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特表2022-513882層システムを製造するためのコーティング設備を動作させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(54)【発明の名称】層システムを製造するためのコーティング設備を動作させる方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/115 20150101AFI20220202BHJP
【FI】
G02B1/115
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534251
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(85)【翻訳文提出日】2021-07-26
(86)【国際出願番号】 EP2019085810
(87)【国際公開番号】W WO2020127394
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】102018133187.8
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514073189
【氏名又は名称】ローデンシュトック ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シェルシュリヒト,リュディガー
(72)【発明者】
【氏名】ラドゥンズ,ステファン
【テーマコード(参考)】
2K009
【Fターム(参考)】
2K009AA09
2K009DD01
(57)【要約】
本発明は、層システム(10)を製造するための少なくとも1つのコーティング設備(108)を動作させるための自動制御フィードバック方法、少なくとも1つのコーティング設備(108)において層システム(10)を製造するための方法、層システム(10)を製造するための少なくとも1つのコーティング設備(108)においてコーティングプロセスを慣らし運転するための方法、層システム(10)を製造するためのコーティングシステム(100)、層システム(10)を製造するためのコーティング設備(108)、層システム(10)を製造するためのコーティング設備(108)のシステム(200)、設備データセット(DAT)を格納するためのデータベース(106)、少なくとも1つのコーティング設備(108)を動作させるための方法のコンピュータプログラム製品、およびデータ処理プログラムを実行するためのデータ処理システム(124)に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
層システム(10)を製造するための少なくとも1つのコーティング設備(108)を動作させる方法であって、
(i)それぞれの単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の設備実層厚(d_actual_11、...、d_actual_20)をそれぞれ有する1つまたは複数の単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)からなる実際の層システム(10_n)の実測定曲線(90)として、縦座標値および横座標値を備える少なくとも1つのスペクトル測定曲線を検出するステップ(S100)であって、前記1つまたは複数の単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)が、前記少なくとも1つのコーティング設備(108)の設備データセット(DAT_n)にしたがって生成され、前記設備データセット(DAT_n)が、前記1つまたは複数の単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の前記それぞれの単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の少なくとも前記設備実層厚(d_actual_11、...、d_actual_20)を含む、ステップと、
(ii)少なくとも1つの関連付け基準にしたがって、特に前記実測定曲線(90)の有意なスペクトル点について、前記実際の層システム(10_n)の前記実測定曲線(90)を、1つまたは複数の単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)から形成された目標データセット層システム(10_target)に基づく、縦座標値および横座標値を備える目標データセット(DAT_target)の目標測定曲線(92)に関連付けるステップ(S102)であって、前記目標データセット(DAT_target)は、前記1つまたは複数の単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の前記それぞれの単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の少なくとも1つの既知の目標層厚(d_target_11、...、d_target_20)を含む、ステップと、
(iii)前記実測定曲線(90)の少なくとも1つのスペクトル間隔(82)において前記それぞれの単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の少なくとも1つのシミュレーション実層厚(g_actual_11、...、g_actual_20)を変化させ、前記1つまたは複数の単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の前記それぞれの単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の少なくとも1つの最終シミュレーション実層厚(g_actual_11、...、g_actual_20)を備える最終シミュレーション実データセット(DAT_actual_sim)を取得することによって、反復法にしたがって、シミュレーション実測定曲線(94)を生成し、それによって、前記実測定曲線(90)が、終了基準に達するまで(S116)前記シミュレーション実測定曲線(94)で少なくとも近似される、ステップ(S104)と、
(iv)前記それぞれの単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の少なくとも前記シミュレーション目標層厚(g_target_11、...、g_target_20)を前記目標測定曲線(92)の少なくとも1つのスペクトル間隔(82)において変化させ、前記1つまたは複数の単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の前記それぞれの単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の少なくとも1つの最終シミュレーション目標層厚(g_target_11、...、g_target_20)を備える最終シミュレーション目標データセット(DAT_target_sim)を取得することによって、反復法にしたがって、シミュレーション目標測定曲線(98)を生成し、それによって、前記目標測定曲線(92)が、終了基準に達するまで(S116)前記シミュレーション目標測定曲線(98)で少なくとも近似される、ステップ(S106)と、
(v)前記少なくとも1つのコーティング設備(108)のための前記最終シミュレーション目標データセット(DAT_target_sim)を、前記それぞれの単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の新たな設備実層厚(d_actual_11、...、d_actual_20)としての少なくとも1つの補正実層厚(d_corr_11、...、d_corr_20)を有するさらなる層システム(10_n+1)の堆積のための新たな設備データセット(DAT_n+1)として提供するステップ(S108)であって、それが、前記最終シミュレーション目標データセット(DAT_target_sim)を有する前記1つまたは複数の単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の前記それぞれの単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の前記最終シミュレーション目標層厚(g_target_11、...、g_target_20)から決定される、ステップ(S108)と、
を含む方法。
【請求項2】
前記終了基準が、
(i)統計的選択法にしたがって前記関連付け基準について安定した結果に達している、
(ii)前記実測定曲線(90)と前記シミュレーション実測定曲線(94)との偏差が許容範囲内である、
(iii)最大反復回数が実行されている、
という条件のうちの少なくとも1つが満たされたときに達成される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記それぞれの単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の前記目標層厚(d_target_11、...、d_target_20)は、前記それぞれの単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の前記シミュレーション実層厚(g_actual_11、...、g_actual_20)の開始値として使用されており、
および/または、
前記それぞれの単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の前記シミュレーション実層厚(g_actual_11、...、g_actual_20)は、前記それぞれの単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の前記シミュレーション目標層厚(g_target_11、...、g_target_20について)の開始値として使用されており、
および/または、
前記それぞれの単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の所定の層厚は、前記それぞれの単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の前記シミュレーション目標層厚(g_target_11、...、g_target_20)の開始値として使用されている、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記シミュレーション実測定曲線(94)またはシミュレーション目標測定曲線(98)をそれぞれ生成するステップ(S104、S106)について、
前記関連付け基準にしたがって決定された横座標値について、前記実測定曲線(90)またはシミュレーション実測定曲線(94)それぞれと前記目標測定曲線(92)の横座標値の商の平均値としてスケール因子(122)を決定するステップ(S110)、および前記それぞれの単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の前記目標層厚(d_target_11、...、d_target_20)または前記シミュレーション実層厚(g_actual_11、...、g_actual_20)それぞれを、前記スケール因子(122)を用いて、前記1つまたは複数の単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の前記それぞれの単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の前記シミュレーションの実層厚(g_actual_11、...、g_actual_20)または前記シミュレーション目標層厚(g_target_11、...、g_target_20)それぞれの開始値としてスケーリングするステップをさらに含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記シミュレーション実測定曲線(94)またはシミュレーション目標測定曲線(98)をそれぞれ生成する(S104、S106)ステップについて、
前記複数の単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の前記1つまたは各々に対する少なくとも前記第1の間隔(82)において、前記対応する第1の最終シミュレーション実層厚(g_actual_11、...、g_actual_20)または前記対応する第1の最終シミュレーション目標層厚(g_target_11、...、g_target_20)それぞれと、前記対応する設備実層厚(d_actual_11、...、d_actual_20)の商(126)を形成するステップ(S112)であって、前記それぞれの単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の、第1のシミュレーション実層厚(g_actual_11、...、g_actual_20)、またはシミュレーション目標層厚(g_target_11、...、g_target_20)それぞれは、前記1つまたは複数の単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の前記それぞれの単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の、前記シミュレーション実層厚(g_actual_11、...、g_actual_20)またはシミュレーション目標層厚(g_target_11、...、g_target_20)それぞれを、前記商(126)を用いてスケーリングすることによって生成される、ステップをさらに含む、
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記シミュレーション実測定曲線(94)またはシミュレーション目標測定曲線(98)のそれぞれを生成するステップ(S104、S106)について、
前記それぞれの単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の、前記単一の第1のシミュレーション実層厚(g_actual_11、...、g_actual_20)または前記1つのシミュレーション目標層厚(g_target_11、...、g_target_20)それぞれを、少なくとも1つの基準、特に前記目標測定曲線(94)の前記それぞれの目標層厚(g_target_11、...、g_target_20)から妥当性および/または所定の偏差について検証するステップ(S114)と、
前記少なくとも1つの基準が欠落している場合、
前記それぞれの単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の前記シミュレーション実層厚(g_actual_11、...、g_actual_20)または前記シミュレーション目標層厚(g_target_11、...、g_target_20)を前記変化させるステップ(S104、S106)、および前記それぞれの単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の、第1の最終シミュレーション実層厚(g_actual_11、...、g_actual_20)またはシミュレーション目標層厚(g_target_11、...、g_target_20)それぞれを前記提供するステップ(S108)、ならびに前記第1のシミュレーション実層厚(g_actual_11、...、g_actual_20)またはシミュレーション目標層厚(g_target_11、...、g_target_20)を前記生成するステップを繰り返すステップであって、前記基準に不合格であった前記1つまたは複数の単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の前記それぞれの単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)について、変化させるときに(S104、S106)、制限が指定されている、ステップと、
前記1つまたは複数の単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の前記それぞれの単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の第2のシミュレーション実層厚(g_actual_11、...、g_actual_20)、またはシミュレーション目標層厚(g_target_11、...、g_target_20)それぞれを提供するステップと、
をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
1つまたは複数のさらなるスペクトル間隔(84、86)で前記ステップ(S104、S106、S112、S113、S114、S115)を繰り返すステップであって、次の間隔(84、86)それぞれは前記前の間隔(82、84)を含み、前記前の間隔(82、84)の前記それぞれの単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の前記第2のシミュレーション実層厚(g_actual_11、...、g_actual_20)またはシミュレーション目標層厚(g_target_11、...、g_target_20)それぞれが、前記次の間隔(84、86)における開始値として設定されている、ステップと、
前記1つまたは複数の単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の前記それぞれの単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の最終シミュレーション実層厚(g_actual_11、...、g_actual_20)またはシミュレーション目標層厚(g_target_11、...、g_target_20)それぞれを提供するステップと、
を含む、請求項5から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
干渉反射低減層システム(10)が、基板(22)の少なくとも1つの表面(24)上に堆積され、
前記層システム(10)は、少なくとも4つの連続する層パケット(42、44、46、48、50)のスタック(40)を備え、各層パケット(42、44、46、48、50)は、一対の第1および第2の単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)を備え、前記第1の単一層(11、13、15、17、19)は第1の光学的厚さ(t1)を有し、前記第2の単一層(12、14、16、18、20)は、前記第1の光学的厚さ(t1)とは異なる第2の光学的厚さ(t2)を有し、
前記基板に相対的に近い前記それぞれの第1の単一層(11、13、15、17、19)の屈折率(n1)は、前記スタック(40)の前記基板から相対的に遠い前記それぞれの第2の単一層(12、14、16、18、20)の屈折率(n2)よりも大きく、
前記層システム(10)は、残留反射色の明度(L)、彩度(C)、および色相角(h)を有し、
前記層システム(10)上への表面法線(70)に対する、0°および30°の前記境界値を有する視野角(AOI)の間隔における前記残留反射色の前記色相角(h)の変化(Δh)の前記値は、前記視野角(AOI)の前記間隔における前記彩度(C)の変化(ΔC)の前記値よりも小さく、
-少なくとも、高屈折率の第1の単一層(11、13、15、17、19)のための第1の材料および低屈折率の第2の単一層(12、14、16、18、20)のための第2の材料、前記単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)を備えた所望の層パケット(42、44、46、48、50)の数、前記単一層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の前記厚さの開始値、を含む、層設計を定義するステップと、
-0°および30°の境界値を有する視野角(AOI)の間隔の少なくとも境界値における、明度(L)、彩度(C)、および色相角(h)を含む目標色値を定義するステップと、
-最適化目標に到達するまで、前記単一層厚(d_actual_11、...、d_actual_20)を変化させるための最適化方法を実行するステップと、
が実行される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記境界値が0°および30°である前記視野角(AOI)の前記間隔における前記色相角(h)は、最大15°、好ましくは最大10°変化し、
および/または、
0°から前記層システム(10)上への前記表面法線(70)に対して30°から45°の上側境界値を有する境界視野角(θ)までの視野角(AOI)の第2の間隔における前記色相角(h)の前記変化(Δh)の前記値は、前記視角(AOI)の前記第2の間隔における前記彩度(C)の変化(ΔC)の前記値よりも小さく、前記境界視野角(θ)での前記彩度(C)の前記値は少なくとも2であり、特に、前記第2の間隔における前記色相角(h)は最大20°、好ましくは最大15°変化し、
および/または、
前記境界値が0°および30°である前記視野角(AOI)の前記間隔における前記明所反射率(Rv)は、最大1.5%、好ましくは最大1.2%であり、
および/または、
前記境界値が0°および30°である前記視野角(AOI)の前記間隔における前記暗所反射率(Rv’)は、最大1.5%、好ましくは最大1.2%である、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の方法を用いて、少なくとも1つのコーティング設備(108)において層システム(10)を製造する方法であって、
前記層システム(10)が、前記コーティング設備(108)の最終シミュレーション目標データセット(DAT_target_sim)に基づいて製造される、
製造方法。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項に記載の方法を用いて層システム(10)を製造するための少なくとも1つのコーティング設備(108)におけるコーティングプロセスの慣らし運転のための方法であって、
縦座標値および横座標値を備えるスペクトル測定曲線の実測定曲線(90)が、終了基準に達するまでシミュレーション実測定曲線(94)で少なくとも近似されている、
方法。
【請求項12】
少なくとも請求項1に記載の方法によって、層システム(10)を製造するためのコーティングシステム(100)であって、
-基板(22)を光学要素(80)のための層システム(10)でコーティングするコーティング設備(108)と、
-前記コーティング設備(108)を制御し、シミュレーションコンピュータ(102)と通信するための制御コンピュータ(110)と、
-前記層システム(10)のスペクトル分解実測定曲線(90)を決定するための光学測定装置と、
-前記層システム(10)の光学計算および最適化のためのシミュレーションソフトウェア(104)がインストールされたシミュレーションコンピュータ(102)と、
-設備データセット(DAT)を格納するためのデータベース(106)と、
-前記シミュレーションコンピュータ(102)および/または前記コーティング設備(108)を入力および制御するための入力装置(114)と、
を少なくとも備えるコーティングシステム。
【請求項13】
少なくとも請求項1に記載の方法によって、層システム(10)を製造するためのコーティング設備(108)であって、
(i)前記層システム(10)に人工エージングプロセスを適用するための構成要素(116)と、
(ii)前記層システム(10)のスペクトル分解実測定曲線(90)を決定するための光学測定装置(118)と、
のうちの少なくとも1つを備えるコーティング設備。
【請求項14】
少なくとも請求項1に記載の方法によって、層システム(10)を製造するためのコーティング設備(108)のシステム(200)であって、
-基板(22)を層システム(10)でコーティングするための一つまたは複数のコーティング設備(108)と、
-少なくとも1つのコーティング設備(108)を制御し、シミュレーションコンピュータ(102)と通信するための1つまたは複数の制御コンピュータ(110)と、
-前記層システム(10)のスペクトル分解実測定曲線(90)を決定するための光学測定装置(112)と、
-前記層システム(10)の光学計算および最適化のためのシミュレーションソフトウェア(104)がインストールされ、前記コーティング設備(108)の前記制御コンピュータ(102)と通信するシミュレーションコンピュータ(102)と、
-設備データセット(DAT)を格納するためのデータベース(106)と、
-前記シミュレーションコンピュータ(102)および/または前記1つまたは複数のコーティング設備(108)を入力および制御するための入力装置(114)と、
を少なくとも備えるシステム。
【請求項15】
少なくとも請求項1に記載の、層システム(10)を製造するために少なくとも1つのコーティング設備(108)を動作させるための方法のための設備データセット(DAT)を格納するためのデータベース(106)。
【請求項16】
層システム(10)を製造するための少なくとも1つのコーティング設備(108)を動作させる方法のためのコンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータプログラム製品は、コンピュータシステム(102)上で実行可能であり、前記コンピュータシステム(102)に少なくとも請求項1に記載の方法を実行させるプログラム命令を含む少なくとも1つのコンピュータ可読記憶媒体を含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項17】
少なくとも請求項1に記載の、層システム(10)を製造するための少なくとも1つのコーティング設備(108)を動作させる方法を実行するためのコンピュータ可読プログラム命令を含むデータ処理プログラムを実行するためのデータ処理システム(124)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層システムを製造するためのコーティング設備を動作させる方法に関する。本発明はさらに、層システムを製造するための方法、コーティング設備、コーティングシステム、コーティング設備のシステム、および設備データセットを格納するためのデータベースにおいてコーティングプロセスを慣らし運転するための方法、コーティング設備を動作させる方法のためのコンピュータプログラム製品、ならびに層システムを製造するためのコーティング設備を動作させる方法を実行するためのデータ処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
基礎となるコーティングプロセスを伴う製造環境で実施されるコーティング方法は、一般的に、コーティングバッチからコーティングバッチまでの変動を有する。これらの逸脱は、コーティング設備の状態がわずかに変化するという事実、例えば真空チャンバの壁上のコーティング材料の堆積物、オペレータがコーティング設備にコーティング材料を装填するときに影響を及ぼすこと、コーティング設備に設置された様々な構成要素の摩耗などに起因する。
【0003】
コーティングバッチからコーティングバッチへの逸脱を可能な限り低く保つための経済的に理にかなった方法は、非常に精密なプロセスメンテナンスであり、必要に応じて、基礎となるコーティングプロセスがコーティングバッチからコーティングバッチにわずかに調整される。
【0004】
そのようなプロセスメンテナンスは、深いノウハウを必要とし、これまでのところ、十分に訓練されたオペレータまたは熟練した人員によってのみ首尾よく実行することができる。
【0005】
光学業界において一般的であるように、層システムで基板をコーティングする場合、例えば、プロセスメンテナンスは以下のように見える。光学基板が層システムでコーティングされた後、少なくとも1つのコーティングされた基板に対して光学測定が行われ、光学基板および設けられた層システムからなる光学システムを再現するスペクトル分解測定信号が記録される。反射防止コーティングまたはミラーコーティングの場合、光学システムの分光反射または反射率は、市販の分光計で決定される。結果は、データタプル(例えば、ナノメートル単位の波長、%単位の反射率)からなる2次元データセットである。この記録されたデータセット(「設備実データセット」)は、オペレータによって同じ性質の目標データセットと比較され、反射防止コーティングまたはミラーコーティングの場合、目標システムのスペクトル反射を表す。
【0006】
スペクトルコースまたは色値L、C、h(いわゆるCIELCh色空間)などのスペクトルパラメータに許容できない偏差がある場合、オペレータは基礎となるコーティングプロセスに補正を加えなければならない。原則として、オペレータは、コーティングプロセスで格納される、層システムの少なくとも1つの単一層の堆積される物理層の厚さを調整する。この層の選択は、通常、経験または所定のルーチンに基づいている。
【0007】
このコーティングプロセスでさらなるコーティングバッチが製造された後、オペレータは、実データセットと目標データセットとの間のさらなる比較によって自分のプロセスメンテナンスの有効性を決定することができ、コーティングプロセスに対してさらなる現象学的補正(数値的に生成されない)を行わなければならない場合がある。
【0008】
この方法は、多くの場合、知識のあるオペレータによってのみ実行することができる反復的な試行およびエラープロセスを消費する時間および材料である。この記載された経験ベースの手順は、必ずしも所望の結果を確実にもたらすとは限らない。その上、経験ベースのプロセスメンテナンスは、必ずしも同じ光学色値に対して常に同じ層厚の関係をもたらすとは限らない。これは、層の特性および層の厚さの関係を知らずに変化させる可能性がある。
【0009】
特許文献1から知られているような、干渉反射防止コーティングを有する既知の光学素子は、通常、規格DIN EN ISO 13666:2013-10により計算して、約1%の光反射率を有する。残りの残留反射の色は、視野角が変更されたときに強い変動を示す場合がある。変動は、視覚的カラースケール全体に及ぶ場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2016/110339A1
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、層システムの製造のためのコーティング設備の経済的に最適化された動作のための方法を示すことである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、コーティング設備、コーティングシステム、コーティング設備のシステム、ならびにそのような方法を実行するためのデータベース、コンピュータプログラム製品、およびデータ処理システムを開示することである。
【0013】
目的は、独立請求項の特徴によって解決される。本発明の好適な設計および利点は、さらなる特許請求の範囲、明細書、および図面からもたらされる。
【0014】
本発明は、光学素子の製造に特に適している。本発明による方法は、光学素子およびコーティングの製造にも、多層システムの堆積にも限定されないことを理解されたい。同様に、層システムが堆積される基板は、必要に応じて透明であっても、透明でなくてもよい。
【0015】
さらに、本発明は、基板上に堆積され、層厚を有する単一層からなる層システムに使用することができる。これは、接着促進層が単一層と基板との間に配置されること、および/または単一層が保護層で覆われることを排除しない。可能な接着促進層および/または保護層は、1つの単一層を備える層システムの調査された特性に影響を有しないか、または少なくとも有意な影響を有しない。
【0016】
代替的に、層システムは、基板上に上下に堆積された複数の単一層から形成することができ、各単一層はそれぞれの層厚を有する。それぞれの単一層の層厚は、同じであっても異なっていてもよい。ここでも、基板に最も近い単一層と基板との間に接着促進層を配置することができ、および/または層システムを保護層で覆うことができる。可能な接着促進層および/または保護層は、複数の単一層を備える層システムの調査された特性に影響を有しないか、または少なくとも有意な影響を有しない。
【0017】
特に明記しない限り、本開示で使用される用語は、それぞれ、2012および2011のドイツ規格協会の規格DIN EN ISO 13666:2013-10(EN ISO 13666:2012(D/E))およびDIN EN ISO 11664-4:2012-06(EN ISO 11664-4:2011)の意味で理解されるべきである。
【0018】
DIN EN ISO 13666:2013-10のセクション4.2によれば、可視光、可視放射、または可視波長範囲という用語は、人間に光の感覚を直接引き起こすことができる光放射に関する。可視放射は、一般に、400nm~780nmの波長範囲を指す。
【0019】
本開示の文脈において、可視放射は、好ましくは、人間の目の感度最大値に対応する400nmまたは460nm~700nmの波長範囲を指すことができる。これは、フィルタ特性およびスルーレートの設計のための設計柔軟性を同時に高めることができる。
【0020】
規格DIN EN ISO 13666:2013-10のセクション15.1によれば、スペクトル反射率、反射率(reflectance)または反射率(reflectivity)という用語は、それぞれ、特定の波長(λ)の入射放射パワーに対する、各材料、表面、またはコーティングのそれぞれによって反射されるスペクトル放射パワーの比を指す。この場合、反射率は、単一の副層の反射率ではなく、その複数の高および低屈折率副層を備えるコーティング全体の反射率を指す。
【0021】
本発明の第1の態様によれば、層システムを製造するための少なくとも1つのコーティング設備を動作させる方法が提案されており、以下を含む、
(i)縦座標値および横座標値を備える少なくとも1つのスペクトル測定曲線を、それぞれの単一層の設備実層厚を有する1つまたは複数の単一層からなる実際の層システムの実測定曲線として検出するステップであって、1つまたは複数の単一層は、少なくとも1つのコーティング設備の設備データセットにしたがって製造され、設備データセットは、1つまたは複数の単一層のそれぞれの単一層の設備実層厚を少なくとも含む、ステップ、
(ii)少なくとも1つの関連付け基準にしたがって、特に実測定曲線の有意なスペクトル点について、実際の層システムの実測定曲線を、1つまたは複数の単一層から形成された目標データセット層システムに基づく、縦座標値および横座標値を備える目標データセットの目標測定曲線に関連付けるステップであって、目標データセットが、1つまたは複数の単一層のそれぞれの単一層の少なくとも1つの既知の目標層厚を含む、ステップ、
(iii)実測定曲線の少なくとも1つのスペクトル間隔においてそれぞれの単一層の少なくとも1つのシミュレーション実層厚を変化させ、1つまたは複数の単一層のそれぞれの単一層の少なくとも1つの最終シミュレーション実層厚を備える最終シミュレーション実データセットを取得することによって、反復法にしたがって、シミュレーション実測定曲線を生成し、それによって、実測定曲線は、終了基準に達するまでシミュレーション実測定曲線で少なくとも近似される、ステップ、
(iv)目標測定曲線の少なくとも1つのスペクトル間隔においてそれぞれの単一層の少なくともシミュレーション目標層厚を変化させ、1つまたは複数の単一層のそれぞれの単一層の少なくとも1つの最終シミュレーション目標層厚を備える最終シミュレーション目標データセットを取得することによって、反復法にしたがって、シミュレーション目標測定曲線を生成し、それによって、目標測定曲線は、終了基準に達するまでシミュレーション目標測定曲線で少なくとも近似される、ステップ、
および、
(v)少なくとも1つのコーティング設備のための最終シミュレーション目標データセットを、それぞれの単一層の新たな設備実層厚として少なくとも1つの補正実層厚を有するさらなる層システムの堆積のための新たな設備データセットとして提供するステップであって、それは、最終シミュレーション目標データセットを備える1つまたは複数の単一層のそれぞれの単一層の最終シミュレーション目標層厚から決定される、ステップ。
【0022】
有利には、本発明による方法は、コーティング設備の自己制御およびフィードバック動作を可能にする。
【0023】
好適には、コーティング設備は、光学素子などの層システムの製造のために展開することができる。
【0024】
曲線の重要な点は、有利には、試験された層システムの測定曲線に対して、マッチ(一致)するコーティングシステムの目標設計を見出すために使用することができ、測定曲線の水平および/または横方向のシフトの形態の第1の近似に使用することができる。
【0025】
目標測定曲線を備える目標データセットは、最適なコーティングの目標データを含む。スペクトル分解光学測定に加えて、これらのデータは、例えば可視スペクトル範囲、色値L、C、およびhなどのさらなる目標量、および/または所望により定義されるべき間隔における平均または加重透過および/または反射値などの所定の計算可能なスペクトル量を含むことができる。スペクトル的に計算可能な量の例は、可視範囲ならびにIR-A/IR-Bおよび/またはUV-A/UV-B範囲であり得る。
【0026】
さらに、目標データセットは、小さいものから大きいものまで入れ子になったコーティング固有スペクトル間隔を含む。可能な最大の指示間隔は、最大スペクトル視野範囲を表す。間隔の数は自由に選択可能である。目標データセットは、コーティングの光学レイアウトを一義的に固定する特徴的なスペクトル点を含む。
【0027】
実測定曲線は、少なくとも実行された光学測定のデータを含む。設備データセットは、少なくとも、層システムが複数の単一層から形成される場合にはコーティング設備に設定された複数の単一層の実層厚を含み、または層システムが1つの単一層のみから形成される場合にはコーティング設備に設定された1つの単一層の実層厚を含む。
【0028】
シミュレーション実測定曲線は、少なくとも1つのシミュレーションされたスペクトル測定曲線を含み、これは、好ましくは、実測定曲線として実行される光学測定との可能な限り最良の一致を表す。
【0029】
シミュレーション実データセットは、少なくとも、層システムの複数の単一層のうちの1つのシミュレーション実層厚、または反復最適化法で決定された層システムの複数の単一層のシミュレーション実層厚を含む。
【0030】
シミュレーション目標測定曲線は、少なくとも1つのシミュレーションされたスペクトル測定曲線を含み、これは、好ましくは、目標測定曲線とシミュレーション実測定曲線との間の可能な限り最良の一致を表す。
【0031】
シミュレーション目標データセットは、反復最適化法で決定された複数の単一層のシミュレーション目標層厚、またはシミュレーション目標データセットを介した再計算による目標測定曲線と可能な限り最良の一致する1つの単一層のシミュレーション目標層厚を少なくとも含む。このデータセットの設定された1つまたは複数のシミュレーション目標層厚は、好適には、連続コーティングバッチのプロセスパラメータを表す。
【0032】
この目的のために、シミュレーション目標データセットは、可能な限り理想的な層および/または理想的なプロセス、可能な限り理想的な屈折率および可能な限り理想的な堆積条件などの材料特性、ならびにコーティング形状、コーティング厚さ制御などの設備パラメータのためのシミュレーションされた層システムの設定された計算パラメータを含む。
【0033】
一方で、シミュレーション目標データセットは、実測定曲線とシミュレーション実測定曲線との間の光学的差異を相関させ、同時に、コーティングバッチからコーティングバッチへの形態的および技術的偏差などのシステム関連偏差、ならびに取り扱いの差異などのシステム関連以外の偏差を考慮に入れる。他方、シミュレーション実データセットは、目標測定曲線に戻るシミュレーション目標測定曲線の計算に使用される。
【0034】
このシミュレーション目標データセットの助けによって、設備パラメータならびに層パラメータおよび/または層特性から、相関のさらなる分析の可能性がある。この目的のために、静的に関連するデータセットの数に頼ることが有利であり得る。
【0035】
本発明による方法は、コーティング設備に堆積された層システムの実測定曲線がシミュレーションコンピュータのシミュレーションソフトウェアにロードされることを提供する。
【0036】
有利には、層システムのためのコーティングプロセスは、1つの単一層または複数の単一層を塗布することからなることができる。各単一層は、好ましくは、堆積速度、プロセスガスフローなどの他のパラメータに加えて、物理的または光学的層厚を含むパラメータセットによって記述される。コーティングプロセスの1つまたは複数の単一層は、材料ZrO、TiO、Al、Ta、Si、Nd、Pr、PrTiO、La、Nb、Y、Ce、Dy、HfO、SiO、MgF、ZrF、AlF、NaAl14、NaAlF、シランおよびシロキサン、ならびにこれらの材料の任意の混合物からなることができる。PVD、CVD、スパッタリングおよびそれらの関連プロセスなどのすべての一般的な方法をコーティング方法として使用することができる。
【0037】
シミュレーションソフトウェアの助けにより、スペクトルデータの極値などの有意なスペクトル点、場合によっては反射が1%である1%通過などの選択された点、測定曲線のピークの半値全幅などが、関連付け基準にしたがって、実測定曲線のスペクトルデータから決定される。実測定曲線と一致する目標測定曲線を見つけるために、または実測定曲線からの偏差が最も小さい目標測定曲線を選択するために、決定されたスペクトル点に基づいてデータベースに格納された目標測定曲線と比較する。すべての目標測定曲線がデータベースからシミュレーションソフトウェアにロードされ、目標測定曲線の特性点と実測定曲線の各点との間のマッチングが各目標測定曲線について計算される。
【0038】
それぞれの座標、すなわち強度を縦座標とし、波長を横座標とした場合のすべてのスペクトル点について、目標測定曲線の横座標に対する実測定曲線の対応する横座標の商、および決定された商の平均の商が形成される。これらの平均の商は、以下ではスケール因子と呼ばれ、層システム全体に均一に適用される。
【0039】
これらのスケール因子のそれぞれについて、仮想スペクトルデータセットが生成され、その結果、対応するスケール因子が乗算された目標測定曲線の、それぞれ単一層の場合の層厚、または複数の単一層の場合の層厚からの第1の近似が得られる。
【0040】
これは、その後の最適化方法にとって非常に好適な開始点を作り出す。このスケール因子は、さらなる可能な分析のためにデータベースに格納される。
【0041】
前のステップの、単一層のスケーリングされた予備層厚から、または複数の単一層のスケーリングされた予備層厚からそれぞれ開始して、最適化方法が制限されたスペクトル間隔で開始する。この制限されたスペクトル間隔は、コーティングに固有のものであり、目標データセットの間隔リストから可能な第1として、目標測定曲線に関連付けられた目標データセットに格納される。この最適化方法の範囲内で、層システムが単一層から形成される場合は単一層の層厚、または層システムが複数の単一層から形成される場合は複数の単一層の層厚がそれぞれ決定され、第1の近似で基礎となるシミュレーション目標測定曲線を用いて実測定曲線を記述する。
【0042】
第1のシミュレーション実層厚として前のステップで得られた、層厚または複数の層厚のそれぞれから、コーティング設備に設定された対応する実層厚または複数の実層厚それぞれを用いて、単一層または複数の単一層のそれぞれについて商が形成される。この再計算は、第1の予備シミュレーションデータセットをもたらす。この第1の予備シミュレーションデータセットは、単一層レベルでの妥当性のために、目標データセットに格納された目標層厚と比較される。第1のラフな近似であるため、単一層厚当たり+/-20%の偏差を許容することができる。偏差がより大きい場合、プロセスは前のステップから再開されるが、今回は最適化方法の制約を伴う、すなわち単一層厚が指定範囲外であった単一層厚がこの範囲に制限されるという制約を伴う。
【0043】
理想的には、この制限は必要ではない。しかしながら、制限が必要な場合、すべての単一層の層厚はそれに応じて制限され得る。
【0044】
このステップの後、単一層の1つの層厚または複数の単一層の複数の層厚の第2の予備セットが利用可能である。制限が必要ない場合、この第2のシミュレーション実データセットは、第1の予備シミュレーション実データセットと同一である。
【0045】
目標データセットの間隔リストからのさらなる各スペクトル間隔に対して、最適化方法が適用される。現在実行中の最適化方法は、前の最適化方法のシミュレーション実データセットのセットを常に使用する。
【0046】
一般的には、適応されたシンプレックスアルゴリズムを最適化方法として使用することができるが、他の既知のシミュレーション方法も同様に適し得る。そのような最適化方法のためのシミュレーションソフトウェアは、様々な製造業者から市販されており、例えば、市販のシミュレーションソフトウェア「Essential MacLeod」または光学コーティングの製造のための他の周知のシミュレーションソフトウェアである。
【0047】
すべての間隔反復が経過すると、スペクトルデータは実測定曲線に良好な一致で近似し、第1の最終シミュレーション実測定曲線およびシミュレーション実層厚の対応するセットが存在する。これらの2つのパラメータセットは、一時的に格納されるシミュレーション実データセットを形成する。
【0048】
これらのステップは、終了基準に達するまで、例えば統計的選択法により安定した結果が得られるまで繰り返される。好ましくは、曲線全体は、この目的のために、特に例えばカイ二乗偏差などに関して考慮することができる。
【0049】
実測定曲線のスペクトルデータが可能な限り最良に一致するよう近似されると、1つまたは複数のシミュレーション実層厚を用いて、最終シミュレーション実データセットを生成することができる。
【0050】
ここで、最適化プロセスが再び開始され、目標データセットのスペクトルデータを再生するためにシミュレーション実測定曲線と目標測定曲線との間の最適化が行われるという違いがある。加えて、シミュレーション実データセットはここでは固定されており、もはや変更されない。
【0051】
この手順の最後に、層システムが単一層で形成される場合には1つ、または層システムが複数の単一層で形成される場合には複数の、シミュレーション目標層厚が利用可能であり、それは、シミュレーション目標データセットを生成する。これらの1つまたは複数のシミュレーション目標層厚から、コーティング設備で、設定又は送信されたシミュレーション目標データセットを用いて再計算することにより、1つまたは複数の補正実層厚が次の1つまたは複数の設備実層厚として計算される。
【0052】
本発明の利点は、先行技術に提示された手順とは対照的に、本発明による方法を用いて、コーティングプロセスの包括的な分析制御を行うことができ、これは全面的に数値計算に基づいているという事実にある。
【0053】
任意選択的に、本発明による方法では、コーティング厚さを考慮して補正することができるだけでなく、必要に応じて、他のプロセスパラメータ、例えば、設備の状態、コーティング源の使用年数および/または状態、コーティング設備の測定機器の使用年数および/または状態、コーティング中の基板との負荷状態なども監視することができる。
【0054】
本発明による方法は、既存のコーティングプロセスの自動自己最適化、およびコーティング設備の慣らし運転などの新しいコーティングプロセスの自動自己構成に適用することができる。慣らし運転によって、当業者は、コーティング設備の新しいコーティングプロセスおよびコーティングシステムの新しい設定または第1(最初)の構成(設定)をそれぞれ理解する。
【0055】
連続的な最適化/監視は、このようにして製造された層システム、例えば光学素子が、目標データからの可能な限り小さい偏差を有することを保証する。
【0056】
加えて、設備データセットおよびシミュレーションデータセットなどの新たに導入されたパラメータセットならびにそれらの監視は、コーティングおよび設備監視の新たな可能性を開く。
【0057】
有利には、本発明による方法は、コーティングシステムの製造、例えば光学素子のための製造における可能な節約をもたらす。技術的に引き起こされたプロセスの欠陥の場合、即時の反応/通知を行うことができる。例えば、コーティング設備に凝集欠陥がある場合、次のバッチを直ちに停止することができ、したがって不良バッチを防止することができる。潜行性の設備またはプロセス欠陥の場合、ミスアライメント(ずれ)は、即時かつ連続的なコーティング補正によって防止することができ、それによって設備固有補正パラメータセットはこれを示す。
【0058】
コーティング設備のメンテナンスを簡単にすることができる。異なる人々によるプロセス制御の個々の違いを回避することができる。コーティング側の品質保証は、これまでのように下流ではなく、この自己制御システムで行うことができる。
【0059】
さらに、エンジニアリングには有利な節約の機会がある。新しいプロセスの慣らし運転は、外部から遠隔制御することができる。新たに導入されたパラメータセットは、以前に未解決の設備、プロセス、および層の問題を理解する新しい方法を開く。
【0060】
本発明による方法の有利な実施形態によれば、終了基準は、以下の条件のうちの少なくとも1つが満たされたときに達成することができる:
(i)統計的選択法にしたがって関連付け基準について安定した結果に達している、
(ii)実測定曲線とシミュレーション実測定曲線との偏差が許容範囲内である、
(iii)最大反復回数が実行された。
【0061】
有利には、統計的選択法にしたがって関連付け基準について安定した結果に達している場合、最適な結果に達することができる。
【0062】
実測定曲線とシミュレーション実測定曲線との偏差が許容範囲内である場合、少なくとも満足する結果を得ることができる。
【0063】
最大反復回数が実行された場合、計算の労力を制限することができる。
【0064】
本発明による方法の有利な設計によれば、それぞれの単一層の目標層厚は、シミュレーション実層厚の開始値として使用することができる。これにより、本方法の良好な結果が得られる。代替的または追加的に、それぞれの単一層のシミュレーション実層厚は、それぞれの単一層のシミュレーション目標層厚の開始値として使用することができる。特に、それぞれの単一層のシミュレーション実層厚の開始値としての目標層厚と組み合わせると、方法の結果をさらに改善することができる。
【0065】
代替的または追加的に、それぞれの単一層の所定の層厚は、それぞれの単一層のシミュレーション目標層厚の開始値として使用することができる。これは、例えば、好適な層厚についての経験値が既に存在する場合、または複数の単一層が堆積される場合であって、単一層の好適な層厚についての経験値が既に利用可能である場合に、好適である。さらに、単一層の層厚のほぼ任意の開始値で、層システムの十分に良好な結果は、それに対応してより多くの反復回数によって達成することができる。
【0066】
本発明による方法の有利な設計によれば、シミュレーション実測定曲線またはシミュレーション目標測定曲線それぞれを生成するステップは、以下をさらに含み得る:
関連付け基準にしたがって決定された横座標値について、実測定曲線またはシミュレーション実測定曲線それぞれと目標測定曲線の横座標値の商の平均値としてスケール因子を決定するステップ、および層システムが単一層から形成されている場合には1つの目標層厚もしくは層システムが複数の単一層から形成されている場合には複数の目標層厚;または1つもしくは複数の単一層の1つもしくは複数のシミュレーション実層厚それぞれを、1つまたは複数のシミュレーション実層厚または1つまたは複数のシミュレーション目標層厚それぞれの開始値として、スケール因子を用いてスケーリングするステップである。
【0067】
したがって、本発明による方法によれば、シミュレーション実層厚の開始値を決定するために、実測定曲線および目標層厚からシミュレーション実測定曲線が生成されている一方で、シミュレーション目標層厚の開始値を決定するために、シミュレーション実測定曲線およびシミュレーション実層厚からシミュレーション目標測定曲線が生成されている。
【0068】
これは、連続的な最適化方法のための可能な限り最良の開始点を生成する。
【0069】
本発明による方法の有利な実施形態によれば、シミュレーション実測定曲線またはシミュレーション目標測定曲線をれぞれを生成するステップは、以下をさらに含み得る:
層システムが複数の単一層を有する場合には、複数の単一層それぞれに対して、または層システムが単一層のみを有する場合には、1つの単一層に対して、少なくとも第1の間隔において、対応する第1の最終シミュレーション実層厚または対応する第1の最終シミュレーション目標層厚それぞれと、対応する設備実層厚の商を形成するステップであって、第1のシミュレーション実層厚またはシミュレーション目標層厚それぞれは、その商を用いて、シミュレーション実層厚またはシミュレーション目標層厚それぞれをスケーリングすることによって生成されている、ステップ。
【0070】
したがって、シミュレーション実測定曲線の生成について、シミュレーション実層厚が使用され、一方、シミュレーション目標実測定曲線の生成については、シミュレーション目標層厚が使用される。
【0071】
このようにして、シミュレーション実測定曲線またはシミュレーション目標測定曲線をそれぞれ調整するときに、さらなる最適化のために適切な方法で好適な開始値を生成することができる。
【0072】
本発明による方法の有利な実施形態によれば、シミュレーション実測定曲線またはシミュレーション目標測定曲線それぞれを生成するステップは、以下をさらに含み得る:
少なくとも1つの基準、特に妥当性および/または目標測定曲線のそれぞれの目標層厚からの所定の偏差について、および少なくとも1つの基準が欠落している場合、それぞれの単一層の、単一の第1の1つのシミュレーション実層厚もしくは複数のシミュレーション実層厚、または1つのシミュレーション目標層厚をそれぞれ検証するステップ、
それぞれの単一層のシミュレーション実層厚またはそれぞれの単一層のシミュレーション目標層厚それぞれの変化、およびそれぞれの単一層の第1の最終シミュレーション実層厚またはシミュレーション目標層厚それぞれの提供、ならびに1つまたは複数の単一層のそれぞれの単一層の第1のシミュレーション実層厚またはシミュレーション目標層厚それぞれの生成、を繰り返すステップであって、基準に不合格であった1つの単一層または複数の単一層のものについては、変化するときに、制限が指定される、ステップ、および、
1つまたは複数の単一層のそれぞれの単一層の、第2のシミュレーション実層厚またはシミュレーション目標層厚それぞれを提供するステップ。
【0073】
したがって、シミュレーション実測定曲線の生成のために、シミュレーション実層厚が使用され、一方、シミュレーション目標実測定曲線の生成のために、シミュレーション目標層厚が使用される。
【0074】
この手順は、最適化方法におけるパラメータの絞り込みを容易にし、したがって最適化されたパラメータセットの決定を加速する。
【0075】
有利な設計によれば、本発明による方法は以下をさらに含み得る:
1つまたは複数のさらなるスペクトル間隔でステップを繰り返すステップであって、次の間隔それぞれは前の間隔を含み、前の間隔のそれぞれの単一層の第2のシミュレーション実層厚またはシミュレーション目標層厚それぞれは、次の間隔の開始値として設定されている、ステップ、および、
1つまたは複数の単一層のそれぞれの単一層の最終シミュレーション実層厚またはシミュレーション目標層厚それぞれを提供するステップ。
【0076】
したがって、シミュレーション実層厚およびシミュレーション目標層厚について、反復的な間隔ネスティングがそれぞれ別々に行われる。
【0077】
このようにして、測定された実測定曲線へのシミュレーション測定曲線の効果的な近似を有利に達成することができ、それによってフィッティングパラメータを連続的に精緻化することができる。最適化プロセスにおいて好適ではない最小値が決定されるリスクをこのようにして低減することができる。
【0078】
本発明による方法の有利な設計によれば、光学素子を製造することができ、光学素子は、基板と、基板の少なくとも1つの表面上の干渉反射低減層システムと、を備え、
層システムは、少なくとも4つの連続する層パケットのスタックを備え、各層パケットは一対の第1および第2の単一層を備え、第1の単一層は第1の光学的厚さを有し、第2の単一層は第1の光学的厚さとは異なる第2の光学的厚さを有し、
基板に相対的に近いそれぞれの第1の単一層の屈折率は、スタックの相対的に基板から遠いそれぞれの第2の単一層の屈折率よりも大きく、
層システムは、残留反射色の明度、彩度、および色相角を有し、
層システム上への表面法線に対する、0°および30°の境界値を有する視野角の間隔における残留反射色の色相角の変化の値は、視野角のその間隔における彩度の変化の値よりも小さく、
以下のステップが実行されている:
-高屈折率の第1の単一層のための第1の材料および低屈折率の第2の単一層のための第2の材料、単一層を備える所望の層パケットの数、単一層の厚さの開始値、を少なくとも含む層設計を定義するステップ、
-0°および30°の境界値を有する視野角の間隔の少なくとも境界値での明度、彩度、および色相角を含む目標色値を定義するステップ、
-最適化目標に達するまで単一層厚を変化させるための最適化方法を実行するステップ。
【0079】
有利には、間隔の境界値での目標色値は、同じまたは類似するように選択することができる。
【0080】
特に、異なる残留反射色の色相角の最大偏差を事前決定することができる。
【0081】
有利には、層システムは4つまたは5つの層パケットを有することができ、5つより多くの層パケットを提供することもできる。
【0082】
彩度は、色の飽和度と表記することもできる。色相角は、色角と表記することもできる。
【0083】
有利には、副層の層厚を変化させることによって、視野角のより大きな変化でも残留反射色が変化しないか、またはわずかしか変化しない色安定層システムを提供することができる。有利には、色安定残留反射色は、広い視野角範囲にわたって彩度と色相角との適切な組み合わせによって達成することができる。
【0084】
基板に相対的に近い、スタックの層パケットの第1の副層はそれぞれ、同じ第1の材料から形成することができる。基板から相対的に遠い第2の副層はそれぞれ、第1の副層の第1の材料とは異なる同じ第2の材料から形成することもできる。第2の副層に匹敵する屈折特性を有する第3の材料の機能層を、第1の副層と第2の副層との間で基板から最も遠い層パケットに配置されるように設けることができる。計算目的のために、必要に応じて、機能層を第2の副層に関連付けることができる。代替的に、各第1の副層の各材料は、スタックにおいて変えることができる。同様に、代替的に、各第2の副層を形成する各材料をスタックにおいて変えることができる。
【0085】
本発明による方法の有利な実施形態によれば、境界値が0°および30°である視野角の間隔における色相角は、最大で15°、好ましくは最大で10°変化することができる、および/または、
層システム上への表面法線に対して、0°から、30°~45°の上側境界値を有する境界視野角までの視野角の第2の間隔における色相角の変化の値は、視野角の前記第2の間隔における彩度の変化の値よりも小さくすることができ、境界視野角での彩度の値は、少なくとも2とすることができ、特に、前記第2の間隔における色相角は、最大で20°、好ましくは最大で15°変化することができる、および/または、
境界値が0°および30°である視野角の間隔における明所反射率は、最大1.5%、好ましくは最大1.2%であり得、および/または、
境界値が0°および30°である視野角の間隔における暗所反射率は、最大1.5%、好ましくは最大1.2%であり得る。
【0086】
光学システムの残留反射の色の印象は、観察者にとって完全にまたはほとんど変化しないままである。
【0087】
有利には、視野角の変動がより大きくても、色が安定した残留反射色という結果になり得る。
【0088】
有利には、第1の副層は、高屈折率材料から形成することができる。
【0089】
好適には、第1の副層は、化合物Ta、TiO、ZrO、Al、Nd、Pr、PrTiO、La、Nb、Y、HfO、InSn酸化物、Si、MgO、CeO、ZnSおよび/またはそれらの変形物、特にそれらの他の酸化状態ならびに/またはシランおよび/もしくはシロキサンを有するそれらの混合物のうちの少なくとも1つまたは複数を有することができる。
【0090】
これらの材料は、眼鏡レンズをコーティングするためなどの光学素子に展開するための高古典的屈折率材料として知られている。しかしながら、より高い屈折率の副層は、副層全体の屈折率が1.6より大きい、好ましくは少なくとも1.7、より好ましくは少なくとも1.8、最も好ましくは少なくとも1.9である限り、SiOまたは他のより低い屈折率の材料を含むこともできる。
【0091】
有利には、第2の副層は、低屈折率材料から形成することができる。
【0092】
より低い屈折率副層は、材料MgF、SiO、SiO、純粋な形態またはフッ素化誘導体であるAl、シラン、シロキサンを添加したSiOのうちの少なくとも1つを有することができる。しかしながら、より低い屈折率副層は、SiOとAlとの混合物を含むこともできる。好ましくは、より低い屈折率副層は、少なくとも80重量%のSiO、より好ましくは少なくとも90重量%のSiOを含むことができる。
【0093】
好ましくは、低屈折率副層の屈折率は、最大1.55、好ましくは最大1.48、特に好ましくは最大1.4である。これらの屈折率の表示は、25°Cの温度における標準状態、および550nmの使用される光強度の基準波長での表記である。
【0094】
異なる屈折率を有する層材料の一般的な例は、屈折率が1.46の二酸化ケイ素(SiO)、屈折率が1.7の酸化アルミニウム(Al)、屈折率が2.05の二酸化ジルコニウム(ZrO)、屈折率が2.1の酸化プラセオジムチタン(PrTiO)、それぞれ屈折率が2.3の酸化チタン(TiO)および硫化亜鉛(ZnS)である。これらの値は、コーティング方法および層厚に応じて10%まで変化し得る平均値を表す。
【0095】
普通の光学ガラスは、1.5~2.0の間の屈折率を有する。したがって、MgF、SiOなどの屈折率が1.5より小さい層材料は、光学ガラスと組み合わせて低屈折率材料として表記され、ZrO、PrTiO、TiO、ZnSなどの屈折率が2.0より大きい層材料は、光学ガラスと組み合わせて高屈折率材料として表記される。
【0096】
第1および第2の副層の高屈折材料と低屈折材料との間の屈折率の差は、コーティング方法および層厚に応じて、好ましくは少なくとも0.2から少なくとも0.5である。
【0097】
このタイプのコーティングに使用される材料は、例えば、PVD法(PVD=物理蒸着)またはCVD法(CVD=化学蒸着)によって光学の基板に適用される一般的な材料である。
【0098】
光学素子の好適な実施形態によれば、少なくともそれぞれの第1の副層は、同じ第1の材料から形成することができ、それぞれの第2の副層は、少なくとも主に同じ第2の材料から形成することができる。
【0099】
任意選択的に、それぞれの第2の副層は、同じ第2の材料から形成することができ、基板から最も遠い層パケットにおいてのみ、第1の副層と第2の副層との間に機能層を有することができる。機能層は、低屈折率を有することができ、必要に応じて計算目的のために第2の副層に追加することができる。
【0100】
本発明の別の、特に独立した態様によれば、少なくとも1つのコーティング設備において1つの単一層または複数の単一層から層システムを製造するための方法であって、
(i)縦座標値および横座標値を備える少なくとも1つのスペクトル測定曲線を、各々がそれぞれの単一層の設備実層厚を有する1つまたは複数の単一層からなる実際の層システムの実測定曲線として検出するステップであって、1つまたは複数の単一層は、少なくとも1つのコーティング設備の設備データセットにしたがって製造され、設備データセットは、1つまたは複数の単一層のそれぞれの単一層の設備実層厚を少なくとも含む、ステップ、
(ii)少なくとも1つの関連付け基準にしたがって、特に実測定曲線の有意なスペクトル点について、実際の層システムの実測定曲線を、縦座標値および横座標値を備える目標データセットの目標測定曲線に関連付け、目標データセットが、1つまたは複数の単一層から形成された目標データセット層システムに基づいているステップであって、目標データセットは、1つまたは複数の単一層のそれぞれの単一層の少なくとも1つの既知の目標層厚を含む、ステップ、
(iii)それぞれの単一層の少なくとも1つのシミュレーション実層厚を実測定曲線の少なくとも1つのスペクトル間隔で変化させ、1つまたは複数の単一層のそれぞれの単一層の少なくとも1つの最終シミュレーション実層厚を備える最終シミュレーション実データセットを取得することによって、反復法にしたがって、シミュレーション実測定曲線を生成し、それによって、実測定曲線は、終了基準に達するまでシミュレーション実測定曲線で少なくとも近似される、ステップ、
(iv)それぞれの単一層の少なくとも1つのシミュレーション目標層厚を目標測定曲線の少なくとも1つのスペクトル間隔で変化させ、1つまたは複数の単一層のそれぞれの単一層の少なくとも1つの最終シミュレーション目標層厚を備える最終シミュレーション目標データセットを取得することによって、反復法にしたがって、シミュレーション目標測定曲線を生成し、それによって、目標測定曲線は、終了基準に達するまでシミュレーション目標測定曲線で少なくとも近似される、ステップ、
(v)少なくとも1つのコーティング設備のための最終シミュレーション目標データセットを、それぞれの単一層の新たな設備実層厚として少なくとも1つの補正実層厚を有するさらなる層システムの堆積のための新たな設備データセットとして提供し、それは、最終シミュレーション目標データセットを備える1つまたは複数の単一層のそれぞれの単一層の最終シミュレーション目標層厚から決定される、ステップである。
【0101】
有利には、反復法は、1つまたは複数のスペクトル間隔で実行することができ、次の間隔それぞれは前の間隔を含む。
【0102】
したがって、例えば光学素子のための層システムの製造のためのコーティング設備を動作させる上述の方法の単一ステップは、有利には、層システム自体の製造に適用することができる。
【0103】
有利には、本発明の第1の態様による方法を使用して、本方法は、層システム、特に光学層システムのためのコーティング設備の自己制御およびフィードバック動作を可能にする。
【0104】
本発明の別の、特に独立した態様によれば、層システムの製造のための少なくとも1つのコーティング設備におけるコーティングプロセスの慣らし運転のための方法が提案され、縦座標値および横座標値を備えるスペクトル測定曲線の実測定曲線は、終了基準に達するまでシミュレーション実測定曲線で少なくとも近似され、
(i)縦座標値および横座標値を備える少なくとも1つのスペクトル測定曲線を、各々がそれぞれの単一層の設備実層厚を有する1つまたは複数の単一層からなる実際の層システムでの実測定曲線として検出するステップであって、1つまたは複数の単一層が、少なくとも1つのコーティング設備の設備データセットにしたがって製造され、設備データセットが、1つまたは複数の単一層のそれぞれの単一層の設備実層厚を少なくとも含む、ステップ、
(ii)少なくとも1つの関連付け基準にしたがって、特に実測定曲線の有意なスペクトル点について、実際の層システムの実測定曲線を、縦座標値および横座標値を備える目標データセットの目標測定曲線に関連付け、目標データセットが、1つまたは複数の単一層から形成された目標データセット層システムに基づいているステップであって、目標データセットが、1つまたは複数の単一層のそれぞれの単一層の少なくとも1つの既知の目標層厚を含む、ステップ、
(iii)それぞれの単一層の少なくとも1つのシミュレーション実層厚を実測定曲線の少なくとも1つのスペクトル間隔において変化させ、1つまたは複数の単一層のそれぞれの単一層の少なくとも1つの最終シミュレーション実層厚を備える最終シミュレーション実データセットを取得することによって、反復法にしたがって、シミュレーション実測定曲線を生成し、それによって、実測定曲線は、終了基準に達するまでシミュレーション実測定曲線で少なくとも近似される、ステップ、
(iv)それぞれの単一層の少なくとも1つのシミュレーション目標層厚を目標測定曲線の少なくとも1つのスペクトル間隔において変化させ、1つまたは複数の単一層のそれぞれの単一層の少なくとも1つの最終シミュレーション目標層厚を備える最終シミュレーション目標データセットを取得することによって、反復法にしたがって、シミュレーション目標測定曲線を生成し、それによって、目標測定曲線は、終了基準に達するまでシミュレーション目標測定曲線で少なくとも近似される、ステップ、
(v)少なくとも1つのコーティング設備のための最終シミュレーション目標データセットを、それぞれの単一層の新たな設備実層厚として少なくとも1つの補正実層厚を有するさらなる層システムの堆積のための新たな設備データセットとして提供するステップであって、それは、最終シミュレーション目標データセットを備える1つまたは複数の単一層のそれぞれの単一層の最終シミュレーション目標層厚から決定される、ステップ、
を含む。
【0105】
有利には、本発明の第1の態様による方法を使用して、本方法は、コーティング設備におけるコーティングプロセスの慣らし運転時の動作の自己制御およびフィードバックモードを可能にする。
【0106】
通常、コーティング設備の慣らし運転にはかなりの時間が必要であり、これは有利に短縮することができる。
【0107】
例えば光学素子のための層システムの製造のためのコーティング設備を動作させる本発明による自己制御およびフィードバック方法を用いて、新しいコーティング設備の慣らし運転をより効果的にかつ迅速に行うことができる。これは、コーティング設備の試運転中にかなりの節約の可能性をもたらす。また、コーティング設備の慣らし運転を遠隔制御することもでき、現場で必要とされる作業員がより少なくなるため、さらなる節約の可能性をもたらす。
【0108】
本発明のさらなる、特に独立した態様によれば、例えば光学素子のための層システムを製造するためのコーティングシステムが提案されており、以下を少なくとも備える:
基板を層システムでコーティングするためのコーティング設備、
コーティング設備を制御し、シミュレーションコンピュータと通信するための制御コンピュータ、
層システムのスペクトル分解実測定曲線を決定するための光学測定装置、
層システムの光学計算および最適化のためのシミュレーションソフトウェアがインストールされたシミュレーションコンピュータ、
設備データセットを格納するためのデータベース、
シミュレーションコンピュータおよび/またはコーティング設備を入力および制御するための入力装置。
【0109】
このようにして、コーティングシステムは、上述の本発明による方法にしたがってコーティング設備の効果的な慣らし運転および動作に必要なすべての必要な構成要素を備える。
【0110】
結果として、コーティングシステムの製造のためのコーティング設備を動作させる本発明による方法を用いた新しいコーティング設備の慣らし運転は、より効果的かつ迅速に実行することができる。これは、コーティング設備を試運転する際にかなりの節約の可能性をもたらす。また、コーティング設備の慣らし運転を遠隔制御することもでき、現場で必要とされる作業員がより少なくなるため、さらなる節約の可能性をもたらす。
【0111】
コーティング設備は、例えば、様々なコーティング源、開口部、ガラスホルダ、ポンプなどの基板のコーティングのための関連する集合体を備える真空チャンバを含む。
【0112】
有利には、本発明の第1の態様による方法を使用して、コーティングシステムは、自己制御およびフィードバック方式で動作可能であり得る。
【0113】
コーティングシステムの制御コンピュータは、コーティング設備のコーティングプロセスを制御し、コーティング設備との通信を処理する。自動データ交換のために、このコンピュータは少なくともネットワーク接続を有することができる。
【0114】
光学測定装置では、スペクトル分解測定信号を記録することができ、これは光学基板および塗布層システムからなる光学素子を再生する。このいわゆる実測定曲線は、データタプルからなる2次元データセットとして、例えば、ナノメートル単位の波長、%単位の反射率として提供することができる。このデータを「スペクトルデータ」と表記する。
【0115】
シミュレーションソフトウェアはシミュレーションコンピュータにインストールされる。
【0116】
シミュレーションソフトウェアは、光学計測装置によって生成されたデータセットを少なくとも読み込むことができるコンピュータプログラムである。さらに、シミュレーションソフトウェアは、コーティング設備のデータセットの読み込みおよび出力をすることができる。
【0117】
ソフトウェアは、本発明による方法を制御アルゴリズムとして実装する。ソフトウェアは、データベースと協働し、例えば、データベースから目標データセットを読み出し、新たに計算されたシミュレーションデータセットをデータベースに格納する。さらに、ソフトウェアは、市販のシミュレーションプログラム、例えば「Essential MacLeod」に見られるような少なくとも1つの任意の最適化/フィッティングアルゴリズムを実装する。
【0118】
データベースでは、得られたシミュレーション目標データセットは、各コーティング設備および各コーティングプロセスのために格納され、後の時点で再び読み出すことができる。加えて、データベースは、すべての格納されたコーティングプロセスの対応する目標データセットを含む。
【0119】
コーティング設備の制御コンピュータとシミュレーションソフトウェアとの間の双方向データ交換は、シミュレーションソフトウェアおよびコーティング設備の制御コンピュータへの既存のネットワーク接続によって直接実現することができるか、またはデータ交換を引き継ぎ、シミュレーションソフトウェアにコーティング設備からのデータを提供し、反対方向にコーティング設備にデータを送り返すさらなるソフトウェアを使用することができる。手動の場合、このデータ交換は、入力装置を介したオペレータとの対話によって行われる。
【0120】
本発明のさらなる、特に独立した態様によれば、特に上述したように、例えば光学素子のための層システムの製造のためのコーティング設備が提案され、コーティング設備は、層システムに人工エージングプロセスを適用するための構成要素を含んでいる。
【0121】
便宜上、コーティング設備で製造された層システムはまた、層システムのスペクトル特性を決定するときに静的実測定曲線を得るために、同じ設備で人工的にエージングすることができる。これは、層システムの特性がもはや時間とともに大きく変化しないため、新しい層システムの正しい補正層厚を決定する際の高い確度をもたらす。
【0122】
有利には、本発明の第1の態様による方法を使用して、本方法は、コーティング設備におけるコーティングプロセスの自己制御およびフィードバックモード動作を可能にする。
【0123】
本発明のさらなる、特に独立した態様によれば、特に上述したように、例えば光学素子のための層システムを製造するためのコーティング設備が提案されており、以下を備える:
コーティングシステムのスペクトル分解実測定曲線を決定するための光学測定装置、および/または、
層システムに人工エージングプロセスを適用するための構成要素。
【0124】
好適には、製造された層システムのスペクトルデータのその場(in-situ)での決定のための光学測定装置を、コーティング設備自体に配置することもできる。これにより、コーティング設備からのコーティングシステムの移送中の不確実性および層システムに対して起こり得るその後の変更が排除される。したがって、適切な1つ(単一層を備える層システムの場合)または複数(複数の単一層を備える層システムの場合)の補正層厚の決定を、より直接的に実行することができる。したがって、コーティング方法のための設備データセットの最適化をより効果的に実行することができる。有利には、製造された層システムの人工エージングのための構成要素をコーティング設備に組み込むこともできる。したがって好都合なことに、光学素子のスペクトル特性を決定するときに静的実測定曲線を得るために、コーティング設備で製造された層システムを同じ設備で人工的にエージングすることができる。
【0125】
これは、層システムの特性がもはや時間とともに大きく変化しないため、新しい層システムの正しい1つまたは複数の補正コーティング厚さを決定するときの高い確度をもたらす。
【0126】
有利には、本発明の第1の態様による方法を使用して、コーティングシステムは、自己制御およびフィードバック方式で動作可能であり得る。
【0127】
本発明のさらなる、特に独立した態様によれば、特に上述したように、例えば光学素子のための層システムを製造するためのコーティング設備のシステムが提案されており、少なくとも以下を備える:
少なくとも1つの基板を層システムでコーティングするための1つまたは複数のコーティング設備、
少なくとも1つのコーティング設備を制御し、シミュレーションコンピュータと通信するための1つまたは複数の制御コンピュータ、
層システムのスペクトル分解実際の測定曲線を決定するための光学測定装置、
層システムの光学計算および最適化のためのシミュレーションソフトウェアがインストールされ、コーティング設備の制御コンピュータと通信するシミュレーションコンピュータ、
設備データセットを格納するためのデータベース、および、
シミュレーションコンピュータおよび/または1つまたは複数のコーティング設備を入力および制御するための入力装置。
【0128】
複数のコーティング設備のこのようなシステムでは、様々なコーティング設備を1つのシミュレーションコンピュータによって制御することができ、コーティング設備を動作させるときにかなりの節約の可能性をもたらす。このようにして、1つのコーティング設備で得られている知識および/またはデータセットは、別のコーティング設備に効果的に移され得る。
【0129】
本発明のさらなる、特に独立した態様によれば、層システム、例えば光学素子の製造のための少なくとも1つのコーティング設備を動作させる方法、特に本発明の第1の態様による方法のための設備データセットを格納するデータベースが提案され、以下を含む:
(i)縦座標値および横座標値を備える少なくとも1つのスペクトル測定曲線を、各々がそれぞれの単一層の設備実層厚を有する1つまたは複数の単一層からなる実際の層システムの実測定曲線として検出するステップであって、1つまたは複数の単一層が、少なくとも1つのコーティング設備の設備データセットにしたがって製造され、設備データセットが、1つまたは複数の単一層のそれぞれの単一層の設備実層厚を少なくとも含む、ステップ、
(ii)少なくとも1つの関連付け基準にしたがって、特に実測定曲線の有意なスペクトル点について、実際の層システムの実測定曲線を、縦座標値および横座標値を備える目標データセットの目標測定曲線に関連付け、目標データセットが、1つまたは複数の単一層から形成された目標データセット層システムに基づいているステップであって、目標データセットが、1つまたは複数の単一層のそれぞれの単一層の少なくとも1つの既知の目標層厚を含む、ステップ、
(iii)それぞれの単一層の少なくとも1つのシミュレーション実層厚を実測定曲線の少なくとも1つのスペクトル間隔において変化させ、1つまたは複数の単一層のそれぞれの単一層の少なくとも1つの最終シミュレーション実層厚を備える最終シミュレーション実データセットを取得することによって、反復法にしたがってシミュレーション実測定曲線を生成し、それによって、実測定曲線が、終了基準に達するまでシミュレーション実測定曲線で少なくとも近似される、ステップ、
(iv)それぞれの単一層の少なくともシミュレーション目標層厚を目標測定曲線の少なくとも1つのスペクトル間隔において変化させ、1つまたは複数の単一層のそれぞれの単一層の少なくとも1つの最終シミュレーション目標層厚を備える最終シミュレーション目標データセットを取得することによって、反復法にしたがってシミュレーション目標測定曲線を生成し、それによって、目標測定曲線が、終了基準に達するまでシミュレーション目標測定曲線で少なくとも近似される、ステップ、
(v)少なくとも1つのコーティング設備のための最終シミュレーション目標データセットを、それぞれの単一層の新たな設備実層厚として少なくとも1つの補正実層厚を有するさらなる層システムの堆積のための新たな設備データセットとして提供し、それは、最終シミュレーション目標データセットを備える1つまたは複数の単一層のそれぞれの単一層の最終シミュレーション目標層厚から決定される、ステップ。
【0130】
設備データセットは、少なくとも設備データセット、目標データセット、シミュレーション実データセット、および/またはシミュレーション目標データセットを含む。
【0131】
そのようなデータベースの助けにより、多種多様な設備データセット、目標データセット、シミュレーション実データセットおよび/またはシミュレーション目標データセットに効果的な方法でアクセスすることができる。このようにして、以前のおよび/または他のコーティングプロセスからの知見は、好適な方法でさらに使用され得るか、または他のコーティング設備および/またはプロセスに移され得る。
【0132】
有利には、本発明の第1の態様による方法を使用するデータベースによって、コーティング設備またはコーティング設備のシステムは、自己制御およびフィードバック方式で動作させることができる。
【0133】
本発明のさらなる、特に独立した態様によれば、例えば光学素子のための層システムを製造するための少なくとも1つのコーティング設備を動作させる方法のためのコンピュータプログラム製品が提案され、コンピュータプログラム製品は、コンピュータシステム上で実行可能で、コンピュータシステムに、以下を含む方法を実行させるプログラム命令を含む少なくとも1つのコンピュータ可読記憶媒体を備える:
(i)縦座標値および横座標値を備える少なくとも1つのスペクトル測定曲線を、各々がそれぞれの単一層の設備実層厚を有する1つまたは複数の単一層からなる実際の層システムの実測定曲線として検出するステップであって、1つまたは複数の単一層が、少なくとも1つのコーティング設備の設備データセットにしたがって製造され、設備データセットが、1つまたは複数の単一層のそれぞれの単一層の設備実層厚を少なくとも含む、ステップ、
(ii)少なくとも1つの関連付け基準にしたがって、特に実測定曲線の有意なスペクトル点について、実際の層システムの実測定曲線を、縦座標値および横座標値を備える目標データセットの目標測定曲線に関連付け、目標データセットが、1つまたは複数の単一層から形成された目標データセット層システムに基づいているステップであって、目標データセットが、1つまたは複数の単一層のそれぞれの単一層の少なくとも1つの既知の目標層厚を含む、ステップ、
(iii)それぞれの単一層の少なくとも1つのシミュレーション実層厚を実測定曲線の少なくとも1つのスペクトル間隔において変化させ、1つまたは複数の単一層のそれぞれの単一層の少なくとも1つの最終シミュレーション実層厚を備える最終シミュレーション実データセットを取得することによって、反復法にしたがってシミュレーション実測定曲線を生成し、それによって、実測定曲線が、終了基準に達するまでシミュレーション実測定曲線で少なくとも近似される、ステップ、
(iv)それぞれの単一層の少なくともシミュレーション目標層厚を目標測定曲線の少なくとも1つのスペクトル間隔において変化させ、1つまたは複数の単一層のそれぞれの単一層の少なくとも1つの最終シミュレーション目標層厚を備える最終シミュレーション目標データセットを取得することによって、反復法にしたがってシミュレーション目標測定曲線を生成し、それによって、目標測定曲線が、終了基準に達するまでシミュレーション目標測定曲線で少なくとも近似される、ステップ、
(v)少なくとも1つのコーティングシステムのための最終シミュレーション目標データセットを、それぞれの単一層の新たな設備実層厚として少なくとも1つの補正実層厚を有するさらなる層システムの堆積のための新たな設備データセットとして提供し、それは、最終シミュレーション目標データセットを備える1つまたは複数の単一層のそれぞれの単一層の最終シミュレーション目標層厚から決定される、ステップ。
【0134】
コンピュータプログラム製品は、モジュール方式でコーティング設備を制御および動作させるためのソフトウェアを提供し、多種多様なデータ処理システムに対してアクセス可能にすることができる。
【0135】
有利には、本発明の第1の態様による方法を使用するコンピュータプログラム製品によって、コーティング設備またはコーティング設備のシステムは、自己制御およびフィードバック方式で動作させることができる。
【0136】
本発明のさらなる、特に独立した態様によれば、コンピュータ可読プログラム命令を含むデータ処理プログラムを実行するためのデータ処理システムが、特に上述したように、例えば光学素子のためのコーティングシステムを製造するための少なくとも1つのコーティング設備を動作させる方法を実行するために提案される。データ処理システムは、好ましくは、シミュレーションコンピュータおよびデータベースだけでなく、コーティング設備の制御コンピュータも備えることができる。
【0137】
有利には、本発明の第1の態様による方法を使用するデータ処理システムによって、コーティング設備またはコーティング設備のシステムは、自己制御およびフィードバック方式で動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0138】
さらなる利点は、図面の以下の説明から明らかになるであろう。図には、本発明の例示的な実施形態が図示されている。図、説明、および特許請求の範囲は、組み合わせて多数の特徴を含む。当業者はまた、便宜上、特徴を個別に考慮し、それらを組み合わせて有用なさらなる組み合わせを形成する。
【0139】
例として以下を示す。
【0140】
図1】本発明の例示的な一実施形態によるコーティングシステムのブロック図である。
【0141】
図2】本発明の例示的な一実施形態による、光学素子のための層システムを製造するための少なくとも1つのコーティング設備を動作させる方法のフロー図である。
【0142】
図3】本発明による方法のフロー図である。
【0143】
図4】本発明による方法の詳細なフロー図である。
【0144】
図5】本発明の一例示的な実施形態による、基板上に5つの層パケットの層システムを備える光学素子を示す図である。
【0145】
図6】280nmから800nmまでの波長範囲における実測定曲線と目標測定曲線とを比較した、光の垂直入射における本発明による層システムの反射率曲線である。
【0146】
図7図6の反射率曲線の拡大図である。
【0147】
図8】目標測定曲線とスケーリングされたシミュレーション目標測定曲線とを比較した、光の垂直入射における層システムの反射率曲線を示す図である。
【0148】
図9】目標測定曲線と380nm~580nmの第1のスペクトル間隔においてフィッティングされたシミュレーションされた目標測定曲線とを比較した、光の垂直入射における層システムの反射率曲線を示す図である。
【0149】
図10】目標測定曲線と380nm~780nmのより大きいスペクトル間隔においてフィッティングされたシミュレーションされた目標測定曲線とを比較した、光の垂直入射における層システムの反射率曲線を示す図である。
【0150】
図11】実測定曲線と280nm~800nmの波長範囲全体においてフィッティングされたシミュレーションされた目標測定とを比較した、光の垂直入射における層システムの反射率曲線を示す図である。
【0151】
図12】本発明のさらなる例示的な実施形態によるコーティング設備のシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0152】
図では、同一の種類または同一の効果を有する構成要素には、同一の参照符号で番号付けされている。図は例を示しているにすぎず、限定として理解されるべきではない。
【0153】
以下で使用される方向を示す用語は、「左」、「右」、「上部」、「下部」、「前」、「後方」、「後」などの用語と共に、単に図の理解を容易にすることを意図しており、決して一般性の限定を表すことを意図していない。図示された構成要素および要素、それらの設計および使用は、当業者の考慮事項に従って変更することができ、それぞれの用途に適合させることができる。
【0154】
図1は、本発明の例示的な一実施形態によるコーティングシステム100のブロック図である。有利には、コーティングシステム100は、自己制御およびフィードバック制御プロセスで動作可能であり得る。光学要素80のための層システム10を製造するためのコーティングシステム100は、基板22を光学要素80のための層システム10でコーティングするための少なくとも1つのコーティング設備108を備える。
【0155】
基板22上の層システム10を備えた光学素子80の構造を図5に示す。
【0156】
コーティングシステム100は、コーティング設備108を制御し、シミュレーションコンピュータ102と通信するための制御コンピュータ110と、層システム10のスペクトル分解実測曲線90を決定するための光学測定装置と、層システム10の光学計算および最適化のためのシミュレーションソフトウェア104がインストールされたシミュレーションコンピュータ102と、設備データセットDATを格納するためのデータベース106と、手動入力120を介してシミュレーションコンピュータ102および/またはコーティング設備108を入力および制御するための入力装置114と、をさらに備える。
【0157】
データベース106は、好ましくは、本発明の第1の態様による方法を実行するための態様、特に独立した態様により使用されている。
【0158】
データベース106は、光学素子80のための層システム10を製造するためのコーティング設備108を動作させる方法のための設備データセットDATを格納するよう機能し、設備データセットDATは、少なくとも設備データセットDAT_n、DAT_n+1、目標データセットDAT_target、シミュレーション実データセットDAT_actual_sim、および/またはシミュレーション目標データセットDAT_target_simを含む。
【0159】
コンピュータプログラム製品は、光学素子80の層システム10を製造するための少なくとも1つのコーティング設備108を動作させる本発明の第1の態様による方法のシミュレーションコンピュータ102に実装され、コンピュータプログラム製品は、コンピュータシステム102上で実行可能であり、コンピュータシステム102に方法を実行させるプログラム命令を含む少なくとも1つのコンピュータ可読記憶媒体を含む。
【0160】
コンピュータプログラム製品は、特にデータ処理システム124のシミュレーションコンピュータ102上で本発明の第1の態様による方法を実行するための、本発明の独立した態様と考えることができる。
【0161】
少なくともシミュレーションコンピュータ102およびシミュレーションソフトウェア104を含むデータ処理システム124は、光学素子80のための層システム10を製造するためのコーティング設備108を動作させる方法を実行するためのコンピュータ可読プログラム命令を含むデータ処理プログラムの実行するよう機能する。
【0162】
データ処理システム124は、特に本発明の第1の態様による方法をシミュレーションコンピュータ102で実行するための、本発明の別の態様と考えることができる。
【0163】
コーティング設備108は、任意選択で、光学測定装置112、118において層システム10をスペクトル測定するときに光学要素80の安定した比率を確保するために、層システム10に人工エージングプロセスを適用するための構成要素116を備えることができる。
【0164】
さらなる選択肢では、コーティング設備108はまた、層システム10のスペクトル特性のその場測定をコーティング設備108自体で実行することができ、直接フィードバックをシミュレーションコンピュータ102に送信することができるように、層システム10のスペクトル分解実測曲線90を決定するための光学測定装置118を備えることができる。
【0165】
図2では、本発明の例示的な実施形態による光学素子80のための層システム10を製造するための少なくとも1つのコーティング設備108を動作させる本発明の第1の態様による方法のシーケンスが、グラフで図示されており、図3および図4にそれぞれフローチャートとしてまたは詳細なフローチャートとして、個々のステップで説明されている。
【0166】
第1のステップS100(i)において、本発明の第1の態様によるコーティング設備108を動作させる方法は、縦座標値および横座標値を備える少なくとも1つのスペクトル測定曲線を、それぞれの設備実層厚d_actual_11、...、d_actual_20を有する一連の単一層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20からなる実際の層システム10_nの実測定曲線90として検出するステップを含む。それにより、単一層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20は、コーティング設備108の設備データセットDAT_nにしたがって製造される。設備データセットDAT_nは、単一層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20の設備実層厚d_actual_11、...、d_actual_20を少なくとも含む。
【0167】
次のステップS102では、(ii)実際の層システム10_nの実測定曲線90を、特に実測定曲線90の有意なスペクトル点を含むことができる関連付け基準にしたがって、単一層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20から形成された目標データセット層システム10_targetに基づく、縦座標値および横座標値を備える目標データセットDAT_targetの目標測定曲線92に関連付けるステップが行われる。目標データセットDAT_targetは、単一層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20の少なくとも既知の目標層厚d_target_11、...、d_target_20を含み、シミュレーションコンピュータ102を介してデータベース106から検索することができる。
【0168】
さらなるステップS104において、(iii)実測定曲線90の少なくとも1つのスペクトル間隔82において単一層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20の少なくともシミュレーション実層厚g_actual_11、...、g_actual_20を変化させることによって反復法にしたがってシミュレーション実測定曲線94を生成するステップが行われる。これにより、少なくとも最終シミュレーション実層厚g_actual_11、...、g_actual_20を備える最終シミュレーション実データセットDAT_actual_simが得られ、これにより、実測定曲線90がシミュレーション実測定曲線94で少なくとも近似される。この反復法は、終了基準に達するまで、例えば統計的選択法(図4の検証S114およびクエリS116)にしたがって関連付け基準について安定した結果に達するまで実行される。シミュレーション実層厚g_actual_11、...、g_actual_20の開始値としては、例えば、反復法では目標層厚d_target_11、...、d_target_20が使用される。
【0169】
次のステップS106では、(iv)目標測定曲線92の少なくとも1つのスペクトル間隔82において単一層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20の少なくともシミュレーション目標層厚g_target_11、...、g_target_20を変化させることによって反復法にしたがいシミュレーション目標測定曲線98を生成するステップが行われる。これにより、少なくとも最終シミュレーション目標層厚g_target_11、...、g_target_20を備える最終シミュレーション目標データセットDAT_target_simが得られ、これにより、目標測定曲線92がシミュレーション目標測定曲線98で少なくとも近似される。この反復法は、終了基準に達するまで、例えば統計的選択法(図4の検証S115およびクエリS117)にしたがって関連付け基準について安定した結果に達するまで実行される。例えば、反復法におけるシミュレーション目標層厚g_target_11、...、g_target_20の開始値として、シミュレーション実層厚g_actual_11、...、g_target_20が使用される。
【0170】
最終ステップS108では、(v)コーティング設備108の最終シミュレーション目標データセットDAT_target_simを、新たな設備実層厚d_actual_11、...、d_actual_20として少なくとも補正実層厚d_corr_11、...、d_corr_20を有するさらなる層システム10_n+1の堆積のための新たな設備データセットDAT_n+1として提供するステップが行われる。これらは、最終シミュレーション目標データセットDAT_target_simを用いて、最終シミュレーション目標層厚g_target_11、...、g_target_20から決定されている。
【0171】
ステップS104またはS106それぞれにおいてシミュレーション実測定曲線94またはシミュレーション目標測定曲線98それぞれを生成するために、ステップS110またはS111それぞれにおいて、関連付け基準にしたがって決定された横座標値について、実測定曲線90またはシミュレーション実測定曲線94それぞれと目標測定曲線92の横座標値の商の平均値として、スケール因子122を決定することができる。このスケール因子122により、目標層厚d_target_11、...、d_target_20、または、単一層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20のシミュレーション実層厚g_actual_11、...、g_actual_20それぞれが、シミュレーション実層厚g_actual_11、...、g_actual_20またはシミュレーション目標層厚g_target_11、...、g_target_20の開始値としてスケーリングされて決定されている。
【0172】
少なくとも単一層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20各々の第1の間隔82において、ステップS112またはS113それぞれの場合で、ステップS104またはS106それぞれにおいてシミュレーション実測定曲線94またはシミュレーション目標測定曲線98それぞれを生成するために、商126を、対応する第1の最終シミュレーション実層厚g_actual_11、...、g_actual_82または対応する第1の最終シミュレーション目標層厚g_target_11、...、g_target_20それぞれと、対応する設備実層厚d_actual_11、...、d_actual_20から形成することができる。商126を用いて、第1のシミュレーション実層厚g_actual_11、...、g_actual_20またはシミュレーション目標層厚g_target_11、...、g_target_20それぞれが、シミュレーション実層厚g_actual_11、...、g_actual_20またはシミュレーション目標層厚g_target_11、...、g_target_20それぞれを、商126を用いてスケーリングすることによって生成される。
【0173】
ステップS114またはS115それぞれにおいて、単一の第1のシミュレーション実層厚g_actual_11、...、g_actual_20またはシミュレーション目標層厚g_target_11、...、g_target_20それぞれを、少なくとも1つの基準、特に目標測定曲線94のそれぞれの目標層厚g_target_11、...、g_target_20からの妥当性および/または所定の偏差について検証することができる。少なくとも1つの基準が欠落している場合、ステップS104、S106においてシミュレーション実層厚g_actual_11、...、g_actual_20またはシミュレーション目標層厚g_target_11、...、g_target_20それぞれの変化、第1の最終シミュレーション実層厚g_actual_11、...、g_actual_20またはシミュレーション目標層厚g_target_11、...、g_target_20それぞれの提供S108ならびに第1のシミュレーション実層厚g_actual_11、...、g_actual_20またはシミュレーション目標層厚g_target_11、...、g_target_20それぞれの生成が繰り返され、基準に不合格であったそのような単一層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20について、S104、S106を変化させるときに、制限が指定されている。続いて、第2のシミュレーション実層厚g_actual_11、...、g_actual_20、またはシミュレーション目標層厚g_target_11、...、g_target_20それぞれが提供される。
【0174】
ステップS104、S106、S112、S113、S114、S115は、1つまたは複数のさらなるスペクトル間隔84、86において繰り返すことができ、次の間隔84、86それぞれは前の間隔82、84を含み、前の間隔82、84の第2のシミュレーション実層厚g_actual_11、...、g_actual_20またはシミュレーション目標層厚g_target_11、...、g_target_20それぞれは、次の間隔84、86で開始値として設定され、最終シミュレーション実層厚g_actual_11、...、g_actual_20またはシミュレーション目標層厚g_target_11、...、g_target_20それぞれが、提供される。
【0175】
有利には、光学素子80のための層システム10の製造のための記載された方法は、反復法が1つまたは複数のスペクトル間隔82、84、86において実行されるように、実行することができ、次の間隔84、86それぞれは前の間隔82、84を含む。さらに、記載された方法は、光学要素80のための層システム10を製造するための少なくとも1つのコーティング設備108におけるコーティングプロセスの慣らし運転に使用することもできる。
【0176】
図5は、本発明の一例示的な実施形態による、例えば眼鏡レンズなどの基板22上の層システム10を備える光学素子80を例示的に示す。干渉反射低減層システム10は、基板22の少なくとも一方の表面24上に配置される。有利には、層システム10は、本発明の第1の態様による自己制御およびフィードバック方法で製造可能である。
【0177】
基板22上の最下層として、層システム10は、従来通り、例えばスタック40の接着性を改善するために、および/または基板22のスクラッチ保護として、単一層または多層の中間層30を有することができる。この中間層30は、従来通り、例えば準化学量論的な低屈折率金属酸化物、クロム、シランまたはシロキサンからなることができる。中間層30は、光学特性のさらなる考慮には関係しない。
【0178】
図5では、例えば、スタック40の5つの層パケット42、44、46、48、50が中間層30上に連続して配置されている。
【0179】
少なくとも4つ、この例では5つの連続した層パケット42、44、46、48、50のスタック40が中間層30上に配置され、各層パケット42、44、46、48、50は、第1の単一層11、13、15、17、19と第2の単一層12、14、16、18、20のペアを備える。
【0180】
基板に最も近い層パケット42は、基板に相対的に近い単一層11、および基板から相対的に遠い単一層12を備え、次の層パケット44は、基板に相対的に近い単一層13、および基板から相対的に遠い単一層14を備え、それに続く層パケット46は、基板に相対的に近い単一層15、および基板から相対的に遠い単一層16を備え、それに続く層パケット48は、基板に相対的に近い単一層17、および基板から相対的に遠い単一層18を備え、ならびに基板から最も遠い層パケット50は、基板に相対的に近い単一層19、および基板から相対的に遠い単一層20を備える。
【0181】
任意選択的で、基板から最も遠い層パケット50は、基板に相対的に近い副層19と基板から相対的に遠い副層20との間に、機能層34を有することができ、これは、例えば、電気伝導率を高めるため、機械的応力均等化のため、および/または拡散障壁として作用することができる。この機能層34は、低屈折率材料から形成することができ、例えばアルミニウムなどの他の金属酸化物と合金化することができる。光学特性の計算目的およびシミュレーション目的のために、機能層34は、基板から最も遠い最上層パケット50の低屈折率副層20に追加することができ、または、必要に応じて、例えば、層厚が比較的薄い場合には無視することができる。
【0182】
各層パケット42、44、46、48、50において、対応する第1の単一層11、13、15、17、19はそれぞれ、第1の光学的厚さt1を有し、対応する第2の単一層12、14、16、18、20はそれぞれ、各層パケット42、44、46、48、50における第1の光学的厚さt1とは異なる第2の光学的厚さt2を有する。
【0183】
基板に相対的に近いそれぞれの第1の単一層11、13、15、17、19の屈折率n1は、スタック40の基板から相対的に遠いそれぞれの第2の単一層12、14、16、18、20の屈折率n2よりも大きい。層システム10は、残留反射色の明度L、彩度C、および色相角hを有し、層システム10上への表面法線70に対する、0°および30°の境界値を有する視野角AOIの間隔における残留反射色の色相角hの変化Δhの値は、視野角AOIの間隔における彩度Cの変化ΔCの値よりも小さい。
【0184】
層システムは、表面法線70から測定して、0°から境界角度、例えば30°の視野角AOIで観察者によって観察される。
【0185】
層システム10を設計するために、以下のステップが好適に実行される:
-高屈折率の第1の単一層11、13、15、17、19のための第1の材料および低屈折率の第2の単一層12、14、16、18、20のための第2の材料、単一層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20を備える所望の層パケット42、44、46、48、50の数、単一層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20の厚さの開始値を少なくとも含む層設計を定義するステップ、
-0°および30°の境界値を有する視野角AOIの間隔における少なくとも境界値での明度L、彩度C、および色相角hを含む目標色値を定義するステップ、
-最適化目的に達するまで、単一層厚d_actual_11、...、d_actual_20を変化させるための最適化方法を実行するステップ。
【0186】
基板22は、例えばプラスチック、特に眼鏡レンズ用の透明プラスチックである。
【0187】
特に、本開示の文脈における眼鏡レンズという用語は、規格DIN EN ISO 13666:2013-10のセクション8.1.13によるコーティングされた眼鏡レンズを指し、したがって特にその特性の1つまたは複数を変更するために1つまたは複数の表面コーティングが施された眼鏡レンズを指す。
【0188】
好ましくは、そのような眼鏡レンズは、特に眼鏡(矯正ありおよび矯正なし)、サングラス、スキーゴーグル、作業用ゴーグル、および頭部装着型ディスプレイ装置(いわゆる「ヘッドマウントディスプレイ」)に関連する眼鏡として有利に展開することができる。
【0189】
本開示の文脈において、眼鏡レンズという用語は、半完成眼鏡レンズ製品、特に規格DIN EN ISO 13666:2013-10のセクション8.4.2による眼鏡レンズブランクまたは半完成眼鏡レンズ製品、すなわち光学的に仕上げられた表面を1つのみ有するレンズブランクまたはブランクをさらに含むことができる。
【0190】
図5の設計を参照すると、基板22の反対面26は、任意選択的で、別の、同様の、または同一の層システム10を有するか、コーティングなしか、または保護コーティング(図示せず)のみを有することができる。
【0191】
好ましくは、基板に相対的に近い単一層11、13、15、17、19の各々は、同一の第1材料から形成される。好ましくは、第1の材料は、第1の屈折率n1を有する相対的に高い屈折率材料である。
【0192】
好ましくは、基板から相対的に遠い単一層12、14、16、18、20の各々は、同一の第2の材料から形成される。好ましくは、第2の材料は、第2の屈折率n2を有する低屈折率材料である。屈折率n1は屈折率n2よりも大きく、好ましくは屈折率n1、n2の差は少なくとも0.2、好ましくは少なくとも0.5までである。
【0193】
第1の単一層11、13、15、17、19および第2の単一層12、14、16、187、20の順序は、スタック40で同じままであり、その結果、各層パケット42、44、46、48、50において、基板に相対的に近いそれぞれの第1の単一層11、13、15、17、19は、常に相対的に高い屈折率の層であり、基板から相対的に遠いそれぞれの第2の単一層12、14、16、18、20は、常に、単一層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20のうちの、相対的に低い屈折率の層である。
【0194】
特に、相対的に高い屈折率の単一層11、13、15、17、19は高屈折率材料の層であり得、相対的に低い屈折率の単一層12、14、16、18、20は低屈折率材料の層であり得る。
【0195】
スタック40の層パケット42、44、46、48、50は、それらのそれぞれの厚さおよび/または各層パケット42、44、46、48、50の個々の単一層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20の厚さのみが異なる。
【0196】
それ自体知られている方法で、スタック40は、例えば層システム10を維持するために機能するカバー層32で終端している。カバー層32は、スタック40の最上層パケット50の最後の光学的に関連する単一層20に適用され、例えば、フッ素含有分子を含むことができる。カバー層32は、通常、改善されたメンテナンス特性をスタック40に付与し、その特性は、一般的には15mN/m未満の表面エネルギーで撥水および撥油機能などである。
【0197】
カバー層32は、層システム10の光学特性のさらなる考察にさらに関係するものではない。
【0198】
層システム10のスタック40の光学特性は、それ自体知られている計算方法および/または最適化方法によって計算的にシミュレーションすることができる。次いで、層システム10は、層パケット42、44、46、48、50の単一副層60、62の決定された層厚で製造される。
【0199】
光学層システム10の製造において、層システム10のその光学特性は、副層60、62の製造中に調整される。例えば、WO2016/110339A1から知られている方法を使用することができ、これを以下で簡単に概説する。既知の方法では、使用される材料は同じままで、層厚を変えるだけで、材料システムにおいてミラーリングまたは反射低減などの様々な光学効果を達成することができる。しかしながら、他の方法も可能である。
【0200】
材料が同じままで、WO2016/110339A1に記載されているように層パケットの厚さを変えることによって、特に反射低減効果のために、異なる反射率を達成することができる。これは、それぞれパラメータσを最小化または最適化することによって達成される。次に、パラメータσは、スタック40の、4つの層パケット42、44、46、48(図示せず)または図5による5つの層パケット42、44、46、48、50それぞれの、単一層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20の層厚の関数、または単一層11、12、14、13、15、16、17、18、19、20のそれぞれの光学的厚さt1、t2の比の関数である。
【0201】
特定の波長λにおいて、FWOT(全波光学的厚さ)とも呼ばれる層の光学的厚さtは、次のように決定される
【0202】
【0203】
ここで、dは層厚を表し、λは設計波長を表し、nは単一層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20の屈折率を表す。
【0204】
反射率Rと変数σとの積が1未満に設定される場合、スタック40の所定の反射率Rに対して、スタック40による反射低減効果を達成することができる。
【0205】
【0206】
反射率(reflectance)とも呼ばれる反射率(reflectivity)Rは、ここでは、エネルギー量としての光ビームの反射強度と入射強度との比を表す。反射率Rは、便宜上、380nm~800nmの光の範囲にわたって平均化され、100%で表記される。
【0207】
そのような条件Rσ<1は、層システム10の製造のための方法の最適化プロセスのための境界条件として適用することができる。
【0208】
層パケット42、44、46、48、50の第1および第2の単一層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20の光学的厚さt1、t2は、最適化方法によって、好ましくは変分計算によってパラメータσを決定することによって決定される。
【0209】
その中で、好ましくは、5つの層パケット42、44、46、48、50がスタック40に存在するときのそれぞれの単一層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20の厚さは、それぞれの層スタック42、44、46、48、50の、それぞれの相対的に高い屈折率の第1の単一層11、13、15、17、19の第1光学的厚さt1と、相対的に低い屈折率の第2の単一層12、14、16、18、20の第2光学的厚さt2との商V(i=1、2、3、4、5)の関数として形成される。
【0210】
有利な設計では、図5による層システム10において、5つの連続する層パケット42、44、46、48、50を備えるスタック40のパラメータσは、以下の関係から決定することができる。
【0211】
【0212】
ここで、i=2~nmax=5である。
【0213】
インデックスi=1、2、3、4、5は、基板22上の層パケット42、44、46、48、50の順序を表す。したがって、vは、基板に最も近い層パケット42を表し、vは、基板から最も遠い層パケット50を表す。
【0214】
DIN EN ISO 1 1664-4:2012-06(EN ISO 11664-4:2011)に記載されているように、デカルト座標のいわゆるCIE-L色空間(単純化CIELab色空間)において知覚的に関連する色を指定することが知られている。
【0215】
はCIELab明度であり、a、bはCIELab座標であり、CはCIELab彩度であり、habはCIELab色相角である。
【0216】
軸は、0から100までの値の色の明度(輝度)を表す。L軸は、ゼロ点でa平面に垂直である。これはニュートラルグレー軸とも呼ばれる場合があり、その理由は、黒色(L=0)端点と白色(L=100)端点との間に、すべての無彩色(グレートーン)が含まれるためである。
【0217】
軸上では、緑色と赤色は互いに反対にあり、b軸は青色と黄色との間に延在する。補色の色調は、中心において互いに180°反対になっている、すなわち、座標原点a=0、b=0は灰色である。
【0218】
軸は、色の緑色成分または赤色成分を表し、負の値は緑色を表し、正の値は赤色を表す。b軸は、色の青色成分または黄色成分を表し、負の値は青色を表し、正の値は黄色を表す。
【0219】
値は約-170~+100の範囲であり、b値は-100~+150の範囲であり、特定の色調の中程度の明度でのみ、最大値に達する。CIELab色体は、中程度の明度範囲で最大の範囲を有するが、この範囲は、色の範囲に応じて高さおよびサイズが変化する。
【0220】
CIELab色相角habは、aとbの両方が正である場合は0°~90°、bが正でaが負である場合は90°~180°、aとbの両方が負である場合は180°~270°、bが負でaが正である場合は270°~360°でなければならない。
【0221】
CIE-Lh色空間(単純化CIELCh色空間)では、CIELab色空間のデカルト座標が極座標に変換される。円柱座標C(彩度、相対色飽和度、中心のL軸からの距離)とh(色相角、CIELab色円の色調の角度)が指定される。CIELab明度Lは変化しないままである。
【0222】
色相角hは、a軸とb軸から得られる。
【0223】
【0224】
ここでの色相角hは、反射低減層システム10の残留反射の色を表す。
【0225】
彩度Cは以下のようになる。
【0226】
【0227】
彩度Cは色深度とも呼ばれる。
【0228】
単一層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20の層厚d_target_11、...、d_target_20を設定するために、最適化目標に達するまで単一層厚d_target_11、...、d_target_20を変化させるための最適化方法が実行される。次いで、最適化方法は、最適化目標(色安定性)に達するまで、単一層厚d_target_11、...、d_target_20を変化させる。
【0229】
これにより、色相角hは、境界値が0°および30°を有する視野角AOIの間隔を最大で15°、好ましくは最大で10°変化させることができる。層システム10上への表面法線70に対する、0°から上側境界値30°および45°を有する境界視野角θまでの視野角AOIの第2の間隔における色相角hの変化Δhの値は、視野角AOIの第2の間隔における彩度Cの変化ΔCの値よりも小さくすることができ、境界視野角θにおける彩度Cの値は、少なくともθ=2とすることができ、特に、第2の間隔における色相角hは、最大で20°、好ましくは最大で15°変化することができる。
【0230】
境界値0°および30°を有する視野角AOIの間隔における明所反射率Rvは、有利には最大1.5%、好ましくは最大1.2%とすることができる。
【0231】
境界値0°および30°を有する視野角AOIの間隔における暗所反射率Rv’は、有利には最大1.5%、好ましくは最大1.2%とすることができる。
【0232】
図6図11には、光の垂直入射における反射率曲線が、それぞれ、目標測定曲線92、またはシミュレーション実測定曲線94と共に、実測定曲線90としてそれぞれ図示されている。
【0233】
図6は、本発明による層システム10の反射率曲線を、280nm~800nmの波長範囲における実測定曲線90(実線)と目標測定曲線92(点線)との比較により示し、図7は、図6の反射率曲線の拡大図である。目標測定曲線92は、目標測定曲線92としてのデータベース106から実測定曲線90との極値比較によって決定された。強いピークシフトは、280nm~380nmの低波長範囲、および図7の拡大図で380nm~680nmの波長範囲で見ることができる。
【0234】
図8には、目標測定曲線92(点線)とスケーリングされたシミュレーション目標測定曲線98(実線)とを比較した層システム10の反射率曲線が図示されている。これにより、シミュレーション目標測定曲線98の水平シフトが生じた。完全な層システム10がスケーリングされ、すなわち、層システム10を表す単一層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20のすべての物理層厚g_target_11、...、g_target_20を含むベクトルにスケール因子122が乗算され、すなわち、各単一層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20は、同じスケール因子122によってそれぞれより厚く、またはより薄くされた。
【0235】
図9は、目標測定曲線92と、380nm~580nmの第1のスペクトル間隔82において目標測定曲線92にフィットされたシミュレーション目標測定曲線98とを比較した、層システム10の反射率曲線を示している。ここでは、反復最適化法にシンプレックスアルゴリズムを適用した。アルゴリズムは、物理層厚g_target_11、...、g_target_20を変更することによって、380nm~580nmの間隔において目標測定曲線92に、前のステップからのシミュレーション目標測定曲線98を可能な限り正確にマッピングする最適化目標から開始された。これは、選択された間隔82における両方の測定曲線92、98の非常に良好な近似をもたらす。
【0236】
図10は、目標測定曲線92と、380nm~780nmのより大きなスペクトル間隔84において目標測定曲線92にフィットされたシミュレーション目標測定曲線98とを比較した、層システム10の反射率曲線を示している。このとき、380nm~780nmのより大きな間隔84にシンプレックス最適化を適用した。層厚の関係は考慮されなかった。400nm付近のより低い波長範囲では、両方の測定曲線92、98の間の一致性はわずかに悪いが、580nm~680nmのより高い波長範囲ではより良好である。
【0237】
図11は、目標測定曲線92と、280nm~800nmの間隔86としての波長範囲全体にわたって目標測定曲線92にフィットされたシミュレーション目標測定曲線98とを比較した、層システム10の反射率曲線を示している。このとき、280nm~800nmのより大きい間隔86にシンプレックス最適化を適用した。層厚の関係は考慮されなかった。両測定曲線92、98の間の一致性は、480nm~580nmの中間波長範囲でわずかに悪化しているが、280nm~800nmの全波長範囲で平均して改善されている。
【0238】
図12は、本発明のさらなる実施形態によるコーティング設備108のシステム200のブロック図を示す。システム200はまた、本発明の第1の態様による自己制御およびフィードバック制御プロセスで動作可能なスタンドアロンシステムと考えることもできる。これに関して、光学素子80のための層システム10を製造するためのコーティング設備108のシステム200は、基板22を光学素子80のための層システム10でコーティングするための2つのコーティング設備108と、コーティング設備108を制御し、シミュレーションコンピュータ102と通信するための各制御コンピュータ110、層システム10のスペクトル分解実測定曲線90を決定するための、1つのコーティング設備108当たり1つの光学測定装置112と、層システム10の光学計算および最適化のためのシミュレーションソフトウェア104がインストールされ、コーティング設備108の制御コンピュータ102と通信するシミュレーションコンピュータ102と、を備える。システム200はさらに、
設備データセットDATを格納するためのデータベース106、シミュレーションコンピュータ102を入力および制御するための入力装置114ならびに/またはコーティング設備108を備える。コーティング設備108のこのようなシステム200により、有利には、1つのシミュレーションコンピュータ102を介して複数のコーティング設備108を制御し、層システム10を備える光学素子80の製造のためのコーティングプロセスを慣らし運転および/または最適化することが可能である。
図1
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図12
【国際調査報告】