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特表2022-513936フラーレン誘導体ブレンド、その製造方法及び使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(54)【発明の名称】フラーレン誘導体ブレンド、その製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/46 20060101AFI20220202BHJP
【FI】
H01L31/04 154F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534646
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(85)【翻訳文提出日】2021-08-13
(86)【国際出願番号】 US2019066879
(87)【国際公開番号】W WO2020131887
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】62/780,569
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512037705
【氏名又は名称】ナノ-シー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NANO-C, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【弁理士】
【氏名又は名称】西下 正石
(72)【発明者】
【氏名】リヒター,ヘニング
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン,エドワード エイ
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151AA11
5F151BA11
5F151DA03
5F151DA07
5F151FA04
5F151FA06
5F151GA03
(57)【要約】
本明細書には、フラーレン誘導体ブレンドが記載される。該ブレンドは、例えば有機光起電力デバイスのようなエレクトロニクスの用途において有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のフラーレン誘導体;及び
第2のフラーレン誘導体;
を含む、組成物であって、
前記第1及び前記第2のフラーレン誘導体が異なるタイプのものであり;及び
前記第1のフラーレン誘導体と前記第2のフラーレン誘導体との比が、約97:3と約60:40との間である、
組成物。
【請求項2】
前記第1のフラーレン誘導体がメタノフラーレンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第1のフラーレンがディールス・アルダー付加体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記第2のフラーレン誘導体がディールス・アルダー付加体である、請求項1又は2のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記第2のフラーレン誘導体がメタノフラーレンである、請求項1又は3のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記第1のフラーレン誘導体がディールス・アルダー付加体であり、前記第2のフラーレン誘導体がメタノフラーレンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記第1のフラーレン誘導体がメタノフラーレンであり、前記第2のフラーレン誘導体がディールス・アルダー付加体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記第1のフラーレン誘導体がC60系フラーレン誘導体であり、前記第2のフラーレン誘導体がC70系フラーレン誘導体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記第1のフラーレン誘導体がC70系フラーレン誘導体であり、前記第2のフラーレン誘導体がC60系フラーレン誘導体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記第1のフラーレン誘導体及び前記第2のフラーレン誘導体が、C60系フラーレン誘導体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記第1のフラーレン誘導体及び前記第2のフラーレン誘導体が、C70系フラーレン誘導体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記第1のフラーレン誘導体と前記第2のフラーレン誘導体との比が、約97:3と約70:30との間である、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記第1のフラーレン誘導体と前記第2のフラーレン誘導体との比が、約95:5と約70:30との間である、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記第1のフラーレン誘導体と前記第2のフラーレン誘導体との比が、約92:8と約70:30との間である、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記第1のフラーレン誘導体と前記第2のフラーレン誘導体との比が、約97:3と約75:25との間である、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記第1のフラーレン誘導体と前記第2のフラーレン誘導体との比が、約95:5である、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記第1のフラーレン誘導体と前記第2のフラーレン誘導体との比が約90:10である、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記第1のフラーレン誘導体と前記第2のフラーレン誘導体との比が約85:15である、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記第1のフラーレン誘導体と前記第2のフラーレン誘導体との比が約75:25である、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
第3のフラーレン誘導体をさらに含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
非フラーレンアクセプターをさらに含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
量子ドットをさらに含む、請求項1~19及び21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記メタノフラーレンが、フェニル-C61-酪酸-メチル-エステル([60]PCBM)、チオフェニル-C61-酪酸-メチル-エステル([60]ThCBM)、[70]PCBM、フェニル-C61-酪酸-ヘキシル-エステル([60]PCBC)、フェニル-C71-酪酸-ヘキシル-エステル([70]PCBC)、及び他の[6、6]-フェニルC61酪酸又は[6、6]-フェニルC71酪酸誘導体からなる群から選択される、請求項1~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
ディールス・アルダー付加体が、任意に置換されたインデン、n-ヘキシルエステル、α-置換o-キノジメタン、及び3-(1-イジニル)プロピオン酸のエステルからなる群から選択される、請求項1~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記第1のフラーレン誘導体が[60]PCBM又は[70]PCBMであり、前記第2のフラーレン誘導体がディールス・アルダーインデン付加体、α-置換o-キノジメタン付加体又は3-(1-インデニル)プロピオン酸のエステルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
前記第1のフラーレン誘導体が[60]PCBMであり、前記第2のフラーレン誘導体が以下の化合物である、組成物。
【化1】
【請求項27】
半導体ポリマーをさらに含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
前記導体ポリマーが、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)、(ポリ[2-3,7-ジメチルオクチルオキシ)-5-メチルオキシ]-パラフェニレンビニレン)(MDMO-PPV)、カルバゾール系コポリマー、ジケトピロロピロール(DPP)系コポリマー、シクロペンタジチオフェン系コポリマー、及びいくつかの液晶を含有する低分子(例えば、官能化ヘキサベンゾンコロネン)、ペンタセン誘導体、オリゴチオフェン、トリフェニルアミン、官能化アントラジチオフェン、例えばチオフェン-及びインドリン系由来の多数の従来の低分子量着色剤、からなる群から選択される、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
請求項1~28のいずれか一項に記載の組成物を含む、OPVデバイス。
【請求項30】
前記デバイスが、2種のフラーレン誘導体を含まないOPVデバイスに比べて、熱安定性が向上している、請求項29に記載のOPVデバイス。
【請求項31】
前記デバイスが、2種のフラーレン誘導体を含まないOPVデバイスに比べて、空気下で120℃まで加熱した場合の熱安定性が向上している、請求項29に記載のOPVデバイス。
【請求項32】
前記デバイスが、2種のフラーレン誘導体を含まないOPVデバイスに比べて、1太陽強度の照射を受けた場合の安定性が向上している、請求項29に記載のOPVデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2018年12月17日に出願された、米国特許出願第62/780,569号の先の出願日の利益を主張し、その内容は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
<参照による援用>
本明細書に記載されるすべての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、その全体が参照により援用される。本明細書で参照される特許文献及び科学文献によって、当業者は利用可能な知識を確立する。本明細書に引用される発行された特許、出願、及び他の刊行物は、それぞれが、参照により援用されることが明確かつ個別に示されているのと同程度に、参照により本明細書に援用される。矛盾している場合、本開示が優先する。
【0003】
本出願は、概して材料に関する。より詳細には、本出願は、フラーレンブレンド及びフラーレンブレンドを含む光起電力デバイスに関する。
【背景技術】
【0004】
液体処理バルクヘテロ接合に基づく有機光起電力デバイス(OPVs)は、ますます増える用途に使用されるという大きな可能性を有し、低重量、柔軟性、又は(例えば、屋内環境発電のための)限られた照射レベルにおける発電能力が要求される。しかしながら、広範囲での導入においては、デバイス寿命の間中、大部分が安定に存続する、十分に高い電力変換効率(PCE)が好ましい。過去数年にわたって、太陽光をより効率よく吸収し、励起子を効率よく形成し、それに続いて電極に電荷を輸送する、新しい種類の低バンドギャップポリマーの開発が大きく進展している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電子ドナー材料として、そのようなポリマーを使用するデバイスにおける初期のPCEは、多くの場合に著しく増加しているが、例えば、光照射(light soakings)実験によって評価される安定性は、多くの場合に期待外れであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様において、第1のフラーレン誘導体と第2のフラーレン誘導体とを含む、組成物であって、前記第1及び前記第2のフラーレン誘導体が異なるタイプのものであり;前記第1のフラーレン誘導体と前記第2のフラーレン誘導体との比が、約97:3と約60:40との間である、組成物が提供される。
【0007】
いくつかの実施形態において、第1のフラーレン誘導体はメタノフラーレンである。
【0008】
いくつかの実施形態において、第1のフラーレンはディールス・アルダー付加体である。
【0009】
いくつかの実施形態において、第2のフラーレン誘導体はディールス・アルダー付加体である。
【0010】
いくつかの実施形態において、第2のフラーレン誘導体はメタノフラーレンである。
【0011】
いくつかの実施形態において、第1のフラーレン誘導体はディールス・アルダー付加体であり、第2のフラーレン誘導体はメタノフラーレンである。
【0012】
いくつかの実施形態において、第1のフラーレン誘導体はメタノフラーレンであり、第2のフラーレン誘導体はディールス・アルダー付加体である。
【0013】
いくつかの実施形態において、第1のフラーレン誘導体はC60系フラーレン誘導体であり、第2のフラーレン誘導体はC70系フラーレン誘導体である。
【0014】
いくつかの実施形態において、第1のフラーレン誘導体はC70系フラーレン誘導体であり、第2のフラーレン誘導体はC60系フラーレン誘導体である。
【0015】
いくつかの実施形態において、第1のフラーレン誘導体及び第2のフラーレン誘導体は、C60系フラーレン誘導体である。
【0016】
いくつかの実施形態において、第1のフラーレン誘導体及び第2のフラーレン誘導体は、C70系フラーレン誘導体である。
【0017】
いくつかの実施形態において、第1のフラーレン誘導体と第2のフラーレン誘導体との比は、約97:3と約70:30との間である。
【0018】
いくつかの実施形態において、第1のフラーレン誘導体と第2のフラーレン誘導体との比は、約95:5と約70:30との間である。
【0019】
いくつかの実施形態において、第1のフラーレン誘導体と第2のフラーレン誘導体との比は、約92:8と約70:30との間である。
【0020】
いくつかの実施形態において、第1のフラーレン誘導体と第2のフラーレン誘導体との比は、約97:3と約75:25との間である。
【0021】
いくつかの実施形態において、第1のフラーレン誘導体と第2のフラーレン誘導体との比は、約95:5である。
【0022】
いくつかの実施形態において、第1のフラーレン誘導体と第2のフラーレン誘導体との比は、約90:10である。
【0023】
いくつかの実施形態において、第1のフラーレン誘導体と第2のフラーレン誘導体との比は、約85:15である。
【0024】
いくつかの実施形態において、第1のフラーレン誘導体と第2のフラーレン誘導体との比は、約75:25である。
【0025】
いくつかの実施形態において、組成物は、第3のフラーレン誘導体をさらに含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、組成物は、電子アクセプターとして機能する非フラーレン材料をさらに含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、非フラーレン材料は、量子ドットを含む。
【0028】
いくつかの実施形態において、非フラーレン材料は、光吸収後に光子を放出する。放出された光子は、例えばドナー材料によって、活性層において吸収され、励起子を形成し、それによってさらなる電荷輸送を生成し得る。
【0029】
いくつかの実施形態において、メタノフラーレンは、フェニル-C61-酪酸-メチル-エステル([60]PCBM)、チオフェニル-C61-酪酸-メチル-エステル([60]ThCBM)、[70]PCBM、フェニル-C61-酪酸-ヘキシル-エステル([60]PCBC)、フェニル-C71-酪酸-ヘキシル-エステル([70]PCBC)及び他の[6、6]-フェニルC61酪酸又は[6、6]-フェニルC71酪酸誘導体からなる群から選択される。
【0030】
いくつかの実施形態において、ディールス・アルダー付加体は、任意に置換されたインデン、n-ヘキシルエステル、α-置換o-キノジメタン、及び3-(1-イジニル(idynyl))プロピオン酸のエステルからなる群から選択される。
【0031】
いくつかの実施形態において、第1のフラーレン誘導体は、[60]PCBM又は[70]PCBMであり、第2のフラーレン誘導体は、ディールス・アルダーインデン付加体、α-置換o-キノジメタン付加体又は3-(1-インデニル)プロピオン酸のエステルである。
【0032】
いくつかの実施形態において、第1のフラーレン誘導体は、[60]PCBMであり、第2のフラーレン誘導体は、以下の化合物である。
【0033】
【化1】
【0034】
いくつかの実施態様において、組成物は、半導体ポリマーをさらに含む。
【0035】
いくつかの実施形態において、半導体ポリマーは、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)、(ポリ[2-3,7-ジメチルオクチルオキシ)-5-メチルオキシ]-パラフェニレンビニレン)(MDMO-PPV)、カルバゾール系コポリマー、ジケトピロロピロール(DPP)系コポリマー、シクロペンタジチオフェン系コポリマー、及びいくつかの液晶を含有する低分子(例えば、官能化ヘキサベンゾンコロネン)、ペンタセン誘導体、オリゴチオフェン、トリフェニルアミン、官能化アントラジチオフェン、及び例えばチオフェン-及びインドリン系由来の多数の従来の低分子量着色剤、からなる群から選択される。
【0036】
本発明の第2の態様において、第1のフラーレン誘導体と第2のフラーレン誘導体とを含む、組成物であって、前記第1及び前記第2のフラーレン誘導体が異なるタイプのものであり;前記第1のフラーレン誘導体と前記第2のフラーレン誘導体との比が、約97:3と約60:40との間である、組成物を含む、有機光起電力デバイスが提供される。
【0037】
いくつかの実施形態において、デバイスは、2種のフラーレン誘導体を含まないOPVデバイスに比べて、安定性が向上している。いくつかの実施形態において、デバイスは、異なるタイプの2種のフラーレン誘導体を含まないOPVデバイスに比べて、安定性が向上している。
【0038】
いくつかの実施形態において、デバイスは、2種のフラーレン誘導体を含まないOPVデバイスに比べて、空気下で120℃まで加熱した場合の熱安定性が向上している。
【0039】
いくつかの実施形態において、デバイスは、2種のフラーレン誘導体を含まないOPVデバイスに比べて、1太陽強度の照射を受けた場合の安定性が向上している。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1は、活性層において、ドナー材料としてPV2001を、アクセプター材料として[60]PCBM、ブレンドI又はブレンドIIを使用するデバイスの、デバイス構造の例示的な概略図である。
【0041】
図2図2は、活性層において、ドナー材料としてPCE-11を、アクセプター材料として[60]PCBM、ブレンドI又はブレンドIIを使用するデバイスの、デバイス構造の例示的な概略図である。
【0042】
図3A図3Aは、アクセプター材料として[60]PCBM、ブレンドI、又はブレンドIIを用いた、ITO/ZnO/PV2001:アクセプター/PEDOT:PSS/銀ナノワイヤ(AgNW)デバイスの、アニーリング時間(120℃、空気中)の関数としての、電力変換効率(PCE、%)のグラフである。
【0043】
図3B図3Bは、アクセプター材料として[60]PCBM、ブレンドI、又はブレンドIIを用いた、ITO/ZnO/PV2001:アクセプター/PEDOT:PSS/銀ナノワイヤ(AgNW)デバイスの、アニーリング時間(120℃の空気中)の関数としての、フィルファクター(FF、%)のグラフである。
【0044】
図3C図3Cは、アクセプター材料として[60]PCBM、ブレンドI、又はブレンドIIを用いた、ITO/ZnO/PV2001:アクセプター/PEDOT:PSS/銀ナノワイヤ(AgNW)デバイスの、アニーリング時間(120℃、空気中)の関数としての、短絡電流(Jsc、mA/cm)のグラフである。
【0045】
図3D図3Dは、アクセプター材料として[60]PCBM、ブレンドI、又はブレンドIIを用いた、ITO/ZnO/PV2001:アクセプター/PEDOT:PSS/銀ナノワイヤ(AgNW)デバイスの、アニーリング時間(120℃、空気中)の関数としての、開路電圧(Vo、V)のグラフである。
【0046】
図3E図3Eは、アクセプター材料として[60]PCBM、ブレンドI、又はブレンドIIを用いた、ITO/ZnO/PV2001:アクセプター/PEDOT:PSS/銀ナノワイヤ(AgNW)デバイスの、アニーリング時間(120℃、空気中)の関数としての、1.2V(mA/cm)における光注入(light injection)のグラフである。
【0047】
図4A図4Aは、アクセプター材料として[60]PCBM、ブレンドI又はブレンドIIを用いた、ITO/ZnO/PCE-11:アクセプター/蒸着MoOx/蒸着銀(Ag)デバイスの、アニーリング時間(120℃、空気中)の関数としての、電力変換効率(PCE、%)のグラフである。
【0048】
図4B図4Bは、アクセプター材料として[60]PCBM、ブレンドI、又はブレンドIIを用いた、ITO/ZnO/PCE-11:アクセプター/蒸着MoOx/蒸着銀(Ag)デバイスの、アニーリング時間(120℃、空気中)の関数としての、フィルファクター(FF、%)のグラフである。
【0049】
図4C図4Cは、アクセプター材料として[60]PCBM、ブレンドI、又はブレンドIIを用いた、ITO/ZnO/PCE-11:アクセプター/蒸着MoOx/蒸着銀(Ag)デバイスの、アニーリング時間(120℃、空気中)の関数としての、短絡電流(Jsc、mA/cm)のグラフである。
【0050】
図4D図4Dは、アクセプター材料として[60]PCBM、ブレンドI、又はブレンドIIを用いた、ITO/ZnO/PCE-11:アクセプター/蒸着MoOx/蒸着銀(Ag)デバイスの、アニーリング時間(120℃、空気中)の関数としての、開路電圧(Voc、V)のグラフである。
【0051】
図4E図4Eは、アクセプター材料として[60]PCBM、ブレンドI、又はブレンドIIを用いた、ITO/ZnO/PCE-11:アクセプター/蒸着MoOx/蒸着銀(Ag)デバイスの、アニーリング時間(120℃、空気中)の関数としての、1.2V(mA/cm)における光注入のグラフである。
【0052】
図5図5は、65℃、短絡条件における、1太陽LED光をもつ一定の照明下での、3つのアクセプター材料、[60]PCBM、ブレンドI及びブレンドIIをもつ、PCE-11の、経時的な規格化された電力変換効率(PCE)のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0053】
電子ドナー材料として低バンドギャップポリマーを用いるデバイスの初期PCEは、増加している;しかしながら、例えば、光照射実験などによって評価されるような安定性は、しばしば期待外れであった。(通常、短絡電流、Jscの減少によって駆動される)経時的なPCEの減少をなくす、又は少なくとも最小にする戦略としては、電子アクセプター材料としてC70誘導体を使用することが挙げられる。しかしながら、産業段階においてC70誘導体を使用することは、C60誘導体と比較して約10倍高い、C70誘導体の価格を考慮すると、少なくとも現段階では経済的に実現可能ではない。さらに、電子トラップが存在するために性能が著しく低下する、電子アクセプター材料のいくつかのブレンドが報告されている(Lenesらの、Adv.Funt.Mater.2009、19、3002-3007;Cowanらの、Adv.Funt.Mater.2011、21、3083-3092;それぞれ、その全体が参照により本明細書に援用される)。ブレンドされたアクセプターの官能基化における違いは、異なる電子構造、特にLUMO準位をもたらし、電子トラップと全体的な性能の低下とを産み出す。官能基化における違いは、デバイスの安定性を低下させ得る、望ましくないモルフォロジーをもたらし得る。官能基化における違いは、望ましくないモルフォロジーを改善しないまま、デバイスの期待外れの安定性を維持し得る。ブレンドを使用し、安定性が向上した高性能デバイスは、予想されていない。
【0054】
有機光起電力デバイス、その製造方法及び使用が、本明細書に記載されている。デバイスは、電子アクセプター材料としてフラーレン誘導体を含む。
【0055】
本発明のある態様において、電子アクセプター材料のブレンドは、バルクヘテロ接合(BHJ)に基づくデバイスにおいて使用され、ここで、少なくとも2種の電子アクセプターが、異なるタイプの、すなわち、同じ付加基をもっていない、フラーレン誘導体である。2種の成分の適切な比において、そのようなブレンドを使用することは、同様の低バンドギャップ電子ドナーポリマーと、電子アクセプター材料として純粋な[60]PCBM又は[70]PCBMと、をもつ、BHJと同様の初期PCEをもたらすだけではない。このブレンドはまた、有機光起電力(OPV)デバイスに望ましい光照射条件下における安定性を著しく向上させる。
【0056】
従来、OPVの用途においては、純粋なフラーレン又はフラーレン誘導体の組成物が好まれていた。C60及びC70フラーレンは、異なるLUMO準位を含有する、異なる電子構造を有する(Yangらの、J.Am.Chem.Soc.1995,117,7801-7804;その全体が参照により本明細書に援用される)。同様に、異なるタイプのフラーレン誘導体は、異なる電子構造を有する。フラーレンブレンドは、これらの異なる電子構造が電子をトラップし、電子正孔対の再結合に寄与するエネルギートラップをもたらすため、望ましくなかった。電子正孔対の再結合は、短絡電流を制限する。さらに、フラーレン誘導体のブレンドは、ポリマー-アクセプターブレンドの無秩序性を増加させ、これは、さらに電子移動度とエネルギー変換効率とを低下させ得る。驚くべきことに、異なるタイプのフラーレン誘導体の適切な比をもつブレンドは、純粋なフラーレンの組成物と同様又はそれよりも大きい初期PCEを有し、同時に向上した安定性をも有する。
【0057】
<フラーレン誘導体>
フラーレン誘導体としては、例えば、メタノフラーレン、プラトーフラーレン誘導体、ビンゲルフラーレン誘導体、ジアゾリンフラーレン誘導体、アザフラロイド、ケトラクタム、及びディールス・アルダーフラーレン誘導体が挙げられる。フラーレン誘導体は、1つ以上の官能基を持つことができる。複数の官能基化(通常2又は3)の場合、官能基は同一であっても異なっていてもよい。フラーレン誘導体は、例えば、国際特許公開第WO2015/192942号、米国特許公開第2013/0306944号、米国特許公開第2017/0294585号、米国特許第8,435,713号、及び米国特許第9,527,797号(それぞれ、その全体が参照により本明細書に援用される)に開示されている。他のフラーレン誘導体としては、内包フラーレン誘導体及び開口フラーレンが挙げられる。実例は、Rossらの(Nature Materials 2009、8、208-212、内包)及びChenらの(Adv. Energy Mater.2011、1、776-780、開口フラーレン)に記載され(しかし、これらには限定されない)、それぞれ、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0058】
メタノフラーレンは、以下の一般的な形を有する。
【0059】
【化2】
【0060】
式中、Aはフラーレンであり;X及びYは、独立してアリール、アルキル又はジアゾアルカン付加を介して結合した他の基であり;nは1~6の整数である。いくつかの実施形態において、X及びYは、独立してアリール又はアルキルであり;nは1~4の整数である。いくつかの実施形態において、X及びYは、独立してアリール又はアルキルであり;nは1又は2である。いくつかの実施形態において、X及びYは、独立してアリール又はアルキルであり;nは1である。メタノフラーレンの非限定的な例としては、フェニル-C61-酪酸-メチル-エステル([60]PCBM)、チオフェニル-C61-酪酸-メチル-エステル([60]ThCBM)、[70]PCBM、フェニル-C61-酪酸-ヘキシル-エステル([60]PCBC)、フェニル-C71-酪酸-ヘキシル-エステル([70]PCBC)及び他の[6、6]-フェニルC61酪酸又は[6、6]-フェニルC71酪酸誘導体(C60-PCBX又はC70-PCBX)が挙げられる。メタノフラーレンは、例えば、米国特許第8,435,713号及び米国特許公開第2005/0239717号(それぞれ、その全体が参照により本明細書に援用される)に記載されているように調製することができる。メタノフラーレンは、しばしばポリマーとブレンドされてOPVデバイスにおいて電子アクセプターとして機能する。[60]PCBM及び[70]PCBMのブレンドは、米国特許公開第2017/0294585号(それぞれ、その全体が参照により本明細書に援用される)に記載されているように調製されてもよい。C70-PCBXは、米国特許公開第2017/0267628号(その全体が参照により本明細書に援用される)に記載されているように調製されてもよい。
【0061】
いくつかの実施形態において、メタノフラーレンは、以下の化合物である。
【0062】
【化3】
【0063】
いくつかの実施形態において、メタノフラーレンは、以下の化合物である。
【0064】
【化4】
【0065】
いくつかの実施形態において、メタノフラーレンは、以下の化合物である。
【0066】
【化5】
【0067】
プラトー誘導体は以下の一般的な形を有する。
【0068】
【化6】
【0069】
式中、Aはフラーレンであり;Rは、任意に置換されたアリール又はアラルキルであり;及びR、R、R、及びRは、独立して、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたシクロアルキル、任意に置換されたヘテロアルキル、任意に置換されたヘテロシクロアルキル、任意に置換されたアルケニル、又は任意に置換されたアラルキルである。いくつかの実施形態において、Rは、任意に置換されたアリール又はアラルキルであり;R、R、R、及びRは、独立して、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたシクロアルキル、任意に置換されたヘテロアルキル、任意に置換されたヘテロシクロアルキル、又は任意に置換されたアラルキルである。いくつかの実施形態において、Rは、アリール又はアラルキルであり;R、R、R及びRは、独立してアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル又はアラルキルである。プラトー誘導体としては、2-アザ-プロパン-(C+2N)が挙げられる。プラトーフラーレン誘導体は、C60又はC70のいずれかから形成され得る。
【0070】
メタノフラーレンの下位クラスである、ビンゲル誘導体は、以下の一般的な形を有する。
【0071】
【化7】
【0072】
式中、Aはフラーレンであり;Xは電子求引性基であり;Yは、水素、アリール、置換されたアリール、アルキル、置換されたアルキルであり;zは1~6の整数である。電子求引性基の非限定的な例としては、エステル、ニトリル、ニトロ、シアノ、ケトン、ジアルキルホスフェート、置換ピリジン、トリアルキルシリルアセチレン、又は三置換シリル基が挙げられる。いくつかの実施形態において、zは、1~4の整数である。いくつかの実施形態において、zは1又は2である。電子求引性基の非限定的な例としては、エステル、ニトリル、ニトロ、シアノ、ケトン、ジアルキルホスフェート、置換ピリジン、トリアルキルシリルアセチレン、又は三置換シリル基が挙げられる。
【0073】
ジアゾリン誘導体は、以下の一般的な形を有する。
【0074】
【化8】
【0075】
式中、Aはフラーレンであり;R及びRは、独立してアリールである。
【0076】
アザフラロイド誘導体は、以下の一般的な形を有する。
【0077】
【化9】
【0078】
式中、Aはフラロイドであり;Rはアルキル、アリール、置換されたアリール、又はSO-Rであり、ここでRはアルキル、アリール、又は置換されたアリールである。
【0079】
ディールス・アルダー誘導体は、以下の一般的な形を有する。
【0080】
【化10】
【0081】
式中、Aはフラーレンであり;R10及びR11は、独立して、H、アルキル、アルキルオキシ、-OC(O)R12、アリール、置換されたアルキル、置換されたアリール、ヘテロアリール、又は置換されたヘテロアリールであり;R12は、独立して、アルキル、アルキルオキシ、アリール、置換されたアルキル、置換されたアリール、ヘテロアリール、又は置換されたヘテロアリールであり;Xは、O、アルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、又は置換されたヘテロアリールであり;Yは、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、ビニレン、又は置換されたビニレンであり;nは1~20の整数である。ディールス・アルダー誘導体の非限定的な例としては、インデン付加体、2-メトキシインデン-C60、他のアルコキシ置換インデン-及びo-キノジメタン-C60及びC70付加体、α-置換o-キノジメタン-付加体、C60又はC70の3-(1-インデニル)プロピオン酸付加体のエステル、ビス-インデン-、及びビス-o-キノジメタン-C60及びC70付加体が挙げられる。
【0082】
いくつかの実施形態において、ディールス・アルダー誘導体は、以下の化合物、
【0083】
【化11】
【0084】
又は以下の3-(1-インデニル)プロピオン酸のエステルである。
【0085】
【化12】
【0086】
いくつかの実施形態において、ディールス・アルダー誘導体は、以下の化合物である。
【0087】
【化13】
【0088】
いくつかの実施形態において、ディールス・アルダー誘導体は、以下の化合物である。
【0089】
【化14】
【0090】
いくつかの実施形態において、ディールス・アルダー誘導体は、以下の化合物である。
【0091】
【化15】
【0092】
<フラーレンブレンド>
少なくとも2種のフラーレン誘導体のブレンドは、2種以上のC60誘導体、2種以上のC70誘導体、又は少なくとも1種のC60誘導体と少なくとも1種のC70誘導体とを含有し得る。
【0093】
少なくとも2種のフラーレン誘導体のブレンドは、2種以上の異なるタイプのフラーレン誘導体を含有し得る。いくつかの実施形態において、フラーレン誘導体のそれぞれタイプは、異なるタイプのフラーレン誘導体を含有する。
【0094】
少なくとも2種のフラーレン誘導体のブレンドは、さらに非フラーレンアクセプター材料を含んでもよい。非フラーレンアクセプターの非限定的な例としては、ベンゾチアジアゾール及びロダニン基が側面に位置するインダセノジチオフェンコア(IDTBR)、IDTBRのインデノフルオレン類縁体(IDFBR)、(5Z,50Z)-5,50-{(9,9-ジオクチル-9H-フルオレン-2,7-ジイル)ビス[2,1,3-ベンゾチアジアゾール-7,4-ジイル(Z)メチリリデン]}ビス(3-エチル-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-4-オン)(FBR)、n-オクチルイダカエノ(idacaeno)ジチオフェン(O-IDTBR)、2-エチルヘキシルイダカエノジチオフェン(EH-IDTBR)又は量子ドット(例えば、Liuらの、Adv.Mater.2013、25、5772-5778;Hollidayらの、Nature Communications vol.7,Article number:11585(2016);Baranらの、Nature Materials、2017、16、363-369;それぞれ、その全体が参照により本明細書に援用される)が挙げられる。
【0095】
2種のフラーレン誘導体のブレンドは、約97:3、95:5、90:10、85:15、80:20、75:25、70:30、60:40の比又はその間のいずれかの比を有し得る。
【0096】
フラーレン誘導体のブレンドを、例えば、トルエン、o-キシレン、o-ジクロロベンゼン、溶媒のブレンド及び1,8-オクタンジチオールなどであるが、これらに限定されない添加剤を用いて、粉末状の各フラーレン誘導体を溶液中に添加することによって形成してもよい。
【0097】
次いで、ブレンドを溶液から析出させてもよい。ブレンドの沈殿を促進するために、溶液をアンチソルベントに添加してもよい。沈殿したブレンドを濾過し、オーブン又は真空中で、又はオーブンと真空との組み合わせで、乾燥させてもよい。他の方法は、当業者には明らかであろう。
【0098】
いくつかの実施形態において、ブレンドは、メタノフラーレン及びディールス・アルダー誘導体を含む。メタノフラーレンは、C60系又はC70系であってもよい。いくつかの実施形態において、メタノフラーレンはPCBMであってもよい。ディールス・アルダー誘導体は、α位が置換されたインデン付加体を含んでもよい。
【0099】
いくつかの実施形態において、ブレンドは、約97:3と60:40との間の、メタノフラーレン:ディールス・アルダー誘導体の比を含む。いくつかの実施形態において、ブレンドは、約97:3と60:40との間の、ディールス・アルダー:メタノフラーレン誘導体の比を含む。いくつかの実施形態において、ブレンドは、約95:5、90:10、85:15、80:20、75:25、70:30又は60:40の、メタノフラーレン:ディールス・アルダー誘導体の比を含む。いくつかの実施形態において、ブレンドは、約95:5、90:10、85:15、80:20、75:25、70:30又は60:40の、ディールス・アルダー:メタノフラーレン誘導体の比を含む。いくつかの実施形態において、ブレンドは、約90:10、又は85:15の、メタノフラーレン:ディールス・アルダー誘導体の比を含む。いくつかの実施形態において、ブレンドは、約90:10又は85:15の、ディールス・アルダー:メタノフラーレン誘導体の比を含む。
【0100】
いくつかの実施形態において、ブレンドは、[60]PCBMと(α位又は他の位置に官能基をもつインデン付加体を含有する)C60-インデン付加体とを含む。いくつかの実施形態において、ブレンドは、約95%の[60]PCBMと約5%のC60-インデン付加体とを含む。いくつかの実施形態において、ブレンドは、約90%の[60]PCBMと約10%のC60-インデン付加体とを含む。いくつかの実施形態において、ブレンドは、約85%の[60]PCBMと約15%のC60-インデン付加体とを含む。いくつかの実施形態において、ブレンドは、約5%の[60]PCBMと約95%のC60-インデン付加体とを含む。いくつかの実施形態において、ブレンドは、約10%の[60]PCBMと約90%のC60-インデン付加体とを含む。いくつかの実施形態において、ブレンドは、約15%の[60]PCBMと約85%のC60-インデン付加体とを含む。
【0101】
いくつかの実施形態において、ブレンドは、[60]PCBMと(α位又は他の位置に官能基をもつインデン付加体を含有する)C70-インデン付加体とを含む。いくつかの実施形態において、ブレンドは、約95%の[60]PCBMと約5%のC70-インデン付加体とを含む。いくつかの実施形態において、ブレンドは、約90%の[60]PCBMと約10%のC70-インデン付加体とを含む。いくつかの実施形態において、ブレンドは、約85%の[60]PCBMと約15%のC70-インデン付加体とを含む。いくつかの実施形態において、ブレンドは、約5%の[60]PCBMと約95%のC70-インデン付加体とを含む。いくつかの実施形態において、ブレンドは、約10%の[60]PCBMと約90%のC70-インデン付加体とを含む。いくつかの実施形態において、ブレンドは、約15%の[60]PCBMと約85%のC70-インデン付加体とを含む。
【0102】
いくつかの実施形態において、ブレンドは、約90%の[60]PCBMと約10%の以下の化合物とを含む。
【0103】
【化16】
【0104】
いくつかの実施形態において、ブレンドは、約10%の[60]PCBMと約90%の以下の化合物とを含む。
【0105】
【化17】
【0106】
いくつかの実施形態において、ブレンドは、約15%の[60]PCBMと約85%の以下の化合物とを含む。
【0107】
【化18】
【0108】
いくつかの実施形態において、ブレンドは、約85%の[60]PCBMと約15%の以下の化合物とを含む。
【0109】
【化19】
【0110】
いくつかの実施形態において、ブレンドは、約90%の[60]PCBMと約10%の以下の化合物とを含む。
【0111】
【化20】
【0112】
いくつかの実施形態において、ブレンドは、約10%の[60]PCBMと約90%の以下の化合物とを含む。
【0113】
【化21】
【0114】
いくつかの実施形態において、ブレンドは、約15%の[60]PCBMと約85%の以下の化合物とを含む。
【0115】
【化22】
【0116】
いくつかの実施形態において、ブレンドは、約85%の[60]PCBMと約15%の以下の化合物とを含む。
【0117】
【化23】
【0118】
<性能の測定>
適切な比をもつ2種以上のフラーレン誘導体のブレンドは、現在の技術のOPVデバイスと同等以上の電力変換効率を得てもよい。電力変換効率は、デバイスが光子を電気に変換する効率の尺度である。
【0119】
デバイスの安定性は、デバイスに光を照射し、光照射条件下で経時的に性能を測定することによって決定される。性能は、PCEに基づいて定量化してもよい。安定性は、デバイスが動作する条件に応じて、温度、湿度、及び光強度を含有する、様々な条件下において測定してもよい。安定性は、連続的に性能を測定するか、又は使用期間の前後に性能を測定することによって、決定されてもよい。
【0120】
<有機光起電力デバイス>
安価で、高速で、大規模なロールツーロール製造方法を使用する、有機光起電力デバイス(OPVs)は、発電のための重要な技術になる見込みが高い。
【0121】
OPVデバイスは、ポリマー太陽電池(PSC)又はポリマー-フラーレン複合体太陽電池とも呼ばれ、軽量で柔軟性があり、大面積の柔軟なデバイスを含有する、幅広い新しい用途の可能性をもたらす。
【0122】
理論に拘束されることを望まないが、光捕集、キャリア生成、輸送、及び収集のために使用される材料の光学的及び電子的特性を調整することに加えて、活性層のナノスケールのモルフォロジーの制御は、実験室において、及び特に大面積デバイスの、電力変換効率(PCE)を増加させる方針におけるもう1つの重要な因子である。特に、ナノスケールのモルフォロジーは、OPVの最適化における重要な因子であり得る。
【0123】
バルクヘテロ接合OPVsは、OPVデバイスの特定の種類であり、ここで、電子ドナー材料(すべてではないがほとんどの場合、ポリマー)と電子アクセプター材料との間にナノスケールのモルフォロジーが形成される。OPVデバイスは、フラーレン又はそれらの誘導体などの、電子アクセプターとブレンドされた電子ドナー(例えば、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT))をその活性層において含有する。フラーレン誘導体のブレンドを電子ドナーポリマーと組み合わせる場合、フラーレン-ポリマーブレンドのモルフォロジーは、フラーレン誘導体ブレンドの誘導体とフラーレン誘導体ブレンドの比とに依存する。また、電子ドナー材料のブレンドの使用も報告されている(例えば、Linらの、Synthetic Metals 2014,192,113-118;その全体が参照により本明細書に援用される)。
【0124】
デバイスは、例えば、電極、電子輸送層などのような異なる層の液相析出を介して作製することができる。活性層は、電子アクセプターと電子ドナーとを含む。
【0125】
さらなる適切な電子ドナー材料としては、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)、(ポリ[2-3,7-ジメチルオクチルオキシ)-5-メチルオキシ]-パラフェニレンビニレン)(MDMO-PPV)、カルバゾール系コポリマー、シクロペンタジチオフェン系コポリマー、ジケトピロロピロール(DPP)系コポリマー、及びいくつかの液晶を含有する低分子(例えば、官能化ヘキサベンゾンコロネン)、ペンタセン誘導体、オリゴチオフェン、トリフェニルアミン、官能化アントラジチオフェン、例えばチオフェン-及びインドリン系由来の多数の従来の低分子量着色剤、などの半導体ポリマーが挙げられる。
【0126】
<フラーレンの調製のための一般的な手順>
容器にフラーレン誘導体、及び要すれば、他の化合物を特定の比率で添加して、所望のブレンドを製造する。ブレンドの成分材料に、好ましくは完全に溶解するのに適した種類及び量の溶媒を添加する。いくつかの実施形態において、要すれば、そして限定されないが、溶解性は、時間、熱、超音波処理、撹拌、回転、かき混ぜ、及び/又は過剰な溶媒の使用のいずれかの組み合わせにより促進することができる。いくつかの実施形態において、一旦材料が溶解、好ましくは完全に溶解されると、所望の濃度を達成するために、要すれば多少の溶媒が除去されてもよい。いくつかの実施形態において、溶媒和されたブレンドは、次いで、さらなる濃縮及び/又はアンチソルベントの添加、又はアンチソルベントへの添加を含有するが限定されるものではない、いくつかの手段により沈殿される。いくつかの実施形態において、成分材料の比が製品全体にわたってほぼ均一で一定になるように、沈殿が完全かつ均一であることが望ましい。いくつかの実施形態において、沈殿した材料は、次いで、ろ過され、アンチソルベントですすがれ、真空、熱及び/又は時間のいくつかの組合せを使用する、いずれかの数、順序又は工程の組合せにおいて、乾燥される。いくつかの実施形態において、ふるい分けを含有するがこれに限定されない、技術を用いて、生成物の所望の外観及び/又はコンシステンシーを達成してもよい。材料の乾燥は、熱重量分析(TGA)によって確認することができる。材料が乾燥すると、質量によって収率を確認することができる。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析を含有する種々な特性評価の方法により、固体全体にわたる、成分比、純度及びコンシステンシーの程度を確認することができる。
【実施例
【0127】
以下の非限定的な実施例において、特定の実施形態を説明する。
【0128】
<ブレンドIの調製>
ブレンドIを、以下の化合物を用いて調製した。
【0129】
【化24】
【0130】
所望のブレンドにおける総質量の9/10に等しい質量の[60]PCBMと所望のブレンドにおける総質量の1/10に等しい質量のディールス・アルダー付加体とを、溶媒中の総フラーレンが18g/Lに達するのに十分な大きさのロータリーエバポレーターフラスコに添加した。該フラスコをロータリーエバポレーターに固定した。注入ライン及び負圧を介してo-キシレンを添加し、溶媒中の固体が18g/Lに達した。内容物を、固体が完全に溶解するまで、~200トル、50℃の水浴中で30~60分間撹拌した。圧力を下げて、濃度が100g/Lになるまで、o-キシレンを蒸発させた。100g/Lを超えないことが好ましい。o-キシレン中のフラーレン溶液をメタノールにゆっくり注ぎ、フラーレン付加体を完全に沈殿させた。混合物を、393 ザルトリウス グレードの濾紙(1~2ミクロン)によって、真空濾過した。固体をメタノールですすぎ、全てのo-キシレンを濾液に押し通した。濾過した固体を真空下、好ましくは70℃で12時間以上、乾燥させた。固体をオーブンから取り出し、好ましくは50℃以下で、固体をふるいにかけ、ブレンドを50℃及び高真空において、さらに1時間以上乾燥し続けた。固体をオーブンから取り出した。得られた固体の収率は定量的であった。HPLC分析に基づく純度と成分比とを記録し、固体をTGAにより分析し、残留溶媒含有量を決定した。
【0131】
<ブレンドIIの調製>
ブレンドIIを、以下の化合物を用いて調製した。
【0132】
【化25】
【0133】
所望のブレンドにおける総質量の9/10に等しい質量の[60]PCBMと所望のブレンドにおける総質量の1/10に等しい質量のディールス・アルダー付加体とを、溶媒中の総フラーレンが18g/Lに達するのに十分な大きさのロータリーエバポレーターフラスコに添加した。該フラスコをロータリーエバポレーターに固定した。注入ライン及び負圧を介してo-キシレンを添加し、溶媒中の固体が18g/Lに達した。内容物を、固体が完全に溶解するまで、~200トル、50℃の水浴中で30~60分間撹拌した。圧力を下げて、濃度が100g/Lになるまで、o-キシレンを蒸発させた。100g/Lを超えないことが好ましい。o-キシレン中のフラーレン溶液をメタノールにゆっくり注ぎ、フラーレン付加体を完全に沈殿させた。混合物を、393 ザルトリウス グレードの濾紙(1~2ミクロン)によって、真空濾過した。固体をメタノールですすぎ、全てのo-キシレンを濾液に押し通した。濾過した固体を真空下、好ましくは70℃で12時間以上、乾燥させた。固体をオーブンから取り出し、好ましくは50℃以下で、固体をふるいにかけ、ブレンドを50℃及び高真空において、さらに12時間以上続けた。固体をオーブンから取り出した。得られた固体の収率は定量的であった。HPLC分析に基づく純度と成分比とを記録し、固体をTGAにより分析し、残留溶媒含有量を決定した。
【0134】
<活性層中においてドナーPV2001をもつ、ブレンドI又はブレンドIIを用いるデバイスの作製>
図1に示すような逆構造を用いて、ドナー材料としてPV2001、アクセプター材料としてブレンドI、ブレンドII、又は[60]PCBMをもつデバイスを作製した。酸化インジウムスズ(ITO)(102)でプレコートした、ガラス基板(101)(25mm×25mm、標準レイアウト、0.1cm、各基板上に6つの太陽電池という結果になる)を、やわらかい組織とトルエンとで拭き取ることにより前洗浄した。続いて、ガラス基板を超音波浴において、最初にアセトンで、次いでIPAでそれぞれ5分間、さらに洗浄した。IPA中のZnO溶液を、ドクターブレーディングによって析出させ、続いて空気下、120℃で4分アニールすることで、ZnO酸化物層(103)を形成した。活性層(104)は、ドナーとしてPV2001を、アクセプターとして[60]PCBM、ブレンドI又はブレンドIIを含有していた。活性層インクの調製において、13.5mgのPV2001(台湾、新竹のRaynergy Tekから購入)と19.5mgの[60]PCBM、ブレンドI又はブレンドIIとを、120℃、窒素下、少なくとも8時間にわたる撹拌で、1mLのo-キシレン中に溶解させた。室温条件におけるドクターブレーディングによる、ZnO酸化物層(103)上への析出前の、670nm~675nmにおいて分光光度計によって測定された光学密度は、0.7~0.8であった。続いて、正孔輸送層としてポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホネート(PEDOT-PSS、HTL388)(105)を、再びドクターブレーディングにより析出させ、続いてグローブボックス中で、140℃、4分間アニールした。最後に、銀ナノワイヤ(106)を、水溶液から上部電極として析出させた。
【0135】
<活性層においてドナーPCE-11をもつ、ブレンドI又はブレンドIIを用いるデバイスの作製>
図2に示すような逆構造を用いて、ドナー材料としてPCE-11、アクセプター材料としてブレンドI、ブレンドII、又は[60]PCBMをもつデバイスを作製した。酸化インジウムスズ(ITO)(202)でプレコートした、ガラス基板(201)(25mm×25mm、標準レイアウト、0.1cm、各基板上に6つの太陽電池という結果になる)を、やわらかい組織とトルエンとで拭き取ることにより前洗浄した。続いて、ガラス基板を超音波浴において、最初にアセトンで、次いでIPAでそれぞれ5分間、さらに洗浄した。ZnO溶液を、ドクターブレーディングによって析出させ、続いて空気下、120℃で4分アニールすることで、ZnO酸化物層を形成した。活性層(207)は、ドナーとしてPCE-11を、アクセプターとして[60]PCBM、ブレンドI又はブレンドIIを含有する。活性層インクの調製において、13.5mgのPCE-11(PffBT4T-2OD、カナダ、ケベック州ドーバルの1-Material Inc.から購入)と19.5mgの[60]PCBM、ブレンドI又はブレンドIIとを、120℃、窒素下、少なくとも8時間にわたる撹拌で、1mLのo-キシレン中に溶解させた。室温条件におけるドクターブレーディングによる、ZnO酸化物層(203)上への析出前の、687nmにおいて分光光度計によって測定された光学密度は、0.7~0.8であった。続いて正孔輸送層として10nmのMoOx(208)を蒸着した。最後に、蒸発によって100nmの銀(209)を上部電極として蒸着した。
【0136】
<安定性測定>
活性層中にPV2001又はPCE-11をもつ両方のデバイスの熱安定性を、周囲空気中、120℃において、光をあてない熱酸化によって評価した。この目的のために、最終的なセルを、窒素中において1太陽強度で測定した。続いて、セルを暗雰囲気中、120℃の空気中でアニールした。セルの性能をアニーリング時間の関数として規則的に測定した。この目的のために、太陽シミュレーター(LOT Quantum Design LSO 916)とソース測定ユニットKEYSIGHT B2901Aとを使用した。各測定後、セルをオーブンに戻し、アニーリング手順を続けた。デバイスに照射し、電流を測定している間、-1から1.5Vの電位をデバイスに印加した。得られた電流-電圧(I-V)曲線から、電力変換効率、フィルファクター、短絡電流、開路電圧、及び光注入データを抽出した。ドナー材料としてPV2001を使用するデバイスの電力変換効率(PCE、%)、フィルファクター(FF、%)、短絡電流(Jsc、mA/cm)、開路電圧(Voc、V)、及び1.2V(mA/cm)における光注入を、図3A~3Eに示し、一方、ドナー材料としてPCE-11を使用するデバイスからの対応するデータを図4A~4Eに示す。
【0137】
[60]PCBMの使用と比較して向上した、ブレンドI及びIIの熱安定性が、調べたドナー材料PV2001及びPCE-11の両方で観察された。ここで調査した全ての材料系について観察された経時的な性能の低下は、ブレンドI又はブレンドIIの使用ではそれほど顕著ではなかったが、図3C及び図4Cに示された、短絡電流(J)の低下によって主に駆動されている。そのような改善された熱安定性は、特に、例えば、デバイス集積化の状況において、限られた期間のアニーリング処置工程が必要とされる用途において、商業との関連で重要である。
【0138】
さらに、不活性ガス及び65℃に制御された温度の下、1太陽強度の太陽光(UV無し)に近いLED光による露光の下で寿命測定を行った。ドナー材料としてPCE-11を用いた、[60]PCBM、ブレンドI及びブレンドIIについて初期測定値で規格化した、電力変換効率(PCE)の650時間の持続期間にわたる進展を図5に示す。ブレンドI及びブレンドIIは共に、アクセプター材料[60]PCBMと比較して長期安定性が高められるという証拠を示した。露光の継続は、さらにより強調された違いを示すと予想される。
【0139】
本開示を読むことから当業者には明らかなように、本発明のさらなる実施形態は、特に上に開示されたもの以外の形態で提示することができる。したがって、上に記載された特定の実施形態は、例示的であり、限定的ではないとみなされる。当業者は、本明細書に記載された特定の実施形態に対する多数の等価物を、慣例の実験以上のものを用いずに認識するか、又は確認することができるであろう。本発明は、前述の例示的な実施形態において説明及び図示されてきたが、本開示は、例示としてのみ作成されており、本発明の精神及び範囲、範囲は以下の請求項によってのみ限定される、から逸脱することなく、本発明の実施の詳細における多数の変更が可能であることが理解される。開示された実施形態の特徴は、本発明の範囲及び精神の中で様々な方法で組み合わされ、再構成され得る。本発明の範囲は、前述の記載に含有される実施例に限定されるのではなく、添付の特許請求の範囲及びその等価物に記載される通りである。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5
【国際調査報告】