(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(54)【発明の名称】車体の前壁用の遮音要素およびそのような遮音要素のための支持要素
(51)【国際特許分類】
B60R 13/08 20060101AFI20220202BHJP
【FI】
B60R13/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534997
(86)(22)【出願日】2019-12-10
(85)【翻訳文提出日】2021-08-13
(86)【国際出願番号】 EP2019084363
(87)【国際公開番号】W WO2020126651
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】102018132726.9
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513044337
【氏名又は名称】アドラー ペルツァー ホルディング ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Adler Pelzer Holding GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュルツェ、フォルクマー
(72)【発明者】
【氏名】リーデラー、フランク
(72)【発明者】
【氏名】カルチ、トーマス
【テーマコード(参考)】
3D023
【Fターム(参考)】
3D023BA02
3D023BB17
3D023BB21
3D023BB30
3D023BD12
3D023BE03
3D023BE19
(57)【要約】
車室とエンジン室との間に配置された車体の前壁のための遮音要素が、プラスチック製キャリア層(16)と、プラスチック製キャリア層(16)に接続された吸音層(18)とを有する複合部品を備え、複合部品は、少なくとも1つの第1の通過穴を有している。設置された状態において見たときに、複合部品は、車室に面し、プラスチック製キャリア層(16)の外側によって形成された前側と、前壁に当接し、プラスチック製キャリア層(16)から遠ざかる方を向いた吸音層(18)の外側によって形成された後ろ側とを有する。少なくとも1つの押さえ突起(72)が、プラスチック製キャリア層(16)の外側から遠ざかる方を向き、したがって吸音層(18)に面するプラスチック製キャリア層(16)の内側において、キャリア層穴の縁、および/またはキャリア層穴の縁からずらされた位置で、プラスチック製キャリア層(16)から突出し、吸音層(18)の吸音材料に埋め込まれ、プラスチック製キャリア層(16)から遠ざかる方を向いた押さえ突起(72)の自由端が、プラスチック製キャリア層(16)から遠ざかる方を向いた吸音層(18)の外側に実質的に整列する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室とエンジン室との間に配置された車体の前壁のための遮音要素であって、
プラスチック製キャリア層(16)と、該プラスチック製キャリア層(16)に接続された吸音層(18)とを備える複合部品
を有し、
前記複合部品は、設置された状態において見たときに、前記車室に面し、前記プラスチック製キャリア層(16)の外面(24)によって形成された前側(20)と、前記前壁に当接し、前記プラスチック製キャリア層(16)から遠ざかる方を向いた前記吸音層(18)の外側(26)によって形成された後ろ側(22)とを有し、
少なくとも1つの第1の通過穴(32、34、36、38)が、前記複合部品に存在し、
前記第1の通過穴(32、34、36、38)は、前記プラスチック製キャリア層(16)に形成された孔縁(49、51、53、55)を有するキャリア層穴(48、50、52、54)と、前記吸音層(18)に形成された孔縁を有する吸音層穴(57、59、61、63)とを含み、
少なくとも1つの押さえ突起(72)が、前記プラスチック製キャリア層(16)の前記外面(24)から遠ざかる方を向き、したがって前記吸音層(18)に面する前記プラスチック製キャリア層(16)の内側(28)において、前記キャリア層穴(48、50、52、54)の前記孔縁(49、51、53、55)、および/または前記キャリア層穴(48、50、52、54)の前記孔縁(49、51、53、55)からずらされた位置で、前記プラスチック製キャリア層(16)から突出し、前記吸音層(18)の吸音材料に埋め込まれ、前記プラスチック製キャリア層(16)から遠ざかる方を向いた前記押さえ突起(72)の自由端(76)が、前記プラスチック製キャリア層(16)から遠ざかる方を向いた前記吸音層(18)の前記外側(26)に実質的に整列している、遮音要素。
【請求項2】
前記プラスチック製キャリア層(16)の前記内側(28)から遠ざかる方を向いた前記少なくとも1つの押さえ突起(72)の前記自由端(76)は、前記吸音材料によって覆われる、ことを特徴とする請求項1に記載の遮音要素。
【請求項3】
いくつかの押さえ突起(72)が、前記キャリア層穴(48、50、52、54)の周りに周状に配置されている、ことを特徴とする請求項1または2に記載の遮音要素。
【請求項4】
前記少なくとも1つの押さえ突起(72)は、ピン状の突起または押さえドームとして形成されている、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の遮音要素。
【請求項5】
前記少なくとも1つの押さえ突起(72)は、前記キャリア層穴(48、50、52、54)を取り囲み、開口部が設けられた周壁を有しているカラーとして形成されている、ことを特徴とする請求項1または2に記載の遮音要素。
【請求項6】
前記吸音層(18)の吸音材料は、前記キャリア層穴(48、50、52、54)の前記孔縁(49、51、53、55)を過ぎて内側へと突出し、環状の突出縁(80、82、84)を形成している、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の遮音要素。
【請求項7】
前記突出縁(80、82、84)は、前記プラスチック製キャリア層(16)の前記外面(24)と整列し、あるいは前記プラスチック製キャリア層(16)の前記外面(24)上の前記キャリア層穴(48、50、52、54)の前記孔縁(49、51、53、55)の少なくとも一部分に沿って延びる、ことを特徴とする請求項6に記載の遮音要素。
【請求項8】
前記プラスチック製キャリア層(16)に形成されたキャリア層穴(48、50、52、54)および前記吸音層(18)に形成された吸音層穴(57、59、61、63)を含んでおり、両方の穴は整列した孔縁を有している前記複合部品の少なくとも1つの第2の通過穴(32、34、36、38)
を特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の遮音要素。
【請求項9】
エンジン室と車室との間に設けられた車体の前壁への配置のための遮音複合部品のキャリア要素であって、
外側と、前記遮音複合部品の吸音層(18)の吸音材料が少なくとも2つの成形ツール部分を有する成形ツール内で適用可能または適用されている内側とを有するプラスチック製キャリア層(16)と、
前記プラスチック製キャリア層(16)に形成された孔縁を有する少なくとも1つの第1のキャリア層穴と、
前記穴の前記縁に配置され、さらには/あるいは前記穴の前記縁からずらされて配置され、前記プラスチック製キャリア層(16)から突出し、前記プラスチック製キャリア層(16)の前記内側から突出している少なくとも1つの押さえ突起(72)と
を有しており、
前記プラスチック製キャリア層(16)を、前記外側を第1の成形ツール部分に当接させ、前記プラスチック製キャリア層(16)の前記内側から遠い前記少なくとも1つの押さえ突起(72)の端部を第2の成形ツール部分に接触させて前記プラスチック製キャリア層(16)を前記第1のキャリア層穴の前記孔縁の領域において前記第1の成形ツール部分に対して保持するように、前記成形ツールへと導入することができる、キャリア要素。
【請求項10】
前記プラスチック製キャリア層(16)の前記第1の穴は、成形コア、とくには前記吸音材料を前記プラスチック製キャリア層(16)の後ろ側へと成形するために用意された前記成形ツールの前記第1または第2の成形ツール部分に配置された成形コアが、前記第1のキャリア層穴の前記孔縁に対する半径方向のすき間を伴って進入するように設けられている、ことを特徴とする請求項9に記載のキャリア要素。
【請求項11】
前記少なくとも1つの押さえ突起(72)は、請求項1~8のいずれか一項に記載のとおりに形成され、さらには/あるいは前記プラスチック製キャリア層(16)は、請求項1~8のいずれか一項に記載のとおりに形成され、さらには/あるいは前記プラスチック製キャリア層(16)に、請求項1~8のいずれか一項に記載のとおりの吸音層(18)または吸音材料が設けられている、ことを特徴とする請求項9または10に記載のキャリア要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本特許出願は、2018年12月18日付のドイツ特許出願第10 2018 132726.9号の優先権を主張し、その内容は、参照によって本特許出願の主題に組み込まれる。
【0002】
本発明は、車室をエンジン室から隔てる車体の前壁のための遮音要素に関する。さらに、本発明は、車体の前壁に配置される遮音複合部品のための支持要素に関する。
【背景技術】
【0003】
遮音要素を、車体の前壁の内側、すなわち車体の車室とエンジン室との間の壁の内側に配置することが、一般的に知られている。そのような前壁の遮音の例として、国際公開第2018/192858号パンフレット、米国特許出願公開第2006/0091699号明細書、または独国特許出願公開第37 33 284号明細書が参照される。
【0004】
そのような遮音要素は、重層としても知られるプラスチック製キャリア層と、プラスチック製キャリア層上に成形され、吸音材料、とくにはPUR発泡材料で作られた音響減衰層とを有するサンドイッチ構造を有する。車体の前壁は、配線、配管、または部品のためのいくつかの貫通部を有する。したがって、遮音要素にも、典型的には前壁の貫通部に位置合わせされた貫通穴が設けられる。遮音要素および前壁を通過する要素の種類に応じて、そのような要素を、機械的損傷から保護する必要がある(擦り傷に対する保護)。そのような保護を実現するための1つの可能な手段は、遮音要素の通過穴の孔縁の周囲を発泡させること、または遮音材料で取り囲むことである。
【0005】
音響減衰材料は、典型的には、プラスチック製キャリア層が挿入される特別に設計された成形ツール(通常は、発泡ツール)内でプラスチック製キャリア層上に成形される。プラスチック製キャリア層の製造は、この目的のために用意される別の金型において事前に行われる。吸音材料によって少なくとも部分的に埋め込まれるプラスチック製キャリア層の孔縁の領域において、吸音材料は、少なくとも部分的にキャリア層の穴内に到達できなければならない。部分的には、吸音材料は、プラスチック製裏打ち層の両面において孔縁を取り囲まなければならない。どちらの場合も、これにより、プラスチック製キャリア層が、製造プロセスの最中にプラスチック製キャリア層が挿入されたツール金型内で「浮く」可能性があり、これが不満足な製造結果につながる可能性がある。これを回避するために、吸音材料をプラスチック製キャリア層上に成形するための対応する金型は、吸音材料によって少なくとも部分的に囲まれるべき孔縁に沿ってプラスチック製キャリア層を押さえる押さえピンを有する。そのような成形ツールの押さえピンは、成形ツールの製造コストを増加させ、原則としてそのような成形ツールにおいて時々実行されなければならない洗浄プロセスを複雑にする。加えて、このような成形ツールを用いて形成された吸音層は、押さえ突起によって生じる空洞を有し、これは音響的に不利である。
【0006】
独国特許出願公開第10 2013 006 300号明細書から、プラスチックによって取り囲まれるべき器具のハンドルのコアを、コアから全側面に突出するスペーサピンによって、金型内の中央に配置できることが知られている。この手順は、或るプラスチック製構成要素に片側においてのみ第2のプラスチック製構成要素が設けられる2つの構成要素からなる部品には適さない。
【0007】
独国特許第198 33 098号明細書が、コアと、コアをすべての側面において取り囲むパッド付きカバーとを有するパッド付き物品の製造方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2018/192858号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0091699号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第37 33 284号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第10 2013 006 300号明細書
【特許文献5】独国特許第198 33 098号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、車室とエンジン室との間に配置された車体の前壁用の遮音要素、およびそのような遮音要素用のキャリア要素であって、その助けにより、音響減衰材料をキャリア要素上に成形するための成形ツール内でキャリア要素の位置を維持するためにツール側において必要な努力を軽減することができる遮音要素およびキャリア要素を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するために、本発明は、車室とエンジン室との間に配置された車体の前壁のための遮音要素を提案し、この遮音要素は、
プラスチック製キャリア層と、プラスチック製キャリア層に接続された吸音層とを備える複合部品
を備え、
複合部品は、設置された状態において見たときに、車室に面し、プラスチック製キャリア層の外側によって形成された前側と、前壁に当接し、プラスチック製キャリア層から遠ざかる方を向いた吸音層の外側によって形成された後ろ側とを有し、
少なくとも1つの第1の通過穴が、複合部品に存在し、
第1の通過穴は、プラスチック製キャリア層に形成された孔縁を有するキャリア層穴と、吸音層に形成された孔縁を有する吸音層穴とを含み、
少なくとも1つの押さえ突起が、プラスチック製キャリア層の外側から遠ざかる方を向き、したがって吸音層に面するプラスチック製キャリア層の内側において、キャリア層穴の孔縁、および/またはキャリア層穴の孔縁からずらされた位置で、プラスチック製キャリア層から突出し、押さえ突起は、吸音層の吸音材料に埋め込まれ、プラスチック製キャリア層から遠ざかる方を向いた押さえ突起の自由端が、プラスチック製キャリア層から遠ざかる方を向いた吸音層の外側と実質的に同一平面にある。
【0011】
したがって、本発明は、成形ツール上に配置された押さえ突起の代わりに、プラスチック製キャリア層の一部であり、すなわち吸音材料が成形される遮音要素のキャリア要素の一部である押さえ突起を提供する。このような押さえ突起は、整列する吸音層の穴と協働して遮音要素の貫通部を形成する開口、すなわちプラスチック製キャリア層の穴の孔縁に位置し、あるいは孔縁から外側にずらされて位置する。
【0012】
本発明による遮音要素において、例えばピン状またはドーム状であってもよい少なくとも1つの押さえ突起は、例えば、吸音層の吸音材料に埋め込まれる。いくつかのそのような押さえ突起が、キャリア層穴の孔縁を巡って周状に存在すると好都合である。押さえ突起(押さえピン)が吸音材料をプラスチック製キャリア層上に成形するための一方の成形ツール部分の一部である先行技術とは異なり、本発明による遮音要素においては、成形ツールからの取り外し後に吸音層内に空洞が存在せず、むしろプラスチック製キャリア層の押さえ突起が吸音層の中へと延び、おそらくは吸音層を貫いて延びる。
【0013】
本発明による遮音要素は、すでに上述したように、複合部品として設計され、プラスチック製キャリア層(いわゆる、重層)と、吸音材料(例えば、PU発泡体)で作られた吸音層とを有する。このように2層で構成された複合部品は、一方がプラスチック製キャリア層によって形成され、他方が吸音層によって形成された2つの外側を有する。両方の層の内側が互いに接触し、2つの層は、内側において互いに接続されている。設置された状態において、プラスチック製キャリア層の外側が車室に面し、複合部品のこの面が前側を形成する一方で、複合部品の後ろ側は、前壁に当接する吸音層の外側によって形成される。
【0014】
ここで、少なくとも1つの押さえ突起は、キャリア層の穴の領域においてプラスチック製キャリア層の内側から突出しており、プラスチック製キャリア層の裏側から遠ざかる方を向いた突起の自由端は、自由端が吸音層の外側を超えて突出しておらず、むしろ好ましくは吸音材料によって比較的薄く(例えば、少なくとも1mmかつ最大で5mm)覆われているという点で、吸音層の外側と本質的に同一平面にある。
【0015】
すでに述べたように、孔縁の周りにいくつかの押さえ突起を設けることが有用であり、これらは、ピンまたはドームの形態であると好都合である。押さえ突起または少なくとも1つの押さえ突起の設計は、吸音材料をプラスチック製キャリア層上に成形するためのツール金型において、この吸音材料が少なくとも1つの押さえ突起の周囲および上方に流れることができるように選択されるべきである。本発明の有用な実施形態において、キャリア層の穴を少なくとも部分的に取り囲むカラーが押さえ突起として使用される場合、カラーは、その周壁に切り欠きを有するか、あるいは上縁に向かって開口する縁の切り欠きを有するべきである。カラーのこのような設計により、ツール金型に導入された吸音材料は、カラーを通って流れることができる。
【0016】
上述の本発明による遮音要素の構造は、とくには、吸音材料が設けられたプラスチック製キャリア層の穴の縁を形成する役に立つ。吸音材料は、キャリア層の穴へと突出し、プラスチック製キャリア層の外側と同一平面にあり、あるいは前方へと突出し、したがって両側において穴の縁を取り囲む突出領域を有する。吸音材料の望ましくないせん断を防止するために、プラスチック製キャリア層と吸音層との間にフック構造をもたらすように、アンカ突起、ブレークスルー、などへと形成することが可能である。遮音要素の貫通部の領域におけるプラスチック製キャリア層内の吸音材料で満たされるブレークスルーの例を、独国特許出願公開第41 32 571号明細書、欧州特許出願公開第2 786 851号明細書、および特開平7-285 138号公報において見つけることができる。
【0017】
本発明の個々の実施形態が、従属請求項の主題である。
【0018】
本発明の好都合なさらなる発展において、吸音層の吸音材料は、キャリア層穴の孔縁を越えて第1の穴内へと内側に突出し、環状突出縁を形成する。
【0019】
さらには、この実施形態において、好都合には、突出縁がプラスチック製キャリア層の外側と整列し、あるいはプラスチック製キャリア層の外側上のキャリア層穴の孔縁の少なくとも一部分に沿って延びてよい。好都合には、本発明による遮音要素は、プラスチック製キャリア層に形成されたキャリア層穴および吸音層に形成された吸音層穴を含んでおり、両方の穴は整列した孔縁を有している複合部品の少なくとも第2の通過穴をさらに備えることができる。
【0020】
上述の本発明による遮音要素に加えて、上述の課題は、本発明によれば、エンジン室と車室との間に設けられた車体の前壁への配置のための遮音複合部品のキャリア要素によっても解決でき、このキャリア要素は、
外側と、遮音複合部品の吸音層の吸音材料が少なくとも2つの成形ツール部分を有する成形ツール内で適用可能または適用されている内側とを有するプラスチック製キャリア層と、
プラスチック製キャリア層に形成された孔縁を有する少なくとも1つの第1のキャリア層穴と、
穴の縁に配置され、さらには/あるいは穴の縁からずらされて配置され、プラスチック製キャリア層から突出し、プラスチック製キャリア層の内側から突出している少なくとも1つの押さえ突起と
を有し、
プラスチック製キャリア層を、外側を第1の成形ツール部分に当接させ、プラスチック製キャリア層の内側から遠ざかる方を向いた少なくとも1つの押さえ突起の端部を第2の成形ツール部分に接触させてプラスチック製キャリア層を第1のキャリア層穴の孔縁の領域において第1の成形ツール部分に当接させて保持するように、成形ツールへと導入することが可能である。
【0021】
このようなキャリア要素において遮音材料が設けられたプラスチック製キャリア層の孔縁を実現することができるように、例えば、プラスチック製キャリア層の第1の穴を、成形ツールコア、とくには吸音材料をプラスチック製キャリア層の後ろ側へと成形するために用意された成形ツールの第1または第2の成形ツール部分に配置された成形ツールコアが、第1のキャリア層穴の孔縁に対する半径方向のすき間を伴って進入するように設けることが可能である。
【0022】
キャリア要素に、好都合には、遮音要素に関連して上述したように押さえ突起構造を形成することができる。また、キャリア要素のプラスチック製キャリア層を、本発明に関連して上述したように形成することができる。とくには、キャリア要素のプラスチック製キャリア層は、本発明の文脈において上述した遮音材料および吸音層を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明を、実施形態の一例を用い、図面を参照して、以下でさらに詳細に説明する。
【
図1】前壁遮音要素を備える車体の斜視分解図である。
【
図2】
図1による遮音要素の重層、すなわちプラスチック製キャリア層の設計の斜視図である。
【
図3】
図2によるプラスチック製キャリア層上に遮音材料を成形するための成形ツールの断面図であり、プラスチック製キャリア層が成形ツールに挿入されている。
【
図4】吸音材料が挿入された後の
図3に示した成形ツールの断面図である。
【
図5】遮音要素の設置時に車体の前壁に当接する遮音要素の後ろ側の図である。
【
図7】
図6の線VII-VIIによる遮音要素の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1が、複合部品として設計された遮音要素14が配置される前壁12を有する車体10を概略的に示している。遮音要素14は、少なくとも部分的には、固定突起(図示せず)によって前壁12に固定され、固定突起は、遮音要素14と一体に形成され、遮音要素14が設置された状態において、車体10または前壁12のそれぞれの収容穴に配置され、それぞれの収容穴と協働する。これに関して、例として、国際公開第2018/192858号パンフレットが参照され、その内容は、参照により本開示の主題の一部とされる。
【0025】
それ自体は知られているとおり、遮音要素14は、例えば各々に長石などの高密度の無機充てん材が最大70%という高い重量割合でもたらされているEVA/PE、PE、PP、EPDM、TPE、TPO、および/またはポリウレタン発泡体で作られた重層または質量層としてのプラスチック製キャリア層16と、吸音材料(例えば、ポリウレタン発泡体)で作られた吸音層18(例えば、
図6を参照)とを含むいわゆる質量-ばね系を有する。
【0026】
図1に示されるとおりの設置状態において、遮音要素14は、車室に面する前側20と、前壁に対向して当接する後ろ側22とを有する。前側20が、プラスチック製キャリア層16の外面24によって形成される一方で、後ろ側22は、吸音層18の外面26によって形成される。プラスチック製キャリア層16と吸音層18とは、互いに対向する内側28、30(
図7も参照)において互いに接続されている。
【0027】
遮音要素14は、複数の通過穴32、34、36、38を有し、これらの通過穴は、この実施形態においては異なる形状であり、遮音要素のさまざまな種類の通路を示すように意図されている。通過穴34を除き、図面に示されている他の通過穴34には、プラスチック製キャリア層16の穴の孔縁に沿って吸音材料が設けられている。これらの孔縁に沿って吸音材料を成形するために、
図3および
図4に示されるように、吸音材料を成形するために用意される成形ツールにおいて一定量の位置決め補助が必要である。
【0028】
図3が、この実施形態においては第1の成形ツール部分42および第2の成形ツール部分44を有する二部構成の成形ツール40の断面図を示している。事前に製造されたプラスチック製キャリア層16が、最初に、プラスチック製キャリア層の外面24を第1の成形ツール部分42の内面に当接させて、成形ツール40の成形キャビティ46に配置される。その後に、成形ツール40は一緒に動かされる。この実施形態の例では、孔縁49、51、53、55を有する4つの穴48、50、52、54が、プラスチック製キャリア層16に形成されている。成形コア56が、穴54へと突出し、穴54を完全に埋めている。成形コア58、60、62が、各々の穴48、50、52へと突出しているが、これらの穴よりも断面が小さく、したがって成形キャビティ46内で成形コアと孔縁49、51、53との間に空き空間64、66、68が残されている。
【0029】
したがって、これらの空き空間は、
図3および
図4から見て取ることができるとおり、例えば(とくには、いくつかの入口のうちの)1つの入口70を介して吸音材料が成形ツール40へと導入されるときに、この材料で満たされる。成形コア56、58、60、62は、それぞれキャリア層穴48、50、52、54に整列する遮音要素14の吸音層18の穴57、59、61、63をもたらす。
【0030】
穴48、50、52への吸音材料の進入(穴54は成形コア56によって完全に埋められているため、この穴には材料は進入しない)は、プラスチック製キャリア層16が成形キャビティ46内で「洗い流され」、次いで「浮き上がる」というリスクをもたらす。これを防止するために、各々の穴48、50、52の領域に、プラスチック製キャリア層16の内側28から突出する押さえ突起72(この実施形態の例では、すべてピンまたはドームの形態である)が配置され、これらの突起が、成形キャビティ46を境界付ける第2の成形ツール部分44の内側74に当接し、あるいは突起の自由端76が、成形ツール部分44に対して短い距離に配置される。これらの押さえ突起72は、プラスチック製キャリア層16を第1の成形ツール部分42の内側78に当接した状態に保持する。これは、吸音材料が進入して穴48、50、52の縁の周囲を流れるときに、プラスチック製キャリア層16が「浮く」ことを防止する。
【0031】
穴48、50、52の縁を吸音材料で囲み、あるいは取り囲み、もしくは部分的に取り囲む所望の設計に応じて、プラスチック製キャリア層16は、
図3および
図4あるいは
図6および
図7に示されるように、これらの穴の領域において、異なる構造を有する。例えば、穴48の突出縁80が、プラスチック製キャリア層16の外面24に整列する一方で、穴50、52のそれぞれの突出縁82、84は、穴の縁51、53を両側において取り囲む。穴52の設計に関しては、プラスチック製キャリア層16の前側20から突出する追加のフック構造または同様の突起86がさらに設けられ、これらが吸音材料に埋め込まれ、したがってプラスチック製キャリア層16の前側20における吸音層18のさらなる保持を保証する。
【0032】
図8が、押さえ突起88の別の実施形態を示している。この実施形態において、押さえ突起88は、符号92で示されるプラスチック製キャリア層の穴の周りを延びる周状のカラー90として形成される。カラー90は、
図3の穴の設計について示したように、遮音材料をプラスチック製キャリア層92の穴の縁の付近またはプラスチック製キャリア層92の穴の縁の周囲へと通過させることができる開口部94を有する。遮音材料がもたらされるとき、押さえ突起88は、この材料に埋め込まれる。
【符号の説明】
【0033】
10 車体
12 前壁
14 遮音要素
16 プラスチック製キャリア層
18 吸音層
20 前側
22 後ろ側
24 前側の外面
26 外側
28 内側
30 内側
32 通過穴
34 通過穴
36 通過穴
38 通過穴
40 二部構成の成形ツール
42 第1の成形ツール部分
44 第2の成形ツール部分
46 成形キャビティ
48 キャリア層穴
59 孔縁
50 キャリア層穴
51 孔縁
52 キャリア層穴
53 孔縁
54 キャリア層穴
55 孔縁
56 成形コア
57 吸音層穴
58 成形コア
59 吸音層穴
60 成形コア
61 吸音層穴
62 成形コア
63 吸音層穴
64 空き空洞
66 空き空洞
68 空き空洞
70 入口
72 押さえ突起
74 成形キャビティの内側
76 押さえ突起の自由端
78 成形キャビティの内側
80 突出縁
82 突出縁
84 突出縁
86 突起
88 押さえ突起
90 カラー
92 プラスチック製キャリア層
94 カラーの開口部
【国際調査報告】