(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(54)【発明の名称】足首の非対称襟を有する履物品
(51)【国際特許分類】
A43B 23/02 20060101AFI20220202BHJP
A43B 11/00 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
A43B23/02 101B
A43B11/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535506
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(85)【翻訳文提出日】2021-08-17
(86)【国際出願番号】 US2019067599
(87)【国際公開番号】W WO2020132317
(87)【国際公開日】2020-06-25
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514144250
【氏名又は名称】ナイキ イノベイト シーブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ホプキンス,ティモシー ピー.
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050AA01
4F050BC07
4F050BC13
4F050BF02
4F050GA10
4F050HA28
4F050HA53
(57)【要約】
履物品は、たとえば着用者が自分の踵を履物品の外にスライドさせるとき、履物品を脱ぎ履きしやすくする方式で膨張し得る、足首の非対称襟を含む。履物品は、襟エレベータも含み得る。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
履物品であって、ソールと;前記ソールに結合され、踵領域および足首領域を有するアッパー(upper)と;前記足首領域に位置決めされ、足首の襟の内側および足首の襟の外側を有する足首の襟であって、前記足首の襟は、前記ソールにより近く位置決めされた降下状態と、前記ソールからより遠く位置決めされた直立状態との間で移動可能である、足首の襟と;少なくとも前記踵領域に位置決めされ、前記足首の襟を前記降下状態から前記直立状態に移動させるように動作可能な襟エレベータと;前記足首の襟の内側に沿って位置決めされたガセットと;を備え、前記足首の襟の外側に沿っては対応するガセットがない、履物品。
【請求項2】
前記襟エレベータは、加えられた力が前記足首の襟を前記直立状態から前記降下状態に移動させる場合、第1構成から第2構成に弾性変形されることによって位置エネルギーを蓄積し、前記位置エネルギーは、前記加えられた力の除去時、前記襟エレベータを前記第1構成に戻す、請求項1に記載の履物品。
【請求項3】
前記襟エレベータは、内側レバーアームと、外側レバーアームと、前記内側レバーアームを前記外側レバーアームに結合し、前記足首の襟の後方部分に位置する中央連結バンドと、を含む、請求項2に記載の履物品。
【請求項4】
足首の襟の外側は、ガセットを含まない、請求項1に記載の履物品。
【請求項5】
前記足首の襟の外側は、前記ガセットよりも小さい、対応しないガセットを含む、請求項1に記載の履物品。
【請求項6】
前記足首の襟の外側は、第1材料を備える、対応しないガセットを含み、前記第1材料は、前記ガセットの第2材料よりも弾性が小さい、請求項1に記載の履物品。
【請求項7】
前記足首の襟の外側は、前記ガセットよりも前に位置決めされる、対応しないガセットを含む、請求項1に記載の履物品。
【請求項8】
前記足首の襟の外側は、前記ガセットとは異なる角度配向を有する、対応しないガセットを含む、請求項1に記載の履物品。
【請求項9】
前記足首の襟の外側は、前記ガセットとは異なる形状を有する、対応しないガセットを含む、請求項1に記載の履物品。
【請求項10】
履物品であって、ソールと;前記ソールに結合され、踵領域および足首領域を有するアッパーと;前記足首領域に位置決めされ、足首の襟の内側および足首の襟の外側を有する足首の襟であって、前記足首の襟は、前記ソールにより近く位置決めされた降下状態と、前記ソールからより遠く位置決めされた直立状態との間で移動可能であり、前記足首の襟の内側は、内側上端線の縁を含み、前記足首の襟の外側は、前記内側上端線の縁の鏡像ではない外側上端線の縁を含む、足首の襟と;少なくとも前記踵領域に位置決めされ、前記足首の襟を前記降下状態から前記直立状態に移動させるように動作可能な襟エレベータと;を備える、履物品。
【請求項11】
前記襟エレベータは、加えられた力が前記足首の襟を前記直立状態から前記降下状態に移動させる場合、第1構成から第2構成に弾性変形されることによって位置エネルギーを蓄積し、前記位置エネルギーは、前記加えられた力の除去時、前記襟エレベータを前記第1構成に戻す、請求項10に記載の履物品。
【請求項12】
前記襟エレベータは、内側レバーアームと、外側レバーアームと、前記内側レバーアームを前記外側レバーアームに結合し、前記足首の襟の後方部分に位置する中央連結バンドと、を含む、請求項10に記載の履物品。
【請求項13】
前記内側上端線の縁は、前位置から後位置まで延びる第1上端線の縁部分を含み、前記外側上端線の縁は、前記前部分から前記後部分まで延びる第2上端線の縁部分を含み、前記第1上端線の縁部分は、前記第2上端線の縁部分に比して、より深い谷部を含む、請求項10に記載の履物品。
【請求項14】
前記第1上端線の縁部分の最下位部分は、前記第2上端線の縁部分の最下位部分よりも前記ソールに近い、請求項13に記載の履物品。
【請求項15】
前記第1上端線の縁部分は、前記第2上端線の縁部分よりも長い、請求項13に記載の履物品。
【請求項16】
履物品であって、ソールと;前記ソールに結合され、踵領域と、足首の襟のある足首領域と、を有するアッパーと;足首の襟の内側と、足首の襟の外側と、を備える前記足首の襟であって、加えられた力に応答して、前記足首の襟の内側は、前記足首の襟の外側よりも低い弾性係数、大きな柔軟性、またはこれらの組み合わせを備え、前記足首の襟は、前記加えられた力に応答して、前記ソールからより遠く位置決めされた直立状態から、前記ソールにより近く位置決めされた降下状態に可逆的に移動可能である、前記足首の襟と;前記踵領域に位置決めされ、前記加えられた力が除去される場合、足首の襟を前記降下状態から前記直立状態に移動させるように動作可能な襟エレベータと;を備える、履物品。
【請求項17】
前記襟エレベータは、加えられた力が前記足首の襟を前記直立状態から前記降下状態に移動させる場合、第1構成から第2構成に弾性変形されることによって位置エネルギーを蓄積し、前記位置エネルギーは、前記加えられた力の除去時、前記襟エレベータを前記第1構成に戻す、請求項16に記載の履物品。
【請求項18】
前記襟エレベータは、内側レバーアームと、外側レバーアームと、前記内側レバーアームを前記外側レバーアームに結合し、前記足首の襟の後方部分に位置する中央連結バンドと、を含む、請求項12に記載の履物品。
【請求項19】
前記足首の襟の内側は、第1編織構造を含み、前記足首の襟の外側は、第2編織構造を含み、前記第1編織構造は、前記低い弾性係数、前記大きな柔軟性またはこれらの組み合わせに寄与するステッチサイズまたはステッチタイプを含む、請求項16に記載の履物品。
【請求項20】
前記足首の襟の内側は、1つ以上の内側織地を含み、前記足首の襟の外側は、1つ以上の外側織地を含み、前記1つ以上の内側織地は、前記1つ以上の外側織地よりも高い弾性糸含量を含む、請求項11に記載の履物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、足首の非対称襟を有する履物品に関し、足首の非対称襟は、外側の特性とは異なる内側の特性を有する。
【背景技術】
【0002】
一部の履物品は、履物品を履くときに操作される足首の襟を含む。たとえば、足首の襟は、着用者の足がアッパー(upper)内にスライドするときにソールに向かって押される場合がある。また、このようないくつかの履物品は、足首の襟を、押された状態または降下状態から直立状態に移動させるように動作可能な襟エレベータを含む。襟エレベータの1つのタイプに関する一例は、米国特許第9,820,527号に記載されており、他の襟エレベータの例は、米国公開特許第2018/0110292号および米国公開特許第2018/0289109号に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0003】
本開示に記載されている一部の主題は図面を参照しており、その全文は参照として本明細書に組み込まれる。
【
図1】本開示の一態様による履物品の側面図を示す。
【
図2】本開示の一態様による
図1の履物品の上面図を示す。
【
図3A】本開示の一態様による襟エレベータを有する別の履物品を示す。
【
図3B】本開示の一態様による襟エレベータを有する別の履物品を示す。
【
図3C】本開示の一態様による襟エレベータを有する別の履物品を示す。
【
図4A】本開示の一態様による代替の襟エレベータを有する別の履物品を示す。
【
図4B】本開示の一態様による代替の襟エレベータを有する別の履物品を示す。
【
図4C】本開示の一態様による代替の襟エレベータを有する別の履物品を示す。
【
図10】本開示の一態様による、それぞれの代替の履物品を示す。
【
図11】本開示の一態様による、それぞれの代替の履物品を示す。
【
図12】本開示の一態様による、それぞれの代替の履物品を示す。
【
図13】本開示の一態様による、それぞれの代替の履物品を示す。
【発明を実施するための形態】
【0004】
主題は、法定要件を満たすように、本明細書の全体に具体的かつ詳しく説明される。本明細書の全体に記載された態様は、限定ではなく例示のためのものであり、説明それ自体には、必ずしも特許請求の範囲を限定しようとする意図があるわけではない。むしろ、請求された主題は、本明細書に記載されたものと同一であり、かつ他の現在の技術または将来の技術に係わっている様々な要素または要素の組み合わせを含むように、他の方式で実施され得る。本開示を読むとき、代替的な態様は、本開示の範囲から逸脱することなく、記載の態様に関する分野に従事している当業者に明らかになるであろう。特定の特徴および下位組み合わせは実用的であり、他の特徴および下位組み合わせを参照せずに採用され得ることが理解されよう。これは、特許請求の範囲により考慮され、特許請求の範囲内に属する。
【0005】
一般的に、本明細書に記載された主題は、特に足首の非対称襟を有する履物品に関し、それに関連する製造および方法を含む。いくつかの態様において、足首の非対称襟は、たとえば着用者が自分の踵を履物品の外にスライドさせるとき、履物品を脱ぎ履きしやすくする方式で膨張し得る。本開示のいくつかの態様は、足首の非対称襟と、襟エレベータと、を有する履物品に関する。
【0006】
図面をより詳しく説明するに先立って、以下では本開示に使用され得る特定の用語について一部のさらなる説明をする。
【0007】
単数形(「a」、「an」、「the」)、「少なくとも1つ」および「1つ以上」は、項目のうち少なくとも1つが存在することを示すように相互交換的に使用され得る。これらの用語が使用される場合、文脈上別段に明示しない限り、当該項目は複数存在し得る。本明細書において、パラメータ(たとえば、量または条件)のすべての数値は、添付の請求項を含む文脈に鑑み、別段に明示的または明確に示していない限り、「約」という用語が実際に数値の前にあるか否かを問わず、「約」によってすべての場合において変更されることであると、理解されたい。「約」とは、記述された数値が多少の不正確性(値の正確性への若干の近接、値におおよそあるいは合理的に近似、ほぼ)を許容することを示す。「約」によって提供される不正確性が、このような一般的な意味として当業界で別段に理解されない場合、本明細書で用いられる「約」は、このようなパラメータを測定および使用する通常の方法で生じ得る最小限の変動を示す。また、範囲の開示は、すべての値と当該範囲内のさらに分割された範囲とを具体的に開示するものと理解されたい。参照されたすべての参考文献は、その全文が本明細書に組み込まれる。
【0008】
「備える(comprising)」、「含む(including)」、および「有する(having)」という用語は包括的であり、したがって、記述された特徴、ステップ、動作、要素または構成要素の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、ステップ、動作、要素もしくは構成要素の存在または付加を排除しない。ステップ、プロセスおよび動作の手順は、可能な場合変更され得、さらなるまたは代替的ステップが採用され得る。本明細書で用いられる「または」という用語は、リストに挙げられた関連項目の任意の1つおよびすべての組み合わせを含む。「のいずれか」という用語は、参照される項目「のうちいずれか1つ」を含む、参照される項目の任意の可能な組み合わせを含むものと理解される。「のいずれか」という用語は、参照される請求項「のうちいずれか1つ」を含む、添付の請求項のうち参照される請求項の任意の可能な組み合わせを含むものと理解される。
【0009】
一貫性および便宜のために、図示の例に対応する本詳細な説明全体に、方向の形容詞が採用され得る。通常の当業者なら、「上」、「下」、「上方」、「下方」、「上端」、「下端」などのような用語は、請求項によって定義されているように、本発明の範囲に対する限定を表すことなく、図面に関する説明として使用され得ることが認識されよう。
【0010】
本詳細な説明全体および請求項に使用され得る「長手方向」という用語は、構成要素の長さを延ばす方向を指す。たとえば、靴の長手方向は、靴の前足部領域と踵領域との間で延びる。「前方」または「前」という用語は、踵領域から前足部領域への一般的な方向を指すために用いられ、「後方」または「後」という用語は、逆方向、すなわち前足部領域から踵領域への方向を指すために用いられる。場合によって、構成要素は長手方向軸だけでなく、その軸に沿う前後方の長手方向として識別され得る。長手方向または長手方向軸は、前後方向または前後方向軸と呼ばれ得る。
【0011】
本詳細な説明全体および請求項に使用され得る「横方向」という用語は、構成要素の幅を延ばす方向を指す。たとえば、靴の横方向は、靴の外側と内側との間で延びる。横方向または横方向軸は、左右方向もしくは左右方向軸、または内外側方向もしくは内外側方向軸とも呼ばれ得る。
【0012】
本詳細な説明全体および請求項に使用され得る「垂直」という用語は、一般的に左右方向および長手方向の両方に垂直な方向を指す。たとえば、ソールが地表面に平坦に装着された場合に、垂直方向は地表面から上方に延び得る。これらの方向の形容詞はそれぞれ、ソールの個々の構成要素に適用され得ることが理解されよう。「上方」という用語は、構成要素の上端に向かう垂直方向を指し、靴の甲、締結領域、および/またはアッパーのスロートを含み得る。「下方」という用語は、構成要素の下端に向かう、上方向とは反対の垂直方向を指し、一般的に履物品のソール構造体の下端を指し得る。
【0013】
靴などの履物品の「内部」は、靴を着用したときに着用者の足が占める空間の部分を指す。構成要素の「内側」は、組み立てられた履物品において構成要素または履物品の内部に向かって配向された(または配向される)構成要素の側面または表面を指す。構成要素の「外側」または「外部」は、組み立てられた靴において靴の内部から離れるように配向された(または配向される)構成要素の側面または表面を指す。場合によって、他の構成要素は、構成要素の内側と、組み立てられた履物品における内部との間にあり得る。同様に、他の構成要素は、構成要素の外側と、組み立てられた履物品の外部の空間との間にあり得る。また、「内向き」および「内向きに」という用語は、靴などの履物品または構成要素の内部へ向かう方向を指し、「外向き」および「外向きに」という用語は、靴などの履物品または構成要素の外部へ向かう方向を指す。また、「近位」という用語は、履物の構成要素の中央により近い方向を指すか、または利用者が履物品を着用することによって足が履物品に挿入されるときに足に向かってより近い方向を指す。同様に、「遠位」という用語は、履物の構成要素の中央から遠く離れている相対的位置を指すか、または利用者が履物品を着用することによって足が履物品に挿入されるときに足からより遠く離れている方向を指す。したがって、近位および遠位という用語は、一般的に反対の用語を提供して相対的空間位置を説明するためのものであると理解されよう。
【0014】
本明細書の態様の説明および理解を助けるために、以下では
図1および
図2を参照して、舌革補強材を含み得る通常の履物品10の要素を説明する。
図1は履物品10の外側を示し、
図2は履物品の上端を示す。本開示で言及される多様な図面を説明する場合、類似の参照番号は、ずべての図を通して類似の構成要素を指す。
【0015】
履物品10は、ソール構造体12とアッパー14とを含む少なくとも2つの主要要素を含む。履物品10を(足に意図どおり)着用する場合、ソール構造体12は通常、足底面(すなわち、足の下端)の近くに位置決めされる。ソール構造体12は、足の下端を保護し得、さらに、地面反力を減衰させ、エネルギーを吸収し、静止摩擦を提供し、回内および回外などの足の動きを制御し得る。アッパー14は、ソール構造体12に結合され、ソール構造体12と一緒に足受容空洞16を形成する。すなわち、ソール構造体12は、一般的に足の下端を取り巻くが、アッパー14は、足の背側部(すなわち、足の上端または足の甲)上に延び、それを少なくとも部分的に覆い、履物品10を足に固定させる。アッパー14は、履物品10を履く場合、足が足受容空洞16内に配置されるとき足が挿入される足挿入開口18を含む。
【0016】
図1に示したように、履物品10は、前足部領域20、中足部領域22、踵領域24、および足首領域26を含み得る。前足部領域20、中足部領域22、および踵領域24は、ソール構造体12およびアッパー14を通じて延びる。足首領域26は、アッパー14の一部に位置する。前足部領域20は、一般に、中足骨を指骨と連結する足指および関節に対応する、履物品10の一部を含む。中足部領域22は、一般に、足のアーチ区域および足の甲に対応する履物品10の部分を含む。踵領域24は、踵骨を含む足の後方部分に対応する。足首領域26は、足首に対応する。前足部領域20、中足部領域22、踵領域24、および足首領域26は、履物品10の正確な区域を画定することを意図せずに、その代わりに本明細書の多様な態様の理解を助けるために履物品10の一般的な区域を示すことを意図する。また、履物品の一部は、これらの一般的な区域を用いて相対的な用語で説明され得る。たとえば、第1構造体は、第2構造体よりも踵の方にあると説明され得、この場合、第2構造体は足指の方にあり、前足部の方により近い。
【0017】
履物品10はまた、内側28(
図2で確認され、
図1では隠されている)および外側30(
図2で確認され、
図1で見られる)を有する。内側28および外側30は、前足部領域20、中足部領域22、踵領域24、および足首領域26のそれぞれを通じて延び、履物品10の両側に対応し、当業者によって理解されるように、それぞれは履物品10の長手方向の中間線基準面29の反対側に位置する。たとえば、長手方向の中間線基準面29は、ソール構造体の最前方点、およびソール構造体の最後方点を通過し得る。よって、内側29は、外側30に対向するものと考えられる。通常、内側は、足の内側区域(すなわち、他の足に面する表面)に対応し、外側は、足の外側区域(すなわち、他の足から離れて他の足に面する表面)に対応する。別の態様において、履物品は、履物品10の緯線方向の中間線基準面31の反対側に位置する前部分33および後部分35を含む。緯線方向の中間線基準面31は、長手方向の中間線基準面29および地表面に垂直に延び、履物品10の最前方点と履物品10の最後方点との間に等間隔で配置される。また、これらの用語は、多様な構造体の相対的位置を説明するために使用され得る。たとえば、履物品の内側部分により近い第1構造体は、第2構造体(外側区域により近く、より外側にある)の内側にあるものと説明され得る。
【0018】
履物品を説明する場合、「下位」および「上位」という相対的用語も用いられ得る。たとえば、上位部分は一般的に、ヒトの足が水平な地表面に平坦に置かれており、ヒトが直立しているとき、ヒトの頭の方向へより近く配向されている上端部分に対応する一方、下位部分は、一般的に、ヒトの頭から離れて配向され、かつ地表面により近い下端部分に対応する。
【0019】
ソール構造体12は、多様な材料で構成され得、多様な要素を含み得る。たとえば、ソール構造体12は、ミッドソール32およびアウトソール34を含み得る。ミッドソール32は、歩行、ランニングまたはその他歩行活動中において、足と地面との間で圧縮されるとき、地面反力を減衰させる(すなわち、クッションを提供する)圧縮可能なポリマーフォーム要素(たとえば、ポリウレタンまたはエチルビニルアセテート(EVA)フォーム)で形成され得る。さらなる態様において、ミッドソール32は、流体充填チャンバ、プレート、調節器、または力をさらに減衰させたり、安定性を向上させたり、足の動きに影響を与えたりする他の要素を含み得る。ミッドソール32は、単一のワンピース型ミッドソールであってもよく、または1つのユニットとして一体化された多数の構成要素であってもよい。いくつかの態様において、ミッドソール32は、ユニソールとしてアウトソール34と一体化され得る。アウトソール34は、ワンピース型であってもよく、またはいくつかのアウトソールの構成要素であってもよく、静止摩擦を与えるためにテキスチャ加工され得る耐摩耗性ゴム材料で形成され得、かつ/またはミッドソール32に固定されたトレッド(tread)またはクリート(cleat)などの静止摩擦要素を含み得る。アウトソール34は、ソールの全長および全幅にを延ばすか、または長さおよび/または幅にわたって部分的にのみ延び得る。
【0020】
アッパー14はまた、多様な材料で構成され得、多様な特徴を含み得る。たとえば、アッパー14は、革、織地、またはその他の合成材料もしくは天然材料で構成され得る。また、アッパー14は、編織地、織物、編組物、不織布、積層体、またはこれらの任意の組み合わせであり得る。アッパー14は、通気性、伸長、柔軟性、ウィッキング性(wicking)、耐水性などと関連した多様な材料特性を有し得る。
【0021】
アッパー14は、通常、ソール構造体12と重なり、これに連結される一部を含み、かかる連結の接合部はバイトライン(biteline)と呼ばれ得る。また、アッパー14は、アッパー14からソール構造体12の足対向表面の少なくとも一部を横切って延びる材料パネルを含む「ストローベル(strobel)」を含み得、ストローベルは、ソール構造体12がアッパー14に取り付けられるときにアッパー14を靴型に保持するために使用され得る。言い換えれば、履物品10に一体化されたソール構造体12は足対向表面を含み、場合によっては、アッパー14は、バイトライン領域の近くから内向きに延びて足対向表面を少なくとも部分的に覆うパネル(ストローベルと呼ばれる)を含み得る。この場合、履物品を着用するときに、ストローベルは足の下に位置決めされる。ストローベルは、インソールまたはその他の材料層で覆われ得る。
【0022】
アッパー14は、他の特徴を含む。たとえば、アッパー14は、足挿入開口18の少なくとも一部の周囲に周縁を形成する足首の襟36を含む。また、アッパー14は、多くの場合、足首の襟36から延びるスロート38を含み、細長い開口40の少なくとも1つ以上の側面に沿って周縁を形成する。舌革42は、細長い開口40に位置しており、細長い開口40のサイズは、様々な閉鎖システムを用いて調整することができる。たとえば、
図1は、紐44を図示し、他の閉鎖システムは、弾性バンド、フックアンドループストラップ、ジッパー、バックルなどを含み得る。舌革42の位置、および閉鎖システムの連結部は、たとえば、履物品を着用するか脱ぐときに開口をより大きくすることと、履物品を足に固定するときに開口をより小さくすることとによって、足挿入開口および細長い開口のサイズを変更するように調整することができる。本開示の他の箇所で説明されているように、舌革42は、舌革が他の履物品要素または着用者などから力または調整を受けるとき、舌革の形状および位置を保持するのに役立ち得る舌革補強材を含み得る。
【0023】
履物品10は、たとえばランニングまたは歩行時に着用可能な運動用靴を含み得、
図1および
図2に関して説明された要素を含む履物品10についての説明は、他のタイプのシューズ、たとえば、バスケットボールシューズ、テニスシューズ、アメリカンフットボールシューズ、サッカーシューズ、レジャーまたはカジュアルシューズ、ドレスシューズ、作業靴、サンダル、スリッパー、ブーツ、ハイキングシューズなどにも適用され得る。
【0024】
図1および
図2について説明したが、以下では
図3A~
図3Cおよび
図4A~
図4Cを参照して本開示のいくつかの他の態様について説明する。
図3A、
図3B、および
図3Cのそれぞれは、ソール312に結合されたアッパー314を含む履物品310を示し、アッパー314は、踵領域324と、足首の襟336のある足首領域326とを含む。足首の襟336は、降下状態(
図3Cに示す)と直立状態(
図3Aおよび
図3Bに示す)との間で移動可能である。降下状態で、足首の襟336は、ソール312により近く位置決めされ、直立状態で、足首の襟336は、ソール312からより遠く位置決めされる。同様に、履物品410は、ソール412に結合されたアッパー414を含み、アッパー414は踵領域424と、足首の襟436のある足首領域426とを含む。
【0025】
また、履物品310は襟エレベータ350を含み、襟エレベータ350は、踵領域324および/または足首領域326近くにあるアッパー314に結合され、足首の襟336を降下状態から直立状態に移動させるように動作可能である。より具体的に、襟エレベータ350は、踵領域324に位置決めされ、足首領域326まで延びる部分を含む。前述したように、踵領域324と足首領域326との間に必ずしも正確な輪郭設定(delineation)があるわけではなく、その代わり、これらの領域に対する襟エレベータ350の位置決めを説明することは、襟エレベータ350が、より下位にある部分(ソールに近い部分)から、より上位にある部分(足首の襟336に近い部分)まで延びることを説明する1つの方式である。襟エレベータ350をアッパー314(踵領域324および/または足首領域326の近くにある)に結合する限り、このような結合の形態は多様であり得る。たとえば、襟エレベータ350は、踵領域324でアッパーに結合されるか、足首領域326で結合されるか、足首の襟336に結合されるか、あるいはこれらのあらゆるすべての組み合わせが可能である。襟エレベータ350は、足首の襟を降下状態から直立状態に移動させるように動作可能な、襟エレベータの1つのタイプに関する一例であり、本開示の他の箇所で説明されているように、襟エレベータは、
図3A~
図3Cに示したもの以外に1つ以上の代替の構造体を含み得る。たとえば、
図4A~
図4Cは、足首の襟436を降下状態(たとえば、
図4C)から直立状態(たとえば、
図4Aおよび
図4B)に移動させるように動作可能であり、襟エレベータ350とは異なる構造の襟エレベータ450を備えた履物品410を示す。
【0026】
例示の目的で、アッパー314およびアッパー414は、仮想の破線によって示され、襟エレベータは、アッパーに対して多様な箇所に配置され得る。たとえば、襟エレベータは、踵領域、足首領域、足首の襟、またはこれらのあらゆるすべての組み合わせにおいて、外部層と内部ライニング(inner lining)との間に、少なくとも部分的に、場合によって完全に貼り付けられ得る。別の態様において、襟エレベータは少なくとも部分的に露出しており、アッパーの外側または外部表面に配置され得る。さらなる態様において、襟エレベータの少なくとも一部は、内部ライニングの内側の足対向表面上に配置され得る。別の態様において、襟エレベータは履物品の外部に配置され得、タブ、熱かしめ、接合剤、ステッチまたはその他の結合により足首の襟の踵部分に取り付けられ得る。
【0027】
襟エレベータ(たとえば、襟エレベータ350および450)は、多様な要素を含み得る。一態様において、襟エレベータは、内側レバーアームと、外側レバーアームと、内側レバーアームを外側レバーアームに結合し、足首の襟の踵部分に位置する中央連結バンドと、を含む。さらなる態様において、それぞれのレバーアームは、基部に貼り付けられ、基部は、足首の襟が降下状態に移動する場合にレバーアームが変形されることによって、レバーアームに対して静止状態で維持される。基部は、履物品の一部、たとえばソールの一部またはアパーの一部であり得る。また、基部は、ソール、ソールそれ自体、またはこれらの任意の組み合わせに直接または間接的に貼り付けられた1つ以上の他のアンカー(anchor)であってもよい。米国特許第9,820,527号には、1つ以上の襟エレベータが記載されており、その一部は、変形可能部材(単数または複数)(基部を備えるか、または備えない)と呼ばれてもよく、米国特許第9,820,527号の開示全体は参照として本明細書に組み込まれる。本開示の一態様によれば、米国特許第9,820,527号に記載されている変形可能部材のうち少なくとも一部は、内側レバーアームと、外側レバーアームと、内側レバーアームを外側レバーアームに結合する中央連結バンドと、を含む。他の例において、米国特許第2018/0110292号および米国特許第2018/0289109号のそれぞれには、複数の他の襟エレベータが記載されており、その一部は、コントロールバー(基部を備えるか、または備えない)と呼ばれており、米国特許第2018/0110292号および米国特許第2018/0289109号の開示全体は、参照として本明細書に組み込まれる。本開示の一態様によれば、米国特許第2018/0110292号および米国特許第2018/0289109号に記載されているコントロールバーのうち少なくとも一部は、内側レバーアームと、外側レバーアームと、内側レバーアームを外側レバーアームに結合する中央連結バンドと、を含む。
【0028】
図示された襟エレベータ350および450のそれぞれは、内側レバーアーム352および452の例をそれぞれ示す。また、図示された襟エレベータ350および450のそれぞれは、外側レバーアーム354および454の例をそれぞれ示し、中央連結バンド356および456の例をそれぞれ示す。また、レバーアーム352および354は、基部358に取り付けられ、レバーアーム452および454は、基部358とは異なる構造の基部458に取り付けられる。基部358は、ソール312の足対向表面に、またはその近くに貼り付けられ、基部358は、アウトソールの一部、ミッドソールの一部、インソールの一部、ストローベルの一部、これらのソール層のうち任意の層の間に積層された材料のプレートもしくはシート、またはこれらの任意の組み合わせであり得る。特に、基部358は、レバーアーム352および354が固定されている硬質の部分またはセクションを含み得る。
図4A~
図4Cは他の態様を示し、ここで基部458は、アッパーの一部(たとえば、ヒールカウンター(heel counter))、ミッドソール側壁の一部、またはこれらの任意の組み合わせに取り付けられ得、基部458は、基部358について説明されている方式で中底を通って延びることとは対照的に、履物品の裏面を巻き付ける。
【0029】
内側レバーアーム、外側レバーアーム、および中央連結バンドは、単一の連続体であってもよく、よって、内側レバーアームと、外側レバーアームと、中央連結バンドとの間には、明確な境界が存在しなくてもよい。たとえば、内側および外側アーム、ならびに中央連結バンドは、成形されるか、鋳造されるか、3Dプリントされるか、そうでなければ単一の一体形成ユニットとして形成され得る。他の態様において、内側レバーアームおよび外側レバーアームは、機械的もしくは化学的結合、摩擦嵌め、被覆、または他の結合により中央連結バンドに連結される別々の、別個の、および個別の細長い部材であり得る。
【0030】
襟エレベータの一部の構造的要素について一般的に説明したが、以下では襟エレベータの一部の動作態様について説明する。簡単に前述したように、襟エレベータは、足首の襟を降下状態から直立状態に移動させる。より具体的に、内側レバーアーム、外側レバーアーム、中央連結バンドまたはこれらの任意の組み合わせの少なくとも一部は、アッパーの一部に貼り付けられる。一態様において、中央連結バンドは、足首の襟の踵部分の近くに貼り付けられ得る。たとえば、本開示の他の箇所で説明されているように、中央連結バンドは、接着剤、連結タブ、熱かしめ、ステッチなどにより足首の襟の踵部分に取り付けられ得る。このように、足首の襟がソールにより近く降下状態に移動すると、内側レバーアームおよび外側レバーアームは、より圧縮された姿勢、またはより負荷のかかった姿勢に変形される。言い換えれば、襟エレベータは、加えられた力が足首の襟を直立状態から降下状態に移動させるとき、より圧縮されていない構成(たとえば、
図3Aおよび
図4A)から、より一層圧縮された構成(たとえば、
図3Cおよび
図4C)へと、弾性変形されることによって位置エネルギーを蓄積する。位置エネルギーは、加えられた力の除去時、襟エレベータをより圧縮されていない構成に戻し、襟エレベータがアッパーに貼り付けられるため、足首の襟も降下状態から直立状態に移動する。足首の襟が降下状態に移動すれば(直立状態に比して)、襟エレベータの圧縮が大きくなり得るが、直立状態において襟エレベータは、少なくとも部分的に変形された状態における位置エネルギーを依然として蓄積して(すなわち、予圧圧縮)、着用者の踵の周りで足首の襟の後方、すなわち踵部分の保持を可能にし得る。たとえば、襟エレベータが上部踵領域および/または上部足首領域に取り付けられている場合、アッパーの一部は、足首の襟が直立状態にあるときの予圧構成で襟エレベータを保持し得るか、または維持し得る。他の態様において、足首の襟が直立状態にあるときに、襟エレベータには負荷がかからないことがある。
【0031】
一態様において、中央連結バンドの下のアッパーの部分325または425は、アッパーの他の部分よりも柔軟な1つ以上の織地の壁を含み得る。アッパーのより柔軟な領域は、たとえば少なくとも部分的にヒールカウンター領域にあり得る。特に、このようなアッパーのより柔軟な部分325または425は、足首の襟が降下状態に移動するときに容易に折り畳まれ得、襟エレベータがより圧縮されていない状態に戻るときに襟エレベータに一層小さな抵抗を提供し得る(履物品の他の部分または通常の履物品における、あまり柔軟でないアッパーに比して)。
【0032】
いくつかの態様において、内側レバーアームと、外側レバーアームと、中央連結バンドとの組み合わせは、変形可能要素と呼ばれ得る。「変形可能要素」という用語は、弾性的に柔軟な部材を指し、弾性的に柔軟な部材は、屈折させることができるか、または圧縮することができるが、非屈折または非圧縮状態に向かって移動するための付勢を有する。変形可能要素は、内側レバーアームから外側レバーアームまで連続的に延びる単一の一体形成された変形可能要素を含み得る。他の態様において、内側レバーアームおよび外側レバーアームは、ヒールピース(heel piece)とも呼ばれ得る、中央連結バンドに連結される2つ以上の別個の個別的な変形可能要素であってもよい。
【0033】
いくつかの態様において、変形可能要素は、基部に直接結合されるか、装着されるか、または取り付けられ得る。他の態様において、基部は、変形可能要素を所定の位置に係合させて維持する1つ以上のアンカーを含み得る。たとえば、アンカーは、レバーアームと基部との間の接合部(たとえば、359および459)に位置し得る。かかるアンカーは、ソール(たとえば、インソール、ミッドソール、アウトソール)の部分と一体形成され、かつ/または、結合され、かつ/または、その内部もしくは間もしくは外側に位置し得る。たとえば、アンカーは、ソールの間、上端または下に積層されるブロック、プレートまたはウェッジに配置され得る。場合によっては、ソール(たとえば、ミッドソール)の一部は、彫刻されるか、または切り取られて、アンカーに取り付けられるか、またはこれを収容し得る。別の態様において、内外側配向に延びる基部(たとえば、基部358)は、アンカーが抵抗嵌め、圧縮嵌め、スナップ嵌めによって、または連動メカニズム/構成を介して係合するアンカー状受容部を含む。他の例において、アンカーは、アッパーの部分と一体形成され、かつ/または、結合され、かつ/または、その内部、間もしくは外側に位置し得る。たとえば、アンカーはアッパー、ヒールカウンター、またはこれらの組み合わせに位置し得る。単一のアンカーは、履物品の全幅を延ばし得るか、または2つのアンカーは、履物品の両側上に(たとえば、内側および外側上に)位置決めされ得る。変形可能部材は、基部またはアンカーに斜めに取り付けられ得る。たとえば、変形可能部材は、基部に垂直な角度で取り付けられ、その後、後方を向いて湾曲したりまたは弧状になり得る。別の態様において、変形可能部材は、後方を向いて弧状になる前に、前方に傾いている角度で(すなわち、上方および前方に)、または後方に傾いている角度で(すなわち、上方および後方に)に取り付けられ得る。
【0034】
変形可能部材と基部またはアンカーとの間の連結は、多様な方式で説明され得る。たとえば、一態様において、変形可能要素は、基部を中心に(たとえば、インソール、ミッドソールまたはアウトソールを中心に)枢動しない(すなわち、非枢動式である)。言い換えれば、変形可能要素は、基部に回転不可能に結合され得る。様々な態様において、変形可能要素と基部(またはアンカー)との間の係合には遊びがなく、これは、2つの構成要素間の相対的移動がほとんどまたは全くないことを意味する。
【0035】
変形可能要素は、チューブ、ワイヤー、バネ、形状記憶構造または材料などのうち1つ以上を含み得る。また、変形可能要素は、1つ以上の材料、たとえば炭素鋼、ステンレス鋼、チタン、ニッケルチタン(ニチノール)、ならびにその他の金属および合金(形状記憶またはその他)、ポリマー(形状記憶またはその他)、複合材料、フォーム材、グラファイト、炭素繊維、ガラス繊維、TPC-ET、シリコン、TPUおよびポリカーボネートを含むことができる。たとえば、変形可能要素は、チタンを含むか、またはチタンワイヤーであり得る。なお、1つ以上の変形可能要素は、第1材料、たとえばチタンからなり得、1つ以上の追加の変形可能要素は、第2材料、たとえばグラファイトからなり得る。
【0036】
いくつかの態様において、変形可能要素は、単一の単片を含み得る。たとえば、変形可能要素の第1端部(たとえば、内側レバーアームの端部)は、内側アンカーに内蔵されるか取り付けられ得、変形可能要素の第2端部(たとえば、外側レバーアームの端部)は、外側アンカーに内蔵されるか取り付けられ得、変形可能要素の中間部分(たとえば、中央連結バンド)は、アッパーの踵部分または足首部分の周りで延びるか、いくつかの追加のヒールピース構造に内蔵され得る。
【0037】
他の態様において、変形可能要素は、複数の別個の個別的な構成要素を含み得る。たとえば、変形可能要素は、2つの個別的構成要素を含み得、第1構成要素(たとえば、内側レバーアーム)は、内側アンカーに内蔵されるか取り付けられる第1端部と、ヒールピースまたは中央連結バンドの内側に内蔵されるか取り付けられる第2端部と、を有する。したがって、第2構成要素(たとえば、外側レバーアーム)は同様に、外側アンカーに内蔵されるか取り付けられる第1端部と、ヒールピースまたは中央連結バンドの外側に内蔵されるか取り付けられる第2端部と、を含み得る。複数の別個の個別的な構成要素は、たとえばテープラップ(tape wrap)、織成インケーシング(woven encasing)、オーバーモールド(たとえば、TPU)、熱収縮チューブなどのうち1つ以上によって一緒に固定することができ、これらの各々は、異なる安定性および強度を提供することができる。たとえば、変形可能要素は、カバー、スリーブ、オーバーモールドまたは熱収縮チューブに独立的に収納されるか、または一緒に収納される1つ以上のワイヤーを含み得る。変形可能要素の弾性変形を容易にするために、1つ以上のワイヤーはアーチ状になり、屈折し、揺動した後、初期/正常状態に戻ることができる。
【0038】
変形可能要素は、その長さに沿って、かつ/またはその長さに沿う別個の点で、可変の機械的特性を有し得る。かかる変形は、変形可能要素(たとえば、ワイヤーまたは2つ以上のワイヤーの束)、変形可能要素(複数可)の全部または一部を取り囲む固定装置、あるいはこれらの任意の組み合わせによって提供され得る。たとえば、変形可能要素および/または固定装置は、その長さに沿って可変断面、可変密度、可変材料などを有し得る。よって、厚さまたは形状の変化により、あるいは、他に変形可能要素の厚さまたは形状が一定した場合には、変形可能要素をその長さに沿ってねじることにより、可変断面を提供することができる。
【0039】
簡単に前述したように、変形可能要素は、カバー、スリーブ、オーバーモールド、またはその他の適宜な構造を含み得、これは、変形可能要素の他の要素(たとえば、ワイヤー、バネなど)を保護し得、変形可能要素の屈曲または圧縮を制御し、かつ/または案内し、かつ/または支持し、かつ/または別な方法でこれに影響を及ぼし得る。いくつかの態様において、カバーは、その製造材料、形状、幾何学形状などに基づき、変形可能要素から(たとえば、ワイヤー(複数可)またはバネから)カバーへ機械的曲げ/変形の力を伝達することによって機械的応力の分散を促進するように構成されて、変形可能要素の損傷または破損を防止するか、または少なくとも抑制し、そうでなければ、変形可能要素が受ける集中的で繰り返しの機械的応力によって、該損傷または該破損が生じ得る。たとえば、カバーは、応力の分散を促進して変形可能要素の動的屈曲に寄与するように、その長さに沿って変わる寸法(たとえば、漏斗様のテーパ状)を有し得る。変形可能要素が破損した場合、カバーは、少なくともある程度の付勢を依然として提供することによって、足首の襟を降下位置から直立位置に移動させるのに役立ち得る。また、カバーは、変形可能要素に追加のパッドおよび/または支持を提供し得、着用者が変形可能要素を感じることを防止するか、少なくとも抑制し得る。
【0040】
簡単に前述したように、中央連結バンドは、ヒールピースとも呼ばれ得る。中央連結バンドは、内側および外側レバーアームと、単一の連続ユニットとして一体形成され得る。他の態様において、中央連結バンドは、内側レバーアームと外側レバーアームとの間で延び、これらの間の橋渡しとなる個別的なピースであり得る。特に、中央連結バンドは、アッパーへの結合を提供し得、足首の襟にフレームを提供して、足が挿入されるときに足首の襟が足受容開口内に折り畳まれることを防止し得る。
【0041】
着用者によって着用される場合、襟エレベータ(たとえば、襟エレベータ350および450)を有する履物品は、着用者が履物品を操作するために自分の手を使用しなくても、着用者が着用し得る履物品である。たとえば、着用者の足指は、足挿入開口318または418を通じて挿入され得る一方、自分の足のアーチまたは踵は、足首の襟336または436をソール312または412に向かって下方へ圧迫するのに用いられる。このように、足首の襟336または436をソールにより近く降下状態に調整することにより、足挿入開口318または418のサイズが大きくなり得る。着用者の足が足受容空洞316または416内にスライドすると、襟エレベータ350または450は、足首の襟を降下状態(すなわち、
図3Cおよび
図4C)から直立状態(すなわち、
図3Aおよび
図4A)へ移動させて履物品を着用者の足に固定するのに役立つ。
【0042】
特に、襟エレベータ350および450は、時間が経つにつれて上部踵領域および上部足首領域の構造的破壊の可能性を減少させ得、これは、直立状態に戻るように、または付勢されるように動作するフレームの提供による繰り返しのハンドフリー着用(hands-free donning)に起因し得る。また、襟エレベータ350および450は、利用者が手を使用することおよび/もしくは紐を結ぶために屈むことなく、靴べらを使用することなく、またはフィット(fit)のための他のそのような調整機構、要素またはメカニズムを使用することなく、自分の靴を容易に着用する(すなわち、履く)ことを可能にし得る。さらに、履物品310および410は、足受容開口内に着用者の足を容易に受容したり容易に導いたりし、あるいは他の方式で足受容開口に対して着用者の足を収容し得る。このような簡単な着用の可能性は、特に足首の襟の上端線が足受容空洞に向かって内向きに折れないようにしながら大きな足挿入開口を提供するのに役立つ襟エレベータ350および450に起因し得る。
【0043】
履物品310および410の動作は、多様な方式で説明され得る。たとえば、足首の襟336および436には、弾性があり得るか、たとえば足首の襟が降下状態に移動するとき、足挿入開口318および418の膨張を可能にするゴアリング要素(goring element)が含まれ得る。降下状態で、足挿入開口318および418は、少なくとも約5%、または少なくとも約10%、または少なくとも約15%膨張し得る。かかる測定された膨張は、多様な方式で検出され得る。たとえば、足挿入開口の第1円周は、足首の襟が第1状態にあるときに測定され得、第2円周は、足首の襟が(第1状態に比して)ソールの近くにある第2状態にあるときに測定され得る。第1および第2状態においてソールから足首の襟までの距離は、垂直面(すなわち、水平基準面に対して垂直であり、地面接触表面が休止位置(at-rest position)に着座する平坦な地表面を含む)で測定され得、距離は、足首の襟の上端線の縁の最後方点から、ソールの上端線の縁(たとえば、バイトラインでソールがアッパーに連結されるところ)までの距離として測定され得る。このように、第1状態における距離は、第2状態における距離よりも長く、一態様では、第2距離は、第1距離の75%以下である。前述の例に続いて、第1状態における距離の75%以下の距離を有する第2状態において、円周は、少なくとも約5%、少なくとも約10%、または少なくとも約15%膨張し得る。さらなる例において、足挿入開口318および418の円周は、足首の襟が第1状態における距離の75%以下の距離を有する第2状態にあるとき、少なくとも約1.0インチ(約2.54センチメートル)だけ膨張し得る。足挿入開口318および418の膨張量は、靴のスタイルおよびサイズによって異なり得る。他の態様において、降下状態におけるソール312および412の上の足首の襟336および436の高さは、直立状態における高さよりも約50%低いが、他のパラメータと同様に、これは、靴のスタイルおよびサイズによって異なり得る。
【0044】
本開示の他の箇所で説明されているように、襟エレベータ350および450は、足首の襟336および436を降下状態から直立状態に移動させるときに復帰力を提供する。いくつかの態様において、復帰力は、約1重量ポンド~約15重量ポンドであり、これは、足首の襟の多様な位置で測定され得る。たとえば、前述のように、足首の襟は、ソールからの第1距離を有する第1状態と、ソールからの第2距離(第1状態における距離よりも短い)を有する第2状態と、を含み得る。一態様において、襟エレベータ350および450は、第1状態における距離の約85%以下の距離を有する第2状態で、約1重量ポンド~約15重量ポンドの復帰力を提供する。さらなる態様において、襟エレベータ350および450は、第1状態における距離の約75%以下の距離を有する第2状態で、約1重量ポンド~約15重量ポンドの復帰力を提供する。さらに、襟エレベータ350および450は、第1状態における距離の約50%以下の距離を有する第2状態で、約1重量ポンド~約15重量ポンドの復帰力を提供し得る。復帰力は、足首の襟の後部が第2状態から跳ね戻って着用者の踵の周りにぴったりとフィットするように十分に強いものであり得る。たとえば、足首の襟336および436は、降下状態における足首の襟とソールとの間の距離が、直立状態における距離の85%未満、または75%未満、または50%未満である場合、約1秒未満の間に降下状態から直立状態に上昇し得る。他の態様において、足首の襟336および436は、降下状態における足首の襟とソールとの間の距離が、直立状態における距離の85%未満、または75%未満、または50%未満である場合、約0.5秒未満の間に降下状態から直立状態に上昇し得る。そして、さらなる態様において、足首の襟336および436は、降下状態における足首の襟とソールとの間の距離が、直立状態における距離の85%未満、または75%未満、または50%未満である場合、約0.2秒未満の間に降下状態から直立状態に上昇し得る。跳ね戻り時間は、外力(たとえば、着用者の踵により加えられ得る摩擦)による相殺のない状態で測定される。
【0045】
以下では、
図5~
図9を参照して、ソール512に結合されたアッパー514を有する別の履物品510について説明する。アッパー514は、踵領域524と、足首の襟536を有する足首領域526と、を含む。足首の襟536は、ソール512により近く位置決めされた降下状態(たとえば、
図8)と、ソール512からより遠く位置決めされた直立状態(たとえば、
図5および
図6)との間で移動可能である。また、履物品510は、アッパーの踵領域524に、アッパーの足首領域526に、足首の襟536もしくはその近くに、またはこれらの任意の組み合わせに結合され、足首の襟536を降下状態から直立状態に移動させるように動作可能な襟エレベータ550を含む。たとえば、本開示の他の箇所で説明されているように、中央連結バンド556は、足首の襟536の後方部分に(またはその近くに)貼り付けられ得、かつ/またはレバーアーム552および554は、アッパーの踵領域524に貼り付けられ得る。襟エレベータ550は、襟エレベターの1つのタイプに関する一例であり、本開示の他の態様において、履物品510は、本明細書に開示された多様な他の襟エレベータのうちいずれかを含み得る。アッパー514には舌革がなく、よって、つま革は、前足部領域から足首の襟536の前方の上端線の縁までずっと延びる。代替の態様において、アッパー514は、スロート(たとえば、38)、舌革(たとえば、42)、および閉鎖システム(たとえば、フックアンドループストラップ、弾性バンド、紐44など)を含み得る。
【0046】
本開示の一態様において、足首の襟536は、足首の襟の内側部分560と;足首の襟の外側部分562と;後面を巻き付け、内側部分560と外側部分562とを連結する、足首の襟の後方横方向部分564と;を含む。
図5~
図9において、部分560、562および564は一方から他方へ連続的に延び、よって、足首の襟536は、内側から後方横方向部分を通って外側まで連続的に延びる。部分560、562および562は、必ずしも足首の襟536に沿う正確な境界の提供を意図するわけではなく、特徴部の相対位置決めを説明する場合に有用であり得る。
【0047】
本開示の別の態様において、足首の襟536は非対称であり、内側部分560における第1セットの構造または特性を含み、第1セットの構造または特性は、外側部分562における第2セットの構造または特性とは異なる。たとえば、本開示の一態様において、足首の襟536は、内側部分560に沿ってガセット570を含み、外側部分562に沿っては対応するガセットがない。
【0048】
本開示で使用される「ガセット」は、足首の襟の一部に貼り付けられてそれを膨張させる織地片(たとえば、パネルまたはストリップ)を含む。たとえば、ガセット570は、弾性材料を含み得、弾性材料は、第1休止状態を含み、足首の襟が押される場合(たとえば、着用者が足挿入開口を介して自分の足を滑らせる場合)に伸長し、足首の襟が直立位置に戻る場合に第1休止状態に戻る。このような意味で、ガセット570は、足首の襟536の一時的な膨張を提供し、これは、足挿入開口518のサイズも増加させ得る。たとえば、
図8は、着用者Wが足挿入開口518を介して自分の左足を挿入し、自分の足を用いて足首の襟536を(たとえば、後方横方向部分564において)押すことを図示する。
図8に図示したように、ガセット570は、
図6に示した休止状態に比して伸長状態または延伸状態にある。ガセット570は、ほとんど隠されていないように示される。たとえば、ガセットは、ガセット材料パネルの縁の周りでアッパーに貼り付けられ得る。他のいくつかの場合において、ガセットは、材料のストリップを含んでもよく、ストリップの少なくとも一部は、足首の襟または足首領域の材料層の間に収納されてもよい。
【0049】
また、本開示で使用される「対応するガセット」は、別のガセットと実質的に類似した構成(類似したサイズ、形状、材料、角度配向、および長手方向の配向(すなわち、ガセットおよび対応するガセットが、内側から外側への配向に実質的に整列されるように、前方から後に)に沿う位置を含む)のガセットを指す。前述したように、本開示の一態様において、履物品は、内側部分(たとえば、560)に沿ってガセット(たとえば、570)を含み、外側部分(たとえば、562)に沿っては対応するガセットがない。このように、外側部分に沿って、履物品は、より小さなガセット、異なる材料から構成されたガセット、より前方または後方に位置決めされたガセット、異なる角度配向を有するガセット、またはこれらのあらゆるすべての組み合わせを含み得る。さらなる例において、履物品の外側部分は、
図5~
図7に図示したように、いかなるガセットも含まなくてもよい。
【0050】
本開示の一態様によれば、内側部分に沿ってガセットを有し、外側部分に沿っては対応するガセットがない履物品は、多様な方式で動作し得る。
図9を参照すると、たとえば、足首の襟536が押される場合、より伸長した状態の足首の襟536を有する履物品510の上面図が示されている。
図7の休止状態に比して、
図9の足首の襟536は、外側部分562よりも、内側部分560の方で延伸している。足首の襟536の異なる部分における多様な延伸および膨張は、多様な状況で有用性を提供し得る。たとえば、延伸要素(たとえば、ガセット)の位置は、一部の着用者の脱ぎ履きの技法または制限に対応するように構成され得る。すなわち、場合によって、着用者は、より一般的には、外側よりは内側に近い位置(たとえば、275)で足首の襟236を押すことができる。着用者は、多様な理由で、より中央に位置付けられた位置に対向する位置275で足首の襟236を押すことができる。たとえば、着用者の手先の器用さおよび関節可動域が制限され得、これにより、位置275が足首の襟を押すためのより容易な標的になり得る。他の場合において、着用者が自分の足を足挿入開口を介して挿入するとき、自分の足の外側部分(たとえば、回外)を下方に傾斜させたりねじったりした方がより自然であり得、かかる回転によって、着用者の踵は内向きに調整され得、位置275にさらに整列され得る。他の場合において、履物品を脱ぐとき、着用者の踵は、より中央に位置決めされた箇所277に直接整列された経路に沿って、上げられないこともある。たとえば、踵は、位置275に整列された経路に沿って足挿入開口518から引っ張られ得、よって、内側部分560に沿う膨張は、履物を脱ぐことを容易にするように、位置決めされる。
【0051】
他の場合において、着用者は、より中央に位置決めされた箇所277で、押す力を依然として加えることができ、外側部分264に沿って対応するガセットを含まない場合、他の目的のために外側部分264の構造を保存することができる。たとえば、対応するガセットが外側部分264に沿って含まれない場合には、外側部分264(ならびに足首領域526および踵領域524)の選択された審美性が保存され得るか、対応するガセットによって別段に破壊され得る外側アッパー内に、異なる機能要素が含まれ得る。異なる機能要素の例として、剛性、相当な通気性、相当な絶縁性、相当な耐水性などを有する織地が挙げられ得る。
【0052】
図5~
図9は、外側部分562がいかなるガセットも含まない一例を示す。他の態様において、外側上のガセットが、異なるサイズ、異なる形状、位置、異なる角度配向、異なる材料またはこれらの任意の組み合わせを含むので、外側部分は、対応するガセットではないガセットを含んでもよい。たとえば、
図10において、外側ガセット580Aおよび内側ガセット570が内側から外側への配向に整列され、類似した角度配向を含んでも、外側ガセット580Aはより小さい(すなわち、より狭い)ので、外側ガセット580Aは、内側ガセット570に対して対応するガセットではない。
図11によって提供される別の例において、外側ガセット580Aは、ガセット270とは異なる長手方向の位置を含み、よって、ガセット580Aおよび570は、内側から外側への配向において緯線方向に整列されない。したがって、ガセット580/bは、サイズ、形状、および角度配向が類似していても、対応するガセットではない。
図12は別の例を提供し、外側ガセット580Cおよび内側ガセット570が、内側から外側への配向に整列され、類似したサイズおよび角度配向を含んでも、外側ガセット580Cは異なる形状を有するので、外側ガセット580Cは、内側ガセット570に対して対応するガセットではない。
図13において、外側ガセット580Dは、異なる角度配向を有するので、外側ガセット580Dは、内側ガセット570に対して対応するガセットではない。ガセットの角度配向は、多様な方式で決定され得る。たとえば、基準線は、ガセット基部の中間点からガセット口部(gusset mouth)の中間点まで延び得、基準線が水平基準面(たとえば、地面接触表面が休止位置に着座する平坦な地表面)と交差する角度が、測定され得る。
図10~
図13は、襟エレベータおよび足首の非対称襟を有する、いくつかの多様な履物品の例に過ぎず、他の態様において、外側上の対応しないガセットは、内側ガセットに比して、他の差異を有し得る。
【0053】
本開示の他の箇所に示したように、足首の襟536は非対称であり、内側部分560における第1セットの構造または特性を含み、第1セットの構造または特性は、外側部分562における第2セットの構造または特性とは異なる。
図5~
図13は、いくつかの態様を図示し、ここで履物品は、内側部分560に沿ってガセットを含み、外側部分562に沿っては対応するガセットがない。足首の襟536は、他の点で非対称であってもよい。たとえば、
図14および
図15を参照されば、襟エレベータ650を有する代替の履物品610が示されている。また、内側部分660は、1つ以上の材料層に配置された1つ以上の材料の第1セットを有する第1アッパー構成を含み得、外側部分662は、1つ以上の材料層に配置された1つ以上の材料の第2セットを有する第2アッパー構成を含み得る。本開示の一態様によれば、第1アッパー構成は、第2アッパー構成とは異なる材料特性を含み得る。異なり得る材料特性の例には、弾性係数または剛性が含まれる。これらの特性は、当業者によって適切であると決定された1つ以上の標準または試験方法を用いて測定され得る。たとえば、第1アッパー構成および第2アッパー構成の弾性係数は、ASTM WK 27572(2010年2月11日に開始)、ASTM D5034、または類似した試験方法によって測定され得る。ASTM D5034が適用される場合、一態様において、試験片の長辺は、アッパーに沿って前後配向に整列される。
【0054】
さらなる態様において、内側部分660の第1アッパー構成は、第2アッパー構成よりも低い弾性係数を含む。別の態様において、内側部分660の第1アッパー構成は、第2アッパー構成よりも柔軟である。また、内側部分660は、外側部分662より弾性もあり、柔軟であってもよい。より大きい弾性、より大きい柔軟性、またはこれらの組み合わせは、多様な方式で履物品610の動作に寄与し得る。たとえば、内側部分660に沿ってより大きな弾性および/またはより大きな柔軟性を含む足首の襟の非対称は、
図9について説明した動作と同様に、脱ぎ履きをする間、内側に沿ってより多くの膨張を促進し得る。
【0055】
第1構成は、様々な点で第2構成とは異なり得る。たとえば、第1構成は、第1編織構造を含み得、第2構成は、第2編織構造を含み得る。第1編織構造は、低い弾性係数、大きな柔軟性またはこれらの組み合わせに寄与するステッチサイズまたはステッチタイプを含み得る。別の例において、第1構成は、高い弾性糸含量を有する材料を含み得るか、第2構成は、第1構成に含まれない1つ以上の追加の材料層を含み得るか、これらの組み合わせが可能である。
【0056】
別の代替の例において、
図16および
図17を参照すると、襟エレベータ750を有する別の履物品710が示されている。また、足首の襟の内側部分760は、内側上端線の縁761を含み、外側部分762は、外側上端線の縁763を含む。本開示の一態様において、足首の襟736は、内側上端線の縁761と外側上端線の縁763の差異に基づいて非対称である。たとえば、内側上端線の縁761は、前部分から後部分まで延びるに連れて、ソール712に向かってより急激に下方に凹んでいる谷部を有する。逆に、外側上端線の縁763は、外側上端線の縁763が前から後へ延びるに連れて、急激に凹んでおらず、より水平に延びる。上端線の縁761および763は、多様な方式で比較され得る。たとえば、内側上端線の縁761の最下位部分は、外側上端線の縁の最下位部分よりもソール712に近い。また、内側上端線の縁761は、外側上端線の縁763よりも長い。たとえば、内側から外側への第1基準面が、地点780Aおよび780Bを通って延び、第1基準面に平行な、内側から外側への第2基準面が、地点782Aおよび782Bを通って延びる場合、面間の内側上端線の縁761の長さは、面間の外側上端線の縁763の長さよりも長い。
【0057】
内側上端線の縁761の比較的下位にある部分、比較的長い内側上端線の縁761、またはこれらの組み合わせは、多様な方式で履物品710の動作に寄与し得る。たとえば、上端線の縁761および763の差異を含む、足首の襟の非対称は、
図9について説明した動作と同様に、脱ぎ履きをする間、内側に沿ってより多くの膨張を促進し得る。動作中において、足首の襟が、押されるサイクルを経る場合(たとえば、足が足首の襟を下の方に圧迫する場合、ハンドフリー着用の動作中に)、より垂直かつより上位にある外側上端線の縁763は、内側上端線の縁761に比して、押されるサイクルの初期に(そして、押されるサイクル全体にわたって)後方への折り畳みに対する張力および抵抗を提供し得、これは、アッパー724の内側踵部分の変形に影響されやすい可能性がある。
【0058】
本開示のいくつかの態様は、図面に提供された例について説明されている。出願時の本出願の1つ以上の請求項または条項、あるいは1つ以上の関連出願に含まれる関連主題であり得る、本開示のさらなる態様が以下で説明されるが、請求項または条項は、この説明の下記に説明される主題のみに限定されるものではない。これらのさらなる態様は、図面によって図示している特徴、図面によって示していない特徴、およびこれらの任意の組み合わせを含み得る。これらのさらなる態様を説明する場合、例示の目的で図面によって示した要素が参照され得る。
【0059】
本開示の一態様は、ソールを備える履物品に関する。履物品はまた、踵領域および足首領域を有する、ソールに結合されたアッパーを備える。さらに、履物品は、足首領域に位置決めされた、足首の襟を備える。足首の襟は、足首の襟の内側および足首の襟の外側を含み、ここで足首の襟は、ソールにより近く位置決めされた降下状態と、ソールからより遠く位置決めされた直立状態との間で移動可能である。履物品は、少なくとも踵領域に位置決めされ、足首の襟を降下状態から直立状態に移動させるように動作可能な襟エレベータを備える。また、履物品は、足首の襟の内側に沿って位置決めされたガセットを備え、足首の襟の外側に沿っては対応するガセットがない。
【0060】
本開示の別の態様は、ソールを備える履物品に関する。履物品はまた、踵領域および足首領域を有する、ソールに結合されたアッパーを備える。履物品は、足首領域に位置決めされた、足首の襟も備える。足首の襟は、足首の襟の内側および足首の襟の外側で構成され、ここで足首の襟は、ソールにより近く位置決めされた降下状態と、ソールからより遠く位置決めされた直立状態との間で移動可能である。足首の襟の内側は、内側上端線の縁を含み、足首の襟の外側は、内側上端線の縁の鏡像ではない外側上端線の縁を含む。また、履物品は、少なくとも踵領域に位置決めされた襟エレベータを備え、これは、足首の襟を降下状態から直立状態に移動させるように動作可能である。
【0061】
また、本開示の一態様は、ソールを備える履物品に関する。履物品はまた、踵領域と、足首の襟のある足首領域とを有する、ソールに結合されたアッパーを備える。足首の襟は、足首の襟の内側および足首の襟の外側を含む。足首の襟の内側は、加えられた力に応答して、足首の襟の外側よりも低い弾性係数、大きな柔軟性またはこれらの組み合わせを備える。足首の襟は、加えられた力に応答して、ソールからより遠く位置決めされた直立状態から、ソールにより近く位置決めされた降下状態に可逆的に移動可能である。さらに、履物品は、踵領域に位置決めされ、加えられた力が除去される場合、足首の襟を降下状態から直立状態に移動させるように動作可能な襟エレベータを備える。
【0062】
本発明は、構造に固有であり当業者によって実現される他の利点と共に、上述のすべての目標および目的を達成するようによく適合しているものであると、前述のところから分かるであろう。
【0063】
特定の特徴および下位組み合わせは実用的であり、他の特徴および下位組み合わせを参照せずに採用され得ることが理解されよう。これは、請求項により考慮され、特許請求の範囲内に属する。
【0064】
本発明の範囲を逸脱することなく、多数の可能な態様が本発明で作られ得るので、本発明に説明されるか、添付の図面に示されるすべての事項は、例示的のものとして解釈されるべきであり、限定的な意味では解釈されないことを理解されたい。
【0065】
本発明、および以下で列挙されている請求項に関連して使用される「条項のうちいずれか」という用語または前記用語の類似した変形は、請求項/条項の特徴が任意の組み合わせで組み合わせられ得るように解釈されることを意図する。たとえば、例示的な条項4は、条項1~条項3のうちいずれか1つの方法/装置を示してもよく、これは条項1および条項4の特徴が組合わせられ得、かつ/または、条項2および条項4の要素が組合わせられ得、かつ/または、条項3および条項4の要素が組合わせられ得、かつ/または、条項1、条項2、および条項4の要素が組合わせられ得、かつ/または、条項2、条項3、および条項4の要素が組合わせられ得、かつ/または、条項1、条項2、条項3、および条項4の要素が組合わせられ得、かつ/または、その他の変形があり得るものと解釈されることを意図する。また、「条項のうち任意の条項」という用語または前記用語の類似した変形は、上記に提供された例の一部により示されているように、「条項のうちいずれか1つ」、またはこのような用語のその他の変形を含むことを意図する。
【0066】
以下の条項は、本発明にて考慮される態様である。
【0067】
条項1.履物品であって、ソールと;ソールに結合され、踵領域および足首領域を有するアッパーと;足首領域に位置決めされ、足首の襟の内側および足首の襟の外側を有する足首の襟であって、足首の襟は、ソールにより近く位置決めされた降下状態と、ソールからより遠く位置決めされた直立状態との間で移動可能である、足首の襟と;少なくとも踵領域に位置決めされ、足首の襟を降下状態から直立状態に移動させるように動作可能な襟エレベータと;足首の襟の内側に沿って位置決めされたガセットと;を備え、足首の襟の外側に沿っては対応するガセットがない、履物品。
【0068】
条項2.襟エレベータは、加えられた力が足首の襟を直立状態から降下状態に移動させる場合、第1構成から第2構成に弾性変形されることによって位置エネルギーを蓄積し、位置エネルギーは、加えられた力の除去時、襟エレベータを第1構成に戻す、条項のうちいずれかに記載の装置。
【0069】
条項3.襟エレベータは、内側レバーアームと、外側レバーアームと、内側レバーアームを外側レバーアームに結合し、足首の襟の後方部分に位置する中央連結バンドと、を含む、条項のうちいずれかに記載の装置。
【0070】
条項4.足首の襟の外側は、ガセットを含まない、条項のうちいずれかに記載の装置。
【0071】
条項5.足首の襟の外側は、ガセットよりも小さい、対応しないガセットを含む、条項のうちいずれかに記載の装置。
【0072】
条項6.足首の襟の外側は、第1材料を備える、対応しないガセットを含み、第1材料は、ガセットの第2材料よりも弾性が小さい、条項のうちいずれかに記載の装置。
【0073】
条項7.足首の襟の外側は、ガセットよりも前に位置決めされる、対応しないガセットを含む、条項のうちいずれかに記載の装置。
【0074】
条項8.足首の襟の外側は、ガセットとは異なる角度配向を有する、対応しないガセットを含む、条項のうちいずれかに記載の装置。
【0075】
条項9.足首の襟の外側は、ガセットとは異なる形状を有する、対応しないガセットを含む、条項のうちいずれかに記載の装置。
【0076】
条項10.履物品であって、ソールと;ソールに結合され、踵領域および足首領域を有するアッパーと;足首領域に位置決めされ、足首の襟の内側および足首の襟の外側を有する足首の襟であって、足首の襟は、ソールにより近く位置決めされた降下状態と、ソールからより遠く位置決めされた直立状態との間で移動可能であり、足首の襟の内側は、内側上端線の縁を含み、足首の襟の外側は、内側上端線の縁の鏡像ではない外側上端線の縁を含む、足首の襟と;少なくとも踵領域に位置決めされ、足首の襟を降下状態から直立状態に移動させるように動作可能な襟エレベータと;を備える、履物品。
【0077】
条項11.内側上端線の縁は、前位置から後位置まで延びる第1上端線の縁部分を含み、外側上端線の縁は、前部分から後部分まで延びる第2上端線の縁部分を含み、第1上端線の縁部分は、第2上端線の縁部分に比して、より深い谷部を含む、条項のうちいずれかに記載の装置。
【0078】
条項12.第1上端線の縁部分の最下位部分は、第2上端線の縁部分の最下位部分よりもソールに近い、条項のうちいずれかに記載の装置。
【0079】
条項13.第1上端線の縁部分は、第2上端線の縁部分よりも長い、条項のうちいずれかに記載の装置。
【0080】
条項14.履物品であって、ソールと;ソールに結合され、踵領域と、足首の襟のある足首領域と、を有するアッパーと;足首の襟の内側と、足首の襟の外側と、を備える足首の襟であって、加えられた力に応答して、足首の襟の内側は、足首の襟の外側よりも低い弾性係数、大きな柔軟性、またはこれらの組み合わせを備え、足首の襟は、加えられた力に応答して、ソールからより遠く位置決めされた直立状態から、ソールにより近く位置決めされた降下状態に可逆的に移動可能である、足首の襟と;踵領域に位置決めされ、加えられた力が除去される場合、足首の襟を降下状態から直立状態に移動させるように動作可能な襟エレベータと;を備える、履物品。
【0081】
条項15.足首の襟の内側は、第1編織構造を含み、足首の襟の外側は、第2編織構造を含み、第1編織構造は、低い弾性係数、大きな柔軟性またはこれらの組み合わせに寄与するステッチサイズまたはステッチタイプを含む、条項のうちいずれかに記載の装置。
【0082】
条項16.足首の襟の内側は、1つ以上の内側織地を含み、足首の襟の外側は、1つ以上の外側織地を含み、1つ以上の内側織地は、1つ以上の外側織地よりも高い弾性糸含量を含む、条項のうちいずれかに記載の装置。
【国際調査報告】