【氏名】マイネ ニクラス
(72)【発明者】
【氏名】エジュル ヤン
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
4J029
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169CB35
4G169DA05
4G169EC04Y
4G169EC12Y
4G169ZA03A
4G169ZA03B
4G169ZC04
4G169ZC07
4H006AA02
4H006AB46
4H006AB84
4H006AC25
4H006AC41
4H006AC48
4H006AC84
4H006BA68
4H006BB14
4H006BC10
4H006BE10
4H006BJ50
4H006DA15
4H006FC52
4H006FE13
4H006KA52
4H006KA57
4H039CA60
4H039CG40
4J029AA09
4J029AB05
4J029BB13A
4J029HA01
4J029HC01
4J029HC04A
4J029HC05A
4J029HC08
4J029KE05
4J029KE11
(57)【要約】
本発明は、特定のカルボン酸化合物又は該カルボン酸化合物の塩の脱カルボキシル化によって特定のヒドロキシ化合物を製造する方法、ジアリールカーボネート、ビスフェノール、又はポリカーボネートを製造する方法、ジアリールカーボネート又はビスフェノール、ポリカーボネート、及びポリマー中のC14対C12の同位体比を調整する方法に関する。脱カルボキシル化の間に、特定の溶剤を使用する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
(式中、
Rは、炭素数1~6の直鎖状アルキル基又は分岐状アルキル基であり、
nは、1又は2であり、かつ、
mは、0、1、2、又は3である)のヒドロキシ化合物を、少なくとも1つの不均一系触媒を使用して、式(II):
(式中、R、n、及びmは前記定義の通りである)のカルボン酸化合物又は対応する前記式(II)のカルボン酸化合物の塩の脱カルボキシル化によって製造する方法であって、
少なくとも1つの式(I)のヒドロキシ化合物は、前記脱カルボキシル化反応全体を通して前記式(II)のカルボン酸化合物に対して化学量論的に過剰に存在し、ここで、前記脱カルボキシル化は、形成される前記式(I)のヒドロキシ化合物と、化学量論的に過剰に使用される前記少なくとも1つの式(I)のヒドロキシ化合物との両方の溶融温度を上回る温度で実施されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記脱カルボキシル化反応を実施する前に、前記式(II)のカルボン酸化合物又は対応する前記式(II)のカルボン酸化合物の塩は、前記脱カルボキシル化反応全体を通して前記式(II)のカルボン酸化合物に対して化学量論的に過剰に存在する前記少なくとも1つの式(I)のヒドロキシ化合物中に溶解されていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの不均一系触媒は、ゼオライトであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ゼオライトは、フォージャサイト構造を有することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記式(II)のカルボン酸化合物の塩のカチオンは、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、アンモニウム、ホスホニウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、モリブデン、カドミウムのカチオン、及びそれらの任意の所望の混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記式(II)のカルボン酸化合物又は対応する前記式(II)のカルボン酸化合物の塩は、発酵によって又は糖類、リグノセルロース、リグノセルロース含有材料、フラン及び/又はリグニンから得られたものであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
製造される前記式(I)のヒドロキシ化合物は、前記脱カルボキシル化反応全体を通して前記式(II)のカルボン酸化合物に対して化学量論的に過剰に存在する前記式(I)のヒドロキシ化合物に相当することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記式(I)のヒドロキシ化合物は、フェノールであることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記式(II)のカルボン酸化合物又は対応する前記式(II)のカルボン酸化合物の塩は、2-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、及び対応する塩からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ポリマー、好ましくはポリカーボネート中のC14対C12の同位体比を調整する方法であって、以下の工程:
(a1)請求項1~9のいずれか一項に記載の方法を実施する工程と、
ここで、前記脱カルボキシル化反応全体を通して前記式(II)のカルボン酸化合物に対して化学量論的に過剰に存在し、石油ベースである前記式(I)のヒドロキシ化合物と、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法の方法産物としての前記式(I)のヒドロキシ化合物とのモル比が維持される;
(b1)任意に、前記石油ベースである式(I)のヒドロキシ化合物、又は発酵によって若しくは糖類、リグノセルロース、フラン及び/又はリグニンから得られた式(I)のヒドロキシ化合物のいずれかを添加することによって、方法工程(a1)からの前記モル比を変更する工程と、
(c1)方法工程(b1)で得られる式(I)のヒドロキシ化合物の混合物を使用してジアリールカーボネート又はビスフェノールを製造する工程と、
(d1)方法工程(c1)からの少なくとも1つのジアリールカーボネート及び/又はビスフェノールを使用して、ポリマー、好ましくはポリカーボネートを製造する工程と、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項11】
ビスフェノールを製造する方法であって、
以下の工程:
(a2)請求項1~9のいずれか一項に記載の式(I)のヒドロキシ化合物を製造する方法を実施して、式(I)のヒドロキシ化合物を得る工程と、
(b2)工程(a2)からの前記式(I)のヒドロキシ化合物をケトン又はアルデヒドと反応させて、ビスフェノールを得る工程と、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項12】
ジアリールカーボネートを製造する方法であって、
以下の工程:
(a3)請求項1~9のいずれか一項に記載の式(I)のヒドロキシ化合物を製造する方法を実施して、式(I)のヒドロキシ化合物を得る工程と、
(b3)工程(a3)からの前記式(I)のヒドロキシ化合物をハロゲン化カルボニル、一酸化炭素、又はジメチルカーボネートと反応させて、ジアリールカーボネートを得る工程と、
を含む、方法。
【請求項13】
ポリカーボネートを製造する方法であって、
以下の工程:
(a4)請求項11に記載のビスフェノールを製造する方法を実施して、ビスフェノールを得る工程と、
(b4)工程(a4)からの前記ビスフェノールをハロゲン化カルボニル、一酸化炭素、又はジメチルカーボネートと反応させて、ポリカーボネートを得る工程と、
を含む、方法。
【請求項14】
ポリカーボネートを製造する方法であって、
以下の工程:
(a5)請求項12に記載のジアリールカーボネートを製造する方法を実施して、ジアリールカーボネートを得る工程と、
(b5)工程(a5)からの前記ジアリールカーボネートをビスフェノールと反応させて、ポリカーボネートを得る工程と、
を含む、方法。
【請求項15】
ポリカーボネートを製造する方法であって、
以下の工程:
(a6)請求項11に記載のビスフェノールを製造する方法を実施して、ビスフェノールを得る工程と、
(b6)請求項12に記載のジアリールカーボネートを製造する方法を実施して、ジアリールカーボネートを得る工程と、
(c6)工程(a6)からの前記ビスフェノールを工程(b6)からのジアリールカーボネートと反応させて、ポリカーボネートを得る工程と、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のカルボン酸化合物又は該カルボン酸化合物の塩の脱カルボキシル化によって特定のヒドロキシ化合物を製造する方法、ジアリールカーボネート、ビスフェノール、又はポリカーボネートを製造する方法、ジアリールカーボネート又はビスフェノール、ポリカーボネート、及びポリマー中のC14対C12の同位体比を調整する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族環上に種々の置換パターンを有するフェノールは、様々なモノマーの出発化合物ひいては該モノマーから得られるポリマーの出発化合物でもある。このようなフェノールを再生可能な原料から製造することは大きな課題である。バイオベースのフェノールを製造する1つの選択肢は、例えば、特許文献1に記載されるような糖類の直接的な発酵である。しかしながら、フェノールはそこに記載される微生物に対して毒性を有し、これを水性発酵ブロスから除去することも手間がかかる。4-ヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシ安息香酸、及び3-ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシ安息香酸も同様に糖類から発酵によって製造され得る。これらは一般的に使用される微生物に対してより低い毒性を有するので、通常、フェノールと比較してより高い収率が達成され得る。ヒドロキシ安息香酸は結晶化され、発酵ブロスから分離され得る。4-ヒドロキシ安息香酸のフェノールへの後続の脱カルボキシル化も以前に記載されている。特許文献2は、溶剤としての水中で不均一系触媒を使用する反応を記載している。A.S. Lisitsynは、非特許文献1において、銅触媒を使用するジフェニルエーテル中での脱カルボキシル化を記載している。L.J. Goossenらは、非特許文献2において、溶剤としてのNMP中で銀触媒又は銅触媒を使用する脱カルボキシル化を記載している。非特許文献3はまた、トルエン中での脱カルボキシル化を記載している。
【0003】
フェノールを高純度で得るには、従来技術に記載される方法では最初に溶剤を除去することが必要である。しかしながら、しばしば溶剤残留物がフェノール中に残り、それにより、例えば、ジアリールカーボネート若しくはビスフェノール等のモノマーの製造のために上記フェノールを更に使用することが困難となる、又はこれらの方法の収率に影響が及ぼされる。
【0004】
同様に、ヒドロキシ安息香酸の脱カルボキシル化に均一系触媒を使用する場合に、触媒をフェノールから分離することができ、可能であればリサイクルすることができるようにする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2014/076113号
【特許文献2】特開2016-23136号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Applied Catalysis A: General 332; 2007 (166-170)
【非特許文献2】ChemCatChem 2010, 2, 430-442
【非特許文献3】Dalton Transactions (24), 4683-4688; 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の課題は、従来技術の少なくとも1つの不利点を改善する、式(II)のカルボン酸化合物又は対応する式(II)のカルボン酸化合物の塩の脱カルボキシル化によって式(I)の特定のヒドロキシ化合物を製造する方法を提供することであった。特に、本発明の課題は、式(I)のヒドロキシ化合物を高純度で得る方法を提供することであった。これにより、得られる式(I)のヒドロキシ化合物は、特に他の化学的化合物のための出発材料として使用するのに適したものとなるだろう。特に、生成物の後処理が可能な限り簡単であり、その結果、好ましくは費用効果が高く、環境に優しい方法によって、式(I)のヒドロキシ化合物が提供されるべきである。この場合に、不均一系触媒を使用することが望まれたのは、これにより既に式(I)のヒドロキシ化合物から触媒を分離することが容易になるからである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題のうちの少なくとも1つ、好ましくは全てが本発明によって解決された。驚くべきことに、式(II)のカルボン酸化合物又は対応する上記式(II)のカルボン酸化合物の塩の脱カルボキシル化は、不均一系触媒を使用して、溶剤としての式(I)のヒドロキシ化合物中で効率的に実施され得ることが判明した。所望の式(I)のヒドロキシ化合物の収率は、好ましくは、従来技術に記載される条件下よりも更に高い。脱カルボキシル化反応の間に溶剤として少なくとも1つの式(I)のヒドロキシ化合物を使用すると、触媒の分離後に手間のかかる後処理をすることなく更なる化学反応のための出発材料として直接使用することができる反応混合物が得られるという特定の利点がもたらされる。第一に、これは反応がほぼ完了するまで進行するからである。第二に、溶剤を除去する必要がない。上記方法は、特に好ましくは、使用される溶剤が、製造される所望の式(I)のヒドロキシ化合物に相当するように設計され得る。脱カルボキシル化が完了して、触媒を分離した後に、これによりほぼ純粋な式(I)のヒドロキシ化合物が得られる。
【0009】
したがって、本発明は、式(I):
(式中、
Rは、炭素数1~6の直鎖状アルキル基又は分岐状アルキル基であり、
nは、1又は2であり、かつ、
mは、0、1、2、又は3である)のヒドロキシ化合物を、少なくとも1つの不均一系触媒を使用して、式(II):
(式中、R、n、及びmは上記定義の通りである)のカルボン酸化合物又は対応する上記式(II)のカルボン酸化合物の塩の脱カルボキシル化によって製造する方法であって、
少なくとも1つの式(I)のヒドロキシ化合物は、脱カルボキシル化反応全体を通して式(II)のカルボン酸化合物に対して化学量論的に過剰に存在し、ここで、脱カルボキシル化は、形成される式(I)のヒドロキシ化合物と、化学量論的に過剰に使用される少なくとも1つの式(I)のヒドロキシ化合物との両方の溶融温度を上回る温度で実施されることを特徴とする、方法を提供する。
【0010】
本発明によれば、式(II)のカルボン酸化合物又は式(II)のカルボン酸化合物の塩は、少なくとも1つの式(I)のヒドロキシ化合物と一緒に存在する。これは、脱カルボキシル化反応の開始前にも当てはまる。少なくとも1つの式(I)のヒドロキシ化合物は化学量論的に過剰に存在する。すなわち、式(II)のカルボン酸化合物又は式(II)のカルボン酸化合物の塩は、少なくとも1つの式(I)のヒドロキシ化合物に対してモル濃度不足(molar deficit)で存在する。その後、脱カルボキシル化の間に、式(I)のヒドロキシ化合物が目標生成物として更に形成される。これは、上記少なくとも1つの式(I)のヒドロキシ化合物と同じであっても又は異なっていてもよく、好ましくは同じであり得る。したがって、本発明では、目標生成物として式(I)のヒドロキシ化合物がin situで形成した後に、その後の或る時点で、式(II)のカルボン酸化合物又は式(II)のカルボン酸化合物の塩のモル濃度不足が生ずる可能性がある状況は除外される。それというのも、脱カルボキシル化の開始以降、少なくとも1つの式(I)のヒドロキシ化合物が付加的に存在せねばならないからである。本発明によれば、脱カルボキシル化反応を実施する前に、式(II)のカルボン酸化合物又は対応する式(II)のカルボン酸化合物の塩は、脱カルボキシル化反応全体を通して式(II)のカルボン酸化合物に対して化学量論的に過剰に存在する少なくとも1つの式(I)のヒドロキシ化合物中に溶解されていることが好ましい。したがって、式(II)のカルボン酸化合物又は式(II)のカルボン酸化合物の塩は、脱カルボキシル化反応全体を通して式(II)のカルボン酸化合物に対して化学量論的に過剰に存在する少なくとも1つの式(I)のヒドロキシ化合物中に可溶であることが好ましい。「溶解する」及び「溶液で」という用語は、本発明によれば、当業者に既知の意味を有すると理解されるべきである。「溶解する」及び「溶液で」という用語は、好ましくは、物質が溶解している液体を濾過した場合に、慣用の濾過方法を使用して固体を分離除去することができないことを意味する。
【0011】
本発明の方法は、形成される式(I)のヒドロキシ化合物と、化学量論的に過剰に使用される少なくとも1つの式(I)のヒドロキシ化合物との両方の溶融温度を上回る温度で実施される。したがって、本発明の方法は、好ましくは溶液で実施される。この場合に、脱カルボキシル化反応全体を通して式(II)のカルボン酸化合物に対して化学量論的に過剰に存在する少なくとも1つの式(I)のヒドロキシ化合物が溶剤として働く。
【0012】
本発明の方法は、好ましくは100℃~400℃、特に好ましくは150℃~300℃、非常に特に好ましくは160℃~250℃の温度で実施される。
【0013】
本発明の方法は、バッチ式、セミバッチ式、又は連続式であり得る。
【0014】
本発明の方法は、好ましくは、式中のRがtert-ブチル基、プロピル基又はメチル基であり、nが1又は2、好ましくは1であり、かつmが0、1、2又は3である上記式(I)のヒドロキシ化合物を製造するのに使用される。本発明の方法は、特に好ましくは、4-プロピルフェノール、オルトメチルフェノール、パラメチルフェノール若しくはメタメチルフェノール(クレゾール)、2,4-ジメチルフェノール、2,5-ジメチルフェノール、4-tert-ブチルフェノール、又はフェノールを製造するのに使用される。本発明の方法は、非常に特に好ましくは、式(I)のヒドロキシ化合物がフェノールであることを特徴とする。
【0015】
脱カルボキシル化反応全体を通して式(II)のカルボン酸化合物に対して化学量論的に過剰に存在する少なくとも1つの式(I)のヒドロキシ化合物が、式中のRがtert-ブチル基、プロピル基又はメチル基であり、nが1又は2、好ましくは1であり、かつmが0、1、2又は3である上記式(I)のヒドロキシ化合物であることも好ましい。脱カルボキシル化反応全体を通して式(II)のカルボン酸化合物に対して化学量論的に過剰に存在する上記少なくとも1つの式(I)のヒドロキシ化合物は、特に好ましくは、4-プロピルフェノール、オルトメチルフェノール、パラメチルフェノール若しくはメタメチルフェノール(クレゾール)、2,4-ジメチルフェノール、2,5-ジメチルフェノール、4-tert-ブチルフェノール、又はフェノールである。非常に特に好ましいのは、フェノールである。
【0016】
本発明の方法によって製造される式(I)のヒドロキシ化合物が、脱カルボキシル化反応全体を通して式(II)のカルボン酸化合物に対して化学量論的に過剰に存在する式(I)のヒドロキシ化合物に相当することが好ましい。
【0017】
本発明によれば、式(II)のカルボン酸化合物又は式(II)のカルボン酸化合物の塩は、時に、式(II)のカルボン酸化合物とも総称される。しかしながら、別段の指定がない限り、これは常に遊離酸及び/又は塩を意味する。本発明によれば、異なる式(II)のカルボン酸化合物の混合物若しくは異なる式(II)のカルボン酸化合物の塩の混合物、又は少なくとも1つの式(II)のカルボン酸化合物と少なくとも1つの式(II)のカルボン酸化合物の塩との混合物を使用することも可能である。
【0018】
本発明の方法では、式(II)のカルボン酸化合物の塩のカチオンは、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、アンモニウム、ホスホニウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、モリブデン、カドミウムのカチオン、及びそれらの任意の所望の混合物からなる群より選択されることが好ましい。式(II)のカルボン酸化合物の塩のカチオンは、特に好ましくは、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、及びそれらの混合物からなる群より選択される。
【0019】
また、本発明によれば、式(II)のカルボン酸化合物又は対応する式(II)のカルボン酸化合物の塩が2-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、及び対応する塩からなる群より選択されることが好ましい。非常に特に好ましいのは、4-ヒドロキシ安息香酸又は対応する塩である。
【0020】
脱カルボキシル化反応において活性であるあらゆる不均一系触媒が原則的に本発明の方法における触媒として適している。これらは当業者に知られている。本発明の方法で使用される不均一系触媒は、好ましくは、Al2O3、Al2O3上に担持されたH3PO4、Al2O3上に担持されたPtClx、Cu/Al/Ga-MOF、Pt-Al-MOF、活性炭上に担持されたパラジウム、活性炭上に担持された白金、ZSM-5、HZSM-5等のゼオライト、MCM-41(Mobil社の物質番号41の組成物(Mobil Composition of Matter No. 41))上に担持されたFe2O3、Al-MCM-41上に担持されたFe2O3、SAPO-34(ケイ素アルミノリン酸塩)上に担持されたPt、SAPO-11上に担持されたPt、Ptハイドロタルサイト、SiO2上に担持されたPt、及びそれらの任意の所望の混合物からなる群より選択される。本発明の方法は、特に好ましくは、少なくとも1つの不均一系触媒がゼオライトであることを特徴とする。本発明の方法は、非常に特に好ましくは、ゼオライトがフォージャサイト構造を有することを特徴とする。
【0021】
ゼオライト、特にフォージャサイト構造を有するゼオライトは当業者に知られている。フォージャサイトの結晶構造は合成ゼオライトYの結晶構造と同一である。フォージャサイト骨格の基本要素は、六角柱を介して相互に連結されているソーダライトケージである。非常に特に好ましいのは、本発明により使用されるY型ゼオライト触媒である。
【0022】
本発明の一つの態様では、式(II)のカルボン酸化合物又は対応する式(II)のカルボン酸化合物の塩は、発酵によって又は糖類、リグノセルロース、リグノセルロース含有材料、フラン及び/又はリグニンから得られたものであることが更に好ましい。したがって、式(II)のカルボン酸化合物又は対応する式(II)のカルボン酸化合物の塩は、好ましくはバイオベースである。本発明の目的のために、「バイオベース」という表現は、関連する化学的化合物が、出願日時点で入手可能であり、及び/又は、再生可能及び/又は持続可能な原料を介して得ることが可能であり、及び/又は好ましくはそのような再生可能及び/又は持続可能な原料であることを意味すると理解される。再生可能及び/又は持続可能な原料は、好ましくは、自然過程によってその減少速度と同等の速度で再生される原料を意味すると理解される(CEN/TS 16295:2012を参照)。この表現は、特に、本発明によれば石油ベースとも呼ばれる化石原料から製造された原料と区別するのに使用される。炭素同位体C14の相対量は化石原料中の方が少ないため、原料がバイオベース又は石油ベースのどちらであるかは、原料中の炭素同位体を測定することによって決定され得る。これは、例えばASTM D6866-18(2018)又はISO16620-1~ISO16620-5(2015)又はDIN SPEC 91236 2011-07に従って行われ得る。
【0023】
本発明によれば、「石油ベース」という用語は、好ましくは、0.3×10-12未満、特に好ましくは0.2×10-12、非常に特に好ましくは0.1×10-12のC14同位体含有量を有する化合物を記載するのに使用される。式(I)のヒドロキシ化合物がフェノールである場合に、石油ベースのフェノールは、好ましくはHock法を介して得られる。
【0024】
当業者は、式(II)のカルボン酸化合物又は対応する式(II)のカルボン酸化合物の塩を発酵によって又は糖類、リグノセルロース、リグノセルロース含有材料、フラン及び/又はリグニンから得る方法を理解している。
【0025】
これは、例えば、国際公開第2015174446号、国際公開第2015156271号、米国特許出願公開第20040143867号、Appl. Environ Microbiol 84 2018 :e02587-17、国際公開第2016114668号、Biomass and Bioenergy 93:209-216 October 2016、Biotechnol Bioeng. 2016 Jul;113(7):1493-503、ACS Catal., 2016, 6 (9), pp. 6141-6145又はBiotechnol. Bioeng., 113: 1493-1503、Appl Microbiol Biotechnol. 2018 Oct;102(20):8685-8705、Microbiology. 1994 Apr;140 (Pt 4):897-904、Journal of Biotechnology 132 (2007) 49-56、国際公開第2000018942号、米国特許第6030819号、欧州特許出願公開第2698435号、Bioprocess Biosyst Eng (2017) 40: 1283、米国特許第2996540号、米国特許第9206449号、Nature 2014, 515, 249-252、Biomass and Bioenergy 93 (2016) 209-216、3 Biotech. 2015 Oct; 5(5): 647-651、Appl Environ Microbiol. 2018 Mar 15; 84(6): e02587-17、米国特許第3360553号に記載されている。
【0026】
本発明のこの態様では、バイオベースの式(II)のカルボン酸化合物又は対応する式(II)のカルボン酸化合物の塩を使用して、バイオベースの式(I)のヒドロキシ化合物を得ることが特に有利である。今度はこれを使用して、更なるバイオベースの化合物、例えば、ジアリールカーボネート、ビスフェノール、又はポリカーボネートを製造することができ、これにより、最終的にバイオベースのポリマーが入手可能となり、効率的かつ費用効果の高い様式でこれらが製造可能となる。
【0027】
したがって、本発明は、更なる態様では、ジアリールカーボネート、ビスフェノール、又はポリカーボネートを製造する方法であって、ジアリールカーボネート、ビスフェノール、又はポリカーボネートの製造において、全ての好ましい事項及び好ましい組み合わせで、本発明の方法の直接的な方法産物を不均一系触媒の除去後に使用することを特徴とする、方法に関する。既に上記のように、本発明の方法により、脱カルボキシル化の実施後に、製造された式(I)のヒドロキシ化合物と、脱カルボキシル化反応全体を通して式(II)のカルボン酸化合物に対して化学量論的に過剰に存在する少なくとも1つの式(I)のヒドロキシ化合物とを含有する混合物を得ることが可能となる。これらの2つのヒドロキシ化合物は、好ましくは同一であり得る。この混合物から触媒を除去すると、式(I)のヒドロキシ化合物の本質的に純粋な混合物が存在する。この本質的に純粋な混合物を、更なる手間のかかる精製工程なしに、ジアリールカーボネート、ビスフェノール、又はポリカーボネートを製造する本発明の方法へと供給することができる。触媒の分離は当業者に知られている。触媒の分離は、例えば濾過によって達成され得る。したがって、「直接的な方法産物」という表現は、特に、方法産物から溶剤を事前に除去する必要がないことを意味すると理解されるべきである。溶剤のこの除去は通常は熱応力を伴うため、式(I)のヒドロキシ化合物の本発明による混合物が受ける熱応力はこうして、従来技術の対応する化合物よりも低かった。
【0028】
本発明によれば、この状況では、式(II)のカルボン酸化合物又は式(II)のカルボン酸化合物の塩が4-ヒドロキシ安息香酸又は対応する塩であることが特に好ましい。
【0029】
ジアリールカーボネート又はビスフェノールを製造する方法は当業者に知られている。ジアリールカーボネートは、例えば、式(I)のヒドロキシ化合物をハロゲン化カルボニル、好ましくはホスゲン、一酸化炭素、又はジメチルカーボネートと既知のように反応させることによって製造され得る。ビスフェノールは、式(I)のヒドロキシ化合物を既知のようにケトン又はアルデヒドと反応させることによって得ることができる。式(I)のヒドロキシ化合物を使用するポリカーボネートの製造方法も当業者に知られている。例えば、式(I)のヒドロキシ化合物は、ポリカーボネートを既知のように製造する界面法における連鎖停止剤として使用され得る。
【0030】
これらの方法では、ケトン又はアルデヒド等の他の反応物は、同様にバイオベース又は石油ベース、好ましくはバイオベースであり得る。
【0031】
また、この方法では、式(I)のヒドロキシ化合物を製造する本発明の方法において、全ての上記の好ましい事項及び組み合わせで、式(II)のカルボン酸化合物若しくは対応する式(II)のカルボン酸化合物の塩が発酵によって若しくは糖類、リグノセルロース、フラン及び/又はリグニンから得られたものであり、かつ式(I)のヒドロキシ化合物を製造する本発明の方法において、全ての上記の好ましい事項及び組み合わせで、脱カルボキシル化反応全体を通して式(II)のカルボン酸化合物に対して化学量論的に過剰に存在する少なくとも1つの式(I)のヒドロキシ化合物が石油ベースであること、又は式(I)のヒドロキシ化合物を製造する本発明の方法において、全ての上記の好ましい事項及び組み合わせで、式(II)のカルボン酸化合物若しくは対応する式(II)のカルボン酸化合物の塩が石油ベースであり、かつ式(I)のヒドロキシ化合物を製造する本発明の方法において、全ての上記の好ましい事項及び組み合わせで、脱カルボキシル化反応全体を通して式(II)のカルボン酸化合物に対して化学量論的に過剰に存在する少なくとも1つの式(I)のヒドロキシ化合物が発酵によって若しくは糖類、リグノセルロース、フラン及び/又はリグニンから得られたものであることが好ましい。すなわち、本発明によれば、石油ベースの式(I)のヒドロキシ化合物とバイオベースの式(I)のヒドロキシ化合物との混合物を得ることが好ましい。この場合に、本発明により製造される式(I)のヒドロキシ化合物がバイオベースであるときに、溶剤として使用される式(I)のヒドロキシ化合物が石油ベースであるか、又はその逆のいずれかが可能である。この好ましい事項は、以下で実施形態2と呼ばれる。
【0032】
現在、或る製品が「バイオベース」と記載され得た時点に応じて、異なる表示が存在する(とりわけ、ASTM D6866-18(2018)又はISO16620-1~ISO16620-5(2015)又はTUEV Rheinland(商標)からのDIN SPEC 91236 2011-07による「バイオベース」製品についての認証プログラムを参照)。これらの異なる表示の要件は、製品中のバイオベースの炭素の或る特定のパーセンテージである。本発明の方法は、本発明の方法を中断することなく、バイオベースの炭素の割合を容易に調整することを可能にする。これは、式(II)のカルボン酸化合物若しくはその供給源、又は脱カルボキシル化反応全体を通して式(II)のカルボン酸化合物に対して化学量論的に過剰に存在する少なくとも1つの式(I)のヒドロキシ化合物若しくはその供給源の添加又は交換によって容易に行われ得る。したがって、本発明の方法は、既存のシステムが追加の出費なしに将来的な表示の要件の変化に対応することも可能にする。すなわち、厳格な要件であっても、依然としてバイオベースとしての適切な表示を有する式(I)のヒドロキシ化合物を容易に製造することが可能である。
【0033】
ジアリールカーボネート、ビスフェノール、又はポリカーボネートを製造する本発明の方法は、ジアリールカーボネート、ビスフェノール、又はポリカーボネートを製造する反応で未反応であった式(I)のヒドロキシ化合物をジアリールカーボネート、ビスフェノール、又はポリカーボネートから分離した後に、式(I)のヒドロキシ化合物を製造する本発明の方法へと、全ての上記の好ましい事項及び組み合わせで、脱カルボキシル化反応全体を通して式(II)のカルボン酸化合物に対して化学量論的に過剰に存在する式(I)のヒドロキシ化合物として供給し戻すことを特徴とする場合に特に有利である。未反応の式(I)のヒドロキシ化合物は溶剤として再利用され得るので、この方法様式は全体的に特に有利である。これは環境保護の観点及び経済的観点から有利である。式(I)のヒドロキシ化合物のこのリサイクルは、特に好ましくは、ジアリールカーボネート又はビスフェノールを製造する本発明の方法で実施される。
【0034】
未反応の式(I)のヒドロキシ化合物がバイオベースのヒドロキシ化合物と石油ベースのヒドロキシ化合物との特定の混合物である場合に、当業者は、式(I)のヒドロキシ化合物を製造する本発明の方法において、この比率を更に維持するために適切な措置を取ることができる。例えば、当業者は、脱カルボキシル化反応全体を通して式(II)のカルボン酸化合物に対して化学量論的に過剰に存在する少なくとも1つの式(I)のヒドロキシ化合物に相当する供給源を未反応の式(I)のヒドロキシ化合物に更に加えることができる。
【0035】
未反応の式(I)のヒドロキシ化合物をジアリールカーボネート又はビスフェノールから分離することは当業者に知られている。この分離は既知のように、例えば蒸留によって実施され得る。
【0036】
更なる態様では、本発明は、全ての好ましい事項及び組み合わせで、実施形態2によるジアリールカーボネート、ビスフェノール、又はポリカーボネートを製造する本発明の方法によって得られたものであることを特徴とするジアリールカーボネート、ビスフェノール、又はポリカーボネートを提供する。既に上記のように、これらのジアリールカーボネート、ビスフェノール、又はポリカーボネートは、バイオベースの炭素と石油ベースの炭素との特に調整可能な比率を有する。これは本発明の方法によって得ることができる。
【0037】
本発明の好ましいビスフェノールは、式(2a):
HO-Z-OH (2a)
(式中、
Zは、炭素数6~30であり、1つ以上の芳香族環を含み得て、置換されていてもよく、かつ架橋要素として脂肪族ラジカル又は環状脂肪族ラジカル又はアルキルアリール又はヘテロ原子を有し得る芳香族ラジカルである)のビスフェノールである。
【0038】
式(2a)におけるZは、好ましくは、式(3):
(式中、
R
6及びR
7は、独立して、H、C
1~C
18アルキル、C
1~C
18アルコキシ、Cl若しくはBr等のハロゲン、又はそれぞれ任意に置換されたアリール若しくはアラルキルであり、好ましくはH又はC
1~C
12アルキル、特に好ましくはH又はC
1~C
8アルキル、非常に特に好ましくはH又はメチルであり、かつ、
Xは、単結合、-SO
2-、-CO-、-O-、-S-、C
1~C
6アルキレン、C
2~C
5アルキリデン、又はC
1~C
6アルキル、好ましくはメチル若しくはエチルによって置換されていてもよいC
5~C
6シクロアルキリデンであり、或いはヘテロ原子を含む更なる芳香族環と任意に縮合されていてもよいC
6~C
12アリーレンである)のラジカルである。
【0039】
Xは、好ましくは、単結合、C
1~C
5アルキレン、C
2~C
5アルキリデン、C
5~C
6シクロアルキリデン、-O-、-SO-、-CO-、-S-、-SO
2-であり、又は式(3a):
のラジカルである。
【0040】
ビスフェノールの例は、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシジフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)アリール、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、1,1’-ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン、並びにそれらの環アルキル化された化合物及び環ハロゲン化された化合物である。
【0041】
好ましいビスフェノールは、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルプロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,3-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン(ビスフェノールM)、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,3-ビス[2-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、及び1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)である。
【0042】
特に好ましいビスフェノールは、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、及び1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)である。
【0043】
本発明の好ましいジアリールカーボネートは、式(2):
(式中、R、R’及びR’’は、それぞれ独立して同一でも又は異なっていてもよく、水素、任意に分岐状のC
1~C
34アルキル、C
7~C
34アルキルアリール又はC
6~C
34アリールであり、また、Rは-COO-R’’’を示してもよく、ここで、R’’’は、任意に分岐状のC
1~C
34アルキル、C
7~C
34アルキルアリール又はC
6~C
34アリールである)のジアリールカーボネートである。このようなジアリールカーボネートは、例えば欧州特許出願公開第1609818号に記載されている。好ましいのは、ジフェニルカーボネート、4-tert-ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4-tert-ブチルフェニル)カーボネート、ビフェニル-4-イルフェニルカーボネート、ジ(ビフェニル-4-イル)カーボネート、4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニルフェニルカーボネート、及びジ[4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル]カーボネートである。非常に特に好ましいのは、置換又は非置換の、好ましくは非置換のジフェニルカーボネートである。
【0044】
さらに、本発明は、本発明のジアリールカーボネート及び/又はビスフェノールの重合によって得られるポリカーボネートを提供する。
【0045】
ジアリールカーボネート及び/又はビスフェノールの重合によってポリカーボネートを製造するそのような方法は当業者に知られている。例えば、ビスフェノール及び任意の分岐剤をアルカリ性水溶液中に溶解させ、溶剤中に任意に溶解されたカーボネート源、特にホスゲン等のハロゲン化カルボニル、一酸化炭素、又はジメチルカーボネートと、アルカリ性水溶液、有機溶剤、及び触媒、好ましくはアミン化合物の二相混合物中で反応させることができる。この反応様式は、2工程以上で行うこともできる。ポリカーボネートを製造するそのような方法の原理は、例えば、H. Schnell, Chemistry and Physics of Polycarbonates, Polymer Reviews, vol. 9, Interscience Publishers, New York 1964 p. 33 ff、及びPolymer Reviews, vol. 10, "Condensation Polymers by Interfacial and Solution Methods", Paul W. Morgan, Interscience Publishers, New York 1965, chapter VIII, p. 325から二相界面法として知られており、したがって、不可欠な条件は当業者によく知られている。
【0046】
代替的に、本発明によるポリカーボネートは、溶融エステル交換法によっても製造され得る。溶融エステル交換法は、例えば、Encyclopedia of Polymer Science, vol. 10 (1969)、Chemistry and Physics of Polycarbonates, Polymer Reviews, H. Schnell, vol. 9, John Wiley and Sons, Inc. (1964)、及び独国特許第1031512号に記載されている。溶融エステル交換法では、ビスフェノールは、適切な触媒及び任意にその他の添加剤を使用して、溶融物においてジアリールカーボネートとエステル交換される。
【0047】
更なる態様では、本発明は、ポリマー、好ましくはポリカーボネート中のC14対C12の同位体比を調整する方法であって、以下の工程:
(a1)全ての上記の好ましい事項及び組み合わせで、式(I)のヒドロキシ化合物を製造する本発明の方法を実施する工程と、
ここで、脱カルボキシル化反応全体を通して式(II)のカルボン酸化合物に対して化学量論的に過剰に存在し、石油ベースである式(I)のヒドロキシ化合物と、本発明の方法による方法の方法産物としての式(I)のヒドロキシ化合物とのモル比が維持される;
(b1)任意に、石油ベースである式(I)のヒドロキシ化合物、又は発酵によって若しくは糖類、リグノセルロース、フラン及び/又はリグニンから得られた式(I)のヒドロキシ化合物のいずれかを添加することによって、方法工程(a1)からのモル比を変更する工程と、
(c1)方法工程(b1)で得られる式(I)のヒドロキシ化合物の混合物を使用してジアリールカーボネート又はビスフェノールを製造する工程と、
(d1)方法工程(c1)からの少なくとも1つのジアリールカーボネート及び/又はビスフェノールを使用して、ポリマー、好ましくはポリカーボネートを製造する工程と、
を含むことを特徴とする、方法を提供する。
【0048】
既により詳細に上記されたように、当業者は、ポリマー中のC14及びC12の同位体比が、ポリマーをバイオベースと記載することができるか否かの指標であることを理解している。これらの同位体ひいてはその比を決定する方法も既に上記されている。同位体比は、好ましくは、ASTM D6866-18(2018)又はISO16620-1~ISO16620-5(2015)又はDIN SPEC 91236 2011-07に従って決定される。同様に、方法工程(c1)についても、また方法工程(d1)についても、既に上記された好ましいビスフェノール及びジアリールカーボネート、並びにこれらを重合してポリカーボネートを得る方法が参照される。本発明のこの方法は、既存のシステムが追加の出費なしに将来的な表示の要件の変化に対応することも可能にする。すなわち、厳格な要件であっても、依然としてバイオベースとしての適切な表示を有するポリマー、好ましくはポリカーボネートを容易に製造することが可能である。
【0049】
本発明の別の主題は、ビスフェノールを製造する方法であって、
以下の工程:
(a2)式(I)のヒドロキシ化合物を製造する本発明の方法を実施して、式(I)のヒドロキシ化合物を得る工程と、
(b2)工程(a2)からの式(I)のヒドロキシ化合物をケトン又はアルデヒドと反応させて、ビスフェノールを得る工程と、
を含む、方法である。
【0050】
本発明の追加的な主題は、ジアリールカーボネートを製造する方法であって、
以下の工程:
(a3)式(I)のヒドロキシ化合物を製造する本発明の方法を実施して、式(I)のヒドロキシ化合物を得る工程と、
(b3)工程(a3)からの式(I)のヒドロキシ化合物をハロゲン化カルボニル、一酸化炭素、又はジメチルカーボネートと反応させて、ジアリールカーボネートを得る工程と、
を含む、方法である。
【0051】
本発明の更なる主題は、ポリカーボネートを製造する方法であって、
以下の工程:
(a4)ビスフェノールを製造する本発明の方法を実施して、ビスフェノールを得る工程と、
(b4)工程(a4)からのビスフェノールをハロゲン化カルボニル、一酸化炭素、又はジメチルカーボネートと反応させて、ポリカーボネートを得る工程と、
を含む、方法である。
【0052】
本発明の更に別の主題は、ポリカーボネートを製造する方法であって、
以下の工程:
(a5)ジアリールカーボネートを製造する本発明の方法を実施して、ジアリールカーボネートを得る工程と、
(b5)工程(a5)からのジアリールカーボネートをビスフェノールと反応させて、ポリカーボネートを得る工程と、
を含む、方法である。
【0053】
本発明のまた更に別の主題は、ポリカーボネートを製造する方法であって、
以下の工程:
(a6)ビスフェノールを製造する本発明の方法を実施して、ビスフェノールを得る工程と、
(b6)ジアリールカーボネートを製造する本発明の方法を実施して、ジアリールカーボネートを得る工程と、
(c6)工程(a6)からのビスフェノールを工程(b6)からのジアリールカーボネートと反応させて、ポリカーボネートを得る工程と、
を含む、方法である。
【0054】
本発明は、全てのこれらの上記主題によって実現される。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0055】
略語:
bara:barでの絶対圧力
rpm:1分間当たりの回転数
1H NMR:プロトン共鳴分光法
M:mol/Lでのモル濃度
aq.:水溶液
【0056】
化学物質:
4-ヒドロキシ安息香酸(4-HBA):純度≧99%、Sigma-Aldrich Chemie GmbH社
DM水(H2O):配管供給からの脱塩水
水酸化ナトリウム(NaOH):無水、純度≧97%、Sigma-Aldrich Chemie GmbH社
脱塩水及び水酸化ナトリウムから調製されたNaOH水溶液
フェノール:純度≧96%、Sigma-Aldrich Chemie GmbH社
ヘキサジュウテロジメチルスルホキシド(DMSO-d6):純度≧96%、Euriso-Top GmbH社
【0057】
触媒:
CBV 600(CAS 1318-02-1)、Zeolyst International, Inc.社、表面積660m2/g、細孔サイズ2.43nm、Si/Al比2.5。この触媒は使用前に空気中で300℃にて3時間焼成した。
【0058】
フォージャサイト(製品参照:BCR704)、Sigma-Aldrich Chemie GmbH社、表面積567m2/g、細孔サイズ0.67nm、Si/Al比1.6。この触媒は受け取ったままの状態で使用した。
【0059】
一般的な実験手順(触媒を用いた実験):
10mL容の圧力反応器に0.5gの4-ヒドロキシ安息香酸、0.5mLの溶剤(表を参照)、及び0.02gのそれぞれの触媒(表を参照)を装入し、不活性ガスとしてのアルゴンでフラッシュし、反応器を閉じた。次いで、反応器をアルゴンで3baraまで加圧し、混合物を800rpmで10分間撹拌し、圧力を1.5baraまで解放した。反応器を230℃の反応温度にする前に、この操作をもう一度繰り返した。この温度で適切な反応時間(表を参照)の後に、圧力反応器を室温に冷却し、圧力を解放した。得られた反応混合物をエタノール中に取り、固形触媒を遠心分離(5分間、5000rpm、Hettich社のUniversal 320)により分離除去し、回転蒸発器で溶液からエタノールを除去した。次いで、こうして単離された反応生成物を1H-NMRによって調査した。
【0060】
一般的な実験手順(触媒を用いない実験):
この手順は、触媒を用いた実験における一般的な実験手順と類似していた。唯一の違いは、触媒を使用しなかったことである。
【0061】
反応生成物中の4-ヒドロキシ安息香酸及びフェノールを測定するための1H NMR:
約100mgの得られた反応生成物を0.5mLのDMSO-d6中に溶解し、1H-NMRスペクトルをBruker社のAvance 400において400MHzで記録した。得られたスペクトルを、以下に示される特定のシフト及び積分に基づいて評価した。
【0062】
【0063】
【0064】
表から分かるように、式(I)のヒドロキシ化合物(実施例ではフェノール)を使用することによって、他の点では同一の条件下で、溶剤としての水と比べて所望の生成物への転化を高めることが可能である。このことは、様々な不均一系触媒に当てはまる。
【国際調査報告】