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特表2022-514058レーザーダイレクトストラクチャリング用熱可塑性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(54)【発明の名称】レーザーダイレクトストラクチャリング用熱可塑性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20220202BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20220202BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/22
H05K1/03 610H
H05K1/03 610R
H05K1/03 610S
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535504
(86)(22)【出願日】2019-11-06
(85)【翻訳文提出日】2021-08-03
(86)【国際出願番号】 EP2019080316
(87)【国際公開番号】W WO2020126188
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】18213902.2
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519060025
【氏名又は名称】エムエーペー ウーロペ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】シュラウヴェン ベルナルデュス アントニウス ヘラルデュス
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA011
4J002CF061
4J002CF071
4J002CF081
4J002CG001
4J002CH091
4J002CL011
4J002CL031
4J002DB016
4J002DE096
4J002DE106
4J002DE116
4J002DE126
4J002DE136
4J002DE137
4J002DH036
4J002DH046
4J002DJ006
4J002DK006
4J002DM007
4J002FD130
4J002GQ00
4J002GQ05
(57)【要約】
本発明は、a)20~90wt%の熱可塑性樹脂と、b)0.1~80wt%のレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤と、c)レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤機能を有していない10~80wt%のセラミック充填剤粒子であって、c)の少なくとも80wt%がTiO2である、セラミック充填剤粒子と、を含むとともに、組成物が、多くとも0.014の40GHzで測定される損失正接を有し、a)、b)、及びc)の合計量が、合計組成物を基準にして95~100wt%であり、組成物が、f)1種以上の添加剤をさらに含み、添加剤の合計量が、組成物の合計重量を基準にして0.1~5wt%、0.3~5wt%、又は0.3~3wt%である、熱可塑性組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性組成物であって、
a)20~90wt%の熱可塑性樹脂と、
b)0.1~80wt%のレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤と、
c)レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤機能を有していない10~80wt%のセラミック充填剤粒子であって、c)の少なくとも80wt%がTiOである、セラミック充填剤粒子と、
を含むとともに、
前記組成物が、多くとも0.014の40GHzで測定される損失正接を有し、a)、b)、及びc)の合計量が、合計組成物を基準にして95~100wt%であり、前記組成物が、f)1種以上の添加剤をさらに含み、前記添加剤の合計量が、前記組成物の合計重量を基準にして0.1~5wt%、0.3~5wt%、又は0.3~3wt%である、熱可塑性組成物。
【請求項2】
a)が、ポリカーボネート系樹脂、好ましくはポリカーボネート又はポリカーボネートとゴム状ポリマーとのブレンド、たとえば、
- 45~75wt%のポリカーボネートと、5~40wt%のABSと、0~10wt%のMBSと、のブレンドであって、量は前記熱可塑性樹脂a)を基準にする、ブレンド、又は
- 80~99wt%のポリカーボネートと、Siを含有するエラストマー性成分を含む1~20wt%のグラフトコポリマーと、のブレンドであって、量は前記熱可塑性樹脂a)を基準にする、ブレンド
である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
b)がスズ含有酸化物を含み、且つ前記組成物中の前記スズ含有酸化物の量が、合計組成物を基準にして少なくとも20wt%、少なくとも25wt%、少なくとも30wt%、少なくとも31wt%、少なくとも32wt%、少なくとも33wt%、少なくとも34wt%、又は少なくとも35wt%である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
c)の量が、合計組成物を基準にして少なくとも20wt%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
b)及びc)の合計量が、合計組成物を基準にして少なくとも15wt%、少なくとも20wt%、少なくとも25wt%、少なくとも30wt%、少なくとも33wt%、又は少なくとも35wt%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
b)が酸化スズアンチモンを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
b)が、コアと前記コアをカバーするシェルとからなる粒子を含み、前記シェルが、LDS添加剤機能を有する材料で作製され、且つ前記コアがTiOである、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、少なくとも3.5、好ましくは少なくとも4.0、より好ましくは少なくとも4.2、より好ましくは少なくとも4.5、より好ましくは少なくとも4.7、より好ましくは少なくとも5.0の1GHzで測定される誘電定数を有し、及び/又は前記組成物が、多くとも0.014、より好ましくは多くとも0.010、より好ましくは多くとも0.007の1GHzで測定される正接損失を有し、及び/又は前記組成物が、少なくとも3.5、好ましくは少なくとも4.0、より好ましくは少なくとも4.2、より好ましくは少なくとも4.5、より好ましくは少なくとも4.7、より好ましくは少なくとも5.0の40GHzで測定される誘電定数を有し、及び/又は前記組成物が、多くとも0.010、好ましくは多くとも0.007の40GHzで測定される正接損失を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
b)が、光散乱技術により決定したときに多くとも5μm、好ましくはより好ましくは多くとも4μm、より好ましくは多くとも2.5μmの粒子サイズd50を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
f)が、熱分解又は熱酸化分解に対する安定剤、加水分解に対する安定剤、光とくにUV光による分解及び/又は光酸化分解に対する安定剤、並びに剥離剤及び滑剤などの加工助剤から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、前記組成物の合計重量を基準にして4wt%未満、3wt%未満、2wt%未満、1wt%未満、0.5wt%未満、0.1wt%未満、又は0wt%の繊維状充填剤又は鉱物充填剤などの充填剤を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物を含む成形品。
【請求項13】
請求項12に記載の成形品を提供することと、伝導性トラックがレーザー照射により形成される前記成形品の領域を照射することと、前記照射された領域を続いて金属化することと、を含む、回路キャリアの製造プロセス。
【請求項14】
請求項13に記載のプロセスにより得られうる回路キャリア。
【請求項15】
請求項14に記載の回路キャリアを含むアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザーダイレクトストラクチャリングプロセスに使用するのに好適な熱可塑性組成物に関する。本発明はまた、本組成物を含む成形品に関する。本発明はまた、レーザー放射及び後続の金属化により伝導性トラックを有する成形品を提供することにより回路キャリアを製造するプロセスと、それにより得られうる回路キャリアと、に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンをはじめとするモバイルフォンの最近の進歩に伴って、モバイルフォン内のアンテナの製造方法に関して多くの研究が行われてきた。モバイルフォン内のアンテナの3次元設計を可能にする特定の必要性が存在している。レーザーダイレクトストラクチャリング(これ以降では「LDS」ということもある)は、かかる3次元アンテナを形成する公知の方法の1つである。LDSは、典型的には、LDS添加剤を含有する樹脂成形物品の表面にレーザーを照射してレーザーにより照射された部分のみを活性化し、次いで活性化された部分に金属を適用することにより、メッキ層を形成する技術である。この技術の望ましい特性は、接着剤などを用いることなく樹脂ベースの表面上にアンテナなどの金属構造体を直接造形しうることである。
【0003】
スマートフォンの進歩は、高誘電定数(Dk)及び/又は低損失正接(散逸係数Dfとしても知られる)のアンテナ製造用材料の需要をもたらした。高Dkは、アンテナのサイズの低減を可能にしうるとともに、低Dfは、エネルギー損失(熱)を最小化及び/又は放射エネルギーを最大化する。現状の先行技術材料は、高Dk及び低Dfを有するLDS材料をいまだに提供していない。特定的には、進歩は、高周波で使用可能なアンテナに関する。
【0004】
この問題は、たとえば、米国特許出願公開第2009/0292051号明細書に述べられている。米国特許出願公開第2009/0292051号明細書には、10~90wt%の熱可塑性ベース樹脂と、0.1~30wt%のレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤と、10~80wt%のセラミック充填剤と、を含む熱可塑性組成物が開示されている。米国特許出願公開第2009/0292051号明細書によれば、LDS添加剤は、誘電定数の増加を助けるので、同一レベルの誘電定数の組成物を達成するのに必要とされるセラミック充填剤は、より少なくなる。LDS添加剤は、重金属混合酸化物スピネル又は銅塩である。実施例で使用されたセラミック充填剤は、39/21の比のBaTiOとTiOとの混合物である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、望ましいラジオ周波性能、特定的には高周波で低損失正接を有するLDS組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
それゆえ、本発明は、
a)20~90wt%の熱可塑性樹脂と、
b)0.1~80wt%のレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤と、
c)レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤機能を有していない10~80wt%のセラミック充填剤粒子であって、c)の少なくとも80wt%がTiOである、セラミック充填剤粒子と、
を含み、
組成物が、多くとも0.014の40GHzで測定される損失正接を有する、
熱可塑性組成物を提供する。好ましくは、a)、b)、及びc)の合計量は、合計組成物を基準にして95~100wt%であり、且つ組成物は、f)1種以上の添加剤をさらに含み、添加剤の合計量は、組成物の合計重量を基準にして0.1~5wt%、0.3~5wt%、又は0.3~3wt%である。
【0007】
本発明者らは、驚くべきことに、TiOの使用が、BaTiOなどの他のタイプのセラミック充填剤材料と比較して、とくに高周波で低損失正接を有する組成物をもたらすことを見いだした。BaTiOは、その望ましいラジオ周波性能で知られているので、望ましいラジオ周波性能を得る目的で最も一般的に使用される材料である。TiOが高周波で周知のBaTiOよりも有意に良好な結果をもたらしたことは、驚くべきことである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
a)熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂は、ポリカーボネートとくに芳香族ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリエステルアミド、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリフェニレンエーテル、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、環状オレフィン(コ)ポリマー(COP)、又はそれらの組合せなどの樹脂を含みうる。樹脂は、ホモポリマー、コポリマー、又はそれらの混合物であってもよく、分岐状又は非分岐状であってもよい。
【0009】
好適なポリアミド(PA)の例は、分岐状ポリアミドであってもよい脂肪族ポリアミド、たとえば、PA6、PA46、PA66、PA6/66、PA11、PA12、半芳香族ポリアミド、たとえば、MXD6、PA6I/6T、PA66/6T、PA4T、全芳香族ポリアミド、並びに列挙されたポリアミドのコポリマー及びブレンドである。好適なポリエステルの例は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリエチレンナフタノエート(PEN)、ポリブチレンナフタノエート(PBN)である。好ましいポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートである。ポリフェニレンエーテルは、典型的にはポリアミド又はポリスチレンとの組合せで使用される。
【0010】
好適なLCPの例は、Vectra(登録商標)E845i LDS、E840i LDS、TECACOMP LCP LDS black4107として商品化されている。好適なPEEKの例は、TECACOMP PEEK LDSとして商品化されている。好適なCOPの例は、ZEONEX RS420-LDS Cyclo Olefin Polymerとして商品化されている。
【0011】
熱可塑性樹脂は、ゴム状ポリマーをさらに含みうる。ゴム状ポリマーの例は、国際公開第2009024496号パンフレット(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。ゴム状ポリマーは、好ましくは約10℃未満、より具体的には約-10℃未満、より具体的には約-20℃~-80℃のTgを有するエラストマー(すなわちゴム状)ポリマーであるか又はそれを含有する。
【0012】
好ましい実施形態では、熱可塑性樹脂はポリカーボネート系樹脂である。ポリカーボネート系樹脂は、ポリカーボネートであってもポリカーボネートとアクリロニトリルブタジエンスチレンゴム(ABS)などのゴム状ポリマーとのブレンドであってもよい。ポリカーボネートは、ホモポリマー、コポリマー、及びそれらの混合物であってもよく、分岐状又は非分岐状であってもよい。好適なポリカーボネート系樹脂は、たとえば、米国特許出願公開第2009/0292048号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0013】
芳香族カーボネート鎖状単位を含むポリカーボネートは、式(I):
-R-O-CO-O- (I)
(式中、R基は、芳香族、脂肪族、又は脂環式の基である)
の構造単位を有する組成を含む。有益には、Rは、芳香族有機基、代替実施形態では式(II):
-A-Y-A- (II)
(式中、A及びAの各々は、単環式2価アリール基であり、且つYは、AからAを分離する0、1、又は2個の原子を有する連結基である)
の基である。模範的実施形態では、1個の原子がAからAを分離する。このタイプの基の例示的例は、-O-、-S-、-S(O)-、-S(O2)-、-C(O)-、メチレン、シクロヘキシル-メチレン、2-[2,2,1]-ビシクロヘプチリデン、エチリデン、イソプロピリデン、ネオペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン、アダマンチリデンなどである。他の一実施形態では、0個の原子がAからAを分離し、例示的例はビスフェノールである。連結基Yは、炭化水素基又は飽和炭化水素基、たとえば、メチレン、シクロヘキシリデン、又はイソプロピリデンでありうる。
【0014】
好適な芳香族ポリカーボネート樹脂としては、たとえば、一般に知られる界面重合プロセス又は溶融重合法を利用して、少なくとも2価フェノールとカーボネート前駆体とから製造されるポリカーボネートが挙げられる。適用されうる好適な2価フェノールは、芳香環の一部を形成する炭素原子に各々が直接連結された2個のヒドロキシ基を含有する芳香環を1個以上有する化合物である。かかる化合物の例は、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス-(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)-プロパン、2,2-ビス-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロパン、2,4-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、2,4-ビス-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、ビス-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-メタン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-シクロヘキサン、1,1-ビス-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-シクロヘキサン、2,2-(3,5,3’,5’-テトラクロロ-4,4’-ジヒドロキシジフェニル)プロパン、2,2-(3,5,3’,5’-テトラブロモ-4,4’-ジヒドロキシジフェニル)プロパン、(3,3’-ジクロロ-4,4’-ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-スルホン、ビス-4-ヒドロキシフェニルスルホン、ビス-4-ヒドロキシフェニルスルフィドである。
【0015】
カーボネート前駆体は、カルボニルハロゲニド、ハロゲンホルメート、又はカーボネートエステルでありうる。カルボニルハロゲニドの例は、カルボニルクロライド及びカルボニルブロマイドである。好適なハロゲンホルメートの例は、ヒドロキノンなどの2価フェノールの又はエチレングリコールなどのグリコールのビス-ハロゲンホルメートである。好適なカーボネートエステルの例は、ジフェニルカーボネート、ジ(クロロフェニル)カーボネート、ジ(ブロモフェニル)カーボネート、ジ(アルキルフェニル)カーボネート、フェニルトリルカーボネートなど、及びそれらの混合物である。他のカーボネート前駆体も使用されうるが、カルボニルハロゲニド、特定的にはホスゲンとしても知られるカルボニルクロライドを使用することが好ましい。
【0016】
本発明に係る組成物中の芳香族ポリカーボネート樹脂は、触媒と酸受容体と分子量制御用化合物とを用いて調製されうる。
【0017】
触媒の例は、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、N,N-ジメチルアニリンなどの第3級アミン、テトラエチルアンモニウムブロマイドなどの第4級アンモニウム化合物、及びメチルトリフェニルホスホニウムブロマイドなどの第4級ホスホニウム化合物である。
【0018】
有機酸受容体の例は、ピリジン、トリエチルアミン、ジメチルアニリンなどである。無機酸受容体の例は、アルカリ金属又は土類アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、及びリン酸塩である。
【0019】
分子量制御用化合物の例は、1価フェノール、たとえば、フェノール、p-アルキルフェノール、及びパラ-ブロモフェノール、並びに第2級アミンである。
【0020】
ゴム状ポリマー
ポリカーボネートなどの樹脂とブレンドされうるゴム状ポリマーの例は、国際公開第2009024496号パンフレット(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。ゴム状ポリマーは、好ましくは約10℃未満、より具体的には約-10℃未満、より具体的には約-20℃~-80℃のTgを有するエラストマー性(すなわち弾性)ポリマーであるか又はそれを含有する。
【0021】
好ましくは、熱可塑性樹脂a)中のゴム状ポリマーの量は、熱可塑性樹脂a)の量の0~60wt%、たとえば、1~50wt%、5~40wt%、又は10~30wt%である。
【0022】
エラストマー性ポリマーの例としては、ポリイソプレン、ブタジエン系ゴム、たとえば、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエンランダムコポリマー及びブロックコポリマー、前記ブロックコポリマーのハイドロジェネート、アクリロニトリル-ブタジエンコポリマー及びブタジエン-イソプレンコポリマー、アクリレート系ゴム、たとえば、エチレン-メタクリレート及びエチレン-ブチルアクリレート、アクリレートエステル-ブタジエンコポリマー、たとえば、アクリル性エラストマー性ポリマー、たとえば、ブチルアクリレート-ブタジエンコポリマー、シロキサン系ゴム、たとえば、ポリオルガノシロキサン、たとえば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ジメチル-ジフェニルシロキサンコポリマーなど、並びに他のエラストマー性ポリマー、たとえば、エチレン-プロピレンランダムコポリマー及びブロックコポリマー、エチレンと[アルファ]-オレフィンとのコポリマー、エチレンと脂肪族ビニルとのコポリマー、たとえば、エチレン-ビニルアセテート、及びエチレン-プロピレン非共役ジエンターポリマー、たとえば、エチレン-プロピレン-ヘキサジエンコポリマー、ブチレン-イソプレンコポリマー、及び塩素化ポリエチレンが挙げられるとともに、これらの物質は、個別に又は2種以上の組合せで使用されうる。
【0023】
とくに好ましいエラストマー性ポリマーとしては、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー)、AES樹脂(アクリロニトリル-エチレン-プロピレン-スチレンコポリマー)、AAS樹脂(アクリロニトリル-アクリル性エラストマー-スチレンコポリマー)、及びMBS(メチルメタクリレートブタジエンスチレンコポリマー)が挙げられる。とくに好ましいグラフトコポリマーは、アクリロニトリルブタジエンスチレンゴム(ABS)、メチルメタクリレートブタジエンスチレンゴム(MBS)、又はこれらのコポリマーの混合物であり、ポリカーボネートマトリックスとかかるコポリマーとの間の相溶性が高いので、これらのコポリマーは、ポリカーボネートマトリックス中に均一に分散可能になりうる。このため、ある特定のタイプの成分b)により引き起こされるおそれのある熱可塑性樹脂の分解はいずれも減少する。経済上の観点から、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)はさらにより好ましい。いずれの市販のABSも適用されうる。とくに好ましいアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)は、10~50重量部、好ましくは10~40重量部、さらにより好ましくは10~30重量部のゴム含有率のアクリロニトリルブタジエンスチレンである。
【0024】
とくに好ましい実施形態では、熱可塑性樹脂a)は、45~75wt%のポリカーボネートと、5~40wt%のABSと、0~10wt%のMBSと、のブレンドである(ただし、量は熱可塑性樹脂a)を基準にする)。
【0025】
いくつかの実施形態では、ゴムは、Siを含有するエラストマー性成分を含むグラフトコポリマーである。これは、組成物の難燃性を改善するという利点を有する。グラフトコポリマーは、Siを含有するエラストマー性成分と、それと共重合可能なモノマー成分と、をグラフト共重合することにより形成される。エラストマー性成分は、一般に高くても0℃、好ましくは高くても-20℃、より好ましくは-30℃のガラス転移温度を有する。
【0026】
グラフトコポリマーとしては、コア/シェル型グラフトコポリマーが好ましく、この場合、コアは、Siを含有するエラストマー性成分である。Siを含有するエラストマー性成分は、好ましくはポリオルガノシロキサンである。
【0027】
グラフトコポリマーは、好ましくは、たとえば、米国特許出願公開第2005/0143520号明細書に記載されるように、40~95重量部のポリオルガノシロキサン粒子(II)の存在下で5~60重量部のビニルモノマー(I)を重合することにより((I)及び(II)の和は100重量部である)好ましくは調製されるグラフトコポリマーを含有するポリオルガノシロキサンである。ビニルモノマー(I)の例としては、たとえば、芳香族ビニルモノマー、たとえば、スチレン、アルファ-メチルスチレン、p-メチルスチレン、及びp-ブチルスチレン、ビニルシアニドモノマー、たとえば、アクリロニトリル及びメタクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、たとえば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、グリシジルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、及びヒドロキシエチルメタクリレート、並びにカルボキシル基含有ビニルモノマー、たとえば、イタコン酸、(メタ)アクリル酸、フマル酸、及びマレイン酸が挙げられる。ビニルモノマー(a-I)は、必要であれば、1分子当たり少なくとも2つの重合性不飽和結合を有する多官能性モノマーを含みうる。多官能性モノマーの例としては、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、及びジビニルベンゼンが挙げられる。ビニルモノマー(I)は、単独又は組合せで使用されうる。ポリオルガノシロキサン粒子(II)は、好ましくは、構成成分の乳化重合により調製される。通常のシード乳化重合は、グラフト共重合に適用可能であるとともに、ポリオルガノシロキサン粒子(II)のラテックス中でビニルモノマー(I)をラジカル重合することにより達成可能である。
【0028】
ポリオルガノシロキサンを含むこれらのグラフトコポリマーは、たとえば、株式会社カネカからカネエースMR01及びカネエースMR02として入手可能である。
【0029】
Siを含有するエラストマー性成分を含む他の好適なグラフトコポリマーとしては、三菱レイヨン製のメタブレンS-2001、メタブレンS-2200、及びメタブレンSX-005が挙げられる。
【0030】
とくに好ましい実施形態では、熱可塑性樹脂a)は、80~99wt%のポリカーボネートと、Siを含有するエラストマー性成分を含む1~20wt%のグラフトコポリマーと、のブレンドである(ただし、量は熱可塑性樹脂a)を基準にする)。
【0031】
いくつかの実施形態では、熱可塑性樹脂a)は、ポリシロキサン-ポリカーボネートコポリマーであるか又はそれを含む。ポリシロキサン-ポリカーボネートコポリマーの例は、たとえば、米国特許第5380795号明細書及び国際公開第09040772号パンフレットに記載されている。これもまた、組成物の難燃性を改善するという利点を有する。
【0032】
本発明の組成物中のa)の量は、合計組成物の重量を基準にして20~90wt%、たとえば、少なくとも30wt%、少なくとも40wt%、少なくとも50wt%、若しくは少なくとも60wt%、及び/又は多くとも85wt%、多くとも80wt%、多くとも75wt%、多くとも70wt%、多くとも67wt%、若しくは多くとも65wt%である。
【0033】
b)レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤
いくつかの好ましい実施形態では、b)はLDS添加剤の粒子を含む。
【0034】
いくつかの好ましい実施形態では、b)は、コアとコアをカバーするシェルとからなる粒子を含み、この場合、シェルは、LDS添加剤機能を有する材料で作製される。コアは、好ましくは、高誘電定数を有する材料で作製される。
【0035】
本明細書では、「材料の粒子」という用語は、形状(球状、ウィスカー、繊維状など)にかかわらず、材料からなる微粒子状成分として理解される。この用語は、コア-シェル粒子のコアから識別されるように使用される。
【0036】
典型的には、b)は、LDS添加剤の粒子又はコアとコアをカバーするシェルとからなる粒子のどちらかからなる。b)はまた、LDS添加剤の粒子と、コアとコアをカバーするシェルとからなる粒子と、からなりうる。
【0037】
「レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤」及び「レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤機能を有する材料」という用語は、1)100重量部の熱可塑性樹脂たとえばポリカーボネートに10重量部のLDS添加剤の候補材料を添加することにより作製された試料を成形することと、2)レーザーにより試料を照射することと、3)照射された試料を無電解メッキに付すことと、により作製された物品上にメッキ層を形成可能な材料を意味するものと理解される。たとえば、工程2)は、13Wの出力、20kHzの周波数、及び2m/sのスキャニングスピードで1064nmの波長のYAGレーザーにより試料を照射することでありうる。たとえば、工程3)は、照射された試料をMID Copper 100 XB Strikeメッキ浴(MacDermid Performance Solutions製)を用いて無電解メッキに付すことでありうる。
【0038】
レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤又はシェルに使用されるレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤機能を有する材料の例としては、
重金属混合酸化物スピネル、たとえば、銅含有スピネル、たとえば、酸化クロム銅スピネル、酸化モリブデン銅スピネル、及び酸化マンガンクロム銅スピネル、
銅塩、たとえば、リン酸水酸化銅、リン酸銅、硫酸銅、チオシアン酸第1銅、
有機金属錯体、たとえば、パラジウム/パラジウム含有重金属錯体、
スズ含有酸化物、たとえば、酸化スズアンチモン(アンチモンドープ酸化スズ)、酸化スズビスマス(ビスマスドープ酸化スズ)、酸化スズアルミニウム(アルミニウムドープ酸化スズ)、及び酸化スズモリブデン(モリブデンドープ酸化スズ)、
亜鉛含有金属酸化物、たとえば、酸化亜鉛アルミニウム(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、ZnNi1-XFe(式中、xは0.60超且つ0.85未満である)、
チタン酸銅カルシウム、並びに
それらの組合せ
が挙げられる。
【0039】
酸化クロム銅スピネルの例としては、Shepherd TechnologiesからLD5という商品名で販売されているものなどが挙げられる。
【0040】
アンチモンドープ酸化スズの例としては、国際公開第2012/126831号パンフレットに記載されるように、少なくとも45のCIELab色値Lを有するものが挙げられる。アンチモンドープ酸化スズのさらなる例としては、国際公開第2013/076314号パンフレットに記載されるように、少なくともスズと、アンチモン、ビスマス、アルミニウム、及びモリブデンからなる群から選択される第2の金属と、を含む混合金属酸化物がさらに挙げられ、ただし、LDS添加剤は、少なくとも40wt%のスズを含み、且つ第2の金属対スズの重量比は、少なくとも0.02:1である。例としては、Keeling&Walker製のStanostat CP5C及びFerro製の25-3511PKが挙げられる。
【0041】
すでに述べたように、b)は、LDS添加剤の粒子からなりうる。しかしながら、b)が、コアとコアをカバーするシェルとからなる粒子を含むか又はその粒子からなり、シェルが、LDS添加剤機能を有する材料で作製されるとき、コアは、好ましくは、本発明に係る組成物の所望のラジオ周波性能の達成に寄与するように選択される。
【0042】
好ましくは、コアは、セラミック材料で作製され、好ましくは、金属酸化物、金属ケイ酸塩、金属ホウ化物、金属炭化物、及び金属窒化物から選択される。
【0043】
金属酸化物の好適な例としては、酸化マグネシウム、酸化チタン(たとえばTiO)、酸化亜鉛、酸化銅、酸化セリウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム(たとえば、アルミナ及び/又はヒュームドアルミナ)、CaTiO、MgZrSrTiO、MgTiO、MgAl、BaZrO、BaSnO、BaNb、BaTa、WO、MnO、SrZrO、SnTiO、ZrTiO、CaZrO、CaSnO、CaWO4、MgTa、MgZrO、La、CaZrO、MgSnO、MgNb、SrNb、MgTa、Ta、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、チタン酸ストロンチウムバリウム、ストロンチウムドープマンガン酸ランタン、酸化ランタンアルミニウム(LaAlO)、チタン酸銅カルシウム(CaCuTi12)、チタン酸銅カドミウム(CdCuTi12)、Ca1-xLaMnO、(Li,Ti)ドープNiO、酸化ストロンチウムランタン銅(LSCO)、酸化イットリウム銅バリウム(YBaCu)、チタン酸ジルコン酸鉛、及びランタン修飾チタン酸ジルコン酸鉛が挙げられる。
【0044】
ケイ酸塩の例は、NaSiO、LiAlSiO、LiSiO、BaTiSi、AlSi、ZrSiO、KAlSi、NaAlSi、CaAlSi、CaMgSi、及びZnSiOである。マイカ及びタルクは、所望のラジオ周波性能の達成に寄与しないので、コアとして好ましくないことに留意されたい。
【0045】
ホウ化物の例は、ホウ化ランタン(LaB)、ホウ化セリウム(CeB)、ホウ化ストロンチウム(SrB)、ホウ化アルミニウム、ホウ化カルシウム(CaB)、ホウ化チタン(TiB)、ホウ化ジルコニウム(ZrB)、ホウ化バナジウム(VB)、ホウ化タンタル(TaB)、ホウ化クロム(CrB及びCrB)、ホウ化モリブデン(MoB、Mo、及びMoB)、及びホウ化タングステン(W)である。
【0046】
炭化物の例は、炭化ケイ素、炭化タングステン、炭化タンタル、炭化鉄、及び炭化チタンである。
【0047】
窒化物の例としては、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化チタン、窒化アルミニウム、及び窒化モリブデンが挙げられる。
【0048】
好ましくは、コアは、金属酸化物、金属ホウ化物、金属炭化物、及び金属窒化物から選択されるセラミック材料で作製される。
【0049】
好ましくは、コアは、金属酸化物、より好ましくは二酸化チタン及び/又はチタン酸バリウム、最も好ましくは二酸化チタンで作製される。
【0050】
いくつかの好ましい実施形態では、コアは、二酸化チタン及び/又はチタン酸バリウム、好ましくは二酸化チタンで作製され、且つシェルは、酸化スズアンチモンで作製される。
【0051】
b)の量は、合計組成物を基準にして0.1~80wt%である。いくつかの実施形態では、b)の量は、合計組成物を基準にして少なくとも20wt%、少なくとも25wt%、少なくとも30wt%、少なくとも31wt%、少なくとも32wt%、少なくとも33wt%、少なくとも34wt%、又は少なくとも35wt%である。他の実施形態では、b)の量は、合計組成物を基準にして20wt%未満、15wt%未満、10wt%未満、又は5wt%未満である。
【0052】
好ましい実施形態では、b)は、酸化スズアンチモンなどのスズ含有酸化物を含み、且つ組成物中のスズ含有酸化物の量は、合計組成物を基準にして少なくとも20wt%、好ましくは合計組成物を基準にして少なくとも25wt%、少なくとも30wt%、少なくとも31wt%、少なくとも32wt%、少なくとも33wt%、少なくとも34wt%、又は少なくとも35wt%である。スズ含有酸化物であるLDS添加剤は、所望のラジオ周波性を得る際に大きな影響を及ぼす。
【0053】
好ましくは、LDS添加剤は、光散乱技術により決定したときに多くとも8μm、より好ましくは多くとも5μm、より好ましくは多くとも4μm、より好ましくは多くとも2μmの粒子サイズd90を有する。
【0054】
好ましくは、LDS添加剤は、光散乱技術により決定したときに多くとも5μm、より好ましくは多くとも4μm、より好ましくは多くとも2μmの粒子サイズd50を有する。
【0055】
より小さなサイズを有するLDS添加剤は、本発明に係る組成物に良好な機械的強度を与えることが判明した。
【0056】
粒子サイズは、たとえば、Malvern Mastersize粒子サイズアナライザーを用いて光散乱技術により決定されうる。これは、たとえば、ISO13320-1:2009に準拠して行われうる。
【0057】
c)レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤機能を有していないセラミック充填剤粒子
成分c)は、LDS添加剤機能を有していないセラミック材料の粒子である。かかる材料の少なくとも80wt%は、本発明に係る組成物中のTiOであり、これは高周波で低損失正接を有する組成物をもたらす。
【0058】
本発明に係る組成物中に存在するレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤機能を有していないセラミック充填剤粒子の少なくとも80wt%は、TiOである。好ましくは、本発明に係る組成物中に存在するレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤機能を有していないセラミック充填剤粒子を基準にしたTiOの量は、少なくとも90wt%、少なくとも95wt%、少なくとも99wt%、又は100wt%である。
【0059】
本発明に係る組成物は、そのほか、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤機能を有していない他のセラミック充填剤粒子を含みうるが、それらの量はc)の多くとも20wt%に限定される。
【0060】
好ましくは、組成物中に存在しうるレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤機能を有していないさらなるセラミック充填剤粒子は、LDS添加剤機能を有していない金属酸化物、金属ケイ酸塩、金属ホウ化物、金属炭化物、及び金属窒化物から好ましくは選択されるセラミック材料で作製される。
【0061】
好ましくは、さらなるセラミック充填剤粒子は金属酸化物で作製される。いくつかの好ましい実施形態では、組成物はチタン酸バリウムを含まない。
【0062】
c)の量は、合計組成物を基準にして10~80wt%である。好ましくは、c)の量は、合計組成物を基準にして少なくとも15wt%、少なくとも20wt%、少なくとも25wt%、少なくとも30wt%、若しくは少なくとも35wt%、及び/又は多くとも70wt%、多くとも60wt%、多くとも50wt%、若しくは多くとも40wt%である。
【0063】
好ましくは、合計組成物を基準にしたb)及びc)の合計量は、少なくとも15wt%、少なくとも20wt%、少なくとも25wt%、少なくとも30wt%、少なくとも33wt%、若しくは少なくとも35wt%、及び/又は多くとも70wt%、多くとも60wt%、多くとも50wt%、若しくは多くとも40wt%である。
【0064】
国際公開第2012/126831号パンフレットには、5wt%のLDS添加剤と10wt%のTiOとを含む組成物が実施例7に開示されていることに留意されたい。LDS添加剤は、アンチモンドープ酸化スズで被覆されたマイカであった。LDS添加剤中のマイカの使用は、高損失正接を有する組成物をもたらすので、実施例7の組成物は、0.014超の40GHzで測定される損失正接を有する。
【0065】
国際公開第2013/076314号パンフレットには、5wt%の酸化スズアンチモンと7wt%のTiOとを含む組成物が実施例1に開示されていることにさらに留意されたい。酸化スズアンチモン及びTiOの合計量は少ないので、国際公開第2013/076314号パンフレットの実施例1の組成物は、0.014超の40GHzで測定される損失正接を有する。
【0066】
a)、b)、及びc)の合計
好ましくは、成分a)、b)、及びc)の合計量は、合計組成物の90~100wt%、たとえば、合計組成物を基準にして90~99.9wt%、92~99.0wt%、又は95~98wt%である。好ましくは、成分a)、b)、及びc)の合計量は、合計組成物を基準にして少なくとも96wt%、少なくとも97wt%、少なくとも98wt%、又は少なくとも99wt%である。
【0067】
性質
好ましくは、本発明に係る組成物は、少なくとも3.5、より好ましくは少なくとも4.0、より好ましくは少なくとも4.2、より好ましくは少なくとも4.5、より好ましくは少なくとも4.7、より好ましくは、少なくとも5.0の1GHzで測定される誘電定数を有する。
【0068】
好ましくは、本発明に係る組成物は、多くとも0.014、より好ましくは多くとも0.010、より好ましくは多くとも0.007の1GHzで測定される正接損失を有する。
【0069】
好ましくは、本発明に係る組成物は、少なくとも3.5、より好ましくは少なくとも4.0、好ましくは少なくとも4.2、より好ましくは少なくとも4.5、より好ましくは少なくとも4.7、より好ましくは少なくとも5.0の40GHzで測定される誘電定数を有する。
【0070】
本発明に係る組成物は、多くとも0.014、好ましくは多くとも0.010、より好ましくは多くとも0.007の40GHzで測定される正接損失を有する。
【0071】
d)難燃剤
本発明に係る熱可塑性組成物は、d)難燃剤をさらに含みうる。
【0072】
好ましくは、成分d)の量は、合計組成物を基準にして0~15wt%、たとえば、0.1~10wt%である。成分d)の存在は、任意選択的であるため、本発明に係る組成物は、本質的に成分d)フリーでありうる。このことは、成分d)の量が合計組成物を基準にして1wt%未満、0.5wt%未満、0.1wt%未満、又は0wt%であることを意味しうる。
【0073】
難燃剤は、無機難燃剤又は有機難燃剤でありうる。
【0074】
無機難燃剤の例としては、スルホネート塩、たとえば、カリウムペルフルオロブタンスルホネート(Rimar塩)及びカリウムジフェニルスルホンスルホネート、たとえばアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属(好ましくは、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、及びバリウムの塩)と無機酸複合塩たとえばオキソアニオンとを反応させることにより形成される塩、たとえば、炭酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、たとえば、Na2CO3、K2CO3、MgCO3、CaCO3、BaCO3、及びBaCO3、又はフルオロアニオン錯体、たとえば、Li3AlF6、BaSiF6、KBF4、K3AlF6、KAlF4、K2SiF6、及び/又はNa3AlF6などが挙げられる。無機難燃剤は、ビカット温度を維持する目的に有利である。
【0075】
有機難燃剤の例としては、有機ホスフェート及び/又はリン-窒素結合を含有する有機化合物が挙げられる。
【0076】
模範的有機ホスフェートの1タイプは、式(GO)P=O(式中、各Gは、独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルカリール基、又はアラルキル基であり、ただし、少なくとも1つのGは芳香族基である)の芳香族ホスフェートである。G基のうち2個は、ジフェニルペンタエリトリトールジホスフェートなどの環式基を提供するように連結一体化されてもよく、これはAxelrodにより米国特許第4,154,775号明細書に記載されている。他の好適な芳香族ホスフェートは、たとえば、フェニルビス(ドデシル)ホスフェート、フェニルビス(ネオペンチル)ホスフェート、フェニルビス(3,5,5’-トリメチルヘキシル)ホスフェート、エチルジフェニルホスフェート、2-エチルヘキシルジ(p-トリル)ホスフェート、ビス(2-エチルヘキシル)p-トリルホスフェート、トリトリルホスフェート、ビス(2-エチルヘキシル)フェニルホスフェート、トリ(ノニルフェニル)ホスフェート、ビス(ドデシル)p-トリルホスフェート、ジブチルフェニルホスフェート、2-クロロエチルジフェニルホスフェート、p-トリルビス(2,5,5’-トリメチルヘキシル)ホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェートなどでありうる。具体的芳香族ホスフェートは、各Gが芳香族であるもの、たとえば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、イソプロピル化トリフェニルホスフェートなどである。
【0077】
また、二官能性又は多官能性の芳香族リン含有化合物、たとえば、下記式:
【化1】
(式中、各Gは、独立して、1~30個の炭素原子を有する炭化水素であり、各Gは、独立して、1~30個の炭素原子を有する炭化水素又は炭化水素オキシであり、各Xは、独立して、臭素又は塩素であり、mは0~4且つnは1~30である)
の化合物も有用である。好適な二官能性又は多官能性の芳香族リン含有化合物の例としては、レゾルシノールテトラフェニルジホスフェート(RDP)、ハイドロキノンのビス(ジフェニル)ホスフェート、及びビスフェノールAのビス(ジフェニル)ホスフェート、それぞれ、それらのオリゴマー及びポリマーのカウンターパートなどが挙げられる。上述した二官能性又は多官能性の芳香族化合物の調製方法は、英国特許第2,043,083号明細書に記載されている。
【0078】
本発明の熱可塑性組成物は、本質的に塩素及び臭素フリーでありうるとともに、とくに、合計組成物を基準にして100ppm未満、75ppm未満、又は50ppm未満の臭素及び/又は塩素含有率を有するとして定義されうる塩素及び臭素難燃剤でありうる。
【0079】
好ましくは、組成物の成形品は、3.0mm(±10%)の厚さで少なくともUL94V1等級(すなわちV1又はV0等級)を有する。
【0080】
より好ましくは、組成物の成形品は、1.5mm(±10%)の厚さでUL94V1又はV0等級を有する。
【0081】
a)、b)、c)、及びd)の合計
好ましくは、成分a)、b)、c)、及びd)の合計量は、合計組成物の90~100wt%、たとえば、合計組成物を基準にして90~99.9wt%、92~99.0wt%、又は95~98wt%である。好ましくは、成分a)、b)、c)、及びd)の合計量は、合計組成物を基準にして少なくとも96wt%、少なくとも97wt%、少なくとも98wt%、又は少なくとも99wt%である。
【0082】
成分e)ドリップ防止剤
本発明に係る熱可塑性組成物は、e)ドリップ防止剤をさらに含みうる。
【0083】
好ましくは、成分e)の量は、合計組成物を基準にして0~2.0wt%又は0.05~2.0wt%、より好ましくは0.1~1.5wt%、より好ましくは0.2~1.0wt%である。成分e)の存在は、任意選択的であるため、本発明に係る組成物は、成分e)をほとんど又はまったく含んでいなくてもよい。たとえば、成分e)の量は、合計組成物を基準にして0.05wt%未満、0.01wt%未満、又は0wt%でありうる。
【0084】
ドリップ防止剤の好適な例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフルオロポリマーが挙げられる。フルオロポリマーは、フィブリル形成ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフィブリル形成フルオロポリマー又は非フィブリル形成ポリテトラフルオロエチレンなどの非フィブリル形成フルオロポリマーでありうる。
【0085】
ドリップ防止剤は、フルオロポリマーの(水性)ディスパージョンの形態でありうる。この場合、ディスパージョンは、十分量、たとえば、ディスパージョンの少なくとも30wt%又は少なくとも50wt%のフルオロポリマーを含有する。
【0086】
ドリップ防止剤は、フルオロポリマーとさらなるポリマーとの混合物、たとえば、カプセル化フルオロポリマーの形態でありうる。この場合、ディスパージョンは、十分量、たとえば、混合物の少なくとも30wt%又は少なくとも50wt%のフルオロポリマーを含有する。さらなるポリマーは、たとえば、アクリレートコポリマー又はスチレン-アクリロニトリルでありうる。フルオロポリマーとアクリレートポリマーとの混合物の例は、三菱レイヨンからメタブレンA-3800として市販されている。カプセル化フルオロポリマーは、フルオロポリマーの存在下でポリマーを重合することにより製造されうる。
【0087】
好ましくは、ドリップ防止剤は、フルオロポリマーとさらなるポリマーとの混合物、たとえば、カプセル化フルオロポリマーである。かかるドリップ防止剤は、押出し機への供給がより容易であるうえに組成物から水を除去する必要がないので、ディスパージョンの形態のドリップ防止剤と比較してより良好に取扱い可能である。
【0088】
a)、b)、c)、d)、及びe)の合計
好ましくは、成分a)、b)、c)、d)、及びe)の合計量は、合計組成物の90~100wt%、たとえば、合計組成物を基準にして90~99.9wt%、92~99.0wt%、又は95~98wt%である。好ましくは、成分a)、b)、c)、d)、及びe)の合計量は、合計組成物を基準にして少なくとも96wt%、少なくとも97wt%、少なくとも98wt%、又は少なくとも99wt%である。
【0089】
他の添加剤f)
本発明に係る熱可塑性組成物は、組成物の合計重量を基準にしてf)0~10wt%の1種以上の他の添加剤をさらに含みうる。こうしたものとしては、慣用添加剤、たとえば、熱分解又は熱酸化分解に対する安定剤、加水分解に対する安定剤、光とくにUV光による分解及び/又は光酸化分解に対する安定剤、並びに剥離剤や滑剤などの加工助剤が挙げられる。かかる添加剤及びそれらの慣用量の好適な例は、上述したKunststoff Handbuch,3/1に明記されている。添加剤の合計量は、典型的には0~5wt%、たとえば、0.1~3wt%又は0.3~1wt%である。たとえば、添加剤の合計量は、組成物の全重量を基準にして0.1~5wt%、0.3~5wt%、0.5~5wt%、1~5wt%、又は1.5~5wt%である。
【0090】
a)、b)、c)、d)、e)、及びf)の合計
好ましくは、成分a)、b)、c)、d)、e)、及びf)の合計量は、合計組成物の100wt%である。
【0091】
本発明に係る組成物は、繊維状充填剤(たとえば、ガラス繊維)や鉱物充填剤(たとえば、炭酸カルシウム、高分散性ケイ酸、アルミナ、水酸化アルミニウム、タルク粉末、マイカ、ウォラストナイト、クォーツサンド、シリカサンド)などの充填剤が本質的にフリーである。それゆえ、本発明に係る組成物は、組成物の全重量を基準にして5wt%未満、好ましくは4wt%未満、3wt%未満、2wt%未満、1wt%未満、0.5wt%未満、0.1wt%未満、又は0wt%の繊維状充填剤や鉱物充填剤などの充填剤を含む。
【0092】
成分b)及びc)並びに以上に記載される任意選択的成分は、1軸スクリュー押出し機や2軸スクリュー押出し機などの好適な混合デバイスを利用して熱可塑性樹脂a)に導入されうるとともに、好ましくは2軸スクリュー押出し機が使用される。好ましくは、熱可塑性樹脂ペレットは、少なくとも成分b)及びc)と一緒に押出し機に導入されて押し出され、次いで、水浴中でクエンチされ、次いでペレット化される。したがって、本発明はさらに、成分a)とb)とc)と以上に記載され任意選択的成分とを溶融混合することにより本発明に係る熱可塑性組成物を製造するプロセスに関する。
【0093】
他の態様
本発明はさらに、本発明に係る熱可塑性組成物を含む成形品に関する。本発明はとくに、本発明に係る組成物の射出成形により製造される成形品に関する。本発明はさらにまた、本発明に係る組成物から製造される成形品とその上に提供される伝導性トラックとを含有する物品とくに回路キャリアに関する。一実施形態では、かかる回路キャリアは、アンテナの製造に使用される。
【0094】
本発明はさらに、かかる回路キャリアの製造プロセスに関し、このプロセスは、本発明に係る熱可塑性組成物を含む成形品を提供する工程と、伝導性トラックがレーザー照射により形成される前記成形品の領域を照射する工程と、照射された領域を続いて金属化する工程と、を含む。好ましい実施形態では、レーザー照射は、接着促進表面を形成しながら金属核の放出と成形品のアブレーションとを同時に行うために使用される。これは、堆積された金属導体トラックの優れた接着強度を達成する簡単な手段を提供する。レーザーの波長は、有利には248nm、308nm、355nm、532nm、1064nm、さらには10600nmである。レーザー照射により発生する金属核上へのさらなる金属の堆積は、好ましくは、メッキプロセスにより行われる。前記金属化は、好ましくは、成形品の照射された領域上に電気伝導性経路を形成するように少なくとも1つの無電解メッキ浴中に成形品を浸漬することにより実施される。無電解メッキプロセスの非限定的例は、銅メッキプロセス、金メッキプロセス、ニッケルメッキプロセス、銀メッキ、亜鉛メッキ、及びスズメッキである。好ましくは、第1のメッキは銅メッキである。伝導性トラックは1つ以上の層を有しうる。第1の層は、たとえば、銅層でありうるとともに8~16μm、より典型的には8~12μmでありうる。存在するのであれば、第2の層は、たとえば、ニッケル層でありうるとともに2~4μmでありうる。存在するのであれば、第3の層は、たとえば、金層でありうるとともに0.05~0.2μmでありうる。
【0095】
成形品への照射は、たとえば、2~15Wのパワー、20~100kHzの周波数、及び/又は1~5m/sのスピードを含む条件下で実施されうる。
【0096】
成形品への照射は、たとえば、100~400nmの波長を有するUV光、400~800nmの波長を有する可視光、又は800~25000nmの波長を有する赤外光により実施されうる。
【0097】
100~400nmの波長を有するUV光により成形品への照射を実施するとき、耐デラミネーション性を改善するために金属化領域を有する成形品を熱処理に付すことが好ましい。熱処理は、成形品をマイクロ波に付すことにより、たとえば、成形品をマイクロ波オーブン内に配置することにより実施されうる。好ましくは、成形品への照射は、400~800nmの波長を有する可視光又は800~25000nmの波長を有する赤外光により実施される。これらのタイプのレーザー照射は、照射された領域上の金属層がメッキ工程後の熱処理を必要とすることなく相対的により強い接着強度を有するという点で有利である。最も好ましくは、成形品への照射は、800~25000nmとくに1064nmの波長を有する赤外光により実施される。
【0098】
好ましくは、回路キャリアの製造プロセスは、照射された領域を金属化する工程後の熱処理工程を含まない。これは、効率的プロセスを可能にする点で有利である。
【0099】
本発明のさらなる態様は、レーザーダイレクトストラクチャリングプロセスに使用するための本発明に係る熱可塑性組成物に関する。
【0100】
本発明のさらなる態様は、レーザーダイレクトストラクチャリングプロセスにおける本発明に係る熱可塑性組成物の使用に関する。
【0101】
本発明は、本明細書に記載の特徴のすべての可能な組合せに関し、特許請求の範囲に存在する特徴の組合せがとくに好ましいことに留意されたい。したがって、本発明に係る組成物に関する特徴のすべての組合せ、本発明に係るプロセスに関する特徴のすべての組合せ、並びに本発明に係る組成物に関する特徴及び本発明に係るプロセスに関する特徴のすべての組合せが本明細書に記載されることは、分かるであろう。したがって、本発明のプロセスの成形工程、照射工程、及び金属化工程に関する特徴並びに本発明に係る組成物に関する特徴の組合せが本明細書に記載されることは、分かるであろう。たとえば、本明細書は、本発明に係る熱可塑性組成物を含む成形品を提供することと、伝導性トラックがレーザー照射により形成される前記成形品の領域を照射することと、照射された領域を続いて金属化することと、を含むとともに、組成物が成分d)を含み、且つ成形品への照射が、800~25000nmの波長を有する赤外光により実施される、回路キャリアの製造プロセスを開示する。
【0102】
「comprising(~を含む)」という用語は、他の要素の存在を排除しないことにさらに留意されたい。しかしながら、ある特定の成分を含む製品に関する記述は、これらの成分からなる製品も開示することも理解されるべきである。同様に、ある特定の工程を含むプロセスに関する記述は、これらの工程からなるプロセスも開示することも理解されるべきである。これらの成分からなる製品/組成物は、製品/組成物のより単純でより経済的な調製プロセスを提供するという点で有利でありうる。同様に、ある特定の工程を含むプロセスに関する記述は、これらの工程からなるプロセスも開示することも理解されるべきである。これらの工程からなるプロセスは、より単純でより経済的なプロセスを提供するという点で有利でありうる。
【0103】
パラメーターに対して下限及び上限の値が挙げられたとき、下限の値と上限の値との組合せにより作成される範囲も開示されるものと理解される。
【0104】
次に、下記実施例により本発明を明らかにするが、それらに限定されるものではない。
【実施例
【0105】
実験
比較実験(CEx)及び組成物例(Ex)は、表1に与えられる成分から準備された。そのほか、離型用添加剤(Cognisにより供給される0.3%Loxiol P861/3.5)、安定化用添加剤(ADK Palmeroleにより供給される0.05%ADK Stab2112)、及びドリッピング防止用添加剤(Dupontにより供給される0.40%Dispersion40)が添加された。
【0106】
サンプル組成物はすべて、表2及び3に与えられる量に従って調製された。量はすべて、重量パーセント単位である。実験の各々では、サンプルは、280°の温度で同方向回転2軸スクリュー押出し機により押し出された。押出し物はグラニュレート化され、捕集されたグラニュレートは、110℃の温度で4時間乾燥され、続いておおよそ290℃~300℃の溶融温度を用いて試験品に射出成形された。
【0107】
ラジオ周波性-誘電定数(DC)及び散逸係数(DF)-は、ASTM D-2520、方法B-共振空洞摂動技術のガイドラインを用いて1GHz及び40GHzで測定された。1GHzでの公称サンプルサイズは4.7×9.1×51mm、40GHzでは0.63×0.63×12.6mmにあった。試験は、実験室周囲条件(公称23℃及び51%RH)で行われた。
【0108】
アイゾットノッチ付き衝撃強度は、23℃の温度でISO180/4Aに準拠して測定された。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
Xは、性質を測定できなかったことを表す。
【0111】
TiOの使用は、BaTiOと比較してより高い誘電定数及びより低い散逸係数もたらすことが分かる(Ex1対CEx1、CEx2対CEx3、Ex2対CEx4)。40GHzでの散逸係数の差はとくに大きい。さらに、TiOの使用は、より良好な衝撃強度をもたらす。
【0112】
Ex1とCEx2との比較は、LDS添加剤の差がラジオ周波性の実質的な差をもたらしたことを示す。5wt%のATOを含有するEx1は、LDS添加剤の実質的な部分がマイカであるCEx2よりも望ましい性質をもたらした。
【0113】
【表3】
【0114】
Ex3とCEx5との比較は、TiOの使用がTiOとBaTiOとの混合物と比較して40GHzで実質的により低い散逸係数をもたらすことを示す。
【国際調査報告】