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特表2022-514039固体電解質膜またはアノードの製造方法、並びに、固体電解質膜またはアノード
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(54)【発明の名称】固体電解質膜またはアノードの製造方法、並びに、固体電解質膜またはアノード
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20220202BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20220202BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20220202BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20220202BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220202BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220202BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20220202BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20220202BHJP
   H01G 11/30 20130101ALI20220202BHJP
   H01G 11/56 20130101ALI20220202BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/62 Z
H01M10/0562
H01M10/054
H01M10/052
H01M4/36 A
H01M4/36 C
H01M10/058
H01G11/86
H01G11/30
H01G11/56
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535235
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(85)【翻訳文提出日】2021-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2019085594
(87)【国際公開番号】W WO2020127223
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】102018222142.1
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515230084
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト ツゥア フェアデルング デア アンゲヴァンドテン フォァシュング エー.ファウ.
(71)【出願人】
【識別番号】516386144
【氏名又は名称】テヒニシュ ウニヴェルズィテート ドレスデン
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ヒッパウフ フェリックス
(72)【発明者】
【氏名】シャム ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】ツォーク セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】アルトゥエス ホルファー
(72)【発明者】
【氏名】カスケル ステファン
(72)【発明者】
【氏名】デルフラー スザンヌ
【テーマコード(参考)】
5E078
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AA03
5E078AA14
5E078BA44
5E078BA56
5E078BB30
5H029AJ06
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029AL13
5H029AM12
5H029BJ12
5H029CJ03
5H029CJ06
5H029CJ08
5H029CJ30
5H029DJ08
5H029DJ16
5H029EJ12
5H029HJ01
5H029HJ12
5H050AA12
5H050AA19
5H050CA08
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA00
5H050EA24
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA03
5H050GA05
5H050GA08
5H050GA10
5H050GA29
5H050HA01
5H050HA12
(57)【要約】
本発明は、固体電解質膜(3)または固体電池用のアノードユニットの製造方法に関し、固体電解質膜(3)用に固体電解質材料とポリテトラフルオロエチレンとの粉末混合物を製造し、アノードユニット用に電極材料と固体電解質材料と導電性添加剤とポリテトラフルオロエチレンとの粉末混合物を製造し、粉末混合物に対するせん断力の作用によって、少なくとも部分的にフィブリル化されたポリテトラフルオロエチレンを形成し、粉末混合物を、可撓性複合層に成形する。粉末混合物は最大で1重量%のポリテトラフルオロエチレンを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質膜(3)または固体電池用のアノードユニットの製造方法であって、
前記固体電解質膜(3)用に固体電解質材料とポリテトラフルオロエチレンとの粉末混合物を製造し、前記アノードユニット用に電極材料と固体電解質材料と導電性添加剤とポリテトラフルオロエチレンとの粉末混合物を製造し、
前記粉末混合物に対するせん断力の作用によって、少なくとも部分的にフィブリル化されたポリテトラフルオロエチレンを形成し、
前記粉末混合物を、前記固体電解質膜(3)としての可撓性複合層、または、集電体層(5)上に配置され、前記アノードユニットの複合材料(4)からなる層に成形し、
前記粉末混合物は最大で1重量%のポリテトラフルオロエチレンを含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも部分的にフィブリル化されたポリテトラフルオロエチレンは、粉砕、ウォームシャフト中での混合、またはカレンダ圧延装置中での混合、またはこれらの組合せによって形成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粉末混合物は、圧延、プレス、または押出によって、前記可撓性複合層に成形されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記固体電解質膜用の粉末混合物は、99~99.9重量%の濃度の前記固体電解質材料と、0.1~1重量%の濃度のポリテトラフルオロエチレンとを含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリテトラフルオロエチレンは、完全に一軸配向または完全に二軸配向したポリテトラフルオロエチレンとして存在することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
固体電解質材料とポリテトラフルオロエチレンとを含む固体電解質膜(3)であって、
前記固体電解質膜(3)が最大で1重量%のポリテトラフルオロエチレンを含む、固体電解質膜。
【請求項7】
導電性を有する集電体層(5)と、当該集電体層(5)上に配置され、電極材料と固体電解質材料と導電性添加剤とバインダーとしてのポリテトラフルオロエチレンとを含む複合材料(4)からなる層とを含むアノードユニットであって、
前記複合材料が最大で1重量%のポリテトラフルオロエチレンを含み、
前記ポリテトラフルオロエチレンが少なくとも部分的にフィブリル化ポリテトラフルオロエチレンとして存在する、アノードユニット。
【請求項8】
前記複合材料が少なくとも0.1重量%のポリテトラフルオロエチレンを含むことを特徴とする、請求項7に記載のアノードユニット。
【請求項9】
前記電極材料は、前記電極材料の粒子に形成された保護層を含むことを特徴とする、請求項7または8に記載のアノードユニット。
【請求項10】
請求項6に記載の固体電解質膜(3)が、第1の活性層(2)と第1のキャリア膜(1)とから形成された第1の電極ユニット上に直接形成された、固体電解質電極複合体。
【請求項11】
前記固体電解質膜(3)と前記第1の活性層(2)とが積層体を形成することを特徴とする、請求項10記載の固体電解質電極複合体。
【請求項12】
請求項10または11に記載の固体電解質電極複合体を含む固体電池であって、
前記固体電解質膜(3)の前記第1の電極ユニットとは反対側の表面に、第2のキャリア膜としての集電体層(5)と第2の活性層としての複合材料(4)からなる層とを含むアノードユニットが形成されたことを特徴とする、固体電池。
【請求項13】
前記第2のキャリア膜(5)の材料が、前記第1のキャリア膜(1)の材料とは異なることを特徴とする、請求項12記載の固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質膜またはアノードの製造方法、並びに、それに対応して製造された固体電解質膜またはアノードに関する。
【背景技術】
【0002】
固体電池は、リチウムイオン電池の非常に有望なさらなる開発を代表する。固体電池では、電解質として、液体電解質の代わりに、固体として存在するリチウムイオン伝導体を用いる。それは、活物質粒子間のイオン伝導体、および、アノードとカソード間のイオン伝導性セパレータとして、同時に機能する。ここで重要なことは、粉末状電極混合物の大面積処理と、固体電解質と活物質との間の、可能な限り多くの接触点と可能な限り少ない中空空間を有する密接な接触表面の形成の可能性である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第US2016/248120号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固体電池は特に、使用される電解質クラス(酸化物、硫化物、ポリマー系)に関連して分類することができる。酸化物固体電解質は、高い化学的機械的安定性を有する。しかし、非多孔質の薄い電極あるいは固体電解質膜への加工は、高い焼結温度のために大きな挑戦である。硫化物電解質材料もまた、大面積上にはほとんど堆積できない。例えば米国特許出願公開第US2016/248120号明細書(特許文献1)に記載されているような湿式化学プロセスによって、その用途のアノード、カソード、および電解質層のために、異なるバインダ溶媒混合物が使用される。これは、そうしなければ、層の形成時に、その下の層の溶媒和が起こり得るからである。数重量%の比較的高いバインダ含有量およびそれから生じるより高い電気的およびイオン的な抵抗は、このようなプロセスにおいて不利である。
【0005】
したがって、本発明の目的は、アノード側の固体電池の構成要素を開発し、上記の欠点を回避する、すなわち、大面積で製造することができ、電気的およびイオン的な抵抗をできるだけ低くするそれらの製造方法を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、本発明に従って、請求項1に記載の方法、請求項6に記載の固体電解質膜、および請求項7に記載のアノードユニットにより、達成される。有利な実施形態およびさらなる展開が、従属請求項に記載されている。
【0007】
固体電池用、好ましくはアルカリイオン固体電池用またはリチウム電池用またはナトリウム電池用の固体電解質膜の製造方法は、固体電解質材料とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)との粉末混合物を製造する工程を有する。粉末混合物に対するせん断力の作用によって、少なくとも部分的にフィブリル化されたポリテトラフルオロエチレンを形成する。次いで、粉末混合物を、固体電解質膜としての可撓性複合層に成形する。粉末混合物は最大で1重量%のポリテトラフルオロエチレンを含む。
【0008】
フィブリル化されたポリテトラフルオロエチレンをバインダーとして使用することにより、バインダーの使用量を低減することができ、固体電解質膜のポリテトラフルオロエチレンの量が最大で1重量%という少量で済むため、これらのセルの構成要素にバインダーとしてポリテトラフルオロエチレンを使用することが可能となり、したがって電気特性が向上する。さらに、バインダーの含有量が少ないことにより、リチウムに関して典型的に0.1V未満の電圧にさらされる電池構成要素としての固体電解質膜とアノードユニットの製造と設計が可能となる。そうでなければ、バインダー材料PTFEの劣化が、望ましくない副反応を生じる。バインダーの含有量が少ないことにより、上述の副反応が低減され、技術的に有効な製造と設計が可能となる。本発明の核心は、典型的に、電池構成要素に直接接し得るリチウムまたはナトリウムの電気化学ポテンシャルに近い電気化学ポテンシャルにさらされる電池構成要素としての固体電解質膜またはアノードユニットの製造である。バインダーの含有量が少ないにもかかわらず、自立して加工可能な膜を製造することができる。バインダーは、通常、特定の電位未満で劣化し、このことは、容量(アノード)とセル構成要素(膜)の機能性の不可逆的な損失を引き起こす。電極の機械的安定性は、セルアセンブリおよびプレス後の固体電池用の外装体によって提供される。したがって、バインダーの機能は、最終セルではもはや必要とされず、アセンブリ中でのみ重要である。
【0009】
粉末混合物によって簡単なプロセスが保証される。ここで、粉末混合物における材料は、粒状形態で存在し、固体電解質膜であれば5μmまで、活物質粒子であれば15μmまでのサイズを有する複数の小粒子からなる材料、あるいは、粒状または破片状の混合物またはバルク材料であると理解されるべきである。粉末混合物は、取扱いを簡単にするために、乾燥形態で存在することができる。加えて、粉末混合物はまた、DIN EN ISO 6186の規格で規定される流動性を有さない。本明細書において、「乾燥」は、粉末混合物の成分が、液体または液体凝集状態で存在する材料を含まない固体形態で存在すると、理解されるべきである。この粉末混合物は、無溶媒であることができ、溶媒なしで調製することができる。「可撓性複合層」は、室温で破壊することなく180°まで曲げたり折り曲げたり広げたりできる複合層と理解されるべきである。曲げ半径は90~100μmが好ましく、特に100μmが好ましい。
【0010】
少なくとも部分的にフィブリル化された、または代替的に完全にフィブリル化されたポリテトラフルオロエチレンの形成は、有効なフィブリル化を確実にするために、ウォームシャフトまたはカレンダー圧延装置、混練装置、乳鉢装置、またはこれらの組合せにおいて、粉砕、混合することによって行うことができる。少なくとも部分的にフィブリル化されたポリテトラフルオロエチレンの形成は、典型的には室温で起こる。しかしながら、0.5重量%未満のバインダー含有量に到達するためには、好ましくは60~100℃、特に好ましくは90~100℃、特に100℃の高温で形成を行う。
【0011】
粉末混合物の可撓性複合層への成形は、典型的には、圧延、プレス、または押出によって行う。しかしながら、これらの方法の組合せを用いることもできる。
【0012】
ポリテトラフルオロエチレンは、少なくとも部分的に一軸配向および/または二軸配向したポリテトラフルオロエチレンとして複合層中に存在することができる。しかしながら、ポリテトラフルオロエチレンは、完全に一軸配向または完全に二軸配向したポリテトラフルオロエチレンとして存在することもできる。
【0013】
99~99.9重量%の濃度の固体電解質材料と、0.1~1重量%の濃度のポリテトラフルオロエチレンとを含む粉末混合物を提供できる。粉末混合物は、好ましくは0.5重量%未満のポリテトラフルオロエチレン、特に好ましくは0.1~0.4重量%のポリテトラフルオロエチレンを含む。
【0014】
固体電解質膜は、固体電解質材料とポリテトラフルオロエチレンとを含み、固体電解質膜は、最大で1重量%のポリテトラフルオロエチレンを含む。
【0015】
上述の方法は、上述の固体電解質膜を製造するために使用することができる。すなわち、上述の固体電解質膜は、上述の方法によって製造することができる。
【0016】
固体電解質電極複合体は、第1の活性層と第1の集電体とから形成され、典型的には導電性材料からなる第1のキャリア膜と第1の集電体層の形態で形成された第1の電極ユニット上に、直接形成され、すなわち、直接接して形成され、上述の特性を有する固体電解質膜を含む。ここで、「導電性」の用語が使用される材料は、室温、例えば25℃で10S/m超の導電率を有する任意の材料であると理解されるべきである。
【0017】
固体電解質膜と第1の活性層は、積層体を形成することができる。すなわち、固体電解質膜を第1の活性層上に積層してもよい。
【0018】
上記の方法は、アノードユニットの製造にも用いることができる。この場合、アノードユニット用に電極材料と固体電解質材料と導電性添加剤とポリテトラフルオロエチレンとの粉末混合物を製造し、粉末混合物に対するせん断力の作用によって、少なくとも部分的にフィブリル化されたポリテトラフルオロエチレンを形成する。粉末混合物を、集電体上に配置された層に成形する。この層はアノードユニットの複合材料からなり、粉末混合物は最大で1重量%のポリテトラフルオロエチレンを含む。
【0019】
固体電解質膜と、第2の活性層として作用するアノードユニットの複合材料からなる層は、積層体を形成することができる。すなわち、固体電解質膜を第2の活性層上に積層してもよい。
【0020】
例えば、リチウム電池または他の固体電池について説明した方法で製造することができるアノードユニットは、典型的には、導電性を有する集電体と、集電体上に配置された複合材料からなる層とを含む。複合材料は、電極材料と固体電解質材料と導電性添加剤とバインダーとしてのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とを含む。この複合材料は、0.1~1重量%のポリテトラフルオロエチレンを含み、このポリテトラフルオロエチレンは、少なくとも部分的にフィブリル化されたポリテトラフルオロエチレンとして存在する。
【0021】
フィブリル化されたポリテトラフルオロエチレンをバインダーとして使用することにより、バインダーの使用量を低減することができ、ポリテトラフルオロエチレンの使用量を少なくすることができ、電気特性が向上する。ここで、「導電性」の用語が使用される材料は、室温、例えば25℃で10S/m超の導電率を有する任意の材料であると理解されるべきである。複合材料は典型的には無溶媒であり、このことは、よりシンプルな処理およびよりシンプルな適用を可能にする。
【0022】
複合材料中のポリテトラフルオロエチレンは、所望の機械的特性を得るために、少なくとも部分的に一軸配向および/または二軸配向したポリテトラフルオロエチレンとして存在することができる。当然ながら、ポリテトラフルオロエチレンは、完全に一軸配向または完全に二軸配向または配向したポリテトラフルオロエチレンとして存在することもできる。
【0023】
複合材料は、60~99重量%、好ましくは~100%の量の導電性電極材料を含むことができる。複合材料は、典型的に、バインダーとして充分に利用できる少なくとも0.1重量%のポリテトラフルオロエチレンを含む。複合材料は、好ましくは0.5重量%未満、特に好ましくは0.1~0.4重量%のポリテトラフルオロエチレンを含む。
【0024】
導電性電極材料は、リチウム、ナトリウム、黒鉛、非黒鉛および/または非黒鉛化炭素材料である硬質炭素、LiTi12、またはこれら材料の混合物を含むことができる。
【0025】
固体電解質材料は、以下の群より選ばれた材料を含むことができる;LiS-P、LiS-GeS、LiS-B、LiS-SiS、LiPSCl、LiS-P-LiX(X=Cl、Br、I)、LiS-P-LiO、LiS-P-LiO-LiI、LiS-SiS-LiI、LiS-SiS-LiBr、LiS-SiS-LiCl、LiS-SiS-B-LiI、LiS-SiS-P-LiI、LiS-P-Z(ここで、mおよびnは整数であり、MはP、SiまたはGeから選択される。)、LiS-SiS-LiPO、LiS-SiS-LiMO(ここで、pおよびqは整数であり、MはP、SiまたはGeから選択される。)、NaS-P、NaS-GeS、NaS-B、NaPSCl、NaS-SiS、NaS-P-NaX(X=Cl、Br、I)、NaS-P-NaO、NaS-P-NaO-NaI、NaS-SiS-NaI、NaS-SiS-NaBr、NaS-SiS-NaCl、NaS-SiS-B-NaI、NaS-SiS-P-NaI、NaS-P-Z(ここで、mおよびnは整数であり、MはP、SiまたはGeから選択される。)、NaS-SiS-NaPO、NaS-SiS-NaMO(ここで、pおよびqは整数であり、MはP、SiまたはGeから選択される。)、またはこれらの混合物。
リチウムは、一般的に、本出願に記載のすべての化合物においてナトリウムで置換され得る。固体電解質材料は、典型的には、粉末混合物中に13~35重量%の濃度で存在する。複合材料は、導電性添加剤として、カーボンナノチューブ、ブラックカーボン、黒鉛、グラフェン、および/または炭素繊維を、1~5重量%の濃度で含有することができる。固体電解質材料は、典型的には電気化学的に活性な材料である。導電性添加剤は、電気化学的に不活性な材料であり得る。
【0026】
電極材料は、この材料の粒子に形成された保護層を含むことができる。この保護層は、固体電解質材料と電極材料との間の副反応を防止すべきである。保護層は例えば、LiO-ZrOまたは他の金属酸化物を含むことができる。電極材料のすべての粒子は、典型的には2~5nmの厚みを有する保護層を有することができる。
アノードユニットの導電性を有する集電体は、典型的には、導電性材料、好ましくはニッケル、銅、ステンレス鋼、または対応する合金を含むか、またはこの材料から完全に形成される。
代替的または追加的に、集電体は、集電体層として、特に、好ましくは両面コーティングを有する、面積型集電体または集電体膜として、エキスパンドメタルとして、発泡体として、織布として、ノンクリンプ織布として、または、プライマー層を備えた集電体層として、形成され得る。ここで、プライマー層は同様に平面状であり得る。
【0027】
好ましくは、可撓性複合層を、導電性を有する集電体上に形成してカソードユニットを形成する。次いで、可撓性複合層および/または集電体を圧縮してもよい。導電性を有する集電体層への可撓性複合層の形成は、典型的には、60~120℃の温度、好ましくは80~100℃の温度で行う。
【0028】
固体電池は、上述の特性を有する固体電解質電極複合体を含み、この固体電池では、固体電解質膜の第1の電極ユニットとは反対側の表面に、第2の活性層と第2のキャリア膜とを含む第2の電極ユニットが形成されている。
【0029】
第2のキャリア膜の材料は、通常、第1のキャリア膜の材料とは異なる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明の実施形態を図面に示し、以下の図1図16を参照して以下に説明する。
図1】アノードの概略側面図。
図2図1に対応して示す、固体電解質膜を有するアノード。
図3図1に対応して示す、固体電解質膜およびカソードを備えたアノード。
図4】複合材料の乾燥膜の走査電子顕微鏡写真。
図5】0重量%のバインダー含有量を有するテストセルの放電電圧プロファイル。
図6図5に対応して示す、0.1重量%のバインダー含有量を有するテストセルの放電電圧プロファイル。
図7図5に対応して示す、0.3重量%のバインダー含有量を有するテストセルの放電電圧プロファイル。
図8図5に対応して示す、0.7重量%のバインダー含有量を有するテストセルの放電電圧プロファイル。
図9図5に対応して示す、1重量%のバインダー含有量を有するテストセルの放電電圧プロファイル。
図10】試験セルの内部抵抗のナイキスト線図。
図11図4に対応する、黒鉛を含むアノードの走査電子顕微鏡写真。
図12図4に対応する、固体電解質膜の走査型電子顕微鏡写真。
図13】対称設計の電池セルの時間に対する電圧推移を示す図。
図14図13に対応する、バインダーとしてポリテトラフルオロエチレンを用いた対称電池セルの電圧推移を示す図。
図15】固体電解質材料のインピーダンススペクトル。
図16】電解質乾燥膜およびカソード乾燥膜と組み合わせた黒鉛乾燥膜電極の1回目の充電の電圧曲線。
【発明を実施するための形態】
【0031】
カソードユニットを形成する第1の活性層としての第1の電極2を有する基材膜またはキャリア膜としてのアルミニウムからなる導電性を有する集電体層1を、図1の模式的な側面図に示す。第1の電極2は、本実施形態では、粉末状の複合材料から形成されている。複合材料は、85重量%のリチウムニッケルマンガンコバルト(NCM)、13重量%のLiS-PまたはLiPSCl(アルギロダイト)のような固体電解質材料、2重量%の導電性添加剤としての導電性カーボンナノチューブ、および0.1重量%のバインダーとしてのポリテトラフルオロエチレンを含む。ここでのバインダー含有量は、NCM:C:SEの比が85:2:13である総質量に関係している(SEは、固体電解質の略語である)。得られた複合材料は、粉末状で、乾燥しており、無溶媒であるが、流動性はない。この複合材料は、乳鉢内で混ぜ合わせることができる。この工程で、複合材料を形成する混合物または粉末混合物にせん断力が作用し、これによって力ベクトルに沿ってフィブリルが形成される。次の工程では、ローラを用いて複合材料を板上に所望の層厚に圧延し、キャリア膜1上に積層する。キャリア膜1の厚みは20μm未満であり、カーボンプライマーを有していてもよい。カソードユニットの最終的な成形は、スタンピングまたはレーザ切断によって行う。
【0032】
複合材料は、代替的に、溶媒添加なしに、粉末混合物またはバルク材料としてカレンダーギャップに直接投入することができる。ドイツ特許出願DE 10 2017 208 220号に記載されているように、2つのカレンダーローラの回転速度として異なる回転速度、例えば10:9~10:4の比が使用される。回転速度の比は21、例えば、10mm/s:5mm/s、または、20mm/s:10mm/sが有利である。これにより、ギャップ内の複合材料にせん断力が作用し、ローラの走行方向に沿ってフィブリルが形成される。より速く回転するローラ上に層形成が生じる。次の工程では、層を基材膜1上に積層し、スタンピングまたはレーザー切断によって最終的な成形を行う。カレンダーギャップ内での膜形成はさらに、膜形成中に、含まれる層の大きな圧縮を可能とする。このために重要なのは、複合材料に用いられる粉末材料の粒度分布であり、粉末材料の粒度分布を互いに調整させて、大きな粒子間の隙間をできるだけ効率よく小さな粒子で埋め、気孔率を低く保つことである。したがって、プレス前の膜の密度は1.7~1.9g/cmであり、これは50~55%の気孔率に相当する。プレスまたは圧縮後の密度は、通常3.5g/cmであり、10%までの気孔率は理想的な0%の気孔率に近づく。
【0033】
処理は、60~100℃の高温で有利な方法で行われ、これは、必要なバインダー含有量またはバインダー含有量のかなりの低減の結果である。加えて、固体電解質はまた、結合することなく、より高温で処理することもできる。このようにして得られるカソードユニットは、基材膜1-第1の電極2の層連続を有する。第1の電極2は、その組成において、典型的に、次のような構成を有する。カソード材料:60~99重量%、固体電解質材料:13~35重量%、導電性添加剤:2~5重量%。ここで、バインダー(ポリテトラフルオロエチレン)は、総質量の0.1~1重量%である。上述したプレスは、典型的には、工程として最終的に行う。これは、電解質の流動性を確保するために、290~450MPa、好ましくは300MPaの圧力で行う。固体電解質材料が関与するすべての処理工程は、保護ガス、例えば希ガス、好ましくはアルゴン、または窒素、または-50℃未満の露点を有する乾燥空気の下で行うことが好ましい。
【0034】
カソードユニットの代わりにアノードユニットを上記の方法で製造することもできる。例えば、黒鉛60~85重量%、固体電解質13~35重量%、およびカーボンナノチューブ2~5重量%からなる粉末混合物を使用し、この目的のために上述したように処理する。基材または集電体層1としては、ニッケルまたはステンレス鋼膜または銅が用いられる。ポリテトラフルオロエチレンを総質量の0.3~1重量%の割合で粉末混合物に添加する。黒鉛の代わりに、硬質炭素、リチウム、リチウム合金、特にリチウムインジウム合金、またはシリコンをアノードに用いることもできる。
【0035】
キャリア膜1と第1の電極2とからなるカソードユニットが、これに直接接して配置された固体電解質膜3と共に、図1に対応する図2に示されている。この固体電解質膜3は、集電体層としてキャリア膜1が直接接して取り付けられた第1の電極2の側面または表面とは反対側の側面または表面に、直接接して配置されている。キャリア膜1と第1の電極2とは、互いの上に同じアライメントで、すなわち、それぞれの厚さを除いて同一の寸法を有して配置されているが、固体電解質膜3は、第1の電極2よりも幅広である。繰り返し要素には、この図および以下の図において同じ参照番号を付してある。
【0036】
図3は、図1および図2に対応する図であり、図2に示す構造に加えて、アノードユニットが、固体電解質膜3の側面とは反対側に配置された側面に取り付けられた固体電池を示す。アノードユニットは、第2の活性層としての第2の電極4と、第2の集電層としての第2の基材膜5とが直接接して形成されている。第2の電極4は、固体電解質膜3に直接接している。固体電解質膜3、第2の電極4、および第2キャリア膜5は、互いの上に同じアライメントで配置され、第2キャリア膜5の厚みが最も薄く、第2の電極4の厚みが最も厚く、固体電解質膜3の厚みが第2の電極4の厚みと第2キャリア膜5の厚みとの間になっている。キャパシタンスは、典型的には互いに調整され、そこから厚みが結果的に得られる。第1の電極は例えば、100μmの厚みを有することができ、リチウムアノードとしての第2の電極は例えば、10μmまでである。また、第1のキャリア膜1と第2のキャリア膜5の厚みを同一にすることもできる。
【0037】
第1の電極2の厚みは、固体電解質膜3の厚みよりも厚く、第1のキャリア膜1の厚みよりも厚い。一次および二次電池用の電池電極は、上述の方法を用いて、好ましくはリチウムイオン化合物またはナトリウムイオン化合物、固体スーパーキャパシタ電極、または、感湿または感溶媒の材料からなる、すなわちあらゆる種類の硫化物電解質からなる層を用いて製造することができる。
【0038】
ここで、固体電解質膜3についても同様に、上述の方法を用いて、形成する。99.9重量%超の固体電解質および0.1重量%のポリテトラフルオロエチレンの粉末混合物を、カソード製造と類似の方法で、膜を形成するまで処理する。これにより、99~99.9重量%の固体電解質と、0.1~1重量%のポリテトラフルオロエチレンとを有する固体電解質膜が得られる。
【0039】
図3の模式側面図に示されたセルスタックは、ポーチバッグまたはハードケースとして構成された電池ハウジングを備えることができる。その後、スタックを圧縮し、張力を加えて、固体電池が得られる。これにより、固体電池のすべての層を同一のバインダを用いて形成する、これらを互いの上に直接積層する、またはこれらを異なる方法で接続することが可能となる。これによって、電池性能を損なわない均一で密な境界面が得られる。それにもかかわらず、異なる方法で製造された構成要素と構成要素とを組み合わせることが可能である。
【0040】
上述の方法によれば、溶媒を添加することなく電極を製造することができる。固体電池は、最終的には、その動作のために機械的に大きく張力がかけられるので、バインダ機能は、成膜のためだけに必要であり、完成したセルの動作における層の安定化のためには必要ではない。
【0041】
図4は、NCMと固体電解質(SE)と炭素繊維(CNF)とを質量比で85:13:2、および、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を総質量の0.3重量%を含む乾燥膜の走査型電子顕微鏡写真(SEM写真)を示す。
【0042】
図5図9に、上述の固体電池の試験セルのそれぞれの放電電圧プロファイルを示す。ここでは、それぞれの電圧が容量対して記録されている。図5では、ポリテトラフルオロエチレンの割合は0重量%である。図6では0.1重量%;図7では0.3重量%;図8では0.7重量%;図10では1重量%である。
【0043】
図10に、インピーダンス測定をナイキスト線図で示す。ここでは、虚数成分が実数成分に対して記録されている。測定曲線は、0.1重量%、0.3重量%、および1重量%のバインダー成分を有するテストセルを示す。それぞれの固体電池の内部抵抗は、ポリテトラフルオロエチレンの割合の増加に伴って、増加する。
【0044】
走査型電子顕微鏡写真を、図4に対応する図11および図12に示す。図11は、黒鉛、固体電解質材料、および0.7重量%のポリテトラフルオロエチレンから製造されたアノードユニットの第2の電極4を示す。固体電解質材料と0.7重量%のポリテトラフルオロエチレンとからなる固体電解質膜3を図12に示す。
【0045】
図13に、対称電池セルの電圧推移の図を示す。2つのリチウムアノードと1つの固体電解質材料の膜とを含む対称電池セルを、0.1mA/cmの電流密度で、30分間ずつ、200時間超に渡り、充放電した。すなわち定電流サイクルした。時間に対して記録された電圧の推移は、測定中、加電圧が安定したままであることを示している。
【0046】
固体電解質乾燥膜中に0.7重量%のポリテトラフルオロエチレンを含む電池セルの電圧推移を、図13に対応する図14に示す。測定サイクルは、図13に関連して説明した測定サイクルに対応し、加電圧は測定中、ここでも安定したままである。バインダの副反応は無視できると結論できる。
【0047】
図15に、固体電解質材料または固体電解質の室温での導電率測定のためのインピーダンススペクトルを示す。固体電解質膜3の導電率は、バインダ重量が0.7重量%と小さいため、僅かに低下するだけである。湿式化学的アプローチは、導電率を部分的に10のファクターまで減少させる。
【0048】
図16は、固体電解質膜3として電解質乾燥膜と組み合わせた黒鉛乾燥膜電極の1回目の充電の電圧推移を示す。連続測定曲線は全成分中の割合が0重量%のバインダーに関し、破線曲線は0.3重量%の割合のポリテトラフルオロエチレンのバインダーに関し、点線測定曲線は0.7重量%の割合のポリテトラフルオロエチレンのバインダーに関する。より少ないバインダ含有量での不可逆容量は3.4V未満に低下する。これとは逆に、降伏電圧4.25Vまで、より多くの容量を蓄積することができる。
【0049】
実施例において開示された実施形態のみが、互いに組み合わせることができ、個別に請求される。
図1
図2
図3
図4
図5
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【国際調査報告】