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  • 特表-要求の厳しい用途のための超硬合金 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(54)【発明の名称】要求の厳しい用途のための超硬合金
(51)【国際特許分類】
   C22C 29/08 20060101AFI20220202BHJP
   B22F 1/148 20220101ALI20220202BHJP
   B22F 3/15 20060101ALI20220202BHJP
   B23B 27/14 20060101ALN20220202BHJP
【FI】
C22C29/08
B22F1/148
B22F3/15 M
B23B27/14 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534297
(86)(22)【出願日】2019-11-28
(85)【翻訳文提出日】2021-08-13
(86)【国際出願番号】 IB2019060286
(87)【国際公開番号】W WO2020128689
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】1820628.4
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518414476
【氏名又は名称】ハイペリオン マテリアルズ アンド テクノロジーズ (スウェーデン) アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ラヴィーン, オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】テル, オリヴィエ
【テーマコード(参考)】
3C046
4K018
【Fターム(参考)】
3C046FF32
3C046FF39
3C046FF45
3C046FF50
3C046FF52
3C046FF53
3C046FF57
4K018AB02
4K018AB07
4K018AD06
4K018BA04
4K018BA09
4K018BB04
4K018BC11
4K018EA11
4K018KA01
4K018KA14
4K018KA19
4K018KA58
(57)【要約】
特に、油およびガス流適用を含む、要求の厳しい用途のための、耐腐食性および耐浸食性の超硬合金。以下の構成要素Co、Ni、Cr、Moおよび残余のWCを含む、硬質相およびバインダー相に基づく超硬炭化タングステングレードが記載される。特に、超硬合金のバインダー相含有量は、5.1~7.5wt%の間であり、超硬合金は、1.7~3.3wt%のCo;2.0~3.7wt%のNi;0.5~1.1wt%のCr;0.05~0.4wt%のMoおよび残余として含まれるWCを含み、Coのwt%は、常にNiのwt%未満である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
WCを含む硬質相およびバインダー相を含む超硬合金であって、
超硬合金のバインダー相含有量が、5.1~7.5wt%の間であり、
超硬合金が、1.7~3.3wt%のCo;2.0~3.7wt%のNi;0.5~1.1wt%のCr;0.05~0.4wt%のMoおよび90.0~96.0wt%のWCを含み、
Coのwt%が、Niのwt%未満である
ことを特徴とする、超硬合金。
【請求項2】
超硬合金におけるCo/Niの商wt%が、0.5~0.95である、請求項1に記載の超硬合金。
【請求項3】
超硬合金におけるCr/(Co+Ni+Cr+Mo)の商wt%が、0.08~0.14の範囲である、請求項1または2に記載の超硬合金。
【請求項4】
超硬合金におけるMo/(Co+Ni+Cr+Mo)の商wt%が、0.01~0.06の範囲である、請求項1または2に記載の超硬合金。
【請求項5】
6.2~7.2wt%のバインダー相を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の超硬合金。
【請求項6】
超硬合金におけるCo+Ni含有量が、少なくとも4wt%である、請求項1から5のいずれか一項に記載の超硬合金。
【請求項7】
WCの粒度が、線形切片によって決定された0.2~2μmの範囲である、請求項1から6のいずれか一項に記載の超硬合金。
【請求項8】
WCの粒度が、線形切片によって決定された0.3~0.9μmの範囲である、請求項7に記載の超硬合金。
【請求項9】
1.7~2.6wt%の範囲のCoを含む、請求項1に記載の超硬合金。
【請求項10】
3.3~3.7wt%の範囲のNiを含む、請求項1に記載の超硬合金。
【請求項11】
0.7~1.0wt%の範囲のCrを含む、請求項1に記載の超硬合金。
【請求項12】
0.1~0.3wt%の範囲のMoを含む、請求項1に記載の超硬合金。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の超硬合金を含む、油およびガス適用のための部材。
【請求項14】
チョーク弁、制御弁、弁座、プラグ座、フラック座、ケージ、ケージアセンブリ、シールリング、流体および/またはスラリーの通過流を可能にする弁の部材部分のいずれか1つを含む、請求項13に記載の部材。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の超硬合金を含む、金属成形のためのツール。
【請求項16】
請求項1から14のいずれか一項に記載の超硬合金を含む、流体取扱いのための部材。
【請求項17】
WCを含む硬質相およびバインダー相を含む超硬合金を作成する方法であって、該方法が、
1.7~3.3wt%のCo;2.0~3.7wt%のNi;0.5~1.1wt%のCr;0.05~0.4wt%のMoおよび90.0~96.0wt%のWCの原材料を含む粉末化バッチを調製することと(Coのwt%は、Niのwt%未満である);
粉末化バッチを圧縮してプリフォームを形成することと;
プリフォームを焼結して物品を形成することと
を含みかつ特徴とし、
超硬合金のバインダー相含有量が、5.1~7.5wt%の間である、
方法。
【請求項18】
プリフォームを焼結して物品を形成する工程が、真空またはHIP処理を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
焼結処理が、1360~1500℃の温度および0~20MPaの圧力で処理することを含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
請求項17から19のいずれか一項に記載の方法によって製造された、油およびガス適用のための物品。
【請求項21】
請求項17から19のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる、超硬合金物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、要求の厳しい用途のための耐摩耗性超硬合金および製造方法に関し、特に、排他的にではないが、所与の硬度に対して比較的高い靭性を有する、耐腐食性および耐浸食性の超硬合金に関する。
【背景技術】
【0002】
超硬合金は、岩石の切断、機械加工、掘削または分解のためのツールなどの要求の厳しい用途のために、広範に使用されてきた。これらの高い耐摩耗性の炭化物は、油およびガス産業における部材として特に適用されることが見出されており、それらの産業において、例えば、チョーク弁および制御弁、ケージ、弁座ならびにシールリングを含む様々な流体流を制御する部材のために典型的に使用される。それらの炭化物の適性は、特に、硬度、靭性、強度および耐摩耗性を含むそれらの物理的および機械的特性に大きく起因する。物理的に要求の厳しい油およびガス適用において、従来の超硬合金部材は、耐用年数が比較的短い。さらに、接近可能性が制限され(例えば、海中環境)、点検のために長い生産中断時間がかかることに起因して、稼働中の性能および負担の予測が非常に重要である。
【0003】
油およびガス生産系における流れを制御する部材は、典型的に、高速の流体流(>200m/秒)に晒され、そこで流体は、典型的に、様々な湿度、流量およびpHで、砂/油/ガス/水と混合される。動作条件には、関連する腐食、孔食および段階的なクラッキングの可能性の増大を伴う、特にHSへの曝露を含む「酸性」条件も含まれ得る。
【0004】
深海環境と共に、動作の(特に、媒体流の高い変動性、ならびに極度の高圧および高温を含む)条件がますます困難になるということは、従来の部材が、短い耐用年数を有し、故障率が高くなりやすいことを意味する。
【0005】
WO2012/045815は、耐用年数を最大限にするように改善された物理的および機械的性質を提供するために、硬質相がNi、Co、Cr、MoおよびNbを含むバインダー相と組み合わされている、油およびガス適用のための超硬合金材料を記載している。
【0006】
WO00/000655は、Co、Ni、Cr、Moおよび残余のWCを含む材料を含む、媒体流を制御するためのチョーク弁として実装される場合の、耐腐食-浸食性のための超硬炭化タングステン材料を開示している。
【0007】
EP1413637も、Co、Ni、Cr、Moおよび残余のWCに基づく、油およびガス適用のための超硬炭化タングステングレードを開示している。
【0008】
しかし、油およびガス流体流の制御におけるある特定の環境下では、既存の超硬合金は、耐腐食性および機械抵抗性には最適化されていない。特に、既存の超硬合金は、流れ条件が酸性媒体を含み、大きい固体粒子によってそれぞれの部材部分に間欠的な衝撃が加わる場合には、不満足な故障率を示す。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、要求の厳しい用途に適した、特にこのような要求の厳しい用途の部材部分のための構成要素または主要材料としての使用に適した超硬合金材料を対象とする。また、困難な環境および動作条件に耐えるために、望ましい靭性、硬度、強度および耐摩耗性の性質を有する超硬合金が提供される。また、金属成形のためのツールとして、または流体取扱い適用における摩耗部分としての使用に適した超硬合金が提供される。また、特に流体流部材としての使用を含む、油およびガス生産における部材部分としての使用に適した超硬合金が提供される。
【0010】
それらの目的は、比較的に高い硬度、靭性および抗折力(T★RS)を有する超硬合金材料によって達成される。特に、本開示による超硬合金材料は、1600~2000HV30の範囲の硬度を含むことができる(ISO3878:1983)。さらに、本発明の超硬合金は、9~12MN/m3/2の間の靭性を含むことができる(Palmqvist、ISO28079:2009)。さらに、本発明の超硬合金は、3000N/mm超のTRSを含むことができる(ISO3327:2009)。
【0011】
WCを含む硬質相およびバインダー相を含む超硬合金であって、超硬合金のバインダー相含有量が、5.1~7.5wt%の間であり、超硬合金が、1.7~3.3wt%のCo;2.0~3.7wt%のNi;0.5~1.1wt%のCr;0.05~0.4wt%のMoおよび90.0~96.0wt%のWCを含み、Coのwt%が、常にNiのwt%未満であることを特徴とする、超硬合金が提供される。
【0012】
必要に応じて、超硬合金は、WCを残余wt%として含む。
【0013】
特に、本発明者らは、Coのwt%が常にNiのwt%未満である、硬質相のWCおよびバインダー相を含む超硬合金の列挙される元素組成物が、望ましい有利な硬度、靭性耐摩耗性および耐腐食性の性質を提供することを特定した。したがって、要求の厳しい油およびガス流体流適用における部材としての使用に適した、耐浸食性が高い材料が提供される。
【0014】
さらに、超硬合金の元素組成物は、好ましくは、1.7~3.3wt%のCo;2.0~3.7wt%のNi;0.5~1.1wt%のCr;0.05~0.4wt%のMoを含む。特に、一部の態様では、Co、Ni、CrおよびMoの実質的にすべての、大部分のまたは主な成分wt%は、バインダー相に存在する。すなわち、ある特定の実施形態では、少量または比較的に少量(すなわち、10wt%未満、5wt%未満、2wt%未満または1%未満)の、Co、Ni、Crおよび/またはMoのそれぞれの総量wt%は、バインダー相の外側に/バインダー相を超えて存在することができる。このような少量は、硬質相とバインダー相の間の粒界に、または硬質相に存在することができる。
【0015】
超硬合金は、Cr、MoおよびWを、遊離/元素形態の1つもしくは組合せで、または超硬合金のその他の構成要素のいずれかもしくは組合せと組み合わせられた化合物として含む。
【0016】
必要に応じて、WCを含む硬質相およびバインダー相を含む超硬合金であって、超硬合金のバインダー相含有量が、5.1~7.5wt%の間であり、超硬合金が、1.7~3.3wt%のCo;2.0~3.7wt%のNi;0.5~1.1wt%のCr;0.05~0.4wt%のMoおよび90.0~96.0wt%のWCからなり、Coのwt%が、Niのwt%未満であることを特徴とする、超硬合金が提供される。
【0017】
必要に応じて、超硬合金の硬質相は、少なくとも87wt%、89wt%、90wt%、92wt%、93wt%、94wt%、95wt%、96wt%である。必要に応じて、超硬合金におけるWCの量は、少なくとも90wt%であり、または90~96wt%もしくは91~95wt%の範囲である。
【0018】
必要に応じて、超硬合金は、窒化物および/または炭窒化物を含まない。必要に応じて、超硬合金は、不純物レベルで存在する窒化物および/または炭窒化物を含むことができる。必要に応じて、このような窒化物および/または炭窒化物の不純物レベルは、0.05wt%未満、0.01wt%未満または0.001wt%未満である。必要に応じて、超硬合金は、Ti、ならびにTiの炭化物、窒化物および/または炭窒化物を含まない。好ましくは、超硬合金は、組成的にTiを含まないように、0wt%のTiを含む。
【0019】
必要に応じて、焼結超硬合金における炭素含有量は、高い耐腐食性、耐摩耗性および靭性にさらに寄与するように所定の範囲内に維持される。必要に応じて、焼結材料の炭素含有量は、微細構造の遊離炭素(上限)およびエータ相の開始点(下限)の間の範囲で保持され得る。このような限界値は、当業者によって認識されよう。
【0020】
必要に応じて、焼結炭化物の磁気バインダー相の磁気飽和は、炭化物に含有されている「純粋」コバルト含有量の「予測される」最大磁気飽和パーセントとして表すことができる。本発明の態様によれば、焼結炭化物は、化学的に決定された含有量の50~100%の間の磁気飽和を含むことができる。
【0021】
必要に応じて、超硬合金におけるCo/Niの商wt%は、0.50~0.95である。Co:Niの相対量は、主にガス抽出適用の、増強された耐腐食性、特に耐乾燥浸食性を提供する。好ましくは、Co/Niの商wt%は、0.50~0.90;0.55~0.85;0.55~0.80;0.55~0.75;0.60~0.75または0.60~0.70の範囲であり得る。特に、比較的により高いwt%のNiは、特に酸性条件(pH<7)で耐腐食性を増強することが見出された。
【0022】
必要に応じて、超硬合金におけるCr/(Co+Ni+Cr+Mo)の商wt%は、0.08~0.14の範囲である。この範囲は、耐腐食性を増強すると同時に、油およびガスなどの要求の厳しい用途に必要な硬度および靭性を含む望ましい機械的性質を維持する。
【0023】
必要に応じて、超硬合金におけるMo/(Co+Ni+Cr+Mo)の商wt%は、0.01~0.06の範囲である。この範囲は、耐腐食性を増強すると同時に、油およびガスなどの要求の厳しい用途に必要な硬度および靭性を含む望ましい機械的性質を維持する。
【0024】
必要に応じて、超硬合金のバインダー相は、少なくとも4wt%であり、または4~8wt%もしくは4~7wt%の範囲である。WC硬質相に対するバインダー相の量(wt%)は、靭性を増強すると同時に、要求の厳しい用途に適したレベルに硬度を維持することが見出された。この相対バインダー含有量は、増強された耐腐食性(特に、耐乾燥浸食性)への寄与ももたらす。
【0025】
必要に応じて、超硬合金におけるCo+Ni含有量は、少なくとも4wt%であり、または4~8wt%、4~7wt%もしくは5~6.5wt%の範囲である。このような構成は、本発明の材料の靭性の増大への寄与をもたらす。
【0026】
必要に応じて、WCの粒度は、線形切片によって決定された焼結材料の0.2~2μm、0.2~1μmまたは0.4~0.8μmの範囲であり得る。必要に応じて、出発WC材料のFSSS粒度は、0.4~2μmの範囲であり得る。このような粒度は、増強された靭性を提供すると同時に、硬度を維持する。好ましくは、線形切片によって測定された、焼結材料におけるWCの粒度は、0.3~0.9μmの範囲である。
【0027】
必要に応じて、Coは、1.7~3.3wt%、2.0~2.6wt%、2.1~2.5wt%または2.2~2.4wt%の範囲に含まれる。必要に応じて、超硬合金は、3.3~3.7wt%または3.4~3.6wt%の範囲のNiを含む。必要に応じて、超硬合金は、0.7~1.0wt%、0.75~0.95wt%または0.8~0.9wt%の範囲のCrを含む。必要に応じて、超硬合金は、0.1~0.4wt%の範囲のMoを含む。
【0028】
必要に応じて、WCを含む硬質相およびバインダー相を含む超硬合金であって、超硬合金のバインダー相含有量が、5.1~7.5wt%の間であり、超硬合金が、1.7~3.3wt%のCo;2.0~3.7wt%のNi;0.5~1.1wt%のCr;0.05~0.4wt%のMoおよび残余として含まれるWCを含み、Coのwt%が、Niのwt%未満であることを特徴とする、超硬合金が提供される。
【0029】
本明細書で特許請求される超硬合金を含む油およびガス適用のための部材も提供される。必要に応じて、部材は、チョーク弁、制御弁、弁座、プラグ座、フラック(frac)座、ケージ、ケージアセンブリ、シールリング、流体および/またはスラリーの通過流を可能にする弁の部材部分のいずれか1つを含むことができる。
【0030】
また、金属成形のためのツールとして、または流体流適用を伴う摩耗部分としての使用などの要求の厳しい(demanding high)摩耗適用に適した組成物が提供される。一態様によれば、本発明の超硬合金は、特に、ダイ、しごき加工(ironing)ダイ、伸線または金属成形における他の部材のためのダイとしての使用を含む、金属成形のためのツールとして使用することができる。一態様によれば、本発明の超硬合金は、流体流を制御する部材として使用することができる。
【0031】
また、WCを含む硬質相およびバインダー相を含む超硬合金を作成する方法であって、該方法が、1.7~3.3wt%のCo;2.0~3.7wt%のNi;0.5~1.1wt%のCr;0.05~0.4wt%のMoおよび残余として含まれるWCの原材料を含む粉末化バッチを調製することと(Coのwt%は、常にNiのwt%未満である);粉末化バッチを圧縮してプリフォームを形成することと;プリフォームを焼結して物品を形成することとを含み、超硬合金のバインダー相含有量が、5.1~7.5wt%の間であることを特徴とする、方法が提供される。
【0032】
また、WCを含む硬質相およびバインダー相を含む超硬合金を作成する方法であって、該方法が、1.7~3.3wt%のCo;2.0~3.7wt%のNi;0.5~1.1wt%のCr;0.05~0.4wt%のMoおよび90.0~96.0wt%のWCの原材料を含む粉末化バッチを調製することと(Coのwt%は、Niのwt%未満である);粉末化バッチを圧縮してプリフォームを形成することと;プリフォームを焼結して物品を形成することとを含み、超硬合金のバインダー相含有量が、5.1~7.5wt%の間であることを特徴とする、方法が提供される。
【0033】
必要に応じて、プリフォームを焼結して物品を形成する工程は、真空またはHIP処理を含む。必要に応じて、焼結の処理は、1360~1500℃の温度および0~20MPaの圧力で処理することを含む。
【0034】
また、本明細書に記載される方法によって製造された、要求の厳しい用途のための物品が提供される。
【0035】
また、本明細書に記載される方法によって得ることができる、超硬合金物品が提供される。
【0036】
必要に応じて、Crは、Cr形態で、粉末化バッチの一部に添加することができる。
【0037】
必要に応じて、該方法は、Cr元素を添加することを含むことができる。このような実装に従って、該方法は、当業者によって認識される通り、微細構造の遊離炭素(上限)およびエータ相の開始点(下限)の間の範囲で焼結超硬合金における望ましい炭素wt%を達成するように、追加の炭素を添加することをさらに含むことができる。必要に応じて、粉末化バッチにおけるFSSSによるWC粒径は、0.4~2μmの範囲であり得る。
【0038】
必要に応じて、本発明の超硬合金は、タングステン超硬合金である。
【0039】
本発明の超硬合金は、さらに、タングステン、チタン、クロム、バナジウム、タンタル、ネオジムおよびモリブデンの群から選択される炭化物、窒化物および/または炭窒化物を含むことができる。このような成分は、好ましくは、材料の他の成分に対して大部分のまたは主な成分wt%として超硬合金に含まれるWCに対して、少量wt%の添加剤として粉末バッチに添加することができる。
【0040】
必要に応じて、超硬合金は、窒素または窒素化合物を含まない。しかし、超硬合金は、0.1wt%未満、0.05wt%未満または0.01wt%未満などの不純物レベルの、窒化物などの窒素または窒素化合物を含むことができる。
【0041】
必要に応じて、WCを含む硬質相およびバインダー相を含む超硬合金であって、超硬合金のバインダー相含有量が、5.1~7.5wt%の間であり、超硬合金が、1.7~3.3wt%のCo;2.0~3.7wt%のNi;0.5~1.1wt%のCr;0.05~0.4wt%のMoおよび90.0~96.0wt%のWC、ならびに必要に応じて不純物レベルのFe、Co、Ti、Nb、Ta、V、Re、Ru、Zr、Alおよび/またはYのいずれか1つまたは組合せからなり、Coのwt%が、Niのwt%未満であることを特徴とする、超硬合金が提供される。
【0042】
必要に応じて、本発明の超硬合金は、さらに、不純物レベルのFe、Ti、Nb、Ta、V、Re、Ru、Zr、Alおよび/またはYのいずれかを含むことができる。これらの元素は、元素、炭化物、窒化物または炭窒化物形態のいずれかで存在することができる。不純物レベルは、超硬合金に存在する不純物の全量について、0.1wt%未満または0.5wt%未満などのレベルである。
【0043】
好ましくは、超硬合金は、炭化物を排他的に含む。好ましくは、超硬合金は、WCを、主な炭化物成分wt%として含む。必要に応じて、超硬合金は、MoおよびCrのいずれか1つまたは組合せの少量wt%の炭化物を含むことができる。
【0044】
超硬合金は、典型的に、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデンまたはそれらの組合せを含む金属相成分をさらに含む。このような成分は、バインダー相に存在することができる。
【0045】
ここで、本発明の具体的な実装を、単なる例として、以下の添付の図を参照しながら記載する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】比較例に加えて、本発明の態様による異なる実施例の材料について標準化された質量損失および靭性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
比較的に高い靭性を有し、増強された耐腐食性および耐浸食性を示す耐摩耗性の超硬合金グレードが提供される。本発明者らは、このような物理的および機械的な特性が、WC硬質相に対して5.1~7.5wt%の範囲のバインダー相含有量、および超硬合金が1.7~3.3wt%のCo;2.0~3.7wt%のNi;0.5~1.1wt%のCr;0.05~0.4wt%のMoと90.0~96.0wt%のWCの組成物を有することによって達成され得ることを特定した。望ましい物理的および機械的な特性への寄与は、Niに対するCoの量を制御することによって、特にCoのwt%をNiのwt%未満に維持することによっても達成され得る。
【0048】
本発明の超硬合金は、特に、油およびガス生産における部材としての使用を含む、このような部材が腐食および機械的浸食を受けやすい、潜在的に摩耗度が高い、要求の厳しい用途に適合される。さらに、本発明の炭化物はまた、金属成形のためのツールとしての使用に適している。
【実施例
【0049】
ミル加工、圧縮、成形および焼結hip処理を含む従来の粉末冶金方法を使用して、本発明による超硬合金を製造した。比較用試験片に加えて、本発明による超硬合金材料を調製した。
【0050】
試料混合物グレードA~Iのそれぞれを、硬質構成要素を形成する粉末およびバインダーを形成する粉末から調製した。以下の調製方法は、出発粉末化材料:WC95.24g、Cr3C20.82g、Co2.05g、Ni3.58g、C0.05g、Mo0.31g、PEG2g、エタノール50mlを有する、以下の表1のグレードBに対応する。それが当業者に可能な粉末化材料の相対量であり、粉末化バッチを作成し、表1の超硬合金の完全に焼結された最終的な組成物を達成するためには、適切な調整が必要とされることが、当業者によって認識されよう。
【0051】
均一混合物が得られ、乾燥およびふるい分けによって顆粒化されるまで、粉末を、潤滑剤および抗凝集剤と共に湿式ミル加工した。乾燥粉末を圧縮して、前述の標準形状による未焼結部分を形成し、SinterHIPを使用して1350~1500℃および5MPaで焼結した。
【0052】
表1は、本発明によるグレードA~Iのさらなる特徴付けと共に、組成物(wt%)を詳細に示す。
【0053】
硬度試験を、ISO3878に従ってグレードA~Iで行い、Palmqvist ISO28079に従って靭性試験を行った。ビッカース押し込み試験を、30kgf(HV30)を使用して実施して、硬度を評価した。Palmqvist破壊靭性を、
に従って計算した。
【0054】
式中、Aは、一定の0.0028であり、HVは、ビッカース硬度(N/mm2)であり、Pは、適用負荷(N)であり、ΣLは、インプリントの亀裂の長さの合計(mm)である。結果は表2に示される。
【0055】
表3は、実施例グレードBおよびGを、比較例1~4と共に様々な異なる組成物およびWC出発物質の粒径に従って詳細に示す。出発物質の粒径は、標準ミル加工および焼結手順に従って低減され、したがって、完全に焼結された最終的な材料の粒度(線形切片によって決定された)は、Fisher Model 95 Sub-Sieve Sizer(商標)(FSSS)によって決定される通り、出発物質の粒径未満(最大で、またはおよそ半分)となり得ることが認識されよう。
【0056】
線形切片法(ISO4499-2:2008)は、WC粒度の測定法である。粒度測定は、微細構造のSEM画像から得られる。名目上は二相の材料、例えば超硬合金(硬質相およびバインダー相)について、線形切片技術により粒度分布の情報が得られる。超硬合金の微細構造の較正済み画像に、線を引く。この線が、WCの粒子を切り取る場合、線の長さ(l)を、較正規則を使用して測定する(ここで、1次、2次、3次、...n次粒子について、i=1、2、3、...n)。少なくとも100個の粒子を、測定のために計数した。平均WC粒度は、以下の通り定義される。
【0057】
硬度(ISO3878)、靭性(Palmqvist、ISO28079)およびTRS(ISO3327:2009)試験を、グレードBおよびG(部分的に)、ならびに比較例1~4で行った。抗折力を決定するための試験片は、タイプCのシリンダーであった(40×3mm2の寸法を有する円筒横断面)。試料を、2つの支持体の間に置き、破壊が生じるまで、それらの中心に負荷した(3点曲げ)。最大負荷を記録し、試験当たり最少で5つの試料で平均した。結果は、それぞれの磁気コバルト含有量と共に、表4に示されている。
【0058】
グレードBおよびGならびに比較例1~4の腐食率を評価し、結果を表5に示す。試料の表面粗さ(Ra)は、0.036μmであった。腐食率(mm/年)を、以下の模擬試験条件下で、浸漬時間に対する質量損失を用いることによって推定した。
1)曝気条件において、pH6の合成海水(3.56%wtのNaCl)中、25℃において212時間浸漬させた。
2)曝気条件において、pH1の合成海水(3.56%wtのNaCl+0.1MのHSO)中、60℃において212時間浸漬させた。
【0059】
質量損失腐食率(mm/年)を、先の模擬試験条件に従って、次式(ASTMG31-72「実験室での金属の浸漬腐食試験のための標準技法(Standard Practice for Laboratory Immersion Corrosion Testing of Metals)」):
腐食率=8.76 10×((重量損失(g)/(曝露された表面積(cm)×密度(g/cm)×浸漬時間(時))
を使用して推定した。
【0060】
表5のグレードの耐乾燥浸食性を、指針として次式ASTM G76-07(「ガスジェットを使用する固体粒子衝突による浸食試験を実施するための標準試験法(Standard Test Method for Conducting Erosion Tests by Solid Particle Impingement Using Gas Jets)」-ジェットノズルタイプの浸食装置を用いるガス噴流固体粒子衝突浸食による材料損失の決定)に従って、空気-砂浸食リグを使用して試験した。粒径範囲は、181μm~251μmであり、衝突角度は、90°であり、浸食物供給速度は、約10g/分であり、流速は、200±20m/秒であり、試料とノズルの間の隔離距離は、30mmであった。結果は表6に示される。
【0061】
グレードGによる本発明の超硬合金材料は、増強された靭性および耐腐食性と共に高い耐摩耗性(耐浸食性)を示した。特に、図1は、本発明のグレードBおよびGならびに比較例1~4についての、標準化された質量損失および靭性のグラフである。線10は、靭性の最小合格限界であり、線11は、要求の厳しい油およびガス探査条件のための耐乾燥浸食性の最小合格限界である。分かる通り、試料Gは、本明細書に記載される試験方法に従って、靭性および乾燥浸食性の両方の要件を満たしている。
【0062】
別途定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明において記載の主題が関係する分野の技術者に一般に理解される意味と同じ意味を有する。
【0063】
別途指示がない限り、「wt%」への任意の言及は、超硬合金の総質量に対する成分の質量画分を指す。
【0064】
ある範囲の値、例えば、濃度範囲、百分率範囲または比率範囲が提供される場合、文脈によって別途明示がない限り、その範囲の上限および下限の間の下限単位の小数までに介在する各値、ならびにその記述される範囲における任意の他の記述されるまたは介在する値は、記載の主題に包含されると理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立して、そのより小さい範囲に含まれてもよく、このような実施形態も、記述される範囲内の特に除外された限界値がある場合はそれを条件として、記載の主題に包含される。記述される範囲が、限界値の一方または両方を含む場合、含まれるそれらの限界値のいずれかまたは両方を除く範囲も、記載の主題に含まれる。
【0065】
先におよび本明細書の他所で使用される「1つの(a)」および「1つの(an)」という用語は、列挙された成分の「1つまたは複数」を指すと理解されるべきである。単数形の使用は、特に別途記述がない限り複数を含むことが、当業者には明らかとなろう。したがって、「1つの(a)」、「1つの(an)」および「少なくとも1つの(at least one)」という用語は、本願では交換可能に使用される。
【0066】
別途指示がない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される、成分の量、サイズ、重量、反応条件などの性質を表すすべての数値は、すべての場合において「約」という用語によって修正されると理解されるであろう。したがって、反対が示されない限り、以下の本明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメーターは、本発明の主題によって得られることが求められる望ましい性質に応じて変わり得る近似である。少なくとも、特許請求の範囲への均等論の原則の適用を制限するものではないが、各数値パラメーターは、報告された有効桁数に照らして、通常の四捨五入技術を適用することによって少なくとも解釈されるべきである。
【0067】
本出願を通して、様々な実施形態の説明では「含む(comprising)」という言語が使用されるが、ある場合には代替として、「から本質的になる(consisting essentially of)」または「からなる(consisting of)」という言語を使用して実施形態が説記載され得ることが、当業者によって理解されよう。
【0068】
こうして本発明の主題を記載してきたが、本発明の主題は、多くのやり方で修正され得るか、または変えられ得ることが明らかとなろう。このような修正形態および変更形態は、本発明の主題の精神および範囲からの逸脱とみなされるべきではなく、このようなすべての修正形態および変更形態は、以下の特許請求の範囲に含まれることが企図される。
図1
【国際調査報告】