(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(54)【発明の名称】有機化合物
(51)【国際特許分類】
C07J 43/00 20060101AFI20220202BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20220202BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20220202BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20220202BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20220202BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20220202BHJP
A61P 25/12 20060101ALI20220202BHJP
A61P 25/10 20060101ALI20220202BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220202BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20220202BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20220202BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20220202BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220202BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20220202BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20220202BHJP
A61P 1/14 20060101ALI20220202BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220202BHJP
A61P 25/30 20060101ALI20220202BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20220202BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20220202BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220202BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20220202BHJP
A61K 31/58 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
C07J43/00 CSP
A61P25/20
A61P25/22
A61P25/24
A61P25/18
A61P25/08
A61P25/12
A61P25/10
A61P25/28
A61P25/16
A61P25/14
A61P25/04
A61P9/00
A61P9/10
A61P3/04
A61P1/14
A61P25/00
A61P25/30
A61P27/16
A61P25/02 101
A61P25/02
A61P43/00 111
A61P21/00
A61K31/58
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534641
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(85)【翻訳文提出日】2021-08-13
(86)【国際出願番号】 US2019066923
(87)【国際公開番号】W WO2020131918
(87)【国際公開日】2020-06-25
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507401225
【氏名又は名称】イントラ-セルラー・セラピーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INTRA-CELLULAR THERAPIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】バノーバー,キンバリー
(72)【発明者】
【氏名】リ,ポン
(72)【発明者】
【氏名】デイビス,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】チャオ,ユープー
【テーマコード(参考)】
4C086
4C091
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086DA12
4C086GA16
4C086GA20
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA05
4C086ZA06
4C086ZA08
4C086ZA12
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA18
4C086ZA21
4C086ZA22
4C086ZA34
4C086ZA36
4C086ZA69
4C086ZA70
4C086ZA94
4C086ZC39
4C086ZC41
4C091AA01
4C091BB01
4C091CC01
4C091DD01
4C091EE02
4C091EE04
4C091FF01
4C091GG01
4C091HH01
4C091JJ03
4C091KK01
4C091LL01
4C091MM03
4C091NN01
4C091PA07
4C091PB02
4C091QQ01
4C091RR01
4C091RR09
4C091RR20
4C091SS10
(57)【要約】
本発明は、本明細書に記載される遊離または医薬的に許容される塩および/または実質的に純粋な形態の(3α,5α)-3-ヒドロキシ-21-(1H-イミダゾール-1-イル)-3-メトキシメチル)-プレグナン-20-オンの特定のプロドラッグおよび類似体、その医薬組成物、および鎮静薬、睡眠薬、抗不安薬および/または麻酔薬としての使用方法、およびうつ病、不安、不眠症、てんかんおよび他の中枢神経系障害の処置方法、ならびに他の薬物との組合せに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離または塩形態(例えば医薬的に許容される塩形態)、例えば単離または精製された遊離または塩形態の、式I:
【化1】
式I
[式中、
Xが、H、-(C=O)-R
a、-CH
2-(C=O)-O-R
aおよび-CH
2-(C=O)-N(R
a)(R
b)より選択され;
R
1が、CH
3、CDH
2、CD
2HおよびCD
3より選択され;
R
2からR
9の各々が、独立して、HおよびDより選択され;
R
aおよびR
bが、独立して、H、C
1-20アルキル(例えばメチル)、およびC
1-4アルキル-アリール(例えばベンジル)より選択され;
ただし、R
1がCH
3であり、R
2からR
9がすべてHである場合、Xが、-(C=O)-R
a、-CH
2-(C=O)-O-R
aおよび-CH
2-(C=O)-N(R
a)(R
b)より選択される]
で示される化合物。
【請求項2】
XがHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Xが、-(C=O)-R
a、-CH
2-(C=O)-O-R
a、および-CH
2-(C=O)-N(R
a)(R
b)より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Xが-(C=O)-R
aである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
Xが-CH
2-(C=O)-O-R
aである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
XがCH
2-(C=O)-N(R
a)(R
b)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
XがCH
2-(C=O)-N(R
a)(R
b)であり、R
bがHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
R
1がCH
3である、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
R
1がCD
3である、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
R
2からR
9のいずれか1つ、2つ、3つまたは4つがDである、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
R
2およびR
3がDである、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
R
5からR
6がDである、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
R
7からR
9のいずれか1つ、2つまたは3つがDである、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
化合物が、
【化2】
【化3】
からなる群より選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
塩形態、例えば医薬的に許容される塩形態の、請求項1~14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
構造の1つ以上の指定される位置に重水素が50%超(すなわち、50原子%超のD)、例えば60%超、70%超、80%超、90%超、95%超、96%超、97%超、98%超または99%超組み込まれている、請求項1~15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
遊離または医薬的に許容される塩形態の請求項1~16のいずれか一項に記載の化合物を、医薬的に許容される希釈剤または担体と混合されて含む、医薬組成物。
【請求項18】
経口投与形態(例えば錠剤またはカプセル剤)である、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
例えば筋肉内または皮下注射のための長時間作用型注射用として製剤化されている、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項20】
GABA
A受容体モジュレーター(例えばGABA
A受容体の正のアロステリックモジュレーター)を用いた改善に適した中枢神経系障害の処置または予防のための方法であって、遊離または医薬的に許容される塩形態の請求項1~16のいずれか一項に記載の化合物、または請求項17~19のいずれか一項に記載の医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、方法。
【請求項21】
障害が、睡眠障害(例えば不眠症)、概日リズム障害、位相シフト障害(例えば時差ぼけ)、不安(全般性不安、社交不安およびパニック障害を含む)、外傷後ストレス障害、うつ病(例えば難治性うつ病、大うつ病性障害、双極性うつ病、分娩後うつ病、季節性情動障害、気分変調症、治療抵抗性うつ病、自殺念慮または自殺行動、および月経前不快気分障害)、強迫性障害群(例えば強迫性障害)、統合失調症、統合失調感情障害、注意障害(例えば注意欠陥障害(ADD)、注意欠陥多動性障害(ADHD))、痙攣性障害(例えば、発作性障害、てんかんまたはてんかん重積、例えば初期てんかん重積、確立したてんかん重積、難治性てんかん重積、超難治性てんかん重積、および非痙攣性てんかん重積、例えば全身性てんかん重積および複雑な部分てんかん重積)、攻撃性の障害(例えば急性または慢性の攻撃性)、激越障害(例えば急性または慢性の激越)、記憶および/または認知の障害(例えば神経変性障害、アルツハイマー病、老化、レヴィー小体認知症、血管性認知症)、運動障害(例えばパーキンソン病、ハンチントン病、振戦)、自閉症および自閉症スペクトラム障害(例えばアスペルガー症候群)、疼痛障害(例えば神経障害性疼痛、急性疼痛、慢性疼痛)、パーソナリティ障害(例えば、反社会性パーソナリティ障害、うつ病性パーソナリティ障害)、血管障害(例えば卒中、虚血、血管奇形)、摂食障害(例えば、過食症、拒食症、むちゃ食い障害、カヘキシー)、外傷性脳傷害、物質濫用障害、物質使用障害、物質離脱症候群、レット症候群、脆弱性X症候群、アンジェルマン症候群、および耳鳴り、および神経変性疾患(例えばアルツハイマー、筋萎縮性側索硬化症、昏睡、認知症、パーキンソン病、ハンチントン病、ジスキネジア、ジストニア);ならびに効果的な処置のために鎮静または感覚消失を必要とするあらゆる障害からなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
鎮静または感覚消失を、それを必要とする患者において誘発する方法であって、遊離または医薬的に許容される塩形態の請求項1~16のいずれか一項に記載の化合物、または請求項17~19のいずれか一項に記載の医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、方法。
【請求項23】
中枢神経系障害の処置もしくは予防または鎮静または感覚消失の誘発のための医薬の製造における、遊離または医薬的に許容される塩形態の請求項1~16のいずれか一項に記載の化合物、または遊離または医薬的に許容される塩形態の請求項17~19のいずれか一項に気合の医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2018年12月17日出願の米国仮出願第62/780,703号に基づく優先権および利益を主張する国際出願であり、当該出願の内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
(発明の分野)
本発明は、本明細書に記載される遊離または医薬的に許容される塩および/または実質的に純粋な形態の(3α,5α)-3-ヒドロキシ-21-(1H-イミダゾール-1-イル)-3-メトキシメチル)-プレグナン-20-オンの特定のプロドラッグおよび類似体、その医薬組成物、および鎮静薬、睡眠薬、抗不安薬および/または麻酔薬としての使用方法、およびうつ病、不安、不眠症、てんかんおよび他の中枢神経系障害の処置方法、ならびに他の薬物との組合せに関する。
【背景技術】
【0002】
脳の興奮性は、昏睡からけいれんまで連続した動物の覚醒レベルとして定義され、様々な神経伝達物質によって調節される。一般的に、神経伝達物質は、ニューロン膜を横断するイオンの伝導性を調節する役割を担う。
【0003】
脳内のニューロンの最大40%がγ-アミノ酪酸(GABA)を神経伝達物質として利用しているため、神経伝達物質であるGABAは、脳全体の興奮性に大きな影響を及ぼす。GABAは、GABA受容体複合体(GRC)と相互作用して、脳を含む神経系全体の神経細胞への影響を媒介する。GABAは、神経細胞膜を横断する塩化物イオンの伝達性を調節することにより、個々のニューロンの興奮性を調節する。GABAは、GRCの認識部位と相互作用して、GRCの電気化学的勾配を下って細胞に塩化物イオンが流れるのを促進する。この陰イオンのレベルの細胞内増加は、膜電位の過分極を引き起こし、ニューロンを興奮性入力の影響を受けにくくする。つまり、ニューロンの興奮性を低下させる。言い換えれば、ニューロンの塩化物イオン濃度が高いほど、脳の興奮性と覚醒のレベルが低くなる。
【0004】
GRCは、不安、発作活動、うつ病および鎮静の媒介において重要な役割を果たす。その結果、GABAおよびGABAのように作用してGABAの効果を促進する薬物(例えば、治療上有用なバルビツール酸塩およびベンゾジアゼピン(BZ)、例えばValium(登録商標))は、GRCの特定の調節部位と相互作用することによって治療上有用な効果を生じる。蓄積された証拠は、現在、ベンゾジアゼピンとバルビツール酸塩の結合部位に加えて、GRCが神経活性ステロイドのための別個の部位を含むことを示している。
【0005】
神経活性ステロイドは、内因的に発生する。最も強力な内因性神経活性ステロイドは、3α-ヒドロキシ-5-還元プレグナン-20-オンおよび3α,21-ジヒドロキシ-5-還元プレグナン-20-オンであり、それぞれ、ホルモンステロイドのプロゲステロンおよびデオキシコルチコステロンの代謝物である。米国特許出願公開第2017/0240589号(出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)に記載されているように、いくつかの最近の臨床観察は、脳の興奮性の恒常性制御におけるプロゲステロンおよびデオキシコルチコステロンならびにそれらの代謝産物の重要な役割を示唆している。これは、例えば、発作活動または月経てんかん、PMSおよびPNDに関連する症状の増加、およびプロゲステロンのレベルの低下とPMS、PNDおよび月経てんかんに関連する症状との相関として現れる。しかしながら、プロゲステロンは、前述の症候群の処置に一貫して効果的ではない。プロゲステロンの天然の神経活性代謝物は、プレグナノロンおよびアロプレグナノロンを含み、これらの代謝物は、プロゲステロンおよびデオキシコルチコステロンの効果の少なくとも一部を媒介し得る。
【0006】
天然に存在する神経活性ステロイドは、おそらく急速な代謝のために、半減期が短く、経口バイオアベイラビリティが低いため、一般的に薬理学的薬剤として適さない。このようなステロイドの1つは、アロプレグナノロンである。
【化1】
それは有望な薬理学的活性を示す内因性神経活性ステロイドであるが、経口バイオアベイラビリティが低く、半減期が短い問題がある。それにもかかわらず、アロプレグナノロンは、てんかん、うつ病および他のCNS障害の静脈内処置のために探究されている。
【0007】
脳の興奮性のための調節薬、例えば鎮静薬、睡眠薬および抗不安薬、ならびにCNS関連疾患の予防または処置のための薬物をして作用する、新規な改善された神経活性ステロイドが必要である。
【0008】
合成および半合成の神経活性ステロイドは、当技術分野で知られており、潜在的なCNS薬として研究されてきた。
【0009】
3β置換の付加は、強力な経口活性を有するが、望ましくないほど長い半減期を有する神経活性ステロイドをもたらすことが示されている。例えば、鎮静薬/睡眠薬は、翌日の残留効果および継続的な夜間投与での蓄積を回避するために、ヒトにおける排泄半減期が5時間未満であることが好ましい。3β-メトキシメチル置換ステロイドは、他の3β置換神経活性ステロイドの望ましい経口活性を維持するが、鎮静薬/睡眠薬および麻酔薬として有用にさせる持続作用があることが以前に発見された。このような化合物は、例えば、米国特許第5,939,545号および第6,277,838号に開示されている。
【0010】
3α-ヒドロキシ-3β-メトキシメチル-21-(1H-イミダゾール-1-イル)-5α-プレグナン-20-オンは、合成神経活性ステロイドである。その主要な分子標的は、γ-アミノ酪酸タイプA(GABAA)受容体であり、GRCチャネル機能の正のアロステリックモジュレーターとして機能する。ベンゾジアゼピンおよび他のベンゾジアゼピン部位などのGABAAモジュレーターの他のクラスと同様に、神経活性ステロイドは、睡眠障害、不安、うつ病、およびてんかんの処置のためなどの多数の潜在的な適応症を有する。この化合物は、例えば、米国特許出願公開第2004/0034002号および第2009/0131383号に開示されており、これらの内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
【0011】
臨床試験は、3α-ヒドロキシ-3β-メトキシメチル-21-(1H-イミダゾール-1-イル)-5α-プレグナン-20-オンが、経口投与後のヒトにおいて以下の薬物動態特性を有することを示唆している:(1)Tmaxが約1~約3時間の急速な吸収;(2)対象体間で変動するCmaxレベル;(3)用量に比例より大きいCmax値;および(4)5つの異なる投与群間で平均化して約12時間のT1/2値。下記表I参照。薬物動態パラメーター、例えばAUC、CmaxおよびTmaxは、平均値を指す。括弧内で示される値は、標準偏差に対応する。
【表1】
【0012】
しかしながら、代謝分解に対するより高い耐性などの改善された分布および/またはバイオアベイラビリティなどの改善された薬物動態特性を有する、3α-ヒドロキシ-3β-メトキシメチル-21-(1H-イミダゾール-1-イル)-5α-プレグナン-20-オンの誘導体を開発することは有益である。
【発明の概要】
【0013】
以下に示す化学名2-(1H-イミダゾール-1-イル)-1-((3S,5S,8R,9S,10S,13S,14S,17S)-3-(メトキシメチル)-10,13-ジメチルヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル)エタン-1-オン、および一般名3α-ヒドロキシ-3β-メトキシメチル-21-(1H-イミダゾール-1-イル)-5α-プレグナン-20-オンを有する、式Aで示される化合物は、強力なGABA
A受容体の正のアロステリックモジュレーターである。この化合物はまた、アセチルコリン受容体および5-HT
3セロトニン受容体と相互作用し得る。
【化2】
式A
式Aで示される化合物は、鎮静薬/睡眠薬または麻酔薬として、および中枢神経系障害の処置または予防に有用であるが、患者に投与されたとき、これらの化合物の治療濃度の改善または薬物動態分布または動態の改善を提供できる式Aで示される化合物の同位体類似体などの類似体およびプロドラッグが当該技術分野において必要とされている。式Aで示される化合物の重水素化類似体および/またはプロドラッグである式I以降で示される化合物を提供することにより、本開示はこれを満たすものである。その有用な代謝および薬物動態プロファイルにより、本開示の化合物は、患者に投与されたとき、長時間にわたる化合物Aおよびその類似体の治療量濃度の改善を提供する長時間作用型または持続放出組成物としての製剤に特に適し得る。
【0014】
第1態様において、本開示は、遊離または塩形態(例えば医薬的に許容される塩形態)、例えば単離または精製された遊離または塩形態の、式I:
【化3】
式I
[式中、
Xが、H、-(C=O)-R
a、-CH
2-(C=O)-O-R
aおよび-CH
2-(C=O)-N(R
a)(R
b)より選択され;
R
1が、CH
3、CDH
2、CD
2HおよびCD
3より選択され;
R
2からR
9の各々が、独立して、HおよびDより選択され;
R
aおよびR
bが、独立して、H、C
1-20アルキル(例えばメチル)、およびC
1-4アルキル-アリール(例えばベンジル)より選択され、
ただし、R
1がCH
3であり、R
2からR
9がすべてHである場合、Xが、-(C=O)-R
a、-CH
2-(C=O)-O-R
aおよび-CH
2-(C=O)-N(R
a)(R
b)より選択される]
で示される化合物(化合物1)を提供する。
【0015】
第2態様において、本開示は、式I以降の化合物を、医薬的に許容される希釈剤または担体と混合して含む、医薬組成物を提供する。
【0016】
第3態様において、本開示は、GABAA受容体モジュレーター(例えばGABAA受容体の正のアロステリックモジュレーター)を用いた改善に適した中枢神経系障害の処置または予防のための方法であって、式Iの化合物またはその医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、方法を提供する。
【0017】
第4態様において、本開示は、鎮静または感覚消失(anesthesia)を、それを必要とする患者において誘発する方法であって、式Iの化合物またはその医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
第1態様において、本開示は、遊離または塩形態(例えば医薬的に許容される塩形態)、例えば単離または精製された遊離または塩形態の、式I:
【化4】
式I
[式中、
Xが、H、-(C=O)-R
a、-CH
2-(C=O)-O-R
aおよび-CH
2-(C=O)-N(R
a)(R
b)より選択され;
R
1が、CH
3、CDH
2、CD
2HおよびCD
3より選択され;
R
2からR
9の各々が、独立して、HおよびDより選択され;
R
aおよびR
bが、独立して、H、C
1-20アルキル(例えばメチル)、およびC
1-4アルキル-アリール(例えばベンジル)より選択される、
ただし、R
1がCH
3であり、R
2からR
9がすべてHである場合、Xが、-(C=O)-R
a、-CH
2-(C=O)-O-R
aおよび-CH
2-(C=O)-N(R
a)(R
b)より選択される]
で示される化合物(化合物1)を提供する。
【0019】
本開示は、
1.1 XがHである、化合物I;
1.2 Xが、-(C=O)-R
a、-CH
2-(C=O)-O-R
a、および-CH
2-(C=O)-N(R
a)(R
b)より選択される、化合物I;
1.3 Xが-(C=O)-R
aである、化合物I;
1.4 Xが-CH
2-(C=O)-O-R
aである、化合物I;
1.5 XがCH
2-(C=O)-N(R
a)(R
b)である、化合物I;
1.6 R
aがHである、化合物Iまたは1.1~1.5のいずれか;
1.7 R
aがC
1-20アルキル(例えばメチル)またはC
1-4アルキル-アリール(例えばベンジル)である、化合物Iまたは1.1~1.5のいずれか;
1.8 R
aがC
1-20アルキル(例えばメチル)である、化合物Iまたは1.1~1.5のいずれか;
1.9 R
aがC
1-4アルキル-アリール(例えばベンジル)である、化合物Iまたは1.1~1.5のいずれか;
1.10 R
aがメチルである、化合物Iまたは1.1~1.5のいずれか;
1.11 R
aがベンジルである、化合物Iまたは1.1~1.5のいずれか;
1.12 XがCH
2-(C=O)-N(R
a)(R
b)であり、R
bがHである、化合物Iまたは1.1~1.11のいずれか;
1.13 R
1がCH
3である、化合物Iまたは1.1~1.12のいずれか;
1.14 R
1がCDH
2、CD
2H、またはCD
3である、化合物Iまたは1.1~1.12のいずれか;
1.15 R
1がCD
3である、化合物Iまたは1.1~1.12のいずれか;
1.16 R
2からR
9のすべてがHである、化合物1.1~1.15のいずれか;
1.17 R
2からR
9のいずれか1つがDである、化合物1.1~1.15のいずれか;
1.18 R
2からR
9のいずれか2つがDである、化合物1.1~1.15のいずれか;
1.19 R
2からR
9のいずれか3つがDである、化合物1.1~1.15のいずれか;
1.20 R
2からR
9のいずれか4つがDである、化合物1.1~1.15のいずれか;
1.21 R
2およびR
3がDである、化合物1.1~1.20のいずれか;
1.22 R
5からR
6がDである、化合物1.1~1.21のいずれか;
1.23 R
7からR
9のいずれか1つ、2つまたは3つがDである、化合物1.1~1.22のいずれか;
1.24 化合物が、
【化5】
【化6】
からなる群より選択される、化合物Iまたは1.1~1.23のいずれか;
1.25 遊離形態(遊離塩基形態)の、化合物Iまたは1.1~1.24のいずれか;
1.26 塩形態、例えば医薬的に許容される塩形態(例えば塩酸塩)の、化合物Iまたは1.1~1.24のいずれか;
1.27 固体形態の、化合物Iまたは1.1~1.24のいずれか;
1.28 実質的に純粋なジアステレオマー形態(すなわち他のジアステレオマーを実質的に含まない)の、化合物Iまたは1.1~1.27のいずれか;
1.29 70%超、好ましくは80%超、より好ましくは90%超および最も好ましくは95%超のジアステレオマー過剰率を有する、化合物Iまたは1.1~1.28のいずれか;
1.30 構造の1つ以上の指定される位置に重水素が50%超(すなわち、50原子%超のD)、例えば60%超、70%超、80%超、90%超、95%超、96%超、97%超、98%超または99%超組み込まれている、化合物Iまたは1.1~1.28のいずれか;
1.31 単離または精製された形態の、化合物Iまたは1.1~1.30のいずれか
を含む、遊離または塩形態、例えば単離または精製された遊離または塩形態の、式Iの化合物の更なる例示的な実施態様を提供する。
【0020】
第2態様において、本開示は、式Iの化合物、例えば化合物1または1.1~1.31のいずれかを、例えば医薬的に許容される希釈剤または担体と混合されて含む、医薬組成物(医薬組成物2)を提供する。本開示は、
2.1 式I以降の化合物が、固体形態である、医薬組成物2;
2.2 組成物が、即時放出組成物である、医薬組成物2または2.1;
2.3 組成物が、遅延放出組成物である、医薬組成物2または2.1;
2.4 組成物が、持続放出組成物である、医薬組成物2または2.1;
2.5 組成物が、経口投与形態(例えば錠剤またはカプセル剤)である、医薬組成物2または2.1~2.4のいずれか;
2.6 組成物が、舌下、バッカルおよび/または経口溶解性錠剤である、医薬組成物2.5;
2.7 組成物が、注射用組成物(例えば、静脈内、皮下または筋肉内注射のために製剤化される)である、医薬組成物2または2.1~2.4のいずれか;
2.8 組成物が、持続放出注射用組成物(例えばデポー製剤)、例えば、筋肉内または皮下注射のための長時間作用型注射用として製剤化される)である、医薬組成物2.7;
2.9 組成物が、経粘膜組成物、例えばバッカル、舌下、鼻腔内または肺のエアロゾル組成物である、医薬組成物2または2.1~2.4のいずれか;
2.10 組成物が、眼科的組成物、例えば局所または眼内注射用組成物である、医薬組成物2または2.1~2.4のいずれか;
2.11 式I以降の化合物が、ポリマーマトリックス中である、医薬組成物2または2.1~2.10のいずれか
を含む、医薬組成物2の更なる例示的実施態様を提供する。
【0021】
医薬組成物2以降は、本発明の化合物が、その意図された目的を達成するのに有効な量で含まれるすべての組成物を含む。個々のニーズは様々であるが、各成分の有効量の最適範囲の決定は当業者の範囲内である。典型的には、化合物は、不眠症の処置を受けている哺乳類の体重の1日当たり、0.0025~50mg/kgの用量またはその医薬的に許容される塩の等量で、哺乳類、例えばヒトに、経口投与され得る。筋肉内注射については、用量は、一般的に経口用量の約半分である。
【0022】
単位経口用量は、約0.01~約50mg、好ましくは約0.1~約10mgの化合物を含み得る。単位用量は、約0.1~約10、好都合には約0.25~50mgの化合物またはその塩を各々含む、1つ以上の錠剤として、1日1回以上投与され得る。
【0023】
本発明の医薬組成物は、その意図された目的を達成する任意の手段によって投与され得る。例えば、投与は、非経腸、舌下、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、経皮またはバッカル経路によるものであり得る。これとは別にまたは同時に、投与は、経口経路によるものであり得る。投与される用量は、レシピエントの年齢、健康状態および体重、もしあるならば同時処置の種類、処置の頻度および望まれる効果の性質に依存する。
【0024】
化合物1以降の治療血漿レベルは、約5ng/mL~約500ng/mLの範囲であり得る。他の効果的な治療範囲としては、約50ng/mL~約500ng/mL、約50ng/mL~約400ng/mL、約50ng/mL~約325ng/mL、約50ng/mL~約250ng/mL、約50ng/mL~約100ng/mL、および約100ng/mL~約250ng/mLが挙げられる。
【0025】
いくつかの実施態様において、本開示の医薬組成物は、持続または遅延放出ための注射可能な組成物、例えばデポー製剤である。
【0026】
いくつかの一実施態様において、医薬組成物は、ポリマーマトリックス中に式1以降の化合物を含む。一の実施態様において、本開示の化合物は、ポリマーマトリックス内に分散または溶解している。更なる実施態様において、ポリマーマトリックスは、デポー製剤において用いられる標準的ポリマー、例えばヒドロキシ脂肪酸のポリエステルおよびその誘導体より選択されるポリマー、またはアルキルα-シアノアクリレート、ポリアルキレンオキサレート、ポリオルトエステル、ポリカルボネート、ポリオルト-カルボネート、ポリアミノ酸、ヒアルロン酸エステルおよびその混合物のポリマーを含む。更なる実施態様において、ポリマーは、ポリ乳酸、ポリd,l-乳酸、ポリグリコール酸、PLGA50:50、PLGA65:35、PLGA75:25、PLGA85:15およびPLGA90:10のポリマーからなる群より選択される。別の一実施態様において、ポリマーは、ポリ(グリコール酸)、ポリ-D,L-乳酸、ポリ-L-乳酸、前記の共重合体、ポリ(脂肪族カルボン酸)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリ(オルトカルボネート)、ポリ(アセタール)、ポリ(乳酸-カプロラクトン)、ポリオルトエステル、ポリ(グリコール酸-カプロラクトン)、ポリ無水物、および天然ポリマー、例えばアルブミン、カゼイン、およびワックス、例えばグリセロールモノおよびジステアレートなどより選択される。好ましい実施態様において、ポリマーマトリックスは、ポリ(d,l-乳酸-グリコール酸共重合体)を含む。
【0027】
(医薬)組成物3および3.1~3.4は、持続または遅延放出に特に有用であり、ここで、本開示の化合物は、ポリマーマトリックスの分解時に放出される。これらの組成物は、最大180日間、例えば約14から約30から約180日間にわたる本開示の化合物の制御および/または持続放出のために(例えばデポー組成物として)製剤化され得る。例えば、ポリマーマトリックスは、約30、約60または約90日間にわたって本開示の化合物を分解および放出し得る。別の一例において、ポリマーマトリックスは、約120または約180日間にわたって本開示の化合物を分解および放出し得る。
【0028】
さらに別の一実施態様において、本開示の医薬組成物、例えば本開示のデポー組成物、は、注射による投与のために製剤化される。
【0029】
第3態様において、本開示は、GABAA受容体モジュレーター(例えばGABAA受容体の正のアロステリックモジュレーター)を用いた改善に適した中枢神経系障害の処置または予防のための方法であって、式Iの化合物、例えば化合物1または1.1~1.31のいずれか、またはその医薬組成物、例えば組成物2または2.1~2.11のいずれかを、それを必要とする患者に投与することを含む、方法(方法3)を提供する。更なる実施態様において、本開示は以下を提供する:
3.1 遊離または医薬的に許容される塩形態の化合物1または1.1~1.31のいずれかを投与することを含む、方法3;
3.2 医薬組成物2または2.1~2.11のいずれかを投与することを含む、方法3;
3.3 中枢神経系障害が、GABAA受容体の正のアロステリックモジュレーターを用いた処置に適する、方法3または方法3.1~3.2のいずれか;
3.4 中枢神経系障害が、睡眠障害(例えば不眠症)、概日リズム障害、位相シフト障害(例えば時差ぼけ)、不安(全般性不安、社交不安およびパニック障害を含む)、外傷後ストレス障害、うつ病(例えば難治性うつ病、大うつ病性障害、双極性うつ病、分娩後うつ病、季節性情動障害、気分変調症、治療抵抗性うつ病、自殺念慮または自殺行動、および月経前不快気分障害)、強迫性障害群(例えば強迫性障害)、統合失調症、統合失調感情障害、注意障害(例えば注意欠陥障害(ADD)、注意欠陥多動性障害(ADHD))、痙攣性障害(例えば、発作性障害、てんかんまたはてんかん重積、例えば初期てんかん重積、確立したてんかん重積、難治性てんかん重積、超難治性てんかん重積、および非痙攣性てんかん重積、例えば全身性てんかん重積および複雑な部分てんかん重積)、攻撃性の障害(例えば急性または慢性の攻撃性)、激越障害(例えば急性または慢性の激越)、記憶および/または認知の障害(例えば神経変性障害、アルツハイマー病、老化、レヴィー小体認知症、血管性認知症)、運動障害(例えばパーキンソン病、ハンチントン病、振戦)、自閉症および自閉症スペクトラム障害(例えばアスペルガー症候群)、疼痛障害(例えば神経障害性疼痛、急性疼痛、慢性疼痛)、パーソナリティ障害(例えば、反社会性パーソナリティ障害、うつ病性パーソナリティ障害)、血管障害(例えば卒中、虚血、血管奇形)、摂食障害(例えば、過食症、拒食症、むちゃ食い障害、カヘキシー)、外傷性脳傷害、物質濫用障害、物質使用障害、物質離脱症候群、レット症候群、脆弱性X症候群、アンジェルマン症候群、および耳鳴り、および神経変性疾患(例えばアルツハイマー、筋萎縮性側索硬化症、昏睡、認知症、パーキンソン病、ハンチントン病、ジスキネジア、ジストニア);ならびに効果的な処置のために鎮静または感覚消失を必要とするあらゆる障害からなる群より選択される、方法3.3;
3.5 中枢神経系障害が、睡眠障害(例えば不眠症)、不安(全般性不安、社交不安およびパニック障害を含む)、外傷後ストレス障害、うつ病(例えば難治性うつ病、大うつ病性障害、双極性うつ病、分娩後うつ病)、および痙攣性障害(例えば、発作性障害、てんかんまたはてんかん重積)からなる群より選択される、方法3.4;
3.6 中枢神経系障害が、睡眠障害(例えば不眠症)、不安(全般性不安、社交不安およびパニック障害を含む)、うつ病(例えば難治性うつ病、大うつ病性障害、双極性うつ病、分娩後うつ病)、および痙攣性障害(例えば、発作性障害、てんかんまたはてんかん重積)からなる群より選択される、方法3.5;
3.7 化合物または組成物が、経口投与される、方法3または3.1~3.6のいずれか;
3.8 投与される組成物が、固形経口投与形態(例えば錠剤またはカプセル剤)である、方法3.7;
3.9 固形経口投与形態が、舌下またはバッカルの経口溶解性錠剤である、方法3.7;
3.10 化合物または組成物が、例えばエアロゾルの形態で、鼻腔内または肺吸入により投与される、方法3または3.1~3.6のいずれか;
3.11 化合物または組成物が、眼科的に、例えば局所点眼として投与される、方法3または3.1~3.6のいずれか;
3.12 化合物または組成物が、1日3回、1日2回または1日1回投与される、方法3.7~3.11のいずれか;
3.13 化合物または組成物が、注射、例えば静脈内、皮下、眼内、腹腔内または筋肉内注射により投与される、方法3または3.1~3.6のいずれか;
3.14 化合物または組成物が、長時間作用型注射用組成物、例えばデポー製剤として投与される、方法3.13;
3.15 注射が、1日に1回または2日に1回または3~7日に1回または1週間に1回または1~4週間に1回または1月に1回投与される、方法3.13または3.14。
【0030】
本開示のGABAAモジュレーターを用いた処置に適した他の疾患および障害は、米国特許出願公開第2017/0240589号に開示および記載されており、この内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
【0031】
本明細書に記載の本発明の化合物は、一般的に、GABA機能を調節するように設計され、それ故に、対象体におけるCNS関連状態の処置および予防のための神経活性ステロイドとして作用するように設計される。本明細書で用いる調節は、GABA受容体機能の阻害または増強、特に、GABAA受容体機能の正のアロステリック調節(増強)を指す。したがって、本明細書で提供される化合物および医薬組成物は、ヒトおよび非ヒト哺乳動物を含む哺乳動物におけるCNS状態を予防および/または処置するための治療薬としての用途がある。したがって、前述のように、本発明は、その範囲内に含まれ、記載された処置方法、ならびにこのような方法のための化合物、およびこのような方法のために有用な医薬の製造のためのこのような化合物の使用に及ぶ。
【0032】
別の一実施態様において、本開示は、約14日間、約30~約180日間にわたる、好ましくは約30、約60または約90日間にわたる本発明の化合物の遅延および/または持続放出のために製剤化される、医薬組成物2または2.1~2.11のいずれかの投与の投与を含む、方法3.1~3.15のいずれかを提供する。制御および/または持続放出は、治療、特に投薬レジメンのノンコンプライアンスまたは不遵守が一般的に生じる薬物治療の早期中止を回避するために特に有用である。
【0033】
さらに別の一実施態様において、本発明は、本開示のデポー組成物が一定時間の本発明の化合物の制御および/または持続放出のために投与される、医薬組成物の投与を含む、前記方法3または3.1~3.15を提供する。
【0034】
第4態様において、本開示は、鎮静または感覚消失を、それを必要とする患者において誘発する方法であって、式Iの化合物、例えば化合物1または1.1~1.31のいずれか、またはその医薬組成物、例えば組成物2または2.1~2.11のいずれかを、それを必要とする患者に投与することを含む、方法(方法4)を提供する。更なる実施態様において、第4態様は以下を提供する:
4.1投与される用量が、投与の2時間以内、例えば投与の1時間以内に患者において鎮静および/または感覚消失を生じるのに有効である、方法4;
4.2投与される用量が、投与の45分以内、例えば投与の30分以内、20分以内または10分以内に患者において鎮静および/または感覚消失を生じるのに有効である、方法4;
4.3投与される用量が、投与の5分以内、例えば投与の分以内、2分以内または1分以内に患者において鎮静および/または感覚消失を生じるのに有効である、方法4;
4.4単回投与により提供される鎮静および/または感覚消失が、1時間~24時間、例えば1時間~12時間、1時間~6時間、1時間~4時間または1時間~2時間の持続を有する、方法4または4.1~4.3のいずれか;
4.5化合物または組成物が、経口投与される、方法4または4.1~4.4のいずれか;
4.6投与される組成物が、固形経口投与形態(例えば錠剤またはカプセル剤)である、方法4.5;
4.7固形経口投与形態が、舌下またはバッカルの経口溶解性錠剤である、方法4.6;
4.8化合物または組成物が、例えばエアロゾルの形態で、鼻腔内または肺吸入により投与される、方法4または4.1~4.4のいずれか;
4.9化合物または組成物が、注射、例えば静脈内、皮下、腹腔内または筋肉内注射により投与される、方法4または4.1~4.4のいずれか。
【0035】
本開示の化合物、本開示の医薬組成物または本開示のデポー組成物は、慣用の単剤療法において通常生じる望ましくない副作用を引き起こすことなく組み合される薬物の治療活性を高めるように、特に個々の薬物が単剤療法として用いられる場合より低い投与量にて、第2治療薬と組み合され得る。したがって、本開示の化合物は、1つ以上の抗うつ薬、抗精神病薬、鎮静/睡眠薬(例えばベンゾジアゼピン、抗てんかん薬、物質濫用治療薬(例えばメサドン、ナロキソン)、および/またはパーキンソン病または気分障害を処置するのに用いられる薬物と同時に(simultaneously)、連続してまたは同期間に(contemporaneously)投与され得る。別の一例において、副作用は、本開示の化合物を1つ以上の第2治療薬と組み合わせて遊離または塩形態で投与することにより軽減または最小化し得て、ここで、(i)第2治療薬または(ii)本開示の化合物および第2治療薬両方の投与量は、薬物/化合物が単剤療法として投与される場合より低い。
【0036】
したがって、いくつかの実施態様において、本開示は、1つ以上の治療薬の患者への投与をさらに含む方法であって、1つ以上の治療薬が、遊離または医薬的に許容される塩形態の、GABA活性を調節する(例えば、活性を増強し、GABA伝達の促進する)化合物、GABA-Bアゴニスト、5-HT受容体モジュレーター(例えば5-HT1Aアゴニスト、5-HT2Aアンタゴニスト、5-HT2Aインバースアゴニスト、セロトニン再取り込み阻害薬など)、メラトニン受容体アゴニスト、イオンチャネルモジュレーター(例えばブロッカー)、セロトニン-2アンタゴニスト/再取り込み阻害薬(5-HT2拮抗作用およびセロトニン再取り込み阻害の両方を有する化合物、すなわちSARI)、オレキシン受容体アンタゴニスト、H3アゴニストまたはアンタゴニスト、ノルアドレナリンアゴニストまたはアンタゴニスト、ガラニンアゴニスト、CRHアンタゴニスト、ヒト成長ホルモン、成長ホルモンアゴニスト、エストロゲン、エストロゲンアゴニスト、他の神経活性ステロイド、プロゲステロンまたはプロゲステロン代謝物、ニューロキニン-1薬、抗うつ薬、オピエートアゴニストおよび/またはオピエートパーシャルアゴニスト(例えばμ-、κ-またはδ-オピエート受容体アゴニストまたはパーシャルアゴニスト)、ノシセプチンアゴニスト、および抗精神病薬、例えば非定型抗精神病薬より選択される、方法3、または方法3.1~3.15のいずれか、または方法4または4.1~4.9のいずれかを提供する。いくつかの実施態様において、このような薬物は、投与される本開示の化合物の代謝速度を低下させるのに役立つ、レダクターゼ阻害薬、オキシドレダクターゼ阻害薬またはシトクロムオキシダーゼ(CYP酵素)阻害薬などの薬物代謝の阻害薬を含む。例えば、このような薬物は、ケトンレダクターゼおよびステロイドヒドロゲナーゼの阻害薬(例えば、20α-ヒドロキシステロイドヒドロゲナーゼまたは20β-ヒドロキシステロイドヒドロゲナーゼ)を含み得る。このようなレダクターゼ、オキシドレダクターゼおよびヒドロゲナーゼの阻害薬に加えて、このような薬物代謝の阻害薬はまた、これらの酵素の競合的基質を含み得る。
【0037】
いくつかの実施態様において、本開示の化合物と、前記の1つ以上の第2治療薬の組合せは、前記の医薬組成物またはデポー組成物として患者に投与され得る。組合せ組成物は、組み合わせた薬物の混合物、ならびに薬物の2つ以上の別個の組成物を含み得て、ここで個々の組成物が、患者に例えば一緒に共投与され得る。
【0038】
第5態様において、本開示は、前記の1つ以上の障害の処置または予防、例えば、方法3または方法3.1~3.15のいずれか、または鎮静または感覚消失の導入、例えば方法4または4.1~4.9のいずれか、または本明細書に記載の実施態様の他の方法のいずれかのための医薬の製造における、式Iで示される化合物、化合物1または1~1.31のいずれか、またはその医薬組成物、例えば組成物2または2.1~2.11のいずれかの使用を開示する。
【0039】
第6態様において、本開示は、前記の1つ以上の障害の処置または予防、例えば、方法3または方法3.1~3.15のいずれか、または鎮静または感覚消失の導入、例えば方法4または4.1~4.9のいずれか、または本明細書に記載の実施態様の他の方法のいずれかにおける、式Iで示される化合物、例えば化合物1または1~1.31のいずれか、またはその医薬組成物、例えば組成物2または2.1~2.11のいずれかの使用を提供する。
【0040】
理論に拘束されるものではないが、本発明は、化合物A:
【化7】
式A
などの化合物で処置された動物および/またはヒトで生じることが見出されている代謝を特に制限、遅延、変更および/または防止する化合物を提供する。
【0041】
重水素(2H)原子の化学的および物理的特性、例えば電子電荷、電子体積、極性、電子価などが通常の水素原子(1H)と比較して極めて類似しているため、重水素で水素を置換した薬物化合物は、一般的に、非重水素化類似体と同様の生物学的活性を有すると考えられるが、薬物動態特性が改善される可能性がある。重水素原子がプロチウム原子のおよそ2倍の原子量を有するが、その空間体積および電荷分布は同様であることが特に重要であり、ここで、これらの後者の要因が生体分子と結合するのに重要である。薬物動態特性の改善は、H-D結合と比較してC-D結合の結合強度が極めて強く、それ故に酵素(代謝)反応中におけるD/H引き抜きに対するエネルギー障壁がより高いこと(速度論的同位体効果)により生じる。このような置換が薬理活性を深刻に損失しすぎることなく薬物動態特性の改善をもたらす程度は可変的である。したがって、いくつかの状況においては、得られた重水素化化合物は薬物動態学的安定性の中程度の増加しか示さず、一方、他の状況においては、得られた重水素化化合物は著しい代謝安定性の改善を有し得る。さらに、同時重水素置換の影響を確実に予測することは困難であり得る。これらは、代謝安定性の相加的(相乗的)改善をもたらす場合もあれば、もたらさない場合もある。
【0042】
これまでに多くの重水素化医薬化合物が提案および調査されているが、米国食品医薬品局によって承認されている重水素化医薬化合物は、重水素化されていない対応物より治療上有用な長い半減期を有する、ハンチントン病薬のテトラベナジン重水素型であるデューテトラベナジン(Teva Pharmaceuticals、2017年4月)の1つのみである。
【0043】
いくつかの実施態様において、本開示は、式Aで示される化合物の構造の特定の選択された位置に重水素原子を含有する化合物を提供する。これらの特定の重水素化は、これらの化合物に影響を及ぼす可能性が高いと本願発明者らにより決定された酵素経路との関係のため、該化合物の代謝分解およびクリアランスに影響を有すると予想される。したがって、これらの新規な化合物は、式Aで示される化合物と同じ薬理活性を実質的に示しながら、さらに予想外にも代謝安定性および薬物動態特性を改善すると予想される。
【0044】
他の実施態様において、本開示は、天然の代謝活性が不安定な官能基を除去し、インビボで式Aの化合物をもたらすように、化合物内に配置された生物学的に不安定な官能基を有する式Aの化合物の類似体である化合物を提供する。したがって、それを必要とする患者への本開示のいくつかの化合物の投与は、該ヒトの組織への式Aの化合物の即時放出および遅延放出の両方をもたらす。本開示のこのような化合物は、それ自体に有意な薬理学的活性を有するが、式Aの薬理学的に活性な化合物のリザーバーとして機能する。このように、本開示の化合物は、長時間作用型注射剤(LAI)または「デポー」医薬組成物としての製剤に特に適している。理論に拘束されるものではないが、本開示の化合物を含む注入された「デポー」は、該化合物を身体組織に徐々に放出し、組織において、該化合物は徐々に代謝されて、式Aの化合物を生成する。このようなデポー製剤は、本開示の化合物の溶解および放出の速度を制御するのに適した成分の選択によってさらに調整され得る。
【0045】
本明細書で用いられる「アルキル」は、他に明記されない限り、例えば長さが1~21個の炭素原子の、飽和または不飽和炭化水素部分であり;あらゆるこのようなアルキルは、他に明記されない限り、直鎖または分岐鎖(例えばn-ブチルまたはtert-ブチル)であり得て、好ましくは直鎖である。例えば、「C1-21アルキル」は、1~21個の炭素原子を有するアルキルを意味する。一の実施態様において、アルキルは、1つ以上のヒドロキシまたはC1-22アルコキシ(例えばエトキシ)基で置換されていてもよい。別の一実施態様において、アルキルは、好ましくは直鎖で、所望により飽和または不飽和の、1~21個の炭素原子を含み、例えば、R1が、1~21個の炭素原子、好ましくは6~15個の炭素原子、16~21個の炭素原子を含むアルキル鎖であるいくつかの実施態様において、例えばそれが結合する-C(O)-と一緒になって、例えば式Iの化合物から切断されたとき、天然または非天然の、飽和または不飽和脂肪酸の残基を形成する。
【0046】
用語「D」または「重水素」は、水素原子の2H同位体を指す。水素の2つの安定な同位体の天然存在量は、約99.98%プロチウム(1H)および0.02%重水素(2H)である。したがって、平均して、一般的試薬を用いて合成された分子における任意の水素原子は、すべての水素原子の位置にて約0.02%重水素を有する。したがって、当業者は、本明細書に記載のように、C-D結合または「D」原子を有する化学構造を言及するときに、これは分子の該位置が重水素の天然の0.02%存在量より多く有するように濃縮されていることを意味すると理解する。したがって、分子内のラベル「D」は、例えば、少なくとも0.1%重水素、または少なくとも1%重水素、または少なくとも10%重水素を指す。好ましくは、本開示による任意化合物は、化合物構造の各指定される「D」原子の位置に重水素が50%超(すなわち、50原子%超のD)、例えば60%超、70%超、80%超、90%超、95%超、96%超、97%超、98%超または99%超組み込まれている。
【0047】
用語「医薬的に許容される希釈剤または担体」は、医薬製剤において有用であり、アレルゲン性、発熱性または病原性である物質および病気を潜在的に引き起こすかもしくは促進することが知られている物質を含まない希釈液および担体を意味することが意図される。したがって、医薬的に許容される希釈液または担体は、体液、例えば血液、尿、髄液、唾液など、ならびにその構成成分、例えば血液細胞および循環タンパク質を除外する。適切な医薬的に許容される希釈液および担体は、医薬製剤に関するいくつかの周知の学術書のいずれか、例えばAnderson, Philip O.; Knoben, James E.; Troutman, William G, eds., Handbook of Clinical Drug Data, Tenth Edition, McGraw-Hill, 2002; Pratt and Taylor, eds., Principles of Drug Action, Third Edition, Churchill Livingston, New York, 1990; Katzung, ed., Basic and Clinical Pharmacology, Ninth Edition, McGraw Hill, 20037ybg; Goodman and Gilman, eds., The Pharmacological Basis of Therapeutics, Tenth Edition, McGraw Hill, 2001; Remington's Pharmaceutical Sciences, 20th Ed., Lippincott Williams & Wilkins., 2000; and Martindale, The Extra Pharmacopoeia, Thirty-Second Edition (The Pharmaceutical Press, London, 1999) に見ることができ、これらすべては、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
【0048】
化合物についての「精製された」、「精製された形態の」および「単離および精製された形態の」なる用語は、合成プロセス(例えば反応混合物)または天然源またはそれらの組合せから単離された後の該化合物の物理的状態を指す。したがって、化合物についての「精製された」、「精製された形態の」および「単離および精製された形態の」なる用語は、本明細書に記載または当業者に周知の標準的な分析技術により特徴付けるのに十分な純度の、精製プロセスまたは本明細書に記載もしくは当業者に周知のプロセス(例えばクロマトグラフィー、再結晶化、LC-MSおよびLC-MS/MS技術など)から得られた後の該化合物の物理的状態を指す。
【0049】
他に断らない限り、本開示の化合物、例えば化合物Iまたは1.1~1.31は、遊離または塩、例えば酸付加塩の形態で存在し得る。十分に塩基性である本発明の化合物の酸付加塩は、例えば無機または有機酸、例えば塩酸などとの酸付加塩である。
【0050】
本開示の化合物は、医薬品としての使用が意図され、それ故に医薬的に許容される塩が好ましい。医薬用途に適さない塩は、例えば本発明の遊離化合物の単離または精製に有用であり得て、それ故に本開示の化合物の範囲に含まれる。
【0051】
本開示の化合物は、1つ以上のキラル炭素原子を含み得る。したがって、化合物は、個々の異性体、例えばエナンチオマーまたはジアステレオマー形態で、または個々の形態の混合物、例えばラセミ/ジアステレオマー混合物として存在する。不斉中心が(R)-、(S)-、または(R,S)-配置にあるあらゆる異性体が存在し得る。本発明は、個々の光学活性異性体両方およびその混合物(例えばラセミ/ジアステレオマー混合物)を包含すると理解されるべきである。したがって、本発明の化合物は、ラセミ混合物であってもよく、または、例えば主に純粋、または実質的に純粋な異性体形態、例えば70%超のエナンチオマー/ジアステレオマー過剰率(「ee」)、好ましくは80%超のee、より好ましくは90%超のee、最も好ましくは%超のeeであってもよい。該異性体の精製および該異性体混合物の分離は、当該技術分野で公知の標準的な技術(例えば、カラムクロマトグラフィー、分取TLC、分取HPLC、擬似移動床など)により達成され得る。
【0052】
二重結合または環についての置換基の性質による幾何異性体は、シス(Z)またはトランス(E)体であり得て、両方の異性体が本発明の範囲に包含される。
【0053】
本開示の化合物は、安定または不安定な同位体を包含することも意図される。安定同位体は、同種の豊富な核種(すなわち元素)と比較して1つの追加の中性子を含有する非放射性同位体である。このような同位体を含む化合物の活性は保持され、このような化合物はまた非同位体類似体の薬物動態の測定に関して有用性を有することが予想される。例えば、本開示の化合物の特定位置における水素原子は、重水素(非放射性の安定な同位体)で置き換えられ得る。公知の安定同位体の例としては、重水素、13C、15N、18Oが挙げられるがこれらに限定されない。あるいは、同種の豊富な核種(すなわち元素)と比較して追加の中性子を含有する放射性同位体である不安定同位体、例えば、123I、131I、125I、11C、18Fは、I、CおよびFの対応する豊富な種に置き換わり得る。本発明の化合物の有用な同位体の別の例は、11C同位体である。これらの放射性同位体は、本発明の化合物の放射性イメージングおよび/または薬物動態試験に有用である。
【0054】
したがって、式Iの化合物の範囲によって具体的に提供される重水素化に加えて、本開示は、1つ以上の炭素原子、窒素原子または酸素原子が安定または不安定な同位体(例えば、11C、13C、15N、18O、18F)に置き換えられており、さらに1つ以上の水素原子がトリチウム(3H)に置き換えられている式Iによる化合物をさらに想定する。これらの化合物は、例えば、構造決定(例えば核磁気共鳴または質量スペクトル分析による)、および代謝および排泄経路を解明するおよび潜在的な薬物候補のクリアランスを測定するラジオイメージング研究の目的に有用である。
【0055】
本発明の組成物(例えば本発明のデポー組成物)におけるポリマーマトリックスに有用なポリマーは、ヒドロキシ脂肪酸のポリエステルおよびその誘導体、または他の化学物質、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリクエン酸、ポリリンゴ酸、ポリ-β-ヒドロキシ酪酸、ε-カプロラクトン開環重合体、乳酸-グリコール酸共重合体、2-ヒドロキシ酪酸-グリコール酸共重合体、ポリ乳酸-ポリエチレングリコール共重合体またはポリグリコール酸-ポリエチレングリコー共重合体)、アルキルα-シアノアクリレート(例えばポリ(ブチル2-シアノアクリレート))、ポリアルキレンオキサレート(例えばポリトリメチレンオキサレートまたはポリテトラメチレンオキサレート)、ポリオルトエステル、ポリカルボネート(例えばポリエチレンカルボネートまたはポリエチレンプロピレンカルボネート)、ポリオルト-カルボネート、ポリアミノ酸(例えばポリ-γ-L-アラニン、ポリ-γ-ベンジル-L-グルタミン酸またはポリ-y-メチル-L-グルタミン酸)、ヒアルロン酸エステルなどのポリマーを含み得て、これらポリマーの1つ以上が用いられ得る。
【0056】
好ましい実施態様において、本発明のポリマーマトリックスは、生体適合性および生分解性である。用語「生体適合性」は、毒性がなく、発癌性がなく、そして体組織において著しく炎症を誘導しない高分子物質と定義される。マトリックス物質は、生分解性であるべきであり、ここで、高分子物質は、身体で容易に排泄可能な生成物に体内プロセスによって分解されるべきであり、体内に蓄積されるべきでない。生体分解の生成物はまた、ポリマーマトリックスが身体と生体適合性であるという点で身体と生体適合性であるべきである。
【0057】
用語「疾患」、「障害」および「状態」は、相互交換可能に用いられ、区別して解釈されることを意図しない。
【0058】
「治療有効量」は、疾患または障害に罹患している対象体に投与されるとき、処置に予定している時間にわたって疾患または障害の軽減、寛解または退行を生じるのに有効な(例えば医薬デポーにおいて含有されるような)本発明の化合物の量である。
【0059】
本発明の実施に用いられる投与量は、例えば処置されるべき特定の疾患または状態、用いられる本発明の特定の化合物および所望の療法に応じて当然変化する。他に断らない限り、投与のための本発明の化合物の量(遊離塩基または塩形態として投与される)は、遊離塩基形態の本発明の化合物の量を指すかまたはそれに基づく(すなわち、量の計算は遊離塩基量に基づく)。
【0060】
本発明の化合物は、経口、皮下、非経腸(静脈内、筋肉内、鼻腔内または皮下)または経皮を含む任意の満足な経路によって投与され得るが、好ましくは経口投与される。特定の実施態様において、本発明の化合物は、例えばデポー製剤中であり、好ましくは非経腸、例えば注射により投与される。
【0061】
本開示の化合物の医薬的に許容される塩は、慣用の化学方法により塩基性または先生部分を含有する親化合物から合成され得る。一般に、このような塩は、これら化合物の遊離塩基形態を化学量論量の適切な酸と水もしくは有機溶媒またはその2つの混合物中で反応させることにより製造され得て;一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルなどの非水性媒体が好ましい。
【0062】
本開示の化合物を含む医薬組成物は、従来の希釈剤または添加剤(例としてはゴマ油があげられるがこれに限定されない)およびガレヌス分野で公知の技術を用いて製造され得る。したがって、経口剤形は、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤などを含み得る。
【0063】
中間体のものを含む、式Aで示される化合物の合成方法は、米国特許出願公開第2004/0034002号および第2009/0131383号に開示されており、これらの内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
【0064】
他の本開示の化合物の本質的なコアは、上記刊行物に開示され、当業者に知られている類似の手順により製造され得る。本開示の特定の重水素化化合物は、一般的に、重水素化試薬が利用可能である場合、市販の重水素化試薬を非重水素化試薬に代えることによる類似の手段によって製造され得る。
【0065】
本発明の化合物のジアステレオマーの単離または精製は、当該技術分野で知られている慣用方法、例えば、カラム精製法、分取薄層クロマトグラフィー、分取HPLC、結晶化、トリチュレーション、擬似移動床法などによって行うことができる。
【0066】
製造された化合物のジアステレオマーは、室温にてChiralpak(登録商標)AY-H(5μ、30×250mm)を用いてHPLCによって分離し、10%エタノール/90%ヘキサン/0.1%ジメチルエチルアミンで溶出することができる。ピークを230nmにて検出して、98~99.9%eeのジアステレオマーを生成することができる。
【0067】
3α-ヒドロキシ-3β-メトキシメチル-5α-プレグナン-20-オンは、Hogenkamp, et al., "Synthesis and in Vitro Activity of 3β-Substituted-3α-hydroxypregnan-20-ones: Allosteric Modulators of the GABAA Receptor," J Med. Chem. 40:61-72 (1997)に記載されるように、(3R)-スピロ[オキシラン-2α、5α-プレグナン]-20-オンおよびナトリウムメトキシドから製造され得る。21-置換ステロイドは、触媒HBrと共にMeOH中のBr2を用いて20-ケトステロイドから合成される、対応する21-ブロモステロイドから製造され得る。有用な合成方法の他の情報源としては、Botella et al., J. Med Chem., 48: 3500-3511 (2015); Botella et al., J. Med Chem., 60: 7810-7819 (2017); Wong et al., Steroids 71: 77-82 (2006); Botella et al., WO 2016/061527; Hogenkamp, Derek L., WO 2000/66614; Goliber et al., US 2006/0074059; Chang et al., WO 2005/105822; Woodward, Richard M., WO 2006/131392が挙げられ、これら各々の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。一般的に言えば、本開示の化合物は、広く知られている化合物3α-ヒドロキシ-5α-プレグナン-2-オンおよびそのジアステレオマーから開始する当該分野で知られている方法に従って製造され得る。
【0068】
例えば、この化合物は、Wongらの下記スキームに従って製造され得る:
【化8】
【実施例】
【0069】
実施例1:3α-ヒドロキシ-21-(1'-イミダゾリル)-3β-メトキシメチル-5α-プレグナン-20-オン(式Aの化合物)の合成
【化9】
工程1:21-ブロモ-3α-ヒドロキシ-3β-メトキシメチル-5α-プレグナン-20-オン
3α-ヒドロキシ-3β-メトキシメチル-5α-プレグナン-20-オン(30.0g、82.9mmol)のメタノール900mL中の溶液に、室温で撹拌しながら、3滴の48%HBr水溶液を加える。その後臭素(13.9g、87.1mmol)をメタノール200mL中の溶液として2時間かけて滴下し、この間、反応物は遮光された。TLC(1%アセトン/塩化メチレン)が、出発物質の不存在ことおよび極性の低い生成物の形成を示した後に、反応物を約300mLまで濃縮する。その後CH
2Cl
2(400mL)を加え、反応物を、水200mLを含む分液漏斗に注ぐ。相を分離し、水相をCH
2Cl
2(3×100mL)で抽出する。有機相を合わせ、飽和NaHCO
3水溶液200mLで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、減圧下濃縮して、臭化物を微黄色泡沫として得る。更なる精製は必要ない。
【0070】
工程2:3α-ヒドロキシ-21-(1'-イミダゾリル)-3β-メトキシメチル-5α-プレグナン-20-オン
上記で製造した臭化物(36.7g、82.9mmol)のCH3CN 800mL中の懸濁液に、イミダゾール(28.2g、415mmol)を加え、反応物をアルゴン下加熱還流する。反応は還流で1時間後に完了する(TLC、95:4.5:0.5のCH2Cl2:MeOH:トリエチルアミン(TEA))。反応物を室温まで冷却し、その後真空で濃縮する。得られた油をCH2Cl2 600mL中に溶解させ、希釈NaHCO3溶液(4×200mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、真空で濃縮する。95:4.5:0.5のCH2Cl2:MeOH:TEAで溶出する、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、表題化合物18gを白色固体として得て、mpは185~187℃である(真空キャピラリー)。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ7.40 (s, 1H), 7.08 (s, 1H), 6.84 (s, 1H), 4.72 (d, 1H, J=17.7 Hz), 4.64 (d, 1H, J=18 Hz), 3.39 (s, 3H), 3.18 (s, 2H), 2.57 (t, 1H, J=8.7 Hz), 0.76 (s, 3H), 0.66 (s, 3H).
【0071】
実施例2:1-((3R,5S,8R,9S,10S,13S,14S,17S)-3-ヒドロキシ-3-(メトキシメチル)-10,13-ジメチルヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル)-2-(1H-イミダゾール-1-イル-d3)エタン-1-オン
【化10】
イミダゾール-d
4(0.193g、2.72mmol、3.0当量)のTHF(2mL)中の溶液に、0℃にて、水素化リチウム(0.0237g、2.8mmol、3.1当量)を加える。溶液を、0℃にて2時間Ar下撹拌する。THF(2.5mL)中の21-ブロモ-3α-ヒドロキシ-3β-メトキシメチル-5α-プレグナン-20-オン(0.40g、0.906mmol、1.0当量)を、反応混合物に0℃にて5分間にわたってAr下ゆっくり加える。0℃にて3時間撹拌した後、反応混合物を氷浴中メタノールによりクエンチする。有機層を分離し、減圧下濃縮する。残渣をさらにカラムクロマトグラフィーにより精製して、純粋な表題化合物(0.184g、0.426mmol)を白色粉末として50%の単離収率で得る。
1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 4.86 - 4.60 (m, 2H), 3.41 (s, 3H), 3.20 (s, 2H), 2.60 (t, J = 8.9 Hz, 1H), 2.31 - 2.12 (m, 1H), 2.06 - 1.90 (m, 1H), 1.84 - 1.66 (m, 4H), 1.66 - 1.13 (m, 12H), 1.63-1.51 (m, 3H) 1.00 (m, 1H), 0.87 (m, 1H), 0.78 (s, 3H), 0.68 (s, 3H).
【0072】
実施例3:1-((3R,5S,8R,9S,10S,13S,14S,17S)-3-ヒドロキシ-3-((メトキシ-d3)メチル)-10,13-ジメチルヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル)-2-(1H-イミダゾール-1-イル)エタン-1-オン
【化11】
工程1:1-((3R,5S,8R,9S,10S,13S,14S,17S)-10,13-ジメチルヘキサデカヒドロスピロ[シクロペンタ[a]フェナントレン-3,2'-オキシラン]-17-イル)エタン-1-オン
【0073】
トリメチルスルホキソニウムヨウ化物(2.09g、9.5mmol)およびカリウムtert-ブトキシド(1.134g、10.01mmol)のDMSO(30.0mL)中のスラリー溶液を、60℃にて1時間Ar下加熱する。5α-プレグナン-3,20-ジオン(2.0g、6.3mmol)を反応混合物に加え、室温にて一晩撹拌する。反応完了後、反応混合物をクエンチし、氷浴中水(30mL)により沈殿させる。得られた沈殿をろ過により収集し、水(50mL×2)で洗浄する。残渣をさらにMeOH/アセトン(4/1)からの再結晶化により精製し、その後固体を真空下一晩乾燥して、純粋な最終生成物(1.83g、5.54mmol)を白色粉末として87%の収率で得る。1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 2.64 (d, J = 1.4 Hz, 2H), 2.56 (t, J = 8.9 Hz, 1H), 2.25 - 2.15 (m, 1H), 2.14 (s, 3H), 2.11 - 1.99 (m, 2H), 1.89 (t, J = 14.0, 13.1 Hz, 1H), 1.79 - 1.60 (m, 6H), 1.60 - 1.51 (m, 1H), 1.50 - 1.05 (m, 9H), 1.06 - 0.94 (m, 2H), 0.90 (s, 3H), 0.63 (s, 3H).
【0074】
工程2:1-((3R,5S,8R,9S,10S,13S,14S,17S)-3-ヒドロキシ-3-((メトキシ-d3)メチル)-10,13-ジメチルヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル-17-d)エタン-1-オン-2,2,2-d3
【0075】
水酸化ナトリウム(0.916g、22.9mmol)をメタノール-d4(40mL)中に溶解させ、30分間Ar下加熱還流する。工程1の化合物(3.8g、11.4mmol)を、メタノール溶液へ室温にてAr下ゆっくり加え、溶液を40℃にて一晩加熱する。反応混合物をクエンチし、氷浴中水(65mL)により沈殿させる。得られた沈殿をろ過し、水(25mL×2)で洗浄する。固体ケーキをさらに、酢酸エチル/ヘキサン(1/1)からの再結晶化および真空下乾燥により精製して、純粋な生成物(3.15g、8.52mmol)を白色粉末として74%の収率で得る。1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 3.20 (s, 2H), 2.26 - 2.13 (m, 1H), 2.04 - 1.95 (m, 1H), 1.80 - 1.51 (m, 8H), 1.52 - 1.12 (m, 12H), 0.98 (m 1H), 0.85 (m, 1H), 0.77 (s, 3H), 0.62 (s, 3H).
【0076】
工程3:2-ブロモ-1-((3R,5S,8R,9S,10S,13S,14S,17S)-3-ヒドロキシ-3-((メトキシ-d3)メチル)-10,13-ジメチルヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル-17-d)エタン-1-オン-2,2-d2
【0077】
工程2の化合物(3.11g、8.41mmol)のMeOH(30mL)中の溶液に、3滴のHBr水溶液(48%)を加える。臭素(0.485mL、8.88mmol)をMeOH(20mL)中に溶解させ、暗所で反応混合物に滴下する。反応完了後、反応混合物を水(100mL)によりクエンチする。酢酸エチル(30ml×3)を加えて、最終生成物を抽出し、有機相を合わせ、水(20mL×2)で再度洗浄する。溶媒を蒸発させ、真空下一晩乾燥して、純粋な7(3.67g、8.20mmol)を白色粉末として97%の収率で得る。1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 3.20 (s, 2H), 2.19 (t, J = 10.8 Hz, 0H), 1.92 (ddd, J = 11.9, 4.1, 2.9 Hz, 1H), 1.79 - 1.51 (m, 7H), 1.51 - 1.15 (m, 12H), 1.06 - 0.93 (m, 1H), 0.89 - 0.80 (m, 1H), 0.77 (s, 3H), 0.65 (s, 3H).
【0078】
工程4:1-((3R,5S,8R,9S,10S,13S,14S,17S)-3-ヒドロキシ-3-((メトキシ-d3)メチル)-10,13-ジメチルヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル)-2-(1H-イミダゾール-1-イル)エタン-1-オン
【0079】
イミダゾール(0.274g、4.03mmol、3.0当量)のTHF(2mL)中の溶液に、水素化リチウム(0.035g、4.17mmol、3.1当量)を加える。溶液を30分間Ar下加熱還流する。THF(4mL)中の工程3の化合物(0.6g、1.34mmol、1.0当量)を、反応混合物に0℃にて5分間にわたってAr下ゆっくり加える。0℃にて3時間撹拌した後、反応混合物を氷浴中メタノールによりクエンチする。溶媒を蒸発させ、カラムクロマトグラフィーにより精製して、表題化合物(0.12g、0.277mmol)を白色粉末として21%の単離収率で得る。1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 7.39 (s, 1H), 7.13 (s, 1H), 6.88 (s, 1H), 4.93 - 4.56 (m, 2H), 3.20 (s, 1H), 2.60 (t, J = 8.8 Hz, 1H), 2.33 - 2.12 (m, 1H), 1.98 (dt, J = 11.8, 3.3 Hz, 1H), 1.83 - 1.66 (m, 4H), 1.63 - 1.54 (m, 4H), 1.51 - 1.13 (m, 12H), 1.07 - 0.94 (m, 1H), 0.91 - 0.82 (m, 1H), 0.78 (s, 3H), 0.68 (s, 3H).
【0080】
実施例4:1-((3R,5S,8R,9S,10S,13S,14S,17S)-3-ヒドロキシ-3-((メトキシ-d3)メチル)-10,13-ジメチルヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル)-2-(1H-イミダゾール-1-イル-d3)エタン-1-オン
【化12】
イミダゾール-d4(0.291g、4.03mmol、3.0当量)のTHF(2mL)中の溶液に、水素化リチウム(0.035g、4.17mmol、3.1当量)を加える。溶液を30分間Ar下加熱還流する。THF(4mL)中の実施例3工程3の化合物(0.6g、1.34mmol、1.0当量)を、反応混合物に0℃にて5分間にわたってAr下ゆっくり加える。0℃にて3時間撹拌した後、反応混合物を氷浴中メタノールによりクエンチする。溶媒を蒸発させ、カラムクロマトグラフィーにより精製して、純粋な表題化合物(0.07g、0.016mmol)を白色粉末として12%の単離収率で得る。
1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 3.20 (s, 2H), 2.60 (t, J = 8.9 Hz, 1H), 2.31 - 2.15 (m, 1H), 2.08 - 1.90 (m, 1H), 1.82 - 1.66 (m, 4H), 1.64 - 1.14 (m, 15H), 1.08 - 0.93 (m, 1H), 0.92 - 0.83 (m, 1H), 0.78 (s, 3H), 0.68 (s, 3H).
【0081】
実施例5:1-((3R,5S,8R,9S,10S,13S,14S,17S)-3-ヒドロキシ-3-((メトキシ-d3)メチル)-10,13-ジメチルヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル-17-d)-2-(1H-イミダゾール-1-イル)エタン-1-オン-2-d
【化13】
イミダゾール(0.161g、2.37mmol、3.0当量)のTHF(2mL)中の溶液に、水素化リチウム(0.021g、2.45mmol、3.1当量)を加える。溶液を、0℃にて2時間Ar下撹拌する。THF(2.5mL)中の実施例3工程3の化合物(0.353g、0.79mmol、1.0当量)を、反応混合物に0℃にて5分間にわたってAr下ゆっくり加える。0℃にて3時間撹拌した後、反応混合物を氷浴中D
2O(1.5mL)によりクエンチする。溶媒を蒸発させ、カラムクロマトグラフィーにより精製して、純粋な表題化合物(0.097g、0.253mmol)を白色粉末として29%の単離収率で得る。
1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 7.56 (s, 1H), 7.14 (s, 1H), 7.04 - 6.84 (m, 1H), 5.05 - 4.43 (m, 1H), 3.20 (s, 2H), 2.33 - 2.14 (m, 1H), 1.97 (dt, J = 11.6, 3.4 Hz, 1H), 1.82 - 1.66 (m, 4H), 1.57 (m, 3H), 1.50 - 1.15 (m, 12H), 1.06 - 0.92 (m, 1H), 0.91 - 0.82 (m, 1H), 0.78 (s, 3H), 0.68 (s, 3H).
【0082】
実施例6:1-((3R,5S,8R,9S,10S,13S,14S,17S)-3-ヒドロキシ-3-((メトキシ-d3)メチル)-10,13-ジメチルヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル-17-d)-2-(1H-イミダゾール-1-イル-d3)エタン-1-オン-2-d
【化14】
イミダゾール-d4(0.194g、2.69mmol、3.0当量)のTHF(2mL)中の溶液に、水素化リチウム(0.023g、2.78mmol、3.1当量)を加える。溶液を、0℃にて2時間Ar下撹拌する。THF(2.5mL)中の実施例3工程3の化合物(0.4g、0.89mmol、1.0当量)を、反応混合物に0℃にて5分間にわたってAr下ゆっくり加える。0℃にて3時間撹拌した後、反応混合物を氷浴中D
2O(1.5mL)によりクエンチする。溶媒を蒸発させ、カラムクロマトグラフィーにより精製して、純粋な11(0.17g、0.389mmol)を白色粉末として44%の単離収率で得る。
1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 4.92 - 4.38 (m, 1H), 3.20 (s, 2H), 2.36 - 2.06 (m, 1H), 1.97 (dt, J = 11.8, 3.4 Hz, 1H), 1.85 - 1.63 (m, 4H), 1.64 - 1.14 (m, 11H), 0.99 (m, 1H), 0.86 (m, 1H), 0.78 (s, 3H), 0.68 (s, 3H).
【0083】
実施例7:1-((3R,5S,8R,9S,10S,13S,14S,17S)-3-ヒドロキシ-3-((メトキシ-d3)メチル-d2)-10,13-ジメチルヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル)-2-(1H-イミダゾール-1-イル)エタン-1-オン
【化15】
工程1:1-((3R,5S,8R,9S,10S,13S,14S,17S)-10,13-ジメチルヘキサデカヒドロスピロ[シクロペンタ[a]フェナントレン-3,2'-オキシラン]-17-イル-3',3'-d2)エタン-1-オン
【0084】
トリメチルスルホキソニウム-d9ヨウ化物(2.17g、9.48mmol)およびカリウムtert-ブトキシド(1.13g、10.1mmol)のd6-DMSO(26.0mL)中のスラリー溶液を、60℃にて1時間Ar下加熱する。5α-プレグナン-3,20-ジオン(2.0g、6.3mmol)を反応混合物に加え、室温にて一晩撹拌する。反応完了後、反応混合物をクエンチし、氷浴中水(60mL)により沈殿させる。得られた沈殿をろ過により収集し、水(50mL×2)で洗浄する。残渣をさらにMeOH/アセトン(4/1)からの再結晶化および真空下乾燥により精製して、純粋な最終生成物(2.08g、6.2mmol)を白色粉末として99%の収率および91.5%の同位体純度で得る。1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 2.56 (t, J = 9.0 Hz, 1H), 2.28 - 2.09 (m, 3H), 2.08 - 1.98 (m, 2H), 1.89 (t, J = 13.5 Hz, 1H), 1.80 - 1.62 (m, 5H), 1.57 (m, 2H), 1.50 - 1.06 (m, 10H), 0.97 (m, 1H), 0.92 - 0.73 (m, 5H), 0.63 (s, 3H).
【0085】
工程2:1-((3R,5S,8R,9S,10S,13S,14S,17S)-3-ヒドロキシ-3-((メトキシ-d3)メチル-d2)-10,13-ジメチルヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル-17-d)エタン-1-オン-2,2,2-d3
【0086】
水酸化ナトリウム(0.49g、12.2mmol)をメタノール-d4(20mL)中に溶解させ、30分間Ar下加熱還流する。工程1の化合物(2.04g、6.12mmol)を、メタノール溶液へ室温にてAr下ゆっくり加え、溶液を40℃にて一晩加熱する。反応混合物をクエンチし、氷浴中水(60mL)により沈殿させる。得られた沈殿をろ過し、水(25mL×2)で洗浄する。固体ケーキをさらに、酢酸エチル/ヘキサン(1/1)からの再結晶化および真空下乾燥により精製して、純粋な生成物(1.43g、3.85mmol)を白色粉末として63%の収率で得る。1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 2.23 - 2.12 (m, 1H), 2.01 (dt, J = 12.1, 3.4 Hz, 1H), 1.80 - 1.51 (m, 7H), 1.49 - 1.12 (m, 11H), 1.06 - 0.92 (m, 1H), 0.89 - 0.79 (m, 1H), 0.77 (s, 3H), 0.62 (s, 3H).
【0087】
工程3:2-ブロモ-1-((3R,5S,8R,9S,10S,13S,14S,17S)-3-ヒドロキシ-3-((メトキシ-d3)メチル-d2)-10,13-ジメチルヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル-17-d)エタン-1-オン-2,2-d2
【0088】
工程2の化合物(1.43g、3.85mmol)のMeOH(12mL)中の溶液に、3滴のHBr水溶液(48%)を加える。臭素(0.209mL、4.04mmol)をMeOH(8mL)中に溶解させ、暗所で反応混合物に滴下する。反応完了後、反応混合物を水(60mL)によりクエンチする。酢酸エチル(40ml×2)を加えて、最終生成物を抽出し、有機相を合わせ、水(30mL×2)で再度洗浄する。溶媒を蒸発させ、真空下一晩乾燥して、純粋な生成物(1.70g、3.78mmol)を白色粉末として98%の収率で得る。1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 2.24 - 2.12 (m, 1H), 1.92 (dt, J = 11.8, 3.5 Hz, 1H), 1.79 - 1.64 (m, 4H), 1.62 - 1.50 (m, 3H), 1.50 - 1.15 (m, 11H), 1.04 - 0.92 (m, 1H), 0.90 - 0.80 (m, 1H), 0.77 (s, 3H), 0.65 (s, 3H).
【0089】
工程4:1-((3R,5S,8R,9S,10S,13S,14S,17S)-3-ヒドロキシ-3-((メトキシ-d3)メチル-d2)-10,13-ジメチルヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル)-2-(1H-イミダゾール-1-イル)エタン-1-オン
【0090】
イミダゾール(0.182g、2.7mmol、3.0当量)のTHF(1.5mL)中の溶液に、水素化リチウム(0.023g、2.76mmol、3.1当量)を加える。溶液を、0℃にて2時間Ar下撹拌する。THF(3.0mL)中の工程3の化合物(0.4g、0.89mmol、1.0当量)を、反応混合物に0℃にて5分間にわたってAr下ゆっくり加える。0℃にて3時間撹拌した後、反応混合物を氷浴中メタノール(3.0mL)によりクエンチする。溶媒を蒸発させ、残渣をシリカゲルのフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、対応する生成物を得て、その後セミ分取HPLCにより再度精製して、最終生成物(0.063g、0.145mmol)を白色粉末として16%の単離収率で得る。1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 7.49 (s, 1H), 7.13 (s, 1H), 6.88 (s, 1H), 4.97 - 4.45 (m, 2H), 2.60 (t, J = 9.0 Hz, 1H), 2.27 - 2.10 (m, 1H), 1.98 (d, J = 11.9, 3.4 Hz, 1H), 1.80 - 1.66 (m, 4H), 1.62 - 1.52 (m, 3H), 1.51 - 1.16 (m, 12H), 1.06 - 0.93 (m, 1H), 0.90 - 0.81 (m, 1H), 0.78 (s, 3H), 0.68 (s, 3H).
【0091】
実施例8:1-((3R,5S,8R,9S,10S,13S,14S,17S)-3-ヒドロキシ-3-((メトキシ-d3)メチル-d2)-10,13-ジメチルヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル)-2-(1H-イミダゾール-1-イル-2-d)エタン-1-オン
【化16】
イミダゾール-d1(0.184g、2.67mmol、3.0当量)のTHF(2.0mL)中の溶液に、水素化リチウム(0.023g、2.76mmol、3.1当量)を加える。溶液を、0℃にて2時間Ar下撹拌する。THF(3.0mL)中の実施例7工程3の化合物(0.4g、0.89mmol、1.0当量)を、反応混合物に0℃にて5分間にわたってAr下ゆっくり加える。0℃にて3時間撹拌した後、反応混合物を氷浴中メタノール(3.0mL)によりクエンチする。溶媒を蒸発させ、残渣をシリカゲルのフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、対応する生成物を得て、その後セミ分取HPLCにより再度精製して、最終生成物(0.163g、0.375mmol)を白色粉末として42%の単離収率で得る。
1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 7.28 (s, 1H), 6.88 (s, 1H), 5.06 - 4.50 (m, 2H), 2.60 (t, J = 8.9 Hz, 1H), 2.34 - 2.12 (m, 1H), 1.98 (dt, J = 11.8, 3.4 Hz, 1H), 1.80 - 1.67 (m, 4H), 1.64 - 1.51 (m, 3H), 1.51 - 1.15 (m, 11H), 1.07 - 0.94 (m, 1H), 0.91 - 0.82 (m, 1H), 0.78 (s, 3H), 0.68 (s, 3H).
【0092】
実施例9:1-((3R,5S,8R,9S,10S,13S,14S,17S)-3-ヒドロキシ-3-((メトキシ-d3)メチル-d2)-10,13-ジメチルヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル)-2-(1H-イミダゾール-1-イル-d3)エタン-1-オン
【化17】
イミダゾール-d4(0.144g、2.00mmol、3.0当量)のTHF(2.0mL)中の溶液に、水素化リチウム(0.0174g、2.07mmol、3.1当量)を加える。溶液を、0℃にて2時間Ar下撹拌する。THF(3.0mL)中の実施例7工程3の化合物(0.3g、0.667mmol、1.0当量)を、反応混合物に0℃にて5分間にわたってAr下ゆっくり加える。0℃にて3時間撹拌した後、反応混合物を氷浴中メタノール(3.0mL)によりクエンチする。溶媒を蒸発させ、残渣をシリカゲルのフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、対応する生成物を得て、その後セミ分取HPLCにより再度精製して、最終生成物(0.147g、0.337mmol)を白色粉末として51%の単離収率で得る。
1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 4.87 - 4.36 (m, 2H), 2.60 (t, J = 8.9 Hz, 0H), 2.34 - 2.07 (m, 2H), 1.98 (dt, J = 11.7, 3.4 Hz, 0H), 1.80 - 1.65 (m, 2H), 1.64 - 1.52 (m, 1H), 1.51 - 1.15 (m, 11H), 1.06 - 0.94 (m, 1H), 0.90 - 0.82 (m, 1H), 0.78 (s, 3H), 0.68 (s, 3H).
【0093】
実施例10:1-((3R,5S,8R,9S,10S,13S,14S,17S)-3-ヒドロキシ-3-((メトキシ-d3)メチル-d2)-10,13-ジメチルヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル-17-d)-2-(1H-イミダゾール-1-イル)エタン-1-オン
【化18】
イミダゾール(0.136g、2.00mmol、3.0当量)のTHF(2.0mL)中の溶液に、水素化リチウム(0.0174g、2.07mmol、3.1当量)を加える。溶液を、0℃にて2時間Ar下撹拌する。THF(2.5mL)中の実施例7工程3の化合物(0.3g、0.667mmol、1.0当量)を、反応混合物に0℃にて5分間にわたってAr下ゆっくり加える。0℃にて3時間撹拌した後、反応混合物を氷浴中D
2O(1.50mL)によりクエンチする。溶媒を蒸発させ、残渣をシリカゲルのフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、対応する生成物を得て、その後セミ分取HPLCにより再度精製して、最終生成物(0.140g、0.322mmol)を白色粉末として48%の単離収率で得る。
1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 7.60 (s, 1H), 7.15 (s, 1H), 6.89 (s, 1H), 5.20 - 4.42 (m, 2H), 2.41 - 2.11 (m, 1H), 2.05 - 1.87 (m, 1H), 1.80 - 1.65 (m, 4H), 1.63 - 1.52 (m, 3H), 1.50 - 1.15 (m, 13H), 1.06 - 0.93 (m, 1H), 0.91 - 0.83 (m, 1H), 0.78 (s, 3H), 0.68 (s, 3H).
【0094】
実施例11:1-((3R,5S,8R,9S,10S,13S,14S,17S)-3-ヒドロキシ-3-((メトキシ-d3)メチル-d2)-10,13-ジメチルヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル-17-d)-2-(1H-イミダゾール-1-イル-2-d)エタン-1-オン
【化19】
イミダゾール-d1(0.102g、1.48mmol、3.0当量)のTHF(2.0mL)中の溶液に、水素化リチウム(0.0128g、1.52mmol、3.1当量)を加える。溶液を、0℃にて2時間Ar下撹拌する。THF(3.0mL)中の実施例7工程3の化合物(0.221g、0.492mmol、1.0当量)を、反応混合物に0℃にて5分間にわたってAr下ゆっくり加える。0℃にて3時間撹拌した後、反応混合物を氷浴中D
2O(1.50mL)によりクエンチする。溶媒を蒸発させ、残渣をシリカゲルのフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、対応する生成物を得て、その後セミ分取HPLCにより再度精製して、最終生成物(0.156g、0.358mmol)を白色粉末として73%の単離収率で得る。
1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 7.51 - 7.30 (m, 1H), 7.13 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 5.76 - 5.03 (m, 2H), 2.26 - 2.14 (m, 1H), 2.10 (d, J = 12.2 Hz, 1H), 1.90 - 1.80 (m, 1H), 1.79 - 1.73 (m, 1H), 1.73 - 1.64 (m, 2H), 1.65 - 1.46 (m, 5H), 1.44 - 1.15 (m, 10H), 1.07 - 0.94 (m, 1H), 0.91 - 0.83 (m, 1H), 0.77 (s, 3H), 0.70 (s, 3H).
【0095】
実施例12:1-((3R,5S,8R,9S,10S,13S,14S,17S)-3-ヒドロキシ-3-((メトキシ-d3)メチル-d2)-10,13-ジメチルヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル-17-d)-2-(1H-イミダゾール-1-イル-d3)エタン-1-オン
【化20】
イミダゾール-d4(0.144g、2.00mmol、3.0当量)のTHF(2.0mL)中の溶液に、水素化リチウム(0.0174g、2.07mmol、3.1当量)を加える。溶液を、0℃にて2時間Ar下撹拌した。THF(3.0mL)中の実施例7工程3の化合物(0.300g、0.667mmol、1.0当量)を、反応混合物に0℃にて5分間にわたってAr下ゆっくり加える。0℃にて3時間撹拌した後、反応混合物を氷浴中D
2O(1.50mL)によりクエンチする。溶媒を蒸発させ、残渣をシリカゲルのフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、対応する生成物を得て、その後セミ分取HPLCにより再度精製して、最終生成物(0.160g、0.366mmol)を白色粉末として55%の単離収率で得る。
1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 5.04 - 4.56 (m, 2H), 2.30 - 2.13 (m, 1H), 1.98 (dt, J = 11.8, 3.4 Hz, 1H), 1.82 - 1.66 (m, 4H), 1.63 - 1.52 (m, 3H), 1.51 - 1.14 (m, 11H), 1.07 - 0.93 (m, 1H), 0.93 - 0.83 (m, 1H), 0.78 (s, 3H), 0.68 (s, 3H).
【0096】
実施例13:3α-ヒドロキシ-21-(1'-イミダゾリル)-3β-メトキシメチル-5α-プレグナン-20-オンの他の類似体
本開示の範囲内の化合物の他の重水素化類似体は、上記の従来技術の参照手順に従って、通常の試薬の代わりに重水素化試薬を用いることにより、当業者に公知の適切な手段によって製造され得る。例えば:
【化21】
【0097】
実施例14:3α-ヒドロキシ-21-(1'-イミダゾリル)-3β-メトキシメチル-5α-プレグナン-20-オンの薬理活性
3α-ヒドロキシ-21-(1'-イミダゾリル)-3β-メトキシメチル-5α-プレグナン-20-オンのインビトロ効力[[35S]-tert-ブチルビシクロホスホロチオネート(TBPS)の結合を阻害する能力]、ローターロッドTD50(試験した動物の半分が1分間回転ロッド上に留まらない用量)、および試験した動物がローターロッド試験に合格できる前の時間の長さ(作用の持続時間)を決定する。本発明の化合物のインビトロおよびインビボの活性を測定するこれらの方法は、米国特許第5,232,917号(出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)に完全に記載されている。TBPSアッセイは、化合物のインビトロの効力を示し、一方、ローターロッドアッセイは、化合物の鎮静/睡眠活性を推定する。化合物の作用の持続時間は用量に依存し、高用量で延びるため、作用の持続時間は、すべての動物がローターロッド試験に合格しなかった最低用量で測定される。IC50は、[35S]-tert-ブチルビシクロホスホロチオネート(TBPS)の特異的結合を50%阻害するステロイドの用量である。ローターロッドTD50は、半分の動物がラットのローターロッド試験に合格しない用量である。すべての動物がローターロッド試験に合格しなかった最低用量で測定される作用の持続時間は、試験したすべての動物が再度ローターロッド試験に合格するのに必要な時間である。
【0098】
結果は、式Aの化合物(実施例1)の3α-ヒドロキシ-21-(1'-イミダゾリル)-3β-メトキシメチル-5α-プレグナン-20-オンでは、TBPS IC50が138nMであり、ローターロッドTD50(po)が28mg/kgであり、作用の持続時間が140分であることを示す。
【0099】
実施例15:重水素化化合物のインビボマウス薬物動態
最初の試験において、実施例2~6の化合物を、マウスにおける標準的手順を用いて、式Aの化合物(実施例1)と比較する。各試験において、2つの化合物を1匹の動物に同時投与し、血漿および脳における相対的薬物動態を決定する。各試験化合物をポリエチレングリコール400ビヒクル中に溶解させ、10mg/kgの用量で経口投与する。試験化合物を一緒に単回経口投与した後、血漿および脳レベルを投与後0.25、0.5、1、2、4および6時間の時点で測定する。両方の化合物についての最大濃度、最大濃度までの時間および曲線下面積(AUC)の平均値を決定する。様々なペアの同時投与実験について、結果を下記表に要約する。
【表2】
【表3】
【表4】
【0100】
これらの結果は、実施例2、4および6の重水素化化合物の各々が、実施例1の重水素化されていない化合物と比較して極めて高い薬物の脳曝露を提供し、それ故に極めて高い脳/血漿AUC比も提供することを予想外にも示す。対照的に、実施例3の重水素化化合物は、実施例1の化合物と同様の血漿および脳のAUC値B/P比を提供する。これらのデータは、イミダゾール環上またはその近くでの重水素化が、脳と血漿の間の化合物の分配に好影響を及ぼし、その結果、薬物への中枢神経系の曝露が高くなることを示唆する。これは、これらの化合物は中枢神経系GABA受容体への結合を意図した神経活性ステロイドであるため、特に重要である。
【0101】
実施例16:重水素化化合物のインビトロヒト肝細胞薬物動態
実施例1、2、5および6の化合物を、標準的なインビトロヒト肝細胞安定性アッセイを2回繰り返して実施して比較する。化合物はDMSO中の1μM溶液として提供され、試験化合物の濃度を、試験化合物の添加後0.5、1.0および4.0時間にて決定する。開始時濃度のパーセンテージとして結果を下記表に示す。
【表5】
【0102】
これらの結果は、イミダゾールの重水素化の増加が肝細胞におけるこれらの化合物の代謝安定性を増加させ(実施例1を実施例2と比較)、一方、メトキシ基上の重水素化またはカルボニル基に隣接する炭素の重水素化は不明な効果を提供することを示唆する。
【国際調査報告】