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▶ ベーリンガー・インゲルハイム・イオ・カナダ・インコーポレイテッドの特許一覧

特表2022-513961FLT3アゴニスト抗体及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(54)【発明の名称】FLT3アゴニスト抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220202BHJP
   C07K 16/40 20060101ALI20220202BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20220202BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220202BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220202BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220202BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220202BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220202BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220202BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220202BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20220202BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/40 ZNA
C07K16/46
C07K16/28
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 P
A61K39/395 D
A61P35/00
A61K47/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534690
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(85)【翻訳文提出日】2021-08-16
(86)【国際出願番号】 IB2019001437
(87)【国際公開番号】W WO2020128638
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】62/781,213
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521258005
【氏名又は名称】ベーリンガー・インゲルハイム・イオ・カナダ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOEHRINGER INGELHEIM IO CANADA INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ジェサ,アリフ
(72)【発明者】
【氏名】ゴベイル,フィル
(72)【発明者】
【氏名】バイルシュミット,メリッサ
(72)【発明者】
【氏名】マエツェル,ドロテア
(72)【発明者】
【氏名】フランソン,ヨハン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB11
4C085DD62
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書には、抗FLT3アゴニスト作用抗体が記載されている。このようなアゴニスト作用抗体は、樹状細胞の増幅及びがんの処置に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
FMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)に結合する、組換え抗体又はその抗原結合断片であって、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、
a)配列番号1(GFTFSNY);2(NYGMA);又は29(GFTFSNYGMA)に示されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域相補性決定領域1(VH-CDR1);
b)配列番号3(HSGGGD)又は4(SIHSGGGDTYYRDSVKG)に示されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域相補性決定領域2(VH-CDR2);
c)配列番号5(GRTPTGYYFDH)に示されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域相補性決定領域3(VH-CDR3);
d)配列番号6~10(RASEGIHXGLA)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域相補性決定領域1(VL-CDR1);
e)配列番号10(NANSLHS)に示されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域相補性決定領域2(VL-CDR2);及び
f)配列番号11(QQYYDYPLT)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域相補性決定領域3(VL-CDR3)
を含み、ここでのXは任意のアミノ酸残基である、該組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
FMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)に結合する、組換え抗体又はその抗原結合断片であって、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、
a)配列番号1(GFTFSNY);2(NYGMA);又は29(GFTFSNYGMA)に示されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域相補性決定領域1(VH-CDR1);
b)配列番号3(HSGGGD)又は4(SIHSGGGDTYYRDSVKG)に示されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域相補性決定領域2(VH-CDR2);
c)配列番号5(GRTPTGYYFDH)に示されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域相補性決定領域3(VH-CDR3);
d)配列番号6~10(RASEGIHXGLA)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域相補性決定領域1(VL-CDR1);
e)配列番号10(NANSLHS)に示されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域相補性決定領域2(VL-CDR2);及び
f)配列番号11(QQYYDYPLT)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域相補性決定領域3(VL-CDR3)
のいずれか1個、2個、3個、4個、又は5個を含み、ここでのXは任意のアミノ酸残基である、該組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
VL-CDR1が、配列番号7(RASEGIHDGLA);配列番号8(RASEGIHSGLA);配列番号9(RASEGIHTGLA);及び配列番号10(RASEGIHLGLA)からなるリストから選択されたアミノ酸配列を含む、請求項1又は請求項2の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
VL-CDR1が、配列番号8(RASEGIHSGLA)に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1又は請求項2の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
a)配列番号15、17、19、21、及び23のいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、若しくは99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含む、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)配列;及び
b)配列番号16、18、20、22、24、25、26、27及び28のいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、若しくは99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含む、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)配列
を含む、請求項1~4のいずれか一項の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
a)免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)が、配列番号15に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、若しくは99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含み;及び
b)免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)が、配列番号16に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、若しくは99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含む、請求項5の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項7】
a)免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)が、配列番号15に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、若しくは99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含み;及び
b)免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)が、配列番号26に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、若しくは99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含む、請求項5の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項8】
a)配列番号15、17、19、21、及び23のいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、若しくは99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含む、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)配列;及び
b)配列番号16、18、20、22、24、26、27及び28のいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、若しくは99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含む、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)配列
を含む、FMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)に特異的に結合する組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項9】
a)免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)が、配列番号15に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、若しくは99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含み;及び
b)免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)が、配列番号16に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、若しくは99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含む、請求項8の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項10】
a)免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)が、配列番号15に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、若しくは99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含み;及び
b)免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)が、配列番号26に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、若しくは99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含む、請求項8の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項11】
前記組換え抗体又はその抗原結合断片が、キメラであるか又はヒト化されている、請求項1~10のいずれか一項の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項12】
前記組換え抗体又はその抗原結合断片が、IgG抗体である、請求項1~11のいずれか一項の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項13】
前記組換え抗体又はその抗原結合断片が、該組換え抗体又はその抗原結合断片の1つ以上のエフェクター機能を減少させるための1つ以上の突然変異を含む、請求項1~12のいずれか一項の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項14】
前記組換え抗体又はその抗原結合断片の重鎖定常領域が、EU番号付け体系による、N434A、N434H、T307A/E380A/N434A、M252Y/S254T/T256E、433K/434F/436H、T250Q、T250F、M428L、M428F、T250Q/M428L、N434S、V308W、V308Y、V308F、M252Y/M428L、D259I/V308F、M428L/V308F、Q311V/N434S、T307Q/N434A、E258F/V427T、S228P、L235E、S228P/L235E/R409K、S228P/L235E、K370Q、K370E、G446の欠失、K447の欠失、及びIgG4の修飾の任意のその組合せから選択された、以上のいずれかのアミノ酸修飾又は修飾のセットを含む、IgG4重鎖定常領域を含む、請求項1~13のいずれか一項の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項15】
前記組換え抗体又はその抗原結合断片が、Fab、F(ab)、単一ドメイン抗体、又は一本鎖可変断片(scFv)を含む、請求項1~14のいずれか一項の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項16】
前記組換え抗体又はその抗原結合断片が、ヒト末梢血単核細胞及び/又は骨髄由来細胞と接触すると、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞の量を増加させる、請求項1~15のいずれか一項の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項17】
樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞の量の増加についてのEC50が、約200ピコモル(pM)より低い、請求項16の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項18】
前記組換え抗体又はその抗原結合断片が、FLT3を発現している細胞において、STAT5発現を増加させる、請求項1~17のいずれか一項の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項19】
FLT3を発現している細胞におけるSTAT5発現の増加についてのEC50が、ヒトFLT3リガンドによって誘導されたFLT3を発現している細胞におけるSTAT5発現の増加についてのEC50と等しいか又はそれより低い、請求項18の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項20】
免疫調節部分を含む、請求項1~19の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項21】
免疫調節部分が、インターフェロン遺伝子刺激タンパク質(STING)アゴニストである、請求項20の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか一項の組換え抗体又はその抗原結合断片と、薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤とを含む、医薬組成物。
【請求項23】
静脈内投与用に製剤化された、請求項22の医薬組成物。
【請求項24】
皮下投与用に製剤化された、請求項22の医薬組成物。
【請求項25】
腫瘍内投与用に製剤化された、請求項22の医薬組成物。
【請求項26】
がんの処置に使用するための、請求項1~21のいずれか一項の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項22~25のいずれか一項の医薬組成物。
【請求項27】
がんが、神経膠芽腫、膵臓癌、乳癌、膀胱癌、腎臓癌、頭頸部癌、卵巣癌、大腸癌、子宮頸癌、前立腺癌、又は肺癌を含む、請求項26の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項28】
請求項1~21のいずれか一項の組換え抗体若しくはその抗原結合断片又は請求項22~25のいずれか一項の医薬組成物を、がんを患う個体に投与する工程を含む、がんに罹患した個体におけるがんを処置する方法。
【請求項29】
がんが、神経膠芽腫、膵臓癌、乳癌、膀胱癌、腎臓癌、頭頸部癌、卵巣癌、大腸癌、子宮頸癌、前立腺癌、又は肺癌を含む、請求項28の方法。
【請求項30】
樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞の集団を増幅又は分化させるのに使用するための、請求項1~21のいずれか一項の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項22~25のいずれか一項の医薬組成物。
【請求項31】
請求項1~21のいずれか一項の組換え抗体若しくはその抗原結合断片又は請求項22~25のいずれか一項の医薬組成物を個体に投与する工程を含む、個体における樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞の集団を増幅又は分化させる方法。
【請求項32】
樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞が、通常型樹状細胞サブセットcDC1、通常型樹状細胞サブセットcDC2、形質細胞様樹状細胞、又はその任意の組合せを含む、請求項31の方法。
【請求項33】
請求項1~21のいずれか一項の組換え抗体若しくはその抗原結合断片又は請求項22~25のいずれか一項の医薬組成物の有効量を、腫瘍またはがんを患う個体に投与する工程を含む、腫瘍またはがんを患う個体の腫瘍微小環境に、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞を動員又は増幅する方法。
【請求項34】
樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞が、通常型樹状細胞サブセットcDC1、通常型樹状細胞サブセットcDC2、形質細胞様樹状細胞、又はその任意の組合せを含む、請求項33の方法。
【請求項35】
請求項1~19のいずれか一項の組換え抗体又はその抗原結合断片をコードしている核酸。
【請求項36】
請求項35の核酸を含む細胞。
【請求項37】
前記細胞が真核細胞である、請求項36の細胞。
【請求項38】
前記細胞がチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項37の細胞。
【請求項39】
請求項1~21のいずれか一項の組換え抗体又はその抗原結合断片を培養培地に分泌するのに十分な条件下で、培養培地中で請求項36~38のいずれか一項の細胞をインキュベートする工程を含む、がん処置を行なう方法。
【請求項40】
培養培地を少なくとも1回の精製工程にかける工程をさらに含む、請求項39の方法。
【請求項41】
請求項1~21のいずれか一項の組換え抗体又はその抗原結合断片と薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤とを混合する工程を含む、がん処置を行なう方法。
【請求項42】
がん処置法における、請求項1~21のいずれか一項の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項22~25のいずれか一項の医薬組成物の使用。
【請求項43】
がんが、神経膠芽腫、膵臓癌、乳癌、膀胱癌、腎臓癌、頭頸部癌、卵巣癌、大腸癌、子宮頸癌、前立腺癌、又は肺癌を含む、請求項42の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は医薬組成物の使用。
【請求項44】
樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞の集団の増幅又は分化における、請求項1~21のいずれか一項の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項22~25のいずれか一項の医薬組成物の使用。
【請求項45】
個体における、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞の集団の増幅又は分化における、請求項1~21のいずれか一項の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項22~25のいずれか一項の医薬組成物の使用。
【請求項46】
樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞が、通常型樹状細胞サブセットcDC1、通常型樹状細胞サブセットcDC2、形質細胞様樹状細胞、又はその任意の組合せを含む、請求項44又は45の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は医薬組成物の使用。
【請求項47】
個体の腫瘍微小環境に、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞を動員する際の、請求項1~21のいずれか一項の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項22~25のいずれか一項の医薬組成物の使用。
【請求項48】
樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞が、通常型樹状細胞サブセットcDC1、通常型樹状細胞サブセットcDC2、形質細胞様樹状細胞、又はその任意の組合せを含む、請求項47の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は医薬組成物の使用。
【請求項49】
がんの処置のための医薬品の製造における、請求項1~21のいずれか一項の組換え抗体又はその抗原結合断片、及び薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤の使用。
【請求項50】
がんが、神経膠芽腫、膵臓癌、乳癌、膀胱癌、腎臓癌、頭頸部癌、卵巣癌、大腸癌、子宮頸癌、前立腺癌、又は肺癌を含む、請求項49の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は医薬組成物の使用。
【請求項51】
がんと診断されたか又はがんに罹患していることが疑われる個体を処置するための医薬品の製造における、請求項1~21のいずれか一項の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項22~25のいずれか一項の医薬組成物の使用。
【請求項52】
がんが、神経膠芽腫、膵臓癌、乳癌、膀胱癌、腎臓癌、頭頸部癌、卵巣癌、大腸癌、子宮頸癌、前立腺癌、又は肺癌を含む、請求項51の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は医薬組成物の使用。
【請求項53】
樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞の集団の増幅又は分化のための医薬品の製造における、請求項1~21のいずれか一項の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項22~25のいずれか一項の医薬組成物の使用。
【請求項54】
がんに罹患した個体における、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞の集団の増幅又は分化のための医薬品の製造における、請求項1~21のいずれか一項の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項22~25のいずれか一項の医薬組成物の使用。
【請求項55】
樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞が、通常型樹状細胞サブセットcDC1、通常型樹状細胞サブセットcDC2、形質細胞様樹状細胞、又はその任意の組合せを含む、請求項54の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は医薬組成物の使用。
【請求項56】
がんを患う個体の腫瘍微小環境に、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞を動員するための医薬品の製造における、請求項1~21のいずれか一項の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項22~25のいずれか一項の医薬組成物の使用。
【請求項57】
樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞が、通常型樹状細胞サブセットcDC1、通常型樹状細胞サブセットcDC2、形質細胞様樹状細胞、又はその任意の組合せを含む、請求項56の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2018年12月18日に出願された米国仮特許出願番号第62/781,213号の恩典を主張し、それらは全て、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
背景
FMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)は、CD135としても知られているが、これは造血幹細胞、成熟樹状細胞(DC)、及び樹状前駆細胞上に発現されるクラスIIIチロシンキナーゼ受容体である。そのリガンドであるFLT3リガンド(FLT3L)を介したFLT3のシグナル伝達により、これらの細胞の増幅及び分化が起こる。この受容体の突然変異は、リガンドによるシグナル伝達から細胞増殖を脱共役させ、これは、病的新生物、特に急性骨髄性白血病(AML)に関連している。逆に、外来の可溶性FLT3Lによる処置を介したFLT3のアゴニスト作用が、現在、固形腫瘍療法について診療所で調査中であり、ここでのその樹状細胞増幅特性は、ペプチドワクチン接種療法のためのアジュバントとして、並びにがん免疫療法及び放射線療法と組み合わせた抗腫瘍免疫応答をブーストするように働く。しかしながら、FLT3L療法は、薬物動態の利用可能性が限定されていること、及び複雑な投薬必要条件に苦しむ。
【0003】
要約
本明細書において、樹状細胞及びその前駆細胞の増幅及び分化を誘導し、リガンドの制限されたバイオアベイラビリティを克服しつつ、腫瘍による抗原提示を改善する、FLT3アゴニスト抗体の開発が記載されている。これらの抗体は、がんの処置法において有用である。
【0004】
本明細書に記載の態様は、FMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)に結合する組換え抗体又はその抗原結合断片を含み、ここでの組換え抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1(GFTFSNY);2(NYGMA);又は29(GFTFSNYGMA)に示されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域相補性決定領域1(VH-CDR1);配列番号3(HSGGGD)又は4(SIHSGGGDTYYRDSVKG)に示されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域相補性決定領域2(VH-CDR2);配列番号5(GRTPTGYYFDH)に示されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域相補性決定領域3(VH-CDR3);配列番号6~10(RASEGIHXGLA)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域相補性決定領域1(VL-CDR1);配列番号10(NANSLHS)に示されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域相補性決定領域2(VL-CDR2);及び配列番号11(QQYYDYPLT)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域相補性決定領域3(VL-CDR3)を含み、ここでのXは任意のアミノ酸残基である。いくつかの実施態様では、VL-CDR1は、配列番号7(RASEGIHDGLA);配列番号8(RASEGIHSGLA);配列番号9(RASEGIHTGLA);及び配列番号10(RASEGIHLGLA)からなるリストから選択されたアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、VL-CDR1は、配列番号8(RASEGIHSGLA)に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、配列番号15、17、19、21、及び23のいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、若しくは99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含む、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)配列;並びに配列番号16、18、20、22、24、25、26、27及び28のいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、若しくは99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含む、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)配列を含む。いくつかの実施態様では、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)は、配列番号15に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、若しくは99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含み;及び免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)は、配列番号16に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、若しくは99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)は、配列番号15に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、若しくは99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含み;及び免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)は、配列番号26に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、若しくは99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、キメラであるか又はヒト化されている。いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、IgG抗体である。
いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、該組換え抗体又はその抗原結合断片の1つ以上のエフェクター機能を減少させるための1つ以上の突然変異を含む。いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片の重鎖定常領域は、EU番号付け体系による、N434A、N434H、T307A/E380A/N434A、M252Y/S254T/T256E、433K/434F/436H、T250Q、T250F、M428L、M428F、T250Q/M428L、N434S、V308W、V308Y、V308F、M252Y/M428L、D259I/V308F、M428L/V308F、Q311V/N434S、T307Q/N434A、E258F/V427T、S228P、L235E、S228P/L235E/R409K、S228P/L235E、K370Q、K370E、G446の欠失、K447の欠失、及びIgG4の修飾の任意のその組合せから選択された、以上のいずれかのアミノ酸修飾又は修飾のセットを含む、IgG4重鎖定常領域を含む。いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、Fab、F(ab)、単一ドメイン抗体、又は一本鎖可変断片(scFv)を含む。いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、ヒト末梢血単核細胞及び/又は骨髄由来細胞と接触すると、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞の量を増加させる。いくつかの実施態様では、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞の量の増加についてのEC50は、約200ピコモル(pM)より低い。いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、FLT3を発現している細胞株において、STAT5発現を増加させる。いくつかの実施態様では、FLT3を発現している細胞株におけるSTAT5発現の増加についてのEC50は、ヒトFLT3リガンドによって誘導されたFLT3を発現している細胞株におけるSTAT5発現の増加についてのEC50と等しいか又はそれより低い。いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、免疫調節部分を含む。いくつかの実施態様では、該免疫調節部分は、インターフェロン遺伝子刺激タンパク質(STING)アゴニストである。いくつかの実施態様では、本明細書には、本明細書に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片と、薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤とを含む、医薬組成物が記載されている。いくつかの実施態様では、該医薬組成物は、静脈内投与用に製剤化されている。いくつかの実施態様では、該医薬組成物は、皮下投与用に製剤化されている。いくつかの実施態様では、該医薬組成物は、腫瘍内投与用に製剤化されている。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物は、がんの処置に使用するためのものである。いくつかの実施態様では、がんは、神経膠芽腫、膵臓癌、乳癌、膀胱癌、腎臓癌、頭頸部癌、卵巣癌、大腸癌、子宮頸癌、前立腺癌、又は肺癌を含む。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物は、がんと診断されたか又はがんに罹患していることが疑われる個体におけるがんの処置に使用するためのものである。いくつかの実施態様では、がんは、神経膠芽腫、膵臓癌、乳癌、膀胱癌、腎臓癌、頭頸部癌、卵巣癌、大腸癌、子宮頸癌、前立腺癌、又は肺癌を含む。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物は、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞の集団を増幅又は分化させるのに使用するためのものである。
いくつかの実施態様では、本明細書には、がんと診断されたか又はがんに罹患していることが疑われる個体に、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物を投与する工程を含む、個体における樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞の集団を増幅又は分化する方法が記載されている。いくつかの実施態様では、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞は、通常型樹状細胞サブセットcDC1、通常型樹状細胞サブセットcDC2、形質細胞様樹状細胞、又はその任意の組合せを含む。いくつかの実施態様では、本明細書には、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片又は本明細書に記載の医薬組成物の有効量を、腫瘍またはがんを患う個体に投与する工程を含む、腫瘍またはがんを患う個体の腫瘍微小環境に、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞を動員及び/又は増幅する方法が記載されている。いくつかの実施態様では、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞は、通常型樹状細胞サブセットcDC1、通常型樹状細胞サブセットcDC2、形質細胞様樹状細胞、又はその任意の組合せを含む。いくつかの実施態様では、本明細書には、本明細書に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片をコードしている核酸が記載されている。いくつかの実施態様では、本明細書には、本明細書に記載の核酸を含む細胞が記載されている。いくつかの実施態様では、該細胞は真核細胞である。いくつかの実施態様では、該細胞はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。いくつかの実施態様では、本明細書には、本明細書に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片を培養培地に分泌するのに十分な条件下で、培養培地中で本明細書に記載の細胞をインキュベートする工程を含む、がん処置を行なう方法が記載されている。いくつかの実施態様では、がん処置を行なう方法は、培養培地を少なくとも1回の精製工程にかける工程をさらに含む。いくつかの実施態様では、本明細書には、本明細書に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片と薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤とを混合する工程を含む、がん処置を行なう方法が記載されている。いくつかの実施態様では、本明細書には、がんの処置における、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物の使用が記載されている。いくつかの実施態様では、がんは、神経膠芽腫、膵臓癌、乳癌、膀胱癌、腎臓癌、頭頸部癌、卵巣癌、大腸癌、子宮頸癌、前立腺癌、又は肺癌を含む。いくつかの実施態様では、本明細書には、がんと診断されたか又はがんに罹患していることが疑われる個体における、がんの処置における、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物の使用が記載されている。いくつかの実施態様では、がんは、神経膠芽腫、膵臓癌、乳癌、膀胱癌、腎臓癌、頭頸部癌、卵巣癌、大腸癌、子宮頸癌、前立腺癌、又は肺癌を含む。いくつかの実施態様では、本明細書には、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞の集団を増幅又は分化させる際の、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物の使用が記載されている。いくつかの実施態様では、本明細書には、個体における、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞の集団を増幅又は分化させる際の、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物の使用が記載されている。いくつかの実施態様では、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞は、通常型樹状細胞サブセットcDC1、通常型樹状細胞サブセットcDC2、形質細胞様樹状細胞、又はその任意の組合せを含む。いくつかの実施態様では、本明細書には、個体の腫瘍微小環境に、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞を動員する際の、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物の使用が記載されている。いくつかの実施態様では、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞は、通常型樹状細胞サブセットcDC1、通常型樹状細胞サブセットcDC2、形質細胞様樹状細胞、又はその任意の組合せを含む。いくつかの実施態様では、本明細書には、がん処置を処置するための医薬品の製造における、本明細書に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片、及び薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤の使用が記載されている。いくつかの実施態様では、本明細書には、がんの処置のための医薬品の製造における、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物の使用が記載されている。いくつかの実施態様では、がんは、神経膠芽腫、膵臓癌、乳癌、膀胱癌、腎臓癌、頭頸部癌、卵巣癌、大腸癌、子宮頸癌、前立腺癌、又は肺癌を含む。いくつかの実施態様では、本明細書には、がんと診断されたか又はがんに罹患していることが疑われる個体を処置するための医薬品の製造における、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物の使用が記載されている。いくつかの実施態様では、がんは、神経膠芽腫、膵臓癌、乳癌、膀胱癌、腎臓癌、頭頸部癌、卵巣癌、大腸癌、子宮頸癌、前立腺癌、又は肺癌を含む。いくつかの実施態様では、本明細書には、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞の集団の増幅又は分化のための医薬品の製造における、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物の使用が記載されている。いくつかの実施態様では、本明細書には、がんと診断されたか又はがんに罹患していることが疑われる個体における、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞の集団の増幅又は分化のための医薬品の製造における、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物の使用が記載されている。いくつかの実施態様では、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞は、通常型樹状細胞サブセットcDC1、通常型樹状細胞サブセットcDC2、形質細胞様樹状細胞、又はその任意の組合せを含む。いくつかの実施態様では、本明細書には、がんと診断されたか又はがんに罹患していることが疑われる個体の腫瘍微小環境に、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞を動員するための医薬品の製造における、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物の使用が記載されている。いくつかの実施態様では、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞は、通常型樹状細胞サブセットcDC1、通常型樹状細胞サブセットcDC2、形質細胞様樹状細胞、又はその任意の組合せを含む。
【0005】
本明細書に記載の別の態様は、FMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)に結合する、組換え抗体又はその抗原結合断片を含み、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1(GFTFSNY);2(NYGMA);又は29(GFTFSNYGMA)に示されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域相補性決定領域1(VH-CDR1);配列番号3(HSGGGD)又は4(SIHSGGGDTYYRDSVKG)に示されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域相補性決定領域2(VH-CDR2);配列番号5(GRTPTGYYFDH)に示されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域相補性決定領域3(VH-CDR3);配列番号6~10(RASEGIHXGLA)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域相補性決定領域1(VL-CDR1);配列番号10(NANSLHS)に示されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域相補性決定領域2(VL-CDR2);又は配列番号11(QQYYDYPLT)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域相補性決定領域3(VL-CDR3)のいずれか1つを含み、ここでのXは任意のアミノ酸残基である。いくつかの実施態様では、VL-CDR1は、配列番号7(RASEGIHDGLA);配列番号8(RASEGIHSGLA);配列番号9(RASEGIHTGLA);及び配列番号10(RASEGIHLGLA)からなるリストから選択されたアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、VL-CDR1は、配列番号8(RASEGIHSGLA)に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、配列番号15、17、19、21、及び23のいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、若しくは99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含む、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)配列;並びに、配列番号16、18、20、22、24、25、26、27及び28のいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、若しくは99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含む、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)配列を含む。いくつかの実施態様では、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)は、配列番号15に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、若しくは99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含み;及び、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)は、配列番号16に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、若しくは99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)は、配列番号15に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、若しくは99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含み;及び、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)は、配列番号26に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、若しくは99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、キメラであるか又はヒト化されている。いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、IgG抗体である。いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、該組換え抗体又はその抗原結合断片の1つ以上のエフェクター機能を減少させるための1つ以上の突然変異を含む。いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片の重鎖定常領域は、EU番号付け体系による、N434A、N434H、T307A/E380A/N434A、M252Y/S254T/T256E、433K/434F/436H、T250Q、T250F、M428L、M428F、T250Q/M428L、N434S、V308W、V308Y、V308F、M252Y/M428L、D259I/V308F、M428L/V308F、Q311V/N434S、T307Q/N434A、E258F/V427T、S228P、L235E、S228P/L235E/R409K、S228P/L235E、K370Q、K370E、G446の欠失、K447の欠失、及びIgG4の修飾の任意のその組合せから選択された、以上のいずれかのアミノ酸修飾又は修飾のセットを含む、IgG4重鎖定常領域を含む。いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、Fab、F(ab)、単一ドメイン抗体、又は一本鎖可変断片(scFv)を含む。いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、ヒト末梢血単核細胞及び/又は骨髄由来細胞と接触すると、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞の量を増加させる。いくつかの実施態様では、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞の量の増加についてのEC50は、約200ピコモル(pM)より低い。いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、FLT3を発現している細胞株において、STAT5発現を増加させる。いくつかの実施態様では、FLT3を発現している細胞株におけるSTAT5発現の増加についてのEC50は、ヒトFLT3リガンドによって誘導されたFLT3を発現している細胞株におけるSTAT5発現の増加についてのEC50より低い。いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片は免疫調節部分を含む。いくつかの実施態様では、該免疫調節部分は、インターフェロン遺伝子刺激タンパク質(STING)アゴニストである。いくつかの実施態様では、本明細書には、本明細書に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片と、薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤とを含む、医薬組成物が記載されている。いくつかの実施態様では、該医薬組成物は、静脈内投与用に製剤化されている。いくつかの実施態様では、該医薬組成物は、皮下投与用に製剤化されている。いくつかの実施態様では、該医薬組成物は、腫瘍内投与用に製剤化されている。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物は、がんの処置に使用するためのものである。いくつかの実施態様では、がんは、神経膠芽腫、膵臓癌、乳癌、膀胱癌、腎臓癌、頭頸部癌、卵巣癌、大腸癌、子宮頸癌、前立腺癌、又は肺癌を含む。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物は、がんと診断されたか又はがんに罹患していることが疑われる個体におけるがんの処置に使用するためのものである。いくつかの実施態様では、がんは、神経膠芽腫、膵臓癌、乳癌、膀胱癌、腎臓癌、頭頸部癌、卵巣癌、大腸癌、子宮頸癌、前立腺癌、又は肺癌を含む。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物は、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞の集団を増幅又は分化させるのに使用するためのものである。
いくつかの実施態様では、本明細書には、がんと診断されたか又はがんに罹患していることが疑われる個体に、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物を投与する工程を含む、個体における樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞の集団を増幅又は分化する方法が記載されている。いくつかの実施態様では、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞は、通常型樹状細胞サブセットcDC1、通常型樹状細胞サブセットcDC2、形質細胞様樹状細胞、又はその任意の組合せを含む。いくつかの実施態様では、本明細書には、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片又は本明細書に記載の医薬組成物の有効量を、がんと診断されたか又はがんに罹患していることが疑われる個体に投与する工程を含む、個体の腫瘍微小環境に、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞を動員する方法が記載されている。いくつかの実施態様では、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞は、個体に投与される場合、通常型樹状細胞サブセットcDC1、通常型樹状細胞サブセットcDC2、形質細胞様樹状細胞、又はその任意の組合せを含む。いくつかの実施態様では、本明細書には、本明細書に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片をコードしている核酸が記載されている。いくつかの実施態様では、本明細書には、本明細書に記載の核酸を含む細胞が記載されている。いくつかの実施態様では、該細胞は真核細胞である。いくつかの実施態様では、該細胞はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。いくつかの実施態様では、本明細書には、本明細書に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片を培養培地に分泌するのに十分な条件下で、培養培地中で本明細書に記載の細胞をインキュベートする工程を含む、がん処置を行なう方法が記載されている。いくつかの実施態様では、がん処置を行なう方法は、培養培地を少なくとも1回の精製工程にかける工程をさらに含む。いくつかの実施態様では、本明細書には、本明細書に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片と薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤とを混合する工程を含む、がん処置を行なう方法が記載されている。いくつかの実施態様では、本明細書には、がんの処置における、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物の使用が記載されている。いくつかの実施態様では、がんは、神経膠芽腫、膵臓癌、乳癌、膀胱癌、腎臓癌、頭頸部癌、卵巣癌、大腸癌、子宮頸癌、前立腺癌、又は肺癌を含む。いくつかの実施態様では、本明細書には、がんと診断されたか又はがんに罹患していることが疑われる個体における、がんの処置における、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物の使用が記載されている。いくつかの実施態様では、がんは、神経膠芽腫、膵臓癌、乳癌、膀胱癌、腎臓癌、頭頸部癌、卵巣癌、大腸癌、子宮頸癌、前立腺癌、又は肺癌を含む。いくつかの実施態様では、本明細書には、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞の集団を増幅又は分化させる際の、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物の使用が記載されている。いくつかの実施態様では、本明細書には、個体における、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞の集団を増幅又は分化させる際の、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物の使用が記載されている。いくつかの実施態様では、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞は、通常型樹状細胞サブセットcDC1、通常型樹状細胞サブセットcDC2、形質細胞様樹状細胞、又はその任意の組合せを含む。いくつかの実施態様では、本明細書には、個体の腫瘍微小環境に、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞を動員する際の、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物の使用が記載されている。いくつかの実施態様では、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞は、通常型樹状細胞サブセットcDC1、通常型樹状細胞サブセットcDC2、形質細胞様樹状細胞、又はその任意の組合せを含む。いくつかの実施態様では、本明細書には、がん処置を処置するための医薬品の製造における、本明細書に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片、及び薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤の使用が記載されている。いくつかの実施態様では、本明細書には、がんの処置のための医薬品の製造における、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物の使用が記載されている。いくつかの実施態様では、がんは、神経膠芽腫、膵臓癌、乳癌、膀胱癌、腎臓癌、頭頸部癌、卵巣癌、大腸癌、子宮頸癌、前立腺癌、又は肺癌を含む。いくつかの実施態様では、本明細書には、がんと診断されたか又はがんに罹患していることが疑われる個体を処置するための医薬品の製造における、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物の使用が記載されている。いくつかの実施態様では、がんは、神経膠芽腫、膵臓癌、乳癌、膀胱癌、腎臓癌、頭頸部癌、卵巣癌、大腸癌、子宮頸癌、前立腺癌、又は肺癌を含む。いくつかの実施態様では、本明細書には、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞の集団の増幅又は分化のための医薬品の製造における、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物の使用が記載されている。いくつかの実施態様では、本明細書には、がんと診断されたか又はがんに罹患していることが疑われる個体における、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞の集団の増幅又は分化のための医薬品の製造における、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物の使用が記載されている。いくつかの実施態様では、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞は、通常型樹状細胞サブセットcDC1、通常型樹状細胞サブセットcDC2、形質細胞様樹状細胞、又はその任意の組合せを含む。いくつかの実施態様では、本明細書には、がんと診断されたか又はがんに罹患していることが疑われる個体の腫瘍微小環境に、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞を動員するための医薬品の製造における、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物の使用が記載されている。いくつかの実施態様では、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞は、通常型樹状細胞サブセットcDC1、通常型樹状細胞サブセットcDC2、形質細胞様樹状細胞、又はその任意の組合せを含む。
【0006】
本明細書に記載の別の態様は、配列番号15、17、19、21、及び23のいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、若しくは99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含む、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)配列;並びに、配列番号16、18、20、22、24、26、27及び28のいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、若しくは99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含む、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)配列を含む、FMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)に特異的に結合する組換え抗体又はその抗原結合断片を含む。いくつかの実施態様では、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)は、配列番号15に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、若しくは99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含み;及び、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)は、配列番号16に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、若しくは99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)は、配列番号15に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、若しくは99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含み;及び、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)は、配列番号26に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、若しくは99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、キメラであるか又はヒト化されている。いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、IgG抗体である。いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、該組換え抗体又はその抗原結合断片の1つ以上のエフェクター機能を減少させるための1つ以上の突然変異を含む。いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片の重鎖定常領域は、EU番号付け体系による、N434A、N434H、T307A/E380A/N434A、M252Y/S254T/T256E、433K/434F/436H、T250Q、T250F、M428L、M428F、T250Q/M428L、N434S、V308W、V308Y、V308F、M252Y/M428L、D259I/V308F、M428L/V308F、Q311V/N434S、T307Q/N434A、E258F/V427T、S228P、L235E、S228P/L235E/R409K、S228P/L235E、K370Q、K370E、G446の欠失、K447の欠失、及びIgG4の修飾の任意のその組合せから選択された、以上のいずれかのアミノ酸修飾又は修飾のセットを含む、IgG4重鎖定常領域を含む。いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、Fab、F(ab)、単一ドメイン抗体、又は一本鎖可変断片(scFv)を含む。いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、ヒト末梢血単核細胞及び/又は骨髄由来細胞と接触すると、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞の量を増加させる。
いくつかの実施態様では、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞の量の増加についてのEC50は、約200ピコモル(pM)より低い。いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、FLT3を発現している細胞株において、STAT5発現を増加させる。いくつかの実施態様では、FLT3を発現している細胞株におけるSTAT5発現の増加についてのEC50は、ヒトFLT3リガンドによって誘導されたFLT3を発現している細胞株におけるSTAT5発現の増加についてのEC50より低い。いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片は免疫調節部分を含む。いくつかの実施態様では、該免疫調節部分は、インターフェロン遺伝子刺激タンパク質(STING)アゴニストである。いくつかの実施態様では、本明細書には、本明細書に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片と、薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤とを含む、医薬組成物が記載されている。いくつかの実施態様では、該医薬組成物は、静脈内投与用に製剤化されている。いくつかの実施態様では、該医薬組成物は、皮下投与用に製剤化されている。いくつかの実施態様では、該医薬組成物は、腫瘍内投与用に製剤化されている。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物は、がんの処置に使用するためのものである。いくつかの実施態様では、がんは、神経膠芽腫、膵臓癌、乳癌、膀胱癌、腎臓癌、頭頸部癌、卵巣癌、大腸癌、子宮頸癌、前立腺癌、又は肺癌を含む。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物は、がんと診断されたか又はがんに罹患していることが疑われる個体におけるがんの処置に使用するためのものである。いくつかの実施態様では、がんは、神経膠芽腫、膵臓癌、乳癌、膀胱癌、腎臓癌、頭頸部癌、卵巣癌、大腸癌、子宮頸癌、前立腺癌、又は肺癌を含む。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物は、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞の集団を増幅又は分化させるのに使用するためのものである。いくつかの実施態様では、本明細書には、がんと診断されたか又はがんに罹患していることが疑われる個体に、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物を投与する工程を含む、個体における樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞の集団を増幅又は分化する方法が記載されている。いくつかの実施態様では、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞は、通常型樹状細胞サブセットcDC1、通常型樹状細胞サブセットcDC2、形質細胞様樹状細胞、又はその任意の組合せを含む。いくつかの実施態様では、本明細書には、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片又は本明細書に記載の医薬組成物の有効量を、がんと診断されたか又はがんに罹患していることが疑われる個体に投与する工程を含む、個体の腫瘍微小環境に、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞を動員する方法が記載されている。いくつかの実施態様では、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞は、個体に投与される場合、通常型樹状細胞サブセットcDC1、通常型樹状細胞サブセットcDC2、形質細胞様樹状細胞、又はその任意の組合せを含む。いくつかの実施態様では、本明細書には、本明細書に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片をコードしている核酸が記載されている。いくつかの実施態様では、本明細書には、本明細書に記載の核酸を含む細胞が記載されている。いくつかの実施態様では、該細胞は真核細胞である。いくつかの実施態様では、該細胞はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。いくつかの実施態様では、本明細書には、本明細書に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片を培養培地に分泌するのに十分な条件下で、培養培地中で本明細書に記載の細胞をインキュベートする工程を含む、がん処置を行なう方法が記載されている。いくつかの実施態様では、がん処置を行なう方法は、培養培地を少なくとも1回の精製工程にかける工程をさらに含む。いくつかの実施態様では、本明細書には、本明細書に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片と薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤とを混合する工程を含む、がん処置を行なう方法が記載されている。いくつかの実施態様では、本明細書には、がんの処置における、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物の使用が記載されている。いくつかの実施態様では、がんは、神経膠芽腫、膵臓癌、乳癌、膀胱癌、腎臓癌、頭頸部癌、卵巣癌、大腸癌、子宮頸癌、前立腺癌、又は肺癌を含む。いくつかの実施態様では、本明細書には、がんと診断されたか又はがんに罹患していることが疑われる個体における、がんの処置における、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物の使用が記載されている。いくつかの実施態様では、がんは、神経膠芽腫、膵臓癌、乳癌、膀胱癌、腎臓癌、頭頸部癌、卵巣癌、大腸癌、子宮頸癌、前立腺癌、又は肺癌を含む。いくつかの実施態様では、本明細書には、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞の集団を増幅又は分化させる際の、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物の使用が記載されている。いくつかの実施態様では、本明細書には、個体における、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞の集団を増幅又は分化させる際の、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物の使用が記載されている。いくつかの実施態様では、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞は、通常型樹状細胞サブセットcDC1、通常型樹状細胞サブセットcDC2、形質細胞様樹状細胞、又はその任意の組合せを含む。いくつかの実施態様では、本明細書には、個体の腫瘍微小環境に、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞を動員する際の、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物の使用が記載されている。いくつかの実施態様では、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞は、通常型樹状細胞サブセットcDC1、通常型樹状細胞サブセットcDC2、形質細胞様樹状細胞、又はその任意の組合せを含む。
いくつかの実施態様では、本明細書には、がん処置を処置するための医薬品の製造における、本明細書に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片、及び薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤の使用が記載されている。いくつかの実施態様では、本明細書には、がんの処置のための医薬品の製造における、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物の使用が記載されている。いくつかの実施態様では、がんは、神経膠芽腫、膵臓癌、乳癌、膀胱癌、腎臓癌、頭頸部癌、卵巣癌、大腸癌、子宮頸癌、前立腺癌、又は肺癌を含む。いくつかの実施態様では、本明細書には、がんと診断されたか又はがんに罹患していることが疑われる個体を処置するための医薬品の製造における、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物の使用が記載されている。いくつかの実施態様では、がんは、神経膠芽腫、膵臓癌、乳癌、膀胱癌、腎臓癌、頭頸部癌、卵巣癌、大腸癌、子宮頸癌、前立腺癌、又は肺癌を含む。いくつかの実施態様では、本明細書には、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞の集団の増幅又は分化のための医薬品の製造における、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物の使用が記載されている。いくつかの実施態様では、本明細書には、がんと診断されたか又はがんに罹患していることが疑われる個体における、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞の集団の増幅又は分化のための医薬品の製造における、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物の使用が記載されている。いくつかの実施態様では、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞は、通常型樹状細胞サブセットcDC1、通常型樹状細胞サブセットcDC2、形質細胞様樹状細胞、又はその任意の組合せを含む。いくつかの実施態様では、本明細書には、がんと診断されたか又はがんに罹患していることが疑われる個体の腫瘍微小環境に、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞を動員するための医薬品の製造における、本明細書に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の医薬組成物の使用が記載されている。いくつかの実施態様では、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞は、通常型樹状細胞サブセットcDC1、通常型樹状細胞サブセットcDC2、形質細胞様樹状細胞、又はその任意の組合せを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本明細書に記載の新規特色は、添付の請求項に特に示されている。本明細書に記載の特色及び特色の利点のより良い理解は、例示的な実施例(本明細書に記載の特色の原理が利用されている)を示す以下の詳細な説明、及び添付の図面を参照することによって得られるであろう。
図1図1は、1回量のSTAT5-ルシフェラーゼリポーターアッセイにおけるFLT3抗体の活性を示す。数値は、500ng/mlで試験されたFLT3L(灰色の棒グラフ)に標準化されている。一番上のクローン(*によって示される6B2)は、さらなるスクリーニングに進めた。
図2図2は、STAT5-ルシフェラーゼリポーターアッセイにおける、ヒトFLT3Lと比較した、図1に強調された一番上のクローン(6B2)についての用量反応曲線を示す。
図3図3は、AML5増殖アッセイにおける、図1に強調された一番上のクローン(6B2)についての、二価F(ab)’2(左)と一価Fab(右)との間の活性の差を示す。
図4図4は、ヒト又はカニクイザルのFLT3を発現しているHEK293T細胞に対する、NB1113についての用量反応結合曲線を示す。
図5図5は、ヒト(左)及びカニクイザル(右)のFLT3-STAT5-ルシフェラーゼリポーターアッセイにおけるNB1113についての用量反応曲線を示す。
図6図6は、FLT3L、NB1113、又は陰性対照を用いて12日間処置した後の、初代ヒト骨髄からインビトロで増幅させた、HLA-DR+CD1c+細胞の出現頻度を示す。FLT3L及びNB1113についてのEC50は、それぞれ0.023nM及び0.113nMである。
図7図7は、一回量の静脈内注射後の個々の雌カニクイザル血清中のNB1113の薬物動態(PK)分析を示す。
図8図8は、1回量のNB1113の注射後の個々の雌サルにおける、全樹状細胞集団(DC)、古典型樹状細胞2集団(cDC2)及び形質細胞様樹状細胞集団(pDC)における変化を示す。
図9図9は、1回量のNB1113の投薬後に、B細胞の出現頻度とT細胞の出現頻度の有意な変化は全く観察されなかったことを示す。
図10図10は、血小板数の僅かな変化が、1回量のNB1113の投薬後に観察されたことを示す。
【0008】
詳細な説明
以下の説明において、様々な実施態様の完全な理解を提供するために、ある具体的な詳細が示されている。しかしながら、当業者は、提供された実施例が、これらの詳細を用いることなく実践され得ることを理解するだろう。内容からそうではない必要がない限り、明細書及びそれに続く請求項を通して、「含む(comprise)」という単語及びその変化形、例えば「含む(comprises)」及び「含んでいる」は、制限のない包括的な意味で、すなわち、「を含むがこれらに限定されない」として解釈されるものである。本明細書及び添付の請求項に使用されているような単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、内容から明らかにそうではないことが示されない限り、複数の対象物を含む。また、「又は」という用語は一般的に、内容から明らかにそうではないことが示されない限り、「及び/又は」を含むその意味で使用されることが注記されるべきである。さらに、本明細書に提供される見出しは、単に便宜のためであって、請求されている実施態様の範囲又は意味を解釈するものではない。
【0009】
本明細書において使用する「約」という用語は、記載されている量に10%以下だけ近い、量を指す。
【0010】
本明細書において使用する「個体」、「患者」又は「被験者」という用語は、記載の組成物及び方法が処置に有用である、少なくとも1つの疾患と診断されたか、罹患していると疑われるか、又は発症するリスクがある、個体を指す。特定の実施態様では、個体は哺乳動物である。特定の実施態様では、哺乳動物は、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ラマ、アルパカ、又はヤクである。特定の実施態様では、個体はヒトである。
【0011】
本明細書において使用される場合の「特異的結合」又は「結合」という用語は、言及されている抗体若しくは断片のCDRの1つ以上のアミノ酸残基、又は言及されている抗体若しくは断片の1つ以上の可変領域アミノ酸残基によって媒介される、結合を指す。特異的な標的への抗体の結合又は結合していることに関連した、本明細書において使用する「接触する」又は「接触」という用語は、列挙されている接触している残基の5Å、4Å、3Å、又はそれ以下の範囲内にある可変領域又はCDRのアミノ酸残基を指す。接触には、水素結合、ファンデルワールス相互作用、及び抗体の可変領域又はCDRのアミノ酸残基と列挙された残基との間の塩橋形成を含む。
【0012】
提供された抗体の中には、モノクローナル抗体、多重特異的抗体(例えば、二重特異的抗体及び多重反応性抗体)、及び抗体断片がある。該抗体は、抗体コンジュゲート、及び抗体を含む分子、例えばキメラ分子を含む。したがって、抗体は、完全長抗体及び天然抗体、並びに、その結合特異性を保持したその断片及び部分、例えば、任意の数の免疫グロブリンクラス及び/又はアイソタイプ(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgD、IgE、及びIgM);並びに、その生物学的に関連した(抗原結合性)断片又は特異的結合部分(Fab、F(ab’)2、Fv、及びscFv(一本鎖又は関連した実体)を含むがこれらに限定されない)を含む、その任意の特異的な結合部分を含むがこれらに限定されない。モノクロ―ナル抗体は一般的に、実質的に均一な抗体の組成物内にある抗体であり;したがって、モノクロ―ナル抗体組成物内に含まれる任意の個々の抗体は、少量存在する可能性のある天然に存在する可能性のある突然変異を除いて同一である。モノクロ―ナル抗体は、ヒトIgG1定常領域を含み得る。モノクロ―ナル抗体は、ヒトIgG4定常領域を含み得る。
【0013】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広義な意味で使用され、これには、ポリクローナル抗体及びモノクロ―ナル抗体、例えばインタクトな抗体及びその機能的な(抗原結合性の)抗体断片、例えば抗原結合性断片(Fab)の断片、F(ab')断片、Fab’断片、Fv断片、組換えIgG(rIgG)断片、一本鎖抗体断片、例えば一本鎖可変断片(sFv又はscFv)、及び単一ドメイン抗体(例えばsdAb、sdFv、ナノボディ)断片が含まれる。該用語は、遺伝子工学操作された及び/又は他の方法で修飾された形態の免疫グロブリン、例えば細胞内抗体、ペプチド抗体、キメラ抗体、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、及びヘテロコンジュゲート抗体、多重特異的抗体、例えば二重特異的抗体、ディアボディーズ、トリアボディーズ、及びテトラボディーズ、直列型ジ-scFv、直列型トリ-scFvを包含する。特記されない限り、「抗体」という用語は、その機能的抗体断片を包含すると理解されるべきである。該用語はまた、インタクトな抗体又は完全長抗体、例えば、任意のクラス又はサブクラスの抗体、例えばIgG及びそのサブクラスであるIgM、IgE、IgA、及びIgDも包含する。該抗体は、ヒトIgG1定常領域を含み得る。該抗体は、ヒトIgG4定常領域を含み得る。
【0014】
「相補性決定領域」及び「CDR」という用語は、「超可変領域」すなわち「HVR」と同義語であるが、これは、抗原特異性及び/又は結合親和性を付与する、抗体可変領域内の非連続的なアミノ酸配列を指すことが当技術分野において公知である。一般的には、各々の重鎖可変領域には3つのCDR(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)が存在し、各々の軽鎖可変領域には3つのCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3)が存在する。「フレームワーク領域」及び「FR」は、重鎖及び軽鎖の可変領域のCDRではない部分を指すことが当技術分野において公知である。一般的には、各々の完全長重鎖可変領域には4つのFR(FR-H1、FR-H2、FR-H3、及びFR-H4)が存在し、各々の完全長軽鎖可変領域には4つのFR(FR-L1、FR-L2、FR-L3、及びFR-L4)が存在する。所与のCDR又はFRの正確なアミノ酸配列の境界は、Kabat et al. (1991), “Sequences of Proteins of Immunological Interest,” 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (“Kabat” numbering scheme), Al-Lazikani et al., (1997) JMB 273,927-948 (“Chothia” numbering scheme); MacCallum et al., J. Mol. Biol. 262:732-745 (1996), “Antibody-antigen interactions: Contact analysis and binding site topography,” J. Mol. Biol. 262, 732-745.” (“Contact” numbering scheme); Lefranc MP et al.,“IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V-like domains,” Dev Comp Immunol, 2003 Jan;27(1):55-77 (“IMGT” numbering scheme); Honegger A and Pluckthun A, “Yet another numbering scheme for immunoglobulin variable domains: an automatic modeling and analysis tool,” J Mol Biol, 2001 Jun 8;309(3):657-70, (“Aho” numbering scheme); and Whitelegg NR and Rees AR, “WAM: an improved algorithm for modelling antibodies on the WEB,” Protein Eng. 2000 Dec;13(12):819-24(“AbM” numbering scheme)によって記載のスキームを含む、多くの周知のスキームのいずれかを使用して容易に決定され得る。
【0015】
所与のCDR又はFRの境界は、同定のために使用されるスキームに応じて変化し得る。例えば、Kabatスキームは構造的アラインメントに基づき、一方、Chothiaスキームは構造的情報に基づく。Kabat及びChothiaの両方のスキームの番号付けは、最も一般的な抗体領域の配列長に基づき、これは挿入文字、例えば「30a」によって収容される挿入、及びいくつかの抗体内に出現する欠失を伴う。2つのスキームは異なる位置に特定の挿入及び欠失(「挿入欠失」)を配置し、その結果、異なる番号付けとなる。Contactスキームは、複雑な結晶構造の分析に基づき、多くの点においてChothia番号付けスキームに類似している。
【0016】
「可変領域」又は「可変ドメイン」という用語は、抗原に対する抗体の結合に関与する、抗体の重鎖又は軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれV及びV)は一般的に、類似した構造を有し、各ドメインは、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)及び3つのCDRを含んでいる(例えば、Kindt et al. Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., page 91(2007)参照)。単一のVドメイン又はVドメインは、抗原結合特異性を付与するのに十分であり得る。さらに、特定の抗原に結合する抗体は、抗原に結合する抗体に由来するVドメイン又はVドメインを使用して、それぞれ、相補的なVドメイン又はVドメインのライブラリーをスクリーニングすることによって単離され得る(例えば、Portolano et al., J. Immunol. 150:880-887 (1993); Clarkson et al., Nature 352:624-628(1991)参照)。
【0017】
提供された抗体の中には、抗体断片がある。「抗体断片」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合する、インタクトな抗体の部分を含む、インタクトな抗体ではない分子を指す。抗体断片の例としては、Fv、Fab、Fab’、 Fab’-SH、F(ab’);ディアボディーズ;鎖状抗体;一本鎖抗体分子(例えばscFv又はscFv);及び、抗体断片から形成された多重特異的抗体が挙げられるがこれらに限定されない。特定の実施態様では、該抗体は、重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域を含む一本鎖抗体断片、例えばscFvである。
【0018】
抗体断片は、インタクトな抗体のタンパク質分解、並びに、組換え宿主細胞の産生を含むがこれらに限定されない、様々な技術によって作製され得る。いくつかの実施態様では、該抗体は、組換え産生された断片、例えば、天然には起こらない整列を含む断片、例えば、合成リンカー、例えばポリペプチドリンカーによって接続された2つ以上の抗体領域又は抗体鎖を有する断片、及び/又は、天然に存在するインタクトな抗体の酵素消化によって産生されない断片である。いくつかの態様では、抗体断片はscFvである。
【0019】
「ヒト化」抗体は、全て又は実質的に全てのCDRアミノ酸残基が非ヒトCDRに由来し、全て又は実質的に全てのFRアミノ酸残基がヒトFRに由来する、抗体である。ヒト化抗体は場合により、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも部分を含んでいてもよい。「ヒト化形態」の非ヒト抗体は、典型的には親非ヒト抗体の特異性及び親和性を保持しつつ、ヒトに対する免疫原性を低減するために、ヒト化を受けている、非ヒト抗体の変異体を指す。いくつかの実施態様では、ヒト化抗体内のいくつかのFR残基は、例えば、抗体の特異性又は親和性を回復又は改善するために、非ヒト抗体(例えば、CDR残基が由来する抗体)に由来する対応する残基で置換されている。
【0020】
提供される抗体の中にはヒト抗体がある。「ヒト抗体」は、ヒト、又はヒト細胞、又は、ヒト抗体レパートリー又は他のヒト抗体コード配列、例えばヒト抗体ライブラリーを利用するヒト以外の起源によって産生される抗体のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を有する抗体である。該用語は、非ヒト抗原結合領域を含むヒト化形態の非ヒト抗体、例えば全て又は実質的に全てのCDRが非ヒトである抗体を除外する。
【0021】
ヒト抗体は、抗原による攻撃に応答して、インタクトなヒト抗体又はヒト可変領域を有するインタクトな抗体を産生するように改変されているトランスジェニック動物に免疫源を投与することによって調製され得る。このような動物は典型的には、内因性免疫グロブリン遺伝子座を置き換えているか、又は染色体外に存在するか、又は動物の染色体に無作為に組み込まれている、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全て又は一部を含有している。このようなトランスジェニック動物では、内因性免疫グロブリン遺伝子座は一般的に不活性化されている。ヒト抗体はまた、ヒトレパートリーに由来する抗体コード配列を含有している、ファージディスプレイライブラリー及び無細胞ライブラリーを含む、ヒト抗体ライブラリーに由来していてもよい。
【0022】
いくつかの実施態様では、工学操作されたヒト抗体分子の軽鎖又は重鎖の可変ドメインを、適宜、ヒト軽鎖又は重鎖の定常ドメインに融合させてもよい。工学操作されたヒト抗体分子のヒト定常ドメインは、存在する場合、提案されている抗体の機能に関して、特に必要とされ得るエフェクター機能の欠如に関して選択され得る。例えば、重鎖可変領域に融合させた重鎖定常ドメインは、ヒトIgA、IgG、又はIgMドメインであり得る。好ましくは、ヒトIgGドメインが使用される。ヒト定常ドメインの選択に応じて、任意の望ましくないエフェクター機能を除去して、天然アイソタイプの抗体を産生するために、例えば、部位特異的突然変異誘発又はオリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発を使用して、特定のアミノ酸残基を改変することが必要であり得る。軽鎖可変領域に融合させ得る、軽鎖ヒト定常ドメインとしては、ヒトラムダ鎖又はヒトカッパ鎖が挙げられる。
【0023】
いくつかの実施態様では、ヒト定常ドメインの類似体が代替的には有利には使用されてもよい。これらは、対応するヒトドメインよりも1つ以上追加のアミノ酸を含有しているそうした定常ドメイン、又は対応するヒトドメインの1つ以上の既存のアミノ酸が置換、付加、欠失、又は改変されているそうした定常ドメインを含む。このようなドメインは、例えば、オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発によって得られ得る。
【0024】
「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、同義語として使用され、アミノ酸残基のポリマーを指し、最小の長さに限定されない。ポリペプチド(提供される抗体及び抗体鎖及び他のペプチド、例えばリンカー及び結合性ペプチドを含む)は、天然及び/又は非天然アミノ酸残基を含む、アミノ酸残基を含み得る。該用語はまた、ポリペプチドの発現後修飾、例えばグリコシル化、シアル化、アセチル化、リン酸化などを含み得る。いくつかの態様では、該ポリペプチドは、該タンパク質が所望の活性を維持する限りにおいて、生得の又は天然の配列に関して修飾を含有していてもよい。これらの修飾は、部位特異的突然変異誘発などを通した意図的なものであっても、又は、タンパク質を産生する宿主の突然変異、若しくはPCR増幅に起因するエラーなどを通した偶発的なものであってもよい。
【0025】
基準ポリペプチド配列に関する配列同一率(%)は、配列をアラインさせ、必要であれば、最大の配列同一率を達成するためにギャップを導入した後、配列同一性の一部として保存的な置換を全く考慮せずに、基準ポリペプチド配列内のアミノ酸残基と同一である、候補配列内のアミノ酸残基の比率である。アミノ酸配列同一率を決定する目的でのアラインメントは、公知である様々な方法で、例えば公共的に利用できるコンピューターソフトウェア、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを使用して達成され得る。比較する配列の完全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要とされるアルゴリズムを含む、配列をアラインさせるための適切なパラメーターを決定することができる。しかしながら、本明細書での目的のために、アミノ酸配列同一率値%は、配列比較コンピュータープログラムALIGN-2を使用して算出される。ALIGN-2配列比較コンピュータープログラムは、ジェネンテック社によって作成され、ソースコードがユーザー文書と共にワシントンD.C.20559のアメリカ合衆国著作権局に提出され、そこでアメリカ合衆国著作権登録番号TXU510087として登録されている。ALIGN-2プログラムは、ジェネンテック社(サウスサンフランシスコ、カリフォルニア州)から公共的に入手可能であるか、又は、ソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX(登録商標) V4.0Dを含むUNIX(登録商標)オペレーティングシステム上での使用のためにコンパイルされるべきである。全ての配列比較パラメーターはALIGN-2プログラムによって設定され、変更されない。
【0026】
ALIGN-2がアミノ酸配列の比較のために使用される状況では、所与のアミノ酸配列Aの、所与のアミノ酸配列Bに対するアミノ酸配列同一率%(あるいは、所与のアミノ酸配列Bに対して、特定のアミノ酸配列同一率%を有する又は含む、所与のアミノ酸配列Aとして表現されてもよい)は、以下のように計算され:X/Yの分率×100、ここで、Xは、プログラムによるAとBのアラインメントにおいて、配列アラインメントプログラムALIGN-2によって同一な一致としてスコアリングされたアミノ酸残基の数であり、Yは、B内のアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さとは等しくない場合、Bに対するAのアミノ酸配列同一率%は、Aに対するBのアミノ酸配列同一率%とは等しくないであろうことが理解されるだろう。具体的に特記しない限り、本明細書において使用する全てのアミノ酸配列同一率値%は、ALIGN-2コンピュータープログラムを使用して直前の段落で記載されているように得られる。
【0027】
いくつかの実施態様では、本明細書において提供される抗体のアミノ酸配列変異体が考えられる。変異体は典型的には、1つ以上の置換、欠失、付加、及び/又は挿入において、本明細書において具体的に開示されたポリペプチドとは異なる。このような変異体は、天然に起こるものであっても、又は例えば本発明の上記の1つ以上のポリペプチド配列を修飾し、本明細書に記載のように及び/又は多くの公知の技術のいずれかを使用して、該ポリペプチドの1つ以上の生物学的活性を評価することによって、合成的に作製されてもよい。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性を改善することが望ましくあり得る。抗体のアミノ酸配列変異体は、該抗体をコードしているヌクレオチド配列に適切な改変を導入することによって、又はペプチド合成によって調製され得る。このような改変としては、例えば、該抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/又は該残基への挿入、及び/又は該残基の置換が挙げられる。欠失、挿入、及び置換のあらゆる組合せを行なって最終構築物に到達することができる。ただし、最終構築物は、所望の特徴、例えば抗原への結合を有する。
【0028】
いくつかの実施態様では、1つ以上のアミノ酸の置換を有する抗体変異体が提供される。置換による突然変異誘発のための関心対象の部位はCDR及びFRを含む。アミノ酸の置換を関心対象の抗体に導入し得、産物を所望の活性、例えば保持された/改善された抗原への結合、低減された免疫原性、又は改善されたADCC(抗体依存性細胞媒介性細胞障害)若しくはCDC(補体依存性細胞障害)についてスクリーニングし得る。
【0029】
いくつかの実施態様では、置換、挿入、又は欠失は、1つ以上のCDR内で起こり得、ここでの置換、挿入、又は欠失は、抗原に対する抗体の結合を実質的に低減させない。例えば、実質的に結合親和性を低減させない保存的置換は、CDR内で起こり得る。このような改変は、CDRの「ホットスポット」の外にあり得る。変異体のV配列及びV配列のいくつかの実施態様では、各CDRは改変されていない。
【0030】
改変(例えば置換)は、例えば抗体の親和性を改善するために、CDR内で行なわれ得る。このような改変は、体細胞の成熟中に高い突然変異率を有する、CDRをコードするコドンにおいて行なわれ得(例えば、Chowdhury, Methods Mol. Biol. 207:179-196(2008)参照)、結果として得られた変異体を結合親和性について試験することができる。親和性成熟(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリング、CDRの無作為化、又はオリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発を使用した)を使用して、抗体の親和性を改善することができる(例えば、Hoogenboom et al. in Methods in Molecular Biology 178:1-37(2001)参照)。抗原との結合に関与するCDR残基を、例えば、アラニン走査突然変異誘発又はモデリングを使用して具体的に同定し得る(例えば、Cunningham and Wells Science, 244:1081-1085(1989)参照)。CDR-H3及びCDR-L3が特に標的化されることが多い。代わりに又は追加して、抗体と抗原との間の接触点を同定するための抗原-抗体複合体の結晶構造。このような接触残基及び隣接残基を、置換のための候補として標的化又は排除し得る。変異体をスクリーニングして、それらが所望の特性を含有しているかどうかを決定し得る。
【0031】
アミノ酸配列の挿入及び欠失は、1残基から100以上の残基を含有しているポリペプチドまでの長さにおよぶアミノ末端及び/又はカルボキシル末端への融合、並びに、1つ又は複数のアミノ酸残基の配列間への挿入及び欠失を含む。末端への挿入例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入変異体としては、抗体のN末端又はC末端への酵素(例えばADEPT)又は抗体の血清中半減期を延長させるポリペプチドへの融合が挙げられる。抗体分子の配列内挿入変異体の例としては、軽鎖への3アミノ酸の挿入が挙げられる。末端欠失の例としては、軽鎖の末端における7個以下のアミノ酸の欠失を有する抗体が挙げられる。
【0032】
いくつかの実施態様では、抗体はそのグリコシル化を増加又は減少させるために、改変されている(例えば、1つ以上のグリコシル化部位が作り出されるか又は除去されるように、アミノ酸配列を改変することによって)。抗体のFc領域に付着した糖鎖が改変されてもよい。哺乳動物細胞に由来する天然抗体は典型的には、Fc領域のCH2ドメインのAsn297にN結合によって付着している分岐した、二分岐のオリゴ糖を含む(例えば、Wright et al. TIBTECH 15:26-32(1997)参照)。オリゴ糖は、様々な糖鎖、例えばマンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、シアル酸、二分岐オリゴ糖構造の「基部」にあるGlcNAcに付着したフコースであり得る。抗体内のオリゴ糖の修飾は、例えば、特定の改善された特性を有する抗体変異体を作製するために行なわれ得る。抗体グリコシル化変異体は、改善されたADCC及び/又はCDC機能を有し得る。いくつかの実施態様では、Fc領域に(直接的に又は間接的に)付着したフコースを欠失している糖鎖構造を有する抗体変異体が提供される。例えば、このような抗体内のフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%、又は20%~40%であり得る。フコースの量は、Asn297に付着した全ての糖構造の合計と比較した、Asn297における糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定される(例えば、国際公開公報第08/077546号参照)。Asn297は、Fc領域内のおよそ297位に位置するアスパラギン残基を指す(Fc領域残基のEU番号付け;例えば、Edelman et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 1969 May; 63(1):78-85参照)。しかしながら、Asn297はまた、抗体内の小さな配列の変化に因り、297位の上流又は下流の約±3アミノ酸、すなわち、294位から300位に位置し得る。このようなフコシル化変異体は、改善されたADCC機能を有し得る(例えば、Okazaki et al. J. Mol. Biol. 336:1239-1249 (2004);及びYamane-Ohnuki et al. Biotech. Bioeng. 87: 614(2004)参照)。細胞株、例えばノックアウト細胞株、例えば、タンパク質フコシル化の欠失したLec13CHO細胞、及びα-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子(FUT8)ノックアウトCHO細胞、及びそれらの使用法を使用して、脱フコシル化抗体を産生することができる(例えば、Ripka et al. Arch. Biochem. Biophys. 249:533-545 (1986); Yamane-Ohnuki et al. Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004); Kanda, Y. et al., Biotechnol. Bioeng., 94(4):680-688(2006)参照)。他の抗体グルコシル化変異体も含まれる(例えば、米国特許第6,602,684号参照)。
【0033】
いくつかの実施態様では、1つ以上のアミノ酸の改変を、本明細書において提供された抗体のFc領域に導入し得、これによりFc領域変異体を作製し得る。本明細書のFc領域は、定常領域の少なくとも部分を含有している、免疫グロブリン重鎖のC末端領域である。Fc領域は、天然配列のFc領域及び変異Fc領域を含む。Fc領域変異体は、1つ以上のアミノ酸位置においてアミノ酸の改変(例えば置換)を含む、ヒトFc領域の配列(例えばヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4Fc領域)を含み得る。
【0034】
本明細書において使用する「エフェクター機能」という語句は、FcγRに結合した時にFc含有タンパク質によって付与される機能的能力を含むことを意味する。いずれか1つの理論に拘るものではないが、Fc/FcγR複合体の形成は、様々なエフェクター細胞を、結合した抗原の部位に動員し、典型的にはその結果として、細胞内に多様なシグナル伝達事象及び重要な後続の免疫応答が起こる。
【0035】
本明細書において使用する「抗体依存性細胞媒介性細胞障害」及び「ADCC」という語句は、FcRを発現する非特異的な細胞障害性細胞(例えばナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)が、標的細胞上に結合した抗体を認識し、続いて、標的細胞の溶解を引き起こす、細胞媒介性反応を指す。ADCCを媒介するための主な細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現し、一方、単球はFcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。
【0036】
本明細書において使用する「抗体依存性細胞貪食」及び「ADCP」という語句は、抗体でコーティングされた細胞が、全体的に又は部分的に、免疫グロブリンFc領域に結合する貪食性免疫細胞(例えばマクロファージ、好中球、及び樹状細胞)によって内部移行するプロセスを指す。
【0037】
「補体依存性細胞障害」すなわち「CDC」という語句は、抗体のFc領域が補体の活性化をトリガーする能力を指し、その結果、標的化された細胞の表面上に膜侵襲複合体が形成される。
【0038】
いくつかの実施態様では、この開示の抗体は、いくつかであるが全てではないエフェクター機能を有する変異体を含み、これは、インビボでの抗体の半減期は重要であるが、特定のエフェクター機能(例えば補体及びADCC)は不必要であるか又は有害である適用にとって望ましい候補となる。インビトロ及び/又はインビボでの細胞障害アッセイを実施することによって、CDC及び/又はADCC活性の減少/消失を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実施することにより、抗体がFcγRとの結合を欠失しているが(よってADCC活性を欠失している可能性がある)、FcRn結合能を保持していることを確かめることができる。関心対象の分子のADCC活性を評価するインビトロアッセイの非制限的な例は、米国特許第5,500,362号及び第5,821,337号に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ法を使用してもよい(例えば、ACTI(商標)及びCytoTox96(登録商標)非放射性細胞障害アッセイ)。このようなアッセイのために有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)、単球、マクロファージ、及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。
【0039】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、野生型Fcを含む抗体と比較して、エフェクター機能を調節することができる。この調節は、Fc領域の選択の結果であり得る(例えば、IgG4は、IgG1よりも、もともと低いエフェクター機能を有する)。この調節は、Fc領域(IgG1又はIgG4のFc領域のいずれか)に1つ以上の変異体を導入した結果であり得る。いくつかの実施態様では、調節は、ADCC及び/又はADCP及び/又はCDC(補体依存性細胞障害)の調節である。いくつかの実施態様では、調節は、効果の抑制的調節又は低減である。いくつかの実施態様では、調節は、ADCCの調節であり;いくつかの実施態様では、調節は、ADCCの抑制的調節である。いくつかの実施態様では、調節は、ADCC及びCDCの抑制的調節である。いくつかの実施態様では、調節は、ADCCのみの抑制的調節である。いくつかの実施態様では、調節は、ADCC及びCDC及び/又はADCPの抑制的調節である。いくつかの実施態様では、抗体は、ADCC/CDC及びADCPを抑制的調節又は低減する。いくつかの実施態様では、Fc変異体を含む抗体によって誘導されるADCC又はCDC又はADCPの低減又は抑制的調節は、野生型Fc領域を含んでいる抗体による、ADCC、又はCDC、又はADCPの誘導について観察された数値の0、2.5、5、10、20、50、又は75%への減少である。いくつかの実施態様では、該抗体によって誘導されたADCCの調節は、該Fc変異体のEC50が、野生型Fc領域を含んでいる抗体と比較して、およそ10倍を超えて減少しているような、効力の減少である。いくつかの実施態様では、該抗体は、野生型Fc領域を含んでいる抗体と比較して、ヒトエフェクター細胞の存在下において、あらゆる実質的なADCC及び/又はCDC及び/又はADCPを欠失している。いくつかの実施態様では、該抗体は、低減した、例えば少なくとも20%低減した、又は強く低減した、例えば少なくとも50%低減したエフェクター機能を示し、これはADCC(抑制的調節)、CDC及び/又はADCPの低減であり得る。
【0040】
インビトロ及び/又はインビボでの細胞障害アッセイを実施することにより、CDC活性及び/又はADCC活性の低減/消失を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実施することにより、抗体がFcγRとの結合を欠失しているが(よってADCC活性を欠失している可能性がある)、FcRn結合能を保持していることを確かめることができる。
【0041】
補体活性化経路は、同族抗原と複合体を形成した分子、例えば抗体への、補体系の第一成分(C1q)の結合によって開始される。C1qに対する様々な変異体の結合特性は、ELISAサンドイッチ型イムノアッセイによって分析され得る。最大値の半分の応答における抗体濃度が、EC50値を決める。この解読値は、試料及び基準物質の変動係数と共に、同じプレート上で測定された基準標準物質に対する相対的な差として報告される。
【0042】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、対応する野生型抗体と比較して、C1qに対して低下した親和性を示す。いくつかの実施態様では、抗体は、対応する野生型抗体よりも少なくとも2倍、又は少なくとも3倍、又は少なくとも5倍、又は少なくとも7倍、又は少なくとも10倍、又は少なくとも20倍、又は少なくとも30倍、又は少なくとも40倍、又は少なくとも50倍、又は少なくとも60倍、又は少なくとも70倍、又は少なくとも80倍、又は少なくとも90倍、又は少なくとも100倍、又は少なくとも200倍低い、C1q受容体に対する親和性を示す。
【0043】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、対応する野生型抗体よりも少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、少なくとも40%、少なくとも30%、少なくとも20%、少なくとも10%、又は少なくとも5%低い、C1qに対する親和性を示す。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、約100nM~約100μM、又は約100nM~約10μM、又は約100nM~約1μM、又は約1nM~約100μM、又は約10nM~約100μM、又は約1μM~約100μM、又は約10μM~約100μMである、C1qに対する親和性を示す。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、1μMより高い、5μMより高い、10μMより高い、25μMより高い、50μMより高い、又は100μMより高い、C1qに対する親和性を示す。
【0044】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、対応する野生型Fc抗体と比較して、低減したCDC活性を示す。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、対応する野生型抗体よりも少なくとも2倍、又は少なくとも3倍、又は少なくとも5倍、又は少なくとも10倍、又は少なくとも50倍、又は少なくとも100倍低い、CDC活性を示す。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、対応する野生型抗体と比較して、少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも100%、又は少なくとも200%、又は少なくとも300%、又は少なくとも400%、又は少なくとも500%低減した、CDC活性を示す。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、検出可能なCDC活性を全く示さない。いくつかの実施態様では、CDC活性の低減及び/又は消失は、Fcリガンド及び/又は受容体に対する本明細書に記載の抗体の低減した親和性に起因し得る。
【0045】
当技術分野において、生物学的療法は、望んでいない細胞及び/又は標的を認識し攻撃するように免疫系が指令するという複雑な性質に伴う、有害毒性問題を有し得ることが理解される。処置が必要とされる場所で攻撃のための認識及び/又は標的化が行なわれない場合、有害毒性などの結果が起こり得る。例えば、非標的化組織の抗体による染色は、毒性問題の可能性を示し得る。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、対応する野生型抗体と比較して低減した非標的化組織の染色を示す。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、対応する野生型抗体よりも少なくとも2倍、又は少なくとも3倍、又は少なくとも5倍、又は少なくとも7倍、又は少なくとも10倍、又は少なくとも20倍、又は少なくとも30倍、又は少なくとも40倍、又は少なくとも50倍、又は少なくとも60倍、又は少なくとも70倍、又は少なくとも80倍、又は少なくとも90倍、又は少なくとも100倍、又は少なくとも200倍低い、低減した非標的化組織の染色を示す。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、対応する野生型抗体と比較して、少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも100%、又は少なくとも200%、又は少なくとも300%、又は少なくとも400%、又は少なくとも500%低減した、低減した非標的化組織の染色を示す。
【0046】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、対応する野生型抗体と比較して、低減した抗体に関連した毒性を示す。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、対応する野生型抗体よりも少なくとも2倍、又は少なくとも3倍、又は少なくとも5倍、又は少なくとも7倍、又は少なくとも10倍、又は少なくとも20倍、又は少なくとも30倍、又は少なくとも40倍、又は少なくとも50倍、又は少なくとも60倍、又は少なくとも70倍、又は少なくとも80倍、又は少なくとも90倍、又は少なくとも100倍、又は少なくとも200倍低い毒性を示す。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、対応する野生型抗体と比較して、少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも100%、又は少なくとも200%、又は少なくとも300%、又は少なくとも400%、又は少なくとも500%低減した毒性を示す。
【0047】
当技術分野において、生物学的療法は、有害作用の血小板凝集を有し得ることが理解される。インビトロ及びインビボでのアッセイを、血小板凝集の測定のために使用することができる。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、インビトロアッセイにおいて、対応する野生型抗体と比較して低減した血小板凝集を示す。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、インビトロアッセイにおいて、対応する野生型抗体よりも少なくとも2倍、又は少なくとも3倍、又は少なくとも5倍、又は少なくとも7倍、又は少なくとも10倍、又は少なくとも20倍、又は少なくとも30倍、又は少なくとも40倍、又は少なくとも50倍、又は少なくとも60倍、又は少なくとも70倍、又は少なくとも80倍、又は少なくとも90倍、又は少なくとも100倍、又は少なくとも200倍低い、低減した血小板凝集を示す。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、インビトロアッセイにおいて、対応する野生型抗体と比較して、少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも100%、又は少なくとも200%、又は少なくとも300%、又は少なくとも400%、又は少なくとも500%低減した、低減した血小板凝集を示す。
【0048】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、対応する野生型抗体と比較して、低減したインビボでの血小板凝集を示す。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、インビボアッセイにおいて、対応する野生型抗体よりも少なくとも2倍、又は少なくとも3倍、又は少なくとも5倍、又は少なくとも7倍、又は少なくとも10倍、又は少なくとも20倍、又は少なくとも30倍、又は少なくとも40倍、又は少なくとも50倍、又は少なくとも60倍、又は少なくとも70倍、又は少なくとも80倍、又は少なくとも90倍、又は少なくとも100倍、又は少なくとも200倍低い、低減した血小板凝集を示す。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、インビボアッセイにおいて、対応する野生型抗体と比較して、少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも100%、又は少なくとも200%、又は少なくとも300%、又は少なくとも400%、又は少なくとも500%低減した、低減した血小板凝集を示す。
【0049】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、対応する野生型抗体と比較して、低減した血小板活性化及び/又は血小板凝集を示す。
【0050】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、FLT3を標的化する。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、Fc領域(例えば(Fab')断片)を欠失している。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、N-グリコシル化部位に又はその近くに突然変異した残基を含む。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、EU番号付け体系による、N434A、N434H、T307A/E380A/N434A、M252Y/S254T/T256E、433K/434F/436H、T250Q、T250F、M428L、M428F、T250Q/M428L、N434S、V308W、V308Y、V308F、M252Y/M428L、D259I/V308F、M428L/V308F、Q311V/N434S、T307Q/N434A、E258F/V427T、S228P、L235E、S228P/L235E/R409K、S228P/L235E、K370Q、K370E、G446の欠失、K447の欠失、及びIgG4の任意のその組合せから選択された、アミノ酸修飾又は修飾のセットを有する。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、IgG4を含む。いくつかの実施態様では、該抗体は、修飾されたIgG4を含み、ここでのIgG2(T260までの)はIgG4 Fcの末端と接続している。
【0051】
抗体は、延長された半減期及び改善された新生仔Fc受容体(FcRn)への結合を有し得る(例えば米国特許出願第2005/0014934号参照)。このような抗体は、FcRnに対するFc領域の結合を改善する1つ以上の置換をFc領域内に有するFc領域を含み得、これには、Fc領域残基(EU番号付け体系による、238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424又は434)の1つ以上において置換を有するものが含まれる(例えば、米国特許第7,371,826号参照)。Fc領域変異体の他の例も考えられる(例えばDuncan & Winter, Nature 322:738-40 (1988);米国特許第5,648,260号及び第5,624,821号;及び国際公開公報第94/29351号参照)。
【0052】
いくつかの実施態様では、システインで工学操作された抗体、例えば「チオモノクロ―ナル抗体」(ここでは抗体の1つ以上の残基が、システイン残基で置換されている)を作製することが望ましくあり得る。いくつかの実施態様では、置換された残基は、抗体が近づくことのできる部位で起こる。反応性チオール基は、他の部分、例えば薬物部分又はリンカー薬物部分へのコンジュゲーションのための部位に位置し得、これにより免疫コンジュゲートが作製され得る。いくつかの実施態様では、以下の残基のいずれか1つ以上がシステインで置換されていてもよい:軽鎖のV205(Kabatの番号付け);重鎖のA118(EU番号付け);及び重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)。
【0053】
いくつかの実施態様では、本明細書に提供された抗体は、公知であり入手可能である、追加の非タンパク質性部分を含有するようにさらに修飾されていてもよい。抗体の誘導体化に適した部分としては水溶性ポリマーが挙げられるがこれらに限定されない。水溶性ポリマーの非制限的な例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/マレイン酸無水物コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストラン又はポリ(nビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール、及びその混合物が挙げられるがこれらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中におけるその安定性に因り、製造において利点を有し得る。ポリマーは、任意の分子量であり得、分岐していても分岐していなくてもよい。抗体に付着したポリマーの数は変更され得、2つ以上のポリマーが付着している場合、それらは同じ分子であっても、又は異なる分子であってもよい。
【0054】
本明細書に記載の抗体は、核酸によってコードされ得る。核酸は、2つ以上のヌクレオチド塩基を含んでいる、一種のポリヌクレオチドである。特定の実施態様では、核酸は、ポリヌクレオチドをコードしているポリペプチドを細胞内に導入するために使用され得る、ベクターの成分である。本明細書において使用する「ベクター」という用語は、核酸分子に連結されている別の核酸を輸送することのできる、該核酸分子を指す。ある種類のベクターは、ゲノムに組み込まれるベクター、すなわち「組込み型ベクター」であり、これは、宿主細胞の染色体DNAに組み込まれるようになることが可能である。別の種類のベクターは、「エピソーム」ベクター、例えば、染色体外での複製が可能な核酸である。作動可能に連結されている遺伝子の発現を指令することのできるベクターは、本明細書において「発現ベクター」と称される。適切なベクターは、プラスミド、細菌人工染色体、酵母人工染色体、ウイルスベクターなどを含む。発現ベクター内における、転写の制御に使用するための、調節配列、例えばプロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナルは、哺乳動物、微生物、ウイルス、又は昆虫の遺伝子に由来し得る。通常、複製起点によって付与される、宿主における複製能、及び形質転換体の認識を容易にする選択用遺伝子が追加的に取り込まれてもよい。ウイルス、例えばレンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスなどに由来するベクターが使用され得る。プラスミドベクターは、染色体の位置への組込みのために鎖状化されていてもよい。ベクターは、ゲノム内の所定の位置又は限定された部位のセットへの部位特異的組込みを指令する配列を含み得る(例えばAttP-AttBの組換え)。さらに、ベクターは、転移因子に由来する配列を含み得る。
【0055】
本明細書において基準配列と比較してアミノ酸配列又は核酸配列を記載するために使用される場合の、本明細書において使用する「相同な」、「相同性」又は「相同率」という用語は、Karlin及びAltschul(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 2264-2268, 1990, modified as in Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877, 1993)によって記載される式を使用して決定され得る。このような式は、Altschul et al.(J. Mol. Biol. 215: 403-410, 1990)の基本的な局所的アラインメント探索ツール(BLAST)プログラムに取り込まれる。配列の相同率は、本出願の出願日の日付において、最新版のBLASTを使用して決定され得る。
【0056】
本明細書に記載の抗体をコードしている核酸を使用して、適した細胞に感染させるか、トランスフェクトさせるか、形質転換させるか、又は別の方法で核酸の遺伝子を導入させることができ、よって、商業的使用又は治療的使用のための抗体の産生が可能となる。標準的な細胞株、及び大規模細胞培養液からの抗体の産生法は当技術分野において公知である。例えば、Li et al., “Cell culture processes for monoclonal antibody production.” Mabs. 2010 Sep-Oct; 2(5): 466-477を参照されたい。特定の実施態様では、該細胞は真核細胞である。特定の実施態様では、該真核細胞は哺乳動物細胞である。特定の実施態様では、該哺乳動物細胞は、抗体の産生に有用な細胞株であり、これはチャイニーズハムスター卵巣(CVHO)細胞、NS0マウス骨髄腫細胞、又はPER.C6(登録商標)細胞である。特定の実施態様では、抗体をコードしている核酸は、抗体の産生に有用な細胞のゲノム遺伝子座に組み込まれる。特定の実施態様では、本明細書には、抗体の産生及び分泌を可能とするに十分なインビトロでの条件下で、該抗体をコードしている核酸を含む細胞を培養する工程を含む、抗体の作製法が記載されている。
【0057】
特定の実施態様では、本明細書には、(a)ゲノム位置に組み込まれた本明細書に記載の抗体をコードしている核酸を含む哺乳動物細胞株;及び(b)凍結保護剤を含む、マスターセルバンクが記載されている。特定の実施態様では、凍結保護剤は、グリセロール又はDMSOを含む。特定の実施態様では、マスターセルバンクは、(a)(i)配列番号11、13、15、17、又は19のいずれか1つによって示される重鎖アミノ酸配列;及び(ii)ゲノム位置に組み込まれた、配列番号12、14、16、18、又は20のいずれか1つによって示される軽鎖アミノ酸配列、を有する抗体をコードしている核酸を含むCHO細胞株;及び(b)凍結保護剤を含む。特定の実施態様では、凍結保護剤は、グリセロール又はDMSOを含む。特定の実施態様では、マスターセルバンクは、液体窒素による凍結に耐えることのできる適切なバイアル又は容器に含まれる。
【0058】
また本明細書には、本明細書に記載の抗体を産生する方法が記載されている。このような方法は、抗体をコードしている核酸を含む細胞又は細胞株を、該抗体の発現及び分泌を可能とするに十分な条件下で細胞培養培地中でインキュベートし、細胞培養培地から抗体をさらに収集する工程を含む。収集はさらに、生細胞、細胞片、非抗体タンパク質又はポリペプチド、所望ではない塩、緩衝液、及び培地成分を除去するための、1回以上の精製工程を含み得る。特定の実施態様では、追加の精製工程(群)としては、遠心分離、超遠心分離、プロテインA、プロテインG、プロテインA/G、若しくはプロテインLによる精製、及び/又はイオン交換クロマトグラフィーが挙げられる。
【0059】
FLT3アゴニスト抗体
本明細書には、FLT3アゴニスト作用抗体及びその抗原結合断片が記載されている。これらの抗体及び抗原結合断片は、FLT3受容体を通してシグナル伝達を増加させる効果を有する。特定の実施態様では、本明細書に記載の抗体及び抗原結合断片は、アイソタイプ対照と比較して、STAT5の転写を少なくとも約2倍、3倍、5倍、又は10倍活性化する。特定の実施態様では、本明細書に記載の抗体及び抗原結合断片は、ヒト末梢血単核細胞及び/又は骨髄細胞と共に培養した場合、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞の量を、少なくとも約1.25倍、1.5倍、2倍、又は3倍増加させる。樹状細胞は、CD11c陽性細胞、又はCD11c陽性と高いレベルのMHCクラスII発現の組合せによって同定され得る。特定の実施態様では、ヒト末梢血単核細胞及び/又は骨髄由来細胞と接触させた場合の、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞の量の増加のEC50は、約200ピコモル(pM)、150pM、140pM、130pM、126pM、120pM、110pM、又は100pM未満である。
【0060】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、FLT3に結合する。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、FLT3に結合すると、FLT3のリン酸化を誘導する。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、2つのFLT3受容体を架橋又は二量体化し、その結果、2つのFLT3受容体のリン酸化及び活性化が起こる。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、FLT3を発現している細胞を、該FLT3に結合した場合に、内部移行させ、該FLT3を分解するように誘導する。
【0061】
特定の態様では、FLT3アゴニスト作用抗体又は抗原結合断片は、キメラNB1016、ヒト化1063、又は脱アミド化変異体NB112、NB113、NB114、若しくはNB115の相補性決定領域を含む、免疫グロブリン重鎖可変領域及び免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。特定の実施態様では、FLT3アゴニスト作用抗体は、免疫グロブリン重鎖可変領域及び免疫グロブリン軽鎖可変領域を含み、ここでの免疫グロブリン重鎖可変領域は、(a)配列番号1(GFTFSNY);2(NYGMA);又は29(GFTFSNYGMA)に示されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域相補性決定領域1(VH-CDR1);(b)配列番号3(HSGGGD)又は4(SIHSGGGDTYYRDSVKG)に示されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域相補性決定領域2(VH-CDR2);及び(c)配列番号5(GRTPTGYYFDH)に示されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域相補性決定領域3(VH-CDR3)を含み;免疫グロブリン軽鎖可変領域は、(d)配列番号6(RASEGIHNGLA)に示されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域相補性決定領域1(VL-CDR1);(e)配列番号11(NANSLHS)に示されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域相補性決定領域2(VL-CDR2);及び(f)配列番号12(QQYYDYPLT)に示されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域相補性決定領域3(VL-CDR3)を含む。NB1016及びNB1063のVL-CDR1に「NG」脱アミド化部位候補が存在する。これにより、下流プロセシングにおいて不均一な産物がもたらされ得る。それ故、本明細書には、配列番号6の8位にアスパラギンを有さないVL-CDRの変異体を含み、依然としてFLT3結合活性を保持している、抗体が開示されている。特定の実施態様では、組換え抗体はさらに、ヒト軽鎖定常領域及びヒト重鎖定常領域を含む。特定の実施態様では、該組換え抗体はヒト化されている。
【0062】
キメラNB1016クローン及びヒト化NB1063クローンの軽鎖可変領域相補性決定領域1におけるアスパラギンは、脱アミド化部位候補である。脱アミド化は、抗体の不均一性を増加させ、抗体の安定性を低減させるので、脱アミド化は、治療薬として使用される抗体にとって有害であり得る。それ故、本明細書において、アスパラギンを別のアミノ酸で置換した、NB1016及びNB1063のCDR領域の突然変異体が考えられる。特定の実施態様では、異なるアミノ酸を用いての置換により、NB1016及びNB1063と比較して、標的への結合若しくはSTAT5の発現の誘導によって定義されるような親和性若しくは機能的活性は全く減少しないか、又はほんの無視できる程度にしか減少しない。特定の実施態様では、本明細書には、免疫グロブリン重鎖可変領域及び免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む、FMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)に特異的に結合する組換え抗体が記載され、ここでの免疫グロブリン重鎖可変領域は、(a)配列番号1(GFTFSNY);2(NYGMA);又は29(GFTFSNYGMA)に示されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域相補性決定領域1(VH-CDR1);(b)配列番号3(HSGGGD)又は4(SIHSGGGDTYYRDSVKG)に示されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域相補性決定領域2(VH-CDR2);(c)配列番号5(GRTPTGYYFDH)に示されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域相補性決定領域3(VH-CDR3)を含み;免疫グロブリン軽鎖可変領域は、(d)(RASEGIHXGLA)に示されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域相補性決定領域1(VL-CDR1);(e)配列番号11(NANSLHS)に示されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域相補性決定領域2(VL-CDR2);及び(f)配列番号12(QQYYDYPLT)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域相補性決定領域3(VL-CDR3)を含む。特定の実施態様では、RASEGIHXGLAのXは、NB1016又はNB1063と比較して、標的との結合又はSTAT5発現の誘導の減少が全く起こらない、任意のアミノ酸である。特定の実施態様では、RASEGIHXGLAのXは、NB1016又はNB1063と比較して、標的との結合又はSTAT5発現の誘導の約25%、20%、15%、10%、又は5%未満の減少がもたらされる任意のアミノ酸である。特定の実施態様では、RASEGIHXGLAのXは、アスパラギン酸、セリン、トレオニン、又はロイシンから選択されたアミノ酸である。特定の実施態様では、VL-CDR1は、配列番号7(RASEGIHDGLA)、配列番号8(RASEGIHSGLA)、配列番号9(RASEGIHTGLA)、及び配列番号10(RASEGIHLGLA)からなるリストから選択されたアミノ酸配列を含む。特定の実施態様では、該組換え抗体はさらに、ヒト軽鎖定常領域及びヒト重鎖定常領域を含む。特定の実施態様では、該組換え抗体はヒト化されている。
【0063】
特定の実施態様では、FLT3アゴニスト作用抗体は、免疫グロブリン重鎖可変領域及び免疫グロブリン軽鎖可変領域を含み、ここでの免疫グロブリン重鎖可変領域は、(a)配列番号1(GFTFSNY);2(NYGMA);又は29(GFTFSNYGMA)に示されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域相補性決定領域1(VH-CDR1);(b)配列番号3(HSGGGD)又は4(SIHSGGGDTYYRDSVKG)に示されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域相補性決定領域2(VH-CDR2);及び(c)配列番号5(GRTPTGYYFDH)に示されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域相補性決定領域3(VH-CDR3)を含み;免疫グロブリン軽鎖可変領域は、(d)配列番号7(RASEGIHDGLA)に示されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域相補性決定領域1(VL-CDR1);(e)配列番号11(NANSLHS)に示されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域相補性決定領域2(VL-CDR2);及び(f)配列番号12(QQYYDYPLT)に示されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域相補性決定領域3(VL-CDR3)を含む。特定の実施態様では、該組換え抗体はさらに、ヒト軽鎖定常領域及びヒト重鎖定常領域を含む。特定の実施態様では、該組換え抗体はヒト化されている。
【0064】
特定の実施態様では、FLT3アゴニスト作用抗体は、免疫グロブリン重鎖可変領域及び免疫グロブリン軽鎖可変領域を含み、ここでの免疫グロブリン重鎖可変領域は、(a)配列番号1(GFTFSNY);2(NYGMA);又は29(GFTFSNYGMA)に示されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域相補性決定領域1(VH-CDR1);(b)配列番号3(HSGGGD)又は4(SIHSGGGDTYYRDSVKG)に示されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域相補性決定領域2(VH-CDR2);及び(c)配列番号5(GRTPTGYYFDH)に示されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域相補性決定領域3(VH-CDR3)を含み;免疫グロブリン軽鎖可変領域は、(d)配列番号8(RASEGIHSGLA)に示されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域相補性決定領域1(VL-CDR1);(e)配列番号11(NANSLHS)に示されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域相補性決定領域2(VL-CDR2);及び(f)配列番号12(QQYYDYPLT)に示されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域相補性決定領域3(VL-CDR3)を含む。特定の実施態様では、該組換え抗体はさらに、ヒト軽鎖定常領域及びヒト重鎖定常領域を含む。特定の実施態様では、該組換え抗体はヒト化されている。
【0065】
特定の実施態様では、FLT3アゴニスト作用抗体は、免疫グロブリン重鎖可変領域及び免疫グロブリン軽鎖可変領域を含み、ここでの免疫グロブリン重鎖可変領域は、(a)配列番号1(GFTFSNY);2(NYGMA);又は29(GFTFSNYGMA)に示されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域相補性決定領域1(VH-CDR1);(b)配列番号3(HSGGGD)又は4(SIHSGGGDTYYRDSVKG)に示されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域相補性決定領域2(VH-CDR2);及び(c)配列番号5(GRTPTGYYFDH)に示されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域相補性決定領域3(VH-CDR3)を含み;免疫グロブリン軽鎖可変領域は、(d)配列番号9(RASEGIHTGLA)に示されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域相補性決定領域1(VL-CDR1);(e)配列番号11(NANSLHS)に示されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域相補性決定領域2(VL-CDR2);及び(f)配列番号12(QQYYDYPLT)に示されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域相補性決定領域3(VL-CDR3)を含む。特定の実施態様では、該組換え抗体はさらに、ヒト軽鎖定常領域及びヒト重鎖定常領域を含む。特定の実施態様では、該組換え抗体はヒト化されている。
【0066】
特定の実施態様では、FLT3アゴニスト作用抗体は、免疫グロブリン重鎖可変領域及び免疫グロブリン軽鎖可変領域を含み、ここでの免疫グロブリン重鎖可変領域は、(a)配列番号1(GFTFSNY);2(NYGMA);又は29(GFTFSNYGMA)に示されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域相補性決定領域1(VH-CDR1);(b)配列番号3(HSGGGD)又は4(SIHSGGGDTYYRDSVKG)に示されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域相補性決定領域2(VH-CDR2);及び(c)配列番号5(GRTPTGYYFDH)に示されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域相補性決定領域3(VH-CDR3)を含み;免疫グロブリン軽鎖可変領域は、(d)配列番号10(RASEGIHLGLA)に示されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域相補性決定領域1(VL-CDR1);(e)配列番号11(NANSLHS)に示されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域相補性決定領域2(VL-CDR2);及び(f)配列番号12(QQYYDYPLT)に示されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域相補性決定領域3(VL-CDR3)を含む。特定の実施態様では、該組換え抗体はさらに、ヒト軽鎖定常領域及びヒト重鎖定常領域を含む。特定の実施態様では、該組換え抗体はヒト化されている。
【0067】
また、本明細書には、FLT3に対するアゴニスト活性を有する抗体に由来する免疫グロブリン重鎖可変領域及び免疫グロブリン軽鎖可変領域が記載されている。
【0068】
特定の実施態様では、本明細書には、(a)配列番号15、17、19、21、又は23のいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%同一である、アミノ酸配列を含む、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)配列;及び(b)配列番号16;18;20;22;24;25;26;27;及び28のいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%同一である、アミノ酸配列を含む、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)配列を含む、FMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)に特異的に結合する組換え抗体が記載されている。特定の実施態様では、該組換え抗体は、(a)配列番号15に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%同一である、アミノ酸配列を含む、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH);及び(b)配列番号16のいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%同一である、アミノ酸配列を含む、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含む。配列番号16;18;20;22;又は24のいずれか1つのVL領域の軽鎖可変領域相補性決定領域1におけるアスパラギンは、脱アミド化部位候補である。それ故、本明細書において、アスパラギンを別のアミノ酸で置換したVL-CDR領域の突然変異体が考えられる。特定の実施態様では、異なるアミノ酸を用いての置換により、NB1016又はNB1063と比較して、標的への結合若しくはSTAT5の発現の誘導によって定義されるような親和性若しくは機能的活性は全く減少しないか、又はほんの無視できる程度にしか減少しない。特定の実施態様では、異なるアミノ酸を用いての置換により、NB1016又はNB1063と比較して、標的への結合若しくはSTAT5の発現の誘導の約25%、20%、15%、10%、又は5%未満の減少が起こる。特定の実施態様では、記載の抗体のVLは、VL-CDR1の脱アミド化反応を減少させる突然変異を保持しつつ、配列番号25;26;27;及び28のいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%同一である、アミノ酸配列を含む。
【0069】
特定の実施態様では、本明細書には、(a)配列番号15に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%同一である、アミノ酸配列を含む、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)配列;及び(b)配列番号25、26、27又は28に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%同一である、アミノ酸配列を含む、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)配列を含む、FMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)に特異的に結合する組換え抗体が記載されている。特定の実施態様では、該組換え抗体は、(a)配列番号15に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%同一である、アミノ酸配列を含む、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)配列;及び(b)配列番号25に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%同一である、アミノ酸配列を含む、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)配列を含む。特定の実施態様では、該組換え抗体は、(a)配列番号15に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%同一である、アミノ酸配列を含む、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)配列;及び(b)配列番号26に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%同一である、アミノ酸配列を含む、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)配列を含む。特定の実施態様では、該組換え抗体は、(a)配列番号15に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%同一である、アミノ酸配列を含む、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)配列;及び(b)配列番号27に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%同一である、アミノ酸配列を含む、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)配列を含む。特定の実施態様では、該組換え抗体は、(a)配列番号15に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%同一である、アミノ酸配列を含む、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)配列;及び(b)配列番号28に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%同一である、アミノ酸配列を含む、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)配列を含む。
【0070】
いくつかの実施態様では、本明細書のFLT3アゴニスト抗体が、個体に投与されると、腫瘍微小環境への、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞の動員及び/又は増幅が起こる。いくつかの実施態様では、本明細書のFLT3アゴニスト抗体は、個体に投与されると、樹状細胞を動員及び/又は増幅する。いくつかの実施態様では、本明細書のFLT3アゴニスト抗体は、樹状細胞を動員及び/又は増幅し、樹状細胞は、細胞表面マーカーCD11cについての陽性によって同定され得る。いくつかの実施態様では、本明細書のFLT3アゴニスト抗体は、個体に投与されると、通常型の樹状細胞(cDC)サブセット(cDC1及びcDC2)を動員及び/又は増幅する。いくつかの実施態様では、本明細書のFLT3アゴニスト抗体は、個体に投与されると、形質細胞様樹状細胞(pDC)を動員及び/又は増幅する。いくつかの実施態様では、本明細書のFLT3アゴニスト抗体は、個体に投与されると、樹状細胞、通常型樹状細胞サブセットcDC1、cDC2、形質細胞様樹状細胞、又はその任意の組合せを動員する。cDC1樹状細胞は、Lin-HLA-DR+CD11c+BDCA-+を含む細胞表面発現パターンによって同定され得る。形質細胞様樹状細胞は、Lin-HLA-DR+CD123+BDCA-+を含む細胞表面発現パターンによって同定され得る。
【0071】
本明細書に記載のFLT3アゴニスト抗体をさらに、免疫調節部分にコンジュゲートさせることができる。該免疫調節部分は、樹状細胞又は血液学的樹状前駆細胞を増幅及び/又は活性化することのできる任意の部分を含み得る。特定の実施態様では、該免疫調節部分は、STINGアゴニストを含む。インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)は、膜貫通タンパク質173(TMEM173)としても知られているが、これは転写因子を活性化する、免疫シグナル伝達経路の強力な活性化因子、例えばSTAT6及びIRF3であり、これにより、I型インターフェロンの転写及び分泌が起こる。特定の実施態様では、STINGアゴニストは、2’,3’-cGAMP(CAS番号、1441190-66-4)、4-[(2-クロロ-6-フルオロフェニル)メチル]-N-(フラン-2-イルメチル)-3-オキソ-1,4-ベンゾチアジン-6-カルボキシアミド、MK-1454、ADU-S100/MIW815、SRCB-0074、SYNB1891、E-7766又はSB11285を含む。STINGアゴニストを、当技術分野において公知である適切な技術を使用して、今回の開示の組換え抗体又は抗原結合断片に共有結合させることができる。STINGアゴニストを、適切な薬物対抗体の比、例えば1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、又は7:1の比で、今回の開示の組換え抗体又は抗原結合断片に共有結合させることができる。
【0072】
がんの処置
FLT3Lは、インビボにおいて樹状細胞の数の増加をもたらし、インビボでのメチルコラントレン(MCA)誘発の同系線維肉腫マウスモデルにおいて腫瘍退縮及び抗腫瘍免疫応答を誘導することが示された(Lynch, D. H., et al. “Flt3 ligand induces tumor regression and antitumor immune responses in vivo.” Nature Medicine, 3(6), 625-631.(1997)参照)。しかしながら、FLT3L療法は、薬物動態の利用可能性が限定されていること、及び複雑な投薬必要条件に苦しむ。試験は、少なくとも10回の1日1回のFLT3Lの注射が、腫瘍増殖速度の実質的な減少、及び腫瘍退縮の誘導に必要とされたことを示すが、14日間から19日間の処置が最適であるようであった。
【0073】
腫瘍による攻撃後の最大7日間の1日1回のFLT3Lによる処置が、MCAにより誘発された線維肉腫マウスモデルにおいて、腫瘍の拒絶をもたらすことが示された(Lynch, D. H., et al. 1997参照)。
【0074】
特定の実施態様では、本明細書に、がん又は腫瘍の処置に有用な抗体が開示されている。処置は、処置される容態を改善又は寛解することを探究した方法を指す。がんに関して、処置は、腫瘍体積の減少、腫瘍体積の増殖の減少、無進行生存期間又は全生存期間の延長を含むがこれらに限定されない。特定の実施態様では、処置は、処置されるがんの寛解を奏功するだろう。特定の実施態様では、処置は、以前に処置されたがん又は腫瘍の再発又は進行を予防することを目的とした、予防用量又は維持用量としての使用を包含する。当業者によって、全ての個体が投与される処置に等しく又は完全に応答するわけでないであろうことが理解され、それにも関わらず、これらの個体は、処置されることができると考えられる。
【0075】
特定の実施態様では、がん又は腫瘍は、固形癌又は腫瘍である。特定の実施態様では、がん又は腫瘍は、血液がん又は腫瘍である。特定の実施態様では、がん又は腫瘍は、乳腺、心臓、肺、小腸、大腸、脾臓、腎臓、膀胱、頭部、頸部、卵巣、前立腺、脳、膵臓、皮膚、骨、骨髄、血液、胸腺、子宮、精巣、及び肝臓の腫瘍を含む。特定の実施態様では、本発明の抗体を用いて処置され得る腫瘍は、腺腫、腺癌、血管肉腫、星状細胞腫、上皮癌、胚細胞腫、神経膠芽腫、神経膠腫、血管内皮腫、血管肉腫、血腫、肝芽腫、白血病、リンパ腫、髄芽腫、黒色腫、神経芽細胞腫、骨肉腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、及び/又は奇形腫を含む。特定の実施態様では、腫瘍/がんは、末端黒子型黒色腫、日光角化症、腺癌、腺様嚢胞癌、腺腫、腺肉腫、腺扁平上皮癌、星細胞腫、バルトリン腺癌、基底細胞癌、気管支腺癌、毛細血管カルチノイド、細胞癌、癌肉腫、胆管細胞癌、軟骨肉腫、嚢胞腺腫、卵黄嚢腫瘍、子宮内膜増殖症、子宮内膜間質肉腫、類内膜腺癌、上衣腫、ユーイング肉腫、限局性結節性過形成、ガストリン産生腫瘍、生殖系列腫瘍、神経膠腫、グルカゴン産生腫瘍、血管芽腫、血管内皮腫、血管腫、肝腺腫、肝腺腫症、肝細胞癌、インスリナイト(insulinite)、上皮内腫瘍、上皮内扁平細胞腫瘍、浸潤性扁平細胞癌、大細胞癌、脂肪肉腫、肺癌、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病、平滑筋肉腫、黒色腫、悪性黒色腫、悪性中皮腫、神経鞘腫、髄芽腫、髄上皮腫、中皮腫、粘表皮癌、骨髄性白血病、神経芽細胞腫、神経上皮腺癌、結節性黒色腫、骨肉腫、卵巣癌、漿液性乳頭状腺癌、下垂体腫瘍、形質細胞腫、偽肉腫、前立腺癌、肺芽腫、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、漿液性癌、扁平細胞癌、小細胞癌、軟組織癌、ソマトスタチン分泌腫瘍、扁平上皮癌、扁平上皮細胞癌、未分化癌、ぶどう膜黒色腫、疣状癌、膣/外陰部癌、VIP(血管作動性腸管ペプチド)産生腫瘍、及びウィルムス腫瘍の群から選択される。特定の実施態様では、本発明の1つ以上の抗体を用いて処置される予定の腫瘍/がんは、脳癌、頭頸部癌、結腸直腸癌、急性骨髄性白血病、前駆B細胞急性リンパ芽球性白血病、膀胱癌、星細胞腫、好ましくはグレードII、III、又はIVの星細胞腫、神経膠芽腫、多形神経膠芽腫、小細胞癌、及び非小細胞癌、好ましくは非小細胞肺癌、肺腺癌、転移性黒色腫、アンドロゲン非依存性転移性前立腺癌、アンドロゲン依存性転移性前立腺癌、前立腺腺癌、及び乳癌、好ましくは乳管癌、及び/又は乳癌を含む。特定の実施態様では、この開示の抗体を用いて処置されるがんは、神経膠芽腫を含む。特定の実施態様では、この開示の1つ以上の抗体を用いて処置されるがんは、膵臓癌を含む。特定の実施態様では、この開示の1つ以上の抗体を用いて処置されるがんは、卵巣癌を含む。特定の実施態様では、この開示の1つ以上の抗体を用いて処置されるがんは、肺癌を含む。特定の実施態様では、この開示の1つ以上の抗体を用いて処置されるがんは、前立腺癌を含む。特定の実施態様では、この開示の1つ以上の抗体を用いて処置されるがんは、大腸癌を含む。特定の実施態様では、処置されるがんは、神経膠芽腫、膵臓癌、卵巣癌、大腸癌、前立腺癌、又は肺癌を含む。特定の実施態様では、がんは、他の処置に対して難治性である。特定の実施態様では、処置されるがんは、再発している。特定の実施態様では、がんは、再発した/難治性の神経膠芽腫、膵臓癌、卵巣癌、大腸癌、前立腺癌、又は肺癌である。
【0076】
治療法
特定の実施態様では、本明細書に記載の抗体は、それを必要とする被験者に、抗体を含有している医薬組成物の投与に適した任意の経路、例えば、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、腫瘍内、又は脳内などの経路によって投与され得る。特定の実施態様では、該抗体は静脈内に投与される。特定の実施態様では、該抗体は、適切な投薬計画で、例えば週1回、週2回、月1回、月2回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、又は月1回などで投与される。特定の実施態様では、該抗体は3週間毎に1回投与される。該抗体は、任意の治療有効量で投与され得る。特定の実施態様では、治療に許容される量は、約0.1mg/kgから約50mg/kgである。特定の実施態様では、治療に許容される量は、約1mg/kgから約40mg/kgである。特定の実施態様では、治療に許容される量は、約5mg/kgから約30mg/kgである。
【0077】
本明細書に記載のFLT3アゴニスト作用抗体は、可溶性リガンドよりもより好ましいPK(薬物動態)/PD(薬力学)特徴を有し、これにより、毎日の投与を必要としない投薬計画が可能となる。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体を用いての個体への投薬間隔は、約2日間から約14日間であり得る。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体を用いての個体への投薬間隔は、約2日間から約3日間、約2日間から約4日間、約2日間から約5日間、約2日間から約6日間、約2日間から約7日間、約2日間から約8日間、約2日間から約9日間、約2日間から約10日間、約2日間から約11日間、約2日間から約12日間、約2日間から約14日間、約3日間から約4日間、約3日間から約5日間、約3日間から約6日間、約3日間から約7日間、約3日間から約8日間、約3日間から約9日間、約3日間から約10日間、約3日間から約11日間、約3日間から約12日間、約3日間から約14日間、約4日間から約5日間、約4日間から約6日間、約4日間から約7日間、約4日間から約8日間、約4日間から約9日間、約4日間から約10日間、約4日間から約11日間、約4日間から約12日間、約4日間から約14日間、約5日間から約6日間、約5日間から約7日間、約5日間から約8日間、約5日間から約9日間、約5日間から約10日間、約5日間から約11日間、約5日間から約12日間、約5日間から約14日間、約6日間から約7日間、約6日間から約8日間、約6日間から約9日間、約6日間から約10日間、約6日間から約11日間、約6日間から約12日間、約6日間から約14日間、約7日間から約8日間、約7日間から約9日間、約7日間から約10日間、約7日間から約11日間、約7日間から約12日間、約7日間から約14日間、約8日間から約9日間、約8日間から約10日間、約8日間から約11日間、約8日間から約12日間、約8日間から約14日間、約9日間から約10日間、約9日間から約11日間、約9日間から約12日間、約9日間から約14日間、約10日間から約11日間、約10日間から約12日間、約10日間から約14日間、約11日間から約12日間、約11日間から約14日間、又は約12日間から約14日間であり得る。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体を用いた個体への投薬間隔は、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、約10日間、約11日間、約12日間、又は約14日間であり得る。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体を用いた個体への投薬間隔は、少なくとも約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、約10日間、約11日間、又は約12日間であり得る。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体を用いた個体への投薬間隔は、最大で約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、約10日間、約11日間、約12日間、又は約14日間であり得る。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体を用いた個体への投薬間隔は、約1週間から約5週間であり得る。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体を用いた個体への投薬間隔は、約1週間から約2週間、約1週間から約3週間、約1週間から約4週間、約1週間から約5週間、約2週間から約3週間、約2週間から約4週間、約2週間から約5週間、約3週間から約4週間、約3週間から約5週間、又は約4週間から約5週間であり得る。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体を用いた個体への投薬間隔は、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、又は約5週間であり得る。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体を用いた個体への投薬間隔は、少なくとも約1週間、約2週間、約3週間、又は約4週間であり得る。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体を用いた個体への投薬間隔は、最大で約2週間、約3週間、約4週間、又は約5週間であり得る。
【0078】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、がんを発症するリスクのある個体に、又は臨床的寛解まで処置されていた癌若しくは最小残留疾患を有する癌を含む、癌について以前に成功裡に処置されていた個体に、投与され得る。
【0079】
薬学的に許容される賦形剤、担体、及び希釈剤
特定の実施態様では、今回の開示のアゴニストFLT3抗体は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤を含む医薬組成物に含まれる。特定の実施態様では、今回の開示の抗体は、無菌溶液中に懸濁して投与される。特定の実施態様では、該溶液は、約0.9%のNaCl又は約5%のデキストロース、グルコース、又はショ糖を含む。特定の実施態様では、該溶液はさらに、緩衝液、例えば酢酸塩、クエン酸塩、ヒスチジン、コハク酸塩、リン酸塩、重炭酸塩、及びヒドロキシメチルアミノメタン(トリス);界面活性剤、例えばポリソルベート80(Tween80)、ポリソルベート20(Tween20)、及びポロキサマー188;ポリオール/二糖/多糖、例えばグルコース、デキストロース、マンノース、マンニトール、ソルビトール、ショ糖、トレハロース、及びデキストラン40;アミノ酸、例えば、グリシン又はアルギニン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、メチオニン;又は、キレート剤、例えばEDTA又はEGTA、の中の1つ以上を含む。特定の実施態様では、今回の開示の抗体は、凍結乾燥して発送/保存され、投与前に復元される。特定の実施態様では、凍結乾燥した抗体製剤は、増量剤、例えばマンニトール、ソルビトール、ショ糖、トレハロース、及びデキストラン40を含む。凍結乾燥製剤は、ガラスのバイアルに含まれて含有され得る。製剤化された場合、復元されるか否かに関わらず、該抗体は、特定のpHで、一般的には7.0未満で緩衝化され得る。特定の実施態様では、pHは、4.5~6.5、4.5~6.0、4.5~5.5、4.5~5.0、又は5.0~6.0であり得る。
【0080】
本明細書には、適切な容器内の本明細書に記載の1つ以上の抗体と、使用説明書、希釈剤、賦形剤、担体、及び投与用の器具から選択された1つ以上の追加の成分とを含む、キットも記載されている。
【0081】
特定の実施態様では、本明細書には、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤と、今回の開示の抗体とを混合する工程を含む、がん処置を調製する方法が記載されている。特定の実施態様では、本明細書には、今回の開示の1つ以上の抗体を凍結乾燥させる工程を含む、保存又は発送のためのがん処置を調製する方法が記載されている。
【0082】
実施例
以下の例示的な実施例は、本明細書に記載の組成物及び方法の実施態様を示し、いずれにしても限定することを意味するものではない。
【0083】
実施例1-FLT3アゴニスト作用抗体の作製及びスクリーニング
特徴付けのための抗体を作製するために、ラット免疫化を行なった。レパートリーの多様性を最大限とするために、複数の抗原及びラット株を免疫化のために選択した。それ故、ウィスター系ラット及びスプラーグドーリーラットの両方が、組換えFLT3タンパク質(ECD)、完全長FLT3をコードしているDNA、又は、細胞内ドメインにアミノ酸が挿入され、その結果、その固有の二量体化がもたらされている完全長FLT3をコードしているDNAのいずれかを用いて免疫化された。陽性力価を有していたラットを、収集及びハイブリドーマ融合のために選択した。ハイブリドーマ上清のパネルを、FLT3に対する結合についてスクリーニングし、選択したクローンをそのまま、STAT5-ルシフェラーゼリポーターに基づいたアッセイにおける一次機能スクリーニングへと進めた。
【0084】
ヒトFLT3-STAT5-ルシフェラーゼを安定に発現している細胞を、96ウェルのクリアボトム黒色ポリスチレンマイクロプレート中の10%FBSの補充されたDMEM中に40,000個の細胞/ウェルで播種した。翌日、細胞を、0.1%FBSの補充されたDMEM中で24時間かけて血清を枯渇させた。その後、細胞を、FLT3L又は抗体のいずれかを用いて18時間かけて37℃で処理し、ONE-Gloルシフェラーゼ試薬を使用して、ルシフェラーゼシグナルを定量した。図1に示される、1回量のスクリーニングから、FLT3Lと比較して最も高い活性を有する、3つのクローンが同定され、その中の1つは6B2である(図1、アステリスク)。これらのクローンを追加のスクリーニングに進めた。下流スクリーニングには低い発現及び不十分な量に因り、6B2のV領域がシークエンスされ、ラット/ヒトキメラ分子(6B2-chim)として作製された。続いて、これらの3つのクローンを、同じSTAT5-ルシフェラーゼアッセイにおいて総用量反応曲線に進めて、相対的強度を決定した。このスクリーニングから、クローン6B2は、図に示されるように優れた活性を有するとして強調された。
【0085】
実施例2-キメラ6B2抗体NB1016及びそのヒト化変異体の作製
クローン6B2の重鎖及び軽鎖をさらに、ヒトIgG4PAA及びヒトカッパ軽鎖骨格に移植して、第二のキメラ分子NB1016を作製した。「PAA」は、(i)ヒンジ領域を安定化させることによりFabアームの交換を防ぐ、S228P突然変異(Silva et al. “The S228P mutation prevents in vivo and in vitro IgG4 Fab-arm exchange as demonstrated using a combination of novel quantitative immunoassays and physiological matrix preparation” J Biol Chem. 290(9):5462-9(2015)参照)、並びに(ii)FcγR及びC1qへの結合を減少させ、ADCC機能及びCDC機能を効果的に消失させる、F234A/L235A突然変異(Glaesner et al. “Engineering and characterization of the long-acting glucagon-like peptide-1 analogue LY2189265, an Fc fusion protein” Diabetes Metab Res Rev; 26: 287-296(2010)参照)を示すために使用される略称である。ヒト化NB1016変異体はまたCDR移植によっても作製され、ラットmAb 6B2 V領域を、IMGTデータベースに対してBLASTにかけ、最も関連したVH及びVLの生殖系列フレームワーク領域が、CDR移植のための鋳型として選択された。CDRは、KABAT番号付けスキームに基づいて同定された。合計で、5×VH及び5×VLのヒト化V領域が作製され、ヒト化VH及びVLの各組合せに基づいて、スクリーニングのための25個のヒト化変異体が作製された。25個のヒト化変異体を、NB1016と共に、1回の低用量のSTAT5-ルシフェラーゼアッセイでスクリーニングして、表1に示されるような相対的活性を決定した。
【0086】
【表1】
【0087】
表1のスクリーニングから、12個のヒト化変異体が、AML5細胞の増殖を調べる2回目の機能スクリーニングにおける用量反応試験のために選択された。AML5細胞を、少なくとも1週間かけて、20%FBS及び200ng/mLのFLT3Lを含む、α-MEM中で培養し、その後、実験を実行した。アッセイを開始する前日に、細胞を、FLT3Lを含まない、0.1%FBSで補充されたα-MEMを使用して一晩かけて血清を枯渇させた。その後、抗体又はFLT3Lを添加し、プレートを37℃で72時間インキュベートし、増殖は、CellTiter-Glo試薬(プロメガ社)を使用して評価された。表2は、12個の変異体が、全て非常に効力があったことを示し、互いに対して並びにキメラ分子NB1016に対して同等な活性を示す。それ故、NB1063(ヒト化VH1×ヒト化VL1(配列番号11及び12)を示す)が、フレームワーク使用の選択及び事前の分析特徴(サイズ排除クロマトグラフィー/疎水性相互作用クロマトグラフィー;データは示されていない)に基づいてさらなる分析のために選択された。
【0088】
【表2】
【0089】
実施例3-6B2アゴニスト作用は、受容体の二量体化を必要とし、それはFcR非依存性である。
一番上のクローン6B2がFLT3にアゴニスト作用する機序を解明するために、一価6B2Fab及び二価6B2F(ab)’2が作製され、抗体のそれぞれの機能的活性を、Fcγ受容体を発現することが知られ、かつFLT3L依存性であるように馴化された、OCI-AML5細胞を使用して、細胞増殖アッセイにおいて測定した。OCI-AML5細胞を、αMEM+20%熱不活化FBS及び200ng/mLの組換えFLT3L中で2週間かけて馴化し、その後、αMEM+0.1%熱不活化FBS(FLT3Lを含まない)中で24時間かけて血清を枯渇させた。その後、細胞を、6B2、6B2Fab、6B2F(Ab)’2、又はアイソタイプ対照を用いて37℃で3日間処理し、CellTiter-Glo試薬(プロメガ社)を使用して、細胞生存率を測定した。図3に示されるように(左)、二価6B2F(ab)’は、6B2と等価なアゴニスト機能を保持し、このことはFLT3アゴニスト作用は、FcRの関与とは独立していることを示す。しかしながら、一価6B2Fabは、このアッセイでは機能的活性を示さず(図3右)、このことはFLT3アゴニスト作用がFLT3の二量体化を必要とすることを示す。
【0090】
実施例4-傾向の同定及びNB1063変異体の作製
NB1063の軽鎖のCDR1は、「NG」アミノ酸モチーフを含有していた。このモチーフは脱アミド化部位を示し、これは下流製造における薬品の不均一性の原因となり得る。それ故、一連の軽鎖変異体を作製してこの傾向を除去し、NB1063と同等な活性を有する変異体を同定した。合計して、4個の変異体(N31D、N31S、N31T、及びN31L)が作製され、AML5増殖アッセイの用量反応においてNB1063と平行して試験し、この結果は表3に示されている。このスクリーニングから、NB1113が、ヒト一次細胞ベースアッセイにおいて、最終試験のために、脱アミド化部位の除去されたリードヒト化軽鎖変異体(N31S)として同定された。
【0091】
【表3】
【0092】
実施例5-ヒト及びカニクイザルのFLT3に対するNB1113の結合及び機能的活性
NB1113はヒトFLT3に結合するがマウスFLT3には結合しないので、NB1113の結合及び機能的活性を、ヒト及びカニクイザル(cyno)の両方のFLT3発現系において評価した。ヒト及びカニクイザルのFLT3-STAT5-ルシフェラーゼを安定に発現している細胞を、結合アッセイ及び機能的アッセイの両方のために使用した。ヒト又はカニクイザルのFLT3に対するNB1113の結合は、PBS+2%FBS中の様々な濃度のNB1113を使用したフローサイトメトリー、続くAF488抗ヒトIgG(H+L)二次抗体を使用した検出によって評価された。図4に示されるように、NB1113は、ヒト及びカニクイザルのFLT3の両方に同様に結合し、EC50は1.36nM(ヒト)及び0.90nM(カニクイザル)である。これらの結果は、NB1113の効力も実証しつつ、ヒト及びサルのFLT3に対するNB1113の交差反応性を実証した。
【0093】
NB1113の機能的活性を評価するために、ヒト及びカニクイザルのFLT3-STAT5-ルシフェラーゼ細胞を、96ウェルのクリアボトム黒色ポリスチレンマイクロプレート中の10%FBSの補充されたDMEM中に40,000個の細胞/ウェルで播種した。翌日、細胞を、0.1%FBSの補充されたDMEM中で24時間かけて血清を枯渇させた。その後、細胞を、NB1113を用いて18時間かけて37℃で処理し、ONE-Gloルシフェラーゼ試薬(プロメガ社)を使用して、ルシフェラーゼシグナルを定量した。図5に示されるように、NB1113は、ヒト及びカニクイザルの両方のFLT3-STAT5-ルシフェラーゼアッセイにおいて類似した活性を示し、EC50は1.1nM(ヒト)及び1.6nM(カニクイザル)である。
【0094】
実施例6-樹状細胞(DC)増幅アッセイ
FLT3アゴニスト作用により、樹状細胞の増幅が起こるので、NB1113を、関連した生理学的モデルで試験した。ヒト骨髄を商業的供給源から入手し、ACK溶解緩衝液中への懸濁によって赤血球を枯渇させた。結果として得られた赤血球溶解骨髄細胞を、10%FBS、200nMのL-グルタミン、及び50μMのβ-メルカプトエタノールを有するRPMI1640培地中に再懸濁し、96ウェルの培養プレート中に1ウェルあたり1.5×10個の細胞で播種した。用量反応中の培養液をFLT3L又はNB113の存在下で、12日間インキュベートした。この期間の終了時に、細胞を、樹状細胞増殖について、標準的なフローサイトメトリー染色プロトコール、及びCD1cとHLA-DR+に対する抗体、並びに、生死判定染色を使用した、フローサイトメトリーによって分析した。図6に示されるように、NB1113は、FLT3Lと同等な、樹状細胞の強力な増幅を示す。
【0095】
実施例7-カニクイザルにおけるNB1113及び樹状細胞の増幅の薬物動態分析。
NB1113はカニクイザルFLT3に結合し、それ故、NB1113の薬物動態及びインビボでの樹状細胞の増幅能を、雌カニクイザルにおいて評価した。アジアを起源とする雌カニクイザル(マカカ・ファシクラリス(Macaca fascicularis))は2つのグループに割り当てられ、それぞれ1mg/kg又は10mg/kgのNB1113のいずれかの投与を受けた。動物は、5mL/kgの容量での伏在静脈を介した静脈内ボーラス注射を介して、投薬期間の1日目に、1回量の投与を受けた。ビヒクル/希釈剤は、リン酸緩衝化食塩水(PBS)(pH7.4)(1×)であった。毒性の評価は、死亡率、臨床観察、体重、食物消費の質、及び臨床病態に基づいた。カニクイザルに対する、1又は10mg/kgのNB1113の1回の静脈内投与は良好な耐容性を示し、NB1113に関連した臨床的観察は全く認められなかった。薬物動態評価用の血液試料を、投薬1日前、並びに投薬後約0.25、2、6、12、24、48、96、168、336、504、及び672時間後に大腿静脈を介して回収した。血液を、血清分離管(抗凝固剤を含まない)に回収し、室温で凝固させ、回収から1時間以内に遠心分離にかけ、分析するまで-60℃から-80℃で保存した。LC-MS/MS分析が、タンデム質量分析を伴う液体クロマトグラフィー(LC-MS/MS)法を使用したサル血清試料中のNB1113の濃度を決定するために使用された。時間0におけるNB1113の外挿の平均濃度(C)、観察された最大濃度(Cmax)、及び投薬後0~672時間までの濃度時間曲線下面積の数値(AUC0~672)によって評価されるような曝露は、1~10mg/kgまでの用量レベルの増加と共に増加した(図7)。Cmax平均値及びAUC0~672値の増加は、ほぼ用量に比例した。10mg/kgのNB1113の用量レベルは、それぞれ、257μg/mL及び33,300h・μg/mLという、1日目の血清中Cmax値及びAUC0~672値に相当した。
【0096】
免疫表現型検査のための血液試料を、大腿静脈を介して2回、投薬前の期間中、及び投薬期間の5日目、8日目、15日目、22日目、及び28日目に回収した。血液を、抗凝固剤のエチレンジアミン四酢酸カリウム塩を使用して回収し、フローサイトメトリーを使用して直ちに分析した(表4参照)。
【0097】
1又は10mg/kgのNB1113の投与により、投薬期間の5日目から22日目までの間に、全DC集団(Lin-CD16-HLA-DR+細胞として定義される)、cDC2集団(Lin-CD16-HLA-DR+BDCA-+細胞として定義される)、及びpDC集団(Lin-CD16-HLA-DR+CD123+/bright BDCA-2+細胞として定義される)の増加がもたらされた(図8)。結果は、静脈内への1回量のNB1113が、インビボにおいて効果的に樹状細胞を増幅することができることを実証する。
【0098】
全T細胞集団(CD3+)、ヘルパーT細胞集団(Th:CD3+CD4+CD8-)、細胞障害性T細胞集団(CD3+CD4-CD8+)、及びB細胞集団(CD3-CD20+)に観察された小さな変化は、規模が小さく、この種において記述された生物学的ばらつきの正常範囲内にあった(図9)。NK細胞はNB1113による処置に応答して僅かに減少したが、レベルは、全分析期間を通して投与前の数値よりも低いままであった。単球集団に観察された小さな変化は、動物群間及び投薬群間でばらつきがあった(図9)。
【0099】
血小板数に対するNB1113の効果を試験するために、血液学的分析用の試料を、投薬期間の1日目、3日目、4日目、5日目、6日目、11日目、及び18日目に回収した。血液試料を、断食させた動物から大腿静脈又は橈側皮静脈を介して回収した。投薬前の期間の数値と比較して、血小板数は一般的に、2日目から6日目までに減少し(-1.1から-17.8%へ)、8日目から22日目まで増加し(+1.1から+42.8%へ)、その後、28日目までに基線値に戻った(図10)。減少した血小板数は、FLT3受容体リガンドで処置されたサルにおいて、NB1113に関連した所与の類似した所見であると想定された(Reeves et al. “Systemic dendritic cell mobilization associated with administration of FLT3 ligand to SIV- and SHIV-infected macaques.” AIDS Res Hum Retroviruses. Dec; 25(12): 1313-28. (2009))。
【0100】
【表4】
【0101】
本発明の好ましい実施態様が本明細書において示され記載されているが、このような実施態様は単に例として提供されていることが当業者には明らかであろう。数多くの変種、変化、及び置換がすぐに、本発明から逸脱することなく、当業者には思いつくであろう。本明細書に記載の本発明の実施態様に対する様々な代替選択肢が、本発明を実施する際に使用され得ることが理解されるべきである。
【0102】
本明細書に言及されている全ての刊行物、特許出願、交付済み特許、及び他の文書は、各々の個々の刊行物、特許出願、交付済み特許、及び他の文書が具体的かつ個々にその全体が参照により組み込まれていると示されているかのように、参照により本明細書に組み入れられる。参照により組み込まれた文書に含まれる定義が、該定義が本開示の定義と矛盾する場合には除外される。
【0103】
【表5】


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
2022513961000001.app
【国際調査報告】