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特表2022-5138952次元フーリエ変換を用いた超音波イメージングのための方法、対応するコンピュータプログラム、および超音波プロービングデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(54)【発明の名称】2次元フーリエ変換を用いた超音波イメージングのための方法、対応するコンピュータプログラム、および超音波プロービングデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20220202BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534289
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(85)【翻訳文提出日】2021-08-13
(86)【国際出願番号】 FR2019053179
(87)【国際公開番号】W WO2020128344
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】1873636
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】311015001
【氏名又は名称】コミサリヤ・ア・レネルジ・アトミク・エ・オ・エネルジ・アルテルナテイブ
(71)【出願人】
【識別番号】311016455
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メラベ,リュカ
(72)【発明者】
【氏名】ロベール,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】プラダ・ジュリア,クレール
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601BB06
4C601EE04
4C601GB04
4C601HH14
4C601HH25
4C601HH29
4C601HH31
4C601JB01
4C601JB34
4C601JB49
(57)【要約】
この2次元フーリエ変換超音波イメージング方法は送信および受信トランスデューサを制御すること(902)により:サンプリングされた超音波時間信号のM個の行列MR、1≦m≦M、を得ること(904);M個のスペクトル行列FTMRを得るために、各行列MRを2次元フーリエ変換すること(908);M個のスペクトル画像FTIを得るために、各スペクトル行列FTMRをコンバートすること(910);M個のスペクトル画像FTIを結合し(912)、および、超音波画像Iを得るために、結果としてもたらされたスペクトル画像FTIを2次元逆フーリエ変換すること(914)を含む。コンバージョン(910)は、後方散乱中の伝搬モードの変化を、参照フレームの変更の方程式(SYS)にこのモードの変化を特徴づけるパラメータを追加することによって、考慮すること、および/または、行列変換の関係(REL)に位相シフト項を追加することによって、壁に対する反射を考慮することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オブジェクト(102)の超音波プロービングによる取得(S)の2次元フーリエ変換によるイメージング方法(900)であって、以下のステップ、
超音波のM回連続した送信のための、L個の送信トランスデューサ(108、...、108)の制御(902)、
各送信について、特にオブジェクト(102)における前記各送信の後方散乱によるエコーを測定するN個の測定時間信号を、同時に所定の持続時間で受信するような、N個の受信トランスデューサ(108、...、108)の制御(902)、
各測定時間信号のN個の連続したサンプルへの時間サンプリング(904)、
サイズN×Nの超音波時間信号のM個の行列MR、1≦m≦M、を得ること(904)であって、各行列MRの各係数MR(u,t)は、m番目の送信に起因するu番目の受信トランスデューサにより受信された測定信号のt番目の時間サンプルを表す、行列MR、1≦m≦M、を得ること(904)、
M個のスペクトル行列FTMR、1≦m≦M、を得るための、各行列MRの行と列の2次元フーリエ変換(908)、
空間周波数の空間におけるM個のスペクトル画像FTIを得るための、各スペクトル行列FTMRのコンバージョン(910)であって、このコンバージョンは、M個の行列FTMRのM個のスペクトル画像FTIへの行列変換のための関係(REL)の適用、および参照フレーム変更方程式の系(SYS)を用いる双線形補間の適用を含む、コンバージョン(910)、
M個のスペクトル画像FTIの結合(912)、および、オブジェクトの可視化のための超音波画像Iを得るための、結果としてもたらされたスペクトル画像FTIの行と列での2次元逆フーリエ変換(914)
を含み、
コンバージョン(910)は、
プローブされるオブジェクト(102)における後方散乱中の伝搬モード(M、M、M、M、M5)の変化を、参照フレームの変更の方程式(SYS)にこのモードの変化を特徴づけるパラメータを追加することによって、考慮すること、および/または
行列変換の関係(REL)に位相シフト項を追加することによって、プローブされるオブジェクト(102)の壁に対する反射を考慮すること
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
L個の送信トランスデューサ(108、...、108)が、M個の送信ゾーンにおいて、異なる連続した送信角度θを有する平面超音波のM回連続した送信のために制御される、請求項1に記載のイメージング方法(900)。
【請求項3】
各スペクトル行列FTMRの各スペクトル画像FTIへのコンバージョン(910)において、参照フレーム変更方程式(SYS)が以下の形
【数1】
をとり、
ここで、kuおよびktが、それぞれ各スペクトル行列FTMRの行および列を表す空間波数および時間波数であり、kxおよびkzが、各スペクトル画像FTIの行および列を表す空間周波数であり、±が加算または減算を表し、γが、プローブされるオブジェクトでの後方散乱時の伝搬モードの変化を特徴づけるパラメータであり、θ’が、スネルデカルトの法則を用いてθから決定可能な後方散乱時の入射角である、請求項2に記載のイメージング方法(900)。
【請求項4】
パラメータγが、プローブされるオブジェクト(102)での後方散乱後に伝搬モードにしたがって送信された任意の波の伝搬速度の、プローブされるオブジェクトでの後方散乱前に伝搬モードにしたがって送信された同じ波の伝搬速度に対する比として定義される、請求項3に記載のイメージング方法(900)。
【請求項5】
各スペクトル行列FTMRの各スペクトル画像FTIへのコンバージョン(910)において、行列変換関係(REL)が以下の形
【数2】
をとり、
ここで、kuおよびktが、それぞれ各スペクトル行列FTMRの行および列を表す空間波数および時間波数であり、kxおよびkzが、各スペクトル画像FTIの行および列を表す空間周波数であり、eが指数関数であり、jが、j=-1となるような純虚数であり、φがku、ktおよびθに依存する位相シフト関数である、請求項2から4のいずれか一項に記載のイメージング方法(900)。
【請求項6】
オブジェクト(102)の壁に対する反射を考慮せず、
【数3】
である、請求項3および5に記載のイメージング方法(900)。
【請求項7】
送信トランスデューサによって送信された波を受信するオブジェクトの前面から距離Hに位置するオブジェクト(102)の底部に対する反射を考慮し、
【数4】
であり、
ここで、γが、プローブされるオブジェクトの底部に対する反射中に起こり得る伝搬モードの変化を特徴づけるパラメータであり、特に、反射後に伝搬モードにしたがって送信された任意の波の伝搬速度と、反射前に伝搬モードにしたがって送信されたこの同じ波の伝搬速度との比として定義される、請求項3および5に記載のイメージング方法(900)。
【請求項8】
送信トランスデューサによって送信された波を受信するオブジェクトの前面から距離Hに位置するオブジェクト(102)の底部に対する第1の反射、オブジェクトの前面に対する第2の反射、およびオブジェクトの底部に対する第3の反射を考慮し、
【数5】
であり、
ここで、γr1が、プローブされるオブジェクトの底部に対する第1の反射中に起こり得る伝搬モードの変化を特徴づけるパラメータであり、特に、第1の反射後に伝搬モードにしたがって送信された任意の波の伝搬速度と、第1の反射前に伝搬モードにしたがって送信されたこの同じ波の伝搬速度との比として定義され、γr2が、プローブされるオブジェクトの前面に対する第2の反射中に起こり得る伝搬モードの変化を特徴づけるパラメータであり、特に、第2の反射後に伝搬モードにしたがって送信された任意の波の伝搬速度と、第2の反射前に伝搬モードにしたがって送信されたこの同じ波の伝搬速度との比として定義され、γr4が、プローブされるオブジェクトの底部に対する第3の反射中に起こり得る伝搬モードの変化を特徴づけるパラメータであり、特に、第3の反射後に伝搬モードにしたがって送信された任意の波の伝搬速度と、第3の反射前に伝搬モードにしたがって送信されたこの同じ波の伝搬速度との比として定義され、θ’’が、スネルデカルトの法則を用いてθから決定可能な、オブジェクトの底部に対する第1の反射中の反射角である、請求項3および5に記載のイメージング方法(900)。
【請求項9】
M個のスペクトル画像FTIを得るための各スペクトル行列FTMRのコンバージョン(900)が、参照フレーム変更方程式の系(SYS)が全単射でないときに、伝搬する波のみを保持し、各スペクトル行列FTMRのスペクトル空間と対応するスペクトル画像FTIのスペクトル空間との間の対応曖昧性を除去するために、各スペクトル行列FTMRのスペクトル空間の台制限を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のイメージング方法(900)。
【請求項10】
通信ネットワークからダウンロード可能な、および/または、コンピュータ可読媒体に記憶されている、および/または、プロセッサ(114)によって実行可能なコンピュータプログラム(118)であって、前記プログラムがコンピュータ(112)上で実行されたときに、請求項1から9のいずれか一項に記載のイメージング方法(900)のステップを行うための命令を含む、コンピュータプログラム(118)。
【請求項11】
オブジェクト(102)の超音波プロービングのための超音波プロービングデバイス(100)であって、
L個の超音波送信トランスデューサ、およびN個の超音波受信トランスデューサ(108、...、108)を含むプローブ(104)と、
超音波のM回連続した送信のためのL個の送信トランスデューサを制御するための手段(114、120)と、
各送信について、特に前記各送信の後方散乱によるエコーを測定するN個の測定時間信号を、同時に所定の持続時間で受信するように、N個の受信トランスデューサを制御するための手段(114、120)と、
オブジェクト(102)を可視化するために超音波画像(I)を再構成するためのプロセッサ(114、124、126、128、130、132、134)と
を含み、プロセッサは、以下の処理、
個の連続したサンプルでの各測定時間信号の時間的サンプリング、
サイズN×Nの超音波時間信号のM個の行列MR、1≦m≦M、を得ることであって、各行列MRの各係数MR(u,t)は、m番目の送信に起因するu番目の受信トランスデューサにより受信された測定信号のt番目の時間サンプルを表す、行列MR、1≦m≦M、を得ること、
M個のスペクトル行列FTMR、1≦m≦M、を得るための、各行列MRの行と列の2次元フーリエ変換、
空間周波数の空間におけるM個のスペクトル画像FTIを得るための、各スペクトル行列FTMRのコンバージョンであって、このコンバージョンは、M個の行列FTMRのM個のスペクトル画像FTIへの行列変換の関係(REL)の適用、および参照フレームの変更のための方程式の系(SYS)を用いる双線形補間の適用を含む、コンバージョン、
M個のスペクトル画像FTIの結合、および、オブジェクトの超音波画像Iを得るための、結果としてもたらされたスペクトル画像FTIの行と列での2次元逆フーリエ変換
を行うように構成され、
プロセッサは、コンバージョンを行うときに、
プローブされるオブジェクトにおける後方散乱中の伝搬モードの変化を、参照フレームの変更の方程式(SYS)にこのモードの変化を特徴づけるパラメータを追加することによって、考慮する、および/または
行列変換の関係(REL)に位相シフト項を追加することによって、プローブされるオブジェクトの壁に対する反射を考慮する
ように、さらに構成されることを特徴とする、超音波プロービングデバイス(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オブジェクトの超音波プローブ取得の2次元フーリエ変換によるイメージング方法に関する。また、本発明は、コンピュータプログラムおよび対応する超音波プロービングデバイスに関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、オブジェクトの超音波プロービングによる取得の2次元フーリエ変換イメージング方法に適用され、以下のステップ:
- 超音波のM回連続した送信のための、L個の送信トランスデューサの制御、
- 各送信について、特にオブジェクトにおける前記各送信の後方散乱によるエコーを測定するN個の測定時間信号を、同時に所定の期間受信するような、N個の受信トランスデューサの制御、
- 各測定時間信号のN個の連続したサンプルへの時間サンプリング、
- サイズN×Nの超音波時間信号のM個の行列MR、1≦m≦M、を得ることであって、各行列MRの各係数MR(u,t)は、m番目の送信に起因するu番目の受信トランスデューサにより受信された測定信号のt番目の時間サンプルを表す、行列MR、1≦m≦M、を得ること、
- M個のスペクトル行列FTMR、1≦m≦M、を得るための、各行列MRの行と列の2次元フーリエ変換、
- 空間周波数の空間におけるM個のスペクトル画像FTIを得るための、各スペクトル行列FTMRのコンバージョンであって、このコンバージョンは、M個の行列FTMRのM個のスペクトル画像FTIへの行列変換のための関係の適用、および参照フレームの変更の方程式の系を用いる双線形補間の適用を含む、コンバージョン、
- M個のスペクトル画像FTIの結合、および、オブジェクトの超音波画像Iを得るための、結果としてもたらされたスペクトル画像FTIの行と列での2次元逆フーリエ変換
を含む。
【背景技術】
【0003】
このような方法は、例えば、「The wavenumber algorithm for full-matrix imaging using an ultrasonic array」と題され、IEEE Transactions on Ultrasonics,Ferroelectrics,and Frequency Control55巻、No.11、ページ2450-2462、2008年11月に公開された、Hunter等の論文に説明されている。信号の取得はFMC技術(「フルマトリクスキャプチャー」)によってなされ、それにしたがって、円筒形の超音波のM=L回の連続した送信およびN=L回の受信のために、L個の送信トランスデューサが制御される。
【0004】
このような方法は、「Extended high-frame rate imaging method with limited-diffraction beams」と題され、IEEE Transactions on Ultrasonics,Ferroelectrics,and Frequency Control53巻、No.5、ページ880-899、2006年5月に公開された、Cheng等の論文にも説明されている。今度は、信号の取得は、PWI技術(「平面波イメージング(Plane Wave Imaging)」)によってなされ、それにしたがって、平面超音波のM回連続した送信およびN=L回の受信のために、L個の送信トランスデューサが制御される。一般に、MはLおよびNよりも著しく小さい。
【0005】
この方法は、そのアルゴリズムの速さと得られる結果の品質ゆえに有利である。しかし、この方法は、可視化されるべき欠陥が直接モードで容易に検出されるときの、すなわち、オブジェクト102での内部反射がなく、伝搬モードの変化がない直接後方散乱によって検出されるときの、医療イメージングまたは非破壊検査の単純なコンテキストで機能する。状況がより複雑になるとすぐに、特に、伸びた欠陥または平坦な欠陥などのより複雑な欠陥ゆえに、あるいは、これらの欠陥がオブジェクトのエッジに近いときには、得られる画像の品質は急速に悪化する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「The wavenumber algorithm for full-matrix imaging using an ultrasonic array」、Hunter等、IEEE Transactions on Ultrasonics,Ferroelectrics,and Frequency Control55巻、No.11、ページ2450-2462、2008年11月
【非特許文献2】「Extended high-frame rate imaging method with limited-diffraction beams」、Cheng等、IEEE Transactions on Ultrasonics,Ferroelectrics,and Frequency Control53巻、No.5、ページ880-899、2006年5月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、上述の劣化問題の少なくとも一部を回避する2次元フーリエ変換超音波イメージング方法を提供することが望まれ得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、オブジェクトの超音波プロービングによる取得の2次元フーリエ変換イメージングのための方法が提案されており、以下のステップ:
- 超音波のM回連続した送信のための、L個の送信トランスデューサの制御、
- 各送信について、特にオブジェクトにおける前記各送信の後方散乱によるエコーを測定するN個の測定時間信号を、同時に所定の期間受信するような、N個の受信トランスデューサの制御、
- 各測定時間信号のNt個の連続したサンプルへの時間サンプリング、
- サイズN×Nの超音波時間信号のM個の行列MR、1≦m≦M、を得ることであって、各行列MRの各係数MR(u,t)は、m番目の送信に起因するu番目の受信トランスデューサにより受信された測定信号のt番目の時間サンプルを表す、行列MR、1≦m≦M、を得ること、
- M個のスペクトル行列FTMR、1≦m≦M、を得るための、各行列MRの行と列の2次元フーリエ変換、
- 空間周波数の空間におけるM個のスペクトル画像FTIを得るための、各スペクトル行列FTMRのコンバージョンであって、このコンバージョンは、M個の行列FTMRのM個のスペクトル画像FTIへの行列変換のための関係の適用、および参照フレームの変更のための方程式の系を用いる双線形補間の適用を含む、コンバージョン、
- M個のスペクトル画像FTIの結合、および、オブジェクトの超音波画像Iを得るための、結果としてもたらされたスペクトル画像FTIの行と列での2次元逆フーリエ変換
を含み、
コンバージョンは:
- プローブされるオブジェクトにおける後方散乱中の伝搬モードの変化を、参照フレーム変更方程式にこのモードの変化を特徴づけるパラメータを追加することによって、考慮すること、および/または
- 行列変換関係に位相シフト項を追加することによって、プローブされるオブジェクトの壁に対する反射を考慮すること
を含む。
【0009】
このように、コンバージョンステップの行列変換または参照フレーム変更関係に統合されたパラメータまたは項を用いて、単純な直接モード後方散乱よりも複雑な後方散乱の状況を考慮することが、アルゴリズムの複雑さという点で実際の追加コストなしに、得られる画像の明らかな改善を可能にする。また、物体のエッジ付近にある伸びたまたは平坦な複雑な欠陥も、よりよく検出され、位置特定され、可視化される。
【0010】
任意選択で、L個の送信トランスデューサは、M個の送信ゾーンにおいて、異なる連続した送信角度θを有する平面超音波のM回連続した送信のために制御される。
【0011】
また、任意選択で、各スペクトル行列FTMRを各スペクトル画像FTIにコンバートする際に、参照フレーム変更方程式は以下の形:
【数1】
をとり、
ここで、kuおよびktは、それぞれ各スペクトル行列FTMRの行および列を表す空間波数および時間波数であり、kxおよびkzは、各スペクトル画像FTIの行および列を表す空間周波数であり、±は加算または減算を表し、γは、プローブされるオブジェクトでの後方散乱時の伝搬モードの変化を特徴づけるパラメータであり、θ’は、スネルデカルトの法則を用いてθから決定可能な後方散乱時の入射角である。
【0012】
また、任意選択で、パラメータγは、プローブされるオブジェクトでの後方散乱後に伝搬モードにしたがって送信された任意の波の伝搬速度の、プローブされるオブジェクトでの後方散乱前に伝搬モードにしたがって送信された同じ波の伝搬速度に対する比として定義される。
【0013】
また任意選択で、各スペクトル行列FTMRを各スペクトル画像FTIにコンバートする際に、行列変換関係は以下の形:
【数2】
をとり、
ここで、kuおよびktは、それぞれ各スペクトル行列FTMRの行および列を表す空間波数および時間波数であり、kxおよびkzは、各スペクトル画像FTIの行および列を表す空間周波数であり、eは指数関数であり、jは、j=-1となるような純虚数であり、φはku、ktおよびθに依存する位相シフト関数である。
【0014】
また、任意選択で、イメージング方法は、オブジェクトの壁に対する反射を考慮せず:
【数3】
である。
【0015】
また、任意選択で、イメージング方法は、送信トランスデューサによって送信された波を受信するオブジェクトの前面から距離Hに位置するオブジェクトの底部に対する反射を考慮し:
【数4】
であり、
ここで、γは、プローブされるオブジェクトの底部に対する反射時に起こり得る伝搬モードの変化を特徴づけるパラメータであり、特に、反射後に伝搬モードにしたがって送信された任意の波の伝搬速度と、反射前に伝搬モードにしたがって送信されたこの同じ波の伝搬速度との比として定義される。
【0016】
また、任意選択で、イメージング方法は、送信トランスデューサによって送信された波を受信するオブジェクトの前面から距離Hに位置するオブジェクトの底部に対する第1の反射、オブジェクトの前面に対する第2の反射、およびオブジェクトの底部に対する第3の反射を考慮し:
【数5】
であり、
ここで、γr1は、プローブされるオブジェクトの底部に対する第1の反射中に起こり得る伝搬モードの変化を特徴づけるパラメータであり、特に、第1の反射後に伝搬モードにしたがって送信された任意の波の伝搬速度と、第1の反射前に伝搬モードにしたがって送信されたこの同じ波の伝搬速度との比として定義され、γr2は、プローブされるオブジェクトの前面に対する第2の反射中に起こり得る伝搬モードの変化を特徴づけるパラメータであり、特に、第2の反射後に伝搬モードにしたがって送信された任意の波の伝搬速度と、第2の反射前に伝搬モードにしたがって送信された同じ波の伝搬速度との比として定義され、γr4は、プローブされるオブジェクトの底部に対する第3の反射中に起こり得る伝搬モードの変化を特徴づけるパラメータであり、特に、第3の反射後に伝搬モードにしたがって送信された任意の波の伝搬速度と、第3の反射前に伝搬モードにしたがって送信された同じ波の伝搬速度との比として定義され、θ’’は、スネルデカルトの法則を用いてθから決定可能な、オブジェクトの底部に対する第1の反射中の反射角である。
【0017】
また任意選択で、M個のスペクトル画像FTIを得るための各スペクトル行列FTMRのコンバージョンは、参照フレーム変更方程式の系が全単射でないときに、伝搬する波のみを保持し、各スペクトル行列FTMRのスペクトル空間と対応するスペクトル画像FTIのスペクトル空間との間の対応曖昧性を除去するために、各スペクトル行列FTMRのスペクトル空間の台(support)制限を含む。
【0018】
通信ネットワークからダウンロード可能な、および/または、コンピュータ可読媒体に記憶されている、および/または、プロセッサによって実行可能なコンピュータプログラムであって、前記プログラムがコンピュータ上で実行されたときに、本発明によるイメージング方法のステップを行うための命令を含む、コンピュータプログラムも提案される。
【0019】
オブジェクトの超音波プロービングのための超音波プロービングデバイスも提案されており、超音波プロービングデバイスは:
- L個の超音波送信トランスデューサ、およびN個の超音波受信トランスデューサを含むプローブと、
- 超音波のM回連続した送信のためのL個の送信トランスデューサを制御するための手段と、
- 各送信について、特に前記各送信の後方散乱によるエコーを測定するN個の測定時間信号を、同時に所定の持続時間で受信するように、N個の受信トランスデューサを制御するための手段と、
- オブジェクトを可視化するために超音波画像を再構成するためのプロセッサとを含み、プロセッサは、以下の処理:
・N個の連続したサンプルでの各測定時間信号の時間的サンプリング、
・サイズN×Nの超音波時間信号のM個の行列MR、1≦m≦M、を得ることであって、各行列MRの各係数MR(u,t)は、m番目の送信に起因するu番目の受信トランスデューサにより受信された測定信号のt番目の時間サンプルを表す、行列MR、1≦m≦M、を得ること、
・M個のスペクトル行列FTMR、1≦m≦M、を得るための、各行列MRの行と列の2次元フーリエ変換、
・空間周波数の空間におけるM個のスペクトル画像FTIを得るための、各スペクトル行列FTMRのコンバージョンであって、このコンバージョンは、M個の行列FTMRのM個のスペクトル画像FTIへの行列変換関係の適用、および参照フレームの変更の方程式の系による双線形補間の適用を含む、コンバージョン、
・M個のスペクトル画像FTIの結合、および、オブジェクトの超音波画像Iを得るための、結果としてもたらされたスペクトル画像FTIの行と列での2次元逆フーリエ変換
を行うように構成され、
プロセッサは、コンバージョンを行うときに:
- プローブされるオブジェクトにおける後方散乱中の伝搬モードの変化を、参照フレーム変更方程式にこのモードの変化を特徴づけるパラメータを追加することによって、考慮する、および/または
- 行列変換関係に位相シフト項を追加することによって、プローブされるオブジェクトの壁に対する反射を考慮する
ように、さらに構成される。
【0020】
本発明は、一例としてのみ与えられ、添付の図面を参照して行われる以下の説明を介して、よりよく理解されるであろう:
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態による超音波プロービングデバイスの一般的な構造を図示する図である。
図2図1のデバイスによって実施されることができる平面超音波の連続的な送信の原理を示す図である。
図3図1のデバイスについて、起こり得る反射および/またはモードの変化を考慮する第1のケースを示す図である。
図4図1のデバイスについて、起こり得る反射および/またはモードの変化を考慮する第2のケースを示す図である。
図5図1のデバイスについて、起こり得る反射および/またはモードの変化を考慮する第3のケースを示す図である。
図6図4のケースにおいて、図1のデバイスによって行われることができる行列コンバージョンの第1の例の結果を示す図である。
図7図4のケースにおいて、図1のデバイスによって行われることができる行列コンバージョンの第2の例の結果を示す図である。
図8図4のケースにおいて、図1のデバイスによって行われることができる行列コンバージョンの第3の例の結果を示す図である。
図9】本発明の一実施形態による、図1のデバイスによって実施される超音波信号取得および処理方法の連続したステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1を参照すると、本発明の実施形態による、オブジェクト102をプロービングするためのデバイス100は、ハウジング106、すなわちプローブ104に取り付けられた参照フレームとして機能する変形可能ではない構造要素を有する超音波プローブ104を含んでおり、その中には、例えば直線的にまたはマトリクス状に、アレイ状に配置されたL=N個の固定式または可動式のトランスデューサ108、...、108が配置されている。したがって、超音波プローブ104はマルチエレメントプローブである。
【0023】
オブジェクト102は、例えば、非破壊検査によって観察したい機械部品、または、医療コンテキストでは、非侵襲的に検査したい人間または動物の身体の一部である。図1に示す実施形態では、オブジェクト102は、水110などの液体に浸され、プローブ104は、水110がそれらを分離するようにオブジェクト102から距離を置いて維持されている。しかし、別の同等の実施形態では、プローブ104がオブジェクト102と直接接触していてもよい。以下の説明でむしろアプローチされるのは、この別の実施形態でさえある。
【0024】
トランスデューサ108、...、108は、一般的参照符号Cの下で識別された制御信号に応答して、図1に点線の矢印で示された互いに平行な主方向に沿って、および図の主平面内である主平面内で、オブジェクト102に向かって個別に超音波を送信するように設計されている。
【0025】
トランスデューサ108、...、108はさらに、オブジェクト102から、およびオブジェクト102へと反射または後方散乱した超音波のエコーを検出し、一般的参照符号Sの下で識別され、これらのエコーに対応する測定信号を提供するように設計されている。このように、図1の非限定的な例では、トランスデューサ108、...、108が送信機能と受信機能の両方を行っているが、送信機とは異なる受信機が、本発明の原理との整合性を保ちつつ、異なる独立したハウジングに提供されることも可能である。さらに、送信機の数Lは、受信機の数Nとは全く異なっていてもよい。
【0026】
プロービングデバイス100は、プローブ104のトランスデューサ108、...、108を制御するため、および測定信号Sを処理するための電子回路112をさらに含む。この電子回路112は、制御信号Cをプローブ104に送信するため、および測定信号Sを受信するために、プローブ104に接続されている。電子回路112は、例えばコンピュータの電子回路である。電子回路112は、制御信号Cをプローブ104に送信し、プローブ104から測定信号Sを受信するように設計されたマイクロプロセッサなどの中央処理ユニット114と、特にコンピュータプログラム118が記憶されたメモリ116とを有する。
【0027】
コンピュータプログラム118は、まず、トランスデューサ108、...、108のための制御信号Cを生成し、それらのエコーを受信するための命令120を含む。具体的には、これらの命令は:
- 超音波のM回連続した送信のために、L=N個のトランスデューサ108、...、108を送信機としてアクティブ化し、
- 各送信に続いて、これらのN個の受信機によって、所望の調査深さの所定の持続時間の間に、N個の測定時間信号を同時に受信するために、トランスデューサ108、...、108を受信機としてアクティブ化し、特に、オブジェクト102内の考慮される各送信の後方散乱によるエコーを測定する
ようにプログラムされている。
【0028】
特に、オブジェクト102のM個の送信ゾーンにおいてM個の異なる連続した送信角度を有する平面超音波は、遅延法則データベース122においてメモリ116に記憶された遅延法則をトランスデューサ108、...、108に適用することによって、送信時に得られることができる。各遅延法則は、M個の異なる連続した送信角度の中で、所望の送信角度で平面超音波を生成するように、送信の間にトランスデューサ108、...、108に適用される遅延を定義する。したがって、連続した所望の送信が存在するのと同じ数の遅延法則が存在する。
【0029】
図2に示すように、連続した送信の数Mが奇数であり、トランスデューサ108、...、108のアレイに直交するz方向に関して対称な角度セクタにおいて、送信角度が一定のピッチで互いに追従する特定のケースでは、第1の平面波送信は、トランスデューサ108、...、108によって送信される信号に関する遅延法則Tと関連付けられており、プローブ104の開口の外側に部分的に位置する第1の送信ゾーンZEにおいて、z方向に関して送信角度θの平面波の送信を可能にする。また、(M+1)/2番目の平面波送信は、プローブ104の開口を覆う(M+1)/2番目の送信ゾーンZE(M+1)/2において、z方向に関して送信角度ゼロの平面波を送信するための一様な遅延法則T(M+1)/2と関連付けられている。最後に、最後の平面波送信は、プローブ104の開口の外側に部分的に位置する最後の送信ゾーンZEにおいて、z方向に関して送信角度θ=-θの平面波の送信を可能にする遅延法則Tと関連付けられている。一般的には、m番目の平面波送信は、z方向に関する送信角度θ=θ+(m-1).(θ-θ)/(M-1)の平面波の送信を可能にする遅延法則Tと関連付けられている。実際には、Mはほとんどの場合偶数であり:それで、0°では送信がなく、角度ピッチは一定ではない。
【0030】
採用された取得技術を考えると、イメージングされるゾーンは、M個の連続した送信ゾーンの和集合の中に含まれなければならない。その結果、このゾーンは、図2に見られるように、プローブ104の開口を超えて延び得る。特に、イメージングされるゾーンは、最大角度と最小角度の送信ゾーンの先端で区切られた扇型ゾーンの形をとることができる。このようにして、S-スキャンタイプの画像を得ることができる。
【0031】
代替的に、連続した平面波送信による信号の取得の原理によって有利に可能となるように、M個の異なる連続した送信角度θ-θは、トランスデューサアレイ108、...、108に垂直ではない平均方向θ(M+1)/2の周りに定義されることができる。特に、非破壊検査において調査されるオブジェクトの底部に置かれた亀裂などの欠陥を検出することが問題となり、この亀裂がさらにトランスデューサアレイに垂直であるとき、プローブ104に対して調査されるゾーンを横方向にシフトさせ、例えば平均45°の周りに送信することが好ましい。調査されるゾーンは、プローブ104の開口から完全に離れるポイントまでシフトされることさえ可能である。
【0032】
イメージングされたゾーンを再構成するために使用される測定信号の品質を向上させるために、トランスデューサ108、...、108によって送信された超音波信号のアポダイゼーションを適用して、エッジ効果によって被る歪みのない、より良い品質の平面超音波を形成することも可能である。このようなアポダイゼーションは、台形、ハニングまたはブラックマンハリス振幅(amplitude)法則などのアポダイゼーション窓を用いて、すべてのトランスデューサ上で空間的に送信ごとに行われる。この結果、連続する送信ゾーンの定義がより良好になる。
【0033】
図1および図2に示され、本明細書で論じられているもの以外の他の実施形態によれば、平面波以外の波、例えば、Hunter等の上述の論文のような円筒波を送信することができる。使用するトランスデューサの数(1からLの間)および遅延法則は、目標とされる取得およびアプリケーションに応じて、適合させれば十分である。それでも、以下の説明では、これから提示される計算を単純化するために、図2に示されるような平面送信が用い続けられる。
【0034】
再び図1を参照すると、M回の連続した送信のそれぞれから得られた信号の受信時に、N個のトランスデューサ108、...、108によって受信されたN×M個の測定時間信号のセットSがプローブ104によって中央処理ユニット114に送り返される。それ自体知られている方法で、これらの時間信号は、コンピュータプログラム118による処理のために提出される前に、N個の連続したサンプルにサンプリングされ、デジタル化される。
【0035】
そして、コンピュータプログラム118は、平面波行列と呼ばれる、サイズN×Nの超音波時間信号のM個の行列MR、1≦m≦M、を構築する命令124をさらに含む。各行列MRの各係数MR(u,t)は、m番目の送信に応答してu番目の受信トランスデューサによって受信された測定信号のt番目の時間サンプルを表す。
【0036】
任意選択で、コンピュータプログラム118は、各行列MRの時間的フィルタリングを行う命令126をさらに含み、このようなフィルタリングは、オブジェクト102の関心のあるゾーン外の飛行時間におけるあらゆる情報を除去する。
【0037】
コンピュータプログラム118は、各行列MRの行および列の数NおよびNがそれを可能とする場合、すなわちそれらが2の累乗に対応する場合には、行および列の2次元フーリエ変換により、有利には離散2次元フーリエ変換により、さらに有利には2次元FFT計算(「高速フーリエ変換」)により、各行列MRを周波数信号の行列FTMRに変換するための命令128をさらに含む。したがって、M個のスペクトル行列FTMR、1≦m≦M、が得られ、それらの係数FTMR(ku,kt)は、(受信トランスデューサの相対的な配置に関連する)空間波数kuの離散的な値ku、1≦i≦N、と、(サンプリング時点に関連する)時間波数ktの離散的な値kt、1≦j≦N、とに応じてとられるスペクトル値である。
【0038】
コンピュータプログラム118は、各スペクトル行列FTMRを、得ようとする最終画像の横軸および縦軸にそれぞれ対する空間周波数の空間におけるスペクトル画像FTIにコンバートする命令130をさらに含む。これが、サイズN×Nで係数FTI(kx,kz)のM個のスペクトル画像FTI、1≦m≦M、をもたらし、ここで、kx、1≦i≦N、は、選択された横軸(例えば、トランスデューサの軸と平行)に関連する空間周波数kxの離散的な値であり、kz、1≦j≦N、は、選択された縦軸(例えば、トランスデューサの軸に垂直)に関連する空間周波数kzの離散的な値である。例えば、上述のCheng等の文献で教示されているように、このコンバージョンは、M個の行列FTMRの行列変換関係をM個のスペクトル画像FTIに適用し、参照フレーム変更方程式の系を使用して双線形補間を適用することを伴う。具体的には、行列変換は、ポイント(kx’,kz’)、1≦i≦Nおよび1≦j≦N、におけるスペクトル画像の値をもたらすが、これらの値は、選択された離散的な値(kx,kz)には対応しておらず、空間周波数kxおよびkzの値を波数kuおよびktの値に関係づける参照フレーム変更方程式の系に依存している。それにもかかわらず、所望の係数FTI(kx,kz)、1≦i≦Nおよび1≦j≦N、は、ポイント(kx’,kz’)、1≦i≦Nおよび1≦j≦N、のポジショニングを知ることを可能にする参照フレーム変更方程式の系を用いて、行列変換によって得られた値FTI(kx’,kz’)の双線形補間によって、容易に見出され得る。
【0039】
コンピュータプログラム118は、M個のスペクトル画像FTIの、係数FTI(kx,kz)、1≦i≦Nおよび1≦j≦N、の単一の結果としてもたらされたスペクトル画像FTIへの結合を行うための命令132をさらに含む。単純で高速な実施形態では、スペクトル画像FTIは、M個のスペクトル画像FTIの各ピクセル(kx,kz)での和から生じ得る。
【0040】
最後に、コンピュータプログラム118は、結果としてもたらされたスペクトル画像FTIの行および列の数NおよびNがそれを可能とする場合、すなわちそれらが2の累乗に対応する場合には、行および列の2次元逆フーリエ変換により、有利には逆離散フーリエ変換によって、さらに有利にはIFFT(逆高速フーリエ変換)の2次元計算によって、結果としてもたらされたスペクトル画像FTIを、オブジェクト102を見るための超音波画像Iに変換するための命令134を含む。オブジェクト102を見るための超音波画像Iは、サイズがN×N、ピクセル値がI(x,z)である。
【0041】
上述のHunter等の文献で教示されたアプローチによれば、Weylの恒等式を利用した計算を図2に示すM個の平面波送信に適合させることにより、M個の行列FTMRとM個のスペクトル画像FTIとの間に以下の一般的な行列変換関係を得る:
[数1]
【数6】
【0042】
より具体的には、これまでの離散的な表記によれば、任意のm、1≦m≦M、に対して、これは:
[数2]
【数7】
を与える。
【0043】
また、空間周波数kxおよびkzの値を波数kuおよびktの値にリンクする以下の一般的な参照フレーム変更方程式の系も得る:
[数3]
【数8】
【0044】
より具体的には、これまでの離散的な表記によれば、任意のm、1≦m≦M、に対して、これは:
[数4]
【数9】
を与える。
【0045】
しかし、これらの式は、直接モードの後方散乱、すなわち、観測されるオブジェクト102のエッジに対する反射がなく、後方散乱中に伝搬モードの変化がない場合にのみ有効である。そのため、それらは、ほとんどの医療用途、および単純な非破壊検査コンテキストにおける単純な欠陥探索に適している。しかし、それらは、上述のようなより複雑な非破壊検査コンテキストには適していない。
【0046】
本発明によれば、伝搬モードまたはオブジェクト102の少なくとも1つの壁に対する、反射の変化のパラメータまたは項が上述の方程式に統合されることが有利に提供される。より具体的には、以下のうちの少なくとも1つが統合される:
- 上述の参照フレーム変更方程式の系に統合される、オブジェクト102の欠陥に対する後方散乱時の伝搬モードの変化を特徴づけるパラメータγ、および/または、
- 上述の行列変換関係に組み込まれた、オブジェクト102の壁に対する少なくとも1回の反射を特徴づける位相シフト項
【数10】
、ここで、eは指数関数、jはj=-1となるような純虚数、φはku,ktおよびθに先験的に依存する位相シフト関数である。
【0047】
また、オブジェクト102の壁に対する反射時に、モードの変化があり得る。この関連で、時間波数ktは伝搬モードに依存するため、伝搬モードの変化の可能な考慮に起因して、入射した送信された波に対応する波数は、同じ波が少なくとも1回反射したとき、および後方散乱後に、対応する波数と異なり得ることに留意すべきである。一方、どんなモードの変化でも、同じ波について一定のままなのは、波の波数と伝搬速度の積、すなわちその角周波数である。慣習的に、以下ではktを、後方散乱直後に現れる伝搬のモードにおける波に対応する波数とする。
【0048】
このように、オブジェクト102の少なくとも1つの壁に対する送信された波の少なくとも1回の反射を考慮すると、M個の行列FTMRとM個のスペクトル画像FTIとの間の上述の一般的な行列変換関係はより正確になる:
[数5]
【数11】
【0049】
オブジェクト102の欠陥に対する後方散乱中の伝搬モードの変化を考慮すると、上述の参照フレーム変更方程式の系はより正確になる:
[数6]
【数12】
【0050】
この方程式の系において、記号±は、オブジェクト102の1つ以上の壁に対する反射の数に依存する加算または減算を表す。角度θ’は、後方散乱中の入射角である。角度θ’は、スネルデカルトの法則を用いて、角度θから単純に、考慮される後方散乱に先行する反射回数に応じて得られることができる。θと同様に、図2に示すz軸、すなわち、トランスデューサの平面または軸に直交する軸に応じて表される。
【0051】
また、この方程式の系において、γは、オブジェクト102への後方散乱時の波の伝搬モードの変化を特徴づけるパラメータである。このように方程式の系に統合されると、それは、プローブされるオブジェクトでの後方散乱後に伝搬モードにしたがって送信された波の伝搬速度の、プローブされるオブジェクトでの後方散乱前に伝搬モードにしたがう同じ波の伝搬速度に対する比として定義される。したがって、ktを後方散乱後の波に対応する波数とすると、γ.ktは後方散乱中の入射波に対応する波数となる。
【0052】
上記の関係および方程式の系をさらに明確にするためには、反射とモードの変化の、異なる起こり得るケースを区別する必要がある。
【0053】
起こり得る反射および/またはモード変化を考慮する第1のケースによれば、オブジェクトの壁に対する反射は考慮されないが、オブジェクト102の欠陥Dに対する後方散乱中の、伝搬モードの変化が考慮される。この第1のケースが図3に示される。選択された横軸のx軸は、トランスデューサ、オブジェクト102の前面平面および底部平面に平行である。角度θおよびθ’が定義される、選択された縦軸のz軸は、一方で、トランスデューサ、オブジェクト102の前面の平面および底部の平面に直交する。反射なしにプローブ104から直接来る後方散乱中の任意の入射波は、θ’=θであることに留意されたい。欠陥Dは、例えば、オブジェクト102の底部に位置する伸びたせん断(shear)欠陥である。図2に示したM個の平面波送信におけるWeylの恒等式を用いた計算は、ひいては、上述の一般的な行列変換関係:
[数7]
【数13】
を与える。
【0054】
すなわち:
[数8]
φ(ku,kt,θ)=0
【0055】
また、図2に示したM個の平面波送信におけるWeylの恒等式を用いた計算は、上述の参照フレームを変更するための方程式の系について:
[数9]
【数14】
を与える。
【0056】
この第1のケースによれば、パラメータγは1とは異なる。γは、Mモードの後方散乱波の伝搬速度cと、欠陥Dに対して後方散乱する前のMモードの入射波の伝搬速度cとの比c/cに等しい。γは、モードの変化が、Lと書かれる縦方向の伝搬モード(後方散乱前)からTと書かれる横方向の伝搬モード(後方散乱後)へのモードの変化である場合、厳密には1よりも小さい。逆に、モードの変化が、伝搬モードT(後方散乱前)から伝搬モードL(後方散乱後)へのモードの変化である場合は、厳密に1よりも大きい。また、後方散乱における伝搬モードの変化を考慮しなければ、γ=1、上述のCheng等の文献の教示に由来して、先に定義した第1の関係および方程式の系を見出すことにも注意する。
【0057】
一般に「ハーフバウンスモード」と呼ばれる、起こり得る反射および/またはモード変化を考慮する第2のケースによれば、オブジェクト102の前面からの距離Hで、オブジェクト102の底部に対する反射が考慮され、この反射またはオブジェクト102の欠陥に対する任意の後続の後方散乱中の、伝搬モードの変化が考慮されることができる。この第2のケースが図4に示される。選択された横軸のx軸は、依然として、トランスデューサ、オブジェクト102の前面平面および底部平面に平行である。また、角度θおよびθ’が定義される、選択された縦軸のz軸も、やはり、トランスデューサ、オブジェクト102の前面平面および底部平面に直交している。これは、再びオブジェクト102の底部に位置する伸びたせん断欠陥である。図2に示したM個の平面波送信におけるWeylの恒等式を用いた計算は、そして、上述の一般的な行列変換関係について:
[数10]
【数15】
を与える。
【0058】
すなわち:
[数11]
φ(ku,kt,θ)=H・(γ・γ・kt・cosθ+γ・kt・cosθ’)
【0059】
この行列変換関係において、γは、プローブされるオブジェクトの底部に対する反射時に起こり得る伝搬モードの変化を特徴づけるパラメータである。γは、プローブされるオブジェクトの底部に対しての反射後に伝搬モードMにしたがって送信された波の伝搬速度cと、プローブされるオブジェクトの底部に対しての反射の前に伝搬モードMにしたがって送信されたこの同じ波の伝搬速度cとの比c/cとして定義される。そして、パラメータγは、c/cの比として定義され、cはMモードの後方散乱波の伝搬速度である。したがって、ktが後方散乱後の波に対応する波数ならば、γ.γ.ktは、オブジェクト102の底部に対する反射前に送信された入射波に対応する波数であり、γ.ktは、オブジェクト102の底部に対する反射後であるがその後の後方散乱前の入射波に対応する波数である。この第2のケースによれば、後方散乱中の伝搬モード変化を考慮しない場合、パラメータγは1に等しくなり得る。同様に、オブジェクト102の底部に対する反射中の伝搬モード変化を考慮しない場合、γは1に等しい。逆に、この反射中の伝搬モードの変化が考慮されるとすぐに1とは異なるものになる。より正確には、モードの変化が伝搬モードL(反射前)から伝搬モードT(反射後)へのモードの変化である場合、厳密には1より小さい。また、モードの変化が伝搬モードT(反射前)から伝搬モードL(反射後)へのモードの変化である場合は、厳密には1より大きい。
【0060】
また、図2に示したM個の平面波送信におけるWeylの恒等式を用いた計算は、上述の参照フレーム変更の方程式の系について:
[数12]
【数16】
を与える。
【0061】
伝搬モードの変化がない、後方散乱が後に続く反射という特定のケース(θ’=θ)では、以下の簡略化された関係を得る:
[数13]
【数17】
【0062】
また、簡略化された参照フレーム変更については、次のような方程式の系も得る:
[数14]
【数18】
【0063】
一般に「フルバウンスモード」と呼ばれる、起こり得る反射および/またはモード変化を考慮する第3のケースによれば、オブジェクト102の底部に対する第1の反射が考慮され、オブジェクト102の前面に対する第2の反射が考慮され、オブジェクト102の底部に対する第3の反射が考慮され、これら3つの反射のそれぞれの間の、または第2の反射と第3の反射との間のオブジェクト102の欠陥に対する任意の後方散乱の間の、伝搬モードの変化が考慮され得る。この第3のケースが図5に示される。選択された横軸のx軸は、やはりトランスデューサ、オブジェクト102の前面平面および底部平面に平行である。角度θおよびθ’が定義される、選択された縦軸のz軸は、やはり、トランスデューサ、オブジェクト102の前面平面および底部平面に直交している。また、角度θ’は、後方散乱中の入射角、すなわちオブジェクトの前面に対する第2の反射の後のそれのままである。一方、また、z軸から定義され、オブジェクト102の底部に対する第1の反射の後の波の角度に対応する別の角度θ’’が導入される。図2に示されたM個の平面波送信について、Weylの恒等式を用いた計算は、そして、上述の一般的な行列変換関係について:
[数15]
【数19】
を与える。
【0064】
すなわち:
[数16]
【数20】
【0065】
この行列変換関係において、ktはやはり欠陥による後方散乱直後の波数であり、ここでは伝搬モードMに相当する。また、この行列変換関係において、γr1は、プローブされるオブジェクトの底部に対する第1の反射中に起こり得る伝搬モードの変化を特徴づけるパラメータであり、γr2は、プローブされるオブジェクトの前側に対する第2の反射中に起こり得る伝搬モードの変化を特徴づけるパラメータであり、γr4は、プローブされるオブジェクトの底部に対する第3の反射中に起こり得る伝搬モードの変化を特徴づけるパラメータである。各γriは、i=1、2、または4の場合、反射後に伝搬モードMi+1にしたがって送信された波の伝搬速度ci+1と、反射前に伝搬モードMにしたがって送信されたこの同じ波の伝搬速度cとの比ci+1/cとして定義される。そして、パラメータγは比c/cとして定義され、ここで、cはMモードでの後方散乱波の伝搬速度であり、cはMモードでの後方散乱直前の波の伝搬速度である。したがって、ktがやはり後方散乱直後の波に対応する波数であるとすると、γr1.γr2.γ.ktはオブジェクト102の底部に対する第1の反射前に送信された入射波に対応する波数であり、γr2.γ.ktはこの第1の反射の直後の波に対応する。最後に、kt/γr4は、トランスデューサによって受信された波に対応する波数である。この第3のケースによれば、後方散乱中の伝搬モードの変化を考慮しない場合、パラメータγは1に等しくなり得る。同様に、γriは、i=1、2、または4の場合、オブジェクト102における対応する反射中の伝搬モード変化を考慮しない場合、1に等しい。逆に、この反射中の伝搬モードの変化が考慮されるとすぐに、1とは異なるものとなる。より正確には、モードの変化が伝搬モードL(反射前)から伝搬モードT(反射後)へのモードの変化である場合、厳密には1よりも小さい。また、モードの変化が伝搬モードT(反射前)から伝搬モードL(反射後)へのモードの変化である場合は、厳密には1より大きい。
【0066】
また、図2に示したM個の平面波送信におけるWeylの恒等式を用いた計算は、上述の参照フレーム変更の方程式の系について:
[数17]
【数21】
を与える。
【0067】
伝播モードの変化がない、最後の反射が後につづく逆伝搬が後に続く2回の連続の反射という特殊なケース(θ’=θ’’=θ)では、以下の簡略化された関係を得る:
[数18]
【数22】
【0068】
また、参照フレームを変更するための以下の簡略化された方程式の系も得る:
[数19]
【数23】
【0069】
本発明の第2の態様によれば、スペクトル行列および画像FTMRおよびFTIのそれぞれのスペクトル空間の台をウィンドウ化することによって制限することが有利である。これらの台を制限することにより、実際、メモリおよび特に計算における利益を得ることができる。また、反射および/またはモード変化を考慮するさまざまな起こり得るケースに応じて、参照フレームの変更の方程式の系が全単射でありえるか否かに注目することも有利である。全単射ではない場合には、アーチファクトのリスクを伴ういかなる曖昧さも回避するために、台はさらに制限されることができ、これは、計算をさらに単純化する。これらの台の制限によって生じる欠落データは、いずれにしても、それらの台をすべて結び合わせるM個のスペクトル画像FTIの結合によって補償される。
【0070】
上述され図4に示された、送信された波の伝搬モードの変化がある、またはないオブジェクト102の底部に対する単一の反射の第2のケースについて、図6、7、8に説明のために3つの例が与えられる。
【0071】
図6は、波の後方散乱中に伝搬モードの変化が起こらないとき(γ=1)の、スペクトル行列FTMRの台、およびスペクトル画像FTIへのコンバージョンに対する、参照フレーム変更方程式の系の影響を示している。このため、これは、LLL(M=L、M=L、M=Lについて)、TLL(M=T、M=L、M=Lについて)、TTT(M=T、M=T、M=Tについて)、およびLTT(M=L、M=T、M=Tについて)と示されるモードを含む。スペクトル台ウィンドウ化による第1の制限によれば、各kuについて、kuの絶対値以上のktの値のみが保たれ、これは、スペクトル行列FTMRの上向きに開いた三角のZ台を形成する。このZ台の外側では、波はエバネッセント(すなわちそれらは伝搬しない)であり、したがって重要ではないと実際にみなされることができる。この第2のケースでは、参照フレーム変更方程式の系がγ=1の場合に取る形を考えると、これは、スペクトル画像FTIの条件kt≧|ku|に依存する角度セクタ(すなわち、スペクトルウィンドウ化)で囲まれたディスクの一部にZ’台という結果になる。この参照フレーム変更方程式の系は全単射であるため、Z台(およびそれゆえZ’台)をさらに制約することは特に適切ではない。
【0072】
図7は、波の後方散乱中にLからTへの伝搬モードの変化が起こるとき(γ<1)の、スペクトル行列FTMRの台、およびスペクトル画像FTIへのコンバージョンに対する、参照フレーム変更方程式の系の影響を示している。このため、これは、LLT(M=L、M=L、M=Tについて)、およびTLT(M=T、M=L、M=Tについて)と示されるモードを含む。上述のように、第1のスペクトル台制限によれば、各kuについて、kuの絶対値以上のktの値のみが保たれ、スペクトル行列FTMRの上向きに開いた三角のZ台を形成する。この第2のケースでは、参照フレーム変更方程式の系がγ<1の場合に取る形を考えると、これは、スペクトル画像FTIに対して、条件kt≧|ku|に依存する角度セクタで囲まれたディスクの部分台Z’という結果になる。この参照フレーム変更方程式の系は依然として全単射であるため、台Z(およびそれゆえ台Z’)をさらに制約することは特に適切ではない。
【0073】
図8は、波の後方散乱中にTからLへの伝搬モードの変化が起こるとき(γ>1)の、スペクトル行列FTMRの台、およびスペクトル画像FTIへのコンバージョンに対する、参照フレーム変更方程式の系の影響を示している。このため、これは、LTL(M=L、M=T、M=Lについて)、およびTTL(M=T、M=T、M=Lについて)と示されるモードを含む。上述のように、第1のスペクトル台制限によれば、各kuについて、kuの絶対値以上のktの値のみが保たれ、スペクトル行列FTMRの上向きに開いた三角の台を形成する。この第2のケースでは、参照フレーム変更方程式の系がγ>1の場合に取る形を考えると、これは、以前のものよりも複雑な形状の台Z’という結果になり、その中には重なり合うゾーンZ2’が目印をつけられている。より正確には、台Zは2つのゾーンZ1とZ2に分割されることができ、Z1は参照フレームを変えることにより、台Z’の2つのゾーンZ1’とZ2’を投影し、Z2は台Z’の2つのゾーンZ2’とZ3’を投影する。これは、ゾーンZ2’では、各組(kx,kz)は、ゾーンZ1とZ2にそれぞれ2つの前出の項を持つことを意味する。このことから、γ>の場合、参照フレーム変更方程式の系は単射ではないために全単射ではないことがわかり、台Z(およびそれゆえ台Z’)をさらに制限することが適切になる。例えば、スペクトル行列FTMRに対してZ2台ゾーンのみを保持することができ、すなわち、スペクトル画像FTIに対してZ2’とZ3’の台ゾーンの和集合のみを保持することができる。これは、より選択的なスペクトルのウィンドウ化を構成する。しかし、その後のM個のスペクトル画像FTIの結合を考えると、情報の損失は大きくない。その一方で、既に強調したように、メモリおよび計算における利益は、アーチファクトの制限と同様に重要である。
【0074】
次に、本発明の好ましい実施形態にしたがって、図9を参照して、図1のデバイス100によって実施されることができる超音波信号を取得および処理するための方法900の一例が説明される。
【0075】
ステップ902において、命令120を実行する処理ユニット114は、測定信号の取得のために、トランスデューサ108、...、108の送信および受信シーケンスを制御する。
【0076】
これらのシーケンスは、トランスデューサ108、...、108の数Nよりもはるかに小さくなり得る整数であるM個である。各ショットの後、信号はすべてのN個のトランスデューサで受信され、デジタル化され、電子回路112に送信される。
【0077】
ステップ904において、命令124を実行する処理ユニット114は、測定信号を記録し、測定信号がサンプリングされ、デジタル化され、さらなる処理のためにM個の行列MR、1≦m≦M、に分配される。ステップ902および904は、同時に行われてもよく、すなわち、測定信号の記録することおよび画像再構成などの処理を行うことを開始するために、すべてのショットが発射されるまで待つ必要はない。
【0078】
任意選択のステップ906において、命令126を実行する処理ユニット114は、各行列MRの時間的なフィルタリングを行い、このフィルタリングは、関心のあるゾーンの外側の飛行時間に位置する情報を除去することを目的とする。このステップ906は、特に邪魔になるエコー源となる界面を除外することにより、イメージングされるゾーンを欠陥のごく近傍に限定することを可能とする。これは、オブジェクトの底部から形成する亀裂をイメージングするために特に有用である。
【0079】
ステップ908において、命令128を実行する処理ユニット114は、各行列MRの行および列の2次元離散フーリエ変換を行い、M個のスペクトル行列FTMRを得る。
【0080】
ステップ910において、命令130を実行する処理ユニット114は、反射および/またはモード変化の所望の考慮にしたがって選択された、行列変換関係RELおよび参照フレーム変更方程式の系SYSを使用して、各行列FTMRをコンバートしてM個のスペクトル画像FTIを得る。
【0081】
ステップ912において、命令132を実行する処理ユニット114は、M個のスペクトル画像FTIの、単一の結果としてもたらされるスペクトル画像FTIへの結合を行う。
【0082】
最後に、最後のステップ914において、命令134を実行する処理ユニット114は、結果としてもたらされたスペクトル画像FTIの行および列で2次元逆離散フーリエ変換を行って、オブジェクト102を見るための超音波画像Iを得る。
【0083】
オブジェクトの底部に長さ5.9mmの欠陥が見える超音波画像Iの例(a)は、モードの変化がないオブジェクト102の底部でのバウンスを考慮して、Tモード送信によるTTTイメージングについて与えられる。
【0084】
オブジェクトの長さ9.8mmの欠陥が見える超音波画像Iの例(b)は、オブジェクト102の底部でのバウンスと、後方散乱中のLモードからTモードへの変化を考慮して、Lモード送信によるLLTイメージングについて与えられる。
【0085】
オブジェクトの底部に長さ9.0mm、傾き-14.2°の欠陥が見える超音波画像Iの例(c)は、オブジェクト102の底部でのバウンスと、後方散乱中のTモードからLモードへの変化を考慮して、Tモード送信によるTTLイメージングについて与えられる。
【0086】
最後に、オブジェクトの前部に長さ4.3mmの欠陥が見える超音波画像Iの例(d)は、モードを変化させないオブジェクト102の底部と前面での2回のバウンスを考慮に入れた、Tモード送信によるTTTTTイメージングについて与えられる。これらの例のそれぞれにおいて、一般的に検出および可視化が困難なタイプの欠陥が、ここでは非常に明確に見え、位置特定され、測定可能である。
【0087】
上述したような超音波プロービングデバイスは、2次元フーリエ変換超音波イメージングを用いて、送信された波の起こり得る反射および伝搬モードの変化を巧みに考慮することで、複雑で通常はあまり見えない欠陥の可視化を可能にしていることがはっきりと明らかである。この巧みな考慮は、行われた処理に複雑さを加えるものではない。スペクトル台の制限も考慮されることができ、計算をさらに単純化する。
【0088】
また、本発明は、上述の実施形態に限定されないことに留意すべきである。実際、当業者には、上述の実施形態に対して、まさに開示された教示に照らして、様々な変更を加えることができることが明らかであろう。
【0089】
特に、コンピュータプログラム命令は、これらの命令の実行中に行われる機能の専用の電子回路に置き換えられることができる。
【0090】
特にまた、図3から図9では、送信および受信トランスデューサがプローブされるオブジェクトと接触している超音波イメージングの例のみが考慮されている。しかし、図1に示すように、プローブ104は、超音波の適切な送信のために、例えば液体に浸されて、オブジェクト102から距離を置いていてもよい。しかし、本発明の一般的な原理は依然として有効であり、ただ、プローブとオブジェクトの前面との間で考慮される液体媒体における、送信および受信において波の送信を考慮するために、位相項を追加することによって方程式を適合させなければならない。この適合は特に簡単であり、当業者の理解範囲にある。
【0091】
一般に、上記の発明の詳細な提示において、使用された用語は、本発明を本明細書に記載された実施形態に限定するものと解釈されるべきではなく、当業者が彼らの一般的な知識を、彼らにまさに開示された教示の実施に適用することによって把握できるすべての均等を含むものと解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】