IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ピーピーソル インコーポレーテッドの特許一覧

特表2022-513904GNSS受信機のデータ信号処理方法、記録媒体、及びGNSS受信機システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(54)【発明の名称】GNSS受信機のデータ信号処理方法、記録媒体、及びGNSS受信機システム
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/22 20100101AFI20220202BHJP
   G01S 19/30 20100101ALI20220202BHJP
【FI】
G01S19/22
G01S19/30
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534301
(86)(22)【出願日】2019-11-29
(85)【翻訳文提出日】2021-06-11
(86)【国際出願番号】 KR2019016705
(87)【国際公開番号】W WO2020122480
(87)【国際公開日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】10-2018-0162140
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521258337
【氏名又は名称】ピーピーソル インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】PPSOLN, INC.
【住所又は居所原語表記】A-2409, 606, Seobusaet-gil Geumcheon-gu, Seoul 08504 Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】パク クァンドン
(72)【発明者】
【氏名】ユン ウンジュン
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062AA09
5J062CC07
5J062DD03
5J062DD04
5J062DD05
5J062DD24
(57)【要約】
少なくとも一つのGNSS衛星からデータ信号を受信し、データ信号を利用してGNSS衛星の擬似距離を獲得するステップと、擬似距離に基づいて擬似距離加速度を獲得するステップ及び擬似距離加速度にノイズモデルに基づく重みを付与した分散(variance)をデータ信号に適用するステップを含むデータ信号処理方法を開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星から受信したデータ信号のマルチパス誤差を低減するための受信機システムのデータ信号処理方法において、
少なくとも一つの衛星からデータ信号を受信し、前記データ信号を利用して前記衛星の擬似距離を獲得するステップと、
前記擬似距離に基づいて、擬似距離加速度を獲得するステップと、
前記擬似距離加速度にノイズモデルに基づく重みを付与した分散(variance)を前記データ信号に適用するステップと、を含むデータ信号処理方法。
【請求項2】
前記擬似距離加速度を獲得するステップは、前記擬似距離を時間に対して微分を実行した2階微分値(second time derivative)を前記擬似距離加速度で獲得する請求項1に記載のデータ信号処理方法。
【請求項3】
前記ノイズモデルは、線形(linear)モデル、多項式(polynomial)モデル及び指数(exponential)モデルのうち、少なくとも一つである、請求項1に記載のデータ信号処理方法。
【請求項4】
前記データ処理方法は、前記ノイズモデルに基づく重みが適用されたデータ信号を基に精度を評価するステップをさらに含む、請求項1に記載のデータ信号処理方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のデータ信号処理方法を実行するために、コンピュータによって実行されることができるコマンドのプログラムが類型的に具現されており、コンピュータで読み取ることができる記録媒体。
【請求項6】
少なくとも一つの衛星からデータ信号を受信するデータ受信部と、
前記データ信号を用いて前記衛星の擬似距離を獲得する擬似距離獲得部と、
前記擬似距離に基づき、擬似距離加速度を獲得し、前記擬似距離加速度を利用してノイズモデルに基づいて重みを生成する重み生成部と、
前記擬似距離加速度に前記重みを付与した分散(variance)を前記データ信号に適用するデータ処理部と、を含むGNSS受信機システム。
【請求項7】
前記重み生成部は、前記擬似距離を時間に対して微分を実行した2階微分値(second time derivative)を前記擬似距離加速度で獲得するように備えられた、請求項6に記載のGNSS受信機システム。
【請求項8】
前記ノイズモデルは、線形(linear)モデル、多項式(polynomial)モデル及び指数(exponential)モデルのうち、少なくとも一つである、請求項6に記載のGNSS受信機システム。
【請求項9】
前記ノイズモデルに基づく重みが適用されたデータ信号を基に精度を評価する精度評価部をさらに含む、請求項6に記載のGNSS受信機システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施例は、GNSS受信機のデータ信号処理方法、記録媒体及びGNSS受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
GNSS(Global Navigation Satellite System)は、宇宙軌道を回っている人工衛星を利用して地上にある物体の位置・速度に関する情報を提供するシステムである。小さくは1m以下の解像度の精密な位置情報まで把握することができ、軍事用途だけでなく、航空機・船舶・自動車などの交通手段の位置案内や測地・緊急救助・通信など、民間分野でも幅広く応用されている。現存するGNSSは、米国国防総省が開発して運営しているジーピーエス(GPS; Global Positioning System)、ロシアのグロナス(GLONASS; Global Navigation Satellite System)、欧州連合(EU)のガリレオ(Galileo)、中国の北斗(北斗、Beidou)がある。
【0003】
GNSSは、少なくとも一つの人工衛星、信号を受信する受信機、地上の監視局及びシステム監視体制を含む。人工衛星から発信された電波を受信機で受け、衛星からの距離を求め、受信機の位置を決定する方式である。
【0004】
しかし、建物が密集した都心環境では、マルチパス誤差及び信号遮断により誤差が数百メートル以上発生することがあるため、マルチパス誤差はGNSSの深刻な弱点であると考えられている。マルチパス誤差は、GNSS測位の主要誤差の一つで、受信機周辺の地形や建物に衛星信号が反射されて発生する。建物が密集した都市部と低仰角衛星信号で多く発生し、電離層、対流圏遅延とは異なり、相対測位でも消去されず、予測が難しく、マルチパス誤差の影響を低減するための研究が活発に行われている。最近では、信号対雑音比(SNR、Signal-to-Noise Ratio)と仰角を重みとして使用してマルチパス誤差を低減する試みがあった。Li and Wu(2009)は、GNSS信号が建物に反射される時にSNRが減る特性を利用し、指数関数の形でSNRをモデル化することで、都心環境でマルチパス誤差を低減する重みモデルを提案し、Tay and Marais(2013)は、仰角が低い衛星が相対的に建物の影響を大きく受ける特性を利用し、仰角とSNRを共に利用する重みモデルを提案した。SNRの指数関数モデルと仰角-SNRの組み合わせモデルが効果的ではあるが、依然として都心環境で10メートル以上の測位誤差が発生する限界を見せている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した必要性に応じたもので、本発明が解決しようとする一課題は、都心環境で安定したGNSS測位精度を確保するために、コード擬似距離観測値の変化特性を利用し、マルチパス誤差を低減する方法及びシステムを提供することである。
【0006】
より具体的に、本発明は、マルチパス誤差を低減するために、受信機から生成されたコード擬似距離観測値の加速度を重みとして使用する方法及びシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施例に係る衛星から受信したデータ信号のマルチパス誤差を低減するための受信機システムのデータ信号処理方法は、少なくとも一つの衛星からデータ信号を受信し、前記データ信号を利用して前記衛星の擬似距離を獲得するステップ、前記擬似距離に基づいて、擬似距離加速度を獲得するステップ、及び前記擬似距離加速度にノイズモデルに基づく重みを付与した分散(variance)を前記データ信号に適用するステップを含むことができる。
【0008】
また、前記擬似距離加速度を獲得するステップは、前記擬似距離を時間に対して微分を実行した2階微分値(second time derivative)を前記擬似距離加速度で獲得することができる。
【0009】
また、前記ノイズモデルは、線形(linear)モデル、多項式(polynomial)モデル及び指数(exponential)モデルのうち、少なくとも1つであってもよい。
また、前記データ処理方法は、前記ノイズモデルに基づく重みが適用されたデータ信号を基に精度を評価するステップをさらに含むことができる。
【0010】
一方、本発明の一実施例に係る記録媒体は、衛星から受信したデータ信号のマルチパス誤差を低減するためのデータ信号処理方法を実行するために、コンピュータによって実行されることができるコマンドのプログラムが類型的に具現されており、コンピュータで読み取ることができる記録媒体であってもよい。
【0011】
一方、本発明の一実施例に係る記録媒体は、衛星から受信したデータ信号のマルチパス誤差を低減するための受信機システムは、少なくとも一つの衛星からデータ信号を受信するデータ受信部、前記データ信号を用いて前記衛星の擬似距離を獲得する擬似距離獲得部、前記擬似距離に基づき、擬似距離加速度を獲得し、前記擬似距離加速度を利用してノイズモデルに基づいて重みを生成する重み生成部、及び前記擬似距離加速度に前記重みを付与した分散(variance)を前記データ信号に適用するデータ処理部、を含むことができる。
【0012】
また、前記重み生成部は、前記擬似距離を時間に対して微分を実行した2階微分値(second time derivative)を前記擬似距離加速度で獲得することができる。
【0013】
また、前記ノイズモデルは、線形(linear)モデル、多項式(polynomial)モデル及び指数(exponential)モデルのうち、少なくとも1つであってもよい。
【0014】
また、前記ノイズモデルに基づく重みが適用されたデータ信号を基に精度を評価する精度評価部をさらに含むことができる。
【0015】
前述したもの以外の他の側面、特徴、利点が以下の図面、請求の範囲及び発明の説明から明確になるであろう。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、重みを適用していない場合に比べ、GNSS測位の精度を向上させることができる。また、加速度以外にもSNR値の閾値に応じたデータ処理を追加的に適用する場合、GNSS測位の精度がさらに向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施例に係る信号受信機を介したGNSS(Global Navigation Satellite System)を示す。
図2】本発明の一実施例に係る受信機システムの構成要素を説明する簡単なブロック図である。
図3】受信機を介して合計60分間信号を受信した後の衛星信号スカイプロット(skyplot)を示す。
図4a-4c】本発明の受信機が60分間観測したPRN 2衛星の擬似距離、擬似距離速度及び擬似距離加速度の特性を説明する図である。
図5】本発明の受信機のPRN 2衛星観測結果から、擬似距離加速度の特性を説明する図である。
図6】本発明の受信機が観測したPRN 1~10衛星の擬似距離加速度を示す図である。
図7】本発明の一実施例に係る受信機が擬似距離加速度を複数の方法で重みを適用したことに対する効果を比較するグラフである。
図8】受信機が観測する擬似距離加速度の不均一性を説明する図である。
図9a-9c】受信機が受信する信号のSNRと、衛星の高度及び遮蔽程度の間の相関関係を説明する図である。
図10図3のスカイプロットに示された衛星の中でマルチパスの影響を受ける衛星4個(PRN 2、3、5、7)に対するSNR統計を示すグラフである。
図11】受信機が一定時間の間観測した全ての衛星に対するSNRを一緒に示すスカイプロットである。
図12a-12b】本発明の一実施例に係る受信機のデータ処理効果を、従来のデータ処理方法と比較する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本明細書の多様な実施例が添付された図面を参照して記載される。しかし、これは本明細書に記載された技術を特定の実施例に対して限定しようとするものではなく、本文書の実施例の多様な変更(modifications)、均等物(equivalents)、及び/又は代替物(alternatives)を含むものとして理解されるべきである。図面の説明に関し、同様な構成要素に対しては、同様な参照符号が使用されてもよい。
【0019】
また、本文書で使用される「第1」、「第2」、などの表現は、多様な構成要素を、順序、及び/又は重要度に関係なく修飾することができ、一つの構成要素を他の構成要素と区分するために使用されるだけで、その構成要素を限定しない。例えば、第1ユーザ機器と第2ユーザ機器は、順序又は重要度とは関係なく、異なるユーザ機器を示すことができる。例えば、本文書に記載された権利の範囲を逸脱せずに第1構成要素は第2構成要素と命名されてもよく、同様に第2構成要素も第1構成要素に変えて命名されてもよい。
【0020】
ある構成要素(例:第1構成要素)が、他の構成要素(例:第2構成要素)に「(機能的に又は通信的に)連結されて((operatively or communicatively)coupled with / to)」いるか、「接続されて(connected to)」いると言及された時には、前記ある構成要素が、前記他の構成要素に直接連結されるか、他の構成要素(例:第3構成要素)を介して連結することができると理解されるべきであろう。一方、ある構成要素(例:第1構成要素)が、他の構成要素(例:第2構成要素)に「直接連結されて」いるか、「直接接続されて」」いると言及された時には、前記ある構成要素と、前記他の構成要素の間に他の構成要素(例:第3の構成要素)が存在しないことと理解されてもよい。
【0021】
本開示の実施例で、「モジュール」、「ユニット」、「部(part)」などのような用語は、少なくとも一つの機能や動作を実行する構成要素を指すための用語であり、このような構成要素は、ハードウェア又はソフトウェアに具現されるかハードウェア及びソフトウェアの組み合わせで具現されてもよい。また、複数の「モジュール」、「ユニット」、「部(part)」などは、それぞれが個別な特定のハードウェアに具現される必要がある場合を除き、少なくとも一つのモジュールやチップに一体化され、少なくとも一つのプロセッサに具現されてもよい。
【0022】
本文書で使用された用語は、単に特定の実施例を説明するために使用されたもので、他の実施例の範囲を限定しようとする意図ではないかも知れない。単数の表現は、文脈で明らかに異なることを意味しない限り、複数の表現を含んでもよい。技術的又は科学的な用語を含め、ここで使用される用語は、本文書に記載された技術分野で通常の知識を有する者によって一般的に理解されるのと同じ意味を持つことができる。本文書で使用された用語のうち、一般的に辞書に定義された用語は、関連技術の文脈で持つ意味と同一又は類似の意味で解釈されてもよく、本文書で明らかに定義されない限り、理想的又は過度に形式的な意味で解釈されない。場合によって、本文書で定義された用語であっても、本文書の実施例を排除するよう解釈されることはできない。
【0023】
以下で、添付された図面を用いて本発明の多様な実施例について具体的に説明する。
【0024】
図1及び図2は、本発明の一実施例に係るGNSS(Global Navigation Satellite System)及び信号受信機を概略的に説明する図である。
【0025】
特に図1は、本発明の一実施例に係る信号受信機を介したGNSSを示す。
【0026】
図1を参照すると、受信機システム(100)は、建物などのように信号を遮蔽する障害物(30)が存在する環境で信号を受信することができる。受信機システム(100)は、複数の衛星から送信されたデータ信号を、アンテナを介して受信することができ、例として、第1衛星(10)と第2衛星(20)からのデータ信号を受信することができる。このとき、受信機システム(100)は、u-blox EVK-M8Tであってもよく、アンテナは評価キット(evaluation kit)に含まれている小型アクティブアンテナ(small active antenna)であってもよいが、これに限定しない。図面で受信機システム(100)は、固定設置されるものと示されているが、本発明は、必ずしもこれに限定されるものではなく、受信機システム(100)は、携帯用及び/又はモバイル受信機であってもよい。
【0027】
一方、第1衛星(10)又は第2衛星(20)が送信する信号は、2つの搬送波L1(1575.42MHz)とL2(1227.6MHz)を介したものであってもよい。このとき、搬送波コードは、C / AコードとPコードの不規則コードに位相変調され、それぞれビットレート1.023Mbps、10.23Mbpsで衛星ごとに固有の擬似雑音信号(PRN、Pseudo-Random Noise)が含まれる。
【0028】
C/Aコードは民間に公開されているが、Pコードは軍事目的に転用するために、公開されていないWコードを利用して暗号化されるが、暗号化されたPコードを、Yコード又はP(Y)コードという。航法情報は、標準測位サービス(SPS:Standard Positioning System)と精密測位サービス(PPS:Precise Positioning System)に区分してサービスを提供している。SPSは、測位と時刻転送の業務として民間用に利用され、L1周波数のC / Aコードのみを使用することができ、PPSは、主に軍用として設計されて測位、タイミング、速度機能を有し、L1、L2のP(Y)コードが使用されている。擬似雑音信号(PRN、Pseudo-Random Noise)は、雑音のような性質を持った1と0の2進シーケンス(sequence)であってもよい。
【0029】
受信機システム(100)は、第1衛星(10)から直接信号(direct signal)を受信することができる。一方、受信機システム(100)は、第2衛星(20)から信号を受信する場合、障害物(30)に信号が遮蔽され、間接的に信号を受信することができる。
【0030】
C/AコードやPコードを使用してDelay-Lock Loop(DLL)によって測定された衛星と受信機システム(100)のアンテナとの間の位相距離である擬似距離は、受信機システム(100)の時計による誤差と大気層に対する電波エリアが含まれてもよい。単独測位で、前記擬似距離は、4つの衛星距離を観測して求められるが、距離は電波が衛星を出発した時刻と受信機に到着した時刻との差で求め、獲得することができる。このような擬似距離は、一次的に受信機システム(100)時計に含まれている誤差と二次的に衛星時計に含まれている誤差、大気の影響誤差などを含んでもよい。
【0031】
一方、擬似距離の計算は、 第1衛星と第2衛星(10、20)から発射される信号が地上に到達するのにかかる時間が最も重要な要因であるため、信号が一直線に入ってこなければならない。例えば、第2衛星(20)から転送された信号が障害物(30)をはじめとするビルの森を介し、ぶつかって入ってくると、それだけ遅延時間が発生するようになり、誤差が発生するようになる。このように、第2衛星(20)から来る信号は、すぐに来る直接信号(direct signal)ではなく、反射されて来るマルチパス信号である。マルチパス信号は、より長くなった経路を介して受信機に入ってくることによって、結果的に間違った位置を計算させ、マルチパス誤差を生じさせることがある。
【0032】
また、マルチパス信号は、複数回ぶつかりながら、その信号の強度が弱まるかもしれない。電離層、対流層誤差と同様に、マルチパス誤差も、衛星が地平線に近いほどその影響が大きくなる。つまり、受信機システム(100)は、仰角(elevation angle)が低い衛星ほどその信号の精度が低下するため、ある程度以上の仰角(仰角マスク、mask angle)を有する衛星だけを利用して位置を測定できる。
【0033】
図1を参照すると、受信機システム(100)は、第1衛星(10)からは、Line of Sight(LoS)信号を含む直接信号(direct signal)を受信することができるが、第2衛星(20)を介した信号は、障害物(30)を通過したマルチパス信号であって、マルチパス誤差が含まれている信号を受信してもよい。さらに、第2衛星(20)の仰角は、第1衛星(10)より低い衛星という点で、第2衛星(20)から受信する信号の精度が低下することもある。
【0034】
一実施例によると、受信機システム(100)は、マルチパス信号のように信号が障害物などに反射されるときにSignal to Noise Ratio(SNR)が減る特性を利用して指数関数の形にSNRをモデル化することにより、第2衛星(20)からの信号に対するマルチパス誤差を低減する重みモデルを利用することができる。また、受信機システム(100)は、仰角が低い第2衛星(20)が相対的に障害物(30)の影響を多く受ける特性を利用し、仰角とSNRを一緒に利用する重みモデルを利用することができる。ただし、SNRの指数関数モデルと仰角-SNR組み合わせモデルは、依然として都心環境で10メートル以上の測位誤差が発生する限界がある。
【0035】
これにより、本発明の一実施例に係る受信機システム(100)は、LoS信号を含む直接受信信号に比べて障害物などに反射された信号の変動率が非常に大きいという特徴を利用し、受信機システム(100)で生成されているコード擬似距離(Code Pseudo-range)観測値の加速度を重みとして使用するモデルを利用することができる。
【0036】
また、本発明の他の実施例に係る受信機システム(100)は、多くのエポック(epoch)でLoS信号と同様の加速度が測定される点を補完するために、加速度以外にもSNR値の閾値(Threshold value)をさらに適用したモデルを利用することができる。
【0037】
図2は、本発明の一実施例に係る受信機システムの構成要素を説明する簡単なブロック図である。
【0038】
図2を参照すると、本発明の受信機システム(100)は、GNSSデータ受信部(110)、コード擬似距離獲得部(120)、重み生成部(130)、データ処理部(140)、SNR獲得部(150)を含んでもよい。
【0039】
GNSSデータ受信部(110)は、少なくとも一つのGNSS衛星からデータ信号を受信することができる。データ信号は、2つの搬送波L1(1575.42MHz)とL2(1227.6MHz)を介したものであってもよい。このとき、搬送波コードは、C/AコードとPコードの不規則コードに位相変調され、それぞれのビットレート1.023Mbps、10.23Mbpsで衛星ごとに固有の擬似雑音信号(PRN、Pseudo-Random Noise)が含まれる。GNSSデータ受信部(110)は、小型アクティブアンテナ(small active antenna)であってもよいが、これに限定しない。
【0040】
コード擬似距離獲得部(120)は、GNSSデータ受信部(110)から受信したデータ信号に基づき、少なくとも一つのGNSS衛星との擬似距離(Pseudo-Range)を獲得することができる。このとき、擬似距離は、GNSS衛星と受信機システム(100)とのおおよその距離を意味するものであり、GNSS衛星から送出されたデータ信号が受信機システム(100)のGNSSデータ受信部(110)に受信されるのにかかる時間に光速度を乗じて計算されてもよい。
【0041】
重み生成部(130)は、本発明の一実施例に係るデータ信号に適用する重みを生成してもよい。具体的に、重み生成部(130)は、本発明の一実施例に係る線形(linear)モデル、多項式(polynomial)モデル、又は指数(exponential)モデルに基づく重みを生成してもよい。このとき、重み生成部(130)は、各重みモデルの変数としてコード擬似距離獲得部(120)から得た擬似距離に基づいて獲得した擬似距離加速度を使用してもよい。つまり、重み生成部(130)は、擬似距離加速度に対して、各重みモデルに係る重みを適用してもよい。
【0042】
一方、SNR獲得部(150)は、GNSSデータ受信部(110)を介して受信したデータ信号のSNRを獲得することができる。SNR獲得部(150)は、獲得したSNRが既に設定された第1値よりも低いSNRを示すデータ信号を識別することができ、これに対する情報を重み生成部(130)に伝達することができる。前記第1値は、任意に設定された値であってもよく、例えば、40デシベルになってもよい。
【0043】
重み生成部(130)は、SNR獲得部(150)から第1値より低いSNRを示すデータ信号に対して既に設定された第2値を、該当データ信号の擬似距離加速度に擬制してもよい。つまり、重み生成部(130)は、第2値に対して重みを適用してもよい。前記第2値は、任意に設定された値であってもよく、例えば、100m/s2であってもよい。
【0044】
データ処理部(140)は、獲得したデータ信号に重み生成部(130)で獲得した重み値を介してデータ処理を実行してもよい。具体的に、データ処理部(140)は、 得られたデータ信号に、重み生成部(130)の各重みモデルに係る結果値を分散として適用することができる。
【0045】
精度評価部(200)は、所定の期間中に最小二乗法によって算出されたRMSE(Root Mean Square Error)精度を評価することができる。ただし、これは一例に過ぎず、精度評価部(200)は、RMSEの他にも、MAE(Mean Absolute Error)を通じた回帰モデル、ROC(Receiver Operating Characteristic curve)などを通じた分類モデルとCEP(Circular Error Probable)、SEP(Spherical Error Probable)、dRMS、R95など、多様なツール(tool)を使用して精度を評価することができる。
【0046】
図2で精度評価部(200)は、受信機システム(100)と別の構成で具現されたものを示したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、精度評価部(200)は、受信機システム(100)に含まれる構成であってもよい。それだけではなく、本発明の他の実施例によると、前記受信機システム(100)を構成する各構成要素のうち少なくとも一つは、受信機システム(100)とは別の構成で具現されてもよい。
【0047】
図3は、受信機を介して合計60分間信号を受信した後の衛星信号スカイプロット(skyplot)を示す。
【0048】
図3は、本発明の一実施例に係る受信機システム(100)が06:36から07:36まで合計60分間衛星信号を観測したスカイプロット(skyplot)を示す。スカイプロットには、合計10個の衛星が観測され、それぞれの衛星は、それぞれPRN 1~10を有する。このとき、PRN 1~10は、説明の便宜のために例示的に羅列したものであり、PRN(Pseudo-Random Noise)は、それぞれの衛星に含まれている固有の擬似雑音信号である。
【0049】
一方、それぞれの衛星の軌跡の方向は、スカイプロットに矢印で表示されており、矢印が始まる部分が最初の観測時のそれぞれの衛星の位置である。スカイプロットの右側のバーは、観測された信号のSNRに関する情報を示す(SNR 10~50)。図3を参照すると、仰角が高い衛星(スカイプロットを基準として中央に近い)が高いSNR値を示す。
【0050】
スカイプロットには、建物のような障害物の外郭線(30-1)を示す。図3を参照すると、障害物(30)は、方位角120度~240度を占め、150~180方位角の範囲で45度の仰角以上の信号を遮蔽することができる。
【0051】
つまり、障害物(30)に遮蔽され、LoSが確保されない現象が発見される衛星のPRNは、それぞれ1、2、3、4、5で、合計5個である。その中で、衛星PRN 2、3、4は、建物の外郭線(30-1)を通過して観測されたものと判断されてもよい。
【0052】
受信機システム(100)は、衛星PRN 2、3、4に対して外郭線(30-1)の内部、すなわち、LoSが確保されていない区間では、SNR値が非常に低いことを観測することができる。ただし、受信機システム(100)は、衛星PRN 2、3、4がそれぞれ外郭線(30-1)を脱することで、SNRが急激に上昇することを観測することができる。受信機システム(100)は、LoSが確保されない地域で受信された信号は、マルチパス誤差のため低いSNRで信号を受信するが、障害物(30)によって信号が遮蔽されてない状況では、通常のSNRで信号を受信することができる。
【0053】
図4a~4c及び図5は、反射された信号のコード擬似距離加速度の変動率に関して説明する図である。
【0054】
特に図4a~4cは、本発明の受信機が60分間観測したPRN 2衛星の擬似距離、擬似距離速度及び擬似距離加速度の特性を説明する図である。
【0055】
受信機システム(100)は、衛星からの信号を収集した後に測定したコード擬似距離(Pseudo-range)とコード擬似距離の時間に対して微分を実行した擬似距離速度(range-rate)、そして時間変化率にもう一度時間に対して微分を実行した2階微分値(second-time-derivative)である擬似距離加速度(range-acceleration)の変動特性を獲得することができる。
【0056】
図4aを参照すると、受信機システム(100)は、衛星PRN 2に対して06:36から07:36まで60分間観測することができ、衛星PRN 2のコード擬似距離を獲得することができる。
【0057】
具体的に、図4aのobsは受信機システム(100)に記録されたC/Aコード擬似距離観測値である。また、図4aのcomは、航法メッセージで衛星PRN 2の座標を予測した後、既存の正確に測量した受信機システム(100)の座標を入力して計算した距離値である。このとき、受信機システム(100)の座標は、事前にRTK(Real-Time Kinematic)で測量することができるが、これに限定しない。
【0058】
図4aを参照すると、衛星PRN 2は、06:36から07:00までは障害物(30)に隠れ、受信機システム(100)とLoSが確保できない場合がある。それにもかかわらず、受信機システム(100)は、衛星PRN 2の信号を回折及び反射などマルチパスを介して受信することができる。受信機システム(100)は、一部のエポック(epoch)では過度な信号干渉のため信号の受信に失敗することがあり、断続的に観測値を抜かすことがある。
【0059】
受信機システム(100)によって観測された擬似距離(obs)は、計算された距離(com)とバイアスが存在してもよい。そのバイアスの大きさは、22,254mから始まり、17,811mに徐々に減少する。上述したバイアスの大きさを時間に換算すると0.742 msecと0.594 msec程度に相当する。このようなバイアスは、受信機システム(100)の計算誤差によるものであり、擬似距離観測には、受信機システム(100)の時計誤差以外に、対流圏誤差と電離層誤差が影響を与えることがある。
【0060】
図4bは、受信機システム(100)に記録されたコード擬似距離の時間に対して微分を実行した擬似距離速度(range-rate)を示す。衛星PRN 2のようなGNSS衛星は、地球の質量中心を基準に公転しており、観測点が地表面上に位置しているため、受信機システム(100)と衛星PRN 2の間の距離は一定でないことがある。したがって、擬似距離の時間変化率は0になることができず、その大きさは、約±800m / secの範囲で変動してもよい。図3のスカイプロットで確認できるように、衛星PRN 2番は高度が上昇し始める衛星であるため、受信機システム(100)は、観測以降、擬似距離速度が低下していると判断でき、その値は-700m/secから-200m/secで、±800m/sec以内と判断できる。
【0061】
受信機システム(100)の座標と衛星PRN 2の軌道情報に基づいて計算した速度であるρ-'com 値は、非常にスムーズ(smooth)に変動している。一方、受信機システム(100)に記録された擬似距離速度であるρ-'com は、建物のためLoSが確保されない06:36から07:00まで、非常に不安定であり、ノイズがひどく発生する。06:36から07:00までの区間では、マルチパスの信号を受信するため、受信機システム(100)は、ρ'obs-- 値のノイズが大きいと測定してもよい。
【0062】
受信機システム(100)は、ρ'obs-- 値の不安定性をマルチパスの影響であるとみなし、ρ'obs-- 値を測位アルゴリズムに適用する重みとして使用してもよい。ただし、ρ'obs--値は、衛星の方位角、仰角及び運動方向によって±800m/secの値を持つ。つまり、受信機システム(100)は、マルチパス信号であると判断するための特定の値を基準として使用するのは難しい。そこで、ρ''obs値の特性を図4c及び図5を介して検討することができる。
【0063】
図4cは、擬似距離速度又は距離速度を時間に対して微分したものを示す。図4cを参照すると、計算による加速度ρ''comは、0m/s2の近くに分布している。一方、ρ''obs 値は、衛星PRN 2と受信機システム(100)のLoSが確保される7:00~7:36の区間では、0m/s2の近くに分布することと測定されるが、マルチパスの影響を受けた区間で±50m/s2の範囲で急激に変動する。
特に図5は、本発明の受信機のPRN 2衛星観測結果を通じて擬似距離加速度に関する特性を説明する図である。
【0064】
具体的に図5は、衛星PRN 2に関するρ''の値を示したグラフで障害物(30)の影響から完全に外れた時間である7:00以降の部分を、垂直軸を範囲に±2m/s2に制限し、拡大して示したものである。受信機システム(100)は、7:00以降、衛星PRN 2とLoSが確保されて直接信号(direct signal)を受信することができる。
【0065】
図5を参照すると、ρ''comは、ほとんど0m/s2の近くに分布している。一方、ρ''obs値は、最大値が1.0 m/s2であり、平均値は0.21m/s2、標準偏差は0.15 m/s2である。つまり、LoSが確保される状況である7:00以降には、ρ''obs値もまた±1m/s2の範囲内の安定した値を示す。つまり、ρ''obs値がρ'obs--値よりマルチパスの影響でより明確に区分される特性があるため、本発明の一実施例によると、受信機システム(100)は、ρ''obs値をデータ処理の重みモデルとして使用してもよい。
【0066】
図6は、本発明の受信機が観測したPRN 1~10の衛星の擬似距離加速度を示す図である。
【0067】
図4cでは、衛星PRN 2の擬似距離加速度値は、LoSが確保される場合、0m/s2に近い値で安定的に維持されている一方、LoSが確保されていないマルチパス環境では、その変動幅が非常に大きく表れた。同様に、図3のスカイプロットを見ると、PRN 2番以外にもPRN 1、3、4、5番衛星が障害物(30)に隠れることを確認することができる。
【0068】
図6を参照すると、衛星PRN 1、5は、ほとんどの時間を障害物(30)に隠れており、最も長い時間の間、大幅の擬似距離加速度変動を示す。障害物(30)に隠れてから逃れる衛星PRN 2、3、4は、障害物(30)による遮蔽の影響から逃れると、すぐに擬似距離加速度(RA、Range acceleration)が0m/s2の近くで安定した値を維持している。
【0069】
また、障害物(30)の影響を受けない5つの衛星PRN 5~10は、すべての区間で0m/s2に近いRA値を示している。衛星PRN 5~10のρ''obs値の平均値と標準偏差は、PRN 5から10の順に、それぞれ0.24±0.19m/s2、0.16±0.14m/s2、0.19±0.15m/s2、0.18±0.14m/s2、0.24±0.19m/s2である。つまり、それぞれのρ''obs値の平均値は、すべて0以上に表われ、最大値が0.24m/s2であり、標準偏差はすべて0.2m/s2以下である。
【0070】
上述したように、衛星10個のRA観測値のノイズレベルは、建物のような障害物(30)が信号を遮蔽するか否かということと、非常に密接な関係を示す。これにより、本発明の一実施例に係る受信機システム(100)は、擬似距離加速度(RA、Range acceleration)に重みを付与してデータ処理をすることで、受信される信号が、マルチパス信号であるかを効果的に判断することができる。マルチパス環境では、RAのノイズがひどいという特性を利用し、受信機システム(100)はRAを重みとして利用するために計算されたRA(ρ''com)と観測されたRA(ρ''obs)との差を利用することができる。つまり、受信機システム(100)は、差Δρ'' = ρ''obs - ρ''comが既に設定された値以上である場合、信号が受信される環境がマルチパス環境であると判断してもよい。
【0071】
一方、受信機システム(100)は、Δρ'' をデータ処理の重みとして使用するためにはρ''comを計算しなければならず、この時受信機システム(100)の座標が必要である。しかし、実際の測位では、受信機システム(100)の座標を時刻毎に推定しなければならず、観測環境が良くない所で推定した座標の信頼性は当然低いものである。
【0072】
したがって、本発明の一実施例に係る受信機システム(100)は、Δρ'' の代わりに、より活用性の高い観測されたRA(ρ''obs)を重みの基準として使用してもよい。具体的に、計算されたRA(ρ''com)は、観測されたRA(ρ''obs)に比べて非常に安定し、その値は、ほとんど0m/s2の近くに分布する。つまり、図4cで最大±50m/s2を示す観測されたRA(ρ''obs)に比べて計算されたRA(ρ''com)の変動幅がはるかに小さい。したがって、計算されたRA(ρ''com)は、実際の測位アルゴリズムに重みとして適用しなくても無視できるほど小さい影響であってもよい。これにより、受信機システム(100)は、測位アルゴリズムに重みとして使用するRAとして、Δρ'' = ρ''obs - ρ''comで計算されたRA(ρ''com)を除き、観測されたRA(ρ''obs)のみを使用することができる。つまり、受信機システム(100)は、受信機システム(100)の座標と関係なく受信機システム(100)に記録された擬似距離観測だけで重みを設定してもよい。
【0073】
図7は、本発明の一実施例に係る受信機が、擬似距離加速度において、複数の方法で重みを適用したことに対した効果を比較するグラフである。
【0074】
本発明の一実施例に係る受信機システム(100)は、擬似距離加速度に重みを付与するノイズモデル(Noise model)であり、線形(linear)モデル、多項式(polynomial)モデル、指数(exponential)モデルの3種類を適用することができる。線形(linear)モデルは、σi= α*ρ''obsであり、多項式(polynomial)モデルは、σi= α*(ρ''obs)2、そして指数(exponential)モデルは、σi = α*exp(k*ρ''obs )であってもよい。ここでσiは各観測値に適用する分散(variance)であり、αとkは実験的に決定された最適のパラメータであってもよい。このとき、分散(variance)をデータ処理に適用する時の単位はm/s2を適用してもよい。受信機システム(100)は、C/Aコード擬似距離データを毎秒毎に06:36から07:36までの1時間の間処理することができ、この時、最小二乗法(Least Square、LS)を適用することで、受信機システム(100)の座標3個と時計誤差1個、合計4個の未知数を推定することができる。受信機システム(100)の位置は、RTK測量で決定してもよい。
【0075】
重みモデルの位置精度(positioning accuracy)を評価するために、合計1時間の最小二乗法を通じて算出されたRMSE(Root Mean Square Error)の精度は、図7と同じである。
【0076】
図7を参照すると、擬似距離加速度に重みを適用していないRMSEの精度は水平32.1m、垂直37.0mを示す。線形(linear)モデルのRMSEは、水平10.9m、垂直10.5mを示し、擬似距離加速度に重みとして適用していない場合に比べて約65%の精度が向上した。2次多項式(polynomial)モデルを適用したRMSEは、水平9.1m、垂直8.1mで、約70%の精度が向上し、これは、線形モデルよりも高い精度を示したものである。最後に、指数(exponential)モデルのRMSEは、水平と垂直が8.2mと7.9mで、向上率はそれぞれ75%と79%である。
【0077】
つまり、3つのモデルの中では、指数(exponential)モデルが最も高い向上率を示すことができる。そこで、本発明の一実施例に係る受信機システム(100)は、指数(exponential)モデルを通じて、擬似距離加速度を重みとして適用することができる。
図8は、受信機が観測する擬似距離加速度の不均一性を説明する図である。
【0078】
本発明の受信機システム(100)は、マルチパス誤差の指標であるRA(ρ''obs)を重みに、マルチパス誤差低減モデルとして使用するが、一部のエポック(epoch)では、むしろ精度が低下することがある。このような現象は、マルチパス信号の場合にも、RA(ρ''obs)の値が低い場合は発生することがある。つまり、マルチパス信号の場合にも、直接信号のような低いRA(ρ''obs)が測定される場合、受信機システム(100)はアルゴリズム上、建物の影響を受けていない通常の信号と区別することができないという欠点があり得る。マルチパス誤差の影響を受けていることが明らかであるにも関わらず低いRA(ρ''obs)値が出る場合、受信機システム(100)は、計算されたRA(ρ''obs)をそのまま重みに適用したとき、該当エポック(epoch)から大幅に低下した精度の結果を獲得する。
【0079】
図8は、建物のような障害物(30)に反射される信号が受信機システム(100)に記録されたことが明らかである一部の時間区間のRA(ρ''obs)値を±5m / s2の範囲内で拡大して示したものである。具体的に図8は、図4cに示した衛星PRN 2のRA(ρ''obs)値のうち06H:40M:00Sから06H:45M:59Sまで1秒間隔で合計360個のエポック(epoch)を示したものである。
【0080】
図8を参照すると、灰色の実線は、データが漏れたエポック(epoch)であってもよい。合計360個のRA(ρ''obs)観測値が表示されなければならないが、灰色の実線で表示されている漏れたエポックは合計73個で、20.3%に達する。これは、マルチパスのような信号の干渉によって、データが受信機システム(100)に記録されていない場合であることもある。そして、±1m / s2の範囲を超えて大きなRA観測値を示すエポックは223個で62%であり、±1m/s2以内のRA観測値を示すエポックは、64個で17.8%であることがわかる。つまり、±1m/s2の範囲を超えて大きなRA観測値を示すエポックが絶対多数であることから、マルチパスの影響を受ける環境であることが明らかな場合でも、受信機システム(100)は全体の17.8%に相当するエポック(epoch )に対して、まるでLoSが確保される信号のように低いRA値として観測する。
【0081】
本発明の一実施例に係る受信機システム(100)は、マルチパス環境でも一部のエポック(epoch)から低いRA値が観測される現象を考慮し、受信機システム(100)に記録される信号の強さであるSNRを、追加の指標として利用してもよい。これに関し、図9a~9cを用いて詳細に説明することにする。
【0082】
図9a~9cは、受信機が受信する信号のSNRと、衛星の高度及び遮蔽程度の間の相関関係を説明する図である。図9a図9cの衛星PRN 2、8、7は、それぞれ図3で獲得したスカイプロットに示されている例示的な衛星に関するものである。
【0083】
図9aは、衛星PRN 2、図9bは、衛星PRN 8、図9cは、衛星PRN 7の仰角とSNR値の経時変化をそれぞれ示す。図9a及び9cから遮蔽領域(900)は、衛星が建物などの障害物に隠れてLoSが完全に確保されていない区間であることがある。
【0084】
図9aを参照すると、衛星PRN 2は09:12の仰角が75°で最大値を示し、13:00の仰角が10°で最小値を示す。衛星PRN 2から受信した信号のSNRは、仰角75°で約50デシベル(db)であり、仰角10°で約40デシベルを示す。衛星PRN 2は、07:00時以前の遮蔽領域(900)でのSNRは約30デシベル程度の低い値を示していたが、その降、建物の境界(遮蔽領域の末端部)に近接し、SNRが急激に上昇する。特に、衛星PRN 2の高度の上昇率よりSNRの上昇率が遮蔽領域(900)の末端部から飛躍的に増加することになる。
【0085】
図9bを参照すると、衛星PRN 8は観測時間中の終始、遮蔽の影響を受けず、大概一貫性のあるLoSを確保することができる。衛星PRN 8は、最大仰角67°でSNRが47デシベルを示し、最も低い仰角である10°でも比較的に高いSNRである40デシベルを示す。
【0086】
図9cを参照すると、衛星PRN 14は、衛星PRN 2と同様に建物の影響を受ける遮蔽領域(900)から低いSNRを示す。
【0087】
つまり、図9a~9cの衛星のSNR特性を分析すると、衛星信号のSNRは、仰角に影響を受けるが、建物の影響がないとき(遮蔽領域でない場合)は35デシベル以上を維持する。ただし、建物の影響があるとき(遮蔽領域である場合)の衛星信号のSNRは、仰角と関係なく急激に低くなる。
【0088】
結論として、衛星のLoSが確保される場合には、衛星信号のSNR値は、仰角が低くなるとしても急激に低下しないが、建物の干渉によるマルチパス信号となる遮蔽領域(900)では、衛星信号のSNRが著しく減少する。
【0089】
これは、図3のスカイプロットを見るとき、受信機システム(100)が障害物の外郭線(30-1)の近くで急激に増加又は減少するSNR値を受信するのと同じ結論であってもよい。これにより、本発明の一実施例に係る受信機システム(100)は、SNRを障害物によるマルチパス信号の付加的な指標として使用することができる。
【0090】
一方、本発明の受信機システム(100)がマルチパス信号の付加的な指標として使用するSNRの基準(閾値)を選定する方法を、図10を介して説明する。
【0091】
図10は、図3のスカイプロットに示された衛星の中でマルチパスの影響を受ける衛星4個(PRN 2、3、5、7)に対するSNR統計を示したグラフである。
【0092】
図10には、各衛星のSNR変動キャップ(1000)及び変動結果平均SNR(1010)が示される。図10を参照すると、4個の衛星は、建物によるマルチパスの影響を受ける領域(inside)では平均SNRが27~32デシベル程度であり、マルチパスの影響を受けない領域(outside)では45~47デシベル程度の範囲を有する。
【0093】
本発明の受信機システム(100)は、特定のSNR値を閾値(threshold value)に設定してもよく、閾値より低いSNRを示す信号は、マルチパスの影響を受ける信号と判断してもよい。具体的に、本発明の一実施例に係る受信機システム(100)は、1次的にρ''obs値に基づいて指数モデル(σi = α*exp(k*ρ''obs) )を適用することができ、2次的にSNR閾値を適用することができる。
【0094】
例えば、本発明の受信機システム(100)は、多様なテストを介してSNR閾値を40デシベルに設定することができ、それより低いSNRを示す信号の場合には、信号の擬似距離加速度(ρ''obs)値を100m/s2に適用することができる。上述した例示の閾値と適用する擬似距離加速度値は一例示に過ぎず、本発明の受信機システム(100)は、多様な閾値と適用する擬似距離加速度値を利用することができる。
【0095】
上述した実施例によると、本発明の受信機システム(100)は、マルチパス信号のうち、偶然の理由で直接信号のような低い加速度で観測された信号に対して、マルチパス信号と判断し、高い加速度を示すマルチパス信号と同様に処理することができる。
【0096】
図11は、受信機が一定時間の間観測したすべての衛星に対するSNRを一緒に示したスカイプロットである。
【0097】
図11は、上述した例示に係る受信機システム(100)が06:35から15:00まで約8時間25分の間観測したすべての衛星に対するスカイプロットであり、SNRが35デシベル以上である場合は青、40デシベル以下である場合は赤で示す。
【0098】
本例示によると、建物の外郭線(30-1)がSNRの変化を示す青と赤の境界線とかなり一致していることがわかる。したがって、本例示では、受信機システム(100)がSNR 40デシベルを閾値として設定することが合理的な根拠になることがわかる。ただし、上述したように、これは一例示に過ぎず、受信機システム(100)は、多様な方法によって、多様なデシベルを閾値に設定することができる。
【0099】
図12a及び12bは、本発明の一実施例に係る受信機のデータ処理効果を、従来のデータ処理方法と比較する図である。測位精度は、RMS誤差(RMSE; Root-Mean-Square Error)値を用いて比較することができる。受信機システム(100)は、観測したデータを用いてLi and Wu(2009)モデル、Tay and Marais(2013)モデル及び本発明のモデルを重みとして適用し、その精度を水平と垂直RMSEで算出することができる。説明の便宜のために以下、本発明の重みモデルをRA、Li and Wu(2009)のモデルはLW、Tay and Marais(2013)のモデルはTMとする。受信機システム(100)によって収集されたデータは、最小二乗法推定で処理した後、その結果を比較した。
【0100】
図12aは受信機システム(100)が建物の屋上から収集したデータを多様な方法で分析したことを示す。建物の屋上は開豁地に1つの障害物が存在する環境であることがある。
【0101】
測位結果重みを適用していなかった場合、受信機システム(100)は、水平22.1m垂直22.9m、3D 31.8mのRMSEで獲得することができる。また、受信機システム(100)は、LWモデルを適用した場合、水平19.5m、縦18.8m、3D 27.1mのRMSEで獲得、TMモデルを適用した場合、水平5.7m、垂直6.2m、3D 8.4mのRMSEで獲得することができる。これは、LWとTMモデルを適用した場合、すべて重みを適用していない場合に比べて精度が向上されることを示す。
【0102】
一方、本発明のRAモデルは、水平3.7m、垂直3.7m、3D 5.2mのRMSEで水平83%、垂直84%、3D 84%が改善された精度を示し、これはLWモデルの水平12%、垂直18%、3D 15%、及びTMモデルの水平74%、垂直73%、3D 74%に比べ、より大きい向上率である。つまり、本発明のRAモデルは、従来の重みモデルに比べてマルチパス誤差の低減効果を増大させることができるという効果を有する。
【0103】
図12bは、受信機システム(100)がアーバンキャニオン(Urban Canyon)で収集したデータを多様な方法で分析したものを示す。アーバンキャニオン(Urban Canyon)は、高層建築物などが密集している市街地環境であることがある。
【0104】
図12bは、図12aと同様に、各モデルの測位結果を棒グラフで示したものである。測位結果重みを適用していない場合、受信機システム(100)は、水平38.0m、縦58.0m、3D 69.3mのRMSEを獲得することができる。従来モデル適用結果、受信機システム(100)は、LWモデルの場合、水平43.1m、縦64.8m、3D 77.8mのRMSEを獲得し、TMモデルの場合は水平9.6m、垂直12.7m、3D 16.0mのRMSEを獲得することができる。
【0105】
図12bを参照すると、LWモデルの場合、重みを適用していない場合より、むしろ精度が低下することがあることを示し、TMモデルは水平75%、垂直78%、3D 77%の精度向上率を示す。本発明のRAモデルは、水平6.2m、垂直7.1m、3D 9.4mのRMSEで、重みを適用していない場合より精度が水平83%、垂直88%、3D 86%向上した。つまり、本発明によれば、都心環境でも、80%以上の高い精度向上率を示し、従来のTMモデルと比較しても、水平35%、垂直44%、3D 41%の精度が向上した。
【0106】
これにより、本発明の受信機システム(100)は、コード擬似距離の観測値を使用するRAモデルを適用し、観測環境が劣悪な都心環境でも、従来のモデルよりマルチパス誤差が低減するように観測できるという効果を確認することができる。
【0107】
一方、上述した本発明の多様な実施例に係る方法は、既存の電子デバイスにインストール可能なアプリケーションの形で具現されることができる。
【0108】
また、上述した本発明の様々な多様な実施例に係る方法は、既存の電子デバイスに対するソフトウェアのアップグレード、又はハードウェアのアップグレードだけでも具現されることができる。
【0109】
また、上述した本発明の多様な実施例は、電子デバイスに備えられている組み込まれたサーバ、又は電子デバイスの外部サーバを介して実行されることも可能である。
【0110】
一方、本発明の実施例によると、以上で説明した多様な実施例は、ソフトウェア(software)、ハードウェア(hardware)、又はこれらの組み合わせを利用してコンピュータ(computer)又は同様の装置で読み取ることができる記録媒体(computer readable recording medium)に保存されたコマンドを含むソフトウェアで具現されることができる。一部の場合において、本明細書で説明される実施例が、プロセッサ自体に具現されることができる。ソフトウェア的な具現によると、本明細書で説明される手順及び機能のような実施例は、別のソフトウェアモジュールとして具現されることができる。それぞれのソフトウェアモジュールは、本明細書で説明される1つ以上の機能及び動作を実行することができる。
【0111】
一方、コンピュータ(computer)又は同様の装置は、記憶媒体から保存されたコマンドを呼び出し、呼び出されたコマンドに応じて動作が可能な装置であって、開示された実施例に係る装置を含んでもよい。前記コマンドがプロセッサによって実行される場合、プロセッサが直接、又は前記プロセッサの制御下で、他の構成要素を用いて前記コマンドに該当する機能を実行することができる。コマンドは、コンパイラやインタプリタによって生成又は実行されるコードを含んでもよい。
【0112】
機器で読み取ることができる記録媒体は、非一時的記録媒体(non-transitory computer readable recording medium)の形態で提供されてもよい。ここで、「非一時的」とは、記憶媒体が信号(signal)を含まず、実在(tangible)することを意味するだけで、データが記憶媒体に半永久的、又は一時的に保存されることを区別しない。この時、非一時的コンピュータ読み取り可能媒体とは、レジスタ、キャッシュ、メモリなどのように短い瞬間の間データを保存する媒体ではなく、半永久的にデータを保存し、機器で読み取り(reading)が可能な媒体を意味する。非一時的コンピュータ読み取り可能媒体の具体的な例としては、CD、DVD、ハードディスク、ブルーレイディスク、USB、メモリカード、ROMなどがあり得る。
【0113】
また、上述した多様な実施例に係る構成要素(例:モジュール、プログラム、装置など)のそれぞれは、単数又は複数のオブジェクトで構成されてもよく、前述した該当サブ構成要素の一部のサブ構成要素が省略されたり、又は他のサブ構成要素が多様な実施例にさらに含まれたりすることができる。おおむね、又は追加的に、一部の構成要素(例:モジュール、プログラム、装置など)は、一つのオブジェクトに統合され、統合される前のそれぞれの該当構成要素によって実行される機能を同一又は同様に実行することができる。多様な実施例に係るモジュール、プログラム、又は他の構成要素によって実行される動作は、順次的、並列的、反復的又はヒューリスティックに実行されるか、少なくとも一部の動作が異なる順番で実行されたり、省略されたり、又は他の動作が追加されたりしてもよい。
【0114】
また、以上では、本発明の望ましい実施例に関して示して説明したが、本発明は上述した特定の実施例に限定されず、請求範囲で請求する本発明の要旨を逸脱することなく当該発明が属する技術分野で通常の知識を有する者によって多様な変形実施が可能であることはもちろん、このような変形実施は、本発明の技術的思想や展望から個別的に理解されてはならない。
【0115】
したがって、本発明の思想は、前で説明した実施例に限定して決められてはならず、後述する特許請求範囲だけでなく、この特許請求範囲と均等な、又はこれによって等価的に変更されたすべての範囲が本発明の思想のカテゴリに属することであろう。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図9c
図10
図11
図12a
図12b
【国際調査報告】