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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-10
(54)【発明の名称】抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220203BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20220203BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220203BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220203BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20220203BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220203BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20220203BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220203BHJP
   A61K 35/54 20150101ALI20220203BHJP
   A61K 35/22 20150101ALI20220203BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220203BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/18 ZNA
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12Q1/02
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K31/7088
A61K48/00
A61K35/54
A61K35/22
A61P3/10
A61P1/00
A61P1/14
A61P1/04
C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021518937
(86)(22)【出願日】2019-10-02
(85)【翻訳文提出日】2021-04-12
(86)【国際出願番号】 EP2019076771
(87)【国際公開番号】W WO2020070224
(87)【国際公開日】2020-04-09
(31)【優先権主張番号】18198252.1
(32)【優先日】2018-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517423431
【氏名又は名称】オスペダーレ・サン・ラッファエーレ・エッセエッレエッレ
(71)【出願人】
【識別番号】521138291
【氏名又は名称】エンテラ・エッセ・エッレ・エッレ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】パオロ・フィオリーナ
(72)【発明者】
【氏名】フランチェスカ・ダディオ
(72)【発明者】
【氏名】フランチェスカ・ザガリ
【テーマコード(参考)】
4B063
4B064
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA20
4B063QQ79
4B063QR48
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZA66
4C084ZA68
4C084ZA69
4C084ZC35
4C085AA13
4C085AA14
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA66
4C086ZA68
4C086ZA69
4C086ZC35
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB41
4C087BB57
4C087BB64
4C087CA04
4C087NA14
4C087ZA66
4C087ZA68
4C087ZA69
4C087ZC35
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA25
4H045EA27
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、IGFBP3に特異的に結合し、IGFBP3へのIGF-Iの結合を置き換えない抗体又はその抗原結合フラグメントに関する。抗体は、TMEM219受容体へのIGFBP3の結合を阻害する又は低下させる。本発明は、それらの産生のための方法、前記抗体を含有する医薬組成物、及びその使用にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトIGFBP3に結合する単離された抗体又はその抗原結合フラグメントであって、
- IGFBP3へのIGF-Iの結合を置き換えず、
- TMEM219受容体へのIGFBP3の結合を阻害する又は低下させる、単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
IGFBP3によって誘導されるTMEM219受容体の活性化を阻害する、低下させる、又は中和する、請求項1に記載の単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
a- IGFBP3で処理された健常対象のミニ消化管成長の増加;
b- IBD患者のミニ消化管成長の増加;
c- 糖尿病性腸症血清で処理された健常対象のミニ消化管成長の増加;
d- IGFBP3で処理された健常対象のミニ消化管におけるEphB2及び/又はLGR5の発現の増加;
e- IGFBP3で処理された健常対象のミニ消化管におけるカスパーゼ8発現の減少;
f- IGFBP3で処理されたβ細胞におけるβ細胞喪失の減少;
g- IGFBP3で処理されたβ細胞におけるインスリンの発現の増加;並びに
h- IGFBP3で処理されたβ細胞におけるβ細胞のアポトーシスの減少
から選択される少なくとも1つの活性を有する、請求項1又は2に記載の単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
a)、b)、及びc)における増加が、少なくとも20%であり;d)及びe)における増加が、少なくとも50%であり;f)における減少及びg)における増加が、少なくとも10%である、請求項3に記載の単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
a.i.配列番号1~配列番号7からなる群から選択されるアミノ酸配列のCDR1配列;
ii.配列番号8~配列番号16からなる群から選択されるアミノ酸配列のCDR2配列;及び
iii.配列番号17~配列番号26からなる群から選択されるアミノ酸配列のCDR3配列
を含む重鎖可変ドメイン(VH);並びに/又は
b.i.配列番号27~配列番号36からなる群から選択されるアミノ酸配列のCDR1配列;
ii.配列番号37~配列番号44からなる群から選択されるアミノ酸配列のCDR2配列;及び
iii.配列番号45~配列番号54からなる群から選択されるアミノ酸配列のCDR3配列
を含む軽鎖可変ドメイン(VL)
を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
Table 2(表2)及び/又はTable 3(表3)に示されるCDRを含む、請求項5に記載の単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
a.配列番号55~配列番号65からなる群から選択されるアミノ酸配列の重鎖可変ドメイン配列;又は
b.配列番号66~配列番号76からなる群から選択されるアミノ酸配列の軽鎖可変ドメイン配列;又は
c.(a)の軽鎖可変ドメイン及び(b)の重鎖可変ドメイン
を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
配列番号55及び配列番号66を有するYu139-A02、配列番号56及び配列番号67を有するYu139-A03、配列番号57及び配列番号68を有するYu139-B01、配列番号58及び配列番号69を有するYu139-C01、配列番号59及び配列番号70を有するYu139-C02、配列番号60及び配列番号71を有するYu139-D02、配列番号61及び配列番号72を有するYu139-D03、配列番号62及び配列番号73を有するYu139-F02、配列番号63及び配列番号74を有するYu139-G01、配列番号64及び配列番号75を有するYu139-G03、又は配列番号65及び配列番号76を有するYu139-H03、好ましくはYu139-A03、Yu139-C01、Yu139-G03、又はYu139-H03である、請求項1から7のいずれか一項に記載の単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
4×10-6Mよりも低い又はそれに等しい親和定数でヒトIGFBP3に結合する、請求項1から8のいずれか一項に記載の単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項10】
(a)IGFBP3上のエピトープ、例えばTable 4(表4)及びTable 5(表5)に規定されるモノクローナル抗体Yu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03によって認識されるエピトープと同じ又は類似したエピトープに特異的に結合する;或いは
(b)Table 4(表4)及びTable 5(表5)に規定されるモノクローナル抗体Yu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03と結合を交差競合する;或いは
(c)Table 4(表4)及びTable 5(表5)に規定されるYu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03のいずれかと同じ又は類似した結合親和性若しくは特異性、又はその両方を示す;或いは
(d)本明細書において記載される抗体分子、例えばTable 4(表4)及びTable 5(表5)に規定されるYu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03のいずれかから例えば選定される抗体分子の1つ又は複数の生物学的特性を有する;或いは
(e)本明細書において記載される抗体分子、例えばTable 4(表4)及びTable 5(表5)に規定されるYu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03のいずれかから例えば選定される抗体分子の1つ又は複数の薬物動態特性を有する、単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項11】
ヒト又はヒト化抗体である、請求項1から10のいずれか一項に記載の単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項12】
IgG2又はIgG4抗体、好ましくはIgG2カッパ抗体、IgG2ラムダ抗体、IgG4カッパ抗体、又はIgG4ラムダ抗体である、請求項1から11のいずれか一項に記載の単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする少なくとも1つの配列を含む単離されたポリヌクレオチドであって、好ましくはcDNAである、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項14】
請求項13に記載のポリヌクレオチドを含むベクターであって、好ましくはプラスミド、ウイルスベクター、非エピソーム性哺乳類ベクター、発現ベクター、及び組み換え発現ベクターからなる群から選択される、ベクター。
【請求項15】
請求項13に記載のポリヌクレオチド又は請求項14に記載のベクターを含む単離された細胞であって、好ましくはハイブリドーマ又はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又はヒト胎児腎臓細胞(HEK293)である、単離された細胞。
【請求項16】
医薬としての使用のための、好ましくは糖尿病、腸管及び/若しくは腸障害、吸収不良症候群、悪液質、又は糖尿病性腸症の治療における使用のための、請求項1から12のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合フラグメント、又は請求項13に記載のポリヌクレオチド、又は請求項14に記載のベクター、又は請求項15に記載の細胞であって、好ましくは糖尿病は、I型又はII型糖尿病であり、好ましくは腸管及び/又は腸障害は、炎症性腸疾患、セリアック病、潰瘍性結腸炎、クローン病、又は腸管閉塞である、抗体若しくはその抗原結合フラグメント、又はポリヌクレオチド、又はベクター、又は細胞。
【請求項17】
好ましくは糖尿病、腸管及び/若しくは腸障害、吸収不良症候群、悪液質、又は糖尿病性腸症の治療における使用のための、請求項1から12のいずれか一項に記載の単離された抗体若しくはその抗原結合フラグメント、又は請求項13に記載の単離されたポリヌクレオチド、又は請求項14に記載のベクター、又は請求項15に記載の単離された細胞、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物であって、好ましくは腸管及び/又は腸障害は、炎症性腸疾患、セリアック病、潰瘍性結腸炎、クローン病、又は腸管閉塞である、医薬組成物。
【請求項18】
IGFBP3と、請求項1から12のいずれか一項に記載の抗体又は請求項17に記載の組成物とを接触させる工程を含む、TMEM219受容体へのIGFBP3の結合を阻害する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IGFBP3に特異的に結合し、IGFBP3へのIGF-Iの結合を置き換えない抗体又はその抗原結合フラグメントに関する。抗体は、TMEM219受容体へのIGFBP3の結合を阻害する又は低下させる。本発明は、それらの産生のための方法、前記抗体を含有する医薬組成物、及びその使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
IGFBP3/TMEM219軸
インスリン様成長因子結合タンパク質は、インスリン様成長因子(IGF)の生体利用能をモジュレートする7つの結合タンパク質のファミリーである。それらの中でIGFBP3は最も豊富であり、ほぼすべての組織に存在し、IGFに対するより高い親和性を有する;実際、IGFのおよそ80~90%が、酸不安定サブユニット(ALS)との三元複合体でIGFBP3に結合している(1)。
【0003】
IGF生体利用能を調節するその能力に加えて、IGFBP3は、IGF非依存的機能を有することも示されている(2)。実際、それは、細胞表面タンパク質、不可欠なシグナル伝達能を有する細胞表面受容体、細胞内及び核タンパク質(転写因子)と関連し得、故に細胞成長に影響を与え、アポトーシスを直接誘導する(2)。デス受容体の中で、1回貫通膜タンパク質であるTMEM219は、IGFBP-3に特異的に結合するが、他のIGFBP種には結合しないことが示された(3)。TMEM219へのIGFBP3の結合は、がん細胞(すなわち、前立腺及び乳房)(3)だけでなく幹細胞(すなわち、結腸幹細胞)(4)も含めた様々な細胞においてカスパーゼ-8介在性アポトーシスを誘導する。種々のストラテジーを用いてIGFBP3/TMEM219軸を遮断する又は増強することは、それぞれ細胞死を阻止する又は増加させることが示されている。本発明者らの知る限りでは、IGFBP3/TMEM219結合を阻止し得、及び標的組織/細胞に対するIGFBP3、IGF-I非依存性であり、カスパーゼ8介在性の有害な影響を食い止め得る、TMEM219又はIGFBP3に対する市販のモノクローナル抗体はない。
【0004】
糖尿病におけるIGFBP3/TMEM219軸
1型(T1D)及び2型糖尿病(T2D)は両方とも、インスリンの分泌の低下、血中グルコースレベルを制御できないこと、及び高血糖をもたらす、ベータ細胞の喪失によって特徴付けられる(5、6)。異なる病因メカニズムにもかかわらず、T1Dにおける自己免疫応答及びT2Dにおけるインスリン抵抗性/炎症は両方とも、ベータ細胞量の進行性の低下につながる。実際、生じている免疫活性化がT1Dにおけるベータ細胞喪失を完全に説明するのに十分ではないらしいことが明らかになりつつある(5)。更には、免疫療法がT1Dを治癒することができないことにより(7)、(i)自己免疫が、T1D発病に関与する唯一の要因ではあり得ないこと、及び(ii)T1Dに対する有効な治療を確立するために、ベータ細胞喪失等、疾患の異なるメカニズムを標的にする代替ストラテジーが必要とされることが強調された。長年にわたるT1Dを有する個体において散在性ベータ細胞が検出されるという観察結果は(8)、ベータ細胞代謝回転を保つために新たなベータ細胞が生じているに違いないこと(5、9)、又は破壊されたベータ細胞が「異なり」得、死滅する傾向があり得る(10)ことを裏付ける。このことは、表面ベータ細胞受容体の上方/下方調節された発現が、それらを免疫系に見えるようにすることにおいて主要な役割を有し得ること、並びにより重要なことには、他の非免疫学的決定因子が、ベータ細胞の運命及び機能をモジュレートし得ることを示唆し得る。それ故、T1Dにおける非免疫学的ベータ細胞破壊、及びT2Dにおけるベータ細胞の進行性の喪失を阻止することは、ベータ細胞の生成と破壊の間のバランスを適当なベータ細胞量の回復に傾かせ得、故に疾患の本当に最初の段階を食い止め得る又は遅らせ得る新規の治療的手法のための道を開く。
【0005】
IGFBP3受容体であるTMEM219は、ベータ細胞株において及びヒト/マウス膵島において発現されること、並びにその連結はベータ細胞にとって有毒であることが示されている。興味深いことには、ヒトIGFBP3についてトランスジェニックのマウスは、高血糖を発症し、膵島量の低下を呈し、インスリン-グルコース刺激への応答の減少を示し(11)、一方でIGFBP3についてノックダウンされたものは、糖代謝制御の点においていかなる変更も示さなかった(12)ことも観察されている。
【0006】
ヒトにおいて、Drogan及び同僚らは、IGFBP3の循環レベルの上昇がT2Dの発症と関連していることを最近発表した(13)。更には、Diabimmune調査グループによる最近の調査では、IGFBP3レベルが、T1Dの危険性がある子どもにおける自己抗体陽性及び血清転換の機会と相関することが実証され、故にベータ細胞自己免疫の早期発症における循環IGFBP3の役割が示唆された(14)。
【0007】
IGFBP3受容体であるTMEM219は、その活性化が標的細胞内でのカスパーゼ8介在性アポトーシスを誘発し、故にそれらの喪失につながる、デス受容体として既に記載されている(4)。
【0008】
炎症性腸疾患におけるIGFBP3/TMEM219軸
腸管幹細胞(ISC)は、小腸及び大腸陰窩の底に存在し、陰窩の再生及び代謝回転を制御する。特に、ISCは陰窩に沿って分化して、杯細胞、腸細胞、腸内分泌細胞を生成し得る(4)。
【0009】
炎症性腸疾患(IBD)は、クローン病(CD)及び潰瘍性結腸炎(UC)という2つの病型を包含し、欧州においてほぼ250万人の個体及び米国において100万に影響を及ぼす免疫介在性の慢性状態である(15)。IBDの発病はまだ調査中であるが、最近の証拠は、回腸CDにおけるペネート細胞への及びUCにおける杯細胞へのISCの分化の欠如が、疾患の発生において主要な役割を担い得ることを示唆している。特に、粘膜における局所的シグナル伝達及び炎症経路は両方とも外部刺激に応答し、ISCの数及び機能を保ち、故に腸管の恒常性を維持する(16)。実際に最近、Yancuらは、CDにおけるIGFBP-3の役割を支持する結果を発表した。実際、彼らは、IGFBP3のノックアウトが、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)結腸炎マウスモデルにおける炎症をモジュレートすることにおいて役割を有することを実証した(17)。
【0010】
本発明者らは、インスリン様成長因子結合タンパク質3(IGFBP3)受容体であるTMEM219受容体がISC上で発現されること、並びに循環ホルモンIGFBP3とのその相互作用が、糖尿病性腸症という糖尿病における腸管障害のモデルにおいてISCの運命及び機能を制御することを最近見い出した(4)。糖尿病性腸症及びIBDは共通の特質を共有することから、これらの結果は、未知のIBD発病への重要な洞察を加え得、IBD治療のための新たな治療的手法の導入におそらくつながるであろう。
【0011】
IBDに対する現在利用可能な療法は、抗炎症性及び免疫療法的ストラテジーの使用に基づき、それはいくつかの副作用によって悪化し、長期にわたるその有効性は依然として疑問の余地がある。外科手術も、とりわけUCにおける疾患の進行した状態において上手く採用される(15)。CDの大部分における疾患の再発は頻繁でもあり、故に、異なる治療的手法の必要性を強調する。結果として、IBDの治療における新規の治療標的及びストラテジーの同定は、健康コミュニティにとって臨床上非常に意義がある。
【0012】
WO2016193497及びWO2016193496は、有効な治療剤であるエクトTMEMというTMEM219細胞外ドメインを記載している。しかしながら、受容体構築物は、治療剤として抗体ほど望ましくない。それ故、エクトTMEMの効果を模倣する抗体の必要性が依然としてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】WO2016193497
【特許文献2】WO2016193496
【特許文献3】WO2002/020565
【特許文献4】US20040132028
【特許文献5】US2003/0157108
【特許文献6】US2004/0093621
【特許文献7】WO2003/011878
【特許文献8】米国特許第6,602,684号
【特許文献9】US2005/0123546
【特許文献10】WO1997/30087
【特許文献11】WO1998/58964
【特許文献12】WO1999/22764
【特許文献13】米国特許第7,521,541号
【特許文献14】米国特許第5,215,534号
【特許文献15】米国特許第9,248,242号
【特許文献16】米国特許第9,427,531号
【特許文献17】米国特許第9,566,395号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Chothiaら、(1992) J. Mol. Biol. 227:799~817
【非特許文献2】Tomlinsonら、(1992) J. Mol. Biol. 227:776~798
【非特許文献3】J. Mol. Biol. 332、489~503 (2003)
【非特許文献4】PNAS 100(4)、1700~1705 (2003)
【非特許文献5】J. Mol. Biol. 369、1015~1028 (2007)
【非特許文献6】Wrightら、TIBTECH 15:26~32 (1997)
【非特許文献7】Kam, N.W.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102 (2005) 11600~11605
【非特許文献8】Taylorら、(1992) Nucl. Acids Res.20:6287~6295
【非特許文献9】Angalら、(1993) Molecular Immunology 30:105
【非特許文献10】Abdiche, Y. N.;D. S. Malashock;A. Pinkerton;J. Pons(2009年3月)、「Exploring blocking assays using Octet, ProteOn, and Biacore biosensors」、Analytical Biochemistry、386 (2): 172~180、doi:10.1016/j.ab.2008.11.038、PMID 19111520
【非特許文献11】Brooks, B.D. (2014)、「The Importance of Epitope Binning in Drug Discovery」、Current Drug Discovery Technology、11
【非特許文献12】John deKruif及びTon Logtenberg、Phage Display of Antibodies、Encyclopedia of Immunology(第2版) 1998、1931~1934頁
【非特許文献13】D'Addio Fら、Cell Stem Cell 2015年10月1日; 17(4): 486~498
【非特許文献14】Taghipour N.ら、Gastroenterol Hepatol Bed Bench 2016;9(1):45~52
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ヒトIGF結合タンパク質3(IGFBP3)に高い親和性及び特異性で結合し、その同種受容体TMEM219へのIGFBP3の結合を低下させ得る又は破棄し得る抗体が本明細書において開示される。これらの中和抗体は、TMEM219へのIGFBP3結合が、糖尿病性腸症、炎症性腸疾患(IBD)、及び1型又は2型糖尿病を含めた疾患の病態生理学に寄与する障害を治療することにおいて有用である。そのような中和抗体は、抗体治療法の付加的な利点を有して、受容体に基づくリガンドトラップであるエクトTMEM219(参照によりそれらの全体として本明細書に組み入れられるWO2016/193497及びWO2016/193496)の活性を保持する治療剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1の態様において、ヒトIGFBP3に結合する単離された抗体又はその抗原結合フラグメントであって、
- IGFBP3へのIGF-Iの結合を置き換えない、及び/又はIGFBP3へのIGF-Iの結合を妨げず、
- TMEM219受容体へのIGFBP3の結合を阻害する又は低下させる、単離された抗体又はその抗原結合フラグメントが提供される。
【0017】
好ましくは、単離された抗体又はその抗原結合フラグメントは、IGFBP3によって誘導されるTMEM219受容体の活性化を阻害する、低下させる、又は中和する。
【0018】
IGFBP3によって誘導されるTMEM219受容体の活性化は、当技術分野における任意の公知の方法によって又は下で記載されるように測定され得る。特に、TMEM219受容体のIGFBP3により誘導される活性化は、本明細書において記載されるミニ消化管(minigut)成長におけるアポトーシス増加又は減少を測定することによって測定され得る。
【0019】
本発明は、
a- IGFBP3で処理された健常対象のミニ消化管成長の増加;
b- IBD患者のミニ消化管成長の増加;
c- 糖尿病性腸症血清で処理された健常対象のミニ消化管成長の増加;
d- IGFBP3で処理された健常対象のミニ消化管におけるEphB2及び/又はLGR5の発現の増加;
e- IGFBP3で処理された健常対象のミニ消化管におけるカスパーゼ8発現の減少;
f- IGFBP3で処理されたβ細胞におけるβ細胞喪失の減少;
g- IGFBP3で処理されたβ細胞におけるインスリンの発現の増加;並びに
h- IGFBP3で処理されたβ細胞におけるβ細胞のアポトーシスの減少
から選択される少なくとも1つの活性を有する、単離された抗体又はその抗原結合フラグメントも提供する。
【0020】
好ましくは、a)、b)、及びc)における増加は、少なくとも20%であり;d)及びe)における増加は、少なくとも50%であり;f)における減少及びg)における増加は、少なくとも10%である。
【0021】
本発明は、IGFBP3、好ましくは遊離IGFBP3に特異的に結合し、IGF-Iに結合しているIGFBP3には結合しない、単離された抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。
【0022】
遊離IGFBP3は、IGF1及び/又はIGF1/ALSと複合していない循環IGFBP3の部分である。
【0023】
本発明は、
a.i.配列番号1~配列番号7からなる群から選択されるアミノ酸配列のCDR1配列;
ii.配列番号8~配列番号16からなる群から選択されるアミノ酸配列のCDR2配列;及び
iii.配列番号17~配列番号26からなる群から選択されるアミノ酸配列のCDR3配列
を含む重鎖可変ドメイン(VH);並びに
b.i.配列番号27~配列番号36からなる群から選択されるアミノ酸配列のCDR1配列;
ii.配列番号37~配列番号44からなる群から選択されるアミノ酸配列のCDR2配列;及び
iii.配列番号45~配列番号54からなる群から選択されるアミノ酸配列のCDR3配列
を含む軽鎖可変ドメイン(VL)
を含む、単離された抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。
【0024】
好ましくは、単離された抗体又はその抗原結合フラグメントは、Table 2(表2)及び/又はTable 3(表3)に示されるCDRを含む。
【0025】
好ましくは、抗体又はその抗原結合フラグメントは、IGFBP3に特異的に結合し、IGF-Iに結合しているIGFBP3には結合しない。好ましくは、それは、遊離IGFBP3に結合し、IGF-Iに結合しているIGFBP3には結合しない。
【0026】
好ましくは、それは、
a- IGFBP3で処理された健常対象のミニ消化管成長の増加;
b- IBD患者のミニ消化管成長の増加;
c- 糖尿病性腸症血清で処理された健常対象のミニ消化管成長の増加;
d- IGFBP3で処理された健常対象のミニ消化管におけるEphB2及び/又はLGR5の発現の増加;
e- IGFBP3で処理された健常対象のミニ消化管におけるカスパーゼ8発現の減少;
f- IGFBP3で処理されたβ細胞におけるβ細胞喪失の減少;
g- IGFBP3で処理されたβ細胞におけるインスリンの発現の増加;並びに
h- IGFBP3で処理されたβ細胞におけるβ細胞のアポトーシスの減少
から選択される少なくとも1つの活性を有する。
【0027】
好ましくは、a)、b)、及びc)における増加は、少なくとも20%であり;d)及びe)における増加は、少なくとも50%であり;f)における減少及びg)における増加は、少なくとも10%である。
【0028】
好ましくは、単離された抗体又はその抗原結合フラグメントは、
a.配列番号55~配列番号65からなる群から選択されるアミノ酸配列の重鎖可変ドメイン配列;
b.配列番号66~配列番号76からなる群から選択されるアミノ酸配列の軽鎖可変ドメイン配列;又は
c.(a)の軽鎖可変ドメイン及び(b)の重鎖可変ドメイン
を含む。
【0029】
更に好ましくは、単離された抗体は、Table 2(表2)~Table 7(表7)に報告されるYu139-A02、Yu139-A03、Yu139-B01、Yu139-C01、Yu139-C02、Yu139-D02、Yu139-D03、Yu139-F02、Yu139-G01、Yu139-G03、若しくはYu139-H03、又はその抗原結合フラグメント、好ましくはYu139-A03、Yu139-C01、Yu139-G03、若しくはYu139-H03、又はその抗原結合フラグメントである。
【0030】
更に好ましくは、単離された抗体は、配列番号55及び配列番号66を有するYu139-A02、配列番号56及び配列番号67を有するYu139-A03、配列番号57及び配列番号68を有するYu139-B01、配列番号58及び配列番号69を有するYu139-C01、配列番号59及び配列番号70を有するYu139-C02、配列番号60及び配列番号71を有するYu139-D02、配列番号61及び配列番号72を有するYu139-D03、配列番号62及び配列番号73を有するYu139-F02、配列番号63及び配列番号74を有するYu139-G01、配列番号64及び配列番号75を有するYu139-G03、又は配列番号65及び配列番号76を有するYu139-H03、好ましくはYu139-A03、Yu139-C01、Yu139-G03、又はYu139-H03である。
【0031】
好ましくは、本発明の単離された抗体又はその抗原結合フラグメントは、4×10-6Mよりも低い又はそれに等しい親和定数でヒトIGFBP3に結合する。
【0032】
本発明は、
(a)IGFBP3上のエピトープ、例えばTable 4(表4)及びTable 5(表5)に規定されるモノクローナル抗体Yu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03によって認識されるエピトープと同じ又は類似したエピトープに特異的に結合する;或いは
(b)Table 4(表4)及びTable 5(表5)に規定されるモノクローナル抗体Yu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03と結合を交差競合する;或いは
(c)Table 4(表4)及びTable 5(表5)に規定されるYu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03のいずれかと同じ又は類似した結合親和性若しくは特異性、又はその両方を示す;或いは
(d)本明細書において記載される抗体分子、例えばTable 4(表4)及びTable 5(表5)に規定されるYu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03のいずれかから例えば選定される抗体分子の1つ又は複数の生物学的特性を有する;或いは
(e)本明細書において記載される抗体分子、例えばTable 4(表4)及びTable 5(表5)に規定されるYu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03のいずれかから例えば選定される抗体分子の1つ又は複数の薬物動態特性を有する、単離された抗体又はその抗原結合フラグメントも提供する。
【0033】
好ましくは、本発明の単離された抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒト又はヒト化抗体である。
【0034】
より好ましくは、本発明の単離された抗体又はその抗原結合フラグメントは、IgG2又はIgG4抗体、好ましくはIgG2カッパ抗体、IgG2ラムダ抗体、IgG4カッパ抗体、又はIgG4ラムダ抗体である。
【0035】
本発明は、上で規定される抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする少なくとも1つの配列を含む単離されたポリヌクレオチドを提供し、好ましくは前記ポリヌクレオチドはcDNAである。
【0036】
本発明は、上で規定されるポリヌクレオチドを含むベクターを提供し、好ましくは前記ベクターは、プラスミド、ウイルスベクター、非エピソーム性哺乳類ベクター、発現ベクター、及び組み換え発現ベクターからなる群から選択される。
【0037】
本発明は、上で規定されるポリヌクレオチド又は上で規定されるベクターを含む単離された細胞を更に提供し、好ましくは単離された細胞は、ハイブリドーマ又はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又はヒト胎児腎臓細胞(HEK293)である。
【0038】
本発明は、医薬としての使用のための、好ましくは糖尿病、腸管及び/若しくは腸障害、吸収不良症候群、悪液質、又は糖尿病性腸症の治療における使用のための、上で規定される抗体若しくはその抗原結合フラグメント又は単離されたポリヌクレオチド又はベクター又は単離された細胞を更に提供し、好ましくは糖尿病は、I型又はII型糖尿病であり、好ましくは腸管及び/又は腸障害は、炎症性腸疾患、セリアック病、潰瘍性結腸炎、クローン病、又は腸管閉塞である。
【0039】
本発明は、好ましくは糖尿病、腸管及び/若しくは腸障害、吸収不良症候群、悪液質、又は糖尿病性腸症の治療における使用のための、上で規定される単離された抗体若しくはその抗原結合フラグメント又は単離されたポリヌクレオチド又はベクター又は単離された細胞、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物も提供し、好ましくは腸管及び/又は腸障害は、炎症性腸疾患、セリアック病、潰瘍性結腸炎、クローン病、又は腸管閉塞である。
【0040】
本発明は、IGFBP3と、上で規定される抗体又は組成物とを接触させる工程を含む、TMEM219受容体へのIGFBP3の結合を阻害する方法を提供する。
【0041】
本発明は、糖尿病、好ましくは1型若しくは2型糖尿病、腸管及び/若しくは腸障害、吸収不良症候群、悪液質、又は糖尿病性腸症の治療の方法を提供し、好ましくは腸管及び/又は腸障害は、炎症性腸疾患、IBD、セリアック病、クローン病、又は腸管閉塞であり、方法は、上で規定される単離された抗体若しくはその抗原結合フラグメント又は単離されたポリヌクレオチド又はベクター又は単離された細胞、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物をそれを必要とする対象に投与する工程、或いは上で規定される単離された抗体若しくはその抗原結合フラグメント又は単離されたポリヌクレオチド又はベクター又は単離された細胞をそれを必要とする対象に投与する工程を含む。
【0042】
本発明は、上で規定される細胞を獲得する工程、及び抗体又はその抗原結合フラグメントを産生する工程を含む、抗体又はその抗原結合フラグメントを産生するための方法も提供する。
【0043】
一部の実施形態において、組み合わせは、IGFBP3の阻害剤(例えば、本明細書において記載される抗IGFBP3抗体分子)を含む。故に、抗IGFBP3抗体分子及びその組み合わせを使用した、組成物、及びIGFBP3を検出するための方法、並びに糖尿病だけでなく腸管及び/又は腸障害を含めた様々な障害を治療するための方法が本明細書において開示される。
【0044】
したがって、1つの態様において、本発明は、以下の特性のうちの1つ又は複数を有する抗体分子(例えば、単離された又は組み換えの抗体分子)を特色とする:
(i)高い親和性で、例えば少なくとも約4×106M-1、好ましくは107M-1、典型的には約108M-1、及びより典型的には約109M-1~1010M-1、又はそれよりも強い親和定数で、IGFBP3、例えばヒトIGFBP3に結合する;
(ii)遊離IGFBP3に結合し、IGF-Iに結合しているIGFBP3には実質的に結合しない;
(iii)IGFBP3のその受容体TMEMへの結合を阻害する又は低下させる;
(iv)IGFBP3上のエピトープ、例えば商業的抗体LSBIO社LS-C45037又はクローン83.8F9によって認識されるエピトープとは異なるエピトープに特異的に結合する;
(v)IGFBP3上のエピトープ、例えばTable 4(表4)及びTable 5(表5)に規定されるモノクローナル抗体Yu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03によって認識されるエピトープと同じ又は類似したエピトープに特異的に結合する;
(vi)Table 4(表4)及びTable 5(表5)に規定されるモノクローナル抗体Yu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03と結合を交差競合する;
(vii)Table 4(表4)及びTable 5(表5)に規定されるYu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03のいずれかと同じ又は類似した結合親和性若しくは特異性、又はその両方を示す;
(viii)Table 2(表2)~Table 7(表7)に記載される抗体分子(例えば、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域)と同じ又は類似した結合親和性若しくは特異性、又はその両方を示す;
(ix)Table 2(表2)~Table 5(表5)に示されるアミノ酸配列を有する抗体分子(例えば、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域)と同じ又は類似した結合親和性若しくは特異性、又はその両方を示す;
(x)Table 6(表6)~Table 7(表7)に示されるヌクレオチド配列によってコードされる抗体分子(例えば、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域)と同じ又は類似した結合親和性若しくは特異性、又はその両方を示す;
(xi)IGFBP3に対する第2の抗体分子と同じ又は重複するエピトープに結合し、第2の抗体分子は、本明細書において記載される抗体分子、例えばTable 4(表4)及びTable 5(表5)に規定されるYu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03から選定される抗体分子である;
(xii)本明細書において記載される抗体分子、例えばTable 4(表4)及びTable 5(表5)に規定されるYu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03のいずれかから例えば選定される抗体分子の1つ又は複数の生物学的特性を有する;
(xiii)本明細書において記載される抗体分子、例えばTable 4(表4)及びTable 5(表5)に規定されるYu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03のいずれかから例えば選定される抗体分子の1つ又は複数の薬物動態特性を有する;
(xiv)IGFBP3の1つ又は複数の活性を阻害する、例えば未処理サンプルと比較した場合に、IBD患者由来組織サンプルからのミニ消化管の発達の少なくとも20%の増加、及び/又は未処理サンプルと比較した場合に、IGFBP3の存在下でのミニ消化管成長の発達の少なくとも20%の増加、又は未処理サンプルと比較した場合に、糖尿病性腸症血清の存在下でのミニ消化管成長の発達の少なくとも20%の増加のうちの1つ又は複数をもたらす;
(xv)IGFBP3処理サンプルと比較して少なくとも50%のEphB2及びLGR5の増加;又はIGFBP3処理サンプルと比較して少なくとも50%のカスパーゼ8発現レベルの減少を誘導する;或いは
(xvi)IGFBP3の1つ又は複数の活性を阻害する、例えばベータ細胞喪失の低下又はインスリンの増加のうちの1つ又は複数をもたらし;ベータ細胞喪失の低下又はインスリンの増加は、IGFBP3処理サンプルと比較して少なくとも10%である;
(xvii)IGFBP3の1つ又は複数の活性を阻害し、低下させ、又は中和し、IGFBP3により誘導されるアポトーシスの遮断又は低下をもたらす;
(xviii)ヒトIGFBP3に結合し、カニクイザルIGFBP3と交差反応性である。
【0045】
抗体分子をコードする核酸分子、発現ベクター、宿主細胞、及び抗体分子を作製するための方法も提供される。抗体分子を含む免疫コンジュゲート、多重又は二重特異性抗体分子、及び医薬組成物も提供される。
【0046】
いかなる理論にも拘束されることなく、IGFBP3/TMEM219軸は、炎症性腸疾患(IBD)において機能不全であり、故にISC喪失及び粘膜バリアの機能の変更につながり、それは、免疫応答活性化及び炎症を誘発し持続させる微生物に更に侵入されると思われる。IBDにおけるIGFBP3-TMEM219相互作用を遮断する作用物質の使用は、ISCを保護し得、腸管バリアの完全性を保ち得、故に局所的炎症の発症を阻止する。
【0047】
更に、TMEM219シグナル伝達の活性化は、カスパーゼ8発現の上方調節及びインスリン発現の低下を通じてベータ細胞のアポトーシスを増加させる。IGFBP3は、プレT1D及びプレT2Dを有する患者の血清において、並びに新たに診断された及び長年にわたる糖尿病患者において増加し、TMEM219はベータ細胞において発現される。TMEM219の発現又は過剰発現は、ベータ細胞破壊を好み、ベータ細胞量に影響を及ぼし、結果として生じる高血糖/炎症は、糖尿病の発生及び進行の間の過程を実行する。前糖尿病状態における変更した血糖制御及び炎症は、IGFBP3肝臓産生の増加を好み、それは、膵臓ベータ細胞上で発現したTMEM219を標的にし得、TMEM219過剰発現がIGFBP3放出の増加と並行するループを誘発し得る。次いで、TMEM219はベータ細胞死を誘発し得、故に、IGFBP3/TMEM219軸を標的にすることは、そのような細胞死を阻止し得る。
【0048】
本明細書において開示される抗IGFBP3抗体分子を使用して(単独で又は他の作用物質若しくは治療様式との組み合わせで)、糖尿病、並びに腸管及び/又は腸障害、吸収不良症候群、炎症性腸疾患、悪液質、IBD、セリアック病、糖尿病性腸症等の障害を治療し得、予防し得、及び/又は診断し得る。加えて、以下のカテゴリー(i)~(iii):(i)糖尿病を治療する作用物質;(ii)抗炎症剤;又は(iii)免疫療法剤、のうちの1つ、2つ、又はすべてから選定される2種、3種、又はそれを上回る種類の治療剤の組み合わせを含む方法及び組成物が本明細書において開示される。
【0049】
付加的な治療剤は、インスリン、Vandana、2014(19、参照により組み入れられる)で詳述されるインスリングラルギン、ビグアニド、グルコシダーゼ阻害剤、チアゾリジンジオン、DPP-4阻害剤、Georgeら、2013(20、参照により組み入れられる)で詳述されるGLP-1受容体アゴニスト、糖尿病を予防するために使用される作用物質、アスピリン、抗凝固剤及び血小板抗凝集剤(エノキサパリン、ヘパリン(eparin)、スロデキシド等);コレステロール降下薬(Marshaら、2011(21、参照により組み入れられる)に記載される、スタチン、胆汁酸封鎖剤、エゼチミブ、フィブラート類等);他の血圧降下剤(チアジド、ACE阻害剤、ベータ及びアルファ遮断薬等);抗アポトーシス剤、抗炎症剤、コルチコステロイド、及び免疫抑制剤(22、参照により組み入れられる)、臓器移植におけるアジュバント療法、細胞療法手法における保護剤、鎮痛薬、抗生物質、プロバイオティクス、TNF-アルファ遮断薬(23、参照により組み入れられる)、SGLT2阻害剤(グリフロジン誘導体等)、インテグリン阻害剤(24、参照により組み入れられる)を含めた、糖尿病を治療する作用物質から選択され得る。
【0050】
IGFBP3の存在下での及び/又は糖尿病性腸症血清の存在下でのミニ消化管成長と比較した場合のミニ消化管成長の増加を測定する方法は、当技術分野において公知であり、いくつかの刊行物(4、18、27、28)に記載されている又は下記の方法の節に記載されるとおりである。
【0051】
IGFBP3の存在下での発現と比較した場合のEphB2、LGR5、又はカスパーゼ8発現の増加及び/又は減少を測定する方法は、当技術分野において公知であり、定量RT-PCR、リアルタイムRT-PCR、マイクロアレイ、ノーザンブロッティング、RNA-Seqを含む(29、30)、又は下記の方法の節に記載されるとおりである。
【0052】
IGFBP3の存在下でのベータ細胞喪失と比較した場合のベータ細胞喪失の減少を測定する方法は、当技術分野において公知であり、細胞増殖アッセイ(CFSE染色、カルセイン/PI染色、トリパンブルー排除、BrdU染色、MTT)、アポトーシスアッセイ(TUNEL、カスパーゼの活性化及び検出、アネキシンV結合)を含む、又は下記の方法の節に記載されるとおりである。
【0053】
IGFBP3の存在下でのインスリンレベルと比較した場合のインスリンレベルの増加を測定する方法は、当技術分野において公知であり、ウェスタンブロット、ELISA、質量分析を含む(31~33)。
【0054】
IGFBP3の存在下でのアポトーシスと比較した場合のアポトーシスの減少を測定する方法は、当技術分野において公知であり、DNA断片化、カスパーゼ活性化分析、ミトコンドリア(Mithocondrial)膜透過性、アネキシンV結合を含む(34)、又は下記の方法の節に記載されるとおりである。
【0055】
一部の実施形態において、抗体分子は、高い親和性で、例えばマウス抗IGFBP3抗体分子又はキメラ抗IGFBP3抗体分子又は商業的抗IGFBP3抗体分子のKDとほぼ同じである、又はそれよりも少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、若しくは90%高い若しくは低いKDで、IGFBP3に結合する。一部の実施形態において、マウス又はキメラ抗IGFBP3抗体分子のKDは、例えばBiacore法又はKinExA=結合平衡除外アッセイによって測定され、約0.4、0.3、0.2、0.1、又は0.05nM未満である。一部の実施形態において、マウス又はキメラ抗IGFBP3抗体分子のKDは約0.2nM未満である。他の実施形態において、マウス又はキメラ抗IGFBP3抗体分子のKDは、例えばIGFBP3を発現する細胞(例えば、300.19細胞)上での結合によって測定され、約10、5、3、2、又は1nM未満である。一部の実施形態において、マウス又はキメラ抗IGFBP3抗体分子のKDは約1nM未満である。
【0056】
IGFBP3への結合を測定する方法は、タンパク質-タンパク質相互作用アッセイとして当技術分野において公知であり、ELISA、共免疫沈降、表面プラズモン共鳴、FRET-フェルスター共鳴エネルギー転移を含む(35)、又は下記の方法の節に記載されるとおりである。
【0057】
一部の実施形態において、抗体分子の発現レベルは、マウス又はキメラ抗体分子、例えばLSBIO社LS-C45037、クローン83.8F9、又はNovus社NBP2-12364等のマウス、商業的、又はキメラ抗IGFBP3抗体分子の発現レベルよりも高い、例えば少なくとも約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10倍高い。一部の実施形態において、抗体分子は、HEK293細胞、CHO細胞、又は当技術分野において公知の任意の適切な哺乳類細胞株において発現される。
【0058】
一部の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、マウス、商業的、又はキメラ抗IGFBP3抗体分子、例えば本明細書において記載されるマウス、商業的、又はキメラ抗IGFBP3抗体分子のIC50(50%阻害の濃度)とほぼ同じである又はそれよりも低い、例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、若しくは90%低いIC50で、1つ又は複数のIGFBP3関連活性を低下させる。
【0059】
一部の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、マウス、商業的、又はキメラ抗IGFBP3抗体分子、例えばLSBIO社LS-C45037、クローン83.8F9、又はNovus社NBP2-12364等のマウス、商業的、又はキメラ抗IGFBP3抗体分子よりも、インビボ又はインビトロでの改善された安定性を有する、例えば少なくとも約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10倍安定である。
【0060】
1つの実施形態において、抗IGFBP3抗体分子はヒト化抗体分子である。
【0061】
別の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、本明細書において記載される抗体、例えばYu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03のいずれかから選定される抗体;又はTable 2(表2)~Table 5(表5)に記載される抗体、又はTable 6(表6)~Table 7(表7)におけるヌクレオチド配列;若しくは前述の配列のいずれかと実質的に同一の(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%、又はそれよりも高く同一の)配列によってコードされる抗体由来の、少なくとも1つの抗原結合領域、例えば可変領域又はその抗原結合フラグメントを含む。
【0062】
更に別の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、本明細書において記載される抗体、例えばYu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03のいずれかから選定される抗体;又はTable 2(表2)~Table 5(表5)に記載される抗体、又はTable 6(表6)~Table 7(表7)におけるヌクレオチド配列;若しくは前述の配列のいずれかと実質的に同一の(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%、又はそれよりも高く同一の)配列によってコードされる抗体由来の、少なくとも1つ、2つ、3つ、又は4つの可変領域を含む。
【0063】
更に別の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、本明細書において記載される抗体、例えばYu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03のいずれかから選定される抗体;又はTable 2(表2)~Table 5(表5)に記載される抗体、又はTable 6(表6)~Table 7(表7)におけるヌクレオチド配列;若しくは前述の配列のいずれかと実質的に同一の(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%、又はそれよりも高く同一の)配列によってコードされる抗体由来の、少なくとも1つ又は2つの重鎖可変領域を含む。
【0064】
更に別の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、本明細書において記載される抗体、例えばYu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03のいずれかから選定される抗体;又はTable 2(表2)~Table 5(表5)に記載される抗体、又はTable 6(表6)~Table 7(表7)におけるヌクレオチド配列;若しくは前述の配列のいずれかと実質的に同一の(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%、又はそれよりも高く同一の)配列によってコードされる抗体由来の、少なくとも1つ又は2つの軽鎖可変領域を含む。
【0065】
更に別の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、IgG4、例えばヒトIgG4に対する重鎖定常領域を含む。1つの実施形態において、ヒトIgG4は、位置228における置換(例えば、SerからProへの置換)を含む。なお更に別の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、IgG1、例えばヒトIgG1に対する重鎖定常領域を含む。1つの実施形態において、ヒトIgG1は、位置297における置換(例えば、AsnからAlaへの置換)を含む。1つの実施形態において、ヒトIgG1は、位置250における置換、位置428における置換、又はその両方(例えば、位置250におけるThrからGlnへの置換及び/又は位置428におけるMetからLeuへの置換)を含む。1つの実施形態において、ヒトIgG1は、位置234における置換、位置235における置換、又はその両方(例えば、位置234におけるLeuからAlaへの置換及び/又は位置235におけるLeuからAlaへの置換)を含む。1つの実施形態において、重鎖定常領域は、Table 8(表8)に記載されるアミノ酸配列(amino sequence)、又はそれと実質的に同一の(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%、又はそれよりも高く同一の)配列を含む。
【0066】
更に別の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、カッパ軽鎖定常領域、例えばヒトカッパ軽鎖定常領域を含む。1つの実施形態において、軽鎖定常領域は、Table 8(表8)に記載されるアミノ酸配列、又はそれと実質的に同一の(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%、又はそれよりも高く同一の)配列を含む。
【0067】
別の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、IgG4、例えばヒトIgG4に対する重鎖定常領域、及びカッパ軽鎖定常領域、例えばヒトカッパ軽鎖定常領域、例えば、Table 8(表8)に記載されるアミノ酸配列、又はそれと実質的に同一の(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%、又はそれよりも高く同一の)配列を含む重鎖及び軽鎖定常領域を含む。更に別の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、IgG1、例えばヒトIgG1に対する重鎖定常領域、及びカッパ軽鎖定常領域、例えばヒトカッパ軽鎖定常領域、例えば、Table 8(表8)に記載されるアミノ酸配列、又はそれと実質的に同一の(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%、又はそれよりも高く同一の)配列を含む重鎖及び軽鎖定常領域を含む。1つの実施形態において、ヒトIgG1又はIgG4は、凝集を減少させる、電荷不均一性を低下させる、親和性を増加させる、及び抗原結合をモジュレートするための、可変領域における置換;CDRにおける不安定ホットスポットの変異による除去、参照により組み入れられる(26)に記載される可変領域における推定N-グリコシル化部位を含む。
【0068】
別の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、Yu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03のいずれかのアミノ酸配列;又はTable 2(表2)~Table 5(表5)に記載されるアミノ酸配列、又はTable 6(表6)~Table 7(表7)におけるヌクレオチド配列;若しくは前述の配列のいずれかと実質的に同一の(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%、又はそれよりも高く同一の)配列によってコードされるアミノ酸配列を含む、重鎖可変ドメイン及び定常領域、軽鎖可変ドメイン及び定常領域、又はその両方を含む。抗IGFBP3抗体分子は、任意で、重鎖、軽鎖、又はその両方由来のリーダー配列を含む。
【0069】
更に別の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、本明細書において記載される抗体、例えばYu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03、若しくはBAP058-クローン-Oのいずれかから選定される抗体;又はTable 2(表2)~Table 5(表5)に記載される抗体、又はTable 6(表6)~Table 7(表7)におけるヌクレオチド配列;若しくは前述の配列のいずれかと実質的に同一の(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%、又はそれよりも高く同一の)配列によってコードされる抗体の、重鎖可変領域由来の少なくとも1つ、2つ、又は3つの相補性決定領域(CDR)を含む。
【0070】
更に別の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、Table 2(表2)~Table 5(表5)に示されるアミノ酸配列又はTable 6(表6)~Table 7(表7)に示されるヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域由来の少なくとも1つ、2つ、又は3つのCDR(又は、集合的にCDRのすべて)を含む。1つの実施形態において、CDR(又は、集合的にCDRのすべて)の1つ又は複数は、Table 2(表2)~Table 5(表5)に示されるアミノ酸配列又はTable 6(表6)~Table 7(表7)に示されるヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列と比べて、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又はそれを上回る数の変化、例えばアミノ酸置換又は欠失を有する。
【0071】
更に別の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、本明細書において記載される抗体、例えばYu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03のいずれかから選定される抗体;又はTable 2(表2)~Table 5(表5)に記載される抗体、又はTable 6(表6)~Table 7(表7)におけるヌクレオチド配列;若しくは前述の配列のいずれかと実質的に同一の(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%、又はそれよりも高く同一の)配列によってコードされる抗体の、軽鎖可変領域由来の少なくとも1つ、2つ、又は3つのCDRを含む。
【0072】
更に別の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、Table 2(表2)~Table 5(表5)に示されるアミノ酸配列又はTable 6(表6)~Table 7(表7)に示されるヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域由来の少なくとも1つ、2つ、又は3つのCDR(又は、集合的にCDRのすべて)を含む。1つの実施形態において、CDR(又は、集合的にCDRのすべて)の1つ又は複数は、Table 2(表2)~Table 5(表5)に示されるアミノ酸配列又はTable 6(表6)~Table 7(表7)に示されるヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列と比べて、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又はそれを上回る数の変化、例えばアミノ酸置換又は欠失を有する。ある特定の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、軽鎖CDRにおける置換、例えば軽鎖のCDR1、CDR2、及び/又はCDR3における1つ又は複数の置換を含む。
【0073】
別の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、Table 2(表2)~Table 5(表5)に示されるアミノ酸配列又はTable 6(表6)~Table 7(表7)に示されるヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含む、重鎖及び軽鎖可変領域由来の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つのCDR(又は、集合的にCDRのすべて)を含む。1つの実施形態において、CDR(又は、集合的にCDRのすべて)の1つ又は複数は、Table 2(表2)~Table 5(表5)に示されるアミノ酸配列又はTable 6(表6)~Table 7(表7)に示されるヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列と比べて、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又はそれを上回る数の変化、例えばアミノ酸置換又は欠失を有する。
【0074】
1つの実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、本明細書において記載される抗体、例えばYu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03のいずれかから選定される抗体;又はTable 2(表2)~Table 5(表5)に記載される抗体、又はTable 6(表6)~Table 7(表7)におけるヌクレオチド配列によってコードされる抗体由来の6つすべてのCDR、或いは密接に関係したCDR、例えば同一である、又は少なくとも1つのアミノ酸変更、しかし多くとも2つ、3つ、若しくは4つの変更(例えば置換、欠失、又は挿入、例えば保存的置換)を有するCDRを含む。1つの実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、本明細書において記載される任意のCDRを含み得る。ある特定の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、軽鎖CDRにおける置換、例えば軽鎖のCDR1、CDR2、及び/又はCDR3における1つ又は複数の置換を含む。別の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、本明細書において記載される抗体、例えばYu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03のいずれかから選定される抗体;又はTable 2(表2)~Table 5(表5)に記載される抗体、又はTable 6(表6)~Table 7(表7)におけるヌクレオチド配列;若しくは前述の配列のいずれかと実質的に同一の(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%、又はそれよりも高く同一の)配列によってコードされる抗体の、重鎖可変領域由来のKabatらに従った少なくとも1つ、2つ、又は3つのCDR(例えば、Table 2(表2)~Table 5(表5)に提示されるKabat定義に従った少なくとも1つ、2つ、又は3つのCDR);或いはTable 2(表2)~Table 3(表3)に示されるKabatらに従った1つ、2つ、又は3つのCDRと比べて、少なくとも1つのアミノ酸変更、しかし多くとも2つ、3つ、又は4つの変更(例えば置換、欠失、又は挿入、例えば保存的置換)を有する少なくとも1つ、2つ、又は3つのCDRを含む。
【0075】
別の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、本明細書において記載される抗体、例えばYu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03のいずれかから選定される抗体;又はTable 2(表2)~Table 5(表5)に記載される抗体、又はTable 6(表6)~Table 7(表7)におけるヌクレオチド配列;若しくは前述の配列のいずれかと実質的に同一の(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%、又はそれよりも高く同一の)配列によってコードされる抗体の、軽鎖可変領域由来のKabatらに従った少なくとも1つ、2つ、又は3つのCDR(例えば、Table 2(表2)~Table 3(表3)に提示されるKabat定義に従った少なくとも1つ、2つ、又は3つのCDR);或いはTable 2(表2)~Table 3(表3)に示されるKabatらに従った1つ、2つ、又は3つのCDRと比べて、少なくとも1つのアミノ酸変更、しかし多くとも2つ、3つ、又は4つの変更(例えば置換、欠失、又は挿入、例えば保存的置換)を有する少なくとも1つ、2つ、又は3つのCDRを含む。
【0076】
更に別の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、本明細書において記載される抗体、例えばYu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03のいずれかから選定される抗体;又はTable 2(表2)~Table 5(表5)に記載される抗体、又はTable 6(表6)~Table 7(表7)におけるヌクレオチド配列;若しくは前述の配列のいずれかと実質的に同一の(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%、又はそれよりも高く同一の)配列によってコードされる抗体の、重鎖及び軽鎖可変領域由来のKabatらに従った少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つのCDR(例えば、Table 2(表2)~Table 3(表3)に提示されるKabat定義に従った少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つのCDR);或いはTable 2(表2)~Table 3(表3)に示されるKabatらに従った1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つのCDRと比べて、少なくとも1つのアミノ酸変更、しかし多くとも2つ、3つ、又は4つの変更(例えば置換、欠失、又は挿入、例えば保存的置換)を有する少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つのCDRを含む。
【0077】
更に別の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、本明細書において記載される抗体、例えばYu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03のいずれかから選定される抗体;又はTable 2(表2)~Table 5(表5)に記載される抗体、又はTable 6(表6)~Table 7(表7)におけるヌクレオチド配列;若しくは前述の配列のいずれかと実質的に同一の(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%、又はそれよりも高く同一の)配列によってコードされる抗体の、重鎖及び軽鎖可変領域由来のKabatらに従った6つすべてのCDR(例えば、Table 2(表2)~Table 3(表3)に提示されるKabat定義に従った6つすべてのCDR);或いはTable 2(表2)~Table 3(表3)に示されるKabatらに従った6つすべてのCDRと比べて、少なくとも1つのアミノ酸変更、しかし多くとも2つ、3つ、又は4つの変更(例えば置換、欠失、又は挿入、例えば保存的置換)を有する6つすべてのCDRを含む。1つの実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、本明細書において記載される任意のCDRを含み得る。
【0078】
別の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、本明細書において記載される抗体、例えばYu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03のいずれかから選定される抗体;又はTable 2(表2)~Table 5(表5)に記載される抗体、又はTable 6(表6)~Table 7(表7)におけるヌクレオチド配列によってコードされる抗体の、重鎖可変領域由来の少なくとも1つ、2つ、又は3つのChothia又はKabat超可変ループ(例えば、Table 2(表2)~Table 5(表5)に提示されるChothia又はKabat定義に従った少なくとも1つ、2つ、又は3つの超可変ループ);或いはIGFBP3と接触するそうした超可変ループ由来の少なくともアミノ酸;或いはTable 2(表2)~Table 5(表5)に示されるChothiaらに従った1つ、2つ、又は3つの超可変ループと比べて、少なくとも1つのアミノ酸変更、しかし多くとも2つ、3つ、又は4つの変更(例えば置換、欠失、又は挿入、例えば保存的置換)を有する少なくとも1つ、2つ、又は3つのChothia又はKabat超可変ループを含む。
【0079】
別の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、本明細書において記載される抗体、例えばYu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03のいずれかから選定される抗体;又はTable 2(表2)~Table 5(表5)に記載される抗体、又はTable 6(表6)~Table 7(表7)におけるヌクレオチド配列によってコードされる抗体の、軽鎖可変領域の少なくとも1つ、2つ、又は3つのChothia超可変ループ(例えば、Table 2(表2)~Table 5(表5)に提示されるChothia定義に従った少なくとも1つ、2つ、又は3つの超可変ループ);或いはIGFBP3と接触するそうした超可変ループ由来の少なくともアミノ酸;或いはTable 2(表2)~Table 5(表5)に示されるChothiaらに従った1つ、2つ、又は3つの超可変ループと比べて、少なくとも1つのアミノ酸変更、しかし多くとも2つ、3つ、又は4つの変更(例えば置換、欠失、又は挿入、例えば保存的置換)を有する少なくとも1つ、2つ、又は3つのChothia超可変ループを含む。
【0080】
更に別の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、本明細書において記載される抗体、例えばYu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03のいずれかから選定される抗体;又はTable 2(表2)~Table 5(表5)に記載される抗体、又はTable 6(表6)~Table 7(表7)におけるヌクレオチド配列によってコードされる抗体の、重鎖及び軽鎖可変領域由来の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つの超可変ループ(例えば、Table 2(表2)~Table 5(表5)に提示されるChothia定義に従った少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つの超可変ループ);或いはIGFBP3と接触するそうした超可変ループ由来の少なくともアミノ酸;或いはTable 2(表2)~Table 5(表5)に示されるChothiaらに従った1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つの超可変ループと比べて、少なくとも1つのアミノ酸変更、しかし多くとも2つ、3つ、又は4つの変更(例えば置換、欠失、又は挿入、例えば保存的置換)を有する少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つの超可変ループを含む。
【0081】
1つの実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、本明細書において記載される抗体、例えばYu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03のいずれかから選定される抗体の6つすべての超可変ループ(例えば、Table 2(表2)~Table 5(表5)に提示されるChothia定義に従った6つすべての超可変ループ)、或いは密接に関係した超可変ループ、例えば同一である、又は少なくとも1つのアミノ酸変更、しかし多くとも2つ、3つ、若しくは4つの変更(例えば置換、欠失、又は挿入、例えば保存的置換)を有する超可変ループ;或いはTable 2(表2)~Table 5(表5)に示されるChothiaらに従った6つすべての超可変ループと比べて、少なくとも1つのアミノ酸変更、しかし多くとも2つ、3つ、又は4つの変更(例えば置換、欠失、又は挿入、例えば保存的置換)を有する6つすべての超可変ループを含む。1つの実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、本明細書において記載される任意の超可変ループを含み得る。
【0082】
なお更に別の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、本明細書において記載される抗体、例えばYu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03のいずれかから選定される抗体の対応する超可変ループと同じ標準構造、例えば本明細書において記載される抗体の重鎖及び/又は軽鎖可変ドメインの少なくともループ1及び/又はループ2と同じ標準構造を有する少なくとも1つ、2つ、又は3つの超可変ループを含む。超可変ループ標準構造の説明に関しては、例えばChothiaら、(1992) J. Mol. Biol. 227:799~817;Tomlinsonら、(1992) J. Mol. Biol. 227:776~798を参照されたい。これらの構造は、これらの参考文献に記載される表を調べることによって決定され得る。
【0083】
ある特定の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、Kabatら及びChothiaらに従って規定されるCDR又は超可変ループの組み合わせを含む。
【0084】
1つの実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、Kabat及びChothia定義に従った、本明細書において記載される抗体、例えばYu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03のいずれかから選定される抗体の重鎖可変領域由来の少なくとも1つ、2つ、若しくは3つのCDR又は超可変ループ(例えば、Table 2(表2)~Table 5(表5)に提示されるKabat及びChothia定義に従った少なくとも1つ、2つ、若しくは3つのCDR又は超可変ループ);或いはTable 6(表6)~Table 7(表7)におけるヌクレオチド配列;又は前述の配列のいずれかと実質的に同一の(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%、又はそれよりも高く同一の)配列によってコードされる抗体の重鎖可変領域由来の少なくとも1つ、2つ、若しくは3つのCDR又は超可変ループ;或いはTable 2(表2)~Table 5(表5)に示されるKabat及び/又はChothiaに従った1つ、2つ、若しくは3つのCDR又は超可変ループと比べて、少なくとも1つのアミノ酸変更、しかし多くとも2つ、3つ、又は4つの変更(例えば置換、欠失、又は挿入、例えば保存的置換)を有する、重鎖可変領域由来の少なくとも1つ、2つ、若しくは3つのCDR又は超可変ループを含む。
【0085】
例えば、抗IGFBP3抗体分子は、例えばTable 2(表2)~Table 5(表5)に示される、Kabatらに従ったVH CDR1若しくはChothiaらに従ったVH超可変ループ1、又はその組み合わせを含み得る。抗IGFBP3抗体分子は、例えばTable 2(表2)~Table 5(表5)に示される、例えばKabatらに従ったVH CDR2~3及びKabatらに従ったVL CDR1~3を更に含み得る。したがって、一部の実施形態において、フレームワーク領域は、Kabatらに従って規定されるCDR及びChothiaらに従って規定される超可変ループの組み合わせに基づいて規定される。例えば、抗IGFBP3抗体分子は、例えばTable 2(表2)~Table 5(表5)に示される、Chothiaらに従ったVH超可変ループ1に基づいて規定されるVH FR1、及びKabatらに従ったVH CDR1~2に基づいて規定されるVH FR2を含み得る。抗IGFBP3抗体分子は、例えばKabatらに従ったVH CDR2~3に基づいて規定されるVH FR3~4、及びKabatらに従ったVL CDR1~3に基づいて規定されるVL FR1~4を更に含み得る。抗IGFBP3抗体分子は、Kabat及びChothia定義に従ったCDR又は超可変ループの任意の組み合わせを含有し得る。1つの実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、Kabat及びChothia定義に従った、本明細書において記載される抗体、例えばYu139-A02、Yu139-A03、Yu139-B01、Yu139-C01、Yu139-C02、Yu139-D02、Yu139-D03、Yu139-F02、Yu139-G01、Yu139-G03、Yu139-H03のいずれかから選定される抗体の、軽鎖可変領域由来の少なくとも1つ、2つ、又は3つのCDR(例えば、Table 2(表2)~Table 5(表5)に提示されるKabat及びChothia定義に従った少なくとも1つ、2つ、又は3つのCDR)を含む。好ましい抗IGFBP3抗体は、Yu139-A03、Yu139-C01、Yu139-H03、又はYu139-G03である。
【0086】
一実施形態、例えば可変領域、CDR(例えば、Chothia CDR又はKabat CDR)、又は本明細書で、例えばTable 2(表2)~Table 5(表5)で言及される他の配列を含む実施形態において、抗体分子は、単一特異性抗体分子、二重特異性抗体分子である、又は抗体の抗原結合フラグメントを含む抗体分子、例えば半抗体若しくは半抗体の抗原結合フラグメントである。実施形態において、抗体分子は、IGFBP3に対する第1の結合特異性、並びにTNF-アルファ、インテグリン、IL1、IL12及びIL23、CD3、CD20、CD80、CD86に対する第2の結合特異性を有する二重特異性抗体分子である。
【0087】
1つの実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、
(i)配列番号1~配列番号7のいずれか1つから選定されるVHCDR1アミノ酸配列;配列番号8~配列番号16のいずれか1つから選定されるVHCDR2アミノ酸配列;及び配列番号17~配列番号26のいずれか1つから選定されるVHCDR3アミノ酸配列を含む、重鎖可変領域(VH);並びに
(ii)配列番号27~配列番号36のいずれか1つから選定されるVLCDR1アミノ酸配列、配列番号37~配列番号44のいずれか1つから選定されるVLCDR2アミノ酸配列、及び配列番号45~配列番号54から選定されるVLCDR3アミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域(VL)
を含む。
【0088】
別の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、
(i)配列番号2、配列番号4、又は配列番号7から選定されるVHCDR1アミノ酸配列;配列番号9、配列番号11、配列番号12、又は配列番号16のVHCDR2アミノ酸配列;及び配列番号18、配列番号20、配列番号25、又は配列番号26のVHCDR3アミノ酸配列を含む、重鎖可変領域(VH);並びに
(ii)配列番号28、配列番号30、配列番号35、配列番号36のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号38、配列番号39、配列番号43、配列番号44のVLCDR2アミノ酸配列、及び配列番号46、配列番号48、配列番号53、配列番号54のVLCDR3アミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域(VL)
を含む。
【0089】
1つの実施形態において、抗IGFBP3抗体分子の軽鎖又は重鎖可変フレームワーク(例えば、少なくともFR1、FR2、FR3、及び任意でFR4を包含する領域)は、(a)ヒト軽鎖若しくは重鎖可変フレームワーク由来のアミノ酸残基の少なくとも80%、85%、87%、90%、92%、93%、95%、97%、98%、若しくは好ましくは100%を含む軽鎖若しくは重鎖可変フレームワーク、例えばヒト成熟抗体、ヒト生殖系列配列、若しくはヒトコンセンサス配列由来の軽鎖若しくは重鎖可変フレームワーク残基;(b)ヒト軽鎖若しくは重鎖可変フレームワーク由来のアミノ酸残基の20%~80%、40%~60%、60%~90%、若しくは70%~95%を含む軽鎖若しくは重鎖可変フレームワーク、例えばヒト成熟抗体、ヒト生殖系列配列、若しくはヒトコンセンサス配列由来の軽鎖若しくは重鎖可変フレームワーク残基;(c)非ヒトフレームワーク(例えば、齧歯類フレームワーク);又は(d)例えば抗原決定基若しくは細胞毒性決定基を除去するように改変されている、例えば脱免疫化若しくは部分的にヒト化されている非ヒトフレームワーク、から選定され得る。
【0090】
1つの実施形態において、軽鎖又は重鎖可変フレームワーク領域(特に、FR1、FR2、及び/又はFR3)は、ヒト生殖系列遺伝子のVL又はVHセグメントのフレームワークと少なくとも70、75、80、85、87、88、90、92、94、95、96、97、98、99%同一の又はそれと同一の軽鎖又は重鎖可変フレームワーク配列を含む。
【0091】
ある特定の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、10個、15個、20個、又はそれを上回る数の変化、例えばアミノ酸置換又は欠失を有する重鎖可変ドメインを含む。
【0092】
1つの実施形態において、抗IGFBP3抗体分子の重鎖若しくは軽鎖可変領域、又はその両方は、本明細書において記載される核酸配列、或いは、例えば低いストリンジェンシー、中間のストリンジェンシー、若しくは高いストリンジェンシー、又は本明細書において記載される他のハイブリダイゼーション条件下で、本明細書において記載される核酸配列(例えば、Table 6(表6)及びTable 7(表7)に示される核酸配列)にハイブリダイズする核酸又はその相補体、によってコードされるアミノ酸配列を含む。
【0093】
別の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、Table 2(表2)~Table 5(表5)に記載のアミノ酸配列、又はそれと実質的に同一の配列(例えば、それと少なくとも約85%、90%、95%、99%、若しくはそれを上回る割合同一の配列、又はTable 2(表2)~Table 5(表5)に示される配列と多くとも(no more than)1、2、5、10、若しくは15個のアミノ酸残基異なる配列)を有する、少なくとも1つ、2つ、3つ、又は4つの抗原結合領域、例えば可変領域を含む。別の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、Table 2(表2)~Table 5(表5)に記載のヌクレオチド配列、又はそれと実質的に同一の配列(例えば、それと少なくとも約85%、90%、95%、99%、若しくはそれを上回る割合同一の配列、又はTable 2(表2)~Table 5(表5)に示される配列と多くとも3、6、15、30、若しくは45個のヌクレオチド異なる配列)を有する核酸によってコードされるVH及び/又はVLドメインを含む。
【0094】
更に別の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、Table 2(表2)~Table 5(表5)に記載のアミノ酸配列、又はそれと実質的に相同な配列(例えば、それと少なくとも約85%、90%、95%、99%、若しくはそれを上回る割合同一の、及び/又は1つ、2つ、3つ、若しくはそれを上回る数の置換、挿入、若しくは欠失、例えば保存された置換を有する配列)を有する、重鎖可変領域由来の少なくとも1つ、2つ、又は3つのCDRを含む。更に別の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、Table 2(表2)~Table 5(表5)に記載のアミノ酸配列、又はそれと実質的に相同な配列(例えば、それと少なくとも約85%、90%、95%、99%、若しくはそれを上回る割合同一の、及び/又は1つ、2つ、3つ、若しくはそれを上回る数の置換、挿入、若しくは欠失、例えば保存された置換を有する配列)を有する、軽鎖可変領域由来の少なくとも1つ、2つ、又は3つのCDRを含む。更に別の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、Table 2(表2)~Table 5(表5)に記載のアミノ酸配列、又はそれと実質的に相同な配列(例えば、それと少なくとも約85%、90%、95%、99%、若しくはそれを上回る割合同一の、及び/又は1つ、2つ、3つ、若しくはそれを上回る数の置換、挿入、若しくは欠失、例えば保存された置換を有する配列)を有する、重鎖及び軽鎖可変領域由来の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つのCDRを含む。
【0095】
更に他の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD、及びIgEの重鎖定常領域(Fc)から選定される;特に、例えばIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4の重鎖定常領域、より特にIgG1又はIgG4(例えば、ヒトIgG1、IgG2、又はIgG4)の重鎖定常領域から選定される、重鎖定常領域を有する。1つの実施形態において、重鎖定常領域はヒトIgG1である。別の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、例えばカッパ又はラムダの軽鎖定常領域から選定される、軽鎖定常領域を有する。1つの実施形態において、定常領域は、抗IGFBP3抗体分子の特性を改変する(例えば、Fc受容体結合、抗体グリコシル化、システイン残基の数、エフェクター細胞機能、補体機能、半減期、凝集、及び安定性のうちの1つ又は複数を増加させる又は減少させる)ように変更される、例えば変異する。ある特定の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、変異したヒトIgG4を含む。
【0096】
1つの実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、単離されている又は組み換えである。
【0097】
1つの実施形態において、抗IGFBP3抗体分子は、ヒト化又はヒト抗体分子である。
【0098】
本発明は、本明細書において記載される抗IGFBP3抗体分子の重鎖及び軽鎖可変領域、CDR、超可変ループ、フレームワーク領域をコードする、一方又は両方のヌクレオチド配列を含む核酸分子も特色とする。
【0099】
ある特定の実施形態において、抗IGFBP3抗体分子をコードするヌクレオチド配列は、コドン最適化される。例えば、本発明は、例えばTable 2(表2)~Table 5(表5)に要約されるYu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03のいずれか、又はそれと実質的に同一の配列のうちの1つ又は複数から選定される抗IGFBP3抗体分子の、それぞれ重鎖及び軽鎖可変領域をコードする第1及び第2の核酸を特色とする。例えば、核酸は、Table 6(表6)~Table 7(表7)に記載のヌクレオチド配列、又はそれと実質的に同一の配列(例えば、それと少なくとも約85%、90%、95%、99%、若しくはそれを上回る割合同一の配列、又はTable 6(表6)~Table 7(表7)に示される配列と多くとも3、6、15、30、若しくは45個のヌクレオチド異なる配列)を含み得る。
【0100】
他の実施形態において、核酸分子は、Yu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03のいずれかのアミノ酸配列;若しくはTable 2(表2)~Table 5(表5)に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び/若しくは重鎖定常領域をコードするヌクレオチド配列;又はTable 6(表6)~Table 7(表7)におけるヌクレオチド配列;又は前述の配列のいずれかと実質的に同一の(例えば、少なくとも約85%、90%、95%、99%、又はそれよりも高く同一の)配列を含む。
【0101】
他の実施形態において、核酸分子は、Yu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03のいずれかのアミノ酸配列;若しくはTable 2(表2)~Table 5(表5)に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び/若しくは軽鎖定常領域をコードするヌクレオチド配列;又はTable 6(表6)~Table 7(表7)におけるヌクレオチド配列;又は前述の配列のいずれかと実質的に同一の(例えば、少なくとも約85%、90%、95%、99%、又はそれよりも高く同一の)配列を含む。
【0102】
抗IGFBP3重鎖及び軽鎖可変ドメイン及び定常領域をコードする前述のヌクレオチド配列は、別個の核酸分子に又は同じ核酸分子に存在し得る。ある特定の実施形態において、核酸分子は、リーダー配列をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0103】
ある特定の実施形態において、核酸分子は、Table 2(表2)~Table 5(表5)に記載のアミノ酸配列、又はそれと実質的に相同な配列(例えば、それと少なくとも約85%、90%、95%、99%、若しくはそれを上回る割合同一の、及び/又は1つ、2つ、3つ、若しくはそれを上回る数の置換、挿入、若しくは欠失、例えば保存された置換を有する配列)を有する、重鎖可変領域由来の少なくとも1つ、2つ、若しくは3つのCDR又は超可変ループをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0104】
別の実施形態において、核酸分子は、Table 2(表2)~Table 5(表5)に記載のアミノ酸配列、又はそれと実質的に相同な配列(例えば、それと少なくとも約85%、90%、95%、99%、若しくはそれを上回る割合同一の、及び/又は1つ、2つ、3つ、若しくはそれを上回る数の置換、挿入、若しくは欠失、例えば保存された置換を有する配列)を有する、軽鎖可変領域由来の少なくとも1つ、2つ、若しくは3つのCDR又は超可変ループをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0105】
更に別の実施形態において、核酸分子は、Table 2(表2)~Table 5(表5)に記載のアミノ酸配列、又はそれと実質的に相同な配列(例えば、それと少なくとも約85%、90%、95%、99%、若しくはそれを上回る割合同一の、及び/又は1つ、2つ、3つ、若しくはそれを上回る数の置換、挿入、若しくは欠失、例えば保存された置換を有する配列)を有する、重鎖及び軽鎖可変領域由来の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、若しくは6つのCDR又は超可変ループをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0106】
別の実施形態において、核酸分子は、Table 2(表2)~Table 5(表5)に要約されるYu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03のいずれか、又はそれと実質的に同一の配列に対する、1つ又は複数の重鎖フレームワーク領域(例えば、VHFW1(a型)、VHFW1(b型)、VHFW1(c型)、VHFW1(d型)、VHFW2(a型)、VHFW2(a'型)、VHFW2(b型)、VHFW2(c型)、VHFW2(d型)、VHFW2(e型)、VHFW3(a型)、VHFW3(b型)、VHFW3(c型)、VHFW3(d型)、VHFW3(e型)、若しくはVHFW4のいずれか、又はその任意の組み合わせ、例えば本明細書において記載されるフレームワーク組み合わせ)を含む。例えば、核酸分子は、Table 6(表6)~Table 7(表7)に記載のヌクレオチド配列、又はそれと実質的に同一の配列(例えば、それと少なくとも約85%、90%、95%、99%、若しくはそれを上回る割合同一の配列、又はTable 6(表6)~Table 7(表7)に示される配列と多くとも3、6、15、30、若しくは45個のヌクレオチド異なる配列)を含み得る。
【0107】
別の実施形態において、核酸分子は、Table 2(表2)~Table 5(表5)に要約されるYu139-A02、A03、B01、C01、C02、D02、D03、F02、G01、G03、H03のいずれか、又はそれと実質的に同一の配列に対する、1つ又は複数の軽鎖フレームワーク領域(例えば、VLFW1(a型)、VLFW1(b型)、VLFW1(c型)、VLFW1(d型)、VLFW1(e型)、VLFW1(f型)、VLFW2(a型)、VLFW2(c型)、VLFW3(a型)、VLFW3(b型)、VLFW3(c型)、VLFW3(d型)、VLFW3(e型)、VLFW3(f型)、VLFW3(g型)、若しくはVLFW4のいずれか、又はその任意の組み合わせ、例えば本明細書において記載されるフレームワーク組み合わせ)を含む。例えば、核酸分子は、Table 6(表6)~Table 7(表7)に記載のヌクレオチド配列、又はそれと実質的に同一の配列(例えば、それと少なくとも約85%、90%、95%、99%、若しくはそれを上回る割合同一の配列、又はTable 6(表6)~Table 7(表7)に示される配列と多くとも3、6、15、30、若しくは45個のヌクレオチド異なる配列)を含み得る。
【0108】
別の実施形態において、核酸分子は、本明細書において記載される1つ又は複数の重鎖フレームワーク領域及び1つ又は複数の軽鎖フレームワーク領域を含む。重鎖及び軽鎖フレームワーク領域は、同じベクター又は別個のベクターに存在し得る。
【0109】
別の態様において、本出願は、本明細書において記載される核酸又は公知の方法に従ってコドン最適化のために改変された核酸を含有する宿主細胞及びベクターを特色とする。核酸は、同じ宿主細胞又は別個の宿主細胞に存在する単一のベクター又は別個のベクターに存在し得る。宿主細胞は、真核細胞、例えば哺乳類細胞、昆虫細胞、酵母細胞、又は原核細胞、例えば大腸菌(E. coli)であり得る。例えば、哺乳類細胞は、培養細胞又は細胞株であり得る。例示的な哺乳類細胞には、リンパ球細胞株(例えば、NSO)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、COS細胞、卵母細胞、及びトランスジェニック動物由来の細胞、例えば乳房上皮細胞が含まれる。
【0110】
1つの態様において、本発明は、本明細書において記載される抗体分子を提供する方法を特色とする。方法は、IGFBP3抗原(例えば、IGFBP3エピトープの少なくとも一部分を含む抗原)を提供する工程;IGFBP3ポリペプチドに特異的に結合する抗体分子を獲得する工程;及び抗体分子がIGFBP3ポリペプチドに特異的に結合するかどうかを評価する工程、又はIGFBP3の活性をモジュレートする、例えば阻害することにおける抗体分子の効力を評価する工程、を含む。方法は、抗体分子を対象、例えばヒト又は非ヒト動物に投与する工程を更に含み得る。
【0111】
別の態様において、本発明は、薬学的に許容される担体、賦形剤、又は安定剤、及び本明細書において記載される抗IGFBP3抗体分子の少なくとも1つを含む組成物、例えば医薬組成物を提供する。1つの実施形態において、組成物、例えば医薬組成物は、本明細書において記載される抗体分子及び1つ又は複数の作用物質、例えば治療剤又は他の抗体分子の組み合わせを含む。1つの実施形態において、抗体分子は、標識又は治療剤にコンジュゲートされる。
【0112】
本明細書において開示される抗IGFBP3抗体分子は、上で示されるIGFBP3の1つ又は複数の活性を阻害し得る、低下させ得る、又は中和し得る。故に、そのような抗体分子を使用して、対象におけるIGFBP3により誘導される活性の阻害、低下、又は中和が望まれる障害を治療し得る又は予防し得る。
【0113】
抗IGFBP3抗体分子の使用
本抗体は、糖尿病、並びに腸管腸疾患(intestinal bowel disease)、吸収不良症候群、炎症性腸疾患、悪液質、クローン病、潰瘍性結腸炎、セリアック病、糖尿病性腸症等の様々な障害又は状態の治療の方法において使用される。
【0114】
したがって、別の態様において、対象におけるIGFBP3/TMEM219軸をモジュレートする方法が提供される。方法は、対象におけるIGFBP3/TMEM219軸がモジュレートされるような、単独で又は1つ若しくは複数の作用物質若しくは手順との組み合わせで、本明細書において開示される抗IGFBP3抗体分子(例えば、治療有効量の抗IGFBP3抗体分子)を対象に投与する工程を含む。1つの実施形態において、抗体分子は、対象におけるIGFBP3/TMEM219軸活性を阻害する、低下させる、又は中和する、又は遮断する。対象は、哺乳類、例えば霊長類、好ましくは高等霊長類、例えばヒト(例えば、本明細書において記載される障害を有する又は有する危険性がある患者)であり得る。1つの実施形態において、対象は、IGFBP3/TMEM219軸を阻害する、低下させる、中和する、又は遮断することを必要とする。1つの実施形態において、対象は、本明細書において記載される障害、例えば本明細書において記載される糖尿病、又は炎症性腸疾患(IBD)、吸収不良症候群、過敏性腸疾患、悪液質、セリアック病、糖尿病性腸症を有する又は有する危険性がある。
【図面の簡単な説明】
【0115】
図1】商業的モノクローナル抗体抗IGFBP3(LSBIO社LSC45037 クローン83.8F9)はIGFBP3に結合するが、TMEM219の細胞外ドメインとの相互作用を阻害しない。図1Aは、アッセイの概略を提供する。このELISAでは、プレートをLSBIO社抗IGFBP3モノクローナル抗体(捕捉抗体)でコートする。次いで、IGFBP3とエクトTMEM219とのプレミックスを添加する。IGFBP3/エクトTMEM219複合体におけるIGFBP3は、プレート上の商業的LSBio社抗体に結合するはずである。捕捉抗体がエクトTMEM219と競合する場合、エクトTMEM219は複合体から置き換えられ、洗浄により除去されるはずである。結合しているTMEM219の検出を、抗Hisタグ試薬を用いて実施する(エクトTMEM219はHisタグを有する);エクトTMEM219が置き換えられた場合、吸光度は低い。図1Bは結果を示している。最も左の3本の棒は、様々な対照を示している。それぞれの場合において、商業的LSBio社抗IGFBP3をプレートにコートする。第1の対照実験では(最も左の棒)、プレート又はプレートにコートされた商業的抗IGFBP3抗体への抗Hisタグの非特異的結合を制御するために、IGFBP3/エクトTMEM219ミックスが省かれる。第2の対照実験では、プレートへの又はLSBio社抗IGFBP3捕捉抗体へのエクトTMEM219の非特異的結合を制御するために、IGFBP3のみが省かれる。第3の対照では、IGFBP3への抗Hisタグの非特異的結合を制御するために、エクトTMEM219が省かれる。最も右の棒は、IGFBP3:TMEM-219(1:1)複合体の添加後の吸光度を示している。高い吸光度は、LSBio社抗体が、IGFBP3への結合をエクトTMEM219と競合しないことを示す。
図2】糖尿病性腸症のモデル(DE、n=3)において、ミニ消化管発達をレスキューすることにおける市販の抗IGFBP3抗体(LSBIO社LS-C149975/72664 クローン83.8F9)の効果。モノクローナル抗体を、エクトTMEM219と比較して、1:10及び1:50比で試験し、一方でポリクローナル抗体を1:10比のみで試験した。****p<0.0001 DE培地対健常培地、エクトTMEM219対DE培地。
図3】クローン病のモデル(IBD、n=3)において、ミニ消化管発達をレスキューすることにおける市販の抗IGFBP3抗体(LSBIO社LS-C45037/クローン83.8F9)の効果。モノクローナル抗体を、エクトTMEM219と比較して、1:1、1:10、及び1:50比で試験し、一方でポリクローナル抗体を1:10比のみで試験した。****p<0.0001 IBD患者対健常対照;***p<0.001 エクトTMEM219対IBD患者。
図4】抗IGFBP3商業的抗体/エクトTMEM219で処理された又は処理されないままのクローン病患者(IBD)から獲得されたミニ消化管における(n=3)及び健常対照における(n=3)、RT-PCRによって分析された、ISC(腸管幹細胞)マーカー発現(A)EphB2、(B)LGR5、及び(C)h-TERT。モノクローナル(クローン83.8F9)及びポリクローナル抗体を、エクトTMEM219と比較して、1:10比で使用した。**p<0.01 エクトTMEM219対IBD患者。
図5】競合ELISAスクリーニングアッセイを使用することによって試験された、新たに作出された抗IGFBP3 mAb(n=11、YU139抗体)、又はエクトTMEM219単独、又は市販のモノクローナル抗IGFBP3(LSBIO社LS-C45037/クローン83.8F9、m抗IGFBP3)の存在下でのIGFBP3-エクトTMEM219結合。このアッセイでは、マイクロタイタープレートをrhIGFBP3でコートし、標識されたエクトTMEM219を添加した。各候補モノクローナル抗体を添加し、プレートを洗浄した後に吸光度を測定することによって、エクトTMEM219を置き換えるその能力を査定した。エクトTMEM219シグナルの最高の低下を達成し得る抗IGFBP3抗体が枠で囲まれている(一元配置ANOVA、p<0.00001)。
図6】IGFBP3曝露時のミニ消化管発達に対する抗IGFBP3 mAbの効果。新たに作出されたmAbの11種のうちの4種が、IGFBP3曝露時のミニ消化管成長を有意にレスキューした(枠で囲まれた)。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、mAb/エクトTMEM219対IGFBP3。モノクローナル抗IGFBP3抗体を、IGFBP3に対して1:1のモル比で使用した(エクトTMEM219のように)。上で記載されるように、商業的モノクローナル抗IGFBP3抗体をLSBIO社(LSBIO社LS-C45037/107162)から購入した。
図7】IGFBP3曝露時のミニ消化管形態に対する抗IGFBP3 mAbの効果。11種の新たに作出された抗IGFBP3 mAb、商業的モノクローナル抗IGFBP3抗体(LSBIO社、LS-C45037/107162)、及びエクトTMEM219を、IGFBP3で処理されたミニ消化管に対して試験し、自己再生特性を形態評価によって査定した。少なくとも1つの陰窩ドメインを有する大きな陰窩オルガノイドの発達を、主な基準として見なした。非関連抗体は抗NLRP3(IC7578A、R&D Systems社)であった。元の倍率×40。
図8】ISCマーカー発現は、IGFBP3で処理されたミニ消化管において(n=3)、新たに作出された抗IGFBP3 mAbによって再構築される。IGFBP3及び選択された抗IGFBP3 mAb/エクトTMEM219とともに培養されたミニ消化管における、RT-PCRを使用することによって分析された、ISCマーカーEphB2(A)及びLGR5(B)の正規化されたmRNA発現。*p<0.05、**p<0.01 mAb対IGFBP3。
図9】カスパーゼ8発現は、IGFBP3で処理されたミニ消化管において、新たに作出された抗IGFBP3 mAbによって下方調節される。IGFBP3及び選択された抗IGFBP3 mAb/エクトTMEM219とともに培養されたミニ消化管における、RT-PCRを使用することによって分析された、カスパーゼ8の正規化されたmRNA発現。*p<0.05、**p<0.01 mAb対IGFBP3(n=3)。
図10】DE(n=2)において、ミニ消化管成長をレスキューすることにおける抗IGFBP3 mAbの効果。方法において記載されるように、ミニ消化管を、糖尿病性腸症(DE)を有する患者から獲得された血清とともに成長させ、選択された新たに作出された抗IGFBP3 mAb/エクトTMEM219を添加した。DE馴化培地によって誘導されるミニ消化管成長に対する有害な影響は、試験した抗IGFBP3 mAbの一部によって有意に破棄された。*p<0.05、**p<0.01 mAb対DE培地。
図11】IBD(n=3)において、ミニ消化管成長をレスキューすることにおける抗IGFBP3 mAbの効果。ミニ消化管を、IBDを有する患者から獲得し、IGFBP3及び新たに作出された抗IGFBP3 mAb/エクトTMEM219のあり/なしで再負荷した。ミニ消化管発達は、試験した抗IGFBP3 mAbの一部によってレスキューされた。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001 mAb対IBD患者。
図12-1】エピトープビニング実験:IGFBP3を、プレートに直接コートした(黒の線)又はコートされた商業的抗体(LSBIO社LS-C45037/クローン83.8F9)によって捕捉した(赤の線)。IGFBP3が商業的LSBIO社、LS-C45037/クローン83.8F9抗体によって捕捉された場合でさえ、すべての試験した新たに作出された抗IGFBP3抗体に対して用量依存的結合が観察される。
図12-2】エピトープビニング実験:IGFBP3を、プレートに直接コートした(黒の線)又はコートされた商業的抗体(LSBIO社LS-C45037/クローン83.8F9)によって捕捉した(赤の線)。IGFBP3が商業的LSBIO社、LS-C45037/クローン83.8F9抗体によって捕捉された場合でさえ、すべての試験した新たに作出された抗IGFBP3抗体に対して用量依存的結合が観察される。
図12-3】エピトープビニング実験:IGFBP3を、プレートに直接コートした(黒の線)又はコートされた商業的抗体(LSBIO社LS-C45037/クローン83.8F9)によって捕捉した(赤の線)。IGFBP3が商業的LSBIO社、LS-C45037/クローン83.8F9抗体によって捕捉された場合でさえ、すべての試験した新たに作出された抗IGFBP3抗体に対して用量依存的結合が観察される。
図13】新たに作出された抗IGFBP3 mAbを、競合ELISAを使用することによって、IGF-I-IGFBP3相互作用を置き換えるそれらの能力についてインビトロで試験した。簡潔には、プレートをIGFBP3(Life Technologies社)4μg/mlでコートした。IGF-I(R&D社、291-G1-01M)を、IGFBP3との用量依存的比率(0:1、0.5:1、及び2:1)で添加した。抗IGFBP3 mAb(Yumab社)を、IGFBP3と比較して1:1の濃度で添加した。抗IGF-I HRPコンジュゲート抗体を使用することによって、IGFBP3-IGF-I結合を明らかにした。商業的モノクローナル抗IGFBP3抗体(Novus Biological社)を、対照として、競合ELISA結合アッセイにおいて評価した。
図14】新たに作出されたモノクローナル抗体を、マウスミニ消化管アッセイにおいて試験した。簡潔には、ミニ消化管を、対照マウスC57BL6/J(n=3)から獲得された陰窩から作出し、IGFBP3曝露があり次第8日間培養し、1:1の比率(mAb/エクトTMEM219:IGFBP3)で、エクトTMEM219又は新たに作出された抗IGFBP3 mAbのいずれかで処理した。
図15-1】図15A:マウスにおいてDSSにより誘導された結腸炎に対する、新たに作出された抗IGFBP3 mAbの効果。(A)DSSにより誘導された結腸炎マウス調査の実験スケジュール。図15B:マウスにおいてDSSにより誘導された結腸炎に対する、新たに作出された抗IGFBP3 mAbの効果。(B)疾患活動性指標(DAI)スコアを、創傷治癒中/慢性期の始まりの、DSSの最後の投与の7日後に評価した。
図15-2】図15C:マウスにおいてDSSにより誘導された結腸炎に対する、新たに作出された抗IGFBP3 mAbの効果。(C)血便を、創傷治癒中/慢性期の始まりの、DSSの最後の投与の7日後に評価した。図15D:マウスにおいてDSSにより誘導された結腸炎に対する、新たに作出された抗IGFBP3 mAbの効果。(D)結腸サイズを、創傷治癒中/慢性期の始まりの、DSSの最後の投与の7日後に評価した。
図16】1型糖尿病マウスモデルに対する、新たに作出された抗IGFBP3 mAbの効果。(A)NODマウス調査の実験スケジュール、(B)21週齢で検出された、雌NODマウスにおける1型糖尿病の発生率に対する抗IGFBP3 mAb効果。マウスの75%において、抗IGFBP3 mAbによる糖尿病予防が観察された。
【発明を実施するための形態】
【0116】
本発明の抗体は、IGFBP3に特異的に結合する抗体を含む。本明細書において記述されるように、これらの抗体は、集合的に「抗IGFBP3抗体」と称される。故に、「抗IGFBP3抗体」によって、IGFBP3に特異的な抗体が意図される。これらの抗体のすべては、本明細書における記述によって包含される。それぞれの抗体は、本発明の方法において単独で又は組み合わせで使用され得る。
【0117】
「特異的に結合する抗体」によって、抗体は別のポリペプチドと実質的に交差反応しないであろうことが意図される。「実質的に交差反応しない」によって、抗体又はフラグメントは、IGFBP3に対する結合親和性の10%未満、より好ましくは5%未満、及び更により好ましくは1%未満である、非相同タンパク質に対する結合親和性を有することが意図される。
【0118】
本明細書において使用するとき、「抗原結合分子」という用語は、その最も広い意味で、抗原決定基に特異的に結合する分子を指す。抗原結合分子の例は、抗体、抗体フラグメント、及び足場抗原結合タンパク質である。「抗原結合部分」という用語は、抗原決定基に特異的に結合するポリペプチド分子を指す。1つの態様において、抗原結合部分は、その標的細胞抗原を通じてシグナル伝達を活性化し得る。特定の態様において、抗原結合部分は、それが付着している実体を標的部位に向かわせ得る。抗原結合部分には、標的細胞抗原に特異的に結合し得る抗体及びそのフラグメントが含まれる。加えて、標的細胞抗原に特異的に結合し得る抗原結合部分には、本明細書において下で規定される足場抗原結合タンパク質、例えば設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)(例えば、WO 2002/020565を参照されたい)又はリポカリン(アンチカリン)等、設計されたリピートタンパク質又は設計されたリピートドメインに基づく結合ドメインが含まれる。
【0119】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一特異性及び多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、並びにそれらが所望の抗原結合活性を呈する限りにおいて抗体フラグメントを含むがそれらに限定されない、様々な抗体構造を包含する。
【0120】
付加的な用語は、下で及び本出願を通して定義される。
【0121】
「抗体」という用語は、少なくとも1本の重(H)鎖又は少なくとも1本の軽(L)鎖を含む免疫グロブリン分子を指すことを意図される。前記鎖は、ジスルフィド結合によって相互接続され得る。「抗体」という用語は、前記鎖の多量体も含む(例えば、IgM)。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてHCVR又はVHと略される)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメインCH1、CH2、及びCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてLCVR又はVLと略される)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL1)を含む。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存されている領域が点在した、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域に更に分割され得る。各VH及びVLは、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4でアミノ末端からカルボキシ末端に並べられた、少なくとも1つのCDR、好ましくは3つのCDR、及び少なくとも1つのFR、好ましくは4つのFRから構成される。一部の実施形態において、抗体(又は、その抗原結合部)のFRは、ヒト生殖系列配列と同一であり得る、又は天然に若しくは人工的に改変され得る。アミノ酸コンセンサス配列は、2つ以上のCDRの対照分析に基づいて規定され得る。
【0122】
本明細書において使用される「抗体」という用語は、参照により組み入れられる(25)に記載される、ADC(抗体薬物コンジュゲート)、ペイロード融合抗体、二重特異性、Fab、scFv、ダイアボディ、トリアボディ、ミニボディ、及び単一ドメイン抗体、ラクダIgG、IgNARも含む。
【0123】
本明細書において使用される「抗体」という用語は、抗体分子全体の抗原結合フラグメントも含む。本明細書において使用される、抗体の「抗原結合部」、抗体の「抗原結合フラグメント」等の用語は、抗原に特異的に結合して複合体を形成する、任意の天然に存在する、酵素的に獲得可能な、合成の、又は遺伝子操作されたポリペプチド又は糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合フラグメントは、タンパク質分解的消化、又は抗体可変ドメイン及び任意で定常ドメインをコードするDNAの操縦及び発現を伴う組み換え遺伝子操作技法等、任意の適切な標準的技法を使用して、例えば抗体分子全体に由来し得る。そのようなDNAは公知であり、及び/又は例えば商業的供給元、DNAライブラリー(例えばファージ-抗体ライブラリーを含む)から容易に入手可能である、又は合成され得る。DNAを配列決定し及び化学的に又は分子生物学技法を使用することによって操縦して、例えば、1つ若しくは複数の可変及び/若しくは定常ドメインを適切な立体配置に並べ得る、又はコドンを導入し得る、システイン残基を創出し得る、アミノ酸を改変し得る、付加し得る、若しくは欠失させ得る、等。
【0124】
設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)は、細胞骨格への内在性膜タンパク質の付着を媒介するタンパク質のファミリーであるアンキリンに由来する。単一アンキリンリピートは、2つのアルファ-ヘリックス及び1つのベータ-ターンからなる33残基のモチーフである。それらは、各リピートの第1のアルファ-ヘリックス及びベータ-ターンにおける残基をランダム化することによって、異なる標的抗原に結合するように操作され得る。モジュールの数を増加させることによって、それらの結合界面を増加させ得る(親和性成熟の方法)。更なる詳細に関しては、J. Mol. Biol. 332、489~503 (2003)、PNAS 100(4)、1700~1705 (2003)、及びJ. Mol. Biol. 369、1015~1028 (2007)、並びにUS20040132028を参照されたい。
【0125】
単一ドメイン抗体は、単一の単量体可変抗体ドメインからなる抗体フラグメントである。最初の単一ドメインは、ラクダ科由来の抗体重鎖の可変ドメインに由来した(ナノボディ又はVHHフラグメント)。更に、単一ドメイン抗体という用語は、自律性ヒト重鎖可変ドメイン(aVH)又はサメに由来するVNARフラグメントを含む。
【0126】
抗原結合フラグメントの非限定的な例には、(i)Fabフラグメント;(ii)F(ab')2フラグメント;(iii)Fdフラグメント;(iv)Fvフラグメント;(v)単鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAbフラグメント;及び(vii)抗体の超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位(例えば、CDR3ペプチド等の単離された相補性決定領域(CDR))、又は制約FR3-CDR3-FR4ペプチドが含まれる。ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、1価ナノボディ及び2価ナノボディ)、小モジュラー免疫医薬品(SMIP)、及びサメ可変IgNARドメイン等の他の操作された分子も、本明細書において使用される「抗原結合フラグメント」という表現の中に包含される。
【0127】
抗体の抗原結合フラグメントは、典型的に、少なくとも1つの可変ドメインを含むであろう。可変ドメインは、任意のサイズ又はアミノ酸組成のものであり得、一般的に、1つ又は複数のフレームワーク配列に近接する又はそれとインフレームにある少なくとも1つのCDRを含むであろう。VLドメインと関連したVHドメインを有する抗原結合フラグメントにおいて、VH及びVLドメインは、任意の適切な並びで互いに対して配置され得る。例えば、可変領域は二量体であり得、VH-VH、VH-VL、又はVL-VL二量体を含有し得る。或いは、抗体の抗原結合フラグメントは、単量体VH又はVLドメインを含有し得る。
【0128】
ある特定の実施形態において、抗体の抗原結合フラグメントは、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合で連結された少なくとも1つの可変ドメインを含有し得る。抗体の抗原結合フラグメント内に見い出され得る可変及び定常ドメインの非限定的な例示的な立体配置には、(i)VH-CH1;(ii)VH-CH2;(iii)VH-CH3;(iv)VH-CH1-CH2;(v)VH-CH1-CH2-CH3;(vi)VH-CH2-CH3;(vii)VH-CL;(viii)VL-CH1;(ix)VL-CH2;(x)VL-CH3;(xi)VL-CH1-CH2;(xii)VL-CH1-CH2-CH3;(xiii)VL-CH2-CH3;及び(xiv)VL-CLが含まれる。上で列挙される例示的な立体配置のいずれかを含めた、可変及び定常ドメインの任意の立体配置において、可変及び定常ドメインは、互いに直接連結され得る、又は完全な若しくは部分的なヒンジ若しくはリンカー領域によって連結され得る。ヒンジ領域は、様々な実施形態において、単一ポリペプチド分子における近接する可変及び/又は定常ドメイン間に柔軟な又は半柔軟な連結をもたらす、少なくとも2つ(例えば、5、10、15、20、40、60個、又はそれを上回る数)のアミノ酸からなり得る。更には、抗体の抗原結合フラグメントは、様々な実施形態において、互いと及び/又は1つ若しくは複数の単量体VH若しくはVLドメインと非共有結合で結び付いた(例えば、ジスルフィド結合によって)、上で列挙される可変及び定常ドメイン立体配置のいずれかのホモ二量体又はヘテロ二量体(又は、他の多量体)を含み得る。
【0129】
ある特定の実施形態において、本明細書において提供される抗原結合分子は、抗体がグリコシル化される程度を増加させる又は減少させるように変更される。分子のグリコシル化バリアントは、1つ又は複数のグリコシル化部位が創出される又は除去されるようにアミノ酸配列を変更することによって好都合に獲得され得る。抗原結合分子がFc領域を含む場合、それに付着した炭水化物を変更し得る。哺乳類細胞によって産生される天然抗体は、典型的に、Fc領域のCH2ドメインのAsn297にN-結合によって一般的に付着している分岐した二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wrightら、TIBTECH 15:26~32 (1997)を参照されたい。オリゴ糖は、様々な炭水化物、例えばマンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、並びに二分岐オリゴ糖構造の「ステム」におけるGluNAcに付着したフコースを含み得る。一部の実施形態において、抗原結合分子におけるオリゴ糖の改変を行って、ある特定の改善された特性を有するバリアントを創出し得る。1つの態様において、Fc領域に付着した(直接的に又は間接的に)フコースを欠く炭水化物構造を有する、抗原結合分子のバリアントが提供される。そのようなフコシル化バリアントは、改善されたADCC機能を有し得る、例えば米国特許公報第US 2003/0157108号(Presta, L.)又は第US 2004/0093621号(協和発酵工業株式会社)を参照されたい。本発明の抗原結合分子の更なるバリアントには、例えばFc領域に付着した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分割されている、二分割オリゴ糖を有するものが含まれる。そのようなバリアントは、低下したフコシル化及び/又は改善されたADCC機能を有し得る、例えばWO 2003/011878(Jean-Mairetら);米国特許第6,602,684号(Umanaら);及びUS 2005/0123546(Umanaら)を参照されたい。Fc領域に付着したオリゴ糖に少なくとも1つのガラクトース残基を有するバリアントも提供される。そのような抗体バリアントは、改善されたCDC機能を有し得、例えばWO1997/30087(Patelら);WO1998/58964(Raju, S.);及びWO 1999/22764(Raju, S.)に記載されている。
【0130】
ある特定の実施形態において、本発明の抗原結合分子のシステイン操作バリアント、例えば、分子の1つ又は複数の残基がシステイン残基で置換されている「チオMAb」を創出することが望ましくあり得る。特定の実施形態において、置換残基は、分子の接近可能部位に存在する。それらの残基をシステインで置換することによって、反応性チオール基がそれによって抗体の接近可能部位に位置し、それを使用して、薬物部分又はリンカー-薬物部分等の他の部分に抗体をコンジュゲートして、免疫コンジュゲートを創出し得る。ある特定の実施形態において、以下の残基のいずれか1つ又は複数をシステインで置換し得る:軽鎖のV205(Kabat番号付け);重鎖のA118(EU番号付け);及び重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)。システイン操作抗原結合分子は、例えば米国特許第7,521,541号に記載されるように作出され得る。
【0131】
ある特定の態様において、本明細書において提供される抗原結合分子は、当技術分野において公知であり、容易に入手可能である付加的な非タンパク性部分を含有するように更に改変され得る。抗体の誘導体化に適した部分には水溶性ポリマーが含まれるが、それに限定されるわけではない。水溶性ポリマーの非限定的な例には、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールの共重合体、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1、3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダム共重合体のいずれか)、及びデキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコール(propropylene glycol)ホモポリマー、ポリプロピレンオキシド(prolypropylene oxide)/エチレンオキシド共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、並びにその混合物が含まれるが、それらに限定されるわけではない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性に起因して、製造において利点を有し得る。ポリマーは、任意の分子量のものであり得、分岐していても分岐していなくてもよい。抗体に付着したポリマーの数は変動し得、1つを上回る数のポリマーが付着している場合、それらは同じ又は異なる分子であり得る。一般的に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/又はタイプは、抗体誘導体が規定の条件下で療法において使用されるかどうか等にかかわらず、改善される対象となる抗体の特定の特性又は機能を含むがそれらに限定されない検討事項に基づいて決定され得る。別の態様において、抗体と、放射線への曝露によって選択的に加熱され得る非タンパク性部分とのコンジュゲートが提供される。1つの実施形態において、非タンパク性部分はカーボンナノチューブである(Kam, N.W.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102 (2005) 11600~11605)。放射線は、任意の波長のものであり得、通常の細胞には害を及ぼさないが、抗体-非タンパク性部分の近位にある細胞が殺傷される温度まで非タンパク性部分を加熱する波長を含むが、それに限定されるわけではない。別の態様において、本明細書において提供される抗原結合分子の免疫コンジュゲートを獲得し得る。「免疫コンジュゲート」とは、細胞毒性剤を含むがそれに限定されない1つ又は複数の異種分子にコンジュゲートされた抗体である。
【0132】
抗体分子全体と同様に、抗原結合フラグメントは、単一特異性又は多重特異性(例えば、二重特異性)であり得る。抗体の多重特異性抗原結合フラグメントは、典型的に、少なくとも2つの異なる可変ドメインを含むと考えられ、各可変ドメインは、別個の抗原に又は同じ抗原上の異なるエピトープに特異的に結合し得る。本明細書において開示される例示的な二重特異性抗体形式を含めた任意の多重特異性抗体形式は、様々な実施形態において、当技術分野において利用可能なルーチン技法を使用して、抗IL-6R抗体の抗原結合フラグメントの背景における使用に適応され得る。
【0133】
抗体の定常領域は、補体を固定する及び細胞依存性細胞毒性を媒介する抗体の能力において重要である。故に、抗体のアイソタイプは、細胞毒性を媒介することが抗体にとって望ましいかどうかに基づいて選択され得る。
【0134】
本明細書において使用される「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変及び定常領域を有する抗体を含むことを意図される。それにもかかわらず、本発明において特色となるヒト抗体は、様々な実施形態において、例えばCDRに及び一部の実施形態ではCDR3に、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダム変異導入若しくは部位特異的変異導入によって、又はインビボでの体細胞変異によって導入された変異)を含み得る。しかしながら、本明細書において使用される「ヒト抗体」という用語は、マウス等の別の哺乳類種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植されている抗体を含むことを意図されない。
【0135】
本明細書において使用される「組み換えヒト抗体」という用語は、宿主細胞にトランスフェクトされた組み換え発現ベクターを使用して発現した抗体(下で更に記載される)、組み換えのコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体(下で更に記載される)、ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、参照によりその全体として本明細書に組み入れられるTaylorら、(1992) Nucl. Acids Res.20:6287~6295を参照されたい)、又はヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列への接合を伴う他の任意の手段によって調製された、発現した、創出された、若しくは単離された抗体等、組み換え手段によって調製される、発現する、創出される、又は単離されるすべてのヒト抗体を含むことを意図される。そのような組み換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変及び定常領域を有する。しかしながら、ある特定の実施形態において、そのような組み換えヒト抗体は、インビトロ変異導入(又は、ヒトIg配列についてトランスジェニックの動物が使用される場合には、インビボ体細胞変異導入)に供され、故に、組み換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、一方でヒト生殖系列VH及びVL配列に由来し、関係するが、インビボでヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然に存在し得ない配列である。
【0136】
ヒト抗体は、ヒンジ不均一性と関連する2つの形態で存在し得る。一実施形態において、免疫グロブリン分子は、二量体が鎖間重鎖ジスルフィド結合によって一つにまとめられている、およそ150~160kDaの安定な4本の鎖構築物を含む。別の実施形態において、二量体は鎖間ジスルフィド結合を介して連結されておらず、共有結合でつながった軽鎖及び重鎖から構成される約75~80kDaの分子が形成される(半抗体)。これらの実施形態/形態は、親和性精製の後でさえ分離するのが極めて困難である。様々な無傷IgGアイソタイプにおける第2の形態の出現の頻度は、抗体のヒンジ領域アイソタイプと関連した構造の差によるが、それに限定されるわけではない。ヒトIgG4ヒンジのヒンジ領域における単一アミノ酸置換は、ヒトIgG1ヒンジを使用して典型的に観察されるレベルまで、第2の形態の出現を有意に低下させ得る(Angalら、(1993) Molecular Immunology 30:105)。本発明は、様々な実施形態において、例えば、所望の抗体形態の産出量を改善するために産生において望ましくあり得る、ヒンジ、CH2、又はCH3領域に1つ又は複数の変異を有する抗体を包含する。
【0137】
本明細書において使用される「単離された抗体」とは、同定されており、その天然環境の少なくとも1つの成分から分離され、及び/又は回収されている抗体を意味する。例えば、生物の少なくとも1つの成分から、又は抗体が天然に存在する若しくは天然に産生される組織若しくは細胞から分離されている又は取り出されている抗体は「単離された抗体」である。様々な実施形態において、単離された抗体は、組み換え細胞内のインサイチューの抗体も含む。他の実施形態において、単離された抗体は、少なくとも1つの精製又は単離工程に供されている抗体である。様々な実施形態において、単離された抗体は、他の細胞材料及び/又は化学物質を実質的に不含であり得る。
【0138】
「特異的に結合する」等の用語は、抗体又はその抗原結合フラグメントが、生理学的条件下で比較的安定である、抗原との複合体を形成することを意味する。抗体が抗原に特異的に結合するかどうかを判定するための方法は、当技術分野において周知であり、例えば平衡透析、表面プラズモン共鳴等を含む。例えば、本明細書において使用される、IGFBP3に「特異的に結合する」抗体には、表面プラズモン共鳴アッセイにおいて測定され、約1000nM未満、約500nM未満、約300nM未満、約200nM未満、約100nM未満、約90nM未満、約80nM未満、約70nM未満、約60nM未満、約50nM未満、約40nM未満、約30nM未満、約20nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約4nM未満、約3nM未満、約2nM未満、約1nM未満、又は約0.5nMのKDで、IGFBP3又はその一部分に結合する抗体が含まれる。
【0139】
本明細書において使用される「表面プラズモン共鳴」という用語は、例えばBIAcore(商標)システム(GE Healthcare社のBiacore Life Sciences部門、Piscataway、NJ)又は結合平衡除外アッセイを使用して、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変更の検出によってリアルタイム相互作用の分析を可能にする光学現象を指す。
【0140】
本明細書において使用される「KD」という用語は、抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を指すことを意図される。
【0141】
「エピトープ」という用語は、パラトープとして知られる、抗体分子の可変領域における特異的抗原結合部位と相互作用する抗原決定基を指す。単一抗原は、1つを上回る数のエピトープを有し得る。故に、異なる抗体は、1つの抗原上の異なるエリアに結合し得、異なる生物学的効果を有し得る。エピトープは、立体配置的又は直鎖状であり得る。立体配置的エピトープは、直鎖状ポリペプチド鎖の種々のセグメント由来の空間的に並列したアミノ酸によってもたらされる。直鎖状エピトープは、ポリペプチド鎖における近接アミノ酸残基によってもたらされるものである。ある特定の状況において、エピトープは、抗原上のサッカリド、ホスホリル基、又はスルホニル基の部分を含み得る。
【0142】
本明細書において特色となる方法に有用な抗IGFBP3抗体は、様々な実施形態において、抗体が由来した対応する生殖系列配列と比較して、重鎖及び軽鎖可変ドメインのフレームワーク及び/又はCDR領域に1つ又は複数のアミノ酸置換、挿入、及び/又は欠失を含む。そのような変異は、本明細書において開示されるアミノ酸配列を、例えば公的な抗体配列データベースから入手可能な生殖系列配列と比較することによって容易に突き止められ得る。本発明は、様々な実施形態において、本明細書において開示されるアミノ酸配列のいずれかに由来する抗体及びその抗原結合フラグメントの使用を伴う方法であって、1つ又は複数のフレームワーク及び/又はCDR領域内の1つ又は複数のアミノ酸を、抗体が由来した生殖系列配列の対応する残基に、又は別のヒト生殖系列配列の対応する残基に、又は対応する生殖系列残基の保存的アミノ酸置換に変異させる方法を含む(そのような配列変化は、本明細書において集合的に「生殖系列変異」と称される)。1つ又は複数の個々の生殖系列変異又はその組み合わせを含む、多数の抗体及び抗原結合フラグメントが構築され得る。ある特定の実施形態において、VH及び/又はVLドメイン内のフレームワーク及び/又はCDR残基のすべてを、抗体が由来した元の生殖系列配列に見い出される残基に戻し変異させる。他の実施形態において、ある特定の残基のみ、例えばFR1の最初の8個のアミノ酸内若しくはFR4の最後の8個のアミノ酸内に見い出される変異した残基のみ、又はCDR1、CDR2、若しくはCDR3内に見い出される変異した残基のみを、元の生殖系列配列に戻し変異させる。他の実施形態において、フレームワーク及び/又はCDR残基の1つ又は複数を、異なる生殖系列配列(すなわち、抗体がもともと由来した生殖系列配列とは異なる生殖系列配列)の対応する残基に変異させる。更に、抗体は、フレームワーク及び/又はCDR領域内に2つ以上の生殖系列変異の任意の組み合わせを含有し得、例えばある特定の個々の残基を、ある特定の生殖系列配列の対応する残基に変異させ、一方で元の生殖系列配列とは異なるある特定の他の残基を維持する又は異なる生殖系列配列の対応する残基に変異させる。いったん獲得されると、1つ又は複数の生殖系列変異を含有する抗体及び抗原結合フラグメントは、結合特異性の改善、結
合親和性の増加、アンタゴニスト的若しくはアゴニスト的生物学的特性の改善若しくは増強(場合に応じて)、免疫原性の低下等、1つ又は複数の所望の特性について容易に試験され得る。この一般的様式で獲得された抗体及び抗原結合フラグメントの使用は、本発明に包含される。
【0143】
本発明は、1つ又は複数の保存的置換を有する本明細書において開示されるHCVR、LCVR、及び/又はCDRアミノ酸配列のいずれかのバリアントを含む抗IGFBP3抗体の使用を伴う方法も含む。例えば、本発明は、本明細書において開示されるHCVR、LCVR、及び/又はCDRアミノ酸配列のいずれかと比べて、例えば10個又はそれよりも少ない、8つ又はそれよりも少ない、6つ又はそれよりも少ない、4つ又はそれよりも少ない等の保存的アミノ酸置換を有するHCVR、LCVR、及び/又はCDRアミノ酸配列を有する抗IL-6R抗体の使用を含む。
【0144】
本明細書において使用される「生物学的等価の」という用語は、効力及び安全性の両方に関する効果が比較分子と本質的に同じであると予想され得るような、同じモル用量での及び類似した条件下(例えば、同じ投与の経路)での投与後に類似した生体利用能(利用能の割合及び程度)を有する分子を指す。抗IGFBP3抗体を含む2つの医薬組成物は、それらが薬学的に等価である場合には生物学的等価であり、それらが、同じ投与の経路のための同じ剤形で同じ量の活性成分(例えば、IGFBP3抗体)を含有することを意味し、同じ又は同等の水準を満たす。生物学的等価性は、例えば、2つの組成物に関して薬物動態パラメーターを比較するインビボ調査によって判定され得る。生物学的等価性調査において一般に使用されるパラメーターには、ピーク血漿濃度(Cmax)及び血漿中薬物濃度時間曲線下面積(AUC)が含まれる。
【0145】
本発明は、ある特定の実施形態において、配列番号55~配列番号65の群から選定される配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号66~配列番号76の群から選定される配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体を対象に投与する工程を含む方法に関する。本開示は、そのような抗体を含む医薬組成物、及びこれらの組成物を使用する方法を提供する。
【0146】
抗体は、移行、送達、忍容性の改善等を提供するための適切な担体、賦形剤、及び他の作用物質を含み、静脈内又は皮下注射に適した製剤で、様々な実施形態において対象に投与される。
【0147】
注射可能な調製物は、公知の方法によって調製され得る。例えば、注射可能な調製物は、例えば上で記載される抗体又はその塩を、注射に従来使用される無菌の水性媒体又は油性媒体中に溶解する、懸濁する、又は乳化することによって調製され得る。注射用の水性媒体としては、例えば生理食塩水、グルコース及び他の助剤を含有する等張液等があり、それは、アルコール(例えば、エタノール)、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート20又は80、水素化ヒマシ油のHCO-50(ポリオキシエチレン(50モル)付加物)]等の適当な可溶化剤との組み合わせで使用され得る。油性媒体としては、例えばゴマ油、大豆油等が採用され、それは、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等の可溶化剤との組み合わせで使用され得る。故に、調製された注射可能な調製物は、適当なアンプル中に充填され得る。
【0148】
本発明に従った抗体は、任意の許容されるデバイス又はメカニズムを使用して対象に投与され得る。例えば、投与は、注射器及び針を使用して、又は再利用可能なペン及び/若しくは自動注入器送達デバイスを用いて達成され得る。
【0149】
本発明の方法は、抗体(又は、抗体を含む医薬製剤)を投与するための多数の再利用可能なペン及び/又は自動注入器送達デバイスの使用を含む。そのようなデバイスの例には、ほんのわずかだけ例を挙げると、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford社、Woodstock、UK)、DISETRONIC(商標)ペン(Disetronic Medical Systems社、Bergdorf、Switzerland)、HUMALOG MIX 75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN 70/30(商標)ペン(Eli Lilly and Co.社、Indianapolis、IN)、NOVOPEN(商標)I、II、及びIII(Novo Nordisk社、Copenhagen、Denmark)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk社、Copenhagen、Denmark)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson社、Franklin Lakes、NJ)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、及びOPTICLIK(商標)(Sanofi-Aventis社、Frankfurt、Germany)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。本発明の医薬組成物の皮下送達における適用を有する使い捨て可能なペン及び/又は自動注入器送達デバイスの例には、ほんのわずかだけ例を挙げると、SOLOSTAR(商標)ペン(Sanofi-Aventis社)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk社)、及びKWIKPEN(商標)(Eli Lilly社)、SURECLICK(商標)自動注入器(Amgen社、Thousand Oaks、CA)、PENLET(商標)(Haselmeier社、Stuttgart、Germany)、EPIPEN(Dey, L.P.社)、HUMIRA(商標)ペン(Abbott Labs社、Abbott Park、IL)、DAI(登録商標)自動注入器(SHLグループ)、並びにPUSHCLICK(商標)技術を特色とする任意の自動注入器(SHLグループ)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0150】
1つの実施形態において、抗体は、あらかじめ充填された注射器で投与される。別の実施形態において、抗体は、安全システムを含有するあらかじめ充填された注射器で投与される。例えば、安全システムは、不測の針刺し傷害を阻止する。様々な実施形態において、抗体は、ERIS(商標)安全システム(West Pharmaceutical Services社)を含有するあらかじめ充填された注射器で投与される。参照によりそれらの全体として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,215,534号及び第9,248,242号も参照されたい。
【0151】
別の実施形態において、抗体は、自動注入器で投与される。様々な実施形態において、抗体は、PUSHCLICK(商標)技術を特色とする自動注入器(SHLグループ)で投与される。様々な実施形態において、自動注入器は、対象への1用量の組成物及び/又は抗体の投与を可能にする注射器を含むデバイスである。参照によりそれらの全体として本明細書に組み入れられる、米国特許第9,427,531号及び第9,566,395号も参照されたい。
【0152】
本発明によれば、「対象」とは、ヒト対象又はヒト患者を意味する。
【実施例
【0153】
方法
患者及び調査設計
憩室症、結腸がん、過敏性腸症候群に対する結腸内視鏡検査又は腸管手術を受けた患者の中で、健常対象(対照)が登録された(n=10)。年齢:41.3±2.2(平均±SEM);性別(M/F):7/3。
【0154】
IBD個体は、クローン病の5年の病歴を有し、合併症(狭窄症、瘻孔)に対する手術処置の時点で、又は手術を受ける前の内視鏡検査ルーチン診察の間に登録された。年齢:47.1±3.1(平均±SEM);性別(M/F):4/6。
【0155】
DE血清を、41~43歳に及ぶ年齢を有する、長年にわたる1型糖尿病(>20年間の糖尿病の病歴)、腸管症状、及び運動機能不全を有するn=10の個体から獲得し、インビトロ実験のためにプールした。すべての対象は、調査登録の前にインフォームドコンセントを提供した。
【0156】
組み換えタンパク質及び介入調査
組み換えヒトIGFBP3を、Life Technologies社(IGFBP3、Life Technologies社、10430H07H5)から入手した。エクトTMEM219を、Genescript社のカスタマイズされたタンパク質サービスを通じて入手した。大腸菌において産生されたタンパク質は、以下のアミノ酸配列
THRTGLRSPDIPQDWVSFLRSFGQLTLCPRNGTVTGKWRGSHVVGLLTTLNFGDGPDRNKTRTFQATVLGSQMGLKGSSAGQLVLITARVTTERTAGTCLYFSAVPGILPSSQPPISCSEEGAGNATLSPRMGEECVSVWSHEGLVLTKLLTSEELALCGSR(配列番号104)
を有する。
【0157】
50ng/mlのIGFBP3及び130ng/mlのエクトTMEM219を、ミニ消化管培養から+1日目に培養培地に添加した(下記を参照されたい)。
【0158】
モノクローナル及びポリクローナル抗IGFBP3(LSBio社LS-C45037/107162 マウスIgG1クローン83.8F9;LSBIO社LS-C149975/72664、ヤギIgG)を、それぞれ1、10、50ug/mlで及び10ug/mlの最終濃度で、ミニ消化管培養から+1日目に培養培地に添加した。新たに作出された抗IGFBP3モノクローナル抗体を、10ug/mlの最終濃度のIGFBP3と比較して1:1のモル比で添加した。
【0159】
陰窩単離及びミニ消化管発達
陰窩を、健常対象(健常対照)の腸管サンプルの粘膜若しくは粘膜下組織から摘出した、又は合併症(狭窄症、瘻孔)に対する手術を受けた確証されたクローン病を有する患者から獲得した。粘膜を、抗生物質ノルモシン(Normocin)[Invivogen社、San Diego、California 92121、USA ant-nr]、ゲンタマイシン[Invitrogen社、Carlsbad、CA、USA ant-gn]、及びファンギゾン[Invitrogen社15290018]の混合物と室温で15分間インキュベートし、次いで組織を小片に細かく刻み、PBS中10mMジチオトレイトール(DTT)(Sigma社)と数分間2~3回インキュベートした。次いで、サンプルをPBS中8mM EDTAに移し、37℃で30分間インキュベートした。この工程の後、サンプルの激しい振とうにより、結腸陰窩に富んだ上清がもたらされた。ウシ胎仔血清(FBS、Sigma社12103C-500ML)を5%の最終濃度まで添加し、単一細胞を2分間の40×gでの遠心分離によって取り出した。陰窩を50μlのマトリゲル(BD Biosciences社354234)と混合し、予熱した培養ディッシュにプレーティングした。凝固後、陰窩を、Glutamax、10mM(Life Technologies社35050038)、HEPES(Life Technologies社15630080)、N-2[1×](Life Technologies社17502048)、レチノイン酸なしのB-27[1×](Life Technologies社12587010)、10mMニコチンアミド(Sigma社N0636)、1mM N-アセチル-L-システイン(Sigma社A965)、50ng/mlヒトEGF(Life Technologies社PHG0311)、1μg/ml RSPO1(Sino Biological社11083-H08H)、100ng/mlヒトノギン(Peprotech社12010C)、1μg/mlガストリン(Sigma-Aldrich社SCP0152)、500nM LY2157299(Axon MedChem社1491)、10μM SB202190(Sigma社S7067)、及び0.01μM PGE2(Sigma社P6532)を補充した、完全陰窩培養培地:Wnt3a馴化培地及びAdvanced DMEM/F12(Life Technologies社1263010)50:50で覆った。単離された陰窩を、組み換えタンパク質及び介入調査の節に記載される組み換えタンパク質/抗体のあり/なしで8日間培養した。8日後、陰窩を回収し、形態、ミニ消化管成長、腸管シグネチャーマーカー(EphB2、LGR5、h-TERT)及びカスパーゼ8(Life Technologies社)の発現を、RT-PCRを使用して調べた。少なくとも1つの陰窩ドメインを有する発達したミニ消化管のパーセンテージを、既に記載されているように(4、18)査定した。
【0160】
インビトロでのミニ消化管作出調査
陰窩を、健常対象生検サンプルから単離し、以前に記載されているように培養して、ミニ消化管を作出した。病態を模倣するために、普通のFBSの代わりに、糖尿病性腸症(DE)を有する個体のヒト血清を添加することによって陰窩培養培地を改変し、つまり「DE」培地、L-Wnt3細胞を10%「DE」血清中で成長させて馴化培地を作出し、それを、Advanced DMEM/F12培地に50:50で更に添加して、上で記載される陰窩培養培地を獲得した(陰窩単離及びミニ消化管発達を参照されたい)。8日後、陰窩を回収し、形態、ミニ消化管成長、腸管シグネチャーマーカー(EphB2、LGR5、h-TERT)及びカスパーゼ8(Life Technologies社)の発現を、RT-PCRを使用して調べた。これは、腸管幹細胞損傷のモデルとして確立されている(4)。
【0161】
qRT-PCR分析
精製された腸管陰窩由来のRNAを、Trizol Reagent(Invitrogen社)を使用して抽出し、TaqManアッセイ(Life Technologies社、Grand Island、NY)をメーカーの取扱説明書に従って使用して、qRT-PCR分析を実施した。正規化された発現値を、ΔΔCt又はΔCt法を使用して決定した。定量逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)データをACTBの発現に対して正規化し、ΔCt値を算出した。分析は、技術的及び生物学的な三つ組で実施された。
【0162】
発現がqRT-PCRによって定量化されている遺伝子の一覧が下で報告されている。
【0163】
【表1】
【0164】
競合ELISA結合アッセイ
以下の試薬を使用して、新たに作出された抗IGFBP3抗体をスクリーニングした:組み換えヒトIGFBP3(0,223mg/ml R&D System社8874-B3-025)、エクトTMEM219(0,5mg/ml GenScript社)、新たに作出された抗IGFBP3 mAb(Yumab社、契約下)、ヤギポリクローナル抗IGFBP3(LS-C149975 LSBio社)、マウスモノクローナル抗IGFBP3(LS-C45037 LSBio社)、マウス6×HisタグHRP(GTX30506 Genetex社)、ウシ血清アルブミン(BSA A9418 Sigma社)、Tween 20(TW P2287 Sigma社)、ELISA比色TMB試薬(HRP基質、Item H Sigma社、RABTMB3)、ELISA STOP溶液(Item I、Sigma社、RABSTOP3)、ブロッキング試薬液(PBS中3%BSA)、及び希釈液(PBS中0,5%BSA、0,05%Tw)。
【0165】
マイクロプレートを、50μl/ウェルの、PBSに溶解した4μg/ml rhIGFBP3又はPBS単独(コーティングなし)でコートした。プレートを37℃で90分間インキュベートし、PBS(300μl/ウェル)で洗浄し、ブロッキング試薬(200μl/ウェル)とともに室温で2時間インキュベートした。次いで、サンプルを希釈液(50μl/ウェル)に希釈し、プレートに以下のとおりに添加した:希釈液(なし)、エクトTMEM 10μg/ml、エクトTMEM 10μg/ml+抗IGFBP3 mAb 10μg/ml、抗IGFBP3 mAb 10μg/ml単独。洗浄工程の後、次いでプレートを、希釈液に1:2000希釈された抗6×HisタグHRP(50μl/ウェル)とともに室温で1時間インキュベートした。次いで、可視化液を添加した後、ELISAプレートをELISAリーダーで読み取り、吸光度(adsorbance)を測定した。
【0166】
エピトープビニング
エピトープビニングとは、標的タンパク質に対するモノクローナル抗体のライブラリーを特徴付けし、次いで選別するために使用される競合的イムノアッセイである(Abdiche, Y. N.;D. S. Malashock;A. Pinkerton;J. Pons(2009年3月)、「Exploring blocking assays using Octet, ProteOn, and Biacore biosensors」、Analytical Biochemistry、386 (2): 172~180、doi:10.1016/j.ab.2008.11.038、PMID 19111520)。同様の標的に対する抗体を、ライブラリーにおける他のすべての抗体に対して一対形式で試験して、抗体が抗原のエピトープへの互いの結合を遮断するかどうかを見る。各抗体が、ライブラリーにおける他の抗体のすべてに対して創出されたプロファイルを有した後、ライブラリーにおける他のものと比べて、競合的遮断プロファイルが各抗体に対して創出される。密接に関係したビニングプロファイルは、抗体が同じ又は密接に関係したエピトープを有し、一緒に「まとめられる(binned)」ことを示す。エピトープビニングは、エピトープマッピング及びエピトープ特徴付け等の種々の名前の下で文献において参照される(Brooks, B.D. (2014)、「The Importance of Epitope Binning in Drug Discovery」、Current Drug Discovery Technology、11)。
【0167】
CVCマイクロプレートを、i)100μl/ウェルの、PBSに溶解した2μg/ml rhIGFBP3又はPBS単独(コーティングなし)でコートし、室温で60分間インキュベートした;ii)100μl/ウェルの2μg/ml抗IGFBP3(LS-C45037 LSBio社)でコートし、4℃でo.nインキュベートした。プレートをH2O-Tween20(0.05%)で洗浄し、ブロッキング試薬(2%BSA-PBS-T(0.05%))とともにインキュベートした。条件ii)に関しては、100μl/ウェルの2μg/ml rhIGFBP3を4℃でo.nインキュベートした。洗浄後、新たに作出された抗体(2%BSA-PBS-T(0.05%)中)をプレート上に滴定し、室温で1時間インキュベートした。洗浄工程の後、結合している抗体の検出を、2%BPS-PBS-T(0.05%)中のヤギ抗ヒトFc-HRP抗体(Sigma社A0170)を使用し、それに続いて洗浄し、TMB(100μl/ウェル)を用いて読み出すことによって実施した。次いで、ELISAプレートを読み取り、450nmでの吸光度を測定した。
【0168】
ベータ細胞
ヒトベータ細胞株であるBetalox-5細胞(36)を、DMEM(グルコース1g/L)、BSA画分V(0.02% wt/vol)、非必須アミノ酸(1×)ペニシリン(100単位/mL)、及びストレプトマイシン(100μg/mL)を含有する培養フラスコ中で成長させた。細胞を、5%CO2の加湿インキュベーターにおいて37℃で培養した。細胞を2週間ごとに1回継代した。ベータ細胞を、IGFBP3の有無で、エクトTMEM219の有無で、新たに作出されたモノクローナル抗体の有無で培養し(組み換えタンパク質及び介入調査を参照されたい)、免疫蛍光調査、RNA抽出、アポトーシス検出、及びタンパク質分析のために細胞を回収した。インスリンの査定のために上清を回収した。インスリンレベルを微粒子酵素イムノアッセイ(Mercodia社Iso-Insulin ELISA、10-1113-01)でアッセイした。
【0169】
統計分析
データを平均及び標準偏差(SD)として提示し、正規分布についてはコルモゴロフ-スミルノフ検定で、及び等分散性についてはルビーン検定で検定した。差の統計的有意性を、両側t検定及びカイ二乗(χ2)検定で検定した。2つの群間の有意性を、対応のない両側スチューデントt検定によって判定した。多重比較に関しては、ボンフェローニ補正を有する一元配置ANOVA検定を採用した。統計分析を、GraphPad Prismバージョン5.0(GraphPad Software社、La Jolla、CA)を使用して行った。すべての統計的検定を5%の有意水準で実施した。
【0170】
(実施例1)
モノクローナル抗体開発
スクリーニングのための抗原として組み換え全長ヒトIGFBP3(R&D社カタログ番号8874-B3)を使用して、モノクローナル抗IGFBP3抗体をナイーブヒトファージディスプレイライブラリーから発見した。簡潔には、ヒトIGFBP3(R&D社カタログ番号8874-B3)をビオチン化し、96ウェルELISAプレートにストレプトアビジンを介して4℃で固定化した。洗浄及びBSAを用いたウェルのブロッキングの後、抗体-ファージライブラリーを添加した。ストレプトアビジンに結合する試験したライブラリーを、抗体-ファージからまず除いた(John deKruif及びTon Logtenberg、Phage Display of Antibodies、Encyclopedia of Immunology(第2版) 1998、1931~1934頁)。抗原特異的抗体を担持したそうしたファージがプレート表面に捕捉された。結合していない/弱く結合しているファージのPBS-Tを用いた洗浄による除去の後、抗原特異的ファージを溶出し、大腸菌におけるファージ感染によって増幅した。この増幅されたライブラリー部分集合を、よりストリンジェントな条件下で標的結合について再度選択した。合計で3回の選択ラウンドを実施して、抗原特異的抗体-ファージを富化した。
【0171】
発見過程の最後に、各選択アウトプットを抗原特異的抗体についてスクリーニングした。この目的のために、384個のクローンを各選択アウトプットから選定し、モノクローナルscFv抗体の産生に使用した。次いで、これらを、ELISAによって特異的抗原結合について試験した。24個の標的特異的ヒットが同定され、それを配列決定した。固有のCDR配列を示すすべての抗体を、哺乳類scFv-Fc発現ベクターにクローニングした。結果として、scFvを、ヒトIgG4のFcフラグメントに遺伝子融合させた。
【0172】
これにより11種のscFv-Fc抗体がもたらされ、それをHEK293細胞の一過性のトランスフェクションによって産生した。次いで、抗体を親和性クロマトグラフィー(プロテインA)によって精製し、PBS(添加物なし)中で再緩衝(re-buffer)した。タンパク質濃度をUV/VIS分光測定によって判定し、純度をクマシー染色によってチェックした。
【0173】
11種の新規の抗IGFBP3抗体の配列は、下の表に報告されている。
【0174】
【表2】
【0175】
【表3】
【0176】
【表4】
【0177】
【表5】
【0178】
【表6A】
【0179】
【表6B】
【0180】
【表7A】
【0181】
【表7B】
【0182】
【表8】
【0183】
(実施例2)
市販の抗IGFBP3モノクローナル抗体は、IGFBP3/TMEM219結合に影響を及ぼさない
市販の抗IGFBP3抗体を、IGFBP3へのエクトTMEM219の結合を置き換えるその能力について試験した。結合の置き換えは、(i)天然TMEM219受容体へのIGFBP3の結合を阻害する抗体の能力、及び(ii)エクトTMEM219リガンドトラップ融合タンパク質の中和活性を模倣する抗体の能力、の両方を示すであろう。
【0184】
図1Aに示されるように、本発明者らは、プレートを商業的抗IGFBP3モノクローナル抗体でコートし、IGFBP3とエクトTMEM219とを30分間プレインキュベートすることによって形成されるIGFBP3とエクトTMEM219とのあらかじめ形成された複合体を添加した。次いで、本発明者らは、抗Hisタグ及び抗Hisタグストレプトアビジン-HRPを使用することによってエクトTMEM219のシグナルを査定して、エクトTMEM219が複合体に依然として結合しているかどうか(高いシグナル)、又は置き換えられ、洗い流されたかどうか(低いシグナル)を検出した。結果は図1Bに示されている。
【0185】
図1Bに示されるように、商業的抗IGFBP3 mAbは、IGFBP3-エクトTMEM219複合体に結合し得、故に、それがIGFBP3-エクトTMEM219結合を置き換えなかったことを示唆する。モノクローナル抗IGFBP3抗体(LSBio社)を、競合ELISA結合アッセイにおいて評価した(図1B)。
【0186】
市販の抗IGFBP3モノクローナル抗体は、種々の疾患モデルにおいてミニ消化管のIGFBP3媒介性損傷をレスキューしない
モノクローナル及びポリクローナルの両方の市販の抗体が、TMEM219へのIGFBP3の結合を阻止することにより腸管幹細胞(ISC)傷害病状においてミニ消化管成長をレスキューするエクトTMEM219リガンドトラップの能力を模倣し得るかどうかを査定するために、それらをミニ消化管アッセイにおいてインビトロで更に試験した。ミニ消化管を、既に記載されているように(4、18)、健常対照から作出した。図2における最も左の3本の棒に示されるように、糖尿病性腸症を有する患者からの培地(「DE培地」)の存在下でのインキュベーションは、健常個体からの培地(「健常培地」)におけるインキュベーションと比較して、ミニ消化管の形成を有意に低下させ;130ng/mlのエクトTMEM219の更なる添加は、DE培地の存在下でのミニ消化管成長を回復させた。
【0187】
モノクローナル及びポリクローナル抗体を、糖尿病性腸症を有する個体からの培地(「DE培地」)の存在下にて3つの異なる濃度で試験した。市販のモノクローナルもポリクローナル抗IGFBP3抗体も、糖尿病性腸症を有する個体からの培地の存在下でのミニ消化管の発達を有意に改善しなかった。試験した抗体のいずれも、ミニ消化管発達をレスキューするエクトTMEM219の能力を模倣せず、商業的抗IGFBP3抗体は、糖尿病性腸症等の病状におけるISC損傷を阻止し得ないであろうことを示唆し;実施例1からのデータと一致し、本発明者らは、この機能的活性の欠如は、それらがTMEM219結合へのIGFBP3の結合を阻止することができないことに起因し得ると推論する。
【0188】
このことは、IGFBP3-TMEM219相互作用を選択的に阻止する他の抗IGFBP3抗体の必要性を強調する。
【0189】
合併症(狭窄症、瘻孔)に対する手術を受けた確証されたクローン病(炎症性腸疾患、IBD)を有する患者から獲得された陰窩を使用したミニ消化管アッセイにおいても抗体を試験した。このモデルは、それが患者における病状の主要な特質をインビトロで繰り返すため、臨床上非常に意義がある。
【0190】
図3に示されるように、本発明者らは、IBD患者のミニ消化管が十分に成長し得ず及び発達し得ないこと、並びにエクトTMEM219が、ミニ消化管成長をレスキューし得及びオルガノイド発達を再構築し得ることを観察した。それに反して、種々のモル比で試験した市販の抗体は、いかなる効果も発揮しなかった。
【0191】
次に、本発明者らは、RT-PCRによって検出される、IBD患者におけるISCマーカーのEphB2、LGR5、及びh-TERTの発現が、エクトTMEM219とは対照的に、市販の抗IGFBP3 Abの添加によってレスキューされないことを示した(図4A図4B、及び図4C)。これらの結果は、ISC機能(ミニ消化管発達)を標的にすることにおける、及びISCマーカー発現をレスキューすることにおける、商業的抗IGFBP3モノクローナル及びポリクローナル抗体の不十分な効果を裏付ける。このことは、IGFBP3-TMEM219シグナル伝達の活性化に起因してISCが損傷される種々の病状(例えば、糖尿病性腸症、IBD)が、それを選択的に標的にするストラテジーからの利益を受け得ることも重視する。
【0192】
(実施例3)
新規の抗IGFBP3 mAbは、IGFBP3-TMEM219結合を阻害する
実施例1に記述されるように、一連の抗IGFBP3モノクローナル抗体をファージディスプレイによって選択した。次いで、これら新規の抗体を、競合ELISA結合アッセイを使用して、IGFBP3への結合をエクトTMEMと競合するそれらの能力についてスクリーニングした。IGFBP3(コーティング)、エクトTMEM219、及びファージディスプレイによって選択された抗IGFBP3抗体を、すべて1:1のモル比で使用した。図5に示されるように、それらのうちの2つはより低い程度ではあるものの、新規の抗体はIGFBP3-エクトTMEM219結合を阻害し得た。このアッセイにおいて、市販のモノクローナル抗IGFBP3抗体は、IGFBP3-エクトTMEM219結合を阻害するのが不十分であった。
【0193】
このことは、新たに発見された抗IGFBP3 mAbの大多数が、市販の抗IGFBP3抗体と比較してより高い割合までIGFBP3-TMEM219結合を阻止し得ることを実証する。
【0194】
新規の抗IGFBP3抗体は、ミニ消化管アッセイにおいてIGFBP3損傷をレスキューする
11種の新たに発見されたモノクローナル抗体を、ミニ消化管アッセイにおいても試験した。ミニ消化管を、健常対照から獲得された陰窩から作出し、IGFBP3の存在下で8日間培養し、エクトTMEM219又は新たに発見された抗IGFBP3 mAbのいずれかで処理した。すべての因子は、培養の初日の後に、1:1比(mAb/エクトTMEM219:IGFBP3)で含まれた。
【0195】
図6及び図7に示されるように、エクトTMEM219は、大きな陰窩オルガノイドの自己再生能(発達%)及び形態に対するIGFBP3の負の効果をレスキューする。更に、YU139-C01、YU139-A03、YU139-G03、及びYU139-H03抗体も、エクトTMEM219に類似して、大きな陰窩オルガノイドの自己再生能(発達%)及び形態(陰窩ドメインの非存在、小さなスフェロイドの生成)に対するIGFBP3の負の効果をレスキューする(図6及び図7)。
【0196】
新規のモノクローナル抗IGFBP3抗体は、ISCマーカーに対するIGFBP3損傷をレスキューする
IGFBP3曝露時にミニ消化管発達を促進するのに有効であると示された新たに発見された抗IGFBP3 mAbは、IGFBP3のみで処理されたサンプルと比較して少なくとも50%、IGFBP3の存在下でISCマーカーのEphB2及びLGR5の発現を有意に上方調節し得た(図8)。この結果は、エクトTMEM219に関して観察されたものと類似している。
【0197】
新規のモノクローナル抗IGFBP3抗体は、カスパーゼ8のIGFBP3媒介性過剰発現を阻害する
ISCに対するIGFBP3による有害な影響は、カスパーゼ8媒介性である。興味深いことには、新たに発見された抗IGFBP3 mAbは、IGFBP3のみで処理されたサンプルと比較した場合、IGFBP3処理によって誘導されるカスパーゼ-8上方調節を少なくとも50%阻害し得た(図9)。
【0198】
これらの結果は、発見された抗IGFBP3 mAbが、IGFBP3/TMEM219カスパーゼ-8媒介性アポトーシス傷害を遮断することによって、ISCプールに対する保護的効果を発揮することを示唆する。
【0199】
新たに発見された抗IGFBP3抗体は、疾患モデルにおいてミニ消化管成長をレスキューする
新たに発見されたモノクローナル抗IGFBP3抗体がTMEM219発現腸管幹細胞に対するIGFBP3の有害な影響を阻止することを確認するために、本発明者らは、DEの確立されたモデルにおけるミニ消化管アッセイにおいてそれらをインビトロで更に試験した。
【0200】
新規の抗IGFBP3 mAbは、エクトTMEM219処理に類似して、少なくとも20%のDEにおけるミニ消化管の発達を有意に改善した(図10)。
【0201】
このことは、IGFBP3への結合に対して選択され、IGFBP3へのエクトTMEM結合を競合的に阻害するそれらの能力についてスクリーニングされた本発明の抗IGFBP3 mAbが、ISC機能をレスキューし得、IGFBP3による有害な影響からISCプールを守り得ることを強調する。
【0202】
本発明者らは、IBD患者から獲得されたミニ消化管を新たに発見された抗IGFBP3 mAbで処理した場合、ミニ消化管成長が少なくとも20%有意に回復することも実証した。新規の抗IGFBP3 mAbを用いて獲得された効果は、エクトTMEM219によって発揮されたものと類似していた(図11)。
【0203】
これらの結果は、この疾患モデルにおいても、ISCのプール及び機能を守ることにおける潜在的有益性を示している。
【0204】
新たに発見されたヒトモノクローナル抗IGFBP3抗体は、商業的マウスモノクローナル抗IGFBP3とは抗原の異なる領域に結合する
エピトープビニング実験を実施して、商業的抗体LSBIO社LS-C45037(クローン83.8F9)及び新たに開発された抗IGFBP3抗体が、IGFBP3の同じエピトープ領域に結合するかどうかをチェックした。簡潔には、マルチウェルプレートを先行技術抗体でコートして、サンドイッチELISAを実施した。ファージディスプレイによって選択された新規の抗IGFBP3モノクローナル抗体のすべては、商業的抗体LSBIO社LS-C45037(クローン83.8F9)の存在下でIGFBP3に結合し得た。
【0205】
この結果は、新たに発見された抗体によって結合されるIGFBP3上のエピトープが、市販の抗体のものとは異なることを示唆する(図12)。
【0206】
(実施例4)
新たに作出されたモノクローナル抗IGFBP3抗体は、IGF-I-IGFBP3結合を置き換えない
競合ELISA結合アッセイ
新たに作出された抗IGFBP3 mAbを、競合ELISAを使用することによって、IGF-I-IGFBP3相互作用を置き換えるそれらの能力についてインビトロで試験した。簡潔には、プレートをIGFBP3(Life Technologies社)4μg/mlでコートした。IGF-I(R&D社、291-G1-01M)を、IGFBP3との用量依存的比率(0:1、0.5:1、及び2:1)で添加した。本発明の新たに作出された抗IGFBP3 mAb(Yumab社)を、IGFBP3と比較して1:1の濃度で添加した。抗IGF-I HRPコンジュゲート抗体を使用することによって、IGFBP3-IGF-I結合を明らかにした。
【0207】
以下の試薬を使用して、抗IGFBP3抗体をスクリーニングした:組み換えヒトIGFBP-3(0,223mg/ml R&D System社、675-B3-025)、IGF-I(R&D社、291-G1-01M)、抗IGFBP3 mAb(Yumab社)、マウスモノクローナル抗IGFBP3(Novus Biological社、NBP2-12364)、抗IGF-I HRP(LSBio社、C547140)、ウシ血清アルブミン(BSA、Sigma社A7906)、Tween 20(TW)、ELISA比色TMB試薬(HRP基質、Item H Sigma社、RABTMB3)、ELISA STOP溶液(Item I、Sigma社、RABSTOP3)、ブロッキング試薬液(PBS中3%BSA)、及び希釈液(PBS中0,5%BSA、0,05%Tw)。
【0208】
マイクロプレート(Thermofisher、Electron Corporation社、2801)を、50μl/ウェルの、PBSに溶解した4μg/ml rhIGFBP3又はPBS単独(コーティングなし)でコートした。プレートを37℃で90分間インキュベートし、PBS(300μl/ウェル)で洗浄し、ブロッキング試薬(200μl/ウェル)とともに室温で2時間インキュベートした。次いで、サンプルを希釈液(50μl/ウェル)に希釈し、プレートに以下のとおりに添加した:希釈液(なし)、rhIGFBP3との種々の比率のIGF-I(0:1、0.5:1、及び2:1)、及び10μg/mlの抗IGFBP3 mAb。洗浄工程の後、次いでプレートを、希釈液(50μl/ウェル)に希釈された抗IGF-I HRPとともに室温で1時間インキュベートした。次いで、可視化液を添加した後、ELISAプレートをELISAリーダーで読み取った。
【0209】
図13に示されるように、新たに作出された抗IGFBP3 mAbは、アッセイにおいて、IGF-Iの吸光度を有意義に低下させず、mAbが、低又は高濃度のIGF-IでのIGF-I-IGFBP3結合を完全には置き換え得ないことを示した。全体として、本結果は、IGF-Iが利用可能である場合、IGFBP3はそれに優先的に結合すること、及び新たに作出された抗IGFBP3 mAbは、インビトロでIGFBP3-IGF-I結合を妨げないことを裏付ける。
【0210】
言い換えれば、IGF1が利用可能である場合、IGFBP3は優先的にIGFF1に優先的に結合し、新たに作出されたmAbは、IGF1-IGFBP3結合を妨げない。
【0211】
新たに作出されたモノクローナル抗IGFBP3抗体は、マウスミニ消化管においてIGFBP3損傷をレスキューする
陰窩単離及びマウスミニ消化管発達
本発明の抗体が、ヒト組織に対して、マウス組織において類似した組織交差反応性プロファイルを有することを確認するために、本発明者らは、マウス陰窩におけるインビトロミニ消化管アッセイにおいて、本発明のモノクローナル抗IGFBP3抗体を更に試験した。陰窩を、C57BL/6Jマウス(632C57BL/6J Charles River Laboratories社、Lyon、France)から獲得した。簡潔には、結腸を2~4mm片にはさみで切り、フラグメントを30mlの氷冷PBS中で洗浄し、次いで20mM EDTA-PBSとともに37℃でインキュベートした。次いで、フラグメントをトリプシン/DNAse溶液で処理して、陰窩を獲得した。この工程の後、サンプルの激しい振とうにより、結腸陰窩に富んだ上清がもたらされた。陰窩をマトリゲルと混合し、予熱した培養ディッシュにプレーティングした。マトリゲルの凝固後(37℃で10~15分間)、陰窩を、培養培地(ADF、10mM HEPES、N-2、レチノイン酸なしのB27、10μM Y-27632、1μM JAG1ペプチド(Anaspec社、Fremont、CA、USA)、1μg/ml R-スポンジン1、50ng/ml EGF(Invitrogen社)、及び100ng/mlノギン(Peprotech社、Rocky Hill、NJ、USA))で覆い、培地を8日目まで1日おきに変えた。
【0212】
エクトTMEM219のあり/なしで、IGFBP3の存在下にて、8日間、単離された陰窩を培養して、大きな陰窩オルガノイド、つまりミニ消化管を作出した。新たに作出された抗IGFBP3 mAbを0日目に1:1の比率(mAb/エクトTMEM219:IGFBP3)で添加した。ミニ消化管発達を、プレーティングされた単離された陰窩と比較した、8日後のオルガノイド成長のパーセンテージとして算出した(D'Addio Fら、Cell Stem Cell 2015年10月1日; 17(4): 486~498)。
【0213】
図14に示されるように、YU139-C01、YU139-A03、YU139-G03、及びYU139-H03抗体は、エクトTMEM219に関して観察されるものと類似して、大きな陰窩オルガノイドのマウスミニ消化管自己再生能(発達%)及び形態(陰窩ドメインの非存在、小さなスフェロイドの生成)に対するIGFBP3の負の効果をレスキューする。
【0214】
親和性測定
Octet BLIに基づく分析
結合親和性をより詳細に査定するために、バイオレイヤー干渉法(Biolayer Interferometry)(BLI)プラットフォームであるOctet機器(BLItz System)によって実施される生体分子相互作用分析を使用して、親和性測定を実施した。アッセイを確立するために、標的モノクローナル抗体(1%BSA-PBST中30μg/ml)をAHCバイオセンサー上にFcを介して固定化し、種々の濃度の抗原ヒトIGFBP3(R&D社、カタログ番号675 B3)及びマウスIGFBP3(Creative Biomart社、カタログ番号igfbp3 829M)との相互作用を測定した。
【0215】
標的ヒト及びマウスIGFBP3に対するYU139-C01、YU139-H03、YU139-G03、及びYU139-A03の親和性測定は、Table 9(表9)に報告されている。
【0216】
【表9】
【0217】
新たに作出された抗IGFBP3 mAbは、4×10-6Mを下回るKDを有して、優れたヒト抗原結合親和性を示す。抗体は、マウス交差反応性も示す。このデータは、マウスが、前臨床開発の間のモノクローナル抗体の試験のための関連動物種と見なされ得ることを裏付けた。
【0218】
腹腔内(IP)投与後のIBDマウスモデルにおける抗IGFBP3 mAb効力
C57BL/6Jマウスにおいてデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)によって誘導される結腸炎のモデルは、IBDにおける薬物の抗炎症特性を評価し及び確認もするための有効な動物モデルである。DSS(飲用水での経口投与)は、顕著な下痢、それに続く炎症を誘導する。このモデルは十分に特徴付けされ、信頼性が高く、再現性があり、死亡がないことをIBDにおける規制当局によって認められている。この調査をC57BL/6Jマウスにおいて実施した。実際、この特定の遺伝的背景において、マウスは、最後のDSS投与の3日後に分析された場合には急性結腸炎を、又は最後のDSS投与の7日後に分析された場合には慢性様炎症を発症する。
【0219】
動物
雄C57BL/6Jマウスは、Charles River laboratories社、l'Arbresle、Franceによって供給された。マウスを20±5℃で飼育し、水及び食料を自由裁量で提供した。すべての実験プロトコールは、政府ガイドラインに従って、リールのパスツール研究所における認定施設で実施された。
【0220】
DSSにより誘導されたマウス結腸炎モデルの確立及び処理
飲用水に溶解した2.5%(w/v)DSS(45kD;TDB Consultancy AB社、Uppsala、Sweden、バッチ番号DB001-41)をマウスに5日間給餌することによって、急性結腸炎を誘導した。マウスを8つの群にランダムに分けた:対照群; DSS+ビヒクル;DSS+Yu139-CO1 0.6mg/マウス、DSS+エクトTMEM 0.1mg/マウス、DSS+マウス抗TNFα 0.1mg/マウス(Ozyme社、B270358)、DSS+ペントキシフィリン(Sigma社P1784、BCBQ05 15)、DSS+ヒュミラ(Abbvie社、1108722)ip、DSS+ヒュミラsc。C57BL/6JマウスにおけるDSSにより誘導される急性結腸炎に対する抗IGFBP3 mAbの予防的治療効果を査定するために、マウスを、結腸炎誘導の3日前に開始する表示される用量のYu139-CO1を用いた腹腔内投与によって毎日処理し、最後のDSS投与の7日後に生じる安楽死まで実施した。動物モデルの実験スケジュールは、図15Aに記載されている。
【0221】
バイオ医薬品の治療特性を、陽性対照群、マウス抗TNFα抗体、ペントキシフィリン、及びヒュミラによって誘導されるものと比較した(Taghipour N.ら、Gastroenterol Hepatol Bed Bench 2016;9(1):45~52)。
【0222】
図15Bに示されるように、ビヒクルを受けたDSSマウスの群において、DSSの最後の投与の7日後に、DAIスコアは、結腸炎の重症度を表す健常対照群(ビヒクルのみを受けた群)と比較して有意に増加した。Yu139-CO1、エクトTMEM219、ヒュミラ、及びマウス抗TNFα抗体を受けた結腸炎マウスでは、ビヒクルのみを受けたDSSマウスと比較して、DAIスコアの有意な減少が記録された。この結果は、新たに作出された抗IGFBP3 mAbの抗炎症効果を表す。
【0223】
図15Cに示されるように、Yu139-CO1、ヒュミラ(関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、潰瘍性結腸炎、乾癬、化膿性汗腺炎、ブドウ膜炎、及び若年性特発性関節炎を治療するために使用される、IBD患者の治療において使用される生物学的ベンチマーク)、及びマウス抗TNF-α抗体を用いた処理を受けたDSSマウスでは、ビヒクルを受けた結腸炎マウスと比較して、潜血の存在の有意な減少が記録された。
【0224】
図15Dは、Yu-139-CO1を受けた結腸炎マウス及び4つの陽性対照における結腸のサイズの有意な増加を示し、新たに作出された抗IGFBP3 mAbの治療特性を表す。
【0225】
臨床的採点
すべての群において、マウスの重量、便の硬さ、及び血便を毎日記録した。疾患活動性指標(DAI)スコアは、標準的採点システムに従って、体重、便の硬さ、及び潜血の変化に基づいた。これらのパラメーターを、Table 10(表10)に記載される尺度で査定した。DAIデータは、毎日取られたこれらのパラメーターの平均スコアとして提示されている。動物を、麻酔下での頸椎脱臼によって屠殺した。安楽死時に、結腸を慎重に切除し、その重量及びサイズを測定した。安楽死時に、潜血(OB)の存在を、潜血法を使用して記録する。
【0226】
【表10】
【0227】
統計分析
2つの独立したサンプルに対する並べ替え検定を使用して、すべての比較を分析した。統計値は、GraphPad Prismバージョン7.0(GraphPad Software社、San Diego、CA)を使用して算出されている。p値が<0.05である場合、差を統計的に有意であると見なした。
【0228】
腹腔内(IP)投与後のT1Dマウスモデルにおける抗IGFBP3 mAb効力
動物
雌非肥満糖尿病(NOD)マウス(10週齢)をJackson Laboratory社、Bar Harbor、Maine(JAXストック#001976)から入手した。すべてのマウスを、Jackson Laboratory社施設内動物実験委員会によって承認された施設ガイドラインに従って世話し及び使用した。
【0229】
糖尿病モニタリング及び処理
明らかな糖尿病(空腹時血中グルコース濃度の上昇及び古典的症状によって特徴付けられる最も進行した段階)を、300mg/dLを上回る血中グルコースレベルとして規定した。血中グルコースを、Breeze2(Bayer S.p.A社)血中グルコース計測器を使用して測定した。
【0230】
実験を3つの群にランダムに分けた:対照群;Yu139-CO1 0.25mg/マウス、及びエクトTMEM 0.1mg/マウス。抗IGFBP3 mAbが、NODマウスにおいて糖尿病を予防するかどうかを判定するために、動物を、表示される用量のYu139-CO1を用いた腹腔内投与によって10日間毎日処理した。実験スケジュールは、図16Aに記載されている。
【0231】
統計分析
データを平均及び標準偏差(SD)として提示し、正規分布についてはコルモゴロフ-スミルノフ検定で、及び等分散性についてはルビーン検定で検定した。差の統計的有意性を、両側t検定及びカイ二乗(χ2)検定で検定した。2つの群間の有意性を、対応のない両側スチューデントt検定によって判定した。多重比較に関しては、ボンフェローニ補正を有する一元配置ANOVA検定を採用した。異なる群間での糖尿病発生率を、ログ-ランク(マンテル-コックス)検定で分析した。統計分析を、GraphPad Prismバージョン7.0(GraphPad Software社、La Jolla、CA)を使用して行った。すべての統計的検定を5%の有意水準で実施した。
【0232】
図16Bに示されるように、本発明者らは、10日間の新たに作出された抗IGFBP3 mAb投与が、NODマウスにおいて臨床的糖尿病を予防するのに有効であり得るかどうかを査定した。目立ったことには、腹腔内(IP)経路によって与えられた抗IGFBP3 mAbは、血中グルコースを制御し、T1D NODマウスモデルにおいて糖尿病を予防するのに有効である。この処理は、21週齢を有するマウスの75%において糖尿病予防を誘導した。
【0233】
参照による組み入れ
本出願において引用されるすべての刊行物、特許、特許出願、及び他の文書は、あたかもそれぞれ個々の刊行物、特許、特許出願、又は他の文書が、すべての目的のために参照により組み入れられることを個々に示されるかのようにと同程度に、すべての目的のために参照によりそれらの全体として本明細書によって組み入れられる。
【0234】
等価性
様々な具体的な実施形態が例示され及び記載されているが、上記の明細書は制限的ではない。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変化がもたらされ得ることが理解されるであろう。多くの変形は、本明細書を概観すれば当業者に明白になるであろう。
【0235】
(参考文献)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12-1】
図12-2】
図12-3】
図13
図14
図15-1】
図15-2】
図16
【配列表】
2022514163000001.app
【国際調査報告】