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特表2022-514225ピペット・ヘッド、ピペット・ヘッドを備えたピペット装置、およびピペット・ヘッドを使用したピペット操作方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-10
(54)【発明の名称】ピペット・ヘッド、ピペット・ヘッドを備えたピペット装置、およびピペット・ヘッドを使用したピペット操作方法
(51)【国際特許分類】
   B01L 3/02 20060101AFI20220203BHJP
   G01N 35/10 20060101ALI20220203BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
B01L3/02 D
G01N35/10 G
G01N1/00 101K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021533627
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(85)【翻訳文提出日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 EP2019084908
(87)【国際公開番号】W WO2020120683
(87)【国際公開日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】18212800.9
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591121683
【氏名又は名称】エッペンドルフ エスイー
【氏名又は名称原語表記】Eppendorf SE
【住所又は居所原語表記】Barkhausenweg 1, D-22339 Hamburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】イェンス・ヴィルマル
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク・シュナイダー
【テーマコード(参考)】
2G052
2G058
4G057
【Fターム(参考)】
2G052AD06
2G052BA14
2G052CA02
2G052CA20
2G052CA21
2G052CA28
2G052CA30
2G052CA33
2G052DA06
2G058CA01
2G058EA02
2G058EB01
2G058ED10
2G058ED36
2G058ED38
4G057AB17
4G057AB18
4G057AB37
4G057AB38
4G057AE12
4G057AE23
(57)【要約】
ピペット装置用の少なくとも1つのピペット・チップを備えたピペット・ヘッドであって、
保持具と、
ピペット・チップに固締するための保持具に保持されている少なくとも1つのアタッチメントと、
アタッチメントに保持されている2つのエラストマのOリングと、を備え、
2つのOリング、アタッチメント、およびピペット・チップは、ピペット・チップを2つのOリングに押圧することによってのみ生じる2つのOリングの変形によって、ピペット・チップをアタッチメントに堅固に固締するように設計されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペット装置用の少なくとも1つのピペット・チップを備えたピペット・ヘッドであって、
保持具(2)と、
ピペット・チップ(6)に固締するための前記保持具(2)に保持されている少なくとも1つのアタッチメント(5)と、
前記アタッチメント(5)に保持されている2つのエラストマのOリング(24,25)と、を備え、
前記2つのOリング(24,25)、前記アタッチメント(5)、および前記ピペット・チップ(6)は、前記ピペット・チップ(6)を前記2つのOリング(24,25)に押圧することによってのみ生じる前記2つのOリング(24,25)の変形によって、前記ピペット・チップ (6)を前記アタッチメント(5)に堅固に固締するように設計されている、少なくとも1つのピペット・チップを備えたピペット・ヘッド。
【請求項2】
Oリング(24,25)と接触する点での前記ピペット・チップ (6)の前記シール・シート(68)の内径は対応する前記Oリング(24,25)の外径よりも小さく、前記2つのOリング(24,25)が変形することによって前記ピペット・チップ(6)が前記アタッチメント(5)に堅固に固締される場合、前記シール・シート(68)が前記アタッチメント(5)に直接接触しないように、あるいは前記ピペット・チップを変形させる力を前記ピペット・チップ(6)に作用することなく前記アタッチメント(5)に当接するように、前記ピペット・チップ(6)の前記シール・シート(68)の内寸が決められる、請求項1に記載の少なくとも1つのピペット・チップを備えたピペット・ヘッド。
【請求項3】
前記Oリング(24,25)が軟性ゴム、シリコーン、または熱可塑性エラストマから製造される、請求項1または2に記載の少なくとも1つのピペット・チップを備えたピペット・ヘッド。
【請求項4】
前記アタッチメント(5)が軸位置固定装置(20,22)を有し、前記装置(20,22)は、前記2つのOリング(24,25)それぞれを特定の上部位置および特定の下部位置で支持し、径方向に前記2つのOリング(24,25)が変形することができるように設計されている、請求項1から3のうちの一項に記載の少なくとも1つのピペット・チップを備えたピペット・ヘッド。
【請求項5】
前記軸位置固定装置(20,22)が、少なくとも1つのOリング(24,25)を部分的に収容する前記アタッチメントの周縁部にある周縁環状溝(21,23)であるか、それらの間に少なくとも1つのOリング(24,25)を収容する前記アタッチメントの周縁部にある1つまたは複数の凸部である、請求項4に記載の少なくとも1つのピペット・チップを備えたピペット・ヘッド。
【請求項6】
前記アタッチメント(5)が少なくとも1つの円錐部(19)を有し、かつ/または前記アタッチメント(5)が少なくとも1つの円柱部(17,18)を有する、請求項1から5のうちの一項に記載の少なくとも1つのピペット・チップを備えたピペット・ヘッド。
【請求項7】
前記アタッチメント(5)が上部に上部円柱部(17)と、下部に下部円柱部(18)と、その間に上部から下部まで先細りしている円錐部(19)と、前記上部円柱部(17)と前記円錐部(19)との間にある上部軸位置固定装置(20)と、前記円錐部(19)と前記下部円柱部(18)との間にある下部軸位置固定装置(22)とを有する、請求項5または6に記載の少なくとも1つのピペット・チップを備えたピペット・ヘッド。
【請求項8】
前記上部Oリング(24)が前記下部Oリング(25)よりも内径が大きく、かつ/または断面の直径が大きい、請求項1から7のうちの一項に記載の少なくとも1つのピペット・チップを備えたピペット・ヘッド。
【請求項9】
前記上部Oリング(24)の前記断面の直径が、前記上部環状溝(21)の深さよりも大きく、かつ/または、前記上部環状溝(21)の幅が前記上部Oリング(24)の断面の直径と同じか大きく、かつ/または、前記下部Oリング(25)の断面の直径が前記下部環状溝(23)の高さよりも大きく、かつ/または前記下部環状溝(23)の幅が前記下部Oリング(25)の断面の直径と同じか大きい、請求項1から5のうちの一項に記載の少なくとも1つのピペット・チップを備えたピペット・ヘッド。
【請求項10】
1つまたは複数の列に互いに隣接して平行に配置されているアタッチメント(5)を有する、請求項1から9のうちの一項に記載の少なくとも1つのピペット・チップを備えたピペット・ヘッド。
【請求項11】
前記アタッチメント(5)が前記保持具 (2)に堅固に接続されている、請求項1から10のうちの一項に記載の少なくとも1つのピペット・チップを備えたピペット・ヘッド。
【請求項12】
請求項1から11のうちの一項に記載少なくとも1つのピペット・チップを有するピペット・ヘッド(1)を備える、ピペット装置または移送装置。
【請求項13】
請求項12によるピペット装置および/または移送装置を備えたピペット・ステーションまたはピペット機械または実験用機械(70)。
【請求項14】
請求項1から11のうちの一項に記載の少なくとも1つのピペット・チップ(6)を備えたピペット・ヘッド(1)、もしくは請求項12に記載のピペット装置または移送装置、もしくは請求項13に記載のピペット・ステーションまたはピペット機械または実験用機械(70)の使用であって、
ピペット・チップ(6)がピペット・ヘッド(1)のそれぞれのアタッチメント(5)に固締されており、
固締されたそれぞれのピペット・チップ(6)の下端部(63)が作業面(75)に設けられている容器(73)と接触するまで、前記ピペット・ヘッド(1)が移動し、
固締されたそれぞれのピペット・チップ(6)の前記下端部(63)が前記容器(73)の底から特定の距離(x)だけ離れるまで、前記ピペット・ヘッド(1)が移動し、
液体が前記容器(73)から固締されたそれぞれのピペット・チップ(6)に注入される、使用。
【請求項15】
前記固締されたすべてのピペット・チップ(6)の前記下端部(63)が同時に前記容器(73)の底と接触するまで前記ピペット・ヘッド(1)が移動し、その後、前記すべてのピペット・チップ(6)の前記下端部(63)が前記容器(73)の底から特定の距離だけ離れるまで前記ピペット・ヘッド(1)が移動する、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記ピペット・ヘッド(1)がマルチチャネルのピペット・ヘッドであり、前記容器がマイクロタイター・プレート(73)である、請求項14または15に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピペット・チップを取り出すピペット・ヘッド、ピペット・ヘッドを備えたピペット装置、およびピペット・ヘッドを使用して液体をピペット操作する方法に関する。
【0002】
単一のピペット・チップを取り出したり複数のピペット・チップを同時に取り出したりするためのピペット・ヘッドを備えたピペット装置は、特に、臨床検査室、生物検査室、生化学検査室および化学検査室で液体を計量するために使用される。
【0003】
ピペット・ヘッドは、ピペット・チップの上端部に、装着用開口部に挿入可能な少なくとも1つのアタッチメントを有する。液体が、ピペット・チップに吸引され、そこからピペット・チップの下端部にある先端開口部を通って排出される。
【0004】
使用後、このピペット・チップはアタッチメントから取り外し可能であり、新しいピペット・チップと交換可能である。このようにして、後続の計量の汚染を防ぐことができる。プラスチックからなる使い捨てのピペット・チップが経済的に利用可能である。
【0005】
エア・クッション式ピペット装置として設計される場合、少なくとも1つの空気変位装置がピペット装置に一体化され、各アタッチメントの接続孔を介して接続されて、その上に固締されているピペット・チップと連通する。変位装置を用いることによって、エア・クッションが移動可能となるので、液体がピペット・チップに吸引されピペット・チップから吐出される。変位装置は、一般的に、その中で移動可能なプランジャを備えたシリンダである。しかし、1つの変位チャンバおよび少なくとも1つの可変壁を備えている変位装置もまた知られており、この壁の変形によってエア・クッションが変位する。
【0006】
直接変位式ピペット装置としての本実施形態では、小型のプランジャがピペット・チップに配置されており、ピペット・チップがアタッチメントに装着される場合、ピペット・チップがピペット装置のプランジャ駆動装置に連結される。
【0007】
好ましくは、液体が単一のステップまたは数回の小さなステップで吸入される。ピペット操作時には、液体が単一のステップで吐出され、分注時には数回の小さなステップで排出される。
【0008】
ピペット装置は、手動または電動モータで駆動し、ピペット操作時にユーザの手で把持する実際のマルチチャネル・ピペットとして設計可能である(「手持ちピペット」)。
【0009】
計量ステーション(「ピペット・ステーション」)または計量機械(「ピペット機械」)では、ピペット・ヘッドがロボット・アームまたは別の移送システムで移動可能であり、ピペット・ヘッドを作業面の上に移動させる。計量ステーションまたは計量機械は、ピペット・ヘッドによって新しいピペット・チップをホルダから取り出し、容器から液体を吸い上げ、液体をピペット・チップによって容器内に排出し、使用済みのピペット・チップを廃棄物容器に破棄することができる。ピペット・ヘッドは、液体に計量以外の別の処理をすることのできる実験用機械(ワークステーション)の構成要素であってもよい。これは、特に、混合、温度制御および他の物理的処理の制御、化学転化、または生化学転化、ならびに試料分析を含む。
【0010】
ピペット・チップを保持するためのアタッチメントは、しばしば、ピペット装置のハウジングまたは別の保持具に対して、円錐形、円筒形、または部分的に円錐形、または部分的に円筒形の凸部として設計されている。ピペット・チップは、シール・シートによって装着用開口部に近い上端部でアタッチメントに固締可能である。この目的のために、ホルダで利用可能な少なくとも1つのピペット・チップの装着用開口部に少なくとも1つのアタッチメントを押入するので、ピペット・チップは幾分か拡張し、張力が予めかかった状態でアタッチメントにしっかりと載置する。固締するのに加わる力は、ピペット・チップの数とともに増大する。
【0011】
固締されたピペット・チップをアタッチメントから取り外すために、ピペット装置は駆動装置およびエジェクタを備えた吐出装置を有する。駆動装置を作動することによって、エジェクタが移動するので、エジェクタがピペット・チップをアタッチメントから取り外す。駆動装置は、手動で駆動するか、あるいは電動モータで駆動するかのどちらかである。固締されたピペット・チップをアタッチメントから取り外す吐出力は、ピペット・チップの数とともに増大する。
【0012】
強い力を加えて、ピペット・チップを8個、12個、16個、24個、96個、または384個のアタッチメントに固締し、ピペット・チップをアタッチメントから吐出しなければならない。
【0013】
独国特許第102004003433B4号はマルチチャネル・ピペットを記載しており、ピペット・チップをアタッチメントに固締し、ピペット・チップをアタッチメントから取り外すのに加える力は、アタッチメントがばね懸架式であり、かつエジェクタにより形成される停止部を超えて軸方向に突出することで減少する。ピペット・チップに固締するときにその固締力が特定値を超えると、ピペット・チップがエジェクタに載置されるまでアタッチメントは曲がる。このことによって、固締力は、ピペット・チップがアタッチメントに密閉式に保持される値に制限される。吐出力もまた、これに応じて制限される。
【0014】
欧州特許2735369A1号は、マルチチャネル・ピペットを記載しており、ピペット・チップがアタッチメントをスライドする場合にエジェクタが停止要素としての役割をする。ピペット・チップを押圧してアタッチメントから外すために順次接触する複数の接触要素をエジェクタが有すると、吐出力がさらに減少する。
【0015】
国際特許公開第WO01/56695A1号は、96チャネル付きのピペット・ヘッドを記載しており、ここでは、カラーを備えたピペット・チップを装着するための力を減少させるために、アタッチメントは上部より下端部の円錐角度が大きく、ピペット・チップは上端部でより壁厚が大きく、カラーより下では壁厚が小さい。ピペット・ヘッドは、ピペット・チップをアタッチメントから吐出するための停止プレートを備える。停止プレートはピペット・チップをアタッチメントから順次押出し、吐出力を低減させるために、段が付けられている。プレテンショニング式装置を備えた支柱が停止プレートから突出している。停止プレートによってピペット・チップをアタッチメントから吐出し始めるために、収縮するときにアタッチメントに接続されているシリンダ内でプランジャを移動させるプランジャ・プレートが、プレテンショニング式装置と接触する。ピペット・チップを吐出するためのプレテンショニング式装置を備えた設計は、複雑である。
【0016】
国際特許公報第WO2005/113149A1号および独国実用新案第202005006970U1号は、ピペット・チップ用の96アタッチメントを有するピペット・ヘッドを備えた、液体を吸い上げ分注する装置を記載する。96プランジャ/シリンダ・ユニットは、アタッチメントに接続され、駆動機構を使用して手動で作動可能である。ピペット・チップをピペット・チップ保持具から取り出し、液体を吸い上げて分注するために、ピペット・ヘッドは縦案内部に沿って移動可能である。96ピペット・チップを取り上げるのに必要な力を加えるために、トランスミッションレバーを用いてピペット・ヘッドをより大きな力で下方へ押圧可能である。ピペット・チップをアタッチメントから除去するために、アタッチメントは垂直に移動可能な穿孔プレートにある孔を通じて案内される。
【0017】
独国実用新案第202008013533U1号は、ベース・プレート、およびベース・プレートを外側で横方向に覆う弾性シール・プレートを備えたピペット装置を記載しており、所定のパターンで配置されている複数のピペット・チャネルが、このベース・プレートおよびシール・プレートを通って延びている。それぞれがカラーを有する同じパターンのピペット・チップを備えたマガジンが、マガジン・ホルダにあり、ベース・プレートをカラーおよびシール・プレートを介して圧力ばめしてベース・プレートに直接接続する。ピペット・チップをシール・プレートと密閉式に接触させるために、あるいはピペット・チップをシール・プレートから外すために、マガジン・ホルダは、偏心ギヤを介して駆動モータによって上下するマガジン・フレームによって形成される。
【0018】
ピペット・チップをマガジン・ホルダのマガジンに受け、ピペット・チップをシール・プレートに押圧するピペット機械は、「i-Pipette」および「i-PipettePro」という商品名で米国カリフォルニア州CovinaにあるApricotDesigns社が販売している。
【0019】
不利な点は、このようなピペット機械が特定のマガジンで特定のピペット・チップでしか作動しないことである。さらに不利な点は、マガジン・ホルダが手動で充填されることである。
【0020】
欧州特許公開第0337726A2号は、複数のピペット・チップを直列の平行なアタッチメントを用いて同時に取り出す装置を記載しており、アタッチメントはそれぞれ調節可能な溝幅の環状溝にエラストマのOリングを有する。ピペット・チップをアタッチメントに密閉式にしっかりと固締し、ピペット・チップをアタッチメントから取り外すために、Oリングの周縁方向の伸張は、溝幅を調節することによって変更可能である。溝幅を調節するために、溝部はそれぞれ、アタッチメントにねじ留めされるねじ付きスリーブによって縁取られ、ねじ付きスリーブは、連結した駆動機構を用いてアタッチメントを作動させることができる。各ねじ付きスリーブは、歯付きホイールに堅固に接続されている。歯付きホイールは回転可能な取手によって駆動するシングル・ラックと噛合う。代替の実施形態では、各個別のねじ付きスリーブが電動モータによって個々に駆動し、電動モータは同期的に操作するために共通の電源に接続される。ピペット・チップをアタッチメントに堅固に固締する駆動装置のデザインは複雑である。
【0021】
独国特許第19917375C2号は、ピペット・チップとアタッチメントとを備えるピペットユニットを記載する。アタッチメントは、下端部に結合スリーブを備えたピペットチューブ、ピペットチューブをスライドし弾性可変材料からなるOリング、およびピペットチューブをスライドするスリーブを有する。スリーブはOリングを軸方向に圧縮する役目をするので、Oリングは径方向に変形し、ピペット・チップの内周縁にある環状溝に密閉式に係合する。Oリングを解放してピペット・チップを取り外すことが可能である。ピペット・チップをアタッチメントの所定の位置に保持するために、アタッチメントおよびピペット・チップは相互作用する軸方向位置合わせ手段を有する。Oリングがピペット・チップの環状溝に係合するので、互いに接合する軸方向位置合わせ手段には予め張力がかかる。ピペット・チップを吐出するために、スリーブを取り囲むエジェクタ・チューブとして形成される移動可能なエジェクタが設けられている。エジェクタは、油圧式にまたは電動モータによって作動可能であり、あるいは、ピペット・チップをピペットユニットに装着する間に張力がかかる予め荷重が加えられたばねによって作動可能である。ピペット・チップをアタッチメントに堅固に固締し、取り外す作動手段は複雑であり、大きな空間を必要とする。製造公差またはピペット・チップをアタッチメントに不正確に位置合わせすることによって、ピペット・チップを定められた連結位置に容易に固定できなくなる。環状溝および軸方向位置合わせ手段は、様々なピペット・チップの使用を限定してしまう。
【0022】
国際特許公報第WO2018/002254A1号および独国特許公開第102016111912A1号は、ピペット・チップを受けるための複数の平行なアタッチメントが互いに隣接して配置されている保持具を備えた計量装置用の計量ヘッドを記載している。各アタッチメントは下端部に外周縁から外方に突出する少なくとも部分的な周縁支持用凸部を備えたチューブと、チューブを取り囲み、チューブ上を軸方向に移動可能な少なくとも1つのスリーブと、チューブを取り囲み、スリーブの下端部の近くに配置されている少なくとも1つのエラストマのOリングとを有する。スリーブの上に圧力プレートが配置され、圧力プレートはチューブが延びる複数の第1の孔を有し、圧力プレートは、支持用凸部から第1の距離にある解除位置と、支持用凸部から第1の距離よりも短い第2の距離にある固締位置との間でチューブに沿って移動可能であり、圧力プレートは、スリーブが下端部で隣接するOリングに押圧されるように、固締位置にあるすべてのアタッチメントの隣接するスリーブの上縁部を押圧し、アタッチメントをスライドするピペット・チップを堅固に固締するためにOリングが拡張する。第1の変位装置が圧力プレートに接続され、圧力プレートを解除位置と固締位置との間で移動させるように設計されている。
【0023】
多数のピペット・チップを同時に堅固に固締し解除することは、圧力プレートを同時にすべてのスリーブに押圧すること、およびすべてのスリーブを同時に解除することによって可能となる。第1の調節装置から圧力プレートを介してスリーブへ力を伝達することによって、比較的簡単でコンパクトで軽量の構成が促進される。Oリングを拡張することによって堅固に固締することで、異なる形状や寸法のピペット・チップの使用が促進される。
【0024】
独国特許102006036764号は、ピペット装置を備えたピペット・システムを記載しており、ピペット装置は外周縁に周縁掛止用ビーズを有する少なくとも1つの装着軸と、その下に、互いに離間した2つの周縁環状溝を有し、それぞれがシール・リングを収容する。ピペット・システムはピペット・チップを備える。ピペット・チップは、掛止溝を用いて掛止用ビーズに固締可能であり、シール・リングが密閉して当接する密閉領域を下に有する。このような掛止によって、ピペット・チップを装着軸に所望に載置することができ、シール・リングがピペット・チップを装着軸に密閉することができる。掛止用ビーズと掛止溝とを掛止するためには、比較的大きな装着力が必要となる。
【0025】
このことより、本発明の目的は、少なくとも1つのアタッチメントと少なくとも1つのピペット・チップを備え、より小さな力で、かつより簡単な設計でアタッチメントにあるピペット・チップを確実に取り出したり取り外したりするためのピペット・ヘッドを提供することである。
【0026】
本目的は、請求項1の特徴を有する少なくとも1つのピペット・チップを備えたピペット・ヘッドによって達成される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項に明記されている。
【0027】
本発明による、ピペット装置用の少なくとも1つのピペット・チップを備えたピペット・ヘッドは、
・ 保持具と、
・ ピペット・チップに固締するための保持具に保持されている少なくとも1つのアタッチメントと、
・ アタッチメントに保持されている2つのエラストマのOリングと、を備え、
・ 2つのOリング、アタッチメント、およびピペット・チップは、ピペット・チップを2つのOリングに押圧することによってのみ生じる2つのOリングの変形によって、ピペット・チップをアタッチメントに堅固に固締するように設計されている。
【0028】
ピペット・チップは、下端部に先端開口部を有し、装着用開口部近くの上端部にシール・シートを有する長いチューブである。シール・シートによってピペット・チップがアタッチメントに固締可能である。ピペット・チップの内径および外径は、概して、先端開口部から装着用開口部まで広がっている。Oリングがないか、1つしかOリングがないか、あるいは1つの掛止用ビーズと2つのOリングがあるピペット・ヘッドのアタッチメントによってピペット・チップが取り出されると、取り出すのに大きな力(装着力、固締力)が生じる。というのは、ポリプロピレンやポリエチレン、または別の硬質弾性プラスチックからなるピペット・チップは、アタッチメントをスライドしてそれによって変形する場合にアタッチメントに直接接触するようになるからである。本発明によるピペット・ヘッドでは、2つのOリング、アタッチメント、およびピペット・チップは、ピペット・チップを2つのOリングに押圧することによってのみ生じる2つのOリングの変形によってピペット・チップをアタッチメントに堅固に固締するように設計されているので、ピペット・チップがアタッチメントに直接接触することを回避し、それによってピペット・チップが拡張することを回避する。この場合、ピペット・チップはアタッチメントと直接接触しないか、あるいは、アタッチメントとピペット・チップとの間に作用してピペット・チップを変形させる力を受けずにアタッチメントに当接するだけである。この結果、ピペット・チップがピペット・ヘッドによって取り出される場合、2つのOリングのみが変形する。そうすることで、ピペット・チップは拡張してアタッチメントに直接固締されるのではなく、2つのOリングを用いて固締される。2つのOリングはアタッチメントに保持されておりOリングが変形することによって予テンション下でピペット・チップに当接する。Oリングはエラストマからなるので、ピペット・チップより簡単に変形可能である。その結果、ピペット・チップを取り出すのに必要なピックアップ力が低減する。手持ち式ピペットの場合、固締力を低減することによって、手動でピペット操作している間にユーザの負担を軽減することができる。ピペット・ステーション、ピペット機械、または実験用機械の場合、これにより、移送システムに課せられる要件、特にその強度や駆動装置の性能の要件を低減することになる。
【0029】
さらに、2つのOリングによって、ピペット・チップをアタッチメントに正確に位置合わせする。このことは、容器に衝突することなく容器の開口部にピペット・チップを導入するのに有利となる。その結果、特に、手持ちでのピペット操作の場合、ピペット・チップの下端部が容器の壁に接触するときに、ピペット・チップが傾くことを回避できる。これは、ピペット製造会社によって推奨されており、均一な条件下で液体が先端開口部から流出する。
【0030】
各アタッチメントにある2つのOリングのさらなる有利な点とは、すべての先端をアタッチメント上でスライドさせることができるので、その後はアタッチメント上でさらに上に押し上げることができ、後のピペット操作位置までさらに上に押し上げることができることである。代替として、固締されたピペット・チップが常に同じ高さにあるように、すべてのチップをアタッチメント上でエジェクタまたは停止部まで押し上げることができる。
【0031】
本発明の一実施形態によると、Oリングと接触する点でのピペット・チップのシール・シートの内径は対応するOリングの外径よりも小さいので、このOリングはスライドしながら変形し、アタッチメント上でピペット・チップを堅固に固締する。別の実施形態によると、2つのOリングが変形することによってピペット・チップがアタッチメントに堅固に固締される場合、シール・シートがアタッチメントに直接接触しないように、あるいはピペット・チップを変形させる力をピペット・チップに作用することなくアタッチメントに当接するように、ピペット・チップのシール・シートの内寸が決められる。好ましい一実施形態は、シール・シートの内径と内寸とに関する上述の2つの実施形態の特徴を組み合わせたものである。好ましい実施形態によると、この組み合わせは請求項1の最後の箇条書きにある特徴部と置き換える。
【0032】
別の実施形態によると、シール・シートは装着用開口部に向かって拡張する円筒形または円錐形をしている。別の実施形態によると、ピペット・チップが2つのOリングが変形することでアタッチメントに堅固に固締される場合、シール・シートの内径は、シール・シートと同じ断面にあるアタッチメントの外径よりも大きいか等しい。
【0033】
好ましい実施形態によると、ピペット・チップは密閉されてアタッチメントに堅固に固締可能であるので、少なくとも1つの固締されたピペット・チップを用いて液体を吸い上げ分注するためにピペット・ヘッドを使用することができる。この目的のために、ピペット・ヘッドは少なくとも1つの変位装置を有し、この変位装置は、エア・クッションを移動させ先端開口部を通して固締されたピペット・チップに液体を吸入し、先端開口部から分注するために、少なくとも1つのラインを介してアタッチメントの端部にある接続孔に接続されている。2つのOリングが径方向に変形することによって、同じアタッチメントに寸法の異なるピペット・チップを取り出し、さまざまなサイズのピペット・チップでピペット操作ができるようになる。その結果、さまざまなピペット操作を行う複雑さを軽減することができる。たとえば、公称容量が10μlおよび50μl、または公称容量が300μlおよび1,000μlのピペット・チップを、同じアタッチメント上に密閉して固締することができるように、Oリングおよびアタッチメントを設計することが可能である。この目的のために、種々の製造業者から市販されているピペット・チップを使用することができる。というのは、これらは密閉領域に適合する寸法を有するためである。
【0034】
さまざまなピペット・チップの寸法が大きく異なると、必要に応じてピペット・ヘッドを使用して、様々なサイズのピペット・チップをたとえば1つのピペット・チップ保持具から別のピペット・チップ保持具まで移送することができる。というのは、ピペット・チップは、密閉してアタッチメントに堅固に固締されていなくても、ピペット・ヘッドを用いて移送できるようにアタッチメントに堅固に載置できるためである。このことは、特に、実験用機械でピペット・チップを自動的に移送するのに使用することができる。たとえば、公称容量が10μl、50μl、300μlおよび1,000μlの市販のピペット・チップを取り出し、同じアタッチメントで移送することができるように、Oリングおよびアタッチメントを設計することが可能である。本発明は、ピペット・チップを移送するためには使用できるが液体を吸入し分注するためには使用できないピペット・ヘッドを備える。ピペット・チップを移送するためのこのようなピペット・ヘッドは、変位装置なしで設計可能であり、以下に移送ヘッドとしても称する。
【0035】
別の実施形態によると、Oリングは軟性エラストマから製造される。別の実施形態によると、Oリングは、ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム(FEPM、たとえばDuPontPerformanceElastomers社のViton(登録商標))、水和ニトリルゴム(HNBR)、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)、または熱可塑性エラストマから製造される。軟性エラストマ(シリコーンゴム)製のOリングは、具体的には、VMQという名でドイツのピンネベルクにあるC.OttoGerckens社(シール技術)が販売している。
【0036】
別の実施形態によると、アタッチメントは軸位置固定装置を有する。この装置は、2つのOリングそれぞれを特定の上部位置および特定の下部位置で支持し、径方向に2つのOリングが変形することができるように設計されている。その結果、2つのOリングをアタッチメントの特定の位置や領域で保持することが可能となる。これらは、アタッチメントに装着するピペット・チップに合わせて調整可能である。
【0037】
別の実施形態によると、軸位置固定装置は環状溝である。環状溝はそれぞれ、少なくとも1つのOリングを部分的に収容可能であり、そのOリングはアタッチメントの環状溝の底部で案内され、環状溝の2つの側面によって上下に移動することはない。各Oリングをぴったりと、あるいは軸方向に遊びをもって、あるいは軸方向にある程度圧縮して、それぞれの環状溝に保持するように、環状溝を寸法決めすることができる。さらに、両方のOリングを同じ環状溝に保持することが可能である。この場合、両方のOリングは同じ環状溝内で互いを支持し、上のOリングは側面の頂部に支持され、下のOリングは環状溝の側面の底部に支持される。
【0038】
別の実施形態によると、軸位置固定装置は1つまたはいくつかの凸部から形成され、この凸部は少なくとも1つのOリングの両面でアタッチメントの周縁部に配置されている。少なくとも1つのOリングの両面にある少なくとも1つの凸部によって、軸方向の移動を防止し、あるいは制限する。
【0039】
好ましい実施形態によると、各アタッチメントはOリングを2つだけ有する。別の実施形態によると、各アタッチメントは2つを超えるOリングを有する。各Oリングに対して、独立した環状溝または別の軸位置固定装置があってもよく、あるいはいくつかのOリングを同じ環状溝に共に配置してもよく、または同じ軸位置固定装置によってアタッチメントに保持されてもよい。
【0040】
別の実施形態によると、軸位置固定装置はアタッチメントと一体的に設計されている。別の実施形態によると、軸位置固定装置は、アタッチメントをスライドするスリーブおよび/またはリングであり、スリーブおよび/またはリングはその間にOリングを収容し、Oリングはアタッチメントの内側で案内される。スリーブおよび/またはリングは、アタッチメントに固定されるかアタッチメントに緩く案内され、さらなる軸位置固定手段によってアタッチメントから滑り落ちるのを防ぐ。これらは、たとえば上の保持具および下の固定リングによって形成されてもよく、固定リングはアタッチメントの周縁部のさらなる環状溝に保持されている。
【0041】
別の実施形態によると、2つのOリングはアタッチメント上に互いにある距離をおいて配置されている。このことは、ピペット・チップをアタッチメントに正確に位置合わせするのに特に有利となる。さらに、このようにすると、ピペット・チップを固締するときの固締力を特に緩やかに増大させることができる。
【0042】
別の実施形態によると、アタッチメントが、少なくとも1つの円錐部を有する。このことは、徐々に固締力を増加させながらピペット・チップをアタッチメントに固締させるのに有利である。
【0043】
別の実施形態によると、アタッチメントが、少なくとも1つの円柱部を有する。円柱部によって、ピペット・チップのアタッチメントへの案内および密閉を向上することができる。
【0044】
別の実施形態によると、アタッチメントは上部に上部円柱部と、下部に下部円柱部と、その間に部から下部まで先細りしている円錐部と、上部円柱部と円錐部との間にある上部軸位置固定装置と、円錐部と下部円柱部との間にある下部軸位置固定装置とを有する。その結果、ピペット・チップをアタッチメントに固締するときの固締力を徐々に増大し、ピペット・チップをうまく案内しアタッチメントに位置合わせすることができる。
【0045】
別の実施形態によると、上部Oリングは下部Oリングよりも内径が大きく、かつ/または断面の直径が大きい。このことは、ピペット・チップをアタッチメントに固締させる場合に固締力を徐々に増加させるのに有利である。
【0046】
別の実施形態によると、上部Oリングの断面の直径は、上部環状溝の深さよりも大きく、かつ/または、上部環状溝の幅は上部Oリングの断面の直径と同じか大きく、かつ/または、下部Oリングの断面の直径は下部環状溝の高さよりも大きく、かつ/または下部環状溝の幅は下部Oリングの断面の直径と同じか大きい。それぞれの環状溝の深さで、ピペット・チップをアタッチメントに固締することによってそれぞれのOリングを径方向に変形することができ、かつ/または、それぞれの環状溝の幅で、小さい固締力で変形路を長くすることができる。
【0047】
別の実施形態によると、ピペット・ヘッドが1つまたは複数の列に互いに隣接して平行に配置されているアタッチメントを有する。その結果、多数のピペット・チップを同時に固締するのにピペット・ヘッドを使用することができ、このために、ピペット・ヘッドは固締力が低いため特に適している。
【0048】
別の実施形態によると、アタッチメントが保持具に堅固に接続されている。2つのOリングは固締力を低いまま保つことができるので、特にこの目的のために、ばねを介して保持具でアタッチメントを支持する必要はない。本発明によるピペット・ヘッドの別の実施形態によると、結果として装着力をさらに制限するために、ばねを介してアタッチメントが保持具に支持されている。
【0049】
別の実施形態によると、保持具がピペット・ヘッドのハウジングまたはハウジングの一部あるいは、シャーシまたはシャーシの一部である。たとえば、保持具はピペット・ヘッドのハウジングの下部ハウジング壁またはシャーシの底部である。アタッチメントは特に、下部ハウジング壁またはシャーシの底部にねじ止めすることで保持可能である。アタッチメントがシャーシの底部に保持されると、ハウジングは下部ハウジング壁にそれぞれのアタッチメント用の貫通孔を有していてもよく、または下部ハウジング壁を完全になくしてもよい。
【0050】
本発明はさらに、請求項1から11のうちの一項または前述の実施形態のうちの1つによるピペット・ヘッドを備えるピペット装置または移送装置に関する。ピペット装置または移送装置は、特に、手動または電動モータで駆動し1つまたはいくつかのチャネルを有する実用的なピペット装置または移送装置として設計可能であり、この装置は、ピペット操作時またはピペット・チップの移送時にユーザの手で把持可能である(手持ちピペット)。
【0051】
本発明はさらに、請求項12によるピペット装置および/または移送装置を備えたピペット・ステーションまたはピペット機械または実験用機械に関する。ピペット・ステーションまたはピペット機械または実験用機械は、(自動)ピペット操作またはピペット・チップの移送に使用可能である。実験用機械は、自動ピペット操作およびピペット・チップの移送に使用可能であり、さらに、液体を使用する他の処理、たとえば温度調整、混合、化学反応もしくは生化学反応の実施、および他の物理的処理、化学的処理、または生化学的処理などにも使用可能である。
【0052】
ピペット・ステーション、ピペット機械、または実験用機械では、ピペット・ステーションやピペット機械や実験用機械に急変装置を用いて締着できるように、ピペット・ヘッドを設計することができ、別のピペット・ヘッド(たとえばピペット・チップが別のサイズの場合)や、実験器具を搬送するグリッパ・ツール、またはその上の別のツールを締着するためにそこから分離することができる。この実施形態は、ピペッティング・ツールとも呼ばれる。
【0053】
本発明はさらに、請求項1から11のうちの一項に記載のピペット・ヘッド、請求項12に記載のピペット装置、または請求項13に記載のピペット・ステーションまたはピペット機械または実験用機械の使用に関し、
・ ピペット・チップがピペット・ヘッドのそれぞれのアタッチメントに固締されており、
・ 固締されたそれぞれのピペット・チップがその下端部で作業面に設けられている容器と接触するまで、ピペット・ヘッドが移動し、
・ 固締されたそれぞれのピペット・チップの下端部が容器の底から特定の距離だけ離れるまで、ピペット・ヘッドが移動し、
・ 液体が容器から固締されたそれぞれのピペット・チップに注入される。
【0054】
複数の用途のために、容器の底の極めて近くで液体をピペット・チップに注入するのが望ましい。これらの用途には、たとえば、効率的な洗浄工程および相境界下での液体の最適な回収が含まれる。ピペット・ステーション、ピペット機械、または実験用機械では、この場合、先端開口部の垂直方向の最終的な位置決めに影響する複数の公差が存在する。特に、マルチチャネルのピペット・ヘッド、特に急変装置(マルチチャネルのピペッティング・ツール)を備えた設計で使用する場合、個々のピペット・チップを正確に位置決めすることが不可能となる。
【0055】
アタッチメントごとに2つのOリングを有するピペット・ヘッドを使用すると、計量品質を等しく維持しながら、ピペット・チップのシートのわずかな差異による未知の公差チェーンが許される。この目的のために、ピペット・チップがすべてのアタッチメントに固締されるまで、ピペット・チップをまず1つまたは複数のチャネルのみを有するピペット・ヘッドを用いて取り出す。この場合、ピペット・チップはアタッチメント上を完全にスライドしていない、すなわち、エジェクタまたは停止部までスライドしないので、アタッチメント上でさらに上方に押される。その後、固締されたピペット・チップすべての下端部が容器上にある状態でピペット・ヘッドが移動して配置され、その容器から液体が除去されたりその容器に液体が分注されたりする。ピペット・チップの下端部を容器に配置することによって、既知および未知の公差が補正される。この場合、ピペット・チップはアタッチメント上でさらに上に押し上げることができ、これは下端部が容器と接触するのが早いか遅いかによって異なる程度である。ついで、固締されたすべてのピペット・チップが容器の底から少し離れるまで、容器内に浸しておく。このことによって、ピペット・チップの先端開口部と容器の底との間に液体を引き込むための小さな隙間が生じる。この工程は完全に自動的に行うことができるので、ユーザのさらなる作業は発生しない。この工程は、実験用機械のプログラム実行中に行うことができる。固締されたピペット・チップのシートは、単一または複数のキャビティのある個々の容器受容体(キャビティ)または他の使用される使い捨て用品に適合可能である。
【0056】
一実施形態によると、固締されたすべてのピペット・チップの下端部が同時に容器の底と接触するまでピペット・ヘッドが移動し、ついで、固締されたすべてのピペット・チップの下端部が容器の底から特定の距離だけ離れるまでピペット・ヘッドが移動する。その結果、それぞれの固締されたピペット・チップの下端部と容器の底の隙間がとりわけ小さくできる。別の実施形態によると、固締されたすべてのピペット・チップの下端部が容器の底でなく表面の一部と接触するまで、ピペット・ヘッドが移動する。その結果、少なくともピペット・チップを容器に正確に位置合わせすることができ、接触面の位置と容器の底との公差のみが補正されない。
【0057】
別の実施形態によると、ピペット・ヘッドはマルチチャネルのピペット・ヘッドであり、容器はマルチキャビティの容器であり、特にマイクロテスト・プレート(マイクロタイター・プレート)である。本発明は、固締されたピペット・チップとマイクロテスト・プレートとの複数の公差を同時に補正するのに特に適している。この場合、各ピペット・チップの下端部はまずマルチキャビティの容器の表面またはウェルまたはマルチキャビティの容器の他のキャビティの底と接触するようになり、ついでそのキャビティの底から少しの距離だけ離れる。
【0058】
たとえば、ピペット・チップに接触してはならない液体が容器に入っているために、固締されたそれぞれのピペット・チップの下端部が作業面に設けられた容器に接触するようにピペット・ヘッドを移動させることができない場合、すべてのピペット・チップをエジェクタまで押し上げたり、アタッチメント上で停止させたりして、固締されたすべてのピペット・チップを同じ高さにするように、ピペット・ヘッドを使用することができる。その結果、固締されたピペット・チップの下端部が容器と接触するようにピペット・ヘッドを移動させる場合と同程度ではないが、公差による誤差は減少する。
【0059】
さらに、本目的は以下の番号1によるピペット・ヘッドまたは以下の番号2から15のその実施形態のうちの1つによって達成される。
【0060】
・ ピペット装置用のピペット・ヘッドであって、

・ 保持具と、
・ ピペット・チップに固締するための保持具に保持されている少なくとも1つのアタッチメントと、
・ アタッチメントに保持されている2つのエラストマのOリングと、を備え、
・ 2つのOリングおよびアタッチメントが、2つのOリングの変形のみによってピペット・チップをアタッチメントに堅固に固締するように設計されている。
【0061】

・番号1によるピペット・ヘッドであって、Oリングが軟性ゴム、シリコーン、または熱可塑性エラストマから製造される。
【0062】

・番号1または2によるピペット・ヘッドであって、アタッチメントが軸位置固定装置を有し、この装置は、2つのOリングそれぞれを特定の上部位置および特定の下部位置で支持し、径方向に2つのOリングが変形することができるように設計されている。
【0063】

・番号3によるピペット・ヘッドであって、軸位置固定装置が、少なくとも1つのOリングを部分的に収容するアタッチメントの周縁部にある周縁環状溝であるか、それらの間に少なくとも1つのOリングを収容するアタッチメントの周縁部にある1つまたは複数の凸部である。
【0064】

・番号1から4のうちの1つによるピペット・ヘッドであって、アタッチメントが少なくとも1つの円錐部を有し、かつ/またはアタッチメントが少なくとも1つの円柱部を有する。
【0065】

・番号4または5によるピペット・ヘッドであって、アタッチメントが上部に上部円柱部と、下部に下部円柱部と、その間に上部から下部まで先細りしている円錐部と、上部円柱部と円錐部との間にある上部軸位置固定装置と、円錐部と下部円柱部との間にある下部軸位置固定装置とを有する。
【0066】

・番号1から6のうちの1つによるピペット・ヘッドであって、上部Oリングが下部Oリングよりも内径が大きく、かつ/または断面の直径が大きい。
【0067】

・番号1から7のうちの1つによるピペット・ヘッドであって、上部Oリングの断面の直径が、環状溝の深さよりも大きく、かつ/または、上部環状溝の幅が上部Oリングの断面の直径と同じか大きく、かつ/または、下部Oリングの断面の直径が下部環状溝の高さよりも大きく、かつ/または下部環状溝の幅が下部Oリングの断面の直径と同じか大きい。
【0068】

・番号1から8のうちの1つによるピペット・ヘッドであって、1つまたは複数の列に互いに隣接して平行に配置されているアタッチメントを有する。
【0069】

・番号1から9のうちの1つによるピペット・ヘッドであって、アタッチメントが保持具に堅固に接続されている。
【0070】

・番号1から10のうちの1つによるピペット・ヘッドを備えるピペット装置または移送装置。
【0071】

・番号11によるピペット装置および/または移送装置を備えたピペット・ステーションまたはピペット機械または実験用機械。
【0072】

・番号1から10のうちの1つによるピペット・ヘッド、番号11によるピペット装置もしくは移送装置、または番号12によるピペット・ステーションもしくはピペット機械もしくは実験用機械の使用であって、
・ ピペット・チップがピペット・ヘッドのそれぞれのアタッチメントに固締されており、
・ 固締されたそれぞれのピペット・チップがその下端部で作業面に設けられている容器と接触するまで、ピペット・ヘッドが移動し、
・ 固締されたそれぞれのピペット・チップの下端部が容器の底から特定の距離(x)だけ離れるまで、ピペット・ヘッドが移動し、
・ 液体が容器から固締されたそれぞれのピペット・チップに注入される。
【0073】

・番号13による使用であって、固締されたすべてのピペット・チップの下端部が同時に容器の底と接触するまでピペット・ヘッドが移動し、その後、固締されたすべてのピペット・チップの下端部が容器の底から特定の距離だけ離れるまでピペット・ヘッドが移動する。
【0074】

・番号13または14による使用であって、ピペット・ヘッドはマルチチャネルのピペット・ヘッドであり、容器はマイクロタイター・プレートである。
【0075】
例示的実施形態の添付の図面を参照しつつ、本発明を以下にさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1】固締されたピペット・チップを備えたピペット・ヘッドの正面図。
図2】同じピペット・ヘッドの、ピペット・チップのない背面図。
図3】固締されたピペット・チップを備えた同じピペット・ヘッドの縦断面図。
図4】固締されたピペット・チップを備えた同じピペット・ヘッドのアタッチメントの縦断面部分拡大図。
図5】従来のピペット・ヘッドに固締した場合および本発明によるピペット・ヘッドに固締した場合のピペット・ヘッドの経路を関数とした装着力を示す図表。
図6】計量システムの公差チェーンと合計とを示す概略図。
図7】取り出されたピペット・チップがマイクロタイター・プレートの底より上にある、マルチチャネルのピペット・ヘッドのアタッチメントを示す概略図。
図8】マイクロタイター・プレートの底領域と接触することによってピペット・チップが個別に調整されたピペッティング・ツールを示す概略図。
図9】個別に調整されたピペット・チップがマイクロタイター・プレートの底領域から少しの距離だけ退避しているピペッティング・ツールを示す概略図。
【0077】
本願では、用語「上部」および「下部」、「水平方向」および「垂直方向」は、垂直方向にあるアタッチメントを備えたピペット・ヘッドの向きを示し、アタッチメントは下部に配置され、ピペット・ヘッドの他の部品は上に配置されている。
【0078】
異なる実施形態の記載では、同じ参照番号を同じ名前の構成要素に使用する。
【0079】
図1から図2によると、ピペット・ヘッド1が、垂直面で結合する前部ハウジング・ケース3および後部ハウジング・ケース4から形成されるハウジング2を有する。
【0080】
ピペット・チップ6を固締するための8個の平行アタッチメント5(ピン)が、ピペット・ヘッド1の下面から垂直下方へ突出している(図3および図4)。
【0081】
帯状の保持プレート7がハウジング2の上面に配置されている。この保持プレート7から、締着ピン8が上方に突出している。
【0082】
図3によると、8個の平行プランジャ/シリンダ・ユニット9がピペット・ヘッド1に一列に互いに隣接して配置されている。各プランジャ/シリンダ・ユニット9は、1つのプランジャ11が中で可動に配置されている1つのシリンダ10を有する。
【0083】
各シリンダ10は雄ねじ12を有する。この雄ねじ12によって、シリンダ10が水平な下部ハウジング壁15の貫通孔14にある対応する雌ねじ13にねじ止めされる。シリンダ10を下部ハウジング壁15にねじ留めすることは、シリンダ10の外周縁にある段部16によって制限され、この段部16によってシリンダ10が下部ハウジング壁15の上面に当接する。
【0084】
シリンダ10の下部は下部ハウジング壁15の下面から外方に突出しており、そこにアタッチメント5を形成する。ハウジング2はしたがって、アタッチメント5の保持具となる。
【0085】
図4によると、各アタッチメント5は、上部に上部円柱部17と、下部に下部円柱部18と、その間に上部から下部まで先細りしている円錐部19とを有する。それぞれのアッタッチメント5では、上部環状溝21の形をした上部軸位置固定装置20が、上部円柱部17と円錐部19との間にあり、下部環状溝23の形をした下部軸位置固定装置22が、円錐部19と下部円柱部18との間にある。
【0086】
エラストマ、好ましくは軟性エラストマ、特に軟性シリコーンゴムから作られるOリング24,25が、それぞれ環状溝21、23に挿入される。各Oリング24,25は環状溝21,23の底部上に案内され、断面の直径は環状溝21,23の深さよりも大きく、各Oリング24,25を中に配置する環状溝21、23の幅よりも小さい。
【0087】
上からプランジャ11が突き刺さる各シリンダ10の内部空間26はアタッチメント5の底面にある接続孔27まで下方へ延びている。
【0088】
各シリンダ10の上部にはライナー28が配置されており、これを通してプランジャ11が各シリンダ10内に密閉して案内される。
【0089】
各プランジャ11は、円柱ロッドとして設計され、この円柱ロッドは円柱プランジャ・ヘッド30の中央孔29に上部が挿入されその中で締着される(たとえば接着されたり押入されたりする)。各プランジャ・ヘッド30は、外周縁に周縁プランジャ・ヘッド環状溝31を有する。
【0090】
水平上部ハウジング壁32の下に、帯状のプランジャ・プレート33がそれに平行に配置されている。プランジャ・プレート33は8つのチャネル34を底面に有し、このチャネル34は下部で開口し、互いに平行に位置合わせされている。各チャネルは、2つの帯状のチャネル壁35と、チャネル壁の下端部から内側に突出する2つのチャネル・ショルダ36によって縁取られている。プランジャ・プレート33の2つの外縁部にあるチャネル壁35はそれぞれ、隣接するチャネル34を片側のみで縁取る。他のチャネル壁35はそれぞれ、2つの隣接するチャネル34を片側で縁取る。チャネル・ショルダ36の間に、各チャネルは溝付き開口部37をプランジャ・プレート33の下面に有する。
【0091】
ハウジング2の前面および後面に平行に位置合わせされているプランジャ・プレート33の縁部に、チャネル34が面開口部38を備える。プランジャ・ヘッド30の上部が面開口部38を通ってチャネル34に挿入されるので、チャネル・ショルダ36がプランジャ・ヘッド環状溝31をぴったりと係合する。したがって、プランジャ・プレート33を垂直方向に移動させることによって、プランジャ11がシリンダ内で共に移動可能である。
【0092】
締着ピン8の中央に、軸方向移動が可能なねじ付きナット39が配置され、その下端部は、プランジャ・プレート33をシリンダ10の軸方向に移動させるために、プランジャ・プレート33に堅固に接続されている。
【0093】
締着ピン8は、上部に円筒形の上部ピン部40を有する。外周縁に、上部ピン部40が2つの部分的に周縁の接続要素41を支持する。この接続要素41は互いに180度偏位しており、外側に径方向に突出しており、それによってバイオネット接続を形成することができる。接続要素41は、底面にわずかなねじピッチを有し、バイオネット接続のピン・ホルダに嵌合接続要素で締め付けられる。
【0094】
上部ピン部40の近傍に、締着部8は上部ピン部40よりも外径が大きい円筒形の中央ピン部42を備える。
【0095】
その下に、締着ピン8が、円錐状に下方へ拡張する下部ピン部43を有する。下部ピン部43はその底部で保持プレート7に堅固に接続される。
【0096】
中央孔44が締着ピン8の長手方向に延びる。この孔は、2つの直径方向に対向する縦溝45を有する。
【0097】
スリーブ状のねじ付きナット39が中央孔44に挿入され、上端部で2つの径方向に突出する羽根46によって縦溝45に案内される。
【0098】
さらに、スピンドル47がねじ付きナット39にねじ留めされる。そのねじ48の上に、このスピンドルは突出する軸受ピン49を有し、この軸受ピン49によって、玉軸受50に装着される。玉軸受50が軸受保持具52の軸受ブシュ51に保持される。軸受保持具52は2つのタブを有し、このタブは両面から直径方向に突出し、上部ピン部40の上縁部にあり、そこにねじを用いて固定されている。
【0099】
玉軸受50を超えて突出する軸受ピン49の一部に、駆動装置54が、径方向のねじピン53を用いて非回転式に固定され、駆動装置54は、その上面で径方向および軸方向に延びる、爪状の駆動部を導入するためのスロット55を有する。
【0100】
スピンドル47は玉軸受50の底面に支持されている。駆動装置54は玉軸受50の上面に支持されている。これによって、スピンドル47は軸方向に移動不可能なように締着ピン8に保持される。
【0101】
ねじ付きナット39の1つの羽根46では、溝を通って軸受保持具52に案内されるシリンダピン56が固定されている。軸受保持具52はねじ付きナット39の中軸に対して平行に向いており締着ピン8から上方に突出する。
【0102】
駆動装置54を回転させることによって、締着ピン8に軸方向に固定されているスピンドル47が、締着ピン8に軸方向に非回転式に案内されているねじ付きナット39を移動させる。このことによって、プランジャ・プレート33が移動し、プランジャ11がシリンダ10内で移動される。駆動装置54を様々な方向に回転させることによって、プランジャ11をシリンダ10内で様々な方向に移動可能である。シリンダピン56の位置を走査することによって、プランジャ11のシリンダ10におけるそれぞれの位置を測定することができる。
【0103】
締着ピン8と、ねじ付きナット39およびスピンドル47が内蔵されている駆動装置は、欧州特許第1407861B1号による図1から図4ならびに図6の実施形態に相当する。この点に関して、欧州特許第1407861B1号の文献を参照し、これによってその内容は参照により本願に組み込まれるものとする。
【0104】
実験用機械は、締着ピンに連結可能な、バイオネット接続の相補型ピン・ホルダを備える。好ましくは、実験用機械の相補型接続部が、欧州特許第1407861B1号の図7から図10によるツール・ホルダに相当する。この点に関して、欧州特許第1407861B1号の文献を参照し、これによってその内容は参照により本願に組み込まれるものとする。
【0105】
下部ハウジング壁15の下に、ピン5がそれを通って下方へ突出する貫通孔58をさらに有する除去用プレート57が配置されている。除去用プレート57は、後部ハウジング・ケース4の凸部60内で上方に案内されるロッド・アセンブリ59に長辺で接続されている。後部ハウジング・ケース4は上面に開口部を有し、その開口部を通してロッド・アセンブリ59がハウジング2から突出している。駆動装置61がロッド・アセンブリ59の上端部から側方に突出している。ばね装置(図示せず)を用いて、除去用プレート57が下部ハウジング壁15の下面に当接するまで、ロッド・アセンブリ59が載置状態で上方に押圧される。実験用機械は駆動要素を備えた駆動装置を有し、それを用いて駆動装置61が下方へ押圧可能であり、その結果、除去用プレート57を下方に移動させ、ピペット・チップ6をアタッチメント5から除去される。
【0106】
図3および図4によると、ピペット・チップ6がアタッチメント5に固締される。ピペット・チップ6は、下端部63に先端開口部62を有し、上端部65に装着用開口部64を有するチューブである。ピペット・チップ6の内径および外径は、概して、先端開口部62から装着用開口部64まで広がっている。本実施例では、ピペット・チップ6が、いくつかの円錐形領域64,65,66、ならびに、上端部65の近傍に円筒形拡張部67を有する。円筒形拡張部67の領域およびその下の領域において、ピペット・チップが内部にシール・シート68を有する。
【0107】
図3および図4によると、ピペット・ヘッド1のアタッチメント5が、装着用開口部64を通ってピペット・チップ6に導入される。Oリング24,25が、シール・シート68の高さに配置されている。これにより、Oリング24、25が径方向にいくぶん押圧されるのでピペット・チップ6がアタッチメント5に堅固に固締され、アタッチメント5に密閉される。Oリング24,25は、軟質の弾性材料で構成されており、それ以外の場合、ピペット・チップ6はアタッチメント5に接触しないので、ピペット・チップ6をアタッチメント5に装着する際の装着力は比較的小さい。
【0108】
図5では、ピペット・ヘッドの経路の関数としてのピペット・チップを装着する際の測定された装着力を、8つのチャネルおよび2つのOリング24、25が各アタッチメント5にある本発明によるピペッティングヘッド1と、アタッチメントにOリング24、25のない8つのチャネルを有する従来のピペット・ヘッドについて互いに隣接して示す。図中左の3つの曲線によると、従来のピペット・ヘッドを使用する場合、装着力は、ピペット・チップがアタッチメントに十分にしっかりと固定され密閉されるまで急激に増加する。これは、装着力が120ニュートンでのピペット・ヘッドが2.2mm移動したときにみられる。図中右の曲線によると、装着力が約30ニュートン、ピペット・ヘッドの移動が2mmで、十分に固定され、密閉して接続される。この場合、Oリング24,25のみが弾性変形する。この値を超えると、装着力が急激に増加する。というのは、ピペット・チップ6の変形もまたこのために必要となるからである。
【0109】
装着力が減少するため、ピペット・チップ6をアタッチメント5から吐出する力も減少する。
【0110】
以下、本発明による使用を図6から図9をもとに説明する。図6によると、実験用機械70には、ピペット・チップ6の先端開口部64の垂直方向の位置決めに影響する複数の公差がある。これらの公差は、多軸移送装置71(ロボット・アームまたは他の移送システム)の位置決めの公差を含む。これに加えて、多軸移送装置71に保持されたツール・ホルダ72にピペット・ヘッド1(ピペッティング・ツール)を固定する際の公差がある。さらに、ピペット・ヘッド1の製造公差も考慮する必要がある。また、ピペット・チップ6を取り出すためのアタッチメント5とピペット・チップ6自体には公差がある。マイクロタイター・プレート73およびマイクロタイター・プレート73を実験用機械70の作業面75(デッキ)に位置決めするためのアダプタ74にはさらなる公差がある。最後に、作業面75自体にも公差がある。
【0111】
特に、マルチチャネルのピペット・ヘッド1を使用する場合、個々のピペット・チップ6を正確に位置決めすることが不可能となる。というのは、ピペット・チップ6はすべて同じ高さにしなければならないからである。
【0112】
たとえば、次世代シーケンシング(NGS)のような多くのターゲット用途では、これは、洗浄工程の効率の低下および/または試験材料からの収率の低下によって、品質が低下する。最悪の場合、汚染物が持ち越され、たとえば、試料が別の相(油で覆われたサンプル)の下で吸引され、オーバレイの一部が持ち越される。
【0113】
公差範囲の減少によって、工程の信頼性が低下し、したがって、試料損失のリスクが増大する。さらに、特定の公差範囲に届いてはならないため、問題は部分的にしか解決されない。たいてい、個々の公差を最小化するために装置を極めて正確に較正するための直接的なニーズも増える。
【0114】
「面教示」は、システム上の特定の公差(位置決めオフセットやツール公差など)に対処するが、ユーザにとって非常に作業集約的であり、多くの労力を必要とする。さらに、複数の公差も面教示(ウェルの幾何学的形状、アダプタ上のマイクロタイター・プレート・シート、ピペット・チップの幾何学的形状、ピペット・チップ・シート、ツール・ホルダなど)によってカバーされない。というのは、これらは計量工程中ではなく、使用前に行われるからである。
【0115】
各アタッチメント5上の2つのOリング24,25を使用することによって、計量品質を等しく維持しながら、ピペット・チップのシートのわずかな差異による未知の公差チェーンを許容することができる。この方法は3つのサブステップからなる。
【0116】
図7によると、いくつかのピペット・チップ6が単一チャネルまたはマルチチャネルのピペット・ヘッド1に取り出される。ピペット・チップ6がピペット・ヘッド1のアタッチメント5に取り出されると、すべてのピペット・チップ6が、同等の高さに配置され、小さな力の作用で、アタッチメント5上をさらなる距離だけスライドすることができる。
【0117】
面(マイクロタイター・プレート73の底など)の底公差範囲下で垂直方向へもっぱら移動することによって、ピペット・チップ6は各アタッチメント5にさまざまな程度まで押圧される。アタッチメント5を垂直方向に等しく位置合わせすると、このステップの後、個々のピペット・チップ6が個々の高さを有し、この高さは、未知の底のジオメトリおよび公差チェーンによって決定されたものである。このことは図8に示されている。
【0118】
その後、ピペット・ヘッド1がわずかに上方に移動することによって、ピペット・チップ6の下端部63と容器(マイクロタイター・プレート73など)の表面との間に隙間xが生じる。この隙間xは、ピペット・チップ6に液体を吸引するのに必要であり、ピペット・チップ6が閉塞されることを回避する。この方法によると、ピペット・チップ6の個々の位置により、すべてのピペット・チップ6下端部は、容器の表面から同じ距離だけ離れている。このことは図9に示されている。
【0119】
この方法の利点は、すべての(既知および未知の)公差を各計量ステップで完全に補償できることである。さらに、この工程は、ユーザがさらなる労力なしで実験用機械70によって実行することができるため、自動的に行われる。この方法は、ピペット・チップ6と、使用される単一キャビティおよびマルチキャビティの容器(マイクロタイター・プレート73など)の対応する個々のキャビティとをそれぞれ組み合わせて、実験用機械70の運転中に実行される。
【符号の説明】
【0120】
1 ピペット・ヘッド
2 ハウジング(保持具)
3,4 ハウジング・ケース
5 アタッチメント(ピン)
6 ピペット・チップ
7 締着プレート(保持プレート)
8 締着ピン
9 プランジャ/シリンダ・ユニット
10 シリンダ
11 プランジャ
12 雄ねじ
13 雌ねじ
14 貫通孔
15 ハウジング壁部
16 段
17 上部円柱部
18 下部円柱部
19 円錐部
20 上部軸位置固定装置
21 上部環状溝
22 下部軸位置固定装置
23 下部環状溝
24,25 Oリング
26 内部空間
27 接続孔
28 ライナー
29 孔
30 円柱プランジャ・ヘッド
31 プランジャ・ヘッド環状溝
32 ハウジング壁部
33 プランジャ・プレート
34 チャネル
35 チャネル壁
36 チャネル・ショルダ
37 溝付き開口部
38 正面開口部
39 ねじ付きナット
40 上部ピン部
41 接続要素
42 中央ピン部
43 下部ピン部
44 孔
45 縦溝
46 羽根
47 スピンドル
48 ねじ
49 軸受ピン
50 玉軸受
51 軸受ブシュ
52 軸受保持具
53 ねじピン
54 駆動装置
55 スロット
56 円柱ピン
57 除去用プレート
58 貫通孔
59 ロッド・アセンブリ
60 突部
61 駆動装置
62 先端開口部
63 下端部
64 装着用開口部
65 上端部
64,65,66 円錐形領域
67 円柱拡張部
68 シール・シート
70 実験用機械
71 マルチ軸移送装置(ロボット・アーム)
72 ツール・ホルダ
73 マイクロタイター・プレート
74 アダプタ
75 作業面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】