(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(54)【発明の名称】がんの処置における使用のためのBT1718
(51)【国際特許分類】
A61K 47/66 20170101AFI20220202BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220202BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20220202BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220202BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20220202BHJP
A61K 31/5386 20060101ALN20220202BHJP
C12Q 1/68 20180101ALN20220202BHJP
C12Q 1/02 20060101ALN20220202BHJP
C07K 7/50 20060101ALN20220202BHJP
【FI】
A61K47/66
A61P35/00
A61K9/19
A61K9/08
G01N33/50 Z
A61K31/5386
C12Q1/68
C12Q1/02
C07K7/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547957
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(85)【翻訳文提出日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 GB2019053080
(87)【国際公開番号】W WO2020089627
(87)【国際公開日】2020-05-07
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514087186
【氏名又は名称】バイスクルアールディー・リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】515318049
【氏名又は名称】キャンサー リサーチ テクノロジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Cancer Research Technology Limited
【住所又は居所原語表記】Angel Building, 407 St. John Street, London EC1V 4AD United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ケーラー, マリア
(72)【発明者】
【氏名】ラングフォード, ギリアン
(72)【発明者】
【氏名】シメオニデス, ステファン
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4C076
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045AA40
2G045CA25
2G045CB03
2G045DA13
2G045DA36
2G045DA80
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA18
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ42
4C076AA12
4C076AA29
4C076AA95
4C076BB13
4C076CC27
4C076CC41
4C076DD67
4C076EE59
4C076FF13
4C076GG06
4C076GG47
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB25
4C086MA01
4C086MA17
4C086MA66
4C086NA13
4C086ZB26
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA18
4H045BA30
4H045BA72
4H045EA20
(57)【要約】
本発明は、対象におけるがんを処置する方法に関する。ある特定の態様では、本発明は、対象におけるある特定のがんを処置する方法であって、対象に、BT1718などのMT1-MMPに対する高親和性結合物質または薬学的に許容されるその塩もしくは組成物を含む薬物コンジュゲートの有効量を投与するステップを含む、方法を提供する別の実施形態によると、本発明は、BT1718または薬学的に許容されるその塩、および薬学的に許容される担体、アジュバント、またはビヒクルを含む組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
BT1718をBT1718を必要とする患者に投与する方法であって、前記患者にBT1718または薬学的に許容されるその塩および/もしくは組成物を投与するステップを含み、治療的に有効なC
maxが実現される、方法。
【請求項2】
実現される前記C
maxが、約10ng/mL~約10,000ng/mLである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
実現される前記C
maxが、約100ng/mL~約1,000ng/mLである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記BT1718が、約0.3mg/m
2~約45mg/m
2の用量で投与される、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記BT1718は、約0.6mg/m
2、約1.2mg/m
2、約2.4mg/m
2、約4.8mg/m
2、約9.6mg/m
2、約19.2mg/m
2、約38.4mg/m
2および約45mg/m
2からなる群から選択される用量で投与される、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
BT1718をBT1718を必要とする患者に投与する方法であって、前記患者にBT1718または薬学的に許容されるその塩および/もしくは組成物を投与するステップを含み、治療的に有効なAUCが実現される、方法。
【請求項7】
実現される前記AUCが、約5ng h/mL~約5,000ng h/mLである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
実現される前記AUCが、約5ng h/mL~約100ng h/mLである、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
BT1718をBT1718を必要とする患者に投与する方法であって、前記患者にBT1718または薬学的に許容されるその塩および/もしくは組成物を投与するステップを含み、約1mL/分/kg~約200mL/分/kgのCL
pが実現される、方法。
【請求項10】
実現される前記CL
pが、約1mL/分/kg~約100mL/分/kgである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
実現される前記CL
pが、約4.4mL/分/kg~約20mL/分/kgである、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
BT1718をBT1718を必要とする患者に投与する方法であって、前記患者にBT1718または薬学的に許容されるその塩および/もしくは組成物を投与するステップを含み、治療的に有効なV
ssが実現される、方法。
【請求項13】
実現される前記V
ssが、約0.05L/kg~約20L/kgである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
実現される前記V
ssが、約0.2L/kgである、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
BT1718をBT1718を必要とする患者に投与する方法であって、前記患者にBT1718または薬学的に許容されるその塩および/もしくは組成物を投与するステップを含み、治療的に有効なt
1/2が実現される、方法。
【請求項16】
実現される前記t
1/2が、約5分~約1,440分である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
実現される前記t
1/2が、約10分~約120分である、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
実現される前記t
1/2が、約10分~約60分である、請求項15から17までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
BT1718をBT1718を必要とする患者に投与する方法であって、前記患者にBT1718または薬学的に許容されるその塩および/もしくは組成物を投与するステップを含み、腎排出と一致したDM1-SHの尿中濃度が観察される、方法。
【請求項20】
BT1718をBT1718を必要とする患者に投与する方法であって、前記患者にBT1718または薬学的に許容されるその塩および/もしくは組成物を投与するステップを含み、治療有効用量の実現が、細胞死または細胞増殖の阻害のバイオマーカーの存在によって示される、方法。
【請求項21】
前記バイオマーカーが、細胞死のバイオマーカーである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記細胞死のバイオマーカーが、p-ヒストンH3および切断型カスパーゼ3からなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記バイオマーカーが、細胞増殖の阻害のバイオマーカーである、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記細胞増殖の阻害のバイオマーカーが、Ki67である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
BT1718をBT1718を必要とする患者に投与する方法であって、前記患者にBT1718または薬学的に許容されるその塩および/もしくは組成物を投与するステップを含み、腫瘍への免疫細胞の浸潤が、免疫組織化学的検査(IHC)または免疫細胞の浸潤を検出するための別の妥当な方法を介して免疫賦活応答のマーカーによって観察される、方法。
【請求項26】
BT1718をBT1718を必要とする患者に投与する方法であって、前記患者にBT1718または薬学的に許容されるその塩および/もしくは組成物を投与するステップを含み、治療有効用量の実現が、循環バイオマーカーの存在によって示される、方法。
【請求項27】
前記循環バイオマーカーが、MMP14、MMP2、TIMP-1、および血管内皮増殖因子からなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
BT1718をBT1718を必要とする患者に投与する方法であって、前記患者にBT1718または薬学的に許容されるその塩および/もしくは組成物を投与するステップを含み、治療有効用量の実現が、循環腫瘍細胞(CTC)バイオマーカーの存在によって予測される、方法。
【請求項29】
BT1718をBT1718を必要とする患者に投与する方法であって、前記患者にBT1718または薬学的に許容されるその塩および/もしくは組成物を投与するステップを含み、治療的に有効な応答の実現が、予後バイオマーカーの存在によって予測される、方法。
【請求項30】
前記予後バイオマーカーが、血漿中総細胞外遊離DNA(cfDNA)である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
BT1718をBT1718を必要とする患者に投与する方法であって、前記患者にBT1718または薬学的に許容されるその塩および/もしくは組成物を投与するステップを含み、治療有効用量の実現が、細胞死の循環バイオマーカーの存在によって示される、方法。
【請求項32】
前記細胞死の循環バイオマーカーが、M30およびM65からなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
BT1718をBT1718を必要とする患者に投与する方法であって、前記患者にBT1718または薬学的に許容されるその塩および/もしくは組成物を投与するステップを含み、治療有効用量の実現が、免疫細胞におけるMT1 MMPの発現の変化の存在によって示される、方法。
【請求項34】
前記免疫細胞が、骨髄細胞およびリンパ系細胞からなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記骨髄細胞が、好中球、単球、好酸球、および好塩基球からなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記リンパ系細胞が、T細胞、B細胞、およびNK細胞からなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
BT1718をBT1718を必要とする患者に投与する方法であって、前記患者にBT1718または薬学的に許容されるその塩および/もしくは組成物を投与するステップを含み、前記BT1718が、クロロブチルの止め栓およびアルミニウムシールを伴う20mLのI型透明ガラスバイアル中に入った状態で提供される、方法。
【請求項38】
前記BT1718が、再構成用の白色~灰色がかった白色の凍結乾燥粉末である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記バイアルが、BT1718を約21.2mg含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記患者が、がん患者である、請求項1から39までのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、それぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる、2018年10月30日出願の米国仮特許出願第62/753,005号、2019年1月4日出願の米国仮特許出願第62/788,391号、および2019年9月27日出願の米国仮特許出願第62/907,106号の優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
膜I型マトリックスメタロプロテイナーゼ(MT1-MMP)タンパク質は、コラーゲンおよび他の細胞外マトリックス構成成分のタンパク質分解によって媒介される組織リモデリングに関与するマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)ファミリーのメンバーである[1]。多くの固形腫瘍(周囲の間質を含む)におけるMT1-MMPの過剰発現が細胞の侵入および遊走に関連付けられる[2]。今度はこれがNSCLC[3、4]、乳がん[5、6]および他の固形悪性腫瘍[7、8、9]における予後不良およびより短い生存に関連付けられる。
【0003】
マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤は調査されてきたが、不十分な薬理学、代謝安定性、最適以下の生物学的利用能および/またはDLTなどの種々の理由で失敗に終わっている[10]。代替の手法を使用して、MT1-MMPの過剰発現を、その活性を阻害するのではなく、腫瘍に対する選択的な結合および細胞傷害性DM1ペイロードの送達の促進のための細胞表面標的として活用するために、BT1718が開発された。
【0004】
この研究に関しては、標的集団は、妥当な標準治療(SOC)処置選択肢の全てに対して不応性の進行した固形悪性腫瘍を有する成人患者である。もっぱら腫瘍型の限定的なサブセットまたは限定的なMT1-MMP発現レベルに制限されない利点の潜在性を伴って、全ての固形腫瘍型の患者に対して開かれたものになるように用量漸増を計画する。しかし、最適な用量/スケジュールでの第IIa相拡大では、MT1-MMPが一般に過剰発現されることが分かっている腫瘍型を有し、MT1-MMP過剰発現が登録時の前向き選択の間に確認された富化集団において臨床シグナルを探究する。これらの腫瘍型は、さらなる前臨床データに基づいて同定されるが、現在のところ、NSCLC、TNBC、卵巣、肉腫、およびMT1を発現する腫瘍型などの腫瘍を含めることが提唱されている。
非小細胞肺がん
【0005】
肺がんは、英国(UK)およびアメリカ合衆国(USA)において2番目に多いがんであり、どちらの国においてもがんによる死亡の最も多い原因である。転帰は不良であり、5年生存はたった10%である。UKでは非小細胞肺がんが全ての肺がんの87%を占める。患者のごく一部が治癒的外科手術を適用できる初期疾患を有し、より多くの患者が根治的(化学)放射線治療に適し得るが、治癒率は低い[11]。
【0006】
進行または再燃した疾患を有する場合、処置は緩和的なものになり、予後は不良である。少数(<10%)の患者は、上皮増殖因子受容体(EGFR)または未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)阻害剤を用いた突然変異を対象とする処置に応答し得る腫瘍を有する。化学療法が大多数の患者に対する治療の頼みの綱であったが、現在では免疫療法が加わっている。第一選択のプラチナダブレット化学療法に適する患者に関しては、全生存(OS)の中央値はまだたった11カ月である[12、13]。ドセタキセルなどの第二選択の化学療法は、それを受けるのに十分適合する患者に対して中程度の活性を有し、客観的奏効率(ORR)は8~12%である(ドセタキセル、ペメトレキセド)[14~18]。今ではプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)チェックポイント遮断を標的とする抗体および阻害剤が第二選択(今では第一選択)として化学療法に置き換わっており、ORRは第二選択処置に関してはおよそ20%(ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ)であり、プログラム死-リガンド1(PD-L1)が選択される場合には少なくとも30%である[14~16、18]。これらの薬剤を超えるSOCは存在しない。
【0007】
これに関連して、NSCLCに対する有望な新しい薬剤では、したがって、第二選択化学療法という比較器を用いて見られるものよりも大きなORRが実証され、選択された集団において30%が目指されることが予測され得る。NSCLCでは膜I型マトリックスメタロプロテイナーゼが高度に発現され、多数のin vivo NSCLCモデルにおいてBT1718の優れた活性が示されている。
【0008】
トリプルネガティブ乳がん
【0009】
トリプルネガティブ乳がんは、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、またはヒト表皮受容体2(HER2)を過剰発現しない腫瘍を特徴とする。トリプルネガティブ乳がんは、現行の標的化薬剤に応答しない可能性があり、また、他の乳がんよりも攻撃的に挙動する傾向もあり、したがって、必要性がまだ対処されていない重要な領域である。UKにおいて診断される乳がんのおよそ10~15%がTNBCに分類され、これは1年当たり>8000症例に相当する[19]。
【0010】
進行または再燃した疾患を有する場合、処置は緩和的化学療法からなり、最も一般的に使用される第一選択薬剤はタキサンまたは白金である。これらのORRは30~35%であるが、無増悪生存期間(PFS)はたったおよそ4カ月であり、OSはおよそ12カ月である[20~22]。その後の治療のための明白なSOCは存在しないが、承認された第三選択薬剤(例えば、カペシタビンまたはエリブリン)のORRはたった9~12%である[23]。第四選択の奏効率は2%の低さであり得る[24]。新しく、より活性が大きい薬剤が明白に必要とされている。プログラム細胞死タンパク質1チェックポイント阻害剤は第III相試験に進む十分な見込みを示したが、報告されたORRは<20%である。糖タンパク質NMBに対する抗体-薬物コンジュゲート(ADC)であるCDX-011もいくらかの見込みを示し、小規模第I相拡大におけるNMB選択された腫瘍に関するORRは30%であった[25]。別のADCであるサシツズマブゴビテカン(IMMU 132)はTrop-2を標的とする同様の活性を示した[26]。興味深いことに、HER2陽性乳がんに関してはADC ado-トラスツズマブエムタンシン(T-DM1)が第三選択として最初に承認されたが、このHER2陽性集団におけるORRは31%であった[27]。
【0011】
したがって、NSCLCと同様に、TNBCに対する有望な新しい薬剤により、化学療法比較器を用いて見られる物よりも大きなORRが実証され、選択された集団において30%が目指されることが予測され得る。NSCLCと同様に、TNBCではMT1-MMPが高度に発現され、多数のin vivo TNBCモデルにおいてBT1718の優れた活性が示されている。
【0012】
肉腫
【0013】
肉腫は支持組織または結合組織において発生し、広範囲の異なる生物学的亜型を表し、全体的な発生率は1年当たりおよそ100,000名に6名である。肉腫は、一般的ながんではないが(全てのがんの1%)、進行疾患における薬剤の有用性の欠如/不応性に起因して、必要性がまだ対処されていない領域である[28、29]。
【0014】
進行または再燃した疾患を有する場合、処置は緩和的化学療法からなり(KIT/血小板由来増殖因子(PDGF)受容体阻害剤が有効な薬剤である消化管間質腫瘍(GIST)を除く)、最も一般的に使用される第一選択薬剤はドキソルビシンまたはイホスファミドである。これらのORRはたった10%~25%である。タキサン、トラベクテジンおよびパゾパニブは、特定の亜型の肉腫に対して利用可能な他の薬剤であるが、全て同様に利益が限られている。第一選択治療を超える明白なSOCは存在しない。
European Organization for Research and Treatment Cancer(EORTC)Soft Tissue and Bone Sarcoma Groupにより、初期相試験における有望な新しい肉腫治療薬を決定するための基準が確立された[30]。3カ月時点での標的PFS率を定義することにより、安定(SD)がこの評価基準に含まれる。これは、>20%になり、40%が目指されることが予想される。利用可能なデータから、肉腫では任意の他のがん型よりもMT1-MMPが高度に発現され、in vivo線維肉腫モデルにおいてBT1718の優れた活性が示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Pahwa, S., M.J. Stawikowski, and G.B. Fields, Monitoring and Inhibiting MT1-MMP during Cancer Initiation and Progression. Cancers (Basel), 2014. 6(1): p. 416-35.
【非特許文献2】Kessenbrock, K., V. Plaks, and Z. Werb, Matrix Metalloproteinases: Regulators of the Tumor Microenvironment. Cell, 2010. 141(1): p. 52-67.
【非特許文献3】Wang, Y.Z., et al., MMP-14 overexpression correlates with poor prognosis in non-small cell lung cancer. Tumor Biol, 2014. 35(10): p. 9815-21.
【非特許文献4】Zhou, H., et al., Significance of semaphorin-3A and MMP-14 protein expression in non-small cell lung cancer. Oncology Letters, 2014. 7(5): p. 1395-1400.
【非特許文献5】Laudanski, P., et al., Increased serum level of membrane type 1-matrix metalloproteinase (MT1-MMP/MMP-14) in patients with breast cancer. Folia Histochem Cytobiol, 2010. 48(1): p. 101-3.
【非特許文献6】Tetu, B., et al., The influence of MMP-14, TIMP-2 and MMP-2 expression on breast cancer prognosis. Breast Cancer Research, 2006. 8(3): p. R28-R28.
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1Aは、LU-010-0046(MT1-MMP高発現)非小細胞肺癌(NSCLC)患者由来の異種移植(PDX)動物モデルにおいてBT1718を3mg/kgで週2回投薬した場合およびBT1718を10mg/kgで週2回投薬した場合のBT1718の有効性を示す。
【0017】
図1Bは、LU-010-0251(MT1-MMP高発現)非小細胞肺癌(NSCLC)患者由来の異種移植(PDX)動物モデルにおいてBT1718を3mg/kgで週2回投薬した場合およびBT1718を10mg/kgで週2回投薬した場合のBT1718の有効性を示す。
【0018】
図1Cは、LU-010-0486(MT1-MMP低発現)非小細胞肺癌(NSCLC)患者由来の異種移植(PDX)動物モデルにおいてBT1718を3mg/kgで週2回投薬した場合およびBT1718を10mg/kgで週2回投薬した場合のBT1718の有効性を示す。
【0019】
【
図2】
図2は、BT1718を0.015、0.031、0.061、0.123、および0.245mg/kg/時間で投薬した場合の血漿中薬物濃度-時間曲線を示すグラフである。この投薬範囲は、0.6、1.2、2.4、4.8および9.6mg/m
2と表すこともできる。
【0020】
【0021】
【
図4】
図4は、BT1718臨床試験の概要を示す図である。
【0022】
【
図5】
図5は、第1相および第2a相の概要を示す図である。
【0023】
【
図6】
図6は、BT1718による処置中の患者の状態を示すグラフである。
【0024】
【
図7】
図7Aは、患者番号36/011についてのM30およびM65アッセイによって示されたBT1718投薬後の腫瘍細胞死の増加を示すグラフである。
【0025】
図7Bは、患者番号31/012についてのM30およびM65アッセイによって示されたBT1718投薬後の腫瘍細胞死の増加を示すグラフである。
【0026】
図7Cは、患者番号16/013についてのM30およびM65アッセイによって示されたBT1718投薬後の腫瘍細胞死の増加を示すグラフである。
【0027】
図7Dは、患者番号36/010についてのM30およびM65アッセイによって示されたBT1718投薬後の腫瘍細胞死の増加を示すグラフである。
【0028】
図7Eは、患者番号31/014についてのM30およびM65アッセイによって示されたBT1718投薬後の腫瘍細胞死の増加を示すグラフである。
【0029】
図7Fは、患者番号16/015についてのM30およびM65アッセイによって示されたBT1718投薬後の腫瘍細胞死の増加を示すグラフである。
【0030】
【
図8】
図8は、用量レベルおよび患者数を含む用量漸増スキームを示す図である。
【0031】
【
図9A】
図9Aは、0.6mg/m
2、1.2mg/m
2、および2.4mg/m
2での投薬を行ったサイクル1&2における最初の投薬後の時間に対するBT1718血漿中濃度のスパゲッティプロットを示すグラフである。
【0032】
【
図9B】
図9Bは、4.8mg/m
2、7.2mg/m
2、および9.6mg/m
2での投薬を行ったサイクル1&2における最初の投薬後の時間に対するBT1718血漿中濃度のスパゲッティプロットを示す。
【0033】
【
図9C】
図9Cは、15mg/m
2、20mg/m
2、および25mg/m
2での投薬を行ったサイクル1&2における最初の投薬後の時間に対するBT1718血漿中濃度のスパゲッティプロットを示す。
【0034】
【0035】
【発明を実施するための形態】
【0036】
1.化合物
独自のファージディスプレイおよびサイクリックペプチド技術(Bicycle(登録商標)技術)を利用して、膜1型-マトリックスメタロプロテイナーゼ(MT1-MMP/MMP14)に対する高親和性結合性ペプチドを同定した。MT1-MMP(MT1)は、多くの固形腫瘍において過剰発現されることが見いだされた、組織リモデリングに通常関与する細胞表面膜プロテアーゼである。MT1の過剰発現は、がんの侵襲性および予後不良に関連付けられている。がんにおけるMT1および他のMMPのタンパク質分解活性を標的化する試みは、臨床試験において、不十分な選択性によって引き起こされる毒性に大きく起因して失敗したが、MT1-MMPは標的化細胞傷害性送達手法のための魅力的ながん標的のままである。
【0037】
チオール反応性足場で翻訳後に環化される1011~1013種の独特のペプチド配列を含有する多様な選択ファージライブラリーを使用して、MT1のヘモペキシンドメインに対する低分子(1.5~2kDa)制約二環式ペプチド性結合物質(Bicycle)を同定した。最初の結合物質を定方向スクリーニングによる親和性成熟および化学的最適化による安定化に供した。
【0038】
MT1のヘモペキシンドメインに見かけのKdおよそ2nMで結合する二環式制約ペプチド性結合物質(Bicycle)を同定した。Bicycleペプチド(N241)は、プロテアーゼの外部ドメイン全体に同様の親和性で結合するが、触媒ドメインへの結合性は示さない。N241はまた、試験した密接に関連するMMPファミリーメンバーのいずれか(MMP15、MMP16、MMP24、MMP1、Pro-MMP1、MMP2)に対しても結合性を示さない。in vitroにおけるN241のMT1に対する薬理的影響の特徴付けにより、当該ペプチドが、プロテアーゼの触媒活性にも関連するMMP触媒活性(MMP1、MMP2およびMMP9)にも細胞遊走または侵入にも直接は影響を及ぼさないことが示される。しかし、蛍光的にタグ付けしたN241のHT1080線維肉腫細胞上のMT1への結合の結果、当該化合物の迅速な内部移行およびその後のリソソーム内局在化がもたらされる。さらに、177Lu負荷N241を、MT1陽性腫瘍異種移植片を担持するマウスにIV注射した場合、迅速な腫瘍への局在化が実証され、そのレベルは60分未満で腫瘍1グラム当たり注射用量の15~20%の高さである。対照的に、非結合性Bicycleペプチドは腫瘍への局在化を示さない。これらの特性から、N241が、MT1陽性腫瘍細胞を標的とする細胞傷害性ペイロードのための良好な送達ビヒクルであり得ることが示唆される。MT1に対する結合性を保持する、種々のリンカーおよび細胞傷害性ペイロードとのBicycle薬物コンジュゲート(BDC)を調製した。選択されたBDCの抗腫瘍活性がマウスにおけるMT1陽性ヒト腫瘍細胞異種移植片において実証された。
【0039】
BT1718は、膜1型-マトリックスメタロプロテアーゼ(MT1-MMP;MMP14)に高い親和性および特異性で結合する制約二環式ペプチドと、それとヒンダードジスルフィドリンカーを通じて共有結合により連結した強力な抗チューブリン剤DM1とで構成されるBicycle薬物コンジュゲート(BDC)である。MT1-MMPは、組織リモデリングに天然に関与するが、細胞表面プロテアーゼの過剰発現は、腫瘍の攻撃性および侵襲性、ならびに多くのがんの兆候についての患者の予後不良に結び付けられている。中心的な化学的足場によって2つのループ中に制約された直鎖状アミノ酸配列の高度に多様なファージライブラリーからなる独自のファージディスプレイペプチド技術を使用してBT1718に対するBicycle結合物質(N241)を同定した。Bicycleペプチドは、モノクローナル抗体を用いて観察されたものと同様の親和性および特異性で結合するが、サイズが小さいこと(1.5~2kDa)がその迅速な溢出および腫瘍透過の助けとなり、それにより、Bicycleペプチドが細胞傷害性ペイロードの標的化送達のための理想的なフォーマットになる。
【0040】
切断可能性を調整するために様々なリンカーフォーマットを用いて一連のメイタンシノイド-BDCコンジュゲートを調製し、MT1陽性腫瘍異種移植モデルにおけるそれらの抗腫瘍活性を評価した。さらなる評価のために選択されたBDC(BT1718)を腫瘍異種移植モデルのアレイにおける有効性について評価した。
【0041】
モノ-ヒンダードリンカー-DM1構築物(BT1718)は、MT1陽性EBC-1肺腫瘍異種移植片に対する活性が最も高い構築物の1つであった。このモデルにおける有効性は、最小の切断可能なリンカーを含有するコンジュゲートでは低下した。BT1718を週2回のスケジュールで2週間にわたって投薬することにより、3mg/kgでは腫瘍成長の有意な低減が見られ、このモデルでは10mg/kgで完全な退縮が引き起こされた。同一の総用量を毎日から週に1回用量までのスケジュールで与薬した場合にも有効な処置が認められた。選択されたMT1陽性腫瘍異種移植モデル(例えば、HT1080線維肉腫;HCC1806トリプルネガティブ乳がん;SNU-16胃がん)におけるBT1718を用いた処置では、3~10mg/kgの範囲の最小に有効な用量で週1回または週2回により活性が実証され、10mg/kgで週2回により大多数のモデルにおいて完全な退縮が引き起こされた。予備代謝試験により、BT1718が主に腎臓を通じて尿中に排出されることが示される。
【0042】
Bicycle薬物コンジュゲート(BDC)であるBT1718は、線維肉腫、肺がんおよび乳がんのヒト腫瘍異種移植モデルにおいて強力な抗腫瘍活性を示す。いかなる特定の理論にも制約されることなく、BDCのサイズが小さいことにより、迅速な溢出および腫瘍透過の改善に起因して、抗体-薬物コンジュゲートなどの他の標的化細胞傷害手法に対する著しい利点がもたらされ得ると考えられる。
【0043】
BT1718は、膜1型-マトリックスメタロプロテイナーゼ(MT1-MMP)に選択的に結合する新規の二環式ペプチド(Bicycle)と、分子スペーサーおよび切断可能なジスルフィドリンカーを通じてそれと接続した強力な細胞傷害性チューブリン阻害剤であるDM1とからなる、強力な高度に選択的なBicycle薬物コンジュゲート(Bicycle Drug Conjugate)(BDC)である。MT1-MMPを発現する腫瘍細胞に結合すると、DM1ペイロードが、コンジュゲートから放出されることによって活性化され、そこでDM1ペイロードにより微小管ダイナミクスが乱され、その結果、腫瘍細胞死がもたらされる。
【0044】
BT1718は、BicycleRDにより、本明細書ではBicycleと称されるそれらの制約二環式ペプチド性結合物質の新規のプラットフォーム技術を使用して開発された強力な、高度に選択的なBDCである。BDCは、他のコンジュゲートした毒素による手法と比較して低分子量(3.5kDA)を有し、これにより、腫瘍組織の迅速な透過が可能になる。半減期が短いことおよび排出が腎臓を介したものであることに起因して最小の全身毒性が予測され、小分子細胞傷害薬およびADCを用いた場合に見られる頻繁な標的毒性である胃腸(GI)および肝毒性が潜在的に少なくなる。BT1718は、腫瘍細胞上に過剰発現される細胞表面MT1-MMPに特異的に結合し、それにより、その細胞傷害性ペイロードであるDM1の腫瘍への送達が容易になる。腫瘍に局在してリンカーの切断によって放出されたら、次いで、活性なコンジュゲートしていないDM1が細胞分裂中の正常な微小管機能を遮断することが可能になり、最終的にアポトーシス、細胞死および腫瘍サイズの縮小に至る。
【0045】
ある特定の態様では、本発明は、対象におけるある特定のがんを処置する方法であって、対象に、BT1718などのMT1-MMPに対する高親和性結合物質または薬学的に許容されるその塩もしくは組成物を含む薬物コンジュゲートの有効量を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0046】
BT1718の調製は、その全体がこれにより参照により本明細書に組み込まれる、2015年10月29日出願のWO2016/067035に詳細に記載されている。BT1718は以下に示す構造を有する:
【化1】
2.定義
【0047】
本明細書で使用される場合、「約」または「およそ」という用語は、数値と併せて使用される場合、その数値の上下の境界が及ぶ範囲を指す。例えば、「約」または「およそ」という用語は、30%、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、または0.5%上および/または下(より高いまたはより低い)という分散によって規定された値に及び得る。一部の実施形態では、「約」または「およそ」という用語は、25%上および/または下(より高いまたはより低い)という分散によって規定された値に及ぶ。一部の実施形態では、「約」または「およそ」という用語は、10%上および/または下(より高いまたはより低い)という分散によって規定された値に及ぶ。一部の実施形態では、「約」または「およそ」という用語は、5%上および/または下(より高いまたはより低い)という分散によって規定された値に及ぶ。
安全性の考察
【0048】
非臨床薬理学
【0049】
BT1718は、MT1-MMPに結合し、そのジスルフィドリンカーが切断されると細胞傷害性チューブリン阻害剤であるDM1を放出するBDCである(DM1-SHとも称される)。BT1718は、MT1-MMPのヘモペキシンドメインに対して高い親和性および選択性を有し(阻害定数Ki、1.75±0.92nM)、Bicycle構成成分はMT1-MMPの触媒ドメインに対しても(少なくとも50倍の選択性)、他の関連するMMPヘモペキシンドメインに対しても有意な結合性を有さない(200倍を超える選択性)。さらに、BT1718はMT1-MMPのタンパク質分解活性に干渉しない。
【0050】
膜I型マトリックスメタロプロテイナーゼ結合性Bicycleは、細胞表面MT1 MMPに結合し、リソソーム区画に内部移行した後そこに局在化することが示されている。BT1718により、MT1-MMPを発現する腫瘍細胞に対して、MT1-MMPを発現しない細胞よりも少なくとも2桁大きな強力な細胞死滅活性が実証された(nM IC50S範囲)。一方、コンジュゲートしていないDM1単独に対しては、全ての細胞がそれらのMT1-MMP発現レベルとは関係なく同様の感受性を示した。さらに、BT1718の過剰なBicycle構成成分はBT1718細胞傷害性と拮抗した。総合すると、これらのデータから、BT1718がMT1-MMPを発現する細胞に結合し、標的依存性細胞死滅を媒介することが実証される。
【0051】
in vivoでは、BT1718の静脈内投与により、肺、乳房、胃、線維肉腫、鼻および結腸直腸を含めた種々の腫瘍型を代表する多数の異種移植モデルにおいて用量依存的抗腫瘍活性が示され、疾患の安定化および/または退縮が伴った。EBC-1モデルにおける最小の有効用量は1mg/kg(3mg/m2)を1週間に3回(腫瘍成長が遅くなった)であり、HT-1080モデルでは週2回与えられた2mg/kg(6mg/m2)であった(表1)。3mg/kg(9mg/m2)で週2回という用量ではいくつかのモデルにおいてSDまたはより良好な状態がもたらされ、試験した最高用量である10mg/kg(30mg/m2)で週2回では、試験したMT1-MMPを発現する異種移植腫瘍の大多数で完全な退縮が引き起こされ(表1)、多くの場合、マウスは試験終了まで無腫瘍のままであった。投薬を一時停止した後に腫瘍の再成長が生じた一部の例では、BT1718の投与により、それでもなお、再投与時に著しい退縮または腫瘍成長の低下を誘導することができた。異種移植モデルにおけるBT1718の抗腫瘍活性は、in vitroアッセイにおいて観察された細胞傷害効力と相関する傾向があった。さらに、また、in vitroにおいて実証されている通り、過剰なコンジュゲートしていないMT1-MMP結合性Bicycleでは抗腫瘍効果が減弱し、これにより、in vivoにおけるBT1718の有効性にはMT1 MMP結合性が重要であることが示唆される。この所見と一致して、異種移植腫瘍の免疫組織化学的検査(IHC)により、BT1718が最大の抗腫瘍効果をもたらしたモデルは、MT1-MMPに対する強力な膜染色を示し、一方、BT1718に対して同様に応答しなかったモデル(最高用量でSD)は、限定された膜MT1-MMP発現を有したかまたは膜MT1-MMP発現を有しなかったことが確認された。
【0052】
BT1718についての抗腫瘍活性と投薬スケジュールの関係を調査した。等しい総週間用量を週1回、週2回、もしくは週3回または1日1回のいずれかで投与した場合の抗腫瘍活性を比較した。高総週間用量の60mg/m2では、全てのスケジュールで腫瘍の完全な退縮がもたらされ、また、60mg/m2を週1回では注目すべき体重減少(>10%)が引き起こされたことを除いて、忍容性は良好であった。低用量レベル(総週間用量18mg/m2)では、週1回および週2回のスケジュールが最も有効であり、それよりも頻度の高いスケジュール(週3回または1日1回)では、抗腫瘍効果のいくらかの低下が示された。要約すると、非臨床データにより、週1回などの異なるスケジュールの臨床評価が支持される。さらに、より頻度の低い投薬スケジュールを評価することができる。
【0053】
高レベルのMT1-MMPを発現しなかったNSCLC患者由来の異種移植(PDX)モデルにおいて生成されたデータから、BT1718に応答した抗腫瘍活性がないことが示された。しかし、MT1-MMPを発現するPDXモデルはBT1718に対して感受性を有し、3mg/kg(9mg/m
2)で週2回ではSDがもたらされ、一方、ビヒクル対照動物の全てで進行(PD)が実証され、腫瘍成長は27日目までに2,000mm
3を超えた(
図1A、
図1Bおよび
図1C)。さらに、BT1718は、MT1 MMPを発現するNSCLC PDXモデルに対して、SOC化学療法薬であるドセタキセルに対する当該モデルの感受性とは無関係に抗腫瘍効果を生じた。BT1718(10mg/kg;30mg/m
2で週2回)ではどちらのモデルにおいても腫瘍の完全な退縮が引き起こされたが、臨床的に関連する用量のドセタキセル(60mg/m
2、週1回)ではドセタキセル感受性モデルにおいてのみ退縮が生じた。低用量のBT1718(3mg/kg;9mg/m
2で週2回)で、どちらのモデルにおいてもSDがもたらされた。PDXモデルにより、BT1718の抗腫瘍活性にはMT1-MMP発現が必要であることが確認される。
【0054】
in vitroおよびin vivo抗腫瘍活性の要約
表1.in vitro抗腫瘍活性の要約
【表1】
表2.in vivo抗腫瘍活性の要約
【表2】
【0055】
表1および表2の注釈:一般に、退縮および安定は、in vitro細胞傷害性およびMT1-MMP発現と相関した。雌BALB/cマウスn=3/群の動物に対して、EBC-1は週3回投薬し、それ以外は週2回投薬した。腫瘍成長阻害(TGI)(%)=[1-(Ti-T0)/(Vi-V0)]×100;Tiは所与の日数における処置群の平均腫瘍体積であり、T0は処置開始日の処置群の平均腫瘍体積であり、ViはTiと同一の日のビヒクル対照群の平均腫瘍体積であり、V0は処置開始日のビヒクル群の平均腫瘍体積である。一元配置ANOVAを実施して、群の間で腫瘍体積を比較し、有意なF統計値(処置分散のエラー分散に対する比)が得られた場合、ゲームス・ハウエル検定を用いて群間での比較を行った。全てのデータを、GraphPad Prismを使用して解析した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。in vitro細胞傷害性はCellTiter-Glo(登録商標)によって測定したものであり、MT1-MMP膜Hスコアは免疫組織化学染色からのものであり、NMは測定されなかったことを示す。腫瘍サイズは投薬1日目のものである。
【0056】
非小細胞肺がん患者由来の異種移植モデルにおけるMT1-MMP発現に依存的な抗腫瘍活性
【0057】
患者由来異種移植片(PDX)肺モデルをそれらのMT1-MMP発現について選択した。マウスにビヒクルを週2回投薬したか、またはBT1718を3mg/kgもしくは10mg/kgで週2回投薬した。平均±SEM、n=6/群。モデルに応じて21~27日目に腫瘍成長阻害(TGI)を算出し、一元配置ANOVAを実施して、群の間で腫瘍体積を比較し、有意なF統計値(処置分散のエラー分散に対する比)が得られた場合、ゲームス・ハウエル検定を用いて群間での比較を行った。3mg/kgを投薬されたLU 01 0046、LU-01-0251およびLU-01-0486の動物では、TGIはそれぞれ91%、71%および11%であり、10mg/kg群では、TGIはそれぞれ105%、106%および17%であった。非小細胞肺がん患者由来の異種移植モデルにおけるMT1-MMP発現に依存的な抗腫瘍活性は
図1A、
図1B、および
図1Cに示されている。
【0058】
Good Laboratory Practice(医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準)(GLP)に準拠した毒性試験の一部として、安全性薬理学試験のコアバッテリーを実施した。BT1718をラットに0.2、0.5または1mg/kg(それぞれ1.2、3、6mg/m2)の用量レベルで単回投薬した後、中枢神経系(CNS)行動モデル(Irwin試験)において影響は見られなかった。0.2、0.5、1および1.5mg/kg(それぞれ2.4、6、12および18mg/m2)で週2回の投薬を行ったサルにおいて、4日目、22日目(2回目の投薬後および7回目の投薬後)ならびに回復期間中に(0、6および12mg/m2で週2回の投薬を行った動物について)心電図(ECG)および呼吸器プレチスモグラフィー測定値を取得した。同一のサルにおいて1日目および25日目ならびに回復期間中に血圧(BP)測定値も評価した。安全性試験をGLPに対して行い、いずれの日に測定したいずれのパラメーターに関してもBT1718に関連する所見は示されなかった。したがって、BT1718にはGLP毒性試験において試験した用量およびスケジュールで心臓、呼吸器または行動に関する不都合はないと結論づけた。
【0059】
結論として、BT1718により、MT1 MMPを発現する異種移植片およびPDXモデルにおける抗腫瘍有効性がもたらされ、長期にわたる退縮が伴う。利用可能な前臨床データに基づいて、週2回の投薬が、最も忍容性が高く、効果的な投薬スケジュールであると思われた。GLPに準拠した安全性薬理学試験では、試験した最高用量(18mg/m2)に至るまで心血管機能、呼吸器機能または行動機能に対するBT1718に関連する影響は観察されなかった。BT1718は、一般にNSCLC、TNBCおよび肉腫などのがんにおいて見いだされるMT1-MMP発現細胞にDM1を送達することができる新規の送達プラットフォームである。
【0060】
薬物動態学
【0061】
ヒト、サル、イヌ、マウスおよびラット由来の血漿および全血におけるBT1718の安定性を評価した。in vitro、37℃、血漿中のBT1718の半減期は、ヒト、ラットおよびイヌでは>6時間であり、マウスおよびサルに関しては>5時間であった。in vitro、37℃、全血中のBT1718の半減期は、マウス、ラットおよびイヌでは>24時間であり、ヒトおよびサルに関しては2~4時間であった。全血中のBT1718ペプチドの安定性が異なる種間で異なることの機構は分かっていない。BT1718は血液細胞への限られた分布を示し(MT1-MMP発現を欠く細胞への取り込みが少ないという予測と一致して)、これはヒトおよび試験した全ての前臨床種にわたって同等であった。
【0062】
BT1718の血漿タンパク質への結合も評価した。BT1718ペプチドの血漿タンパク質への結合の平均値は87%から98%までにわたり、BT1718の遊離画分はヒト血漿では13%、ラット血漿では2.6%、マウス血漿では7.5%、サル血漿では3.8%、およびイヌ血漿では1.5%であった。これらの結果に血漿および全血の安定性データとの相関はなかった。BT1718は血液細胞への限られた分布を示し(MT1-MMP発現を欠く細胞への取り込みが少ないという予測と一致して)、これはヒトおよび試験した全ての前臨床種にわたって同等であった。コンジュゲートしていないDM1の血漿タンパク質への結合は以前に報告されており、結合していない画分はヒトおよびサルでは7%であり、ラットでは3%であった[31、32]。体内分布に関する予備試験およびPK試験における回復から、BT1718は主に腎臓によって取り除かれ、したがって、血漿タンパク質への結合の差異が安全性の展望から臨床的に極めて重要である可能性は低いことが示唆される。
【0063】
齧歯類におけるBT1718のPK特性は、分布容積が中程度であること、血漿クリアランスの速度が大きいこと、および半減期が短いことを特徴とするものであった(表3)。CD1マウスにおける曲線下面積(AUC)は用量に比例した。
【0064】
肺がん異種移植(EBC-1)試験においてもPK試料を分析し、10mg/kg(30mg/m2)の用量には第1の測定時点(5分)における最大の曝露が伴い、これは7.6±0.6μMであった。CD1マウスにおける試験では、10mg/kg(30mg/m2)の用量では、推定C09.3μMが得られ、AUCは5.3μM・hであり、これはより信頼できる曝露の評価基準になる。3mg/kg(9mg/m2)の用量では、EBC-1モデルの中のいくつかの異種移植モデルにおいてSDがもたらされ、これには1.5±0.9μMという最大観察血漿中濃度(Cmax)が伴った。BALB/cマウスでは、5mg/kg(15mg/m2)の用量でCmax8μMおよびAUC約2.5μM・hが測定された。EBC-1異種移植マウスにおけるスケジューリング実験では、20mg/kg(60mg/m2)の用量に有意な体重減少が伴い、CD1マウスではこれにCmax38.2μMおよびAUC11.6μM・hが伴った。用量依存的有効性は、BT1718への用量依存的曝露によって裏付けられる。
【0065】
BT1718を用いた繰り返し投与実験では、ラットまたはサルに関してTKパラメーターに有意な性別に関連する差異は認められなかった。ラットおよびサルのどちらにおいても曝露は用量と共にほぼ直線的に増大し、繰り返し投与で28日間にわたって維持された。血漿t
1/2は用量とは無関係に0.2時間から0.56時間の間であった。血漿クリアランスおよび分布容積はBT1718の用量にわたって同様であり、PK試験と一致した。
表3.薬物動態パラメーターおよび毒物動態パラメーターの概要
【表3】
【0066】
表3注釈:平均値±標準偏差;試験は全て静脈内へのものであった;Cmax、最大濃度;C0、0時間時点での推定Cmax;AUC、曲線下面積;CL、クリアランス;t1/2、終末相半減期;Vdss、定常状態分布容積、NC、算出されず。EBC-1異種移植片試験、雌マウス、Cmaxは5分時点のものである。BALB/c PK試験、雌マウスのみ、CD1雄マウス用量反応試験およびSprague Dawley雄ラット試験、Wister Hanラット非GLP毒性試験、雄の1日目の数字のみが示されている。*Cmaxは1時間時点のものである。Wistar HanラットGLP試験、値は1日目の雄の値である。性別間または繰り返し投与での有意差なし、試験デザインの複合的な性質に起因する。平均Cmax、AUCおよびTmaxは算出されたもののみ。サルGLP試験、値は1日目の雄の値である。性別間または繰り返し投与での有意差なし。Cmax/用量の平均値および中央値は、マウスおよびラットのどちらにおいても全ての薬物動態試験にわたって1.5であり、AUC/用量は0.5であった。
【0067】
BT1718中のDM1、BT1718のあらゆるペプチジル-DM1代謝産物、他のDM1を含有する混合ジスルフィドおよび遊離DM1を検出するために、還元ステップ後にも血漿および尿中の総DM1の濃度を測定した。血漿および尿中の総DM1のレベルは用量の増加と共に上昇し、総DM1の約85%がBT1718投与から48時間以内に尿中に回収された。インタクトなBT1718が尿中にほとんど回収されず、これにより、BT1718のBicycle構成成分がタンパク質分解による切断を受ける可能性があることが示唆される。遊離DM1は肝臓を通じて取り除かれ、胆汁および糞便中に排出され、第1相および第2相酵素による広範囲にわたる代謝を受けることが実証されているので、尿中の総DM1の回収率が高いことから、排出されるDM1の大部分がなおBicycleの断片とコンジュゲートしている(ペプチジル-DM1である)ことが示唆される[33]。生物学的マトリックスにおける遊離のチオールの不安定性に起因して、遊離DM1についてのアッセイの開発は成功していない。
【0068】
光音響試験により、MT1-MMP特異的抗体と比較して迅速な腫瘍透過が実証された。さらに、腫瘍担持マウスにおける放射標識したBicycleの体内分布および器官分布試験により、腫瘍への放射活性の迅速な蓄積が示され、投薬1時間後に12.02±2.37%初回用量/グラム(%ID/g)のピークに達した後、24時間の時点では1.54±0.06%ID/gに減少し、脈管構造からの迅速なクリアランスが伴った(20分以内)。腎臓および膀胱において、標識されたペプチドの用量とは無関係に、放射活性の大部分の蓄積が見いだされた;これにより、非飽和性排出またはタンパク質分解のいずれかの後に腎臓を通じて排出されることが示される。さらに、BT1718およびそのBicycle構成成分であるN241の内因性クリアランスは、凍結保存された肝細胞において測定したところ小さかった。in vivo画像診断/放射標識試験において見られたBicycle構成成分の肝細胞による無視できる代謝、および分布を予備PK試験における尿中の総DM1と総合すると、コンジュゲートしていないDM1に対する全く異なる排出および代謝経路が示唆される。コンジュゲートしていないDM1を放射標識したところ([[3H]-DM1(91μCi/kg、200μg/kg、IV)、ラットの肺、肝臓、腎臓、脾臓、心臓、胃腸管、および副腎に急速にかつ広範囲にわたって分布することが報告された。DM1の排出の主要な経路は胆汁/糞便を通じたものであり、尿中には最小量が排出され[33]、これは、心臓、肝臓、GIおよび肺などの他の器官への蓄積がわずかであり、短寿命であり、これらの器官が全身毒性を免れ得ることを意味するBT1718およびその代謝産物の分布とは完全に異なる。
【0069】
BT1718は血漿クリアランスの速度が大きく、その結果、半減期が短い。前臨床試験では、BT1718は腎臓によりインタクトな親としてまたはタンパク質分解断片/代謝産物としてのいずれかで排出される。そのように、BT1718は遊離DM1とは全く異なる排出および代謝経路を有する。さらに、Bicycleは、高分子量ADCとは異なり、投与から20分以内に腫瘍を透過することが示されている。
【0070】
毒性学
【0071】
BT1718の静脈内投与の臨床使用を支持するために、BT1718を用いたin vivo前臨床安全性評価試験のプログラムを行った。これらは、ヒト、ラットおよびサル組織におけるin vitro組織マイクロアレイならびに免疫原性のin vitroおよびin vivo評価を含む。in vivo評価は、マウスおよびラットにおける単回投薬毒性、マウス、ラット、イヌおよびサルにおける複数回投薬範囲発見試験(非GLP)ならびに28日間の試験相と28日間の回復期間からなるラットおよびサルにおけるGLPに準拠した複数回投薬試験を含む。BT1718のBicycle構成成分であるN241は、in vitro免疫原性試験においてドナーコホート(n=50)の2%だけに陽性応答を引き出し、これにより、臨床的免疫原性のリスクが低いことが示され、これは、ラットおよびサルの28日間のGLP準拠試験のどちらにおいても全ての血清試料が抗薬物抗体(ADA)に対して陰性であったことによって裏付けられた。BT1718の投与後の重要な標的器官が造血系およびリンパ組織系、腎臓、および膀胱、肝臓、ニューロン神経系、皮膚(変化は一般に注射部位の付近におけるものであった)、ならびにより少ない程度に他の高度に複製する組織、例えば、生殖器官、GI、および副腎組織、膵臓組織および唾液組織などの分泌性細胞などであることが同定された。毒性は全て用量依存的、可逆的であった、または回復相中に回復する徴候が示され、例外として、軸索変性および生殖器官の変化は最小であった。
【0072】
カニクイザルに対するGLPに準拠した試験では、BT1718の重度の毒性を発現しない最大用量(HNSTD)は、18mg/m2の週2回投与であることが確立され、これは、0.48mg/kgのヒト用量に相当する。ラットに対するGLPに準拠した試験では、最高投与用量である6mg/m2で週2回のMTDに達しなかった。この用量レベルで、腎毒性が認められ(臨床的状態に対する影響はなかった)、精巣毒性も認められた。28日間の投薬休止後、腎臓に関連する所見の部分的な回復のエビデンスが認められたが、精巣への影響の回復はこの用量レベルでは認められなかった。非GLPラット試験では、9mg/m2で週2回投与という用量は忍容性が良好でなかった。したがって、ラットに対する週2回投薬についてのMTDは1から1.5mg/kgの間であるとみなした。
【0073】
GLPおよび非GLP試験にわたるBT1718毒性に関する標的組織は以下の通りであった:
【0074】
血液学的変化
【0075】
BT1718を投与したラットおよびイヌおよびサルにおける血液学的変化を観察した。
【0076】
1mg/kgまたは1.5mg/kg(12mg/m2または18mg/m2)で週2回投与したサルにおいて可逆的な胸腺委縮およびリンパ節内の胚中心の減少が見られた。投薬期間中、0.5mg/kg(6mg/m2)で週2回の開始と共に白血球(white blood cell)(WBC)および網状赤血球の可逆的な減少が認められ、1mg/kg(12mg/m2)で週2回の開始と共に網状赤血球の可逆的な減少が認められ(それぞれ最大0.11×および0.2×)、網状赤血球の減少には赤血球およびパラメーターの用量依存的であるが最小の減少(0.63~0.93×)が伴った。1mg/kg(12mg/m2)で週2回またはそれよりも高用量を投与したサルでは血小板の用量依存的増加(1.4~2.5×)が見られた。
【0077】
ラットGLP試験では、BT1718を1mg/kg(6mg/m2)で週2回投与することにより、網状赤血球の減少(雄では0.06×および雌では0.37×)、赤血球パラメーターの減少(0.64×の最大降下)、ならびに血小板の増加(2.3×の最大増加)が引き起こされた。細胞充実性の喪失およびリンパ節内のリンパ系枯渇が示されたが、サルとは異なり、白血球(leukocyte)の減少は観察されなかった。血液学的毒性は全て可逆的であった。
【0078】
非GLP試験では、BT1718をMTDを超える用量で投与した前臨床種の全てで末梢血液学的変化が観察された;ラット(1.5mg/kg;9mg/m2で週2回)、イヌ(1mg/kg;20mg/m2で週2回)、およびサル(2mg/kg;24mg/m2、週1回)において、WBC(リンパ球および好中球が最も影響を受けた集団であった)ならびに赤血球系列の有意な減少が観察され、これは、リンパ系、胸腺および骨髄の細胞充実性の全体的な減少と相関した。好中球減少症、白血球減少症(leucopenia)および赤血球減少症および血小板増加症などの血液学的毒性は細胞周期に影響を及ぼす薬剤では珍しくなく、臨床的に管理しやすい。
【0079】
腎臓および膀胱の変化
【0080】
BT1718および可能性のあるそのペプチジル代謝産物は、腎臓および膀胱を通じて取り除かれると予測される。
【0081】
ラットGLP試験では、0.2mg/kg(1.2mg/m2)で週2回の開始と共に腎臓尿細管上皮の変性が見られ、発生率および重症度は用量と共に増大した(最小~中等度)。ラット(>1mg/kg;6mg/m2で週2回)、イヌ(1mg/kg;20mg/m2で週2回)およびマウス(3.3.5mg/kg;10mg/m2、週3回)における非GLP試験ではMTDを超える用量で中等度の尿細管変性および上皮有糸分裂が観察された。GLPサル試験では、いずれの性別においても、試験した最高用量の1.5mg/kg(18mg/m2)で腎臓の変化は見られなかった。
【0082】
中等度の変性は、クレアチニンおよび尿素レベルの上昇と相関した。尿細管好塩基球増加症も見られ、これは、修復および再生と一致する[34]。ラットGLP試験では、回復相において腎臓上皮変性の改善の徴候が示され、また、尿素およびクレアチニンレベルがベースラインに戻った;非GLP試験では回復は評価しなかった。
【0083】
非GLP試験では、ラットおよびイヌのどちらにおいてもMTDを超える用量で膀胱上皮変性が見られた(それぞれ40mg/m2および14mg/m2で週2回の単回投与)。GLPに準拠した試験ではいずれの種においても膀胱の変化は見られなかった。さらに、ヒト膀胱組織マイクロアレイ(TMA)試験の尿路上皮に中等度のまたは強力なMT1-MMP染色(ヒト切片3つのうち2つ)が観察された。しかし、ラットまたはサルの膀胱では膜染色は見られなかった。
【0084】
ニューロンの変化
【0085】
末梢性ニューロパチーは、微小管阻害剤[35]およびDM1とコンジュゲートした抗体の一般的な臨床副作用である。GLPサル試験では、BT1718により、約2.4mg/m2のDM1で週2回に相当する1mg/kg(12mg/m2)で週2回の用量の開始と共に最小の軸索変性が引き起こされ、これは、いかなる明白な神経学的欠損とも相関しなかった(0.5mg/kg[6mg/m2]で週2回の投薬を3回受けた雄1匹が最小の軸索変性を有した)。この変性はラット試験では観察されず、また、イヌ試験では評価を行わなかった。BT1718はADCとは全く異なる分布プロファイルを有する。かなり短寿命の、DM1とコンジュゲートしたADC(t1/240時間)であるカンツズマブメルタンシンでは、58~228mg/m2(0.85および3.3mg/m2のDM1)週1回の用量での投与を受けた動物において軽度の軸索変性が示され[36]、これは、MTD(上昇したトランスアミナーゼのDLT)においてさえ重症ではないいくらかの神経感覚AEであると臨床的に置き換えられた[37]。IMGN901もt1/2がおよそ40時間であり、全患者の17%において神経感覚AEが報告された(全グレード)[38]。ado-トラスツズマブエムタンシン(T-DM1)はt1/2が約4日であり、したがって、BT1718と比較して全く異なる分布を有し、120および360mg/m2(DM1含有量2および6mg/m2)で投与した場合、中等度~重症の軸索変性が示された。シュワン細胞の過形成および肥大、ならびに一部の場合では、浸潤性好中球もこのT-DM1媒介性軸索変性に付随し[31、32、39]、この所見はBT1718を用いた場合には観察されなかった。T-DM1の投与後のこれらの前臨床所見は、臨床的には患者の20%に末梢性ニューロパチーが生じると置き換えられる[31、32、39]。
【0086】
肝臓の変化
【0087】
ラットGLP 28日間繰り返し投与試験では、1mg/kg(6mg/m2)で週2回の最小~わずかな可逆的な肝細胞萎縮が観察された。これらの所見は、アルカリホスファターゼ(ALP)およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)レベルの可逆的な上昇ならびにコレステロールの増加(いずれも対照値から1.5×を超えなかった)と相関した。肝酵素の上昇がラットに対する非GLP試験(3.35mg/kg;20.1mg/m2で週2回)およびイヌに対する非GLP試験(1mg/kg;20mg/m2で週2回)において見られ、組織病理学的な相関を伴った。GLPに準拠したサル試験では、試験した最高用量(1.5mg/kg;18mg/m2で週2回)に至るまで肝毒性(liver toxicity)は見られなかった。肝毒性(hepatotoxicity)は、マイタンシン毒素(DM1)を単独で、およびDM1とコンジュゲートした抗体を、前臨床的に、および臨床的に用いた場合に以前に観察されているが、クリアランスの経路がBT1718では(腎臓による)これらのメイタンシノイド化合物(肝臓による)と比較して変わっているという仮説に起因して、患者は腎臓および膀胱を通じ得、肝臓がこれらの他の薬剤を用いた場合に見られる高トランスアミナーゼ血症という臨床的に関連するDLTから免れ得る。
【0088】
局所毒性(注射部位またはその周囲)
【0089】
GLPに準拠したサル試験では、0.5mg/kg(6mg/m2)で週2回およびそれを超える用量での投薬を受けた動物において注射部位の近くの領域(および時々これらの部位から遠位、例えば、足首または前肢)で生じた皮膚の黒色化はメラニン細胞の活性化に起因するとみなされ、この所見の出現、分布および発生率は用量の増加と共に増大した。この所見には、多くの場合、注射部位の近くの皮膚脱落/皮膚炎が伴い、これは、必要であれば、動物用発明品によって改善した。顕微鏡レベルで、これらの臨床所見は、最小~わずかな角質増殖および表皮過形成が最小~わずかな表皮色素と一緒に観察されたことと相関した。皮膚炎症細胞浸潤が時々見られたが、これらは、動物のほんの一部でしか観察されず、また、試験した最高用量(1.5mg/kg;18mg/m2で週2回)では観察されなかったので、一過性の炎症反応であると推定された。回復した動物では顕微鏡レベルの皮膚所見は見られなかったが、皮膚および真皮の色素沈着はなお明らかであった。表皮色素沈着の発生機序は、いくつかの化学療法剤で報告されている炎症後色素沈着過度を表すものであり得る[40]。この注射部位における局所毒性は他のいずれの前臨床毒性学種においても観察されなかった。
【0090】
胃腸の変化
【0091】
ラットおよびサルに対するGLPに準拠した試験においてGIに関連する所見は観察されなかった。
【0092】
マウス、ラット、イヌおよびサルに対する非GLP試験では、顕性GI管毒性がMTDを超える用量においてのみ見られた。イヌでは、1mg/kg(20mg/m2)で週2回の用量でわずか~中等度の小腸変性が見られた。ラットでは、5.03mg/kg(30.2mg/m2)を週2回の用量で回腸の単一細胞壊死が見られた。サルでは、1.5mg/kg(18mg/m2)で投薬した1週間後の3mg/kg(36mg/m2)の単回投与により、盲腸において腺上皮細胞の軽度の単一細胞壊死が認められ、盲腸および結腸の粘膜における上皮細胞有糸分裂の軽度の増加が伴った。マウスでは、13.4mg/kg(40.2mg/m2)の単回投薬で腸粘膜有糸分裂が見られた。
【0093】
生殖器官の変化
【0094】
生殖系の変化は、細胞周期に影響を及ぼす薬剤の一般的な副作用である。ラットGLP試験では、1mg/kg(6mg/m2)で週2回の投与を受けた雄の全てで精巣変性/精細管の萎縮および精子の非存在が見られた。これらの変化は、精巣および精巣上体のサイズおよび重量の減少と相関した。サル試験では生殖器官の変化は見られなかった。
【0095】
副腎の変化
【0096】
ラットGLP試験では、1mg/kg(6mg/m2)で週2回の投薬を受けた雄における副腎の最終的な重量は有意に小さかった。0.2mg/kg(1.2mg/m2)で週2回の投与を受けた雄10匹のうち2匹、0.5mg/kg(3mg/m2)で週2回の投与を受けた雄10匹のうち3匹および1mg/kg(6mg/m2)で週2回の投与を受けた雄10匹のうち4匹、ならびに1mg/kg(6mg/m2)で週2回の投与を受けた雌10匹のうち5匹において球状層の最小の肥大も見られた。変化は最小であり、ストレスに関連するものとみなされ、したがって、臨床的相関は有さなかった可能性がある。しかし、TMA試験では、ラット切片(3つのうち3つ)は球状層に弱いMT1-MMP染色を有し、標的に関連する可能性があることが示される。TMA試験において全てのヒト切片(3つのうち3つ)において弱い~中等度の膜染色が見られた。サルに関しては毒物学的変化もTMA染色も認められなかった。
【0097】
唾液腺の変化
【0098】
口渇および関連する毒性は化学療法に伴う一般的な副作用であり[41]、これらの症状は、処置を停止して3~4週間以内に消散する傾向がある。ヒトTMA試験では、ヒト耳下腺切片3つのうち2つでMT1-MMPに関する弱い膜染色が示され、したがって、唾液腺は毒性の標的となる可能性がある。
【0099】
膵腺房の変化
【0100】
膵臓の分泌性細胞は、ヒト膵臓切片(3つのうち3つ)において時々の弱い~中等度のMT1-MMP特異的染色を有し、したがって、これらの細胞がBT1718による処置に伴う毒性の標的になり得るリスクが存在する。ラットまたはイヌTMAでは発現が認められず、当然のことながらin vivo毒性所見は認められなかった。
【0101】
非臨床データの要約
【0102】
前臨床モデルにおけるBT1718毒性の標的器官は、造血組織およびリンパ組織、腎臓および膀胱、肝臓、ニューロン、ならびに皮膚(変化は一般に注射部位の付近)、ならびに、より少ない程度に、他の高度に複製している組織、例えば、生殖器官、GIならびに副腎組織、膵臓組織および唾液組織などの分泌性細胞などであることが同定された。毒性の大部分は最小であり、可逆的であった。ラットは、試験した他の前臨床種(マウス、イヌおよびサル)よりもBT1718に対する感受性が高いと思われる。
【0103】
カニクイザルに対するGLPに準拠した試験では、BT1718のHNSTDは18mg/m2の週2回の投与であることが確立された。これは、0.48mg/kgのヒト用量に相当する。ラットに対するGLPに準拠した試験では、最高投与用量の6mg/m2で週2回のMTDに達しなかった。この用量レベルで、腎毒性が認められ(臨床的状態に対する影響はなかった)、精巣毒性も認められた。28日間の投薬休止後、腎臓に関連する所見の部分的な回復のエビデンスが認められたが、精巣への影響の回復はこの用量レベルでは認められなかった。非GLPラット試験では、9mg/m2で週2回投与という用量は忍容性が良好でなかった。
【0104】
したがって、ラットに対する週2回投薬についてのMTDは1から1.5mg/kgの間(6~9mg/m2)であるとみなした。薬力学的試験に基づいて、有意な成長阻害をもたらす最低用量は3mg/m2で週2回(相当するヒト用量[HED]0.08mg/kgで週2回)であり、いくつかの細胞に基づくおよびPDX腫瘍モデルでは9mg/m2で週2回(HED、0.24mg/kgで週2回)ではSDまたはそれよりも良好な状況が示された。EBC-1肺異種移植モデルでは、BT1718を18mg/m2で週に1回だけ与薬した場合に同様の有効性が見られた。さらに、ドセタキセル耐性肺PDXモデルにおいて、BT1718によりSDおよび退縮がもたらされた。さらに、種々の腫瘍異種移植モデルにおいて、BT1718を30mg/m2(HED、0.8mg/kg)で週2回投与することにより、長期にわたる完全な退縮がもたらされた。これらのモデルにおけるBT1718に対する応答の程度は、MT1 MMPの中等度~高い発現と相関した。
【0105】
提唱された開始用量
【0106】
28日間繰り返し投与GLPサル試験において確立されたHNSTDは、1.5mg/kg(18mg/m2)で週2回であった。アロメトリックスケーリングを使用し、ICH手引き(ICH S9)に記載の通り標準の安全係数6を適用すると、ヒト開始用量は3mg/m2で週2回になった。1カ月間繰り返し投与GLPラット試験では、MTDも動物の10%における重症毒性用量(STD10)も確立されず、したがって、試験した最高用量である1mg/kg(6mg/m2)で週2回に基づき、アロメトリックスケーリングおよび標準の安全係数10 10(ICH S9)を用いて、ヒト開始用量は、0.6mg/m2で週2回になる(これはおよそ0.12mg/m2で週2回のDM1用量と等しい)。ラットがBT1718に対して最も感受性が高い種であるので、開始用量はラットにおける試験した最高用量に基づく。
【0107】
したがって、FIH第I相試験に対して提唱された開始用量は0.6mg/m2で週2回である。
【0108】
臨床経験(第I相試験/同一のクラスの他の化合物)
【0109】
BT1718を用いた臨床試験は以前には行われていない。しかし、DM1の親類似体であるマイタンシンが臨床試験において評価されており、DM1も、Roche Holding AGによる商品名Kadcyla(登録商標)の下で承認されたT-DM1によって例示されるADCの構成成分として臨床的に評価されている。コンジュゲートしたDM1を用いて生じた有害事象を以下の表4に要約する。
表4.コンジュゲートしたDM1を用いて生じた有害事象の要約
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【0110】
BT1718に関する予測される安全性プロファイル
【0111】
造血の変化
【0112】
BT1718を投与したラット、イヌおよびサルにおいて血液学的パラメーターの変化を観察した。好中球減少症、リンパ球減少症、赤血球減少症および血小板増加症などの血液学的毒性は、細胞周期に影響を及ぼす薬剤では珍しくなく、これらの変化は臨床的に管理しやすい。GLP試験ではBT1718に関して最小のリンパ球減少症、赤血球減少症および血小板増加症が見られ、非GLP試験ではMTDを超える用量で組織病理学的相関が観察された。BT1718により患者における血液学的変化がもたらされる可能性が高く、したがって、標準の血液学的評価を臨床計画の一部として試みる。
【0113】
腎臓および膀胱の変化
【0114】
BT1718および可能性のあるそのペプチジル代謝産物は、腎臓および膀胱を通じて取り除かれると予測される。前臨床種では、ラットにおいて腎臓尿細管上皮変性が見られ、その重症度および発生率は用量依存的であった。一般に、MTDまたはそれを上回る用量で動物においてクレアチニンおよび尿素レベルの上昇も観察された。尿細管好塩基球増加症も見いだされ、これは、修復および再生と一致する[34]。非GLP試験ではラットおよびイヌの両方で、後に決定されたMTDよりも上で膀胱上皮変性が見られた(それぞれ40mg/m2および14mg/m2)。さらに、行われたTMA試験において膀胱の尿路上皮が中等度または強力にMT1-MMP染色された(ヒト切片3つのうち2つ)。
【0115】
肝臓の変化
【0116】
ラットにおいて、最小~わずかな可逆的な肝細胞萎縮が、ALP、ASTおよびコレステロールレベルの小さな上昇と相関して観察された。同様の所見がイヌに関して高用量で認められたが、サルでは認められなかった。肝毒性(hepatotoxicity)は主に肝臓で取り除かれるマイタンシンおよび抗体-メイタンシノイドコンジュゲートに関しては一般的な所見であったが、BT1718に関しては、このメイタンシノイドコンジュゲートに対する示差的な腎クリアランス経路を考慮すると最小であり得る。しかし、用心のために、標準の肝機能検査を臨床計画の一部として実施する。臨床的に必要な場合には、さらなる調査または画像診断を開始する。
【0117】
ニューロンの変化
【0118】
末梢性ニューロパチーは、微小管阻害剤の一般的な副作用であり[35]、抗体-DM1コンジュゲートを用いた場合に生じる顕著なAEになっている。BT1718では、サルにおいて最小の軸索変性が引き起こされ、いかなる明白な神経臨床所見も伴わなかった。生体内分布の変更および限定された全身曝露により臨床ニューロパチーの発生率が低下し得る。患者を、試験来院時に神経系に関するあらゆるAEについて評価する。臨床的に必要な場合には、症状を対象とする臨床検査(clinical examination)およびさらなる調査または画像診断を開始する。臨床的に必要な場合には、さらなる調査または画像診断を開始する。
【0119】
皮膚
【0120】
脱落、皮膚炎および色素沈着の増大を含めた皮膚に関する用量に関連する所見がサルにおいて観察された。患者を、試験来院時に皮膚に関連するあらゆるAEについて評価する。さらに、DM1および他の化学療法薬は、溢出を引き起こし得る、および/または発疱性物質、刺激性物質、炎症性物質または皮膚剥離性物質であり[56、57]、用心のために、BT1718を発疱性物質として取り扱う。患者を、処置中および各試験来院時に溢出のエビデンスについて評価する。発疱性物質溢出の管理に関する標準の地域の方針に従い、一般には注入の停止から開始し、可能であれば局部ヒドロコルチゾンの吸引を行い、審査を継続する。温湿布もしくは冷湿布、ジメチルスルホキシド(DMSO)またはヒアルロニダーゼなどの特定の処置の役割は分かっていない。
【0121】
胃腸の変化
【0122】
GLP試験ではBT1718をそれらのMTDを下回る用量で用いた場合、動物において胃腸への影響は見られず、非GLP試験では高用量で変性およびアポトーシス性組織病理学的性質が認められた。したがって、ヒトにおいてMTD未満では胃腸毒性の可能性は低いとみなされる。患者を、試験来院時にGI管に関するあらゆるAEについて評価する(以下の膵腺房の節を参照されたい)。臨床的に必要な場合には、さらなる調査または画像診断を開始することができる。
【0123】
生殖器官の変化
【0124】
生殖系の変化は、細胞周期に影響を及ぼす薬剤の一般的な副作用である。ラットGLP試験では、1mg/kg(6mg/m2)で週2回の投与を受けた雄の全てが精巣変性/精細管の萎縮および精子の非存在を有した。サル試験では生殖器官の変化は見られなかった。
【0125】
生殖の変化はBT1718の投与の可能性のある副作用である。患者は、BT1718の生殖能力に対する潜在的な影響を知らされ、患者は、標準の臨床試験での避妊の実施に応じることを求められる。第I相試験は予後および生殖能力が非常に限定される可能性が高い不応性/再燃した患者に対するものになり、したがって、この状況では、それは許容されるリスクとみなされる。家族を有するまたは増やすことを考慮する立場にあり得る男性患者に関して適切な場合には、精子保存の可能性を検討すべきである。精子保存を行うことを望む患者はまた、自身の予後の意味合い、ならびに精子の産生、機能および遺伝学的健康に対する以前の治療の可能性のある影響も考察すべきである。
【0126】
副腎の変化
【0127】
ラットGLP試験では、各用量で動物の一部に球状層の最小の肥大が見られた。さらに、行われたラットTMA試験では、切片3つのうち3つが球状層に弱いMT1-MMP染色を有し、ヒトTMA切片でも、切片3つのうち3つにおいて弱い~中等度の染色が示されたことが分かった。BT1718の投与により、球状層を含めた副腎機能の変化が導かれ得る(アルドステロン分泌)。そのように、BPおよび標準の臨床化学パラメーターを臨床計画の一部として評価する。持続性の原因不明の低血圧/高血圧またはカリウムレベルの変更を必要に応じてさらに血清中レニン:アルドステロン、コルチゾールまたはACTHアッセイと共に調査し、臨床的に必要な場合には、補液およびステロイド補充、または逆に抗高血圧薬などの処置を開始する。
【0128】
唾液腺の変化
【0129】
口渇および関連する毒性は、化学療法を用いた場合の一般的な副作用であり[41]、これらの症状は、処置を停止して3~4週間以内に消散する傾向がある。ヒトTMA試験では、ヒト耳下腺切片3つのうち2つでMT1-MMPに関する弱い膜染色が示され、したがって、唾液腺は毒性の標的となる可能性がある。
【0130】
患者を、試験来院時に口渇を含めたあらゆるAEについて評価する。臨床的に必要な場合には、症状を対象とする臨床検査および/またはさらなる調査を行う。
【0131】
膵腺房の変化
【0132】
膵臓の分泌性細胞は行われた3回のTMAで弱い~中等度のMT1-MMP特異的染色を有し、したがって、これらの細胞がBT1718による処置に伴う毒性の標的になり得るリスクが存在する。ラットまたはイヌTMAでは発現が認められず、また、in vivoにおけるMT1-MMP毒性所見も認められなかった。毒性は、膵臓の外分泌機能の障害として顕在化すると予測することができる。患者を、試験来院時にGI管に関するあらゆるAEについて評価する(上の胃腸節も参照されたい)。鼓腸、脂肪便および/または下痢をさらに糞便エラスターゼ評価を用いて調査することができ、臨床的に必要な場合にはCREONなどの処置を開始することができる。
【0133】
提唱された試験についての理論的根拠
【0134】
BT1718は、MT1-MMPを発現する腫瘍細胞を標的とすることにより、選択的な腫瘍細胞死を誘導することが予想される。これは、許容される治療域を有する客観的な放射線学的応答に変換され、最終的に、MT1-MMPを発現する腫瘍を有する患者のPFSおよびOSが改善されることが予測される。前臨床データから関連性のあるモデルにおける活性が実証され、毒性学によりモニタリング可能かつ可逆的な毒性が示され、診療所において管理しやすいものであることが予測される。
【0135】
BT1718は、他のコンジュゲートした毒素による手法と比較して低分子量(3.5kDA)を有し、これにより、腫瘍組織の迅速な透過が可能になる。さらに、前臨床PKおよび毒物動態学的試験により、半減期が15~30分であることが推定され、これはADCと対比される。したがって、ADCに対する仮定される利点としては、循環BT1718に対する正常組織の全身曝露の低減、回復期の間に毒性を管理することができること、ならびに腫瘍浸透度の改善が挙げられる。他の潜在的な利点としては、ペプチド:コンジュゲート比が1:1に固定されること(様々なコンジュゲーションの結果として混成集団が生じるADCと比較して)、および小分子としての製造がよりスケーラブルであること(ADCなどの生物学的製剤と比較して)が挙げられる。
【0136】
MT1-MMPの過剰発現がNSCLC[3、4]、乳がん[5、6、58]および他の固形腫瘍[7、8、9]において報告されている。これらの腫瘍型でMT1-MMP過剰発現の発生率が最も高いものを同定する研究が行われている。BT1718の抗腫瘍活性は、一般に、高レベルのMT1-MMP発現を有する異種移植モデルにおいてより高いが、MT1-MMP低発現を有するいくつかのモデルにおいて抗腫瘍活性が観察された。大多数のがんがいくらかのMT1-MMPを発現し得、有効性とMT1-MMP発現の関係は完全には明らかにされていないので、試験の用量漸増相は、MT1-MMP発現のレベルに基づいた補充に制限されず、全ての固形悪性腫瘍型の患者に対して開かれる。第IIa相、最適な用量/スケジュールでの拡大相では、一般にMT1-MMPを過剰発現することが予測される腫瘍型を有し、登録時の前向きスクリーニング選択の間に高MT1-MMP過剰発現の上昇が確認された場合に患者を登録する。この発現の確認により、MT1-MMP過剰発現が、BT1718を用いた処置を受けた患者についての好都合な臨床転帰に変換されることが予想されるという仮説が検定される。これらの腫瘍型には、現在、第IIa相に関してNSCLC、TNBC、卵巣、肉腫、およびMT1を発現する腫瘍型を含めることが提唱されている。
【0137】
投与経路は静脈内とする。この送達方法を裏付けるために、前臨床有効性および毒性試験は全て静脈内であった。最初に、前臨床有効性および毒性試験によって支持された週2回投薬を評価する。BT1718のPKに起因して、頻度の高い用量間隔により、より高い用量密度が可能になり得、安全性および臨床PKを前臨床種と直接相関させることができる。漸増相の間、週1回レジメンも探究し、これは、患者にとってより都合がよいことが予想され、また、予備前臨床データから、同様の活性を有し得ることが示唆される。
さらなる実施形態
組入れ基準
【0138】
本明細書に記載の通り、患者は、表8に列挙されている適格性基準を満たさなければならない。一部の実施形態では、患者は、表8に列挙されている適格性基準を満たす。
除外基準
【0139】
本明細書に記載の通り、患者が表9に列挙されている基準のいずれかに当てはまる場合には、その患者を除外する。一部の実施形態では、除外された患者は表9の基準に当てはまる。
用量
【0140】
本明細書に記載の通り、BT1718は、約0.3mg/m2~約45mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約0.3mg/m2~約45mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約0.3mg/m2~約45mg/m2またはそのごく一部の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約0.5mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約1mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約2mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約3mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約4mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約5mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約6mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約7mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約8mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約9mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約10mg/m2の用量で投与される。
【0141】
一部の実施形態では、BT1718は、約11mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約12mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約13mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約14mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約15mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約16mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約17mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約18mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約19mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約20mg/m2の用量で投与される。
【0142】
一部の実施形態では、BT1718は、約21mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約22mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約23mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約24mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約25mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約26mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約27mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約28mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約29mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約30mg/m2の用量で投与される。
【0143】
一部の実施形態では、BT1718は、約31mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約32mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約33mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約34mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約35mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約36mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約37mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約38mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約39mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約40mg/m2の用量で投与される。
【0144】
一部の実施形態では、BT1718は、約41mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約42mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約43mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約44mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、BT1718は、約45mg/m2の用量で投与される。
投与経路
【0145】
本明細書に記載の通り、BT1718は、静脈内投与される。
投薬スケジュール
【0146】
本明細書に記載の通り、BT1718は、4週間のうち3週間にわたって週1回静脈内投与される。本明細書に記載の通り、BT1718は、4週間のうち3週間にわたって週2回静脈内投与される。
【0147】
一部の実施形態では、BT1718は、週2回、約0.6~9.6mg/m2の用量で静脈内投与される。一部の実施形態では、BT1718は、週2回、約0.6mg/m2の用量で静脈内投与される。一部の実施形態では、BT1718は、週2回、約1.2mg/m2の用量で静脈内投与される。一部の実施形態では、BT1718は、週2回、約2.4mg/m2の用量で静脈内投与される。一部の実施形態では、BT1718は、週2回、約4.8mg/m2の用量で静脈内投与される。一部の実施形態では、BT1718は、週2回、約7.2mg/m2の用量で静脈内投与される。一部の実施形態では、BT1718は、週2回、約9.6mg/m2の用量で静脈内投与される。
【0148】
一部の実施形態では、BT1718は、各投与時に約1時間の注入によって投与される。一部の実施形態では、BT1718は、週2回、約0.015~0.245mg/kg/時間の注入速度で静脈内投与される。一部の実施形態では、BT1718は、週2回、約0.015mg/kg/時間の注入速度で静脈内投与される。一部の実施形態では、BT1718は、週2回、約0.031mg/kg/時間の注入速度で静脈内投与される。一部の実施形態では、BT1718は、週2回、約0.061mg/kg/時間の注入速度で静脈内投与される。一部の実施形態では、BT1718は、週2回、約0.123mg/kg/時間の注入速度で静脈内投与される。一部の実施形態では、BT1718は、週2回、約0.184mg/kg/時間の注入速度で静脈内投与される。一部の実施形態では、BT1718は、週2回、約0.245mg/kg/時間の注入速度で静脈内投与される。
【0149】
一部の実施形態では、BT1718は、
図4および5に記載されている用量およびスケジュールで投与される。
薬物動態データ
【0150】
一部の実施形態では、CLpは約10mL/分/kg~12mL/分/kgである。一部の実施形態では、CLpは約10mL/分/kgである。一部の実施形態では、CLpは約12mL/分/kgである。一部の実施形態では、CLpは約11mL/分/kgである。
【0151】
一部の実施形態では、t1/2は約10分~20分である。一部の実施形態では、t1/2は約10分である。一部の実施形態では、t1/2は約11分である。一部の実施形態では、t1/2は約12分である。一部の実施形態では、t1/2は約13分である。一部の実施形態では、t1/2は約14分である。一部の実施形態では、t1/2は約15分である。一部の実施形態では、t1/2は約16分である。一部の実施形態では、t1/2は約17分である。一部の実施形態では、t1/2は約18分である。一部の実施形態では、t1/2は約19分である。一部の実施形態では、t1/2は約20分である。
薬学的に許容される組成物
【0152】
別の実施形態によると、本発明は、BT1718または薬学的に許容されるその塩、および薬学的に許容される担体、アジュバント、またはビヒクルを含む組成物を提供する。
【0153】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、良好な医学的判断の範囲内に入り、ヒトおよび下等動物の組織と、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを伴わずに接触させて使用するのに適しており、妥当なベネフィット/リスク比に見合う塩を指す。薬学的に許容される塩は当技術分野で周知である。例えば、S. M. Berge et al.は、参照により本明細書に組み込まれるJ. Pharmaceutical Sciences, 1977, 66, 1-19において薬学的に許容される塩を詳細に記載している。本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、適切な無機および有機の酸および塩基に由来する塩を含む。薬学的に許容される非毒性酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸などの無機酸と形成される、または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸もしくはマロン酸などの有機酸と形成される、またはイオン交換などの当技術分野で使用されている他の方法を使用することによって形成されるアミノ基の塩である。他の薬学的に許容される塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。
【0154】
妥当な塩基に由来する塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩およびN+(C1~4アルキル)4塩が挙げられる。代表的なアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。適切な場合、別の薬学的に許容される塩として、非毒性アンモニウム、第四級アンモニウム、ならびにハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、カルボン酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、低級アルキルスルホン酸イオンおよびアリールスルホン酸イオンなどの対イオンを使用して形成されるアミンカチオンが挙げられる。
【0155】
「対象」という用語は、本明細書で使用される場合、「患者」という用語と互換的に使用され、動物、好ましくは哺乳動物を意味する。一部の実施形態では、対象または患者はヒトである。他の実施形態では、対象(または患者)は、動物対象(または患者)である。一部の実施形態では、動物対象(または患者)は、イヌ科の動物、ネコ科の動物、またはウマ科の動物対象である。
【0156】
「薬学的に許容される担体、アジュバント、またはビヒクル」という用語は、それと共に製剤化される化合物の薬理活性を破壊しない無毒性の担体、アジュバント、またはビヒクルを指す。本発明の組成物に使用することができる薬学的に許容される担体、アジュバントまたはビヒクルとしては、これだけに限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和型植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースに基づく物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂などが挙げられる。
【0157】
本発明の組成物は、経口的に、非経口的に、吸入噴霧によって、局部に、直腸に、経鼻的に、頬側に、膣にまたは埋め込み型レザバーを介して投与することができる。「非経口的」という用語は、本明細書で使用される場合、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、肝内、病巣内および頭蓋内注射または注入技法を含む。組成物は経口的に、腹腔内にまたは静脈内に投与されることが好ましい。本発明の組成物の滅菌された注射可能な形態は水性または油性懸濁液であり得る。これらの懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用し、当技術分野で公知の技法に従って製剤化することができる。滅菌された注射可能な調製物はまた、例えば1,3-ブタンジオール中溶液のような、無毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌された注射可能な溶液または懸濁液であってもよい。使用することができる許容されるビヒクルおよび溶媒には、水、リンゲル液および等張食塩水がある。さらに、滅菌不揮発性油が溶媒または懸濁媒として慣習的に使用されている。
【0158】
この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含めた任意の無刺激性の不揮発性油を使用することができる。オレイン酸などの脂肪酸およびそのグリセリド誘導体が注射剤の調製において有用であり、オリーブ油またはヒマシ油、特にそれらのポリオキシエチル化バージョンなどの天然の薬学的に許容される油も同様である。これらの油溶液または懸濁液は、長鎖アルコール希釈剤または分散剤、例えば、エマルションおよび懸濁液を含めた薬学的に許容される剤形の製剤化に一般に使用されるカルボキシメチルセルロースまたは同様の分散剤なども含有し得る。他の一般に使用される界面活性物質、例えば、Tweens、Spansなど、および、薬学的に許容される固体、液体、または他の剤形の製造に一般に使用される他の乳化剤(emulsifying agent)または生物学的利用能増強剤も製剤化のために使用することができる。
【0159】
本発明の薬学的に許容される組成物は、これだけに限定されないが、カプセル剤、錠剤、水性懸濁液または溶液を含めた任意の経口的に許容される剤形で経口投与することができる。経口使用のための錠剤の場合では、一般に使用される担体として、ラクトースおよびトウモロコシデンプンが挙げられる。ステアリン酸マグネシウムなどの平滑剤も一般に添加される。カプセル剤の形態での経口投与に関しては、有用な希釈剤として、ラクトースおよび乾燥コーンスターチが挙げられる。経口使用のために水性懸濁液が必要とされる場合、活性成分を乳化剤(emulsifying agent)および懸濁化剤と合わせる。所望であれば、ある特定の甘味剤、香味剤または着色剤も添加することができる。
【0160】
あるいは、本発明の薬学的に許容される組成物を直腸内投与用の坐剤の形態で投与することができる。これらは、薬剤を、室温では固体であるが直腸内温度では液体であり、したがって、直腸内で融解して薬物を放出する適切な非刺激性賦形剤と混合することによって調製することができる。そのような材料としては、カカオバター、蜜ろうおよびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0161】
本発明の薬学的に許容される組成物は、特に、眼、皮膚、または下部腸管の疾患を含め、処置の標的が、局部適用によって容易に到達可能である領域または器官を含む場合には、局部投与することもできる。これらの領域または器官のそれぞれに対して適切な局部製剤が容易に調製される。
【0162】
下部腸管に対する局部適用は、直腸坐薬製剤(上記を参照されたい)または適切な浣腸製剤として行うことができる。局部的経皮吸収パッチを使用することもできる。
【0163】
局部適用のために、提供される薬学的に許容される組成物を、1つまたは複数の担体中に懸濁または溶解した活性構成成分を含有する適切な軟膏剤に製剤化することができる。本発明の化合物を局部投与するための担体としては、これだけに限定されないが、鉱油、液体ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化蝋および水が挙げられる。あるいは、提供される薬学的に許容される組成物を、1つまたは複数の薬学的に許容される担体中に懸濁または溶解した活性構成成分を含有する適切なローション剤またはクリーム剤に製剤化することができる。適切な担体としては、これだけに限定されないが、鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステル蝋、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が挙げられる。
【0164】
眼への使用のために、提供される薬学的に許容される組成物を、ベンザルコニウム塩化物(benzylalkonium chloride)などの保存剤を伴うかまたは伴わない、等張性のpH調整された滅菌生理食塩水中の微粒子化された懸濁液として、または、好ましくは、等張性のpH調整された滅菌生理食塩水中溶液として製剤化することができる。あるいは、眼への使用のために、薬学的に許容される組成物をワセリンなどの軟膏剤に製剤化することができる。
【0165】
本発明の薬学的に許容される組成物を経鼻エアロゾルまたは吸入によって投与することもできる。そのような組成物は、医薬製剤の技術分野で周知の技法によって調製され、ベンジルアルコールまたは他の適切な保存剤、生物学的利用能を増強するための吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または他の従来の可溶化剤もしくは分散剤を使用して、生理食塩水中溶液として調製することができる。
【0166】
ある特定の実施形態では、本発明の薬学的に許容される組成物を経口投与用に製剤化する。そのような製剤は、食品を用いてまたは用いずに投与することができる。一部の実施形態では、本発明の薬学的に許容される組成物は、食品を用いずに投与される。他の実施形態では、本発明の薬学的に許容される組成物は、食品を用いて投与される。
【0167】
本発明の薬学的に許容される組成物を、ヒトおよび他の動物に、処置される感染症の重症度に応じて、経口的に、直腸に、非経口的に、大槽内に、膣内に、腹腔内に、局部に(散剤、軟膏剤、または滴剤によってなど)、頬側に、経口または経鼻スプレーとしてなどで投与することができる。ある特定の実施形態では、所望の治療効果を得るために、本発明の化合物を1日当たり対象の体重1kg当たり約0.01mg~約50mgおよび好ましくは約1mg/kgから約25mg/kgまでの投与量レベルで1日に1回または複数回、経口投与または非経口投与することができる。
【0168】
経口投与するための液体剤形としては、これだけに限定されないが、薬学的に許容されるエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップ剤およびエリキシル剤が挙げられる。活性化合物に加えて、液体剤形は、例えば、水または他の溶媒などの、当技術分野で一般に使用される不活性な希釈剤、可溶化剤および乳化剤(emulsifier)、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステルなど、ならびにそれらの混合物を含有し得る。不活性な希釈剤に加えて、経口用組成物は、湿潤剤、乳化剤(emulsifying agent)および懸濁化剤、甘味剤、香味剤、ならびに香料などのアジュバントも含み得る。
【0169】
注射可能な調製物、例えば、滅菌注射用水性または油性懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用し、公知の技術に従って製剤化することができる。滅菌された注射可能な調製物は、例えば1,3-ブタンジオール中溶液のような、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌された注射可能な溶液、懸濁液または乳剤であってもよい。使用することができる許容されるビヒクルおよび溶媒には、水、リンゲル液、U.S.P.および等張食塩水がある。さらに、滅菌不揮発性油が溶媒または懸濁媒として慣習的に使用されている。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含めた任意の無刺激性の不揮発性油を使用とすることができる。さらに、注射剤の調製にはオレイン酸などの脂肪酸が使用される。
【0170】
注射製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通して濾過することによって、または、滅菌剤を、使用前に滅菌水または他の滅菌注射用媒体に溶解または分散させることができる滅菌固体組成物の形態で組み込むことによって、滅菌することができる。
【0171】
BT1718の効果を延長するために、皮下または筋肉内注射からの化合物の吸収を遅くすることが望ましい場合がある。これは、難水溶性の結晶性または非結晶性材料の液体懸濁液を使用することによって実現することができる。そこで化合物の吸収速度はその溶解速度に依存し、そして溶解速度は結晶サイズおよび結晶形に依存し得る。あるいは、非経口投与された化合物形態の遅延吸収は、化合物を油状ビヒクル中に溶解または懸濁させることによって実現される。注射可能なデポ剤の形態は、ポリ乳酸-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中化合物の微小封入マトリックスを形成することによって製造される。化合物のポリマーに対する比および使用される特定のポリマーの性質に応じて、化合物の放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(酸無水物)が挙げられる。デポ剤注射製剤はまた、化合物を体組織に適合するリポソームまたはマイクロエマルション中に閉じ込めることによっても調製される。
【0172】
直腸または膣内投与用の組成物は、本発明の化合物を外界温度では固体であるが、体温では液体であり、したがって、直腸内または膣腔内で融解し、活性化合物を放出するカカオバター、ポリエチレングリコールまたは坐薬ワックスなどの適切な非刺激性の賦形剤または担体と混合することによって調製することができる坐剤であることが好ましい。
【0173】
経口投与用の固体剤形としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、および顆粒剤が挙げられる。そのような固体剤形では、活性化合物を、少なくとも1種の不活性な薬学的に許容される賦形剤または担体、例えば、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウムなど、ならびに/または、a)充填剤もしくは増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸など、b)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、およびアラビアゴムなど、c)保湿剤、例えばグリセロールなど、d)崩壊剤、例えば、寒天--寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸塩、ある特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウムなど、e)溶解遅延剤、例えばパラフィンなど、f)吸収加速剤、例えば四級アンモニウム化合物など、g)湿潤剤、例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレートなど、h)吸収剤、例えば、カオリンおよびベントナイト粘土など、およびi)滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムなど、およびそれらの混合物と混合する。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合では、剤形は緩衝剤も含み得る。
【0174】
同種の固体組成物を、例えば、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量のポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用し、軟充填ゼラチンカプセルおよび硬充填ゼラチンカプセル中の充填剤として使用することもできる。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤の固体剤形は、腸溶コーティングおよび医薬製剤の技術分野で周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて調製することができる。これらの固形剤形は、必要に応じて乳白剤を含有し、また、腸管のある特定の部分において、必要に応じて遅延様式で活性成分のみを放出するかまたは活性成分を優先的に放出する組成物であってもよい。使用することができる包埋組成物の例としては、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。同種の固体組成物を、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用し、軟充填ゼラチンカプセルおよび硬充填ゼラチンカプセル中の充填剤として使用することもできる。
【0175】
BT1718または薬学的に許容されるその塩はまた、上記の1つまたは複数の賦形剤と共にマイクロカプセルに封入された形態にすることもできる。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤の固体剤形は、腸溶コーティング、放出制御コーティングおよび医薬製剤の技術分野で周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて調製することができる。そのような固体剤形では、活性化合物をショ糖、ラクトースまたはデンプンなどの少なくとも1種の不活性な希釈剤と混和することができる。そのような剤形はまた、通常の慣例の通り、不活性な希釈剤以外の追加的な物質、例えば、ステアリン酸マグネシウムおよび結晶セルロースなどの錠剤化滑沢剤および他の錠剤化補助剤も含み得る。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合では、剤形は緩衝剤も含み得る。これらの剤形は、必要に応じて乳白剤を含有し、また、腸管のある特定の部分において、活性成分のみを放出するかまたは活性成分を優先的に、必要に応じて遅延様式で放出する組成物であってもよい。使用することができる包埋組成物の例としては、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。
【0176】
本発明の化合物の局部または経皮投与の剤形は、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、散剤、溶液、噴霧剤、吸入剤またはパッチを含む。活性構成成分を滅菌条件下で薬学的に許容される担体および必要に応じて任意の必要な保存剤または緩衝剤と混和する。点眼用製剤、点耳剤、および点眼剤も本発明の範囲内に入ることが意図されている。さらに、本発明は、化合物の体への制御送達を提供するというさらなる利点を有する経皮吸収パッチの使用を意図している。そのような剤形は、化合物を妥当な媒体に溶解または分配させることによって作出することができる。化合物の皮膚を横断した流入を増大させるために吸収増強剤を使用することもできる。速度は、律速膜を提供することまたは化合物をポリマーマトリックスもしくはゲル中に分散させることのいずれかによって制御することができる。
【実施例】
【0177】
以下の実施例に上記の本発明を例示するが、実施例はいかなる形でも本発明の範囲を限定するものではない。それ自体が当業者に公知の他の試験モデルによって本発明の医薬化合物、組合せ、および組成物の有益な効果を決定することもできる。
(実施例1)
進行固形腫瘍を有する患者に対するBT1718の静脈内与薬に関する第I/IIA相試験
試験デザイン
臨床試験の目的およびエンドポイント
主要目的およびエンドポイント
【0178】
主要目的およびエンドポイントを以下の表5に提示する。
表5.主要目的およびエンドポイント
【表5】
【0179】
二次目的およびエンドポイントを以下の表6に提示する。
表6.二次目的およびエンドポイント。
【表6】
【0180】
三次目的およびエンドポイントを以下の表7に提示する。
表7.三次目的およびエンドポイント。
【表7-1】
【表7-2】
【0181】
臨床試験のデザイン
【0182】
本試験は、進行固形腫瘍を有する患者に対する、拡大相を伴う多施設、FIH、第I/IIa相、オープンラベル用量漸増試験である。
【0183】
本臨床試験は、2つの相、第I相および第IIa相からなる(
図4)。
【0184】
第I相、用量漸増相:
【0185】
第I相は、ステージ1およびステージ2からなる。ステージ1が完了する前にステージ2を開始することができる:
【0186】
ステージ1-BT1718をRP2Dおよび/またはMTDが確立されるまで、4週間のうち3週間にわたって週2回、静脈内投与する。
【0187】
週2回のスケジュールの単一患者コホート1、2、3、および4は著しい毒性を伴わずに完了し、標的閾値に到達し、3+3漸増のきっかけになった。コホート5(9.6mg/m2)は、2×DLT(GGT、疲労)で完了し、7.2mg/m2のコホートが開かれた。ここで週1回の漸増も開かれる(9.6mg/m2)。
【0188】
ステージ2-BT1718を、RP2Dおよび/またはMTDが確立されるまで、4週間のうち3週間にわたって週1回、静脈内投与する。
【0189】
ステージ2は、ステージ1からの利用可能な毒性データ、PKデータおよび/またはPDデータに基づいて潜在的な生物活性が期待される用量で開かれる。このステージは、3+3用量漸増デザインに従い、各用量レベルにおいて評価可能な患者を最低3名を含む。用量の増加は最大100%までであり、報告された安全性および利用可能なPKデータによって駆動される。
【0190】
第IIa相、拡大相
【0191】
第IIa相、最適な用量/スケジュールでの拡大では、MT1-MMPが一般に過剰発現されることが分かっている腫瘍型を有し、MT1-MMP過剰発現が登録時の前向き選択の間に確認された富化集団において、忍容性をさらに特徴付け、臨床シグナルを探究する。これらの腫瘍型には現在NSCLC、TNBCまたは肉腫が含まれることが提唱される。
【0192】
パートA-BT1718を第I相、ステージ1において確立されたMTDおよび/またはRP2Dで週2回、静脈内投与する。NSCLCおよびTNBCであることが現在提唱されているMT1-MMP陽性腫瘍を有する2つの適応症からの同数の患者で構成される14名の患者が含まれる。少なくとも6名の患者が処置前と処置中の対の腫瘍生検材料を有する。第IIa相、パートA(週2回、拡大)は第I相、ステージ2(週1回、用量漸増)と並行して実行することができる。
【0193】
パートB-BT1718を、第I相のステージ2において確立されたMTDおよび/またはRP2Dで週1回、静脈内投与する。NSCLCおよびTNBCであることが現在提唱されているMT1-MMP陽性腫瘍を有する同数の患者で構成される14名の患者が含まれる。少なくとも6名の患者が処置前と処置中の対の腫瘍生検材料を有する。第IIa相、パートB(週1回、拡大)は第I相、ステージ1(週2回、用量漸増)と並行して実行することができる。
【0194】
パートC&パートD-パートAおよびBの完了後、結果が試験依頼者であるBicycleRDからのチームメンバーおよびCIで構成されるJoint Development Committeeによって審査される。第I相(ステージ1および2)ならびに第IIa相(パートAおよびB)において現在までに生成されたデータの審査後、いずれの投薬スキームを使用するか(週1回または2回)、開始用量およびいずれの腫瘍が適応症であるかに関する決定を行う。この決定後、それぞれ患者およそ15~16名の、最大2つの追加的なコホートをそれぞれパートCおよびDに登録し、患者集団は、前臨床データおよび臨床的な新たなデータに基づいて選択する。これらの腫瘍型には現在NSCLC、TNBCまたは肉腫が含まれることが提唱される。
【0195】
第I相、ステージ1および2では、任意の適切な標準治療にもかかわらず腫瘍が進行した進行固形腫瘍を有する患者50~60名が本試験に参加することが予測される。最終的な患者数は、1つまたは複数の投薬スケジュールでMTDおよび/またはRP2Dを同定するために必要になる用量漸増の数に依存する。
【0196】
試験依頼者は、試験中に新たなデータに基づいて代替投薬スケジュールを検討することができ、例えば、毒性学プロファイルが週2回の投薬レジメンを用いた場合に良性である場合、連続的な週2回投薬を評価することができる。第I相の間に得られた新たなデータを決定に使用して、第IIa相のステージに進むことができる。さらに、選択された患者集団に応じて、投薬頻度の増加も検討することができる。投薬スケジュールに何らかの変化を加えた場合には、実質的な改訂を、承認を求めてMHRA、RECおよびHRAに提出する。第IIa相、パートA、B、CおよびDでは、最大で追加的な60~70名の患者が、前臨床データおよび臨床データに基づいて同定され、NSCLC、TNBCおよび肉腫であることが現在提唱されている最大3種の腫瘍型に関して評価されることが予想される。
【0197】
第I相、ステージ1では、BT1718を4週間のうち3週間にわたって週2回、静脈内投与する(1日目、4日目、8日目、11日目、15日目および18日目に投薬する)。開始用量は0.6mg/m2になり、各サイクルは28日間続く。患者は、疾患が増悪するまで処置を続けることができる(BT1718の利用可能性に応じて)。
【0198】
第I相、ステージ2では、BT1718を4週間のうち3週間にわたって週1回、静脈内投与する(1日目、8日目および15日目に投薬)。週1回レジームの開始用量は、最大で、週2回のスケジュール(第I相、ステージ1)から安全であるとみなされた最後の完了コホートの全体的な週間用量の100%になる。患者は、疾患が増悪するまで処置を続けることができる(BT1718の利用可能性に応じて)。
【0199】
用量制限毒性の定義
【0200】
DLTおよびMTDの定義のいくつかは、NCI CTCAE Version4.02に由来する。DLTとして記載されている事象の全てがNCI CTCAEによって完全に裏付けられているわけではなく、AEの評価を補助するために、異なる事象の混合によって形成されることに留意されたい。
【0201】
DLTは、サイクル1(すなわち、最初の28日間)の間に生じ、妥当な支持的臨床管理にもかかわらず、以下の基準のうちの1つまたは複数に当てはまる、薬物に関連する可能性が高いまたは極めて高いAEと定義される(しかし、臨床的に有意な毒性は全て、用量審査決定および第II相用量の決定において考慮される):
7日以上にわたってグレード4の好中球減少症(好中球の絶対数[ANC]<0.5×109/L)、*注釈を参照されたい;
グレード3または4の好中球減少症を伴う発熱性好中球減少症(ANC<1.0×109/Lかつ単一体温が38.3℃以上であるかまたは38度以上の体温が1時間よりも長く持続する);
グレード3または4の好中球減少症(ANC<1.0×109/L)を伴う臨床的に有意な感染(臨床的にまたは微生物学的に実証されたもの);
グレード4の血小板減少症:
a)5日以上にわたる、*注釈を参照されたい、または
b)活動性出血を伴う、または
c)血小板輸血を必要とする。
骨髄以外の器官に対するグレード3または4の毒性、以下を除外する:
グレード3の悪心;
制吐薬を用いた最適な処置を受けていない患者におけるグレード3または4の嘔吐;または
下痢止め薬を用いた最適な処置を受けていない患者におけるグレード3または4の下痢。
試験依頼者および試験主任医師(Chief Investigator)(CI)を含む研究チームの同意が得られた場合の一過性、無症候性のグレード3の生化学的異常。
致死的事象;
サイクル1における処置の中止、または7日を超える投薬の遅延(遅延が臨床決定ではなくスケジューリングに起因して7日を超えた場合は除外する)を導く任意の他の関連する毒性;
ベースライン時よりも大きく、CIおよび試験責任医師(Principal Investigator)(PI)を含め、試験依頼者によってDLTであると判断される任意の他の関連する毒性。
【0202】
*注釈:グレード4の好中球減少症またはグレード4の血小板減少症が生じた場合には、DLTが生じたかどうかを決定するために、事象の発生後少なくとも7日目(好中球減少症)および5日目(血小板減少症)に全血球計算を実施しなければならない。試験担当医師は、グレード3またはそれ未満まで消散するまで患者を密接にモニタリングし続けなければならない。
【0203】
上で定義した用量制限毒性は、用量漸増を決定する目的で考慮に入れるものであるが、累積的な毒性が明らかになるのであれば、次の用量レベルまたはRP2Dのいずれかを決定する際にも考慮に入れる。
【0204】
最大耐量の定義
【0205】
定義された(上の用量制限の節において)DLTの1つの症例が患者3名のコホートにおいて観察された場合、最大で合計6名の患者をその用量レベルで処置する。6名の患者のうち1名にDLTが生じた場合、用量漸増を続ける。最大6名の患者のうち2名またはそれよりも多くにDLTが生じた場合には、用量漸増を止め、この用量を耐えられないものと定義する。MTDを定義するために、最大で6名の評価可能な患者を、耐えられないレベルを下回る用量で処置する。
【0206】
MADは、受けられる最高用量と定義される。これは通常、MTDを上回る耐えられない用量を表すが、その代わりに、毒性により用量が制限される前に、実現可能な注入体積によって用量が制限される場合には、投与可能な最大用量を表し得る。
【0207】
拡大相(パートAおよびB)に対するRP2Dは、週1回の投薬および週2回の投薬のどちらについても、全ての臨床的に関連する毒性、有効性データ、およびPK結果データがCI、PIおよび試験依頼者の顧問医師(Medical Advisor)によって考察された後に決定される。処置の全てのサイクルおよびコホートからの全ての利用可能なデータを含め、著しい毒性は全てRP2Dの決定に関して考慮に入れる。
【0208】
患者の評価可能性
【0209】
応答
【0210】
適格性基準を満たし、BT1718の計画された曝露用量の75%以上を受けており、疾患のベースライン評価および少なくとも1回の繰り返し疾患評価を有する患者全員に関して、応答について評価可能である。
【0211】
患者が完全奏効または部分奏効(CRまたはPR)を有することを確定するために、少なくとも4週間後の繰り返し評価が必要である。SDの状態に割り当てられるためには、追跡調査測定値がSD基準を少なくとも1回およびBT1718の初回用量の与薬から少なくとも6週間後に満たされなければならない。
【0212】
安全性
【0213】
適格性基準を満たし、BT1718の投与を少なくとも1回受ける患者全員に関して、安全性について評価可能である。
【0214】
用量漸増
【0215】
第I相、ステージI、本試験の単一患者用量漸増相では、第1のサイクル(28日間のDLT期間)の間次の単一患者コホートへの漸増を行う決定を下すためには、各患者が当該患者に対する計画されたBT1718の投薬の全てを受けていなければならない。患者がそのサイクルの間に毒性以外の理由で当該患者に対する計画されたBT1718の投薬の全てを受けたのではない場合には、決定を下すことができるようになる前に、さらなる評価可能な患者を補充する必要があり得る。
【0216】
用量漸増コホートが3+3デザインに従って拡大されたら、用量漸増を行うために、患者は、第1のサイクル(28日間のDLT期間)の間に当該患者に対する計画されたBT1718の曝露用量の75%以上を受けていなければならない。3~6患者コホートのいずれかの患者が第1のサイクル(28日間のDLT期間)の間にBT1718に関連する毒性以外の理由で当該患者に対する計画された投薬の75%未満を受ける場合には、決定を下すことができるようになる前に、さらなる評価可能な患者を補充する必要があり得る。
【0217】
患者の選択
【0218】
適格性基準
【0219】
患者は、以下の表8に列挙する適格性基準を満たさなければならない:
表8.組入れ基準。
【表8-1】
【表8-2】
【表8-3】
【0220】
除外基準
【0221】
除外基準を以下の表9に提示する。
表9.除外基準
【表9-1】
【表9-2】
【0222】
患者の登録
【0223】
患者を試験に登録する前に、試験担当医師または指定された代表者が試験スクリーニング期間中に患者の適格性を決定すべきである。
【0224】
適格患者について、現場スタッフが電子データ捕捉(EDC)システムに登録し、次いで、Centre for Drug Development(CDD)において、BT1718を用いた処置を開始する前に正式登録すべきである。登録プロセスの間にEDCシステムによって適格患者に試験番号が割り当てられる。CDDは、患者の登録後に、割り当てられた用量レベルを含めた患者の正式登録の確認を試験担当医師に送付する。確認が受領されて初めて試験処置を施行することができる。
【0225】
処置
【0226】
第I相開始用量およびスケジュールの選択
【0227】
28日間繰り返し投与GLPサル試験において確立されたHNSTDは18mg/m2で週2回であった。アロメトリックスケーリングを使用し、標準の安全係数6を適用すると(ICH S9)、ヒト開始用量は3mg/m2で週2回になった。ラットに対するGLPに準拠した試験では、最高投与用量の6mg/m2で週2回を用いてMTDに到達せず、アロメトリックスケーリングおよび標準の安全係数10(ICH S9)を用いると、ヒト開始用量は0.6mg/m2で週2回になる(これはおよそ0.12mg/m2で週2回のDM1用量と等しい)。ラットはBT1718に対する感受性がより高い種であるので、開始用量はラットのMTDに基づいたものにする。
【0228】
したがって、FIH第I相試験に対して提唱された開始用量は、0.6mg/m2で週2回である。
【0229】
投薬スケジュール/処置スケジュール
【0230】
第I相、用量漸増相、ステージ1、投薬スケジュール/処置スケジュール
【0231】
BT1718を4週間のうち3週間にわたって週2回、静脈内投与する(1日目、4日目、8日目、11日目、15日目および18日目+/-1日目に投薬する)。処置の各サイクルは28日間からなり、患者は、BT1718の利用可能性に応じて、疾患が増悪するまで継続することができる。開始用量は0.6mg/m2とする。
【0232】
第I相、用量漸増相、ステージ2、投薬スケジュール/処置スケジュール
【0233】
上のステージ1における週2回の投薬スケジュールの評価に加えて、週1回の投薬スケジュールもステージ2において評価する。ステージ2は、ステージ1からの利用可能なPKデータ、毒性データおよび/またはPDデータに基づいて潜在的な生物活性が期待される用量で開かれる。
【0234】
BT1718を4週間のうち3週間にわたって週1回、静脈内投与する(1日目、8日目および15日目+/-1日目に投薬)。処置の各サイクルは28日間からなり、患者は、BT1718の利用可能性に応じて、疾患が増悪するまで継続することができる。週1回レジームの開始用量は、最大で、週2回のスケジュール(第I相、ステージ1)から安全であるとみなされた最後の完了コホートの全体的な週間用量の100%になる。ステージ2は、3+3デザインに従って最低3名の評価可能な患者を含み、第IIa相、パートA週2回用量拡大相への補充と並行して評価することができる(
図3参照)。
【0235】
試験依頼者は、試験中に新たなデータに基づいて代替投薬スケジュールを検討することができ、例えば、毒性学プロファイルが週2回の投薬レジメンを用いた場合に良性である場合、連続的な週2回投薬を評価することができる。第I相の間に得られた新たなデータを決定に使用して、第IIa相のステージに進むことができる。さらに、選択された患者集団に応じて、投薬頻度の増加も検討することができる。投薬スケジュールに何らかの変化を加えた場合には、実質的な改訂を、承認を求めてMHRA、RECおよびHRAに提出する。
【0236】
第IIa相、拡大相(パートA)
【0237】
BT1718を第I相、ステージ1によって定義されたRP2Dおよびスケジュールで、週2回静脈内投与する。第IIa相、パートAは週2回投薬についてのRP2Dが利用可能になった時に開始することができるので、この拡大は、第I相、ステージ2における進行中の週1回、用量漸増への補充と並行して評価することができる(上記および
図4を参照されたい)。
【0238】
第IIa相、拡大相(パートB)
【0239】
BT1718を第I相、ステージ2によって定義されたRP2Dおよびスケジュールで、週1回静脈内投与する。第IIa相、拡大相パートBは、週1回投薬についてのRP2Dが利用可能になった時に開始することができ、したがって、この拡大は、進行中の週2回、第I相、ステージ1における用量漸増(このステージに対する補充が進行中の場合)または第IIa相、拡大相(パートA)と並行して評価することができる。
【0240】
第IIa相、拡大相(パートC&D)
【0241】
パートAおよびBの完了後、結果を審査する。第I相、ステージ1および2、ならびに第IIa相、パートAおよびBにおいて現在までに生成されたデータの審査後、いずれの投薬スキームを使用するか(週1回または2回)、開始用量およびいずれの腫瘍が適応症であるかに関する決定を行う。この決定後、パートCおよびDにおいてそれぞれ患者およそ15~16名の、最大2つの追加的なコホートを登録し、患者集団は、前臨床データおよび臨床的な新たなデータに基づいて選択する。これらの腫瘍型には現在NSCLC、TNBCまたは肉腫が含まれることが提唱される。選択用バイオマーカーまたは閾値もパートCおよびDの前に審査することができる。
【0242】
用量漸増スキーム
【0243】
第I相、用量漸増相、ステージ1-(週2回投薬)
【0244】
第I相、用量漸増相、ステージ1では、用量の増加は、最初に単一患者コホートにおいて最大で100%までであり、報告された安全性データおよび任意の利用可能なPKデータによって駆動され、試験担当医師によって少なくともBT1718に関連する可能性が高いとみなされる第1のCTCAEグレード2毒性が観察されるまで、または用量が6mg/m2で週2回(すなわち、その週にわたって12mg/m2)を超えるまでである。その後のコホートは、報告された安全性および利用可能なPKデータによって駆動される100%までの用量漸増ステップを伴う標準の3+3フォーマットに戻す。最初の3名の患者の間で単一のDLTが見られる場合、コホートを最大で合計6名の評価可能な患者に拡大する。評価可能な患者6名のうち2名未満にDLTが生じた場合、この用量を耐えられるものとみなす。
【0245】
単一患者コホートでは、次の患者は、前の患者がDLT期間(最初の28日間)を完了し、試験依頼者および研究チームにより次のコホートに進むことが安全であるとみなされたら、BT1718の最初の投薬を受けることができる。3+3患者コホートでは、第1の患者を毒性について1日目から7日間にわたって観察した後、その後の患者がBT1718の最初の投薬を受ける。
【0246】
第1のサイクル(28日間のDLT期間)の間に毒性以外の理由で当該患者に対する計画された投薬の75%未満を受けた患者は、用量審査決定のためのDLTの評価に関して評価可能ではなく、そのコホートに戻すことができる。しかし、これらの患者についての報告された安全性情報を、用量レベルの変化パーセンテージのガイドとみなすことができる。BT1718の用量を漸増させるという決定を下すためには、必要数の評価可能な患者が1サイクル(およそ28日間)を完了していなければならない。
【0247】
第I相、用量漸増相、ステージ2-(週1回投薬)
【0248】
第I相、用量漸増相(ステージ2)では、用量の増加は、前の用量レベルの100%までであり得、報告された安全性および利用可能なPKデータによって駆動される。最初の3名の患者の間で単一のDLTが見られる場合、コホートを最大で合計6名の評価可能な患者に拡大する。評価可能な患者6名のうち2名未満にDLTが生じた場合、この用量を耐えられるものとみなす。
【0249】
3+3患者コホートでは、第1の患者を毒性について1日目から7日間にわたって観察した後、その後の患者がBT1718の最初の投薬を受ける。
【0250】
第1のサイクル(28日間のDLT期間)の間に毒性以外の理由で当該患者に対する計画された投薬の75%未満を受けた患者は、用量審査決定のためのDLTの評価に関して評価可能ではなく、そのコホートに戻すことができる。しかし、これらの患者についての報告された安全性情報を、用量レベルの変化パーセンテージのガイドとみなすことができる。BT1718の用量を漸増させるという決定を下すためには、必要数の評価可能な患者が1サイクル(およそ28日間)を完了していなければならない。
【0251】
患者内用量漸増
【0252】
患者内用量漸増は許容されない。
【0253】
用量レベルの拡大
【0254】
患者3名のコホートにおいて上で定義されたDLTの1つの症例が観察された場合、最大6名の患者をその用量レベルで処置する。6名の患者のうち1名にDLTが生じた場合、用量漸増を続ける。最大6名の患者のうち2名またはそれよりも多くにDLTが生じた場合には、用量漸増を止め、この用量を耐えられないものと定義する。最大で6名の評価可能な患者を、耐えられないレベルを下回る用量で処置して、MTDを定義する。
【0255】
MADは、受けられる最高用量と定義される。これは通常、MTDを上回る耐えられない用量を表すが、その代わりに、毒性により用量が制限される前に、実現可能な注入体積によって用量が制限される場合には、投与可能な最大用量を表し得る。
【0256】
RP2Dでの用量拡大相の間に新型のDLTまたは多数のDLTが生じた場合、拡大コホート内の新しい患者に対する用量レベルを進行中の安全性報告に基づいて低下させることができる。これを継続的にモニタリングするだけでなく、最初の6名の患者が処置を2サイクル受けた後に正式な評価も行う。
【0257】
用量の改変
【0258】
用量の遅延および減少
【0259】
DLT(サイクル1において定義されたもののみ)が生じ、DLTの開始から15日以内にグレード1未満まで消散したかまたはベースラインまで戻った患者は、PI、試験依頼者および患者の同意をもって処置を再開することができる。用量を前の用量レベルに減少すべきである。AEが15日以内にベースラインまで消散せず戻らない場合には、患者は試験から外れる。この減少させた用量において、同一のまたは異なる毒性のいずれでも、患者にDLTが生じる場合には、さらなる用量の減少は行わず、患者は試験から離脱する。
【0260】
血液学的毒性
【0261】
グレード3以上の血液学的毒性が生じた患者については、毒性がグレード3未満に消散するまで、そのサイクルの間、その後の用量を省略する。グレード3未満まで消散したら、処置をそのサイクルの間に同一の用量レベルで再開することができる。
【0262】
患者が次のサイクルを開始する予定の時にBT1718に関連する(可能性が高いまたは極めて高い)グレード2毒性がなお存在する場合には、そのサイクルを、毒性がグレード1以下に消散するまで最大14日間遅延させるべきである。
【0263】
初めて投薬を省略したかまたは遅らせた時には、次回に同一の用量で与薬することができる。しかし、その後に再度省略するまたは遅延させる必要がある場合には、用量を前の用量レベルに減少すべきである(PI、試験依頼者および患者がさらなる用量の省略/遅延が妥当であり、毒性の有効な制御をもたらすことに同意した例外的な状況でなければ)。
【0264】
毒性が15日以内にグレード2未満に戻らない場合、患者は試験から外れる。
【0265】
用量減少は、PI、試験依頼者および患者が、さらなる処置が妥当であることおよび用量減少により毒性の有効な制御がもたらされることが予想されることに同意した例外的な状況でなければ、患者当たり1回しか許容されない。
【0266】
非血液学的毒性:
【0267】
グレード2
【0268】
支持的臨床管理に応答しない(<7日間)、BT1718に関連する(可能性が高いまたは極めて高い)臨床的に有意なグレード2の非血液学的毒性が生じた患者は、毒性がグレード1以下に消散するまで、そのサイクルの間のその後の投薬を省略する。
【0269】
患者が次のサイクルを開始する予定の時に臨床的に有意なグレード2のBT1718に関連する毒性がなお存在する場合には、そのサイクルを、毒性がグレード1以下に消散するまで最大14日間遅延させるべきである。
【0270】
初めて投薬を省略したかまたは遅らせた時には、再開時に同一の用量で与薬することができる。しかし、その後に再度省略するまたは遅延させる必要がある場合には、用量を前の用量レベルに減少すべきである(PI、試験依頼者および患者がさらなる用量の省略/遅延が妥当であり、毒性の有効な制御をもたらすことに同意した例外的な状況でなければ)。
【0271】
毒性が15日以内にグレード1以下に戻らない場合、患者は試験から外れる。
【0272】
用量減少は、PI、試験依頼者および患者が、さらなる処置が妥当であることおよび用量減少により毒性の有効な制御がもたらされることが予想されることに同意した例外的な状況でなければ、患者当たり1回しか許容されない。
【0273】
グレード3
【0274】
支持的臨床管理に迅速に応答しない(<3日間)、グレード3の非血液学的毒性が生じた患者は、毒性がグレード1以下に消散するまで、そのサイクルの間のその後の投薬を省略する。
【0275】
患者が次のサイクルを開始する予定の時に臨床的に有意なグレード2のBT1718に関連する毒性がなお存在する場合には、そのサイクルを、毒性がグレード1以下に消散するまで最大14日間遅延させるべきである。
【0276】
患者がグレード3の非血液学的毒性の後に処置を再開する場合、用量を前の用量レベルに減少すべきである。毒性が15日以内にグレード1以下に戻らない場合、患者は試験から外れる。
【0277】
用量減少は、PI、試験依頼者および患者が、さらなる処置が妥当であることおよび用量減少により毒性の有効な制御がもたらされることが予想されることに同意した例外的な状況でなければ、患者当たり1回しか許容されない。
【0278】
グレード4
【0279】
Hy’s Law(ビリルビン>2×ULNおよびALT/AST>3×ULN、薬物以外の説明なし)と一致してグレード4の非血液学的毒性、または肝酵素の変化が生じた患者はさらなる処置をやめ、検査の正確度が確認されたら試験から外れる。
【0280】
処置の持続時間
【0281】
(a)患者が離脱を要求した場合、(b)疾患増悪のエビデンスが存在する場合、(c)患者に許容されない毒性が生じている場合、または(d)試験担当医師が、任意の他の理由で患者が離脱すべきだと感じる場合を除いて、処置を継続すべきである。
【0282】
患者がBT1718を用いた処置による利益を得(すなわち、RECIST 1.1によって測定して安定なまたは応答性の疾患を有する)、いかなる臨床的に有意なグレード2またはそれよりも高いBT1718に関連するAEも生じていないことに試験依頼者およびCIが同意する場合、患者は、疾患増悪まで処置を継続することができ(BT1718の利用可能性に応じて)、その後、患者は試験から離脱する。プロトコールに記載されている通り追跡調査情報を収集すべきである(以下を参照されたい)。
【0283】
試験依頼者は、患者が処置を受け続けるかどうかを検討する際に、その患者について報告された客観的応答を確定するために、放射線学的データを含む完全な毒性および有効性プロファイルを審査する。試験依頼者が、もたらされた情報または受け取った他の情報に基づいて、または任意の他の理由で患者に処置を継続させないと決定した場合には、試験依頼者の決定を最終的なものとする。
【0284】
患者の入替え
【0285】
第I相、用量漸増相(ステージ1およびステージ2)
【0286】
患者が、BT1718に関連する(可能性が高いまたは極めて高い)毒性以外の理由で第1のサイクル(28日間のDLT期間)の間に計画されたBT1718の曝露用量の75%未満を受けた場合、その患者を用量漸増相の間に同一の用量レベルで処置を受けた別の患者と入れ替える。単一患者コホートに関しては、患者が当該患者に対する計画された投薬の全てを受けたのではない場合にその患者を入れ替えることができる。
【0287】
第II相、拡大相
【0288】
患者が、薬物に関連する(可能性が高いまたは極めて高い)毒性以外の理由で第1のサイクル(28日間のDLT期間)の間にBT1718の計画された曝露用量の75%未満を受けた場合、PDのエビデンスが存在する場合を除き、その患者を拡大コホート(パートA、B、CおよびD)では入れ替える。
【0289】
患者の入替えは試験依頼者によって確定される。試験からの新たなデータまたはBT1718利用可能性に基づいて、患者の入替えが生じない状況があり得る。これは試験依頼者によって文書化される。
【0290】
併用薬および処置
【0291】
医学的に必要な場合には、併用薬を与薬することができる。これは、BT1718に関連するAEまたは関連しないAEの症候性臨床管理を含む。詳細(併用薬の名称ならびに併用薬の与薬の開始日および終止日を含む)を患者の診療記録に記録し、詳細を電子症例報告書(eCRF)に入力しなければならない。
【0292】
骨痛または他の症状を制御するために、緩和的放射線治療を同時にもたらすことができる。これらの放射線を照射した病変は応答について評価不能である。
【0293】
患者は、試験中は他の抗がん治療または治験薬を受けてはならない。
【0294】
上記の通り、毒性を管理する必要がある場合、患者が試験から離脱することを必要とせずに、BT1718の投薬を最大15日遅らせることもできる。
【0295】
日光曝露に対する予防策
【0296】
BT1718は、UV(紫外線)スペクトル(290~700nm)、特に290~300nmを吸収し、モル吸光係数は>1000L mol-1cm-1である。そのように、DM-1を含有する薬物に関して患者における光毒性のエビデンスは示されていないが、可能性があると考えるべきであり、処置中およびその後1週間にわたってUV曝露に対する予防策が必要である。患者は過剰な日光曝露を回避すべきであり、日中に屋外に出る際には、患者は、適切な場合には帽子およびサングラスを含めた保護衣類を着用すべきであり、あらゆる潜在的に露出する皮膚に日焼け防止指数が高い(SPF30またはそれよりも高い)広範なスペクトルの日焼け止めを塗布すべきである。サンベッドは使用してはならない。
【0297】
医薬情報
【0298】
医薬データ
【0299】
BT1718の製剤
【0300】
BT1718薬品は、臨床使用のために、クロロブチルの止め栓およびアルミニウムシールを伴う20mLのI型透明ガラスバイアル中、再構成用の白色~灰色がかった白色の凍結乾燥粉末として供給される。バイアルの実際の薬物含有量は、21.2mgのBT1718になる。
【0301】
保管条件
【0302】
供給品は全て、病院薬剤部内の安全な立ち入りが制限された保管領域で保管しなければならない。BT1718は、元の包装のまま-20℃±5℃で光から保護して保管しなければならない。
【0303】
IMPの調製方法
【0304】
注入用のBT1718の溶液を調製する際には良好な無菌下での実施を使用しなければならない。
【0305】
BT1718は、IV投与(注入による)前に5%ブドウ糖を用いてさらに希釈するための4.0mg/mLの標的濃度のBT1718を提供するために、注射用の滅菌水5.0mL(標的体積である5.3mLの溶液に戻すため)を用いて再構成される。バイアルの含有量は、再構成後に取り出し可能な体積が5.0mLであることに基づいて、バイアル当たり20mgのBT1718の利用可能性を確実にするものである。
【0306】
希釈BT1718の安定性
【0307】
注入用に調製された溶液を2~8℃で20時間保管し、その後、投与前に室温(21℃±4℃)で4時間保管することができる。注入は2時間以内に完了しなければならない。微生物学的観点から、投与は、希釈薬物の調製後できるだけ早く行うべきである。
【0308】
BT1718投与
【0309】
投与前に、正確な投与量について常に第2の適格の人員による2重確認を行わなければならない。
【0310】
注入中のモニタリング
【0311】
注入の前後にバイタルサイン(体温、脈拍数、BP)をモニタリングすべきであり、処置または観察中に懸念があれば繰り返すべきである。糖尿病の患者には、各BT1718注入の前後に、少なくとも最初の2サイクルにわたって、およびその後、臨床的に必要な場合に、グルコースフィンガープリック検査を行うべきである。
【0312】
あらゆるBT1718の有害作用を十分に評価するために、患者は、BT1718の最初の注入前にいかなる前投薬を用いた一次予防法も受けるべきではない。万一患者が何らかのBT1718の有害作用を示した場合には、あらゆるその後の注入前に二次予防法として前投薬を施行することができる(例えば、デキサメタゾン、クロルフェナミンまたは制吐薬)。しかし、新たな安全性データから、前投薬が一次予防法として全患者に対して必要であることが示唆された場合には、サイクル1の1日目よりも前、およびその後の全ての注入について前投薬を行う。試験依頼者は、この要件が各試験担当医師に連絡されることを確実にする。
【0313】
顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)または顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)は試験中の一次または二次予防法に使用すべきでなく、骨髄回復を加速して用量密度を増大させるためだけでも使用すべきでない。しかし、GM-CSFまたはGCSFの治療的使用は、骨髄を支持するための急性の臨床的要件が存在する場合には(例えば、発熱性好中球減少症の場合に治療的に)許容される。あらゆる白血球減少症(leukopenia)、好中球減少症、赤血球減少症または血小板減少症の持続時間の確立がDLT評価の一部を形成するので、可能であれば患者のBT1718の第1のサイクル内でのGM-CSFまたはGCSFの使用を回避すべきであるが、患者の安全性およびウェルビーイングは骨髄支持に関する臨床決定における主な懸念のままである。
【0314】
静脈溢出/偶発的溢流
【0315】
DM1および他の化学療法薬は、溢出を引き起こすものであり得る、および/または発疱性物質、刺激性物質、炎症性物質もしくは皮膚剥離性物質であり[56、57]、用心のために、BT1718を発疱性物質として取り扱う。カニューレ設置、開存性および注入中または注入後の溢出のあらゆる兆候に慎重な注意を払うべきである。発疱性物質溢出の管理に関する標準の地域の方針に従うべきであり、一般には注入の終止から開始し、可能であれば局部ヒドロコルチゾンの吸引を行い、審査を継続する。温湿布または冷湿布、DMSOまたはヒアルロニダーゼなどの特定の処置の役割は分かっていない。BT1718の調製、調査、投与、廃棄または溢流の管理の間は常に手袋および使い捨てエプロンを着用すべきである。
【0316】
調査スケジュール
【0317】
患者が異なる病院で調査、例えば、週1回の血液試料、必要に応じてスキャン、および他の調査を受ける場合には、試験担当医師が報告された結果を受け取り、審査することを確実にするのは自身の責任である。これらの結果は、ソースデータ検証(SDV)に利用可能なものでなければならない。使用される全ての検査室から発効日および検査室認証のエビデンスを含めた検査室基準範囲を得なければならない。スキャン結果に関しては、元の画像および報告書は、試験担当医師の現場で実施された任意のスキャンとの比較に利用可能でなければならず、比較に適したフォーマットでなければならない。他の全ての調査に関しては、結果から離れて、SDVまたは審査のための任意の裏付けデータが利用可能にならなければならない。
【0318】
試験担当医師または代理人は、検査室正常範囲またはあらゆる検査室認証のあらゆる変化を試験依頼者に知らせ、あらゆる新しい文書記録を提示しなければならない。
【0319】
処置前評価
【0320】
プロトコールにより求められる、基準日を含めた登録された患者についての全ての評価/調査の詳細を診療記録に記録しなければならない。
【0321】
書面のインフォームドコンセントの入手
【0322】
あらゆるプロトコールに特異的な手順を行う前に患者から書面のインフォームドコンセントを入手しなければならない。
【0323】
最初の保存または新鮮なスクリーニング腫瘍試料のMT1-MMPについての分析に対する同意を試験のために試料を分析する前に入手しなければならず、スクリーニング前(プレスクリーニング同意)または完全な試験への同意時(主要同意書)に入手すべきである。
【0324】
患者には、試験に対する義務に関して考える十分な時間が与えられなければならない。インフォームドコンセントを得てからBT1718投薬の開始前までに28日よりも多くが経過した場合には、試験担当医師は、繰り返し同意を患者から得るべきかどうかを検討すべきである。より新しい承認されたバージョンのインフォームドコンセント文書(ICD)が利用可能な場合には、いずれかのプロトコール特異的調査が実施される前に再同意を入手しなければならない。
【0325】
PIおよびPIにより委任された責任を有し、Delegation Logに署名した試験分担医師(Sub-Investigator)のみが、患者からインフォームドコンセントを得、同意書に署名することが許される。プロトコールにより求められる何らかの医療介入を行う前に全ての署名を入手しなければならない。患者はPI/試験分担医師がいるところで同意書に署名および日付を記入すべきであり、その後、PI/試験分担医師が署名する。患者およびインフォームドコンセントを得るPI/試験分担医師の署名の日付はどちらも同一であるべきである。
【0326】
PIまたは試験分担医師は、患者に、当該患者の疾患およびBT1718の通常の管理についての背景および現在の知見に関して知らせなければならず、また、患者が以下の点を承知していることも確実にしなければならない:
【0327】
BT1718が新しいものであること、および正確な活性の程度は現在のところ分かっていないが、当該患者が処置を受けることがさらなる知見に寄与すること;
【0328】
BT1718の既知の毒性および副作用が生じる可能性;
【0329】
妊娠すること(または患者のパートナーが妊娠すること)の潜在的な危険、および当該患者が妥当な医学的に承認された避妊に関する情報を得ていること;
【0330】
当該患者は、試験の前または試験中の任意の時点のいずれでも処置を拒否することができること、および参加拒否にはペナルティもそうでなければ権利が与えられる利益の喪失も伴わないこと;
【0331】
研究および患者の権利に関する関係する質問に回答するために接触すべきは誰か、および万一研究に関連する傷害が生じた時に接触すべきは誰か。
【0332】
プレスクリーニング(第IIa相、拡大相のみ)
【0333】
第IIa相、拡大相では、患者全員が、MT1-MMP IHCプロファイリング用の保存組織の送付前に、または新鮮なスクリーニング腫瘍生検試料を得て送付する前に、別々の書面の同意を示すべきである。
【0334】
患者が最初の投薬を受ける前の6カ月以内に以下を実施/入手するべきである:
【0335】
保存試料の回収-MT1-MMP IHCプロファイリングのための保存腫瘍試料の回収
【0336】
新鮮な腫瘍生検試料-MT1-MMP IHCプロファイリングのための保存腫瘍試料が利用不可能な場合、新鮮な腫瘍生検試料を得る。
【0337】
保存腫瘍生検試料が利用不可能であるかまたはMT1-MMP IHCプロファイリングが決定的なものでない患者に関しては、新鮮なスクリーニング腫瘍生検材料により適格性を決定することが求められる。新鮮なスクリーニング腫瘍生検試料は、患者が登録されることが予想される前の8週間以内に実施/入手しなければならない。
【0338】
BT1718の第1の投与前28日以内の評価(-28日目~サイクル1の1日目の投薬前)
【0339】
患者がBT1718の最初の投薬を受ける前の28日以内に以下を実施/入手しなければならない。放射線学的測定などの既存の結果に関して、これらの調査が試験に関する患者の情報提供の同意前に実施された場合であっても、求められる時間ウインドウ内に実施されていれば、これを使用することができる。
【0340】
人口統計の詳細
【0341】
診断(組織学的または細胞学的)、処置前、同時の状態/疾患、ベースラインの徴候および症状ならびに同時の処置)を含めた病歴
【0342】
放射線学的疾患評価:放射線学的測定(胸部、腹部、骨盤および任意の他の関連性のある部位のコンピュータ化断層撮影法[CT]または磁気共鳴画像法[MRI]スキャン)-を患者がBT1718の最初の投薬を受ける前の4週間以内に実施し、RECIST Version 1.1に対して報告しなければならない。
【0343】
用量漸増相におけるIHCならびに他の分子病理学的技法によるMT1-MMP発現の後向き評価のための保存腫瘍試料の回収。
【0344】
処置前腫瘍生検は、用量漸増相(第I相、ステージ1および2)の患者については必要に応じたものであり、拡大相(第IIa相、パートAおよびB)の最低でも6名の患者については義務的なものである。
【0345】
注釈:ベースライン処置前腫瘍生検(最初の投薬の前の28日以内に実施する)は、新鮮なスクリーニング腫瘍試料(MT1-MMP IHCプロファイリングによって適格性を確認するため)を最初の投薬の前の8週間以内に提供した患者に対しては必要ない。
【0346】
必要に応じた新鮮な非腫瘍生検試料:置前腫瘍生検材料を有する患者は、必要に応じて新鮮な非腫瘍生検材料も有する。非腫瘍生検材料は、腫瘍生検材料とほぼ同一の時間に取得することができる。これは、用量漸増相(第I相、ステージ1および2)の患者ならびに拡大相(第IIa相、パートAおよびB)の患者に当てはまる。
【0347】
臨床疾患評価(該当する場合)
【0348】
患者が同意した時からいずれかのプロトコール特異的手順まで、SAEを含めた全てのAEをモニタリングし、eCRFに記録しなければならないことに留意されたい。
【0349】
試験への組入れの8日以内の評価
【0350】
試験への組入れ前の8日以内に以下を実施しなければならない:
【0351】
完全な身体検査
【0352】
身長、体重、BSA、WHOパフォーマンスステータス、体温、脈拍数およびBP(BPは座ってまたは横になって5分間安静にした後に取得すべきである)
【0353】
12誘導ECG;
【0354】
子供を持つことができる女性患者は、BT1718の第1の投与前および最終的な投与の30日後のみヒト絨毛膜ゴナドトロピン(HCG)妊娠検査(血清または尿検査が許容される)に関して陰性結果を有さなければならない(患者の進行疾患を考慮した特定の懸念、患者の限定された予後、妊娠の可能性のなさ、およびがんが患者の将来/生殖能力/家族生活に対してどのように影響を及ぼすかに関する注意喚起に敏感な人を除いて、頻度の高い検査は妥当である可能性が低いことに留意されたい)。
【0355】
検査室検査(laboratory test)(血液/尿試料):
【0356】
血液学的検査-Hb、2点分画(好中球、リンパ球)を伴うWBCおよび血小板
【0357】
生化学的-ナトリウム、カリウム、調整カルシウム、マグネシウム、リン酸、尿素、クレアチニン、アルブミン、ビリルビン、ALP、ALTおよび/またはAST、空腹時血糖
【0358】
尿検査-pH、グルコース、タンパク質および血液を含む
【0359】
腎機能-血清クレアチニン、算出されたクレアチニンクリアランス(ライトもしくはコッククロフト&ゴールト)または同位元素クリアランス測定値(GFRスキャン)。同位元素クリアランス結果は、算出されたC&G/ライト法の結果がGFR=50mL/分である場合に使用される。
【0360】
凝固検査-INR/PTおよびAPTTを含む。あらゆる生検手順の前に繰り返すべきである。
【0361】
患者が適格であることが確認されたら患者を試験に登録する。
【0362】
研究用血液試料:薬力学および遺伝子解析用。
【0363】
試験中の評価
【0364】
各サイクルの1日目
【0365】
各サイクルの1日目に、BT1718投与前に以下を実施しなければならない:
【0366】
体重およびBSA-各サイクルの1日目に繰り返して、BT1718投与に必要な用量を算出しなければならない。BT1718の用量は、ベースラインから10%もしくはそれよりも大きな体重の変化があった場合、最後の体重調整から10%もしくはそれよりも大きな体重の変化があった場合、または毒性が原因で用量を減少させた場合にのみ再算出する必要がある。
【0367】
12誘導ECG-サイクル1の1日目のBT1718投与前、およびBT1718投与後1時間半(+15分)以内に実施すべきである。サイクル2の1日目に、ECGをBT1718投与前またはBT1718投与後1時間半(+15分)以内のいずれか実施すべきである。サイクル2以降は、ECGを、2サイクル毎の1日目(例えば、サイクル4の1日目、サイクル6の1日目)のBT1718投与前またはBT1718投与後1時間半(+15分)以内に繰り返すべきである。
【0368】
血液学的検査:段落[0342]で詳述している。
【0369】
生化学的検査:段落[0343]で詳述している。空腹時血糖の結果はベースラインに関して以外は必要なく、したがって、患者は通院前に絶食する必要はない;
【0370】
尿検査-段落[0344]で詳述している。この評価は、サイクル1の22日目(+/-1日)にのみ繰り返すべきである(すなわち、BT1718投与を行わない時)。
【0371】
研究用尿試料採取;PK解析用。
【0372】
研究用血液試料:PK解析、薬力学解析および遺伝子解析用。
【0373】
各計画されたBT1718投与の前
【0374】
症状を対象とする身体検査:臨床的に必要な場合には、症状を対象とする身体検査をBT1718投与前に実施すべきである。
【0375】
WHOパフォーマンスステータス
【0376】
バイタルサイン:体温、脈拍数およびBP(BPは座ってまたは横になって5分間安静にした後に取得すべきである)をBT1718投与前および注入の1時間(+/-15分)後に実施する。臨床的に必要な場合には注入中にも行うべきである。これらの評価をサイクル1の22日目(+/-1日)にのみ繰り返すべきである(すなわち、BT1718投与を行わない時)。
【0377】
糖尿病の患者には、グルコースフィンガープリック検査(非空腹時)を各BT1718注入前1時間以内に、および各BT1718注入の1時間(+15分)後に、少なくとも最初の2サイクルにわたって、およびその後、臨床的に必要な場合に行うべきである。
【0378】
有害事象および併用薬:各来院時に、各BT1718投与前に、前の来院から生じたあらゆるAEの評価が試験担当医師、試験担当看護師または試験担当医師のチームの適格のメンバーによって行われなければならない。AEの開始日および終止日を当該事象のBT1718投与との関係と共に診療記録に記録しなければならない。全てのAEに、NCI CTCAE Version4.02に従ってグレード付けを行わなければならない。あらゆる同時の処置を診療記録に記録しなければならない。
【0379】
検査室検査:
【0380】
血液学的検査および生化学的検査:
【0381】
血液学的検査:段落[0342]で詳述している。
【0382】
コア生化学的:ナトリウム、カリウム、尿素、クレアチニン、アルブミン、ビリルビン、ALP、ALTおよび/またはAST。
【0383】
第I相、用量漸増相、ステージ1、および第IIa相、パートA(週2回投薬)
【0384】
サイクル1の間に、検査室検査(上で定義された)を実施し、1日目、4日目、8日目、11日目、15日目および18日目のBT1718投与の前に確認しなければならない。22日目(すなわち、BT1718投与を行わない時)に追加的な検査室検査も実施しなければならない。BT1718投与の最大24時間前に検査室検査を実施することができるが、結果が入手可能であり、BT1718の与薬前に試験担当医師によって審査されなければならない。
【0385】
サイクル2以降の間、検査室検査を実施し、1日目、8日目および15日目のBT1718投与前、ならびにその後、臨床的に必要な場合に確認しなければならない。6サイクル後、血液学的および生化学的評価の頻度はPIおよび試験依頼者の自由裁量で減少させることができるが、最低でも各サイクルの1日目には実施しなければならない。BT1718投与の最大24時間前に検査室検査を実施することができるが、結果が入手可能であり、BT1718の与薬前に試験担当医師によって審査されなければならない。
【0386】
第I相、用量漸増相、ステージ2、および第IIa相、パートB(週1回投薬)
【0387】
検査室検査を実施し、1日目、8日目および15日目のBT1718投与前に確認しなければならない。22日目(すなわち、BT1718投与を行わない時)に追加的な検査室検査も実施しなければならない。BT1718投与の最大24時間前に検査室検査を実施することができるが、結果が入手可能であり、BT1718の与薬前に試験担当医師によって審査されなければならない。
【0388】
6サイクル後、血液学的および生化学的評価の頻度はPIおよび試験依頼者の自由裁量で減少させることができるが、最低でも各サイクルの1日目には実施しなければならない。BT1718投与の最大24時間前に検査室検査を実施することができるが、結果が入手可能であり、BT1718の与薬前に試験担当医師によって審査されなければならない。
【0389】
放射線学的疾患評価:これを2サイクル毎の最後(+/-7日)に繰り返さなければならない。評価は、疾患が増悪するまで、最大2年にわたって継続することができ、また、臨床的な懸念または疾患増悪の疑いがある場合には、2サイクル毎よりも頻繁に実施することができる。放射線学的測定(胸部、腹部、骨盤および任意の他の関連性のある部位のCTまたはMRIスキャン)固形がんの治療効果判定のためのガイドライン(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)(RECIST)Version 1.1に対して報告される。
【0390】
臨床疾患評価(該当する場合):これを、疾患増悪まで、最大2年にわたって2サイクル毎の最後(+/-7日)に、または臨床的な懸念もしくは疾患増悪の疑いがある場合に繰り返さなければならない。
【0391】
BT1718による処置中の他の評価:
【0392】
処置後腫瘍生検は、用量漸増相(第I相、ステージ1および2)の患者については必要に応じたものであり、拡大相(第IIa相、パートAおよびB)の最低でも6名の患者については義務的なものである。薬力学評価のための腫瘍生検材料をサイクル1の8日目または15日目(4+/-2時間)に取得する。サイクル1の間に生検手順を実施することができない場合には、サイクル2の8日目または15日目(4+/-2時間)に実施することができる。
【0393】
処置後非腫瘍生検は、用量漸増相(第I相、ステージ1および2)ならびに拡大相(第IIa相、パートAおよびB)の患者については必要に応じたものである。薬力学評価のための非腫瘍生検材料は、処置後腫瘍生検材料を有する同一患者から取得する。非腫瘍生検は、サイクル1の8日目または15日目(処置の4+/-2時間後)の腫瘍生検材料とほぼ同一の時間に取得することができる。サイクル1の間に生検手順を実施することができない場合には、サイクル2の8日目または15日目(処置の4+/-2時間後)に実施することができる。
【0394】
研究用血液試料:薬力学的解析および遺伝子解析用。
【0395】
NB:第IIa相、拡大相パートCおよびDに関する評価を拡大相パートAおよびBの完了後に定義する。
【0396】
試験停止来院時の評価
【0397】
試験停止は、患者が試験から離脱する決定がなされた日付と定義される。「試験停止」来院時の評価はBT1718の最後の投薬の28日(+/-7日)後に実施しなければならない。可能な限り以下の調査を実施すべきである:
【0398】
症状を対象とする身体検査:臨床的に必要な場合;
【0399】
WHOパフォーマンスステータス、体温、脈拍数およびBP(BPは座ってまたは横になって5分間安静にした後に取得すべきである);
【0400】
血液学的検査:段落[0342]で詳述している;
【0401】
生化学的検査:段落[0343]で詳述している;空腹時血糖の結果は必要なく、患者は通院前に絶食する必要はない;
【0402】
尿検査;段落[0344]で詳述している;
【0403】
子供を持つことができる女性患者は、HCG妊娠検査(血清または尿検査が許容される)に関して陰性結果を有さなければならない;
【0404】
12誘導ECG;
【0405】
腫瘍疾患の放射線学的評価、ただし、患者が前の試験スキャンでPDを有することが示されているかまたは評価が以前28日以内に実施されている場合を除く;
【0406】
該当する場合、疾患の臨床評価;
【0407】
AEの評価(上も参照されたい);
【0408】
併用薬の審査;ならびに
【0409】
研究用血液試料:薬力学的解析および遺伝子解析用。
【0410】
追跡調査
【0411】
安全性の追跡調査
【0412】
適格患者に関しては、SAEおよびAEの収集およびモニタリングを、BT1718の最後の投与の28日後まで、または患者が別の抗がん治療を開始するまで続ける。この期間後になお継続しているあらゆる薬物に関連するAEを月に1回、ベースラインまでの消散または安定化まで追跡調査するが、患者が別の抗がん処置を開始した場合を除く。
【0413】
試験担当医師がこの期間後にあらゆるBT1718に関連するAEまたはSAEを認識した場合には、これらは、優先タイムライン内で試験依頼者にも報告されなければならない。
【0414】
有効性および生存の追跡調査
【0415】
患者全員を最初の増悪について、および生存について、試験終了まで追跡調査すべきである。もはや処置中ではない患者に関しては、患者がいつ別の全身性の抗がん治療を開始するか、または、いつPDが生じるか(すでに生じていない場合)、および患者が生存し続けているかを決定するために、現場の試験チームが患者の状態を少なくとも3カ月に1回確認すべきである(NHS/HSC電子データ記録を通じてまたは適切な場合には電話のみによって)。もはや処置中ではない患者にはさらなる試験来院は求められないが、現場チームが患者の状態を確認すべきである。
【0416】
治験総括報告書(CSR)のための最終的なデータベースロック時に患者が追跡調査できていないまたは進行していないまたは死亡している場合には、その時点で進行/死亡していたか不明として情報を打ち切る。
【0417】
事象のスケジュール
表10.第I相、ステージ1および第IIa相、パートA(週2回投薬)。
【表10-1】
【表10-2】
【表10-3】
【表10-4】
【表10-5】
表11.第I相、ステージ2および第IIa相、パートB(週1回投薬)
【表11-1】
【表11-2】
【表11-3】
【表11-4】
【表11-5】
【0418】
薬物動態および薬力学的評価
【0419】
PKおよび薬力学的評価の要約
表12.PKおよび薬力学的評価の要約
【表12-1】
【表12-2】
【0420】
二次評価
【0421】
BT1718の薬物動態(血漿)
【0422】
血漿中のインタクトなBT1718および総DM1(BT1718中のDM1、BT1718のあらゆるペプチジル-DM1代謝産物、ならびに他のDM1を含有する混合ジスルフィドおよび遊離DM1)を、第I相、用量漸増相(ステージ1および2)ならびに新たなデータに応じて潜在的に第IIa相、拡大相(パートAおよびB)において、合意された標準操作手順(SOP)および有効な方法に従って測定する。
【0423】
三次/研究評価
【0424】
腫瘍組織におけるMT1-MMP発現
【0425】
有効なMT1-MMPプロトタイプIHC分析法を展開して、合意されたSOPおよび有効な方法に従ってMT1-MMP発現を決定する。第I相、用量漸増相(ステージ1および2)に関しては、保存試料および必要に応じて処置前生検材料および処置後生検材料を使用してMT1 MMP発現を後向きに測定する。MT1-MMPの前向き分析を第IIa相、拡大相(パートAおよびB)に関して行って、試験に入る前に患者を選択する。さらに、処置前のMT1-MMP発現レベル対処置後のMT1-MMP発現レベルを調査するために、各拡大群(AおよびB)において最低6つの対の新鮮な生検材料を義務付ける。
【0426】
腫瘍材料の標的発現、生物学および利用可能性に関する新たな知見に応じて、腫瘍に浸潤する免疫細胞のマーカーも分子組織学的検査技法を使用して調査することができる。
【0427】
BT1718の薬物動態(尿)
【0428】
サイクル1の1日目の後の尿中の総DM1を合意されたSOPおよび有効な方法に従って測定する。新たなデータに応じて、これらの尿試料中のインタクトなBT1718も潜在的に測定する。
【0429】
免疫原性
【0430】
第I相、用量漸増相(ステージ1および2)ならびに新たなデータに応じて潜在的に第IIa相、拡大相(パートAおよびB)において、血清試料をBT1718に対する潜在的な免疫原性について、合意されたSOPおよび有効な方法に従って分析する。
【0431】
腫瘍試料および非腫瘍試料における細胞傷害性のマーカー
【0432】
第I相、用量漸増相(ステージ1および2)における患者由来の新鮮な腫瘍および非腫瘍生検材料(可能であれば)を使用して、細胞傷害性のマーカーを合意されたSOPおよび有効な方法に従って測定する。
【0433】
各第IIa相、拡大相(パートAおよびB)における少なくとも6名の患者由来の新鮮な対の生検材料を使用して、細胞傷害性のマーカーを合意されたSOPおよび有効な方法に従って測定する。
【0434】
腫瘍試料中の耐性マーカー
【0435】
第IIa相、拡大相(パートAおよびB)において、腫瘍生検材料を使用して、耐性マーカーを合意されたSOPおよび有効な方法に従って測定する。
【0436】
循環バイオマーカー
【0437】
第IIa相、拡大相(パートAおよびB)の間の処置前および処置後の特定の時点で、合意されたSOPおよび有効な方法に従って血液を採取する。
【0438】
循環腫瘍細胞
【0439】
第IIa相、拡大相(パートAおよびB)において、合意されたSOPおよび有効な方法に従って血液中の循環腫瘍細胞を測定する。循環腫瘍細胞を保管し、試験終了時に分析することができる。
【0440】
細胞外遊離DNA
【0441】
第I相、用量漸増相(ステージ1および2)ならびに第IIa相、拡大相(パートAおよびB)において、合意されたSOPおよび有効な方法に従って患者由来の血漿中の細胞外遊離DNAを測定する。
【0442】
循環免疫細胞
【0443】
第IIa相、拡大相(パートAおよびB)において、MT1-MMPを発現することが分かっている様々な循環免疫細胞におけるMT1-MMP発現および他の発現マーカーを合意されたSOPに従って評価することができる。
【0444】
循環細胞死マーカー-M30およびM65
【0445】
細胞死マーカー用の試料を試験において患者から取得する。第I相、用量漸増相(ステージ1および2)ならびに第IIa相、拡大相(パートAおよびB)において、M30およびM65 ELISAアッセイを使用して、血清中の細胞死のマーカーを合意されたSOPおよび有効な方法に従って測定する。
【0446】
安全性の評価
【0447】
試験担当医師の責任
【0448】
以下の節に記載の通り、試験担当医師は、試験に登録された患者の安全性をモニタリングすることに関して、および情報を正確に文書化し、報告することに関して責任を負う。
【0449】
有害事象の定義
【0450】
有害事象
【0451】
AEは、試験医薬品(IMP)、比較器となる製品または承認された薬物を投与された患者に生じたあらゆる不都合な、望ましくない、または予期しない医療上のできごとである。
【0452】
AEは、IMPまたは比較器に関連する可能性があるまたは関連しない可能性がある徴候、症状、疾患、および/または検査室でのもしくは生理的観察であり得る。
【0453】
AEは、これだけに限定されないが、以下の一覧中のものを含む。
【0454】
既存の状態の臨床的に有意な悪化。これは、完全に消散し、その後再度異常になる可能性がある状態を含む。
【0455】
偶発的であるか意図的であるかにかかわらずIMPの過剰投薬から生じるAE。
【0456】
IMPの有効性の欠如から生じるAE、例えば、試験担当医師が、薬物バッチが効果的でないと疑う場合、または試験担当医師が、IMPが疾患増悪に寄与したと疑う場合。
【0457】
重篤な有害事象
【0458】
重篤な有害事象は、用量、因果関係または予測可能性にかかわらず、以下のあらゆるAEである:
【0459】
死亡をもたらす;
【0460】
生命を脅かす*;
【0461】
入院を必要とするまたは現在の入院を延長させる(一部の入院はSAE報告が免除される-例えば、患者が試験に入る前に計画された入院;輸血などの計画された手順のための一晩の滞在);
【0462】
持続的なまたは著しい無能または能力障害をもたらす;
【0463】
先天異常または先天性欠損である;
【0464】
あらゆる他の医療上の重要な事象**。
【0465】
*生命を脅かす事象は、有害事象時に患者の死亡リスクがかなり高かった事象、またはデバイスもしくは他の医療用製品の使用もしくは継続使用により患者の死亡がもたらされた可能性がある事象と定義される。
【0466】
**医療上の重要な事象は、患者を危険にさらす恐れがある、または上に列挙されている転帰の1つを防止するために介入を必要とする可能性がある、あらゆる事象と定義される。例としては、緊急治療室での処置を必要とするアレルギー性気管支痙攣(呼吸に関連する重篤な問題)、重篤な血液悪液質(血液障害)または入院を生じさせない発作/痙攣が挙げられる。薬物依存または薬物乱用の発生も重要な医療上の事象の例である。
【0467】
致死的SAEに関しては、致死的転帰を伴うSAEと同様に、SAE用語として死亡の報告をするのではなく、可能な限り死亡の原因を報告する。利用可能な場合には、剖検報告を試験依頼者に提示する。
【0468】
あらゆる用量DLTは、現場スタッフがDLTを認識してから24時間以内に試験依頼者のCSMおよびCRAに報告されなければならない。試験依頼者の医薬品安全性監視部門(Pharmacovigilance Department)は、あらゆる最初のまたは追いかけの電子メールによる届出をコピーしなければならない。
【0469】
SAEとして処理しなければならない他の報告可能な事象を以下に列挙する。
【0470】
AEを伴うまたは伴わない過剰投薬。
【0471】
例えば、スタッフを汚染するIMPの溢流を含めた、AEを伴うまたは伴わないIMPへの不注意でのまたは偶発的な曝露。
【0472】
プロトコール手順に関連する可能性があり、試験の実施を改変する可能性があるあらゆるAE。
【0473】
妊娠の事象はSAEと同様に報告し、処理しなければならない:
【0474】
妊娠。IMPを用いた処置の間に患者または患者のパートナーに生じたまたは最後のIMP投与から6カ月以内に生じたあらゆる妊娠を妊娠報告フォームで医薬品安全性監視部門にSAEと同一のタイムラインで報告しなければならない。これらは、患者が試験から離脱した場合であっても報告すべきである。
【0475】
試験の過程中に他の医療上の重要な事象が同定され、標準の基準の範囲外の特定の事象を報告する必要がある場合、そのことを現場に伝え、プロトコールを、そのことが反映されるように更新する。
【0476】
疑わしい予想外の重篤な有害反応
【0477】
SUSARは、疑わしい予想外の重篤な有害反応である。全てのAEおよびSAEを試験依頼者が重篤度、因果関係および予測可能性について評価する。医薬品安全性監視部門は全てのSUSARを関連する監督当局/当局および関連するRECに法令で指定されているタイムライン内に急送する(SI2004/1031、改訂の通り)。
【0478】
有害事象の因果関係の決定
【0479】
AEとBT1718の関係を以下の通り決定する。
【0480】
可能性が極めて高い
【0481】
IMP投与に関連する時間内に始まり、
【0482】
明白な代替の医学的説明がない。
【0483】
可能性が高い
【0484】
IMP投与に関連する時間内に始まり、
【0485】
患者の臨床的状態に関する既知の特徴によって合理的に説明できない。
【0486】
可能性がある
【0487】
IMP投与に関連する時間内に始まり、
【0488】
IMPとAEの因果関係(causal relationship)が少なくとも合理的な可能性である。
【0489】
可能性が低い
【0490】
時間的関連性または患者の臨床的状態が、試験薬物が観察された影響と関連していた可能性が低いものである。
【0491】
関連性なし
【0492】
AEが投与されたIMPと明確に関連しない。
【0493】
注釈:薬物に関連するとは、事象が、可能性がある、可能性が高いまたは可能性が極めて高いと評価されたことを指す。
【0494】
試験担当医師は、AEの因果関係を決定するための十分な情報(すなわち、IMP、他の疾病、進行性悪性腫瘍など)を得る努力をしなければならず、また、各AEとIMPの因果関係(causal relationship)に関する自身の見解を提示しなければならない。これは、重要なAEに関して、それらの原因である可能性が高い因子に関する臨床的判断に基づいて補足調査を始めることが必要とする可能性があり、かつ/または、当該AEの分野の専門家からのさらなる見解を求めることを含む可能性がある。
【0495】
AEの因果関係を評価する際には以下の手引きを考慮に入れるべきである:
【0496】
IMPを用いた以前の経験およびAEがIMPを用いて生じたことが分かっているかどうか。
【0497】
併用薬、同時発生の疾病、非薬物治療、診断検査、手順または他の交絡する影響などのAEに関する代替説明。
【0498】
IMPの投与とAEの間の事象のタイミング。
【0499】
IMPの血中レベルおよび過剰投薬があればそのエビデンス。
【0500】
脱攻撃、すなわち、IMPを中止した場合または投与量を減少させた場合に有害反応に何が起こるか?
【0501】
再攻撃、すなわち、AEの消散後にIMPを再開した場合に何が起こるか?
【0502】
AEの因果関係の評価は、報告時に利用可能な情報に基づくべきである。
【0503】
予測可能性
【0504】
BT1718に関する予測可能性の評価を、医薬品安全性監視部門がIBの現行バージョンと対照して行う。
【0505】
安全性情報の収集
【0506】
スクリーニング不合格
【0507】
スクリーニング不合格の患者に関しては、同意の日付から患者が不適格であることが確認された日付までのSAEを試験依頼者の医薬品安全性監視部門に報告しなければならない。
【0508】
適格患者
【0509】
適格患者に関しては、SAEおよびAEの収集およびモニタリングを、患者が試験に参加することへの書面の同意を提示した時から開始し、BT1718の最後の投与の28日後まで、または患者が別の抗がん治療を開始するまで継続する。
【0510】
試験担当医師がこの28日間の期間後にあらゆる薬物に関連するSAEを認識した場合、これらも試験依頼者に優先タイムライン内で報告しなければならない。
【0511】
AEおよびSAEの追跡調査
【0512】
可能性がある、可能性が高いまたは可能性が極めて高いという因果関係を有するAEの追跡調査を、事象が消散するか、安定化するか、または患者が別の抗がん治療を開始するまで続ける。
【0513】
医薬品安全性監視部門は、SAEに関するさらなる情報を試験現場に定期的に要求する。要求された追跡調査情報は、追跡調査情報が最初に認識されてから24時間以内に医薬品安全性監視部門に報告されるべきである。致死的なまたは命にかかわる症例に関しては、追跡調査情報を求め、認識されたらすぐに医薬品安全性監視部門に報告しなければならない。
【0514】
他の目的の安全性情報
【0515】
以下の状況に関する情報も、これらがAEに関連するか否かにかかわらず収集する:
【0516】
乱用または誤用
【0517】
これらのあらゆる発生はSAEと同一の様式で報告されるべきである。
【0518】
試験依頼者の医薬品安全性監視部門へのSAEの報告
【0519】
因果関係にかかわらず全てのSAEを医薬品安全性監視部門に急送様式で報告しなければならない。
【0520】
SAEは、AE報告フォームに、提示された記入ガイドラインを使用して文書化されるべきである。
【0521】
SAEの各エピソードを別々のSAE報告フォームに記録しなければならない。NCI CTCAE Version4.02を使用して、各SAEの重症度のグレード付けを行い、最悪のグレードを記録しなければならない。以前報告されたSAEに関する新しいまたは改訂された情報が利用可能になる場合には、試験担当医師はこれを医薬品安全性監視部門に新しいSAE報告フォームで報告すべきである。
【0522】
SAEが指定の時間枠内に報告されなかった場合には、SAE報告フォームを医薬品安全性監視部門に送付する際に遅れた理由をフォームに付け加えなければならない。
【0523】
試験担当医師があらゆる薬物に関連するSAEを患者が「試験停止」した後に認識した場合には、これらも医薬品安全性監視部門に上記で指定した指定のタイムライン内に報告しなければならない。
【0524】
SAEとして医薬品安全性監視部門に報告されることが免除される事象
【0525】
この節に明記される事象は、任意の理由で入院が長引き、その後にSAEフォームに記入しなければならない場合を除いて、この試験でSAEとして報告する必要はない。それでもなお事象をeCRFの妥当な項に記録しなければならない。
【0526】
待機的入院-試験に入る前に計画された手順のための待機的入院はSAEではない。試験プロトコールに従ったIMPの投与のための入院もSAEとして報告することが免除される。
【0527】
疾患増悪に起因した死亡-疾患増悪に起因した死亡の場合は、IMPに関連するとみなされる場合を除いてSAE報告の必要はない。
【0528】
有害事象および重篤な有害事象のeCRFへの記録
【0529】
適格患者に関しては、SAEを含めた全てのAEをeCRFに記録しなければならない。薬草およびサプリメントを含めた全ての併用薬を記録しなければならない。事象を処置するために使用したあらゆる治療を記録しなければならない。試験中および試験終了時にeCRFを安全性データベースと一致させる。したがって、現場は、紙のSAE報告フォーム(医薬品安全性監視部門だけが使用する)に入力されたデータと、eCRFに入力されたデータが一致していることを確実にすべきである。試験依頼者の顧問医師および試験担当医師は安全性データベースからの安全性データおよび臨床データベースからの安全性データの両方を定期的に審査する。
【0530】
緊急安全措置
【0531】
試験依頼者または試験担当医師は、臨床試験の患者を、患者の健康または安全性に対するあらゆる差し迫った危険から保護するために、妥当な緊急安全措置(USM)を取ることができる。これは、ヒト健康に対する重篤なリスクを提起するパンデミックまたは感染から患者を保護するために取られる手順を含む。
【0532】
USMは、監督当局からの事前許可なく取ることができる。
【0533】
MHRAおよびRECは、そのような措置を取ってから3日以内に通知しなければならない。
【0534】
現場がUSMを開始する場合には、試験担当医師は試験依頼者にすぐに知らせなければならない。
【0535】
届出は以下を含まなければならない:
【0536】
USMの日付;
【0537】
決定者;および
【0538】
実施理由
【0539】
次いで、試験依頼者はUSM開始から3日以内にMHRAおよびRECに通知する。
【0540】
有効性評価
【0541】
疾患の測定
【0542】
疾患は、付録2に示されているRECIST v1.1基準に従って測定しなければならない。
【0543】
腫瘍評価のタイミングおよび型
【0544】
試験担当医師によって妥当であると判断され、プロトコールに沿った悪性腫瘍の詳細な臨床的および放射線学的評価を、患者がBT1718の最初の投薬を受ける前に実施しなければならない。ベースラインにおいて評価可能な病変を検出したものと同一の方法を使用して、試験全体を通してこれらの病変を追跡しなければならない。適合性を確実にするために、応答を判定するために使用される放射線学的評価を同一の技法を使用して実施しなければならない。画像診断に基づいた評価と臨床検査による評価の両方の方法が処置の抗腫瘍効果を評価するために使用されている場合、画像診断に基づいた評価が臨床検査による評価よりも好ましい。
【0545】
放射線学的評価の全てを、BT1718を用いた処置を開始する前4週間(28日)以内に実施しなければならない。最後の抗がん治療とこれらの測定の間の間隔は少なくとも4週間でなければならない。応答を判定するための臨床的測定の全てを、BT1718の最初の投薬から1週間以内に実施しなければならない。
【0546】
完全奏効(CR)および部分奏効(PR)は、少なくとも4週間後に、その後の評価によって確認する必要がある。SDと定義されるには、試験に入った後、少なくとも1回、6週間という最大の間隔で安定基準を満たさなければならない。患者をCRまたはPRに割り当てるために繰り返し評価を実施する必要はない。
【0547】
試験依頼者による要求があった場合、外部の独立した審査のためにスキャンのコピーが入手可能でなければならない。
【0548】
ベースライン評価
【0549】
これらには、胸部、腹部、および骨盤における病変のCTスキャンもしくはMRIスキャンによる放射線学的測定ならびに/または臨床的に必要な場合には他の放射線学的測定、または必要に応じて臨床的測定、例えば、触知できる病変の評価または腫瘍マーカーの測定を含めなければならない。疾患が存在する全ての領域を文書化しなければならず(特定の病変が応答について追跡されない場合であっても)、全ての測定可能病変の測定値をスキャン報告書に明白に記録しなければならない。あらゆる測定不能病変について存在することを示さなければならない。臨床的測定に関しては、病変のサイズを推定するためのルーラーを含むカラー写真による文書化が強く推奨され、これは、応答に関する外部の独立した審査の補助になるためである(付録2参照)。
【0550】
試験中および「試験停止」時の評価
【0551】
腫瘍評価を2サイクル毎に(+/-7日)または臨床的に必要な場合にはそれよりも頻繁に繰り返さなければならない。ベースラインで測定された全ての病変をその後の疾患評価ごとに測定し、スキャン報告書に明白に記録しなければならない。ベースラインにおいて認められた測定不能病変は全て、存在するかまたは存在しないかをスキャン報告書に記されなければならない。
【0552】
PD以外の理由で試験から除かれる患者全員について、以前4週間以内に腫瘍評価が実施されている場合を除き、処置中止時に再評価しなければならない。
【0553】
放射線科医が追跡調査の要件を認識し、ベースラインにおいて挙げられた全ての標的病変および非標的病変に関する所見をRECIST 1.1基準に従って測定することを確実にすることは試験責任医師の責任である。
【0554】
腫瘍応答
【0555】
適格性基準を満たし、少なくとも1サイクルの試験薬物適用を受け、疾患のベースライン評価および少なくとも1回のベースライン後評価を有する患者全員が、応答について評価可能である。PDの明白なエビデンスが生じているが形式的な疾患評価を伴わない患者は非応答者とみなされる。CRまたはPRの最初の兆候の少なくとも4週間後、患者を確認されたCRまたはPRの状態に割り当てるために、確証的な繰り返し評価が必要である。SDの状態に割り当てられるためには、追跡調査測定値がSD基準を少なくとも1回およびBT1718の初回用量の与薬から少なくとも6週間後に満たさなければならない。
【0556】
4週間の完了前に急速な腫瘍増悪が生じた場合には、患者を、早期増悪を有すると分類する。
【0557】
腫瘍応答は、別の応答カテゴリーに分類することが不可能な場合、例えば、ベースラインおよび/または追跡調査における評価が実施されないまたは妥当に実施されない場合にのみ「評価不能」に分類すべきである。
【0558】
試験依頼者によって指名された専門家の審査者が、試験担当医師により評価された客観的応答(CRおよびPR)の独立した審査を請け負うことができる。専門家の審査者には、試験の試験担当医師ではない専門家を少なくとも1名含める。あらゆる独立した審査者の評価も試験担当医師によってなされた評価と共に最終的なCSRに文書化する。eCRFには試験担当医師の見解が反映される。
【0559】
eCRFへの応答の記録
【0560】
疾患評価を含む各来院についての適用可能な全体的な応答カテゴリーをeCRFに記録しなければならない。
【0561】
転帰の他の定義
【0562】
毒性による死亡:薬物毒性が主に寄与すると考えられるあらゆる死亡。
【0563】
早期死亡:処置の最初の28日の間の死亡。
【0564】
処置スケジュールの完了前の患者の離脱
【0565】
試験担当医師は、各患者に、試験の持続時間全体にわたって(すなわち、最後のBT1718投与の28±7日後まで)試験を継続させるために、全ての合理的な取り組みを行わなければならない。しかし、試験担当医師が患者を試験から除いた場合、または患者がさらなる参加を辞退した場合、最終的な「試験停止」評価を、理想的にはその後のあらゆる治療介入の前に実施すべきである。評価および観察の結果は全て、試験からの離脱の理由に関する説明と共に、診療記録およびeCRFに記録しなければならない。
【0566】
有害事象(臨床的または検査室)に起因して試験から除かれた患者は、認められた医療行為に従って処置および追跡される。そのような処置の転帰に関する全ての関係する情報をeCRFおよび必要であれば重篤な有害事象(SAE)報告フォームに記録しなければならない。
【0567】
以下は試験担当医師が患者を試験から離脱させる正当な理由である。
【0568】
有害事象(AE)/SAE;
【0569】
同意の撤回;
【0570】
試験プロトコールからの重大な逸脱(持続的な患者の出席不履行および持続的なノンコンプライアンスを含む);
【0571】
試験依頼者による試験終結決定;
【0572】
BT1718に関連しない臨床的理由での試験担当医師による離脱;
【0573】
疾患増悪のエビデンス;
【0574】
妊娠(試験中の女性患者に関して)
【0575】
試験終了の定義
【0576】
「試験終了」は、最後の患者が「試験停止」来院または最終的な追跡調査来院を完了した日付(いずれか遅い方)と定義される。「試験停止」来院は、BT1718の最後の用量投与の28+/-7日後に行うことが予定される。
【0577】
IMPは、あらゆる残りの患者が処置を開始した最新の日付から2年にわたって利用可能である。この後、あらゆる残りの患者が試験停止になり、試験が上記の通り終了する。
【0578】
いずれかの患者がまだ試験来院を有している間、または試験データ、例えば、無増悪またはOSデータがまだ収集されている間は試験終了を宣言することができない。
【0579】
患者が試験終了を越えてIMPの持続的または延長使用を続けることができる手配が可能になる場合、その手配は試験とは別個であり、試験終了が宣言されるのを妨げるものではない。
【0580】
試験が閉じられた「試験終了」から90日以内にMHRAおよびRECに通知することはCDDの責任である。
【0581】
CDDによる試験の早期終結(例えば、毒性に起因して)または一時的な停止の場合には、CDDは、決定の15日以内にMHRAおよびRECに通知し、終結/停止に関する詳細な説明書面を提示する。
【0582】
以下の場合に補充をやめる:
【0583】
必要な患者数が補充される前に、薬物の毒性が処置を続けるには強すぎるとみなされる場合。
【0584】
規定された補充される患者数に達した場合。
【0585】
規定された試験の目的が実現された場合。
【0586】
終結の理由にかかわらず、追跡調査の中止時に患者について入手可能な全てのデータをeCRFに記録しなければならない。処置の中止に関する全ての理由を文書化しなければならない。
【0587】
試験終結の際には、試験依頼者および試験担当医師は、患者の利益の保護が十分に考慮されることを確実にしなければならない。
【0588】
データ解析および統計学的考察
【0589】
以下の条件のうちの1つが満たされた後に最終的な解析を行う:
【0590】
試験が早期に終結する
【0591】
試験終了に到達した
【0592】
サンプルサイズ
【0593】
第I相、用量漸増相
【0594】
第I相に必要な患者数は、MTDを決定するために探究されるのに必要な用量レベルの数に依存する。およそ50~60名の患者がステージ1と2の間に参加することが予測され、最終的な数は、必要とされる用量漸増の数および評価可能な患者の数に依存する。
【0595】
第IIa相、拡大相
【0596】
パートAおよびパートB-パートAおよびBの両方に14名の患者を補充して、RP2Dの毒性プロファイルおよび忍容性をさらに特徴付ける。合計14名の患者により、80%検出力および有意水準0.2で奏効率30%の検出および奏効率10%の除外も可能になる。
【0597】
パートC&D-TNBCまたはNSCLCのコホートに対して、検出力=80%およびα=0.2のサイモンの二段階デザインを使用すると、望ましい奏効率30%を検出し、10%の低さの奏効率を除外するためには最大で15名の患者が必要である。6名の患者の後に暫定解析を行い、4カ月の時点で少なくとも1名の応答が見られた場合には最大で合計15名の患者の補充を続ける。応答が見られなかった場合には、そのコホートを無益であるとして終止する。患者15名のうち3名またはそれよりも多くで応答が観察された場合には、奏効率が<10%ではなく、≧30%である可能性が高いと結論づける。
【0598】
肉腫患者のコホートに関しては、検出力=80%およびα=0.2のサイモンの二段階デザインを使用すると、所望の臨床的有用率40%を検出し、20%の低さの臨床的有用率を除外するためには最大で16名の患者が必要である。11名の患者の後に暫定解析を行い、3カ月時点で少なくとも3名に応答/疾患安定化が見られた場合には最大で合計16名の患者の補充を続ける。3名よりも少ない応答/疾患安定化が見られた場合には、そのコホートを無益であるとして終止する。患者16名のうち5名またはそれよりも多くに応答または疾患安定化が見られた場合には、臨床的有用率が<20%ではなく、≧40%である可能性が高いと結論づける。
【0599】
したがって、パートC/Dではコホート当たりおよそ15~16名の患者が必要になることが予測される。しかし、パートCおよびDに補充される最終的な腫瘍型は、パートA/Bの結果または試験のこの相の開始時に入手可能な外部のエビデンスによって情報を得ることができる。
【0600】
データの提示
【0601】
データを記述的様式で提示する。変数を解析して、試験実行の基準が満たされるかどうかを決定する。これには、適格性基準の全ては満たしていない患者、プロトコール逸脱の評価、IMP説明責任および一般的な試験の実施に影響を及ぼす他のデータに関する記載を含める。
【0602】
登録された患者全員についてベースラインの特徴を要約する。処置を開始する前に死亡したもしくは離脱したまたは必要な安全性観察を完了しなかった患者は別々に記載し、評価する。
【0603】
全てのサイクルについて処置の施行を記載する。投薬の施行、投薬の改変または遅延および治療の持続時間を記載する。
【0604】
安全性
【0605】
安全性データを書面での同意の日付から収集する。安全性変数を記述統計によって要約する。検査変数をNCI CTCAE Version4.02を使用して記載する。
【0606】
有害事象を各用量レベルについて報告し、器官分類ごと、および観察されたより悪い重症度グレードごとのAEの頻度の表として提示する。表は、関連する事象および関連しない事象を示すものであるべきである。
【0607】
薬物動態
【0608】
血漿中濃度/時間データを、非コンパートメント法を使用して解析する。インタクトなBT1718について決定されるPKパラメーターは、Cmax、Tmax、AUC、t1/2、全身クリアランス(CLT)およびVdSSを含む。総DM1について決定されるPKパラメーターは、Cmax、Tmax、AUCおよびt1/2を含む。
【0609】
最初の投薬後24時間かけて採取した尿中の総DM1-SHを測定して、尿中に排出されたDM1のパーセンテージを決定する。さらに、インタクトなBT1718も評価することができる。
【0610】
BT1718についての免疫原性評価も行い、陽性であるまたは陰性であると報告する。
【0611】
薬力学
【0612】
薬力学的分析および報告書は品質管理ステップを受けた後に最終決定され、アッセイ実施の責任を有する人および適切な場合には検査室QA管理者が署名する。
【0613】
予測されるデータ解析パラダイムを本試験の過程全体を通して変化に供することができる。結果として、データは、各アッセイについて検査室と試験依頼者の間で合意された通り解析され、その後、合意されたSOPに対する各アッセイの開発および検証が行われる。
【0614】
データは、検査室と試験依頼者の間で合意されたフォーマットおよび時間枠で報告される。
【0615】
収集した全ての薬力学的試料を上記の通り分析する。
【0616】
抗腫瘍活性
【0617】
抗腫瘍活性を文書で証明することはこの試験の二次目的である。患者は、応答について評価可能な試験薬物適用を少なくとも1サイクル受けなければならない。客観的応答、試験中に各患者によって実現される最良の腫瘍応答および増悪までの時間をコホートごとのデータ一覧表に提示する。
【0618】
奏効率(客観的応答を有する評価可能な患者の割合)をコホートごとに報告する。無増悪生存期間を試験参加から文書化された疾患増悪または死亡(いずれか最初に生じた方)までで算出する。解析時に生存しており、無増悪であるまたは追跡調査できていない患者は、患者が生存しており、無増悪であることが分かっていた最後の時点で打ち切る。全生存を試験参加から任意の原因での死亡時点までで算出する。解析時に生存しているまたは追跡調査できていない患者は、患者が生存していることが分かっていた最後の時点で打ち切る。応答の持続時間を、応答が見られた最初のスキャンの日付から最初のX線検査増悪または死亡の日付まで測定する。PFS、OSおよび応答の持続時間の中央値を提示する。6カ月時点でのPFS率およびOS率も提示する。95%信頼区間を報告する。
【0619】
投与
【0620】
この試験は、MHRAからの臨床試験の認可および承認の下で行われ、また、この試験を開始する前に関連するRECを得る。この試験は、王立がん研究基金(Cancer Research UK)、CDDが試験依頼者であり、それによりモニタリングされる。適用可能な規制要件をこの節に記載する。
【0621】
プロトコール逸脱および改訂
【0622】
試験の実施全体を通してプロトコールを厳守すべきであり、試験の実施がプロトコールに従ったものでなくなり得る状況が生じた場合には、現場はCDDと接触してこれについて審議すべきである。
【0623】
プロトコールの改訂は試験依頼者しか行うことができない。プロトコール改訂を任命された倫理委員会(Ethics Committee)、HRAおよびMHRAによる審査にかけることができる。改訂を実行し、必要であればプロトコールに組み入れる前に、倫理委員会およびHRA(および妥当な場合にはMHRA)による「承諾する見解」(すなわち、承認)の書面による文書化を受けなければならない。
【0624】
GCPの重大な違反
【0625】
重大な違反とは、試験の対象の安全性または身体的もしくは精神的完全性、または試験の科学的値に著しく影響を及ぼす可能性がある違反である。
【0626】
試験依頼者がGCPの重大な違反を認識してから7暦日以内にMHRAに報告するという点でその義務を果たすことができるように、現場スタッフは、試験プロトコール(またはGCP原則)からのあらゆる予期しない逸脱を、逸脱が生じた後できるだけ早く試験依頼者に知らせて、試験依頼者による迅速な評価を可能にしなければならない。
【0627】
電子症例報告書(eCRF)の記入
【0628】
試験依頼者によって承認された電子CRFを使用して、データを収集する。試験担当医師は、eCRFに報告されたデータの正確度、完全性、明瞭さおよびタイムラインを保証することに関して責任を負う。
【0629】
試験担当医師および試験依頼者によって提供されたDelegation Logに署名し、試験担当医師によって公認を受けた人員のみがeCRFのデータを入力または変更すべきである。公認の使用者は、eCRFへのアクセスを提供するために使用者一覧に含められる。プロトコールにより求められる調査の全てをeCRFに報告しなければならない。試験担当医師は、これらの調査による報告書の原本、トレースおよび画像の全てを今後の参照のために保持しなければならない。
【0630】
この臨床試験に登録された患者からの個人データの収集および処理は、この試験において使用されるBT1718の有効性、安全性、品質および有用性を調査するために必要なデータに限定される。データの収集および処理は、患者の機密性および適用可能な規則に従って適用可能なデータプライバシー保護のコンプライアンスを確実にするために十分な予防策を取って行わなければならない。収集されたデータは、個人データの処理に関して個体の保護に対するDirective 95/46/EC of the European Parliament and of the Council of 24 October 1995に従う。
【0631】
データは、公認の現場人員によってeCRFに直接入力される。eCRFデータの修正はシステムに対して直接なされ、システム監査証跡に元の値、誰が変更を行ったか、日時、および変更の理由に関する詳細が保持される。
【0632】
eCRFフォームに現場人員による入力がなされたら、手動および自動化確認を使用してデータをクリーニングする。クエリが現場に対して電子的に発行される。公認の人員はクエリに対して、データの関連性のある修正を行うことまたは応答を提示することによって回答しなければならない。回答を受けたクエリは閉じられるまたは必要に応じて再発行される。
【0633】
患者が「試験停止」し、eCRFが完全に記入されたら、試験担当医師は電子シグネチャーを提供して、完全な対象ケースブックを公認しなければならない。
【0634】
試験終了時に、試験依頼者は全てのeCRFを保持および保存し、現場での保管に関して責任を負う試験担当医師にPDFコピーを提供する。
【0635】
試験実施、モニタリング、監査および検査
【0636】
試験を開始する前に、試験を行うための前提条件を明白にし、試験センターでの組織の準備を行わなければならない。試験の実施に関与する人員のいかなる変化も直ちに試験依頼者に知らせなければならない。
【0637】
試験中、試験依頼者のCRAは、SOPに従ってデータ品質をモニタリングする責任を負う。適切な場合には、標的化ソースデータ検証を含めた戦略的なモニタリング手法を実行する。
【0638】
試験開始前に、試験担当医師は、予測されるモニタリング来院の頻度を知らされる。試験担当医師は各モニタリング来院の前に合理的な届出を受け取る。
【0639】
CRAは以下の責任を負う:
【0640】
試験記録を審査し、それらをソース文書と比較すること;
【0641】
薬物動態および薬力学的試料および保管を確認すること;
【0642】
試験の実施および新たな問題を試験担当医師と話し合うこと;
【0643】
薬物の保管、調剤および回収が信頼でき、妥当なものであることを確認すること;ならびに
【0644】
利用可能な施設が受け入れ可能なままであることを検証すること。
【0645】
試験終了時に、供給され、使用されなかった全てのBT1718を現場で廃棄しなければならない(CRAまたはCSMにより廃棄の許可が下りて初めて)。
【0646】
RECに「試験終了」を通知することは試験依頼者の責任である。
【0647】
試験の過程中、CDDの品質保証部門(Quality Assurance Department)、またはCDDが契約している外部の監査役が現場監査来院を行うことができる。
【0648】
この試験を行う試験責任医師はMHRAによる検査の潜在性を受け入れる。
【0649】
ソース文書の検証
【0650】
文書で同意されている場合を除き、eCRFに収集された全てのデータは、ソースデータによって検証可能なものでなければならない。したがって、試験担当医師およびその研究チームの両方が全ての関連性のあるデータを診療記録に記録することを確実にすることは試験担当医師の責任である。試験担当医師は、データ保護規制を考慮しながら、CRAがeCRFに入力されたデータを検証するために関連性のあるソース文書に直接アクセスすることを可能にしなければならない。eCRFへの入力を患者の診療記録と比較し、検証をeCRFに記録する。
【0651】
一部のソースデータは電子的にしか存在しない場合があり、eCRFに直接入力またはローディングされ得る。
【0652】
患者の診療記録、および他の関連性のあるデータを、試験を監査するために指名された試験依頼者とは独立した妥当な資格のある人員、NHS Trustスタッフ、および規制当局が審査することもできる。詳細は機密のままであり、病院の外部では患者の名前は記録されない。
【0653】
治験総括報告書
【0654】
妥当な間隔で暫定のデータ一覧表を作成して、試験担当医師がデータを審査し、収集された情報の完全性を確認することができるようにする。全ての臨床データを試験終了時に最終的なデータ一覧表に提示する。試験依頼者は最終的なデータ一覧表に基づいて治験総括報告書を作成する。この報告書を、試験の過程中に収集されたデータを正確に表していることの審査および確認のために試験担当医師に提出する。試験の要約した結果が試験依頼者からMHRAおよびRECに提供される。
【0655】
記録の保持
【0656】
臨床試験中および試験閉鎖後、試験担当医師は、臨床試験の実施と生成されたデータの品質の評価および検証の両方が可能になるように、十分かつ正確な記録を維持しなければならない。これらの必須文書(Chapter V of Volume 10 (Clinical Trials) of The Rules Governing Medicinal Products in the European Union based upon Section 8 of the ICH GCP Guidelinesにおいて詳述されている)、スキャン、試験関連文書およびeCRFのコピー、付随する監査証跡およびSAE報告フォームなどのソース文書を含むE6(R2)により、試験担当医師がGCPの原則およびガイドラインに従ったかどうかを示すべきである。
【0657】
試験担当医師が保持する必要がある全ての必須文書は、国の法令によって求められる最小の期間または試験依頼者により必要とされる場合にはより長い期間にわたって、規制当局または試験依頼者の要求に応じて容易に利用可能であることが確実になるように保管されなければならない。記録は、試験依頼者による事前の書面での承認なしで破棄してはならない。
【0658】
試験対象の医学的ファイルは、国の法令に従って、および病院、施設または個人の実施により許容される最大の期間に従って保持されるべきである。
【0659】
倫理的配慮
【0660】
試験開始前、プロトコールおよびICDは、CDD外部審査プロセスを通過し、プロトコールおよび安全性審査委員会(Safety Review Board)によって承認され、任命されたRECの承諾する見解を受け取らなければならない。
【0661】
患者の試験を続ける意欲に影響を及ぼし得る新しい情報(性質または重症度)が利用可能になった時はいつでも、患者(または該当する場合には患者の公認の代表者)に最新情報を伝えることは試験主任医師/試験責任医師の責任である。試験主任医師/試験責任医師は、これが患者の医学的注釈に文書化され、患者の再同意を得ることを確実にしなければならない。
【0662】
試験依頼者および試験主任医師/試験責任医師は、試験が、GCP原則およびUK臨床試験規則(改訂の通りSI2004/1031およびSI2006/1928)の要件、ICH GCPガイドラインおよびWMA Declaration of Helsinki-Ethical Principles for Medical Research Involving Human Subjects adopted by the 18th WMA General Assembly, Helsinki, Finland, June 1964および2013年10月を含む全てのその後の改訂に従って行われることを確実にしなければならない。
【0663】
BT1718による処置中の患者の状態を以下の表Aおよび
図6に示す。
表A:BT1718による処置中の患者の状態
【表A-1】
【表A-2】
【0664】
病状の定義は、BT1718試験プロトコールに明記されている標的病変および非標的病変の文書化に基づき、RECIST(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)1.1に従ったものである。応答を判定するための全ての臨床的測定をBT1718の最初の投薬から1週間以内に実施しなければならない。
【0665】
完全奏効(CR)および部分奏効(PR)を少なくとも4週間後にその後の評価によって確認する必要がある。SDと定義されるには、試験に入った後、6週間の最大の間隔で安定基準を少なくとも1回満たさなければならない。4週間の完了前に急速な腫瘍増悪が生じた場合には、患者を、早期増悪を有すると分類する。
【表20】
【0666】
進行固形腫瘍を有する患者に対する週1回(QW)および週2回(BIW)投薬スケジュールのオープンラベル、ファースト・イン・ヒューマン第I/IIa相試験に着手した。
【0667】
4週間サイクル:3週間にわたって1時間の静脈内(IV)注入、その後、1週間の休薬。
試験目的:
【0668】
主要
・一方または両方の投薬スケジュールの最大耐量(MTD)および最大投与用量(MAD)を確立することにより、推奨される第II相用量(RP2D)を提唱すること(第I相)
・BT1718の安全性および忍容性プロファイル(第I/IIa相)
【0669】
二次
・ヒトにおけるBT1718の薬物動態学(PK)を調査すること(第I相)
・MT1-MMPを発現する腫瘍におけるBT1718有効性の予備シグナルを評価すること(第IIa相)
【0670】
三次
・DM1腫瘍レベルを含めた潜在的な予測的な薬力学的バイオマーカーを探究すること。
【0671】
オープンラベル、ファースト・イン・ヒューマン第I/IIa相試験における患者の特徴の要約を以下の表Bに示す。
表B.患者の特徴
【表B】
【0672】
用量レベルおよび患者数を含む用量漸増スキームを
図8に提示する。
安全性および有効性の結果
【0673】
9.6mg/m2でBIWにおいて2件のDLTが報告された:GGTの増加(グレード4)および疲労(グレード3)、どちらもBT1718を用いた処置の休止または中断後に消散した。
【0674】
現在までに報告された最も一般的な関連する有害事象クラスは、悪心、下痢および嘔吐を含めたグレード1~3の胃腸障害(18/28名の患者)であった。
【0675】
より一般に用量の増加と共にグレード1~2の関連する末梢性ニューロパチーが生じた。
【0676】
週1回投薬では、BT1718が試験した用量レベルで耐えられものであると思われ、毒性は管理しやすいものである。
【0677】
客観的応答(RECIST 1.1)はこの選択されていない集団では現在まで観察されていない。8週間の時点で6/20名の患者が安定を有した;1名の患者はサイクル6において標的病変の約14%の減少を有し、病変の1つは約45%減少した。受けたサイクルの平均数は3カ月であった(n=28)。
【0678】
有害事象の要約:表Cに、15%以上の患者で報告された薬物に関連する事象を示す。
表C.15%以上の患者で報告された薬物に関連する事象
【表C】
薬物動態の結果
【0679】
BT1718のAUCは、0.6~25mg/m2の範囲にわたってほぼ用量に比例し、サイクル2の値はサイクル1と一致した。
【0680】
スパゲッティプロット:サイクル1&2における最初の投薬後の時間に対するBT1718血漿中濃度を
図9A、
図9B、および
図9Cに示す。
【0681】
平均(±SD)血漿クリアランス(CLp)は32.3(±24.9)L/hであり、平均(±SD)分布容積(Vss)は22.9(37.4)Lであり、その結果、終末相半減期(t1/2)は0.2~1時間であった。
【0682】
散布図:BT1718の用量に対するAUCを
図10Aに示し、BT1718の用量に対するCmaxを
図10Bに示す。
【0683】
全患者についてのデータ:CLp=10mL/分/kg;t1/2=18分。
【0684】
サイクル1のみについてのデータ:CLp=12mL/分/kg;t1/2=18分。
【0685】
BT1718のAUCは1時間のIV注入後、用量と共に増大し、サイクル1と2の間で一致している。
【0686】
決定された週2回投薬についてのRP2Dは、7.2mg/m2であった。サイクル当たりのより大きなBT1718の総用量を、週1回投薬(用量漸増を32mg/m2で継続中)を使用して実現させた;したがって、拡大相において使用されるRP2Dは週1回のスケジュールのみに対するものである。
【0687】
週1回のRP2Dを、腫瘍のMT1-MMP発現に関して選択された患者における有効性について評価する。
(実施例2)
人間における投薬されたBT1718のPKの結果
コホート1~5についてのPKの結果
【0688】
コホート1~5における投薬されたBT1718の結果を
図2に示す。
【0689】
患者への1時間の静脈内注入後のBT1718についての予備臨床薬物動態データを以下の表13に示す。
表13.患者への1時間の静脈内注入後のBT1718についての予備臨床薬物動態データ
【表13】
【0690】
BT1718血漿アッセイを十分なダイナミックレンジで十分に検証する。全身曝露を開始用量で測定する。血漿中濃度が用量と共に上昇すること、および血漿中濃度が前臨床データ(ラットおよび霊長類)と一致することが見いだされている。
(実施例3)
BT1718投薬後の腫瘍細胞死の増加
【0691】
M30およびM65アッセイによって示される通り、BT1718により腫瘍上皮細胞アポトーシス死/壊死が増加する(
図7A~
図7F)。サイクル1において、C1D1(投薬前)&24時間(投薬後)、次いで、各投薬前に血清において測定を行った。評価した最高用量の患者全員(5/5)で細胞死マーカーの変化が観察された。5名の患者全員が最初の疾患評価でSDを有した(2つの代表的な曲線が提示されている)。データは、BT1718の抗腫瘍活性の初期薬力学的マーカーを表し得る。
(実施例4)
患者における腫瘍へのDM1送達の分析
【0692】
組織試料中のDM1を数量化するための定量的高速液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)法を開発した。
【0693】
DM1を、二環式ペプチドと複合体を形成したBT1781として投与した。遊離DM1の濃度を決定するために、コンジュゲートした分子を還元し、その後、ビニルピリジンで誘導体化した。
【0694】
GLP前臨床試験においてPK決定のために使用したものと同一の試料調製手順を組織試料中のDM1の決定に適用する。要するに、組織ホモジナイゼーション後、試料をTCEPで還元した後、ビニルピリジンによって誘導体化する。誘導体化は、DM1内の反応性が高いチオール基を安定化するために必要である。
【0695】
別段の指定がない限り、本実施例におけるDM1の呼称は、ビニルピリジン誘導体化DM1を示すために使用される。
【0696】
方法の主要なステップの一般的な概要は、以下の通り概説することができる:
1)組織ホモジナイゼーション
2)還元/アルキル化
3)タンパク質沈殿
4)LC-MS/MSによる試料抽出物の分析
【0697】
ホモジナイゼーション方法を以下の通り最適化した:
1)組織試料を室温で解凍する。
2)Analytical Balanceで所望の量の組織をPrecellys 2mL強化チューブ中に測り入れる。
3)組織の重量を使用して溶液の体積を算出する。組織/溶液比は1:30W(mg)/V(μL)でなければならない。ホモジナイゼーション溶液:(NaCl(0.9%):SDS(0.2mg/mL)(50:50v/v%))
4)算出された量の溶液を組織に添加する。
5)およそ5秒間ボルテックスする。
6)試料を湿式氷浴中、およそ8分間予冷する
7)Precellys-24 Dualホモジナイザーに5000rpm、40秒間の5セッションでかける。
8)ホモジネート試料を、5810-R遠心分離機を使用して4℃、3000rpmで3分間遠心分離する。
【0698】
回収率を上昇させるためにSDSを0.1mg/mLの最終濃度で添加した。SDSの存在下でのホモジネートの収率は酢酸アンモニウム緩衝剤の存在下でのホモジネートの収率と比較して高かった。対照として、Milli Q、SDSおよび酢酸アンモニウム緩衝剤を使用した。
【0699】
患者3名の腫瘍試料の分析から、非臨床モデルと一致して、2名の患者におけるDM1の腫瘍への送達が示された。
【0700】
腫瘍における総DM1レベルの予備分析から、DM1が腫瘍に局在化することが示される。
【0701】
参考文献
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
付録
【0702】
付録1:WHOパフォーマンス尺度(表14)
表14.WHOパフォーマンス尺度
【表14】
付録2:疾患応答の判定
【0703】
本試験における疾患応答の評価は、以下に明記するRECIST基準に従って実施すべきである。
【0704】
固形がんの治療効果判定のための新ガイドライン(New response evaluation criteria in solid tumors)(RECIST基準):
【0705】
改訂版RECISTガイドライン(バージョン1.1)
【0706】
E.A. Eisenhauer et al. (2009) European Journal of Cancer 45: 228-247
【0707】
これはRECIST基準の要約バージョンであることに留意されたい。詳細な付録について、および迷った場合には上記の論文を参照されたい。
【0708】
ベースラインにおける腫瘍の測定可能性
【0709】
定義
【0710】
ベースラインにおいて、腫瘍病変/リンパ節は、以下の通り、測定可能または測定不能にカテゴリー化される:
【0711】
測定可能
【0712】
腫瘍病変:少なくとも1つの寸法に正確に測定されなければならず(測定断面における最大径を記録する)、以下の最小サイズを有するもの:
【0713】
CTスキャンで10mm(CTスキャンのスライス厚は5mm以下;画像診断の手引きに関する付録IIを参照)。
【0714】
臨床検査による測径器による測定で10mm(測径器により正確に測定できない病変は測定不能として記録すべきである)。
【0715】
胸部X線で20mm
【0716】
悪性リンパ節:リンパ節が病的な腫大とみなされ、測定可能であるには、CTスキャンによって評価して、短径で15mmでなければならない(CTスキャンのスライス厚は5mm以下であることが推奨される)。ベースラインおよび追跡調査中は、短径のみを測定し、追跡する。
【0717】
測定不能
【0718】
小病変(最大径が<10mm、または短径が10~15mm未満の病的リンパ節)ならびに真の測定不能病変を含む、全ての他の病変。真の測定不能病変とみなされる病変としては、軟膜疾患、腹水、胸水または心嚢水、炎症性乳房疾患、皮膚または肺のリンパ管症、身体検査によって同定され、再現性のある画像診断技法では測定可能でない腹部腫瘤/腹部臓器肥大。
【0719】
病変の測定可能性に関して特に考慮すべき点
【0720】
骨病変、嚢胞性病変、および局所療法により以前に処置された病変には特定のコメントが必要である:
【0721】
骨病変:
【0722】
骨スキャン、PETスキャンまたは単純フィルムは骨病変を測定するために適した画像診断技法とは考えられない。しかし、これらの技法は、骨病変の存在または消失を確認するために使用することはできる。
【0723】
同定可能な軟部組織構成成分を含み、CTまたはMRIなどの横断画像診断技法によって評価することができる溶解性骨病変または溶解性造骨性混合病変は、軟部組織構成成分が上記の測定可能性の定義を満たす場合には測定可能病変とみなすことができる。
【0724】
造骨性骨病変は測定不能である。
【0725】
嚢胞性病変:
【0726】
X線検査により定義される単純嚢胞の基準を満たす病変は、その定義上、単純嚢胞であることから、悪性病変とみなすべきではない(測定可能病変・測定不能病変のいずれでもなお)。
【0727】
嚢胞性転移を表すと思われる「嚢胞性病変」が上記の測定可能の定義を満たす場合には、これを測定可能病変とみなすことができる。しかし、同一患者に非嚢胞性病変が存在する場合には、これらの非嚢胞性病変を標的病変として選択することが好ましい。
【0728】
局所処置歴のある病変:
【0729】
以前に放射線照射された領域内、または他の局所領域治療に供された領域内に位置する腫瘍病変は、病変の増悪が実証されている場合を除き、通常、測定可能とはみなされない。そのような病変が測定可能とみなされる条件を試験プロトコールに詳細に記載すべきである。
【0730】
測定法ごとの詳細
【0731】
病変の測定
【0732】
全ての測定値は、臨床的に評価する場合には測径器を使用してメートル法で記録すべきである。全てのベースライン評価を可能な限り処置開始近く、早くても処置開始前4週間以内に実施すべきである。
【0733】
評価の方法
【0734】
ベースラインおよび追跡調査中に同定され、報告された各病変を特徴付けるためには、同一の評価方法および同一の技法を使用すべきである。追跡する病変が、画像診断することはできないが、臨床検査では評価可能である場合を除いて、常に、臨床検査ではなく画像診断に基づいた評価を行うべきである。
【0735】
臨床的病変:
【0736】
臨床的病変は、表在性で、測径器を使用して評価した径が10mm以上の場合にのみ測定可能とみなされる(例えば、皮膚の小結節)。皮膚病変の場合、病変のサイズを推定するためのルーラーを含むカラー写真による文書化が推奨される。上記の通り、画像診断による評価はより客観的であり、試験終了時に再検討することもできるので、臨床検査および画像診断の両方で病変を評価することができる場合は、画像診断による評価を行うべきである。
【0737】
胸部X線:
【0738】
特に、新病変の同定に関してはCTの方がX線よりも感度が高いので、特に、増悪が重要なエンドポイントである場合には、胸部CTが胸部X線よりも好ましい。しかし、病変の輪郭が明瞭であり、空気を含む肺で囲まれている場合には、胸部X線での病変を測定可能とみなすことができる。
【0739】
CT、MRI:
【0740】
CTは、応答判定のために選択された病変を測定するための、現時点で最も良好な利用可能かつ再現性のある方法である。本ガイドラインでは、CTスライス厚が5mmまたはそれ未満であるという仮定に基づいて、CTスキャンでの病変の測定可能性を定義した。CTスキャンのスライス厚が5mmを超える場合、測定可能病変の最小サイズはスライス厚の2倍とすべきである。ある特定の状況ではMRIも許容される(例えば、体幹部撮影)。客観的な腫瘍応答評価を判定するためにCTとMRIの両方を使用する場合についてのより詳細はEisenhauer et alによる刊行物に提示されている。
【0741】
超音波:
【0742】
超音波は、病変サイズの評価に関しては有用ではなく、測定方法として使用すべきではない。超音波検査は、後日行われる独立した再検討の際に全体を再現することができず、また、操作者に依存するものであるので、評価ごとに同一の技術および測定が得られることを保証できない(付録IIにより詳細に記載されている)。試験の過程で超音波によって新病変が同定された場合には、CTまたはMRIによる確認が推奨される。CTによる放射線被曝に対する懸念がある場合には、選択された状況下でCTの代わりにMRIを使用することができる。
【0743】
内視鏡、腹腔鏡:
【0744】
客観的な腫瘍評価のためにこれらの技法を利用することは推奨されない。しかし、生検材料が得られる場合に完全な病的反応を確認するため、または完全奏効後もしくは外科的切除後の再発がエンドポイントである試験において再燃を決定するためには有用であり得る。
【0745】
腫瘍マーカー:
【0746】
腫瘍マーカーは、客観的な腫瘍応答を判定するために単独で使用することはできない。しかし、マーカーが最初に正常値上限を超えていた場合には、患者が完全奏効の状態にあるとみなされるためには、正常値になっていなければならない。
【0747】
細胞診、組織診:
【0748】
これらの技法は、稀な症例において、プロトコールにより求められる場合には(例えば、胚細胞性腫瘍などの腫瘍型での残存病変であり、この場合、既知の残留する良性腫瘍が残存する可能性がある)、PRとCRを区別するために使用することができる。滲出が処置による潜在的な有害作用であることが公知の場合(例えば、ある特定のタキサン系化合物または血管新生阻害剤)、応答(または安定)とPDを区別するために、測定可能な腫瘍が応答または安定の基準を満たした場合には、処置中に出現または悪化したあらゆる滲出液が新生物起源であることの細胞学的確認を考慮することができる。
【0749】
腫瘍応答判定
【0750】
全体的な腫瘍量および測定可能疾患の評価
【0751】
客観的応答または将来の増悪を評価するためには、ベースラインにおける全体的な腫瘍量を推定し、それをその後の測定値に対する比較器として使用することが必要である。測定可能疾患は、少なくとも1つの測定可能病変が存在することによって定義される(上記に詳述した通り)。
【0752】
「標的」および「非標的」病変のベースラインでの文書化
【0753】
ベースラインにおいて測定可能病変が1つよりも多く存在する場合、侵された全ての臓器を代表する、合計で最大5つの病変(および各臓器につき最大2つの病変)までの全ての病変を標的病変として同定すべきであり、ベースラインにおいて記録し、測定する(これは、患者が侵された臓器部位を1つまたは2つしか有さない場合には、それぞれ最大で2つおよび4つの病変を記録することを意味する)。5つの標的病変のみを選択することを裏付けるエビデンスについては、Bogaerts et alの論文による大規模な前向きデータベースの解析を参照されたい。標的病変は、それらのサイズ(最大径を有する病変)に基づいて選択され、関与する全ての臓器を代表するものであるべきであるが、さらに、再現性のある反復測定に役立つものであるべきである。最大の病変が再現性のある測定に適さない場合も時々あり得るが、その場合には、再現性よく測定することができる、次に大きな病変を選択すべきである。Eisenhauer et alによる刊行物の
図3の例。
【0754】
リンパ節は、腫瘍に侵されていない場合であっても画像診断によって可視化することができる正常な解剖学的構造物であるので、特に言及するに値する。測定可能であると定義され、標的病変として同定することができる病的リンパ節は、CTスキャンによる短径が15mm以上であるという基準を満たさなければならない。これらのリンパ節の短径のみがベースライン径和に寄与する。リンパ節の短径は、リンパ節が固形腫瘍に侵されているかどうかを判断するために放射線科医が通常使用する径である。リンパ節のサイズは、通常、画像が得られる面の2つの寸法で報告される(CTスキャンに関しては、これはほぼ常に横断面である;MRIに関しては、撮像面は横断面、矢状断面、冠状断面であり得る)。これらの測定値のうちの小さい方が短径である。例えば、20mm×30mmであることが報告されている腹部リンパ節は、短径が20mmであり、悪性の測定可能なリンパ節とされる。この例では、リンパ節の測定値として20mmを記録すべきである。他の病的リンパ節(短径が10mm以上15mm未満のもの)は全て、非標的病変とみなすべきである。短径が10mm未満のリンパ節は病的ではないとみなされ、記録も追跡もすべきではない。
【0755】
全ての標的病変の径の和(非リンパ節病変に関しては最長径、リンパ節病変に関しては短径)を算出し、ベースラインでの径和として報告する。リンパ節を和に加える場合には、上記の通り、短径のみを和に加える。ベースラインでの径和は、疾患の測定可能な寸法でのあらゆる客観的な腫瘍退縮をさらに特徴付けるために参照として使用される。
【0756】
病的リンパ節を含む全ての他の病変(または疾患部位)は非標的病変として同定すべきであり、また、ベースラインにおいて記録すべきである。測定の必要はなく、これらの病変は、「あり」、「なし」、または、稀な場合には、「明らかな増悪」として追跡すべきである(より詳細は後述)。さらに、同一の臓器を侵している多数の非標的病変を単一の項目として症例記録フォームに記録することが可能である(例えば、「多数の腫大骨盤リンパ節」または「多発肝転移」)。
【0757】
応答基準
【0758】
標的病変の評価
【0759】
完全奏効(CR):全ての標的病変の消失。あらゆる病的リンパ節(標的または非標的にかかわらず)が、短径が10mm未満に縮小しなくてはならない。
【0760】
部分奏効(PR):ベースラインでの径和を参照として、標的病変の径和が少なくとも30%減少。
【0761】
進行(PD):試験中の最小の径和(ベースライン径和が試験中の最小値である場合、これを含む)を参照として、標的病変の径和の少なくとも20%増加。20%の相対的増加に加えて、径和が少なくとも5mmの絶対的な増加も示さなければならない(注釈:1つまたは複数の新病変の出現も増悪とみなす)。
【0762】
安定(SD):試験中の最小の径和を参照として、PRとみなすまでの十分な縮小もなく、PDとみなすまでの十分な増加もない。
【0763】
標的病変の評価に関する特別な注意点
【0764】
リンパ節
【0765】
標的病変と同定されたリンパ節は、試験中にリンパ節が10mm未満に退縮した場合でも、短径の実測値(ベースライン検査時と同一の解剖学的断面において測定)を常に記録すべきである。これは、正常なリンパ節は短径が10mm未満であると定義されるので、リンパ節を標的病変に含めた場合、完全奏効の基準が満たされた場合であっても病変の「径和」がゼロではないことがあることを意味する。したがって、症例報告書または他のデータ収集法を、CRとみなすために、各リンパ節が10mm未満の短径を実現しなければならない場合に、標的リンパ節病変が別々の欄に記録されるようにデザインすることができる。PR、SDおよびPDに関しては、リンパ節の短径の実測値を標的病変の径和に含める。
【0766】
「小さすぎて測定不能」となった標的病変。
【0767】
試験中は、ベースラインで記録した全ての病変(リンパ節および非リンパ節)は、非常に小さくなってしまった場合(例えば、2mm)でも、その後の各評価時点での実測値を記録すべきである。しかし、時には、ベースラインで標的病変として記録された病変またはリンパ節が、CTスキャンで極めてかすかになり、放射線科医が正確な測定を割り当てることをためらい、「小さすぎて測定不能」として報告することがあり得る。その場合でも、何らかの値を症例報告書に記録することが重要である。病変が消失した可能性が高いというのが放射線科医の見解である場合には、測定値を0mmとして記録すべきである。病変が存在すると考えられ、かすかに視認できるが、測定するには小さすぎる場合には、5mmのデフォルト値を割り当てるべきである。(注釈:通常リンパ節は正常の場合でも定義できるサイズを有し、後腹膜腔のように脂肪で囲まれていることも多いので、この規則がリンパ節に使用される可能性は低い;しかし、リンパ節が存在すると考えられ、かすかに視認できるが測定するには小さすぎる場合には、この状況でも同様に5mmのデフォルト値を割り当てるべきである)。このデフォルト値は、CTスライス厚が5mmであることに由来する(しかし、CTスライス厚が変動してもこのデフォルト値は変化させるべきではない)。これらの病変の測定値には潜在的に再現性がなく、したがって、このデフォルト値を定めることにより、測定誤差に基づく誤った応答または増悪が防止される。しかし、繰り返しになるが、放射線科医が実測値を提示することができる場合には、5mm未満であってもそれを記録すべきである。
【0768】
処置中に分裂または融合した病変:
【0769】
非リンパ節病変が「断片」になった場合、標的病変の径和を算出するためには、断片化した部分の最大径を合わせて加算すべきである。同様に、病変が融合して、病変間の境界面を維持することができ、それが個々の病変それぞれの最大径測定値を得ることを補助する。病変が真に融合し、したがってもはや分離できない場合には、この場合、最大径のベクトルを「融合病変」の最大の長径とすべきである。
【0770】
非標的病変の評価
【0771】
一部の非標的病変は実際には測定可能であり得るが、それらを測定する必要はなく、その代わりに、プロトコールで規定されている時点で定性的な評価のみを行うべきである。
【0772】
完全奏効(CR):全ての非標的病変の消失および腫瘍マーカーレベルの正常化。全てのリンパ節のサイズが非病的なものでなければならない(短径が10mm未満)。
【0773】
非CR/非PD:1つまたは複数の非標的病変の持続および/または正常範囲を超える腫瘍マーカーレベルの維持。
【0774】
進行(PD):既存の非標的病変の明らかな増悪(以下のコメント参照)。(注釈:1つもしくは複数の新病変の出現も増悪とみなす)。
【0775】
非標的疾患の増悪の評価に関する特別の注意点
【0776】
非標的疾患の増悪の概念には以下の追加的な説明が必要である:
【0777】
患者が測定可能疾患も有する場合。
【0778】
この状況では、非標的疾患に基づいて「明らかな増悪」が実現されるには、非標的疾患における実質的な悪化の全体的なレベルが、標的疾患にSDまたはPRが存在する場合であっても、全体的な腫瘍量が治療を中止するのに十分値するように増加していなければならない。1つまたは複数の非標的病変のサイズの中程度の「増大」は、通常、明らかな増悪の状態の質に至るほどの程度ではない。したがって、標的疾患がSDまたはPRである場合に、非標的疾患の変化のみに基づいて全体的な増悪に指定することは極めて稀である。
【0779】
患者が測定不能疾患のみを有する場合。
【0780】
この状況は、測定可能疾患を有することが試験参加の基準ではない場合、一部の第III相試験で生じる。上記と同じ一般概念が適用されるが、この場合、測定可能疾患評価は、測定不能疾患量の増大の解釈の考慮に入れない。非標的疾患の悪化は容易に数量化することができないので(定義によると:全ての病変が真に測定不能である場合)、患者を明らかな増悪について評価する際に適用することができる有用な試験は、測定不能疾患の変化に基づく全体的な疾患量の増加の程度が、測定可能疾患のPDを宣言するために必要な増加に匹敵するかどうか:すなわち、腫瘍量の増加が「体積」として追加的な73%の増加に相当するかどうか(これは、測定可能病変では径の20%増加と同等である)を検討することである。このような例としては、胸水の「微量」から「大量」への増加、局在化していたリンパ管症の広範な拡大が挙げられる、または、プロトコールに「治療の変更を要するのに十分」と記載することができる。「明らかな増悪」が見られた場合、患者はその時点で総合PDを有したと考えるべきである。測定不能疾患に適用するための客観的な基準を有することが理想的ではあるが、疾患の性質上それは不可能であり、したがって、増加を実質的なものとせざるを得ない。
【0781】
新病変
【0782】
新しい悪性病変の出現は疾患増悪を示し、したがって、新病変の検出に関して言及しておくことが重要である。新しいX線検査での病変の同定に関する特定の基準はないが、新病変の所見は明らかなものであるべきである。すなわち、スキャニング技法の違い、画像診断モダリティの変化、または腫瘍以外の何かを示すと考えられる所見(例えば、一部の「新しい」骨病変は既存病変の単に治癒中または拡大であり得る)に起因するものであってはならない。これは、患者のベースライン病変が部分奏功または完全奏効を示す場合に特に重要である。例えば、肝病変の壊死が、実際には新病変ではないのにCTスキャン報告書に「新しい」嚢胞性病変として報告されることがあり得る。
【0783】
ベースラインではスキャンされなかったが追跡調査試験で解剖学的位置に同定された病変は新病変とみなされ、疾患増悪を示す。この例は、ベースラインにおいて内臓疾患を有し、試験中に脳のCTまたはMRIが要求され、それにより転移が明らかになった患者である。患者の脳転移は、ベースラインにおいて脳の画像診断を行っていなくてもPDのエビデンスとみなされる。
【0784】
新病変が、例えば小さいサイズなどの理由で明確ではない場合、治療の継続および追跡調査における評価により、それが真に新しい疾患であるかどうかが明らかになる。スキャンの繰り返しにより明確に新病変があることが確定された場合、最初のスキャンの日付を使用して増悪を宣言すべきである。
【0785】
フルオロデオキシグルコース(FDG)-陽電子放出断層撮影法(PET)による応答の判定には、追加的な試験が必要であるが、時には、増悪の評価(特に、「新しい」疾患の可能性がある時)においてCTスキャニングを補完するためにFDG-PETスキャニングの使用を組み入れることが合理的である。FDG-PET画像診断に基づく新病変は、以下のアルゴリズムに従って同定することができる:
【0786】
a.ベースラインにおいてFDG-PET陰性であり、追跡調査時にFDG-PETが陽性であった場合は、新病変に基づくPDのサインである。
【0787】
b.ベースラインではFDG-PETを行っておらず、追跡調査時にFDG-PETが陽性であった場合:
【0788】
追跡調査時のFDG-PET陽性がCTによって確認された新しい疾患部位に対応する場合はPDとする。
【0789】
追跡調査時のFDG-PET陽性が、CTで新しい疾患部位と確認されない場合は、当該部位で真の増悪が生じているかどうかを決定するために、追加的な追跡調査のCTスキャンが必要である(真に増悪だった場合、PDの日付は最初のFDG-PETスキャン異常の日付とする)。FDG-PETスキャン「陽性」病変は、吸収補正画像においてFDG取り込みが周囲組織の2倍を超えるFDG集積病変を意味する。
【0790】
追跡調査時のFDG-PET陽性がCTでの既存の疾患部位に対応し、当該既存の疾患部位が解剖学的画像に基づいて進行していない場合、それはPDではない。
【0791】
最良総合応答(best overall response)の判定
【0792】
最良総合応答は、確定のためのあらゆる要件を考慮に入れた、試験処置開始から処置終了までの間に記録された最良の応答である。応答がこの試験の治療終了後まで文書化されない場合には、代替抗がん治療が施されていない限りは処置後評価を最良総合応答の決定において考慮することができる。患者の最良総合応答の割り当ては、標的疾患および非標的疾患の両方に関する所見に依存し、また、新病変の出現も考慮に入れられる。
【0793】
各時点での応答
【0794】
応答の判定はプロトコールで指定された各時点で行われることが想定されている。表15に、ベースラインで測定可能疾患を有する患者についての各時点で算出された総合応答の状態の要約を提示する。
【0795】
患者が測定不能(したがって、非標的)疾患のみを有する場合には、表16を使用すべきである。
【0796】
評価の欠損および評価不能の規定
【0797】
特定の時点で画像診断/測定が全く行われなかった場合、患者はその時点では評価不能(NE)である。評価において一部の病変の測定しか行われなかった場合も通常その時点ではNEとみなす。ただし、個々の欠測病変の寄与で各時点での割り当てられた応答が変化しないことの説得力のある論拠を示すことができる場合を除く。これはPDの場合に生じる可能性が最も高いと思われる。例えば、患者がベースラインにおいて測定された病変を3つ有し、その径和が50mmであり、追跡調査時には2つの病変のみが評価されたが径和が80mmであった場合、欠測病変の寄与にかかわらず、患者は達成されたPD状態を有する。
【0798】
最良総合応答:全ての時点
【0799】
患者についての全てのデータが分かったら、最良総合応答が決定される。
【0800】
この試験における最良応答は、全ての時点にわたる最良応答と定義される(例えば、最初の評価でSD、2回目の評価でPR、4週間後に確定され、最後の評価でPDを有する患者の最良総合応答は確定PRである)。全てのCRまたはPRを、「未確定」CRまたはPRになる時まで少なくとも4週間後に確定しなければならない。そして、PRまたはCRの日付は、確定スキャンの日付ではなく、応答が最初に認められた最初の日付である。SDが最良応答になると考えられる場合には、プロトコールで指定されたベースラインからの最短期間も満たさなければならない。それ以外の状況でSDが各時点での最良の応答のときに最短期間が満たされない場合、患者の最良応答は、その後の評価に依存する。例えば、最初の評価でSDであり、2回目の評価でPDであり、SDの最短持続時間を満たしていない患者の最良応答はPDになる。同様の患者が最初のSD評価後に追跡調査できなくなった場合には評価不能とみなされることになる。FDG-PETスキャン「陽性」病変は、吸収補正画像においてFDG取り込みが周囲組織の2倍を超えるFDG集積病変を意味する。
表15.各時点での応答:標的(+/-非標的)疾患を有する患者
【表15】
表16.各時点での応答:非標的疾患のみを有する患者。
【表16】
表17.CRおよびPRの確定が必要とされる場合の最良総合応答
【表17】
【0801】
応答判定に関する特別の注意点
【0802】
リンパ節疾患が標的病変の径和に含められ、リンパ節が「正常な」サイズ(10mm未満)まで縮小した場合、それでもなおスキャンで報告された測定値を有する可能性がある。この測定値は、リンパ節のサイズの増大に基づく場合、過大評価して増悪としないために、リンパ節が正常であっても記録すべきである。以前に記載の通り、これは、CRの患者の症例報告書(CRF)上の総計が「ゼロ」にならない場合があることを意味する。
【0803】
健康状態の全体的な悪化を有し、その時点での客観的な疾患増悪のエビデンスを伴わずに処置の中止が必要になった患者は、「症状悪化」と報告すべきである。処置中止後においても、客観的な増悪を証明するためにあらゆる努力を払うべきである。症状悪化は、客観的応答の記述子ではなく、試験治療の終止理由である。そのような患者の客観的応答の状態は、表1~3に示されている通り標的疾患および非標的疾患の評価により決定される。
【0804】
「早期増悪、早期死亡および評価不能」と定義される状態は試験に特異的であり、各プロトコールに明確に記載されるべきである(処置の持続時間、処置の周期性に左右される)。
【0805】
一部の場合では、残存疾患と正常組織を区別することが難しいことがある。完全奏効の評価がこの決定に左右される場合には、完全奏効の状態に割り当てる前に、残存病変の調査(細針吸引/生検)を行うことが推奨される。残存するX線検査異常が線維化または瘢痕を表すものと考えられる場合には、生検を同様の様式で、応答をCRに格上げするためにFDG-PETを使用することができる。
【0806】
増悪の所見が不明確な場合(例えば、極めて小さく、不明瞭な新病変;既存病変の嚢胞性変化または壊死)、予定された次の評価まで処置を継続することができる。予定された次の評価において増悪が確定した場合、増悪の日付は先に増悪が疑われた日にすべきである。
【0807】
奏功期間
【0808】
奏功期間は、CR/PR(最初に記録された方)の測定基準が最初に満たされた時点から、再発または進行が客観的に文書化された最初の日まで測定される(試験中に記録された最小の測定値を進行の参照とする)。
【0809】
全体的な完全奏効の持続時間は、CRの測定基準が最初に満たされた時から再発疾患が客観的に文書化された最初の日まで測定される。
【0810】
安定の持続時間
【0811】
安定は、処置の開始から(ランダム化試験では、ランダム化の日付から)増悪の基準が満たされるまで測定され、試験中の最小の径和を参照とする(ベースライン径和が最小である場合には、これはPDを算出するための参照である)。
付録3:ニューヨーク心臓協会(New York Heart Association)(NYHA)尺度。
表18.ニューヨーク心臓協会(New York Heart Association)(NYHA)尺度
【表18】
【0812】
付録4:略語および用語の定義に関する表
表19.略語および用語の定義
【表19-1】
【表19-2】
【表19-3】
【表19-4】
【国際調査報告】