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特表2022-514077前立腺がん用の精液中のマーカーとしてのMCM5の使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(54)【発明の名称】前立腺がん用の精液中のマーカーとしてのMCM5の使用
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/574 20060101AFI20220202BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20220202BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20220202BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
G01N33/574 A ZNA
G01N33/543 545A
C12Q1/02
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535558
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(85)【翻訳文提出日】2021-08-17
(86)【国際出願番号】 GB2019053627
(87)【国際公開番号】W WO2020128486
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】1820868.6
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】517426786
【氏名又は名称】アーケア ダイアグノスティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ストックリー,ジャクリーン
(72)【発明者】
【氏名】ナイバーグ,シェリル
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QR72
4B063QR77
(57)【要約】
本発明は、対象において前立腺がんの存在又は非存在を検出する方法であって、対象から得られた精液試料を提供するステップ、及び少なくとも1つのバイオマーカーを検出するか、又は少なくとも1つのバイオマーカーの濃度を決定するステップを含む、方法に関する。本発明はまた、そのような方法において使用され得る溶解緩衝液、モノクローナル抗体、及びキットに関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において前立腺がんの存在又は非存在を検出する方法であって、
前記対象から得られた精液試料を提供するステップ、及び
少なくとも1つのバイオマーカーを検出するか、又は少なくとも1つのバイオマーカーの濃度を決定するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記精液試料を処理して、前記精液試料中の細胞から前記少なくとも1つのバイオマーカーを放出させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つのバイオマーカーがMCMタンパク質を含むか又はそれからなる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記MCMタンパク質がMCM5である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記精液試料が禁欲の期間後に得られる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのバイオマーカーを検出することが、前記バイオマーカーの前記濃度が予め定義されたカットオフより高いかどうかを決定することを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
(a)前記予め定義されたカットオフが、40pg/mL~100pg/mL、50pg/mL~75pg/mL、60pg/mL~70pg/mL、又は約65pg/mLであり、
(b)前記バイオマーカーの前記濃度が前記予め定義されたカットオフより高い場合に前立腺がんが存在する可能性があり、且つ/又は
(c)前記方法が前立腺がんを診断する方法であり、且つ、前記方法が、前記バイオマーカーの前記濃度が前記予め定義されたカットオフより高い場合に、前立腺がんを有するとして前記対象を診断するステップをさらに含む、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記濃度が参照と比較され、且つ、前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記濃度が前記参照と比較して異常であるか又は前記参照より高い場合に前立腺がんが存在する可能性があり、必要に応じて、前記方法が前立腺がんを診断する方法であり、且つ、前記方法が、前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記濃度が前記参照より高い場合に、前立腺がんを有するとして前記対象を診断するステップをさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
(a)前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記濃度を決定すること若しくは前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記濃度が予め定義されたカットオフより高いかどうかを決定することが、ELISAアッセイを使用して実行され、
(b)前記方法が、40%より高い、50%より高い、60%より高い、40%~100%、50%~100%、60%~100%、若しくは約61%の感度を有し、
(c)前記方法が、65pg/mLの予め定義されたカットオフを使用して40%より高い、50%より高い、60%より高い、40%~100%、50%~100%、60%~100%、若しくは約61%の感度を有し、
(d)前記方法が、70%より高い、75%より高い、70%~100%、75%~100%、若しくは約79%の特異度を有し、
(e)前記方法が、65pg/mLの予め定義されたカットオフを使用して70%より高い、75%より高い、70%~100%、75%~100%、若しくは約79%の特異度を有し、
(f)前記方法が、60%より高い、70%より高い、75%より高い、60%~100%、70%~100%、75%~100%、若しくは約78%の陽性予測値(PPV)を有し、
(g)前記方法が、65pg/mLの予め定義されたカットオフを使用して60%より高い、70%より高い、75%より高い、60%~100%、70%~100%、75%~100%、若しくは約78%の陽性予測値(PPV)を有し、
(h)前記方法が、55%より高い、60%より高い、55%~100%、60%~100%、若しくは約63%の陰性予測値(NPV)を有し、
(i)前記方法が、65pg/mLの予め定義されたカットオフを使用して55%より高い、60%より高い、55%~100%、60%~100%、若しくは約63%の陰性予測値(NPV)を有し、且つ/又は
(j)前記方法が、尿試料を使用して実行される同等の方法より高い感度、特異度、NPV及び/若しくはPPVを有し、必要に応じて、尿試料を使用して実行される前記同等の方法が3pg/mLのカットオフを使用する、
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記精液試料を処理して前記少なくとも1つのバイオマーカーを放出させる前記ステップが、前記精液試料中の細胞から前記少なくとも1つのバイオマーカーを放出させることができる溶解緩衝液に前記精液試料を曝露することを含み、必要に応じて、
(a)前記精液試料中の細胞から前記少なくとも1つのバイオマーカーを放出させることができる溶解緩衝液に前記精液試料を曝露することが、前記精液試料を遠心分離することにより得られた前記精液試料中の前記細胞のペレットに対して実行され、
(b)前記精液試料中の細胞から前記少なくとも1つのバイオマーカーを放出させることができる溶解緩衝液に前記精液試料を曝露することが、
細胞がフィルターに捕捉されるように、細胞を捕捉するための前記フィルターに非侵襲的試料を通過させること、
前記捕捉された細胞が溶解緩衝液に曝露されるように、前記溶解緩衝液を前記フィルターに通過させること、及び/若しくは
前記溶解緩衝液により前記細胞が前記少なくとも1つのバイオマーカーを放出するように、所定時間前記フィルターをインキュベートすること
を含み、
(c)前記溶解緩衝液が前記精液試料中の細胞からMCMタンパク質を放出させることができ、必要に応じて前記溶解緩衝液が前記精液試料中の細胞からMCM5を放出させることができ、
(d)前記溶解緩衝液が前記精液試料中の上皮細胞からMCMタンパク質を放出させることができ、必要に応じて前記溶解緩衝液が前記精液試料中の上皮細胞からMCM5を放出させることができ、
(e)前記溶解緩衝液が前記精液試料中の細胞からMCM5を放出させることができ、且つ、前記MCM5タンパク質を変性させず、
(f)前記溶解緩衝液が前記精液試料中の上皮細胞からMCM5を放出させることができ、且つ、前記MCM5タンパク質を変性させず、且つ/又は
(g)前記溶解緩衝液が抗体を変性させない、
請求項2から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
(a)前記溶解緩衝液が界面活性剤を含み、
(b)前記溶解緩衝液が、Triton X-100を含む界面活性剤を含み、
(c)前記溶解緩衝液が、0.01%~25%、0.01%~10%、0.05%~5%、0.1%~2%、0.5%~2%、0.75%~1.25%、又は約1%の濃度でTriton X-100を含む界面活性剤を含み、
(d)前記溶解緩衝液が、デオキシコール酸ナトリウムを含むか又はそれからなる界面活性剤を含み、
(e)前記溶解緩衝液が、0.1%~20%、0.1~10%、0.1~5%、0.5%~5%、0.5%~2.5%、0.75%~2.5%、0.75%~1.25%、又は約1%の濃度でデオキシコール酸ナトリウムを含むか又はそれからなる界面活性剤を含み、
(f)前記溶解緩衝液が、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含むか又はそれからなる界面活性剤を含み、
(g)前記溶解緩衝液が、0.001%~10%、0.01%~5%、0.05%~5%、0.01%~1%、0.05%~1%、0.05%~0.5%、0.075%~0.25%、又は約0.1%の濃度でドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含むか又はそれからなる界面活性剤を含み、
(h)前記溶解緩衝液が、Triton X-100、デオキシコール酸ナトリウム、及びドデシル硫酸ナトリウム(SDS)からなる界面活性剤を含む溶解緩衝液を含み、
(i)前記溶解緩衝液が、0.5%~2%のTriton X-100、0.5%~2%のデオキシコール酸ナトリウム、及び0.05%~0.5%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)からなる界面活性剤を含み、
(j)前記溶解緩衝液が緩衝剤成分を含み、
(k)前記溶解緩衝液が、pH4~pH9、pH5~pH8.5、pH6~pH8、pH6.5~pH8、pH7~pH8、pH7.3~pH7.9、pH7.4~pH7.8、pH7.5~pH7.7、又は約pH7.6のpHを有し、且つ/又は前記溶解緩衝液のpHをpH4~pH9、pH5~pH8.5、pH6~pH8、pH6.5~pH8、pH7~pH8、pH7.3~pH7.9、pH7.4~pH7.8、pH7.5~pH7.7、又は約pH7.6に維持する緩衝剤成分を含み、
(l)前記溶解緩衝液が、Trisを含むか又はそれからなる緩衝剤成分を含み、
(m)前記溶解緩衝液が、1mMより高い、1mM~350mM、5~200mM、5~100mM、5~50mM、5mM~40mM、5mM~35mM、10mM~35mM、15mM~35mM、15mM~30mM、20mM~30mM、又は約25mMの濃度でTrisを含むか又はそれからなる緩衝剤成分を含み、
(n)前記溶解緩衝液が、15mM~35mMの濃度のTrisからなる緩衝剤成分を含み、
(o)前記溶解緩衝液が塩を含み、
(p)前記溶解緩衝液が塩化ナトリウムを含み、
(q)前記溶解緩衝液が、10mM~350mM、20mM~300mM、50mM~250mM、100mM~250、100mM~200mM、125mM~175mM、又は約150mMの濃度で塩化ナトリウムを含み、
(r)前記溶解緩衝液が100mM~200mMの濃度で塩化ナトリウムを含み、
(s)前記溶解緩衝液が、
(i)1mM~100mMのTris、
(ii)50mM~300mMの塩化ナトリウム、
(iii)0.1~5%のデオキシコール酸ナトリウム、
(iv)0.01~1%のドデシル硫酸ナトリウム、及び/又は
(v)0.1~5%のTriton-X100
を含み、且つ/又は
(t)前記溶解緩衝液が、
(i)10mM~40mMのTris、必要に応じて約25mMのTris、
(ii)100mM~200mMの塩化ナトリウム、必要に応じて約150mMの塩化ナトリウム、
(iii)0.5~2%のデオキシコール酸ナトリウム、必要に応じて約1%のデオキシコール酸ナトリウム、
(iv)0.05~0.5%のドデシル硫酸ナトリウム、必要に応じて約0.1%のドデシル硫酸ナトリウム、及び/又は
(v)0.5~2%のTriton-X100、必要に応じて約1%のTriton-X100
を含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つのバイオマーカーを放出する前記細胞が上皮細胞であり、必要に応じて前記対象の前立腺の内壁から脱落した上皮細胞である、請求項2から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つのバイオマーカーを検出するか、又は前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記濃度を決定する前記ステップが、
前記精液試料を第1のモノクローナル抗体及び/又は第2のモノクローナル抗体に曝露すること、並びに
前記第1のモノクローナル抗体及び/若しくは前記第2のモノクローナル抗体に結合した前記少なくとも1つのバイオマーカーを検出するか、又は前記第1のモノクローナル抗体及び/若しくは前記第2のモノクローナル抗体に結合した前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記濃度を決定すること
を含み、
必要に応じて前記第1のモノクローナル抗体及び前記第2のモノクローナル抗体がMCM5に結合する、
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のモノクローナル抗体が、
(i)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドに結合し、
(ii)(a)配列番号9の配列、又は単一のアミノ酸置換により配列番号9とは異なる配列を有する12A7 CDRH1、
(b)配列番号11の配列、又は単一のアミノ酸置換により配列番号11とは異なる配列を有する12A7 CDRH2、
(c)配列番号13の配列、又は単一のアミノ酸置換により配列番号13とは異なる配列を有する12A7 CDRH3、
(d)配列番号3の配列、又は単一のアミノ酸置換により配列番号3とは異なる配列を有する12A7 CDRL1、
(e)配列番号5の配列、又は単一のアミノ酸置換により配列番号5とは異なる配列を有する12A7 CDRL2、及び
(f)配列番号7の配列、又は単一のアミノ酸置換により配列番号7とは異なる配列を有する12A7 CDRL3
からなる群から選択される少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含み、
(iii)配列番号29に対して少なくとも85%、90%、95%、98%、99%、又は100%同一の配列を有する重鎖可変領域を含み、
(iv)配列番号27に対して少なくとも85%、90%、95%、98%、99%、又は100%同一の配列を有する軽鎖可変領域配列を含み、又は
(v)(i)、(ii)、(iii)、又は(iv)の抗体と競合する抗体であり、且つ/又は
前記第2のモノクローナル抗体が、
(i)配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドに結合し、
(ii)(a)配列番号21の配列、又は単一のアミノ酸置換により配列番号21とは異なる配列を有する4B4 CDRH1、
(b)配列番号23の配列、又は単一のアミノ酸置換により配列番号23とは異なる配列を有する4B4 CDRH2、
(c)配列番号25の配列、又は単一のアミノ酸置換により配列番号25とは異なる配列を有する4B4 CDRH3、
(d)配列番号15の配列、又は単一のアミノ酸置換により配列番号15とは異なる配列を有する4B4 CDRL1、
(e)配列番号17の配列、又は単一のアミノ酸置換により配列番号17とは異なる配列を有する4B4 CDRL2、及び
(f)配列番号19の配列、又は単一のアミノ酸置換により配列番号19とは異なる配列を有する4B4 CDRL3
からなる群から選択される少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含み、
(iii)配列番号33に対して少なくとも85%、90%、95%、98%、99%、又は100%同一の配列を有する重鎖可変領域を含み、
(iv)配列番号31に対して少なくとも85%、90%、95%、98%、99%、又は100%同一の配列を有する軽鎖可変領域配列を含み、又は
(v)(i)、(ii)、(iii)、又は(iv)の抗体と競合する抗体である、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
(a)前記第1のモノクローナル抗体及び/又は前記第2のモノクローナル抗体が、0.001~1nMの範囲内のMCM5に対する親和性を有し、
(b)前記第1のモノクローナル抗体及び/又は前記第2のモノクローナル抗体が、Fab'2、F'(ab)2、Fv、単鎖抗体又はダイアボディであり、
(c)前記第1のモノクローナル抗体が、12A7 CDRH1、12A7 CDRH2、及び12A7 CDRH3を含み、
(d)前記第1のモノクローナル抗体が、12A7 CDRL1、12A7 CDRL2及び12A7 CDRL3を含み、
(e)前記第1のモノクローナル抗体が、配列番号9の配列を有する12A7 CDRH1、配列番号11の配列を有する12A7 CDRH2、及び配列番号13の配列を有する12A7 CDRH3を含み、
(f)前記第1のモノクローナル抗体が、配列番号3の配列を有する12A7 CDRL1、配列番号5の配列を有する12A7 CDRL2、及び配列番号7の配列を有する12A7 CDRL3を含み、
(g)前記第2のモノクローナル抗体が、4B4 CDRH1、4B4 CDRH2、及び4B4 CDRH3を含み、
(h)前記第2のモノクローナル抗体が、4B4 CDRL1、4B4 CDRL2及び4B4 CDRL3を含み、
(i)前記第2のモノクローナル抗体が、配列番号21の配列を有する4B4 CDRH1、配列番号23の配列を有する4B4 CDRH2、及び配列番号25の配列を有する4B4 CDRH3を含み、
(j)前記第2のモノクローナル抗体が、配列番号15の配列を有する4B4 CDRL1、配列番号17の配列を有する4B4 CDRL2、及び配列番号19の配列を有する4B4 CDRL3を有し、
(k)前記第1のモノクローナル抗体が、配列番号29に対して少なくとも95%同一の配列を有する重鎖可変領域を含み、
(l)前記第1のモノクローナル抗体が、配列番号29に対して少なくとも98%同一の配列を有する重鎖可変領域を含み、
(m)前記第1のモノクローナル抗体が、配列番号27に対して少なくとも95%同一の配列を有する軽鎖可変領域を含み、
(n)前記第1のモノクローナル抗体が、配列番号27に対して少なくとも98%同一の配列を有する軽鎖可変領域を含み、
(o)前記第2のモノクローナル抗体が、配列番号33に対して少なくとも95%同一の配列を有する重鎖可変領域を含み、
(p)前記第2のモノクローナル抗体が、配列番号33に対して少なくとも98%同一の配列を有する重鎖可変領域を含み、前記第2のモノクローナル抗体が、配列番号31に対して少なくとも95%同一の配列を有する軽鎖可変領域を含み、且つ/又は
(r)前記第2のモノクローナル抗体が、配列番号31に対して少なくとも98%同一の配列を有する軽鎖可変領域を含む、
請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
対象において前立腺がんの存在又は非存在を検出する方法における請求項1から15のいずれか一項において定義される溶解緩衝液の使用。
【請求項17】
対象において前立腺がんの存在又は非存在を検出する方法における請求項1から16のいずれか一項において定義される第1のモノクローナル抗体及び/又は請求項1から16のいずれか一項において定義される第2のモノクローナル抗体の使用。
【請求項18】
対象において前立腺がんの存在又は非存在を検出する方法におけるキットの使用であって、前記キットが、
(a)請求項1から17のいずれか一項において定義される溶解緩衝液、
(b)請求項1から17のいずれか一項において定義される第1のモノクローナル抗体、及び/又は
(c)請求項1から17のいずれか一項において定義される第2のモノクローナル抗体
を含む、
使用。
【請求項19】
(a)請求項1から18のいずれか一項において定義される溶解緩衝液、
(b)請求項1から18のいずれか一項において定義される第1のモノクローナル抗体、及び/又は
(c)請求項1から18のいずれか一項において定義される第2のモノクローナル抗体、
並びに
(d)対象において前立腺がんの存在又は非存在を検出する方法における前記溶解緩衝液及び/又は前記第1のモノクローナル抗体及び/又は前記第2のモノクローナル抗体の使用のための説明書
を含む、キット。
【請求項20】
前記前立腺がんがグレード4/5である、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法、使用又はキット。
【請求項21】
前記前立腺がんがグレード1~3である、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法、使用又はキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象において前立腺がんの存在又は非存在を検出する方法、及び前記方法における溶解緩衝液の使用に関する。本発明はまた、対象において前立腺がんの存在又は非存在を検出する方法における第1のモノクローナル抗体及び/又は第2のモノクローナル抗体の使用に関する。本発明はさらに、溶解緩衝液、第1のモノクローナル抗体及び/又は第2のモノクローナル抗体を含むキット、並びに対象において前立腺がんの存在又は非存在を検出する方法における前記キットの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
前立腺がんを初期ステージにおいて診断する方法に対する満たされていない医学的必要性がある。前立腺がんは男性において最も一般的ながんであり、英国において各年で47,000を超える新たな症例が診断されており、年間で約11,500人の死亡が前立腺がんにより引き起こされている。年間でおおよそ欧州において450,000、米国において210,000、世界中で1,250,000の新たな症例がある。Cancer Research UKは、英国男性において診断されたがんの全ての新たな症例の4分の1は前立腺がんであり、新たな診断の60%は70歳より上の男性であることを報告している。疾患の最も一般的な形態は腺癌である。5年生存率は英国においてほぼ80%である。前立腺又は乳がんを有する近親者を有する者は、疾患を発症するリスクがより高い。黒人男性は前立腺がんの増加したリスクを有する。農業用殺有害生物剤への曝露及び前立腺がんの発生率の間の関係性の可能性についてある程度の証拠がある。
【0003】
前立腺がんの症状は、前立腺の良性拡大により引き起こされる症状に類似しており、尿意切迫、排尿の困難又は疼痛、及びまれに、尿又は精液中の血液が挙げられる。しかしながら、多くの男性において疾患は、主に骨における有痛性転移形態となるまで無症候性のままである。
【0004】
処置は、腫瘍のステージ及びグレード並びに患者の全般的健康及び年齢に依存する。オプションとしては、積極的監視療法(active surveillance)、部分的又は根治的前立腺摘除術、精巣摘除術、ホルモン治療、及び放射線療法、例えば、近距離照射療が挙げられる。精巣摘除術及びホルモン治療は、腫瘍成長のために必須であるテストステロンの産生を低減又は排除する。
【0005】
前立腺がんの確定診断は多面的アプローチを要求する。前立腺がんのための現行のゴールドスタンダードの診断試験は生検材料の組織学的検査である。生検の決定は、年齢関連の血清PSAレベル及び/又は異常なデジタル直腸検査(DRE)に基づく。腺を経直腸的に触診して異常な形態について検査するDREもまた非特異的である。腺の形態を変更するには小さ過ぎる腫瘍は検出されず、異常な形態又は拡大は非悪性状態によっても引き起こされる。これは当該技術分野において問題となっている。前立腺の試料は一般的に、TRUS(経直腸超音波)ガイド針生検を使用して採取される。サンプリングされる腺の面積を最大化するために典型的には最大12の多数の針コアが採取される。手順は、外来診療部門において泌尿器科専門医により看護師又はヘルスケアアシスタントの補助と共に局所麻酔下で実行される。この手順は、患者にとっていくぶん有痛性であること、並びに患者を敗血症及び/又は出血のリスクに曝すことを含む欠点を抱えている。組織コアは試験室において悪性細胞の存在について顕微鏡により検査されるが、これは労働集約的であり、高度に訓練された細胞学者を要求する他に、ヒューマンエラーを受け易いという問題を有する。
【0006】
生検は侵襲的かつコストがかかることが認識され得る。泌尿器がん、例えば、前立腺がんの診断及び/又は監視のためのより費用効果の高い、信頼できる且つ/又は非侵襲的なツールに対する必要性が当該技術分野において存在する。前立腺がんに対する公知の代替的且つ/又はより低い侵襲性の診断手順は、特異的生物学的マーカー(「バイオマーカー」)の分析を伴う。したがって、前立腺がんを高い特異度及び感度で検出できる前立腺がん用のスクリーニングツールに対する現実的な満たされていない必要性がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、侵襲的な外科的手順の必要性なしに前立腺がんを早期検出するための方法、使用及びキットを提供する。本発明の方法は、精液試料を使用して行うことができ、したがって臨床試験室において使用するため及び/又はポイントオブケア応用のために好適である。さらには、本発明の方法は、複雑な処理ステップを要求しないので、実行が容易である。
【0008】
特に、本発明者らは、前立腺がんは、高い正確性で精液試料において直接的に容易に検出され得ることを実証した。これらの結果は、精液試料における前立腺がんの検出は、症候性集団における診断試験及び症候性集団内の前立腺がんを同定するためのスクリーニングツールの両方としての明確な潜在能力を有することを実証する。究極的に、これは、前立腺がんにおける生存を向上させることが公知であるより早期の診断及び処置を可能にする。
【0009】
そのため、第1の態様では、本発明は、対象において前立腺がんの存在又は非存在を検出する方法であって、前記対象から得られた精液試料を提供するステップ、及び少なくとも1つのバイオマーカーを検出するか、又は少なくとも1つのバイオマーカーの濃度を決定するステップを含む、方法を提供する。
【0010】
第2の態様では、本発明は、対象において前立腺がんの存在又は非存在を検出する方法における本発明の溶解緩衝液の使用を提供する。
【0011】
第3の態様では、本発明は、対象において前立腺がんの存在又は非存在を検出する方法における本発明の第1のモノクローナル抗体及び/又は本発明の第2のモノクローナル抗体の使用を提供する。
【0012】
第4の態様では、本発明は、対象において前立腺がんの存在又は非存在を検出する方法におけるキットの使用であって、前記キットが、
a)本発明の溶解緩衝液、
b)本発明の第1のモノクローナル抗体、及び/又は
c)本発明の第2のモノクローナル抗体
を含む、使用を提供する。
【0013】
第5の態様では、本発明は、
a)本発明の溶解緩衝液、
b)本発明の第1のモノクローナル抗体、及び/又は
c)本発明の第2のモノクローナル抗体、並びに
d)試料において前立腺がんの存在又は非存在を検出する方法における溶解緩衝液及び/又は第1のモノクローナル抗体及び/又は第2のモノクローナル抗体の使用のための説明書
を含む、キットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】通常患者と前立腺がん患者において精液試料から決定したMCM5濃度の箱ひげ図である。
図2】通常患者とグレード群ごとに分けた前立腺がん患者における精液試料から測定したMCM5濃度の箱ひげ図を示す。
図3-1】配列表である。
図3-2】図3-1の続きである。
図3-3】図3-2の続きである。
図3-4】図3-3の続きである。
図3-5】図3-4の続きである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
用語「含む(comprises)」(含む(comprise)、含むこと(comprising))は、当技術分野におけるそれの通常の意味をもつ、すなわち、その述べられた特徴又は特徴群が含まれるが、その用語は、いかなる他の述べられた特徴又は特徴群も、同様に存在するものから排除しないと理解されるべきである。例えば、界面活性剤を含む溶解緩衝剤は他の成分を含有し得る。
【0016】
用語「からなる(consists of)」もまた、当技術分野におけるそれの通常の意味をもつ、すなわち、その述べられた特徴又は特徴群が含まれ、さらなる特徴を除外すると理解されるべきである。例えば、界面活性剤からなる溶解緩衝剤は界面活性剤を含有し、かつ他の成分を含有しない。ポリソルベート80からなる界面活性剤を含む溶解緩衝剤は、界面活性剤以外の成分を含み得るが、溶解緩衝剤における唯一の界面活性剤がポリソルベート80である。
【0017】
「含む(comprises)」又は「含むこと(comprising)」が使用されるあらゆる実施形態について、本発明者らは、「からなる(consists of)」又は「からなること(consisting of)」が使用されるさらなる実施形態を見込む。したがって、「含む(comprises)」のあらゆる開示は「からなる(consists of)」の開示であると見なされるべきである。
【0018】
配列相同性/同一性
配列相同性はまた機能の類似性(すなわち、類似した化学的性質/機能を有するアミノ酸残基)の観点から考慮され得るが、本文書の関連において、配列同一性の観点から相同性を表現することが好ましい。
【0019】
配列比較は、目により、又はより通常には容易に利用できる配列比較プログラムの助けを借りて行うことができる。これらの公的及び商業的に利用可能なコンピュータプログラムは2つ以上の配列間のパーセント相同性(例えば、パーセント同一性)を計算することができる。
【0020】
パーセント同一性は連続する配列に対して計算され得、すなわち、一方の配列が他方の配列と整列され、一方の配列における各アミノ酸が他方の配列における対応するアミノ酸と、1残基ずつ直接比較される。これは「ギャップなし(ungapped)」アラインメントと呼ばれている。典型的には、そのようなギャップなしアラインメントは相対的に少ない数の残基(例えば、50個未満の連続するアミノ酸)に対してのみ行われる。より長い配列に対する比較について、ギャップスコアリングが、お互いに対して挿入(複数可)又は欠失(複数可)を有する関連配列における同一性レベルを正確に反映するように最適なアラインメントを生じるために使用される。そのようなアラインメントを実行するための適切なコンピュータプログラムはGCG Wisconsin Bestfitパッケージ(University of Wisconsin、U.S.A; Devereuxら、1984、Nucleic Acids Research 12:387)である。配列比較を行うことができる他のソフトウェアの例には、BLASTパッケージ、FASTA(Altschulら、1990、J. Mol. Biol. 215:403~410)及びGENEWORKS比較ツール一式が挙げられるが、それらに限定されない。
【0021】
典型的には、配列比較は参照配列の長さに対して実行される。例えば、ユーザーが、所定の配列が配列番号27と95%同一であるかどうかを決定したい場合に、配列番号27が参照配列になる。例えば、配列が配列番号27(参照配列の例)と少なくとも80%同一であるかどうかを評価するために、当業者は、配列番号27の長さに対してアラインメントを実行し、試験配列におけるいくつの位置が配列番号27のそれらと同一であるかを同定する。位置の少なくとも80%が同一である場合に、試験配列は配列番号27と少なくとも80%同一である。配列が配列番号27より短い場合に、ギャップ又は欠けている位置は非同一位置であると見なされるべきである。
【0022】
当業者は、2つの配列間の相同性又は同一性を決定するために利用できる種々のコンピュータプログラムを知っている。例として、配列の比較及び2つの配列間のパーセント同一性の決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。ある実施形態では、2つのアミノ酸又は核酸配列間のパーセント同一性は、Blosum 62マトリックス又はPAM250マトリックスのいずれか、並びに16、14、12、10、8、6、又は4のギャップ重み及び1、2、3、4、5、又は6の長さ重みを使用する、Accelrys GCGソフトウェアパッケージ(http://www.accelrys.com/products/gcg/で入手可能)内のGAPプログラムへ組み込まれているNeedleman及びWunsch(1970)アルゴリズムを使用して決定される。
【0023】
本発明を目的として、用語「断片」は、参照配列の連続する部分を指す。例えば、長さが50アミノ酸の配列番号27の断片は、配列番号27の50連続アミノ酸を指す。
【0024】
本出願の文脈では、同種アミノ酸配列は、参照配列と少なくとも40、50、60、70、80又は90%同一であるアミノ酸配列を含むものと考えられる。最も適切には、目的のバイオマーカーと少なくとも90%配列同一性を有するポリペプチドがそのバイオマーカーの存在を示すと解釈され、より適切には、そのアミノ酸レベルで95%又はより適切には98%同一であるポリペプチドがそのバイオマーカーの存在を示すと解釈される。適切には、前記比較は、目的のバイオマーカーの存在又は非存在を決定するためにアッセイされることになっているポリペプチド又は断片の少なくともその長さに対してなされる。最も適切には、比較は目的のポリペプチドの全長にわたってなされる。
【0025】
対象において前立腺がんの存在又は非存在を検出する方法
本発明は、対象において前立腺がんの存在又は非存在を検出する方法を提供する。
【0026】
典型的には、対象において前立腺がんが存在するかどうかを100%の精度で予測する診断方法は不可能である。したがって、「対象において前立腺がんの存在又は非存在を検出する」という表現は、対象において前立腺がんが存在又は非存在する可能性があるかどうかを決定することを指すものと理解することができる。前立腺がんが存在する可能性がある場合、対象は医療介入を検討したいと考えることができる。
【0027】
前立腺がん
本発明の目的において、「前立腺がん」という用語は、がん細胞が前立腺の組織に形成される状態を指す。一部の実施形態では、前立腺がんは、腺癌、上皮内がん、又は前立腺上皮内腫瘍である。
【0028】
前立腺がんは、退形成(例えば、不十分な細胞分化及び/又は健常細胞に関連する形態学的特徴の喪失)、侵襲性(すなわち、健常組織に拡散する能力)、転移性(すなわち、初期部位から異なる二次部位に拡散する能力)、及び/又はゲノム不安定性を特徴とし得る。
【0029】
一部の実施形態では、前立腺がんは悪性である。悪性前立腺がんの細胞は、退形成(例えば、不十分な細胞分化及び/又は健常細胞に関連する形態学的特徴の喪失)、侵襲性(すなわち、健常組織に拡散する能力)、転移性(すなわち、初期部位から異なる二次部位に拡散する能力)、及び/又はゲノム不安定性を特徴とし得る。
【0030】
一部の実施形態では、前立腺がんは低悪性度、例えばグレード1~3である。一部の実施形態では、前立腺がんは高悪性度、例えばグレード4/5である。本発明の方法を使用し、低悪性度の前立腺がん、例えばグレード4又は5の前立腺がんを検出することができる。本発明の方法を使用して、高悪性度の前立腺がん、例えばグレード1~3の前立腺がんを検出することができる。高悪性度の前立腺がんは、過度の細胞増殖率、典型的には長い細胞寿命及び不十分な細胞分化に関連している可能性がある。初期前立腺がんはより良好に検出され、本方法は低悪性度のがんの検出に使用することができるので有利である。がん生物学及び医学に使用される評点システムは、がん細胞をそれらの細胞分化の欠如に関して分類する。これは、がん細胞がそのがん細胞の起源であった組織に見出される健康な細胞と形態が異なる程度を反映する。評点システムは、特定のがんがどれくらい速く成長するかを予想され得る指標を提供するために使用することができる。
【0031】
典型的には、グリーソングレード分類システム(Gleason grading system)を使用して前立腺がんをグレード分類する。このシステムはがん医療において広く使用されている。しかし簡単に説明すると、前立腺がん試料のグリーソングレードを決定するためには、顕微鏡を使用して細胞形態を目視により検査し、細胞にどの程度異常が出現するかに基づいて2つの最も一般的な細胞タイプをグレード1~5にグレード分類することによって、試料にまずグリーソンスコアが割り当てられる。グレード1は、細胞が正常な前立腺細胞のように見えることを意味する。グレード5は、細胞が正常な前立腺細胞とは著しく異なって見えることを意味する。次いで、グリーソンスコアは、2つの最も一般的なグレードを合計することによって決定される。例えば、試料の細胞の最も一般的なグレードがグレード3であり、第2の最も一般的なグレードがグレード4である場合、この試料のグリーソンスコアは7になる。グリーソンスコアが高いほど、前立腺がんが急速に増殖し、より拡散する可能性が高くなることを示している。グリーソンスコアを使用し、以下に示すように前立腺がんをグリーソングレード群に割り当てることができる:
・ グレード1群:グリーソンスコア6以下(低悪性度のがん)
・ グレード2群:グリーソンスコア3+4=7(中悪性度のがん)
・ グレード3群:グリーソンスコア4+3=7(中悪性度のがん)
・ グレード4群:グリーソンスコア8(高悪性度のがん)
・ グレード5群:グリーソンスコア9~10(高悪性度のがん)。
【0032】
対象
対象は、好ましくは動物対象であり、さらにより好ましくはヒトである。しかし、一部の実施形態では、対象は非ヒト哺乳動物、例えば霊長類、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、マウス、ヒツジ、又はブタなどであり得る。
【0033】
対象は、好ましくは男性である。一部の実施形態では、対象は中年であり、例えば40~65歳、又は45歳~60歳である。一部の実施形態では、対象は高齢者、例えば少なくとも65、70、75、80、85、又は90歳である。
【0034】
一部の実施形態では、対象は前立腺がんに罹患している。一部の実施形態では、対象は前立腺がんが寛解している。一部の実施形態では、対象は前立腺がんを有することが疑われている。一部の実施形態では、対象は健常に見える。一部の実施形態では、対象は前立腺がんを発症するリスクがある。一部の実施形態では、対象は前立腺がんを発症する高いリスクを有する。
【0035】
対象が前立腺がんを発症するリスクが高いことを示す遺伝子マーカーを有していると以前に同定されている場合、対象は前立腺がんを発症するリスクがあるか、又は高いリスクを有する可能性がある。対象が婦人科がんの家族歴を有する場合、対象は前立腺がんを発症するリスクがあるか、又は発症するリスクが高い可能性がある。対象ががん、例えば非前立腺がんに罹患している場合、又は以前にがんであると診断されていた場合、対象は前立腺がんを発症するリスクがあるか、又は発症する高いリスクを有する可能性がある。
【0036】
一部の実施形態では、対象は前立腺がんに関連する1つ以上の症状に罹患している。前立腺がんに関連する症状としては、安定的な排尿の開始及び維持の困難、尿意切迫感、排尿時の痛み(排尿障害)、夜間排尿の増加(夜間頻尿)、排尿回数の増加、便通時の痛み、尿中の血液(血尿)、精液中の血液(血精液症)、便秘、腰痛、骨盤の痛み、及び/又は股関節の痛みが挙げられる。
【0037】
対象から得られた精液試料の提供
本発明の方法は、対象から得られた精液試料を提供することを含む。精液試料は、射精又は外科的精子採取によって得ることができる。好ましくは、精液試料は射精によって得られる。一部の実施形態では、精液試料は禁欲期間後に得られる。本出願の目的において、「禁欲期間」は、対象が射精していない期間(例えば、対象が自慰行為をしていないか、又は性交していない期間)である。必要に応じて、禁欲期間は少なくとも12時間、少なくとも1日、少なくとも3日、1週間未満、12時間~1週間、1日~1週間、又は3日~1週間である。
【0038】
バイオマーカー
本発明の方法は、少なくとも1つのバイオマーカーを検出するか、又は少なくとも1つのバイオマーカーの濃度を決定するステップを含む。生物学的マーカー、又はバイオマーカーは、生物学的状態、プロセス、事象、状態又は疾患を示すのに有用である血液又は他の体液又は組織において確認される分子である。バイオマーカーが、限定するものではないがDNA、RNA、染色体異常、タンパク質及びそれらの誘導体、又は代謝産物から構成され得ることは、当業者には自明である。一般的に、バイオマーカーとは、プロセス、事象又は状態の区別可能な生物学的指標又は生物学的に誘導された指標と考えることができる。一部の実施形態では、バイオマーカーは、生物学的体液、例えば精液におけるその発生、過剰発現又は過少発現が、がん、例えば前立腺がんの存在、進行、処置に対する応答又は重症度を反映し得る特定のタンパク質又はペプチドであり得る。
【0039】
したがって、「バイオマーカー」という用語には、翻訳後修飾されたポリペプチドを含む、同定されたタンパク質又は核酸の全ての生物学的に関連する形態が含まれる。例えば、バイオマーカーがポリペプチドである場合、マーカータンパク質は、グリコシル化、リン酸化、多量体、又は前駆体の形態で試料中に存在し得る。
【0040】
必要に応じて、バイオマーカーは、MCMタンパク質を含むか、又はそれからなる。MCMタンパク質2-7は、クロマチン上で形成し、かつその後のDNA複製のための必須の前提条件又はライセンシング因子である複製前複合体の部分を構成する。MCMタンパク質複合体は複製ヘリカーゼとして働き、したがって、DNA複製機構のコア構成要素である。MCMタンパク質は細胞周期のG0期からG1/S期への移行において上方制御され、細胞周期制御に活発に関与する。MCMタンパク質は、クロマチンの周囲に環状構造を形成する。
【0041】
ヒトMCM5遺伝子は22q13.1にマッピングされ、成熟MCM5タンパク質は、734個のアミノ酸からなる(配列番号35、UNIPROT P33992:ヒトDNA複製ライセンシング因子MCM5)。「MCM5」という用語は、配列番号35のポリペプチド、又は配列番号35に対して85%、90%、95%、98%、若しくは100%同一であるポリペプチドを指す。
【0042】
少なくとも1つのバイオマーカーの検出又は少なくとも1つのバイオマーカーの濃度の決定
当業者は、少なくとも1つのバイオマーカーを検出するか、又は少なくとも1つのバイオマーカーの濃度を決定するために当技術分野において知られた任意の適切な技術を使用し得る。例えば、少なくとも1つのバイオマーカーは、リガンド(複数可)との相互作用、1-D若しくは2-Dゲルに基づいた分析システム、液体クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィーとMSMS、ICAT(登録商標)若しくはiTRAQ(登録商標)を含む任意の質量分析技術との組合せ、凝集テスト、薄層クロマトグラフィー、NMR分光法、サンドイッチイムノアッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RAI)、酵素イムノアッセイ(EIA)、ラテラルフロー/イムノクロマトグラフィストリップテスト、ウェスタンブロッティング、免疫沈降法、金粒子、銀粒子、若しくはラテックス粒子、及び磁性粒子、若しくはQ-dotを使用することを含む粒子に基づいたイムノアッセイ、又は当技術分野において知られた任意の他の適切な技術により決定され得る。
【0043】
本発明の方法の一部の実施形態では、少なくとも1つのバイオマーカーの濃度を決定すること、又はバイオマーカーの濃度が事前設定したカットオフよりも高いかどうかを決定することがELISAアッセイを使用して実施される。さらなる実施形態では、ELISAアッセイはサンドイッチELISAアッセイである。サンドイッチELISAアッセイは、検出されるべき又はその濃度が決定されることになっている少なくとも1つのバイオマーカーを、プレートにすでに結合した「捕捉抗体」を使用して捕捉するステップ、及び少なくとも1つのバイオマーカーのどれくらいが捕捉されているかを「検出抗体」を使用して検出するステップを含む。検出抗体は、標識、例えば、酵素HRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)と予めコンジュゲートされ得る。その後、ELISAプレートは、標識検出抗体が、捕捉された少なくとも1つのバイオマーカーと結合するように、標識検出抗体に曝露され得る。標識検出抗体への曝露後、ELISAプレートは、いかなる過剰の結合していない標識検出抗体も除去するために洗浄されるべきである。その後、洗浄されたプレートは、性質が(検出抗体の)標識によって測定可能な様式で変化する作用物質に曝露することができる。次いで、検出抗体の濃度が決定され得るか、又はバイオマーカーが検出され得る。例えば、検出抗体が、例えばHRPとのコンジュゲーションにより、標識されている場合に、ELISAプレートは、3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(TMB)基質に曝露され得る。その後、検出抗体の濃度、及びしたがって、最初の非侵襲的試料中の少なくとも1つのバイオマーカーの濃度は、TMBの有色生成物への変換に対応する色変化の定量化により決定され得る。「捕捉抗体」は、本明細書に記載した第1のモノクローナル抗体又は第2のモノクローナル抗体であり得る。同様に、「検出抗体」は、本明細書に記載した第1のモノクローナル抗体又は第2のモノクローナル抗体であり得る。
【0044】
少なくとも1つのバイオマーカーを検出することは、定性的ステップであってもよい。例えば、少なくとも1つのバイオマーカーを検出するステップは、前立腺がんにおける少なくとも1つのバイオマーカーの濃度の数値を決定することなく、例えばバイオマーカーの濃度が事前設定したカットオフ又は参照よりも高いか低いかを単に決定することによって実施することができる。必要に応じて、少なくとも1つのバイオマーカーを検出することは、バイオマーカーの濃度が事前設定したカットオフよりも高いかどうかを決定することを含む。例えば、定性ELISAアッセイでは、発色生成物(例えば、検出抗体に結合した酵素によって生成された発色生成物)の強度を閾値の色の強度と比較することができる。この実施形態では、有色生成物の強度は、少なくとも1つのバイオマーカーの濃度についての数値を決定する必要なしに、少なくとも1つのバイオマーカーの濃度を示している。このタイプの定性ELISAで使用される参照は、事前設定したカットオフに対応する発色生成物のすでに決定された閾値強度であり得る。
【0045】
一部の実施形態では、少なくとも1つのバイオマーカーはMCMタンパク質であり、MCMタンパク質の濃度を決定するステップがELISAアッセイを行うことを含む。一部の実施形態では、少なくとも1つのバイオマーカーはMCMタンパク質であり、MCMタンパク質の濃度を決定するステップがサンドイッチELISAアッセイを行うことを含む。一部の実施形態では、少なくとも1つのバイオマーカーはMCM5タンパク質であり、MCM5タンパク質の濃度を決定するステップがELISAアッセイを行うことを含む。一部の実施形態では、バイオマーカーはMCM5タンパク質であり、MCM5タンパク質の濃度を決定するステップがサンドイッチELISAアッセイを行うことを含む。
【0046】
バイオマーカーの濃度が事前設定した(予め定義された)カットオフよりも高いかどうかの決定
必要に応じて、少なくとも1つのバイオマーカーを検出することは、バイオマーカーの濃度が事前設定した(予め定義された)カットオフよりも高いかどうかを決定することを含む。バイオマーカーの濃度が事前設定したカットオフよりも高い場合に前立腺がんが存在する可能性がある。
【0047】
少なくとも1つのバイオマーカーの濃度と事前設定したカットオフとの間に統計的に有意な差がある場合、少なくとも1つのバイオマーカーの濃度はカットオフよりも高いと言うことができる。例えば、前立腺がんは、少なくとも1つのバイオマーカーの濃度が事前設定したカットオフよりも少なくとも1標準偏差、少なくとも2標準偏差、少なくとも3標準偏差、又は少なくとも4標準偏差高い場合に存在する可能性がある。
【0048】
必要に応じて、上記のように、少なくとも1つのバイオマーカーを検出することは定性ステップであってもよく、すなわち、前立腺がんにおいて少なくとも1つのバイオマーカーの濃度の数値を決定することなく実施することができる。
【0049】
事前設定した(予め定義された)カットオフは、40pg/mL~100pg/mL、50pg/mL~75pg/mL、60pg/mL~70pg/mL、又は約65pg/mLであり得る。
【0050】
少なくとも1つのバイオマーカーの濃度の参照との比較
一部の実施形態では、少なくとも1つのバイオマーカーの濃度が参照と比較され、少なくとも1つのバイオマーカーの濃度が参照と比較して異常であるか、又は参照よりも高い場合に前立腺がんが存在する可能性がある。
【0051】
少なくとも1つのバイオマーカーの濃度と参照との間に統計的有意差がある場合に、少なくとも1つのバイオマーカーの濃度は参照と比較して異常であると言われ得る。例えば、少なくとも1つのバイオマーカーの濃度は、参照よりも有意に低い場合、異常である。あるいは、少なくとも1つのバイオマーカーの濃度は、それが参照より有意に高い場合に、異常である。本発明の一実施形態では、少なくとも1つのバイオマーカーの濃度が参照よりも高い場合に前立腺がんが存在する可能性がある。例えば、参照が少なくとも1つのバイオマーカーの平均濃度である場合、少なくとも1つのバイオマーカーの濃度が参照より少なくとも1標準偏差、少なくとも2標準偏差、少なくとも3標準偏差、又は少なくとも4標準偏差より高い場合に前立腺がんが存在する可能性がある。
【0052】
適切には、参照は、1名以上の健康な個体から得られた精液試料について決定した少なくとも1つのバイオマーカーの濃度であり得る。健康な個体は、現在前立腺がんに罹患していない個体である。例えば、健康な個体は、前立腺がんに罹患したことがない個体、又は現在前立腺がんの症状を有していない個体であり得る。
【0053】
参照が1名以上の健康な個体から調製した試料について決定された少なくとも1つのバイオマーカーの濃度である場合、参照は、1名の健康な個体から得られた複数の試料について決定された少なくとも1つのバイオマーカーの平均濃度であってもよい。あるいは、参照は、複数の健康な個体から調製された複数の試料について決定された少なくとも1つのバイオマーカーの平均濃度であり得る。この関連において、「1個以上の試料」は、少なくとも10個、100個、500個、1000個、10000個、100000個、又は1000000個の試料であり得る。
【0054】
一実施形態では、参照は、少なくとも1つのバイオマーカーを検出すること、又は本発明の方法で得られた精液試料から、例えば前立腺がんの存在若しくは非存在を検出する本発明の方法の対象となる精液試料から放出される少なくとも1つのバイオマーカーの濃度を決定することと並行して、1名以上の健康な個体から調製された1つ以上の試料から決定された少なくとも1つのバイオマーカーの平均濃度であり得る。
【0055】
別の実施形態では、参照は、健康な個体から調製された1個以上の試料について以前決定された少なくとも1つのバイオマーカーの平均濃度であり得る。そのような実施形態では、数値比較は、本発明で得られた精液試料について決定された少なくとも1つのバイオマーカーの濃度を参照と比較することにより行うことができる。これによって、対象の精液試料を分析するたびに並行して参照を決定することにより分析を複製させる必要がなくなる。
【0056】
適切には、参照は、例えば年齢によって、民族的背景によって、又は当技術分野で周知の他のそのような判断参照によって、分析しようとする対象とマッチさせることができる。例えば、参照は、適切には、特定の患者サブグループ、例えば高齢の対象、又は前立腺がんの素因などの既往歴のある対象にマッチさせることができる。
【0057】
適切には、参照を導き出すために使用される試料は、本発明の方法で得られた試料と同じ方法で得られたものである。例えば、本発明の方法で得られた試料が5日間の禁欲後に得られた精液試料である場合、参照は明らかに健康な個体から5日間の禁欲後に得られた精液試料であり得る。
【0058】
一部の実施形態では、決定された少なくとも1つのバイオマーカーの濃度は、同じ対象から得られた精液試料から以前に決定された少なくとも1つのバイオマーカーの濃度と比較することができる。これらの実施形態では、少なくとも1つのバイオマーカーの以前決定された濃度は参照として使用される。これは、対象における再発の可能性をモニターすることにおいて有益であり得、その再発の可能性は、次には、対象の処置の経過及び/又は有効性をモニターすることにおいて有益であり得る。
【0059】
前立腺がんの診断
本方法は前立腺がんを診断する方法であり得、また本方法はバイオマーカーの濃度が事前設定したカットオフよりも高い場合に前立腺がんを有するとして対象を診断するステップをさらに含み得る。本方法は前立腺がんを診断する方法であり得、また本方法は少なくとも1つのバイオマーカーの濃度が参照よりも高い場合に前立腺がんを有するとして対象を診断するステップをさらに含み得る。
【0060】
前立腺がんを有するとして対象が診断された場合に、本方法は前立腺がんに対し対象を治療するさらなるステップを含み得る。例えば、本方法は、根治的前立腺切除術(前立腺を除去する手術)、外部ビーム放射線療法、永久シード線源近距離照射療法(permanent seed brachytherapy)、ホルモン療法、高線量率近距離照射療法、高強度集束超音波、凍結療法、化学療法、又は前立腺がん治療薬、例えばアビラテロン、エンザルタミド、カバジタキセル、ドセタキセル、ビスホスホネート、又はラジウム-223の投与を使用して対象を処置することを含み得る。
【0061】
感度及び特異度
本発明の方法は、前立腺がんを高い特異度及び高い感度で検出することができる。医療診断の分野において、及び本明細書で使用される場合、用語「感度」(真陽性率とも呼ばれる)は、陽性として正しく同定されている、実際の陽性者に占める割合の尺度を指す。換言すれば、診断検査の感度は、真陽性者、すなわち、疾患を有すると正しく同定された個体の数を、検査集団におけるその疾患を有する全ての個体(すなわち、真陽性結果と偽陰性結果の合計)に占める割合として表現され得る。したがって、高感度診断検査は、その疾患を有する個体をめったに誤認しないため、望ましい。これは、高感度検査により得られた陰性結果が、その疾患を除外する見込みが高いことを意味する。
【0062】
医療診断の分野において、及び本明細書で使用される場合、用語「特異度」(真陰性率とも呼ばれる)は、陰性として正しく同定されている、実際の陰性者に占める割合の尺度を指す。換言すれば、診断検査の特異度は、真陰性者(すなわち、疾患を有しないと正しく同定された健康な個体)の数を、検査集団における全ての健康な個体(すなわち、真陰性結果と偽陽性結果の合計)に占める割合として表現され得る。したがって、高特異度診断検査は、健康な個体をめったに誤認しないため、望ましい。これは、高特異度検査により得られた陽性結果が、その疾患を確定する見込みが高いことを意味する。
【0063】
医療診断の分野において、及び本明細書で使用される場合、用語「陽性適中率(PPV)」は、真陽性結果である、診断検査により生じた全ての陽性結果に占める割合を指す。言い換えれば、PPVは、真陽性結果と偽陽性結果の合計で割った真陽性結果の数として定義することができる。医療診断の分野において、及び本明細書で使用される場合、用語「陰性適中率(NPV)」は、真陰性結果である、診断検査により生じた全ての陰性結果に占める割合を指す。言い換えれば、NPVは、真陰性結果と偽陰性結果の合計で割った真陰性結果の数として定義することができる。
【0064】
医療診断の分野において、及び本明細書で使用される場合、「受診者動作特性(ROC)曲線」は、全ての可能なカットオフ値についての、偽陽性率(1-特異度)に対して真陽性率(感度)のプロットを指す。医療診断の分野において、及び本明細書で使用される場合、「ヨーデン指標」は、ROC曲線と偶然(chance)の線(45度線)との間の距離が最も高いカットオフポイントを指す。これらの用語は当技術分野において及び当業者にとってよく知られている。
【0065】
方法の特異度及び/又は感度は、陽性試料であることがわかっている試料(例えば、前立腺がんを有する患者由来の試料)及び/又は陰性試料であることがわかっている試料(例えば、健康な個体由来の試料)に前記方法を行うことにより決定され得る。このように、その方法が既知の陽性試料を正しく同定する程度(すなわち、その方法の感度/真陽性率)及び/又は既知の陰性試料を正しく同定する程度(すなわち、その方法の特異度/真陰性率)を決定することができる。
【0066】
必要に応じて、本発明の方法は、40%より高い、50%より高い、60%より高い、40%~100%、50%~100%、60%~100%、又は約61%の感度を有する。必要に応じて、本発明の方法は、70%より高い、75%より高い、70%~100%、75%~100%、又は約79%の特異度を有する。必要に応じて、本方法は、60%より高い、70%より高い、75%より高い、60%~100%、70%~100%、75%~100%、又は約78%の陽性予測値(PPV)を有する。必要に応じて、本方法は、55%より高い、60%より高い、55%~100%、60%~100%、又は約63%の陰性予測値(NPV)を有する。必要に応じて、本発明の方法は、60%より高い感度、75%より高い特異度、75%より高いPPV及び60%より高いNPVを有する。必要に応じて、本発明の方法は、50%~100%の感度、75%~100%の特異度、75%~100%のPPV、及び60%~100%のNPVを有する。
【0067】
少なくとも1つのバイオマーカーを検出することが、バイオマーカーの濃度が事前設定したカットオフと比較して異常であるかどうかを決定することを含む実施形態では、事前設定したカットオフの値は、本方法の感度及び特異度に影響を及ぼす。高い事前設定されたカットオフが使用される場合、特異度は増加するが感度は低下する。好ましくは、選択される事前設定したカットオフは良好な感度及び特異度のバランスを達成するが、高い感度又は高い特異度が特定の適用に対して重要であるかどうかに応じて、使用者は事前設定したカットオフを変更したいと思う場合がある。
【0068】
必要に応じて、本発明の方法は、65pg/mlの事前設定したカットオフを使用し、40%より高い、50%より高い、60%より高い、40%~100%、50%~100%、60%~100%、又は約61%の感度を有する。必要に応じて、本方法は、65pg/mLの事前設定したカットオフを使用し、70%より高い、75%より高い、70%~100%、75%~100%、又は約79%の特異度を有する。必要に応じて、本方法は、65pg/mLの事前設定したカットオフを使用し、60%より高い、70%より高い、75%より高い、60%~100%、70%~100%、75%~100%、又は約78%の陽性予測値(PPV)を有する。必要に応じて、本方法は、65pg/mLの事前設定したカットオフを使用し、55%より高い、60%より高い、55%~100%、60%~100%、又は約63%の陰性予測値(NPV)を有する。必要に応じて、本発明の方法は、65pg/mLの事前設定したカットオフを使用し、50%~100%の感度、75%~100%の特異度、75%~100%のPPV、及び60%~100%のNPVを有する。
【0069】
本出願は、前立腺がんの非存在の存在が、尿試料を使用するアッセイと比較して、より正確に(例えば、より高い感度又は特異度で)決定され得ることを実証している。したがって、必要に応じて、本方法は、尿試料を使用して実施される同等の方法よりも高い感度、特異度、NPV及び/又はPPVを有し得る。必要に応じて、本方法は、尿試料を使用して実施される同等の方法よりも高い感度及び特異度を有する。必要に応じて、本方法は、尿試料を使用して実施される同等の方法よりも高い感度及びNPVを有する。必要に応じて、本方法は、尿試料を使用して実施される同等の方法よりも高い感度及びPPVを有する。必要に応じて、本方法は、尿試料を使用して実施される同等の方法よりも高い特異度及びNPVを有する。必要に応じて、本方法は、尿試料を使用して実施される同等の方法よりも高い特異度及びPPVを有する。必要に応じて、本方法は、尿試料を使用して実施される同等の方法よりも高いNPV及びPPVを有する。必要に応じて、本方法は、尿試料を使用して実施される同等の方法よりも高い感度、特異度、NPV及びPPVを有する。必要に応じて、尿試料を使用する同等の方法は、3pg/mLのカットオフ値を使用する。
【0070】
精液試料中の細胞から少なくとも1つのバイオマーカーを放出させる精液試料の処理
前立腺の正常な上皮細胞は、完全に分化しているのでMCM5を発現せず、したがって、前立腺分泌物に排出される上皮細胞はMCM5を含んでいない。しかし、腫瘍の存在下では、MCM5を発現する未分化の未成熟増殖細胞が前立腺を覆う表面上皮に存在し、これらのMCM5発現細胞は前立腺の分泌物中に排出され得る。したがって、射精時に、精液中にMCM5が存在することは前立腺がんを示唆している。このため、精液試料中の前立腺がんの非存在の存在を検出するために、精液中の上皮細胞からMCM5を放出させて、例えば抗体ベースのELISAを使用して検出することができることは有利である。これらの理由のため、本方法は、精液試料を処理して、精液試料中の細胞から少なくとも1つのバイオマーカーを放出させるステップを含み得る。精液試料を処理して、少なくとも1つのバイオマーカーを放出させるステップは、精液試料中の細胞から少なくとも1つのバイオマーカーを放出させることができる溶解緩衝液に精液試料を曝露することを含み得る。必要に応じて、精液試料中の細胞から少なくとも1つのバイオマーカーを放出させることができる溶解緩衝液に精液試料を曝露することは、精液試料を遠心分離することによって得られる精液試料中の細胞のペレットに対して実施される。必要に応じて、精液試料中の細胞から少なくとも1つのバイオマーカーを放出させることができる溶解緩衝液に精液試料を曝露することは、精液試料を遠心分離することによって得られる上清試料に対して実施される。好ましくは、精液試料を処理して精液試料中の細胞から少なくとも1つのバイオマーカーを放出させるステップは、少なくとも1つのバイオマーカーを検出するか、又は少なくとも1つのバイオマーカーの濃度を決定するステップの前に実施される。必要に応じて、精液試料中の細胞から少なくとも1つのバイオマーカーを放出させることができる溶解緩衝液に精液試料を曝露することには、細胞がフィルターに捕捉されるように、細胞を捕捉させるためのフィルターに非侵襲的試料を通過させること、捕捉された細胞が溶解緩衝液に曝露されるように、溶解緩衝液をフィルターに通過させること、及び/又は溶解緩衝液により細胞が少なくとも1つのバイオマーカーを放出するように、所定時間フィルターをインキュベートすることが含まれる。
【0071】
溶解緩衝剤は一般的に、細胞を溶解することができる緩衝剤である。細胞から1つ以上のバイオマーカーを放出させることに加えて、溶解緩衝剤は、その後の分析に使用される方法と適合性であり得る。例えば、分析方法が二重抗体サンドイッチELISAである場合、溶解緩衝剤はマイクロタイタープレートの表面と結合した捕捉抗体を分解しないことが望ましくあり得る。溶解緩衝剤は、排他的ではないが、一般的に、1つ以上の界面活性剤(表面活性物質としても知られている)、1つ以上の塩、及び緩衝剤を含む。場合によっては、これらの成分の濃度は溶解緩衝剤の効力に影響し得る。
【0072】
一実施形態では、緩衝液は、精液試料中の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は実質的に全ての細胞を溶解することができる場合に、「溶解緩衝液」であると言うことができる。一実施形態では、緩衝液は、非侵襲的試料中の細胞が溶解緩衝液に少なくとも1分、5分、10分、20分、30分、60分、1時間、2時間、6時間、12時間、24時間、又は一晩曝露された場合に、精液試料中の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は実質的に全ての細胞を溶解することができる場合、「溶解緩衝液」であると言うことができる。一実施形態では、緩衝液は、非侵襲的試料中の細胞が溶解緩衝液に4℃、20℃又は室温で少なくとも1分、5分、10分、20分、30分、60分、1時間、2時間、6時間、12時間、24時間、又は一晩曝露された場合に、精液試料中の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は実質的に全ての細胞を溶解することができる場合、「溶解緩衝液」であると言うことができる。
【0073】
一実施形態では、溶解緩衝液は、精液試料中の細胞から少なくとも1つのバイオマーカー、例えばMCMタンパク質又はMCM5を放出させることができる。溶解緩衝液は、25mMのTris pH7.6、150mMの塩化ナトリウム、1%のデオキシコール酸ナトリウム、0.1%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1%のTriton-X 100を含む緩衝液を使用した場合に放出されるバイオマーカー(例えばMCM5)の量が40%、50%、60%、70%、又は80%量よりも多い場合、「精液試料中の細胞からバイオマーカーを放出させることができる」と考えられる。アッセイで使用される抗体は、バイオマーカーに結合する抗体であるものとする。例えば、バイオマーカーがMCM5である場合、MCM5に結合する第1のモノクローナル抗体及び/又は第2のモノクローナル抗体を使用することができる。好ましくは、12A7抗体及び4B4抗体が使用される。
【0074】
必要に応じて、溶解緩衝液は精液試料中の細胞からMCM5を放出させることができ、かつMCM5タンパク質を変性させない。MCM5の少なくとも40%、50%、60%、70%、又は80%が無傷である場合、溶解緩衝液はMCM5タンパク質を変性させない。MCM5タンパク質が無傷であるか、又は変性されているかどうかは、本明細書において定義される抗体12A7及び4B4にMCM5を曝露することによって決定することができる。理論に拘束されるものではないが、抗体12A7及び4B4は無傷(すなわち非変性状態)のMCM5に結合すると考えられるため、抗体12A7及び4B4を使用したELISAアッセイを使用して、変性されているMCM5の割合を決定することができる。
【0075】
必要に応じて、溶解緩衝液は抗体を変性させない。これは、少なくとも1つのバイオマーカーを検出するか、又は少なくとも1つのバイオマーカーの濃度を決定することが、例えばELISAアッセイにより抗体を使用して検出することを含む場合に有用であり得る。溶解緩衝液が抗体を変性させない場合には、少なくとも1つのバイオマーカーを検出するか、又は少なくとも1つのバイオマーカーの濃度を決定するステップの前に抗体が除去される必要はない。溶解緩衝液に曝露した後の抗体の活性が、溶解緩衝液に曝露する前の抗体の活性の少なくとも40%、50%、60%、70%、又は80%である場合、溶解緩衝液は抗体を変性させないと考えることができる。抗体の活性は、ELISAアッセイ、例えば実施例1に記載されたものを使用して試験され得る。
【0076】
一部の実施形態では、溶解緩衝剤は界面活性剤(表面活性物質とも呼ばれる)を含む。一般的に、界面活性剤は、細胞壁を破壊することが知られている化合物である。界面活性剤は、疎水性領域と親水性領域の両方を有する両親媒性である。適切な界面活性剤は当業者によく知られている。本発明による溶解緩衝液で適切に使用され得る界面活性剤の例としては、限定するものではないが、Triton X-100、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)及びデオキシコール酸ナトリウムが挙げられる。必要に応じて、界面活性剤はTriton X-100を含む。必要に応じて、界面活性剤はデオキシコール酸ナトリウムを含むか又はそれからなる。必要に応じて、界面活性剤はドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含むか又はそれからなる。必要に応じて、界面活性剤はTriton X-100、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)及びデオキシコール酸ナトリウムを含む。必要に応じて、界面活性剤は、0.01%~25%、0.01%~10%、0.05%~5%、0.1%~2%、0.5%~2%、0.75%~1.25%、又は約1%の濃度でTriton X-100を含む。必要に応じて、界面活性剤は、0.1%~20%、0.1~10%、0.1~5%、0.5%~5%、0.5%~2.5%、0.75%~2.5%、0.75%~1.25%、又は約1%の濃度のデオキシコール酸ナトリウムを含むか又はそれからなる。必要に応じて、界面活性剤は、0.001%~10%、0.01%~5%、0.05%~5%、0.01%~1%、0.05%~1%、0.05%~0.5%、0.075%~0.25%、又は約0.1%の濃度のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含むか又はそれからなる。必要に応じて、界面活性剤は、0.5%~2%のTriton X-100、0.5%~2%のデオキシコール酸ナトリウム、及び0.05%~0.5%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)からなる。
【0077】
一部の実施形態では、溶解緩衝液は緩衝剤成分を含む。緩衝剤成分は、溶解緩衝液のpHを、2.0pH単位、1.5pH単位又は1.0pH単位未満の変動pHで維持する任意の成分であると考えることができる。緩衝剤成分は、pH4~pH9、pH5~pH8.5、pH6~pH8、pH6.5~pH8、pH7~pH8、pH7.3~pH7.9、pH7.4~pH7.8、pH7.5~pH7.7、若しくは約pH7.6のpHを有し得る、及び/又は溶解緩衝液のpHをpH4~pH9、pH5~pH8.5、pH6~pH8、pH6.5~pH8、pH7~pH8、pH7.3~pH7.9、pH7.4~pH7.8、pH7.5~pH7.7、若しくは約pH7.6に維持する。例えば、緩衝剤成分は、好ましくはpH7.4~pH7.8のpHを有する。
【0078】
本発明による溶解緩衝液で適切に使用することができる緩衝液の例はTrisである。必要に応じて、緩衝剤成分はTrisを含むか又はTrisからなる。必要に応じて、緩衝剤成分は、1mMより高い、1mM~350mM、5~200mM、5~100mM、5~50mM、5mM~40mM、5mM~35mM、10mM~35mM、15mM~35mM、15mM~30mM、20mM~30mM、又は約25mMの濃度でTrisを含むか又はそれからなる。緩衝剤成分は、15mM~35mMの濃度のTrisからなり得る。
【0079】
一部の実施形態では、溶解緩衝剤は塩を含む。様々な塩が当業者によく知られている。一部の実施形態では、塩が、特定のレベルのイオン強度を与えるように溶解緩衝剤に加えられる。本発明による溶解緩衝液で適切に使用することができる塩の例は、塩化ナトリウムである。必要に応じて、溶解緩衝液は10mM~350mM、20mM~300mM、50mM~250mM、100mM~250、100mM~200mM、125mM~175mM、又は約150mMの濃度で塩化ナトリウムを含む。必要に応じて、溶解緩衝液は100mM~200mMの濃度で塩化ナトリウムを含む。
【0080】
必要に応じて、溶解緩衝剤は、
(i)1mM~100mMのTris、
(ii)50mM~300mMの塩化ナトリウム、
(iii)0.1%~5%のデオキシコール酸ナトリウム、
(iv)0.01%~1%のドデシル硫酸ナトリウム、及び/又は
(v)0.1%~5%のTriton-X100
を含む。
【0081】
必要に応じて、溶解緩衝剤は、
(i)10mM~40mMのTris、
(ii)100mM~200mMの塩化ナトリウム
(iii)0.5%~2%のデオキシコール酸ナトリウム、
(iv)0.05%~0.5%のドデシル硫酸ナトリウム、及び/又は
(v)0.5%~2%のTriton-X100
を含む。
【0082】
必要に応じて、溶解緩衝剤は、
(i)約25mMのTris、
(ii)約150mMの塩化ナトリウム、
(iii)約1%のデオキシコール酸ナトリウム、
(iv)約0.1%のドデシル硫酸ナトリウム、及び/又は
(v)約1%のTriton-X100
を含む。
【0083】
抗体
少なくとも1つのバイオマーカーを検出するか、又は少なくとも1つのバイオマーカーの濃度を決定するステップは、
精液試料を第1のモノクローナル抗体及び/又は第2のモノクローナル抗体に曝露すること、並びに、
第1のモノクローナル抗体及び/若しくは第2のモノクローナル抗体に結合した少なくとも1つのバイオマーカーを検出するか、又は第1のモノクローナル抗体及び/若しくは第2のモノクローナル抗体に結合した少なくとも1つのバイオマーカーの濃度を決定すること
を含み得る。
【0084】
用語「抗体」は、天然に存在する形、又は組換え抗体、例えば単鎖抗体、キメラ抗体、若しくはヒト化抗体を指し得る。用語「抗体(antibody)」及び「抗体(antibodies)」はまた、標的タンパク質、例えばMCM5のようなMCMタンパク質と結合することができる抗体の断片を包含すると見なされ得る。そのような断片には、Fab'2、F'(ab)2、Fv、単鎖抗体、又はダイアボディが挙げられ得る。抗体は、(断片よりむしろ)天然に存在する完全長の抗体であり得る。さらなる実施形態では、抗体はヒト化抗体ではない。
【0085】
一般的に、抗体は2つの重鎖及び2つの軽鎖から形成される。各重鎖は重鎖定常領域(CH)及び重鎖可変領域(VH)で構成される。同様に、各軽鎖は軽鎖定常領域(CL)及び軽鎖可変領域(VL)から構成される。VH及びVL領域は相補性決定領域(CDR)を含む。CDRは主に、標的タンパク質と特異的に結合することを担う。
【0086】
目的のバイオマーカータンパク質、例えばMCM5と結合する抗体を開発することは十分、当業者の能力の範囲内である。これは、哺乳動物、例えばマウス、ウサギ、又はモルモットをバイオマーカータンパク質、例えばMCM5で免疫することにより行われ得る。アジュバント、例えばフロインドの完全アジュバントを含むことは有益であり得る。免疫された哺乳動物の脾臓細胞を取り出し、骨髄腫細胞と融合させて、適切な条件を前提として不死であり、かつ抗体を分泌するハイブリドーマ株を形成する。ハイブリドーマは単一クローンへ分離され、各クローンにより分泌された抗体は、バイオマーカータンパク質(例えば、MCM5)とのそれらの結合能力について評価される。
【0087】
第1のモノクローナル抗体及び第2のモノクローナル抗体
本発明の方法の一部の実施形態では、精液試料は、第1のモノクローナル抗体及び/又は第2のモノクローナル抗体に曝露される。上記で論じられているように、そのような実施形態は、本明細書に記載された第1のモノクローナル抗体及び/又は本明細書に記載された第2のモノクローナル抗体に精液試料を曝露することを含むELISAアッセイ又はサンドイッチELISAアッセイを行うことを含み得る。一実施形態では、第1のモノクローナル抗体及び/又は第2のモノクローナル抗体は、MCM5に結合する。好ましくは、第1のモノクローナル抗体及び/又は第2のモノクローナル抗体は、MCM5に特異的に結合する。好ましくは、第1のモノクローナル抗体は配列番号1と結合する。好ましくは、第2のモノクローナル抗体は配列番号2と結合する。
【0088】
一部の実施形態では、第1のモノクローナル抗体又は第2のモノクローナル抗体はMCM5のエピトープ(断片)(例えば、配列番号1又は配列番号2)と結合する。したがって、用語「MCM5と結合する抗体」は、MCM5の単一のエピトープ、例えば配列番号1又は配列番号2のみと結合する抗体を指す。
【0089】
本発明を目的として、用語「結合親和性」は、抗体のそれの標的と結合する能力を指す。本発明を目的として、用語「特異的に結合する」は、標的、例えばMCM5と、別の非標的分子との結合についてのそれの結合親和性の少なくとも2倍、10倍、50倍、又は100倍である結合親和性で結合する抗体を指す。ある実施形態では、非標的分子は、MCM5以外のMCMタンパク質、例えばMCM2である。好ましくは、第1のモノクローナル抗体及び/又は第2のモノクローナル抗体は、MCMタンパク質、必要に応じてMCM5と、別の非標的分子との結合についてのそれの結合親和性の少なくとも2倍、10倍、50倍、又は100倍である結合親和性で結合する能力がある。さらにより好ましくは、第1のモノクローナル抗体及び/又は第2のモノクローナル抗体は、配列番号1(例えば、第1のモノクローナル抗体に関して)又は配列番号2(例えば、第2のモノクローナル抗体に関して)と、別の非標的分子との結合についてのそれの結合親和性の少なくとも2倍、10倍、50倍、又は100倍である結合親和性で結合する能力がある。
【0090】
MCM5に対する結合親和性の評価のための好ましい方法はELISAによる。好ましくは、第1のモノクローナル抗体及び/又は第2のモノクローナル抗体は、2500ng/ml以下、1500ng/ml以下、1000ng/ml以下、600ng/ml以下、50ng/ml以下、30ng/ml以下、20ng/ml以下、又は10ng/ml以下のMCM5に対する親和性(実施例2に記載されているように、EC50又は50%最大結合濃度として測定される)を有する。EC50は典型的には、1ng/mlより高く、したがって、EC50は1ng/mlから前文に特定された上限のいずれかの間であり得る。リガンド、例えば抗体の標的への結合能力を評価するための他の標準アッセイは当技術分野において知られており、それには、例えば、ウェスタンブロット、RIA、及びフローサイトメトリー分析が挙げられる。抗体の結合動力学(例えば、結合親和性)もまた、当技術分野において知られた標準アッセイ、例えば表面プラズモン共鳴(SPR)(例えば、Biacore(商標)システム)分析により評価することができる。MCM5との結合についての親和定数(KD)は、好ましくは、0.01~10nM、0.01~5nM、0.01~1nM、0.01~0.5nM、0.01~0.25nM、0.025~0.25nM、又は0.04~0.25nMの範囲である。一実施形態では、ELISAに使用される第1及び/又は第2のモノクローナル抗体は、約0.01nM、0.02nM、0.03nM、0.04nM、0.05nM、0.06nM、0.07nM、0.08nM、0.09nM、0.1nM、0.2nM、0.3nM、0.4nM、又は0.5nMのMCM5に対する親和性を有する。一実施形態では、ELISAに使用される第1のモノクローナル抗体及び/又は第2のモノクローナル抗体は約0.05nMのMCM5に対する親和性を有する。一実施形態では、ELISAに使用される第1のモノクローナル抗体及び/又は第2のモノクローナル抗体は約0.2nMのMCM5に対する親和性を有する。一実施形態では、ELISAに使用される第1のモノクローナル抗体及び/又は第2のモノクローナル抗体は約0.233nMのMCM5に対する親和性を有する。一実施形態では、第1のモノクローナル抗体は約0.05nMのMCM5に対する親和性を有し、第2のモノクローナル抗体は約0.2nMのMCM5に対する親和性を有する。一実施形態では、第1のモノクローナル抗体は約0.05nMのMCM5に対する親和性を有し、第2のモノクローナル抗体は約0.233nMのMCM5に対する親和性を有する。一実施形態では、第1のモノクローナル抗体は12A7であり、かつ約0.05nMのMCM5に対する親和性を有し、第2のモノクローナル抗体は4B4であり、かつ約0.2nMのMCM5に対する親和性を有する。一実施形態では、第1のモノクローナル抗体は12A7であり、かつ約0.05nMのMCM5に対する親和性を有し、第2のモノクローナル抗体は4B4であり、かつ約0.233nMのMCM5に対する親和性を有する。会合速度(ka)は好ましくは、0.4~3.4×106 1/Mの範囲である。解離速度(kd)は好ましくは、1~10×10-3 1/sの範囲である。これらの値は典型的にはSPR(表面プラズモン共鳴)により決定され得る。
【0091】
抗体相補性決定領域(CDR)
本発明の方法は、抗体12A7又は4B4のCDRの少なくとも1つ、すなわち、以下からなる群から選択されるCDRを含む第1のモノクローナル抗体及び/又は第2のモノクローナル抗体の使用を含み得る:
a. 配列番号9の配列、又は配列番号9とは1つ、2つ、若しくは3つのアミノ酸置換により異なる配列を有する、12A7 CDRH1、
b. 配列番号11の配列、又は配列番号11とは1つ、2つ、若しくは3つのアミノ酸置換により異なる配列を有する、12A7 CDRH2、
c. 配列番号13の配列、又は配列番号13とは1つ、2つ、若しくは3つのアミノ酸置換により異なる配列を有する、12A7 CDRH3、
d. 配列番号3の配列、又は配列番号3とは1つ、2つ、若しくは3つのアミノ酸置換により異なる配列を有する、12A7 CDRL1、
e. 配列番号5の配列、又は配列番号5とは1つ、2つ、若しくは3つのアミノ酸置換により異なる配列を有する、12A7 CDRL2、
f. 配列番号7の配列、又は配列番号7とは1つ、2つ、若しくは3つのアミノ酸置換により異なる配列を有する、12A7 CDRL3、
g. 配列番号21の配列、又は配列番号21とは1つ、2つ、若しくは3つのアミノ酸置換により異なる配列を有する、4B4 CDRH1、
h. 配列番号23の配列、又は配列番号23とは1つ、2つ、若しくは3つのアミノ酸置換により異なる配列を有する、4B4 CDRH2、
i. 配列番号25の配列、又は配列番号25とは1つ、2つ、若しくは3つのアミノ酸置換により異なる配列を有する、4B4 CDRH3、
j. 配列番号15の配列、又は配列番号15とは1つ、2つ、若しくは3つのアミノ酸置換により異なる配列を有する、4B4 CDRL1、
k. 配列番号17の配列、又は配列番号17とは1つ、2つ、若しくは3つのアミノ酸置換により異なる配列を有する、4B4 CDRL2、及び
l. 配列番号19の配列、又は配列番号19とは1つ、2つ、若しくは3つのアミノ酸置換により異なる配列を有する、4B4 CDRL3。
【0092】
4B4及び12A7抗体と同じCDRを有する抗体は、4B4及び12A7の配列とは他の領域において実質的に異なり得る。そのような抗体は、例えば抗体断片であり得る。
【0093】
句「配列番号3とは単一のアミノ酸置換により異なる配列」は、配列番号3に定義された1個のアミノ酸を異なるアミノ酸によって置き換える可能性を指す。好ましくは、そのような置き換えは保存的アミノ酸置換である。以下の8つの群それぞれは、典型的にはお互いに保存的置換であるアミノ酸を含有する:(1)アラニン、グリシン、(2)アスパラギン酸、グルタミン酸、(3)アスパラギン、グルタミン;(4)アルギニン、リシン、(5)イソロイシン、ロイシン、メチオニン、バリン、(6)フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、(7)セリン、スレオニン、及び(8)システイン、メチオニン。
【0094】
ある実施形態では、第1のモノクローナル抗体は、12A7の重鎖由来の少なくとも1つのCDR(12A7 CDRH1、12A7 CDRH2、又は12A7 CDRH3)、加えて12A7の軽鎖由来の少なくとも1つのCDR(12A7 CDRL1、12A7 CDRL2、又は12A7 CDRL3)を含む。さらなる実施形態では、第1のモノクローナル抗体は12A7の重鎖由来の少なくとも2つのCDR及び12A7の軽鎖由来の少なくとも2つのCDRを含む。好ましい実施形態では、第1のモノクローナル抗体は12A7の重鎖由来の3つ全てのCDR及び/又は12A7の軽鎖由来の3つ全てのCDRを含む。ある実施形態では、第1のモノクローナル抗体は、12A7 CDRL1及び12A7 CDRL2、12A7 CDRL1及び12A7 CDRL3、12A7 CDRL1及び12A7 CDRH1、12A7 CDRL1及び12A7 CDRH2、12A7 CDRL1及び12A7 CDRH3、12A7 CDRL2及び12A7 CDRL3、12A7 CDRL2及び12A7 CDRH1、12A7 CDRL2及び12A7 CDRH2、12A7 CDRL2及び12A7 CDRH3、12A7 CDRL3及び12A7 CDRH1、12A7 CDRL3及び12A7 CDRH2、12A7 CDRL3及び12A7 CDRH3、12A7 CDRH1及び12A7 CDRH2、12A7 CDRH1及び12A7 CDRH3、又は12A7 CDRH2及び12A7 CDRH3を含む。
【0095】
ある実施形態では、第2のモノクローナル抗体は、4B4の重鎖由来の少なくとも1つのCDR(4B4 CDRH1、4B4 CDRH2、又は4B4 CDRH3)、加えて4B4の軽鎖由来の少なくとも1つのCDR(4B4 CDRL1、4B4 CDRL2、又は4B4 CDRL3)を含む。さらなる実施形態では、第2のモノクローナル抗体は4B4の重鎖由来の少なくとも2つのCDR及び4B4の軽鎖由来の少なくとも2つのCDRを含む。好ましい実施形態では、第2のモノクローナル抗体は4B4の重鎖由来の3つ全てのCDR及び/又は4B4の軽鎖由来の3つ全てのCDRを含む。ある実施形態では、第2のモノクローナル抗体は、4B4 CDRL1及び4B4 CDRL2、4B4 CDRL1及び4B4 CDRL3、4B4 CDRL1及び4B4 CDRH1、4B4 CDRL1及び4B4 CDRH2、4B4 CDRL1及び4B4 CDRH3、4B4 CDRL2及び4B4 CDRL3、4B4 CDRL2及び4B4 CDRH1、4B4 CDRL2及び4B4 CDRH2、4B4 CDRL2及び4B4 CDRH3、4B4 CDRL3及び4B4 CDRH1、4B4 CDRL3及び4B4 CDRH2、4B4 CDRL3及び4B4 CDRH3、4B4 CDRH1及び4B4 CDRH2、4B4 CDRH1及び4B4 CDRH3、又は4B4 CDRH2及び4B4 CDRH3を含む。好ましい実施形態では、抗体は、配列番号3(12A7 CDRL1)、配列番号5(12A7 CDRL2)、配列番号7(12A7 CDRL3)、配列番号9(12A7 CDRH1)、配列番号11(12A7 CDRH2)、配列番号13(12A7 CDR H3)、配列番号15(4B4 CDRL1)、配列番号17(4B4 CDRL2)、配列番号19(4B4 CDRL3)、配列番号21(4B4 CDRH1)、配列番号23(4B4 CDRH2)又は配列番号25(4B4 CDRH3)のいずれか1つに記載された配列と同一の配列を有する少なくとも1つのCDRを含む。ある実施形態では、第1のモノクローナル抗体が12A7 CDRL2を含む場合、12A7 CDRL2は配列番号5に記載された配列を有する。さらなる実施形態では、第1のモノクローナル抗体が12A7 CDRL1を含む場合、12A7 CDRL1は配列番号3に記載された配列を有する。さらなる実施形態では、第1のモノクローナル抗体が12A7 CDRL3を含む場合、12A7 CDRL3は配列番号7に記載された配列を有する。さらなる実施形態では、第1のモノクローナル抗体が12A7 CDRH1を含む場合、12A7 CDRH1は配列番号9に記載された配列を有する。さらなる実施形態では、第1のモノクローナル抗体が12A7 CDRH2を含む場合、12A7 CDRH2は配列番号11に記載された配列を有する。さらなる実施形態では、第1のモノクローナル抗体が12A7 CDRH3を含む場合、12A7 CDRH3は配列番号13に記載された配列を有する。さらなる実施形態では、第2のモノクローナル抗体が4B4 CDRL1を含む場合、4B4 CDRL1は配列番号15に記載された配列を有する。さらなる実施形態では、第2のモノクローナル抗体が4B4 CDRL2を含む場合、4B4 CDRL2は配列番号17に記載された配列を有する。さらなる実施形態では、第2のモノクローナル抗体が4B4 CDRL3を含む場合、4B4 CDRL3は配列番号19に記載された配列を有する。さらなる実施形態では、第2のモノクローナル抗体が4B4 CDRH1を含む場合、4B4 CDRH1は配列番号21に記載された配列を有する。さらなる実施形態では、第2のモノクローナル抗体が4B4 CDRH2を含む場合、4B4 CDRH2は配列番号23に記載された配列を有する。さらなる実施形態では、第2のモノクローナル抗体が4B4 CDRH3を含む場合、4B4 CDRH3は配列番号25に記載された配列を有する。
【0096】
好ましくは、12A7又は4B4のCDRの少なくとも1つを含む第1のモノクローナル抗体及び/又は第2のモノクローナル抗体は、MCM5と結合する(必要に応じて、特異的に結合する)。さらにより好ましくは、12A7又は4B4のCDRの少なくとも1つを含む第1のモノクローナル抗体及び/又は第2のモノクローナル抗体は、配列番号1又は配列番号2と結合する(必要に応じて、特異的に結合する)。
【0097】
重鎖可変領域及び軽鎖可変領域
一部の実施形態では、本発明に使用される第1のモノクローナル抗体は、配列番号29と少なくとも85%、90%、95%、98%、99%、又は100%同一の配列を有する重鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、本発明に使用される第1のモノクローナル抗体は、配列番号27と少なくとも85%、90%、95%、98%、99%、又は100%同一の配列を有する軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、本発明に使用される第2のモノクローナル抗体は、配列番号33と少なくとも85%、90%、95%、98%、99%、又は100%同一の配列を有する重鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、本発明に使用される第2のモノクローナル抗体は、配列番号31と少なくとも85%、90%、95%、98%、99%、又は100%同一の配列を有する軽鎖可変領域を含む。そのような抗体は「バリアント抗体」と呼ばれ得る。
【0098】
ある実施形態では、第1のモノクローナル抗体は、配列番号29と少なくとも95%同一の配列を有する重鎖可変領域を含む。さらなる実施形態では、第1のモノクローナル抗体は、配列番号29と少なくとも98%同一の配列を有する重鎖可変領域を含む。一実施形態では、第1のモノクローナル抗体は、配列番号27と少なくとも95%同一の配列を有する軽鎖可変領域を含む。さらなる実施形態では、第1のモノクローナル抗体は、配列番号27と少なくとも98%同一の配列を有する軽鎖可変領域を含む。さらなる実施形態では、第1のモノクローナル抗体は、配列番号27と少なくとも95%同一の配列を有する軽鎖可変領域及び配列番号29と少なくとも95%同一の配列を有する重鎖可変領域を含む。好ましい実施形態では、第1のモノクローナル抗体は、配列番号29と少なくとも98%同一の配列を有する重鎖可変領域及び配列番号27と少なくとも98%同一の配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0099】
さらなる実施形態では、第2のモノクローナル抗体は、配列番号33と少なくとも95%同一の配列を有する重鎖可変領域を含む。さらなる実施形態では、第2のモノクローナル抗体は、配列番号33と少なくとも98%同一の配列を有する重鎖可変領域を含む。さらなる実施形態では、第2のモノクローナル抗体は、配列番号31と少なくとも95%同一の配列を有する軽鎖可変領域を含む。さらなる実施形態では、第2のモノクローナル抗体は、配列番号31と少なくとも98%同一の配列を有する軽鎖可変領域を含む。さらなる実施形態では、第2のモノクローナル抗体は、配列番号33と少なくとも95%同一の配列を有する重鎖可変領域及び配列番号31と少なくとも95%同一の配列を有する軽鎖可変領域を有する。好ましい実施形態では、第2のモノクローナル抗体は、配列番号33と少なくとも98%同一の配列を有する重鎖可変領域及び配列番号31と少なくとも98%同一の配列を有する軽鎖可変領域を有する。
【0100】
当業者に知られているように、抗体は、フレームワーク領域を含む複数の領域を含有する。フレームワーク領域におけるアミノ酸の欠失又は付加は、抗体のそれの標的と結合する能力に影響する可能性は低い。他方、CDRにおける変異は、抗体の標的と結合する能力に影響する可能性がかなりより高い。したがって、本発明のある特定の実施形態では、バリアント抗体は、12A7若しくは4B4抗体のCDRと同一であるCDRを有するか、又は単一のアミノ酸置換(好ましくは、保存的アミノ酸置換)の点でのみ異なるCDRを有する。第1のモノクローナル抗体及び/又は第2のモノクローナル抗体は、配列が配列番号27、29、31、又は33に記載された配列とは極めて有意に異なるフレームワーク領域を有し得る。
【0101】
必要に応じて、第1のモノクローナル抗体が配列番号29と少なくとも85%、90%、95%、98%、99%、又は100%同一の配列を有する重鎖可変領域を含む場合、その抗体はさらに、12A7 CDRH1、12A7 CDRH2、又は12A7 CDRH3の少なくとも1つを含む。標的結合特異性はCDRによって決定されるため、12A7のCDRを含む抗体は、たとえその抗体配列の残りが極めて可変的であるとしても、それでもなおMCM5と結合し得ることは当業者によって理解されている。この理由により、第1のモノクローナル抗体が12A7 CDRH1、12A7 CDRH2、又は12A7 CDRH3の少なくとも1つを含む場合、第1のモノクローナル抗体は好ましくは、配列番号29と少なくとも90%同一の配列を有する重鎖可変領域を含む。より好ましい実施形態では、本発明の第1のモノクローナル抗体は、12A7 CDRH1、12A7 CDRH2、及び12A7 CDRH3を含み、かつ配列番号29と少なくとも95%同一の配列を有する重鎖可変領域を含む。
【0102】
必要に応じて、第2のモノクローナル抗体が配列番号33と少なくとも85%、90%、95%、98%、99%、又は100%同一の配列を有する重鎖可変領域を含む場合、第2のモノクローナル抗体はさらに、4B4 CDRH1、4B4 CDRH2、又は4B4 CDRH3の少なくとも1つを含む。標的結合特異性はCDRによって決定されるため、4B4のCDRを含む抗体は、たとえその抗体配列の残りが極めて可変的であるとしても、それでもなおMCM5と結合し得ることは当業者によって理解されている。この理由により、第2のモノクローナル抗体が4B4 CDRH1、4B4 CDRH2、又は4B4 CDRH3の少なくとも1つを含む場合、第2のモノクローナル抗体は好ましくは、配列番号33と少なくとも90%同一の配列を有する重鎖可変領域を含む。より好ましい実施形態では、第2のモノクローナル抗体は、4B4 CDRH1、4B4 CDRH2、及び4B4 CDRH3を含み、かつ配列番号33と少なくとも95%同一の配列を有する重鎖可変領域を含む。
【0103】
必要に応じて、第1のモノクローナル抗体が配列番号27と少なくとも85%、90%、95%、98%、99%、又は100%同一の配列を有する軽鎖可変領域を含む場合、第1のモノクローナル抗体はさらに、12A7 CDRL1、12A7 CDRL2、又は12A7 CDRL3の少なくとも1つを含む。標的結合特異性はCDRによって決定されるため、12A7のCDRを含む抗体は、たとえその抗体配列の残りが極めて可変的であるとしても、それでもなおMCM5と結合し得ることは当業者によって理解されている。この理由により、第1のモノクローナル抗体が12A7 CDRL1、12A7 CDRL2、又は12A7 CDRL3の少なくとも1つを含む場合、第1のモノクローナル抗体は好ましくは、配列番号27と少なくとも90%同一の配列を有する軽鎖可変領域を含む。より好ましい実施形態では、第1のモノクローナル抗体は、12A7 CDRL1、12A7 CDRL2、及び12A7 CDRL3を含み、かつ配列番号27と少なくとも95%同一の配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0104】
必要に応じて、本発明の第2のモノクローナル抗体が配列番号31と少なくとも85%、90%、95%、98%、99%、又は100%同一の配列を有する軽鎖可変領域を含む場合、第2のモノクローナル抗体はさらに、4B4 CDRL1、4B4 CDRL2、又は4B4 CDRL3の少なくとも1つを含む。標的結合特異性はCDRによって決定されるため、4B4のCDRを含む抗体は、たとえその抗体配列の残りが極めて可変的であるとしても、それでもなおMCM5と結合し得ることは当業者によって理解されている。この理由により、第2のモノクローナル抗体が4B4 CDRL1、4B4 CDRL2、又は4B4 CDRL3の少なくとも1つを含む場合、第2のモノクローナル抗体は好ましくは、配列番号31と少なくとも90%同一の配列を有する重鎖可変領域を含む。より好ましい実施形態では、第2のモノクローナル抗体は、4B4 CDRL1、4B4 CDRL2、及び4B4 CDRL3を含み、かつ配列番号31と少なくとも95%同一の配列を有する重鎖可変領域を含む。
【0105】
本発明のさらなる実施形態では、第1のモノクローナル抗体は、
(i)12A7 CDRH1、12A7 CDRH2、及び12A7 CDRH3、
(ii)配列番号29と少なくとも95%同一の配列を有する重鎖可変領域、
(iii)12A7 CDRL1、12A7 CDRL2、及び12A7 CDRL3、並びに
(iv)配列番号27と少なくとも95%同一の配列を有する軽鎖可変領域
を含む。
【0106】
さらなる実施形態では、第2のモノクローナル抗体は、
(i)4B4 CDRH1、4B4 CDRH2、及び4B4 CDRH3、
(ii)配列番号33と少なくとも95%同一の配列を有する重鎖可変領域、
(iii)4B4 CDRL1、4B4 CDRL2、及び4B4 CDRL3、並びに
(iv)配列番号31と少なくとも95%同一の配列を有する重鎖可変領域
を含む。
【0107】
配列番号29と同一の重鎖可変配列及び配列番号27と同一の軽鎖可変配列を有する抗体は、抗体12A7と呼ばれ得る。配列番号33と同一の重鎖可変配列及び配列番号31と同一の軽鎖可変配列を有する抗体は、抗体4B4と呼ばれ得る。
【0108】
MCM5と結合するバリアント抗体を作製する方法は、十分、当業者の能力の範囲内である。そのようなバリアント抗体は、配列番号27、29、31、又は33と比較して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、50個、又は100個の置換又は欠失変異を含み得る。「欠失」バリアント抗体は、1個、2個、3個、4個、5個、若しくはそれ以上のアミノ酸の欠失、又は場合によっては、配列番号27、29、31、若しくは33の全領域の欠失を含み得る。「置換」バリアントは、1個、2個、3個、4個、5個、又はそれ以上のアミノ酸の、同じ数の新しいアミノ酸での置き換えを含み得る。
【0109】
好ましくは、本明細書に記載されたバリアント抗体は、配列番号27、29、31、又は33とは保存的アミノ酸置換によって(必要に応じて、保存的アミノ酸置換によってのみ)異なる配列を含む。そのような保存的置換が抗体の結合性質を変化させる可能性が低いことを当業者はよく知っている。
【0110】
一部の実施形態では、ELISAアッセイ又はサンドイッチELISAアッセイは、本明細書に記載されたモノクローナル抗体の1つ以上の使用を含む。一実施形態では、ELISAアッセイ又はサンドイッチELISAアッセイは、精液試料を本明細書に記載の第1のモノクローナル抗体に曝露することを含む。一実施形態では、ELISAアッセイ又はサンドイッチELISAアッセイは、本明細書に記載の第2のモノクローナル抗体に精液試料を曝露することを含む。一実施形態では、ELISAアッセイ又はサンドイッチELISAアッセイは、本明細書に記載の第1のモノクローナル抗体及び/又は本明細書に記載の第2のモノクローナル抗体に精液試料を曝露することを含む。一実施形態では、ELISAアッセイ又はサンドイッチELISAアッセイは、精液試料を本明細書に記載の第1のモノクローナル抗体及び本明細書に記載の第2のモノクローナル抗体に曝露することを含む。一部の実施形態では、ELISAアッセイ又はサンドイッチELISAアッセイにおいて使用される第1のモノクローナル抗体及び/又は第2のモノクローナル抗体は、MCM5に特異的に結合する。
【0111】
一部の実施形態では、ELISAアッセイ又はサンドイッチELISAアッセイにおいて使用される第1のモノクローナル抗体は、配列番号1に結合する。一部の実施形態では、ELISAアッセイ又はサンドイッチELISAアッセイにおいて使用される第2のモノクローナル抗体は、配列番号2に結合する。一部の実施形態では、ELISAアッセイ又はサンドイッチELISAアッセイにおいて使用される第1のモノクローナル抗体は、配列番号1に結合し、かつELISAアッセイ又はサンドイッチELISAアッセイにおいて使用される第2のモノクローナル抗体は、配列番号2に結合する。
【0112】
一部の実施形態では、ELISAアッセイ又はサンドイッチELISAにおいて使用される第1のモノクローナル抗体は、本明細書に記載の12A7のCDRの少なくとも1つを含む。一部の実施形態では、ELISAアッセイ又はサンドイッチELISAアッセイに使用される第2のモノクローナル抗体は、本明細書に記載された4B4のCDRの少なくとも1つを含む。一部の実施形態では、ELISAアッセイ又はサンドイッチELISAアッセイに使用される第1のモノクローナル抗体は本明細書に記載された12A7のCDRの少なくとも1つを含み、ELISAアッセイ又はサンドイッチELISAアッセイに使用される第2のモノクローナル抗体は本明細書に記載された4B4のCDRの少なくとも1つを含む。
【0113】
一部の実施形態では、ELISAアッセイ又はサンドイッチELISAアッセイに使用される第1のモノクローナル抗体は、12A7のCDRの少なくとも1つを含む本明細書に記載されたモノクローナル抗体である。一部の実施形態では、ELISAアッセイ又はサンドイッチELISAアッセイに使用される第2のモノクローナル抗体は、4B4のCDRの少なくとも1つを含む本明細書に記載されたモノクローナル抗体である。一部の実施形態では、ELISAアッセイ又はサンドイッチELISAアッセイに使用される第1のモノクローナル抗体は12A7のCDRの少なくとも1つを含む本明細書に記載されたモノクローナル抗体であり、ELISAアッセイ又はサンドイッチELISAアッセイに使用される第2のモノクローナル抗体は4B4のCDRの少なくとも1つを含む本明細書に記載されたモノクローナル抗体である。
【0114】
一部の実施形態では、ELISAアッセイ又はサンドイッチELISAアッセイに使用される第1のモノクローナル抗体は、12A7のCDRの少なくとも1つを含み、かつ配列番号1と結合する本明細書に記載されたモノクローナル抗体である。一部の実施形態では、ELISAアッセイ又はサンドイッチELISAアッセイに使用される第2のモノクローナル抗体は、4B4のCDRの少なくとも1つを含み、かつ配列番号2と結合する本明細書に記載されたモノクローナル抗体である。一部の実施形態では、ELISAアッセイ又はサンドイッチELISAアッセイに使用される第1のモノクローナル抗体は、12A7のCDRの少なくとも1つを含み、かつ配列番号1と結合する本明細書に記載されたモノクローナル抗体であり、及びELISAアッセイ又はサンドイッチELISAアッセイに使用される第2のモノクローナル抗体は、4B4のCDRの少なくとも1つを含み、かつ配列番号2と結合するモノクローナル抗体である。
【0115】
一部の実施形態では、ELISAアッセイ又はサンドイッチELISAアッセイに使用される第1のモノクローナル抗体は、12A7である。一部の実施形態では、ELISAアッセイ又はサンドイッチELISAアッセイに使用される第2のモノクローナル抗体は、4B4である。一部の実施形態では、ELISAアッセイ又はサンドイッチELISAアッセイに使用される第1のモノクローナル抗体は12A7であり、ELISAアッセイ又はサンドイッチELISAアッセイに使用される第2のモノクローナル抗体は4B4である。
【0116】
使用
本発明はまた、本明細書に開示した様々な構成要素の使用を提供する。一実施形態では、本発明は、対象において前立腺がんの存在又は非存在を検出する方法における本発明の溶解緩衝液の使用を提供する。一実施形態では、本発明は、対象において前立腺がんの存在又は非存在を検出する方法における本発明の第1のモノクローナル抗体及び/又は本発明の第2のモノクローナル抗体の使用を提供する。
【0117】
キット
本発明はまた、対象において前立腺がんの存在又は非存在を検出する方法におけるキットの使用であって、キットが、
(a)前述の請求項のいずれか一項において定義される溶解緩衝液、
(b)前述の請求項のいずれか一項において定義される第1のモノクローナル抗体、及び/又は
(c)前述の請求項のいずれか一項において定義される第2のモノクローナル抗体
を含む、使用を提供する。
【0118】
本発明はまた、
(a)前述の請求項のいずれか一項において定義される溶解緩衝液、
(b)前述の請求項のいずれか一項において定義される第1のモノクローナル抗体、及び/又は
(c)前述の請求項のいずれか一項において定義される第2のモノクローナル抗体、及び
(d)対象において前立腺がんの存在又は非存在を検出する方法における溶解緩衝液及び/又は第1のモノクローナル抗体及び/又は第2のモノクローナル抗体の使用のための説明書
を含む、キットを提供する。
【0119】
【0120】
[実施例]
試験集団
患者は2018年3月から10月の間に英国の4つの現場で試験に登録され、倫理的承認はNorth East - Newcastle & North Tyneside 1 研究倫理委員会から得られ、インフォームドコンセントは尿試料及び精液試料を採取する前に全ての患者から得た。
【0121】
試料処理-尿
直腸指診の後、各患者から最低10mLの尿を採取し、尿を撹拌して均一に混合し、10~50mLをきれいな遠心チューブに移した。試料は室温で1500g、5分間、遠心分離を実施した。上清は、細胞沈殿物ペレットをかき乱さないように注意して廃水に廃棄し、チューブを吸収紙上に逆さまにして置いた。細胞沈殿物ペレットを適量の溶解緩衝液(尿1mLあたり10μL)に再懸濁し、室温で1時間インキュベートした後、-20℃未満で保存した。
【0122】
試料処理-精液
患者は、予約の48時間前までに試料を提供し、予約時に研究看護師に手渡すように求められた。次いで、試料を実験室に移し、1500gで5分間遠心分離した。遠心分離後、上清を除去し、-20℃以下で保存する前に新しいチューブに入れた。次いで、残った細胞沈殿物のペレットを500μLの溶解緩衝液に再懸濁し、室温で3分~1時間インキュベートして溶解させた後、試験まで-20℃以下で保存した。
【0123】
MCM5 ELISA
製造業者の指示に従って、患者の溶解物をMCM5 ELISA試験に供した。簡単に説明すると、100μLの溶解物をMCM5 ELISAマイクロタイタープレートに加え(試料及び対照を2回繰り返して実施)、プレートシェーカー(700RPM)で60分間、室温にてインキュベートした後、インキュベーションウェルを350μLの1x洗浄緩衝液で自動プレート洗浄機を使用して6回洗浄した。100μLのMCM5-HRPコンジュゲート抗体を各ウェルに加え、室温で30分間インキュベートし、その後、上記のように350μlの1x洗浄緩衝液で6回洗浄した。100μLのTMBを各ウェルに加え、暗所で30分間インキュベートし、その後、停止溶液(0.5M H2SO4)を添加した。光学密度(OD)を450nm及び630nm(参照波長)で測定した。MCM5の濃度を、陰性対照(溶解緩衝剤)と共に、既知の組換えMCM5対照(1.5mg/ml)の段階希釈標準曲線を使用して計算した。
【0124】
結果-尿
排尿試料は泌尿器科医による直腸指診(DRE)の直後に採取し、年齢が48~80歳の範囲の合計146名の適格な対象から試料が収集された。その後、70名の対象が前立腺生検に基づく日常的な臨床検査で前立腺がんと診断された。
【0125】
残りの76名の対象は、陰性の生検結果(生検試料に腫瘍細胞が見られない)によって定義されているとおり、前立腺がんを有していないことが確認された。表1は、二重のウェルの平均を使用して算出した場合のDRE後の尿におけるADXPROSTATEの感度、特異度、陽性予測値(PPV)及び陰性予測値(NPV)を示している。単一のウェルの結果を使用して算出すると、性能特性に変化が生じる場合がある。
【0126】
【表1】
【0127】
結果-精液
年齢範囲が48~72歳の合計42名の適格な対象から精液試料を採取した。その後、23名の対象が前立腺生検に基づく日常的な臨床検査によって前立腺がんと診断された。
【0128】
残りの19名の対象は、陰性の生検結果(生検試料に腫瘍細胞が見られない)、又はDRE、PSA、及び画像に基づいて生検の必要がないとの泌尿器科医の判断によって定義されるとおり、前立腺がんを有していないことが確認された。表2は、二重のウェルの平均を使用して算出した場合の精液におけるADXPROSTATEの感度、特異度、陽性予測値(PPV)及び陰性予測値(NPV)を示している。単一のウェルの結果を使用して算出すると、性能特性に変化が生じる場合がある。
【0129】
【表2】
【0130】
ADXPROSTATEを使用して決定したMCM5のレベルは、前立腺がん患者の精液ペレットにおいて有意に高かった(図1、p=0.03)。重要なことには、グリーソングレードの4群及び5群の5名の患者全てにおいて、MCM5レベルはカットオフよりも有意に高かった(図2、p=0.007)。
【0131】
本発明のさらなる態様:
1.対象において前立腺がんの存在又は非存在を検出する方法であって、
前記対象から得られた精液試料を提供するステップ、及び
少なくとも1つのバイオマーカーを検出するか、又は少なくとも1つのバイオマーカーの濃度を決定するステップ
を含む、方法。
2.前記精液試料を処理して、前記精液試料中の細胞から前記少なくとも1つのバイオマーカーを放出させるステップ
をさらに含む、態様1に記載の方法。
3.前記少なくとも1つのバイオマーカーがMCMタンパク質を含むか又はそれからなる、態様1又は2に記載の方法。
4.前記MCMタンパク質がMCM5である、態様3に記載の方法。
5.前記精液試料が禁欲の期間後に得られる、先行する態様のいずれか1つに記載の方法。
6.前記少なくとも1つのバイオマーカーを検出することが、前記バイオマーカーの前記濃度が予め定義されたカットオフより高いかどうかを決定することを含む、先行する態様のいずれか1つに記載の方法。
7.前記予め定義されたカットオフが、40pg/mL~100pg/mL、50pg/mL~75pg/mL、60pg/mL~70pg/mL、又は約65pg/mLである、態様6に記載の方法。
8.前記バイオマーカーの前記濃度が前記予め定義されたカットオフより高い場合に前立腺がんが存在する可能性がある、態様6又は7に記載の方法。
9.前記方法が前立腺がんを診断する方法であり、前記方法が、前記バイオマーカーの前記濃度が前記予め定義されたカットオフより高い場合に、前立腺がんを有するとして前記対象を診断するステップをさらに含む、態様6から8のいずれか1つに記載の方法。
10.前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記濃度が参照と比較され、前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記濃度が前記参照と比較して異常である又は前記参照より高い場合に前立腺がんが存在する可能性がある、先行する態様のいずれか1つに記載の方法。
11.前記方法が前立腺がんを診断する方法であり、前記方法が、前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記濃度が前記参照より高い場合に、前立腺がんを有するとして前記対象を診断するステップをさらに含む、態様10に記載の方法。
12.前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記濃度を決定すること又は前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記濃度が予め定義されたカットオフより高いかどうかを決定することが、ELISAアッセイを使用して実行される、先行する態様のいずれか1つに記載の方法。
13. 40%より高い、50%より高い、60%より高い、40%~100%、50%~100%、60%~100%、又は約61%の感度を有する、先行する態様のいずれか1つに記載の方法。
14. 65pg/mLの予め定義されたカットオフを使用して40%より高い、50%より高い、60%より高い、40%~100%、50%~100%、60%~100%、又は約61%の感度を有する、先行する態様のいずれか1つに記載の方法。
15. 70%より高い、75%より高い、70%~100%、75%~100%、又は約79%の特異度を有する、先行する態様のいずれか1つに記載の方法。
16. 65pg/mLの予め定義されたカットオフを使用して70%より高い、75%より高い、70%~100%、75%~100%、又は約79%の特異度を有する、先行する態様のいずれか1つに記載の方法。
17. 60%より高い、70%より高い、75%より高い、60%~100%、70%~100%、75%~100%、又は約78%の陽性予測値(PPV)を有する、先行する態様のいずれか1つに記載の方法。
18. 65pg/mLの予め定義されたカットオフを使用して60%より高い、70%より高い、75%より高い、60%~100%、70%~100%、75%~100%、又は約78%の陽性予測値(PPV)を有する、先行する態様のいずれか1つに記載の方法。
19. 55%より高い、60%より高い、55%~100%、60%~100%、又は約63%の陰性予測値(NPV)を有する、先行する態様のいずれか1つに記載の方法。
20. 65pg/mLの予め定義されたカットオフを使用して55%より高い、60%より高い、55%~100%、60%~100%、又は約63%の陰性予測値(NPV)を有する、先行する態様のいずれか1つに記載の方法。
21.尿試料を使用して実行される同等の方法より高い感度、特異度、NPV及び/又はPPVを有する、先行する態様のいずれか1つに記載の方法。
22.尿試料を使用して実行される前記同等の方法が3pg/mLのカットオフを使用する、態様21に記載の方法。
23.前記精液試料を処理して前記少なくとも1つのバイオマーカーを放出させる前記ステップが、前記精液試料中の細胞から前記少なくとも1つのバイオマーカーを放出させることができる溶解緩衝液に前記精液試料を曝露することを含む、態様2から22のいずれか1つに記載の方法。
24.前記精液試料中の細胞から前記少なくとも1つのバイオマーカーを放出させることができる溶解緩衝液に前記精液試料を曝露することが、前記精液試料を遠心分離することにより得られた前記精液試料中の前記細胞のペレットに対して実行される、態様23に記載の方法。
25.前記精液試料中の細胞から前記少なくとも1つのバイオマーカーを放出させることができる溶解緩衝液に前記精液試料を曝露することが、
細胞がフィルターに捕捉されるように、細胞を捕捉するための前記フィルターに前記非侵襲的試料を通過させること、
前記捕捉された細胞が溶解緩衝液に曝露されるように、前記溶解緩衝液を前記フィルターに通過させること、及び/又は
前記溶解緩衝液により前記細胞が前記少なくとも1つのバイオマーカーを放出するように、所定時間前記フィルターをインキュベートすること
を含む、態様23又は24に記載の方法。
26.前記溶解緩衝液が前記精液試料中の細胞からMCMタンパク質を放出させることができ、必要に応じて前記細胞が上皮細胞である、態様23から25のいずれか1つに記載の方法。
27.前記溶解緩衝液が前記精液試料中の細胞からMCM5を放出させることができ、必要に応じて前記細胞が上皮細胞である、態様26に記載の方法。
28.前記溶解緩衝液が前記精液試料中の細胞からMCM5を放出させることができ、前記MCM5タンパク質を変性させず、必要に応じて前記細胞が上皮細胞である、態様23から27のいずれか1つに記載の方法。
29.前記溶解緩衝液が抗体を変性させない、態様23から28のいずれか1つに記載の方法。
30.前記溶解緩衝液が界面活性剤を含む、態様23から29のいずれか1つに記載の方法。
31.前記界面活性剤がTriton X-100を含む、態様30に記載の方法。
32.前記界面活性剤が、0.01%~25%、0.01%~10%、0.05%~5%、0.1%~2%、0.5%~2%、0.75%~1.25%、又は約1%の濃度でTriton X-100を含む、態様31に記載の方法。
33.前記界面活性剤がデオキシコール酸ナトリウムを含むか又はそれからなる、態様30から32のいずれか1つに記載の方法。
34.前記界面活性剤が、0.1%~20%、0.1~10%、0.1~5%、0.5%~5%、0.5%~2.5%、0.75%~2.5%、0.75%~1.25%、又は約1%の濃度でデオキシコール酸ナトリウムを含むか又はそれからなる、態様33に記載の方法。
35.前記界面活性剤がドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含むか又はそれからなる、態様30から34のいずれか1つに記載の方法。
36.前記界面活性剤が、0.001%~10%、0.01%~5%、0.05%~5%、0.01%~1%、0.05%~1%、0.05%~0.5%、0.075%~0.25%、又は約0.1%の濃度でドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含むか又はそれからなる、態様35に記載の方法。
37.前記界面活性剤が、Triton X-100、デオキシコール酸ナトリウム、及びドデシル硫酸ナトリウム(SDS)からなる、態様30から36のいずれか1つに記載の方法。
38.前記界面活性剤が、0.5%~2%のTriton X-100、0.5%~2%のデオキシコール酸ナトリウム、及び0.05%~0.5%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)からなる、態様37に記載の方法。
39.前記溶解緩衝液が緩衝剤成分を含む、態様23から38のいずれか1つに記載の方法。
40.前記緩衝剤成分が、pH4~pH9、pH5~pH8.5、pH6~pH8、pH6.5~pH8、pH7~pH8、pH7.3~pH7.9、pH7.4~pH7.8、pH7.5~pH7.7、又は約pH7.6のpHを有し、且つ/又は前記溶解緩衝液のpHをpH4~pH9、pH5~pH8.5、pH6~pH8、pH6.5~pH8、pH7~pH8、pH7.3~pH7.9、pH7.4~pH7.8、pH7.5~pH7.7、又は約pH7.6に維持する、態様39に記載の方法。
41.前記緩衝剤成分がTrisを含むか又はそれからなる、態様39又は40に記載の方法。
42.前記緩衝剤成分が、1mMより高い、1mM~350mM、5~200mM、5~100mM、5~50mM、5mM~40mM、5mM~35mM、10mM~35mM、15mM~35mM、15mM~30mM、20mM~30mM、又は約25mMの濃度でTrisを含むか又はそれからなる、態様41に記載の方法。
43.前記緩衝剤成分が15mM~35mMの濃度のTrisからなる、態様39から42のいずれか1つに記載の方法。
44.前記溶解緩衝液が塩を含む、態様23から43のいずれか1つに記載の方法。
45.前記塩が塩化ナトリウムである、態様44に記載の方法。
46.前記溶解緩衝液が、10mM~350mM、20mM~300mM、50mM~250mM、100mM~250、100mM~200mM、125mM~175mM、又は約150mMの濃度で塩化ナトリウムを含む、態様45に記載の方法。
47.前記溶解緩衝液が100mM~200mMの濃度で塩化ナトリウムを含む、態様46に記載の方法。
48.前記溶解緩衝液が、
(i)1mM~100mMのTris、
(ii)50mM~300mMの塩化ナトリウム、
(iii)0.1~5%のデオキシコール酸ナトリウム、
(iv)0.01~1%のドデシル硫酸ナトリウム、及び/又は
(v)0.1~5%のTriton-X100
を含む、態様23から47のいずれか1つに記載の方法。
49.前記溶解緩衝液が、
(i)10mM~40mMのTris、
(ii)100mM~200mMの塩化ナトリウム、
(iii)0.5~2%のデオキシコール酸ナトリウム、
(iv)0.05~0.5%のドデシル硫酸ナトリウム、及び/又は
(v)0.5~2%のTriton-X100
を含む、態様48に記載の方法。
50.前記溶解緩衝液が、
(i)約25mMのTris、
(ii)約150mMの塩化ナトリウム、
(iii)約1%のデオキシコール酸ナトリウム、
(iv)約0.1%のドデシル硫酸ナトリウム、及び/又は
(v)約1%のTriton-X100
を含む、態様49に記載の方法。
51.前記少なくとも1つのバイオマーカーを放出する前記細胞が上皮細胞であり、必要に応じて前記対象の前立腺の内壁から脱落した上皮細胞である、態様2から50のいずれか1つに記載の方法。
52.前記少なくとも1つのバイオマーカーを検出するか、又は前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記濃度を決定する前記ステップが、
前記精液試料を第1のモノクローナル抗体及び/又は第2のモノクローナル抗体に曝露すること、並びに
前記第1のモノクローナル抗体及び/若しくは前記第2のモノクローナル抗体に結合した前記少なくとも1つのバイオマーカーを検出するか、又は前記第1のモノクローナル抗体及び/若しくは前記第2のモノクローナル抗体に結合した前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記濃度を決定すること
を含む、先行する態様のいずれか1つに記載の方法。
53.前記第1のモノクローナル抗体及び前記第2のモノクローナル抗体がMCM5に結合する、態様52に記載の方法。
54.前記第1のモノクローナル抗体が、
(i)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドに結合し、
(ii)(a)配列番号9の配列、又は配列番号9とは単一のアミノ酸置換により異なる配列を有する、12A7 CDRH1、
(b)配列番号11の配列、又は配列番号11とは単一のアミノ酸置換により異なる配列を有する、12A7 CDRH2、
(c)配列番号13の配列、又は配列番号13とは単一のアミノ酸置換により異なる配列を有する、12A7 CDRH3、
(d)配列番号3の配列、又は配列番号3とは単一のアミノ酸置換により異なる配列を有する、12A7 CDRL1、
(e)配列番号5の配列、又は配列番号5とは単一のアミノ酸置換により異なる配列を有する、12A7 CDRL2、及び
(f)配列番号7の配列、又は配列番号7とは単一のアミノ酸置換により異なる配列を有する、12A7 CDRL3
からなる群から選択される少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含み、
(iii)配列番号29に対して少なくとも85%、90%、95%、98%、99%、又は100%同一の配列を有する重鎖可変領域を含み、
(iv)配列番号27に対して少なくとも85%、90%、95%、98%、99%、又は100%同一の配列を有する軽鎖可変領域配列を含み、又は
(v)(i)、(ii)、(iii)、又は(iv)の抗体と競合する
抗体である、態様53に記載の方法。
55.前記第2のモノクローナル抗体が、
(i)配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドに結合し、
(ii)(a)配列番号21の配列、又は配列番号21とは単一のアミノ酸置換により異なる配列を有する、4B4 CDRH1、
(b)配列番号23の配列、又は配列番号23とは単一のアミノ酸置換により異なる配列を有する、4B4 CDRH2、
(c)配列番号25の配列、又は配列番号25とは単一のアミノ酸置換により異なる配列を有する、4B4 CDRH3、
(d)配列番号15の配列、又は配列番号15とは単一のアミノ酸置換により異なる配列を有する、4B4 CDRL1、
(e)配列番号17の配列、又は配列番号17とは単一のアミノ酸置換により異なる配列を有する、4B4 CDRL2、及び
(f)配列番号19の配列、又は配列番号19とは単一のアミノ酸置換により異なる配列を有する、4B4 CDRL3
からなる群から選択される少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含み、
(iii)配列番号33に対して少なくとも85%、90%、95%、98%、99%、又は100%同一の配列を有する重鎖可変領域を含み、
(iv)配列番号31に対して少なくとも85%、90%、95%、98%、99%、又は100%同一の配列を有する軽鎖可変領域配列を含み、又は
(v)(i)、(ii)、(iii)、又は(iv)の抗体と競合する
抗体である、態様53又は54に記載の方法。
56.前記第1のモノクローナル抗体及び/又は前記第2のモノクローナル抗体が、0.001~1nMの範囲内のMCM5に対する親和性を有する、態様52から55のいずれか1つに記載の方法。
57.前記第1のモノクローナル抗体及び/又は前記第2のモノクローナル抗体が、Fab'2、F'(ab)2、Fv、単鎖抗体又はダイアボディである、態様52から56のいずれか1つに記載の方法。
58.前記第1のモノクローナル抗体が、12A7 CDRH1、12A7 CDRH2、及び12A7 CDRH3を含む、態様52から57のいずれか1つに記載の方法。
59.前記第1のモノクローナル抗体が、12A7 CDRL1、12A7 CDRL2及び12A7 CDRL3を含む、態様52から58のいずれか1つに記載の方法。
60.前記第1のモノクローナル抗体が、配列番号9の配列を有する12A7 CDRH1、配列番号11の配列を有する12A7 CDRH2、及び配列番号13の配列を有する12A7 CDRH3を含む、態様52から59のいずれか1つに記載の方法。
61.前記第1のモノクローナル抗体が、配列番号3の配列を有する12A7 CDRL1、配列番号5の配列を有する12A7 CDRL2、及び配列番号7の配列を有する12A7 CDRL3を含む、態様52から60のいずれか1つに記載の方法。
62.前記第2のモノクローナル抗体が、4B4 CDRH1、4B4 CDRH2、及び4B4 CDRH3を含む、態様52から61のいずれか1つに記載の方法。
63.前記第2のモノクローナル抗体が、4B4 CDRL1、4B4 CDRL2及び4B4 CDRL3を含む、態様52から62のいずれか1つに記載の方法。
64.前記第2のモノクローナル抗体が、配列番号21の配列を有する4B4 CDRH1、配列番号23の配列を有する4B4 CDRH2、及び配列番号25の配列を有する4B4 CDRH3を含む、態様52から63のいずれか1つに記載の方法。
65.前記第2のモノクローナル抗体が、配列番号15の配列を有する4B4 CDRL1、配列番号17の配列を有する4B4 CDRL2、及び配列番号19の配列を有する4B4 CDRL3を有する、態様52から64のいずれか1つに記載の方法。
66.前記第1のモノクローナル抗体が、配列番号29に対して少なくとも95%同一の配列を有する重鎖可変領域を含む、態様52から65のいずれか1つに記載の方法。
67.前記第1のモノクローナル抗体が、配列番号29に対して少なくとも98%同一の配列を有する重鎖可変領域を含む、態様52から66のいずれか1つに記載の方法。
68.前記第1のモノクローナル抗体が、配列番号27に対して少なくとも95%同一の配列を有する軽鎖可変領域を含む、態様52から67のいずれか1つに記載の方法。
69.前記第1のモノクローナル抗体が、配列番号27に対して少なくとも98%同一の配列を有する軽鎖可変領域を含む、態様52から68のいずれか1つに記載の方法。
70.前記第2のモノクローナル抗体が、配列番号33に対して少なくとも95%同一の配列を有する重鎖可変領域を含む、態様52から69のいずれか1つに記載の方法。
71.前記第2のモノクローナル抗体が、配列番号33に対して少なくとも98%同一の配列を有する重鎖可変領域を含む、態様52から70のいずれか1つに記載の方法。
72.前記第2のモノクローナル抗体が、配列番号31に対して少なくとも95%同一の配列を有する軽鎖可変領域を含む、態様52から71のいずれか1つに記載の方法。
73.前記第2のモノクローナル抗体が、配列番号31に対して少なくとも98%同一の配列を有する軽鎖可変領域を含む、態様52から72のいずれか1つに記載の方法。
74.対象における前立腺がんの非存在の存在を検出する方法における先行する態様のいずれか1つにおいて定義される溶解緩衝液の使用。
75.対象における前立腺がんの存在又は非存在を検出する方法における先行する態様のいずれか1つにおいて定義される第1のモノクローナル抗体及び/又は先行する態様のいずれか1つにおいて定義される第2のモノクローナル抗体の使用。
76.対象において前立腺がんの存在又は非存在を検出する方法におけるキットの使用であって、前記キットが、
(a)先行する態様のいずれか1つにおいて定義される溶解緩衝液、
(b)先行する態様のいずれか1つにおいて定義される第1のモノクローナル抗体、及び/又は
(c)先行する態様のいずれか1つにおいて定義される第2のモノクローナル抗体
を含む、使用。
77.(a)先行する態様のいずれか1つにおいて定義される溶解緩衝液、
(b)先行する態様のいずれか1つにおいて定義される第1のモノクローナル抗体、及び/又は
(c)先行する態様のいずれか1つにおいて定義される第2のモノクローナル抗体、
並びに
(d)対象において前立腺がんの存在又は非存在を検出する方法における前記溶解緩衝液及び/又は前記第1のモノクローナル抗体及び/又は前記第2のモノクローナル抗体の使用のための説明書
を含む、キット。
78.前記前立腺がんがグレード4/5である、先行する態様のいずれか1つに記載の方法、使用又はキット。
79.前記前立腺がんがグレード1~3である、態様1から78のいずれか1つに記載の方法、使用又はキット。
【0132】
上記の明細書で言及された全ての刊行物は参照により本明細書に組み入れられている。本発明の記載された態様及び実施形態の様々な改変及びバリエーションは、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者に明らかであろう。本発明は特定の好ましい実施形態に関連して記載されているが、主張されている本発明がそのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことは理解されるべきである。実際、当業者に明らかである、本発明を実行するための記載された様式の様々な改変は、以下の特許請求の範囲の範囲内であることを意図される。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図3-5】
【配列表】
2022514077000001.app
【国際調査報告】