IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジェイアールエイチエス セラピューティクス インク.の特許一覧

特表2022-513884B型肝炎ウイルスワクチンおよびその使用
<>
  • 特表-B型肝炎ウイルスワクチンおよびその使用 図1
  • 特表-B型肝炎ウイルスワクチンおよびその使用 図2
  • 特表-B型肝炎ウイルスワクチンおよびその使用 図3
  • 特表-B型肝炎ウイルスワクチンおよびその使用 図4A
  • 特表-B型肝炎ウイルスワクチンおよびその使用 図4B
  • 特表-B型肝炎ウイルスワクチンおよびその使用 図5
  • 特表-B型肝炎ウイルスワクチンおよびその使用 図6
  • 特表-B型肝炎ウイルスワクチンおよびその使用 図7
  • 特表-B型肝炎ウイルスワクチンおよびその使用 図8
  • 特表-B型肝炎ウイルスワクチンおよびその使用 図9
  • 特表-B型肝炎ウイルスワクチンおよびその使用 図10
  • 特表-B型肝炎ウイルスワクチンおよびその使用 図11
  • 特表-B型肝炎ウイルスワクチンおよびその使用 図12
  • 特表-B型肝炎ウイルスワクチンおよびその使用 図13
  • 特表-B型肝炎ウイルスワクチンおよびその使用 図14
  • 特表-B型肝炎ウイルスワクチンおよびその使用 図15
  • 特表-B型肝炎ウイルスワクチンおよびその使用 図16
  • 特表-B型肝炎ウイルスワクチンおよびその使用 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(54)【発明の名称】B型肝炎ウイルスワクチンおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/51 20060101AFI20220202BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20220202BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220202BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220202BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220202BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220202BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220202BHJP
   A61K 39/29 20060101ALI20220202BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
C12N15/51
C12N7/01 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/29
A61P31/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534263
(86)(22)【出願日】2019-12-09
(85)【翻訳文提出日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 US2019065151
(87)【国際公開番号】W WO2020123341
(87)【国際公開日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】62/778,549
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521258131
【氏名又は名称】ジェイアールエイチエス セラピューティクス インク.
【氏名又は名称原語表記】JRHS THERAPEUTICS INC.
【住所又は居所原語表記】7 Fengxian East Road,No 231,Building 1,Haidian District,Beijing 10094,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スー,チョアン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,メイジィア
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA83X
4B065AA86X
4B065AA87X
4B065AA90X
4B065AA96X
4B065AA96Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA45
4C085AA03
4C085BA87
4C085GG03
(57)【要約】
組換えHBV表面抗原を含むB型肝炎ウイルス(HBV)ワクチン粒子であって、L表面タンパク質;任意選択でM表面タンパク質;および任意選択でS表面タンパク質を含み、L、MおよびS表面タンパク質の合計に対するL表面タンパク質のモルパーセンテージが、少なくとも約1モル%、8モル%、10モル%、20モル%、30モル%、40モル%、または50モル%である、B型肝炎ウイルス(HBV)ワクチン粒子が記載される。そのB型肝炎ウイルス(HBV)ワクチン粒子を作製する方法、およびそれを使用して対象のHBV感染を処置または予防する方法もまた記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
L表面タンパク質;
任意選択でM表面タンパク質;および
任意選択でS表面タンパク質
を含む組換えHBV表面抗原を含むB型肝炎ウイルス(HBV)ワクチン粒子であって、前記L、MおよびS表面タンパク質におけるL表面タンパク質のパーセンテージが、少なくとも約1モル%である、B型肝炎ウイルス(HBV)ワクチン粒子。
【請求項2】
前記L、M、およびS表面タンパク質におけるL表面タンパク質のパーセンテージが、少なくとも約2モル%、3モル%、4モル%、5モル%、6モル%、7モル%、または8モル%である、請求項1に記載のHBVワクチン粒子。
【請求項3】
前記L、M、およびS表面タンパク質におけるL表面タンパク質のパーセンテージが、約8モル%を超える、請求項1に記載のHBVワクチン粒子。
【請求項4】
前記L、M、およびS表面タンパク質におけるL表面タンパク質のパーセンテージが、約9モル%、10モル%、11モル%、12モル%、13モル%、14モル%、15モル%、16モル%、17モル%、18モル%、19モル%、20モル%、21モル%、22モル%、23モル%、24モル%、25モル%、26モル%、27モル%、28モル%、29モル%、30モル%、31モル%、32モル%、33モル%、34モル%、35モル%、36モル%、37モル%、38モル%、39モル%、40モル%、41モル%、42モル%、43モル%、44モル%、45モル%、46モル%、47モル%、48モル%、49モル%、または50モル%を超える、請求項1に記載のHBVワクチン粒子。
【請求項5】
前記L、M、およびS表面タンパク質におけるL表面タンパク質のパーセンテージが、少なくとも約60モル%、70モル%、80モル%、90モル%、または100モル%である、請求項1に記載のHBVワクチン粒子。
【請求項6】
MまたはSタンパク質を含まない、請求項1に記載のHBVワクチン粒子。
【請求項7】
ウイルス様粒子である、請求項1に記載のHBVワクチン粒子。
【請求項8】
前記L、M、およびS表面タンパク質におけるL表面タンパク質のパーセンテージが、約10モル%~約40モル%、5~15モル%、15~25モル%、25~40モル%、または40~60モル%である、請求項1に記載のHBVワクチン粒子。
【請求項9】
前記L表面タンパク質が、内部シスエレメントを有しない組換え核酸配列によってコードされる、請求項1から8のいずれか一項に記載のHBVワクチン粒子。
【請求項10】
図9に示されるようにクローンA4または51を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のHBVワクチン粒子。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のHBVワクチン粒子およびアジュバントを含むHBVワクチン。
【請求項12】
前記アジュバントが、ミョウバン、トール様受容体、およびコロイド金からなる群から選択される、請求項11に記載のHBVワクチン。
【請求項13】
それを必要とする対象におけるHBV感染を処置または予防する方法であって、有効量の請求項11または12に記載のHBVワクチンを前記対象に投与するステップを含む方法。
【請求項14】
前記対象がヒトである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
L表面タンパク質をコードする組換え核酸配列であって、内部シスエレメントを有しない組換え核酸配列。
【請求項16】
請求項15に記載の組換え核酸配列を含む、L表面タンパク質を発現するための組換え発現ベクター。
【請求項17】
請求項16に記載の組換え発現ベクターで形質転換された細胞。
【請求項18】
前記S表面タンパク質をコードする第2の組換え核酸配列を含む第2の組換え発現ベクター、および
前記M表面タンパク質をコードする第3の組換え核酸配列を含む第3の組換え発現ベクター
によってさらに形質転換された、請求項17に記載の細胞。
【請求項19】
1つまたは複数のさらなる組換え発現ベクターによってさらに形質転換された、請求項17または18に記載の細胞。
【請求項20】
HBVコア抗原をコードする第4の組換え核酸配列を含む第4の発現ベクターによってさらに形質転換された、請求項17または18に記載の細胞。
【請求項21】
大腸菌、真菌、昆虫または哺乳動物タンパク質発現宿主に由来する、請求項17~20のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項22】
HEK-293細胞またはCHO細胞に由来する、請求項21に記載の細胞。
【請求項23】
HBVワクチン粒子を調製するための方法であって、
a)L、MおよびS表面タンパク質をそれぞれコードする第1、第2および第3の組換え核酸配列を含む組換え発現ベクターを提供するステップであって、前記第1、第2および第3の組換え核酸配列は、内部シスエレメントを有さないステップと;
b)前記組換え発現ベクターで細胞を形質転換するステップと;
c)細胞がL、MおよびS表面タンパク質を共発現するように培養および選択するステップと
を含む方法。
【請求項24】
L、MおよびS表面タンパク質のそれぞれが、別個の発現ベクター中にある、請求項23記載の方法。
【請求項25】
細胞が前記L、MおよびS表面タンパク質においてL表面タンパク質を少なくとも約1モル%、2モル%、3モル%、4モル%、5モル%、6モル%、7モル%、8モル%、9モル%、10モル%、11モル%、12モル%、13モル%、14モル%、15モル%、16モル%、17モル%、18モル%、19モル%、20モル%、21モル%、22モル%、23モル%、24モル%、25モル%、26モル%、27モル%、28モル%、29モル%、30モル%、31モル%、32モル%、33モル%、34モル%、35モル%、36モル%、37モル%、38モル%、39モル%、40モル%、41モル%、42モル%、43モル%、44モル%、45モル%、46モル%、47モル%、48モル%、49モル%または50モル%のパーセンテージで発現するように選択するステップをさらに含む、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
細胞が前記L、MおよびS表面タンパク質においてL表面タンパク質を少なくとも約60モル%、70モル%、80モル%、90モル%または100モル%のパーセンテージで発現するように選択するステップをさらに含む、請求項23、24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記組換え発現ベクターが、前記HBVコア抗原をコードする第4の組換え核酸配列をさらに含み、ステップc)が、L、MおよびS表面タンパク質ならびにHBVコア抗原を共発現する細胞を培養および選択することを含む、請求項23~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記細胞が、昆虫または哺乳動物のタンパク質発現宿主に由来する、請求項23~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記細胞が、HEK-293細胞またはCHO細胞に由来する、請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年12月12日に出願された米国仮出願第62/778,549号の利益を主張し、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
参照による組み込み
本明細書に引用される全ての特許、特許出願、および論文の全内容は、その全体が参照により明示的に組み込まれる。
【0003】
本発明は、B型肝炎ウイルス(HBV)ワクチンに関する。
【背景技術】
【0004】
慢性B型肝炎ウイルス(HBV)感染は、依然として世界的な公衆衛生管理の課題である。世界中で3億5000万人を超える患者が慢性B型肝炎感染に罹患しており、毎年100万件を超える死亡をもたらしている。例えば、非特許文献1;非特許文献2;および非特許文献3を参照されたい。特に、中国等の発展途上国では、人口の10%近くが罹患している(例えば、非特許文献4;非特許文献5を参照されたい)。さらに、慢性疾患のキャリア患者の大部分が肝細胞癌を発症する。例えば、非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8を参照されたい。
【0005】
ヌクレオシド阻害剤の使用等の現在の処置は、共有結合的に閉じた環状DNA(cccDNA)の転写を阻害せず、しばしば薬物耐性をもたらす。インターフェロンアルファ処置は、許容できない副作用をもたらし(非特許文献9)、処置された患者のせいぜい10%しか抗体陽転を達成しない。したがって、この現在の健康管理の問題に対処するために、より効果的な処置オプションが依然として必要とされている。
【0006】
B型肝炎ウイルスの表面エンベロープは、L、M、およびSと命名された3つのタンパク質を含む。3つのタンパク質は共通のC末端を共有するが、M形態はSと比較して余分なN末端PreS2配列を含み、L形態はMおよびSと比較して追加のPreS1配列を含む(非特許文献10)。PreS1配列は、受容体結合配列(aa21~47)を含み、肝細胞へのウイルスの特異的結合を担うと報告されている。例えば、非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13;および非特許文献14を参照されたい。最近、タウロコール酸ナトリウム共輸送ポリペプチドが、ヒトB型肝炎ウイルスの機能的受容体として同定された。例えば、非特許文献15;非特許文献16を参照されたい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kane,M.,1995.Global programme for control of hepatitis B infection.Vaccine,13,pp.S47-S49
【非特許文献2】Lavanchy,D.,2004Hepatitis B virus epidemiology,disease burden,treatment,and current and emerging prevention and control measures.Journal of Viral Hepatitis,11(2),pp.97-107
【非特許文献3】Maddrey,W.C.,2001.Hepatitis B--an important public health issue.Clinical laboratory,47(1-2),pp.51-55
【非特許文献4】Yao,J.L.,1996.Perinatal transmission of hepatitis B virus infection and vaccination in China.Gut,38(Suppl2),pp.S37-S38
【非特許文献5】Liang,X.,et al.,2009,Epidemiological serosurvey of hepatitis B in China-declining HBV prevalence due to hepatitis B vaccination.Vaccine,27(47),pp.6550-6557
【非特許文献6】Bosch,F.X.,Ribes,J.and Borras,J.,1999,Epidemiology of primary liver cancer,in Seminars in Liver Disease,Vol.19,No.03,pp.271-285,Thieme Medical Publishers,Inc.
【非特許文献7】Bosch,F.X.,Ribes,J.,Cleries,R.and Diaz,M.,2005,Epidemiology of hepatocellular carcinoma,Clinics in Liver Disease,9(2),pp.191-211
【非特許文献8】Ribes,J.,Cleries,R.,Rubio,A.,Hernandez,J.M.,Mazzara,R.,Madoz,P.,Casanovas,T.,Casanova,A.,Gallen,M.,Rodriguez,C.and Moreno,V.,2006,Cofactors associated with liver disease mortality in an HBsAg-positive Mediterranean cohort:20years of follow-up,International Journal of Cancer,119(3),pp.687-694
【非特許文献9】Lok,A.S.and McMahon,B.J.,2007.Chronic hepatitis B.Hepatology,45(2),pp.507-539)
【非特許文献10】Ganem,D.and Varmus,H.E.,1987.The molecular biology of the hepatitis B viruses.Annual Review of Biochemistry,56(1),pp.651-693
【非特許文献11】Barrera,A.,Guerra,B.,Notvall,L.and Lanford,R.E.,2005,Mapping of the hepatitis B virus pre-S1 domain involved in receptor recognition,Journal of Virology,79(15),pp.9786-9798
【非特許文献12】Neurath,A.R.,Kent,S.B.H.,Strick,N.and Parker,K.,1986,Identification and chemical synthesis of a host cell receptor binding site on hepatitis B virus,Cell,46(3),pp.429-436
【非特許文献13】Neurath,A.R.,Seto,B.and Strick,N.,1989,Antibodies to synthetic peptides from the preS1 region of the hepatitis B virus(HBV)envelope(env)protein are virus-neutralizing and protective,Vaccine,7(3),pp.234-236
【非特許文献14】Dash,S.,Rao,K.V.and Panda,S.K.,1992,Receptor for pre-Sl(21-47)component of hepatitis B virus on the liver cell:Role in virus cell interaction,Journal of Medical Virology,37(2),pp.116-121
【非特許文献15】Yan,H.,et al.,2012,Sodium taurocholate cotransporting polypeptide is a functional receptor for human hepatitis B and D virus.Elife,1,p.e00049
【非特許文献16】Ni,Y.,et al.,2014,Hepatitis B and D viruses exploit sodium taurocholate co-transporting polypeptide for species-specific entry into hepatocytes.Gastroenterology,146(4),pp.1070-1083
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
有効なHBVワクチンが依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様において、
L表面タンパク質;
任意選択でM表面タンパク質;および
任意選択でS表面タンパク質
を含む組換えHBV表面抗原を含むB型肝炎ウイルス(HBV)ワクチン粒子が開示され、L、MおよびS表面タンパク質におけるL表面タンパク質のパーセンテージは、少なくとも約1モル%である。
【0010】
本明細書に開示される実施形態のいずれか1つにおいて、L、M、およびS表面タンパク質におけるL表面タンパク質のパーセンテージは、少なくとも約2モル%、3モル%、4モル%、5モル%、6モル%、7モル%、または8モル%である。
【0011】
本明細書に開示される実施形態のいずれか1つにおいて、L、M、およびS表面タンパク質におけるL表面タンパク質のパーセンテージは、約8モル%を超える。
【0012】
本明細書に開示される実施形態のいずれか1つにおいて、L、M、およびS表面タンパク質におけるL表面タンパク質のパーセンテージは、約9モル%、10モル%、11モル%、12モル%、13モル%、14モル%、15モル%、16モル%、17モル%、18モル%、19モル%、20モル%、21モル%、22モル%、23モル%、24モル%、25モル%、26モル%、27モル%、28モル%、29モル%、30モル%、31モル%、32モル%、33モル%、34モル%、35モル%、36モル%、37モル%、38モル%、39モル%、40モル%、41モル%、42モル%、43モル%、44モル%、45モル%、46モル%、47モル%、48モル%、49モル%、または50モル%を超える。
【0013】
本明細書に開示される実施形態のいずれか1つにおいて、L、M、およびS表面タンパク質におけるL表面タンパク質のパーセンテージは、少なくとも約60モル%、70モル%、80モル%、90モル%、または100モル%である。
【0014】
本明細書に開示される実施形態のいずれか1つにおいて、HBVワクチン粒子は、MまたはSタンパク質を含まない。
【0015】
本明細書に開示される実施形態のいずれか1つにおいて、HBVワクチン粒子は、ウイルス様粒子である。
【0016】
本明細書に開示される実施形態のいずれか1つにおいて、L、MおよびS表面タンパク質におけるL表面タンパク質のパーセンテージは、約10モル%~約40モル%、5~15モル%、15~25モル%、25~40モル%または40~60モル%である。
【0017】
本明細書に開示される実施形態のいずれか1つにおいて、HBVワクチン粒子は、図9に示されるようにクローンA4または51を含む。
【0018】
本明細書に開示される実施形態のいずれか1つにおいて、L表面タンパク質は、内部シスエレメントを有しない組換え核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、L表面タンパク質は、Sタンパク質発現を駆動する内部シスエレメントを有しない組換え核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、L表面タンパク質は、Mタンパク質発現を駆動する内部シスエレメントを有しない組換え核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、L表面タンパク質は、MまたはSタンパク質発現を駆動する内部シスエレメントを有しない組換え核酸配列によってコードされる。
【0019】
別の態様において、実施形態のいずれか1つのHBVワクチン粒子およびアジュバントを含むHBVワクチンが開示される。
【0020】
本明細書に開示される実施形態のいずれか1つにおいて、アジュバントは、ミョウバン、トール様受容体、およびコロイド金からなる群から選択される。
【0021】
さらに別の態様において、それを必要とする対象におけるHBV感染を処置または予防する方法であって、本明細書に開示される実施形態のいずれか1つの有効量のHBVワクチンを対象に投与するステップを含む方法が開示される。
【0022】
本明細書に開示される実施形態のいずれか1つにおいて、対象はヒトである。
【0023】
さらに別の態様において、L表面タンパク質をコードする組換え核酸配列が開示され、組換え核酸配列は、内部シスエレメントを有しない。
【0024】
さらに別の態様において、本明細書に開示される実施形態のいずれか1つの組換え核酸配列を含む、L表面タンパク質を発現するための組換え発現ベクターが開示される。
【0025】
さらに別の態様において、本明細書に開示される実施形態のいずれか1つの組換え発現ベクターで形質転換された細胞が説明される。
【0026】
本明細書に開示される実施形態のいずれか1つにおいて、細胞は、
S表面タンパク質をコードする第2の組換え核酸配列を含む第2の組換え発現ベクター、および
M表面タンパク質をコードする第3の組換え核酸配列を含む第3の組換え発現ベクター
によってさらに形質転換される。
【0027】
本明細書に開示される実施形態のいずれか1つにおいて、細胞は、1つまたは複数のさらなる組換え発現ベクターによってさらに形質転換される。
【0028】
本明細書に開示される実施形態のいずれか1つにおいて、細胞は、HBVコア抗原をコードする第4の組換え核酸配列を含む第4の発現ベクターによってさらに形質転換される。
【0029】
本明細書に開示される実施形態のいずれか1つにおいて、細胞は、昆虫または哺乳動物のタンパク質発現宿主に由来する。本明細書に開示される実施形態のいずれか1つにおいて、細胞は、大腸菌または真菌に由来する。
【0030】
本明細書に開示される実施形態のいずれか1つにおいて、細胞は、HEK-293細胞またはCHO細胞に由来する。
【0031】
さらに別の態様において、HBVワクチン粒子を調製するための方法であって、
a)L、MおよびS表面タンパク質をそれぞれコードする第1、第2および第3の組換え核酸配列を含む組換え発現ベクターを提供するステップであって、第1、第2および第3の組換え核酸配列は、内部シスエレメントを有さないステップと;
b)組換え発現ベクターで細胞を形質転換するステップと;
c)細胞がL、MおよびS表面タンパク質を共発現するように培養および選択するステップと
を含む方法が説明される。
【0032】
本明細書に開示される実施形態のいずれか1つにおいて、L、S、およびM表面タンパク質のそれぞれは、別個の発現ベクター中にある。
【0033】
本明細書に開示される実施形態のいずれか1つにおいて、方法は、細胞がL、MおよびS表面タンパク質においてL表面タンパク質を少なくとも約1モル%、2モル%、3モル%、4モル%、5モル%、6モル%、7モル%、8モル%、9モル%、10モル%、11モル%、12モル%、13モル%、14モル%、15モル%、16モル%、17モル%、18モル%、19モル%、20モル%、21モル%、22モル%、23モル%、24モル%、25モル%、26モル%、27モル%、28モル%、29モル%、30モル%、31モル%、32モル%、33モル%、34モル%、35モル%、36モル%、37モル%、38モル%、39モル%、40モル%、41モル%、42モル%、43モル%、44モル%、45モル%、46モル%、47モル%、48モル%、49モル%または50モル%のパーセンテージで発現するように選択するステップをさらに含む。
【0034】
本明細書に開示される実施形態のいずれか1つにおいて、方法は、細胞がL、MおよびS表面タンパク質においてL表面タンパク質を少なくとも約60モル%、70モル%、80モル%、90モル%または100モル%のパーセンテージで発現するように選択するステップをさらに含む。
【0035】
本明細書に開示される実施形態のいずれか1つにおいて、組換え発現ベクターは、HBVコア抗原をコードする第4の組換え核酸配列をさらに含み、ステップc)は、L、MおよびS表面タンパク質ならびにHBVコア抗原を共発現する細胞を培養および選択することを含む。
【0036】
本明細書に開示される実施形態のいずれか1つにおいて、細胞は、昆虫または哺乳動物のタンパク質発現宿主に由来する。本明細書に開示される実施形態のいずれか1つにおいて、細胞は、大腸菌または真菌に由来する。本明細書に開示される実施形態のいずれか1つにおいて、細胞は、HEK-293細胞またはCHO細胞に由来する。
【0037】
本明細書に開示される任意の態様または実施形態は、本明細書に開示される別の態様または実施形態と組み合わせることができる。本明細書に記載の1つまたは複数の実施形態と、本明細書に記載の他の1つまたは複数の実施形態との組み合わせが、明示的に企図される。
【0038】
別段に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載の方法および材料と類似または同等の方法および材料を本発明の実践または試験に使用することができるが、適切な方法および材料を以下に記載する。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。さらに、材料、方法、および実施例は例示にすぎず、限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本発明は、例示のみを目的として提示され、限定することを意図するものではない以下の図を参照して説明される。
【0040】
図1】Lタンパク質発現のウエスタンブロット分析を示す図である。レーン1.分子量ラダー;レーン2.モックトランスフェクション;レーン3.L形態;レーン4.追加のN末端シグナルペプチドを有するL形態。分泌されたLタンパク質は、49KDa~60KDaのタンパク質として可視化されることに留意されたい。
図2】単独または組み合わせのいずれかでのS、MおよびLタンパク質の一過性発現を示す図である(馴化培地中のHBsAg粒子の存在がELISA分析によって検出された;同時トランスフェクションS+M+Lは、低レベルのHBsAg粒子を示したが検出可能であり、Lタンパク質の高い発現がMまたはSタンパク質の分泌を阻害することが確認された)。
図3】コアタンパク質の存在下でのL、MおよびSタンパク質の一過性発現のELISA検出を示す図であり、コアタンパク質が粒子の分泌に影響しないことを示している。
図4A】抗PreS2モノクローナル抗体S26(左パネル)および抗Sポリクローナル抗体(右パネル)によって認識されるタンパク質を発現した293F安定クローン16、23、50、51および12のウエスタンブロットスクリーニングを示す図である。馴化培地を72時間後に回収し、L、MおよびS形態の存在を、PreS2特異的モノクローナル抗体S26(左パネル)およびSに対するポリクローナル抗体(右パネル)を使用したウエスタン分析によってスクリーニングした。
図4B】抗PreS2モノクローナル抗体S26(左パネル)および抗Sポリクローナル抗体(右パネル)によって認識されるタンパク質を発現したCHO安定クローン7C8および10E3のウエスタンブロットスクリーニングを示す図である。
図5】抗Sポリクローナル抗体(左パネル)および抗PreS2モノクローナル抗体S26(右パネル)によって認識されるタンパク質を発現した293F安定クローンA4および51のウエスタンブロットスクリーニングを示す図である。馴化培地を72時間後に回収し、L、MおよびS形態の存在をウエスタン分析によってスクリーニングした。
図6】さらなる安定発現クローン26、43、88をL、M、およびSタンパク質の存在についてスクリーニングしたことを示す図である。個々のクローンを293FreeStyle発現培地で増殖させた。馴化培地を72時間後に回収し、L、MおよびS形態の存在を、PreS2特異的モノクローナル抗体S26(左パネル)およびSに対するポリクローナル抗体(右パネル)を使用したウエスタンブロット分析によってスクリーニングした。
図7】クローン51の最終SEC精製の銀染色分析画分を示す図である。クローン51の馴化培地を濃縮し、ヒドロキシアパタイトによって捕捉し、サイズ排除クロマトグラフィーによって分画した。最後の2つのレーンは、参照タンパク質として分画されたBSAタンパク質である。
図8】クローンA4についての最終SEC精製の銀染色分析画分を示す図である。クローンA4の馴化培地を濃縮し、HBsAg粒子をヒドロキシアパタイトによって捕捉し、サイズ排除クロマトグラフィーによって分画した。
図9】クローンA4および51由来の精製HBsAgタンパク質のクーマシー染色を示す図である。BCA推定による約10μgのタンパク質を各レーンにロードした。タンパク質の同一性を、ゲルペプチド中でウエスタンブロットおよびその後質量分析法によって検証した。レーン1、2、3は、クローンA4の3つの異なる調製物である。レーン4は、クローン51の代表的な調製物の一つである。
図10】抗Sポリクローナル抗体(左パネル)および抗PreS2モノクローナル抗体S26(中央パネル)および抗PreS1モノクローナル抗体AP1(右パネル)を使用した精製HBsAg粒子のウエスタンブロット分析を示す図である。左側レーンおよび中央レーンは、クローンA4の2つの異なる調製物である。右側のレーンは、クローン51からの精製タンパク質調製物である。
図11】L、MおよびS形態が少なくとも部分的にグリコシル化されていることを示す図である。精製されたタンパク質をPNGaseで処理し、グリカンの除去をSDS PAGEおよびウエスタンブロット分析によって監視した。
図12】クローン16由来の精製HBsAg粒子の電子顕微鏡写真を示す図である。
図13】クローン51由来の精製HBsAg粒子の電子顕微鏡写真を示す図である。
図14】精製LMSウイルス様粒子を用いて2匹のマウスが免疫化されたマウス血清力価を示す図である。酵母由来HBsAgを免疫対照として使用した。最初の免疫化の35日後、ウイルス様粒子に対する抗体応答の力価を連続希釈によって決定した。HBsAg-1、HBsAg-2:酵母で産生されたS形態HBsAgを用いてマウスを免疫化した。#16-1、#16-2:マウスをクローン16由来の精製LMS HBsAgで免疫化した。#51-1、#51-2:マウスをクローン#51由来の精製LMS HBsAgで免疫化した。
図15】精製HBsAg粒子を使用してアッセイされた抗体力価を示す。各バーは、Balb C系統の1匹のマウスにおける抗体力価を表す。
図16】精製された直鎖状のPreS2ペプチドを使用して、PreS2領域に対する抗体応答を試験したことを示す図である。4匹全てのマウス由来の血清は、PreS2ペプチドに対して反応性であったが、BSA対照に対しては反応性でなかった。
図17】4匹全ての免疫マウスから脾臓を取り出し、マウスからのB細胞を使用してハイブリドーマを生成したことを示す。精製されたHBsAg粒子に対して反応性であったクローンを、S、PreS2、PreS1、または未知のビンに群分けした。
【発明を実施するための形態】
【0041】
発明の詳細な説明
【0042】
HBVワクチン
【0043】
一態様において、
L表面タンパク質;
任意選択でM表面タンパク質;および
任意選択でS表面タンパク質
を含む組換えHBV表面抗原を含むB型肝炎ウイルス(HBV)ワクチン粒子が開示され、L、MおよびS表面タンパク質におけるL表面タンパク質のパーセンテージは、少なくとも約1モル%である。
【0044】
いくつかの実施形態において、L、M、およびS表面タンパク質におけるL表面タンパク質のパーセンテージは、少なくとも約2モル%、3モル%、4モル%、5モル%、6モル%、7モル%、または8モル%である。
【0045】
いくつかの実施形態において、L、M、およびS表面タンパク質におけるL表面タンパク質のパーセンテージは、約8モル%を超える。
【0046】
いくつかの実施形態において、L、M、およびS表面タンパク質におけるL表面タンパク質のパーセンテージは、約9モル%または10モル%を超える。いくつかの実施形態において、L、M、およびS表面タンパク質におけるL表面タンパク質のパーセンテージは、約9モル%、10モル%、11モル%、12モル%、13モル%、14モル%、15モル%、16モル%、17モル%、18モル%、19モル%、20モル%、21モル%、22モル%、23モル%、24モル%、25モル%、26モル%、27モル%、28モル%、29モル%、30モル%、31モル%、32モル%、33モル%、34モル%、35モル%、36モル%、37モル%、38モル%、39モル%、40モル%、41モル%、42モル%、43モル%、44モル%、45モル%、46モル%、47モル%、48モル%、49モル%、もしくは50モル%を超える、または本明細書に開示される任意の2つの値で画定される範囲内である。
【0047】
いくつかの実施形態において、L、M、およびS表面タンパク質におけるL表面タンパク質のパーセンテージは、少なくとも約15モル%、20モル%、25モル%、30モル%、または40モル%である。いくつかの実施形態において、L、M、およびS表面タンパク質におけるL表面タンパク質のパーセンテージは、少なくとも約60モル%、70モル%、80モル%、90モル%、または100モル%である。いくつかの実施形態において、HBVワクチン粒子は、MまたはSタンパク質を含まない。いくつかの実施形態において、HBVワクチン粒子は、ウイルス様粒子である。
【0048】
いくつかの実施形態において、L、M、およびS表面タンパク質におけるL表面タンパク質のパーセンテージは、約10モル%~約40モル%である。いくつかの実施形態において、L、M、およびS表面タンパク質におけるL表面タンパク質のパーセンテージは、約5~15モル%、15~25モル%、25~40モル%、または40~60モル%である。いくつかの実施形態において、L、M、およびS表面タンパク質におけるL表面タンパク質のパーセンテージは、約1モル%~約40モル%である。いくつかの実施形態において、L、M、およびS表面タンパク質におけるL表面タンパク質のパーセンテージは、約2モル%~約40モル%である。いくつかの実施形態において、L、M、およびS表面タンパク質におけるL表面タンパク質のパーセンテージは、約4モル%~約40モル%である。いくつかの実施形態において、L、M、およびS表面タンパク質におけるL表面タンパク質のパーセンテージは、約5モル%~約40モル%である。いくつかの実施形態において、L、M、およびS表面タンパク質におけるL表面タンパク質のパーセンテージは、約6モル%~約40モル%である。いくつかの実施形態において、L、M、およびS表面タンパク質におけるL表面タンパク質のパーセンテージは、約7モル%~約40モル%である。
【0049】
いくつかの実施形態において、L、M、およびS表面タンパク質におけるL表面タンパク質のパーセンテージは、約8モル%~約40モル%である。いくつかの実施形態において、L、M、およびS表面タンパク質におけるL表面タンパク質のパーセンテージは、約9モル%~約40モル%である。いくつかの実施形態において、L、M、およびS表面タンパク質におけるL表面タンパク質のパーセンテージは、約10モル%~約40モル%である。いくつかの実施形態において、L、M、およびS表面タンパク質におけるL表面タンパク質のパーセンテージは、約15モル%~約40モル%である。いくつかの実施形態において、L、M、およびS表面タンパク質におけるL表面タンパク質のパーセンテージは、約20モル%~約40モル%である。いくつかの実施形態において、L、M、およびS表面タンパク質におけるL表面タンパク質のパーセンテージは、約25モル%~約40モル%である。いくつかの実施形態において、L、M、およびS表面タンパク質におけるL表面タンパク質のパーセンテージは、約30モル%~約40モル%である。
【0050】
本明細書に開示される実施形態のいずれか1つにおいて、L表面タンパク質は、内部シスエレメントを有しない組換え核酸配列によってコードされる。出願人らは、驚くべきことに、シスエレメントを除去することにより、ある特定の割合を超えるL表面タンパク質(例えば、8モル%超または10モル%超)を発現させることができることを見出した。本明細書に開示される実施形態のいずれか1つにおいて、内部シスエレメントは、Mおよび/またはS形態の転写開始のためのプロモーターを含む。したがって、いくつかの実施形態において、L表面タンパク質は、Sタンパク質発現を駆動する内部シスエレメントを有しない組換え核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、L表面タンパク質は、Mタンパク質発現を駆動する内部シスエレメントを有しない組換え核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、L表面タンパク質は、MまたはSタンパク質発現を駆動する内部シスエレメントを有しない組換え核酸配列によってコードされる。
【0051】
別の態様において、実施形態のいずれか1つのHBVワクチン粒子およびアジュバントを含むHBVワクチンが開示される。免疫応答を刺激および/または増強することができる任意のアジュバントが企図される。アジュバントの非限定的な例は、ミョウバン、トール様受容体およびコロイド金を含む。
【0052】
さらに別の態様において、それを必要とする対象におけるHBV感染を処置または予防する方法であって、本明細書に開示される実施形態のいずれか1つの有効量のHBVワクチンを対象に投与するステップを含む方法が開示される。対象の非限定的な例は、ヒト、サル、ウシ、ウマ、イヌ、ネコおよび他の哺乳動物を含む。
【0053】
本明細書に開示される実施形態のいずれか1つにおいて、対象はヒトである。
【0054】
さらに別の態様において、L表面タンパク質をコードする組換え核酸配列が開示され、組換え核酸配列は、内部シスエレメントを有しない。
【0055】
さらに別の態様において、本明細書に開示される実施形態のいずれか1つの組換え核酸配列を含む、L表面タンパク質を発現するための組換え発現ベクターが開示される。
【0056】
さらに別の態様において、本明細書に開示される実施形態のいずれか1つの組換え発現ベクターで形質転換された細胞が説明される。細胞の非限定的な例は、CHOおよびHEK-293細胞を含む。
【0057】
本明細書に開示される実施形態のいずれか1つにおいて、細胞は、
S表面タンパク質をコードする第2の組換え核酸配列を含む第2の組換え発現ベクター、および
M表面タンパク質をコードする第3の組換え核酸配列を含む第3の組換え発現ベクター
によってさらに形質転換される。
【0058】
本明細書に開示される実施形態のいずれか1つにおいて、細胞は、HBVコア抗原をコードする第4の組換え核酸配列を含む第4の発現ベクターによってさらに形質転換される。本明細書に開示される実施形態のいずれか1つにおいて、細胞は、1つまたは複数のさらなる組換え発現ベクターによってさらに形質転換される。
【0059】
本明細書に開示される実施形態のいずれか1つにおいて、細胞は、昆虫または哺乳動物のタンパク質発現宿主に由来し、例えばHEK-293細胞またはCHO細胞である。本明細書に開示される実施形態のいずれか1つにおいて、細胞は、大腸菌または真菌に由来する。
【0060】
調製方法
【0061】
さらに別の態様において、HBVワクチン粒子を調製するための方法であって、
a)L、MおよびS表面タンパク質をそれぞれコードする第1、第2および第3の組換え核酸配列を含む組換え発現ベクターを提供するステップであって、第1、第2および第3の組換え核酸配列は、内部シスエレメントを有さないステップと;
b)組換え発現ベクターで細胞を形質転換するステップと;
c)細胞がL、MおよびS表面タンパク質を共発現するように培養および選択するステップと
を含む方法が説明される。
【0062】
本明細書に開示される実施形態のいずれか1つにおいて、L、M、およびS表面タンパク質のそれぞれは、別個の発現ベクター中にある。
【0063】
本明細書に開示される実施形態のいずれか1つにおいて、方法は、細胞がL、MおよびS表面タンパク質においてL表面タンパク質を少なくとも約1モル%、2モル%、3モル%、4モル%、5モル%、6モル%、7モル%、8モル%、9モル%、10モル%、11モル%、12モル%、13モル%、14モル%、15モル%、16モル%、17モル%、18モル%、19モル%、20モル%、21モル%、22モル%、23モル%、24モル%、25モル%、26モル%、27モル%、28モル%、29モル%、30モル%、31モル%、32モル%、33モル%、34モル%、35モル%、36モル%、37モル%、38モル%、39モル%、40モル%、41モル%、42モル%、43モル%、44モル%、45モル%、46モル%、47モル%、48モル%、49モル%もしくは50モル%、または本明細書に開示される任意の2つの値で画定される範囲内のパーセンテージで発現するように選択するステップをさらに含む。
【0064】
本明細書に開示される実施形態のいずれか1つにおいて、方法は、細胞がL、MおよびS表面タンパク質においてL表面タンパク質を少なくとも約15モル%、20モル%、25モル%、30モル%、40モル%、50モル%、60モル%、70モル%、80モル%、90モル%または100モル%のパーセンテージで発現するように選択するステップをさらに含む。
【0065】
本明細書に開示される実施形態のいずれか1つにおいて、組換え発現ベクターは、HBVコア抗原をコードする第4の組換え核酸配列をさらに含み、ステップc)は、L、MおよびS表面タンパク質ならびにHBVコア抗原を共発現する細胞を培養および選択することを含む。
【0066】
本明細書に開示される実施形態のいずれか1つにおいて、細胞は、昆虫または哺乳動物のタンパク質発現宿主に由来し、例えばHEK-293細胞またはCHO細胞である。本明細書に開示される実施形態のいずれか1つにおいて、細胞は、大腸菌または真菌に由来する。
【0067】
医薬組成物
【0068】
本発明はまた、本明細書に記載のHBVワクチン粒子もしくはHBVワクチンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の少なくとも1つと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0069】
「アジュバント」という語句は、本明細書で使用される場合、当技術分野で公知の任意のアジュバントを指す。
【0070】
「薬学的に許容される担体」という語句は、本明細書で使用される場合、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒または封入材料等の薬学的に許容される材料、組成物またはビヒクルであって、1つの器官または身体の一部から別の器官または身体の一部への主題の医薬品の運搬または輸送に関与するものを意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合性であり、患者に有害ではないという意味で「許容可能」でなければならない。薬学的に許容され得る担体として機能し得る材料のいくつかの例は、糖、例えばラクトース、グルコースおよびスクロース;デンプン、例えばトウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン;セルロースおよびその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;トラガカント粉末;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えばカカオバターおよび坐剤ワックス;油、例えば落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油および大豆油;グリコール、例えばブチレングリコール;ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール;エステル、例えばオレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張食塩水;リンガー液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;ならびに医薬製剤に使用される他の非毒性適合性物質を含む。
【0071】
湿潤剤、乳化剤および潤滑剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウムおよびポリエチレンオキシド-ポリブチレンオキシドコポリマーならびに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤および芳香剤、防腐剤および酸化防止剤も組成物中に存在し得る。
【0072】
本発明の製剤は、経口、経鼻、局所(口腔および舌下を含む)、直腸、膣ならびに/または非経口投与に適したものを含む。製剤は、単位剤形で好都合に提供され得、薬学の分野で周知の任意の方法によって調製され得る。単一剤形を生成するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、処置される宿主および特定の投与様式に応じて変動する。単一剤形を製造するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、一般に、治療効果を生じるHBVワクチン粒子またはHBVワクチンの量である。一般に、100%のうち、この量は、約1%~約99%、好ましくは約5%~約70%、最も好ましくは約10%~約30%の範囲の活性成分である。
【0073】
これらの製剤または組成物を調製する方法は、本発明のHBVワクチン粒子またはHBVワクチンを担体および任意選択で1つまたは複数の補助成分と会合させるステップを含む。一般に、製剤は、本発明のHBVワクチン粒子またはHBVワクチンを液体担体、または細かく分割された固体担体、またはその両方と均一かつ密接に会合させ、次いで必要に応じて製品を成形することによって調製される。
【0074】
経口投与に適した本発明の製剤は、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ(フレーバーベース、通常はスクロースおよびアカシアもしくはトラガカントを使用)、粉末、顆粒の形態であってもよく、または水性もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液として、または水中油型もしくは油中水型液体エマルジョンとして、またはエリキシル剤もしくはシロップ剤として、またはトローチ剤(ゼラチンおよびグリセリン、もしくはスクロースおよびアカシア等の不活性塩基を使用)として、ならびに/または洗口剤等としてであってもよく、それぞれが活性成分として本発明のHBVワクチン粒子またはHBVワクチンの所定量を含有する。本発明のHBVワクチン粒子またはHBVワクチンは、ボーラス、舐剤、またはペーストとして投与することもできる。
【0075】
経口投与用の本発明の固体剤形(カプセル、錠剤、丸剤、糖衣錠、粉末、顆粒等)において、活性成分は、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウム等の1種もしくは複数種の薬学的に許容される担体、ならびに/または以下のいずれかと混合される:デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/もしくはケイ酸等の充填剤もしくは増量剤;例えばカルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、および/もしくはアカシア等の結合剤;グリセロール等の保湿剤;寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカ澱粉、アルギン酸、ある特定のシリケート、炭酸ナトリウム、および澱粉グリコレートナトリウム等の崩壊剤;パラフィン等の溶液遅延剤;第四級アンモニウム化合物等の吸収促進剤;例えばセチルアルコール、グリセロールモノステアレートおよびポリエチレンオキシド-ポリブチレンオキシドコポリマー等の湿潤剤;カオリンおよびベントナイト粘土等の吸収剤;タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよびそれらの混合物等の滑沢剤;ならびに着色剤。カプセル、錠剤、および丸剤の場合、医薬組成物はまた緩衝剤も含み得る。同様の種類の固体組成物もまた、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコール等の賦形剤を使用して、軟質および硬質充填ゼラチンカプセル中の充填剤として使用され得る。
【0076】
錠剤は、任意選択で1種または複数種の補助成分と共に、圧縮または成形によって作製され得る。圧縮錠剤は、結合剤(例えばゼラチンもしくはヒドロキシブチルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えばデンプングリコール酸ナトリウムまたは架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤、または分散剤を使用して調製され得る。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を適切な機械で成形することによって作製され得る。
【0077】
錠剤、ならびに糖衣錠、カプセル剤、丸剤および顆粒等の本発明の医薬組成物の他の固体剤形は、任意選択で刻み目が付けられてもよく、または腸溶コーティングおよび薬学的製剤分野で周知の他のコーティング等のコーティングおよびシェルを用いて調製されてもよい。それらはまた、例えば、所望の放出プロファイルを提供するための様々なブトーション(butortion)でヒドロキシブチルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはミクロスフェアを使用して、その中の活性成分の徐放または制御放出を提供するように製剤化され得る。それらは、例えば、細菌保持フィルターによる濾過によって、または使用直前に滅菌水もしくは他の何らかの滅菌注射用媒体に溶解され得る滅菌固体組成物の形態の滅菌剤を組み込むことによって滅菌され得る。これらの組成物はまた、任意選択で乳白剤を含有してもよく、胃腸管のある特定の部分においてのみ、または優先的に、任意選択で遅延様式で活性成分を放出する組成物であってもよい。その例は包埋組成物であり、ポリマー物質およびワックスを含めて使用することができる。活性成分はまた、必要に応じて、上記の賦形剤の1つまたは複数と共にマイクロカプセル化された形態であってもよい。
【0078】
不活性希釈剤に加えて、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、香味剤、着色剤、芳香剤および保存剤等のアジュバントも含むことができる。
【0079】
懸濁液は、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガカント、ならびにそれらの混合物として懸濁化剤を含有し得る。
【0080】
直腸投与または膣投与のための本発明の医薬組成物の製剤は、本発明の1つまたは複数のHBVワクチン粒子またはHBVワクチンを、例えばカカオバター、ポリエチレングリコール、坐剤ワックスまたはサリチレートを含む1種または複数種の適切な非刺激性賦形剤または担体と混合することによって調製することができ、室温では固体であるが体温では液体であるため、直腸または膣腔内で融解し、本発明の活性医薬剤を放出する坐剤として提供することができる。
【0081】
膣投与に適した本発明の製剤は、当技術分野においてアブトリエート(apbutriate)であることが知られているような担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォームまたはスプレー製剤も含む。
【0082】
粉末およびスプレーは、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物等の賦形剤を含有し得る。スプレーは、クロロフルオロ炭化水素および揮発性非置換炭化水素、例えばブタンおよびブタン等の慣用的なブテラント(butellant)をさらに含有し得る。
【0083】
眼科用製剤、眼軟膏、粉末、溶液等も本発明の範囲内であることが企図される。
【0084】
非経口投与に適した本発明の医薬組成物は、本発明の1つまたは複数のHBVワクチン粒子またはHBVワクチンを、1種または複数種の薬学的に許容される滅菌等張水溶液もしくは非水溶液、分散液、懸濁液もしくはエマルジョン、または使用直前に滅菌注射液もしくは分散液に再構成され得る滅菌粉末と組み合わせて含み、これは酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、製剤を意図するレシピエントの血液と等張にする溶質、または懸濁剤もしくは増粘剤を含み得る。
【0085】
いくつかの場合において、薬物の効果を延長するために、皮下注射または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅らせることが望ましい。これは、水溶性が低い結晶性または非晶質材料の液体懸濁液の使用によって達成され得る。薬物の吸収速度はその溶解速度に依存し、一方溶解速度は結晶サイズおよび結晶形態に依存し得る。代替として、非経口投与された薬物形態の遅延吸収は、薬物を油性ビヒクルに溶解または懸濁することによって達成される。デポー注射のための1つの戦略は、ポリエチレンオキシド-ポリブチレンオキシドコポリマーの使用を含み、ビヒクルは室温で流動性であり、体温で固化する。
【0086】
注射可能なデポー形態は、ポリラクチド-ポリグリコリド等の生分解性ポリマー中に主題のHBVワクチン粒子またはHBVワクチンのマイクロカプセルマトリックスを形成することによって作製される。薬物対ポリマーの比、および使用される特定のポリマーの性質に応じて、薬物放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例は、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)を含む。デポー注射用製剤はまた、体組織と適合するリポソームまたはマイクロエマルジョンに薬物を封入することによって調製される。
【0087】
本発明のHBVワクチン粒子またはHBVワクチンを医薬品としてヒトおよび動物に投与する場合、それらはそれ自体で、または例えば0.1%~99.5%(より好ましくは0.5%~90%)の活性成分を薬学的に許容される担体と組み合わせて含有する医薬組成物として投与され得る。
【0088】
本発明のHBVワクチン粒子またはHBVワクチンおよび医薬組成物は、併用療法で使用することができ、すなわち、HBVワクチン粒子またはHBVワクチンおよび医薬組成物は、1つまたは複数の他の所望の治療薬または医療処置と同時に、その前に、またはその後に投与することができる。併用レジメンで使用する治療法(治療薬または手順)の特定の組み合わせは、所望の治療薬および/または手順の適合性ならびに達成される所望の治療効果を考慮に入れる。使用される療法は、同じ障害(例えば、本発明のHBVワクチン粒子もしくはHBVワクチンは、別の抗HBV剤と同時に投与されてもよい)に対して所望の効果を達成し得るか、または異なる効果(例えば、任意の有害作用の制御)を達成し得ることも理解されよう。
【0089】
本発明のHBVワクチン粒子またはHBVワクチンは、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、局所、経口、または他の許容可能な手段によって投与され得る。いくつかの具体的な実施形態において、本明細書に開示されるHBVワクチン粒子またはHBVワクチンは、経鼻投与によって投与される。
【0090】
本発明はまた、本発明の医薬組成物の成分の1つまたは複数で充填された1つまたは複数の容器を含む医薬パックまたはキットを提供する。任意選択で、そのような容器には、医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定された形態の通知が関連付けられてもよく、その通知は、ヒトへの投与のための製造、使用または販売の機関による承認を反映する。
【0091】
均等物
【0092】
以下の代表的な実施例は、本発明の説明を補助することを意図しており、本発明の範囲を限定することを意図しておらず、またそのように解釈されるべきではない。実際、本明細書に示され記載されたものに加えて、本発明の様々な修正およびその多くのさらなる実施形態は、以下の実施例ならびに本明細書に引用された科学文献および特許文献への参照を含むこの文書の全内容から当業者に明らかになるであろう。これらの引用された参考文献の内容は、最新技術を例示するのを補助するために参照により本明細書に組み込まれることがさらに理解されるべきである。以下の実施例は、その様々な実施形態およびその均等物において本発明の実践に適合させることができる重要な追加の情報、例示、および指針を含む。
【実施例
【0093】
結果
【0094】
HBsAg粒子を発現させるために、B型肝炎ウイルス分離株GZ-DYH(adw2サブタイプ、遺伝子型B2、Genbank ID DQ448619)を、遺伝子発現について同定した。タンパク質配列に基づいて、本発明者らは哺乳動物タンパク質発現のためにコードDNAの配列を最適化した。SおよびMタンパク質発現を駆動する内部シスエレメントを除去した。L、MおよびSタンパク質のオープンリーディングフレームを含むDNA断片を合成し、別々の哺乳動物発現ベクターにサブクローニングした。
【0095】
Lタンパク質の野生型コード配列は、小胞体におけるLの蓄積に応答する内部シスエレメントを含有し、このシスエレメントは、L、MおよびSタンパク質の発現の厳密な調節に関与する。この制御機構は表面タンパク質の差次的発現をもたらし、Sはそれらの中で最も豊富であり、一方MおよびLはそれぞれ約5~15モル%および1~2モル%のはるかに低いレベルで発現される。Lタンパク質の発現率を別々の発現ベクターで分析している報告はない。L形態単独の発現は、従来報告されている42DKa Lタンパク質よりも大きい分泌形態をもたらした(レーン2、図1)。L形態タンパク質の分泌を促進するために、分泌シグナルをLタンパク質のN末端に付加し、分泌型(レーン3、図1)は天然タンパク質と同様のグリコシル化パターンを示し、Lタンパク質のみがゴルジ装置で複雑なグリコシル化を受けたことを示した。しかしながら、単独で発現したLは馴化培地中にほとんど量を示さず、電子顕微鏡観察下では粒子を形成しなかった(図示せず)。
【0096】
L形態の発現は、S形態およびM形態の発現に依存するか、またはS形態もしくはM形態の存在下でのみ、L形態が分泌されることが見出された。また、S形態の発現は、L形態の存在により阻害される(図2図3)。L形態分泌のS形態およびM形態への依存性は、LがSまたはMの折り畳みによって駆動された構造に集合することを示唆したが、正確な機構は理解されていない。しかしながら、この特徴は、SおよびL形態タンパク質を蓄積する発現クローンを同定するために利用することができる。
【0097】
3つ全ての形態を含むHBsAg粒子を製造するための以前の戦略は、SおよびMの発現を駆動するためにHBsAgコード配列内のシスエレメントを利用した。これらのシスエレメントのプロモーター強度が定義されていることを考えると、さまざまな比率でL、M、およびS形態を発現し得るクローンをスクリーニングすることはできない。発現ベクターの組み合わせを使用することによって生成されたHBV粒子は、L、M、およびSの可変の組成を有し、L形態HBV粒子を様々な比率で安定に発現し得るクローンを選択する可能性を開くことが見出された。
【0098】
HBV粒子を陽性発現した293F由来の数百のクローンについてスクリーニングを行った。陽性クローンは、Sにおける三次元エピトープを認識する抗体に基づいて選択された。これらのクローンのほとんどはSタンパク質のみを発現した。個々のクローンを、抗L形態抗体、続いて抗S抗体を使用するウエスタンブロッティングによってスクリーニングした。クローン16およびクローン51は、約26KDaでS形態の発現を示し、PreS2抗体のエピトープを含む30~38KDaおよび51~60KDaの範囲のさらなるタンパク質の発現を示した(図4A)。グリコシル化の不均一性は、PreS2エピトープを含有するタンパク質がゴルジ装置において複雑なグリコシル化を受けたことを示唆していた。クローン12およびクローンA4は、抗PreS2抗体によって認識された42KDaおよび39KDaのタンパク質に加えて、26KDaおよび22KDaのS形態タンパク質に関する強いシグナルを含んでいた(図5)。また、CHO発現宿主を使用して同じ発現戦略を適用した。同様に、CHO細胞に由来するクローン7C8、10E3は、26KDaおよび22KDaのSタンパク質(図4B、右パネル)、ならびに抗PreS2抗体によって認識される42KDaおよび39KDaのタンパク質(図4B、左パネル)を発現した。CHO発現系では、上位42KDaのLタンパク質も抗Sポリクローナル抗体によって認識される。両方の発現系において、L形態に対応する42KDaおよび39KDaのタンパク質バンドは、別個のより鋭いバンドを示し、これらのタンパク質がゴルジ装置において複雑なグリコシル化を受けなかったことを示唆していた。1つの追加のクローン43も、クローンA4と同様に、42KDaおよび39KDaのタンパク質バンドの検出を示した(図6)。要約すると、クローン16およびクローン51は原形質膜での粒子の形成を表し得るが、クローン12およびA4 HBsAg粒子の分泌は、小胞体からの出芽を伴う固有の機構を示した(Patient,R.,Hourioux,C.,Sizaret,P.Y.,Trassard,S.,Sureau,C.and Roingeard,P.,2007.Hepatitis B virus subviral envelope particle morphogenesis and intracellular trafficking.Journal of virology,81(8),pp.3842-3851)。クローン16および51の両方が、抗PreS1抗体として認識された30~38KDaの範囲内の有意な量のタンパク質を含んでおり(図4A)、L形態タンパク質が有意な量で存在し得ることを示唆した。精製されたクローン51粒子は、より多くの30~38KDaタンパク質を含んでいた(図7)。
【0099】
まとめると、293FおよびCHO発現系の両方における組み合わせ発現戦略は、以前には特性評価されておらず、所望のL、MおよびS比を有するHBsAg粒子の製造に使用することができるHBsAg粒子を生成した。有意な量のLおよびS発現を示したクローンを、スケールアップおよびさらなる特性評価に選択した。
【0100】
クローン16、51、A4、製造スケールアップ、精製およびタンパク質特性評価
【0101】
安定な細胞株16、51およびA4は、S形態タンパク質を発現し、さらに、PreS2特異的抗体S26によって検出されたL形態タンパク質を発現した。細胞を、振盪フラスコ培養物中の293FreeStyle発現培地(Thermo Fisher)中で増殖させた。72時間または96時間の増殖後、馴化培地を回収し、細胞残屑を遠心分離および濾過によって除去した。ウイルス様粒子を、Sephacryl400樹脂、またはヒドロキシアパタイト吸着とそれに続くサイズ排除クロマトグラフィーの組み合わせを使用する2回の連続サイズ排除クロマトグラフィーで精製した。
【0102】
クローンA4精製タンパク質粒子は、それぞれ38KDaおよび42KDaの2つのLタンパク質を含んでいた(図8図9)。PNGase処理すると、42KDaタンパク質は38KDaに減少し(図11)、42KDaが38KDaのグリコシル化形態であることが確認された。Lタンパク質の同一性は、PreS1抗体AP1に対して特異的に産生された抗体によって(図10)、およびペプチド質量分析によって(表1)検証された。さらに、27および24KDaタンパク質によって表されるように、2つのSタンパク質を発現させた(図10)。両方のSタンパク質を、N末端配列決定(図示せず)およびペプチド質量分析(表1)によって検証した。クローン51とは異なり、A4Lタンパク質はSDS PAGEにおいて別個のバンドとして移動し、タンパク質グリコシル化がゴルジ装置においてさらに修飾されず、小胞体において生じたインビボ粒子集合を模倣したことを示唆していた。
【0103】
クローン51精製タンパク質粒子は、28KDaおよび38KDaの分子量マーカーの間にLおよびMタンパク質を含んでいた。PreS1特異的抗体AP1によるこの範囲内のタンパク質の検出(図10)は、この範囲内のタンパク質混合物の少なくとも一部が、予想よりも小さい分子量ではあるが、Lタンパク質であることを示唆していた。PNGase処理すると、L/Mタンパク質混合物は、28KDaの分子量マーカーで別個のバンドに減少した。さらに、質量分析によるペプチドマッピングは、この範囲のタンパク質混合物の一部がPreS2配列を含むことを示した(表1)。クローン16およびクローン51からの精製タンパク質は粒子を形成した(図12図13)が、粒子のLおよびMタンパク質を分解するためにはより詳細な分析が必要である。
【0104】
クローンA4および51の両方が、27KDaおよび24KDaのSタンパク質を含んでいた(図10)。PNGase処理により27KDaのSタンパク質バンドが24KDaに減少し、27KDaが24KDaのSタンパク質のグリコシル化形態であることが確認された(図11)。
【0105】
SDS PAGEとそれに続くクーマシー染色(図10)によって示されるように、A4および51の両方の精製HBsAg粒子中のLタンパク質が、総タンパク質の10%を超えた。
【0106】
【表1】
【0107】
クローン16および51生成タンパク質の免疫化
【0108】
それぞれクローン16およびクローン51に由来する精製LMSウイルス様粒子を使用して、それぞれ2匹のマウスを免疫化した。酵母由来HBsAgを参照として2匹のマウスに注射して使用した。全ての実験について、マウス系統Balb Cを使用した。14日後、全てのマウスにブースト注射を行った。最初の免疫化の35日後にマウスから血液を採取し、ウイルス様粒子に対する抗体応答の力価を連続希釈によって決定した(図14)。バックグラウンドと比較して有意な応答を示した最終希釈液を力価として決定した。酵母由来HBsAgの抗体力価は2e6であり、LMS HBsAgの抗体力価は8e6であった(図14図15)。要約すると、クローン16およびクローン51 HBsAg粒子を使用した免疫化は、酵母ベースの抗原を使用して得られたものと比較して約4倍高い抗体力価を生じた(図15)。HBsAgタンパク質に対する免疫応答を特性評価するために、精製HBsAgタンパク質、酵母由来S抗原、および大腸菌由来PreS1、PreS2ペプチド配列を使用した。これらの抗原をポリスチレン96ウェルマイクロタイタープレートにコーティングし、血清の連続希釈液をインキュベートした後、結合したマウスIgG1抗体を検出した。最も強い免疫応答はS抗原に対するものであり、続いてPreS2抗原およびPreS1抗原に対するものであった(図16)。
【0109】
どのエピトープがマウスにおける免疫応答の誘発に関与しているかを理解するために、免疫化マウスからの脾臓細胞を使用してハイブリドーマを生成した。合計102個のハイブリドーマが精製HBsAg粒子に対して反応することが分かった(図17)。ハイブリドーマを分類するために様々な抗原を使用して、本発明者らは、35個のハイブリドーマからの抗体がS抗原に対して反応し、26個および10個のハイブリドーマがそれぞれPreS2およびPreS1ペプチドに対して反応することを見出した(図17)。さらに、31個のハイブリドーマは、精製HBsAg粒子に対して反応性であったが、S、またはPreS1およびPreS2配列に由来する線状ペプチド抗原に対して反応性ではなく、これらの抗体が精製HBsAg抗原のPreS領域に存在する非線状エピトープを認識し得ることを示唆していた。しかしながら、血清中の抗体力価を分析するために使用されるPreS2およびPreS1ペプチド抗原は、二次または三次構造を欠き、PreS領域の三次元エピトープに対する応答を詳細に説明することができなかった。
【0110】
材料および方法
【0111】
クローニングおよび細胞株選択
【0112】
HBV表面抗原のコード配列は、B型肝炎ウイルス分離株GZ-DYH(Genbank寄託番号DQ448619、血清型adw2)に基づいた。タンパク質発現のために、オープンリーディングフレームを哺乳動物発現系のためにコドン最適化した。MおよびS形態の転写開始のためのプロモーター等の内部シスエレメントは、サイレント置換によって無効にされた。L、MおよびS形態をコードする遺伝子をGenewiz(South Plainfield、NJ)で別々に合成し、DNA断片をそれぞれ発現ベクターにサブクローニングした。発現プラスミド構築物を、予め無血清増殖に適合させたHEK293細胞にトランスフェクトした。安定な発現細胞株を、フローサイトメーターを使用して96ウェル培養プレートでの単一細胞クローニングによって選択した。約10%の単一細胞が細胞株を生じ、発現クローンを生成する。発現クローンを、ELISAスクリーニング、続いてPreS2(NovusBio、Littleton、CO)、PreS1(ProspecBio、East Brunswick、NJ)、およびHBsAg Sタンパク質(Creative Diagnostics、Shirley、NY)に特異的な抗体を使用したウエスタンブロット分析に基づいて選択した。
【0113】
FreeStyle(商標)293発現培地(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)を全ての細胞株クローニングおよびスケールアップ手順に使用した。組換えHBV表面抗原のウエスタンブロット分析を、抗PreS2モノクローナル抗体S26、抗PreS1モノクローナル抗体AP1、AP2(Santa Cruz Biotechnology、Dallas、TX)、およびウサギ抗HBsAg Sポリクローナル抗体(Fitzgerald Industries International、Acton、MA)を使用して行った。HBsAg ELISAキットは、Creative Diagnostics(Shirley、NY)から入手した。
【0114】
HBsAg粒子の生成
【0115】
HBsAg粒子の小規模生成には振盪フラスコ培養を使用した。安定にトランスフェクトされた細胞株の馴化培地を回収し、タンジェンシャルフロー濾過および濃縮、ヒドロキシアパタイト吸着サイズ排除クロマトグラフィー、ならびに陰イオン交換クロマトグラフィーの組み合わせによってHBVウイルス様粒子を精製した。精製された粒子の形態を、電子走査顕微鏡を使用して可視化した。精製されたHBsAg粒子のタンパク質組成物を、銀染色およびウエスタンブロット、またはクーマシーブルー染色に続くトリプシン消化およびペプチド質量分析によって分析した。タンパク質濃度をBCA法によって決定した。
【0116】
製造業者の仕様(New England Biolab、Ipswich、MA)に従って、PNGase処理によるHBV表面抗原の脱グリコシル化を行った。
【0117】
N末端配列決定のために、タンパク質をSDS PAGEによって分離し、ウエスタンブロッティング手順によってPVDF膜に転写した。PVDF膜をクーマシーブルーで染色し、タンパク質バンドをスライスし、エドマン分解に供し、続いてHPLC分析に供した。
【0118】
Vydac 214TP C4カラム(10um、4.6×150mm)を使用して逆相HPLCを行う。移動相は、アセトニトリル/H2O 20%~80%勾配、流速1ml/分である。
【0119】
質量分析によるペプチドマッピング
【0120】
精製したタンパク質をSDS PAGEによって分離し、続いてクーマシーブルー染色を行った。タンパク質バンドをスライスし、ゲルスライスをゲル内トリプシン消化、続いてLC-MS分析に使用した。ペプチド質量をデータベース中の既知のペプチド配列と比較し、同定を質量比較によって確認した。質量分析によって同定されたペプチドを表1に列挙する。
【0121】
マウスの免疫化および抗体応答の決定
【0122】
Balb C系統のマウスをCharles River Laboratoriesから購入した。マウスを群あたり2匹に群分けした。10μgの酵母由来HBsAg、またはクローン#16もしくは#51由来の10μgの精製タンパク質を、アルミニウムアジュバントと混合した後に注射し、続いて14日後にブースト注射した。最初の免疫化の35日後にマウスから血液を採取し、ウイルス様粒子に対する抗体応答の力価を連続希釈によって決定した(図16)。抗体力価は、酵母由来S抗原、PreS1ペプチド、PreS2ペプチド、またはHi-Binding 96ウェルアッセイプレートにコーティングした精製LMS HBsAgを使用することによって決定した。スチューデントt検定を使用して、抗体力価の有意性を決定した。
【0123】
ハイブリドーマおよびエピトープビニング
【0124】
免疫化マウスの脾臓を最終注射の1日後に取り出した。脾臓細胞を単離し、標準的な手順に従ってマウス骨髄腫細胞に融合した。ハイブリドーマクローンを、PreS領域を含む精製HBsAg粒子に対する反応性について試験した(図17)。エピトープの領域を決定するために、酵母ベースのHBsAg S、PreS1ペプチドおよびPreS2ペプチドをポリスチレン96ウェルマイクロタイタープレートにコーティングした。ハイブリドーマの馴化培地を結合抗原と共にインキュベートし、続いて抗マウスIgG検出を行った。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【国際調査報告】