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特表2022-513793僧帽弁腱索修復のための方法及び装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(54)【発明の名称】僧帽弁腱索修復のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/95 20130101AFI20220202BHJP
   A61F 2/24 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
A61F2/95
A61F2/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021533507
(86)(22)【出願日】2019-12-11
(85)【翻訳文提出日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 US2019065814
(87)【国際公開番号】W WO2020123719
(87)【国際公開日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】62/778,624
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/778,662
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/297,422
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/875,265
(32)【優先日】2019-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/897,207
(32)【優先日】2019-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/897,809
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/905,267
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PCT/US2019/021480
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519236022
【氏名又は名称】パイプライン メディカル テクノロジーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビショップ ゴードン ビー.
(72)【発明者】
【氏名】グリズウォルド エリック
(72)【発明者】
【氏名】マクダニエル スティーヴン アール.
(72)【発明者】
【氏名】ファム トゥルン エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】パーセル キャメロン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ラム ヒエン エヌ.
【テーマコード(参考)】
4C097
4C267
【Fターム(参考)】
4C097AA27
4C097BB04
4C097CC01
4C097CC04
4C097DD09
4C097DD10
4C097DD12
4C097EE02
4C097EE08
4C097EE11
4C097EE13
4C097EE19
4C097SB06
4C097SB07
4C267AA09
4C267AA43
4C267AA56
4C267BB16
4C267BB22
4C267CC19
(57)【要約】
経血管的人工腱索移植のための方法及び装置に関する。カテーテルは左心房に向けて前進する。心房側から、カテーテルを僧帽弁弁尖の上面に固定することができ、弁尖アンカを僧帽弁弁尖内に前進させて、僧帽弁弁尖を弁尖縫合部に固定することができる。心室アンカは、心室壁部を心室縫合部に固定するために心室壁部に固定されている。弁尖縫合部及び心室縫合部は、張力をかけられ、縫合部ロックによって接続されて、人工腱索を形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋込型装置を給送するための血管内展開カテーテルであって、
近位端部、遠位端部及び中央内部通路を有する細長くかつ柔軟な管状本体と、
前記管状本体の前記遠位端部に設けられたシースであって、前記埋込型装置を取り外し可能に受容するためのキャビティを画定する側壁を有するシースと、
前記側壁に設けられ、前記埋込型装置における相補的な第2の係合エレメントと係合するように、前記キャビティに露出した少なくとも1つの半径方向に延在する第1の係合エレメントと、
を備える、ことを特徴とする血管内展開カテーテル。
【請求項2】
前記シースは、前記埋込型装置を収容するための半径方向に拡張された形態と、前記埋込型装置の展開後の半径方向に縮小された形態との間で変形可能である、ことを特徴とする請求項1に記載の血管内展開カテーテル。
【請求項3】
前記第1の係合エレメントはらせん状のスレッドを含む、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の血管内展開カテーテル。
【請求項4】
前記シース内に埋込型装置をさらに含む、ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の血管内展開カテーテル。
【請求項5】
前記埋込型装置は、前記シースに対する前記埋込型装置の回転に応じて軸方向に前進する、ことを特徴とする請求項4に記載の血管内展開カテーテル。
【請求項6】
前記埋込型装置は組織アンカを含む、ことを特徴とする請求項5に記載の血管内展開カテーテル。
【請求項7】
前記組織アンカは、前記第1の係合エレメントと回転可能に係合するらせん状係合アンカ及びハブを有する、ことを特徴とする請求項6に記載の血管内展開カテーテル。
【請求項8】
近位端部、遠位端部及び中央内部通路を有する細長くかつ柔軟な管状本体と、
前記管状本体の前記遠位端部におけるシースであって、キャビティを画定する側壁を有するシースと、
前記キャビティ内に取り外し可能に配置された心室組織アンカであって、ハブ及びらせん状組織アンカを有する心室組織アンカと、
前記側壁に設けられ、前記らせん状組織アンカを係合させるために前記キャビティに露出した少なくとも1つの半径方向に延在する第1の係合エレメントと、
を備え、
前記管状本体に対する前記らせん状組織アンカの回転は、前記らせん状組織アンカを前記キャビティから遠位方向に前進させる、ことを特徴とする心室組織アンカデリバリシステム。
【請求項9】
前記管状本体の長さ全体に延びるアンカドライバをさらに備える、ことを特徴とする請求項8に記載の心室組織アンカデリバリシステム。
【請求項10】
前記第1の係合エレメントは、前記シースの内側面に形成されたらせん状のチャネルを備える、ことを特徴とする請求項8又は9に記載の心室組織アンカデリバリシステム。
【請求項11】
前記シースは、前記らせん状組織アンカを収容するための半径方向に拡張された形態と、前記らせん状組織アンカの展開後の半径方向に縮小された形態との間で変形可能である、ことを特徴とする請求項8~10のいずれかに記載の心室組織アンカデリバリシステム。
【請求項12】
前記シースは、デリバリカテーテルへの近位方向の後退に応じて前記半径方向に拡張された形態から前記半径方向に縮小された形態へと変形可能である、ことを特徴とする請求項11に記載の心室組織アンカデリバリシステム。
【請求項13】
展開カテーテルからデリバリカテーテルを通してインプラントを展開する方法であって、
前記インプラントの外径は、前記デリバリカテーテルの外径より大きく、
前記方法は、
前記展開カテーテルの遠位端部における折り畳み可能なシースから前記インプラントを展開するステップと、
前記展開カテーテルを前記デリバリカテーテルへと近位方向に後退させるステップと、
前記展開カテーテルの前記デリバリカテーテルへの近位方向に後退に応答して、前記シースを折り畳むステップと、
を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項14】
前記インプラントは組織アンカを含む、ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記インプラントを展開するステップは、前記シースに対して前記組織アンカを回転させることを含む、ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
縫合部を切断するための血管内縫合部カッターであって、
内部を通る縫合部経路を画定するカッターハウジングと、
前記カッターハウジング内に回転可能に配置され、刃先を有するカッターヘッドと、
を備え、
前記カッターハウジング内における前記カッターヘッドの回転により、前記刃先が、前記縫合部経路を横断して、前記縫合部経路に沿って延びる前記縫合部を切断する、ことを特徴とする血管内縫合部カッター。
【請求項17】
前記縫合部経路は、前記カッターハウジングの遠位端部における開口部と、前記カッターハウジングの側に形成された窓部との間に設けられている、ことを特徴とする請求項16に記載の血管内縫合部カッター。
【請求項18】
前記カッターハウジングは、円筒形の内側面を形成するバレルを画定する、ことを特徴とする請求項16又は17に記載の血管内縫合部カッター。
【請求項19】
前記カッターハウジングに結合された外側シースをさらに備え、
前記外側シースは、長手方向軸に沿って延び、
内側シャフトは、前記外側シースを通って延び、かつ前記カッターヘッドに結合され、
前記外側シースに対する前記内側シャフトの回転により、前記カッターハウジング内で前記刃先が回転する、ことを特徴とする請求項16~18のいずれかに記載の血管内縫合部カッター。
【請求項20】
前記内側シャフトに対する前記外側シースの軸方向の移動を防止するロックをさらに備える、ことを特徴とする請求項19に記載の血管内縫合部カッター。
【請求項21】
前記外側シースの近位端部に結合されたハンドルと、
前記内側シャフトの近位端部に結合されたカッターハンドルと、
をさらに備える、ことを特徴とする請求項20に記載の血管内縫合部カッター。
【請求項22】
前記ロックは前記ハンドル内に配置されている、ことを特徴とする請求項21に記載の血管内縫合部カッター。
【請求項23】
前記刃先はらせん経路において延在している、ことを特徴とする請求項16~22のいずれかに記載の血管内縫合部カッター。
【請求項24】
ロック位置において、前記刃先は前記カッターハウジングに覆われる、ことを特徴とする請求項16~23のいずれかに記載の血管内縫合部カッター。
【請求項25】
前記カッターヘッドと前記カッターハウジングとの間の回転を防止するように、前記カッターハウジングにロックが設けられている、ことを特徴とする請求項16~19,23又は24のいずれかに記載の血管内縫合部カッター。
【請求項26】
前記ロックは、リセスを前記カッターハウジングと係合させる突起を前記カッティングヘッドに有する、ことを特徴とする請求項20,21,22又は25のいずれかに記載の血管内縫合部カッター。
【請求項27】
前記カッターハウジングに設けられた前記ロックは、前記カッターヘッドを前記カッターハウジング内で軸方向に移動させることにより解除される、ことを特徴とする請求項26記載の血管内縫合部カッター。
【請求項28】
縫合部を切断する方法であって、
カッターハウジングを通って延びる縫合部経路を通して縫合部を前進させるステップと、
前記縫合部経路に沿って延びる前記縫合部を切断するために、カッターヘッドにおける刃先を前記縫合部経路と交差させるように、前記カッターハウジング内で前記カッターヘッドを回転させるステップと、
を含む、方法。
【請求項29】
前記カッターハウジングを通って延びる縫合部経路を通して縫合部を前進させるステップの間に、前記刃先は前記カッターハウジングに覆われる、ことを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記カッターハウジングに対するカッターヘッドの回転を許容するため、前記カッターハウジング内におけるロックから前記カッターヘッドを解除するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
前記カッターハウジング内におけるロックから前記カッターヘッドを解除するステップは、前記カッターハウジングに対して前記カッターヘッドを軸方向に移動させることを含む、ことを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項32】
第1の端部、第2の端部及び当該第1の端部と当該第2の端部に配設された複数の開口部を有する綿撒糸と、
遠位端部及び尾端部を有する縫合部と、
放射線不透過性マーカと、
を備える弁尖アンカであって、
前記縫合部の前記遠位端部は、前記綿撒糸の前記第2の端部に結合されて、前記第2の端部から延び、
前記縫合部の前記尾端部は、前記縫合部が綿撒糸開口部を通って延びるように、前記複数の開口部を通って延びており、前記綿撒糸が前記弁尖に対して圧縮され、前記縫合部が前記弁尖を通して後退するときに、前記弁尖アンカは、弁尖を通って前進するための第1の縮小断面から、前記弁尖の心房側と接触するための第2の拡張断面へと拡張可能である、ことを特徴とする弁尖アンカ。
【請求項33】
前記綿撒糸は2つのシート材料を含む、ことを特徴とする請求項32に記載の弁尖アンカ。
【請求項34】
前記縫合部の一部分は前記2つのシート材料の間に配置される、ことを特徴とする請求項33に記載の弁尖アンカ。
【請求項35】
前記2つのシート材料の間に配置される前記縫合部の前記一部分は平坦である、ことを特徴とする請求項34に記載の弁尖アンカ。
【請求項36】
前記開口部は、前記2つのシート材料の間に配置される前記縫合部の前記一部分を通って延在している、ことを特徴とする請求項34又は35に記載の弁尖アンカ。
【請求項37】
前記放射線不透過性マーカは、前記綿撒糸の前記第2の端部に隣接した前記縫合部に配置される、ことを特徴とする請求項32~36のいずれかに記載の弁尖アンカ。
【請求項38】
前記放射線不透過性マーカは、前記縫合部の周囲に配置された放射線不透過性バンドを有する、ことを特徴とする請求項32~37のいずれかに記載の弁尖アンカ。
【請求項39】
前記放射線不透過性マーカは、前記綿撒糸の前記第2の端部から延びる前記縫合部の一部に配置される、ことを特徴とする請求項32~38のいずれかに記載の弁尖アンカ。
【請求項40】
カテーテルと、
前記カテーテル内に配置され、心臓の僧帽弁の弁尖を穿刺するため前記カテーテルから前進するように構成された中空針であって、当該針内に配置された弁尖アンカを有する中空針と、
前記カテーテルを通って近位方向に延びる前記弁尖アンカに結合された弁尖縫合部と、
を備え、
前記中空針は、前記弁尖を穿刺するための鋭端部と、前記鋭端部に近位の柔軟部と、を有する、ことを特徴とする弁尖アンカ展開アセンブリ。
【請求項41】
前記弁尖アンカは、前記中空針から退出したあと半径方向に拡張可能である、ことを特徴とする請求項40に記載の弁尖アンカ展開アセンブリ。
【請求項42】
前記中空針の外側面は溝又は突起を含む、ことを特徴とする請求項40又は41に記載の弁尖アンカ展開アセンブリ。
【請求項43】
前記中空針の外側面は、前記中空針の前記外側面にらせん状の溝を有するか、又は、前記中空針は、前記中空針の前記外側面の周囲にらせん状のスレッドを有する、ことを特徴とする請求項40又は41に記載の弁尖アンカ展開アセンブリ。
【請求項44】
前記中空針の外側面は、前記中空針の前記外側面の周囲にらせん状コイルを有する、ことを特徴とする請求項40又は41に記載の弁尖アンカ展開アセンブリ。
【請求項45】
前記中空針の前記柔軟部は前記中空針のカット部を含む、ことを特徴とする請求項40~44のいずれかに記載の弁尖アンカ展開アセンブリ。
【請求項46】
弁尖アンカを展開するためのシステムであって、
カテーテルと、
前記カテーテル内に配置され、心臓の僧帽弁の弁尖を穿刺するように前記カテーテルから前進するように構成された針と、
弁尖アンカと、
前記カテーテルを通って近位方向に延びる前記弁尖アンカに結合された弁尖縫合部と、
前記針で前記弁尖を穿刺するのに十分な力で前記針を前進させるための蓄積エネルギー装置と、
を備えるシステム。
【請求項47】
前記蓄積エネルギー装置は、ばね、加圧液体又は加圧ガスである、ことを特徴とする請求項46に記載のシステム。
【請求項48】
前記システムは、蓄積エネルギーを解放して、前記弁尖を穿刺するために前記針を展開させるように構成されたトリガを有する、ことを特徴とする請求項46又は47に記載のシステム。
【請求項49】
前記弁尖アンカが前記針から前進するように前記針は中空である、ことを特徴とする請求項46~48のいずれかに記載のシステム。
【請求項50】
前記針は中空であり、前記弁尖アンカは前記針内に配置される、ことを特徴とする請求項46~49のいずれかに記載のシステム。
【請求項51】
経血管的心臓修復のための安定化システムであって、
ベースと、
軸方向に移動可能に前記ベースに支持された遠位ドッキングプラットフォームと、
軸方向に移動可能に前記ベースに支持された近位ドッキングプラットフォームと、
軸方向に移動可能に前記ベースに支持された中間ドッキングプラットフォームと、
を備える、ことを特徴とする安定化システム。
【請求項52】
前記ベースは、底部プレートと、上部プレートと、前記底部プレートに対する前記上部プレートの位置を軸方向に調節するための調節機構と、を有する、ことを特徴とする請求項51に記載の安定化システム。
【請求項53】
前記近位ドッキングプラットフォーム及び前記遠位プラットフォームは前記上方プレートに支持されている、ことを特徴とする請求項52に記載の安定化システム。
【請求項54】
前記近位ドッキングプラットフォーム及び前記遠位プラットフォームは前記上方プレートに固定されて支持されている、ことを特徴とする請求項53に記載の安定化システム。
【請求項55】
前記中間ドッキングプラットフォームは軸方向に移動可能に前記上方プレートに支持されている、ことを特徴とする請求項54に記載の安定化システム。
【請求項56】
前記近位ドッキングプラットフォームは縫合部管理システムを含む、ことを特徴とする請求項51に記載の安定化システム。
【請求項57】
前記縫合部管理システムはアンカ張力要素を含む、ことを特徴とする請求項56に記載の安定化システム。
【請求項58】
前記アンカ張力要素は回転スプールを含む、ことを特徴とする請求項57に記載の安定化システム。
【請求項59】
前記回転スプールに巻き付けられた縫合部に適用される張力の量を制限するためのクラッチをさらに備える、ことを特徴とする請求項58に記載の安定化システム。
【請求項60】
前記クラッチは、前記縫合部に適用される張力の量を約0.2N~約5Nの張力の範囲内に制限する、ことを特徴とする請求項59に記載の安定化システム。
【請求項61】
前記近位ドッキングプラットフォームは、血管内装置の近位ハンドルを受けるための凹状の安定化面をさらに有する、ことを特徴とする請求項51に記載の安定化システム。
【請求項62】
前記遠位ドッキングプラットフォームは、カテーテルに取り付けるように構成された第1の安定化装置をさらに備える、ことを特徴とする請求項51に記載の安定化システム。
【請求項63】
前記第1の安定化装置は、アクセスシースを固定するためのクランプを備える、ことを特徴とする請求項62に記載の安定化システム。
【請求項64】
経血管的心臓修復のための縫合部管理システムであって、
アンカ張力要素を備え、
前記アンカ張力要素は、スプールに巻き付けられた縫合部に適用される張力の量を制限するためのクラッチを有する張力要素を含む、ことを特徴とする縫合部管理システム。
【請求項65】
前記クラッチは、前記縫合部に適用される張力の量を約0.2N~約5Nの張力の範囲内に制限する、ことを特徴とする請求項64に記載の縫合部管理システム。
【請求項66】
前記縫合部に張力を付与するために縫合部に取り付けられたおもりをさらに備える、ことを特徴とする請求項64に記載の縫合部管理システム。
【請求項67】
プラットフォームのエッジに形成された一つ又は複数の溝をさらに備え、当該一つ又は複数の溝を通して、前記おもりに取り付けられた前記縫合部が引っ掛けられる、ことを特徴とする請求項66に記載の縫合部管理システム。
【請求項68】
経血管心臓修復システムであって、
ベースと、
前記ベースに支持された遠位ドッキングプラットフォームと、
前記遠位ドッキングプラットフォームに接続されたアクセスシースと、
前記ベースに支持された近位ドッキングプラットフォームと、
前記近位ドッキングステーションに支持された回転スプールと、
前記アクセスシースを通って、前記アクセスシースから前記回転スプールに延びる第1の縫合部と、
を備える経血管心臓修復システム。
【請求項69】
前記第1の縫合部の遠位端部に取り付けられた組織アンカをさらに備える、ことを特徴とする請求項68に記載の経血管心臓修復システム。
【請求項70】
前記回転スプールは、前記近位ドッキングプラットフォームにより回転可能に支持され、前記第1の縫合部は前記回転スプールに巻きつけられる、ことを特徴とする請求項68に記載の経血管心臓修復システム。
【請求項71】
前記回転スプールに巻き付けられた前記第1の縫合部に適用される張力の量を制限するためのクラッチをさらに備える、ことを特徴とする請求項68に記載の経血管心臓修復システム。
【請求項72】
前記クラッチは、前記第1の縫合部に適用される張力の量を約8N未満に制限する、ことを特徴とする請求項71に記載の経血管心臓修復システム。
【請求項73】
前記クラッチは、前記第1の縫合部に適用される張力の量を約4N未満に制限する、ことを特徴とする請求項71に記載の経血管心臓修復システム。
【請求項74】
前記クラッチは、前記第1の縫合部に適用される張力の量を約0.5N~約3Nに制限する、ことを特徴とする請求項71に記載の経血管心臓修復システム。
【請求項75】
軸方向にスライド可能に前記第1の縫合部により支持された縫合部ロックをさらに備える、ことを特徴とする請求項68に記載の経血管心臓修復システム。
【請求項76】
前記縫合部ロックは前記第1の縫合部に固定される、ことを特徴とする請求項75に記載の経血管心臓修復システム。
【請求項77】
前記縫合部ロックは、前記組織アンカに隣接した位置で前記第1の縫合部に固定される、ことを特徴とする請求項76に記載の経血管心臓修復システム。
【請求項78】
前記縫合部ロックを通してスライド可能に延在する弁尖縫合部をさらに備える、ことを特徴とする請求項75に記載の経血管心臓修復システム。
【請求項79】
前記縫合部ロックはさらに前記弁尖縫合部に固定されている、ことを特徴とする請求項78に記載の経血管心臓修復システム。
【請求項80】
動的弁尖管理システムであって、
ベースと、
前記ベースに支持された遠位ドッキングプラットフォームと、
前記遠位ドッキングプラットフォームに接続されたアクセスシースと、
前記ベースに支持された近位ドッキングプラットフォームと、
前記近位ドッキングプラットフォームにおける第1の縫合部ガイドと、
前記アクセスシースから近位方向へと前記第1の縫合部ガイドを横切って延びる第1の弁尖縫合部と、
前記第1の縫合部ガイドの近位で前記第1の弁尖縫合部に接続されたおもりと、
を備える動的弁尖管理システム。
【請求項81】
前記第1の弁尖縫合部の遠位端部に取り付けられた弁尖アンカをさらに備える、ことを特徴とする請求項80に記載の動的弁尖管理システム。
【請求項82】
前記第1の縫合部は、前記第1のガイドを横切って軸方向に延びる、ことを特徴とする請求項81に記載の動的弁尖管理システム。
【請求項83】
前記アクセスシースから近位方向へと第2の縫合部ガイドを横切って延びる第2の弁尖縫合部をさらに備える、ことを特徴とする請求項81に記載の動的弁尖管理システム。
【請求項84】
組織アンカ針の展開を心周期と同期させる方法であって、
前記心周期の生理学的パラメータをモニタするステップと、
左心室の圧力ピークのタイミングに相関する時間信号を生成するステップと、
前記時間信号に応答してアクチュエータへの制御信号の送信を開始するステップと、
前記アクチュエータの作動に応じて、前記圧力ピーク時に針を展開するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項85】
前記生理学的パラメータは脈拍を含む、ことを特徴とする請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記生理学的パラメータは末梢脈拍を含む、ことを特徴とする請求項84に記載の方法。
【請求項87】
前記生理学的パラメータはECG信号を含む、ことを特徴とする請求項84に記載の方法。
【請求項88】
前記生理学的パラメータはQRS波を含む、ことを特徴とする請求項84に記載の方法。
【請求項89】
前記生理学的パラメータは血圧を含む、ことを特徴とする請求項84に記載の方法。
【請求項90】
前記生理学的パラメータは経皮的に得られる、ことを特徴とする請求項84に記載の方法。
【請求項91】
前記生理学的パラメータは血管内センサにより得られる、ことを特徴とする請求項84に記載の方法。
【請求項92】
前記センサは血圧センサを含む、ことを特徴とする請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記アクチュエータはアンカドライバを有する、ことを特徴とする請求項84に記載の方法。
【請求項94】
前記アクチュエータは、前記アクチュエータの作動まで、前記針の展開を防止するロックを有する、ことを特徴とする請求項84に記載の方法。
【請求項95】
心臓同期式弁尖アンカ展開システムであって、
デリバリカテーテルと、
前記デリバリカテーテルにより軸方向に往復するように支持された針と、
前記カテーテル内の第1の位置から、前記カテーテルを超えて延在する第2の位置へと前記針を前進させるように構成された針ドライバと、
アクチュエータと、
心周期データの供給源との電気接続用のコネクタと、
制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、前記心周期の所定の点の検出に応答して前記アクチュエータを作動させるように構成されている、ことを特徴とするシステム。
【請求項96】
前記アクチュエータは、前記針を遠位方向に前進させるように前記針ドライバを作動させる、ことを特徴とする請求項95に記載のシステム。
【請求項97】
臨床医が前記針を遠位方向に前進させるのを防ぐロックアウトをさらに備え、
前記アクチュエータは、前記臨床医が前記針を遠位方向に前進させることができるように、前記ロックアウトを無効にする、ことを特徴とする請求項95に記載のシステム。
【請求項98】
前記針ドライバはばね仕掛けである、ことを特徴とする請求項95に記載のシステム。
【請求項99】
電磁駆動ドライバを有する、ことを特徴とする請求項95に記載のシステム。
【請求項100】
油圧駆動ドライバを有する、ことを特徴とする請求項95に記載のシステム。
【請求項101】
空気圧駆動ドライバを有する、ことを特徴とする請求項95に記載のシステム。
【請求項102】
前記臨床医が手動で前記針ドライバを作動できるようにする手動制御部をさらに備える、ことを特徴とする請求項95に記載のシステム。
【請求項103】
前記針に設けられた少なくとも1つの保持エレメントをさらに備える、ことを特徴とする請求項95に記載のシステム。
【請求項104】
前記保持エレメントは、前記弁尖からの前記針の近位方向への後退に抵抗するために半径方向外側に延在する組織係合面を有する、ことを特徴とする請求項103に記載のシステム。
【請求項105】
前記保持エレメントは、前記針を囲むらせん状のスレッドを含む、ことを特徴とする請求項104に記載のシステム。
【請求項106】
前記らせん状のスレッドは、前記針の周囲にらせん状に巻かれたワイヤを含む、ことを特徴とする請求項105に記載のシステム。
【請求項107】
デリバリカテーテルと、
前記デリバリカテーテルにより軸方向に往復するように支持された針と、
前記針により支持された組織保持構造と、
前記針内に設けられた組織アンカと、
を備える、弁尖アンカ展開システム。
【請求項108】
前記組織保持構造は、半径方向外側に延在するフランジを有する、ことを特徴とする請求項107に記載の弁尖アンカ展開システム。
【請求項109】
前記組織保持構造はらせん状フランジを有する、ことを特徴とする請求項108に記載の弁尖アンカ展開システム。
【請求項110】
前記フランジは、前記針の周囲にらせん状に巻かれたワイヤを有する、ことを特徴とする請求項109に記載の弁尖アンカ展開システム。
【請求項111】
撓み区域をさらに有する、ことを特徴とする請求項107に記載の弁尖アンカ展開システム。
【請求項112】
前記撓み区域は前記針のスロットを有する側壁を含む、ことを特徴とする請求項111に記載の弁尖アンカ展開システム。
【請求項113】
前記針内に送られる綿撒糸をさらに備える、ことを特徴とする請求項107に記載の弁尖アンカ展開システム。
【請求項114】
撓み区域に送られる綿撒糸をさらに備える、ことを特徴とする請求項113に記載の弁尖アンカ展開システム。
【請求項115】
前記撓み区域の近位端部は前記針の遠位端部から約6cm以内である、ことを特徴とする請求項111に記載の弁尖アンカ展開システム。
【請求項116】
ハブと、
前記ハブから近位方向に延びる縫合部と、
前記ハブから遠位方向へ延びるらせん状アンカと、
組織と係合しかつ前記らせん状アンカが外れるのを防止するように、第1の形態から、展開された第2の形態に遠位方向へと軸方向に移動可能な第2のアンカと、
を備える、組織アンカ。
【請求項117】
前記第2のアンカは、近位端部と尖った遠位端部との間に延在する枝部を有する、ことを特徴とする請求項116に記載の組織アンカ。
【請求項118】
前記枝部は支持部に支持される、ことを特徴とする請求項117に記載の組織アンカ。
【請求項119】
前記支持部は環状構造を有する、ことを特徴とする請求項118に記載の組織アンカ。
【請求項120】
前記支持部は、前記らせん状アンカに対して前記支持部を遠位方向に前進させるための展開システムの管状構造を受ける、ことを特徴とする請求項118又は119に記載の組織アンカ。
【請求項121】
前記ハブは、第1の枝部を受ける軸方向に移動可能な枝部ガイドを有する、ことを特徴とする請求項116に記載の組織アンカ。
【請求項122】
前記枝部ガイドは、遠位方向に向けて半径方向外側に傾斜した発射角度に前記枝部を偏向させるための偏向面を有する、ことを特徴とする請求項121に記載の組織アンカ。
【請求項123】
前記発射角度は、約30°~45°の範囲である、ことを特徴とする請求項122に記載の組織アンカ。
【請求項124】
前記ハブは、前記第2のアンカを受ける軸方向に移動可能な開口部を有する、ことを特徴とする請求項116に記載の組織アンカ。
【請求項125】
前記ハブに取り付けられ、前記らせん状アンカを通って同心円状に延びるコアワイヤをさらに備える、ことを特徴とする請求項116~124のいずれかに記載の組織アンカ。
【請求項126】
前記ハブから近位方向に延びる縫合部アンカガイドをさらに備える、ことを特徴とする請求項116~125のいずれかに記載の組織アンカ。
【請求項127】
前記展開された第2の形態において、前記第2のアンカは前記縫合部アンカガイドを通って延びる、ことを特徴とする請求項126に記載の組織アンカ。
【請求項128】
前記第2のアンカは、前記縫合部アンカガイドにおける開口部を通って延びる、ことを特徴とする請求項127に記載の組織アンカ。
【請求項129】
前記第2のアンカが前記展開された第2の形態に移動すると、前記第2のアンカは前記縫合部アンカガイドを貫通する、ことを特徴とする請求項128に記載の組織アンカ。
【請求項130】
前記第2のアンカにより支持される放射線不透過性マーカをさらに備える、ことを特徴とする請求項116に記載の組織アンカ。
【請求項131】
前記ハブに取り付けられ、かつ前記らせん状アンカを通って同心円状に延びるコアワイヤをさらに備える、ことを特徴とする請求項116~130のいずれかに記載の組織アンカ。
【請求項132】
前記コアワイヤにより軸方向に移動可能に支持された放射線不透過性マーカをさらに備える、ことを特徴とする請求項131に記載の組織アンカ。
【請求項133】
前記コアワイヤに支持されたばねをさらに備える、ことを特徴とする請求項131に記載の組織アンカ。
【請求項134】
前記コアワイヤは前記らせん状アンカを超えて遠位方向に延びる、ことを特徴とする請求項131に記載の組織アンカ。
【請求項135】
放射線不透過性マーカの遠位方向への移動を制限するように前記コアワイヤに設けられた遠位ストッパをさらに備える、ことを特徴とする請求項134に記載の組織アンカ。
【請求項136】
前記らせん状アンカの遠位端部における組織貫通点と、前記らせん状アンカに設けられ、前記点の近位に位置し、組織との係合から外れる前記らせん状アンカの回転に抵抗するように構成された折り返し部と、をさらに含む、ことを特徴とする請求項116に記載の組織アンカ。
【請求項137】
新生腱索展開システムであって、
近位端部及び遠位端部を有するカテーテルと、
前記カテーテルを通って拡張可能であり、前記カテーテルを通って近位方向に延びる心室縫合部を有する心室アンカサブアセンブリと、
前記カテーテルを通って拡張可能である弁尖アンカ展開サブアセンブリと、
を備え、
前記心室アンカサブアセンブリは、らせん状組織アンカと、前記らせん状組織アンカが外れるのを抑制するために、第1の形態から、展開された第2の形態に遠位方向へと軸方向に移動可能な第2の組織アンカと、を有し、
前記弁尖アンカ展開サブアセンブリは、当該サブアセンブリ内に半径方向に拡張可能な弁尖アンカを有するとともに、前記カテーテルを通って近位方向に延びる弁尖縫合部を有する、ことを特徴とする新生腱索展開システム。
【請求項138】
経血管的人工腱索の埋め込み方法であって、
左心房に及び僧帽弁を通して左心室にカテーテルを前進させるステップと、
らせん状組織アンカを前記左心室の壁部へと回転させることにより、前記カテーテルから前記左心室の壁部に心室アンカを展開するステップと、
前記らせん状組織アンカが外れるのを抑制するために前記左心室の壁部に第2の組織アンカを展開するステップと、
前記心室アンカに取り付けられて、前記カテーテルを通して近位方向に延びた状態のまま心室縫合部を維持するステップと、
心房側から弁尖アンカカテーテルを僧帽弁弁尖に固定するステップと、
前記弁尖アンカカテーテルが前記弁尖に固定された状態で、前記僧帽弁弁尖を弁尖縫合部に固定するために、前記カテーテルから前記僧帽弁弁尖を通して弁尖アンカを前進させるステップであって、前記弁尖縫合部が前記カテーテルを通って近位方向に延びている、ステップと、
前記左心房の方向への前記弁尖の移動範囲を制限するために、前記弁尖縫合部を前記心室縫合部に固定するステップと、
を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項139】
前記第2の組織アンカを展開するステップは、前記らせん状組織アンカに対して遠位方向へと前記第2の組織アンカを軸方向に前進させるステップを含む、ことを特徴とする請求項138に記載の方法。
【請求項140】
経カテーテル僧帽弁腱索修復のための人工腱索を形成するシステムであって、
僧帽弁の弁尖に結合された縫合部を係合させるように構成された縫合部ロックと、
心室組織と結合するように構成されたアンカと、
を備え、
前記アンカは保持部材を有し、当該保持部材は、前記縫合部ロックが前記アンカとの位置関係を維持するために、前記縫合部ロックと結合するように構成されている、ことを特徴とするシステム。
【請求項141】
前記保持部材は、心周期中における前記アンカに対する前記縫合部ロックの動きを制限するために、前記縫合部ロックと結合するように構成されている、ことを特徴とする請求項140に記載のシステム。
【請求項142】
前記保持部材は、前記縫合部ロックの近位端部と遠位端部との間に位置する前記縫合部ロックの外側面と結合するように構成されている、ことを特徴とする請求項140に記載のシステム。
【請求項143】
前記保持部材は、前記縫合部ロックと結合するように構成されたソケットを有する、ことを特徴とする請求項140に記載のシステム。
【請求項144】
前記ソケットは、前記縫合部ロックを前記ソケットに侵入させ、前記ソケットと結合するように半径方向に適合可能に構成されている、ことを特徴とする請求項143に記載のシステム。
【請求項145】
前記保持部材は、選択的に前記縫合部ロックと結合しかつ分離するように構成されている、ことを特徴とする請求項140に記載のシステム。
【請求項146】
前記保持部材は、約3Nまでの変位力に亘って前記縫合部ロックとの結合を維持するように構成されている、ことを特徴とする請求項140に記載のシステム。
【請求項147】
前記保持部材は、約1.5Nまでの変位力に亘って前記縫合部ロックとの結合を維持するように構成されている、ことを特徴とする請求項140に記載のシステム。
【請求項148】
前記保持部材は、締まりばめにより前記縫合部ロックと結合されるように構成されている、ことを特徴とする請求項140に記載のシステム。
【請求項149】
経カテーテル僧帽弁腱索修復のための人工腱索のためのシステムであって、
心臓の僧帽弁の弁尖と結合するように構成された縫合部と、
前記縫合部と係合するように構成された縫合部ロックと、
前記僧帽弁の下方の組織と結合するように構成されたアンカと、
を備え、
前記アンカは、長手方向を画定し、かつ前記長手方向と直交する方向への前記アンカに対する前記縫合部ロックの移動を拘束するように構成された拘束部材を有する、ことを特徴とするシステム。
【請求項150】
前記拘束部材は、前記長手方向と直交する平面における前記アンカに対する前記縫合部ロックの移動を拘束するように構成されている、ことを特徴とする請求項149に記載のシステム。
【請求項151】
前記拘束部材は、前記長手方向に沿った前記アンカに対する前記縫合部ロックの移動を拘束するように構成されている、ことを特徴とする請求項150に記載のシステム。
【請求項152】
前記縫合部ロックは長手方向を画定し、
前記拘束部材は、前記アンカにより画定された前記長手方向を前記縫合部ロックにより画定された前記長手方向と実質的に整列させるように構成されている、ことを特徴とする請求項149に記載のシステム。
【請求項153】
前記拘束部材は、前記アンカに対する前記縫合部ロックの移動を拘束するために、前記縫合部ロックの両側に接触するように構成されている、ことを特徴とする請求項149に記載のシステム。
【請求項154】
前記拘束部材は、前記アンカに対する前記縫合部ロックの移動を拘束するために、3つ以上の点において、前記縫合部ロックの外側面に接触するように構成されている、ことを特徴とする請求項149に記載のシステム。
【請求項155】
前記拘束部材は、前記アンカに対する前記縫合部ロックの移動を拘束するために、前記縫合部ロックの近位面に接触するように構成されている、ことを特徴とする請求項149に記載のシステム。
【請求項156】
経カテーテル僧帽弁腱索修復のためのシステムであって、
僧帽弁の下方の組織と結合するように構成され、保持部材を有するアンカと、
縫合部を介して前記僧帽弁の弁尖を前記アンカに結合させることにより、前記僧帽弁のための人工腱索を実現するように構成された縫合部ロックと、
を備え、
前記縫合部ロックは、前記アンカの前記保持部材に結合され、前記縫合部ロックから前記アンカに変位力を伝えるように構成される、ことを特徴とするシステム。
【請求項157】
前記縫合部ロックは、変位力を前記保持部材に伝えるように構成され、当該変位力は最大約3Nである、ことを特徴とする請求項156に記載のシステム。
【請求項158】
前記保持部材は、約6Nを超える力に応答して前記縫合部ロックと切り離されるように構成されている、ことを特徴とするに記載の請求項156に記載のシステム。
【請求項159】
前記人工腱索は少なくとも4億回サイクルに亘って機能し続ける、ことを特徴とするに記載の請求項156に記載のシステム。
【請求項160】
前記縫合部ロックは、長手方向に沿って延びており、
前記縫合部ロックは、遠位面と近位面との間に延在する周囲面を有し、
前記周囲面は、前記保持部材と結合するように構成された長手方向に延在する部分を有する、ことを特徴とするに記載の請求項156に記載のシステム。
【請求項161】
経カテーテル僧帽弁腱索修復のためのシステムであって、
心臓の左心室で心室組織と結合するように構成されたらせん状組織アンカと、
前記心臓の僧帽弁の弁尖と結合するように構成された縫合部と、
前記らせん状組織アンカと結合するように構成された縫合部と、
を備え、
前記縫合部の少なくとも一部は溶融性縫合部である、ことを特徴とするシステム。
【請求項162】
溶融性である前記縫合部の前記一部は前記縫合部の遠位端部である、ことを特徴とする請求項161に記載のシステム。
【請求項163】
前記システムは、長手方向軸に沿って離間した遠位開口部及び近位開口部を有する縫合部ロックをさらに備え、
前記縫合部ロックは、前記遠位開口部と前記近位開口部との間における前記縫合部ロックを通して前記縫合部又は複数の縫合部を通過させるように構成され、
前記縫合部の前記遠位端部又は両端部は溶融性である、ことを特徴とする請求項161又は162に記載のシステム。
【請求項164】
縫合部カッターをさらに備え、
前記縫合部カッターは加熱源を有する、ことを特徴とする請求項161~163のいずれかに記載のシステム。
【請求項165】
前記縫合部は二成分縫合部であり、
前記縫合部の全長の50%以上である前記縫合部の近位部分は、非溶融性縫合部であり、前記縫合部の全長の50%未満である前記縫合部の遠位部分は、溶融性縫合部である、ことを特徴とする請求項161~164のいずれかに記載のシステム。
【請求項166】
前記溶融性縫合部は、ポリオレフィン、ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリグリコリド/L-ラクチド、ポリエチレンテレフタレート、シリコーン、コラーゲン又は他のアミノ酸タンパク質あるいはこれらの組み合わせである、ことを特徴とする請求項161~165のいずれかに記載のシステム。
【請求項167】
前記縫合部の前記非溶融性縫合部は、ポリテトラフルオロエチレン又は発泡ポリテトラフルオロエチレンである、ことを特徴とする請求項165又は166に記載のシステム。
【請求項168】
経カテーテル僧帽弁腱索修復のためのシステムであって、
心臓の左心室で心室組織と結合するように構成されたらせん状組織アンカと、
前記心臓の僧帽弁の弁尖と結合するように構成された縫合部と、
前記らせん状組織アンカと結合するように構成された縫合部と、
前記心臓の前記僧帽弁の前記弁尖を穿刺するように構成された中空針と、
を備え、
前記中空針の外側面は、前記中空針の外側面にらせん状の溝を有するか、あるいは、前記中空針は、前記中空針の前記外側面の周囲にらせん状コイルを有する、ことを特徴とするシステム。
【請求項169】
前記中空針で前記弁尖を穿刺するための蓄積エネルギー装置をさらに備える、ことを特徴とする請求項168に記載のシステム。
【請求項170】
前記蓄積エネルギー装置は、ばね、加圧液体又は加圧ガスである、ことを特徴とする請求項168~169のいずれかに記載のシステム。
【請求項171】
前記中空針は、穿刺された前記弁尖に綿撒糸を送るように構成されている、ことを特徴とする請求項168~170のいずれかに記載のシステム。
【請求項172】
蓄積されたエネルギーの偶発的な解放を防止するロックをさらに備える、ことを特徴とする請求項168~171のいずれかに記載のシステム。
【請求項173】
前記システムは、第1の綿撒糸が展開された後、一つ又は複数のさらなる綿撒糸を展開させるように構成されている、ことを特徴とする請求項168~172のいずれかに記載のシステム。
【請求項174】
蓄積されたエネルギーを解放し、これにより前記弁尖を穿刺するために前記針を展開するように構成されたトリガを備える、ことを特徴とする請求項168~173のいずれかに記載のシステム。
【請求項175】
展開された前記針は、前記弁尖を通して前記針をさらに駆動するように回転されるか、あるいは、前記針は、前記弁尖から前記針を取り除くように回転される、ことを特徴とする請求項168~174のいずれかに記載のシステム。
【請求項176】
前記弁尖は、前記弁尖の心房側又は前記弁尖の心室側から穿刺される、ことを特徴とする請求項168~175のいずれかに記載のシステム。
【請求項177】
前記針の長さは調節可能である、ことを特徴とする請求項168~176のいずれかに記載のシステム。
【請求項178】
前記針は、他の弁尖拘束機構がない場合に前記弁尖を穿刺するように構成されている、ことを特徴とする請求項168~177のいずれかに記載のシステム。
【請求項179】
前記システムは、前記中空針の遠位部分に近接する綿撒糸を保持するための綿撒糸保持機構を備え、
前記綿撒糸保持機構は、蓄積されたエネルギーの解放及びこれに続く前記弁尖の穿刺の間に前記綿撒糸を保持する、ことを特徴とする請求項168~178のいずれかに記載のシステム。
【請求項180】
経カテーテル僧帽弁腱索修復のためのシステムであって、
心臓の左心室において心室組織と結合するように構成されたらせん状組織アンカを備え、
前記らせん状組織アンカは、
前記らせん状組織アンカと同軸に長手方向に延在するセンタリングピンと、
前記心臓の僧帽弁の弁尖と結合するように構成された縫合部と、
前記アンカと結合するように構成された縫合部と、
をさらに備える、ことを特徴とするシステム。
【請求項181】
前記センタリングピンは、前記らせん状組織アンカと同軸に配置されている、ことを特徴とする請求項180に記載のシステム。
【請求項182】
前記センタリングピンはワッシャをさらに備え、
前記ワッシャは、穴部(又は開口部)を有し、前記センタリングピンは前記穴部に挿入される、ことを特徴とする請求項180又は181に記載のシステム。
【請求項183】
前記システムはばねをさらに備え、
前記ばねは、前記センタリングピンと同軸であり、ワッシャに圧力を付与して、前記センタリングピンの遠位端部に向けて前記ワッシャを押す、ことを特徴とする請求項180~182のいずれかに記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、35U.S.C.119(e)の下で、2018年3月12日に出願された米国仮出願第62/641,612号の利益を主張する2019年3月8日に出願された米国特許出願第16/297,422号の一部継続出願であり、2016年12月30日に出願された米国仮出願第62/441,031号の優先権を主張する2017年6月29日に出願された米国特許出願第15/638,176の一部継続出願(現在は米国特許第9,877,833号)である2017年12月29日に出願された米国特許出願第15/858,671号の一部継続出願である。これらの全体は参照により本願に組み込まれる。
【0002】
また、本願は、35U.S.C.119(e)の下で、2018年12月12日に出願された米国仮出願第62/778,662号、2018年12月12日に出願された米国仮出願第62/778,624号、2019年7月17日に出願された米国仮出願第62/875,265号、2019年9月6日に出願された米国仮出願第62/897,207号、2019年9月9日に出願された米国仮出願第62/897,809号及び2019年9月24日に出願された米国仮出願第62/905,267号の優先権の利益を主張する。これらの全体は参照により本願に組み込まれる。
【0003】
外国又は国内の優先権主張が本出願とともに提出されたものとして出願データシートで特定されている全ての出願は、37CFR1.57の下、参照により組み込まれる。
【0004】
本開示は、僧帽弁の修復又は交換に関し、より詳細には、僧帽弁逆流症から僧帽弁の機能を適切に修復するための、僧帽弁の再形成、修復及び/又は僧帽弁腱索の交換するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0005】
心臓には4つの心臓弁があり、血液が心臓の4つの心室を一方向に通過できるようにする。4つの弁は三尖弁、僧帽弁、肺弁及び大動脈弁である。4つの室は左心房及び右心房(上部の室)並びに右心室及び左心室(下部の室)である。
【0006】
僧帽弁は、前尖及び後尖と呼ばれる2つの弁尖から形成されている。これらの弁尖は、心臓の収縮により弁尖に加わる圧力に応じて開閉する。僧帽弁に関していくつかの問題が生じ得る。問題の1つとして、僧帽弁逆流症(MR)がある。僧帽弁逆流症は、僧帽弁弁尖が適切に閉じないという症状を有しており、このため、僧帽弁からの漏洩が生じる場合がある。重度の僧帽弁逆流症は心機能に悪影響を及ぼす可能性があり、患者の生活の質及び寿命を低下させる虞がある。
【0007】
僧帽弁逆流を治療するための技術が開発されている。これらの技術には、心臓移植、弁の置換又は修復、腱索の短縮又は置換、及び、弁形成としても知られる僧帽弁輪の修復が含まれる。上記の技術はステージ及び病因に応じて選択される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
腱索の置換又は修復に関するため、ある種の外科的アプローチ及び経心尖(trans apical)アプローチが提案されている。しかし、このような提案にも関わらず、MRを減少又は排除するように、腱索の置換又は修復のための経血管的(transvascular)アプローチが依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様は、埋込型装置を給送するための血管内展開カテーテルを含む。当該血管内展開カテーテルは、近位端部、遠位端部及び中央内部通路を有する細長くかつ柔軟な管状本体と、管状本体の遠位端部に設けられたシースであって、埋込型装置を取り外し可能に受容するためのキャビティを画定する側壁を有するシースと、側壁に設けられ、埋込型装置における相補的な第2の係合エレメントと係合するように、キャビティに露出した少なくとも1つの半径方向に延在する第1の係合エレメントと、を備える。
【0010】
本開示の他の態様は、心室組織アンカデリバリシステムを含む。組織アンカデリバリシステムは、近位端部、遠位端部及び中央内部通路を有する細長くかつ柔軟な管状本体と、管状本体の遠位端部に設けられ、キャビティを画定する側壁を有するシースと、キャビティ内に取り外し可能に配置された心室組織アンカであって、ハブ及びらせん状組織アンカを有する心室組織アンカと、少なくとも1つの半径方向に延在する第1の係合エレメントであって、側壁に設けられ、キャビティに露出する、らせん状組織アンカを係合させるための第1の係合エレメントと、を備える。管状本体に対するらせん状組織アンカの回転は、キャビティかららせん状組織アンカを遠位方向に前進させる。
【0011】
本開示の他の態様は、展開カテーテルからデリバリカテーテルを通してインプラントを給送するための方法を含む。当該方法において、インプラントの外径は、デリバリカテーテルの外径より大きい。この方法は、展開カテーテルの遠位端部における折り畳み可能なシースからインプラントを給送するステップと、デリバリカテーテルへと展開カテーテルを近位方向に後退させるステップと、デリバリカテーテルへの展開カテーテルの近位方向への後退に応じて、シースを折り畳むするステップと、を含む。
【0012】
本開示の他の態様は、縫合部(縫合糸)を切断するための血管内縫合部カッターを含む。この血管内縫合部カッターは、内部を通る縫合部経路を画定するカッターハウジングと、カッターハウジング内に回転可能に配置されたカッターヘッドと、を備える。カッターヘッドは刃先を有する。カッターハウジング内におけるカッターヘッドの回転により、縫合部経路に沿って延びる縫合部を切断するように、刃先が縫合部経路を横断する。
【0013】
本開示の他の態様は、縫合部を切断する方法を含む。この方法は、カッターハウジングを通って延びる縫合部経路を通して縫合部を前進させるステップと、縫合部経路に沿って延びる縫合部を切断するために、カッターヘッドにおける刃先が縫合部経路を横断するようにカッターハウジング内でカッターヘッドを回転させるステップと、を含む。
【0014】
本開示の他の態様は、弁尖アンカを含む。弁尖アンカは、第1の端部、第2の端部及び第1の端部と第2の端部との間に配置された複数の開口部を有する綿撒糸と、遠位端部及び尾端部を有する縫合部であって、縫合部の遠位端部は綿撒糸の第2の端部に結合され、この第2の端部から延びる、縫合部と、放射線不透過性マーカと、を備える。縫合部が綿撒糸の開口部を通して延びるように、縫合部の尾端部は複数の開口部を通して延びている。綿撒糸が弁尖に対して圧縮され、縫合部が弁尖を通して後退したときに、弁尖アンカは、弁尖を通して前進するための第1の減少した断面から、弁尖の心房側に接触するために第2の拡大した断面に拡大可能である。
【0015】
本開示の他の態様は、弁尖アンカ展開アセンブリを含む。弁尖アンカ展開アセンブリは、カテーテルと、カテーテル内に配置され、心臓の僧帽弁の弁尖を穿刺するようにカテーテルから前進するように構成された中空針であって、針内に配置された弁尖アンカを有する中空針と、カテーテルを通して近位方向に延びる弁尖アンカに結合された弁尖縫合部(leaflet suture)と、を備える。中空針は、弁尖を穿刺するための鋭端部と、鋭端部の近位にある柔軟部と、を有する。
【0016】
本開示の他の態様は、弁尖アンカを展開するためのシステムを含む。このシステムは、カテーテルと、カテーテル内に配置され、心臓の僧帽弁の弁尖を穿刺するようにカテーテルから前進するように構成された針と、弁尖アンカと、カテーテルを通って近位方向に延びる弁尖アンカに結合された弁尖縫合部と、針で弁尖を穿刺するのに十分な力で針を前進させるための蓄積エネルギー装置と、を備える。
【0017】
本開示の態様は、経血管的人工腱索の埋め込み方法を含む。この方法は、左心房に及び僧帽弁を通して左心室にカテーテルを前進させるステップと、カテーテルから左心室の壁部に心室アンカを展開するステップと、心室アンカに取り付けられて、カテーテルを通して近位方向に延びた状態のまま心室縫合部を維持するステップと、弁尖の下方側(心室側)に対して弁尖アンカを配置するために、心房側から、僧帽弁弁尖の上面を通して弁尖アンカを前進させるステップであって、弁尖縫合部はカテーテル内を通り弁尖を通って近位方向に延びる、ステップと、左心房の方向への弁尖の移動範囲を制限するために、弁尖の上部の接合縁部に亘って弁尖縫合部を心室縫合部に固定するステップと、を含む。
【0018】
本開示の他の態様は、弁尖アンカ展開システムを含む。このシステムは、近位端部及び遠位端部を有するカテーテルと、カテーテルの遠位端部に位置する弁尖アンカと、弁尖アンカを通って前進可能な針と、を備える。針は、事前に配置された半径方向に拡大可能な弁尖アンカを解放可能に移送し、カテーテルを通って近位方向に延びる縫合部を有する。
【0019】
本開示の他の態様は、経血管的人工腱索の埋め込み方法を含む。この方法は、僧帽弁を通して左心房及び左心室にカテーテルを前進させるステップと、カテーテルから左心室の壁部に心室アンカを展開するステップと、心室アンカに取り付けられて、カテーテルを通して近位方向に延びた状態のまま心室縫合部を維持するステップと、心房側から弁尖アンカカテーテルを僧帽弁弁尖に固定するステップと、弁尖アンカカテーテルが弁尖に固定された状態で、僧帽弁弁尖を弁尖縫合部に固定するために、カテーテルから僧帽弁弁尖を通して弁尖アンカを前進させるステップであって、弁尖縫合部はカテーテルを通って近位方向に延びている、ステップと、左心房の方向への弁尖の移動範囲を制限するために、弁尖縫合部を心室縫合部に固定するステップと、を含む。
【0020】
僧帽弁弁尖を弁尖縫合部に固定するために、カテーテルから僧帽弁弁尖を通して弁尖アンカを前進させるステップは、僧帽弁弁尖の上面を通して、弁尖アンカが事前に装填された針を前進させることを含んでいてもよい。弁尖アンカカテーテルを僧帽弁弁尖に固定するステップは、弁尖コネクタを使用することを含んでいてもよい。弁尖コネクタはらせん状アンカ又は組織フックを有していてもよい。
【0021】
本開示の他の態様は、弁尖アンカを僧帽弁の弁尖に固定する方法を含む。この方法は、カテーテルを左心房に前進させるステップと、心房側から、カテーテルに結合された弁尖コネクタを僧帽弁弁尖に固定するステップと、弁尖コネクタを僧帽弁弁尖に固定した後、僧帽弁弁尖を弁尖縫合部に固定するために、僧帽弁弁尖を通して弁尖アンカを前進させるステップと、を含む。
【0022】
弁尖コネクタを僧帽弁弁尖に固定した後、僧帽弁弁尖を弁尖縫合部に固定するために、僧帽弁弁尖を通して弁尖アンカを前進させるステップは、心房側から僧帽弁弁尖を通して、弁尖アンカが事前に装填された針を前進させることを含んでいてもよい。弁尖コネクタを通して針を前進させてもよい。弁尖コネクタはらせん状アンカを有していてもよい。
【0023】
本開示の他の態様は、弁尖アンカ展開システムを含む。このシステムは、近位端部及び遠位端部を有するカテーテルと、カテーテルの遠位端部に配置された弁尖コネクタと、弁尖コネクタを通って前進可能な針と、を備える。針は、事前に装填され、半径方向に拡大可能な弁尖アンカを備え、カテーテルを通って近位方向に延びる縫合部を有する。弁尖コネクタはらせん状アンカを有していてもよい。
【0024】
本開示の他の態様は、新生腱索展開システムを含む。このシステムは、近位端部及び遠位端部を有するカテーテルと、カテーテルを通って拡張可能であり、カテーテルを通って近位方向に延びる心室縫合部を有するらせん心室アンカサブアセンブリと、カテーテルを通って拡張可能である弁尖アンカ展開サブアセンブリと、を備え、弁尖アンカ展開サブアセンブリは、当該サブアセンブリ内に半径方向に拡張可能な弁尖アンカを有するとともに、カテーテルを通って近位方向に延びる弁尖縫合部を有する。
【0025】
半径方向に拡張可能な弁尖アンカは綿撒糸を有していてもよい。綿撒糸は、縫合部の近位方向の後退により、細長いストリップ形態から、半径方向に拡張し軸方向に縮小した形態へと変形可能であってもよい。半径方向に拡張可能な弁尖アンカは、2つのシート材料の間に配置された弁尖縫合部を有していてもよい。半径方向に拡張可能な弁尖アンカは、弁尖を穿刺するための鋭端部を有する針内を運ばれる。弁尖アンカ展開サブアセンブリは、遠位端部及び中央内部通路を有する細長いチューブと、遠位端部における弁尖コネクタと、を有していてもよい。弁尖コネクタはらせん弁尖アンカを有していてもよい。針は、らせん弁尖アンカに対して軸方向に移動可能であってもよい。システムは、カテーテルを通して前進可能であり、心室縫合部を弁尖縫合部に接続するように構成された縫合部ロックサブアセンブリを有していてもよい。
【0026】
本開示の他の態様は、弁尖アンカデリバリサブシステムを含む。このサブシステムは、近位端部、遠位端部及び中央内部通路を有する細長くかつ柔軟な管状本体と、中央内部通路を通して軸方向に前進移動可能な展開針と、展開針内に送られる弁尖アンカと、管状本体の遠位端部に支持された弁尖コネクタと、を備える。弁尖アンカは、らせんエレメントを有していてもよい。展開針は、らせんエレメントを通して軸方向に延在可能であってもよい。
【0027】
本開示の他の態様は、組織アンカを含む。この組織アンカは、ハブと、ハブから近位方向に延びる縫合部と、ハブから遠位方向へ延びるらせん状アンカと、らせん状アンカを通り、らせん状アンカの遠位端部を超えて、同心円状に延びるコアワイヤと、を備える。
【0028】
組織アンカは、ハブから近位方向に延びる縫合部アンカガイドをさらに有していてもよい。組織アンカは、ハブから近位方向に延びる長さが約10cm以下である管状スリーブをさらに有していてもよい。組織アンカは、スリーブに支持された放射線不透過性マーカをさらに有していてもよい。組織アンカは、軸方向に移動可能にコアワイヤに支持された放射線不透過性マーカをさらに有していてもよい。組織アンカは、コアワイヤに支持されたばねをさらに有していてもよい。組織アンカは、らせん状アンカの遠位端部における組織貫通点と、組織との係合から外れるらせん状アンカの回転に抵抗するように構成された折り返し部(バーブ)と、をさらに有していてもよい。
【0029】
本開示の他の態様によれば、動的深度インジケータを含む組織アンカが提供される。この組織アンカは、ハブと、ハブから遠位方向へ延びる組織アンカと、ハブから遠位方向へ延びるコアワイヤと、ハブにより移動可能に支持された放射線不透過性マーカと、放射線不透過性マーカを遠位方向に付勢するためのばねと、を有する。放射線不透過性マーカは、組織へと前進する組織アンカに応答して、組織アンカに対して近位方向に前進する。
【0030】
本開示の他の態様は、血管内縫合部ロックを含む。この縫合部ロックは、内部を通る縫合部経路を有する本体と、縫合部経路の断面寸法を縮小するためのハウジングにおける可動壁部と、ハウジングにおける回転可能なカップリングと、カップリングの回転に応答して可動壁部を前進させる駆動機構と、を備える。
【0031】
縫合部ロックは、縫合部経路に露出された摩擦増強表面をさらに含んでいてもよい。摩擦増強表面は可動壁部に設けられてもよい。縫合部ロックは、傾斜面を有し、ハウジング内で軸方向に移動可能なプッシュウェッジを備えていてもよい。カップリングの回転は、プッシュウェッジを軸方向に前進させ、これにより、可動壁部を横方向に前進して縫合部経路の断面寸法が変更される。可動壁部は、第1の側に縫合部グリップ面を有し、第2の側にランプ面を有していてもよい。ランプ面は、プッシュウェッジの傾斜面との滑り接触用に構成されている。
【0032】
本開示の他の態様において、経血管的心臓修復のための安定化システムは、ベースと、軸方向に移動可能にベースに支持された遠位ドッキングプラットフォームと、軸方向に移動可能にベースに支持された近位ドッキングプラットフォームと、軸方向に移動可能にベースに支持された中間ドッキングプラットフォームと、を備える。
【0033】
本開示の他の態様において、経血管的心臓修復アンカ張力要素のための縫合部管理システムは、スプールに巻き付けられた縫合部に適用される張力の量を制限するためのクラッチを有する張力要素を備える。
【0034】
本開示の他の態様において、経血管的心臓修復システムは、ベースと、ベースに支持された遠位ドッキングプラットフォームと、遠位ドッキングプラットフォームに接続されたアクセスシースと、ベースに支持された近位ドッキングプラットフォームと、近位ドッキングステーションに支持された回転スプールと、アクセスシースを通って、アクセスシースからスプールに延びる第1の縫合部と、を備える。
【0035】
本開示の他の態様において、動的な弁尖管理システムは、ベースと、ベースに支持された遠位ドッキングプラットフォームと、遠位ドッキングプラットフォームに接続されたアクセスシースと、ベースに支持された近位ドッキングプラットフォームと、近位ドッキングプラットフォームにおける第1の縫合部ガイドと、アクセスシースから近位方向へと第1の縫合部ガイドを横切って延びる第1の弁尖縫合部と、第1の縫合部ガイドの近位で第1の弁尖縫合部に接続されたおもりと、を備える。
【0036】
組織アンカ針の展開を心周期と同期させる方法は、心周期の生理学的パラメータをモニタするステップと、左心室の圧力ピークのタイミングに相関する時間信号を生成するステップと、時間信号に応答してアクチュエータへの制御信号の送信を開始するステップと、アクチュエータの作動に応じて、圧力ピーク時に針を展開するステップと、を含む。生理学的パラメータは、脈拍、末梢脈拍、ECG信号及び特にQRS波を含んでいてもよい。生理学的パラメータは血圧を含む。生理学的パラメータは、経皮的に取得され、又は血管内センサによって取得され得る。センサは圧力センサを含む。
【0037】
アクチュエータは力駆動のアンカドライバを有していてもよい。代替例として、アクチュエータは、アクチュエータが作動してロックアウトを解除するまで針の展開を防止するロックアウトを備えていてもよい。
【0038】
本開示の他の態様は、心臓同期式(cardiac synchronous)弁尖アンカ展開システムを含む。このシステムは、デリバリカテーテルと、デリバリカテーテルにより軸方向に往復するように支持された針と、カテーテル内の第1の位置から、カテーテルを超えて延在する第2の位置へと針を前進させるように構成された針ドライバと、アクチュエータと、心周期データの供給源との電気接続用のコネクタと、制御回路と、を備える。制御回路は、心周期の所定の点の検出に応答してアクチュエータを作動させるように構成されてもよい。
【0039】
一態様では、アクチュエータは、針を遠位方向に前進させるように針ドライバを作動させる。前記システムは、臨床医が針を遠位方向に前進させるのを防ぐロックアウトをさらに備えていてもよい。アクチュエータは、臨床医が針を遠位方向に前進させることができるようにロックアウトを無効にする。
【0040】
針ドライバは、ばね仕掛け、電磁駆動式、油圧駆動式、空気圧駆動式又は臨床医が手動で駆動する手動圧駆動式である。一実装例では、システムは、臨床医が手動で針ドライバを作動させる手動制御部を備える。
【0041】
針は、針のターゲット組織からの近位方向の後退に抵抗するために、少なくとも1つの保持エレメントを備える。保持エレメントは、弁尖からの針の近位方向への後退に抵抗するために半径方向外側に延在する組織係合面を有していてもよい。1つの特定の保持エレメントは、針を囲むらせん状のスレッド(thread)を有する。らせん状のスレッドは、針の周囲にらせん状に巻かれ、針の外側に溶接されたワイヤを有していてもよい。
【0042】
本開示のさらなる態様は、弁尖アンカ展開システムを含む。このシステムは、デリバリカテーテルと、デリバリカテーテルにより軸方向に往復するように支持された針と、針により支持された組織保持構造と、針内に設けられた組織アンカと、を有する。組織保持構造は、らせん状フランジである半径方向外側に延在するフランジを有していてもよいし、針の周囲にらせん状に巻かれたワイヤを有していてもよい。弁尖アンカ展開システムは撓み区域をさらに有していてもよい。撓み区域は、針のスロットを有する側壁を含んでいてもよい。綿撒糸は針内、例えば撓み区域内に送られてもよい。撓み区域は、針の最も遠位の6cm又は最も遠位の4cm又は2cm内に完全に存在し得る。
【0043】
本開示の態様は、組織アンカを含む。組織アンカは、ハブと、ハブから近位方向に延びる縫合部と、ハブから遠位方向へ延びるらせん状アンカと、組織と係合しかつらせん状アンカが外れるのを防止するように、第1の形態から展開された第2の形態に遠位方向へと軸方向に移動可能な第2のアンカと、を備える。
【0044】
本開示の他の態様は、新生腱索展開システムを含む。このシステムは、近位端部及び遠位端部を有するカテーテルを含む。心室アンカサブアセンブリは、カテーテルを通って延在可能であり、カテーテルを通って近位方向に延びる弁尖縫合部を有する。心室アンカサブアセンブリは、らせん状組織アンカと、らせん状組織アンカが外れるのを抑制するために、第1の形態から、展開された第2の形態に遠位方向へと軸方向に移動可能な第2の組織アンカと、を有する。弁尖アンカ展開サブアセンブリは、カテーテルを通って延在可能であり、サブアセンブリ内に半径方向に拡張可能な弁尖アンカを有し、カテーテルを通って近位方向に延びる弁尖縫合部を有する。
【0045】
本開示の他の態様は、経血管的人工腱索の埋め込み方法を含む。この方法は、僧帽弁を通して左心房及び左心室にカテーテルを前進させるステップと、らせん状組織アンカを左心室の壁部へと回転させることにより、カテーテルから左心室の壁部に心室アンカを展開するステップと、らせん状組織アンカが外れるのを抑制するために左心室の壁部に第2の組織アンカを展開するステップと、心室アンカに取り付けられて、カテーテルを通して近位方向に延びた状態のまま心室縫合部を維持するステップと、心房側から弁尖アンカカテーテルを僧帽弁の弁尖に固定するステップと、弁尖アンカカテーテルが弁尖に固定された状態で、僧帽弁弁尖を弁尖縫合部に固定するために、カテーテルから僧帽弁弁尖を通して弁尖アンカを前進させるステップであって、弁尖縫合部がカテーテルを通って近位方向に延びる、ステップと、左心房の方向への弁尖の移動範囲を制限するために、弁尖縫合部を心室縫合部に固定するステップと、を含む。
【0046】
本開示の第1の態様において、経カテーテル僧帽弁腱索修復のためのシステムは、心臓の左心室における心室組織と結合されるように構成されたアンカと、心臓の僧帽弁の弁尖と結合されるように構成された縫合部と、長手方向軸に沿って離間された遠位開口部及び近位開口部を有する縫合部ロックと、アンカと結合されるように構成され、縫合部ロックを受けるソケットと、を備える。縫合部ロックは、遠位開口部と近位開口部との間で縫合部ロックを通って縫合部を通過するように構成されている。ソケットは、アンカに対して縫合部ロックを保持するように構成されている。縫合部の遠位部分は、縫合部ロックを通って縫合部ロックの長手方向軸と実質的に平行な方向に延びている。縫合部の近位部分は、ソケットと縫合部ロックとの間で縫合部ロックの長手方向軸と実質的に平行な方向に延びている。第1の実施例の変形例では、ソケットは縫合部ロックに対する縫合部の移動を抑制するように構成されている。
【0047】
第1の態様の変形例では、ソケットは、アンカに対して縫合部ロックを保持するように構成され、これにより、縫合部の1対1の動作又は略1対1の動作が可能となる。第1の態様の変形例では、ソケット及び縫合部ロックは、ソケットの外側の縫合部の近位部分が5/1000インチを超える縫合部ロックの移動を生じさせることなく切断され得るように、ソケットの内側面と縫合部ロックの外側面との間に縫合部を保持する。ソケットの外側の縫合部の近位部分に加わる張力が減少している場合又は張力が加わっていない場合に弁尖近傍の縫合部の遠位部分に加わる張力を維持するように、第1の態様の変形例では、ソケット及び縫合部ロックはソケットの内側面と縫合部ロックの外側面との間に縫合部を保持する。
【0048】
第1の態様の変形例では、縫合部は、第1の弁尖に結合された第1の縫合部である。システムは、第1の弁尖に結合された、少なくとも1つの第2の縫合部をさらに有する。縫合部ロックと第1の弁尖との間における第1の縫合部の張力は調整可能であり、少なくとも1つの第2の縫合部の張力も調整可能である。代替の実施例では、少なくとも1つのさらなる縫合部は、縫合部ロックと第1の弁尖との間における第1縫合部及び少なくとも1つの第2の縫合部の張力を実質的に変えることなく、僧帽弁の第2の弁尖に結合されてもよい。
【0049】
第1の態様の変形例では、ソケットは、組織のカプセル化又は内部成長を促進するように構成される。第1の態様の変形例では、縫合部ロックは、テーパノーズ部を含む。第1の態様の変形例では、ソケットは、縫合部ロックがソケットに挿入されたときに、テーパノーズ部と接触するように構成されたブッシングを含む。第1の態様の変形例では、ソケットは、縫合部の摩耗を減らすように構成された材料で形成される。第1の態様の変形例では、ソケットの近位部分は、ソケットへの縫合部ロックの侵入を容易にするためのテーパ面を含む。第1の態様の変形例では、ソケットの内側面及び縫合部ロックの外側面は、弁尖により縫合部に加わる力に抵抗する保持力を加えるように構成される。
【0050】
第1の態様の変形例では、縫合部ロックは放射線不透過性である。ソケットは、縫合部ロックの近位面の近傍に位置する放射線不透過性エレメントを有する。代替例として、ソケットは、少なくとも部分的に又は完全に放射線不透過性であってもよい。第1の態様の変形例では、ソケットは、支持コイルを含む。第1の態様の変形例では、ソケットは、拘束力を提供しつつ縫合部ロックがソケットに侵入することを許容するように半径方向に順応性(適合性)を有する。第1の態様の変形例では、縫合部は、少なくとも4億サイクルに亘って動作し得る人工腱索を形成するように構成されている。第1の態様の変形例では、縫合部は第1の縫合部である。システムは、アンカと結合され、ソケット及び縫合部ロックを通過するように構成されたアンカ縫合部を備える。システムにより、ソケットへの縫合部ロックの案内が容易になる。
【0051】
第1の態様の変形例では、ソケットの一部は、0N~約10Nの変位力(displacing force)で縫合部ロックを保持するように構成されている。第1の態様の変形例では、ソケットの一部は、0N~約6Nの変位力で縫合部ロックを保持するように構成されている。第1の態様の変形例では、ソケットの一部は、0N~約4Nの変位力で縫合部ロックを保持するように構成されている。
【0052】
第1の態様の変形例では、縫合部ロックがソケットに位置するときに、縫合部は縫合部ロックの近位開口部から延在して、縫合部ロックのノーズ部の周囲を覆うように構成されている。ノーズ部は、縫合部の摩耗を減少させるために実質的に丸みを帯びたプロファイル(外形状)を有する。
【0053】
第1の態様の変形例では、ソケットは、縫合部ロックがソケットに位置するときに、縫合部ロックと弁尖との間に引かれた線から約15°以下に縫合部ロックの長手方向の向きの維持を容易にする。第1の態様の変形例では、縫合部ロックはソケットに挿入可能であり、ソケットから取り外し可能である。
【0054】
第2の態様では、経カテーテル僧帽弁腱索修復のための人工腱索を形成するシステムは、僧帽弁の弁尖に結合した縫合部と係合するように構成された縫合部ロックと、心室組織に結合されるように構成されたアンカと、を備える。アンカは、縫合部ロックがアンカとの位置関係を維持するため縫合部ロックに結合されるように構成された保持部材を含む。
【0055】
第2の態様の変形例では、保持部材は、心周期中のアンカに対する縫合部ロックの動きを制限するために、縫合部ロックと結合するように構成される。第2の態様の変形例では、保持部材は、縫合部ロックの近位端部と遠位端部との間に位置する縫合部ロックの外側面と結合するように構成される。代替例として、保持部材は、縫合部ロックの内側面の少なくとも一部と少なくとも部分的に結合又は係合する。第2の態様の変形例では、保持部材は、縫合部ロックと結合するように構成されたソケットを有する。ソケットは、縫合部ロックがソケットに入り、ソケットと結合することを可能にするために、半径方向に適応するように構成されてもよい。
【0056】
第2の態様の変形例では、縫合部ロックと選択的に結合しかつ分離するように構成されている。第2の態様の変形例では、保持部材は、約3Nまでの変位力に亘って縫合部ロックとの結合を維持するように構成されている。第2の態様の変形例では、約1.5Nまでの変位力に亘って縫合部ロックとの結合を維持するように構成されている。
【0057】
第2の態様の変形例では、保持部材は、少なくとも部分的な締りばめ(interference fit)を介して、縫合部ロックと結合するように構成されている。
【0058】
第3の態様では、経カテーテル僧帽弁腱索修復のための人工腱索のシステムは、心臓の僧帽弁の弁尖と結合するように構成された縫合部と、縫合部と係合するように構成された縫合部ロックと、僧帽弁の下方の組織と結合するように構成されたアンカと、を備える。弁尖に結合された縫合部及びアンカは実質的に長手方向を画定し、長手方向と直交する方向へのアンカに対する縫合部ロックの移動を拘束するように構成された拘束部材を有する。
【0059】
第3の態様の変形例では、拘束部材は、長手方向と直交する平面におけるアンカに対する縫合部ロックの移動を拘束するように構成されている。拘束部材は、長手方向に沿ったアンカに対する縫合部ロックの移動を拘束するように構成されている。第3の態様の変形例では、縫合部ロックは長手方向を規定する。拘束部材は、アンカにより画定された長手方向を縫合部ロックにより画定された長手方向と実質的に整列させるように構成されている。第3の態様の変形例では、拘束部材は、アンカに対する縫合部ロックの移動を拘束するために、少なくとも2つの箇所で、縫合部ロックの両側と接触するように構成されている。第3の態様の変形例では、拘束部材は、アンカに対する縫合部ロックの移動を拘束するために、3つ以上の点において、縫合部ロックの外側面と接触するように構成されている。
【0060】
第3の態様の変形例では、拘束部材は、アンカに対する縫合部ロックの移動を拘束するために、縫合部ロックの近位面と接触するように構成されている。
【0061】
第4の態様では、経カテーテル僧帽弁腱索修復のためのシステムは、僧帽弁の下方の心室組織と結合するように構成され、保持部材を有するアンカと、縫合部を介して僧帽弁の弁尖をアンカに結合させることにより、僧帽弁のための人工腱索を実現するように構成された縫合部ロックと、を備える。縫合部ロックは、アンカの保持部材に結合され、縫合部ロックからアンカに変位力を伝えるように構成されている。
【0062】
第4の態様の変形例では、縫合部ロックは、変位力を保持部材に伝えるように構成され、当該変位力は最大約3Nである、第4の実施例のいくつかの態様では、保持部材は、約6Nを超える力に応答して縫合部ロックと切り離されるように構成されている。第4の態様の変形例では、人工腱索は少なくとも4億回サイクルに亘って機能し続ける。
【0063】
第4の態様の変形例では、縫合部ロックは長手方向に延びている。縫合部ロックは、遠位面と近位面との間に延びる周囲面を有する。周囲面は、保持部材と結合するように構成された長手方向に延在する部分を有する。
【0064】
第5の態様の変形例では、経カテーテル僧帽弁腱索修復のためのシステムは、僧帽弁の弁尖と結合するように構成された縫合部と、僧帽弁の下方で心室組織と結合するように構成されたアンカと、縫合部ロックに対する縫合部の角運動を抑制するように、縫合部に係合し、アンカの保持部材と結合するように構成された縫合部ロックと、を備える。
【0065】
第5の態様の変形例では、縫合部ロックは、縫合部ロックにより画定された長手方向に対して縫合部の角運動を抑制するように、アンカの保持部材と結合するように構成されている。第5の態様の変形例では、縫合部は、保持部材が縫合部ロックと結合された後、縫合部ロックに対してスライドするように構成されている。第5の態様の変形例では、縫合部ロックは、縫合部と係合するように構成された内部ロック部材を有する。
【0066】
第5の態様の変形例では、保持部材は、縫合部ロックと組み合わせて縫合部と係合するように構成されている。さらに、保持部材及び縫合部ロックは、保持部材及び縫合部ロックの干渉面に隣接する縫合部の部分と係合するように構成されている。アンカは、長手方向と、保持部材の隣接する干渉面との間の縫合部の部分と、を画定する。縫合部ロックは、長手方向に実質的に平行な方向に延在する。
【0067】
第5の態様の変形例では、アンカは長手方向を画定する。保持部材は、縫合部ロックから長手方向に平行に延びる線が僧帽弁の弁尖と交差するように、縫合部ロックを配向するように構成されている。第5の態様の変形例では、縫合部は、僧帽弁の第1の弁尖に結合された少なくとも1つの第1の縫合部である。システムは、僧帽弁の第2の弁尖と結合するように構成された少なくとも第2の縫合部をさらに含む。縫合部ロックは、第2の縫合部と係合し、アンカの保持部材と結合して、縫合部ロックに対する第2の縫合部の角運動を拘束するように構成されている。縫合部ロックは、縫合部ロックにより画定された長手方向に対する第2の縫合部の角運動を拘束するように、アンカの保持部材と結合するように構成されてもよい。
【0068】
第6の態様の変形例では、経カテーテル僧帽弁腱索修復のための人工腱索のシステムは、心臓の僧帽弁の弁尖と結合するように構成された縫合部と、縫合部と係合するように構成され、長手方向に沿って配向された縫合部ロックと、僧帽弁の下方の心室組織と結合し、アンカ縫合部を介して縫合部ロックと結合するように構成されたアンカと、を備える。アンカは、縫合部ロックと結合して、長手方向に対する縫合部ロックの配向角度の変化を90°未満に制限するように構成された保持部材を含む。
【0069】
第6の態様の変形例では、保持部材は、心周期中の縫合部の移動中の角度の変化を約10°未満とするために縫合部ロックと結合するように構成される。保持部材は、心周期中の縫合部の移動中の角度の変化を約5°未満とするために縫合部ロックと結合するように構成される。第6の態様の変形例では、保持部材はソケットである。
【0070】
第6の態様の変形例では、縫合部は第1の縫合部である。僧帽弁弁尖は第1の僧帽弁弁尖である。システムは、第2の僧帽弁弁尖と結合するように構成された第2の縫合部をさらに備える。保持部材は、縫合部ロックから第2の僧帽弁弁尖に向かって延びる第2の縫合部と縫合部ロックの長手方向との間に形成される角度の変化を90°未満に制限するため、縫合部ロックと結合するように構成されている。保持部材は、心周期中の第2の縫合部の移動中における、縫合部ロックから第2の僧帽弁弁尖に向かって延びる第2の縫合部と縫合部ロックの長手方向との間に形成される角度の変化を5°未満に制限するため、縫合部ロックと結合するように構成されている。
【0071】
第7の態様の変形例では、経カテーテル僧帽弁腱索修復のための人工腱索のシステムは、僧帽弁の弁尖と結合するように構成された縫合部と、縫合部と係合するように構成され、長手方向に延びる縫合部ロックと、僧帽弁の下方の組織と結合するように構成されたアンカと、を備える。縫合部が、縫合部ロックの長手方向に対して約45°未満の角度で僧帽弁弁尖に向かって縫合部ロックから延びるように、アンカは、縫合部ロックと結合するように構成された保持部材を有する。
【0072】
第7の態様の変形例では、縫合部は、縫合部ロックの長手方向に対して約5°未満の角度で、縫合部ロックから僧帽弁の弁尖に向かって延びる。第7の態様の変形例では、心周期中の縫合部の移動中において、前記角度は0~45°である。第7の態様の変形例では、縫合部は第1の縫合部である。僧帽弁弁尖は第1の僧帽弁弁尖である。システムは、第2の僧帽弁弁尖と結合するように構成された第2の縫合部をさらに含む。保持部材は、第2の縫合部が縫合部ロックの長手方向に対して約45°未満の角度で縫合部ロックから第2の僧帽弁弁尖に向かって延びるように、縫合部ロックと結合するように構成される。第2の縫合部は、縫合部ロックの長手方向に対して約5°未満の角度で、縫合部ロックから第2の僧帽弁弁尖に向かって延びてもよい。第7の態様の変形例では、人工腱索は少なくとも4億サイクルに亘って機能し続ける。
【0073】
第8の態様の変形例では、経カテーテル僧帽弁腱索修復のための人工腱索のシステムは、僧帽弁の弁尖と結合するように構成された遠位部分を有する縫合部と、縫合部と結合するように構成された縫合部ロックと、縫合部ロックと結合し、僧帽弁の下方の組織と係合するアンカと結合するように構成された拘束部材と、を備える。拘束部材は、人工腱索に力を加えている間、拘束部材に対する縫合部ロックを維持するように構成されている。
【0074】
第8の態様の変形例では、人工腱索に加えられる力は、最大約2.0Nである。第8の態様の変形例では、拘束部材は、縫合部ロックによって画定された線と拘束部材によって画定された線との間の角度を約0°~5°に維持するように構成されている。
【0075】
第8の態様の変形例では、縫合部は、縫合部ロックの近位に位置する近位部分を含む。拘束部材は、縫合部ロックの近位部分の除去中に、拘束部材に対する縫合部ロックの配向を維持するように構成される。第8の態様の変形例では、縫合部は、縫合部ロックの近位に位置する近位部分を含む。拘束部材は、縫合部ロックの近位部分の張力変化の間、拘束部材に対する縫合部ロックの配向を維持するように構成される。第8の態様の変形例では、縫合部は、縫合部ロックの近位に位置する近位部分を含む。拘束部材は、縫合部の近位部分に張力が加わっていない場合に、拘束部材に対する縫合部ロックの配向を維持するように構成される。
【0076】
第8の態様の変形例では、拘束部材は、拘束部材に対して縫合部の少なくとも一部の配向を維持するように構成される。第8の態様の変形例では、拘束部材は、縫合部の一部と拘束部材により画定された長手方向の線との間に形成される角度を0°~約15°の範囲内に維持するように構成される。縫合部の前記部分は、縫合部ロックの遠位面の近位に配置され、前記角度は実質的に0°である。縫合部の前記部分は、縫合部ロックの遠位面の遠位に配置されてもよい。
第8の態様の変形例では、拘束部材は、縫合部ロックと拘束部材との間における実質的に同軸の関係を維持するように構成されている。
【0077】
第9の態様は、経カテーテル僧帽弁腱索修復のためのシステムは、第1の僧帽弁の弁尖と結合されるように構成された第1の縫合部と、僧帽弁の第1の弁尖又は第2の弁尖と結合されるように構成された第2の縫合部と、第1の縫合部及び第2の縫合部と結合されるように構成された縫合部ロックと、僧帽弁の下方で組織と結合され、アンカに対する縫合部ロックの移動を拘束するように構成されたアンカと、を有する。
【0078】
第9の態様の変形例では、アンカは、アンカに対する縫合部ロックの回転及び位置移動を拘束するように構成された拘束部材を有する。第9の態様の変形例では、アンカは、約0N~4Nの力にわたって、アンカに対する縫合部ロックの動きを制限するように構成される。第9の態様の変形例では、アンカは、約0N~10Nの力にわたって、アンカに対する縫合部ロックの回転移動を制限するように構成される。第9の態様の変形例では、アンカは、約0N~6Nの力にわたって、アンカに対する縫合部ロックの動きを制限するように構成される。
【0079】
第9の態様の変形例では、第1の縫合部は、第1の弁尖と結合されるように構成された遠位部分と、縫合部ロックの近位に位置する近位部分と、を有する。アンカは、第1の縫合部の近位部分を除去する間におけるアンカに対する縫合部ロックの回転移動を制限するように構成されている。第9の態様の変形例では、第2の縫合部は、第2の弁尖と結合されるように構成された遠位部分と、縫合部ロックの近位に位置する近位部分と、を有する。アンカは、第2の縫合部の近位部分を除去する間におけるアンカに対する縫合部ロックの回転移動を制限するように構成されている。
【0080】
第10の態様では、経カテーテル僧帽弁腱索修復のための人工腱索は、僧帽弁の弁尖と結合されるように構成された縫合部と、縫合部と結合されるように構成された縫合部ロックと、縫合部ロック及び僧帽弁の下方で組織に係合しているアンカと結合されるように構成された拘束部材と、を備える。拘束部材は、人工腱索に加えられる力の変化に対して人工腱索の長さの変化を制限するように構成される。第10の態様の変形例では、拘束部材は、人工腱索に加えられる力の変化に対して、人工腱索の長さの変化を約0.5mm未満に制限するように構成される。
【0081】
第10の態様の変形例では、拘束部材は、人工腱索に加えられる力の変化に対して、人工腱索の長さの変化を約0.1mm未満に制限するように構成される。第10の態様の変形例では、縫合部は、弁尖と結合するように構成された遠位部分と、縫合部の遠位部分の調節のためにカテーテルと結合するように構成された近位部分と、を有する。拘束部材は、カテーテルを介して加えられる力に対する人工腱索の長さの変化を制限するように構成される。
【0082】
第11の態様では、経カテーテル僧帽弁腱索修復のためのシステムは、僧帽弁の弁尖と結合するように構成された縫合部と、縫合部に沿って前進し、縫合部と選択的に係合するように構成された縫合部ロックと、僧帽弁の下方で組織と結合するように構成されたアンカと、を備える。アンカは、縫合部ロック及びアンカを整列させるように構成された保持部材を含む。
【0083】
第11の態様の変形例では、保持部材は、縫合部によって縫合部ロックに加えられる回転力に対して、アンカに対する縫合部ロックの配置を維持するように構成される。第11の態様の変形例では、保持部材は、縫合部ロックが選択的に縫合部に係合した後、縫合部によって縫合部ロックに加えられる回転力に対して、アンカに対する縫合部ロックの配置を維持するように構成される。第11の態様の変形例では、アンカは長手方向の線を画定し、縫合部ロックは長手方向の線を画定する。保持部材は、アンカの長手方向の線が縫合部ロックの長手方向の線と実質的に平行になるように、縫合部ロックをアンカと整列させるように構成される。
【0084】
第11の態様の変形例では、縫合部ロックは長手方向の線を画定する。保持部材は、縫合部ロックによって画定された長手方向の線が弁尖まで延びるように、縫合部ロックをアンカと整列させるように構成される。
【0085】
第12の態様では、経カテーテル僧帽弁腱索修復のためのシステムは、僧帽弁の弁尖と結合するための遠位部分及び弁尖に対する縫合部の調節のための近位部分を有する縫合部と、縫合部に沿って前進するように構成された縫合部ロックと、僧帽弁の下方の組織と結合するように構成されたアンカと、を備える。アンカは、縫合部ロックの動きを制限するために、縫合部ロックと選択的に結合するように構成された保持部材を含む。
【0086】
第12の態様の変形例では、保持部材は、縫合部ロックと選択的に結合するように構成される。縫合部ロックは、アンカに対して実質的に静止したままである縫合部の旋回点(ピボット点)を提供する。
【0087】
第12の態様の変形例では、縫合部は第1の縫合部である。システムは、第2の縫合部をさらに備える。第2の縫合部は、僧帽弁の弁尖と結合するための遠位部分と、第2の縫合部を調節するための近位部分と、を有する。縫合部ロックは、第1の縫合部及び第2の縫合部に沿って前進するように構成される。縫合部ロックは、アンカに対して実質的に静止したままである第1及び第2の縫合部のための旋回点を提供し得る。第1の縫合部の遠位部分は、僧帽弁の第1の弁尖に結合するように構成されてもよく、第2の縫合部の遠位部分は、僧帽弁の第2の弁尖に結合するように構成されてもよい。第12の実施例の一態様では、保持部材はソケットである。
【0088】
第13の態様では、経カテーテル僧帽弁腱索修復のための複数の人工腱索を形成するシステムは、第1の縫合部と、第2の縫合部と、第1の縫合部及び第2の縫合部に沿って前進するように構成された縫合部ロックと、僧帽弁の下方の組織と結合するように構成されたアンカと、を備える。第1の縫合部は、僧帽弁の弁尖と結合するための遠位部分と、第1の縫合部の調節のための近位部分と、を有する。第2の縫合部は、僧帽弁の弁尖と結合するための遠位部分と、第2の縫合部の調節のための近位部分と、を有する。アンカは、第2の縫合部の調節中に第1の縫合部の遠位部分の張力を維持するために、縫合部ロックと選択的に結合するように構成された保持部材を有する。
【0089】
第13の態様の変形例では、第2の縫合部の調節には、第2の縫合部の近位部分を使用する第2の縫合部の遠位部分の調節が含まれる。第13の態様の変形例では、保持部材は、第1の縫合部の調節中に第2の縫合部の遠位部分の張力を実質的に維持するように、縫合部ロックと選択的に結合するように構成される。第1の縫合部の調節には、第1の縫合部の近位部分を使用する第1の縫合部の遠位部分の調節が含まれ得る。
【0090】
第13の態様の変形例では、保持部材はソケットである。ソケットは、縫合部ロックの外側面に隣接して配置された第1の縫合部の一部と係合するように構成され得る。ソケットは、縫合部ロックの外側面に隣接して配置された第2の縫合部の一部と係合するように構成され得る。ソケットの内側面及び縫合部ロックの外側面は、第1の縫合部の一部及び第2の縫合部の一部を拘束するように構成され得る。ソケットの内側面は、結晶構造が、第1の縫合部の材料の配向及び第2の縫合部の材料の配向に対応する方向に配向されている材料を含み得る。第13の態様の変形例では、第1の縫合部の遠位部分及び第2の縫合部の遠位部分は、僧帽弁の第1の弁尖に結合されるように構成されている。
【0091】
第14の態様では、経カテーテル僧帽弁腱索修復のためのシステムは、心室組織と結合するように構成されたアンカと、僧帽弁弁尖と結合するように構成された縫合部と、縫合部と選択的に係合するように構成された縫合部ロックと、を備える。保持エレメントは、縫合部ロックをアンカに結合するように構成される。少なくとも1つの縫合部ロック及び保持エレメントの少なくとも一方は、縫合部ロックをアンカに結合することを容易にするテーパ面を含む。
【0092】
第14の態様の変形例では、縫合部ロックは、テーパ面を有する近位部分を有する。テーパ面は円錐形状をなす。第14の態様の変形例では、保持エレメントは、テーパ面を有する遠位部分を有する。テーパ面は漏斗形状をなす。第14の態様の変形例では、縫合部ロックは、テーパ面を有する近位部分を有する。保持エレメントは、遠位部分を有する。当該遠位部分の面のプロファイル(輪郭形状)は、縫合部ロックのテーパ面のプロファイルに対応する。第14の態様の変形例では、保持エレメントは、アンカに永久的に取り付けられる。第14の態様の変形例では、保持エレメントは、縫合部ロックに永久的に取り付けられる。第14の態様の変形例では、保持エレメントは、放射線不透過性材料を組み込んだ遠位部分を含む。保持エレメントは、遠位部分の放射線不透過性材料の近位に位置する非放射線不透過性部分を含み得る。縫合部ロックは放射線(X線)不透過性であってもよい。第14の態様の変形例では、アンカ縫合部は、縫合部ロックを保持部材にガイドするように、アンカに結合される。縫合部ロックは、アンカ縫合部と選択的に係合するように構成されてもよい。
【0093】
第15の態様では、経カテーテル僧帽弁腱索修復のシステムは、心室組織と結合するように構成されたアンカと、僧帽弁弁尖と結合するように構成された縫合部と、縫合部と選択的に係合するように構成され、長手方向の線に沿って延びる縫合部ロックと、縫合部ロックをアンカに固定するように構成された保持部材と、を備える。保持部材は、縫合部ロックの長手方向の線に直交する方向に縫合部ロックに保持力を及ぼすように構成される。
【0094】
第15の態様の変形例では、保持部材は、組織のカプセル化又は内部成長を促進するように構成されている。第15の態様の変形例では、保持部材は、縫合部ロックが保持部材に挿入されたときに縫合部ロックに接触するように構成されたブッシングを含む。第15の態様の変形例では、保持部材は、縫合部ロックを保持部材に挿入する際の保持部材の座屈に抵抗するように構成されたコイルを含む。第15の態様の変形例では、保持部材は、縫合部の摩耗を低減するように構成された材料で形成されている。
【0095】
第15の態様の変形例では、縫合部は、縫合部ロックの近位開口部から延在し、縫合部ロックが保持部材によって固定されたときに縫合部ロックのノーズ部の周囲を覆うように構成される。ノーズ部は実質的に丸みを帯びたプロファイルを有する。第15の態様の変形例では、保持部材はソケットである。第15の態様の変形例では、保持部材はピンを含む。第15の態様の変形例では、保持部材は、縫合部ロックの長手方向の線に実質的に平行な方向に縫合部ロックに保持力を及ぼすように構成されたアンカ縫合部を含む。
【0096】
本開示の前述及び他の特徴は、添付の図面と併せて、以下の説明及び添付の特許請求の範囲からより完全に明らかになるであろう。これらの図面は、本開示によるいくつかの実施例のみを示しており、範囲を限定すると見なされるべきではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0097】
図1図1は、僧帽弁に対する経中隔的アプローチによる心室アンカの配置を示している。
図2A図2Aは、心室アンカを示している。
図2B図2Bは、心室アンカを示している。
図2C図2Cは、心室アンカ展開ツールの遠位端部における心室アンカの斜視図である。
図2D図2Dは、心室アンカ展開ツールの近位端部の斜視図である。
図2E図2Eは、心室アンカ及び心室アンカ展開ツールの遠位端部の部分分解斜視図である。
図2F図2Fは、第1の形態をなす第2のアンカを含む心室アンカを示す図である。
図2G図2Gは、展開された第2の構成をなす第2のアンカを含む図2Fに示した心室アンカを示す図である。
図3図3は、僧帽弁の弁尖に係合するように配置されたカテーテルの展開端部を示す図である。
図4図4は、らせん弁尖アンカによって捕捉された弁尖及び心房から心室へ弁尖を横断する針を示す図である。
図5図5は、針から心室へ展開された綿撒糸タイプの弁尖アンカを示す図である。
図6A図6Aは、弁尖の心室側に対して綿撒糸を折りたたむための弁尖縫合部の近位方向への牽引を示す図である。
図6B図6Bは、綿撒糸タイプの弁尖アンカの詳細図である。
図6C図6Cは、綿撒糸タイプの弁尖アンカの詳細図である。
図6D図6Dは、綿撒糸タイプの弁尖アンカの詳細図である。
図7図7は、縫合部ロックに張力をかけかつ取り付ける準備の整った展開された心室アンカ及び縫合部並びに展開された弁尖アンカ及び縫合部を示す図である。
図8図8は、弁尖アンカデリバリサブシステム遠位端部の斜視図である。
図9図9は、弁尖アンカデリバリサブシステムの近位端部の斜視図である。
図10図10は、弁尖アンカデリバリサブシステムの遠位端部の斜視図である。
図11図11は、弁尖アンカを心室アンカに接続するように、縫合部ロックデリバリサブシステムを介して弁尖アンカ縫合部及び心室アンカ縫合部に亘って縫合部ロックを前進させた状態を示す図である。
図12図12は、張力が調整され、縫合部の尾部が切断された後のロック位置にある縫合部ロックを示す図である。
図13図13は、縫合部ロックデリバリサブシステムの遠位端部の斜視図である。
図14図14は、縫合部ロックデリバリサブシステムの近位端部の斜視図である。
図15図15は、縫合部ロックデリバリサブシステムの遠位端部の部分分解図である。
図16図16は、縫合部切断アセンブリの遠位端部斜視図である。
図17図17は、供給前に縫合部を保持するためカッティングヘッドが前進していない状態にある縫合部ロックデリバリサブシステムの切断アセンブリの側面図である。
図18図18は、縫合部を供給するためにカッティングヘッドが前進した状態にある縫合部ロックデリバリサブシステムの切断アセンブリの側面図である。
図19図19は、縫合部ロックと係合するように構成されたトルクドライバの遠位端部及び縫合部ロックの側面図である。
図20図20は、縫合部ロックの近位端部を示している。
図21図21は、縫合部ロックの遠位端部を示している。
図22A図22Aは、本願の一態様に係る心室アンカデリバリサブシステムの側面図である。
図22B図22Bは、図22Aに示した心室アンカデリバリサブシステムの近位部分の側面図である。
図22C図22Cは、図22Aに示した心室アンカデリバリサブシステムの中間部分の側面図である。
図22D図22Dは、図22Aに示した心室アンカデリバリサブシステムの遠位部分の側面図である。
図22E図22Eは、図22Dに示した部分に沿った長手方向断面図である。
図22F図22Fは、図22Aに示した心室アンカデリバリサブシステムの遠位部分を形成するために用いられ得るマンドレルに沿った長手方向断面図である。
図23A図23Aは、本願の一実施例に係るカッターカテーテルの上面図である。
図23B図23Bは、図23Aに示したカッターカテーテルの部分側方断面図である。
図23C図23Cは、図23Aの線23C-23Cに沿った断面図である。
図24A図24Aは、本願の一態様に係る図23Aに示したカッターカテーテルのカッターハウジングの正面図である。
図24B図24Bは、図23Aのカッターハウジングの側面図である。
図24C図24Cは、図23Bのカッターハウジングの側方断面図である。
図24D図24Dは、図24Cの線24D-24Dに沿った図である。
図25A図25Aは、カッターヘッドの実施例を示す正面図である。
図25B図25Bは、図25Aに示したカッターヘッドの側面図である。
図26図26は、破線で示したカッターハウジングに配置されたカッターヘッドの側方斜視図である。
図27図27は、一実施例に係るカッターカテーテルのハンドルを示す側方断面図である。
図28図28は、一実施例に係る弁尖アンカを形成し得る一実施例に係る縫合部及び綿撒糸の上面図である。
図29図29は、図28の線B-Bに沿った断面図である。
図30図30は、一実施例に係る弁尖アンカを形成し得る一実施例に係る縫合部及び綿撒糸の上面図である。
図31図31は、縫合部が開口部31を通った状態を示す、図30に示した一実施例に係る弁尖アンカの図である。
図32図32は、本発明の一態様に係る針の側面斜視図である。
図33図33は、本発明の一態様に係る綿撒糸デリバリハンドルの斜視図である。
図34A図34Aは、本発明の一態様に係る縫合部管理システム及び安定化システムの上面後方斜視図である。
図34B図34Bは、図34Aの安定化システム及び縫合部管理システムの上面斜視図である。
図35図35は、図34Aの安定化システム及び縫合部管理システムの側面図である。
図36図36は、図34Aの安定化システム及び縫合部管理システムの上面図である。
図37図37は、図34Aの安定化システム及び縫合部管理システムの後部の近接上面図である。
図38図38は、図34Aの安定化システム及び縫合部管理システムの近接後面図である。
図39図39は、代替例に係る弁尖アンカ展開針の遠位端部斜視図である。
図40図40は、心周期における事前に選択された点の検出に基づいて同期された制御信号を提供するシステムの概略ブロック図である。
図41図41は、図23に示したシステムに用いられたトリガジェネレータの概略ブロック図である。
図42図42は、図40に示したシステムに用いられたアクチュエータ点弧回路の概略ブロック図である。
図43図43は、図40に示したシステムに用いられたアクチュエータユニットの概略ブロック図である。
図44図44は、図40に示したシステムにおけるECG信号、マーカパルス、トリガパルス及び発射(噴射)パルスの波形を示す図である。
図45図45は、図40に示した装置に用いられ得るタッチセンサーモニタを示す図である。
図46図46は、本開示の一態様に係る経カテーテル僧帽弁腱索修復システム及び心臓の概略的な側面図である。
図47図47は、本開示の一態様に係る縫合部カッター機構の斜視断面図である。
図48図48は、本開示の一態様に係る経カテーテル僧帽弁腱索修復システムにおける綿撒糸縫合部及び縫合部ロックの動きを示す図である。
図49図49は、本開示の一態様に係る縫合部ロック及び縫合部の移動を示す図である。
図50図50は、本開示の一態様に係る縫合部ロック及び縫合部の移動を示す図である。
図51図51は、本開示の一態様に係る、経カテーテル僧帽弁腱索修復システムの縫合部ロック、保持部材及びアンカを示す図であって、アンカの上方部分が保持部材の外側面の一部に沿って延びている状態を示す図である。
図52図52は、保持部材内に縫合部ロックが配置された状態の、図51に示した経カテーテル僧帽弁腱索修復システムの断面図である。
図53図53は、本開示の一態様に係る縫合部ロック、保持部材及びアンカの向き(方向)を示す図である。
図54図54は、本開示の一実施例に係る縫合部ロック及び縫合部の向き(方向)を示す図である。
図55図55は、本開示の一実施例に係る経カテーテル僧帽弁腱索修復システムのアンカ、保持部材及び縫合部ロックを示す図であって、アンカがアンカハブに亘って延びる状態を示す図である。
図56図56は、経カテーテル僧帽弁腱索修復システムのアンカ、保持部材及び縫合部ロックを示す図であって、アンカが保持部材から隣接する組織に前進した状態を示す図である。
図57図57は、経カテーテル僧帽弁腱索修復システムのアンカ、保持部材及び縫合部ロックを示す図であって、アンカが保持部材から隣接する組織に前進した状態を示す図である。
図58図58は、経カテーテル僧帽弁腱索修復システムのアンカ、保持部材及び縫合部ロックを示す図であって、アンカが保持部材から隣接する組織に前進した状態を示す図である。
図59図59は、本開示の一態様に係る経カテーテル僧帽弁腱索修復システムのアンカ、保持部材及び縫合部ロックを示す図であって、アンカ綿撒糸が縫合部ロックとアンカハブとの間に配置された状態を示す図である。
図60図60は、本開示の一態様に係る経カテーテル僧帽弁腱索修復システムのアンカ、保持部材及び縫合部ロックを示す図であって、アンカ綿撒糸が縫合部ロックとアンカハブとの間に配置された状態を示す図である。
図61図61は、本開示の一態様に係る保持部材の側面図である。
図62図62は、本開示の一態様に係る保持部材の上方部分の側面図である。
図63図63は、本開示の実施例に係る、アンカハブを固定する高密度化部分を有する保持部材を示す図である。
図64図64は、図63に示したソケットの断面図である。
図65A図65Aは、本開示の一態様に係るソケットの側方斜視図である。
図65B図65Bは、図65Aに示したソケットの上方断面図である。
図66図66は、本開示の一態様に係るアンカ、保持部材及び縫合部ロックの概略図である。
図67図67は、本開示の一態様に係る人工腱索の向き(方向)を示す図である。
図68図68は、本開示の実施例に係る縫合部ロック及びロックドライバ機構の側面斜視図である。
図69図69は、本開示の一態様に係る、ロックドライバ機構及びブートを締結し、最初に離脱させた後の縫合部ロックの側面斜視図である。
図70図70は、本開示の一態様に係る、ロックドライバ及びブートをさらに離した状態にある図69の構成の側面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0098】
2017年12月19日に出願された米国特許出願第15/858,671号(参照により全体が本明細書に組み込まれる)は、経血管的人工腱索の埋め込み方法及びシステムを開示している。一態様は、僧帽弁を通して左心房及び左心室にカテーテルを前進させるステップと、カテーテルから左心室の壁部に心室アンカを展開するステップと、心室アンカに取り付けられて、カテーテルを通して近位方向に延びた状態のまま心室縫合部を維持するステップと、僧帽弁弁尖を弁尖縫合部に固定するために、弁尖アンカを僧帽弁弁尖に前進させるステップであって、弁尖縫合部はカテーテルを通って近位方向に延びているステップと、弁尖縫合部を接合縁の上部に延ばし、左心房の方向への弁尖の移動範囲を制限するように弁尖縫合部を心室縫合部に固定するステップと、を含む。特定の態様は本明細書にさらに記載する。
【0099】
僧帽弁に対するアプローチは、左心房に対するアクセスをもたらすために、標準的な経中隔的アプローチにより実現する。このアクセスにおいて、第1のステップは、逆流を最善に矯正すると判断された位置で僧帽弁の弁尖に弁尖捕捉カテーテルを固定することを含む。上大静脈表面から弁尖の表面を精査することにより、付加的な僧帽弁腱索を追加するための最適な位置に関するフィードバックを即座に提供することができるため有利である。本開示の他の実施例では、第1に心室アンカが展開され、次いで、弁尖アンカが展開される。
【0100】
図1を参照すると、らせん状アンカ32などの心室アンカが左心室24の先端部20近傍に展開されている。らせん状アンカ32は先端部20の近傍に位置するように図示されているが、アンカ32は先端部の薄い組織からオフセットした点に取り付けられてもよく、2つの乳頭筋の間など、心室のより厚い隣接壁部に埋め込まれてもよい。これにより、埋め込まれた新生腱索(neo chordae)構成体(縫合部、任意選択的な新生乳頭筋及び/又はらせん状アンカ)を、生来の腱索(native chordae)の本来の経路と実質的に平行又は同心の長手方向軸に沿って整列させることができる。特定の実施例では、埋め込まれた新生腱索構成体は、生来の腱索の本来の経路及び/又は隣接する生来の腱索の本来の経路と平行である位置から5°,10°又は15°以内にある長手方向軸に沿って整列する。さらに、らせん状アンカを図示しているが、アンカは心臓の組織の係合のために異なる構造を有していてもよいし、らせん構造に代えて、組織の係合に関して周知である種々の突刺構造、フック構造又は放射状に拡張可能な構造を含む他の組織アンカの構造を用いてもよい。
【0101】
図2A,2Bを参照すると、本開示の一態様に係る心室アンカとしての使用に適した組織アンカが示されている。主に現在の腱索修復の用途に関してアンカアセンブリ50を説明する。しかし、アンカは、柔らかい組織又は骨アンカが望ましい他の多くの用途に使用され得る。
【0102】
アンカアセンブリ50は、概してコイル54を有する。コイルは、ステンレス鋼又はニチノールなどの様々な材料からなる。コイル54は近位端部56と遠位端部58の間においてらせん状に延びている。遠位端部58は、鋭利な先端部59を備えており、また、コイルの逆回転及び組織からの分離に抵抗するように構成された折り返し部(バーブ)61を備える。コイル54の近位端部56は、以下でさらに詳細に説明するハブ57により搬送される(ハブに取り付けられるか又は形成される)。
【0103】
細長いコアワイヤ62がコイル54においてハブ57から遠位方向へ延びている。コアワイヤ62は組織を貫通する鋭い遠位端部64を有する。遠位端部64は、コイル54の遠位端部58の遠位に位置している。これにより、鋭い遠位端部64が、接触時に組織を貫通し、コイル54の回転が開始される前に目的とする組織内にコイルが埋め込まれ得る。アンカの回転前に端部64を係合させることにより、アンカが横方向の動きに対して安定し、組織に対するアンカ50の単一での配置及びコイル54の回転が可能となり、当業者によって理解されるように、所望のターゲット部位から離れてアンカを移動することなく、組織に係合する。コアワイヤ62の近位端部は、はんだ付け、ろう付け、接着剤及び/又はハブ57の外側面又は側壁における開口部に挿入するなどの機械的な干渉などの種々の方法により、ハブに取り付けられてもよい。
【0104】
放射線不透過性(radiopaque)の深度マーカ66は開口部68を有し、軸方向に移動可能にコアワイヤ62上で運ばれる。半径方向外側に延在する突起又は環状の隆起部などの遠位ストッパ(止め部)70はコアワイヤ62に設けられ、ストッパ70の遠位側にコアワイヤ先端セグメント72を提供するように鋭利な遠位端部64の近位に間隔を置いて配置されている。これにより、マーカ66が遠位先端部64の組織固着機能を妨害することはない。ストッパ70は、マーカ66の遠位方向への移動を制限するように機能する。マーカ66は、コアワイヤ62を受けるように中央に開口部を有する円盤状の環状構造を有していてもよい。
【0105】
コイルばね71はコアワイヤ62と同心円状に設けられ、放射線不透過性マーカ66を遠位方向に付勢する。したがって、放射線不透過性マーカ66はストッパ70の近位面に対向した位置に保持される。使用中は、マーカ66は、ターゲット取付部位において、組織の表面に接触する。らせん状コイルアンカ54が回転し、組織内へと遠位方向に前進するとき、マーカ66は、組織面とともにコアワイヤ62上で近位方向に移動し、組織アンカが完全に埋め込まれたときにマーカ66ハブの近位方向に後退するまで、コイルばね71を圧縮する。これにより、マーカ66とハブ57又は他の放射線不透過性マーカなどの参照物との間の変化する距離を観察することにより、組織へのコイルの進行及び目的とする組織に対するコイル54の埋め込み部分の完全に係合した端部点の透視的視覚化が可能となる。
【0106】
ハブ57は、本明細書の他の箇所に記載した回転ドライバとの係合のための近位コネクタを有する。一実施例では、コネクタは、ドライバの遠位端部における相補的な表面構造に取り外し可能に係合するための六角形の開口部などの開口部を有する。縫合部(縫合糸)74は、アンカアセンブリ50に固定され、例えば、ハブ57、コイル54又はコアワイヤ62に固定される。図示した実施例では、縫合部74はクロスピン76に取り付けられている。クロスピン76は、ハブの側壁において、中央のハブ通路を横切るように一つ又は複数の開口部に挿入されている。縫合部は、ハブ57から離間した一つ又は複数の放射線不透過性マーカ82をさらに有していてもよいし、近位コネクタ及び回転ドライバの中央通路を通って近位方向に延びいてもよい。
【0107】
管状スリーブ78などの縫合部ロックガイドは、少なくとも約2mm又は4mm又は8mmに亘ってハブ57から近位方向に延びているが、一般的に所望の性能に応じて約5cm又は2cm以下である。ガイドスリーブ78はePTFEなどの可撓性材料を含んでいてもよい(から形成されてもよい)。好ましくは、放射線不透過性マーカバンド80は、スリーブ78の近位端部に設けられ、縫合部74におけるマーカ82から軸方向に離間しており、縫合部74に亘って遠位方向に前進するときに、縫合部ロックの透視的視覚化を容易にする。マーカバンドをスリーブ上に配置し、スリーブを反転させてリングを閉じ込めるようにして、マーカバンド80をePTFE製のスリーブの内側層と外側層との間に配置してもよい。
【0108】
縫合部ロックガイドは、図示したスリーブ又はハブから近位方向に延び、展開カテーテルから取り外した後の縫合部ロックの向きを維持するために縫合部ロックにおける内部通路に受容されるアライメントピンなどの種々の構造を有していてもよい。縫合部ロックが展開カテーテルによって所定の位置に保持されている間に縫合部への張力が最適化されるため、カテーテルからの解放後の縫合部ロックの向きの変化は、弁尖の張力に影響を及ぼし、インプラントの治療的価値に悪影響を与える虞がある。縫合部ロックガイドは、カテーテルからの展開前と展開後の両方で、心室アンカと弁尖アンカとの最大距離を一定に保つように機能する。このようにして、(心収縮期中の)弁尖縫合部に対する最大張力は、カテーテルの取り外し前後で縫合部ロックがロックされた後も変化しないままである。
【0109】
らせん状アンカセンブリ50は、心室アンカデリバリサブシステム300により送られる。図2C~2Eは、心室アンカデリバリサブシステム300及びその構成要素を示す図である。図2Cは、サブシステム300の遠位端部の斜視図である。図2Dは、サブシステム300の近位端部の斜視図である。図2Eは、サブシステム300の遠位端部の部分展開図である。
【0110】
サブシステム300はデリバリカテーテル100を通して送られてもよい。デリバリカテーテル100は、心房経中隔的穿刺(atrial trans-septal puncture)などの従来の技術により左心房にアクセスすることができる。様々なサブシステムがデリバリカテーテル100に配置され、取り外されるときに、デリバリカテーテル100は、処置の全体を通して実質的に一定の位置に維持され得る。例えば、デリバリカテーテル100の遠位端部は左心房に配置されてもよい。他の例では、デリバリカテーテル100の遠位端部は、処置の間に亘って左心房に配置されてもよい。
【0111】
図2C~2Eに示すように、心室アンカデリバリサブシステム300は、外側シース304、ドライバ(シャフト307及びヘッド306を含む)、アンカハブ308及びアンカ302を含む。アンカはらせん状アンカ302であり、ドライバヘッド306はらせん状アンカ302を回転させるように構成されている。らせん状アンカ302は、アンカハブ308の外径に亘って配置されるように構成された内径を有していてもよい。らせん状アンカ302は、締まりばめ、他の摩擦係合、はんだ付け又は他の周知の取付け技術によってアンカハブ308にしっかりと固定されてもよい。アンカハブ308は、らせん状アンカ302とともに埋め込まれたままにされてもよい。
【0112】
アンカハブ308は、縫合部74(図2A)を受容し、縫合部74をらせん状アンカ302に取り付けるための、アンカハブ308の中心軸に実質的に沿って設けられた内部通路(ルーメン)を有していてもよい。いくつかの実施例では、縫合部74は、縫合部74がアンカハブ308の内部通路を通して近位方向に引っ張られるのを防ぐ大きさの直径を有する取付エレメント(例えば、ノット、結び目又はワッシャ)を有していてもよい。例えば、縫合部74は、内部通路の遠位側で結ばれてもよい。いくつかの実施例では、縫合部74は、アンカハブ308に結び付けられてもよい(例えば、内部通路を通して、外側面などの構造体や図2Bに示したクロスピン76等の周囲に巻き付けられ、それ自体に結び付けられ得る)。
【0113】
らせん状アンカ302は、巻線の遠位セクション及び巻線の近位セクションを含んでいてもよい。巻線の近位セクションは、巻線の遠位セクションよりも互いの離間距離が小さくてもよく、らせん状アンカ302をアンカハブ308に固定するように構成されてもよい。巻線の遠位セクションは、巻線の近位セクションよりもさらに離間していてもよいし、心室組織に挿入されるように構成されてもよい。アンカハブ308は、らせん状アンカ302に当接しかつ/又はらせん状アンカ302がアンカハブ308の近位端部を越えて近位方向に前進するのを防ぐように構成された拡大断面を近位端部に有していてもよい。本明細書の他の箇所に記載したような他のらせん状アンカは、本明細書に記載した心室アンカデリバリサブシステム300と使用され得るように構成されてもよい。
【0114】
らせん状アンカ308の近位面は、ドライバヘッド306の延在部分306’を受けるためのリセスを有していてもよい。リセスは、ドライバの回転時にドライバからアンカハブ308にトルクを伝達するように構成されるように非円形(例えば、長方形又は六角形などの多角形)であってもよい。リセスは、アンカハブ308の中央内部通路の周囲に配置されてもよい。
【0115】
他の実施例では、アンカハブ308は、延在部分を有していてもよいし、ドライバ306は、相補的なリセスを有していてもよい。ドライバヘッド306は、アンカ上の対応する構成要素と回転可能に係合するための相補的な構造を有する開口部又は遠位方向に面する支柱を有する円筒形であってもよい。ドライバヘッド306はドライブシャフト307に固定的に結合されてもよい。ドライバは、縫合部74を受けるように構成されたドライブシャフト307及びドライバヘッド306を通る中央内部通路を有していてもよい。ドライバの中央内部通路は、アンカハブ308の中央内部通路と整列するように構成されてもよい。ドライブシャフト307はガイドシャフト305内に受容されてもよい。ドライバヘッド306の径はガイドシャフト305の内径より大きい。外側シース304は、ガイドシャフト305、ドライバヘッド306、アンカハブ308及びらせん状アンカ302を受容する大きさを有していてもよい。
【0116】
外側シース304は、デリバリカテーテル100を介して左心室に送られ、心室取付部位の近位に送達される。いくつかの実施例では、外側シース304はデリバリカテーテルなしで送られてもよい。いくつかの実装例では、らせん状アンカ302は、外側シース304が心室取付部位に配置され、外側シース304を通して遠位方向に押されるか、あるいは、外側シース304が近位方向に後退して、らせん状アンカ302が露出するまで、外側シース304内に隠れていてもよい。らせん状アンカ302は心室組織と接触するように配置され得る。ドライブシャフト307の回転により、ドライバヘッド306、アンカハブ308及びらせん状アンカ302が回転し、これにより、心室アンカ302を心室組織にねじ止めする。ドライバ309の回転により、ドライバ309、アンカハブ308及びらせん状のねじ302が外側シース304に対して遠位方向でかつ軸方向に前進する。
【0117】
図2Dに示すように、ドライブシャフト307は、ドライブハンドル312を用いてユーザにより手動で回転させられる。図2Dに示すように、心室アンカデリバリサブシステム300の近位端部は、止血弁314、316する。第1の止血弁314は、ドライブハンドル312の遠位に配置されてもよいし、ガイドシャフト305へのアクセスを提供してもよい。第2の止血弁316は、ドライブハンドル312の近位に配置されてもよいし、ドライバの中央内部通路へのアクセスを提供してもよい。心室アンカ縫合部(図示せず)は第2の止血弁316を通って延びてもよい。
【0118】
いくつかの実装例では、ドライバヘッド306の挿入部306’及びアンカハブ308のリセスは、2つの構成要素を一時的に一緒に保持する摩擦係合を有し得る。らせん状アンカ302が挿入され、心室組織からの反力によってドライバが近位に後退すると、摩擦係合が解除される。いくつかの実装例では、縫合部74に対する近位張力は、近位ハブ308とドライバヘッド306との間に係合力をもたらす。これはドライバ309の後退時に解放される。外側シース304がデリバリカテーテル100へ引き込まれる前に、ドライバヘッド306は、外側シース304へと近位方向に引き込まれてもよい。
【0119】
心室アンカデリバリサブシステム300の移植されていない構成要素は、デリバリカテーテル100から取り外されてもよく、その後、サブシステムは、新生腱索の移植を完了させるためにデリバリカテーテル100に配置されてもよい。変形例では、心室アンカデリバリサブシステム300及び弁尖アンカデリバリサブシステム330などの後のサブシステムは、デリバリカテーテル100内に同時に配置されてもよいし、1つの構成例では、組織アンカ及び弁尖アンカの双方がデリバリカテーテルに事前に装填されてもよい。他の実施例では、心室アンカの移植は、異なる順序で実行され得る(例えば、弁尖アンカの移植後)。心室アンカデリバリ構成要素は、縫合部74の近位端部を超えて近位方向に後退してもよく、縫合部74はデリバリカテーテル100を通して心室アンカ302まで延びたままであってもよい。
【0120】
本開示の特定の実施例では、取付部位かららせん状コイル54が外れる虞のある心室アンカ32のらせん状コイル54が移植後に逆回転するのを防ぐために、第2のアンカを設けることが望ましい。一般的に、第2のアンカは、第1のらせん状アンカの取り付け及び経管的な案内等のための第1の形態から、組織を係合させ、取付部位かららせん状アンカ54を外れないように防ぐ、展開された第2の構成へと展開される。
【0121】
特定の実施例では、第2のアンカは、第1のらせん状アンカの完全な係合に応じて自動的に第2の構成に展開されてもよい。代替例として、第2のアンカは、主治医又は臨床医によるプッシャの制御又は遠位方向への前進移動の手動操作によって展開され得る。プッシャは、アンカドライバ上で軸方向に移動可能に設けられた管状体の形態をなしていてもよい。代替例として、プッシャはアンカドライバを有していてもよい。そのような例では、アンカドライバは、第2のアンカアセンブリの半径方向内側に向いた面上の相補的な面構造と協働するラチェットなどの係合面構造を有していてもよい。アンカドライバは、第2のアンカに影響を及ぼすことなく近位方向に後退し得るが、その後のアンカドライバの遠位方向への前進により第2のアンカが展開される。代替例では、プッシャは、以下に説明するような、縫合部ロックカテーテルを有していてもよい。
【0122】
図2F,2Gを参照して前述した第2のアンカは独立して使用され、かつ/又は図2A~2Eを参照して説明した実施例に関して本明細書に記載した心室アンカ32の特徴及び態様とともに使用されてもよい。
【0123】
図2F,2Gは、第2のアンカ110を含む、一実施例に係る心室アンカ32を示している。図示した実施例では、第2のアンカ110は、近位端部114と鋭い遠位端部116との間に延びている少なくとも第1の枝部(tine)112を有する。枝部112は、近位端部114に対する接続などにより、サポート118に支持され得る。サポート118は枝部112の軸方向の前進を促進する。図示した実施例では、サポート118は、開口部120を有する、リング122などの環状構造を備える。開口部120は、アンカドライバ(図示せず)あるいはアンカ展開システムの一部であり得る他のチューブ状構造又は構成要素を軸方向に移動可能に受けるように構成されている。
【0124】
ハブ57は、第1の枝部112を軸方向に移動可能に受けるための開口部又は通路などの少なくとも1つの第1の枝部ガイド124を有する。第1の枝部ガイド124は、遠位方向において半径方向外側に傾斜した発射角度に枝部112を偏向させるための偏向面を有していてもよい。枝部ガイド124からの出口で測定した発射角度は、約30°~約45°の範囲であり、他の実施例では、アンカの中央の長手方向軸から約35°~約40°の範囲である。
【0125】
偏向面の代替例として又は偏向面に加えて、枝部は、枝部ガイド124から前進するときに外側に傾斜するように半径方向外側に事前に付勢されてもよい。第1の枝部112の遠位方向の前進は、第1の枝部ガイドを通して枝部を前進させ、その遠位では、枝部112が遠位方向に半径方向外側に延在して、所望とする性能(作用)に応じて、枝部の長さの少なくとも約1mm又は2mm又は3mm又は4mm又はそれ以上を露出させる。長手方向軸に垂直に測定すると、完全に展開された枝部の遠位先端部116は、らせん状コイル54の外側面から少なくとも約1mm又は2mm又は3mm又は4mm又はそれ以上離間している。完全に展開されたときの遠位先端部116は、らせん状コイルの外径の少なくとも約50%又は75%又は100%又はそれ以上だけらせん状コイルから横方向に離間されてもよい。
【0126】
枝部112は、回転に抵抗するのに十分な構造的完全性を有し、好ましくは付勢を保持し得る、ステンレス鋼又はニチノールなどの種々の材料のうち任意の材料から形成されてもよいし、上記の材料を含んでいてもよい。枝部112は、フラットリボン又は丸線であってもよく、一実施例では、0.016インチのステンレス鋼製の丸線からなる。
【0127】
第1の枝部112の遠位方向への前進は、本明細書の他の箇所に記載した縫合部74及び/又はアンカドライバ上を前進するカテーテル又は第2のアンカ展開プッシャなどによって、サポート118に遠位圧力を加えることによって実現されてもよい。代替例として、第2のアンカ110は、サポート118を遠位方向に前進させて、ハブ57との間にサポート118を拘束するように、縫合部上で縫合部ロックを遠位方向に前進させ、サポート118に接触させることによって展開されてもよい。このようにして、縫合部ロックは、第2のアンカが展開部位から後退するのを防止又は阻害するように、第2のアンカロックとして機能し得る。
【0128】
第2の枝部126は、第2の枝部ガイド128を通って延在し、サポートリング122に接続されるように設けられてもよい。第2のアンカシステムの所望とする性能に応じて、3つ、4つ又はそれ以上の枝部を設けてもよい。図示した実施例では、らせん状アンカの周囲に沿って約180°離間して配置された2つの枝部が示されている。3つの枝部を含む実施例では、枝部は、約120°の間隔で等距離に配置される。
【0129】
図示のように、枝部ガイド124,128は、縫管状の縫合部アンカガイドの素材(繊維)を通して枝部112,126を導くことができる。縫合は、枝部の経路と整列した開口部を備えていてもよいし、あるいは、枝部は、展開時に素材を貫通してもよい。枝部の出口経路は、必要に応じて遠位に移動可能であり、その結果、枝部は、ハブを通ってらせん状コイル内に軸方向に延在し、互いに離間して隣接する2つのコイルの巻線間において横方向に出る。枝部及び/又はサポート118は、完全な展開の透視確認を可能にするために放射線不透過性マーカ又は材料を含んでいてもよい。
【0130】
図3~6は弁尖アンカの展開を示している。図3を参照すると、心室アンカ32が展開され、心室アンカ縫合部74によりカテーテル100に繋がれ、心室アンカサブシステムが取り外される。弁尖アンカは、弁尖の心房側のターゲット部位に向けて示された針338内で運ばれる。針338は、カテーテル100を通って前進可能な管状スリーブ332などカテーテル100内で軸方向に往復運動するように送られる。針及び針ドライバについて以下にさらに説明する。
【0131】
図3に示すように、図示した構成では、針は、心房から心室まで弁尖を通過し、次いで、事前に装填された縫合部を心室に前進させることができる。次に、図4に示すように、縫合部は、弁尖の心室側に対して綿撒糸を折りたたみ、縫合部を弁尖に固定するように使用され得る。したがって、綿撒糸は半径方向に拡大可能な弁尖アンカを形成する。特定の実施例では、他の形態を有する、半径方向に拡大可能な弁尖アンカを用いてもよい。
【0132】
弁尖アンカ及び縫合部は、図5に示すような新たな僧帽弁腱索を効果的に形成するために、心室アンカ縫合部及び縫合部ロックと組み合わせて使用され得る。前述のように、弁尖アンカ及び縫合部は、心室アンカ縫合部及び縫合部ロックの種々の実施例を開示する米国特許出願第15/858,671(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示された経血管的人工腱索の埋め込み方法及びシステムと組み合わせて使用され得る。
【0133】
好ましくは、弁尖アンカ展開サブアセンブリは、針先端338がターゲット側で通過し前進する間に、弁尖を捕捉し安定化させるための一時的なアンカを備える。図3及び図4に示すように、デリバリチューブ332の遠位端部400又は他のシステムの構成要素には、らせん状組織アンカ402などの一時的な組織アンカが含まれる。一時的なアンカ402は、弁尖と瞬間的に係合することのみを目的としているため、遠位折り返し部(バーブ)を有していないことを除き、心室アンカと同様であってもよい。したがって、アンカ402は、遠位先端部408で終端するらせんエレメント406を備える。
【0134】
使用中、遠位先端部408は、弁尖の表面におけるターゲット部位に配置され、らせんエレメント406は、弁尖に係合して貫通するように軸を中心に回転する。図2A,2Bを参照して心室アンカについて述べた方法と同様に、針先端338は、らせんエレメント406の回転の前に任意選択的に弁尖と係合し、回転に応じてターゲット部位から離間する動きに対してアンカを安定させるために使用され得る。
【0135】
心房側から弁尖を捕捉し、弁尖をカテーテルに固定するためのらせんエレメント406の係合に続いて、針は、らせんエレメント406により画定された中央内部通路を通って遠位方向に前進して完全に弁尖を通って前進する。これにより、図4に示すように、針先338は弁尖の心室側から突出する。針を通って延びるプッシャなどのアンカ展開アクチュエータは、アンカ展開アクチュエータを利用して、針から心室にアンカを展開されるように利用され得る。
【0136】
図5を参照すると、弁尖アンカは、本明細書の他の箇所に記載した綿撒糸340であってもよい。綿撒糸340は、弁尖アンカ縫合部344の遠位端部に取り付けられるか、結合され得る。綿撒糸は、繊維(織物、布)などの柔らかくかつ/又は柔軟な材料を含み得る。縫合部344は、針336を通って延びていてもよい。綿撒糸340は、給送のために針336内に配置され得る(図8,10を参照して以下で説明する)ように、縮小された半径方向断面を含む形態で折り畳まれるか又は圧縮され得る。図5に示すように、綿撒糸340は、針先端338の遠位端部からの展開時に、縮小された断面からより大きな半径方向断面に拡大され得る。いくつかの実施例では、綿撒糸340は、プッシュワイヤ又はリリースワイヤ(図示せず)を介して針336を通して押される。針先端338を通して送達するときに、図6に示した弁尖縫合部344の近位方向への後退により、弁尖アンカが軸方向に折りたたまれ、半径方向に拡大された形態となり、これにより、弁尖アンカが弁尖の穿刺を通して後退するのを防止するとともに、図7に示すように、弁尖縫合部344が弁尖に固定される。
【0137】
図6A~6Dは、弁尖縫合部344の遠位端部に接続された綿撒糸340を概略的に示している。綿撒糸340は、縮小された断面形状を形成するように綿撒糸340の長手方向軸を中心として(例えば、時計回り又は反時計回りに)丸められ/折り畳まれる2つの翼部341、342を備える。いくつかの実施例では、弁尖縫合部344は、綿撒糸340と一体的に形成されてもよい。折り畳み可能又は折り畳むことができる構造を形成するために、図6Aに示すように、縫合部344は、綿撒糸を通って遠位方向に延び、綿撒糸の遠位端部においてループし、近位方向に戻り、綿撒糸340に形成された一つ又は複数の開口部(例えば、2つの開口部、3つの開口部、4つの開口部等)を縫うようにして進む。いくつかの実施例では、開口部は綿撒糸340の中心に沿って整列される。
【0138】
開口部は、綿撒糸340と、綿撒糸340と一体である縫合部344の埋め込み部分の部分とを通って延びてもよい。縫合部344の埋め込み部分は、綿撒糸340内で少なくとも部分的に平らになっている。いくつかの実施例では、開口部は、実質的に綿撒糸の中心近くに配置され得る(例えば、埋め込まれた縫合部344のすぐ左又は右にあるいは縫合部344の左側と右側の間で交互に)。展開されると、縫合部344は、綿撒糸340の遠位端部に効果的に結合される(例えば、縫合部344は綿撒糸シート間に挿入された場所にループして戻る)。
【0139】
図6B~6Dは、本明細書の他の箇所に記載した綿撒糸の例を概略的に示している。図6Bは、左右の翼部341、342用のシートである2つのフラットシートの間に縫合部344の遠位端部(破線で示す)を取り付けることにより形成された綿撒糸340を概略的に示している。図6Cは、図6BのB-Bの軸に沿った綿撒糸340の断面図である。いくつかの実施例では、縫合部344は、2つのシートの間(例えば、実質的にシートの中心)に挿入され、3つの構成要素を一緒に結合するために、(例えば、熱及び/又は圧力下で)押圧されかつ/又はラミネート(積層)される。少なくとも1つの層は部分的に焼結されてもよい。縫合部344は、縫合部の破れや引き裂きに対する耐性を改善するため、平坦化及び/又は高密度化されてもよい。シートは、平らなポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シート(例えば、薄い未硬化の発泡PTFE(ePTFE)シート)又は任意の適切な材料としてもよい。一実施例では、弁尖縫合部344は、ジグザグ又はS字形などの代替的な構成でシートの間に配置されてもよい。図6Dは、図6Bの綿撒糸340を示している。綿撒糸340は、縫合部344の近位尾部を通る複数の開口部343を有する。
【0140】
いくつかの実施例では、本明細書の他の箇所に記載したように、僧帽弁の弁尖に対して縫合部344を固定するように構成される折り畳み可能な構造を形成するため、一つ又は複数の開口部343は、様々な構成で綿撒糸を通して形成される。図6Dは、縫合部344の裏面側で交互に配置された開口343を示している。いくつかの実施例では、開口部343は、(例えば、翼部341又は翼部342において)縫合部344の同じ側に形成され得る。いくつかの実施例では、開口部343は、縫合部344を通して形成され得る。開口部343は、綿撒糸340の中心に沿って整列させてもよい。開口部343は、縫合部344の長さに沿って整列され得る(例えば、直線を形成する)。縫合部344は、対向する2つのシートの間で少なくとも部分的に平坦化され、これにより、縫合部344を通る開口部343の配置が容易となる。上記の位置決めを含む、開口部343の様々な組み合わせを使用してもよい。
【0141】
綿撒糸340は、翼部341、342がほぼ同じ大きさになるように形成されてもよいし、異なる大きさになるように形成されてもよい。弁尖縫合部344が近位方向に後退すると、図6Aに示すように、綿撒糸340は、アコーディオンのように折り畳まれる。綿撒糸340は、長手方向軸に実質的に垂直をなす略平面である近位面を含む形態をなしてもよい。この形態により、縫合部344が弁尖に容易に固定され得る。弁尖縫合部344を弁尖に固定すると、弁尖アンカデリバリサブシステム340は、デリバリカテーテル100から引き抜かれる。弁尖アンカデリバリ要素は、縫合部344の近位端部に亘って近位方向に後退され得る。縫合部344は、心室アンカ縫合部74と並んで、デリバリカテーテル100を通って弁尖アンカ340まで延在し続ける。
【0142】
図8~10は、弁尖アンカデリバリサブシステム330及びその構成要素を示す図である。図8は、サブシステム330の遠位端部の斜視図である。図9は、サブシステム330の近位端部の斜視図である。図10は、サブシステム330の遠位端部の分解図である。
【0143】
図8,10に示すように、弁尖アンカデリバリサブシステム330は外側デリバリチューブ332を含んでいてもよい。チューブ332は、任意選択的に撓み区域を有していてもよく、フレックスチューブ332の種々の側に沿った一つ又は複数プルワイヤ(図示せず)の近位方向の後退によりオペレータによって操作可能であるように構成されてもよい。オペレータは、図9に示すように、弁尖アンカデリバリサブシステム330の近位端部におけるハンドル350に配置されたノブ352又はレバー又は他の作動機構を介してフレックスチューブの屈曲を制御することができる。
【0144】
針点338を含む遠位端部で終端する内側管状シャフト又は針336は、デリバリチューブ332を通って延びてもよい。内側針336は、任意選択的なフレックスチューブ332の形状に適合するのに十分な可撓性を有するハイポチューブ、押出し又は編み込みチューブあるいはカテーテルを含む。針の先端338は可撓性シャフト336の遠位端部に結合されていてもよい。柔軟なジャケット333はフレックスチューブ332及びデリバリシャフト334を取り囲んでいてもよい。
【0145】
図9に示すように、内側管状シャフト336の近位端部は、針ハンドル354に接続されていてもよい。針ハンドル354は止血弁356を含んでいてもよい。弁尖縫合部344は弁356を通して挿入されてもよい。弁356は、トゥオイ-ボルス・バルブ(tuohy-borst valve)であってもよい。針ハンドル354は、内側可撓性シャフト336の内部通路にアクセスするための付加的なポート358を有していてもよい。針ハンドル354は、内側可撓性シャフト336がハンドル350を通ってデリバリシャフト334の内部通路に延びるように、ハンドル350に対して近位方向に配置され得る。ハンドル350は、内側可撓性シャフト336を受け、周囲環境からデリバリシャフト334への開口部を含むハンドルの内部構成要素をシールするための止血弁を有していてもよい。
【0146】
針先端338は、ハンドル350に向けて針ハンドル354を延ばすことにより、あるいは、ハンドル350から針ハンドル354を後退させることにより、延長又は後退可能であってもよい。針336の遠位方向への前進は、ハンドル354を手動で前進させることによって実現され得る。代替例として、針の遠位方向への前進は、相対的に高速で、ストローク長が短い遠位方向の前進を実現するように、機械的又は電気機械的機構によって補助されてもよい。
【0147】
針先端338がチューブ332を越えて遠位方向に延ばされたときに弁尖に圧力がかかると、針先端338が弁尖を穿刺し、図4に示すように、針先端338が弁尖の反対側(例えば、心房側)まで延在する。この圧力は、針先端338を延ばすことにより及び/又針先端338が延長位置にある状態でデリバリ装置330全体を後退させることにより加えられ得る。
【0148】
心室アンカ縫合部74及び弁尖アンカ縫合部344は、緊張状態で互いに結合され、新生腱索インプラントを形成するか、あるいは、新生腱索インプラントの2つのセクションを互いに結合して、新生腱索が弁尖の接合端の心房側を横断するよう心室アンカ302と弁尖アンカ340との間を延びてもよい。新生腱索の全長は、適切な張力が弁尖に加えられ、心室アンカ302によって張力が維持されるように、縫合部ロック376を係合する前に一方又は両方の縫合部74,344を近位方向に引張ることにより調節され得る。縫合部74,344は、デリバリカテーテル100を通って体外の位置まで、近位方向に延在し続けることができる。いくつかの実施例では、縫合部74、344の近位端部は、縫合部ロックの配置及び縫合部74、344の切断を容易にするために、ハンドル又は縫合部ロックデリバリシステム370の近位部分に供給され得る。いくつかの実施例では、近位端部は自由端であってもよいし、他の手段に結合又は固定されていてもよい。
【0149】
図11は、心室アンカ縫合部74及び弁尖縫合部344上の縫合部ロック376の前進を示している。縫合部ロックデリバリサブシステム370は、デリバリカテーテル100を通って前進し、管状のプッシャカテーテル372は、縫合部74、344の遠位方向に沿って縫合部ロック376を押す。縫合部ロック376は、心室に到達すると、縫合部74を近位方向に後退させることで心室縫合部74に沿って押し続けられ、一方、縫合部ロック376が心室アンカへと遠位方向に前進する必要がある場合に、弁尖縫合部344がカテーテルを通して遠位方向に供給されることを許容する。以下にさらに述べるように、図12は、人工腱索を形成するために弁尖アンカ及び心室アンカが繋ぎ合わされた最終的な構造を示している。2つの縫合部の近位尾部が切断され、カテーテルは、僧帽弁を介して心室から近位方向に後退される。
【0150】
図13~14は、縫合部ロックデリバリサブシステム370及びその構成要素を示す図である。図13は、サブシステム370の遠位端部の斜視図である。図14は、サブシステム370の近位端部の斜視図である。図15は、サブシステム370の遠位端部の部分展開図である。図16は、切断アセンブリの遠位端部の斜視図である。図17,18は、サブシステム370の切断アセンブリ部分の側面図である。図19は、縫合部ロック376及び縫合部ロック376と係合するように構成されたトルクドライバ388の遠位端部の側面図である。図20,21は、縫合部ロック376の近位端部及び遠位端部をそれぞれ示している。
【0151】
縫合部ロックデリバリサブシステム370は、両方の縫合部74、344(又は3つ又は4つあるいは付加的な縫合部)に亘りこれらを固定する縫合部ロック376を前進(例えば、スライド)させるように構成され得る。縫合部74、344は、縫合部74、344に張力をかけ、縫合部ロック376と各組織アンカ302、340との間の各縫合部74、344の長さを調節するように、縫合部ロック376に対して近位方向にそれぞれ後退し得る。新生腱索インプラントの張力及び長さが最適化されると、縫合部74、344が縫合部ロック376に対して移動できないように、縫合部74、344の長さを固定するために縫合部ロック376がロックされる。次いで、縫合部74、344は、縫合部ロック376の近位の点で切断され得る。縫合部74、344は、縫合部ロック376を給送したのと同じ縫合部ロックデリバリサブシステム370によって切断され得る。他の実施例では、縫合部ロックが所定位置にロックされた後、別個の切断装置がデリバリカテーテル100に挿入される。
【0152】
縫合部ロックにより、当該ロックを通して一つ又は複数の縫合部を前進させて縫合部の調節が可能となり、通常の使用条件下でePTFE縫合部が縫合部ロックから滑るのを防止する十分なクランプ効果で縫合部がロックされ得る(例えば、滑ることなく、縫合部の破壊強度の少なくとも約60%又は80%又はそれ以上の張力に耐える)。僧帽弁の弁尖の張力の再調整のためにロックを解除して、目的の結果が得られるまで締め直すことができる。次いで、締め付けツールを取り外して、縫合部ロックを残留させる。
【0153】
縫合部ロック376は、リテーナカテーテル373により、縫合部に沿って前進してもよい。リテーナカテーテル373の遠位端部は、リテーナエレメント377と結合されてもよい(図15)。リテーナエレメントは、縫合部ロック376と係合するように構成されたフランジ371あるいは他の機械的な特徴部を含んでいてもよい。例えば、フランジ371は、縫合部ロック376の近位端部においてリセスに挿入されてもよい。いくつかの実施例では、縫合部ロック376からリテーナカテーテル373を取り外すために、リテーナカテーテル373を回転させかつ/又はリテーナカテーテル373の軸方向に実質的に垂直な方向に移動させてもよい。
【0154】
縫合部74、344は、各々の組織アンカから縫合部ロック376を通って延び、図21に示す縫合部ロック376の遠位面における遠位開口部395から侵入して、図20に示す縫合部ロック376の近位面における縫合部経路への近位開口部394から退出する。縫合部74、344は、縫合部ロック376の近位のカッターヘッド375のチャネルを通り、リテーナカテーテル373の外側に沿って、デリバリカテーテル100を通って延びてもよい。カッターヘッド375は、カッターカテーテル372の遠位端部に結合されてもよい。リテーナカテーテル373は、2つのカテーテル372、373が互い対して延長(拡張)又は収縮するように、カッターカテーテル372の内部通路内を延びてもよい。
【0155】
縫合部74、344が縫合部ロック376内でロック(固定)されると、縫合部74、344の近位端部は、縫合部ロックの近位面に隣接して切断され得る。縫合部74、344は、カッターヘッド375に結合されたカッターカテーテル372を縫合部ロック376の近位面に向かって前進させることによって切断され得る。図17~18に概略的に示すように、カッターヘッド375がリテーナカテーテル373に沿ってリテーナエレメント377に向かって前進するとき、カッターヘッドはリテーナエレメント377に配置されたカッティングブレード379に縫合部74、344を近接させる。カッターヘッド375は、縫合部74、344を保持するカッターヘッド375のチャネルがブレード379によって次第に空間的に占有されるように、リテーナエレメント377に亘って前進するように構成される。ブレード379がカッターヘッド375のチャネルに押し込まれると、ブレード379は、縫合部74、344を剪断する。縫合部74、344に近位張力を適用することにより、縫合部74、344の切断が容易となる。他の実施例では、縫合部74、344を切断するように、異なる作動(例えば、カッティングカテーテルの回転)を構成してもよい。
【0156】
いくつかの実装例では、2つ以上の縫合部を使用してもよいし、縫合部ロック376内でロックされてもよく、同じ方法で縫合部ロックデリバリサブシステム370によって切断されてもよい。いくつかの実施例では、リテーナエレメント377に亘るカッターヘッド375の前進は、縫合部ロック376からのリテーナカテーテル373の解放を容易にする。例えば、カッターヘッド375は、縫合部ロック376を安定化させる遠位位置に前進し、縫合部ロック376から軸方向及び/又は回転方向にリテーナカテーテル373を解放させる。
【0157】
図19は、例示的な縫合部ロック376の側面図を示している(外側ケーシング/シェルが取り外された状態で示す)。本明細書の他の箇所に記載したように、縫合部は、遠位端部から近位端部まで縫合部ロック376を通過する。縫合部ロック376は、ねじの回転方向に応じて、プッシュウェッジ384を遠位方向に前進又は近位方向に後退させるように構成されたねじ382を備える。ねじ382は、トルクシャフト388により回転され得る。トルクシャフト388は、縫合部ロック376の近位端部に配置されたリセス381(例えば、図20に示すように、多角形のリセス又は他の非円形のリセス)と噛み合うように構成されたドライバヘッドを有し、これにより、トルクシャフト388の回転によりねじ382が回転する。トルクシャフト388は、リテーナカテーテル373の内部通路を通って延びる。トルクシャフト388は、サブシステムハンドル396の近位端部に配置されたノブ398又は他の作動機構によって、その近位端部で回転される。ハンドル396は止血弁397を有する。いくつかの実装では、縫合部311、344は、止血弁397を通過する。
【0158】
トルクシャフト388によるプッシュウェッジ384の前進により、ランプ(傾斜路)又傾斜面386がばねピン388などの一つ又は複数のばねを徐々に圧縮させる。ばねは、トルクシャフト388の回転によって強制的に閉じるまで、縫合部経路を開くようにクランプを上方に付勢する。一つ又は複数のばね388の圧縮により、縫合部311、344上でクランプ390が下方に押しやられ、2つの対向する面の間で縫合部311、344が圧縮される。いくつかの実施例では、クランプ390及び対向する面392は、離散的な増分で互いに嵌合するように構成されたノッチ面を有してもよい。縫合部311,344が縫合部ロック376から近位方向に又は遠位方向に引き抜かれないように、嵌合したノッチ面は、摩擦を強化し、いくつかの実施例では、対向する面間の縫合部311,344の保持のための機械的干渉をもたらす。いくつかの実施例では、締め付けは、トルクシャフトを反対方向に回転させることによって戻すことができる。
【0159】
縫合部ロックが縫合部74、344上において適切に配置され、所定の位置でロックされると、縫合部74、344は、本明細書の他の箇所に記載したように切断され得る。図12は、縫合部74、344が切断された後の縫合部ロックデリバリサブシステム370の後退を示している。縫合部ロックデリバリサブシステム370がデリバリカテーテル100から取り外されると、デリバリカテーテル100は、本体から引き抜かれ得る。
【0160】
(折り畳み可能なアンカデリバリシース)アンカアセンブリ50、コイル54及び/又は管状スリーブ78の構成に応じて、特定の実施例では、展開されたアンカアセンブリ50の外側プロファイルは、デリバリカテーテル100及び/又はイントロデューサシースの内径よりも大きくてもよい。したがって、特定の実施例では、図22A~Eに示すように、前記心室アンカデリバリサブシステム300は、心室アンカデリバリサブシステム400が給送中にアンカアセンブリ50、コイル54及び/又は管状スリーブ78の保護及び支持を提供しかつデリバリカテーテル100の内径に適合するように折り畳み可能なアンカデリバリシース404を有するように変更され得る。このように、折り畳み可能なアンカデリバリシース404は、シース404がデリバリカテーテル100内に引き込まれる間、より小さな径に折り畳まれ得る。また、例えば、拍動する心室あるいは導入及び配置する間に遭遇する他の動き又は形状によりアンカアセンブリ50がデリバリシース404から外れないように、折り畳み可能なデリバリシース404は、給送中にアンカアセンブリ50を固定するように構成され得る。また、特定の実施例では、アンカアセンブリ50のコイル54が心臓壁と係合すると、デリバリシース404は、拍動する心室の動きに抵抗するのに十分にねじれ耐性を有する。以下に記載するように、シース404は、検出用の放射線不透過性チップを含み得る。特定の実施例におけるデリバリシース404は、コイル54及び管状スリーブ78を保持するのに十分な内径を有するが、デリバリカテーテル100又はイントロデューサシース内に適合するのに十分に小さい外径を有することができる。特定の実施例では、アンカアセンブリ50が給送されるときに、過度の力を加えることなくかつ破断されることなく、シース404はデリバリカテーテル100のより狭い収縮部を通して引き出されるように、アンカデリバリシース404は折り畳み可能である。特定の実施例では、アンカデリバリシース404は、デリバリカテーテル100の内径の大きさ(例えば、いくつかの実施例では約9Fr)から、アンカアセンブリ50を適合させるのに必要なより大きな第2の大きさ(例えば、いくつかの実施例では、約19Fr)に径が移行するように適合されている。
【0161】
折り畳み可能なアンカシース404の非限定的であり例示的な一つの特定の実施例では、シースは、3つの異なる直径のチューブに構成された、熱可塑性エラストマー材料(例えば、Pebaxなど)からなる約0.005インチの壁部を有する。例えば、より径の小さいカテーテル(一実施例では9Fr(フレンチ))から、アンカアセンブリ50(一実施例では19Frの径)を収容するためのより大きな径へと移行させるために2つの相対的に短い部品片(ピース)を用いることができる。第3のチューブは、シース自体の折り畳み可能な部分を形成する。3つ全ての部品片は、熱接着又はの他の適切な成形プロセスを用いて、テーパマンドレル上に形成され得る。さらなる実施例では、例えば、シースに組み込まれ、熱的又は他の方法でシースに適切に結合された、60wt%のタングステンを含む熱可塑性エラストマーから形成されたポリマー放射線不透過性マーカバンドなどの放射線不透過性マーカであってもよい。
【0162】
図22A~Fは、折り畳み可能なシース404を有する心室アンカデリバリサブシステム400を示す。心室アンカデリバリサブシステム400は、前述した方法及びステップにおいて使用され、アンカアセンブリ50を回転させ給送するためドライブシャフト307、ドライバヘッド306及び前述した他の構成要素とともに使用され得る。心室アンカデリバリサブシステム400は、近位部分410と、中間部分412と、折り畳み可能なシース404と、を含む遠位部分414を有するシース405を備える。近位部分410は、サイドポート418を備えた止血弁416を含み得る。図示した実施例では、シース405の中間部分412及び近位部分410は、9Fr(フレンチ)の外径を有し得るステンレス鋼のハイポチューブなどのチューブから形成され得る。折り畳み可能なシース404は、より小さな直径のチューブに結合されるか、取り付けられる別個の材料から形成され得る。
【0163】
図22D,22Eに示すように、折り畳み可能なシース404の遠位端部は、中間部分412より大きな径を有する。図22Eは、図22Dの長手方向断面図である。ねじ山422は、アンカアセンブリ50を折り畳み可能なシース404内に保持するために、折り畳み可能なシース404の遠位端部の内側面に形成され得る。したがって、一つの構成例では、アンカアセンブリ50のコイル54は、アンカアセンブリ50がシース404内に保持されるように、折り畳み可能なシース404におけるねじ山422と係合する。アンカアセンブリ50の回転は、シース404を通してアンカアセンブリ502を前方に駆動する。このように、シース404は、アンカアセンブリ50が給送中にデリバリシース404から外れないように、給送中にアンカアセンブリ50を支持する。また、シース404のより大きな径の遠位端部は、折り畳み可能なアンカデリバリシース404がデリバリカテーテル100内に引き込まれるように、デリバリカテーテル100の内径に亘って適合するように折り畳み可能である。変形例では、シース404は、アンカアセンブリ50と係合するための溝、突起又は他のエレメントを含み得る。
【0164】
通常、シース404は、らせん状組織アンカなどの埋込型装置と取外し可能に係合し、シース内に配置されるとらせん状アンカからの軸方向の引き抜きに抵抗する様々な任意の干渉要素を備えてもよい。シースに対して第1の方向にアンカを回転させると、らせんがシースから外れるときにアンカが軸方向に遠位に移動する。干渉要素は、シースの内周における少なくとも約1つ、2つ、4つ又はこれ以上の完全に回転して延在する、らせん状の(半径方向外側に延在する)チャネルであってもよいし、あるいは(半径方向内側に延在する)隆起部であってもよい。
【0165】
代替例として、少なくとも約1つ、2つ、6つ又はこれ以上の半径方向内側に延在するタブが設けられ、各々のタブは、シースの円周に亘る回転が完全ではない。係合タブは、約90°以下の周方向の長さを有してもよく、いくつかの実施例では、シースの内側面に亘って約45°又は20°又は10°又はそれ以下の長さを有する。所望の性能に応じて、複数の完全な回転によって、あるいは、例えば、カテーテルに対して約半分又は4分の1回転未満などの完全な回転未満の回転によって、インプラントをカテーテルから外すことができる。
【0166】
カテーテル側壁又は回転アンカドライバ又はその両方は、ドライバの回転を容易にし、展開カテーテルの回転を阻止するために、らせん状の創傷又は編組側壁などのトルク伝達要素を有してもよい。
【0167】
シースは、カテーテルシャフトに取り付けられた近位端部と遠位開口端部との間に延びている。近位端部は、デリバリカテーテルの遠位開口部にスライド可能に係合するための角度の付いた係合面を有し、これにより、シースは、デリバリカテーテルへの近位方向の後退に応じて、半径方向に拡張された形態から半径方向に縮小された形態へと変形可能である。
【0168】
シースは、一般に約15cm未満であり、多くの実施例において、約10cm又は5cm又は3cm又はそれ以下である意図したインプラントに対応する軸方向の長さを有する。
【0169】
装置のODが展開カテーテルの内部通路のIDよりも小さい実施例において、上記の回転インターロック機能は、上記のようにフレキシブルな(折り畳み可能な)側壁の内側面又は、固定(折り畳み不可能な)側壁カテーテルに実装され得る。折り畳み可能なシースの実装例では、埋込型装置を収容するために半径方向に拡張された形態にあるとき、シースのODより小さいIDを有するデリバリカテーテルへの近位方向の後退により、装置の展開後にシースが折り畳まれる。
【0170】
図22Fは、折り畳み可能なシース404を形成する方法を示している。第1の直径430及びより小さい第2の直径432を有するマンドレル426が配設される。図22Fは、図2Eの端面図に類似したマンドレルの長手方向断面図である。マンドレル426の小径部432は、中間部分412の遠位端部内に配置され得る。マンドレル426は、マンドレル426の第1の部分430と第2の部分432との間に移行領域427を有し得る。マンドレル426の大径部430の外側面にコイル450が配置され得る。折り畳み可能なシース404を形成するシース452は、マンドレル426及び中間部分412の遠位端部の上に配置され得る。一実施例では、シース452は、約0.005インチの壁熱可塑性エラストマー(ぺバックス(Pebax)など)製の壁部を含み得る。シース452の近位端部の径が減少し、中間部分412に結合され、シース452の遠位端部がシース404における内側のねじ山を形成するためにコイル450の形態を取るように、マンドレル426上にあるときに、シース452が熱処理され得る。前述のように、シース404は、例えば、シースに組み込まれ、熱的又は他の方法でシース404に適切に結合された、60wt%のタングステンを含む熱可塑性エラストマーから形成されたポリマー放射線不透過性マーカバンドなどの放射線不透過性マーカを有する。一実施例において、マーカは、シースの遠位端部に配置される。
【0171】
(回転縫合部カッター)図23A~C,図24A~D,図25A~B及び図26は、上記の一つ又は複数の処置及びシステムにおいて縫合部74、344を切断するために使用されるカッターカテーテル500の他の実施例を示している。例えば、縫合部74、344が縫合部ロック376内でロック(固定)されると、縫合部74、344の近位端部は、本明細書に記載の一実施例に係る縫合部カッターカテーテル500を用いて、縫合部ロック376の近位面に隣接して切断され得る。
【0172】
図23A,23Bを参照すると、カッターカテーテル(血管内縫合部カッターともいう)500は、デリバリカテーテル502を通って延びる外側シース504と、外側シース504を通って延びる内側シャフト506と、を有する。外側シース504の近位端部は、ルアーロック503に結合され得る。図24を参照すると、外側シース504は外側シース504の遠位端部においてカッターハウジング510に結合されている。カッターハウジング510は、円筒形のチャンバを形成するバレル(barrel)の形状にすることができる。カッターハウジング510の遠位端部は穴部512を有する。縫合部は穴部512を通って延び、次いで、カッターハウジング510を通って延びる縫合部経路を画定するようにカッターハウジング510の側面に形成された窓部514を通って延びる。このように、縫合部74、344は、図23Cに示すように、カッターハウジング510を通して前進し得る。
【0173】
図25A,25B,26を参照すると、カッターヘッド520は、カッターハウジング510内に回転するように配置される。カッターヘッド520は、刃先522を含む中空のハーフバレル形状又は部分的なバレル形状を有することができる。刃先522は、遠位端部からカッターヘッド520の近位端部に延びるため、らせん経路又は湾曲形状を有する。図26に示すように、刃先522は、カッターヘッド520の側面に沿って延びることができる。遠位穴部512及び側方窓部514を通って延びる縫合部は、カッターハウジング510内でカッターヘッド520を回転させることによって切断され得る。回転により、縫合部は、刃先522とカッターハウジング510の内側面との間で圧縮される。刃先522の形状のため、縫合部がスライスされる。これは、圧縮又はチョッピング動作と比べて、より効率的で信頼性の高い切断動作である。
【0174】
有利には、血管内縫合部カッター500が心臓内を前進するとき、カッターヘッド520の刃先522は、露出されず、カッターハウジング510の表面に覆われる。例えば、図26に示すように、刃先522は、カッターハウジング510の内側面によって覆われている。図示した実施例では、カッターカテーテル500は、カッターヘッド520とカッターハウジング510との間の回転を防止するように、血管内縫合部カッター500の遠位端部にロック540を有する。図示した実施例では、ロック540は、カッターハウジング510における対応するリセス552と係合するカッターヘッド520に突起550を有する。係合すると、突起550及びリセス552はカッターヘッド520とカッターハウジング510との間の回転を防止する。このように、刃先522は、露出せずに、カッターハウジング510の内側面に覆われる位置に留まる。突起520及びリセス522は、カッターハウジング510に対して回転ハウジング520を軸方向に前進させることによって係合が解除され得る。非係合位置において、カッターヘッド520は、上記のように縫合部を切断するように、カッターハウジング510に対して回転され得る。突起520及びリセス522は、他の構成では反転させてもよく、カッターハウジング510及びカッターヘッド520の他の部分に配置されてもよい。
【0175】
図27は、ルアーロック503の周りに形成され得る近位ハンドル570を示している。ハンドル570は、カッターヘッド520及びカッターハウジング510の動きを制御するように使用され得る。この構成では、カッターヘッド510は、ハンドル570に対して固定され得る。縫合部カッターハンドル572の回転により、カッターヘッド520がカッターハウジング510に対して回転するように、カッターヘッド520は縫合部カッターハンドル572に回転的に連結されかつ結合され得る。図示するように、縫合部カッターハンドル572は、ハンドル570に対して後退位置に配置され、この位置ではカッターヘッド520とカッターハウジング510との間の回転を防止するように、突起550及びリセス552が係合する。ハンドル570にロック578が設けられる。ロック578を解除することにより、カッターヘッドハンドル572は、ハンドル570に対して軸方向に(例えば、図示の実施例では遠位方向に)移動し得る。このように、突起550及びリセス552の係合が解除され、縫合部カッターハンドル572がハンドル570に対して回転縫合部を切断する。
【0176】
(放射線不透過性マーカを有する綿撒糸)図28~31は、綿撒糸640を有し、本明細書に記載したシステム及び方法とともに使用され得る弁尖アンカ641の実施例を示している。図28,29は、2つのフラットシート645a、645bの間に縫合部644の遠位端部に固定することによって形成された綿撒糸640の一実施例を概略的に示している。図29は、図28に示したB-B線に沿った綿撒糸640の断面を示している。いくつかの実施例では、縫合部644は、2つのシート645a、645bの間に(例えば、実質的にシートの中央に)挿入され、圧縮されかつ/又はラミネートされて、3つの構成要素が結合される(例えば、熱及び/又は圧力下で)。少なくとも1つの層は部分的に焼結されてもよい。縫合部644は、縫合部の破れに対する耐性を向上させるために、平坦化及び/又は高密度化されてもよい。シートは、平らなポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製のシート(例えば、薄い未硬化の発泡PTFE(ePTFE)シート)又は任意の他の適切な材料であってもよい。いくつかの実装例では、弁尖縫合部644は、ジグザグ又はS字形をなしてシートの間に配置され得る。図30は、縫合部644の近位尾部660を通す複数の開口部643を含む図28の綿撒糸640を示している。いくつかの実施例では、一つ又は複数の開口部643は、僧帽弁の弁尖に対して縫合部644を固定するように構成された、本明細書の他の箇所に記載したような折り畳み可能な構造を形成するように、様々な構成で綿撒糸を通して形成され得る。図30は、縫合部644を通って綿撒糸の中心を通って延びる開口部643を示している。いくつかの実施例では、開口部643は、縫合部644の対向する側で交互に形成される。いくつかの実施例では、開口部643は、縫合部644の同じ側で(例えば、翼部641又は翼部642に)形成され得る。図示の構成では、複数の開口部643は縫合部644を通って形成され得る。複数の開口部643は、綿撒糸640の中心に沿って整列し得る。複数の開口部643は、縫合部644の長さに沿って整列し得る(例えば、直線を形成する)。開口部643は、綿撒糸640の近位である第1の端部から遠位である第2の端部まで延在し得る。縫合部644は、2つの対向するシートの間で少なくとも部分的に平坦化されてもよく、これにより、縫合部644を通る開口部643の配置が容易となる。前述した配置を含む、開口部643の種々の組み合わせを用いてもよい。
【0177】
放射線不透過性マーカが綿撒糸640に付加されてもよい。例えば、図28~31に示した実施例では、マーカバンド660aは、綿撒糸640の第2の端部つまり遠位端部に隣接した縫合部の周囲に配置され得る。マーカバンド660aは、この位置で縫合部644に圧着され得る。次いで、図31に示すように、縫合部644の近位端部660は、マーカバンド660aに最も近い開口部643から開始して、綿撒糸640に形成された開口部643に通される。これにより、展開時にマーカバンド660aを綿撒糸640の遠位端部に配置する。綿撒糸640は、縫合部644の近位方向への後退(収縮)によって、細長いストリップ(片)状の構成から半径方向に拡大され軸方向に短縮された構成に変形可能であってもよい。
【0178】
(フレキシブルな綿撒糸給送針)前述のように、特定の実施例では、半径方向に拡張(拡大)可能な弁尖アンカは、弁尖を貫通するための鋭端部を有する中空針内を移動する。半径方向に拡張可能な弁尖アンカは綿撒糸を有していてもよい。綿撒糸は、縫合部の近位方向への後退によって、細長いストリップ(片)状の構成から半径方向に拡張(拡大)され軸方向に短縮された構成に変形可能であってもよい。
【0179】
いくつかの実施例では、中空針は、一つ又は複数のらせん状溝を有する外側面を含む。他の実施例では、中空針は、一つ又は複数の隆起したらせん状コイル、例えば、中空針の外側に取り付けられた薄いコイルを有していてもよい。図32は、中空針1204が針1204の外側面に取り付けられたらせん状コイル1205を有する実施例を示している。弁尖は、穿刺プロセスの前後及びその間に動いていることがあるため、弁尖は、溝のない中空針又は隆起したらせん状コイルが弁尖から滑り落ちる可能性がある可動範囲を有することがある。溝を有する面又は隆起したらせん状コイルにはいくつかの利点がある。第1に、中空針が弁尖を完全に穿刺しない場合、すなわち、中空針の遠位部分が綿撒糸の給送を許容しない場合、あるいは、医師が、中空針が意図するより早く弁尖から外れる可能性があると判断した場合、医師は、カテーテル又は回転力を針に伝達するカテーテル内の機構に力を加えて、中空針をさらに弁尖組織にねじ込み、弁尖が針から外れないように固定することができる。第2に、綿撒糸が送られると、医師は、カテーテル又は回転力を針に伝達するカテーテル内の機構に力を加えて、医師は、弁尖から中空針を緩めることによって針を取り外すことができる。
【0180】
使用するカテーテルシステムによれば、中空針は、心臓の左心房側から左心室側に針を穿刺するように配向され得る。他の実施例では、中空針は、心臓の左心室側から左心房側に弁尖を穿刺するように配向され得る。患者の外部から心臓への入口点は異なることがあるため、中空針の少なくとも一部が柔軟であることが望ましい。柔軟性のある中空針を使用することにより、中空針は弁尖にアクセスするために全ての湾曲部分に亘って移動することができ、医師は弁尖を穿刺する前に針の配置を微調整することができる。図32は、必要に応じて中空針の柔軟性をもたらす中空針のカット部1203を示している。いくつかの実施例では、中空針のカット部1203は、レーザカット、機械加工又は他の周知の方法で形成される。
【0181】
また、システムは、蓄積されたエネルギー源の放出を介して弁尖を穿刺する中空針を含んでいてもよい。例えば、蓄積されたエネルギーは、ばね、加圧された液体、加圧された気体、電気的に作動するピストンであるか、あるいは他の周知の方法によるものである。いくつかの実施例では、蓄積エネルギー装置はばねである。さらなる実施例では、図33に示すように、ばねは、綿撒糸デリバリハンドル1202に配置される。
【0182】
蓄積されたエネルギー量は、十分な距離又は深さで弁尖を穿刺するため、中空の針に十分な力を提供する必要がある。本明細書において、「十分な距離又は深さ」とは、中空針の遠位端が、中空針を心臓内の他の構造に接触させたり穿刺したりすることなく、弁尖を完全に穿刺すること、弁尖が動いている間、針が弁尖と係合したままとなることを可能にすること、医師が綿撒糸を給送することを可能にすることのうち、一つ又は複数を意味する。針が十分な距離又は深さで弁尖を穿刺しなかった場合、医師は、弁尖組織を通して中空針をさらに前進させるため中空針を回転させる。針が正しい位置で弁尖を穿刺しなかった場合、医師は、弁尖組織から中空針を取り除くため、中空針を反対方向に回転させる。次に、システムが再装備される、すなわち、綿撒糸の給送のために中空針を適切に配置するように、蓄積されたエネルギーがシステムに付与され、システムが再配置され、作動される。いくつかの実施例では、システムは制御装置を備える。医師は、弁尖上又はその近傍にカテーテル(後退した中空針を含む)を配置し、弁尖に対してカテーテルが正しい位置にあることを確認し、弁尖を穿刺するために蓄積されたエネルギーを放出させる。カテーテルの遠位端部、中空針の遠位端部又はその両方の少なくとも一部は、放射線不透過性であるか、あるいは蓄積されたエネルギーの放出を介して、医師が綿撒糸を送る前に穿刺の位置が正しいことを確認できるようにする他の視覚化補助部を含む。
【0183】
(構成要素の安定化及び縫合部管理システム)単独で又は上記の開示の態様と組み合わせて使用することができる本開示の態様は、前述した一つ又は複数のサブアセンブリの構成要素(例えば、デリバリカテーテル100及び/又はデリバリカテーテルへと前進し得る一つ又は複数の種々のサブシステム)の近位部分(例えば、ハンドル)の位置を安定化させかつ/又は調整するために使用される経血管的心臓修復のための安定化システムである。また、安定化システムは、心室アンカ縫合部及び少なくとも1つの弁尖縫合部の一方又は両方の長さ及び/又は張力を調整するための縫合部管理システムを含み得る。
【0184】
特定の態様では、経血管的心臓修復の縫合部管理システムは、医師が縫合部の長さを調整し、縫合部ロックの張力を設定している間、縫合部に対する実質的に固定された力又は張力を維持するのを補助する。「実質的に固定された力」という用語は、張力の小さな変化が生じることを許容することを含むことを当業者であれば理解されよう。例えば、一態様では、張力に10%の変化が生じる。
【0185】
このような縫合部管理システムを使用する利点は、修復処置中に、心臓の鼓動に応じて弁尖が「自然な」状態で動き続けることを許容するが、縫合部に実質的に一定の張力をかけることによって、各綿撒糸が実質的に弁尖と接触した状態を維持することである。さらに、装置を使用することにより、縫合部のもつれを防止又は最小限に抑えることができる。さらなる利点は、医師が張力を増減させるため各縫合部を個別に調整して、必要に応じて弁尖の最終的な動きを調整可能なことである。縫合部管理システムは、手術中に医師の近くの手術室に配置され得る。アンカ及び弁尖縫合部が患者に対して展開された後、デリバリカテーテルを通る縫合部の端部は、縫合部管理システムに取り付けられ、前述の実質的に一定の張力に保持され得る。
【0186】
本開示の特定の態様において、安定化システムの態様は有益であり、縫合部管理システム又は装置の態様から独立して使用され得る。同様に、縫合部管理システムの特定の態様は有益であり、安定化システムの態様から独立して使用され得る。それにもかかわらず、本明細書に記載されるように、特定の利点は、本明細書に記載した安定化及び縫合部管理システムの様々な態様の組み合わせ及びサブコンビネーションを利用するシステムにより達成され得る。
【0187】
図34A,34Bは、安定化システム(システムという)1500の実施例を示している。システム1500は、処置中の装置の移動を回避するためにスタンド又はテーブル(図示せず)に配置され得るベース又はトレイ1502を有する。図35に示すように、ベースは、上方又は上部プレート1504及び底部又は下部プレート1506を有する。上部プレート及び下部プレート(本明細書では上方プレート及び底部プレートともいう)1504、1506は、図示の実施形態では下部プレート1506に結合された下部ねじ付きボス1512及び上部プレート1504に結合された上部ねじ付きボス1514を有する調整可能な位置決め機構1510(本明細書では「調節機構」ともいう)を介して互いに移動可能に接続され得る。下部ねじ付きボス1512及び上部ねじ付きボス1514を通って、ねじ1516が延びている。下部プレート1506に対するねじ1516(図35参照)の軸方向の移動は、ねじハンドル1518の回転により上部プレート1504が下部プレート1506に対して移動するように制限される。このように、調節機構1510は、上部プレート1504(及びこれに結合された構成要素)において、必要に応じてスタンド又はテーブルに取り付けられる下部プレート1506に対する矢印1520の方向に再配置され得る。調節機構1510は、上部プレート1504と下部プレート1506との間の移動を防止するためのロックを含んでいてもよい。いくつかの実施例では、上部プレート及び下部プレートを相互に軸方向に相互に移動させる、スライドプレート、相補レール及び第2のチャネル又はローラなどの他の機構を用いてもよい。
【0188】
システム1500の安定化部1550は、前述した僧帽弁腱索修復装置の構成要素を保持し又は安定化するように使用される複数の構成要素を含む。特に、以下で詳細に説明するように、装置は、イントロデューサシースの近位部分(例えば、ハンドル)、デリバリカテーテル100、心室アンカデリバリサブシステム300、縫合部ロックデリバリサブシステム370、綿撒糸デリバリサブシステム又はハンドル1202、及び/又は縫合部カッターカテーテル500のハンドル又は近位端部を保持し又は安定化させるように使用され得る。そのような構成要素は本明細書に記載した実施例及び態様に従って構成され得る。
【0189】
例えば、システムは、システム1500の遠位部分に配置され得る第1のドッキングプラットフォーム1600を備える。本明細書において、第1のドッキングプラットフォーム1600を「遠位ドッキングプラットフォーム1600」という。遠位ドッキングプラットフォーム1600は、イントロデューサカテーテルのハンドル又は近位部分を保持するか又は安定化させるように構成され得る。本明細書に記載したデリバリサブシステムの様々な構成要素は、イントロデューサカテーテルを通って前進する。図35を参照すると、遠位ドッキングプラットフォーム1600は、クランプ1602の形態をなす第1の安定化装置1602を有する。第1の安定化装置1602は、イントロデューサ又はアクセスシースなどのカテーテルの環状部分の周囲をクランプする(クランプで固定する)ように構成され得る。図示した実施例では、クランプ1602は、ハンドル1610に結合されたねじ付きポスト1608により互いに近接又は離間するように移動する一対のクランププレート1604、1606を有する。したがって、図示の配置では、ハンドル1610の回転などの制御装置の操作により、プレート1604、1606がイントロデューサシース(図示せず)をシステム1500にクランプ(固定)する。いくつかの実施例では、カテーテル又はイントロデューサシースを安定化させるように、摩擦嵌合装置、コレット又はイントロデューサシースのハンドル上の係合機能部に確実に接続される装置などの他の機構を第1の安定化装置1600に使用してもよい。
【0190】
図34A,34B,35に示すように、クランプは、アーム1620によって上部プレート1504及びベース1502に結合され得る。アーム1620は、クランプ1602を上部プレート1504の軸方向に沿って上方及び前方に配置する「L字」形状を有する。アーム1620は、下部プレート1506に対する上部プレート1504の移動によってクランプ1602が軸方向に移動するように、上部プレートに結合され得る。
【0191】
図36に示すように、遠位ドッキングプラットフォーム1600は、第2の安定化装置1650を有する。図示した実施例では、第2の安定化装置1650は、クランプの形態をなし、アーム1620上に設けられる。図示した実施例では、第2の安定化装置1650は、アーム1620のエルボー部に配置され得る。第2の安定化装置1650は、本明細書に記載した僧帽弁修復システムの他の構成要素を安定化させるために使用され得る。例えば、第2の安定化装置1650は、縫合部ロックデリバリサブシステムの近位端部(又はハンドル)を安定化させるために使用され得る(例えば、図14参照)。
【0192】
図示した第2の安定化装置1650は、構成要素を保持するためのクランプ1652を有する。図34A参照。図示した実施例では、クランプ1652は、第1の安定化装置と同様に、ねじなどの制御機構により互いに近接又は離間するように移動する、一対のプレートを備える。したがって、図示した構成では、ねじの回転により、プレートが縫合部ロックデリバリサブシステム(図示せず)の一部をシステム1500にクランプ(固定)する。いくつかの実施例では、縫合部ロックデリバリサブシステムを安定化させるように、摩擦係合装置又は縫合部ロックデリバリサブシステムの係合機能部に確実に接続する装置などの他の機構を前方マウント部に使用してもよい。図36に示すように、アームは、ハンドルの一部又は縫合部ロックデリバリサブシステムの他の部分を支持するために使用されるプラットフォーム1660を含んでいてもよい。1つの構成例では、ハンドル縫合部ロックデリバリサブシステムの後方部分又は後部がプラットフォーム1660に位置する間に、縫合部ロックデリバリサブシステムの前方部分を固定するために、第2の安定化装置1650を使用することができる。
【0193】
図35,36を参照すると、システム1500は、第2のドッキングプラットフォーム1700を有する。第2のドッキングプラットフォーム1700は、第1のドッキングプラットフォーム1600の近位に配置され、本明細書では近位ドッキングプラットフォーム1700という。近位つまり第2のドッキングプラットフォーム1700は、上部プレート1504から延びるアーム1702によってベース1502の上方に支持される。近位ドッキングプラットフォーム1700は、前述の安定化装置と同じ高さに位置してもよい。近位ドッキングプラットフォーム1700は、縫合部管理システムの構成要素を含むことができ、これについては、以下でより詳細に説明する。近位ドッキングプラットフォーム1700は第3の安定化装置1710を含む。装置1710は、本明細書に記載した実施例に係る心室アンカデリバリサブシステムのハンドルなどの構成要素を支持するために使用され得る軸方向に延びるU字形チャネルなどの細長い凹状支持面を含むことができる。上部プレート1504の移動によりプラットフォーム1700が動くように、第2のドッキングプラットフォーム1700は、アーム1702介して上部プレート1504に結合され得る。したがって、図示の配列では、近位ドッキングプラットフォーム1700及び遠位プラットフォーム1600は上部プレートにより支持され、いくつかの実施例では、上部プレートによって固定的に支持される。
【0194】
図35,36を参照すると、システム1500は第3のドッキングプラットフォーム1800を有する。第3のドッキングプラットフォーム1800は、取り付けられた器具の軸方向において、第1及び第2のドッキングプラットフォーム1600、1700の間に配置され得る。前述のように、第1及び第2のドッキングプラットフォーム1600、1700は、互いに対して遠位及び近位方向にそれぞれ配置される。本明細書では、第3のドッキングプラットフォーム1800を中間ドッキングプラットフォーム1800とも呼ぶ。中間ドッキングプラットフォーム1800は、万力又はクランプの形態とし得る第4の安定化装置1802を含む。中間ドッキングプラットフォーム1800は、第1及び第2のドッキングプラットフォーム1600、1700の間に配置される。中間ドッキングプラットフォーム1800は、調節機構1810を含む。図示の実施例では、調節機構1810は、安定化装置1802と下部レール1812との間のねじ付き係合部を含むことができる。下部レール1812は、上部プレート1505に対して固定され得る。レール1812及び上部プレート1504に対して安定化装置1802を動かすように、ねじ1816を回転させる。調整機構1810は、第4の安定化装置(及びこれに結合された構成要素)において、必要に応じてスタンド又はテーブルに取り付けられる下部プレート1506に再配置される。調節機構1810は移動を防止するロックを有し得る。中間ドッキングプラットフォームは、上部プレート1504に支持される。また、調節機構1810は、第4の安定化装置(及びこれに結合された構成要素)において、上部プレート1504並びに遠位及び近位ドッキングプラットフォーム(及びこれに結合された構成要素)などの上部プレートに支持されるか又は固定的に支持された構成要素に再配置される。
【0195】
一実施例における使用では、第4の安定化装置は、前述のデリバリカテーテル100などのように、デリバリカテーテルを安定化させるために使用される。特定の実施例では、第1の安定化装置1650は、イントロデューサカテーテルを安定化させるように使用され、第4の安定化装置1802は、イントロデューサカテーテルに挿入されるデリバリカテーテル100を安定化させるように使用される。このように、ねじ1816の回転は、イントロデューサカテーテルに対するデリバリカテーテルの微小な動きを許容する。すなわち、中間ドッキングプラットフォームの動きにより、遠位ドッキングプラットフォーム及びこれに取り付けられたイントロデューサカテーテルに対してデリバリカテーテルが動くことが可能となる。
【0196】
図37,38を参照すると、縫合部管理システム1700は、少なくとも1つ、2つ、3つ又はそれ以上の張力要素を有する。張力要素は、各縫合部を保持し、縫合部を常に張力下に保つのを補助するために使用され、したがって、綿撒糸が各心拍により生じる力から左心房又は左心室に引き込まれる虞のあるたるみを回避し、さらに、たるんだ縫合部が左心房又は左心室において絡むのを回避し、あるいはたるんだ縫合部が左心室における他の腱索と絡むのを回避する。
【0197】
例えば、一実施例では、アンカ縫合部は、アンカ張力要素1720に取り付けられる。アンカ張力要素1720は、回転スプール1712を有する。回転スプール1712は、スプールの周囲に巻かれた縫合部(例えば、心室アンカに結合された縫合部)に加えられる張力の量を制限するためのクラッチなどのトルク制限固定具を備える。アンカ縫合部に過度の張力が加えられた場合に、アンカ張力要素1720は、アンカが心臓壁から引き抜かれるリスクを有利に回避又は低減することができる。他の実施例では、アンカ張力要素1720は、縫合部に張力を加えるばね式支柱構造を含んでいてもよい。一実施例では、心室アンカデリバリサブシステム300の心室アンカ302に結合された縫合部の近位端部は、心室アンカが展開された後、アンカ張力要素1720の周囲に巻き付けられる。このように、一定の張力が縫合部に加えられ、クラッチなどのトルク制限固定具は、過度の張力が心室アンカに加えられるのを防止又は制限する。一実施例では、クラッチのトルク制限は約2N~約5Nである。
【0198】
図37,38を参照すると、弁尖に対する綿撒糸の縫合部の張力の調節を可能にする少なくとも1つ、2つ、3つ又はそれ以上の縫合部調節フィンガ部1770が設けられる。使用中、綿撒糸に結合された縫合部は、所望の張力を提供するために、おもり1750などの張力付与部に取り付けられる。特定の実施例では、おもりは約2~約8グラムである。図示した実施例では、おもり1750は、おもり1750を受ける複数の穴部(開口部)、リセス又はソケットなどのおもり取付部を提供することによって、近位プラットフォーム1700に収容される。縫合部(例えば、弁尖縫合部)は、プラットフォーム1700に形成されたノッチ又は溝である縫合部ガイド1760に配置される。ガイド1760は、横方向の動きにいくらかの制約を与えつつ、縫合部が軸方向にスライドすることを許容するように構成され得る。近位ドッキングプラットフォーム1700は、少なくとも1つ、2つ、3つ又はそれ以上の縫合部ガイド1760を有する。おもり1750に取り付けられた縫合部(例えば、弁尖縫合部)の端部をプラットフォーム1700のエッジに引っ掛けることにより、縫合部のもつれを制限又は防止するように作用する一定の張力を綿撒糸の縫合部に適用することができる。前述のように、プラットフォーム1700は複数のガイド1760を備え、これにより、プラットフォーム1700のエッジに引っ掛けられる。
【0199】
図37,38に示すように、プラットフォーム1700は、ノッチ又は溝1760の近傍に又は隣接して配置された縫合部調節機構又はフィンガ部1770を含む。縫合部調節機構1770は回転スプールを含むか、回転スプールからなる。各スプールはスロット1774を有し、このスロットを通って縫合部が延在する。回転スプール1770は縫合部に対する張力を調節するように回転し得る。
【0200】
縫合部管理システムは動的な弁尖管理システムを提供する。そのようなシステムを使用する利点は、修復処置中に、心臓の鼓動に応答して「自然な」状態で弁尖が動き続けることを許容しつつ、縫合部に実質的に一定の張力を付与することにより各綿撒糸が弁尖と実質的に接触した状態で維持されることである。さらに、システムを使用することにより、縫合部のもつれが防止されるか、最小限に抑えられることである。さらなる利点は、必要に応じて、弁尖の最終的な動きを調整するために張力を減少又は増加させるために各縫合部を個別に調節する機能が医師に提供されることである。例えば、一実施例における使用では、縫合部ロック(前述の実施例)を患者に対して前進させた後でかつ縫合部をロックして切断する前に、弁(バルブ)の動作を見ながら、縫合部の張力を調節することができる。これは、スプールを回転させて、ワイヤのたるみ及びこれに対応する張力を増減させることにより実行され得る。所望の張力が達成されると、上記のように縫合部ロックを作動させることができる。
【0201】
例えば、4つまでの、複数の縫合部が縫合部管理装置に固定され、必要に応じて、複数の縫合部管理装置を使用してもよい。装置の構成要素は、非限定的な例として、ステンレス鋼、ポリオキシメチレンなどのアセタール樹脂、PTFE、アルミニウム、3Dプリント樹脂材料などを含む、装置の性能要件を満たす任意の適切な滅菌可能材料を含み得る。
【0202】
(弁尖組織アンカ展開システム)本開示のさらなる態様によれば、代替的な弁尖組織アンカ展開システムが提供される。図39を参照すると、針展開カテーテル332は、針336を軸方向に往復運動させる。針展開カテーテル332の遠位端部に放射線不透過性マーカバンド1900が設けられ、これにより、針336が近位方向に向けてカテーテル332内に後退している間に、マーカバンド1900の位置が僧帽弁の弁尖との関係において視覚化される。
【0203】
図39において、針336は遠位方向に前進した構成として図示されている。針336は、側壁1904及びスロットパターンなどの少なくとも1つの柔軟性強化機能部を有する管状本体1902を備える。図示した実施例では、側壁を通して少なくとも1つの蛇行スロット1906が延在する。蛇行スロット1906は、ハイポチューブをレーザエッチングするなど、当技術分野で周知の様々な方法で形成され得る。蛇行スロット1906は、撓み区域に沿った針336の横方向の柔軟性を向上させ、僧帽弁弁尖上の適切な位置を狙うことを容易にする。撓み区域は、通常、長さが約4cm未満又は約2cm未満であるが、綿撒糸の全長を収容するのに十分な長さである。
【0204】
針336は、傾斜面1910によって管状側壁1904から離間された鋭利先端部1908において遠位方向の終端をなす。傾斜面1910の傾斜角は、通常、約30°~85の範囲内であり、好ましくは、約70°~80°の範囲内であり、一実施例では約75°である。
【0205】
少なくとも1つの組織保持エレメント1912は、組織を通って遠位方向への迅速で強制的な動力による針336の前進を可能にするが、ターゲット組織からの針336の近位方向への後退に抵抗するように設けられている。保持エレメント1912は、少なくとも1つ又は2つ又は5つ又は10つ以上の折り返し部(バーブ)、環状リング又はタブなどの、管状側壁1904から半径方向外側に延在する種々の構造部を有してもよい。図示した実施例では、保持エレメントは、管状本体1902の周囲でらせん状に巻かれたポリマーストランド又は金属ワイヤから形成され得る連続らせん1914の形態をなす環状リングを有する。一実施例では、らせんワイヤは、例えば、0.008インチのワイヤであり、管状本体1902に溶接又は他の方法で固定される。
【0206】
針336をディプロマカテーテル332から十分な速度で遠位方向に前進させることにより、図3に符号406で示した弁尖安定化アンカを必要とせずに、針336は弁尖を貫通することが可能となる。保持エレメント1912は、綿撒糸の展開に至るまで、針上に弁尖を十分に保持する。その後、針は、回転されずに近位方向に後退されるか、又は回転されて、針を緩めて弁尖から取り除かれる。
【0207】
付加的な弁尖の安定化が望まれる場合、前述の一時的な弁尖アンカによって、あるいは弁尖を把持する又は掴む代替の機械的技術によって、あるいはクライオ(冷凍)カテーテルによる吸引又は凍結把持により安定化が実現する。これらの技術には、ターゲット組織を冷凍するための切除処置において使用されるタイプのクライオカテーテルが含まれる。心房細動に使用される冷凍アブレーションカテーテルは、しばしば僧帽弁の弁尖に誤って付着し、付着した弁尖を解放するために動作を停止する必要がある。これと同じクライオアタッチメントを使用して、弁尖アンカ展開針の展開中に安定化させるために問題となっている弁尖を見つけて分離することができる。クライオカテーテルは、ガス交換(NO又はアルゴン)を使用してカテーテルの先端の温度を下げ、摂氏マイナス75℃の低温に達し得る。
【0208】
(アクチュエータ制御システム)本明細書で説明した僧帽弁尖アンカの展開は、弁の心房側から弁尖を穿刺する(刺す)ことにより実現する。弁尖の穿刺中に弁尖を捕捉して支持するための把持構造の必要性を回避し、図39に示すような針を使用するため、弁尖アンカ展開針の遠位での退出は、QRS波付近で発生する心室のピーク(収縮期)圧に対応するようにタイミングを合わせることができる。これは、弁尖の穿刺を僧帽弁閉鎖と同期させ、心室内の収縮期圧が、心房から弁尖の貫通中に必要なバックアップサポートを提供する。
【0209】
心周期に伴う弁尖針発射のタイミングは、臨床医が手動で行ってもよいし、目的の実装に応じて部分的又は完全に自動化してもよい。例えば、視覚信号又は音声信号又は蛍光画像は、QRS群のタイミングを臨床医に警告し、臨床医が発射トリガ又は他のコントロールを押して針を展開する。臨床医の反応時間は変動する可能性があるため、針の発射手順を部分的又は完全に自動化することが望ましい場合がある。
【0210】
例えば、針338は、カテーテルの近位端部によって運ばれるソレノイドなどの自動針ドライバを備えていてもよい。ソレノイドは、僧帽弁の閉鎖中など、心周期の目標時間に時間的に対応する起動信号に応答して針を遠位方向に突出するように起動される。
【0211】
代替例として、起動信号は、臨床医への視覚的、触覚的又は聴覚的な信号であり、これに応答して、臨床医は、ボタン又はスライダなどのコントロールを操作して手動で針を前進させるか、あるいは電気機械式又は機械的な針ドライバを起動させる制御装置を操作する。
【0212】
本開示の他の実施例では、針の展開は、臨床医によって手動で行われ得るが、ロックアウトを解除した後にだけ行われ得る。この実施例では、取り外し可能な機械的干渉部は、針シャフトの近位部分で形成されるか又は当該近位部分に結合され得る。遠位方向に面する干渉面は、針に結合された半径方向外側に延在するタブ又は環状フランジ、あるいは針を通って延びる開口部の遠位面に設けられる。この目的のために、「針」は針自体を指し、並びに当業者によって理解されるように、針に機械的に連結され、針と共に移動する近位方向に延びる任意の構造部(例えば、延長チューブ又はロッド)を指す。
【0213】
近位方向に面する干渉面は、針の遠位方向に面する干渉面との締まりばめ(摩擦係合)により係合する係合状態と、遠位方向に面する干渉面及び対応する構造が針を退出させるために遠位方向に自由に前進する非係合状態との間で移動可能に構成される。近位方向に面する干渉面は、軸方向に移動可能なピン又は近位のハンドピースによって移動可能に運ばれる旋回可能な又はスライドするレバーなどのストッパに設けられる。ソレノイドなどのストッパドライバは、係合状態と非係合状態との間でストッパを移動させるように構成される。
【0214】
針の展開を防ぐために、ストッパを最初に係合させてもよい。目標時間を示す起動信号に応答して(たとえば、QRS群の最中又はその前後)、ストッパは非係合状態へと後退する。これにより、臨床医が針を時期尚早に展開することを防ぐが、所望とする目標時間に針を手動で展開することを可能にする。針の遅い展開を防ぎ、臨床医により針の発射を許容する狭いウィンドウを形成するために、起動信号に続く事前設定されたタイムウィンドウの後に、ストッパは自動的に係合状態に戻る。臨床医がウィンドウ内で針を時間通りに展開できなかった場合、針を発射する機会が再び得られ、その後にQRS群が発生する。
【0215】
QRS群を直接検出するため又は心周期のポイントのプロキシ(代用)を検出するために、さまざまな手法が開発されている。直接検出技術は、パワースペクトル分析、バンドパスフィルタリング、微分、テンプレートマッチング及び波形機能に依存するリアルタイム技術を含む。プロキシは、動脈側又は静脈側又は心房又は心室内で測定された血圧、あるいは末梢血圧などの非侵襲的に測定された血圧を含む。僧帽弁が閉じているときに大動脈弁が開いているため、静脈側の測定値はQRS群のタイミングのプロキシ(代用)として機能し、周期的な静脈圧曲線にはっきりとした特徴が出る。前述のソースのいずれかからのデータは、望ましい時間感度に応じて、真のQRS群からの時間遅延を考慮に入れるように調整されることが望ましい。好ましくは、ECG信号は、通常は既に存在し、手術室で動作している従来のECGモニタから得られる。
【0216】
典型的なECG波形は、心房脱分極を示すP波、心室脱分極を示すQRS群、心室再分極を示すT波並びに場合により再分極の延長を示す可能性のあるU波で構成される。ECGの主な活動は、通常、さまざまな監視及び診断の目的で、リアルタイムでのQRS群の識別に関連する。QRS群又はQRS波は、通常、持続時間が約80~120ミリ秒であり、心室収縮の開始と大動脈弁を介した血液の排出に対応する。これは僧帽弁の圧力応答性閉鎖に対応し、本開示の目的にとって重要である。
【0217】
図40~45は、心臓10と同期してアクチュエータの制御を提供するシステムを示している。本明細書において使用するように、アクチュエータは、臨床医への視覚的、音声的又は触覚的フィードバック、自動化された針発射機構、あるいはアクチュエータが発射機構のロックを解除するまで臨床医が針を展開するのを防ぐ手動操作針展開に係る実施例におけるロックアウト機構などの、心周期における事象によってトリガされる制御信号に応答して起動されるものを指す。
【0218】
そのようなシステムの全体が図40に示されている。図示のシステムは、心周期212を感知するための構成要素、感知された心周期218に応答してアクチュエータのトリガパルスを生成するための構成要素、心周期232内の指定された時間にトリガパルスの前縁を配置するための構成要素、心周期234の間に発生するトリガパルスの幅を定義するための構成要素、並びにトリガパルスに応答して、及び定義された幅222に応答して一定期間、アクチュエータの点弧を制御するための構成要素を含む。
【0219】
特に、心電図(ECG)ユニット212は、心周期を感知し、ECG信号216を提供するように、患者の心臓10に電気的に接続される。ECGユニット212は、典型的には患者の胸部に取り付けられた表面取り付け電極及び内部又は腔内電極を含む心臓信号を感知するための任意の既知の方法で心臓に接続され得る。代替例として、感知接続は、電気信号を伝導するようにカテーテル332を通って延びる一つ又は複数の電気リードの提供あるいはカテーテル332の遠位端部におけるセンサ(例えば、圧力センサ)又は電極の操作などを介して、カテーテル332と一体的に組み込まれ得る。電極は、面接触が使用される単極構造であってもよいし、双極(バイポーラ)構造であってもよい。電気リードは、カテーテル332を通って近位方向に延在し、次に、ECGユニット212に取り外し可能に接続され、感知信号216を伝達する標準的な電気コネクタで終端し得る。
【0220】
信号216は、トリガジェネレータ218に送られる。トリガジェネレータ218は、トリガパルス220をアクチュエータ点弧回路222に提供する。アクチュエータ点弧回路222は、針を発射するか又は臨床医が針を時期尚早に発射するのを抑制する障壁を取り除くなど、アクチュエータ224に電圧を加える。
【0221】
ECG信号216の心拍サイクルにおけるトリガパルス220の位置は、パルス位置決め回路232によって決定される。パルス220の幅及び心拍サイクル中の持続時間はパルス幅回路234によって決定される。トリガジェネレータ218及びパルス位置決め回路232及びパルス幅回路234は、PC又はマイクロプロセッサ236に追加のボードとして含まれ、この場合、システムは、コンピュータキーボード及び適切なソフトウェアを介して制御され得る。PC236及びECG212は、別個のモニタを有するか、あるいはECG及びトリガパルス220に関する情報の両方を表示する単一のモニタ238を有する。
【0222】
トリガジェネレータ218は、マーカパルス252を提供するマーカパルス回路250と、マーカパルス252に応答してトリガパルス220を生成するトリガパルス回路254と、を含んでいてもよい。代替例として、マーカパルス回路250はECG自体に含まれる。
【0223】
これは、図44を参照することにより、より詳細に理解され得る。ここで、ECG信号216は、波形Q、R、S及びTを含む一連の心拍周期256a、256b、256cからなるとみることができる。波形Rが事前に選択された閾値258を横切ると、マーカパルス252a、252b、252cが生成される。次に、トリガパルス回路254によりトリガパルス220a、220b、220cが生成される。各トリガパルス220の前縁260の位置及び全幅262は、パルス位置決め回路232及びパルス幅回路234によって決定される。トリガパルス220に応答して、図44に264a、264b、264cとして示した発火パルス264はアクチュエータ224に電圧を加えるように生成される。
【0224】
図42はアクチュエータ点弧回路222を示している。アクチュエータ点弧回路222は、アクチュエータユニット224におけるアクチュエータレーザ電源272(関連する場合)に対するトリガ回路220の給送を抑制するゲート270を含む。ゲート270の抑制効果は、オペレータがスイッチ274を作動させると実現する。しかし、トリガパルス220は、アーミングスイッチ278の動作によって実現する抑制効果を有するアーミング回路276によって抑制される。アクチュエータ電源272に対するトリガパルス220の給送に対するこの二重のロックにより、アクチュエータの点弧が真に望まれており偶発的ではないことが保証される。したがって、オペレータは、アーミング回路276を有効にするように、アーミングスイッチ278を操作することによりシステムを最初に作動可能にしなければならない。次に、その時だけ、オペレータは、スイッチ274を作動することにより、ゲート270を介して次に発生するトリガパルス220をアクチュエータ電源272に渡す。トリガ信号をQRS波と同期させるための適切な設計の詳細は、1993年11月16日に出願された、ワフルストロム(Wahlstrom)らの米国特許第5,674,217号に開示されている。その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0225】
(溶融性縫合部)特定の実施例では、開示されたシステムは、望ましい引張強度及び比較的低いクリープのために、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又は発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)縫合部を使用し得る。しかし、PTFE及びePTFE製の縫合部は、切断又は溶融によって容易に切断され得ない。
【0226】
この課題を克服するため、本開示のいくつかの実施例は、縫合部の少なくとも一部が溶融可能である縫合部に関する。いくつかの実施例では、縫合部は、縫合部の遠位端部が溶融可能な縫合部材料を含み、縫合部の近位端部が非溶融性の縫合部材料である二成分縫合部とし得る。いくつかの実施例では、縫合部の遠位部分は、縫合部の全長の50%未満からなる。他の実施例では、縫合部の近位端部は、縫合部の全長以上からなる。他の実施例では、二成分縫合部は、溶融可能な縫合部の一部を含み、溶融性部分は、溶融可能領域のいずれかの側に非溶融性の縫合部材料を含む相対的に小さな溶融可能領域である。溶融可能領域は、移植された人工腱索(prosthetic chordae)の引張強度又は耐クリープ性に影響を与えないように、縫合部の位置に配置される必要がある。二成分縫合部を使用する場合、溶融性部分と非溶融性部分との間の接合部は、縫合部の強度に影響を与えないように、縫合部が結ばれる点又は縫合部ロックの位置の近傍に配置されるべきである。人工腱索の移植後、心臓が正常に機能している間は、溶融可能な縫合部に全く張力が加わっていないか、縫合部の相対的に小さな部分に張力が加わっている必要がある。僧帽弁逆流を矯正するために張力が加えられたときに縫合部が崩壊(破断)しないように、張力を加えるステップ中に医師が縫合部に十分な張力を与えることができるように、二成分縫合部は、縫合部の全長に亘って、特に溶融性部分と非溶融性部分との任意の境界面(接合部分)で十分な引張強度を有する必要がある。
【0227】
図46は、一実施例に係る心臓の概略側面図であり、後部僧帽弁及び前部僧帽弁(符号なし)によって隔てられた左心房3301及び左心室3302を示している。本実施例では、綿撒糸3303は、心室側の弁尖に固定されており、非溶融性縫合部3304の一部が、綿撒糸から左心房3301に延在し、2つの弁尖の間を通って左心室3302に延びている。左心室3302において、組織アンカ3305はらせん状アンカ3306により心臓組織に固定されている。非溶解性縫合部3308は、結び目3307を介して非溶解性縫合部3304に接合されている。溶融性縫合部3309は、切断された後の縫合部の一部のみが示されており、溶融性縫合部の残りの遠位端部は、カテーテルを通して後退している(図示せず)。本実施例では、鼓動する心臓による張力は縫合部3304、3308に全て加わっており、溶融性縫合部3309には実質的に張力が加わっていない。縫合部の遠位端部の長さはできるだけ短くする必要がある。縫合部3304、3308の一方の遠位部のみを図示していることに留意されたい。
【0228】
システムは縫合部カッターをさらに備える。一つ又は複数の縫合部に張力が設定され、僧帽弁逆流が矯正又は最小化されると、溶融性縫合部を溶融させて、縫合部を切断するために、一つ又は複数の縫合部の遠位端部に亘って配置されたカテーテルを通して縫合部カッターを前進させることができる。溶融性縫合部の遠位端部は、患者から取り除かれるようにカテーテルを通して後退される。一つ又は複数の縫合部の各々は、一度に1つが切断され、あるいは、2つ以上の縫合部が一度に溶融される。縫合部カッターは、熱源、例えば、コイルを含み、このコイルは、コイルに近接する温度が溶融性縫合部の溶融温度を超えて上昇するようにコイルを加熱するために電圧が加えられる。
【0229】
図47は、縫合部カッター3310が、カテーテル(図示せず)を通って、縫合部の遠位端部3311に亘って縫合部ロック3312まで前進する一実施例を示している。弁尖綿撒糸3303に接続された縫合部及び僧帽弁逆流を最小化又は矯正するために張力がかけられたアンカ3306に接続された縫合部は、心臓が正常に機能している間に縫合部に張力が加えられたときに、縫合部が縫合部ロック3312を通って移動できないように、縫合部ロック3312に固定(クランプ)される。縫合部カッター3310は、加熱源、例えば、ヒータコイル3315と、ヒータコイル3315と同軸であり、ヒータハウジング3316を含み、ヒータコイルの外径よりも大きい内径を有する、心臓構造を熱から絶縁するための短い管と、血液がカテーテルに入るのを防ぐハイポチューブ3317と、ヒータコイルに電気エネルギーを供給して溶融性縫合部の融点を超える温度を提供する絶縁導体3318と、を含む。ヒータコイルへの電気エネルギーの供給は、縫合部カッターを所定の位置まで移動したときに医師によって行われ、縫合部の切断後に医師によって停止される。図47では、非溶融性縫合部(符号なし)は、縫合部ロックを越えて(縫合部カッターの方向に向かって)延びており、縫合部の溶融可能部分は、縫合部カッターのコイルと同軸でコイルの内径の内側に配置されている。このように、一つ又は複数の縫合部の遠位部分が除去されると、縫合部の端部又は尾部の相対的に短い部分だけが縫合部ロックを超えて延在し、弁尖及び心室アンカまで延在する縫合部の残りの部分は非溶融性縫合部であり、縫合部ロックにしっかりと固定されたままとなる。
【0230】
溶融性縫合部成分は、ポリオレフィン、ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリグリコリド/L-ラクチド、ポリエチレンテレフタレート、シリコーン、コラーゲンなどのアミノ酸タンパク質及びこれらの組み合わせを含む適切な溶融性組成物を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例では、縫合部の一部は、縫合部又は溶融可能領域の溶融可能部分として前述したポリマーのいずれか1つを用いて溶融可能となる。縫合部の非溶融性部分は、PTFE又はePTFEとし得る。
【0231】
(縫合部ロックガイド)前述の実施例は経カテーテル僧帽弁腱索修復の効果的なメカニズム、例えば、人工腱索の移植及び効果を提供する。以下の実施例は、付加的な利点を提供するために上記の概念の多くに基づいている。例えば、心臓の正常な機能は、僧帽弁腱索修復システムに周期的な動きと負荷を及ぼす原因となる可能性がある。特に、心臓の通常の圧縮サイクルの結果、縫合部ロック又は他の構成要素(例えば、縫合部)が振動するか、あるいは心室内を移動する可能性がある。この動きを図48に示す。矢印4180、4182は、それぞれ、縫合部の動き及び縫合部ロックの動きをそれぞれ示している。
【0232】
縫合部及び縫合部ロックの振動運動は、縫合部、特に縫合部ロックと縫合部の接合部における過度の摩耗の一因となる可能性がある。結果として生じる摩耗は、最終的には、人工腱索の早期の劣化及び破損(破断)をもたらす虞がある。特に、あるシステムでは、縫合部は、例えば、長手方向に沿って縫合部ロックを通る。僧帽弁の弁尖とアンカを接続する縫合部は、縫合部の一端から延びている。縫合部ロックの重さにより、縫合部ロックの他の端部が直交方向に対して僅かに引き下げられ、この角度の動きにより、縫合部を縫合部ロックに対して押し付ける。縫合部ロックが鋭角をなす場合、この角度により、縫合部が時期尚早に破断される(破損する)原因となり得る剪断力がもたらされる虞がある。例えば、図49は縫合部ロック4206を示しており、縫合部ロック4206の向きにより、縫合部4211が縫合部ロック4206の鋭角に対して配置される。縫合部4211及び縫合部ロック4206の移動中に、鋭角は、縫合部4211に剪断力をもたらす。縫合部4244は、同様の剪断力を受け得る。これらの剪断力は、矢印4202で示すように、縫合部ロック4206の回転運動によって増幅され得る。
【0233】
さらに、縫合部に対する張力が増加すると、例えば図50に示すように、縫合部ロックが縫合部に略直交する方向に回転する傾向がある。この動きは、他の動きの間の縫合部ロックの質量及び結果として生じる慣性に加えて、例えば「鞭打ち」運動の一部として、縫合部に高い衝撃力を加える。状況によっては、粘弾性特性のために縫合部が粉々になる可能性がある。したがって、縫合部ロックの動き(例えば、アンカに対する)は、僧帽弁腱索修復システムの潜在的な障害の付加的な原因となり得る。
【0234】
さらに、縫合部に対する張力の変化は、人工腱索の長さを変える可能性があり、これは、例えば、MRの解決において、人工腱索の有効性に悪影響を与える可能性がある。例えば、図49,50に示すように、縫合部に対する張力が低下する又は除去されると、縫合部ロック4206は、縫合部4211、4244に対して特定の配向をとる。この状況において、人工腱索は、例えば、弁尖(縫合部4244が弁尖に結合されている)と心室組織(縫合部4211がアンカ4202に固定されている)との間で測定した場合、特定の長さを有する。事実上、縫合部の一部(例えば、縫合部4211)は、縫合部ロック4206の周囲に巻かれ、人工腱索の全長には寄与していない。しかし、張力が縫合部に加えられると、その張力により、図50に示すように、縫合部ロック4206が回転する。その結果、以前に縫合部ロック4206の周囲に巻かれた縫合部4211の部分は、縫合部ロック4206から引き離され、これに対応して人工腱索の長さが増加する。ある状況では、状況によっては、この増加は約0.10mm~0.30mmであり、場合により0.50mmである。いくつかの実施例では、変化量は、縫合部ロック4206の幅及び縫合部ロック4206の回転角に依存する。状況によっては、これらの長さの変化により人工腱索の有効性が低下し、医師による人工腱索の再調整か又は人工腱索の再取り付けが必要になる。
【0235】
本開示の実施例は、これらの問題のいくつか又は全ての影響を軽減するとともに、人工腱索の有効性を改善し、及び/又は実施の容易さを増大させる付加的な利点を提供するように設計されている。例えば、いくつかの実施例は、縫合部ロック及び他のシステムの構成要素に対する縫合部の動きを低減又は排除するように設計された経カテーテル僧帽弁腱索修復システムを含む。さらに、特定の実施例は、心室内における拘束されていない縫合部の量を減少させるように作用する。いくつかの実施例は、鞭打ち効果を減少可能な人工乳頭筋を組み込んだ人工腱索を提供する。
【0236】
特定の実施例は、アンカに対する縫合部ロックの動きを制限又は排除するように設計されている。また、これらの実施例は、少なくともアンカ近傍の場所で、アンカに対する縫合部の動きを制限又は排除する。その結果、これらの実施例は、縫合部の摩耗を減少させ、僧帽弁腱索修復システムの寿命を延長させる。
【0237】
いくつかの実施例において、経カテーテル僧帽弁腱索修復システムは、縫合部ロックの動きを制限する縫合部ロックガイド(例えば、ソケット又はスリーブ)とも呼ばれる保持部材を使用して、人工乳頭構造を形成する。そのような縫合部ロックガイドの例は、図2A,2Bを参照して前述したように、管状スリーブ78の形態をなしていた。縫合部ロックに対する縫合部の動きも縫合部ロックの近傍で拘束され、これにより、縫合部の摩耗が減少する。いくつかの実施例では、経カテーテル僧帽弁腱索修復システムは、アンカに対する縫合部ロックの動き及び縫合部ロックに対する縫合部の動きを制限する、アンカソケットと呼ばれる縫合部ロックガイドを含む。
【0238】
本明細書における実施例は、約8億サイクル又は約20年に亘って完全性を維持するように設計された人工(装具)システムを提供することができる。最低4億サイクル又は約10年間持続し得る人工腱索を開示している。これらの人工腱索は、4億サイクル後、過度の構造的損傷及び/又は機能障害なしに、すなわち、穴、裂け目、全体的な層間剥離、切断、ほつれ、不完全なリーフレット接合、過度の逆流などが生じることなく、さまざまな状況や環境下で機能する。
【0239】
図51,52は、本開示のいくつかの実施例に係る経カテーテル僧帽弁腱索修復システム4300を示している。このシステム300は、経カテーテルデリバリシステムを使用して体外循環なしに、拍動する心臓に展開された1つ又は複数の縫合部又はテザー(tether)を使用して、一つ又は複数の人工腱索を提供する。これらの実施例は、保持部材又は拘束部材を使用することにより、時間の経過に伴うアンカ縫合部又はテザーの摩耗を減少させる。いくつかの実施例では、保持部材又は拘束部材は心外膜に配置された固定装置又はアンカに固定されたステント状又はステントグラフト状のソケットを含む。前述したシステム4300の構成要素を給送するため、前述した及び/又は国際出願PCT/US2017/069046及び国際出願PCT/US2019/021480に開示されたデリバリシステム及び技術を使用することができる。これらは参照により組み込まれる。
【0240】
図51,52は、アンカ4302、保持部材4304及び縫合部ロック3406を示している。本明細書のいくつかの実施例では、保持部材4304は、本開示の特定の態様において図2A,2Bを参照して説明したスリーブ78又はソケットと同様であるソケット又はスリーブである。他の実施例では、保持部材は、ピン、フック、クラスプ(留め具)、爪、キャッチ、バックル、縫合部などであり得る。アンカ4302は、部分的又は全体的に、前述した上記及び/又は国際出願番号PCT/US2017/069046又は国際出願番号PCT/US2020/021480に開示されたアンカのいずれかであり得る。図51,52には、縫合部4308及びアンカ縫合部4310が示されている。図51,52には2つの縫合部4308を示しているが、1つの縫合部のみ又は2つ以上の縫合部を使用してもよい。例えば、前述した及び/又は国際出願番号PCT/US2017/069046又は国際出願番号PCT/US2020/021480におけるシステム又は技術を使用して、例えば綿撒糸を使用して、縫合部4308が僧帽弁の一つ又は複数の弁尖に結合され得る。したがって、縫合部4308は綿撒糸縫合部と呼ばれる。アンカ4302は、心室組織を係合させ、保持部材4304は、縫合部ロック4306及び縫合部4308、4310を受け、これらを固定することができる。
【0241】
縫合部ロックガイド又は保持部材4304は、いくつかの実施例では、縫合部4308及び/又は縫合部ロック4306の動きを制限する一方で、人工腱索の一部としての縫合部4308の設置、調整及び最終的には操作を容易にする。例えば、いくつかの実施例では、保持部材(縫合部ロックガイドとも呼ぶ)4304は、縫合部ロック4306と選択的に結合及び分離されるように構成される。縫合部ロック4306に結合されると、保持部材4304は、心周期中の滑りを防止するのに十分強い固定力(例えば、非限定的である最大約1N、1.5N、2.0N、2.5N、又は3Nの力)を提供し、それでもなお、医師が縫合部4308を引張って、縫合部ロック4306を変位させることなく、縫合部4308を締めたり緩めたりすることを可能にする。他の実施例では、保持部材4304は、縫合部4308及び縫合部ロック4306を固定するように設計され、縫合部を調整する場合、医師は、保持部材4304から縫合部ロック4306を取り外し、縫合部4308を調整し、次いで、縫合部ロック4306を保持部材4304に再挿入する。保持部材4304から縫合部ロックを取り外すことは、特定の実施例では、より大きな力、例えば、約6N~約9Nを超える力、又はいくつかの実施例では、10Nを超える力を必要とする。つまり、非限定的な実施例では、保持部材4304は、約4.5N、5N、5.5N、6N、6.5N、7N、7.5N、8N、8.5N、9N、9.5N、10N、10.5N又は11Nの力を含む、約4Nから少なくとも10Nの力に抵抗する保持力を縫合部ロックに及ぼすように構成される。
【0242】
保持部材4304の結果として、縫合部ロック4306は、アンカ4302との位置関係を維持し得る。例えば、心臓組織が心周期中に移動するとき、保持部材4304は、縫合部ロック4306に加えられる変位力に抵抗する(例えば、縫合部4308を介して)。いくつかの実施例では、保持部材4304は、縫合部ロック4306に加えられた力をアンカ4302に伝達する。変位力は、最大約1Nの範囲であってもよく、場合により、変位力は約1.5N又は最大約3Nであってもよい。
【0243】
いくつかの実施例では、保持部材4304は、血管グラフトチューブを反転させることによって形成されたソケットである。保持部材4304は、拘束力を提供しながら、縫合部ロック4306が保持部材4304に挿入され得るように半径方向に適合可能に設計されている。また、保持部材4304は、軸方向の剛性を有し、耐摩耗性である。軸方向の剛性により、縫合部ロック4306は、座屈なしに保持部材4304に挿入され得る。耐摩耗性は、PTFE-PTFEの相互作用によって最小限となる。
【0244】
例えば、図51,52に示す実施例では、保持部材4304は、縫合部ロック4306及び/又は縫合部4308を受けて固定するチャンバを画定する内側面4330を含む。いくつかの実施例では、保持部材4304は、縫合部ロック4306を収容するのに十分に柔軟であり、縫合部ロック4306が保持部材4304に挿入された後でも縫合部ロック4306に対する縫合部4308の調整を可能にする材料から形成される。いくつかの実施例では、保持部材4304は、縫合部ロック4306が挿入されて保持部材4304と結合されることを許容するように半径方向に適合可能である。保持部材4304は、締まりばめ又は摩擦係合などを利用して、縫合部ロック4306と結合されてもよい。
【0245】
いくつかの実施例では、保持部材4304は、縫合部ロック4306の外側面、例えば、縫合部ロック4306の近位端部と遠位端部との間に位置する外側面の一部と結合される。例えば、保持部材4304は、縫合部ロック4306と結合するように縫合部ロック4306の反対側に接触する。他の実施例では、保持部材4304は、アンカ4302に対する縫合部ロック4306の移動を抑制するように3つ以上の点で縫合部ロック4306に接触する。図51,52において、保持部材4304及び縫合部ロック4306は円筒形であり、保持部材4304は、周囲に沿って縫合部ロック4306と係合する。図51,52では、保持部材4304と縫合部ロック4304との間の係合接触は、縫合部ロックの円周面に沿って長手方向に延びる。いくつかの実施例では、係合接触は、縫合部ロックの長手方向範囲の半分以上に亘る。他の実施例では、係合接触は、縫合部ロックの長手方向範囲の約20%~約98%に亘って延びている。他の実施例では、上記の範囲は、より制限されてもよく、例えば、約40%~約80%、50%~約70%又は前記範囲の組み合わせ(例として明示的に言及した範囲の部分的な範囲)としてもよい。
【0246】
また、図51,52は、保持部材4304が縫合部ロック4306及び縫合部4308を固定するときに、保持部材4304の材料を補強する支持部材4354又は支持コイルを図示している。いくつかの実施例では、アンカ4302及び支持部材4354は、統合され得る2つの別個の構造体である。他の実施例では、アンカ4302及び支持部材4354は、単一の材料で一体に形成される。支持部材4354は、ソケット4304に完全に挿入されたときに縫合部ロック4306の遠位面と実質的に整列する位置で終端するように、保持部材4304の長さに沿って延びてもよい。他の実施例では、支持部材4354は、縫合部ロック4306の上方部分と実質的に整列した位置であって、縫合部ロック4306遠位面(又は近位)の下方の位置で終端するように、保持部材4304の長さに沿って延びる。支持部材4354は、保持部材4304の外側面に接触する。接着材料4362は、支持部材4354及び保持部材4304の露出した外側面に沿って配置される。この接着材料4362は、アンカハブ4338の露出した外側面に接触してもよい。
【0247】
いくつかの実施例では、支持部材4354は、縫合部ロック4306が保持部材4304に入る際の折り畳みを防ぐために軸方向の剛性をもたらす。例えば、図51,52において、支持部材4354は、例えば、縫合部ロック4306が保持部材4304に押し込まれるときに、縫合部ロック4306により保持部材4304に加わる長手方向の力に抵抗する支持コイルである。この付加的な剛性は、保持部材4304を安定に保持し、これにより、容易に設置することができる。他の実施例では、保持部材4304は、他の材料から形成されてもよく、他の構成としてもよい。例えば、支持部材4304は、保持部材4304の外側面に沿って長手方向に延びる複数の金属片から形成されるか、又は保持部材4304の他の表面に沿って長手方向に離間された一つ又は複数の円筒形カフである。いくつかの実施例では、保持部材4354は、ニチノール又は同様の材料から形成された枝部である。
【0248】
いくつかの実施例では、支持部材4354は、縫合部ロック4306及び縫合部4308を保持部材4304内に維持する付加的な固定力をもたらす。例えば、図51,52では、支持部材4354は支持コイルである。いくつかの実施例では、縫合部ロック4306が保持部材4304に押し込まれると、支持コイルは直線的に圧縮され、縫合部ロック4306を収容するようにその内径が拡大される。支持コイルの圧縮力(例えば、元の構成及びより小さな内径への反動時)は、保持部材4304と縫合部ロック4306との間の摩擦力を増加させる。さらに、いくつかの実施例では、支持コイルは、保持部材4304から縫合部ロック4306を引っ張る力に応じて直線的に延びるように構成される。これは、支持コイルの内径をさらに減少させ、保持部材4304と縫合部ロック4306との間の摩擦力を増大させる。
【0249】
いくつかの実施例では、支持部材4354は、保持部材4304の遠位部分の下方の保持部材4304の中間部分で終端する。このように、支持部材4354上方の保持部材4304の遠位部分は、保持部材4304及び支持部材4354の組み合わせと比べて、縫合部ロック4306及び縫合部4308に相対的に小さな力を及ぼす。相対的に小さな力で、医師は、縫合部ロック306を保持部材4304から移動させることなく、縫合部4308の張力又は長さを調整することができる。
【0250】
換言すると、いくつかの実施例では、保持部材4304(単体又は支持部材4354と組み合わせ)は、心周期中に縫合部ロック4306を保持するのに十分な力(例えば、約0N~約4Nの力)をもたらす。医師により弁尖(例えば、縫合部4308の遠位端部を引く)及び/又は縫合部4308(例えば、縫合部4308の近位端部を引く)に加わる力により、医師が縫合部ロック4306に対して縫合部4308を調節することが可能となり、縫合部ロック4306は、縫合部ロック4306と弁尖との間の縫合部4308の長さを調整するために、保持部材4304内で固定されたままとなる。いくつかの実施例では、縫合部4308の移動に必要な力は1N~2Nである。したがって、保持部材4304(単体又は支持部材4354と組み合わせ)は、縫合部4308の調整中に、アンカ4302に対して縫合部ロック4306を固定する。縫合部ロック4306が縫合部4308と係合すると(以下に説明するように)、保持部材4304は、縫合部ロック4306を固定し、これにより、人工僧帽弁腱索の一部として縫合部4308が固定される。
【0251】
図51、52を参照して説明した実施例引き続き参照すると、保持部材4304は、略円筒形の構造を有する。保持部材4304は、ePTFEから(全体的又は部分的に)形成されたステント又はステントグラフト構造であってもよい。保持部材4304を形成する材料は、アンカ4302及び/又は人工腱索をさらに固定するように、組織の内部成長を促進する。保持部材4304を形成する材料は、繊維配向が保持部材4304の長手方向軸に実質的に平行な方向にあるフィルム微細構造を含む。このように、縫合部4308(例えば、ePTFE製の縫合部)の長手方向の動きは、縫合部の摩擦及び摩耗をさらに低減するように繊維配向と一致する。
【0252】
換言すると、いくつかの実施例では、保持部材4304は、ePTFEグラフト、エラストマー、他のポリマー又はこれらの材料の組み合わせからなる。例えば、いくつかの実施例では、保持部材4304は、ePTFE製のストレッチグラフトから構成され、カラム強度を高めるために緻密化され得る。いくつかの実施例では、保持部材4304は、部分的又は完全に生体再吸収性又は生体吸収性であり、例えば、組織と他の構成要素との間の生物学的線維性接着まで一時的な固定をもたらす。いくつかの実施例では、保持部材4304は、移植後の生体適合性及び線維化を増強するように設計されたメッシュを含む。保持部材4304の表面の全部又は一部は、その表面上及び/又その表面を通した組織の成長を促進するように構成され得る。一例では、この成長は、比較的粗くかつ/又は多孔性の表面を提供することによって達成される。別の例では、保持部材4304の材料に一つ又は複数の穴を開けて、瘢痕組織線維細胞がこれらの穴を通って成長することを可能にし、これにより固定が強化される。さらに、当技術分野で知られているタイプの生物学的コーティングは、治癒及び組織成長を促進するように保持部材4304の表面に含まれる。
【0253】
縫合部ロック4306は、保持部材4304内に固定され、アンカ4302と同軸に整列する。この構成は、少なくとも保持部材4304内において、縫合部4308に対する縫合部ロック4306の相対運動を最小化又は排除する。また、この構成は、縫合部ロック4306及びアンカ4302に対する保持部材4304内における縫合部4308の動きを最小化又は排除する。
【0254】
いくつかの実施例では、支持部材4354の長さは約0.5mm~3.0mmである。他の実施例では、支持部材4354の長さは、保持部材4304の長さの4分の1から保持部材4304の全長までの長さである。
【0255】
他の実施例(例えば、図2A、2B、55に示す実施例)は支持部材4354を含んでいない。いくつかの実施例は、ソケットの異なる部分を構築するために使用される材料及び/又は表面処理を変更することあるいは異なる箇所でソケットの大きさを変えることなど、他のメカニズムを介して種々の拘束力を付与する。さらに他の実施例は、ソケットの上方部分を拡張するか、あるいは上方部分における縫合部及び縫合部ロックに対する拘束力を低減させる外部ツールを利用する。
【0256】
図52に示すように、縫合部4308は縫合部ロック4306の外側面と保持部材4304の内側面との間に配置され得る。いくつかの実施例では、これらの面(全体又は一部)は、縫合部4308の固定を容易にするように設計されており、例えば、より高い摩擦係数を有する。他の実施例では、これらの面(全体又は一部)は、縫合部4308の容易な調節を容易にするように設計されており、より低い摩擦係数を有する。これらの表面の一方又は両方は、調節を可能にしつつ、縫合部4308の固定を補助する弾力性を有してもよい。
【0257】
縫合部ロック4306と保持部材4304との間に縫合部4308を固定することにより、付加的な利点をもたらされる。例えば、縫合部の近位部分(例えば、ソケット4306から医師又はカテーテルの近位端部へと延びる部分)に対する張力が変動するかあるいは除去された場合であっても、縫合部ロック4304及び保持部材4304は、縫合部の遠位部分(例えば、縫合部ロック4306から弁尖へと延びる部分)に対数張力を維持する。その結果、縫合部ロック4306が保持部材4304内に配置され、これにより縫合部4308が固定されると、縫合部の近位部分における張力変化(例えば、医師が誤ってカテーテルをぶつけた場合)は縫合部4308の遠位部分における張力に実質的に影響を及ぼさない。したがって、医師は、手術中に各縫合部4308の張力状態を維持する必要がない。さらに、いくつかの実施例では、他の縫合部の調節中に、1つの縫合部の遠位部分における張力を維持するために縫合部ロック4306及び保持部材4304が用いられ得る。
【0258】
図52に示すように、いくつかの実施例では、保持部材4304は上方拡大部4376及び下方拡大部4378を有する。これらの拡大部4376、4378は、縫合部ロック4306が保持部材4304に押し込まれたときの折り畳み又は座屈を防ぐために、付加的な軸方向剛性をもたらす。さらに、上方拡大部4376は、剛性を高め、放射線不透過性マーカを提供するバンドを組み込むことができる。いくつかの実施例では、上方拡大部4376は、ソケットの下方部分よりもさらに外側に(例えば、半径方向に沿って)位置する外側面を含む。上方拡大部分4376は、保持部材4304の下方部分よりもさらに外側に(例えば、半径方向に沿って)位置する内側面を有する。例えば、上方拡大部4376は、縫合部ロック4306の受け入れを補助するようにテーパ状(例えば、漏斗形状)をなす。
【0259】
縫合部4308、4310は、縫合部4308、4310は、生体適合性ポリマー縫合部材料などの外科用グレードの材料から形成されてもよい。このような材料の例として、2-0ePTFE(ポリテトラフルオロエチレン)又は2-0ポリプロピレンが挙げられる。いくつかの実施例では、縫合部4308、4310は弾性力を有していない。他の実施例では、縫合部4308、4310は、部分的又は完全に弾性力を有する。いくつかの実施例では、縫合部4308、4310は、部分的又は完全に生体再吸収性又は生体吸収性であり、例えば、組織と他の構成要素との間の生物学的線維性接着まで一時的な固定をもたらす。したがって、縫合部4308、4310は、生体適合性材料(例えば、ニチノール、ePTFE、PTFE、PET、又はポリエステル、ナイロン、シリコーン、コラーゲン又は他のアミノ酸タンパク質、ステンレス鋼、コバルトクロム、これらの組み合わせなど)から形成されてもよい。
【0260】
図51,52は、心臓組織4352に接触し、心臓組織にねじ込まれるときにアンカ4302の停止点として機能するアンカハブ4338を示している。いくつかの実施例では、アンカハブ4338は、(以下で説明するように)ブッシング4353に結合される上面を含む。アンカ4302及びアンカハブ4338は、摩擦係合などの機械的手段、化学的手段又は他の手段を介して一緒に接合される。アンカハブ4338は、保持部材4304に加わる力を(例えば、縫合部4308を介して)アンカ4302を介して心臓組織4252に伝達する。このように、アンカハブ4338は、心臓の動きにより生じる振動運動を減衰させるように、保持部材4304と連動する。
【0261】
いくつかの実施例では、アンカハブ4338の近位面は縫合部ロック4306(例えば、縫合部ロック4306のノーズ部)及び縫合部4308と接触する。アンカハブ4338(又は少なくともその近位面)は、アンカハブ4338と縫合部ロック4306との間に配置された縫合部4308を固定するように摩擦力を増大させるように設計された材料から形成されてもよいし、あるいは、アンカハブ4338と縫合部ロック4306との間に配置された縫合部4308の調節を容易にするように、摩擦力を低減する材料から形成されてもよい。アンカハブ4338は、PFA、シリコーン材料、PTFE材料、ePTFE材料、熱可塑性プラスチックなど(又はこれらの組み合わせ)から形成される。いくつかの実施例では、アンカハブ4338は、部分的に又は全体的に、金属、ステンレス鋼、チタン又はPEEKなどの硬質プラスチック又は他の十分に剛性の高い材料で形成される。縫合部ロックと相互作用するアンカハブ4338の近位面又はブッシングは、PFA、シリコーン材料、PTFE材料、ePTFE材料、熱可塑性プラスチックなど(又はこれらの組み合わせ)から形成される。
【0262】
いくつかの実施例では、ブッシング4353は、縫合部ロック4306の緩衝を緩和するためにアンカハブ4338に隣接して配置されている。ブッシングは、PFA又は別のポリマーから形成されてもよい。ブッシングは、縫合部4308に接触する表面を提供し、縫合部ロック4306のノーズ部分と組み合わせて、縫合部4308の固定を補助する。いくつかの実施例では、ブッシングは、ブッシングのPFA材料と縫合部4308のePTFE材料との相互作用により、縫合部の調節を容易にする。また、ブッシングは、特にアンカハブ4338が縫合部4308に対して(例えば、アンカハブ4338の材料及び/又は表面のために)より粗い表面を提示する場合、縫合部の摩耗を減少させる表面を提供し得る。ブッシング4353、又は縫合部ロックと相互作用するアンカハブ4338の近位面は、PFA、シリコーン材料、PTFE材料、ePTFE材料、熱可塑性プラスチックなどから形成される。
【0263】
いくつかの実施例では、ハブ(例えば、ハブ4338)の径は、支持部材4354の小径又は内径に対応する。どのように取り付けられているかに応じて、ハブ4338の長さは、支持部材4354をハブ4338に取り付け、ハブ4338にドライバを係合させるのに十分な長さである。保持部材4304がハブ4338に取り付けられる形状は、支持部材4354の小径よりも小さい。いくつかの実施例では、保持部材4304の外径は、支持部材4354の径よりも小さい。
【0264】
図52に示すように、アンカ縫合部4310は、アンカハブ4338のチャネル4336を通過し、アンカハブ4338の底面4340の近傍に固定され得る。いくつかの実施例では、チャネル4336は、(例えば、アンカ縫合部4310の端部に形成された結び目をアンカ縫合部4342の下方に捕捉することによって)アンカ縫合部4310を固定するボトルネック部4342を含む。他の実施例では、アンカ縫合部4310及びアンカハブ4338は、摩擦嵌合などの機械的手段、化学的手段又は他の同様の手段によって互いに結合される。
【0265】
縫合部ロック4306は、本明細書に記載し、かつ/又は国際出願PCT/US2017/069046及びPCT/US2019/021480に開示された縫合部ロックの特徴を有していてもよい。縫合部ロック4306は、摩擦係合又は締まりばめを提供するように保持部材4304の円筒形チャンバに対応する円筒形の外側面を有する。縫合部ロック4306は、アンカ縫合部4310及び縫合部4308を選択的に固定するロック機構(例えば、内部ロック機構)を有してもよい。図示した縫合部ロック4306は、張力が加えられたときに縫合部が押し付けられる丸みを帯びた面を提供するノーズ部分4370を含む。このように、縫合部ロック4306は、縫合部4308を擦り切れさせる虞のある鋭いエッジを回避する。いくつかの実施例では、ノーズ部4370は、例えば、PFA又は縫合部の摩耗を低減するように設計された他の材料から形成される。
【0266】
縫合部ロック4306は、保持部材4304の円筒形チャンバに入るまで、アンカ縫合部4310を下って移動する。保持部材4304は、縫合部ロック4306にいくらかの半径方向の抵抗をもたらすが、縫合部ロック4306を受けるように半径方向に適合する。いくつかの実施例では、縫合部ロック4306が最も低い位置にある(すなわち、ブッシング4353を押すことを含む、ソケット4304の端部まで下がる)場合でも、縫合部4308を調整することができる。例えば、縫合部4308は、縫合部ロック4306が保持部材4304の外側にある間、最も容易に調節される。しかし、縫合部ロック4306が保持部材4304に入った後でも、縫合部4308を依然として調節することができる。いくつかの実施例では、縫合部ロック4306が最も低い位置にあるとき、縫合部4308は、PFAブッシング4353と縫合部ロック4306のPFAノーズ4370との間に挟まれる。いくつかの実施例では、この段階では、より大きな抵抗を伴うが、依然として縫合部4308を調節することができる。例えば、縫合部ロックノーズ4370及びブッシング4353は、より容易な調節のために摩擦を低減する。他の実施例では、他に、ブッシング4353及びノーズ4370は、縫合部を固定し、さらなる動きを防ぐように設計されている。
【0267】
前述したいくつかの実施例では、アンカ4302は保持部材4304と予め組み付けられる。換言すると、アンカ4302及び保持部材4304は患者の体外で結合される。次いで、縫合部ロック4306は、患者の体内で(例えば、摩擦係合又は締まりばめを介して)保持部材4304に結合される。他の実施例では、保持部材4304及び縫合部ロック4306は患者の体外で結合される。次いで、保持部材4304及びアンカ4302は、患者の体内で(例えば、摩擦係合又は締まりばめを介して)互いに結合される。
【0268】
いくつかの実施例では、保持部材4304は拡張するように構成されている。例えば、いくつかの実施例では、保持部材4304は、縫合部ロック4306が保持部材4304に押し下げられると拡張し、縫合部ロック4306の周囲を再びシールして所定の位置に固定するのを補助する弾性材料から形成される。他の実施例では、保持部材4304は、拡張構造及び後退(収縮)位置を有する。保持部材4304は、拡張構造で給送され、縫合部ロック4306が所定の位置に配置されると、保持部材4304は、縫合部ロック4306を所定の位置に固定するように後退位置へと折り畳まれる。
【0269】
いくつかの実施例では、図53に示すように、アンカ4402は、長手方向の線4403を画定し、保持部材4404又は拘束部材(例えば、ソケット)は、アンカ4402により画定される長手方向の線4403と直交する方向へのアンカ4402に対する縫合部ロック4406の動きを拘束する。いくつかの実施例では、保持部材4404は、長手方向の線4403に直交する平面におけるアンカ4402に対する縫合部ロック4406の動きを拘束する。いくつかの実施例では、保持部材又は拘束部材(例えば、ソケット4404)は、長手方向の線4403に沿ったアンカに対する縫合部ロックの動きを拘束する。
【0270】
図53に示すように、拘束部材4404は、アンカ4402によって画定された長手方向の線4403及び/又は拘束部材4404によって画定された長手方向の線4405を、縫合部ロック4406によって画定された長手方向の線4407と実質的に整列させる。いくつかの実施例では、保持部材4404は、アンカ4402及び/又は保持部材4404と同軸関係で縫合部ロック4406を固定する。いくつかの実施例では、アンカ4402、保持部材4404及び/又は縫合部ロック4406により画定された長手方向のラインは、僧帽弁の弁尖に延びる。
【0271】
いくつかの実施例では、図54に示すように、保持部材4504は、縫合部ロック4506に対する縫合部(縫合部4511)の角運動を拘束する。図49,50を参照して前述したように、いくつかの実施例では、縫合部ロックは、心周期中の力に応答して回転し、その結果、縫合部ロックによって画定された長手方向の線に対する、縫合部ロックから弁尖に向かって延びる縫合部の部分により形成された角度が大きく異なる。アンカの上方でかつ弁尖に近い縫合部ロックの位置も角運動に寄与する。しかし、図54に示すように、保持部材4504、保持部材4504は、縫合部ロック4560を特定の方向で固定することによって、縫合部4511の角運動を抑制する。例えば、いくつかの実施例では、縫合部ロック4506から弁尖に向かって延びる縫合部4511の部分と、縫合部ロック4506の長手方向の線4522との間に形成される角度4520は、45°未満である。いくつかの実施例では、角度4520は、約-45°~+45°の範囲であり、これは2つの反対の方向では約0°~45°の範囲となる。この角度4520は、縫合部4511の前記部分及び縫合部ロックの長手方向の線4522を含む任意の平面に形成され得る。
【0272】
縫合部4511は心周期中に移動するが、保持部材4504は、角運動(角度4520の変化)を90°未満に制限することができる。いくつかの実施例では、角度変化は45°未満であり、他の実施例では、角度変化は、約40°、35°、30°、25°、20°、15°、10°、8°未満又約5°未満である。
【0273】
心室アンカと縫合部ロックとの間の角度変化を測定する方法について説明する。
【0274】
アンカと縫合部ロックとの間の角度変化は、例えば、以下のステップで決定される:
【0275】
1.心室アンカを引張試験機の片側に固定する。これは、シリコンパッドなどの心室の解剖学的構造をシミュレートするか、標準の引張試験機のクランプの顎部にクランプ(クランプで固定)することで実行され得る。
【0276】
2.引張試験機の反対側に人工腱索を固定する。これは、シリコンパッドなどの弁尖構造をシミュレートするか、標準の引張試験機のクランプの顎部にクランプ(クランプで固定)することで実行され得る。
【0277】
3.縫合部ロックを使用して、心室アンカと人工腱索を結合する。
【0278】
4.心室アンカ、人工腱索及び縫合部ロックを含むシステムに最低2Nの張力で負荷をかける。
【0279】
5.縫合部ロックの軸又は縫合部ロックの任意の線形特徴部と、心室アンカの軸又は心室アンカの任意の線形特徴部との間の角度を測定する(角度1)。
【0280】
6.心室アンカ、人工腱索及び縫合部ロックを含むシステムを、0N未満の負荷又はロードセルにシステムがぶら下がっている静的重量に相当する負荷にアンロードする。
【0281】
7.縫合部ロックの軸又は縫合部ロックの任意の線形特徴部と、心室アンカの軸又は心室アンカの任意の線形特徴部との間の角度を測定する(角度2)。
【0282】
8.角度1と角度2の差を計算する。
【0283】
人工腱索を設置する間、アンカ及び保持部材は、(例えば、カテーテルを介して)給送され、アンカは、心室組織に移植される。アンカ縫合部はアンカから延びている。次に、縫合部(例えば、綿撒糸縫合部)が一つ又は複数の僧帽弁弁尖に結合される。縫合部ロックは、アンカ縫合部及び綿撒糸縫合部を前進する。いくつかの実施例では、縫合部ロックと弁尖と間における綿撒糸縫合部の長さが人工腱索の(例えば、MRを減少させかつ/又は排除するように)適切な動作を保証するように、医師は、綿撒糸縫合部に対する縫合部ロックの位置を調節することができる。例えば、医師は、縫合部ロックと僧帽弁の弁尖との間に位置する縫合部の量を減少させるように、1つの縫合部の近位部分を引っ張る。
【0284】
しかし、特定の実施例では、縫合部ロックは制限されない。その結果、縫合部の調整(例えば、縫合部を引っ張ること)は、縫合部ロックを上方に動かし、これは、縫合部ロックと僧帽弁との間における縫合部の部分の張力に影響を与える。この問題は、複数の縫合部が縫合部ロックとともに使用される場合に悪化する可能性がある。1つの縫合部を調整すると、縫合部ロックが上昇し、他の縫合部の以前の調整が取り消される。
【0285】
例えば、縫合部は弁尖に取り付けることができ、縫合部ための可動プーリとして機能する縫合部ロックを通過する。具体的には、体外に位置する縫合部の端部を医師が引っ張ると、縫合部が移動する。しかし、縫合部の近位端部を引っ張ると、縫合部ロックが上方に移動することがあり、そのため、体外に位置する縫合部に対する医師の動きは、縫合部ロックと弁尖の間の縫合部の動きと1対1で対応しない。
【0286】
この問題は、複数の縫合部が単一の縫合部ロックを通過するときに悪化する可能性がある。例えば、医師は第1の縫合部を正しい長さに調整することができる。しかし、医師が第2の縫合部を調整し始めると、この動きより縫合部ロックが変位する。これは、第1の縫合部に悪影響を及ぼし、第1の縫合部を再調整するために医師の力が必要となる。これは第2の縫合部に悪影響を及ぼす可能性があり、付加的な調節が必要となる。
【0287】
縫合部ロックを係合させ後に医師が縫合部を切断すると、付加的な問題が生じる。縫合部を切断する前に、医師は縫合部の張力を維持し、これにより縫合部ロックがより高い位置に維持される。縫合部を切断すること(及び/又はカテーテルから縫合部ロックを切り離すこと)により、張力が解放され、縫合部ロックが下方に移動することがある。これは、人工腱索としての縫合部の有効性に影響を及ぼす可能性がある。医師は、縫合部(例えば、第2の縫合部を調節している間に第1の縫合部)の張力を維持する必要があり、そのためさらなる問題が生じる。例えば、カテーテルの不注意な動き(例えば、偶発的な衝突)により、縫合部ロックが動いてしまい、縫合部ロックと組織(例えば、弁尖)の間の縫合部の長さが変わる可能性がある。
【0288】
本明細書に記載したいくつかの実施例は、保持部材内に縫合部ロックを固定することにより前記の問題に対処するものであって、これにより、アンカに対して相対的に静止している縫合部のための旋回点が形成される。これは、医師による人工腱索の形成中に縫合部を調節する際に特に有益である。縫合部ロックをアンカに固定することにより(例えば、保持部材を用いて)、調節時における縫合部ロックの上方への動きを実質的に排除することができる。
【0289】
さらに、静止した旋回点を有することは、縫合部の近位部分の調節(すなわち、医師の近くにある縫合部の一部を引っ張ること)と、結果として生じる縫合部の遠位部分(すなわち、縫合部ロックと僧帽弁との間の縫合部の部分)の調節との間により直接的な相関関係をもたらす。特に、本明細書に記載した実施例の多くは、双方向であり正確な縫合部の調節を可能にし、この調節により、ガイド装置(例えば、カテーテル)の動きが例えば、弁尖と縫合部ロックとの間における縫合部の長さの変化に変化される。例えば、ガイド装置を1mm前方に動かすと、縫合部も1mm前方に移動する。これを「1対1の動作(1対1モーション)」と呼ぶ。当業者であれば本開示から容易に理解されるように、本明細書のいくつかの実施例は、様々な条件下で1対1の動作又はほぼ1対1の動作を可能にする。特に、参照により本願に組み込まれる国際出願PCT/US2017/062014及び国際出願PCT/US2019/021400は、縫合部を「押すことができる」ようにする機構を開示している。これは、堅い管状の構造体(すなわち、コイル)を縫合部に配置することによるものを含む。コイルによりもたらされる剛性により、心臓のガイドワイヤのように縫合部を押すことができる。この点に関し、修正された縫合部の動きは、ガイド装置(例えば、カテーテル又はコイル)の動きに「1対1」で追従する。
【0290】
換言すると、保持部材内に縫合部ロックを固定することにより、縫合部のための固定されたピボット点が形成され、これにより、体外に位置する縫合部に対する医師による動きが、縫合部ロックと弁尖との間における縫合部の動作と1対1の対応を有する。当業者であればすぐに理解されるように、状況により、例えば、非限定的な実施例において問題となっている性質及び程度が縫合部ロックの動きとは大きく異なる他の変化(例えば、縫合部の僅かな伸張又は縫合部ロックの小さな動き)により1対1の動作が略1対1の動作になる。例えば、前記動作の比(動作比)は、1:1から約1:0.95、1:0.90、1:0.85、1:0.80などであり、1:0.50まで変動する。
【0291】
縫合部ロックで固定された旋回点を形成することにより、付加的な利点が得られる。例えば、複数の縫合部が縫合部ロックを通過するとき、各縫合部は、他の縫合部に実質的に影響を及ぼすことなく独立して調節され得る。特に、保持部材内で固定された縫合部ロックで、第1の縫合部が正しい長さに調節され得る。縫合部ロックが第2の縫合部と一緒に動かないため、医師は、第1の縫合部の調節を妨げることなく、第2の縫合部の調節を開始することができる。
【0292】
さらに、いくつかの実施例では、第1の縫合部の一部は、縫合部ロックの外側面とソケットの内側面との間に位置している。医師が第2の縫合部を調節するときに、前記面によりもたらされる力が第1の縫合部の前記部分を所定の位置に保持する。この構成によれば、医師が第1の縫合部に対する外部張力を維持する必要がないため、付加的な利点がもたらされる。縫合部の張力を低減又は排除することにより、縫合部の伸長又は他の有害な影響を低減させることができる。
【0293】
さらに、縫合部ロックの位置を変化させることなく、かつ縫合部ロックと組織との間における縫合部の長さを変化させることなく、第1の縫合部を切断することができる。当業者であれば、この文脈において、位置の実質的な変化よりも小さいと見なされる僅かな動き(例えば、5/1000インチ未満又は5/100インチ未満)があるかもしれないことを理解されるであろう。
【0294】
さらに、いくつかの実施例では、縫合部ロックは、ターゲット領域の組織の近傍(例えば、心臓の頂点の近傍)に位置する固定された旋回点として機能し、これにより、取り付けが容易となる。
【0295】
いくつかの実施例では、複数の縫合部は、組織(例えば、一つ又は複数の弁尖)に結合され、縫合部ロックを通過する。各縫合部は、縫合部ロックと組織の間に延在する長さを有する。縫合部ロックが保持部材に配置されると、縫合部が所定の位置に保持される。第1の縫合部を調節する(例えば、縫合部ロックと組織の間における第1の縫合部の長さを減少させる)必要がある場合、縫合部ロックを保持部材から取り除き、医師は、長さを減少させるように第1の縫合部を引き寄せる。しかし、この調節中、縫合部ロックの位置は相対的に静止したままである(例えば、縫合部ロックの動きは1mm以内である)。そのため、医師は他の縫合部をさらに調節したり再調節したりする必要はない。いくつかの実施例では、縫合部ロックが保持部材内にある間、縫合部を調節することができる。保持部材は、縫合部ロックを固定し、縫合部の調節中の縫合部ロックの動きをさらに低減又は排除する。例えば、縫合部ロックの移動は、約0.5mm以下である。
【0296】
いくつかの実施例では、保持部材で係合した縫合部ロックは十分に緩んでいるため、縫合部(例えば、ePTFE製の腱索)に加わる弁尖の力は、縫合部ロックと保持部材との間の境界を通り、縫合部ロックのノーズ部の周囲に亘り、縫合部ロックのオープンクランプ機構を通って、縫合部アセンブリの押し込み可能な部分に戻るように縫合部を引っ張るのに十分な力である。この状況での操作可能な力は、0N~約2Nの範囲で変動する。いくつかの実施例では、前記力は、0.15N~1.50Nである。
【0297】
いくつかの実施例では、医師は、縫合部ロックと弁尖との間における縫合部の長さを短くするように、縫合部の外側部分を引っ張る。医師が縫合部ロックと弁尖の間における縫合部の長さを長くしたい場合、医師は縫合部の外側部分の張力を解放し、心臓の自然な心周期の間における弁尖の動きにより縫合部が引っ張られる。いくつかの実施例では、縫合部ロックは、保持部材の第1の部分に配置される。この位置では、縫合部に作用する力は医師及び弁尖が縫合部ロックと弁尖の間における縫合部の長さの変化をもたらすほど十分に小さい(例えば、0N~2Nの力)。同時に、保持部材によりもたらされる固定力は、前記調節中に縫合部ロックが動くのを防止するか、縫合部ロックの動きを約0.5mmに制限する。
【0298】
いくつかの実施例では、縫合部ロックと対応する組織との間における縫合部の長さが正される(例えば、MRが臨床的に減少又は排除される)と、縫合部ロックは、保持部材の第2の部分に押し込まれる。この位置では、保持部材は、縫合部ロック及び縫合部により大きな固定力を適用する。その結果、縫合部は、弁尖によりもたらされる力によって縫合部ロック内で移動しない(又は僅かに移動する、例えば、約0.5mm)ため、縫合部ロックと組織との間における縫合部の長さが一定のままとなる(又は縫合部による伸張の量だけ移動する、例えば約10%)。この時点で、医師は、人工腱索によりもたらされる張力及び配置の測定分析を行うことができる。分析が満足する結果であれば、医師は縫合部を固定するように縫合部ロックを係合させる。この構成において、人工腱索は、少なくとも4億サイクル、すなわち約10年あるいは800万サイクル又は約20年の間使用され得る。
【0299】
いくつかの実施例では、縫合部は、保持部材による拘束力のみを使用して、単体で又は縫合部ロックの外側面との組み合わせで永久的に固定される。例えば、縫合部ロックは、内部のクランプ又は拘束機構を欠く場合があり、保持部材の内側面とともに、心臓の自然な心周期から生じる力からのさらなる動きに対して縫合部を固定する外側面を提供する。
【0300】
いくつかの実施例では、保持部材により、縫合部ロックは様々な大きさの縫合部と連動(協働)し得る。例えば、縫合部ロックが保持部材の第1の部分に挿入されると、より大きくかつ/又はより厚い縫合部が固定される。また、より小さな縫合部は、例えば、縫合部ロックを保持部材に深く押し込むことによって固定され得る。
【0301】
本開示の実施例は、縫合部を容易に調節可能なさらなる利点をもたらす。摩擦は、縫合部の寿命及び有効性だけでなく、縫合部の調節を困難にする可能性がある。いくつかの実施例は、テーパノーズ部を有する縫合部ロックを使用することによりこの問題に対処する。例えば、図52に示されているように、縫合部ロック4306の遠位端部はテーパノーズ部4370を有する。縫合部ロック4306の外側面は円筒形であり、同様に、ノーズ部4370の外側面は、ノーズ部4370の遠位端部に向けて半径が減少する円筒形を有する。
【0302】
ノーズ部4370の前面は、テーパノーズ部のリングによって囲まれた内側開口部を有する。いくつかの実施例では、内側開口部の径は1mm~3mmである。リングの厚さは0.5mm~2.0mmである。
【0303】
テーパノーズ部4370は、縫合部ロック4306の保持部材4304への挿入を容易にする。いくつかの実施例では、ノーズ部4370は、テーパが鋭く(より急に先細りになっており)、他の実施例では、ノーズ部4370のテーパは穏やかである(あまり急に先細りになっていない)。さらに又は代替例として、保持部材4304は、縫合部ロック4306を保持部材4304の内側部分に案内するように外側に向けてテーパ状をなす近位部分を含む。例えば、保持部材4304の近位端部は、保持部材4304の中間部分よりも半径がより大きくてもよい。前述のように、縫合部ロック4306を保持部材4304に案内するように、アンカ縫合部4310を使用してもよい。
【0304】
図52に示すように、ノーズ部4370の内側面は、長手方向の線に沿って前方部分から中間部分に向けて厚さが増加する近位部分を含む。中間部分の後、ノーズ部の厚さは遠位部分に向かって減少する。いくつかの実施例では、ノーズ部の近位端部は、縫合部ロック本体にスナップフィットするように構成されてもよい。
【0305】
双方向の調節を容易にするため、特定の実施例では、縫合部ロック及び保持部材を介して、縫合部にかかる摩擦力を確実に減少させる。例えば、ノーズ部の外形状(輪郭)は、縫合部を磨耗させる鋭いエッジを形成することなく、ノーズ部の周囲における縫合部の動きを容易にする丸みを帯びた面を提供する。さらに、ノーズ部の組成は、例えば、PFA又は縫合部とノーズ部との間の摩擦をさらに減少させる他の材料を含む。
【0306】
ノーズ部は、複数の縫合部を同時に収容するように構成され得る。同時に、テーパをなす外形状により、保持部材へのアクセスが容易になる。これらの両方の機能を利用するため、ノーズ部における開口部の大きさは、使用する縫合部の数に対応する。例えば、2つ縫合部を使用する場合、ノーズ部の開口部の径は1mmであり、4つの縫合部を使用する場合、ノーズ部の開口部の径は2mmである。一般的には、縫合部の数に対する径の比率は、縫合部あたりの約0.5mmである。いくつかの実施例では、複数の異なるノーズ部(例えば、異なる大きさの開口部を有するノーズ部)は、単一の縫合部ロック本体と交換可能に使用され得る。他の実施例では、縫合部ロックの大きさ(例えば、縫合部ロックの径)は、異なる数の縫合部に対応するために大きいか又は小さい。
【0307】
いくつかの実施例では、フィルム微細構造の原繊維の配向が、保持部材の長手方向軸と実質的に平行な方向に配向されたePTFE材料で形成される。このように、縫合部(例えば、ePTFE製の縫合部)の長手方向の動きは、縫合部の摩擦及び摩耗をさらに減少させるように、原繊維の配向に沿っている。例えば、いくつかの実施例では、保持部材(全体又は少なくとも内側面)は、ノード及び原繊維微細構造を有する実質的にモノリシックのePTFE製のカバーから形成される。ノードは保持部材の長手方向軸と実質的に直交するように配向され、原繊維は保持部材の長手方向軸と実質的に平行である。
【0308】
前述のように、保持部材は縫合部及び/又は縫合部ロックと係合する。いくつかの実施例では、縫合部をたるませるため、縫合部ロックを保持部材から外す必要がある。これにより、他の縫合部に対する1つの縫合部における張力の維持が簡単になる。これは、カテーテルを介して生じる長さの変化がなくなるためである。前記実施例では、縫合部をたるませるため、縫合部ロックは保持部材との締まりばめから外される。換言すると、いくつかの実施例では、複数の縫合部は、保持部材に挿入される縫合部ロックを通過する。その結果、縫合部は、縫合部ロックの外側面と保持部材の内側面との間における所定位置に保持される。医師が1つの縫合部を調節する必要がある場合、縫合部ロックは保持部材から取り外される。この段階で、問題の縫合部は、縫合部ロックを大きく上方に動かすことなく調節され得る。したがって、当該縫合部を調整しても、他の縫合部の張力は大きく変化しない。
【0309】
いくつかの実施例では、保持部材は、人工腱索の一部として人工乳頭筋として機能する。例えば、保持部材及び縫合部(並びにアンカ及び/又は縫合部ロック)の材料は、組織のカプセル化、組織の内部成長及び/又は特定の生物学的反応を促進するために選択される。
【0310】
図55は、他の実施例に係る経カテーテル僧帽弁腱索修復システム4600を示している。このシステム4600は、図51、52に示したものと同様の特徴を有する。しかし、本実施例では、保持部材4604は支持部材を含まない。代わりに、アンカ4602は、アンカハブ4638の周囲に延在し、保持部材4604の下面で終端をなしている。機械的結合又は接合4601は、保持部材4604をアンカハブ4638に固定する。アンカ4602及びアンカハブ4638は前述したように互いに結合され得る。図55において、保持部材4604の壁部は、図51、52におけるソケットの壁部より25%~100%厚い。より厚い壁部は、通過を可能にするのに十分な適合性を維持しつつ、縫合部ロック4606が保持部材4604に入るときの座屈を防ぐように軸方向の支持をもたらす。機械的結合又は接合により、アンカハブ4638は、アンカハブ4638に亘って延びる保持部材4604に固定される。
【0311】
いくつかの実施例は、経カテーテル僧帽弁腱索修復システムを用いた経カテーテル僧帽弁腱索修復の方法を含む。このプロセスの間、アンカ及びアンカソケットは、例えば、デリバリカテーテルを介して一緒に給送される。図56~58は、アンカ4702、ソケット4704及び縫合部ロック4706を給送する方法を示している。図56では、アンカ4702はソケット4704内に位置している。この構成では、アンカ4702及びソケット4704の双方は、カテーテルを通過し、(例えば、左心房を経由して)左心室に至る。いくつかの実施例では、アンカ4702がカテーテル又は他の組織に接触するか穿刺するのを防ぐように、アンカ4702はソケット4704内で完全に後退する(収容される)。ソケット4704が心室壁に対して配置されると、アンカ4702はソケット4704から組織へと前進する。アンカ4702がソケット4704から出てくるときに、アンカ4702を所定位置にロックするようにソケット取付装置4755がアンカハブ4738と最終的に接触するまで、ソケット取付装置4755はコイルスレッドを捕捉する。いくつかの実施例では、ソケット取付装置4755は、コイルが通過する1つのループ又は一連のループを備えた縫合部である。他の実施例では、ソケット取付装置4753はソケット4704の遠位端部におけるソケット材の延長部であり、この延長部は、コイルが通過する1つの穴部又は一連の穴部を有する。前記の双方の例では、穴部又はループを通るコイルの押し出しは、ソケット取付装置4753がハブ4738に対して固定されるまで、コイルを前進させる。
【0312】
図57は、アンカ4702が心室組織内に展開されるときのアンカ4702及びソケット4704を示している。ソケット取付装置4755は、ソケット4704に対して所定位置にアンカハブ4738(したがって、アンカ4702)を固定する。次いで、図58に示すように、縫合部ロック4706は、ブッシング4753に接触するまで、アンカ縫合部4710に沿ってソケット4704内を前進する。縫合部4708に正しく張力をかかると、縫合部ロック4706が作動して、縫合部4708及びアンカ縫合部4710を所定位置にロックする。縫合部ロック4706は、アンカ4702と同軸に整列し、縫合部ロック4706の外側面とソケット4704の内側面との間にピンで留められる縫合部4708と平行をなす。また、縫合部4708は、縫合部ロック4708の湾曲したノーズ部とブッシング4753との間にピンで留められる。
【0313】
図59、60は経カテーテル僧帽弁腱索修復システム4800の他の実施例を示している。このシステムは、図51、52に示したものと同様の特徴を有する。本実施例では、アンカ綿撒糸4860はアンカ縫合部4810に組み込まれる。縫合部ロック4806がソケット4804内に前進すると、アンカハブ4838と縫合部ロック4806との間にブッシングを形成するように、綿撒糸4860が畳まれる。縫合部ロック4806は、弁尖及びアンカ縫合部4810の残りの部分と結合された縫合部4808を選択的に係合する。
【0314】
図61は、高密度化されたePTFE4850から形成されたソケットを示している。いくつかの実施例では、ソケットはePTFEから形成される。ソケットは、チューブを折り返すことにより、2つの層に形成される。これにより、縫合部ロックがソケットに入るときに軸方向の圧縮及び折り畳みに抵抗するようにソケットが補強される。いくつかの実施例では、保持部材は、厚肉のグラフト材から形成される。軸方向の剛性を高めるため、厚肉のグラフト材は緻密化(圧縮)される。この例として、適切な厚さ及び密度を得るために巻かれた(丸められた)グラフト材を図61に示す。さらに、得られた2層構造により、緻密化された柔軟性が向上する。
【0315】
図62は、PTFE製ソケットの「巻かれた」端部4852を示す。いくつかの実施例では、ソケットはePTFEから形成される。マーカバンド4854は、チューブが巻かれる前にチューブの外側面に配置され、ソケットの上部における巻かれた2つの層の間にバンドが配置される。このバンドは放射線不透過性バンドである。いくつかの実施例では、保持部材は、他の部分と半径方向の剛性が異なる端部を含む。例えば、保持部材の近位部分は、半径方向の剛性を高くなるように形成され得る。いくつかの実施例では、図62に示すように、保持部材を形成するように巻かれるときに、マーカバンドはグラフト材の層間に配置される。このマーカバンドは半径方向の剛性を高め、保持部材のこの部分を放射線不透過性にする。いくつかの実施例では、マーカバンドは、PTFE又はePTFEからなる2つの層の間に保持され、PTFE又はePTFE構造へと高密度化される。
【0316】
図63,64は、アンカハブ5016と連動するように設計された、高密度化されたPTFEソケット5004を示している。いくつかの実施例では、ソケット5004は、ePTFEから形成される。高密度化されたPTFE又はePTFEソケット5004は、アンカハブ5016における対応する溝5072に嵌合する下方の延長部5070を含む。これにより、ソケット5004がハブ5072に固定される。放射線不透過性バンド5074はソケット5004の上部近傍に位置する。高密度化されたPTFE又はePTFEはアンカを保持し続けるように使用され得る。図63に示すように、PTFE又はePTFEをアンカの保持リングに押し込むことにより、アンカが所定位置に保持される。図64は、マーキングバンドが近位部分に組み込まれ、遠位部分がアンカ(図64に図示せず)を保持するように設計された高密度化部分を含む例示的な保持部材を示している。
【0317】
図65A,65Bは、血管グラフトチューブを反転させて外側壁及び内側壁を形成するソケットを示している。これにより、生体適合性のある材料からソケットが形成される。この材料は、縫合部の材料と同じであってもよく、これにより、縫合部ソケットに位置する場所での縫合部の摩耗が最小化又は低減される。ソケット面の原線維の方向は、摩耗を最小化するように、縫合部の原線維の方向と一致するように方向付けられる。
【0318】
前述した種々の人工腱索展開システムは、多くの異なる医療用途に使用され得る。上記の実施例によれば、縫合部ロックに対する縫合部の動き及びアンカに対する縫合部ロックの動きを低減又は排除することができる。例えば、いくつかの実施例では、アンカは、例えば、左心室の頂点近傍又は乳頭筋近傍の心臓組織に送られる。前述のように、アンカは左心房に進められた経中隔的カテーテル及び左心房及び僧帽弁を通して送られる。アンカはらせん状アンカであり、保持部材に結合される。いくつかの実施例では、アンカは、最初に保持部材内に送られ、保持部材から心臓組織に進められる。アンカ縫合部は、(例えば、アンカハブを介して)アンカに取り付けられる。次いで、弁尖アンカ(例えば、綿撒糸)が給送され、僧帽弁の弁尖に取り付けられる。いくつかの実施例では、綿撒糸は、弁尖の心房側から延びる綿撒糸縫合部とともに弁尖の心室側に位置する。他の実施例では、綿撒糸は弁尖の心房側に位置し、綿撒糸縫合部は弁尖の心室側から延びる。複数の綿撒糸及び縫合部は一つ又は複数の弁尖に配置されてもよい。
【0319】
特定の実施例では、人工腱索に影響を与えるため、縫合部ロックはアンカ縫合部及び縫合部上を進む。具体的には、縫合部の近位端部は、縫合部ロックにおける開口部を通って侵入し、縫合部ロックを通過する。縫合部ロックは、縫合部アンカにより案内されて保持部材に向かって前進する。縫合部ロックが放射線不透過性であり、保持部材が近位面の近傍に放射線不透過性バンドを含み得るため、医師は、保持部材に対する縫合部ロックの位置を確認するために画像技術を使用することができる。さらに、保持部材において放射線不透過性バンドを使用することにより、医師は、縫合部ロックが保持部材に完全に挿入されたことを確認することができる。
【0320】
特定の実施例では、縫合部ロックが保持部材に到達すると、医師は、新たな人工腱索に影響を及ぼすように縫合部ロックと弁尖との間の縫合部の長さを調節する。いくつかの実施例では、前記調節の一部又は全ては、保持部材における又は保持部材内における縫合部ロックで行われる。特定の実施例では、縫合部ロックが保持部材において相対的に一定の位置に維持されるため、縫合部の任意の動きは、縫合部ロックの遠位の縫合部の1対1の動作又は略1対1の動作となる。例えば、近位縫合部の動きと遠位縫合部の動きの比は0.5~1.0であり得る。
【0321】
いくつかの実施例では、この調節は、医師が縫合部ロックを所定の位置に保持し、縫合部を張力で保持した状態で、保持部材のすぐ外側の縫合部ロックを使用して行われる。他の実施例では、この調節は、保持部材(保持部材の近位部分又はアンカハブに隣接する保持部材の遠位部分のいずれか)における縫合部ロックを用いて行われる。前記実施例では、保持部材は縫合部ロックを所定位置に保持するが、縫合部が縫合部ロックを通してスライドできるようにする。医師は縫合部ロックを所定位置に保持する必要がない。
【0322】
さらに、いくつかの実施例では、保持部材の拘束力は、弁尖により加えられる力に対して縫合部を所定の位置に保持するのに十分であり、それでも医師からの引張り力に応答して縫合部を滑らせることができる。これらの実施例では、医師は、縫合部ロックを所定の位置に保持する必要はなく、また、各縫合部を緊張状態に保持する必要もない。代わりに、保持部材は、綿撒糸縫合部の遠位部分(すなわち、保持部材の遠位にあり、弁尖まで延びる綿撒糸縫合部の部分)の張力を維持する。これにより、医師は各綿撒糸縫合部を個別に調節することができ、カテーテルの不注意な動き(偶発的な衝突など)が縫合部に影響を与えることはない。この状況での医師による調節は一方向である(つまり、縫合部ロックと綿撒糸の間の縫合部の長さを短くする)。医師が縫合部ロックと綿撒糸の間の縫合部の長さを長くする必要がある場合、弁尖による動きが縫合部ロックを通して再び縫合部を引っ張るように、医師は縫合部ロックを縫合部から取り外す。
【0323】
縫合部適切に締められると、医師は、縫合部ロック、例えば、本明細書及び/又は国際出願PCT/US2017/069046及びPCT/US2019/021480に開示された技術を用いて縫合部を所定位置にロックすることができる。他の実施例では、保持部材は、縫合部ロック内に付加的なロック機構を必要とせずに、縫合部を所定位置にロックする。次に、医師は、余分な縫合部(例えば、保持部材の近位に位置する縫合部)を切断する。縫合部は保持部材の近位において張力がかかっていないため、当該縫合部を切断しても、縫合部ロック及び/又は縫合部ロックと弁尖との間に位置する縫合部が著しく動くことはない。
【0324】
他の実施例では、保持部材及び縫合部ロックは統合され、ユニットとして送られる。いくつかの実施例では、このユニットはアンカを含むか、あるいは給送プロセス中にアンカに結合される。医師は、縫合部ロックと弁尖の間に延びる縫合部の長さを調節することができ、縫合部を所定位置に永続的にロックするように縫合部ロックを使用することができる。
【0325】
前記実施例において得られた人工腱索は従来の人工腱索よりも耐久性がある。第1に、縫合部ロックに対する縫合部の動きが低減されるか排除され、縫合部の摩耗を減少させる。第2に、アンカに対する縫合部ロックの動きが低減されるか排除され、縫合部の摩耗をさらに減少させる。また、縫合部ロックに対する縫合部の向きによっても縫合部の摩耗が減少する。前述した付加的な特徴(例えば、縫合部ロックのノーズ部を含む)は、人工腱索の寿命を延ばす。
【0326】
図66は、本開示の一態様に係るアンカ、保持部材及び縫合部ロックを示している。図67は本開示の態様に係る人工腱索の向きを示している。
【0327】
(縫合部ロックブート)本明細書の特定の態様では、新生腱索インプラントの張力及び長さが最適化されると、縫合部ロックは、縫合部が縫合部ロックに対してもはや移動しないように、縫合部の長さを固定するようにロックされる。
【0328】
本開示のさらなる態様では、僧帽弁の損傷を矯正又は最小化するため、医師が縫合部に張力をかけた後、適用された縫合部の張力及び長さの調節が保持されるように、縫合部をクランプ(固定)又はピン留めするか、あるいは縫合部ロックに係合させてロックする。このステップ及び結果生じたロックの係合により、僧帽弁の損傷を矯正又は最小化することができ、新生腱索(すなわち、人工腱索)の機能的な寿命期間に亘って矯正されたままとなる。デリバリカテーテルを通して縫合部ロックを前進させ、縫合部を縫合部ロック内でクランプ(固定)又はピン留めするために、縫合部ロックの締め付け要件に応じて、縫合部を縫合部ロック内でクランプ(固定)又はピン留めするために必要な力を提供することを可能にするロックドライバ機構、すなわち、1つの代替例ではロックスクリュードライバなどのロックドライバ、例えば、蓄積エネルギー機構などに縫合部ロックを結合することができる。
【0329】
いくつかの態様では、縫合部ロックは、ロックドライバに位置するか又はロックドライバとともに配置されたブートにさらに結合されてもよい。ブートは、ロックドライバの係合を強化するために縫合部ロックをブートに可逆的に保持するように構成された保持機構を備える。いくつかの実施例によれば、例えば、図68に示したように、システムは、デリバリカテーテル6905、縫合部ロック6935及びブート6915を備える。図68に示すように、縫合部ロック6935は、ロックドライバ6910と係合するネジ6925を有する。ランプ(又はプッシュウェッジ)6930を前進又は後退させるためにロックドライバを回転させることができ、これにより、縫合部ロック6940の内側面に対して縫合部6945がクランプ(固定)される。縫合部ロック6935はブート6915に結合されている。ロックドライバ6910(点線で示す)はねじ6925の頭部と係合する。ブート6915を通して同軸状にロックドライバ6910に挿入することにより、縫合部ロック保持部材6920(図68では2つの保持部材6920はブート6915の両側に図示されている)をブート6915の外側面から突出するように押し進めることができる。縫合部ロック保持部材6920は、縫合部ロック6935に摩擦嵌合(図示せず)をもたらすか、又は、縫合部ロック6935における一つ又は複数のくぼみ(点線の斜視図に示す)を係合させる。代替の実施例では、縫合部ロック保持部材又はくぼみを必要とせずに、ロックドライバとブートとの間における摩擦嵌合だけを用いてもよい。ロックドライバ6910が縫合部ロック保持部材6920の遠位位置に配置されると、ブーツ6915の縫合部ロック保持部材6920は、ブート6915に対する縫合部ロック6935の動きを制限又は排除するように、縫合部ロック6935と結合する。医師が僧帽弁の動きを矯正するために縫合部に張力をかけると、次いで、医師は、ロックドライバ6910を回転させて、縫合部を縫合部ロック6935内にクランプ(固定)又はピンで留める。当業者であれば、複数の構成要素を一緒に押したり引いたりして縫合部ロックのロックを係合するなどの代替の縫合部ロッククランプ又はロック構成が本開示の範囲内に含まれることを理解されるであろう。
【0330】
縫合部が縫合部ロック内にクランプされると、医師は、僧帽弁の損傷や欠損が矯正又は最小化されたことを確認するため、任意の既知の視覚化技術を使用する。例えば、さらなる調節を行う必要がある場合、ロックドライバ6910を回転させて、縫合部6945にかかる力を軽減し、必要に応じて張力を調節し、手順を繰り返して縫合部をクランプする。僧帽弁の損傷が矯正又は最小化されたことを確認すると、ロックドライバ6910を後退させ、これによりねじ6925の頭部から外れる。
【0331】
図69、70は、縫合部ロック6935からロックドライバ6910及びブート6915を取り外す状態を示している。ロックドライバ6910が縫合部ロックから後退し、縫合部ロック保持部材を過ぎると、縫合部ロック保持部材がブートから後退し、これにより、ブート6915が縫合部ロックから外れる。縫合部ロック保持部材が後退すると、ブート6915は縫合部ロックから外れる。ブート6915が縫合部ロック保持部材6920(図示せず)を縫合部ロック6935から外すと、医師は、ロックドライバ6910及びブート6915をカテーテルから取り外すことができる。
【0332】
いくつかの実施例では、アンカは、縫合部ロックがアンカとの位置関係を維持するように、縫合部ロックと結合するように構成された保持部材をさらに含み得る。これらの実施例では、医師は、縫合部ロックを保持部材に挿入するために、ロックドライバ及びブートに圧力をかけることができる。縫合部ロックが保持部材に挿入され、縫合部に適切な張力をかけられると、縫合部を縫合部ロックにクランプ(固定)することができ、前述のように、ロックドライバ及びブートを縫合部ロック及びカテーテルから後退させることができる。
【0333】
縫合部ロックは、縫合部保持機構を作動させるように構成された代替的な機構をさらに含む。いくつかの実施例では、縫合部保持機構は、回転により縫合部に対する可逆的に圧力を加えたり、除去したりすることができるねじである。図68~70は、縫合部保持機構がねじ6925、一つ又は複数のランプ6930及び縫合部ロック6940の面を有する実施例を示している。縫合部ロックのランプ及び/又は反対側の面は、複数のノッチを含む。各ノッチは、ねじの回転によって縫合部をクランプ(固定)するように前進する高さを有する。各ノッチの高さは、最も内側のノッチから最も外側のノッチまで増加又は減少してもよい。例えば、縫合部を縫合部ロック内にクランプする力を提供するように、ばね又は他の蓄積エネルギー機構などの他の縫部糸保持機構を使用してもよい。例えば、任意の既知の方法でばねを作動させることができ、これにより、縫合部ロックからブーツを取り外す際にばねの蓄積されたエネルギーが解放される。
【0334】
特定の構成では、縫合部は、天然及び/又は合成であるか否か関わらず、モノフィラメント、複合フィラメント又はマルチフィラメントの形態(編組、織り、ねじれ又はそれ以外の場合は一緒に保持される)で、糸(スレッド)、ケーブル、ワイヤ、フィラメント、ストランド、ライン、織り物用糸(yarn)、ガット又は同様の構造を含み得る。
【0335】
本開示は特定の実施例及び例を記載しているが、上記のシステム及び方法の種々の態様は、さらに別の実施例又は許容可能な実施例を形成するように、異なる組み合わせとしてもよいし、かつ/あるいは修正してもよい。そのような修正及び変形の全てが本開示の範囲内に含まれる。実際に多種多様な設計及び手法が可能であり、これらは本開示の範囲内に含まれる。
【0336】
さらに、別々の実施例の文脈において本開示に記載されている特定の特徴は、単一の実施例において組み合わせて実施され得る。あるいは、単一の実施例の文脈で記載されている様々な特徴は、別々に又は任意の適切な組み合わせで複数の実施例で実施され得る。さらに、特定の組み合わせにより特徴が作用すると記載しているが、クレームに記載した組み合わせの一つ又は複数の特徴は、必要に応じて組み合わせから独立させてもよく、組み合わせは下位の組み合わせ又は下位の組み合わせの変形として主張され得る。
【0337】
種々の実施例に関連した任意の特定の特徴、態様、方法、特性、品質、属性、要素等の本明細書における開示は、本明細書に記載した他の全ての実施例において使用することができる。また、本明細書に記載した任意の方法は、列挙したステップを実施するのに適した任意の装置を使用して実施し得る。
【0338】
さらに、構成要素及び動作を特定の配置又は順序で図示するか又は明細書に記載しているが、そのような構成要素及び動作は、望ましい結果を得るために図示、記載した特定の配置及び順序で配置又は実行される必要はないし、全ての構成要素及び動作を含む必要はない。図示又は説明していない他の構成要素及び動作は、実施例及び例に組み込まれ得る。例えば、一つ又は複数の付加的な動作を説明した動作のうちのいずれかの前、後、同時に又は動作の間に実行してもよい。さらに、他の実施例では、動作の並べ替え又は再配置を行ってもよい。また、上記実施例における様々なシステム構成要素の分離は、全ての実施例においてそのような分離を必要とするものと理解されるべきではなく、説明した構成要素及びシステムは概して単一の製品に統合されるか、あるいは複数の製品にパッケージ化され得る。
【0339】
すなわち、例示的な種々の実施例及び例を本明細書に記載している。上記実施例及び例に関連させてシステム及び方法を開示しているが、本開示は、具体的に開示した実施例以外の他の代替的な実施例及び/又は実施例の他の用途並びに修正及び等価物に及ぶものである。本開示は、開示した実施例における種々の特徴及び態様を互いに組み合わせてもよく又は置換してもよいことを明確に意図している。したがって、本開示の範囲は、開示した特定の実施例に限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲及びこれらの均等物の全範囲を公正に読むことによってのみ決定されるべきである。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22A
図22B
図22C
図22D
図22E
図22F
図23A
図23B
図23C
図24A
図24B
図24C
図24D
図25A
図25B
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34A
図34B
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47
図48
図49
図50
図51
図52
図53
図54
図55
図56
図57
図58
図59
図60
図61
図62
図63
図64
図65A
図65B
図66
図67
図68
図69
図70
【国際調査報告】