(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(54)【発明の名称】高温エネルギー貯蔵システム及び方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/253 20210101AFI20220202BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20220202BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20220202BHJP
H01M 10/6571 20140101ALI20220202BHJP
H01M 50/251 20210101ALI20220202BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20220202BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20220202BHJP
H01M 50/522 20210101ALI20220202BHJP
H01M 50/244 20210101ALI20220202BHJP
【FI】
H01M50/253
H01M10/615
H01M10/613
H01M10/6571
H01M50/251
H01M10/651
H01M50/204 101
H01M50/522
H01M50/244 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534359
(86)(22)【出願日】2019-12-13
(85)【翻訳文提出日】2021-08-03
(86)【国際出願番号】 US2019066231
(87)【国際公開番号】W WO2020131617
(87)【国際公開日】2020-06-25
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515103582
【氏名又は名称】アンブリ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドウェル,デイビッド・ジェー
(72)【発明者】
【氏名】モデスト,ザカリー・ティー
(72)【発明者】
【氏名】エリオット,アレックス
(72)【発明者】
【氏名】ブリッグス,アダム
(72)【発明者】
【氏名】トロンベッタ,ニック
(72)【発明者】
【氏名】ホルツァー,ダン
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031HH06
5H031KK03
5H031KK08
5H040AA28
5H040AA29
5H040AS01
5H043AA12
5H043BA28
5H043CA05
5H043FA24
(57)【要約】
本開示は、より低コストで製造可能なエネルギー貯蔵システムを提供する。エネルギー貯蔵システムは、複数の電気化学セルと、複数の電気化学セルを支持するために筐体内に配置されるラックと、1つ以上の絶縁部分を形成するためのラックと筐体との間の1つ以上のパネルと、1つ以上の絶縁部分内に配置される絶縁材料とを備えてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電気化学セルであって、前記複数の電気化学セルのうちの1つの電気化学セルが、負極、電解質、及び、正極を備え、前記負極、前記電解質、及び、前記正極のうちの少なくとも2つが、前記電気化学セルの動作温度で液体状態にあり、前記複数の電気化学セルが直列又は並列に接続される、複数の電気化学セルと、
前記複数の電気化学セルを支持するラックであって、前記ラックが複数のトレイを備え、前記複数のトレイのうちの1つのトレイが、締結具を介して互いに結合されない支持ユニットを備える、ラックと、
を備えるエネルギー貯蔵システム。
【請求項2】
筐体を更に備え、前記ラックが前記筐体の内側に配置される、請求項1に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項3】
前記筐体が複数のラックを備え、これらの複数のラックが前記ラックを備える、請求項2に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項4】
前記筐体が筐体外部カバーを更に備え、前記筐体外部カバーが前記ラックから電気的に絶縁される、請求項2に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項5】
前記ラックが前記筐体内の1つ以上の絶縁基板上に配置される、請求項2に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項6】
前記ラックと前記筐体との間に配置される絶縁材料を更に備える、請求項2に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項7】
前記絶縁材料が粉末形態を成す、請求項6に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項8】
前記ラックがラック外部カバーを更に備え、前記ラック外部カバーが前記ラックに電気的に接続される、請求項1に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項9】
前記ラック外部カバー又は前記筐体外部カバーが取り外し可能なフロントカバーを備える、請求項4又は8に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項10】
前記複数の電気化学セルのうちの1つ以上が前記トレイ上に配置される、請求項1に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項11】
前記支持ユニットの少なくとも一部は、前記複数の電気化学セルを支持するように構成される複数の断面支持部材である、請求項1に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項12】
前記トレイのアスペクト比が約0.5以下である、請求項1に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項13】
前記ラックは、前記複数の電気化学セルに熱エネルギーを供給するように構成される1つ以上のヒータを備える、請求項1に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項14】
前記1つ以上のヒータは、前記ラックの内側に又は前記ラックの貫通部に隣接して配置される、請求項13に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項15】
前記1つ以上のヒータが絶縁体及び加熱ワイヤを備え、前記加熱ワイヤが前記絶縁体の溝内に配置される、請求項13に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項16】
前記システムは、流体の流れを可能にするように構成される外部ポート、前記ラックからのガスの流れの放出を可能にするように構成される通気ポート、及び、故障耐性安全インジケータから成るグループから選択される1つ以上の安全機能を備える、請求項1に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項17】
前記ラック又は前記トレイは、前記ラック又は前記トレイの1つ以上の要素を通じて冷却流体を流すように構成される、請求項1に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項18】
前記複数の電気化学セルは、前記動作温度で約5×10
-5オーム以下の電気抵抗を維持するように構成される相互接続部を介して接続される、請求項1に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項19】
前記複数の電気化学セルが直列及び並列に接続される、請求項1に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項20】
筐体と、
複数の電気化学セルであって、前記複数の電気化学セルのうちの1つの電気化学セルが、負極、電解質、及び、正極を備え、前記負極、前記電解質、及び、前記正極のうちの少なくとも2つが、前記電気化学セルの動作温度で液体状態にあり、前記複数の電気化学セルが直列又は並列に接続される、複数の電気化学セルと、
前記複数の電気化学セルを支持するラックであって、前記ラックが前記筐体内に配置される、ラックと、
前記ラックと前記筐体との間の1つ以上のパネルであって、前記1つ以上のパネルが1つ以上の絶縁部分を形成するように構成される、1つ以上のパネルと、
前記1つ以上の絶縁部分内に配置される絶縁材料と、
を備えるエネルギー貯蔵システム。
【請求項21】
前記絶縁材料が粉末形態を成す、請求項20に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項22】
前記1つ以上のパネルが前記ラック又は前記筐体に取り付けられる、請求項20に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項23】
前記ラックが複数のラックを備え、これらの複数のラックが前記ラックを備える、請求項20に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項24】
前記ラックが1つ以上のチューブガスケットによってシールされる、請求項20に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項25】
前記1つ以上のチューブガスケットは、前記絶縁材料が充填される絶縁織布を備える、請求項24に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項26】
前記システムは、流体の流れを可能にするように構成される外部ポート、前記筐体からのガスの流れの放出を可能にするように構成される通気ポート、及び、故障耐性安全インジケータから成るグループから選択される1つ以上の安全機能を備える、請求項20に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項27】
前記ラック内に又は前記ラックに隣接して配置されるサーマルバラストを更に備え、前記サーマルバラストは、前記筐体の温度を維持又は調整するように構成される、請求項20に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項28】
制御システム、バッテリ管理システム、ヒータコントローラ、回路パネル、ヒューズ、交流(AC)分配、AC及び直流(DC)切断、通信装置、及び、安全構成要素から成るグループから選択される1つ以上の部材を収容するように構成される断熱電子機器区画室を更に備える、請求項20に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項29】
前記ラックは、前記ラックの1つ以上の要素を通じて冷却流体を流すように構成される、請求項20に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項30】
前記複数の電気化学セルは、前記動作温度で約5×10
-5オーム以下の電気抵抗を維持するように構成される相互接続部を介して接続される、請求項20に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項31】
前記相互接続部は、ニッケル合金、銅ニッケル-アルミニウム青銅合金、アルミニウム黄銅合金、銅合金、及び、アルミニウム合金から成るグループから選択される1つ以上の材料を備える、請求項30に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項32】
前記筐体が閾値温度に達するときに前記筐体を換気するように構成される換気システムを更に備える、請求項20に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項33】
前記換気システムは、塩化水素又は塩素ガスを除去するように構成されるフィルタを備える、請求項32に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項34】
エネルギー貯蔵システムを製造するための方法であって、
(a)ラック上に複数の電気化学セルを設けるステップであって、前記複数の電気化学セルのうちの1つの電気化学セルが、負極、電解質、及び、正極を備え、前記負極、前記電解質、及び、前記正極のうちの少なくとも2つが、前記電気化学セルの動作温度で液体状態にあり、前記ラックが、締結具を伴うことなく互いに接合される複数の支持要素を備える、ステップと、
(b)相互接続部を使用して前記複数の電気化学セルを直列又は並列に接続するステップと、
を含む方法。
【請求項35】
前記ラックに隣接して複数の絶縁パネルを設けるステップを更に含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
(a)の前に、前記ラックを形成するために前記複数の支持要素を互いに接合するステップを更に含む、請求項34に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
この出願は、その全体が参照により本願に組み入れられる2018年12月17日に出願された米国仮特許出願第62/780,857号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー貯蔵装置(又はバッテリ)は、貯蔵された化学エネルギーを電気エネルギーに変換できる装置である。エネルギー貯蔵装置は、様々な家庭用及び産業用の用途で用いられ得る。エネルギー貯蔵装置は、作業を行なうために用いられる場合がある。エネルギー貯蔵装置に貯蔵された化学エネルギーは、エネルギー貯蔵装置が電気負荷(例えば、電力網又は電気機器)に取り付けられるときに放出され得る。
【0003】
100℃を超える高温で動作され得るエネルギー貯蔵装置がある。そのような装置は、動作温度で液体である1つ以上の構成要素を含むことができる液体金属バッテリであってもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書中で認識されるように、エネルギー貯蔵装置を低コスト且つ効率的に貯蔵することには課題が残っている。複数の液体金属バッテリを貯蔵するためのシステムは、製造コストが高くなる場合がある。更に、断熱材料は、パネルとして又はロールの状態でのいずれかで利用可能であり、システムにおける接合部、継ぎ目、及び/又は、隙間の周囲で効果的な熱障壁を形成しない場合がある。そのような状況において、システムは、システムの全体的な熱効率を低下させる熱漏洩経路を有し得る。
【0005】
本明細書中では、高温装置(例えば、液体金属バッテリ)を貯蔵するための低コスト及び/又は十分に軽量のシステムの必要性が認識される。高温装置のための安全で効率的な絶縁を伴うシステムも必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、本開示は、複数の電気化学セルであって、複数の電気化学セルのうちの1つの電気化学セルが、負極、電解質、及び、正極を備え、負極、電解質、及び、正極のうちの少なくとも2つが、電気化学セルの動作温度で液体状態にあり、複数の電気化学セルが直列又は並列に接続される、複数の電気化学セルと、複数の電気化学セルを支持するラックであって、ラックが複数のトレイを備え、複数のトレイのうちの1つのトレイが、締結具を介して互いに結合されない支持ユニットを備える、ラックと、を備えるエネルギー貯蔵システムを提供する。
【0007】
幾つかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置が筐体を更に備え、ラックが筐体の内側に配置される。幾つかの実施形態では、筐体が複数のラックを備え、これらの複数のラックがラックを備える。幾つかの実施形態では、筐体が筐体外部カバーを更に備え、筐体外部カバーがラックから電気的に絶縁される。幾つかの実施形態では、ラックが筐体内の1つ以上の絶縁基板上に配置される。幾つかの実施形態において、エネルギー貯蔵装置は、ラックと筐体との間に配置される絶縁材料を更に備える。幾つかの実施形態では、絶縁材料が粉末形態を成す。幾つかの実施形態では、ラックがラック外部カバーを更に備え、ラック外部カバーがラックに電気的に接続される。幾つかの実施形態では、ラック外部カバー又は筐体外部カバーが取り外し可能なフロントカバーを備える。
【0008】
幾つかの実施形態では、複数の電気化学セルのうちの1つ以上がトレイ上に配置される。幾つかの実施形態において、支持ユニットの少なくとも一部は、複数の電気化学セルを支持するように構成される複数の断面支持部材である。幾つかの実施形態では、トレイのアスペクト比が約0.5以下である。幾つかの実施形態において、ラックは、複数の電気化学セルに熱エネルギーを供給するように構成される1つ以上のヒータを備える。幾つかの実施形態において、1つ以上のヒータは、ラックの内側に又はラックの貫通部に隣接して配置される。幾つかの実施形態では、1つ以上のヒータが絶縁体及び加熱ワイヤを備え、加熱ワイヤが絶縁体の溝内に配置される。
【0009】
幾つかの実施形態において、システムは、流体の流れを可能にするように構成される外部ポート、ラックからのガスの流れの放出を可能にするように構成される通気ポート、及び、故障耐性安全インジケータから成るグループから選択される1つ以上の安全機能を備える。幾つかの実施形態において、ラック又はトレイは、ラック又はトレイの1つ以上の要素を通じて冷却流体を流すように構成される。幾つかの実施形態において、複数の電気化学セルは、動作温度で約5×10-5オーム以下の電気抵抗を維持するように構成される相互接続部を介して接続される。幾つかの実施形態では、複数の電気化学セルが直列及び並列に接続される。
【0010】
他の態様において、本開示は、筐体と、複数の電気化学セルであって、複数の電気化学セルのうちの1つの電気化学セルが、負極、電解質、及び、正極を備え、負極、電解質、及び、正極のうちの少なくとも2つが、電気化学セルの動作温度で液体状態にあり、複数の電気化学セルが直列又は並列に接続される、複数の電気化学セルと、複数の電気化学セルを支持するラックであって、ラックが筐体内に配置される、ラックと、ラックと筐体との間の1つ以上のパネルであって、1つ以上のパネルが1つ以上の絶縁部分を形成するように構成される、1つ以上のパネルと、1つ以上の絶縁部分内に配置される絶縁材料と、を備えるエネルギー貯蔵システムを提供する。
【0011】
幾つかの実施形態では、絶縁材料が粉末形態を成す。幾つかの実施形態では、1つ以上のパネルがラック又は筐体に取り付けられる。幾つかの実施形態では、ラックが複数のラックを備え、これらの複数のラックがラックを備える。幾つかの実施形態では、ラックが1つ以上のチューブガスケットによってシールされる。幾つかの実施形態において、1つ以上のチューブガスケットは、絶縁材料が充填された絶縁織布を備える。
【0012】
幾つかの実施形態において、システムは、流体の流れを可能にするように構成される外部ポート、筐体からのガスの流れの放出を可能にするように構成される通気ポート、及び、故障耐性安全インジケータから成るグループから選択される1つ以上の安全機能を備える。幾つかの実施形態において、システムは、ラック内に又はラックに隣接して配置されるサーマルバラストを更に備え、サーマルバラストは、筐体の温度を維持又は調整するように構成される。幾つかの実施形態において、システムは、制御システム、バッテリ管理システム、ヒータコントローラ、回路パネル、ヒューズ、交流(AC)分配、AC及び直流(DC)切断、通信装置、及び、安全構成要素から成るグループから選択される1つ以上の部材を収容するように構成される断熱電子機器区画室を更に備える。
【0013】
幾つかの実施形態において、ラックは、ラックの1つ以上の要素を通じて冷却流体を流すように構成される。幾つかの実施形態において、複数の電気化学セルは、動作温度で約5×10-5オーム以下の電気抵抗を維持するように構成される相互接続部を介して接続される。
【0014】
幾つかの実施形態において、相互接続部は、ニッケル合金、銅ニッケル-アルミニウム青銅合金、アルミニウム黄銅合金、銅合金、及びアルミニウム合金から成るグループから選択される1つ以上の材料を備える。
【0015】
幾つかの実施形態において、エネルギー貯蔵システムは、筐体が閾値温度に達するときに筐体を換気するように構成される換気システムを更に備える。幾つかの実施形態において、換気システムは、塩化水素又は塩素ガスを除去するように構成されるフィルタを備える。
【0016】
他の態様において、本開示は、エネルギー貯蔵システムを製造するための方法を提供する。方法は、(a)ラック上に複数の電気化学セルを設けるステップであって、複数の電気化学セルのうちの1つの電気化学セルが、負極、電解質、及び、正極を備え、負極、電解質、及び、正極のうちの少なくとも2つが、電気化学セルの動作温度で液体状態にあり、ラックが、締結具を伴うことなく互いに接合される複数の支持要素を備える、ステップと、(b)相互接続部を使用して複数の電気化学セルを直列又は並列に接続するステップとを含むことができる。
【0017】
幾つかの実施形態において、方法は、ラックに隣接して複数の断熱パネルを設けるステップを更に含む。
【0018】
幾つかの実施形態において、方法は、(a)の前に、ラックを形成するために複数の支持要素を互いに接合するステップを更に含む。
【0019】
本開示の更なる態様及び利点は、本開示の単なる例示的な実施形態が示されて記載されるにすぎない以下の詳細な説明から当業者に容易に明らかになる。理解されるように、本開示は、他の異なる実施形態が可能であり、その幾つかの詳細は、全てが本開示から逸脱することなく、様々な自明な点で変更が可能である。したがって、図面及び説明は、本質的に例示と見なされるべきであり、限定的であると見なされるべきでない。
【0020】
参照による組み入れ
この明細書中で言及される全ての刊行物、特許、及び、特許出願は、あたかもそれぞれの個々の刊行物、特許、又は、特許出願が参照により組み入れられるべく具体的に且つ個別に示唆されたと同じ程度に参照により本願に組み入れられる。
【0021】
本発明の新規の特徴が添付の特許請求の範囲に詳細に記載される。本発明の特徴及び利点のより良い理解は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を説明する以下の詳細な説明及び添付図面(本明細書中の1又は複数の「図」及び「FIG」も)を参照することによって得られ、添付図面は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】筐体前面カバーを伴わないエネルギー貯蔵システムの正面図の一例を示す。
【
図3】エネルギー貯蔵システムのラックの一部の一例を示す。
【
図4】エネルギー貯蔵システム内のトレイの一例を示す。
【
図5A】エネルギー貯蔵システムにおけるトレイの拡大図の一例を示し、別個のトレイ要素の一例を示す。
【
図5B】エネルギー貯蔵システムにおけるトレイの拡大図の一例を示し、組み立てられたトレイ要素の一例を示す。
【
図7】チューブガスケット密閉ラックの一例を示す。
【
図10】ラックの周りに配置されたヒータの一例を示す。
【
図11】本開示の装置、システム、及び、方法を実施するようにプログラムされる或いはさもなければ構成されるコンピュータシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の様々な実施形態を本明細書中で示して説明してきたが、当業者に明らかなように、そのような実施形態は単なる一例として与えられる。本発明から逸脱することなく、多くの変形、変更、及び、置換は当業者に想起し得る。本明細書中に記載される発明の実施形態の様々な代替案を使用できることが理解されるべきである。
【0024】
本明細書中で使用される「セル」という用語は、一般に、電気化学セルを指す。セルは、A||Bとして示される、材料「A」の負極及び材料「B」の正極を含むことができる。正極及び負極は電解質によって分離され得る。また、セルは、ハウジング、1つ以上の集電体、及び、高温電気絶縁シールを含むこともできる。場合によっては、セルは、少なくとも約4インチ幅、少なくとも約4インチ深さ、及び、少なくとも約2.5インチ高さとなり得る。場合によっては、セルは、少なくとも約8インチ幅、少なくとも約4インチ深さ、及び、少なくとも約8インチ高さとなり得る。幾つかの例において、電気化学セルの任意の所与の寸法(例えば、高さ、幅、又は、深さ)は、少なくとも約1インチ、2インチ、2.5インチ、3インチ、3.5インチ、4インチ、4.5インチ、5インチ、5.5インチ、6インチ、6.5インチ、7インチ、7.5インチ、8インチ、8.5インチ、9インチ、9.5インチ、10インチ、12インチ、14インチ、16インチ、18インチ、20インチ以上となり得る。一例において、セル(例えば、各セル)は、少なくとも約4インチ×4インチ×2.5インチの寸法を有することができる。他の例において、セル(例えば、各セル)は、少なくとも約8インチ×2.5インチ×8インチの寸法を有することができる。場合によっては、セルは円筒形であってもよく、前述の高さ、幅、又は、深さ寸法のいずれかに対応する直径を有してもよい。場合によっては、セルは、おおよそ、少なくとも約70ワット時のエネルギー貯蔵容量を有してもよい。セルは、おおよそ、少なくとも約1ワット時のエネルギー貯蔵容量、10ワット時のエネルギー貯蔵容量、20ワット時のエネルギー貯蔵容量、30ワット時のエネルギー貯蔵容量、40ワット時のエネルギー貯蔵容量、50ワット時のエネルギー貯蔵容量、60ワット時のエネルギー貯蔵容量、70ワット時のエネルギー貯蔵容量、80ワット時のエネルギー貯蔵容量、90ワット時のエネルギー貯蔵容量、100ワット時のエネルギー貯蔵容量、200ワット時のエネルギー貯蔵容量、300ワット時のエネルギー貯蔵容量、400ワット時のエネルギー貯蔵容量、500ワット時のエネルギー貯蔵容量、600ワット時のエネルギー貯蔵容量、800ワット時のエネルギー貯蔵容量、1,000ワット時のエネルギー貯蔵容量、1,200ワット時のエネルギー貯蔵容量、又はそれ以上のエネルギー貯蔵容量を有してもよい。
【0025】
所与のエネルギー容量及び電力容量を伴うセルのグループは、所与の(例えば、定格)電力レベルの少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は、約100%を送出するように構成されてもよい。例えば、1000kWシステムは500kWでも動作し得る場合があるが、500kWシステムは1000kWで動作できない場合がある。場合によっては、所与のエネルギー容量及び電力容量を伴うシステムは、所与の(例えば、定格)電力レベルの約100%未満、約110%未満、約125%未満、約150%未満、約175%未満、又は約200%未満などを送出するように構成されてもよい。例えば、システムは、定格電力レベルでそのエネルギー容量を消費するのにかかる時間よりも短い期間にわたってその定格電力容量よりも多くを供給する(例えば、電力がシステムの定格電力で供給される場合にシステムの定格エネルギーを供給するのにかかる時間の約1%未満、約10%未満、又は、約50%未満に対応する期間にわたってシステムの定格電力よりも大きい電力を供給する)ように構成されてもよい。
【0026】
本明細書中で使用される「バッテリ」という用語は、一般に、直列及び/又は並列に接続される1つ以上の電気化学セルを伴うエネルギー貯蔵装置を指す。バッテリは、任意の数の電気化学セルを備えることができる。バッテリは、少なくとも1回の充電/放電又は放電/充電サイクル(「cycle」)を行なってもよい。バッテリは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100個以上のセルを含んでもよい。
【0027】
エネルギー貯蔵システムは、少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、20個、30個、40個、50個又はそれ以上の並列のバッテリを含んでもよい。代案として、エネルギー貯蔵システムは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、100、200、500、1000、1500、2000個又はそれ以上の直列のバッテリを含んでもよい。他の代案として、エネルギー貯蔵システムは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50個以上の直列のバッテリと、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50個以上の並列のバッテリとを含んでもよい。
【0028】
本明細書中で使用される「垂直」という用語は、一般に、重力加速度ベクトル(g)と平行な方向を指す。
【0029】
本明細書中で使用される「電圧」又は「セル電圧」という用語は、一般に、(例えば、任意の充電状態又は充電/放電状態における)セルの電圧を指す。場合によっては、電圧又はセル電圧が開回路電圧であってもよい。場合によっては、電圧又はセル電圧が充電中又は放電中の電圧となり得る。
【0030】
本開示の電圧は、接地(0ボルト(V))などの基準電圧、又は、電気化学セル内の対向電極の電圧に対して解釈され又は表わされてもよい。
【0031】
本明細書中で使用される「スロット」という用語は、一般に、ラックの要素(例えば、構造要素及びレール)又はトレイの要素(例えば、ランナ又はクロス構造支持部材)における狭い開口部、切り欠き、又は、スリットを指す。トレイは、1つ以上のランナを含んでもよい。ランナは、1つ以上のスロットを有してもよい。スロットは、タブとの接合又は嵌め合いを可能にしてもよい。スロットとタブとの接合は、トレイの組み立てを可能にして、トレイのための構造的支持を可能にしてもよい。
【0032】
本明細書中で使用される「タブ」という用語は、一般に、トレイ上のクロス構造支持部材から延在する突出部を指す。タブは、タブがスロットと接合又は結合できるようにする形状を備えてもよい(例えば、タブは、スロット内へと延在してもよく又はスロット内に嵌合してもよい)。スロット及びタブは、溶接又はろう付けによって接合又は結合されてもよい。スロットとタブとの接合部は、トレイ要素の分解を可能にしなくてもよい。
【0033】
本明細書中で使用される「締結具」という用語は、一般に、2つ以上の物体を接合構成要素を損傷させることなく取り外す又は分解することができるように、2つ以上の物体を互いに非恒久的に機械的に接合する又は取り付けるハードウェア装置を指す。締結具としては、ネジ、ボルト、ピン、クリップ、リベット、ラッチ、アンカー、又は、他のタイプの締結具を挙げることができるが、これらに限定されない。締結具はスロットでなくてもよい。締結具はタブでなくてもよい。
【0034】
本明細書で使用される「貫通部」という用語は、一般に、(例えば、ラックの内側にある)電気化学セルを(例えば、ラックの外側にある)エネルギー貯蔵システムにおける他の構成要素に接続するためにワイヤ、センサ、及び/又は、高電流/電圧(例えば、セル電流又は電圧)接続部が通過できるポート又は開口を指す。ラック、ラックを取り囲む断熱材、及び/又は、ラックを取り囲む筐体が、1又は複数の貫通部を有してもよい。貫通部は、シールされてもよく又はシールされなくてもよい。一例において、貫通部は、ワイヤ又は接続部を保持する及び/又は貫通部をシールするためのグロメット(例えば、ゴム製グロメット)又は他の挿入体を含んでもよい。
【0035】
「少なくとも」、「~よりも大きい」、又は、「~以上」という用語が一連の2つ以上の数値における最初の数値に先行するときには常に、「少なくとも」、「~よりも大きい」、又は、「~以上」という用語は、その一連の数値における各数値に適用される。例えば、1、2、又は、3以上は、1以上、2以上、又は、3以上と同等である。
【0036】
「~を超えない」、「~未満」、又は、「~以下」という用語が一連の2つ以上の数値における最初の数値に先行するときには常に、「~を超えない」、「~未満」、「~以下」は、その一連の数値における各数値に適用される。例えば、3、2、又は、1以下は、3以下、2以下、1以下と同等である。
【0037】
電気化学セル
エネルギー貯蔵システムは、1つ以上の電気化学セル(「セル」)を備えてもよい。電気化学セル(「セル」)は、例えば、電子装置、他のエネルギー貯蔵装置、又は、電力網などの負荷に電気エネルギー(例えば、電位下の電子)を送出するように構成され得る。複数のセルは、直列及び/又は並列に接続されてもよい。セルは、電気化学セルであってもよい。
【0038】
エネルギー貯蔵システムは、1つの電気化学セル又は複数の電気化学セルを備えてもよい。複数の電気化学セルの電気化学セルは、負極、電解質、及び、正極を備えてもよい。負極、電解質、及び、正極のうちの少なくとも2つは、電気化学セルの動作温度において液体状態であってもよい。例えば、電解質及び負極が液体状態であってもよく、一方、正極が固体又は半固体状態である。本開示の電気化学セルは、負極、負極に隣り合う電解質、及び、電解質に隣り合う正極を含むことができる。負極は、電解質によって正極から分離され得る。負極は、放電中にアノードとなり得る。正極は、放電中にカソードとなり得る。
【0039】
電気化学セルは、液体金属バッテリセルであってもよい。液体金属バッテリセルは、負の液体(例えば、溶融)金属電極と正の液体(例えば、溶融)金属、半金属及び/又は非金属電極との間に配置される液体電解質を含むことができる。液体金属バッテリセルは、溶融アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム)又はアルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム)を備える負極、電解質、及び、固体、半固体又は溶融金属の正極を有してもよい。電解質は、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩などの塩(例えば、溶融塩)を含むことができる。アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、活性なアルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物、塩化物、臭化物、又は、ヨウ化物、或いは、それらの組み合わせなどのハロゲン化物となり得る。
【0040】
固体、半固体、又は、溶融金属の正極は、例えば、スズ、鉛、ビスマス、アンチモン、テルル、及び、セレンのうちの1つ以上を含むことができる。例えば、正極は、鉛(Pb)又は鉛-アンチモン(Pb-Sb)合金を含むことができる。正極は、アンチモン(Sb)、アンチモン-スズ(Sb-Sn)、アンチモン-鉛(Sb-Pb)、又は、アンチモン-スズ-鉛(Sb-Sn-Pb)合金を含んでもよい。また、正極は、1つ以上の遷移金属又はd-ブロック元素(例えば、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、水銀(Hg))を、単独で、或いは、他の金属、半金属、又は、非金属、例えば亜鉛-スズ(Zn-Sn)合金もしくはカドミウム-スズ(Cd-Sn)合金と組み合わせて含むこともできる。正極は、1つの安定した酸化状態を有する金属又は半金属(例えば、単一又は特異的な酸化状態を伴う金属)を備えることができる。本明細書中における金属又は溶融金属正極又は正極の任意の説明は、金属、半金属、及び、非金属のうちの1つ以上を含む電極を指してもよい。正極は、列挙された材料の例のうちの1つ以上を含んでもよい。溶融金属正極は、鉛及びアンチモンを含むことができる。溶融金属正極は、正極で合金化されたアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含んでもよい。液体金属バッテリセルは、負極としてカルシウムを有し、正極としてアンチモンを有してもよい。液体金属バッテリセルは、負極としてカルシウム合金を有し、正極としてアンチモンを有してもよい。液体金属バッテリセルは、負極としてリチウムを有し、正極としてアンチモンを有してもよい。液体金属バッテリセルは、負極としてリチウムを有し、正極としてビスマスを有してもよい。液体金属バッテリセルは、負極としてカルシウムを有し、正極としてビスマスを有し得る。液体金属バッテリセルは、負極としてカルシウム合金を有し、正極としてビスマスを有してもよい。液体金属バッテリセルは、負極としてカルシウムを有し、正極として鉛を有してもよい。液体金属バッテリセルは、負極としての液体カルシウム合金、溶融塩電解質、及び、溶融塩中に分散された固体金属、半金属、又は、金属間粒子を備えるカソードを有してもよい。一例では、金属間粒子がアンチモン(Sb)を備えてもよい。
【0041】
場合によっては、電気化学セルの負極及び/又は正極は、エネルギー貯蔵装置の動作温度で液体状態であってもよい。これに代えて又は加えて、負極又は正極は、エネルギー貯蔵装置の動作温度で固体又は半固体であってもよい。一例では、エネルギー貯蔵装置の動作温度において、負極は液体状態であり、正極は固体状態である。(1又は複数の)電極を(1又は複数の)液体状態に維持するために、バッテリセルが任意の適切な温度まで加熱されてもよい。バッテリセルは、約100℃、約150℃、約200℃、約250℃、約300℃、約350℃、約400℃、約450℃、約500℃、約550℃、約600℃、約650℃、又は、約700℃の温度に加熱及び/又は維持されてもよい。バッテリセルは、少なくとも約100℃、少なくとも約150℃、少なくとも約200℃、少なくとも約250℃、少なくとも約300℃、少なくとも約350℃、少なくとも約400℃、少なくとも約450℃、少なくとも約500℃、少なくとも約550℃、少なくとも約600℃、少なくとも約650℃、少なくとも約700℃、少なくとも約800℃、少なくとも約900℃以上の温度に加熱及び/又は維持されてもよい。負極、電解質、及び、正極は、液体(又は溶融)状態となり得る。バッテリセルは、約200℃~約600℃、約500℃~約550℃、又は、約450℃~約575℃に加熱されてもよい。
【0042】
電気化学セルは、少なくとも部分的に又は完全に自己加熱されてもよい。例えば、バッテリは、動作温度を維持するためにシステムに供給されるべき付加的なエネルギーを伴うことなくセルを所与の動作温度(例えば、液体成分のうちの少なくとも1つの凝固点を超えるセル動作温度)に維持できるサイクル動作の非効率性によってシステムが十分な熱を生成できるようにするべく、十分な速度で十分に絶縁、充電、放電、及び/又は、調整されてもよく、及び/又は、十分な割合の時間だけサイクルされてもよい。バッテリは、バッテリが始動された後にエネルギーを何ら消費しなくてもよい。
【0043】
本開示の電気化学セルは、充電(又はエネルギー貯蔵)モードと放電モードとの間でサイクルするようになっていてもよい。電気化学セルは、完全に充電され、部分的に充電され、又は、部分的に放電され、又は、完全に放電され得る。
【0044】
エネルギー貯蔵システム
本開示は、エネルギーを貯蔵するためのエネルギー貯蔵システムを提供する。本開示のエネルギー貯蔵システムは、負荷(例えば、抵抗器、電気機器、又は、電力網)に電気的に結合されるときに充電及び/又は放電してもよい。
【0045】
一態様において、本開示は、複数の電気化学セルと、複数の電気化学セルを支持するラックとを備えるエネルギー貯蔵システムを提供する。複数の電気化学セルのうちの1つの電気化学セルは、負極、電解質、及び、正極を備えてもよい。負極、電解質、及び、正極のうちの少なくとも1つ、2つ、又は、全ては、電気化学セルの動作温度で液体状態であってもよい。
【0046】
他の態様において、本開示は、複数の電気化学セルとラックとを備えるエネルギー貯蔵システムを提供する。電気化学セルは、負極、電解質、及び、正極を備えてもよい。ラックは、スロット及びタブを備える複数のトレイを備えてもよい。電気化学セルはトレイ上に配置されてもよい。ラックは、複数の電気化学セルを(例えば、機械的に)支持してもよい。
【0047】
他の態様において、本開示は、複数の電気化学セルとラックとを備えるエネルギー貯蔵システムを提供する。電気化学セルは、負極、電解質、及び、正極を備えてもよい。ラックは、複数のトレイを備えてもよい。複数のトレイのうちの1つのトレイは、締結具(例えば、ボルト、リベット、ピンなど)を介して互いに結合されない支持ユニット(例えば、ランナ及び/又はクロス構造支持部材)を備えてもよい。電気化学セルはトレイ上に配置されてもよい。ラックは、複数の電気化学セルを(例えば、機械的に)支持してもよい。トレイは、複数の電気化学セルを(例えば、機械的に)支持してもよい。
【0048】
他の態様において、エネルギー貯蔵システムは、筐体と、複数の電気化学セルと、複数の電気化学セルを支持するラックとを備えてもよい。エネルギー貯蔵システムは、ラックとは別個であってもよい又はラックの一部であってもよいラック外部カバーを更に備えてもよい。ラックは、筐体内に配置されてもよい。エネルギー貯蔵システムは、ラックと筐体との間に1つ以上のパネルを更に備えてもよい。1つ以上のパネルは、1つ以上の絶縁部分を形成するように構成されてもよい。エネルギー貯蔵システムは、1つ以上の絶縁部分に配置される絶縁材料を更に備えてもよい。ラック外部カバーは、ラック内のトレイ及び/又はトレイ上の電気化学セルへの絶縁部分における絶縁体の流れを防止してもよい。或いは、システムは、ラック外部カバーを伴わずに設計されてもよく、また、絶縁体は、ラック内のトレイ及び/又はトレイ上の電気化学セルへ流れ及び/又はこれらと接触してもよい。絶縁部分の数は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上であってもよい。
【0049】
電気化学セルの動作温度は、約100℃、150℃、200℃、250℃、300℃、350℃、400℃、450℃、500℃、550℃、600℃、650℃、又は、700℃であってもよい。電気化学セルの動作温度は、少なくとも約100℃、150℃、200℃、250℃、300℃、350℃、400℃、450℃、500℃、550℃、600℃、650℃、700℃、800℃、900℃以上であってもよい。負極、電解質、又は、正極のうちの少なくとも1つは、電気化学セルの動作温度(例えば、250℃を超える)で液体状態であってもよい。負極、電解質、又は、正極のうちの少なくとも2つは、電気化学セルの動作温度(例えば、250℃を超える)で液体状態であってもよい。負極、電解質、又は、正極の全ては、電気化学セルの動作温度(例えば、250℃を超える)で液体状態であってもよい。
【0050】
複数の電気化学セルが直列に接続されてもよい。複数の電気化学セルが並列に接続されてもよい。複数の電気化学セルの一部が直列に接続されてもよく、また、複数の電気化学セルの一部が並列に接続されてもよい。
【0051】
エネルギー貯蔵システムがラックを備えてもよい。ラックは、エネルギー貯蔵システム内の複数のラックの一部であってもよい。エネルギー貯蔵システムのラックの数は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上であってもよい。ラックは、複数のトレイを備えてもよい。ラックのうちの1つのトレイの数は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上であってもよい。
【0052】
トレイは、トレイを形成するために互いに組み付けられる1つ以上のトレイ要素を備えてもよい。トレイ及び/又はトレイ要素がスロット及びタブを備えてもよい。スロット及びタブは、互いに嵌め合うなどして互いに結合するように構成されてもよい。トレイは、複数のスロット及び/又は複数のタブを備えてもよい。トレイのスロットの数は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上であってもよい。トレイのタブの数は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上であってもよい。トレイのスロットの数は、トレイのタブの数と同じであってもよい。これに代えて又は加えて、トレイのスロットの数は、トレイのタブの数と異なっていてもよい。スロットが開口を備えてもよい。開口は、様々な形態、形状、及び/又は、サイズを有してもよい。トレイは、1つ以上の電気化学セルを支持してもよい。例えば、トレイは、少なくとも1、2、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50個又はそれ以上の電気化学セルを支持してもよい。
【0053】
エネルギー貯蔵システムは、エネルギー貯蔵システム内の1つ以上のラックを部分的又は完全に覆うラック外部カバーを更に備えてもよい。ラック外部カバーは、ラックの一部であってもよく又はラックとは別個であってもよい。一例において、ラック外部カバーは、ラックとは別個であり、ラックから分離可能である(例えば、取り外されてもよい)。他の例において、ラック外部カバーは、ラックと一体化されて、取り外しできない。他の例では、ラック外部カバーの一部がラックと一体化され、他の部分が一体化されない(例えば、取り外し可能である)。ラック外部カバーは、粉末状の断熱材がラックによって保持されているトレイ上の電気化学セルと接触する又は電気化学セルを覆うことを防止するために使用されてもよく、及び/又は、ラックをエネルギー貯蔵システムの他の要素から電気的に絶縁するために使用されてもよい。ラック外部カバーが1つのラックを完全に覆ってもよい。ラック外部カバーが1つのラックを部分的に覆ってもよい。ラック外部カバーは、2つ以上の隣り合うラックを完全に又は部分的に覆ってもよい。ラック外部カバーがフロントカバーを備えてもよい。ラック外部カバーのフロントカバーは、フロントカバーが取り外されるときにラックへのトレイの装填を可能にするとともに、ラックの内容積をラック及びラック外部カバーの外側の絶縁体から密閉して、絶縁体がトレイ上の電気化学セルの一部と接触してこれを覆うのを防止できるようにするべく設計されてもよい。ラック外部カバーは、ラックと電気的に接続されてもよい。ラック外部カバーは、ラックから物理的に分離されて、それ自体の構造ラックを備えてもよく、及び/又は、ラックから電気的に絶縁されてもよい。ラック外部カバーは、ラックと熱的に接続されてもよい。これに代えて又は加えて、ラック外部カバーがラックから熱的に絶縁されてもよい。複数の電気化学セルのうちの1つ以上がトレイ上に配置されてもよい。1つのトレイ上に配置される複数の電気化学セルの数は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上であってもよい。ラックの一方のトレイ上に配置される複数の電気化学セルの数は、ラックの他方のトレイ上に配置される複数の電気化学セルの数と同じであってもよい。ラックの一方のトレイ上に配置される複数の電気化学セルの数は、ラックの他方のトレイ上に配置される複数の電気化学セルの数と異なっていてもよい。
【0054】
ラック又は隣り合うラックのセットは、複数の電気化学セルに熱エネルギーを供給するための1つ以上のヒータを備えてもよい。ラックのヒータの数は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上であってもよい。ヒータは、ラックとラック外部カバーとの間に配置されてもよい。ヒータがラックの内部に配置されてもよい。ヒータがトレイの隣に配置されてもよい。ヒータがトレイ上に載置されてもよい。ヒータは、ラック外部カバー又は隣り合うラックと隣り合う或いは接触するラックの部分に配置されてもよい。ヒータは、ラック外部カバーの外側に配置されてもよい。ヒータは、より高い熱漏洩経路を有することからラックによって取り囲まれる容積内の温度勾配を低減するためにより多くの加熱を必要とするラック又はラック外部カバーの内面又は外面に沿う位置の近くに配置されてもよい。これに代えて又は加えて、ヒータは、ラックへの入口及び/又は出口の近くに配置されてもよい。ラックの入口又は出口は、電気接続部及び他の電気部品をラックの内側からラックの外側へと通すように構成されてもよい。
【0055】
ラック及び/又はラック外部カバーが筐体内にあってもよい。筐体は、様々な形態、形状、及び/又は、サイズを有してもよい。想定し得る形状又は形態の例としては、数学的形状(例えば、円形、三角形、正方形、長方形、五角形、又は、六角形)、二次元幾何学的形状、多次元幾何学的形状、曲線、多角形、多面体、他の幾何学的形状、又は、部分的形状、或いは、これらの形状の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
筐体、ラック外部カバー、ラック、及び、トレイのうちの少なくとも2つは、同じ材料から形成されてもよい。筐体、ラック外部カバー、ラック、及び、トレイは、異なる材料から形成されてもよい。筐体、ラック外部カバー、ラック、及び/又は、トレイは、金属(又は金属含有)材料、ポリマー材料、及び/又は、複合材料から形成されてもよい。金属材料は、1つ以上の元素金属を含んでもよい。金属材料の例としては、アルミニウム、ステンレス鋼合金(例えば、200シリーズ、300シリーズ、400シリーズなど)、市販の純チタン、チタン合金、銀合金、銅合金、グレード5チタン、超弾性チタン合金、コバルト-クロム合金、及び、超弾性金属合金(例えば、ニチノール又は超弾塑性金属)が挙げられる。
【0057】
ラックは、筐体内の1つ以上の絶縁基板上に配置されてもよい。絶縁基板の数は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上であってもよい。絶縁基板は、様々な形態、形状、及び/又は、サイズを有してもよい。想定し得る形状又は形態の例としては、数学的形状(例えば、円形、三角形、正方形、長方形、五角形、又は、六角形)、二次元幾何学的形状、多次元幾何学的形状、曲線、多角形、多面体、他の幾何学的形状、又は、部分的形状、或いは、これらの形状の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。異なる絶縁基板は、異なる形状、形態、及び/又は、サイズを有してもよい。異なる絶縁基板は、同じ形状、形態、及び/又は、サイズを成していてもよい。
【0058】
エネルギー貯蔵システムは、ラック及び/又はラック外部カバーと筐体との間に絶縁材料を備えてもよい。絶縁材料は粉末形態を成してもよい。絶縁材料が粉末の形態を成す場合、粉末中の個々の粒子の粒径(例えば、断面)は、最大で約1センチメートル(cm)、1000マイクロメートル(μm)、500μm、400μm、300μm、200μm、100μm、50μm、10μm、1μm、0.5μm、0.1μm以下であってもよい。絶縁材料は、シリカ、微孔質シリカ、アルミナシリカ、アルミナシリケート、マグネシア、真空絶縁パネル、シリカエアロゲル、セメント質発泡体、パーライトルーズフィル、バーミキュライトルーズフィル、気泡コンクリート、セルラーコンクリート、レンガ、ガラス、流し込みコンクリート、ガラス繊維、及び、鉱物ウール、又は、任意の他の断熱材料を含む、或いは、これらであってもよいが、これらに限定されない。
【0059】
ここで図を参照するが、図の全体にわたって同様の数字は同様の部分を指す。図及び図中の特徴が必ずしも原寸に比例して描かれるとは限らないことが理解される。
【0060】
図1は、エネルギー貯蔵システムの一例を示す。エネルギー貯蔵システムは、筐体101、筐体フロントカバー102、絶縁ゾーン103、及び、ラック外部カバー104を備えてもよい。筐体フロントカバー102は、筐体101をシールする(例えば、気密シールする、非気密シールする、絶縁ゾーンから筐体の外側への粉末絶縁体の著しい流れを防止するのに十分にシールする)ように構成されてもよい。絶縁ゾーン103は、筐体101の内側に配置されてもよい。絶縁ゾーン103は、ラック105及び/又はラック外部カバー104を取り囲む絶縁材料を備えてもよい。絶縁材料は、ラック外部カバー104と筐体101との間に保持されてもよい。絶縁材料は粉末形態を成してもよい。図示の例では、エネルギー貯蔵システムがラック105を備えてもよい。ラック105は、ラックフロントカバー106によってシールされてもよい。ラックは、複数のトレイ107を備えてもよい。複数のトレイの数は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上であってもよい。ラックは、複数のセルを支持するように構成されてもよい。セルは、電気化学セルであってもよい。複数の電気化学セルのうちの1つ以上は、複数のトレイ107のうちの1つに配置されてもよい。ラック105及び/又はラック外部カバー104が1つ以上のヒータを備えてもよい。ヒータは、複数の電気化学セルに熱エネルギーを供給するように構成されてもよい。ラック105又はラック外部カバー104は、1つ以上の絶縁基板上に配置されてもよい。エネルギー貯蔵システムが複数のラック105を備えてもよい。複数のラックの数は、少なくとも2、3、4以上であってもよい。筐体は、筐体の上端又はその付近に位置される1つ以上のポート108を備えてもよい。筐体は、該筐体の底部又はその付近に位置される1つ以上の除去ポート109を更に備えてもよい。
【0061】
図2は、筐体フロントカバーを伴わないエネルギー貯蔵システムの一例の正面図を示す。エネルギー貯蔵システムは、筐体201及びラック外部カバー202を備えてもよい。ラック外部カバー202は、筐体201の内部に配置されてもよい。図示の例では、エネルギー貯蔵システムがラック203を備えてもよい。ラックが複数のトレイ204を備えてもよい。複数のトレイの数は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上であってもよい。複数のトレイ204のうちの1つには1つ以上のセルが配置されてもよい。セルは、電気化学セルであってもよい。セルが電気的に通じてもよい。一例では、セルが直列形態で電気的に通じている(例えば、1つのセルの負極が他のセルの正極と電気的に通じている)。他の例では、セルが並列形態で電気的に通じている(例えば、1つのセルの負極が他のセルの負極と電気的に通じている)。ラック外部カバー202が1つ以上の絶縁基板205上に配置されてもよい。ラック外部カバー202と筐体201との間には1つ以上のパネル206があってもよい。1つ以上のパネル206は、1つ以上の絶縁部分207を形成するように構成されてもよい。1つ以上のパネル206がシートメタルであってもよい。シートメタルパネルは、平坦であってもよく、或いは、機械的剛性を向上させるために波形であってもよい。パネルは、薄いシート又は箔(例えば、ステンレス鋼箔)と組み合わされるエキスパンドメタルメッシュなどの低コスト及び/又は低重量の材料又はアセンブリから設計されてもよい。絶縁部分207が絶縁材料を備えてもよい。1つ以上の絶縁部分207は、絶縁材料を分離するように構成されてもよい。絶縁部分は、絶縁材料の一部をエネルギー貯蔵システムから除去できるようにしてもよい。この状況では、全ての絶縁材料を除去することなく、保守又は交換の目的で外部の者がラック202又は電気化学セルにアクセスすることができる。
【0062】
ラック及びトレイ
エネルギー貯蔵システムは、複数のセルを支持するラックを備えてもよい。ラックが筐体内にあってもよい。ラックは、構造的支持を行なってもよく、相互接続の形成に関与し及び/又は相互接続の形成に役立ってもよい。ラックは、熱管理流体を複数の電気化学セルの少なくともサブセットと熱的に通じさせるための1つ以上の流体流路を有してもよい。熱管理流体は、空気、浄化/洗浄された空気、ガス(例えば、ヘリウム、アルゴン、超臨界CO2)、油、水、溶融塩、又は、蒸気を含むがこれらに限定されない任意の適した流体であってもよい。ガスの例は、アルゴン又は窒素(N2)である。外気が使用されてもよい。熱管理流体が高い熱容量を有してもよい。流体流路がラックの一体部分であってもよい(例えば、熱管理流体がラックを流通してもよい)。これに代えて又は加えて、流体流路がラックとは別個であってもよい。流体流路は、熱管理流体がセルと接触しないように熱管理流体を分離してもよい。
【0063】
ラックが1つ以上の機能を有してもよい。そのような(1又は複数の)機能の例としては、(i)装置/システム内のセル及び/又はセルのグループに機械的支持を与えること、及び/又は、(ii)バッテリ(又はバッテリシステム)の熱管理を支援するために熱管理流体のための経路を与えること、を挙げることができるが、これらに限定されない。エネルギー貯蔵システムがラック外部カバーを備えてもよい。ラック外部カバーがラックの一部であると見なされてもよい。ラックが更なる構成要素を備えてもよい。更なる構成要素は、例えば、チューブ、パイプ、又は、密閉トラスであってもよい。更なる要素は、ラックと溶接されてもよく、或いは、ラックと動作可能に結合されてもよい。熱管理流体流路が、ラック構造の1つ以上の部分に溶接され或いはさもなければ接続され又は接合されてもよい。
【0064】
ラックがラック外部カバーを更に備えてもよい。ラック外部カバーは、ラックと電気的に接続されてもよい。ラック外部カバーがラックから電気的に絶縁されてもよい。ラック外部カバーが取り外し可能であってもよい。ラック外部カバーが部分的に取り外し可能であってもよい。ラック外部カバーが取り外し可能でなくてもよい。ラック外部カバーが薄いシートメタルスキンであってもよい。ラック外部カバーがラックフロントカバーを備えてもよい。ラックフロントカバーが取り外し可能であってもよい。ラックフロントカバーが取り外し可能でなくてもよい。
【0065】
図3は、エネルギー貯蔵システムのラックの一部の一例を示す。ラック301は、構造支持体302(例えば、ラックを形成するために互いに接合され得るラックの一部分)及びレール303などのラック要素を備えてもよい。ラック要素は、例えば、チューブ、パイプ、又は、密閉トラスを備えてもよい。ラック要素が互いに溶接されてもよい。ラック301が一体に形成されてもよい。ラック301及び/又は(1又は複数の)その一部は、装置/システム内の他のラックと接合され得る。熱管理流体流路は、ラックの1つ以上の部分に溶接され或いはさもなければ接続され又は接合されてもよい。例えば、外部チューブが、ラック801又は(1又は複数の)個々のラック要素上の1つ以上の流体入口又は出口に接合されてもよい。(1又は複数の)流体入口/(1又は複数の)出口は、ラック又は(1又は複数の)ラック要素における流体流導管と流体連通してもよい。
【0066】
ラックは、任意の適切なサイズ又は形状を成してもよい。ラックは、例えば、
図3に示されるような任意の数の垂直及び水平ラック要素を備える矩形の箱であってもよい。ラックは、電気化学セルを直列及び/又は並列の形態で機械的に及び/又は構造的に支持することができる。ラックは、電気化学セルを任意の数のセル(例えば、本明細書中の他の箇所に記載されるようなセルのグループ)を有するサブセットに区分してもよい。サブセット内の電気化学セルは、並列及び/又は直列に接続され得る。更に、本明細書中の他の箇所でより詳細に説明するように、ラックは、他の(1又は複数の)ラックと接合及び/又はさもなければ接続され得る。ラックは、セルのグループをより大きなユニットへと組み立てるために使用されてもよい。ラック(又はその任意の部分)は、断熱材と界面を成すように構成されてもよい。ラックは、任意の数の電気化学セル(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上)を収容してもよい。ラックは、少なくとも約5個、少なくとも約10個、少なくとも約20個、少なくとも約30個、少なくとも約40個、少なくとも約50個、少なくとも約60個、少なくとも約80個、少なくとも約100個、少なくとも約200個、少なくとも約300個、少なくとも約400個、少なくとも約500個、少なくとも約600個、又は少なくとも約700個の電気化学セルを収容してもよい。
【0067】
ラックは、1つ又は複数の流体流路を備えてもよい。幾つかの実施では、流体流路が平行であってもよい。例えば、複数の平行な流体流路が設けられてもよい。流体流路の少なくとも一部が(例えば、本開示の制御システムによって)別個に制御可能であってもよい。そのような制御としては、1つ以上の流路の開閉、(1又は複数の)流量の制御又は維持、流体温度の制御又は維持などを挙げることができる。例えば、並列流体流路のうちの少なくとも2つを通じた流体流量(例えば、質量流量、体積流量)を別々に制御することができる。熱管理流体は、1つ以上の開口を通じて流体流路に入ることができる。その後、流体は、任意の数の(例えば、直交、平行)流体流路を通ってラックを流通できる。個々の流体流路は、円形、正方形、長方形、楕円形、又は、任意の他の適切な形状の断面形状を有してもよい。流体流路は、約0.1cm2未満、約0.5cm2未満、約1cm2未満、約2cm2未満、約5cm2未満、約10cm2未満、約20cm2未満、約50cm2未満、又は、約100cm2未満の断面積を有してもよい。流体は、1つ以上の開口を通じて流体流路に出入りすることができる。流体は、これに代えて又は加えて、ラックの任意の面又は境界で(例えば、入口/出口を備える面/境界に対して垂直又は隣接する面上で)ラックに出入りすることができる。熱管理流体は、第1の開口を通じてラックに入り、複数の流体流路に分割されて、第2の開口を通じて出ることができる。熱管理流体は、2つ以上の別個の開口を通じてラックに入ることができる。熱管理流体は、各経路内の流体を分離する別個の熱流路(例えば、それぞれが、例えば別個の入口及び/又は別個の出口などの1つ以上の別個の開口と流体連通している)を通じて流れることができ、それにより、システムは、各経路(例えば、それぞれが、例えば、ライフゲート又はバルブなどのそれら自体の流体流量制御アクチュエータによって制御される)を通じた流体流量を別々に制御することができる。ラックの1つ以上の構造要素(例えば、支持部材又はトレイ)は、熱管理流体流路が構造要素を通り抜けるように構成されてもよい。一例では、構造要素のうちの1つ以上が熱管理流体のための流体流路を構成する。
【0068】
熱管理流体が電気化学セルと接触しなくてもよい(例えば、熱管理流体をラック要素内に保持することができる)。ラックは、プラスチック、アルミニウム、鋼、又は、ステンレス鋼を含む任意の適した材料から形成され得る。ラックは、腐食に耐えることができる。ラックは、熱管理流体と接触してもよく、また、熱管理流体に対して化学的に耐性があってもよい。熱管理流体がセルと接触しなくてもよい(例えば、それによって、セル寿命が延び、システムの複雑さが低減する)。ラックは、例えば電気化学セルで使用される反応性金属などの反応性材料(例えば、反応性金属)に対して化学的耐性を有することができる。
【0069】
ラックは、熱伝達を選択的に加速する特徴又は特性(例えば、幾何学的特徴)を有することができる(例えば、ラック要素の厚さ又は組成、及び/又は、(1又は複数の)流体流路の断面積又は直径は、電気化学セルと熱管理流体との間を多かれ少なかれ熱が通過できるようにするべく異なっていてもよい)。例えば、ラック又はその一部の寸法(例えば、ラックにおける流体流路の厚さ、断面積、又は、直径、或いは、ラック全体の熱質量)は、(例えば、システム内のラック又はラック部分の位置にしたがって)熱伝達を選択的に加速させるように設定され得る。様々な幾何学的特徴は、熱管理流体経路付けの様々な設定を可能にし得る。流体流路は、システムからの熱の選択的な除去を可能にするためにセル間又はセルのグループ間で経路付けられてもよい。
【0070】
トレイ及びラックは、重量を最小にするとともに、トレイ装填密度を最大にする(例えば、エネルギー貯蔵システム筐体内のエネルギー貯蔵容量の大きさを増加させる)ように設計されてもよい。トレイは、ラック内へ装填するためにフォークリフトによって昇降可能に設計されてもよい。垂直に積み重ねられるラック間の空間を最小限に抑えるために、ラックがランナ(例えば、ラックの壁に沿ってラックの前部からラックの後部まで水平に延びる構造要素)を伴って設計されてもよく、また、ランナは、約10インチ(in)、8in、6in、5in、4in、3in、2in、1in以下の幅であってもよい。トレイは、容易な装填を可能にするためにトレイ上のランナがラック上のレールと適合するように設計されてもよい。例えば、トレイがラックの前縁に持ち上げられると、トレイランナを使用して、トレイをラック内のレールに沿ってラック内へとスライドさせることができる。組み立て中に必要とされる垂直空間を最小限に抑えるために、(例えば、ウインチシステムを使用して)トレイがレールに沿って押され及び/又は引かれてもよい。
【0071】
ラックは、複数のトレイを備えてもよい。ラック及び/又はトレイは、低コストシステムを達成できる強度メトリックごとのドルと相俟った自己固定溶接物スキームを使用してもよい。自己固定は、単位当たりの組み立て労力を低減することができる。製造プロセスが高い費用効率となるようにするべく、組立強度当たりのドルを利用することができる。自己固定溶接物スキームは、一時的な締結具が接合プロセス(例えば、溶接又はろう付け)のために構成要素を所定位置に保持できるようにするべく、スロット及びタブ、インターロック、機構の使用を含んでもよく、また、接合プロセスが完了した後に除去されてもよく、或いは、他の自己位置合わせ及び自己位置決め機構を含んでもよい。例えば、構成要素は、構成要素上のマーキングにしたがって視覚的に位置合わせされてもよい。位置合わせされた特徴は、スポット溶接又はシーム溶接されて、機械的に堅牢な構造を形成することができる。
図4は、エネルギー貯蔵システム内のトレイの一例を示す。トレイは、1つ以上の機能を有してもよい。そのような(1又は複数の)機能の例としては、(i)装置/システム内のセル及び/又はセルのグループに対して機械的な支持をもたらすこと、(ii)セル又はセルのグループが互いに直接に短絡しない或いは接地された接続部に短絡しないようにすること、(iii)セル及び/又はセルのグループと他の電気的に活性でない構造部材との間の電気的絶縁を維持すること、及び/又は、(iv)バッテリ(又はバッテリシステム)の熱管理に役立つように熱管理流体が流れるための経路をもたらすことが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、ラック及び/又はトレイの要素(例えば、クロス構造支持体、垂直支持体、レール、又は、ランナ)は、冷却流体を流すための1つ以上の経路を含んでもよい。ラック及び/又はトレイは、冷却流体が電気化学セルと接触しないようにシールされる経路を含んでもよい。トレイ401がトレイ要素402を備えてもよい。トレイ要素402は、例えば、スロット及びタブ又は他のインターロック機構又は自己固定機構を備えてもよい。トレイ要素402が互いに溶接されてもよい。トレイ401及び/又は(1又は複数の)その一部は、システム内の他の構成要素(例えば、トレイ、ラック、ラック外部カバー)と接合され得る。熱管理流体流路は、トレイ401の1つ以上の部分に溶接或いはさもなければ接続又は接合されてもよい。トレイがラック内へ固定されてもよい(例えば、所定位置に溶接、ろう付け、締結、或いはさもなければ、固定されてもよい)。これに代えて又は加えて、トレイがラックから取り外し可能であってもよい。トレイは、締結具を使用せずにラックに組み付けられ及び/又は固定されてもよい。
【0072】
トレイは、長い寸法及び短い寸法を有してもよい。トレイは、トレイの長い寸法と平行な長い寸法を伴うランナを含んでもよい。トレイは、短い寸法と平行な長い寸法を伴うクロス構造支持部材を有してもよい。トレイは、少なくとも2、3、4、5、6、8、10個又はそれ以上のランナを有してもよい。トレイは、少なくとも1、2、3、4、6、8、10、12、15、20又はそれ以上のクロス構造支持部材を有してもよい。トレイは、ランナよりも多くのクロス構造支持部材を含んでもよい。クロス構造支持部材は、ラック内の電気化学セルに機械的な支持をもたらしてもよい。トレイは、約1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1以下の、長さに対する幅(例えば、長い寸法に対する短い寸法)のアスペクト比を有してもよい。トレイは、約0.1~0.2、0.1~0.3、0.1~0.4、0.1~0.5、0.1~0.6、0.1~0.7、0.1~0.8、0.1~0.9、又は、0.1~1のアスペクト比を有してもよい。一例では、トレイが約0.5以下のアスペクト比を有する。
【0073】
図5A及び
図5Bは、エネルギー貯蔵システムにおけるトレイの拡大図の一例を示す。トレイは、1つ以上のトレイ要素を備えてもよい。
図5Aは、組み立て前のトレイ要素の一例を示す。
図5Bは、組み立て済みのトレイ要素の一例を示す。トレイ要素は、1つ以上のランナ501及び/又はクロス構造支持部材503を含んでもよい。ランナ501は、トレイの1つ以上の辺の長さを延ばしてもよい。一例において、トレイの2つの辺におけるランナ501はそれぞれ、トレイの片の長さを延ばしてもよい。他の例では、トレイのそれぞれの辺におけるランナ501がそれぞれトレイの四辺の長さを延ばす。ラックはレールを備えてもよく、また、トレイのランナがレールに隣接して配置されてもよい(例えば、レールは、レールとランナとの間の接触によって機械的に支持してもよい)。トレイは、ラックのレールとトレイのランナとの間で締結具又は溶接によって所定位置に固定されてもよい。これに代えて又は加えて、トレイのランナ及びラックのレールのうちの1つ以上が同じ要素であってもよく、したがって、トレイがラック内に固定されてもよい(例えば、トレイが取り外し可能でなくてもよい)。ランナ501が1つ以上のスロット502を備えてもよい。各ランナは、少なくとも1、2、3、4、5、6、8、10、12、15、20個又はそれ以上のスロットを備えてもよい。スロット502は、タブ504を受けるように設計又は構成されてもよい。タブ504は、クロス構造支持部材503の1つ以上の側における突出部であってもよい。各クロス構造支持部材503は、少なくとも1、2、3、4、5、6、8、10、12、15、20個又はそれ以上のタブを含んでもよい。これに代えて又は加えて、ランナがタブを備えてもよく、また、クロス構造支持部材が嵌め合いスロットを備えてもよい。個々のタブ504が個々のスロット502に嵌め合わされてもよい(例えば、各タブは、それが挿入される対応するスロットを有してもよい)。タブ504は、様々な形態、形状、及び/又は、サイズを有してもよい。タブ504は、スロット502内に嵌合するように寸法付けられてもよい。タブ504は、スロット502に入ってスロット502と連結してもよい。スロット502及びタブ504は、工具を伴わずにトレイの組み立てを可能にし得る。これに代えて又は加えて、タブ504は、溶接、ろう付け、又は、他の機械的接続を使用してスロット502に接合されてもよい。トレイは、複数のセルを保持するように構成されてもよい。トレイ上のセルの数は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、75、100、125、150、175、200、250、300、400、500以上であってもよい。トレイは、複数のセルを機械的に支持するように構成されてもよく又は機械的に支持してもよい。複数の電気化学セルのうちの1つ以上がトレイ上に配置されてもよい。1つの例では、複数のトレイのうちの1つのトレイが100個の電気化学セルを保持してもよく、また、1つのラックは、該ラックが500個の電気化学セルを保持するように5つのトレイを備えてもよい。他の例では、複数のトレイのうちの1つのトレイが100個の電気化学セルを保持してもよく、1つのラックが5個のトレイを備えてもよく、また、1つの筐体は、該筐体が1000個の電気化学セルを保持するように2つのラックを備えてもよい。
【0074】
トレイ上のセルは、個々の電気化学セル(例えば、セルのハウジング又は他の構成要素)が互いに接触しない(例えば、並列電気接続を形成しない)ように構成されてもよい。セル間の直接的な接続を回避することは、電気化学セル間に隙間が存在するようにセルを少なくとも僅かな距離を隔てて位置決めすることによって可能にされ又は達成されてもよい。例えば、電気化学セル間の隙間は、約0.0625インチ(in)、0.125in、0.25in、0.5in、0.75in、1in以上であってもよい。電気化学セル間の隙間は、約0.0625インチ~0.125インチ、0.0625インチ~0.25インチ、0.0625インチ~0.5インチ、0.0625インチ~0.75インチ、又は、0.0625インチ~1インチであってもよい。これに代えて又は加えて、(例えば、セルが並列電気形態を成さないように)セルを互いに電気的に絶縁するために隣り合う電気化学セルのハウジング間に(例えば、セル間の隙間内に)1つ以上の電気絶縁材料が配置されてもよい。電気絶縁材料は、耐火レンガ、アルミナシリケート、セラミック、ガラス、ガラス繊維、又は、他の電気絶縁材料などの高温(例えば、550℃以上)に耐性があって高温で安定であってもよい。トレイ上に配置される電気化学セルは、1つ以上のセル-トレイ絶縁要素を使用してトレイから電気的に絶縁されてもよい。セル-トレイ絶縁要素は、セラミック材料又は他の耐熱性電気絶縁材料であってもよい。例えば、セル-トレイ絶縁セラミックは、耐火レンガ、アルミナシリケート、セラミック、ガラス、ガラス繊維、又は、任意の他の高温及び電気絶縁材料を備えてもよい。セル-トレイ絶縁要素が平坦な絶縁パネルであってもよい。平坦な絶縁パネルは、トレイ上の個々のセルとトレイとの間、トレイ上のセルの一部とトレイとの間、及び/又は、トレイ上の他の全てのセルとトレイとの間に位置されてもよい。一例において、セル-トレイ絶縁要素は、トレイ上の複数のセルとトレイとの間に配置される層である。セル-トレイ絶縁要素は、1つ以上のセル及び/又はトレイに接合され又は取り付けられてもよい。例えば、セル-トレイ絶縁構成要素は、セル-トレイ絶縁要素を(1又は複数の)セル及び/又はトレイに接合する又は取り付けるための接着材料のコーティング又は他の薄層を備えてもよい。
【0075】
スロット及びタブは、セルレベルトレイアセンブリ、ラック、外部構造、及び、任意の他のシステム構成要素を含むがこれらに限定されない任意の高温金属溶接物用途で使用されてもよい。トレイは、費用効率の高い材料から形成されてもよい。トレイは、取り外し装置がラックに入ることなくトレイを取り外すことができるように端部で二重支持体を使用するように構成されてもよい。トレイは、組み立てが容易であってもよい。スロット及びタブは、切断装置を使用して製造されてもよい。切断装置としては、ハサミ、環状カッタ、ブレード、ブローチ加工、対角プライヤ、ダイヤモンド工具、ダイ、エッジャ、ノコギリ、レーザ、ニッパ、ピンサ、及び、カミソリを挙げることができるが、これらに限定されない。トレイ要素は、オーバーヘッド切断テーブル上で切断されてもよい。その後、タブを形成するべくトレイ要素が曲げられてもよい。切断装置が自動化された装置でなくてもよい。切断装置が自動化された装置であってもよい。切断装置は、他の製造方法と比較して低コストでスロット及びタブを製造できるようにしてもよい。
【0076】
相互接続
電気化学セルは、トレイ上及びトレイ間で直列又は並列に互いに接合されてもよい。直列に接続されるセルは、高電流及び高温定格セル間電気接続部又は(1又は複数の)相互接続部の使用を必要とする場合がある。相互接続部は、電気化学セルの動作温度以上まで空気中で安定である材料から形成されてもよく、また、セルの正端子及び/又は負端子に電気的に接合されてもよい。直列に接続されるセルは、1つのセルの正端子を他のセルの負端子に接続する相互接続部を有してもよい。相互接続部は、セル化学の動作温度(例えば、最大で550℃又は約550℃よりも高い温度)で長期間(例えば、数年)動作すると評価される材料を備えてもよく、また、セル動作温度で十分に高い導電率を有さなければならない。相互接続部は、ニッケル合金(例えば、金属及び合金のためのユニファイドナンバリングシステム(USN)#N 02201 NS)、銅ニッケル-アルミニウム青銅合金(例えば、UNS#C 63000)、アルミニウム黄銅合金(例えば、UNS#68700)、銅合金(UNS#C 95400)、アルミニウム合金(例えば、UNS#A 91100及びUNS#A 93003)を備えてもよい。また、相互接続部は、高い導電率を有するがセル動作温度において空気中で安定しない材料、例えばNiめっき軟鋼を備えてもよい。電気化学セルの動作温度(例えば、約550℃以上)における相互接続部の電気抵抗は、約1×10-3オーム、1×10-4オーム、5×10-5オーム、1.5×10-5オーム、1×10-5オーム、5×10-6オーム、1×10-6オーム、1×10-7オーム、1×10-8オーム以下であってもよい。一例において、動作温度における相互接続部の電気抵抗は、約5×10-5オーム以下である。他の例において、動作温度における相互接続部の電気抵抗は、約1.5×10-5オーム以下である。
【0077】
また、相互接続部は、セル上の正端子又は負端子との導電接続の形成を容易にするための要素を備えてもよい。幾つかの例では、相互接続部がセル端子に直接にろう付け又は溶接される。他の例において、相互接続材料は、セルに対して直接にろう付けする又は溶接することに適合しない場合がある(例えば、相互接続部及びセル端子のために異なる材料を使用することに基づく機械的に弱いろう付け接合部の形成に起因する)。相互接続部は、システムを定格の電力、電流、及び、動作温度で動作させるのに必要な十分な機械的強度及び導電性を伴って一次相互接続材料(例えば、相互接続構成要素の大部分を構成する材料)及びセル端子に結合(例えば、溶接又はろう付け)され得る中間要素を備えてもよい。
【0078】
絶縁
安全で効率的な動作を維持するために、エネルギー貯蔵システムは、ラックと筐体との間に絶縁材料を備えてもよい。絶縁材料が断熱材料であってもよい。絶縁材料は粉末形態を成してもよい。絶縁材料は、ラックと筐体との間の空の容積を満たしてもよい。絶縁材料は、隙間、継ぎ目、又は、接合部を伴わない均質な層を形成してもよい。絶縁材料は、経時的に又は期間中に沈降するので、充填することができる。例えば、ラックがラック外部カバーを備えてもよく、また、絶縁体がラック外部カバーと筐体との間に配置されてもよい。
【0079】
絶縁材料は、シリカ、微孔質シリカ、アルミナシリカ、アルミナシリケート、マグネシア、真空絶縁パネル、シリカエアロゲル、セメント質発泡体、パーライトルーズフィルバーミキュライトルーズフィル、気泡コンクリート、セルラーコンクリート、レンガ、ガラス、流し込みコンクリート、ガラス繊維、及び、鉱物ウール、又は、任意の他の断熱材料を含む、或いは、これらであってもよいが、これらに限定されない。絶縁材料は粉末形態を成してもよい。絶縁材料が粉末の形態を成す場合、粉末中の個々の粒子の粒径(例えば、断面)は、最大で約1センチメートル(cm)、1000マイクロメートル(μm)、500μm、400μm、300μm、200μm、100μm、50μm、10μm、1μm、0.5μm、0.1μm以下であってもよい。粉末絶縁体は、アルミナシリケート、シリカ、又は、高温使用用に設計された他の無機材料から形成されてもよい。粉末絶縁材料は、エネルギー貯蔵システム内の空隙を充填するために使用されてもよい。空隙は、1つ以上のパネルが接続されて1つ以上の絶縁部分(例えば、2つのパネルが出会う継ぎ目或いは他のタイプの絶縁材料によって必要とされる外部層)を形成するときに存在してもよい。他の多くの絶縁材料が絶縁体の隣り合う剛性要素間の継ぎ目又は接合部に開口を残すことができる剛性要素を備え得るため、空隙が存在し得る。
【0080】
エネルギー貯蔵システムは、ラックと筐体との間に1つ以上のパネルを更に備えてもよい。1つ以上のパネルは、1つ以上の絶縁部分を形成するように構成されてもよく、また、電気化学セルを含むシステムの一部に隣り合う特定のゾーンに粉末絶縁体を保持するように設計されてもよい。
図6は、筐体のフロントカバー及びサイドパネルを取り外した状態のエネルギー貯蔵システムの一例を示す。1つ以上のパネル603は、筐体(例えば、筐体の壁)とラック外部カバー又はラック602との間に配置されてもよい。1つ以上のパネル603は、ラック又はラック外部カバー602に取り付けられてもよく又は取り付けられなくてもよい。1つ以上のパネル603は、絶縁体が複数の部分に分割されるように構成されてもよい。絶縁部分は、第1の絶縁部分605、第2の絶縁部分606、及び、第3の絶縁部分607を備えてもよい。絶縁ゾーン分離パネル(
図6には示されない)は、第1の絶縁部分605と第2の絶縁部分606との間に位置されてもよい。第1の絶縁部分605は、ラック及び/又はラック外部カバーを取り囲んでセルの壁及び上端を絶縁してもよい。第1の絶縁部分605が最初に充填されてもよい(例えば、配置前に又は配置場所で)。一例において、第1の絶縁部分605は、セルが設置される前に充填されてもよい。第2の絶縁部分606は、ラックの後部に「トンネル」を備えてもよい。第2の絶縁部分606は、バスバー、ワイヤ、感知リード線、冷却管、及び、アルゴンパージ管の周囲で絶縁してもよい。絶縁材料は、第2の絶縁部分606内のこれらの構成要素の周囲の全ての空隙及びエアポケットで充填してもよい。第2の絶縁部分606は、第1の絶縁部分が充填された後に充填されてもよい。保守又は修理中、小さな「トンネル」容積が空にされてもよく、一方、絶縁体の残りの部分が空にされなくてもよい。次に、全てのセルが設置された後に第3の絶縁部分607が充填されてもよい。筐体フロントカバーを閉じた後、筐体の前面付近の(例えば、筐体フロントカバーに隣接する)ポート604を通じて絶縁材料が充填されてもよい。
【0081】
絶縁材料が1つ以上の絶縁部分に配置されてもよい。1つ以上の絶縁部分が絶縁材料で充填されてもよい。幾つかの絶縁部分には、システム配置前に絶縁材料が充填されてもよい。システムが配置場所に設置された後に、セル又はワイヤの設置のためにアクセスが必要な幾つかの絶縁部分に絶縁材料を充填することができる。絶縁材料は、筐体601の上端の複数のポート604を通じて充填されてもよい。絶縁材料は、任意の空隙を完全に満たしてもよく、及び/又は、空気空間に取って代わってもよい。誘導振動又は撹拌を使用して、絶縁材料が適切に沈降できるようにしてもよい。絶縁材料は、真空吸引によってシステムから容易に除去できるとともに、システム全体を再設置する必要なく熱特性が経時的に低下する場合には新しい絶縁材料と交換することができる。
【0082】
絶縁材料は、複数の方法によって1つ以上の絶縁部分に配置され得る。方法は、絶縁材料を絶縁部分に注入することを含んでもよい。絶縁材料は、機器の1つ以上の一部分を介して1つ以上の絶縁部分に配置され得る。機器の1つ以上の一部分は、重量フィーダ、貯蔵容器、ミキサ、ブレンダ、スクリーナ、クラッシャ、グラインダ、包装機、又は、任意の他の処理機器であってもよい。エネルギー貯蔵システムから絶縁材料を除去するために、標準的な「工場真空」、工業用真空、又は、同様の機器が使用されてもよい。冷却を補助するために、更なる絶縁部分が導入されてもよい。総絶縁厚を減少させて冷却速度を増大させることによって冷却を支援するために選択された絶縁部分が空にされてもよい。
【0083】
エネルギー貯蔵システムは、容器の高温ゾーン(例えば、セルが位置される場所)から断熱される制御室を含むように設計されてもよい。制御室は、断熱された電子機器区画室であってもよい。断熱電子機器区画室は、筐体及び/又はラックの内部又は外部に配置されてもよい。制御室は、1つ以上の制御システム、電子機器(例えば、バッテリ管理システム、ヒータコントローラ)、電気部品(例えば、高温-低温検知/平衡化ワイヤ及びバスバー移行部、AC分配、回路パネル、AC及びDC切断、ヒューズ)、通信装置、及び、他の装置(例えば、視覚的インジケータ、安全構成要素)を備えてもよい。制御室は、外部環境及び/又は空調と空気を交換するためにファンを使用して熱的に制御されてもよい。
【0084】
ラック及び/又はラック外部カバー(又はその任意の部分)は、1つ以上のパネルと接続するように構成されてもよい。ラック及び/又はラック外部カバーは、1つ以上のパネル装着のための拘束場所又は抑止場所としての役目を果たし得る1つ以上の特定の領域又は部分を備えてもよい。1つ以上のパネルは、ラック(又はその任意の部分)に恒久的に接続(例えば、溶接又は結合)され得る剛性金属接続部を介してラック及び/又はラック外部カバーに取り付けられてもよい。1つ以上のパネルは、(例えば、サービスアクセス又は定期的な交換を容易にするために)接続ポイントが取り外し可能又は交換可能となり得るようにラック及び/又はラック外部カバーに接続されてもよい。1つ以上のパネルは、アセンブリの絶縁領域がアセンブリの断熱領域(例えば、システムの熱的に維持されたゾーン)とアセンブリの非断熱領域及び/又は周囲環境との間に直接的な熱経路を形成し得ないようにラック及び/又はラック外部カバーに組み付けられてもよい。
【0085】
ラックは、筐体内の1つ以上の絶縁基板上に配置されてもよい。絶縁基板は、様々な形態、形状、及び/又は、サイズを有してもよい。想定し得る形状又は形態の例としては、数学的形状(例えば、円形、三角形、正方形、長方形、五角形、又は、六角形)、二次元幾何学的形状、多次元幾何学的形状、曲線、多角形、多面体、他の幾何学的形状、又は、部分的形状、或いは、これらの形状の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。絶縁基板の数は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上であってもよい。絶縁基板は、筐体内に嵌合するように寸法付けられてもよい。絶縁基板の材料は、真空絶縁パネル、ケイ酸カルシウム、セメント結合ケイ酸カルシウム、セメント結合無機ケイ酸塩、シリカエアロゲル、高密度ガラス繊維バット、岩石、岩石及びスラグウールルーズフィル、セメント系発泡体、パーライトルーズフィル、ガラス繊維剛性パネル、バーミキュライトルーズフィル、曝気コンクリート、気泡コンクリート、レンガ、ガラス、流し込みコンクリート、ガラス繊維、鉱物ウール、セルロース、ポリウレタンフォーム、ポリスチレン、又は、それらの任意の組み合わせであってもよいが、これらに限定されない。
【0086】
絶縁材料は、ラック及び/又はラック外部カバーを取り囲んでもよく、及び/又は、(1又は複数の)流体流チャネルの内側に設けられてもよい。絶縁材料が電気化学セルを取り囲んでもよい。流体流チャネルの内側の絶縁材料は、熱伝達流体と流体流チャネルの1つ以上の構造部分との間に絶縁材料を与えることができる。絶縁体は、システムの熱管理を容易にするように分配され得る。(例えば、加熱ゾーン又はその近傍の)システム/装置及び/又はラックの中心又はその近傍の(例えば、中心に対向する)絶縁材料の量(例えば、体積、質量、厚さ、総絶縁能力など)は、(例えば、加熱ゾーン又はその近傍ではない、或いは、中心から離れる方向を向く)システム/装置及び/又はラックの周辺又はその近傍の絶縁材料の量より少なくてもよい。例えば、システムは、システム内の所定の位置からの熱の除去に役立つように流体流路の少なくとも一部に沿って絶縁体を備えてもよい。任意の所与の部分に沿う絶縁体の量は、位置にしたがって変化し得る。例えば、加熱ゾーンに近接する又は隣り合う位置に、最小量の絶縁体が設けられてもよい。
【0087】
絶縁材料を使用して、セルからの熱の損失を防止してもよい(例えば、セルの充電又は放電から熱が発生されていないときに金属電極を溶融状態に保つため)。絶縁材料は、セルが非動作状態であるとき及び/又はヒータを介して追加の加熱電力が供給されないときに所与の期間(例えば、有限期間、例えば、少なくとも約30分、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、18時間、24時間、2日間、5日間、10日間、20日間、1ヶ月間、又はそれ以上など)にわたってセルを動作温度以上に維持するように設計されてもよい。
【0088】
絶縁材料は、通常は/定期的に動作されるときに(例えば、2日ごとに少なくとも1回サイクルされるときに又はそのエネルギー容量の少なくとも50%が少なくとも2日ごとに放電される状態で)システムを(例えば、完全に)自己加熱できるようにしてもよい。例えば、絶縁材料は、2日ごとに少なくとも1回充電及び放電(又はサイクル)されるときにシステムが自己加熱形態で連続的に動作できるようにしてもよい。幾つかの例において、通常の/定期的な動作は、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、12時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月又はそれ以上ごとに少なくとも1回のサイクリング(そのような動作に関連する充電/放電メトリックの一例)を含んでもよい。
【0089】
エネルギー貯蔵装置又はシステムの構成要素(例えば、電気化学セル、セルのグループ、及び、1つ以上のラック)の少なくとも一部は、絶縁材料境界を介してエネルギー貯蔵装置又はシステムの他の室温構成要素から断熱されてもよい。絶縁材料は、熱境界(例えば、(1又は複数の)熱障壁を備える熱境界)の一方側をセル動作に適した(例えば、必要とされる)温度以上に維持できるようにする(1又は複数の)熱障壁を画定するのに役立つことができ(例えば、高温ゾーン)、一方、熱境界の他方側は、室温又は周囲温度条件により近い状態に維持され得る(例えば、低温ゾーン)。
【0090】
絶縁材料は、熱伝達のための高インピーダンス(本明細書では「熱インピーダンス」とも称される)を伴う材料を備えてもよい。そのような材料は、それらが高温ゾーン(本明細書では「高温ゾーン」とも称される)の周囲でパッケージングされ得るように、シート、タイル、ラップ、テープ、又は、他の(例えば、類似の)形状因子内にパッケージングされてもよい。異なる絶縁材料が同じエネルギー貯蔵システムで使用されてもよい。例えば、1つの絶縁部分は、第1の熱インピーダンスを伴う断熱材を利用してもよく、また、他の絶縁部分は、1つ以上の異なる熱インピーダンス(例えば、第2の熱インピーダンス、第3の熱インピーダンスなど)を伴う材料を備えてもよい。絶縁材料は、構成要素のセット又はパッケージを備えてもよい。幾つかの例では、取り外し可能及び/又は交換可能な構成要素(例えば、タイル)が絶縁材料層に組み込まれてもよい。絶縁材料は、(例えば、断熱材の内側の)電気化学セルを(例えば、断熱材の外側の)エネルギー貯蔵システム内の他の構成要素に接続するために本明細書では総称して「接続部」と称されるワイヤ、センサ、及び/又は、高電流/電圧(例えば、セル電流又は電圧)接続部が通過できる専用の領域、部分、又は、入口及び出口(例えば、貫通部)を有してもよい。例えば、貫通部は、管理/制御システムと通信するワイヤ及び/又はセンサを支持してもよい。そのようなセンサは、例えば、システムの高温ゾーン内に配置される又はシステムの高温ゾーンと熱的に通じる1つ以上の温度センサを含んでもよい。幾つかの例では、貫通部が電圧(例えば、低電流)感知ワイヤを支持する。電圧感知ワイヤは、少量の電流(例えば、約10ミリアンペア(mA)未満又は約1mA未満)を扱う(例えば、それに耐える)ように設計されてもよい。貫通部は、電圧感知ワイヤ及び/又はセルへ/セルからの電流を分配するためのワイヤを支持する。貫通部は、バスバーに対して高電流及び/又は高電圧ワイヤを支持する。貫通部は、例えば、円形、長方形、正方形、楕円形、又は、多角形の断面を有してもよい。そのような貫通部は、約0.0001平方センチメートル(cm2)より大きい、約0.001cm2より大きい、約0.01cm2より大きい、約0.1cm2より大きい、約1cm2より大きい、又は、約10cm2よりも大きい断面積を有してもよい)。
【0091】
貫通部は、それを通じた過剰な熱損失を制限又は防止するために熱的に効率が良くてもよい。場合によっては、貫通部には、システムの高温ゾーンから他の低温領域(例えば、1つ以上の低温ゾーン)への熱伝達を制限する又は減少させるために高い熱インピーダンスを伴う(1又は複数の)材料が充填され得る。充填材料は、均質(例えば、1つの材料が貫通部全体を満たす)又は不均質(例えば、2つ以上の異なる材料が1つの貫通部で充填材として使用される)であってもよい。貫通部は、貫通部を通じた熱伝達を制限する又は減少させることができる1つ以上のプラグ及び/又は1つ以上のエンドキャップを備えることができる。(1又は複数の)プラグ及び/又は(1又は複数の)エンドキャップは、貫通部構造内に高い熱インピーダンスを伴う材料を封入してもよい。貫通部構造全体は、タイル(又は、シート、ラップ、テープなど)をサービス又は修理の一環として貫通部と共に取り外すことができるように絶縁材料のタイル(又は、シート、ラップ、テープなど)に装着され得る。
【0092】
貫通部を通過するワイヤは、例えば、ニッケル、アルミニウム、青銅、真鍮、ステンレス鋼、又は、それらの任意の組み合わせなどの特殊な材料(例えば、システムの動作温度以上で安定な材料、耐酸化性材料、システムの動作温度で適切な(例えば、十分な及び/又は高い)電気伝導率を有する材料)を備えてもよい。そのような材料は、ワイヤ上の熱誘起腐食を制限して又は減少させてもよい。貫通部内のワイヤは、より高い温度で安定な材料から、より導電性が高いが熱的に安定性が低い材料(例えば、銅)へと(例えば、順次に)移行してもよい。貫通部内のワイヤは、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、25、30又はそれ以上の異なる部分を備えてもよい。これらの部分は、異なる材料を備えてもよい。これらの部分は、一体的に形成されてもよく、又は、互いに接合(例えば、溶接)されて複合ワイヤを形成してもよい。場合によっては、材料は、高温側に隣接する貫通部の領域において最も高い熱安定性(場合によっては、より低い導電率)を伴う材料から、低温側に隣接する領域において最も高い導電率(場合によっては、より低い熱安定性)を伴う材料への順序で、配置されてもよい。
【0093】
貫通部は、貫通部構造に組み込まれる(例えば、貫通部構造と一体形成される)ワイヤを備えてもよい。場合によっては、システム内の異なる貫通部は、ワイヤ長さ、貫通部内のワイヤの位置、及び/又は、ワイヤ間の間隔が異なる貫通部に関して同じであるように設計されてもよい。場合によっては、貫通部は、貫通部内で浮いているワイヤを備えてもよい。場合によっては、ワイヤは、該ワイヤがシステムの高温(例えば、熱い)ゾーンと低温(例えば、冷えた/涼しい室温)ゾーンとの間に直線接続部を形成しないように高熱インピーダンス材料で鋳造又は設定されてもよい。このようにして経路付けられたワイヤは、該ワイヤが貫通部内の熱インピーダンス材料の異種層を通って移動するときにワイヤによって伝導された熱エネルギーを放出できるようにするべく貫通部内に組み込まれる余分な長さを有してもよい。ワイヤの(実際の)長さは、例えば、高温ゾーンから低温ゾーンまでの距離(例えば、貫通部の長さ)の少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約50倍、又は、少なくとも約100倍大きくてもよい。これは、ワイヤを電子機器と容易に及び/又は安全に相互接続すること、及び/又は、システムサービスアクセス/タッチを安全にすることを助けることができる。
【0094】
エネルギー貯蔵システムが1つ以上の絶縁構成要素を備えてもよい。絶縁材料が粉状形態を成す場合、絶縁構成要素は、粉末が小さな隙間を通って流れることができないように及び/又は電気化学セルを取り囲んでセルの取り外し及び交換を困難にし得ることがないように粉状絶縁材料を詰め込むように構成されてもよい。絶縁構成要素がチューブガスケットであってもよい。エネルギー貯蔵システムのラックは、1つ以上のチューブガスケットによってシールされてもよい。
図7は、チューブガスケット密閉ラックの一例を示す。1つ以上のパネル701がラック702に接続されてもよい。絶縁材料が1つ以上のパネル701によって取り囲まれる絶縁部分の内側に収容されてもよい。絶縁材料は粉末形態を成してもよい。1つ又は1つ以上のパネル701が薄いシートメタルスキンであってもよい。1つ以上のパネルが薄いシートメタルスキンである場合、メタルスキンは、完全なシーム溶接ではなく曲げられた特徴及びリブを使用してラックに取り付けられてもよい。ラックの内部では、絶縁材料が全ての隙間を満たさない場合があり、大きなコスト削減のために幾らかの漏れが許容され得る。1つ以上のパネル701が取り外し可能であってもよい。取り外し可能なパネルがある場合はいつでも、チューブガスケット703を使用することができる。チューブガスケットは、絶縁織布及び絶縁材料で形成されてもよい。絶縁織布は、端部が圧着されたチューブ形状構成要素を形成するために使用されてもよい。チューブ形状構成要素に絶縁材料が充填されてもよい。絶縁材料は粉末形態を成してもよい。チューブガスケット703は、必要なときに容易なアクセスを可能にしつつラックを取り囲む粉末絶縁体からラックの内側(セルのトレイが位置される場所)を「シール」するために使用されてもよい。また、ラック702がラックフロントカバー704を備えてもよい。ラックフロントカバー704は、ラック及びトレイをシールするように構成されてもよい。ラックフロントカバー704は、上端から吊り下げられる薄壁のドアであってもよい。ラックフロントカバー704は、チューブガスケット703を押し下げてラックを覆ってもよい。
【0095】
本明細書中に開示されるエネルギー貯蔵システムは、より良好な熱効率、システム又は運用コストにおける想定し得る低減、設置の容易さ、取り外しの容易さ、保守の容易さ、特定の領域の選択的充填、及び/又は、領域から粉末を選択的に除去することによって冷却を加速するためのシステムの動的に変化する熱特性を達成することができる。
【0096】
加熱システム
ラックは、複数の電気化学セルに熱エネルギーを供給するための1つ以上のヒータを備えてもよい。加熱は、例えば、電源(例えば、電力網を介した発電機、バックアップバッテリシステム、ディーゼル発電機などのオンサイト発電機、風力タービン又は太陽光発電システムなどの再生可能発電機)からの電気エネルギーを変換する電気抵抗ヒータなどの任意の形態のヒータを使用して達成されてもよい。充電、放電、及び/又は、休止動作モード中、或いは、長時間の休止期間中、又は、バッテリがその規則的な(又は通常の)又は意図された動作電力定格を下回る電力定格で充電及び/又は放電される期間中にシステムの温度を管理するために、システムが加熱された後にシステムに対して加熱を行なうこともできる。バッテリがその動作温度にある又はその動作温度に近い又はそれを上回るとき、バッテリは、バッテリ内に貯蔵されたエネルギーから電力を供給することによって動作温度を維持してもよい(例えば、バッテリがそのエネルギーをヒータに放電してもよい)。バッテリ絶縁体は、加熱された時点で、アイドリング時(例えば、バッテリが充電又は放電していないとき)にバッテリが熱を(例えば、バッテリの熱チャンバ内で)保持するように設計され得る。しかしながら、動作中、熱チャンバは、場合によっては過熱する場合がある。サイクル期間中(例えば、バッテリが充電中及び/又は放電中であるとき)に装置の温度(例えば、装置チャンバ又は容器内の温度)を調整するために、熱管理システムを使用することができる。セル構成要素は動作のために熱を必要とする場合があるため、システムは、所与の(例えば、最適な)熱境界を維持するのに役立つべく1つ以上の熱管理流体の自然な又は強制的な移動のための(1又は複数の)機構を備えつつ、セル及び/又はセルのグループが可能な限り多くの熱を捕捉して保持するために過剰に断熱されるように構成されてもよい。(1又は複数の)機構が、起動されて、システムの信頼性、性能のロバスト性、及び、高効率動作を向上できるようにする。(1又は複数の)冷却機構は、起動された受動冷却(例えば、通気口/対流チャネルを開き、通気口/弁を開いて、自然対流がシステムを冷却できるようにすること)を含んでもよい。(1又は複数の)冷却機構は、能動冷却(例えば、熱管理流体の流れを開始又は増大させること)を含んでもよい。冷却機構は、起動された受動冷却と能動冷却との組み合わせを備えてもよい。
【0097】
エネルギー貯蔵システムが1つ以上のヒータを備えてもよい。ヒータは、加熱要素又は加熱コイルなどの抵抗ヒータであってもよい。ヒータは、ラック上に、ラック上で絶縁体に隣接して、熱損失が最も高い位置付近(例えば、貫通部を伴う部分の近く)のラック上の場所に、ラック内のトレイ付近に位置されてもよく、ラックの構造要素に接合されてもよく、或いは、ラック外部カバーに接合されてもよい。エネルギー貯蔵システムは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、50又は100個のヒータを備えてもよい。ヒータは、ラック、ラック外部カバー、トレイ、又は、エネルギー貯蔵システムの他の部分に組み込まれてもよい。ヒータは、電気化学セル、ラック、トレイ、及び/又は、ラック外部カバーに隣接することを含めて、加熱ゾーン全体にわたって分布されてもよい。ヒータは、個別にアドレス可能であってもよく(例えば、独立して動作されてもよく)、又は、グループとしてアドレスされてもよい(例えば、グループとして動作されてもよい)。一例では、ヒータのブロックが独立してアドレス可能である(例えば、ヒータの部分がグループとして制御される)。ヒータは、1つ以上の熱電対と関連付けられてもよい。ヒータは、熱電対によって測定される温度が変化するにつれてヒータがオン又はオフするように熱電対と通信してもよい。個々のヒータが個々の熱電対と関連付けられてもよい。これに代えて又は加えて、個々のヒータが複数の熱電対と関連付けられてもよく、或いは、個々の熱電対が複数のヒータと関連付けられてもよい。熱電対は、加熱ゾーン全体にわたって分配されてもよく、また、ラック、トレイ、及び/又は、電気化学セルに隣接して配置されてもよい。
【0098】
エネルギー貯蔵システムは、ヒータ及び/又は熱電対の簡単な取り外し、保守、及び/又は、交換を可能にするように設計されてもよい。ヒータ及び/又は熱電対の取り外し、保守、及び/又は、交換は、システムが動作温度付近にある間に行なわれてもよい。ヒータ及び/又は熱電対の取り外し、保守、及び/又は、交換は、システムを周囲温度付近まで冷却することなく行なわれてもよい。システムからトレイ及び/又は電気化学セルを取り外すことなく、ヒータ及び/又は熱電対の取り外し、保守、及び/又は、交換が行なわれてもよい。一例では、絶縁体の1つ以上の部分が除去されてもよく、また、ヒータ及び熱電対が絶縁を伴うことなくこれらの部分から保守点検されてもよい。
【0099】
図8は、ヒータの一部の一例を示す。ヒータ801が絶縁壁802を備えてもよい。絶縁壁802は、耐火レンガ(例えば、ケイ酸塩、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、石灰又はマグネシアを含む)から形成されてもよい。また、ヒータが1つ以上のヒータコイル803を備えてもよい。耐火レンガは、ヒータコイル803を支持するために使用されてもよい。例えば、絶縁体又は絶縁物が1つ以上の溝又はチャネルを備えてもよい。溝又はチャネルは、1つ以上の加熱ワイヤを保持するように構成されてもよい。膨張に起因して、耐火レンガは、熱コイルに作用する応力を強制的に解くことなくヒータコイルの動きを保持するためのチャネルとして機能することができる。ヒータコイルは、1つ以上の装着ワイヤ804によって固定されてもよい。装着ワイヤ804が金属クリップであってもよい。ヒータコイルがその間を移動できるようにするべく、装着ワイヤ804は、少なくとも約0.1インチ、1インチ、2インチ、3インチ、4インチ、5インチ、6インチ、7インチ、8インチ、9インチ、10インチ、11インチ、12インチ又はそれ以上おきに離間されてもよい。ヒータコイルは、温度勾配を調整するために必要な特定の位置、並びに、高出力加熱システムを対象としてもよい。ヒータコイルは、(貫通部を通じた)真っ直ぐでない(例えば、ジグザグの、スパイラル状の、又は、螺旋状の)パターン又は経路を有してもよい。1つ以上のヒータコイルを通じて伝導される熱の速度は、(1又は複数の)ヒータコイルの断面積、(1又は複数の)ヒータコイルの(1又は複数の)材料の熱伝導率又は電気伝導率、及び、(1又は複数の)ヒータコイルの長さの逆数のうちの1つ以上に関連付けられ又は依存してもよい。場合によっては、断面積を更に縮小すると、破断及び/又は酸化を受けやすい機械的に脆弱なヒータコイルワイヤがもたらされ得る。ヒータコイルは、例えば、ラックから絶縁材料又は低温ゾーンまでの円形の幾何学的経路で螺旋状になるワイヤなどの螺旋コイルを成して構成されてもよい。螺旋構造の軸は、ラックから絶縁材料又は低温ゾーンまでの熱流路の方向とおおよそ平行(例えば、実質的に平行)となり得る。ヒータコイルは、例えば、楕円形、正方形、長方形、多角形、及び/又は、他の断面形状を有する螺旋型形状などの他の形状を成して構成されてもよい。
【0100】
図9は、
図8のヒータの一部の側面図の一例を示す。装着ワイヤ903は、一端901で絶縁壁902に鋳造又は接着されて、設置中に曲げられてもよい。ヒータが1つ以上のラックの周りに配置されてもよい。ヒータがラックの周りに配置されてもよい。
図10は、ラックの周りに配置されたヒータの一例を示す。ヒータは、ラック1002の周囲に配置されてもよい。ヒータは、ラック外部カバー1001の周囲に配置されてもよい。絶縁材料1003がヒータの近傍に配置されてもよい。ヒータは、ヒータコイルを電気化学セル及びラックの外側スキンの両方から絶縁された状態に保つためにいずれも高電圧AC絶縁材料としての機能を果たすことができる。
【0101】
サーマルバラスト
電気化学セル及び/又はエネルギー貯蔵システムの熱特性及び動作条件(例えば、動作の周波数及び持続時間、電力使用プロファイル)は、セルを動作温度ウィンドウ内に維持することを困難にする場合がある。幾つかの例において、システムは、サーマルバラストなどの大量の熱エネルギーを保持又は吸収するのに役立つ要素を含むように設計されてもよい。サーマルバラストは、システムの動作温度又はその付近で大量の熱エネルギーを保持又は吸収することができ、それにより、システムを能動的に冷却又は加熱することなく、システムをより狭い動作温度ウィンドウ内に保つことができる。そのようなサーマルバラストは、セルの動作温度ウィンドウの下端又はその付近で相変化(例えば、凍結又は融解)を受ける材料の使用を伴ってもよい。したがって、セルが相変化温度(例えば、液体の凝固点)以下の温度まで冷却し始める場合、サーマルバラストは、熱を放出して、材料の相変化温度又はその付近の温度を維持するのに役立ち、したがって、セルを最小動作温度又はそれを超える温度に維持することができる。同様に、サーマルバラストは、セルの最大動作温度に近い又はそれよりも僅かに低い相変化温度(例えば、融点)を有してもよく、また、(例えば、セルが動作されている態様に起因して)セルが加熱する場合、サーマルバラストは相変化(例えば、溶融)を受けて熱を吸収し、それにより、セルの温度を許容可能な動作温度範囲内に維持することができる。サーマルバラストは、非共晶塩混合物など、相変化が起こり得る範囲を有してもよく、それにより、サーマルバラストは、所定の温度範囲にわたって熱を連続的に放出する又は吸収する。一例において、温度範囲は、セルの動作範囲と完全に又は部分的に重なり合ってもよい。サーマルバラスト(例えば、非共晶塩混合物)は、セルの上側の動作温度付近で液体であってもよい。サーマルバラストは、動作温度が上側の動作温度未満まで低下されると、少なくとも部分的に凍結して二相混合物を形成し得る。サーマルバラストは、セルの下側の動作温度付近で固体であってもよい。電気化学セルの下側の動作温度は、サーマルバラストの共晶融点と一致し得る。
【0102】
サーマルバラストは、単位質量当たり大量のエネルギーを印加すると相転移を起こす材料を備えてもよい。サーマルバラストの材料の相転移をもたらす単位質量当たりのエネルギーは、約10ジュール/グラム(J/g)、20J/g、50J/g、100J/g、200J/g、500J/g、1000J/g以上であってもよい。相変化材料は、塩化マグネシウム(MgCl2)、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化リチウム(LiCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、炭酸リチウム(Li2CO3)、又は、炭酸カルシウム(CaCO3)などの塩化物、臭化物、水酸化物、炭酸塩を含む1つ以上の塩の組み合わせであってもよい。
【0103】
サーマルバラストは、システム内のシール要素内に保持されてもよい。シール要素は、システム内の他の機能を果たすこともできる。幾つかの例において、トレイ又はラックの構造要素は、サーマルバラスト材料が内部に保持されてシールされるシール要素としても機能し得る。これに代えて又は加えて、サーマルバラストを備えるシール要素は、1つ以上の位置でラックに隣接して配置されてもよい。例えば、シール要素は、ラック又はトレイの1つ以上の構造要素(例えば、ランナ、レール、及び/又は、クロス構造部材)に隣接して配置されてもよい。
【0104】
安全機能
エネルギー貯蔵システムは、エネルギー貯蔵システム内の1つ以上の構成要素の不具合の場合に機器への潜在的な損害、傷害、又は、損傷のリスクを低減するための安全機能を備えてもよい。安全機能としては、手動又は遠隔アクセス可能なAC及び/又はDC切断スイッチ、容器の外側から高温ゾーン(例えば、セルが位置される場所)の内側への流体流路をもたらす(1又は複数の)外部ポート、煙又は他の有害ガス(水素を含む)の漏れを許容するための容器の上端の通気ポート、及び/又は、電気的な、熱的な、又は、他の危険を検出してエネルギー貯蔵システムの電気的、熱的、及び/又は、化学的危険を低減するための措置を講じるように設計される制御システムのうちの1つ以上を挙げることができる。手動又は遠隔アクセス可能な切断スイッチは、エネルギー貯蔵装置が電気エネルギーを充電又は放電するのを防ぐためにエネルギー貯蔵装置を送電網又は任意の他の電気エネルギー源から切断できるようにしてもよい。(1又は複数の)外部ポートは、水又は他の流体が筐体に入ることができるようにする流体流路をもたらしてもよい。水又は他の流体は、例えば破裂又は1つ以上の電気化学セルの場合に、筐体内で反応が起こるのを低減、防止、又は、停止してもよい。流体は、水又は火災抑制液、泡、又は、ゲルを含んでもよい。エネルギー貯蔵システムは、少なくとも1、2、3、4、5、6、8、10、1、15、20個又はそれ以上の(1又は複数の)外部ポートを含んでもよい。ポートは、火災、熱、発煙、又は、他の危険な事象の場合に、消防ホース又は他の水又は流体の供給源に接続可能であってもよい。エネルギー貯蔵システムは、少なくとも1、2、3、4、5、6、8、10、1、15、20個又はそれ以上の(1又は複数の)通気ポートを備えてもよい。通気ポートは、破裂ディスク及び/又は断熱プラグを含んでもよい。破裂ディスクは、システムの圧力が圧力閾値を下回るときに通気孔をシールでき、また、システムの圧力が圧力閾値を上回るときに破裂し得る。圧力閾値(例えば、システム内の相対圧力対周囲空気圧)は、約5気圧(atm)、4atm、3atm、2atm、1.5atm、1atm、0.5atm、0.25atm、0.1atm、0.05atm、0.01atm以下であってもよい。一例において、破裂ディスクは、システムの圧力が約0.1気圧を超えるときに破裂し得る。(1又は複数の)通気ポートは、通常動作中に熱損失を最小化及び/又は防止するために断熱体を更に備えてもよい。制御システムは、システム内の電気接続を自動的に切断し、熱流体流路に接続された送風機を自動的にオンにしてシステムを冷却し、及び/又は、システムの充電又は放電を停止し或いは充電又は放電の速度を制限してもよい。
【0105】
また、エネルギー貯蔵システムは、システムの内部温度の表示を与える又はシステムがライブ電気ハザード(例えば、AC又はDC電気ハザード)を有するかどうかを示す温度センサ又はインジケータなどの故障耐性安全インジケータを備えてもよい。故障耐性安全インジケータは、グリッド又はバッテリによって供給される電力を使用しなくてもよい(例えば、インジケータは自己完結型であってもよく及び独立したエネルギー源を備えてもよい)。システムは、単一のタイプの安全インジケータ(例えば、温度センサ)を含んでもよく又は複数のタイプの安全インジケータを含んでもよい。システムは、冗長安全インジケータを含んでもよい。
【0106】
また、エネルギー貯蔵システムが換気・濾過システムを備えてもよい。換気・濾過システムは、特定の条件が満たされるときにエネルギー貯蔵システムを換気する(例えば、エネルギー貯蔵システムから空気を放出する又はエネルギー貯蔵システムを通じて空気をリサイクルする)ように構成されてもよい。例えば、換気・濾過システムは、エネルギー貯蔵システムの温度が閾値温度を超えるときにエネルギー貯蔵システムを換気してもよい。閾値温度は、少なくとも約200℃、250℃、300℃、350℃、400℃、450℃、500℃、550℃、600℃又はそれ以上であってもよい。これに加えて又は代えて、換気・濾過システムは、セルの破損時にエネルギー貯蔵システムを換気してもよい。セル破損の場合、セルから放出される塩蒸気(例えば、MgCl2、CaCl2、LiCl、NaCl、KCl)は、大気水蒸気及び酸素と反応して、有害な塩化水素又は塩素ガスを形成し得る。換気・濾過システムは、そのようなガスを除去する又はそのようなガスの濃度を低減することができ、それにより、オペレータがそのようなガスに晒されるリスクを低減する。換気・濾過システムは、エネルギー貯蔵システムから放出される任意の空気が濾過されるように、セルとエネルギー貯蔵システムの通気ポートとの間に配置されてもよい。エネルギー貯蔵システムは、停電時に換気システムに電力を供給するように構成されるバックアップバッテリを備えてもよい。
【0107】
濾過システムが1つ以上のブロアファンを備えてもよい。ブロアファンは、セルの近傍の空気を濾過システムに押し込んでもよい。また、ブロワファンは、空気を濾過システムからエネルギー貯蔵システムの通気ポートへと押し出し、そこで空気がその後にエネルギー貯蔵システムから排出されてもよい。場合によっては、ブロワファンは、高温の濾過された空気をエネルギー貯蔵システムから取り出して新鮮な空気を環境からエネルギー貯蔵システムへと循環させるように構成されてもよい。
【0108】
濾過システムの濾過部分が活性炭フィルタを備えてもよい。活性炭フィルタには、例えば、水酸化カリウム、ヨウ化カリウム等の酸及び塩素中和化合物が含浸されてもよい。また、濾過システムが高効率微粒子吸収(HEPA)フィルタを備えてもよい。HEPAフィルタは、破損中にセルから放出される蒸気中の固体粒子を濾過するランダムに配置された繊維(例えば、ガラス繊維)のマットから形成されてもよい。
【0109】
輸送及び現場設置
エネルギー貯蔵システムは、簡単な現場設置を容易にする設計上の特徴を含んでもよい。エネルギー貯蔵システムは、道路、鉄道、又は、海を介してより容易に輸送できるように重量が約30メートルトン未満になるように設計されてもよい。エネルギー貯蔵システムは、その構成要素のいずれにも機械的/振動的損傷を引き起こすことなくエネルギー貯蔵システムを輸送できるように恒久的又は取り外し可能な機構を伴って設計されてもよい。システムは、筐体が供給されて設置された後に現場に設置されるべき電子機器、(1又は複数の)ラック、絶縁体、及び/又は、トレイなどの特定の敏感な構成要素を有するように設計されてもよい。
【0110】
また、エネルギー貯蔵システムは、コンクリートスラブ、砂利の平らな層などの事前に準備された表面上に配置されるように設計されてもよい。事前に準備された表面は、顧客サイトでのシステムの簡単な設置及び試運転を容易にするために、電気配線又は他の態様を含んでもよい。
【0111】
筐体は、クレーン又はフォークリフトを使用して筐体を輸送容器から持ち上げることができるようにするべく、筐体の上端、側部、及び/又は、底部付近の機械的接続部など、筐体を輸送容器(例えば、輸送トラック、輸送船、又は、列車)から持ち上げることができるようにする機構を有するように設計されてもよい。
【0112】
コンピュータシステム
本開示は、本開示の方法を実施するようにプログラムされるコンピュータシステムを提供する。
図11は、エネルギー貯蔵システムを制御するようにプログラムされる或いはさもなければ構成されるコンピュータシステム1101を示す。コンピュータシステム1101は、例えば、エネルギー貯蔵システムの動作時間、電力、及び/又は、温度など、本開示のエネルギー貯蔵システムの様々な態様を調整することができる。コンピュータシステム1101は、ユーザの電子デバイス又は電子デバイスに対して遠隔に配置されたコンピュータシステムとなり得る。電子デバイスは、モバイル電子デバイスとなり得る。
【0113】
コンピュータシステム1101は、シングルコア又はマルチコアプロセッサ、或いは、並列処理のための複数のプロセッサとなり得る中央処理ユニット(CPU、本明細書では「プロセッサ」及び「コンピュータプロセッサ」でもある)1105を含む。また、コンピュータシステム1101は、メモリ又は記憶場所1110(例えば、ランダムアクセスメモリ、リードオンリーメモリ、フラッシュメモリ)、電子ストレージユニット1115(例えば、ハードディスク)、1つ以上の他のシステムと通信するための通信インタフェース1120(例えば、ネットワークアダプタ)、及び、キャッシュ、他のメモリ、データストレージ、及び/又は、電子ディスプレイアダプタなどの周辺機器1125も含む。メモリ1110、ストレージユニット1115、インタフェース1120、及び、周辺機器1125は、マザーボードなどの通信バス(実線)を介してCPU1105と通信している。ストレージユニット1115は、データを記憶するためのデータストレージユニット(又はデータリポジトリ)となり得る。コンピュータシステム1101は、通信インタフェース1120の助けを借りて、コンピュータネットワーク(「ネットワーク」)1130に動作可能に結合することができる。ネットワーク1130は、インターネット、インターネット及び/又はエクストラネット、或いは、インターネットと通信しているイントラネット及び/又はエクストラネットとなり得る。ネットワーク1130は、場合によっては、電気通信及び/又はデータネットワークである。ネットワーク1130は、クラウドコンピューティングなどの分散コンピューティングを可能にし得る1つ以上のコンピュータサーバを含むことができる。ネットワーク1130は、場合によっては、コンピュータシステム1101の助けを借りて、ピアツーピアネットワークを実装することができ、これにより、コンピュータシステム1101に結合されたデバイスがクライアント又はサーバとして動作することが可能になる。
【0114】
CPU1105は、プログラム又はソフトウェアで具体化することができる一連の機械可読命令を実行することができる。命令は、メモリ1110などの記憶場所に記憶することができる。命令をCPU1105に向けることができ、該命令は、その後、本開示の方法を実施するようにCPU1105をプログラムする或いはさもなければ構成することができる。CPU1105によって実行される動作の例としては、フェッチ、デコード、実行、及び、ライトバックを挙げることができる。
【0115】
CPU1105は、集積回路などの回路の一部となり得る。システム1101の他の1つ以上の構成要素を回路に含めることができる。場合によっては、回路が特定用途向け集積回路(ASIC)である。
【0116】
ストレージユニット1115は、ドライバ、ライブラリ、及び、保存されたプログラムなどのファイルを記憶することができる。ストレージユニット1115は、ユーザデータ、例えば、ユーザ選択及びユーザプログラムを記憶することができる。コンピュータシステム1101は、場合によっては、イントラネット又はインターネットを介してコンピュータシステム1101と通信しているリモートサーバ上に位置されるようなコンピュータシステム1101の外部にある1つ以上の更なるデータストレージユニットを含むことができる。
【0117】
コンピュータシステム1101は、ネットワーク1130を介して1つ以上のリモートコンピュータシステムと通信することができる。例えば、コンピュータシステム1101は、ユーザのリモートコンピュータシステムと通信することができる。リモートコンピュータシステムの例としては、パーソナルコンピュータ(ポータブルPCなど)、スレート又はタブレットPC(Apple(登録商標)iPad(登録商標)、Samsung(登録商標)Galaxy Tabなど)、電話、スマートフォン(Apple(登録商標)iPhone(登録商標)、Android対応デバイス、Blackberry(登録商標)など)又は携帯情報端末が挙げられる。ユーザは、ネットワーク1130を介してコンピュータシステム1101にアクセスすることができる。
【0118】
本明細書に記載の方法は、例えば、メモリ1110又は電子ストレージユニット1115などの、コンピュータシステム1101の電子記憶場所に記憶された機械(例えば、コンピュータプロセッサ)実行可能コードによって実施することができる。機械実行可能コード又は機械可読コードは、ソフトウェアの形で提供できる。使用中、コードはプロセッサ1105によって実行することができる。場合によっては、コードは、ストレージユニット1115から取り出され、プロセッサ1105による即時アクセスのためにメモリ1110に記憶され得る。状況によっては、電子ストレージユニット1115を排除することができ、また、機械実行可能命令がメモリ1110に記憶される。
【0119】
コードは、事前にコンパイルして、コードを実行するようになっているプロセッサを有するマシンで使用するように構成することもでき、また、実行時にコンパイルすることもできる。コードが事前にコンパイルされた又はコンパイル済みの態様で実行できるようにするべく選択され得るプログラミング言語でコードを供給することができる。
【0120】
コンピュータシステム1101など、本明細書で提供されるシステム及び方法の態様は、プログラミングで具体化することができる。技術の様々な態様は、典型的には機械(又はプロセッサ)実行可能コード及び/又はあるタイプの機械可読媒体に保持又は組み込まれる関連データの形の「製品」又は「製造品」と考えることができる。機械実行可能コードは、メモリ(例えば、読み取り専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、フラッシュメモリ)又はハードディスクなどの電子記憶ユニットに記憶することができる。「ストレージ」タイプの媒体としては、コンピュータ、プロセッサなどの有形メモリのいずれか又は全て、或いは、ソフトウェアプログラミングのためにいつでも持続性ストレージを提供できる、様々な半導体メモリ、テープドライブ、ディスクドライブなどの関連モジュールを挙げることができる。ソフトウェアの全て又は一部は、インターネット又はその他の様々な通信ネットワークを通じて通信される場合がある。そのような通信は、例えば、あるコンピュータ又はプロセッサから別のコンピュータへの、例えば、管理サーバ又はホストコンピュータからアプリケーションサーバのコンピュータプラットフォームへのソフトウェアのロードを可能にし得る。したがって、ソフトウェア要素を担うことができる別のタイプの媒体は、有線及び光の地上回線ネットワークを介して、及び様々なエアリンクを介して、ローカルデバイス間の物理インタフェース全体で使用されるような、光、電気及び電磁波を含む。有線又は無線リンク、光リンクなど、そのような波を運ぶ物理的要素も、ソフトウェアを搭載したメディアと見なすことができる。本明細書中で使用されるコンピュータ又は機械「読み取り可能媒体」などの用語は、持続性の有形な「記憶」媒体に限定されなければ、実行のためにプロセッサに命令を与えることに関与する任意の媒体を指す。
【0121】
したがって、コンピュータ実行可能コードなどの機械可読媒体は、有形の記憶媒体、搬送波媒体、又は物理的伝送媒体を含むがこれらに限定されない多くの形態をとることができる。不揮発性記憶媒体は、例えば、図面に示されるデータベースなどを実装するために使用され得るような、(1又は複数の)任意のコンピュータなどの任意の記憶デバイスなどの、光ディスク又は磁気ディスクを含む。揮発性記憶媒体は、そのようなコンピュータプラットフォームのメインメモリなどのダイナミックメモリを含む。有形の伝送媒体としては、同軸ケーブル、コンピュータシステム内のバスを構成する配線を含めて、銅線及び光ファイバが挙げられる。搬送波伝送媒体は、電気信号又は電磁信号、又は無線周波数(RF)及び赤外線(IR)データ通信中に生成されるような音響波又は光波の形をとることがある。したがって、コンピュータ可読媒体の一般的な形式としては、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、その他の磁気媒体、CD-ROM、DVD又はDVD-ROM、その他の光学媒体、パンチカード紙テープ、穴のパターンがある任意の他の物理的な記憶媒体、RAM、ROM、PROM及びEPROM、FLASH-EPROM、任意の他のメモリチップ又はカートリッジ、データ又は命令を伝送する搬送波、そのような伝送波を伝送するケーブル又はリンク、又は、コンピュータがプログラミングコード及び/又はデータを読み取ることができるようにする任意の他の媒体が挙げられる。これらの形態のコンピュータ可読媒体の多くは、実行のためにプロセッサに1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスを担持することに関与し得る。
【0122】
コンピュータシステム1101は、例えば、エネルギー貯蔵システムの制御を行なうためのユーザインタフェース(UI)1140を備える電子ディスプレイ1135を含むことができる又は電子ディスプレイ1135と通信することができる。UIの例としては、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)やウェブベースのユーザインタフェースが挙げられるが、これらに限定されない。
【0123】
本開示の方法及びシステムは、1つ以上のアルゴリズムによって実装することができる。アルゴリズムは、中央処理ユニット1105による実行時にソフトウェアを介して実装することができる。アルゴリズムは、例えば、システムの温度を変更し、システムの稼働時間を変更し、及び、システムによって供給される電力を変更することができる。
【0124】
本発明の好ましい実施形態について図示して本明細書中で説明してきたが、当業者に明らかなように、そのような実施形態は単なる一例として与えられる。本発明が、明細書中で提供される特定の例によって限定されることは意図されていない。前述の明細書を参照して本発明を説明してきたが、本明細書の実施形態の説明及び例示は、限定的な意味で解釈されることを意図していない。この時点では、本発明から逸脱することなく、数多くの変形、変更、及び、置換が当業者に想起される。更に、本発明の全ての態様は、様々な条件及び変数に依存する、本明細書中に記載された特定の描写、形態、又は、相対的比率に限定されないことが理解されるものとする。本明細書に記載された本発明の実施形態に対する様々な代替案が、本発明を実施する際に使用されてもよいことが理解されるべきである。したがって、本発明は、そのような代替、修正、変形、又は同等物もカバーするものとすることが企図されている。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を定義し、これらの特許請求の範囲内の方法及び構造並びにそれらの均等物がそれによってカバーされることが意図されている。
【国際調査報告】