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特表2022-514162臨床試験をデザインするシステムと方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-10
(54)【発明の名称】臨床試験をデザインするシステムと方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/20 20180101AFI20220203BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20220203BHJP
【FI】
G16H10/20
G06N20/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021518936
(86)(22)【出願日】2019-10-01
(85)【翻訳文提出日】2021-05-27
(86)【国際出願番号】 US2019054147
(87)【国際公開番号】W WO2020072548
(87)【国際公開日】2020-04-09
(31)【優先権主張番号】16/149,954
(32)【優先日】2018-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
2.Python
(71)【出願人】
【識別番号】521138556
【氏名又は名称】オリジェント・データ・サイエンシーズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・エル・エニスト
(72)【発明者】
【氏名】アルバート・エイ・テイラー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・イー・ボーリュー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・エイ・カイマー
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA03
(57)【要約】
臨床試験に患者候補を登録する方法は、第1の臨床試験に参加した第1の患者のグループに対して、予測モデルおよび第1の患者のグループに関連する臨床データを用いて、状態の予測された進行を示す第1の予測データを生成するステップと、第1の予測データに基づいて臨床試験データをサブセットにグループ化するステップと、臨床試験データの各サブセットを分析して、治療の有効性の尺度を生成するステップと、第1の患者のグループ全体に対する治療の有効性の尺度よりも高い有効性の尺度を有する少なくとも一つのサブセットを特定することにより、第2の臨床試験のためのスクリーニング基準を確立するステップと、第2の臨床試験の候補の臨床データを受信するステップと、候補の第2の予測データを生成するステップと、第2の予測データがスクリーニング基準を満たす場合に、候補を第2の臨床試験に登録するステップと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療のための臨床試験に患者候補を登録する方法であって、
第1の臨床試験に参加した第1の患者のグループに対して、予測モデルおよび第1の患者のグループに関連する臨床データを用いて、状態の予測された進行を示す第1の予測データを生成するステップであって、前記予測モデルは、状態を有する第2の患者のグループに関連する臨床データに基づいて構築された、第1の予測データを生成するステップと、
前記第1の患者のグループに関連する臨床試験データを、前記第1の予測データに基づいて臨床試験データの複数のサブセットにグループ化するステップであって、臨床試験データの各サブセットは、前記第1の患者のグループの対応するサブグループに関連付けられている、グループ化するステップと、
臨床試験データの各サブセットを分析し、夫々のサブセットに対応する患者のサブグループに対する治療の有効性の尺度を生成する、分析するステップと、
前記複数のサブセットのうち、前記第1の患者のグループ全体に対する治療の有効性の尺度よりも高い有効性の尺度を有する少なくとも一つのサブセットを特定することにより、前記治療に関する第2の臨床試験のための少なくとも一つのスクリーニング基準を確立するステップであって、前記少なくとも一つのスクリーニング基準は、前記特定されたサブセットに関連する予測データ値の範囲に基づいている、確立するステップと、
治療のための前記第2の臨床試験の候補に関連する臨床データを受信するステップと、
前記予測モデルと前記候補に関連する前記臨床データを用いて、前記候補の状態の進行予測を示す第2の予測データを生成するステップと、
前記第2の予測データが、少なくとも一つのスクリーニング基準を満たすかどうかを判定するステップと、
前記第2の予測データが前記少なくとも一つのスクリーニング基準を満たすとの判定に従って、前記候補を前記第2の臨床試験に登録するステップと、並びに、
前記第2の予測データが前記少なくとも一つのスクリーニング基準を満たさないと判定に従って、前記第2の臨床試験に対して前記候補を拒絶するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
治療の目標に基づいて、複数の異なる予測モデルから予測モデルを選択するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第2の患者のグループの臨床データに関する学習機械をトレーニングすることにより、予測モデルを構築するステップを含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記学習機械をトレーニングする前に、前記第2の患者のグループの臨床データを標準化するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記予測モデルは、少なくとも一つの状態進行指標を予測し、前記第2の患者のグループの臨床データは、少なくとも一つの状態進行指標のデータを含む、請求項1~4のいずれか一に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の患者のグループに関連する臨床データは、前記第1の臨床試験の前に生成される臨床データである、請求項1~5のいずれか一に記載の方法。
【請求項7】
一つのサブセットに関連する患者の数が、少なくとも一つの他のサブセットに関連する患者の数と等しい、請求項1~6のいずれか一に記載の方法。
【請求項8】
一つのサブセットに関連する患者の数が、少なくとも一つの他のサブセットに関連する患者の数と異なる、請求項1~7のいずれか一に記載の方法。
【請求項9】
前記予測モデルは、少なくとも一つの状態進行指標を予測し、治療の有効性の尺度が少なくとも一つの状態進行指標に基づいている、請求項1~8のいずれか一に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の患者のグループ全体に対する治療の有効性の尺度が、対照グループと治療グループとの間の治療結果に統計的に有意な差がないことを示す、請求項1~9のいずれか一に記載の方法。
【請求項11】
前記有効性の尺度が、対照患者の治療結果と治療患者の治療結果とを比較することによって生成される、請求項1~10のいずれか一に記載の方法。
【請求項12】
前記複数のサブセットのうちのあるサブセットを特定することが、閾値試験を満たす有効性の尺度を有するサブセットを特定することを含む、請求項1~11のいずれか一に記載の方法。
【請求項13】
前記閾値試験が、0.05を超えないp値である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記複数のサブセットのうちの少なくとも一つのサブセットを特定することは、サブグループのサイズおよび予測データ値の関数として有効性の尺度の表現をプロットすることを含む、請求項1~13のいずれか一に記載の方法。
【請求項15】
有効性の尺度の表現をプロットすることは、ヒートマップを生成することを含み、外観の変化は有効性の尺度の変化を示す、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ヒートマップは、前記患者のグループ全体に対する治療の有効性の尺度の表現を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記複数のサブセットのうち少なくとも一つのサブセットを特定することは、同じ外観を有する位置に囲まれたヒートマップ上の位置を特定することを含む、請求項15または請求項16に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも一つのスクリーニング基準は、予測データ値の範囲の最大値と予測データ値の範囲の最小値とを含む、請求項1~17のいずれか一に記載の方法。
【請求項19】
候補の臨床データが、臨床医から臨床試験候補ポータルを介して受信される、請求項1~18のいずれか一に記載の方法。
【請求項20】
候補を第2の臨床試験に登録する、または拒絶する指示を臨床医に送信するステップを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記予測データ値の範囲は、上限の閾値予測データ値と下限の閾値予測データ値とを含む、請求項1~20のいずれか一に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の予測データは、予測される患者の回帰、またはイベントまでの予測される時間を含む、請求項1~21のいずれか一に記載の方法。
【請求項23】
患者はヒトであり、状態は疾患である、請求項1~22のいずれか一に記載の方法。
【請求項24】
疾患が、神経変性疾患、または癌である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
第1の臨床試験が、薬剤の有効性、薬剤の異なる投与量の有効性、または、薬剤の異なる組み合わせの有効性の、少なくとも一つを判定するように構成されている、請求項1~24のいずれか一に記載の方法。
【請求項26】
登録された候補を治療するステップを含む、請求項1~25のいずれか一に記載の方法。
【請求項27】
治療のための臨床試験に候補を登録するためのシステムであって、一つ以上のプロセッサと、メモリと、並びに、前記メモリに格納され一つ以上のプロセッサによって実行可能な一つ以上のプログラムとを含み、
前記一つ以上のプロセッサによって、前記メモリに格納される前記一つ以上のプログラムは、
第1の臨床試験に参加した第1の患者のグループに対して、予測モデルおよび第1の患者のグループに関連する臨床データを用いて、状態の予測された進行を示す第1の予測データを生成するステップであって、前記予測モデルは、状態を有する第2の患者のグループに関連する臨床データに基づいて構築された、第1の予測データを生成するステップと、
前記第1の患者のグループに関連する臨床試験データを、前記第1の予測データに基づいて臨床試験データの複数のサブセットにグループ化するステップであって、臨床試験データの各サブセットは、前記第1の患者のグループの対応するサブグループに関連付けられている、グループ化するステップと、
臨床試験データの各サブセットを分析し、夫々のサブセットに対応する患者のサブグループに対する治療の有効性の尺度を生成する、分析するステップと、
前記複数のサブセットのうち、前記第1の患者のグループ全体に対する治療の有効性の尺度よりも高い有効性の尺度を有する少なくとも一つのサブセットを特定することにより、前記治療に関する第2の臨床試験のための少なくとも一つのスクリーニング基準を確立するステップであって、前記少なくとも一つのスクリーニング基準は、前記特定されたサブセットに関連する予測データ値の範囲に基づいている、確立するステップと、
治療のための前記第2の臨床試験の候補に関連する臨床データを受信するステップと、
前記予測モデルと前記候補に関連する前記臨床データを用いて、前記候補の状態の進行予測を示す第2の予測データを生成するステップと、
前記第2の予測データが、少なくとも一つのスクリーニング基準を満たすかどうかを判定するステップと、
前記第2の予測データが前記少なくとも一つのスクリーニング基準を満たすとの判定に従って、前記候補を前記第2の臨床試験に登録する通知を送信するステップと、並びに、
前記第2の予測データが前記少なくとも一つのスクリーニング基準を満たさないと判定に従って、前記第2の臨床試験に対して前記候補を拒絶する通知を送信するステップと
を、実行するものである、システム。
【請求項28】
前記一つ以上のプロセッサによって、前記メモリに格納される前記一つ以上のプログラムは、
治療の目標に基づいて、複数の異なる予測モデルから予測モデルを選択するステップを、
実行するものである、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記一つ以上のプロセッサによって、前記メモリに格納される前記一つ以上のプログラムは、
第2の患者のグループの臨床データに関する学習機械をトレーニングすることにより、予測モデルを構築するステップを、
実行するものである、請求項27または請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記一つ以上のプロセッサによって、前記メモリに格納される前記一つ以上のプログラムは、
前記学習機械をトレーニングする前に、前記第2の患者のグループの臨床データを標準化するステップを、
実行するものである、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記予測モデルは、少なくとも一つの状態進行指標を予測し、前記第2の患者のグループの臨床データは、少なくとも一つの状態進行指標のデータを含む、請求項27~30のいずれか一に記載のシステム。
【請求項32】
前記第1の患者のグループに関連する臨床データは、前記第1の臨床試験の前に生成される臨床データである、請求項27~31のいずれか一に記載のシステム。
【請求項33】
一つのサブセットに関連する患者の数が、少なくとも一つの他のサブセットに関連する患者の数と等しい、請求項27~32のいずれか一に記載のシステム。
【請求項34】
一つのサブセットに関連する患者の数が、少なくとも一つの他のサブセットに関連する患者の数と異なる、請求項27~33のいずれか一に記載のシステム。
【請求項35】
前記予測モデルは、少なくとも一つの状態進行指標を予測し、治療の有効性の尺度が少なくとも一つの状態進行指標に基づいている、請求項27~34のいずれか一に記載のシステム。
【請求項36】
前記第1の患者のグループ全体に対する治療の有効性の尺度が、対照グループと治療グループとの間の治療結果に統計的に有意な差がないことを示す、請求項27~35のいずれか一に記載の方法。
【請求項37】
前記有効性の尺度が、対照患者の治療結果と治療患者の治療結果とを比較することによって生成される、請求項27~36のいずれか一に記載のシステム。
【請求項38】
前記複数のサブセットのうちのあるサブセットを特定することが、閾値試験を満たす有効性の尺度を有するサブセットを特定することを含む、請求項27~37のいずれか一に記載のシステム。
【請求項39】
前記閾値試験が、0.05を超えないp値である、請求項38に記載のシステム。
【請求項40】
前記複数のサブセットのうちの少なくとも一つのサブセットを特定することは、サブグループのサイズおよび予測データ値の関数として有効性の尺度の表現をプロットすることを含む、請求項27~39のいずれか一に記載のシステム。
【請求項41】
有効性の尺度の表現をプロットすることは、ヒートマップを生成することを含み、外観の変化は有効性の尺度の変化を示す、請求項40に記載のシステム。
【請求項42】
前記ヒートマップは、前記患者のグループ全体に対する治療の有効性の尺度の表現を含む、請求項41に記載のシステム。
【請求項43】
前記複数のサブセットのうち少なくとも一つのサブセットを特定することは、同じ外観を有する位置に囲まれたヒートマップ上の位置を特定することを含む、請求項41または請求項42に記載のシステム。
【請求項44】
少なくとも一つのスクリーニング基準は、予測データ値の範囲の最大値と予測データ値の範囲の最小値とを含む、請求項27~43のいずれか一に記載のシステム。
【請求項45】
候補の臨床データが、臨床医から臨床試験候補ポータルを介して受信される、請求項27~44のいずれか一に記載のシステム。
【請求項46】
前記一つ以上のプロセッサによって、前記メモリに格納される前記一つ以上のプログラムは、
候補を第2の臨床試験に登録する、または拒絶する指示を臨床医に送信するステップを、
実行するものである、請求項45に記載のシステム。
【請求項47】
前記予測データ値の範囲は、上限の閾値予測データ値と下限の閾値予測データ値とを含む、請求項27~46のいずれか一に記載のシステム。
【請求項48】
前記第1の予測データは、予測される患者の回帰、またはイベントまでの予測される時間を含む、請求項27~47のいずれか一に記載のシステム。
【請求項49】
患者はヒトであり、状態は疾患である、請求項27~48のいずれか一に記載のシステム。
【請求項50】
疾患が、神経変性疾患、または癌である、請求項49に記載のシステム。
【請求項51】
第1の臨床試験が、薬剤の有効性、薬剤の異なる投与量の有効性、または、薬剤の異なる組み合わせの有効性の、少なくとも一つを判定するように構成されている、請求項27~50のいずれか一に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年10月2日に出願された米国非仮出願第16/149,954号の利益を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、一般的に、ヒトの臨床試験の設計および実施に関するものである。
【背景技術】
【0003】
疾患の進行の不均一性が高い疾患に対するヒト臨床試験は、並外れて困難である。このような疾患の例としては、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、がん、(糖尿病、C型肝炎などの)多くの慢性疾患、うつ病やPTSDなどの精神疾患などが挙げられる。ALSはその典型的な例である。最も有名なALS患者は、ルーゲーリッグとホーキング博士の2人である。ゲーリッグはALSと診断されてから約2年で亡くなったが、ホーキング博士は50年以上もALSと付き合ってきた。ホーキング博士の長寿は、ALSの治療法が優れていたからではなく、単に病気の現れ方の違いによるものである。患者の中には、すぐに死亡率に達して病気が進行する人もいれば、何十年もかけて非常に緩やかに進行する人もいる。多くの人は時間の経過とともに、速い、平均的、遅い、と交互に様々な速度で進行していく。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような疾患進行の不均一性は、ヒト臨床試験を実施しようとする創薬及び薬剤開発企業に並々ならぬ課題をもたらす。例えば、ヒト臨床試験では、知らず知らずのうちに、多くの(ホーキング博士のような)遅い進行の患者と(ゲーリッグのような)速い進行の患者を含む、広い範囲の疾患進行の患者を登録することがある。このような臨床試験では、治療を受けた患者の中に小さな陽性信号があっても、その信号がノイズの上に検出されないような、多くのばらつきや「ノイズ」があることが予想され得る。そのため、実際にはその逆のことが起こっているにもかかわらず、薬が効かない、あるいは十分に効かないという結論に達してしまうことがある。このような偽陰性により、医薬品開発プログラムが中止され、すでに投資された数千万ドルから数億ドルの損失を被る可能性がある。さらに深刻なことは、人間の苦しみを和らげる可能性のある薬が放棄されてしまうことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
幾つかの実施形態によれば、方法およびシステムは、以前に実施された臨床試験のデータに基づいて、臨床試験への登録候補をスクリーニングする。予測モデルを用いて、以前の臨床試験に参加した患者の疾患進行予測を生成する。疾患進行予測によって定義された患者のサブグループは、治療成績の向上を示すものとして識別される。臨床試験に登録する候補は、予測モデルを使用して候補の疾患進行予測を生成し、候補の予測を患者のサブグループの予測と比較することによってスクリーニングされる。候補は、スクリーニングに基づいて登録されたり、登録を拒否されたり、あるいは様々な臨床試験のサブグループに選択されたりする。
【0006】
幾つかの実施形態によると、治療のための臨床試験に患者候補を登録する方法は、
第1の臨床試験に参加した第1の患者のグループに対して、予測モデルおよび第1の患者のグループに関連する臨床データを用いて、状態の進行予測を示す第1の予測データを生成するステップであって、前記予測モデルは、状態を有する第2の患者のグループに関連する臨床データに基づいて構築された、第1の予測データを生成するステップと、
前記第1の患者のグループに関連する臨床試験データを、前記第1の予測データに基づいて臨床試験データの複数のサブセットにグループ化するステップであって、臨床試験データの各サブセットは、前記第1の患者のグループの対応するサブグループに関連付けられている、グループ化するステップと、
臨床試験データの各サブセットを分析し、夫々のサブセットに対応する患者のサブグループに対する治療の有効性の尺度を生成する、分析するステップと、
前記複数のサブセットのうち、前記第1の患者のグループ全体に対する治療の有効性の尺度よりも高い有効性の尺度を有する少なくとも一つのサブセットを特定することにより、前記治療に関する第2の臨床試験のための少なくとも一つのスクリーニング基準を確立するステップであって、前記少なくとも一つのスクリーニング基準は、前記特定されたサブセットに関連する予測データ値の範囲に基づいている、確立するステップと、
治療のための前記第2の臨床試験の候補に関連する臨床データを受信するステップと、
前記予測モデルと前記候補に関連する前記臨床データを用いて、前記候補の状態の進行予測を示す第2の予測データを生成するステップと、
前記第2の予測データが、少なくとも一つのスクリーニング基準を満たすかどうかを判定するステップと、
前記第2の予測データが前記少なくとも一つのスクリーニング基準を満たすとの判定に従って、前記候補を前記第2の臨床試験に登録するステップと、並びに、
前記第2の予測データが前記少なくとも一つのスクリーニング基準を満たさないと判定に従って、前記第2の臨床試験に対して前記候補を拒絶するステップと
を含む。
【0007】
これらの実施形態のいずれかにて、方法は、治療の目標に基づいて、複数の異なる予測モデルから予測モデルを選択するステップを含む。
【0008】
これらの実施形態のいずれかにて、方法は、第2の患者のグループの臨床データに関する学習機械をトレーニングすることにより、予測モデルを構築するステップを含む。これらの実施形態のいずれかにて、方法は、前記学習機械をトレーニングする前に、前記第2の患者のグループの臨床データを標準化するステップを含む。
【0009】
これらの実施形態のいずれかにて、前記予測モデルは、少なくとも一つの状態進行指標を予測し得、前記第2の患者のグループの臨床データは、少なくとも一つの状態進行指標のデータを含む。
【0010】
これらの実施形態のいずれかにて、前記第1の患者のグループに関連する臨床データは、前記第1の試験の前に生成される臨床データであってもよい。
【0011】
これらの実施形態のいずれかにて、一つのサブセットに関連する患者の数が、少なくとも一つの他のサブセットに関連する患者の数と等しくてもよい。
【0012】
これらの実施形態のいずれかにて、一つのサブセットに関連する患者の数が、少なくとも一つの他のサブセットに関連する患者の数と異なってもよい。
【0013】
これらの実施形態のいずれかにて、前記予測モデルは、少なくとも一つの状態進行指標を予測し得、治療の有効性の尺度が少なくとも一つの状態進行指標に基づいている。
【0014】
これらの実施形態のいずれかにて、前記第1の患者のグループ全体に対する治療の有効性の尺度が、対照グループと治療グループとの間の治療結果に統計的に有意な差がないことを示し得る。
【0015】
これらの実施形態のいずれかにて、前記有効性の尺度が、対照患者の治療結果と治療患者の治療結果とを比較することによって生成され得る。
【0016】
これらの実施形態のいずれかにて、前記複数のサブセットのうちのあるサブセットを特定することが、閾値試験を満たす有効性の尺度を有するサブセットを特定することを含み得る。これらの実施形態のいずれかにて、前記閾値試験が、0.05を超えないp値であってもよい。
【0017】
これらの実施形態のいずれかにて、前記複数のサブセットのうちの少なくとも一つのサブセットを特定することは、サブグループのサイズおよび予測データ値の関数として有効性の尺度の表現をプロットすることを含み得る。これらの実施形態のいずれかにて、有効性の尺度の表現をプロットすることは、ヒートマップを生成することを含み得、外観の変化は有効性の尺度の変化を示す。これらの実施形態のいずれかにて、前記ヒートマップは、前記患者のグループ全体に対する治療の有効性の尺度の表現を含み得る。これらの実施形態のいずれかにて、前記複数のサブセットのうち少なくとも一つのサブセットを特定することは、同じ外観を有する位置に囲まれたヒートマップ上の位置を特定することを含み得る。
【0018】
これらの実施形態のいずれかにて、少なくとも一つのスクリーニング基準は、予測データ値の範囲の最大値と予測データ値の範囲の最小値とを含み得る。
【0019】
これらの実施形態のいずれかにて、方法は、候補の臨床データが、臨床医から臨床試験候補ポータルを介して受信され得る。これらの実施形態のいずれかにて、候補を第2の臨床試験に登録する、または拒絶する指示を臨床医に送信するステップを含み得る。
【0020】
これらの実施形態のいずれかにて、前記予測データ値の範囲は、上限の閾値予測データ値と下限の閾値予測データ値とを含み得る。
【0021】
これらの実施形態のいずれかにて、前記第1の予測データは、予測される患者の回帰、またはイベントまでの予測される時間を含み得る。
【0022】
これらの実施形態のいずれかにて、患者はヒトであってもよく、状態は疾患であってもよい。これらの実施形態のいずれかにて、疾患が、神経変性疾患、または癌であってもよい。
【0023】
これらの実施形態のいずれかにて、第1の臨床試験が、薬剤の有効性、薬剤の異なる投与量の有効性、または、薬剤の異なる組み合わせの有効性の、少なくとも一つを判定するように構成され得る。
【0024】
これらの実施形態のいずれかにて、方法は、登録された候補を治療するステップを含み得る。
【0025】
幾つかの実施形態によると、治療のための臨床試験に候補を登録するためのシステムであって、一つ以上のプロセッサと、メモリと、並びに、前記メモリに格納され一つ以上のプロセッサによって実行可能な一つ以上のプログラムとを含み、
前記一つ以上のプロセッサによって、前記メモリに格納される前記一つ以上のプログラムは、
第1の臨床試験に参加した第1の患者のグループに対して、予測モデルおよび第1の患者のグループに関連する臨床データを用いて、状態の進行予測を示す第1の予測データを生成するステップであって、前記予測モデルは、状態を有する第2の患者のグループに関連する臨床データに基づいて構築された、第1の予測データを生成するステップと、
前記第1の患者のグループに関連する臨床試験データを、前記第1の予測データに基づいて臨床試験データの複数のサブセットにグループ化するステップであって、臨床試験データの各サブセットは、前記第1の患者のグループの対応するサブグループに関連付けられている、グループ化するステップと、
臨床試験データの各サブセットを分析し、夫々のサブセットに対応する患者のサブグループに対する治療の有効性の尺度を生成する、分析するステップと、
前記複数のサブセットのうち、前記第1の患者のグループ全体に対する治療の有効性の尺度よりも高い有効性の尺度を有する少なくとも一つのサブセットを特定することにより、前記治療に関する第2の臨床試験のための少なくとも一つのスクリーニング基準を確立するステップであって、前記少なくとも一つのスクリーニング基準は、前記特定されたサブセットに関連する予測データ値の範囲に基づいている、確立するステップと、
治療のための前記第2の臨床試験の候補に関連する臨床データを受信するステップと、
前記予測モデルと前記候補に関連する前記臨床データを用いて、前記候補の状態の進行予測を示す第2の予測データを生成するステップと、
前記第2の予測データが、少なくとも一つのスクリーニング基準を満たすかどうかを判定するステップと、
前記第2の予測データが前記少なくとも一つのスクリーニング基準を満たすとの判定に従って、前記候補を前記第2の臨床試験に登録する通知を送信するステップと、並びに、
前記第2の予測データが前記少なくとも一つのスクリーニング基準を満たさないと判定に従って、前記第2の臨床試験に対して前記候補を拒絶する通知を送信するステップと
を、実行するものである。
【0026】
これらの実施形態のいずれかにて、前記一つ以上のプロセッサによって、前記メモリに格納される前記一つ以上のプログラムは、
治療の目標に基づいて、複数の異なる予測モデルから予測モデルを選択するステップを、
実行し得るものである。
【0027】
これらの実施形態のいずれかにて、前記一つ以上のプロセッサによって、前記メモリに格納される前記一つ以上のプログラムは、
第2の患者のグループの臨床データに関する学習機械をトレーニングすることにより、予測モデルを構築するステップを、
実行し得るものである。これらの実施形態のいずれかにて、前記一つ以上のプロセッサによって、前記メモリに格納される前記一つ以上のプログラムは、
前記学習機械をトレーニングする前に、前記第2の患者のグループの臨床データを標準化するステップを、
実行し得るものである。
【0028】
これらの実施形態のいずれかにて、前記予測モデルは、少なくとも一つの状態進行指標を予測し得、前記第2の患者のグループの臨床データは、少なくとも一つの状態進行指標のデータを含む。
【0029】
これらの実施形態のいずれかにて、前記第1の患者のグループに関連する臨床データは、前記第1の試験の前に生成される臨床データであってもよい。
【0030】
これらの実施形態のいずれかにて、一つのサブセットに関連する患者の数が、少なくとも一つの他のサブセットに関連する患者の数と等しくてもよい。
【0031】
これらの実施形態のいずれかにて、一つのサブセットに関連する患者の数が、少なくとも一つの他のサブセットに関連する患者の数と異なってもよい。
【0032】
これらの実施形態のいずれかにて、前記予測モデルは、少なくとも一つの状態進行指標を予測し得、治療の有効性の尺度が少なくとも一つの状態進行指標に基づいている。
【0033】
これらの実施形態のいずれかにて、前記第1の患者のグループ全体に対する治療の有効性の尺度が、対照グループと治療グループとの間の治療結果に統計的に有意な差がないことを示し得る。
【0034】
これらの実施形態のいずれかにて、前記有効性の尺度が、対照患者の治療結果と治療患者の治療結果とを比較することによって生成され得る。
【0035】
これらの実施形態のいずれかにて、前記複数のサブセットのうちのあるサブセットを特定することが、閾値試験を満たす有効性の尺度を有するサブセットを特定することを含み得る。これらの実施形態のいずれかにて、前記閾値試験が、0.05を超えないp値であってもよい。
【0036】
これらの実施形態のいずれかにて、前記複数のサブセットのうちの少なくとも一つのサブセットを特定することは、サブグループのサイズおよび予測データ値の関数として有効性の尺度の表現をプロットすることを含み得る。これらの実施形態のいずれかにて、有効性の尺度の表現をプロットすることは、ヒートマップを生成することを含み得、外観の変化は有効性の尺度の変化を示す。これらの実施形態のいずれかにて、前記ヒートマップは、前記患者のグループ全体に対する治療の有効性の尺度の表現を含み得る。これらの実施形態のいずれかにて、前記複数のサブセットのうち少なくとも一つのサブセットを特定することは、同じ外観を有する位置に囲まれたヒートマップ上の位置を特定することを含み得る。
【0037】
これらの実施形態のいずれかにて、少なくとも一つのスクリーニング基準は、予測データ値の範囲の最大値と予測データ値の範囲の最小値とを含み得る。
【0038】
これらの実施形態のいずれかにて、候補の臨床データが、臨床医から臨床試験候補ポータルを介して受信され得る。これらの実施形態のいずれかにて、前記一つ以上のプロセッサによって、前記メモリに格納される前記一つ以上のプログラムは、
候補を第2の臨床試験に登録する、または拒絶する指示を臨床医に送信するステップを、
実行し得るものである。
【0039】
これらの実施形態のいずれかにて、前記予測データ値の範囲は、上限の閾値予測データ値と下限の閾値予測データ値とを含み得る。
【0040】
これらの実施形態のいずれかにて、前記第1の予測データは、予測される患者の回帰、またはイベントまでの予測される時間を含み得る。
【0041】
これらの実施形態のいずれかにて、患者はヒトであってもよく、状態は疾患であってもよい。これらの実施形態のいずれかにて、疾患が、神経変性疾患、または癌であってもよい。
【0042】
これらの実施形態のいずれかにて、第1の臨床試験が、薬剤の有効性、薬剤の異なる投与量の有効性、または、薬剤の異なる組み合わせの有効性の、少なくとも一つを判定するように構成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
特許又は出願ファイルには、カラーで描かれた少なくとも一つの図面が含まれている。カラーの図面を含むこの特許または特許出願公開の複写は、要求および必要な手数料の支払いに応じて事務局から提供される。以下、例示として、本発明を添付図面を参照して説明する。
図1A図1Aおよび1Bは、幾つかの実施形態による、患者レベルの予測に基づいて候補を臨床試験に登録する方法のフロー図である。
図1B図1Aおよび1Bは、幾つかの実施形態による、患者レベルの予測に基づいて候補を臨床試験に登録する方法のフロー図である。
図2図2は、幾つかの実施形態による、ALS患者の疾患進行メトリクスを生成するための予測モデルの例示的なリストである。
図3A図3A~3Dは、一実施形態による、改善された治療効果に関連する患者サブグループを識別するためのプロットである。
図3B図3A~3Dは、一実施形態による、改善された治療効果に関連する患者サブグループを識別するためのプロットである。
図3C図3A~3Dは、一実施形態による、改善された治療効果に関連する患者サブグループを識別するためのプロットである。
図3D図3A~3Dは、一実施形態による、改善された治療効果に関連する患者サブグループを識別するためのプロットである。
図4A図4Aおよび4Bは、別の実施形態による、改善された治療効果に関連する患者サブグループを識別するためのプロットである。
図4B図4Aおよび4Bは、別の実施形態による、改善された治療効果に関連する患者サブグループを識別するためのプロットである。
図5図5は、幾つかの実施形態による、患者レベルの予測に基づいて候補を臨床試験に登録するためのシステムの機能ブロック図である。
図6図6は、幾つかの実施形態による、候補をスクリーニングして臨床試験に登録するためにユーザが使用することができる例示的なユーザインタフェースを示す図である。
図7図7は、幾つかの実施形態による、コンピューティングデバイスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下に記載するのは、患者レベルの予測アルゴリズムを使用して、以前に臨床試験が実施された治療プログラムを救済または改善するためのシステムおよび方法である。幾つかの実施形態によれば、システムおよび方法は、病気、または他の状態を有する個々の患者から収集された過去の臨床データのデータベースを利用して、他の患者の将来の病気の進行を予測するために使用することができる予測モデルを構築する。予測モデルは、以前に実施された臨床試験に参加した患者の、治療薬またはプラセボの投与前に得られた臨床データを用いて、患者のための疾患の進行を予測するのに使用される。その予測結果に基づいて、患者のサブグループが定義される。各サブグループについて、観察された治療群の臨床試験結果データと、観察された対照群の臨床試験結果データを比較し、そのサブグループに観察可能な治療効果があるかどうかを判定する。言い換えれば、サブグループが定義され、分析されて、治療効果が検出可能(すなわち、統計的に有意)である、予測された疾患の進行によって定義される患者のサブグループが存在するかどうかを判定する。幾つかの実施形態では、治療効果と分散の組み合わせにより、統計的に有意なエフェクトサイズが得られるサブグループを特定するために、サブグループが定義され、分析される。
【0045】
特定された一つまたは複数のサブグループの予測データは、新しい臨床試験の候補をスクリーニングするのに使用される。臨床試験の開始時に患者をスクリーニングして、例えば、各候補患者の死亡リスクスコアを予測し、リスクスコアが所定の範囲内にある患者のみに臨床試験への参加を許可する。別の変形例では、全ての患者が臨床試験に参加するかもしれないが、事前に定義された予測基準を満たす患者のみが臨床試験の一次分析に含まれる。
【0046】
幾つかの実施形態によれば、以前に実施された臨床試験は、治療効果が検出できなかった、または治療開発プログラムの継続を正当化するのに十分な強さでなかったという意味で、「失敗した」臨床試験である。しかし、以前に実施された臨床試験は、失敗した臨床試験である必要はない。登録試験を目的としていない試験は、ピボタル試験で分析するサブグループを特定するための基礎となり得る。例えば、ある治療法に有意な反応を示したサブグループを特定するために「all comers」試験を実施し、その結果をもとに、特定したサブグループと同じ特徴を持つ患者を対象とした臨床試験を計画することができる。最初の試験は、プラセボ対照の試験か、対照のない試験のいずれかである。対照のない試験では、各参加者に対して治療効果がないと仮定した予測を生成し、将来の臨床試験を設計するための患者のサブグループを見つけるための仮想対照として使用することができる。
【0047】
本開示の目的上、「臨床試験」および「患者」という用語は、実験を介した被験者のあらゆる研究を広く意味する。幾つかの実施形態では、被験者はヒトであり、臨床試験は、ヒト被験者を苦しめる状態(例えば、疾患)に対する治療の有効性を試験するために実施される。しかしながら、被験者は、組織培養中の動物または細胞であってもよく、臨床試験は、動物または細胞に対する治療のための試験、または、より広範には、動物または細胞の研究を指すことがある。これには、(例えば、ある薬が犬に有効であるかどうかを判定する)獣医学的研究の評価や、人間が使用することを目的とした新しい治療法を動物や細胞でテストするためのもの(例えば、薬をテストするためのマウスモデル)が含まれる。
【0048】
研究の範囲は、医薬品の治療法に留まらない。医療機器の使用、生物学的療法、運動及び物理療法、心理カウンセリングを含むがこれらに限定されない、あらゆる介入活動に適用することができる。
【0049】
本開示および実施形態の以下の説明では、添付の図面を参照し、その図面には、例示として、実施可能な特定の実施形態が示されている。他の実施形態および例を実施することができ、また、本開示の範囲から逸脱することなく変更を加えることができることを理解されたい。
【0050】
さらに、以下の説明で使用されている単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈から明らかにそうでないことが示されていない限り、複数形も含むことが意図されていることも理解されたい。また、本明細書で使用されている「および/または」という用語は、関連するリストアップされた項目の一つまたは複数の可能な組み合わせを意味し、それを包含していることも理解されたい。さらに、本明細書で使用される「includes」、「including」、「comprises」、および/または「comprising」という用語は、記載された特徴、整数、ステップ、操作、要素、構成要素、および/またはユニットの存在を特定するが、一つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、構成要素、ユニット、および/またはそれらのグループの存在または追加を排除しないことを理解されたい。
【0051】
本発明の特定の態様は、アルゴリズムの形式で本明細書に記載されたプロセスステップおよび命令を含む。本発明のプロセスステップおよび命令は、ソフトウェア、ファームウェア、またはハードウェアで具現化され得、ソフトウェアで具現化される場合には、様々なオペレーティングシステムによって使用される異なるプラットフォームに常駐し、そこから操作されるようにダウンロードされ得ることに留意すべきである。以下の議論から明らかなように、特に他に述べない限り、本明細書全体を通して、「処理」、「コンピューティング」、「計算」、「判定」、「表示」などの用語を利用した説明は、コンピュータシステムのメモリまたはレジスタまたは他のそのような情報記憶、送信、または表示装置の、内部の物理的(電子的)な量として表されるデータを操作および変換する、コンピュータシステム、または同様の電子計算装置の動作およびプロセスを指すことが理解される。
【0052】
本発明は、本明細書の操作を実行するためのデバイスにも関する。このデバイスは、必要な目的のために特別に構築されたものであってもよいし、コンピュータに格納されたコンピュータプログラムによって選択的に起動または再構成される汎用コンピュータから構成されていてもよい。このようなコンピュータプログラムは、フロッピーディスク、USBフラッシュドライブ、外付けハードドライブ、光ディスク、CD-ROM、光磁気ディスク、リードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カードまたは光カード、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)を含む、あらゆる種類のディスク、または、電子命令を格納するのに適したあらゆる種類の媒体などの、非一過性のコンピュータ可読記憶媒体に格納されていてもよく、あらゆる種類のディスク若しくはあらゆる種類の媒体は、それぞれがコンピュータシステムバスに結合されている。さらに、本明細書で言及されているコンピュータは、単一のプロセッサを含んでいてもよいし、計算能力を高めるために複数のプロセッサ設計を採用したアーキテクチャであってもよい。
【0053】
本明細書に記載されている方法、装置、およびシステムは、いかなる特定のコンピュータまたは他の装置にも本質的に関係しない。様々な汎用システムは、本明細書の教示に従ったプログラムと共に使用することもでき、あるいは、必要な方法ステップを実行するために、より専門的な装置を構築することが便利であることが分かるかもしれない。このような様々なシステムに必要な構造は、以下の説明から明らかになるであろう。さらに、本発明は、任意の特定のプログラミング言語を参照して説明されていない。本明細書に記載された本発明の教示を実施するために、様々なプログラミング言語が使用され得ることが理解されるであろう。
【0054】
図1は、前の臨床試験からのデータに基づいて、新しい臨床試験に候補を登録するための方法100を示す。前の臨床試験および新しい臨床試験は、いずれも、疾患の治療のための新薬など、ある状態に対する治療の有効性を判定するためのものであってもよい。幾つかの実施形態では、前の臨床試験は、治療群と対照(プラセボ)群との間で結果に統計的に有意な差がなかったという意味で、失敗した試験である。しかしながら、後述するように、これは必ずしもそうである必要はない。
【0055】
方法100は、前の臨床試験において全試験集団の結果と比較して改善された結果を示す患者の一つまたは複数のサブグループを特定し、サブグループの一つまたは複数の特性を使用して新しい臨床試験の候補をスクリーニングする。前の臨床試験から生成されたサブグループを定義する特性と一致する特性を有する候補は、新しい試験に参加するために選択され、および/または新しい試験内の特定の役割に割り当てられてもよい。
【0056】
上述したように、方法100が使用され得る状態は、疾患、障害、または効果的な治療が求められている他の状態であり得る。そのような疾患の例は、冠動脈疾患、心血管疾患、脳卒中、糖尿病、認知症、パーキンソン病-痴呆症(PD)および筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含む神経変性疾患、肝硬変、筋骨格系疾患、皮膚疾患、内分泌系疾患 眼疾患、腸疾患、アメーバ、ウイルス、細菌などの感染症、プリオン病、呼吸器疾患、喘息、泌尿器系疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、乳癌、前立腺癌、大腸癌、肺癌などの癌、精神疾患など、である。
【0057】
前の臨床試験および新しい臨床試験で検討されている治療法は、ヒトまたは動物において、患者に測定可能な結果をもたらすように設計された任意の治療法であり得る。治療は、医薬品と関連付けることができる。例えば、治療は、新しい薬剤の投与、既存の薬剤の新しい適応、薬剤の新しいまたは異なる投与量、または複数の薬剤の異なる組み合わせであり得る。治療は、心理療法、物理療法、行動療法、または認知療法などの療法を含む、新しいまたは異なる療法であることができ、または治療は、新しいまたは異なるデバイスであるか、またはそれを含むことができる。
【0058】
方法100のステップ102は、患者における状態の進行を予測するための一つまたは複数の予測モデルを構築することを含む。予測モデルは、患者の臨床データに基づいて、患者の将来の状態の進行の予測を生成するために構築される。予測には、臨床試験の結果として一般的に使用される様々な指標を含めることができる。予測モデルの例としては、回帰モデルやTime-to-Eventモデルなどがある。回帰モデルは、将来のある時点における患者の能力または状態を予測することができ、一方、Time-to-Eventモデルは、患者が死亡を含むある能力(障害)または状態に到達する対数尤度を判定する。
【0059】
図2は、ALS患者の回帰モデルおよびTime-to-Eventモデルの例を示している。各モデルは、臨床医が患者のALSの進行を測定するために使用することができる臨床指標と関連している。各モデルは、それが予測するように設計されている臨床指標に従って命名される。例えば、ALSの機能評価スコアである「ALSFRS-Rトータルスコア」。このスコアを作成するためのテストには、タスクを実行する能力に関連する12の質問が含まれている。患者は、タスクを実行する能力について、ポイントスケール(例えば、0=できない、4=普通にできる、の5ポイントスケール)で評価される。個々の項目のスコアは合計され、トータルスコアとなる(例:0=最悪、48=最高)。ALSFRS-Rモデルは、患者の臨床データに基づいて、患者の将来の定義された時間(例えば、6ヶ月後、1年後、5年後など)におけるALSFRS-Rスコアを予測することができる。
【0060】
ALSの予測モデルの別の例として、患者が50%肺活量に到達する対数尤度を予測する「50%肺活量」Time-to-Eventモデルがある。肺活量とは、患者が排出できる空気の量を示す臨床的な指標である。50%肺活量は、ALSにおいて非侵襲的な人工呼吸を処方する際によく用いられるマイルストーンである。同様に、「%予測肺活量」回帰モデルは、将来の定義された時点での%予測肺活量を予測する。
【0061】
回帰技術および機械学習技術を含む、当業者に知られている多数の予測モデリング技術のいずれかを使用して、予測モデルを作成することができる。回帰技術は、線形回帰、ロジスティック回帰、Cox比例ハザードモデル、時系列モデル、分類および回帰ツリー、多変量適応回帰スプラインを含み得るが、これらに限定されない。機械学習技術には、k-nearest neighbors、ディープラーニングアルゴリズム、畳み込みニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、またはナイーブベイズが含まれる。これらのモデリング技術は、最も予測性の高い特徴セットを選択するために変数の削減を行い、その後、予測モデルを構築するために使用できる。また、既知の手法を用いてモデルを組み合わせ、精度が向上する可能性のあるアンサンブルモデルを作成することもできる。
【0062】
一つまたは複数の予測モデルは、予測モデルが構築される状態を有する患者の臨床データで学習機械を訓練することによって構築されてもよい。臨床データは、個々の患者から収集された過去の臨床データの一つ以上のデータベース140から得られてもよい。このデータは、一般的に、各患者の病気が時間の経過とともにどのように進行したかを捉えている。データには、身長、体重、脈拍、強制肺活量などのバイタル、遺伝子データ、バイオマーカデータ、病気の進行スコア、症状の発症日、診断日、死亡日などのイベントの日付、性別、年齢、喫煙および飲酒習慣、薬の使用状況、職業、その他の種類の関連情報が含まれてもよい。過去の臨床データを保存するデータベースの例としては、ALS患者のPRO-ACTデータベースがあり、このデータベースには、完了したALS臨床試験から10,700人以上のALS患者から収集したデータが含まれている。
【0063】
他の臨床情報データベースの例としては、カリフォルニア大学アーバイン校が維持している心臓病データベースと糖尿病データベースがある。NIHが維持している「All of Us」一般患者データベースもその一例である。NIHから提供されているようなアーカイブされた臨床研究データセットを使用することができる。個々のデータセットは、テスト用の「臨床試験データセット」として個別に使用することも、モデルトレーニング用の大規模な疾患データセットとして結合することも、できる。CODR(Critical Path Institute)やADNIのアルツハイマー病データを用いて、アルツハイマー病の治療試験用モデルを構築することができる。パーキンソン病の治療試験には、MJ Fox Foundationが提供するPPMI Parkinson疾患データベースを用いてモデルを構築することができる。がん治療の臨床試験には、Cancer Genome Atlas (TCAG)を用いたモデルを構築できる。1型糖尿病治療のモデルは、TEDDYの1型糖尿病データセットを用いて構築することができる。
【0064】
予測モデルは、ユーザが関心を持つ任意の結果を予測するために構築することができ、これには、連続的な結果および分類的な結果を含む、薬剤候補の有効性を測定するための一次または二次エンドポイントとして有用な結果が含まれる。有用な結果としては、生存率、疾患の再発、生命力などの臨床指標、コレステロール値や血清グルコース値などの検査値、血管造影などの診断検査の結果、疾患の進行や重症度を示すバイオマーカなどが挙げられる。他のモデルは、欠勤などの疾患負担のより広い指標であると考えられる結果や、生活の質の指標や機能的状態などの、患者中心の結果を、予測することができる。
【0065】
好ましい実施形態は、生存率、生命維持能力が50%になるまでの時間、車椅子を使用するまでの時間、音声を失うまでの時間、および栄養チューブを使用するまでの時間などの、Time-to-Eventの結果、または、ALSFRS-R機能スコア、若しくは(bulbarスコア、呼吸スコア、fine motorスコア、およびgross motorスコアを含む)ALSFRS-Rサブスコア、若しくは予想される生命維持能力のパーセント、若しくはリットル単位の生命維持能力などの、回帰的な結果を含む、ALSの臨床試験において有用な予測の結果であろう。
【0066】
別の好ましい結果は、アルツハイマー病モデルによる、ADAS-Cogスコアおよびまたは日常生活動作、グローバル重症度、またはグローバル変化評価、またはMini Mental State Examination(MMSE)の、予測である。パーキンソン病では、主要な結果は、パーキンソン病モデルによる、統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS)またはそのサブスコアのいずれか、またはパーキンソン病認知評価尺度(PD-CRS)、モントリオール認知評価(MoCA)、PD認知における結果のための尺度(SCOPA-COG)、Mini Mental State Examination(MMSE)、Mattis Dementia Rating Scale(MDRS)の、予測であり得る。
【0067】
幾つかの実施形態では、疾患データベースからの臨床データは、予測モデルの学習に使用される前に再フォーマットおよび/またはスクリーニングされる。データベース内のデータは、異なる当事者によって異なる時期に異なる臨床技術を用いて収集されたものである可能性があり、したがって、生の形態では適切でない可能性がある。そのため、ある患者から次の患者まで一貫した内容や形式を持つ訓練データを生成するために、データを調和させたり、スクリーニングしたりする必要がある。これには、日付の書式や測定単位の統一などの単純な作業のほか、時間の経過とともに変化したテストのスコアを生成するために使用された臨床テストのバージョンを判定するなど、より複雑な作業が含まれる場合がある。個々のデータポイントの中には、その分野の実務者に知られている様々な方法のいずれかを用いて入力されたものもある。訓練に使用される臨床データの再フォーマット化および/またはスクリーニングは、自動化されたタスクであってもよいし、臨床疾患評価プロセスの経験者など、一人以上の担当者が参加して、所定の患者記録または患者記録のセット内のデータの再フォーマット化またはスクリーニングに関する判断を行ってもよい。
【0068】
ステップ104では、ある状態に対する治療のための臨床試験中に生成されたデータを分析するために、予測モデル150が選択される。幾つかの実施形態では、予測モデルは、利用可能な予測モデルのセットの中から選択される。予測モデル150は、状態の種類に基づいて、また、治療の望ましい結果に基づいて、選択されてもよい。例えば、ALS患者の延命のために設計された薬剤の有効性を評価するために実施される臨床試験に対して、ALS患者の死亡までの時間を予測する予測モデルが選択されてもよく、あるいは、ALS患者の機能障害の低下を遅らせるために設計された薬剤の臨床試験に対して、ALSFRS-Rスコアを予測する予測モデルが選択されてもよい。
【0069】
幾つかの実施形態によれば、前の臨床試験からのデータに基づいて新しい臨床試験に候補を登録する方法は、ステップ102および/またはステップ104を含まなくてもよい。一つ又は複数の予測モデルは、前の時点で既に構築されていてもよい。一つ以上の既存モデルは、購入または公開を介してなど、第三者によって提供されていてもよい。幾つかの実施形態では、ユーザは、利用可能なモデルのセットの中から既存の予測モデルを選択してもよい(例えば、多数の疾患の予測モデルの中から、ALSの臨床試験を分析するためのALS予測モデルを選択する)。他の実施形態では、ユーザは、予測モデルを選択せず、代わりに、予測モデルは、デフォルトまたはその他の方法で事前に選択されたモデルであってもよい。
【0070】
ステップ106では、前の臨床試験に参加した患者のための患者ベースライン記録が、臨床試験データベース160から抽出される。患者ベースライン記録は、患者が臨床試験の治療またはプラセボを受ける前に生成された、任意の患者データを含んでもよい。ベースラインデータは、前の臨床試験への登録のために患者をスクリーニングするのに使用されたデータであってもよいし、その他の患者情報であってもよい。患者の記録は、臨床試験を実施した第三者などから受け取ってもよいし、ローカルデータベースや、個々の臨床試験の公開データベースから、検索してもよい。患者ベースライン記録は、一般に、対照群(複数)の患者および治療群(複数)の患者の記録を含む。
【0071】
ステップ108において、前に実施された臨床試験からの患者ベースライン記録は、前に実施された臨床試験の患者に対する予測を生成するために、予測モデル150に供給される。上述したように、予測モデル150は、疾患を有する患者の過去の臨床データを学習機械に学習させることによって構築されたので、前に実施された臨床試験の患者の予測は、臨床試験に参加していない患者(予測モデルを構築するためにデータが使用された患者)の臨床データに基づいて生成されることになる。
【0072】
予測モデル150を用いた患者ベースライン記録の分析の出力は、前に実施された臨床試験に参加した患者の状態の予測された進行を示す予測データのセットである。例えば、100人の試験患者を含む、ALSを治療するための薬剤の有効性を試験するための、前に実施された臨床試験への登録から1年後のALSFRS-Rスコアを予測するべく構成された予測モデルの場合、予測データは、100人の予測されたALSFRS-Rスコア(前に実施された臨床試験の各患者の予測されたALSFRS-Rスコア)を含む。幾つかの実施形態では、予測データは、あるマイルストーンに到達する可能性を含む。例えば、予測データは、患者が死亡するまでの時間が10年であることの尤度、または対数尤度値そのものを含み得る。
【0073】
ステップ110では、予測データに基づいて、臨床試験の患者データを複数のサブセットにグループ化する。各サブセットは、臨床試験の患者のサブグループに対応する。各サブグループについて、対応するサブセットのデータを解析することで、治療の効果が評価される。臨床試験の患者データのサブセットは、ある範囲内で類似した予測を行う臨床試験の患者のサブグループに関連付けられている。例えば、データのサブセットは、1~1.5の範囲内の予測値を有する患者のデータを含むことができる。幾つかの実施形態では、データのサブセットは、関連するサブグループに属する患者の割合に基づいて選択される。例えば、臨床データの3つのサブセットを定義し、各サブセットを臨床試験の患者集団の3分の1と関連付けることができる。各データサブセットの3分の1のサブグループは、それぞれ、連続した範囲の予測値を持つ患者で構成される。例えば、第1のサブグループは、0.0~0.5の範囲の予測値を持つ患者を含み、第2のサブグループは、0.5~1.0の範囲の予測値を持つ患者を含み、第3のサブグループは、1.0~1.5の範囲の予測値を持つ患者を含む。サブセットは、任意のサイズのサブグループに対して定義することができる。例えば、サブセットは、臨床試験の集団の50%、25%、10%、5%、2%、またはその他の任意の割合を有するサブグループに関連していてもよい。サブセットは、相互に排他的である必要はない。例えば、第1のサブグループは、0.0~0.5の範囲の予測値を有する患者を含み、第2のサブグループは、0.0~1.0の範囲の予測値を有する患者を含み、第3のサブグループは、0.0~1.5の範囲の予測値を有する患者を含む。
【0074】
臨床試験データのサブセットは、臨床試験中に生成される試験結果データ、すなわち、治療およびプラセボの効果またはその欠如を反映するデータを含む。したがって、臨床試験データは、臨床試験の実施に関連する患者の状態の測定値を含む。各サブセットには、臨床試験中に治療薬を投与された患者のデータが含まれ、また、プラセボを投与された患者などの、対照患者のデータも含まれる場合がある。臨床試験結果データは、ステップ112において、臨床試験データベースから抽出されてもよい。
【0075】
サブグループの患者に対する臨床試験の効果は、臨床試験患者データの関連するサブセットのデータを分析することによって評価される。例えば、臨床試験中に測定される臨床試験結果を、治療群と対照群との間で比較して、治療の有効性の尺度を生成する。任意のサブグループの有効性の尺度は、完全な分析セット(前に実施された臨床試験の成功が判断されたデータの完全なセット)の有効性の尺度よりも小さいか、等しいか、または大きいかもしれない。有効性の尺度は、例えば、確率値(p値)、または臨床試験における治療の有効性を、より一般的には試験の結果を、測定するための他の適切な値であってもよい。
【0076】
ステップ114において、臨床試験データのサブセットに対する有効性の尺度を照会して、完全な分析セットと比較して異なる(例えば、より高い)有効性の尺度を示す、(患者のサブグループに対応する)臨床データの一つ以上のサブセットを特定する。この特定には、有効性の尺度のいずれかが閾値を上回っているか下回っているかを判定することが含まれる。例えば、臨床試験の成功は、治療群と対照群との間に、0.05以下のp値に基づく統計的に有意な差があるかどうかに基づいて判定されてもよいし、データのサブセットに対するp値は、0.05に等しいまたは0.05未満の値を検索されてもよい。
【0077】
いずれかのサブグループの患者が、全データセットと比較して改善された、または十分に改善された結果を生み出した限り、そのサブグループの患者は、検出可能な結果に繋がる共通の特性を共有しているという結論に達することができる。サブグループは、一般的に、完全な患者群よりも一つ以上の特性においてより均質であり、十分に高い有効性の尺度に関連するサブグループのメンバーの均質性は、完全な患者群に対するサブグループの検出可能な効果に寄与する。特定されたサブグループの検出可能な結果は、グループ内の患者に対する治療効果の向上によるものであり、例えば、ある特性を有する患者に対して、その特性を有さない患者よりも治療効果が高いことが挙げられる。また、特定されたサブグループの検出結果は、データ内のノイズが除去されたこと、すなわちRMSEが低下したことに、起因する場合もある。例えば、臨床試験に参加している他の患者に比べて病気が急速に進行している患者は、臨床結果データの分散が大きくなり(例えば、RMSEが大きくなり)、治療による統計的に有意な結果を示すことができなくなる。これらの患者を欠くサブグループは、完全な分析のセットが示さない、統計的に有意な結果を示すことができる。このように、例えば、完全なグループとサブグループの治療効果は同じかもしれないが、サブグループのRMSEは、完全なグループのエフェクトサイズのp値が0.05以上であるとき、サブグループのエフェクトサイズのp値が0.05未満となる限り、全グループよりも小さいかもしれない。サブグループに関連する改善されたエフェクトサイズは、治療効果の増加とノイズの減少との組み合わせに起因するものであってもよい。
【0078】
ステップ116では、完全な分析のセットと比較して改善された結果を示す一つ以上のサブセット(例えば、0.05未満のp値を有するもの)に関連する一つ以上の予測値が特定され、将来の臨床試験患者登録スクリーニング基準として確立される。一つ以上の予測値は、以下でさらに説明するように、治療のための将来の臨床試験の候補をスクリーニングするのに使用することができる。一つまたは複数の予測値は、特定されたサブセットを定義するのに使用された予測値である。例えば、治療の検出可能な効果を示すものとして特定された臨床試験データのサブセットは、0.5~1.0の範囲の予測された進行値を有する患者のデータを含むことができる。特定された臨床試験データのサブセットに対するこれらの上限および下限の予測状態進行値は、将来の臨床試験の候補をスクリーニングするための上限および下限のスクリーニング閾値として確立される。幾つかの実施形態では、本方法は、スクリーニング基準をユーザに提供して、ユーザが将来の臨床試験を設計する際に使用することで終了する。
【0079】
幾つかの実施形態によれば、本方法は、将来の臨床試験への登録のために候補患者をスクリーニングすることを含む。ステップ118では、同じ治療に対する将来の臨床試験への登録のために関連する患者をスクリーニングする臨床データが、受信される。この臨床データは、臨床データの一部または全部を生成した臨床医から、または臨床医からデータを収集した第三者から、受け取ることができる。例えば、ALS治療を専門とする医師が、自分の患者の一人以上について生成した臨床データを候補スクリーニングポータルに入力して、自分の患者の一人以上が臨床試験に登録されるべきかどうかを判定したり、将来の臨床試験を計画している医薬品開発企業が、スクリーニングプロセスに提供するための候補患者情報を収集したり、することができる。
【0080】
ステップ120では、候補の臨床データを予測モデル150(すなわち、前に実施された臨床試験の予測値を生成するのに使用されたのと同じ予測モデル)に投入することによって、候補患者について一つまたは複数の状態進行予測値が生成される。したがって、例えば、予測モデル150が、前に実施された臨床試験の患者に対するALSFRS-Rスコアを生成するのに使用された場合、ステップ120は、候補患者のためにALSFRS-Rスコアを生成する。
【0081】
ステップ122では、ステップ120からの候補患者の予測値(複数可)を、ステップ116で確立された将来の臨床試験患者登録スクリーニング基準と比較して、候補患者が臨床試験に登録されるべきかどうかを判定する。候補患者の予測値(複数可)が基準を満たしている場合、候補患者は臨床試験に登録されるように特定される。候補患者の予測値が基準を満たさない場合、その候補患者は臨床試験への登録を拒否するように特定される。
【0082】
幾つかの実施形態では、スクリーニング基準は、上限および下限の予測値閾値であってもよく、上限および下限の予測値閾値によって定義される範囲に入る予測値を有する候補患者は、臨床試験への登録のために特定され、予測値が範囲外である候補患者は、臨床試験への登録を拒否するように特定される。幾つかの実施形態では、スクリーニング基準は、上限の閾値だけ、または下限の閾値だけを含んでいてもよく、候補患者の予測値が、臨床試験への登録のために特定されるために、それぞれ閾値より大きい、または閾値より小さい、ものであればよい。
【0083】
ステップ118~122は、任意の数の候補患者について繰り返してもよい。ステップ124では、登録のために選択された患者で臨床試験を登録する。ステップ126において、臨床試験が実施され、登録された患者は、周知の臨床試験方法に従って、治療またはプラセボを与えられてもよい。幾つかの実施形態では、登録された患者は、スクリーニングに基づいて異なるレベルの治療を与えられる。例えば、臨床試験は、低用量および高用量の群を含むように定義され得、スクリーニングは、どの患者がどの群に含まれるべきかを特定し得る。
【0084】
臨床試験の終了時に、試験結果が判定される。試験結果は、前の臨床試験では検出できなかった検出可能な治療効果を示し得、これは、上述したように、前の臨床試験の結果に基づいて候補患者をスクリーニングしたことに起因する可能性がある。方法100の結果、治療開発者は、さらなる治療開発を進めたり、食品医薬品局などの承認機関から承認を受けたり、するための証拠を得ることができる。このような場合、さもなければ、最初の臨床試験が失敗したために、治療を断念していたであろう。これにより、治療法開発のための多大な投資の損失を防ぎ、患者が利用できる治療法の数と質を高めることができ、生活の質の向上、苦痛の緩和、延命につながる可能性がある。
【0085】
図3A~3Dは、将来の臨床試験の候補をスクリーニングするためのスクリーニング基準を確立するのに使用することができる、1373人の被験者の完全な分析のセットに相対して、改善された治療効果に関連する患者のサブグループを特定するための一つの技法を示す。この手法は、例えば、方法100のステップ114で使用することができる。この手法では、前に実施された臨床試験の結果データが、患者のサブグループに基づいてサブセットにグループ化され、各サブセットについて、治療効果、二乗平均平方根誤差(RMSE)、およびエフェクトサイズが判定される。エフェクトサイズは、各サブセットに対応する患者のサブグループに対する治療の有効性の尺度として用いられ、治療効果をRMSEで割ったものである。データサブセットを定義するサブグループのメンバーは、予測モデルを用いて生成される予測状態進行データ(例えば、方法100のステップ108で生成された予測データ)に基づいて、選択される。エフェクトサイズの増加に関連するサブグループは、将来の臨床試験が、前に実施された臨床試験に対して、検出可能な、または改善された治療結果を示す可能性がある患者集団を表す場合があり、したがって、そのようなサブグループの予測状態進行データは、将来の臨床試験候補患者のスクリーニング基準として確立され得る。
【0086】
図3A~3Dは、所定のサブセットについて、治療効果、二乗平均平方根誤差、エフェクトサイズ、およびp値を、それぞれ、そのサブセットに対応するサブグループにおける前に実施された臨床試験の総集団の割合の関数として表したグラフである。グラフ上の各データポイントは、与えられたサブグループのそれぞれの指標を表している。グループは、状態の進行の「低リスク」、「中リスク」、「高リスク」の予測に従って定義される。図の例では、予測される進行メトリクスは、ALS患者に対する50%予測肺活量リスクであるが、図の概念はあらゆるメトリクスに適用可能である。
【0087】
各グラフの左側では、各グループに属する集団の割合が3分の1となっており、これは図示の実施形態で用いた最小のグループサイズである。しかしながら、任意のグループサイズを使用してもよい。低リスクグループ302は、予測される50%肺活量リスクが最も低い、集団の3分の1を含み、高リスクグループ304は、予測される50%肺活量リスクが最も高い、集団の3分の1を含み、中リスクグループ306は、集団の残りの3分の1を含む。各グループのそれぞれの指標がプロットされている。各グラフの右に向かって、それぞれのグループのサイズを大きくして、集団全体が含まれるまで、より多くの患者を効果分析に含める。低リスクグループのサイズは、最初に、中リスクグループの低い方のメンバーを含めることで増加し、高リスクグループのサイズは、最初に、中リスクグループの高い方のメンバーを含めることで増加し、中リスクグループのサイズは、低リスクグループと高リスクグループとの両方からメンバーを取り込むことで増加する。グループのサイズが大きくなるごとに、そのグループのエフェクトサイズが判定され、それぞれのグラフにプロットされる。3つのグループの指標は、全体の集団に対する、それぞれの指標値を表す、完全な分析のセット(「FAS」)に対する指標値に収束する。
【0088】
図3Cは、集団の約80~90%に到達した低リスクグループ302の最大限を示しており、これは、低リスクグループが、最も低い予測状態進行値を有する、臨床試験集団全体の80~90%を含む、サイズである。このサブグループのエフェクトサイズは、集団の中程度の33%のエフェクトサイズよりも小さいが、このサブグループは、集団の90%弱を表しており、このサブグループの予測データをスクリーニング基準として使用することは、将来の試験の候補のうち、より多くの割合が登録のために選択されることを意味し得る。ユーザは、この情報を利用して、ユーザのニーズに最も適した試験の特性を判定する目的で、幾つかの試験をシミュレートすることができる。すなわち、多くの候補を拒絶する高い治療効果を有する試験、または、より多くの候補患者を含む低い治療効果を有する試験である。
【0089】
図3Dは、共変量調整線形回帰分析を用いて判定される、図3A~Cに描かれる3つのリスクグループについて到達したp値を示す。見てわかるように、中リスクグループ306のみが0.05未満のp値を達成しており、これは、全サンプルサイズ(この実験では1,373)の約65~75%であるサンプルサイズの場合である。したがって、中リスクグループの閾値を用いた試験は、1,373人の65%に相当するサンプルサイズ、すなわち900人未満の患者で実施することができる。これは、試験を実施する薬剤スポンサーにとって、時間と費用の両方で大幅な節約となる。
【0090】
図3Cの重ね合わせた黒い破線は、(最も低いリスク予測を伴う試験集団の70%を表す)試験集団の約70%での中リスクグループに対するエフェクトサイズの平準化、および完全な分析のセットに対するエフェクトサイズの平準化を、示すものである。幾つかの実施形態によれば、中リスクグループのこの平準化に関連するサブグループは、分析されたサブグループの最も高いエフェクトサイズに関連し、試験集団の70%を包含するので、スクリーニング基準を確立するために、選択することができる。図3Cのチャートは、臨床試験の患者集団を、最も近い個体を段階的に含めることにより、分析のためにサイズを体系的に調整するサブグループに分けることができることを示している。
【0091】
図4Aおよび4Bは、将来の臨床試験の候補をスクリーニングするためのスクリーニング基準を確立するのに使用し得る、完全な分析セットと比較して改善された治療効果に関連する患者のサブグループを特定する別の技法を示す。図4Aおよび4Bは、前の臨床試験の患者サブグループの治療効果の指標を表す、エフェクトサイズの「ヒートマップ」を示す。
【0092】
ヒートマップの各ブロックは、メンバーが上限および下限の状態進行予測閾値によって定義される、サブグループを表す。各ブロックについて、ブロックによって表されるサブグループに関連する臨床試験データに関して、統計分析が行われ、サブグループの試験結果が判定される。以下でさらに説明するように、ヒートマップは、統計的に有意なエフェクトサイズ(例えば、p値が0.05未満)を示すサブグループを特定するのに使用することができる。別の方法として、治療効果と、それとは別にRMSEのヒートマップを作成することもできる。これらは、治療効果の最大値とRMSEの最小値が重なる領域を見つけるのに用いられ得る、治療効果の最大値とRMSEの最小値を伴うゾーンを、特定するべく、用いられ得る。これらの指標は、p値が0.05未満のエフェクトサイズをもたらすサンプルサイズをシミュレートするのに使用できる。
【0093】
図4AのヒートマップのY軸には、上限の予測進行閾値が表示され、X軸には、下下限の予測進行閾値が表示されている。図示の例では、予測値は、低い方の-2.98から高い方の0.64までの範囲の対数尤度である。また、各軸には、臨床試験の患者集団全体に対する割合が表示されている。あるサブグループのサイズを患者集団の割合で判定するには、関連するボックスに対する、対応するX軸とY軸の値を使用する。つまり、左上のボックスは、患者集団の100%を捉える上限および下限の閾値に対応しているため、患者集団の全体を表している。つまり、予測値が0.64(左上のボックスに対応するy軸の値)以下かつ-2.98(左上のボックスに対応するx軸の値)以上であった患者が100%であった。ハイライトされたボックスでは、上限および下限の閾値が-1.94と-2.66になっており、このボックスは予測値が-2.66から1.94の範囲にある患者のサブグループを表している。このサブグループのサイズは、患者集団の全体の40%であり、チャートから、上限の予測値の閾値に対応する集団の割合を、下限の予測値の閾値に対応する集団の割合から引くことで(「54%-14%」)、導出される。
【0094】
黒い対角線は、下限の閾値が上限の閾値を下回る境界を表している。したがって、空白の右下半分は、下限の閾値が上限の閾値よりも大きいという、可能性のない領域を表している。対角線は、ブロックが始まる領域には全く触れていないが、これは、対角線付近の正方形のサンプルサイズが小さすぎて(例えば、1人または2人の患者のみのサブグループ)、意味のある比較を行うことができないためである。
【0095】
図示の実施形態では、ボックスの表示に3つの色が使用されており、それぞれの色は、それぞれのボックスに対応するサブグループの患者の臨床試験結果データから計算されたp値の閾値に対応している。この例では、治療の効果の尺度としてp値を用いている。p値が0.05以下のデータに対応するボックスは赤色、0.05~0.10のデータに対応するボックスはオレンジ色、0.10以上のデータに対応するボックスは黄色で表示している。(完全な分析のセットを表す)図4Aのチャートの左上のボックスが黄色に着色されているのは、p値が0.10以上であるため、この例で表される臨床試験が正の治療効果を示す確率が低いことを示している。一方、(p値が0.05以下である)赤色で強調表示されたボックスは、正の治療効果が得られる可能性が高いサブグループを示している。このサブグループを特定して、将来の臨床試験のスクリーニング基準を確立するのに用いることもできる。また、強調表示されたボックスを囲むボックスで表されるサブグループも、赤色であるため、同様に可能である。
【0096】
図4Bは、別の例示的な実施形態によるヒートマップである。この例では、強調表示されたブロックは、特定の予測データによって記述される患者のグループ(例えば、「予測される肺活量50対数尤度が-1.87から-0.84の間で試験に参加した患者」)を特定し、その中で、治療群の患者は対照群の患者とは異なる反応を示した。この試験が成功していれば、完全な分析のセットを表す左上のブロックが赤くなっていたはずである。赤色のブロックの領域は、50%肺活量に到達する対数尤度の下限閾値-1.87と上限閾値-0.84を中心とした頑強な「ホットスポット」を示している(範囲は-1.99から+1.50まで)。このホットスポットは、エリア内の複数のブロックが検出可能な効果を示しているという意味で、ロバストである。
【0097】
ホットスポットの中心にあるブロックの閾値は、将来の臨床試験のスクリーニング基準を確立するために選択され得る。したがって、ベースラインの特性が、特定された閾値の境界内に入る予測をもたらす患者のみを含む、将来の臨床試験が設計され得る。オレンジ色または黄色のブロックに近い検出可能な効果を示すブロック(例えば、赤色のブロック)は、治療効果値を減少させ、および/またはRMSE値を増加させる患者に関連する予測値を含むことに近いため、スクリーニング基準を確立するために選択するのに良好なブロックではないかもしれない。したがって、幾つかの実施形態によると、ホットスポットの中央に位置するサブグループが、スクリーニング基準を確立するために選択されてもよい。一方で、単独の赤いブロックは拒絶されてもよい。幾つかの実施形態では、対応するサブグループのサイズに基づいて、ブロックを選択してもよい。例えば、ホットスポットの中央にある複数の隣接するブロックについて、より大きなサイズのサブグループに対応するブロックが選択されてもよく、これは、より広範なスクリーニング基準となり、将来の臨床試験への登録を受け入れる候補が増えることにつながるからである。
【0098】
幾つかの実施形態では、複数のホットスポットが発生し、複数のスクリーニング基準のセットを確立するために複数のサブグループが選択され得る。例えば、将来の臨床試験の低用量群のスクリーニング基準を確立するために、比較的低い予測指標に対応する第1のホットスポット内のブロック(例えば、ゆっくりと進行する疾患を有する患者)を特定し、将来の臨床試験の高用量群(すなわち、より積極的な治療)のスクリーニング基準を確立するために、比較的高い予測指標に対応する第2のホットスポット内のブロック(例えば、急速に進行する疾患を有する患者)を特定し得る。
【0099】
図5は、上述した原理および方法に従って、前の臨床試験を既に経た治療のための将来の臨床試験に、どの候補患者を登録すべきかを判定するのに使用することができる、登録スクリーニングシステム500の機能ブロック図である。システム500は、上述した方法100を実行するのに使用され得る。システム500は、一つ以上の非一時的なコンピュータ可読媒体に格納された一つ以上のコンピュータプログラムを実行する一つ以上のサーバを含み得る。システム500は、疾患データベース540、臨床試験データベース550、および臨床試験クライアントシステム560のうちの、一つまたは複数と通信可能に接続され得る。
【0100】
システム500は、モデルビルダ502、予測ジェネレータ504、スクリーニング基準ジェネレータ506、および登録スクリーナ508などの、機能ユニットを含む。これらの機能ユニットは、システム500の一つ以上のプロセッサによって実行される一つ以上の実行可能なソフトウェアプログラムの機能コンポーネントを表す。幾つかの実施形態において、シミュレーションジェネレータ505は、エフェクトサイズの有意性をテストするには小さすぎるサンプルサイズで、高い治療効果および/または低いRMSEを有するゾーンに対する、正しいサンプルサイズをユーザが見つけられるようにするのに、使用し得る。シミュレーションジェネレータ505は、比較的小規模な臨床試験におけるホットスポットを見つけるのに有用である。
【0101】
モデルビルダ502は、患者における状態の進行を予測するための一つ以上の予測モデルを構築するように構成される。モデルビルダ502は、患者の臨床記録に基づいて患者の状態の進行を予測するように訓練することができる一つ以上の学習機械を含み得る。モデルビルダ502は、状態を備える患者から収集された過去の臨床データで構成される訓練データに関して学習機械を訓練することにより、状態の予測モデルを構築し得る。
【0102】
このデータは、(方法100に関して上述したデータベース140などの)疾患データベース540から検索されてもよく、このデータベースは、疾患を患う患者の臨床情報を維持するサードパーティデータベースまたはローカルデータベースであってもよい。疾患データベース540は、診療所、病院、研究機関、政府機関、または患者データの任意の他の適切なソースからの、患者データを含んでもよい。疾患データベース540は、前に実施された臨床試験または研究からの患者臨床データを含んでもよい。臨床試験および研究は、疾患に関する任意の数の様々な治療および研究トピックに関連する、試験および研究を含み得る。また、患者臨床データは、一般的に、介入型臨床試験からではなく、観察型患者データのデータベースである、患者登録からのものであってもよい。多くの患者団体がこの種のデータベースを作成している。患者データは、PATIENTSLIKEME(https://www.patientslikeme.com)やAPPLE’S IOS HEALTH KIT(https://developer.apple.com/healthkit/)、GOOGLE FIT(https://developers.google.com/fit/)などの、民間の非EHRデータアグリゲータを含む他のデータソースから収集され得る。
【0103】
モデルビルダ502は、方法100のステップ102に関して上述したように、臨床医が患者の状態の進行を測定するのに使用することができる一つ以上の臨床指標の予測を生成するモデルを構築する。幾つかの実施形態では、モデルビルダ502は、疾患の進行の単一の指標に対する予測を生成する予測モデルを構築し、他の実施形態では、モデルビルダ502は、疾患の進行の複数の指標に対する予測を生成する予測モデルを構築する。
【0104】
幾つかの実施形態では、モデルビルダ502は、予測モデルを訓練する前に、過去の臨床データを再フォーマット、フィルタリング、スクリーニング、またはその他の方法で操作するように、構成される。モデルビルダ502は、ユーザがトレーニングデータセットに含めるためのデータを選択できるようにするなど、ユーザによるそのような操作を容易にするように構成され得る。幾つかの実施形態では、モデルビルダ502は、一つ以上の自動化された機能を介して履歴データを操作するように構成され得る。例えば、モデルビルダ502は、予測モデルを訓練するために必要な患者の臨床データを自動的に抽出し、必要のないデータを破棄し、および/または、予め定義されたトレーニングデータスキーマに基づいてデータを再フォーマットし得る。
【0105】
幾つかの実施形態では、システム500は、予測モデルを構築するためのモデルビルダではなく、前に構築された一つ以上の保存された予測モデルを含む。これらの予測モデルは、システム500によって以前に構築されたものであってもよいし、サードパーティによって提供されたものであってもよい。モデルビルダ502は、過去の臨床試験に基づいて、将来の臨床試験の候補をスクリーニングする際に使用する予測モデルを選択するように構成することもできる。例えば、過去の臨床試験は、所定の疾患を有する患者の延命に対する新薬の有効性を試験するために実施されたものであってもよく、所定の疾患を有する患者の死亡までの時間を予測するための予測モデルをモデルビルダ502から選択するものであってもよい。
【0106】
予測ジェネレータ504は、前の臨床試験に参加した患者の疾患進行の予測を生成するように構成される。予測ジェネレータは、モデルビルダ502によって構築または選択される予測モデルと、前の臨床試験からの患者ベースラインデータとを使用する。予測ジェネレータ504は、前の臨床試験に対する患者臨床データを格納する、前の臨床試験データベース550から患者ベースラインデータを受け取るように構成されてもよいし、データベース550から受け取った、前の臨床試験の患者記録から患者ベースラインデータを抽出するように構成されてもよい。データベース550は、ローカルまたはリモートのデータベースであってもよく、一般に、試験前に前の臨床試験に参加した各患者について収集されたベースラインデータと、臨床試験中および/または臨床試験の終了時に収集された試験結果データとを含む。このデータは、治療群および対照群のデータを含み得る。予測ジェネレータ504は、患者のベースラインデータのみを使用して、予測を生成する。
【0107】
予測ジェネレータ504は、使用された予測モデルおよび患者ベースラインデータの関数である予測データのセットを生成する。このデータは、患者ベースラインデータ内の各患者に対する、予測された疾患進行指標の値を含み得る。したがって、例えば、前の臨床試験が100人の患者で構成されていた場合、その臨床試験のために生成された予測データは、100個の疾患進行予測値であり得る。幾つかの実施形態では、予測ジェネレータ504は、複数の予測モデルを実行し、または、複数の指標を生成する単一の予測モデルを実行し、その結果、各患者について複数の予測指標を含む予測データセットを得ることができる。
【0108】
スクリーニング基準ジェネレータ506は、臨床試験の患者データを、患者のサブグループに対応する複数のサブセットにグループ化するように構成される。サブセットは、予測ジェネレータ504によって生成される予測データに基づいて定義される。スクリーニング基準ジェネレータは、各サブセット内の臨床試験データを分析して、対応する患者のサブグループの、患者に関連するデータのみを考慮した場合の治療の有効性を判定するように構成される。スクリーニング基準ジェネレータ506は、任意の関連するサイズを有する任意の数の関連するサブグループを生成し得る。幾つかの実施形態では、スクリーニング基準ジェネレータは、最小限のサブグループサイズ、および/またはサブグループサイズ増分を定義するためのユーザからの入力を受け取る。例えば、ユーザは、集団全体の5%を最小限のサブグループサイズと定義してもよいし、サブグループサイズの5%増分を定義してもよい。
【0109】
スクリーニング基準ジェネレータ506は、データの各サブセットを分析して、患者の関連するサブグループの、患者に対する治療の有効性の尺度を生成するように構成される。スクリーニング基準ジェネレータ506は、完全な第1のグループの患者に対する治療の有効性の尺度よりも高い有効性の尺度に関連するサブグループを特定することによって、治療のための将来の臨床試験のスクリーニング基準を確立するように構成され得る。例えば、スクリーニング基準ジェネレータは、完全な試験集団のp値が0.05より大きかった場合に、0.05以下のp値に関連するサブグループを特定し得る。
【0110】
幾つかの実施形態では、スクリーニング基準ジェネレータ506は、スクリーニング基準を確立する、サブグループまたは複数のサブグループの、ユーザによる特定を容易にするように構成される。例えば、スクリーニング基準ジェネレータは、ユーザが有望なサブグループまたは複数のサブグループを特定することを可能にする、図3A-Dおよび図4A-Bに示されるような、プロットを生成し得る。
【0111】
幾つかの実施形態では、スクリーニング基準ジェネレータ506は、上で説明したように、サブグループまたは複数のサブグループを選択し、スクリーニング基準のためにサブグループの疾患進行予測値境界を使用することによって、スクリーニング基準を確立するように構成される。例えば、0.0~0.5の範囲の疾患進行予測値を有する患者からなる選択されたサブグループについては、将来の臨床試験の候補が将来の臨床試験に登録されるためには0.0~0.5の範囲の疾患進行予測値を有する必要があるように、スクリーニング基準を0.0~0.5の範囲とすることができる。幾つかの実施形態では、スクリーニング基準ジェネレータは、候補のためのサブ分析グループ化を判定するためのスクリーニング基準を確立するように構成され得る。例えば、候補を試験のための低用量および高用量グループにスクリーニングするためのスクリーニング基準を確立してもよい。
【0112】
登録スクリーナ508は、将来の臨床試験への登録のために候補をスクリーニングするように構成される。登録スクリーナ508は、候補患者情報を受信するように構成されてもよく、予測ジェネレータ504によって使用された予測モデルを使用して、患者に対する1つまたは複数の疾患進行予測値を生成してもよい。幾つかの実施形態では、候補患者情報は、例えば臨床医が臨床医の患者を将来の臨床試験への登録のためにスクリーニングするために使用することができる将来の臨床試験クライアントシステム560から受信される。
【0113】
登録スクリーナ508は、候補のための予測値(複数可)がスクリーニング基準ジェネレータによって確立された登録基準を満たすかどうかを、判定するように構成され得る。例えば、登録スクリーナは、候補のための疾患進行予測値が、スクリーニング基準として確立された予測値の範囲内に入るかどうかを判定し得る。登録スクリーナは、候補が将来の臨床試験に登録されるべきかどうかの通知を将来の臨床試験クライアントシステム560に提供するように構成され得る。幾つかの実施形態では、登録スクリーナ508は、候補に対するサブ分析グループ化を判定するように構成される。例えば、登録スクリーナ508は、候補が将来の臨床試験のための「低用量」グルーピングに登録されるべきであると決定してもよい。
【0114】
未来の臨床試験クライアントシステム560は、登録スクリーニングシステム500から遠隔にあり、例えば、インターネットを介してスクリーニングシステムに通信可能に結合されたシステムであればよい。クライアントシステム560は、ユーザがスクリーニングシステム500にデータを送信し、スクリーニングシステム500からデータを受信することを可能にする、コンピュータであればよい。例えば、クライアントシステム560は、スクリーニングシステム500のウェブサーバと通信しているウェブブラウザを実行する臨床医のオフィスにあるコンピュータであってもよい。
【0115】
図6は、幾つかの実施形態に係る、スクリーニングシステム500に候補情報を提供し、且つスクリーニングシステム500からスクリーニング結果を受け取るための、臨床医によって使用される、例示的な将来の臨床試験クライアントシステムのユーザインタフェースを示す図である。
【0116】
ユーザインタフェース602は、ユーザ(例えば、臨床医)がスクリーニングのための候補患者情報を入力するためのユーザインタフェースの例示的な実施形態である。臨床医などのユーザは、候補の臨床情報を手動で入力してもよいし、候補の臨床記録をアップロードしてもよいし、両方の何らかの組み合わせを行ってもよい。幾つかの実施形態では、候補情報をアップロードする当事者は、候補の主治医または主治医のスタッフなど、患者情報を生成した当事者である。幾つかの実施形態では、候補情報をアップロードする当事者は、データを生成した一人以上の臨床医から候補情報を以前に収集した第三者であってもよい。
【0117】
ユーザインタフェース604は、候補に対してスクリーニングの結果を提供する。これらの結果は、患者を将来の臨床試験に登録するか否か、および/または、臨床試験内での患者のグループ分け(例えば、患者を低用量群または高用量群に登録すべきである、など)を含み得る。幾つかの実施形態では、スクリーニング結果は、複数の将来の臨床試験が設計されている場合など、将来の臨床試験の表示を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、スクリーニング結果は、候補情報を発信したユーザに提供されるのではなく、将来の臨床試験を設計している、および/または、実施する予定の第三者に提供される。スクリーニング結果を受け取る当事者は、スクリーニングシステム500を使用する、またはその他の方法で実施する、当事者であってもよい。
【0118】
幾つかの実施形態では、候補患者の記録は、将来のスクリーニングのためにスクリーニングシステム500によって受け取られ、保存される。幾つかの実施形態では、スクリーニングシステム500は、候補の情報が登録システム500に提供されたときから後日、候補の登録に関する通知を提供する。例えば、現場の臨床医は、計画された将来の臨床試験について知らずに、日常的に患者の記録をアップロードし、候補が将来の臨床試験に選ばれたという通知を登録システム500から受け取ることができる。そして、臨床医は、登録を促進するように候補に通知し得る。幾つかの実施形態では、候補の患者情報を提供する当事者は、スクリーニング結果を受け取る当事者であり、将来の臨床試験を実施する当事者である。
【0119】
上述した原理、方法、およびシステムは、当業者であれば容易に認識できるように、多くの異なる利用例に拡張され得る。本開示の範囲内である利用例は、以下でさらに説明される。
【0120】
予測に基づく共変量調整 - この利用例では、試験の開始時に、患者が治療を開始する瞬間(ベースライン訪問)の前およびそれまでに測定された患者データを用いて、予測が行われる。これらの予測は、従来の統計的手段を用いた分析の調整に使用できる追加のベースラインデータ(「共変量」)である。ベースライン共変量が試験の測定結果(測定される試験の「エンドポイント」)の予測性が高ければ高いほど、調整によって試験の検出力(実際に治療効果がある場合に、それを検出できる可能性)が高まる。
【0121】
予測に基づく無作為化 - この利用例では、予測を使用して複数の層を定義する(例えば、予測される「速い」「平均」「遅い」進行の患者の3つのグループ)。これらの3つのグループにはそれぞれ無作為化スケジュールが設定され、患者を様々な試験群(プラセボ、高用量、中用量、低用量など)に割り当てる。このように無作為化することで、すべての試験群において、「速い」「平均」「遅い」患者の割合が同程度になるはずである。さらに、予測アルゴリズムは何十もの入力変数を活用しているため、交絡変数(2つの試験群の間でその変数に統計的に有意な差があること)が存在する可能性は、それらの入力変数のすべてにおいて低減することができる。
【0122】
予測に基づく臨床試験エンリッチメント - この利用例では、予測を用いて層(例えば、今後12ヶ月間に8ポイント以上16ポイント以下の進行が予測される患者)を定義し、これを臨床試験に患者を登録するための包含/除外基準として用いる。そのためには、治験責任医師が患者の治験参加資格を審査する際に、予測データを容易に入手できなければならない。この種の試験デザインは、予測的エンリッチメント(試験対象の治療に反応すると予測される患者を登録すること)または予後的エンリッチメント((同じように進行すると予測される)同種の患者を登録することで、それらの患者が異なる試験群に無作為に割り付けられたときに薬剤の効果を際立たせることができる)のいずれかに有用である。
【0123】
予測に基づく仮想コントロール - この利用例では、試験で治療を受ける各患者について、治療薬が投与される瞬間の前に収集されたデータのみを使用して、予測を行う。その後、患者の病気の進行が観察され、予測された病気の経過と比較される。
【0124】
上記の利用例の一つまたは複数を組み合わせることができる。例えば、仮想コントロールの利用例は、同時に行われるプラセボコントロールを補強することができる。仮想コントロールの予測は、プラセボ群の患者からの観察データと組み合わされる。これにより、観察された治療データと比較するために、より大きなプラセボ群が作成される。別の組み合わせとして、無作為化の利用例と共変量調整の利用例の組み合わせがある。幾つかの実施形態によれば、臨床試験エンリッチメントの利用例が共変量調整の利用例と組み合わされ、他の実施形態では、臨床試験エンリッチメント、無作為化、および共変量調整の利用例が、組み合わされる。
【0125】
予測データをEDCシステムに投入するためのAPIツール - 臨床試験は、しばしば電子データ収集(EDC)ソフトウェアシステムを使用してデータを収集する。この利用例では、システムがホストするスクリプトを使用して、EDCシステムと統合できるソフトウェアAPIをホストすることができる。このスクリプトは、データをAPIに渡し、APIが予測値を計算し、予測値が保存されているEDCシステムに戻す。その後、追加の利用例(例えば、上述の利用例やその組み合わせ)がこのデータを活用することができる。この利用例の一つの利点は、データがEDCに流入している時点で予測データを収集することにより、すべての予測が、薬物介入が行われた後の患者の真の進行についての知識がないまま、プロスペクティブに生成されたことを議論の余地なく証明できることである。
【0126】
予測データを試験分析システムに投入するためのAPIツール - この利用例は、予測がプロスペクティブでないことを除いて、前述の利用例に類似している。代わりに、過去のデータを使用して作られ、別の時点(例えば、現在、または別の過去の日)に前方に投影される。
【0127】
シミュレーションジェネレータ - ユーザ(例えば、CROの、または製薬会社のインハウスの、生物統計学者)に、臨床試験設計パラメータを最適化する患者予測のアプリケーションを利用して、臨床試験設計をシミュレートする能力を提供する、ソフトウェアプラットフォームである。臨床試験のシミュレーションを行う際には、過去の患者データのデータベースを使用して、患者の選択とシミュレーションを行うことができる。患者のサブセットは、データベースから(無作為に、またはその他の方法で)選択され、シミュレートされた治療効果で修正される。この利用例では、上述の利用例をパッケージ化してエンドユーザに提供し、エンドユーザ自身がこれらのシミュレーションを実行できるようにすることができる。個々のセルの治療効果およびRMSEは、シミュレーションジェネレータへの入力として使用することができるため、所望の検出力を得るために将来の試験のサンプルサイズを判定する方法を提供することができる。
【0128】
ヘルスケア患者の予後のスクリーニング - ソフトウェアシステムは、ヘルスケアプロバイダのEHR/EMRシステムに組み込むことができる。
【0129】
ヘルスケア患者のスクリーニング - 病院(またはクリニック、ヘルスシステム、その他のヘルスケアプロバイダ)のウェブサイトにUIが組み込まれている。見込み患者は、フォームに情報を入力することができる。このフォームは、データを予測エンジンに送り、予測エンジンは限られたデータに基づく予備的な分析結果を返す。その後、患者は医療機関に予約を取り、医師と会って詳しい検査や分析を受けることになる。これにより、医療機関は、その医療サービスから恩恵を受ける可能性のある新しい患者を特定する方法を提供する。
【0130】
集団健康 - 予測に基づいて、医療機関は、自分のケア下にある患者の健康状態を把握することができる。これにより、患者が近い将来に特定の健康イベントを経験する可能性があるかどうかを知らせ、リソースのニーズを実効的に予測し、他のクリニックと比較して医療機関のパフォーマンスを分析することができる。
【0131】
医療保険 - 患者の進行の可能性や、病気に関連するイベントのタイミングを、予測することで、医療保険(「支払者」)は、個々の患者に関連するキャッシュアウトフローをより適切に予測し、計画することができる。
【0132】
生命保険 - 医療保険会社とは異なり、生命保険会社は、引受の際に申請者の全医療記録にアクセスできる。平均余命の引受は、保険会社が各被保険者の死亡リスクを値踏みするのに役立つ。
【0133】
ライフセトルメント(LS)- 生命保険と同様に、ライフセトルメント(または「バイアティカルズ」)プロバイダは投資会社であり、個人に今日中に現金を支払い、その代わりに、LSプロバイダは被保険者の生命保険の受取人として指名される。また、LSプロバイダは残りの保険料の支払いにも責任を負う。被保険者が死亡すると、LSプロバイダは死亡保険金を受け取る。これらの保険は、これらの保険のポートフォリオを保有するLS投資会社の間で取引される。保険の価値は、死亡保険金の額と、被保険者が死亡したときに発生する、支払の可能性の高いタイミングによって決まる。患者の平均余命をより正確に推定することで、LSプロバイダは、これらのLS保険の市場価値をより容易に評価することができる。
【0134】
図7は、一実施形態に係るコンピュータの例を示す図である。コンピュータ700は、図5のシステム500など、上述のシステムおよび方法に従って患者情報を表示するシステムの構成要素とすることができる。幾つかの実施形態では、コンピュータ700は、図1Aおよび1Bの方法100などの、患者情報を表示するための方法を実行するように構成される。
【0135】
コンピュータ700は、ネットワークに接続されたホストコンピュータであればよい。コンピュータ700は、クライアントコンピュータまたはサーバであり得る。図7に示すように、コンピュータ700は、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、サーバ、または、電話やタブレットなどのハンドヘルドコンピューティングデバイスなど、任意の適切なタイプのマイクロプロセッサベースのデバイスであればよい。コンピュータは、例えば、プロセッサ710、入力デバイス720、出力デバイス730、ストレージ740、および通信デバイス760のうちの一つまたは複数を含むことができる。入力デバイス720および出力デバイス730は、一般的に、上述したものに対応するものであり、コンピュータと接続可能または一体化したものとすることができる。
【0136】
入力デバイス720は、タッチスクリーン若しくはモニタ、キーボード、マウス、または音声認識デバイスなど、入力を提供する任意の適切なデバイスであればよい。出力デバイス730は、タッチスクリーン、モニタ、プリンタ、ディスクドライブ、またはスピーカなどの、出力を提供する任意の適切なデバイスであればよい。
【0137】
ストレージ740は、RAM、キャッシュ、ハードドライブ、CD-ROMドライブ、テープドライブ、またはリムーバブルストレージディスクを含む、電気的、磁気的、または光学的メモリなど、ストレージを提供する任意の適切なデバイスであればよい。通信デバイス760は、ネットワークインターフェースチップやカードなど、ネットワーク上で信号を送受信できる任意の適切なデバイスを含み得る。コンピュータのコンポーネントは、物理的なバスを介して、または無線でなど、任意の適切な方法で接続することができる。ストレージ740は、一つまたは複数のプログラムを含む非一過性のコンピュータ可読記憶媒体とすることができ、これらプログラムは、プロセッサ710などの一つまたは複数のプロセッサによって実行されると、一つまたは複数のプロセッサに、図5の方法500など、本明細書に記載された方法を実行させる。
【0138】
ストレージ740に格納され、プロセッサ710によって実行され得るソフトウェア750は、例えば、(例えば、上述したようなシステム、コンピュータ、サーバ、および/またはデバイスにおいて、具現化されるような)本開示の機能を具現化するプログラミングを、含むことができる。幾つかの実施形態では、ソフトウェア750は、アプリケーションサーバおよびデータベースサーバなどのサーバの組み合わせを含むことができる。
【0139】
ソフトウェア750はまた、命令実行システム、装置、またはデバイスからソフトウェアに関連する命令をフェッチして、命令を実行することができる、上述したような命令実行システム、装置、またはデバイスによって、またはそれらに関連して、使用するために任意のコンピュータ可読記憶媒体内に格納および/または送信することができる。本開示の文脈では、コンピュータ可読記憶媒体は、命令実行システム、装置、またはデバイスによって、またはそれらに関連して、使用するためのプログラミングを含む、または記憶することができる、ストレージ740などの任意の媒体であればよい。
【0140】
ソフトウェア750はまた、命令実行システム、装置、またはデバイスからソフトウェアに関連する命令をフェッチして、命令を実行することができる、上述したような命令実行システム、装置、またはデバイスによって、またはそれらに関連して、使用するために任意の送信媒体内に伝搬することができる。本開示の文脈では、送信媒体は、命令実行システム、装置、またはデバイスによって、またはそれらに関連して、使用のためのプログラミングを通信、伝播、または送信することができる、任意の媒体であればよい。送信可読媒体は、電子、磁気、光学、電磁、または赤外線の有線若しくは無線の伝搬媒体を含み得るが、これらに限定されない。
【0141】
コンピュータ700は、任意の適切なタイプの相互接続された通信システムとすることができる、ネットワークに接続することができる。ネットワークは、任意の適切な通信プロトコルを実装することができ、任意の適切なセキュリティプロトコルによってセキュリティが確保され得る。ネットワークは、無線ネットワーク接続、T1またはT3回線、ケーブルネットワーク、DSL、または電話回線など、ネットワーク信号の送受信を実装することができる、任意の適切な配置のネットワークリンクを含むことができる。
【0142】
コンピュータ700は、ネットワーク上で動作するのに適した任意のオペレーティングシステムを実装することができる。ソフトウェア750は、C、C++、Java、またはPythonなどの、任意の適切なプログラミング言語で書くことができる。様々な実施形態において、本開示の機能を具現化するアプリケーションソフトウェアは、例えば、クライアント/サーバ配置で、またはWebベースのアプリケーション若しくはWebサービスとしてWebブラウザを介してなど、異なる構成で展開することができる。
【0143】
上述の記載では、説明のために、特定の実施形態を参照して記載した。しかし、上記の例示的な議論は、網羅的であることや、本発明を開示した正確な形態に限定することを、意図したものではない。上記の教示に鑑みて、多くの修正および変形が可能である。実施形態は、技術の原理とその実用的な応用を最もよく説明するために選択され、記述されたものである。当業者は、それによって、企図された特定の使用に適した様々な変更を伴う技術および様々な実施形態を最もよく利用することができる。
【0144】
添付の図を参照して、本開示および実施例を完全に説明したが、様々な変更および修正が当業者に明らかになることに留意されたい。そのような変更および修正は、特許請求の範囲によって定義される開示および実施例の範囲内に含まれると理解されるべきである。最後に、本出願で参照された特許および刊行物の開示全体を、参照により本明細書に組み込むものである。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5
図6
図7
【国際調査報告】