(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(54)【発明の名称】置換複素環縮合γ-カルボリンの合成
(51)【国際特許分類】
C07D 471/16 20060101AFI20220202BHJP
A61K 31/4985 20060101ALI20220202BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20220202BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20220202BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20220202BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20220202BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20220202BHJP
A61P 25/06 20060101ALI20220202BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20220202BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20220202BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20220202BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
C07D471/16
A61K31/4985
A61P3/04
A61P25/22
A61P25/24
A61P25/18
A61P25/20
A61P25/06
A61P25/04
A61P15/00
A61P1/00
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534642
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(85)【翻訳文提出日】2021-08-13
(86)【国際出願番号】 US2019066889
(87)【国際公開番号】W WO2020131895
(87)【国際公開日】2020-06-25
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507401225
【氏名又は名称】イントラ-セルラー・セラピーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INTRA-CELLULAR THERAPIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】リ,ポン
【テーマコード(参考)】
4C065
4C086
【Fターム(参考)】
4C065AA07
4C065BB04
4C065CC06
4C065DD03
4C065EE03
4C065HH09
4C065JJ01
4C065KK01
4C065LL04
4C065PP03
4C065QQ04
4C086AA01
4C086AA03
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4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA05
4C086ZA08
4C086ZA12
4C086ZA18
4C086ZA66
4C086ZA70
4C086ZA81
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、置換複素環縮合γ-カルボリンの製造のための改善された方法、それらの製造に有用な中間体、およびこのような中間体および複素環縮合γ-カルボリンの製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離または塩形態の式1J
【化1】
[式中、Rは、HおよびC
1-4アルキルより選択され、Qは、4-(4-フルオロフェニル)-4-オキソブチルおよび3-(4-フルオロフェノキシ)プロピルより選択される]
で示される化合物の製造方法であって;
(a)遊離または塩形態の式1E
【化2】
[式中、
(i)Aは、Br、ClおよびIより選択され;
(ii)Rは、HおよびC
1-4アルキル(例えばメチル)より選択され;
(iii)Bは、保護基である]
で示される化合物を、
(i)周期表の第8~11属からなる群より選択される遷移金属触媒、(ii)所望により塩基、(iii)所望によりアルカリ金属またはヨウ化もしくは臭化アンモニウム(例えばヨウ化カリウムまたは臭化テトラブチルアンモニウム)、および(iv)所望により単座配位または二座配位リガンドと反応させて、遊離または塩形態の式1F
【化3】
[式中、BおよびRは、式1Eで示される化合物について定義されるとおりである]で示される中間体を得る工程;
(b)式1Fで示される化合物のピペリジン窒素を脱保護して、遊離または塩形態の式1I
【化4】
[式中、Rは、式1Fで示される化合物について定義されるとおりである]で示される化合物を得る工程;および
(c)式1Iで示される化合物のピペリジン窒素を、適切なアルキル化剤でアルキル化させて、式1Jで示される化合物を得る工程;および所望により
(d)遊離形態の式1Jで示される化合物を、塩形態、例えば酸付加塩形態(例えばトシル酸塩形態)の式1Jで示される化合物に変換する工程
を含む方法。
【請求項2】
Rが、Hである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
3-(4-フルオロフェノキシ)プロピルである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
Bが、式P-Zで示される基であり、Pが、CH
2、C(O)、C(O)OおよびS(O)
2より選択され、Zが、置換されていてもよいアルキル、アリール、アルキルアリールまたは-OR'であり、ここでR'が、アルキル、アリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
Bが、アシル基(例えばアルカノイル基またはアルコキシカルボニル基)、例えば、t-ブトキシカルボニル、フェノキシカルボニル、エトキシカルボニルまたはメトキシカルボニル、または置換されていてもよいベンジルオキシカルボニルである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
保護基Bが、エトキシカルボニルである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程(a)の遷移金属触媒が、銅触媒である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(a)の遷移金属触媒が、CuI、CuBr、CuCl、Cu(OAc)
2、Cu
2Cl
2、CuBr
2、CuSO
4、Cu
2SO
4およびCu
2Oより選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
遷移金属触媒が、CuIである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程(a)の塩基が、炭酸塩基、例えば、アルカリまたはアルカリ土類金属の炭酸塩または重炭酸塩、またはその混合物である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程(a)の塩基が、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウムまたは重炭酸カリウム、またはその混合物より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程(a)が、アルカリ金属またはヨウ化もしくは臭化アンモニウムを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(a)が、単座配位または二座配位リガンド、例えばフェノールまたはアミンリガンドより選択されるリガンドを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
リガンドが、置換されていてもよい1,2-ジアミン、置換されていてもよい1,2-アミノアルコール、DBU、DBNまたはDABCOより選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
リガンドが、DBUである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
工程(a)の溶媒が、ジオキサンまたはトルエンであり、所望により溶媒が、トルエンである、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
溶媒が、トルエンであり、式1Eで示される化合物をトルエン溶媒中の塩基(ii)と組み合わせて、混合物を共沸蒸留触媒(i)および随意的なヨウ化物(iii)および/または随意的なリガンド(iv)を加える前に、水を除去する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
式1Fで示される化合物を、混合物を室温に冷却し、その後非極性溶媒(例えば、ペンタン、n-ペンタン、ヘキサン、n-ヘキサン、ヘプタン、n-ヘプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、またはその組合せ)で混合物を希釈して、生成物を沈殿させ、続いてろ過して、沈殿を単離することにより単離する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
脱保護工程(b)が、酸性加水分解、例えば水性または非水性酸性加水分解である、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
脱保護工程(b)が、酢酸中臭化水素酸(例えば、AcOH中33%w/wHBr)の使用を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
工程(b)が、式1Iで示される化合物の酸付加塩形態(例えばHClまたはHBr塩)を得て、式1Iで示される化合物の酸付加塩形態を対応の遊離塩基形態へ変換する中和工程をさらに含み、所望により、中和工程が、中性アンモニア塩基を含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
工程(c)の適切なアルキル化剤が、一般式Q-Xで示される化合物であり、式中、Qが、4-(4-フルオロフェニル)-4-オキソブチルおよび3-(4-フルオロフェノキシ)プロピルより選択され、Xが、クロロ、ブロモ、ヨード、C
1-4アルキルスルホニルオキシ(例えばメタンスルホニルオキシ)および所望により置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ(例えば、ベンゼンスルホニルオキシ、4-ニトロベンゼンスルホニルオキシ、4-ハロスルホニルオキシなど)より選択される、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
工程(c)が、適切な塩基、例えば、有機塩基(例えばアミン塩基)または無機塩基(例えば水素化物、アルコキシド、アリールオキシド、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩または水酸化物塩基)をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
式1Jで示される化合物を、工程(c)から遊離塩基形態で得る、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
遊離塩基形態の式1Jで示される化合物を、(i)反応混合物を有機溶媒(例えば酢酸エチル)および水で希釈する工程、(ii)有機層を分離し、真空下で低容量まで濃縮する工程、および(iii)残渣を非極性溶媒(例えば、ペンタン、n-ペンタン、ヘキサン、n-ヘキサン、ヘプタン、n-ヘプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、またはその組合せ)と1~5回(例えば3回)共蒸発させ、続いて固体をろ過により回収する工程を含む方法により、反応混合物から単離する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
得られた粗生成物を、適切な溶媒(例えばアセトニトリル、アセトンおよび/またはメタノール)からの沈殿により、例えばスラリー化およびろ過により、または再結晶化によりさらに精製する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
粗生成物をアセトニトリルでスラリー化させ、ろ過し、続いて二成分溶媒混合物(例えばアセトン-メタノール混合物)から再結晶化させる、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
式1Jで示される化合物を、結晶性固体として得る、請求項25~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
遊離または塩形態の請求項1で定義されるとおりである式1Iで示される化合物の製造方法であって、(a)遊離または塩形態の請求項1で定義されるとおりである式1Eで示される化合物を、(i)周期表の第8~11属からなる群より選択される遷移金属触媒、(ii)所望により塩基、(iii)所望によりアルカリ金属またはヨウ化もしくは臭化アンモニウム(例えばヨウ化カリウムまたは臭化テトラブチルアンモニウム)、および(iv)所望により単座配位または二座配位リガンドと反応させて、遊離または塩形態の式1Fで示される中間体を形成する工程;および(b)式1Fで示される化合物のピペリジン窒素を脱保護して、遊離または塩形態の式1Iで示される化合物を得る工程を含む、方法。
【請求項30】
遊離または塩形態の式1E:
【化5】
[式中、
(iv)Aは、Br、ClおよびIより選択され;
(v)Rは、HおよびC
1-4アルキル(例えばメチル)より選択され;そして
(vi)Bは、保護基である]
で示される化合物を製造する工程であって、
(a)一般式:
【化6】
[式中、
(i)Aは、Cl、F、BrまたはIであり;そして
(ii)Rは、HまたはC
1-4アルキルである]
で示される求核性ハロゲン化アルキル、
(b)塩基、および(c)触媒でN-アルキル化させる工程であって;
該塩基が、3級アミン塩基(例えばDIPEA)であり、該触媒が、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム(例えばヨウ化または臭化テトラブチルアンモニウム)である工程
をさらに含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
遊離または塩形態の請求項1で定義されるとおりである式1Fで示される化合物の製造方法であって、(a)トルエンを含む溶媒中の、遊離または塩形態の請求項1で定義されるとおりである式1Eで示される化合物を、(i)周期表の第8~11属からなる群より選択される遷移金属触媒、(ii)塩基、(iii)所望によりアルカリ金属またはヨウ化もしくは臭化アンモニウム(例えばヨウ化カリウムまたは臭化テトラブチルアンモニウム)、および(iv)1つ以上の、DBUを含む単座または二座配位リガンドと反応させて、遊離または塩形態の式1Fで示される化合物を形成し、続いて、(b)遊離または塩形態の式1Fで示される化合物、疎水性溶媒混合物からの沈殿により単離する工程を含む、方法。
【請求項32】
実質的に純粋な形態の請求項1で定義されるとおりである式1Jで示される化合物を含む、活性医薬組成物(活性医薬成分)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2018年12月17日出願の米国仮出願第62/780,688号に基づく優先権および利益を主張する国際出願であり、当該出願の内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
(発明の分野)
本発明は、5-HT2A受容体、セロトニントランスポーター(SERT)、ドーパミンD1および/またはD2受容体シグナル伝達系に関連する経路および/またはμ-オピオイド受容体に関連する疾患の処置において有用な、本明細書に記載の特定の置換複素環縮合γ-カルボリンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
置換複素環縮合γ-カルボリンは、中枢神経系障害の処置において5-HT2受容体、特に5-HT2A受容体のアゴニストまたはアンタゴニストであることが知られている。これらの化合物は、米国特許第6,548,493号;第7,238,690号;第6,552,017号;第6,713,471号;第7,183,282号;米国再発行特許第39680号および米国再発行特許第39679号に、5-HT2A受容体調節に関連する障害、例えば肥満、不安、うつ病、精神病、統合失調症、睡眠障害、性障害、片頭痛、頭痛に関連する状態、社会恐怖症、消化管障害、例えば消化管運動の機能不全、および肥満の処置に有用な新規な化合物として記載されている。米国特許第8,309,722号および米国特許第7,081,455号はまた、置換複素環縮合γ-カルボリンの製造方法、ならびに中枢神経系障害、例えば嗜癖行動および睡眠障害の制御および予防に有用なセロトニンのアゴニストおよびアンタゴニストとしてのこれらのγ-カルボリンの使用を開示している。
【0003】
また、米国特許第8,598,119号は、精神病とうつ病性障害の組合せならびに精神病またはパーキンソン病の患者における睡眠、うつ病性および/または気分障害の処置のための特定の置換複素環縮合γ-カルボリンの使用を開示する。精神病および/またはうつ病に関連する障害に加えて、この特許出願は、ドーパミンD2受容体に影響を及ぼすことなくまたは影響を最小限とし、これによりドーパミンD2経路の高い占有率に関連する副作用、または慣用の睡眠鎮静薬(例えばベンゾジアゼピン)に関連する他の経路(例えばGABAA受容体)の副作用(薬物依存、筋緊張低下、脱力、頭痛、かすみ目、回転性めまい、悪心、嘔吐、上腹部不快感、下痢、関節痛および胸部痛の発症を含むがこれらに限定されない)なしに睡眠障害の処置に有用な、5-HT2A受容体に選択的に拮抗する、低用量でのこれら化合物の使用を開示し、請求する。米国特許第8,648,077号はまた、これら置換複素環縮合γ-カルボリンのトルエンスルホン酸付加塩結晶の製造方法を開示する。
【0004】
また、最近の証拠は、上記の置換縮合複素環γ-カルボリンが、一部、ケタミンと類似の方法で、mTOR1シグナル伝達を介する拮抗作用によって作動し得ることを示す。ケタミンは、選択的NMDA受容体アンタゴニストである。ケタミンは、一般的な心因性モノアミン(セロトニン、ノルエピネフリンおよびドーパミン)と無関係なシステムによって作用し、これが極めてより急速な作用の主な理由である。ケタミンは、シナプス外グルタミン酸作動性NMDA容体に直接拮抗し、これはまた、AMPA型グルタミン酸受容体の活性化を間接的にもたらす。下流の影響は、脳由来神経栄養因子(BDNF)およびmTORC1キナーゼ経路を含む。ケタミンと同様に、最近の証拠は、本開示のものに関連する化合物が、D1受容体の活性化を介してラット内側前頭前野錐体ニューロンにおけるNMDAおよびAMPA-誘導電流の両方を増強すること、およびこれがmTORC1シグナル伝達の増加に関連することを示唆している。国際出願第PCT/US2018/043100号は、特定の置換縮合複素環γ-カルボリンについてのこのような効果、およびそれに関連する有用な治療適応症を開示している。
【0005】
米国特許出願公開第2017/319580号は、更なる置換縮合γ-カルボリンを開示している。これらのより新規な化合物は、セロトニン受容体阻害、SERT阻害およびドーパミン受容体調節を含む、以前に開示された化合物の特異な薬理活性の多くを保持する。しかしながら、これらの化合物は、予想外にも、μオピエート受容体で著しい活性を示すことが見出された。これらの新規化合物の類似体は、例えば国際公開第2018/126140号および国際公開第2018/126143号にも開示されている。
【0006】
例えば、以下に示す式Aの化合物は、強力なセロトニン5-HT
2A受容体アンタゴニストおよびμオピエート受容体パーシャルアゴニストまたはバイアスアゴニストである。この化合物はまた、ドーパミン受容体、特にドーパミンD1受容体と相互作用する。
【化1】
式A
式Aで示される化合物は、そのD
1受容体活性により、mTOR経路を介するNMDAおよびAMPA介在性シグナル伝達も増強し得るとも考えられている。したがって、式Aの化合物は、中枢神経系障害の処置または予防に有用であるが、この特異な生化学および薬理学的プロファイルを有する更なる化合物、特に式Aの化合物と比較して微妙に変化した薬理学または薬物動態学的プロファイルを有し得るものが当該技術分野において必要とされている。
【0007】
遊離または医薬的に許容される塩形態の置換複素環縮合γ-カルボリンの製造、その製造で有用な中間体、例えばエナンチオマー的に純粋な2,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール型の中間体、および当該中間体および当該置換複素環縮合γ-カルボリンの製造方法は、米国特許第7,183,282号、第8,309,722号、第8,779,139号、第9,315,504号および第9,751,883号に開示されており、これら各々の内容全体は、出典明示により本明細書の一部とする。
【0008】
本開示は、高い純度、収率および経済効率で特定の縮合γ-カルボリンを製造する方法を提供する。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、遊離または医薬的に許容される塩形態の置換複素環縮合γ-カルボリンの製造、その製造で有用な中間体、例えばエナンチオマー的に純粋な2,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール型の中間体、および当該中間体および当該置換複素環縮合γ-カルボリンの製造方法についての改善された方法を提供する。
【0010】
本発明により製造される置換複素環縮合γ-カルボリンおよびその医薬的に許容される塩は、式1Jおよび2J:
【化2】
[式中、Rは、HおよびC
1-4アルキルより選択され、そしてQは、4-(4-フルオロフェニル)-4-オキソブチルおよび3-(4-フルオロフェノキシ)プロピルより選択される]で示される核構造によって表される。式2J(同様に本明細書全体を通して式2類)の化合物において、示される立体化学は、絶対立体化学であり、これは例えば、式2Iの化合物において4aS,9bR配置、式2Jの化合物において6bR,10aS配置に対応すると理解される。対照的に、式1J(同様に本明細書全体を通して式1類)の化合物において、示される立体化学は、2つの隣接する立体中心についての相対立体化学であると理解される。したがって、例えば上記の式1Jの化合物において、式は、6bR,4aS配置を有する化合物および6bS、4aR配置を有する化合物の両方、またはその組合せを表わす。
【0011】
いくつかの実施態様において、本発明は、例えば式1Jの化合物の製造のための中間体として、有用な、遊離または塩形態の下記の式1Iの化合物に関する:
遊離または塩形態、例えば酸付加塩形態であって、所望により固体形態の、式1I:
【化3】
[式中、
Rは、HまたはC
1-4アルキル(例えばメチル)である]
で示される化合物。
【0012】
いくつかの実施態様において、本発明はさらに、下記式の化合物に関する:
1.1 Rが、C1-C4アルキル(例えばメチル)である、式1I。
1.2 Rが、Hである、式1I。
1.3 化合物が、遊離塩基形態である、式1I、1.1または1.2。
1.4 化合物が、酸付加塩形態である、式1I、1.1または1.2。
1.5 酸付加塩形態が、ハロゲン化水素酸塩形態(例えば、塩基対酸のモル比が1:1~3:1である、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩またはフッ化水素酸塩)である、式1.4。
1.6 酸付加塩形態が、塩酸塩である、式1.5。
1.7 該化合物が、固体形態、例えば固体非晶質形態または固体結晶形態である、先行する式のいずれか。
1.8 該化合物が、他のすべての立体異性体と比較して、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは95%超、最大100%のシス立体異性体である、および/または該化合物が、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは95%超または97%超または99%超、または99.5%超、または99.9%超、最大100%のエナンチオマー過剰率(e.e.)を有する(すなわち、上記の4aS,9bRエナンチオマーについて)、先行する式のいずれか。
【0013】
いくつかの実施態様において、本発明は、例えば式2Jの化合物の製造のための中間体として、有用な、遊離または塩形態の下記の式2Iの化合物に関する:
遊離または塩形態、例えば酸付加塩形態であって、所望により固体形態の、式2I:
【化4】
[式中、
Rは、HまたはC
1-4アルキル(例えばメチル)である]
で示される化合物。
【0014】
本発明はさらに、下記式の化合物に関する:
2.1 Rが、C1-C4アルキル(例えばメチル)である、式2I。
2.2 Rが、Hである、式2I。
2.3 化合物が、遊離塩基形態である、式2I、2.1または2.2。
2.4 化合物が、酸付加塩形態である、式2I、2.1または2.2。
2.5 酸付加塩形態が、ハロゲン化水素酸塩形態(例えば、塩基対酸のモル比が1:1~3:1である、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩またはフッ化水素酸塩)である、式2.4。
2.6 酸付加塩形態が、塩酸塩である、式2.5。
2.7 該化合物が、固体形態、例えば固体非晶質形態または固体結晶形態である、先行する式のいずれか。
2.8 該化合物が、他のすべての立体異性体と比較して、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは95%超、最大100%のシス立体異性体である、先行する式のいずれか。
【0015】
本発明は、式1Jの化合物の製造プロセスにおける不純物として形成され得る、下記の化合物をさらに提供する:
【化5】
該化合物1Kおよび1Lの各々において、基Rは、HおよびC
1-4アルキル(例えばメチル)より選択され、基Qは、-O-および-(C=O)-より選択される。
【0016】
本発明は、式2Jの化合物の製造プロセスにおける不純物として形成され得る、下記の化合物をさらに提供する:
【化6】
該化合物2Kおよび2Lの各々において、基Rは、HおよびC
1-4アルキル(例えばメチル)より選択され、基Qは、-O-および-(C=O)-より選択される。
【0017】
いくつかの実施態様において、本発明は、下記スキームに示す式1Jの化合物の製造方法に関する:
【化7】
化合物1Aから1Jの各々について、独立して:
(i)Aは、Br、ClおよびIより選択され;
(ii)Rは、HおよびC
1-4アルキル(例えばメチル)より選択され;
(iii)Bは、本明細書で定義される保護基であり;そして
(iv)Qは、4-(4-フルオロフェニル)-4-オキソブチルおよび3-(4-フルオロフェノキシ)プロピルより選択され;
化合物1A、1B、1C、1D、1E、1F、1Iおよび1Jの各々は、独立して遊離塩基または塩形態(例えば酸付加塩形態)である。化合物1Bは、本質的にまたは完全にラセミのシス異性体である、すなわちほぼ等量の2つのシスエナンチオマーを含み、あらゆるトランス異性体を実質的にまたは完全に排除することが理解される。また、化合物1Cが、実質的に、本質的にまたは完全に単一のシスエナンチオマー、具体的には4aS,9bRのエナンチオマー(上記に示す)であり、反対のシスエナンチオマーまたはあらゆるトランス立体異性体を実質的にまたは完全に排除することが理解される。
【0018】
いくつかの実施態様において、本発明は、下記スキームに示す式2Jの化合物の製造方法に関する:
【化8】
化合物2Aから2Jの各々について、独立して:
(i)Aは、Br、ClおよびIより選択され;
(ii)Rは、HおよびC
1-4アルキル(例えばメチル)より選択され;
(iii)Bは、本明細書で定義される保護基であり;そして
(iv)Qは、4-(4-フルオロフェニル)-4-オキソブチルおよび3-(4-フルオロフェノキシ)プロピルより選択され;
化合物1A、1B、2C、2D、2E、2F、2Iおよび2Jの各々は、独立して遊離塩基または塩形態(例えば酸付加塩形態)である。化合物1Bは、本質的にまたは完全にラセミのシス異性体である、すなわちほぼ等量の2つのシスエナンチオマーを含み、トランス異性体を実質的にまたは完全に排除することが理解される。また、化合物2Cは、実質的に、本質的にまたは完全に単一のシスエナンチオマーであり、反対のシスエナンチオマーまたはあらゆるトランス立体異性体を実質的にまたは完全に排除することが理解される。
【0019】
いくつかの実施態様において、本発明は、下記の、遊離または塩形態の上記の式1Jの化合物の製造方法に関する:
3.1 Rが、Hである、式1J。
3.2 Rが、C1-4アルキルである、式1J。
3.3 Rが、メチルである、式1J。
3.4 Qが、4-(4-フルオロフェニル)-4-オキソブチルである、式1Jまたは3.1~3.3のいずれか。
3.5 Qが、3-(4-フルオロフェノキシ)プロピルである、式1Jまたは3.1~3.3のいずれか。
3.6 Rが、Hであり、Qが、3-(4-フルオロフェノキシ)プロピルである、式1J。
3.7 式1Jの化合物が、遊離塩基形態、例えば固体遊離塩基の形態である、式1Jまたは3.1~3.6のいずれか。
3.8 式1Jの化合物が、塩の形態である、式1Jまたは3.1~3.6のいずれか。
3.9 式1Jの化合物が、酸付加塩の形態である、式1Jまたは3.1~3.6のいずれか。
3.10 式1Jの化合物が、トシル酸塩または塩酸塩形態の形態であり、例えば、遊離塩基対酸の比が1:1~1:3である、式1Jまたは3.1~3.6のいずれか。
3.11 式1Jの化合物が、他のすべての立体異性体と比較して、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは95%超、最大100%のシス立体異性体である、式1Jまたは3.1~3.10のいずれか。
3.12 式1Jの化合物が、実質的にエナンチオマー的に純粋な形態、例えば、少なくとも90%e.e.、好ましくは少なくとも95%e.e.、または少なくとも97%e.e、または少なくとも99%e.e.、または少なくとも99.5%e.e.、または少なくとも99.9%e.e.、最大100%e.e.である、式1Jまたは3.1~3.11のいずれか。
【0020】
いくつかの実施態様において、本発明は、下記の、遊離または塩形態の上記の式2Jの化合物の製造方法に関する:
4.1 Rが、Hである、式2J。
4.2 Rが、C1-4アルキルである、式2J。
4.3 Rが、メチルである、式2J。
4.4 Qが、4-(4-フルオロフェニル)-4-オキソブチルである、式2Jまたは4.1~4.3のいずれか。
4.5 Qが、3-(4-フルオロフェノキシ)プロピルである、式2Jまたは4.1~4.3のいずれか。
4.6 Rが、Hであり、Qが、3-(4-フルオロフェノキシ)プロピルである、式2J。
4.7 式2Jの化合物が、遊離塩基形態、例えば固体遊離塩基の形態である、式2Jまたは4.1~4.6のいずれか。
4.8 式2Jの化合物が、塩の形態である、式2Jまたは4.1~4.6のいずれか。
4.9 式2Jの化合物が、酸付加塩の形態である、式2Jまたは4.1~4.6のいずれか。
4.10 式2Jの化合物が、トシル酸塩または塩酸塩形態の形態であり、例えば、遊離塩基対酸の比が1:1~1:3である、式2Jまたは4.1~4.6のいずれか。
4.11 式2Jの化合物が、他のすべての立体異性体と比較して、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは95%超、最大100%のシス立体異性体である、式2Jまたは4.1~4.10のいずれか。
4.12 式2Jの化合物が、実質的にエナンチオマー的に純粋な形態、例えば、少なくとも90%e.e.、好ましくは少なくとも95%e.e.、または少なくとも97%e.e.、または少なくとも99%e.e.、または少なくとも99.5%、または少なくとも99.9%e.e.、最大100%e.e.である、式2Jまたは4.1~4.11のいずれか。
【0021】
第1態様において、本発明は、遊離または塩形態の式1Jまたは3.1~3.12のいずれかの化合物の製造方法(方法1J)であって、(a)遊離または塩形態の式1Eの化合物を、(i)周期表の第8~11属からなる群より選択される遷移金属触媒、(ii)所望により塩基、(iii)所望によりアルカリ金属またはヨウ化もしくは臭化アンモニウム(例えばヨウ化カリウムまたは臭化テトラブチルアンモニウム)、および(iv)所望により単座配位または二座配位リガンドと反応させて、遊離または塩形態の式1Fの中間体を形成する工程;(b)式1Fの化合物のピペリジン窒素を脱保護して、遊離または塩形態の式1I(または1.1~1.8のいずれか)の化合物を得る工程;および(c)式1Iの化合物のピペリジン窒素を、適切なアルキル化剤でアルキル化させて、式1J(または3.1~3.12のいずれか)の化合物を得る工程;そして所望により(d)遊離形態の式1Jの化合物を、塩形態、例えば酸付加塩形態(例えばトシル酸塩形態)の式1J(または3.1~3.12のいずれか)の化合物に変換する工程を含む、方法を提供する。いくつかの実施態様において、方法は、式1Dの化合物をアルキル化させて、式1Eの化合物を形成する工程をさらに含む。
【0022】
第1態様の別の一実施態様において、本発明は、遊離または塩形態の式2Jまたは4.1~4.12のいずれかの化合物の製造方法(方法2J)であって、(a)遊離または塩形態の式2Eの化合物を、(i)周期表の第8~11属からなる群より選択される遷移金属触媒、(ii)所望により塩基、(iii)所望によりアルカリ金属またはヨウ化もしくは臭化アンモニウム(例えばヨウ化カリウムまたは臭化テトラブチルアンモニウム)、および(iv)所望により単座配位または二座配位リガンドと反応させて、遊離または塩形態の式2Fの中間体を形成する工程;(b)式2Fの化合物のピペリジン窒素を脱保護して、遊離または塩形態の式2I(または2.1~2.8のいずれか)の化合物を得る工程;および(b)式1Iの化合物のピペリジン窒素を、適切なアルキル化剤でアルキル化させて、式2J(または4.1~4.12のいずれか)の化合物を得る工程;そして所望により(d)遊離形態の式2Jの化合物を、塩形態、例えば酸付加塩形態(例えばトシル酸塩形態)の式2J(または4.1~4.12のいずれか)の化合物に変換する工程を含む、方法を提供する。いくつかの実施態様において、方法は、式2Dの化合物をアルキル化させて、式2Eの化合物を形成する工程をさらに含む。
【0023】
第2態様において、本発明は、遊離または塩形態の式1Iまたは1.1~1.8のいずれかの化合物の製造方法(方法1I)であって、(a)遊離または塩形態の式1Eの化合物を、(i)周期表の第8~11属からなる群より選択される遷移金属触媒、(ii)所望により塩基、(iii)所望によりアルカリ金属またはヨウ化もしくは臭化アンモニウム(例えばヨウ化カリウムまたは臭化テトラブチルアンモニウム)、および(iv)所望により単座配位または二座配位リガンドと反応させて、遊離または塩形態の式1Fの中間体を形成する工程;および(b)式1Fの化合物のピペリジン窒素を脱保護して、遊離または塩形態の式1I(または1.1~1.8)の化合物を得る工程を含む、方法を提供する。いくつかの実施態様において、方法は、式1Dの化合物をアルキル化させて、式1Eの化合物を形成する工程をさらに含む。
【0024】
第2態様の別の一実施態様において、本発明は、遊離または塩形態の式2Iまたは2.1~2.8のいずれかの化合物の製造方法(方法2I)であって、(a)遊離または塩形態の式2Eの化合物を、(i)周期表の第8~11属からなる群より選択される遷移金属触媒、(ii)所望により塩基、(iii)所望によりアルカリ金属またはヨウ化もしくは臭化アンモニウム(例えばヨウ化カリウムまたは臭化テトラブチルアンモニウム)、および(iv)所望により単座配位または二座配位リガンドと反応させて、遊離または塩形態の式2Fの中間体を形成する工程;および(b)式2Fの化合物のピペリジン窒素を脱保護して、遊離または塩形態の式2I(または2.1~2.8のいずれか)の化合物を得る工程を含む、方法を提供する。いくつかの実施態様において、方法は、式2Dの化合物をアルキル化させて、式2Eの化合物を形成する工程をさらに含む。
【0025】
第3態様において、本発明は、遊離または塩形態の式1Fの化合物の製造方法(方法1F)であって、(a)遊離または塩形態の式1Eの化合物を、(i)周期表の第8~11属からなる群より選択される遷移金属触媒、(ii)所望により塩基、(iii)所望によりアルカリ金属またはヨウ化もしくは臭化アンモニウム(例えばヨウ化カリウムまたは臭化テトラブチルアンモニウム)、および(iv)所望により単座配位または二座配位リガンドと反応させて、遊離または塩形態の式1Fの中間体を形成する工程を含む、方法を提供する。いくつかの実施態様において、方法は、式1Dの化合物をアルキル化させて、式1Eの化合物を形成する工程をさらに含む。
【0026】
第3態様の別の一実施態様において、本発明は、遊離または塩形態の式2Fの化合物の製造方法(方法2F)であって、(a)遊離または塩形態の式2Eの化合物を、(i)周期表の第8~11属からなる群より選択される遷移金属触媒、(ii)所望により塩基、(iii)所望によりアルカリ金属またはヨウ化もしくは臭化アンモニウム(例えばヨウ化カリウムまたは臭化テトラブチルアンモニウム)、および(iv)所望により単座配位または二座配位リガンドと反応させて、遊離または塩形態の式2Fの中間体を形成する工程を含む、方法を提供する。いくつかの実施態様において、方法は、式2Dの化合物をアルキル化させて、式2Eの化合物を形成する工程をさらに含む。
【0027】
別の態様において、本開示は、式1Jまたは3.1~3.12のいずれかの化合物の製造プロセスにおける、式1Iまたは1.1以降のいずれかの化合物および/または式1Fの化合物の使用を提供する。
【0028】
別の態様において、本開示は、式2Jまたは4.1~4.12のいずれかの化合物の製造プロセスにおける、式2Iまたは2.1以降のいずれかの化合物および/または式1Fの化合物の使用を提供する。
【0029】
別の態様において、本開示は、実質的に純粋な形態の式1Jまたは2Jの化合物を含む活性医薬組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
一態様において、本発明は、遊離または塩形態の式1Iまたは1.1~1.8のいずれかの化合物の製造方法(方法1I)であって、(a)遊離または塩形態の式1Eの化合物を、(i)周期表の第8~11属からなる群より選択される遷移金属触媒、(ii)所望により塩基、(iii)所望によりアルカリ金属またはヨウ化もしくは臭化アンモニウム(例えばヨウ化カリウムまたは臭化テトラブチルアンモニウム)、および(iv)所望により単座配位または二座配位リガンドと反応させて、遊離または塩形態の式1Fの中間体を形成する工程;および(b)式1Fの化合物のピペリジン窒素を脱保護して、遊離または塩形態の式1I(または1.1~1.8のいずれか)の化合物を得る工程を含む、方法を提供する。いくつかの実施態様において、方法は、式1Dの化合物をアルキル化させて、式1Eの化合物を形成する工程をさらに含む。
【0031】
好ましくは、工程(a)および(b)を、式1Fで示される中間体を単離または精製することなく行う。いくつかの実施態様において、工程(a)および(b)を、単一の反応ベッセルまたは一連の接続された反応ベッセルにおいて連続的に行う。
【0032】
この態様の別の一実施態様において、本発明は、遊離または塩形態の式2Iまたは2.1~2.8のいずれかの化合物の製造方法(方法2I)であって、(a)遊離または塩形態の式2Eの化合物を、(i)周期表の第8~11属からなる群より選択される遷移金属触媒、(ii)所望により塩基、(iii)所望によりアルカリ金属またはヨウ化もしくは臭化アンモニウム(例えばヨウ化カリウムまたは臭化テトラブチルアンモニウム)、および(iv)所望により単座配位または二座配位リガンドと反応させて、遊離または塩形態の式2Fの中間体を形成する工程;および(b)式2Fの化合物のピペリジン窒素を脱保護して、遊離または塩形態の式2I(または2.1~2.8のいずれか)の化合物を得る工程を含む、方法を提供する。
【0033】
好ましくは、工程(a)および(b)を、式2Fで示される中間体を単離または精製することなく行う。いくつかの実施態様において、工程(a)および(b)を、単一の反応ベッセルまたは一連の接続された反応ベッセルにおいて連続的に行う。
【0034】
方法1Iまたは2Iの工程(a)の遷移金属触媒は、周期表の第8~11属より選択される遷移金属(例えば、パラジウム、銅、ニッケル、白金、ルテニウムまたはロジウム)の原子、イオン、塩または錯体であり得る。このような遷移金属触媒の例としては、米国特許第6,759,554B2号、第6,395,916B1号および第6,307,087B1号(これら各々は出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)に記載されている、銅触媒、例えばCuI、CuCl、CuBr、CuBr2、酢酸Cu(II)、Cu2Cl2、Cu2O、Cu、CuSO4、Cu2SO4、またはパラジウムまたはニッケル触媒、例えばPd/C、PdCl2、Pd(OAc)2、(CH3CN)2PdCl2、Pd[P(C6H5)3]4、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム[Pd(dba)2]、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム[Pd2(dba)3]、Ni(アセチルアセテート)2、NiCl2[P(C6H5)]2およびNi(1,5-シクロオクタジエン)2が挙げられるがこれらに限定されない。好ましい実施態様において、遷移金属触媒は、銅触媒である。特に好ましい実施態様において、該触媒は、CuIである。
【0035】
方法1Iまたは2Iの工程(a)に有用な塩基は、例として、アミン塩基(例えばトリエチルアミン、トリメチルアミン、N,N'-ジイソプロピルエチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)または1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO))、水素化物(例えば水素化ナトリウム、リチウムまたはカリウム)、アルコキシド(例えばナトリウムまたはカリウムtert-ブトキシド)、炭酸塩(例えば炭酸ナトリウムまたは重炭酸、カリウムまたは炭酸セシウム)またはリン酸塩(例えばリン酸カリウム)が挙げられる、ブレンステッド塩基またはルイス塩基であり得る。好ましい実施態様において、塩基は、アルカリまたはアルカリ土類金属(例えばナトリウム、カリウム、セシウム、バリウムなど)の炭酸塩である。特に好ましい実施態様において、該塩基は、炭酸カリウムである。
【0036】
いくつかの実施態様において、工程(a)の塩基は、下記の、それ自体が塩基性である工程(a)のリガンド、例えばアミンリガンド(例えばDBU、DBNまたは1,2-ジアミン)を用いることにより除去され得る。このような実施態様において、工程(a)は、塩基(ii)を含まないリガンド(iv)を含み得る。他の実施態様において、塩基(ii)および塩基性リガンド(iv)の両方、例えば、無機塩基(ii)(例えば炭酸カリウムまたは炭酸ナトリウム)および塩基性アミンリガンド(iv)(例えばDBU、DBNまたは1,2-ジアミン)を一緒に用いる。
【0037】
方法1Iまたは2Iの工程(a)において有用な随意的な単座または二座配位リガンドは、遷移金属触媒と結合することが知られているリガンドである。このようなリガンドの例としては、フェノールまたはアミンリガンド、例えば所望により置換されていてもよいアリールアルコール、1,2-ジアミン、1,2-アミノアルコール、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、イミダゾリウムカルベン、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、2-(アミノメチル)ピリジン、4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン、4,7-ジメチル-1,10-フェナントロリン、5-メチル-1,10-フェナントロリン、5-クロロ-1,10-フェナントロリン、および5-ニトロ-1,10-フェナントロリンが挙げられるがこれらに限定されない。フェノールまたはアミンリガンドの例としては、米国特許第6,759,554B2号;第6,395,916B1号;第6,307,087B1号、Klapars, A. et al., J. Am. Chem. Soc. (2002) 124, 7421-7428; Kang, S., et al., Synlett, 3, 427-430 (2002);Sugahara, M. and Ukita, T., Chem. Pharm. Bull. (1997) 45, 719-721(これら各々は出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている、2-フェニルフェノール、2,6-ジメチルフェノール、2-イソプロピルフェノール、1-ナフトール、8-ヒドロキシキノリン、8-アミノキノリン、DBU、DBN、DABCO、2-(ジメチルアミノ)エタノール、N,N-ジエチルサリチルアミド、2-(ジメチルアミノ)グリシン、N,N,N',N'-テトラメチル-1,2-ジアミノエタン、4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン、4,7-ジメチル-1,10-フェナントロリン、5-メチル-1,10-フェナントロリン、5-クロロ-1,10-フェナントロリン、5-ニトロ-1,10-フェナントロリン、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、2-(アミノメチル)ピリジン、(メチルイミノ)二酢酸、シス-1,2-ジアミノシクロヘキサン、トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン、シス-およびトランス-1,2-ジアミノシクロヘキサンの混合物、シス-N,N'-ジメチル-1,2-ジアミノシクロヘキサン、トランス-N,N'-ジメチル-1,2-ジアミノシクロヘキサン、シス-およびトランス-N,N'-ジメチル-1,2-ジアミノシクロヘキサンの混合物、シス-N-トリル-1,2-ジアミノシクロヘキサン、トランス-N-トリル-1,2-ジアミノシクロヘキサン、シス-およびトランス-N-トリル-1,2-ジアミノシクロヘキサンの混合物、エタノールアミン、1,2-ジアミノエタン、N,N'-ジメチル-1,2-ジアミノエタン、N,N-ジメチル-2-ヒドロキシベンズアミド、N,N-ジエチル-2-ヒドロキシベンズアミド、フルオロ-N,N-ジエチル-2-ヒドロキシベンズアミド、クロロ-N,N'-ジエチル-2-ヒドロキシベンズアミド、(2-ヒドロキシフェニル)(ピロリジン-1-イル)メタノン、ビフェニル-2-オール、2-ピリジルフェノール、1,2-ベンゼンジアミン、アンモニア、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドおよび1-メチル-2-ピロリジノンが挙げられるがこれらに限定されない。特に好ましい実施態様において、該リガンドは、DBU、DBN、N,N'-ジメチル-1,2-ジアミノエタン、トランス-N,N'-ジメチル-1,2-ジアミノシクロヘキサンまたはN-ブチルエチレンジアミンである。いかなる理論にも拘束されるものではないが、リガンドは、金属触媒を安定化および可溶化させることにより反応を促進すると考えられる。
【0038】
いくつかの実施態様において、式1Fまたは2Fで示される粗製化合物は、銅を除去するために試薬で処理される。例えば、粗製化合物を有機溶媒に懸濁および/または溶解させ、塩基性水溶液(例えばアンモニア水溶液)で洗浄し得る。あるいは、粗製固体を塩基性水溶液(例えばアンモニア水溶液)で直接洗浄し得る。
【0039】
方法1Iまたは2Iの脱保護工程(b)の条件は、必然的に保護基Bの選択によって異なり、例えば酸または塩基の触媒作用または接触水素化を含み得る。したがって、例えば、保護剤が、アシル基、例えばアルカノイル基またはアルコキシカルボニル基(例えばエトキシカルボニル)またはアロイル基である場合、脱保護を、例えば、アルカリ金属の水酸化物、例えば水酸化リチウム、カリウムまたはナトリウムなどの塩基との加水分解により達成し得る。あるいは、アシル保護剤、例えばt-ブトキシカルボニル基を、例えば、塩酸、硫酸またはリン酸またはトリフルオロ酢酸などの適切な酸で処理することによって除去し得る。アリールメトキシカルボニル保護剤、例えばベンジルオキシカルボニル基を、例えば、白金またはパラジウム炭素などの触媒上での水素化によって、またはホウ素トリス(トリフルオロアセテート)などのルイス酸での処理によって除去し得る。該脱保護工程に有用な試薬の更なる例については、Theodora Greenによる「Protective Groups in Organic Synthesis」(出版社:John Wiley & Sons)参照。
【0040】
好ましい実施態様において、保護基Bは、カルバメート保護基、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、またはt-ブトキシカルボニルである。該実施態様において、方法1Iまたは2Iの工程(b)は、好ましくは、酸性水溶液、例えば塩酸水溶液または臭化水素酸水溶液を用いて、または非水性酸性媒体、例えば有機溶媒(例えばメタノール、THF、ジオキサン、ジエチルエーテル、酢酸、またはその混合物)中の塩化水素または臭化水素を用いて、または強有機酸(例えばニートトリフルオロ酢酸(TFA)、またはジオキサンなどの適切な有機溶媒中のTFA)を用いて実施され得る。好ましい実施態様において、非水性酸性媒体は、有機溶媒(例えば酢酸)中に溶解した臭化水素酸である。
【0041】
いくつかの実施態様において、方法1Iまたは2Iの工程(b)は、酸性条件下で実施され、式1Iまたは2Iの化合物は、酸付加塩形態で得られる。例えば、反応は、塩酸または臭化水素酸を用いて実施され、式1Iまたは2Iの化合物を塩酸塩または臭化水素酸塩として得ることができる。他の実施態様において、方法1Iまたは2Iの工程(b)は、酸性条件下で実施され、反応混合物は、遊離塩基形態の式1Iまたは2Iの化合物を得るために、適切な塩基での中和または塩基性化に供される。該中和または塩基性化を実施するための適切な塩基には、所望により水溶液(例えば水酸化ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液またはアンモニア水溶液)中の、無機塩基、例えば水酸化物、酸化物、炭酸塩および重炭酸塩(例えばアンモニウム、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩基、例えばNaOH、KOH、LiOH、NH4OH、Ca(OH)2、CaO、MgO、Na2CO3、K2CO3、Li2CO3、NaHCO3、KHCO3、LiHCO3、CaCO3、MgCO3、(NH4)2CO3など)が含まれる。
【0042】
いくつかの実施態様において、方法1Iまたは2Iは、それぞれ、式1Iまたは2Iの化合物を、結晶性遊離塩基または結晶性酸付加塩として、例えば塩酸塩または臭化水素酸塩として提供する。本発明者らは、予想外にも、方法1Iまたは2I、または方法5.1~5.52の1つ以上を用いることにより、これらの化合物を製造する従来技術の方法と比較して、遷移金属不純物(例えば銅)によるコンタミネーションレベルが極めて低い式1Iまたは2Iの化合物が生成されることを発見した。例えば、本発明の方法を用いることにより、約50ppm未満の銅または約10ppm未満の銅または約5ppm未満の銅を含む式1Iまたは2Iの化合物を生成することができる。
【0043】
第1態様の特定の実施態様において、本開示は以下を提供する:
5.1 式1Iまたは2Iの化合物が、それぞれ、式1.1~1.8または2.1~2.8のいずれかによる化合物である、方法1Iまたは2I。
5.2 式1Eまたは2Eの化合物の置換基Aが、Br、ClおよびIより選択される、方法1Iまたは2I。
5.3 Aが、Brである、方法5.2。
5.4 式1E、1Fおよび1Iまたは2E、2Fおよび2Iの化合物の置換基Rが、C1-4アルキル(例えばメチル)である、方法1Iもしくは2Iまたは5.1以降のいずれか。
5.5 式1E、1Fおよび1I、または2E、2Fおよび2Iの化合物の置換基Rが、Hである、方法1Iもしくは2Iまたは5.1以降のいずれか。
5.6 式1Eおよび1Fまたは2Eおよび2Fの化合物の保護基Bが、式P-Zで示される基であり、Pが、CH2、C(O)、C(O)OおよびS(O)2より選択され、Zが、置換されていてもよいアルキル、アリール、アルキルアリールまたは-OR'であり、ここでR'が、アルキル、アリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルである、方法1Iもしくは2Iまたは5.1以降のいずれか。
5.7 保護基Bが、アシル基(例えばアルカノイル基またはアルコキシカルボニル基)、例えば、t-ブトキシカルボニル、フェノキシカルボニル、エトキシカルボニルまたはメトキシカルボニル、または置換されていてもよいベンジルオキシカルボニルである、方法5.6。
5.8 保護基Bが、エトキシカルボニルである、方法5.7。
5.9 保護基Bが、置換されていてもよいベンジル基、例えば、ベンジル、4-メトキシベンジルまたは2,4-ジメトキシベンジルである、方法5.6。
5.10 工程(a)の遷移金属触媒が、銅触媒である、方法1Iもしくは2Iまたは5.1以降のいずれか。
5.11 工程(a)の遷移金属触媒が、CuI、CuBr、CuCl、Cu(OAc)2、Cu2Cl2、CuBr2、CuSO4、Cu2SO4およびCu2Oより選択される、方法5.10。
5.12 工程(a)の遷移金属触媒が、CuI、CuBrおよびCuClより選択される、方法5.11。
5.13 遷移金属触媒が、CuIである、方法5.12。
5.14 工程(a)の遷移金属触媒が、0.01~0.50当量、例えば0.05~0.40当量、0.10~0.30当量または0.15~0.25当量、または約0.20当量の量で存在する、方法1Iもしくは2Iまたは5.1以降のいずれか。
5.15 工程(a)の塩基が、例えばアミン、アルコキシド、炭酸およびリン酸、およびその混合物より選択される、ブレンステッド塩基である、方法1Iもしくは2Iまたは5.1以降のいずれか。
5.16 工程(a)の塩基が、炭酸塩基、例えば、アルカリまたはアルカリ土類金属の炭酸塩または重炭酸塩、またはその混合物である、方法5.15。
5.17 工程(a)の塩基が、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウムまたは重炭酸カリウム、またはその混合物より選択される、方法5.16。
5.18 工程(a)の塩基が、所望により1.5~3当量、例えば2~2.5当量、または約2.2当量の量で、炭酸カリウムを含む、方法5.17。
5.19 工程(a)が、塩基(ii)を含まない、例えばアルコキシド、炭酸、リン酸または他の無機塩基を含まない、方法1Iもしくは2Iまたは5.1以降のいずれか。
5.20 工程(a)が、例えばヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム、または臭化もしくはヨウ化テトラアルキルアンモニウム(例えば、臭化またはヨウ化テトラブチルアンモニウム)より選択される、アルカリ金属またはヨウ化もしくは臭化アンモニウムを含む、方法1Iもしくは2Iまたは5.1以降のいずれか。
5.21 工程(a)が、ヨウ化カリウムを含む、方法5.20。
5.22 工程(a)が、単座配位または二座配位リガンド、例えばフェノールまたはアミンリガンドより選択されるリガンドを含む、方法1Iもしくは2Iまたは5.1以降のいずれか。
5.23 リガンドが、置換されていてもよい1,2-ジアミン、置換されていてもよい1,2-アミノアルコール、DBU、DBNまたはDABCOより選択される、方法5.22。
5.24 リガンドが、DBUである、方法5.23。
5.25 工程(a)のリガンドが、0.01~0.50当量、例えば0.05~0.45当量、0.10~0.40当量または0.20~0.30当量、または約0.25当量の量で存在する、方法1Iもしくは2Iまたは5.1以降のいずれか。
5.26 工程(a)の溶媒が、ジオキサンまたはトルエンである、方法1Iもしくは2Iまたは5.1以降のいずれか。
5.27 工程(a)の溶媒が、トルエンである、方法5.26。
5.28 式1Eまたは2Eの化合物をトルエン溶媒中の塩基(ii)と組み合わせて、混合物を共沸蒸留触媒(i)および随意的なヨウ化物(iii)および/または随意的なリガンド(iv)を加える前に、水を除去する、方法5.27。
5.29 式1Fまたは2Fの化合物を、混合物を室温に冷却し、その後非極性溶媒(例えば、ペンタン、n-ペンタン、ヘキサン、n-ヘキサン、ヘプタン、n-ヘプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、またはその組合せ)で混合物を希釈して、生成物を沈殿させ、続いてろ過して、沈殿を単離することにより単離する、方法1Iもしくは2Iまたは5.1以降のいずれか。
5.30 反応溶媒が、トルエンであり、加えられる非極性溶媒が、ヘプタン(例えばヘプタンまたはn-ヘプタン)である、方法5.29。
5.31 沈殿した固体(例えばろ過ケーキ)を、水性無機塩基(例えば、水性NaOH、KOHまたはNH4OH)でスラリー化させ、続いてろ過し、水で洗浄する、方法5.29または5.30。
5.32 脱保護工程(b)が、酸または塩基介在性切断反応、加水分解反応(例えば酸または塩基触媒される)または水素化反応である、方法1Iもしくは2Iまたは5.1以降のいずれか。
5.33 脱保護工程(b)が、酸性加水分解、例えば水性または非水性酸性加水分解である、方法5.32。
5.34 酸性加水分解が、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸および硝酸より選択される酸、所望により過剰な酸(例えば10~30モル当量の酸酸)を含む、方法5.33。
5.35 酸性加水分解が、非水性溶媒、例えば、酢酸、エーテルまたはTHF中の酸を含む、方法5.33。
5.36 酸性加水分解が、水性溶媒、例えば水または水-アルコール混合物(例えば、水-メタノールまたは水-エタノール)中の酸を含む、方法5.33。
5.37 脱保護工程(b)が、酢酸中臭化水素酸(例えば、AcOH中33%w/wHBr)の使用を含む、方法5.35。
5.38 脱保護工程が、臭化水素酸または臭化水素の使用を含み、該工程が、初期または最終生成物を、極性溶媒(例えば、酢酸エチル、メチルtert-ブチルエーテル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、またはその組合せ、またはその1つ以上を連続して)で洗浄して、生成物から臭素を除去することをさらに含む、方法5.32~5.37のいずれか。
5.39 工程(b)が、式1Iまたは2Iの化合物の酸付加塩形態(例えばHClまたはHBr塩)を得て、式1Iまたは2Iの化合物の酸付加塩形態を対応の遊離塩基形態へ変換する中和工程をさらに含む、方法5.32~5.38のいずれか。
5.40 中和工程が、式1Iまたは2Iの化合物の酸付加塩形態を、無機塩基(例えば、アンモニウム、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、アルコキシド、炭酸塩または重炭酸塩)と混合することを含む、方法5.39。
5.41 無機塩基が、水酸化アンモニウム、所望により水性アンモニア(例えば、25%w/v水性アンモニア)の形態である、方法5.40。
5.42 脱保護工程(b)が、例えば有機溶媒中の有機塩基(例えばピペリジン)を含む、塩基介在性切断である、方法5.32。
5.43 脱保護工程(b)が、水素化反応、例えば、遷移金属触媒(例えば白金またはパラジウム)および水素を含む接触水素である、方法5.32。
5.44 式1Iまたは2Iの化合物(例えば、化合物1.1~1.8または2.1~2.8のいずれか)を、固体、例えば非晶質または結晶性固体(遊離塩基または酸付加塩形態のいずれかで)として得る、方法1Iもしくは2Iまたは5.1以降のいずれか。
5.45 式1Iまたは2Iの化合物(例えば、化合物1.1~1.8または2.1~2.8のいずれか)を、実質的に純粋な形態、例えば90重量%超の純度または95重量%超の純度、最大100重量%の純度で得る、方法1Iもしくは2Iまたは5.1以降のいずれか。
5.46 式1Iまたは2Iの化合物(例えば、化合物1.1~1.8または2.1~2.8のいずれか)を、遊離形態(すなわち遊離塩基形態)で、所望により結晶性固体として得る、方法1Iもしくは2Iまたは5.1以降のいずれか。
5.47 式1Iまたは2Iの化合物(例えば、化合物1.1~1.8または2.1~2.8のいずれか)を、塩形態、例えば酸付加塩形態で得る、方法1Iもしくは2Iまたは5.1以降のいずれか。
5.48 式1Iまたは2Iの化合物(例えば、化合物1.1~1.8または2.1~2.8のいずれか)を、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヒドロヨウ化物、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩またはメタンスルホン酸塩より選択される付加塩として、例えば1:1~2:1の塩基対酸のモル比で得る、方法5.47。
5.49 式1Iまたは2Iの化合物(例えば、化合物1.1~1.8または2.1~2.8のいずれか)を、塩酸塩または臭化水素酸塩、例えば、固体の塩酸塩または臭化水素酸塩または結晶性固体の塩酸塩または臭化水素酸塩として得る、方法5.48。
5.50 方法を、式1Fまたは2Fで示される中間体を単離または精製することなく行う、方法1Iもしくは2Iまたは5.1以降のいずれか。
5.51 工程(a)および(b)を、単一の反応ベッセルまたは一連の接続された反応ベッセルにおいて連続的に行う、方法1Iもしくは2Iまたは5.1以降のいずれか。
5.52 式1Iまたは2Iの化合物(例えば、化合物1.1~1.8または2.1~2.8のいずれか)を、約50ppm未満の銅、約10ppm未満の銅または約5ppm未満の銅を有する形態で得る、方法1Iもしくは2Iまたは5.1以降のいずれか。
5.53 式1Iまたは2Iの化合物のピペリジン窒素を、本明細書に記載の適切なアルキル化剤でアルキル化せて、遊離または塩形態の式1Jまたは2Jの化合物を得る、工程(c)をさらに含む、方法1Iもしくは2Iまたは5.1以降のいずれか。
5.54 式1Jまたは2Jの化合物を、工程(c)から遊離塩基形態で得て、該方法が、遊離塩基形態の式1Jまたは2Jの化合物を、塩形態、例えば酸付加塩形態(例えばトシル酸塩形態)の式1Jまたは2Jの化合物へ変換する工程(d)をさらに含む、方法5.53。
5.55 式3.1~3.12または4.1~4.12で記載される、式1Jまたは2Jの化合物をそれぞれ提供する、方法5.53または5.54。
5.56 本明細書全体の任意の実施態様に記載される、
a. 遊離または塩形態の2-ブロモフェニルヒドラジンを遊離または塩形態、所望により水和物形態の4-ピペリジノンと、所望により酢酸溶媒中で、反応させることにより、式1Aの化合物を製造する工程;
b. (a)式1Aの化合物を式1Bの化合物へ還元すること(所望により、該還元が、トリエチルシランおよびメタンスルホン酸との式1Aの化合物の反応を含む)、および(b)キラル塩分割またはキラルクロマトグラフィーにより式1Bの立体異性体を分離して、式1Cまたは2Cの化合物を得ること(所望により、該キラル塩分割が、S-マンデル酸を用いる単回分割工程で行われる)により、遊離または塩形態の式1Cまたは2Cの化合物を製造する工程;
c. 式1Cまたは2Cの化合物のピペリジンアミンを保護剤で塩基の存在下保護することにより、遊離または塩形態の式1Dまたは2Dの化合物を製造する工程;
d. 式1Dまたは2Dの化合物を(a)求核性ハロゲン化アルキルおよび(b)塩基でN-アルキル化させることにより、遊離または塩形態の式1Dまたは2Dの化合物を製造する工程
のいずれかまたはすべてをさらに含む、方法1Iもしくは2Iまたは5.1~5.55のいずれか。
【0044】
別の態様において、本発明は、遊離または塩形態の式1Jまたは3.1~3.12のいずれかの化合物の製造方法(方法1J)であって、(a)遊離または塩形態の式1Eの化合物を、(i)周期表の第8~11属からなる群より選択される遷移金属触媒、(ii)所望により塩基、(iii)所望によりアルカリ金属またはヨウ化もしくは臭化アンモニウム(例えばヨウ化カリウムまたは臭化テトラブチルアンモニウム)、および(iv)所望により単座配位または二座配位リガンドと反応させて、遊離または塩形態の式1Fの中間体を形成する工程;(c)式1Fの化合物のピペリジン窒素を脱保護して、遊離または塩形態の式1I(または1.1~1.8のいずれかのいずれか)の化合物を得る工程;および(c)式1Iの化合物のピペリジン窒素を、適切なアルキル化剤でアルキル化させて、式1J(または3.1~3.12のいずれか)の化合物を得る工程;そして所望により(d)遊離形態の式1Jの化合物を、塩形態、例えば医薬的に許容される塩形態、例えば酸付加塩形態(例えばトシル酸塩形態)の式1J(または3.1~3.12のいずれか)の化合物に変換する工程を含む、方法を提供する。いくつかの実施態様において、方法は、式1Dの化合物をアルキル化させて、式1Eの化合物を形成する工程をさらに含む。
【0045】
第2態様の別の一実施態様において、本発明は、遊離または塩形態の式2Jまたは4.1~4.15のいずれかの化合物の製造方法(方法2J)であって、(a)遊離または塩形態の式2Eの化合物を、(i)周期表の第8~11属からなる群より選択される遷移金属触媒、(ii)所望により塩基、(iii)所望によりアルカリ金属またはヨウ化もしくは臭化アンモニウム(例えばヨウ化カリウムまたは臭化テトラブチルアンモニウム)、および(iv)所望により単座配位または二座配位リガンドと反応させて、遊離または塩形態の式2Fの中間体を形成する工程;(b)式2Fの化合物のピペリジン窒素を脱保護して、遊離または塩形態の式2I(または2.1~2.8のいずれか)の化合物を得る工程;および(c)式1Iの化合物のピペリジン窒素を、適切なアルキル化剤でアルキル化させて、式2J(または4.1~4.12のいずれか)の化合物を得る工程;そして所望により(d)遊離形態の式2Jの化合物を、塩形態、例えば医薬的に許容される塩形態、例えば酸付加塩形態(例えばトシル酸塩形態)の式2J(または4.1~4.12のいずれか)の化合物に変換する工程を含む、方法を提供する。いくつかの実施態様において、方法は、式2Dの化合物をアルキル化させて、式2Eの化合物を形成する工程をさらに含む。
【0046】
すべての点で、方法1Jおよび2Jの工程(a)および(b)は、方法5.1~5.56のいずれかをそれぞれ含む、方法1Iおよび2Iについての上記の説明に従って実施し得る。
【0047】
方法1Jまたは2Jの工程(c)に適切なアルキル化剤は、一般式Q-Xの化合物を含み、式中、Qは、4-(4-フルオロフェニル)-4-オキソブチルおよび3-(4-フルオロフェノキシ)プロピルより選択され、Xは、任意の適切な脱離基である。脱離基は、求核置換反応に適することが当該技術分野で知られている実体である。いくつかの実施態様において、Xは、クロロ、ブロモ、ヨード、C1-4アルキルスルホニルオキシ(例えばメタンスルホニルオキシ)および所望により置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ(例えば、ベンゼンスルホニルオキシ、4-ニトロベンゼンスルホニルオキシ、4-ハロスルホニルオキシなど)より選択される。
【0048】
いくつかの実施態様において、方法1Jまたは2Jの工程(c)は、適切な塩基をさらに含む。適切な塩基としては、有機塩基、例えばアミン塩基(例えば、アンモニア、トリエチルアミン、N,N'-ジイソプロピルエチルアミンまたは4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)、1,5-ジアザビシクル[4.3.0]-ノナ-5-エン(DBN)、1,5-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-5-エン(DBU));または無機塩基、例えば水素化物(例えば水素化ナトリウム、リチウムまたはカリウム)、アルコキシド(例えばナトリウム、カリウムまたはリチウムt-ブトキシド)、アリールオキシド(例えば、リチウム、ナトリウムまたはカリウムフェノキシド)、またはアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩または水酸化物(例えば、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、セシウムまたはバリウムの炭酸塩、重炭酸塩、水酸化物またはリン酸塩)が挙げられるがこれらに限定されない。所望により、工程(c)は、無機ヨウ化物塩、例えばヨウ化カリウムまたはヨウ化ナトリウム、好ましくはヨウ化カリウムをさらに含み得る。適切な溶媒は、極性プロトン性および/または極性非プロトン性溶媒、例えばアセトニトリル、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、イソプロパノール、およびその混合物を含む。好ましい実施態様において、工程(c)は、アルキル化剤の1-クロロ-3-(4-フルオロフェノキシ)プロパン、およびトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、炭酸カリウムおよび炭酸ナトリウムより選択される塩基と、式1Iまたは2Iの化合物の反応を含む。塩基を用いる場合、塩基の量は、触媒量(例えば0.01当量)から過剰量(例えば10当量以上)までの任意の量である。いくつかの実施態様において、反応は、1.0~10.0当量の塩基、例えば3.0~10.0または4.0~6.0当量の塩基で実施される。
【0049】
方法1Jまたは2Jの工程(c)から得られる式1Jまたは2Jの化合物は、遊離塩基または塩として得ることができる。適切な塩形態は、酸付加塩、例えばリン酸塩、硫酸塩、ハロゲン化水素酸塩(例えば塩酸塩)およびカルボン酸塩(例えば酢酸塩またはギ酸塩)を含む。式1Jまたは2Jの化合物の遊離塩基形態または塩形態のいずれかを、任意の適切な方法によって、例えば単離または精製し得る。いくつかの実施態様において、工程(c)の反応は、過剰な塩基の存在下で実施され、これによって、反応混合物からの式1Jまたは2Jの化合物の遊離塩基の単離を可能にし得る(例えば、水/有機抽出、および/またはクロマトグラフィー、および/または適切な溶媒からの沈殿、および/または反応溶媒の蒸発による)。いくつかの実施態様において、工程(c)の反応は、塩基の非存在下で、または1当量未満の塩基(例えば0.5当量以下または触媒量)の存在下で実施される。特に塩基の非存在下で実施される場合、工程(c)は、式1Jまたは2Jの化合物の酸付加塩を生成し得て、ここで、塩の酸成分は、アルキル化剤に由来する。例えば、式1Iまたは2Iの化合物が上記で定義されるアルキル化剤QXで処理され、付加塩基が非存在下である場合、得られた式1Jまたは2Jの化合物は、基Xに対応する酸付加塩として得ることができる(例えば、Xがクロロである場合、式1Jまたは2Jの化合物を、塩酸塩付加塩形態で得ることができる)。いくつかの実施態様では、工程(c)の反応中に等モルまたは中程度に過剰の塩基が用いられるが、精製前または精製中に、過剰の酸(例えば塩酸)が加えられ、酸付加塩(例えば塩酸塩)としての式1Jまたは2Jの化合物を生じる。
【0050】
いくつかの実施態様において、方法1Jまたは2Jの工程(c)は、遊離形態(すなわち遊離塩基形態)の式1Jまたは2Jの化合物を生成し、この形態は、単離および/または精製され、その後所望により、工程(d)を、該式1Jまたは2Jの化合物の遊離塩基形態を、該式1Jまたは2Jの化合物の塩形態、例えば医薬的に許容される塩形態(例えば酸付加塩)に変換するために行う。いくつかの実施態様において、該式1Jまたは2Jの化合物のこの酸付加塩形態は、さらに単離および/または精製される。理論に拘束されるものではないが、遊離形態の式1Jまたは2Jの化合物を最初に単離し、続いてこの化合物を塩形態(例えば酸付加塩形態)に変換することにより、より高い純度および/または加工性の最終生成物(式1Jまたは2Jの化合物)が得られると考えられる。
【0051】
方法1Jまたは2Jの工程(d)は、式1Jまたは2Jの化合物の遊離塩基形態を、水もしくは有機溶媒または2つの混合物中で適切な酸と反応させて、例えば本発明の式1Jまたは2Jの医薬的に許容される酸付加塩を得ることにより実施され得る。適切な酸は、当技術分野で一般的に知られており、例えば塩酸またはトルエンスルホン酸を含み得る。一価の酸(例えば塩酸またはトルエンスルホン酸)が用いられる場合、工程(d)は、用いられる酸対遊離塩基のモル当量(例えば、1:1の酸対遊離塩基から1:2の酸対遊離塩基まで)に応じて、一付加塩または二付加塩を生じ得る。
【0052】
この態様の特定の実施態様において、本開示は以下を提供する:
6.1 式1Iまたは2Iの化合物が、それぞれ、式1.1~1.8または2.1~2.8のいずれかによる化合物である、方法1Jまたは2J。
6.2 式1Eまたは2Eの化合物の置換基Aが、Br、ClおよびIより選択される、方法1Jまたは2J。
6.3 Aが、Brである、方法6.2。
6.4 式1E、1Fおよび1Iまたは2E、2Fおよび2Iの化合物の置換基Rが、C1-4アルキル(例えばメチル)である、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.5 式1E、1Fおよび1I、または2E、2Fおよび2Iの化合物の置換基Rが、Hである、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.6 式1Eおよび1Fまたは2Eおよび2Fの化合物の保護基Bが、式P-Zで示される基であり、Pが、CH2、C(O)、C(O)OおよびS(O)2より選択され、Zが、置換されていてもよいアルキル、アリール、アルキルアリールまたは-OR'であり、ここでR'が、アルキル、アリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルである、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.7 保護基Bが、アシル基(例えばアルカノイル基またはアルコキシカルボニル基)、例えば、t-ブトキシカルボニル、フェノキシカルボニル、エトキシカルボニルまたはメトキシカルボニル、または置換されていてもよいベンジルオキシカルボニルである、方法6.6。
6.8 保護基Bが、エトキシカルボニルである、方法6.7。
6.9 保護基Bが、置換されていてもよいベンジル基、例えば、ベンジル、4-メトキシベンジルまたは2,4-ジメトキシベンジルである、方法6.6。
6.10 工程(a)の遷移金属触媒が、銅触媒である、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.11 工程(a)の遷移金属触媒が、CuI、CuBr、CuCl、Cu(OAc)2、Cu2Cl2、CuBr2、CuSO4、Cu2SO4およびCu2Oより選択される、方法6.10。
6.12 工程(a)の遷移金属触媒が、CuI、CuBrおよびCuClより選択される、方法6.11。
6.13 遷移金属触媒が、CuIである、方法6.12。
6.14 工程(a)の遷移金属触媒が、0.01~0.50当量、例えば0.05~0.40当量、0.10~0.30当量または0.15~0.25当量、または約0.20当量の量で存在する、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.15 工程(a)の塩基が、例えばアミン塩基、アルコキシド、炭酸およびリン酸、およびその混合物より選択される、ブレンステッド塩基である、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.16 工程(a)の塩基が、炭酸塩基、例えば、アルカリまたはアルカリ土類金属の炭酸塩または重炭酸塩、またはその混合物である、方法6.15。
6.17 工程(a)の塩基が、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウムまたは重炭酸カリウム、またはその混合物より選択される、方法6.16。
6.18 工程(a)の塩基が、所望により1.5~3当量、例えば2~2.5当量、または約2.2当量の量で、炭酸カリウムを含む、方法6.17。
6.19 工程(a)が、塩基(ii)を含まない、例えばアルコキシド、炭酸、リン酸または他の無機塩基を含まない、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.20 工程(a)が、例えばヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウムまたは臭化リチウム、または臭化もしくはヨウ化テトラアルキルアンモニウム(例えば、臭化またはヨウ化テトラブチルアンモニウム)より選択される、アルカリ金属またはヨウ化もしくは臭化アンモニウムを含む、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.21 工程(a)が、ヨウ化カリウムを含む、方法6.20。
6.22 工程(a)が、単座配位または二座配位リガンド、例えばフェノールまたはアミンリガンドより選択されるリガンドを含む、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.23 リガンドが、置換されていてもよい1,2-ジアミン、置換されていてもよい1,2-アミノアルコール、DBU、DBNまたはDABCOより選択される、方法6.22。
6.24 リガンドが、DBUである、方法6.23。
6.25 工程(a)のリガンドが、0.01~0.50当量、例えば0.05~0.45当量、0.10~0.40当量または0.20~0.30当量、または約0.25当量の量で存在する、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.26 工程(a)の溶媒が、ジオキサンまたはトルエンである、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.27 工程(a)の溶媒が、トルエンである、方法6.26。
6.28 式1Eまたは2Eの化合物をトルエン溶媒中の塩基(ii)と組み合わせて、混合物を共沸蒸留触媒(i)および随意的なヨウ化物(iii)および/または随意的なリガンド(iv)を加える前に、水を除去する、方法6.27。
6.29 式1Fまたは2Fの化合物を、混合物を室温に冷却し、その後非極性溶媒(例えば、ペンタン、n-ペンタン、ヘキサン、n-ヘキサン、ヘプタン、n-ヘプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、またはその組合せ)で混合物を希釈して、生成物を沈殿させ、続いてろ過して、沈殿を単離することにより単離する、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.30 反応溶媒が、トルエンであり、加えられる非極性溶媒が、ヘプタン(例えばヘプタンまたはn-ヘプタン)である、方法6.29。
6.31 沈殿した固体(例えばろ過ケーキ)を、水性無機塩基(例えば、水性NaOH、KOHまたはNH4OH)でスラリー化させ、続いてろ過し、水で洗浄する、方法6.29または6.30。
6.32 脱保護工程(b)が、酸または塩基介在性切断反応、加水分解反応(例えば酸または塩基触媒される)または水素化反応である、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.33 脱保護工程(b)が、酸性加水分解、例えば水性または非水性酸性加水分解である、方法6.32。
6.34 酸性加水分解が、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸および硝酸より選択される酸、所望により過剰な酸(例えば10~30モル当量の酸酸)を含む、方法6.33。
6.35 酸性加水分解が、非水性溶媒、例えば、酢酸、エーテルまたはTHF中の酸を含む、方法6.33。
6.36 酸性加水分解が、水性溶媒、例えば水または水-アルコール混合物(例えば、水-メタノールまたは水-エタノール)中の酸を含む、方法6.33。
6.37 脱保護工程(b)が、酢酸中臭化水素酸(例えば、AcOH中33%w/wHBr)の使用を含む、方法6.35。
6.38 脱保護工程が、臭化水素酸または臭化水素の使用を含み、該工程が、初期または最終生成物を、極性溶媒(例えば、酢酸エチル、メチルtert-ブチルエーテル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、またはその組合せ、またはその1つ以上を連続して)で洗浄して、生成物から臭素を除去することをさらに含む、方法6.32~6.37のいずれか。
6.39 工程(b)が、式1Iまたは2Iの化合物の酸付加塩形態(例えばHClまたはHBr塩)を得て、式1Iまたは2Iの化合物の酸付加塩形態を対応の遊離塩基形態へ変換する中和工程をさらに含む、方法6.32~6.38のいずれか。
6.40 中和工程が、式1Iまたは2Iの化合物の酸付加塩形態を、無機塩基(例えば、アンモニウム、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、アルコキシド、炭酸塩または重炭酸塩)と混合することを含む、方法6.39。
6.41 無機塩基が、水酸化アンモニウム、所望により水性アンモニア(例えば、25%w/v水性アンモニア)の形態である、方法6.40。
6.42 脱保護工程(b)が、例えば有機溶媒中の有機塩基(例えばピペリジン)を含む、塩基介在性切断である、方法6.32。
6.43 脱保護工程(b)が、水素化反応、例えば、遷移金属触媒(例えば白金またはパラジウム)および水素を含む接触水素である、方法6.32。
6.44 式1Iまたは2Iの化合物(例えば、化合物1.1~1.8または2.1~2.8のいずれか)を、固体、例えば非晶質または結晶性固体(遊離塩基または酸付加塩形態のいずれかで)として得る、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.45 式1Iまたは2Iの化合物(例えば、化合物1.1~1.8または2.1~2.8のいずれか)を、実質的に純粋な形態、例えば90重量%超の純度または95重量%超の純度、98.5%超の純度、最大100重量%の純度で得る、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.46 式1Iまたは2Iの化合物(例えば、化合物1.1~1.8または2.1~2.8のいずれか)を、遊離形態(すなわち遊離塩基形態)で、所望により結晶性固体として得る、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.47 式1Iまたは2Iの化合物(例えば、化合物1.1~1.8または2.1~2.8のいずれか)を、塩形態、例えば酸付加塩形態で得る、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.48 式1Iまたは2Iの化合物(例えば、化合物1.1~1.8または2.1~2.8のいずれか)を、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヒドロヨウ化物、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩またはメタンスルホン酸塩より選択される付加塩として、例えば1:1~2:1の塩基対酸のモル比で得る、方法6.48。
6.49 式1Iまたは2Iの化合物(例えば、化合物1.1~1.8または2.1~2.8のいずれか)を、塩酸塩または臭化水素酸塩、例えば、固体の塩酸塩または臭化水素酸塩または結晶性固体の塩酸塩または臭化水素酸塩として得る、方法6.44。
6.50 方法を、式1Fまたは2Fで示される中間体を単離または精製することなく行う、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.51 工程(a)および(b)を、単一の反応ベッセルまたは一連の接続された反応ベッセルにおいて連続的に行う、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.52 式1Iまたは2Iの化合物(例えば、化合物1.1~1.8または2.1~2.8のいずれか)を、約50ppm未満の銅、約10ppm未満の銅または約5ppm未満の銅を有する形態で得る、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.53 式1Jまたは2Jの化合物が、それぞれ、式3.1~3.12または4.1~4.12の化合物である、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.54 工程(c)の適切なアルキル化剤が、一般式Q-Xの化合物であり、式中、Qが、4-(4-フルオロフェニル)-4-オキソブチルおよび3-(4-フルオロフェノキシ)プロピルより選択され、Xが、任意の適切な脱離基(例えば、求核置換反応に適することが当該技術分野で知られている官能基)である、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.55 基Xが、クロロ、ブロモ、ヨード、C1-4アルキルスルホニルオキシ(例えばメタンスルホニルオキシ)および所望により置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ(例えば、ベンゼンスルホニルオキシ、4-ニトロベンゼンスルホニルオキシ、4-ハロスルホニルオキシなど)より選択される、方法6.50。
6.56 式1Jまたは2Jの化合物の基Qが、4-(4-フルオロフェニル)-4-オキソブチルである、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.57 式1Jまたは2Jの化合物の基Qが、3-(4-フルオロフェノキシ)プロピルである、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.58 アルキル化剤が、4-クロロ-4'-フルオロブチロフェノンまたは1-クロロ-3-(4-フルオロフェノキシ)プロパンである、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.59 工程(c)が、アルキル化剤(例えば、1-クロロ-3-(4-フルオロフェノキシ)プロパン)を、1~3当量、例えば1~2当量または1.25~1.75当量、または約1.5当量、例えば1.35~1.65当量の量で含む、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.60 工程(c)が、適切な塩基、例えば、有機塩基(例えばアミン塩基)または無機塩基(例えば水素化物、アルコキシド、アリールオキシド、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩または水酸化物塩基)をさらに含む、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.61 工程(c)の塩基が、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムより選択される、方法6.56。
6.62 工程(c)の塩基が、トリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミンである、方法6.57。
6.63 トリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミンが、1~10当量、例えば2~10当量、または4~6当量、または約5当量、例えば4.5~5.5当量の量で存在する、方法6.58。
6.64 工程(c)が、無機ヨウ化物塩(例えば、ヨウ化カリウムまたはヨウ化ナトリウム)を、所望により0.75~1.5当量または1~1.25当量、または約1当量、例えば0.9~1.1当量の量で、さらに含む、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.65 工程(d)の溶媒が、ジメチルスルホキシドである、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.66 式1Jまたは2Jの化合物を、工程(c)から遊離塩基形態で得る、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.67 遊離塩基形態の式1Jまたは2Jの化合物を、(i)反応混合物を有機溶媒(例えば酢酸エチル)および水で希釈する工程、(ii)有機層を分離し、真空下で低容量まで濃縮する工程、および(iii)残渣を非極性溶媒(例えば、ペンタン、n-ペンタン、ヘキサン、n-ヘキサン、ヘプタン、n-ヘプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、またはその組合せ)と1~5回(例えば3回)共蒸発させ、続いて固体をろ過により回収する工程を含む方法により、反応混合物から単離する、方法6.66。
6.68 式1Jまたは2Jの化合物を単離するプロセスが、粗生成物を適切な溶媒(例えばアセトニトリル、アセトンおよび/またはメタノール)から沈殿させて、遊離塩基固体を得る(例えば、粗生成物を該溶媒でスラリー化させ、ろ過し、生成物固体を回収する、および/または生成物を該溶媒から再結晶化させる)工程を含む、方法6.67。
6.69 粗生成物を、5:1~1:5の溶媒比の二成分溶媒混合物、例えばアセトン-メタノールまたはアセトン-酢酸エチルから再結晶化する、方法6.68。
6.70 再結晶化溶媒が、アセトン対メタノールが2:1~4:1、例えばアセトン対メタノールが3:1である、アセトン-メタノールである、方法6.69。
6.71 方法が、粗生成物をアセトニトリルでスラリー化させ、続いて、二成分溶媒(例えばアセトン-メタノール)で再結晶化させることを含む、方法6.68~6.70のいずれか。
6.72 式1Jまたは2Jの化合物を、工程(c)から塩形態、例えば酸付加塩(例えば塩酸塩)で得る、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.73 式1Jまたは2Jの化合物を、工程(c)から遊離塩基形態で得て、該方法が、遊離塩基形態の式1Jまたは2Jの化合物を、塩形態、例えば酸付加塩形態(例えばトシル酸塩形態)の式1Jまたは2Jの化合物へ変換する工程(d)をさらに含む、方法6.66~6.71のいずれか。
6.74 工程(d)が、遊離塩基形態の式1Jまたは2Jの化合物を、酸(例えばトルエンスルホン酸)を用いて、遊離塩基に対して1.25~2.00モル当量(例えば1.3~1.6当量、または約1.5当量)の酸の量で、適切な溶媒(例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトニトリル、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン)中で処理することを含む、方法6.73。
6.75 工程(d)の温度が、25℃~100℃、例えば30℃~60℃または45℃~55℃、または50℃である、方法6.73または6.74。
6.76 酸が、トルエンスルホン酸であり、溶媒が、メチルエチルケトンである、方法6.74または6.75。
6.77 工程(d)が、固体形態、所望により結晶形態の、式1Jまたは2Jの化合物の自発的沈殿をもたらし、所望により、続いて溶媒(例えば塩形成溶媒)で洗浄する、方法6.73~6.76のいずれか。
6.78 方法が、遊離塩基形態、所望により固体結晶遊離塩基形態の、式1Jまたは2Jの化合物を提供する、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.79 方法が、酸付加塩形態、所望により固体結晶塩形態の、式1Jまたは2Jの化合物を提供する、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.80 酸付加塩形態が、トシル酸塩形態である、方法6.79。
6.81 方法が、他のすべての立体異性体と比較して、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは95%超、最大100%のシス立体異性体の、式1Jまたは2Jの化合物を提供する、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.82 方法が、実質的にエナンチオマー的に純粋な形態、例えば、少なくとも90%e.e.、好ましくは少なくとも95%e.e.、または少なくとも97%e.e.、または少なくとも99%e.e.、または少なくとも99.5%e.e.、または少なくとも99.9%e.e.、最大100%e.e.である、式1Jまたは2Jの化合物を提供する、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.83 方法が、例えばHPLCにより測定して、実質的に純粋な形態、例えば5%超純粋な形態、または97%超、98%超、98.5%超、99%超、99.5%超または99.9%超純粋な形態、最大100%純粋な形態の、式1Jまたは2Jの化合物を提供する、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.84 方法が、約50ppm未満の銅、約10ppm未満の銅または約5ppm未満の銅を有する形態の式1Jまたは2Jの化合物を提供する、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.85 方法が、少なくとも0.001重量%かつ2重量%未満の、式1Kもしくは2Kまたは1Lもしくは2Lの化合物より選択される少なくとも1つの化合物と混合された式1Jまたは2Jの化合物を提供する、方法1Iもしくは2Iまたは6.1~6.84のいずれか。
6.86 方法が、少なくとも0.10重量%かつ2重量%未満の、式1Kもしくは2Kまたは1Lもしくは2Lの化合物より選択される少なくとも1つの化合物と混合された式1Jまたは2Jの化合物を提供する、方法6.85。
6.87 方法が、少なくとも1.0重量%かつ2.0重量%未満の、式1Kまたは2Kの化合物と混合された式1Jまたは2Jの化合物を提供する、方法6.86。
6.88 方法が、少なくとも1.0重量%かつ2.0重量%未満の、式1Lまたは2Lの化合物と混合された式1Jまたは2Jの化合物を提供する、方法6.86または6.87。
6.89 方法が、1.0重量%未満の1-クロロ-3-(4-フルオロフェノキシ)プロパン)、例えば0.5%重量%未満、0.25%重量%未満、0.15%重量%未満、0.10%重量%未満、または0.08重量%未満の1-クロロ-3-(4-フルオロフェノキシ)プロパン)と混合された式1Jまたは2Jの化合物を提供する、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.90 方法が、5000ppm未満の任意の有機溶媒(例えばアセトン、アセトニトリルまたはメタノール)、例えば4000ppm未満、3000ppm未満、1500ppm未満、1000ppm未満、500ppm未満または410ppm未満の任意のこのような有機溶媒と混合された式1Jまたは2Jの化合物を提供する、方法1Iもしくは2Iまたは6.1以降のいずれか。
6.91 基RがHであり、基Qが-O-である、式1Kもしくは2Kまたは1Lもしくは2Lの化合物である、方法6.85~6.90のいずれか。
6.92 本明細書全体の任意の実施態様に記載される、
a. 遊離または塩形態の2-ブロモフェニルヒドラジンを遊離または塩形態、所望により水和物形態の4-ピペリジノンと、所望により酢酸溶媒中で、反応させることにより、式1Aの化合物を製造する工程;
b. (a)式1Aの化合物を式1Bの化合物へ還元すること(所望により、該還元が、トリエチルシランおよびメタンスルホン酸との式1Aの化合物の反応を含む)、および(b)キラル塩分割またはキラルクロマトグラフィーにより式1Bの立体異性体を分離して、式1Cまたは2Cの化合物を得ること(所望により、該キラル塩分割が、S-マンデル酸を用いる単回分割工程で行われる)により、遊離または塩形態の式1Cまたは2Cの化合物を製造する工程;
c. 式1Cまたは2Cの化合物のピペリジンアミンを保護剤で塩基の存在下保護することにより、遊離または塩形態の式1Dまたは2Dの化合物を製造する工程;
d. 式1Dまたは2Dの化合物を(a)求核性ハロゲン化アルキルおよび(b)塩基でN-アルキル化させることにより、遊離または塩形態の式1Dまたは2Dの化合物を製造する工程
のいずれかまたはすべてをさらに含む、方法1Iもしくは2Iまたは6.1~6.91のいずれか。
【0053】
別の態様において、本発明は、遊離または塩形態の式1Fの化合物の製造方法(方法1F)であって、(a)トルエンを含む溶媒中の、遊離または塩形態の式1Eの化合物を、(i)周期表の第8~11属からなる群より選択される遷移金属触媒、(ii)塩基、(iii)所望によりアルカリ金属またはヨウ化もしくは臭化アンモニウム(例えばヨウ化カリウムまたは臭化テトラブチルアンモニウム)、および(iv)1つ以上の、DBUを含む単座または二座配位リガンドと反応させて、遊離または塩形態の式1Fの化合物を形成し、続いて、(b)遊離または塩形態の式1Fの化合物、疎水性溶媒混合物からの沈殿により単離する工程を含む、方法を提供する。
【0054】
この態様の別の一実施態様において、本発明は、遊離または塩形態の式2Fの化合物の製造方法(方法2F)であって、(a)トルエンを含む溶媒中の、遊離または塩形態の式2Eの化合物を、(i)周期表の第8~11属からなる群より選択される遷移金属触媒、(ii)塩基、(iii)所望によりアルカリ金属またはヨウ化もしくは臭化アンモニウム(例えばヨウ化カリウムまたは臭化テトラブチルアンモニウム)、および(iv)1つ以上の、DBUを含む単座または二座配位リガンドと反応させて、遊離または塩形態の式2Fの化合物を形成し、続いて、(b)遊離または塩形態の式2Fの化合物、疎水性溶媒混合物からの沈殿により単離する工程を含む、方法を提供する。
【0055】
式1Fまたは2Fで示されるものなどの化合物の合成のための従来の方法には、リガンドN,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンを含むジオキサン溶媒中でのヨウ化銅の使用、または炭酸カリウム塩基およびDBUリガンドを含むトルエン溶媒中でのヨウ化銅の使用が含まれていた。しかしながら、これらの従来技術の方法は、(1)長い反応時間、(2)望ましくない不純物の形成、および/または(3)反応溶媒の蒸発中の分解による生成物の損失のうちの1つまたは複数に悩まされていた。出願人は、予想外にも、反応および精製条件の選択が収率を改善するために重要であることを発見した。特に、水が不純物の形成および分解を促進することを予想外にも見出した。溶媒としてトルエン、特に共沸蒸留したトルエンを用いることにより、生成物の収率と純度が向上する。また、疎水性炭化水素溶媒の添加によって誘発される反応混合物からの生成物の沈殿が、従来技術の方法と比較して、より純粋でより高収率の生成物を提供することを予想外にも見出した。
【0056】
方法1Fおよび2Fの特定の実施態様において、本開示は以下をさらに提供する:
7.1 工程(a)の遷移金属触媒が、銅触媒である、方法1Fまたは2F。
7.2 工程(a)の遷移金属触媒が、CuI、CuBr、CuCl、Cu(OAc)2、Cu2Cl2、CuBr2、CuSO4、Cu2SO4およびCu2Oより選択される、方法7.1。
7.3 工程(a)の遷移金属触媒が、CuI、CuBrおよびCuClより選択される、方法7.2。
7.4 遷移金属触媒が、CuIである、方法7.3。
7.5 工程(a)の遷移金属触媒が、0.01~0.50当量、例えば0.05~0.40当量、0.10~0.30当量または0.15~0.25当量、または約0.20当量の量で存在する、方法1Fもしくは2Fまたは7.1以降のいずれか。
7.6 工程(a)の塩基が、例えばアミン塩基、アルコキシド、炭酸およびリン酸、およびその混合物より選択される、ブレンステッド塩基である、方法1Fもしくは2Fまたは7.1以降のいずれか。
7.7 工程(a)の塩基が、炭酸塩基、例えば、アルカリまたはアルカリ土類金属の炭酸塩または重炭酸塩、またはその混合物である、方法7.6。
7.8 工程(a)の塩基が、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウムまたは重炭酸カリウム、またはその混合物より選択される、方法7.7。
7.9 工程(a)の塩基が、所望により1.5~3当量、例えば2~2.5当量、または約2.2当量の量で、炭酸カリウムを含む、方法7.8。
7.10 工程(a)が、例えばヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム、またはヨウ化もしくは臭化テトラアルキルアンモニウム(例えば臭化テトラブチルアンモニウム)より選択される、アルカリ金属またはヨウ化もしくは臭化アンモニウムを含む、方法1Fもしくは2Fまたは7.1以降のいずれか。
7.11 工程(a)が、ヨウ化カリウムを含む、方法7.10。
7.12 工程(a)のDBUリガンドが、0.01~0.50当量、例えば0.05~0.45当量、0.10~0.40当量または0.20~0.30当量、または約0.25当量の量で存在する、方法1Fもしくは2Fまたは7.1以降のいずれか。
7.13 式1Eまたは2Eの化合物をトルエン溶媒中の塩基(ii)と組み合わせて、混合物を共沸蒸留して、触媒(i)および随意的なヨウ化物(iii)およびリガンド(iv)を加える前に、水を除去する、方法1Fもしくは2Fまたは7.1以降のいずれか。
7.14 式1Fまたは2Fの化合物を、混合物を室温に冷却し、その後非極性溶媒(例えば、ペンタン、n-ペンタン、ヘキサン、n-ヘキサン、ヘプタン、n-ヘプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、またはその組合せ)で混合物を希釈して、生成物を沈殿させ、続いてろ過して、沈殿を単離することにより単離する、方法1Fもしくは2Fまたは7.1以降のいずれか。
7.15 反応溶媒が、トルエンであり、加えられる非極性溶媒が、ヘプタン(例えばヘプタンまたはn-ヘプタン)である、方法7.14。
7.16 沈殿した固体(例えばろ過ケーキ)を、水性無機塩基(例えば、水性NaOH、KOHまたはNH4OH)でスラリー化させ、続いてろ過し、水で洗浄する、方法7.14または7.15。
7.17 沈殿した固体を、水性水酸化アンモニウムでスラリー化させ、続いてろ過し、水で洗浄する、方法7.16。
7.18 式1Fまたは2Fの化合物を、固体、例えば非晶質または結晶性固体として得る、方法1Fもしくは2Fまたは7.1以降のいずれか。
7.19 式1Fまたは2Fの化合物を、実質的に純粋な形態、例えば90重量%超の純度または95重量%超の純度、最大100重量%の純度で得る、方法1Fもしくは2Fまたは7.1以降のいずれか。
7.20 式1Fまたは2Fの化合物を、遊離形態(すなわち、遊離塩基形態)で、所望により結晶性固体として得る、方法1Fもしくは2Fまたは7.1以降のいずれか。
7.21 式1Fまたは2Fの化合物を、約50ppm未満の銅、約10ppm未満の銅または約5ppm未満の銅を有する形態で得る、方法1Fもしくは2Fまたは7.1以降のいずれか。
【0057】
いくつかの実施態様において、方法1F、2F、1I、2I、1J、2J、または5.1~5.56または6.1~6.92、または7.1~7.21のいずれかは、遊離または塩形態の式1Cまたは2C:
【化9】
で示される化合物を製造する工程であって、
a)式1A:
【化10】
で示される化合物を、式1B:
【化11】
で示される化合物に還元させる工程であって、式中、式1A、1B、1Cおよび/または2Cの化合物の置換基Aが、Br、ClおよびIより選択される、サブ工程;および
b)式1Bの化合物の立体異性体(例えばエナンチオマー)をキラル酸分割またはキラルクロマトグラフィーにより分離して、式1Cまたは2Cを得る工程であって;所望により、式1Cまたは2Cの化合物が、他のすべての立体異性体と比較して、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは95%超、最大100%のシス立体異性体であり;および/または式1Cまたは2Cの化合物が、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは95%超または97%超または99%超または99.9%超、最大100%のエナンチオマー過剰率(e.e.)(例えば、4aS,9bRエナンチオマーまたは4aR,9bSエナンチオマー)を有する、サブ工程
を含む、工程をさらに含み得る。
【0058】
式1Aの化合物の式1Bの化合物への還元は、酸(例えば酢酸、メタンスルホン酸またはトリフルオロ酢酸)の存在下でのシラン;金属(例えば亜鉛)および無機酸(例えば塩酸);ナトリウムおよび液体アンモニア;エタノール中のナトリウム;またはボラン-アミン錯体(例えばテトラヒドロフラン中のボラン-トリエチルアミン);トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム;またはシアノ水素化ホウ素ナトリウムを含むがこれらに限定されない、還元剤の使用により達成され得る。式1Aの化合物の式1Bの化合物への変換は、式1Aの化合物を触媒、例えば酸化パラジウム、パラジウム炭素または酸化白金の存在下水素で処理する、接触水素化により達成され得る(Hudlicky, M., "Reductions in Organic Chemistry", Ellis Horwood, Ltd., Chichester, UK, 1984参照)。式2Aの化合物の式2Bの化合物への還元は、式1Aの化合物の式1Bの化合物への還元について記載したのと類似の物質、例えば酸(例えば酢酸、メタンスルホン酸またはトリフルオロ酢酸)の存在下でのシラン;金属(例えば亜鉛)および無機酸(例えば塩酸);ナトリウムおよび液体アンモニア;エタノール中のナトリウム;またはボラン-アミン錯体(例えばテトラヒドロフラン中のボラン-トリエチルアミン)の使用;トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム;またはシアノ水素化ホウ素ナトリウムの使用により達成され得る。式2Aの化合物の式2Bの化合物への変換は、式2Aの化合物を触媒、例えば酸化パラジウム、パラジウム炭素または酸化白金の存在下水素で処理する、接触水素化により達成され得る。式1Aまたは2Aの化合物の還元に特に好ましい実施態様において、還元は、トリフルオロ酢酸の存在下でのトリエチルシランの使用、またはメタンスルホン酸の存在下でのトリエチルシランの使用により達成される。特に、トリフルオロ酢酸をメタンスルホン酸に置き換えることにより、収率、反応時間、およびコスト効率が著しく向上することが予想外にも見出された。例えば、10容量のトリフルオロ酢酸の代わりに4容量のメタンスルホン酸を用いると、工程の収率を増加させながら、高価なトリエチルシラン試薬の必要性を著しく減少させ(7容量から1.3容量へ)、反応時間を45時間から2~5時間に短縮する。
【0059】
いくつかの実施態様において、式1Cまたは2Cの化合物を生成する式1Bの化合物の異性体のエナンチオマー濃縮(または分離)は、キラル酸、例えばキラルスルホン酸またはモノ-もしくはジ-カルボン酸またはその誘導体を用いる、キラル塩分割により達成され得る。このような酸の例としては、(+/-)/(R/S)酒石酸、(+/-)/(R/S)(モノ-またはジ-アセチル)酒石酸、(+/-)/(R/S)(モノ-またはジ-ベンゾイル)酒石酸、(+/-)/(R/S)(モノ-またはジ-ピバロイル)酒石酸、(+/-)/(R/S)マンデル酸、(+/-)/(R/S)アセトキシフェニル酢酸、(+/-)/(R/S)メトキシフェニル酢酸、(+/-)/(R/S)ヒドロキシマンデル酸、(+/-)/(R/S)ハロマンデル酸(例えば4-フルオロマンデル酸)、(+/-)/(R/S)乳酸、および(+/-)/(R/S)カンファースルホン酸が挙げられるがこれらに限定されない。同様に、式2Bの化合物のエナンチオマー分離は、キラル酸、例えばキラルスルホン酸またはモノ-もしくはジ-カルボン酸またはその誘導体を用いる、キラル塩分割により達成され得る。このような酸の例としては、(+/-)/(R/S)酒石酸、(+/-)/(R/S)(モノ-またはジ-アセチル)酒石酸、(+/-)/(R/S)(モノ-またはジ-ベンゾイル)酒石酸、(+/-)/(R/S)(モノ-またはジ-ピバロイル)酒石酸、(+/-)/(R/S)マンデル酸、(+/-)/(R/S)アセトキシフェニル酢酸、(+/-)/(R/S)メトキシフェニル酢酸、(+/-)/(R/S)ヒドロキシマンデル酸、(+/-)/(R/S)ハロマンデル酸(例えば4-フルオロマンデル酸)、(+/-)/(R/S)乳酸、および(+/-)/(R/S)カンファースルホン酸が挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは、式1Bまたは2Bの化合物の分割は、マンデル酸を用いて達成される。特に好ましい実施態様において、該酸は、(S)-(+)-マンデル酸である。望ましくないエナンチオマーが最初に除去される場合、分割が最適化され得る。したがって、別の好ましい実施態様において、分割は、(R)-(-)-マンデル酸を加えて、最初に望ましくないエナンチオマーを除去し、続いて(S)-(+)-マンデル酸を加えて、所望の生成物を得ることにより達成される。いくつかの実施態様において、1回のみの分割が、(S)-(+)-マンデル酸のみを用いて実施される。分離に好ましい溶媒は、メタノール、エタノール、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、およびその組合せを含む。
【0060】
別の一実施態様において、式1Bの化合物の立体異性体のエナンチオマー濃縮(または分離)は、キラルクロマトグラフィー、例えば商品名「Chiralpak(登録商標)AD(登録商標)」で販売されているアミローストリス(3,5-ジメチルフェニルカルバメート)カラムを用いて、達成され得る。式1Bの異性体を、100~450mL/分の流速にてエタノールなどの移動相で分離および溶離し得る。さらに別の一実施態様において、式1Bの異性体を、メタノールまたはイソプロピルアルコールなどの移動相で分離および溶離し得る。所望の化合物、好ましくは式1Cまたは2Cの化合物の画分を収集し、単離し得る。一実施態様において、キラルクロマトグラフィーは、Chiralpak(登録商標)AD(登録商標)、20μm、5cm ID×50cm Lのカラムおよび150mL/分の流速での100%エタノール移動相の使用を含む。別の一実施態様において、キラルクロマトグラフィーは、Chiralpak(登録商標)AD(登録商標)、20μm、11cm ID×25cm Lのカラムおよび400mL/分の流速での100%エタノール移動相の使用を含む。
【0061】
式1Jまたは2Jの化合物に到達する一連の更なるすべての反応が、化合物のジアステレオマーまたはエナンチオマー組成を実質的に変化させないため、式1Cまたは2Cの化合物を生成する式1Bの化合物の異性体の分離の際に、化合物のジアステレオマーまたはエナンチオマー組成が固定されるか、その後固定されると理解される。したがって、本開示のすべての態様および実施態様において、式1D、1E、1F、1Hおよび1Iによる中間体の各々は、実質的に、本質的にまたは完全に単一のシスエナンチオマーであり得て、反対のシス異性体またはあらゆるトランス異性体を実質的にまたは完全に排除し得る。同様に、本開示のすべての態様および実施態様において、式2D、2E、2F、2H、および2Iによる中間体の各々は、実質的に、本質的にまたは完全に単一のシスエナンチオマー、具体的には4aS,9bRのエナンチオマーであり得て、反対のシス異性体またはあらゆるトランス異性体を実質的にまたは完全に排除し得る。したがって、式1D、2D、1E、2E、1F、2F、1H、2H、1Iおよび2Iによる中間体の各々は、他のすべての立体異性体と比較して、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは95%超、最大100%のシス立体異性体であり得る;および/または少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは95%超または97%超または98.5%超または99%超または99.9%超、最大100%のエナンチオマー過剰率(e.e.)を有し得る。
【0062】
いくつかの実施態様において、方法1F、2F、1I、2I、1J、2J、または5.1~5.56または6.1~6.92、または7.1~7.21のいずれかは、2-ブロモフェニルヒドラジンを4-ピペリジノンと酸性溶媒中で反応させること(フィッシャーのインドール反応)により、遊離または塩形態の式1Aの化合物を製造する工程をさらに含み得る。いくつかの実施態様において、2-ブロモフェニルヒドラジンおよび/または4-ピペリジノンは、酸付加塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩として提供される。いくつかの実施態様において、4-ピペリジノンは、水和物、例えば一水和物として存在する。いくつかの実施態様において、生成物は、酸付加塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、トリフルオロ酢酸塩、硫酸塩または酢酸塩として得られる。反応は、任意の適切な溶媒、例えば溶解させた酸(例えばHCl、HBr、H2SO4、酢酸)を含む水性またはアルコール性溶媒(例えば水、メタノール、エタノールまたはイソプロパノール、またはそのあらゆる混合物)、または酸性溶媒(例えば酢酸、トリフルオロ酢酸)中で実施され得る。いくつかの実施態様において、収率は、生成物が難溶性である溶媒を用いることによって改善され得る。いくつかの実施態様において、収率は、溶媒としてニート酢酸を用いることによって改善される。
【0063】
いくつかの実施態様において、方法1F、2F、1I、2I、1J、2J、または5.1~5.56または6.1~6.92、または7.1~7.21のいずれかは、遊離または塩形態の式1Dまたは2D:
【化12】
[式中、
(i)Aは、Br、ClおよびIより選択され;そして
(ii)Bは、本明細書で定義される保護基である]
で示される化合物を製造する工程であって、
式1Cまたは2Cで示される化合物のピペリジンアミンを保護剤で塩基の存在下保護する工程をさらに含み得て、
ここで、該保護剤は、一般式:
【化13】
[式中、
(i)Yが、ハロゲン、イミダゾイル、ベンゾトリアゾール、N-(オキシ)スクシンイミド、アルコキシ、-O-アルキルアリールまたは-O-アリールであり;
(ii)Zが、所望により置換されていてもよいアルキル、アリール、アルキルアリールまたは-ORであり、Rが、アルキル、アリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルであり;
(iii)Pが、-CH
2-、-C(O)-、-C(O)O-またはS(O)
2である]
で示される化合物である。
【0064】
式1Cまたは2Cの化合物との反応のための適切な保護剤の例としては、ベンジルオキシカルボニルクロリド(Cbz-Cl)、トリフェニルメチルクロリド、クロロギ酸エチル、t-ブトキシカルボニル無水物(Boc
2O)、ベンジルN-スクシンイミジルカルボネート、またはベンゾイルハロゲン化物(例えばベンゾイルクロリドまたはブロミド)、(ベンジルオキシカルボニル)-ベンゾトリアゾール、ベンジルハロゲン化物(例えばベンジルクロリドまたはブロミド)、1-アレーンスルホニルクロリドまたはトルエンスルホニルクロリドが挙げられるがこれらに限定されない。式1Cまたは2Cの化合物の保護剤の別の例は、p-メトキシベンジルであり、これは、p-メトキシベンジルクロリド、p-メトキシ臭化ベンジルまたはp-メトキシベンズアルデヒドを用いて製造され得る。本明細書に記載の保護剤は、包括的であることを意図するものではない。アミン保護剤の更なる例については、主題に関する多くの一般的なテキストの1つ、例えばTheodora Greenによる「Protective Groups in Organic Synthesis」(出版社:John Wiley & Sons)(この開示は出典明示により本明細書の一部とする)参照。したがって、式1Cまたは2Cの化合物へ保護剤を添加すると、得られた化合物1Dまたは2Dの置換基Bは、一般式:
【化14】
[式中、
(i)Zが、所望により置換されていてもよいアルキル、アリール、アルキルアリールまたは-ORであり、Rが、アルキル、アリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルであり;
(ii)Pが、-CH
2-、-C(O)-、-C(O)O-またはS(O)
2である]
を有する。
【0065】
この実施態様の保護工程は、一般的に、ブチルリチウムまたは金属水素化物(例えば水素化カリウム);アルカリまたはアルカリ土類金属の重炭酸塩、炭酸塩または水酸化物(例えば炭酸カリウムまたはナトリウム、重炭酸ナトリウム、または水酸化ナトリウム)、または有機アミン(例えばトリエチルアミン)などの塩基の添加を必要とする。好ましくは、式1Dまたは2Dの化合物の保護剤は、クロロギ酸エチルまたはBOC無水物である。特に好ましい実施態様において、該保護剤は、クロロギ酸エチルであり、該塩基は、トリエチルアミンまたは水酸化ナトリウムである。
【0066】
いくつかの実施態様において、式1Cまたは2Cの化合物の式1Dまたは2Dの化合物への変換は、水とTHFの混合物中のクロロギ酸エチルおよび水酸化ナトリウムでの処理を含む。
【0067】
いくつかの実施態様において、式1Cまたは2Cの化合物のピペリジン窒素を保護するための手順は、最初に式1Cまたは2Cの化合物の塩、例えばマンデル酸塩を適切な塩基で中和し、続いて式1Cまたは2Cの化合物の遊離塩基を単離、分離または精製することを必要とする。その後、式1Cまたは2Cの化合物のピペリジン窒素を保護するための適切な試薬を、適切な塩基と共に加えて、式1Dまたは2Dの化合物を得る。中和に用いられる塩基は、保護反応に用いられる塩基であってもよく、またはそうでなくてもよい。他の実施態様において、式1Cまたは2Cの化合物の塩(例えばマンデル酸塩)は、単一の工程で式1Dまたは2Dの化合物に到達するために、過剰の塩基の存在下で適切な保護試薬と反応される。したがって、これらの実施態様において、遊離塩基形成およびアシル化反応は、同時に行われる。好ましくは、塩基は、水酸化ナトリウムである。
【0068】
いくつかの実施態様において、方法1F、2F、1I、2I、1J、2J、または5.1~5.52または6.1~6.92、または7.1~7.21のいずれかは、遊離または塩形態の式1Eまたは2E:
【化15】
[式中、
(i)Aは、Br、ClおよびIより選択され;
(ii)Rは、HおよびC
1-4アルキル(例えばメチル)より選択され;そして
(iii)Bは、本明細書で定義される保護基である]
で示される化合物を製造する工程であって、
上記の式1Dまたは2Dで示される化合物を、(a)一般式:
【化16】
[式中、
(i)Aは、Cl、F、BrまたはIであり;そして
(ii)Rは、HまたはC
1-4アルキルである]
で示される求核性ハロゲン化アルキル、
(b)塩基、および所望により(c)触媒(例えばヨウ化物または臭化物供給源)でN-アルキル化させる工程をさらに含み得る。
【0069】
更なる態様において、本開示は、上記で定義される式1Dまたは2Dの化合物を製造する方法であって、式1Dまたは2Dの化合物を(a)求核性ハロゲン化アルキル、(b)塩基および(c)触媒と適切な溶媒中で以下に記載するようにアルキル化する工程を含む方法を提供する。
【0070】
式1Dおよび2Dの化合物のアルキル化に適した求核性ハロゲン化アルキルの例としては、2-クロロアセトアミド、2-ブロモアセトアミド、N-C1-4アルキル2-クロロアセトアミド(例えばN-メチル2-クロロアセトアミド)、およびN-C1-4アルキル2-ブロモアセトアミド(例えばN-メチル2-ブロモアセトアミド)が挙げられるがこれらに限定されない。該アルキル化に有用な塩基の例としては、有機塩基、例えばアミン塩基(例えば、アンモニア、トリエチルアミン、N,N'-ジイソプロピルエチルアミンまたは4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)、1,5-ジアザビシクル[4.3.0]-ノナ-5-エン(DBN)、1,5-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-5-エン(DBU));または無機塩基、例えば水素化物(例えば水素化ナトリウム、リチウムまたはカリウム)、アルコキシド(例えばナトリウム、カリウムまたはリチウムt-ブトキシドおよびK(OAr)、Na(OAr))、またはアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩または水酸化物(例えば、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、セシウムまたはバリウムの炭酸塩、重炭酸塩、水酸化物またはリン酸塩)が挙げられるがこれらに限定されない。所望により、このようなN-アルキル化反応は、ヨウ化物または臭化物の供給源、例えばアルカリ金属またはヨウ化もしくは臭化アンモニウムの存在下で達成され得る。例えば、ヨウ化カリウムまたはヨウ化ナトリウム、または臭化カリウムまたは臭化ナトリウム、ヨウ化テトラアルキルアンモニウム(例えばヨウ化テトラブチルアンモニウム)、または臭化テトラアルキルアンモニウム(例えば臭化テトラブチルアンモニウム)。特定の実施態様において、アルキル化は、2-クロロアセトアミドまたはN-メチル2-クロロアセトアミドをN,N'-ジイソプロピルエチルアミンおよびヨウ化カリウムの存在下ジメチルアセトアミド溶媒中で用いることにより実施され得る。適切な溶媒はまた、アセトニトリル、ジオキサン、ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミドを含む。
【0071】
好ましい実施態様において、式1Dまたは2Dの化合物のアルキル化は、2-クロロアセトアミド、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、およびテトラブチルヨウ化もしくは臭化アンモニウムをジメチルアセトアミドなどの適切な中で90~110℃の温度にて用いて実施される。本発明者らは、式1Eまたは2Eの化合物を製造するための従来技術の方法のスケールアップにおいて、以前の反応温度に近い温度(すなわち約120℃以上)での発熱自己触媒分解の懸念があることを予想外にも発見した。したがって、本発明者らは、反応条件の別の設定を見つけるために、広範な再評価活動を実施した。評価した因子には、濃度、温度、試薬の投与量、モル比、溶媒の選択(例えば、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、DMSO、アセトンおよびアセトニトリル)、触媒の選択(例えば、アルカリ金属ハロゲン化物、例えばKIおよびKBr;アンモニウム塩、例えばテトラブチルヨウ化もしくは臭化アンモニウム;求核性ハロゲン化アルキルの脱離基(例えば、ClまたはBr)、および塩基の選択(例えば、アミン塩基、例えばDIPEA、水素化物塩基、例えばNaH、無機塩基、例えば炭酸ナトリウムまたはカリウム)が含まれる。ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム触媒(例えばヨウ化または臭化テトラブチルアンモニウム)を、約0.5~1.5当量、例えば0.75~1.25当量または0.9~1.10当量(例えば約1.0当量)の量で、3級アミン塩基(例えば1.5~1.9当量、例えば約1.7当量のDIPEA)および2-クロロアセトアミドと共にジメチルアセトアミド溶媒中で用いると、改善された結果を得ることを予想外にも見出した。好ましくは、温度は、90~110℃、例えば95~100℃である。この方法が従来技術の方法よりわずかに低い収率を提供するため、さらに予想外にも、酢酸エチル中の式1D/2Dおよび1E/2Eの化合物間の溶解度の違いを利用できることが見出された。したがって、好ましい実施態様において、式1Eまたは2Eの化合物を製造する工程は、粗生成物を、所望によりn-ヘキサン溶媒との混合物としての、酢酸エチル溶媒中に、再懸濁させ、5~70℃の温度にて再結晶させることにより生成物を単離する工程を含む。
【0072】
別の態様において、本開示は、実質的に純粋な形態の式1Jまたは2Jの化合物を含む活性医薬組成物(活性医薬成分)を提供する。この態様の更なる実施態様において、本開示は以下を提供する:
8.1 医薬的に許容される塩形態の式1Jまたは2Jの化合物を含む、活性医薬組成物(活性医薬成分)であって、該組成物が、少なくとも97重量%の該化合物(塩形態として測定)を、所望により固体結晶塩形態(例えばトシル酸塩形態)で含む、組成物。
8.2 化合物が、式1Jの化合物であり、ここで、Rが、Hであり、Qが、3-(4-フルオロフェノキシ)プロピルである、組成物8.1。
8.3 該化合物が、実質的にエナンチオマー的に純粋な形態、例えば、少なくとも97%e.e.、または少なくとも98%e.e.、または少なくとも98.5%e.e.、または少なくとも99%e.e.、最大100%e.e.である、組成物8.2。
8.4 組成物が、少なくとも98%、少なくとも98.5%または少なくとも99.0重量%(塩形態として測定)で化合物を含む、組成物8.2または8.3。
8.5 化合物が、遊離塩基形態、所望により固体結晶遊離塩基形態である、組成物8.2~8.4のいずれか。
8.6 組成物が、式1A、1B、1C、1D、2D、1E、2E、1F、2F、1Iまたは2Iの任意の化合物をそれぞれ2.0重量%以下、例えばそれぞれ1.0重量%以下、またはそれぞれ0.50重量%以下含む、組成物8.1~8.5のいずれか。
8.7 組成物が、式1Iまたは2Iの化合物(例えば、RがHである)を、2.0重量%以下例えば1.5重量%以下、1.0重量%以下または0.5重量%以下含む、組成物8.1~8.6のいずれか。
8.8 組成物が、50ppm以下の銅、例えば40ppm以下、25ppm以下または10ppm以下の銅、または5ppm以下の銅を含む、組成物8.1~8.7のいずれか。
8.9 組成物が、少なくとも0.001重量%かつ2重量%未満の、式1Kもしくは2Kまたは1Lもしくは2Lの化合物より選択される少なくとも1つの化合物を含む、組成物8.1~8.8のいずれか。
8.10 組成物が、式1Jまたは2Jの化合物を、少なくとも0.10重量%かつ2重量%未満の、式1Kもしくは2Kまたは1Lもしくは2Lの化合物より選択される少なくとも1つの化合物と混合されて含む、組成物8.1~8.8のいずれか。
8.11 組成物が、式1Jまたは2Jの化合物を、少なくとも1.0重量%かつ2.0重量%未満の、式1Kまたは2Kの化合物と混合されて含む、組成物8.1~8.8のいずれか。
8.12 組成物が、式1Jまたは2Jの化合物を、少なくとも1.0重量%かつ2.0重量%未満の、式1Lまたは2Lの化合物と混合されて含む、組成物8.1~8.8のいずれか。
8.13 組成物が、式1Jまたは2Jの化合物を、1.0重量%未満の1-クロロ-3-(4-フルオロフェノキシ)プロパン)、例えば0.5重量%未満、0.25重量%未満、0.15重量%未満、0.10重量%未満または0.08重量%未満の1-クロロ-3-(4-フルオロフェノキシ)プロパン)と混合されて含む、組成物8.1~8.12のいずれか。
8.14 組成物が、式1Jまたは2Jの化合物を、5000ppm未満の任意の有機溶媒(例えばアセトン、アセトニトリルまたはメタノール)、例えば4000ppm未満、3000ppm未満、1500ppm未満、1000ppm未満、500ppm未満または410ppm未満の任意のこのような有機溶媒と混合されて含む、組成物8.1~8.12のいずれか。
8.15 基RがHであり、基Qが-O-である、式1Kもしくは2Kまたは1Lもしくは2Lの化合物である、組成物8.9~8.14のいずれか。
8.16 式1Jまたは2Jの化合物が、方法1J、2Jまたは6.1~6.92に従って製造される化合物である、組成物8.1~8.15のいずれか。
【0073】
別の態様において、本開示は、組成物8.1~8.16のいずれかによる活性医薬組成物(活性医薬成分)を、1つ以上の医薬的に許容される添加剤、希釈剤または溶媒と混合して含む、医薬組成物を提供する。いくつかの実施態様において、医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、カプレット剤、散剤、ウェーハ剤、ゲル剤または滅菌注射用液剤より選択される。いくつかの実施態様において、医薬組成物は、口腔内崩壊錠である。いくつかの実施態様において、医薬組成物は、例えば筋肉内または皮下投与のための、長時間作用型注射用組成物である。いくつかの実施態様において、医薬組成物は、当量の遊離塩基の重量で測定して、1~60mgの式1Jまたは2Jの化合物(例えば、経口摂取剤形については、20~60mg、20~40mgまたは40~60mg;例えば、経口速溶解性剤形については、1~30mg、5~20mg、5~15mgまたは1~10mg)を含む。
【0074】
本明細書で用いる「活性医薬組成物」は、ヒトまたは動物対象体の身体に投与するための医薬組成物への組み込みを意図した活性医薬成分(API)を指す。そのため、APIは、活性な医学用化合物(例えば式1Jまたは2Jの化合物)およびその合成から生じる偶発的な不純物のみからなる。対照的に、「医薬組成物」は、少なくとも1つの添加剤、希釈剤または溶媒と混合されたAPIを含む。適切な添加剤、希釈剤および溶媒は、当技術分野で知られており、結合剤、崩壊剤、ポリマー、糖、賦形剤、甘味剤、接着剤、緩衝剤、放出調節剤、保護コーティング剤(例えば胃コーティング剤)、着色剤、香味剤および液体担体(例えば水、エタノール、グリセロール、ソルビトール、プロピレングリコールなど)を含むがこれらに限定されない。
【0075】
本明細書に記載の化合物およびその医薬的に許容される塩は、本明細書に記載および例示される方法を用いて、それに類似の方法によって、および化学分野で知られている方法によって製造され得る。本明細書に記載の合成方法の説明において、溶媒の選択、反応雰囲気、反応温度、実験の時間および後処理の手順を含む、提案されるすべての反応条件が、当業者によって容易に認識されるべきであるその反応について標準的な条件となるように選択されることを理解されたい。したがって、時には、任意の反応を、本明細書に記載されているより高温でまたは長いもしくは短い時間実施する必要があり得る。有機合成の当業者は、分子の様々な部分に存在する官能基が、提案される試薬および反応に適合しなければならないことを理解している。市販されていない場合、これらのプロセスの出発物質は、公知の化合物の合成と同様または類似の技術を用いた化学技術より選択される手順により製造され得る。本明細書で引用するすべての参考文献は、その全体として出典明示により本明細書の一部とする。
【0076】
用語がある実施態様について特に定義されていない限り、本明細書で用いられる用語は、下記意味を有する。
【0077】
語句「医薬的に許容される塩」は、親化合物がその酸または塩基付加塩を作ることによって修飾されている、開示化合物の誘導体を指す。医薬的に許容される塩の例としては、アミンなどの塩基性残基の無機または有機酸性塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリまたは有機塩が挙げられるがこれらに限定されない。医薬的に許容される塩は、例えば無毒性の無機酸または有機酸から形成された、親化合物の従来の無毒性塩または4級アンモニウム塩を含む。例えば、このような従来の無毒性塩は、塩酸などの無機酸に由来するもの;およびトルエンスルホン酸などの有機酸から作られた塩を含む。
【0078】
本発明の医薬的に許容される塩は、従来の化学的方法によって、塩基性または酸性部分を含む親化合物から合成し得る。一般的に、このような塩は、これらの化合物の遊離酸または塩基形態を、化学量論量の適切な塩基または酸と、水中もしくは有機溶媒中または2つの混合物中で(一般的に非水性媒体が好ましい)反応させることによって調製することができる。本開示の化合物は、2つ以上の塩基性窒素原子を有する。例えば、式1Jおよび2Jの化合物は、それぞれ2つの塩基性窒素原子(1つはN-アリールピペラジン窒素、1つは脂肪族ピペリジン窒素)を有する。ピペリジン窒素は、ピペラジン窒素より塩基性であることが理解される。これらの窒素原子のいずれかまたは両方が、反応で提供される遊離塩基対酸のモル比に応じて、一塩基、二塩基または三塩基のブレンステッド酸の酸性水素と酸付加塩を形成し得ることも理解される。結果として、「酸付加塩」などの用語が本開示で用いられるとき、このような用語は、可能な任意のこのような塩、およびそれらの組み合わせを指す。
【0079】
用語「アルキル」は、特定の数の炭素原子を有する分岐鎖および直鎖の両方の飽和脂肪族炭化水素基を含むことを意図し、例えば「C1-C4アルキル」は、1~4個の炭素原子を有するアルキルを意味する。アルキルの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、およびtert-ブチルが挙げられるがこれらに限定されない。
【0080】
本明細書で用いる「ハロ」、「ハロゲン」または「ハロゲン化物」は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを指す。したがって、「ハロゲン化アルキル」は、ヨウ化メチルまたはヨードブタンなど、上記で定義したアルキル基に結合したハロゲン基を指す。
【0081】
「アルカリ金属」は、リチウム、ナトリウムおよびカリウムを指す。「アンモニウム」は、アンモニウムイオン(NH4
+)およびテトラアルキルアンモニウムイオン(NR4
+)の両方を指し、ここでRは、C1-6アルキルラジカルである。例えば、テトラアルキルアンモニウムは、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウムおよびテトラブチルアンモニウムを含む。したがって、用語「アルカリ金属またはアンモニウムヨウ化物または臭化物」は、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウムおよびテトラアルキルアンモニウムのヨウ化物および臭化物塩を含むがこれらに限定されない。
【0082】
「シクロアルキル」は、少なくとも1つの脂肪族環を含む単環式または多環式環系を含むことを意図する。したがって、「シクロアルキル」は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニルなどを含む。シクロアルキルが多環式系である場合、このような系は、芳香族環、非芳香族環、ヘテロ芳香族環またはヘテロ非芳香族環と縮合した脂肪族を含み得る。このような例としては、オクタヒドロ-1H-インデン、2,3-ジヒドロ-1H-インデンおよび5,6,7,8-テトラヒドロキノリンが挙げられる。
【0083】
本明細書における用語「ヘテロシクロアルキル」は、O、NおよびSからなる群より選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む、少なくとも1つの脂肪族環を含む単環式または多環式環系を指す。したがって、ヘテロシクロアルキルは、ピペリジニル、ピペラジニル、2-ピロリドニル、1,2,3,4-テトラヒドロキノリニル、2H,6H-1,5,2ジチアジニル、2H-ピロリルまたは1,2,3,4-テトラヒドロ-1,8-ナフチリジンを指し得る。
【0084】
本明細書で用いる用語「アリール」は、少なくとも1つの芳香族環(すなわち、4n+2Pi電子を含み、nは整数である平面環)を含む安定な5から7員の単環式または多環式または7から14員の多環式環系を意味することを意図する。したがって、用語「アリール」は、フェニル、ナフチルおよびそれらの誘導体が含む。用語「アリール」はまた、1つ以上の芳香族環または非芳香族環またはヘテロ芳香族環と縮合した少なくとも1つの芳香族環を含む多環式環系(例えば2,3-ジヒドロ-1H-インデン)を含むことを意図する。
【0085】
本明細書で用いる用語「複素環」、「複素環式環」または「ヘテロアリール」は、独立してN、OおよびSからなる群より選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む、少なくとも1つの芳香族環を含む、安定な5から7員の単環式または多環式または7から14員の多環式環を意味することを意図する。したがって、「複素環」または「複素環式環」または「ヘテロアリール」は、単一のヘテロ芳香族環、または別のヘテロ芳香族環または非ヘテロ芳香族環もしくは非芳香族環と縮合したヘテロ芳香族環を含み得る。複素環式環は、安定な構造をもたらす任意のヘテロ原子または炭素原子にてそのペンダント基に結合し得る。本明細書に記載の複素環式環は、得られる化合物が安定である場合、炭素または窒素原子上で置換され得る。複素環またはヘテロアリール基の例としては、1H-インダゾリル、チアゾリル、フリル、ピリジル、キノリニル、ピロリル(pyrollyl)、インドリルおよび5,6,7,8-テトラヒドロキノリニルが挙げられるがこれらに限定されない。
【0086】
本明細書で用いる用語「置換」は、指定された原子の通常の原子価を超えず、置換が安定な化合物をもたらすという条件で、指定された原子上の任意の1つ以上の水素が、示された群からの選択で置き換えられることを意味する。したがって、所望により置換されていてもよいアルキルは、1つ以上の水素が、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、スルフヒドリル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル(例えばCH2Cl、CF3、CH3CH2Brなど)、アミド、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルコキシ、カルボキシ、カルボニル、シリル、アルキルアミノ、アルキルアミド、ニトロ、シアノ、ハロ、-S(O)-アルキル、-S(O)2-アルキル、R-シクロアルキル、R-ヘテロシクロアルキル、R-C(O)-、R-C(O)-OR'、R-O-、-N(R)(R')(式中、RおよびR'は、独立して、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルキルまたはヘテロシクロアルキルである)を含むがこれらに限定されない、示された基からの選択で置き換えられた、上記のアルキル基を指し得る。
【0087】
用語「分割」は、専門用語であり、キラル有機酸または塩基をラセミ混合物の成分と反応させて、ジアステレオマー塩を形成し、該塩を例えば結晶化技術によって分離することを含む、任意の手段によるそのエナンチオマーへのラセミ混合物の分離を指す。用語「キラル塩分割」は、キラル酸の使用によるそのエナンチオマーへのラセミ混合物の分離を指す。
【0088】
用語「クロマトグラフィー」は、当技術分野で周知であり、固相と相互作用させて、移動相、例えばエタノール、メタノール、アセトニトリル、水またはその混合物との混合物の成分を溶出させることによって混合物の成分を分離する技術を指す。用語「キラルクロマトグラフィー」は、固定相がキラルであるクロマトグラフィーを指す。
【0089】
用語「キラル酸」は、式1Bまたは2Bの化合物とジアステレオマー塩を形成することができる任意の光学活性酸を指す。本明細書における用語「モノ-またはジ-カルボン酸」または「スルホン酸」は、それぞれ1つまたは2つのカルボン酸官能基およびスルホン酸基を含む任意の化合物を指す。このような酸の例としては、(+/-)/(R/S)酒石酸、(+/-)/(R/S)(モノ-またはジ-アセチル)酒石酸、(+/-)/(R/S)(モノ-またはジ-ベンゾイル)酒石酸、(+/-)/(R/S)(モノ-またはジ-ピバロイル)酒石酸、(+/-)/(R/S)マンデル酸、(+/-)/(R/S)アセトキシフェニル酢酸、(+/-)/(R/S)メトキシフェニル酢酸、(+/-)/(R/S)ヒドロキシマンデル酸、(+/-)/(R/S)ハロマンデル酸(例えば4-フルオロマンデル酸)、(+/-)/(R/S)乳酸、および(+/-)/(R/S)カンファースルホン酸が挙げられるがこれらに限定されない。
【0090】
用語「保護剤」は、その官能基を遮断またはマスクするように、保護が望まれる原子と反応する任意の化合物を指す。典型的には、望ましくない化学変換から保護するように、潜在的に反応性のある官能基を一時的に修飾するために用いられる。所望の保護剤は、反応条件と適合性または安定性があり、保護がもはや望まれなくなった後の時点で容易に切断されるものである。
【0091】
用語「保護基(protecting group)」および「保護基(protective group)」は、合成変換中に反応性官能基を保護またはマスクするために用いられる除去可能な化学基を指す。用語「保護剤」は、保護される官能性部分へ保護基を結合させるために用いられる試薬を指す。例えば、保護剤のクロロギ酸エチルは、保護基のエトキシカルボニルと結合するために用いられ、保護剤のBOC-無水物は、保護基のt-ブトキシカルボニルと結合するために用いられる。本明細書で定義される保護基は、一般式P-Zを有する基を含み、式中、Zは、所望により置換されていてもよいアルキル、アリール、アルキルアリール、アルコキシカルボニル、または-ORであり、Rは、アルキル、アリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルであり、Pは、-CH2-、-C(O)-、-C(O)O-、またはS(O)2である。保護基の例としては、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、トリフェニルメチル、アルキルオキシおよびアリールオキシカルボニル(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t-ブトキシカルボニル、フェノキシカルボニル)、ベンジルN-スクシンイミジルカルボニル、ベンゾイル、置換ベンゾイル、置換ベンジルオキシカルボニル、ベンジル、置換ベンジル、およびアルキルおよびアリールスルホニル(例えば、メタンスルホニル、ベンゼンスルホニル、トルエンスルホニル)が挙げられる。さらに適切な保護剤および保護基は、例えば、Theodora Greenの「Protective Groups in Organic Synthesis」(出版社:John Wiley & Sons, Fourth Edition, 2007)(出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)で見つけることができる。
【0092】
用語「脱保護(deprotection)」または「脱保護する(deprotect)」または「脱保護すること(deprotecting)」は、保護基を除去または切断する行為を指す。上記の保護基の脱保護条件は、保護基の選択によって必然的に異なり、酸(例えば、塩酸、硫酸、リン酸またはトリフルオロ酢酸またはルイス酸、例えばトリス(トリフルオロ酢酸)ホウ素)または塩基(アルカリ金属の水酸化物、例えば水酸化リチウム、カリウムまたはナトリウム)触媒作用または接触水素化条件(例えば水素およびパラジウム炭素)を含み得る。
【0093】
本明細書における用語「触媒」は、それ自体が消費されることなく、化合物または反応の反応性に影響を及ぼし、誘導し、増加させ、影響を与え、または促進することができる任意の物質または薬物を指す。語句「遷移金属触媒」は、d軌道に価電子を有する任意の金属、例えば周期表の第3~12属より選択される金属を指す。本発明の方法に有用な触媒は、周期表の第8~11属からの遷移金属の原子、イオン、塩または錯体を含む。「周期表の第3~12属」は、IUPAC系に従って番号付けされた周期表の属を指す。したがって、第8~11属からの遷移金属は、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀および金を含む。このような触媒例としては、CuI、CuCl、CuBr、CuBr2、酢酸Cu(II)、Cu2Cl2、Cu2O、CuSO4、Cu2SO4、Cu、Pd/C、PdCl2、Pd(OAc)2、(CH3CN)2PdCl2、Pd[P(C6H5)3]4、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム[Pd(dba)2]、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム[Pd2(dba)3]、Ni(アセチルアセテート)2、NiCl2[P(C6H5)]2およびNi(1,5-シクロオクタジエン)2が挙げられるがこれらに限定されない。触媒は、典型的には、反応物に対して化学量論以下で用いられるが、必ずしもそうであるとは限らない。反応物に対して好ましくは0.5~20モル%、最も好ましくは10モル%の遷移金属触媒が用いられる。
【0094】
本明細書における用語「塩基」は、有機または無機塩基、例えばアミン塩基(例えば、アンモニア、トリエチルアミン、N,N'-ジイソプロピルエチルアミンまたは4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP);1,5-ジアザビシクル[4.3.0]-ノナ-5-エン(DBN)、1,5-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-5-エン(DBU));水素化物(例えば水素化ナトリウム、リチウムまたはカリウム);アルコキシド、(例えばナトリウム、カリウムまたはリチウムt-ブトキシドおよびK(OAr)、Na(OAr));またはアルカリまたはアルカリ土類金属の炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩または水酸化物(例えば、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、セシウムまたはバリウムの炭酸塩、重炭酸塩、水酸化物またはリン酸塩)を指す。
【0095】
用語「ブレンステッド塩基」は、当技術分野で認識されている用語であり、荷電されてないまたは荷電されている原子または分子、例えば、プロトン受容体であるオキシド、アミン、アルコキシドまたはカーボネートを指す。ブレンステッド塩基の例としては、K3PO4、K2CO3、Na2CO3、Tl2CO3、Cs2CO3、K(OtBu)、Li(OtBu)、Na(OtBu)、K(OPh)、およびNa(OPh)、またはその混合物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0096】
用語「ルイス塩基」は、当技術分野で認識されている用語であり、特定の反応条件下で電子対を供与することができる化学部分を指す。ルイス塩基の例としては、荷電されてない化合物、例えばアルコール、チオール、オレフィン、およびアミン(例えばアンモニア、トリエチルアミン)、および荷電されている部分、例えばアルコキシド、チオーレート、カーボネート、および他の様々な有機アニオンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0097】
本明細書における用語「酸」は、ルイス酸またはブレンステッド酸を指す。ルイス酸は、当該技術分野の用語であり、電子対を受け入れることができる化学部分(例えば三フッ化ホウ素)を指す。ブレンステッド酸は、プロトンを供与することができる任意の化学部分(例えば、酢酸、塩酸、リン酸、および当技術分野で知られている他の有機酸)を指す。
【0098】
用語「リガンド」は、別の中心原子、典型的には金属との配位および/または共有結合によって1つ以上の電子を供与または共有することができる任意の原子、分子またはイオンを指す。「単座配位リガンド」は、中心原子との1つの結合部位を有するリガンド(例えばピリジンまたはアンモニア)を指す。「二座配位リガンド」は、2つの結合部位を有するリガンド(例えばN,N'-ジメチルエチレンジアミン、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンまたは1,10-フェナントロリン)を指す。第8~11属の遷移金属の有用なリガンドの例としては、2-フェニルフェノール、2,6-ジメチルフェノール、2-イソプロピルフェノール、1-ナフトール、8-ヒドロキシキノリン、8-アミノキノリン、DBU、DBN、DABCO、2-(ジメチルアミノ)エタノール、N,N-ジエチルサリチルアミド、2-(ジメチルアミノ)グリシン、N,N,N',N'-テトラメチル-1,2-ジアミノエタン、4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン、4,7-ジメチル-1,10-フェナントロリン、5-メチル-1,10-フェナントロリン、5-クロロ-1,10-フェナントロリン、5-ニトロ-1,10-フェナントロリン、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、2-(アミノメチル)ピリジン、(メチルイミノ)二酢酸、シス-1,2-ジアミノシクロヘキサン、トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン、シス-およびトランス-1,2-ジアミノシクロヘキサンの混合物、シス-N,N'-ジメチル-1,2-ジアミノシクロヘキサン、トランス-N,N'-ジメチル-1,2-ジアミノシクロヘキサン、シス-およびトランス-N,N'-ジメチル-1,2-ジアミノシクロヘキサンの混合物、シス-N-トリル-1,2-ジアミノシクロヘキサン、トランス-N-トリル-1,2-ジアミノシクロヘキサン、シス-およびトランス-N-トリル-1,2-ジアミノシクロヘキサンの混合物、エタノールアミン、1,2-ジアミノエタン、N,N'-ジメチル-1,2-ジアミノエタン、N,N-ジメチル-2-ヒドロキシベンズアミド、N,N-ジエチル-2-ヒドロキシベンズアミド、フルオロ-N,N-ジエチル-2-ヒドロキシベンズアミド、クロロ-N,N'-ジエチル-2-ヒドロキシベンズアミド、(2-ヒドロキシフェニル)(ピロリジン-1-イル)メタノン、ビフェニル-2-オール、2-ピリジルフェノール、1,2-ベンゼンジアミン、アンモニア、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1-メチル-2-ピロリジノンまたはその混合物、ならびに前記のビフェニルおよびジナフチルリガンドが挙げられるがこれらに限定されない。特定の実施態様において、用いられるリガンドの量は、化学量論量または過剰量であり得る。他の実施態様において、リガンドは、反応のための溶媒として用いられ得る。したがって、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1-メチル-2-ピロリジノンまたは他の液体アミンなどの試薬は、反応のための溶媒およびリガンドとして機能し得る。
【0099】
用語「N,N'-ジメチルエチレンジアミン」は、「N,N'-ジメチル-1,2-ジアミノエタン」と相互交換可能に用いられる。
【0100】
語句「求核性ハロゲン化アルキル」は、ハロゲン化アルキル官能基(求電子)および求核性官能基の両方を有する任意の化合物を指す。用語「求核性」または「求核剤」は、当技術分野で十分認識されている用語であり、反応性の電子対を有する化学部分を指す。
【0101】
用語「還元(reduction)」または「還元すること(reducing)」は、分子内の官能基のより高い酸化状態からより低い酸化状態への変換を指す。用語「還元剤(reducing agent)」または「還元剤(reductive agent)」は、分子内の官能基をより高い酸化状態からより低い酸化状態に変換する効果についてこの分野で知られている任意の化合物または複合体を指す。還元の例には、炭素-炭素二重結合の炭素-炭素単結合への還元、およびカルボニル基(C=O)のメチレン(CH2)への還元の両方が含まれる。還元は、直接電子、水素化物または水素原子の移動を介して達成し得る。方法1Cおよび2Cに有用な典型的な還元剤は、金属水素化物(例えば、リチウムアルミニウム水素化物、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム)および触媒(例えばラネーニッケル、パラジウム炭素、ホウ化ニッケル、白金金属またはその酸化物、ロジウム、ルテニウムおよび酸化亜鉛、ペンタシアノコバルト(II)Co(CN)5
3-)の存在下での水素を含む。接触水素化は、典型的には、室温および大気圧で実施されるが、より抵抗性のある二重結合には、より高い温度および/またはより高い圧力が必要になり得る。二重結合を単結合に変換するのに有用な他の還元剤には、シランと酸;シアノ水素化ホウ素ナトリウムと酸;亜鉛と酸;ナトリウムと液体アンモニア;エタノール中のナトリウム;およびボラン-トリエチルアミンが挙げられる。
【0102】
用語「アルキル化」は、置換または付加による有機化合物へのアルキルラジカルの導入を指す。したがって、用語「N-アルキル化」は、有機化合物の窒素原子へのアルキルラジカルの導入を指す。
【0103】
本明細書に記載の化合物の製造手順、および本明細書に記載の方法のいくつかのステップを実施するための手順は、当業者に公知であり、例えば米国特許第8,309,722号;第8,779,139号;第9,315,504号;第9,751,883号;第8,648,077号;第9,199,995号;第および9,586,960号(これらの各々の内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)で見つけることができる。
【実施例】
【0104】
実施例1:6-ブロモ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール塩酸塩
【化17】
1-(2-ブロモフェニル)ヒドラジン塩酸塩および4-ピペリジノン一水和物塩酸塩を、酢酸中、約1:1.1のモル比で合わせ、得られたスラリーを、HPLC分析により1%未満のヒドラジン出発物質が残るまで(例えば6時間)加熱還流する。その後反応混合物を、室温まで冷却し、ろ過し、ケーキをアセトンで洗浄し、固体まで乾燥して、それを次の工程で用いる。
【0105】
実施例2:[4aS,9bR]-6-ブロモ-2,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール
【化18】
還元:マグネチックスターラー、N
2注入口および乾燥管を有する3Lの3首RBFへ、メタンスルホン酸(400mL)を入れる。6-ブロモ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール塩酸塩(100g)を、小分けにして入れる。反応混合物を40℃~45℃まで加熱し、その後トリエチルシラン(TES)(55.5mL、1当量)を、発熱を制御するために、数回に分けて1時間かけて入れる。温度を40℃~45℃にて維持する。添加が完了したら、混合物を、40℃~45℃にて1.5時間撹拌する。更なるTES(13.9mL、0.25当量)を約10分間かけて加え、その後、混合物を40℃~45℃にて30分間撹拌してもよい。更なるTES(13.9mL、0.25当量)を約10分間かけて加え、その後、混合物を室温にて一晩撹拌してもよい。更なるTES(5.5mL、0.1当量)を入れ、混合物を室温にて90分間撹拌してもよい。10℃未満まで冷却後、反応を、水(600mL)でクエンチし、一定の速度で水を滴下し、40℃未満を維持する(強い発熱が観察された)。ジクロロメタン(1000mL)を加え、混合物を、約pH12まで50%w/vNaOH水溶液で調節する。混合物をセライト層によりろ過する。層を分離し、水層をジクロロメタン(100mL)で抽出する。合わせた有機層を水(100mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム(120g)で乾燥し、ろ過し、真空下で濃縮する。残渣をヘプタンで処理する。ろ過後、得られた固体を、真空下で30℃にて乾燥して、73.1gの生成物を得る(収率:83%、HPLC純度:97.1%)。
【0106】
分離:[4aS,9bR]-6-ブロモ-2,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドールは、ラセミ体のシス6-ブロモ-2,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール(9.61g、38.0mmol)をメタノール(190mL)中に50℃にて溶解させ、(S)-(+)-マンデル酸(5.78g、38.0mmol)を小分けにして加えることにより、分離され得る。得られた澄明な溶液を、50℃にて数分間撹拌し、エーテル(95mL)を滴下する。得られた溶液を室温まで冷却する。白色沈殿(S-マルデル酸塩、4.1g)をろ過する。HPLC分析は99%e.e.超を示す。
【0107】
実施例3:(4aS,9bR)-エチル6-ブロモ-3,4,4a,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール-2(9bH)-カルボキシレート
【化19】
(4aS,9bR)-エチル6-ブロモ-3,4,4a,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール-2(9bH)-カルボキシレートは、まず50%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、[4aS,9bR]-6-ブロモ-2,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール(36.0g、0.142mol)を遊離塩基として得て、生成物をMTBEへ抽出することにより、製造され得る。その後(4aS,9bR)-エチル6-ブロモ-3,4,4a,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール-2(9bH)-カルボキシレートへの変換は、[4aS,9bR]-6-ブロモ-2,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール(36.0g、0.142mol)のTHF(300ml)およびトリエチルアミン(24ml)中の懸濁液を氷水槽中で冷却することに行われ得る。クロロギ酸エチル(13.5ml、0.142mol)を、シリンジポンプにより1時間かけて滴下する。氷水槽を除去し、反応混合物を室温にてさらに1時間撹拌する。反応混合物を、セライトのパッドに通し、溶媒を蒸発させて、(4aS,9bR)-エチル6-ブロモ-3,4,4a,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール-2(9bH)-カルボキシレートを得る。
1H NMR (CDCl
3, 300 MHz): 1.20-1.35 (m,3H), 1.73-1.85 (m, 1H), 1.85-1.99 (m, 1H), 3.22-3.52 (m, 3H), 3.52-3.66 (m, 1H), 3.66-3.95 (Br, 1H), 3.95-4.21 (m, 4H), 6.60 (t, J = 7.7 Hz, 1H), 7.04 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.20 (d, J = 8.1 Hz, 1H).
【0108】
[4aS,9bR]-6-ブロモ-2,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール(式1Cの化合物)遊離塩基の使用の代わりに、反応はまた、[4aS,9bR]-6-ブロモ-2,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドールの(S)-マルデル酸塩を用いて開始することにより、実施され得る。100mL丸底フラスコは、マグネチック撹拌バー、圧力均等化添加漏斗および添加漏斗の上部にあるN2注入口を備える。フラスコに、S-マンデレート出発物質(5g、12.35mmol)、Na2CO3(2.88g、27.17mmol)および25mLのTHFを入れる。黄色反応混合物に、25℃にて(加熱ブロック温度)クロロギ酸エチル(1.64g、15.11mmol)の5mLのTHF中の溶液を約70分間かけて滴下する。バッチを25℃にてさらに10分間撹拌し、その後、HPLCによりチェックする。2%未満の出発物質がHPLCにより観察され、所望の生成物を約98%で記録する。バッチに12.5mLのEtOHを加え、バッチを減圧下濃縮して、約30mLの溶媒(大部分はTHF)を除去する。その後、バッチに37.5mLのH2Oを加え、得られた混合物はpH紙によりpH>9を示す。その後、黄色混合物を、室温にて約1時間撹拌し、その後ろ過する。固体を25mLのH2Oですすぐ。真空オーブン中で58℃にて約16時間乾燥後、3.9442gの黄色固体を得る(98%の収率)。固体の1H NMRは一致し、(s)-マンデル酸を示さなかった。生成物のHPLC分析は、99%超の純度で所望の生成物を示す。LC-MSは、M/e = 326(M+1)のピークを示す。
【0109】
実施例4:[4aS,9bR]-エチル5-(2-アミノ-2-オキソエチル)-6-ブロモ-3,4,4a,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール-2(9bH)-カルボキシレート
【化20】
(4aS,9bR)-エチル5-(2-アミノ-2-オキソエチル)-6-ブロモ-3,4,4a,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール-2(9bH)-カルボキシレートは、(4aS,9bR)-エチル6-ブロモ-3,4,4a,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール-2(9bH)-カルボキシレート(5.648g、17.4mmol)、2-クロロアセトアミド(7.32g、78.2mmol)、ヨウ化カリウム(19.2g、77.7mol)およびジイソプロピルエチルアミン(19mL、115mmol)のアセトニトリル(80mL)中の懸濁液を27時間加熱還流することにより、製造され得る。溶媒を真空中で除去し、水(200mL)を残渣加え、1時間撹拌する。得られた白色固体をろ過し、エタノールで洗浄し、乾燥する。
【0110】
更なる実験において、代わりにジメチルアセトアミド溶媒を用いて実質的に同じ条件(例えば80~110℃の温度にて、例えば110℃にて)を用いることにより、収率および反応時間が改善されることを見出した。比較実験において、溶媒として、アセトニトリルまたはジオキサンのいずれかと比較してジメチルアセトアミドを用いることにより、より高い収率を得ることを見出した。更なる実験はまた、所望によりヨウ化カリウムまたは臭化テトラブチルアンモニウムをさらに含む、ジメチルアセトアミド、アセトニトリルまたはジオキサンの溶媒中で2-ブロモアセトアミドを用いることにより実施される。
【0111】
更なる実験は、より大きなスケールにおいて、生成物が油化して、取り扱いおよび精製が困難になり得ることを明らかにする。冷却速度および水の添加速度を制御することが、この結果に著しく影響を及ぼすことを予想外にも見出した。したがって、改善された方法において、生成物を、所望により種晶添加により誘発される、貧溶媒として水を用いた沈殿結晶化によりジメチルアセトアミド反応混合物から得る。例えば、反応を約50~70℃まで冷却し、続いて水の一部を加え、続いてさらに水を加え得る。混合物を、撹拌し、または約0~15℃(例えば5℃)の最終温度まで徐々に冷却しながら撹拌し、続いてろ過し、水で洗浄する。冷却工程中に、種晶添加を開始して、生成物の沈殿を引き起こす。
【0112】
実施例4b:4aS,9bR]-エチル5-(2-アミノ-2-オキソエチル)-6-ブロモ-3,4,4a,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール-2(9bH)-カルボキシレート
【化21】
(4aS,9bR)-エチル6-ブロモ-3,4,4a,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール-2(9bH)-カルボキシレート(175g、538mmol)、2-クロロアセトアミド(75.48g、807mmol)、臭化テトラブチルアンモニウム(173.5g、538mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(151mL、917mmol)を、ジメチルアセトアミド(158mL)中に107~110℃にて24~27時間懸濁させる。HPLCは、85%超の完了を示す。反応混合物を50~55℃まで冷却し、水をゆっくり加え(350~400mL)、混合物を2時間約50℃にて撹拌し、その後混合物に生成物(約50mg)を種晶添加する。更なる水(450~500mL)を1~3時間かけて加え、続いて第2の種晶添加をし、その後混合物を、5℃までゆっくり冷却する。懸濁液をろ過し、ろ過ケーキを水で洗浄し、真空下で乾燥して、187gの粗生成物を得る(HPLCにより86%の純度)。粗生成物を酢酸エチル中に70℃にて再懸濁させ、2時間撹拌する。懸濁液を50℃まで冷却し、n-ヘプタンをゆっくり加え、沈殿を誘発する。50℃にて2時間撹拌後、混合物を5℃までゆっくり冷却し、続いてろ過し、酢酸エチル/ヘキサン(1:1)で洗浄する。乾燥後、149gの純粋な生成物を得る(HPLCにより98%の純度)。
【0113】
実施例5:(6bR,10aS)-エチル2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-2-オキソ-1H-ピリド[3',4':4,5]-ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-カルボキシレート
【化22】
[4aS,9bR]-エチル5-(2-アミノ-2-オキソエチル)-6-ブロモ-3,4,4a,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール-2(9bH)-カルボキシレート(254mg、1.34mmol)、ヨウ化銅(I)(254mg、1.34mol)、炭酸カリウム(3.96g、28.7mmol)およびN,N'-ジメチルエチレンジアミン(0.31mL、2.87mmol)のジオキサン(20mL)中の懸濁液を、4.5時間加熱還流する。別の一部のヨウ化銅(I)(250mg、1.32mmol)およびN,N'-ジメチルエチレンジアミン(0.33mL、3.05mmol)を加える。得られた混合物をさらに3時間、その後73℃にて約66時間加熱還流する。反応混合物を濃縮し、100:3:3のジクロロメタン:トリエチルアミン:メタノールを用いて短いアルミナカラムに通す。カラムから得られた溶媒を、固体まで蒸発させ、ジクロロメタン中に再懸濁させる。ジクロロメタン溶液を食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、固体まで濃縮する(3.7g、HPLCにより95%、83%の純度)。
【0114】
この実験手順を製造バッチスケール(約1kgスケール)に拡大する際に、主にろ過中の損失により、収率が26%に低下することを見出した。ろ過ケーキをメタノールで再スラリー化して更なる生成物を回収した後でも、正味収率は86%にしか近づかず、HPLC純度は約70~75%である。理論に拘束されるものではないが、損失は、配管ライン、反応器および他の容器の間の移動中に失われた材料によるものであると考えられる。
【0115】
更なる実験を、反応および精製条件を最適化するために実施した。ヨウ化カリウム(1.9当量)、ヨウ化銅(0.2当量)およびジオキサン溶媒と共にN,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをリガンド(0.25当量)として用いた最初の実験は、許容可能な収率を得るのに少なくとも48時間の反応時間を生じる。さらに、生成物が酵素に感受性であり、クロマトグラフィー前の抽出後処理および反応溶媒の濃縮中に分解が生じ得ることを予想外にも見出した。反応はまた、反応溶媒の水分量に感受性である(ジオキサンと水が混和性であり、他の溶媒と比較して存在する水の著しく高い濃度を可能にする)ことも見出した。リガンドとしてDBUを、溶媒としてトルエンを、および反応前の共沸溶媒を用いることにより、収率および変換率が著しく改善されることを見出した収率は、反応混合物を抽出および/または蒸発に供することにより、炭化水素溶媒を用いて遊離塩基生成物を沈殿させるによりさらに改善される。
【0116】
[4aS,9bR]-エチル5-(2-アミノ-2-オキソエチル)-6-ブロモ-3,4,4a,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール-2(9bH)-カルボキシレート(1400g、1.00当量)および炭酸カリウム(2.2当量)を、トルエン溶媒(4mL/gの反応物)中に懸濁させ、混合物を、ディーン・スタークトラップで110℃にて約2時間加熱する。さらに水が収集されなくなるまで、共沸蒸留を続ける。70℃まで冷却後、ヨウ化銅(0.2当量)およびDBU(0.25当量)を加える。7時間120℃にて撹拌後、反応が実質的に完了する(HPLCにより3%未満出発物質が残っている)ことを見出した。反応混合物を室温まで冷却し、10倍量の脱気したn-ヘプタンで撹拌しながら希釈する。2時間撹拌後、重い懸濁液を得る。混合物をろ過し、収集した固体を、7%水性水酸化アンモニウムで1時間スラリーにする。スラリーをろ過し、固体を2回水で洗浄する。スラリー化/洗浄の手順を、12.5%水性水酸化アンモニウムを用いて再度2回繰り返す(各1時間のスラリー)。固体を乾燥して、95%の収率(95%のHPLC純度)で表題生成物を得る。
【0117】
実施例6:(6bR,10aS)-2,3,6b,7,8,9,10,10a-オクタヒドロ-1H-ピリド-[3',4':4,5]-ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン
【化23】
(6bR,10aS)-2-オキソ-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-カルボン酸エチルエステル(6.4g、21.2mmol)を、HBr/酢酸溶液(64mL、33%w/w)中に室温にて懸濁させる。混合物を50℃にて16時間加熱する。冷却および酢酸エチル(300mL)での処理後、混合物をろ過する。ろ過ケーキを酢酸エチル(300mL)で洗浄し、その後真空下で乾燥する。その後得られたHBr塩をメタノール(200mL)中に懸濁させ、イソプロパノール中のドライアイスで冷却する。激しく撹拌下、アンモニア溶液(10mL、メタノール中7N)を懸濁液にゆっくり加え、混合物のpHを10に調整する。得られた混合物を、さらに精製することなく真空下で乾燥して、粗製(6bR,10aS)-2-オキソ-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン(8.0g)を得て、これを次の工程で直接用いる。MS (ESI) m/z 230.2 [M+H]
+.
【0118】
実施例7:(6bR,10aS)-8-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オン
【化24】
(6bR,10aS)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オン(100mg、0.436mmol)、1-(3-クロロプロキシ)-4-フルオロベンゼン(100μL、0.65mmol)およびKI(144mg、0.87mmol)のDMF(2mL)中の混合物を、アルゴンで3分間脱気し、DIPEA(150μL、0.87mmol)を加える。得られた混合物を78℃まで加熱し、この温度にて2時間撹拌する。混合物を室温まで冷却し、その後ろ過する。ろ過ケーキを、溶離剤としてのメタノール/7N NH
3のメタノール中の混合物(1:0.1v/v)中における0~100%酢酸エチルのグラジェントを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、部分的に生成された生成物を得て、これをさらに、0.1%ギ酸を含有する水中における0~60%アセトニトリルのグラジェントを用いたセミ分取HPLCシステムで16分間かけて精製して、固体として表題生成物を得る(50mg、収率30%)。MS (ESI) m/z 406.2 [M+1]
+.
1H NMR (500 MHz, DMSO-d
6) δ 10.3 (s, 1H), 7.2 - 7.1 (m, 2H), 7.0 - 6.9 (m, 2H), 6.8 (dd, J = 1.03, 7.25 Hz, 1H), 6.6 (t, J = 7.55 Hz, 1H), 6.6 (dd, J = 1.07, 7.79 Hz, 1H), 4.0 (t, J = 6.35 Hz, 2H), 3.8 (d, J = 14.74 Hz, 1H), 3.3 - 3.2 (m, 3H), 2.9 (dd, J = 6.35, 11.13 Hz, 1H), 2.7 - 2.6 (m, 1H), 2.5 - 2.3 (m, 2H), 2.1 (t, J = 11.66 Hz, 1H), 2.0 (d, J = 14.50 Hz, 1H), 1.9 - 1.8 (m, 3H), 1.7 (t, J = 11.04 Hz, 1H).
【0119】
更なる実験において、収率および純度が、DMSO溶媒中で70~75℃にて3~5時間反応させることにより改善することを見出した(97%変換、100g~1kgスケール)。生成物は、酢酸エチル-水混合物でクエンチし、続いて相分離後のn-ヘプタンと溶媒交換することにより、単離され得る。粗生成物は、n-ヘプタンからの結晶化、続いてろ過、洗浄および真空下での乾燥により、単離され得る。粗生成物はさらに、スラリー化およびアセトニトリルからのろ過により精製され得る。得られた生成物は、予想される
1H-NMRおよびHPLC-MS分析に一致する。下記純度プロファイルを得る(溶媒不純物をHS-GCにより決定することを除き、有機不純物をHPLCにより決定する):
【表1】
【0120】
実施例8:(6bR,10aS)-8-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オンの精製
スケールアップ実験中に、粗製(6bR,10aS)-8-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オンを、アセトニトリルまたはアセトンのいずれか中で再スラリー化することにより、精製生成物について全体的に許容されるHPLC純度(93~97%)が得られるが、特定の不純物が過剰量であり、例えば1-(3-クロロプロキシ)-4-フルオロベンゼンが0.10~0.30%w/wの量で存在することを予想外にも見出した。この純度は、最終生成物中0.08%w/w以下に制限される必要がある。
【0121】
したがって、結晶化研究を、遊離塩基生成物の更なる精製のための最適な条件を決定するために実施した。最初にスクリーニングされる溶媒には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、2-メチルテトラヒドロフラン、酢酸エチルおよび酢酸イソプロピルが含まれる。最初のスクリーニング結果に基づいて、更なる研究は、メタノール、アセトンおよびアセトニトリルに限定する。
【0122】
【0123】
しかしながら、上記再結晶化生成物を、それぞれ50℃および100mbarの真空にて乾燥した場合、残存溶媒のレベルは、下記表に示すように、ICH限度を超える(アセトニトリルについて24時間乾燥、メタノールおよびアセトンについて60時間乾燥):
【表3】
【0124】
このデータは、生成物が、予想外にも、真空下で長時間乾燥した後でも、除去が極めて困難になる方法で、溶媒を取り込む傾向があることを示す。さらなる研究と組み合わせて、(6bR,10aS)-8-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オン遊離塩基が、約10モル%の量にてその結晶構造内に溶媒を取り込む傾向があることを見出した。
【0125】
更なる研究は、結晶化中の冷却速度が、残存溶媒レベルに影響を及ぼすことを示す。より速い冷却(例えば、20℃/時間対10℃/時間)が、より少ない溶媒を取り込む、より小さいサイズの結晶を生成するのに役立つことを見出した。対照的に、より高い温度またはより低い圧力(より高い真空)で結晶を乾燥することは、残存溶媒レベルに大きな影響を及ぼさない。
【0126】
更なる研究は、結晶化工程における貧溶媒(例えばn-ヘプタンまたはMTBE)の役割を評価するために実施した。理論に拘束されるものではないが、溶媒混合物を用いることにより、各溶媒がICHレベル未満に低下し得ることが考えられる。しかしながら、溶媒混合物からの再結晶化が、十分な全体的HPLC純度および満足な不純物プロファイルを維持することを確認するために、二成分溶媒混合物の各セットを分析しなければならない。
【0127】
様々な溶媒比の、アセトン-酢酸エチルおよびアセトン-メタノールを含む、再結晶化溶媒混合物の様々な組合せを試験した。2:1または3:1の比のアセトン-メタノール再結晶化が、下記表に示すように、満足な結果を提供することを見出した。
【表4】
【0128】
上記で製造した結晶のすべての乾燥条件は、16時間、40℃、100mbarである。
【0129】
実施例9:(6bR,10aS)-8-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オントシレートの精製
遊離塩基形態の(6bR,10aS)-8-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オン(1.88g)を、20mLバイアルに加える。11mLのメチルエチルケトンを加え、反応混合物を50℃まで加熱し、褐色懸濁液を形成させる。固体トルエンスルホン酸(1.5当量)を加えると、混合物はすぐに均質な褐色溶液になる。50℃で撹拌しながら、生成物の結晶化がゆっくり始まる。約1時間撹拌後、熱を除去し、反応混合物を、室温まで撹拌(一晩撹拌)しながら放冷する。褐色懸濁液を得る。混合物をろ過し、真空下メチルエチルケトンで洗浄して、1.7gのオフホワイトから褐色がかった粉末を得る。粉末は、室温にてゆっくり紫色に変わる。XRPD分析は、良好な結晶性材料の特徴である鋭いピークを示すが、いくつか非晶質バックグラウンドが存在する。1H-NMRは、モノトシル酸塩(トシルプロトン対遊離塩基プロトンが1:1モル比)と一致する。更なる研究は、塩が吸湿性であることを示す。
【国際調査報告】