(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(54)【発明の名称】6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸を使用する経口療法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/20 20060101AFI20220202BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220202BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
A61K31/20
A61P35/00
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535568
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(85)【翻訳文提出日】2021-08-13
(86)【国際出願番号】 US2019067763
(87)【国際公開番号】W WO2020132401
(87)【国際公開日】2020-06-25
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520395765
【氏名又は名称】ラファエル ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ショア,ロバート ジー エル
(72)【発明者】
【氏名】パーディー,ティモシー エス
(72)【発明者】
【氏名】ボテジュ,ラクマル
【テーマコード(参考)】
4C206
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206JA30
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZB26
4C206ZB27
(57)【要約】
本発明は、疾患または障害を治療するための方法および組成物であって、それを必要とする患者に、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を、任意選択的に第2の治療剤と組み合わせて経口投与することによって、治療するための方法および組成物を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疾患または障害の治療を必要とする患者において疾患または障害を治療するための方法であって、前記疾患または障害を治療するために、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を前記患者に経口投与するステップを含む、方法。
【請求項2】
前記疾患または障害が、癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記癌が、リンパ腫である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記癌が、白血病である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記癌が、癌腫である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記癌が、肉腫である、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記癌が、骨髄腫である、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記癌が、脳または脊髄の癌である、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記癌が、黒色腫である、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記癌が、芽腫である、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記癌が、生殖細胞腫瘍である、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記癌が、膵臓癌である、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記癌が、前立腺癌である、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記リンパ腫が、再発性または難治性のホジキンリンパ腫である、請求項3に記載の方法。
【請求項15】
前記リンパ腫が、再発性または難治性のT細胞性非ホジキンリンパ腫である、請求項3に記載の方法。
【請求項16】
前記リンパ腫が、再発性または難治性のバーキットリンパ腫である、請求項3に記載の方法。
【請求項17】
前記リンパ腫が、MYCならびにBCL2および/またはBCL6の再編成を有する高悪性度B細胞リンパ腫である、請求項3に記載の方法。
【請求項18】
治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸を、それを必要とする患者に送達する方法であって、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を、前記患者に経口投与するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年12月20日に出願された米国特許仮出願第62/782,938号、および2019年4月16日に出願された米国特許仮出願第62/834,478号の利益および優先権を主張し、その各々の内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を経口投与することによって、癌を治療するための方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
CPI-613(6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸)は、多くの癌細胞に特有の変化したエネルギー代謝を標的とする画期的な新薬の研究用小分子(リポ酸類似体)である。CPI-613は、複数の第I、I/II、およびII相臨床研究で評価されており、膵臓癌、急性骨髄性白血病(AML)、末梢T細胞リンパ腫(PTCL)、バーキットリンパ腫、および骨髄異形成症候群(MDS)の治療のためのオーファン薬物指定が付与されている。
【0004】
CPI-613の臨床有用性に対する1つの制限は、その投与経路である。CPI-613は、1M(150mg/mL)トリエタノールアミン水溶液中の50mg/mL溶液として製剤化され、投与前に注射用の無菌5%デキストロースで希釈される。安全上の理由から、得られた溶液は、IV注入として、30~120分かけて中心静脈カテーテルを介して患者に投与されなければならない。
【0005】
CPI-613を安全かつ効果的に投与するために、代替方法が必要とされている。本発明は、この必要性に取り組み、他の関連する利益を提供する。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、疾患または障害を治療するための方法および組成物であって、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を、かかる治療を必要とする患者に経口投与することによって、治療するための方法および組成物を提供する。特定の実施形態では、疾患または障害は、膵臓癌または前立腺癌ではない。特定の実施形態では、疾患または障害は、癌であり得、例えば、再発性または難治性であり得る。癌は、例えば、リンパ腫、白血病、癌腫、肉腫、骨髄腫、脳または脊髄の癌、黒色腫、芽腫、生殖細胞腫瘍、膵臓癌、または前立腺癌であり得る。特定の実施形態では、癌は、膵臓癌または前立腺癌ではない。特定の実施形態では、癌は、ブレンツキシマブベドチンおよびPD-1阻害剤が効かなかった患者における再発性もしくは難治性のホジキンリンパ腫を含む再発性もしくは難治性のホジキンリンパ腫、再発性もしくは難治性のT細胞非ホジキンリンパ腫、再発性もしくは難治性のバーキットリンパ腫、またはMYCおよびBCL2および/もしくはBCL6の再編成を有する高悪性度B細胞リンパ腫である。
【0007】
本発明はさらに、疾患または障害を治療するための方法および組成物であって、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を、かかる治療を必要とする患者に経口投与することによって、治療するための方法および組成物を提供する。ただし、疾患または障害は前立腺癌ではなく、さらに、疾患または障害が膵臓癌である場合、治療は、(i)ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩と(ii)nab-パクリタキセルとの組み合わせを患者に投与することをさらに含まないことを条件とする。本発明はさらに、疾患または障害を治療するための方法および組成物であって、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を、かかる治療を必要とする患者に経口投与することによって、治療するための方法および組成物を提供する。ただし、(a)疾患または障害は前立腺癌ではなく、(b)治療はさらに、オートファジー阻害剤を患者に投与することを含まず、(c)疾患または障害が膵臓癌である場合、治療は、(i)ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩と(ii)nab-パクリタキセルとの組み合わせを患者に投与することをさらに含まないことを条件とする。本発明は、癌を治療するための方法および組成物であって、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を、かかる治療を必要とする患者に経口投与することによって、治療するための方法および組成物をさらに提供する。ただし、癌は前立腺癌ではなく、さらに、癌が膵臓癌である場合、治療は、(i)ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩と(ii)nab-パクリタキセルとの組み合わせを患者に投与することをさらに含まないことを条件とする。本発明はさらに、癌を治療するための方法および組成物であって、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を、かかる治療を必要とする患者に経口投与することによって、治療するための方法および組成物を提供する。ただし、(a)癌は前立腺癌ではなく、(b)治療は、オートファジー阻害剤を患者に投与することをさらに含まず、(c)癌が膵臓癌である場合、治療は、(i)ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩と(ii)nab-パクリタキセルとの組み合わせを患者に投与することをさらに含まないことを条件とする。本発明はさらに、癌を治療するための方法および組成物であって、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を、かかる治療を必要とする患者に経口投与することによって、治療するための方法および組成物を提供する。ただし、癌は前立腺癌または膵臓癌ではないことを条件とする。本発明はさらに、癌を治療するための方法および組成物であって、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を、かかる治療を必要とする患者に経口投与することによって、治療するための方法および組成物を提供する。ただし、癌は前立腺癌または膵臓癌ではなく、さらに、治療は患者にオートファジー阻害剤を投与することをさらに含まないことを条件とする。癌は、例えば、リンパ腫、白血病、癌腫、肉腫、骨髄腫、脳または脊髄の癌、黒色腫、芽腫、または生殖細胞腫瘍であり得る。
【0008】
本発明はまた、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸を、それを必要とする患者に送達する方法を提供し、方法は、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を、患者に経口投与するステップを含む。本発明はさらに、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸を、それを必要とする患者に送達するための方法を提供し、方法は、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を、患者に経口投与するステップを含む。ただし、患者は前立腺癌の治療を必要とせず、さらに、患者が膵臓癌の治療を必要とする場合、患者は、膵臓癌の治療のための(i)ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩と(ii)nab-パクリタキセルとの組み合わせも投与されないことを条件とする。本発明はさらに、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸を、それを必要とする患者に送達するための方法を提供し、方法は、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を、患者に経口投与するステップを含む。ただし、(a)患者は前立腺癌の治療を必要とせず、(b)患者はオートファジー阻害剤も投与されず、(c)患者が膵臓癌の治療を必要とする場合、患者は、膵臓癌の治療のための(i)ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩と(ii)nab-パクリタキセルとの組み合わせも投与されないことを条件とする。本発明はさらに、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸を、それを必要とする患者に送達する方法を提供し、方法は、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を、患者に経口投与するステップを含む。ただし、患者は前立腺癌または膵臓癌の治療を必要としないことを条件とする。本発明はさらに、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸を、それを必要とする患者に送達するための方法を提供し、方法は、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を、患者に経口投与するステップを含む。ただし、(a)患者は前立腺癌または膵臓癌の治療を必要とせず、(b)患者はオートファジー阻害剤も投与されないことを条件とする。
【0009】
本発明の前述の態様は、以下の詳細な説明において、追加の実施形態と共により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、マウスでのヒト非小細胞肺癌異種移植における、経口6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸の抗腫瘍効果を示す。
【
図2】
図2は、マウスでのヒト膵臓癌異種移植における、経口6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸の抗腫瘍効果を示す。
【
図3】
図3Aおよび
図3Bは、それぞれ経口CPI-613およびクロロキンまたはメトホルミンのいずれかによる、C57Bl/6マウスにおけるMFL2同系腫瘍の処置を示す。
【
図4】
図4は、経口CPI-613およびドキソルビシンによる、Balb/cマウスにおけるBaf3-P210同系腫瘍の処置を示す。
【
図5】
図5A、
図5B、および
図5Cは、CPI-613ピペラジン材料Aの粉末X線回折パターン、示差走査熱量測定サーモグラム、およびプロトン核磁気共鳴スペクトルを示す。
【
図6】
図6A、
図6B、
図6C、
図6D、および
図6Eは、CPI-613ピペラジン形態Bの粉末X線回折パターン、示差走査熱量測定サーモグラム、プロトン核磁気共鳴スペクトル、熱重量測定サーモグラム、および赤外分光測定を示す。
【
図7】
図7A、
図7B、
図7C、
図7D、および
図7Eは、CPI-613ピペラジン材料Cの粉末X線回折パターン、熱重量測定サーモグラム、プロトン核磁気共鳴スペクトル、示差走査熱量測定サーモグラム、および赤外分光測定を示す。
【
図8】
図8A、
図8B、
図8C、および
図8Dは、CPI-613ベンザチン形態Aの粉末X線回折パターン、示差走査熱量測定サーモグラム、プロトン核磁気共鳴スペクトル、および熱重量測定サーモグラムを示す。
【
図9】
図9A、
図9B、
図9C、
図9D、および
図9Eは、CPI-613ベンザチン材料Bの粉末X線回折パターン、示差走査熱量測定サーモグラム、プロトン核磁気共鳴スペクトル、熱重量測定サーモグラム、および赤外分光測定を示す。
【
図10】
図10A、
図10B、
図10C、
図10D、および
図10Eは、CPI-613DL-リジン材料Aの粉末X線回折パターン、示差走査熱量測定サーモグラム、プロトン核磁気共鳴スペクトル、赤外分光測定、および熱重量測定サーモグラムを示す。
【
図11】
図11A、
図11B、
図11C、
図11D、および
図11Eは、CPI-613トリエタノールアミン形態Aの粉末X線回折パターン、示差走査熱量測定サーモグラム、プロトン核磁気共鳴スペクトル、赤外分光測定、および熱重量測定サーモグラムを示す。
【
図12】Eudragit L100またはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS-M)のいずれかを含む6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸の非晶質固体分散製剤(それぞれ、上および中央の回折パターン)、および結晶6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸(下の回折パターン)のX線粉末回析パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、疾患または障害の治療を必要とする患者において疾患または障害を治療するための方法および組成物であって、疾患または障害を治療するために、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を、患者に経口投与することによって、治療するための方法および組成物を提供する。本発明はさらに、疾患または障害の治療を必要とする患者において疾患または障害を治療するための方法および組成物を提供し、疾患または障害を治療するために、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を、患者に経口投与する。ただし、疾患または障害は前立腺癌ではなく、さらに、疾患または障害が膵臓癌である場合、治療は、(i)ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩と(ii)nab-パクリタキセルとの組み合わせを患者に投与することをさらに含まないことを条件とする。本発明はさらに、疾患または障害の治療を必要とする患者において疾患または障害を治療するための方法および組成物であって、疾患または障害を治療するために、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を、患者に経口投与することによって、治療するための方法および組成物を提供する。ただし、(a)疾患または障害は前立腺癌ではなく、(b)治療はオートファジー阻害剤を患者に投与することをさらに含まず、(c)疾患または障害が膵臓癌である場合、治療は、(i)ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩と(ii)nab-パクリタキセルとの組み合わせを患者に投与することをさらに含まないことを条件とする。
【0012】
本発明はさらに、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸を、それを必要とする患者に送達する方法を提供し、方法は、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を、患者に経口投与するステップを含む。本発明はさらに、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸を、それを必要とする患者に送達するための方法を提供し、方法は、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を、患者に経口投与するステップを含む。ただし、患者は前立腺癌の治療を必要とせず、さらに、患者が膵臓癌の治療を必要とする場合、患者は、膵臓癌の治療のための(i)ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩と(ii)nab-パクリタキセルとの組み合わせも投与されないことを条件とする。本発明はさらに、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸を、それを必要とする患者に送達するための方法を提供し、方法は、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を、患者に経口投与するステップを含む。ただし、(a)患者は前立腺癌の治療を必要とせず、(b)患者はオートファジー阻害剤も投与されず、(c)患者が膵臓癌の治療を必要とする場合、患者は、膵臓癌の治療のための(i)ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩と(ii)nab-パクリタキセルとの組み合わせも投与されないことを条件とする。
【0013】
本発明の実施は、特に明記されない限り、有機化学、薬理学、および生化学の従来の技術を使用する。そのような技術は、「Comprehensive Organic Synthesis」(B.M.Trost&I.Fleming,eds.,1991-1992)などの文献で説明されており、参照よって組み込まれる。本発明の様々な態様が以下のセクションで示されるが、しかし1つの特定のセクションで説明される本発明の態様は、いずれの特定のセクションにも限定されるものではない。
【0014】
I.定義
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語および語句を以下に定義する。
【0015】
本明細書で使用される用語「a」、「an」、および「the」は、「1つ以上」を意味し、文脈が不適切でない限り、複数を含む。
【0016】
用語「6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸」は、化学構造
【化1】
を有する化合物を指し、デビミスタットまたはCPI-613として知られている。
【0017】
本発明の組成物に含まれる特定の化合物は、特定の幾何学型または立体異性型で存在し得る。本発明は、シス-およびトランス-異性体、R-およびS-鏡像体、ジアステレオマー、(D)-異性体、(L)-異性体、それらのラセミ混合物、ならびにそれらの他の混合物を含むすべてのそのような化合物が本発明の範囲内に入るものとして考えられる。
【0018】
本明細書で使用される場合、用語「オートファジー阻害剤」は、任意の機構によって(例えば、オートファゴソームまたはそのカーゴの形成に影響を与えることによって)任意の種類のオートファジー(例えば、マクロオートファジー、ミクロオートファジー、シャペロン介在性オートファジー、マイトファジー、またはリポファジー)を阻害することができる化合物を指す。オートファジー阻害剤の例としては、限定されないが、Mdivi-1、シクロスポリンA、4-アミノキノリン、3-メチルアデニン(3-MA、カタログ番号5142-23-4)、MHY1485(カタログ番号326914-06-1SP600125)、3-メチル-6-(3-メチルピペリジン-1-イル)-3H-プリン、6-クロロ-N-(1-エチルピペリジン-4-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロアクリジン-9-アミン、4-(((1-(2-フルオロフェニル)シクロペンチル)-アミノ)メチル)-2-((4-メチルピペラジン-1-イル)メチル)フェノール、6-フルオロ-N-[4-フルオロベンジル]キナゾリン-4-アミン、N-アセチル-L-システイン、L-アスパラギン、N2,N4-ジベンジルキナゾリン-2,4-ジアミン、(2S,3S)-trans-エポキシスクシニル-L-ロイシルアミド-3-メチルブタンエチルエステル、N-[6-(4-クロロフェノキシ)ヘキシル]-N’-シアノ-N’’-4-ピリジニル-グアニジン、ロイペプチン、2-(4-モルホリニル)-8-フェニル-1(4H)-ベンゾピラン-4-オン、4,6-ジ-4-モルホリニル-N-(4-ニトロフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-アミン、ペプスタチンA、2-((5-ブロモ-2-((3,4、5-トリメトキシフェニル)アミノ)ピリミジン-4-イル)オキシ)-N-メチルベンズアミド、6-フルオロ-N-[(4-フルオロフェニル)メチル]-4-キナゾリンアミン、タプシガルギン、アモジアキン、アルテミシニン、メフロキン、プリマキン、ピペラキン、キナクリン、U0126、3-メチルアデニン、バフィロマイシンA1、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、ベルテポルフィン、LY294002、SB202190、SB203580、SC79、およびウォルトマンニンが挙げられる。
【0019】
本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、本発明の方法によって治療される生物を指す。かかる生物としては、好ましくは、限定されないが、哺乳動物(例えば、ネズミ、サル、ウマ(馬)、ウシ(牛)、ブタ、イヌ、ネコなど)が含まれる。「患者」という用語は、最も好ましくは、ヒトを指す。
【0020】
「治療有効量」とは、特定の患者または患者集団において治療される障害または状態の阻害、停止、または改善をもたらすのに十分な量の化合物を指す。例えば、治療有効量は、疾患の進行を遅らせる、あるいは再燃を防止または遅延するための維持治療など、その再発を防止または遅延するのに十分な薬剤の量であり得る。治療有効量は、実験室または臨床設定で実験的に決定することができ、あるいは治療される特定の疾患および患者のために、米国食品医薬品局または同等な外国当局のガイドラインによって要求される量であり得る。適切な剤形、投与量、および投与経路の決定は、製薬および医療の従来技術の通常の技術レベルの範囲内であることが認識されるべきである。
【0021】
「治療」は、治療される障害に関連するか、またはそれによって引き起こされる少なくとも1つの症状または特徴の急性または予防的な減少または軽減を指す。例えば、治療は障害の症状の軽減または障害の完全な根絶を含むことができる。別の例として、治療は、疾患の進行を遅らせること、あるいは再燃を防止または遅延する維持治療など、その再発を防止もしくは遅延させることを含むことができる。
【0022】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、ヒトへの投与に好適であるようにした、活性剤と不活性もしくは活性な賦形剤との組み合わせの組成物を指す。
【0023】
本明細書で使用される「薬学的に許容される」という語句は、健全な判断の範囲内で、妥当な利益/リスク比に見合った許容される毒性、刺激、アレルギー反応、および他の問題もしくは合併症を伴う、ヒトの組織と接触させて使用するのに好適であるような化合物、材料、組成物、および/または剤形を指す。
【0024】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、ヒトにおいて使用するのに好適な標準的な医薬賦形剤のうちのいずれかを指す。賦形剤の例としては、例えば、Martin,Remington’s Pharmaceutical Sciences,15th Ed.,Mack Publ.Co.Easton,PA[1975]を参照されたい。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される塩」は、ヒトへの投与に好適な本発明の化合物の任意の塩(例えば、酸または塩基)を指す。当業者に知られているように、本発明の化合物の「塩」は、無機または有機の酸および塩基に由来し得る。酸の例には、限定されないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン-p-スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸などが挙げられる。塩基の例には、限定されないが、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)水酸化物、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)、水酸化物、アンモニア、および式NW3でWがC1~4アルキルである化合物などが挙げられる。
【0026】
塩のさらなる例には、米国特許第8,263,653号に記載されているイオン対形成剤を使用して生成される塩が含まれ、その全開示は参照により本明細書に組み込まれる。なお、さらなるイオン対形成剤は、Handbook of Pharmaceutical Salts Properties,Selection and Use,UIPAC,Wiley-VCH,P.H.Stahl,ed.のガイダンスによって選択することができ、その全開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0027】
塩のさらなる例には、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、カンファー酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、フルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パルモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、ウンデカン酸塩などが挙げられる。塩のさらに他の例には、Na+、NH4
+、およびNW4
+(式中、WはC1~4アルキル基である)などの好適なカチオンと複合された本発明の化合物のアニオンが挙げられる。用語「アルキル」は、従来技術で認識されており、飽和脂肪族基を含み、直鎖アルキル基および分岐鎖アルキル基が含まれる。
【0028】
特定の実施形態では、医薬的に許容可能な塩は、以下の酸から調製されるものである。塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、パリシル酸、p-トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン-2-スルホン酸、およびベンゼンスルホン酸。特定の他の実施形態では、医薬的に許容可能な塩は、カルボン酸基のナトリウム、カリウム、またはカルシウム塩などのアルカリ金属またはアルカリ土類塩である。
【0029】
治療上の使用のため、本発明の化合物の塩は医薬的に許容可能であることが意図される。しかし、医薬的に許容可能でない酸および塩基の塩もまた、例えば、医薬的に許容可能な化合物の調製または精製における使用が認められ得る。
【0030】
説明全体を通して、組成物が、特定の構成要素を有する(having)、含む(including)、または含む(comprising)と記載されている場合、あるいはプロセスおよび方法が、特定のステップを有する(having)、含む(including)、または含む(comprising)と記載されている場合、さらに、列挙された構成要素から本質的になる(consist essentially of)、またはそれからなる(consist of)本発明の組成物があり、列挙された処理ステップから本質的になる(consist essentially of)、またはそれからなる(consist of)本発明によるプロセスおよび方法があることが企図される。
【0031】
一般的事柄として、パーセンテージを特定する組成物は特に指定されない限り重量によるものである。さらに、変数が定義を伴わない場合、変数の先の定義によって管理される。
【0032】
II.治療適用
本発明は、疾患または障害の治療を必要とする患者において疾患または障害を治療するための方法および組成物であって、疾患または障害を治療するために、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を、患者に経口投与することによって、治療するための方法および組成物を提供する。本発明はさらに、疾患または障害の治療を必要とする患者において疾患または障害を治療するための方法および組成物であって、疾患または障害を治療するために、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を、患者に経口投与することによって、治療するための方法および組成物を提供する。ただし、疾患または障害は前立腺癌ではなく、さらに、疾患または障害が膵臓癌である場合、治療は、(i)ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩と(ii)nab-パクリタキセルとの組み合わせを患者に投与することを含まないことを条件とする。本発明はさらに、疾患または障害の治療を必要とする患者において疾患または障害を治療するための方法および組成物であって、疾患または障害を治療するために、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を、患者に経口投与することによって、治療するための方法および組成物を提供する。ただし、(a)疾患または障害は前立腺癌ではなく、(b)治療はオートファジー阻害剤を患者に投与することをさらに含まず、(c)疾患または障害が膵臓癌である場合、治療は、(i)ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩と(ii)nab-パクリタキセルとの組み合わせを患者に投与することを含まないことを条件とする。本発明はさらに、疾患または障害の治療を必要とする患者において疾患または障害を治療するための方法および組成物であって、疾患または障害を治療するために、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を、患者に経口投与することによって、治療するための方法および組成物を提供する。ただし、疾患または障害は前立腺癌または膵臓癌でないことを条件とする。本発明はさらに、疾患または障害の治療を必要とする患者において疾患または障害を治療するための方法および組成物であって、疾患または障害を治療するために、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を、患者に経口投与することによって、治療するための方法および組成物を提供する。だだし、(a)疾患または障害は前立腺癌または膵臓癌ではなく、(b)治療は、オートファジー阻害剤を患者に投与することをさらに含まない。
【0033】
本発明はさらに、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸を、それを必要とする患者に送達する方法を提供し、方法は、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を、患者に経口投与するステップを含む。本発明はさらに、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸を、それを必要とする患者に送達するための方法を提供し、方法は、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を、患者に経口投与するステップを含む。ただし、患者は前立腺癌の治療を必要とせず、さらに、患者が膵臓癌の治療を必要とする場合、患者は、膵臓癌の治療のための(i)ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩と(ii)nab-パクリタキセルとの組み合わせも投与されないことを条件とする。本発明はさらに、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸を、それを必要とする患者に送達するための方法を提供し、方法は、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を、患者に経口投与するステップを含む。ただし、(a)患者は前立腺癌の治療を必要とせず、(b)患者はオートファジー阻害剤も投与されず、(c)患者が膵臓癌の治療を必要とする場合、患者は、膵臓癌の治療のための(i)ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩と(ii)nab-パクリタキセルとの組み合わせも投与されないことを条件とする。本発明はさらに、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸を、それを必要とする患者に送達する方法を提供し、方法は、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を、患者に経口投与するステップを含む。ただし、患者は前立腺癌または膵臓癌の治療を必要としないことを条件とする。本発明はさらに、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸を、それを必要とする患者に送達するための方法を提供し、方法は、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を、患者に経口投与するステップを含む。ただし、(a)患者は前立腺癌または膵臓癌の治療を必要とせず、(b)患者はオートファジー阻害剤も投与されないことを条件とする。
【0034】
疾患または障害の種類
特定の実施形態では、疾患または障害は、変化したエネルギー代謝に関連している。特定の実施形態では、疾患または障害は、癌である。特定の実施形態では、疾患または障害は、前立腺癌または膵臓癌以外の癌である。特定の実施形態では、疾患または障害は、骨髄異形成症候群である。特定の実施形態では、疾患または障害は、アルツハイマー病である。特定の実施形態では、疾患または障害は、糖尿病である。特定の実施形態では、疾患または障害は、微生物感染症である。特定の実施形態では、微生物感染症は、アクチノマイセス属、カンピロバクター属(例えば、Campylobacter jejuni)、大腸菌属(例えば、Escherichia coli)、レプトスピラ属、シュードモナス属(例えば、Pseudomonas aeruginosa)、赤痢菌属(例えば、Shigella boydii)、ブドウ球菌属(例えば、Staphylococcal aureus)、または連鎖球菌属(例えば、Streptococcus pneumoniae)の細菌による感染などの細菌感染症である。特定の実施形態では、微生物感染症は、イースト感染症(例えば、カンジダ属)または真菌感染症(例えば、クリプトコッカス属)である。特定の実施形態では、微生物感染症は、例えば、クリプトスポリジウム属、ジアルジア属、リーシュマニア属、ネオスポラ属、マラリア原虫変形体、トキソプラズマ属、トリコモナス属、またはトリパノソーマ属による真核生物性の感染である。特定の実施形態では、疾患または障害は、過剰増殖性疾患である。特定の実施形態では、疾患または障害は、乾癬である。特定の実施形態では、疾患または障害は、神経障害である。特定の実施形態では、疾患または障害は、糖尿病性神経障害である。
【0035】
好ましくは、疾患または障害は、癌である。本方法は、膵臓癌の重症度または種類に従って、さらに特徴付けることができる。特定の実施形態では、癌は、ステージIまたは初期癌であり、癌は小さく、1つの領域にのみ存在する。特定の実施形態では、癌は、ステージIIまたはIIIであり、癌はより大きく、近くの組織またはリンパ節に増殖している。特定の実施形態では、癌は、身体の他の部分に広がったステージIVまたは進行性もしくは転移性の癌。
【0036】
特定の実施形態では、癌は、ステージIのリンパ腫であり、癌は1つのリンパ節領域に見出されるか、または癌は1つのリンパ外の臓器または部位に浸潤しているが、いずれのリンパ節領域にも浸潤していない。特定の実施形態では、癌は、ステージIIのリンパ腫であり、癌は横隔膜の同じ側の2つ以上のリンパ節領域に見出されるか、または癌は横隔膜の同じ側の他のリンパ節領域における癌の有無にかかわらず、1つの臓器およびその所属リンパ節を伴う。特定の実施形態では、癌は、ステージIIIのリンパ腫であり、横隔膜の両側のリンパ節に癌が存在する。特定の実施形態では、癌は、ステージIVのリンパ腫であり、癌はリンパ節を超えて1つ以上の臓器に広がっている。
【0037】
特定の実施形態では、癌は、進行性または難治性である。特定の実施形態では、癌は、転移性である。特定の実施形態では、癌は、再発性(recurrentまたはrelapsed)である。特定の実施形態では、癌は、再発性または難治性である。特定の実施形態では、癌は、過去に治療されていない。特定の実施形態では、癌は、過去に、全身療法によって治療されていない。特定の実施形態では、癌は、過去に、全身療法または化学放射線による局所治療によって治療されていない。特定の実施形態では、患者は、造血細胞移植を受けていない。特定の実施形態では、患者は、造血細胞移植を受けている。
【0038】
特定の実施形態では、癌は、リンパ腫である。特定の実施形態では、癌は、T細胞リンパ腫である。特定の実施形態では、癌は、B細胞リンパ腫である。特定の実施形態では、癌は、マントル細胞リンパ腫である。特定の実施形態では、癌は、白血病である。特定の実施形態では、癌は、急性骨髄性白血病である。特定の実施形態では、癌は、癌腫である。特定の実施形態では、癌は、肉腫である。特定の実施形態では、癌は、骨髄腫である。特定の実施形態では、癌は、脳または脊髄の癌である。特定の実施形態では、癌は、黒色腫である。特定の実施形態では、癌は、芽腫である。特定の実施形態では、癌は、生殖細胞腫瘍である。特定の実施形態では、疾患または障害は、膵臓癌である。特定の実施形態では、疾患または障害は、膵臓癌ではない。特定の実施形態では、癌は、転移性膵臓癌である。特定の実施形態では、癌は、局所進行性膵臓癌である。特定の実施形態では、癌は、組織学的または細胞学的に実証され、測定可能な局所進行性膵臓腺癌である。特定の実施形態では、癌は、組織学的または細胞学的に実証され、測定可能な転移性膵臓腺癌である。特定の実施形態では、癌は、組織学的または細胞学的に実証され、過去に治療されていない測定可能な局所進行性膵臓腺癌である。特定の実施形態では、癌は、組織学的または細胞学的に実証され、過去に治療されていない測定可能な転移性膵臓腺癌である。特定の実施形態では、膵臓癌は、組織学的または細胞学的に実証され、過去に全身療法によって治療されていない測定可能な局所進行性膵臓腺癌である。特定の実施形態では、癌は、組織学的または細胞学的に実証され、過去に全身療法によって治療されていない測定可能な転移性膵臓腺癌である。特定の実施形態では、癌は、組織学的または細胞学的に実証され、過去に全身療法または化学放射線による局所治療によって治療されていない測定可能な局所進行性膵臓腺癌である。特定の実施形態では、癌は、組織学的または細胞学的に実証され、過去に全身療法または化学放射線による治療によって治療されていない測定可能な転移性膵臓腺癌である。特定の実施形態では、癌は、局所進行性膵臓腺癌である。特定の実施形態では、癌は、転移性膵臓腺癌である。特定の実施形態では、癌は、過去に治療されていない局所進行性膵臓腺癌である。特定の実施形態では、癌は、過去に治療されていない転移性膵臓腺癌である。特定の実施形態では、癌は、過去に全身療法によって治療されていない局所進行性膵臓腺癌である。特定の実施形態では、癌は、過去に全身療法によって治療されていない転移性膵臓腺癌である。特定の実施形態では、癌は、過去に全身療法または化学放射線による局所治療によって治療されていない局所進行性膵臓腺癌である。特定の実施形態では、癌は、過去に、全身療法または化学放射線による局所治療によって治療されていない膵臓腺癌である。特定の実施形態では、癌は、(i)ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩と(ii)nab-パクリタキセルとの組み合わせで同時に治療されていない転移性膵臓癌である。特定の実施形態では、癌は、(i)ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩と(ii)nab-パクリタキセルとの組み合わせで同時に治療されていない局所進行性膵臓癌である。特定の実施形態では、癌は、組織学的または細胞学的に実証され、(i)ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩と(ii)nab-パクリタキセルとの組み合わせで同時に治療されていない測定可能な局所進行性膵臓腺癌である。特定の実施形態では、癌は、組織学的または細胞学的に実証され、(i)ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩と(ii)nab-パクリタキセルとの組み合わせで同時に治療されていない測定可能な転移性膵臓腺癌である。特定の実施形態では、癌は、組織学的または細胞学的に実証され、過去に治療されておらず、(i)ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩と(ii)nab-パクリタキセルとの組み合わせで同時に治療されていない測定可能な局所進行性膵臓腺癌である。特定の実施形態では、癌は、組織学的または細胞学的に実証され、過去に治療されておらず、(i)ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩と(ii)nab-パクリタキセルとの組み合わせで同時に治療されていない測定可能な転移性膵臓腺癌である。特定の実施形態では、癌は、組織学的または細胞学的に実証され、過去に全身療法によって治療されておらず、(i)ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩と(ii)nab-パクリタキセルとの組み合わせで同時に治療されていない測定可能な局所進行性膵臓腺癌である。特定の実施形態では、癌は、組織学的または細胞学的に実証され、過去に全身療法によって治療されておらず、(i)ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩と(ii)nab-パクリタキセルとの組み合わせで同時に治療されていない測定可能な転移性膵臓腺癌である。特定の実施形態では、癌は、組織学的または細胞学的に実証され、過去に全身療法または化学放射線による局所治療によって治療されておらず、(i)ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩と(ii)nab-パクリタキセルとの組み合わせで同時に治療されていない測定可能な局所進行性膵臓腺癌である。特定の実施形態では、癌は、組織学的または細胞学的に実証され、過去に全身療法または化学放射線による局所治療によって治療されておらず、(i)ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩と(ii)nab-パクリタキセルとの組み合わせで同時に治療されていない測定可能な転移性膵臓腺癌である。特定の実施形態では、癌は、(i)ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩と(ii)nab-パクリタキセルとの組み合わせで同時に治療されていない局所進行性膵臓腺癌である。特定の実施形態では、癌は、(i)ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩と(ii)nab-パクリタキセルとの組み合わせで同時に治療されていない転移性膵臓腺癌である。特定の実施形態では、癌は、過去に治療されておらず、(i)ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩と(ii)nab-パクリタキセルとの組み合わせで同時に治療されていない局所進行性膵臓腺癌である。特定の実施形態では、癌は、以前に治療されておらず、(i)ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩と(ii)nab-パクリタキセルとの組み合わせで同時に治療されていない転移性膵臓腺癌である。特定の実施形態では、癌は、過去に全身療法によって治療されておらず、(i)ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩と(ii)nab-パクリタキセルとの組み合わせで同時に治療されていない局所進行性膵臓腺癌である。特定の実施形態では、癌は、過去に全身療法によって治療されておらず、(i)ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩と(ii)nab-パクリタキセルとの組み合わせで同時に治療されていない転移性膵臓腺癌である。特定の実施形態では、癌は、過去に全身療法または化学放射線による局所治療によって治療されておらず、(i)ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩と(ii)nab-パクリタキセルとの組み合わせで同時に治療されていない局所進行性膵臓腺癌である。特定の実施形態では、癌は、過去に全身療法または化学放射線による局所治療によって治療されておらず、(i)ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩と(ii)nab-パクリタキセルとの組み合わせで同時に治療されていない膵臓腺癌である。特定の実施形態では、疾患または障害は、前立腺癌である。特定の実施形態では、疾患または障害は、前立腺癌ではない。特定の実施形態では、癌は去勢抵抗性前立腺癌である。特定の実施形態では、疾患または障害は、肺癌である。特定の実施形態では、疾患または障害は、結腸癌である。特定の実施形態では、疾患または障害は、直腸癌である。特定の実施形態では、疾患または障害は、大腸癌である。特定の実施形態では、癌は、神経内分泌腫瘍である。特定の実施形態では、癌は、膵消化管神経内分泌腫瘍である。特定の実施形態では、疾患または障害は、肝臓癌である。特定の実施形態では、疾患または障害は、子宮癌である。特定の実施形態では、疾患または障害は、子宮頸癌である。特定の実施形態では、疾患または障害は、膀胱癌である。特定の実施形態では、疾患または障害は、腎臓癌である。特定の実施形態では、疾患または障害は、乳癌である。特定の実施形態では、疾患または障害は、卵巣癌である。
【0039】
特定の実施形態では、癌は、バーキットリンパ腫である。特定の実施形態では、癌は、再発性または難治性のバーキットリンパ腫である。特定の実施形態では、癌は、患者が少なくとも1つの以前の療法ラインで失敗した再発性または難治性のバーキットリンパ腫である。特定の実施形態では、癌は、患者が以前に骨髄移植で失敗した再発性または難治性のバーキットリンパ腫である。特定の実施形態では、癌は、ダブルヒットびまん性大細胞型B細胞リンパ腫である。特定の実施形態では、癌は、MYCならびにBCL2および/またはBCL6(DHL/THL)の再編成を有する高悪性度B細胞リンパ腫である。特定の実施形態では、癌は、ホジキンリンパ腫である。特定の実施形態では、癌は、非ホジキンリンパ腫である。特定の実施形態では、癌は、T細胞非ホジキンリンパ腫である。特定の実施形態では、癌は、再発性または難治性のホジキンリンパ腫である。特定の実施形態では、癌は、再発性または難治性の非ホジキンリンパ腫である。特定の実施形態では、癌は、再発性または難治性のT細胞非ホジキンリンパ腫である。特定の実施形態では、癌は、患者が造血細胞移植を受けていないホジキンリンパ腫である。特定の実施形態では、癌は、患者が造血細胞移植を受けているホジキンリンパ腫である。特定の実施形態では、癌は、患者が造血細胞移植を受けていない非ホジキンリンパ腫である。特定の実施形態では、癌は、患者が造血細胞移植を受けている非ホジキンリンパ腫である。特定の実施形態では、癌は、患者が造血細胞移植を受けていないT細胞非ホジキンリンパ腫である。特定の実施形態では、癌は、患者が造血細胞移植を受けているT細胞非ホジキンリンパ腫である。特定の実施形態では、癌は、患者が造血細胞移植を受けていない再発性または難治性のホジキンリンパ腫である。特定の実施形態では、癌は、患者が造血細胞移植を受けている再発性または難治性のホジキンリンパ腫である。特定の実施形態では、癌は、患者が造血細胞移植を受けていない再発性または難治性の非ホジキンリンパ腫である。特定の実施形態では、癌は、患者が造血細胞移植を受けているかまたは受けていない再発性または難治性のホジキンリンパ腫である。特定の実施形態では、癌は、患者がブレンツキシマブベドチンおよびPD-1阻害剤で失敗している再発性または難治性のホジキンリンパ腫である。特定の実施形態では、癌は、患者がブレンツキシマブベドチンおよびPD-1阻害剤で失敗し、造血細胞移植を受けている再発性または難治性のホジキンリンパ腫である。特定の実施形態では、癌は、患者がブレンツキシマブベドチンおよびPD-1阻害剤で失敗し、造血細胞移植を受けていない再発性または難治性のホジキンリンパ腫である。特定の実施形態では、癌は、患者が造血細胞移植を受けている再発性または難治性の非ホジキンリンパ腫である。特定の実施形態では、癌は、患者が造血細胞移植を受けていない再発性または難治性のT細胞非ホジキンリンパ腫である。特定の実施形態では、癌は、患者が造血細胞移植を受けている再発性または難治性のT細胞非ホジキンリンパ腫である。特定の実施形態では、癌は、患者が造血細胞移植を受けているかまたは受けていない再発性または難治性のT細胞非ホジキンリンパ腫である。
【0040】
治療剤を患者に投与する一般的な態様
一般的に、治療剤、例えば、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩は、疾患または障害を治療するのに十分な治療有効量で、患者に送達される。治療は、1日以上で1回または数回の投与を含み得、投与量は個別の開業医によって調整されて所望の効果を達成し得る。好ましくは、使用される薬剤(複数可)の投与量は、疾患細胞と主に相互作用して、正常細胞を比較的無傷にしておくのに十分なものであるべきである。
【0041】
投与量は、単回用量で、または1日に1回~4回以上などの個々の分割された用量の形態で投与され得る。特定の実施形態では、1日投与量は単回用量で投与される。患者における応答が特定の用量で不十分である場合、より高い用量(または異なるより局所的な送達経路による有効なより高い用量)が、患者の耐容性の範囲で使用され得る。
【0042】
併用療法では、併用療法における成分は、特定の順序で、かつ/または治療サイクルに従って、同じもしくは異なる日に投与され得る。例えば、特定の実施形態では、少なくとも1回の用量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩が、第2の治療剤の投与の前に(治療サイクルにおける早い日など)、患者に投与される。特定の実施形態では、併用療法の活性成分は、治療サイクルの同じ日に投与され得る(例えば、同時に共投与される)。特定の実施形態では、第2の治療剤の少なくとも1回用量が、治療サイクルにおける早い日など、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩を投与する前に患者に投与される。特定の実施形態では、治療サイクルは、患者への利益を最大化するために、1回以上繰り返すことができる。
【0043】
6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸およびその薬学的に許容される塩
特定の実施形態では、治療剤は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸である。特定の実施形態では、治療剤は、非晶質6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸である。特定の他の実施形態では、治療剤は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸の塩である。
【0044】
6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸の薬学的に許容される塩を調製するために使用され得る例示的なイオン対形成剤としては、例えば、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、メフェナム酸、およびトロメタミンなどの第三級アミン(トリエタノールアミンなど)、第二級アミン、または第一級アミン、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。特定の実施形態では、治療剤は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸と有機ブレンステッド塩基との塩である。特定の実施形態では、治療剤は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸とアミン化合物との塩である。さらに他の実施形態では、治療剤は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸と、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、アミノ置換脂肪族アルコール、ヒドロキシモノアルキルアミン、ヒドロキシジアルキルアミン、ヒドロキシトリアルキルアミン、アミノ置換ヘテロ脂肪族アルコール、アルキルジアミン、置換アルキルジアミン、または少なくとも1つの環窒素原子を含む任意選択的に置換されたヘテロアリール基との塩である。例えば、Berge et al.,“Pharmaceutical Salts,”J.of Pharmaceutical Science,1977;66:1-19を参照されたい。
【0045】
特定の実施形態では、治療剤は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸と、ポリエチレンイミン、ポリグルタミン酸、アンモニア、L-アルギニン、ベネタミン、ベンザチン、ベタイン、水酸化カルシウム、コリン、デアノール、ジエタノールアミン(2,2’-イミノビス(エタノール))、ジエチルアミン、2-(ジエチルアミノ)-エタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-メチル-グルカミン、ヒドラバミン、1H-イミダゾール、リジン、水酸化マグネシウム、4-(2-ヒドロキシエチル)-モルホリン、ピペラジン、水酸化カリウム、1-(2-ヒドロキシエチル)-ピロリジン、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン(2,2’,2’’-ニトリロトリス(エタノール))、トロメタミン、または水酸化亜鉛との塩である。特定の実施形態では、治療剤は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸と、ジイソプロパノールアミン、3-アミノ-1-プロパノール、メグルミン、モルホリン、ピリジン、ナイアシンアミド、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2-((2-ジメチルアミノ)エトキシ)エタノール、2-(ジメチルアミノ)エタノール、1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン、または水酸化アンモニウムとの塩である。特定の実施形態では、治療剤は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸と、例えば、水酸化セシウムなどのアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物との塩である。
【0046】
特定の実施形態では、治療剤は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸と、ポリマーコンジュゲートイオン対形成剤との塩であり、限定されないが、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリグルタミン酸またはデキストランなどの糖ベースのポリマーを上記のイオン対形成剤または任意の他の既知のイオン対形成剤のいずれかと組み合わせて使用される。特定の実施形態では、治療剤は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸と、Handbook of Pharmaceutical Salts Properties,Selection and Use,IUPAC,Wiley-VCH,P.H.Stahl,ed.のガイダンスによって選択されるイオン対形成剤との塩である(その開示の全体が、参照により本明細書に組み込まれる)。その中で特に注目されるイオン対合剤は、p.342の表5に列挙されるものを含むが、これらに限定されない。
【0047】
特定の実施形態では、治療剤は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸のトリエタノールアミン塩である。特定の実施形態では、治療剤は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸のピペラジン塩である。特定の実施形態では、治療剤は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸のベンザチン塩である。特定の実施形態では、治療剤は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸のDL-リジン塩である。特定の実施形態では、治療剤は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸のコリン、メグルミン、トロメタミン、L-アルギニン、L-リジン、カリウム、ナトリウム、カルシウム、またはマグネシウム塩である。特定の実施形態では、治療剤は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸のコリン塩である。特定の実施形態では、治療剤は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸のメグルミン塩である。特定の実施形態では、治療剤は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸のトロメタミン塩である。特定の実施形態では、治療剤は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸のL-アルギニン塩である。特定の実施形態では、治療剤は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸のL-リジン塩である。特定の実施形態では、治療剤は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸のカリウム、ナトリウム、カルシウム、またはマグネシウム塩である。特定の実施形態では、治療剤は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸のカリウム塩である。特定の実施形態では、治療剤は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸のナトリウム塩である。特定の実施形態では、治療剤は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸のカルシウム塩である。特定の実施形態では、治療剤は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸のマグネシウム塩である。
【0048】
特定の実施形態では、治療剤は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸のピペラジン塩である(CPI-613ピペラジン材料Aとして命名される)。特定の実施形態では、CPI-613ピペラジン材料Aは、3.22、6.47、9.72、15.76、16.34、18.89、19.43、20.75、21.00、21.76、22.96、23.83、25.12、26.16、および26.56(±0.2°2θ)にピークを有する粉末X線回折パターンを示す。特定の実施形態では、CPI-613ピペラジン材料Aは、3.22、18.89、19.43、20.75、および21.00(±0.2°2θ)にピークを有する粉末X線回折パターンを示す。
【0049】
特定の実施形態では、治療剤は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸のピペラジン塩である(CPI-613ピペラジン形態Bとして命名される)。特定の実施形態では、CPI-613ピペラジン形態Bは、5.09、7.30、7.90、8.16、9.04、9.62、10.23、10.83、11.70、12.27、12.69、13.61、13.92、14.68、15.38、15.88、16.31、16.92、17.31、17.51、17.98、18.62、19.03、19.35、20.12、20.60、21.16、21.40、21.78、22.24、22.59、23.12、24.07、24.92、25.38、26.35、27.12、27.60、および28.02(±0.2°2θ)にピークを有する粉末X線回折パターンを示す。特定の実施形態では、CPI-613ピペラジン形態Bは、7.30、15.88、16.31、16.92、17.31、19.03、19.35、20.60、21.78、22.59、24.07、および26.35(±0.2°2θ)にピークを有する粉末X線回折パターンを示す。特定の実施形態では、CPI-613ピペラジン形態Bは、15.88、16.31、16.92、19.03、19.35、20.60、21.78、および22.59(±0.2°2θ)にピークを有する粉末X線回折パターンを示す。特定の実施形態では、CPI-613ピペラジン形態Bは、15.88、16.31、16.92、19.03、19.35、および20.60(±0.2°2θ)にピークを有する粉末X線回折パターンを示す。
【0050】
特定の実施形態では、治療剤は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸のピペラジン塩である(CPI-613ピペラジン材料Cとして命名される)。特定の実施形態では、CPI-613ピペラジン材料Cは、3.39、10.30、11.43、11.81、13.24、13.78、15.56、15.83、16.30、16.93、17.27、17.67、18.36、18.93、19.64、20.73、21.86、22.44、22.79、23.21、23.74、25.62、26.85、および27.72(±0.2°2θ)にピークを有する粉末X線回折パターンを示す。特定の実施形態では、CPI-613ピペラジン材料Cは、15.56、15.83、17.67、18.36、18.93、20.73、22.44、および25.62(±0.2°2θ)にピークを有する粉末X線回折パターンを示す。特定の実施形態では、CPI-613ピペラジン材料Cは、15.83、18.36、18.93、および20.73(±0.2°2θ)にピークを有する粉末X線回折パターンを示す。
【0051】
特定の実施形態では、治療剤は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸のベンザチン塩である(CPI-613ベンザチン形態Aとして命名される)。特定の実施形態では、CPI-613ベンザチン形態Aは、5.43、6.16、7.16、9.12、10.83、11.10、12.30、13.68、14.58、15.71、15.95、16.25、17.94、18.27、18.73、19.08、19.89、20.19、20.49、21.73、22.35、22.68、23.21、23.67、24.00、24.52、24.72、24.99、25.72、26.23、26.60、27.09、および28.06(±0.2°2θ)にピークを有する粉末X線回折パターンを示す。特定の実施形態では、CPI-613ベンザチン形態Aは、5.43、10.83、12.30、15.95、17.94、18.73、19.08、21.73、および22.35(±0.2°2θ)にピークを有する粉末X線回折パターンを示す。特定の実施形態では、CPI-613ベンザチン形態Aは、5.43、18.73、および21.73(±0.2°2θ)にピークを有する粉末X線回折パターンを示す。
【0052】
特定の実施形態では、治療剤は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸のベンザチン塩である(CPI-613ベンザチン材料Bとして命名される)。特定の実施形態では、CPI-613ベンザチン材料Bは、7.48、7.91、12.69、13.19、14.58、15.02、15.47、15.88、16.14、16.39、16.66、16.99、17.23、17.43、18.04、18.41、18.90、19.19、19.45、19.76、20.07、20.53、20.74、21.01、21.33、21.78、22.02、22.34、22.63、23.53、23.82、24.08、24.41、24.92、25.07、25.54、25.64、25.93、26.38、26.69、27.07、27.60、27.93、28.37、29.06、および29.70(±0.2°2θ)にピークを有する粉末X線回折パターンを示す。特定の実施形態では、CPI-613ベンザチン材料Bは、7.48、16.14、16.66、16.99、17.23、17.43、18.41、18.90、19.45、19.76、22.34、23.53、24.08、および24.41(±0.2°2θ)にピークを有する粉末X線回折パターンを示す。特定の実施形態では、CPI-613ベンザチン材料Bは、7.48、16.14、16.99、17.23、17.43、18.90、19.45、22.34、および24.08(±0.2°2θ)にピークを有する粉末X線回折パターンを示す。特定の実施形態では、CPI-613ベンザチン材料Bは、16.14、17.23、17.43、19.45、および22.34(±0.2°2θ)にピークを有する粉末X線回折パターンを示す。
【0053】
特定の実施形態では、治療剤は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸のDL-リジン塩(CPI-613DL-リジン材料Aとして命名される)である。特定の実施形態では、CPI-613DL-リジン材料Aは、2.67、5.50、8.05、8.27、13.15、13.73、15.73、16.13、16.62、18.98、19.34、19.74、20.06、21.19、21.80、22.50、23.82、24.17、26.03、26.41、および27.00(±0.2°2θ)にピークを有する粉末X線回折パターンを示す。特定の実施形態では、CPI-613DL-リジン材料Aは、2.67、8.05、18.98、19.34、および21.19(±0.2°2θ)にピークを有する粉末X線回折パターンを示す。特定の実施形態では、CPI-613DL-リジン材料Aは、2.67および18.98(±0.2°2θ)にピークを有する粉末X線回折パターンを示す。
【0054】
特定の実施形態では、治療剤は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸のトリエタノールアミン塩である(CPI-613トリエタノールアミン形態Aとして命名される)。特定の実施形態では、CPI-613トリエタノールアミン形態Aは、2.76、5.54、8.33、11.14、11.87、13.11、13.92、14.79、16.42、16.73、17.48、18.07、19.02、19.52、20.23、20.79、21.37、21.98、22.37、22.77、23.04、23.27、23.94、25.01、26.42、27.34、28.07、28.42、および28.97(±0.2°2θ)にピークを有する粉末X線回折パターンを示す。特定の実施形態では、CPI-613トリエタノールアミン形態Aは、2.76、13.11、13.92、16.42、16.73、19.52、20.23、21.37、22.37、および22.77(±0.2°2θ)にピークを有する粉末X線回折パターンを示す。特定の実施形態では、CPI-613トリエタノールアミン形態Aは、13.92、19.52、20.23、21.37、22.37、および22.77(±0.2°2θ)にピークを有する粉末X線回折パターンを示す。
【0055】
特定の実施形態では、治療剤(6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩)は少なくとも約50%(w/w)の純度を有する。特定の実施形態では、治療剤は、少なくとも約60%(w/w)の純度を有する。特定の実施形態では、治療剤は、少なくとも約70%(w/w)の純度を有する。特定の実施形態では、治療剤は、少なくとも約80%(w/w)の純度を有する。特定の実施形態では、治療剤は、少なくとも約90%(w/w)の純度を有する。特定の実施形態では、治療剤は、少なくとも約95%(w/w)の純度を有する。特定の実施形態では、治療剤は、少なくとも約96%(w/w)の純度を有する。特定の実施形態では、治療剤は、少なくとも約97%(w/w)の純度を有する。特定の実施形態では、治療剤は、少なくとも約98%(w/w)の純度を有する。特定の実施形態では、治療剤は、少なくとも約99%(w/w)の純度を有する。
【0056】
医薬組成物
経口投与に適した任意の医薬組成物が、本発明で使用され得る。特定の実施形態では、本医薬組成物は、乾燥経口投与剤形である。特定の実施形態では、本医薬組成物は、錠剤、ピル、カプセル、カプレット、粉末、顆粒、溶液、懸濁液、およびゲルから選択される経口投与剤形である。経口投与剤形は、医薬的に許容可能な賦形剤を含み得、担体、希釈剤、安定剤、可塑剤、結合剤、流動促進剤、崩壊剤、増量剤、潤滑剤、可塑剤、着色剤、フィルム形成剤、香味剤、保存剤、投与ビヒクル、および前述のいずれかの任意の組み合わせなどが挙げられる。医薬的に許容可能な賦形剤は、部分的には、投与される特定の組成物によって、ならびに特定の投与計画によって決定される。したがって、本発明の医薬組成物に好適な幅広い様々な製剤がある(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th ed.,Gennaro et al.Eds.,Lippincott,Williams and Wilkins,2000)。
【0057】
本医薬組成物は、一般的に、少なくとも1種類の不活性賦形剤を含む。賦形剤には、医薬的に適合性のある結合剤、潤滑剤、湿潤剤、崩壊剤などが含まれる。錠剤、ピル、カプセル、トローチなどは、以下の賦形剤または同様な性質の化合物のいずれかを含むことができる。微細結晶セルロース、トラガカントガム、またはゼラチンなどの結合剤、デンプンまたはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、Primogel、またはコーンスターチなどの分散剤、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤、スクロースまたはサッカリンなどの甘味剤、あるいは、ペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ風味などの香味剤。単位剤形がカプセルであるとき、脂肪オイルなどの液体賦形剤を含むことができる。さらに、単位剤形は、投与単位の物理的形態を改善する様々な他の材料、例えば、糖衣、シェラック、または腸溶剤を含むことができる。さらに、シロップは、活性化合物に加えて、甘味剤としてスクロースならびに特定の保存剤、色素、着色剤、および香味剤を含み得る。特定の実施形態では、本医薬組成物は、賦形剤を組成物の約10重量%~約85重量%など、約5重量%~約99重量%の量で含み、治療剤が残りを構成する。特定の実施形態では、医薬的に許容可能な賦形剤は、組成物の全重量の約20%~約80%含まれる。特定の実施形態では、本医薬組成物は、治療剤を組成物の少なくとも約40重量%の量で含み、1つ以上の賦形剤が残りを構成する。特定の実施形態では、本医薬組成物は、治療剤を組成物の少なくとも約50重量%の量で含む。特定の実施形態では、本医薬組成物は、治療剤を組成物の少なくとも約60重量%の量で含む。特定の実施形態では、本医薬組成物は、治療剤を組成物の少なくとも約70重量%の量で含む。特定の実施形態では、本医薬組成物は、治療剤を組成物の少なくとも約80重量%の量で含む。特定の実施形態では、本医薬組成物は、治療剤を組成物の少なくとも約90重量%の量で含む。
【0058】
固形組成物のための希釈剤としては、限定されないが、微結晶セルロース(例えば、AVICEL(登録商標))、超微粒セルロース、ラクトース、デンプン、アルファ化デンプン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、砂糖、デキストレート、デキストリン、デキストロース、二塩基性リン酸カルシウム二水和物、三塩基性リン酸カルシウム、カオリン、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マルトデキストリン、マンニトール、ポリメタクリレート(例えば、Eudragit)、塩化カリウム、粉末セルロース、塩化ナトリウム、ソルビトールおよびタルクが挙げられる。
【0059】
固形医薬組物のための結合剤としては、限定されないが、アカシア、トラガカント、スクロース、グルコース、アルギン酸、カルボマー(例えば、Carbopol)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、グアーガム、水素化植物油、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(例えば、KLUCEL(登録商標))、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、METHOCEL(登録商標))、液体グルコース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マルトデキストリン、メチルセルロース、ポリメタクリレート、ポビドン(例えば、KOLLIDON(登録商標)、PLASDONE(登録商標))、アルファ化デンプン、アルギン酸ナトリウム、およびデンプンが挙げられる。特定の実施形態では、本医薬組成物は、結合剤を組成物の約0.75重量%~約15重量%など、約0.5重量%~約25重量%の量で含む。特定の実施形態では、本医薬組成物は、結合剤を組成物の約1重量%~約10重量%の量で含む。
【0060】
患者の胃における成形固体医薬組成物の溶解速度は、組成物への崩壊剤の添加によって増加され得る。崩壊剤には、限定されないが、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム(例えば、AC-DI-SOL(登録商標)、PRIMELLOSE(登録商標))、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン(例えば、KOLLIDON(登録商標)、POLYPLASDONE(登録商標))、グアーガム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、メチルセルロース、微結晶セルロース、粉末セルロース、アルファ化デンプン、アルギン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム(例えば、EXPLOTAB(登録商標))、およびデンプンが挙げられる。特定の実施形態では、本医薬組成物は、崩壊剤を組成物の約0.2重量%~10重量%など、約0.2重量%~約30重量%の量で含む。特定の実施形態では、本医薬組成物は、崩壊剤を組成物の約0.2重量%~約5重量%の量で含む。
【0061】
本医薬組成物は、任意選択的に1種類以上の薬学的に許容される湿潤剤を含む。このような湿潤剤は、好ましくは、水と密接に関連して本組成物の生物学的利用能を改善すると考えられる状態にAPIを維持するように選択される。湿潤剤として使用することができる界面活性剤の非限定的な例には、第四級アンモニウム化合物、例えば塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、および塩化セチルピリジニウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、例えばノノキシノール9、ノノキシノール10、およびオクトキシノール9、ポロキサマー(ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンブロックコポリマー)、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリドおよびオイル、例えばポリオキシエチレン、カプリル酸/カプリン酸モノ-およびジグリセリド(例えば、GattefosseのLabrasol(商標))、ポリオキシエチレンカスターオイルおよびポリオキシエチレン水素化カスターオイル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えばポリオキシエチレンセトステアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、例えばステアリン酸ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、例えばポリソルベート20およびポリソルベート80(例えば、ICIのTween(商標)80)、プロピレングリコール脂肪酸エステル、例えばプロピレンラウリン酸グリコール(例えば、GattefosseのLauroglycol(商標))、ラウリル硫酸ナトリウム、脂肪酸およびその塩、例えばオレイン酸、オレイン酸ナトリウム、およびオレイン酸トリエタノールアミン、グリセリル脂肪酸エステル、例えばモノステアリン酸グリセリル、ソルビタンエステル、例えばモノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタンおよびモノパルミチン酸ソルビタン、チロキサポール、ならびにそれらの混合物が挙げられる。特定の実施形態では、本医薬組成物は、湿潤剤を組成物の約0.4重量%~10重量%など、約0.25重量%~約15重量%の量で含む。特定の実施形態では、本医薬組成物は、湿潤剤を組成物の約0.5重量%~約5重量%の量で含む。特定の実施形態では、本医薬組成物はアニオン性界面活性剤である湿潤剤を含む。特定の実施形態では、本医薬組成物は湿潤剤としてラウリル硫酸ナトリウムを含む。特定の実施形態では、本医薬組成物は、ラウリル硫酸ナトリウムを組成物の約0.4重量%~約4重量%など、約0.25重量%~約7重量%の量で含む。特定の実施形態では、本医薬組成物は、ラウリル硫酸ナトリウムを組成物の約0.5重量%~約2重量%の量で含む。
【0062】
潤滑剤(例えば、付着防止剤または流動促進剤)を添加して、固体組成物の流動特性を改善する、かつ/または錠剤製剤の圧縮の際に組成物と装置の間の摩擦を低減することができる。潤滑剤として機能し得る賦形剤には、限定されないが、コロイド状二酸化ケイ素、三ケイ酸マグネシウム、粉末セルロース、デンプン、タルク、および三塩基性リン酸カルシウムが含まれる。好適な潤滑剤にはさらに、ベヘン酸グリセリル(例えば、GattefosseのCompritol(商標)888)、ステアリン酸およびその塩でステアリン酸マグネシウム、カルシウム、そしてナトリウムなど、ステアリン酸亜鉛、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、水素化カスターオイル、水素化植物オイル(例えば、AbitecのSterotex(商標))、ワックス、ホウ酸、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、フマル酸ナトリウム、塩化ナトリウム、DL-ロイシン、PEG(例えば、Dow Chemical CompanyのCarbowax(商標)4000およびCarbowax(商標)6000)、オレイン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ならびにラウリル硫酸マグネシウムが含まれる。特定の実施形態では、本医薬組成物は、潤滑剤を組成物の約0.2重量%~8重量%など、約0.1重量%~約10重量%の量で含む。特定の実施形態では、本医薬組成物は、潤滑剤を組成物の約0.25重量%~約5重量%の量で含む。特定の実施形態では、本医薬組成物は潤滑剤としてステアリン酸マグネシウムを含む。特定の実施形態では、本医薬組成物はコロイド状二酸化ケイ素を含む。特定の実施形態では、本医薬組成物はタルクを含む。特定の実施形態では、本組成物はステアリン酸マグネシウムまたはタルクを組成物の約0.5重量%~約2重量%の量で含む。
【0063】
香味剤および香味増強剤は、剤形を患者にとってより口当たりを良くする。本発明の組成物に含まれ得る医薬製品用の一般的な香味剤および香味増強剤には、マルトール、バニリン、エチルバニリン、メントール、クエン酸、フマル酸エチルマルトール、および酒石酸が含まれる。
【0064】
組成物はまた、医薬的に許容可能な任意の着色剤を使用して着色し、これらの外観を改善、および/または製品および単位投与レベルの患者識別を容易にし得る。
【0065】
賦形剤の選択および使用量は、本分野における標準的な手順の経験および考慮、ならびに参考文献に基づいて製剤科学者によって容易に決定され得る。本発明の固体組成物には、粉末、顆粒、凝集体、および成形組成物が含まれる。投与量は、単位剤形に簡便に提示され、製薬技術でよく知られた方法のいずれかによって調製され得る。剤形には、錠剤、ピル、粉末、カプレット、顆粒、カプセル、小袋、トローチ、およびロゼンジのような固体剤形が含まれる。特定の実施形態では、本医薬組成物は、錠剤である。特定の実施形態では、本医薬組成物は、噴霧乾燥分散体である。特定の実施形態では、本医薬組成物は、噴霧乾燥分散体であり、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS-M)から選択される少なくとも1つのポリマーを含む。特定の実施形態では、本医薬組成物は、噴霧乾燥分散体であり、Eudragit L100、ポリ(ビニルピロリドン)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、およびヒドロキシプロピルメチルセルローススクシネート(HPMCAS-M)から選択される少なくとも1つのポリマーを含む。特定の実施形態では、本医薬組成物は、噴霧乾燥分散体であり、Eudragit L100、ポリ(ビニルピロリドン)粘度グレードK30(PVP K30)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS-M)から選択される少なくとも1つのポリマーを含む。特定の実施形態では、本医薬組成物は、噴霧乾燥分散体であり、Eudragit L100およびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS-M)から選択される少なくとも1つのポリマーを含む。特定の実施形態では、本医薬組成物は、噴霧乾燥分散体であり、Eudragit L100を含む。特定の実施形態では、本医薬組成物は、噴霧乾燥分散体であり、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS-M)を含む。
【0066】
本発明の製剤は、好適な緩衝剤の添加により緩衝化され得る。
【0067】
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、単位用量組成物である。特定の実施形態では、本医薬組成物は、約1mg~約5000mgの治療剤を含む。特定の実施形態では、本医薬組成物は、約100mg~約3000mgの治療剤を含む。特定の実施形態では、本医薬組成物は、約200mg~約2000mgの治療剤を含む。特定の実施形態では、本医薬組成物は、約50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mg、1600mg、1700mg、1800mg、1900mg、2000mg、2500mg、または3000mgの治療剤を含む。特定の実施形態では、本医薬組成物は、約300mg、500mg、700mg、または1000mgの治療剤を含む。
【0068】
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は米国特許第7,220,428号に記載されているようにエマルジョン、粒子、またはゲルを含む。特定の実施形態では、本医薬組成物は、約0.1%w/w~約75%w/wの脂質または脂肪酸成分を有する固体または液体製剤である。特定の実施形態では、本製剤は約0.1%w/v~約15%w/vの脂質および脂肪酸成分を含む。特定の実施形態では、脂肪酸成分は飽和または不飽和のC4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、またはC12脂肪酸および/またはそのような脂肪酸の塩を含む。脂質はコレステロールおよびそのアナログを含み得る。
【0069】
投与量および治療計画
本治療剤は、任意の好適なスケジュールに従って、任意の好適な用量で、患者に経口投与され得る。用量および計画は、例えば、治療される状態、および別の治療剤が併用投与されるかどうかに基づいて変化し、本明細書で提供されるガイダンスを考慮して、当業者によって容易に決定され得る。特定の実施形態では、用量および計画は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩によって、静脈内で疾患または障害を効果的に治療するために使用される用量および計画に基づいて適応される。特定の実施形態では、用量は最大耐用量である。
【0070】
本発明の利点は、経口投与が、従来技術のIV投与と比較して、投与の柔軟性が大幅に増加することである。従来技術では、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸は、1M(150mg/mL)トリエタノールアミン水溶液中の50mg/mL溶液として製剤化され、注射用無菌5%デキストロース(D5W)によって50mg/mLから低くて4mg/mL(例、12.5mg/mL)に希釈されてから、中心静脈カテーテルを介して30~120分かけてIV注入として投与される。そのような注入は患者にとって不都合であり、頻繁で長期の投与を伴う投薬計画が、事実上除外される。IV投与後のビス-ベンジルチオ-オクタン酸の半減期は、ほんの約1~2時間であり(Pardee,T.S.et al.,Clin Cancer Res.2014,20,5255-64)、より頻繁なおよび/または長期の投与を効果的に使用して、ビス-ベンジルチオ-オクタン酸への患者の暴露を増加し得る。
【0071】
例えば、最近の第I相試験では、18名の転移性膵臓腺癌患者のうち11名は、2週間サイクルの1日目および3日目に500mg/m2の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸(最大耐容用量)を、サイクルの1日目に修正FOLFIRINOX(65mg/m2のオキサリプラチン、400mg/m2のロイコボリン、140mg/m2のイリノテカン、および400mg/m2ボーラスに続いて46時間かけて2400mg/m2のフルオロウラシル)およびサイクルの4日目にNeulasta(ペグフィルグラスチム)と併用して静脈内治療したときに、奏功が得られた(Alistar A.et al.,Lancet Onol.2017,18,770-78、参照により本明細書に組み込まれる)。本発明によれば、転移性膵臓腺癌を有する患者は、Alistarの第I相試験のように2週間サイクルの1日目に修正FOLIFIRINOXで治療することができるが、開業医は6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸の用量および計画に関して柔軟性を有するであろう。6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸は、第I相試験のように、2週間サイクルの1日目および3日目に、1日量を1回経口投与され得る。あるいは、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸は、2回以上(例えば、3、4、または5回)の分割用量で投与され得る。単回用量または分割用量は、1日目および3日目に投与、あるいは毎日を含めて1日目および/もしくは3日目以外のサイクルの異なる日に、または1日目および/もしくは3日目に追加して投与され得る。
【0072】
別の第I相試験では、4週間サイクルの1週目、2週目、および3週目の1日目および4日目に、840mg/m2~2940mg/m2の1日量で投与した場合、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸の静脈内投与は、骨髄異形成症候群(MDS)、急性骨髄性白血病(AML)、バーキットリンパ腫、および皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)を有する患者において有効性を示した(Pardee,T.et al.,Clin.Cancer Res.2014,20,5255-64、参照により本明細書に組み込まれる)。本発明によれば、MDS、AML、バーキットリンパ腫、またはCTCLを有する患者は、同じまたは異なるスケジュールに従って6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸により経口治療され得る。6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸は、Pardeeの第I相試験のように、4週間サイクルの1週目、2週目、および3週目の1日目および4日目に、1日量を1回経口投与され得る。あるいは、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸は、1日目および3日目以外でまたはそれに加えて(最大毎日を含めて)、それらの日にまたははサイクルの異なる日に、2回以上(例えば、3、4、または5回)の分割用量で投与され得る。
【0073】
別の第I相試験では、静脈内6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸を、4週間サイクルの1~4日目、8日目、11日目、15日目、および18日目に、2000mg/m2~2750mg/m2の1日量で投与し、4週間サイクルの4日目および5日目にベンダムスチン(90mg/m2)と併用した場合、再発性または難治性のT細胞リンパ腫を有する患者において有効性を示した(Lamar Z.et al.,Blood 2016,128,4163、参照により本明細書に組み込まれる)。T細胞リンパ腫を有する患者は、Lamarの第I相試験のように、4週間サイクルの4日目および5日目にベンダムスチンで治療され得るが、本発明によれば、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸は、同じまたは異なるスケジュールに従って投与され得る。6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸は、Lamarの第I相試験のように、4週間サイクルの1~4、8、11、15、および18日目に1日量を1回経口投与され得る。あるいは、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸は、2回以上(例えば、3、4、または5回)の分割用量で投与され得る。単回用量または分割用量は、4週間サイクルの1~4、8、11、15、および18日目に、または1~4、8、11、15、および18日目以外のサイクルの異なる日に、もしくはそれに追加して(最大毎日を含めて)投与され得る。
【0074】
経口投与の別の利点は、維持療法を実行可能にすることである。例えば、第一選択療法-6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸の有無に関わらない-で成功裏に治療され、癌が部分的または完全に寛解している患者は、再発を遅延または防止するために長期ベースで経口によって6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩で治療され得る。維持治療は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩の、例えば、毎日または毎週など、定期的に、1日当たり1、2、3、4、または5回の用量を含み得る。特定の実施形態では、維持療法は、膵臓癌の治療のためである。特定の実施形態では、維持療法は、膵臓癌の治療のためであり、患者はゲムシタビンおよびnab-パクリタキセルをさらに投与されない。特定の実施形態では、維持療法は、膵臓癌の治療のためであり、患者はゲムシタビンまたはnab-パクリタキセルをさらに投与されない。
【0075】
特定の実施形態では、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩は、それが投与される各日に、約1mg~約10,000mgの用量で経口投与される。1日用量は、1回の用量で投与、または3、4、もしくは5回の用量などの2回の用量以上に分割され得る。特定の実施形態では、1日量は、約10mg~約7,500mgである。特定の実施形態では、1日量は、約100mg~約5,000mgである。特定の実施形態では、1日量は、約200mg~約4,000mgである。特定の実施形態では、1日量は、約300mg~約3,000mgである。特定の実施形態では、1日量は、約400mg~約2,500mgである。特定の実施形態では、1日量は、約500mg~約2,000mgである。特定の実施形態では、1日用量は、約100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1,000mg、1,250mg、1,500mg、1,750mg、2,000mg、2,500mg、3,000mg、3,500mg、4,000mg、4,500mg、5,000mg、6,000mg、7,000mg、8,000mg、9,000mg、または10,000mgである。特定の実施形態では、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩の各用量は、約0.5g~1.5gであり、1日に1、2、3、4、または5回投与される。特定の実施形態では、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩の各用量は、約0.5g~1.5gであり、1日に1回投与される。特定の実施形態では、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩の各用量は、約0.5g~1.5gであり、1日に2回投与される。特定の実施形態では、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩の各用量は、約0.5g~1.5gであり、1日に3回投与される。特定の実施形態では、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩の各用量は、約0.5g~1.5gであり、1日に4回投与される。特定の実施形態では、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩の各用量は、約0.5g~1.5gであり、1日に5回投与される。特定の実施形態では、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩の各用量は約1gであり、1日に1、2、3、4、または5回投与される。特定の実施形態では、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩の各用量は、約1gであり、1日に1回投与される。特定の実施形態では、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩の各用量は、約1gであり、1日に2回投与される。特定の実施形態では、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩の各用量は、約1gであり、1日に3回投与される。特定の実施形態では、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩の各用量は、約1gであり、1日に4回投与される。特定の実施形態では、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩の各用量は、約1gであり、1日に5回投与される。
【0076】
特定の実施形態では、投与サイクルは少なくとも1回繰り返される。特定の実施形態では、本発明の方法はサイクル2回以上による治療を含む。特定の実施形態では、本発明の方法はサイクル3回以上による治療を含む。特定の実施形態では、本発明の方法はサイクル4回以上による治療を含む。特定の実施形態では、本発明の方法はサイクル5回以上による治療を含む。特定の実施形態では、本発明の方法はサイクル6回以上による治療を含む。特定の実施形態では、本発明の方法はサイクル7回以上による治療を含む。特定の実施形態では、本発明の方法はサイクル8回以上による治療を含む。特定の実施形態では、本発明の方法はサイクル9回以上による治療を含む。特定の実施形態では、本発明の方法はサイクル10回以上による治療を含む。特定の実施形態では、本発明の方法は、例えば、少なくとも1か月間、6か月間、1年間、2年間、3年間、またはそれ以上の長期間、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩による、毎日または毎週ベースを含む定期的な治療を含む。
【0077】
第2の治療剤
特定の実施形態では、本発明の方法は、治療有効量の第2の治療剤の投与をさらに含む。例えば、本発明は、疾患または障害の治療を必要とする患者において疾患または障害を治療するための方法を提供し、方法は、疾患または障害を治療するために、(a)治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を、患者に経口投与するステップと、(b)治療有効量の第2の治療剤を、患者に投与するステップと、を含む。本発明は、疾患または障害の治療を必要とする患者において疾患または障害を治療するための方法を提供し、方法は、疾患または障害を治療するために、(a)治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を、患者に経口投与するステップと、(b)治療有効量の第2の治療剤を、患者に投与するステップと、を含む。ただし、第2の治療剤がオートファジー阻害剤ではなく、治療がオートファジー阻害剤を患者に投与することを含まないことを条件とする。本発明はさらに、疾患または障害の治療を必要とする患者において疾患または障害を治療するための方法を提供し、方法は、疾患または障害を治療するために、(a)治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を、患者に経口投与するステップと、(b)治療有効量の第2の治療剤を、患者に投与するステップと、を含む。ただし、疾患または障害が前立腺癌ではなく、さらに、疾患または障害が膵臓癌である場合、患者は、(i)ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩と(ii)nab-パクリタキセルとの組み合わせをさらに投与されないことを条件とする。本発明は、疾患または障害の治療を必要とする患者において疾患または障害を治療するための方法をさらに提供し、方法は、疾患または障害を治療するために、(a)治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を、患者に経口投与するステップと、(b)治療有効量の第2の治療剤を、患者に投与するステップであって、ただし、(a)疾患または障害が前立腺癌ではなく、(b)第2の治療剤がオートファジー阻害剤ではなく、かつ治療がオートファジー阻害剤を患者に投与することを含まないことを条件とする、ステップと、(c)疾患または障害が膵臓癌である場合、治療は、(i)ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩と(ii)nab-パクリタキセルとの組み合わせを患者に投与することをさらに含まないステップと、を含む。特定の実施形態では、本発明は、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸を、それを必要とする患者に送達する方法を提供し、方法は、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を、患者に経口投与するステップと、さらに、治療有効量の第2の治療剤を、患者に投与するステップと、を含む。本発明は、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸を、それを必要とする患者に送達するための方法をさらに提供し、方法は、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を、患者に経口投与するステップと、さらに、治療有効量の第2の治療剤を、患者に投与するステップと、を含む。ただし、患者が前立腺癌の治療を必要とせず、さらに、患者が膵臓癌の治療を必要とする場合、患者は、膵臓癌の治療のための(i)ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩と(ii)nab-パクリタキセルとの組み合わせも投与されないことを条件とする。本発明はさらに、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸を、それを必要とする患者に送達するための方法を提供し、方法は、治療有効量の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を、患者に経口投与するステップと、さらに、治療有効量の第2の治療剤を、患者に投与するステップと、を含む。ただし、(a)患者は前立腺癌の治療を必要とせず、(b)患者はオートファジー阻害剤も投与されず、(c)患者が膵臓癌の治療を必要とする場合、患者は、膵臓癌の治療のための(i)ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩と(ii)nab-パクリタキセルとの組み合わせも投与されないことを条件とする。
【0078】
特定の実施形態では、第2の治療剤は、化学療法剤である。特定の実施形態では、第2の治療剤は、ベンダムスチンまたはその薬学的に許容される塩である。特定の実施形態では、第2の治療剤は、例えば、疾患または障害が、ホジキンリンパ腫またはT細胞非ホジキンリンパ腫を含む非ホジキンリンパ腫などの、リンパ腫である場合、ベンダムスチン塩酸塩である。特定の実施形態では、第2の治療剤は、例えば、疾患または障害が膵臓癌である場合、オキサリプラチン、ロイコボリン、イリノテカン、およびフルオロウラシルの組み合わせである。特定の実施形態では、第2の治療剤は、例えば、疾患または障害が膵臓癌である場合、ゲムシタビンおよびnab-パクリタキセルの組み合わせである。特定の他の実施形態では、第2の治療剤は、例えば、疾患または障害が膵臓癌である場合、ゲムシタビンおよびnab-パクリタキセルの組み合わせではない。特定の実施形態では、第2の治療剤は、例えば、疾患または障害が前立腺癌である場合、ドセタキセルである。特定の他の実施形態では、第2の治療剤は、例えば、疾患または障害が前立腺癌である場合、ドセタキセルではない。特定の実施形態では、第2の治療剤は、オートファジー阻害剤である。特定の実施形態では、第2の治療剤は、オートファジー阻害剤ではない。
【0079】
第2の治療剤は、任意の適切な用量で、任意の好適なスケジュールに従って、投与され得る。様々な疾患および障害に対する適切な用量およびスケジュールは、当該技術分野で既知であり、過度の実験なしに、経口6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸と共に使用するように適合することができる。
【0080】
治療の有効性および安全性
本発明の治療方法は、治療の有効性および安全性によってさらに特徴付けられ得る。好ましくは、本方法は許容可能な安全プロファイルを提供し、リスクを上回る治療の利益を伴う。癌を有する少なくとも10名の患者の第II相または第III相の臨床治験で試験した場合、本発明の方法は、好ましくは、少なくとも約10%の全奏効率、少なくとも約1か月の奏効期間、少なくとも約1か月の無増悪生存期間(PFS)、および/または少なくとも約1か月の全生存期間(OS)をもたらす。好ましくは、第II相または第III相臨床試験は少なくとも15名の患者を含む。より好ましくは、第II相または第III相臨床試験は少なくとも20名の患者を含む。より好ましくは、第II相または第III相臨床試験は少なくとも25名の患者を含む。より好ましくは、第II相または第III相臨床試験は少なくとも50名の患者を含む。より好ましくは、第II相または第III相臨床試験は少なくとも100名の患者を含む。より好ましくは、第II相または第III相臨床試験は少なくとも200名の患者を含む。より好ましくは、第II相または第III相臨床試験は少なくとも300名の患者を含む。より好ましくは、第II相または第III相臨床試験は少なくとも400名の患者を含む。より好ましくは、第II相または第III相臨床試験は少なくとも500名の患者を含む。好ましくは、本発明の方法は患者における少なくとも約20%の全奏効率をもたらす。より好ましくは、本発明の方法は少なくとも約30%の全奏効率をもたらす。より好ましくは、本発明の方法は少なくとも約40%の全奏効率をもたらす。より好ましくは、本発明の方法は少なくとも約50%の全奏効率をもたらす。より好ましくは、本発明の方法は少なくとも約60%の全奏効率をもたらす。より好ましくは、本発明の方法は少なくとも約70%の全奏効率をもたらす。より好ましくは、本発明の方法は少なくとも約80%の全奏効率をもたらす。より好ましくは、本発明の方法は少なくとも約90%の全奏効率をもたらす。好ましくは、本発明の方法は少なくとも約2か月の奏効期間、PFS、および/またはOSをもたらす。好ましくは、本発明の方法は少なくとも約3か月の奏効期間、PFS、および/またはOSをもたらす。好ましくは、本発明の方法は少なくとも約4か月の奏効期間、PFS、および/またはOSをもたらす。好ましくは、本発明の方法は少なくとも約5か月の奏効期間、PFS、および/またはOSをもたらす。好ましくは、本発明の方法は少なくとも約6か月の奏効期間、PFS、および/またはOSをもたらす。好ましくは、本発明の方法は少なくとも約7か月の奏効期間、PFS、および/またはOSをもたらす。好ましくは、本発明の方法は少なくとも約8か月の奏効期間、PFS、および/またはOSをもたらす。好ましくは、本発明の方法は少なくとも約9か月の奏効期間、PFS、および/またはOSをもたらす。好ましくは、本発明の方法は少なくとも約10か月の奏効期間、PFS、および/またはOSをもたらす。好ましくは、本発明の方法は少なくとも約11か月の奏効期間、PFS、および/またはOSをもたらす。好ましくは、本発明の方法は少なくとも約12か月の奏効期間、PFS、および/またはOSをもたらす。好ましくは、本発明の方法は少なくとも約14か月の奏効期間、PFS、および/またはOSをもたらす。好ましくは、本発明の方法は少なくとも約16か月の奏効期間、PFS、および/またはOSをもたらす。好ましくは、本発明の方法は少なくとも約18か月の奏効期間、PFS、および/またはOSをもたらす。好ましくは、本発明の方法は少なくとも約20か月の奏効期間、PFS、および/またはOSをもたらす。好ましくは、本発明の方法は少なくとも約24か月の奏効期間、PFS、および/またはOSをもたらす。特定の実施形態では、上記の全奏効率、奏効期間、および無増悪生存期間は、第II相臨床試験で測定される。特定の実施形態では、上記の全奏効率、奏効期間、および無増悪生存期間は、第III相臨床試験で測定される。
【0081】
治療のための患者
本治療方法は、治療される患者に従ってさらに特徴付けられ得る。好ましくは、患者はヒトである。特定の実施形態では、患者は成人である。
【0082】
均等物
上の記載は本発明の多数の態様および実施形態を説明しており、治療用途、治療方法、および医薬組成物を含む。本特許出願は、態様および実施形態のすべての組み合わせおよび置換を明確に考慮している。
【実施例】
【0083】
全般的に今まで説明されている本発明は、以下の実施例を参照することによってより容易に理解されるであろうが、本発明の特定の態様および実施形態の説明の目的でのみ含まれ、本発明を限定することは意図されない。
【0084】
実施例1-非小細胞肺癌における6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸の経口有効性
ヒトH460NSCLC細胞はAmerican Type Cell Culture(ATCC)(カタログ番号HTB-177、Manassas、VA)から入手した。これらの細胞は、ATCCから腫瘍細胞を受理した際、Charles River Labs Molecular Divisionによって実施されたマウス抗体産生(MAP)テストを用いてウイルス汚染について試験して陰性であった。腫瘍細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)および2mM L-グルタミン添加したロズウェルパーク記念研究所(RPMI)-1640溶液を50mL含むT225組織培養フラスコ中で、加湿した5%CO2雰囲気において37℃で維持した。細胞をトリプシン処理によって2~3日ごとに1:10の比率で分割し、新しいフラスコ中の新鮮な培地に再懸濁させた。細胞は実験のために70~90%の密集度で同じ方法で採取した。
【0085】
CD1-Nu/Nu雌マウス、約4~6週齢はCharles River Laboratoriesから入手した。ストーニーブルックにあるニューヨーク州立大学(SUNY)のDepartment of Animal Laboratory Researchのマイクロアイソレーター室においてマウスを1ケージで5匹飼育した。明暗サイクルは毎日各12時間であり、午前7時~午後7時まで明るくした。食餌(Purina Rodent Chow)および水(蒸留した無菌濾過水、pH7)を自由に摂取させた。プロトコルと手順は、SUNY施設内動物管理使用委員会(IACUC)によって承認され、規則に従った。
【0086】
腫瘍接種前の試験場所への動物の到着と実験との間に7日間の順応期間をもうけた。マウスは右脇腹部に、0.1mLのダルベッコのリン酸緩衝化塩(PBS)溶液に懸濁させた2×106個のヒトH460NSCLCまたはBxPC3膵臓癌細胞を、27-5/8ゲージ針付1ccシリンジを用いて皮下(SC)接種した。腫瘍寸法(長さおよび幅)は、処置前、処置中、および処置後に毎日測定し(ノギスを使用)、腫瘍体積は長楕円体の式(長さ×幅2)/2を使用して計算した。試験品または対照品による処置を腫瘍細胞移植の8日後に開始し、そのとき腫瘍は約300mm3であった。
【0087】
6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸の経口投与は、群あたり11匹の動物で100mg/kgだった。6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸の100mgを5%デキストロース中の少量の0.01~0.05N NaOHに懸濁させ、4%氷酢酸でpH7.0に滴定して50mg/mLにした。投与前に、懸濁液を5%デキストロースによって12.5mg/mLに希釈し、動物は胃管栄養法によって送達された約0.2mLの投与容量で100mg/kgを受けた。腫瘍細胞移植後、マウスを8日目、15日目、22日目、および29日目に処置した。
【0088】
同様な試験を2×106個のBxPC-3細胞によって接種されたCD-1ヌードマウス(n=9)でも実施した。試験は腫瘍が150mm3の平均サイズに達したときに開始し(0日目)、CPI-613を100mg/週の経口用量で4週間投与した。比較群(n=9)はIP処置によって25mg/kgの週用量で実施した。
【0089】
結果を、
図1および
図2に示す。6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸で処置されたマウスにおける腫瘍は、5%デキストロースによって処理されたマウスまたは未処置マウスにおけるものよりもかなり遅く増殖したことが明らかである。効果は特にBxPC3腫瘍で顕著であった。この例は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸が経口投与されたときに癌を治療するのに有効であることを示す。
【0090】
実施例2-AMLにおける6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸の経口有効性
0日目に、C57Bl/6マウスに100万個のMFL2細胞を尾静脈に注入し(Pardee,T.S.et al.,Experimental Hematology,2011,39,473-485)、7日目から(生物発光イメージングによって生着を確認する際)、CPI-613で経管栄養によって処置し(週末を除き、1日に300mg/kg、5%デキストロース中0.05NのNaOH中に50mg/mLの溶液、4%の氷酢酸でpH7.5~8に調整、クロロキン実験用の1匹の動物)、クロロキンで腹腔内投与によって処置し(IP)(週末を除き、1日に200μL(約100mg/kg)、PBS中10mg/mLの溶液、Chlr、3匹の動物)、メトホルミンで経口投与によって処置し(飲料水中に1mg/mL、自由に摂取)、またはCPI-613(上記のように経管栄養で1日に300mg/kg)とクロロキン(上記のようにIPで1日に200μL、4匹)もしくはメトホルミン(上記のように飲料水中に1mg/mL、自由に摂取)のいずれかとの組み合わせで経口投与によって処置し、生存を追跡した。対照動物(クロロキン実験における1匹の動物)は、経口ビヒクルおよびIPビヒクルの両方を受けた。P値は、ログランク検定によって決定された。
【0091】
結果を、
図3Aおよび
図3Bに示す。この実施例は、経口6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸を、特に、クロロキンまたはメトホルミンのいずれかと組み合わせた場合、AML腫瘍を有するマウスの生存率を有意に延長することを示す。
【0092】
実施例3-ALLにおける6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸の経口有効性
0日目に、Balb/cマウスに、100万個のBaf3-p210細胞を尾静脈に注入し、3日目から(生物発光イメージングによって生着を確認する際)、生理食塩水(対照)、ドキソルビシン(200μLのPBS中に3mg/kg IP)、またはドキソルビシン(200μLのPBS中に3mg/kg IP)に加えてCPI-613(250mg/mLの経管栄養、5%デキストロース中の0.05NのNaOH中のCPI-613の25mg/mLの溶液、4%氷酢酸でpH7.5~8に調整された)で処置し、生存を追跡した。ドキソルビシンを3日間連続して1日に1回投与し、CPI-613を死亡するまで1日に1回投与した。P値は、ログランク検定によって決定された。
【0093】
結果を、
図4に示す。この実施例は、経口6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸をドキソルビシンと組み合わせると、ドキソルビシン単独と比較して、フィラデルフィア染色体陽性のB細胞ALL腫瘍を有するマウスの生存を有意に延長することを示す。
【0094】
実施例4-6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸の塩
一般的な手順
示差走査熱量測定は、TA InstrumentsのQ2000を使用して行った。温度較正は、NISTトレーサブルインジウム金属を使用して行った。手動ピンホールを有するアルミ圧着パンに試料を配置し、重量を正確に記録した。試料パンとして構成された秤量したアルミニウムパンを、セルの参照側に配置した。試料を-50℃から250℃まで、10℃/分の加熱速度を使用して加熱した。
【0095】
溶液プロトン核磁気共鳴スペクトルを、399.82MHzの1Hラーモア周波数で、AgilentのDD2-400分光計を用いて、25℃で取得した。試料を、テトラメチルシラン(TMS)を含有するDMSO-d6に溶解した。スペクトルは、6.5μsの1Hパルス幅、5秒の取得時間、走査間の2.5秒の遅延、6410Hzの64102データポイントを含むスペクトル幅、および40回の積算スキャンで取得した。自由誘導減衰(FID)を、131072ポイントおよび0.2Hzの指数関数線幅拡大係数を有するAgilentのVnmrJ 3.2Aソフトウェアを使用して処理して、シグナル対ノイズ比を改善した。不完全に重水素化された溶媒からの残留ピークは、約2.50ppmである。スペクトルは、内部テトラメチルシラン(TMS)を0.0ppmとして参照した。
【0096】
PANalytical X’Pert PRO MPD回折計を使用して、粉末X線回折パターンを収集した。標本は、Optix長微細焦点線源を使用して生成されたCu放射線を使用して分析した。楕円傾斜型多層膜鏡を使用して、試料を通して検出器上に、線源のCuKαX線の焦点を合わせた。試料を3ミクロン厚のフィルムの間に挟み、透過型の配置で分析し、回折ベクトルと平行に回転させて配向統計値を最適化した。ビームストップ、短い散乱防止エクステンション、散乱防止ナイフエッジ、およびヘリウムパージを使用して、空気散乱によって生成されるバックグラウンドを最小限に抑えた。入射ビームおよび回折ビームにソーラースリットを使用して、軸発散を最小限に抑えた。検体から240mm離れた走査位置感知検出器(X’Celerator)を使用して、回折パターンを収集した。分析の前に、シリコン標本(NIST標準物質640d)を分析して、シリコン111のピークの位置を検証した。粉末X線回折パターンの図は、未検証のソフトウェアPatternMatch v3.0.4を使用して生成された(非cGMPを表す)。
【0097】
Ever-Gloの中赤外/遠赤外線源、臭化カリウム(KBr)ビームスプリッター、および重水素化硫酸トリグリシン(DTGS)検出器を搭載したNexus670(登録商標)フーリエ変換赤外(FT-IR)分光光度計(Thermo Nicolet)上で赤外スペクトルを取得した。波長検証は、NIST SRM 1921b(ポリスチレン)を使用して行った。ゲルマニウム(Ge)結晶を有する減衰全反射(ATR)アクセサリ(Thanderdome(商標)、Thermo Spectra-Tech)をデータ取得に使用した。各スペクトルは、4cm-1のスペクトル分解能で収集された256回の積算スキャンを表す。バックグラウンドのデータセットは、綺麗なGeクリスタルを用いて取得した。これら2つのデータセットの比率を互いに比較することによって、Log1/R(R=反射率)スペクトルを得た。
【0098】
熱重量分析は、TA Instrumentsのモデル2050を使用して行った。温度較正は、ニッケルおよびAlumel(商標)を使用して行った。各試料をアルミニウムパンに入れた。試料を密封し、蓋を貫通させ、次いで熱重量測定炉に挿入した。炉を窒素下で加熱した。試料を、周囲温度から250℃、300℃、または350℃まで10℃/分の加熱速度を使用して加熱した。
【0099】
ピペラジン
6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸(66.8mg)を、ガラスバイアルに充填し、およそ1モル当量のピペラジンを含有するエーテル溶液(1.1mL中14.8mg)と接触させると、溶解し、続いて油が形成された。試料を一晩冷蔵(2~8℃)すると、核が形成された。試料は、約3日間、冷凍庫に移した。上清をデカントし、固体を窒素下で短時間乾燥させて、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸とピペラジンとの2:1の化学量論比を有する結晶性無水材料として、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸のピペラジン塩を得た(CPI-613ピペラジン材料Aと表す)。示差走査熱量論では、38℃で始まる吸熱事象を示す。
図5A、
図5B、および
図5Cは、CPI-613ピペラジン材料Aの粉末X線回折パターン、示差走査熱量測定サーモグラム、およびプロトン核磁気共鳴スペクトルを示す。CPI-613ピペラジン材料Aの粉末X線回折パターンで観察されたピークを、以下の表に列挙する。
【表1】
【0100】
6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸(105.2mg)およびジエチルエーテル(2.0mL)をガラスバイアルに充填した。混合物を超音波処理して、透明な溶液を得た。溶液を少量のCPI-613ピペラジン材料Aで播種した。試料を撹拌プレート上に置き、約300RPMで撹拌した。約1/2モル当量のピペラジン(2mL中12.5mg)を含有するエーテル溶液を溶液に加え、沈殿が生じた。約5分後、追加のジエチルエーテル(3mL)を、CPI-613ピペラジン材料Aの追加のシードと共にスラリーに加え、次いで超音波処理を行った。スラリーを撹拌プレートに戻し、追加のエーテル(9mL)で処理した。約4日後、固体を真空濾過によって回収し、窒素下で短時間乾燥させて、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸とピペラジンとの2:1の化学量論を有する結晶性無水材料を96.5mg得た(CPI-613ピペラジン形態Bと表す)。示差走査熱量論では、69℃で始まる吸熱事象を示し、熱重量分析では重量損失がほとんどなかった(69℃まで0.2%)。
図6A、
図6B、
図6C、
図6D、および
図6Eは、CPI-613ピペラジン形態Bの粉末X線回折パターン、示差走査熱量測定サーモグラム、プロトン核磁気共鳴スペクトル、熱重量測定サーモグラム、および赤外分光測定を示す。CPI-613ピペラジン形態Bの赤外スペクトルで観察されるピークは、698、701、754、767、804、840、864、884、913、924、1003、1027、1070、1092、1122、1155、1177、1199、1216、1234、1260、1303、1338、1378、1400、1453、1462、1494、1530、1600、1649、2854、2922、3027、および3060(すべて±4cm
-1)を含む。CPI-613ピペラジン形態Bの粉末X線回折パターンで観察されたピークを、以下の表に列挙する。
【表2】
【0101】
6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸(120.2mg)を、ガラスバイアルに充填した。およそ1モル当量のピペラジン(5mLのジエチルエーテル中26.5mg)を含有する溶液を添加し、油を得た。冷蔵保管の前に、超音波処理を伴ってさらに13mLのジエチルエーテルを加えた。一晩保管した後、試料を真空濾過によって回収した。ゲル状の厚い濾過ケーキを、窒素下で短時間乾燥させて、白色の不透明な固体に崩壊させて、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸とピペラジンとの2:1の化学量論比を有する結晶性材料が得られた(CPI-613ピペラジン材料Cと表す)。示差走査熱量測定では、50℃で始まる吸熱事象を示し、50℃までの0.4%の重量損失(熱重量分析による)を伴う。結晶化溶媒は、溶液プロトン核磁気共鳴スペクトルでは観察されなかった。
図7A、
図7B、
図7C、
図7D、および
図7Eは、CPI-613ピペラジン材料Cの粉末X線回折パターン、熱重量測定サーモグラム、プロトン核磁気共鳴スペクトル、示差走査熱量測定サーモグラム、および赤外分光測定を示す。CPI-613ピペラジン材料Cの赤外スペクトルで観察されるピークは、701、763、799、839、912、1003、1030、1071、1092、1128、1182、1201、1242、1307、1340、1384、1421、1437、1453、1494、1532、1599、1652、2851、2918、2940、3025、および3059(すべて±4cm
-1)を含む。CPI-613ピペラジン材料Cの粉末X線回折パターンで観察されたピークを、以下の表に列挙する。
【表3】
【0102】
ベンザチン
6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸(41.6mg)を、ガラスバイアルに充填した。1モル当量のベンザチン(2mLのイソプロピルアルコール中25.1μL)をバイアルに加え、透明な溶液を得た。この溶液を、2mLの酢酸エチルと接触させ、一晩(2~8℃)冷蔵した。次いで、透明な溶液を、冷凍庫(-25~-10℃)に約3日間移したが、固体は観察されなかった。溶液を窒素下で蒸発させると、油が生成された。油を、5mLのイソプロピルエーテルと接触させ、超音波処理した後、冷凍庫(-25~-10℃)に9日間保管した。除去の際、溶液をデカントし、残りの油を窒素下に短時間置いた。次いで、試料を、周囲温度で一晩真空に曝露し、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸とベンザチンとの2:1化学量論比を有する結晶性無水材料が得られた(CPI-613ベンザチン形態Aと表す)。示差走査熱量測定では、46℃で始まる吸熱事象を示し、熱重量分析では重量損失がほとんどなかった(50℃まで0.03%未満)。指数付けから導かれた周囲温度でのCPI-613ベンザチン形態Aの暫定単位格子パラメータおよび計算体積は、a=5.773Å、b=15.105Å、c=16.902Å、α=103.11°、β=92.62°、γ=142.00°、V=1406.0Å
3である。空間群は、P1(1)またはP-1(2)のいずれかであり得る。
図8A、
図8B、
図8C、および
図8Dは、CPI-613ベンザチン形態Aの粉末X線回折パターン、示差走査熱量測定サーモグラム、プロトン核磁気共鳴スペクトル、および熱重量測定サーモグラムを示す。CPI-613ベンザチン形態Aの粉末X線回折パターンで観察されたピークを、以下の表に列挙する。
【表4】
【0103】
6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸(123.9mg)および0.5mLの酢酸エチルを、ガラスバイアルに充填し、透明な溶液を得た。1/2モル当量のベンザチン(37μL)を試料に添加した。透明な溶液を、一晩冷凍庫に移すと(-25~-10℃)、細かい複屈折針状結晶が形成された。さらに0.5mLの酢酸エチルを試料に加え、続いて冷凍庫(-25~-10℃)で一晩保管した。固体を真空濾過によって回収し、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸とベンザチンとの2:1の化学量論比を有する結晶材料が得られた(CPI-613ベンザチン材料Bと表す)。示差走査熱量測定では、42℃で始まる吸熱事象を示し、熱重量分析では、CPI-613ベンザチン材料Bは、50℃までに3.4%の重量損失を示す。ピーク積分に基づいて、溶液プロトン核磁気共鳴スペクトルは、材料が、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸1モル当たり0.3モルの酢酸エチルを含有することを示す(6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸/ベンザチン/酢酸エチルが2:1:0.6の化学量論比を与える)。NMRによって決定された酢酸エチルの量は、熱重量分析によって観察された重量損失と一致する。しかしながら、酢酸エチルが残留物であるのか、またはCPI-613ベンザチン材料Bが酢酸エチル溶媒和物であるのかは不明である。
図9A、
図9B、
図9C、
図9D、および
図9Eは、CPI-613ベンザチン材料Bの粉末X線回折パターン、示差走査熱量測定サーモグラム、プロトン核磁気共鳴スペクトル、熱重量測定サーモグラム、および赤外分光測定を示す。CPI-613ベンザチン材料Bの赤外スペクトルで観察されたピークは、687、699、740、754、766、778、813、845、880、920、1001、1015、1031、1050、1073、1080、1090、1133、1158、1181、1194、1210、1240、1269、1331、1369、1398、1421、1443、1452、1463、1480、1494、1547、1600、1650、1736、2856、2920、3029、および3065(すべて±4cm
-1)を含む。CPI-613ベンザチン材料Bの粉末X線回折パターンで観察されたピークを、以下の表に列挙する。
【表5】
【0104】
リジン
6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸(106.6mg)および約1モル当量のDL-リジン(44.7mg)を、ガラスバイアルに充填した。次いで、試料を、3mLのメタノールと接触させると、濁った溶液が得られた。さらに1mLのメタノールを加え、試料を50℃に加熱し、濁った溶液を得た。試料を除去し、約3日間(2~8℃)冷蔵した。試料は、わずかな細粒を含有することが観察され、約21日間、冷凍庫(-25~-10℃)に移した。溶液をデカントし、得られた固体を窒素下で乾燥させることによって採取した。固体を押すと流動することが観察された。試料を、単離後/分析前に冷凍庫に保管して、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸とDL-リジンとの1:1の化学量論比を有する結晶性無水塩を得た(CPI-613DL-リジン材料Aと表す)。示差走査熱量測定は、130℃で始まる吸熱事象を示し、熱重量分析では、130℃までの重量損失がほとんどない(0.2%)ことが示された。
図10A、
図10B、
図10C、
図10D、および
図10Eは、CPI-613DL-リジン材料Aの粉末X線回折パターン、示差走査熱量測定サーモグラム、プロトン核磁気共鳴スペクトル、赤外分光測定、および熱重量測定サーモグラムを示す。CPI-613DL-リジン材料Aの赤外スペクトルで観察されたピークは、699、730、761、769、804、852、910、974、1029、1069、1104、1145、1184、1200、1237、1275、1323、1341、1391、1407、1450、1495、1543、1582、1643、2189、2851、2913、2936、2954、3024、および3060(すべて±4cm
-1)を含む。CPI-613DL-リジン材料Aの粉末X線回折パターンで観察されたピークを、以下の表に列挙する。
【表6】
【0105】
トリエタノールアミン
6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸(124.2mg)およびジエチルエーテル(0.5mL)を、ガラスバイアルに充填した。スラリーを、1モル当量のトリエタノールアミン(42.2μL)と接触させた。混合物を超音波処理して、透明な溶液を得た。この溶液を、1mLのヘプタンと接触させ、超音波処理すると、濁った懸濁液が形成された。試料を窒素下で蒸発させると、透明な油が残った。油を、3mLのヘプタンで処理し、油のままであることに注目した。試料を、3mLのメチルtert-ブチルエーテルと接触させ、油粘度を増加させた。CPI-613トリエタノールアミン形態Aのシードを添加した。試料を、冷凍庫(-25~-10℃)に保管し、同じ日に観察し、核が形成されたことが観察された。温めると、固体の明らかな溶解が観察された。試料を除去した後、およそ2日間、冷凍庫の状態に戻した。溶液をデカントし、固体を約20mLのヘプタンで処理し、超音波処理した。固体は「流動した」が、試料が温まるにつれて凝集した。試料を、さらに8日間冷凍庫に戻した。試料を冷凍庫から取り出し、溶液をデカントし、固体を窒素下で短時間乾燥させた。試料を、周囲温度で約10分間真空に曝露した。最終固体は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸とトリエタノールアミンとの1:1の化学量論比を有する結晶性無水塩として、不透明な細粒および不規則な複屈折性ブレードからなっていた(CPI-613トリエタノールアミン形態Aと表す)。示差走査熱量測定では、28℃で始まる吸熱事象を示し、熱重量分析では、軽微な重量損失(50℃までに0.2%の重量損失)を有した。指数付けから導かれた周囲温度でのCPI-613トリエタノールアミン形態Aの暫定単位格子パラメータおよび計算体積は、a=32.014Å、b=5.768Å、c=15.927Å、α=90°、β=96.91°、γ=90°、V=2,919.7.0Å
3である。空間群はP1 2
1/c(14)である。
図11A、
図11B、
図11C、
図11D、および
図11Eは、CPI-613トリエタノールアミン形態Aの粉末X線回折パターン、示差走査熱量測定サーモグラム、プロトン核磁気共鳴スペクトル、赤外分光測定、および熱重量測定サーモグラムを示す。CPI-613トリエタノールアミン形態Aの赤外スペクトルで観察されたピークは、703、752、767、777、807、847、910、970、1011、1032、1058、1069、1102、1155、1203、1241、1261、1294、1326、1347、1398、1451、1479、1493、1569、2854、2921、および3084(すべて±4cm
-1)を含む。CPI-613トリエタノールアミン形態Aの粉末X線回折パターンで観察されたピークを、以下の表に列挙する。
【表7】
【0106】
実施例5-6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸の噴霧乾燥分散経口製剤
6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸(API)の非晶質固体分散製剤は、APIを以下のポリマーのうちの1つと1:4で混合することによって調製した。Eudragit L100、ポリ(ビニルピロリドン)粘度グレードK30(PVP K30)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、またはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS-M)、および小スケールBend Lab Dryerを35kg/時の乾燥ガス流速能力(BLD-35)で使用したメタノールまたはアセトンから噴霧乾燥。2つの代表的な噴霧乾燥分散(SDD)製剤(各75g)の条件、収率、および残留溶媒レベルを以下の表に示す。
【表8】
【0107】
走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して、2種類のSDD製剤の粒子形態を定性的に決定し、任意の程度の融合または結晶化が目視によって存在するか試験した。粒子は崩壊した球状形態を示し、気付いた結晶化または融合はなかった。
【0108】
X線回折は、一般的に、結晶性物質の存在に対して高感度であり、試料質量の約1%のLODを有する。どちらのSDD製剤についても、結晶性はPXRDによって検出されなかった。結晶性6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸APIと比較したディフラクトグラムを
図12で認めることができ、上のディフラクトグラムは、Eudragit L100製剤であり、中央のディフラクトグラムは、HPMCAS-M製剤であり、下のディフラクトグラムは、結晶性6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸である。
【0109】
実施例6-6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸のエマルジョン経口製剤
モノラウリン(131mg)および6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸(93mg)を、磁気撹拌バーを備えた丸底フラスコ内のポリソルベート80(2.5mL)中で50℃に加温した。透明な溶液までの完全な溶解後、50℃で激しく撹拌しながら水(7.5mL)を加えてエマルジョンを得た。
【0110】
6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸(312mg)をポリソルベート80(6.25g)、大豆オイル(1.25g)、ならびにコレステロール(14g)、酢酸コレステリル(14g)、安息香酸コレステリル(14g)、モノラウリン(25.4g)、およびモノパルミチン(32.6g)を含む脂質混合物(100mg)と混合し、固体が溶解するまで混合物を50℃に加熱した(30分)。デキストロース(11.25g)を236mLの水に溶解し、得られたデキストロース水溶液を上記のオイル溶液に加えた。得られた二相混合物を室温で30分間撹拌し、次に0.22umフィルターに通して真空濾過した。
【0111】
実施例7-6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸の液体製剤
6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸溶液は、(a)1M水性トリエタノールアミン中の6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸の50mg/mL溶液を調製するステップ、および(b)50mg/mL溶液を5%デキストロース水溶液で5mg/mLの濃度まで希釈するステップによって調製した。得られた5mg/mL溶液は、以下の実施例8において「7A」として識別される。
【0112】
懸濁液ビヒクルは、(a)トリス緩衝剤(48mg)およびHPMCAS-HF(20mg)を14mLの蒸留水中で混合するステップと、(b)希水酸化ナトリウムでpHを7.4に調整して、HPMCAS-HFを溶解するステップと、(c)得られた溶液を約90℃まで加熱するステップと、(d)MethocelA4M Premium(100mg)を加熱溶液に加えるステップと、(e)混合物を激しく撹拌して未溶解MethocelA4Mを懸濁させるステップと、(f)混合物をMethocelA4Mが溶解するまで(約10分)、氷浴で冷却および撹拌するステップと、(g)溶液を蒸留/脱イオン水で希釈して全容量を20mLにするステップと、(h)pHを希酢酸または希水酸化ナトリウムによって7.4に調整して懸濁液ビヒクルを得るステップと、によって調製した。
【0113】
実施例5の噴霧乾燥製剤の懸濁液は、それぞれのSDD製剤の400mgを乳鉢に加え、懸濁液ビヒクル4mLをゆっくり加えて(少量ずつ添加後、乳棒で完全に混合して均一に分散させる)、次いでフラスコに移して、投与前に1分間撹拌することによって調製した。得られたEudragit L100 SDD製剤の懸濁液(20mg/mLの6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸)は、以下の実施例8において「7B」として識別される。得られたHPMCAS-M SDD製剤の懸濁液(20mg/mLの6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸)は、以下の実施例8において「7C」として識別される。
【0114】
同じ方法で、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸の20mg/mL懸濁液は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸80mgを乳鉢に加え、懸濁液ビヒクル4mLをゆっくり加え(少量ずつ添加後、乳棒で完全に混合して均一に分散させる)、次いでフラスコに移して、投与前に1分間撹拌することによって調製した。得られた6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸の懸濁液は、以下の実施例8において「7D」として識別される。
【0115】
6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸の溶液は、SOLUTOL(登録商標)(ヒドロキシステアリン酸ポリオキシル15、KOLLIPHOR(登録商標)HS 15)(3グラム)を蒸留水(7mL)に溶解して30%溶液を作製し、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸(50mg)を5mLのその30%溶液に加え、1分間ボルテックスし、次に45分間超音波処理して、無色透明の溶液(10mg/mL、pH7)を得ることによって調製した。得られた溶液は以下の実施例8において「7E」として識別される。
【0116】
実施例8-6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸の経口生物学的利用能
1群当たり16匹のBALB/cヌードマウス(雄8匹、雌8匹)の6群に、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸を6つの異なる方法で投与した:(1)実施例7のトリエタノールアミン/デキストロース水溶液(25mg/kg、5mL/kg、実施例7A)の5μL/g IV注射(尾静脈)、(2)実施例7のトリエタノールアミン/デキストロース水溶液の5μL/g IP注射(25mg/kg、5mL/kg、7A)、(3)実施例7のEudragit L100 SDD懸濁液の5μL/g経口投与(100mg/kg、5mL/kg、7B)、(4)実施例7のHPMCAS-M SDD懸濁液の5μL/g経口投与(100mg/kg、5mL/kg、7C)、(5)実施例7の20mg/mL 6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸懸濁液の5μL/g経口投与(100mg/kg、5mL/kg、7D)、または(6)実施例7の10mg/mL SOLUTOL溶液の10μL/g経口投与(100mg/kg、10mL/kg、7E)。各実験では、約80μLの血液を4匹の雄および4匹の雌マウスの1つの下位群から投与後0.083、1、4、および24時間に、4匹の雄および4匹の雌マウスの他の下位群から0.5、2、および8時間に収集した。収集した血液試料からの血漿を、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸の存在についてLC-MS/MSによって分析した。
【表9】
【0117】
この例は、6,8-ビス-ベンジルチオ-オクタン酸が経口で生物学的に利用可能であることを示す。
【0118】
参照による組み込み
本明細書において参照される特許文書および科学論文の各々の全開示は、すべての目的のために参照により組み込まれる。
【0119】
均等物
本発明は、その趣旨または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具体化され得る。したがって、前述の実施形態は、本明細書で説明される本発明を限定するよりもむしろすべての点で例示的であると考えられるべきである。そのため本発明の範囲は、前述の説明によるよりもむしろ添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味および同等性範囲内にあるすべての変更は、そこに包含されることが意図される。
【国際調査報告】