IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シギロン セラピューティクス, インコーポレイテッドの特許一覧

特表2022-514144細胞治療のための移植可能なデバイス、及び関連する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-10
(54)【発明の名称】細胞治療のための移植可能なデバイス、及び関連する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/50 20060101AFI20220203BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20220203BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220203BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220203BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20220203BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20220203BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20220203BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220203BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 7/04 20060101ALN20220203BHJP
   A61K 38/37 20060101ALN20220203BHJP
   A61K 38/36 20060101ALN20220203BHJP
   C07K 14/745 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
A61K9/50
A61K9/06
A61K47/36
A61K48/00
A61L27/38
A61K47/42
A61K35/12
C12N5/10 ZNA
C07K7/06
A61P7/04
A61K38/37
A61K38/36
C07K14/745
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021517306
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(85)【翻訳文提出日】2021-05-21
(86)【国際出願番号】 US2019053637
(87)【国際公開番号】W WO2020069429
(87)【国際公開日】2020-04-02
(31)【優先権主張番号】62/737,835
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/824,768
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519118164
【氏名又は名称】シギロン セラピューティクス, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SIGILON THERAPEUTICS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】バーニー, ローレン, エミリー
(72)【発明者】
【氏名】ハイデブレクト, リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ミラー, ロバート, ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】オベルリ, マティアス, アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】イン, ゾエ
(72)【発明者】
【氏名】ボウレガード, マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ジョンストン, エリカ エレン
(72)【発明者】
【氏名】オコナー, オーウェン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーシャ, オミド
(72)【発明者】
【氏名】カルモナ, ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】ゴンザレス, フランシスコ キャバレロ
(72)【発明者】
【氏名】ペリット, デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】スミス, デヴィン マッキンリー
(72)【発明者】
【氏名】ウォットン, ポール ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】スウェル, ジャレッド エー.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C081
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA01
4B065BD06
4B065BD41
4B065CA24
4B065CA44
4C076AA09
4C076AA53
4C076AA63
4C076AA95
4C076BB21
4C076CC14
4C076EE36
4C076EE41
4C081AB11
4C081CD34
4C081CE02
4C081CE03
4C081DA12
4C081DB02
4C081DC04
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA44
4C084DC14
4C084DC15
4C084DC16
4C084MA38
4C084MA65
4C084NA03
4C084NA05
4C084NA13
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087MA38
4C087MA65
4C087NA03
4C087NA05
4C087NA13
4C087ZA53
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA12
4H045BA13
4H045BA14
4H045BA56
4H045CA40
4H045DA65
4H045DA66
4H045EA20
4H045EA65
(57)【要約】
本出願で説明されているのは、異物反応(FBR)を軽減するための手段と、細胞結合物質(CBS)を含むポリマー組成物中でカプセル化された複数の細胞(例えば生細胞)を含む少なくとも1個の細胞含有区画とを含む移植可能なデバイス、並びにこのデバイスを製造するための及び使用するための組成物及び方法である。この細胞は、本出願で説明されている疾患、障害、又は状態の処置に有用な治療薬を発現し得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロゲルカプセルであって、
(a)リンカーを介して細胞結合ペプチド(CBP)で共有結合的に修飾されたアルギン酸塩を含む第1のポリマー組成物中でカプセル化された複数の組み換えRPE細胞を含む細胞含有区画であって、任意選択的に、前記リンカーは、前記CBPのアミン末端に連結されている、細胞含有区画と、
(b)前記細胞結合区画を取り囲み且つ第2のポリマー組成物を含むバリア区画であって、前記第2のポリマー組成物は、表4で示されている化合物101、化合物100、化合物110、化合物112、化合物113、及び化合物114からなる群から選択される少なくとも1種の化合物で共有結合的に修飾されたアルギン酸塩を含む、バリア区画と
を含み、
前記ヒドロゲルカプセルは、球状の形状であり、且つ直径が0.7ミリメートル~3.0ミリメートルであり、
前記細胞含有区画は、いかなる抗線維性化合物も実質的に含まず、前記バリア区画は、細胞を実質的に含まず、且つ前記CBPを実質的に含まず、
前記組み換えRPE細胞は、治療用ポリペプチドをコードする外因性のヌクレオチド配列を含み、
前記CBPペプチドは、RGD(配列番号43)又はRGDSP(配列番号59)を含み、前記リンカーは、1個のグリシン残基、2個のグリシン残基、3個のグリシン残基、1個のベータ-アラニン残基、2個のベータ-アラニン残基、及び3個のベータ-アラニン残基から本質的になる、
ヒドロゲルカプセル。
【請求項2】
前記共有結合的に修飾されたアルギン酸塩上の前記CBPの密度は、CBPなしの参照ヒドロゲルカプセルと比較して、マウスへの前記カプセルの移植後1週間、2週間、4週間、8週間、又は12週間で、インビボでの前記治療用ポリペプチドの産生を少なくとも1.25倍増加させるのに十分な量であり、任意選択的に、前記産生の増加は、少なくとも1.5倍、2倍、5倍、又はより高い、請求項1に記載のヒドロゲルカプセル。
【請求項3】
前記共有結合的に修飾されたアルギン酸塩上の前記CBPの密度は、CBPなしの参照ヒドロゲルカプセルと比較して、マウスへの前記カプセルの移植後1週間、2週間、4週間、8週間、又は12週間で、前記組み換えRPE細胞の生存率を少なくとも10%増加させるのに十分な量であり、任意選択的に、前記細胞の生存率の増加は、少なくとも25%、50%、又はより高い、請求項1又は2に記載のヒドロゲルカプセル。
【請求項4】
前記CBPは、RGD(配列番号43)又はRGDSP(配列番号59)であり、前記リンカーは、前記CBPのアミン末端に連結された1個のグリシン残基から本質的になる、請求項1~3のいずれか一項に記載のヒドロゲルカプセル。
【請求項5】
前記第1のポリマー組成物中の前記アルギン酸塩は、分子量が75kDa~150kDaであり、且つG:M比が1.5以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載のヒドロゲルカプセル。
【請求項6】
前記バリア区画中における前記共有結合的に修飾されたアルギン酸塩中の前記アルギン酸塩は、分子量が75kDa未満であり、且つG:M比が1.5以上であり、前記第2のポリマー組成物は、非修飾アルギン酸塩をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のヒドロゲルカプセル。
【請求項7】
前記バリア区画中の前記非修飾アルギン酸塩は、分子量が150kDa~250kDaであり、且つG:M比が1.5以上である、請求項6に記載のヒドロゲルカプセル。
【請求項8】
化合物101は、前記第2のポリマー組成物中における前記共有結合的に修飾されたアルギン酸塩中の化合物である、請求項1~7のいずれか一項に記載のヒドロゲルカプセル。
【請求項9】
前記治療用ポリペプチドは、第VIII因子ポリペプチド、第VII因子ポリペプチド、及びFIXポリペプチドからなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載のヒドロゲルカプセル。
【請求項10】
前記組み換えRPE細胞は、ARPE-19細胞に由来しており、任意選択的に、前記ARPE-19細胞は、前記第1のポリマー組成物 1ミリリットル当たり約2500万~3500万個、約3500万~約4500万個、又は約4000万個の細胞の濃度で存在し、前記細胞含有区画中における前記共有結合的に修飾されたアルギン酸塩中の前記アルギン酸塩は、分子量が75kDa~150kDaであり、G:M比が1:5以上であり、且つGRGDSPで共有結合的に修飾されており、任意選択的に、前記アルギン酸塩上のGRGDSPの密度は、定量的ペプチドコンジュゲーションアッセイにより決定した場合に、粘度が80~120cPである生理食塩水中の前記GRGDSP-アルギン酸塩1グラム当たりGRGDSP約0.1~約1.0マイクロモルである、請求項1~9のいずれか一項に記載のヒドロゲルカプセル。
【請求項11】
前記治療用ポリペプチドは、第VIII因子-BDDポリペプチドであり、前記外因性のヌクレオチド配列は、配列番号15を含み、前記第1のポリマー組成物中の前記アルギン酸塩は、分子量が75kDa~150kDaであり、且つG:M比が1.5以上であり、前記アルギン酸塩上のGRGDSPの密度は、定量的ペプチドコンジュゲーションアッセイにより決定した場合に、粘度が80~120cPである生理食塩水中の前記GRGDSP-アルギン酸塩1グラム当たりGRGDSP約0.3~約0.6マイクロモルである、請求項1~10のいずれか一項に記載のヒドロゲルカプセル。
【請求項12】
前記バリア区画中の前記第2のポリマー組成物は、分子量が150kDa~250kDaであり且つG:M比が1.5以上である非修飾アルギン酸塩をさらに含み、
前記バリア区画中における前記共有結合的に修飾されたアルギン酸塩中の前記アルギン酸塩は、分子量が75kDa未満であり、G:M比が1.5以上であり、且つ前記化合物が化合物101であり、
前記共有結合的に修飾されたアルギン酸塩中の化合物101のコンジュゲーション密度は、窒素パーセントに関する燃焼分析により決定した場合に、少なくとも2.0%の窒素且つ9.0%未満の窒素であるか、又は3.0%~8.0%、4.0%~7.0%、5.0%~7.0%、若しくは6.0%~7.0%の窒素である、
請求項1~11のいずれか一項に記載のヒドロゲルカプセル。
【請求項13】
前記ヒドロゲルカプセルは、直径が約1.5mmであり、前記バリア区画の厚さは、約180μm~260μmであるか、又は約310μm~440μmである、請求項1~12のいずれか一項に記載のヒドロゲルカプセル。
【請求項14】
球状の形状であり、且つ直径が約1.5mmであるヒドロゲルカプセルであって、
(a)GRGDSPで共有結合的に修飾されたアルギン酸塩中でカプセル化された複数の組み換えRPE細胞を含む細胞含有区画であって、前記組み換えRPE細胞は、ARPE-19細胞に由来しており、且つ外因性のヌクレオチド配列を含み、前記外因性のヌクレオチド配列は、第VIII因子-BDDタンパク質をコードするコドン最適化配列に動作可能に連結されたプロモーター配列と、ポリA配列とを含み、前記アルギン酸塩は、分子量が75kDa~150kDaであり、且つG:M比が1.5以上である、細胞含有区画と、
(b)前記細胞結合区画を取り囲み、且つ表4で示されている化合物101で共有結合的に修飾されたアルギン酸塩と非修飾アルギン酸塩との混合物を含むバリア区画であって、前記供給結合的に修飾されたアルギン酸塩中の前記アルギン酸塩は、分子量が75kDa未満であり、且つG:M比が1.5以上であり、前記非修飾アルギン酸塩は、分子量が150kDa~250kDaであり、且つG:M比が1.5以上である、バリア区画と
を含むヒドロゲルカプセル。
【請求項15】
前記プロモーター配列は、配列番号23から本質的になり、前記コドン最適化配列は、配列番号15から本質的になり、前記ポリA配列は、配列番号24から本質的になる、請求項14に記載のヒドロゲルカプセル。
【請求項16】
前記アルギン酸塩上のGRGDSPの密度は、定量的ペプチドコンジュゲーションアッセイにより決定した場合に、粘度が80~120cPである生理食塩水中の前記GRGDSP-アルギン酸塩1グラム当たりGRGDSP約0.3~約0.6マイクロモルである、請求項14又は15に記載のヒドロゲルカプセル。
【請求項17】
デバイスであって、
(c)ポリマー組成物を含む少なくとも1個の細胞含有区画であって、前記ポリマー組成物は、第1の細胞結合物質(CBS)を含み、且つ前記デバイスが対象(例えばヒト)に移植された場合に治療薬を発現し得る複数の細胞をカプセル化しており、前記細胞は、膵島細胞ではない、細胞含有区画と、
(d)前記デバイスが前記対象に移植された場合に異物反応(FBR)を軽減するための手段と
を含むデバイス。
【請求項18】
デバイスであって、
(a)ポリマー組成物、例えばポリマーマトリックス、例えばヒドロゲルマトリックス、であって、
(i)第1の細胞結合物質(CBS)と、
(ii)治療薬を提供し得る、例えば、産生し得るか、発現し得るか、又は放出し得る複数の細胞であって、膵島細胞ではない細胞と
を含むポリマー組成物を含み、下記の特性:
(b)球状の形状と、少なくとも1.0mm、1.3mm、1.5mm、2.0mm、2.5mm、若しくは3.0mmの線形寸法、例えば直径との組み合わせを含むか;
(c)前記ポリマー組成物は、区画内に配置されており、例えば、前記ポリマー組成物を取り囲む生体適合性ポリマーを含む区画内に若しくはマトリックス内に配置されているか;
(d)いくつかの実施形態において前記デバイスの外面上に配置された実体、例えば、FBRを軽減する化合物、例えば、本明細書で定義されている抗線維性化合物を含むか;
又は
(e)前記デバイスは、抗線維性化合物、例えば、本明細書で説明されている抗線維性化合物、例えば、前記デバイスの外側に配置された抗線維性化合物を含む
の内の1つを含むデバイス。
【請求項19】
前記第1のCBSは、第1のリンカーを介して第1のポリマーに共有結合的に付着した第1のCBP(「第1のCBP-ポリマー」)を含む、請求項17又は18に記載のデバイス。
【請求項20】
前記第1のCBPは、DGEA、FYFDLR、HAVDI、PHSRN、REDV、RGD、RGDSP、YIGSR、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、及び配列番号58からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項19に記載のデバイス。
【請求項21】
前記第1のリンカーは、1個、2個、若しくは3個のグリシン残基から本質的になるか又は1個のベータ-アラニン残基から本質的になる直鎖アミノ酸リンカーである、請求項19又は20に記載のデバイス。
【請求項22】
前記第1のCPBは、RGD又はRGDSPから本質的になる、請求項21に記載のデバイス。
【請求項23】
前記複数の細胞は、組み換えRPE細胞である、請求項17~22のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項24】
前記組み換えRPE細胞は、ARPE-19細胞に由来しており、且つ外因性の核酸配列を含み、前記外因性の核酸配列は、ポリペプチドのコード配列に動作可能に連結されたプロモーター配列を含み、前記プロモーター配列は、配列番号23から本質的になるか、又はからなる、請求項23に記載のデバイス。
【請求項25】
前記コード配列は、配列番号9、10、11、12、13、14、15、16、及び17からなる群から選択されるコドン最適化FVIII-BDDコード配列であるか、又は配列番号19、20、及び21からなる群から選択されるコドン最適化FIX-paduaコード配列である、請求項24に記載のデバイス。
【請求項26】
デバイスの調製物であって、前記調製物中の各デバイスは、請求項17~25のいずれか一項に記載のデバイスである、デバイスの調製物。
【請求項27】
対象の体内に入れるのに適した医薬組成物である請求項26に記載のデバイスの調製物。
【請求項28】
ヒドロゲルカプセルであって、
(c)第1のRGD-ポリマーを含む第1のポリマー組成物中でカプセル化された複数の細胞を含む細胞含有区画と、
(d)前記細胞結合区画を取り囲み且つ第2のポリマー組成物を含むバリア区画であり、前記第2のポリマー組成物は、非修飾アルギン酸塩と、(e)表4で示されているle 4からなる群から選択される少なくとも1種の化合物で共有結合的に修飾されたアルギン酸塩との混合物を含み、
前記ヒドロゲルカプセルは、球状の形状であり、且つ直径が0.5ミリメートル~5ミリメトールであり、前記細胞は、膵島細胞ではない、
ヒドロゲルカプセル。
【請求項29】
前記複数の細胞は、組み換えARPE-19細胞である、請求項28に記載のヒドロゲルカプセル。
【請求項30】
前記組み換えARPE-19細胞は、外因性の核酸配列を含み、前記外因性の核酸配列は、ポリペプチドのコード配列に動作可能に連結されたプロモーター配列を含み、前記プロモーター配列は、配列番号23から本質的になるか、又はからなる、請求項29に記載のヒドロゲルカプセル。
【請求項31】
前記コード配列は、配列番号9、10、11、12、13、14、15、16、及び17からなる群から選択されるコドン最適化FVIII-BDDコード配列であるか、又は配列番号19、20、及び21からなる群から選択されるコドン最適化FIX-paduaコード配列である、請求項30に記載のヒドロゲルカプセル。
【請求項32】
前記FVIII-BDDコード配列は、配列番号15であり、前記第1のRGD-ポリマーは、G1~3RGD又はG1~3RGDSPと共有結合的にコンジュゲートしたアルギン酸塩から本質的になり、任意選択的に、前記細胞含有区画中における前記複数の細胞の濃度は、前記第1ポリマー組成物1ミリリットル当たり約3500万~約4500万個の細胞である、請求項31に記載のヒドロゲルカプセル。
【請求項33】
前記アルギン酸塩は、GRGDSPとコンジュゲートしている、請求項32に記載のヒドロゲルカプセル。
【請求項34】
ヒドロゲルカプセルの調製物であって、前記調製物中の各カプセルは、請求項1~16のいずれか一項又は請求項28~33のいずれか一項に記載のヒドロゲルカプセルである、ヒドロゲルカプセルの調製物。
【請求項35】
前記調製物中の各カプセルは、直径が1.4~1.6ミリメートルである、請求項34に記載のヒドロゲルカプセルの調製物。
【請求項36】
対象の腹膜腔に入れるか又は移植するのに適した薬学的に許容可能な組成物である請求項34又は35に記載のヒドロゲルカプセルの調製物。
【請求項37】
治療薬が必要な対象の処置での使用のための組成物であって、前記処置は、
請求項26若しくは27に記載のデバイスの調製物を準備するか、又は請求項3~36のいずれか一項に記載のヒドロゲルカプセルの調製物を準備すること、
及び
前記調製物を対象の体腔に移植すること
を含む、使用のための組成物。
【請求項38】
前記治療薬は、血液凝固因子である、請求項37に記載の使用のための組成物。
【請求項39】
前記血液凝固因子は、第VIII因子-BDDタンパク質であり、前記第VIII因子-BDDタンパク質は、配列番号1から本質的になる、請求項38に記載の使用のための組成物。
【請求項40】
前記血液凝固因子は、第IX因子-paduaタンパク質であり、前記第IX因子-paduaタンパク質は、配列番号36を含む、請求項38に記載の使用のための組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2018年9月27日に出願された米国仮特許出願第62/737,835号;及び2019年3月27日に出願された米国仮特許出願第62/824,768号に対する優先権を主張するものである。上記の仮出願のそれぞれの開示内容は、全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出され、全体が参照により本明細書に援用される配列表を含む。2019年9月20日に作成された前記ASCIIコピーは、S2225-7026WO_SLという名称であり、サイズは213,209バイトである。
【背景技術】
【0003】
慢性疾患及び遺伝性疾患を処置し得る治療剤を産生するように組み換えられている細胞を移植することによるそのような疾患の処置には、そのような疾患の患者の健康を改善するという刺激的な可能性がある。この可能性を完全に達成するためには、移植された細胞は、生存できるように患者の免疫反応から保護されなければならず、且つ移植された細胞はまた、数週間、数ヶ月、又はさらに長い期間にわたり、所望の治療剤の治療レベルを産生する能力も有しなければならない。そのような細胞治療を送達するための一つの探索的アプローチは、デバイス構造がこの細胞を免疫系細胞から単離する一方で、この細胞のための栄養素の進入及び産生された治療剤の排出を可能にすることを目的として、組み換え細胞を半透過性のデバイス(例えばヒドロゲルカプセル)にカプセル化することである。移植可能なデバイスに含まれる生細胞の生存率及び/又は産生性の増加を達成するために、この一般的なアプローチを改善することが必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書で説明されているのは、(i)第1の細胞結合物質(CBS)と複数の細胞とを含むポリマー組成物を含む少なくとも1個の細胞含有区画を含むデバイスである。ある実施形態において、このポリマー組成物は、第1のCBSと同一であるか又は異なる1種又は複数種の追加の細胞結合物質を含む。ある実施形態において、この細胞含有区画中における細胞結合物質の量は、(例えば、このデバイスが細胞培養培地中でインキュベートされた場合に)インビトロで、又は(例えば、このデバイスが試験対象に移植されるか若しくは他の方法で投与された場合に)インビボで、細胞の生存率を増加させるのに及び/又は細胞の産生性を増加させるのに有効な量である。
【0005】
ある実施形態において、CBSは、細胞結合ペプチド(CBP)又は細胞結合ポリペプチド(CBPP)である。ある実施形態において、CBSは、リンカーを介してポリマー分子に共有結合的に付着したCBP(「CBP-ポリマー」)を含む。ある実施形態において、CBSは、リンカーを使用することなくポリマー分子に共有結合的に付着したCBPを含む。ある実施形態において、細胞含有区画中のポリマー組成物は、第1のCBP-ポリマー中に存在する同一の又は異なるポリマー型に共有結合に付着している様々な細胞結合ペプチドを含む1種又は複数種の追加のCBP-ポリマーを含む。ある実施形態において、本明細書で説明されているデバイス中でカプセル化された細胞は、細胞結合ペプチドを欠く実質的に同様のデバイス(即ち、本明細書で定義されているようなCBSなしの参照カプセル又は参照粒子)中でカプセル化された場合と比べて、移植後の1つ又は複数の時点で、少なくとも1.25倍、1.5倍、2倍、5倍、8倍、又は10倍多い量の治療薬を発現する。
【0006】
本明細書では、本開示のデバイスでの使用のための様々な細胞結合ペプチドが説明されている。ある実施形態において、この細胞結合ペプチドは、40個以下(例えば、35個、30個、若しくはより少ない)のアミノ酸の長さであるか、又は25個以下(例えば、20個、15個、10個、若しくはより少ない)のアミノ酸の長さであり、且つ細胞付着分子(CAM)のリガンドの細胞結合配列を含む。ある実施形態において、この細胞結合ペプチドは、本明細書の表1で示されている細胞結合配列から本質的になる。ある実施形態において、この細胞結合配列は、RGD(配列番号43)又はRGDSP(配列番号59)である。ある実施形態において、この細胞結合ペプチドのアミノ末端は、アミノ酸リンカーを介してポリマーに共有結合的に付着している。ある実施形態において、このリンカー中のアミノ酸は、アキラルである。ある実施形態において、このアミノ酸リンカーは、1~3個のグリシン残基から本質的なるか、又は1~3個のベータ-アラニン残基から本質的になる。ある実施形態において、この細胞結合ペプチドは、RGD(配列番号43)又はRGDSP(配列番号59)から本質的になり、このリンカーは、単一のグリシン残基から本質的になるか又は単一のベータ-アラニン残基から本質的になる。
【0007】
一態様において、第1のCBP-ポリマー中のポリマーは、多糖又は他のヒドロゲル形成ポリマーである。ある実施形態において、第2のCBP-ポリマー中のポリマー、及び存在する任意の他のCBP-ポリマーも、ヒドロゲル形成ポリマーである。いくつかの実施形態において、細胞含有区画中における各CBP-ポリマー中のヒドロゲル形成ポリマーは、多糖である。いくつかの実施形態において、細胞含有区画中における各CBP-ポリマー中のヒドロゲル形成ポリマーは、アルギン酸塩である。いくつかの実施形態において、各CBP-ポリマー中のアルギン酸塩は、分子量が75kDa超(例えば75kDa~250kDa)であり、且つG:M比が1.5以上である。
【0008】
ある実施形態において、第1の区画中に(例えば、第1の区画を形成するために使用されるポリマー溶液中に)存在する各CBP-ポリマーは、細胞結合ペプチド密度(例えば本明細書の実施例1で説明されているような燃焼分析で決定された%窒素)が、少なくとも約0.05%の窒素(例えば、約0.1%、0.2%、及び0.3%の窒素)であるか、又は下限値としての約0.05%、0.1%、0.2%、及び0.3%の窒素のいずれかと、上限値としての約4%、3%、2%、及び1%の窒素のいずれかとの間の範囲内である。ある実施形態において、第1の区画中のCBP-ポリマーは、GRGDSP(配列番号60)で共有結合的に修飾されているアルギン酸塩(おおよその分子量が75kDa~150kDであり、G:M比が≧1.5である)である。
【0009】
他の実施形態において、第1の区画中における(例えば、第1の区画を形成するために使用されるポリマー溶液中における)各CBP-ポリマー(例えばGRGDSP-アルギン酸塩)中のリンカー-RGD部分(例えばGRGDSP(配列番号60))の密度は、定量的ペプチドコンジュゲーションアッセイで決定され、例えば、本明細書で説明されている定量的ペプチドコンジュゲーションアッセイで決定される。ある実施形態において、細胞は、組み換えARPE-19細胞であり、CBP-ポリマー中のリンカー-RGD部分は、GRGDSP(配列番号60)であり、ポリマーは、おおよその分子量が75kDa~150kDaであり且つG:M比が≧1.5であるアルギン酸塩(例えばアルギン酸ナトリウム)であり、決定されたコンジュゲーション密度は、GRGDSP(配列番号60)のマイクロモル/粘度が80~120cPである溶液(例えば生理食塩水)中のGRGDSP-アルギン酸塩のgで表される。ある実施形態において、そのようなGRGDSP-アルギン酸塩溶液(MMW-Alg、G:M比≧1.5)のコンジュゲーション密度は、約0.1~1.0マイクロモル/gであるか、又は約0.2~約0.8、約0.3~約0.7、若しくは約0.3~約0.6マイクロモル/gの内のいずれかである。ある実施形態において、この組み換えARPE-19細胞は、FVIII BDDタンパク質の外因性のコード配列(例えば配列番号15)を含む。ある実施形態において、この外因性のコード配列は、プロモーター配列(例えば、配列番号26のヌクレオチド337~2069)に動作可能に連結されている。
【0010】
ある実施形態において、細胞含有区画はまた、CBP-ポリマー中のポリマーと同一であるか又は異なる非修飾ヒドロゲル形成ポリマーも含む。ある実施形態において、このCBP-ポリマー及び非修飾ポリマーは両方とも、分子量が75kDa(例えば約75kDa~150kDa)であり且つG:M比が1.5以上であるアルギン酸塩である。
【0011】
この細胞含有区画中の複数の細胞(例えば生細胞)(例えば生存細胞)は、単一の細胞として存在してもよいし、細胞クラスタとして(例えばスフェロイドとして)存在してもよいし、マイクロキャリアに付着していてもよい。いくつかの実施形態において、第1の区画中の複数の生細胞は、少なくとも100個、250個、500個、750個、1,000個、2,500個、5,000個、10,000個、25,000個、又は50,000個の細胞である。ある実施形態において、この複数は、細胞株に由来し且つ治療薬を発現するように組み換えられた細胞を含む。ある実施形態において、この細胞株は、内皮細胞株、上皮細胞株、線維芽細胞株、ケラチン生成細胞株、又は間葉細胞株であり、例えば、本明細書の表5で列挙されている市販の細胞株である。ある実施形態において、この複数の細胞は、組み換えられた網膜色素上皮(RPE細胞)であり、例えば、ARPE-19細胞株から組み換えられた細胞である。いくつかの実施形態において、この複数の細胞は、例えばデバイスが対象に移植された場合に、治療薬を発現し得る。
【0012】
ある態様では、複数の細胞により発現される治療薬は、デバイスが対象(例えばヒト)に移植された場合に治療効果を直接的に又は間接的に付与し得る生体分子又は化学分子(例えば、核酸、ポリペプチド、脂質、糖、又は小分子)である。ある実施形態において、この治療薬は、細胞から分泌されており且つ対象で欠いているか又は不足している内因性のタンパク質を補充するか又は増強するタンパク質であり、例えば、血友病患者で血液凝固を改善する血液凝固タンパク質であるか、又は身体中に蓄積するであろう毒性代謝産物の除去を媒介する酵素である。別の実施形態において、この治療薬は、細胞から分泌されており且つ対象に治療効果をもたらす機能を実施するか又は媒介する物質であり、例えば、対象の内因性の細胞による1種又は複数種のタンパク質の発現を阻害して治療効果を生じる阻害性RNA分子である。いくつかの実施形態において、この治療薬は、例えば対象の血液凝固障害又はライソゾーム蓄積症の処置に有用な補充療法又は補充タンパク質である。いくつかの実施形態において、この治療薬は、血液凝固障害の処置に有用なポリペプチドであり、例えば、第VIII因子タンパク質若しくはその変異体、第IX因子タンパク質若しくはその変異体、又は第VII因子タンパク質若しくはその変異体である。
【0013】
いくつかの実施形態において、デバイスは、異物反応(FBR)を軽減するための(例えば、このデバイスが対象中に移植されたか対象上に移植された場合にFBRを軽減するための)少なくとも1つの手段をさらに含む。本明細書では、デバイスの、FBRを軽減するための様々な手段が説明されている。ある実施形態において、FBRを軽減するための手段は、球状の形状と、少なくとも1ミリメートル(mm)(例えば、約1.25mm、約1.5mm、約2.0mm、約2.5mm、約3.0mm)の線形寸法(例えば直径)との組み合わせを含む。ある実施形態において、この手段は、細胞含有区画を取り囲む生体適合性ポリマーで形成されたバリア区画と、任意選択的な、このバリア区画を取り囲む生体適合性ポリマーで形成された第3の区画とを含み、第1の区画中の細胞と、対象の免疫系との間に生態適合性の物理的バリアをさらに設ける。ある実施形態において、この生体適合性ポリマーは、アルギン酸塩である。
【0014】
別の実施形態において、FBRを軽減するための手段は、FBRを軽減する化合物(例えば、本明細書で定義されている抗線維性(afibrotic)化合物)を含む。ある実施形態において、この抗線維性化合物は、デバイス表面の外面上に配置されている。別の実施形態において、この手段は、バリア区画を含み、このバリア区画は、第1の区画を取り囲み、且つ抗線維性化合物で共有結合的に修飾されているポリマー(本明細書で定義されている「抗線維性ポリマー」)を含む。いくつかの実施形態において、抗線維性化合物は、外部デバイス面に共有結合的に付着しており、このバリア区画内のポリマーに共有結合的に付着しており、且つ、任意選択的に、細胞含有区画内のポリマーに共有結合的に付着している。ある実施形態において、このバリア区画は、この抗線維性ポリマー中のポリマーと同一であるか又は異なる非修飾ポリマーを含む。
【0015】
ある実施形態において、この抗線維性化合物は、式(I):
【化1】

の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩であり、式中、変数A、L、M、L、P、L、及びZ、並びに関連するサブ変数は、本明細書で定義されている。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩(例えば、式(I-a)、(II)、(II-a)、(II-b)、(III)、(III-a)、(III-b)、(III-c)、(III-d)、又は(III-e))は、本明細書で説明されている化合物であり、例えば、本明細書の表4で示されている化合物の内の1つが挙げられる。ある実施形態において、この抗線維性化合物は、表4で示されている化合物100、化合物101、又は化合物102である。
【0016】
一態様において、本開示のデバイスは、2区画ヒドロゲルカプセル(例えば、マイクロカプセル(直径が1mm未満)又はミリカプセル(millicapsule)(直径が少なくとも1mm))であり、この2区画ヒドロゲルカプセルでは、複数の細胞(例えば生細胞)と1種又は複数種のCBP-ポリマーとを含む細胞含有区画(例えば内側区画)が、抗線維性ポリマーを含むバリア区画(例えば外側区画)で取り囲まれている。ある実施形態において、抗線維性化合物は、式(I)の化合物である。ある実施形態において、このバリア区画は、異なる式(I)の化合物で修飾されており且つ同一の又は異なるヒドロゲル形成ポリマーを含む2種以上の抗線維性ポリマーを含む。いくつかの実施形態において、内側の細胞含有区画は、(i)外側のバリア区画中の抗線維性化合物と同一であるか又は異なる式(I)の化合物と、(ii)内側の区画中のCBP-ポリマー中と又はバリア区画中の抗線維性ポリマー中と同一であるか又は異なるポリマーとを含む抗線維性ポリマーを含む。ある実施形態において、このバリア区画は、抗線維性ポリマーと、非修飾ヒドロゲル形成ポリマーとの混合物を含む。ある実施形態において、この非修飾ヒドロゲル形成ポリマーは、分子量が150kDa~250kDaであり且つG:M比が1.5以上であるアルギン酸塩である。
【0017】
ある実施形態において、本開示の複数区画ヒドロゲルカプセル中の区画は、体積がほぼ等しく、例えば、変動が20%、10%、又は5%未満である。ある実施形態において、本開示のヒドロゲルカプセルは、2個の区画を有し、且つ直径が約0.5mm~約1.5mm、約0.8mm~約1.2mm、又は約1.0mm~約1.5mmである球状である。ある実施形態において、第2の区画の厚さは、約10~約500ミクロン、10~約300ミクロン、約20~約150ミクロン、又は約40~約75ミクロンである。
【0018】
別の態様において、本開示のデバイスは、第1の細胞含有区画中でカプセル化されているか又は第2の細胞含有区画中でカプセル化されている第2の複数の細胞を含む。ある実施形態において、第2の複数の細胞は、第1の複数と同一の細胞株から組み換えられているが、異なる治療薬を発現する。別の実施形態において、第2の複数の細胞は、第1の複数とは異なる細胞株から組み換えられているが、第1の複数と同一の治療薬を発現する。
【0019】
別の態様において、本開示は、本明細書で説明されている複数(3個、6個、12個、25個、50個、又はより多くの内の少なくともいずれか)の細胞含有デバイスを含む調製物(例えば組成物)を特徴とする。一実施形態において、この複数のデバイスの内の1つ又は複数は、(i)第1の細胞結合ペプチドで共有結合的に修飾された第1のポリマー(第1のCBP-ポリマー)を含むポリマー組成物中でカプセル化された複数の細胞(例えば生細胞)を含む細胞含有区画であって、この細胞は、このデバイスが対象に移植された場合に治療薬を発現し得る、細胞含有区画と、このデバイスが対象に移植された場合に異物反応(FBR)を軽減するための手段とを含むデバイスである。いくつかの実施形態において、この複数のデバイスの内の少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、99%、又はより多くは、球状のヒドロゲルカプセルである。いくつかの実施形態において、この調製物は、薬学的に許容可能な組成物である。
【0020】
別の態様において、本開示は、本明細書で説明されているデバイス又はデバイス調製物を対象に移植する方法を特徴とする。別の態様において、本開示は、対象に治療薬を提供する方法であって、本明細書で説明されているデバイスの内の1つ又は複数を対象に投与することであり、投与されるデバイス中の複数の細胞は、投与後に治療薬を産生する能力を有する、投与することを含む方法を特徴とする。別の態様において、本開示は、治療薬が必要な対象を処置する方法であって、本明細書で説明されているデバイスの内の1つ又は複数を対象に投与することであり、投与されるデバイスは、治療薬を産生する能力を有する、投与することを含む方法を特徴とする。いくつかの実施形態において、投与する工程は、複数のデバイスを含む薬学的に許容可能な調製物を対象に移植することを含み、これらのデバイスの各々は、治療薬を産生する能力を有する。いくつかの実施形態において、この対象は、哺乳動物(例えばヒト)である。
【0021】
別の態様において、本開示は、本明細書で説明されているデバイスを評価する方法を特徴とする。いくつかの実施形態において、この方法は、本明細書で説明されているデバイスを準備すること、及びこのデバイスの構造パラメータ又は機能パラメータを評価することを含む。いくつかの実施形態において、この方法は、a)細胞生存率、及びb)産生された治療薬の量の内の1つ又は複数に関して、本明細書で説明されているデバイス又は調製物内のデバイスを評価することを含む。いくつかの実施形態において、この評価を、(i)デバイス(若しくはデバイスの調製物)の形成後又は(ii)対象へのデバイス(若しくはデバイスの調製物)の投与後少なくとも1、5、10、20、30、60、90、又は120日で実施する。ある実施形態において、この評価は、対象への移植後少なくとも10、20、30、60、90、又は120日でデバイス(又は調製物内のデバイス)の線維化の量及び/又は構造的完全性を評価することをさらに含む。いくつかの実施形態において、この対象は、哺乳動物(例えば、マウス(例えば免疫適格性マウス)、非ヒト霊長類、ヒト)である。
【0022】
本開示の1つ又は複数の実施形態の詳細が本明細書において記載されている。本開示の他の特徴、対象及び利点は、発明を実施するための形態、図面、実施例及び特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本開示の例示的な球状ヒドロゲル2区画カプセルを示し、線は下記を示す:細胞結合ペプチドに共有結合的に付着したポリマーと、このポリマー中でカプセル化された細胞とから形成された第1の内側区画;第2の区画;並びに第2の区画内及びこのカプセルの表面上の両方に配置された抗線維性化合物。図1は、配列番号60として「GRGDSP」を開示する。
図2】FVIII-BDDタンパク質を発現するように組み換えられ、次いで、下記の実施例2で説明するように、細胞結合部位を含まない(対照)か又は細胞結合部位を含むアルギン酸塩溶液から形成された単一区画ヒドロゲルカプセル中でカプセル化されたARPE19細胞(ARPE-19:FVIII-BDD細胞)のインビトロでの産生性を示す棒グラフである。
図3】2区画ヒドロゲルカプセルのヌードマウスへの移植後2週間での血漿FVIIII-BDDレベルを示す棒グラフであり、このカプセルでは、第2の区画が、抗線維性アルギン酸塩と非修飾アルギン酸塩との混合物から形成され、第1の区画が、本明細書の実施例で説明されている試験CBP-アルギン酸塩溶液(VLVG-4GRGDSP、1G-RGD:0.41)中のARPE-19:FVIII-BDD細胞の懸濁液から形成されたか、又は抗線維性アルギン酸塩+非修飾アルギン酸塩の混合物から形成された(対照)。
図4A】2区画ヒドロゲルカプセルの移植前(初期)及びマウスへのIP移植後1ヶ月(最終)での細胞/カプセルの数(図4A)及び機械的強度(図4B)を示す棒グラフであり、このカプセルでは、第2の区画は、抗線維性アルギン酸塩と非修飾アルギン酸塩との混合物から形成され、第1の区画は、CBP-アルギン酸塩(VLVG-4GRGDSP、1G-RGD:0.41)、HA、若しくはコラーゲンIを含む試験アルギン酸塩溶液中のARPE-19:FVIII-BDD細胞の懸濁液から形成されたか、又は抗線維性アルギン酸塩+非修飾アルギン酸塩混合物から形成された(対照)。
図4B】2区画ヒドロゲルカプセルの移植前(初期)及びマウスへのIP移植後1ヶ月(最終)での細胞/カプセルの数(図4A)及び機械的強度(図4B)を示す棒グラフであり、このカプセルでは、第2の区画は、抗線維性アルギン酸塩と非修飾アルギン酸塩との混合物から形成され、第1の区画は、CBP-アルギン酸塩(VLVG-4GRGDSP、1G-RGD:0.41)、HA、若しくはコラーゲンIを含む試験アルギン酸塩溶液中のARPE-19:FVIII-BDD細胞の懸濁液から形成されたか、又は抗線維性アルギン酸塩+非修飾アルギン酸塩混合物から形成された(対照)。
図5】2区画ヒドロゲルカプセルのヌードマウスへの移植後2週間での血漿FVIIII-BDDレベルを示す棒グラフであり、このカプセルでは、第2の区画は、抗線維性アルギン酸塩と非修飾アルギン酸塩との混合物から形成され、第1の区画は、本明細書の実施例で説明されている試験CBP-アルギン酸塩溶液(1G RGD:0.41、MVG-GRGDSP、4G-RGD:0.53)中のARPE-19:FVIII-BDD細胞の懸濁液から形成されたか、又は抗線維性アルギン酸塩+非修飾アルギン酸塩混合物から形成された(対照)。
図6】内側区画:外側区画が50:50の体積比である2区画ヒドロゲルミリカプセルの明視野画像を示す。第2の(外側)区画は、中程度の又は高いコンジュゲーションの抗線維性アルギン酸塩を含む。内側区画は、中程度のコンジュゲーションの抗線維性アルギン酸塩(対照)、又は外因性のタンパク質を発現するように組み換えられた例示的なRPE細胞を含むか若しくは含まない(RGD、空)CBP-アルギン酸塩(RGD)のいずれかを含む。カプセルを、線維化の存在に関して、C57/BL6マウスでの移植の11日後に撮像した。
図7】FIXタンパク質を発現するように組み換えられたRPE細胞を含む2区画ヒドロゲルカプセルの移植後2週間でのヌードマウスにおけるFIXの血漿レベルを示す棒グラフである。RPE細胞は、下記の様々なアルギン酸塩組成物の第1の区画中でカプセル化された:細胞結合ペプチドなし(対照)、単一のグリシン残基を有するリンカー(1G-RGD:0.41又は4Gリンカー(配列番号61)を介して様々な密度のRGDペプチドで修飾されたアルギン酸塩(4G-RGD:0.53、0.96、1.77、及び2.95)。
図8】FIXタンパク質を発現するように組み換えられたRPE細胞を含む2区画ヒドロゲルカプセルの移植後2週間でのヌードマウスにおけるFIXの血漿レベルを示す棒グラフである。RPE細胞は、下記の様々なアルギン酸塩組成物の第1の区画中でカプセル化された:細胞結合ペプチドなし(対照)、1G-RGD、4G-DGEA、若しくは4G-PHSRNで修飾されたアルギン酸塩、又は他のCBPアルギン酸塩とブレンドされた1G-RGDの組み合わせ(1G-RGD:0.41、4G-DGEA、1:1 1G-RGD:0.41/4G-DGEA、1:1 1G-RGD:0.41/4G-PHSRN、1:1:1 1G-RGD:0.41/4G-DGEA/4G-PHSRN)。
図9】FIXタンパク質を発現するように組み換えられたRPE細胞を含む2区画ヒドロゲルカプセルの移植後2週間でのヌードマウスにおけるFIXの血漿レベルを示す棒グラフである。RPE細胞は、様々な1G-RGD密度(0、0.22、0.33、0.72、及び1.47%のN)の第1の区画中でカプセル化された。
図10】PTHタンパク質を発現するように組み換えられたRPE細胞を含む2区画ヒドロゲルカプセルの移植後2週間でのヌードマウスにおけるPTHの血漿レベルを示す棒グラフである。RPE細胞は、対照又は1G-RGD:0.72ポリマーのいずれかの第1の区画中でカプセル化された。
図11】第2の(外側)区画が中程度の又は高いコンジュゲーションの抗線維性アルギン酸塩を含む2区画ヒドロゲルミリカプセルの明視野画像を示す。内側区画は、中程度のコンジュゲーションの抗線維性アルギン酸塩(対照)を含むか、又は外因性のタンパク質を発現するように組み換えられた例示的なRPE細胞を含むか若しくは含まない(RGD、空)CBP-アルギン酸塩(RGD)を含む。
図12】第2の(外側)区画が中程度の又は高いコンジュゲーションの抗線維性アルギン酸塩を含む2区画ヒドロゲルミリカプセルの明視野画像を示す。内側区画は、中程度のコンジュゲーションの抗線維性アルギン酸塩(対照)又はマウス由来のBalb/3T3細胞を有するか若しくは有しない(RGD、空)CBP-アルギン酸塩(RGD)を含む。
図13A】様々なポリマーの同一性及び溶液粘度の1G-RGDポリマーで調製されたカプセルの初期破壊(図13A)及び血漿中のFIXレベル(図13B)を示す棒グラフである。
図13B】様々なポリマーの同一性及び溶液粘度の1G-RGDポリマーで調製されたカプセルの初期破壊(図13A)及び血漿中のFIXレベル(図13B)を示す棒グラフである。
図14】FIXタンパク質を発現するように組み換えられたRPE細胞を含む2区画ヒドロゲルカプセルの移植後2週間でのヌードマウスにおけるFIXの血漿レベルを示す棒グラフである。RPE細胞は、対照又は1G-HAVDIポリマーのいずれかの第1の区画中でカプセル化された。
図15A】IP部位又はSubQ部位に移植された第1の区画中の対照又は1G-RGDポリマーで調製されたカプセルのFIX-paduaレベル及び1個のカプセル当たりの生存細胞の数を示す棒グラフである。
図15B】IP部位又はSubQ部位に移植された第1の区画中の対照又は1G-RGDポリマーで調製されたカプセルのFIX-paduaレベル及び1個のカプセル当たりの生存細胞の数を示す棒グラフである。
図16】未処理ヌードマウス、又は第1の区画中に1G-RGD:0.33と共にARPE19:FVIIを含むカプセルによるマウスのFVII-paduaの血漿レベルを示す棒グラフである。
図17】FIXタンパク質を発現するように組み換えられたRPE細胞を含む2区画ヒドロゲルカプセルの移植後2週間でのヌードマウスにおけるFIXの血漿レベルを示す棒グラフである。RPE細胞は、非修飾SLG20ポリマーとの1G-RGD:6.04の1G-RGD:0.33又は1:55、1:30又は1:50ブレンドのいずれかの第1の区画中でカプセル化された。
図18】第1又は第2の区画上で対照又はRGD-コンジュゲートアルギン酸塩を有する2区画カプセルの蛍光画像の白黒写真である。カプセルは、このカプセルの表面に付着したマウスマクロファージを同定するためにF4/80に関して染色されており、通常は緑色の蛍光で現れるが、この写真では白色で示される。
図19】FIXタンパク質を発現するように組み換えられたRPE細胞を含む2区画ヒドロゲルカプセルの移植後2週間でのヌードマウスにおけるFIX-paduaの血漿レベルを示す棒グラフである。RPE細胞は、一緒にブレンドされたか又は両方とも同一のポリマーにコンジュゲートした様々なポリマー上で1G-RGDペプチド及びG-PHSRNペプチドの両方を含む第1の区画中でカプセル化された。
図20】FVIIIタンパク質(配列番号8によりコードされる配列番号1)を発現するように組み換えられたRPE細胞を含む2区画ヒドロゲルカプセルの移植後11日でのヌードマウスにおけるFVIII-BDDの血漿レベル(1つの群当たり5匹のマウス)を示す棒グラフである。
図21】組み換えRPE細胞を生成するのに有用なPiggyBacトランスポゾン発現ベクターを示す。
図22】FIXタンパク質を発現するように組み換えられた例示的なRPE細胞を含む2区画ヒドロゲルカプセルの移植後12日でのヌードマウスにおけるFIXタンパク質の血漿レベル(1つの群当たり3匹のマウス)を示す棒グラフである。組み換えRPE細胞を、様々なリンカーの長さ及び配列を含むCBP-ポリマーで修飾されたカプセルの第1の区画中でカプセル化した。図22は、配列番号59としての「RDGSP」を開示する。
図23】FIXタンパク質を発現するように組み換えられた例示的なRPE細胞を含む2区画ヒドロゲルカプセルの移植後18日でのヌードマウスにおけるFIXタンパク質の血漿レベル(1つの群当たり4匹のマウス)を示す棒グラフである。組み換えRPE細胞を、様々な溶液粘度のCBP修飾アルギン酸塩で調製したカプセルの第1の区画中でカプセル化した。
図24】表7~11中に、例示的なアミノ酸配列(配列番号1、3~7、29~36)及び治療用ポリペプチドのコード配列(配列番号8~21)、及びRPE細胞を組み換えるのに有用な例示的な発現ベクター(配列番号22~28)内のヌクレオチド配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示は、ポリマー組成物によりカプセル化された複数の細胞(例えば生細胞)を含む少なくとも1個の区画を含むデバイスを特徴とする。このカプセル化ポリマー組成物は、少なくとも1種の細胞結合物質(CBS)を含み、例えば、細胞結合ペプチド(CBP)又は細胞結合ポリペプチド(CBPP)を含む。この細胞は、このデバイスが対象(例えばヒト)に移植された場合に治療薬を発現し得、このデバイスは、このデバイスが対象に移植された場合に異物反応(FBR)を軽減するための手段をさらに含む。ある実施形態において、FBRを軽減するための手段は、このデバイスの表面上に配置された式(I)の化合物を含む。本開示はまた、本明細書で説明されている複数のデバイスを含む調製物と、この調製物を製造する方法及び使用する方法も提供する。いくつかの実施形態において、本明細書で説明されているデバイス及びその調製物又は組成物は、治療薬のインビボでの発現により予防され得るか又は処置され得る疾患、障害、又は状態の予防又は処置に有用である。いくつかの実施形態において、これらのデバイス及び調製物は、有利な特性を有し、例えば、カプセル化された細胞は、CBSを含まない実質的に同一のデバイス(例えば、CBSなしの参照デバイス)中に移植された実質的に同一の細胞と比べて、高いインビボでの産生性及び/又は生存率を有する。
【0025】
略語及び定義
本開示の詳細な説明及び実施例の全体を通して、下記の略語が使用される。
CBP:細胞結合ペプチド
CBPP:細胞結合ポリペプチド
CBP-ポリマー:リンカーを介してCBPで共有結合的に修飾されたポリマー
CBS:細胞結合物質
CM-Alg:化学修飾アルギン酸塩
CM-LMW-Alg:化学修飾された、低分子量アルギン酸塩
CM-LMW-Alg-101:表4に示される化合物101で化学修飾された、低分子量アルギン酸塩
CM-HMW-Alg:化学修飾された、高分子量アルギン酸塩
CM-HMW-Alg-101:表4に示される化合物101で化学修飾された、高分子量アルギン酸塩
CM-MMW-Alg:化学修飾された、中間分子量アルギン酸塩
CM-MMW-Alg-101:表4に示される化合物101で化学修飾された、中間分子量アルギン酸塩
HMW-Alg:高分子量アルギン酸塩
MMW-Alg:中間分子量アルギン酸塩
RGD-アルギン酸塩:アミノ酸配列RGD(配列番号43)を含むペプチドで共有結合的に修飾されたアルギン酸塩
U-Alg:非修飾アルギン酸塩
U-HMW-Alg:非修飾高分子量アルギン酸塩
U-LMW-Alg:非修飾低分子量アルギン酸塩
U-MMW-Alg:非修飾中間分子量アルギン酸塩
70:30のCM-Alg:U-Alg:化学修飾アルギン酸塩及び非修飾アルギン酸塩の70:30混合物(V:V)、例えば、実施例2に記載のとおり
【0026】
本開示が、より容易に理解され得るように、本明細書において使用されるいくつかの専門用語及び科学用語が、以下に具体的に定義される。本明細書において他の箇所に特に定義されない限り、本明細書において使用される全ての他の専門用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。
【0027】
添付の特許請求の範囲を含め、本明細書において用いられるところ、「a」、「an」、及び「the」などの単数形の用語は、文脈上特に明記されない限り、それらの対応する複数の指示対象を含む。
【0028】
「約」又は「おおよそ」は、数値として定義されたパラメータ(例えば、ヒドロゲルカプセルの物理的性質、例えば、直径、球形度、このカプセル中でカプセル化された細胞の数、調製物中のカプセルの数)を修飾するために本明細書で使用される場合には、引用された数値が、当業者により決定された場合に、定義されたパラメータの許容可能な機能的範囲内であることを意味し、この機能的範囲は、この数値がどのように測定されるか又は決定されるかに部分的に依存し、例えば、この測定システムの許容可能な誤差範囲等の測定システムの限界に部分的に依存する。例えば、「約」は、引用された数値の20%上下の範囲を意味し得る。非限定的な例として、直径が約1.5ミリメートル(mm)であり且つ約500万(M)個の細胞をカプセル化すると定義されたヒドロゲルカプセルは、直径が1.2~1.8mmであり得、且つ4M~6M個の細胞をカプセル化し得る。別の非限定的な例として、約100個のデバイス(例えばヒドロゲルカプセル)の調製物として80~120個のデバイスを有する調製物が挙げられる。いくつかの実施形態において、用語「約」は、修飾されたパラメータが、このパラメータに関して述べられた数値の15%、10%、又は5%上下だけ変動し得ることを意味する。或いは、特に、本明細書で説明されているデバイスのある特定の特性(例えば、細胞産生性、又はCBP若しくは抗線維性化合物の密度)に関して、用語「約」は、引用された値の一桁内(例えば、5倍、4倍、3倍、2倍、又は1倍以内)の上下を意味し得る。
【0029】
本明細書において用いられるところ、「取得する(Acquire)」又は「取得している(acquiring)」は、値又は物理的エンティティを「直接的に取得する」又は「間接的に取得する」ことによる、値(例えば数値若しくはイメージ)、又は、物理的エンティティ(例えばサンプル)の入手を達成することを指す。「直接的に取得する」とは、プロセスを実施(例えば分析方法又はプロトコルの実施)して、値又は物理的エンティティを得ることを意味する。「間接的に取得する」とは、他の団体又は提供者(例えば、物理的エンティティ又は値を直接的に取得した第三者の実験室)から値又は物理的エンティティを受け取ることを指す。値又は物理的エンティティを直接的に取得するステップは、物理的な物質における物理的な変更、又は、機器若しくはデバイスの使用を含むプロセスの実施を含む。値を直接的に取得するステップの例としては、ヒト対象からのサンプルの入手が挙げられる。値を直接的に取得するステップは、例えば、蛍光顕微鏡データを取得する蛍光顕微鏡の使用といった、機器又はデバイスを使用するプロセスの実施を含む。
【0030】
「投与する(administer)」、「投与する(administering)」、又は「投与」は、本明細書で使用される場合、本明細書で説明されている実体(例えば、デバイス、若しくはデバイスの調製物)を対象に移植するか、吸収させるか、摂取させるか、注射するか、若しくは別の方法で導入することを指すか、又は投与のためにそのような実体を対象に提供することを指す。
【0031】
「抗線維性」は、本明細書で使用される場合、異物反応(FBR)を軽減する化合物又は物質を意味する。例えば、抗線維性化合物を含むデバイス(例えばヒドロゲルカプセル)(例えば、表4で列挙される化合物で共有結合的に修飾されたポリマーを含むヒドロゲルカプセル)の組織への移植により誘発される生体組織中でのFBRの量は、抗線維性なしの参照デバイス(即ち、あらゆる抗線維性化合物を欠くが、組成(例えば、同一のCBP-ポリマー、同一の細胞型)及び構造(例えば、サイズ、形状、区画の数)が実質的に同一のデバイス)の移植により誘発されるFBRと比べて少ない。実施形態において、FBRの程度は、例えば、国際公開第2017/075630号パンフレットに記載される当該技術分野において公知のアッセイを用いて、又はVegas,A.,et al.,Nature Biotechnol(上掲)に記載されるアッセイ/方法(例えば、移植されたカプセルの皮下カテプシン測定、組織切片のマッソンのトリクローム(MT)、ヘマトキシリン又はエオジン染色、コラーゲン密度の定量化、マクロファージ(CD68又はF4/80)細胞染色及び共焦点顕微鏡検査、筋線維芽細胞(α平滑筋アクチン(alpha-muscle actin)、SMA)又は一般的な細胞付着、公知の炎症因子及び免疫細胞マーカーの79RNA配列の定量化、又は好適な被験体、例えば、免疫応答性マウスの腹腔内で14日後に回収されたデバイス(例えば、カプセル)におけるマクロファージ及び好中球についてのFACS分析のうちの1つ又は複数を用いて、例えば、タンパク質吸着、マクロファージ、多核異物巨細胞、線維芽細胞、及び血管新生を含み得る移植されたデバイス(例えば、ヒドロゲルカプセル)を含む組織における免疫応答によって評価される。実施形態において、FBRは、免疫応答の1つ又は複数のバイオマーカー、例えば、カテプシン、TNF-α、IL-13、IL-6、G-CSF、GM-CSF、IL-4、CCL2、又はCCL4の移植を含む組織におけるレベルを測定することによって評価される。いくつかの実施形態において、本発明のデバイス(例えば、外面上に配置された抗線維性化合物を含むヒドロゲルカプセル)により誘発されたFBRは、FBRなしの参照デバイス(例えば、FBRを軽減するための手段を欠く以外は試験デバイス又は特許請求されているデバイスと実質的に同一であるデバイス(例えば、抗線維性化合物を含まないが、それ以外は特許請求されているカプセルと実質的に同一であるヒドロゲルカプセル))により誘発されたFBRと比べて少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、又は約100%低い。いくつかの実施形態において、FBR(例えば、バイオマーカーのレベル)は、約30分、約1時間、約6時間、約12時間、約1日、約2日、約3日、約4日、約1週間、約2週間、約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約6ヶ月、又は約より長い後に測定されている。
【0032】
「細胞」は、本明細書で使用される場合、組み換えられた細胞を指すか、又は組み換えられていない細胞を指す。ある実施形態において、細胞は、不死化細胞であるか、又は不死化細胞に由来する組み換え細胞である。ある実施形態において、細胞は、生細胞であり、例えば、本明細書で説明されているか又は当該技術分野で既知の任意の技術により測定した場合に生存している。
【0033】
「細胞結合ペプチド(CBP)」は、本明細書で使用される場合、細胞付着分子(CAM)(例えば、細胞-マトリックス接合又は細胞-細胞接合を媒介するCAM)のリガンドの細胞結合ドメインに由来するアミノ酸配列を含む直鎖状又は環状のペプチドを意味する。CBPは、50個、40個、30個、25個、20個、15個、又は10個未満のアミノ酸の長さである。ある実施形態において、CBPは、3~12個のアミノ酸の長さであるか、4~10個のアミノ酸の長さであるか、又は3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、若しくは10個のアミノ酸の長さである。CBPのアミノ酸配列は、天然に存在する結合ドメイン配列と同一であってもよいし、その保存的に置換された変異体であってもよい。ある実施形態において、CAMリガンドは、哺乳動物タンパク質である。ある実施形態において、CAMリガンドは、下記の表1で列挙されているタンパク質の群から選択されるヒトタンパク質である。ある実施形態において、CBPは、下記の表1で列挙されている細胞結合配列、又はその保存的に置換された変異体を含む。ある実施形態において、CBPは、下記の表1で列挙されている細胞結合配列の内の少なくとも1つを含む。ある実施形態において、CBPは、下記の表1で列挙されている細胞結合配列から本質的になる。ある実施形態において、CBPは、RGDペプチドであり、これは、このペプチドが、アミノ酸配列RGD(配列番号43)を含み、任意選択的に、N末端及びC末端の内の一方又は両方に位置する1つ又は複数の追加のアミノ酸を含むことを意味する。ある実施形態において、CBPは、RGD(配列番号43)を含む環状ペプチドであり、例えば、Vilaca,H.et al.,Tetrahedron 70(35):5420-5427(2014)で説明されている環状RGDペプチドの内の1つである。ある実施形態において、CBPは、RGD(配列番号43)を含む直鎖状ペプチドであり、且つ6個未満のアミノ酸の長さである。ある実施形態において、CBPは、RGD(配列番号43)又はRGDSP(配列番号59)から本質的になる直鎖状ペプチドである。
【0034】
【表1】
【0035】
「CBP-ポリマー」は、本明細書で使用される場合、ポリマーであって、リンカーを介してこのポリマーに共有結合的に付着している少なくとも1つの細胞結合ペプチド分子を含むポリマーを意味する。ある実施形態において、このポリマーは、ペプチドでもポリペプチドでもない。ある実施形態において、CBP-ポリマー中のポリマーは、あらゆるアミノ酸を含まない。ある実施形態において、CBP-ポリマー中のポリマーは、合成の又は天然に存在する多糖であり、例えばアルギン酸塩であり、例えばアルギン酸ナトリウムである。ある実施形態において、リンカーは、アミノ酸リンカーであり(即ち、単一のアミノ酸から本質的になるか、又はいくつかの同一の若しくは異なるアミノ酸のペプチドから本質的になり)、このアミノ酸リンカーは、CBPのN末端又はC末端に結合したペプチドを介して連結されている。ある実施形態において、アミノ酸リンカーのC末端は、CBPのN末端に連結されており、アミノ酸リンカーのN末端は、アミド結合を介して多糖中の少なくとも1つのペンダントカルボキシル基に連結されている。ある実施形態において、リンカー-CBPの構造は、リンカーが1個、2個、3個、又は4個のグリシン残基を有することを意味するG(1~4)-CBPと表される(「G(1~4)」は、配列番号70として開示されている)。ある実施形態において、CBP-多糖、例えばCBP-アルギン酸塩)中の単糖部分の内の1つ又は複数は、CBPで修飾されておらず、例えば、この非修飾部分は、遊離カルボキシル基を有するか、又は修飾可能なペンダントカルボキシル基を欠いている。ある実施形態において、CBPが共有結合的に付着している多糖部分の数は、下記の値の内のいずれか未満である:99%、95%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、1%。
【0036】
ある実施形態において、CBP-ポリマー中のCBP修飾の密度は、例えば下記の実施例で説明されているように、窒素パーセントに関する燃焼分析により推定される。ある実施形態において、CBP-ポリマーは、RGD-ポリマー(例えばRGD-アルギン酸塩)であり、このRGD-ポリマーは、リンカーRGD分子(例えば、GRGD(配列番号62)又はGRGDSP(配列番号60)から本質的になるペプチド)で共有結合的に修飾されたポリマー(例えばアルギン酸塩)であり、リンカー-RGD分子修飾の密度(例えばコンジュゲーション密度)は、本明細書で説明されているアッセイを使用して決定した場合に、約0.05%の窒素(N)~1.00%のN、約0.10%のN~約0.75%のN、約0.20%のN~約0.50%のN、又は約0.30%のN~約0.40%のNである。ある実施形態において、RGD-アルギン酸塩(例えば、GRGDSP(配列番号60)で共有結合的に修飾されたMMWアルギン酸塩)中のリンカー-RGD修飾のコンジュゲーション密度は、ポリマーにコンジュゲートされたペプチドの量を定量し得る任意のアッセイ(例えば、本明細書で説明されている定量的ペプチドコンジュゲーションアッセイ)により決定した場合に、粘度が80~120cPである溶液(例えば生理食塩水)中のRGD-ポリマー1g当たりリンカー-RGD部分0.1~1.0、0.2~0.8、0.3~0.7、0.3~0.6、0.4~0.6マイクロモルである。別途明示的に述べられていない限り、又は文脈から明らかでない限り、CBP-ポリマー中のCBPに関する具体的に列挙された数値濃度、濃度範囲、密度、又は密度範囲は、コンジュゲートしたCBP分子の濃度又は密度を指し、即ち、CBP-ポリマー中に存在し得るいかなる残留遊離(例えばコンジュゲートしていない)CBPも含まない。
【0037】
「細胞結合ポリペプチド(CBPP)」は、本明細書で使用される場合、少なくとも50個、少なくとも75個、又は少なくとも100個のアミノ酸の長さであり且つCAMリガンドの細胞結合ドメインのアミノ酸配列又はその保存的に置換された変異体を含むポリペプチドを意味する。ある実施形態において、CAMリガンドは、哺乳動物タンパク質である。ある実施形態において、CBPPアミノ酸は、完全長CAMリガンドの天然に存在するアミノ酸配列を含み、例えば、表1で列挙されているタンパク質の内の1つ又はその保存的に置換されている変異体を含む。
【0038】
「CBP密度」は、本明細書で使用される場合、別途本明細書で明示的に述べられていない限り、CBP-ポリマー(例えば、G1~3RGD(配列番号63)又はG1~3RGDSP(配列番号64)で修飾されたアルギン酸塩)中のリンカー-CBP部分の量又は濃度を指す。
【0039】
「細胞結合物質(CBS)」は、本明細書で使用される場合、細胞-マトリックス接合若しくは細胞-細胞接合又は他のレセプター媒介シグナル伝達を媒介する細胞付着分子(CAM)又は他の細胞表面分子のリガンドの少なくとも1種の活性を模倣し得るあらゆる化学物質、生物学的物質、又は他のタイプの物質(例えば、小有機化合物、ペプチド、ポリペプチド)を意味する。ある実施形態において、細胞をカプセル化するポリマー組成物中に存在する場合には、CBSは、1つ又は複数の細胞との一過性の又は永続的な結合又は接触を形成し得る。ある実施形態において、CBSは、ポリマー組成物中でカプセル化された2個以上の生細胞間の相互作用を促進する。ある実施形態において、複数の細胞(例えば生細胞)をカプセル化するポリマー組成物中のCBSの存在は、カプセル化された細胞が試験対象(例えばマウス)に移植された場合の細胞産生性(例えば、治療薬の発現)の増加、及び細胞の生存率の増加の内の一方又他は両方と相関する。ある実施形態において、CBSは、ポリマー組成物中の1つ又は複数のポリマー分子に物理的に付着している。ある実施形態において、CBSは、本明細書で定義されているように、細胞結合ペプチド又は細胞結合ポリペプチドである。
【0040】
本明細書において用いられるところ、「保存的に修飾された変異体」又は保存的置換」は、そのアミノ酸配列中に1つ又は複数の保存的アミノ酸置換を有することを除いて、参照分子と同一である参照ペプチド又はポリペプチドの変異体を指す。実施形態において、保存的に修飾された変異体は、参照アミノ酸配列と少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、97%、98%又は99%同一のアミノ酸配列からなる。保存的アミノ酸置換は、同様の特徴(例えば、電荷、側鎖サイズ、疎水性/親水性、骨格構造及び剛性など)を有し、且つ得られる置換ペプチド又はポリペプチドの生物活性に最小限の影響を与えるアミノ酸による、アミノ酸の置換を指す。機能的に類似したアミノ酸の保存的置換の表は、当該技術分野において周知であり、機能的特徴によって分類された例示的な置換が、以下の表2に記載されている。
【0041】
【表2】
【0042】
本明細書及び特許請求の範囲を通して用いられるところの「から本質的になる(consists essentially of)」、及び「から本質的になる(consist essentially of)」又は「から本質的になる(consisting essentially of)」などの変化形は、任意の記載される要素又は要素の群の包含、及び規定の分子、組成物、デバイス、又は方法の基本的又は新規な性質を実質的に変化させない、記載される要素と類似の又は異なる性質の他の要素の任意選択の包含を示す。非限定的な例として、列挙されたアミノ酸配列から本質的になる細胞結合ペプチド又は治療用タンパク質はまた、それぞれ、この細胞結合ペプチド又は治療用タンパク質の関連する生物学的活性に実質的に影響を及ぼさない1つ又は複数のアミノ酸残基のこの列挙されたアミノ酸配列中の置換を含む1つ又は複数のアミノ酸も含み得る。別の非限定的な例として、列挙されたアミノ酸配列から本質的になる細胞結合ペプチドは、この細胞結合ペプチドの関連する生物学的活性(例えば、本明細書で説明されているカプセル化された細胞の生存率又は産生性を増加させる能力)を実質的に変化させない、1つ又は複数の共有結合的に付着した部分(例えば、放射性標識又は蛍光標識)を含み得る。
【0043】
「に由来する」は、細胞に関して本明細書で使用される場合、組織、細胞株、又は細胞から得られる細胞を指し、この細胞は、次いで任意選択的に、例えば、培養され、継代され、分化され、誘導されて、由来細胞を生じる。例えば、間葉系幹細胞は、間葉系組織に由来し得、次いで、様々な細胞型に分化され得る。
【0044】
「デバイス」は、本明細書で使用される場合、あらゆる移植可能な物体(例えば、粒子、ヒドロゲルカプセル、移植片、医療機器)を指し、この物体は、このデバイスの移植後に治療薬を発現し得る細胞(例えば生細胞)を含み、且つこのデバイスに細胞栄養素が入ることを可能にすることにより、この細胞の生存率を支える構造を有する。いくつかの実施形態において、このデバイスは、生細胞により生成された代謝副産物及び/又は治療薬のこのデバイスからの放出が可能である。
【0045】
本明細書において用いられるところ、「差分体積」は、別の区画に占有される空間を除く、本明細書に記載のデバイス内の1つの区画の体積を指す。例えば、内側及び外側区画を有する2区画デバイス中の第2の(例えば、外側)区画の差分体積は、第1(内側)の区画に占有される空間を除く、第2の区画内の体積を指す。
【0046】
「有効量」は、本明細書で使用される場合、例えば疾患、障害、又は状態を処置するために生物学的反応を誘発するのに十分な、デバイス、デバイス組成物、又はデバイス若しくはデバイス組成物の成分、例えば、細胞(例えば、組み換え細胞)を含む複数のヒドロゲルカプセル、又は細胞(例えば、組み換えRPE細胞)により産生された薬剤(例えば治療薬)の量を指す。いくつかの実施形態において、用語「有効量」は、デバイスの成分の量を指し、例えば、このデバイス中の細胞の数、このデバイスの表面上に及び/又はバリア区画中に配置された抗線維性化合物の密度、細胞含有区画中のCBSの密度を指す。当業者に認識されるように、有効量は、所望される生物学的エンドポイント、治療薬、組成物、又はデバイス(例えば、カプセル、粒子)の薬物動態、処置される状態、投与様式、並びに対象の年齢及び健康状態等の因子に応じて変動し得る。有効量は、治療的処置及び予防的処置を包含する。例えば、FBRを軽減するために、式(I)の化合物の有効量は、線維化を低減し得るか、又は移植されたデバイス上の若しくはこのデバイス付近の線維化組織の増殖若しくは拡散を停止させ得る。別の例として、CBSの有効量は、デバイス中の細胞の生存率(例えば、生細胞の数)を改善させ得、並びに/又はこの細胞により発現される及び/若しくは分泌される治療薬のレベルを上昇させ得る。デバイス、組成物、又は成分(例えば、抗線維性化合物若しくはCBS)の有効量は、当該技術分野で既知であるか又は本明細書で説明されている任意の技術により決定され得る。
【0047】
本明細書において用いられるところ、「内因性の核酸」とは、対象の細胞内で自然に生じる核酸である。
【0048】
本明細書において用いられるところ、「内因性のポリペプチド」とは、対象の細胞内で自然に生じるポリペプチドである。
【0049】
本明細書において用いられるところ、「組み換え細胞」とは、天然のものではない改変を有する細胞(例えば、RPE細胞)であり、典型的には、同様の条件下で組み換えがなされていない他の同様の細胞中に存在していない(又は、異なるレベルで存在する)核酸配列(例えば、DNA又はRNA)又はポリペプチドを含む(外因性の核酸配列)。実施形態において、組み換え細胞は外因性の核酸を含む(例えば、ベクター又は改変染色体配列)。実施形態において、組み換え細胞は、外因性のポリペプチドを含む。実施形態において、組み換え細胞は、組み換えがなされていない同様の細胞に存在しない外因性の核酸配列、例えば配列、例えばDNA又はRNAを含む。実施形態において、外因性の核酸配列は染色体性であり、例えば、外因性の核酸配列は、内因性の染色体配列中に配置された外因性の配列である。実施形態において、外因性の核酸配列は、染色体性又は染色体外性である、例えば非組み込み型ベクターである。実施形態において、外因性の核酸配列は、RNA配列、例えば、mRNAを含む。実施形態において、外因性の核酸配列は、RNAとして発現される配列、例えばmRNA又は調節RNAを含む染色体性又は染色体外性の外因性の核酸配列を含む。実施形態において、外因性の核酸配列は、ポリペプチドをコードする配列、又は、ポリペプチドとして発現される配列を含む染色体性又は染色体外性の核酸配列を含む。実施形態において、外因性の核酸配列は、第2の核酸配列の立体構造又は発現を調節する第1の染色体性又は染色体外性の外因性の核酸配列を含み、ここで、第2のアミノ酸配列は外因性又は内因性であることが可能である。例えば、組み換え細胞は、内因性の配列の発現を制御する外因性の核酸を含んでいることが可能である。実施形態において、組み換え細胞は、組み換えがなされていない同様の細胞において見出されるレベルとは異なるレベル又は分布で存在するポリペプチドを含み得る。実施形態において、組み換え細胞は、RNA又はポリペプチドを生成するために組み替えられたRPEを含む。実施形態において、組み換え細胞は、RNAとして発現される配列、例えばmRNA又は調節RNAを含む配列を含む染色体性又は染色体外性の外因性の核酸配列を含む外因性の核酸配列を含み得る。実施形態において、組み換え細胞(例えば、RPE細胞)は、ポリペプチドをコードする配列、又はポリペプチドとして発現される配列を含む染色体性又は染色体外性の核酸配列を含む外因性の核酸配列を含む。ある実施形態において、ポリペプチドは、天然に存在するコード配列と比べてポリペプチドの高い発現を達成するために、コドン最適化配列でコードされている。このコドン最適化配列は、市販のアルゴリズムを使用して生成され得、例えば、GeneOptimizer(ThermoFisher Scientific)、OptimumGene(商標)(GenScript,Piscataway,NJ USA)、GeneGPS(登録商標)(ATUM,Newark,CA USA)、又はJava(登録商標) Codon Adaptation Tool(JCat,www.jcat.de,Grote、A.et al.,Nucleic Acids Research,Vol 33,Issue suppl_2,pp.W526-W531(2005)を使用して生成され得る。ある実施形態において、組み換え細胞(例えばRPE細胞)は、内因性の配列の高次構造又は発現を制御する外因性の核酸配列を含む。ある実施形態において、組み換え細胞(例えばRPE細胞)は、安定的にトランスフェクトされた細胞の集団から培養されるか、又はモノクローナル細胞株から培養される。
【0050】
「外因性の核酸」とは、本明細書で使用される場合、対象細胞中に天然には存在しない核酸のことである。
【0051】
「外因性のポリペプチド」とは、本明細書で使用される場合、対象細胞(例えば組み換え細胞)中に天然には存在しないポリペプチドのことである。特定の配列のアミノ酸位置への言及は、(別途述べられていない限り)参照アミノ酸配列(例えば、完全長の成熟(シグナルペプチド開裂後)野生型タンパク質の配列)中での前記アミノ酸の位置を意味しており、且つ参照アミノ酸配列中の他の位置での変異(例えば、欠失、挿入、及び/又は置換)の存在を排除しない。
【0052】
本明細書において用いられるところ、「第VII因子タンパク質」又は「FVIIタンパク質」は、別段の定めがある場合を除き、当該技術分野において認識されているアッセイによって決定される際、FVII生物活性、例えば、血液凝固の促進を有する、天然の第VII因子タンパク質又はその変異体のアミノ酸配列を含むポリペプチドを意味する。天然のFVIIは、一本鎖酵素前駆体、酵素前駆体様の二本鎖ポリペプチド及び完全に活性化された二本鎖形態(FVIIa)として存在する。いくつかの実施形態において、FVIIへの言及は、酵素前駆体様及びFVIIaを含む、その一本鎖及び二本鎖形態を含む。本明細書に記載のデバイス、例えば、組み換えRPE細胞を含むデバイスによって生成され得るFVIIタンパク質は、野生型霊長類(例えば、ヒト)、ブタ、イヌ、及びマウスタンパク質、並びに1つ又は複数のアミノ酸置換及び/又は欠失を有する断片、突然変異体、変異体を含む、このような野生型タンパク質の変異体を含む。いくつかの実施形態において、変異体FVIIタンパク質は、野生型第VIIa因子の活性の少なくとも50%、75%、90%又はそれ以上(>100%を含む)を有する完全に活性化された二本鎖形態(第VIIa因子)へと活性化されることが可能である。FVII及びFVIIaの変異体は公知であり、例えば、マルゼプタコグアルファ(marzeptacog alfa)(活性化)(MarzAA)並びに欧州特許第1373493号明細書、米国特許第7771996号明細書、米国特許第9476037号明細書及び米国特許出願公開第20080058255号明細書に記載されている変異体である。
【0053】
FVII因子生物活性は、別段の定めがある場合を除き、当該技術分野において認識されているアッセイによって定量化され得る。例えば、生体液、例えば、血漿のサンプルのFVII生物活性は、(i)脂質膜及び第X因子に埋め込まれた組織因子(TF)を含むシステムにおいて生成された第Xa因子の量を測定すること(Persson et al.,J.Biol.Chem.272:19919-19924,1997);(ii)水性系における第X因子加水分解を測定すること;(iii)表面プラズモン共鳴に基づいて機器を用いてTFへのその物理的結合を測定すること(Persson,FEBS Letts.413:359-363,1997);又は(iv)合成基質の加水分解を測定すること;及び/又は(v)TF非依存性インビトロ系におけるトロンビンの生成を測定することによって定量化され得る。実施形態において、FVII活性は、市販の発色アッセイ(BIOPHEN FVII,HYPHEN BioMed Neuville sur Oise,France)によって評価され、ここで、FVIIを含有する生体サンプルが、トロンボプラスチンカルシウム、第X及びSXa-11因子(第Xa因子に特異的な発色性基質と混合される。
【0054】
本明細書において用いられるところ、「第VIII因子タンパク質」又は「FVIIIタンパク質」は、別段の定めがある場合を除き、当該技術分野において認識されているアッセイによって決定される際、FVIII生物活性、例えば、凝固活性を有する、天然の第VIII因子ポリペプチド又はその変異体のアミノ酸配列を含むポリペプチドを意味する。本明細書に記載のデバイス、例えば、組み換えRPE細胞を含むデバイスによって発現され得るFVIIIタンパク質は、野生型霊長類(例えば、ヒト)、ブタ、イヌ、及びマウスタンパク質、並びに1つ又は複数のアミノ酸置換及び/又は欠失、Bドメイン欠失(BDD)変異体、一本鎖変異体及び半減期延長ポリペプチドを有する上記の野生型又は変異体のいずれかの融合を有する断片、突然変異体、変異体を含む、このような野生型タンパク質の変異体を含む。実施形態において、細胞は、Bドメインの完全又は部分的な欠失を有する前駆体第VIII因子ポリペプチド(例えば、シグナル配列を有する)をコードするように組み換えられる。実施形態において、細胞は、一本鎖第VIII因子ポリペプチドをコードするように組み換えられ、変異体FVIIIタンパク質は、好ましくは、対応する野生型第VIII因子の凝固活性の少なくとも50%、75%、90%又はそれ以上(>100%を含む)を有する。FVIIIタンパク質の凝固活性を測定するためのアッセイは、一段階又は二段階凝固アッセイ(Rizza et al.,1982,Coagulation assay of FVIII:C and FIXa in Bloom ed.The Hemophelias.NY Churchill Livingston 1992)又は発色性基質FVIII:Cアッセイ(Rosen,S.1984.Scand J Haematol 33:139-145、補遺)を含む。
【0055】
いくつかのFVIII-BDD変異体が公知であり、例えば、以下の米国特許第4,868,112号明細書(例えば、第2欄、2行から第19欄、21行及び表2);同第5,112,950号明細書(例えば、第2欄、55~68行、図2、及び実施例1);同第5,171,844号明細書(例えば、第4欄、122行から第5欄、36行);同第5,543,502号明細書(例えば、第2欄、17~46行);同第5,595,886号明細書;同第5,610,278号明細書;同第5,789,203号明細書(例えば、第2欄、26~51行及び実施例5~8);同第5,972,885号明細書(例えば、第1欄、25行から第2欄、40行);同第6,048,720号明細書(例えば、第6欄、1~22行及び実施例1);同第6,060,447号明細書;同第6,228,620号明細書;同第6,316,226号明細書(例えば、第4欄、4行から第5欄、28行及び実施例1~5);同第6,346,513号明細書;同第6,458,563号明細書(例えば、第4欄、25~53行)及び同第7,041,635号明細書(例えば、第2欄、1行から第3欄、19行、第3欄、40行から第4欄、67行、第7欄、43行から第8欄、26行、及び第11欄、5行から第13欄、39行)のいずれかに開示されている完全又は部分的なBドメイン欠失を有する変異体が挙げられる。
【0056】
いくつかの実施形態において、(例えば、デバイスに含まれる組み換え細胞によって発現される)本明細書に記載のデバイスより生成されるFVIII-BDDタンパク質は、Bドメインにおけるアミノ酸の以下の欠失の1つ又は複数を有する:(i)2つのポリペプチド鎖への一次翻訳産物の細胞内プロセシングに不可欠なアミノ末端Bドメイン配列を除くBドメインの大部分(国際公開第91/09122号パンフレット);(ii)アミノ酸747~1638(Hoeben R.C.,et al.J.Biol.Chem.265(13):7318-7323(1990));アミノ酸771~1666又はアミノ酸868~1562(Meulien P.,et al.Protein Eng.2(4):301-6(1988);アミノ酸982~1562又は760~1639(Toole et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.83:5939-5942(1986));アミノ酸797~1562(Eaton et al.,Biochemistry 25:8343-8347(1986));741~1646(Kaufman、国際公開第87/04187号パンフレット))、747~1560(Sarver et al.,DNA 6:553-564(1987));アミノ酸741~1648(Pasek、国際公開第88/00831号パンフレット))、アミノ酸816~1598又は741~1689(Lagner(Behring Inst.Mitt.(1988)No 82:16-25、EP295597号明細書)の欠失;フーリンプロテアーゼ認識配列における1つ又は複数の残基を含む欠失、例えば、米国特許第9,956,269号明細書、第10欄、65行から第11欄、36行に記載されている特定の欠失のいずれかを含む、アミノ酸1643~1648におけるLKRHQR(配列番号65)。
【0057】
他の実施形態において、FVIII-BDDタンパク質は、以下のBドメインアミノ酸又はアミノ酸配列のいずれかを保持する:(i)Bドメインにおける1つ又は複数のN-連結されたグリコシル化部位、例えば、残基757、784、828、900、963、又は任意選択により943、最初の226アミノ酸又は最初の163アミノ酸(Miao,H.Z.,et al.,Blood 103(a):3412-3419(2004)、Kasuda,A.,et al.,J.Thromb.Haemost.6:1352-1359(2008)、及びPipe,S.W.,et al.,J.Thromb.Haemost.9:2235-2242(2011)。
【0058】
いくつかの実施形態において、FVIII-BDDタンパク質は、米国特許第10,023,628号明細書、同第9,394,353号明細書及び同第9,670,267号明細書に記載されているR1645及び/又はR1648位置における置換のいずれかを含む、この部位におけるタンパク質分解による切断を防ぐフーリンプロテアーゼ認識配列における1つ又は複数のアミノ酸の置換(アミノ酸1643~1648におけるLKRHQR(配列番号65))によって生成される一本鎖変異体である。
【0059】
いくつかの実施形態において、上記のFVIII-BDDタンパク質のいずれかは、以下の変位の1つ又は複数をさらに含み得る:FVIII-BDDタンパク質の発現を改善するためのF309S置換(Miao,H.Z.,et al.,Blood 103(a):3412-3419(2004);アルブミン融合(国際公開第2011/020866号パンフレット);及びFc融合(国際公開第04/101740号パンフレット)。
【0060】
別段の定めがある場合を除き、本明細書において言及される全てのFVIII-BDDアミノ酸位置は、完全長ヒトFVIIIにおける位置を指す。
【0061】
本明細書において用いられるところ、「第IX因子タンパク質」又は「FIXタンパク質」は、別段の定めがある場合を除き、当該技術分野において認識されているアッセイによって決定される際、FIX生物活性、例えば、凝固活性を有する天然の第IX因子タンパク質又はその変異体のアミノ酸配列を含むポリペプチドを意味する。FIXは、不活性な酵素前駆体として生成され、これは、活性化ペプチドの第XIa因子除去によって活性な形態に転化されて、1つ又は複数のジスルフィド結合によって一緒に保持された重鎖及び軽鎖が生成される。(例えば、組み換えRPE細胞を含むデバイス)本明細書に記載のデバイスによって生成され得るFIXタンパク質は、野生型霊長類(例えば、ヒト)、ブタ、イヌ、及びマウスタンパク質、並びに半減期延長ポリペプチドを有する上記の野生型又は変異体タンパク質のいずれかの1つ又は複数のアミノ酸置換及び/又は欠失及び融合を有する断片、突然変異体、変異体を含む、このような野生型タンパク質の変異体を含む。実施形態において、細胞は、完全長野生型ヒト第IX因子ポリペプチド(例えば、シグナル配列を有する)又はその機能的変異体をコードするように組み換えられる。変異体FIXタンパク質は、好ましくは、野生型第VIX因子の凝固活性の少なくとも50%、75%、90%又はそれ以上(>100%を含む)を有する。FIXタンパク質の凝固活性を測定するためのアッセイとしては、Biophen第IX因子アッセイ(Hyphen BioMed)及び一段階凝固アッセイ(活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)(例えば、欧州特許第2032 607号明細書に記載される)、トロンビン生成時間アッセイ(TGA)及び回転式トロンボエラストメトリー(例えば、国際公開第2012/006624号パンフレットに記載される)が挙げられる。
【0062】
いくつかの機能的FIX変異体が公知であり、以下の国際特許公報:国際公開第02/040544号パンフレット、4頁、9~30行及び15頁、6~31行;国際公開第03/020764 A2号パンフレット、14~24頁の表2及び3、及び12頁、1~27行;国際公開第2007/149406号パンフレット、4頁、1行から19頁、11行;国際公開第2007/149406号パンフレット、19頁、12行から20頁、9行;国際公開第08/118507号パンフレット、5頁、14行から6頁、5行;国際公開第09/051717号パンフレット、9頁、11行から20頁、2行;国際公開第09/137254号パンフレット、2頁、段落[006]から5頁、段落[011]及び16頁、段落[044]から24頁、段落[057];国際公開第09/130198 A2号パンフレット、4頁、26行から12頁、6行;国際公開第09/140015号パンフレット、11頁、段落[0043]から13頁、段落[0053];国際公開第2012/006624号パンフレット;国際公開第2015/086406号パンフレットに記載されている機能的FIX変異体のいずれかを含む本発明に記載のデバイスに封入される組み換え細胞によって発現され得る。
【0063】
一定の実施形態において、FIXポリペプチドは、FIXタンパク質の半減期を延長する異種ポリペプチド又は非ポリペプチド部分に融合された野生型又は変異体配列を含む。例示的な半減期延長部分としては、Fc、アルブミン、PAS配列、トランスフェリン、CTP(その4つのO-グリカンを有するヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)の28アミノ酸C末端ペプチド(CTP))、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、アルブミン結合ポリペプチド、アルブミン結合小分子、又はこれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。例示的なFIXポリペプチドは、国際公開第2012/006624号パンフレットに記載されているrFIXFcタンパク質であり、これは、Fcのヒンジ領域における2つのジスルフィド結合を介して一緒に結合されたFIXFc一本鎖(FIXF c-sc)及びFc一本鎖(Fc-sc)である。
【0064】
FIX変異体は、機能獲得及び機能喪失変異体も含む。機能獲得変異体の例は、ヒトFIXの「Padua」変異体であり、これは、R(アルギニン)(配列番号2のアミノ酸位置384に対応する)の代わりに成熟タンパク質の位置338におけるL(ロイシン)を有し、野生型ヒトFIXと比較してより高い触媒及び凝固活性を有する(Chang et al.,J.Biol.Chem.,273:12089-94(1998))。機能喪失変異体の例は、成熟タンパク質の開始から5番目のアミノ酸位置におけるリジンと置換されるアラニンであり、これは、コラーゲンIVへの結合の低下(例えば、機能喪失)を有するタンパク質をもたらす。
【0065】
本明細書において用いられるところ、「インターロイキン2タンパク質」又は「IL-2タンパク質」は、別段の定めがある場合を除き、当該技術分野において認識されているアッセイによって決定される際、IL-2生物活性を有する、例えば、Treg細胞におけるIL-2受容体シグナル伝達を活性化する、天然のIL-2タンパク質又はその変異体のアミノ酸配列を含むポリペプチドを意味する。本明細書に記載のデバイス、例えば、組み換えRPE細胞を含むデバイスによって生成され得るIL-2タンパク質は、野生型霊長類(例えば、ヒト)、ブタ、イヌ、及びマウスタンパク質、並びにこのような野生型タンパク質の変異体を含む。変異体IL-2タンパク質は、好ましくは、対応する野生型IL-2の生物活性の少なくとも50%、75%、90%又はそれ以上(>100%を含む)を有する。IL-2タンパク質のための生物活性アッセイが、米国特許第10,035,836号明細書に記載されており、例えば、CD4+CD25-/低T細胞又はNK細胞と比較して、Treg細胞におけるリン酸化STAT5タンパク質のレベルを測定することを含む。本開示のデバイス(例えば、組み換えRPE細胞を含むデバイス)によって生成され得る変異体IL-2タンパク質は、以下のアミノ酸置換:N88R、N88I、N88G、D20H、Q126L、Q126F、及びC125S又はC125Aの1つ又は複数を有するタンパク質を含む。
【0066】
本明細書において用いられるところ、「膵島細胞」は、任意の天然の又は任意の合成的に生成された、又は修飾された細胞であって、膵臓ランゲルハンス島の細胞の部分的若しくは全体的な機能を部分的若しくは全体的に再現する、模倣する又は他の形で発現することを意図された細胞を含む細胞を意味する。「膵島細胞」という用語は、幹細胞、例えば、人工多能性幹細胞に由来するグルコース応答的なインスリン産生細胞を含む。
【0067】
本明細書において用いられるところ、「マンニトール」は、特に明記されない限り、D-マンニトールを指す。
【0068】
「中間分子量アルギン酸塩」又は「MMW-Alg」は、本明細書で使用される場合、おおよその分子量が75kDa~150kDaであるアルギン酸塩を意味する。
【0069】
「間葉系幹機能細胞(mesenchymal stem function cell)」又は「MSFC」は、それらの用語が本明細書において用いられるところ、中胚葉系統に由来するか、又は中胚葉系統の細胞に特有の少なくとも1つの特徴を有する細胞を指し、ここで、MSFCは、i)分化の末期状態でなく、ii)1つ又は複数の細胞型へと最終的に分化し得る。MSFCは、内胚葉由来の細胞、例えば、腸細胞、又は外胚葉由来の細胞、例えば、皮膚に由来する細胞、CNS、又は神経細胞を含まない。実施形態において、MSFCは、多能性である。実施形態において、MSFCは、分化全能性でない。実施形態において、MSFCは、以下の特徴の1つ又は複数を含む:
a)それは、間葉系幹細胞(MSC)又はそれに由来する細胞を含み、このような細胞としては、MSCの一次細胞培養物に由来する細胞、天然のMSC(例えばヒト又は他の哺乳動物由来)から直接単離された細胞(長期の培養を伴わない、例えば、細胞分裂が単離から5又は10継代又は回未満)、形質転換、多能性、不死化、又は長期(例えば、細胞分裂から5又は10継代又は回超)MSC培養物に由来する細胞が挙げられる。;
b)それは、低分化細胞から得られた細胞、例えば、MSCに発生、プログラム、若しくは再プログラム(例えばインビトロで)された細胞、又はいずれかの遺伝子組み換えを除き、1種以上の天然MSCと実質的に同様である細胞又はMSCの一次若しくは長期培養物由来の細胞、又は上のa)に記載される細胞を含む。MSFCが由来し得る低分化細胞の例としては、IPS細胞、胚性幹細胞、又は他の分化全能性又は多能性細胞が挙げられ;例えば、Chen,Y.S.et al(2012)Stem Cells Transl Med 1(83-95);Frobel,J et al(2014)Stem Cell Reports 3(3):414-422;Zou,L et al(2013)Sci Rep 3:2243を参照されたい;
c)例えば、細胞の多能性についての情報を提供することが可能な任意のアッセイ、例えば、顕微鏡検査によって測定した際に、それは多能性であり;
d)それは、円形ないし楕円形の核と共に、特徴的な単核の卵形、星形又は紡錘形を示す。楕円形の細長い核は、隆起した核小体及びヘテロクロマチンとユークロマチンとの混合物を有し得る。MSFC(例えば、MSC)は、細胞質をほとんど含まないが、核から伸びているように見える多くの薄い突起(process)を有し得る;
e)例えば、細胞分裂についての情報を提供することが可能な任意のアッセイ、例えば、顕微鏡検査によって測定した際に、それは細胞分裂が可能である。実施形態において、MSFCは、(例えば、デバイス内にカプセル化されるか又は組み込まれる前に)培養物中で細胞分裂が可能である。実施形態において、それは、デバイス(例えば、本明細書に記載のデバイス)内にカプセル化された、例えば、本明細書に記載されるようにカプセル化されたか、又は組み込まれた後、細胞分裂が可能である。実施形態において、それは、コンフルエンスに達した後、細胞分裂することができない;
f)それは、間葉細胞系統、例えば、骨芽細胞、軟骨芽細胞、脂肪細胞、又は線維芽細胞へと分化することが可能である;
g)それは、間葉細胞マーカー、例えば、CD105、CD106、CD73、CD90、Stro-1、CD49a、CD29、CD44、CD146、CD166、TNAP+、THY-1+、Stro-2、Stro-4、及びアルカリホスファターゼのうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は全てを発現する;
h)それは、CD34、CD31、VE-カドヘリン、CD45、HLA-DR、CD11b及びグリコホリン又は白血球分化抗原、例えば、CD14、CD33、CD3及びCD19のうちの1つ、2つ、3つ、又はいずれかの有意なレベルを発現しない;
i)それは、CD75、CD90、及びCD105のうちの1つ、2つ、又は全てを発現し、CD45、CD34、及びCD14のうちの1つ、2つ、又はいずれかを発現しない;
j)例えば、炎症に関連する情報を提供することが可能な任意の方法、例えば、T細胞増殖のインビボ阻害によって測定した際に、それは、抗炎症性又は免疫減衰性(immune-dampening)である;
k)例えば、目視検査などによって決定した際に、それは、付着性、例えば、プラスチック付着性であることが可能である;又は
l)例えば、目視検査などによって決定した際に、3次元で成長し得る。
【0070】
本明細書において用いられるところ、「副甲状腺ホルモン」又は「PTH」は、例えば、当該技術分野において認識されているアッセイによって決定される際、PTH生物活性を有する、天然の副甲状腺ホルモンポリペプチド又はペプチド又はその変異体のアミノ酸配列を含むポリペプチド又はペプチドを意味する。本明細書に記載の封入細胞によって発現され得るPTHポリペプチド及びペプチドは、野生型霊長類(例えば、ヒト)、ブタ、イヌ、及びマウスタンパク質、並びにこのような野生型タンパク質の変異体を含む。このようなPTHポリペプチド及びペプチドは、プレプロ-PTHポリペプチド(115アミノ酸)、プロ-PTHポリペプチド(90アミノ酸)、成熟84-アミノ酸ペプチド(PTH(1-84))、及び生物学的に活性なその変異体、例えば、切断型変異体ペプチドPTH(1-34)のための野生型ヒト配列から本質的になり得る。ヒト野生型配列における1つ又は複数のアミノ酸置換を有するPTHペプチド変異体が、例えば、米国特許第7410948号明細書及び8563513号明細書並びに米国特許出願公開第20130217630号明細書に記載されている。PTH変異体は、好ましくは、対応する野生型PTHの生物活性の少なくとも50%、75%、90%又はそれ以上(>100%を含む)を有する。タンデム質量分析法による特定のPTH変異体を検出するためのアッセイが、米国特許第8383417号明細書に記載されている。PTHペプチド変異体のための生物活性アッセイ、cAMPレベルを測定することによって決定される際、アデニル酸シクラーゼの刺激が、米国特許第7410948号明細書に記載されている。
【0071】
本明細書において用いられるところ、「ポロキサマー」は、2つのポリオキシエチレン(ポリ(エチレンオキシド))部分が横に配置されたポリオキシプロピレン(ポリ(プロピレンオキシド))の中心の疎水性鎖から構成される非イオン性トリブロック直鎖コポリマーの種類に対する標準的な総称を指す。
【0072】
本明細書において用いられるところ、「ポロキサマー188」又は「P 188」は、ポリオキシプロピレンコアについて1800g/モルのおよその分子量及び約80%重量パーセント、例えば、79.0~83.7パーセントのオキシエチレン含量を有するポロキサマーを指す。実施形態において、ポロキサマー188は、8350g/モルの平均分子量を有する。実施形態において、ポロキサマー188は、例えば、サイズ排除クロマトグラフィーによって決定した際に、7680g/モル~9510g/モルの平均分子量、及び81.8±1.9%重量パーセントのオキシエチレン含量を有する。実施形態において、ポロキサマー188中の各ポリオキシエチレン鎖は、75~85(例えば、80)のエチレンオキシドモノマーを有し、ポリオキシプロピレンコアは、25~30(例えば、27)のプロピレンオキシドモノマーを有する。実施形態において、本明細書に記載の方法において使用されるポロキサマー188は、この方法が行われる時点で公式である、米国薬局方-国民医薬品集(United States Pharmacopeia-National Formulary)(USP-NF)又は欧州薬局方(European Pharmacopoeia)(Ph.Eur.)によって公表されるポロキサマーの研究論文に記載される規格を実質的に満たす。
【0073】
「ポリマー組成物」とは、本明細書で使用される場合、1種又は複数種のポリマーを含む組成物(例えば、溶液、混合物)のことである。クラスとして、「ポリマー」は、ホモポリマー、ヘテロポリマー、コポリマー、ブロックポリマー、ブロックコポリマーを含み、天然及び合成の両方であり得る。ホモポリマーは、1種類のビルディングブロック(即ちモノマー)を含むが、コポリマーは、複数種類のモノマーを含む。
【0074】
本明細書において用いられるところ、「ポリペプチド」は、ペプチド結合を介して結合されたアミノ酸残基を含み、少なくとも2、いくつかの実施形態において、少なくとも10、50、75、100、150又は200のアミノ酸残基を有するポリマーを指す。
【0075】
本明細書において用いられるところ、「予防(prevention)」、「予防する(prevent)」、及び「予防している(preventing)」は、投与又は治療の適用を含む処置であって、例えば、封入細胞の組成物(例えば、本明細書に記載の)を、疾病、障害、又は状態の発症の前に、前記疾病、障害、又は状態に係る物理的徴候を妨げるために投与するステップを含む処置を指す。いくつかの実施形態において、「予防(prevention)」、「予防する(prevent)」及び「予防(preventing)」は、疾病、障害又は状態の兆候又は症状が未だ発生していないか、又は、実測されていないことが必要とされる。いくつかの実施形態において、処置は、予防を含み、他の実施形態においては含まない。
【0076】
「置換治療」又は「置換タンパク質」は、タンパク質の減少、変性又は欠乏に関連する疾病又は状態にある対象において減少している、不十分な量で存在している、変性した(例えば、変異した)、又は、欠乏しているタンパク質の有益な機能を置換又は増大させる治療用タンパク質又はその機能性画分である。例は、一定の血液凝固障害における一定の血液凝固因子、又は、一定のライソゾーム蓄積症における一定のライソゾーム酵素である。実施形態において、置換治療又は置換タンパク質は、内因性のタンパク質の機能が提供される。実施形態において、置換治療又は置換タンパク質は、置換されるタンパク質の、例えば野生型対立遺伝子又は障害に関連していない対立遺伝子といった天然の変異体と同一のアミノ酸配列を有する。実施形態において、又は置換治療若しくは置換タンパク質は、例えば野生型対立遺伝子又は障害に関連していない対立遺伝子であって、例えば対象が有する対立遺伝子といった天然変異体とは、アミノ酸残基の約1、2、3、4、5、10、15又は20%以下でアミノ酸配列が異なる。
【0077】
「参照デバイス」は、特許請求されているデバイス(例えばヒドロゲルカプセル)に関して本明細書で使用される場合、(i)特定の特徴を欠き、例えば、FBR軽減手段(例えば、抗線維性化合物(本明細書で定義されている)又はCBS(本明細書で定義されている)(例えばRGDポリマー)を含むバリア区画)を欠き、(ii)特許請求されているデバイス中と同一の細胞型のほぼ同量の細胞を細胞含有区画中でカプセル化し、(iii)特定の特徴(例えば抗線維性化合物又はCBS)を欠く以外は、特許請求されているデバイス中と実質的に同様のポリマー組成及び構造を有するデバイス(例えばヒドロゲルカプセル)を意味する。ある実施形態において、参照デバイスの細胞含有区画中の生細胞の数は、特許請求されているデバイスの細胞含有区画中の生細胞の数の80~120%以内であるか、又は90%~110%以内である。ある実施形態において、参照デバイス中の細胞及び特許請求されているデバイス中の細胞は、同一の細胞培養物から得られる。ある実施形態において、実質的に同様のポリマー組成は、参照デバイス中の及び特許請求されているデバイス中の全てのポリマー(例えば、任意のCBP-ポリマー及び抗線維性ポリマーのポリマー成分)が、該当する場合には、化学クラス及び分子量クラスが同一である(例えば、G含有量が高く且つ分子量範囲が同一であるアルギン酸塩)ことを意味する。例えば、ある実施形態において、CBPなしの参照デバイスの細胞含有区画は、特許請求されているデバイスの細胞含有区画を形成するために使用されるCBP-ポリマー中のポリマー(例えばアルギン酸塩)の非修飾バージョンから形成されている。特許請求されている2区画ヒドロゲルミリカプセルが、(i)複数の細胞をカプセル化するCBP-ポリマーから形成された内側区画と、(ii)化学的に修飾されたポリマー(例えば、本明細書で説明されているCM-LMW-アルギン酸塩)及び非修飾ポリマー(例えば、本明細書で説明されているU-HMW-アルギン酸塩)の混合物から形成された外側区画とを有するいくつかの実施形態において、参照カプセル及び特許請求されているカプセルの外側区画は、同一のポリマー混合物から形成されているが、参照カプセルの内側区画は、外側区画のために使用された同一のポリマー混合物中の細胞の懸濁液から形成される。ある実施形態において、実質的に同様の構造は、参照デバイスと特許請求されているデバイスとが、同数の区画(例えば、1個、2個、3個等)並びにほほ同一のサイズ及び形状を有することを意味する。
【0078】
「RPE細胞」は、本明細書で使用される場合、下記の特徴の内の1つ又は複数を有する細胞を指す:a)網膜色素上皮細胞(RPE)(例えば、ARPE-19細胞株(ATCC(登録商標)CRL-2302(商標))を使用して培養される)、又は、例えば、治療用タンパク質をコードする外因性の配列で、ARPE-19細胞株から培養された細胞を安定的にトランスフェクトすることによるか、又は別の方法で、そのように培養されたARPE-19細胞を、外因性のタンパク質若しくは他の外因性の物質を発現するように組み換えることによる、このRPEに由来する細胞、RPE細胞の初代細胞培養物に由来する細胞、(例えば、ヒト又は他の哺乳動物からの)天然に存在するRPE細胞から直接単離された細胞(長期の培養を伴わない、例えば、単離から5又は10回未満の継代又はラウンドの細胞分裂)、形質転換されたか、不死化されたか、又は長期(例えば、5若しくは10回超の継代若しくはラウンドの細胞分裂)にわたるRPE細胞培養物に由来する細胞を含む;b)低分化細胞から得られている細胞、例えば、RPE細胞へと発生したか、プログラムされたか、若しくは(例えばインビトロで)再プログラムされた細胞、又は、任意の遺伝子組み換えを除いて、1種若しくは複数種の天然に存在するRPE細胞と実質的に同様である細胞、又はRPE細胞の初代培養物若しくは長期培養物からの細胞(例えば、この細胞は、IPS細胞から由来し得る);又はc)下記の特性の内の1つ又は複数を有する細胞:i)バイオマーカーCRALBP、RPE-65、RLBP、BEST1、若しくはαB-クリスタリンの内の1つ若しくは複数を発現するか;ii)バイオマーカーCRALBP、RPE-65、RLBP、BEST1、若しくはαB-クリスタリンの内の1つ若しくは複数を発現しないか;iii)網膜中に天然に見出され、且つブルッフ膜中の脈絡膜血管上に単一層を形成するか;iv)網膜における上皮輸送、光吸収、分泌、及び免疫調節に関与するか、又はv)不死化RPE細胞株(例えば、ARPE-19細胞株(ATCC(登録商標)CRL-2302(商標)))と同一の若しくは実質的に同一の遺伝的内容、及び任意選択的に同一の若しくは実質的に同一の後成的内容を有するように、合成により生成されているか、若しくは天然に存在する細胞から修飾されている。ある実施形態において、本明細書で説明されているRPE細胞は、例えば新たな特性を有するように組み換えられており、例えば、この細胞は、CBP又はCBSを含むポリマー組成物中でカプセル化された場合に、治療薬を発現するように組み換えられている。他の実施形態において、RPE細胞は組み換えられていない。
【0079】
「生理食塩水」は、本明細書で使用される場合、別途明記されない限り、通常の生理食塩水を意味しており、即ち、0.9% NaClを含む水を意味する。
【0080】
「配列同一性」又は「パーセント同一」は、本明細書において、2つのヌクレオチド配列又は2つのアミノ酸配列を指すために用いられる場合、2つの配列が比較され、比較ウィンドウ(comparison window)又は指定される領域にわたって最大の一致のために整列される場合、2つの配列が規定の領域内で同じであるか、又は規定の領域内のヌクレオチド又はアミノ酸位置の規定のパーセンテージの同じヌクレオチド又はアミノ酸を有することを意味する。配列同一性は、限定されないが、米国特許出願公開第2017/02334455号明細書に記載されているアルゴリズムのいずれかを含む、当該技術分野において公知の標準的な技術を用いて決定され得る。実施形態において、同一のヌクレオチド又はアミノ酸位置の規定のパーセンテージは、少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上である。
【0081】
「球状」は、本明細書で使用される場合、例えば表面上で波及び起状を有する場合がある球体(例えば、完全に円形の球)又は球体様の形状を形成する曲面を有するデバイス(例えば、ヒドロゲルカプセル又は他の粒子)を意味する。球体及び球体様の物体は、3つの垂直軸、a、b、及びcのそれぞれの周りの円、楕円、又は組み合わせの回転によって数学的に定義され得る。球体については、3つの軸が同じ長さである。一般に、球体様の形状は、互いに10%、又は5%、又は2.5%以内である半主軸(semi-principal axes)を有する楕円体(その平均面について)である。球体又は球体様の形状の直径は、半主軸の平均などの平均直径である。
【0082】
「スフェロイド」は、この用語が、デバイス(例えば、ヒドロゲルカプセル又は他の粒子)を指すために本明細書で使用される場合、このデバイスが、(i)完全な若しくは古典的な扁平スフェロイド若しくは扁長スフェロイドの形状を有するか又は(ii)スフェロイドを大まかに形成する表面を有し、例えば、波及び起状を有し得、及び/又は半主軸が互いに100%内である楕円体(平均的な表面)であり得ることを意味する。
【0083】
本明細書において用いられるところ、「対象」は、ヒト又は非ヒト動物を指す。実施形態において、対象は、例えば任意の年齢群のヒト(すなわち、男性又は女性)、小児科の対象(例えば乳児、小児、青年)又は成人対象(例えば、若年成人、中年成人、又は老人)である。実施形態において、対象は、非ヒト動物、例えば哺乳動物(例えば、マウス、イヌ、霊長類(例えばカニクイザル又はアカゲザル)である。実施形態において、対象は、(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、又はイヌ)の商業的に関連する哺乳動物)又は鳥類(例えば、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、又はシチメンチョウなどの商業的に関連する鳥類)である。一定の実施形態において、動物は哺乳動物である。動物は、オス又はメスであり得、任意の成長段階であり得る。非ヒト動物は遺伝子組み換え動物であり得る。
【0084】
本明細書において用いられるところ、「総体積」は、別の区画に占有される空間を含む多区画デバイスの1つの区画内の体積を指す。例えば、2区画デバイスの第2の(例えば、外側)区画の総体積は、第1の区画に占有される空間を含む第2の区画内の体積を指す。
【0085】
本明細書において用いられるところ、「処置(treatment)」、「処置する(treat)」、及び「処置している(treating)」は、疾病、障害、若しくは状態の発症の低減、逆転、緩和、遅延の1つ又は複数、又は疾病、障害、若しくは状態の症状、兆候、若しくは基礎原因の1つ又は複数の進行の阻害を指す。実施形態において、処置は、疾病、障害若しくは状態の発症の低減、逆転、緩和、遅延、又は、疾病、障害若しくは状態の症状の進行の阻害を含む。実施形態において、処置は、疾病、障害若しくは状態の発症の低減、逆転、緩和、遅延、又は、疾病、障害若しくは状態の兆候の進行の阻害を含む。実施形態において、処置は、疾病、障害又は状態の基礎原因の発症の低減、逆転、緩和、低減又は遅延を含む。いくつかの実施形態において、「処置(treatment)」、「処置する(treat)」及び「処置している(treating)」は、疾病、障害又は状態の兆候又は症状が発生しているか、又は、実測されていることを必要とする。他の実施形態において、処置は、疾病又は状態の兆候又は症状が不在でも、例えば予防的処置で投与されてもよい。例えば、処置は、症状の発症(例えば、症状の履歴を鑑みて、及び/又は、遺伝的又は他の感受性要因を鑑みて)の前に感受性の個体に投与され得る。処置はまた、例えば再発を遅延又は予防するために、症状が回復した後も継続してもよい。いくつかの実施形態において、処置は予防を含み、他の実施形態においては含まない。
【0086】
本明細書において用いられるところ、「フォン・ヴィレブランド因子タンパク質」又は「VWFタンパク質」は、別段の定めがある場合を除き、当該技術分野において認識されているアッセイによって決定される際、VWF生物活性、例えば、FVIII結合活性を有する天然のVWFポリペプチド又はその変異体のアミノ酸配列を含むポリペプチドを意味する。(例えば、デバイスに含まれる組み換え細胞によって発現される)本明細書に記載のデバイスによって生成され得るVWFタンパク質は、野生型霊長類(例えば、ヒト)、ブタ、イヌ、及びマウスタンパク質、並びにこのような野生型タンパク質の変異体を含む。封入細胞は、以下のVWFポリペプチドのいずれかをコードするように組み換えられ得る:2813アミノ酸の前駆体VWF、22アミノ酸のシグナルペプチドを欠くVWF、及び任意選択により、741アミノ酸のプレプロペプチド、2050アミノ酸の成熟VWFタンパク質、及びその切断型変異体、例えば、VWF欠損マウスにおける内因性のFVIIIレベルを安定させるのに十分なVWF断片、例えば、D’D3領域(アミノ酸764~1247)又はD1D2D’D3領域を含有する切断型変異体;及び例えば、米国特許第9458223号明細書に記載されているように、D’領域における1つ又は複数のアミノ酸置換を有するVWF変異体。変異体VWFタンパク質は、好ましくは、対応する野生型VWFタンパク質の生物活性の少なくとも50%、75%、90%又はそれ以上(>100%を含む)を有する。VWFの生物活性を決定するための当該技術分野において認識されているアッセイは、リストセチン補因子活性(Federici A B et al.2004.Haematologica 89:77-85)、血小板糖タンパク質複合体Ib-V-IXのGP IbαへのVWFの結合(Sucker et al.2006.Clin Appl Thromb Hemost.12:305-310)、及びコラーゲン結合(Kallas & Talpsep.2001.Annals of Hematology 80:466-471)を含む。
【0087】
いくつかの実施形態において、本開示のデバイスによって産生されるVWFタンパク質は、VWFタンパク質の半減期を延長する異種ポリペプチド又は非ポリペプチド部分に融合された天然又は変異体VWFアミノ酸配列を含む。例示的な半減期延長部分としては、Fc、アルブミン、PAS配列、トランスフェリン、CTP(その4つのO-グリカンを有するヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)の28アミノ酸C末端ペプチド(CTP))、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、アルブミン結合ポリペプチド、アルブミン結合小分子、又はこれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。
【0088】
選択される化学的定義
特定の官能基及び化学用語の定義を以下により詳細に記載する。化学元素は、Handbook of Chemistry and Physics,75th Ed.の内表紙のPeriodoic Table of the Elements,CAS versionに従って識別し、特定の官能基は、ここに記載されているとおり通常どおり定義している。また、有機化学の一般原則、並びに特定の官能基部分及び反応性は、Thomas Sorrell,Organic Chemistry,University Science Books,Sausalito、1999;Smith and March,March’s Advanced Organic Chemistry,5th Edition,John Wiley & Sons,Inc.,New York、2001;Larock,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers,Inc.,New York、1989;及びCarruthers,Some Modern Methods of Organic Synthesis,3rd Edition,Cambridge University Press,Cambridge,1987に記載されている。
【0089】
本明細書で用いている略語は、化学及び生物学の技術分野におけるその従来の意味を有する。本明細書に記載の化学構造及び式は、化学技術分野において既知である化学原子価に係る標準的な規則に従って構成されている。
【0090】
値の範囲が列挙されている場合、範囲中の各値及び部分範囲が包含されることが意図されている。例えば「C1~C6アルキル」は、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C1~C6、C1~C5、C1~C4、C1~C3、C1~C2、C2~C6、C2~C5、C2~C4、C2~C3、C3~C6、C3~C5、C3~C4、C4~C6、C4~C5、及びC5~C6アルキルを包含することが意図されている。
【0091】
本明細書において用いられるところ、「アルキル」は、1~24個の炭素原子(「C1~C24アルキル」)を有する直鎖又は分岐飽和炭化水素基のラジカルを指す。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1~12個の炭素原子(「C1~C12アルキル」)、1~10個の炭素原子(「C1~C12アルキル」)、1~8個の炭素原子(「C1~C8アルキル」)、1~6個の炭素原子(「C1~C6アルキル」)、1~5個の炭素原子(「C1~C5アルキル」)、1~4個の炭素原子(「C1~C4アルキル」)、1~3個の炭素原子(「C1~C3アルキル」)、1~2個の炭素原子(「C1~C2アルキル」)、又は1個の炭素原子を有する(「C1アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は、2~6個の炭素原子を有する(「C2~C6アルキル」)。C1~C6アルキル基の例としては、メチル(C1)、エチル(C2)、n-プロピル(C3)、イソプロピル(C3)、n-ブチル(C4)、tert-ブチル(C4)、sec-ブチル(C4)、イソ-ブチル(C4)、n-ペンチル(C5)、3-ペンタニル(C5)、アミル(C5)、ネオペンチル(C5)、3-メチル-2-ブタニル(C5)、第三級アミル(C5)、及びn-ヘキシル(C6)が挙げられる。アルキル基の追加の例としては、n-ヘプチル(C7)、n-オクチル(C8)などが挙げられる。アルキル基の各実例は独立して任意選択により置換され得、すなわち、非置換であるか(「非置換アルキル」)又は1個以上の置換基(例えば、実例として、1~5個の置換基、1~3個の置換基、又は1個の置換基)で置換されている(「置換アルキル」)。
【0092】
本明細書において用いられるところ、「アルケニル」は、2~24個の炭素原子、1つ又は複数の炭素-炭素二重結合を有し、及び三重結合を有さない直鎖又は分岐炭化水素基のラジカル(「C2~C24アルケニル」)を指す。いくつかの実施形態において、アルケニル基は、2~10個の炭素原子(「C2~C10アルケニル」)、2~8個の炭素原子(「C2~C8アルケニル」)、2~6個の炭素原子(「C2~C6アルケニル」)、2~5個の炭素原子(「C2~C5アルケニル」)、2~4個の炭素原子(「C2~C4アルケニル」)、2~3個の炭素原子(「C2~C3アルケニル」)、又は2個の炭素原子を有する(「C2アルケニル」)。1つ又は複数の炭素-炭素二重結合は、中間(2-ブテニルにおけるものなど)又は末端(1-ブテニルにおけるものなど)であることが可能である。C2~C4アルケニル基の例としては、エテニル(C2)、1-プロペニル(C3)、2-プロペニル(C3)、1-ブテニル(C4)、2-ブテニル(C4)、ブタジエニル(C4)などが挙げられる。C2~C6アルケニル基の例としては、前述のC2~4アルケニル基並びにペンテニル(C5)、ペンタジエニル(C5)、ヘキセニル(C6)などが挙げられる。アルケニル基の各実例は独立して任意選択により置換され得、すなわち、非置換であるか(「非置換アルケニル」)又は1個以上の置換基(例えば、実例として、1~5個の置換基、1~3個の置換基、又は1個の置換基)で置換されている(「置換アルケニル」)。
【0093】
本明細書において用いられるところ、「アルキニル」という用語は、2~24個の炭素原子、1つ又は複数の炭素-炭素三重結合を有する直鎖又は分岐炭化水素基のラジカル(「C2~C24アルケニル」)を指す。いくつかの実施形態において、アルキニル基は、2~10個の炭素原子(「C2~C10アルキニル」)、2~8個の炭素原子(「C2~C8アルキニル」)、2~6個の炭素原子(「C2~C6アルキニル」)、2~5個の炭素原子(「C2~C5アルキニル」)、2~4個の炭素原子(「C2~C4アルキニル」)、2~3個の炭素原子(「C2~C3アルキニル」)、又は2個の炭素原子を有する(「C2アルキニル」)。1つ又は複数の炭素-炭素三重結合は、中間(2-ブチニルにおけるものなど)又は末端(1-ブチニルにおけるものなど)であることが可能である。C2~C4アルキニル基の例としては、エチニル(C2)、1-プロピニル(C3)、2-プロピニル(C3)、1-ブチニル(C4)、2-ブチニル(C4)などが挙げられる。アルキニル基の各実例は独立して任意選択により置換され得、すなわち、非置換であるか(「非置換アルキニル」)又は1個以上の置換基(例えば、実例として、1~5個の置換基、1~3個の置換基、又は1個の置換基)で置換されている(「置換アルキニル」)。
【0094】
本明細書において用いられるところ、「ヘテロアルキル」という用語は、非環式の安定な直鎖若しくは分岐鎖、又はこれらの組み合わせであって、少なくとも1個の炭素原子と、O、N、P、Si、及びSからなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子とを含むものを指し、ここで、窒素原子及び硫黄原子は任意選択により酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は任意選択により四級化されていてもよい。ヘテロ原子O、N、P、S、及びSiは、ヘテロアルキル基の任意の位置に配置されていてもよい。例示的なヘテロアルキル基としては、これらに限定されないが:-CH2-CH2-O-CH3、-CH2-CH2-NH-CH3、-CH2-CH2-N(CH3)-CH3、-CH2-S-CH2-CH3、-CH2-CH2、-S(O)-CH3、-CH2-CH2-S(O)2-CH3、-CH=CH-O-CH3、-Si(CH3)3、-CH2-CH=N-OCH3、-CH=CH-N(CH3)-CH3、-O-CH3、及び-O-CH2-CH3が挙げられる。2個又は3個以下のヘテロ原子が連続していてもよい(例えば-CH2-NH-OCH3及び-CH2-O-Si(CH3)3など)。「ヘテロアルキル」が引用され、続いて、特定のヘテロアルキル基が引用されている場合(-CH2O、-NRCRDなど)、用語ヘテロアルキル及び-CH2O又は-NRCRDは、重複していないか、又は相互に排他的ではないことが理解されるであろう。むしろ、特定のヘテロアルキル基が追加的な明確さのために引用されている。それ故、「ヘテロアルキル」という用語は、-CH2O、-NRCRDなどの特定のヘテロアルキル基を排除していると本明細書において解釈されるべきではない。ヘテロアルキル基の各実例は、独立して任意選択により置換され得、すなわち、非置換であるか(「非置換ヘテロアルキル」)又は例えば1個以上の置換基、例えば1~5個の置換基、1~3個の置換基、若しくは1個の置換基で置換されている(「置換ヘテロアルキル」)。
【0095】
「アルキレン」、「アルケニレン」、「アルキニレン」、又は「ヘテロアルキレン」という用語は、単独で、又は他の置換基の一部として、別段の定めがある場合を除き、それぞれ、アルキル、アルケニル、アルキニル、又はヘテロアルキルから誘導される二価ラジカルを意味する。アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、又はヘテロアルキレン基は、例えば、C1~C6員アルキレン、C2~C6員アルケニレン、C2~C6員アルキニレン、又はC1~C6員ヘテロアルキレンと記載され得、ここで、「員」という用語は、部分中の非水素原子を指す。ヘテロアルキレン基の場合、ヘテロ原子は、鎖終端の一方又は両方を占有することも可能である(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノなど)。さらに、アルキレン及びヘテロアルキレン連結基について、連結基の式が書かれている方向によって連結基の向きは示唆されていない。例えば、式-C(O)2R’-は、-C(O)2R’-及び-R’C(O)2-の両方を表し得る。
【0096】
本明細書において用いられるところ、「アリール」は、6~14個の環炭素原子及びゼロ個のヘテロ原子を芳香族環系中に有する(「C6~C14アリール」)、単環式又は多環式(例えば、二環式又は三環式)4n+2芳香族環系(例えば、環式アレイにおいて共有される6、10、又は14個のπ電子を有する)のラジカルを指す。いくつかの実施形態において、アリール基は6個の環炭素原子を有する(「C6アリール」;例えば、フェニル)。いくつかの実施形態において、アリール基は10個の環炭素原子を有する(「C10アリール」;例えば、1-ナフチル及び2-ナフチルなどのナフチル)。いくつかの実施形態において、アリール基は14個の環炭素原子を有する(「C14アリール」;例えば、アントラシル)。アリール基は、例えば、C6~C10員アリールと記載され得、ここで、「員」という用語は、部分中の非水素環原子を指す。アリール基としては、フェニル、ナフチル、インデニル、及びテトラヒドロナフチルが挙げられる。アリール基の各実例は独立して任意選択により置換され得、すなわち、非置換であるか(「非置換アリール」)又は1個以上の置換基で置換されている(「置換アリール」)。
【0097】
本明細書において用いられるところ、「ヘテロアリール」は、環炭素原子及び1~4個の環ヘテロ原子を芳香族環系中に有する5~10員単環式又は二環式4n+2芳香族環系(例えば、環式アレイにおいて共有される6又は10個のπ電子を有する)のラジカルを指し、ここで、各ヘテロ原子は、窒素、酸素及び硫黄から独立して選択される(「5~10員ヘテロアリール」)。1個以上の窒素原子を含有するヘテロアリール基において、結合点は、原子価的に許容されるとおり、炭素又は窒素原子であることが可能である。ヘテロアリール二環系は、1個以上のヘテロ原子を一方又は両方の環中に含んでいることが可能である。「ヘテロアリール」はまた、上記に定義されているヘテロアリール環が、1個以上のアリール基と縮合しており、結合点がアリール又はヘテロアリール環のいずれかにある環系を含み、このような実例において、環員の数は、縮合(アリール/ヘテロアリール)環系中の環員の数を示す。一方の環がヘテロ原子を含有しない二環式ヘテロアリール基(例えば、インドリル、キノリニル、カルバゾリルなど)において、結合点は、いずれかの環にあることが可能であり、すなわち、結合点は、ヘテロ原子を有する環(例えば、2-インドリル)又はヘテロ原子を含有しない環(例えば、5-インドリル)のいずれかにあることが可能である。ヘテロアリール基は、例えば6~10員ヘテロアリールと記載され得、ここで、「員」という用語は、部分中の非水素環原子を指す。
【0098】
いくつかの実施形態において、ヘテロアリール基は、環炭素原子及び1~4個の環ヘテロ原子を芳香族環系中に有する5~10員芳香族環系であり、ここで、各ヘテロ原子は窒素、酸素、及び硫黄から独立して選択される(「5~10員ヘテロアリール」)。いくつかの実施形態において、ヘテロアリール基は、環炭素原子及び1~4個の環ヘテロ原子を芳香族環系中に有する5~8員芳香族環系であり、ここで、各ヘテロ原子は窒素、酸素、及び硫黄から独立して選択される(「5~8員ヘテロアリール」)。いくつかの実施形態において、ヘテロアリール基は、環炭素原子及び1~4個の環ヘテロ原子を芳香族環系中に有する5~6員芳香族環系であり、ここで、各ヘテロ原子は窒素、酸素、及び硫黄から独立して選択される(「5~6員ヘテロアリール」)。いくつかの実施形態において、5~6員ヘテロアリールは、窒素、酸素、及び硫黄から選択される1~3個の環ヘテロ原子を有する。いくつかの実施形態において、5~6員ヘテロアリールは、窒素、酸素、及び硫黄から選択される1~2個の環ヘテロ原子を有する。いくつかの実施形態において、5~6員ヘテロアリールは、窒素、酸素、及び硫黄から選択される1個の環ヘテロ原子を有する。ヘテロアリール基の各実例は独立して任意選択により置換され得、すなわち、非置換であるか(「非置換ヘテロアリール」)又は1個以上の置換基で置換されている(「置換ヘテロアリール」)。
【0099】
1個のヘテロ原子を含有する例示的な5員ヘテロアリール基としては、限定されないが、ピロリル、フラニル及びチオフェニルが挙げられる。2個のヘテロ原子を含有する例示的な5員ヘテロアリール基としては、限定されないが、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、及びイソチアゾリルが挙げられる。3個のヘテロ原子を含有する例示的な5員ヘテロアリール基としては、限定されないが、トリアゾリル、オキサジアゾリル、及びチアジアゾリルが挙げられる。4個のヘテロ原子を含有する例示的な5員ヘテロアリール基としては、限定されないが、テトラゾリルが挙げられる。1個のヘテロ原子を含有する例示的な6員ヘテロアリール基としては、限定されないが、ピリジニルが挙げられる。2個のヘテロ原子を含有する例示的な6員ヘテロアリール基としては、限定されないが、ピリダジニル、ピリミジニル、及びピラジニルが挙げられる。3又は4個のヘテロ原子を含有する例示的な6員ヘテロアリール基としては、限定されないが、それぞれトリアジニル及びテトラジニルが挙げられる。1個のヘテロ原子を含有する例示的な7員ヘテロアリール基としては、限定されないが、アゼピニル、オキセピニル、及びチエピニルが挙げられる。例示的な5,6-二環式ヘテロアリール基としては、限定されないが、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾチオフェニル、ベンゾフラニル、ベンゾイソフラニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンズイソキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンズチアゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズチアジアゾリル、インドリジニル、及びプリニルが挙げられる。例示的な6,6-二環式ヘテロアリール基としては、限定されないが、ナフチリジニル、プテリジニル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、キノキサリニル、フタラジニル、及びキナゾリニルが挙げられる。他の例示的なヘテロアリール基としては、ヘム及びヘム誘導体が挙げられる。
【0100】
本明細書において用いられるところ、「アリーレン」及び「ヘテロアリーレン」という用語は、単独で、又は他の置換基の一部として、それぞれ、アリール及びヘテロアリールから誘導される二価ラジカルを意味する。
【0101】
本明細書において用いられるところ、「シクロアルキル」は、3~10個の環炭素原子(「C3~C10シクロアルキル」)及びゼロ個のヘテロ原子を非芳香族環系中に有する非芳香族環状炭化水素基のラジカルを指す。いくつかの実施形態において、シクロアルキル基は、3~8個の環炭素原子(「C3~C8シクロアルキル」)、3~6個の環炭素原子(「C3~C6シクロアルキル」)、又は5~10個の環炭素原子を有する(「C5~C10シクロアルキル」)。シクロアルキル基は、例えば、C4~C7員シクロアルキルと記載され得、ここで、「員」という用語は、部分中の非水素環原子を指す。例示的なC3~C6シクロアルキル基としては、限定されないが、シクロプロピル(C3)、シクロプロペニル(C3)、シクロブチル(C4)、シクロブテニル(C4)、シクロペンチル(C5)、シクロペンテニル(C5)、シクロヘキシル(C6)、シクロヘキセニル(C6)、シクロヘキサジエニル(C6)などが挙げられる。例示的なC3~C8シクロアルキル基としては、限定されないが、前述のC3~C6シクロアルキル基並びにシクロヘプチル(C7)、シクロヘプテニル(C7)、シクロヘプタジエニル(C7)、シクロヘプタトリエニル(C7)、シクロオクチル(C8)、シクロオクテニル(C8)、クバニル(C8)、ビシクロ[1.1.1]ペンタニル(C5)、ビシクロ[2.2.2]オクタニル(C8)、ビシクロ[2.1.1]ヘキサニル(C6)、ビシクロ[3.1.1]ヘプタニル(C7)などが挙げられる。例示的なC3~C10シクロアルキル基としては、限定されないが、前述のC3~C8シクロアルキル基並びにシクロノニル(C9)、シクロノネニル(C9)、シクロデシル(C10)、シクロデセニル(C10)、オクタヒドロ-1H-インデニル(C9)、デカヒドロナフタレニル(C10)、スピロ[4.5]デカニル(C10)などが挙げられる。前述の例に例示されているとおり、一定の実施形態において、シクロアルキル基は、単環式(「単環式シクロアルキル」)であるか、又は二環系などの縮合、架橋若しくはスピロ環系を含有し(「二環式シクロアルキル」)、また、飽和であることが可能であり、又は部分不飽和であることが可能である。「シクロアルキル」はまた、上記に定義されているシクロアルキル環が、1個以上のアリール基と縮合しており、結合点がシクロアルキル環にある環系を含み、このような実例において、炭素の数は引き続きシクロアルキル環系中の炭素の数を示す。シクロアルキル基の各実例は独立して任意選択により置換され得、すなわち、非置換であるか(「非置換シクロアルキル」)又は1個以上の置換基で置換されている(「置換シクロアルキル」)。
【0102】
本明細書において用いられるところ、「ヘテロシクリル」は、環炭素原子及び1~4個の環ヘテロ原子を有する3~10員非芳香族環系のラジカルを指し、ここで、各ヘテロ原子は、窒素、酸素、硫黄、ホウ素、リン、及びケイ素から独立して選択される(「3~10員ヘテロシクリル」)。1個以上の窒素原子を含有するヘテロシクリル基において、結合点は、原子価的に許容されるとおり、炭素又は窒素原子であることが可能である。ヘテロシクリル基は、単環式(「単環式ヘテロシクリル」)又は二環系などの縮合、架橋若しくはスピロ環系(「二環式ヘテロシクリル」)であることが可能であり、また、飽和であることが可能であり、又は部分不飽和であることが可能である。ヘテロシクリル二環系は、1個以上のヘテロ原子を一方又は両方の環中に含んでいることが可能である。「ヘテロシクリル」はまた、上記に定義されているヘテロシクリル環が、1個以上のシクロアルキル基と縮合しており、結合点がシクロアルキル又はヘテロシクリル環のいずれかにある環系、又は上記に定義されているヘテロシクリル環が、1個以上のアリール又はヘテロアリール基と縮合しており、結合点がヘテロシクリル環にある環系を含み、このような実例において、環員の数は引き続きヘテロシクリル環系中の環員の数を示す。ヘテロシクリル基は、例えば、3~7員ヘテロシクリルと記載され得、ここで、「員」という用語は、部分中における、非水素環原子、すなわち、炭素、窒素、酸素、硫黄、ホウ素、リン、及びケイ素を指す。ヘテロシクリルの各実例は独立して任意選択により置換され得、すなわち、非置換であるか(「非置換ヘテロシクリル」)又は1個以上の置換基で置換されている(「置換ヘテロシクリル」)。一定の実施形態において、ヘテロシクリル基は非置換3~10員ヘテロシクリルである。一定の実施形態において、ヘテロシクリル基は置換3~10員ヘテロシクリルである。
【0103】
いくつかの実施形態において、ヘテロシクリル基は、環炭素原子及び1~4個の環ヘテロ原子を有する5~10員非芳香族環系であり、ここで、各ヘテロ原子は、窒素、酸素、硫黄、ホウ素、リン、及びケイ素から独立して選択される(「5~10員ヘテロシクリル」)。いくつかの実施形態において、ヘテロシクリル基は、環炭素原子及び1~4個の環ヘテロ原子を有する5~8員非芳香族環系であり、ここで、各ヘテロ原子は、窒素、酸素、及び硫黄から独立して選択される(「5~8員ヘテロシクリル」)。いくつかの実施形態において、ヘテロシクリル基は、環炭素原子及び1~4個の環ヘテロ原子を有する5~6員非芳香族環系であり、ここで、各ヘテロ原子は、窒素、酸素、及び硫黄から独立して選択される(「5~6員ヘテロシクリル」)。いくつかの実施形態において、5~6員ヘテロシクリルは、窒素、酸素、及び硫黄から選択される1~3個の環ヘテロ原子を有する。いくつかの実施形態において、5~6員ヘテロシクリルは、窒素、酸素、及び硫黄から選択される1~2個の環ヘテロ原子を有する。いくつかの実施形態において、5~6員ヘテロシクリルは、窒素、酸素、及び硫黄から選択される1個の環ヘテロ原子を有する。
【0104】
1個のヘテロ原子を含有する例示的な3員ヘテロシクリル基としては、限定されないが、アジルジニル(azirdinyl)、オキシラニル、チオレニル(thiorenyl)が挙げられる。1個のヘテロ原子を含有する例示的な4員ヘテロシクリル基としては、限定されないが、アゼチジニル、オキセタニル及びチエタニルが挙げられる。1個のヘテロ原子を含有する例示的な5員ヘテロシクリル基としては、限定されないが、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ジヒドロチオフェニル、ピロリジニル、ジヒドロピロリル及びピロリル-2,5-ジオンが挙げられる。2個のヘテロ原子を含有する例示的な5員ヘテロシクリル基としては、限定されないが、ジオキソラニル、オキサスルフラニル、ジスルフラニル、及びオキサゾリジン-2-オンが挙げられる。3個のヘテロ原子を含有する例示的な5員ヘテロシクリル基としては、限定されないが、トリアゾリニル、オキサジアゾリニル、及びチアジアゾリニルが挙げられる。1個のヘテロ原子を含有する例示的な6員ヘテロシクリル基としては、限定されないが、ピペリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピリジニル、及びチアニルが挙げられる。2個のヘテロ原子を含有する例示的な6員ヘテロシクリル基としては、限定されないが、ピペラジニル、モルホリニル、ジチアニル、ジオキサニルが挙げられる。2個のヘテロ原子を含有する例示的な6員ヘテロシクリル基としては、限定されないが、トリアジナニル又はチオモルホリニル-1,1-ジオキシドが挙げられる。1個のヘテロ原子を含有する例示的な7員ヘテロシクリル基としては、限定されないが、アゼパニル、オキセパニル及びチエパニルが挙げられる。1個のヘテロ原子を含有する例示的な8員ヘテロシクリル基としては、限定されないが、アゾカニル、オキセカニル及びチオカニルが挙げられる。C6アリール環に縮合した例示的な5員ヘテロシクリル基(本明細書において、5,6-二環式複素環とも称される)としては、限定されないが、インドリニル、イソインドリニル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリノニルなどが挙げられる。アリール環に縮合した例示的な6員ヘテロシクリル基(本明細書において、6,6-二環式複素環とも称される)としては、限定されないが、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニルなどが挙げられる。
【0105】
本明細書において用いられるところ、「アミノ」は、ラジカル-NR70R71を指し、ここで、R70及びR71は各々独立して、水素、C1~C8アルキル、C3~C10シクロアルキル、C4~C10ヘテロシクリル、C6~C10アリール、及びC5~C10ヘテロアリールである。いくつかの実施形態において、アミノはNH2を指す。
【0106】
本明細書において用いられるところ、「シアノ」はラジカル-CNを指す。
【0107】
本明細書において用いられるところ、「ハロ」又は「ハロゲン」は、独立して、又は他の置換基の一部として、別段の定めがある場合を除き、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、又はヨウ素(I)原子を意味する。
【0108】
本明細書において用いられるところ、「ヒドロキシ」はラジカル-OHを指す。
【0109】
本明細書において定義されるところ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリール基は、任意選択により置換されている(例えば、「置換」若しくは「非置換」アルキル、「置換」若しくは「非置換」アルケニル、「置換」若しくは「非置換」アルキニル、「置換」若しくは「非置換」ヘテロアルキル、「置換」若しくは「非置換」シクロアルキル、「置換」若しくは「非置換」ヘテロシクリル、「置換」若しくは「非置換」アリール又は「置換」若しくは「非置換」ヘテロアリール基)。一般に、「置換されている」という用語は、用語「任意選択により」が先行しているか否かに関わらず、ある基(例えば炭素又は窒素原子)に存在する少なくとも1個の水素が許容される置換基で置き換えられることを意味し、この置換基は、例えば、置換により安定な化合物(例えば、再配列、環化、脱離、又は他の反応などによって自発的な変換を起こさない化合物)をもたらすものである。別段の定めがある場合を除き、「置換されている」基は、その基の1つ又は複数の置換可能な位置に置換基を有し、また、いずれかの所与の構造における2つ以上の位置が置換されている場合、この置換基は各位置において同一であるか又は異なる。「置換されている」という用語は、安定な化合物が形成される本明細書に記載の置換基のいずれかなどの、有機化合物の全ての許容可能な置換基による置換を含むことが想定される。本開示は、安定な化合物を得るためのあらゆるこのような組み合わせを想定する。本開示の目的のために、窒素などのヘテロ原子は、ヘテロ原子の原子価を満たすと共に、安定な部分の形成をもたらす、水素置換基及び/又は本明細書に記載のいずれかの好適な置換基を有し得る。
【0110】
2個以上の置換基は、任意選択により結合されて、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、又はヘテロシクリル基を形成し得る。このようないわゆる環形成置換基は、典型的には、必須ではないが、環基礎構造に結合して見出される。一実施形態において、環形成置換基は基礎構造の隣接する構成員に結合している。例えば、環基礎構造の隣接する構成員に結合する2個の環形成置換基が、縮合環構造を形成する。他の実施形態において、環形成置換基は、基礎構造の単一の構成員に結合している。例えば、環基礎構造の単一の構成員に結合する2個の環形成置換基が、スピロ環式構造を形成する。さらに他の実施形態において、環形成置換基は、基礎構造の隣接していない構成員に結合している。
【0111】
本明細書に記載の式(I)の化合物は1つ又は複数の不斉中心を含んでいることが可能であり、それ故、例えば、鏡像異性体及び/又はジアステレオマーといった種々の異性形態で存在することが可能である。例えば、本明細書に記載の化合物は個々の鏡像異性体、ジアステレオマー若しくは幾何異性体の形態であることが可能であり、又はラセミ混合物及び1種以上の立体異性体が富化された混合物を含む立体異性体の混合物の形態であることが可能である。異性体は、キラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、並びにキラル塩の形成及び結晶化を含む当業者に公知の方法によって混合物から単離可能であり;又は好ましい異性体は、不斉合成により調製可能である。例えば、Jacques et al.,Enantiomers,Racemates and Resolutions(Wiley Interscience,New York,1981);Wilen et al.,Tetrahedron 33:2725(1977);Eliel,Stereochemistry of Carbon Compounds(McGraw-Hill,NY,1962);及びWilen,Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions p.268(E.L.Eliel,Ed.,Univ.of Notre Dame Press,Notre Dame,IN 1972)を参照のこと。本開示はさらに、他の異性体を実質的に含まない個々の異性体として、及び代わりに、種々の異性体の混合物として、本明細書に記載の化合物を含む。
【0112】
本明細書において用いられるところ、純粋な鏡像異性化合物は、化合物の他の鏡像異性体又は立体異性体を実質的に含まない(すなわち鏡像体過剰量である)。換言すると、「S」形態の化合物は「R」形態の化合物を実質的に含まず、それ故、「R」形態が鏡像体過剰量である。「鏡像異性体的に純粋な」又は「純粋な鏡像異性体」という用語は、化合物が、75重量%超、80重量%超、85重量%超、90重量%超、91重量%超、92重量%超、93重量%超、94重量%超、95重量%超、96重量%超、97重量%超、98重量%超、99重量%超、99.5重量%超、又は99.9重量%超の鏡像異性体を含むことを示す。一定の実施形態において、重量は、化合物の全ての鏡像異性体又は立体異性体の総重量に基づく。
【0113】
本明細書に記載の式(I)の化合物はまた、1つ又は複数の同位体置換を含んでいてもよい。例えば、Hは、1H、2H(D又は重水素)、及び3H(T又は三重水素)を含むいずれかの同位体形態であり得;Cは、12C、13C、及び14Cを含むいずれかの同位体形態であり得;Oは、16O及び18Oなどを含むいずれかの同位体形態であり得る。
【0114】
「薬学的に許容可能な塩」という用語は、本明細書に記載の化合物に見出される特定の置換基に応じて、比較的無毒の酸又は塩基を伴って調製される有効な化合物の塩を含むことを意味する。本開示のデバイスの提供において使用される式(I)の化合物が比較的酸性の官能基を含有する場合、塩基付加塩は、このような中性型の化合物を、十分な量の所望の塩基と、そのまま、又は好適な不活性溶剤中において接触させることにより得ることが可能である。薬学的に許容可能な塩基付加塩の例としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノ、若しくはマグネシウム塩、又は同様の塩が挙げられる。本開示において使用される化合物が比較的塩基性の官能基を含有する場合、酸付加塩は、このような中性型の化合物を、十分な量の所望の酸と、そのまま、又は好適な不活性溶剤中において接触させることにより得ることが可能である。薬学的に許容可能な酸付加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸、ヨウ化水素酸、又は亜リン酸などのような無機酸から誘導されるものが挙げられ、並びに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などのような有機酸から誘導される塩が挙げられる。また、アルギニン酸塩などのアミノ酸の塩、及びグルクロン酸又はガラクツロン酸などのような有機酸の塩が含まれる(例えば、Berge et al,Journal of Pharmaceutical Science 66:1-19(1977)を参照のこと)。一定の特定の本開示のデバイスにおいて使用される化合物(例えば、粒子、ヒドロゲルカプセル)は、塩基又は酸付加塩への化合物の転換を可能とする塩基性及び酸性官能基の両方を含有する。これらの塩は、当業者に公知の方法によって調製され得る。当業者に公知である他の薬学的に許容可能なキャリアが本開示において使用するのに好適である。
【0115】
本開示のデバイスは、プロドラッグ形態の式(I)の化合物を含み得る。プロドラッグは、生理学的状態で化学変化を容易に生起して本開示においてデバイスを提供するために使用される化合物を提供する化合物である。さらに、プロドラッグは、エキソビボ環境における化学的又は生化学的方法によって式(I)の有用な化合物に転換されることが可能である。
【0116】
一定の式(I)の化合物は、非溶媒和形態、並びに水和物形態を含む溶媒和形態で存在することが可能である。一般に、溶媒和形態は非溶媒和形態と同等であり、本開示の範囲内に包含される。一定の式(I)の化合物は、多数の結晶性又はアモルファス形態で存在し得る。一般に、全ての物理的形態が本開示によって想定される使用について同等であり、本開示の範囲内であることが意図されている。
【0117】
「溶媒和物」という用語は、通常は加溶剤分解反応による、溶剤に付随する化合物の形態を指す。この物理的な付随は水素結合を含み得る。従来の溶剤としては、水、メタノール、エタノール、酢酸、DMSO、THF、ジエチルエーテルなどが挙げられる。本明細書に記載の化合物は、例えば結晶形態で調製され得、溶媒和され得る。好適な溶媒和物としては、薬学的に許容可能な溶媒和物が挙げられ、さらに、化学量論的溶媒和物及び非化学量論的溶媒和物の両方が挙げられる。
【0118】
「水和物」という用語は、水に付随している化合物を指す。典型的には、化合物の水和物に含有される水分子の数は、水和物中の化合物分子の数に対する確定された割合である。従って、化合物の水和物は、例えば一般式R・x H2O(式中、Rは化合物であり、xは0超の数字である)によって表され得る。
【0119】
「互変異性体」という用語は、本明細書において用いられるところ、化合物構造の相互変換可能な形態であって、水素原子及び電子の変位が様々である化合物を指す。それ故、2つの構造が、π電子及び原子(通常はH)の移動を介して平衡状態にあり得る。例えば、酸又は塩基のいずれかを伴う処理によって急速に相互変換されるため、エノール及びケトンは互変異性体である。互変異性体は、対象となる化合物の最適な化学反応性及び生物活性の獲得と関連性があり得る。
【0120】
本明細書において用いられるところ、記号
【化2】

は、エンティティ、例えば、ポリマー(例えば、アルギン酸塩などのヒドロゲル形成ポリマー)又は移植可能なデバイス、例えば、粒子、ヒドロゲルカプセルの表面への結合を指す。
【化3】

によって表される結合は、エンティティ、例えば、ポリマー又は移植可能な要素への直接結合を指してもよく、又は結合基を介したエンティティへの連結を指し得る。本明細書において用いられるところ、「結合基」は、エンティティ(例えば、本明細書に記載のポリマー又は移植可能な要素(例えば、デバイス))への式(I)の化合物の連結のための部分を指し、当該技術分野において公知であるいずれかの結合化学を含み得る。例示的な結合基の列挙は、本明細書において参照によりその全体が援用される、Bioconjugate Techniques(3rd ed,Greg T.Hermanson,Waltham,MA:Elsevier,Inc,2013)に概説されている。いくつかの実施形態において、結合基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、-C(O)-、-OC(O)-、-N(RC)-、-N(RC)C(O)-、-C(O)N(RC)-、-N(RC)N(RD)-、-NCN-、-C(=N(RC)(RD))O-、-S-、-S(O)x-、-OS(O)x-、-N(RC)S(O)x-、-S(O)xN(RC)-、-P(RF)y-、-Si(ORA)2-、-Si(RG)(ORA)-、-B(ORA)-、又は金属を含み、ここで、RA、RC、RD、RF、RG、x及びyの各々は、独立して本明細書に記載されているとおりである。いくつかの実施形態において、結合基は、アミン、ケトン、エステル、アミド、アルキル、アルケニル、アルキニル、又はチオールを含む。いくつかの実施形態において、結合基は架橋剤である。いくつかの実施形態において、結合基は-C(O)(C1~C6-アルキレン)-であり、ここで、アルキレンはR1で置換され、R1は本明細書に記載されているとおりである。いくつかの実施形態において、結合基は-C(O)(C1~C6-アルキレン)-であり、ここで、アルキレンは、1~2個のアルキル基(例えば、1~2個のメチル基)で置換される。いくつかの実施形態において、結合基は-C(O)C(CH3)2-である。いくつかの実施形態において、結合基は-C(O)(メチレン)-であり、ここで、アルキレンは、1~2個のアルキル基(例えば、1~2個のメチル基)で置換される。いくつかの実施形態において、結合基は-C(O)CH(CH3)-である。いくつかの実施形態において、結合基は-C(O)C(CH3)-である。
【0121】
デバイスの特徴
本開示は、少なくとも1種の細胞結合物質(CBS)(本明細書で定義されている)を含むポリマー組成物により第1の細胞含有区画中でカプセル化されている複数の細胞(例えば生細胞)を含む移植可能なデバイスを特徴とする。この細胞は、対象(例えば、ヒト対象又は他の哺乳動物対象)へのこのデバイスの移植時に治療薬を発現し得る。加えて、このデバイスは、FBRを軽減するための少なくとも1種の手段(本明細書で定義されている)を含む。
【0122】
ある実施形態において、細胞含有区画中のCBSは、本明細書において上記で定義されているCBSなしの参照デバイスと比較して、デバイスが免疫無防備動物又は免疫適格性動物(例えば、免疫適格性マウス(例えば、Jackson Laboratory,Bar Harbor,ME USAから入手可能なC57BL/6Jマウス株))に移植された後の時点で細胞の生存率を増加させるのに及び/又は細胞の産生性を増加させるのに有効な量で存在する。ある実施形態において、細胞の生存率及び/又は産生性の増加は、移植後の所望の時点で検出可能であり、例えば、1日、3日、5日、1週間、2週間、4週間、8週間、12週間、24週間、36週間、及び48週間の内の1つ又は複数で検出可能である。ある実施形態において、CBSの有効量は、(i)移植後1週間、2週間、4週間、又は12週間で測定した場合の細胞生存率の少なくとも10%、25%、50%、又は100%の増加、及び(ii)移植後1週間、2週間、4週間、又は12週間で測定した場合の細胞産生性の少なくとも1.25倍、1.5倍、2倍、5倍、8倍、又は10倍の増加の内の一方又は両方をもたらす。ある実施形態において、細胞含有区画中のCBSの有効量は、最小有効量と、CBSなしの参照デバイスと比較して又は細胞含有区画中のCBSの最大有効量(例えば最適量)を含むデバイスと比較して細胞の生存率及び/又は産生性が低下しているより高い量との間の範囲内である。ある実施形態において、細胞含有区画中のCBSの量は、最適量(例えば、CBSなしの参照デバイスと比較して細胞の生存率及び/又は産生性の最大の増加をもたらす量)を50%、25%、10%、又は5%以下上回るか、又は下回る。ある実施形態において、移植後の産生性の改善を達成するためのCBPの有効量は、細胞、CBS、細胞(例えば組み換えARPE-19細胞)により発現された治療用タンパク質、特定のポリペプチド(例えば、第VIII因子、第IX因子、第VII因子)、及び任意選択的に治療用タンパク質の特定のコード配列を含む所望の組み合わせに対して決定される。
【0123】
本明細書で説明されているデバイス中の生存細胞(及び任意選択的な死滅細胞)の数を、当該技術分野で既知の任意の技術(例えば、2種の蛍光色素で生細胞及び死滅細胞を別個に標識し、続いて蛍光顕微鏡を使用して標識細胞を検出して任意選択的に定量するアッセイ)を使用して推定し得る。細胞生存率を、他の細胞生存率の指標を評価する(例えば、エステラーゼ活性を測定するか、又は細胞中のATPの量を定量する)ことによっても評価し得る。
【0124】
ある実施形態において、細胞産生性の移植後の増加を、インビボで細胞により発現されたか又はエクスビボで細胞により発現された(例えば、デバイスを動物から回収した後の細胞発現)治療薬のレベルに関してアッセイすることにより検出する。治療薬の性質に応じて、この治療薬の発現を、細胞内で測定し得、細胞外ではあるがデバイス内部で測定し得、及び/又はデバイスの外部(例えば、本明細書で説明されているデバイス又はデバイス調製物で処置された動物(例えば非ヒト動物)から摘出された組織サンプル中)で測定し得る。ある実施形態において、細胞産生性は、投与されたデバイスの数(例えば、動物中に配置されたカプセルの数)で除算され、及び/又は投与された細胞の数(例えば、例えば本明細書の下記の実施例で説明されるように決定された、投与されたカプセル調製物中の1個のカプセル当たりのおおよその数)で除算された、治療薬又は薬剤活性の測定量として表される。ある実施形態において、決定された量(例えば、治療薬の決定された量、又は活性の量)を、目的の2つの時点の間の時間(例えば、投与と測定との間の時間、例えば、数時間、数日、又は数週間)で除算することにより、細胞産生性の増加をさらに正規化する。ある実施形態では、治療薬はタンパク質であり、動物から摘出された組織サンプル(例えば、動物から採取された血液サンプルから分離された血漿)中のタンパク質の量及び/又は活性を測定し、この測定された量及び/又は活性を、投与されたデバイスの数(例えば、移植された2区画カプセルの数)で除算し、任意選択的に、この結果を、投与と組織サンプルの摘出との間の日数で除算することにより、産生性の増加を決定する。
【0125】
CBSは、カプセル化ポリマー組成物内に存在するポリペプチドポリマー(例えば、フィブロネクチン又はラミニン等のCBPP)を含んでもよいし、無関係なアミノ酸ポリマー(例えばシルクポリマー)に共有結合的に付着しているか、又は天然に存在するポリマー(例えば、アルギン酸塩、キチン、綿)に共有結合的に付着しているか、又は合成ポリマー(例えば、下記のクラスの内のいずれかのポリマー:アクリル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセトニトリル、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリブトエステル(polybutester))に共有結合的に付着しているCBPであってもよい。CBSに加えて、細胞含有区画中のポリマー組成物は、上記で列挙されたポリマークラスの内のいずれかの1種又は複数種の非修飾の天然に存在するか又は合成のポリマーを含み、この区画に構造的完全性を提供するのに役立ち得、及び/又は細胞を支持する足場を提供するのに役立ち得る。
【0126】
いくつかの実施形態において、CBSは、1種又は複数種のCBPで共有結合的に修飾されたアルギン酸塩を含み、CBPとして、RGD(配列番号43)、RGDSP(配列番号59)、DGEA(配列番号39)、FYFDLR(配列番号40)、PHSRN(配列番号46)、YIGSR(配列番号50)、本明細書の表1で列挙されている細胞結合配列の内のいずれかを含むか若しくはから本質的になるペプチド、又はこれらのCBPの内の2つ、3つ、若しくはより多くの混合物(例えば、RGD+DGEA(それぞれ配列番号43及び39)、RGD+PHSRN(それぞれ配列番号43及び46)、RGD+DGEA+PHSRN(それぞれ配列番号43、39、及び46))が挙げられる。アルギン酸塩は、β-D-マンヌロン酸(M)及びα-L-グルロン酸(G)で構成された多糖である。いくつかの実施形態において、アルギン酸塩は、高グルロン酸(G)アルギン酸塩であり、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%超、又はより多くのグルロン酸(G)を含む。いくつかの実施形態において、G:Mの比は、少なくとも1.3、1.5、又は1.5超である。いくつかの実施形態において、アルギン酸塩は、高マンヌロン酸(M)アルギン酸塩であり、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%超、又はより多くのマンヌロン酸(M)を含む。いくつかの実施形態において、M:Gの比は、1である。いくつかの実施形態において、M:Gの比は、1未満である。
【0127】
ある実施形態において、各CBPは、アミノ酸リンカー(例えば、1個、2個、又は3個のグリシン残基から本質的になるアミノ酸リンカー)を介してアルギン酸塩に付着している。ある実施形態において、このリンカーは、CBPのN末端に付着した単一のグリシン残基である。ある実施形態において、第1のCBSは、RGDペプチドで共有結合的に修飾されたポリマーである。ある実施形態において、第1のCBSは、分子量が75~150kDaであり且つG:M比が1.5以上であるアルギン酸であり、GRGD(配列番号62)又はGRGDSP(配列番号60)から本質的になるリンカー-CBPで共有結合的に修飾されている。
【0128】
ある実施形態において、各CBPは、CBPの遊離末端(例えば、CBPの非リンカー末端)上で末端のキャッピング基又は保護基をさらに含み得る。末端のキャッピング基又は保護基は、末端のアミノ酸残基が不要な若しくは不必要な反応を受けることを防止し得、及び/又はCBPの分解若しくは修飾を減少させるか若しくは防止し得る。例示的なキャッピング基として、アルキル基、エーテル、アミド、及び同類のものが挙げられる。ある実施形態において、リンカー-CBPは、GRGD又はGRGDSPと、末端キャッピング基とを含む。ある実施形態において、リンカー-CBPは、GRGD又はGRGDSPを含み、且つ末端キャッピング基は含まない。
【0129】
ある実施形態において、細胞含有区画中のカプセル化ポリマー組成物は、1種又は複数種の追加の細胞結合物質を含み得、この細胞結合物質は、CBPで共有結合的に修飾されたCBPP又はポリマーであり得る。ある実施形態において、このポリマー組成物はまた、第2のCBP-アルギン酸塩も含み、例えば、G(1~3)DGEA(配列番号66)、G(1~3)PHRSN(配列番号67)、又はG(1~3)REDV(配列番号68)からなる群から選択されるリンカー-CBPで共有結合的に修飾されたアルギン酸塩も含む。ある実施形態においては、第2のCBP-アルギン酸塩中のアルギン酸塩はまた、分子量が75~150kDaであり且つG:M比が1.5以上である。
【0130】
本明細書の下記の実施例で説明されるように、2区画ヒドロゲルカプセルの内側区画中において、RGD修飾アルギン酸塩を使用して組み換えRPE細胞がカプセル化される場合には、カプセル化細胞の産生性は、修飾アルギン酸塩中のRGDペプチドの密度による影響を有意に受け得るということが、驚くべきことに発見されている。そのため、いくつかの実施形態において、細胞含有区画を形成するために使用されるCBP-ポリマー中の細胞結合ペプチド(例えば、RGD(配列番号43)又はRGDSP(配列番号59))の密度は、(a)0.10%の窒素(N)~1.00%のN、約0.20%のN~約0.80%のN、約0.30%のN~約0.60%のN、約0.30%~約0.50%、若しくは0.33%のN~0.46%のNであるか、又は(b)定量的ペプチドコンジュゲーションアッセイ(例えば、本明細書で説明されているアッセイ)により決定した場合に、溶液中のCBP-ポリマー(例えば、RGD(配列番号43)若しくはRGDSP(配列番号59)で共有結合的に修飾されたMMW-アルギン酸塩)1g当たりCBP約0.1~約1.0マイクロモルである。ある実施形態において、カプセル化細胞は、組み換えARPE-19細胞である。ある実施形態において、組み換えARPE-19細胞は、安定的にトランスフェクトされた細胞、又はATCCに由来するモノクローナル細胞株(CRL-2302)である。ある実施形態において、組み換えARPE-19細胞は、第VIII因子タンパク質又は第IX因子タンパク質を発現する。デバイスが細胞含有区画中で様々なCBP-ポリマーの混合物を含むいくつかの実施形態において、この細胞含有区画中の細胞結合ペプチドの総密度は、0.1%の窒素(N)~1.00%のN、約0.20%のN~約0.80%のN、約0.30%のN~約0.60%のN、若しくは約0.30%のN~約0.50%のNであるか、又は定量的ペプチドコンジュゲーションアッセイ(例えば、本明細書で説明されているアッセイ)により決定した場合に、溶液中のCBP-ポリマー1g当たりCBP約0.1~約1.0マイクロモルである。
【0131】
ある実施形態において、定量的ペプチドコンジュゲーションアッセイは、CPB-ポリマーのサンプルを酸性加水分解に供して、コンジュゲートペプチド(及びCBP-ポリマー中の任意の残留非コンジュゲートペプチド)から個々のアミノ酸を生成すること、これら個々のアミノ酸を定量すること、各アミノ酸のモル濃度を平均化すること、並びにサンプル中の総ペプチド濃度を算出することを含む。ある実施形態において、定量的ペプチドコンジュゲーションアッセイを、本明細書の実施例25で説明されているプロセスと実質的に同様に実施する。ある実施形態において、定量的ペプチドコンジュゲーションアッセイはまた、総ペプチド濃度からサンプル中の任意の残留非コンジュゲートペプチドの濃度を減算することも含む。CBP-ポリマー組成物中の非コンジュゲートペプチドの濃度を、当該技術分野で既知の任意の適切なアッセイを使用して決定し得、例えば、本明細書の実施例26で説明されているLC-MSにより決定し得る。典型的には、定量的ペプチドコンジュゲーションアッセイを、デバイスを調製するために使用されるCBP-ポリマーの生理食塩水溶液のサンプルに対して実施するが、CBP-ポリマーの凍結乾燥サンプルに対して実施してもよい。
【0132】
ポリマーを、当該技術分野で既知の様々な方法の内のいずれかを使用して、CBPで共有結合的に修飾し得、例えば、Jeon O,et al.,Biodegradable,photocrosslinked alginate hydrogels with independently tailorable physical properties and cell adhesivity.Tissue Eng.Part A 16:2915-2925(2010);Rowley,J.A.et al.,Biomaterials 20:45-53(1999)を参照されたい。例えば、修飾するポリマーがアルギン酸塩である場合には、本明細書の下記の実施例1Bで説明されているものと類似のアプローチを使用して、アミノ酸リンカー配列(1~数個のアミノ酸)と細胞結合アミノ酸配列とから本質的になるペプチドのN末端を、アルギン酸塩に共有結合的に付着し得る。
【0133】
細胞含有区画中のポリマー組成物に加えて、デバイス(例えば、マクロデバイス、粒子、ヒドロゲルカプセル)は、金属、金属合金、セラミック、ポリマー、繊維、不活性材料、及びこれらの組み合わせ等の材料を含み得るか、又はこの材料から形成され得る。デバイスは、1種の材料で完全に構成されてもよいし、細胞含有区画内に及び任意の他の区画内に他の材料を含んでもよい。
【0134】
本開示のデバイスにおけるFBRを軽減するための手段は、当該技術分野で既知の様々なアプローチの内の1つ又は複数を含み得る。
【0135】
例えば、本明細書で開示されているデバイスにおけるFBRを軽減するための手段は、半透過性の生体適合膜であって、細胞の生存及び機能に重要な酸素及び他の分子がこの半透膜を通って移動することを可能にするが、免疫細胞が孔を通過することを防止するように選択されている孔径を有する半透過性の生体適合膜で細胞を取り囲むことを含み得る。ある実施形態において、この半透膜は、分子量カットオフが1000kD未満であるか、又は50~700kD、70~300kD、若しくは70~150kD、若しくは70~130kDである。
【0136】
別のFBR軽減手段は、細胞フリー生体適合材料から形成されたバリア区画で細胞含有区画を取り囲むことを含む(例えば、Ma,M et al.,Adv.Healthc Mater.,2(5):667-672(2012)で説明されているコア-シェルマイクロカプセル)。そのようなバリア区画は、半透膜手段と共に使用されるか又は半透膜手段なしで使用される可能性がある。FBR軽減手段は、例えば米国特許第9,867,781号明細書で説明されているように、FBRを阻害するために、移植されたデバイスから放出される抗炎症剤をこのデバイス上に又はこのデバイス内に配置することを含み得る。他のFBR軽減手段は、国際公開第2017/176792号パンフレット及び同第2017/176804号パンフレットで説明されているように、デバイス表面上に配置されているか又はデバイス内にカプセル化されているCSF-1R阻害剤を用いる。他のFBR軽減手段は、Veiseh,O.,et al.,Nature Materials 14:643-652(2015)で説明されているように、直径が1mm超である球状の形状にデバイスを構成することを用いる。いくつかの実施形態において、FBRを軽減するための手段は、デバイスの外面上に及び/又は細胞含有区画を取り囲むバリア区画内に抗線維性化合物を配置することを含む。例示的な抗線維性化合物を、本明細書の下記で説明する。いくつかの実施形態において、デバイスは、上記FBR軽減手段の内の2つ以上の組み合わせを含み得る。
【0137】
デバイス(例えば粒子)は、意図された標的位置への移植後にカプセル化細胞の生存率及び産生性を支持するのに適した任意の構成及び形状を有し得る。非限定的な例として、デバイスの形状は、円柱、長方形、円盤、卵形、星形、又は球状であり得る。デバイスは、網状又は入れ子の構造で構成され得る。いくつかの実施形態において、デバイスは、ある特定のサイズを超える物質が孔又は開口を通過することを防止し得る。いくつかの実施形態において、デバイス(例えば粒子)は、50kD、75kD、100kD、125kD、150kD、175kD、200kD、250kD、300kD、400kD、500kD、750kD、又は1,000kD超の物質が通過することを防止し得る。
【0138】
ある実施形態において、デバイスは、マクロカプセル化デバイスである。マクロデバイスの非限定的な例は、米国特許第9,526,880号明細書、同第9724430号明細書、及び同第8278106号明細書;欧州特許第742818B1号明細書、並びにSang,S.and Roy,S.,Biotechnol.Bioeng.113(7):1381-1402(2016)で説明されている。
【0139】
いくつかの実施形態において、デバイス(例えば、粒子)は、少なくとも約0.5ミリメートル(mm)、好ましくは、約1.0mm、約1.5mm以上の最大線形寸法(LLD)、例えば、平均直径、又はサイズを有する。いくつかの実施形態において、デバイス、又は粒子デバイスは、直径又はサイズが10mm程度であり得る。例えば、本明細書に記載の粒子は、0.5mm~10mm、1mm~10mm、1mm~8mm、1mm~6mm、1mm~5mm、1mm~4mm、1mm~3mm、1mm~2mm、1mm~1.5mm、1.5mm~8mm、1.5mm~6mm、1.5mm~5mm、1.5mm~4mm、1.5mm~3mm、1.5mm~2mm、2mm~8mm、2mm~7mm、2mm~6mm、2mm~5mm、2mm~4mm、2mm~3mm、2.5mm~8mm、2.5mm~7mm、2.5mm~6mm、2.5mm~5mm、2.5mm~4mm、2.5mm~3mm、3mm~8mm、3mm~7mm、3mm~6mm、3mm~5mm、3mm~4mm、3.5mm~8mm、3.5mm~7mm、3.5mm~6mm、3.5mm~5mm、3.5mm~4mm、4mm~8mm、4mm~7mm、4mm~6mm、4mm~5mm、4.5mm~8mm、4.5mm~7mm、4.5mm~6mm、4.5mm~5mm、5mm~8mm、5mm~7mm、5mm~6mm、5.5mm~8mm、5.5mm~7mm、5.5mm~6mm、6mm~8mm、6mm~7mm、6.5mm~8mm、6.5mm~7mm、7mm~8mm、又は7.5mm~8mmのサイズ範囲内である。
【0140】
本デバイスは、調製物(例えば組成物)中の複数の実質的に同一のデバイスの一部を形成し得る。いくつかの実施形態において、この調製物中のデバイス(例えば、粒子、ヒドロゲルカプセル)は、平均直径又はサイズが約0.5mm~約8mmである。いくつかの実施形態において、この調製物中のデバイスの平均直径又はサイズは、約0.5mm~約4mm又は約0.5mm~約2mmである。いくつかの実施形態において、この調製物中のデバイスは、2区画ヒドロゲルカプセルであり、且つ平均直径又はサイズが約0.7mm~約1.3mm又は約1.2mm~約1.8mmである。
【0141】
いくつかの実施形態において、デバイスは、2個のヒドロゲル区画を有し、これら2個のヒドロゲル区画では、内側の細胞含有区画が、第2の外側の(例えばバリア)区画で完全に取り囲まれている。ある実施形態において、第2の区画の内側の境界は、例えば図1で示されているように、第1の区画の外側の境界と界面を形成する。そのような実施形態において、第2の(外側)区画の厚さは、第2の区画の外側の境界と、これら2個の区画の間の界面との平均距離を意味しており、例えば、外側の区画で視覚的に観察された最薄点と最厚点とのそれぞれで測定された距離の平均を意味する。いくつかの実施形態(例えば、デバイスは約1.5mmの直径である)において、外側区画の最薄の距離及び最厚の距離は、それぞれ25~110マイクロメータ(μm)及び270~480μmである。いくつかの実施形態において、外側区画の厚さは、約10ナノメートル(nm)超であり、好ましくは100nm以上であり、1ミリメートル(mm)と同程度であり得る。例えば、本明細書で説明されているヒドロゲルカプセルデバイス中の外側区画の厚さ(例えば平均距離)は、10nm~1mm、100nm~1mm、500nm~1ミリメートル、1マイクロメータ(μm)~1mm、1μm~1mm、1μm~500μm、1μm~250μm、1μm~1mm、5μm~500μm、5μm~250μm、10μm~1mm、10μm~500μm、又は10μm~250μmであり得る。いくつかの実施形態において、外側区画の厚さ(例えば平均距離)は、100nm~1mm、1μm~1mm、1μm~500μm、又は5μm~1mmである。いくつかの実施形態において、外側区画の厚さ(例えば平均距離)は、約50μm~約100μmである。いくつかの実施形態(例えば、デバイスは約1.5mmの直径である)において、外側区画の厚さ(例えば平均距離)は、約180μm~260μm又は約310μm~440μmである。
【0142】
いくつかの実施形態において、本開示のデバイス(例えば、粒子、カプセル)は、例えば、材料の自由な流動を可能にするために、少なくとも1つの孔又は開口を含む。いくつかの実施形態において、デバイスの平均孔径は、約0.1μm~約10μmである。例えば、平均孔径は、0.1μm~10μm、0.1μm~5μm、0.1μm~2μm、0.15μm~10μm、0.15μm~5μm、0.15μm~2μm、0.2μm~10μm、0.2μm~5μm、0.25μm~10μm、0.25μm~5μm、0.5μm~10μm、0.75μm~10μm、1μm~10μm、1μm~5μm、1μm~2μm、2μm~10μm、2μm~5μm、又は5μm~10μmである。いくつかの実施形態において、デバイスの平均孔径は、約0.1μm~10μmである。いくつかの実施形態において、デバイスの平均孔径は、約0.1μm~5μmである。いくつかの実施形態において、デバイスの平均孔径は、約0.1μm~1μmである。2区画ヒドロゲルカプセルデバイスのいくつかの実施形態において、細胞含有内側区画及び外側区画の平均孔径は、実質的に同じである。いくつかの実施形態において、内側区画及び第2の区画の平均孔径は、約1.5%、2%、5%、7.5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、又はそれ以上異なる。いくつかの実施形態において、デバイスの平均孔径(例えば、第1の区画の平均孔径及び/又は第2の区画の平均孔径)は、各区画内の材料並びに式(I)の化合物の存在及び密度などのいくつかの要因に依存する。
【0143】
いくつかの実施形態において、デバイスは、金属又は金属合金を含む。実施形態において、デバイス中の1つ又は複数の区画(例えば、第1の区画、第2の区画、又は全ての区画)は、金属又は金属合金を含む。例示的な金属又は金属合金としては、チタン及びチタン族合金(例えば、ニチノール、ニッケルチタン合金、熱記憶合金材料)、白金、白金族合金、ステンレス鋼、タンタル、パラジウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ニッケル-クロム、クロムモリブデン合金、又は特定のコバルト合金(例えば、コバルト-クロム及びコバルト-クロム-ニッケル合金、例えば、ELGILOY(登録商標)及びPHYNOX(登録商標))が挙げられる。例えば、金属材料は、ステンレス鋼グレード316(SS 316L)(Fe、<0.3%のC、16~18.5%のCr、10~14%のNi、2~3%のMo、<2%のMn、<1%のSi、<0.45%のP、及び<0.03%のSから構成される)であり得る。金属含有デバイスにおいて、金属の量(例えば、重量%、実際の重量)は、少なくとも5%、例えば、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、又はそれ以上(例えば、w/w);20%未満、例えば、20%、15%、10%、5%、1%、0.5%、0.1%未満、又はそれ以下であり得る。
【0144】
いくつかの実施形態において、デバイスは、セラミックを含む。実施形態において、デバイス中の1つ又は複数の区画(例えば、第1の区画、第2の区画、又は全ての区画)は、セラミックを含む。例示的なセラミック材料としては、酸化チタン、酸化ハフニウム、酸化イリジウム、酸化クロム、酸化アルミニウム、及び酸化ジルコニウムなどの、遷移元素の酸化物、炭化物、又は窒化物が挙げられる。シリカなどのケイ素系材料も使用され得る。セラミック含有デバイスにおいて、セラミックの量(例えば、重量%、実際の重量)は、少なくとも5%、例えば、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、又はそれ以上(例えば、w/w);20%未満、例えば、20%、15%、10%、5%、1%、0.5%、0.1%未満、又はそれ以下であり得る。
【0145】
いくつかの実施形態において、デバイス中の1つ又は複数の区画は、抗線維性ポリマーを含み、例えば、CBP-ポリマー中のポリマーと同一であるか又は異なるポリマーに共有結合的に付着した式(I)の抗線維性化合物を含む。ある実施形態において、この抗線維性ポリマー中の一部又は全てのモノマーは、式(I)の同一の化合物で修飾されている。いくつかの実施形態において、この抗線維性ポリマー中の一部又は全てのモノマーは、式(I)の様々な化合物で修飾されている。デバイスが2区画ヒドロゲルカプセルであるいくつかの実施形態において、この抗線維性ポリマーは、外側のバリア区画中にのみ存在する。
【0146】
デバイス中の1つ又は複数の区画は、CBP-ポリマー中のポリマー及びこのデバイス中に存在する任意の抗線維性ポリマー中のポリマーと同一か又は異なる非修飾ポリマーを含み得る。ある実施形態において、デバイス中の第1の区画、第2の区画、又は全ての区画は、非修飾ポリマーを含む。
【0147】
デバイス中の修飾及び非修飾ポリマーのそれぞれは、直鎖、分岐、若しくは架橋ポリマー、又は選択された分子量範囲、重合度、粘度若しくはメルトフローレートのポリマーであり得る。分岐ポリマーは、以下のタイプ:星型ポリマー、櫛型ポリマー、ブラシ型ポリマー、デンドロン化ポリマー、ラダー、及びデンドリマーの1つ又は複数を含み得る。ポリマーは、熱応答性ポリマー、例えば、ゲル(例えば、熱若しくは特定の温度への曝露により固体若しくは液体になる)又は光架橋性ポリマーであり得る。例示的なポリマーとしては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセチレン、ポリ(塩化ビニル)(PVC)、ポリオレフィンコポリマー、ポリ(ウレタン)、ポリアクリレート及びポリメタクリレート、ポリアクリルアミド及びポリメタクリルアミド、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリエーテル、ポリ(オルトエステル)、ポリ(カーボネート)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ポリフルオロカーボン、PEEK(登録商標)、Teflon(登録商標)(ポリテトラフルオロエチレン、PTFE)、PEEK、シリコーン、エポキシ樹脂、Kevlar(登録商標)、Dacron(登録商標)(エチレングリコール及びテレフタル酸から得られる縮合ポリマー)、ポリエチレングリコール、ナイロン、ポリアルケン、フェノール樹脂、天然及び合成エラストマー、接着剤及びシーラント、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、多糖類及び天然ラテックスなどのバイオポリマー、コラーゲン、セルロースポリマー(例えば、アルキルセルロースなど)、ポリエチレングリコール及び2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、多糖類、ポリ(グリコール酸)、ポリ(L-乳酸)(PLLA)、ポリ(乳酸グリコール酸)(PLGA)、ポリジオキサノン(PDA)、又はラセミポリ(乳酸)、ポリカーボネート、(例えば、ポリアミド(例えば、ナイロン))、フッ素樹脂、炭素繊維、アガロース、アルギン酸塩、キトサン、並びにこれらのブレンド又はコポリマーが挙げられる。ポリマー含有デバイスにおいて、ポリマーの量(例えば、デバイスにおける重量%、ポリマーの実際の重量)は、少なくとも5%、例えば、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、又はそれ以上(例えば、w/w);20%未満、例えば、20%、15%、10%、5%、1%、0.5%、0.1%未満、又はそれ以下であり得る。
【0148】
いくつかの実施形態において、デバイス中の修飾及び非修飾ポリマーの1つ又は複数は、ポリエチレンを含む。例示的なポリエチレンとしては、超低密度ポリエチレン(ULDPE)(例えば、コモノマーを含む、0.890~0.905g/cm3の範囲の密度を有するポリマーを含む);超低密度ポリエチレン(VLDPE)(例えば、コモノマーを含む、0.905~0.915g/cm3の範囲の密度を有するポリマーを含む);直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)(例えば、0.915~0.935g/cm3の範囲の密度を有するポリマーを含み、コモノマーを含む);低密度ポリエチレン(LDPE)(例えば、約0.915~0.935g/m3の範囲の密度を有するポリマーを含む);中密度ポリエチレン(MDPE)(例えば、0.926~0.940g/cm3の範囲の密度を有するポリマーを含み、コモノマーを含んでいても又は含まなくてもよい);高密度ポリエチレン(HDPE)(例えば、0.940~0.970g/cm3の範囲の密度を有するポリマーを含み、コモノマーを含んでいても又は含まなくてもよい)及びポリエチレングリコールが挙げられる。
【0149】
いくつかの実施形態において、デバイス中の修飾及び非修飾ポリマーの1つ又は複数は、ポリプロピレンを含む。例示的なポリプロピレンとしては、例えば、本明細書において参照によりその全体が援用される、McKeen,Handbook of Polymer Applications in Medicine and Medical Devices,3-Plastics Used in Medical Devices,(2014):21-53に記載されるように、ホモポリマー、ランダムコポリマー(ホモ相コポリマー)、及びインパクトコポリマー(ヘテロ相コポリマー)が挙げられる。
【0150】
いくつかの実施形態において、デバイス中の修飾及び非修飾ポリマーの1つ又は複数は、ポリプロピレンを含む。例示的なポリスチレンとしては、汎用性又は結晶(PS又はGPPS)、ハイインパクト(HIPS)、及びシンジオタクチック(SPS)ポリスチレンが挙げられる。
【0151】
いくつかの実施形態において、デバイス中の修飾及び非修飾ポリマーの1つ又は複数は、熱可塑性エラストマー(TPE)を含む。例示的なTPEとしては、(i)TPA-ポリアミドTPEであって、交互するハード及びソフトセグメントのブロックコポリマーを含み、ハードブロック中にアミド化学結合並びにソフトブロック中にエーテル及び/又はエステル結合を有するもの;(ii)TPC-コ-ポリエステルTPEであって、交互するハードセグメント及びソフトセグメントのブロックコポリマーからなり、主鎖中の化学結合はエステル及び/又はエーテルであるもの;(iii)TPO-オレフィン系TPEであって、ポリオレフィン及び従来のゴムのブレンドからなり、ブレンド中のゴム相は架橋をほとんど又は全く有さないもの;(iv)TPS-スチレン系TPEであって、少なくとも、スチレン及び特定のジエンのトリブロックコポリマーからなり、ここで、2つの末端ブロック(ハードブロック)はポリスチレンであり、内部ブロック(1つ又は複数のソフトブロック)はポリジエン又は水素化ポリジエンであるもの;(v)TPU-ウレタンTPEであって、交互するハード及びソフトセグメントのブロックコポリマーからなり、ハードブロック中にウレタン化学結合、及びソフトブロック中にエーテル、エステル又は炭酸結合又はこれらの混合物を有するもの;(vi)TPV-熱可塑性ゴム加硫物であって、熱可塑性材料及び従来のゴムのブレンドからなり、ここで、ゴムは、ブレンド及び混合ステップ中の動的加硫プロセスにより架橋されているもの;並びに(vii)TPA、TPC、TPO、TPS、TPU、及びTPVに分類されるもの以外のいずれかの組成物又は構造を含むTPZ-未分類TPEが挙げられる。
【0152】
いくつかの実施形態において、非修飾ポリマーは非修飾アルギン酸塩である。いくつかの実施形態において、アルギン酸塩は、高グルロン酸(G)アルギン酸塩であり、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%超、又はそれ以上のグルロン酸(G)を含む。いくつかの実施形態において、アルギン酸塩は、高マンヌロン酸(M)アルギン酸塩であり、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%超、又はそれ以上のマンヌロン酸(M)を含む。いくつかの実施形態において、M:Gの比率は約1である。いくつかの実施形態において、M:Gの比率は1未満である。いくつかの実施形態において、M:Gの比率は1超である。いくつかの実施形態において、M:Gの比は、1超である。ある実施形態において、非修飾アルギン酸塩は、分子量が150kDa~250kDaであり、且つG:M比が≧1.5である。
【0153】
いくつかの実施形態において、抗線維性ポリマーは、式(I)の化合物で化学的に修飾されたアルギン酸塩を含む。この抗線維性ポリマー中のアルギン酸塩は、デバイス中に存在する任意の非修飾アルギン酸塩と同一であってもよいし異なっていてもよい。ある実施形態において、抗線維性アルギン酸塩中の式(I)の化合物の密度(例えば、コンジュゲーションの量)は、約4.0%~約8.0%、約5.0%~約7.0%、又は約6.0%~約7.0%の窒素(例えば、窒素パーセントに関する燃焼分析より決定される場合)である。実施形態において、化合物101の量は、約0.5%~2%、2%~4%のN、約4%~6%のN、約6%~8%、又は約8%~10%のN)の、(非修飾アルギン酸塩と比した)% Nの増加をもたらし、ここで、% Nは、燃焼分析によって決定され、修飾アルギン酸塩中の化合物101の量に相当する。
【0154】
他の実施形態において、抗線維性アルギン酸塩中の式(I)の化合物(例えば化合物101)の密度(例えば濃度)は、w/w%として定義され、例えば、適切な定量的アミンコンジュゲーションアッセイ(例えば、本明細書で説明されているアッセイ)により決定した場合のアミンの重量/溶液(例えば生理食塩水)中の抗線維性アルギン酸塩の量の%として定義され、一定の実施形態において、式(I)の化合物(例えば化合物101)の密度は、約1.0w/w%~約3.0w/w%、約1.3w/w%~約2.5w/w%、又は約1.5w/w%~2.2w/w%である。ある実施形態において、定量的アミンコンジュゲーションアッセイは、化学修飾ポリマー(例えば、式(I)の化合物で修飾されたアルギン酸塩、例えばCM-LMW-Alg-101)のサンプルを酸性加水分解に供して遊離アミンを生成すること、及びサンプル中の全遊離アミンを定量することを含む。ある実施形態において、定量的アミンコンジュゲーションアッセイはまた、総アミン濃度から、非加水分解サンプル中の非コンジュゲートアミン(例えば、式(I)の化合物)の濃度を減算することも含む。定量的アミンコンジュゲーションアッセイを、典型的には、デバイスを調製するために使用される化学修飾アルギン酸塩の生理食塩水溶液のサンプルに対して実施するが、化学修飾アルギン酸塩の凍結乾燥サンプルに対して実施してもよい。ある実施形態において、定量的アミンコンジュゲーションアッセイを、本明細書の実施例27で説明されているプロセスと実質的に同様に実施する。ある実施形態において、式(I)の化合物は、表4で示されている化合物101である。
【0155】
アルギン酸塩含有デバイスにおいて、修飾アルギン酸塩及び非修飾アルギン酸塩の量(例えば、デバイスの重量%、アルギン酸塩の実際の重量)は、少なくとも5%であり得、例えば、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、又はより多くあり得(例えばw/w);20%未満であり得、例えば、20%、15%、10%、5%、1%、0.5%、0.1%、又はより少なくあり得る。
【0156】
抗線維性ポリマー中のアルギン酸塩は、当該技術分野において公知の任意の好適な方法を用いて、式(I)の化合物で化学修飾され得る。例えば、アルギン酸塩カルボン酸部分は、式(I)の化合物で修飾されたアルギン酸塩を得るために、1つ又は複数のアミン官能化化合物への結合のために活性化され得る。アルギン酸塩ポリマーは、水(ポリマーのグラム当たり30mL)に溶解され、2-クロロ-4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン(0.5当量)及びN-メチルモルホリン(1当量)で処理され得る。この混合物に、アセトニトリル(0.3M)中の式(I)の化合物の溶液が加えられ得る。反応物が、例えば、16時間にわたって55℃に温められ、次に、室温に冷却され、回転蒸発によって徐々に濃縮され得る。次に、残渣が、例えば水に溶解され得る。次に、混合物は、例えば、シアノ修飾シリカゲル(Silicycle)の床に通してろ過され得、ろ過ケーキが水で洗浄され得る。次に、得られた溶液が、24時間にわたって水に対して透析され得(10,000 MWCO膜)、例えば、水を2回交換する。得られた溶液が、例えば、凍結乾燥によって濃縮されて、所望の化学修飾アルギン酸塩が得られる。
【0157】
本明細書で説明されている各デバイスは、少なくとも1個の細胞含有区画を含む。ある実施形態において、デバイスは、2個、3個、4個、又はより多くの細胞含有区画を含む。各細胞含有区画は、複数の細胞(例えば生細胞)を含み、これらの区画の内の少なくとも1個中の細胞は、デバイスが対象に移植された場合に治療薬を発現し得る。いくつかの実施形態において、この治療薬は、タンパク質又はポリペプチドであり、例えば、抗体、タンパク質、酵素、又は増殖因子)である。
【0158】
ある実施形態において、細胞含有区画中の全ての細胞は、単一の親細胞型又は少なくとも2種の異なる親細胞型の混合物に由来する。ある実施形態において、細胞含有区画中の細胞は全て、同一の親細胞型に由来するが、第1の複数の由来細胞は、第1の治療薬を発現するように組み換えられており、第2の複数の由来細胞は、第2の治療薬を発現するように組み換えられている。2個以上の細胞含有区画を有するデバイスにおいて、細胞及びこの細胞により産生される治療薬は、各細胞含有区画で同一であってもよいし異なっていてもよい。いくつかの実施形態において、細胞含有区画は全て、単一のバリア区画で取り囲まれている。いくつかの実施形態において、このバリア区画は、細胞を実質的に含まない。
【0159】
カプセル化細胞により発現される治療薬に加えて、デバイス(例えば、カプセル、粒子)は、この細胞により発現されない1種又は複数種の外因性の薬剤を含み得、この薬剤として、例えば、核酸(例えばRNA若しくはDNA分子)、タンパク質(例えば、ホルモン、酵素(例えば、グルコースオキシダーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、オキシゲナーゼ、ヒドロゲナーゼ、レダクターゼ)、抗体、抗体断片、抗原、若しくはエピトープ))、小分子、脂質、薬物、ワクチン、又はこれらの任意の誘導体、小分子、タンパク質若しくはポリペプチドの活性な若しくは不活性な断片が挙げられ得る。ある実施形態において、デバイスは、そのような外因性の薬剤を放出するように構成されている。
【0160】
本明細書で説明されているデバイスは、対象への移植用か又は投与用の調製物又は組成物(即ち、デバイス調製物又はデバイス組成物)として提供され得る。いくつかの実施形態において、デバイス調製物又はデバイス組成物は、少なくとも2個、4個、8個、16個、64個、又はより多くのデバイスを含み、この調製物中の又は組成物中のデバイスの少なくとも20%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%は、本明細書で説明されている特徴(例えば、平均直径、又は平均孔径、又は細胞密度)を有する。
【0161】
いくつかの実施形態において、デバイス、デバイス調製物、又はデバイス組成物は、身体のある特定の系(例えば、神経系(例えば、末梢神経系(PNS)若しくは中枢神経系(CNS))、血管系、骨格系、呼吸器系、内分泌系、リンパ系、生殖器系、又は消化管)を標的とするか、又はこの系用に設計されている。いくつかの実施形態において、デバイス、調製物、又は組成物は、CNSを標的とする。いくつかの実施形態において、デバイス、デバイス調製物、又はデバイス組成物は、身体のある特定の部分(例えば、血液、目、脳、皮膚、肺、胃、口、耳、脚、足、手、肝臓、心臓、腎臓、骨、膵臓、脾臓、大腸、小腸、脊髄、筋肉、卵巣、子宮、膣、又は陰茎)を対象とするか、又はこの部分用に設計されている。
【0162】
デバイス、デバイス調製物、又はデバイス組成物は、身体の任意の部位内又は部位上へのインプラント、又は移植又は配置のために構成され得る。いくつかの実施形態において、デバイス、デバイス調製物、又はデバイス組成物は、対象の網、対象の皮下脂肪、又は対象の筋肉組織内へのインプラント、移植、又は配置のために構成される。デバイス、デバイス調製物、又はデバイス組成物は、皮膚上又は中;粘膜表面、体腔、腹膜腔(例えば、網嚢);中枢神経系、例えば、腸又は脊髄;臓器、例えば、心臓、肝臓、腎臓、脾臓、肺、リンパ系、血管系、口腔、鼻腔、歯、歯茎、胃腸管;骨;股関節;脂肪組織;筋肉組織;循環血液;眼(例えば、眼内);乳房、膣;子宮、関節、例えば、膝関節若しくは股関節、又は脊椎へのインプラント、又は移植、又は配置のために構成され得る。
【0163】
いくつかの実施形態において、デバイス、デバイス調製物、又はデバイス組成物は、腹膜腔(例えば、網)内へのインプラント又は移植又は配置のために構成される。いくつかの実施形態において、デバイスは、網嚢(lesser sac)(網嚢(omental bursa)又は網嚢(bursalis omentum)としても知られている)内又は上へのインプラント又は移植又は配置のために構成される。網嚢は、網によって形成される、腹部に位置する空間を指し、例えば、大網、小網、胃、小腸、大腸、肝臓、脾臓、胃脾間膜、副腎、及び膵臓にごく近接している。典型的には、網嚢は、網嚢孔(すなわち、ウィンズロー孔)を介して大嚢に結合されている。いくつかの実施形態において、網嚢は、高濃度の脂肪組織を含む。デバイス、デバイス調製物、又はデバイス組成物は、腹膜腔(例えば、網、例えば、網嚢)内に移植されるか、又は注入若しくはカテーテルによって腹膜腔(例えば、網、例えば、網嚢)内の表面に配置され得る。網(例えば、網嚢)内へのデバイス、デバイス調製物、又はデバイス組成物のインプラント又は配置についてのさらなる検討が、本明細書において参照によりその全体が援用される、M.Pellicciaro et al.(2017)CellR4 5(3):e2410に示されている。
【0164】
いくつかの実施形態において、デバイス、デバイス調製物、又はデバイス組成物は、中枢神経系(CNS)、例えば、脳又は脊髄及びそれらの対応する組織及び体腔内へのインプラント又は移植又は配置のために構成される。脊椎動物において、CNSは、頭蓋腔及び脊柱管を含む背測腔内に含まれる。いくつかの実施形態において、デバイス、デバイス調製物、又はデバイス組成物は、脳内腔、例えば、実質内腔、脳室内腔、又は硬膜下腔内へのインプラント又は移植又は配置のために構成される。デバイス、デバイス調製物、又はデバイス組成物は、CNS内に移植されるか、又は頭蓋骨内に形成された孔を通してCNS内の表面に配置され、注入若しくはカテーテルによって送達され得る。
【0165】
いくつかの実施形態において、デバイス、デバイス調製物、又はデバイス組成物は、眼内へのインプラント又は移植又は配置のために構成される。デバイスのインプラント又は配置に好適な例示的な領域としては、網膜、角膜、上皮、房水、又は硝子体腔(vitreal space)などの、眼内の任意の表面又は空間が挙げられる。いくつかの実施形態において、デバイス、デバイス調製物、又はデバイス組成物は、硝子体腔内へのインプラント又は移植又は配置のために構成される。デバイス、デバイス調製物、又はデバイス組成物は、眼内に移植されるか、又は切開及び/又は注入によって、眼内の表面に配置され得る。
【0166】
いくつかの実施形態において、デバイス、デバイス調製物、又はデバイス組成物は、例えば、対象の損傷を生じずに、又は周囲組織の崩壊をあまり生じずに、対象から容易に取り外し可能である。実施形態において、デバイス、デバイス調製物、又はデバイス組成物は、例えば、低侵襲手術によるアプローチ、摘出、又は切除によって、周囲組織からのデバイスの最小限の分離を伴って又は手術による分離を伴わずに取り外し可能である。
【0167】
デバイス、デバイス組成物、又はデバイス調製物は、哺乳動物レシピエントへの移植後の様々な露出用に構成され得、この露出として、限定的な露出(例えば2日未満、例えば、2日、1日、24時間、20時間、16時間、12時間、10時間、8時間、6時間、5時間、4時間、3時間、2時間、1時間未満、又はより短い);長期の露出(例えば、少なくとも2日、3日、4日、5日、6日、7日、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、16ヶ月、17ヶ月、18ヶ月、19ヶ月、20ヶ月、21ヶ月、22ヶ月、23ヶ月、24ヶ月、1年、1.5年、2年、2.5年、3年、3.5年、4年、又はより長い)、及び永続的な露出(例えば、少なくとも6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、16ヶ月、17ヶ月、18ヶ月、19ヶ月、20ヶ月、21ヶ月、22ヶ月、23ヶ月、24ヶ月、1年、1.5年、2年、2.5年、3年、3.5年、4年、又はより長い)が挙げられる。
【0168】
いくつかの実施形態において、デバイスは、国際公開第2012/112982号パンフレット、同第2012/167223号パンフレット、同第2014/153126号パンフレット、同第2016/019391号パンフレット、同第2016/187225号パンフレット、米国特許出願公開第2012-0213708号明細書、同第2016-0030359号明細書、及び同第2016-0030360号明細書の内のいずれかで開示されている任意のカプセル、デバイス、移植片、又は他の物体ではない。
【0169】
小分子化合物
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のデバイスは、少なくとも1つの式(I)の化合物を含む。:
【化4】

又はその薬学的に許容可能な塩を含み、式中、
Aは、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、-O-、-C(O)O-、-C(O)-、-OC(O)-、-N(RC)-、-N(RC)C(O)-、-C(O)N(RC)-、-N(RC)C(O)(C1~C6-アルキレン)-、-N(RC)C(O)(C1~C6-アルケニレン)-、-N(RC)N(RD)-、-NCN-、-C(=N(RC)(RD))O-、-S-、-S(O)x-、-OS(O)x-、-N(RC)S(O)x-、-S(O)xN(RC)-、-P(RF)y-、-Si(ORA)2-、-Si(RG)(ORA)-、-B(ORA)-、又は金属であり、これらの各々は、結合基(例えば、本明細書に記載の結合基)に任意選択により結合され、1個以上のR1で任意選択により置換されており;
L1及びL3の各々は独立して、結合、アルキル、又はヘテロアルキルであり、ここで、アルキル及びヘテロアルキルの各々は、1個以上のR2で任意選択により置換されており;
L2は結合であり;
Mは、不在であるか、各々が1個以上のR3で任意選択により置換されている、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールであり;
Pは、不在であるか、各々が1個以上のR4で任意選択により置換されている、シクロアルキル、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールであり;
Zは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、-ORA、-C(O)RA、-C(O)ORA、-C(O)N(RC)(RD)、-N(RC)C(O)RA、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールであり、ここで、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールの各々は、1個以上のR5で任意選択により置換されており;
RA、RB、RC、RD、RE、RF、及びRGの各々は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ハロゲン、アジド、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールであり、ここで、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールの各々は、1個以上のR6で任意選択により置換されており;
又はRC及びRDは、これらが結合している窒素原子と一緒になって、1個以上のR6で任意選択により置換されている環(例えば5~7員環)を形成し;
R1、R2、R3、R4、R5、及びR6の各々は独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ハロゲン、シアノ、アジド、オキソ、-ORA1、-C(O)ORA1、-C(O)RB1、-OC(O)RB1、-N(RC1)(RD1)、-N(RC1)C(O)RB1、-C(O)N(RC1)、SRE1、S(O)xRE1、-OS(O)xRE1、-N(RC1)S(O)xRE1、-S(O)xN(RC1)(RD1)、-P(RF1)y、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリールであり、ここで、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールの各々は、1個以上のR7で任意選択により置換されており;
RA1、RB1、RC1、RD1、RE1、及びRF1の各々は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールであり、ここで、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリールの各々は、1個以上のR7で任意選択により置換されており;
各R7は独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ハロゲン、シアノ、オキソ、ヒドロキシル、シクロアルキル、又はヘテロシクリルであり;
xは1又は2であり;
yは2、3、又は4である。
【0170】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、式(I-a):
【化5】

の化合物又はその薬学的に許容可能な塩であり、式中、
Aは、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、-O-、-C(O)O-、-C(O)-、-OC(O)-、-N(RC)-、-N(RC)C(O)-、-C(O)N(RC)-、-N(RC)N(RD)-、N(RC)C(O)(C1~C6-アルキレン)-、-N(RC)C(O)(C1~C6-アルケニレン)-、-NCN-、-C(=N(RC)(RD))O-、-S-、-S(O)x-、-OS(O)x-、-N(RC)S(O)x-、-S(O)xN(RC)-、-P(RF)y-、-Si(ORA)2-、-Si(RG)(ORA)-、-B(ORA)-、又は金属であり、これらの各々は、結合基(例えば、本明細書に記載の結合基)に任意選択により結合され、1個以上のR1で任意選択により置換されており;
L1及びL3の各々は独立して、結合、アルキル、又はヘテロアルキルであり、ここで、アルキル及びヘテロアルキルの各々は、1個以上のR2で任意選択により置換されており;
L2は結合であり;
Mは、不在であるか、各々が1個以上のR3で任意選択により置換されている、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールであり;
Pは、1個以上のR4で任意選択により置換されているヘテロアリールであり;
Zは、各々が1個以上のR5で任意選択により置換されている、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールであり;
RA、RB、RC、RD、RE、RF、及びRGの各々は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ハロゲン、アジド、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールであり、ここで、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールの各々は、1個以上のR6で任意選択により置換されており;
又はRC及びRDは、これらが結合している窒素原子と一緒になって、1個以上のR6で任意選択により置換されている環(例えば5~7員環)を形成し;
R1、R2、R3、R4、R5、及びR6の各々は独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ハロゲン、シアノ、アジド、オキソ、-ORA1、-C(O)ORA1、-C(O)RB1、-OC(O)RB1、-N(RC1)(RD1)、-N(RC1)C(O)RB1、-C(O)N(RC1)、SRE1、S(O)xRE1、-OS(O)xRE1、-N(RC1)S(O)xRE1、-S(O)xN(RC1)(RD1)、-P(RF1)y、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリールであり、ここで、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールの各々は、1個以上のR7で任意選択により置換されており;
RA1、RB1、RC1、RD1、RE1、及びRF1の各々は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールであり、ここで、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリールの各々は、1個以上のR7で任意選択により置換されており;
各R7は独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ハロゲン、シアノ、オキソ、ヒドロキシル、シクロアルキル、又はヘテロシクリルであり;
xは1又は2であり;
yは2、3、又は4である。
【0171】
いくつかの実施形態において、式(I)及び(I-a)について、Aは、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、-O-、-C(O)O-、-C(O)-、-OC(O)-、-N(RC)C(O)-、-N(RC)C(O)(C1~C6-アルキレン)-、-N(RC)C(O)(C1~C6-アルケニレン)-、又は-N(RC)-である。いくつかの実施形態において、Aは、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、-O-、-C(O)O-、-C(O)-、-OC(O)-、又は-N(RC)-である。いくつかの実施形態において、Aは、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、-O-、-C(O)O-、-C(O)-、-OC(O-、又は-N(RC)-である。いくつかの実施形態において、Aは、アルキル、-O-、-C(O)O-、-C(O)-、-OC(O)、又は-N(RC)-である。いくつかの実施形態において、Aは、-N(RC)C(O)-、-N(RC)C(O)(C1~C6-アルキレン)-、又は-N(RC)C(O)(C1~C6-アルケニレン)-である。いくつかの実施形態において、Aは-N(RC)-である。いくつかの実施形態において、Aは-N(RC)-であり、RC及びRDは独立して、水素又はアルキルである。いくつかの実施形態において、Aは-NH-である。いくつかの実施形態において、Aは-N(RC)C(O)(C1~C6-アルキレン)-であり、ここで、アルキレンはR1で置換されている。いくつかの実施形態において、Aは-N(RC)C(O)(C1~C6-アルキレン)-であり、R1はアルキル(例えば、メチル)である。いくつかの実施形態において、Aは-NHC(O)CH(CH3)2-である。いくつかの実施形態において、Aは-N(RC)C(O)(メチレン)-であり、R1はアルキル(例えば、メチル)である。いくつかの実施形態において、Aは-NHC(O)CH(CH3)-である。いくつかの実施形態において、Aは-NHC(O)C(CH3)-である。
【0172】
いくつかの実施形態において、式(I)及び(I-a)について、L1は結合、アルキル、又はヘテロアルキルである。いくつかの実施形態において、L1は結合又はアルキルである。いくつかの実施形態において、L1は結合である。いくつかの実施形態において、L1はアルキルである。いくつかの実施形態において、L1はC1~C6アルキルである。いくつかの実施形態において、L1は、-CH2-、-CH(CH3)-、-CH2CH2CH2、又は-CH2CH2-である。いくつかの実施形態において、L1は、-CH2-又は-CH2CH2-である。
【0173】
いくつかの実施形態において、式(I)及び(I-a)について、L3は結合、アルキル、又はヘテロアルキルである。いくつかの実施形態において、L3は結合である。いくつかの実施形態において、L3はアルキルである。いくつかの実施形態において、L3はC1~C12アルキルである。いくつかの実施形態において、L3はC1~C6アルキルである。いくつかの実施形態において、L3は-CH2-である。いくつかの実施形態において、L3はヘテロアルキルである。いくつかの実施形態において、L3は、1個以上のR2(例えば、オキソ)で任意選択により置換されているC1~C12ヘテロアルキルである。いくつかの実施形態において、L3は、1個以上のR2(例えば、オキソ)で任意選択により置換されているC1~C6ヘテロアルキルである。いくつかの実施形態において、L3は、-C(O)OCH2-、-CH2(OCH2CH2)2-、-CH2(OCH2CH2)3-、CH2CH2O-、又は-CH2O-である。いくつかの実施形態において、L3は-CH2O-である。
【0174】
いくつかの実施形態において、式(I)及び(I-a)について、Mは、不在、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールである。いくつかの実施形態において、Mはヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールである。いくつかの実施形態において、Mは不在である。いくつかの実施形態において、Mはアルキル(例えば、C1~C6アルキル)である。いくつかの実施形態において、Mは-CH2-である。いくつかの実施形態において、Mはヘテロアルキル(例えば、C1~C6ヘテロアルキル)である。いくつかの実施形態において、Mは(-OCH2CH2-)zであり、ここで、zは、1~10から選択される整数である。いくつかの実施形態において、zは、1~5から選択される整数である。いくつかの実施形態において、Mは、-OCH2CH2-、(-OCH2CH2-)2、(-OCH2CH2-)3、(-OCH2CH2-)4、又は(-OCH2CH2-)5である。いくつかの実施形態において、Mは、-OCH2CH2-、(-OCH2CH2-)2、(-OCH2CH2-)3、又は(-OCH2CH2-)4である。いくつかの実施形態において、Mは(-OCH2CH2-)3である。いくつかの実施形態において、Mはアリールである。いくつかの実施形態において、Mはフェニルである。いくつかの実施形態において、Mは非置換フェニルである。いくつかの実施形態において、Mは
【化6】

である。いくつかの実施形態において、Mは、R7(例えば、1個のR7)で置換されているフェニルである。いくつかの実施形態において、Mは
【化7】

である。いくつかの実施形態において、R7はCF3である。
【0175】
いくつかの実施形態において、式(I)及び(I-a)について、Pは、不在、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールである。いくつかの実施形態において、Pは不在である。いくつかの実施形態において、式(I)及び(I-a)について、Pは、三環式、二環式、又は単環式ヘテロアリールである。いくつかの実施形態において、Pは単環式ヘテロアリールである。いくつかの実施形態において、Pは窒素含有ヘテロアリールである。いくつかの実施形態において、Pは、単環式、窒素含有ヘテロアリールである。いくつかの実施形態において、Pは5員ヘテロアリールである。いくつかの実施形態において、Pは5員窒素含有ヘテロアリールである。いくつかの実施形態において、Pは、テトラゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、又はトリアゾリル、ピロリル、オキサゾリル、又はチアゾリルである。いくつかの実施形態において、Pは、テトラゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、又はトリアゾリル、又はピロリルである。いくつかの実施形態において、Pはイミダゾリルである。いくつかの実施形態において、Pは
【化8】

である。いくつかの実施形態において、Pはトリアゾリルである。いくつかの実施形態において、Pは1,2,3-トリアゾリルである。いくつかの実施形態において、Pは
【化9】

である。
【0176】
いくつかの実施形態において、Pはヘテロシクリルである。いくつかの実施形態において、Pは、5員ヘテロシクリル又は6員ヘテロシクリルである。いくつかの実施形態において、Pはイミダゾリジノニル(imidazolidinonyl)である。いくつかの実施形態において、Pは
【化10】

である。
【0177】
いくつかの実施形態において、Pはチオモルホリニル-1,1-ジオキシジルである。いくつかの実施形態において、Pは
【化11】

である。
【0178】
いくつかの実施形態において、式(I)又は(I-a)について、Zは、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールである。いくつかの実施形態において、Zはヘテロシクリルである。いくつかの実施形態において、Zは、単環式又は二環式ヘテロシクリルである。いくつかの実施形態において、Zは、酸素含有ヘテロシクリルである。いくつかの実施形態において、Zは、4員ヘテロシクリル、5員ヘテロシクリル、又は6員ヘテロシクリルである。いくつかの実施形態において、Zは6員ヘテロシクリルである。いくつかの実施形態において、Zは、6員酸素含有ヘテロシクリルである。いくつかの実施形態において、Zはテトラヒドロピラニルである。いくつかの実施形態において、Zは
【化12】

である。いくつかの実施形態において、Zは、4員酸素含有ヘテロシクリルである。いくつかの実施形態において、Zは
【化13】

である。
【0179】
いくつかの実施形態において、Zは、二環式酸素含有ヘテロシクリルである。いくつかの実施形態において、Zは無水フタル酸(phthalic anhydridyl)である。いくつかの実施形態において、Zは、硫黄含有ヘテロシクリルである。いくつかの実施形態において、Zは、6員硫黄含有ヘテロシクリルである。いくつかの実施形態において、Zは、窒素原子及び硫黄原子を含有する6員ヘテロシクリルである。いくつかの実施形態において、Zはチオモルホリニル-1,1-ジオキシジルである。いくつかの実施形態において、Zは
【化14】

である。いくつかの実施形態において、Zは窒素含有ヘテロシクリルである。いくつかの実施形態において、Zは6員窒素含有ヘテロシクリルである。いくつかの実施形態において、Zは
【化15】

である。
【0180】
いくつかの実施形態において、Zは二環式ヘテロシクリルである。いくつかの実施形態において、Zは、1個以上のR5で任意選択により置換されている二環式窒素含有ヘテロシクリルである。いくつかの実施形態において、Zは2-オキサ-7-アザスピロ[3.5]ノナニルである。いくつかの実施形態において、Zは
【化16】

である。いくつかの実施形態において、Zは1-オキサ-3,8-ジアザスピロ[4.5]デカン-2-オンである。いくつかの実施形態において、Zは
【化17】

である。
【0181】
いくつかの実施形態において、式(I)及び(I-a)について、Zはアリールである。いくつかの実施形態において、Zは単環式アリールである。いくつかの実施形態において、Zはフェニルである。いくつかの実施形態において、Zは単置換フェニル(例えば、1個のR5により)である。いくつかの実施形態において、Zは単置換フェニルであり、ここで、1個のR5は窒素含有基である。いくつかの実施形態において、Zは単置換フェニルであり、ここで、1個のR5はNH2である。いくつかの実施形態において、Zは単置換フェニルであり、ここで、1個のR5は酸素含有基である。いくつかの実施形態において、Zは単置換フェニルであり、ここで、1個のR5は酸素含有ヘテロアルキルである。いくつかの実施形態において、Zは単置換フェニルであり、ここで、1個のR5はOCH3である。いくつかの実施形態において、Zは単置換フェニルであり、ここで、1個のR5はオルト位にある。いくつかの実施形態において、Zは単置換フェニルであり、ここで、1個のR5はメタ位にある。いくつかの実施形態において、Zは単置換フェニルであり、ここで、1個のR5はパラ位にある。
【0182】
いくつかの実施形態において、式(I)及び(I-a)について、Zはアルキルである。いくつかの実施形態において、ZはC1~C12アルキルである。いくつかの実施形態において、ZはC1~C10アルキルである。いくつかの実施形態において、ZはC1~C8アルキルである。いくつかの実施形態において、Zは、1~5個のR5で置換されたC1~C8アルキルである。いくつかの実施形態において、Zは、1個のR5で置換されたC1~C8アルキルである。いくつかの実施形態において、Zは、1個のR5で置換されたC1~C8アルキルであり、ここで、R5は、アルキル、ヘテロアルキル、ハロゲン、オキソ、-ORA1、-C(O)ORA1、-C(O)RB1、-OC(O)RB1、又は-N(RC1)(RD1)である。いくつかの実施形態において、Zは、1個のR5で置換されたC1~C8アルキルであり、ここで、R5は、-ORA1又は-C(O)ORA1である。いくつかの実施形態において、Zは、1個のR5で置換されたC1~C8アルキルであり、ここで、R5は、-ORA1又は-C(O)OHである。いくつかの実施形態において、Zは-CH3である。
【0183】
いくつかの実施形態において、式(I)及び(I-a)について、Zはヘテロアルキルである。いくつかの実施形態において、ZはC1~C12ヘテロアルキルである。いくつかの実施形態において、ZはC1~C10ヘテロアルキルである。いくつかの実施形態において、ZはC1~C8ヘテロアルキルである。いくつかの実施形態において、ZはC1~C6ヘテロアルキルである。いくつかの実施形態において、Zは、1個以上のR5で任意選択により置換された窒素含有ヘテロアルキルである。いくつかの実施形態において、Zは、1~5個のR5で置換された窒素及び硫黄含有ヘテロアルキルである。いくつかの実施形態において、Zは、N-メチル-2-(メチルスルホニル)エタン-1-アミニルである。
【0184】
いくつかの実施形態において、Zは、-ORA又は-C(O)ORAである。いくつかの実施形態において、Zは、-ORA(例えば、-OH又は-OCH3)である。いくつかの実施形態において、Zは、OCH3である。いくつかの実施形態において、Zは、-C(O)ORA(例えば、-C(O)OH)である。
【0185】
いくつかの実施形態において、Zは水素である。
【0186】
いくつかの実施形態において、L2は結合であり、P及びL3は独立して、不在である。いくつかの実施形態において、L2は結合であり、Pはヘテロアリールであり、L3は結合であり、Zは水素である。いくつかの実施形態において、Pはヘテロアリールであり、L3はヘテロアルキルであり、Zはアルキルである。
【0187】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、式(I-b):
【化18】

の化合物又はその薬学的に許容可能な塩であり、式中、環M1は、各々が1~5個のR3で任意選択により置換されている、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールであり;環Z1は、1~5個のR5で任意選択により置換されている、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール又はヘテロアリールであり;R2a、R2b、R2c、及びR2dの各々は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ハロ、シアノ、ニトロ、アミノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールであり、又はR2a及びR2b又はR2c及びR2dの各々は一緒になってオキソ基を形成し;Xは、不在、N(R10)(R11)、O、又はSであり;RCは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールであり、ここで、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールの各々は、1~6個のR6で任意選択により置換されており;R3、R5、及びR6の各々は独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ハロゲン、シアノ、アジド、オキソ、-ORA1、-C(O)ORA1、-C(O)RB1、-OC(O)RB1、-N(RC1)(RD1)、-N(RC1)C(O)RB1、-C(O)N(RC1)、SRE1、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールであり;R10及びR11の各々は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、-C(O)ORA1、-C(O)RB1、-OC(O)RB1、-C(O)N(RC1)、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールであり;RA1、RB1、RC1、RD1、及びRE1の各々は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリールであり、ここで、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリールの各々は、1~6個のR7で任意選択により置換されており;各R7は独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ハロゲン、シアノ、オキソ、ヒドロキシル、シクロアルキル、又はヘテロシクリルであり;各m及びnは独立して、1、2、3、4、5、又は6であり;
【化19】

は、本明細書に記載の結合基又はポリマーに対する結合を指す。いくつかの実施形態において、各R3及びR5について、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールの各々は、ハロゲン、オキソ、シアノ、シクロアルキル、又はヘテロシクリルで任意選択により及び独立して置換されている。
【0188】
いくつかの実施形態において、式(I-b)の化合物は、式(I-b-i):
【化20】

の化合物又はその薬学的に許容可能な塩であり、式中、環M2は、1個以上のR3で任意選択により置換されている、アリール又はヘテロアリールであり;環Z2は、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールであり;R2a、R2b、R2c、及びR2dの各々は独立して、水素、アルキル、又はヘテロアルキルであり、又はR2a及びR2b又はR2c及びR2dの各々は一緒になってオキソ基を形成し;Xは、不在、O、又はSであり;各R3及びR5は独立して、アルキル、ヘテロアルキル、ハロゲン、オキソ、-ORA1、-C(O)ORA1、又は-C(O)RB1であり、ここで、アルキル及びヘテロアルキルの各々は、ハロゲンで任意選択により置換されており;又は2個のR5は一緒になって、環Z2に縮合した5~6員環を形成し;各RA1及びRB1は独立して、水素、アルキル、又はヘテロアルキルであり;m及びnは各々独立して、1、2、3、4、5、又は6であり;pは、0、1、2、3、4、5、又は6であり;
【化21】

は、本明細書に記載の結合基又はポリマーに対する結合を指す。
【0189】
いくつかの実施形態において、式(I-b-i)の化合物は、式(I-b-ii):
【化22】

の化合物又はその薬学的に許容可能な塩であり、式中、環Z2は、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール又はヘテロアリールであり;R2c及びR2dの各々は独立して、水素、アルキル、又はヘテロアルキルであり、又はR2c及びR2dは一緒になってオキソ基を形成し;各R3及びR5は独立して、アルキル、ヘテロアルキル、ハロゲン、オキソ、-ORA1、-C(O)ORA1、又は-C(O)RB1であり、ここで、アルキル及びヘテロアルキルの各々は、ハロゲンで任意選択により置換されており;各RA1及びRB1は独立して、水素、アルキル、又はヘテロアルキルであり;p及びqは各々独立して、0、1、2、3、4、5、又は6であり;
【化23】

は、本明細書に記載の結合基又はポリマーに対する結合を指す。
【0190】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、式(I-c):
【化24】

の化合物又はその薬学的に許容可能な塩であり、式中、環Z2は、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール又はヘテロアリールであり;R2c及びR2dの各々は独立して、水素、アルキル、又はヘテロアルキルであり、又はR2c及びR2dは一緒になってオキソ基を形成し;各R3及びR5は独立して、アルキル、ヘテロアルキル、ハロゲン、オキソ、-ORA1、-C(O)ORA1、又は-C(O)RB1であり、ここで、アルキル及びヘテロアルキルの各々は、ハロゲンで任意選択により置換されており;各RA1及びRB1は独立して、水素、アルキル、又はヘテロアルキルであり;mは、1、2、3、4、5、又は6であり;p及びqは各々独立して、0、1、2、3、4、5、又は6であり;
【化25】

は、本明細書に記載の結合基又はポリマーに対する結合を指す。
【0191】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、式(I-d):
【化26】

の化合物又はその薬学的に許容可能な塩であり、式中、環Z2は、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール又はヘテロアリールであり;Xは、不在、O、又はSであり;R2a、R2b、R2c、及びR2dの各々は独立して、水素、アルキル、又はヘテロアルキルであり、又はR2a及びR2b又はR2c及びR2dの各々は一緒になってオキソ基を形成し;各R5は独立して、アルキル、ヘテロアルキル、ハロゲン、オキソ、-ORA1、-C(O)ORA1、又は-C(O)RB1であり、ここで、アルキル及びヘテロアルキルの各々は、ハロゲンで任意選択により置換されており;各RA1及びRB1は独立して、水素、アルキル、又はヘテロアルキルであり;m及びnは各々独立して、1、2、3、4、5、又は6であり;pは、0、1、2、3、4、5、又は6であり;
【化27】

は、本明細書に記載の結合基又はポリマーに対する結合を指す。
【0192】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、式(I-e):
【化28】

の化合物又はその薬学的に許容可能な塩であり、式中、環Z2は、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール又はヘテロアリールであり;Xは、不在、O、又はSであり;R2a、R2b、R2c、及びR2dの各々は独立して、水素、アルキル、又はヘテロアルキルであり、又はR2a及びR2b又はR2c及びR2dの各々は一緒になってオキソ基を形成し;各R5は独立して、アルキル、ヘテロアルキル、ハロゲン、オキソ、-ORA1、-C(O)ORA1、又は-C(O)RB1であり;各RA1及びRB1は独立して、水素、アルキル、又はヘテロアルキルであり;m及びnは各々独立して、1、2、3、4、5、又は6であり;pは、0、1、2、3、4、5、又は6であり;
【化29】

は、本明細書に記載の結合基又はポリマーに対する結合を指す。
【0193】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、式(I-f):
【化30】

の化合物又はその薬学的に許容可能な塩であり、式中、Mは、1個以上のR3で任意選択により置換されているアルキルであり;環Pは、1個以上のR4で任意選択により置換されているヘテロアリールであり;L3は、1個以上のR2で任意選択により置換されている、アルキル又はヘテロアルキルであり;Zは、各々が1個以上のR5で任意選択により置換されている、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールであり;R2a及びR2bの各々は独立して、水素、アルキル、又はヘテロアルキルであり、又はR2a及びR2bは一緒になってオキソ基を形成し;R2、R3、R4、及びR5の各々は独立して、アルキル、ヘテロアルキル、ハロゲン、オキソ、-ORA1、-C(O)ORA1、又は-C(O)RB1であり;各RA1及びRB1は独立して、水素、アルキル、又はヘテロアルキルであり;nは独立して、1、2、3、4、5、又は6であり;
【化31】

は、本明細書に記載の結合基又はポリマーに対する結合を指す。
【0194】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、式(II):
【化32】

の化合物又はその薬学的に許容可能な塩であり、式中、Mは、結合、アルキル又はアリールであり、ここで、アルキル及びアリールは、1個以上のR3で任意選択により置換されており;L3は、1個以上のR2で任意選択により置換されている、アルキル又はヘテロアルキルであり;Zは、水素、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール又は-ORAであり、ここで、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールは、1個以上のR5で任意選択により置換されており;RAは水素であり;R2a及びR2bの各々は独立して、水素、アルキル、又はヘテロアルキルであり、又はR2a及びR2bは一緒になってオキソ基を形成し;R2、R3、及びR5の各々は独立して、アルキル、ヘテロアルキル、ハロゲン、オキソ、-ORA1、-C(O)ORA1、又は-C(O)RB1であり;各RA1及びRB1は独立して、水素、アルキル、又はヘテロアルキルであり;nは独立して、1、2、3、4、5、又は6であり;
【化33】

は、本明細書に記載の結合基又はポリマーに対する結合を指す。
【0195】
いくつかの実施形態において、式(II)の化合物は、式(II-a):
【化34】

の化合物又はその薬学的に許容可能な塩であり、式中、L3は、各々が1個以上のR2で任意選択により置換されている、アルキル又はヘテロアルキルであり;Zは、水素、アルキル、ヘテロアルキル、又は-ORAであり、ここで、アルキル及びヘテロアルキルは、1個以上のR5で任意選択により置換されており;R2a及びR2bの各々は独立して、水素、アルキル、又はヘテロアルキルであり、又はR2a及びR2bは一緒になってオキソ基を形成し;R2、R3、及びR5の各々は独立して、アルキル、ヘテロアルキル、ハロゲン、オキソ、-ORA1、-C(O)ORA1、又は-C(O)RB1であり;RAは水素であり;各RA1及びRB1は独立して、水素、アルキル、又はヘテロアルキルであり;nは独立して、1、2、3、4、5、又は6であり;
【化35】

は、本明細書に記載の結合基又はポリマーに対する結合を指す。
【0196】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、式(III):
【化36】

の化合物又はその薬学的に許容可能な塩であり、式中、Z1は、各々が1~5個のR5で任意選択により置換されている、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールであり;R2a、R2b、R2c、及びR2dの各々は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ハロ、シアノ、ニトロ、アミノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールであり;又はR2a及びR2b又はR2c及びR2dは一緒になってオキソ基を形成し;RCは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、又はヘテロアルキルであり、ここで、アルキル、アルケニル、アルキニル、又はヘテロアルキルの各々は、1~6個のR6で任意選択により置換されており;R3、R5、及びR6の各々は独立して、アルキル、ヘテロアルキル、ハロゲン、オキソ、-ORA1、-C(O)ORA1、又は-C(O)RB1であり;各RA1及びRB1は独立して、水素、アルキル、又はヘテロアルキルであり;m及びnは各々独立して、1、2、3、4、5、又は6であり;qは、0~25の整数であり;
【化37】

は、本明細書に記載の結合基又はポリマーに対する結合を指す。
【0197】
いくつかの実施形態において、式(III)の化合物は、式(III-a):
【化38】

の化合物又はその薬学的に許容可能な塩であり、式中、環Z2は、各々が1~5個のR5で任意選択により置換されている、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールであり;R2a、R2b、R2c、及びR2dの各々は独立して、水素、アルキル、ヘテロアルキル、ハロであり;又はR2a及びR2b又はR2c及びR2dは一緒になってオキソ基を形成し;R3及びR5の各々は独立して、アルキル、ヘテロアルキル、ハロゲン、オキソ、-ORA1、-C(O)ORA1、又は-C(O)RB1であり;各RA1及びRB1は独立して、水素、アルキル、又はヘテロアルキルであり;m及びnは各々独立して、1、2、3、4、5、又は6であり;o及びpは各々独立して、0、1、2、3、4、又は5であり;qは、0~25の整数であり;
【化39】

は、本明細書に記載の結合基又はポリマーに対する結合を指す。
【0198】
いくつかの実施形態において、式(III-a)の化合物は、式(III-b):
【化40】

の化合物又はその薬学的に許容可能な塩であり、式中、環Z2は、各々が1~5個のR5で任意選択により置換されている、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールであり;R2a、R2b、R2c、及びR2dの各々は独立して、水素、アルキル、ヘテロアルキル、ハロであり;又はR2a及びR2b又はR2c及びR2dは一緒になってオキソ基を形成し;R3及びR5の各々は独立して、アルキル、ヘテロアルキル、ハロゲン、オキソ、-ORA1、-C(O)ORA1、又は-C(O)RB1であり;各RA1及びRB1は独立して、水素、アルキル、又はヘテロアルキルであり;m及びnは各々独立して、1、2、3、4、5、又は6であり;o及びpは各々独立して、0、1、2、3、4、又は5であり;qは、0~25の整数であり;
【化41】

は、本明細書に記載の結合基又はポリマーに対する結合を指す。
【0199】
いくつかの実施形態において、式(III-a)の化合物は、式(III-c):
【化42】

の化合物又はその薬学的に許容可能な塩であり、式中、Xは、C(R’)(R”)、N(R’)、又はS(O)xであり;R’及びR”の各々は独立して、水素、アルキル、ハロゲン、又はシクロアルキルであり;R2a、R2b、R2c、及びR2dの各々は独立して、水素、アルキル、ヘテロアルキル、又はハロであり;又はR2a及びR2b又はR2c及びR2dは一緒になってオキソ基を形成し;R3及びR5の各々は独立して、アルキル、ヘテロアルキル、ハロゲン、オキソ、-ORA1、-C(O)ORA1、又は-C(O)RB1であり;各RA1及びRB1は独立して、水素、アルキル、又はヘテロアルキルであり;m及びnは各々独立して、1、2、3、4、5、又は6であり;pは、0、1、2、3、4、又は5であり;qは、0~25の整数であり;xは、0、1、又は2であり;
【化43】

は、本明細書に記載の結合基又はポリマーに対する結合を指す。
【0200】
いくつかの実施形態において、式(III-c)の化合物は、式(III-d):
【化44】

の化合物又はその薬学的に許容可能な塩であり、式中、Xは、C(R’)(R”)、N(R’)、又はS(O)xであり;R’及びR”の各々は独立して、水素、アルキル、ハロゲン、又はシクロアルキルであり;R2a、R2b、R2c、及びR2dの各々は独立して、水素、アルキル、ヘテロアルキル、又はハロであり;又はR2a及びR2b又はR2c及びR2dは一緒になってオキソ基を形成し;R3及びR5の各々は独立して、アルキル、ヘテロアルキル、ハロゲン、オキソ、-ORA1、-C(O)ORA1、又は-C(O)RB1であり;各RA1及びRB1は独立して、水素、アルキル、又はヘテロアルキルであり;m及びnは各々独立して、1、2、3、4、5、又は6であり;pは、0、1、2、3、4、又は5であり;qは、0~25の整数であり;xは、0、1、又は2であり;
【化45】

は、本明細書に記載の結合基又はポリマーに対する結合を指す。
【0201】
いくつかの実施形態において、化合物は、式(I)の化合物である。いくつかの実施形態において、L2は結合であり、P及びL3は独立して、不在である。
【0202】
いくつかの実施形態において、化合物は、式(I-a)の化合物である。式(II-a)のいくつかの実施形態において、L2は結合であり、Pはヘテロアリールであり、L3は結合であり、Zは水素である。いくつかの実施形態において、Pはヘテロアリールであり、L3はヘテロアルキルであり、Zはアルキルである。いくつかの実施形態において、L2は結合であり、P及びL3は独立して、不在である。いくつかの実施形態において、L2は結合であり、Pはヘテロアリールであり、L3は結合であり、Zは水素である。いくつかの実施形態において、Pはヘテロアリールであり、L3はヘテロアルキルであり、Zはアルキルである。
【0203】
いくつかの実施形態において、化合物は、式(I-b)の化合物である。いくつかの実施形態において、Pは不在であり、L1は-NHCH2であり、L2は結合であり、Mはアリール(例えば、フェニル)であり、L3は-CH2Oであり、Zはヘテロシクリル(例えば、窒素含有ヘテロシクリル、例えば、チオモルホリニル-1,1-ジオキシド)である。いくつかの実施形態において、式(I-b)の化合物は、化合物116である。
【0204】
式(I-b)のいくつかの実施形態において、Pは不在であり、L1は-NHCH2であり、L2は結合であり、Mは不在であり、L3は結合であり、Zはヘテロシクリル(例えば、酸素含有ヘテロシクリル、例えば、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、オキセタニル、又はオキシラニル)である。いくつかの実施形態において、式(I-b)の化合物は、化合物105である。
【0205】
いくつかの実施形態において、化合物は、式(I-b-i)の化合物である。式(I-b-i)のいくつかの実施形態において、R2a及びR2bの各々は独立して、水素又はCH3であり、R2c及びR2dの各々は独立して、水素であり、mは1又は2であり、nは1であり、XはOであり、pは0であり、M2は、1個以上のR3で任意選択により置換されているフェニルであり、R3は-CF3であり、Z2はヘテロシクリル(例えば、酸素含有ヘテロシクリル、例えば、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、オキセタニル、又はオキシラニル)である。いくつかの実施形態において、式(I-b-i)の化合物は、化合物100、化合物106、化合物107、化合物108、化合物109、又は化合物111である。
【0206】
いくつかの実施形態において、化合物は、式(I-b-ii)の化合物である。式(I-b-ii)のいくつかの実施形態において、R2a、R2b、R2c、及びR2dの各々は独立して、水素であり、qは0であり、pは0であり、mは1であり、Z2はヘテロシクリル(例えば、酸素含有ヘテロシクリル、例えば、テトラヒドロピラニル)である。いくつかの実施形態において、式(I-b-ii)の化合物は、化合物100である。
【0207】
いくつかの実施形態において、化合物は、式(I-c)の化合物である。式(I-c)のいくつかの実施形態において、R2c及びR2dの各々は独立して、水素であり、mは1であり、pは1であり、qは0であり、R5は-CH3であり、Zはヘテロシクリル(例えば、窒素含有ヘテロシクリル、例えば、ピペラジニル)である。いくつかの実施形態において、式(I-c)の化合物は、化合物113である。
【0208】
いくつかの実施形態において、化合物は、式(I-d)の化合物である。式(I-d)のいくつかの実施形態において、R2a、R2b、R2c、及びR2dの各々は独立して、水素であり、mは1であり、nは3であり、XはOであり、pは0であり、Zはヘテロシクリル(例えば、酸素含有ヘテロシクリル、例えば、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、オキセタニル、又はオキシラニル)である。いくつかの実施形態において、式(I-d)の化合物は、化合物110又は化合物114である。
【0209】
いくつかの実施形態において、化合物は、式(I-f)の化合物である。式(I-f)のいくつかの実施形態において、R2a及びR2bの各々は独立して、水素であり、nは1であり、Mは-CH2-であり、Pは、窒素含有ヘテロアリール(例えば、イミダゾリル)であり、L3は-C(O)OCH2-であり、ZはCH3である。いくつかの実施形態において、式(I-f)の化合物は、化合物115である。
【0210】
いくつかの実施形態において、化合物は、式(II-a)の化合物である。式(II-a)のいくつかの実施形態において、R2a及びR2bの各々は独立して、水素であり、nは1であり、qは0であり、L3は-CH2(OCH2CH2)2であり、Zは-OCH3である。いくつかの実施形態において、式(II-a)の化合物は、化合物112である。
【0211】
式(II-a)のいくつかの実施形態において、R2a及びR2bの各々は独立して、水素であり、nは1であり、L3は結合又は-CH2であり、Zは水素又は-OHである。いくつかの実施形態において、式(II-a)の化合物は、化合物103又は化合物104である。
【0212】
いくつかの実施形態において、化合物は、式(III)の化合物である。式(III)のいくつかの実施形態において、R2a、R2b、R2c、及びR2dの各々は独立して、水素であり、mは1であり、nは2であり、qは3であり、pは0であり、RCは水素であり、Z1は、R5(例えば、-N(CH3)(CH2CH2)S(O)2CH3)で任意選択により置換されているヘテロアルキルである。いくつかの実施形態において、式(III)の化合物は、化合物120である。
【0213】
いくつかの実施形態において、化合物は、式(III-b)の化合物である。式(III-b)のいくつかの実施形態において、R2a、R2b、R2c、及びR2dの各々は独立して、水素であり、mは0であり、nは2であり、qは3であり、pは0であり、Z2は、1個のR5(例えば、-NH2)で置換されたアリール(例えば、フェニル)である。いくつかの実施形態において、式(III-b)の化合物は、化合物102である。
【0214】
いくつかの実施形態において、化合物は、式(III-b)の化合物である。式(III-b)のいくつかの実施形態において、R2a、R2b、R2c、及びR2dの各々は独立して、水素であり、mは1であり、nは2であり、qは3であり、pは0であり、RCは水素であり、Z2はヘテロシクリル(例えば、窒素含有ヘテロシクリル、例えば、窒素含有スピロヘテロシクリル、例えば、2-オキサ-7-アザスピロ[3.5]ノナニル)である。いくつかの実施形態において、式(III-b)の化合物は、化合物121である。
【0215】
いくつかの実施形態において、化合物は、式(III-d)の化合物である。式(III-d)のいくつかの実施形態において、R2a、R2b、R2c、及びR2dの各々は独立して、水素であり、mは1であり、nは2であり、qは、1、2、3、又は4であり、pは0であり、XはS(O)2である。式(III-d)のいくつかの実施形態において、R2a及びR2bの各々は独立して、水素であり、mは1であり、nは2であり、qは、1、2、3、又は4であり、pは0であり、XはS(O)2である。いくつかの実施形態において、式(III-d)の化合物は、化合物101、化合物117、化合物118、又は化合物119である。
【0216】
いくつかの実施形態において、化合物は、式(I-b)、(I-d)、又は(I-e)の化合物である。いくつかの実施形態において、化合物は、式(I-b)、(I-d)、又は(II)の化合物である。いくつかの実施形態において、化合物は、式(I-b)、(I-d)、又は(I-f)の化合物である。いくつかの実施形態において、化合物は、式(I-b)、(I-d)、又は(III)の化合物である。
【0217】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、国際公開第2012/112982号パンフレット、国際公開第2012/167223号パンフレット、国際公開第2014/153126号パンフレット、国際公開第2016/019391号パンフレット、国際公開第2017/075630号パンフレット、米国特許出願公開第2012-0213708号明細書、米国特許出願公開第2016-0030359号明細書又は米国特許出願公開第2016-0030360号明細書に開示されている化合物でない。
【0218】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、表4で示されている化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含む。いくつかの実施形態において、本明細書で説明されているデバイス内の外面及び/又は1個若しくは複数個の区画は、表4で示されている小分子化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含む。
【0219】
【表3】
【0220】
【表4】
【0221】
【表5】
【0222】
いくつかの実施形態において、この化合物は、式(I)(例えば、式(I-a)、(I-b)、(I-c)、(I-d)、(I-e)、(I-f)、(II)、(II-a)、(III)、(III-a)、(III-b)、(III-c)、若しくは(III-d))の化合物又はその薬学的に許容可能な塩であり、且つ
【化46】

又はその薬学的に許容可能な塩から選択される。
【0223】
いくつかの実施形態において、本明細書で説明されているデバイスは、
【化47】

の化合物又はいずれかの化合物の薬学的に許容可能な塩を含む。
【0224】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物(例えば、表4中の化合物101)は、以下の実施例に記載される窒素パーセントの燃焼分析によって決定した際に、少なくとも2.0%且つ9.0%未満、又は3.0%~8.0%、4.0~7.0、5.0~7.0、又は6.0~7.0又は約6.8の結合密度で、アルギン酸塩(例えば、およそのMW<75kDa、G:M比≧1.5を有するアルギン酸塩)に共有結合される。
【0225】
細胞
本開示のデバイスは、複数の細胞(例えば生細胞)を含む少なくとも1個の細胞含有区画を含む。この細胞は、上皮細胞、内皮細胞、繊維芽細胞、間葉系幹細胞、ケラチン生成細胞、及び膵島細胞等の様々な異なる細胞型(例えばヒト細胞)であり得る。例示的な細胞型として、国際公開第2017/075631号パンフレットで列挙されている細胞型が挙げられる。いくつかの実施形態では、この細胞は、下記の表5で示されている細胞株に由来する。
【0226】
【表6】
【0227】
いくつかの実施形態において、デバイスは、本明細書において定義されるような膵島細胞を含まない。実施形態において、本開示のデバイスに含まれる細胞、例えば、RPE細胞、MSFC(組み換えRPE細胞及びMSFCを含む)は、以下の特徴の1つ又は複数を有する:(i)糖尿病又はインスリンで処置され得る別の疾病若しくは状態を処置するのに有効な量で、インスリン(例えば、インスリンA鎖、インスリンB鎖、又はプロインスリン)を産生することが可能でない;(ii)グルコース応答的にインスリンを産生することが可能でない;又は(iii)インスリン産生膵β細胞へと組み換えられた又は分化した誘導多能性幹細胞由来でない。
【0228】
実施形態において、複数の細胞は、本明細書に記載のデバイス、例えば、ヒドロゲルカプセル内にカプセル化される前に、細胞懸濁液の形態である。懸濁液中の細胞は、(例えば、単層細胞培養物からの)単一細胞の形態を取り得、又は例えば、マイクロキャリア(例えば、ビーズ若しくはマトリックス)上に配置された、又は細胞の3次元凝集体(例えば、細胞クラスター又はスフェロイド)としての別の形態で提供され得る。細胞懸濁液は、複数の細胞クラスター(例えば、スフェロイドとして)又はマイクロキャリアを含み得る。
【0229】
いくつかの実施形態において、複数の細胞は、治療薬を産生するように組み換えられている。ある実施形態において、この治療薬は、疾患、障害、又は状態(例えば、国際公開第2017/075631号パンフレットで説明されているもの)の予防用か又は処置用である。この治療薬は、任意の生物学的物質であり得、例えば、核酸(例えば、ヌクレオチド、DNA、若しくはRNA)、ポリペプチド、脂質、糖(例えば、単糖、二糖、オリゴ糖、若しくは多糖)、又は小分子であり得る。例示的な治療薬として、国際公開第2017/075631号パンフレットで列挙されている薬剤が挙げられる。
【0230】
いくつかの実施形態において、治療薬は、ペプチド又はポリペプチド(例えば、タンパク質)、例えば、ホルモン、酵素、サイトカイン(例えば、炎症性サイトカイン又は抗炎症性サイトカイン)、増殖因子、凝固因子、又はリポタンパク質である。組み換え細胞によって産生される、ペプチド又はポリペプチド(例えば、タンパク質、例えば、ホルモン、増殖因子、凝固因子(clotting factor)又は凝固因子(coagulation factor)、抗体分子、酵素、サイトカイン、サイトカイン受容体、又はサイトカイン若しくはサイトカイン受容体を含むキメラタンパク質)は、天然のアミノ酸配列を有することができ、又は天然の配列の変異体を含み得る。変異体は、基準の配列、例えば、天然の配列に対する、天然又は非天然のアミノ酸置換、突然変異、欠失又は付加であり得る。天然のアミノ酸配列は、多型変異体であり得る。天然のアミノ酸配列は、ヒト又は非ヒトアミノ酸配列であり得る。いくつかの実施形態において、天然のアミノ酸配列又はその天然の変異体は、ヒト配列である。さらに、本開示と共に使用するためのペプチド又はポリペプチド(例えば、タンパク質)は、何らかの方法で、例えば、化学又は酵素修飾(例えば、グリコシル化、リン酸化)によって修飾され得る。いくつかの実施形態において、ペプチドは、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、又は50未満のアミノ酸を有する。いくつかの実施形態において、タンパク質は、5kD、10kD、25kD、50kD、100kD、150kD、200kD、250kD、500kD、又はそれ以上の平均分子量を有する。
【0231】
いくつかの実施形態において、タンパク質はホルモンである。例示的なホルモンとしては、抗利尿剤ホルモン(ADH)、オキシトシン、成長ホルモン(GH)、プロラクチン、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、サイロトロピン放出ホルモン(TRH)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、チロキシン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン(PTH)、アルドステロン、コルチゾール、エピネフリン、グルカゴン、インスリン、エストロゲン、プロゲステロン、及びテストステロンが挙げられる。いくつかの実施形態において、タンパク質は、インスリン(例えば、インスリンA鎖、インスリンB鎖、又はプロインスリン)である。いくつかの実施形態において、タンパク質は、成長ホルモン、例えば、ヒト成長ホルモン(hGH)、組み換えヒト成長ホルモン(rhGH)、ウシ成長ホルモン、メチオニン-ヒト成長ホルモン、des-フェニルアラニンヒト成長ホルモン、及びブタ成長ホルモンである。
【0232】
いくつかの実施形態において、タンパク質は、増殖因子、例えば、血管内皮増殖因子(VEGF)、神経増殖因子(NGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮増殖因子(EGF)、形質転換増殖因子(TGF)、及びインスリン様増殖因子-I及び-II(IGF-I及びIGF-II)である。
【0233】
いくつかの実施形態において、タンパク質は、凝固因子(clotting factor)又は凝固因子(coagulation factor)、例えば、血液凝固因子(blood clotting factor)又は血液凝固因子(blood coagulation factor)である。いくつかの実施形態において、タンパク質は、凝固、すなわち、血液が液体から固体又はゲルへと変換される過程に関与するタンパク質である。例示的な凝固因子(clotting factor)及び凝固因子(coagulation factor)としては、第I因子(例えば、フィブリノゲン)、第II因子(例えば、プロトロンビン)、第III因子(例えば、組織因子)、第V因子(例えば、プロアクセレリン、不安定因子)、第VI因子、第VII因子(例えば、安定因子、プロコンバーチン)、第VIII因子(例えば、抗血友病因子A)、第VIIIC因子、第IX因子(例えば、抗血友病因子B)、第X因子(例えば、スチュアート・プロワー因子)、第XI因子(例えば、血漿トロンボプラスチン前駆物質)、第XII因子(例えば、ハーゲマン因子)、第XIII因子(例えば、フィブリン安定化因子)、フォン・ヴィレブランド因子(vWF)、プレカリクレイン、ヘパリン補因子II、高分子量キニノーゲン(例えば、フィッツジェラルド因子)、抗トロンビンIII、及びフィブロネクチンが挙げられる。いくつかの実施形態において、タンパク質は、プロテインCなどの抗凝固因子である。
【0234】
いくつかの実施形態において、タンパク質は抗体分子である。本明細書において用いられるところ、「抗体分子」という用語は、少なくとも1つの免疫グロブリン可変ドメイン配列を含む、タンパク質、例えば、免疫グロブリン鎖又はその断片を指す。「抗体分子」という用語は、例えば、モノクローナル抗体(免疫グロブリンFc領域を有する完全長抗体を含む)を含む。実施形態において、抗体分子は、完全長抗体、又は完全長免疫グロブリン鎖を含む。実施形態において、抗体分子は、完全長抗体、又は完全長免疫グロブリン鎖の抗原結合若しくは機能的断片を含む。実施形態において、抗体分子は、単一特異性抗体分子であり、単一のエピトープに結合し、例えば、それぞれが同じエピトープに結合する複数の免疫グロブリン可変ドメイン配列を有する単一特異性抗体分子である。実施形態において、抗体分子は、多特異性抗体分子であり、例えば、それは、複数の免疫グロブリン可変ドメイン配列を含み、ここで、複数のうちの第1の免疫グロブリン可変ドメイン配列は、第1のエピトープに対する結合特異性を有し、複数のうちの第2の免疫グロブリン可変ドメイン配列は、第2のエピトープに対する結合特異性を有する。実施形態において、第1及び第2のエピトープは、同じ抗原、例えば、同じタンパク質(又は多量体タンパク質のサブユニット)上にある。実施形態において、多特異性抗体分子は、第3、第4又は第5の免疫グロブリン可変ドメインを含む。実施形態において、多特異性抗体分子は、二重特異性抗体分子、三重特異性抗体分子、又は四重特異性抗体分子である。
【0235】
任意のクラスの全免疫グロブリン、その断片、及び抗体の抗原結合可変ドメインを少なくとも含む合成タンパク質を含む様々なタイプの抗体分子が、カプセル化組み換え細胞によって産生され得る。抗体分子は、抗体、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4などのIgG抗体であり得る。抗体分子は、Fab断片、F(ab’)2断片、一本鎖可変領域などを含む抗原結合断片の形態であり得る。抗体は、ポリクローナル又はモノクローナル(mAb)であり得る。モノクローナル抗体は、それらが標的抗原に特異的に結合し、及び/又は所望の生物学的活性を示す限り、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種に由来するか又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一又は同種である一方、鎖の残りの部分が、別の種に由来するか又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一又は同種である「キメラ」抗体、並びにこのような抗体の断片を含み得る。いくつかの実施形態において、抗体分子は、単一ドメイン抗体(例えば、ナノボディ)である。記載される抗体はまた、所望の機能を仲介する際の抗体の有効性を高めるために、組み換え手段、例えばアミノ酸の欠失、付加又は置換によって修飾され得る。例示的な抗体としては、抗β-ガラクトシダーゼ、抗コラーゲン、抗CD14、抗CD20、抗CD40、抗HER2、抗IL-1、抗IL-4、抗IL6、抗IL-13、抗IL17、抗IL18、抗IL-23、抗IL-28、抗IL-29、抗IL-33、抗EGFR、抗VEGF、抗CDF、抗フラジェリン、抗IFN-α、抗IFN-β、抗IFN-γ、抗マンノース受容体、抗VEGF、抗TLR1、抗TLR2、抗TLR3、抗TLR4、抗TLR5、抗TLR6、抗TLR9、抗PDF、抗PD1(抗PD-1としてもしれれる)、抗PD-L1、又は抗神経増殖因子抗体が挙げられる。いくつかの実施形態において、抗体は、抗神経増殖因子抗体(例えば、フルラヌマブ、ファシヌマブ、タネズマブ)である。
【0236】
いくつかの実施形態において、タンパク質は、例えば腫瘍壊死因子α及びβ、それらの受容体及びそれらの誘導体、レニンを含む、サイトカイン若しくはサイトカイン受容体、又はサイトカイン若しくはそれらの受容体を含むキメラタンパク質;リポタンパク質;コルヒチン;コルチコトロピン;バソプレシン;ソマトスタチン;リプレシン;パンクレオザイミン;ロイプロリド;α-1-アンチトリプシン;心房性ナトリウム利尿因子;肺表面活性剤;組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)以外のプラスミノーゲン活性化因子、例えばウロキナーゼ;ボンベシン;トロンビン;エンケファリナーゼ;RANTES(活性化正常T細胞における発現及び分泌調節性(regulated on activation normally T-cell expressed and secreted));ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP-1-α);ヒト血清アルブミンなどの血清アルブミン;ミュラー管抑制因子;レラキシンA鎖;レラキシンB鎖;プロリラキシン(prorelaxin);マウスゴナドトロピン関連ペプチド;絨毛性ゴナドトロピン;β-ラクタマーゼなどの微生物タンパク質;DNase;インヒビン;アクチビン;ホルモン又は増殖因子の受容体;インテグリン;プロテインA又はD;リウマチ因子;血小板由来増殖因子(PDGF);上皮増殖因子(EGF);TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4、又はTGF-β5を含むTGF-α及びTGF-βなどの形質転換増殖因子(TGF);インスリン様増殖因子-I及び-II(IGF-I及びIGF-II);des(1-3)-IGF-I(脳IGF-I)、インスリン様増殖因子結合タンパク質;CD-3、CD-4、CD-8、及びCD-19などのCDタンパク質;エリスロポエチン;骨誘導因子;免疫毒素;インターフェロン-α(例えば、インターフェロン.α.2A)、-β、-γ、-λ及びコンセンサスインターフェロンなどのインターフェロン;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M-CSF、GM-CSF、及びG-CSF;インターロイキン(IL)、例えば、IL-1、IL-2~IL-10;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞受容体;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;プロスタグランジンなどの生殖阻害剤;生殖促進剤;調節タンパク質;イムノアドヘシンなどの、抗体(その断片を含む)及びキメラタンパク質;これらの化合物の前駆体、誘導体、プロドラッグ及び類似体、並びにこれらの化合物、又はそれらの前駆体、誘導体、プロドラッグ及び類似体の薬学的に許容可能な塩である。好適なタンパク質又はペプチドは、天然又は組み換えであってもよく、例えば、融合タンパク質が挙げられる。
【0237】
本明細書に記載のデバイスによって産生されるポリペプチド(例えば、タンパク質)の例としては、CCL1、CCL2(MCP-1)、CCL3(MIP-1α)、CCL4(MIP-1β)、CCL5(RANTES)、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9(CCL10)、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CCL28、CXCL1(KC)、CXCL2(SDF1a)、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8(IL8)、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCL17、CX3CL1、XCL1、XCL2、TNFA、TNFB(LTA)、TNFC(LTB)、TNFSF4、TNFSF5(CD40LG)、TNFSF6、TNFSF7、TNFSF8、TNFSF9、TNFSF10、TNFSF11、TNFSF13B、EDA、IL2、IL15、IL4、IL13、IL7、IL9、IL21、IL3、IL5、IL6、IL11、IL27、IL30、IL31、OSM、LIF、CNTF、CTF1、IL12a、IL12b、IL23、IL27、IL35、IL14、IL16、IL32、IL34、IL10、IL22、IL19、IL20、IL24、IL26、IL29、IFNL1、IFNL2、IFNL3、IL28、IFNA1、IFNA2、IFNA4、IFNA5、IFNA6、IFNA7、IFNA8、IFNA10、IFNA13、IFNA14、IFNA16、IFNA17、IFNA21、IFNB1、IFNK、IFNW1、IFNG、IL1A(IL1F1)、IL1B(IL1F2)、IL1Ra(IL1F3)、IL1F5(IL36RN)、IL1F6(IL36A)、IL1F7(IL37)、IL1F8(IL36B)、IL1F9(IL36G)、IL1F10(IL38)、IL33(IL1F11)、IL18(IL1G)、IL17、KITLG、IL25(IL17E)、CSF1(M-CSF)、CSF2(GM-CSF)、CSF3(G-CSF)、SPP1、TGFB1、TGFB2、TGFB3、CCL3L1、CCL3L2、CCL3L3、CCL4L1、CCL4L2、IL17B、IL17C、IL17D、IL17F、AIMP1(SCYE1)、MIF、Areg、BC096441、Bmp1、Bmp10、Bmp15、Bmp2、Bmp3、Bmp4、Bmp5、Bmp6、Bmp7、Bmp8a、Bmp8b、C1qtnf4、Ccl21a、Ccl27a、Cd70、Cer1、Cklf、Clcf1、Cmtm2a、Cmtm2b、Cmtm3、Cmtm4、Cmtm5、Cmtm6、Cmtm7、Cmtm8、Crlf1、Ctf2、Ebi3、Edn1、Fam3b、Fasl、Fgf2、Flt3l、Gdf10、Gdf11、Gdf15、Gdf2、Gdf3、Gdf5、Gdf6、Gdf7、Gdf9、Gm12597、Gm13271、Gm13275、Gm13276、Gm13280、Gm13283、Gm2564、Gpi1、Grem1、Grem2、Grn、Hmgb1、Ifna11、Ifna12、Ifna9、Ifnab、Ifne、Il17a、Il23a、Il25、Il31、Iltifb、Inhba、Lefty1、Lefty2、Mstn、Nampt、Ndp、Nodal、Pf4、Pglyrp1、Prl7d1、Scg2、Scgb3a1、Slurp1、Spp1、Thpo、Tnfsf10、Tnfsf11、Tnfsf12、Tnfsf13、Tnfsf13b、Tnfsf14、Tnfsf15、Tnfsf18、Tnfsf4、Tnfsf8、Tnfsf9、Tslp、Vegfa、Wnt1、Wnt2、Wnt5a、Wnt7a、Xcl1、エピネフリン、メラトニン、トリヨードチロニン、プロスタグランジン、ロイコトリエン、プロスタサイクリン、トロンボキサン、膵島アミロイドポリペプチド、ミュラー管抑制因子又はホルモン、アディポネクチン、コルチコトロピン、アンジオテンシン、バソプレシン、アルギニンバソプレシン、アトリオペプチン、脳性ナトリウム利尿ペプチド、カルシトニン、コレシストキニン、コルチスタチン、エンケファリン、エンドセリン、エリスロポエチン、卵胞刺激ホルモン、ガラニン、消化管抑制ポリペプチド、ガストリン、グレリン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド-1、ゴナドトロピン放出ホルモン、ヘプシジン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、ヒト胎盤性ラクトーゲン、インヒビン、ソマトメジン、レプチン、リポトロピン、メラノサイト刺激ホルモン、モチリン、オレキシン、オキシトシン、膵臓ポリペプチド、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド、レラキシン、レニン、セクレチン、ソマトスタチン、トロンボポエチン、サイロトロピン、サイロトロピン放出ホルモン、血管作動性腸管ペプチド、アンドロゲン、α-グルコシダーゼ(酸性マルターゼとしても知られている)、グリコーゲンホスホリラーゼ、グリコーゲン脱分枝酵素、ホスホフルクトキナーゼ、ホスホグリセリン酸キナーゼ、ホスホグリセリン酸ムターゼ、乳酸脱水素酵素、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ、カルニチン、及びミオアデニル酸デアミナーゼも挙げられる。
【0238】
いくつかの実施形態において、タンパク質は、補充療法又は補充タンパク質である。いくつかの実施形態において、補充療法又は補充タンパク質は、凝固因子(clotting factor)又は凝固因子(coagulation factor)、例えば、第VIII因子(例えば、天然のヒト第VIII因子アミノ酸配列若しくはその変異体を含む)又は第IX因子(例えば、天然のヒト第IX因子アミノ酸配列若しくはその変異体を含む)である。
【0239】
いくつかの実施形態において、複数の細胞は、ヒト第VIII因子タンパク質(例えば組み換え第VIII因子)を発現するように組み換えられている。いくつかの実施形態において、この組み換え第VIII因子は、Bドメイン欠失組み換え第VIII因子(FVIII-BDD)である。いくつかの実施形態において、FVIII-BDDタンパク質は、図20で示されているFVIII-BDDタンパク質である。ある実施形態において、FVIII-BDDタンパク質は、配列番号1を含むか、配列番号1から本質的になるか、又は配列番号1からなる。
【0240】
いくつかの実施形態において、細胞は、第IX因子(例えば、ヒト第IX因子(FIX)タンパク質)を発現するように組み換えられている。いくつかの実施形態において、FIXタンパク質は、FIX-paduaタンパク質であり、且つ配列番号36を含むか、配列番号36から本質的になるか、又は配列番号36からなる。
【0241】
いくつかの実施形態において、カプセル化細胞は、ヒトRPE細胞株に由来し、ポリペプチドのためのコード配列に動作可能に連結されるプロモーター配列(例えば、配列番号26又は配列番号23のヌクレオチド337~2069)を含む外因性の核酸配列を含む。実施形態において、コード配列は、図24に示されるコドン最適化FVIII-BDDコード配列(配列番号9、10、11、12、13、14、15、16若しくは17)又は図24に示されるコドン最適化FIX-paduaコード配列(配列番号19、20若しくは21)である。
【0242】
いくつかの実施形態において、補充療法又は補充タンパク質は、酵素であり、例えば、アルファ-ガラクトシダーゼA(GLA)、アルファ-L-イズロニダーゼ(IDUA)、グルコセレブロシダーゼ、N-スルホグルコサミンスルホヒドロラーゼ(SGSH)、N-アセチル-アルファ-d-グルコサミニダーゼ、N-アセチルグルコサミン4-スルファターゼ、尿酸オキシダーゼ、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、又はフェニルアラニンアンモニアリアーゼである。いくつかの実施形態において、補充療法又は補充タンパク質は、サイトカイン又は抗体である。
【0243】
いくつかの実施形態において、治療薬は、糖、例えば、単糖、二糖、オリゴ糖、又は多糖である。いくつかの実施形態において、糖は、トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、又はヘプトース部分を含む。いくつかの実施形態において、糖は、直鎖単糖又は環化単糖を含む。いくつかの実施形態において、糖は、グルコース、ガラクトース、フルクトース、ラムノース、マンノース、アラビノース、グルコサミン、ガラクトサミン、シアル酸、マンノサミン、グルクロン酸、ガラクツロン酸、マンヌロン酸、又はグルロン酸部分を含む。いくつかの実施形態において、糖は、タンパク質に結合される(例えば、N-結合型グリカン又はO-結合型グリカン)。例示的な糖としては、グルコース、ガラクトース、フルクトース、マンノース、ラムノース、スクロース、リボース、キシロース、シアル酸、マルトース、アミロース、イヌリン、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マンナン、レクチン、ペクチン、デンプン、セルロース、ヘパリン、ヒアルロン酸、キチン、アミロペクチン、又はグリコーゲンが挙げられる。いくつかの実施形態において、治療薬は、糖アルコールである。
【0244】
いくつかの実施形態において、治療薬は脂質である。脂質は、疎水性又は両親媒性であってもよく、リポソーム、小胞、若しくは膜などの三次構造を形成するか又はリポソーム、小胞、若しくは膜に挿入され得る。脂質は、脂肪酸、グリセロ脂質、グリセロリン脂質、ステロール脂質、プレノール脂質、スフィンゴ脂質、糖脂質、ポリケチド、又はスフィンゴ脂質を含み得る。カプセル化細胞によって産生される脂質の例としては、アナンダミド、ドコサヘキサエン酸、プロスタグランジン、ロイコトリエン、トロンボキサン、エイコサノイド、トリグリセリド、カンナビノイド、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、セラミド、スフィンゴミエリン、セレブロシド、ガングリオシド、エストロゲン、アンドロステロン、テストステロン、コレステロール、カロテノイド、キノン、ヒドロキノン、又はユビキノンが挙げられる。
【0245】
いくつかの実施形態において、治療薬は小分子である。小分子は、細胞によって産生される天然産物を含み得る。いくつかの実施形態において、小分子は、利用可能性が不十分であり、又はリピンスキーのルールオブファイブと適合しない(小分子がヒトにおける経口で有効な薬物である見込みがあるかどうかを推定するのに使用される一連の指針;例えば、Lipinski,C.A.et al(2001)Adv Drug Deliv 46:2-36を参照)。例示的な小分子天然産物としては、抗菌薬(例えば、カルモナム、ダプトマイシン、フィダキソマイシン、ホスホマイシン、イセパマイシン、ミクロノマイシン硫酸塩、ミオカマイシン、ムピロシン、ネチルマイシン硫酸塩、テイコプラニン、チエナマイシン、リファマイシン、エリスロマイシン、バンコマイシン)、抗寄生虫薬(例えば、アルテミシニン、イベルメクチン)、抗癌剤(例えば、ドキソルビシン、アクラルビシン、アミノレブリン酸、アルグラビン、オマセタキシンメペスクシナート、パクリタキセル、ペントスタチン、ペプロマイシン、ロミデプシン、トラベクテジン、アクチノマイシンD、ブレオマイシン、クロモマイシンA、ダウノルビシン、ロイコボリン、ネオカルジノスタチン、ストレプトゾシン、トラベクテジン、ビンブラスチン、ビンクリスチン)、抗糖尿病薬(例えば、ボグリボース)、中枢神経系薬剤(例えば、L-ドパ、ガランタミン、ジコノチド)、スタチン(例えば、メバスタチン)、抗真菌薬(例えば、フマギリン、シクロスポリン)、1-デオキシノジリマイシン、及びテオフィリン、ステロール(コレステロール、エストロゲン、テストステロン)が挙げられる。さらなる小分子天然産物が、本明細書において参照によりその全体が援用される、Newman,D.J.and Cragg,M.(2016)J Nat Prod 79:629-661及びButler,M.S.et al(2014)Nat Prod Rep 31:1612-1661に記載されている。
【0246】
いくつかの実施形態において、細胞は、非タンパク質又は非ペプチド小分子を合成するように組み換えられる。例えば、実施形態において、組み換え細胞は、スタチン(例えば、タウロスタチン(taurostatin)、プラバスタチン、フルバスタチン、又はアトルバスタチン)を産生し得る。
【0247】
いくつかの実施形態において、治療薬は、抗原(例えば、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、植物抗原、環境抗原、又は腫瘍抗原)である。抗原は、免疫賦活性である、すなわち、免疫応答を刺激するか又はそれが由来する生物又は分子に対して有効な免疫を提供することが可能であると当業者によって認識される。抗原は、核酸、ペプチド、タンパク質、糖、脂質、又はこれらの組み合わせであり得る。
【0248】
本明細書に記載のデバイス中の細胞は、単一の治療薬又は複数の治療薬を産生し得る。複数の治療薬は、関連し得るか又は複合体を形成し得る。いくつかの実施形態において、デバイスから分泌又は放出される治療薬は、活性形態である。いくつかの実施形態において、治療薬は、不活性形態で、例えば、プロドラッグとして、デバイスから分泌又は放出される。後者の場合、治療薬は、酵素などの下流の薬剤によって活性化され得る。
【0249】
処置方法
本明細書で説明されているのは、治療薬を生じる本明細書で説明されているデバイス又はデバイスの調製物の投与又は移植により対象の疾患、障害、又は状態を予防するか又は処置する方法であって、この治療薬は、この疾患、障害、又は状態を処置する、方法である。この方法は、デバイス、又は複数のデバイスを含むデバイス調製物を投与するか又は移植することを含み、このデバイスは、(i)第1の細胞結合物質(CBS)を含み且つこのデバイス又はデバイス調製物が対象に移植された場合に治療薬を発現し得る複数の細胞(例えば生細胞)をカプセル化するポリマー組成物を含む少なくとも1個の細胞含有区画と、(ii)このデバイス又はデバイス調製物が対象に移植された場合にFBRを軽減するための手段とを含む。ある実施形態において、この手段は、細胞含有区画を取り囲み且つ式(I)の化合物(例えば本明細書で説明されている)を含むバリア区画を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、疾病、障害、又は状態の少なくとも1つの症状を直接又は間接的に低減又は軽減する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、疾病、障害、又は状態の発症を予防するか又は遅らせる。いくつかの実施形態において、対象はヒトである。
【0250】
いくつかの実施形態において、疾病、障害又は状態は、例えば神経系(例えば、末梢神経系(PNS)又は中枢神経系(CNS))、脈管系、骨格系、呼吸器系、内分泌系、リンパ系、生殖器系又は胃腸管といった身体の系に影響を及ぼす。いくつかの実施形態において、疾病、障害又は状態は、例えば、血液、眼、脳、皮膚、肺、胃、口、耳、脚、足、手、肝臓、心臓、腎臓、骨、膵臓、脾臓、大腸、小腸、脊髄、筋肉、卵巣、子宮、膣又はペニスといった身体の一部に影響を及ぼす。
【0251】
いくつかの実施形態において、疾病、障害又は状態は、神経変性疾患、糖尿病、心臓病、自己免疫疾患、癌、肝疾患、ライソゾーム蓄積症、血液凝固障害又は凝固障害、整形外科状態、アミノ酸代謝障害である。
【0252】
いくつかの実施形態において、疾病、障害又は状態は神経変性疾患である。例示的な神経変性疾患としては、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病(PD)筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)及び脳性麻痺(CP)、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、神経核内封入体病(NIHID)、レビー小体型認知症、ダウン症候群、ハラーフォルデン・シュパッツ症候群、プリオン病、嗜銀顆粒性認知症、大脳皮質基底核変性症、パンチドランカー、びまん性神経原線維変化病、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群、クロイツフェルト・ヤコブ病、ニーマン・ピック病3型、進行性核上性麻痺、亜急性硬化性全脳炎、脊髄小脳失調症、ピック病及び歯状核赤核・淡蒼球ルイ体萎縮症が挙げられる。
【0253】
いくつかの実施形態において、疾病、障害又は状態は、例えば、強皮症、多発性硬化症、狼瘡又は過敏症といった自己免疫疾患である。
【0254】
いくつかの実施形態において、疾病は、例えば、B型肝炎、C型肝炎、肝硬変、NASHといった肝臓病である。
【0255】
いくつかの実施形態において、疾病、障害又は状態は癌である。例示的な癌としては、白血病、リンパ腫、メラノーマ、肺癌、脳癌(例えば、グリア芽細胞腫)、肉腫、膵癌、腎臓癌、肝臓癌、精巣癌、前立腺癌又は子宮癌が挙げられる。
【0256】
いくつかの実施形態において、疾病、障害又は状態は整形外科状態である。例示的な整形外科状態としては、骨粗鬆症、骨壊死、パジェット病又は骨折が挙げられる。
【0257】
いくつかの実施形態において、疾病、障害又は状態はライソゾーム蓄積症である。例示的なライソゾーム蓄積症としては、ゴーシェ病(例えば、タイプI、タイプII、タイプIII)、テイザックス病、ファブリー病、ファーバー病、ハーラー症候群(ムコ多糖症I型(MPS I)としても知られる)、ハンター症候群、ライソゾーム酸性リパーゼ欠損症、ニーマン・ピック病、サラ病、サンフィリポ症候群(ムコ多糖症IIIA型(MPS3A)としても知られる)、多発性スルファターゼ欠損症、マロトー・ラミー症候群、異染性白質萎縮症、クラッベ病、シャイエ症候群、ハーラー・シャイエ症候群、スライ症候群、ヒアルロニダーゼ欠損症、ポンペ病、ダノン病、ガングリオシド蓄積症又はモルキオ症候群が挙げられる。
【0258】
いくつかの実施形態において、疾病、障害又は状態は、血液凝固障害又は凝固障害である。例示的な血液凝固障害又は凝固障害としては、血友病(例えば、血友病A又は血友病B)、ヴォン・ヴィレブランド病、血小板減少症、尿毒症、ベルナール・スーリエ症候群、第XII因子欠乏症、ビタミンK欠乏症又は先天性無フィブリノゲン血症が挙げられる。
【0259】
いくつかの実施形態において、疾病、障害又は状態は、例えば、フェニルケトン尿症、チロシン血症(例えば、タイプ1又はタイプ2)、アルカプトン尿症、ホモシスチン尿症、高ホモシステイン血症、カエデ糖症といったアミノ酸代謝障害である。
【0260】
いくつかの実施形態において、疾病、障害又は状態は、例えば、高脂血症、高コレステロール血症、ガラクトース血症といった脂肪酸代謝疾患である。
【0261】
いくつかの実施形態において、疾病、障害、又は状態は、プリン又はピリミジン代謝障害、例えば、レッシュ・ナイハン症候群である。
【0262】
いくつかの実施形態において、疾病、障害、又は状態は、糖尿病(例えば、1型又は2型糖尿病)である。
【0263】
本開示は、本明細書で説明されている疾患、障害、又は状態を有するか又は有する疑いがある対象を同定し、そのような同定時に、細胞結合ペプチドで共有結合的に修飾されたアルギン酸塩を含む内側区画と、式(I)の化合物(例えば本明細書で説明されている)を含む外側区画とを含むデバイス、又は複数のそのようなデバイスを含む組成物を、この対象に投与する方法をさらに含む。ある実施形態において、この対象は、ヒトである。
【0264】
医薬組成物、キット、及び投与
本開示は、本明細書で説明されているデバイスを含む医薬組成物、及びそのキットをさらに含む。
【0265】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、デバイス又は複数のデバイスを含み、このデバイスは、細胞結合物質を含み且つ複数の細胞(例えば生細胞)をカプセル化するポリマー組成物を含む少なくとも1個の細胞含有区画と、異物反応(FBR)を軽減するための手段と、薬学的に許容可能な賦形剤とを含む。この生細胞は、この組成物が対象に投与された(例えば移植された)場合に治療薬を発現する。いくつかの実施形態において、この医薬組成物は、有効量のデバイス(例えば、ヒドロゲルカプセルの量、例えば、100個、200個、400個、800個、2,000個、又はより多くのカプセル)を含む。いくつかの実施形態において、有効量は治療的有効量である。いくつかの実施形態において、有効量は予防的有効量である。
【0266】
本明細書に記載の医薬組成物は、薬理学の技術分野において公知であるいずれかの方法によって調製可能である。一般に、このような調製方法は、「有効成分」のようなデバイス(例えば、ヒドロゲルカプセル、粒子)と、キャリア、及び/又は1種以上の他の補助成分とを付随させるステップ、並びに次いで、必要である及び/又は所望される場合、生成物を所望の単一投与又は多投与量単位に成型及び/又はパッケージングするステップを含む。
【0267】
薬学組成物は、単一の単位投与量及び/又は複数の単一単位投与量として、調製、パッケージ化、及び/又は、原体で販売されることが可能である。本明細書において用いられるところ、「単位投与量」は、所定の量の活性成分(すなわち、ヒドロゲルカプセル、粒子の数)を含む薬学組成物の個別の量である。所定の量は一般に、対象に投与されることとなる活性成分の投与量、及び/又は、このような投与量の簡便な画分(例えばこのような投与量の半分若しくは三分の一など)と等しい。
【0268】
本開示の薬学組成物中の活性成分、薬学的に許容可能な賦形剤、及び/又は、いずれかの追加の成分の相対量は、処置される対象のアイデンティティ、サイズ及び/又は状態に応じて、並びに、さらに、組成物が投与される経路に応じて様々であろう。一例として、組成物は、0.1%~100%(w/w)の活性成分を含み得る。
【0269】
「薬学的に許容可能な賦形剤」という用語は、一緒に配合されるデバイスの薬理学的活性を破壊しない無毒性のキャリア、助剤、希釈剤、又はビヒクルを指す。本開示の医薬組成物の製造に有用な薬学的に許容可能な賦形剤は、医薬製剤の技術分野において周知であるもののいずれかであり、不活性希釈剤、分散剤及び/又は造粒剤、表面活性剤及び/又は乳化剤、崩壊剤、結合剤、防腐剤、緩衝剤、平滑剤、及び/又は油が挙げられる。本開示の医薬組成物の製造に有用な薬学的に許容可能な賦形剤としては、限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩又は電解質、例えば、プロタミン硫酸塩、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコール及び羊毛脂が挙げられる。
【0270】
本明細書に記載のデバイス及び関連する組成物は、経口的、非経口的(皮下、筋肉内、及び皮内を含む)、局所的、直腸的、経鼻的、腫瘍内、髄腔内、眼内、硝子体内、口腔内、腟内に、又は移植されたレザバーを介して、投与され得る。いくつかの実施形態において、提供されるデバイス又は組成物は、皮下に又はインプラントによって投与可能である。
【0271】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のデバイス及び関連する組成物は、粘膜表面又は体腔などの、身体の特定の領域内又は領域上に投与又は移植され得る。投与又は移植の例示的な部位としては、腹膜腔(例えば、小腹膜嚢)、脂肪組織、心臓、眼(例えば、網膜)、筋肉、脾臓、リンパ節、食道、鼻、副鼻腔、歯、歯茎、舌、口、のど、小腸、大腸、甲状腺、骨(例えば、股関節又は関節)、乳房、軟骨、膣、子宮、卵管、卵巣、陰茎、精巣、血管、肝臓、腎臓、中枢神経系(例えば、脳、脊髄、神経)、又は耳(例えば、蝸牛)が挙げられる。
【0272】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のデバイス及び関連する組成物は、中枢神経系、例えば、脳、脊髄、神経以外の部位において投与又は移植される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のデバイス及び関連する組成物は、眼以外の部位において投与又は移植される。
【0273】
本開示の組成物の無菌注射液形態は、水性又は油性懸濁液であり得る。これらの懸濁液は、技術分野において公知である技術に従い、好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を用いて配合され得る。無菌注射調製物はまた、無毒性で許容可能な非経口希釈剤又は溶剤中の無菌注射溶液又は懸濁液(例えば1,3-ブタンジオール中の溶液として)であり得る。ビヒクル及び溶剤のうち、利用され得る許容可能なものは、水、リンゲル溶液及び等張性の塩化ナトリウム溶液である。加えて、無菌の不揮発性油が、溶剤又は懸濁媒として簡便に利用される。
【0274】
眼科用途のためには、提供される薬学的に許容可能な組成物は、微粉化懸濁液として配合され得るか、又はワセリンなどの軟膏剤中に配合され得る。
【0275】
本明細書において提供される薬学組成物の説明は主にヒトへの投与に好適である薬学組成物に関するものであるが、このような組成物は一般に、全ての種類の対象に対する投与に好適であることは当業者によって理解されるであろう。組成物を種々の動物への投与に好適なものとするためのヒトへの投与に好適な薬学組成物の変更は十分に理解されており、通常の知識を有する獣医学薬理学者は、通常の実験によってこのような変更を設計及び/又は実施することが可能である。
【0276】
本明細書に記載のデバイス及び関連する組成物は、投与の容易さ及び投与量の均一性のために、投与量単位形態(例えば、単一単位剤形)で配合され得る。しかしながら、本開示の組成物の合計投与量及び使用レジメンは、担当医師によって適切な医学的良識の範囲内で決定されることとなることが理解されるであろう。任意の特定の対象又は生体に関する具体的な治療的に有効な投与量レベルは、様々な要因に依存し、例えば、処置される疾患、及び障害の重症度;利用される具体的なデバイスの産生性、及びこのデバイスにより産生される治療薬の活性;利用される具体的な成分;対象の年齢、体重、全体的な健康状態、性別、及び食事;投与されたデバイスにより分泌される具体的な治療薬の投与時間、投与経路、及び半減期;処置の持続時間;デバイスにより発現される具体的な治療薬と組み合わせて使用されるか又は同時に使用される薬物;並びに医学的技術分野で公知である同様の要因に依存する。
【0277】
有効量を達成するために必要とされる治療の正確な量は、例えば対象の種、年齢及び全体的な状態、副作用又は疾患の重症度、特定のデバイスのアイデンティティ、投与形態等に応じて、対象毎に様々となる。所望される投与量は、1日に3回、1日に2回、1日に1回、2日に1回、3日に1回、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、送達可能である。いくつかの実施形態において、所望される投与量は、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、若しくは12ヶ月に1回送達されるか、又は1年、2年、3年、若しくはより多くの年数に1回送達される。一定の実施形態において、複数回の投与(例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、12回、13回、14回、又はより多くの投与)を使用して、所望される投与量を送達し得る。いくつかの実施形態において、デバイス又は関連する組成物の各次の投与又は移植を、先行する投与又は移植の除去後に実施する。
【0278】
本明細書で説明されているデバイス及び関連する組成物を、1種又は複数種の追加の薬学的薬剤と組み合わせて投与し得ることが理解されるだろう。そのような薬学的薬剤は、治療薬のバイオアベイラビリティを改善し得、治療薬の代謝を低減し得、及び/若しくは調節し得、移植されたデバイスのFBRを阻害し得、並びに/又は身体内での治療薬の分布を調節し得る。用いられる療法が、同一の障害に対して望ましい効果を達成し得ること、及び/又は異なる効果を達成し得ることも理解されるだろう。
【0279】
キット(例えば、医薬品包装)も本開示によって包含される。本発明に係るキットは、本明細書に記載の疾病、障害又は状態のいずれかを予防及び/又は処置するのに有用であり得る。提供されるキットは、本発明に記載の医薬組成物又は粒子及び容器(例えば、バイアル、アンプル、瓶、シリンジ、及び/又はディスペンサーパッケージ、又は他の好適な容器)を含み得る。いくつかの実施形態において、提供されるキットは、本発明に係る医薬組成物又は本発明に記載の粒子の希釈又は懸濁のための医薬品用賦形剤を含む第2の容器を任意選択によりさらに含み得る。いくつかの実施形態において、容器及び第2の容器中で提供される本発明に係る医薬組成物又は本発明に記載の粒子は、組み合わされて、1つの単位剤形が形成される。
【0280】
デバイスを作製する方法
本開示は、本明細書で説明されているデバイス(例えば、細胞結合物質を含むポリマー組成物中でカプセル化された複数の細胞を含む細胞含有区画、及びとFBRを軽減するための手段)を作製する方法をさらに含む。
【0281】
デバイスが単一区画ヒドロゲルカプセルの調製物を含む実施形態では、このデバイスを下記の通りに作製し得る。簡潔に説明すると、抗線維性ポリマー(例えば、式(I)の化合物で修飾されたアルギン酸塩)を含むヒドロゲル形成ポリマー溶液のある量を、シリンジ(例えば、後に平滑先端針でキャップされるシリンジ)に充填し得る。次いで、このシリンジを、架橋剤、緩衝液、浸透圧調整剤を含む水性架橋溶液が入った容器の上で垂直に配向されたシリンジポンプに入れ得る。次いで、針に高電圧発電機を接続し得る。次いで、これらシリンジポンプ及び発電機を使用して、架橋溶液中へのポリマー溶液の所望の液滴速度を達成するように決定された設定で、シリンジを通してポリマー溶液を押し出す。この量のポリウマ-溶液を排出した後、数分にわたり(例えば約5分にわたり)架橋溶液中で液滴を架橋させる。ある実施形態において、架橋溶液の表面上の非カプセル破片の数を決定する。次いで、例えば、ヒドロゲルカプセルを含む架橋溶液を別の容器に移し、元の可溶容器中の溶液表面上のあらゆる非カプセル破片を残すことにより、架橋容器の底に落下しているヒドロゲルカプセルを回収し得る。次いで、取り出されたヒドロゲルカプセルを沈降させ得、架橋溶液を除去し得、次いで、カプセルを、緩衝液(例えばHEPES緩衝液)で1回又は複数回洗浄し得る。ある実施形態において、得られたヒドロゲルカプセル組成物の1つ又は複数のアリコートを顕微鏡で調べて、この組成物の品質(例えば、カプセル欠陥及びサテライトカプセルの数)を評価する。
【0282】
デバイスが2個のヒドロゲル区画を有するヒドロゲルカプセルを含むか、又は2区画ヒドロゲルカプセルの調製物を含むいくつかの実施形態では、デバイスを作製する方法は、第1及び第2のポリマー溶液(例えば、ヒドロゲル形成ポリマーを含む各溶液)を含む複数の液滴と、水性架橋溶液とを接触させることを含む。この液滴を、当該技術分野で既知の任意の技術を使用して形成し得る。
【0283】
簡潔に説明すると、2区画ヒドロゲルカプセルの組成物を作製する方法の実施において、第1のポリマー溶液(例えば、細胞結合ペプチドで修飾されたポリマー中に懸濁された複数の細胞(例えば生細胞)を含み、任意選択で非修飾ポリマーとブレンドされている)のある量を、同心針の内腔に接続された第1のシリンジに充填する。次に、第1のシリンジは、架橋剤、緩衝液、及び浸透圧調整剤を含む水性架橋溶液を含む容器の上に垂直に配向されたシリンジポンプに連結され得る。ある体積の第2のポリマー溶液(例えば、非修飾ポリマー、式(I)の化合物で修飾されたポリマー、又はそのブレンドを含む)が、同心針の外腔に連結される第2のシリンジに充填される。次に、第2のシリンジは、架橋溶液を含む容器に対して水平に配向されたシリンジポンプに連結され得る。次に、高電圧発電機が、針に連結され得る。次に、シリンジポンプ及び発電機を用いて、ポリマー溶液の所望の滴下速度を達成するように決定された設定で、シリンジを通して第1及び第2のポリマー溶液を架橋溶液中に押し出すことができる。第1及び第2の体積のポリマー溶液を使い果たした後、液滴は、一定の時間、例えば、約5分間にわたって、架橋溶液中で架橋させられ得る。実施形態において、架橋溶液の表面上の非カプセル破片の数が決定される。次に、例えば、元の架橋容器の溶液表面上に非カプセル破片を残して、カプセルを含む架橋溶液を別の容器に移すことによって、架橋容器の底に落下したカプセルが収集され得る。次に、取り出されたカプセルが、沈降され得、架橋溶液が除去され得、次に、カプセルは、緩衝液(例えば、HEPES緩衝液)で1回以上洗浄され得る。実施形態において、得られたデバイス組成物の1つ又は複数のアリコートが、組成物の品質、例えば、カプセル欠陥及びカプセルの数を評価するために、顕微鏡検査によって調べられる。
【0284】
いくつかの実施形態において、単一区画カプセル又は2区画カプセルを作製するためのプロセスで使用される架橋溶液は、プロセス添加剤(例えば、親水性の非イオン性界面活性剤)をさらに含む。このプロセス添加剤は、架橋溶液の表面張力を低減し得る。本開示のプロセス添加剤として有用な薬剤として、ポリソルベート系界面活性剤、ポリエチレンオキシド(PEO)及びポリプロピレンオキシド(PPO)のコポリマー、ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(プロピレンオキシド)-ポリ(エチレンオキシド)(PEO-PPO-PEO)トリブロックコポリマー、及び非イオン性界面活性剤、例えば、Tween(登録商標)20、Tween(登録商標)80、Triton(商標)X-100、IGEPAL(登録商標)CA-630、ポロキサマー188、又はポロキサマー407が挙げられる。いくつかの実施形態において、プロセス添加剤は、非イオン性界面活性剤である。実施形態において、プロセス添加剤は、2つ以上の界面活性剤、例えば、2つ以上の親水性界面活性剤を含む。いくつかの実施形態において、プロセス添加剤は、Tween(登録商標)20又はTriton(商標)X-100を含まない。実施形態において、プロセス添加剤は、IGEPAL(登録商標)CA-630である。いくつかの実施形態において、プロセス添加剤は、ポロキサマー188である。
【0285】
いくつかの実施形態において、プロセス添加剤(例えば、界面活性剤)は、少なくとも0.0001%以上の濃度で架橋溶液中に存在する。いくつかの実施形態において、架橋溶液は、少なくとも0.001%、0.01%、又は0.1%のプロセス添加剤を含む。いくつかの実施形態において、プロセス添加剤は、約0.001%~約0.1%、約0.005%~約0.05%、約0.005%~約0.01%、及び約0.01%~約0.5%から選択される濃度で存在する。実施形態において、プロセス添加剤は、界面活性剤であり、この界面活性剤の臨界ミセル濃度未満の濃度で存在する。
【0286】
いくつかの実施形態において、架橋剤は、単一のタイプ又は異なるタイプの混合の二価カチオン、例えば、Ba2+、Ca2+、Sr2+の1つ又は複数を含む。いくつかの実施形態において、架橋剤は、例えば、1mM~100mM、2.5mM~75mM、5mM~50mM、7.5mM~25mM、又は約20mMの濃度のBaCl2である。いくつかの実施形態において、架橋剤は、例えば、50mM~150mM、又は約100mMの濃度のCaCl2である。いくつかの実施形態において、架橋剤は、例えば、37.5mM~100mMの濃度のSrCl2である。いくつかの実施形態において、架橋剤は、BaCl2(例えば、5mM~20mM)及びCaCl2(例えば、37.5mM~12.5mM)の混合物、又はBaCl2(例えば、5mM~20mM)及びSrCl2(例えば、37.5mM~12.5mM)の混合物である。
【0287】
水性架橋溶液中の緩衝液の種類及び濃度は、カプセル化される細胞と適合するように且つ溶液pHをほぼ中性(例えば、約6.5~約7.5、約7.0~約7.5、又は約7.0)で維持するように選択される。いくつかの実施形態において、水性架橋溶液中の緩衝液は、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)を含む。
【0288】
水性架橋溶液中の浸透圧調整剤は、細胞(例えば、生細胞)の懸濁液を含む第1のポリマー溶液の浸透圧、例えば、最大で20%、10%又は5%の上変動又は下変動を有する浸透圧と同様の値に溶液浸透圧を維持するように選択される。いくつかの実施形態において、浸透圧剤は、0.1M~0.3Mの濃度のマンニトールである。
【0289】
ある実施形態において、プロセス添加剤は、ポロキサマー188である。ある実施形態において、ポロキサマー188は、洗浄工程後に検出可能な量でカプセル組成物中に存在する。ポロキサマー188を、当該技術分野で既知の任意に技術により検出し得、例えば、カプセルのアリコートを取り出し、硫酸ナトリウム溶液を添加してアリコート中のカプセルを部分的に又は完全に溶解させ、得られた溶液をLC/MSで分析することにより検出し得る。
【0290】
架橋溶液の表面張力の低下は、当該技術分野において公知の任意の方法によって、例えば、接触角ゴニオメータ又は張力計の使用、例えば、デュノイリング法によって評価され得る(例えば、Davarci et al(2017)Food Hydrocolloids 62:119-127を参照)。
【0291】
列挙される例示的な実施形態
1.デバイスであって、
(a)ポリマー組成物を含む少なくとも1個の細胞含有区画であって、前記ポリマー組成物は、第1の細胞結合物質(CBS)を含み、且つ前記デバイスが対象に移植された場合に治療薬を発現し得る複数の細胞をカプセル化し得る、細胞含有区画と、
(b)前記デバイスが前記対象に移植された場合に異物反応(FBR)を軽減するための手段と
を含むデバイス。
【0292】
2.デバイスであって、
(a)ポリマー組成物、例えばポリマーマトリックス、例えばヒドロゲルマトリックスであり、
(i)第1の細胞結合物質(CBS)と、
(ii)治療薬を提供し得る、例えば、産生し得るか、発現し得るか、又は放出し得る複数の細胞
を含むポリマー組成物を含み、
下記の特性:
(b)球状の形状と、少なくとも1.0mm、1.3mm、1.5mm、2.0mm、2.5mm、若しくは3.0mmの線形寸法、例えば直径との組み合わせを含むか;
(c)前記ポリマー組成物は、区画内に配置されており、例えば、前記ポリマー組成物を取り囲む生体適合性ポリマーを含む区画内に若しくはマトリックス内に配置されているか;
(d)いくつかの実施形態において前記デバイスの外面上に配置された実体、例えば、FBRを軽減する化合物、例えば、本明細書で定義されている抗線維性化合物を含むか;
又は
(e)前記デバイスは、抗線維性化合物、例えば、本明細書で説明されている抗線維性化合物、例えば、前記デバイスの外側に配置された抗線維性化合物を含む
の内の1つを含むデバイス。
【0293】
3.特性(b)を含む実施形態2に記載のデバイス。
【0294】
4.特性(c)を含む実施形態2又は3に記載のデバイス。
【0295】
5.特性(d)を含む実施形態2~4のいずれか一つに記載のデバイス。
【0296】
6.特性(e)を含む実施形態2~5のいずれか一つに記載のデバイス。
【0297】
7.特性(b)~(e)の内の2つを含む実施形態2に記載のデバイス。
【0298】
8.特性(b)~(e)の内の3つを含む実施形態2に記載のデバイス。
【0299】
9.特性(b)~(e)の全てを含む実施形態2に記載のデバイス。
【0300】
10.前記デバイスの別の成分、例えばポリマーに共有結合している、FBRを軽減する化合物を含む実施形態2~9のいずれか一つに記載のデバイス。
【0301】
11.前記デバイスの別の成分、例えばポリマーに共有結合している抗線維性化合物、例えば本明細書で説明されている抗線維性化合物を含む実施形態2~9のいずれか一つに記載のデバイス。
【0302】
12.前記第1のCBSは、細胞結合ペプチド(CBP)又は細胞結合ポリペプチド(CBPP)を含む、実施形態1~11のいずれか一つに記載のデバイス。
【0303】
13.前記ポリマー組成物は、前記第1のCBSとは異なる第2のCBSを含む、実施形態1~12のいずれか一つに記載のデバイス。
【0304】
14.前記第1のCBS及び第2のCBSの内の一方又は両方は、細胞結合ペプチド(CBP)又は細胞結合ポリペプチド(CBPP)を含む、実施形態13に記載のデバイス。
【0305】
15.前記第1のCBSは、第1のリンカーを介して第1のポリマーに共有結合的に付着した第1のCBP(「第1のCBP-ポリマー」)を含む、実施形態1~14のいずれか一つに記載のデバイス。
【0306】
16.前記第2のCBSは、第2のリンカー介して第2のポリマーに共有結合的に付着した第2のCBP(「第2のCBP-ポリマー」)を含み、第2のCBP、第2のリンカー、及び第2のポリマーの内の少なくとも1つの化学組成は、前記第1のCBP-ポリマー中の対応する構成成分と異なる、実施形態12~15のいずれか一つに記載のデバイス。
【0307】
17.前記ポリマー組成物は、第3のCBSをさらに含む、実施形態12~16のいずれか一つに記載のデバイス。
【0308】
18.前記第3のCBSは、第3のリンカーを介して第3のポリマーに共有結合的に付着した第3のCBP(「第3のCBP-ポリマー」)を含み、第3のCBP、第3のリンカー、及び第3のポリマーの内の少なくとも1つの化学組成は、前記第1及び第2のCBP-ポリマー中の対応する構成成分と異なる、実施形態17に記載のデバイス。
【0309】
19.前記第1のCBSは、DGEA(配列番号39)、FYFDLR(配列番号40)、HAVDI(配列番号38)、PHSRN(配列番号46)、REDV(配列番号47)、RGD(配列番号43)、RGDSP(配列番号59)、及びYIGSR(配列番号50)、又は前記配列の内のいずれかの保存的置換変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む第1のCBP-ポリマーである、実施形態1~18のいずれか一つに記載のデバイス。
【0310】
20.前記第1のCBPは、10個未満のアミノ酸の長さの直鎖状又は環状のペプチドである、実施形態12~19のいずれか一つに記載のデバイス。
【0311】
21.前記第2のCBPは、10個未満のアミノ酸の長さの直鎖状又は環状のペプチドである、実施形態14~20のいずれか一つに記載のデバイス。
【0312】
22.前記ポリマー組成物は、第1のCBP-ポリマー、第2のCBP-ポリマー、及びに任意選択的な第3のCBP-ポリマーを含み、前記第1のCBP-ポリマーは、RGDポリマーであり、前記第2のCBP-ポリマー及び第3のCBP-ポリマー(存在する場合)の少なくとも一方は、DGEA(配列番号39)、FYFDLR(配列番号40)、HAVDI(配列番号38)、PHSRN(配列番号46)、PHSRNGGGGGGRGDS(配列番号55)、REDV(配列番号47)、GFOGER(配列番号41)、P(GPP)5GFOGER(GPP)5(配列番号54)、及びYIGSR(配列番号50)、又は前記配列の内のいずれかの保存的置換変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態12~21のいずれか一つに記載のデバイス。
【0313】
23.前記第1のCBSは、RGD(配列番号43)又はRGDSP(配列番号59)を含む10個未満のアミノ酸の長さの直鎖CBPである、実施形態1~22のいずれか一つに記載のデバイス。
【0314】
24.前記第1のCBSは、RGD(配列番号43)又はRGDSP(配列番号59)から本質的になる直鎖CBPである、実施形態1~22のいずれか一つに記載のデバイス。
【0315】
25.前記ポリマー組成物は、第2のCBP-ポリマーを含む第2のCBSを含み、前記第1のCBP-ポリマー中の前記CBPは、前記第2のCBP-ポリマー中の前記CBPと異なり、前記第1のCBP-ポリマー中の前記ポリマーは、前記第2のCBP-ポリマー中の前記ポリマーと同一であるか又は異なる、実施形態1~24のいずれか一つに記載のデバイス。
【0316】
26.前記ポリマー組成物は、第1のCBP-ポリマー、任意選択的な第2のCBP-ポリマー、及び任意選択的な第3のCBP-ポリマーを含み、前記ポリマー組成物中における各CBP-ポリマー中の前記リンカーは、
(a)グリシン及び/又はベータ-アラニンの1~10個、1~6個、又は1~4個の残基から本質的になる直鎖アミン酸リンカー;
(b)1個、2個、又は3個のグリシン残基から本質的になる直鎖アミノ酸リンカー;
(c)エチレンオキシド、又は2~4個のエチレンオキシドモノマーのオリゴマー;
並びに
(d)アミノカルボキシレート
からなる群から選択される、実施形態1~25のいずれか一つに記載のデバイス。
【0317】
27.前記第1のCBPは、RGD(配列番号43)又はRGDSP(配列番号59)から本質的になり、前記リンカーは、単一のグリシン残基から本質的になる、実施形態26に記載のデバイス。
【0318】
28.前記ポリマー組成物は、第1のCBP-ポリマー、及び任意選択的な第2のCBP-ポリマー、及び任意選択的な第3のCBP-ポリマーを含み、前記ポリマー組成物中における各CBP-ポリマー中の前記ポリマーは、アルギン酸塩、キトサン、ヒアルロン酸塩、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリルアミド、ゼラチン、ポリ(L-乳酸)(PLLA)、ポリ(乳酸グリコール酸)(PLGA)、カルボキシメチルセルロース、又はカルボキシメチルキトサンである、実施形態1~27のいずれか一つに記載のデバイス。
【0319】
29.前記第1のCBP-ポリマー中の前記ポリマーは、アルギン酸塩である、実施形態28に記載のデバイス。
【0320】
30.前記アルギン酸塩は、前記第2のCBP-ポリマー及び前記第3のCBP-ポリマーの内の一方中の又は両方中の前記ポリマーである、実施形態28又は29に記載のデバイス。
【0321】
31.前記アルギン酸塩は、分子量が75~150kDaであり、且つG:M比が1.5以上である、実施形態28~30のいずれか一つに記載のデバイス。
【0322】
32.前記細胞含有区画は、前記第1のポリマーと同一であるか又は異なる非修飾ポリマーをさらに含む、実施形態1又は12~31のいずれか一つに記載のデバイス。
【0323】
33.前記細胞含有区画中の前記非修飾ポリマーは、アルギン酸塩、キトサン、ヒアルロン酸塩、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリルアミド、ゼラチン、ポリ(L-乳酸)(PLLA)、ポリ(乳酸グリコール酸)(PLGA)、カルボキシメチルセルロース、又はカルボキシメチルキトサンである、実施形態32に記載のデバイス。
【0324】
34.前記FBRを軽減するための手段は、前記細胞含有区画を取り囲むバリア区画を含む、実施形態1~33のいずれか一つに記載のデバイス。
【0325】
35.前記FBRを軽減するための手段は、前記デバイスの外面上に配置されている第1の抗線維性化合物を含む、実施形態1~34のいずれか一つに記載のデバイス。
【0326】
36.前記FBRを軽減するための手段は、前記細胞含有区画を取り囲むバリア区画を含み、前記バリア区画は、ポリマー(抗線維性ポリマー)に共有結合的に付着した抗線維性化合物を含み、前記抗線維性ポリマー中の前記ポリマーは、前記細胞含有区画中に存在する各ポリマーと同一であるか又は異なる、実施形態1~35のいずれか一つに記載のデバイス。
【0327】
37.前記FBRを軽減するための手段は、前記細胞含有区画を取り囲むバリア区画をさらに含み、前記バリア区画は、ポリマー(抗線維性ポリマー)に共有結合的に付着した第2の抗線維性化合物を含み、前記抗線維性ポリマー中の前記ポリマーは、前記細胞含有区画中に存在する各ポリマーと同一であるか又は異なり、前記第2の抗線維性化合物は、前記第1の抗線維性化合物と同一であるか又は異なる、実施形態35に記載のデバイス。
【0328】
38.前記バリア区画は、前記バリア区画中における前記抗線維性ポリマー中の前記ポリマー及び前記細胞含有区画中に存在する各ポリマーと同一であるか又は異なる非修飾ポリマーをさらに含む、実施形態36又は37に記載のデバイス。
【0329】
39.前記バリア区画は、前記非修飾ポリマーと前記抗線維性ポリマーとの混合物を使用して形成されており、任意選択的に、前記抗線維性ポリマー中の前記抗線維性化合物のコンジュゲーション密度は、窒素パーセントに関する燃焼分析(例えば、本明細書の下記の実施例1Aで説明されている)により決定され、決定された窒素パーセントは、少なくとも2.0%及び9.0%未満であるか、又は3.0%~8.0%、4.0%~7.0%、5.0%~7.0%、若しくは6.0%~7.0%であるか、又は約6.8%である、実施形態38に記載のデバイス。
【0330】
40.前記第1及び第2の抗線維性化合物の内の一方又は両方は、式(I-a):
【化48】

の化合物又はその薬学的に許容可能な塩であり、式中、
Aは、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、-O-、-C(O)O-、-C(O)-、-OC(O)-、-N(RC)-、-N(RC)C(O)-、-C(O)N(RC)-、-N(RC)N(RD)-、-N(RC)C(O)(C1~C6-アルキレン)-、-N(RC)C(O)(C1~C6-アルケニレン)-、-NCN-、-C(=N(RC)(RD))O-、-S-、-S(O)x-、-OS(O)x-、-N(RC)S(O)x-、-S(O)xN(RC)-、-P(RF)y-、-Si(ORA)2-、-Si(RG)(ORA)-、-B(ORA)-、又は金属であり、これらの各々は、付着基(例えば、本明細書に記載されている付着基)に任意選択的に連結されており、且つ1つ又は複数のR1で任意選択的に置換されており;
L1及びL3の各々は、独立して、結合、アルキル、又はヘテロアルキルであり、各アルキル及びヘテロアルキルは、1つ又は複数のR2で任意選択的に置換されており;
L2は、結合であり;
Mは、不在であるか、各々が1つ又は複数のR3で任意選択的に置換されているアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールであり;
Pは、1つ又は複数のR4で任意選択的に置換されているヘテロアリールであり;
Zは、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールであり、これらの各々は、1つ又は複数のR5で任意選択的に置換されており;
各RA、RB、RC、RD、RE、RF、及びRGは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ハロゲン、アジド、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールであり、各アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールは、1つ又は複数のR6で任意選択により置換されているか;
又は
RC及びRDは、これらが付着している窒素原子と一緒に、1つ又は複数のR6で任意選択的に置換されている環(例えば5~7員環)を形成し;
各R1、R2、R3、R4、R5、及びR6は、独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ハロゲン、シアノ、アジド、オキソ、-ORA1、-C(O)ORA1、-C(O)RB1、-OC(O)RB1、-N(RC1)(RD1)、-N(RC1)C(O)RB1、-C(O)N(RC1)、SRE1、S(O)xRE1、-OS(O)xRE1、-N(RC1)S(O)xRE1、-S(O)xN(RC1)(RD1)、-P(RF1)y、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリールであり、各アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールは、1つ又は複数のR7で任意選択的に置換されており;
各RA1、RB1、RC1、RD1、RE1、及びRF1は、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールであり、各アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリールは、1つ又は複数のR7で任意選択的に置換されており;
各R7は、独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ハロゲン、シアノ、オキソ、ヒドロキシル、シクロアルキル、又はヘテロシクリルであり;
xは、1又は2であり;
yは、2、3、又は4である、
実施形態36~39のいずれか一つに記載のデバイス。
【0331】
41.式(I)の化合物は、式(I-b)、(I-c)、(I-d)、(I-e)、(I-f)、(II)、(II-a)、(III)、(III-a)、(III-b)、(III-c)、又は(III-d)の内のいずれか一つの化合物、又はその薬学的に許容可能な塩である、実施形態1~39のいずれか一つに記載のデバイス。
【0332】
42.前記第1の抗線維性化合物は、表4で示されている化合物100、化合物101、化合物110、化合物112、化合物113、又は化合物114であり、任意選択的に、前記抗線維性ポリマー中の前記第1の抗線維性化合物のコンジュゲーション密度は、
(a)例えば本明細書の下記の実施例1Aで説明されている、窒素パーセントに関する燃焼分析により決定され、決定された窒素パーセントは、少なくとも2.0%及び9.0%未満であるか、又は3.0%~8.0%、4.0%~7.0%、5.0%~7.0%、若しくは6.0%~7.0%であるか、又は約6.8%であるか、
又は
(b)例えば本明細書の下記の実施例26で説明されている、定量的遊離アミン分析により決定され、決定されたコンジュゲーション密度は、1.0w/w%~3.0w/w%、1.3w/w%~2.8w/w%、1.3w/w%~2.6w/w%、1.5w/w%~2.4w/w%、1.5w/w%~2.2w/w%、若しくは1.7w/w%~2.2w/w%である、
実施形態35~41のいずれか一つに記載のデバイス。
【0333】
43.前記第2の抗線維性化合物は、表4で示されている化合物100、化合物101、化合物110、化合物112、化合物113、又は化合物114である、実施形態37~42のいずれか一つに記載のデバイス。
【0334】
44.前記第1の抗線維性化合物は、表4で示されている化合物100である、実施形態35~43のいずれか一つに記載のデバイス。
【0335】
45.前記第1の抗線維性化合物は、表4で示されている化合物100ではない、実施形態35~43のいずれか一つに記載のデバイス。
【0336】
46.前記第1及び第2の抗線維性化合物の各々は、表4で示されている化合物101である、実施形態37~43のいずれか一つに記載のデバイス。
【0337】
47.前記バリア区画中に存在する各ポリマーは、アルギン酸塩、キトサン、ヒアルロン酸塩、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリルアミド、ゼラチン、ポリ(L-乳酸)(PLLA)、又はポリ(乳酸グリコール酸)(PLGA)、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルキトサンである、実施形態37~46のいずれか一つに記載のデバイス。
【0338】
48.前記バリア区画中における各抗線維性ポリマー中の前記ポリマーは、分子量が<75kDaであり且つG:M比が1.5以上であるアルギン酸塩である、実施形態36~47のいずれか一つに記載のデバイス。
【0339】
49.前記バリア区画中の前記非修飾ポリマーは、分子量が150kDa~250kDaであり且つG:M比が1.5以上であるアルギン酸塩である、実施形態38~48のいずれか一つに記載のデバイス。
【0340】
50.前記細胞含有区画は、CBP-ポリマーから形成されており、前記CBP-ポリマーは、分子量が75kDa~150kDaであり且つG:M比が1.5以上であるアルギン酸塩に共有結合的にコンジュゲートしたG1~3RGD(配列番号63)又はG1~3RGDSP(配列番号64)から本質的になり、且つCBP-コンジュゲーション密度が、
(a)例えば本明細書で説明されているアッセイにより決定した場合に、前記細胞の生存率を増加させるのに十分な量(任意選択的に、前記量は、最適な量である);
(b)例えば本明細書で説明されているアッセイにより決定した場合に、前記細胞の産生性を増加させるのに十分な量(任意選択的に、前記量は、最適な量である);
(c)例えば本明細書の下記の実施例1Bで説明されている、一定重量に凍結乾燥されている前記CBP-ポリマーの燃焼分析により決定した場合に、0.10%の窒素(N)~1.00%のN、約0.20%のN~約0.80%のN、約0.30%のN~約0.60%のN、約0.30%~約0.50%、若しくは0.33%のN~0.46%のN;
(d)溶液中の前記CBP-ポリマー1グラム当たりG1~3RGD(配列番号63)若しくはG1~3RGDSP(配列番号64)0.1~1.0、0.2~0.8、0.3~0.7、若しくは0.3~0.6マイクロモル;
又は
(e)(a)、(b)、(c)、及び(d)の内の2つ以上の任意の組み合わせ
の内の少なくとも1つである、実施形態1又は11~49のいずれか一つに記載のデバイス。
【0341】
51.前記細胞含有区画及びバリア区画は、2区画ヒドロゲルカプセルを形成する、実施形態34~49のいずれか一つに記載のデバイス。
【0342】
52.前記細胞含有区画及びバリア区画は、体積がほぼ等しい、実施形態50又は51に記載のデバイス。
【0343】
53.前記バリア区画の厚さは、
(a)1ナノメートル及び1ミリメートル;
(b)100ナノメートル及び1ミリメートル;
並びに
(c)500ナノメートル及び500マイクロメートル
からなる群から選択される範囲内である、実施形態34~51のいずれか一つに記載のデバイス。
【0344】
54.前記デバイスは、最大線形寸法(LLD)(例えば直径)が500ナノメートル~5ミリメートルである、実施形態1~53のいずれか一つに記載のデバイス。
【0345】
55.前記デバイスは、球状の形状を有し、且つ最大線形寸法(LLD)(例えば直径)が0.5ミリメトール~5ミリメートルであり、例えば、0.75ミリメートル~4ミリメートル、1ミリメートル~3ミリメートル、1ミリメートル~2ミリメートル、約1.5ミリメートル~2ミリメートル、又は約1.5ミリメートルである、実施形態1~54のいずれか一つに記載のデバイス。
【0346】
56.下記:
a)前記細胞含有区画中の前記複数の細胞(例えば生細胞)は、少なくとも100個;250個;500個;750個;1,000個;2,500個;5,000個;10,000個;25,000個;又は50,000個の細胞である;
b)前記バリア区画は、前記CBS及び前記細胞を実質的に含まない;
並びに
c)前記細胞含有区画は、あらゆる抗線維性化合物を実質的に含まない
から選択される1つ又は複数の特性を含む実施形態35~55のいずれか一つに記載のデバイス。
【0347】
57.
(a)前記細胞含有区画及び前記バリア区画は、2区画ヒドロゲルカプセルを形成し;
(b)前記細胞含有区画中の前記第1のCBPポリマーは、前記第1のポリマーとしての、分子量が150~250kDaであり且つG:M比が1.5以上であるアルギン酸塩と、前記リンカーとしての単一のグリシン残基と、前記第1のCBPとしての、RGDSP(配列番号59)からなる直鎖ペプチドとから本質的になり;
(c)前記バリア区画中における前記抗線維性ポリマー中の前記ポリマーは、分子量が75kDa未満であり且つG:M比が1.5以上であるアルギン酸塩であり、前記抗線維性化合物は、表4で示されている化合物101であり;
並びに
(d)前記バリア区画は、分子量が150kDa~250kDaであり且つG:M比が1.5以上である非修飾アルギン酸塩をさらに含む、
実施形態35~56のいずれか一つに記載のデバイス。
【0348】
58.前記バリア区画は、70:30の比の(i)0.9%生理食塩水に5重量/体積%で溶解した前記抗線維性アルギン酸塩及び(ii)0.9%生理食塩水に3重量/体積%で溶解した前記非修飾アルギン酸塩から本質的になるアルギン酸塩溶液から形成されている、実施形態56に記載のデバイス。
【0349】
59.前記複数の細胞は、前記治療薬を発現するように、細胞株から組み換えられており、前記細胞株は、内皮細胞株、上皮細胞株、線維芽細胞株、ケラチン生成細胞株、又は間葉細胞株である、実施形態1~58のいずれか一つに記載のデバイス。
【0350】
60.前記細胞株は、表5で列挙されている細胞株から選択される、実施形態46に記載のデバイス。
【0351】
61.前記複数の細胞は、組み換えRPE細胞である、実施形態1~58のいずれか一つに記載のデバイス。
【0352】
62.前記複数の細胞は、組み換えARPE-19細胞である、実施形態1~58のいずれか一つに記載のデバイス。
【0353】
63.前記治療薬は、第VIII因子タンパク質若しくはその変異体、又は第IX因子タンパク質若しくはその変異体である、実施形態1~62のいずれか一つに記載のデバイス。
【0354】
64.前記デバイスは、2個以上の細胞含有区画を含む、実施形態1~63のいずれか一つに記載のデバイス。
【0355】
65.移植後第1の時点(例えば、少なくとも7日、2週間、4週間、8週間、又は16週間)で前記細胞により発現された前記治療薬の量は、同一の治療薬を発現し得るCBCなしの参照デバイスによりその時点で発現された場合と比べて少なくとも1.25倍、1.5倍、2倍(4倍、6倍、8倍、又は10倍)多い、実施形態1~64のいずれか一つに記載のデバイス。
【0356】
66.ヒドロゲルカプセルであって、
(a)第1のRGD-ポリマーを含む第1のポリマー組成物中でカプセル化された複数の細胞(例えば生細胞)を含む細胞含有区画であって、前記カプセル化細胞は、外因性のポリペプチドを発現し、任意選択的に、前記複数の細胞の濃度は、前記第1のポリマー組成物1ml当たり4千万個の細胞である、細胞含有区画と、
(b)前記細胞結合区画を取り囲み且つ第2のポリマー組成物を含むバリア区画であって、前記第2のポリマー組成物は、非修飾アルギン酸塩と、表4で示されている化合物100、化合物101、化合物110、化合物112、化合物113、及び化合物114からなる群から選択される少なくとも1種の化合物で共有結合的に修飾されたアルギン酸塩との混合物を含む、バリア区画と
を含み、
前記ヒドロゲルカプセルは、球状の形状であり、且つ直径が0.5ミリメートル~5ミリメートルであり、任意選択的に、前記バリア区画の平均厚は、約10~約300ミクロン、約20~約150ミクロン、又は約40~約75ミクロンである、
ヒドロゲルカプセル。
【0357】
67.前記外因性のポリペプチドの発現の増加に有効な量の前記第1のRGD-ポリマーを含み、前記第1のRGD-ポリマーは、リンカーを介してRGDペプチドで共有結合的に修飾されたアルギン酸塩から本質的になり、前記細胞含有区画は、あらゆる抗線維性化合物を実質的に含まず、前記バリア区画は、細胞及びRGDペプチドを実質的に含まず、任意選択的に、前記RGD-ポリマーの有効量は、最適な量である、実施形態66に記載のヒドロゲルカプセル。
【0358】
68.前記RGDペプチドは、RGD(配列番号43)又はRGDSP(配列番号59)のアミノ酸配列から本質的になり、前記リンカーは、前記RGDペプチドのN末端に付着している単一のグリシン残基又は単一のベータ-アラニン残基である、実施形態66又は67に記載のヒドロゲルカプセル。
【0359】
69.
(a)前記第1のRGD-ポリマー中の前記ポリマーは、アルギン酸塩であり、分子量が150~250kDaであり且つG:M比が1.5以上であり、任意選択的に、前記細胞含有区画は、約90cPと、約230cP~約300、350、若しくは400cPとの間、又は約80~約120cPの粘度のアルギン酸塩溶液から形成されており;
(b)前記バリア区画中における前記共有結合的に修飾されたアルギン酸塩中の前記アルギン酸塩は、分子量が<75kDaであり、且つG:M比が1.5以上であり;
(c)前記バリア区画中の前記非修飾アルギン酸塩は、分子量が150kDa~250kDaであり、且つG:M比が1.5以上であり、
(d)任意選択的に、前記バリア区画は、前記共有結合的に修飾されたアルギン酸塩と非修飾アルギン酸塩との混合物を含み且つ粘度が250~350cPであるアルギン酸塩溶液から形成されている、
実施形態67又は68に記載のヒドロゲルカプセル。
【0360】
70.
(a)前記カプセルは、直径が約1.0ミリメートル~2.0ミリメートルであり;
(b)前記アルギン酸塩上の前記RGDペプチドのコンジュゲーション密度は、一定量に凍結乾燥されている前記RGD-ポリマーの燃焼分析(例えば、本明細書の実施例1Bで説明されている)により決定された窒素パーセントであり、決定された窒素パーセントは、約0.10%の窒素(N)~1.00%のN、約0.20%のN~約0.80%のN、約0.30%のN~約0.60%のN、約0.30%~約0.50%、又は0.33%のN~0.46%のNであり;
(c)前記バリア区画中の前記共有結合的に修飾されたアルギン酸塩は、化合物101のみで修飾されており、前記共有結合的に修飾されたアルギン酸塩中の化合物101の密度は、例えば本明細書の実施例1Aで説明されている、一定量に凍結乾燥されている前記共有結合的に修飾されたアルギン酸塩の燃焼分析により決定された窒素パーセントであり、決定された窒素パーセントは、少なくとも2.0%及び9.0%未満であるか、又は3.0%~8.0%、4.0%~7.0%、5.0%~7.0%、若しくは6.0%~7.0%であるか、又は約6.8%である、
実施形態69に記載のヒドロキシカプセル。
【0361】
71.
(a)前記複数の細胞は、組み換えRPE細胞であり、例えば、組み換えARPE-19細胞であり:
(b)前記カプセルは、直径が約1.5ミリメトールであり;
(c)前記RGDペプチドは、RGDSP(配列番号59)のアミノ酸配列から本質的になり、前記リンカーは、単一のグリシン残基であり;
(d)前記アルギン酸塩上の前記RGDペプチドのコンジュゲーション密度は、
(i)例えば本明細書で説明されているアッセイにより決定した場合に、前記細胞の生存率を増加させるのに十分な量;
(ii)例えば本明細書で説明されているアッセイにより決定した場合に、前記細胞の産生性を増加させるのに十分な量;
(iii)一定重量に凍結乾燥されている前記RGD-ポリマーの燃焼分析(例えば本明細書の実施例1Bで説明されている)により決定され、約0.10%の窒素(N)~1.00%のN、約0.20%のN~約0.80%のN、約0.30%のN~約0.60%のN、約0.30%~約0.50%、又は0.33%のN~0.46%のNである決定した窒素パーセント;
(iv)例えば本明細書の実施例25で説明されているように、溶液中のRGD-ポリマー1グラム当たりGRGDSP0.1~1.0、0.2~0.8、0.3~0.7、又は0.3~0.6マイクロモル;
並びに
(v)d(i)、d(ii)、d(iii)、及びd(iv)の内の2つ以上の任意の組み合わせ
からなる群から選択され、
(e)前記バリア区画中の前記共有結合的に修飾されたアルギン酸塩は、化合物101のみで修飾されており、前記共有結合的に修飾されたアルギン酸塩中の化合物101の密度は、
(i)例えば本明細書の実施例1Aで説明されている、一定量に凍結乾燥されている前記共有結合的に修飾されたアルギン酸塩の燃焼分析により決定された窒素パーセントであり、決定された窒素パーセントは、少なくとも2.0%及び9.0%未満であるか、又は3.0%~8.0%、4.0%~7.0%、5.0%~7.0%、若しくは6.0%~7.0%であるか、又は約6.8%であるか;
又は
(ii)例えば本明細書の実施例27で説明されている、定量的遊離アミン分析により決定された重量/重量ベースの%アミンであり、決定された密度は、1.0w/w%~3.0w/w%、1.3w/w%~2.8w/w%、1.3w/w%~2.6w/w%、1.5w/w%~2.4w/w%、1.5w/w%~2.2w/w%、又は1.7w/w%~2.2w/w%である、
実施形態70に記載のヒドロゲルカプセル。
【0362】
72.前記複数の細胞は、FVIII-BDDタンパク質(配列番号1)を発現するように組み換えられたARPE-19細胞である、実施形態71に記載にヒドロゲルカプセル。
【0363】
73.前記ARPE-19細胞は、配列番号15を含み、配列番号15は、任意選択的に、CAGプロモーターヌクレオチド配列(例えば、配列番号26のヌクレオチド337~2069)に動作可能に連結されている、実施形態72に記載のヒドロゲルカプセル。
【0364】
74.前記RGD-ポリマー中の前記アルギン酸塩上の前記RGDペプチドのコンジュゲーション密度は、溶液中のRGD-ポリマー1グラム当たりGRGDSP0.3~0.6マイクロモルである、72又は73に記載のヒドロゲルカプセル。
【0365】
75.前記複数の細胞は、少なくとも1,000個、2,500個、5,000個、10,000個、25,000個、又は50,000個のRPE細胞である、実施形態66~74のいずれか一つに記載のヒドロゲルカプセル。
【0366】
76.デバイスの調製物であって、前記調製物中の各デバイスは、実施形態1~65のいずれか一つに記載のデバイスであるか、又は実施形態66~75のいずれか一つに記載のヒドロゲルカプセルである、調製物。
【0367】
77.前記調製物中の各デバイスは、直径が0.5ミリメートル~2ミリメートル;0.7ミリメートル~1.8ミリメートル、1.0ミリメートル~1.8ミリメートル;1.2ミリメートル~1.7ミリメートル;1.3ミリメートル~1.7ミリメートル;及び1.4~1.6ミリメートルからなる群から選択される球状のヒドロゲルカプセルである、実施形態76に記載の調製物。
【0368】
78.前記調製物は、薬学的に許容可能な組成物である、実施形態76又は77に記載の調製物。
【0369】
79.対象にデバイスを移植する方法であって、
本明細書で説明されているデバイス又はデバイスの調製物、例えば、実施形態1~65のいずれか一つに記載のデバイス、実施形態66~75のいずれか一つに記載のヒドロゲルカプセル、又は実施形態76~78のいずれか一つに記載の調製物を準備すること、
及び
前記対象の身体に前記デバイス又は調製物を配置すること
を含む方法。
【0370】
80.対象に治療薬を提供する方法であって、
本明細書で説明されているデバイス又はデバイスの調製物、例えば、実施形態1~65のいずれか一つに記載のデバイス、実施形態66~75のいずれか一つに記載のヒドロゲルカプセル、又は実施形態76~78のいずれか一つに記載の調製物を準備すること、
及び
前記対象の身体に前記デバイス又は調製物を配置すること
を含む方法。
【0371】
81.例えば対象においてデバイスを評価する方法であって、
本明細書で説明されているデバイス、例えば、実施形態1~65のいずれか一つに記載のデバイス、又は実施形態66~75のいずれか一つに記載のヒドロゲルカプセルを準備すること、
及び
前記対象の身体に前記デバイス又は調製物を配置すること
を含む方法。
【0372】
82.治療薬が必要な対象を処置する方法であって、
本明細書で説明されているデバイス又はデバイスの調製物、例えば、実施形態1~65のいずれか一つに記載のデバイス、実施形態66~75のいずれか一つに記載のヒドロゲルカプセル、又は実施形態76~78のいずれか一つに記載の調製物を準備すること、
及び
前記対象の身体に前記デバイス又は調製物を配置すること
を含む方法。
【0373】
83.本明細書で開示されているデバイス又はヒドロゲルカプセルを製造する方法であって、
前記デバイス又はヒドロゲルカプセルの第1の成分と、前記デバイス又はヒドロゲルカプセルの第2の成分とを組み合わせること
を含み、それにより、本明細書で開示されているデバイス又はヒドロゲルカプセルが製造される、方法。
【0374】
84.本明細書で開示されているデバイス又はヒドロゲルカプセルの調製物を製造する方法であって、
デバイス又はヒドロゲルカプセルと、別の成分、例えば、緩衝液、キャリア、又は賦形剤とを組み合わせること
を含み、それにより、本明細書で開示されているデバイス又はヒドロゲルカプセルが製造される、方法。
【0375】
85.本明細書で開示されているデバイス若しくはヒドロゲルカプセル又はそれらの調製物を製造する方法であって、
本明細書で説明されているデバイス若しくはヒドロゲルカプセル又はそれらの調製物を供給すること、
例えば測定することにより、前記デバイス若しくはヒドロゲルカプセル又はそれらの調製物の成分又は特性と関連するパラメータ(例えば、サイズ、成分の存在又は量、生物学的特性、成分の生存率)の値を求めること
を含み、それにより、本明細書で開示されているデバイス又はヒドロゲルカプセルが製造される、方法。
【0376】
86.本明細書で開示されているデバイス若しくはヒドロゲルカプセル又はそれらの調製物を評価する方法であって、
本明細書で説明されているデバイス若しくはヒドロゲルカプセル又はそれらの調製物を供給すること、
例えば測定することにより、前記デバイス又はヒドロゲルカプセルの成分又は特性と関連するパラメータ(例えば、サイズ、成分の存在又は量、生物学的特性、成分の生存率)の値を求めること
を含み、それにより、本明細書で開示されているデバイス若しくはヒドロゲルカプセル又はそれらの調製物が評価される、方法。
【実施例
【0377】
本明細書に記載の本開示がより完全に理解され得るよう、以下の実施例が記載されている。本出願に記載されている実施例は、本明細書において提供されているデバイス(例えば、カプセル、粒子、化学修飾、組成物及び方法を例示するために提供されており、如何様にもその範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0378】
実施例1:例示的な修飾ポリマーの調製
1A.化学修飾ポリマー。当該技術分野で既知の方法を使用して、ポリマー材料を、本明細書で説明されているデバイス(例えば、本明細書で説明されているヒドロゲルカプセル)の形成前に、式(I)の化合物(又はその薬学的に許容可能な塩)で化学的に修飾し得る。
【0379】
例えば、アルギン酸塩の場合、アルギン酸塩カルボン酸が、抗線維化化合物(afibrotic compound)、例えば、式(I)の化合物で修飾されたアルギン酸塩を得るために1つ又は複数のアミン官能化化合物に対するカップリングのために活性化される。アルギン酸塩ポリマーを、水(30mL/グラムポリマー)に溶解させ、2-クロロ-4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン(0.5当量)N-メチルモルホリン(1当量)で処理する。この混合物に、アセトニトリル(0.3M)中の対象とする化合物(例えば、表4に示される化合物101)の溶液を添加する。目的の化合物を、当該技術分野で既知の方法(例えば、全体が参照に本明細書に組み込まれる国際公開第2018/067615号パンフレットで説明されている)を使用して調製し得る。
【0380】
添加される化合物及びカップリング試薬の量は、アルギン酸塩に結合される化合物の所望の濃度、例えば、結合密度に応じて決まる。CM-LMW-Alg-101-Mediumポリマー溶液を調製するために、溶解された非修飾低分子量アルギン酸塩(およその分子量<75kDa、G:M比≧1.5)を、2-クロロ-4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン(5.1mmol/gアルギン酸塩)及びN-メチルモルホリン(10.2mmol/gアルギン酸塩)及び化合物101(5.4mmol/gアルギン酸塩)で処理する。CM-LMW-Alg-101-Highポリマー溶液を調製するために、溶解された非修飾低分子量アルギン酸塩(およその分子量<75kDa、G:M比≧1.5)を、2-クロロ-4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン(5.1mmol/gアルギン酸塩)及びN-メチルモルホリン(10.2mmol/gアルギン酸塩)及び化合物101(5.4mmol/gアルギン酸塩)で処理する。
【0381】
反応を55℃に16時間温め、次いで室温に冷却し、ロータリー蒸発で穏やかに濃縮し、次いで、残渣を水に溶解させる。混合物をシアノ修飾シリカゲル(Silicycle)ベッドを通してろ過し、ろ過ケーキを水で洗浄する。次いで、得られる溶液を、十分に透析し(10,000MWCOメンブラン)、アルギン酸塩溶液を、凍結乾燥によって濃縮して、所望の化学修飾アルギン酸塩を固体として得るか、又は25cP~35cPの粘度を有する化学修飾アルギン酸塩溶液を生成するのに好適な任意の技術を用いて濃縮する。
【0382】
いくつかの実施形態において、化学修飾アルギン酸塩の結合密度を、窒素パーセントの燃焼分析によって測定する。化学修飾アルギン酸塩の溶液を、水に対して24時間透析し(10,000MWCOメンブラン)、水を2回交換した後、一定重量になるまで凍結乾燥することによって、サンプルを調製する。
【0383】
別の実施形態において、化学修飾アルギン酸塩のコンジュゲーション密度を、下記の実施例27で説明する定量的アミンアッセイを使用して決定する。
【0384】
下記の実施例で説明するヒドロゲルカプセルの生成での使用のために、化学修飾アルギン酸塩ポリマーを、窒素パーセントに関する燃焼分析により決定した場合に中程度(2%~5%のN)密度又は高(5.1%~8%のN)密度で低分子量アルギン酸塩(約MW<75kDa、G:M比≧1.5)にコンジュゲートした化合物101(表4で示されている)で調製し、本明細書ではCM-LMW-Alg-101-Medium及びCM-LMW-Alg-101-Highと称する。別途明記されない限り、下記の実施例で作られるカプセル中の化学修飾アルギン酸塩は、CM-LMW-Alg-101-Mediumである。
【0385】
1B.CBP-アルギン酸塩。当該技術分野で既知の方法を使用して、ポリマー材料を、本明細書で説明されているデバイス(例えば、本明細書で説明されているヒドロゲルカプセル)の形成前に、ペプチドで共有結合的に修飾し得る(例えば、Jeon O,et al.,Tissue Eng Part A.16:2915-2925(2010)及びRowley,J.A.et al.,Biomaterials 20:45-53(1999)を参照されたい)。
【0386】
例えば、アルギン酸塩の場合には、pH6.5にて、0.5M NaClを含む50mMの2-(N-モルホリノ)-エタンスルホン酸水和物緩衝溶液で、アルギン酸塩溶液(1%、w/v)を調製し、N-ヒドロキシスクシンイミド及び1-エチル-3-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]カルボジイミド(EDC)と順次混合する。N-ヒドロキシスクシンイミド対EDCのモル比は、0.5:1.0である。このアルギン酸塩溶液に、目的のペプチドを添加する。添加するペプチド及びカップリング試薬の量は、アルギン酸塩に結合するペプチドの所望の濃度(例えば、ペプチドコンジュゲーション密度)に依存する。ペプチド及びカップリング試薬の量を増加させることにより、より高いコンジュゲーション密度を得ることができる。24時間にわたる反応後、この反応を、3日にわたる超高純度脱イオン水(diH2O)(MWCO 3500)に対する透析により精製し、30分にわたり活性炭で処理し、ろ過し(0.22mmフィルタ)、所望の粘度まで濃縮する。
【0387】
ある実施形態において、ペプチド修飾アルギン酸塩のコンジュゲーション密度を、窒素パーセントに関する燃焼分析で測定する。24時間にわたり水に対してペプチド修飾アルギン酸塩の溶液を透析し(10,000 MWCO膜)、水を2回交換し、続いて一定重量まで凍結乾燥させることにより、サンプルを調製する。
【0388】
別の実施形態において、ペプチド修飾アルギン酸塩のコンジュゲーション密度を、実施例25及び任意選択的な26で説明されている定量的ペプチドコンジュゲーションアッセイを使用して測定する。
【0389】
実施例2:ヒドロゲルカプセルを作成するための例示的なアルギン酸塩溶液の調製
化学修飾及び非修飾アルギン酸塩の70:30混合物。低分子量アルギン酸塩(PRONOVA(商標)VLVGアルギン酸塩、NovaMatrix(登録商標)、cat.#4200506、およそのMW<75kDa;G:M比≧1.5)を、表4中の化合物101で化学修飾して、25cp~35cPの粘度を有する化学修飾低分子量アルギン酸塩溶液(CM-LMW-Alg-101)を生成した。高分子量非修飾アルギン酸塩(U-HMW-Alg)の溶液を、0.9%の生理食塩水に重量体積比3%で非修飾アルギン酸塩(PRONOVA(商標)SLG100,NovaMatrix,Sandvika,Norway,cat.#4202106、150kDa~250kDaのおよそのMW、G:M比≧1.5)を溶解させることによって調製した。CM-LMW-Alg溶液を、70%のCM-LMW-Alg対30%のU-HMW-Algの体積比のU-HMW-Alg溶液(本明細書において70:30のCM-LMW-Alg:U-HMW-Alg溶液と呼ばれる)と混合した。
【0390】
化学修飾アルギン酸塩及び非修飾アルギン酸塩の60:40混合物。この溶液を、60% CM-LMW-Alg-101対40% U-HMW-Algの体積比でCM-LMW-Alg-101溶液とU-HMW-Alg溶液とをブレンドした(本明細書では、60:40 CM-LMW-Alg-101:U-HMW-Alg溶液と称する)ことを除いて、上記の70:30混合物と同一の手順を使用して調製した。
【0391】
非修飾アルギン酸塩溶液。非修飾中間分子量アルギン酸塩(SLG20,NovaMatrix,Sandvika,Norway,cat.#4202006、75~150kDaのおよその分子量)を、0.9%の生理食塩水に重量体積比1.4%で溶解させて、U-MMW-Alg溶液を調製した。
【0392】
細胞結合部位を含むアルギン酸塩溶液。CBP-アルギン酸塩、又は細胞結合タンパク質と非修飾アルギン酸塩との混合物を含む様々なアルギン酸塩溶液を、下記の表6で要約するように調製した。
【0393】
【表7】
【0394】
【表8】
【0395】
全ての非修飾アルギン酸塩及びペプチド修飾アルギン酸塩を、別途述べられていない限り、NovaMatrix(登録商標),Sandvika Norwayから購入した。コラーゲンIを、Corning Life Sciences,カタログ番号354236(Collagen Type I,Rat Tail),Oneonta,NYから購入した。HAを、Lifecore Biomedical,カタログ番号HA700K(MW=500kDa~749kDa),ChaskaMN)から購入した。
【0396】
実施例3:1区画ヒドロゲルミリカプセル又は2区画ヒドロゲルミリカプセルでのカプセル化のための例示的細胞の調製
3A.単一細胞としてのカプセル化のための組み換えARPE-19細胞
治療薬(例えば、血液凝固因子(例えば、FVIIIタンパク質又はFIXタンパク質))を発現するように組み換えられたARPE-19細胞を、当該技術分野で既知の任意の方法に従って培養し得、例えば、下記のプロトコルに従って培養し得る。
【0397】
75cm2の培養フラスコ中の組み換えARPE-19細胞を吸引して、培養培地を除去し、細胞層を、0.05%(w/v)のトリプシン/0.53mMのEDTA溶液(「TrypsinEDTA」)で短時間すすいで、トリプシン阻害剤を含有する血清を全て除去した。2~3mLのトリプシン/EDTA溶液を、フラスコに添加し、細胞を、細胞層が分散されるまで、通常、5~15分間、倒立顕微鏡で観察した。凝集を避けるために、細胞を慎重に取り扱い、分散期間中フラスコをぶつけたり又は振ったりするのを最小限に抑えた。細胞が脱離しなかった場合、フラスコを37℃に置いて、分散を促進した。細胞が分散したら、6~8mLの完全成長培地を添加し、細胞を、穏やかなピペッティングによって吸引した。細胞懸濁液を遠心分離管に移し、5~10分間にわたって約125×gで遠沈して、TrypsinEDTAを除去した。上清を廃棄し、細胞を新鮮な成長培地に再懸濁させた。適切な分量の細胞懸濁液を新たな培養容器に添加し、これを37℃でインキュベートした。培地を週に2~3回取り替えた。
【0398】
3B.クラスターとしてカプセル化するためのARPE-19細胞
例示的な細胞(例えば、組み換えARPE-19細胞)のスフェロイドクラスターを、AggreWell(商標)スフェロイドプレート(STEMCELL Technologies)及び本明細書に概説されるプロトコルを用いて調製した。1日目に、すすぎ液(4mL)を各プレートに添加し、プレートを大型の遠心分離機において3,000RPMで5分間にわたって遠沈した。すすぎ液をピペットによって除去し、4mLの完全成長培地を添加した。組み換えARPE-19細胞を所望の細胞密度でプレートに播種し、ウェル当たり390万個の細胞が直径150μmのクラスターを生じるという一般的な経験則を踏まえて、凝集を防ぐために直ぐにピペッティングした。プレートを800RPMで3分間にわたって遠沈し、プレートを、37℃で一晩、培養器に入れた。
【0399】
2日目に、プレートをインキュベーションから取り外す。広径ピペットチップを用いて、細胞を穏やかにピペッティングして、スフェロイドクラスターを取り除く。クラスターを、40μm又は80μmのセルストレーナーに通してろ過して、外部の脱離した単一細胞を除去し、次に、2×1分間にわたって遠心分離機中で遠沈する。クラスターを、広径ピペットチップを用いて穏やかに再懸濁させ、穏やかに撹拌して、培地又は別の材料(例えば、アルギン酸塩)全体にわたってそれらを分配する。
【0400】
或いは、ARPE-19スフェロイドは、以下のプロトコルを用いて調製される。1日目に、AggreWell(商標)プレートを、滅菌した組織培養フード中の包装から取り出す。2mLのAggrewell(商標)すすぎ液を各ウェルに添加する。プレートを、5分間にわたって2,000gで遠心分離して、気泡を除去し、AggreWell(商標)すすぎ液をウェルから除去する。各ウェルを2mLの完全成長培地ですすぎ、200万個の組み換えARPE-19細胞を3.9mLの完全成長培地中に、各ウェルに添加する。プレートを、3分間にわたって100gで遠心分離し、次に、細胞を、37℃で48時間インキュベートする。3日目に、上記と同じプロトコルを用いて、スフェロイドクラスターを取り除く。
【0401】
或いは、下記のプロトコルと共にPBS MINIバイオリアクタ(PBS Biotec,Inc.,Camarillo CA,USA)を使用して、ARPE19スフェロイドを調製する。細胞培養培地及び2億2千万個のARPE19細胞を、PBS 0.1L容器又はPBS 0.5L容器に入れ、次いで、この容器をベースユニットに挿入して培養器に入れる。PBS MINI速度調整ダイアルを40rpmに設定し、この容器を少なくとも48時間にわたり37℃でインキュベートした後、上記で説明したようにスフェロイドを採取した。
【0402】
実施例4:下記の実施例で使用するヒドロゲルカプセルの調製
単一細胞としてRPE細胞をカプセル化するカプセル。カプセル化の直前に、治療用タンパク質を発現するように組み換えられた単一ARPE-19細胞を、1分にわたり1,400r.p.mで遠心分離し、カルシウムフリーKrebs-Henseleit(KH)緩衝液(4.7mM KCl、25mM HEPES、1.2mM KH2PO4、1.2mM MgSO4×7H2O、135mM NaCl、pH≒7.4、約290mOsm)で洗浄した。洗浄後、この細胞を再度遠心分離し、上清の全てを吸引した。いくつかの実験では、次いで、細胞ペレットを、アルギン酸塩溶液 1ml当たり懸濁単一細胞の所望の密度で、実施例2で説明されている70:30 CM-LMW-Alg:U-HMW-Alg溶液(対照カプセル)に再懸濁させるか、又は実施例2の表6で説明されている修飾アルギン酸塩溶液の内の1つに再懸濁させた。
【0403】
1区画ヒドロゲルカプセル及び2区画ヒドロゲルカプセルの作製の前に、緩衝液及びアルギン酸塩溶液を、無菌プロセスを使用して0.2μmフィルタに通すろ過により滅菌した。
【0404】
細胞をカプセル化する約1.5mmの直径の1区画ヒドロゲルカプセルの作製のために、所望の数の細胞を、所望のアルギン酸塩溶液(例えば、対照カプセルで使用される70:30 CM-LMW-Alg:U-HMW-Alg溶液、又は実施例2及び表6で説明されている実験的アルギン酸塩溶液の内の1つ)に懸濁させ、生じた細胞懸濁液をシリンジに充填し、18ゲージの平滑先端針(SAI Infusion Technologies)でキャップした。このシリンジを、架橋溶液が入っている皿の上で垂直に配向されたシリンジポンプに入れた。この針に高電圧発電機を接続し、バイオセイフティーキャビネットに接地させた。このシリンジポンプ及び発電機をオンにし、0.16mL/分又は10mL/時間の流量で、且つ10秒当たり12滴の滴下速度になるまで5~9kVの範囲で電圧を調整しつつ、アルギン酸塩溶液を、針に通して押し出した。
【0405】
約1.5mmの直径の2区画ヒドロゲルミリカプセルとして構成されるデバイスを調製するために、静電液滴生成装置を下記のように設定した:ESシリーズ0~100kV、20ワット高電圧発電機(EQ series,Matsusada,NC,USA)を、同心針(22Gの内腔、18Gの外腔、Rame-Hart Instrument Co.,Succasunna,NJ,USA)の上部及び下部に連結した。内腔を、BD Luer-Lok(商標)チップ(BD(カタログ番号309646),Franklin Lakes,NJ,USA)を備えた第1のBD使い捨て5mlシリンジに取り付け、このシリンジを、垂直に配向されたシリンジポンプ(Pump 11 Pico Plus,Harvard Apparatus,Holliston,MA,USA)に接続した。外腔を、第2の5ml Luer-lockシリンジにluerカップリングを介して接続し、このシリンジを、垂直に配向された第2のシリンジポンプ(Pump 11 Pico Plus)に接続した。第1の(内側)区画のみに細胞をカプセル化するために、(単一細胞懸濁液として)細胞を含む第1のアルギン酸塩溶液((対照としての)70:30 CM-Alg-101:UM-Alg溶液、又は実施例2及び表6で説明されている実験的アルギン酸塩溶液の内の1つ)を、第1のシリンジに入れ、抗線維性化合物を含む第2の細胞フリーアルギン酸塩溶液(例えば、CM-LMW-Alg-101及びU-HMW-Alg)を、第2のシリンジに入れた。下記の実施例での対照2区画ヒドロゲルカプセルの場合には、第2の(外側)区画を、70:30 CM-LMW-Alg-101:U-HMW-Alg溶液を使用して形成した。2個のシリンジポンプは、第1及び第2のアルギン酸塩溶液を、同心針の両方の腔を通ってシリンジから移動させ、両方のアルギン酸塩溶液を含む単一の液滴が、針から、架橋溶液が入っているガラス皿へと押し出される。各Pico Plusシリンジポンプの設定は、12.06mmの直径であり、各ポンプの流量を、2種のアルギン酸塩溶液に関して1:1の流量比を達成するように調整した。そのため、10ml/時で設定された総流量で、各アルギン酸塩溶液の流量は、約5ml/時であった。
【0406】
2区画及び1区画ミリカプセルの両方の作製のために、アルギン酸塩溶液の所望の体積の押し出しの後、アルギン酸塩液滴を、25mMのHEPES、20mMのBaCl2、0.2Mのマンニトール、及びポロキサマー188を含有する架橋溶液中で5分間にわたって架橋させた。架橋容器の底に落下したカプセルを、コニカルチューブ中にピペッティングすることによって収集した。カプセルがチューブ中で沈降した後、架橋緩衝液を除去し、カプセルを洗浄した。細胞を含まないカプセルを、HEPES緩衝液(NaCl 15.428g、KCl 0.70g、MgCl2・6H2O 0.488g、2リットルの脱イオン水中の50mlのHEPES(1M)緩衝液(Gibco,Life Technologies,California,USA))で4回洗浄し、使用するまで4℃で貯蔵した。細胞をカプセル化するカプセルを、HEPES緩衝液で4回、0.9%の生理食塩水で2回、及び培養培地で2回洗浄し、37℃で培養器中に貯蔵した。
【0407】
実施例5:細胞をカプセル化する単一区画アルギン酸塩カプセル内の細胞結合部位の組み込みの、インビトロでの細胞産生性及び生存率に対する影響
単一区画ヒドロゲルミリカプセル(約1.5mmの直径)を含む組成物を、細胞結合部位を欠くか又は含む実施例2で説明されているアルギン酸塩溶液を使用して、本質的には実施例4で説明されているように調製した。
【0408】
FVIII-BDDタンパク質(配列番号1)を発現するように組み換えられたARPE-19細胞(ARPE-19:FVIII-BDD細胞)を、対照アルギン酸塩溶液(70:30 CM-LMW-Alg-101:U-HMW-Alg)中に又は実施例2及び表6で説明されている実験的アルギン酸塩溶液の内の1つ中に、330万個の細胞/mlアルギン酸塩で懸濁させた。調製後、各カプセル組成物の1つのウェル当たり1つのカプセルを、96ウェルプレートに入れた。24時間後に上清を回収し、各上清中のFVIIIの濃度をELISAで測定した。また、このときに、各カプセル組成物に関して、1つのウェル当たり1つのカプセルの2つのアリコート中に存在する生存細胞の数を、CellTiter Glo(登録商標)生存率アッセイ(Promega Corporation,Madison,WI USA)で測定し、産生性(pg/細胞/日)を、各アリコート中の細胞数で上清中のタンパク質のpgを除算することにより算出した。この分析の結果を図2に示す。
【0409】
図2に示すように、細胞結合ペプチドで共有結合的に修飾されたアルギン酸塩溶液(例えばCBP-アルギン酸塩)中でカプセル化された細胞は、対照(例えば、CBPを欠くアルギン酸塩)と比較して産生性の増加を示さなかった。加えて、コラーゲンI及びHAとのアルギン酸塩ブレンドも、カプセル化された細胞の産生性を改善しなかった。これらの結果は、カプセル化された細胞のインビトロでの産生性は、カプセル化アルギン酸塩ポリマー中の細胞結合部位の存在による影響を受けないことを示す。
【0410】
実施例6:内側カプセル区画中におけるRGD修飾アルギン酸塩中でのARPE19:FVIII-BDD細胞のカプセル化により、カプセル移植後にFVIII-BDD血漿レベルが上昇する
ARPE19:FVIII-BDD細胞をカプセル化する対照2区画ヒドロゲルミリカプセル及びRGD修飾2区画ヒドロゲルミリカプセルの組成物を、実施例4で説明したように、同心針を通して第1及び第2のアルギン酸塩溶液を押し出すことにより調製した。第2の(外側)区画用の溶液は、細胞フリー70:30 CM-LMW-Alg-101:U-HMW-Alg溶液であり、第1の(内側)区画用の溶液は、70:30 CM-LMW-Alg-101:U-HMW-Alg溶液(対照)中のARPE19:FVIII-BDD細胞の懸濁液であるか、又は実施例2で説明したRGD修飾アルギン酸塩溶液(VLVG-4GRGD及び1G-RGD:0.41)の内の1つ中のARPE19:FVIII-BDD細胞の懸濁液であった。ARPE19:FVIII-BDD細胞を、第1のアルギン酸塩溶液(内側区画溶液)中に1億個の細胞/mlで懸濁させた。
【0411】
各カプセル組成物の0.5mLアリコートを、ヌードマウスの腹腔内(IP)空間に移植した(1種の組成物当たり4匹のマウス)。移植後2週間で、各マウスから、中間出血により血液サンプルを採取した。これらのサンプルにおけるFVIII-BDDの血漿レベルをELISAで測定し、結果を図3に示す。
【0412】
血漿FVIII-BDDレベルは、対照と比較して両方のRGD修飾アルギン酸塩カプセルで高く、このことは、第1の区画内のRGD-アルギン酸塩の存在により、インビボでのFVIII-血漿レベルが上昇し得ることを示す。
【0413】
実施例7:内側カプセル区画中における細胞結合部位を含むポリマー中での細胞のカプセル化は、インビボでの細胞増殖又はエクスビボでのカプセルの機械的特性に影響を及ぼさない
CBPを含み且つ第1の(内側)区画中でARPE19:FVIII-BDD細胞をカプセル化する2区画対照及び2区画カプセルの組成物を、実施例6で説明したように調製した。同様の2区画カプセルも調製し、このカプセルでは、外側区画は同一であるが、内側区画は、上記の実施例2及び表6で説明されているコラーゲンI又はHAアルギン酸塩溶液から形成された。全ての対照カプセル及び試験カプセルに関して、内側区画を形成するために使用される溶液中の懸濁細胞の濃度は、1億個の細胞/mlであった。
【0414】
各カプセル組成物の0.5mLアリコートを、ヌードマウスのIP空間に移植した(1種の組成物当たり4匹のマウス)。移植の4週間後、マウスからカプセルの大部分を回収し、CellTiter Glo(登録商標)3D Cell Viability Assay(Promega Corporation,Madison,WI USA)を使用して、カプセル細胞数(各マウスに関して二重で1つのカプセル)を測定した。簡潔に説明すると、1つのウェル当たり1つのカプセルを二重に分析し、蒔いた細胞の標準曲線と比較した。培地100μlを含む各ウェルに、CellTiter Glo(登録商標)3D試薬 100μlを添加し、プレートを、15分にわたり400rpmでシェーカー上に置き、次いで発光をプレートリーダーで読み取った。また、テクスチャーアナライザーを使用して、各組成物のアリコート中のカプセルの機械的強度(初期破壊)を、移植前に及び1ヶ月間の移植期間後の回収時に測定した。細胞数及びカプセル強度の結果を、それぞれ図4A及び図4Bに示す。実験誤差に起因して、多少のばらつきを観察した。
【0415】
対照カプセル及びCBPカプセルでは、1ヶ月間の移植期間中に多少の細胞増殖を観察したが、回収したカプセル中の細胞数は、対照群及びCBP-アルギ酸塩群で同様であった。コラーゲンカプセル中の細胞数、及びHAカプセル中の細胞数は、1ヶ月間の移植期間中に有意に変化しなかった。増殖の大きさは群によって異なるが、他のデータ(示さない)は、開始時の細胞濃度にかかわらず、図4Aに示すように、細胞数は約50,000個の細胞/カプセルでプラトーになること示唆する。そのため、図4Aのデータは、GRGDSP(配列番号60)ペプチドが、対照カプセルで観察されるものを超えてインビボでの有意な増殖を刺激していないことを示唆する。
【0416】
移植前に測定した初期破壊は、カプセル組成物によって異なり、SLG20(即ち、1G-RGD、HA、コラーゲンI)で構成された第1の(内側)区画は、対照カプセル及びVLVG-4GRGDカプセルと比較して強いカプセルを生成した。しかしながら、1ヶ月間の移植後の回収で測定した初期破棄強度は、対照及び全ての試験カプセル組成物でカプセルに関して同様であった。これらのデータは、カプセル内の細胞結合ドメインの存在がカプセルの機械的完全性に影響を及ぼさないことを示唆する。
【0417】
実施例8:内側カプセル区画中におけるG-RGD-アルギン酸塩中でのARPE19-FVIIIーBDD細胞のカプセル化により、カプセル移植後にFVIII-BDD血漿レベルが上昇する
ARPE19:FVIII-BDD細胞をカプセル化する2区画ヒドロゲルミリカプセルの組成物を、実施例4で説明したように、同心針を通して第1及び第2のアルギン酸塩溶液を押し出すことにより調製した。第2の(外側)区画を、70:30 CM-LMW-Alg-101:U-LMW-Alg溶液を使用して調製し、内側区画は、70:30 CM-LMW-Alg-101:U-LMW-Alg溶液(対照)を含むか、又は実施例2及び表6で説明した下記のCBP修飾アルギン酸塩溶液の内の1つを含んだ:MVG-GRGDSP、1G-RGD:0.41、4G-RGD:0.53。全ての対照カプセル及び試験カプセルに関して、内側区画を形成するために使用されるアルギン酸塩溶液中の細胞の濃度は、1億個の細胞/mlであった。
【0418】
各カプセル組成物の0.5mLアリコートを、ヌードマウスのIP空間に移植した(1種の組成物当たり4匹のマウス)。移植後14日で、動物を屠殺し、各マウスから血液サンプルを採取した。これらのサンプルにおけるFVIII-BDDの血漿レベルをELISAで測定し、結果を図5に示す。
【0419】
血漿FVIII-BDDレベルは、単一のGリンカーを介してRGDペプチドで共有結合的に修飾されたアルギン酸塩を含むカプセルを移植したマウスにおいて、コントロールカプセルを移植したか又は4Gリンカーを介して同一のRGDペプチドで共有結合的に修飾されたアルギン酸塩を含むカプセルを移植したマウスと比べて高かった。同一のRGDペプチドを有するがMWアルギン酸塩が異なる2種のRGDアルギン酸塩(MVG-GRGDSP及び1G-RGD:0.41)の間には、又はMVG-GRGDSPアルギン酸塩及びM REDVアルギン酸塩の混合物の間には、有意差がなかった。驚くべきことに、1G-RGD:0.41アルギン酸塩と同一のRGDペプチド(RGDSP(配列番号59))で修飾されたが、単一のGリンカーの代わりに4Gリンカーで修飾された4G-RGD:0.53アルギン酸塩は、細胞産生性に対してマイナスの影響を有するように見え、血漿FVIII-BDDは、4G-RGD:0.53カプセルが移植されたマウスでは検出不能であった。これらのデータは、単一のGリンカーを介してRGD細胞結合ペプチドにコンジュゲートしたポリマー(例えばアルギン酸塩)中で組み換えRPE細胞をカプセル化するデバイス(例えばヒドロゲルミリカプセル)を介して細胞を移植することにより、動物モデルにおいて、移植された組み換えRPE細胞により発現される治療用タンパク質の血漿レベルが上昇し得ることを示す。
【0420】
実施例9:内側カプセル区画中でのRGD-アルギン酸塩の存在は、移植されたカプセルの線維化に影響を及ぼさない
この実験では、内側区画中の細胞結合ペプチドの存在、及び外側区画中の抗線維性化合物の中程度の又は高い密度が、動物モデルへのカプセルの移植後の線維化のレベルに影響を及ぼすかどうかを調べた。この実験で使用するカプセル組成物は、下記で説明する2区画カプセル構成を有した。
(1)対照:70:30 CM-LMW-Alg-101-Medium:U-HMW-Alg混合物中のARPE19-FVIII-BDD細胞の懸濁液を含む溶液から形成された内側区画、70:30 CM-LMW-Alg-101-Medium:U-HMW-Alg混合物から形成された外側区画;
(2)RGD内側/中程度外側:1G-RGD:0.41(表6)中のARPE19-FVIII-BDD細胞の懸濁液を含む溶液から形成された内側区画、70:30 CM-LMW-Alg-101-Medium:U-HMW-Alg混合物から形成された外側区画;
(3)RGD内側/高外側:1G-RGD:0.41(表6)中のARPE19-FVIII-BDD細胞の懸濁液を含む溶液から形成された内側区画、70:30 CM-LMW-Alg-101-High:U-HMW-Alg混合物から形成された外側区画;
(4)RGD内側/高(60:40)外側:1G-RGD:0.41(表6)中のARPE19-FVIII-BDD細胞の懸濁液を含む溶液から形成された内側区画、60:40 CM-LMW-Alg-101-High:U-HMW-Alg混合物から形成された外側区画;
及び
(5)RGD、空:内側/中程度外側:1G-RGD:0.41(表6)から形成された内側区画、70:30 CM-LMW-Alg-101-Medium:U-HMW-Alg混合物から形成された外側区画、しかしながら、細胞はカプセル化されていなかった。
【0421】
各カプセル組成物の0.5mLアリコートを、C57/BL6マウスのIP空間に移植し(1種の組成物当たり4匹のマウス)、11日後に回収した。回収したカプセルを明視野顕微鏡で撮像し、結果を図6に示す。
【0422】
第2の(外側)区画中における中程度の密度の抗線維性化合物と、抗線維性アルギン酸塩:非修飾アルギン酸塩混合物(対照)又はRGD-アルギン酸塩中で細胞をカプセル化する第1の区画とを有するカプセルでは、線維化に差違はなかった。予想されるように、細胞を含まないカプセル(RGD(空))の移植は、異種性RPE細胞を含むカプセルと比べて、マウスでの少ない線維化を示した。高密度のCM-LMWアルギン酸塩を使用することによる第2の(外側)区画中での抗線維性化合物の密度の変化は、線維化を減少させたが、CM-LMW:U-HMWブレンド比の70:30から60:40への変更は、予想されるように線維化を増加させた。従って、第1の(内側)区画内での細胞結合ペプチドの存在は、カプセルの抗線維性特性に影響を及ぼさない。
【0423】
実施例10:内側カプセル区画中におけるG-RGD-アルギン酸塩中でのARPE19:FIX-Padua細胞のカプセル化により、移植後の血漿FIXpaduaレベルが上昇する
ARPE19:FIX-Padua細胞をカプセル化する2区画ヒドロゲルミリカプセルの組成物を、実施例4で説明したように、同心針を通して第1及び第2のアルギン酸塩溶液を押し出すことにより調製した。第2の(外側)区画は、70:30 CM-LMW-Alg-101-Medium:U-HMW-Alg溶液から形成されており、内側区画は、下記のアルギン酸塩溶液の内の1つから形成されており、これらのそれぞれは、1億個のARPE19:FIX-Padua細胞/mlを含んだ:
(1)対照:70:30 CM-LMW-Alg-101-Medium:U-HMW-Alg混合物;
(2)1G-RGD:0.41
(3)4G-RGD:0.53
(4)4G-RGD:0.96
(5)4G-RGD:1.77
(6)RGD-4G:2.95。
【0424】
各カプセル組成物の0.5mLアリコートを、ヌードマウスのIP空間に移植した(1種の組成物当たり4匹のマウス)。移植後12日で、動物を屠殺し、各マウスから血液サンプルを採取した。これらのサンプルにおけるFIXの血漿レベルを、ELISAで測定した。
【0425】
図7に示すように、移植後の血漿FIXレベルは、内側区画中で1G-RGD:0.41アルギン酸塩又は4G-RGD:0.53アルギン酸塩を含むカプセルが、対照、及び内側区画中でより高密度の4G-RGDアルギン酸塩を含むカプセルと比較して有意に高かった。驚くべきことに、1G-RGD:0.41カプセルの移植により、4G-RGD:0.53カプセルの移植と比べて血漿FIXレベルが有意に高くなり、このことは、RGDリンカーの組成が、カプセルから分泌される治療用タンパク質の量に関して細胞の産生性に影響を及ぼし得ることを示す。最後に、4Gリンカーペプチド(配列番号61)の濃度がより高いアルギン酸塩ポリマーを使用して調製したカプセルは全て、対照と同様のFIXレベルを有した。まとめると、これらのデータは、FIXタンパク質を発現するように組み換えられ且つ第1の(内側)区画内のRGD-アルギン酸塩中でカプセル化されたRPE細胞を含む2区画ヒドロゲルカプセルを移植することにより、動物モデルにおける血漿FIXレベルが有意に上昇し得ることを示し、且つRGD密度とリンカーサイズとのいくつかの組み合わせは、約0.41%のNにて1G-RGDSPで修飾されたアルギン酸塩ほどには機能しない場合があることを示唆する。
【0426】
実施例11:内側カプセル区画中でARPE19:FIX-Padua細胞をカプセル化するためにRGD-アルギン酸塩と別のCBP-アルギン酸塩とのブレンドを使用することにより、移植後の血漿FIXレベルはより高い
ARPE19:FIX-Padua細胞をカプセル化する2区画ヒドロゲルミリカプセルの組成物を、実施例4で説明したように、同心針を通して第1及び第2のアルギン酸塩溶液を押し出すことにより調製した。第2の(外側)区画は、70:30 CM-LMW-Alg-101-Medium:U-HMW-Alg溶液から形成されており、内側区画は、下記のアルギン酸塩溶液の内の1つから形成されており、これらのそれぞれは、1億個のARPE19:FIX-Padua細胞/mlを含んだ。
(1)対照:70:30 CM-LMW-Alg-101-Medium:U-HMW-Alg混合物;
(2)1G-RGD:0.41(表6)
(3)4G-DGEA(表6)
(4)1G-RGD/4G-DGEA:1G-RGD:0.41溶液と4G-DGEA溶液との1:1ブレンド
(5)1G-RGD/4G-PHSRN:1G-RGD:0.41溶液と4G-PHSRN溶液との1:1ブレンド
(6)1G-RGD/4G-DGEA/4G-PHSRN:1G-RGD:0.41溶液と、4G-DGEA溶液と、PHSRN溶液との1:1:1ブレンド。
【0427】
各カプセル組成物の0.5mLアリコートを、ヌードマウスのIP空間に移植した(1種の組成物当たり4匹のマウス)。移植後2週間で、動物を屠殺し、各マウスから血液サンプルを採取した。これらのサンプルにおけるFIXの血漿レベルを、ELISAで測定した。
【0428】
図8に示すように、FIXの血漿レベルは、1G-RGD-アルギン酸塩又はDGEA-アルギン酸塩を含むカプセルが対照と比べて高く、RGDカプセルでのこの高いレベルは、一方向ANOVAで統計的有意性に達した。統計的有意性には達しなかったが、1G-RGDアルギン酸塩は、4G-DGEAカプセルと比べてさらに大幅に高かった。FIX血漿レベルは、別のCBP-アルギン酸塩とブレンドされたRGDアルギン酸塩を含むカプセルの3つの群で最高であった。これらのデータは、ARPE19-FIX-Padua細胞と複数のCBP-アルギン酸塩の組み合わせとを含むカプセルが、単一のCBP-アルギン酸塩(RGDSP(配列番号59)又はDGEA(配列番号39))で生成されたカプセルと比較してFIXレベルを改善し得ることを示す。
【0429】
実施例12:ARPE19:FIX-Padua細胞をカプセル化する内側区画中のRGDペプチドの密度は、移植されたヒドロゲルカプセルにより生じるFIX血漿レベルに影響を及ぼす
ARPE19:FIX-Padua細胞をカプセル化する2区画ヒドロゲルミリカプセルの組成物を、実施例4で説明したように、同心針を通して第1及び第2のアルギン酸塩溶液を押し出すことにより調製した。第2の(外側)区画は、70:30 CM-LMW-Alg-101-Medium:U-HMW-Alg溶液から形成されており、内側区画は、表6で説明されている下記のアルギン酸塩溶液の内の1つから形成されており、これらのそれぞれは、1億個のARPE19:FIX-Padua細胞/mlを含んだ:
(1)対照:70:30 CM-LMW-Alg-101-Medium:U-HMW-Alg混合物;
(2)1G-RGD:0.22
(3)1G-RGD:0.33
(4)1G-RGD:0.72
(5)1G-RGD:1.47。
【0430】
各カプセル組成物の0.5mLアリコートを、ヌードマウスのIP空間に移植した。移植後2週間で、動物を屠殺し、各マウスから血液サンプルを採取した。これらのサンプルにおけるFIXの血漿レベルを、ELISAで測定した。
【0431】
図9に示すように、第1の(内側)区画ポリマーへのRGDコンジュゲーションの量は、血漿中で検出されるFIXのレベルに影響を及ぼした。FIXレベルは、RGD密度が0から1G-RGD:53へと増加した場合に上昇したが、驚くべきことに、FIXレベルは、1G-RGD:0.72カプセル及び1G-RGD:1.47カプセルの移植後に連続的に低かった。まとめると、これらのデータは、RGDペプチドのコンジュゲーション密度が、ヒドロゲルカプセルにより生じたFIXレベルに有意な影響を有し得ることを示し、さらには、本実施例で説明されたように構成されたカプセルの場合には、内側区画中において1G-RGD:0.33で調製されたカプセルが、最高の血漿FIX-Paduaレベルを達成するのに最適であり得ることことも示す。
【0432】
実施例13:内側カプセル区画中における1G-RGD-アルギン酸塩中でのARPE19:PTH細胞のカプセル化により、移植後の血漿PTHレベルが上昇する
ARPE19:PTH細胞をカプセル化する対照及びRGD修飾2区画ヒドロゲルミリカプセルの組成物を、実施例4で説明したように、同心針を通して第1及び第2のアルギン酸塩溶液を押し出すことにより調製した。第2の(外側)区画用のアルギン酸塩溶液は、細胞フリー70:30 CM-LMW-Alg-101:U-HMW-Alg溶液であり、第1の(内側)区画用のアルギン酸塩溶液は、70:30 CM-LMW-Alg-101:U-HMW-Alg溶液(対照)中の又は表6で説明されているRGD修飾アルギン酸塩溶液(1G-RGD:0.72%)中の1億個の細胞/mlでのARPE19:FVIII-PTH細胞の懸濁液であった。
【0433】
各カプセル組成物の0.5mLのアリコートを、ヌードマウスの腹腔内(IP)空間に移植した(1種の組成物当たり4匹のマウス)。移植後1週間で、動物を屠殺し、各マウスから血液サンプルを採取した。これらのサンプルにおけるPTHの血漿レベルを、ELISAで測定し、結果を図10に示す。
【0434】
血漿PTHレベルは、対照と比較してRGD修飾アルギン酸塩カプセルで約2倍高く、このことは、第1区画内のRGD-アルギン酸塩の存在によりインビボでのPTH血漿レベルが上昇し得ることを示す。
【0435】
実施例14:内側カプセル区画中におけるG-RGD-アルギン酸塩内でARPE19:FVIII細胞を含むカプセルは、RGDなし対照に相当する安定性を有する
ARPE19:FVIII細胞をカプセル化する2区画ヒドロゲルミリカプセルの組成物を、実施例4で説明したように、同心針を通して第1及び第2のアルギン酸塩溶液を押し出すことにより調製した。カプセルの組成物を、第1の区画溶液及び第2の区画溶液の下記の組み合わせで調製した:(1)第1及び第2:CM-LMW-Alg-101-Medium:U-HMW-Alg溶液(対照条件)、(2)第1:1G-RGD:0.41、第2:CM-LMW-Alg-101-Medium:U-HMW-Alg溶液、(3)第1:1G-RGD:0.41、第2:CM-LMW-Alg-101-High:U-HMW-Alg溶液、(4)第1:1G-RGD:0.41、第2:CM-LMW-ALG-101対High:U-HMWの60:40の体積比で調製したCM-LMW-Alg-101-High:U-HMW-Alg溶液、及び(5)第1:1G-RGD:0.41、第2:CM-LMW-Alg-101-Medium:U-HMW-Alg溶液。ARPE19:FIX細胞を、上記の条件(1~4)に関して、1億個の細胞/mlにて第1の(内側)区画中でカプセル化した。各カプセル組成物の0.5mLアリコートを、ヌードマウスのIP空間に移植した。移植後2ヶ月で、動物を屠殺し、各マウスからカプセルを回収した。カプセルを撮像し、生存/死滅染色を実施した。データを図11に示す。
【0436】
全てのカプセルを無傷で回収し、生存細胞を検出した。GRGDSP含有カプセル(配列番号60)と比較して、対照では第1の区画内の細胞の密度に目に見える差違があったが、生存細胞の総数は類似していた(データは示さない)。まとめると、これらのデータは、第1の区画内でのRGDの組み込みはカプセルの完全性に悪影響を及ぼさないことを示す。
【0437】
実施例15:内側カプセル区画中におけるG-RGD-アルギン酸塩内でBalb/3T3細胞を含むカプセルは、C57/BL6での2ヶ月間の移植を通して、RGDなし対照と同等の抗線維性であった
ARPE19:FVIII細胞をカプセル化する2区画ヒドロゲルミリカプセルの組成物を、実施例4で説明したように、同心針を通して第1及び第2のアルギン酸塩溶液を押し出すことにより調製した。カプセルの組成物を、実施例14で説明した第1の区画溶液及び第2の区画溶液の下記の組み合わせで調製した。Balb/3T3細胞を、上記の条件(1~4)に関して、2千万個の細胞/mlで第1の(内側)区画中でカプセル化した。各カプセル組成物の0.5mLアリコートを、C57/BL6マウスのIP空間に移植した。移植後2ヶ月で、カプセルを回収して線維化の存在に関して明視野顕微鏡で撮像した。
【0438】
全てのカプセルを無傷で回収し、空の透明な外層が不透明な線維性沈殿物で覆われていない図12に示すように、線維化がほとんどなかった。CM-LMW-Alg-101-High:U-HMW-Algの60:40ブレンドで調製されたカプセルでは、予想したように、70:30ブレンドと比較して多くの線維化を観察した。まとめると、これらのデーは、第1の区画内でのRGDの組み込みは、抗線維性関連の中でカプセルの抗線維性に影響を及ぼすことを示す。
【0439】
実施例16:ARPE19:FIX-Padua細胞をカプセル化する内側区画中のG-RGD修飾ポリマーの同一性は、移植されたヒドロゲルカプセルにより生じたFIX血漿レベルに影響を及ぼす
ARPE19:FIX-Padua細胞をカプセル化する2区画ヒドロゲルミリカプセルの組成物を、実施例4で説明したように、同心針を通して第1及び第2のアルギン酸塩溶液を押し出すことにより調製した。第2の(外側)区画は、70:30 CM-LMW-Alg-101-Medium:U-HMW-Alg溶液から形成されており、内側区画は、表6で説明されている様々な初期ポリマーを使用して下記のアルギン酸塩溶液の内の1つから形成されており、これらのそれぞれは、1億個のARPE19:FIX-Padua細胞/mlを含んだ:
(1)1G-RGD:0.72
(2)1G-MVG:0.71、79cP
(3)1G-MVG:0.71、97cP
(4)1G-MVG:0.71、143cP
(5)1G-MVG:0.71、202cP
(6)1G-SLG100:0.65。
【0440】
各カプセル組成物の0.5mLアリコートを、ヌードマウスのIP空間に移植した。移植後4週間で、動物を屠殺し、各マウスからカプセル及び血液サンプルを採取した。これらのサンプルにおけるFIXの血漿レベルを、ELISAで測定した。テクスチャーアナライザーを使用して、移植前及びエクスビボ回収時のカプセルの初期破壊を測定した。
【0441】
カプセルの初期破壊は、ポリマーの同一性及び移植前の溶液粘度により変化した。全てのカプセルを無傷で回収し、エクスビボでの機械的強度は図13Aで示すのと同様であった。図13Bに示すように、FIX-paduaの血漿レベルは、4種の粘度(79、97、143、202cP)のいずれでも、G-SLG100:0.65又はG-MVG:0.71と比較して、G-RGD:0.72を含むカプセルで最高であった。まとめると、これらのデータは、コンジュゲートされたRGDペプチドを有するポリマーの同一性が、ヒドロゲルカプセルにより生じたFIXレベルに対して有意な影響を有し得ることを示し、さらには、本実施例で説明されているように構成されたカプセルでは、最高の血漿FIXレベルを達成するためにはSLG20ポリマーが最適であり得ることも示す。
【0442】
実施例17:内側カプセル区画中における1G-HAVDI-アルギン酸塩中でのARPE19:FIX細胞のカプセル化により、移植後の血漿FIXレベルが上昇する
ARPE19:FIX細胞をカプセル化する対照及びHAVDI修飾(配列番号38)2区画ヒドロゲルミリカプセルの組成物を、実施例4で説明したように、同心針を通して第1及び第2のアルギン酸塩溶液を押し出すことにより調製した。第2の(外側)区画用のアルギン酸塩溶液は、細胞フリー70:30 CM-LMW-Alg-101:U-HMW-Alg溶液であり、第1の(内側)区画用のアルギン酸塩溶液は、表6で説明されている70:30 CM-LMW-Alg-101:U-HMW-Alg溶液(対照)又はHAVDI修飾アルギン酸塩溶液(G-HAVDI:0.38%)中の1億個の細胞/mlでのARPE19:FIX細胞の懸濁液であった。
【0443】
各カプセル組成物の0.5mLのアリコートを、ヌードマウスの腹腔内(IP)空間に移植した(1種の組成物当たり4匹のマウス)。移植後2週間で、各マウスの中間出血からサンプルを採取した。これらのサンプルにおけるFIXの血漿レベルをELISAで測定し、結果を図14に示す。
【0444】
血漿FIXレベルは、対照と比較してHAVDI修飾アルギン酸塩カプセルで約2倍高く、このことは、第1の区画内のカドヘリンに由来するCBPで修飾されたアルギン酸塩(例えばG-HAVDI)の存在により、インビボでのFIX血漿レベルが上昇し得ることを示す。
【0445】
実施例18:ARPE19:FIX-Padua細胞をカプセル化する内側区画中のG-RGD修飾ポリマーは、IP部位及びSubQ部位からの血漿中のFIXレベルを上昇する
ARPE19:FIX-Padua細胞をカプセル化する2区画ヒドロゲルミリカプセルの組成物を、実施例4で説明したように、同心針を通して第1及び第2のアルギン酸塩溶液を押し出すことにより調製した。第2の(外側)区画は、70:30 CM-LMW-Alg-101-Medium:U-HMW-Alg溶液から形成され、内側区画は、表6で説明されているG-RGD:0.33から形成され、これらのそれぞれは、1億個のARPE19:FIX-Padua細胞/mlを含んだ。
【0446】
カプセルを、0.2mLのカプセル/動物にて、ヌードマウスのIP部位及びSubQ部位に移植した。10日後に動物を屠殺し、血漿サンプル及びカプセルを回収した。血漿中のFIXレベルをELISAで決定し、1個のカプセル当たりの生存細胞の数をCell Titer Gloで決定した。
【0447】
図15Aに示すように、全ての条件から血漿中でFIXを検出したが、カプセルがSubQではなくIPに移植された動物でレベルがより高かった。FIXレベルは、IP部位及びSubQ部位の両方に関して、対照と比較してG-RGD含有カプセルが高かった。図15Bに示すように、1個のカプセル当たりの生存細胞の数は、SubQと比較してIPから回収したカプセルがわずかに高かった。まとめると、このことは、CBP含有カプセルは複数の投与経路から治療用タンパク質の血清レベルを上昇させ得ることを示す。
【0448】
実施例19:ARPE19:FVII細胞をカプセル化する内側区画中のG-RGD修飾ポリマーは、IP部位及びSubQ部位から検出可能なFVIIを引き起こす
ARPE19:FVII細胞をカプセル化するカプセルを、1G-RGD:0.33で調製し、実施例18で説明したように移植した。図16は、FVIIがIP部位及びSubQ部位の両方からの血漿中で検出可能であったことを示し、このことは、1G-RGD:0.33を含むカプセルをFVIIの送達に使用し得ること、及びこのカプセルをIP又はSubQに移植し得ることを示す。
【0449】
実施例20:高コンジュゲートG-RGDアルギン酸と非修飾アルギン酸塩とのブレンドで調製されたカプセルは、1G-RGD:0.33アルギン酸塩と同様のFIXレベルを達成する
ARPE19:FIX-Padua細胞をカプセル化する2区画ヒドロゲルミリカプセルの組成物を、実施例4で説明したように、同心針を通して第1及び第2のアルギン酸塩溶液を押し出すことにより調製した。第2の(外側)区画は、70:30 CM-LMW-Alg-101-Medium:U-HMW-Alg溶液から形成されており、内側区画は、表6で説明されている様々な初期ポリマーを使用して、下記のアルギン酸塩溶液の内の1つから形成されており、これらのそれぞれは、1億個のARPE19:FIX-Padua細胞/mlを含んだ:
(1)1G-RGD:0.33
(2)1G-RGD:6.04,1:55
(3)1G-RGD:6.04,1:30
(4)1G-RGD:6.04,1:15。
【0450】
各カプセル組成物の0.5mLアリコートを、ヌードマウスのIP空間に移植した。移植後2週間で、動物を屠殺し、各マウスからカプセル及び血液サンプルを回収した。これらのサンプルにおけるFIXの血漿レベルを、ELISAで測定した。
【0451】
図17に示すように、FIX-paduaの血漿レベルは、G-RGD:6.04,1:55及びG-RGD:6.04:1:15と比較して、1G-RGD:0.33及びG-RGD:6.04,1:30(0.20%のN)を含むカプセルが最高であった。まとめると、これらのデータは、より高いコンジュゲートポリマーと非コンジュゲートポリマーとをブレンドすることにより、最適なRGDコンジュゲーションレベルをほぼ同一レベルまで模倣し得ることを示す。加えて、本実施例で説明されたブレンド溶液により、実施例12で説明されているものと同様の中間コンジュゲーションレベルで最高FIXレベルが存在する。
【0452】
実施例21:線維化を予防するには第1の区画内に1G-RGDが含まれなければならない
ARPE19:FIX-Paduaをカプセル化する2区画ヒドロゲルミリカプセルの組成物を、実施例4で説明したように、同心針を通して第1及び第2のアルギン酸塩溶液を押し出すことにより調製した。カプセルの組成物を、第1の区画溶液及び第2の区画溶液の下記の組み合わせで調製し、第1の区画中で2千万個のARPE19:FIX細胞/mlをカプセル化した:(1)第1:非修飾1.4w/v% SLG20、第2:CM-LMW-Alg-101-High:U-HMW-Alg、(2):第1:1G-RGD:0.33、第2:CM-LMW-Alg-101-High:U-HMW-Alg、及び(3):第1:溶液中の0.33%のNを達成するまで非コンジュゲートG-RGDペプチドとブレンドされた非修飾1.4w/v% SLG20、及び(4):第1:非修飾1.4w/v% SLG20、第2:1G-RGD:0.33。
【0453】
カプセルを、2週間にわたり、C57/BL6マウスのIP空間に0.5mL/動物で移植した。屠殺時に、カプセルを回収した。回収したカプセルを、抗F4/80でマウスマクロファージに関して染色し、線維化の存在に関して蛍光顕微鏡で撮像した。
【0454】
図18に示すように、第1の区画中に対照、コンジュゲート1G-RGD:0.33、又は非コンジュゲート0.33%N G-RGDペプチドを有するカプセルに関して、同様のマクロファージ付着を観察した。特に、第1の区画内に非コンジュゲート0.33%N G-RGDを含むカプセルは、対照と比較してマクロファージ付着が増加しておらず、このことは、非コンジュゲートG-RGDが線維化反応を駆動しないことを示す。重要なことに、G-RGD:0.33アルギン酸塩を第2の(外側)区画に使用したカプセルに関してはマクロファージ付着が増加しており、このことは、線維化を予防するためにはカプセルの第1の(内側)区画内にCBP-アルギン酸塩が含まれなければならないことを示す。
【0455】
実施例22:2種のポリマーを一緒にブレンドした場合の、又は同一のポリマーにコンジュゲートした場合の、G-RGD及びG-PHSRNによるARPE19:FIX細胞のカプセル化は、移植後の同様の血漿FIXレベルを生じる
ARPE19:FIX-Padua細胞をカプセル化する2区画ヒドロゲルミリカプセルの組成物を、実施例4で説明したように、同心針を通して第1及び第2のアルギン酸塩溶液を押し出すことにより調製した。第2の(外側)区画は、70:30 CM-LMW-Alg-101-Medium:U-HMW-Alg溶液から形成されており、内側区画は、表6で説明されている様々な初期ポリマーを使用して、下記のアルギン酸塩溶液の内の1つから形成されており、これらのそれぞれは、1億個のARPE19:FIX-Padua細胞/mlを含んだ:
(1)1G-RGD:0.72とG-PHSRN:0.83との1:1ブレンド;
及び
(2)PHSRN/RGD、同一のポリマー(全体で0.87%のN)。
【0456】
各カプセル組成物の0.5mLアリコートを、ヌードマウスのIP空間に移植した。移植後2週間で、動物を屠殺し、各マウスからカプセル及び血液サンプルを回収した。これらのサンプルにおけるFIXの血漿レベルを、ELISAで測定した。
【0457】
図19に示すように、FIXの血漿レベルは、G-RGD及びG-PHSRNの両方を含むカプセルの両方組成物で同様であった。
【0458】
実施例23:RGDSPコンジュゲートアルギン酸塩中でカプセル化されたARPE19-FIX細胞の産生性に対するリンカー組成物の評価
ARPE19:FIX細胞をカプセル化する2区画ヒドロゲルミリカプセルの組成物を、実施例4で説明したように、同心針を通して第1及び第2のアルギン酸塩溶液を押し出すことにより調製した。第2の(外側)区画は、70:30 CM-LMW-Alg-101-High:U-HMW-Alg溶液から形成されており、内側区画は、リンカーなしで、又は1個、2個、3個、4個、若しくは6個のグリシン残基(1G、2G、3G、4G(配列番号61)、6G(配列番号69))からなるリンカーによるか、又は1個のβ-アラニン残基からなるリンカーによりアルギン酸塩にコンジュゲートしたRGDSPペプチド(配列番号59)を含むRGD-アルギン酸塩溶液から形成された。ペプチドコンジュゲーションレベルを、窒素含有量パーセントに関して凍結乾燥後の元素分析により決定し、下記を得た:リンカーなしの場合は0.19%のN、1Gリンカーの場合は0.30%のN、2Gリンカーの場合は0.32%のN、3Gリンカーの場合は0.29%のN、4Gリンカー(配列番号61)の場合は0.48%のN、6Gリンカーの場合は0.43%のN、及び1個のβ-アラニンで連結されたRGDSPペプチド(配列番号59)の場合は0.28%のN。ARPE19:FIX細胞を、1億個の細胞/mLで第1の(内側)区画にカプセル化した。各カプセル組成物の0.25mLアリコートを、ヌードマウスのIP空間に移植した(n=3/群)。移植後12日で、動物を屠殺し、各マウスから血漿を採取した。これらのサンプルにおけるFIXの血漿レベルを、ELISAで測定した。
【0459】
図22に示すように、第1の(内側)区画ポリマーにRGDSPペプチド(配列番号59)をコンジュゲートさせるために使用されるリンカーの選択は、血漿中で検出されるFIXのレベルに影響を及ぼした。カプセルにより生じた血漿FIXレベルは、ペプチド修飾アルギン酸塩中のグリシンリンカー残基の数が3から4へと及び4から6へと増加した場合に、有意に低下した。対照的に、ペプチドRGDSP(配列番号59)がリンカーを介することなく付着したか又は1G、2G、3G、若しくは1-β-アラニンリンカーの内のいずれかを介して付着したアルギン酸塩を含むカプセルにより生じた血漿FIXレベルは、同様のレベルであった。
【0460】
実施例24:GRDGSPコンジュゲートアルギン酸塩の低から中程度の粘度は、FIXレベルを最大化する
ARPE19:FIX細胞をカプセル化する2区画ヒドロゲルミリカプセルの組成物を、実施例4で説明したように、同心針を通して第1及び第2のアルギン酸塩溶液を押し出すことにより調製した。第2の(外側)区画は、70:30 CM-LMW-Alg-101-High:U-HMW-Alg溶液から形成されており、内側区画は、アルギン酸塩にコンジュゲートしたGRGDSPペプチド(配列番号60)を含むRGD-アルギン酸塩溶液から形成された。このRGD-アルギン酸塩溶液を、下記の様々な溶液粘度に製剤化した:91、112、142、228、366、453cP。ペプチドコンジュゲーションレベルを、窒素含有量パーセントに関して凍結乾燥後の元素分析により決定し、下記を得た:それぞれ、91cP、142cP、228cPのサンプルの場合には0.38%のN、並びに112cP、366cP、及び453cPのサンプルの場合には0.32%のN。これらのRGD-アルギン酸塩溶液を使用して、1億個の細胞/mLで第1の(内側)区画中にARPE19:FIX細胞をカプセル化した。各カプセル組成物の0.25mLアリコートを、ヌードマウスのIP空間に移植した(n=4/群)。移植後18日で、動物を屠殺し、各マウスから血漿を採取した。これらのサンプルにおけるFIXの血漿レベルを、ELISAで測定した。
【0461】
図23に示すように、第1の(内側)区画ポリマー溶液の粘度は、血漿中で検出されるFIXのレベルに影響を及ぼした。ARPE19:FX細胞は、より高い粘度の溶液(366cP及び453cP)中でカプセル化された場合と比べて、低から中程度の粘度の溶液(91cP~228cP)中でカプセル化された場合に、高い血漿FIXレベルを生じた。
【0462】
実施例25:例示的な定量的ペプチドコンジュゲーションアッセイ
このアッセイでは、CBP-ポリマーのサンプルを、CBPを個々のアミノ酸として開裂する酸性加水分解にかけることにより、CBP-ポリマー中のペプチドの量が決定される。この加水分解サンプル中の個々のアミノ酸を分離し、プレカラムオンライン誘導体化と逆相液体クロマトグラフィー-紫外線蛍光(LC-UV-FLR)とにより、アミノ酸基準を使用して定量する(出典:Agilent Biocolumns Amino Acid Analysis“How-To”Guide,Agilent Technologies,Inc.,5991-7694EN,2018年3月1日刊行)。一次AA(例えば、20種の標準的なL-アルファアミノ酸の内のプロリンを除く全て)を、オルト-フタルアルデヒド(OPA)で誘導体化し、二次AA(例えばプロリン)を、9-フルオレニルメチルクロロホルメート(FMOC)で誘導体化する。次いで、各アミノ酸のモル濃度を平均化して、サンプル中の全ペプチドの濃度を算出する。例えば実施例26で説明されている任意の適切な分析技術を使用して、CBP-ポリマーの非加水分解サンプル中のペプチドの量を決定し、この量を全ペプチド量から減算することにより、CBP-ポリマー中の任意の残留する非コンジュゲートCBPの存在に関して、この濃度を補正し得る。
【0463】
このアッセイを、GRGDSP-アルギン酸塩中のペプチドコンジュゲーション密度を決定するために適用されるとして下記でさらに説明するが、当業者は、非修飾ポリマーがいかなるアミノ酸も含まない場合には、GRGDSP-アルギン酸塩又は他のペプチド修飾ポリマー中のペプチド濃度を決定するために、このアッセイを容易に変更し得る。同様に、当業者は、下記に示す任意の機器、器具、又は化学物質を、このアッセイにおいて実質的に同一の機能又は役割を実施し得るか又は果たし得る別の機器、器具、又は化学物質に容易に置き換え得る。
【0464】
定義
【0465】
【表9】
【0466】
機器、器具、及び化学物質
機器
・ Agilent 1260 LCシステム
・ Agilentダイオードアレイ検出器(G1315D):13μL/10mm フローセル
・ Agilent蛍光検出器(G1321B)
・ ChemStationソフトウェア
・ 加熱ブロックを備えたホット/撹拌プレート、IKA RCT BS001
・ 分析天秤、Mettler Toledo XPE105
・ pHメーター、Mettler Toledo S220 SevenCompact
・ 遠心分離機、Beckman Coulter Allegra 25R
・ ボルテックスミキサ、VWR 97043-562
・ 加熱装置付き窒素エバポレータ(耐酸性)、Organomation 1156Y80
【0467】
器具
・ AdvanceBio AA LCカラム、2.7μm、4.6×100mm、Agilent 655950-80
・ AdvanceBio AAAガードカラム、2.7μm、4.6×5mm、Agilent 820750-931
・ PTFE裏打ちキャップ付きマイクロ波反応バイアル、Chemglass CG-4920-02
・ 50mL遠心分離管、VWR 10160-140
・ クリンパ、Chemglass CG-4930-20
・ デキャッパー(Decapper)、VWR 10806-372
・ メスシリンダー、クラスA
・ 容積測定トランスファーピペット(送達用)クラスA
・ メスフラスコ、クラスA
・ トランスファーピペット(200μL可変容積)、Eppendorf 3123000055
・ トランスファーピペット(1000μL可変容積)、Eppendorf 3123000063
・ トランスファーピペット(10mL可変容積)、Eppendorf 3123000080
・ 使い捨てトランスファーピペット、VWR 16001-180
・ 撹拌子、VWR 58948-078
・ LCバイアル(2mL)、Agilent 5182-0716
・ LCバイアルキャップ(プレスリットなし)、Agilent 5182-0721
・ LCバイアルインサート(250μL)、Agilent 5183-2085
・ 様々な実験室のガラス製品
【0468】
化学物質
【0469】
【表10】
【0470】
手順
試薬調製
注記:体積を比例的に増減させて、より小さいバッチ又はより大きいバッチを作製し得る
【0471】
10mM Na2HPO4/Na2B4O7/pH8.2(水性移動相)
・ 1Lメスシリンダーを使用して、LCMSグレードの水 1Lを測定して移動相ボトルに移す
・ Na2HPO4・7H2O 2.64±0.10gを秤量する
・ Na2B4O7 2.00±0.10gを秤量する
・ 両方の塩を、水1Lが入った同一のボトルに入れる
・ この同一のボトルに6N HCl 2.4mLをピペットする
・ 固体が完全に溶解するまで、周囲温度にて撹拌プレートで撹拌する
・ 6N HClで最終pHを8.20±0.05に調整する
使用期限/貯蔵条件(周囲で1週間;2~8℃で1ヶ月)
【0472】
45/45/10 ACN/MeOH/水(有機移動相)
・ 500mLメスシリンダーを使用して、LCMSグレードのACN 450mLを測定して移動相ボトルに移す。
・ 500mLメスシリンダーを使用して、LCMSグレードのMeOH 450mLを測定して同一のボトルに移す。
・ 100mLメスシリンダーを使用して、LCMSグレードの水 100mLを測定して同一のボトルに移す。
・ 手動で反転させたり振盪させたりすることにより、十分に混合する。
使用期限/貯蔵条件(周囲で1ヶ月)
【0473】
注入用希釈剤
・ 100mLメスシリンダーを使用して、水性移動相 100mLを測定して移動相ボトルに移す
・ 同一のボトルに、濃リン酸 0.4mLをピペットする
・ 手動で反転させたり振盪させたりすることにより、十分に混合する。
使用期限/貯蔵条件(2~8℃で1ヶ月)
・ この注入用希釈剤 1.5mLをLCバイアルに移し、このバイアルを、機器分析のためにAgilent LCシステムの「4」の位置に置く
【0474】
誘導体化試薬:ホウ酸緩衝液
・ 1.5mLをLCバイアルに移し、機器分析のためにAgilent LCシステムの「1」の位置に置く
【0475】
誘導体化試薬:OPA及びFMOC
・ OPA試薬及びFMOC試薬の各々のアンプルを開封する
・ OPA試薬又はFMOC試薬 100μL(NLT)を、LCバイアルインサートが入ったLCバイアルに分注し、機器分析のために、OPA試薬が入ったLCバイアルをAgilent LCシステムの「2」の位置に置き、FMOC試薬が入ったLCバイアルをAgilent LCシステムの「3」(FMOC)の位置に置く
【0476】
凍結乾燥させたペプチド-アルギン酸塩コンジュゲートのサンプルの酸性加水分解
凍結乾燥させたコンジュゲート 12~16mgをマイクロ波反応バイアルに秤量し、底にサンプルが残っていることを確認する
下記の工程3.3.2~3.3.19に従って加水分解する
【0477】
生理食塩水中のペプチド-アルギン酸塩コンジュゲートのサンプルの酸性加水分解
コンジュゲートの生理食塩水溶液 1000±50mgを、マイクロ波反応バイアルに秤量する
10mLトランスファーピペット又は容積測定ピペットを使用して、このサンプルに6N HCl 10.0mLを添加する
撹拌子1個を入れる
クリンパによりPTFE裏打ちキャップを密封する
各サンプルバイアルを、ホット/撹拌プレート上の適合する加熱ブロックに入れる
6時間にわたり、120℃で加熱し、400rpmで撹拌する
熱源から取り出し、周囲温度まで冷却する
キャップを外し、使い捨てトランスファーピペットにより、溶液全体を反応バイアルから20mLメスフラスコに移す
空になった反応バイアルにLCMSグレードの水 2mLをピペットし、同一の使い捨てトランスファーピペットで内壁を十分にすすぎ、このすすぎ液を同一の20mLメスフラスコに完全に移す
上記の工程を2回繰り返す
LCMSグレードの水でメスフラスコの目盛りに合わせる
このフラスコをキャップして複数回反転させて、十分に混合する
50mL遠心分離管に完全に移す
10分にわたり5000rpmで遠心分離する
上清 1mLをLCバイアルに正確にピペットし、乾燥するまで(例えば翌日まで)2~8℃で貯蔵する(必要に応じて、任意の再検査のために、残余の上清を2~8℃で貯蔵する)
上清 1mLを、60℃にて窒素下で完全に乾燥させ、針が、サンプルに触れないがサンプルを素早く乾燥させるために十分に低いかを確かめる
乾燥したサンプルが入ったバイアルに、0.1μmol/mLの内部標準混合物 0.25mLをピペットする
徹底的にボルテックスする
LCバイアルインサートが入ったLCバイアルに、ピペットで移す
HPLC分析まで2~8℃で貯蔵する(工程3.6)
【0478】
標準調製
AA標準ストック溶液:10μmol/mL
・ 各AAに関して、MWに基づいて、10μmol/mLストック溶液を調製するのに必要な重量を算出する
・ 下記の例を参照されたい:
【0479】
【表11】
【0480】
・ 算出した重量を、50mLメスフラスコに秤量する
・ 0.1N HClで溶解させて目盛りに合わせる
・ キャップして反転させるか又はボルテックスすることにより、十分に混合する
・ HPLC分析まで2~8℃で貯蔵する(工程3.6)
【0481】
内部標準混合物:1μmol/mL
・ 同一の10mLメスフラスコに、ノルバリンストック溶液(10μmol/mL)1.0mL及びサルコシンストック溶液(10μmol/mL)1.0mLを正確にピペットする
・ 0.1N HClで目盛りに合わせる
・ キャップして反転させるか又はボルテックスすることにより、十分に混合する
・ HPLC分析まで2~8℃で貯蔵する(工程3.6)
【0482】
内部標準混合物:0.1μmol/mL
注記:この溶液は、乾燥後のサンプルの再構成用である
・ 10mLメスフラスコに、内部標準混合物(1μmol/mL)1.0mLを正確にピペットする
・ 0.1N HClで目盛りに合わせる
・ キャップして反転させるか又はボルテックスすることにより、十分に混合する
・ HPLC分析まで2~8℃で貯蔵する(工程3.6)
【0483】
5AA混合物(+iSTD0.1):0.025/0.1/0.25μmol/mL
・ 同一の10mLメスフラスコに、D、S、G、R、N-iSTD、S-iSTD、及びP(10μmol/mL)溶液 xxμL(下記の表を参照されたい)を正確にピペットする
・ 0.1N HClで目盛りに合わせる
・ キャップして反転させるか又はボルテックスすることにより、十分に混合する
・ HPLC分析まで2~8℃で貯蔵する(工程3.6)
【0484】
【表12】
【0485】
17AA標準(+iSTD0.1)混合物:0.1μmol/mL
・ 0.1μmol/mL 17AA標準溶液のアンプルを開封する
・ このAA標準混合物 0.9mLをLCバイアルに正確にピペットする
・ 同一のLCバイアルに、iSTD混合物(1μmol/mL)100μLを正確にピペットする
・ ボルテックスすることにより十分に混合する
・ LCバイアルインサートが入ったLCバイアルに100μLアリコートNLTを分注する
・ HPLC分析まで2~8℃で貯蔵する(工程3.6)
【0486】
HPLC条件
【0487】
【表13】
【0488】
【表14】
【0489】
HPLC分析
(サンプル分析の順序の例)
【0490】
【表15】
【0491】
システムの適合性の基準
定量に使用した目的の各AA(D/S/G/R)並びに標準の注入(UV及びFLRの両方)での内部標準(ノルバリン及びサルコシン)の保持時間及びピーク面積を分析する。
【0492】
【表16】
【0493】
データ解析-システムの適合性が合格した場合にのみサンプルを分析する
積分ガイドライン
・ 目的のAAのみを積分する
・ 「自動積分」から開始する
・ 必要に応じて積分を手動で調整する
【0494】
目的のAAの同定
・ 目的のAA及び17AA(+iSTD)標準混合物中の内部標準のRTは、5AA(+iSTD)標準混合物のRTと一致するべきである
・ 各サンプル中のAAのRTは、標準(UV/FLR)のRTと一致するべきである
相対面積(D、S、G、R)=面積(D、S、G、R)/面積(ノルバリン)
相対面積(P)=面積(P)/面積(サルコシン)
【0495】
標準較正曲線
・ 分析証明書で報告されている値を使用するか、又は標準調製中の希釈係数で調整した実重量を使用して、標準溶液の濃度を算出する。
・ 下記の標準の注入からの目的の各AAの濃度に対して、平均面積又は平均相対面積をプロットする:0.025、0.1、及び0.25μmol/mL。線形回帰を実施する。
濃度=m*面積又は相対面積+b
(式中、mは、線形近似曲線の傾きであり、bは、線形近似曲線のY切片である)
・ RSQは、0.99以上であるべきである。
・ 線形性が損なわれる場合には、新たな誘導体化試薬/標準溶液を調製し、システムの異常を解決して試験を繰り返す。
【0496】
サンプル分析
・ UV及びFLRの両方により定量を行ない得る
・ 相対面積(内部標準に対する面積比)を使用して定量を行なう
・ 線形近似標準曲線を使用して、各サンプル中のAA:G、R、D、Sの濃度を算出する:
濃度、AA(μmol/mL)=(m*面積又は相対面積+b)
・ 各AAの濃度を平均化することにより、全GRGDSP(配列番号60)の濃度を算出する:
濃度、全GRGDSP(配列番号60)(μmol/mL)=(濃度、G/2+濃度、R+濃度、D+濃度、S+濃度、P)/5
μmol(全GRGDSP)(配列番号60)/g(コンジュゲート)=濃度、全GRGDSP(配列番号60)(μmol/mL)×0.25mL/1.0mL×20mL/重量(g)
μmol(コンジュゲートGRGDSP(配列番号60))/g(コンジュゲート)=μmol(全GRGDSP(配列番号60))/g(コンジュゲート)-μmol(残留遊離GRGDSP(配列番号60))/g(コンジュゲート)
【0497】
実施例26:CBP-ポリマー組成物中の残留遊離ペプチドを決定するための例示的なアッセイ
このアッセイは、液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)を使用して、例えば、典型的には、1つ又は複数の精製工程を実施して、非コンジュゲートペプチドの相対な割合(例えば、95%超、98%、99%、又はより多く)を除去した後の、ペプチド-ポリマーコンジュゲートを含む組成物中の残留非コンジュゲートペプチドの量を決定する。簡潔には、生理食塩水中のコンジュゲートのサンプルを、ペプチドの分子量と比べて高い分子量カットオフ(MWCO)を有するMWCOチューブに入れ、このチューブを遠心分離して、このコンジュゲートから残留ペプチドを分離し、既知の濃度の同一ペプチドを含む参照組成物を標準として使用するLC-MSにより、ペプチドの量を定量する。
【0498】
実施例27:式(I)の化合物で修飾された抗線維性ポリマー中のアミンコンジュゲーション密度を決定するための例示的な定量的アミンアッセイ
このアッセイにより、アミン化合物で化学的に修飾されたポリマー中のアミン含有化合物(例えば式Iの化合物、例えば表4中の化合物101)の量が決定される。化学修飾ポリマーのサンプルを酸性加水分解に供し、この酸性加水分解によりコンジュゲートアミンが開裂され、加水分解サンプル中の全アミンの重量%を、標準として非コンジュゲートアミン化合物を使用して、紫外線検出を備える逆相液体クロマトグラフィー(LC-UV)により定量する。LCピークの同一性を、質量分析によりさらに確認し得る。全アミンの重量%を、化学修飾ポリマー中のアミン化合物の%コンジュゲーションとして使用し得る。任意の適切な方法(例えば下記で説明する方法)を使用して、化学修飾ポリマーの非加水分解サンプル中の任意の残留する非コンジュゲートアミン化合物の量を決定し、この量を全ペプチド量から減算することにより、より正確な結果を得ることができる。
【0499】
このアッセイを、化合物101で化学的に修飾されたアルギン酸塩(即ち、CM-LMW-Alg-101)中の%コンジュゲーション密度を決定するために適用されるとして下記でさらに説明するが、当業者は、アミンを含まない多糖(例えばアルギン酸塩)又は別のポリマーを化学的に修飾するために使用される任意の式Iの化合物のコンジュゲーション密度を決定するために、このアッセイを容易に変更し得る。同様に、当業者は、下記に示す任意の機器、器具、又は化学物質を、このアッセイにおいて実質的に同一の機能又は役割を実施し得るか又は果たし得る別の機器、器具、又は化学物質に容易に置き換え得る。
【0500】
定義
【0501】
【表17】
【0502】
機器及び器具
機器
・ Agilent 1260 LCシステム(DAD:13μL/10mmフローセル)
・ Agilent SQ MS検出器(G1956B)
・ ChemStationソフトウェア
・ 加熱ブロックを備えたホット/撹拌プレート、IKA RCT BS001
・ 分析天秤、Mettler Toledo XPE105
・ 遠心分離機、Beckman Coulter Allegra 25R
・ ボルテックスミキサ、VWR 97043-562
【0503】
器具
・ XBridge C18、2.5μm、4.6×50mm、Waters 186006037
・ SG-SM0001参照物質(>98.0%純度)
・ 2N HCl(ACSグレード)、BDH 7203-1
・ アンモニア溶液28%-30%(ACSグレード)、MilliPore Sigma 1.05423.1000
・ アセトニトリル(LCMSグレード)、Fisher Chemical A955-4
・ 水(LCMSグレード)、Fisher Chemical W6-4
・ 0.9%生理食塩水、ROBio SAL-090
・ PTFE裏打ちキャップ付きマイクロ波反応バイアル、Chemglass CG-4920-02
・ Vivaspin 20 3kDa MWCO濃縮器、GE Healthcare 28-9323-58
・ 50mL遠心分離管、VWR 10160-140
・ クリンパ、Chemglass CG-4930-20
・ デキャッパー、VWR 10806-372
・ メスシリンダー、クラスA
・ 容積測定トランスファーピペット(送達用)クラスA
・ メスフラスコ、クラスA
・ ガスタイトシリンジ1mL、Hamilton 81316
・ トランスファーピペット(200μL可変容積)、Eppendorf 3123000055
・ トランスファーピペット(1000μL可変容積)、Eppendorf 3123000063
・ トランスファーピペット(10mL可変容積)、Eppendorf 3123000080
・ 使い捨てトランスファーピペット、VWR 16001-180
・ 撹拌子、VWR 58948-078
・ LCバイアル及びキャップ、VWR 46610-724
・ 実験室のガラス製品一式
【0504】
手順
試薬調製
注記:体積を比例的に増減させて、より小さいバッチ又はより大きいバッチを作製し得る
【0505】
0.1%アンモニア水(水性移動相)
・ 1Lメスシリンダーを使用して、LCMSグレードの水 1Lを測定して移動相ボトルに移す。
・ 1mL容積測定トランスファーピペット又はHamiltonシリンジを使用して、濃アンモニア 1.0mLを測定して同一の移動相ボトルに移す。
・ 手動で反転させたり振盪させたりすることにより、十分に混合する。
・ 使用期限/貯蔵条件-周囲で1ヶ月
【0506】
ACN中の0.1% アンモニア(有機移動相)
・ 1Lメスシリンダーを使用して、LCMSグレードのACN 1Lを測定して移動相ボトルに移す。
・ 1mL容積測定トランスファーピペット又はHamiltonシリンジを使用して、濃アンモニア 1.0mLを測定して同一の移動相ボトルに移す。
・ 手動で反転させたり振盪させたりすることにより、十分に混合する。
・ 使用期限/貯蔵条件-周囲で1ヶ月
【0507】
固体コンジュゲートサンプルの酸性加水分解
凍結乾燥させたコンジュゲート固体 50±5mgをマイクロ波反応バイルに秤量し、このバイアルの底にコンジュゲートが残っていることを確認する
10mLトランスファーピペット又は容積測定ピペットを使用して、2N HCl 10.0mLを添加する
撹拌子1個を入れる
クリンパによりPTFE裏打ちキャップを密封する
各サンプルバイアルを、ホット/撹拌プレート上の適合する加熱ブロックに入れる
120分にわたり、120℃で加熱し、400rpmで撹拌する
熱源から取り出し、周囲温度まで冷却する
使い捨てトランスファーピペットにより、溶液全体を反応バイアルから25mLメスフラスコに移す
空になった反応バイアルにLCMSグレードの水 5mLをピペットし、同一の使い捨てトランスファーピペットで内壁を十分にすすぎ、このすすぎ液を同一の25mLメスフラスコに完全に移す
上記の工程を2回繰り返す
LCMSグレードの水でメスフラスコの目盛りに合わせる
50mL遠心分離管に完全に移す
10分にわたり3000rpmで遠心分離する
上清をHPLC分析にかける
2~8℃で貯蔵する
【0508】
生理食塩水中のコンジュゲートのサンプルの酸性加水分解
コンジュゲートの生理食塩水溶液 1000±50mgを、マイクロ波反応バイアルに秤量する
10mLトランスファーピペット又は容積測定ピペットを使用して、2N HCl 10.0mLを添加する
撹拌子1個を入れる
クリンパによりPTFE裏打ちキャップを密封する
各サンプルバイアルを、ホット/撹拌プレート上の適合する加熱ブロックに入れる
120分にわたり、120℃で加熱し、400rpmで撹拌する
熱源から取り出し、周囲温度まで冷却する
使い捨てトランスファーピペットにより、溶液全体を反応バイアルから25mLメスフラスコに移す
空になった反応バイアルにLCMSグレードの水 5mLをピペットし、同一の使い捨てトランスファーピペットで内壁を十分にすすぎ、このすすぎ液を同一の25mLメスフラスコに完全に移す
上記の工程を2回繰り返す
LCMSグレードの水でメスフラスコの目盛りに合わせる
50mL遠心分離管に完全に移す
10分にわたり3000rpmで遠心分離する
上清をHPLC分析にかける
2~8℃で貯蔵する
【0509】
固体コンジュゲート中の残留遊離アミンのサンプル調製
凍結乾燥させたコンジュゲート固体 50±5mgを、シンチレーションバイアルに秤量する
このシンチレーションバイアルに、生理食塩水5.0mLをピペットする
10分にわたり振盪させたりボルテックスしたりすることにより、完全に溶解させる
MWCOチューブに完全に移す
60分にわたり5000rpmで遠心分離する(膜の平坦面を、ローターアームと並行に配置する)
このMWCOチューブの上部を取り除いて廃棄する
底部のサンプルを5mLメスフラスコに完全に移す
水又は生理食塩水で目盛りに合わせ、反転させて十分に混合する
シンチレーションバイアルに移して2~8℃で貯蔵する
アリコートをHPLC分析に移す
【0510】
生理食塩水中におけるコンジュゲート中の残留遊離アミンのサンプル調製
生理食塩水中のコンジュゲート(又は非修飾アルギン酸塩とのブレンド)1000±50mgを、WMCOチューブに秤量する
このMWCOチューブに生理食塩水 4.0mLをピペットする
このチューブを、5回か又は溶液が十分に混合されるまで反転させたりボルテックスしたりして、遊離アミンを完全に抽出する
90分にわたり5000rpmで遠心分離する
このMWCOチューブの上部を取り除いて廃棄する
底部のサンプルを5mLメスフラスコに完全に移す
水で目盛りに合わせ、反転させて十分に混合する
シンチレーションバイアルに移して2~8℃で貯蔵する
アリコートをHPLC分析に移す
【0511】
標準調製
標準溶液:1mg/mL
SG-SM0001標準 50.00±5.00mgを、シンチレーションバイアルに秤量する
LCMSグレードの水 約10mLを添加し、振盪させたりボルテックスしたりして固体を完全に溶解させる
使い捨てトランスファーピペットを使用して、このシンチレーションバイアルをLCMSグレードの水で2回すすぐことにより、50mLメスフラスコに完全に移す
LCMSグレードの水で体積を合わせ、十分に混合する
2~8℃で貯蔵する
【0512】
標準溶液:0.01mg/mL
・ 10mLメスフラスコに、この1mg/mL溶液 100μLをピペットする
・ LCMSグレードの水で体積を合わせる
・ 反転させることにより十分に混合する
・ 2~8℃で貯蔵する
【0513】
HPLC条件
【0514】
【表18】
【0515】
HPLC分析
サンプル分析の順序の例
【0516】
【表19】
【0517】
システムの適合性の基準
【0518】
【表20】
【0519】
データ解析-システムの適合性が合格した場合にのみサンプルを分析する
積分ガイドライン
・ アミンピークのみを積分する
・ 「自動積分」から開始する
・ 必要に応じて積分を手動で調整する
【0520】
アミンの同定
・ (任意選択)各サンプル中のアミンピークのm/zは、392.1±0.5内であるべきである。
・ 各サンプルにおけるUVでのアミンピークのRTは、標準のRTと一致する。
【0521】
濃度、標準(mg/mL)=
重量(mg)/50mL/希釈係数、
ここで、1.0mg/mL 標準の場合には、希釈係数=1;
0.01mg/mL 標準の場合には、希釈係数=100
【0522】
濃度、遊離アミン(mg/mL)=
面積、非加水分解サンプル/面積、0.01標準×濃度、0.01標準
【0523】
%残留遊離アミン=
濃度、遊離アミン(mg/mL)×5mL/
重量、非加水分解コンジュゲート(mg)×100
【0524】
濃度、全アミン(mg/mL)=
面積、加水分解サンプル/面積、1.0標準×濃度、1.0標準
【0525】
%全アミン=
濃度、全アミン(mg/mL)×25mL/重量、加水分解コンジュゲート(mg)×100
【0526】
均等物及び範囲
本出願は、それらの全体が参照により本明細書において援用されている、種々の発行された特許、公開された特許出願、学術記事、書籍、マニュアル及び他の刊行物を参照する。援用された文献のいずれかと、本明細書との間に齟齬が存在する場合、本明細書が優先されるべきである。加えて、従来技術に属する本開示の特定の実施形態のいずれかは、いずれかの1つ又は複数の請求項からは明示的に除外され得る。このような実施形態は技術分野における当業者に公知であるとみなされるため、これらは、本明細書において明示的に除外されていない場合においても除外され得る。本開示の特定の実施形態のいずれかは、従来技術の存在に関連しているかに関係なく、いかなる理由によってもいずれかの請求項から除外可能である。
【0527】
当業者は、多くのルーチン的な実験を行うことなく、本明細書に記載の特定の実施形態の均等物を認識又は確認可能である。本明細書に記載の本実施形態の範囲が上記の明細書、図面又は実施例に限定されることは意図されておらず、添付の特許請求の範囲に記載されているとおりであることが意図されている。当業者は、以下の特許請求の範囲において定義されているとおり、本開示の趣旨又は範囲を逸脱することなく、本記載に対する種々の変更及び修正が可能であり得ることを認めるであろう。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図24-1】
図24-2】
図24-3】
図24-4】
図24-5】
図24-6】
図24-7】
図24-8】
図24-9】
図24-10】
図24-11】
図24-12】
図24-13】
図24-14】
図24-15】
図24-16】
図24-17】
図24-18】
図24-19】
図24-20】
図24-21】
図24-22】
図24-23】
図24-24】
図24-25】
図24-26】
図24-27】
図24-28】
図24-29】
【配列表】
2022514144000001.app
【国際調査報告】