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特表2022-514034皮膚用クライオスプレーデバイス用の自動制御および位置決めシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(54)【発明の名称】皮膚用クライオスプレーデバイス用の自動制御および位置決めシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/02 20060101AFI20220202BHJP
【FI】
A61B18/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535145
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(85)【翻訳文提出日】2021-06-25
(86)【国際出願番号】 US2019068106
(87)【国際公開番号】W WO2020132602
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】62/784,052
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518072944
【氏名又は名称】アールツー・テクノロジーズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェシー・ローゼン
(72)【発明者】
【氏名】エリック・スタウバー
(72)【発明者】
【氏名】エリカ・エルフォード
(72)【発明者】
【氏名】ディラン・マクレイノルズ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160JJ01
4C160MM22
(57)【要約】
本願は、皮膚冷却治療のための改善されたシステムおよび方法を対象とする。皮膚冷却治療システムは、近位端部および遠位端部を有することができる機械式アームを含むことができる。システムは、機械式アームを制御することができるプロセッサーおよびクライオスプレーアプリケーターを含むことができる。クライオスプレーアプリケーターは、機械式アームの遠位端部に結合することができ、治療のために皮膚組織の領域の一部分にクライオジェンのスプレーを送達するために、機械式アームによって移動可能にすることができる。クライオスプレーアプリケーターは、それを通ってクライオジェンを噴霧することができるオリフィスのアレイを含むことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の皮膚組織の領域を冷却する方法であって、
クライオスプレーアプリケーターに結合された機械式アームの動きを介して、治療される前記患者の皮膚組織の領域に近接して前記クライオスプレーアプリケーターを自動的に位置決めすることと、
前記クライオスプレーアプリケーターのオリフィスのアレイを通してクライオジェンのスプレーを向けて、前記患者の皮膚組織の領域の部分を冷却することと、
前記機械式アームの動きを介して前記クライオスプレーアプリケーターを前進させ、クライオジェンのスプレーによって冷却される前記患者の皮膚組織の領域の部分を変更することと、
前記クライオスプレーアプリケーターが前進している間、前記患者の皮膚組織の領域の部分に対する前記クライオスプレーアプリケーターの位置を自動的に調整することと
を含む方法。
【請求項2】
前記患者の皮膚組織の領域の部分に対して前記クライオスプレーアプリケーターの位置を自動的に調整することは、
前記クライオスプレーアプリケーターと前記患者の皮膚組織の領域の部分との間の距離、および前記患者の皮膚組織の領域の部分に対する前記クライオスプレーアプリケーターの向きのうちの少なくとも一つを調整することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記クライオスプレーアプリケーターと前記患者の皮膚組織の領域の部分との間の距離を自動的に調整することは、
前記クライオスプレーアプリケーターに結合された少なくとも一つの距離センサーを用いて、前記クライオスプレーアプリケーターと前記患者の皮膚組織の領域の部分との間の距離を検出することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記患者の皮膚組織の領域の部分に対して前記クライオスプレーアプリケーターの向きを自動的に調整することは、
少なくとも一つのアライメントセンサーを用いて、前記患者の皮膚組織の領域の部分に対する前記クライオスプレーアプリケーターの向きを検出することを含む、請求項2または請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記患者の皮膚組織の領域の部分を冷却するために前記クライオスプレーアプリケーターのオリフィスのアレイを通してクライオジェンのスプレーを向けることは、前記患者の皮膚組織の領域の部分を変形させる、請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記クライオスプレーアプリケーターの向きは、少なくとも部分的に、前記患者の皮膚組織の領域の部分の変形に基づいて調整される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記クライオスプレーアプリケーターと前記患者の皮膚組織の領域の部分との間の距離は、少なくとも部分的に、前記患者の皮膚組織の領域の部分の変形に基づいて調整される、請求項5または請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記患者の皮膚組織の領域の部分の温度を検出することと、
前記クライオスプレーアプリケーターの前進、前記クライオスプレーアプリケーターと前記患者の皮膚組織の領域の部分との間の距離、またはクライオジェンの送達速度のうちの少なくとも一つを改変することと
をさらに含む、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
赤外線カメラが、前記患者の皮膚組織の領域の部分の温度を検出する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記患者の皮膚組織の領域の部分の温度を検出することは、前記患者の皮膚組織の領域の部分の凍結を検出するか、あるいは前記患者の皮膚組織の領域の部分の冷却速度を検出することを含む、請求項8または請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記クライオスプレーアプリケーターと前記患者の皮膚組織の領域の部分との間の距離を改変することは、
前記クライオスプレーアプリケーターと前記患者の皮膚組織の領域の部分との間の距離を変更することと、
変更された距離に基づいて、前記患者の皮膚組織の領域の更新された部分を特定することと、
更新された治療経路を生成することと
を含む、請求項8ないし請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記更新された治療経路に従って前記クライオスプレーアプリケーターを前進させることをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
クライオジェンの送達速度を改変することは、前記クライオスプレーアプリケーターの開放オリフィスの数を減少させることを含む、請求項8ないし請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
クライオジェンの送達速度を改変することは、前記クライオスプレーアプリケーターの前記オリフィスにおけるクライオジェン圧力を低下させることを含む、請求項8ないし請求項13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記機械式アームが6軸機械式アームを含む、請求項1ないし請求項14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記機械式アームがロボットアームを含む、請求項1ないし請求項15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記クライオスプレーアプリケーターを前記患者の皮膚組織の領域に近接して配置することは、
前記クライオスプレーアプリケーターを前記患者の皮膚組織の領域の部分の上に移動させることと、
前記クライオスプレーアプリケーターと前記患者の皮膚組織の領域の部分とを隔てる初期距離を特定することと、
前記初期距離を調整することと
を含む、請求項1ないし請求項16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
皮膚冷却治療システムであって、
近位端部および遠位端部を有する機械式アームと、
前記機械式アームを制御するように構成されたプロセッサーと、
前記機械式アームの前記遠位端部に結合されたクライオスプレーアプリケーターであって、オリフィスのアレイを含み、治療のために患者の皮膚組織の領域の部分にクライオジェンのスプレーを送達するために前記機械式アームによって移動可能なクライオスプレーアプリケーターと
を含む皮膚冷却治療システム。
【請求項19】
前記機械式アームは6軸機械式アームを含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記機械式アームはロボットアームを含む、請求項18または請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記クライオスプレーアプリケーターが、前記クライオスプレーアプリケーターと、クライオジェンのスプレーが向けられる、治療のための患者の皮膚組織の領域の部分との間の距離を検出するように構成された少なくとも一つの距離センサーを含む、請求項18ないし請求項20のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項22】
前記少なくとも一つの距離センサーは、前記オリフィスのアレイの周りに配置された二つの距離センサーを含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記二つの距離センサーは、
前記オリフィスのアレイからオフセットされた第1の位置にある第1の距離センサーであって、第1の向きを有する第1の距離センサーと、
前記オリフィスのアレイからオフセットされた第2の位置にある第2の距離センサーであって、第2の向きを有する第2の距離センサーと
を含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記第1の向きおよび前記第2の向きのそれぞれは、前記クライオスプレーアプリケーターのスプレーのラインに向けられる、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記クライオスプレーアプリケーターは、前記患者の皮膚組織の領域の部分に対する前記クライオスプレーアプリケーターの向きを検出するように構成された少なくとも一つのアライメントセンサーを含む、請求項18ないし請求項24のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項26】
前記少なくとも一つのアライメントセンサーは、それぞれが共通の方向を向いている三つのアライメントセンサーを含み、前記三つのアライメントセンサーは、前記クライオスプレーアプリケーターの前記オリフィスのアレイの周りに放射状に配置されている、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記プロセッサーは、前記機械式アームの前記遠位端部の動きを制御するように構成されている、請求項18ないし請求項26のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項28】
前記プロセッサーは、前記クライオスプレーアプリケーターの動作と、前記クライオスプレーアプリケーターと前記患者の皮膚組織の領域の部分との間の距離とを制御するように構成されている、請求項21ないし請求項24のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項29】
前記プロセッサーは、少なくとも一つの距離センサーの出力に基づいて、前記クライオスプレーアプリケーターと前記患者の皮膚組織の領域の部分との間の距離を制御するように構成されている、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記プロセッサーは、前記患者の皮膚組織の領域の部分に対して前記クライオスプレーアプリケーターの向きを制御するように構成されている、請求項25または請求項26に記載のシステム。
【請求項31】
前記プロセッサーは、前記少なくとも一つのアライメントセンサーの出力に基づいて、前記患者の皮膚組織の領域の部分に対して、前記クライオスプレーアプリケーターの向きを制御するように構成されている、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記クライオスプレーアプリケーターは、前記患者の皮膚組織の領域の部分の温度を検出するように構成された温度検出機構をさらに備える、請求項18ないし請求項31のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項33】
前記温度検出機構が赤外線カメラを含む、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記温度検出機構は、前記患者の皮膚組織の領域の部分の凍結を検出するか、あるいは前記患者の皮膚組織の領域の部分の冷却速度を検出するように構成されている、請求項32または請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記プロセッサーは、
前記機械式アームの動きを介して前記クライオスプレーアプリケーターの前進を制御して、クライオジェンのスプレーによって冷却される前記患者の皮膚組織の領域の部分を変更し、
前記患者の皮膚組織の領域の部分の温度を検出し、
前記クライオスプレーアプリケーターの前進、前記クライオスプレーアプリケーターと前記患者の皮膚組織の領域の部分との間の距離、またはクライオジェンの送達速度のうちの少なくとも一つを改変する
ように構成される、請求項32ないし請求項34のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項36】
前記クライオスプレーアプリケーターと前記患者の皮膚組織の領域の部分との間の距離を改変することは、
前記クライオスプレーアプリケーターと前記患者の皮膚組織の領域の部分との間の距離を変更することと、
変更された距離に基づいて、前記患者の皮膚組織の領域の更新された部分を特定することと、
更新された治療経路を生成することと
を含む、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
前記プロセッサーは、前記更新された治療経路に従って前記クライオスプレーアプリケーターの前進を制御するように構成されている、請求項36記載のシステム。
【請求項38】
前記クライオジェンの送達速度を改変することは、前記クライオスプレーアプリケーターの開放オリフィスの数を減少させることを含む、請求項35ないし請求項37のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項39】
前記クライオジェンの送達速度を改変することは、前記クライオスプレーアプリケーターの前記オリフィスでのクライオジェン圧力を低下させることを含む、請求項35ないし請求項38のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる、2018年12月21日に出願された米国仮出願第62/784,052号の優先権の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
凍結療法は、医学的療法における低温の局所的または一般的な使用である。凍結療法は、生体組織の制御された凍結を含むことがあり、皮膚組織などの生体組織の制御された凍結は、さまざまな効果を生み出すことができる。従来のクライオプローブなどの特定の組織凍結手順およびデバイスは、組織の重度の凍結を引き起こし、細胞および目に見える皮膚の損傷を引き起こす可能性がある。
【0003】
皮膚の外観を明るくすることができるか、さもなければ皮膚の色素沈着に制御可能に影響を与えることができる化粧品が求められている。例えば、美容上の理由から、全体的な顔色または皮膚の領域の色を明るくして、全体的な外観を変えることが望ましい場合がある。また、そばかす、「カフェオレ斑」、肝斑、太陽黒子、または皮膚の色素の過剰な局所量に起因する可能性のある目の下のくまなど、皮膚の特定の色素過剰領域を明るくすることも美容上の理由から望ましい場合がある。色素沈着過剰は、UV曝露、老化、ストレス、外傷、炎症などのさまざまな要因から生じる可能性がある。このような要因は、メラノサイトによる皮膚でのメラニンの過剰産生またはメラニン形成を引き起こし、これは色素沈着過剰領域の形成を引き起こす可能性がある。このような色素過剰領域は、通常、表皮および/または真皮-表皮接合部内の過剰なメラニンに関連している。しかしながら、色素沈着過剰は、真皮内に沈着した過剰なメラニンからも生じる可能性がある。
【0004】
皮膚組織の色素沈着低下(色素脱失)は、従来の凍結手術手順中に起こり得るような、組織の一時的な冷却または凍結に応答する副作用として観察されてきた。皮膚の冷却または凍結後の色素沈着低下は、メラニン生成の減少、メラノソーム生成の減少、メラノサイトの破壊、または表皮層の下部領域のケラチノサイトへのメラノソームの移動または調節の阻害に起因する可能性がある。結果として生じる色素沈着低下は、長期的または永続的である可能性がある。しかしながら、これらの凍結手順のいくつかは、皮膚組織の色素沈着過剰(または皮膚の黒ずみ)の領域を生成する可能性があることも観察されている。色素沈着の増加または減少のレベルは、冷却処理の温度、および組織が凍結状態に維持される時間の長さを含む、冷却または凍結条件の特定の状況に依存し得る。
【0005】
皮膚凍結の一貫性および全体的な色素沈着低下の一貫性を改善するために、改善された色素沈着低下治療、デバイスおよびシステムが開発されてきた。例えば、より短い時間枠(例えば30~60秒)での中程度の凍結(例えば摂氏-4~-30度)が、皮膚の色素沈着の発現に影響を与えるなど(例えば色素沈着低下)、特定の皮膚科学的効果を生み出す可能性があることが観察されている。凍結療法は、患者の皮膚へのクライオスプレーの直接適用または患者の皮膚への冷却されたプローブまたはプレートの適用を含む、さまざまな技術を使用して提供することができる。例示的な方法およびデバイスは、2009年8月7日に出願され、「METHOD AND APPARATUS FOR DERMATOLOGICAL HYPOPIGMENTATION」と題された米国特許出願公開第2011/0313411号明細書(特許文献1)、2012年11月16日に出願され、「METHOD AND APPARATUS FOR CRYOGENIC TREATMENT OF SKIN TISSUE」と題された米国特許出願公開第2014/0303696号明細書(特許文献2)、2012年11月16日に出願され、「METHOD AND APPARATUS FOR CRYOGENIC TREATMENT OF SKIN TISSUE」と題された米国特許出願公開第2014/0303697号明細書(特許文献3)、2015年2月12日に出願され、「METHOD AND APPARATUS FOR AFFECTING PIGMENTATION OF TISSUE」と題された米国特許出願公開第2015/0223975号明細書(特許文献4)、そして2016年9月6日に出願され、「MEDICAL SYSTEMS, METHODS, AND DEVICES FOR HYPOPIGMENTATION COOLING TREATMENTS」と題された米国特許出願公開第2017/0065323号明細書(特許文献5)に記載されており、これら個々の全体は参照により本明細書中に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0313411号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2014/0303696号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2014/0303697号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2015/0223975号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2017/0065323号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
皮膚または色素沈着に影響を与える限局性病変の治療は凍結療法で達成することができるが、凍結療法のための改善された方法、システムおよびデバイスを提供することが望ましいであろう。特に、一貫性のある信頼性の高い皮膚凍結および所望の皮膚治療効果を達成するためのクライオジェン(低温剤)送達に関連する改良された設計、制御およびパラメーターが有益であろう。したがって、改善された皮膚科学的クライオスプレーの方法、システムおよびデバイスが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、皮膚治療のために患者の皮膚にクライオジェンを送達する改良されたシステム、デバイスおよび方法に関する。より具体的には、本発明は、皮膚凍結による有害な副作用を制限しながら、治療中に皮膚を確実に凍結することによって皮膚治療の一貫性を提供する、改良された皮膚科学的クライオスプレー方法、デバイスおよびシステムに関する。例示的な実施形態は、近位端部および遠位端部を有する機械式アーム、ならびに機械式アームの遠位端部に結合されたクライオスプレーアプリケーターを含む。機械式アームは、ロボット機械式アームおよび/または遠隔操作機械式アームであってもよい。機械式アームは、所望の数の運動軸を有することができ、例えば6軸の機械式アームであってもよい。機械式アームは、ジョイントによって結合された複数のリンケージを含むことができ、これらのジョイントはリンケージの相対的な動きを可能にする。機械式アームは、制御信号に応答して、リンケージを結合するジョイントのいくつかまたは全ての動きを介して機械のリンケージのいくつかまたは全ての相対位置に影響を及ぼし、これによってクライオスプレーアプリケーターの位置および/または方向を変えることができるアクチュエータを含むことができる。機械式アームのアクチュエータを制御する制御信号は、機械式アームのアクチュエータと通信可能に結合できるプロセッサーによって生成することができる。プロセッサーは、クライオスプレーアプリケーターの向き、治療されている患者の皮膚組織からクライオスプレーアプリケーターを分離する距離、および/または治療されている患者の皮膚組織に適用される冷却を制御するための制御信号を生成することができる。
【0009】
クライオスプレーアプリケーターは、それを経て、患者の組織を冷却して患者の組織に治療を提供するためのクライオジェンを供出することができるオリフィスのアレイを含むことができる。クライオスプレーアプリケーターは、いくつかの実施形態では、オリフィスのアレイの周りに配置することができる複数のセンサーをさらに含むことができる。これらのセンサーは、オリフィスのアレイを治療中の皮膚組織から分離させる距離、および/または皮膚組織に対するクライオスプレーアプリケーターの向きを検出することができる。これらのセンサーは、クライオスプレーアプリケーターを患者の皮膚から一定の距離に保つことができ、オリフィスのアレイを、オリフィスのアレイから噴霧されるクライオジェンが患者の治療される皮膚組織に対して垂直に噴霧されるような向きに維持することができる。
【0010】
本開示の一態様は、患者の皮膚組織の領域を冷却する方法に関する。この方法は、クライオスプレーアプリケーターに結合された機械式アームの動きを介して、治療される患者の皮膚組織の領域に近接してクライオスプレーアプリケーターを自動的に位置決めすることを含むことができる。この方法は、クライオスプレーアプリケーターのオリフィスのアレイを通してクライオジェンのスプレーを向けて、患者の皮膚組織の領域の一部分を冷却することを含むことができる。この方法は、機械式アームの動きを介してクライオスプレーアプリケーターを前進させて、クライオジェンのスプレーによって冷却される患者の皮膚組織の領域の一部分を変更することを含むことができる。この方法は、クライオスプレーアプリケーターが前進している間に、患者の皮膚組織の領域の一部分に対してクライオスプレーアプリケーターの位置を自動的に調整することを含むことができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、患者の皮膚組織の領域の一部分に対してクライオスプレーアプリケーターの位置を自動的に調整することは、クライオスプレーアプリケーターと患者の皮膚組織の領域の一部分との間の距離、および患者の皮膚組織の領域の一部分に対するクライオスプレーアプリケーターの向きのうちの少なくとも一つを調整することを含むことができる。いくつかの実施形態では、クライオスプレーアプリケーターと皮膚組織の領域の一部分との間の距離を自動的に調整することは、クライオスプレーアプリケーターに結合された少なくとも一つの距離センサーを用いて、クライオスプレーアプリケーターと皮膚組織の領域の一部分との間の距離を検出することを含むことができる。いくつかの実施形態では、患者の皮膚組織の領域の一部分に対してクライオスプレーアプリケーターの向きを自動的に調整することは、少なくとも一つのアライメントセンサーを用いて、皮膚組織の領域の一部分に対するクライオスプレーアプリケーターの向きを検出することを含むことができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、クライオスプレーアプリケーターのオリフィスのアレイを通してクライオジェンのスプレーを向け、患者の皮膚組織の領域の一部分を冷却することにより、患者の皮膚組織の領域の一部分は変形する。いくつかの実施形態では、クライオスプレーアプリケーターの向きは、少なくとも部分的に、患者の皮膚組織の領域の一部分の変形に基づいて調整される。いくつかの実施形態では、クライオスプレーアプリケーターと患者の皮膚組織の領域の一部分との間の距離は、少なくとも部分的に、患者の皮膚組織の領域の一部分の変形に基づいて調整される。いくつかの実施形態では、この方法は、皮膚組織の領域の一部分の温度を検出することと、クライオスプレーアプリケーターの前進、クライオスプレーアプリケーターと患者の皮膚組織の領域の一部分との間の距離またはクライオジェンの送達速度のうちの少なくとも一つを変更することとを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、赤外線カメラは、皮膚組織の領域の一部分の温度を検出する。いくつかの実施形態では、皮膚組織の領域の一部分の温度を検出することは、皮膚組織の領域の一部分の凍結を検出すること、または皮膚組織の領域の一部分の冷却速度を検出することを含むことができる。いくつかの実施形態では、クライオスプレーアプリケーターと患者の皮膚組織の領域の一部分との間の距離を変更することは、クライオスプレーアプリケーターと患者の皮膚組織の領域の一部分(この部分はクライオジェンのスプレーによって処理された組織を含むことができる)との間の距離を変化させることと、変化させられた距離に基づいて更新された一部分を特定することと、更新された治療経路を生成することとを含むことができる。いくつかの実施形態では、この方法は、更新された治療経路に従ってクライオスプレーアプリケーターを前進させることを含むことができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、クライオジェン送達速度を変更することは、クライオスプレーアプリケーター内の開放オリフィスの数を減少させることを含むことができる。いくつかの実施形態では、クライオジェン送達速度を変更することは、クライオスプレーアプリケーターのオリフィスでのクライオジェン圧力を低下させることを含むことができる。
【0015】
いくつかの実施形態において、機械式アームは6軸機械式アームであってもよい。いくつかの実施形態では、機械式アームはロボットアームであってもよい。いくつかの実施形態では、機械式アームは遠隔操作アームであってもよい。いくつかの実施形態では、クライオスプレーアプリケーターを患者の皮膚組織の領域に近接して配置することは、クライオスプレーアプリケーターを患者の皮膚組織の領域の一部分上で動かすことと、クライオスプレーアプリケーターと皮膚組織の一部分とを分離する初期距離を特定することと、初期距離を調整することとを含むことができる。
【0016】
本開示の一態様は、皮膚冷却治療システムに関する。このシステムは、近位端部および遠位端部を有する機械式アームと、この機械式アームを制御するように構成されたプロセッサーとを含む。システムは、機械式アームの遠位端部に結合されたクライオスプレーアプリケーターを含むことができる。クライオスプレーアプリケーターは、オリフィスのアレイを含むことができる。いくつかの実施形態では、クライオスプレーアプリケーターは、機械式アームによって移動可能であり、治療のために皮膚組織の領域の一部分にクライオジェンのスプレーを送達する。
【0017】
いくつかの実施形態において、機械式アームは6軸機械式アームであってもよい。いくつかの実施形態では、機械式アームはロボットアームであってもよい。いくつかの実施形態では、クライオスプレーアプリケーターは、クライオスプレーアプリケーターと、クライオジェンのスプレーが向けられる治療のための皮膚組織の領域の一部分との間の距離を検出することができる少なくとも一つの距離センサーを含むことができる。いくつかの実施形態では、少なくとも一つの距離センサーは、オリフィスのアレイの周りに配置された二つの距離センサーを含むことができる。いくつかの実施形態では、二つの距離センサーは、オリフィスのアレイからオフセットされた第1の位置にある第1の距離センサーであって、第1の向きを有する第1の距離センサーと、オリフィスのアレイからオフセットされた第2の位置にある第2の距離センサーであって、第2の向きを有する第2の距離センサーとを含む。いくつかの実施形態では、第1の向きおよび第2の向きのそれぞれは、クライオスプレーアプリケーターのスプレーラインに向けられる。
【0018】
いくつかの実施形態では、クライオスプレーアプリケーターは、皮膚組織の領域の一部分に対するクライオスプレーアプリケーターの向きを検出することができる少なくとも一つのアライメントセンサーを含むことができる。いくつかの実施形態では、少なくとも一つのアライメントセンサーは、それぞれが共通の方向を向いている三つのアライメントセンサーを含むことができ、これら三つのアライメントセンサーは、クライオスプレーアプリケーターのオリフィスのアレイの周りに放射状に配置される。
【0019】
いくつかの実施形態では、プロセッサーは、機械式アームの遠位端部の動きを制御することができる。いくつかの実施形態では、プロセッサーは、クライオスプレーアプリケーターの動き、およびクライオスプレーアプリケーターと皮膚組織の領域の一部分との間の距離を制御することができる。いくつかの実施形態では、プロセッサーは、少なくとも一つの距離センサーの出力に基づいて、クライオスプレーアプリケーターと皮膚組織の領域の一部分との間の距離を制御することができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、プロセッサーは、皮膚組織の領域の一部分に対するクライオスプレーアプリケーターの向きを制御することができる。いくつかの実施形態では、プロセッサーは、少なくとも一つのアライメントセンサーの出力に基づいて、皮膚組織の領域の一部分に対するクライオスプレーアプリケーターの向きを制御することができる。いくつかの実施形態では、クライオスプレーアプリケーターは、患者の皮膚組織の領域の一部分の温度を検出するように構成された温度検出機構をさらに含む。いくつかの実施形態では、温度検出機構は赤外線カメラであってもよい。いくつかの実施形態では、温度検出機構は、皮膚組織の領域の一部分の凍結を検出するか、または皮膚組織の領域の一部分の凍結速度を検出することができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、プロセッサーは、機械式アームの動きを介してクライオスプレーアプリケーターの前進を制御して、クライオジェンのスプレーによって冷却される患者の皮膚組織の領域の部分を変更し、皮膚組織の領域の一部分の温度を検出し、そしてクライオスプレーアプリケーターの前進、クライオスプレーアプリケーターと患者の皮膚組織の領域の一部分との間の距離またはクライオジェン送達速度のうちの少なくとも一つを変更することができる。いくつかの実施形態では、クライオスプレーアプリケーターと患者の皮膚組織の領域の一部分との間の距離を変更することは、クライオスプレーアプリケーターと患者の皮膚組織の領域の一部分(この部分はクライオジェンのスプレーによって治療される組織を含む)との間の距離を変化させることと、変化させられた距離に基づいて更新された部分を特定することと、更新された治療経路を生成することとを含むことができる。いくつかの実施形態では、プロセッサーは、更新された治療経路に従ってクライオスプレーアプリケーターの前進を制御するように構成される。いくつかの実施形態では、クライオジェン送達速度を変更することは、クライオスプレーアプリケーターの開放オリフィスの数を減少させることを含むことができる。いくつかの実施形態では、クライオジェン送達速度を変更することは、クライオスプレーアプリケーターのオリフィスでのクライオジェン圧力を低下させることを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】皮膚冷却治療システムの一実施形態の概略図である。
図2】皮膚冷却治療システムの一実施形態の斜視図である。
図3】クライオスプレーアプリケーターの一実施形態の斜視図である。
図4】クライオスプレーアプリケーターの一実施形態の底面図である。
図5】クライオスプレーアプリケーターの一実施形態の側面図である。
図6】クライオスプレーアプリケーターの一実施形態の正面図である。
図7】皮膚組織に冷却治療を提供するためのプロセスの一実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
冷却ベースの治療は、広範囲の健康および美的問題に対処するために頻繁に使用される。これらの治療のいくつかは、肌の美白を創出するために特別に設計されている。この肌の美白は、小さな皮膚領域に限局されることもあれば、あるいは広い皮膚領域に影響を及ぼすこともある。治療の適切な一貫性を達成することが困難な場合があるため、治療される皮膚の領域は、そのような治療を困難にする可能性がある。これらの治療は、治療された皮膚を特定の温度および/または温度範囲に冷却することを含むことがあり、場合によっては、それらの温度および/または温度範囲を所定の時間および/または時間範囲にわたって維持することを含むことがある。場合によっては、多くの治療の有効性は、特定の時間にわたって特定の量の冷却を提供することに依存する。さらに、治療領域が増加するにつれて、一貫した結果を達成することの難しさが増す。
【0024】
本開示は、治療の制御を改善するシステム、デバイスおよび方法に関する。この改善された治療の制御は、システムによって、および/または多軸アームであってもよい機械式アームの遠位端部に結合されたクライオスプレーアプリケーターを含むシステムの使用によって達成することができる。クライオスプレーアプリケーターの位置および/または向きは、機械式アームの動きによって、かつ/または機械式アームの一つ以上のジョイントの動きによって制御することができる。クライオスプレーアプリケーターは、例えば、クライオスプレーアプリケーターと、治療される皮膚との間の距離、治療される皮膚に対するクライオスプレーアプリケーターの向き、および/または治療される皮膚の冷却または温度または色を検出することができる一つ以上のセンサーを含むことができる。機械式アームを制御して、クライオスプレーアプリケーターを患者の皮膚全域でスイープさせ、皮膚の目的の領域を治療することができる。クライオスプレーアプリケーターのスイープは、例えば、皮膚の温度、クライオスプレーアプリケーターと治療される皮膚との間の距離、および/または皮膚に対するクライオスプレーアプリケーターの向きを含む一つ以上のセンサーから受け取った情報に従って制御できる。
【0025】
ここで図1を参照すると、皮膚冷却治療システム100の一実施形態の概略図が示されている。皮膚冷却治療システム100は、機械式アーム104、特に機械式アーム104の遠位端部に結合されたクライオスプレーアプリケーター102を含むことができる。クライオスプレーアプリケーター102は、皮膚の治療される部分に冷却剤を送達するように構成できる。いくつかの実施形態では、クライオスプレーアプリケーター102は、治療される皮膚の部分に向かってかつ/またはその上にクライオジェンのスプレーを送達するように構成することができる。このクライオジェンのスプレーは、一つ以上のオリフィスを通して送達することができ、これらのオリフィスは、一つ以上のノズルを含むことができる。オリフィスのアレイを含む例示的なクライオスプレーアプリケーター102の実施形態は、2018年6月27日に出願され、「Dermatological Cryospray Devices Having Linear Array Of Nozzles And Methods Of Use」と題された米国特許出願公開第16/020,852号明細書に開示されており、その全体は参照により本明細書中に組み込まれる。機械式アーム104およびクライオスプレーアプリケーター102の詳細は、2018年12月21日に出願され、「AUTOMATED DERMATOLOGICAL CRYOSPRAY TREATMENT PLANNING SYSTEM」と題された弁護士整理番号:101537-1110369-001000USを有する同時出願された米国仮出願番号(未割り当て)に記載されており、その全体は参照により本明細書中に組み込まれる。
【0026】
機械式アーム104は、所望の数の運動軸を有することができ、いくつかの実施形態では、それは6軸アームであってもよい。いくつかの実施形態では、機械式アーム104は、一つの軸に沿った動きの制御を可能にするであろう単一の自由度(例えばリニアステージ)、二つの軸に沿った動きの制御を可能にするであろう二つの自由度、三つの自由度、 四つの自由度、五つの自由度、六つの自由度および/またはその他の数の自由度を有することができる。いくつかの実施形態では、自由度の数は、クライオスプレーアプリケーターの所望のレベルの制御および動きに基づいて選択することができる。したがって、自由度の数が多いほど、クライオスプレーアプリケーター102の位置および/または向きをより細かく制御できる。機械式アーム104は、現在市販されている、いくつかの機械式アームのいずれかであってもよい。機械式アーム104はロボットであってもよく、かつ/または遠隔操作されてもよい。
【0027】
システム100は、機械式アーム104と、特に機械式アーム104の一つ以上のアクチュエータと通信可能に結合することができるコントローラー106および/またはプロセッサー106を含むことができる。いくつかの実施形態では、コントローラー106と機械式アーム104との通信結合は有線または無線接続を介することができ、通信結合は、稲妻107によって示される。プロセッサー106は、Intel(登録商標)またはAdvanced Micro Devices, Inc.(登録商標)、Ateml、Texas Instrumentなどから入手可能なマイクロプロセッサーなどのマイクロプロセッサーを含むことができる。
【0028】
コントローラー106および/またはプロセッサー106は、クライオスプレーアプリケーター102の動きを制御することができる制御信号を生成することができる。クライオスプレーアプリケーター102の動きの制御は、プロセッサー106が、患者の皮膚全域にわたるクライオスプレーアプリケーター102のスイープ、クライオスプレーアプリケーター102と現在治療されている皮膚の部分との間の距離、および/または現在治療されている皮膚の部分に対するクライオスプレーアプリケーター102の向きを制御することを可能にすることができる。
【0029】
コントローラー106は、いくつかの実施形態では、治療のための皮膚の所望の領域に関連する情報および治療に関連する情報を受信することができる。この情報を用いて、コントローラー106は、いくつかの実施形態では、治療経路を生成することができ、この治療経路は、クライオスプレーアプリケーター102の動きおよびクライオスプレーアプリケーター102による冷却の送達を特徴付ける。いくつかの実施形態では、コントローラー106は、治療の提供中に、これらの治療経路を変更することができる。いくつかの実施形態では、例えば、クライオスプレーアプリケーター102によってある瞬間に処理される皮膚の部分のサイズは、例えば、それを通ってクライオジェンが噴霧されるオリフィスのアレイ内のオリフィスの数、治療される皮膚の部分とクライオスプレーアプリケーター102との間の距離などに基づいて変化してもよい。そのような実施形態では、ある瞬間に治療される皮膚の部分のサイズが変化するにつれて、コントローラー106は、ある瞬間に治療される皮膚の部分のサイズのこの変化を補償するために更新された治療経路を生成することができる。
【0030】
コントローラー106は、ユーザーデバイス108と通信可能に接続することができる。ユーザーデバイスは、コントローラー106とは異なっていてもよく、あるいは、いくつかの実施形態では、ユーザーデバイス108はコントローラー106を含むことができる。ユーザーデバイス108は、ユーザーが皮膚冷却治療システム100によって提供される治療を制御するといった、ユーザーに情報を提供しかつユーザーから入力を受け取るように構成された、いかなるデバイスであってもよい。ユーザーデバイス108は、いくつかの実施形態では、ラップトップ、タブレット、スマートフォン、モニター、ディスプレイ、キーボード、キーパッド、マウスなどのコンピューティングデバイスを含むことができる。いくつかの実施形態では、コントローラー106とユーザーデバイス108との通信結合は、有線または無線接続を介することができ、通信結合は稲妻110によって示される。
【0031】
ここで図2を参照すると、皮膚冷却治療システム100の一実施形態の斜視図が示されている。当該システムは、クライオスプレーアプリケーター102および機械式アーム104を含む。図2に見られるように、機械式アーム104は、複数のジョイント202によって結合された複数のリンケージ200を含み、これらジョイント202はリンケージ200の相対的な動きを可能にする。機械式アーム104は、複数のアクチュエータをさらに含むことができ、これらのアクチュエータは、コントローラー106から受信した制御信号に応答して、リンケージ200を結合するジョイント202の一部または全ての動きを介して、リンケージ200の一部または全ての相対位置に影響を与え、これによってクライオスプレーアプリケーター102の位置および/または向きに影響を与えることができる。
【0032】
機械式アーム104は、ケーブル204などの一つ以上の通信機構をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、ケーブル204などの通信機構は、機械式アーム104を、具体的には機械式アーム104のアクチュエータをコントローラー106に通信結合することができる。
【0033】
機械式アーム104は、近位端部220および遠位端部222をさらに備える。いくつかの実施形態では、機械式アーム104の近位端部220は、例えば、床、テーブル、カート、ワゴンなどの物体に固定することができる。機械式アーム104の遠位端部222は、クライオスプレーアプリケーター102に結合することができ、機械式アーム104の近位端部220に対して移動することができる。いくつかの実施形態では、プロセッサー106は、機械式アーム104の遠位端部222および/またはクライオスプレーアプリケーター102を制御するように構成することができる。
【0034】
クライオスプレーアプリケーター102は、複数のセンサー206を含むことができ、これらのセンサーは、一つ以上のアライメントセンサー208、一つ以上の距離センサー210、および/または一つ以上の温度検出機構212を含むことができる。いくつかの実施形態は、センサー206は、患者214の治療に関連する情報、具体的には、患者の皮膚の一部または全ての治療に関連する情報を検出することができる。いくつかの実施形態では、センサー206は、クライオスプレーアプリケーター102と現在治療されている皮膚のパッチとの間の距離、および/または現在治療されている皮膚のパッチに対するクライオスプレーアプリケーター102のアライメントを検出することができる。アライメントセンサー208および/または距離センサー210の機能を以下で説明するが、これらの機能は、アライメントセンサー208および距離センサー210の一方または両方を含むことができるセンサー206によって発揮され得ることを理解されたい。
【0035】
ここで図3を参照すると、クライオスプレーアプリケーター102の一実施形態の斜視図が示され、このクライオスプレーアプリケーター102は、機械式アーム104の遠位端部222に結合することができる。クライオスプレーアプリケーター102はスプレーヘッド300を含み、このスプレーヘッド300は、それを経て、クライオジェンを患者の皮膚に向かってかつ/またはその上に、特に現在治療されている患者の皮膚の部分に向かってかつ/またはその上に噴霧することができるオリフィス302のアレイを含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、クライオスプレーアプリケーター102は、複数のセンサー206を含み、具体的には、一つ以上のアライメントセンサー208、一つ以上の距離センサー210、あるいは一つ以上の温度検出機構212のうちの少なくとも一つを含む。いくつかの実施形態では、一つ以上の温度検出機構212は、現在治療されている患者の皮膚の一部分の凍結を検出し、現在治療されている患者の皮膚の一部分の温度を検出し、現在治療されている患者の皮膚の一部分の凍結速度を検出するように構成することができる。いくつかの実施形態では、温度検出機構は、可視スペクトルカメラおよび/または赤外線カメラ301であってもよいカメラを含むことができ、赤外線カメラ301は、現在治療されている患者の皮膚の一部分に向けることができ、あるいは言い換えれば、オリフィス302のアレイを通って中央方向に延在する、本明細書では「スプレーのライン304」とも呼ばれる軸線304は、現在治療されている皮膚の一部分が赤外線カメラ301の視野内にあるように、赤外線カメラ301の視野の中心で軸線306と交差する。
【0037】
ここで図4を参照すると、クライオスプレーアプリケーター102の一実施形態の底面図が示されている。図からわかるように、クライオスプレーアプリケーター102は、スプレーヘッド300およびオリフィス302のアレイを含む。図4の実施形態では、クライオスプレーアプリケーター102は一つ以上のアライメントセンサー208を含み、これらのセンサーは、クライオスプレーアプリケーター102の向きを、具体的には、現在治療されている患者の皮膚の一部分に対するスプレーヘッド300および/またはオリフィス302のアレイの向きを検出するように構成される。いくつかの実施形態では、クライオジェンスプレーは、治療を受ける患者の皮膚組織の一部分の変形を引き起こすことができ、アライメントセンサー208は、いくつかの実施形態では、この変形を検出することができ、かつ/または変形した組織に対するクライオスプレーアプリケーター102の向きを検出することができる。
【0038】
図4の実施形態に見られるように、少なくとも一つのアライメントセンサー208は、三つのアライメントセンサー208-A,208-B,208-Cを備える。これらの三つのアライメントセンサー208-A,208-B,208-Cは、スプレーヘッド300および/またはオリフィス302のアレイの周りに配置され、具体的には、スプレーヘッド300および/またはオリフィス302のアレイの周りに放射状に配置される。いくつかの実施形態では、これらの三つのアライメントセンサー208-A,208-B,208-Cのそれぞれは、共通の方向を向くことができる。具体的には、そして図5(クライオスプレーアプリケーター102の一実施形態の側面図)に示すように、三つのアライメントセンサー208-A,208-B,208-Cは、それぞれ共通の方向を向くことができ、具体的には、第1のアライメントセンサー208-A、第2のアライメントセンサー208-B、そして第3のアライメントセンサー208-Cのそれぞれは、(矢印502,504によって示される)共通の方向を向くことができる。いくつかの実施形態では、この共通の方向は、軸線304がオリフィス302のアレイを通って中央に延びる方向に平行であってもよい。
【0039】
クライオスプレーアプリケーター102は、クライオスプレーアプリケーター102からの、具体的にはスプレーヘッド300および/またはオリフィス302のアレイからの距離を検出するように構成することができる一つ以上の距離センサー210を含む。いくつかの実施形態では、一つ以上の距離センサー210は二つの距離センサー210-A,210-Bを含むことができる。距離センサー210-A,210-Bは、スプレーヘッド300の周りおよび/またはオリフィス302のアレイの周りに配置することができ、いくつかの実施形態では、スプレーヘッド300の周りおよび/またはオリフィス302のアレイの周りに放射状に配置することができる。いくつかの実施形態では、第1の距離センサー210-Aは、オリフィス302のアレイおよび/またはスプレーヘッド300から第1の方向に第1の距離だけオフセットされた第1の位置にあり、第2の距離センサー210-Bは、オリフィス302のアレイおよび/またはスプレーヘッド300から第2の方向に第2の距離だけオフセットされた第2の位置にある。いくつかの実施形態では、第1の距離センサー210-Aの第1のオフセット距離は、第2の距離センサー210-Bの第2のオフセットと等しくてもよい。いくつかの実施形態では、第1の距離センサー210-A、第2の距離センサー210-B、ならびにスプレーヘッド300および/またはオリフィス302のアレイは、図4に示されるように見たときに単一の軸線400が第1の距離センサー210-A、第2の距離センサー210-Bならびにスプレーヘッド300および/またはオリフィス302のアレイのそれぞれを通って延びるように、直線的に配置することができる。第1の距離センサー210-A、第2の距離センサー210-Bならびにスプレーヘッド300および/またはオリフィス302のアレイが直線的に配置されるそうした実施形態では、第1の方向は第2の方向と反対であってもよい。
【0040】
図6に見られるように、クライオスプレーアプリケーター102は、第1の距離センサー210-Aおよび第2の距離センサー210-Bを含む。第1の距離センサー210-Aは、第1の距離軸線600に沿った第1の向きを有し、第2の距離センサー210-Bは、第2の距離軸線602に沿った第2の向きを有する。図から分かるように、第1の距離センサー210-Aの第1の向きは第2の距離センサー210-Bの第2の向きとは異なる。さらに図からわかるように、第1の距離センサー210-Aの第1の向きは、クライオスプレーアプリケーター102のスプレーのライン304に向かって第1の距離センサー210-Aを指し、第2の距離センサー210-Bの第2の向きは、クライオスプレーアプリケーター102のスプレーのライン304に向かって第2の距離センサー210-Bを指す。スプレーのライン304に向かう第1の距離センサー210-Aおよび第2の距離センサー210-Bのこの指向は、第1および第2の距離軸線600,602のそれぞれと、スプレーのライン304との交点によって示される。いくつかの実施形態では、スプレーのラインに向かうこの向きは、クライオスプレーアプリケーター102から、クライオジェンスプレーを介して治療される皮膚の一部分までの距離の測定を容易にすることができる。いくつかの実施形態では、クライオジェンスプレーは、治療を受ける患者の皮膚組織の一部分の変形を引き起こすことができ、スプレーのライン304に対する第1および第2の距離センサー210-A,210-Bの向きは、クライオスプレーアプリケーター102と、治療を受ける患者の皮膚組織の一部分との間の距離の測定に、この変形の影響を取り込むことを容易にすることができる。
【0041】
ここで図7を参照すると、患者の皮膚の領域に治療を提供するためのプロセス700の一実施形態を示すフローチャートが示されている。プロセスは、皮膚冷却治療システム100の全部または一部を使用して実行することができ、具体的には、プロセッサー106によって実行することができる。いくつかの実施形態では、プロセス700は、治療の一部として患者の皮膚の領域を冷却するための方法を提供することができる。
【0042】
プロセス700はブロック702で始まり、クライオスプレーアプリケーター102は、患者の皮膚組織に近接して配置され、具体的には、クライオスプレーアプリケーター102は、患者の皮膚組織の領域に近接して配置され、この領域は、治療される患者の皮膚組織を取り囲む。いくつかの実施形態では、クライオスプレーアプリケーター102の近接位置決めは、このクライオスプレーアプリケーター102に結合された機械式アーム104の一つ以上の動きを介して自動的に実行できる。本明細書で使用される場合、「領域の一部分」および/または部分は、現在治療されているか、あるいはスプレーヘッド300によるクライオジェンの分配によってクライオスプレーアプリケーター102を動かさずに治療されるようにクライオスプレーアプリケーター102に対して位置決めされる皮膚組織の部分集合を特定する。クライオスプレーアプリケーター102の位置決めは、クライオスプレーアプリケーター102と患者の皮膚組織の領域の一部分とを分離する初期距離を特定することと、クライオスプレーアプリケーター102と患者の皮膚組織の領域の一部分とを分離する初期距離を調整することとをさらに含むことができる。
【0043】
ブロック704でクライオジェンが噴霧される。いくつかの実施形態では、クライオジェンは、クライオスプレーアプリケーター102のスプレーヘッド300のオリフィス302のアレイを通して噴霧することができる。このクライオジェンは、オリフィス302のアレイのオリフィスによって、治療される患者の皮膚組織の領域の一部分に向かって噴き出すように向けることができる。クライオジェンは、患者の皮膚組織の領域の治療の一部として、および/または患者の皮膚組織の一部分の治療の一部として、患者の皮膚組織の領域の一部分を冷却するように噴霧しかつ/または向けることができる。クライオジェンは、プロセッサー102によって生成された一つ以上の制御信号によって、スプレーヘッド300のオリフィス302のアレイに流体的に結合された一つ以上のバルブを開くことによって噴霧することができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、クライオジェンは、患者の皮膚組織の領域の一部分を変形させるのに十分な力で噴霧することができる。いくつかの実施形態では、例えば、クライオジェンのスプレーは、患者の皮膚組織の領域の一部分に衝突し、患者の皮膚組織の領域の一部分を変形させることが、より具体的には、患者の皮膚組織の領域の一部分を押し下げることができる。変形は、患者ごとに、および所与の患者の治療領域ごとに、あるいは所与の治療領域全域にわってさえ変化してもよく、それは、例えば、患者の皮膚の緊張、患者の体組成などに基づくことができる。いくつかの実施形態では、そして患者の皮膚の変形を補償するために、クライオジェンスプレーの方向付けは、クライオスプレーアプリケーター102と患者の皮膚組織の領域の一部分との間の距離を測定すること、およびこの距離を所望の値となるようにかつ/または所望の距離範囲内にあるように調整することを含むことができる。
【0045】
ブロック706で皮膚温度が検出される。いくつかの実施形態では、検出された皮膚温度は、患者の皮膚組織の領域の一部分の温度であってもよい。この皮膚温度は、クライオスプレーアプリケーター102の一つ以上の温度検出機構212によって検出することができ、この機構212は、例えば、赤外線カメラを含むことができる。いくつかの実施形態では、検出および/または測定される温度は、患者の皮膚組織の領域の一部分の温度であってもよく、かつ/または温度に関連する属性であってもよい。この属性は、例えば、冷却速度、または凍結状態(皮膚の領域の一部分が治療を受けているかどうか)を含むことができる。いくつかの実施形態では、例えば、皮膚組織の領域の一部分の温度を検出することは、皮膚組織の領域の一部分の凍結を検出すること、あるいは患者の皮膚組織の領域の一部分の冷却速度を検出することを含む。いくつかの実施形態では、皮膚温度は、機構212によって、具体的には赤外線カメラ310によって検出することができる。あるいは、色または色の変化を使用して、皮膚の凍結状態を特定することができる。いくつかの実施形態では、この色および/または色の変化、および特定された凍結状態は、一つ以上の治療決定を行う際に使用することができる。
【0046】
温度が検出された後、プロセス700は判定状態708に進み、ここで、温度閾値に到達したかどうかが特定される。いくつかの実施形態では、この閾値は、プロセッサー106に関連するメモリから検索することができる。この閾値は、一つ以上の患者属性に基づいて、かつ/または提供される治療に基づいて変化してもよい。いくつかの実施形態では、例えば、ある治療が行われているとき、温度閾値はより低くてもよく(例えば、より低い温度を特定する)、いくつかの実施形態では、他の治療が行われているとき、温度閾値はより高くてもよい(例えば、より高い温度を特定する)。皮膚美白が行われている、いくつかの実施形態では、温度閾値は、治療された皮膚の色素沈着の所望の減少を達成するように選択することができる。
【0047】
検出された皮膚温度は、閾値と比較することができる。この比較は、プロセス106によって実行することができる。閾値に達していないと判定された場合、プロセス700は、ブロック704に戻り、上で概説したように進むことができる。閾値に到達したと判定された場合、プロセス700はブロック710に進むことができ、ここでクライオスプレーアプリケーター102が前進する。いくつかの実施形態では、クライオスプレーアプリケーター102は、機械式アームの全部または一部の動きによって、具体的には、一つ以上の制御信号(この制御信号はクライオスプレーアプリケーター102を前進させるために機械式アーム104の動作を指示する)の生成およびプロセッサー106から機械式アームへのその送信によって前進させることができる。したがって、いくつかの実施形態では、プロセッサーは、機械式アーム104の動きを介してクライオスプレーアプリケーター102の前進を制御して、クライオジェンのスプレーによって現在治療されている皮膚の部分を変更するように構成することができる。いくつかの実施形態では、クライオスプレーアプリケーター102の前進は、治療されている患者の皮膚の表面に平行なクライオスプレーアプリケーター102のスイープ運動を含む。クライオスプレーアプリケーター102の前進は、クライオジェンスプレーによって冷却されかつ/または治療されている患者の皮膚組織の領域の部分を変更することができる。
【0048】
ブロック712では、センサーデータが受信される。いくつかの実施形態では、センサーデータは、複数のセンサー206のいくつかまたは全てから受信することができ、これらのセンサーは、一つ以上のアライメントセンサー208、一つ以上の距離センサー210、および/または一つ以上の温度検出機構212を含むことができる。センサーデータは、プロセッサー106によって受信することができる。ブロック714において、クライオスプレーアプリケーター102および/または治療される患者の皮膚の一部分との間の距離が特定され、かつ/または治療される患者の皮膚の一部分に対するクライオスプレーアプリケーター102のアライメントが特定される。この距離は、いくつかの実施形態では、一つ以上の距離センサー210から受信したデータに基づいてプロセッサー106によって特定することができ、かつ/または、上記アライメントは、いくつかの実施形態では、一つ以上のアライメントセンサー208から受信したデータに基づいてプロセッサー106によって特定することができる。
【0049】
ブロック716において、皮膚温度および/または皮膚状態が特定される。いくつかの実施形態では、この皮膚温度および/または皮膚状態は、治療される皮膚の測定温度、皮膚の色または色の変化、治療される皮膚の冷却および/または冷却速度を示す値、例えば、治療される皮膚の凍結の開始を示す一つ以上の値、治療される皮膚の凍結速度を示す一つ以上の値などの凍結状態を示す測定値であってもよい。いくつかの実施形態では、皮膚温度および/または皮膚状態は、一つ以上の温度検出機構212から、具体的には赤外線カメラから受信した情報に基づいて、プロセス106によって特定することができる。
【0050】
ブロック718において、スプレーアプリケーター102と現在治療されている皮膚の一部分との間の距離、現在治療されている皮膚の一部分に対するスプレーアプリケーター102のアライメント、および/または現在治療されている皮膚の一部分にスプレーアプリケーター102によって加えられる冷却の一つ以上が変更される。いくつかの実施形態では、この変更は、プロセッサー106によって生成される制御信号によって指示され、制御信号は、機械式アーム104の全部または一部の動きを引き起こす。したがって、いくつかの実施形態では、プロセッサー106は、クライオスプレーアプリケーターと、少なくとも一つの距離センサー210の出力に基づいて現在治療されている皮膚の一部分との間の距離、少なくとも一つのアライメントセンサー208の出力に基づいて現在治療されている皮膚の一部分に対するクライオスプレーアプリケーターのアライメントおよび/または向き、および/または現在治療されている皮膚の一部分の冷却を制御するように構成することができる。いくつかの実施形態では、スプレーアプリケーター102と、現在治療されている皮膚の一部分との間の距離、現在治療されている皮膚の一部分に対するスプレーアプリケーター102のアライメント、および/または現在治療されている皮膚の一部分にスプレーアプリケーター102によって加えられる冷却のうちの一つ以上を、ブロック714および716の判定に基づいて変更することができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、スプレーアプリケーター102と現在治療されている皮膚の一部分との間の距離、現在治療されている皮膚の一部分に対するスプレーアプリケーター102のアライメントおよび/または向き、および/または現在治療されている皮膚の一部分にスプレーアプリケーター102によって加えられる冷却のうちの少なくとも一つを変更することは、現在治療されている患者の皮膚組織の一部分に対するクライオスプレーアプリケーターの位置の自動調整を含むことができる。いくつかの実施形態では、位置のこの自動調整は、クライオスプレーアプリケーターが前進している間に生じてもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、クライオスプレーアプリケーター102と、現在治療されている皮膚の一部分との間の距離を自動的に調整することは、センサー206の少なくとも一つから、具体的には少なくとも一つの距離センサー210からセンサーデータを受信することと、受信したセンサーデータに基づいてクライオスプレーアプリケーター102と治療される皮膚の一部分との間の距離を特定することと、クライオスプレーアプリケーター102と治療される皮膚の一部分との間の所望の距離を達成するように機械式アーム104を制御するための制御信号を生成することとを含むことができる。いくつかの実施形態では、クライオスプレーアプリケーター102と現在治療されている皮膚の一部分との間の距離は、少なくとも部分的に、現在治療されている皮膚の一部分の変形に基づいて調整することができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、現在治療されている皮膚の一部分に対するクライオスプレーアプリケーター102のアライメントおよび/または向きを自動的に調整することは、例えば、センサー206の少なくとも一つから、具体的にはアライメントセンサー208の少なくとも一つから、現在治療されている皮膚の一部分に対するクライオスプレーの検出された向きおよび/またはアライメントを特徴付けるセンサーデータを受信することと、現在治療されている皮膚の一部分に対するクライオスプレーアプリケーター102のアライメントおよび/または向きをプロセッサー106を用いて特定することと、治療されている皮膚の一部分に対するクライオスプレーアプリケーター102の所望のアライメントおよび/または向きを達成するために制御信号を生成して、機械式アーム104を制御することとを含むことができる。いくつかの実施形態では、現在治療されている皮膚の一部分に対するクライオスプレーアプリケーター102のアライメントおよび/または向きは、少なくとも部分的に、現在治療されている皮膚の一部分の変形に基づいて調整することができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、現在治療されている皮膚の一部分の冷却を変更することは、クライオスプレーアプリケーター102の前進を変更すること、クライオスプレーアプリケーター102と現在治療されている皮膚の一部分との間の距離を変更すること、および/またはクライオジェンの送達速度、例えばある時間内に現在治療されている皮膚にかつ/または皮膚に向かって噴霧されるクライオジェンの量を変更することのうちの少なくとも一つを含むことができる。いくつかの実施形態では、クライオスプレーアプリケーター102と現在治療されている皮膚の部分との間の距離の変更は、現在治療されている皮膚の部分により近づくようにまたは現在治療されている皮膚の部分からより遠ざかるようにクライオスプレーアプリケーターを移動させることによって、クライオスプレーアプリケーター102と現在治療されている皮膚の一部分との間の距離を変更することを含むことができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、冷却の変更は、クライオスプレーアプリケーター102の前進の変更を含むことができる。いくつかの実施形態では、例えば、冷却の低下が望まれる場合、プロセッサー106は、クライオスプレーアプリケーター102が皮膚組織を通過して前進するにつれて皮膚組織に加えられる冷却が少なくなるように、クライオスプレーアプリケーター102の前進速度を増加させることができる。いくつかの実施形態では、冷却を変更することは、クライオジェン送達速度を変更することを含むことができる。いくつかの実施形態では、クライオジェン送達速度は、オリフィス302のアレイでのクライオジェンの圧力を減少または増加させることができる一つ以上のバルブによって変更することができる。いくつかの実施形態では、クライオジェン送達速度は、オリフィス302のアレイにおける開放オリフィスの数を増減することによって変更することができる。いくつかの実施形態では、冷却を増進させたい場合はオリフィスの数を増やすことができ、冷却を低下させたい場合はオリフィスの数を減らすことができる。
【0056】
距離、アライメントおよび/または冷却を変更した後、プロセス700は判定状態720に進み、ここで、現在治療されている皮膚の一部分のサイズが変化したかどうかが特定される。いくつかの実施形態では、スプレーがスプレーヘッド300のオリフィス302のアレイから離れるにつれて、クライオスプレーは広がることができる。したがって、クライオスプレーアプリケーター102が現在治療されている皮膚の一部分に近づくと、クライオスプレーはクライオスプレーアプリケーター102の移動前よりも少量の組織に影響を与え、同様に、クライオスプレーアプリケーター102が現在治療されている皮膚の一部分から遠くに移動させられると、クライオジェンスプレーは、クライオスプレーアプリケーター102の移動前よりも大量の組織に影響を与える。いくつかの実施形態では、プロセッサー106は、ステップ718の動作に基づいて、現在治療されている皮膚の一部分のサイズが変化したかどうかを特定することができる。いくつかの実施形態では、これは、クライオスプレーアプリケーター102との間の距離、したがって現在治療されている皮膚の一部分のサイズが変化したかどうかを特定することを含むことができる。現在治療されている皮膚の一部分のサイズが変化していないと判定された場合、したがって、クライオスプレーアプリケーター102と現在治療されている皮膚の一部分との間の距離が変化していないと判定された場合、プロセス700はブロック710に戻り、上で概説したように進むことができる。
【0057】
現在治療されている皮膚の一部分のサイズが変化したと判定された場合、したがって、クライオスプレーアプリケーター102と現在治療されている皮膚の一部分との間の距離が変化したと判定された場合、プロセス700はブロック722に進むことができ、プロセッサー106は、クライオスプレーアプリケーター102を前進させる際に使用される治療経路を更新して、現在治療されている皮膚の一部分のサイズのこの変化を補償することができる。いくつかの実施形態では、治療経路の更新および/または更新治療経路の生成は、現在治療されている皮膚の一部分の更新されたサイズを特定することと、現在治療されている皮膚の一部分の更新されたサイズに基づいて更新された治療経路を生成することとを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、治療経路は、クライオスプレーアプリケーター102の動きを特定して、所望の治療を提供することができる。治療される皮膚の部分のサイズが減少した実施形態では、更新された治療経路は以前よりも互いに接近してもよく、治療される皮膚の部分のサイズが増加した実施形態では、更新された治療経路は以前よりもさらに離間してもよい。治療経路が更新された後、プロセス700はブロック710に戻り、上で概説したように進行する。いくつかの実施形態では、ブロック710で、クライオスプレーアプリケーター102は、更新された治療経路に従って前進する。
【0058】
本発明の主題をここで具体的に説明してきたが、特許請求される主題は、他の方法で具現化することができ、異なる要素またはステップを含むことができ、そして他の既存または将来の技術と併せて使用することができる。
【0059】
この説明は、個々のステップの順序または要素の配置が明示的に記述されている場合を除いて、さまざまなステップまたは要素のうちのまたはそれらの間の特定の順序または配置を意味すると解釈されるべきではない。図面に示されているか、または上で説明されている構成要素の異なる配置ならびに図示されていないかまたは説明されていない構成要素およびステップが可能である。同様に、いくつかの機能および一部組み合わせは有用であり、他の機能および一部組み合わせを参照せずに使用することができる。本発明の実施形態は、限定的な目的ではなく例示的な目的で説明されており、代替実施形態は、この明細書の読者に明らかとなるであろう。したがって、本発明は、上記または図面に示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、さまざまな具現化および変更を実施することができる。
【符号の説明】
【0060】
100 皮膚冷却治療システム
102 クライオスプレーアプリケーター
104 機械式アーム
106 プロセッサー(コントローラー)
107 稲妻
108 ユーザーデバイス
110 稲妻
200 リンケージ
202 ジョイント
204 ケーブル
206 センサー
208 アライメントセンサー
208-A 第1のアライメントセンサー
208-B 第2のアライメントセンサー
208-C 第3のアライメントセンサー
210 距離センサー
210-A 第1の距離センサー
210-B 第2の距離センサー
212 温度検出機構
214 患者
220 近位端部
222 遠位端部
300 スプレーヘッド
301 赤外線カメラ
302 オリフィス
304 スプレーのライン(軸線)
306 軸線
310 赤外線カメラ
400 軸線
502 矢印
504 矢印
600 第1の距離軸線
602 第2の距離軸線
700 プロセス
702 ブロック
704 ブロック
706 ブロック
708 判定状態
710 ブロック
712 ブロック
714 ブロック
716 ブロック
718 ブロック
720 判定状態
722 ブロック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】