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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-10
(54)【発明の名称】有機化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/16 20060101AFI20220203BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20220203BHJP
   A61K 9/58 20060101ALI20220203BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20220203BHJP
   A61K 31/4985 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
C07D471/16 CSP
A61K47/34
A61K9/58
A61K9/51
A61P25/00
A61P43/00 111
A61P3/04
A61P25/22
A61P25/24
A61P25/18
A61P25/06
A61P25/04
A61P1/04
A61P25/28
A61P25/14
A61P25/30
A61K31/4985
A61P25/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534645
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(85)【翻訳文提出日】2021-08-13
(86)【国際出願番号】 US2019066894
(87)【国際公開番号】W WO2020131899
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】62/780,804
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507401225
【氏名又は名称】イントラ-セルラー・セラピーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INTRA-CELLULAR THERAPIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】リ,ポン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,チアン
(72)【発明者】
【氏名】デイビス,ロバート
【テーマコード(参考)】
4C065
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C065AA07
4C065AA18
4C065BB04
4C065CC06
4C065DD03
4C065EE03
4C065HH09
4C065JJ01
4C065KK09
4C065LL04
4C065PP03
4C076AA65
4C076AA67
4C076AA94
4C076BB11
4C076CC01
4C076CC16
4C076CC21
4C076CC29
4C076EE24
4C076EE24M
4C076EE48
4C076EE48M
4C076FF31
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA66
4C086NA12
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA05
4C086ZA08
4C086ZA12
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA18
4C086ZA22
4C086ZA66
4C086ZA70
4C086ZC39
4C086ZC41
4C086ZC42
(57)【要約】
本発明は、本明細書に記載する遊離または医薬的に許容される塩および/または実質的に純粋な形態の特定の置換複素環縮合γ-カルボリン、5-HT2A受容体、セロトニントランスポーター(SERT)および/またはドーパミンD1およびD2受容体シグナル伝達系に関連する経路に関連する疾患の処置におけるその医薬組成物および使用方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離または医薬的に許容される塩形態の、式I:
【化1】
で示される化合物であって、単離または精製された形態である、化合物。
【請求項2】
遊離または医薬的に許容される塩形態であって、所望により単離または精製された遊離または塩形態である、式I:
【化2】
式I
で示される化合物を、医薬的に許容される希釈剤または担体と混合して含む、医薬組成物。
【請求項3】
所望により注射用デポーとして、持続または遅延放出のために製剤化されている、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
ポリマーマトリックスをさらに含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
ポリマーマトリックスが、生分解性のポリ(d,l-乳酸-グリコール酸共重合体)マイクロ粒子である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
中枢神経系障害の処置または予防のための方法であって、請求項1に記載の化合物または請求項2~5のいずれか一項に記載の医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、方法。
【請求項7】
中枢神経系障害が、セロトニン5-HT2A、ドーパミンD2および/またはD1受容体システムおよび/またはセロトニン再取り込みトランスポーター(SERT)経路に関連する障害である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
中枢神経系障害が、肥満、不安、うつ病(例えば難治性うつ病およびMDD(大うつ病性障害))、精神病(例えば認知症に関連する精神病、例えば進行性パーキンソン病における幻覚または偏執性妄想)、統合失調症、睡眠障害(特に統合失調症および他の精神および神経疾患に関連する睡眠障害)、性障害、片頭痛、疼痛を伴う状態、社会恐怖症、認知症における激越(アルツハイマー病における激越)、自閉症および関連する自閉症障害における激越、消化管障害、例えば消化管運動の機能不全、および認知症、例えばアルツハイマー病またはパーキンソン病における認知症;および気分障害;強迫性障害(OCD)、強迫性パーソナリティ障害(OCPD)、全般性不安障害、社交不安障害、パニック障害、広場恐怖症、強迫性ギャンブル障害、強迫性摂食障害、身体醜形障害、心気症、病的身繕い障害、窃盗症、放火症;注意欠陥・多動性障害(ADHD)、注意欠陥障害(ADD)、衝動制御障害;および関連障害、およびその組合せからなる群より選択される障害である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
中枢神経系障害が、(1)うつ病に罹患している患者における精神病、例えば統合失調症;(2)精神病、例えば統合失調症に罹患している患者におけるうつ病;(3)精神病、例えば統合失調症またはパーキンソン病に関連する気分障害;(4)精神病、例えば統合失調症またはパーキンソン病に関連する睡眠障害;および(5)物質使用障害および/または物質誘発障害より選択される障害であり、所望により患者が、不安または不安障害の残遺症状に罹患している、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
中枢神経系障害が、強迫性障害(OCD)、強迫性パーソナリティ障害(OCPD)、全般性不安障害、社交不安障害、パニック障害、広場恐怖症、強迫性ギャンブル障害、強迫性摂食障害、身体醜形障害、心気症、病的身繕い障害、窃盗症、放火症、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、注意欠陥障害(ADD)、衝動制御障害、および関連障害より選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
中枢神経系障害が、うつ病、不安またはその組合せである、請求項6に記載の方法、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
うつ病および/または不安が、急性うつ病および/または急性不安である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
処置されるべき状態が、急性不安(例えば、全般性不安障害、パニック障害、特定の恐怖症または社交不安障害または社会的回避に関連する短期間不安エピソード)である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
処置されるべき状態が、急性うつ病(例えば、急性大うつ病エピソード、急性短期間うつ病エピソード、急性反復性短期うつ病エピソード)である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
処置されるべき状態が、治療抵抗性うつ病(例えば、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン再取り込み阻害薬(SRI)、三環系抗うつ薬、モノアミンオキシダーゼ阻害薬、ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(NRI)、ドーパミン再取り込み阻害薬(DRI)、SRI/NRI、SRI/DRI、NRI/DRI、SRI/NRI/DRI(トリプル再取り込み阻害薬)、セロトニン受容体アンタゴニスト、またはそのあらゆる組合せより選択される抗うつ薬での処置に反応しない、うつ病)である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
患者が、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、例えばシタロプラム、エシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチンおよびセルトラリンでの処置に反応しないかまたはその副作用に耐えることができない、請求項6~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
患者が、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)、例えばベンラフェキシン、シブトラミン、デュロキセチン、アトモキセチン、デスベンラファキシン、ミルナシプランおよびレボミルナシプランでの処置に反応しないかまたはその副作用に耐えることができない、請求項6~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
患者が、抗精神病薬、例えばクロミプラミン、リスペリドン、クエチアピンおよびオランザピンでの処置に反応しないかまたはその副作用に耐えることができない、請求項6~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
中枢神経系障害の処置または予防のための医薬の製造における、遊離または医薬的に許容される塩形態の、式I:
【化3】
式I
で示される化合物であって、単離または精製された形態である、化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本開示は、2018年12月17日出願の米国仮出願第62/780,804号に基づく優先権および利益を主張する国際出願であり、当該出願の内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
(発明の分野)
本開示は、新規な化合物の特定の置換複素環縮合γ-カルボリン、それに関連する新規な方法および使用、およびその医薬組成物、例えば、5-HT2A受容体、セロトニントランスポーター(SERT)、および/またはドーパミンD1およびD2受容体シグナル伝達系に関連する経路に関連する疾患、例えば、不安、精神病、統合失調症、睡眠障害、性障害、片頭痛、疼痛を伴う状態、社会恐怖症、消化管障害、例えば消化管運動の機能不全および肥満;精神病またはパーキンソン病に関連するうつ病および気分障害;精神病、例えばうつ病に関連する統合失調症;双極性障害;気分障害;および他の精神および神経学状態などの疾患または障害の処置における使用方法、ならびに他の薬物との組合せに関する。
【背景技術】
【0002】
置換複素環縮合γ-カルボリンは、中枢神経系障害の処置において5-HT2受容体、特に5-HT2Aおよび5-HT2C受容体のアゴニストまたはアンタゴニストであることが知られている。これらの化合物は、米国特許第6,548,493号;第7,238,690号;第6,552,017号;第6,713,471号;第7,183,282号;米国再発行特許第39680号および米国再発行特許第39679号に、5-HT2A受容体調節に関連する障害、例えば肥満、不安、うつ病、精神病、統合失調症、睡眠障害、性障害、片頭痛、頭痛に関連する状態、社会恐怖症、消化管障害、例えば消化管運動の機能不全、および肥満の処置に有用な新規な化合物として記載されている。国際出願第PCT/US08/03340号(国際公開第2008/112280号)、およびそれに対応する米国特許出願公開第2010/113781号、および米国特許出願第10/786,935号(米国特許出願公開第2004/209864号として公開)はまた、置換複素環縮合γ-カルボリンの製造方法、ならびに中枢神経系障害、例えば嗜癖行動および睡眠障害の制御および予防に有用なセロトニンのアゴニストおよびアンタゴニストとしてのこれらのγ-カルボリンの使用を開示している。
【0003】
また、米国特許出願公開第2011/071080号(それに対応する米国特許出願公開第2011/071080号)は、精神病とうつ病性障害の組合せならびに精神病またはパーキンソン病の患者における睡眠、うつ病性および/または気分障害の処置のための特定の置換複素環縮合γ-カルボリンの使用を開示する。精神病および/またはうつ病に関連する障害に加えて、この特許出願は、ドーパミンD2受容体に影響を及ぼすことなくまたは影響を最小限とし、これによりドーパミンD2経路の高い占有率に関連する副作用、または慣用の睡眠鎮静薬(例えばベンゾジアゼピン)に関連する他の経路(例えばGABAA受容体)の副作用(薬物依存、筋緊張低下、脱力、頭痛、かすみ目、回転性めまい、悪心、嘔吐、上腹部不快感、下痢、関節痛および胸部痛の発症を含むがこれらに限定されない)なしに睡眠障害の処置に有用な、5-HT2A受容体に選択的に拮抗する、低用量におけるこれら化合物の使用を開示し、請求する。国際公開第2009/114181号(それに対応する米国特許出願公開第2011/112105号)はまた、これら置換複素環縮合γ-カルボリンのトルエンスルホン酸付加塩結晶の製造方法を開示する。
【0004】
従来の抗うつ薬は、その完全な効果を達成するのにしばしば数週間または数か月かかる。例えば、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、例えばセルトラリン(Zoloft、Lustral)、エシタロプラム(Lexapro、Cipralex)、フルオキセチン(Prozac)、パロキセチン(Seroxat)およびシタロプラムは、比較的軽度の副作用ならびにうつ病および不安の症状に対する幅広い効果のため、大うつ病を含むうつ病の第一選択療法と考えられている。しかしながら、SSRIは、一般的にすぐには効果がないため、うつ病の急性期処置には特に有用ではない。この作用の開始の遅れは、自殺行動のリスクを高める。ベンゾジアゼピンは、不安の急性期処置に使用できるが、中毒性があり、過剰摂取のリスクが高くなり得る。ケタミンは、最近、双極性障害および大うつ病性障害における治療抵抗性うつ病に対する速効性抗うつ薬として試験されているが、重大な副作用および過剰摂取のリスクがあり、経口的に活性がない。
【0005】
過去20年にわたり、少なくとも6つのプラセボ対照臨床試験が、速効性抗うつ薬としてケタミンを試験してきた。大うつ病エピソードのある23~56歳の患者を含む、Bermanetalらによる1つの試験では、総用量0.5mg/kgのケタミンを40分間注入すると、わずか24時間後に、プラセボと比較してハミルトンうつ病評価尺度(HDRS)における評価が著しく改善されることがわかった。同様の結果が、2006年にZarateらによって示された。ケタミンの効果は、静脈内注入の4時間後に早くも始まり、最大2週間持続し得る。しかしながら、ケタミンの承認された医療用途は、知覚障害、不安、めまい、離人感、さらには精神病(そしてそれは中毒および濫用のリスクを有するスケジュールIIIの薬物である)を含む副作用のため、制限されている。ケタミンはまた、幻覚およびせん妄、鎮痛や健忘症などの解離効果を引き起こすが、これらはいずれも従来の抗うつ薬には付随しない。これらの解離効果および他の効果は、ケタミンの抗うつ効果を媒介するものとは異なる細胞経路によって媒介されると考えられる。
【0006】
主にモノアミン神経伝達物質領域内で作用する従来の抗うつ薬(すなわち、セロトニン、ノルエピネフリンおよびドーパミン)とは異なり、ケタミンは、選択的NMDA受容体アンタゴニストである。最も広く処方されている現在の抗うつ薬は、SSRI、モノアミンオキシダーゼ阻害薬および三環系抗うつ薬(主にセロトニン取り込み、ノルエピネフリン取り込みおよび/またはドーパミン取り込み阻害薬)である。ケタミンは、モノアミンとは関係のない別の系によって作用し、これがその極めて急速な効果の主な理由である。ケタミンは、シナプス外グルタミン酸作動性NMDA受容体に直接拮抗し、AMPA型グルタメート受容体の活性化も間接的に引き起こす。下流の影響は、脳由来神経栄養因子(BDNF)およびmTOR(例えばmTORC1)キナーゼ経路を含む。
【0007】
うつ病の動物実験は、mTOR(例えばmTORC1)の発現低下との関連を示している。mTORは、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼファミリー(PI3Kファミリー)のメンバーである、セリン/スレオニンおよびチロシンキナーゼである。これは、mTOR複合体1(mTORC1)およびmTOR複合体2(mTORC2)の主要コンポーネントとして作用する。mTOR経路は、哺乳類の代謝および生理学の中心的な調節因子であり、細胞の成長と生存、細胞骨格の組織化、シナプス可塑性、記憶の保持、神経内分泌調節、およびストレス(例えば低酸素ストレス)からのニューロンの回復に影響を及ぼす。試験は、mTORシグナル伝達の活性化が、慢性ストレスを含む、ストレッサーによって引き起こされるシナプスおよび行動の欠陥の一部を逆転させることを示している。ケタミンの抗うつ効果は、mTORシグナル伝達(貯蔵されたBDNFの放出の促進との組み合わせで)の活性化を介し得ることを示唆する証拠がある。研究は、ケタミンの単回抗うつ薬有効量が、マウスおよびラットの前頭前皮質および海馬におけるホスホ-mTORならびにホスホ-p70S6キナーゼおよびホスホ4EBP176,177の急速な発現(投与の30分以内)誘導を誘発し得ることを示している。これは、ケタミン誘発タンパク質翻訳がmTORの活性化に依存して起こるメカニズムを示唆している。
【0008】
最近、驚くべきことに、特定の縮合複素環γ-カルボリン、例えば米国特許第8,309,722号および米国特許第8,598,119号に記載のもの、特にルマテペロン(以下の式Bの化合物)が、mTOR(例えばmTORC1)シグナル伝達経路の活性化を伴い、かつ抗炎症特性と並行した、ドーパミンD1受容体依存性のNMDAおよびAMPA電流の間接的増強を介して速効性の抗うつ作用を示すことがわかった。したがって、このような化合物は、ケタミンおよび他の現在の薬理学的アプローチの有害な副作用を欠き、単独で、または他の抗不安薬または抗うつ薬と組み合わせて、うつ病および不安症の経口で利用可能な速効性処置として有用であると予期される。典型的には、毎日の投与開始後3~4週間で作用が始まる、SSRIなどの従来のうつ病処置とは対照的に、本明細書に記載の化合物の独特の薬理学的プロファイルは、作用の即時開始(例えば、最初の投与後数時間から数日)をもたらすと予測される。また、ベンゾジアゼピンクラスの薬物とは異なり、本明細書に記載の化合物は中毒性がないと考えられる。
【0009】
他の置換複素環縮合γ-カルボリンは、国際公開第2017/132408号および米国特許出願公開第2017/319580号に開示されており、これらは出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
【0010】
関連する刊行物国際公開第2017/132408号および米国特許出願公開第2017/319580号は、上記特許、例えば米国特許第8,309,722号および第8,598,119号に開示されるものといくらか関連する構造を有する新規な複素環縮合γ-カルボリンを開示する。これらの新規化合物は、セロトニン受容体阻害、SERT阻害およびドーパミン受容体調節を含む、以前の化合物の独特な薬理活性の多くを保持している。しかしながら、これらの新規化合物は、予想外にも、μオピエート受容体にて有意な活性を示すことが分かった。
【0011】
強力なセロトニン受容体、セロトニントランスポーター(SERT)、および/またはドーパミンD1およびD2受容体活性を有するが、μオピエート受容体活性を有さず、そして薬物動態特性が改善された化合物が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0012】
本開示の化合物は、驚くべきことに、セロトニン受容体(例えば5-HT2A)、セロトニントランスポーター(SERT)、ドーパミン受容体(例えば、D1および/またはD2)にて強力な活性を有し、先行技術の化合物と比較して著しく改善された薬物動態学的安定性を有し、そしてμオピエート受容体活性を有しないことを見出した。また、本開示の化合物は、D1受容体活性を介して、mTOR経路を通るNMDAおよびAMPA介在性シグナル伝達を増強し得ると考えられる。
【0013】
以下に示す式AおよびBで示される化合物は、強力なセロトニン5-HT2A受容体アンタゴニストおよび強力なD1/D2受容体モジュレーターの両方であるが、SERTおよびμオピエート受容体にて大きく異なる活性を有する。
【化1】
【0014】
それらの構造の密接な類似性にもかかわらず、式Aの化合物が比較的弱いSERTアンタゴニストであるが、極めて強いμオピエートアンタゴニストであることが予想外にも見出された。対照的に、式Bの化合物は、極めて強力なSERTアンタゴニストであり、μオピエート活性を有さない。式Bの化合物はほぼ同等の結合を示し(D2/D1比が1.20)、式Aの化合物は3倍以上高いD2結合を示すが(D2/D1比が3.20)、両方の化合物はD1およびD2ドーパミン受容体の両方に十分結合する。また、式Bで示される化合物は、D1受容体活性を介して、mTOR経路を通るNMDAおよびAMPA介在性シグナル伝達を増強すると考えられる。
【0015】
低用量の抗精神病薬(APD)は、治療抵抗性うつ病(TRD)に罹患している患者における抗うつ薬の有効性を増強する(Tohen et al., 2010)。分子レベルでは、低濃度の抗精神病薬と選択的セロトニン取り込み阻害薬(SSRI)を組み合わせて適用すると、内側前頭前皮質(mPFC)の錐体ニューロンに対するNMDA受容体の活性が強力かつ相乗的に増加する。また、APDとSSRIを組み合わせて適用すると、mPFCにおけるAMPA受容体電流が増強され、これは、いずれの処置単独では見られない効果である。興味深いことに、NMDAおよびAMPA受容体の両方を介したmPFCにおけるグルタミン酸作動性神経伝達のこの増強は、TRD患者に急速な抗うつ薬の有効性をもたらす薬物である非麻酔用量のケタミンによって模倣される。あわせると、このデータは、APDおよびSSRI特性の組合せがTRDの軽減に効果的であることを示している。
【0016】
式Bの化合物(ルマテペロン)は、APDおよびSSRIの特性を有し、そして、ラットmPFCスライスのNMDAおよびAMPA受容体の両方の伝導性に影響を与えることにより、グルタミン酸作動性神経伝達を増強することが見出された。ルマテペロンの作用は、オランザピン(D2受容体アンタゴニストAPD)とフルオキセチン(SSRI)およびケタミンの併用を含む他の速効性抗うつ療法の効果と一致しており、それ故に、不安および治療抵抗性うつ病に対する急性治療作用と一致するルマテペロンの分子作用を支持する。
【0017】
本開示は、中枢神経系障害の処置または予防に有用である式Iで示される化合物を提供する。第1態様において、本開示は、遊離または塩形態であって、例えば単離または精製された遊離または塩形態である、式1:
【化2】
式I
で示される化合物(化合物1)に関する。
【0018】
本開示は、
1.1 遊離形態(すなわち遊離塩基形態)の化合物1;
1.2 塩形態、例えば医薬的に許容される塩形態の化合物1;
1.3 塩が、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセチルサリチル酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸などより選択される酸付加塩である、化合物1.2;
1.4 固体形態の化合物1または1.1~1.3のいずれか;
1.5 炭素原子CHが、実質的にR配置またはS配置のいずれかで存在し、例えば、この炭素においてR配置またはS配置を有するジアステレオマーが、70%超のジアステレオマー過剰率、例えば75%超、80%超、85%超、90%超、95%超、97%超、98%超または99%超のジアステレオマー過剰率で存在する、化合物1または1.1~1.4のいずれか;
1.6 単離または精製された形態の化合物1または1.1~1.5のいずれか
を含む、遊離または塩形態であって、例えば単離または精製された遊離または塩形態である、式Iで示される化合物の更なる例示的な実施態様を提供する。
【0019】
第2態様において、本開示は、化合物1または1.1~1.6のいずれかを、例えば医薬的に許容される希釈剤または担体と混合されて含む、医薬組成物(医薬組成物2)を提供する。本開示は、
2.1 式1または1.1~1.6のいずれかの化合物が、固体形態である、医薬組成物2;
2.2 式1の化合物が、医薬的に許容される塩形態、例えば化合物1.3または1.4より選択される化合物である、医薬組成物2または2.1
を含む、医薬組成物2の更なる例示的な実施態様を提供する。
【0020】
好ましい実施態様において、本開示の医薬組成物は、遊離または医薬的に許容される塩形態の式Iで示される化合物または1.1~1.6のいずれかを、医薬的に許容される希釈剤または担体と混合して含む。
【0021】
更なる実施態様において、本開示の医薬組成物は、持続または遅延放出製剤、例えばデポー製剤である。一実施態様において、デポー製剤(医薬組成物2.3)は、例えば注射用デポーとして持続または遅延放出を提供する、好ましくは医薬的に許容される希釈剤または担体と混合された、好ましくは遊離または医薬的に許容される塩形態の、医薬組成物2または2.1~2.2のいずれかである。
【0022】
別の一実施態様において、本開示は、医薬組成物2または2.1~2.3のいずれかであり、式1以降の化合物がポリマーマトリックス中である、医薬組成物2.4を提供する。一の実施態様において、本開示の化合物は、ポリマーマトリックス内に分散または溶解している。更なる実施態様において、ポリマーマトリックスは、デポー製剤において用いられる標準的ポリマー、例えばヒドロキシ脂肪酸のポリエステルおよびその誘導体より選択されるポリマー、またはアルキルα-シアノアクリレート、ポリアルキレンオキサレート、ポリオルトエステル、ポリカルボネート、ポリオルト-カルボネート、ポリアミノ酸、ヒアルロン酸エステルおよびその混合物のポリマーを含む。更なる実施態様において、ポリマーは、ポリ乳酸、ポリd,l-乳酸、ポリグリコール酸、PLGA50:50、PLGA85:15およびPLGA90:10のポリマーからなる群より選択される。別の一実施態様において、ポリマーは、ポリ(グリコール酸)、ポリ-D,L-乳酸、ポリ-L-乳酸、前記の共重合体、ポリ(脂肪族カルボン酸)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリ(オルトカルボネート)、ポリ(アセタール)、ポリ(乳酸-カプロラクトン)、ポリオルトエステル、ポリ(グリコール酸-カプロラクトン)、ポリ無水物、および天然ポリマー、例えばアルブミン、カゼイン、およびワックス、例えばグリセロールモノおよびジステアレートなどより選択される。好ましい実施態様において、ポリマーマトリックスは、ポリ(d,l-乳酸-グリコール酸共重合体)を含む。
【0023】
例えば、医薬組成物2.4の一実施態様において、化合物は、遊離または医薬的に許容される塩形態の式1または1.1以降の化合物である。医薬組成物2.4の別の一例において、化合物は、医薬的に許容される希釈剤または担体と混合された、遊離または医薬的に許容される塩形態の式1または1.1以降の化合物である。医薬組成物2.4の別の一例において、化合物は、医薬的に許容される希釈剤または担体と混合された、式1または1.1以降の化合物であり、ここで、希釈剤または担体はポリマーマトリックスを含み、所望により、ポリマーマトリックスはポリ(d,l-乳酸-グリコール酸共重合体)を含む。
【0024】
いくつかの実施態様において、医薬組成物2.4は、持続または遅延放出に特に有用であり、ここで、本開示の化合物は、ポリマーマトリックスの分解時に放出される。これらの組成物は、最大180日間、例えば約14から約30から約180日間にわたる本開示の化合物の制御および/または持続放出のために(例えばデポー組成物として)製剤化され得る。例えば、ポリマーマトリックスは、約30、約60または約90日間にわたって本開示の化合物を分解および放出し得る。別の一例において、ポリマーマトリックスは、約120または約180日間にわたって本開示の化合物を分解および放出し得る。
【0025】
さらに別の一実施態様において、本開示の医薬組成物、例えば本開示のデポー組成物、例えば医薬組成物2.3は、注射による投与のために製剤化される。
【0026】
更なる実施態様において、本開示は、米国特許出願公開第2001/0036472号に記載の浸透圧による制御放出経口送達システム(OROS)において前記式1または1.1以降の化合物を提供し、当該出願の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。したがって、第4態様の一実施態様において、本開示は、(a)遊離または医薬的に許容される塩形態の式1または1.1以降いずれかの化合物または前記の本発明の医薬組成物を含有するゼラチンカプセル;(b)カプセルから外側へ向かう順序で、(i)バリア層、(ii)膨張層および(iii)半透過層を含む、ゼラチンカプセル上に重ねられた多層壁;および(c)および壁を通って形成されているかまたは形成可能なオリフィスを含む、医薬組成物またはデバイス(医薬組成物P.1)を提供する。
【0027】
別の一実施態様において、本発明は、液体、遊離または医薬的に許容される塩形態の式1または1.1以降の化合物または本発明の医薬組成物、例えば医薬組成物2または2.1~2.4のいずれかを含有するゼラチンカプセルを含む医薬組成物であって、該ゼラチンカプセルが、ゼラチンカプセルの外表面に接触しているバリア層、バリア層に接触している膨張層、膨張層を包含する半透過層を含む複合壁によって囲まれており、該壁に出口オリフィスが形成されているかまたは形成可能である、医薬組成物(医薬組成物P.2)を提供する。
【0028】
さらに別の一実施態様において、本発明は液体、遊離または医薬的に許容される塩形態の式1または1.1以降の化合物または本発明の医薬組成物、例えば医薬組成物2または2.1~2.4のいずれかを含有するゼラチンカプセルを含む組成物であって、該ゼラチンカプセルが、ゼラチンカプセルの外表面に接触しているバリア層、バリア層に接触している膨張層、膨張層を包含する半透過層を含む複合壁によって囲まれており、該壁に出口オリフィスが形成されているかまたは形成可能であり、該バリア層が膨張層と出口オリフィスでの環境との間にシールを形成する、組成物(医薬組成物P.3)を提供する。
【0029】
さらに別の一実施態様において、本発明は、液体、遊離または医薬的に許容される塩形態の式1または1.1以降の化合物または本発明の医薬組成物、例えば医薬組成物2または2.1~2.4のいずれかを含有するゼラチンカプセルを含む組成物であって、該ゼラチンカプセルが、ゼラチンカプセルの外表面に接触しているバリア層、バリア層の一部に接触膨張層、少なくとも膨張層を包含する半透過層、およびゼラチンカプセル表面から使用環境まで延びている投与剤形に形成されているかまたは形成可能な出口オリフィスによって囲まれている、組成物(医薬組成物P.4)を提供する。膨張層は、1つ以上の個別のセクション、例えばゼラチンカプセルの対向する側部または端部に位置する2つのセクションに形成され得る。
【0030】
特定の態様において、浸透圧による制御放出経口送達システム(すなわち医薬組成物P.1~P.4)中の本開示の化合物は、液体製剤中であり、ここで、該製剤は、純粋な液体活性剤、溶液、懸濁液、エマルションもしくは自己乳化組成物中の液体活性剤、または同類のものであり得る。
【0031】
ゼラチンカプセル、バリア層、膨張層、半透過層;およびオリフィスの特徴を含む浸透圧による制御放出経口送達システム組成物の更なる情報は、米国特許出願公開第2001/0036472号に見ることができ、当該出願の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
【0032】
式1または1.1以降の化合物または本開示の医薬組成物のための他の浸透圧による制御放出経口送達システムは、米国特許出願公開第2009/0202631号に見ることができ、これら各出願の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。したがって、第4態様の別の一実施態様において、本発明は、(a)第1層および第2層を含む2つ以上の層であって、該第1層が遊離もしくは医薬的に許容される塩形態の式1または1.1以降の化合物または前記医薬組成物を含み、該第2層がポリマーを含む、2つ以上の層;(b)2つ以上の層を囲む外壁;および(c)該外壁におけるオリフィスを含む、組成物またはデバイス(医薬組成物P.5)を提供する。
【0033】
組成物P.5は、好ましくは、3層コアを囲む半透膜を利用し;これらの実施態様において、第1層は、第1薬物層と称され、少量の薬物(例えば式1または1.1以降の化合物)および塩などの浸透圧調整剤を含有し、中間層は、第2薬物層と称され、多量の薬物、添加剤を含有し、塩を含有せず:第3層は、プッシュ層と称され、浸透圧調整剤を含有し、薬物を含有しない(医薬組成物P.6)。少なくとも1つのオリフィスは、カプセル型錠剤の第1薬物層端部の膜を通して穿孔される。
【0034】
医薬組成物P.5またはP.6は、区画を画定する膜であって、内部保護サブコートを囲み、そこに少なくとも1つの出口オリフィスが形成されているかまたは形成可能であり、少なくとも一部が半透過性である膜;出口オリフィスから離れた区画内に位置する膨張層であって、膜の半透過性部分と流体連結している膨張層;出口オリフィスと隣接して位置する第1薬物層;および第1薬物層と膨張層間の区画内に位置する第2薬物層であって、本発明の化合物を遊離またはその医薬的に許容される塩で含む薬物層を含み得る(医薬組成物P.7)。第1薬物層および第2薬物層の相対粘度に応じて、異なる放出プロファイルが得られる。各層の最適な粘度を同定するのは必須である。本発明において、粘度は、塩、塩化ナトリウムの添加によって調節される。コアからの送達プロファイルは、各薬物層の重量、処方、厚さに依存する。
【0035】
特定の実施態様において、本発明は、第1薬物層が塩を含み、第2薬物層が塩を含まない、医薬組成物P.7を提供する。医薬組成物P.5~P.7は、所望により、膜と薬物層との間に流動促進層を含み得る。
【0036】
医薬組成物P.1~P.7は、一般的に、浸透圧による制御放出経口送達システム組成物と称され得る。
【0037】
第3態様において、本発明は、中枢神経系障害の処置または予防方法であって、それを必要とする患者に式1または1.1以降の化合物または医薬組成物2または2.1~2.4またはP.1~P.7を投与することを含む、方法(方法3)を提供する。
【0038】
第3態様の更なる実施態様において、本開示は、方法3を提供し、該方法は、以下のようにさらに記載される:
3.1 中枢神経系障害が、米国特許出願公開第2011/071080号(この出願の内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)に同様に記載される、セロトニン5-HT2A、ドーパミンD2および/またはD1受容体システムおよび/またはセロトニン再取り込みトランスポーター(SERT)経路に関連する障害である、方法3;
3.2 中枢神経系障害が、肥満、不安、うつ病(例えば難治性うつ病およびMDD(大うつ病性障害))、精神病(例えば認知症に関連する精神病、例えば進行性パーキンソン病における幻覚または偏執性妄想)、統合失調症、睡眠障害(特に統合失調症および他の精神および神経疾患に関連する睡眠障害)、性障害、片頭痛、疼痛を伴う状態、社会恐怖症、認知症における激越(アルツハイマー病における激越)、自閉症および関連する自閉症障害における激越、消化管障害、例えば消化管運動の機能不全、および認知症、例えばアルツハイマー病またはパーキンソン病における認知症、方法3または3.1;および気分障害;強迫性障害(OCD)、強迫性パーソナリティ障害(OCPD)、全般性不安障害、社交不安障害、パニック障害、広場恐怖症、強迫性ギャンブル障害、強迫性摂食障害、身体醜形障害、心気症、病的身繕い障害、窃盗症、放火症;注意欠陥・多動性障害(ADHD)、注意欠陥障害(ADD)、衝動制御障害;および関連障害、およびその組合せからなる群より選択される障害である;
3.3 中枢神経系障害が、(1)うつ病に罹患している患者における精神病、例えば統合失調症;(2)精神病、例えば統合失調症に罹患している患者におけるうつ病;(3)精神病、例えば統合失調症またはパーキンソン病に関連する気分障害;(4)精神病、例えば統合失調症またはパーキンソン病に関連する睡眠障害;および(5)物質使用障害および/または物質誘発障害より選択される障害であり、所望により患者が、不安または不安障害の残遺症状に罹患している、方法3または3.1;
3.4 中枢神経系障害が、精神病、例えば統合失調症であり、患者が、うつ病に罹患している患者である、方法3または3.1;
3.5 中枢神経系障害が、強迫性障害(OCD)、強迫性パーソナリティ障害(OCPD)、社交不安障害、パニック障害、広場恐怖症、強迫性ギャンブル障害、強迫性摂食障害、身体醜形障害および衝動制御障害より選択される、方法3または3.1;
3.6 中枢神経系障害が、強迫性障害(OCD)または強迫性パーソナリティ障害(OCPD)である、方法3または3.1;
3.7 中枢神経系障害が、うつ病であり、患者が、精神病、例えば統合失調症、またはパーキンソン病に罹患している患者である、方法3または3.1;
3.8 中枢神経系障害が、睡眠障害である、方法3または3.1;
3.9 睡眠障害が、睡眠維持障害、頻繁な覚醒、および/または休息できていないと感じる目覚めである、方法3.8;
3.10 患者が、うつ病にも罹患している、方法3.7または3.8;
3.11 患者が、精神病、例えば統合失調症にも罹患している、方法3.7、3.8または3.9;
3.12 患者が、パーキンソン病にも罹患している、方法3.7~3.11;
3.13 中枢神経系障害が、うつ病、不安またはその組合せである、方法3または3.1;
3.14 うつ病および/または不安が、急性うつ病および/または急性不安である、方法3.13;
3.15 処置されるべき急性うつ病および/または急性不安が、1週間以内、例えば3日以内、例えば1日以内に軽減される、方法3.14;
3.16 患者が、自殺念慮および/または自殺傾向があると診断されている、方法3.14または3.15;
3.17 処置されるべき状態が、急性不安(例えば、全般性不安障害、パニック障害、特定の恐怖症または社交不安障害または社会的回避に関連する短期間不安エピソード)である、方法3.13~3.16のいずれか;
3.18 処置されるべき状態が、急性うつ病(例えば、急性大うつ病エピソード、急性短期間うつ病エピソード、急性反復性短期うつ病エピソード)である、方法3.13~3.17のいずれか;
3.19 処置されるべき状態が、治療抵抗性うつ病(例えば、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン再取り込み阻害薬(SRI)、三環系抗うつ薬、モノアミンオキシダーゼ阻害薬、ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(NRI)、ドーパミン再取り込み阻害薬(DRI)、SRI/NRI、SRI/DRI、NRI/DRI、SRI/NRI/DRI(トリプル再取り込み阻害薬)、セロトニン受容体アンタゴニスト、またはそのあらゆる組合せより選択される抗うつ薬での処置に反応しない、うつ病)である、方法3.13~3.18のいずれか;
3.20 処置されるべき状態が、双極性うつ病および大うつ病性障害より選択される、方法3.13~3.19のいずれか;
3.21 患者が、処置に対する急性反応を、3週間未満、例えば2週間未満または1週間未満、または1~7日または1~5日または1~3日または1~2日または約1日または2日未満または1日未満(例えば12~24時間)に示す、方法3.13~3.20のいずれか;
3.22 患者が、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、例えばシタロプラム、エシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチンおよびセルトラリンでの処置に反応しないかまたはその副作用に耐えることができない、方法3または3.1~3.21のいずれか;
3.23 患者が、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)、例えばベンラフェキシン、シブトラミン、デュロキセチン、アトモキセチン、デスベンラファキシン、ミルナシプランおよびレボミルナシプランでの処置に反応しないかまたはその副作用に耐えることができない、前記方法のいずれか;
3.24 患者が、抗精神病薬、例えばクロミプラミン、リスペリドン、クエチアピンおよびオランザピンでの処置に反応しないかまたはその副作用に耐えることができない、前記方法のいずれか;
3.25 患者が、慣用の抗精神病薬、例えばクロルプロマジン、ハロペリドール、ドロペリドール、フルフェナジン、ロキサピン、メソリダジン、モリンドン、ペルフェナジン、ピモジド、プロクロルペラジンプロマジン、チオリダジン、チオチキセン、トリフロペラジン、クロザピン、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドンおよびジプラシドンの副作用に耐えることができない、前記方法のいずれか;
3.26 患者が、慣用の抗精神病薬、例えば、ロペリドール、アリピプラゾール、クロザピン、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、およびジプラシドンの副作用に耐えることができない、前記方法のいずれか;
3.27 中枢神経系疾患または障害が、薬物依存(例えば、オピエート薬物依存(すなわちオピオイド使用障害)、コカイン依存、アンフェタミン依存、および/またはアルコール依存)、または薬物またはアルコール依存(例えば、オピエート、コカイン、またはアンフェタミン依存)からの離脱であり、所望により、患者が併存疾患、例えば不安、うつ病または精神病にも罹患しており、方法3または3.1;所望により、患者が、現在または以前にオピエートの過剰摂取にも罹患している;
3.28 患者が、所望により前記の障害のいずれかと合わせて、薬物依存障害に罹患しており、例えば、患者が、オピエート薬物依存および/またはアルコール依存に罹患しているか、または薬物またはアルコール依存からの離脱に罹患しており、所望により、患者が、不安または不安障害の残遺症状、またはうつ病または精神病などに罹患しており;さらに所望により、患者が、オピエートの過剰摂取に罹患している、前記方法のいずれか;
3.29 中枢神経系障害が、疼痛障害、例えば疼痛に関連する状態、例えば頭痛、特発性疼痛、神経障害性疼痛、慢性疼痛(例えば、他の病気のために24時間の長時間処置を必要とする患者における中等度から中重度の慢性疼痛)、線維筋痛症、歯痛、外傷性疼痛または慢性疲労である、方法3または3.1;
3.30 患者が、非麻薬性鎮痛薬および/またはオピエートおよびオピオイド薬に反応しないかまたはその副作用に耐えることができない、あるいはオピエート薬の使用が、例えば物質濫用のためまたは物質濫用の可能性が高いため、該患者では禁忌であり、オピエートおよびオピオイド薬が、例えばモルヒネ、コデイン、テバイン、オリパビン、ジプロピオン酸モルヒネ、ジニコチン酸モルヒネ、ジヒドロコデイン、ブプレノルフィン、エトルフィン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、オキシコドン、オキシモルフォン、フェンタニル、α-メチルフェンタンチル、アルフェンタニル、トレファンチニル、ブリフェンタニル、レミフェンタニル、オクトフェンタニル、スフェンタニル、カルフェンタニル、メペリジン、プロジン、プロメドール、ロポキシフェン、デキストロプロポキシフェン、メサドン、ジフェノキシレート、デゾシン、ペンタゾシン、フェナゾシン、ブトルファノール、ナルブフィン、レボルファノール、レボメトルファン、トラマドール、タペンタドールおよびアニレリジン、またはそれらの任意の組合せを含む、前記方法のいずれか;
3.31 有効量が、1mg~1000mg、好ましくは2.5mg~50mgである、前記方法のいずれか;
3.32 有効量が、1日当たり1mg~100mg、好ましくは1日当たり2.5mg~50mgである、前記方法のいずれか;
3.33 処置されるべき状態が、例えば、ドーパミン作動薬、例えばレボドパおよびレボドパアジュバント(カルビドパ、COMT阻害薬、MAO-B阻害薬)、ドーパミンアゴニスト、および抗コリン作動薬より選択される医薬、例えばレボドパを投与されている患者における、ジスキネジアである、前記方法のいずれか;
3.34 患者がパーキンソン病に罹患している、前記方法のいずれか;
3.35 遊離形態の式1の化合物を投与することを含む、前記方法のいずれか;
3.36 塩形態、例えば医薬的に許容される塩形態の式1の化合物を投与することを含む、方法3.1~3.35のいずれか;
3.37 式1または1.1~1.6のいずれかの化合物を投与することを含む、方法3.1~3.35のいずれか;
3.38 式1または1.1~1.6のいずれかの化合物を、医薬的に許容される希釈剤または担体と混合されて含む、医薬組成物を投与することを含む、先行する方法のいずれか;
3.39 医薬組成物が、医薬組成物2または2.1~2.4のいずれかまたはP.1~P.7のいずれかである、方法3.36;
3.40 約14日間、約30~約180日間にわたる、好ましくは約30、約60または約90日間にわたる化合物の制御および/または持続放出のために製剤化された形態の式1または1.1~1.6のいずれかの化合物を投与することを含む、先行する方法のいずれか;
3.41 方法が、1つ以上の追加の治療薬の併用投与をさらに含み、所望により、本開示の化合物および/または1つ以上の追加の治療薬のいずれかの用量が、該化合物または薬物が単剤療法として用いられるより低い用量で提供される、前記方法のいずれか。
【0039】
本開示の化合物、本開示の医薬組成物または本開示のデポー組成物は、慣用の単剤療法において通常生じる望ましくない副作用を引き起こすことなく組み合される薬物の治療活性を高めるように、特に個々の薬物が単剤療法として用いられる場合より低い投与量にて、第2治療薬と組み合され得る。例えば、本開示の化合物は、他の抗うつ薬、抗精神病薬、他の睡眠薬、および/またはパーキンソン病または気分障害を処置するのに用いられる薬物と同時に(simultaneously)、連続してまたは同期間に(contemporaneously)投与され得る。別の一例において、副作用は、本開示の化合物を1つ以上の第2治療薬と組み合わせて遊離または塩形態で投与することにより軽減または最小化し得て、ここで、(i)第2治療薬または(ii)本開示の化合物および第2治療薬両方の投与量は、薬物/化合物が単剤療法として投与される場合より低い。特定の実施態様において、本開示の化合物は、例えばパーキンソン病の処置において用いられるような、例えばレボドパおよびレボドパアジュバント(カルビドパ、COMT阻害薬、MAO-B阻害薬)より選択されるドーパミン作動薬、ドーパミンアゴニストおよび抗コリン作動薬を投与されている患者においてジスキネジアを処置するのに有用である。
【0040】
物質使用障害および物質誘発障害は、DSMの第5版(精神障害の診断と統計マニュアル、またはDSM-V)により定義される物質関連障害の2つのカテゴリーである。物質使用障害は、個人が、結果として問題を経験するにもかかわらず摂取を継続する物質の使用により生じる症状のパターンである。物質誘発障害は、物質の使用により誘発される障害である。物質誘発障害は、中毒、離脱、物質誘発精神障害、例えば物質誘発精神病、物質誘発双極性および関連障害、物質誘発うつ病性障害、物質誘発不安障害、物質誘発強迫性および関連障害、物質誘発睡眠障害、物質誘発性機能不全、物質誘発せん妄および物質誘発神経認知障害を含む。
【0041】
DSM-Vは、物質使用障害を軽度、中等度または重度に分類する基準を含む。本明細書に記載の方法のいくつかの実施態様において、物質使用障害は、軽度物質使用障害、中等度物質使用障害または重度物質使用障害より選択される。いくつかの実施態様において、物質使用障害は、軽度物質使用障害である。いくつかの実施態様において、物質使用障害は、中等度物質使用障害である。いくつかの実施態様において、物質使用障害は、重度物質使用障害である。
【0042】
不安は、物質使用または物質濫用の処置を受けている患者において極めて一般的な併存障害である。物質濫用障害の一般的処置は、オピオイドパーシャルアゴニストであるブプレノルフィンとオピオイドアンタゴニストであるナロキソンとの組合せであるが、これらの薬物はいずれも、不安に対して顕著な効果がなく、それ故に、第3の薬物、例えばベンゾジアゼピン系抗不安薬も処方しなければならないという共通の結果をもたらす。これは、処置レジメンおよび患者コンプライアンスをより困難にする。対照的に、本開示の化合物は、セロトニン拮抗作用およびドーパミン調節と共にオピエート拮抗作用を提供する。これにより、不安および/またはと併存して物質使用または濫用障害を有する患者の処置が顕著に増強され得る。うつ病はまた、物質使用または薬物濫用の処置を受けている患者に高度にまん延している障害である。したがって、SSRIなどの抗うつ薬は、薬物濫用処置を受けている患者にもしばしば併用される。本開示の化合物はまた、物質使用または薬物濫用、ならびに不安およびうつ病の両方の処置を提供することにより、このような患者の処置を増強し得る。
【0043】
本開示の化合物は、併存不安に罹患している患者の抗不安薬での処置の必要性を軽減する抗不安特性を有し得る。したがって、いくつかの実施態様において、本開示は、中枢神経系障害が、例えば不安の症状に罹患している患者または併存障害または残遺障害として不安と診断された患者における、物質嗜癖、物質使用障害および/または物質誘発障害または物質濫用障害であり、該方法が、抗不安薬、例えばベンゾジアゼピンの更なる投与を含まない、方法3、または方法3.1~3.41のいずれかによる方法を提供する。
【0044】
本開示の更なるいくつかの実施態様において、本開示の医薬組成物または本開示のデポー組成物は、望ましくない副作用を引き起こすことなく組み合される薬物の治療活性を高めるように、特に個々の薬物が単剤療法として用いられる場合より低い投与量にて、第2治療薬と組み合され得る。
【0045】
本開示の化合物は、あらゆるこのような追加の治療薬と同時に(simultaneously)、連続してまたは同期間に(contemporaneously)投与され得る。
【0046】
第3態様の更なる実施態様において、本開示は以下を提供する:
3.42 1つ以上の治療薬が、遊離または医薬的に許容される塩形態の、GABA活性を調節する(例えば、活性を増強し、GABA伝達の促進する)化合物、GABA-Bアゴニスト、5-HT受容体モジュレーター(例えば5-HT1Aアゴニスト、5-HT2Aアンタゴニスト、5-HT2Aインバースアゴニストなど)、メラトニン受容体アゴニスト、イオンチャネルモジュレーター(例えばブロッカー)、セロトニン-2アンタゴニスト/再取り込み阻害薬(SARI)、オレキシン受容体アンタゴニスト、H3アゴニストまたはアンタゴニスト、ノルアドレナリンアゴニストまたはアンタゴニスト、ガラニンアゴニスト、CRHアンタゴニスト、ヒト成長ホルモン、成長ホルモンアゴニスト、エストロゲン、エストロゲンアゴニスト、ニューロキニン-1薬、抗うつ薬、オピエートアゴニストおよび/またはオピエートパーシャルアゴニスト、オピエートアゴニストおよび/またはオピエートインバースアゴニスト、および抗精神病薬、例えば非定型抗精神病薬より選択される、方法3.41;
3.43 治療薬が、GABA活性を調節する(例えば、活性を増強し、GABA伝達の促進する)化合物である、方法3.42;
3.44 GABA化合物が、ドキセピン、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼプ酸、ジアゼパム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、テマゼパム、トリアゾラム、インディプロン、ゾピクロン、エスゾピクロン、ゼレプロン、ゾルピデム、ガボキサドール、ビガバトリン、チアギャビン、EVT201(Evotec Pharmaceuticals)およびエスタゾラムの1つ以上からなる群より選択される、方法3.43;
3.45 治療薬が更なる5HT2aアンタゴニストである、方法3.42;
3.46 該更なる5HT2aアンタゴニストが、ケタンセリン、リスペリドン、エプリバンセリン、ボリナンセリン(Sanofi-Aventis、France)、プルバンセリン、MDL100907(Sanofi-Aventis、France)、HY10275(Eli Lilly)、APD125(Arena Pharmaceuticals、San Diego、CA)およびAVE8488(Sanofi-Aventis、France)の1つ以上より選択される、方法3.42;
3.47 治療薬がメラトニン受容体アゴニストである、方法3.42;
3.48 メラトニン受容体アゴニストが、メラトニン、ラメルテオン(ROZEREM(登録商標)、Takeda Pharmaceuticals、Japan)、VEC-162(Vanda Pharmaceuticals、Rockville、MD)、PD-6735(Phase II Discovery)およびアゴメラチンの1つ以上からなる群より選択される、方法3.47;
3.49 治療薬がイオンチャネルブロッカーである、方法3.42;
3.50 該イオンチャネルブロッカーが、ラモトリジン、ギャバペンチンおよびプレガバリンの1つ以上である、方法3.49;
3.51 治療薬がオレキシン受容体アンタゴニストである、方法3.42;
3.52 オレキシン受容体アンタゴニストが、オレキシン、1,3-ジアリールウレア、SB-334867-a(GlaxoSmithKline、UK)、GW649868(GlaxoSmithKline)およびベンズアミド誘導体からなる群より選択される、方法3.42;
3.53 治療薬が、セロトニン-2アンタゴニスト/再取り込み阻害薬(SARI)である、方法3.42;
3.54 セロトニン-2アンタゴニスト/再取り込み阻害薬(SARI)が、1つ以上のOrg50081(Organon-Netherlands)、リタンセリン、ネファゾドン、サーゾーンおよびトラゾドンからなる群より選択される、方法3.53;
3.55 治療薬が5HTIaアゴニストである、方法3.42;
3.56 5HTIaアゴニストが、レピノタン、サリゾタン、エプタピロン、ブスピロンおよびMN-305(MediciNova、San Diego、CA)の1つ以上からなる群より選択される、方法3.55;
3.57 治療薬がニューロキニン-1薬である、方法3.42;
3.58 ニューロキニン-1薬がカソピタント(GlaxoSmithKline)である、方法3.57;
3.59 治療薬が抗精神病薬である、方法3.42;
3.60 抗精神病薬が、クロルプロマジン、ハロペリドール、ドロペリドール、フルフェナジン、ロキサピン、メソリダジン、モリンドン、ペルフェナジン、ピモジド、プロクロルペラジンプロマジン、チオリダジン、チオチキセン、トリフロペラジン、クロザピン、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドンおよびパリペリドンからなる群より選択される、方法3.59;
3.61 治療薬が抗うつ薬である、方法3.42;
3.62 抗うつ薬が、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シタロプラム、クロミプラミン、デシプラミン、ドキセピン、デュロキセチン、エシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、イミプラミン、イソカルボキサジド、マプロチリン、ミルタザピン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、パロキセチン、硫酸フェネルジン、プロトリプチリン、セルトラリン、トラニルシプロミン、トラゾドン、トリミプラミンおよびベンラフェキシンより選択される、方法3.61;
3.63 抗精神病薬が非定型抗精神病薬である、方法3.42;
3.64 非定型抗精神病薬が、クロザピン、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドンおよびパリペリドンからなる群より選択される、方法3.63;
3.65 治療薬が、モダフィニル、アルモダフィニル、ドキセピン、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼプ酸、ジアゼパム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、テマゼパム、トリアゾラム、インディプロン、ゾピクロン、エスゾピクロン、ゼレプロン、ゾルピデム、ガボキサドール、ビガバトリン、チアギャビン、EVT201(Evotec Pharmaceuticals)、エスタゾラム、ピマバンセリン、ケタンセリン、リスペリドン、エプリバンセリン、ボリナンセリン(Sanofi-Aventis、France)、プルバンセリン、MDL100907(Sanofi-Aventis、France)、HY10275(Eli Lilly)、APD125(Arena Pharmaceuticals、San Diego、CA)、AVE8488(Sanofi-Aventis、France)、レピノタン、サリゾタン、エプタピロン、ブスピロン、MN-305(MediciNova、San Diego、CA)、メラトニン、ラメルテオン(ROZEREM(登録商標)、Takeda Pharmaceuticals、Japan)、VEC-162(Vanda Pharmaceuticals、Rockville、MD)、PD-6735(Phase II Discovery)、アゴメラチン、ラモトリジン、ギャバペンチン、プレガバリン、オレキシン、1,3-ジアリールウレア、SB-334867-a(GlaxoSmithKline、UK)、GW649868(GlaxoSmithKline)、ベンズアミド誘導体、Org50081(Organon-Netherlands)、リタンセリン、ネファゾドン、サーゾーン、トラゾドン、カソピタント(GlaxoSmithKline)、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シタロプラム、クロミプラミン、デシプラミン、ドキセピン、デュロキセチン、エシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、イミプラミン、イソカルボキサジド、マプロチリン、ミルタザピン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、パロキセチン、硫酸フェネルジン、プロトリプチリン、セルトラリン、トラニルシプロミン、トラゾドン、トリミプラミン、ベンラフェキシン、クロルプロマジン、ハロペリドール、ドロペリドール、フルフェナジン、ロキサピン、メソリダジン、モリンドン、ペルフェナジン、ピモジド、プロクロルペラジンプロマジン、チオリダジン、チオチキセン、トリフロペラジン、ブレクスピプラゾール、カリプラジン、アセナピン、ルラシドン、クロザピン、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドンおよびパリペリドンからなる群より選択される、方法3.42;
3.66 治療薬がH3アゴニストである、方法3.42;
3.67 治療薬がH3アンタゴニストである、方法3.42;
3.68 治療薬がノルアドレナリンアゴニストまたはアンタゴニストである、方法3.42;
3.69 治療薬がガラニンアゴニストである、方法3.42;
3.70 治療薬がCRHアンタゴニストである、方法3.42;
3.71 治療薬がヒト成長ホルモンである、方法3.42;
3.72 治療薬が成長ホルモンアゴニストである、方法3.42;
3.73 治療薬がエストロゲンである、方法3.42;
3.74 治療薬がエストロゲンアゴニストである、方法3.42;
3.75 治療薬がニューロキニン-1薬である、方法3.42;
3.76 治療薬が、治療薬抗パーキンソン病薬、例えばL-ドーパ、コカレルドーパ、デュオドーパ、スタレボ、シンメトレル、ベンズトロピン、ビペリデン、ブロモクリプチン、エンタカポン、ペルゴリド、プラミペキソール、プロシクリジン、ロピニロール、セレギリンおよびトルカポンである、方法3.42;
3.77 治療薬が、オピエートアゴニストまたはオピエートパーシャルアゴニスト、例えばμアゴニストまたはパーシャルアゴニスト、またはκアゴニストまたはパーシャルアゴニスト、例えば混合アゴニスト/アンタゴニスト(例えばμパーシャルアゴニスト活性およびκアンタゴニスト活性を有する薬物)である、方法3.42;
3.78 治療薬がブプレノルフィンであり、所望により、該処置が抗不安薬、例えばGABA化合物またはベンゾジアゼピンの併用処置を含まない、方法3.77;
3.79 治療薬が、オピエート受容体アンタゴニストまたはインバースアゴニスト、例えばフルオピエートアンタゴニスト、例えばナロキソン、ナルトレキソン、ナルメフェン、メサドン、ナロルフィン、レバロルファン、サミドルファン、ナロデイン、シプロダイムまたはノルビナルトルフィミンより選択されるものである、方法3.42。
【0047】
本発明の別の一態様において、本開示の化合物(例えば、化合物1または1.1~1.6のいずれか)と、方法3.28~3.79に記載の1つ以上の第2治療薬の組合せは、前記の医薬組成物またはデポー組成物として患者に投与され得る。組合せ組成物は、組み合わせた薬物の混合物、ならびに薬物の2つ以上の別個の組成物を含み得て、ここで個々の組成物が、患者に例えば一緒に共投与され得る。
【0048】
第4態様において、本開示は、方法3または方法3.1~3.79のいずれかにおける、化合物1または1.1~1.6のいずれか、または医薬組成物2または2.1~2.4のいずれかの使用を提供する。
【0049】
第5態様において、本開示は、方法3または3.1~3.79のいずれかで提供される1つ以上の中枢神経系障害の処置または予防のための医薬の製造における、化合物1または1.1~1.6のいずれか、または医薬組成物2または2.1~2.4のいずれかの使用を提供する。
【0050】
第6態様において、本開示は、方法3または3.1~3.79のいずれかにおける使用のための、化合物1または1.1~1.6のいずれか、または医薬組成物2または2.1~2.4のいずれかを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0051】
用語「処置」および「処置すること」は、疾患の症状の予防および処置または改善および/または疾患の原因の処置を包含するものとして理解されるべきである。特定の実施態様において、用語「処置」および「処置すること」は、疾患の症状の予防または改善を指す。
【0052】
用語「患者」は、ヒトまたは非ヒトの患者を含み得る。
【0053】
Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th Edition(「DSM-5」)は、「大うつ病性障害」(MDD)を、同じ2週間の間に5つ以上の一連の症状があると定義しており、症状は、患者の以前の機能からの変化を表わす。5つの症状は、抑うつ気分、ほとんどすべての活動への興味または喜びの著しい低下、著しい体重変化、不眠症または過眠症、精神運動性激越または遅滞、疲労感、無価値感または過度の罪悪感、思考能力または決断力の低下、および死または自殺念慮を繰り返し考えることから選択され、このような症状の各々がほぼ毎日存在する。最小限でも、MDD診断は、5つの症状の1つとして、少なくとも気分の落ち込み、興味または喜びの喪失を必要とする。MDDは、数週間または数か月空いていてもよい1つ以上の「大うつ病エピソード」からなり得る(別々のエピソードとして適格であるために2週間超空ける)。DSM-5は、大うつ病エピソードの間、常に自殺行動のリスクがあることを述べている。
【0054】
その性質により、MDDは、DSM-5が、患者がMDDと同じ症状の多くを有するが、少なくとも2年間持続する「持続性うつ病性障害」と区別する限り、急性障害である。MDDに加えて、DSM-5はまた、「短期間のうつ病エピソード」を、抑うつ効果と、少なくとも4日から14日未満のMDDを定義する他の症状のうちの少なくとも4つを有すると定義している。DSMはさらに、「反復性短期うつ病」を、少なくとも1か月に1回、2~13日間、少なくとも12か月連続して、抑うつ気分と、少なくとも4つの他のうつ病の症状が同時に存在することと定義している。したがって、反復性短期うつ病は、同様に、定期的に再発するうつ病の短期エピソードからなる。
【0055】
DSM-5はまた、双極性障害に罹患している患者の診断基準の1つとして、大うつ病エピソードを含む。したがって、大うつ病エピソードを呈している患者は、大うつ病性障害または双極性障害のいずれかに罹患している場合がある。
【0056】
大うつ病エピソードの初期段階中のうつ病の効果的な処置が、このようなエピソードがある1日1日は患者に深刻な結果をもたらし得て、さらに典型的なSSRI抗うつ薬が有益な効果が現れるまで2~4週間かかるため、特に必要であることは明らかである。同じことが、短期間のうつ病エピソードおよび反復性短期うつ病の個々のエピソードの処置にも当てはまる。
【0057】
したがって、本明細書で用いる用語「急性うつ病」は、うつ病の短期または慢性エピソードであり得るものの初期期間を指す(例えば、2日から2週間、または2週間から2か月、または2か月から2年、またはそれ以上続く)。したがって、「急性うつ病」は、大うつ病エピソード、短期間うつ病エピソードまたは反復性短期うつ病エピソードの初期機関を指し得る。うつ病エピソードのこのような急性期の処置が当技術分野において特に必要とされている。このうつ病の急性期中に開始された処置は、それに反応する患者において無期限に継続され得る。
【0058】
DSM-5は、全般性不安障害、パニック障害、社交不安障害および特定の恐怖症を含む、様々な不安障害を定義する。上記のうつ病性障害と同様に、不安障害は、慢性障害の経過中に持続し得る、パニック発作などの短期間の反復性エピソードによって特徴付けられ得る。例えば、全般性不安障害は、多くの事象または活動について、少なくとも6か月間より多くの日数で生じる過度の不安および心配を必要とすると、DSM-5によって定義されている。パニック発作は、数分以内にピークに達する激しい恐怖または激しい不快感の突然の急増として定義されるが、予期される刺激または予期しない刺激のいずれかに応答して繰り返し再発し得る。したがって、上記のうつ病性障害について、不安またはパニックの症状を処置し得る速効性抗不安薬が必要とされているが、不安障害の最も一般的な処置のいくつかは、緩和させるのに2~4週間かかるSSRIおよび他の抗うつ薬である。
【0059】
本明細書で用いる「急性不安」は、不安の慢性経過の一部であり得る、例えば1日以下から1週間続く不安の短期間エピソードを指す(例えば、2日から2週間、または2週間から2か月、または2か月から2年、またはそれ以上続く)。したがって、「急性不安」は、パニック発作、または誘発刺激または事象(例えば、特定の恐怖症を誘発する刺激、社交不安または全般性不安を誘発する事象)に対する不安反応の特定の事例が含まれ得る。このような不安エピソードの急性期の処置が当技術分野において特に必要とされている。不安のこの急性期中に開始された処置は、それに反応する患者において無期限に継続され得る。
【0060】
社会的回避は、不安障害、特に社交不安障害に罹患している患者、および外傷性不安障害に罹患している患者において、重大で衰弱させる症状であり得る。社会的回避は、しばしば、重度の不安障害のある人が家族関係または雇用関係を維持できるかどうかの重要な決定要因の1つである。5-HT2Aおよびドーパミン受容体活性を有する特定の置換融合γ-カルボリン、例えばルマテペロンが、精神障害の感情的経験症状(例えば統合失調症の感情的経験陰性症状)を処置するのに効果的であることを予想外にも見出した。統合失調症の陰性症状は、感情的経験(例えば感情的離脱、受動的社会的離脱、能動的社会的回避)と感情的表現(例えば感情鈍麻、信頼関係の欠如、自発性の欠如、運動遅滞)の2つのカテゴリーに分類し得る。急性増悪統合失調症の患者の2つの臨床試験において、ルマテペロンを1日1回(60mgPO)最大28日間、投与すると、プラセボと比較して感情的経験の症状が著しくかつ予想外にも改善した。これらは、対人機能と最も高い相関関係がある症状である。したがって、式Iの化合物を含むこのような化合物は、社交不安障害などの他の精神障害、または社会的離脱および社会的回避が症状である他の精神障害の感情的経験症状を処置するのに極めて効果的であり得る。
【0061】
他に明記されていないかまたは内容から明らかでない場合、本明細書で用いられる下記の用語は、下記意味を有する:
【0062】
用語「医薬的に許容される希釈剤または担体」は、医薬製剤において有用であり、アレルゲン性、発熱性または病原性である物質および病気を潜在的に引き起こすかもしくは促進することが知られている物質を含まない希釈液および担体を意味することが意図される。したがって、医薬的に許容される希釈液または担体は、体液、例えば血液、尿、髄液、唾液など、ならびにその構成成分、例えば血液細胞および循環タンパク質を除外する。適切な医薬的に許容される希釈液および担体は、医薬製剤に関するいくつかの周知の学術書のいずれか、例えばAnderson, Philip O.; Knoben, James E.; Troutman, William G, eds., Handbook of Clinical Drug Data, Tenth Edition, McGraw-Hill, 2002; Pratt and Taylor, eds., Principles of Drug Action, Third Edition, Churchill Livingston, New York, 1990; Katzung, ed., Basic and Clinical Pharmacology, Ninth Edition, McGraw Hill, 20037ybg; Goodman and Gilman, eds., The Pharmacological Basis of Therapeutics, Tenth Edition, McGraw Hill, 2001; Remington's Pharmaceutical Sciences, 20th Ed., Lippincott Williams & Wilkins., 2000; and Martindale, The Extra Pharmacopoeia, Thirty-Second Edition (The Pharmaceutical Press, London, 1999)に見ることができ、これらすべては、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
【0063】
化合物についての「精製された」、「精製された形態の」および「単離および精製された形態の」なる用語は、合成プロセス(例えば反応混合物)または天然源またはそれらの組合せから単離された後の該化合物の物理的状態を指す。したがって、化合物についての「精製された」、「精製された形態の」および「単離および精製された形態の」なる用語は、本明細書に記載または当業者に周知の標準的な分析技術により特徴付けるのに十分な純度の、精製プロセスまたは本明細書に記載もしくは当業者に周知のプロセス(例えばクロマトグラフィー、再結晶化、LC-MSおよびLC-MS/MS技術など)から得られた後の該化合物の物理的状態を指す。
【0064】
治療的使用を指す場合の用語「同時」は、2つ以上の活性成分が同じまたは異なる時に与えられるかどうかにかかわらず、または同じまたは異なる投与経路によって与えられるかどうかにかかわらず、疾患または障害の処置のためのレジメンの一部として患者に2つ以上の活性成分を投与することを意味する。2つ以上の有効成分の同時投与は、同じ日の異なる時間に、または異なる日に、または異なる頻度で行われ得る。
【0065】
治療的使用を指す場合の用語「同時」は、同じ投与経路による同時またはほぼ同時の2つ以上の有効成分の投与を意味する。
【0066】
治療的使用を指す場合の用語「別々に」は、異なる投与経路による同時またはほぼ同時の2つ以上の有効成分の投与を意味する。
【0067】
本開示の化合物は、医薬品としての使用が意図され、それ故に医薬的に許容される塩が好ましい。医薬用途に適さない塩は、例えば本発明の遊離化合物の単離または精製に有用であり得て、それ故に本開示の化合物の範囲に含まれる。
【0068】
本開示の化合物は、1つ以上のキラル炭素原子を含み得る。したがって、化合物は、個々の異性体、例えばエナンチオマーまたはジアステレオマー形態で、または個々の形態の混合物、例えばラセミ/ジアステレオマー混合物として存在する。不斉中心が(R)-、(S)-、または(R,S)-配置にあるあらゆる異性体が存在し得る。本発明は、個々の光学活性異性体両方およびその混合物(例えばラセミ/ジアステレオマー混合物)を包含すると理解されるべきである。したがって、本発明の化合物は、ラセミ混合物であってもよく、または、例えば主に純粋、または実質的に純粋な異性体形態、例えば70%超のエナンチオマー/ジアステレオマー過剰率(「ee」)、好ましくは80%超のee、より好ましくは90%超のee、最も好ましくは%超のeeであってもよい。該異性体の精製および該異性体混合物の分離は、当該技術分野で公知の標準的な技術(例えば、カラムクロマトグラフィー、分取TLC、分取HPLC、擬似移動床など)により達成され得る。
【0069】
二重結合または環についての置換基の性質による幾何異性体は、シス(Z)またはトランス(E)体であり得て、両方の異性体が本発明の範囲に包含される。
【0070】
本開示の化合物は、安定または不安定な同位体を包含することも意図される。安定同位体は、同種の豊富な核種(すなわち元素)と比較して1つの追加の中性子を含有する非放射性同位体である。このような同位体を含む化合物の活性は保持され、このような化合物はまた非同位体類似体の薬物動態の測定に関して有用性を有することが予想される。例えば、本開示の化合物の特定位置における水素原子は、重水素(非放射性の安定な同位体)で置き換えられ得る。公知の安定同位体の例としては、重水素、13C、15N、18Oが挙げられるがこれらに限定されない。あるいは、同種の豊富な核種(すなわち元素)と比較して追加の中性子を含有する放射性同位体である不安定同位体、例えば、123I、131I、125I、11C、18Fは、I、CおよびFの対応する豊富な種に置き換わり得る。本発明の化合物の有用な同位体の別の例は、11C同位体である。これらの放射性同位体は、本発明の化合物の放射性イメージングおよび/または薬物動態試験に有用である。また、より重い同位体で分布する天然の同位体を有する原子の置換は、これらの置換が代謝的に責任のある部位で行われる場合、薬物動態速度の望ましい変化をもたらし得る。例えば、水素の代わりに重水素(2H)を組み込むと、水素の位置が酵素または代謝活性の部位である場合、代謝分解を遅らせ得る。
【0071】
本開示の化合物は、デポー製剤、例えば本明細書に記載のポリマーマトリックス中に本発明の化合物を分散、溶解または被包させることにより、デポー製剤として含まれ得て、化合物は、ポリマーが時間とともに分解するにつれて持続的に放出される。ポリマーマトリックスからの本発明の化合物の放出は、化合物を例えば医薬デポー組成物から、その医薬デポーが投与される対象体、例えば温血動物、例えばヒトへ制御および/または遅延および/または持続放出することを提供する。したがって、医薬デポーは、本発明の化合物を対象体へ特定の疾患または病状の処置に有効な濃度にて長時間、例えば14~180日間、好ましくは約30、約60または約90日間にわたって送達する。
【0072】
本発明の組成物(例えば本発明のデポー組成物)におけるポリマーマトリックスに有用なポリマーは、ヒドロキシ脂肪酸のポリエステルおよびその誘導体、または他の化学物質、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリクエン酸、ポリリンゴ酸、ポリ-β-ヒドロキシ酪酸、ε-カプロラクトン開環重合体、乳酸-グリコール酸共重合体、2-ヒドロキシ酪酸-グリコール酸共重合体、ポリ乳酸-ポリエチレングリコール共重合体またはポリグリコール酸-ポリエチレングリコー共重合体)、アルキルα-シアノアクリレート(例えばポリ(ブチル2-シアノアクリレート))、ポリアルキレンオキサレート(例えばポリトリメチレンオキサレートまたはポリテトラメチレンオキサレート)、ポリオルトエステル、ポリカルボネート(例えばポリエチレンカルボネートまたはポリエチレンプロピレンカルボネート)、ポリオルト-カルボネート、ポリアミノ酸(例えばポリ-γ-L-アラニン、ポリ-γ-ベンジル-L-グルタミン酸またはポリ-y-メチル-L-グルタミン酸)、ヒアルロン酸エステルなどのポリマーを含み得て、これらポリマーの1つ以上が用いられ得る。
【0073】
ポリマーが共重合体である場合、それは、ランダム、ブロックおよび/またはグラフト共重合体のいずれかであり得る。上記α-ヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシジカルボン酸およびヒドロキシトリカルボン酸が、その分子中に光学活性を有する場合、D-異性体、L-異性体および/またはDL-異性体のいずれか1つが用いられ得る。とりわけ、α-ヒドロキシカルボン酸ポリマー(好ましくは、乳酸-グリコール酸重合体)、そのエステル、ポリ-α-シアノアクリル酸エステルなどが用いられ得て、乳酸-グリコール酸共重合体(ポリ(乳酸-α-グリコール酸)またはポリ(乳酸-グリコール酸共重合体)とも称され、以下PLGAを称する)が好ましい。したがって、一態様において、ポリマーマトリックスに有用なポリマーは、PLGAである。本明細書で用いられる、用語PLGAは、乳酸の重合体を含む(ポリ乳酸、ポリ(乳酸)またはPLAとも称される)。最も好ましくは、ポリマーは、生分解性ポリ(d,l-乳酸-グリコール酸共重合体)ポリマーである。
【0074】
好ましい実施態様において、本発明のポリマーマトリックスは、生体適合性および生分解性である。用語「生体適合性」は、毒性がなく、発癌性がなく、そして体組織において著しく炎症を誘導しない高分子物質と定義される。マトリックス物質は、生分解性であるべきであり、ここで、高分子物質は、身体で容易に排泄可能な生成物に体内プロセスによって分解されるべきであり、体内に蓄積されるべきでない。生体分解の生成物はまた、ポリマーマトリックスが身体と生体適合性であるという点で身体と生体適合性であるべきである。ポリマーマトリックス物質の特定の有用な例としては、ポリ(グリコール酸)、ポリ-D,L-乳酸、ポリ-L-乳酸、前記の共重合体、ポリ(脂肪族カルボン酸)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリ(オルトカルボネート)、ポリ(アセタール)、ポリ(乳酸-カプロラクトン)、ポリオルトエステル、ポリ(グリコール酸-カプロラクトン)、ポリ無水物、および天然ポリマー、例えばアルブミン、カゼイン、およびワックス、例えばグリセロールモノおよびジステアレートなどが挙げられる。本発明の実施において用いるのに好ましいポリマーは、dl(ポリ乳酸-グリコール酸共重合体)である。このような共重合体におけるラクチド対グリコリドのモル比は、およそ75:25から50:50の範囲であることが好ましい。
【0075】
有用なPLGAポリマーの重量平均分子量は、約5,000~500,000ダルトン、好ましくは約150,000ダルトンであり得る。達成すべき分解速度に依存して、種々の分子量のポリマーを用い得る。薬物放出の拡散メカニズムについて、ポリマーは、すべての薬物がポリマーマトリックスから放出されるまで無傷のままであるべきであり、その後分解するべきである。薬物はまた、ポリマー添加剤が生体浸食される(bioerode)場合、ポリマーマトリックスから放出され得る。
【0076】
PLGAは、任意の慣用の方法により製造されてもよく、または商業的に入手してもよい。例えば、PLGAは、環状ラクチド、グリコリドなどから適切な触媒での開環重合により製造され得る(欧州特許第58481号;Effects of polymerization variables on PLGA properties: molecular weight, composition and chain structure参照)。
【0077】
PLGAは、生理学的条件下で(例えば、ヒトなどの温血動物の組織に見ることができる水および生物学的酵素の存在下で)加水分解可能であって酵素的に切断可能であるエステル結合の分解により固形ポリマー組成物全体が分解して乳酸およびグリコール酸を形成することによって生分解性であると考えられる。乳酸およびグリコール酸のいずれも、水溶性で、通常の代謝の無毒性の生成物であり、これは、さらに分解されて、二酸化炭素と水を形成する。言い換えれば、PLGAは、水の存在下で、例えばヒトなどの温血動物の体内でそのエステル基の加水分解によって分解されて、乳酸およびグリコール酸を生じ、酸性微小環境を作ると考えられる。乳酸およびグリコール酸は、通常の生理学的条件下のヒトなどの温血動物の体内における様々な代謝経路の副産物であり、それ故に良好な忍容性を示し、最小の全身毒性をもたらす。
【0078】
別の一実施態様において、本発明に有用なポリマーマトリックスは、ポリエステルの構造が星形である星形ポリマーを含み得る。これらのポリエステルは、酸性残基鎖により囲まれる中心部分として単一のポリオール残基を有する。ポリオール部分は、例えばグルコースまたはマンニトールであり得る。これらのエステルは、公知であって、英国特許出願公開第2,145,422号および米国特許第5,538,739号に記載されており、これら各出願の内容は、出典明示により本明細書の一部とする。
【0079】
星形ポリマーは、ポリヒドロキシ化合物、例えばポリオール、例えばグルコースまたはマンニトールを開示剤として用いて製造され得る。ポリオールは、少なくとも3つのヒドロキシ基を含有し、最大約20,000ダルトンの分子量を有し、エステルの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、例えば平均3つのヒドロキシ基を有するポリオールはエステル基の形態であり、これらはポリラクチドまたはコ-ポリラクチド鎖を含有する。分岐ポリエステル、例えばポリ(d,l-乳酸-グリコール酸共重合体)は、複数のポリラクチド直鎖を有する中心グルコース部分を有する。
【0080】
前記の本発明のデポー組成物(例えばポリマーマトリックスにおける組成物6および6.1~6.10)は、本発明の化合物が分散または被包しているマイクロ粒子もしくはナノ粒子の形態または液体形態のポリマーを含み得る。「マイクロ粒子」は、粒子のマトリックスとして作用するポリマー内に本発明の化合物が分散または溶解している溶液または固体形態のいずれかで本発明の化合物を含有する固形粒子を意味する。ポリマーマトリックスの適切な選択により、得られたマイクロ粒子が拡散放出性および生分解放出性の両方を示すマイクロ粒子製剤が作られ得る。
【0081】
ポリマーがマイクロ粒子形態であるとき、マイクロ粒子は、任意の適切な方法を用いて、例えば溶媒蒸発法または溶媒抽出法により製造され得る。例えば、溶媒蒸発法において、本発明の化合物およびポリマーを、揮発性有機溶媒(例えば、アセトンなどのケトン、クロロホルムまたは塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素、ハロゲン化芳香族性炭化水素、ジオキサンなどの環状エーテル、酢酸エチルなどのエステル、アセトニトリルなどのニトリル、またはエタノールなどのアルコール)に溶解させて、適切なエマルション安定化剤(例えばポリビニルアルコール、PVA)を含有する水相に分散させ得る。その後、有機溶媒を蒸発させて、本発明の化合物が被包されたマイクロ粒子を提供する。溶媒抽出法において、本発明の化合物およびポリマーを、極性溶媒(例えばアセトニトリル、ジクロロメタン、メタノール、酢酸エチルまたはギ酸メチル)に溶解させて、その後、水相(例えば水/PVA溶液)に分散させ得る。エマルションを調製して、本発明の化合物が被包されたマイクロ粒子を提供する。スプレードライは、マイクロ粒子を製造するための別の製剤技術である。
【0082】
本発明のマイクロ粒子を製造する別の方法はまた、米国特許第4,389,330号および米国特許第4,530,840号の両方に記載されている。
【0083】
本発明のマイクロ粒子は、注射可能な組成物における使用に許容されるサイズ範囲のマイクロ粒子を製造できる任意の方法によって製造され得る。一の好ましい製造方法は、米国特許第4,389,330号に記載されているものである。この方法において、活性剤を適切な溶媒に溶解または分散させる。活性剤含有溶媒に、所望の活性剤負荷を有する生成物を提供する活性成分と相対的な量のポリマーマトリックス物質を加える。所望により、マイクロ粒子生成物の成分すべてを溶媒媒体中で一緒に混合し得る。
【0084】
本発明の化合物および本発明の実施において用いられ得るポリマーマトリックス物質の溶媒としては、有機溶媒、例えばアセトン;ハロゲン化炭化水素、例えばクロロホルム、塩化メチレンなど;芳香族炭化水素化合物;ハロゲン化芳香族炭化水素化合物;環状エーテル;アルコール、例えばベンジルアルコール;酢酸エチルなどが挙げられる。一の実施態様において、本発明の実施における使用のための溶媒は、ベンジルアルコールと酢酸エチルの混合物であり得る。本発明に有用なマイクロ粒子の製造に関する更なる情報は、米国特許出願公開第2008/0069885号に見ることができ、該出願の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
【0085】
マイクロ粒子に組み込まれる本開示の化合物の量は、通常約1重量%~約90重量%、好ましくは30~50重量%、より好ましくは35~40重量%の範囲である。重量%は、マイクロ粒子の総重量当たりの本開示の化合物部分を意味する。
【0086】
医薬デポー組成物は、医薬的に許容される希釈剤または担体、例えば水混和性の希釈剤または担体を含み得る。
【0087】
浸透圧による制御放出経口送達システム組成物の詳細は、米国特許出願公開第2009/0202631号に見ることができ、当該出願の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
【0088】
「治療有効量」は、疾患または障害に罹患している対象体に投与されるとき、処置に予定している時間にわたって疾患または障害の軽減、寛解または退行を生じるのに有効な(例えば医薬デポーにおいて含有されるような)本発明の化合物の量である。
【0089】
本発明の実施に用いられる投与量は、例えば処置されるべき特定の疾患または状態、用いられる本発明の特定の化合物および所望の療法に応じて当然変化する。他に断らない限り、投与のための本発明の化合物の量(遊離塩基または塩形態として投与される)は、遊離塩基形態の本発明の化合物の量を指すかまたはそれに基づく(すなわち、量の計算は遊離塩基量に基づく)。
【0090】
本発明の化合物は、経口、非経腸(静脈内、筋肉内または皮下)または経皮を含む任意の満足な経路によって投与され得るが、好ましくは経口投与される。特定の実施態様において、本発明の化合物は、例えばデポー製剤中であり、好ましくは非経腸、例えば注射により投与される。
【0091】
一般に、上記の方法3以降についての満足な結果は、好ましくは経口投与により、1日1回約1mg~100mg程度、好ましくは2.5mg~50mg、例えば1日1回2.5mg、5mg、l0mg、20mg、30mg、40mgまたは50mgの投与量にて経口投与することで得られることが示されている。特に睡眠障害に関するいくつかの実施態様において、満足な結果は、好ましくは経口投与により、1日1回遊離または医薬的に許容される塩形態で本発明の化合物を約2.5mg~5mg程度、例えば2.5mg、3mg、4mgまたは5mgの投与量にて経口投与することで得られることが示される。
【0092】
デポー組成物がより長期間の作用を達成するために用いられる本明細書に記載の障害の処置のために、投与量は、短期間作用組成物と比較して高く、例えば1~100mgより高く、例えば25mg、50mg、100mg、500mg、1,000mg、または1000mg超である。本開示の化合物の作用持続時間は、ポリマー組成、すなわちポリマー:薬物の比率およびマイクロ粒子サイズの操作により制御され得る。本発明の組成物がデポー組成物である場合、注射による投与が好ましい。
【0093】
本開示の化合物の医薬的に許容される塩は、慣用の化学方法により塩基性または酸性部分を含有する親化合物から合成され得る。一般に、このような塩は、これら化合物の遊離塩基形態を化学量論量の適切な酸と水もしくは有機溶媒またはその2つの混合物中で反応させることにより製造され得て;一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルなどの非水性媒体が好ましい。
【0094】
本開示の化合物を含む医薬組成物は、従来の希釈剤または添加剤(例としてはゴマ油があげられるがこれに限定されない)およびガレヌス分野で公知の技術を用いて製造され得る。したがって、経口剤形は、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤などを含み得る。
【実施例
【0095】
先行技術は、本明細書で開示する化合物に関連する縮合複素環γ-カルボリンに一般的に適用できる多くの合成方法を開示している。当業者は、米国再発行特許第39,680号;米国特許第7,183,282号;米国特許第8,309,722号;米国特許第9,751,883号;および米国特許出願公開第2017/0319580号に様々に記載されている手順に従い得て、またはそれを適用し得る。
【0096】
製造された化合物のジアステレオマーは、室温にてChiralpak(登録商標)AY-H(5μ、30×250mm)を用いてHPLCによって分離し、10%エタノール/90%ヘキサン/0.1%ジメチルエチルアミンで溶出することができる。ピークを230nmにて検出して、98~99.9%eeのジアステレオマーを生成することができる。
【0097】
実施例1:(6bR,10aS)-8-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-メチル-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オンの合成
【化3】
水素化ナトリウム(鉱油中60%、32mg、0.786mmol)を、(6bR,10aS)-8-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オン(0.1g、0.262mmol)のDMF(1mL)中溶液に0℃にて加える。混合物を0℃にて30分間撹拌し、ヨードメタン(19.6μL、0.315mmol)を加える。反応混合物を0℃にて1時間撹拌し、水(4mL)を加える。混合物を酢酸エチル(3×4ml)で抽出し、合わせた有機相を無水Na2SO4で乾燥する。混合物をろ過し、ろ液を蒸発乾固する。残渣を、酢酸エチル中における0~100%混合溶媒[酢酸エチル/メタノール/7N NH3(10:1:0.1v/v)]を用いたカラムクロマトグラフィーにより精製する。表題化合物をオフホワイト固体として得る(110g、収率99%)。MS (ESI) m/z 396.2 [M+H]+.1H NMR (500 MHz, Chloroform-d): δ 7.02 - 6.95 (m, 2H), 6.95 - 6.85 (m, 2H), 6.85 - 6.76 (m, 3H), 4.09 - 3.99 (m, 3H), 3.93 (m, 1H), 3.44 (m, 2H), 3.36 (s, 3H), 3.16 - 2.65 (m, 4H), 2.29 (m, 3H), 2.13 (m, 1H), 1.73 (m, 2H).
【0098】
実施例2:4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド-[3',4':4,5]-ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-(7H)-イル)-1-(4-フルオロフェニル)-1-ブタノンの合成
【化4】
(6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド-[3',4':4,5]-ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン(約11.8g、約50mmol)、4-クロロ-4'-フルオロブチロフェノン(15.0g、74.8mmol)、トリエチルアミン(30mL、214mmol)、およびヨウ化カリウム(12.6g、76mmol)のジオキサン(65ml)およびトルエン(65ml)中の懸濁液を、7時間加熱還流する。ろ過および溶媒の蒸発後、200mlのDCMを加える。DCM溶液を食塩水で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、約55mlまで濃縮する。濃縮溶液を600mlの0.5N HClエーテル溶液に滴下する。固体をろ過し、エーテルで洗浄し、その後水中に溶解させる。得られた水溶液を2N NaOHで塩基性化し、DCMで抽出する。DCM層を合わせ、食塩水(2×200mL)で洗浄し、乾燥する(Na2SO4)。溶媒を蒸発させ、シリカゲルで残渣をクロマトグラフィーして、4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド-[3',4':4,5]-ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-(7H)-イル)-1-(4-フルオロフェニル)-1-ブタノンを得る。
【0099】
実施例3:(6bR,10aS)-8-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オンの合成
【化5】
(6bR,10aS)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オン(100mg、0.436mmol)、1-(3-クロロプロキシ)-4-フルオロベンゼン(100μL、0.65mmol)およびKI(144mg、0.87mmol)のDMF(2mL)中の混合物を、アルゴンで3分間脱気し、DIPEA(150μL、0.87mmol)を加える。得られた混合物を78℃に加熱し、この温度で2時間撹拌する。混合物を室温まで冷却し、その後ろ過する。ろ過ケーキを、溶離剤としてのメタノール/7N NH3のメタノール中の混合物(1:0.1v/v)中における0~100%酢酸エチルのグラジェントを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、部分的に精製された生成物を得て、これをさらに、0.1%ギ酸を含有する水中における0~60%アセトニトリルのグラジェントを用いたセミ分取HPLCシステムで16分間かけて精製して、固体として表題生成物を得る(50mg、収率30%)。MS (ESI) m/z 406.2 [M+1]+. 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 10.3 (s, 1H), 7.2 - 7.1 (m, 2H), 7.0 - 6.9 (m, 2H), 6.8 (dd, J = 1.03, 7.25 Hz, 1H), 6.6 (t, J = 7.55 Hz, 1H), 6.6 (dd, J = 1.07, 7.79 Hz, 1H), 4.0 (t, J = 6.35 Hz, 2H), 3.8 (d, J = 14.74 Hz, 1H), 3.3 - 3.2 (m, 3H), 2.9 (dd, J = 6.35, 11.13 Hz, 1H), 2.7 - 2.6 (m, 1H), 2.5 - 2.3 (m, 2H), 2.1 (t, J = 11.66 Hz, 1H), 2.0 (d, J = 14.50 Hz, 1H), 1.9 - 1.8 (m, 3H), 1.7 (t, J = 11.04 Hz, 1H).
【0100】
実施例4:実施例1、2および3の化合物の受容体結合プロファイル
受容体結合を、実施例1、2および3の化合物(それぞれ式1、式Bおよび式Aに対応する)について決定する。下記文献の手順を用い、これらの文献の各々は出典明示によりその全体として本明細書の一部とする:5-HT2A:Bryant, H.U. et al. (1996), Life Sci., 15:1259-1268;D2:Hall, D.A. and Strange, P.G. (1997), Brit. J. Pharmacol., 121:731-736;D1:Zhou, Q.Y. et al. (1990), Nature, 347:76-80;SERT:Park, Y.M. et al. (1999), Anal. Biochem., 269:94-104;μオピエート受容体:Wang, J.B. et al. (1994), FEBS Lett., 338:217-222。
【0101】
一般的に、結果は、試験化合物の存在下で得られた、対照特異的結合のパーセント:
【数1】
として、および対照特異的結合の阻害パーセント:
【数2】
として表される。
【0102】
IC50値(対照特異的結合の最大阻害の半分を生じる濃度)およびヒル係数(nH)を、ヒル式カーブフィッティング:
【数3】
[式中、Y=特異的結合、A=曲線の左漸近線、D=曲線の右漸近線、C=化合物濃度、C50=IC50およびnH=傾斜因子]
を用いて平均複製値で作成した競合曲線の非線形回帰分析により決定する。この分析は、社内ソフトウェアを用いて実施され、市販のソフトウェアSigmaPlot(登録商標)4.0 Windows(登録商標)用(SPSS Inc.による著作権1997)により作成したデータとの比較によりバリデートした。阻害係数(Ki)を、チェン・プルソフ式:
【数4】
[式中、L=アッセイにおける放射性リガンドの濃度およびKD=受容体に対する放射性リガンドの親和性]
を用いて計算した。スキャッチャードプロットを用いて、KDを決定する。
【0103】
下記の受容体親和性の結果を得た:
【表1】
【0104】
実施例1の化合物を、アゴニストシグナル伝達アッセイおよびアンタゴニストシグナル伝達アッセイの両方において、ヒトD2S受容体を発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を用いる細胞ベースの機能アッセイでさらに試験する。化合物のアゴニストまたはアンタゴニスト活性を評価するために、フォルスコリン刺激cAMP蓄積を阻害するか、または30nMのキンピロールによって生成される阻害を逆転させるこれらの化合物の能力を決定する。
【0105】
ヒト組換え(hD2S)受容体(FAST-0102C)を発現するCHO-K1細胞は、抗生物質を含まない培地で試験前に増殖させ、その後、PBS-EDTA(5mM EDTA)で穏やかに洗い流して引き離し、遠心分離で回収して、アッセイ緩衝液(5mM KCl、1.25mM MgSO4、124mM NaCl、25mM HEPES、13.3mMグルコース、1.25mM KH2PO4、1.45mM CaCl2、0.5g/LプロテアーゼフリーBSA、1mM IBMXを添加)に再懸濁させる。
【0106】
アゴニスト試験では、12μLの細胞(2,500細胞/ウェル)を、6μLのフォルスコリン(10μMの最終アッセイ濃度)および6μLの試験化合物と、濃度を増加させながら384ウェルプレートのウェルにおいて混合し、その後30分間室温でインキュベートする。溶解緩衝液を加えて1時間インキュベートした後、Cisbioの「cAMP Dynamic2アッセイキット」(Cisbio、62AM4PEB)を用いて、cAMP濃度を測定する。すべてのアッセイポイントを3回繰り返して測定し、データを標準偏差と共に平均値として示す。カーブフィッティングを、XLfitソフトウェア(IDBS)を用いて実施し、親和性定数を、4パラメーターロジスティックフィットを用いて決定する。
【0107】
アンタゴニスト試験では、12μLの細胞(2,500細胞/ウェル)を、6μLの試験化合物と、濃度を増加させながら384ウェルプレートのウェルにおいて混合し、その後10分間室温でインキュベートする。その後、キンピロール(最終アッセイ濃度30nM、測定されたEC80に対応)とフォルスコリン(10μM最終アッセイ濃度)の混合物6μLを加え、プレートを30分間室温でインキュベートする。溶解緩衝液を加えて1時間インキュベートした後、Cisbioの「cAMP Dynamic2アッセイキット」(Cisbio、62AM4PEB)を用いて、cAMP濃度を測定する。すべてのアッセイポイントを3回繰り返して測定し、データを標準偏差と共に平均値として示す。カーブフィッティングを、XLfitソフトウェア(IDBS)を用いて実施し、親和性定数を、4パラメーターロジスティックフィットを用いて決定する。アンタゴニストでは、見かけの解離定数(KB)を、修正チェン・プルソフ式KB=IC50/(1+(A/EC50A))[式中、A=アッセイにおける参照アゴニストの濃度(30nMのキンピロール)、EC50A=参照アゴニストのEC50値(キンピロールのEC50は3.2nM)]を用いて計算する。
【0108】
結果を下記表に示す。
【表2】
【0109】
結果は、実施例1の化合物が、D2S受容体でアンタゴニスト活性を有するが、検出可能なアゴニスト活性を有しないことを示す。
【0110】
実施例5:動物薬物動態データ
標準的な手順を用いて、実施例1、2および3の化合物の薬物動態プロファイルをラットにおいて試験する。
【0111】
実施例5a:実施例1の化合物のラットのPK試験
外科的に改変されたラットを、ケージごとに1匹飼育し、試験開始前に水と市販の齧歯動物用飼料を自由に摂取させる。試験前および試験中の最低12時間、投与後4時間まで、動物に餌を与えず、投与後4時間の時点で餌を戻す。動物にIV、SCおよびPOで投与し、下記表の試験デザインに従って血液試料を採取する。血液試料(約0.25mL)をJVCまたは尾静脈より採取し、抗凝固剤としてヘパリンナトリウムを含む冷却した採血管に入れ、遠心分離まで氷上で保存する。血液試料を、2~8℃の温度にて3,000gで5分間遠心分離する。血漿試料中の薬物レベルを、MS/MS検出を備えたHPLCにより定量化する。群幾何平均濃度対時間データに基づく薬物動態パラメーターを、非コンパートメント医薬品データ分析ソフトウェアPK Solutions 2.0(Summit Research Services、Montrose、CO)を用いて計算する。
【表3】
【0112】
結果を下記表に要約する。
【表4】
【0113】
実施例5b:実施例2の化合物のラットのPK試験
この試験は、血液試料を下記表に示すとおり採取して、実施例5aに概説したものと同じ手順に従って実施する。
【表5】
【0114】
代表的な結果を以下に示す(*は、測定可能な定量レベル未満の血漿濃度を示す):
【表6】
【0115】
実施例5c:実施例3の化合物のラットのPK試験
第1の試験では、実施例3の化合物を、45%Trapposolビヒクル中の1mg/kgの静脈内ボーラス(IV)、または0.5%CMCビヒクル中の10mg/kgの経口(PO)のいずれかによりラットに投与する(各群N=3)。第2の試験では、実施例2の化合物を、各々45%Trapposolビヒクル中の10mg/kgのPOまたは3mg/kgの皮下(SC)で、ラットに投与する(各群N=6)。薬物の血漿濃度を0~48時間の時点で測定する。代表的な結果を以下に示す(*は、測定可能な定量レベル未満の血漿濃度を示す):
【表7】
【0116】
総合すると、これらの結果は、本開示の化合物が十分に吸収されて脳および組織に分布し、1日1回の治療用量の投与を可能にする適度に長い半減期で保持されることを示す。
【国際調査報告】