(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(54)【発明の名称】半導体ベースのバイオセンサとその検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/00 20060101AFI20220202BHJP
G01N 27/04 20060101ALI20220202BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20220202BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20220202BHJP
G01N 33/62 20060101ALI20220202BHJP
C12Q 1/26 20060101ALN20220202BHJP
C12Q 1/34 20060101ALN20220202BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALN20220202BHJP
【FI】
G01N27/00 J
G01N27/04 Z
G01N33/53 D
G01N33/53 M
G01N33/68
G01N33/62
C12Q1/26
C12Q1/34
C12Q1/6876 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021532026
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(85)【翻訳文提出日】2021-07-29
(86)【国際出願番号】 US2019061410
(87)【国際公開番号】W WO2020117446
(87)【国際公開日】2020-06-11
(32)【優先日】2018-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517196096
【氏名又は名称】フェムトドクス
【氏名又は名称原語表記】FemtoDx
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】モハンティ,プリティラジ
【テーマコード(参考)】
2G045
2G060
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045AA40
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2G045DA31
2G045DA36
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2G060HB06
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2G060KA09
4B063QA01
4B063QR03
4B063QR10
4B063QR32
4B063QR35
4B063QS32
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4B063QX04
(57)【要約】
本明細書では、生物学的物質を検出するための半導体ベースのセンサ装置及び方法が説明される。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出器分子で機能化された半導体ベースのセンサと、
前記半導体ベースのセンサと統合されたヒーターと、
半導体ベースのセンサと統合された温度測定装置であって、前記ヒーターは、少なくとも部分的に、前記温度測定装置によって測定された温度に基づいて前記半導体ベースのセンサを加熱するように構成されている温度測定装置と、を備える装置。
【請求項2】
前記半導体ベースのセンサは、基板を備える請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ヒーターは、基板上の金属ワイヤを備える請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記温度測定装置は、マイクロ温度計である請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記半導体ベースのセンサは、電界効果トランジスタを備える請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記半導体ベースのセンサは、1つ以上のナノワイヤを備える請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記検出器分子は、分析物を結合可能である請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記検出器分子は、抗体、DNA断片、及び/またはRNA断片を含む請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記検出器分子は、酵素を含む請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記検出器分子は、グルコースオキシダーゼを含む請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記検出器分子は、ウレアーゼを含む請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記分析物は、生体分子を含む請求項7に記載の装置。
【請求項13】
前記分析物は、炭水化物を含む請求項7に記載の装置。
【請求項14】
前記分析物は、グルコースを含む請求項7に記載の装置。
【請求項15】
前記分析物は、尿素を含む請求項7に記載の装置。
【請求項16】
検出器分子で機能化された半導体ベースのセンサを備える装置の一部及び/または前記装置と接触している流体の温度を測定することと、
前記半導体ベースのセンサ及び/または前記流体を加熱することと、を含み、前記半導体ベースのセンサ及び/または前記流体に加えられる熱量は、少なくとも部分的に、前記測定するステップで測定された温度に基づく方法。
【請求項17】
前記温度を測定するステップは、前記半導体ベースのセンサと統合された温度測定装置の電気的特性を測定することを含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記温度測定装置の前記電気的特性は、抵抗、電圧、電流、及びコンダクタンスを備えるグループから選択される請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記半導体ベースのセンサ及び/または前記流体を前記加熱するステップは、前記半導体ベースのセンサと統合されたヒーターに電流または電圧を印加することを含む請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記温度を測定するステップ中に測定された前記温度が予め定められた目標温度以下である場合、前記加熱するステップ中に前記半導体ベースのセンサ及び/または流体に加えられる前記熱量はゼロである請求項16に記載の方法。
【請求項21】
分析物を含む流体に前記半導体ベースのセンサを露出するステップを含む請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記半導体ベースのセンサは、基板を備える請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記半導体ベースのセンサは基板を備え、前記ヒーターは前記基板上の金属ワイヤを備える請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記温度測定装置は、マイクロ温度計である請求項17に記載の方法。
【請求項25】
前記半導体ベースのセンサは、電界効果トランジスタを備える請求項16に記載の方法。
【請求項26】
前記半導体ベースのセンサは、1つ以上のナノワイヤを備える請求項16に記載の方法。
【請求項27】
前記検出器分子は、前記分析物を結合可能である請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記検出器分子は、抗体、DNA断片、及び/またはRNA断片を含む請求項16に記載の方法。
【請求項29】
前記検出器分子は、酵素を含む請求項16に記載の方法。
【請求項30】
前記検出器分子は、グルコースオキシダーゼを含む請求項16に記載の方法。
【請求項31】
前記検出器分子は、ウレアーゼを含む請求項16に記載の方法。
【請求項32】
前記分析物は、生体分子を含む請求項21に記載の方法。
【請求項33】
前記分析物は、炭水化物を含む請求項21に記載の方法。
【請求項34】
前記分析物は、グルコースを含む請求項21に記載の方法。
【請求項35】
前記検出器分子は、ウレアーゼを含む請求項21に記載の方法。
【請求項36】
前記加熱するステップでは、温度測定装置によって測定された前記温度が目標温度範囲内にあるように実行される請求項16に記載の方法。
【請求項37】
前記目標温度範囲は、0℃以上50℃以下である請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記目標温度範囲は、30℃以上50℃以下である請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記加熱するステップは、前記加熱するステップがない場合の結合に比べて、前記分析物の前記検出器分子への結合を高める請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、生物学的物質を検出するための半導体ベースのセンサ装置及び方法が説明される。
【背景技術】
【0002】
バイオセンサは、一般的に、結合分子(本明細書では「検出器分子」とも呼ばれる)と信号変換器とが統合された装置を備えており、特定の標的(例えば、分析物)の存在を認識する信号を提供することができる。バイオセンサは、様々な物理的原理に基づくことができるが、一般的には、結合分子の標的分析物への結合に依存している。結合分子と分析物との間の特異的な結合または反応は、信号を導入し、それが伝達されて測定することができる。バイオセンサは、様々な種類のヒトの細胞、ウイルス、病原体等の高分子認識に対応するように構成することができる。そのため、これらの装置には、人間の健康、食品の安全性、薬物反応、個別化医療への応用など、広範囲にわたる診断上の有用性がある。
【発明の概要】
【0003】
本明細書では、生物学的物質を検出するための半導体ベースのセンサ装置及び方法が説明される。
【0004】
一側面では、装置が提供される。前記装置は、検出器分子で機能化された半導体センサを備える。前記装置は、前記半導体センサと統合されたヒーターと、半導体センサと統合された温度測定装置とをさらに備える。前記ヒーターは、少なくとも部分的に、前記温度測定装置によって測定された温度に基づいて前記半導体センサを加熱するように構成されている。
【0005】
一側面では、方法が提供される。前記方法は、装置の一部及び/または前記装置と接触している流体の温度を測定することを含む。前記装置は、検出器分子で機能化された半導体センサを備える。前記方法は、前記半導体センサ及び/または前記流体を加熱することをさらに含む。前記半導体センサ及び/または前記流体に加えられる熱量は、少なくとも部分的に、前記測定するステップで測定された温度に基づく。
【0006】
いくつかの実施形態では、前記半導体センサは、(例えば、シリコンを含む)基板を備える。
【0007】
前記ヒーターは、前記基板上の金属ワイヤを備えていてもよい。
【0008】
いくつかの実施形態では、前記温度測定装置は、マイクロ温度計である。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記半導体センサは電界効果トランジスタを備える。前記半導体センサは、1つ以上のナノワイヤを備えていてもよい。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記検出器分子は、分析物を結合可能である。前記検出器分子は、例えば、抗体、DNA断片、及び/またはRNA断片を含んでいてもよい。前記検出器分子は、酵素を含んでいてもよい。前記検出器分子は、グルコースオキシダーゼを含んでいてもよい。前記分析物は、生体分子を含んでいてもよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記温度を測定する前記ステップは、前記半導体センサと統合された温度測定装置の電気的特性を測定することを含む。前記温度測定装置の前記電気的特性は、抵抗、電圧、電流、及びコンダクタンスを備えるグループから選択される。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記半導体センサ及び/または前記流体を前記加熱するステップは、前記半導体センサと統合されたヒーターに電流または電圧を印加することを含む。前記温度を測定するステップ中に測定された前記温度が予め定められた目標温度以下である場合、前記加熱するステップ中に前記半導体センサ及び/または流体に加えられる前記熱量はゼロである。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記方法は、分析物を含む流体に前記半導体センサを露出するステップをさらに含む。
【0014】
前記加熱するステップは、前記温度測定装置によって測定された前記温度が目標温度範囲内にあるように実行されてもよい。例えば、前記目標温度範囲は0℃以上50℃以下であり、場合によっては、前記目標温度範囲は30℃以上50℃以下である。前記加熱するステップは、前記加熱するステップがない場合の結合に比べて、前記分析物の前記検出器分子への結合を高めてもよい。
【0015】
他の面及び実施形態は、添付の図と併せて考慮すると、本発明の様々な非限定的な実施形態の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。本明細書と参照によって組み込まれた文書とが相反する開示及び/または矛盾する開示を含む場合、本明細書が優先される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の非限定的な実施形態は、添付の図を参照して例示的に説明されるが、これらの図は、概略的なものであり、縮尺通りに描くことを意図されていない。図では、図示されている同一または略同一の各コンポーネントは、通常、単一の数字で表される。明確にするために、全てのコンポーネントが全ての図にラベル付けされているわけではなく、当業者が本発明を理解するために図示が必要でない場合、本発明の各実施形態の全てのコンポーネントが示されているわけでもない。
【
図1A】
図1Aは、ある実施形態による、検出器分子への分析物の結合がない場合の例示的な半導体センサの概略図を示す。
【
図1B】
図1Bは、ある実施形態による、検出器分子への分析物の結合がある場合の例示的な半導体センサの概略図を示す。
【
図2】
図2は、ある実施形態による、統合されたヒーターと統合された温度測定装置とを有する半導体センサの概略図を示す。
【
図3】
図3は、ある実施形態による、非限定的な一実施形態による、統合されたヒーターと統合された温度センサとを有する半導体センサの概略図を示す。
【
図4】
図4は、非限定的な一実施形態による、統合されたヒーターと統合された温度センサとを有する半導体センサを備える装置の非限定的な設計を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書では、生物学的物質(例えば、分析物)を検出するための半導体ベースのセンサ装置及び方法が説明される。装置は、装置と接触している流体中の分析物を検出するために使用してもよい。分析物は、センサの表面で機能化された検出器分子に結合する可能性がある。このような結合は、分析物の存在を検出するために測定可能な信号をもたらすことができる。以下でさらに説明するように、ある実施形態は、流体及び/またはセンサ装置の温度を制御して、分析物の検出器分子への結合に影響を与えることを含む。例えば、センサをヒーター及び温度測定装置(例えば、温度計等の温度センサ)と統合させ、結合部位の温度を室温以上に制御することで、結合力を高め、その結果、検出性を向上させることができる。温度を有利に制御することは、デバイ長のより良い制御も可能にする。(例えば、温度が上昇するとデバイ長が長くなり、センサによって測定される信号が増加し、検出性が向上し得る。)センサは、食品の安全性、薬物反応、個別化医療、癌の検出、病気の検証、並びにその他の医学的及び生物学的用途に役立つ可能性のある特定の分子の存在を検出するために使用することができる。
【0018】
図1A-1Bは、ある実施形態による半導体ベースのセンサ10を示す。検出器分子12は、センサの表面14に機能化されている。後述するように、検出器分子は、検出したい分析物に結合する能力に応じて選択される。
図1Bは、センサに接触している流体16を示す。示されるように、流体は分析物18及び他の種20を含む。この実施形態では、分析物は検出器分子に結合する。分析物の結合は、半導体の物理的特性(例えば、電気的特性)の測定可能な変化を引き起こす。例えば、例示的な実施形態では、
図1A及び
図1Bに示すように、測定された抵抗変化ΔRは分析物の存在を示す。このようにして、センサは、流体サンプル中のある分析物の濃度を検出するために使用することができる。
【0019】
抵抗とは異なる物理的特性の変化を測定してもよいことを理解されたい。例えば、いくつかの実施形態では、コンダクタンス(またはΔG)の変化が測定されてもよく、また、いくつかの実施形態では、導電率の変化が測定されてもよい。いくつかの実施形態では、検出器分子の結合時の構造変化は、測定可能な変化を引き起こす。ある実施形態では、その変化は、分析物による電気的ゲーティングによるものである。いくつかの実施形態では、その変化は、表面プラズモン共鳴の変化によるものである。いくつかの実施形態では、特性(例えば、コンダクタンス、抵抗)の変化は、一般に、センサに電流を印加し、電圧の変化を測定することによって電気的に検出されてもよい。いくつかの実施形態では、特性(例えば、コンダクタンス、抵抗)の変化は、一般に、交流電界を印加することによって電気的に検出されてもよい。
【0020】
任意の適切な半導体ベースのセンサ装置を使用することができる。例えば、適切な装置は、共同所有の米国の文献に記載されている。2014年10月9日に出願された特許出願シリアル番号14/510,178と、国際公開番号WO2016/089453として公開された共同所有の国際出願番号PCT/US2015/041527とがあり、これらは全て、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0021】
センサは、半導体材料を含む。ナノセンサを作製することができる適切な半導体材料には、シリコン、ゲルマニウム、III-V族半導体等が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、センサはシリコンを含む。センサは、追加の半導体材料層や絶縁層(例えば、酸化シリコン等の酸化物)等、半導体材料の上または下に形成された1つ以上の層を含んでいてもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、半導体はナノワイヤ(複数可)にパターニングされる。センサは、いくつかの実施形態では、電界効果トランジスタセンサ(例えば、ナノセンサ)であってもよい。一般に、電界効果トランジスタ(FET)は、電界を使用して導電チャネルを制御し、その結果、チャネル内の電荷キャリアの伝導性を制御する。ゲートに電界を印加して導電チャネルのサイズ及び形状を変えることで、ソース・ドレイン間の電荷キャリアの流れを調整することができる。例示的なバイオセンサ構成では、FETは、ソース端子とドレイン端子との間にナノセンサ(例えば、ナノワイヤ)チャネルを備える。ナノセンサ(例えば、ナノワイヤ)の表面は、従来のFET(
図1)に印加される制御電界と同様の電界を生体分子の結合現象が作り出すことができるように、バイオ機能化されることができる。FETの原理を使用するある装置では、指定され物理的に分離されたセンサ面を精密な製造によって形成することができる。FETセンサを電子回路に接続して、センサ表面の特定のコンダクタンスをモニタすることができる。いくつかの実施形態では、動作上、多くの独立した電子回路が超並列方式で問い合わせられてもよい。FETバイオセンサは、このようなセンサ表面と相互作用する生体分子の測定に適合させることができる(
図1A及び1B)。
【0023】
いくつかの実施形態では、センサは、ナノスケールのシリコンベースのFET装置を備える。このような装置の多くは、多くの多重診断マイクロアレイに必要な感度、信頼性、堅牢性、及びセンサの柔軟性を示す。場合によっては、ナノスケールの装置を従来のトップダウンシリコン上で開発及び/または実装することができる。場合によっては、従来のトップダウンシリコン上にナノスケールの装置を開発及び実装することによって、診療現場及び中央検査室の両方で、トップダウンシリコン半導体製造プロセスの信頼性と堅牢性を向上させ、テストのエラー率を低減することができる。これにより、場合によっては、検査室または診療所への各患者の訪問の有効性が高まり、診断コストが削減され、早期の診断、治療、およびモニタリングが可能になる。
【0024】
ある特定の実施形態では、ナノセンサは、シリコンナノチャネル電界効果トランジスタ(FET)バイオセンサである。このようなセンサは、高感度及び/またはラベルフリーの分析物の検出に使用することができる。このようなセンサは、優れた電気的特性と小さな寸法を持つことができる。ある実施形態では、シリコンナノチャネルは、超高感度に理想的に適している。場合によっては、これらのシステムの高い表面積対体積比により、単一分子の検出が可能になる。場合によっては、このようなFETセンサ(例えば、バイオセンサ)は、診断における従来の光学的手法に典型的な感度を犠牲にすることなく、高速、低コスト、高収率の製造という利点を提供する。トップダウンの製造方法を使用して、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)技術の利点を活用し、豊富に多重化されたセンサアレイを実現できる。ナノチャネルベースのセンサシステムの例は、例えば、ユチェンらによる国際特許公開WO2008/063901A1、及びモハンティらによる国際特許公開WO2009/124111A1に記載されており、これらの各々は全ての目的のために参照により全体が組み込まれている。
【0025】
いくつかの実施形態では、半導体ベースのセンサは、バイアス及び測定回路の一部であることができる。いくつかの実施形態では、バイアス及び測定回路は、回路内のナノセンサ(例えば、ナノチャネル)の両端にバイアス電圧を印加することによって動作する。バイアス電圧は、センサの表面電位(例えば、ナノチャネルの表面電位)に対する検出素子の微分コンダクタンスの所望の依存性を達成するために、十分に負となるように選択することができる。ある実施形態では、この依存性は、ゼロバイアス状態の検出素子によって示される基準増幅率よりも実質的に大きい高増幅率の急峻な傾斜領域を有しており、これにより比較的高い信号対ノイズ比を実現している。バイアス及び測定回路は、いくつかの実施形態では、検出素子の微分コンダクタンスを測定し、測定された微分コンダクタンスを分析物の存在または活性を示す信号に変換する。ある実施形態では、測定された微分コンダクタンスは、以前のキャリブレーション操作を反映したルックアップテーブルまたは代替の変換メカニズムを使用することによって、分析物の存在または活性を示す信号に変換することができる。いくつかの実施形態では、印加されたゲート電圧を使用して、センサの感度を制御することができる。ある実施形態によれば、感度を制御するために、バイアスゲート電圧及び基準ゲート電圧を独立して使用することができる。
【0026】
上述のように、センサの少なくとも一部(例えば、表面)は、検出器分子で機能化されている。検出器分子は、例えば、抗体、酵素、タンパク質、ペプチド、小分子、核酸、アプタマー、受容体分子、ポリマー、及び/または超分子構造を含んでいてもよい。検出器分子は、粒子特異的であるように設計されてもよい。つまり、1つの特定の分析物のみが特定の検出器分子に結合する。いくつかの実施形態では、検出器分子は抗体である。ある実施形態では、検出器分子は、DNAまたはRNA断片であるか、DNAまたはRNA断片を含む。いくつかの実施形態では、検出器分子は、グルコースオキシダーゼであるか、グルコースオキシダーゼを含む。場合によっては、検出器分子はウレアーゼであるか、ウレアーゼを含む。
【0027】
分析物は、例えば、タンパク質、小分子、核酸、ペプチド、抗体、アプタマー、バイオマーカー、遺伝子、ウイルス粒子、超分子構造体、高分子、受容体分子、生体細胞、及び/または生体細胞クラスターを含んでいてもよい。場合によっては、分析物は生体分子を含む。いくつかの例では、分析物は、タンパク質バイオマーカーまたは遺伝子バイオマーカーであってもよい。ある実施形態では、分析物は、単糖類及び/または多糖類であるか、単糖類及び/または多糖類を含む。例えば、場合によっては、分析物は、グルコースであるか、グルコースを含む。小分子分析物の非限定的な例の1つは、尿素である。
【0028】
本明細書に記載の方法は、特定の検出器分子または分析物に限定されないことを理解されたい。
【0029】
いくつかの実施形態では、分析物及び検出器分子は、化学結合等の化学的相互作用を介して結合してもよい。化学結合は、共有結合でも非共有結合でもよい。場合によっては、化学結合は、水素結合、イオン結合、配位結合、及び/またはファンデルワールス相互作用等の非共有結合である。種及び/または物質(例えば、分析物、検出器分子)の1つ以上は、そのような結合を形成することができる官能基を含んでいてもよい。コンポーネント間の共有結合及び非共有結合は、当業者に知られているように、そのような反応を受けるために適切な官能基を用いて、任意のタイプの反応によって形成される可能性があることを理解されたい。本明細書に記載の様々な実施形態での使用に適した化学的相互作用は、本明細書の記載に基づいて、当業者が容易に選択することができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、分析物と検出器の種との間の関連性は、生物学的結合現象を介して(すなわち、相補的な生物学的分子のペアの間で)生じてもよい。例えば、分析物または検出器分子は、他の種または物質上のアビジンまたはストレプトアビジン等の相補的な実在物と特異的に結合するビオチン等の実在物を含んでいてもよい。生物学的分子のペアの間で生物学的結合を形成し得る生物学的分子の他の例には、タンパク質、核酸、糖タンパク質、炭水化物、ホルモン等が含まれるが、これらに限定されない。非限定的な例には、抗体/ペプチドのペア、抗体/抗原のペア、酵素/基質のペア、酵素/阻害剤のペア、酵素/補因子のペア、タンパク質/基質のペア、核酸/核酸のペア、タンパク質/核酸のペア、ペプチド/ペプチドのペア、タンパク質/タンパク質のペア、小分子/タンパク質のペア、受容体/ホルモンのペア、受容体/エフェクタのペア、リガンド/細胞受容体のペア、ビオチン/アビジンのペア、ビオチン/ストレプトアビジンのペア、薬剤/ターゲットのペア、小分子/ペプチドのペア、小分子/タンパク質のペア、及び小分子/酵素のペア等が含まれるが、これらに限定されない。本明細書に記載されている実施形態で使用する種及び/または物質(複数可)の間の生物学的相互作用は、これらの機能に関する本明細書の記述、そのような生物学的相互作用の例、及び適切な生物学的相互作用を特定するための簡単な技術に関する本明細書及び当技術分野での知識に基づいて、当業者によって容易に選択することができる。
【0031】
ある実施形態では、分析物と検出器の種は、物理的な相互作用を介して互いに関連付けられてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、分析物(例えば、超分子構造)は、検出器の種(例えば、高分子)の少なくとも一部と物理的に絡み合っていてもよい。
【0032】
ある実施形態では、分析物と検出器の種は、連結部分(例えば、分析物と検出器の種を近接させる他の生物学的または化学的種)を介して互いに関連付けられてもよい。例えば、互いに関連する分析物と検出器の種との間の最短距離は、デバイ長よりも長くてもよい。いくつかの例では、最短距離は、約100ナノメートル以下、約50ナノメートル以下、約25ナノメートル以下、約10ナノメートル以下、または約1ナノメートル以下であってもよい。
【0033】
上述したように、ある実施形態は、流体及び/またはセンサ装置の温度を制御して、分析物の検出器分子への結合に影響を与えることを含む。温度は、加熱するステップがない場合と比較して、分析物の検出器分子への結合を高める加熱するステップによって制御することができる。例えば、特定の理論に拘束されることなく、場合によっては、流体及び/またはセンサが比較的低温の場合、分析物は検出器分子に比較的不十分に結合する可能性がある(例えば、結合定数の温度依存性のため、または分析物及び/または検出器分子の温度依存性構造のため)。このような場合、加熱するステップは、流体及び/またはセンサの温度を上昇させ、それによって分析物の検出器分子への結合を高めることができる(例えば、温度依存性結合定数を増加させることによって、または結合をより助長する構造をもたらす分析物及び/または検出器分子の構造変化を引き起こすことによって)。
【0034】
図2は、ある実施形態による、統合されたヒーター22と統合された温度測定装置24とを有する半導体ベースのセンサ10の概略図を示す。また、センサは、上述のようにセンサの表面14で機能化された検出器分子12を含む。模式的に示すように、ヒーター及び温度測定装置は、ある実施形態に従って、結合部位の温度が選択された値及び/または選択された範囲内になるように制御され得るように、検出器分子に近接したセンサの表面に形成されている。
【0035】
図3は、センサの検知領域26が、流体サンプル30を含む領域28内にある別の実施形態を示す。領域28は、例えば、マイクロ流体チャンバーであってもよい。この実施形態では、ヒーター22は領域28の端部付近に配置され、温度測定装置はヒーターの反対側に配置されている。なお、ヒーター及び温度測定装置の他の配置が、適切な温度制御を行うために、使用されてもよいことは理解されたい。例えば、ヒーター及び/または温度測定装置の一方または両方は、領域28内に配置されてもよい。そのような実施形態では、センサ及び/または流体に印加される電圧とヒーター電流との干渉を防ぐように注意することが重要になる可能性がある。ある実施形態では、複数のヒーター及び/または温度測定装置を利用する。
【0036】
ヒーター22は、センサと統合できる任意の適切な加熱要素であってよい。いくつかの実施形態では、ヒーターは、ワイヤ(例えば、金属ワイヤ)等の細長い構造体を備える。例えば、曲がりくねった金属ワイヤが、異なる導電率の基板(例えば、絶縁性の基板)に堆積されてもよい。基板の温度上昇を引き起こすジュール熱が発生するように、ワイヤに電流を流してもよい。ワイヤを流れる電流を制御することによって、温度を制御してもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、ヒーターは、電圧を熱に変換する熱電材料を備える。熱電材料にかかる電圧を制御することで、温度を制御してもよい。
【0038】
また、他の適切なヒーターも使用できることを理解されたい。
【0039】
温度測定装置24は、センサと統合できる任意の適切なそのような装置であってもよい。場合によっては、温度測定装置は、マイクロ温度計である。いくつかの実施形態では、温度測定装置は、薄膜の金属または半導体等、抵抗率が温度に依存する材料である。そのような実施形態では、温度は、抵抗を測定することによって測定される。ある実施形態では、温度測定装置は、温度変化に応じて測定電圧を生成する熱電材料である。
【0040】
また、他の適切なヒーターも使用できることを理解されたい。
【0041】
一般的には、温度測定装置を使用してヒーターを制御するための任意の適切な方法を使用することができる。いくつかの実施形態では、温度測定装置からの出力信号を使用して、ヒーターへの入力信号を制御することができる。例えば、ヒーター(例えば、金属ワイヤ)に電流を流すことによってヒーターを作動させ、温度計(例えば、統合されたマイクロ温度計)を使用して温度を測定する方法がある。ヒーターを駆動する電流または電圧の出力は、温度が目標温度及び/または範囲に安定するまで、フィードバックループを使用して調整されてもよい。場合によっては、温度は、0℃以上50℃以下の目標温度範囲に制御される。場合によっては、目標温度範囲は、30℃以上50℃以下であることがある。場合によっては、温度は、+/-5℃以内、場合によっては+/-2℃以内の精度で制御される。
【0042】
以下は、本明細書に記載されたセンサのある特徴を示す非限定的な例である。
【実施例】
【0043】
この例は、
図4に示すように、統合されたヒーター及び温度測定装置を含むセンサの形成を説明する。
【0044】
このセンサは、典型的には約200nmの厚さの二酸化シリコン層の上に、典型的には約100nmの厚さの薄いシリコン層を重ねて作られている。
【0045】
次に、ナノワイヤと電極取り付けパッドとが、電子ビームリソグラフィと反応性イオンエッチングとによって作成される。これにより、センサ領域を除く全ての場所でシリコンが除去される。いくつかの実施形態では、これは2つのステップに分割され、ナノワイヤとパッドとは別々に定義される。いくつかの実施形態では、ナノワイヤは電子ビームリソグラフィで定義され、パッドはフォトリソグラフィで定義される。いくつかの実施形態では、パッドとナノワイヤは全てフォトリソグラフィで定義される。
【0046】
その後、4点測定形状の金属電極のパターンがフォトリソグラフィで作成され、金属電極が堆積される。電極は、Au、Cu、Ag、Al等の金属であり、合金または金属多層であってもよい。場合によっては、Ti、Ta、または他の金属の接着層が使用される。電極は、センサの近くでは約10~20ミクロンの幅で、遠くなるほど幅広になる。典型的には、金属の厚さは100nmの範囲である。
【0047】
次に、電極は、典型的には約100nmの厚い絶縁バリア、典型的にはAl2O3、SiO2、またはHfO2等の酸化物でコーティングされる。
【0048】
その後、ナノワイヤと電極は、同様の酸化物からなる上部の薄い絶縁バリア(典型的には10nm)でコーティングされる。
【0049】
最後に、
図4に示すような金属パッドが、外部の測定・制御機器への接続を可能にするために堆積される。パッドは、典型的には、1~2ミクロンの厚さのAu、Ag、Cu等の高導電性貴金属である。いくつかの実施形態では、金属製のヒーター/温度計システムを利用して、ヒーター及び温度計は、図に示される接続で、パッドと同時に堆積される。他の実施形態では、ヒーター及び温度計は、後のステップで配置される。
【0050】
最終的な回路に統合する準備ができた、完成したセンサの概略図が、
図4に示される。この写真は、いくつかの実施形態では参照電極及び他の制御機構に接続する追加のパッドを含む。分析対象の液体は、センサを中心とした楕円形の領域に配置される。
【国際調査報告】