(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(54)【発明の名称】光のパターンを制御する方法および自動車用照明装置
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/12 20060101AFI20220202BHJP
【FI】
B60Q1/12 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534674
(86)(22)【出願日】2019-11-28
(85)【翻訳文提出日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2019082985
(87)【国際公開番号】W WO2020126399
(87)【国際公開日】2020-06-25
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391011607
【氏名又は名称】ヴァレオ ビジョン
【氏名又は名称原語表記】VALEO VISION
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】アリ、カンジ
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンティン、プラト
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339BA01
3K339BA02
3K339CA01
3K339CA03
3K339DA01
3K339DA05
3K339GB01
3K339HA03
3K339HA04
3K339HA05
3K339KA07
3K339KA09
3K339KA22
3K339KA29
3K339LA03
3K339LA06
3K339LA17
3K339MC03
3K339MC43
3K339MC73
(57)【要約】
本発明は、自動車(100)の自動車用照明装置(10)によって提供される光パターン(1)を制御する方法であって、光パターン(1)の動的部分(5)が、少なくとも光源(2)のマトリックス配列(6)によって提供される方法に関する。この方法は、自動車(100)のステアリング装置(11)のターンを感知するステップと、動的部分(5)を第1の部分(51)と第2の部分(52)に分割するステップと、感知されたターンと同じ方向に第1の部分(51)に関連する光源(2)の動作をシフトするステップと、シフトされた第1の部分(51)と第2の部分(52)の間に第3の部分(53)を作成するステップとを含む。また、本発明は、本方法のステップを実行する制御手段(7)を備えた自動車用照明装置(10)を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(100)の自動車用照明装置(10)によって提供される光パターン(1)を制御するための方法であって、前記光パターン(1)の動的部分(5)は、光源(2)のマトリックス配列(6)によって提供され、
前記方法は、
自動車(100)のステアリング装置(11)におけるターンを感知するステップと、
前記動的部分(5)を第1の部分(51)と第2の部分(52)とに分割するステップと、
第1の部分(51)に関連する光源(2)の動作を感知されたターンと同じ方向にシフトさせるステップと、
シフトされた第1の部分(51)と第2の部分(52)との間に第3の部分(53)を形成するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記光パターンは、ソリッドステート光源(2)の第1群(4)によって提供される固定ビーム(3)をさらに含み、前記マトリックス配列(6)は、第2群のソリッドステート光源(2)を含み、前記固定ビーム(3)と前記動的部分(5)との合計が前記光パターン(1)をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第3の部分(53)は、前記第1の部分(51)と前記第2の部分(52)との間の補間である、請求項1から2のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記補間は線形である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記光パターン(1)がロービームパターンであり、前記第1の部分(51)が前記ロービームパターンのカットオフを含む、請求項1から4のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記光源(2)の動作をシフトするステップの前に、前記ステアリング装置(11)の角度変位を検出するとともにシフトすべき位置の数に変換し、その後にこの位置の数を用いてシフトするステップを実行する、請求項1から5のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記光パターンの1つの点における光度を内部的にチェックするステップをさらに含む、請求項1から6のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
固定ビーム(3)を提供するように意図されたソリッドステート光源(2)の第1群(4)と、
動的ビーム(5)を提供するように意図されたソリッドステート光源(2)のマトリックス配列(6)と、
請求項1から7のうちのいずれか一項に記載された方法のステップを達成するための制御手段(7)と、
を備えた自動車用照明装置(10)。
【請求項9】
前記マトリックス配列(6)が、少なくとも2000個のソリッドステート光源(2)を含む、請求項8に記載の自動車用照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用照明装置の分野に関するものであり、特にダイナミックベンディングライト(DBL)機能を使用する際の光のパターンの管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ダイナミックベンディングライトは、現在の自動車の照明装置の中で、標準的なヘッドライトのアップグレードとして存在感を増しており、夜間の運転をより快適に、より安全にするために設計されている。
【0003】
このような照明機能を実現するために、カーブに入る際に車両の進行方向に光のパターンを提供することを目的とした多くのソリューションがある。
【0004】
メカニックベースのソリューションでは、ステアリングホイールの回転を直接利用して光源を回転させる角運動変換器により、ステアリングホイールの回転に合わせて光源を回転させる。ハンドルの回転方向に合わせて照明が回転するので、急カーブや急旋回の際にも道路を照らすことができる。
【0005】
このソリューションには膨大な数の改良が加えられており、光源の切り替えがより効果的になり、さまざまな運転状況も考慮されるようになっている。
【0006】
この問題に対する別の解決策が求められている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、請求項1に記載の光パターンを制御する方法と、請求項8に記載の自動車用照明装置によって、ダイナミックベンディングライトを提供するための代替的な解決策を提供する。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に定義されている。
【0008】
特に定義されていない限り、本明細書で使用されているすべての用語(技術的および科学的な用語を含む)は、当該技術分野で慣習的に使用されているものとして解釈される。さらに、一般的に使用されている用語も、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想化された意味か、あるいは過度に形式的な意味ではなく、関連する技術分野で慣習的に使用されているものとして解釈されるべきであることが理解される。
【0009】
本文中の「備える(comprises)」という用語およびその派生語(「備えている(comprising)」など)は、除外的な意味で理解されるべきではなく、つまり、これらの用語は、記述・定義されているものがさらなる要素やステップなどを含む可能性を除外するものと解釈されるべきではない。
【0010】
第1の発明の側面において、本発明は、自動車の自動車用照明装置によって提供される光パターンを制御する方法であって、光パターンの動的(ダイナミックな)部分が光源のマトリックス配列によって提供される方法を提供し、当該方法は、
自動車のステアリング装置において、旋回を感知するステップと、
動的部分を第1の部分と第2の部分に分けるステップと、
第1の部分に関連する光源の動作を、感知されたターンと同じ方向にシフトさせるステップと、
シフトさせ第1の部分と、第2の部分との間に、第3の部分を作るステップと、
を備えている。
【0011】
この方法では、例えばロービーム機能を提供するのと同じ照明装置を用いて、ダイナミックベンディングライト機能を含む制御された光のパターンを、可動部品を使用せずに提供し、また、走行速度や対向車の存在など、他の運転状況にも適応させることができる。
【0012】
操作におけるシフトとは、ステアリング装置の動きに応じて、マトリックスに提供される光のパターンを1つ以上の列(column)を右または左にずらすことと理解すべきである。1つの行(row)の元のパターンが、例えば、0-0-1-1-0(0は消灯、1は点灯)である場合、1列を左にシフトした後、得られるパターンは0-1-1-0-0となり、1列を右にシフトした後、得られるパターンは0-0-0-1-1となる。その後の第3の部分の作成は、第1の部分をシフトする際に作成されたブランクスペースに関連付けられた光源をアクティブにする(起動する)こととして理解されるべきである。別の例では、元のパターンが0-0-1-1-1-0-0-0-0-0で、第2の部分が0-0-1、第1の部分が1-1-0-0-0-0-0と定義され、車両の旋回が右に2列シフトすることを伴う場合、第2の部分は同じ0-0-1のままであるが、第2の部分は右に2列シフトし、2列のブランクスペース:0-0-1-1-0-0-0が作成される。第1の部分と第2の部分の間に第3の部分を作ることは「この空白を埋める」ことになるので、第1の部分、第2の部分、第3の部分を結合した後の最終的な光のパターンは、0-0-1-1-1-1-1-0-0-0となる。最初の「1」は第2の部分に、次の2つの「1」は第3の部分に、残りの2つの「1」は右にシフトした第1の部分に属している。
【0013】
この方法のいくつかの特定の実施形態では、光パターンは、第1群の固体光源によって提供される固定ビームをさらに含み、マトリックス配列は第2群の固体光源からなり、固定ビームと動的部分とが合わさったものが結果的に得られる光パターンとなる。用語「ソリッドステート(solid state)」は、半導体を利用して電気を光に変換するソリッドステート(solid state)エレクトロルミネッセンスによる放射された光を意味している。ソリッドステート照明は、白熱灯に比べ、発熱やエネルギー散逸を抑えて可視光を得ることができる。典型的には質量が小さいソリッドステート電子照明装置は、脆いガラス管/球や細長いフィラメント線に比べて、衝撃や振動に強い。また、それらは、フィラメントの蒸発がないため、照明装置の寿命が延びる可能性がある。この種の照明には、半導体発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)、ポリマー発光ダイオード(PLED)を光源とするものがあり、これらは電気フィラメント、プラズマ、ガスとは異なる。
【0014】
現在のヘッドランプでは、固定ビームとマトリックスビーム配列の組み合わせが非常に一般的なソリューションとなっている。マトリックス配列は、いくつかの照明機能を提供する役割を担っているが、本発明の方法では、このマトリックスビームも、追加要素を追加することなく、ダイナミックベンディングライト機能を提供するように構成されている。
【0015】
この方法のいくつかの特定の実施形態では、第3の部分は、第1の部分と第2の部分の間の補間である。
【0016】
第3の部分は、車両の旋回に応じて第1の部分がシフトしたときに生じるギャップを埋める。これらの実施形態では、各ピクセルの光度を定義する方法は、シフトした第1の部分のうち第3の部分に最も近い列と、第2の部分のうち第3の部分に最も近い列との間の補間である。いくつかの特定の実施形態では、この補間は線形である。
【0017】
いくつかの特定の実施形態では、光パターンはロービームパターンであり、第1部分はロービームパターンのカットオフを含む。
【0018】
カットオフは、ロービームパターンの対角線であり、その形状は自動車の法規制上重要である。このカットオフが第1部分に属するということは、車両の旋回時にこのカットオフがシフトされていることを意味する。シフトされたパターンも規制に適合しなければならないので、これは有利である。しかし、本発明は、ハイビームのような、カットオフを持たない他の照明機能にも適用することができる。
【0019】
この方法のいくつかの具体的な実施形態では、光源の動作をシフトするステップの前に、ステアリング装置の角変位が感知されてシフトする位置の数に変換され、このシフトする位置の数を用いてシフトするステップを実行する。
【0020】
ソリッドステート光源のマトリックスは、多くの異なる角度分解能を持ち得る。これらの光源の数と配置に応じて、解像度は、1光源当たり0.01°から0.5°まで変化し得る。したがって、ステアリングホイールの角度位置は、アレイ配列におけるこれらの光源の密度に応じて、光アレイの異なる列の数に変換されてもよい。
【0021】
いくつかの具体的な実施形態では、この方法は、光パターンの1つのポイントにおける光度を内部的にチェックするステップをさらに含む。
【0022】
光のパターンの一部がずれることで全体の光のパターンが変化するため、公定法で規制されている光点のいくつかがその光度基準を満たしているかどうかを確認する必要となってくる場合がある。
【0023】
第2の発明の側面では、本発明は、
固定ビームを供給するための固体光源の第1群と、
ダイナミック(動的な)ビームを提供するための固体光源のマトリックス配列と、
上記の第1の発明の態様による方法のステップを達成するための制御手段と、
を備えた自動車用照明装置を提供する。
【0024】
この自動車用照明装置は、可動部を持たず、既存の要素を利用しながら、新しい構成でダイナミックベンディングライト機能を提供するように構成されている。
【0025】
いくつかの特定の実施形態では、マトリックス配列は、少なくとも2000個のソリッドステート光源を含む。
【0026】
本発明は、数千個の光源を持つ最も簡潔なものから、数十万個の光源を持つより高度なものまで、多くの種類の照明マトリックス/アレイベースの技術に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
説明を完成させるために、また、本発明をよりよく理解するために、一連の図面を提供する。前記図面は、本明細書の不可欠な部分を形成し、本発明の実施形態を示しているが、これは本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではなく、単に本発明をどのように実施することができるかの例示として解釈されるべきである。図面は、以下の図で構成されている。
【0028】
【
図1】
図1は、本発明による自動車用照明装置を構成する自動車の全体透視図である。
【
図2】
図2は、本発明による照明装置の特定の実施形態を示す拡大図である。
【
図3】
図3は、
図2の照明装置によって投射される光のパターンを示しています。
【
図4a】本発明による方法のうち、ステアリング装置が右に回転する場合のいくつかのステップを示している。
【
図4b】本発明による方法のうち、ステアリング装置が右に回転する場合のいくつかのステップを示している。
【
図5a】本発明による方法のうち、ステアリング装置が左に回転する場合のいくつかのステップを示している。
【
図5b】本発明による方法のうち、ステアリング装置が左に回転する場合のいくつかのステップを示している。
【
図6a】このマトリックス配列の動作を、ステアリング装置が操作される前とそれ以降に分けて詳細に示したものである。
【
図6b】このマトリックス配列の動作を、ステアリング装置が操作される前とそれ以降に分けて詳細に示したものである。
【
図6c】このマトリックス配列の動作を、ステアリング装置が操作される前とそれ以降に分けて詳細に示したものである。
【0029】
例示された実施形態の要素は、適切な場合には、図面および詳細な説明を通して一貫して同じ参照数字で示されている。
【0030】
1 照明パターン
2 LED
3 固定ビーム
4 第1の照明モジュール
5 ロービームパターンの残りの部分
51 残りの部分の第1の部分
52 残りの部分の第1の部分
53 残りの部分の第3の部分
6 マトリックス配列
7 制御センター
10 照明装置
11 ステアリング装置
100 自動車
【発明を実施するための形態】
【0031】
例示された実施形態は、当業者が本明細書に記載されたシステムおよびプロセスを具現化して実施できるように、十分に詳細に説明されている。実施形態は、多くの代替形態で提供することができ、本明細書に記載された例に限定して解釈されるべきではないことを理解することが重要である。
【0032】
したがって、実施形態は様々な方法で変更することができ、様々な代替形態をとることができるが、その特定の実施形態を例として図面に示し、以下に詳細に説明する。開示された特定の形態に限定する意図はない。それどころか、添付の請求項の範囲内に入るすべての変更、同等物、および代替物が含まれるべきである。
【0033】
図1は、本発明による自動車用照明装置10を備えた自動車100の全体透視図である。
【0034】
この自動車100は、ステアリング装置11と、照明装置10とを備えている。照明装置10は、複数の群のLED2と、これらの群のLEDの動作を制御するように構成された制御センター(コントロールセンター)7とを備えている。
【0035】
制御センター7は、自動車のステアリングホイールが作動したときに、LED2の構築を変更するように構成されている。
【0036】
図2は、本発明による照明装置10の特定の実施形態を示す近景図である。
【0037】
この照明装置10は、第1の照明モジュール4にまとめられた(グループ化された)第1群のLED2と、マトリックス構成を成すように配列された第2群のLED2とで構成されている6。
【0038】
このマトリックス配列6は、1000ピクセル以上の解像度を持つ高解像度モジュールである。ただし、プロジェクションモジュールの製造に使用される技術には制限は無い。
【0039】
このマトリックス配列の第1の例は、モノリシックソース(モノリシック光源)を備える。このモノリシックソースは、数列×数行に配置されたモノリシックなエレクトロルミネッセンス素子のマトリックスを備えている。モノリシックマトリックスでは、エレクトロルミネッセンス素子は、共通の基板から成長させることができ、個別的に、あるいはエレクトロルミネッセンス素子のサブセット単位で、選択的にアクティベート(活性化)されるように電気的に接続されている。基板は、主に半導体材料で形成することができる。基板は、1つ以上の他の材料、例えば、非半導体(金属および絶縁体)を備えていてもよい。このように、各エレクトロルミネッセント素子/群は、光ピクセルを形成することができ、したがって、その/それらの材料に電気が供給されると、光を放出することができる。このようなモノリシックマトリックスの構成は、プリント回路基板にはんだ付けされることを意図した従来の発光ダイオードと比較して、選択的に活性化可能なピクセルを相互に非常に近接して配置することを可能にする。モノリシックマトリックスは、共通基板に対して垂直に測定した高さの主寸法が実質的に1マイクロメートルに等しいエレクトロルミネッセント素子を備えていてもよい。
【0040】
モノリシックマトリックスは、マトリックス配列6によるピクセル化された光ビームの生成および/または投射の制御がされるように制御センターに結合されている。制御センターは、マトリックス配列の各ピクセルの発光を個別に制御することができる。
【0041】
上に提示したものに代えて、マトリックス配列6は、ミラーのマトリックスに結合された主光源を備えていてもよい。つまり、ピクセル化された光源は、光を放出する少なくとも1つの発光ダイオードにより形成された少なくとも1つの主光源と、光電子素子のアレイ、例えば、「Digital Micro-mirror Device」の頭文字をとってDMDとして知られている主光源からの光線を反射によって投射光学素子に向けることができるマイクロミラーのマトリックスとのアセンブリによって形成されている。必要に応じて、補助光学素子が、少なくとも1つの光源の光線を集めて、マイクロミラーアレイの表面に合焦させて導くようにしてもよい。
【0042】
各マイクロミラーは、光線が投射光学素子に向かって反射される第1の位置と、光線が投射光学素子とは異なる方向に反射される第2の位置の2つの固定位置の間で旋回(揺動)することができる。2つの固定位置は、すべてのマイクロミラーで同じように配向されており、マイクロミラーのマトリックスを支持する基準面に対して、その仕様書で定義されたマイクロミラーのマトリックスの特徴的角度を成している。このような角度は、一般的に20°未満であり、通常は約12°とすることができる。このようにして、マイクロミラーのマトリックスに入射する光ビームの一部を反射する各マイクロミラーは、ピクセル光源の基礎エミッタ(放射器)を形成する。この基礎エミッタを選択的に作動させて基礎光ビームを放出するか否かを決定するためのミラーの位置変更の作動および制御は、制御センターによって制御される。
【0043】
異なる実施形態では、マトリックス配列は走査型レーザシステムを備えていてもよく、ここでは、レーザ光源がレーザビームで波長変換器の表面を探査するように構成された走査素子に向けてレーザビームを放出する。この表面の画像は、投射光学素子によって捕捉される。
【0044】
走査素子の探査は、人間の目が投射画像の変位を感じない程度の速度で行ってもよい。
【0045】
レーザ光源の点火とビームの走査移動を同期制御することで、波長変換素子の表面に選択的にアクティブにすることができる基礎エミッタのマトリックスを生成することが可能となる。走査手段は、レーザ光の反射により波長変換素子の表面を走査する移動式のマイクロミラーであってもよい。走査手段として挙げられるマイクロミラーは、例えば、MEMS(「Micro-Electro-Mechanical Systems」)タイプのものである。しかし、本発明はこのような走査手段に限定されるものではなく、他の種類の走査手段、例えば、回転要素上に一連のミラーを配置し、要素の回転によりレーザ光による透過面の走査を行うものを用いることができる。
【0046】
別の変形例では、光源は複合化されたものであってもよく、発光ダイオードなどの(複数の)光素子からなる少なくとも1つのセグメントと、モノリシックな光源の表面部分と両方を含んでいてもよい。
【0047】
図3は、この照明装置が投射する光のパターン1を示している。第1の照明モジュールは固定ビーム3を投射し、マトリックス配列は、この場合、ロービームパターンの残りの部分5を投射するように構成されている。
【0048】
この場合、この残りの部分5は、光のパターンのカットオフを含む。ハイビームのような他の照明用途では、カットオフはなく、マトリックス配列は別の光のスキームを投射する。
【0049】
図4aは、マトリックス配列によって投射されたロービームパターンのこの残りの部分5の分割を示している。
【0050】
この残りの部分5は、第1部分51と第2部分52とに分割されている。第1の部分51は、車両のステアリング装置の回転に伴って移動し、第2の部分52は静止している。
【0051】
図4bは、第1部分51の右への移動を示している。第1の部分は、カットオフを含み、また、車両のステアリング装置の動きに応じて右にシフトされる。第3の部分53は、第1の部分と第2の部分との間に、それらの間のギャップを埋めるように生成される。この第3の部分の構造は、第1の部分の最後の列および第2の部分の最後の列(これらの列は、第3の部分によって満たされるギャップを囲む列である)の間の線形補間である。
【0052】
図5aと5bは、同様の例を示しているが、左方向へのものである。この場合、第1の部分は左にあり、カットオフは第1の部分と一緒にシフトしているが、第2の部分は右ターンの場合の第2の部分とは異なるプロファイルに対応している。第3の部分は、いずれの場合も、第1の部分と第2の部分の間の線形補間である。
【0053】
図6aは、このマトリックス配列の動作を詳細に示した図です。この図では、マトリックス配列の20列と10行が見えている。各セルには、1から10までの数字が、10%の間隔で、関連するLEDの光度を表している。例えば、「4」は40%、「5」は50%の光度を表している。
【0054】
ステアリング装置が例えば右に1°回転すると、本発明による方法では、マトリックス配列の解像度に応じて、この角度変位を列の数に変換する。例えば、1つのLED列の解像度が0.2°の場合、1°の角度変位は5つのLED列に変換される。
【0055】
LED列の数を計算した後、制御センターは、動的部分を第1部分と第2部分に分割し、第1部分に関連するマトリックス配列の光源の動作を5列右にシフトさせ、その結果、
図6bに示すような動作を行う。この
図6bでは、シフトした第1の部分51と第2の部分52の間には、静止したままの空白が示されている。
【0056】
図6cは、第1の部分51と第2の部分52の間に第3の部分53を設けた、最終的なパターンを示している。この
図6cでは、同じ20列のLEDの動作が変化しているため、自動車の右側に1°のダイナミックベンディングライト機能が提供される。マトリックス配列には数十万個のLEDが含まれており、解像度は通常、LED1列あたり0.01°から0.5°の間となっているため、このシフトには通常、多くの列のLEDが関与する。
【0057】
このようなシフトを行った後は、通常は、公的な規則で定められた照明ポイントが適切な値の光度を提供しているかどうかを 確認することが推奨される。例えば、ポイント50Lの光度が、光度基準を満たしているかどうかを確認してもよい。
【0058】
場合によっては、一部のLEDが発する光の光度を補正することも可能である。制御センターは、これらの場合、固定ビームの光度に応じて、光度の値の補正を適用することができる。
【国際調査報告】