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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(54)【発明の名称】水性アイオノマー分散液とその方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/26 20060101AFI20220202BHJP
   C09D 123/08 20060101ALI20220202BHJP
   C09D 123/10 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
C08L23/26
C09D123/08
C09D123/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534817
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(85)【翻訳文提出日】2021-06-16
(86)【国際出願番号】 US2019066892
(87)【国際公開番号】W WO2020131898
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】62/782,459
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】519452389
【氏名又は名称】パフォーマンス マテリアルズ エヌエー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】モグリア、ロバート エス.
(72)【発明者】
【氏名】サバ、ステイシー エー.
(72)【発明者】
【氏名】カテパリ、ハリ
(72)【発明者】
【氏名】クリミンズ、マシュー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ホアン、ジェシカ イー
(72)【発明者】
【氏名】デグラヴィッラ、ジェームズ アール.
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、リチャード ティエンファ
(72)【発明者】
【氏名】モリス、バリー アラン
(72)【発明者】
【氏名】ダーモディ、ダニエル エル.
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン、カイル
【テーマコード(参考)】
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
4J002BB05X
4J002BB14X
4J002BB23W
4J002GH00
4J002HA06
4J038CB061
4J038CB081
4J038GA06
4J038MA08
4J038MA10
4J038MA15
4J038NA21
4J038PA18
4J038PC08
(57)【要約】
アイオノマー組成物および水を含み、アイオノマー組成物がa)アイオノマー組成物の総重量パーセントに基づいて、少なくとも20重量%のアイオノマー、およびb)アイオノマー組成物の総重量パーセントに基づいて、最大80重量%のポリオレフィンを含む、水性アイオノマー分散液およびその製造方法。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイオノマー組成物および水を含む水性アイオノマー分散液であって、
前記アイオノマー組成物が、
a)前記アイオノマー組成物の総重量パーセントに基づいて、少なくとも20重量%のアイオノマーであって、前記アイオノマーは少なくとも部分的に中和されているエチレン酸コポリマーであり、前記エチレン酸コポリマーが、前記エチレン酸コポリマー中に存在するモノマーの総重量に基づいて、
70~85重量%のエチレンと、
15~30重量%のモノカルボン酸との重合反応生成物であり、
前記エチレン酸コポリマーの総酸単位の少なくとも70モル%が中和されており、前記エチレン酸コポリマーの全酸単位の15モル%~50モル%が亜鉛カチオンで中和されており、前記エチレン酸コポリマーの全酸単位の少なくとも40モル%が一価カチオンで中和されている、アイオノマーと、
b)前記アイオノマー組成物の総重量パーセントに基づいて、最大80重量%のポリオレフィンと、を含む、水性アイオノマー分散液。
【請求項2】
前記水性アイオノマー分散液が、10~60重量%の前記アイオノマー組成物を含む、請求項1に記載の水性アイオノマー分散液。
【請求項3】
前記エチレン酸コポリマーが、前記エチレン酸コポリマー中に存在するモノマーの総重量に基づいて、75~85重量%のエチレンと15~25重量%の前記モノカルボン酸の前記重合反応生成物である、請求項1または2に記載の水性アイオノマー分散液。
【請求項4】
前記エチレン酸コポリマーの総酸単位の20モル%~50モル%が、亜鉛カチオンで中和されている、請求項1~3に記載の水性アイオノマー分散液。
【請求項5】
前記アイオノマー組成物が、10~80重量%の前記ポリオレフィンを含む、請求項1~4に記載の水性アイオノマー分散液。
【請求項6】
前記ポリオレフィンが、ポリエチレンまたはポリプロピレンからなる群から選択される、請求項1~5に記載の水性アイオノマー分散液。
【請求項7】
前記ポリオレフィンが、ASTM D1238(190℃において2.16kg)に従って決定される、0.1~100.0g/10分のメルトインデックスI2を有するエチレン/α-オレフィン共重合体である、請求項1~6に記載の水性アイオノマー分散液。
【請求項8】
水性アイオノマー分散液の製造方法であって、前記方法が、
アイオノマー組成物を準備することであって、前記アイオノマー組成物が、
a)前記アイオノマー組成物の総重量パーセントに基づいて、少なくとも20重量%のアイオノマーであって、前記アイオノマーが少なくとも部分的に中和されているエチレン酸コポリマーであり、前記エチレン酸コポリマーが、前記エチレン酸コポリマー中に存在するモノマーの総重量に基づいて、
70~85重量%のエチレンと、
15~30重量%のモノカルボン酸との重合反応生成物であり、
前記エチレン酸コポリマーの総酸単位の15モル%~50モル%が亜鉛カチオンで中和されているアイオノマーと、
b)前記アイオノマー組成物の総重量パーセントに基づいて、最大80重量%のポリオレフィンと、を含む、準備することと、
前記アイオノマー組成物を水および一価カチオンを含む水性組成物と混合することにより水性アイオノマー分散液を形成することであって、前記水性アイオノマー分散液中の前記アイオノマーは、前記エチレン酸コポリマーの全酸単位の少なくとも70モル%が中和されており、前記エチレン酸コポリマーの全酸単位の少なくとも40モル%が一価カチオンで中和されている、混合することと、を含む、方法。
【請求項9】
前記アイオノマー組成物が、
前記エチレン酸コポリマーを準備し、前記エチレン酸コポリマーの総酸単位の15モル%~50モル%を前記亜鉛カチオンで中和してアイオノマーを形成することと、
前記アイオノマーを前記ポリオレフィンと合わせることにより前記アイオノマー組成物を形成することと、によって形成される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記アイオノマー組成物が、
前記エチレン酸コポリマーと前記ポリオレフィンとを合わせて混合物を形成することと、
前記混合物に前記エチレン酸コポリマーの全酸単位の15モル%~50モル%を中和するのに十分な量の前記亜鉛カチオンを加えることと、によって前記アイオノマー組成物を形成することによって形成される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
混合が摂氏100度~摂氏300度の温度で行われる、請求項8~10に記載の方法。
【請求項12】
前記水性アイオノマー分散液が、10~60重量%の前記アイオノマー組成物を含む、請求項8~11に記載の方法。
【請求項13】
前記エチレン酸コポリマーが、前記エチレン酸コポリマー中に存在するモノマーの総重量に基づいて75~85重量%のエチレンと15~25重量%のモノカルボン酸の前記重合反応生成物である、請求項8~12に記載の方法。
【請求項14】
前記エチレン酸コポリマーの総酸単位の20モル%~50モル%が亜鉛カチオンで中和される、請求項8~13に記載の方法。
【請求項15】
前記アイオノマー組成物が、10~80重量%の前記ポリオレフィンを含む、請求項8~14に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリオレフィンが、ポリエチレンまたはポリプロピレンからなる群から選択される、請求項8~15に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリオレフィンが、ASTM D1238(190℃において2.16kg)に従って決定される、0.1~100.0g/10分のメルトインデックスI2を有する、エチレン/α-オレフィン共重合体である、請求項8~16に記載の方法。
【請求項18】
コーティングされた物品を形成する方法であって、
請求項1~7のいずれか一項に記載の水性アイオノマー分散液を基材上にコーティングして、コーティングされた基材を形成することと、
前記コーティングされた基材を乾燥させてコーティングされた物品を形成することと、を含む方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法に従って形成された、コーティングされた物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の実施形態は、一般に、アイオノマーの水性分散液、およびアイオノマーの水性分散液を形成する方法に関する。より具体的には、本明細書に記載の水性分散液の実施形態は、基材をコーティングするために使用され得る。
【背景技術】
【0002】
アイオノマーは、金属塩をポリ(エチレン(メタ)アクリル酸)コポリマー(ベース樹脂)と反応させることにより製造できる。二価および三価のカチオンなどの多価カチオンで中和されたアイオノマーは、多価カチオンが高分子架橋を形成する傾向があるため、水に分散しにくいことが判っている。一方、カリウム、ナトリウム、またはアンモニアなどの揮発性塩基の一価塩で中和されたアイオノマーも、溶融粘度と疎水性が増加するため、水中での分散が困難である。
【0003】
したがって、アイオノマーの水性分散液をより容易に形成する代替のアイオノマー組成物を得ることが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
水性アイオノマー分散液が、本明細書の実施形態において開示される。水性アイオノマー分散液は、アイオノマー組成物および水を含み、アイオノマー組成物は、a)前記アイオノマー組成物の総重量パーセントに基づいて、少なくとも20重量%のアイオノマーであって、アイオノマーは少なくとも部分的に中和されているエチレン酸コポリマーであり、エチレン酸コポリマーが、エチレン酸コポリマー中に存在するモノマーの総重量に基づいて、70~85重量%のエチレンと、15~30重量%のモノカルボン酸との重合反応生成物であり、エチレン酸コポリマーの総酸単位の少なくとも70モル%が中和されており、エチレン酸コポリマーの全酸単位の15モル%~50モル%が亜鉛カチオンで中和され、エチレン酸コポリマーの全酸単位の40モル%が一価カチオンで中和されている、アイオノマーと、b)アイオノマー組成物の総重量パーセントに基づいて、最大80重量%のポリオレフィンと、を含む。
【0005】
また、本明細書の実施形態において、水性アイオノマー分散液を製造する方法が開示される。この方法は、アイオノマー組成物を準備すること含み、アイオノマー組成物は、a)アイオノマー組成物の全重量パーセントに基づいて、少なくとも20重量%のアイオノマーであって、アイオノマーは、少なくとも部分的に中和されたエチレン酸コポリマーであって、エチレン酸コポリマーは、エチレン酸コポリマー中に存在するモノマーの全重量に基づいて、70~85重量%のエチレンおよび15~30重量%のモノカルボン酸の重合反応生成物であって、エチレン酸コポリマーの全酸単位の15モル%~50モル%が亜鉛カチオンで中和されている、アイオノマーと、b)アイオノマー組成物の全重量パーセントに基づいて、最大80重量%のポリオレフィンと、を含み、アイオノマー組成物を水および一価カチオンを含む水性組成物と混合して、水性アイオノマー分散液を形成し、水性アイオノマー分散液中のアイオノマーは、エチレン酸コポリマーの全酸単位の少なくとも70モル%が中和され、少なくともエチレン酸共重合体の全酸単位の40モル%が一価カチオンで中和されている。
【0006】
コーティングされた物品を形成する方法が、本明細書の実施形態においてさらに開示される。方法は、本明細書の1つ以上の実施形態に記載された水性アイオノマー分散液を基材にコーティングして、コーティングされた基材を形成し、コーティングされた基材を乾燥させて、コーティングされた物品を形成することを含む。本明細書に記載の方法により形成されたコーティングされた物品。
【0007】
本明細書の実施形態においてさらに開示されるのは、コーティングされた物品である。コーティングされた物品は、基材および基材上にコーティングされたアイオノマー組成物を含み得る。
【0008】
本明細書の1つ以上の実施形態において、水性アイオノマー分散液は、10~60重量%のアイオノマー組成物を含む。本明細書の1つ以上の実施形態において、エチレン酸コポリマーは、エチレン酸コポリマー中に存在するモノマーの総重量に基づいて、75~85重量%のエチレンと15~25重量%のモノカルボン酸との重合反応生成物である。本明細書の1つ以上の実施形態において、エチレン酸コポリマーの全酸単位の20モル%~50モル%が亜鉛カチオンで中和される。本明細書の1つ以上の実施形態において、アイオノマー組成物は、10~80重量%のポリオレフィンを含む。本明細書の1つ以上の実施形態において、ポリオレフィンは、ポリエチレンまたはポリプロピレンからなる群から選択される。本明細書の1つ以上の実施形態において、ポリオレフィンは、ASTM D1238に従って測定されるメルトインデックスI2(190℃で2.16kg)が0.1~100.0g/10分であるエチレン/α-オレフィン共重合体である。
【0009】
本明細書のいくつかの実施形態において、アイオノマー組成物は、エチレン酸コポリマーを準備し、エチレン酸コポリマーの全酸単位の15モル%~50モル%を亜鉛カチオンで中和してアイオノマーを形成し、アイオノマーをポリオレフィンと合わせてアイオノマー組成物を形成することによって形成される。本明細書の他の実施形態において、アイオノマー組成物は、エチレン酸コポリマーをポリオレフィンと合わせて混合物を形成し、エチレン酸コポリマーの全酸単位の15モル%~50モル%を中和してアイオノマー組成物を形成するのに十分な量の亜鉛カチオンを混合物に添加することによって形成される。本明細書の1つまたは複数の実施形態において、混合は、摂氏100度~摂氏300度の温度で行われる。
【0010】
実施形態の追加の特徴および利点は、以下の発明を実施するための形態に記載され、部分的には、その説明から当業者に容易に明らかになるか、または発明を実施するための形態を含む本明細書に記載の実施形態を実践することによって認識されるであろう。前述および以下の説明の両方が、さまざまな実施形態を説明し、特許請求される主題の性質および特徴を理解するための概要または枠組みの提供を意図していることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示の特定の実施形態の以下の詳細な説明は、同様の構造が同様の参照番号で示されている以下の図面と併せて読むと最もよく理解できる。
【0012】
図1A】本開示の1つまたは複数の実施形態による、コーティングされた基材に対する「ゼロ」静電荷測定、機械的静電荷移動、および静電荷測定をグラフで示す。
図1B】本開示の1つまたは複数の実施形態による、コーティングされた基材に対する「ゼロ」静電荷測定、機械的静電荷移動、および静電荷測定をグラフで示す。
図1C】本開示の1つまたは複数の実施形態による、コーティングされた基材に対する「ゼロ」静電荷測定、機械的静電荷移動、および静電荷測定をグラフで示す。
図2A】本開示の1つまたは複数の実施形態による、コーティングされた基材に対する「ゼロ」静電荷測定、機械的静電荷移動、および汚れ付与をグラフで示す。
図2B】本開示の1つまたは複数の実施形態による、コーティングされた基材に対する「ゼロ」静電荷測定、機械的静電荷移動、および汚れ付与をグラフで示す。
図2C】本開示の1つまたは複数の実施形態による、コーティングされた基材に対する「ゼロ」静電荷測定、機械的静電荷移動、および汚れ付与をグラフで示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、水性アイオノマー分散液および水性アイオノマー分散液の製造方法の実施形態について詳細に言及する。水性アイオノマー分散液は、例えば床材、プラスチック部品、木材、繊維、金属、セラミック、繊維、ガラス、または紙などの基材をコーティングするために使用し得る。ただし、これは、本明細書に開示された実施形態の単なる例示的な実装であることに留意されたい。実施形態は、上述したものと同様の問題の影響を受けやすい他の技術にも適用可能である。例えば、本明細書に記載の水性アイオノマー分散液は、塗料(または他のコーティング)、コンクリート/セメント、紙、プラスチック、複合材料、電極、接着剤の添加剤として、および接着剤として、または結合剤(アスファルト、ビチューメン、紙、繊維、プラスチック)として使用し得る。
【0014】
本明細書の実施形態において、水性アイオノマー分散液は、アイオノマー組成物および水を含む。いくつかの実施形態において、水性アイオノマー分散液は、10重量%~60重量%のアイオノマー組成物を含む。10重量%~60重量%のすべての個々の値および部分範囲が含まれ、本明細書に開示されている。例えば、いくつかの実施形態において、水性アイオノマー分散液は、10重量%~55重量%、15重量%~55重量%、15重量%~50重量%、または15重量%~45重量%のアイオノマー組成物を含む。本明細書の実施形態において、水性アイオノマー分散液は、40重量%~90重量%の水も含み得る。水の40重量%~90重量%のすべての個々の値および部分範囲が本明細書に含まれ、開示される。例えば、いくつかの実施形態において、水性アイオノマー分散液は、45重量%~90重量%、45重量%~85重量%、50重量%~85重量%、または55重量%~85重量%の水を含む。
【0015】
本明細書に記載の水性アイオノマー分散液は、水溶液中に分散した粒子を有する。水性アイオノマー分散液中に存在する粒子は、4μm以下の平均粒子サイズを有することができる。個々の値および部分範囲はすべて、本明細書に含まれ、開示される。例えば、水性アイオノマー分散液は、3.5μm以下、3.0μm以下、0.1~4μm、0.1~3.5μm、または0.1~3.0μmの平均粒子サイズを有し得る。本明細書に記載の水性分散液は、10~60重量%、15~60重量%、20~60重量%、25~60重量%、または30~60重量%の総樹脂含有量を有することもできる。
【0016】
アイオノマー組成物
アイオノマー組成物は、アイオノマーおよびポリオレフィンを含む。本明細書の実施形態において、アイオノマー組成物は、アイオノマー組成物の総重量パーセントに基づいて少なくとも20重量%のアイオノマーと、アイオノマー組成物の総重量パーセントに基づいて最大80重量%のポリオレフィンと、を含む。個々の値および部分範囲はすべて、本明細書に含まれ、開示される。例えば、いくつかの実施形態において、アイオノマー組成物は、20重量%~90重量%(あるいは、20重量%~85重量%、20重量%~80重量%、または20重量%~60%)のアイオノマーおよび10重量%~80重量%(あるいは、15重量%~80重量%、20重量%~80重量%、または40重量%~80重量%)のポリオレフィンを含む。
【0017】
アイオノマー組成物、アイオノマー、および/またはポリオレフィンはまた、当技術分野で知られている他の添加剤を含んでもよい。添加剤の例としては、加工助剤、流動性向上添加剤、潤滑剤、顔料、染料、難燃剤、耐衝撃性改良剤、核剤、シリカなどのブロッキング防止剤、熱安定剤、UV吸収剤、UV安定剤、界面活性剤、キレート剤、およびカップリング剤が挙げられるが、これらに限定されない。添加剤は、アイオノマー組成物、アイオノマー、またはポリオレフィン中の材料の重量に基づいて、約0.01重量%~約10重量%の範囲の量で使用することができる。
【0018】
アイオノマー
アイオノマーは、少なくとも部分的に中和されたエチレン酸コポリマーである。エチレン酸コポリマーは、エチレン酸コポリマー中に存在するモノマーの総重量に基づいて、70~85重量%のエチレンと、15~30重量%のモノカルボン酸との重合反応生成物である。全ての個々の値および部分範囲は、本明細書に含まれ、開示される。例えば、いくつかの実施形態において、エチレン酸コポリマーは、エチレン酸コポリマー中に存在するモノマーの総重量に基づいて、72~85重量%のエチレンと、15~28重量%のモノカルボン酸との重合反応生成物である。他の実施形態において、エチレン酸コポリマーは、エチレン酸コポリマー中に存在するモノマーの全重量に基づいて、75~85重量%のエチレンと、15~25重量%のモノカルボン酸との重合反応生成物である。エチレン酸共重合体は、米国特許第3,404,134号、同第5,028,674号、同第6,500,888号、および同6,518,365号に開示されたプロセスに従って重合され得る。いくつかの実施形態において、2種以上のエチレン酸コポリマーの混合物を使用することができるが、但し混合物の凝集体成分および特性がエチレン酸コポリマーについて上に記載された制限内にある。例えば、メタクリル酸の総重量%が全ポリマー材料の15重量%~30重量%となるように、2種のエチレンメタクリル酸コポリマーを使用することができる。
【0019】
中和された全酸単位を参照する場合、中和パーセントの計算は、モノカルボン酸コモノマーの既知のモル数に基づいて存在すると考えられる酸単位の数、および添加された金属当量の数に基づく。本明細書の実施形態において、エチレン酸コポリマーの全酸単位の少なくとも70モル%が中和されてアイオノマーを形成し、エチレン酸コポリマーの全酸単位の15モル%~50モル%が亜鉛カチオンで中和され、エチレン酸コポリマーの全酸単位の少なくとも40モル%が一価カチオンで中和されている。個々の値および部分範囲はすべて、本明細書に含まれ、開示される。例えば、いくつかの実施形態において、エチレン酸コポリマーの全酸単位の少なくとも70モル%(あるいは、少なくとも75モル%、少なくとも80モル%、または少なくとも85モル%)が中和されてアイオノマーを形成し、エチレン酸コポリマーの全酸単位の15モル%~50モル%(あるいは、15モル%~45モル%、15モル%~40モル%、20モル%~50モル%、20モル%~45モル%、または20モル%~40モル%)が亜鉛カチオンで中和され、エチレン酸コポリマーの全酸単位の少なくとも40モル%(あるいは、少なくとも45モル%、少なくとも50モル%、40モル%~100モル%、40モル%~95モル%、40モル%~85モル%、または40モル%~80モル%)が一価カチオンで中和される。エチレン酸共重合体は、例えば米国特許第3,404,134号に開示されている方法を用いて中和され得る。他の実施形態において、エチレン酸コポリマーの全酸単位の少なくとも70モル%(あるいは、少なくとも75モル%)が中和されてアイオノマーを形成し、エチレン酸コポリマーの全酸単位の15モル%~50モル%(あるいは、20モル%~50モル%または20モル%~45モル%)が亜鉛カチオンで中和され、エチレン酸コポリマーの全酸単位の少なくとも40モル%(あるいは、少なくとも45モル%、少なくとも50モル%、40モル%~100モル%、40モル%~95モル%、40モル%~85モル%、または40モル%~80モル%)が一価カチオンで中和される。
【0020】
例示的な一価カチオンは、ナトリウム、カリウム、リチウム、アミン(例えば、ジメチルエタノールアミン(DMEA)、トリメチルアミン、アンモニアなど)またはそれらの組み合わせを含む。本明細書のいくつかの実施形態において、一価カチオンは、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニア、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。本明細書の1以上の実施形態において、一価カチオンはナトリウム、カリウム、アンモニア、またはそれらの組み合わせである。
【0021】
本明細書のいくつかの実施形態において、アイオノマーは、1~100g/10分のメルトインデックス(I2)を有し得る。個々の値および部分範囲はすべて、本明細書に含まれ、開示される。例えば、いくつかの実施形態において、アイオノマーは、1~75g/10分または1~50g/10分のメルトインデックス(I2)を有し得る。I2は、ASTM D1238に従って、190℃、2.16kgで測定される。
【0022】
ポリオレフィン
上記のように、本明細書の実施形態に記載のアイオノマー組成物は、ポリオレフィンを含む。ポリオレフィンは、ポリエチレンまたはポリプロピレンからなる群から選択することができる。いくつかの実施形態において、ポリオレフィンはポリエチレンである。ポリエチレンは、エチレンと、任意選択の、1つまたは複数のα-オレフィンコモノマーとの反応生成物である。他の実施形態において、ポリオレフィンはエチレン/α-オレフィン共重合体である。本明細書で使用される「エチレン/α-オレフィン共重合体」という用語は、エチレンと1種以上のα-オレフィンコモノマーとの反応生成物を指す。
【0023】
エチレン/α-オレフィン共重合体は、(a)55重量%以上、例えば、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上、92重量%以上、95重量%以上、97重量%以上、98重量%以上、99重量%以上、99.5重量%以上、50重量%超~99重量%、50重量%超~97重量%、50重量%超~94重量%、50重量%超~90重量%、70重量%~99.5重量%、70重量%~99重量%、70重量%~97重量%70重量%~94重量%、80重量%~99.5重量%、80重量%~99重量%、80重量%~97重量%、80重量%~94重量%、80重量%~90重量%、85重量%~99.5重量%、85重量%~99重量%、85重量%~97重量%、88重量%~99.9重量%、88重量%~99.7重量%、88重量%~99.5重量%、88重量%~99重量%、88重量%~98重量%、88重量%~97重量%、88重量%~95重量%、88重量%~94重量%、90重量%~99.9重量%、90重量%~99.5重量%、90重量%~99重量%、90重量%~97重量%、90重量%~95重量%、93重量%~99.9重量%、93重量%~99.5重量%、93重量%~99重量%、または93重量%~97重量%のエチレン由来の単位および、(b)30重量パーセント未満、例えば25重量パーセント未満、または20重量パーセント未満、18重量%未満、15重量%未満、12重量%未満、10重量%未満、8重量%未満、5重量%未満、4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、0.1~20重量%、0.1~15重量%、0.1~12重量%、0.1~10重量%、0.1~8重量%、0.1~5重量%、0.1~3重量%、0.1~2重量%、0.5~12重量%、0.5~10重量%、0.5~8重量%、0.5~5重量%、0.5~3重量%、0.5~2.5重量%、1~10重量%、1~8重量%、1~5重量%、1~3重量%、2~10重量%、2~8重量%、2~5重量%、3.5~12重量%、3.5~10重量%、3.5~8重量%、3.5~7重量%、または4~12重量%、4~10重量%、4~8重量%、または4~7重量%の1種以上のα-オレフィンコモノマーから誘導された単位を含む。コモノマーの含有量は、核磁気共鳴(「NMR」)分光および例えば参照により本明細書に取り込まれる米国特許第7,498,282号に記載の13C NMR分析に基づく技術などの任意の好適な技術を使用して測定され得る。
【0024】
適切なα-オレフィンコモノマーは、典型的には20個以下の炭素原子を有する。1つまたは複数のα-オレフィンは、C3~C20アセチレン性不飽和モノマーおよびC4~C18ジオレフィンからなる群から選択され得る。例えば、いくつかの実施形態において、α-オレフィンコモノマーは、3~10個の炭素原子または3~8個の炭素原子を有し得る。例示的なα-オレフィンコモノマーには、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、および4-メチル-1-ペンテンが含まれるが、これらに限定されない。1種または複数のα-オレフィンコモノマーは、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、および1-オクテンからなる群から選択することができ、あるいは、1-ブテン、1-ヘキセンおよび1-オクテンからなる群から選択される。
【0025】
本明細書に記載のいくつかの実施形態において、エチレン/α-オレフィン共重合体は、0.850g/cc~0.910g/ccの密度を有し得る。少なくとも0.850g/cc~0.910g/ccのすべての個々の値および部分範囲が含まれ、本明細書に開示される。例えば、いくつかの実施形態において、エチレン/α-オレフィン共重合体は、0.855~0.905g/cc、0.855~0.900g/cc、0.855~0.900g/cc、または0.865~0.895g/ccの密度を有する。密度は、ASTM D792に従って測定することができる。
【0026】
密度に加えて、エチレン/α-オレフィン共重合体は、0.1g/10分~100.0g/10分のメルトインデックスI2を有し得る。0.1g/10分~100.0g/10分の全ての個々の値および部分範囲は、本明細書に含まれ、開示される。例えば、いくつかの実施形態において、エチレン/α-オレフィン共重合体は0.1、0.5、1.0、1.5、2.5、または5.0の下限~100.0、75、0、50.0、35.0、25.0、または20.0g/10分の上限の範囲のメルトインデックスI2を有し得る。他の実施形態において、エチレン/α-オレフィン共重合体は0.5g/10分~100.0g/10分、1.0g/10分~100.0g/10分、2.0g/10分~100.0g/10分、5.0g/10分~100.0g/10分、1.0g/10分~75.0g/10分、5.0g/10分~75.0g/10分、1.0g/10分~50.0g/10分または5.0g/10分~50.0g/10分のメルトインデックスI2を有し得る。メルトインデックスI2は、ASTM D1238(190℃および2.16kg)に従って測定することができる。
【0027】
方法
水性アイオノマー分散液を製造する方法も本明細書で提供される。この方法は、アイオノマー組成物を準備することと、アイオノマー組成物を、水および一価カチオンを含む水性組成物と混合して水性アイオノマー分散液を形成することと、を含む。アイオノマー組成物と水性組成物との混合は、100℃~300℃の温度で行われる。加熱された水性アイオノマー分散液が結果として得られる。さらなる任意選択のステップは、加熱された水性アイオノマー分散液を20~30℃の温度に冷却すること含み得、アイオノマーは液相に分散されたままである。本明細書で使用される場合、「分散する(disperse)」、「分散(dispersing)」および関連する用語は、ポリマーのペレットなどの固体物品を指し、水と混合され、短時間で液相に消失する。
【0028】
水性アイオノマー分散液中のアイオノマー組成物および水の量の態様は、本明細書の実施形態において以前に記載されている。アイオノマー組成物は、アイオノマーおよびポリオレフィンを含む。ポリオレフィンは、本明細書の実施形態において以前に記載されている。アイオノマー組成物中のアイオノマーおよびポリオレフィンの量もまた、本明細書の実施形態において以前に記載されている。アイオノマーは、少なくとも部分的に中和されたエチレン酸コポリマーである。エチレン酸コポリマーおよびエチレン酸コポリマーの中和は、本明細書の実施形態において以前に記載されている。
【0029】
前述のように、アイオノマー組成物は、水および一価カチオンを含む水性組成物と混合されて、水性アイオノマー分散液を形成する。本明細書の実施形態において、水性組成物は、一価カチオンによってエチレン酸コポリマーの全酸単位を中和するのに十分な量の一価カチオンを含み得る。
【0030】
本明細書のいくつかの実施形態において、アイオノマー組成物は、エチレン酸コポリマーを準備し、エチレン酸コポリマーの全酸単位の15モル%~50モル%を亜鉛カチオンで中和してアイオノマーを形成し、アイオノマーをポリオレフィンと合わせることにより、アイオノマー組成物を形成する。
【0031】
本明細書のいくつかの実施形態において、アイオノマー組成物は、エチレン酸コポリマーをポリオレフィンと組み合わせて混合物を形成することと、混合物にエチレン酸コポリマーの全酸単位の15モル%~50モル%まで中和してアイオノマー組成物を形成するのに十分な量の亜鉛カチオンを混合物に加えること、によって形成される。
【0032】
用途
本明細書に記載の水性分散液は、基材をコーティングするために使用することができる。適切な基材には、板紙、ボール紙、パルプ成形形状、織布、不織布、フィルム、連続気泡発泡体、独立気泡発泡体、または金属箔が含まれ得る。本明細書のいくつかの実施形態において、基材をコーティングするための方法は、本明細書の実施形態に記載されるような水性アイオノマー分散液を準備し、水性アイオノマー分散液を基材に塗布してコーティングされた基材を形成すること含む。塗布は、浸漬法、スプレー法、ロールコーティング法、ドクターブレード法、フローコーティング法、または当技術分野で知られている液体コーティングを塗布するための他の適切な方法によって実施することができる。この方法は、乾燥工程をさらに含み得る。
【0033】
本明細書の他の実施形態において、コーティングされた物品を形成する方法は、本明細書の1つまたは複数の実施形態に記載の水性アイオノマー分散液を基材上にコーティングして、コーティングされた基材を形成することと、およびコーティングされた基材を乾燥させて、コーティングされた物品を形成することと、を含む。
【0034】
コーティングされた物品は、基材の少なくとも1つの表面上に形成された、本明細書に記載のアイオノマー組成層を含む。アイオノマー組成物層は、アイオノマー組成物を含む。アイオノマー組成物は、a)本明細書の実施形態に記載される、アイオノマー組成物の総重量パーセントに基づいて少なくとも20重量%のアイオノマーと、b)本明細書の実施形態に記載される、アイオノマー組成物の総重量パーセントに基づいて最大80重量%のポリオレフィンと、を含む。
【0035】
本明細書の実施形態において、コーティングされた物品は、コーティングされていない物品と比較して、改善された静電荷を示し得る。
【0036】
試験方法
密度
密度は、ASTM D-792に従って測定され、1立方センチメートル当たりのグラム数(g/cc)で報告される。
【0037】
メルトインデックス/メルトフローレート
メルトインデックス(I)は、エチレンベースのポリマーに対してはASTM D-1238、手順B(条件190℃/2.16kg)に従って測定され、10分ごとに溶出されるグラム数(g/10分)で報告される。メルトインデックス(MFR)は、エチプロピレンベースのポリマーに対してはASTM D-1238、手順B(条件230℃/2.16kg)に従って測定され、10分ごとに溶出されるグラム数(g/10分)で報告される。
【0038】
平均粒子サイズ
平均粒子サイズは、エポキシ粒子モデル(実際の流体屈折率=1.332、実際の試料屈折率=1.5、仮想サンプルの屈折率=0)を実装したBeckman Coulter LS13-320レーザ光散乱粒子サイズ分析器(Beckman Coulter Inc.,Fullerton,California)で測定された体積平均粒子直径によって定義される。サンプルは、測定前にpH>10のKOH水溶液に希釈される。
【0039】
動粘度
動粘度は、スピンドル10を備えたBrookfield CAP2000+平行平板粘度計を介して測定される。約0.5mLの分散液をデバイスにロードし、適切なrpmで測定して、動粘度を記録する前に15秒間安定した粘度値を取得する。
【0040】
静電荷測定
静電荷測定は、図1A~1Cに見られるように実行される。図1Aを参照すると、キーエンスSK-H050静電プローブが、大きな金属板上の調整可能な金属スタンドに取り付けられ、実験室の温度および湿度%が測定される。次に、電気リード線がメータとプレートに取り付けられ、システムを電気的に接地する。次に、プローブの高さを調整して、試験見本サンプルに焦点を合わせる。プローブの焦点が合うと、「ゼロ」の静電荷測定値が得られる。次に、摩擦電気効果を介して静電荷を誘導するために、試験見本を移動してプラスチックプレートに貼り付け、図1Bに示すように、ウサギの毛皮で覆われたプラスチックブロックを一定の力で15ストロークにわたって試験フィルム上にこすりつける。次に、毛皮でコーティングされたブロックがその領域から除去され、図1Cに見られるように、静電荷が迅速に測定され、記録される。最初の静電気測定が完了すると、試験見本は接地された金属プレートに戻されて放電され、測定プロセス(A~C)が各試験見本に対してさらに2~3回繰り返される。結果は、見本表面積に対して正規化し、表6のV/cmのように報告される。
【0041】
静電荷粉末保持測定
Hershey’sの無糖ココアパウダーは、すべての静電荷パウダー保持測定の汚れ模擬剤として使用される。コーティングされたポリプロピレン不織布見本は、静電荷測定と同様の方法で試験され、実験室の温度と湿度%が測定され、記録される。
【0042】
静電荷粉末保持測定は、図2A~2Cに見られるように実行される。最初に、図2Aに見られるように、試験見本が事前に秤量され、接地された金属板上に配置される。次に、見本を移してプラスチックプレートに貼り付け、ウサギの毛皮で覆われたプラスチックブロックを試験見本に一定の力で15ストロークこすり、図2Bに示すように静電荷を誘導する。次に、カカオ粉末が事前に充填されたステンレス鋼メッシュストレーナを、図2Cに見られるように、微細粉末層がフィルムを均一に覆うように、試験フィルム上で振とうする。次いで、最後に、覆われた見本をプラスチックプレートから取り外し、垂直に保持し、9、15、および30回機械的に振とうし、再度秤量して粉末の保持を測定する。結果を表6に要約する。
【実施例
【0043】
表3に概説されているポリオレフィン分散液は、Berstorff(KraussMaffei)押出機(ねじ径25mm、450rpmで回転する48L/D)を使用して、表4に概説されている手順と条件に従って調製される。ベースポリオレフィン樹脂とアイオノマー界面活性剤を以下の表1および2で説明するように、それぞれSchenck Mechatron減量フィーダーおよびK-Tronペレットフィーダーを介して押出機のフィードスロートに供給される。ポリオレフィン樹脂とアイオノマー界面活性剤を溶融ブレンドし、最初の水流の存在下で乳化してエマルジョン相を形成する。最初の水流は、水と一価カチオンの溶液を含む。一価カチオン溶液は、30重量%の水酸化カリウムの溶液、50重量%の水酸化ナトリウムの溶液、または100重量%のジメチルエタノールアミン(DMEA)の溶液であり得る。次に、エマルジョン相は、押出機の希釈および冷却ゾーンに運ばれ、そこで追加の希釈水が加えられて、表3に概説されるような固形分レベルを有する水性分散液を形成する。押出機のバレル温度は150℃に設定されるが、例外として最初の2つのバレルセグメントはそれぞれ25℃と90℃に設定される。分散液が押出機を出た後、それをさらに冷却し、200μmのメッシュサイズのバグフィルターを介して濾過した。
【0044】
以下の表5では、示された温度で分散を形成しなかった材料を「いいえ」と示し、示された温度で分散を形成した材料を「はい」と示している。「水性分散液」は、(i)固体の95%超が直径4μm以下の微粒子に変換された、および(ii)分散液は安定しており、製造温度で実質的に固体が見えない濁ったまたは乳白色の液体は、室温に最初に冷却した後、視覚的な変化を示さなかったときに形成される。
【0045】
アイオノマー界面活性剤は、以下の表1に要約されており、エチレンとメタクリル酸(MAA)の重合反応生成物であるエチレン酸コポリマーから調製される。MAAの量を以下の表1に示す。アイオノマーの追加の態様を以下に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【0050】
【表5】
【0051】
コーティングされた物品の調製
分散例Bおよび2は、脱イオン水を用いてガラス瓶内で5%固形分に希釈された。ポリプロピレン不織布を3インチ×5インチの見本にカットし、希釈した分散液に完全に沈め、10秒間穏やかに回転させた。湿った見本を分散液から取り出し、平らに置いて24時間乾燥させ、次に分散液に沈め、再び風乾した。見本は、強制空気オーブン内で110℃で5分間焼きなましされ、静電荷と静電荷粉末の保持を試験する前に、再封可能なビニール袋に保管された。
【0052】
【表6】
【0053】
表5および6の分散結果によって示されるように、比較例Aは水性分散液を形成しなかった。比較例Bは分散液を形成したが、固形分が低く、静電荷が低く、静電荷粉末の保持が低かった。発明例1~10はすべて、固形分が30%を超える固形分で分散液を形成した。本発明の分散液は、固形物の95%超が4μm以下の直径を有する微粒子に変換された。また、分散液は安定しており、製造温度で実質的に固体が見えない濁ったまたは乳白色の液体は、室温に最初に冷却した後、視覚的な変化を示さなかった。さらに、本発明の実施例2は、より高い静電荷およびより高い静電荷粉末の保持を示した。
【0054】
本明細書に開示される寸法および値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されると理解されるべきではない。代わりに、他に特定されない限り、そのような各寸法は、記述された値およびその値の近くの機能的に同等の範囲の両方を意味することが意図されている。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意図する。
【0055】
存在する場合、あらゆる相互参照されるか、または関連する特許または出願、および本出願が優先権または利益を主張するあらゆる特許出願または特許を含む、本明細書に挙げられる全ての文献は、明示的に除外されるかまたはさもなければ限定されない限り、その全体が本明細書に参照により組み込まれる。任意の文書の引用は、それが本明細書に開示または特許請求された任意の発明に関する先行技術、またはそれ単独で、もしくは任意の他の参考文献との任意の組み合わせで、そのような発明を教示、示唆、または開示することを認めるものではない。さらに、本文書内の用語の任意の意味または定義が、参照により組み込まれた文書内の同じ用語の任意の意味または定義と矛盾する範囲で、本文書内でその用語に割り当てられた意味または定義が適用されるべきである。
【0056】
本発明の特定の実施形態を図示し、説明したが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなくさまざまな他の変更および修正を行い得ることは当業者には明らかであろう。そのため、添付の特許請求の範囲において、本発明の範囲内にあるそのような変更および修正をすべて網羅することが意図されている。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
【手続補正書】
【提出日】2021-06-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイオノマー組成物および水を含む水性アイオノマー分散液であって、
前記アイオノマー組成物が、
a)前記アイオノマー組成物の総重量パーセントに基づいて、少なくとも20重量%のアイオノマーであって、前記アイオノマーは少なくとも部分的に中和されているエチレン酸コポリマーであり、前記エチレン酸コポリマーが、前記エチレン酸コポリマー中に存在するモノマーの総重量に基づいて、
70~85重量%のエチレンと、
15~30重量%のモノカルボン酸との重合反応生成物であり、
前記エチレン酸コポリマーの総酸単位の少なくとも70モル%が中和されており、前記エチレン酸コポリマーの全酸単位の15モル%~50モル%が亜鉛カチオンで中和されており、前記エチレン酸コポリマーの全酸単位の少なくとも40モル%が一価カチオンで中和されている、アイオノマーと、
b)前記アイオノマー組成物の総重量パーセントに基づいて、最大80重量%のポリオレフィンと、を含む、水性アイオノマー分散液。
【請求項2】
前記水性アイオノマー分散液が、10~60重量%の前記アイオノマー組成物を含む、請求項1に記載の水性アイオノマー分散液。
【請求項3】
前記エチレン酸コポリマーが、前記エチレン酸コポリマー中に存在するモノマーの総重量に基づいて、75~85重量%のエチレンと15~25重量%の前記モノカルボン酸の前記重合反応生成物である、請求項1または2に記載の水性アイオノマー分散液。
【請求項4】
前記エチレン酸コポリマーの総酸単位の20モル%~50モル%が、亜鉛カチオンで中和されている、請求項1~3に記載の水性アイオノマー分散液。
【請求項5】
前記アイオノマー組成物が、10~80重量%の前記ポリオレフィンを含む、請求項1~4に記載の水性アイオノマー分散液。
【請求項6】
前記ポリオレフィンが、ポリエチレンまたはポリプロピレンからなる群から選択される、請求項1~5に記載の水性アイオノマー分散液。
【請求項7】
前記ポリオレフィンが、ASTM D1238(190℃において2.16kg)に従って決定される、0.1~100.0g/10分のメルトインデックスI2を有するエチレン/α-オレフィン共重合体である、請求項1~6に記載の水性アイオノマー分散液。
【請求項8】
水性アイオノマー分散液の製造方法であって、前記方法が、
アイオノマー組成物を準備することであって、前記アイオノマー組成物が、
a)前記アイオノマー組成物の総重量パーセントに基づいて、少なくとも20重量%のアイオノマーであって、前記アイオノマーが少なくとも部分的に中和されているエチレン酸コポリマーであり、前記エチレン酸コポリマーが、前記エチレン酸コポリマー中に存在するモノマーの総重量に基づいて、
70~85重量%のエチレンと、
15~30重量%のモノカルボン酸との重合反応生成物であり、
前記エチレン酸コポリマーの総酸単位の15モル%~50モル%が亜鉛カチオンで中和されているアイオノマーと、
b)前記アイオノマー組成物の総重量パーセントに基づいて、最大80重量%のポリオレフィンと、を含む、準備することと、
前記アイオノマー組成物を水および一価カチオンを含む水性組成物と混合することにより水性アイオノマー分散液を形成することであって、前記水性アイオノマー分散液中の前記アイオノマーは、前記エチレン酸コポリマーの全酸単位の少なくとも70モル%が中和されており、前記エチレン酸コポリマーの全酸単位の少なくとも40モル%が一価カチオンで中和されている、混合することと、を含む、方法。
【請求項9】
前記アイオノマー組成物が、
前記エチレン酸コポリマーを準備し、前記エチレン酸コポリマーの総酸単位の15モル%~50モル%を前記亜鉛カチオンで中和してアイオノマーを形成することと、
前記アイオノマーを前記ポリオレフィンと合わせることにより前記アイオノマー組成物を形成することと、によって形成される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記アイオノマー組成物が、
前記エチレン酸コポリマーと前記ポリオレフィンとを合わせて混合物を形成することと、
前記混合物に前記エチレン酸コポリマーの全酸単位の15モル%~50モル%を中和するのに十分な量の前記亜鉛カチオンを加えることと、によって前記アイオノマー組成物を形成することによって形成される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
混合が摂氏100度~摂氏300度の温度で行われる、請求項8~10に記載の方法。
【請求項12】
コーティングされた物品を形成する方法であって、
請求項1~7のいずれか一項に記載の水性アイオノマー分散液を基材上にコーティングして、コーティングされた基材を形成することと、
前記コーティングされた基材を乾燥させてコーティングされた物品を形成することと、を含む方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法に従って形成された、コーティングされた物品。

【国際調査報告】