(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(54)【発明の名称】ボアスコープ検査方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/30 20060101AFI20220202BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20220202BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20220202BHJP
G01N 21/84 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
G01B11/30 A
F02C7/00 F
F02C7/00 A
F01D25/00 V
F01D25/00 W
G01N21/84 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021540289
(86)(22)【出願日】2020-01-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-24
(85)【翻訳文提出日】2021-09-08
(86)【国際出願番号】 EP2020000009
(87)【国際公開番号】W WO2020148085
(87)【国際公開日】2020-07-23
(31)【優先権主張番号】102019100822.0
(32)【優先日】2019-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503371373
【氏名又は名称】ルフトハンザ・テッヒニク・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】LUFTHANSA TECHNIK AG
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】ペータース,ヤン オケ
(72)【発明者】
【氏名】ティース,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ラシェ,スヴェン
(72)【発明者】
【氏名】ドマシュケ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シュップシュトゥール,トアステン
(72)【発明者】
【氏名】ネッダーマイヤー,ヴェルナー
(72)【発明者】
【氏名】バール,ゼンケ
【テーマコード(参考)】
2F065
2G051
【Fターム(参考)】
2F065AA49
2F065AA53
2F065CC08
2F065DD06
2F065FF05
2F065FF09
2F065JJ05
2F065JJ19
2F065JJ26
2F065MM04
2F065QQ23
2F065QQ24
2F065QQ25
2F065QQ31
2F065RR08
2F065SS02
2G051AA88
2G051AB02
2G051AC17
(57)【要約】
本発明は、ガスタービン、例えば航空機エンジン(80)の部品、特にタービンブレード及び/又はコンプレッサブレード(87')をボアスコープで検査する方法(100)及び装置に関する。本方法(100)は、部品を撮像するためにステレオボアスコープ(10)を使用し、ステレオボアスコープ(10)を用いて2つの立体部分画像を生成するステップ(ステップ102)と、立体部分画像から3D三角測量データを算出するステップ(ステップ105)と、ステレオボアスコープ(10)で検出された部品の3D CAD参照モデル(30)に3D三角測量データを登録するとともに、投影点(31)を把握するステップ(ステップ106及び107)とを備える。立体部分画像から把握した2D画像データを、把握した投影点から3D CAD参照モデル(30)に投影するステップ(ステップ108)と、投影された2D画像データの画像解析を用いて、登録された3D三角測量データの3D CAD参照モデル(30)からのずれを把握することにより、損傷を把握するステップ(ステップ112、113)とを備える。この装置はこの方法を実行するために設計されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を記録するためにステレオボアスコープ(10)を使用する部品のボアスコープ検査方法であって、
ステレオボアスコープ(10)を用いて、2つの立体部分画像を生成するステップ(ステップ102)と、
前記立体部分画像から3D三角測量データを算出するステップ(ステップ105)と、
3D三角測量データを、ステレオボアスコープ(10)によって撮像された部品の3D CAD参照モデル(30)に登録しつつ、投影点(31)を決定するステップ(ステップ106及び107)と、
決定された投影点を、立体部分画像から決定された2D画像データを3D CAD参照モデル(30)に投影するステップ(ステップ108)と、
投影された2D画像データの画像解析と、登録された3D三角測量データの3D CAD参照モデル(30)に対する偏差を把握することにより、損傷を判定するステップ(ステップ112及び113)と、
を備える方法。
【請求項2】
前記3D三角測量データを算出する前に、前記立体部分画像を、予め設定されたキャリブレーションに基づいて補正するステップ(ステップ104)をさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記3D CAD参照モデル(30)は、前記2D画像データが前記3D CAD参照モデルに投影される前に、前記3D三角測量データによって適合される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記2D画像データは、前記立体部分画像を重ね合わせることによって生成される、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記投影点(31)は、ボアスコープガイド装置(14)によって決定可能なステレオボアスコープ(10)の位置(32)を起点として決定される、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ボアスコープガイド装置(14)は、前記ステレオボアスコープ(10)により部品の予め定めた全領域が順次撮像されるように制御され、立体部分画像対によってそれぞれの場合に生成される3D三角測量データ及び/又は2D画像データは、3D CAD参照モデル(30)を用いて統合される、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
記録される前記部品は、ガスタービン、好ましくは航空機エンジン(80)のブレード(87’)であり、記録される前記ブレード(87’)の回転角位置は、3D三角測量データを3D CAD参照モデル(30)に登録する際に考慮する、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
記録される前記ブレード(87’)の回転角度位置は、タービン又は圧縮機の段の全てのブレード(87’)が撮像されるように制御される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステレオボアスコープ(10)と、それに接続された、3D CAD参照モデル(30)を含むメモリにアクセスするコンピュータユニット(20)とを備える部品のボアスコープ検査のための装置であって、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成されている、装置。
【請求項10】
ステレオボアスコープ(10)をガイドするためのボアスコープガイド装置(14)が設けられ、前記ボアスコープガイド装置は、コンピュータユニット(20)に接続され、請求項5又は6に記載の方法を実施するために構成されている、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
記録される前記部品として、ガスタービン、好ましくは航空機エンジン(80)のブレード(87’)の回転角位置を決定して考慮するために構成され、請求項7又は8に記載の方法を実施するために構成されている、請求項9又は10に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機エンジンなどのガスタービンの部品、特にタービンブレード及び/又は圧縮機ブレードをボアスコープで検査する方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術は、ガスタービン、特にジェットエンジンなどの航空機エンジンの光学的検査のための様々な方法を開示する。この方法では、ボアスコープを完全に組み立てられたガスタービンの横方向の開口部から挿入して、ガスタービンの内部を光学的に検査することができるようになっている。
【0003】
運転中に発生する負荷を考慮して、対応するボアスコープが、特に航空機エンジンのタービンブレードや圧縮機ブレードの検査に使用される。この目的のために、ボアスコープを航空機エンジン内に横向きに挿入し、タービン又は圧縮機段のブレード、及びエンジンブレードの接続領域(比較的大きなエンジンブレードの場合はブレード表面の所定の高さ領域)がボアスコープの画像領域内に完全に入るようにガスダクトの内部に配置する。その後、タービンや圧縮機の段を回転させることで、対応する段の全てのエンジンブレードをボアスコープで動的に撮像することができる。
【0004】
このプロセスで生成された画像やビデオの記録は、エンジンブレードの構造状態を記録するために手動で分析される。損傷が大きい場合、損傷をより正確に分析するために、個々のエンジンブレードの静的な3Dキャプチャを手作業で行うことができる。しかし、この3Dキャプチャは非常に複雑で時間がかかるため、例外的な場合にのみ実施されているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、部品、特に航空機エンジンの内部表面の改良された3Dキャプチャを特徴とし、自動損傷判定を行う部品のボアスコープ検査方法及びそのために構成された装置を提供することを目的とする。
【0006】
この目的は、主請求項に記載の方法と、請求項9に記載の装置とによって達成される。従属項は、有効な開発に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、部品を記録するためにステレオボアスコープを使用する部品のボアスコープ検査方法であって、
前記ステレオボアスコープを用いて、2つの立体部分画像を生成するステップと、
前記立体部分画像から3D三角測量データを算出するステップと、
前記ステレオボアスコープで撮像された部品の3D CAD参照モデルに、前記3D三角測量データを登録し、投影点を決定するステップと、
立体部分画像から得られた2D画像データを、決定された投影点から前記参照モデルに投影するステップと、
投影された2D画像データを画像解析し、登録された3D三角測量データの基準モデルに対するずれを確認することにより、損傷を判定するステップと、
を備える方法に関する。
【0008】
さらに、本発明は、ステレオボアスコープと、それに接続され、検査される部品の3D CAD参照モデルを含むメモリにアクセス可能なコンピュータユニットを備える部品のボアスコープ検査のための装置であって、本発明に係る方法を実行するように構成された装置に関するものである。
【0009】
まず、本発明に関連して使用されるいくつかの用語について説明する。
【0010】
「ステレオボアスコープ」とは、立体的な記録のために構成されたボアスコープである。この目的のために、ステレオボアスコープは、互いに間隔を空けて配置された2つの撮像ユニットを有し、その両方の記録コーンによって撮像される共通の記録領域が記録平面に現れるように、記録平面内で重なり合っている。2つの撮像ユニットの結果は、まず「2D画像データ」、つまり色情報又は明るさ情報(グレースケールレベル)を持つ画像ポイントが格子状に配列されたものである。2つの撮像ユニットの間隔と、その結果として生じる記録領域への偏った視野角のために、記録領域内の実質的に全ての点について、三角測量を用いて撮像ユニットからの距離を「3D三角測量データ」として決定することが可能である。この目的に適した方法は、ステレオビジョンという言葉で知られている。画像情報と3D三角測量データから、ボアスコープで記録された対象物や画像領域の3Dモデルを生成することができる。
【0011】
ステレオボアスコープは、ボアスコープの自由端にある光学ユニットによって記録された画像が、光路を介してボアスコープの他端にある接眼レンズやカメラに導かれるのではなく、撮像ユニットとして適切な半導体素子を用いて自由端で直接、電子画像情報に変換され、この画像情報がデータ接続を介してディスプレイ又はさらなる処理のためのコンピュータユニットに伝達される、「ビデオスコープ」の原理に基づくことができる。対応する半導体素子としては、光学式のCCDセンサやCMOSセンサなどが公知である。さらに、光半導体素子の領域に直接、集積回路を設けることもできる。この集積回路は、例えば、データ削減によりデータ接続を介して送信されるデータ量が減少するように、半導体素子によって撮像された電子画像情報の前処理を行うことができる。データの削減は、半導体素子からの電子画像情報を圧縮することで実現できる。また、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路を用いて、両半導体素子で記録された最終的な共通記録領域を表さないデータを電子画像情報から除去することも、追加的又は代替的に可能である。さらに、3D三角測量データの決定や2D画像データの生成など、以下に説明する計算の少なくとも一部を、対応する集積回路を用いて実行することができる。3D三角測量データを3D CADモデルに登録するなどの他のサブステップは、データ接続を介してステレオボアスコープから必要なデータを取得するコンピュータなどの外部コンピュータユニットによって実行するのが好ましい。
【0012】
最初のステップでは、ステレオボアスコープは、撮像ユニットが共通の記録領域又は記録される部品又はその一部の画像を同時に撮像することにより、2つの立体部分画像を生成する。同時に撮像することは、例えば、記録される部品が移動することにより、2つの連続した記録の間で可能な時間的変化を直接除外することができるため、有効である。撮像ユニットが半導体素子である場合、モーションアーチファクトのリスクを最小限にするために、グローバルシャッターを備えるのが好ましい。
【0013】
必要に応じて、2つの撮像ユニットで撮像された立体部分画像を、事前に設定されたキャリブレーションに基づいて補正することで、歪みを補正したり、カラーバランスを取ったりすることができる。キャリブレーションを行うことで、その後の計算が簡単になり、計算結果の精度が向上する。
【0014】
続いて、2つの(適宜、補正された)立体部分画像から3D三角測量データを生成する。このために必要なステレオビジョンの計算と方法は、従来技術で広く知られているので、今さら説明する必要はないだろう。この結果、記録領域内の複数の点に関する計算の後、撮像ユニットに対する距離に関する情報が得られる。
【0015】
その後、ステレオボアスコープで撮像された部品の3D CAD参照モデルに、3D三角測量データを登録する。この目的のために、自動化された方法で、3D三角測量データに基づいて、3D三角測量データが3D CAD参照モデルに最もよく一致する投影点が決定される。3D三角測量データから直接、投影点を得ることにより、別の方法で決定されたステレオボアスコープ又はその撮像ユニットの位置を介して投影点の位置を決定する際に起こり得る不正確さを排除することができる。しかしながら、投影点は、例えばボアスコープガイド装置を用いて決定可能なステレオボアスコープの位置から自動決定するのが、より有効である。この決定可能な位置は、測定の不正確さなどの理由で最終的な投影点と正確に一致していなくても、通常は求める投影点の近傍となる。その結果、ステレオボアスコープの決定可能な位置に基づいて、所望の投影点を、投影点を決定するための任意の開始点よりも迅速に決定できることが多い。さらに、複数の投影点が適している場合、ステレオボアスコープの決定可能な位置を開始点として予め定義しておくことで、原理的には投影点の決定の曖昧さを解消することに貢献できる。決定可能な位置には、通常、ステレオボアスコープの撮像ユニットの向きも含まれる。
【0016】
投影点は、例えば、3D CAD参照モデルからの3D三角測量データの個々の点の偏差が所望の最小値に設定されるまで、及び/又はこれらの偏差の標準偏差が最小になるまで、投影点を段階的に変化させ、3D三角測量データと3D CAD参照モデルとの間の偏差を最小にすることにより決定することができる。
【0017】
投影点が決定されると、3D CAD参照モデルを3D三角測量データに応じて適合させることが可能となる。言い換えれば、3D三角測量データと3D CAD参照モデルとの間に生じる偏差、例えば、3D三角測量データが記録された部品の変形を明らかにするため、3D CAD参照モデルに採用することが意図されており、3D CAD参照モデルが部品の可能な限り正確な画像を提供する。3D CAD参照モデルが3D三角測量データに従って適合されるか否かにかかわらず、2D画像データは、3D CAD参照モデルをテクスチャ化するために、投影点から進む参照モデルに続いて投影される。この目的のために、立体部分画像の1つを使用することができる。しかし、2つの立体部分画像を重ね合わせて2D画像データを生成すると、シェーディング効果などが軽減されるので好ましい。このように、予め決められた投影点から2D画像データを投影することで、2D画像データの3次元モデルへの投影と、部品の実際の状態との間に良好な対応関係が得られる。
【0018】
3D CAD参照モデルに対する3D三角測量データの偏差、及び参照モデルへの2D画像データの投影について、本発明に従って達成された精度により、最終的に記録された部品の損傷の自動判定が可能となる。この場合、3D CAD参照モデルに投影された2D画像データを画像解析することで、例えば、本発明に係る方法で以前に記録された部品の状態に対する画像データの変化により、あるいは、クラックの場合など、影の落ち方を確認することにより、比較的小さな損傷例を判定することができる。登録された3D三角測量データが、元の3D CAD参照モデルや、本発明に係る方法で以前に記録された部品の状態から外れている場合も、部品の損傷を示している可能性がある。これらの検査は、2D画像データによってテクスチャ化された3D CAD参照モデルに基づいて行われるため、可能性のある損傷の正確な位置を特定することができる。
【0019】
多くの場合、ステレオボアスコープを使った個々の記録では、部品を撮像することはできない。このため、ステレオボアスコープ、特に撮像ユニットを制御して移動させることができるボアスコープガイド装置を設けるのが好ましい。さらに、前記ボアスコープガイド装置は、ステレオボアスコープによって部品の全ての所定領域が順次、撮像されるように制御されるのが好ましい。これにより、一対の立体部分画像によってそれぞれの場合に生成された3D三角測量データ及び/又は2D画像データが、参照モデルを用いて結合される。参照モデルにより、3D三角測量データを登録するための投影点及び2D画像データを投影するための投影点を正確に決定することができ、2つの記録の3D三角測量データ及び/又は2D画像データが部分的に重なっている場合、異なる記録のデータを高精度に組み合わせて1つのテクスチャ付き3D CAD参照モデルを形成するために、スティッチング法などの既知の方法を採用することができる。
【0020】
本発明に係る方法は、ガスタービン、特に航空機エンジンのブレードをボアスコープで検査するのに特に適している。この場合、よく知られているように、対応するブレードは、リング状のタービン又は圧縮機の段(stage)を形成するために結合される。
【0021】
タービンや圧縮機の段のブレードは一様であるため、一般にステレオボアスコープの記録だけでは、タービンや圧縮機の段のどのブレードが、実際にステレオボアスコープの記録領域に存在するのかを確認することはできない。このため、3D三角測量データの登録と、それに続く2D画像データの3D CAD参照モデルへの投影は通常、明確な方法ではできない。その対策として、3D三角測量データを基準モデルに登録する際、各段の回転軸に対する記録対象のブレードの実際の回転角位置を考慮するのが好ましい。言い換えれば、投影点は、それぞれ記録された圧縮機又はタービンの段の実際の角度位置を参照して決定され、3D三角測量データの最終的な登録と、タービン又は圧縮機段の3D CAD参照モデルの実際に記録されたエンジンブレードへの2D画像データの投影とが行われる。
【0022】
タービンや圧縮機の段のエンジンブレードをボアスコープで検査する際、記録するタービンや圧縮機ブレードの回転角度位置を制御して、タービンや圧縮機の段の全てのタービンや圧縮機ブレードを撮像するのが好ましい。これにより、タービンや圧縮機の全ブレードの自動撮像と損傷解析が可能となる。
【0023】
本発明に係る装置の説明については、上記の説明を参照されたい。
【0024】
次に、本発明を、添付図面を参照して、有利な実施形態に基づいて例示的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】航空機エンジンに使用する場合の本発明に係るボアスコープ検査装置の例示的な実施形態を示す。
【
図3A】撮像・処理された画像及び3D三角測量データの概略図である。
【
図3B】撮像・処理された画像及び3D三角測量データの概略図である。
【
図3C】撮像・処理された画像及び3D三角測量データの概略図である。
【
図4】
図1のタービンブレードの3D CAD参照モデルの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、エンジン80のボアスコープ検査のために使用中の本発明に係る装置1の例示的な実施形態を示す。
【0027】
断面図で示されたエンジン80は、2軸エンジンであり、ファン81及び低圧圧縮機82が、第1シャフト83を介して低圧タービン84に回転可能に接続され、高圧圧縮機85が、第2シャフト86を介して高圧タービン87に回転可能に接続されている。燃焼室88は、高圧圧縮機85と高圧タービン87の間に配置されている。
【0028】
高圧タービン87の第1段のタービンブレード87’を検査するために、ステレオボアスコープ10が、エンジン80の壁構造90に設けた第1開口部91を介して挿入される。ステレオボアスコープの自由端が
図2に詳細に示されている。
【0029】
ステレオボアスコープ10は、実際のシャフト11が可撓性を有するフレキシブルボアスコープとして構成され、屈曲したガイドチューブ12を介して、エンジン80の燃焼室88を通り、高圧タービン87のガイドベーン89の間に押し込まれるようになっている。この場合、ステレオボアスコープ10の位置は、エンジン80の壁構造90の外側に固定されたボアスコープガイド装置14によって制御可能なガイドチューブ12の自由端13によって決定される。同時に、ボアスコープガイド装置14は、タービンブレード87’に対するステレオボアスコープ10の位置情報を提供する。この位置は、ボアスコープガイド装置14から読取可能なデータに基づいて決定することができる。
【0030】
ステレオボアスコープ10のシャフト11の自由端には、離間した2つの撮像ユニット15、16が設けられ、立体部分画像を記録するように同じ記録領域に方向付けられている。撮像ユニット15、16は、グローバルシャッター又はローリングシャッターを備えたCMOS又はCCDセンサである。
【0031】
ステレオボアスコープ10は、インターフェース17を有し、このインターフェースを介して、2つの撮像ユニット15、16の画像データだけでなく、ステレオボアスコープ10の決定可能な位置に関する情報も、上位コンピュータユニット20に伝達することができる。ステレオボアスコープ10は、ボアスコープガイド装置14を用いてステレオボアスコープ10の位置を変更するために、必要に応じて、前記インターフェース17を介してコンピュータユニット20から制御コマンドを受信することもできる。
【0032】
さらに、コンピュータユニット20には別のボアスコープ18も接続されており、このボアスコープは、エンジン80の壁構造90に設けた第2開口部92から挿入され、高圧圧縮機85のブレードを観察することができるようになっている。本実施形態では、ボアスコープ18は、高圧圧縮機85のブレードの回転角度位置を確認する役割を果たしており、高圧圧縮機85及び高圧タービン87がシャフト86に固定されているため、高圧タービン87のブレード87’の回転角度位置をも確認することができる。高圧タービン87のブレード87’は、燃焼室88からの高温ガスの影響を受けるため、ステレオボアスコープ10で撮像できるような個別化機能はないが、高圧圧縮機85を使用することで、それに対応する可能性がある。壁構造の2つの開口部91、92の位置と、ボアスコープガイド装置14によって決定可能な位置との正確な知識によって、高圧タービン87の第1段のタービンブレード87’のうち、どのタービンブレードがステレオボアスコープ10の記録領域に位置しているのかを確認することができる。
【0033】
図3aは、ステレオボアスコープ10の撮像ユニット15、16によって同時に記録された2つの立体部分画像の例を示す。ステレオビジョンという名称で知られる方法により、2つの立体部分画像は、任意に、可能な角度誤差などを修正するために補正された後、コンピュータユニット20によって統合され、
図3bに示されるような3D三角測量データを形成することができる。
【0034】
特に、記録対象物に対する撮像ユニット15、16の相対的な位置に関する情報を提供することができるこれらの3D三角測量データを用いて、記録されるべき部品(ここでは、高圧タービン78の第1段のタービンブレード87’)の3D CAD参照モデル30に対する投影点31が、続いて3D三角測量データから決定される。
【0035】
対応する3D CAD参照モデル30が
図4に模式的に示されている。この場合、3D CAD参照モデル30は、高圧タービン87の第1段の全てのタービンブレード87’を備え、エンジン80の設計図面に基づいている。
【0036】
各タービンブレード87’が均一であるため、3D三角測量データのみに基づいて投影点31の正確な位置を決定することはできない。しかしながら、(ボアスコープガイド装置14によって決定可能な)エンジン80の内部でのステレオボアスコープ10の位置によって、(ボアスコープ92によって決定可能な)高圧タービン87の回転角位置、さらにタービンブレード87’の回転角位置と合わせて、エンジンブレード87’に対する撮像ユニット15、16の少なくとも近似位置32、さらに3D CAD参照モデル30に対する投影点31を決定することができる。このおおよその位置32は、投影点31の実際の位置を決定するための開始点として使用され、一般に投影点31がおおよその位置32の近傍にあると仮定することができる。
【0037】
このようにして決定された投影点31から、3D三角測量データを用いて、3D CAD参照モデル30を実際の条件に適合させる。すなわち、3次元CAD参照モデル30は、このようにして、3D三角測量データに可能な限り対応するように変更される。
【0038】
その後、立体部分画像を重ね合わせて得られた2D画像データを、予め決められた投影点31から進めた3次元CAD参照モデル30に投影し、3次元CAD参照モデルにテクスチャが付加される。その結果を
図3cに示す。
【0039】
特に、高圧タービンの第1段のタービンブレード87’の記録が連続して非常に多く作成され、説明したように、問題のタービン段全体の完全にテクスチャ化されたモデルが存在する3D CAD参照モデル30に転送されれば、その後、画像分析及び撮像された実際の構造と元の3D CAD参照モデル30との比較によって、自動損傷分析を行うことができる。この点に関して、モデルのテクスチャの変色に基づいて、個々のタービンブレード87’の小さな損傷例、特にクラックを確認することが可能となる一方、元の3D CAD参照モデル30からの偏差は、適切であれば、より詳細に調査すべき個々のタービンブレード87’の変形を示す。ステレオスコープ10の記録領域に実際に位置している3D CAD参照モデル30のタービンブレードへの、3D三角測量データの記載されたそれぞれの登録及び2D画像データのそれぞれの投影によって、3D CAD参照モデル30に基づいて、損傷している可能性のあるタービンブレード87’を明確に決定することができる。
【0040】
図5は、
図1に例示されるような航空機エンジン80の高圧タービン87の第1段のタービンブレード87’を、完全に自動化された方法で撮像し、損傷の有無を検査することができる方法100のシーケンスを示す。
【0041】
方法100のスタート101では、ボアスコープガイド装置14によって位置を制御可能なステレオボアスコープ10をエンジン80に挿入し、記録すべきタービンブレード87’の1つに向かわせると仮定している。さらに、ボアスコープガイド装置14によって位置決定可能なステレオボアスコープ10の位置の他に、例えば第2ボアスコープ18を用いて、高圧タービン87の第1段のタービンブレード87’の回転角度位置も分かると仮定されている。
【0042】
ステップ102では、ステレオボアスコープ10により立体部分画像を生成する。そして、撮像された画像データがコンピュータユニット20に送信される(ステップ103)。コンピュータユニット20では、キャリブレーションデータを用いて立体部分画像が修正される(ステップ104)。
【0043】
続いて、立体部分画像から3D三角測量データが得られ(ステップ105)、3D CAD参照モデル30に登録される(ステップ106)。この目的のために、
図4について上述したように、3D三角測量データに基づいて投影点31が決定される(ステップ107)が、この決定は、
図4に示すように、反復して行うことができる。3D三角測量データが登録されて投影点31が決定された後、ステップ108において、ステップ102で撮像された立体部分画像の2D画像データが3D CAD参照モデル30に投影される。こうしてテクスチャが付加された3次元CAD参照モデル30は、メモリに格納される(ステップ109)。
【0044】
その後、ステップ110では、高圧タービン87の第1段のタービンブレード87’において所望の全領域が撮像されたかどうかをチェックする。ここでは、全てのタービンブレード87’の完全な記録が望まれることもある。この目的のために、例えば、3D CAD参照モデル30に基づいて、問題の領域が2D画像データでテクスチャを付加されているかどうか、又は3D三角測量データが問題の領域に登録されているかどうかをチェックすることが可能である。
【0045】
全領域が撮像されていない場合、この方法では、ボアスコープガイド装置14によるステレオボアスコープ10の位置及び/又はタービンブレード87’の回転角度位置を変更し(ステップ111)、所望の領域が完全に撮像されるまでステップ102から110を繰り返す。
【0046】
ステップ110で、所望の全領域が撮像されたことが確認されれば、ステップ112及び113で、ステップ109でメモリに格納された3D CAD参照モデルに基づいて損傷分析を行う。この目的のため、ステップ112では、3D CAD参照モデルのテクスチャを付加するために処理された2D画像データを、ステップ113では、元の3D CAD参照モデルからの3D三角測量データの偏差を、損傷の可能性を判断するために分析する。
【0047】
本方法は、ステップ114で、損傷の可能性を示す表示、又は損傷が発見されなかった旨の通知のいずれかで終了する。
【国際調査報告】