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特表2022-514168抗うつ製品の製造におけるヒドロキシチロソールおよびその誘導体の新規使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-10
(54)【発明の名称】抗うつ製品の製造におけるヒドロキシチロソールおよびその誘導体の新規使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/05 20060101AFI20220203BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220203BHJP
   A61K 31/138 20060101ALI20220203BHJP
   A61K 31/222 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20220203BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220203BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20220203BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220203BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20220203BHJP
   C07C 39/11 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
A61K31/05
A61K45/00
A61K31/138
A61K31/222
A61P25/24
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/08
A61K9/16
C07C39/11
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021520413
(86)(22)【出願日】2019-01-25
(85)【翻訳文提出日】2021-04-26
(86)【国際出願番号】 CN2019073088
(87)【国際公開番号】W WO2020077915
(87)【国際公開日】2020-04-23
(31)【優先権主張番号】201811207103.X
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521149426
【氏名又は名称】山▲東▼省▲薬▼学科学院
【氏名又は名称原語表記】SHANDONG ACADEMY OF PHARMACEUTICAL SCIENCES
(74)【代理人】
【識別番号】100178434
【弁理士】
【氏名又は名称】李 じゅん
(72)【発明者】
【氏名】凌 沛学
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ ▲飛▼
(72)【発明者】
【氏名】邵 ▲華▼▲栄▼
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 季栩
(72)【発明者】
【氏名】郭 新▲艶▼
(72)【発明者】
【氏名】▲辺▼ 玲
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲帥▼广
(72)【発明者】
【氏名】程 ▲艶▼玲
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 建▲強▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 岱州
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA14
4C076AA31
4C076AA37
4C076AA56
4C076BB01
4C076BB02
4C076BB11
4C076CC01
4C076DD24S
4C076DD28C
4C076DD38
4C076DD43T
4C076DD51Z
4C076DD59S
4C076DD67
4C076DD67T
4C076EE31
4C076EE38
4C076EE42
4C076EE53A
4C076FF04
4C076FF05
4C076FF06
4C076FF09
4C076FF12
4C076FF39
4C076FF51
4C076FF61
4C076GG12
4C076GG14
4C084AA20
4C084MA02
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA41
4C084MA55
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA06
4C084ZA121
4C084ZA122
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA20
4C206DB03
4C206DB58
4C206FA21
4C206KA01
4C206KA12
4C206KA13
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA61
4C206MA72
4C206MA77
4C206MA86
4C206NA05
4C206NA06
4C206NA14
4C206ZA12
4H006AA01
4H006AB21
4H006FC52
4H006FE11
4H006FE13
(57)【要約】
本発明は、抗うつ製品の製造におけるヒドロキシチロソールおよびその誘導体の使用を提供し、バイオ医薬分野に属する。ヒドロキシチロソールの誘導体は、ヒドロキシチロソール塩、ヒドロキシチロソールエステルおよびヒドロキシチロソールエーテルのうちの少なくとも1種から選択され、化学合成、微生物発酵または動植物抽出から由来することができる。前記うつ病を予防または治療するための製品は、医薬品、食品、機能性食品であってもよい。ヒドロキシチロソールおよびその誘導体を有効成分として製造した抗うつ製品は、うつ病を予防または治療し、およびうつ病の再発を予防する効果を奏し、うつ病の発症率の低下、うつ病患者の生活の質の改善に用いることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシチロソール誘導体の構造式は、式(I)で表される化合物のうちの一部または全部の-OHが塩基、酸、アルコールとからなる塩、エステルまたはエーテルである、
【化1】
抗うつ製品の製造におけるヒドロキシチロソールおよびその誘導体の新規使用。
【請求項2】
ヒドロキシチロソール塩が、ヒドロキシチロソールのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩またはヒドロキシチロソールと窒素含有有機塩基からなる塩から選択される、ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記窒素含有有機塩基は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミン、N-ベンゼル基-β-フェニルエチルアミン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、プロカインまたはアンフェタミンから選択される、ことを特徴とする請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記ヒドロキシチロソールエステルは、ヒドロキシチロソールと無機または有機酸とからなる生理的に許容可能なエステルであり、前記無機酸は、硫酸、リン酸、炭酸、塩酸から選択され、前記有機酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、マレイン酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、コハク酸または脂肪酸から選択される、ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記ヒドロキシチロソールエーテルは、ヒドロキシチロソールアルキルエーテル、ヒドロキシチロソールアリールエーテル、およびヒドロキシチロソール配糖体を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項6】
化学合成、微生物発酵または動植物抽出から由来することができ、前記植物は、オリーブ果実、オリーブ葉、またはヒドロキシチロソールおよびその誘導体を含む他の植物である、請求項1に記載のヒドロキシチロソールおよびその誘導体。
【請求項7】
前記うつ病を予防または治療するための製品は、医薬品、食品、機能性食品、特別医療目的用食品から選択される、ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項8】
前記うつ病を予防または治療するための製品は、経口、注射または外用形医薬品であり、経口剤形は、好ましくは舌下錠であり、注射剤形は、好ましくは注射剤であり、外用剤形は、好ましくは鼻腔投与剤である、ことを特徴とする請求項7に記載の使用。
【請求項9】
ヒドロキシチロソールおよびその誘導体は、他の活性成分と組み合わせて配合製剤にすることができる、ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項10】
他の活性成分は、塩酸セルトラリン、フルオキセチン、パロキセチン、シタロプラム、フルボキサミン、塩酸ドクサピン、セレギリン、サフィナミドメシル、トロキサトンなどの抗うつ活性を有する成分、クアゼパム、テマゼパム、舒楽安定、γ-アミノ酪酸のいずれか一つまたは組み合わせなどの鎮静催眠活性を有する成分、サリドロシド、ヒドロキシサリドロシド、チロソールなどの抗酸化活性を有する成分、ガストロジンなどの神経衰弱治療作用を有する成分から選択される、ことを特徴とする請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記うつ病を予防または治療するための製品におけるヒドロキシチロソールおよびその誘導体の含有量が、0.01%~99.99%であり、好ましくは0.05%~95%、より好ましくは0.05%~65%であり、前記%は質量体積パーセント(w/v)または質量百分率(w/w)である、ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ医薬分野に属し、具体的には、ヒドロキシチロソールの新規使用に関する。
【背景技術】
【0002】
社会経済の不断の発展に伴って、生活リズム加速、社会競争が日に日に激しくなり、人々の心理圧力が次第に増大し、うつ病の発症率が年々上昇している。世界保健機関の推定によると、世界中でうつ病の発症率は約3%~5%であり、合計約1~2億人である。2022年までに、うつ病が発展途上国にとっては最も深刻な医療負担となるだろう。
【0003】
うつ病は、抑鬱障害とも呼ばれ、自己のうつ気分体験を中心とする臨床症候群或いは状態であり、持続性かつ顕著な自発性の気分低下を主要臨床的特徴とし、気分障害の主要なタイプである。臨床病状は、主に意気消沈、打ち解けない、離群、身体不快感、食欲不振および睡眠障害がある;一部の病例においては、明らかな焦慮と運動性激越があり、重症者は、幻覚、妄想などの精神病症状が見られる可能性がある。うつ病は、主に以下の種類がある:内因性うつ病、反応性うつ病、仮面うつ病、学習障害を特徴とするうつ病、薬物による二次性うつ病、身体疾患による二次性うつ病、産後うつ病など。現在、市販のうつ病を治療する薬物は、パロキセチン、セルトラリン、フルボキサミン、ヴェンラファキシンがあるが、比較的多くの薬の副作用、例えば、嗜眠、便秘、胃腸不快感、呼吸抑制、記憶力減退と依存性などが存在し、更に安全な抗うつ薬を探し求め、開発することは、重要な意義がある。
【0004】
現在、うつ病の発病メカニズムに関する理論学説について、様々なものが提唱されている。例えば、モノアミン系神経伝達物質学説、神経内分泌学説、神経可塑性学説など。そのうち、モノアミン類神経伝達物質学説の研究は最も広くと深く、それはうつ病の発病が5-ヒドロキシトリプタミン、ノルアドレナリン、ドーパミンなどの神経伝達物質のレベルの低下と関係があると考えられている。ドーパミンとは、重要なカテコールアミン系神経伝達物質の一つであり、細胞のパルス伝達に援助するために用いられる化学物質である。このような脳内分泌物は、人間の情欲、感覚と関係があり、興奮や快楽の情報を伝えることができる。側坐核領域と線条体領域のドーパミン能が損害を受け、またはドーパミンレベルが低下すると、快感欠損、焦慮、食欲不振などのうつ病症状が見られる。脳内ドーパミンレベルは、うつ病の重症度と治療効果の指標の一つである可能性があるため、脳内ドーパミンのレベルを調節することが、うつ病の治療に対して重要な意義がある。
【0005】
ヒドロキシチロソール((hydroxytyrosol、C10、CAS:10597-60-1)は、3,4-ジヒドロキシフェニルエタノール(3,4-dihydroxy phenylethanol)とも呼ばれ、親水親油性の天然ポリフェノール化合物の一つである。常温低純度の場合に、黄色油状物を呈し、高濃度の場合に、無色油状物を呈し、いずれも流動性を有する。主に、オリーブ科オリーブ属の果実と葉にオレウロペインの形式で存在し、オリーブオイル中の有効成分である。カテコールとフェネチルアルコールの構造を有するため、ヒドロキシチロソールは、強い抗酸化性を持ち、近年注目されている。研究により、ヒドロキシチロソールは、極めて強い抗酸化作用を有し、炎症の発生発展に対して比較的良い抑制と予防治療効果を奏し、ドーパミン作動性細胞に対して潜在的な神経保護作用を有するので、パーキンソン病とアルツハイマー症候群の治療に応用できることが明らかになった。従来技術では、ヒドロキシチロソールの調製方法と軟骨保護、骨関節炎の予防および治療、降血脂、黄斑変性症治療製品の製造における使用が開示されているが、うつ病の予防および治療用途としてのヒドロキシチロソールの使用がまだ開示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来技術問題に鑑みてなされたものであって、うつ病およびその合併症の病状を予防および治療し、うつ病の再発を予防する作用を有する抗うつ製品の製造におけるヒドロキシチロソールの新規使用を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を実現するために、本発明の用いる技術方案は、以下のとおりである。
【0008】
うつ病の予防および治療用製品の製造におけるヒドロキシチロソールおよびその誘導体の使用。心理ストレスを受けたことによって引き起こされる心理疾患の病状を緩和および改善するために用いることができ、意気消沈、打ち解けない、身体不快感、食欲不振および睡眠障害などのうつ病中の様々な病状を緩和および改善するために用いることができる。
【0009】
前記ヒドロキシチロソール誘導体は、式(I)で表される化合物のうちの一部または全部の-OHが塩基、酸、アルコールとからなる塩、エステルまたはエーテルであるヒドロキシチロソール塩、ヒドロキシチロソールエステルおよびヒドロキシチロソールエーテルno少なくとも1種から選択される。
【化1】
【0010】
前記ヒドロキシチロソール誘導体は、ヒトまたは動物体内で加水分解されてヒドロキシチロソールに転換され、同じまたは近い生理活性を産生することができる。
【0011】
前記ヒドロキシチロソール塩は、ヒドロキシチロソールと無機または有機塩基とからなる生理的に許容可能な塩である。例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのヒドロキシチロソールのアルカリ金属塩と、カルシウム塩、マグネシウム塩などのヒドロキシチロソールのアルカリ土類金属塩と、アンモニウム塩と、ヒドロキシチロソールと窒素含有有機塩基からなる塩とを含むが、これらに限定されない。前記窒素含有有機塩基は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミン、N-ベンゼル基-β-フェニルエチルアミン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、プロカイン(Procaine)、アンフェタミン(Amphetamine)を含むが、これらに限定されない。
【0012】
前記ヒドロキシチロソールエステルは、ヒドロキシチロソールと無機または有機酸とからなる生理的に許容可能なエステルであり、前記無機酸は、硫酸、リン酸、炭酸、塩酸から選択され、前記有機酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、マレイン酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、コハク酸または脂肪酸から選択される。
【0013】
前記ヒドロキシチロソールエーテルは、ヒドロキシチロソールアルキルエーテル、ヒドロキシチロソールアリールエーテル、およびヒドロキシチロソール配糖体を含む。前記アルキルエーテルとしては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、イソプロピル基またはtert-ブチルメチルを挙げることができる。前記アリールエーテルは、炭素原子を含む芳香族エーテルであってもよく、窒素原子、硫黄原子、酸素原子を含む複素環エーテルであってもよい。前記ヒドロキシチロソール配糖体は、ヒドロキシチロソールグルコシド、ヒドロキシチロソールフルクトシドなどであってもよい。
【0014】
前記ヒドロキシチロソールおよびその誘導体は、化学合成、微生物発酵または動植物抽出から由来することができ、例えば、オリーブ果実、オリーブ葉、または他のヒドロキシチロソールおよびその誘導体を含むものから抽出される。
【0015】
前記うつ病を予防または治療するための製品としては医薬品、食品、機能性食品、特別医療目的用食品または化粧品でもよい。
【0016】
前記抗うつ病製品としては医薬品、食品、機能性食品、特別医療目的用食品または化粧品などを製造するための許容可能な添加物をさらに含むことができる。例えば、フィラー、担体、乳化剤、賦形剤などが挙げられる。
【0017】
前記うつ病を予防または治療するための製品としては経口、注射または外用剤形でもよい。前記経口剤形は、トローチ、錠剤、カプセルおよび顆粒剤を含むが、これらに限定されない。好ましくは舌下錠などの経口剤形である。前記粉末注射剤形は、注射液、粉末注射剤を含むが、これらに限定されない。前記外用剤形は、座薬、噴霧剤、フィルム剤、貼付剤を含むが、これらに限定されない。好ましくは鼻腔投与剤形のような鼻粘膜を介して薬剤を吸収することができる腔投与剤形である。
【0018】
前記抗うつ病食品としては焙煎食品、調味料、飲料類、酒類、乳および乳製品、冷凍飲料、スープ、栄養棒、塗布物、栄養補助食品、食品または飼料添加物、機能性食品を含むが、これらに限定されない。
【0019】
前記うつ病を予防または治療するための製品は、他の製品の適用用量を低下させ、副作用を減少させるために、他の抗うつ病製品と組み合わせて使用することができる。また、ヒドロキシチロソールおよびその誘導体と他の活性成分とからなる配合製剤であってもよく、相乗効果を奏し、抑うつ治療の効果を向上させ、副作用を低減させることができる。
【0020】
他の活性成分は、塩酸セルトラリン、フルオキセチン、パロキセチン、シタロプラム、フルボキサミン、塩酸ドクサピン、セレギリン、サフィナミドメシル、トロキサトンなどの抗うつ活性を有する成分、クアゼパム、テマゼパム、舒楽安定、γ-アミノ酪酸のいずれか一つまたは組み合わせなどの鎮静催眠活性を有する成分、サリドロシド、ヒドロキシサリドロシド、チロソールなどの抗酸化活性を有する成分、ガストロジンなどの神経衰弱治療作用を有する成分から選択されるが、これらに限定されない。
【0021】
前記うつ病を予防または治療するための製品におけるヒドロキシチロソールおよびその誘導体の含有量が、0.01%~99.99%であり、好ましくは0.05%~95%、より好ましくは0.05%~65%である。前記%は、質量体積パーセント(w/v)または質量百分率(w/w)である。
【0022】
さらに、経口製品における質量百分率が、0.05%~60%であり、好ましくは0.1%~40%である。注射用製品における質量百分率が、0.1%~95%であり、好ましくは0.5%~50%である。外用品における質量百分率が、0.1%~65%である。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、以下の有益な効果を有する。
本発明によれば、うつ病およびその合併症の病状を予防または治療するために用いることができ、うつ病の再発を予防し、うつ病の発症率を低下させ、うつ病患者の生活の質を改善し、他の抗うつ薬と併用することにより、他の製品の副作用を低減させることができる抗うつ製品の製造におけるヒドロキシチロソールおよびその誘導体の新規使用が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施例を参照しながら、本発明をさらに詳細に説明するが、図面を参照しながら以下に説明される実施例は例示的なものであり、本発明を限定するものと理解してはいけない。
【0025】
実施例1:ヒドロキシチロソール舌下錠の調製
通常の工程により舌下錠を作製し、配合成分(1000粒)は、以下の通りである。
湿式造粒打錠法を用いて、処方量の蔗糖と微結晶セルロースを秤取し、均一に混ぜて、次に、ヒドロキシチロソールと10%デンプンスラリーとを均一に混ぜて、結合剤として加えて軟材を作製し、20メッシュ篩を通過し、湿顆粒を70℃で1時間乾燥させ、20メッシュ篩で整粒し、タルク粉末を加えて均一に混ぜて打錠し、舌下錠を得た。
【0026】
実施例2:ヒドロキシチロソールソフトカプセルの調製
通常の工程によりソフトカプセルを作製し、配合成分(1000粒)は、以下の通りである。
処方量のヒドロキシチロソールを取って、植物油を加えて溶解し、薬液として使用に備えた。グリセリンおよび水を70℃に加熱して攪拌溶解し、ゼラチンを加え、2時間攪拌した後、浮上した泡を除去して濾過した。ソフトカプセル機をオンにし、左右のカプセルおよびノズル本体加熱をオンにするとともに、ポンプ循環と冷凍をオンにした。ノズル本体を43℃に設定し、左右カプセルを60℃に設定した。予熱完了後、両側の皮膜厚さをいずれも0.70mmに調節した。皮膜を調整した後、薬液をホッパーに入れ、装着量を調節し、ソフトカプセルを製造した。ソフトカプセルを洗って、乾燥した。
【0027】
実施例3:ヒドロキシチロソール錠剤の調製
通常の工程により錠剤を作製し、配合成分(1000錠)は、以下の通りである。
粉砂糖、微結晶セルロースとデンプングリコール酸ナトリウムを均一に混ぜて、次に、ヒドロキシチロソールとデンプンスラリーを均一に混ぜて結合剤として加え、軟材を作製し、14メッシュのナイロン篩を通過して湿顆粒を作製し、45℃で乾燥し、タルク粉末を加え、均一に混ぜた後、12メッシュのナイロン篩を通過し、顆粒が含有量の測定に合格した後、打錠し、錠剤を得た。
【0028】
実施例4:ヒドロキシチロソール顆粒剤の調製
通常の工程により顆粒剤を作製し、配合成分(1000袋)は、以下の通りである。
亜硫酸水素ナトリウム、砂糖と微結晶セルロースを均一に混ぜて、ヒドロキシチロソールとデンプンスラリーを均一に混ぜて結合剤として加え、軟材を作製し、12メッシュのナイロン篩を通過した。80メッシュの篩を通過した食用エッセンスと整粒された顆粒を混合し、個包装し、顆粒剤を得た。
【0029】
実施例5:ヒドロキシチロソール注射剤の調製
通常の工程により注射液(1000本)を作製し、配合成分は、以下の通りである。
調製容器に処方量80%の注射用水を加え、二酸化炭素で飽和させ、ヒドロキシチロソールを加えて溶解した後、予め調製されたエデン酸二ナトリウム溶液と亜硫酸水素ナトリウム溶液を加えて均一に攪拌し、二酸化炭素で飽和した注射用水を十分な量まで加え、不純物を濾過除去した。二酸化炭素気流下で分注し、ポッティングし、滅菌した。
【0030】
実施例6:ヒドロキシチロソール注射剤の調製
通常の工程により注射液(100本)を作製し、配合成分は、以下の通りである。
ビタミンEを精製大豆油に溶解し、ヒドロキシチロソールを加え、均質化し、不純物を濾過除去し、ポッティングし、滅菌し、注射剤を得た。
【0031】
実施例7:保健飲料の調製
通常の工程により保健飲料を作製し、配合成分は、以下の通りである。
上表の質量に従って原料を秤取し、少量の水で溶解した後、水を加えて1000 mLとし、滅菌、分注し、保健飲料を得た。ここで、ヒドロキシチロソールとチロシンを主原料とし、製品の風味や食感をさらに調節するために、本発明の製品配合成分に適量のクエン酸とスクラロース調味剤、および食用エッセンスをさらに添加し、具体的な製造過程については、食品分野の通常の操作に従って行えばよい。
【0032】
実施例8:複方ヒドロキシチロソール錠剤の調製
通常の工程により錠剤を作製し、配合成分(1000錠)は、以下の通りである。
フルオキセチン、粉砂糖、微結晶セルロースとデンプングリコール酸ナトリウムを均一に混ぜて、次に、ヒドロキシチロソールと10%デンプンスラリーを均一に混ぜて加えて軟材を作製し、14メッシュのナイロン篩を通過して湿顆粒を作製し、45℃で乾燥した。乾顆粒を12メッシュのナイロン篩を通過して整粒し、該顆粒とタルク粉末を均一に混ぜて、再度12メッシュのナイロン篩を通過し、顆粒が含有量の測定に合格した後、打錠し、錠剤を得た。
【0033】
実施例9:ヒドロキシチロソールカプロン酸エステルの調製
調製方法は、以下の通りである。
p-ヒドロキシベンゼンエタノール1gを2.3mLのピリジンに溶解し、トルエン10mLで希釈して氷水浴中で冷却した。ヘキサン酸クロリド3mLを加えて固体を生成した。一夜、混合物を室温にした。生成物を酢酸エチルと水の混合溶液に溶解し、有機相を保持し、水相を除去した。有機相を1.5mol/LのHCl溶液と4%炭酸水素ナトリウム溶液で順次洗浄し、水分を乾燥させ、濃縮、ヒドロキシチロソールカプロン酸エステルを得た。そのプロトン核磁気共鳴特徴付けは、H NMR (CDCl) δ7.0-6.8 (m, 3H); 4.40 (t, 2H, J=7.1Hz); 2.90 (t, 2H, J= 6.8Hz); 2.22 (t, 2H, J=7.3Hz); 2.23 (t, 2H, J=7.3Hz); 2.25 (t, 2H, J=7.4Hz); 1.35-2.32 (m, 6H); 1.56-1.25 (m, 12H), 0.93-0.87 (m, 9H)である。
その化学構造は、以下の通りである。
【化2】
【0034】
実施例10:ヒドロキシチロソールカプロン酸エステル舌下錠の調製
通常の工程によりヒドロキシチロソールカプロン酸エステル舌下錠を作製し、配合成分(1000錠)は、以下の通りである。
湿式造粒打錠法を用いて、処方量の蔗糖と微結晶セルロースを秤取し、均一に混ぜて、次に、ヒドロキシチロソールと10%デンプンスラリーを均一に混ぜて、結合剤として加えて軟材を作製し、20メッシュ篩を通過し、湿顆粒を70℃で1時間乾燥させ、20メッシュ篩で整粒し、タルク粉末を加えて均一に混ぜて打錠し、舌下錠を得た。
【0035】
実施例11:尾懸垂法獲得性絶望うつモデル試験
山東省薬学科学院がヒドロキシチロソールおよびその誘導体を提供された。済南朋悦実験動物繁育有限会社が体重18~22gのICRマウス70匹を提供され、動物室の温度:20℃~25℃、相対湿度:45%~55%、昼夜:12時間/12時間、自由に水分と飲食を摂取した。環境適応1週間後、ランダムにモデル対照群(0mg/kg/d)、ヒドロキシチロソール低用量群(1mg/kg/d)、ヒドロキシチロソール中用量群(4mg/kg/d)、ヒドロキシチロソール高用量群(10mg/kg/d)、実施例8群(錠剤1粒当たりヒドロキシチロソール20mg、フルオキセチン5mgを含む)、フルオキセチン群(3mg/kg/d)、ヒドロキシチロソールカプロン酸エステル群(4mg/kg/d)計7群に分けた。6群の試験群の夫々に対してサンプルを胃内投与し、1日1回、連続30日間、0.1mL/10gの体重であった;モデル対照群に対して、対応する溶媒を胃内投与し、胃内投与が0.1mL/10g体重であった。最後のサンプルを投与した2時間後、各群のマウスの尾(尾尖部から2cm)をそれぞれ尾懸垂箱(30cm×30cm×25cm)上部のラックにテープで貼り付け、逆さ釣りの状態とし、頭部を箱底から約5cm離れ、一回に2匹のマウスを掛け、中間を仕切板で隔てた。マウスは異常体位を克服するために暴れたが、次第にあきらめて断続的な無動となり、絶望状態を示した。掛け時間は6分間とし、後の4分間以内の懸尾累積無動時間(無動状態、すなわちマウスの暴れ停止又は何の活動も無し状態)を統計し、結果は表1の通りである。
表1は、マウスにおける尾懸垂試験のヒドロキシチロソールの影響(mean±SD、n=10)である。
【表1】
注:モデル対照群と比較して、*P<0.05である。
【0036】
表1で分かるように、全ての投与群の懸尾無動時間は、モデル対照群と比較するとき、有意差が認められた。このうち、ヒドロキシチロソールの投与量が多いほど、マウスの懸尾無動時間が用量依存性短縮を呈した。ヒドロキシチロソール中用量群(4mg/kg/d)、ヒドロキシチロソールカプロン酸エステル群(4mg/kg/d)は、フルオキセチン群(3mg/kg/d)と比較するとき、有意差がなく、ヒドロキシチロソールおよびそのカプロン酸エステル誘導体は、いずれも病態改善またはうつ病補助治療効果を奏することが示された。また、実施例8群(4mg/kg/dヒドロキシチロソール+1mg/kg/dフルオキセチン)は、ヒドロキシチロソール群(10mg/kg/d)と比較するとき、懸尾無動時間上に有意差が認められず、かつヒドロキシチロソール(4mg/kg/d)とフルオキセチン群(3mg/kg/d)より有意に優れ、組成物の併用は相乗効果があり、病状の緩和に役立つことが示された。
【0037】
実施例12:オープンフィールド試験
山東省薬学科学院がヒドロキシチロソールおよびその誘導体を提供された。済南朋悦実験動物繁育有限会社が体重18~22gのICRマウス70匹を提供され、動物室の温度:20℃~25℃、相対湿度:45%~55%、昼夜:12時間/12時間、自由に水分と飲食を摂取した。環境適応1週間後、うつ病モデルマウスは、コルチコステロンを用いて腹腔注射21日、動物行動学変化を観察することによってモデルの成功を判断した。モデル作成成功後、ランダムにモデル対照群(0mg/kg/d)、ヒドロキシチロソール低用量群(1mg/kg/d)、ヒドロキシチロソール中用量群(4mg/kg/d)、ヒドロキシチロソール高用量群(10mg/kg/d)、実施例8群(錠剤1粒当たりヒドロキシチロソール20mg、フルオキセチン5mgを含む)、フルオキセチン群(3mg/kg/d)、ヒドロキシチロソールカプロン酸エステル群(4mg/kg/d)計7群に分け、各群がマウス10匹であった。7つの試験群の夫々に対してサンプルを1日1回に胃内投与し、連続30日間、胃内投与が0.1mL/10g体重であった。モデル対照群に対して、対応する溶媒を胃内投与し、胃内投与が0.1mL/10g体重であった。最後のサンプルを投与した2時間後、各群のマウスをそれぞれ蓋のないオープンボックス(55cm×55cm×40cm)に単独置き、箱の底部に白線で11cm×11cmの小さい格子に分け、該箱底と四壁を比較的暗い部屋でマウスと顕著な対比をなすように黒色にした。カメラを部屋中心の上方に固定し、マウスの自発活動を撮像記録して測定した。モデル作成21日後、マウスの移動距離と立ち上がり回数を測定し、マウスを箱の底部の中央に置き、自由に活動させて環境に5分間に適応させた後、5分間測定し、毎回ビデオカメラで記録・観察した。2回の実験の間、箱の底部の夫々の小格を70%のエタノールできれいに拭き取った。毎回の測定時間は、午後の4時であり、室内が25℃~28℃に安定し、かつ室内が静かであった。マウスの自発活動を記録し、マウスが1つの小格または10cmを越えると、それぞれ平行1点と記録され、同時に、マウスの両前肢が、立ち上がり或いは段ボール壁に接触すると、立ち上がり1回と記録された。結果は表2の通りである。
表2は、マウスにおける平行移動格数および立ち上がり回数に対するヒドロキシチロソールの影響(mean±SD、n=10)である。
【表2】
注:モデル対照群と比較して、*P<0.05である。
【0038】
表2で分かるように、投与群の平行移動格数および立ち上がり回数は、モデル対照群と比較するとき、有意差が認められた。このうち、ヒドロキシチロソールの投与量が多いほど、マウスの活動回数が用量依存性増加、探索行為増加を呈した。ヒドロキシチロソール中用量群(4mg/kg/d)、ヒドロキシチロソールカプロン酸エステル群(4mg/kg/d)は、フルオキセチン群(3mg/kg/d)と比較するとき、有意差がなく、ヒドロキシチロソールおよびそのカプロン酸エステル誘導体が、いずれも病態改善またはうつ病治療効果を奏することが示された。また、実施例8群(4mg/kg/dヒドロキシチロソール+1mg/kg/dフルオキセチン)は、ヒドロキシチロソール群(10mg/kg/d)と比較するとき、平行移動格数および立ち上がり回数上に有意差が認められず、かつヒドロキシチロソール(4mg/kg/d)とフルオキセチン群(3mg/kg/d)より有意に優れ、組成物の併用は相乗効果があり、病状の緩和に役立つことが示された。
【0039】
実施例13:ラットにおける慢性的な予測不能な軽度ストレスうつ病モデル
山東省薬学科学院がヒドロキシチロソールおよびその誘導体を提供された。済南朋悦実験動物繁育有限会社が体重183~224gのSDラット70匹を提供され、動物室の温度:20℃~25℃、相対湿度:45%~55%、昼夜:12時間/12時間、自由に水分と飲食を摂取した。
【0040】
環境適応1週間後、ランダムにモデル対照群(0mg/kg/d)、ヒドロキシチロソール低用量群(0.5mg/kg/d)、ヒドロキシチロソール中用量群(2mg/kg/d)、ヒドロキシチロソール高用量群(6mg/kg/d)、実施例8群(錠剤1粒当たりヒドロキシチロソール20mg、フルオキセチン5mgを含む)、フルオキセチン群(2mg/kg/d)、ヒドロキシチロソールカプロン酸エステル群(4mg/kg/d)計7群に分けた。モデル作成と投与:ブランク対照群ラットは、正常に水分と飲食を摂取し、いかなる刺激を与えずに、5匹/1ケージで飼育した。残りのラットは、6週間の慢性的な予測不能な温和刺激うつ病モデルの構築(単ケージ飼育)を行った。毎日1種のストレス方式を選択し、異なるストレス源をランダムに分布し、少なくとも7日の間隔で同じストレス源を利用した。24時間の持続圧力を除いて、毎日の8:30~12:00にストレスを実施した。ストレス方法:夜間照明12時間、ケージ傾斜45°、冷水(4℃~8℃)で水泳5分間、45℃熱水で水泳5分間、行為制限1時間、湿ったマット24時間、尾を挟む1分間、禁水24時間、絶食24時間、混雑ケージ一夜などを含む。慢性ストレス2週間後、すべてのラットに対して強制水泳試験と蔗糖選好試験を再度行った。そして、投与群へ投与開始し、1日1回、4週間連続投与(投与期間でモデル作成を続けた)、モデル対照群に対して相応の溶媒を経口投与し、強制水泳試験と蔗糖選好試験を用いてラットにおける抑うつ様行動の薬物の影響を評価した。
【0041】
糖水試験の前に、2瓶の水を用いて動物を48時間適応させ、最初の24時間、2瓶にも等量の1%(w/v)蔗糖水を入れた。第二の24時間、1瓶に1%糖水を入れ、別の1瓶に等量の純水を入れ、12時間後に2瓶の位置を交換した。その後、動物に対して禁水するが、禁食しなく、24時間後に糖水/純水の消費実験を行った。各ケージにラットを1匹置き、夫々のラットへ予め秤量したほぼ等量の2瓶の水(1%糖水1瓶、精製水1瓶)を投与した。試験時間は2時間で、試験1時間後に2瓶の位置を交換した。試験終了後、2瓶の重量を再秤量した。ラット1匹あたりの糖選好=[糖水消費量/(白水消費量+糖水消費量)]×100%。結果は表3の通りである。
表3は、ラットにおける糖選好および強制水泳行為に対するヒドロキシチロソールの影響(mean±SD、n=10)である。
【表3】
注:モデル対照群と比較して、*P<0.05である。
【0042】
糖水選好試験および強制水泳の結果により、モデル対照群に比べ、投与群の糖水選好および水泳無動時間は、いずれも明らかに改善され、かつ投与量と正相関が示された。ヒドロキシチロソール中用量群(2mg/kg/d)、ヒドロキシチロソールカプロン酸エステル群(2mg/kg/d)は、フルオキセチン群(2mg/kg/d)と比較するとき、有意差がなく、ヒドロキシチロソールおよびそのカプロン酸エステル誘導体が、うつ病の治療またはうつ病補助治療効果を奏することが示された。同時に、実施例8群(2mg/kg/dヒドロキシチロソール+0.5mg/kg/dフルオキセチン)は、ヒドロキシチロソール群(6mg/kg/d)と比較するとき、糖水選好および水泳無動時間に有意差が認められず、かつヒドロキシチロソール(2 mg/kg/d)とフルオキセチン群(2mg/kg/d)より有意に優れ、組成物の併用は相乗効果があり、病状の緩和に役立つことが示された。
【0043】
実施例14:うつ病ラットにおける脳内モノアミン系神経伝達物質含有量に対するヒドロキシチロソールの影響
山東省薬学科学院がヒドロキシチロソールおよびその誘導体を提供された。済南朋悦実験動物繁育有限会社が体重183~224gのSDラット70匹を提供され、動物室の温度:20℃~25℃、相対湿度:45%~55%、昼夜:12時間/12時間、自由に水分と飲食を摂取した。
【0044】
環境適応1週間後、ランダムにモデル対照群(0mg/kg/d)、ヒドロキシチロソール低用量群(0.5mg/kg/d)、ヒドロキシチロソール中用量群(2mg/kg/d)、ヒドロキシチロソール高用量群(6mg/kg/d)、実施例8群(錠剤1粒当たりヒドロキシチロソール20mg、フルオキセチン5mgを含む)、フルオキセチン群(2mg/kg/d)、ヒドロキシチロソールカプロン酸エステル群(2mg/kg/d)計7群に分けた。
【0045】
モデルの作成方法は、実施例13と同様である。
【0046】
慢性的なストレスを与えた2週間後、投与群へ投与開始し、1日1回、4週間連続投与(投与期間でモデル作成を続けた)し、モデル対照群に対して対応する溶媒を経口投与した。投与終了後、0.35mL/100gの腹腔注射によりラットを麻酔し、速やかに脳を剥離した。氷盤上で小脳と血腫周辺の組織を分離除去し、称量し、組織400mgを取り、組織ホモジナイザーに入れ、0.1mol/Lの過塩素酸(0.05%EDTA-Naを含む)1mLを加え、氷水浴下でホモジェナイズした。完成後、ホモジェネートを1.5mLの遠心管に移し、4℃条件下で10000r/minで10分間遠心し、上澄み液を取って-80℃の冷蔵庫で保存した。
【0047】
適量のノルアドレナリン(NE)、ドーパミン(DA)と5-ヒドロキシトリプタミン(5-HT)標準物質をそれぞれ精密に秤量し、0.1mol/Lの過塩素酸(0.1%システインを含む)溶液でそれぞれ質量濃度が1mg/mLである標準原液に調製し、原液をそれぞれNE濃度0.1、0.5、1.5、3、4.5μg/mLに希釈した。DA濃度が0.2、1、2、4、5μg/mLであり、5-HT濃度が0.5、1、1.5、2、3μg/mLであり、各成分の標準物質対照液とした。
【0048】
HPLCを用いて測定を行った。クロマトグラフィー条件:CLC-ODSカラムを選択し、移動相がpH=2.5イオン対試薬(ドデシル硫酸ナトリウム0.15g、EDTA-Na20.028g、pH=2.5~3硫酸溶液0.2mL、10%メタノール溶液400mL、蒸留水で1000mLに定容した)であった。流速1.2mL/分間、カラム温度40℃、蛍光励起波長285nm、発光波長313nm、注入量20μL、ピーク面積外部標準法で定量した。
【0049】
表4は、ラットにおける脳内モノアミン系神経伝達物質含有量に対するヒドロキシチロソールの影響(mean±SD、n=10)である。
【表4】
注:モデル対照群と比較して、*P<0.05である。
【0050】
表4で分かるように、モデル対照群に比べ、投与群のモノアミン系神経伝達物質は、いずれも大幅に高め、かつヒドロキシチロソールの投与量と正相関が示された。ヒドロキシチロソール中用量群(2mg/kg/d)、ヒドロキシチロソールカプロン酸エステル群(2mg/kg/d)は、フルオキセチン群(2mg/kg/d)と比較するとき、有意差がなく、ヒドロキシチロソールおよびそのカプロン酸エステル誘導体が、うつ病の動物における脳内モノアミン系神経伝達物質のレベルを向上させることができることが示された。同時に、実施例8群(2mg/kg/dヒドロキシチロソール+0.5mg/kg/dフルオキセチン)は、ヒドロキシチロソール群(6mg/kg/d)と比較するとき、脳内モノアミン系神経伝達物質のレベルに有意差が認められず、かつヒドロキシチロソール(2mg/kg/d)とフルオキセチン群(2mg/kg/d)より有意に優れ、組成物の併用は相乗効果があり、うつ病の病状の緩和に役立つことが示された。
【0051】
実施例15:ヒドロキシチロソール舌下錠、ヒドロキシチロソール錠およびヒドロキシチロソールカプロン酸エステル舌下錠の薬物動態の特徴
山東省薬学科学院がヒドロキシチロソール舌下錠(20mg/錠)、ヒドロキシチロソール錠(20mg/錠)およびヒドロキシチロソールカプロン酸エステル舌下錠(20mg/錠)を提供され、その調製方法は、実施例1、2および10で説明した通りである。済南朋悦実験動物繁育有限会社が雌雄各半、体重8.0~12kgのBeagle犬18匹を提供された。動物室温度:、20℃~25℃、相対湿度:45%~55%、昼夜:12時間/12時間、自由に水分と飲食を摂取した。
【0052】
投与量は、いずれも40mg/匹であった。ランダムにA、BとC計3群に分け、12時間禁食した後、A群にヒドロキシチロソール舌下錠を投与し、B群にヒドロキシチロソール錠を経口投与し、C群にヒドロキシチロソールカプロン酸エステル舌下錠を投与した。それぞれ投与前と投与後の0.083、0.167、0.25、0.5、1、1.5、2、3、4、6、8、10時間で、計12個の時間点で後肢伏在静脈から2mLの血液を採血し、ヘパリン抗凝固により血液を収集し、血漿を分離して-20℃の冷蔵庫で保存して測定対象とした。動物へ投与4時間後に、統一食事を与えた。
【0053】
上記Begle犬の1回目の投与7日後に、2回目の投与を行い、投与1時間で直ちに屠殺し、速やかに脳を剥離した。氷盤上で小脳と血腫周辺の組織を分離除去し、称量し、組織500mgを取り、組織ホモジナイザーに入れ、生理食塩水2.5mLを加え、氷水浴下でホモジェナイズした。完成後、ホモジェネートを1.5mLの遠心管に移し、4℃条件下で10000r/minで10分間遠心し、上澄み液を取って-80℃の冷蔵庫で保存した。
【0054】
血漿および脳組織のホモジネートサンプルを室温で解凍し、200μLを取って1.5mLEP管に入れ、20μg/mLサリシン(内部標準)対照溶液10μLを加え、3分間渦巻き混合し、アセトニトリル1mLを加え、3分間渦巻き混合し、14800r/minで12分間遠心し、上澄み液1mLを取って、37℃窒素で乾かし、残留物に初期流動相120μLを加えて再溶解し、14800r/minで15分間遠心し、上澄み液を取って、サンプリング測定を行った。
【0055】
LC-MS/MSを用いて、その中のヒドロキシチロソールの含有量を分析した。カラム:ACQUITY UPLC BEH C18 カラム(2.1mm×50mm、1.7μm)。クロマトグラフィー条件:移動相アセトニトリル(A)-0.1%ギ酸(B)、グラジエント溶離(0~1分間、95%B;1~3.5分間、95%→5%B;3.5~5分間、5%B;5~6分間、5%→95%B;6~7.5分間、95%B)、カラム温度:35℃、体積流量:0.3mL/min。注入量5μL;質量分析条件:MRM多重反応モニタリング、エレクトロスプレー・マイナスイオン源;キャピラリー電圧2.5kV;抽出電圧3V;イオン源温度120℃;脱溶媒ガス温度400℃;コリジョン電圧15V;コーン電圧30V;脱溶媒ガス体積流量800L/h;ヒドロキシチロソールとサリシンの選択検出イオン質核比m/zは、それぞれ153.01→123.01、285.28→123.04であった。
【0056】
方法論検証の結果により、本方法は生物サンプル中のヒドロキシチロソールの含有量の測定に適用し、線形範囲は5~1000ng/mLであることが示された。得られたヒドロキシチロソール舌下錠、ヒドロキシチロソール錠およびヒドロキシチロソールカプロン酸エステル舌下錠のBeagle犬体内における薬物動態パラメータは、表5の通りである。
表5は、Beagle犬の血漿におけるヒドロキシチロソールの薬物動態パラメータ(mean±SD、n=6)である。
【表5】
表6は、投与1時間後、Beagle犬の脳組織におけるヒドロキシチロソールの濃度(mean±SD、n=6)である。
【表6】
結果により、経口錠剤に比べて、ヒドロキシチロソールを舌下投与の投与方式の方が早く血液循環に入ってピークに達することができ、かつヒドロキシチロソールも早く脳に富化可能であることが示された。ヒドロキシチロソールカプロン酸エステルは、ヒドロキシチロソールの血漿と脳組織の暴露レベルを高めることができ、ヒドロキシチロソールが血液脳関門を透過して脳組織に入ってうつ病の予防と治療効果を発揮することに有利である。
【国際調査報告】