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特表2022-513862フィルタ回路構成、電気自動車、及び電気自動車の運転方法
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  • 特表-フィルタ回路構成、電気自動車、及び電気自動車の運転方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(54)【発明の名称】フィルタ回路構成、電気自動車、及び電気自動車の運転方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/01 20060101AFI20220202BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20220202BHJP
   H03H 7/09 20060101ALI20220202BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20220202BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20220202BHJP
   B60L 53/12 20190101ALI20220202BHJP
   B60L 53/22 20190101ALI20220202BHJP
【FI】
H02J3/01
H02J50/10
H03H7/09 A
B60M7/00 X
B60L5/00 B
B60L53/12
B60L53/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534158
(86)(22)【出願日】2019-12-16
(85)【翻訳文提出日】2021-06-29
(86)【国際出願番号】 EP2019085366
(87)【国際公開番号】W WO2020127063
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】1820591.4
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516149435
【氏名又は名称】ボンバルディアー プリモーフ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Bombardier Primove GmbH
【住所又は居所原語表記】Eichhornstrasse 3, 10785 Berlin, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106404
【弁理士】
【氏名又は名称】江森 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100112977
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 有子
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ランド
【テーマコード(参考)】
5G066
5H105
5H125
5J024
【Fターム(参考)】
5G066EA01
5H105BA09
5H105BB05
5H105CC07
5H105DD10
5H105EE15
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC26
5H125DD02
5H125FF16
5J024AA01
5J024BA11
5J024CA02
5J024CA03
5J024DA01
5J024DA25
5J024EA09
(57)【要約】
誘導電力伝達システムの車両側整流器を車両のトラクションネットワークに効率的に接続するためのフィルタ回路構成、電気自動車、及び電気自動車の運転方法等を提供する。
そのため、フィルタ回路構成、電気自動車、及び電気自動車の運転方法に関し、整流器側高電圧端子及び整流器側低電圧端子を備えており、ネットワーク側高電圧端子と、整流器側高電圧端子との電気的接続が、少なくとも1つのフィルタ回路の少なくとも1つのフィルタ素子で構成されており、ネットワーク側高電圧端子と、第1仮想接地セクションとの電気的接続が、少なくとも第1抵抗素子等を含んで構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導電力伝達システム(1)の車両側整流器(7)を、車両(9)のトラクションネットワーク(8)に接続するためのフィルタ回路構成であって、
整流器側高電圧端子(RTH)及び整流器側低電圧端子(RTL)と、
ネットワーク側高電圧端子(NTH)及びネットワーク側低電圧端子(NTL)と、
車両接地接続端子(VG)と、
第1仮想接地セクション(VGS1)と、を備えており、
前記ネットワーク側高電圧端子(NTH)と、前記整流器側高電圧端子(RTH)との電気的接続が、少なくとも1つのフィルタ回路の少なくとも1つのフィルタ素子を含んで構成されており、
前記ネットワーク側高電圧端子(NTH)と、前記第1仮想接地セクション(VGS1)との電気的接続が、少なくとも第1抵抗素子(R1)を含んで構成されており、
前記ネットワーク側低電圧端子(NTL)と、前記整流器側低電圧端子(RTL)との電気的接続が、少なくとも1つのフィルタ回路の少なくとも1つのフィルタ素子を含んで構成されており、
前記ネットワーク側低電圧端子(NTL)と、前記第1仮想接地セクション(VGS1)との電気的接続が、少なくとも第2抵抗素子(R2)を含んで構成されており、
前記第1仮想接地セクション(VGS1)と、前記車両接地接続端子(VG)との電気的接続が、少なくとも第1容量性素子(C1)を含んで構成されており、
前記ネットワーク側高電圧端子(NTH)と、前記第1仮想接地セクション(VGS1)との電気的接続が、少なくとも1つの共振フィルタ回路を備えており、
及び/又は、前記ネットワーク側低電圧端子(NTL)と、前記第1仮想接地セクション(VGS1)との電気的接続が、少なくとも1つの共振フィルタ回路を備えていることを特徴とするフィルタ回路構成。
【請求項2】
第2仮想接地セクション(VGS2)を備え、当該第2仮想接地セクション(VGS2)と、前記第1仮想接地セクション(VGS1)との電気的接続が、少なくとも1つの抵抗素子(BR)を含んで構成されていることを特徴とする請求項1に記載のフィルタ回路構成。
【請求項3】
前記第2仮想接地セクション(VGS2)と、前記車両接地接続端子(VG)との電気的接続が、少なくとも第2容量性素子(C2)を含んで構成されていることを特徴とする請求項2に記載のフィルタ回路構成。
【請求項4】
前記ネットワーク側高電圧端子(NTH)と、前記第2仮想接地セクション(VGS2)との電気的接続が、少なくとも1つの共振フィルタ回路を備えており、
及び/又は、前記ネットワーク側低電圧端子(NTL)と、前記第2仮想接地セクション(VGS2)との電気的接続が、少なくとも1つの共振フィルタ回路を備えていることを特徴とする請求項2又は3に記載のフィルタ回路構成。
【請求項5】
前記共振フィルタ回路は、誘導性素子(L1H、L1L、L2H、L2L)と、容量性素子(C1H、C1L、C2H、C2L)との直列接続で構成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のフィルタ回路構成。
【請求項6】
前記整流器側高電圧端子(RTH)と、前記第1仮想接地セクション(VGS1)又は第2仮想接地セクション(VGS2)との電気的接続において、少なくとも1つの共振フィルタ回路を備えており、
及び/又は、整流器側低電圧端子(RTL)と、前記第1仮想接地セクション(VGS1)又は第2仮想接地セクション(VGS2)との電気的接続において、少なくとも1つの共振フィルタ回路を備えていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のフィルタ回路構成。
【請求項7】
前記共振フィルタ回路が、誘導性素子(L3H、L3L)と、容量性素子(C3H、C3L)との並列接続を備えていることを特徴とする請求項6に記載のフィルタ回路構成。
【請求項8】
前記整流器側高電圧端子(RTH)と、前記第1仮想接地セクション(VGS1)又は第2仮想接地セクション(VGS2)との電気的接続が、少なくとも1つの容量性素子(C3)を含んで構成されており、
及び/又は、前記整流器側低電圧端子(RTL)と、前記第1仮想接地セクション(VGS1)又は第2仮想接地セクション(VGS2)との電気的接続が、少なくとも1つの容量性素子(C4)を含んで構成されていることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のフィルタ回路構成。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のフィルタ回路構成(2)を備えた、車両(9)としての電気自動車であって、当該電気自動車のトラクションネットワーク(8)への誘導電力伝達システム(1)の二次ユニット(5)の車両側整流器(7)の電気的接続において、フィルタ回路構成(1)を備えていることを特徴とする電気自動車。
【請求項10】
請求項9に記載の車両(9)としての電気自動車の運転方法であって、所定エネルギーを車両(9)に対して、誘導的に伝達する構成であることを特徴とする電気自動車の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ回路構成、電気自動車、及び電気自動車の運転方法に関する。
より具体的には、誘導電力伝達システムの車両側整流器を車両のトラクションネットワークに接続するためのフィルタ回路構成に関する。
又、本発明は、所定のフィルタ回路構成を備えた電気自動車、及び、そのような電気自動車を動作させる運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車、特に軌道系車両、及び/又は路面走行用自動車は、誘導電力伝達によって伝達される電気エネルギーによって作動させることができる。
このような車両は、トラクションネットワーク(トラクションシステムと称する場合がある。)、又はそのような車両のトラクションシステムの一部において、交流電磁界を受信し、電磁誘導によって交流電流を生成するように適合された受信装置を含む回路構成(回路配置)を含んでいる。
又、このような車両は、交流(AC)を直流(DC)に変換するように適合された整流器を含んでおり、整流された直流は、トラクションバッテリーの充電や電気機械の作動に使用することができる。後者の場合、直流はインバータによって交流に変換される。
【0003】
又、誘導電力の伝達は、通常、2セットの巻線構造を用いて行われる。
すなわち、第1セットの巻線である一次巻線構造は、地上に設置され、ウェイサイドパワーコンバーター(Wayside Power Converter)から給電可能となる。
一方、第2セットの巻線である二次巻線構造は、車両に設置される。例えば、二次巻線構造は車両の下に取り付けることができ、路面走行用自動車の場合、その複数の台車のうちの一部の下に取り付けることができる。又、自動車の場合は、車両のシャーシに取り付けられて使用される。
かかる二次巻線構造又は一般的に二次側は、しばしばピックアップ構成又はオンボードレシービングユニットと呼ばれ、又はそれらの一部を構成している。
そして、一次巻線構造と二次巻線構造は、電気エネルギーを車両に伝達するための高周波変圧器を形成する。
これは、車両の動きがない静的状態でも、車両の動きがある動的状態でも行うことができる。
又、整流器は、二次巻線構造に電気的に接続されており、誘導電力の伝達時に二次巻線構造から供給される交流電圧を整流するために動作する。
但し、かかる整流器の動作は、例えば整流された出力信号に電圧リップルを生じさせるような望ましくないノイズを発生させることが知られている。
【0004】
そこで、特許文献1によれば、車両に誘導電力を伝達するシステムの受電装置を開示しており、受電装置は、ハウジングと、整流器と、を備えている。
【0005】
又、特許文献2によれば、コモンモードノイズ低減回路を開示しており、より詳細には、ディファレンシャルモードの信号を最小の損失で維持しつつ、コモンモードノイズを抑制するコモンモードノイズ低減回路を開示している。
【0006】
又、特許文献3によれば、高圧電力線に沿った同一方向のノイズ等を低減させるコモンモードフィルタを開示している。
【0007】
すなわち、整流器が接続されている車両のトラクションネットワークは、整流器にノイズを発生又は伝達することがある。
このノイズは、例えば、トラクションネットワークに接続された電気部品、例えば、電気機械や、空調システムなどの他のサポートシステムの動作に起因するものである。
【0008】
従って、オンボードレシービングユニット(ORU)とも呼ばれる二次ユニット(セカンダリユニット)は、ノイズ、特に放射ノイズと伝導ノイズに関する厳しい規制要件を満たす必要がある。
又、特に、キーコードやCAN等の車両支援通信や、DAB、FM、LW、MWなどの商用無線帯域などの車載エンターテインメントシステムに使用される周波数帯域が問題となる。
更に言えば、ORUの高電圧出力を、グランドから分離して、ノイズを低減することも望まれている。
【0009】
前述のように、放射ノイズ及び伝導ノイズは、ORU内及びORUに接続された車両サポートシステム、すなわちトラクションネットワークに接続された前述のコンポーネントの両方、或いは、さまざまなノイズ源から発生する。
これらのノイズは、いわゆるコモンモードノイズ、すなわち両方の高圧電力線に沿った同一方向のノイズであり、一方で、グランドに関しては反対方向のノイズ、いわゆるディファレンシャルモードノイズである。
すなわち、各高圧電力線上の反対方向のノイズ、あるいはグランドに関して両方のモードが複雑に組み合わさった、いわゆるミックスモードの形態をとることがある。
【0010】
ここで、以下のようなノイズ源が、1つ又は複数存在する可能性がある。
【0011】
まず、トラクションネットワークのノイズ源、例えば、車両のハイブリッドモータードライブや空調システムなど、10kHz~100kHzの低周波ノイズを発生するものは、主にディファレンシャル伝導ノイズを発生し、ORUの高圧回路に入る。
しかしながら、このようなノイズは、ORUの前面から放射されたり、コモンモードノイズとして低電圧回路に伝達されたりしてはならない。
又、これらの周波数での大電流の流れによる内部部品の加熱を防ぐために、ORUはこのノイズに低インピーダンスの差動経路を形成しないことが望まれる。
【0012】
車両の高電圧システム、すなわちトラクションネットワークに存在する高周波の混合モード、コモン又はディファレンシャル伝導ノイズが、様々なハイブリッドシステムコンポーネントから更にノイズを発生させる。
そして、このようなノイズは、ORUの前面から放射されたり、コモンモードノイズとして低電圧回路に伝達されたりしないことが望まれる。
【0013】
又、充電中の一次ユニット(プライマリユニット)とORUとの磁気的及び容量的結合によるノイズも発生する(周波数:例えば、85kHz~255kHz)。
このノイズは、主に放射コモンモードノイズであり、このノイズを高電圧電源接続での伝導コモンモードノイズとして、車両システムを通過させることは望ましくないと言える。
【0014】
又、例えば、170kHzの低周波ノイズの原因となるのが、電力伝達である。
このノイズは、主に、二次巻線構造によって供給される交流電圧の整流によってORUから出力される高電圧の電流と、電圧のリップルに起因している。すなわち、かかるノイズは、主に高電圧接続で存在するディファレンシャルモードの伝導ノイズである。
【0015】
しかも、1MHz以上の高周波ノイズは、電力整流器の高速スイッチングと二次巻線構造の出力における電圧変化に起因する。
このような高周波ノイズは、主として、高電圧接続端子でのミックスモード、ディファレンシャルモード、コモンモードの伝導ノイズ、又はORUの表面からの放射ノイズとして現れると考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】WO2015/150297 A2(特許請求の範囲等)
【特許文献2】US2015/318834 A1(特許請求の範囲等)
【特許文献3】JP2014135674 A(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
そこで、本発明は、整流器及び/又は車両部品から発生するノイズを効果的にフィルタリングすることができる、車両の誘導電力伝達システムにおけるフィルタ回路構成、更には、そのようなフィルタ回路構成を備えた電気自動車、及びそのような電気自動車の運転方法を提供することを目的(技術的課題)とする。
又、本発明によれば、このような効果的なフィルタリング効果を発揮するフィルタ回路構成を、建物等における設置スペースやコストをできるだけ小さくして提供することも目的(技術的課題)としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によれば、上述した技術的課題は、請求項1、8及び9等に記載された技術的特徴によって解決することができる。
又、本発明の有利な実施形態によれば、これら従属請求項等に記載された技術的特徴を有する本発明によって解決することができる。
【0019】
すなわち、本発明によれば、誘導電力伝達システムの車両側整流器を、車両のトラクションネットワークに接続するためのフィルタ回路構成が提案され、下記構成を有することを特徴としている。
すわなち、整流器側高電圧端子及び整流器側低電圧端子と、ネットワーク側高電圧端子及びネットワーク側低電圧端子と、車両接地接続端子と、第1仮想接地セクションと、を備えていることを特徴とする。
そこで、ネットワーク側高電圧端子と、整流器側高電圧端子との電気的接続が、少なくとも1つのフィルタ回路の少なくとも1つのフィルタ素子を含んで構成されていることを特徴とする。
又、ネットワーク側高電圧端子と、第1仮想接地セクションとの電気的接続が、少なくとも第1抵抗素子を含んで構成されていることを特徴とする。
又、ネットワーク側低電圧端子と、整流器側低電圧端子との電気的接続が、少なくとも1つのフィルタ回路の少なくとも1つのフィルタ素子を含んで構成されていることを特徴とする。
又、ネットワーク側低電圧端子と、第1仮想接地セクションとの電気的接続が、少なくとも第2抵抗素子を含んで構成されていることを特徴とする。
又、第1仮想接地セクションと、車両接地接続端子との電気的接続が、少なくとも第1容量性素子を含んで構成されていることを特徴とする。
又、ネットワーク側高電圧端子と、第1仮想接地セクションとの電気的接続が、少なくとも1つの共振フィルタ回路を備えており、及び/又は、ネットワーク側低電圧端子と、第1仮想接地セクションとの電気的接続が、少なくとも1つの共振フィルタ回路を備えていることを特徴とする。
より具体的には、このフィルタ回路構成は、受動的な回路配置であり、受動的な電気素子のみからなる回路配置である。
【0020】
本発明は、あらゆる陸上車両を対象として含み、一時的に陸上にいるだけの車両についても含むが、そればかりではない。
特に、鉄道車両(トラムなど)のような軌道上の車両だけでなく、個人(プライベート)の乗用車や、公共交通機関(軌道上の車両であるトロリーバスを含むバスなど)のような道路上の自動車にも適用することができる。
【0021】
又、以下で説明する電気素子は、通常、抵抗素子、容量性素子、誘導性素子のいずれかを意味している。
より具体的には、抵抗素子として、少なくとも抵抗器が例示され、静電容量性素子として、少なくともコンデンサが例示され、誘導性素子として、少なくともコイルが例示される。
【0022】
又、フィルタ回路構成は、整流器側高電圧端子と、整流器側低電圧端子と、を備えていることを特徴とする。
すなわち、これらの端子により、フィルタ回路構成は、整流器の高電圧出力端子及び整流器の低電圧出力端子に電気的に接続することができる。
そして、これらの出力端子にはDC(直流電圧)が供給されることが好ましい。
【0023】
又、かかるフィルタ回路構成(フィルタ回路配置と称する場合がある。)は、ネットワーク側高電圧端子と、ネットワーク側低電圧端子と、を備えていることを特徴とする。
すなわち、これらの端子により、フィルタ回路構成は、トラクションネットワークの高電圧入力端子及びトラクションネットワークの低電圧入力端子に対して、それぞれ電気的に接続されていることが好ましい。
【0024】
又、トラクションネットワークは、車両用バッテリー、いわゆるトラクションバッテリーを備えていることが好ましい。
又、かかるトラクションネットワークは、車両における他の電気部品、例えば、車両を推進するための電気機械、電力変換器又は他の電気部品、或いは、車両の空調システムの部品等を備えていることが好ましい。
【0025】
又、フィルタ回路構成は、所定のフィルタ回路配置として、車両接地電位に電気的に接続するための車両接地接続端子を備えていることが好ましい。
かかる車両接地接続端子の電位は、車両の基準電位を示すことが好ましい。そして、特に、車両接地接続端子の電位は、車両のシャーシの電位とすることが好ましい。
但し、車両接地接続端子の電位が、車両の別の基準電位によって提供されることも好ましい場合がある。
【0026】
又、フィルタ回路構成は、所定のフィルタ回路配置として、第1仮想接地セクションを備え、又はそれを提供することが好ましい。
かかる第1仮想接地セクションは、いわゆる第1仮想接地電位を提供することが好ましい。
そして、かかる第1仮想接地電位は、車両の接地電位とは異なる態様とすることが好ましい。特に、第1仮想接地電位は、フローティング接地又はフローティング接地電位とすることが好ましい。
【0027】
又、ネットワーク側高電圧端子と整流器側高電圧端子との電気的接続は、少なくとも1つのフィルタ回路の少なくとも1つのフィルタ素子を備えていることが好ましい。
かかる電気的接続が、1つのフィルタ回路の複数のフィルタ素子からなることも、複数のフィルタ回路の複数のフィルタ素子からなることも好ましい。
このようなフィルタ素子は、電気素子であることが好ましい。そして、特に、フィルタ素子としては、容量性素子もしくは誘導性素子、又はそれらの組み合わせであることが好ましい。
【0028】
又、ネットワーク側高電圧端子と第1仮想接地セクションとの電気的接続は、少なくとも第1抵抗素子を備えていることが好ましい。
又、整流器側高電圧端子の第1仮想接地セクションへの電気的接続も、第1抵抗素子を備えていることが好ましい。
【0029】
又、ネットワーク側低電圧端子と整流器側低電圧端子との電気的接続は、少なくとも1つのフィルタ回路の少なくとも1つのフィルタ素子を含んで構成されていることが好ましい。
かかる電気的接続が、1つのフィルタ回路の複数のフィルタ素子を備えていることも好ましいし、複数のフィルタ回路の複数のフィルタ素子を含んで構成されていることも好ましい。
又、ネットワーク側低電圧端子と、第1仮想接地セクションとの電気的接続は、少なくとも第2抵抗素子を含んで構成されていることが好ましい。
又、整流器側低電圧端子と第1仮想接地セクションとの電気的接続が、第2抵抗素子を備えていることも好ましい。
【0030】
又、第1抵抗素子(抵抗体と称する場合がある。)の抵抗値は、第2抵抗素子の抵抗値と等しいことが好ましい。
しかしながら、第1抵抗素子の抵抗値が第2抵抗素子の抵抗値よりも小さい場合、又は大きい場合もある。
すなわち、このように第1抵抗素子の抵抗値が、第2抵抗素子の抵抗値と、等しくない場合もある。
【0031】
又、第1仮想接地セクションと、車両接地接続端子との電気的接続は、少なくとも第1容量性素子を備えていることが好ましい。
【0032】
又、整流器側の端子と、ネットワーク側の端子の間に、1つ以上のフィルタ回路構成のフィルタ素子に加えて、第1抵抗素子及び第2抵抗素子と、第1仮想接地セクションとを設けることによって、いわゆる疑似接地又は疑似基準電位を設けることが好ましい。
かかる疑似基準電位は、特に、2つの抵抗素子が接続された回路部に設けられている。
このように疑似基準電位を設けることにより、有利にも、提案された回路構成で使用されるフィルタ素子の電圧定格を下げることができる。
これは特に、フィルタ素子にかかる電圧が、整流器側高電圧端子と整流器側低電圧端子、又はネットワーク側高電圧端子と、ネットワーク側低電圧端子とにかかる最大電圧の一部に制限されているために可能である。
従って、最大電圧の一部は、第1抵抗素子と第2抵抗素子との抵抗比に依存している。その結果、より安価な電気素子や、所要面積の小さい電気素子を使用することが可能となる。
【0033】
又、フィルタ素子によれば、前述のノイズ、特にコモンモードノイズ、ディファレンシャルモードノイズ、ミックスモードノイズの抑制や、動作中の車両側整流器から発生するノイズやリップルの抑制を効果的かつ確実に行うことができる。
特に、所定の周波数のノイズを可能な限り低減することができる。
【0034】
言い換えれば、フィルタ回路構成におけるフィルタ回路配置は、車両側整流器とトラクションネットワークの間で伝達される前述のノイズをフィルタリングするための複合的なフィルタ手段を提供することができる。
【0035】
又、第1仮想接地セクションと、車両接地接続端子との電気的接続は、少なくとも第1容量性素子を含んで構成されていることが好ましい。
【0036】
又、第1仮想接地セクションと、車両接地接続端子との間の電気的接続内に、第1容量性素子を設けることにより、有利にも車両基準電位へのコモンモードノイズのバイパスが形成されることになる。
【0037】
又、本発明によれば、ネットワーク側の高電圧端子と、第1仮想接地セクションとの電気的接続において、少なくとも1つの共振フィルタ回路を含んで構成されていることが好ましい。
又、代替的又は追加的に、ネットワーク側の低電圧端子の第1仮想接地セクションへの電気的接続は、少なくとも1つの共振フィルタ回路から構成されていることが好ましい。
このような共振フィルタ回路によって、所望の周波数に調整することができる。
これは、共振フィルタ回路の共振周波数が、所定の周波数又はそこから所定の量を超えて逸脱しない周波数に一致するように、共振フィルタ回路の要素としてのフィルタ素子の電気的特性、例えば、抵抗、キャパシタンス又はインダクタンスが選択されることを意味する。
【0038】
なお、ネットワーク側高電圧端子と、第1仮想接地セクションとの電気的接続内の共振フィルタ回路の共振周波数を、ネットワーク側低電圧端子と、第1仮想接地セクションとの電気的接続の共振フィルタ回路の共振周波数と、等しくすることも好ましい。
そして、このような共振フィルタ回路は、少なくとも容量性素子と少なくとも誘導性素子で構成することが好ましい。
又、ネットワーク側高電圧端子と、第1仮想接地セクションとの電気的接続内の共振フィルタ回路は、ネットワーク側高電圧端子と、整流器側高電圧端子との電気的接続の一部である少なくとも1つのフィルタ素子で構成することが好ましい。このようなフィルタ素子は、好ましくは、誘導性とすることである。
又、かかる誘導性に対応して、ネットワーク側低電圧端子の第1仮想接地セクションへの電気的接続の少なくとも1つの共振フィルタ回路における、少なくとも1つのフィルタ素子(要素)は、ネットワーク側低電圧端子の整流器側低電圧端子への電気的接続の少なくとも1つのフィルタ素子から構成することが好ましい。
このようなフィルタ素子としては、誘導性素子とすることも好ましい。
【0039】
又、共振フィルタ回路は、例えばノッチフィルタ回路として設計することが好ましい。すなわち、ノッチフィルタ回路であれば、単一の周波数又は非常に狭い範囲の周波数を効果的に抑制し、残りの周波数は影響を受けないか、又は最小限に抑えることができる。
【0040】
又、共振フィルタ回路を設けることで、車両側整流器の動作によって発生する電圧リップルを非常に効果的に抑制することができるという利点がある。
その上、共振フィルタ回路を設けることによって、前述のフィルタ回路のサイズ低下と、コスト削減ができるという利点もある。
【0041】
又、本発明の別の実施形態では、フィルタ回路構成(フィルタ回路配置又は、単に配置と称する場合がある。)は、第2仮想接地セクションを備えるか、又は第2仮想接地セクションを提供し、第2仮想接地セクションと、第1仮想接地セクションとの電気的接続が、少なくとも1つの抵抗素子(要素)を含んで構成されることが好ましい。
特に、第1仮想接地セクションの電位は、第2仮想接地セクションの電位よりも相対的に高い、又は相対的に低いなど、異なるものとすることができる。
そして、第1仮想接地セクションに対する第2仮想接地セクションの電気的接続の一部である少なくとも1つの抵抗素子は、平衡抵抗器とも呼ばれる。
このような抵抗素子は、有利には、第1仮想接地セクションへのDC(直流)経路を形成することができる。これにより、フィルタ回路構成のノードが様々な回路素子の電圧定格内で動作することを確実にすることができ、又は単純化することができる。
【0042】
又、本発明の別の実施形態では、第2仮想接地セクションと、車両接地接続端子との電気的接続が、少なくとも第2容量性素子を含んで構成されていることが好ましい。
かかる第2容量性素子の静電容量は、車両接地電位と第1仮想接地セクションとを電気的に接続する第1容量性素子の静電容量とは異なることが好ましい。
従って、第2容量性素子の静電容量が、第1容量性素子の静電容量よりも相対的に高くしたり、或いは、逆に相対的に低くしたりすることが好ましい場合がある。
【0043】
又、第2仮想接地セクションと、車両接地接続端子との間に、そのような接続容量性素子(要素)を設けることが好ましい。
このように構成することにより、有利には、ネットワーク側高電圧端子と、第2仮想接地セクションとの電気的接続及び/又はネットワーク側低電圧端子と、第2仮想接地セクションとの電気的接続内の更なる共振フィルタ回路において、特に、ネットワーク側高電圧端子と、第1仮想接地セクションとの電気的接続及び/又はネットワーク側低電圧端子と、第1仮想接地セクションとの電気的接続に設けられた共振フィルタ回路の共振周波数と、を異なる所望の所定の共振周波数に調整することを可能にする。
このような、1つ又は複数の更なる共振フィルタ回路を、第2容量性素子とともに設けることにより、有利なことに、車両側整流器の動作に起因する電圧リップルの抑制を向上させることができる。
しかも、フィルタ回路を配置するための建物等のスペース要件及びコストを削減することができる。
すなわち、中心周波数の異なるノッチフィルタを提供することが可能である。これにより、有利なことに、異なる周波数を効果的に、可能な限り抑制することができる。
【0044】
又、本発明の別の実施形態では、ネットワーク側高電圧端子と、第2仮想接地セクションとの電気的接続が、少なくとも1つの共振フィルタ回路、例えば、更なる共振フィルタ回路を備えていることが好ましい。
あるいは、好ましくはそれに加えて、ネットワーク側低電圧端子と、第2仮想接地セクションとの電気的接続が、少なくとも1つの共振フィルタ回路、例えば、更なる共振フィルタ回路を備えていることが好ましい。
このようなフィルタ回路は、特に、それぞれのネットワーク側の端子を第1仮想接地セクションに接続する前述の共振フィルタ回路と同様に設計することが好ましい。
【0045】
又、このようなフィルタ回路構成では、異なる周波数を効果的に抑制することができる2段のフィルタ回路構成とすることが好ましい。
例えば、ネットワーク側の高電圧端子が、第1仮想接地セクション及び第2仮想接地セクションに接続されている共振フィルタ回路の共振周波数が互いに異なる場合がある。
そして、この態様に対応して、ネットワーク側の低電圧端子が第1仮想接地セクションと、第2仮想接地セクションに接続されている共振フィルタ回路の共振周波数が互いに異なることが好ましい。
但し、これらの共振フィルタ回路につき、共振周波数が等しいものを提供する場合もある。
【0046】
又、本発明の別の実施形態では、共振フィルタ回路は、誘導性素子と、容量性素子との直列接続で構成されることが好ましい。
かかる共振フィルタ回路を直列接続として提供することにより、有利には、所望のフィルタ性能、特にコモンモードノイズ、ディファレンシャルモードノイズ及びミックスモードノイズの抑制、ならびに動作中に車両側整流器によって発生するノイズ及びリップルの抑制を、特定の所定の周波数/特定の所定の複数の周波数、又は特定の所定の周波数範囲に調整することができる。
【0047】
又、ネットワーク側高電圧端子と整流器側高電圧端子との電気的接続が、ネットワーク側高電圧端子を第1仮想接地セクションに接続する共振フィルタ回路の少なくとも1つのフィルタ素子、特に誘導性フィルタ素子と、整流器側高電圧端子を第2仮想接地セクションに接続する共振フィルタ回路の少なくとも1つのフィルタ素子、特に誘導性フィルタ素子とを含んで構成されていることが好ましい。そして、これらのフィルタ素子を直列接続することが好ましい。
【0048】
一方、ネットワーク側低電圧端子と整流器側低電圧端子との電気的接続は、ネットワーク側低電圧端子を第1仮想接地セクションに接続する共振フィルタ回路の少なくとも1つのフィルタ素子、特に誘導性フィルタ素子と、整流器側低電圧端子を第2仮想接地セクションに接続する共振フィルタ回路の少なくとも1つのフィルタ素子、特に誘導性フィルタ素子を含んで構成されていることが好ましい。そして、これらのフィルタ素子を直列接続することが好ましい。
【0049】
又、本発明の別の実施形態では、整流器側高電圧端子と、第1仮想接地セクション又は第2仮想接地セクションとの電気的接続において、少なくとも1つの共振フィルタ回路を備えることが好ましい。
ここでも、共振フィルタ回路の少なくとも1つのフィルタ素子が、ネットワーク側高電圧端子と整流器側高電圧端子との電気的接続内に配置されるフィルタ素子とすることが好ましい。
【0050】
代替的に、又は、好ましくは、加えて、整流器側低電圧端子と、第1仮想接地セクション又は第2仮想接地セクションとの電気的接続において、少なくとも1つの共振フィルタ回路を備えていることが好ましい。
ここでも、共振フィルタ回路の少なくとも1つのフィルタ素子が、ネットワーク側低電圧端子と整流器側低電圧端子との電気的接続内に配置されるフィルタ素子とすることが好ましい。
【0051】
又、整流器側高電圧端子と、第1仮想接地セクション又は第2仮想接地セクションとの電気的接続が、更なる電気素子、特に更なるフィルタ素子を含んで構成されていることが好ましい。
特に、かかる電気的接続が、ネットワーク側高電圧端子と、第1仮想接地セクション又は第2仮想接地セクションとの間の前述の共振フィルタ回路のうちの1つの更なるフィルタ素子を含んで構成されていることが好ましい。
或いは、整流器側高電圧端子と、第1仮想接地セクション又は第2仮想接地セクションとの電気的接続が、フィルタ素子を提供しない更なる電気素子(要素)、特に容量性素子を含んで構成されていることが好ましい。
【0052】
一方、整流器側低電圧端子と、第1仮想接地セクション又は第2仮想接地セクションとの電気的接続が、更なる電気素子、特に更なるフィルタ素子から構成されることが好ましい。
特に、電気的接続が、ネットワーク側低電圧端子と第1仮想接地セクション又は第2仮想接地セクションとの間の前述の共振フィルタ回路のうちの1つの更なるフィルタ素子からなることが好ましい。
そして、整流器側低電圧端子と、第1仮想接地セクション又は第2仮想接地セクションと、の電気的接続が、フィルタ素子を提供しない更なる電気素子、特に容量性素子から構成されることが好ましい。
【0053】
又、本発明において更に提案されているのは、所定の電気自動車である。かかる電気自動車は、ORUを構成することが好ましい。
そして、かかる電気自動車は、トラクションネットワークを含むことが好ましい。
その上、電気自動車は、トラクションネットワークに電気的に接続された、又はトラクションネットワークの一部であるコンポーネント、例えば、電気機械及び/又はトラクションバッテリーを含むことが好ましい。
又、電気自動車は、本明細書に開示された実施形態の1つによるフィルタ回路構成を備えることが好ましい。
又、電気自動車のトラクションネットワークへの誘導電力伝達システムの二次ユニット、すなわちORUの車両側整流器の電気的接続において、フィルタ回路構成を備えていることが好ましい。
これにより、有利なことに、両方向のノイズが効果的に低減された車両を提供することができる。
【0054】
又、本発明において更に提案されているのは、本明細書に開示されている実施形態の1つによる、車両としての電気自動車の運転方法(操作方法)である。
すなわち、かかる電気自動車の運転方法に関する発明において、所定エネルギー(電気等)を車両に対して、誘導的に伝達する構成であることが好ましい。
以下、添付の図を参照しながら本発明を説明する。又、参照する図は、以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1図1は、本発明によるフィルタ回路を配置した誘導電力伝達システムの概略ブロック図である。
図2図2は、本発明による車両の一つとしての電気自動車の概略図である。
図3図3は、本発明によるフィルタ回路構成を示す概略回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下の図では、同じ参照番号は同じ又は類似の技術的特徴を示している。
【0057】
図1は、本発明によるフィルタ回路構成2を備えた誘導電力伝達システム1の概略ブロック図である。
かかる誘導電力伝達システム1は、電磁電力伝達フィールドを生成するための一次巻線構造4を有する一次ユニット3を備えることが好ましい。かかる一次ユニット3は、例えば、経路の表面や、例えば、ガレージの壁に設置することができる。
又、誘導電力伝達システム1は、オンボードレシービングユニット(ORU)とも呼ばれる二次ユニット5を備えていることが好ましい。
かかる二次ユニット5は、一次巻線構造4によって生成された電磁電力伝達フィールドを受信するための二次巻線構造6を含んでいることが好ましい。
又、二次ユニット5は、電磁電力伝達フィールドの受信中に二次巻線構造によって提供される交流電圧を整流するための車両側整流器7を備えていることが好ましい。
又、図2に示すように、誘導電力伝達システム1の車両側整流器7を、車両9のトラクションネットワーク8に対して、接続するためのフィルタ回路構成2が示されている。
かかるフィルタ回路構成2は、二次ユニット5の一部とすることができる。そして、フィルタ回路構成2は、二次ユニット5のハウジング10に対して配置されることが好ましい。
例えば、二次巻線構造6及び/又は車両側整流器7が配置されるハウジングの内部が好適である。しかしながら、フィルタ回路構成2がハウジング10の外側に配置されることも好ましい。
【0058】
フィルタ回路構成2は、上述のノイズ信号、特にいわゆるコモンモードノイズ、いわゆるディファレンシャルモードノイズ、及びいわゆるミックスモードノイズをフィルタリングするために使用される。
又、フィルタ回路構成2は、二次巻線構造6によって提供される交流電圧の整流に必要なスイッチング動作中に、車両側整流器7のスイッチング素子(図示せず)によって生成されるリップルをフィルタリングするために使用される。
【0059】
図2は、図1にも示されている二次ユニット5を備えた、車両9としての電気自動車(以下、単に、車両又は電気自動車と称する場合がある。)を模式的に示している。
かかる二次ユニット5は、車両9としての電気自動車の下側に配置されていることが示されている。
又、図1に示すように、一次ユニット3を有することが示されている。そして、更に示されているのは、車両9としての電気自動車のトラクションネットワーク8である。
そして、図1に示すように、車両9としての電気自動車において、二次巻線構造6は、車両側整流器7及びフィルタ回路構成2によってトラクションネットワーク8に接続されていることが好ましい。
その逆に、トラクションネットワーク8は、フィルタ回路構成2及び車両側整流器7によって二次巻線構造6に接続されることも好ましい。
このことは、二次巻線構造6及び/又は車両側整流器7によって生成されたリップルなどの望ましくない信号部分などのノイズ信号のトラクションネットワーク8への伝達が抑制され、かかるトラクションネットワーク8、又はトラクションネットワーク8に接続された電気部品の動作に望ましくない影響を与えないことを意味する。
又、トラクションネットワーク8の内部で生成されたノイズ信号、例えばトラクションネットワーク8に接続されたコンポーネントによって生成されたノイズ信号の二次巻線構造6への伝達が抑制される。
従って、二次巻線構造6からの望ましくない信号(ノイズ信号)の放出を引き起こすことはない。
【0060】
図3は、本発明によるフィルタ回路構成2の概略回路図である。フィルタ回路構成2は、整流器側高電圧端子RTHと整流器側低電圧端子RTLとからなることが好ましい。
又、フィルタ回路構成2は、ネットワーク側高電圧端子NTHと、ネットワーク側低電圧端子NTLとを備えることが好ましい。
【0061】
又、フィルタ回路構成2は、車両接地接続端子VGを備えることが好ましい。
【0062】
又、フィルタ回路構成2は、いわゆる第1仮想接地セクションVGS1を構成し、又はそれを提供することが好ましい。
【0063】
ネットワーク側高電圧端子NTHと、整流器側高電圧端子RTHとの電気的接続は、少なくとも1つのフィルタ回路の少なくとも1つのフィルタ素子で構成されていることが好ましい。
図示の実施形態では、かかる電気的接続は、第1高電圧誘導性素子L1H、第2高電圧誘導性素子L2H及び第3高電圧誘導性素子L3Hから構成されている。
そして、このような第1高電圧誘導性素子L1H、第2高電圧誘導性素子L2H、第3高電圧誘導性素子L3Hは、例えば、それぞれコイルによって提供することができる。
ここで、高電圧という用語は、低電圧と区別するために、用語上選ばれた相対的な意味であり、それぞれの素子の特定の電気的特性を示すものではない。
これに対応して、低電圧という用語も又、高電圧と区別するために、用語上の目的で相対的に選択されたものであり、それぞれの素子の特定の電気的特性を示すものではない。
【0064】
又、これらの電気的接続の第1高電圧誘導性素子L1H、第2高電圧誘導性素子L2H、第3高電圧誘導性素子L3Hは、以下に説明する第1高電圧フィルタ回路、第2高電圧フィルタ回路、第3高電圧フィルタ回路のそれぞれの素子(回路要素)となることが好ましい。
【0065】
これに対応して、ネットワーク側低電圧端子NTLと、整流器側低電圧端子RTLとの電気的接続は、少なくとも1つのフィルタ回路の少なくとも1つのフィルタ素子、すなわち、第1低電圧誘導性素子L1L、第2低電圧誘導性素子L2L、及び第3低電圧誘導性素子L3Lから構成されることが好ましい。
かかる電気的接続における、これらの第1低電圧誘導性素子L1L、第2低電圧誘導性素子L2L、第3低電圧誘導性素子L3Lとして、以下に説明する第1低電圧フィルタ回路、第2低電圧フィルタ回路、及び第3低電圧フィルタ回路の素子を提供することが好ましい。
【0066】
又、ネットワーク側高電圧端子NTHの第1仮想接地セクションVGS1への電気的接続は、少なくとも第1抵抗素子R1を含んで構成されていることが好ましい。
これに対応して、ネットワーク側低電圧端子NTLの第1仮想接地セクションVGS1への電気的接続は、第2抵抗素子R2を含んで構成されていることも好ましい。
そして、第1抵抗素子R1、第2抵抗素子R2及び本発明の構成内容等からすれば、例えば、抵抗器によって構成することができる。又、第1抵抗素子R1及び第2抵抗素子R2の抵抗値は、それぞれ等しいとすることも好ましいし、異なる値とすることも好ましい。
【0067】
又、ネットワーク側高電圧端子NTHと、第1仮想接地セクションVGS1との電気的接続は、第1高電圧容量性素子C1Hで構成され、ネットワーク側低電圧端子NTLと、第1仮想接地セクションVGS1との電気的接続は、第1低電圧容量性素子C1Lで構成されていることが好ましい。
【0068】
又、第1高電圧容量性素子C1Hは、第1抵抗素子R1に対して、電気的に並列に配置されていることが好ましい。
一方、第1低電圧容量性素子C1Lについても、第2抵抗素子R2に対して、電気的に並列に配置されていることが好ましい。
しかも、第1高電圧容量性素子C1H及び第1低電圧容量性素子C1Lの容量は、それぞれ等しいことが好ましく、これらの第1高電圧容量性素子C1H及び第1低電圧容量性素子C1Lの容量は、それぞれ異なっていることも好ましい。
【0069】
又、ネットワーク側高電圧端子NTHの第1仮想接地セクションVGS1への電気的接続の中で、第1抵抗素子R1と、第1高電圧容量性素子C1Hとの並列接続は、第1高電圧誘導性素子L1Hと直列に電気的に接続されていることが好ましい。
すなわち、フィルタ回路構成2は、ネットワーク側高電圧端子NTHを第1仮想接地セクションVGS1に電気的に接続する範囲内で、第1高電圧誘導性素子L1Hと第1高電圧容量性素子C1Hとの直列接続を構成していることが好ましい。この直列接続により、第1高電圧フィルタ回路が構成される。
【0070】
これに対応して、第2抵抗素子R2と第1低電圧容量性素子C1Lとの並列接続は、ネットワーク側低電圧端子NTLの第1仮想接地セクションVGS1への電気的接続の範囲内で、第1低電圧誘導性素子L1Lに直列に、電気的に接続されていることが好ましい。
すなわち、フィルタ回路構成2は、第1低電圧誘導性素子L1Lと第1低電圧容量性素子C1Lとの直列接続によって、第1低電圧フィルタ回路を構成していることも好ましい。
【0071】
又、第1高電圧フィルタ回路及び第1低電圧フィルタ回路は、それぞれ共振フィルタ回路、例えば、直列共振フィルタ回路によって構成されることが好ましい。
【0072】
又、第1仮想接地セクションVGS1と、車両接地接続端子VGとの電気的接続は、少なくとも第1容量性素子C1で構成されていることが好ましい。
なお、車両接地接続端子VGは、車両の基準となる電位、例えば、車両のシャーシの電位を提供する端子を示す。
【0073】
又、フィルタ回路構成2は、第2仮想接地セクションVGS2を備えることが好ましい。そして、第1仮想接地セクションVGS1及び第2仮想接地セクションVGS2の間の電気的接続は、平衡抵抗器とも呼ばれる、少なくとも1つの抵抗素子BRを含んで構成されていることが好ましい。
又、第2仮想接地セクションVGS2と、車両接地接続端子VGとの間の電気的接続は、第2容量性素子C2を含んで構成されていることが好ましい。そして、第1容量性素子C1及び第2容量性素子C2の静電容量は、互いに異なっていることが好ましい。
【0074】
又、ネットワーク側高電圧端子NTHと第2仮想接地セクションVGS2との電気的接続が、第2高電圧容量性素子C2Hを含んで構成されていることが好ましい。
特に、かかる電気的接続は、第2高電圧誘導性素子L2Hと、第2高電圧容量性素子C2Hの直列接続で構成されていることが好ましい。
かかる直列接続により、第2共振フィルタ回路として設計された第2高電圧フィルタ回路を構成することが好ましい。
より詳細には、ネットワーク側高電圧端子NTHと第2仮想接地セクションVGS2との電気的接続は、第1高電圧誘導性素子L1H、第2高電圧誘導性素子L2H及び第2高電圧容量性素子C2Hの直列接続からなることが好ましい。
【0075】
一方、ネットワーク側低電圧端子NTLと第2仮想接地セクションVGS2との電気的接続が、第2低電圧容量性素子C2Lを含んで構成されていることが好ましい。
特に、かかる電気的接続は、第2低電圧誘導性素子L2Lと第2低電圧容量性素子C2Lの直列接続からなることが好ましい。
かかる直列接続により、第2共振フィルタ回路として設計された第2低電圧フィルタ回路を構成することが好ましい。
より具体的には、ネットワーク側低電圧端子NTLと第2仮想接地セクションVGS2との電気的接続は、第1低電圧誘導性素子L1L、第2低電圧誘導性素子L2L及び第2低電圧容量性素子C2Lの直列接続からなることが好ましい。
【0076】
又、整流器側高電圧端子RTHと第2仮想接地セクションVGS2との電気的接続が、第3容量性素子C3を含んで構成されていることが好ましい。
かかる電気的接続は、前述の第2高電圧容量性素子C2Hと、第3高電圧誘導性素子L3H及び第3高電圧容量性素子C3Hとの並列接続と、を含んで構成されていることが好ましい。
特に、第2高電圧容量性素子C2Hと、前述の第3高電圧誘導性素子L3H及び第3高電圧容量性素子C3Hからなる並列接続(並列回路)との、直列接続は、第3容量性素子C3と電気的に並列に配置され、整流器側高電圧端子RTHと第2仮想接地セクションVGS2との電気的接続を実現している。
従って、第3高電圧誘導性素子L3Hと、第3高電圧容量性素子C3Hとの並列接続により、第3高電圧フィルタ回路、すなわち並列共振フィルタ回路として設計された共振フィルタ回路が提供される。
【0077】
一方、整流器側低電圧端子RTLと第2仮想接地セクションVGS2との電気的接続は、第4容量性素子C4を含んで構成されていることが好ましい。
かかる電気的接続は、前述の第2低電圧容量性素子C2Lと、第3低電圧誘導性素子L3L及び第3低電圧容量性素子C3Lとの並列接続と、を含んで構成されることが好ましい。
特に、第2低電圧容量性素子C2Lと、前述の第3低電圧誘導性素子L3L及び第3低電圧容量性素子C3Lからなる並列接続(並列回路)との、直列接続は、第4容量性素子C4と電気的に並列に配置され、整流器側低電圧端子RTLと第2仮想接地セクションVGS2との電気的接続を実現している。
従って、第3低電圧誘導性素子L3Lと、第3低電圧容量性素子C3Lとの並列接続により、第3低電圧フィルタ回路、すなわち並列共振フィルタ回路として設計された共振フィルタ回路が提供される。
【0078】
つまり、ネットワーク側高電圧端子NTHと整流器側高電圧端子RTHの電気的接続は、第1高電圧誘導性素子L1H、第2高電圧誘導性素子L2H、第3高電圧誘導性素子L3Hの列接続で構成されていることが好ましい。
一方、ネットワーク側低電圧端子NTLと整流器側低電圧端子RTLの電気的接続は、第1低電圧誘導性素子L1L、第2低電圧誘導性素子L2L、及び第3低電圧誘導性素子L3Lの直列接続で構成されることが好ましい。
【0079】
又、第1高電圧誘導性素子L1H及び第1低電圧誘導性素子L1Lを提供するコイルは、それぞれのネットワーク側高電圧端子NTH、ネットワーク側低電圧端子NTLから第1仮想接地セクションVGS1に流れる電流に対して同じ方向になるように巻かれていることが好ましい。
又、第2高電圧誘導性素子L2H及び第2低電圧誘導性素子L2Lを提供するコイルは、それぞれのネットワーク側高電圧端子NTH、ネットワーク側低電圧端子NTLから第2仮想接地セクションVGS2に流れる電流に対して同じ方向になるように巻かれていることが好ましい。
又、第3高電圧誘導性素子L3H及び第3低電圧誘導性素子L3Lを提供するコイルは、それぞれの整流器側高電圧端子RTH、整流器側低電圧端子RTLから第2仮想接地セクションVGS2に流れる電流に対して、反対方向になるように巻かれていることが好ましい。
【0080】
すなわち、図1に示すように、第1及び第2高電圧及び低電圧フィルタ回路により、トラクションネットワーク8の内部で発生するコモンモードノイズ及びディファレンシャルモードノイズを抑制することができる。
又、第3高電圧及び低電圧フィルタ回路により、車両側整流器の動作により発生するリップルを抑制することができる。
【符号の説明】
【0081】
1:誘導電力伝達システム、2:フィルタ回路構成、3:一次ユニット、4:一次巻線構造、5:二次ユニット、6:二次巻線構造、7:車両側整流器、8:トラクションネットワーク、9:車両、10:ハウジング、BR:抵抗素子、C1:第1容量性素子、C1L:第1低電圧容量性素子、C1H:第1高電圧容量性素子、C2:第2容量性素子、C2H:第2高電圧容量性素子、C2L:第2低電圧容量性素子、C3:第3容量性素子、C3H:第3高電圧容量性素子、C3L:第3低電圧容量性素子、C4:第4容量性素子、L1H:第1高電圧誘導性素子、L1L:第1低電圧誘導性素子、L2H:第2高電圧誘導性素子、L2L:第2低電圧誘導性素子、L3H:第3高電圧誘導性素子、L3L:第3低電圧誘導性素子、NTH:ネットワーク側高電圧端子、NTL:ネットワーク側低電圧端子、R1:第1抵抗素子、R2:第2抵抗素子、RTH:整流器側高電圧端子、RTL:整流器側低電圧端子、VG:車両接地接続端子、VGS1:第1仮想接地セクション、VGS2:第2仮想接地セクション
図1
図2
図3
【国際調査報告】