(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(54)【発明の名称】永久磁石を強制的に消磁するための装置を含む電気機械
(51)【国際特許分類】
H02K 21/02 20060101AFI20220202BHJP
F02C 6/08 20060101ALI20220202BHJP
F01D 15/10 20060101ALI20220202BHJP
F02C 6/20 20060101ALI20220202BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20220202BHJP
B64D 27/24 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
H02K21/02
F02C6/08
F01D15/10 A
F02C6/20
B64C39/02
B64D27/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535541
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(85)【翻訳文提出日】2021-07-14
(86)【国際出願番号】 FR2019053183
(87)【国際公開番号】W WO2020128348
(87)【国際公開日】2020-06-25
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516235451
【氏名又は名称】サフラン・ヘリコプター・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】セルギーヌ,キャメル
(72)【発明者】
【氏名】クロノースキー,トマ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィヴ,ロイス,ピエール,ドニ
【テーマコード(参考)】
5H621
【Fターム(参考)】
5H621AA03
5H621PP10
(57)【要約】
本発明は、ステータと、ステータに対して回転可能なロータとを含む航空機のための電気機械に関し、ロータ又はステータは複数の永久磁石を含み、電気機械は、永久磁石を消磁するための消磁装置を含み、消磁装置は、永久磁石の温度の一時的な上昇を達成するのに適しており、一時的な温度の上昇中に、永久磁石によって生成される励磁磁束を制限する。本発明はさらに、そのような電気機械と、電気機械の消磁装置に高温流体を送達するのに適した高温流体供給源とを含むアセンブリに関する。高温流体供給源は、タービンエンジンのガスストリームであり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ(4)と、該ステータ(4)に対して回転可能なロータ(2)とを含む航空機のための電気機械であって、前記ロータ又は前記ステータは複数の永久磁石を含み、当該電気機械は、
前記永久磁石の一時的な温度上昇の間に前記永久磁石(3a)によって生成される励磁磁束を制限するために、前記永久磁石の前記一時的な温度上昇を実施するのに適した、永久磁石(3a)を消磁するための消磁装置を含む、
電気機械。
【請求項2】
前記消磁装置は、前記永久磁石(3a)の近く又は該永久磁石内で高温流体を循環させるように構成される、請求項1に記載の電気機械。
【請求項3】
前記消磁装置は、ダクト(60)を含み、該ダクトの終端部分(61)が、前記永久磁石(3a)の表面に又は前記永久磁石(3a)の内部容積内につながる、請求項2に記載の電気機械。
【請求項4】
前記ダクト(60)の部分が、前記ロータ(2)のシャフトの軸線(A)に沿って延びており、前記ダクトの前記終端部分(61)は、前記ロータ(2)において、前記ダクトの前記部分から前記永久磁石(3a)まで延びる、請求項3に記載の電気機械。
【請求項5】
前記ダクトの部分(62)が、当該電気機械の外側から前記ステータ(4)の内面まで、前記ロータ(2)のシャフト(2)の軸線(A)に直交して延びる、請求項3に記載の電気機械。
【請求項6】
当該電気機械はラジアル方向磁束タイプであり、前記ロータ(2)は円柱形状である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電気機械。
【請求項7】
前記電気機械はアキシャル方向磁束タイプであり、前記ロータは円盤形状である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電気機械。
【請求項8】
前記永久磁石にはキュリー温度があり、前記消磁装置は、前記キュリー温度を超える前記永久磁石(3a)の一時的な温度上昇を実施するのに適している、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電気機械。
【請求項9】
当該電気機械は、巻線(5a)をさらに含み、前記ロータ(2)の回転中に前記永久磁石(3a)によって生成される励磁磁束の影響下で、誘導電流が前記巻線(5a)内を循環するように構成され、
当該電気機械は、巻線障害センサ(50)をさらに含み、巻線障害が検出されたときに、前記消磁装置は、前記永久磁石の前記温度上昇を実施するように構成される、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の電気機械。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の電気機械を含み、且つ高温流体供給源を含むアセンブリであって、該高温流体供給源は、前記電気機械の消磁装置に高温流体を供給するのに適している、アセンブリ。
【請求項11】
ガス/ガス熱交換器又はガス/液体熱交換器をさらに含み、該熱交換器は、前記高温流体供給源と前記電気機械との間に位置付けされる、請求項10に記載のアセンブリ。
【請求項12】
ターボ機械の動作中に高温流体供給源として機能するガスストリームを有するターボ機械(10)と、前記ガスストリームにおいて高温ガス抽出要素(64)とを含む、請求項10又は11のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項13】
前記高温ガス抽出要素は、前記ターボ機械の軸線(D)に直交して規定される抽出面から高温ガスを受け入れるのに適しており、前記抽出面は、
前記ターボ機械の最終圧縮機段(13)の出口上に延びる平面(P3)と呼ばれる平面であって、前記最終圧縮機段は、前記ターボ機械の燃焼室(14)の直ぐ上流に配置される、前記平面及び、
前記最終圧縮機段とは異なる前記ターボ機械の圧縮機段(12)の出口上に延びる平面P2.5と呼ばれる平面、から選択される、請求項12に記載のアセンブリ。
【請求項14】
前記高温ガス抽出要素は、前記ターボ機械の排出ノズルに配置された抽出ポイントから高温ガスを受け入れるのに適している、請求項12に記載のアセンブリ。
【請求項15】
請求項10乃至14のいずれか一項に記載のアセンブリを含む航空機であって、例えば、ヘリコプター又はハイブリッド式熱生成/発電航空機である航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機のエネルギーの発生又は動力化(motorization)に使用される電気機械の分野に関し、特にヘリコプタータイプ、垂直離着陸つまりVTOLタイプ、又は短距離離着陸つまりSTOLタイプ、又は電気推進力を有する電気機械の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
電気式又はハイブリッド式熱/電気推進力を備えた航空機で電気機械を搭載する(carry)ことが現在実施されている。ハイブリッド式電気アーキテクチャでは、発電機は、ガスタービンタイプの火力発電システムによって駆動され得る。
【0003】
搭載される全体の質量を減らすために、これらの用途に適した電気機械は、単位質量当たりの電力密度が高い永久磁石を備えた同期機械である。
【0004】
図1は、例えばヘリコプターに搭載された永久磁石を備えた同期機械の横断面図を示している。ここでは、同期機械は、ラジアル方向磁束タイプ(radial flux type)の機械であり、軸線Aを含む全体的に円筒形状を有している。その同期機械には、軸線Aを中心に回転運動し、固定ステータ4の内側に位置付けされたロータ2がある。
【0005】
この例では、磁石3は、ロータ上に配置され、且つステータの内周に位置付けされた巻線に面している。
【0006】
磁石3は、2対のN/S磁極を形成する。また、3対以上の磁極を有する電気機械も知られている。電気機械の発電機の動作では、巻線に対する磁石の強制回転によって励磁磁束(exciter magnetic flux)が生成され、これが巻線の端子に逆起電力を生成する。
【0007】
図1の電気機械では、巻線の短絡の場合、又は巻線のインピーダンスを大幅に低下させる別のイベントの場合に、この巻線の端子での電圧は、永久磁石が回転し続けるため、抵抗率と同じように急速に降下しない。
【0008】
従って、巻線を循環する電流の強度は非常に急速に増大し、巻線が過熱、絶縁体の融合等のリスクに曝される。これらのリスクは、機器の高レベルの信頼性が要求される航空用途には受け入れられない。
【0009】
従って、巻線の短絡イベント中に、永久磁石同期機械の巻線を保護するための解決策が求められてきた。
【0010】
巻線に銅の塊を追加することによって及び/又は絶縁を強化することによって、回路が高強度の電流に耐えるように、巻線の電気回路の寸法を決めることが提案されている。しかしながら、この解決策は、電気機械の質量への影響を増大させ、且つ巻線の製造をより複雑にする。
【0011】
別の既存の解決策は、電気機械のロータとこのロータを駆動する熱機械(thermal machine)のパワーシャフトとの間の瞬間的な機械的結合解除(decoupling)を達成することから構成される。結合解除は、例えば、クラッチ又は噛み合い結合によって実施され、ロータの回転の緊急停止を可能にする。このタイプの1つの解決策は、出願人の名前の特許文献1に記載されており、この文献では、特に
図2に、発電機とプロペラシャフトとの間に結合解除装置23が示されている。しかしながら、このタイプの装置は巨大であり、航空機の輸送可能な有用な積載量を低下させる。
【0012】
これらの極端なケースでは、ロータを駆動する熱機械を完全に停止することも可能である。しかしながら、この熱機械がヘリコプターのプロペラの動きも保証する場合に、飛行中にその熱機械を停止することは現実的ではない。
【0013】
永久磁石同期機械を巻線型ロータ機械に置き換えることも考えられており、これは、ロータの巻線への電力供給を遮断することによって、励磁機の回転磁束を迅速に打ち消すことができるという利点を有する。ただし、ロータにスリップリングが存在すると、ロータの速度が制限される。そのため、巻線型ロータ機械の単位質量当たりの出力密度は、永久磁石マシンの出力に匹敵しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】仏国特許出願第3 057 029号明細書
【発明の概要】
【0015】
こうして、航空機に搭載することを目的とした電気機械が必要になり、巻線障害イベントによって巻線が損傷のリスクに曝されることはない。
【0016】
特に、巻線が短絡した場合に、誘導電流の強度が過度に増大しないようにすることが望まれる。
【0017】
望ましい機械は、航空分野の特定の制約を満たさなければならず、こうして、航空機の質量及び容積への影響を最小限に抑える必要がある。
【0018】
望ましい解決策は、航空機内の有用な輸送可能な積載量への影響を最小限に抑える必要もある。
【0019】
このため、本発明の第1の目的は、ステータ(stator)と、ステータに対して回転運動移動するロータ(rotor)とを含む航空機のための電気機械であり、ロータ又はステータは複数の永久磁石を含み、電気機械は、永久磁石の一時的な温度上昇中に、永久磁石によって生成される励磁磁束を制限するために、永久磁石の一時的な温度上昇を実施するのに適した、永久磁石を消磁するための消磁装置を含む。
【0020】
本発明による電気機械は、その磁石の温度を上昇させることにより、磁石によって生成される励磁磁束を急速に減少させるのを可能にする消磁装置を含む。温度上昇中の磁性材料の固有の消磁特性が有利に使用される。「消磁(demagnetization:減磁)」とは、磁石の磁気誘導を打ち消すことである。
【0021】
特に、キュリー温度と呼ばれるしきい値温度は、永久磁石の磁気誘導を打ち消す。
【0022】
こうして、巻線に障害が発生した場合に、磁石によって生成される磁束を急速に減らすことができる。巻線に欠陥がある一方で、巻線の端子での逆起電力が高いままである経過時間は大幅に短縮される。
【0023】
好ましくは、電気機械の各永久磁石は、磁石の総磁束の急速な減少を可能にするために、消磁装置に関連付けられる。
【0024】
本発明の電気機械のオプションで非限定的な特徴は、以下の通りであり、単独で、又は技術的に可能な組合せのいずれか1つである。
- 消磁装置は、永久磁石の近く又は永久磁石内で高温の流体を循環させるように構成される。
- 消磁装置は、ダクトを含み、ダクトの終端部分が、永久磁石の表面に又は永久磁石の内部容積内につながる。
この変形例の利点は、ダクトの質量が小さく、輸送可能な有用な積載量への影響が少ないことである。
- ダクトの部分が、電気機械の外側からステータの内面まで、ロータのシャフトの軸線に直交して延びる。
- ダクトの部分が、ロータのシャフトの軸線に沿って延びており、ダクトの終端部分は、ロータ内において、ダクトの部分から永久磁石まで延びる。
- 電気機械はラジアル方向(半径方向)磁束タイプ(radial flux type)であり、ロータは円柱形状である。
- 電気機械はアキシャル方向(軸線方向)磁束タイプ(axial flux type)であり、ロータは円盤形状である。
- 永久磁石にはキュリー温度があり、消磁装置は、キュリー温度を超える永久磁石の一時的な温度上昇を実施するのに適している。
- 電気機械は、巻線をさらに含み、ロータの回転中に永久磁石によって生成される励磁磁束の影響下で、誘導電流が巻線内を循環するように構成され、
電気機械は、巻線障害センサをさらに含み、消磁装置は、巻線障害の検出中に、永久磁石の温度上昇を実施するように構成される。
【0025】
本発明の第2の目的は、上記で規定される電気機械と、電気機械の消磁装置に高温流体を供給するのに適した高温流体供給源とを含むアセンブリである。
【0026】
このアセンブリの可能で非限定的な特徴は、以下の通りであり、単独で、又は可能な組合せのいずれか1つである。
- アセンブリは、ガス/ガス熱交換器又はガス/液体熱交換器をさらに含み、熱交換器は、高温流体供給源と電気機械との間に位置付けされる。
- アセンブリは、ターボ機械の動作中に高温流体供給源として機能するガスストリームを有するターボ機械と、ガスストリームにおいて高温ガス抽出要素とを含む。
- この抽出要素は、ターボ機械の軸線に直交して規定される抽出面から高温ガスを受け入れるのに適しており、抽出面は、
ターボ機械の最終圧縮機段の出口上に延びる平面P3と呼ばれる平面であって、最終圧縮機段は、ターボ機械の燃焼室の直ぐ上流に配置される、平面及び、
最終圧縮機段とは異なるターボ機械の圧縮機段の出口上に延びる平面P2.5と呼ばれる平面、から選択される。
- 抽出要素は、ターボ機械の排出ノズルに配置された抽出ポイントから高温ガスを受け入れるのに適している。
- アセンブリは、抽出要素の近くに吸引装置をさらに含む。
- ターボ機械は、アセンブリの電気機械のロータを駆動するのに適している。
【0027】
本発明は、上記で規定されるアセンブリを含む航空機にも関し、航空機は、典型的には、ヘリコプター又はハイブリッド式熱生成/発電航空機である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明の他の特徴、目的及び利点は、以下の説明から明らかになろう。これは、純粋に例示的であり、限定ではなく、既に上に提示された
図1、及び他の添付図面を伴う。
【
図1】ヘリコプターに搭載された永久磁石を備えた同期機械の横断面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態による同期永久磁石機械の概略縦断面図である。
【
図3】
図2の同期機械のロータを駆動して、
図2の同期機械の消磁装置に高温ガスを供給するように構成されたヘリコプターターボ機械の縦断面図である。
【
図4】特定の永久磁石の消磁の特性曲線であり、横軸に消磁磁場を示し、縦軸に永久磁石の誘導を示す。
【
図5】本発明の第2の実施形態による同期永久磁石機械の概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下の説明は、永久磁石が、ロータ上に配置され、且つステータに対して回転して駆動される同期永久磁石機械の例を述べる。
【0030】
以下の例は、発電機モードの同期機械に関するものであり、ロータは、回転駆動されて、ステータと相互作用し、電気エネルギーを生成する。また、以下に説明するのは、ロータが、全体的に円柱形状であり、且つステータの内側に位置付けされるラジアル方向磁束同期機械である。
【0031】
もっとも、本発明は、同じ利点をもって、永久磁石をステータに固定して配置する機械の場合、及び/又は電気機械がアキシャル方向磁束を有する場合に適用される。より一般的には、本発明は、任意の数の磁石を含む任意の電気機械での用途を見出すことができる。
【0032】
また、以下の例において、主に巻線障害状態で消磁装置を作動させると、磁石によって生成される磁束を急激に低下させる必要のある他の場合に、消磁装置を作動させることが考えられることにも留意されたい。
【0033】
以下の説明及び添付の図では、同様の要素は同じ英数字の参照によって示される。
【0034】
図2に示されるのは、本発明の第1の実施形態による同期永久磁石機械1である。ここでは、機械1をヘリコプターの発電機として使用している。ただし、その機械1は、別のタイプの航空機、特にハイブリッド式熱生成/発電を備える航空機で使用できる。
図2では、機械1は、ロータ2のシャフトの軸線Aを通過する平面の縦断面図で示されている。
【0035】
図をよりよく理解するために、軸線Aに直交する断面Cが示される。断面Cの横断面図(添付の図には示されていない)は、従来技術の機械を示す
図1の機械と同様の一般的な構造を与えるであろう。
【0036】
ヘリコプターのアーキテクチャの一例では、機械1は、PAGB(Power Accessories Gear Box)、つまり「パワーアクセサリギアボックス」内に統合される。機械1は、例えば、出願人の名前の特許文献1に記載されるアーキテクチャに準拠して航空機内に位置付けることができる。
【0037】
機械1は、ステータ4と、ステータ4に対して可動性を有するロータ2とを含む。ロータ2のシャフトは、ヘリコプターに配置されたターボ機械の動力シャフトによって回転駆動される。機械1はラジアル方向磁束を有し、ロータ2は、全体的に円柱形状であり、且つステータ4の内側に位置付けされる。ロータ及びステータは、電気機械を区切るハウジング7内に配置される。代替形態として、機械はアキシャル方向磁束を有し、ロータ2は円盤状タイプであり得る。
【0038】
1つの可能な構成では、電気機械1のロータ2のシャフトは、ガスタービンによって駆動される。次に、機械1は、ガスタービンのメインシャフトに接続されたパワーテイクオフシャフト(動力取出軸)によって駆動されるトランスミッションケースに取り付けられる。
【0039】
ロータは、複数の永久磁石3を含む。ここで、ロータは、2つの正反対のN(極)磁石及び2つの正反対のS(極)磁石を含む4つの磁石を含む。
【0040】
ここで、磁石3は、ロータのシャフトの中央部分22上の表面に規則的に分布しており、2つの連続する磁石は、90°だけ離れている。ロータのシャフトの中央部分は、シャフトの端部21に対してより大きな半径を有する。磁石3a(上)と3b(下)が
図2のビューに表示される。
【0041】
磁石:ラジアル磁石又はオルソラジアル(ortho-radial)磁石、埋設磁石、非同期始動のためにかご形構成に挿入された磁石の他の幾何学的形状が考えられることが理解されるであろう。
【0042】
ラジアル方向磁束を有する機械であるステータ4は、中空円筒の一般的な形状を有する。ステータの内面に規則的に分布する磁極は、ロータの方向に延びる。例えば、銅線を含む巻線が各磁極の周りに巻回される。電流が各巻線内を循環し得る。
【0043】
円筒形のカラー30が、磁石を保持するために、各磁石の表面に配置される。エアギャップと呼ばれる距離Eは、カラーの外面とステータ4の磁極の内周とを分離する。好ましくは、エアギャップEは、0.5ミリメートル~10ミリメートルの間に含まれる。ここにはスリップリング(slip ring)はない。
【0044】
図2に示されるロータの角度位置では、磁石3aは巻線5aの近くに配置され、磁石3bは巻線5bの近くに配置される。
【0045】
ハウジング7は、略円筒形状である。そのハウジング7は、ロータ2を挿入するために軸線Aに沿って穿孔されている。ステータ4は、ハウジング7と一体である。ロータ2は、ベアリング8によるその回転で、ステータ4及びハウジング7によって形成されるアセンブリに対して支持される。
【0046】
本発明に準拠して、機械1は、永久磁石3aを消磁するための消磁装置を含む。消磁装置の機能は、命令に応じて、永久磁石3aの一時的な温度上昇を実施することである。一時的な温度上昇は、運動中の磁石3aの磁場とステータの巻線の磁場との間の相互作用によって生成される励磁磁束を制限する。
【0047】
実際に、磁石3aの温度の上昇は、磁石の保磁場、又はその磁気誘導を打ち消す反磁場のレベルを低下させる。磁石のキュリー温度を超えると、反磁場(消磁場)がない場合でも、磁石の磁気誘導は打ち消される。
【0048】
「磁気誘導」とは、磁石の磁気的挙動に特徴的な磁気モーメントの体積密度を意味し、これは、磁石及びステータの相対的な運動によって生成される励磁磁束に依存する。「反磁場(demagnetizing field:消磁場)」とは、磁石に印加されてその磁気誘導を打ち消す磁場のことである。
【0049】
図2の例では、消磁装置は、永久磁石3aの近くで高温流体を循環させるように構成される。より正確には、消磁装置は、ダクト60を含み、ダクト60の複数の終端部分61に続き、終端部分61は、互いに平行であるそれぞれの軸線B1、B2及びB3を有する。ダクトの終端部分のそれぞれは、磁石3aの内部容積内につながる。
【0050】
磁石3aの内部容積は、ダクト60の左端と流体連通している。こうして、ダクト60及び終端部分61は、電気機械の外部の供給源から高温流体、典型的に熱風を受け取り、この高温流体を磁石に近づけるための通路を提供する。
【0051】
ダクトアセンブリは、高温流体の流れを磁石3aに可能な限り近づけるのを可能にする。
【0052】
図2の例では、ダクト60は、ロータのシャフトの軸線Aに沿って延びる。ダクトの左端は、
図2のロータのシャフトの左端を通過する。ダクトは、ロータ2のシャフトの中央部分22の右端近くの平面まで続く。
【0053】
上記のダクトのセットは、永久磁石3aの強制消磁装置を構成する。
【0054】
1つの有利な変形例では、永久磁石3aは、流体、例えば熱伝達流体を受け入れるのに適した、その永久磁石3aを通る1つ又は複数の内部チャネルを有する。こうして、磁石の内部容積で熱交換が可能になり、これにより、消磁装置によって供給される熱に対する磁石の応答時間が短縮される。これにより消磁が加速される。これらの内部チャネルは、例えば、磁石の内部容積内で、軸線Aに実質的に平行な方向に長手方向に延びる。
【0055】
さらに、ステータでの磁束の作用によって消磁装置の作用を完了して、消磁場(反磁場)を生成することが可能であることに留意されたい。
【0056】
好ましくは、弁63は、高温流体の流入を制御するために、ダクト60の左端に配置される。弁63は、例えば、ヘリコプターに搭載された搭載コンピュータによって電子的に制御可能である。弁63は、オン/オフタイプの弁、又は比例弁であり得る。
【0057】
高温流体がダクト60によって受け入れられると、この高温流体は、磁石3aの内部容積に熱を伝達して、磁石の温度上昇を引き起こす。
【0058】
ハウジング7内の高温流体の排出のために、排出ダクト70を配置することが有利であり、排出ダクト70の第1の端部がハウジングの内部容積内につながり、第2の端部がハウジングから出る。排出の作動は、ヘリコプターのコンピュータにリンクされた排出弁71によって制御可能である。ダクト70は、ハウジング7内の過圧を回避するのを可能にする。
【0059】
発電機の動作では、誘導電流は、磁石、特に磁石3aの励磁磁束の影響下で巻線5a内を循環する。巻線5aが短絡した場合に、磁石が回転し続ける(従って磁束を生成する)と、数百アンペアに達する可能性のある巻線の損傷しきい値を超える非常に高い強度の誘導電流が、巻線内を循環する可能性がある。
【0060】
有利には、機械1は、巻線損傷センサ50を含む。センサ50は、ヘリコプターのコンピュータにデータを通信することができる。消磁装置は、例えば短絡イベント中に巻線に損傷を与えるリスクがある場合に、永久磁石3aの温度上昇を(弁63を介して)トリガーするように構成される。こうして、短絡した巻線を保護することが可能である。
【0061】
好ましい構成では、機械1の各永久磁石3は、消磁装置によって加熱され得る。例えば、ダクト60は、他の終端部分(図示せず)に続いて、各永久磁石の近く、特に永久磁石3bの近くにつながることができる。
【0062】
この変形例の1つの利点は、巻線内の全ての永久磁石によって生成される誘導電流を制限し、完全に打ち消すことさえ可能にすることである。
【0063】
好ましくは、電気機械の各巻線は、短絡の場合に各巻線を保護することができるように、損傷センサを有する。
【0064】
1つの可能な変形例(図には示されていない)では、消磁装置は、ガス/ガス熱交換器又はガス/液体熱交換器に連結することができ、ガスは、例えば空気であり、液体は、例えば、油、燃料又は水である。次に、熱交換器は、高温流体供給源(以下の例ではガスタービンエンジン)と電気機械との間に配置される。熱交換器により、外部熱源から電気機械に流入する流体の入力温度を制御及び適合させることができる。
【0065】
図3は、ヘリコプターのガスタービンエンジン10の概略断面図である。ガスタービンエンジン10は、
図2の電気機械1のロータ2を駆動する軸線Dを有するロータを含む。この例では、ガスタービンエンジン10は、いくつかのステージ(段)と遠心圧縮機を備えたガスタービンエンジンである。
【0066】
ガスタービンエンジンは、ガスタービンエンジンが動作しているときの空気流の順序で、空気入口11、第1の遠心圧縮機12、第2の遠心圧縮機13、燃焼室14、ガス発生器タービン15、及びフリー(free)タービン16を含む。
【0067】
ここで、ガスタービンエンジン10は、二重スプールを有する。そのガスタービンエンジン10は、フリータービン16に対応する第1のスプール17と、圧縮機及びガス発生器タービンに対応する第2のスプール18とを含む。
【0068】
ガスタービンエンジン10は、フリータービン16の出口にある排出ノズル(図示せず)まで、入口11に流入する空気の流路を形成するガスストリームを含む。
【0069】
非常に有利なことに、ガスタービンエンジンの動作中に、ガスストリームは、永久磁石3aを消磁するための装置に高温流体を供給するための高温流体の供給源として機能する。
【0070】
図3の例では、ガス抽出要素64がガスタービンエンジン10のガスストリーム内に位置付けされて、ガスストリーム内の高温ガスを抽出し、その高温ガスをダクト60に供給する。抽出要素64は、ダクト60の一端と直列に位置付けされる。ここで、抽出要素64は、一方ではガスタービンエンジン10のガスストリームの一部に接続され、他方では
図2に示されるダクト60に接続されるダクトである。
【0071】
抽出要素64は、ガスタービンエンジン10の圧縮機の出口に有利に配置され、ガスタービンエンジンの部材によって以前に圧縮された熱風を回収する。
【0072】
図3の例では、抽出要素64は、軸線Dに直交し、且つ第2の遠心圧縮機13の出口を通過する平面(一般に「平面P3」と呼ばれる)でガスタービンエンジン10のストリームにつながる。第2の遠心圧縮機13が燃焼室14の直ぐ上流に配置されるので、この構成の1つの利点は、ガスを非常に高温で回収できることである。
【0073】
代替として又は組合せで、ガスの抽出は、軸線Dに直交し、且つ第1の遠心圧縮機12の出口を通過する平面(一般に「平面P2又はP2.5」と呼ばれる)で、及び/又はターボ機械の排出ノズル(平面P5及び/又はP6)で外部に運ばれる。オプションで、吸引装置が抽出要素64の近くのガス抽出ポイントに追加される。吸引装置は、高温ガスが低圧レベルで、例えば排出ノズルで抽出される場合に特に有利である。
【0074】
代替例として、ガスの抽出は、永久磁石の消磁装置に供給するために、別のタイプのターボ機械のストリームで達成することができる。
【0075】
ヘリコプターのターボ機械を消磁装置の熱源として使用することは有利である。なぜなら、この熱源は、消磁装置がなくても既に存在しているからである。こうして、電気機械のロータを駆動する機能と磁石の強制消磁機能との相乗効果が得られる。さらに、ターボ機械からの高温ガスの抽出は、推進アセンブリの総質量及び信頼性に与える影響が少ない。
【0076】
図4に示されるのは、磁性材料の温度の関数としての、磁石3aの磁性材料の磁気誘導の特性曲線である。この例では、磁性材料はNd
2Fe
14Bである。ここにキロガウスで示される磁気誘導J.Bは、ここでメートル当たりのキロアンペアで示される消磁場(反磁場)Hが絶対値で増大するにつれて減少する。温度が上昇し、消磁場(反磁場)の絶対値が益々小さくなると(100℃で約1380kA/m、210℃で約360kA/m)、磁気誘導が打ち消される。
【0077】
上に示したように、磁石のキュリー温度を超えると、消磁場(反磁場)がない場合でもその磁気誘導は打ち消される。
【0078】
例として、いくつかの磁性材料のキュリー温度は以下の通りである:NdFeBの場合は140℃~220℃、SmCo5の場合は280℃、Sm2Co17の場合は350℃~550℃、l'アルニコの場合は550℃、ストロンチウム型フェライトの場合は250℃、バリウム型フェライトの場合は100℃~240℃である。
【0079】
電気機械1の消磁装置は、好ましくは、磁石のキュリー温度の関数として決定される温度を超えて、その電気機械1が関連する永久磁石の温度上昇を実施するのに適している。
【0080】
例えば、消磁装置は、磁石の磁気誘導を強く制限するように、磁石をそのキュリー温度の95%~105%の間で構成される温度に到達させるように構成される。
【0081】
好ましくは、消磁装置は、磁石がキュリー温度に到達することを可能にし、それはその磁気誘導を打ち消す。
【0082】
実際に、磁石がキュリー温度の100%にある場合に、外部の反磁場(消磁場)がなくても、永久磁石の消磁の最適な効果が得られる。
【0083】
こうして、消磁装置は、たとえ磁石が回転し続けたとしても、磁石の回転によって生成された磁束を一時的に且つ迅速に打ち消す手段を提供する。こうして、短絡イベント中に巻線を保護することが可能である。
【0084】
図5は、本発明の第2の実施形態による永久磁石同期機械1’の縦断面図を示す。断面は、ロータ2のシャフトの軸線Aを通過する。
【0085】
機械1’の内部構造、特にロータ2及びステータの構成は、
図2の機械1に関する上記の説明に準拠している。
【0086】
ダクト60の代わりに、機械1’は、複数のダクト62を含む。ダクト60と同様に、ダクト62は、永久磁石3aの近くに位置するボリュームと流体連通するように、電気機械の外部に高温流体供給源を配置する。ここで、ダクト62は、ロータのシャフトの軸線Aに直交する互いに平行な軸線B1、B2及びB3に沿ってそれぞれ延びる。
【0087】
各ダクト62は、ハウジング7の外側から、ハウジング7を通って、ステータ4を通ってステータ4の内面まで延びる。ダクト62は、開口部40を通ってステータ4を通過する。
【0088】
こうして、ダクト62の端部は、永久磁石3aの表面につながる。
【0089】
弁63は、好ましくは、ダクト62の外端に配置されて、これらのダクトを通る高温流体の流入を制御する。これらのダクトは、例えばヘリコプターの搭載コンピュータによって電子的に制御できる。
【0090】
代替例として、単一のダクト62又は任意の数のダクトを使用することが可能である。
【0091】
終端部分61を有するダクト60の代わりに又はダクト60を補完するものとして、ダクト62を使用することが可能である。ダクトの2つの向きを組み合わせた構造は、永久磁石に近接する高温流体のより大きな総質量流を可能にし、これは温度上昇を加速させる。
【0092】
こうして、高温ガスの噴射は、ロータのシャフトの軸線Aに対してアキシャル方向及び/又はラジアル方向に達成することができる。
【0093】
より一般的には、消磁装置のダクトの形状及び配置は、電気機械の構造、質量及び容積の制約、又は磁石の温度上昇の必要性に応じて適合させることができる。
【0094】
高温の流体は、必ずしも消磁装置の熱源として使用されるとは限らない。多数のタイプの熱源が考えられる。特に、ダクト60を電気抵抗器と交換することが可能であり、抵抗器は、磁束を打ち消さなければならない永久磁石の近くに位置付けされる。
【国際調査報告】