(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(54)【発明の名称】難溶性カルシウム化合物及びフッ化物を使用して口腔ケア効果を提供する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/19 20060101AFI20220202BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
A61K8/19
A61Q11/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534732
(86)(22)【出願日】2019-11-20
(85)【翻訳文提出日】2021-07-15
(86)【国際出願番号】 IB2019060001
(87)【国際公開番号】W WO2020128680
(87)【国際公開日】2020-06-25
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515233487
【氏名又は名称】ジョンソン・アンド・ジョンソン・コンシューマー・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Consumer Inc.
【住所又は居所原語表記】199 Grandview Road, Skillman, NJ 08558, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ケイロス・ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】テスター・シャンテル
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB291
4C083AB292
4C083AB321
4C083AB322
4C083AB342
4C083AB381
4C083AB471
4C083AB472
4C083AC291
4C083BB55
4C083CC41
4C083DD22
4C083DD23
4C083EE31
(57)【要約】
口腔に難溶性カルシウム化合物を投与し、続いて、フッ化物を口腔に導入することにより、口腔に効果を提供する方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔に難溶性カルシウム化合物を投与し、続いて、フッ化物を前記口腔に導入することを含む、口腔に効果を提供する方法。
【請求項2】
前記難溶性カルシウム化合物が、食品摂取後30分以内に前記口腔に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フッ化物が、前記難溶性カルシウム化合物の投与の12時間以内に前記口腔に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記フッ化物が、前記難溶性カルシウム化合物の投与の4時間以内に前記口腔に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記難溶性カルシウム化合物が、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記難溶性カルシウム化合物が、炭酸カルシウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
フッ化物を導入する前記工程が、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一スズ、フッ化アミン、四フッ化チタン、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されるフッ化物含有化合物を前記口腔に導入することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記難溶性カルシウム化合物が、錠剤の形態で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記フッ化物含有化合物が、マウスウォッシュ、マウスリンス、又は練り歯磨きの形態で導入される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
難溶性カルシウム化合物を含む錠剤を口腔に投与し、続いて、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一スズ、フッ化アミン、四フッ化チタン、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されるフッ化物含有化合物を含むマウスウォッシュ、マウスリンス、又は練り歯磨きを前記口腔に導入することを含む、口腔に効果を提供する方法。
【請求項11】
前記錠剤が、食品摂取後30分以内に前記口腔に投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記マウスウォッシュ、前記マウスリンス、又は前記練り歯磨きが、前記錠剤の投与の4時間以内に前記口腔に導入される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記マウスウォッシュ、前記マウスリンス、又は前記練り歯磨きが、前記錠剤の投与の1時間以内に前記口腔に導入される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記錠剤が、約1.5グラム以上の重量を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記錠剤が、アルギニンを更に含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難溶性カルシウム化合物及びフッ化物を使用して口腔に効果を提供する方法に関する。より具体的には、本発明は、例えば、口腔に難溶性カルシウム化合物を導入した後、口腔内にフッ化物を導入することによって、再石灰化及び/又は虫歯予防効果を強化することを含む、口腔ケア効果を提供する方法に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
一態様によれば、本発明は、口腔に難溶性カルシウム化合物を投与し、続いて、当該口腔にフッ化物を導入することを含む、口腔に効果を提供する方法を目的とする。
【0003】
一実施形態では、難溶性カルシウム化合物源は錠剤である。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】GeochemistのWorkbenchソフトウェアモデルから作成された、高溶解性及び難溶性の形態のカルシウムについての、添加したミネラルの量に対するpHのプロットである。
【
図2】GeochemistのWorkbenchソフトウェアモデルから作成された、高溶解性及び難溶性の形態のカルシウムについての、添加したミネラルの量に対するHA飽和レベルのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
出願人らは、難溶性カルシウム化合物及びフッ化物を使用して口腔に効果を提供することにおける顕著な利点を発見した。具体的に言えば、特許請求される方法は、高溶解性カルシウム化合物を使用する方法を含む他の方法と比較して、顕著な再石灰化及びpH緩衝の両方を呈する傾向がある。
【0006】
本明細書で使用するとき、用語「難溶性カルシウム化合物」は、中性pHの水への溶解度が0.5g/L未満である任意のカルシウム含有化合物を指す。特定の実施形態では、難溶性カルシウム化合物は、約0.1g/L以下、約0.05g/L以下、又は約0.02g/L以下の溶解度を有する。好適な難溶性カルシウム化合物の例としては、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、これらの2つ以上の組み合わせなどを含むがこれらに限定されない、難溶性カルシウム塩が挙げられる。特定の好ましい実施形態では、難溶性カルシウム化合物は、炭酸カルシウムを含む。
【0007】
難溶性カルシウム含有化合物は、例えば、粉末、錠剤、菓子、チューインガムなどの固体形態、又は例えば、マウスウォッシュ、マウスリンス、練り歯磨き、ゲルなどの液体形態を含むがこれらに限定されない、任意の好適な形態で口腔に送達され得る。特定の実施形態では、難溶性カルシウム化合物は、錠剤の形態で口腔に導入される。特定の実施形態では、難溶性カルシウム化合物は、マウスウォッシュ又はマウスリンスを介して口腔に導入される。
【0008】
送達ビヒクル中のカルシウムの濃度は、選択された送達ビヒクルの形態に少なくとも部分的に依存する。概して、投与されたフッ化物と反応して、歯垢、歯、及び口腔組織にカルシウム結合フッ化物沈着物を形成するのに有効な濃度の難溶性カルシウム化合物を口腔組織に送達することが望ましい。例として、これらの濃度の難溶性カルシウムを口腔に送達するためには、フッ化物リンス又は歯磨剤の前に使用されるプレリンス中のカルシウム濃度は、好ましくは約0.1重量%~約20重量%、又は約1重量%~約15重量%、又は約5重量%~約10重量%である。錠剤として製剤化される場合、総カルシウム含有量は、約0.1重量%~約50重量%、又は約1重量%~約15重量%、又は約1重量%~約5重量%である。歯磨剤に配合される場合、カルシウム含有量は、難溶性カルシウムの約0.2重量%~約50重量%、又は約1重量%~約25重量%、又は約5重量%~約15重量%である。
【0009】
いくつかの実施形態では、難溶性カルシウム含有化合物は、参照によりその全体が本明細書に援用される、Geonnotti IIIらの米国特許公開第20180140521号及びWittorffらの米国特許出願公開第20180140554(A1)号に記載されているように、口腔全体にわたって移動することができる流体を生成する錠剤などの錠剤の形態で送達され得る。
【0010】
特定の好ましい実施形態では、錠剤は、ユーザーが錠剤を噛み、咀嚼することができる硬度を有するチュアブルで溶解可能な錠剤である。
【0011】
錠剤は、方法で使用するための流体の生成において使用するための任意の好適なサイズ/重量であってよい。例えば、約1グラム以上、又は約1.2グラム以上、又は約1.5グラム以上を超える重量である。特定の好ましい実施形態では、錠剤は、約1.0グラム~約3グラム、又は約1.1グラム~約2.5グラム、又は約1.5グラム~約2グラムである。錠剤は、約5~約15ミリメートル(mm)、又は約6~約12mm、約7~約8mmの厚さを含む、任意の適切な厚さであってよい。錠剤はまた、約5~約20mm、又は約10~約18mm、又は約12~約16mmを含む任意の好適なサイズの直径、対角線、又は最長の縁長を有していてよい。
【0012】
錠剤は、当該技術分野において公知の様々な錠剤化法のいずれを介してでも調製することができる。錠剤製造の従来の方法としては、直接圧縮(「乾式ブレンド」)、乾燥造粒に続く圧縮、湿式造粒に続く乾燥及び圧縮、熱、マイクロ波、赤外線、及び他のエネルギーを印加することを含む、錠剤化される材料のブレンドへのエネルギーの印加、これらの2つ以上の組み合わせなどが挙げられる。
【0013】
錠剤は、錠剤での使用に好適な様々な材料のいずれを含んでいてもよい。特定の実施形態では、錠剤は、少なくとも1つの炭水化物を含む。炭水化物の例としては、デキストロース、デキストロース一水和物、ラクトース、グルコース、フルクトース、マルトデキストリン、スクロース、固形コーンシロップ、及びマンノースなどの糖類;ソルビトール、ラクチトール、キシリトール、エリスリトール、マンニトール、マルチトール、イソマルト、及びポリオールを含む糖アルコールなどの炭水化物アルコール;並びにこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。特定の好ましい実施形態では、錠剤は、例えば、キシリトール、マルチトール、及びこれらの組み合わせ、又は、キシリトール、エリスリトール、イソマルト、並びに、キシリトール、エリスリトール、及びイソマルトの組み合わせを含むこれらの組み合わせを含む、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、及びイソマルトからなる群から選択される1種類以上の糖アルコールを含む。特定の好ましい実施形態では、錠剤は、エリスリトールを単独で、又は1つ以上の追加の糖アルコールと組み合わせて含む。特定の好ましい実施形態では、錠剤は、キシリトールを単独で、又は1つ以上の追加の糖アルコールと組み合わせて含む。他の好ましい実施形態では、錠剤は、ソルビトール、ラクチトール、キシリトール、マンニトール、マルチトール、イソマルト、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される1つ以上の糖アルコールを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、錠剤中の炭水化物は、Cargillによって供給されているZerose(商標)16952Fエリスリトール又はCargillによって供給されているZerose(商標)DC 16966エリスリトールであってよい。特定の実施形態では、錠剤は、両方のエリスリトールを含む。
【0015】
特定の実施形態では、錠剤は、錠剤の約40~約99重量%、又は約75~約95重量%、又は約80~約90重量%を含む、錠剤の少なくとも40重量%の量の全炭水化物の総量を含む。特定の好ましい実施形態では、炭水化物は、1つ以上の糖アルコールを含み、錠剤は、錠剤の約60~99重量%又は約80~約90重量%を含む、錠剤の少なくとも40重量%の糖アルコールの総量を含む。特定の実施形態では、錠剤は、少なくとも20%のキシリトール及び少なくとも20%の1つ以上の他の糖アルコールを含む、2つ以上の炭水化物をそれぞれ少なくとも20%含む。特定の実施形態では、錠剤は、約20~50%のキシリトールと、約20~50%のエリスリトールと、約20~40%のイソマルトとを含む混合物を含む、約20~50%のキシリトールを含む。特定の実施形態では、錠剤は、約20~50%のキシリトールと、少なくとも20%の、ソルビトール、ラクチトール、マンニトール、マルチトール、イソマルト、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される1つの他の糖アルコールとを含む。
【0016】
錠剤は、無糖であってもよい。当業者には容易に理解されるように、かかる錠剤は糖アルコールを含有してもよいが、それでもグルコース、デキストロース、スクロース、又は糖分子のオリゴマー/ポリマーなどの糖は実質的に含まない。
【0017】
難溶性カルシウム含有化合物に加えて、錠剤は、口腔ケア効果を提供する際に使用するための1つ以上の活性成分を含んでいてもよい。特定の実施形態では、活性成分としては、食べ滓の除去を含む口内清掃、歯垢予防、歯肉炎予防、及び悪臭の低減を含む抗菌性、バイオフィルムの破壊、細菌付着の予防、口腔微生物群落構造の改変、口腔微生物の代謝プロファイルの改変、抗ウイルス活性、抗炎症性、pHバランス、歯のホワイトニング、ステイン予防、知覚過敏予防、虫歯予防、エナメル質の強化、口臭のフレッシュニング、口腔水分補給/口渇の緩和、侵食の修復及び予防、能動送達及び保持、感覚強化、口触りの変化、疼痛緩和、創傷治癒などの効果をもたらすための様々な活性物質のいずれかが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
加えて、特定の実施形態では、錠剤は、精油も含む。精油は、揮発性の芳香油であり、合成されてもよく、又は蒸留、圧搾、若しくは抽出による植物由来であってもよく、通常、それらが得られた植物の匂い又は香味を伝える。有用な精油は、殺菌活性を提供することができる。これらの精油のいくつかは、香味剤としても作用する。有用な精油としては、シトラ、チモール、メントール、サリチル酸メチル(冬緑油)、ユーカリプトール、カルバクロール、カンファー、アネトール、カルボン、オイゲノール、イソオイゲノール、リモネン、オシメン、n-デシルアルコール、シトロネル、a-サルピネオール、酢酸メチル、酢酸シトロネリル、メチルオイゲノール、シネオ-ル、リナロール、エチルリナラオール、サフロラバニリン、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、桂皮油、ピメント油、月桂樹油、ニオイヒバ油、ゲリアノール、ベルベノーン、アニス油、ベイ油、ベンズアルデヒド、ベルガモット油、苦扁桃、クロロチモール、シンナムアルデヒド、シトロネラ油、クローブ油、コールタール、ユーカリ油、グアヤコール、ヒノキチオールなどのトロポロン誘導体、ラベンダー油、カラシ油、フェノール、サリチル酸フェニル、パイン油、マツ葉油、サッサフラス油、スパイクラベンダー油、ストラックス、タイム油、トルーバルサム、テレビン油、クローブ油、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
特定の好ましい実施形態では、錠剤は、メントール、チモール、ユーカリプトール、及びサリチル酸メチルからなる群から選択される1つ以上の生物活性精油を含む。特定の好ましい実施形態では、錠剤は、メントールと、チモール、ユーカリプトール、及びサリチル酸メチルから選択される少なくとも1つの他の精油とを含む。特定の好ましい実施形態では、錠剤は、メントール及びユーカリプトール、メントール、ユーカリプトール、及びチモール、又はメントール、ユーカリプトール、チモール、及びサリチル酸メチルを含む。チモール、[(CH3)2CHC6H3(CH3)OH、イソプロピル-m-クレゾールとしても知られている]は、水にごくわずかにしか溶解しないが、アルコールには溶解し、その存在が、定評のある高アルコールの市販のマウスリンスにアルコールが必要であった理由の1つである。サリチル酸メチル、[C6H4OHCOOCH3、冬緑油としても知られている]は、その抗菌機能と共に香りを更に提供する。ユーカリプトール[C10H18O、シネオールとしても知られている]は、テルペンエーテルであり、清涼感のあるピリッとした味覚を与える。ユーカリプトールは、特定の処方において、必要に応じてチモールの代わりに同量使用してもよい。メントール[CH3C6H9(C3H7)OH、ヘキサヒドロチモールとしても知られている]も、アルコールにごくわずかにしか溶解せず、かなり揮発性である。メントールは、いくらかの消毒特性に加えて、清涼感、ヒリヒリ感を提供する。
【0020】
他の好適な抗菌剤としては、ハロゲン化ジフェニルエーテル、2’,4,4’-トリクロロ-2-ヒドロキシ-ジフェニルエーテル(トリクロサン)、2,2’-ジヒドロキシ-5,5’-ジブロモ-ジフェニルエーテル、ハロゲン化サリチルアニリド、4’5-ジブロモサリチルアニリド、3,4’,5-トリクロロサルチルアニリド、3,4’,5-トリブロモサリチルアニリド、2,3,3’,5-テトラクロロサリチルアニリド、3,3’,5-テトラクロロサリチルアニリド、3,5,ジブロモ-3’-トリフルオロメチルサリチルアニリド、5-n-オクタノイル-3’-トリフルオロメチルサリチルアニリド、3,5-ジブロモ-4’-トリフルオロメチルサリチルアニリド、3,5-ジブロモ-3’-トリフルオロメチルサリチルアニリド(フルオロフェン)、安息香酸エステル、メチル-p-ヒドロキシ安息香酸エステル、エチル-p-ヒドロキシ安息香酸エステル、プロピル-p-ヒドロキシ安息香酸エステル、ブチル-p-ヒドロキシ安息香酸エステル、ハロゲン化カルバニリド、3,4,4’-トリクロロカルバニリド、3-トリフルオロメチル-4,4’-ジクロロカルバニリド3,3’,4-トリクロロカルバニリド、フェノール化合物(フェノール及びその同族体、モノ及びポリアルキル及び芳香族ハロ(例えば、F、Cl、Br、I)フェノール、レゾルシノール及びカテコール、並びにこれらの誘導体及びビスフェノール化合物を含む)、2メチルフェノール、3メチルフェノール、4メチルフェノール、4エチルフェノール、2,4-ジメチルフェノール、2,5-ジメチルフェノール、3,4-ジメチルフェノール、2,6-ジメチルフェノール、4-n-プロピルフェノール、4-n-ブチルフェノール、4-n-アミルフェノール、4-tert-アミルフェノール、4-n-ヘキシルフェノール、4-n-ヘプチルフェノール、2-メトキシ-4-(2-プロペニル)フェノール(オイゲノール)、モノ及びポリアルキル及びアラルキルハロフェノール、メチル-p-クロロフェノール、エチル-p-クロロフェノール、n-プロピル-p-クロロフェノール、n-ブチル-p-クロロフェノール、n-アミル-p-クロロフェノール、sec-アミル-p-クロロフェノール、n-ヘキシル-p-クロロフェノール、シクロヘキシル-p-クロロフェノール、n-ヘプチル-p-クロロフェノール、n-オクチル-p-クロロフェノール、o-クロロフェノール、メチル-o-クロロフェノール、エチル-o-クロロフェノール、n-プロピル-o-クロロフェノール、n-ブチル-o-クロロフェノール、n-アミル-o-クロロフェノール、tert-アミル-o-クロロフェノール、n-ヘキシル-o-クロロフェノール、n-ヘプチル-o-クロロフェノール、p-クロロフェノール、o-ベンジル-p-クロロフェノール、o-ベンジル-m-メチル-p-クロロフェノール、o-ベンジル-m,m-ジメチル-p-クロロフェノール、o-フェニルエチル-p-クロロフェノール、o-フェニルエチル-m,m-ジメチル-p-クロロフェノール、3-メチル-p-クロロフェノール、3,5-ジメチル-p-クロロフェノール、6-エチル-3-メチル-p-クロロフェノール、6-n-プロピル-3-メチル-p-クロロフェノール、6-イソプロピル-3-メチル-p-クロロフェノール、2-エチル-3,5-ジメチル-p-クロロフェノール、6-sec-ブチル-3-メチル-p-クロロフェノール、2-イソプロピル-3,5-ジメチル-p-クロロフェノール、6-ジエチルメチル-3-メチル-p-クロロフェノール、6-イソプロピル-2-エチル-3-メチル-p-クロロフェノール、2-secアミル-3,5-ジメチル-p-クロロフェノール、2-ジエチルメチル-3,5-ジメチル-p-クロロフェノール、6-secオクチルメチル-3-メチル-p-クロロフェノール、p-ブロモフェノール、メチル-p-ブロモフェノール、エチル-p-ブロモフェノール、n-プロピル-p-ブロモフェノール、n-ブチル-p-ブロモフェノール、n-アミル-p-ブロモフェノール、sec-アミル-p-ブロモフェノール、n-ヘキシル-p-ブロモフェノール、シクロヘキシル-p-ブロモフェノール、o-ブロモフェノール、tert-アミル-o-ブロモフェノール、n-ヘキシル-o-ブロモフェノール、n-プロピル-m,m-ジメチル-o-ブロモフェノール、2-フェニルフェノール、4-クロロ,2-メチルフェノール、4-クロロ-3-メチルフェノール、4-クロロ-3,5-ジメチルフェノール、2,4-ジクロロ-3,5-ジメチルフェノール、3,4,5,6-テトラブロモ-2-メチルフェノール、5-メチル-2-ペンチルフェノール、4-イソプロピル-3-メチルフェノール、5-クロロ-2-ヒドロキシジフェニルメタン、レゾルシノール及びその誘導体、レゾルシノール、メチルレゾルシノール、エチルレゾルシノール、n-プロピルレゾルシノール、n-ブチルレゾルシノール、n-アミルレゾルシノール、n-ヘキシルレゾルシノール、n-ヘプチルレゾルシノール、n-オクチルレゾルシノール、n-ノニルレゾルシノール、フェニルレゾルシノール、ベンジルレゾルシノール、フェニルエチルレゾルシノール、フェニルプロピルレゾルシノール、p-クロロベンジルレゾルシノール、5-クロロ-2,4-ジヒドロキシジフェニルメタン、4’-クロロ-2,4-ジヒドロキシジフェニルメタン、5-ブロモ-2,4-ジヒドロキシジフェニルメタン、4’-ブロモ-2,4-ジヒドロキシジフェニルメタン、ビスフェノール化合物、ビスフェノールA、2,2’-メチレンビス(4-クロロフェノール)、2,2’-メチレンビス(3,4,6-トリクロロフェノール)(ヘキサクロロフェン)、2,2’-メチレンビス(4-クロロ-6-ブロモフェノール)、ビス(2-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)スルフィド、ビス(2-ヒドロキシ-5-クロロベンジル)スルフィド、メントキシ-1,2-プロパンジオール、o-メトキシシンナムアルデヒド、メンチル-3-ヒドロキシブタノエート、これらの2つ以上の組み合わせなどが挙げられる。
【0021】
他の抗菌剤としては、ヘキセチジン;カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、リノレライジン酸、アラキドン酸ビタミンE、酢酸ビタミンE、アピゲニン、及びこれらの混合物などの脂肪酸化合物;その全容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第20110123462号(Mordasら)に記載されるものなどの長鎖脂肪アルコール(その例としては、これらに限定されるものではないが、1-デセン-3-オール;cis-4-デセン-1-オール、trans-2-デセン-1-オール、cis-2-ノネン-1-オール、cis-4-デセナール、trans-2-デセナール、cis-7-デセナール、cis-5-オクテン-1-オール、trans-2-オクテン-1-オール、1-オクテン-3-オール、cis-3-ノネン-1-オール、trans-2-ノネン-1-オール、cis-6-ノネン-1-オール、9-デセン-1-オール、trans-2-ウンデセン-1-オール、trans-2-ドデセン-1-オール、trans-2-オクテナール、trans-2-ノネナール、6-ノネナール、cis-2-デセナール、trans-2-ウンデセナール、trans-2-ドデセナール、cis-3-オクテン-1-オール、3-オクテン-2-オール、10-ウンデセン-1-オール、trans-2-トリデセン-1-オール、これらの立体異性体、及びこれらの混合物が挙げられる);ファルネソールなどの環状セスキテルペンアルコール;その全体が参照により本明細書に援用される、Engelmanらの米国特許第5,874,068号に記載されているものなどのN’-アルキル-L-アルギニンアルキルエステル(例えば、ラウロイルアルギニンエチルエステル)及び塩;その全体が参照により本明細書に援用される、Gambogiらの米国特許出願公開第20160145203号に記載されているようなアミノ酸誘導体化合物;レトロサイクリン(RC101)、プロテグリン-1(PG1)又はKSL-Wなどの、抗菌性ペプチド;並びにセチルピリジニウムクロリド、クロルヘキセジン、及びこれらの混合物などのカチオン性界面活性剤;が挙げられるが、これらに限定されない。更に、クランベリーに見出されるプロアントシアニジン(PAC)を含む、特定の植物又は果実の抗菌性抽出物が含まれてもよく、例えば、フラバン-3-オール(及びそのポリマー)、プロシアニジン(及びそのポリマー)、テルペン(及びそのポリマー)、ヒドロキシベンゾール酸、ヒドロキシケイ皮酸、アントシアニジン(及びそのポリマー)、フラボノール(及びそのポリマー)、並びに他のシアニジン及びペオニジンがある。ペパーミント油及びセージ油などの油類もまた、本明細書において有用である。
【0022】
他の好適な活性物質としては、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一スズ、及びフッ化アミンなどのフッ化物イオン源(例えば、約1~5000ppmのフッ化物イオン、任意選択的に約200~1150ppmのフッ化物イオンを与える);アルカリ金属ピロリン酸塩などの水溶性ポリリン酸塩、ポリアクリレート、及び無水マレイン酸又はマレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマー、ポリアミノプロパンスルホン酸(AMPS)、クエン酸亜鉛三水和物、ポリペプチド(ポリアスパラギン酸及びポリグルタミン酸など)、並びにこれらの2つ以上の混合物、アルカリ金属ピロリン酸塩などの水溶性ピロリン酸塩などの抗歯石剤;酒石酸及びその薬学的に許容される塩、クエン酸及びクエン酸アルカリ金属塩、並びにこれらの混合物などのキレート剤;硝酸カリウム及び塩化カリウムなどのカリウム塩、並びに塩化ストロンチウム及び酢酸ストロンチウムなどのストロンチウム塩を含む、歯の過敏症を低減させる歯感度低下剤;歯ホワイトニング剤及びビタミンAなどのビタミン類;並びに、顔料及び着色料、例えば、無機白色顔料、無機着色顔料、真珠光沢剤、充填剤粉末など、並びにタルク、雲母、炭酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、シリカ、二酸化チタン、酸化亜鉛、赤色酸化鉄、褐色酸化鉄、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄、フェロシアン化第二鉄アンモニウム、マンガンバイオレット、ウルトラマリン、ナイロン粉末、ポリエチレン粉末、メタクリレート粉末、ポリスチレン粉末、シルク粉末、結晶性セルロース、デンプン、チタン化雲母、酸化鉄チタン化雲母、オキシ塩化ビスマス、並びにこれらの2つ以上の混合物が挙げられる。
【0023】
酵素は、錠剤において使用することができる別の種類の活性物質である。有用な酵素としては、プロテアーゼ、溶菌酵素、歯垢マトリックス阻害剤、及びオキシダーゼの分類に属するものが挙げられ、プロテアーゼとしては、パパイン、ペプシン、トリプシン、フィシン、ブロメリンが挙げられ;細胞壁溶菌酵素としてはリゾチームが挙げられ;歯垢マトリックス阻害剤としては、デキストラナーゼ、ムタナーゼが挙げられ;そして、オキシダーゼとしては、グルコースオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、尿酸オキシダーゼ、ラッカーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ミエロペルオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、クロロペルオキシダーゼを含むペルオキシダーゼが挙げられる。オキシダーゼは、抗菌特性に加えてホワイトニング/洗浄活性をも有する。
【0024】
アルギニン、アルギニン一塩酸塩、及びイヌリン型フルクタン、マルトデキストリン、フラクトオリゴ糖、及びガラクトオリゴ糖を含む、口腔細菌により代謝されて口腔内で有益な効果を生じさせる成分がこれらの錠剤に含まれていてもよい。更に、これらの錠剤を使用して、特定の種の乳酸桿菌(Lactobacilli)及びビフィズス菌(bifidobacteria)、サッカロミセス属(Saccharomyces)種、連鎖球菌(Streptococci)、腸球菌(enterococci)、及び共生大腸菌(Escherichia coli)を含む細菌のプロバイオティクス株を送達することもできる。
【0025】
また、錠剤は、口腔疾患又は口腔又は中咽頭に生じる疾患症状を治療するために、麻酔薬、抗生物質、抗真菌薬、抗ウイルス薬、及び抗炎症化合物などの医薬活性物質を送達するために使用することもできる。
【0026】
特定の実施形態では、本発明で使用される錠剤は、様々な唾液分泌剤(唾液刺激剤又は唾液剤としても知られる)のいずれかを含んでもよい。適当な唾液分泌剤としては、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、アスコルビン酸、アジピン酸、フマル酸、酒石酸などの食品有機酸、ピロカルピン塩酸塩のようなコリンエステル又はコリンエステラーゼ阻害剤などの副交感神経作用薬、及びこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。特定の好ましい実施形態では、唾液分泌剤は、クエン酸、コハク酸、若しくはこれらの組み合わせを、単独で、又は他の唾液分泌剤と組み合わせて含む。特定の好ましい実施形態では、唾液分泌剤は、ジャンブオレオレジン(jambu oleoresin)抽出物を含む。唾液分泌剤は、錠剤の約0.01~約3重量%、約0.01~約1重量%、約0.01~約0.5重量%、約0.01~約0.25重量%、及び約0.01~約0.1重量%を含む、錠剤の約0.001~約5重量%を含む、本発明で使用するための任意の好適な量で存在してよい。
【0027】
本発明で使用するための錠剤は、例えば、甘味料、潤滑剤、充填剤、吸着剤、崩壊剤、滑剤、超崩壊剤、香味料及び芳香剤、酸化防止剤、防腐剤、質感向上剤、着色剤など、並びにこれらの2つ以上の混合物を含む、錠剤において使用するのに好適な様々な追加成分のいずれかを含んでいてもよい。
【0028】
特定の実施形態では、錠剤は、これらに限定されるものではないが、合成糖又は天然の糖、サッカリンナトリウムを含むサッカリン及びその塩、アスパルテーム、並びにアセスルファムカリウムを含むアセスルファム及びその塩、タウマチン、グリチルリチン、スクラロース、ジヒドロカルコン、アリテーム、ミラクリン、モネリン、ステビオシド、並びにこれらの2つ以上の組み合わせなどの人工甘味料を含む、追加甘味料を含んでもよい。特定の好ましい実施形態では、錠剤は、スクラロース、アセスルファムカリウム、又はこれらの組み合わせを含む。錠剤は、錠剤の約0.02~約8重量%、約0.1~約3重量%、約0.1~約1重量%、及び約0.1~約0.5重量%を含む、約0.001~約8重量%を含む任意の好適な総量の追加の甘味料を含んでいてよい。
【0029】
錠剤はまた、特定の実施形態において潤滑材料を含んでもよい。好適な潤滑剤としては、これらに限定されるものではないが、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸などの長鎖脂肪酸及びそれらの塩、タルク、グリセリドワックス、及びこれらの混合物が挙げられる。このような材料は、錠剤の約0.1~約5重量%を含む、約0.5~約3重量%、約0.5~約2重量%を含む、約0.01~約5重量%を含む任意の好適な量で存在してよい。
【0030】
好適な充填剤としては、これらに限定されるものではないが、非水溶性塑性変形材料(例えば、微結晶セルロース又は他のセルロース誘導体)、及びこれらの混合物が挙げられる。好適な吸着剤としては、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、ケイ化微結晶セルロース(例えば、PROSOLVブランドで流通しているもの(PenWest Pharmaceuticals、Patterson,N.Y.))、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(例えば、NEUSILINブランドで流通しているもの(Fuji Chemical Industries(USA)Inc.、Robbinsville,N.J.)、粘土、シリカ、ベントナイト、ゼオライト、ケイ酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、ビーガム、及びこれらの混合物などの非水溶性吸着剤が挙げられるが、これらに限定されない。好適な崩壊剤としては、これらに限定されるものではないが、グリコール酸ナトリウムデンプン、架橋ポリビニルピロリドン、架橋カルボキシメチルセルロース、デンプン、微結晶セルロース、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0031】
超崩壊剤の例としては、これらに限定されるものではないが、クロスカルメロースナトリウム、グリコール酸ナトリウムデンプン、及び架橋ポビドン(クロスポビドン)が挙げられる。一実施形態では、錠剤は、このような超崩壊剤を最大約5重量%含有する。
【0032】
香味料及び芳香剤の例としては、これらに限定されるものではないが、アルコール、エステル、アルデヒド、及びラクトンの混合物を含有する細断された花、葉、果皮、若しくはパルプ化全果実の蒸留物、溶媒抽出物、又は冷圧搾物を含む精油;精油の希釈溶液、又は果実(例えば、イチゴ、ラズベリー、及びクロスグリ)の天然の風味と一致するようにブレンドされた合成化学物質の混合物のいずれかを含む、エッセンス;例えば、コニャック、ウィスキー、ラム、ジン、シェリー、ポート、及びワインなどの醸造酒及び蒸留酒の人工並びに天然香味料;タバコ、コーヒー、茶、ココア、及びミント、レモン、オレンジ、及びライムなどの、水洗い、擦り洗いした果物から圧搾された果汁を含む果汁;オランダハッカ、ペパーミント、ウィンターグリーン、シナモン、カカオ/ココア、バニラ、カンゾウ、メントール、ユーカリ、アニシード、ナッツ類(例えば、ピーナッツ、ココナッツ、ヘーゼルナッツ、クリの実、クルミ、コーラの実)、アーモンド、レーズン、及び、粉末、細粉、又はショウガ根を含む植物材料部分が挙げられる。
【0033】
酸化防止剤の例としては、これらに限定されるものではないが、トコフェロール、アスコルビン酸、ピロ亜硫酸ナトリウム、ブチルヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、エデト酸、及びエデト酸塩、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0034】
防腐剤の例としては、これらに限定されるものではないが、クエン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、酢酸、安息香酸、及びソルビン酸、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0035】
質感向上剤の例としては、これらに限定されるものではないが、ペクチン、ポリエチレンオキシド、及びカラギーナン、並びにこれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、質感向上剤は、約0.1重量%~約10重量%の濃度で使用される。
【0036】
一実施形態では、錠剤は、1種類以上の発泡性カップル剤を更に含有する。一実施形態では、発泡性カップル剤は、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、及び炭酸ナトリウムからなる群からの1つの構成材と、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、リン酸、及びアルギン酸からなる群から選択される1つの構成材とを含有する。一実施形態では、粉末ブレンド/錠剤中の発泡性カップル剤(複数可)の合計量は、粉末ブレンド/錠剤の総重量の約2~約20重量%、例えば約2~約10重量%である。
【0037】
いくつかの実施形態では、錠剤は、その成分を混合し、成分が溶融してシロップになるまで加熱した後、混合物を加圧二酸化炭素ガス(約600ポンド/平方インチ、又はpsi)に曝露し、冷却することによって、作製することができる。このプロセスにより、細かな高圧の気泡がキャンディー内に閉じ込められる。錠剤が口中に置かれて唾液と接触すると、錠剤は壊れて溶解し、気泡から二酸化炭素を放出する結果、弾けるような音及びシューシュー言う音を生じ、わずかなヒリヒリする感覚を残す。
【0038】
錠剤は、チュアブルで溶解可能な錠剤とは対照的に、ガムを製造するために従来使用されているようなガムベースを実質的に含まない。好ましい実施形態では、本発明の錠剤は、そうした用語及びその製造が当該技術分野では理解されており、その製品形態は、チュアブルで溶解可能な錠剤よりもゆっくりと溶解することを意図するハードキャンディ又はトローチ剤を形成するように充分に加熱されない。
【0039】
任意の好適なフッ化物含有化合物/フッ化物源を、本発明の方法で使用してよい。フッ化物源として使用される好適な化合物の例としては、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一スズ、フッ化アミン、四フッ化チタン、これらの2つ以上の組み合わせなどが挙げられる。
【0040】
フッ化物含有化合物は、例えば、粉末、錠剤、菓子、チューインガムなどの固体形態、又は例えば、マウスウォッシュ、マウスリンス、練り歯磨き、ゲルなどの液体形態を含むがこれらに限定されない、任意の好適な形態で口腔に送達され得る。特定の実施形態では、フッ化物含有化合物は、錠剤を介して口腔に導入される。特定の実施形態では、フッ化物含有化合物は、マウスウォッシュを介して口腔に導入される。様々な市販のフッ化物含有製品、例えば、リンス、練り歯磨きなどのいずれかを本明細書で使用することができる。
【0041】
送達ビヒクル/製品中のフッ化物の濃度は、選択された送達ビヒクルの形態に少なくとも部分的に依存する。概して、投与されたカルシウムと反応して、歯垢、歯、及び口腔組織にカルシウム結合フッ化物沈着物を形成するのに有効な濃度のフッ化物を口腔組織に送達することが望ましい。送達ビヒクルは、例えば、約0.01~5000ppmのフッ化物イオン、又は約100~1500ppmのフッ化物イオン、又は約100~500ppmのフッ化物イオンを提供しなければならない。例として、口腔にこれらの濃度のフッ化物を送達するためには、フッ化物リンス中のフッ化物濃度は、約50ppm~約1000ppmである。錠剤として製剤化される場合、全フッ化物含有量は、好ましくは、約0.01ppm~約10ppmのフッ化物である。歯磨剤中に配合される場合、フッ化物含有量は、好ましくは、フッ化物の約500ppm~約5000ppm又は約500~約1500ppmである。
【0042】
本発明の実施形態は、本明細書に記載の化学作用を利用するために特別に処方された任意の市販のフッ化物製品(例えば、マウスウォッシュ、マウスリンス、歯磨剤、ゲル/フォーム、ワニス、トローチ剤、錠剤、チューインガム、医療用サプリメント)と共に、又は水へのフッ素添加を有する地域において使用することができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、フッ化物化合物は、マウスウォッシュ又は歯磨剤の形態で送達され得る。マウスウォッシュ及びリンスは、通常、口腔内の微生物負荷を低減することを意図する消毒液であるが、他のマウスウォッシュは、鎮痛作用、抗炎症作用、又は抗真菌作用などの他の理由で与えられる場合もある。加えて、いくつかのリンスは、酸を中和し、口内乾燥症(口渇)において口内の水分を維持するための唾液の代用物として作用する。美容用マウスリンスは口臭を一時的に制御又は低減し、口内に心地よい味覚を残す。
【0044】
フッ化物マウスウォッシュ及びリンスは、典型的には、フッ化ナトリウム形態を使用するが、フッ化第一スズを使用してもよい。これらは、歯科専門家によって専門的に適用されてもよく、又は家庭で使用されてもよい。マウスリンスで使用される最も一般的なフッ化物化合物は、フッ化ナトリウムである。フッ化物マウスリンスの濃度は、約0.02%~約0.2%(約100~約1,000ppm)又は約0.05%~約0.1%の範囲である。いくつかの実施形態では、1日分のフッ化物リンスは、約0.05%のフッ化物含有量を使用する。フッ化物マウスリンス処理後、マウスリンス中のフッ化物は唾液中に保持される。
【0045】
練り歯磨きは、歯を洗浄し、審美性及び健康を維持するために、歯ブラシと共に使用されるペースト又はゲルの歯磨剤である。練り歯磨きは、口腔衛生を促進するために使用され、歯から歯垢及び食物を除去し、口臭の抑制を支援し、活性成分を送達するのに役立つ研磨剤である。
【0046】
フッ化物練り歯磨きは、フッ化ナトリウムの形態の最大約1.1%(5,000ppm)のフッ化物又は約0.454%のフッ化第一スズを含有し得る。典型的には、練り歯磨きは、フッ化ナトリウム又はモノフルオロリン酸ナトリウムの形態の約0.22%(1,000ppm)~約0.312%(1,450ppm)のフッ化物を有する。フッ化物を含むほとんどの練り歯磨きは、より重い食べ滓及び軽い表面染色を除去するための穏和な研磨剤を含有する。これらの研磨剤としては、炭酸カルシウム、シリカゲル、炭酸マグネシウム、及びリン酸塩が挙げられる。
【0047】
フッ化物は、歯磨き中にいくつかの形態で利用可能である。フッ化物は、歯牙構造と反応する、歯垢内の細菌の代謝に干渉する、又は口腔粘膜に吸収することができる遊離のイオン性フッ化物として利用可能である。また、歯磨き中に口内に沈殿し、イオン性フッ化物を放出することができるプロフッ化物化合物としても利用可能である。
【0048】
また、フッ化物を含む知覚過敏予防練り歯磨きは、過敏な歯を有するヒトに利用可能である。市販のフッ化物を含むいくつかの知覚過敏予防練り歯磨きは、歯の過敏症を緩和するのに役立つ塩化ストロンチウム又は硝酸カリウムと呼ばれる成分を含有する。
【0049】
いくつかの実施形態では、フッ化物含有フォーム/ゲル、ワニス、トローチ剤のサプリメントを使用してもよい。専門的に適用されるか又は家庭で適用されるフッ化物含有ゲル及びフォームを使用してもよい。典型的には、これらのフッ化物ゲルは、2.0%の中性フッ化ナトリウム及び1.23%の酸性フッ素リン酸を含む。これらは、通常、穏やかに噛み合わせることによって口内に保持されるフォーム口内トレーを使用して適用される。適用は、通常、約4分間継続する。いくつかのゲルは、カスタムトレーを使用して家庭での適用のために作製される。ユーザーは、その歯に対して一晩又は日中の数分間、フッ化物処理を保持する。これらのゲル中のフッ化物の濃度は、専門家用製品よりもはるかに低く、典型的には約0.15%~約0.5%のフッ化物を含有する。
【0050】
フッ化物ワニスは、ゲル用途に必要とされるよりも少ない体積のフッ化物の適用及び使用の容易性においてゲルを超える実用的な利点を有する。フッ化物ワニスの原理は、非常に高い濃度(約50,000ppm)のフッ化物塩を歯の表面上に直接適用することである。フッ化物ワニスは、歯の表面上に数時間留まるように設計された樹脂ベースの用途である。このワニスが歯の表面上に置かれると、唾液がフッ化物塩を溶解し、これによりフッ化物イオンが放出される。その後、フッ化物は、これらのリザーバから口腔内に再放出され、虫歯に対する歯の保護として作用する。
【0051】
フッ化物添加トローチ剤及び医療用フッ化物サプリメントを、本発明においてフッ化物源として使用してもよい。フッ化物添加トローチ剤は、それぞれ約1mgのフッ化物を含有し、口内で保持され、吸引されることを意図する。溶解したトローチ剤はゆっくり嚥下されるので、トローチ剤は、局所療法及び全身療法の両方に使用される。医療用フッ化物サプリメントは、典型的には、錠剤、トローチ剤、又は液剤(フッ化物-ビタミン調製物を含む)の形態である。
【0052】
いくつかの実施形態では、本発明におけるフッ化物源は、フッ化物添加水であってもよい。水へのフッ化物添加は、フッ化物の上水道への制御添加により、う歯を低減する。米国では1940年代に使用が開始され、現在では、上水道において米国国民の約3分の2、世界中の人々の約6パーセントに使用されている。これは、口腔内にフッ化物を誘導するための最も費用効率の高い方法である。
【0053】
使用中、難溶性カルシウム化合物は、フッ化物の投与前に送達ビヒクルで経口投与される。いくつかの実施形態では、難溶性カルシウム送達ビヒクルは、フッ化物含有製品の使用直前に使用される。これらの場合、フッ化物含有化合物は、難溶性カルシウム化合物送達ビヒクルの使用後に実施可能になるとすぐに使用される。他の実施形態では、フッ化物含有製品の投与は、難溶性カルシウム化合物の投与の著しく後である。フッ化物含有製品の投与は、難溶性カルシウム化合物の投与の1分、若しくは5分、若しくは10分、若しくは30分、若しくは1時間、若しくは2時間、若しくは4時間、若しくは8時間、若しくは12時間、若しくはそれ以上後であってもよく、又はカルシウムのほとんど若しくは全てが口腔から口腔組織に移動するのに十分な他の時間であってもよい。
【0054】
一実施形態では、フッ化物含有化合物は、難溶性カルシウム含有化合物の投与の約1分、又は10分、又は20分、又は1時間、又はそれ以上後に投与される。
【0055】
いくつかの実施形態では、難溶性カルシウム含有化合物を有するビヒクルは、その日の多数の時点で投与され、フッ化物含有化合物は、その日の多数の時点で投与されるか、又は1日1回だけ投与される。健康なヒト唾液は7.4のpHを有する。酸性の食品及び飲料が摂取されると、口内のpHが低下し、歯垢におけるpHが5.0未満に急速に低下する場合がある。これは、摂取された栄養素を細菌が代謝する際の酸の生成を通じて生じる。う歯は、口内のpHレベルが5.5以下であるときに生じ得る。口内が劇的な又は長期間の低pHに曝露されると、虫歯の原因菌を成長させ得る。7.0以上で維持された歯垢は、糖に曝露されたときであっても、虫歯の原因菌へのシフトを経験しない。
【0056】
カルシウム含有化合物は、溶解するにつれて、口腔内のpHを上昇させ得る。口腔内で本明細書で論じられるような難溶性カルシウム源が緩徐に溶解することは、pHが5.5以下に急速に低下するのを防ぐための緩衝として作用することができる。いくつかの実施形態では、ユーザーは、食事又は間食などの食品摂取の直後又はすぐ後に、難溶性カルシウム化合物送達ビヒクルを投与することができる。例えば、食品摂取後1分以内、又は2分以内、又は5分以内、又は10分以内、又は15分以内、又は30分以内である。
【0057】
したがって、いくつかの実施形態では、難溶性カルシウム化合物送達ビヒクルは、食事又は間食の後など、1日のうちに2回、又は3回、又は4回、又は6回、又は8回、又はそれ以上投与されて、歯垢、歯、及び口腔組織において難溶性カルシウム化合物を維持するのに役立つ。フッ化物化合物はまた、難溶性カルシウム化合物の投与と同時に1回、2回、又は3回、又は4回、又はそれ以上投与されてもよい。
【0058】
例えば、ユーザーは、各食事若しくは間食の後に難溶性カルシウム化合物送達ビヒクルを投与し、1回以上の食事/間食の後に又は1日の終わりにフッ化物化合物を投与してよい。
【0059】
他の実施形態では、投与順序は逆であってもよい(すなわち、フッ化物をカルシウムの投与前に投与する)。このような逆のシステムは、Ca-Fの口腔への沈着の増加をもたらすと予測される。カルシウムに続いてフッ化物を投与した場合と同様に、フッ化物の投与後のカルシウムの投与を遅らせることが望ましい場合がある。
【0060】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、本発明の錠剤を口腔内に導入することを含む。様々な既知の手段のいずれをも、導入工程に用いることができる。例えば、錠剤を手でユーザーの口内に入れてもよく、錠剤をアプリケータ、包装、容器、投与装置、又はこのような目的に好適な他の物品若しくは機械によって導入してもよい。
【0061】
特定の実施形態では、錠剤が溶解している間に錠剤を咀嚼して口腔内で流体を生成し、錠剤から成分を含む流体を生成する。例えば、少なくとも10秒間、少なくとも15秒間、少なくとも20秒間、又は少なくとも30秒間を含む、少なくとも5秒間にわたって咀嚼することを含む咀嚼工程を含む実施形態に従って、流体を生成するのに十分な任意の時間にわたって、錠剤を咀嚼してよい。特定の好ましい実施形態では、約10秒間又は少なくとも10秒間にわたって錠剤を咀嚼する。
【0062】
生成された流体を、口腔全体に強制的に動かしてもよい。強制工程は、口腔内に任意の好適な量の力を印加して任意の1つ以上の方向、例えば、歯、歯肉、頬、及び/又は口腔内の別の表面の左右、上下、前後、前方、後方、周囲、その上、及び/又はそれを通じて流体を動かすことを含む。特定の実施形態では、流体は、(a)口腔の舌面から口腔の頬側面及び/又は唇面に向かって、又はその上に、(b)口腔の頬側面及び/又は唇面から口腔の舌面に向かって、あるいは(a)及び(b)の両方に強制的に動かされる。特定の実施形態では、流体は、頬及び/又は舌の筋肉運動を利用して、口腔全体で強制的に動かされる。特定の実施形態では、流体は、唇が閉じた状態で、口腔全体で強制的に動かされる。特定の好ましい実施形態では、強制的に動かす工程は、頬及び舌の筋肉運動を利用して、生成された流体の少なくとも一部を唇が閉じた状態で口腔全体で動かすことを含む。流体は、例えば、口中でくちゅくちゅする、すすぐ、洗浄する、回す、うがいする、揺動する、激しく動かす、ばしゃばしゃ動かす、口中に引く(irrigating)、動作させる(actuating)、勢いよく流す(gushing)、潅水する(douching)、噴出させる(swooshing)、跳ねさせる(splooshing)、絞り出す(squooshing)、押し出す、誘導する(maneuvering)、混合する、回転させる(twisting)、流す、浸す、循環させる、分配する、分散する、濡らす、動かす、などを含む、本発明に基づく任意の好適な形で、任意の1以上の方向に、又はさもなければ流体をマウスウォッシュ、マウスリンス、若しくは他の液体口腔ケア製品として使用して、強制的に流すことができる。流体は、少なくとも10秒、少なくとも15秒、少なくとも20秒、又は少なくとも30秒を含む、少なくとも5秒を含む任意の好適な時間にわたって、口腔内で強制的に流す/動かすことができる。特定の好ましい実施形態では、約30秒間又は少なくとも30秒間にわたって、流体を撹拌する。
【0063】
特定の実施形態では、本方法で生成された流体は、使用者が飲み込む/摂取してもよく、又は動かす工程の後で排出/吐き出してもよい。特定の好ましい実施形態では、本方法は、流体の少なくとも一部を飲み込むことを含む。しかしながら、流体を嚥下/摂取すると、難溶性カルシウム含有化合物の一部は、歯垢、歯、又は口腔組織などの口腔内に残る。
【実施例】
【0064】
本発明の方法を例示する以下の具体例を参照することによって本発明が更に深く理解されるであろう。方法の多くの変形例が当業者には明らかであることを理解すべきである。以下の実施例は、単なる例示である。
【0065】
実施例1:pHサイクリング試験
pHサイクリング試験を実施した。1日のうちの3回の食事後の酸生成の急増をシミュレートするための試験を開発した。
【0066】
ウシエナメル質標本を研磨し、ヒドロキシアパタイトで50%飽和し、pH5.0に調整した、0.1M乳酸及び0.2% Carbopol C907からなる病変形成溶液中に標本を浸漬することによって人工病変を形成した。200gの荷重で15秒間ビッカース硬度の圧子を用いて、各標本の表面上の4つの凹みから平均標本表面微小硬度を求めた。病変表面硬度範囲は25~45VHNであり、平均病変深さは約70マイクロメートルであった。標本を、脱灰後表面微小硬度(SMH)値によってバランスをとった18個の標本のサブグループに分けた。
【0067】
2つの異なるサイクル処理レジメン下で、再石灰化有効性を評価した。両レジメンは、1分間のフッ化物処理期間(100ppm、pH=6.5)3回、及び1時間の病変形成溶液中の酸接種3回からなり、酸接種の間にカルシウムを導入した。残りの時間(約21時間)は、1.5mM塩化カルシウム、0.9mMリン酸二水素カリウム、130mM塩化カリウム、25mMビス-トリスプロパン、及び2.2g/Lのブタムチンからなる人工唾液中に標本を入れておいた。
【0068】
2つの処理レジメン間の違いは、フッ化物処理及び酸接種の相対的な順序であった。表1に示すレジメンIでは、脱灰事象(Demin:乳酸接種)が最初に生じ、続いて、再石灰化事象(Remin:人工唾液浸漬)が生じた。表2に示すレジメンIIでは、事象の順序を逆にし、再石灰化事象が最初に生じ、続いて、脱灰事象が生じた。
【0069】
【0070】
【0071】
酸接種期間中(Demin:乳酸接種)、病変形成溶液の15mLのアリコートを、6つのエナメル質標本を含有する処理用ビーカーに移した。等モルカルシウム濃度のカルシウム化合物を、酸接種開始の20分後に溶液に導入した。カルシウム化合物の質量を表3に示す。唾液によるカルシウムのクリアランスをシミュレートするために、5mLの新たな病変形成溶液を10分毎に添加した。
【0072】
【0073】
pHサイクリングレジメンを5連続日間繰り返した。2つの難溶性カルシウム化合物(アルファ型リン酸三カルシウム及び炭酸カルシウム)を、1つの高溶解性カルシウム化合物(塩化カルシウム二水和物)と比較した。陰性対照として、カルシウム源及びフッ化物源を水に置き換えた。また、比較目的のために、フッ化物源のみを用いて試験を実施した。
【0074】
5日間の処理及びpHサイクリング後、表面微小硬度(SMH)及びエナメル質フッ化物取り込み量(EFU)の変化から再石灰化有効性を測定した。表面微小硬度を上述のように測定し、ここで、凹みは、ベースライン凹みの隣で測定した。各歯に100マイクロメートルの深さまで微小穿孔加工することによって、フッ化物含有量を求めた。穿孔からエナメル質粉末を回収し、溶解させ(20マイクロリットルのHClO4、40マイクロリットルのクエン酸/EDTA緩衝液、及び40マイクロリットルの脱イオン(DI)水)に溶解させ、同様に調製した標準曲線と比較することによってフッ化物について分析した。表4及び5は、それぞれpHサイクリングレジメンI及びIIの結果の概要を示す。
【0075】
【0076】
【0077】
表4は、レジメンI処理及びpHサイクリングの5日後、全てのカルシウム処理された標本の表面微小硬度(SMH)が、陰性対照(水のみ)標本及び100ppm Fのみで処理した標本よりも著しく高かったことを示す。また、100ppm Fのみで処理した標本のSMHは、陰性対照(水のみ)よりも著しく高かった。2つの難溶性カルシウム化合物(アルファ型リン酸三カルシウム及び炭酸カルシウム)で処理した標本のSMHは、高溶解性カルシウム化合物(塩化カルシウム二水和物)で処理した標本のSMHと同等であった。
【0078】
表は、また、レジメンI処理及びpHサイクリングの5日後、全てのカルシウム処理された標本のエナメル質フッ化物取り込み量(EFU)が、陰性対照(水のみ)標本よりも著しく高く、そして、100ppm Fのみで処理した標本のEFUと等価であったことを示す。また、100ppm Fのみで処理した標本のEFUは、陰性対照(水のみ)標本よりも著しく高かった。2つの難溶性カルシウム化合物(アルファ型リン酸三カルシウム及び炭酸カルシウム)で処理した標本のEFUは、高溶解性カルシウム化合物(塩化カルシウム二水和物)で処理した標本のEFUと同等であった。
【0079】
表5は、5日間のレジメンII処理及びpHサイクリング後、全てのカルシウム処理された標本の表面微小硬度(SMH)が、陰性対照(水のみ)標本よりも著しく高かったことを示す。また、100ppm Fのみで処理した標本のSMHも、陰性対照(水のみ)標本よりも著しく高かった。2つの難溶性カルシウム化合物(アルファ型リン酸三カルシウム及び炭酸カルシウム)で処理した標本のSMHは、100ppm Fのみで処理した標本のSMHと同等であった。高溶解性カルシウム化合物(塩化カルシウム二水和物)で処理した標本が、SMHの最高値を有していた。
【0080】
表は、また、5日間のレジメンII処理及びpHサイクリング後、全てのカルシウム処理された標本のエナメルフッ化物取り込み(EFU)が、陰性対照(水のみ)標本のEFUよりも有意に高かったことを示す。また、100ppm Fのみで処理した標本のEFUも、陰性対照(水のみ)標本よりも著しく高かった。2つの難難溶性カルシウム化合物(アルファ型リン酸三カルシウム及び炭酸カルシウム)で処理した標本のEFUは、100ppm Fのみで処理した標本のEFUと等価であったが、一方、高溶解性カルシウム化合物(塩化カルシウム二水和物)で処理した標本のEFUは、EFUの最高値であった。
【0081】
実施例2:pH試験
高溶解性及び難溶性の形態のカルシウムの口腔のpHに影響を与える能力を、実施例1に記載の病変形成溶液に等モルカルシウム濃度(8mM Ca)のカルシウム化合物を添加することによって評価した。粉末を添加し、37℃で30分間撹拌した後、pHを測定した。アルファ型リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、及び塩化カルシウムの添加後のpHの変化を表6に示す。不溶性形態のカルシウムは、病変形成溶液のpHを上昇させ、可溶性カルシウムはpHを低下させた。
【0082】
【0083】
実施例3:歯垢流体へのカルシウム化合物の溶解
歯垢流体へのカルシウム化合物の溶解を、ソフトウェアGeochemistのWorkbenchを使用して実施された多成分熱力学的スペシエーションモデリングを用いてシミュレートした。初期歯垢流体組成物を、虫歯のない個体からの飢餓(starved)歯垢流体の後にモデル化した。摂食後の低pH条件をシミュレートするために、初期pHをpH5に設定した。モデル化されているミネラルを除いて、全てのミネラルについて沈殿が抑制された。
【0084】
図1は、ソフトウェアモデルから作成した、高溶解性及び難溶性形態のカルシウムについての、添加したミネラルの量に対するpHのプロットである。プロットは、シミュレートした酸性歯垢流体へのアルファ型リン酸三カルシウム及び炭酸カルシウムの添加が、飽和に達したときにpH5からpH6又はそれ以上へとpHを上昇させることを示す。可溶性カルシウムの添加により、pHが低下する。
【0085】
図2は、高溶解性及び難溶性形態のカルシウムについての、添加したミネラルの量に対するHA飽和レベルのグラフである。プロットは、シミュレートした酸性歯垢流体へのアルファ型リン酸三カルシウム又は炭酸カルシウムの添加が、ヒドロキシアパタイト飽和を増加させることを示す。アルファ型リン酸三カルシウム又は炭酸カルシウムの溶解限度において、ヒドロキシアパタイトの過飽和は、可溶性カルシウムの添加よりも少なくとも5桁大きい。
【0086】
実施例4:唾液のpH及び緩衝能
唾液のpH及び緩衝能に対する炭酸カルシウムの影響を、112mg(7%)の炭酸カルシウムを含有する錠剤の摂取前後に回収した唾液から測定した。5人の被験者に、錠剤を10秒間咀嚼し、生成された液体で40秒間ゆすぎ、次いで嚥下させた。錠剤の使用前に5分間及び直後に5分間、唾液を回収した。
【0087】
回収した唾液を20秒間ボルテックスすることによってホモジナイズし、pH電極を用いてpHを測定した。pHを1単位低下させるのに必要なHClのmMとして定義される緩衝能を、酸滴定によって求めた。0.1M HClを0.5mLの唾液に一度に20~40μL添加し、pHがpH=5未満に低下するまで各添加後にpHを測定した。緩衝能は、pHの変化に対するHClのmMの線形回帰の勾配から計算した。
【0088】
【0089】
〔実施の態様〕
(1) 口腔に難溶性カルシウム化合物を投与し、続いて、フッ化物を前記口腔に導入することを含む、口腔に効果を提供する方法。
(2) 前記難溶性カルシウム化合物が、食品摂取後30分以内に前記口腔に投与される、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記フッ化物が、前記難溶性カルシウム化合物の投与の12時間以内に前記口腔に導入される、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記フッ化物が、前記難溶性カルシウム化合物の投与の4時間以内に前記口腔に導入される、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記難溶性カルシウム化合物が、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、実施態様1に記載の方法。
【0090】
(6) 前記難溶性カルシウム化合物が、炭酸カルシウムを含む、実施態様1に記載の方法。
(7) フッ化物を導入する前記工程が、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一スズ、フッ化アミン、四フッ化チタン、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されるフッ化物含有化合物を前記口腔に導入することを含む、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記難溶性カルシウム化合物が、錠剤の形態で投与される、実施態様1に記載の方法。
(9) 前記フッ化物含有化合物が、マウスウォッシュ、マウスリンス、又は練り歯磨きの形態で導入される、実施態様7に記載の方法。
(10) 難溶性カルシウム化合物を含む錠剤を口腔に投与し、続いて、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一スズ、フッ化アミン、四フッ化チタン、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されるフッ化物含有化合物を含むマウスウォッシュ、マウスリンス、又は練り歯磨きを前記口腔に導入することを含む、口腔に効果を提供する方法。
【0091】
(11) 前記錠剤が、食品摂取後30分以内に前記口腔に投与される、実施態様10に記載の方法。
(12) 前記マウスウォッシュ、前記マウスリンス、又は前記練り歯磨きが、前記錠剤の投与の4時間以内に前記口腔に導入される、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記マウスウォッシュ、前記マウスリンス、又は前記練り歯磨きが、前記錠剤の投与の1時間以内に前記口腔に導入される、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記錠剤が、約1.5グラム以上の重量を有する、実施態様10に記載の方法。
(15) 前記錠剤が、アルギニンを更に含む、実施態様10に記載の方法。
【国際調査報告】