(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(54)【発明の名称】電解槽及び使用方法
(51)【国際特許分類】
C25B 1/23 20210101AFI20220202BHJP
C25B 3/03 20210101ALI20220202BHJP
C25B 3/09 20210101ALI20220202BHJP
C25B 3/26 20210101ALI20220202BHJP
C25B 9/23 20210101ALI20220202BHJP
C25B 15/00 20060101ALI20220202BHJP
C25B 15/023 20210101ALI20220202BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20220202BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20220202BHJP
【FI】
C25B1/23
C25B3/03
C25B3/09
C25B3/26
C25B9/23
C25B15/00 302A
C25B15/023
C25B1/04
C25B9/00 Z
C25B9/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534155
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(85)【翻訳文提出日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 US2019067169
(87)【国際公開番号】W WO2020132064
(87)【国際公開日】2020-06-25
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520271481
【氏名又は名称】オプス-12 インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】マ、シチャオ
(72)【発明者】
【氏名】フネナー、サラ
(72)【発明者】
【氏名】フオ、ジヤン
(72)【発明者】
【氏名】クール、ケンドラ ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ケイブ、エトーシャ アール.
(72)【発明者】
【氏名】ミシュラ、アシュレー ディー.
(72)【発明者】
【氏名】イゼット、エドワード
(72)【発明者】
【氏名】レオン、アルヴィン
(72)【発明者】
【氏名】ベッケダール、ティモシー エー.
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021AA09
4K021AB25
4K021AC02
4K021AC05
4K021AC09
4K021BA02
4K021CA06
4K021DB31
4K021DB36
4K021DB43
4K021DB53
4K021DC01
4K021DC03
4K021DC15
(57)【要約】
本明細書では、酸化炭素(COx)還元リアクタ(CRR)及び関連装置を動作させる方法が提供される。一部の実施形態において、方法は、水和期間、ブレークイン期間、通常運転期間、計画停止期間、及び長期停止期間又は保管期間を含む様々な動作工程の間に、電流を停止、低減、又は別様に制御する段階を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CO
x還元のための膜電極アセンブリ(MEA)を動作させる方法であって、
前記MEAのカソードにCO
xを含むガスを導入するとともに第1の電流密度で前記MEAに電流を印加し、それにより、CO
xを還元してCO
x還元生成物を生成する段階と、
通常運転中に、電流一時停止スケジュールに従って、印加電流を自動的に一時停止させる段階と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記電流一時停止スケジュールは、電流一時停止期間によって分離される、前記第1の電流密度での電流オン期間を含み、1つの電流一時停止期間の少なくとも一部の間の前記印加電流は、ゼロ又は前記第1の電流密度よりも低い第2の電流密度である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
電流オン期間の継続時間は、10時間~1000時間である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
電流一時停止期間の継続時間は、5分~10時間である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
電流オン期間の継続時間は、1時間~10時間である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
電流一時停止期間の前記継続時間は、500マイクロ秒~20分である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
電流オン期間の継続時間は、3分~1時間である、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
電流一時停止期間の継続時間は、500マイクロ秒~10分である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
合計電流オン期間継続時間は、合計電流一時停止期間継続時間よりも少なくとも3倍長い、請求項2~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
電流一時停止期間継続時間は一定であり、電流オン期間継続時間は一定である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
電流一時停止期間継続時間及び電流オン期間継続時間の一方又は両方は変動する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記印加電流を自動的に一時停止させる段階は、前記第1の電流密度からの単一ステップを含む請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記印加電流を自動的に一時停止させる段階は、前記第1の電流密度からの複数のステップを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記印加電流を自動的に一時停止させる段階は、前記第1の電流密度からの連続的なランプを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記印加電流を自動的に一時停止させる段階は、単一ステップを用いて前記第1の電流密度に戻す段階を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記印加電流を自動的に一時停止させる段階は、複数のステップを用いて前記第1の電流密度に戻す段階を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記印加電流を自動的に一時停止させる段階は、連続的なランプを用いて前記第1の電流密度に戻す段階を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
印加電流を一時停止させる段階は、前記印加電流をゼロに減少させる段階を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記印加電流をゼロに減少させる段階は、前記MEAを短絡させる段階を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記MEAは、前記印加電流がゼロである場合に開路電位を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
電流を一時停止させながら、前記ガスの流れを停止させる段階をさらに含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
電流を一時停止させながら、前記ガスの流れを維持しつつも減少させる段階をさらに含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
電流を一時停止させながら、前記ガスの流れを同じ流量に維持する段階をさらに含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
アノード供給材料を前記MEAのアノードに導入する段階をさらに含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
電流を一時停止させながら、前記アノード供給材料の流れを停止させる段階をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
電流を一時停止させながら、前記アノード供給材料の流れを維持しつつも減少させる段階をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
電流を一時停止させながら、前記アノード供給材料の流れを同じ流量に維持する段階をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
通常運転の前に、前記第1の電流密度までのマルチステップ又は連続的なランプでの電流の印加を含むブレークイン手順を実行する段階をさらに含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記ブレークイン手順の前に、水和操作を実行する段階であって、電流が印加されず、カソードガス及びアノード供給材料が、前記MEAの前記カソード及びアノードにそれぞれ導入される、段階をさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記水和操作中、温度を動作温度までランプ状に変化させる段階をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
スタックにして配置される1又は複数の膜電極アセンブリ(MEA)を含むCO
x還元リアクタであって、各MEAは、(i)酸化炭素の還元を促進するCO
x還元触媒を含むカソードと、(ii)酸化を促進する触媒を含むアノードと、(iii)前記カソードと前記アノードとの間に設置されるポリマー電解質膜(PEM)層とを備える、CO
x還元リアクタと、
CO
x還元リアクタに印加される電流を制御するように構成されている電源コントローラであって、前記電源コントローラは、前記CO
x還元リアクタの通常運転中、電流一時停止スケジュールに従って印加電流を自動的に一時停止させるように構成されている、電源コントローラと、
を備える、システム。
【請求項32】
前記電流一時停止スケジュールは、電流一時停止期間によって分離される、第1の電流密度での電流オン期間を含み、1つの電流一時停止期間の少なくとも一部の間の前記印加電流は、ゼロ又は前記第1の電流密度よりも低い第2の電流密度である、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
電流オン期間の継続時間は、10時間~1000時間である、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
電流一時停止期間の継続時間は、5分~10時間である、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
電流オン期間の継続時間は、1時間~10時間である、請求項32に記載のシステム。
【請求項36】
電流一時停止期間の継続時間は、500マイクロ秒~20分である、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
電流オン期間の継続時間は、3分~1時間である、請求項32に記載のシステム。
【請求項38】
電流一時停止期間の継続時間は、500マイクロ秒~10分である、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
合計電流オン期間継続時間は、合計電流一時停止期間継続時間よりも少なくとも3倍長い、請求項32~38のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項40】
電流一時停止期間継続時間は一定であり、電流オン期間継続時間は一定である、請求項31~39のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項41】
電流一時停止期間継続時間及び電流オン期間継続時間の一方又は両方は変動する、請求項31~39のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項42】
前記印加電流を自動的に一時停止させることは、前記第1の電流密度からの単一ステップを含む、請求項32~39のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項43】
前記印加電流を自動的に一時停止させることは、前記第1の電流密度からの複数のステップを含む、請求項32~39のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項44】
前記印加電流を自動的に一時停止させることは、前記第1の電流密度からの連続的なランプを含む、請求項32~39のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項45】
前記印加電流を自動的に一時停止させることは、単一ステップを用いて前記第1の電流密度に戻すことを含む、請求項32~39及び42~44のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項46】
前記印加電流を自動的に一時停止させることは、複数のステップを用いて前記第1の電流密度に戻すことを含む、請求項32~39及び42~44のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項47】
前記印加電流を自動的に一時停止させることは、連続的なランプを用いて前記第1の電流密度に戻すことを含む、請求項32~39及び42~44のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項48】
印加電流を一時停止させることは、前記印加電流をゼロに減少させることを含む、請求項31~47のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項49】
前記印加電流をゼロに減少させることは、前記MEAを短絡させることを含む、請求項48に記載のシステム。
【請求項50】
前記MEAは、前記印加電流がゼロである場合に開路電位を有する、請求項48に記載のシステム。
【請求項51】
前記システムは、通常運転の前に、前記第1の電流密度までのマルチステップ又は連続的なランプでの電流の印加を含むブレークイン手順を実行するように構成されている、請求項32~39及び42~47のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項52】
さらに、前記CO
x還元リアクタのカソードとインタラクトするように構成されているカソードサブシステムを備えるとともに、前記CO
x還元リアクタのカソードへの酸化炭素供給ストリームの流れを制御するように構成されている酸化炭素流量コントローラを備える、請求項31~51のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項53】
前記酸化炭素流量コントローラは、電流一時停止中、前記酸化炭素供給ストリームの前記流れを停止するように構成されている、請求項52に記載のシステム。
【請求項54】
前記酸化炭素流量コントローラは、電流一時停止中、酸化炭素の流れを同じ又は異なる流量に維持するように構成されている、請求項52に記載のシステム。
【請求項55】
さらに、CO
xリアクタのアノードとインタラクトするように構成されているアノードサブシステムを備えるとともに、前記CO
xリアクタのアノードへのアノード供給ストリームの流れを制御するように構成されているアノード水流量コントローラを備える、請求項31~54のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項56】
前記アノード水流量コントローラは、電流一時停止中、前記アノード供給ストリームの前記流れを停止するように構成されている、請求項55に記載のシステム。
【請求項57】
前記アノード水流量コントローラは、電流一時停止中、前記アノード供給ストリームの流れを同じ又は異なる流量に維持するように構成されている、請求項55に記載のシステム。
【請求項58】
電流一時停止中、前記アノード供給ストリームの組成を調整するように構成されているコントローラをさらに備える、請求項55に記載のシステム。
【請求項59】
MEAの前記カソード側における圧力を維持するように構成されている背圧コントローラをさらに備える、請求項31~58のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項60】
前記カソードサブシステムは、排出ストリームからの未反応酸化炭素をMEAの前記カソードに戻して制御可能にリサイクルするように構成されている、請求項52に記載のシステム。
【請求項61】
アノード水再循環ループをさらに備える、請求項31~60のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
参照による援用
PCTリクエストフォームは、本出願の一部として本明細書と同時に提出される。同時に提出されたPCTリクエストフォームにおいて特定されているように、本出願が利益又は優先権を主張する各出願は、その全体がすべての目的のために参照により本明細書に援用される。
政府支援の声明
【0002】
本発明は、エネルギー高等研究計画局によって助成された助成番号DE-AR00000819、米国国立エネルギー技術研究所によって助成された助成番号DE-FE0031712、及び米国国家航空宇宙局によって助成された助成番号NNX17CJ02Cの下での政府支援を受けて作成されたものである。政府は、本発明に特定の権利を有する。
【0003】
本開示は、概して、電解酸化炭素還元の分野に関し、より具体的には、電解酸化炭素リアクタを動作させるためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0004】
電解二酸化炭素リアクタは、アノード及びカソードにおける反応物組成、アノード及びカソードに送達される電気エネルギー、並びに、電解質、アノード及びカソードの物理化学的環境等の様々な動作条件のバランスを取らなければならない。これらの条件のバランスを取ることで、電解リアクタの動作電圧、ファラデー収率、並びに、一酸化炭素(CO)及び/又は他の炭素含有生成物(CCP)及び水素を含む、カソードにおいて発生する生成物の混合に、強い影響が及ぶ可能性がある。
【0005】
本明細書に含まれる背景及び文脈の説明は、概して本開示の文脈を提示する目的でのみ提供されている。本開示の大部分に発明者らの研究が提示されているが、このような研究が背景セクションに記載されているか又は本明細書の他の箇所で文脈として提示されているからといって、このような研究が従来技術であると認められているわけではない。
【発明の概要】
【0006】
本開示の1つの態様は、COx還元のための膜電極アセンブリ(MEA)を動作させる方法に関する。方法は、上記MEAの上記カソードにCOxを含むガスを導入するとともに第1の電流密度で上記MEAに電流を印加し、それにより、COxを還元してCOx還元生成物を生成する段階と、通常運転中に、電流一時停止スケジュールに従って、印加電流を自動的に一時停止させる段階と、を含む。
【0007】
一部の実施形態において、上記電流一時停止スケジュールは、電流一時停止期間によって分離される、上記第1の電流密度での電流オン期間を含み、1つの電流一時停止期間の少なくとも一部の間の上記印加電流は、ゼロ又は上記第1の電流密度よりも低い第2の電流密度である。
【0008】
一部の実施形態において、電流オン期間の上記継続時間は、10時間~1000時間である。一部のこのような実施形態において、電流一時停止期間の上記継続時間は、5分~10時間である。
【0009】
一部の実施形態において、電流オン期間の上記継続時間は、1時間~10時間である。一部のこのような実施形態において、電流一時停止期間の上記継続時間は、500マイクロ秒~20分である。
【0010】
一部の実施形態において、電流オン期間の上記継続時間は、3分~1時間である。一部のこのような実施形態において、電流一時停止期間の上記継続時間は、500マイクロ秒~10分である。
【0011】
一部の実施形態において、上記合計電流オン期間継続時間は、上記合計電流一時停止期間継続時間よりも少なくとも3倍、少なくとも5倍、又は少なくとも10倍長い。様々な実施形態によれば、上記電流一時停止期間継続時間及び/又は上記電流オン期間継続時間は一定であっても又は変動してもよい。
【0012】
一部の実施形態において、上記印加電流を自動的に一時停止させる段階は、上記第1の電流密度からの単一ステップを含む。一部の実施形態において、上記印加電流を自動的に一時停止させる段階は、上記第1の電流密度からの複数のステップを含む。一部の実施形態において、上記印加電流を自動的に一時停止させる段階は、上記第1の電流密度からの連続的なランプを含む。
【0013】
一部の実施形態において、上記印加電流を自動的に一時停止させる段階は、単一ステップを用いて上記第1の電流密度に戻す段階を含む。一部の実施形態において、上記印加電流を自動的に一時停止させる段階は、複数のステップを用いて上記第1の電流密度に戻す段階を含む。一部の実施形態において、上記印加電流を自動的に一時停止させる段階は、連続的なランプを用いて上記第1の電流密度に戻す段階を含む。
【0014】
一部の実施形態において、印加電流を自動的に一時停止させる段階は、上記印加電流をゼロに減少させる段階を含む。一部のこのような実施形態において、上記印加電流をゼロに減少させる段階は、上記MEAを短絡させる段階を含む。一部のこのような実施形態において、上記MEAは、上記印加電流がゼロである場合に開路電位を有する。
【0015】
一部の実施形態において、方法は、電流を一時停止させながら、上記ガスの流れを停止させる段階をさらに含む。一部の実施形態において、方法は、電流を一時停止させながら、上記ガスの流れを維持しつつも減少させる段階をさらに含む。一部の実施形態において、方法は、電流を一時停止させながら、上記ガスの上記流れを同じ流量に維持する段階をさらに含む。
【0016】
一部の実施形態において、方法は、アノード供給材料を上記MEAの上記アノードに導入する段階をさらに含む。一部の実施形態において、方法は、電流を一時停止させながら、上記アノード供給材料の流れを停止させる段階をさらに含む。一部の実施形態において、方法は、電流を一時停止させながら、上記アノード供給材料の流れを維持しつつも減少させる段階をさらに含む。一部の実施形態において、方法は、電流を一時停止させながら、上記アノード供給材料の上記流を同じ流量に維持する段階をさらに含む。
【0017】
一部の実施形態において、方法は、通常運転の前に、上記第1の電流密度までのマルチステップ又は連続的なランプでの電流の印加を含むブレークイン手順を実行する段階をさらに含む。一部のこのような実施形態において、方法は、上記ブレークイン手順の前に、水和操作を実行する段階であって、電流が印加されず、カソードガス及びアノード供給材料が、上記MEAの上記カソード及びアノードにそれぞれ導入される、段階をさらに含む。一部のこのような実施形態において、方法は、上記水和期間中、上記温度を動作温度までランプ状に変化させる段階をさらに含む。
【0018】
本開示の別の態様は、スタックにして配置される1又は複数の膜電極アセンブリ(MEA)を含むCOx還元リアクタであって、各MEAは、(i)酸化炭素の還元を促進するCOx還元触媒を含むカソードと、(ii)酸化を促進する触媒を含むアノードと、(iii)上記カソードと上記アノードとの間に設置されるポリマー電解質膜(PEM)層とを備える、COx還元リアクタと、COx還元リアクタに印加される電流を制御するように構成されている電源コントローラであって、上記電源コントローラは、上記COx還元リアクタの通常運転中、電流一時停止スケジュールに従って印加電流を自動的に一時停止させるように構成されている、電源コントローラと、を備える、システムを含む。
【0019】
一部の実施形態において、上記電流一時停止スケジュールは、電流一時停止期間によって分離される、上記第1の電流密度での電流オン期間を含み、1つの電流一時停止期間の少なくとも一部の間の上記印加電流は、ゼロ又は上記第1の電流密度よりも低い第2の電流密度である。
【0020】
一部の実施形態において、電流オン期間の上記継続時間は、10時間~1000時間である。一部のこのような実施形態において、電流一時停止期間の上記継続時間は、5分~10時間である。
【0021】
一部の実施形態において、電流オン期間の上記継続時間は、1時間~10時間である。一部のこのような実施形態において、電流一時停止期間の上記継続時間は、500マイクロ秒~20分である。
【0022】
一部の実施形態において、電流オン期間の上記継続時間は、3分~1時間である。一部のこのような実施形態において、電流一時停止期間の上記継続時間は、500マイクロ秒~10分である。
【0023】
一部の実施形態において、上記合計電流オン期間継続時間は、上記合計電流一時停止期間継続時間よりも少なくとも3倍、少なくとも5倍、又は少なくとも10倍長い。様々な実施形態によれば、上記電流一時停止期間継続時間及び/又は上記電流オン期間継続時間は一定であっても又は変動してもよい。
一部の実施形態において、上記印加電流を自動的に一時停止させる段階は、上記第1の電流密度からの単一ステップを含む。一部の実施形態において、上記印加電流を自動的に一時停止させる段階は、上記第1の電流密度からの複数のステップを含む。一部の実施形態において、上記印加電流を自動的に一時停止させる段階は、上記第1の電流密度からの連続的なランプを含む。
一部の実施形態において、上記印加電流を自動的に一時停止させる段階は、単一ステップを用いて上記第1の電流密度に戻す段階を含む。一部の実施形態において、上記印加電流を自動的に一時停止させる段階は、複数のステップを用いて上記第1の電流密度に戻す段階を含む。一部の実施形態において、上記印加電流を自動的に一時停止させる段階は、連続的なランプを用いて上記第1の電流密度に戻す段階を含む。
一部の実施形態において、印加電流を自動的に一時停止させる段階は、上記印加電流をゼロに減少させる段階を含む。一部のこのような実施形態において、上記印加電流をゼロに減少させる段階は、上記MEAを短絡させる段階を含む。一部のこのような実施形態において、上記MEAは、上記印加電流がゼロである場合に開路電位を有する。
【0024】
一部の実施形態において、システムは、通常運転の前に、上記第1の電流密度までのマルチステップ又は連続的なランプでの電流の印加を含むブレークイン手順を実行するように構成されている。
【0025】
一部の実施形態において、システムは、さらに、上記COx還元リアクタのカソードとインタラクトするように構成されているカソードサブシステムを備えるとともに、上記COxリアクタのカソードへの酸化炭素供給ストリームの流れを制御するように構成されている酸化炭素流量コントローラを備える。一部のこのような実施形態において、上記酸化炭素流量コントローラは、電流一時停止中、酸化炭素の上記流れを停止するように構成されている。一部のこのような実施形態において、上記酸化炭素流量コントローラは、電流一時停止中、酸化炭素の流れを同じ又は異なる流量に維持するように構成されている。一部の実施形態において、上記カソードサブシステムは、排出ストリームからの未反応酸化炭素をMEAの上記カソードに戻して制御可能にリサイクルするように構成されている。
【0026】
一部の実施形態において、システムは、さらに、COxリアクタのアノードとインタラクトするように構成されているアノードサブシステムを備えるとともに、上記COxリアクタのアノードへのアノード供給ストリームの流れを制御するように構成されているアノード水流量コントローラを備える。一部のこのような実施形態において、上記アノード水流量コントローラは、電流一時停止中、上記アノード供給ストリームの上記流れを停止するように構成されている。一部のこのような実施形態において、上記アノード水流量コントローラは、電流一時停止中、上記アノード供給ストリームの流れを同じ又は異なる流量に維持するように構成されている。
【0027】
一部の実施形態において、システムは、電流一時停止中、上記アノード供給ストリームの上記組成を調整するように構成されているコントローラをさらに備える。一部の実施形態において、システムは、MEAの上記カソード側における圧力を維持するように構成されている背圧コントローラをさらに備える。一部の実施形態において、システムは、アノード水再循環ループをさらに備える。
【0028】
本開示のこれらの特徴及び他の特徴が、関連する図面を参照しながら以下でさらに詳細に提示される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1A】本開示の様々な実施形態に係る、酸化炭素還元リアクタ(CRR)の動作時に実施され得る、電流一時停止スケジュール又はプロファイルの一例の図である。
【0030】
【
図1B】本開示の様々な実施形態に係る、電流一時停止期間の開始時において電流が動作電流密度から一時停止電流密度に低減する際の電流プロファイルの概略的な例を示す図である。
【0031】
【
図1C】本開示の様々な実施形態に係る、電流一時停止期間の終了時において動作電流密度に戻る電流プロファイルの概略的な例を示す図である。
【0032】
【
図1D】本開示の様々な実施形態に係る電解酸化炭素還元システムの一例の図である。
【0033】
【
図2】本開示の様々な実施形態に係るCO
x還元に使用される膜電極アセンブリの概略図である。
【0034】
【
図3】カソード層とアノード層との間で重炭酸イオン及び/又は炭酸イオンが水素イオンと結合して炭酸を形成し得、これが分解して気体CO
2を形成し得る、バイポーラMEAの図である。
【0035】
【
図4】CO
2ガスがカソード触媒層に提供されるMEAの図である。
【0036】
【
図5】カソード触媒層と、アノード触媒層と、CO還元反応を促進するように構成されているアニオン伝導性PEMとを有するMEAの図である。
【0037】
【
図6】触媒担体粒子上に担持されている触媒を有するカソード粒子の一例の形態を示す概略図である。
【0038】
【
図7】
図3に示されているものと同様であるが、バイポーラ界面における物質移動並びにCO
2及び水の生成に関連する情報をさらに示す、MEAの図である。
【0039】
【
図8A】層間剥離に抵抗し、任意で反応生成物が界面エリアから離れる経路を提供する特徴を含む、様々なMEA設計を提示する図である。
【
図8B】層間剥離に抵抗し、任意で反応生成物が界面エリアから離れる経路を提供する特徴を含む、様々なMEA設計を提示する図である。
【
図8C】層間剥離に抵抗し、任意で反応生成物が界面エリアから離れる経路を提供する特徴を含む、様々なMEA設計を提示する図である。
【
図8D】層間剥離に抵抗し、任意で反応生成物が界面エリアから離れる経路を提供する特徴を含む、様々なMEA設計を提示する図である。
【0040】
【
図9】カソードバッファ層であり得るアニオン伝導性ポリマー層と、カチオン伝導性ポリマー層であり得るポリマー電解質膜とを備える、部分的なMEAの図である。
【0041】
【
図10】本開示の様々な実施形態に係るCO
x還元リアクタ(CRR)の主な構成要素を示す概略図である。
【0042】
【
図11】本開示の様々な実施形態に係る、分子、イオン、及び電子の流れを示す矢印を伴う、CRRの主な構成要素を示す概略図である。
【0043】
【
図12】本開示の様々な実施形態に係るCRRリアクタの主な入力及び出力を示す概略図である。
【0044】
【
図13】電流サイクルを含むMEAの動作から得られる、印加電流密度(J)と、H
2、CO、CH
2CH
2、CH
4についてのファラデー収率(FY)とを示すプロット図である。
【0045】
【
図14】電流サイクルを含む、シミュレートバイオガス供給を伴うMEAの動作から得られる、印加電流密度(J)と、H
2及びCH
4についてのファラデー収率(FY)とを示すプロット図である。
【0046】
【
図15】銅カソード触媒を伴うMEAのブレークイン期間を示すプロット図である。印加電流密度(J)と、H
2、CO、及びCH
4についてのファラデー収率とが示されている。
【0047】
【
図16】COを生成するように構成されているMEAの、電圧(V)と、印加電流密度(J)と、H
2及びCOについてのファラデー収率とを示すプロット図である。ブレークインイベント及び2つの電流オン/オフイベントを含む3つのサイクルが示されている。
【0048】
【
図17】COを生成するように構成されているMEAの、電圧(V)と、印加電流密度(J)と、H
2及びCOについてのファラデー収率とを示すプロット図である。電流は、95分で一時停止された。
【0049】
【
図18】一方が電流の一時停止を伴わずに作動され、他方が間欠パルスで作動される、COを生成するように構成されている2つのMEAのセルのパフォーマンスを比較するプロット図である。
【0050】
【
図19】COを生成するように構成されており、それぞれ電流一時停止を伴って作動される、MEAスタックのパフォーマンスデータを伴う2つのプロット図を示している。
【0051】
【
図20】異なるランププログラムを用いて500mA/cm
2の動作電流密度に到達するように試験された、COを生成するための2つの同一のMEAの結果を示す図である。
【0052】
【
図21】ランプを伴わないセルで作動されるMEAのパフォーマンスを、ランプの電流を伴うセルでの動作電流に対して比較するプロット図である。
【0053】
【
図22】電流一時停止の継続時間に対する、COについてのファラデー収率の変化(電流一時停止前から後まで)を示す図である。
【
図23】電流一時停止の継続時間に対する、電圧の変化(電流一時停止前から後まで)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本明細書では、酸化炭素(COx)還元リアクタ(CRR)及び関連装置を動作させる方法が提供される。一部の実施形態において、方法は、水和、ブレークイン、通常運転、計画停止、及び長期停止又は保管期間を含む様々な動作工程中に、電流を停止、低減、又は別様に制御する段階を含む。以下で、また実施例にさらに記載されるように、通常運転中に電流を一時停止することは、選択性の改善を含む利点を有する。さらに、システムは、メンテナンス、保管等のような他の目的で停止され得る。
【0055】
本明細書に記載されるCRRは、1又は複数の膜電極アセンブリ(MEA)を備え、複数のMEAはスタックにして配置される。MEAの例は、
図2~
図9を参照しながら以下に記載される。
【0056】
電流密度の低下又はシステムの停止には複数の課題が存在する。そのうち特定のものはCCRに固有であり、燃料電池又は水電解槽等の他の用途のためのMEAアセンブリでは見受けられない。例えば、アニオン交換ポリマー電解質(バイポーラ膜又はAEM単独膜とカソード触媒層とのいずれかの一部である)は、CO
2変換時に重炭酸アニオンを含む。アニオン交換ポリマー電解質を含むバイポーラMEA及びAEM単独MEAは、
図2~
図9を参照しながら以下でさらに記載される。システムが停止され、システム内でCO
2が別のガスに置き換えられる場合、ポリマー電解質中の重炭酸塩は、経時的に水酸化物とCO
2とに分解され得、水酸化物形態のポリマー電解質が残る。このことは、ポリマー電解質の化学的安定性、膨張、吸水、及び耐久性に影響を与え得るMEAの他の側面に影響を与える可能性がある。一部の実施形態において、アニオン交換ポリマー電解質を含有するMEAは、シャットダウン期間の間、CO
2と接触した状態に維持される。これが可能でないか又は実行されない場合、システムが再び開始される前に、MEAをCO
2に或る時間だけ曝露し、MEAが重炭酸塩形態にあることを確実にすることが有益であり得る。
【0057】
バイポーラMEAがCO2変換に用いられる場合、デバイスのカソード側に水が溜まり、COxが触媒層に接近するのを阻止する可能性がある。カソードに水が溜まる速度は、電流密度に比例する。システムを停止又は電流密度を低下させることにより、カソードに水が溜まる速度が下がる。典型的な動作条件下でのCO2の流量が、水が溜まる速度以上の速度で水を除去するのに十分なものでない場合、過剰な水をカソードの外へ排出するようにCO2ガス流による水除去を維持しながら、電流の停止又は低下を利用して水の速度を減じ、高電流密度及び低電圧をもたらす所望の動作条件に戻すことができる。
【0058】
単一のセル又は複数のセルスタックが停止される場合、カソードを通る継続的なCOx流がCOx還元生成物(例えば、CO、CH4、及びCH2CH2)及びH2を除去する。これらの化合物は微量だけ残るが、これはポリマー電解質に吸収されて、純粋なCOxとともにゆっくりと外へ拡散し得る。アノードにおいて、水は或る時間かけて再循環されて、O2で飽和状態になり、カソードから膜を通過する微量のCOx還元生成物及びH2を含有し得る。システムが停止しているときに、アノードを通して水を継続的に循環することで、アノード区画から気相O2の気泡が除去されるが、アノードは依然として、アノード水に溶解したカソードからのO2及び他の化合物に曝露される。これらの化合物はシャットダウン中にカソードへと拡散し、電流が停止した後、カソードはO2及び他の分子に曝露される場合がある。電流が停止しているときに、COx又は水の流れが止まる場合、カソードはH2及び他のCOxを比較的高い濃度で含有し、アノードは酸素の気泡を含有する。このことは、カソードへのアノードO2の及びアノードへのカソードCOx及び生成物の比較的大きなクロスオーバにつながる可能性がある。
【0059】
室温でスタックが開始又はスタックが作動されると、比較的高い温度(例えば、40℃)でスタックを動作させるよりも電圧が高くなるとともに電圧減衰がより速くなる。低温での動作は、電流の流れを開始する前に、水を加熱してスタックのアノードに通して循環させる等の様々な技法によって回避できる。一部の実施形態において(例えば、電流を流す前に所望の温度まで上昇させることが可能でない場合)、短時間で0電流から直接所望の又は所望の電流よりも高い電流まで到達させることを利用して、スタックを迅速に適温まで上昇させ、低温でのスタックの動作を最低限に抑えてよい。以下に記載の動作パラメータは、これらの課題に対処するものである。
【0060】
一部の実施形態において、電流は、特定の電流プロファイルに従ってMEAに印加される。電流プロファイルは、以下でさらに記載されるように、動作モードに従って異なり得る。動作モードは、水和(プレブレークイン)、ブレークイン、通常運転、計画停止、及び長期停止又は保管を含む。これらの動作モード中、多くの場合は電流が特定の電流プロファイルに従って調整されるときに、調整され得る他のセル動作パラメータとしては、(a)カソードガス組成、流量、及び圧力、(b)アノード水組成及び流量、並びに(c)温度が挙げられる。一部の実施形態において、電圧が制御される。
【0061】
印加電流は、セルの動作中に一時停止され得る。電流の一時停止は、オフ/オンサイクルと称される場合もあり、ここで、電流は複数回、オフに切り替えられて、その後オンに切り替えられる。典型的には、電流一時停止中、印加電流は、ゼロに減じられる(すなわち、オフに切り替えられる)が、一部の実施形態においては非ゼロレベルに減じられてよい。
【0062】
以下の表には、特定の動作モード中の、電流プロファイル、カソードガス組成及び流量、アノード水組成及び流量、温度、並びに電圧プロファイルが記載されている。電流効率及びセル構成例も含まれている。
水和(プレブレークイン)
【0063】
一部の実施形態において、いかなる電流もセルに印加される前に、MEAは水和工程に通される。これには、反応物流を開始することと、電流を印加する前に定常状態に達することができるようにセル(又はスタック)を加熱することとが含まれる。スタック又はセルアセンブリの前に、MEAは、MEAの水和を開始するために水に浸漬される。アセンブリ後、アノード水及びカソードCO2の流量並びに圧力が設定される。乾性又は加湿CO2を流すことは、比較的長期間の動作中に乾性CO2が投入物として用いられる場合であっても、この工程において有益であり得る。アノード排出口は、この排出口を出る気泡が存在しないことを確認するために観察される。存在する場合、このことは、(膜内のピンホールからの)著しいCO2クロスオーバ又はハードウェアにおける漏洩があることを示す。所望の動作温度が周囲温度よりも高い場合、セルは、アノード水の流れを開始した後に所望の温度まで加熱される。この工程の間、MEAは所望の温度で水和し続ける。
【0064】
表1:水和中の動作パラメータ例
[表1]
【表1】
ブレークイン
【0065】
ブレークイン期間は、動作条件及びパフォーマンスが所望の長期設定に合致するまでに、MEA又はスタックに初めて適用される手順を指す。一部の実施形態において、MEAが初めて使用されるとき、より良好なパフォーマンスを得るために、典型的な操作とは異なる手順が有用であり得る。以前に作動されたことのないMEAは、十分に水和しない場合があるか、又は、動作時の温度の上昇に起因して構造に変化が生じる場合がある。一部の実施形態において、電流は、所望の動作値まで一直線にジャンプするのではなく、一連の工程において低い値からより高い値へとランプアップする。漸進的な線形ランプアップが用いられてもよい。電流プロファイルの例が
図1Aに示されている。
【0066】
マルチステップランプアップにおける中間工程の数は、例えば、1、2、3、4、5、又は6であってよい。各工程における継続時間は、同じであっても又は異なってもよい。継続時間の例は、30分~5時間の範囲にあり、例えば、1時間又は2時間である。例における
図20は、ランプがより緩やかである結果、選択性がより高くなり得ることを示しており、これは水和がより良好となることに起因し得る。一部の実施形態において、各中間工程では少なくとも1時間の継続時間が用いられる。
【0067】
プレブレークインで(例えば、水和期間中に)動作温度に達する実施形態において、温度はこの温度で一定に維持され得る。他の実施形態において、温度は、ブレークイン手順中にランプアップされ得る。
【0068】
表2:ブレークイン中の動作パラメータ例
[表2]
【表2】
【0069】
通常運転中にスタックをオフ及びオンにサイクルさせることは、長時間にわたってパフォーマンスを維持するのに有用であり得る。電流をたった5マイクロ秒、500マイクロ秒、5秒、又は30秒だけ停止させることで、電流効率を改善及び/又は電圧を減少させることができる。これは電流一時停止と称される。以下で示すように、一部の実施形態において、電流一時停止により、電流が非ゼロレベルまで減少する。例えば、典型的な動作電流密度が300mA/cm2である場合、電流一時停止は、電流密度が50mA/cm2まで低減することを含み得る。一部の実施形態において、電圧は、同様のサイクル作用を達成するように制御される。
【0070】
電流が少ない又は無いことで、セル(例えば、バイポーラMEA)のアノードからカソードに到来する水が少なくなり、セルのカソードにおいて過剰に溜まった場合に水を除去するのに利用できる。また、電流が少ない又は無いことで、カソードにおける電圧が、触媒表面に蓄積し得る有害種が酸化され得る点まで上昇する。考えられる不純物の例としては、COx還元中に形成される炭素含有中間体、鉄等の金属不純物、又はH2S等のCO2ストリームに導入される不純物が挙げられる。同じ効果は、スタック又はセル電圧を所望の値に直接制御することによって達成され得る。
【0071】
様々な実施形態によれば、電流は、比較的頻繁な間隔(10時間未満、例えば、2時間未満)で、又は比較的頻繁でない間隔(数十時間以上)で一時停止されてよい。電流一時停止が頻繁である場合の動作条件及び一時停止が比較的頻繁でない場合の動作条件の例は、以下でそれぞれ表3及び表4に提示される。
【0072】
電流を動作電流からゼロ、又は第2のより低い電流密度に低減する際、様々な電流プロファイルが用いられ得る。一部の実施形態において、より低いレベルへと即座に移行するのに単一ステップが用いられる。代替的な実施形態において、複数のステップが用いられるか、又は、継続的かつ漸進的な線形ランプが用いられてよい。同様に、動作電流密度に戻る際、単一ステップが用いられてもよいし、又は、複数のステップ又は継続的で漸進的なランププログラムを用いて電流をランプ状に変化させてもよい。
【0073】
一般に、電流プロファイル又は電流一時停止スケジュールは、電流オン期間が一時停止期間よりも大幅に長いようになっている。
図1Aは、電流プロファイルと称される場合もある電流一時停止スケジュールの概略的な例を示している。電流密度がy軸上に、時間がx軸上に示されている。
図1Aに見ることができるように、電流オン期間は、電流一時停止期間によって規則的な間隔を置いて分離されている。間隔は、電流オン期間継続時間である。電流密度は、電流一時停止期間中に動作電流密度(J動作中)から、上記で示したようにゼロ又は非ゼロであり得る一時停止電流密度(J一時停止)まで低減される。電流一時停止期間継続時間は、ハイスループットのために電流オン期間よりも大幅に短くなっている。例えば、電流オン期間は、電流一時停止期間よりも、少なくとも3倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、又は500倍長くてよい。選択性の改善は、電流一時停止継続時間、及び電流オン継続時間における以前の選択性の両方と相関する。したがって、電流オン継続時間がより長ければ、より長い電流一時停止継続時間が用いられ得る。オン/オフ継続時間の例は以下に与えられる。
【表3】
【0074】
図1Aの例において、電流一時停止スケジュールは、通常運転の継続時間の間は一定である。他の実施形態において、間隔及び/又は一時停止継続時間は、動作の過程を通して変化してよい。例えば、電流一時停止は、高度な動作工程においてより頻繁になるようにプログラムされてよい。電流一時停止スケジュールは、典型的には、本明細書に記載されるようなコントローラを用いて自動的に実施される。コントローラは、スケジュールを実施するようにプログラム又は別様に構成されている。一部の実施形態において、ユーザは、スケジュールを、動作中に自動で実施されるように設定してよい。
【0075】
また、
図1Aの例では、一時停止期間の開始時に電流密度を減少させ、一時停止期間の終了時に動作密度まで戻すのに、単一ステップが用いられている。本明細書に記載される他の動作モードにおいて電流を増加又は減少させるのと同様に、電流は、電流一時停止期間の開始及び/又は終了時に、複数のステップで又は連続的にランプ状に変化させてよい。
図1Bは、電流一時停止期間の開始時における、動作電流密度から一時停止電流密度への電流の減少の概略的な例を示している。同様に、
図1Cは、電流一時停止期間の終了時における、動作電流密度への戻りの概略的な例を示している。開始時における電流プロファイルは、一時停止期間の終了時のそれとは独立して選択されてよい。例えば、電流は、単一ステップで減少させて、複数のステップで上昇させてもよい。
【0076】
電流一時停止中、セル電圧は、様々な値のうちの任意のものに維持されてよい。いくつかの場合において、電流一時停止中、アノード及びカソードは、(例えば、電源を通して又は電極を金属若しくは他の導体に接続することによって)短絡される。この場合、セル電圧は0又は略0ボルトである。いくつかの場合において、電流一時停止中、アノード及びカソードはフロート可能にされ、セルの電圧は一般的な条件下での開路電圧、例えば、0.8V~1.4V、0.8V~1.2V、又は0.9V~1.1Vである。開路電圧は、外部からの電流がセルに印加されていないか又はセルから引き出されていない場合の、セルの電極間の電位差を表す。開路電圧は、アノード及びカソードにおける半反応電位の発現である。いくつかの場合において、電流一時停止中、セル電圧は、0ボルト(短絡)又は開路電圧のいずれでもない。むしろ、セル電圧は、アノードとカソードとの間に制御電圧及び/又は制御電流を印加することによって異なる電圧に設定される。特定の実施形態において、電流一時停止中、セルの電圧は、約0~1.4ボルト、又は0.9~1.1ボルトに維持される。
【0077】
様々な実施形態によれば、カソード及び/又はアノードの流れは、電流一時停止中に停止されてもよいし、又は継続可能とされてもよい。
表3:通常運転中の動作パラメータ例‐頻繁な電流一時停止
[表3]
【表4】
表4:通常運転中の動作パラメータ例‐比較的頻繁でない電流一時停止
[表4]
【表5】
計画停止
【0078】
時々、COx電解システムの使用に応じて、計画停止が実行されてよい。計画停止においては、システムは短時間だけ停止され、その後オンに戻される。計画停止の理由の例としては、システムの或る部分のメンテナンス(例えば、アノード水リサイクルループ上のフィルタの交換、流量コントローラの置換、又は温度センサの試験)、計画停電、及びCOx還元の生成物を用いる下流プロセスにおける一時停止が挙げられる。計画停止は、数分~数日続く比較的短い停止期間を有する。
【0079】
計画停止中は、印加電流はゼロである。様々な実施形態によれば、印加電流は即座にゼロまで降下してもよいし(すなわち、単一ステップ)、又は、複数のステップで又は連続的なランプのいずれかでランプダウンされてもよい。
【0080】
表5:計画停止の動作パラメータ例
[表5]
【表6】
長期停止及び保管
【0081】
時に、システム又はスタックが長期間停止されることが望ましい場合がある。例えば、施設の休日シャットダウン、システムの新施設への移動、又はCO
x供給の中断。この時間中は、システムを外部入力から完全に切り離すことができることが期待される。この場合、通常運転中に用いられるものとは異なるガス又は水溶液を、アノード又はカソード内に密封することができる。長期停止又は保管期間後のスタートアップ手順は、上記に記載したブレークイン手順と同じとすることができる。表6:長期停止の動作パラメータ例
[表6]
【表7】
システム
【0082】
図1Dは、本明細書に記載のもののうちの任意の1又は複数等のMEAを含むセルを備えてよい酸化炭素還元リアクタ103の動作を制御するシステム101を示している。リアクタは、スタックにして配置される複数のセル又はMEAを含んでよい。システム101は、還元リアクタ103のアノードとインタフェースするアノードサブシステムと、還元リアクタ103のカソードとインタフェースするカソードサブシステムとを備える。
【0083】
図示するように、カソードサブシステムは、酸化炭素の供給ストリームを還元リアクタ103のカソードに提供するように構成されている酸化炭素源109を備え、これは、動作中、カソードにおける還元反応の生成物を含む出力ストリームを生成してよい。生成物ストリームは、未反応酸化炭素及び/又は水素を含んでもよい。108を参照されたい。
【0084】
酸化炭素源109は、還元リアクタ103への酸化炭素の体積流量又は質量流量を制御するように構成されている酸化炭素流量コントローラ113に連結されている。1又は複数の他の構成要素が、酸化炭素源109から還元リアクタ103のカソードまでの流路上に設置されてよい。例えば、任意の加湿器104が、経路上に設けられ、酸化炭素供給ストリームを加湿するように構成されてよい。加湿酸化炭素は、MEAの1又は複数のポリマー層を湿潤させ、それにより、このような層の乾燥を回避し得る。流路上に設置され得る別の構成要素は、パージガス源117に連結されているパージガス流入口である。特定の実施形態において、パージガス源117は、還元リアクタ103のセルに対して電流が一時停止されている場合に、或る期間の間パージガスを提供するように構成されている。一部の実装において、MEAカソード上にパージガスを流すことは、触媒活性及び/又は選択性の回復を促進する。これは、少なくとも部分的に、特定の反応中間体が触媒活性部位から洗い流すこと及び/又はカソードから水が除去されることに起因し得る。パージガスの例としては、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、窒素、アルゴン、ヘリウム、酸素、及びこれらのうちの任意の2以上の混合物が挙げられる。
【0085】
動作中、カソードからの出力ストリームは、セルのカソード側における圧力を規定範囲(例えば、システム構成に応じて、約50~800psig)内に維持するように構成されている背圧コントローラ115に接続する導管107を介して流れる。出力ストリームは、反応生成物108を分離及び/又は濃縮のために1又は複数の構成要素(図示せず)に提供してよい。
【0086】
特定の実施形態において、カソードサブシステムは、排出ストリームからの未反応酸化炭素を還元リアクタ103のカソードに戻して制御可能にリサイクルするように構成されている。一部の実装において、出力ストリームは、酸化炭素をリサイクルする前に、還元生成物及び/又は水素を除去するように処理される。MEAの構成及び動作パラメータに応じて、還元生成物は、一酸化炭素、水素、メタン及び/又はエチレン等の炭化水素、ギ酸、酢酸等の酸素含有有機化合物、及びそれらの任意の組み合わせであってよい。特定の実施形態において、生成物ストリームから水を除去する1又は複数の構成要素(図示せず)がカソード排出口の下流に設置される。このような構成要素の例としては、生成物ガスストリームから液体水を除去するように構成されている相分離器、及び/又は、生成物ストリームガスを冷却し、それにより、乾性ガスを、例えば必要な場合に下流プロセスに提供するように構成されている凝縮器が挙げられる。一部の実装において、リサイクルされる酸化炭素は、カソードの上流の源109からの新鮮な酸化炭素と混合し得る。
【0087】
図1Dに示すように、アノードサブシステムは、酸化炭素還元リアクタ103のアノード側にアノード供給ストリームを提供するように構成されている。特定の実施形態において、アノードサブシステムは、新鮮なアノード水を、アノード水貯蔵器119及びアノード水流量コントローラ111を含む再循環ループに提供するように構成されているアノード水源(図示せず)を備える。アノード水流量コントローラ111は、還元リアクタ103のアノードへの又はそこからのアノード水の流量を制御するように構成されている。図示の実施形態において、アノード水再循環ループは、アノード水の組成を調整するための構成要素に連結されている。これらには、水貯蔵器121及び/又はアノード水添加物源123が含まれ得る。水貯蔵器121は、アノード水貯蔵器119内のものとは異なる組成を有する水を供給する(及びアノード水再循環ループにおいて循環させる)ように構成されている。1つの例において、水貯蔵器121内の水は、循環アノード水内の溶質又は他の成分を希釈することができる純水である。純水は、従来の脱イオン水、さらには、例えば少なくとも約15MOhm-cmであるか又は18.0MOhm-cmを超える抵抗率を有する超純水であってよい。アノード水添加物源123は、循環アノード水に塩及び/又は他の成分等の溶質を供給するように構成されている。
【0088】
動作中、アノードサブシステムは、少なくとも部分的に反応して酸素等の酸化生成物を生成する水又は他の反応物をリアクタ103のアノードに提供してよい。生成物は、未反応アノード供給材料とともに、還元リアクタの排出ストリーム中に提供される。
図1Dには示していないが、任意の分離構成要素がアノード排出ストリームの経路上に設けられ、アノード生成物ストリームから酸化生成物を凝縮又は分離するように構成されてよい。
【0089】
他の制御機能部がシステム101に含まれてよい。例えば、温度コントローラは、動作中の適切な点において、酸化炭素還元リアクタ103を加熱及び/又は冷却するように構成されてよい。図示の実施形態において、温度コントローラ105は、アノード水再循環ループに提供されるアノード水を加熱及び/又は冷却するように構成されている。例えば、温度コントローラ105は、アノード水貯蔵器119内の水及び/又は貯蔵器121内の水を加熱又は冷却し得る加熱器及び/又は冷却器を含むか又はそれに連結されてよい。一部の実施形態において、システム101は、アノード水成分以外の成分を直接加熱及び/又は冷却するように構成されている温度コントローラを備える。セル又はスタック内のこのような他の成分の例、及びカソードに流れる酸化炭素。
【0090】
酸化炭素還元リアクタ103への電流が一時停止されているか否かを含む、電気化学的動作のフェーズに応じて、システム101の特定の構成要素は、非電気的動作を制御するように動作してよい。例えば、システム101は、カソードへの酸化炭素の流量及び/又はリアクタ103のアノードへのアノード供給材料の流量を調整するように構成されてよい。この目的で制御され得る構成要素としては、酸化炭素流量コントローラ113及びアノード水コントローラ111が挙げられ得る。
【0091】
また、電流が一時停止されているか否かを含む、電気化学的動作のフェーズに応じて、システム101の特定の構成要素は、酸化炭素供給ストリーム及び/又はアノード供給ストリームの組成を制御するように動作してよい。例えば、水貯蔵器121及び/又はアノード水添加物源123は、アノード供給ストリームの組成を調整するように制御されてよい。いくつかの場合において、添加物源123は、水性アノード供給ストリーム中の1又は複数の塩等の1又は複数の溶質の濃度を調整するように構成されてよい。
【0092】
いくつかの場合において、コントローラ105等の温度コントローラは、動作のフェーズに基づいて、システム101の1又は複数の構成要素の温度を調整するように構成されている。例えば、セル103の温度は、ブレークイン、通常運転中の電流一時停止、及び/又は保管中に、上昇又は低下されてよい。
【0093】
一部の実施形態において、酸化炭素電解還元システムは、他のシステム構成要素からの還元セルの除去を容易にするように構成されている。これは、保管、メンテナンス、改修等のためにセルを除去する必要がある場合に有用であり得る。図示の実施形態において、隔離弁125a及び125bは、それぞれ酸化炭素源への並びにカソード及び背圧コントローラ115へのセル103の流体連通を遮断するように構成されている。さらに、隔離弁125c及び125dは、それぞれアノード水流入口及び排出口へのセル103の流体連通を遮断するように構成されている。
【0094】
酸化炭素還元リアクタ103は、1又は複数の電源及び関連するコントローラの制御下で動作してもよい。ブロック133を参照されたい。電源及びコントローラ133は、還元リアクタ103内の電極に供給される電流を制御及び/又は印加される電圧を制御するようにプログラム又は別様に構成されてよい。電流及び/又は電圧は、本明細書の他の箇所に記載の電流スケジュール及び/又は電流プロファイルを実行するように制御されてよい。例えば、電源及びコントローラ133は、還元リアクタ103のアノード及び/又はカソードに印加される電流を周期的に一時停止するように構成されてよい。本明細書に記載の電流プロファイルはいずれも、電源及びコントローラ133内にプログラムされてよい。
【0095】
特定の実施形態において、電源及びコントローラ133は、酸化炭素還元リアクタ103における所望の電流スケジュール及び/又はプロファイルを実現するのに必要な動作のすべてではないが一部を実行する。システムオペレータ又は他の責任者は、還元リアクタ103に印加される電流のスケジュール及び/又はプロファイルを完全に定義するように、電源及びコントローラ133と連携して行動してよい。例えば、オペレータは、電源及びコントローラ133内にプログラムされている電流一時停止のセットの他に1又は複数の電流一時停止を制定してよい。
【0096】
特定の実施形態において、電源及びコントローラは、システム101の他の構成要素と連携する1又は複数の他のコントローラ又は制御機構と協調して動作する。例えば、電源及びコントローラ133は、カソードへの酸化炭素の送達、アノードへのアノード水の送達、アノード水への純水又は添加物の添加、及びこれらの機能の任意の組み合わせを制御するためのコントローラと協調して動作してよい。一部の実装において、1又は複数のコントローラは、以下の機能の任意の組み合わせを制御するように協調して制御又は動作するように構成されている:還元セル103への電流及び/又は電圧の印加、(例えば、背圧コントローラ115を介した)背圧の制御、(例えば、パージガス構成要素117を用いた)パージガスの供給、(例えば、酸化炭素流量コントローラ113を介した)酸化炭素の送達、(例えば、加湿器104を介した)カソード供給ストリーム中の酸化炭素の加湿、(例えば、アノード水流量コントローラ111を介した)アノードへの及び/又はそこからのアノード水の流量、並びに(例えば、アノード水源105、純水貯蔵器121、及び/又はアノード水添加物構成要素123を介した)アノード水組成。
【0097】
図示の実施形態において、電圧モニタリングシステム134は、MEAセルのアノード及びカソードにかかる又はセルスタックの任意の2つの電極にかかる電圧を決定する、例えば、マルチセルスタック内のすべてのセルにかかる電圧を決定するために用いられる。このようにして決定された電圧は、電流一時停止中にセル電圧を制御、一時停止の継続時間を通知等するために用いることができる。特定の実施形態において、電圧モニタリングシステム134は、還元セル103を指定の電圧範囲内に留まらせるように電源133と協調して機能するように構成されている。例えば、電源133は、電流一時停止中にセル電圧を指定範囲内に維持するようにして還元セル103の電極に電流及び/又は電圧を印加するように構成されてよい。例えば、電流一時停止中、セルの開路電圧が規定範囲から逸脱する(電圧モニタリングシステム134によって判定される)場合、電源は、セル電圧を指定範囲内に維持するように電極に電流又は電圧を印加するように構成されてよい。
【0098】
図1Dに示すもの等の電解酸化炭素還元システムは、1又は複数のコントローラと、ポンプ、センサ、ディスペンサ、弁、及び電源等の1又は複数の制御可能な構成要素とを備える制御システムを使用してよい。センサの例としては、圧力センサ、温度センサ、流量センサ、導電率センサ、電圧計、電流計、電気化学機器を含む電解質組成センサ、クロマトグラフィーシステム、吸光度計測ツール等の光学センサ等が挙げられる。このようなセンサは、アノード水、純水、塩溶液等を保持するための貯蔵器、及び/又は電解酸化炭素還元システムの他の構成要素において、(例えば、流動場における)MEAセルの流入口及び/又は排出口に連結されてよい。
【0099】
1又は複数のコントローラによって制御され得る様々な機能には、電流及び/又は電圧を酸化炭素還元セルに印加すること、このようなセル上でカソードからの排出口にかかる背圧を制御すること、カソード流入口にパージガスを供給すること、カソード流入口に酸化炭素を送達すること、カソード供給ストリーム中の酸化炭素を加湿すること、アノードに及び/又はアノードからアノード水を流すこと、並びにアノード供給組成を制御することが挙げられる。これらの機能のうちの任意の1又は複数は、その機能を単独で制御するための専用コントローラを有してよい。これらの機能のうちの任意の2以上は、コントローラを共有してよい。一部の実施形態において、少なくとも1のマスタコントローラが2以上の構成要素コントローラに命令を与える、コントローラのヒエラルキが用いられる。例えば、システムは、高水準制御命令を(i)酸化炭素還元セルへの電源、(ii)カソード供給ストリーム流量コントローラ、及び(iii)アノード供給ストリーム流量コントローラに与えるように構成されているマスタコントローラを備えてよい。例えば、システムの個々の構成要素を制御するために、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)が用いられてよい。
【0100】
特定の実施形態において、制御システムは、本明細書に記載の特性の任意のものを有し得る電流スケジュールに従って、MEAを備える酸化炭素還元セルに電流を印加するように構成されている。例えば、電流スケジュールは、印加電流における周期的一時停止を提供し得る。いくつかの場合において、制御システムは、本明細書に記載のようなランプ及び/又は段階的変化等の規定のプロファイルを有する電流一時停止を提供する。
【0101】
特定の実施形態において、制御システムは、電流スケジュールと協調して、1又は複数の供給ストリーム(例えば、酸化炭素流等のカソード供給ストリーム及びアノード供給ストリーム)の流量を制御するように構成されている。例えば、酸化炭素又はパージガスの流れは、MEAセルに印加されている電流が一時停止されると、オンに切り替えられ、オフに切り替えられ、又は別様に調整され得る。
【0102】
特定の実施形態において、制御システムは、塩濃度を規定レベルに維持及び/又はアノード水を回収して再循環させてよい。特定の実施形態において、塩濃度は、MEAセルへの印加電流一時停止のスケジュールと協調して調整される。制御システムの制御下で、システムは、例えば、(a)アノードから外に流れるアノード水を再循環させる、(b)アノードに入るアノード水の組成及び/又は流量を調整する、(c)カソードから流出する水をアノード水に戻すように移動させる、及び/又は(d)アノードに戻る前に、カソードストリームから回収された水の組成及び/又は流量を調整してよい。(d)は、カソードから回収された水の中の酸化炭素還元生成物に対処し得るものであることに留意されたい。しかしながら、一部の実装において、一部の還元生成物はアノードにおける無害な生成物を後で酸化させ得るので、これを考慮する必要はない。
【0103】
コントローラは、任意の数のプロセッサ及び/又はメモリデバイスを備えてよい。コントローラは、ソフトウェア又はファームウェア等の制御ロジックを含んでよく、及び/又は、別のソースから提供される命令を実行してよい。コントローラは、酸化炭素の還元前、還元中、及び還元後に電解セルの動作を制御するための電子装置と統合されてよい。コントローラは、1又は複数の電解酸化炭素還元システムの様々な構成要素又はサブパーツを制御してよい。コントローラは、システムの処理要件及び/又はタイプに応じて、ガスの送達、温度設定(例えば、加熱及び/又は冷却)、圧力設定、電力設定(例えば、MEAセルの電極に送達される電圧及び/又は電流)、液体流量設定、流体送達設定、並びに精製水及び/又は塩溶液の投与等の、本明細書に開示されているプロセスのうちの任意のものを制御するようにプログラムされてよい。これらの被制御プロセスは、電解酸化炭素還元システムと協調して機能する1又は複数のシステムと接続又はインタフェースしてよい。
【0104】
様々な実施形態において、コントローラは、命令を受信し、命令を発行し、本明細書に記載の動作を制御する、様々な集積回路、ロジック、メモリ、及び/又はソフトウェアを有する電子装置を含む。集積回路は、プログラム命令を格納するファームウェアの形態のチップ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)として定義されるチップ、及び/又は、プログラム命令(例えば、ソフトウェア)を実行する1又は複数のマイクロプロセッサ又はマイクロコントローラを含んでよい。プログラム命令は、電解酸化炭素還元システムの1又は複数の構成要素上でプロセスを実行するための動作パラメータを定義する、様々な個々の設定(又はプログラムファイル)の形態の、コントローラに通信される命令であってよい。動作パラメータは、一部の実施形態において、一酸化炭素、炭化水素、及び/又は他の有機化合物等の特定の還元生成物の生成時に、1又は複数の処理工程を達成するためにプロセスエンジニアによって定義されるレシピの一部であってよい。
【0105】
コントローラは、一部の実装において、システムに統合されるか、連結されるか、そうでなければシステムにネットワーク接続されるか、又はそれらの組み合わせであるコンピュータの一部であるか又はそのようなコンピュータに連結されてよい。例えば、コントローラは、遠隔に(例えば、「クラウド」に)格納されている命令を用い、及び/又は、遠隔で実行してよい。コンピュータは、電解操作の現在の進捗をモニタ、過去の電解操作履歴を調査、複数の電解操作から傾向又はパフォーマンスメトリックを調査、現在の処理のパラメータを変更、現在の処理に続く処理工程を設定、又は、新たなプロセスを開始するために、システムへのリモートアクセスを可能にしてよい。いくつかの例において、遠隔コンピュータ(例えば、サーバ)は、ローカルネットワーク又はインターネットを含み得るネットワークを通してシステムにプロセスレシピを提供できる。遠隔コンピュータは、パラメータ及び/又は設定のエントリ又はプログラミングを可能にするユーザインタフェースを備えてよい。パラメータ及び/又は設定は、その後、遠隔コンピュータからシステムに通信される。いくつかの例において、コントローラは、1又は複数の操作中に実行されることになる処理工程のそれぞれについてのパラメータを指定する、データの形式の命令を受信する。
【0106】
コントローラは、一緒にネットワーク接続され、MEAセルへの電流の印加及び本明細書に記載の他のプロセス制御等の共通の目的に向けて機能する、1又は複数の別個のコントローラを含むこと等によって、分散され得る。このような目的で分散された制御システムの一例としては、酸化炭素を電解還元するためのシステム上の1又は複数のプロセッサ、及び、プロセスを制御するために組み合わせられる(プラットフォームレベルで又は遠隔コンピュータの一部として等)遠隔に配置される1又は複数のプロセッサが挙げられる。
【0107】
特定の実施形態において、電解酸化炭素還元システムは、MEA内での塩の沈殿を回避するように構成及び制御される。沈殿した塩は、チャネルを遮断、及び/又はMEAセルのパフォーマンスを悪化させる他の影響を有し得る。いくつかの場合において、セルは、特にカソード側において、乾性気体反応物がMEAから水を過剰に除去することが原因で、例えばカソード側において乾燥し過ぎることがあり得る。塩析沈殿を生じ得るこの問題は、ガス流入口ストリーム中の水の分圧を制御することによって(例えば、気体酸化炭素源ガスを加湿することによって)対処され得る。いくつかの場合において、アノード水中の塩濃度は、MEA内での塩析沈殿を促進するのに十分なほど高い。この問題は、電流一時停止中に、MEAを純水で洗い流すことによって対処され得る。
MEA設計の実施形態
MEAの概要
【0108】
様々な実施形態において、MEAは、アノード層、カソード層、電解質、及び任意で1又は複数の他の層を含む。これらの層は、固体及び/又はゲルであってよい。これらの層は、イオン伝導性ポリマー等のポリマーを含んでよい。
【0109】
使用時、MEAのカソードは、3つの入力:COx、COxと化学反応するイオン(例えば、プロトン)、及び電子を結合することによって、COxの電気化学還元を促進する。還元反応は、CO、炭化水素、及び/又はメタノール、エタノール及び酢酸等の有機化合物を含有する酸素及び水素を生成し得る。使用時、MEAのアノードは、酸素元素及びプロトンを生成するように、水の電解等の電気化学酸化反応を促進する。カソード及びアノードは、それぞれの反応を促進するように触媒をそれぞれ含んでよい。
【0110】
MEA内の層の組成及び構成は、COx還元生成物の高収率を促進し得る。このために、MEAは、以下の条件:(a)カソードにおける寄生還元反応(非COx還元反応)が最小であること、(b)MEA内のアノード又は他の箇所におけるCOx反応物の損失が少ないこと、(c)反応中のMEAの物理的完全性を維持(例えば、MEA層の剥離を防止)すること、(d)COx還元生成物のクロスオーバを防止すること、(e)酸化生成物(例えば、O2)のクロスオーバを防止すること、(f)酸化のためのカソードにおける好適な環境を維持すること、(g)不所望のイオンを遮断しながら所望のイオンがカソードとアノードとの間を移動するための経路を提供すること、及び(h)電圧損失を最低限に抑えることのうちの任意の1又は複数を促進してよい。本明細書において説明するように、塩又は塩イオンがMEAに存在することで、これらの条件のすべてのうちのいくつかを促進できる。
COx還元の考慮事項
【0111】
MEA等のポリマー系膜アセンブリは、水電解槽等の様々な電解システムにおいて、及び、燃料電池等の様々なガルバニックシステムにおいて用いられてきた。しかしながら、COx還元は、水電解槽及び燃料電池においては直面することのない又は直面することの少ない問題を呈する。
【0112】
例えば、多くの用途に関して、COx還元のためのMEAは、約50000時間以上(おおよそ5年の継続動作)程度の耐用期間を要求するが、これは、自動車用途の場合の燃料電池の期待されるライフスパン、例えば5000時間程度よりも大幅に長い。また、様々な用途について、COx還元のためのMEAは、自動車用途において燃料電池に用いられるMEAと比較して、相対的に大きな表面積を有する電極を用いる。例えば、COx還元のためのMEAは、少なくとも約500cm2の表面積(空孔及び他の非平面形状部を考慮しない)を有する電極を用い得る。
【0113】
COx還元反応は、特定の反応物及び生成物種の物質移動を促進する動作環境で、寄生反応を抑制するように実施され得る。燃料電池及び水電解槽MEAは、多くの場合、このような動作環境を作り出すことができない。例えば、このようなMEAは、カソードにける気体水素の発生及び/又はアノードにおける気体CO2の生成等の不所望な寄生反応を促進し得る。
【0114】
一部のシステムでは、COx還元反応の速度は、カソードにおける気体COx反応物のアベイラビリティによって制限される。対照的に、水の電解速度は反応物のアベイラビリティによって有意に制限されない。液体水はカソード及びアノードに容易に接近可能である傾向があり、電解槽は可能な限り最高の電流密度付近で動作をすることができる。
MEAの構成
【0115】
特定の実施形態において、MEAは、カソード層と、アノード層と、アノード層とカソード層との間のポリマー電解質膜(PEM)を有する。ポリマー電解質膜は、電子的連通を防止しながらアノード層とカソード層とのイオン連通を提供し、これが短絡をもたらす。カソード層は、還元触媒と、第1のイオン伝導性ポリマーとを含む。カソード層は、イオン伝導体及び/又は電子伝導体を含んでもよい。アノード層は、酸化触媒と、第2のイオン伝導性ポリマーとを含む。アノード層は、イオン伝導体及び/又は電子伝導体を含んでもよい。PEMは、第3のイオン伝導性ポリマーを含む。
【0116】
特定の実施形態において、MEAは、カソード層とポリマー電解質膜との間のカソードバッファ層を有する。カソードバッファは、第4のイオン伝導性ポリマーを含む。
【0117】
特定の実施形態において、MEAは、アノード層とポリマー電解質膜との間のアノードバッファ層を有する。アノードバッファは、第5のイオン伝導性ポリマーを含む。
【0118】
特定のMEA設計に関連して、イオン伝導性ポリマーの利用可能なクラスは3つあり、それはアニオン伝導体と、カチオン伝導体、と混合型カチオン及びアニオン伝導体とである。特定の実施形態において、第1、第2、第3、第4、及び第5のイオン伝導性ポリマーのうち少なくとも2つは、異なるクラスのイオン伝導性ポリマーからできたものである。MEA層についてのイオン伝導性ポリマーの伝導率及び選択性
【0119】
「イオン伝導性ポリマー」という用語は、アニオン及び/又はカチオンに対して約1mS/cmを超える比伝導率を有するポリマー電解質を記述するために本明細書において使用される。「アニオン伝導体」という用語は、主にアニオンを伝導し(しかし、いくらかの少量のカチオンも伝導される)、約100ミクロンの厚さで約0.85を超えるアニオンの輸率を有するイオン伝導性ポリマーを記述するものである。「カチオン伝導体」及び/又は「カチオン伝導性ポリマー」という用語は、主にカチオンを伝導し(例えば、付随的な量のアニオンも伝導され得る)、約100ミクロンの厚さでおおよそ0.85を超えるカチオンの輸率を有するイオン伝導性ポリマーを記述するものである。アニオンとカチオンの両方を伝導するものとして記載されるイオン伝導性ポリマー(「カチオン及びアニオン伝導体」)の場合、アニオンもカチオンも、約100ミクロンの厚さで、おおよそ0.85を超えるか又はおおよそ0.15未満の輸率を有しない。材料がイオン(アニオン及び/又はカチオン)を伝導すると述べることは、その材料がイオン伝導性材料又はアイオノマであると述べることである。各クラスのイオン伝導性ポリマーの例は、以下の表に提示されている。
【表8】
【0120】
いくつかのクラスAイオン伝導性ポリマーは、2259-60(Pall RAI)、Tokuyama CoによるAHA、fumasep(登録商標)FAA-(fumatech GbbH)、Sustanion(登録商標)、SolvayによるMorgane ADP、又はTosohのアニオン交換膜材料によるTosflex(登録商標)SF-17等の商品名で知られている。さらなるクラスAイオン伝導性ポリマーとしては、IonomrによるHNN5/HNN8、FumatechによるFumaSep、OrionによるTM1、及びW7energyによるPAP-TPが挙げられる。いくつかのクラスCイオン伝導性ポリマーは、Nafion(登録商標)(DuPontTM)、GORE-SELECT(登録商標)(Gore)、fumapem(登録商標)(fumatech GmbH)、及びAquivion(登録商標)PFSA(Solvay)の様々な配合物等の商品名によって知られている。
COx還元のためのバイポーラMEA
【0121】
特定の実施形態において、MEAは、MEAのカソード側のアニオン伝導性ポリマーと、MEAのアノード側の界面カチオン伝導性ポリマーとを有するバイポーラ界面を備える。一部の実装において、カソードは、第1の触媒と、アニオン伝導性ポリマーとを含む。特定の実施形態において、アノードは、第2の触媒と、カチオン伝導性ポリマーとを含む。一部の実装において、カソードバッファ層は、カソードとPEMとの間に配置され、アニオン伝導性ポリマーを含む。一部の実施形態において、アノードバッファ層は、アノードとPEMとの間に配置され、カチオン伝導性ポリマーを含む。
【0122】
動作時、バイポーラ界面を有するMEAは、イオンをポリマー電解質に通過させ、電子をカソード層及びアノード層内の金属及び/又は炭素に通過させ、液体及びガスをこれらの層内の空孔に通過させる。
【0123】
カソード及び/又はカソードバッファ層においてアニオン伝導性ポリマーを利用する実施形態において、MEAは、不所望な生成物を生成するとともにセルの全体的な効率を低下させる望ましくない反応を減少させる又は阻止することができる。アノード及び/又はアノードバッファ層においてカチオン伝導性ポリマーを利用する実施形態において、MEAは、所望の生成物の生成を低減するとともにセルの全体的な効率を低下させる望ましくない反応を減少させる又は阻止することができる。
【0124】
例えば、CO2のカソード還元に用いられる電位のレベルで、水素イオンは、水素ガスに還元され得る。これは、寄生反応である。CO2を還元するのに使用できる電流が、その代わりに水素イオンを還元するのに使用される。水素イオンは、CO2還元リアクタ内のアノードにおいて実行される様々な酸化反応によって生成され得て、MEAを横切って移動してカソードに到達し得、そこで水素ガスを生成するように還元される可能性がある。この寄生反応が進行し得る程度は、カソードに存在する水素イオンの濃度と相関する。従って、MEAは、カソード層内及び/又はカソードバッファ層内にアニオン伝導材料を用いてよい。アニオン伝導材料は、水素イオンがカソード上の触媒部位に到達するのを少なくとも部分的に阻止する。その結果、水素ガスの発生の寄生的生成が減少し、CO又は他の生成物の生成速度及びプロセスの全体的な効率が上昇する。
【0125】
回避され得る別の反応は、CO2を作り出す、アノードにおける炭酸イオン又は重炭酸イオンの反応である。カソードにおいて、CO2から水性炭酸イオン又は重炭酸イオンが生成され得る。このようなイオンは、アノードに到達する場合、水素イオンと反応し、気体CO2を生成して放出し得る。その結果は、カソードからアノードへのCO2の正味の移動であり、ここで、CO2は反応せず、酸化生成物とともに失われる。カソードにおいて生成された炭酸イオン及び重炭酸イオンがアノードに到達するのを防止するために、アノード及び/又はアノードバッファ層は、カチオン伝導性ポリマーを含んでよく、これが、重炭酸イオン等の負イオンのアノードへの移動を少なくとも部分的に阻止する。
【0126】
したがって、一部の設計において、バイポーラ膜構造は、カソードにおけるpHを上げてCO2還元を促進し、一方で、プロトン交換層等のカチオン伝導性ポリマーは、大量のCO2及びCO2還元生成物(例えば、重炭酸塩)がセルのアノード側に通過することを防止する。
【0127】
CO
x還元に使用される一例のMEA200が、
図2に示されている。MEA200は、イオン伝導性ポリマー層260によって分離されたカソード層220及びアノード層240を有し、イオン伝導性ポリマー層260は、カソード層220とアノード層240との間の、イオンが移動する経路を提供する。特定の実施形態において、カソード層220は、アニオン伝導性ポリマーを含み、及び/又は、アノード層240は、カチオン伝導性ポリマーを含む。特定の実施形態において、MEAのカソード層及び/又はアノード層は、多孔性である。空孔は、ガス及び/又は流体移動を促進し得、反応に利用可能な触媒表面積の量を増加させ得る。
【0128】
イオン伝導性層260は、2又は3のサブ層:ポリマー電解質膜(PEM)265、任意のカソードバッファ層225、及び/又は、任意のアノードバッファ層245を含んでよい。イオン伝導性層中の1又は複数の層は、多孔性であってよい。特定の実施形態において、少なくとも1の層は無孔性であり、カソードの反応物及び生成物がガス及び/又は液体移動を介してアノードまで通過及びその逆ができないようになっている。特定の実施形態において、PEM層265は無孔性である。アノードバッファ層及びカソードバッファ層の例示の特性は、本明細書の他の箇所に提供されている。特定の実施形態において、イオン伝導性層は、専ら単層であるか又は2のサブ層を含む。
【0129】
図3は、カソード305における反応物である水及びCO
2(例えば、加湿又は乾性気体CO
2)を受け取って、生成物であるCOを排出するように構成されている、CO
2電解槽303を示している。また、電解槽303は、アノード307における反応物である水を受け取って、気体酸素を排出するように構成されている。電解槽303は、カソード305に隣接するアニオン伝導性ポリマー309と、アノード307に隣接するカチオン伝導性ポリマー311(プロトン交換膜として示されている)とを有するバイポーラ層を備える。
【0130】
電解槽303におけるバイポーラ界面313の拡大挿入図に示されているように、カソード305は、アニオン交換ポリマー(この例では、バイポーラ層内にある同じアニオン伝導性ポリマー309)と、導電性炭素担持粒子317と、担持粒子上に担持される金属ナノ粒子319とを含む。CO2及び水は、空孔321等の空孔を介して移動されて金属ナノ粒子319に到達し、ここで、この場合は、水酸化物イオンと反応して、重炭酸イオン及び還元反応生成物(図示せず)を生成する。CO2は、アニオン交換ポリマー309内の移動によって金属ナノ粒子319に到達してもよい。
【0131】
水素イオンは、アノード307からカチオン伝導性ポリマー311を通して移動されて、ついにはバイポーラ界面313に到達し、ここで、それらはアニオン交換ポリマー309によってカソードに向けてさらに移動されることが妨げられる。界面313において、水素イオンは、重炭酸イオン又は炭酸イオンと反応して炭酸(H2CO3)を生成し得、これは分解されてCO2及び水を生成してよい。本明細書で説明されるように、結果として得られるCO2は、気相で与えられる場合があり、MEA内には、これを還元できるカソード305に戻す経路が提供されるべきである。カチオン伝導性ポリマー311は、重炭酸イオン等のアニオンがアノードに移動されることを妨げる。アノードにおいて、重炭酸イオン等のアニオンはプロトンと反応してCO2を放出する可能性があり、これはカソードにおける還元反応に関与するように利用できるものではない。
【0132】
図示のように、アニオン伝導性ポリマーを有するカソードバッファ層は、カソード及びそのアニオン伝導性ポリマーと協調して、プロトンのカソードへの移動を阻止するように機能してよい。カソード、アノード、カソードバッファ層、及び存在する場合にはアノードバッファ層において適切な伝導率タイプのイオン伝導性ポリマーを用いるMEAは、カソードへのカチオンの移動及びアノードへのアニオンの移動を妨げ得るが、カチオン及びアニオンは依然として、膜層等のMEAの内部領域において接触し得る。
【0133】
図3に示すように、重炭酸イオン及び/又は炭酸イオンは、カソード層とアノード層との間で水素イオンと結合して炭酸を形成し、これは分解されて気体CO
2を形成し得る。MEAは、場合により、おそらくはこの気体CO
2の生成に起因して、剥離し、これは容易な排出経路を有しないことが観察された。
【0134】
層間剥離の問題には、不活性フィラー及び関連付けられる空孔を有するカソードバッファ層を用いて対処することができる。その有効性についての1つの可能な説明は、気体二酸化炭素が還元され得るカソードに気体二酸化炭素が戻るように逃げるための経路を空孔が作成することである。一部の実施形態において、カソードバッファ層は多孔性であるが、カソード層とアノード層との間の少なくとも1の層は無孔性である。これにより、層間剥離を依然として防止しながら、カソード層とアノード層との間でのガス及び/又はバルク液体の通過を防止することができる。例えば、無孔層は、アノードからカソードへの水の直接の通過を防止することができる。MEA内の様々な層の空孔率は、本明細書の他の箇所でさらに記載される。
バイポーラMEAの例
【0135】
一例として、MEAは、還元触媒及び第1のアニオン伝導性ポリマー(例えば、Sustainion、FumaSep FAA-3、Tokuyamaアニオン交換ポリマー)を含むカソード層と、酸化触媒及び第1のカチオン伝導性ポリマー(例えば、PFSAポリマー)を含むアノード層と、第2のカチオン伝導性ポリマーを含み、カソード層とアノード層とを伝導性接続するようにカソード層とアノード層との間に配置される膜層と、第2のアニオン伝導性ポリマー(例えば、Sustainion、FumaSep FAA-3、Tokuyamaアニオン交換ポリマー)を含み、カソード層と膜層とを伝導性接続するようにカソード層と膜層との間に配置されるカソードバッファ層とを備える。この例において、カソードバッファ層は、約1~90体積パーセントの空孔率を有することができるが、さら又は代替的に、任意の好適な空孔率(例えば、無孔を含む)を有することができる。他の例において、カソードバッファ層は、任意の好適な空孔率(例えば、0.01~95%、0.1~95%、0.01~75%、1~95%、1~90%等)を有することができる。
【0136】
過剰な空孔率は、バッファ層のイオン伝導率を低下させる可能性がある。一部の実施形態において、空孔率は、20%以下であり、特定の実施形態において、0.1~20%、1~10%、又は5~10%である。これらの範囲の空孔率は、イオン伝導率を損なうことなく水及び/又はCO2の移動を可能にするのに十分であり得る。空孔率は、以下でさらに記載されるように測定され得る。
【0137】
関連する例において、膜電極アセンブリは、第3のカチオン伝導性ポリマーを含み、膜層とアノード層とを伝導性接続するように膜層とアノード層との間に配置されるアノードバッファ層を備えることができる。アノードバッファ層は、好ましくは約1~90体積パーセントの空孔率を有するが、さらに又は代替的に任意の好適な空孔率(例えば、無孔を含む)を有することができる。しかしながら、他の構成及び例において、アノードバッファ層は、任意の好適な空孔率(例えば、0.01~95%、0.1~95%、0.01~75%、1~95%、1~90%)を有することができる。カソードバッファ層と同様に、一部の実施形態において、空孔率は、20%以下であり、例えば、0.1~20%、1~10%、又は5~10%である。
【0138】
一例において、アノードバッファ層は、アニオン交換ポリマーを伴うカソード触媒層と、アニオン交換ポリマーを伴うカソードバッファ層と、カチオン交換ポリマーを伴う膜と、アニオン交換ポリマーを伴うアノードバッファ層とを有するMEAにおいて用いられてよい。このような構造において、アノードバッファ層は、膜/アノードバッファ層界面への水移動を促進するように多孔性であってよい。水は、この界面において分離し、膜を通過するプロトンと、アノード触媒層まで移動する水酸化物とを作り出す。この構造の1つの利点は、塩基性条件でのみ安定である低コストの水酸化触媒(例えば、NiFeOx)を使用することが可能であることである。
【0139】
別の具体例において、膜電極アセンブリは、還元触媒及び第1のアニオン伝導性ポリマー(例えば、Sustainion、FumaSep FAA-3、Tokuyamaアニオン交換ポリマー)を含むカソード層と、酸化触媒及び第1のカチオン伝導性ポリマーを含むアノード層と、第2のアニオン伝導性ポリマー(例えば、Sustainion、FumaSep FAA-3、Tokuyamaアニオン交換ポリマー)を含み、カソード層とアノード層とを伝導性接続するようにカソード層とアノード層との間に配置される膜層と、第2のカチオン伝導性ポリマーを含み、アノード層と膜層とを伝導性接続するようにアノード層と膜層との間に配置されるアノードバッファ層とを備える。
【0140】
アニオン交換ポリマー膜及びカチオン交換ポリマーを含有するアノードバッファ層を含むMEAが、CO還元のために用いられ得る。この場合、水は、膜/アノードバッファ層界面において形成される。アノードバッファ層における空孔は、水除去を促進することができる。この構造の1つの利点は、酸安定性(例えば、IrOx)水酸化触媒の使用である。
【0141】
関連する例において、膜電極アセンブリは、第3のアニオン伝導性ポリマーを含み、カソード層と膜層とを伝導性接続するようにカソード層と膜層との間に配置されるカソードバッファ層を備えることができる。第3のアニオン伝導性ポリマーは、第1及び/又は第2のアニオン伝導性ポリマーと同じであるか又は異なることができる。カソードバッファ層は、好ましくは約1~90体積パーセントの空孔率を有するが、さらに又は代替的に任意の好適な空孔率(例えば、無孔を含む)を有することができる。しかしながら、他の構成及び例において、カソードバッファ層は、任意の好適な空孔率(例えば、0.01~95%、0.1~95%、0.01~75%、1~95%、1~90%)を有することができる。一部の実施形態において、空孔率は、20%以下であり、特定の実施形態において、0.1~20%、1~10%、又は5~10%である。
【0142】
一例において、カソード触媒層は、Vulcan XC72Rカーボンにおいて担持され、TM1(mTPN-1)アニオン交換ポリマー電解質(Orion製)と混合された直径4nmのAuナノ粒子で構成される。層は、約15um厚、Au/(Au+C)=20wt%、触媒に対するTM1の質量比0.32、物質充填量1.4~1.6mg/cm2(合計Au+C)、推定空孔率0.56である。アニオン交換ポリマー層は、TM1及びPTFE粒子で構成される。PTFEは、直径おおよそ200nmである。TM1分子量は30k~45kである。層の厚みは約15umである。PTFEは、約8%の空孔率を導入し得る。プロトン交換膜層は、ペルフルオロスルホン酸ポリマー(例えば、ナフィオン117)で構成される。厚みはおおよそ125umである。膜は、層を通したガス(CO2、CO、H2)の有意な移動を防止する連続する層を形成する。アノード触媒層は、10um厚のIr又はIrOxナノ粒子(100~200nmの凝集体)で構成される。
COx還元のためのアニオン交換膜単独MEA
【0143】
一部の実施形態において、MEAは、カチオン伝導性ポリマー層を含まない。このような実施形態において、電解質は、カチオン伝導性ポリマー及びアノードではなく、イオン伝導性ポリマーを含む場合には、カチオン伝導性ポリマーを含まない。例は、本明細書に提供されている。
【0144】
AEM単独MEAは、MEAを横切るアニオンの伝導を可能にする。MEA層のいずれも有意なカチオン伝導率を有しない実施形態において、水素イオンは、MEAにおいて限定的な移動度を有する。一部の実装において、AEM単独膜は、高pH環境(例えば、少なくとも約pH7)を提供し、カソードにおける水素発生寄生反応を抑制することによってCO2及び/又はCO還元を促進し得る。他のMEA設計と同様に、AEM単独MEAは、イオン、特に水酸化物イオン等のアニオンがポリマー電解質を通過することを可能にする。pHは、一部の実施形態においてより低くてよく、pH4以上であれば、水素の発生を抑制するように十分高いと言える。また、AEM単独MEAは、電子が触媒層中の金属及び炭素まで移動及びそれらを通過することを許容する。アノード層、カソード層、及び/又はPEMに空孔を有する実施形態において、AEM単独MEAは、液体及びガスが空孔を通過することを許容する。
【0145】
特定の実施形態において、AEM単独MEAは、電解触媒層をカソードとアノードとの両側に有する、アニオン交換ポリマー電解質膜を備える。また、一部の実施形態において、電解触媒層の一方又は両方は、アニオン交換ポリマー電解質を含む。
【0146】
特定の実施形態において、AEM単独MEAは、カソード及びアノード電解触媒層を、ガス拡散層等の多孔性の伝導性担体上に堆積してガス拡散電極(GDE)を形成し、アニオン交換膜をガス拡散電極間に挟むことによって形成される。
【0147】
特定の実施形態において、AEM単独MEAは、CO2還元のために用いられる。アニオン交換ポリマー電解質を使用すれば、CO2還元に不適な低pH環境が回避される。さら、AEMが用いられる場合、水はカソード触媒層から遠くに移動され、それにより、セルのカソードにおける反応物ガス移動を遮断する可能性がある水の蓄積(フラッディング)が防止される。
【0148】
MEAにおける水移動は、拡散及び電気浸透抗力を含む様々な機序によって生じる。一部の実施形態において、本明細書に記載のCO2電解槽の電流密度では、電気浸透抗力が支配的な機序である。水は、ポリマー電解質を通過する際にイオンとともに引っ張られる。ナフィオン膜等のカチオン交換膜では、水移動量が膜の事前処理/水和に依拠することがよく特徴付けられ理解される。プロトンは、事前処理に応じて、それぞれ2~4の水分子を保持しながら、正電位から負電位に(アノードからカソードに)移動する。アニオン交換ポリマーにおいて、同じタイプの効果が生じる。ポリマー電解質を通過する水酸化物イオン、重炭酸イオン、又は炭酸イオンは、水分子を「引っ張る」。アニオン交換MEAにおいて、イオンは、負電圧から正電圧に、したがってカソードからアノードに移動し、このプロセスにおいて水分子を運搬して水をカソードからアノードに移動させる。特定の実施形態において、AEM単独MEAは、CO還元反応において用いられる。CO2還元反応とは異なり、CO還元は、アノードまで移動して有益な反応物を放出し得る炭酸アニオン又は重炭酸アニオンを生成しない。
【0149】
図4は、カソード触媒層403と、アノード触媒層405と、アニオン伝導性PEM407とを備えるCO
2還元MEA401の一例の構成を示している。特定の実施形態において、カソード触媒層403は、炭素粒子等の伝導性基質上に担持されていない又は担持されている金属触媒粒子(例えば、ナノ粒子)を含む。一部の実装において、カソード触媒層403は、アニオン伝導性ポリマーをさらに備える。金属触媒粒子は、特にpH7超でCO
2還元を触媒し得る。特定の実施形態において、アノード触媒層405は、炭素粒子等の伝導性基質上に担持されていない又は担持されている酸化金属触媒粒子(例えば、ナノ粒子)を含む。一部の実装において、アノード触媒層403は、アニオン伝導性ポリマーをさらに含む。アノード触媒層405のための酸化金属触媒粒子の例としては、酸化物イリジウム、酸化ニッケル、ニッケル・鉄酸化物、酸化イリジウムルテニウム、酸化白金等が挙げられる。アニオン伝導性PEM407は、例えば、IonomrによるHNN5/HNN8、FumatechによるFumaSep、OrionによるTM1、W7energyによるPAP-TP、Dioxide MaterialsによるSustainion等のような様々なアニオン伝導性ポリマーのいずれかを含んでよい。これら及び他のアニオン伝導性ポリマーであって、1.1~2.6の範囲のイオン交換容量(IEC)、0~14の機能pH範囲、一部の有機溶媒中で耐久可能な溶解性、妥当な熱安定性、並びに機械的安定性、良好なイオン伝導率/ASR及び許容可能な吸水/膨張比を有するものが用いられてよい。ポリマーは、使用前に、ハロゲンアニオンではなく特定のアニオンに化学的に交換されてよい。
【0150】
図4に示すように、CO
2ガス等のCO
2が、カソード触媒層403に提供されてよい。特定の実施形態において、CO
2は、ガス拡散電極を介して提供されてよい。カソード触媒層403において、CO
2が反応して、総称的にC
xO
yH
zとして示されている還元生成物を生成する。カソード触媒層403において生成されるアニオンは、水酸化物、炭酸塩、及び/又は、重炭酸塩を含んでよい。これらは、アノード触媒層405へと拡散、移動、又は別様に動いてよい。アノード触媒層405において、水の酸化等の酸化反応が生じて、二原子酸素及び水素イオンを生成してよい。一部の用途において、水素イオンは、水酸化物、炭酸塩、及び/又は重炭酸塩と反応して、水、炭酸、及び/又はCO
2を生成してよい。界面が少ないほど、抵抗が低くなる。一部の実施形態において、C2及びC3炭化水素合成のために、より高塩基性の環境が維持される。
【0151】
図5は、カソード触媒層503と、アノード触媒層505と、アニオン伝導性PEM507とを備えるCO還元MEA501の一例の構成を示している。全体として、MEA501の構成は、
図4のMEA401のものと同様であってよい。しかしながら、カソード触媒は、CO還元反応を促進するように選択されてよく、つまり、CO及びCO
2還元実施形態において異なる還元触媒が用いられる。
【0152】
一部の実施形態において、AEM単独MEAは、CO還元に有利であり得る。AEM材料の吸水回数は、触媒界面における水分の調節に役立つように選択することができ、それにより、触媒に対するCOアベイラビリティが改善される。AEM単独膜は、この理由でCO還元に好ましい可能性がある。バイポーラ膜は、塩基性アノード液媒体中でCO2溶解及びクロスオーバに対してより良好に抵抗することを理由として、CO2還元により好ましい可能性がある。
【0153】
様々な実施形態において、カソード触媒層503は、炭素粒子等の伝導性基質上に担持されていない又は担持されている金属触媒粒子(例えば、ナノ粒子)を含む。一部の実装において、カソード触媒層503は、アニオン伝導性ポリマーをさらに含む。特定の実施形態において、アノード触媒層505は、炭素粒子等の伝導性基質上に担持されていない又は担持されている酸化金属触媒粒子(例えば、ナノ粒子)を含む。一部の実装において、アノード触媒層503は、アニオン伝導性ポリマーをさらに含む。アノード触媒層505のための酸化金属触媒粒子の例としては、
図4のアノード触媒層405に関して特定されているものが挙げられ得る。アニオン伝導性PEM507は、例えば、
図4のPEM407に関して特定されているもの等の様々なアニオン伝導性ポリマーのうちの任意のものを含んでよい。
【0154】
図5に示すように、COガスが、カソード触媒層503に提供されてよい。特定の実施形態において、COは、ガス拡散電極を介して提供されてよい。カソード触媒層503において、COが反応して、総称的にC
xO
yH
zとして示されている還元生成物を生成する。
【0155】
カソード触媒層503において生成されるアニオンは、水酸化物イオンを含んでよい。これらは、アノード触媒層505へと拡散、移動、又は別様に動いてよい。アノード触媒層505において、水の酸化等の酸化反応が生じて、二原子酸素及び水素イオンを生成してよい。一部の用途において、水素イオンは、水酸化物イオンと反応して水を生成してよい。
【0156】
MEA501の全体的な構成は、MEA401のそれと同様であるが、これらのMEAには特定の差異が存在する。第1に、MEAは、触媒表面がより多くの-Hを有するのを助けるように、CO還元のためにより湿潤させてよい。また、
図4に示すもの等のAEM単独MEAでは、CO
2還元のために、大量のCO
2が溶解されて、その後アノードに移動されてよい。CO還元のために、著しいCOガスクロスオーバが発生する可能性は低い。この場合、反応環境は非常に塩基性であり得る。触媒を含むMEA材料は、高pH環境において良好な安定性を有するように選択されてよい。一部の実施形態において、CO
2還元よりも薄い膜をCO還元に用いてよい。
AEM単独MEAの例
【0157】
1.銅金属(USRN 40nm厚Cu、約0.05mg/cm2)が、電子ビーム堆積を介して多孔性カーボンシート(Sigracet 39BCガス拡散層)上に堆積された。Ir金属ナノ粒子が、ドロップキャスティングを介して3mg/cm2の充填量で多孔性チタンシート上に堆積された。Ionomr製のアニオン交換膜(25~50μm、80mS/cm2のOH伝導率、2~3mS/cm2のHCO3
-伝導率、33~37%の吸水率)が、電解触媒層が膜に面するようにして多孔性カーボンシートとチタンシートとの間に挟まれた。
【0158】
2.Sigma Aldrichの80nm球状Cuナノ粒子が、Fumatech製のFAA-3アニオン交換固体ポリマー電解質と混合され、触媒に対するFAA-3の質量比は0.10、設定は上記に記載の通りであった。
【0159】
2017年11月9日に公開された米国特許出願公開第2017/0321334号及び2019年7月25日に公開された米国特許出願公開第20190226103号は、MEAの様々な特徴及び例を記載しており、その全体が参照により本明細書に援用される。本明細書で言及されるすべての公開文献は、本明細書に完全に記載されているかのように、その全体が参照により援用される。
カソード触媒層‐一般構造
【0160】
上記に示すように、カソード層又はカソード触媒層とも称される、MEAのカソードは、COx変換を促進する。それは、COx還元反応のための触媒を含む多孔層である。
【0161】
一部の実施形態において、カソード触媒層は、還元触媒粒子と、還元触媒粒子のための担体を提供する電子伝導性担体粒子と、カソードイオン伝導性ポリマーとのブレンドを含む。一部の実施形態において、還元触媒粒子は、担体を伴わずにカソードイオン伝導性ポリマーとブレンドされる。
【0162】
還元触媒粒子に用いることができる材料の例としては、限定されるものではないが、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Au、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Ir、Pt、及びHg等の遷移金属及びそれらの組み合わせ、及び/又は任意の他の好適な材料が挙げられる。他の触媒材料としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタニド、アクチニド、並びにSn、Si、Ga、Pb、Al、Tl、Sb、Te、Bi、Sm、Tb、Ce、Nd及びIn等のポスト遷移金属、又はそれらの組み合わせ、及び/又は任意の他の好適な触媒材料を挙げることができる。触媒の選択は、CRRのカソードにおいて実行される特定の反応に依存する。
【0163】
触媒は、おおよそ1~100nmのサイズ範囲のナノ粒子、又はおおよそ0.2~10nmのサイズ範囲の粒子、又はおおよそ1~1000nmのサイズ範囲若しくは任意の他の好適な範囲の粒子の形態とすることができる。ナノ粒子及びより大きな粒子に加えて、フィルム及びナノ構造表面が用いられてよい。
【0164】
用いられる場合、カソード内の電子伝導性担体粒子は、様々な形態の炭素粒子であり得る。他の考えられる伝導性担持粒子としては、ホウ素ドープダイヤモンド又はフッ素ドープスズ酸化物が挙げられる。1つの構成において、伝導性担持粒子は、Vulcanカーボンである。伝導性担持粒子は、ナノ粒子とすることができる。伝導性担持粒子のサイズ範囲は、おおよそ20nm~1000nm又は任意の他の好適な範囲である。伝導性担持粒子が、いかなる電気化学反応にも関与しないように、CRRの動作時にカソード内に存在する化学物質と適合し、還元に関して安定であり、高い水素生成過電圧を有する場合が特に有用である。
【0165】
Au/C等の複合触媒に関して、例示の金属ナノ粒子サイズは、約2nm~20nmの範囲にあってよく、炭素のサイズは、担持材料として約20~200nmであってよい。Ag又はCu等の純粋な金属触媒に関して、粒子は、結晶粒サイズの観点で2nm~500nmの広い範囲を有する。凝集はさらに大きく、マイクロメートル範囲とすることができる。
【0166】
一般に、このような伝導性担持粒子は、還元触媒粒子よりも大きく、各伝導性担体粒子は、多くの還元触媒粒子を担持できる。
図6は、炭素粒子等の触媒担体粒子610上に担持されている2つの異なる種類の触媒の可能な形態を示す概略図である。第1のタイプの触媒粒子630及び第2のタイプの第2の触媒粒子650が、触媒担体粒子610に結合されている。様々な構成において、触媒担体粒子610に結合されるのは、1つのタイプの触媒粒子のみであるか又は2つより多いタイプの触媒粒子である。
【0167】
2つのタイプの触媒を用いることが、特定の実施形態において有用であり得る。例えば、一方の触媒は、1つの反応(例えば、CO2→CO)に長けたものであり、2つ目のものは、別の反応(例えば、CO→CH4)に長けたものであってよい。全体として、触媒層はCO2のCH4への変換を実行するが、異なる触媒上では、反応に異なる工程が生じる。
【0168】
電子伝導性担体は、チューブ(例えば、カーボンナノチューブ)及びシート(例えば、グラフェン)を含む、粒子以外の形態であってもよい。体積に対して大きい表面積を有する構造が、触媒粒子が結合する部位を提供するために有用である。
【0169】
還元触媒粒子及び電子伝導性担体粒子に加えて、カソード触媒層は、イオン伝導性ポリマーを含んでよい。カソード内のカソードイオン伝導性ポリマーの量の選択にはトレードオフがある。十分なイオン伝導率を提供するのに十分なカソードイオン伝導性ポリマーが含まれることが重要であり得る。しかしながら、カソードは、反応物及び生成物が容易に通過できるように多孔性であること、及び、反応に利用可能な触媒表面積の量を最大化することも重要である。様々な構成において、カソードイオン伝導性ポリマーは、カソード層内の材料の30~70wt%、20~80wt%、若しくは10~90wt%の範囲のどこか、又は任意の他の好適な範囲を占める。カソード内のイオン伝導性ポリマーのwt%は、COx還元のための最高の電流密度を与えるカソード層空孔率及びイオン伝導率をもたらすように選択される。一部の実施形態において、それは20~60wt%又は20~50wt%であってよい。カソード触媒層の厚みの例は、約80nm~300μmの範囲である。
【0170】
還元触媒粒子、カソードイオン伝導性ポリマー、及び存在する場合には電子伝導性担体に加えて、カソード触媒層は、PTFE等の他の添加物を含んでよい。
【0171】
ポリマー:触媒質量比に加えて、触媒層は、物質充填量(mg/cm2)及び空孔率によって特性評価され得る。空孔率は、様々な方式で決定されてよい。1つの方法において、各成分(例えば、触媒、担体、及びポリマー)の充填量をそれぞれの密度で乗算する。これらを合算して、これらの成分が材料中に占める厚みを決定する。その後、これを既知の合計厚みによって除算して、材料によって充填された層のパーセンテージを得る。その後、結果として得られるパーセンテージを1から減算して、空気で充填されていると仮定される層のパーセンテージ、すなわち空孔率を得る。水銀ポロシメトリー又はTEM画像上の画像処理等の方法が用いられてもよい。
【0172】
CO、メタン、及びエチレン/エタノール生成のためのカソード触媒層の例が、以下に与えられる。
●CO生成:直径4nmのAuナノ粒子が、Vulcan XC72Rカーボン上に担持され、Orion製のTM1アニオン交換ポリマー電解質と混合される。層は、約15μm厚、Au/(Au+C)=30%、触媒に対するTM1の質量比が0.32、物質充填量が1.4~1.6mg/cm2、推定空孔率が0.47である。
●メタン生成:20~30nmのサイズのCuナノ粒子が、Vulcan XC72Rカーボン上に担持され、Fumatech製のFAA-3アニオン交換固体ポリマー電解質と混合される。触媒に対するFAA-3の質量比は0.18である。推定Cuナノ粒子充填量は、より広い範囲1~100μg/cm2以内で、約7.1μg/cm2である。
●エチレン/エタノール生成:25~80nmのサイズのCuナノ粒子が、Fumatech製のFAA-3アニオン交換固体ポリマー電解質と混合される。触媒に対するFAA-3の質量比は0.10である。純粋なAEMのためのSigracet39BC GDE上又はMEA電極アセンブリ上のいずれかに堆積される。推定Cuナノ粒子充填量は270μg/cm2である。
【0173】
カソード触媒層の構成要素の機能、材料、及び構造は、以下にさらに記載される。
水管理(カソード触媒層)
【0174】
カソード触媒層は、水の移動を促進し、水がカソード触媒層内に閉じ込められることを防止し得る。閉じ込められた水は、COxが触媒に接近するのを妨げる及び/又は反応生成物がカソード触媒層の外に移動するのを妨げる可能性がある。
【0175】
水管理の課題は、多くの観点でCRRに固有のものである。例えば、PEM燃料セルの酸素電極に比較して、CRRは、はるかに低いガス流量を用いる。蒸気相水除去はガスの体積流量によって決まり、したがって、CRRでは、はるかに少ない蒸気相水除去が実行される。CRRは、燃料電池よりも高圧(例えば、100psi~450psi)で動作してもよい。高圧では、同じモル流量で、より低い体積流量及びより少ない蒸気相水除去がもたらされる。結果として、CRRのMEA内に存在する液体水が除去されることになる。一部のMEAに関して、蒸気相の水を除去する能力は、燃料電池には存在しない温度制限によってさらに制限される。例えば、CO2からCOへの還元は、約50℃で実行されてよく、エチレン及びメタンの生成は、20℃~25℃で実行されてよい。これは、燃料電池の場合の80℃~120℃の典型的な動作温度に比較される。結果として、より多くの液体相の水が除去される。
【0176】
カソード触媒層が水を除去する能力に影響を与える性質としては、空孔率、空孔サイズ、空孔サイズの分布、疎水性、イオン伝導性ポリマーと金属触媒粒子と電子伝導性担体との相対量、層の厚み、層全体の触媒の分布、及び、層を通した触媒の周囲でのイオン伝導性ポリマーの分布が挙げられる。
【0177】
多孔層は、水の排出経路を与える。一部の実施形態において、カソード触媒層は、1nm~100nmのサイズを有する空孔及び少なくとも1ミクロンのサイズを有する空孔を含む空孔サイズ分布を有する。このサイズ分布は水除去を援助することができる。多孔性構造は、炭素担持材料内の空孔、スタックした球状炭素ナノ粒子間にスタックする空孔、凝集した炭素球(マイクロメートルスケール)間に二次的にスタックする空孔、又は、PTFE及び炭素間の界面が数百nm~マイクロメートルの範囲の不規則な空孔も作り出す、不活性フィラー(例えば、PTFE)が導入された空孔、のうちの1又は複数によって形成することができる。
【0178】
カソード触媒層は、水管理に寄与する厚みを有してよい。より厚い層を用いることで、触媒、ひいては反応物がより大きな体積中に分散することが可能になる。これは、水分布を広げ、その管理をより容易にする。
【0179】
非極性の疎水性骨格を有するイオン伝導性ポリマーが、カソード触媒層に用いられてよい。一部の実施形態において、カソード触媒層は、イオン伝導性ポリマーに加えてPTFE等の疎水性ポリマーを含んでよい。一部の実施形態において、イオン伝導性ポリマーは、疎水性ポリマーも含むコポリマーの成分であってよい。
ガス移動(カソード触媒層)
【0180】
カソード触媒層は、ガス移動のために構造化されてよい。具体的には、COxは、触媒まで移動され、気相反応生成物(例えば、CO、エチレン、メタン等)は触媒層の外に移動される。
【0181】
ガス移動に関連する特定の課題は、CRRに固有のものである。ガスは、カソード触媒層の内外の両方に移動され、すなわち、COxは中に、CO、エチレン、及びメタン等の生成物は外に移動される。PEM燃料セルでは、ガス(O2又はH2)が中に移動されるが、外には何も出ない又は生成物の水が出る。また、PEM水電解槽において、水は、O2及びH2ガス生成物との反応物である。
【0182】
圧力、温度、及びリアクタを通る流量を含む動作条件は、ガス移動に影響を与える。ガス移動に影響を与えるカソード触媒層の性質としては、空孔率、空孔サイズ及び分布、層の厚み、並びにアイオノマ分布が挙げられる。
【0183】
一部の実施形態において、アイオノマと触媒との接触は最小限に抑えられる。例えば、炭素担体を使用する実施形態において、アイオノマは、触媒との接触が最小限にされた状態で、炭素の表面に沿って連続的なネットワークを形成してよい。アイオノマ、担体、及び触媒は、アイオノマが触媒表面よりも担体表面に対して高い親和性を有するように設計されてよい。これは、アイオノマが触媒との間でイオンを伝導することを可能にしながら、アイオノマによって遮断されることのない触媒との間でのガス移動を促進し得る。
アイオノマ(カソード触媒層)
【0184】
アイオノマは、触媒層の粒子を一緒に保持すること及びカソード触媒層を通してイオンを移動させることを含む複数の機能を有し得る。一部の場合において、アイオノマと触媒表面との相互作用により、COx還元に好ましい環境が作り出され、所望の生成物に対する選択性が高まり、及び/又は、反応に必要な電圧が低減され得る。重要なことに、アイオノマは、カソード触媒層を通したイオンの移動を可能にするようにイオン伝導性ポリマーである。例えば、水酸化物イオン、重炭酸イオン、及び炭酸イオンは、COx還元が起こる触媒表面から遠くに移動する。以下の説明において、カソード触媒層内のアイオノマは、第1のイオン伝導性ポリマーと称することができる。
【0185】
第1のイオン伝導性ポリマーは、アニオン伝導体である少なくとも1のイオン伝導性ポリマーを含むことができる。このことは、それがプロトン伝導体に比較してpHを上昇させるので有利であり得る。
【0186】
一部の実施形態において、第1のイオン伝導性ポリマーは、負に帯電した可動イオンを輸送するように構成されている、1又は複数の、共有結合されて正に帯電した官能基を含むことができる。第1のイオン伝導性ポリマーは、アミノ化テトラメチルポリフェニレン、ポリ(エチレン-co-テトラフルオロエチレン)系第四級アンモニウムポリマー、四級化ポリスルフォン、それらのブレンド、及び/又は任意の他の好適なイオン伝導性ポリマーから成る群から選択することができる。第1のイオン伝導性ポリマーは、重炭酸塩又は水酸化物の塩を可溶化するように構成することができる。
【0187】
一部の実施形態において、第1のイオン伝導性ポリマーは、カチオン及びアニオン伝導体である少なくとも1のイオン伝導性ポリマーを含むことができる。第1のイオン伝導性ポリマーは、カチオン及びアニオンを輸送することができるポリエーテル、並びに、カチオン及びアニオンを輸送することができるポリエステルから成る群から選択することができる。第1のイオン伝導性ポリマーは、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、フッ化ポリビニリデン、及びポリウレタンから成る群から選択することができる。
【0188】
カチオン及びアニオン伝導体は、(純粋なカチオン伝導体と比較して)pHを上昇させる。さらに、一部の実施形態において、アニオン伝導性ポリマー及びカチオン伝導性ポリマーの2D界面ではなくより大きな体積中での酸塩基再結合を促進するように、カチオン及びアニオン伝導体を使用することが有利であり得る。これにより、水及びCO2形成、発熱が広がり、酸塩基反応に対するバリアが減少することによって膜の抵抗が潜在的に低下し得る。これらのすべては、生成物の蓄積、熱を回避するのに役立ち、セル電圧を低下させることにつながるMEAにおける抵抗損失を低減する点で有利であり得る。
【0189】
典型的なアニオン伝導性ポリマーは、共有結合されて正に帯電した官能基が付随したポリマー骨格を有する。これらは、一部の実施形態において、正に帯電した窒素基を含んでよい。一部の実施形態において、ポリマー骨格は、上記で記載したように非極性である。ポリマーは、任意の適切な分子量、例えば25000g/mol~150000g/molであってよいが、この範囲外のポリマーが用いられてもよいことが理解される。
【0190】
CRRにおけるイオン伝導性ポリマーに関する特定の課題としては、CO2がポリマー電解質を溶解又は可溶化し、これらの機械的安定性を低下させ、膨張しやすく、ポリマーをより自由に移動させる可能性があることが挙げられる。これは、触媒層及びポリマー電解質膜全体の機械的安定性を低下させる。一部の実施形態において、それほどCO2可塑化しにくいポリマーが用いられる。また、水電解槽及び燃料電池の場合とは異なり、伝導性の炭酸イオン及び重炭酸イオンがCO2還元についての重要なパラメータである。
【0191】
水素結合を形成し得るヒドロキシ及びカルボキシ基等の極性官能基の導入は、疑似架橋ネットワーク形成をもたらす。アニオン交換ポリマー層を強化し、ポリマーCO2可塑化を抑制するために、エチレングリコール及びアルミニウムアセチルアセトナートのような架橋剤を添加することができる。ジメチルポリシロキサンコポリマーのような添加物も、CO2可塑化を軽減するのに役立ち得る。
【0192】
様々な実施形態によれば、イオン伝導性ポリマーは、少なくとも12mS/cmの重炭酸イオン伝導率を有してよく、温度80℃以下で化学的及び機械的に安定であり、メタノール、エタノール、及びイソプロパノール等の製造中に用いられる有機溶媒に可溶である。イオン伝導性ポリマーは、COx還元生成物の存在下で安定である(化学的に、かつ安定な溶解性を有する)。イオン伝導性ポリマーは、一部の実施形態において2.1mmol/g~2.6mmol/gの範囲であり得る、そのイオン交換容量、すなわちイオン交換を担う活性部位又は官能基の総数によっても特性評価され得る。
【0193】
アニオン伝導性ポリマーの例は、上記で、クラスAイオン伝導性ポリマーとして上記表内に与えられている。アニオン伝導性ポリマーの特定の例は、骨格であるm-トリフェニルフルオリ-アルキレン及びカチオン基であるトリメチルアンモニウム(TMA+)を有する、Orion mTPN1である。その化学構造は以下に示される。
【化1】
【0194】
さらなる例として、Fumatech及びIonomrによって製造されるアニオン交換膜が挙げられる。Fumatech FAA-3アイオノマは、Br-形態で提供される。Ionomrによって製造されるポリベンジミダゾールに基づくアニオン交換ポリマー/膜は、AF-1-HNN8-50-XとしてI-形態で提供される。
【0195】
受け取られたときのままのポリマーは、アニオン(例えば、I-、Br-等)を重炭酸塩と交換することによって調製されてよい。
【0196】
また、上記に示すように、特定の実施形態において、アイオノマは、カチオン及びイオン伝導性ポリマーであってよい。例は、クラスBイオン伝導性ポリマーとして上記の表内に与えられている。
金属触媒(カソード触媒層)
【0197】
金属触媒は、COx還元反応を触媒する。金属触媒は、典型的にはナノ粒子であるが、一部の実施形態において、より大きな粒子、フィルム、及びナノ構造表面が用いられてよい。ナノ粒子の特定の形態により、より大きな活性を有する活性部位が曝露されて安定化され得る。
【0198】
金属触媒は、多くの場合、純金属(例えば、Cu、Au、Ag)で構成されるが、特定の合金又は他の二金属系が高い活性を有し、特定の反応に用いられてよい。触媒の選択は、所望の反応によって誘導され得る。例えば、CO生成に関しては、Auが用いられてよく、メタン及びエチレン生成に関しては、Cuが用いられてよい。Ag、合金、及び二金属系を含む他の金属が用いられてよい。CO2還元は、既知の触媒上での水素発生及び酸素発生等の他のよく知られた電気化学反応と比較して、高い過電圧を有する。少量の汚染物質が、CO2変換のための触媒を毒する可能性がある。また、上記で示したように、Cu、Au、及びAg等の金属触媒は、水素燃料電池において用いられている白金等の触媒に比べて、あまり開発されていない。
【0199】
カソード触媒層のパフォーマンスに影響を与える金属触媒の性質としては、サイズ、サイズ分布、担持粒子上でのカバレッジの均一性、形状、充填量(金属の重量/金属の重量+炭素の重量又は触媒層の幾何学的面積当たりの粒子の質量として特性評価される)、表面積(触媒層の体積当たりの実際の金属触媒表面積)、純度、及び合成からの有毒表面配位子の存在が挙げられる。
【0200】
ナノ粒子は、例えば、Phan et al.「Role of Capping Agent in Wet Synthesis of Nanoparticles」、J.Phys.Chem.A 2018、121、17、3213~3219、Bakshi「How Surfactants Control Crystal Growth of Nanomaterials」、Cryst.Growth Des.2016、16、2、1104~1133、及びMorsy「Role of Surfactants in Nanotechnology and Their Applications」、Int.J.Curr.Microbiol.App.Sci.2014、3、5、237~260に記載のもの等の任意の適切な方法によって合成されてよく、これらの文献は、参照により本明細書に援用される。
【0201】
一部の実施形態において、金属ナノ粒子は、有毒表面配位子が存在しない状態で提供される。これは、ナノ結晶触媒の合成を誘導するためにアイオノマを配位子として用いることによって達成され得る。金属ナノ触媒の表面は、イオン伝導性アイオノマと直接接続される。これにより、アイオノマが金属と接触することを可能にするように触媒表面を処理する必要性が回避されるとともに、接触が改善される。
【0202】
金属触媒は、一部の実施形態において、炭素担体上に配置されてよい。CO生成に関して、例としては、4~6nmのAu粒子サイズを有するVulcan XC-72Rカーボン上に担持されるPremetek 20wt%Au、及び、5~7nmのAu粒子サイズを有するVulcan XC-72R上に担持される30%Au/Cが挙げられる。メタンに関して、例としては、20~30nmのCu粒子サイズを有するVulcan XC-72Rカーボン上に担持されるPremetek 20wt%Cuが挙げられる。一部の実施形態において、金属触媒は担持されていなくてよい。エチレン生成に関して、担持されていない金属触媒の例としては、80nm粒子サイズのSigmaAldrich非担持Cu、及び、電子ビーム又はスパッタ堆積された10nm~100nmの薄Cu層が挙げられる。
担体(カソード触媒層)
【0203】
カソード触媒層の担体は、様々な機能を有してよい。それは、金属ナノ粒子が凝集することを防止するとともに、反応物の損失及び生成物の形成を広げるように触媒部位が触媒層体積全体に分散された状態で金属ナノ粒子を安定させ得る。また、それは、金属ナノ粒子までの導電性経路を電子的に形成し得る。炭素粒子は、例えば、接触する炭素粒子が導電性経路を提供するように集まる。粒子間の空隙は、ガス及び液体が通過できる多孔性ネットワークを形成する。
【0204】
一部の実施形態において、燃料電池のために開発された炭素担体を用いることができる。多くの異なるタイプが開発されている。これらは、典型的には50nm~500nmのサイズであり、様々な形状(球、ナノチューブ、シート(例えば、グラフェン))、空孔率、体積当たりの表面積、導電率、官能基(Nドープ、Oドープ等)で得ることができる。
【0205】
担体は、疎水性であるとともに、金属ナノ粒子に対して親和性を有してよい。
【0206】
使用できるカーボンブラックの例としては、
●Vulcan XC-72R-密度256mg/cm2、30-50nm
●Ketjen Black-中空構造、密度100~120mg/cm2、30-50nm
●Printex Carbon、20~30nm
が挙げられる。
アノード触媒層
【0207】
アノード層又はアノード触媒層とも称されるMEAのアノードは、酸化反応を促進する。それは、酸化反応のための触媒を含有する多孔層である。反応の例は以下の通りである。
2H2O→4H++4e-+O2(プロトン交換ポリマー電解質-バイポーラ膜の酸性環境中)、又は、
4OH-→4e-+O2+2H2O(アニオン交換ポリマー電解質の塩基性環境中)
【0208】
塩素ガスを生成するようにCO2又は塩化物イオンを作り出すために、炭化水素等の他の材料の酸化が実行されてもよい。
【0209】
一部の実施形態において、
図2を参照すると、アノード240は、酸化触媒とアノードイオン伝導性ポリマーとのブレンドを含有する。アノード及びアノード触媒に供給される反応物に応じてアノードにおいて生じ得る酸化反応には、様々なものがある。1つの構成において、酸化触媒は、Ir、Pt、Ni、Ru、Pd、Au及びそれらの合金、IrRu、PtIr、Ni、NiFe、ステンレス鋼、並びにそれらの組み合わせの金属及び酸化物から成る群から選択される。酸化触媒は、炭素、ホウ素ドープダイヤモンド、及びチタンから成る群から選択される伝導性担持粒子をさらに含有することができる。
【0210】
酸化触媒は、構造化メッシュの形態であり得るか、又は、粒子の形態であり得る。酸化触媒が粒子の形態である場合、粒子は、電子伝導性担体粒子によって担持され得る。伝導性担持粒子は、ナノ粒子であり得る。伝導性担持粒子が、いかなる電気化学反応にも関与しないように、CRRの動作時にアノード240内に存在する化学物質と適合し、酸化的に安定である場合が、特に有用である。アノードにおける電圧及び反応物を考慮して伝導性担持粒子が選択される場合が特に有用である。一部の構成において、伝導性担持粒子は、高電圧に好適なチタンである。他の構成において、伝導性担持粒子は、低電圧で最も有用であり得る炭素である。一般に、このような伝導性担持粒子は、酸化触媒粒子よりも大きく、各伝導性担体粒子は、多くの酸化触媒粒子を担持できる。このような構成の一例が、
図3に示されており、カソード触媒層に関して上記で論じられている。1つの構成において、酸化触媒は、酸化イリジウムルテニウムである。酸化触媒に使用できる他の材料の例としては、限定されるものではないが、上記で列挙したものが挙げられる。これらの金属触媒の多くは、特に反応条件下で、酸化物の形態であり得ることが理解されるべきである。
【0211】
一部の実施形態において、MEAは、酸化触媒及び第2のイオン伝導性ポリマーを含むアノード層を備える。第2のイオン伝導性ポリマーは、正に帯電した可動イオンを輸送するように構成されている、共有結合されて負に帯電した官能基を含む1又は複数のポリマーを含むことができる。第2のイオン伝導性ポリマーは、エタンスルホン酸フルオリド、テトラフルオロエチレンを伴う2-[1-[ジフルオロ-[(トリフルオロエテニル)オキシ]メチル]-1,2,2,2-テトラフルオロエトキシ]-1,1,2,2,-テトラフルオロ-、テトラフルオロエチレン-ペルフルオロ-3,6-ジオキサ-4-メチル-7-オクタンスルホン酸コポリマー、他のペルフルオロスルホン酸ポリマー及びそれらのブレンドから成る群から選択することができる。カチオン伝導性ポリマーの例としては、例えば、ナフィオン115、ナフィオン117、及び/又はナフィオン211が挙げられる。
【0212】
アノード内のイオン伝導性ポリマーの量の選択にはトレードオフがある。十分なイオン伝導率を提供するのに十分なアノードイオン伝導性ポリマーが含まれることが重要である。しかしながら、アノードは、反応物及び生成物が容易に通過できるように多孔性であること、及び、反応に利用可能な触媒表面積の量を最大化することも重要である。様々な構成において、アノード内のイオン伝導性ポリマーは、層のおおよそ50wt%、又はおおよそ5~20wt%、10~90wt%、20~80wt%、25~70wt%、若しくは任意の好適な範囲を占める。アノード240が可逆水素電極に対して約1.2Vを超える電圧等の高電圧に耐えることができる場合が特に有用である。反応に利用可能な触媒表面積の量を最大化するとともにガス及び液体移動を促進すべく、アノード240が多孔性である場合が、特に有用である。
【0213】
金属触媒の1つの例において、Ir又はIrOx粒子(100~200nm)及びナフィオンアイオノマは、おおよそ10μm厚の多孔層を形成する。金属触媒充填量は、おおよそ0.5~3g/cm2である。
【0214】
一部の実施形態において、塩基性反応にNiFeOxが用いられる。
PEM
【0215】
MEAは、アノード触媒層とカソード触媒層との間に配置され、それらと伝導性連結されているポリマー電解質膜(PEM)を含む。
図2を参照すると、ポリマー電解質膜265は、高いイオン伝導率(約1mS/cm超)を有し、機械的に安定である。機械的安定性は、高引張強度、弾性係数、破断伸び、及び引き裂き抵抗等を通して、様々な手段で証明できる。多くの商業的に入手可能な膜を、ポリマー電解質膜265に使用できる。例としては、限定されるものではないが、様々なナフィオン(登録商標)配合物、GORE-SELECT、FumaPEM(登録商標)(PFSA)(FuMA-Tech GmbH)、及びAquivion(登録商標)(PFSA)(Solvay)が挙げられる。
【0216】
1つの構成において、PEMは、カチオン伝導体である少なくとも1のイオン伝導性ポリマーを含む。第3のイオン伝導性ポリマーは、正に帯電した可動イオンを輸送するように構成されている、1又は複数の、共有結合されて負に帯電した官能基を含むことができる。第3のイオン伝導性ポリマーは、エタンスルホン酸フルオリド、テトラフルオロエチレンを伴う2-[1-[ジフルオロ-[(トリフルオロエテニル)オキシ]メチル]-1,2,2,2-テトラフルオロエトキシ]-1,1,2,2,-テトラフルオロ-、テトラフルオロエチレン-ペルフルオロ-3,6-ジオキサ-4-メチル-7-オクタンスルホン酸コポリマー、他のペルフルオロスルホン酸ポリマー及びそれらのブレンドから成る群から選択することができる。
カソードバッファ層
【0217】
図2を参照すると、ポリマー電解質膜265がカチオン伝導体であるとともにプロトン伝導性である場合、それはCRRの動作中に高濃度のプロトンを含むが、カソード220は、低濃度のプロトンが存在する場合に最も良好に動作することが留意され得る。ポリマー電解質膜265とカソード220との間にカソードバッファ層225を備え、高濃度プロトンから低濃度プロトンへの遷移領域を提供することが有用であり得る。1つの構成において、カソードバッファ層225は、カソード220内のイオン伝導性ポリマーと同じ性質の多くを有するイオン伝導性ポリマーである。カソードバッファ層225は、プロトン濃度が、高濃度プロトンを有するポリマー電解質膜265から低プロトン濃度を有するカソード220に遷移する領域を提供する。カソードバッファ層225内で、ポリマー電解質膜265からのプロトンは、カソード220からのアニオンと遭遇し、それらは互いを中和する。カソードバッファ層225は、ポリマー電解質膜265からの有害な数のプロトンがカソード220に到達してプロトン濃度を上昇させないことを確実にするのに役立つ。カソード220のプロトン濃度が高過ぎる場合、CO
x還元は生じない。高プロトン濃度とは、おおよそ10~0.1モルの範囲であるとみなされ、低濃度とは、おおよそ0.01モル未満であるとみなされる。
【0218】
カソードバッファ層225は、単一のポリマー又は複数のポリマーを含むことができる。カソードバッファ層225が複数のポリマーを含む場合、複数のポリマーは、一緒に混合することができるか、又は、別個の隣接する層に配置することができる。カソードバッファ層225に使用できる材料の例としては、限定されるものではないが、FumaSep FAA-3、Tokuyamaアニオン交換膜材料、及びポリエチレンオキシド(PEO)等のポリエーテル系ポリマー、並びにそれらのブレンドが挙げられる。さらなる例は、上記でカソード触媒層の議論において与えられている。
【0219】
カソードバッファ層の厚みは、プロトン濃度が低いことに起因してCOx還元活性が高いように十分であるように選択される。この十分さは、異なるカソードバッファ層材料について異なり得る。一般に、カソードバッファ層の厚みは、おおよそ200nm~100μm、300nm~75μm、500nm~50μm、又は任意の好適な範囲にある。
【0220】
一部の実施形態において、カソードバッファ層は、50μm未満、例えば、1~5μm、5~15μm、又は10~25μmのように1~25μmである。この範囲の厚みを有するカソードバッファ層を用いることによって、セルの全体的な伝導率を維持しながら、カソード内のプロトン濃度を減少させることができる。一部の実施形態において、極薄層(100nm~1μm、及び一部の実施形態において、サブミクロン)が用いられてよい。また、上記で論じたように、一部の実施形態において、MEAはカソードバッファ層を有しない。一部のこのような実施形態において、カソード触媒層内のアニオン伝導性ポリマーは十分である。カソードバッファ層の厚みは、PEMのそれに対して特性評価され得る。
【0221】
カソードバッファ層とPEMとの界面において形成された水及びCO2は、ポリマー層が接続する箇所でMEAを剥離させる可能性がある。層間剥離の問題は、不活性フィラー粒子及び関連付けられる空孔を有するカソードバッファ層を使用することによって対処できる。その有効性についての1つの可能な説明は、気体二酸化炭素が還元され得るカソードに気体二酸化炭素が戻るように逃げるための経路を空孔が作成することである。
【0222】
不活性フィラー粒子として好適な材料としては、限定されるものではないが、TiO2、シリカ、PTFE、ジルコニア、及びアルミナが挙げられる。様々な構成において、不活性フィラー粒子のサイズは、5nm~500μm、10nm~100μm、又は任意の好適なサイズ範囲である。粒子は、概して球状であり得る。
【0223】
PTFE(又は他のフィラー)の体積が高過ぎる場合、それは、イオン伝導率が低くなる点までポリマー電解質を希釈する。過剰なポリマー電解質の体積は、空孔率に役立たない点までPTFEを希釈する。多くの実施形態において、ポリマー電解質/PTFEの質量比は、0.25対2であり、より詳細には0.5対1である。ポリマー電解質/PTFE(又は、より一般にポリマー電解質/不活性フィラー)の体積比は、0.25対3、0.5対2、0.75対1.5、又は1.0対1.5であり得る。
【0224】
他の構成において、空孔率は、層が形成される際に特定の処理方法を用いることによって達成される。このような処理方法の1つの例は、レーザーアブレーションであり、ここではナノ~マイクロサイズチャネルが層に形成される。別の例は、層を通るチャネルを形成するように、層に機械的に穿孔することである。
【0225】
1つの構成において、カソードバッファ層は、(例えば、おおよそ重量、体積、質量等による)0.01%~95%の空孔率を有する。しかしながら、他の構成において、カソードバッファ層は、任意の好適な空孔率(例えば、0.01~95%、0.1~95%、0.01~75%、1~95%、1~90%)を有することができる。一部の実施形態において、空孔率は、50%以下、例えば、0.1~50%、5~50%、20~50%、5~40%、10~40%、20~40%、又は25%~40%である。一部の実施形態において、空孔率は、20%以下、例えば、0.1~20%、1~10%、又は5~10%である。
【0226】
空孔率は、水銀ポロシメトリー、X線回折(SAXS又はWAXS)、及び、充填空間対空洞空間を計算するためのTEM画像上での画像処理等の方法により、成分の物質充填量及び厚みを用いることを含め、触媒層に関して上記で記載されたように測定されてよい。動作中に水に曝露されているときには、材料は異なる程度に膨張するので、空孔率は、MEAが完全に乾燥しているときに測定される。
【0227】
カソードバッファ層を含むMEAの層における空孔率は、以下でさらに記載される。
アノードバッファ層
【0228】
一部のCRR反応において、カソード220において重炭酸塩が生成される。重炭酸塩がカソードから遠くに移動するのを防止するように、カソード220とアノード240との間のどこかで重炭酸塩移動を阻止するポリマーが存在する場合が有用であり得る。重炭酸塩は、移動する際にいくらかのCO2を取り込み、これにより、カソードにおける反応に利用可能なCO2の量が減少する可能性がある。1つの構成において、ポリマー電解質膜265は、重炭酸塩移動を阻止するポリマーを含む。このようなポリマーの例としては、限定されるものではないが、ナフィオン(登録商標)配合物、GORE-SELECT、FumaPEM(登録商標)(PFSA)(FuMA-Tech GmbH)、及びAquivion(登録商標)(PFSA)(Solvay)が挙げられる。別の構成において、ポリマー電解質膜265とアノード240との間にアノードバッファ層245が存在し、これが重炭酸塩の移動を阻止する。ポリマー電解質膜がアニオン伝導体であるか又は重炭酸塩移動を阻止しない場合、重炭酸塩移動を防止する追加のアノードバッファ層が有用であり得る。重炭酸塩移動を阻止するのに使用できる材料は、限定されるものではないが、ナフィオン(登録商標)配合物、GORE-SELECT、FumaPEM(登録商標)(PFSA)(FuMA-Tech GmbH)、及びAquivion(登録商標)(PFSA)(Solvay)が挙げられる。当然ながら、CRR内に重炭酸塩が存在しない場合、イオン交換層260内に重炭酸塩阻止特徴を含むことは特に望ましくない。
【0229】
本発明の別の実施形態において、アノードバッファ層245は、ポリマー電解質膜265とアノード240との間でプロトン濃度が遷移する領域を提供する。ポリマー電解質膜265中のプロトンの濃度は、その組成及びそれが伝導するイオンの両方に依存する。例えば、プロトンを伝導するナフィオンポリマー電解質膜265は、高プロトン濃度を有する。水酸化物を伝導するFumaSep FAA-3ポリマー電解質膜265は、低プロトン濃度を有する。例えば、アノード240における所望のプロトン濃度がポリマー電解質膜265とは3桁超異なっている場合、アノードバッファ層245は、ポリマー電解質膜265のプロトン濃度をアノードの所望のプロトン濃度まで遷移させるのに有用であり得る。
アノードバッファ層245は、単一のポリマー又は複数のポリマーを含むことができる。アノードバッファ層245が複数のポリマーを含む場合、複数のポリマーは、一緒に混合することができるか、又は、別個の隣接する層に配置することができる。pH遷移のための領域を提供する点で有用であり得る材料としては、限定されるものではないが、Nafion(登録商標)、FumaSep FAA-3、Sustainion(登録商標)、Tokuyamaアニオン交換ポリマー、及びポリエチレンオキシド(PEO)等のポリエーテル系ポリマー、それらのブレンド、及び/又は任意の他の好適な材料が挙げられる。高プロトン濃度とは、おおよそ10~0.1モルの範囲であるとみなされ、低濃度とは、おおよそ0.01モル未満であるとみなされる。イオン伝導性ポリマーは、それらが伝導するイオンのタイプに基づいて異なるクラスに配することができる。これは、上記でさらに詳細に論じられている。イオン伝導性ポリマーの3つのクラスが上記表4に記載されている。本発明の1つの実施形態において、カソード220、アノード240、ポリマー電解質膜265、カソードバッファ層225、及びアノードバッファ層245内のイオン伝導性ポリマーのうちの少なくとも1つは、その他のうちの少なくとも1つと異なるクラスのものである。
層の空孔率
【0230】
以下の層:カソード220、カソードバッファ層225、アノード240、及びアノードバッファ層245のうちのいくつか又はすべてが多孔性である場合が有用であり得る。一部の構成において、空孔率は、不活性フィラー粒子をこれらの層内のポリマーと結合することによって達成される。
不活性フィラー粒子として好適な材料としては、限定されるものではないが、TiO2、シリカ、PTFE、ジルコニア、及びアルミナが挙げられる。様々な構成において、不活性フィラー粒子のサイズは、5nm~500μm、10nm~100μm、又は任意の好適なサイズ範囲である。
他の構成において、空孔率は、層が形成される際に特定の処理方法を用いることによって達成される。このような処理方法の1つの例は、レーザーアブレーションであり、ここではナノ~マイクロサイズチャネルが層に形成される。さら又は代替的に、レーザーアブレーションによって、サブサーフェスアブレーションで層内の空孔率を達成できる。サブサーフェスアブレーションにより、層内の或る点にビームの焦点を合わせると層内にボイドが形成され、それにより、点の近傍で層の材料を気化させることができる。このプロセスを、層全体を通してボイドを形成するように繰り返し、それにより層内の空孔率を達成することができる。ボイドの体積は、好ましくはレーザ出力によって決定される(例えば、高レーザ出力は、より大きなボイド体積に対応する)が、さら又は代替的に、ビームの焦点サイズ又は任意の他の好適なレーザパラメータによって決定することができる。別の例は、層を通るチャネルを形成するように層を機械的に穿孔することである。空孔率は、層において任意の好適な分布を有することができる(例えば、均一、層を通して増加していく空孔率勾配、ランダム空孔率勾配、層を通して減少していく空孔率勾配、周期的空孔率等)。
【0231】
上記及び他の例及び変形例に記載される例の空孔率(例えば、カソードバッファ層の、アノードバッファ層の、膜層の、カソード層の、アノード層の、他の好適な層の等)は、好ましくは均一な分布を有するが、さら又は代替的に、任意の好適な分布を有することができる(例えば、ランダム化分布、層を通して又は横切って増加していく空孔サイズ勾配、層を通して又は横切って減少していく空孔サイズ勾配等)。空孔率は、不活性フィラー粒子(例えば、ダイヤモンド粒子、ホウ素ドープダイヤモンド粒子、ポリフッ化ビニリデン/PVDF粒子、ポリテトラフルオロエチレンPTFE粒子等)、及び、ポリマー層内の実質的に非反応性の領域を形成する任意の他の好適な機序等の、任意の好適な機序によって形成することができる。不活性フィラー粒子は、最小で約10ナノメートル、最大で約200ナノメートル、及び/又は任意の他の好適な寸法又は寸法分布等の、任意の好適なサイズを有することができる。
【0232】
上記で論じたように、カソードバッファ層は、好ましくは約1~90体積パーセントの空孔率を有するが、さらに又は代替的に任意の好適な空孔率(例えば、無孔を含む)を有することができる。しかしながら、他の構成及び例において、カソードバッファ層は、任意の好適な空孔率(例えば、0.01~95%、0.1~95%、0.01~75%、1~95%、1~90%等)を有することができる。一部の実施形態において、空孔率は、20%以下、例えば、0.1~20%、1~10%、又は5~10%である。
【0233】
一部の実施形態において、カソードバッファ層は多孔性であるが、カソード層とアノード層との間の少なくとも1層は無孔性である。これにより、層間剥離を依然として防止しながら、ガス及び/又はバルク液体がカソードとアノード層との間を通過することを防止できる。例えば、無孔層は、アノードからカソードへの水の直接の通過を防止できる。
MEAの製造
【0234】
COx還元のためのMEAは、様々な技法を用いて製造され得る。様々な実施形態において、MEAの製造には、複数のステップが用いられる。製造プロセスのパラメータの少しの差が、パフォーマンスに大きな差を生む可能性がある。
【0235】
特定の実施形態において、MEAの製造には、ポリマー電解質膜(例えば、ナフィオンPEM)層と、カソード上にアニオン交換ポリマー電解質層及びカソード触媒層を堆積又は別様に形成する段階と、アノード上にアノード触媒層を堆積又は別様に形成する段階とが用いられる。代替の方法は、多孔性ガス拡散層(例えば、カソードについては炭素又はアノードについてはチタン)上に触媒層を形成して、触媒含有多孔層間に膜(アニオン交換層を含む場合がある)を挟むことである。特定の実施形態において、触媒層は、固体触媒及び担持粒子のインクとポリマー電解質とを溶媒内に分散させることによって形成される。インクは、様々な方法によって、ポリマー電解質膜又はGDLに付与され得る。溶媒は、その後、多孔性固体触媒層を残して蒸発する。
【0236】
厚み及び均一性を特性評価するのに、イメージング方法が用いられ得る。厚みは、一貫していて制御可能なものであるべきであり、均一性は、平滑かつ可能な限り欠陥のないものであるべきである。
【0237】
MEAの個々の層を形成するために、様々な技法が用いられ得る。通常、これらの技法により、本明細書で言及されるようなPEM層又はGDL等の基質上に層が形成される。このような技法の例としては、超音波スプレー堆積、ドクターブレードの適用、グラビア印刷、スクリーン印刷、及び転写が挙げられる。
【0238】
アニオン交換ポリマーに用いられる触媒インクは(特に、特定のポリマーに関して)よく研究されておらず、燃料電池及び電解槽に用いられる典型的なナフィオン系インクと同じ溶液構造を有しない。よく分散され安定な触媒インクを形成するのに必要な配合物及び工程は知られていなかった。ナフィオンは、水性媒体中での比較的容易な懸濁を可能にするミセル様構造を形成すると考えられている。他のイオン伝導性ポリマー、特に一部のアニオン伝導性ポリマーは、このような構造を形成せず、従って懸濁液中に提供することがより困難である。
【0239】
特定の実施形態において、触媒層インクは、金属又は炭素触媒上に担持されている金属をイオン伝導性ポリマー(例えば、アニオン伝導性ポリマー)と混合して、超音波処理により溶媒(アルコール等)中に拡散することによって調製される。
【0240】
図示のように、特定の製造技法では、ドクターブレードの適用、スクリーン印刷、転写、エレクトロスピニング等が用いられる。ハイスループット処理のために、グラビア印刷又はマイクログラビア印刷等のロールツーロール技法を用いてよい。
MEAの後処理
【0241】
MEAが製造された後、パフォーマンスを高めるために追加の処理を用いてよい。パフォーマンス改善のタイプの例として、耐用期間及び電圧が挙げられる。一部の実施形態において、後処理により、塩又は特定の塩イオンがMEAに導入される。一部の実施形態において、後処理により、層間のより良好な接着を含む、処理から得られる構造上の修正を有するMEAが作り出される。
【0242】
ホットプレス:MEAを圧力下で加熱し、層を一緒に接合する。ホットプレスは、層を一緒に「溶融」して層間剥離を防止するのに役立つ。
●時間:約2分~10分(MEAのみ)、1.5分~2分(MEA+ガス分散層(GDL))、「MEA+GDL」は、安定なアセンブリを形成するために少なくとも2回プレスされてよい
●温度:約100℃~150℃、
●圧力:約300psi~600psi(3×3インチの1/2MEAの場合)だが、MEAは、GDL無しで約2500psiに耐えることができる。
【0243】
水和:MEAを水又は水溶液に浸漬し、セルアセンブリの前にポリマー電解質を湿潤させる。一部の実施形態において、水溶液は、本明細書に記載されるような塩溶液である。
【0244】
ナフィオン又は他のポリマー電解質MEAを煮沸する。これにより、ポリマー電解質のマクロ構造が恒久的に変化し、ポリマーマトリクス中の水の量が増加する。これにより、イオン伝導率が上昇するだけでなく、水移動数も増加する。
【0245】
加熱して乾燥させる。これにより、水含有量を減少させることができ、動作中にポリマー電解質を通して移動される水の量を減少させることができる。
MEA層間の安定化界面
【0246】
アニオン伝導性層(例えば、カソードバッファ層)とカチオン伝導性膜(例えば、PEM)との界面に形成される水及びCO
2は、ポリマー層が接続する箇所での2つの層の分離又は剥離を引き起こす可能性がある。バイポーラ界面における反応は、
図3及び
図7に示されている。
【0247】
また、CO2は、アノードへと失われるのではなく、CO2を還元できるセルのカソードに戻ることが望ましく、したがって、アニオン交換層(例えば、カソードバッファ層及び/又はカソード層)内の経路(例えば、空孔)が、層間剥離を防止するために界面からの水及びCO2を除去するため及びCO2反応できるカソードにCO2を戻すための両方の経路を提供する。
【0248】
図7に示す構造は、
図3に示すものと同様であるが、
図7は、バイポーラ界面における物質移動並びにCO
2及び水の生成に関連する追加の情報を含む。例えば、水酸化物及びCO
2がカソード側で反応し、重炭酸イオンを生成し、これがバイポーラ界面713に向かって移動するのを示している。アノード側において、水の酸化によって生成される水素イオンが、バイポーラ界面713に向かって移動し、ここで、それらは重炭酸イオンと反応して水及びCO
2を生成し、これらの両方は、バイポーラ層を損傷することなく流出可能であるはずである。
【0249】
また、水移動経路も
図7に示されており、これには、(a)カソードから界面713に向けてのアニオンに対する電気浸透抗力、(b)アノードから界面713に向けてのカチオンに対する電気浸透抗力、及び(c)拡散が含まれる。
水は、アノード及びカソードにおいて蒸発する。
【0250】
様々なMEA設計が、層間剥離に抵抗する特徴を含み、任意に、反応生成物が界面エリアを離れるための経路を提供する。一部の実施形態において、バイポーラ界面は平坦である。しかしながら、一部の設計において、界面は、組成勾配及び/又はインターロッキング構造を有するようにして提供される。これらは、層間剥離に抵抗するように構成されているMEA設計のバイポーラ界面を示している
図8A、
図8B、
図8C及び
図8Dを参照しながら以下でさらに記載される。
【0251】
一部の実施形態において、界面は勾配を含む。例えば、スプレー堆積時に2つのノズルを用いて、アニオン交換ポリマーにカチオン交換層の堆積時に変動する相対量のポリマーを添加することによって、勾配が形成されてよい。同様に、アニオン交換層の堆積時にカチオン交換ポリマーが添加されてよい。例えば、
図7を参照すると、勾配は、アニオン交換領域が主にカソードに隣接してアニオン交換ポリマーを有し、カチオン交換ポリマーの相対量がカソードから界面713に向かうにつれて増加するように、アニオン交換領域及びカチオン交換領域の実質的にすべて又は一部を通して延在してよい。同様に、カソード交換領域は主にアノードに隣接してカチオン交換ポリマーを有し、アニオン交換ポリマーの相対量がアノードから界面713に向かうにつれて増加する。一部の実施形態において、純粋なアニオン交換領域及び純粋なカチオン交換領域が存在し、それら2つの間に勾配が存在する。
【0252】
一部の実施形態において、バイポーラ膜の層が一緒に溶融される。これは、適切な溶媒を選択することによって達成され得る。例えば、ナフィオンは、水/エタノール混合物中において少なくともわずかに可溶性である。混合物(又は、カチオン伝導性ポリマーが可溶な別の溶媒)をアニオン伝導性ポリマーのための溶媒として用いることにより、ナフィオン又は他のカチオン伝導性ポリマーが少なくともわずかに溶解力を得て、界面に溶け込むことができる。一部の実施形態において、これの結果、勾配は小さくなり、例えば、アニオン伝導性ポリマー層の厚み中に0.5~10%延在することになる。
【0253】
一部の実施形態において、界面はポリマーの混合物を含む。
図8Aは、カチオン伝導性ポリマー821とアニオン伝導性ポリマー819とが混合されるバイポーラ界面813を示している。
図8Aの例には、アニオン伝導性ポリマー層809の一部と、カチオン伝導性ポリマー層811の一部とが示されている。アニオン伝導性ポリマー層809は、純粋なアニオン伝導性ポリマーであってよく、カチオン伝導性ポリマー層811は、純粋なカチオン交換ポリマーであってよい。カチオン伝導性ポリマー821は、カチオン伝導性ポリマー層811中のものと同じ又は異なるカチオン伝導性ポリマーであってよい。アニオン伝導性ポリマー819は、アニオン伝導性ポリマー層809中のものと同じ又は異なるアニオン伝導性ポリマーであってよい。
【0254】
一部の実施形態において、界面は、界面を物理的に強化する第3の材料を含む。例えば、
図8Bは、界面813を跨ぐ材料830の一例を示している。すなわち、材料830は、部分的にアニオン伝導性ポリマー層809とカチオン伝導性ポリマー層811とに存在する。このため、材料830は、層間剥離に抵抗するように2つの層を結合し得る。1つの例において、材料830は、多孔性PTFE等の多孔性の不活性材料である。このような界面は、例えば、PTFE又は同様の多孔性フィルムの両側にカチオン伝導性ポリマー及びアニオン伝導性ポリマーを流し込み又は別様に塗布し、続いてホットプレスすることによって形成されてよい。
【0255】
図8Cは、カチオン伝導性ポリマー層811からアニオン伝導性ポリマー層809内に延在するカチオン伝導性ポリマーの突出部840を有するバイポーラ界面813を示している。これら突出部は、CO
2及び水が界面に生成されたときに剥離しないように、界面813を機械的に強化し得る。一部の実施形態において、突出部は、アニオン伝導性ポリマー層809からカチオン伝導性ポリマー層811内に延在する。特定の実施形態において、突出部は、両方向に延在する。例示の寸法は、面内寸法で10μm~1mmであるが、より小さな寸法(例えば、500nm~1μm)も可能である。面外寸法は、例えば、これが延在するポリマー層の総厚の10~75%又は10~50%であってよい。突出部は、例えば、リソグラフィー技法等の任意の適切な技法によって、又は、ポリマーを、後で除去されるパターン化メッシュにスプレーすることによって形成されてよい。突出部を作り出すのに、粗面化技法が用いられてもよい。一部の実施形態において、突出部は、ポリマー層をインターロックして界面を機械的に強化するのに役立つように、異なる材料、例えば金属から形成されてよい。
【0256】
図8Dは、カチオン伝導性ポリマー層811とアニオン伝導性ポリマー層809との間に設置されているか又はそれらのうちの1又は複数に混合された第3の材料850を有するバイポーラ界面813を示している。一部の実施形態において、例えば、第3の材料850は、以下でさらに論じられるような添加物であり得る。一部の実施形態において、第3の材料850は、界面におけるアニオン伝導アイオノマ及びカチオン伝導アイオノマのブレンドであり得る。例えば、それは、ナフィオン5wt%アイオノマ及びOrion 2wt% mTPN1の混合物であり得る。一部の実施形態において、第3の材料は、イオンアクセプター及びドナーを含んでよく、これらは一緒に混合されるか又は別個の層として提供されるかのいずれかである。
【0257】
一部の実施形態において、界面は、酸塩基反応を促進するとともに層間剥離を防止するように添加物を含む。一部の実施形態において、添加物は、アニオン伝導性ポリマー及びカチオン伝導性ポリマーの2D界面におけるだけではなく、より大きな体積中に酸塩基再結合を広げるのを促進し得る。これにより、水及びCO2形成、発熱が広がり、酸塩基反応に対するバリアが減少することによって膜の抵抗が低下し得る。これらの効果は、生成物の蓄積、熱を回避するのに役立ち、セル電圧を低下させることにつながるMEAにおける抵抗損失を低減する点で有利であり得る。さらに、これは、熱及びガスの生成に起因する界面における材料の劣化を回避するのに役立つ。
【0258】
酸塩基反応を促進する添加物の例としては、水酸化物を含有するイオン液体(具体例は1-ブチル-3-メチルリミダゾリウム水酸化物である)等の、プロトンアクセプター及びアニオンアクセプターの両方である分子が挙げられる。他のイオン液体も用いてよい。一部の実施形態において、アニオン伝導性ポリマー層及びカチオン伝導性ポリマー層のそれと異なるアイオノマが用いられてよい。例えば、Sustainion等の相対的に高伝導率のアニオン交換材料が用いられてよい。このようなアニオン交換材料は、カソードバッファ層として使用するには十分に選択的でない場合があるが、界面において用いることができる。
【0259】
界面に存在し得る材料のさらなる例としては、異なる荷電基(例えば、カチオン及びアニオン静止荷電基の両方)を有するブロックコポリマー、カチオン及びアニオン伝導性ポリマー、樹脂材料、酸化グラフェンを含む酸化物等のイオンドナー、酸/塩基再結合のための触媒、アノード及びカソードから拡散するH2及びO2に反応する触媒、水分解触媒、CO2吸収材料、及びH2吸収材料が挙げられる。
【0260】
一部の実施形態において、バイポーラ膜の2つのポリマーを共有結合で架橋するように、架橋剤が添加され得る。架橋基の例としては、アイオノマ上で提供され得るキシレンが挙げられる。他の架橋基を用いてよい。例えばカチオン伝導性ポリマー上に、架橋剤が提供されてよく、アニオン伝導性ポリマーが上部にスプレー堆積され、続いて、加熱することで架橋反応を誘導し、界面を横切る架橋をもたらす。
【0261】
一部の実施形態において、バイポーラ膜のアニオン伝導性ポリマー及びカチオン伝導性ポリマーは、異なる静止荷電基を伴った同じ骨格を有する。一例として、異なる静止荷電基とともに、Orionアイオノマを用いてよい。アイオノマは、適合性がより高く、層間剥離を起こしにくい。
【0262】
上記の例において、界面813は、バイポーラ膜の全厚の1%~90%、又は、バイポーラ膜の全厚の5%~90%、若しくは10%~80%、若しくは20%~70%、若しくは30%~60%の厚みを有する三次元体積であってよい。一部の実施形態において、それは、1%~45%、5%~45%、5%~40%、又は5%~30%を含む、全厚の半分未満である。
【0263】
上記に記載されたバイポーラ界面設計のいずれかを製造するのに、ホットプレスを用いてよい。
MEA層の相対サイズ
【0264】
特定の実施形態において、ポリマー電解質膜と、隣接するカソードバッファ層又は他のアニオン伝導性ポリマー層とは、MEAの製造及び/又は動作パフォーマンスを促進する相対厚みを有してよい。
【0265】
図9は、カソードバッファ層であり得るアニオン伝導性ポリマー層(AEM)903と、カチオン伝導性ポリマー層(例えば、プロトン交換ポリマー層)又はアニオン伝導性ポリマー層であり得るポリマー電解質膜(PEM)905とを備える部分的なMEAの一例を示している。この例では、PEM905は、カソードバッファ層であり得るアニオン伝導性ポリマー層903よりも比較的厚く、ポリマー電解質膜(PEM)905は、カチオン伝導性ポリマー層(例えば、プロトン交換ポリマー層)又はアニオン伝導性ポリマー層であり得る。この例において、PEM905は、アニオン伝導性ポリマー層903よりも比較的厚い。例えば、PEM905は、AEM903が約10~20マイクロメートル厚であるのに比較して、120マイクロメートルであり得る。
【0266】
一部の場合において、アニオン伝導性ポリマー層903において用いられるもの等のアニオン伝導性ポリマーは、PEM905において用いられるもの等のカチオン伝導性ポリマーよりも伝導性が実質的に低い。従って、MEAの全抵抗を実質的に増加させることなくカソードバッファ層(例えば、アニオン伝導性ポリマー層903)の利益を提供するために、比較的薄いカソードバッファが用いられる。しかしながら、カソードバッファ層は、薄過ぎると、MEAの製造中及び他の状況において扱いが困難になる。従って、特定の実施形態において、薄いカソードバッファ層は、カチオン伝導性ポリマー層等の比較的厚いPEM層の上部に形成される。アニオン伝導性ポリマー層は、例えば、本明細書の他の箇所に記載の製造技法のいずれかを用いて、PEM層上に作成されてよい。
【0267】
様々な実施形態において、ポリマー電解質膜層は、約20~200マイクロメートル厚である。一部の実施形態において、ポリマー電解質膜層は、約60~120マイクロメートル厚である。一部の実施形態において、約20~60マイクロメートル厚の、薄いポリマー電解質膜層が用いられる。一部の実施形態において、約120~200マイクロメートル厚の、比較的厚いポリマー電解質層が用いられる。
【0268】
一部の実施形態において、より薄いポリマー電解質膜とともに、より薄いカソードバッファ層が用いられる。これにより、界面に形成されたCO2がアノードではなくカソードに戻るように移動するのを促進できる。一部の実施形態において、より厚いポリマー電解質膜とともに、より厚いカソードバッファ層が用いられる。この結果、一部の実施形態において、セル電圧が減少し得る。
【0269】
カソードバッファ層の厚みに影響を与え得る因子としては、アニオン伝導性ポリマーのイオン選択性、アニオン伝導性ポリマーの空孔率、ポリマー電解質膜をコートするアニオン伝導性ポリマーのコンフォーマリティが挙げられる。
【0270】
多くのアニオン伝導性ポリマーが、アニオンに対して95%の範囲の選択性を有し、電流の約5%がカチオンである。アニオンに対して99%超の選択性を有する、より選択性の高いアニオン伝導性ポリマーは、十分なバッファを提供しながら、厚みの大幅な低減での低減を可能にできる。
【0271】
アニオン伝導性層の機械的強度は、その厚みにも影響を与える可能性があり、層の強度がより高ければ、層をより薄くできる。アニオン伝導性ポリマーの空孔率を低減することで、アニオン伝導性層の厚みを低減させてよい。
【0272】
一部の実装において、カソードバッファ層又はポリマー電解質膜に当接する他のアニオン伝導性ポリマー層は、約10~20マイクロメートル厚である。一部の実施形態において、99%を超える選択性を有するポリマーを用いることで、カソードバッファ層を2~10ミクロンまで低減可能であり得る。
【0273】
一部の場合において、ポリマー電解質膜の厚みと隣接するアニオン伝導性ポリマー層の厚みとの比は、約3:1~90:1であり、ここで、高い方の比が選択性の高いアニオン伝導性ポリマー層に用いられる。一部の実施形態において、比は、約2:1~13:1、約3:1~13.1、又は約7:1~13.1である。
【0274】
特定の実施形態において、比較的薄いPEMは、MEAのパフォーマンスの一部の側面を改善する。
図9を参照すると、例えば、ポリマー電解質膜905は、約50マイクロメートルの厚みを有してよく、アニオン伝導性層は、約10~20マイクロメートルの厚みを有してよい。薄いPEMでは、AEM/PEM界面において生成される水が、アノードに向かうように移動しやすい。セルのカソード側におけるガスの圧力は、約80~450psiであり得、これにより、界面における水がアノードに移動させられる。しかしながら、一部の例において、厚いPEMは、水の大部分をAEMに通してカソードに移動させる可能性があり、これがフラッディングにつながる。薄いPEMを用いることによって、フラッディングを回避できる。
CO
x還元リアクタ(CRR)
【0275】
図10は、本開示の実施形態に係る、CO
x還元リアクタ(CRR)1005の主な構成要素を示す概略図である。CRR1005は、本明細書の他の箇所に記載されるもののいずれか等の膜電極アセンブリ1000を有する。膜電極アセンブリ1000は、イオン交換層1060によって分離されるカソード1020及びアノード1040を有する。イオン交換層1060は、サブ層を含んでよい。図示の実施形態は、カソードバッファ層1025、ポリマー電解質膜1065、及び任意のアノードバッファ層1045という3つのサブ層を有する。また、CRR1005は、カソード1020に隣接するカソード支持構造1022と、アノード1040に隣接するアノード支持構造1042とを有する。
【0276】
カソード支持構造1022は、例えばグラファイト製のカソード極板1024を有し、これに電圧を印加できる。カソード極板1024の内側表面に切り込まれた、蛇行チャネル等の流動場チャネルが存在できる。カソード極板1024の内側表面に隣接して、カソードガス拡散層1026も存在する。一部の構成において、1つより多いカソードガス拡散層(図示せず)が存在する。カソードガス拡散層1026は、膜電極アセンブリ1000の内外へのガスの流れを促進する。カソードガス拡散層1026の一例は、炭素マイクロポーラス層を有するカーボン紙である。
【0277】
アノード支持構造1042は、通例は金属製のアノード極板1044を有し、これに電圧を印加できる。アノード極板1044の内側表面に切り込まれた、蛇行チャネル等の流動場チャネルが存在できる。アノード極板1044の内側表面に隣接して、アノードガス拡散層1046も存在する。一部の構成において、1つより多いアノードガス拡散層(図示せず)が存在する。アノードガス拡散層1046は、膜電極アセンブリ1000の内外へのガスの流れを促進する。アノードガス拡散層1046の一例は、チタンメッシュ又はチタンフェルトである。一部の構成において、ガス拡散層1026、1046はマイクロポーラスである。
【0278】
支持構造1022、1042と連携する流入口及び排出口(図示せず)も存在し、これらは、反応物及び生成物それぞれの膜電極アセンブリ1000への流れを可能にする。セルからの反応物及び生成物の漏洩を防止する様々なガスケット(図示せず)も存在する。
【0279】
1つの実施形態において、直流(DC)電圧が、カソード極板1024及びアノード極板1042を通して膜電極アセンブリ1000に印加される。水がアノード1040に供給され、酸化触媒上で酸化されて、分子酸素(O2)を形成し、プロトン(H+)及び電子(e-)を放出する。プロトンは、イオン交換層1060を通ってカソード1020に向かって移動する。電子は外部回路(図示せず)を通って流れる。1つの実施形態において、反応は、以下のように表される。
2H2O→4H++4e-+O2
【0280】
他の実施形態において、他の反応物をアノード1040に供給でき、他の反応が生じ得る。
【0281】
図示の実施形態は、3つのサブ層を有するイオン交換層を示しているが、特定の実施形態では、単層(例えば、カチオン伝導性ポリマー層又はアニオン伝導性ポリマー層)のみを有するイオン交換層が用いられる。他の実施形態は、2つのみのサブ層を有する。
【0282】
図11には、一実施形態による、CRR1105リアクタを通る反応物、生成物、イオン、及び電子の流れが示されている。CRR1105は、本明細書の他の箇所で記載されたMEAのいずれか等の膜電極アセンブリ1100を有する。膜電極アセンブリ1100は、イオン交換層1160によって分離されたカソード1120及びアノード1140を有する。特定の実施形態において、イオン交換層1160は、カソードバッファ層1125、ポリマー電解質膜1165、及び任意のアノードバッファ層1145という3つのサブ層を有する。また、CRR1105は、カソード1120に隣接するカソード支持構造1122と、アノード1140に隣接するアノード支持構造1142とを有する。
【0283】
カソード支持構造1122は、グラファイト製であり得るカソード極板1124を有し、これに電圧を印加できる。カソード極板1124の内側表面に切り込まれた、蛇行チャネル等の流動場チャネルが存在できる。カソード極板1124の内側表面に隣接して、カソードガス拡散層1126も存在する。一部の構成において、1より多いカソードガス拡散層(図示せず)が存在する。カソードガス拡散層1126は、膜電極アセンブリ1100の内外へのガスの流れを促進する。カソードガス拡散層1126の一例は、炭素マイクロポーラス層を有するカーボン紙である。
【0284】
アノード支持構造1142は、金属製であり得るアノード極板1144を有し、これに電圧を印加できる。アノード極板1144の内側表面に切り込まれた、蛇行チャネル等の流動場チャネルが存在できる。アノード極板1144の内側表面に隣接して、アノードガス拡散層1146も存在する。一部の構成において、1より多いアノードガス拡散層(図示せず)が存在する。アノードガス拡散層1146は、膜電極アセンブリ1100の内外へのガスの流れを促進する。アノードガス拡散層1146の一例は、チタンメッシュ又はチタンフェルトである。一部の構成において、ガス拡散層1126、1146はマイクロポーラスである。
【0285】
支持構造1122、1142と連携する流入口及び排出口も存在でき、これは反応物及び生成物それぞれの膜電極アセンブリ1100への流れを可能にする。セルから反応物及び生成物が漏洩するのを防止する様々なガスケットも存在できる。
【0286】
COxは、カソード1120に供給されて、プロトン及び電子の存在下においてCOx還元触媒上で還元できる。COxは、0psig~1000psig又は任意の他の好適な範囲の圧力でカソード1120に供給できる。COxは、他のガスの混合物とともに、100%未満又は任意の他の好適なパーセンテージの濃度でカソード1120に供給できる。一部の構成において、COxの濃度は、おおよそ0.5%の低さ、5%の低さ、若しくは20%の低さ、又は任意の他の好適なパーセンテージとすることができる。
【0287】
1つの実施形態において、おおよそ10%~100%の未反応COxが、カソード1120に隣接する排出口において収集され、還元反応生成物から分離され、その後、カソード1120に隣接する流入口まで戻してリサイクルされる。1つの実施形態において、アノード1140における酸化生成物は、0psig~1500psigの圧力まで圧縮される。
【0288】
1つの実施形態において、複数のCRR(
図10に示すもの等)が電気化学スタックにして配置され、一緒に作動される。スタックの個々の電気化学セルを構成するCRRは、直列又は並列に電気的に接続できる。個々のCRRに反応物が供給され、反応生成物はその後収集される。
【0289】
図12には、一部の実施形態による、リアクタへの入力及び出力が示されている。CO
xアノード供給材料及び電気がリアクタに供給される。CO
x還元生成物及び任意の未反応CO
xがリアクタを離れる。未反応CO
xは、還元生成物から分離されて、リアクタの入力側に戻してリサイクルできる。アノード酸化生成物及び任意の未反応アノード供給材料は、分離ストリームにおいてリアクタを離れる。未反応アノード供給材料は、リアクタの入力側に戻してリサイクルできる。
【0290】
CRRのカソード内の様々な触媒は、COx還元反応により、様々な生成物又は生成物の混合物を形成させる。カソードにおける考えられるCOx還元反応の例が以下に記載される。CO2+2H++2e-→CO+H2O2CO2+12H++12e-→CH2CH2+4H2O2CO2+12H++12e-→CH3CH2OH+3H2OCO2+8H++8e-→CH4+2H2O2CO+8H++8e-→CH2CH2+2H2O2CO+8H++8e-→CH3CH2OH+H2OCO+6H++8e-→CH4+H2O
【0291】
一部の実施形態において、COx還元リアクタを動作させる方法は、上記の実施形態において記載されたように、カソード極板及びアノード極板にDC電圧を印加する段階と、アノードに酸化反応物を供給して酸化反応を生じさせる段階と、カソードに還元反応物を供給して還元反応を生じさせる段階と、アノードからの酸化反応生成物を収集する段階と、カソードからの還元反応生成物を収集する段階とを含む。電流又は電圧は、上記に記載のようなスケジュールに従ってサイクルするように制御されてよい。
【0292】
1つの構成において、DC電圧は、約-1.2V超である。様々な構成において、酸化反応物は、水素、メタン、アンモニア、水、若しくはそれらの組み合わせ、及び/又は任意の他の好適な酸化反応物のいずれかであり得る。1つの構成において、酸化反応物は水である。様々な構成において、還元反応物は、二酸化炭素、一酸化炭素、及びそれらの組み合わせ、及び/又は任意の他の好適な還元反応物のいずれかであり得る。1つの構成において、還元反応物は二酸化炭素である。
実施例
【0293】
ファラデー収率、クーロン効率、又は電流効率とも称されることもあるファラデー効率とは、電気化学反応を促進する系に電荷が移動する効率である。ファラデー効率におけるファラデー定数の使用により、電荷と物質及び電子のモルとが相関される。電子又はイオンが望ましくない副反応に関与する場合、ファラデー損失が生じる。これらの損失は、熱及び/又は化学的副産物として現れる。以下の例は、様々な生成物についてのファラデー収率のプロット図を含む。
メタンに対する改善された選択性
【0294】
銅カソード触媒を伴うMEAは、メタンに対する選択性を有する5cm2のMEA上に100mA/cm2が印加された状態に設定された。動作して約1時間後、4.5分電流が印加される毎に1分の電流オフ(すなわち、電流一時停止)が設定されたサイクルが適用された。
図13は、印加電流密度(J)と、H
2、CO、CH
2CH
2、CH
4、及び合計についてのファラデー収率(FY)を示すプロット図である。プロット図上の各ドットは5.5分離れており、したがって電流一時停止は示されていない。しかしながら、プロット図に示すように、電流サイクルは、1時間で開始する。
【0295】
最初の1時間において、ブレークイン後、メタン選択性は13%から7%に減少した。印加電流サイクルが開始された後、メタン選択性が23%に上昇した。水素選択性は減少し、エチレン及び一酸化炭素に対する選択性が低いレベルに留まった。
【0296】
改善(及び、本開示に記載される他の観察される改善)に関して考えられる機序としては、1)触媒の表面から水素を除去することを可能にし、したがってCO2の接近を改善すること、2)触媒の局所環境からの水除去を可能にすること、3)触媒表面から他の反応副産物又は不純物を脱着させること、及び4)膜/二重層の抵抗/伝導率を変更することが挙げられる。
シミュレートバイオガス供給によるメタンに対する改善された選択性
【0297】
最大1500ppmのH
2S注入でシミュレートバイオガスを試験するための銅カソード触媒を伴うMEAは、最初、100mA/cm
2の定電流が印加された状態で開始された。
図14は、H
2及びCH
4についてのファラデー収率(FY)を示すプロット図である。H
2S注入も示されている。メタンの初期収率(いずれの電流一時停止の前)は、20%から10%に減少した。印加されている電流が5分一時停止され、その後継続されたとき、MEAのパフォーマンスは大幅に向上したが、減少は続いた。その後、試験が再び1分一時停止されて再始動されたとき、MEAはパフォーマンスを回復したが、減少は続いた。印加されている電流の4.5分毎の規則的な1分の一時停止を設定した後、MEAは、メタンに対する30%の安定な選択性を維持し、有意な毒作用の兆候無しに最大1500ppmのH
2Sの曝露に耐えることができた。
ブレークイン時におけるメタンに対する改善された選択性
【0298】
図15は、銅カソード触媒を伴うMEAのためのブレークイン期間を示すプロット図である。印加電流密度と、H
2、CO、及びCH
4についてのファラデー収率が示されている。印加電流は、動作の全継続時間の間、4.5分印加される毎に1分一時停止される。
図13のプロット図と同様に、ドットは5.5分離れており、したがってプロット図上では一時停止は見られない。
図15は、有意なブレークイン期間が存在することを示している。それはまた、この電流サイクルでは、電流サイクル前の期間に減少する
図13及び
図14のFY CH
4曲線とは対照的に、FY CH
4曲線の傾きが右上がりであることを示している。
COに対する改善された選択性
【0299】
COを生成するための金カソード触媒を伴うMEAは、それぞれ50~300時間である2つの継続時間後に、4日超シャットダウンされた。
図16に示すように、セルが再始動したとき、COについてのファラデー収率が上昇し、H
2についてのファラデー収率は、前のサイクルでセルが停止された時の値に比較して低下した。特に、COについてのファラデー収率は、サイクル1の終了時に比較して、サイクル2の開始時に約10%増加し、サイクル2の終了時に比較して、サイクル3の開始時に約5%増加した。
【0300】
図17は、シングルMEAの長期試験でのセルのパフォーマンスを示しており、オフ/オン電流一時停止が示されている。
図17の95時間時点に示すように、セル動作を15分一時停止することで、セルのパフォーマンスが向上した。FY COは86%から94%へと8%上昇し、一方で、FY H
2は13%から6%へと半減した。
【0301】
図18は、2つのMEAのセルのパフォーマンスを示しており、そのうちの一方は、電流の一時停止を伴わずに連続的に作動され、他方は、セルが55分間作動され、その後5分間オフに切り替られる電流の間欠パルスを伴って作動された。このオン/オフサイクルは、図の帯状のドットによって示されているように、パルス期間中に繰り返された。これらのパルス期間の合間では、電流は連続して流された。
図18を参照すると、FY CO及びFY H
2の異なる曲線がラベル付けされている。間欠パルスにより、CO選択性が良好になる。プロット図は、動作中に間欠パルスが印加される場合のリアクタ安定性の改善を示している。間欠パルスを伴うセルでは、30~134時間の選択性の減衰(dFY_CO/dt)が-0.0070%/hrであったのに対し、連続電流を伴うセルでは、-0.055%/hrであった。
【0302】
これらの例は、セル動作を短時間及び長時間一時停止させることで、COに対する選択性を高めることによってセルのパフォーマンスが改善されることを示している。
COに対する改善された選択性-MEAスタック
【0303】
上記の例はシングルMEAを使用している。しかしながら、選択性の改善は、MEAスタックで観察される。
図19は、2つのスタックについてのパフォーマンスデータを示しており、1901にて、継続時間の約63時間時点で約32時間の電流一時停止を伴うMEAスタックの動作についてのデータを示している。32時間の中断はプロット図には示していない。しかしながら、1910にて、結果として得られるFY_COの上昇が観察される。1902にて、1912における約13時間の電流一時停止を伴う動作のデータが示されている。1914における上昇したFY COによって実証されるように、選択性の改善が観察される。上昇は、約20%であった。
ブレークイン電流ランプ
【0304】
図20は、500mA/cm
2の動作電流密度に到達するように異なるランププログラムを用いて試験された、COを生成するための2つの同一のMEAの結果を示している。黒ドットは、各中間電流密度(100mA/cm
2、200mA/cm
2、300mA/cm
2、400mA/cm
2)で1時間作動されたセルに対応し、白ドットは、各中間電流密度で30分作動されたセルに対応する(一部の例において、白ドットはプロット図上で黒ドットを不明瞭にしており、その逆も然りである)。
図20は、より緩やかなランプ速度で作動されたセル(黒ドット)の場合、COのファラデー収率は、各電流密度で比較的短時間作動されたセルの場合よりも高かったことを示している。これらの結果は、より緩やかな電流ランプは水和を促進し、より高いパフォーマンスをもたらし得ることを示している。
【0305】
図21は、高いCO
2利用率での2つのMEAのパフォーマンスを示している。一方のMEA(黒ドット)は、電流ランプを伴わないセルにおいて作動され、300mA/cm
2で直接開始する。他方のMEA(白ドット)は、300mA/cm
2に落ち着くまでに、それぞれ2時間、2時間、2時間の100、200、250mA/cm
2の電流ランプを伴うセルにおいて作動された。
図21に示すように、300mA/cm2までの電流ランプを用いることで、約100mVだけ電圧が改善される。
ランププログラムの効果
【0306】
異なランプアップ又はランプダウンプログラムでセルを動作させることで、選択性及び電圧の異なる減衰速度がもたらされる。具体的には、試験中、300mA/cm2で作動され、電流密度を30分以内に0までランプダウンさせ、15分0に維持してから300mA/cm2で即座に再開させた、COを生成するためのMEAは、電流が即座に停止され、15分0に維持してから電流密度を30分以内に0から300mA/cm2に緩やかにランプアップさせた試験よりも良好なファラデー収率の減衰をもたらした。
電流一時停止継続時間
【0307】
図22は、電流一時停止の継続時間に対する、COについてのファラデー収率の変化(電流一時停止前から後まで)を示しており、
図23は、電流一時停止の継続時間に対する、電圧の変化(電流一時停止前から後まで)を示している。
図22に示すように、長期試験中の電流一時停止の継続時間は、COファラデー収率の変化に影響を与えるが、電圧変化に対する電流一時停止の継続時間の影響は観察されない(
図23)。
開路電圧対セル短絡
【0308】
COを生成する2つのMEAは、電流の間欠パルスを伴って作動され、セルは、45分間作動され、その後、15分間オフに切り替えられた。このサイクルは、14時間繰り返された。一方のMEAに関して、セルは、電流一時停止中に短絡されて0Vにされた。他方のMEAに関して、セルは、電流一時停止中、約1~1.2Vである「開路電圧」(OCV)に留められた。電圧安定性は、電流一時停止中0Vで作動されたセルに比較して、OCV(1~1.2V)に留められたセルの方が高かった。電流一時停止中0Vで動作するセルに関して、電圧減衰は0.6mV/hrであった。OCVにあるセルに関して、電圧は3.7mV/hrの速度で向上した。両方の試験に関して、CO選択性も、約0.07%/hrの速度で経時的に向上した。
他の実施形態
【0309】
簡単にするため省略したが、システム及び/又は方法の実施形態は、様々なシステム構成要素及び様々な方法プロセスのあらゆる組み合わせ及び置換を含むことができ、本明細書に記載の当該方法及び/又はプロセスの1又は複数の例は、本明細書に記載のシステム、要素、及び/又はエンティティのうちの1又は複数の例により、及び/又は、当該例を用いて、非同期的に(例えば、シーケンシャルに)、同時に(例えば、並行して)、又は任意の他の好適な順序で実行できる。
【0310】
前述の詳細な説明から、また図面及び特許請求の範囲から当業者が理解するように、以下の特許請求の範囲で規定される本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の好ましい実施形態に対して修正及び変更を加えることができる。
【国際調査報告】