(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(54)【発明の名称】圧電材料および圧電デバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 41/187 20060101AFI20220202BHJP
H03H 9/17 20060101ALI20220202BHJP
H01L 41/09 20060101ALI20220202BHJP
H01L 41/113 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
H01L41/187
H03H9/17 F
H01L41/09
H01L41/113
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021533600
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(85)【翻訳文提出日】2021-06-11
(86)【国際出願番号】 EP2019085690
(87)【国際公開番号】W WO2020127294
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】102018132904.0
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520142767
【氏名又は名称】アールエフ360・ヨーロップ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【氏名又は名称】岡田 貴志
(72)【発明者】
【氏名】コーツァロフ、イボイル
(72)【発明者】
【氏名】ホントガス、クリストファー・ヘイデン
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108AA07
5J108BB05
5J108CC11
5J108EE03
5J108EE05
5J108EE13
5J108JJ01
5J108KK07
(57)【要約】
改善された特性を有する圧電窒化物化合物材料が提供される。圧電材料は、アルミニウム、窒素、ならびにカルシウム、ルテニウム、ホウ素および/またはイットリウムから選択され得る三元および四元ドーパントを含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電材料であって、
Al
1-x[(Ca
a,Ru
b,Z1
c1,Z2
c2)
y]
xNをその主成分として含み、
ここで、
0.055≦a≦1.33、
0.055≦b≦1.33、
0≦c1、
0≦c2、
0≦c=c1+c2≦1.33、
y=1/(a+b+c)、
0.03≦x≦0.75であり、
Z1およびZ2は、BおよびYから選択される、圧電材料。
【請求項2】
前記主成分は、Al
1-x[(Ca
a,Ru
b,Z1
c1,Z2
c2)
y]
xNであり、
Z1およびZ2は、BおよびYから選択されるか、またはBのみもしくはYのみであり、
ここで、
0.165≦a≦0.66、
0.165≦b≦0.66、
0≦c1、
0≦c2、
0≦c=c1+c2≦0.66、
y=1/(a+b+c)、および
0.09≦x≦0.372である、請求項1に記載の圧電材料。
【請求項3】
xは、0.03、0.06、0.09、0.12、0.15、0.18、0.21、0.24、0.27、0.30、0.33、0.36、0.39、0.42、0.45、0.48、0.51、0.54、0.57、0.60、0.63、0.66、0.69、0.72および0.75から選択される、請求項1ないし2のいずれか一項に記載の圧電材料。
【請求項4】
前記主成分は、Al
0.814Ca
0.062Ru
0.062B
0.062Nである、請求項1に記載の圧電材料。
【請求項5】
前記主成分は、Al
0.814Ca
0.062Ru
0.062B
0.124Nである、請求項1に記載の圧電材料。
【請求項6】
前記主成分は、Al
0.876Ca
0.062Ru
0.062B
0.124Nである、請求項1に記載の圧電材料。
【請求項7】
前記主成分は、Al
0.69Ca
0.124Ru
0.124B
0.062Nである、請求項1に記載の圧電材料。
【請求項8】
前記主成分は、Al
0.814Ca
0.062Ru
0.062Y
0.062Nである、請求項1に記載の圧電材料。
【請求項9】
前記主成分は、Al
0.876Ca
0.062Ru
0.062Nである、請求項1に記載の圧電材料。
【請求項10】
44.2(原子%)、53.5(原子%)、62.77(原子%)、72.1(原子%)、81.4(原子%)、90.7(原子%)、95.78(原子%)、98.25(原子%)または99(原子%)がAlであるとともに、残りのバランスが、Ca(カルシウム)、Ru(ルテニウム)、B(ホウ素)およびY(イットリウム)を含有する三元又は四元ドープAlN圧電材料の組合せである、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の圧電材料。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか一項に記載の材料を含む圧電デバイス。
【請求項12】
前記デバイスは、
-電気音響共振器、SAW共振器、SAWフィルタ、ソリッドマウント共振器(SMR型共振器)、(SMR-)BAWフィルタ、誘導型BAW(GBAW)共振器、GBAWフィルタ、薄膜バルク音波(FBAR)共振器、FBARフィルタ、または
-ラム波、音響板波(APW)、レイリーSAW(R-SAW)、セザワモード波、せん断-横波型SAW(SH-SAW)、ラブモード波、擬似表面弾性波(PSAW)もしくは漏洩型SAW(LSAW)で作動する共振器、または
-音響デバイス、上記のタイプの共振器のいずれかに基づくマルチプレクサ、デュプレクサ、クアッドプレクサ、ヘキサプレクサ、圧電発電機、圧電センサ、質量センサ、マイクロ流体センサ、圧電トランスデューサ、エネルギーハーベスタ、超音波デバイス、トランスデューサ、送信機、圧電(MEMS)マイクロフォン、薄膜もしくはバルクセラミックの形態で正圧電効果もしくは逆圧電効果を利用するデバイス、
から選択される、請求項11に記載の圧電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電材料(Piezoelectric material)および圧電材料を備える圧電デバイス(piezoelectric device)に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電材料は、-それらの圧電効果(piezoelectric effect)により-機械エネルギーを電気エネルギーに変換し、また印加された電気励起(electrical excitation)に応答して機械エネルギーに変換するために利用され得る。圧電材料は、多種多様なデバイスに使用され得る。例えば、電気音響共振器(electro acoustic resonator)を備える電気音響RFデバイスが、電極構造と圧電材料とが組み合わされた共振構造(resonating structure)を有し得る。圧電材料の性能は、弾性パラメータと、誘電パラメータと、圧電パラメータとのセットによって決定される。弾性パラメータ(Elastic parameter)は、例えば、ヤング率(Young's modulus)、C33(材料の剛性テンソル(stiffness tensor)の成分)、格子密度(lattice density)などである。音波の励起の効率を決定する別の重要なパラメータである電気機械結合係数(electromechanical coupling coefficient)κ2が、機械的性能と電気的性能を橋渡しする(bridges)。別のパラメータが、材料(material)の圧電テンソル(piezoelectric tensor)の成分である圧電定数(piezoelectric constant)e33である。その他は、縦剛性(longitudinal stiffness)c33および誘電率(dielectric permittivity)ε33である。
【0003】
例えば、電気音響用途では、圧電材料が高い電気機械結合係数κ2を有することが好ましい。既知の圧電材料は、電気音響共振器、例えば、BAW共振器(BAW=バルク音波(bulk acoustic wave))において使用され得るウルツ鉱型(wurtzite-type)AlN(窒化アルミニウム)である。BAW共振器は、下部電極(bottom electrode)、下部電極の上の上部電極(top electrode)、および下部電極と上部電極との間に挟まれた圧電材料を有する。BAW共振器の圧電材料は、薄膜堆積技法(thin film deposition technique)を介して設けられ得ることが好ましい。
【0004】
さらに知られている圧電材料は、ScドープAlN(スカンジウムドープAlN(scandium doped AlN))である。ScドープAlNは、純粋な窒化アルミニウム(aluminium nitride)よりも高い電気機械結合係数κ2を提供するポテンシャルを有する。
【0005】
しかしながら、圧電デバイスにおける使用に好適な代替材料に対する要望が存在する。さらに、Scドーピングは、同時に、すなわち、これらの性能パラメータにトレードオフ効果を持たせることなく、縦剛性係数C33の低減において現れる、AlScN格子軟化(lattice softening)に起因して、対応するデバイスの機械的特性を劣化させ得ることが分かった。
【0006】
求められているのは、改善された圧電特性、特に、増大された電気機械結合係数κ2を有し、かつ良好な機械的特性、特に、高い縦剛性係数C33を有する、多種多様な圧電デバイスにおいて使用され得る圧電材料である。
【0007】
この目的のために、独立請求項に記載の圧電材料および圧電デバイスが提供される。従属請求項は、好ましい実施形態を提供する。
【0008】
以下で、圧電材料のための組成が提供される。組成が同等と見なされ得る原子の量についての許容レベルは、±1原子(atomic)%または±2原子%であり得る。
【0009】
圧電材料は、構造式Al1-x[(Caa,Rub,Z1c1,Z2c2)y]xNをその主成分(化合物)として含み、ここで、aモル分率(mole fraction)は、0.055以上1.33以下である。bモル分率は、0.055以上1.33以下である。
【0010】
c1は、0以上である。c2は、0以上である。c=c1+c2の和は、0以上1.33以下である。yは、a、b、cの和の逆数:y=1/(a+b+c)である。xは、0.03以上0.75以下である。Z1およびZ2は、B(ホウ素(boron))およびY(イットリウム(yttrium))から選択される。
【0011】
したがって、圧電材料は、Al(アルミニウム(aluminium))、Ca(カルシウム(calcium))、Ru(ルテニウム(ruthenium))およびN(窒素(nitrogen))を含む。
【0012】
さらに、材料は、Y(イットリウム)を含み得る。さらに、材料は、B(ホウ素(boron))を含み得る。さらに、材料は、YおよびBを含み得る。
【0013】
Ca、Ru-ならびに、存在する場合には、Yおよび/またはB-は、Alを置換し得るドーパント(dopant)を確立する。yの値は、これらドーパントが、ドーパント群の各原子がAl1-x[(Caa,Rub,Z1c1,Z2c2)y]xNのウルツ鉱型格子におけるAlを部分的に置換し得る群と見なされ得るように選択される。この場合、xは、Al原子の総ドーピングまたは置換レベルを示す。
【0014】
このような圧電材料は、良好な電気機械結合係数κ2などの、良好な圧電特性を有することが分かった。さらに、上記で説明されたような主成分(main constituent)を有する圧電材料はまた、同等の電気機械結合係数κ2の、純粋なAlNまたはScドープAlNと比較して、より高い剛性(stiffness)、特に、より高い剛性パラメータC33を有し得る。
【0015】
さらに、上記で説明されたような圧電材料は、純粋なAlNまたはScドープAlNに基づく電気音響共振器と比較して、品質係数(quality factor)Qが増加した圧電共振器(piezoelectric resonator)を可能にすることが分かった。したがって、改善された性能を有する対応するRFフィルタ(filter)または他の圧電コンポーネントが可能である。
【0016】
圧電材料は、Al1-x[(Caa,Yb,Zc)y]xNをその主成分(化合物)として有することが可能である。Zは、BおよびYから選択される。
【0017】
したがって、ドーパントは、Ca、RuおよびB、またはCa、RuおよびYからなる。
【0018】
材料は、Al1-x[(Caa,Rub,Z1c1,Z2c2)y]xNをその主成分(化合物)として有することが可能である。Z1およびZ2は、BおよびYから選択されるか、またはBのみもしくはYのみである。0.165≦a≦0.66、0.165≦b≦0.66、0≦c1、0≦c2、0≦c=c1+c2≦0.66、y=1/(a+b+c)および0.09≦x≦0.372である。
【0019】
ドーピングレベルxは、0.03、0.06、0.09、0.12、0.15、0.18、0.21、0.24、0.27、0.30、0.33、0.36、0.39、0.42、0.45、0.48、0.51、0.54、0.57、0.60、0.63、0.66、0.69、0.72および0.75から選択されることが可能である。
【0020】
主成分(化合物)は、Al0.814Ca0.062Ru0.062B0.062Nであることが可能である。このドーピングの組合せにおいて、ドーパントは、Ca、RuおよびBからなる。
【0021】
また、主成分(化合物)は、Al0.814Ca0.062Ru0.062B0.124Nであることが可能である。このドーピングの組合せにおいて、ドーパントは、Ca、RuおよびBからなる。
【0022】
また、主成分(化合物)は、Al0.876Ca0.062Ru0.062B0.124Nであることが可能である。このドーピングの組合せにおいて、ドーパントは、Ca、RuおよびBからなる。
【0023】
また、主成分(化合物)は、Al0.69Ca0.124Ru0.124B0.062Nであることが可能である。このドーピングの組合せにおいて、ドーパントは、Ca、RuおよびBからなる。
【0024】
また、主成分(化合物)は、Al0.814Ca0.062Ru0.062Y0.062Nであることが可能である。このドーピングの組合せにおいて、ドーパントは、Ca、RuおよびYからなる。
【0025】
また、主成分(化合物)は、Al0.876Ca0.062Ru0.062Nであることが可能である。このドーピングの組合せにおいて、ドーパントは、CaおよびRuからなる。ドーパントは、YまたはBを含まない。
【0026】
少なくとも44.2(原子%)、53.5(原子%)、62.77(原子%)、72.1(原子%)、81.4(原子%)、90.7(原子%)、95.78(原子%)、98.25(原子%)または99(原子%)がAlであるとともに、残りのバランス(remaining balance)が、Ca(カルシウム)、Ru(ルテニウム)、B(ホウ素)およびY(イットリウム)を含有する三元又は四元ドープAlN圧電材料の組合せであることが可能である。
【0027】
四元系または五元系窒化物の上記組成は、以下の表(表1および表2)に示される良好な電気機械的特性および良好な機械的特性をもたらす。アブイニシオ特性(Ab initio properties)は、密度関数摂動理論計算(density functional perturbation theory calculations)から導出される。計算と実験との間の比較は、十分な数の準ランダム構造(quasi-random structure)(SQS)および中央統計値が各組成例について得られるので、与えられた計算値が、期待される実験値に近いと見なされ得ることを正当化する。
【0028】
【0029】
【0030】
残りの成分は、必要な製造工程などにより不可避であり得る他の原子を含み得る。
【0031】
圧電デバイスは、上記で説明されたような材料を含むことが可能である。
【0032】
このようなデバイスは、以下から選択され得る。
-電気音響共振器、SAW共振器、SAWフィルタ、ソリッドマウント共振器(solidly mounted resonator)(SMR型共振器)、(SMR-)BAWフィルタ、誘導型(guided)BAW(GBAW)共振器、GBAWフィルタ、薄膜(film)バルク音波(FBAR:)共振器、FBARフィルタ、または
-ラム波(Lamb wave)、音響板波(APW:acoustic plate wave)、レイリー(Rayleigh)SAW(R-SAW)、セザワモード波(Sezawa mode wave)、せん断-横波型SAW(SH-SAW:shear-horizontal SAWs)、ラブモード波(Love mode wave)、擬似表面弾性波(PSAW:pseudo-surface acoustic wave)もしくは漏洩型(Leaky)SAW(LSAW)で作動する共振器(resonator)、または
-音響デバイス(acoustic device)、上記のタイプの共振器のいずれかに基づくマルチプレクサ(multiplexer)、デュプレクサ(duplexer)、クアッドプレクサ(quadplexer)、ヘキサプレクサ(hexaplexer)、圧電発電機(piezoelectric generator)、圧電センサ(piezoelectric sensor)、質量センサ(mass sensor)、マイクロ流体センサ(microfluidic sensor)、圧電トランスデューサ(piezoelectric transducer)、エネルギーハーベスタ(energy harvester)、超音波デバイス(ultrasound device)、トランスデューサ(transducer)、送信機(transmitter)、圧電(MEMS)マイクロフォン(piezo (MEMS) microphone)、薄膜もしくはバルクセラミックの形態(thin film or bulk ceramic form)で正圧電効果(direct piezolectric effect)もしくは逆圧電効果(reverse piezolectric effect)を利用するデバイス。
【0033】
SAWフィルタは、少なくとも1つのSAW共振器を有するRFフィルタである。SAW共振器は、圧電材料と、この圧電材料上に互いに隣り合って配置された電極指(electrode finger)を備えたインターディジタル電極構造(interdigitated electrode structure)とを有する。各電極指は、2つの母線(bus bar)のうちの1つに電気的に接続されている。RF信号が母線に印加されると、-圧電効果により-電極構造は、RF信号と音波の間の変換を行う。音波の波長は、基本的に、同じ極性の隣接する電極指間の距離によって決定される。圧電材料の表面を伝搬する表面波が確立される。周波数は、波長と、波の速度とに依存する。
【0034】
このような共振器を、例えば、ラダー型構造(ladder-type structure)における直列共振器(series resonator)および並列共振器(parallel resonator)として、または格子型構造(lattice-type structure)における共振器として利用することは、例えば、ワイヤレス通信デバイス用の、帯域通過フィルタまたは帯域阻止フィルタを作成することを可能にする。
【0035】
BAW共振器では、圧電材料は、下部電極と上部電極との間に挟まれている。SAW共振器での音波が圧電材料の表面に平行な方向に伝搬する一方で、BAW共振器では、音波は垂直方向に伝搬する。音響エネルギーを共振器構造に閉じ込めるために、共振器構造は、その環境から音響的に減結合されなければならない。これに対応して、BAW共振器は、SMR型共振器(SMR=ソリッドマウント共振器(solidly mounted resonator))またはFBAR型共振器(FBAR=薄膜バルク音波共振器(film bulk acoustic wave resonator))であることが可能である。SMR型共振器では、共振器構造は、音響エネルギーを閉じ込めるための音響ブラッグミラー(acoustic Bragg mirror)として機能する、高音響インピーダンスおよび低音響インピーダンスの2つ以上の層からなる音響ミラー(acoustic mirror)上に配置されている。FBAR型共振器では、下部電極は、共振器構造を音響的に絶縁するために、キャビティの上方に配置され得る。
【0036】
GBAWフィルタでは、電極構造は、SAWフィルタにおける共振器のものと同様である。しかしながら、音波は、導波路構造(waveguiding structure)が得られるように、圧電材料とカバー層との間の界面において縦方向に伝搬する。
【0037】
帯域通過フィルタは、マルチプレクサを確立するために、-場合によっては、追加のインピーダンス整合回路と-組み合わされ得る。例えば、デュプレクサでは、送信フィルタおよび受信フィルタは、送られるべきRF信号および受信されるべきRF信号が、共通のアンテナポートを共有するが、それぞれ送信信号経路および受信信号経路において、別個の信号経路で伝搬し得るように、組み合わされる。これに対応して、より高次のマルチプレクサ、例えば、クアッドプレクサが、追加の帯域通過フィルタおよび追加の信号経路を備える。
【0038】
エネルギーハーベスタでは、圧電材料は、例えば、それぞれのデバイスの環境から得られた機械エネルギーをバッテリまたはキャパシタに投入する(load)ために、機械エネルギーを電気エネルギーに変換するために利用され得る。
【0039】
したがって、改善された圧電デバイス、特に、改善された品質係数を有する共振器デバイスを可能にする改善された圧電材料が提供される。
【0040】
圧電デバイスは、上述されたデバイスに限定されない。さらなるデバイスも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】
図1は、SAW共振器のインターディジタル構造(interdigital structure)の配置を例示する。
【
図2】
図2は、SMR型BAW共振器の構成を例示する。
【
図3】
図3は、デュプレクサを確立するための電気音響共振器の組合せを例示する。
【
図4】
図4は、電気機械結合係数κ
2の計算値と、AlNにおけるScの異なるドーピングレベル(doping level)から作製された圧電層を有する実際のSMR-BAW共振器からの測定値との比較を示す。
【
図5】
図5は、SMR-BAWから測定された外挿機械的品質係数(Q
m)と、アブイニシオ計算(ab-initio calculation)から得られた値との比較を示し、AlNにおけるScの異なるドーピングレベルでQ
mがどれだけ速く変化しているかを示す。
【
図6】
図6は、結合係数κ
2の範囲にわたって、より高いC
33を有するAl
1-xSc
xN(0.0625≦x≦0.31)材料の代替についてのC
33対結合係数κ
2挙動の依存性を示す。
【
図7】
図7は、結合係数κ
2の範囲にわたって、中程度により高いC
33を有するAl
1-xSc
xN(0.0625≦x≦0.31)材料の代替についてのC
33対結合係数κ
2挙動の依存性を示す。
【
図9】
図9は、結合係数κ
2の範囲にわたって、わずかに等価な(marginally equivalent)C
33を有するAl
1-xSc
xN(0.0625≦x≦0.31)材料の代替についてのC
33対結合係数κ
2挙動の依存性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、単結晶圧電基板として、または薄層として設けられた圧電材料によって設けられ得る、圧電材料PM上の電極構造の基本配置を例示する。電極構造は、互いに隣接して配置された電極指EFIを備える、インターディジタル構造IDSを有する。電極指EFIの各々は、2つの母線のうちの1つに電気的に接続されている。
図3に示される配置では、音波は、圧電材料の表面において、電極指に直交する方向に伝搬する。
【0043】
図2は、BAW共振器BAWRの基本構造を例示する。BAW共振器BAWRは、下部電極BEと上部電極TEとの間に挟まれた圧電材料PMを有する。
図4はまた、2つの電極と圧電材料とを備える共振器構造が音響ミラー上に配置された、SMR型共振器を例示する。音響ミラー(acoustic mirror)は、ミラー層MLを有する。隣接するミラー層MLは、異なる音響インピーダンスを有する。異なる音響インピーダンスの異なるミラー層ML間の界面において、音響エネルギーの一部が反射され、これにより、ミラー層MLの組合せが、音響エネルギーを閉じ込めるためのブラッグミラー(Bragg mirror)を確立する。
【0044】
図3は、デュプレクサを確立するために、送信フィルタTXFと受信フィルタRXFとを組み合わせる可能性を例示する。送信フィルタTXFおよび受信フィルタRXFは、直列共振器SRが直列に電気的に接続された信号経路を備える。並列共振器PRが、信号経路と接地との間のシャント経路(shunt path)において電気的に接続されている。インピーダンス整合回路が、アンテナ(antenna)ANが接続され得る共通のポートにおいて整合された周波数依存インピーダンスを提供するために、送信フィルタTXFと受信フィルタRXFとの間に配置され得る。
【0045】
図4は、測定データと計算データとの比較を示す。曲線(1)は、異なるドーピングレベルxにわたって、ScドープAlN(Al
1-xSc
xN)のScドーピングレベルに対する結合係数κ
2の(実験的に)測定された依存性を示す。曲線(2)は、ScドープAlNの理論モデルを決定するためのシミュレーションにおいて行われた計算の結果を示す。実験は、アブイニシオ計算結果を本質的に検証(verifies)していることが確認できる。
【0046】
同様に、
図5も、測定データと計算データとの比較を示す。曲線(3)は、ScドープAlN(Al
1-xSc
xN)のScドーピングレベルに対する物理的な(実験的に製造された)共振器のインピーダンス応答から導出された機械的品質係数Q
mの測定された依存性を示す。曲線(4)は、シミュレーションにおいて行われた計算の結果を示す。この場合も、実験的に導出された値は、計算結果を本質的に検証する。
【0047】
したがって、本組成のベースとなる計算は、信頼できる。
【0048】
図6は、ScドープAlNとAl
0.814Ca
0.062Ru
0.062B
0.062N(表の組成A)に対応する)との複数のパラメータ間の比較を示す。曲線(5)によって示されるように、異なるScドープAlN組成についてのScドーピングレベルは、本質的にC
33を決定する。曲線(6)は、Al
0.814Ca
0.062Ru
0.062B
0.062Nの異なる準ランダム構造についてのκ
2に対するC
33の依存性を示す計算されたデータ点の多項式補間を示す。Al
0.814Ca
0.062Ru
0.062B
0.062Nの異なる準ランダム構造は、Al原子を置換する各ドーパントの正確な位置が異なっている。計算は、実際の組成においては、これらの準ランダム構造の混合物が、約0.18のκ
2および270.4GPaのC
33が得られるように提供されることを示す。したがって、Al
0.814Ca
0.062Ru
0.062B
0.062Nは、非常に類似しているκ
2(0.20に近い)で(with)ScドープAlNベースラインシステム(baseline system)のものよりも約65.3GPa大きいC
33を有し、一方、Al
0.814Ca
0.062Ru
0.062B
0.062Nの中央値は、非常に類似しているκ
2(0.15に近い)でScドープAlNベースラインシステムのものよりも約42.3GPa大きいC
33を有する。
【0049】
図7は、ScドープAlNとAl
0.876Ca
0.062Ru
0.062B
0.124N(表の組成B)に対応する)との複数のパラメータ間の比較を示す。曲線(7)によって示されるように、異なるScドープAlN組成についてのScドーピングレベルは、本質的にC
33を決定する。曲線(8)は、Al
0.876Ca
0.062Ru
0.062B
0.124Nの異なる準ランダム構造についてのκ
2に対するC
33の依存性を示す計算されたデータ点の多項式補間を示す。Al
0.876Ca
0.062Ru
0.062B
0.124Nの異なる準ランダム構造は、Al原子を置換する各ドーパントの正確な位置が異なっている。計算は、実際の組成においては、これらの準ランダム構造の混合物が、約0.139のκ
2および274.2GPaのC
33が得られるように提供されることを示す。したがって、Al
0.876Ca
0.062Ru
0.062B
0.124Nは、非常に類似しているκ
2(0.13に近い)で約14GPaであるC
33を有する。
【0050】
図8は、ドープされたAlNについての計算されたパラメータを示す。
【0051】
図9は、ScドープAlNとAl
0.814Ca
0.062Ru
0.062Y
0.062N(表の組成E)に対応する)との複数のパラメータ間の比較を示す。曲線(9)によって示されるように、異なるScドープAlN組成についてのScドーピングレベルは、本質的にC
33を決定する。曲線(10)は、Al
0.814Ca
0.062Ru
0.062Y
0.062Nの異なる準ランダム構造についてのκ
2に対するC
33の依存性を示す計算されたデータ点の多項式補間を示す。Al
0.876Ca
0.062Ru
0.062B
0.124Nの異なる準ランダム構造は、Al原子を置換する各ドーパントの正確な位置が異なっている。計算は、実際の組成においては、これらの準ランダム構造の混合物が、約0.179のκ
2および232GPaのC
33が得られるように提供されることを示す。したがって、Al
0.876Ca
0.062Ru
0.062B
0.124Nは、非常に類似しているκ
2(0.18)で約18.8GPaであるC
33を有する。
【符号の説明】
【0052】
AN:アンテナ
BAWR:BAW共振器
BE:下部電極
DU:デュプレクサ
EFI:電極指
IDS:インターディジタル電極構造
ML:音響ミラー層
PM:圧電材料
PR:並列共振器
RXF:受信フィルタ
SAWR:SAW共振器
SR:直列共振器
TE:上部電極
TXF:送信フィルタ
【国際調査報告】