(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-10
(54)【発明の名称】ターシャリーエーテルを用いてイソオレフィンポリマーを生成する方法
(51)【国際特許分類】
C08F 210/12 20060101AFI20220203BHJP
C08F 4/54 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
C08F210/12
C08F4/54
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534767
(86)(22)【出願日】2019-12-16
(85)【翻訳文提出日】2021-08-13
(86)【国際出願番号】 CA2019051818
(87)【国際公開番号】W WO2020124212
(87)【国際公開日】2020-06-25
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516186267
【氏名又は名称】アランセオ・シンガポール・プライヴェート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ディヴィッド・トンプソン
【テーマコード(参考)】
4J015
4J100
【Fターム(参考)】
4J015DA04
4J015DA05
4J015EA03
4J100AA06P
4J100AA08P
4J100AA09P
4J100AA17P
4J100AA18P
4J100AR16P
4J100AR17P
4J100AR18P
4J100AS01P
4J100AS02P
4J100AS03P
4J100AS11P
4J100AS13P
4J100AS15P
4J100CA04
4J100DA04
4J100DA19
4J100FA02
4J100FA08
4J100FA19
4J100GA02
4J100JA03
4J100JA11
4J100JA28
4J100JA29
4J100JA43
4J100JA51
4J100JA57
4J100JA58
4J100JA67
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1種のホウ素化合物又はアルミニウム化合物及び少なくとも1種のターシャリーアルキルエーテルを含む開始剤系の存在下で、イソブテン及び任意選択でさらなるモノマーを重合することにより、ポリイソブテン又はブチルゴム等のイソオレフィンポリマーを調製するための効率的な方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)有機希釈剤と、イソオレフィンである少なくとも一種のモノマーと、
・ 少なくとも一種のホウ素化合物又はアルミニウム化合物、及び
・ 少なくとも一種のターシャリーエーテル
を含む開始剤系と、を含む反応媒体を提供する工程、
並びに
b)前記開始剤系の存在下において前記反応媒体内で前記少なくとも一種のモノマーを重合して、イソオレフィンポリマー、前記有機希釈剤及び任意選択で残留モノマーを含む生成物媒体を形成する工程、
を含む、イソオレフィンポリマーを調製する方法。
【請求項2】
前記イソオレフィンはイソブテンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応媒体は、マルチオレフィン、好ましくは、イソプレン、ブタジエン、2-メチルブタジエン、2,4-ジメチルブタジエン、ピペリリン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、2-ネオペンチルブタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、2,5-ジメチル-2,4-ヘキサジエン、2-メチル-1,4-ペンタジエン、4-ブチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジブチル-1,3-ペンタジエン、2-エチル-1,3-ペンタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,6-ヘプタジエン、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン若しくは1-ビニル-シクロヘキサジエン、又は前述したものの混合物をさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記マルチオレフィンはイソプレンである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記反応媒体は、少なくとも一種のイソオレフィンと共重合され、イソオレフィンでもマルチオレフィンでもないモノマーをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記希釈剤は、塩化メチル、塩化メチレン又は塩化エチル等のハイドロクロロカーボン;式:C
xH
yF
z(式中、xは1から40の整数であり、y及びzは整数であり少なくとも1である)によって表されるハイドロフルオロカーボン;不飽和ハイドロフルオロカーボン;炭化水素、好ましくはアルカンを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ホウ素化合物又はアルミニウム化合物は、式MX
3(式中、Mはホウ素又はアルミニウムであり、Xはハロゲンである)によって表される化合物、好ましくは三塩化アルミニウムであるか、又は式MR
(m)X
(3-m)(式中、Mはホウ素又はアルミニウムであり、Xはハロゲンであり、RはC
1~C
12アルキル基及びC
7~C
14アルキルアリール基からなる群から選択される一価の炭化水素基であり、mは1又は2である)によって表される化合物である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ターシャリーエーテルは、メチルtert.-ブチルエーテル(MTBE)、エチルtert.-ブチルエーテル(ETBE)、メチルtert.-アミルエーテル(MTAE)及びフェニルtert.-ブチルエーテル(PTBE)又はこれらの混合物であり、メチルtert.-ブチルエーテル(MTBE)、エチルtert.-ブチルエーテル(ETBE)、メチルtert.-アミルエーテル(MTAE)又はこれらの混合物が好ましく、メチルtert.-ブチルエーテル(MTBE)がさらにより好ましい、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記イソオレフィンポリマーは、14.0から20.0、好ましくは14.0から17.0の1,4-イソプレン構造の分岐不飽和構造に対するモル比を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記イソオレフィンポリマーは、0.9から2.0、好ましくは1.2から2.0のC
21のC
13に対する質量比を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記イソオレフィンポリマーは、800ppm未満、好ましくは50から800ppm、さらにより好ましくは200から700ppmの量でC
13構造及びC
21構造を含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記イソオレフィンポリマーは、1.5から4.5の、ゲル浸透クロマトグラフィーにより決定される質量平均分子量と数平均分子量の比によって測定される多分散指数を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記イソオレフィンポリマーをゴム製品に形成する工程、及び任意選択で前記ゴム製品を硬化する工程をさらに含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記イソオレフィンポリマーと少なくとも一種の第二のゴムを混合する工程、任意選択で前記イソオレフィンポリマー及び第二のゴムをゴム製品に形成する工程、並びに任意選択で前記ゴム製品を硬化する工程をさらに含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種のホウ素化合物又はアルミニウム化合物及び少なくとも1種の第二級アルキルエーテル又はターシャリーアルキルエーテルを含む開始剤系の存在下で、イソブテン及び任意選択でさらなるモノマーを重合することにより、ポリイソブテン又はブチルゴム等のイソオレフィンポリマーを調製するための効率的な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イソオレフィンから誘導される繰り返し単位を含むポリマーは、工業的には、カルボカチオン重合プロセスによって調製される。特に重要なものは、ポリイソブテン及びブチルゴムであり、それは、イソブチレンと、少量のマルチオレフィン、たとえばイソプレンのコポリマーである。
【0003】
イソオレフィンのカルボカチオン重合及びそれとマルチオレフィンとの共重合は、気候的に複雑である。その開始剤系は、典型的には、2つの成分、すなわち開始剤と三塩化アルミニウム等のルイス酸とからなり、大規模な商業プロセスで頻繁に使用されている。
【0004】
開始剤の例には、プロトン源、たとえば、ハロゲン化水素、アルコール、フェノール、カルボン酸及びスルホン酸、並びに水が含まれる。
【0005】
開始工程の間、イソオレフィンがルイス酸及び開始剤と反応して、カルベニウムイオンを生成し、それがさらにモノマーと反応して新しいカルベニウムイオンを形成する(いわゆる成長反応工程である)。
【0006】
モノマーのタイプ、希釈剤又は溶媒のタイプ及びその極性、重合温度、さらにはルイス酸と開始剤との特有の組み合わせが、成長反応の化学、したがって、成長しているポリマー鎖中へのモノマーの組み込みに影響する。
【0007】
産業界では、一般的に、希釈剤としての塩化メチル中でポリイソブチレン、ブチルゴム及びさらにはイソオレフィンポリマーを製造するためのスラリー重合プロセスの使用が広く受け入れられてきた。典型的には、その重合プロセスは、低温、一般的には-90℃より低い温度で実施される。塩化アルキル、特に塩化メチルが採用されるのは各種の理由からであり、その理由には、それがモノマー及び塩化アルミニウム開始剤を溶解するが、ポリマー反応生成物は溶解しないことも含まれる。さらに、塩化メチルは、適切な凝固点及び沸点を有しており、それによって、それぞれ低温重合ならびにポリマー及び未反応モノマーからの効果的な分離を可能としている。塩化メチル中でのスラリー重合プロセスは、最大40重量%以上の反応混合物中のポリマー濃度を達成することが可能であるという利点を提供し、それに対して溶液重合においては、典型的には、目標とする分子量に応じて技術的に実現可能な最大20重量%のポリマー濃度となる。反応装置の表面での熱交換を介して重合熱を除去できるように、重合溶液の許容可能な比較的低い粘度を維持する必要がある。塩化メチル又はアルカン中でのスラリー及び溶液重合プロセスを使用して、高分子量のポリイソブチレン及びイソブチレン-イソプレンのブチルゴムポリマーが製造されている。
【0008】
あるいは、国際公開第2010/006983号及び国際公開第2011/089092号に開示されている例のようにノルマルペンタン及びイソペンタン並びにヘキサン等の脂肪族溶媒さらにはその混合物を使用して重合することもでき、これは、ポリマーの化学修飾等の下流のプロセスにおいて大きな利点となる。
【0009】
イソオレフィンポリマー、たとえば、重合の間に調製されたポリイソブテン又はブチルゴムは、これらの脂肪族媒体に溶解されるため、これらのプロセスは、通常、溶液プロセスと呼ばれる。
【0010】
スラリー法と溶液法の両方に共通する特徴は、開始剤の反応性が高いため、温度制御が用いられ、重合媒体の不均一性に起因するいわゆる「ホットスポット」を回避することが困難でありながら、所望の製品品質を達成し、リアクターファウリング、すなわち反応器の表面にポリマーの堆積物が形成されることを回避するために重要であるということである。このような堆積物は、その断熱効果(insulating effect)により冷却効率を低減させ、反応器内の温度を急激に上昇させ、発熱性重合及び高速な生成の速度を高めることがあり、さらにこの熱は再び十分に取り除かれない。最終的に、これは熱暴走さえももたらし得る。
【0011】
過去には、反応器内の所望の(低い)温度を維持する目的で、外部又は内部の冷却をサポートするいくつかの試みがなされてきた。
【0012】
一般的に使用されているアルミニウムやホウ素の開始剤を、他のより反応性の低い開始剤に置き換えることによって、又は重合の間の発熱より均等に分散させることを可能にするためにかさ高い(bulky)フッ素化置換基によってそれらを修飾することによって、別ン試みがなされてきた。しかしながら、これらの試みは経済的に実現可能なものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第2010/006983号
【特許文献2】国際公開第2011/089092号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、優れたプロセス制御を備えた高品質のイソオレフィンポリマーを調製するための用途の広い方法を提供することが、依然として必要とされていた。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様によると、イソオレフィンポリマーを調製するための方法が提供され、その方法は、少なくとも、
a)有機希釈剤と、イソオレフィンである少なくとも一種のモノマーと、
・ 少なくとも一種のホウ素化合物又はアルミニウム化合物、及び
・ 少なくとも一種のターシャリーエーテル
を含む開始剤系と、を含む反応媒体を提供する工程、
並びに
b)前記開始剤系の存在下において前記反応媒体内で前記少なくとも一種のモノマーを重合して、イソオレフィンポリマー、前記有機希釈剤及び任意選択で残留モノマーを含む生成物媒体を形成する工程、
を含む。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の詳細な説明
本発明にはさらに、本明細書に開示される好ましい実施形態、範囲、パラメーターの任意の相互の組み合わせ、または開示されたパラメーターの最も広い範囲が包含される。
【0017】
イソオレフィン及び他のモノマー
【0018】
工程a)において、有機希釈剤、イソオレフィンである少なくとも一種のモノマー、及び開始剤系を含む反応媒体が提供される。
【0019】
本明細書で使用される場合、「イソオレフィン」という用語は、1個の炭素-炭素-二重結合を含み、その二重結合の1個の炭素原子が、2個のアルキル基で置換され、他の炭素原子が、2個の水素原子で置換されているか、または1個の水素原子と1個のアルキル基で置換されている化合物を表している。
【0020】
好適なイソオレフィンの例としては、4~16個の炭素原子、好ましくは4~7個の炭素原子を有するイソオレフィン、たとえばイソブテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテンが挙げられる。好ましいイソオレフィンは、イソブテンである。
【0021】
反応媒体は、少なくとも一種のイソオレフィンと共重合されるさらなるモノマーを含んでもよい。そのようなさらなるモノマーには、マルチオレフィンが含まれる。
【0022】
本明細書で使用される場合、「マルチオレフィン」という用語は、共役であっても非共役であってもよい、2個以上の炭素-炭素-二重結合を含む化合物を表している。
【0023】
好適なマルチオレフィンの例には、イソプレン、ブタジエン、2-メチルブタジエン、2,4-ジメチルブタジエン、ピペリリン(piperyline)、3-メチル-1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、2-ネオペンチルブタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、2,5-ジメチル-2,4-ヘキサジエン、2-メチル-1,4-ペンタジエン、4-ブチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジブチル-1,3-ペンタジエン、2-エチル-1,3-ペンタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,6-ヘプタジエン、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、および1-ビニル-シクロヘキサジエンが含まれる。
【0024】
好ましいマルチオレフィンは、イソプレンおよびブタジエンである。イソプレンが特に好ましい。
【0025】
反応媒体は、追加的に又は代替的に、少なくとも一種のイソオレフィンと共重合され、イソオレフィンでもマルチオレフィンでもないさらなるモノマーを含んでもよい。そのようなさらなるモノマーには、β-ピネン、スチレン、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、о-、m-及びp-メチル-スチレン等のо-、m-及びp-アルキルスチレンが含まれる。
【0026】
一実施形態において、イソブテンは単独モノマーとして使用され、本明細書で使用される場合、「単独」という用語は、用いられる全てのモノマーの99.9質量%以上の割合を表す。
【0027】
一実施形態において、工程a)で使用されるモノマーは、用いられる全てのモノマーの総質量に基づいて、80質量%~99.5質量%、好ましくは85質量%~98.0質量%、より好ましくは85質量%~96.5質量%、さらにより好ましくは85質量%~95.0質量%の範囲の少なくとも一種のイソオレフィン、及び0.5質量%~20質量%、好ましくは2.0質量%~15質量%、より好ましくは3.5質量%~15質量%、さらにより好ましくは5.0質量%~15質量%の範囲の少なくとも一種のマルチオレフィンを含んでもよい。
【0028】
別の実施形態において、モノマー混合物は、用いられる全てのモノマーの総質量に基づいて、90質量%~95質量%の範囲の少なくとも一種のイソオレフィン及び5質量%~10質量%の範囲のマルチオレフィンを含む。さらにより好ましくは、モノマー混合物は、用いられる全てのモノマーの総質量に基づいて、92質量%~94質量%の範囲の少なくとも一種のイソオレフィン及び6質量%~8質量%の範囲の少なくとも一種のマルチオレフィンモノマーを含む。イソオレフィンは、好ましくはイソブテンであり、マルチオレフィンは好ましくはイソプレンである。
【0029】
反応媒体において少なくとも一種のマルチオレフィンが用いられる場合、最終的な生成されるコポリマーのマルチオレフィン含量は、典型的には0.1mol%以上、好ましくは0.1mol%~15mol%、別の実施形態においては0.5mol%以上、好ましくは0.5mol%~10mol%、別の実施形態においては0.7mol%以上、好ましくは0.7~8.5mol%、特には0.8~1.5、または1.5~2.5mol%、または2.5~4.5mol%、または4.5~8.5mol%であり、特にイソブテンおよびイソプレンが用いられる場合にそうである。
【0030】
別の実施形態において、本発明において生成されるコポリマーのマルチオレフィン含量は、0.1mol%以上、好ましくは0.1mol%~3mol%であり、特にイソブテンおよびイソプレンが用いられる場合にそうである。
【0031】
一実施形態において、モノマーは、特にそれらが任意選択の工程c)からリサイクルされる場合、工程a)で使用する前に精製される。モノマーの精製は、適切なモレキュラーシーブまたはアルミナベースの吸着剤物質を含む吸着剤カラム内を通過させることによって実施されてもよい。重合反応への妨害を最小限にするために、反応に対して毒として作用する、水ならびにアルコールおよびその他の有機酸素化剤などの物質を合計した濃度を、重量ベースで約10ppm未満にまで下げるのが好ましい。
【0032】
有機希釈剤
【0033】
「有機希釈剤」という用語には、反応条件下では液体である、希釈性または溶解性の有機化学物質が包含される。モノマーまたは開始剤系の成分と反応しないか、または感知できる程度まで反応しない任意の好適な有機希釈剤を使用することができる。
【0034】
しかしながら、当業者であれば、希釈剤と、モノマーまたは開始剤系の成分との間の相互作用を認識する。
【0035】
さらに、「有機希釈剤」という用語には、少なくとも2種の希釈剤の混合物も含まれる。
【0036】
有機希釈剤の例としては、ハイドロクロロカーボン、たとえば、塩化メチル、塩化メチレン、または塩化エチルが挙げられる。
【0037】
有機希釈剤のさらなる例としては、式:CxHyFzで表されるハイドロフルオロカーボンが挙げられ、ここで、xは、1~40、別の場合では1~30、別の場合では1~20、別の場合では1~10、別の場合では1~6、別の場合では2~20、別の場合では3~10、別の場合では3~6、最も好ましくは1~3の整数であり、yおよびzは整数であり、少なくとも1である。
【0038】
1つの実施形態においては、ハイドロフルオロカーボンが、たとえば、フルオロメタン;ジフルオロメタン;トリフルオロメタン;フルオロエタン;1,1-ジフルオロエタン;1,2-ジフルオロエタン;1,1,1-トリフルオロエタン;1,1,2-トリフルオロエタン;1,1,2,2-テトラフルオロエタン;1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン;1-フルオロプロパン;2-フルオロプロパン;1,1-ジフルオロプロパン;1,2-ジフルオロプロパン;1,3-ジフルオロプロパン;2,2-ジフルオロプロパン;1,1,1-トリフルオロプロパン;1,1,2-トリフルオロプロパン;1,1,3-トリフルオロプロパン;1,2,2-トリフルオロプロパン;1,2,3-トリフルオロプロパン;1,1,1,2-テトラフルオロプロパン;1,1,1,3-テトラフルオロプロパン;1,1,2,2-テトラフルオロプロパン;1,1,2,3-テトラフルオロプロパン;1,1,3,3-テトラフルオロプロパン;1,2,2,3-テトラフルオロプロパン;1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン;1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパン;1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン;1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン;1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロパン;1,1,1,2,2,3-ヘキサフルオロプロパン;1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン;1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン;1,1,1,2,2,3,3-ヘプタフルオロプロパン;1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン;1-フルオロブタン;2-フルオロブタン;1,1-ジフルオロブタン;1,2-ジフルオロブタン;1,3-ジフルオロブタン;1,4-ジフルオロブタン;2,2-ジフルオロブタン;2,3-ジフルオロブタン;1,1,1-トリフルオロブタン;1,1,2-トリフルオロブタン;1,1,3-トリフルオロブタン;1,1,4-トリフルオロブタン;1,2,2-トリフルオロブタン;1,2,3-トリフルオロブタン;1,3,3-トリフルオロブタン;2,2,3-トリフルオロブタン;1,1,1,2-テトラフルオロブタン;1,1,1,3-テトラフルオロブタン;1,1,1,4-テトラフルオロブタン;1,1,2,2-テトラフルオロブタン;1,1,2,3-テトラフルオロブタン;1,1,2,4-テトラフルオロブタン;1,1,3,3-テトラフルオロブタン;1,1,3,4-テトラフルオロブタン;1,1,4,4-テトラフルオロブタン;1,2,2,3-テトラフルオロブタン;1,2,2,4-テトラフルオロブタン;1,2,3,3-テトラフルオロブタン;1,2,3,4-テトラフルオロブタン;2,2,3,3-テトラフルオロブタン;1,1,1,2,2-ペンタフルオロブタン;1,1,1,2,3-ペンタフルオロブタン;1,1,1,2,4-ペンタフルオロブタン;1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン;1,1,1,3,4-ペンタフルオロブタン;1,1,1,4,4-ペンタフルオロブタン;1,1,2,2,3-ペンタフルオロブタン;1,1,2,2,4-ペンタフルオロブタン;1,1,2,3,3-ペンタフルオロブタン;1,1,2,4,4-ペンタフルオロブタン;1,1,3,3,4-ペンタフルオロブタン;1,2,2,3,3-ペンタフルオロブタン;1,2,2,3,4-ペンタフルオロブタン;1,1,1,2,2,3-ヘキサフルオロブタン;1,1,1,2,2,4-ヘキサフルオロブタン;1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロブタン、1,1,1,2,3,4-ヘキサフルオロブタン;1,1,1,2,4,4-ヘキサフルオロブタン;1,1,1,3,3,4-ヘキサフルオロブタン;1,1,1,3,4,4-ヘキサフルオロブタン;1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタン;1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロブタン;1,1,2,2,3,4-ヘキサフルオロブタン;1,1,2,2,4,4-ヘキサフルオロブタン;1,1,2,3,3,4-ヘキサフルオロブタン;1,1,2,3,4,4-ヘキサフルオロブタン;1,2,2,3,3,4-ヘキサフルオロブタン;1,1,1,2,2,3,3-ヘプタフルオロブタン;1,1,1,2,2,4,4-ヘプタフルオロブタン;1,1,1,2,2,3,4-ヘプタフルオロブタン;1,1,1,2,3,3,4-ヘプタフルオロブタン;1,1,1,2,3,4,4-ヘプタフルオロブタン;1,1,1,2,4,4,4-ヘプタフルオロブタン;1,1,1,3,3,4,4-ヘプタフルオロブタン;1,1,1,2,2,3,3,4-オクタフルオロブタン;1,1,1,2,2,3,4,4-オクタフルオロブタン;1,1,1,2,3,3,4,4-オクタフルオロブタン;1,1,1,2,2,4,4,4-オクタフルオロブタン;1,1,1,2,3,4,4,4-オクタフルオロブタン;1,1,1,2,2,3,3,4,4-ノナフルオロブタン;1,1,1,2,2,3,4,4,4-ノナフルオロブタン;1-フルオロ-2-メチルプロパン;1,1-ジフルオロ-2-メチルプロパン;1,3-ジフルオロ-2-メチルプロパン;1,1,1-トリフルオロ-2-メチルプロパン;1,1,3-トリフルオロ-2-メチルプロパン;1,3-ジフルオロ-2-(フルオロメチル)プロパン;1,1,1,3-テトラフルオロ-2-メチルプロパン;1,1,3,3-テトラフルオロ-2-メチルプロパン;1,1,3-トリフルオロ-2-(フルオロメチル)プロパン;1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-2-メチルプロパン;1,1,3,3-テトラフルオロ-2-(フルオロメチル)プロパン;1,1,1,3-テトラフルオロ-2-(フルオロメチル)プロパン;フルオロシクロブタン;1,1-ジフルオロシクロブタン;1,2-ジフルオロシクロブタン;1,3-ジフルオロシクロブタン;1,1,2-トリフルオロシクロブタン;1,1,3-トリフルオロシクロブタン;1,2,3-トリフルオロシクロブタン;1,1,2,2-テトラフルオロシクロブタン;1,1,3,3-テトラフルオロシクロブタン;1,1,2,2,3-ペンタフルオロシクロブタン;1,1,2,3,3-ペンタフルオロシクロブタン;1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロシクロブタン;1,1,2,2,3,4-ヘキサフルオロシクロブタン;1,1,2,3,3,4-ヘキサフルオロシクロブタン;1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロブタン、等の飽和ハイドロフルオロカーボンからなる群から選択される。
【0039】
特に好ましいHFCとしては、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、1,1-ジフルオロエタン、1,1,1-トリフルオロエタン、フルオロメタン、および1,1,1,2-テトラフルオロエタンが挙げられる。
【0040】
1つのさらなる実施形態において、ハイドロフルオロカーボンが、たとえば、フッ化ビニル;1,2-ジフルオロエテン;1,1,2-トリフルオロエテン;1-フルオロプロペン、1,1-ジフルオロプロペン;1,2-ジフルオロプロペン;1,3-ジフルオロプロペン;2,3-ジフルオロプロペン;3,3-ジフルオロプロペン;1,1,2-トリフルオロプロペン;1,1,3-トリフルオロプロペン;1,2,3-トリフルオロプロペン;1,3,3-トリフルオロプロペン;2,3,3-トリフルオロプロペン;3,3,3-トリフルオロプロペン;2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン;1-フルオロ-1-ブテン;2-フルオロ-1-ブテン;3-フルオロ-1-ブテン;4-フルオロ-1-ブテン;1,1-ジフルオロ-1-ブテン;1,2-ジフルオロ-1-ブテン;1,3-ジフルオロプロペン;1,4-ジフルオロ-1-ブテン;2,3-ジフルオロ-1-ブテン;2,4-ジフルオロ-1-ブテン;3,3-ジフルオロ-1-ブテン;3,4-ジフルオロ-1-ブテン;4,4-ジフルオロ-1-ブテン;1,1,2-トリフルオロ-1-ブテン;1,1,3-トリフルオロ-1-ブテン;1,1,4-トリフルオロ-1-ブテン;1,2,3-トリフルオロ-1-ブテン;1,2,4-トリフルオロ-1-ブテン;1,3,3-トリフルオロ-1-ブテン;1,3,4-トリフルオロ-1-ブテン;1,4,4-トリフルオロ-1-ブテン;2,3,3-トリフルオロ-1-ブテン;2,3,4-トリフルオロ-1-ブテン;2,4,4-トリフルオロ-1-ブテン;3,3,4-トリフルオロ-1-ブテン;3,4,4-トリフルオロ-1-ブテン;4,4,4-トリフルオロ-1-ブテン;1,1,2,3-テトラフルオロ-1-ブテン;1,1,2,4-テトラフルオロ-1-ブテン;1,1,3,3-テトラフルオロ-1-ブテン;1,1,3,4-テトラフルオロ-1-ブテン;1,1,4,4-テトラフルオロ-1-ブテン;1,2,3,3-テトラフルオロ-1-ブテン;1,2,3,4-テトラフルオロ-1-ブテン;1,2,4,4-テトラフルオロ-1-ブテン;1,3,3,4-テトラフルオロ-1-ブテン;1,3,4,4-テトラフルオロ-1-ブテン;1,4,4,4-テトラフルオロ-1-ブテン;2,3,3,4-テトラフルオロ-1-ブテン;2,3,4,4-テトラフルオロ-1-ブテン;2,4,4,4-テトラフルオロ-1-ブテン;3,3,4,4-テトラフルオロ-1-ブテン;3,4,4,4-テトラフルオロ-1-ブテン;1,1,2,3,3-ペンタフルオロ-1-ブテン;1,1,2,3,4-ペンタフルオロ-1-ブテン;1,1,2,4,4-ペンタフルオロ-1-ブテン;1,1,3,3,4-ペンタフルオロ-1-ブテン;1,1,3,4,4-ペンタフルオロ-1-ブテン;1,1,4,4,4-ペンタフルオロ-1-ブテン;1,2,3,3,4-ペンタフルオロ-1-ブテン;1,2,3,4,4-ペンタフルオロ-1-ブテン;1,2,4,4,4-ペンタフルオロ-1-ブテン;2,3,3,4,4-ペンタフルオロ-1-ブテン;2,3,4,4,4-ペンタフルオロ-1-ブテン;3,3,4,4,4-ペンタフルオロ-1-ブテン;1,1,2,3,3,4-ヘキサフルオロ-1-ブテン;1,1,2,3,4,4-ヘキサフルオロ-1-ブテン;1,1,2,4,4,4-ヘキサフルオロ-1-ブテン;1,2,3,3,4,4-ベキサフルオロ-1-ブテン;1,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロ-1-ブテン;2,3,3,4,4,4-ヘキサフルオロ-1-ブテン;1,1,2,3,3,4,4-ヘプタフルオロ-1-ブテン;1,1,2,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1-ブテン;1,1,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1-ブテン;1,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1-ブテン;1-フルオロ-2-ブテン;2-フルオロ-2-ブテン;1,1-ジフルオロ-2-ブテン;1,2-ジフルオロ-2-ブテン;1,3-ジフルオロ-2-ブテン;1,4-ジフルオロ-2-ブテン;2,3-ジフルロ-2-ブテン;1,1,1-トリフルオロ-2-ブテン;1,1,2-トリフルオロ-2-ブテン;1,1,3-トリフルオロ-2-ブテン;1,1,4-トリフルオロ-2-ブテン;1,2,3-トリフルオロ-2-ブテン;1,2,4-トリフルオロ-2-ブテン;1,1,1,2-テトラフルオロ-2-ブテン;1,1,1,3-テトラフルオロ-2-ブテン;1,1,1,4-テトラフルオロ-2-ブテン;1,1,2,3-テトラフルオロ-2-ブテン;1,1,2,4-テトラフルオロ-2-ブテン;1,2,3,4-テトラフルオロ-2-ブテン;1,1,1,2,3-ペンタフルオロ-2-ブテン;1,1,1,2,4-ペンタフルオロ-2-ブテン;1,1,1,3,4-ペンタフルオロ-2-ブテン;1,1,1,4,4-ペンタフルオロ-2-ブテン;1,1,2,3,4-ペンタフルオロ-2-ブテン;1,1,2,4,4-ペンタフルオロ-2-ブテン;1,1,1,2,3,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン;1,1,1,2,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン;1,1,1,3,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン;1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン;1,1,2,3,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン;1,1,1,2,3,4,4-ヘプタフルオロ-2-ブテン;1,1,1,2,4,4,4-ヘプタフルオロ-2-ブテン;およびそれらの混合物等の不飽和ハイドロフルオロカーボンからなる群から選択される。
【0041】
有機希釈剤のさらなる例としては、ハイドロクロロフルオロカーボンが挙げられる。
【0042】
有機希釈剤のさらなる例としては、炭化水素、好ましくはアルカンが挙げられ、さらなる好ましい実施形態は、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、メチルシクロペンタン、イソヘキサン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2-メチルブタン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、3-エチルペンタン、2,2-ジメチルペンタン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、3,3-ジメチルペンタン、2-メチルヘプタン、3-エチルヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン、2,2,4-トリメチルペンタン、オクタン、ヘプタン、ブタン、ノナン、デカン、ドデカン、ウンデカン、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、1,1-ジメチルシクロペンタン、cis-1,2-ジメチルシクロペンタン、trans-1,2-ジメチルシクロペンタン、trans-1,3-ジメチル-シクロペンタン、エチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンからなる群から選択される有機希釈剤である。
【0043】
炭化水素希釈剤のさらなる例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、オルト-キシレン、パラ-キシレン、およびメタ-キシレンが挙げられる。
【0044】
好適な有機希釈剤としては、ハイドロクロロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、および炭化水素からなる群から選択される、少なくとも2種の化合物の混合物がさらに挙げられる。特定の組合せとしては、ヒドロクロロカーボンとヒドロフルオロカーボンとの混合物、たとえば塩化メチルと1,1,1,2-テトラフルオロエタンとの混合物、特には40~60容量%の塩化メチルと、40~60容量%の1,1,1,2-テトラフルオロエタンとの混合物であり、前述の2種の希釈剤を合計したものが、全希釈剤の90~100容量%、好ましくは95~100容量%であり、100容量%までの残りとしては、他のハロゲン化炭化水素が含まれる;又は、塩化メチルと少なくとも1種のアルカンとの混合物、若しくは複数のアルカンの混合物、たとえば、少なくとも90重量%、好ましくは95重量%の、1013hPaの圧力で-5℃~100℃、または別の実施形態においては35℃~85℃の沸点を有する複数のアルカンを含む混合物が挙げられる。別の実施形態においては、アルカンの少なくとも99.9重量%、好ましくは100重量%が、1013hPaの圧力で、100℃以下、好ましくは35~100℃の範囲、より好ましくは90℃以下、さらにより好ましくは35~90℃の範囲の沸点を有する。
【0045】
工程b)で意図している重合の性質に応じて有機希釈剤を選択して、スラリー重合又は溶液重合を可能とする。
【0046】
開始剤系
【0047】
モノマーは、記開始剤系の存在下において反応媒体内で重合され、イソオレフィンポリマー、有機希釈剤及び任意選択で残留モノマーを含む生成物媒体を形成する。
【0048】
開始剤系は、
・ 少なくとも一種のホウ素化合物又はアルミニウム化合物、及び
・ 少なくとも一種のターシャリーエーテル
任意選択で
・ 少なくとも一種のさらなる活性化化合物
を含む。
【0049】
好適なホウ素化合物又はアルミニウム化合物は、式MX3(式中、Mはホウ素又はアルミニウムであり、Xはハロゲンである)によって表される化合物である。そのような化合物の例には、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、及び三臭化ホウ素が挙げられ、三塩化アルミニウムが好ましい。
【0050】
さらに好適なホウ素化合物又はアルミニウム化合物は、式MR(m)X(3-m)(式中、Mはホウ素又はアルミニウムであり、Xはハロゲンであり、RはC1~C12アルキル基及びC7~C14アルキルアリール基からなる群から選択される一価の炭化水素基であり、mは1又は2である)によって表される化合物である。「アルキルアリール」という用語は、脂肪族構造と芳香族構造の両方を含有する基を指し、その基は脂肪族の位置(aliphatic position)にある。
【0051】
そのような化合物には、メチルアルミニウムジブロミド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジブロミド、エチルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミド、ブチルアルミニウムジクロリド、ジメチルアルミニウムブロミド、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムブロミド、ジブチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムセスキブロミド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミド、エチルアルミニウムセスキクロリドが挙げられる。
【0052】
ジエチルアルミニウムクロリド(Et2AlCl又はDEAC)、エチルアルミニウムセスキクロリド(Et1.5AlCl1.5又はEASC)、エチルアルミニウムジクロリド(EtAlCl2又はEADC)、ジエチルアルミニウムブロミド(Et2AlBr又はDEAB)、エチルアルミニウムセスキブロミド(Et1.5AlBr1.5又はEASB)及びエチルアルミニウムジブロミド(EtAlBr2又はEADB)が好ましい。
【0053】
特に好ましいアルミニウム化合物は、三塩化アルミニウムである。
【0054】
エーテル
【0055】
本明細書で使用される場合、ターシャリーエーテルは少なくとも一種のターシャリーアルキル基又はターシャリーアリールアルキル基を有するものであり、好ましくは、エーテル酸素において一つだけターシャリーアルキル基又はターシャリーアリールアルキルアリール基を有するものである。
【0056】
好ましいターシャリーアルキル基には、tert.-ブチル、及びtert.-アミルが含まれる。
【0057】
好ましいターシャリーアリールアルキルアリール基には、クミルが含まれる。
【0058】
ターシャリーアルキルエーテルの例には、メチルtert.-ブチルエーテル(MTBE)、エチルtert.-ブチルエーテル(ETBE)、メチルtert.-アミルエーテル(MTAE)及びフェニルtert.-ブチルエーテル(PTBE)又はこれらの混合物であり、メチルtert.-ブチルエーテル(MTBE)、エチルtert.-ブチルエーテル(ETBE)、メチルtert.-アミルエーテル(MTAE)又はこれらの混合物が好ましく、メチルtert.-ブチルエーテル(MTBE)がさらにより好ましい。
【0059】
本発明において有用なさらなる活性化化合物は、選択されたホウ素化合物又はアルミニウム化合物と反応し、モノマーと反応して、それによって成長反応するポリマー鎖を形成する錯体を生成することができるものから選択される。
【0060】
好ましい一実施形態において、そのような活性化化合物は、水、アルコール、フェノール、ハロゲン化水素、カルボン酸、カルボン酸ハライド、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、スルホン酸、スルホン酸ハライド、アルキルハライド、アルキルアリールハライド及びポリマーハライド(polymeric halide)からなる群から選択される。
【0061】
好ましいアルコールには、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、2-メチルプロパン-2-オール、シクロヘキサノール、およびベンジルアルコールが含まれる。
【0062】
好ましいフェノールには、フェノール;2-メチルフェノール;2,6-ジメチルフェノール;p-クロロフェノール;p-フルオロフェノール;2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェノール;および2-ヒドロキシナフタレンが含まれる。
【0063】
好ましいハロゲン化水素には、塩化水素、臭化水素及びヨウ化水素が含まれる。特に好ましいハロゲン化水素は、塩化水素である。
【0064】
好ましいカルボン酸には、脂肪族カルボン酸および芳香族カルボン酸の両方が含まれる。本発明において有用なカルボン酸の例には、酢酸、プロパン酸、ブタン酸;ケイ皮酸、安息香酸、1-クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、p-クロロ安息香酸、及びp-フルオロ安息香酸が含まれる。特に好ましいカルボン酸には、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、及びp-フルオロ安息香酸が含まれる。
【0065】
本発明において有用なカルボン酸ハライドは、構造的にはカルボン酸に類似しており、酸のOHをハライドで置換したものである。そのハライドは、フルオリド、クロリド、ブロミド、またはヨージドであってもよく、クロリドが好ましい。
【0066】
本発明において有用なカルボン酸ハライドには、アセチルクロリド、アセチルブロミド、シンナミルクロリド、ベンゾイルクロリド、ベンゾイルブロミド、トリクロロアセチルクロリド、トリフルオロアセチルクロリド、トリフルオロアセチルクロリド、及びp-フルオロベンゾイルクロリドが含まれる。特に好ましい酸ハライドには、アセチルクロリド、アセチルブロミド、トリクロロアセチルクロリド、トリフルオロアセチルクロリド、及びp-フルオロベンゾイルクロリドが含まれる。
【0067】
カルボン酸エステルには、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸プロピル、酢酸アリル、酢酸ベンジル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジプロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸アリル、安息香酸ブチリデン、安息香酸ベンジル、安息香酸フェニルエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジペンチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジヘプチル、及びフタル酸ジオクチルが含まれる。
【0068】
カルボン酸アミドには、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、及びN,N-ジエチルアセトアミドが含まれる。好ましいターシャリーアルキル及びアラルキル開始剤としては、次式で表されるターシャリー化合物が挙げられ、ここでXは、ハロゲン、プソイドハロゲン、エーテル、もしくはエステル、又はそれらの混合物、好ましくはハロゲン、好ましくは塩素であり、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、好ましくは1~15個の炭素原子、より好ましくは1~8個の炭素原子を含有する、任意の直鎖状、環状もしくは分岐鎖状のアルキル、アリールもしくはアリールアルキルである。nは、開始剤のサイトの数であり、1以上、好ましくは1~30の数であり、より好ましくはnは1~6の数である。それらのアリールアルキルは、置換されていても、又は非置換であってもよい。本発明及び添付の請求項の目的においては、アリールアルキルは、芳香族構造と脂肪族構造の両方を含有する化合物を意味していると定義される。開始剤の好ましい例には、2-クロロ-2,4,4-トリメチルペンタン;2-ブロモ-2,4,4-トリメチルペンタン;2-クロロ-2-メチルプロパン;2-ブロモ-2-メチルプロパン;2-クロロ-2,4,4,6,6-ペンタメチルヘプタン;2-ブロモ-2,4,4,6,6-ペンタメチルヘプタン;1-クロロ-1-メチルエチルベンゼン;1-クロロアダマンタン;1-クロロエチルベンゼン;1、4-ビス(1-クロロ-1-メチルエチル)ベンゼン;5-tert-ブチル-1,3-ビス(1-クロロ-1-メチルエチル)ベンゼン;5-tert-ブチル-1,3-ビス(1-クロロ-1-メチルエチル)ベンゼン;2-アセトキシ-2,4,4-トリメチルペンタン;2-ベンゾイルオキシ-2,4,4-トリメチルペンタン;2-アセトキシ-2-メチルプロパン;2-ベンゾイルオキシ-2-メチルプロパン;2-アセトキシ-2,4,4,6,6-ペンタヘプタン;2-ベンゾイル-2,4,4,6,6-ペンタメチルヘプタン;1-アセトキシ-1-メチルエチルベンゼン;1-アセトキシアダマンタン;1-ベンゾイルオキシエチルベンゼン;1,4-ビス(1-アセトキシ-1-メチルエチル)ベンゼン;5-tert-ブチル-1,3-ビス(1-アセトキシ-1-メチルエチル)ベンゼン;2-メトキシ-2,4,4-トリメチルペンタン;2-イソプロポキシ-2,4,4-トリメチルペンタン;2-メトキシ-2-メチルプロパン;2-ベンジルオキシ-2-メチルプロパン;2-メトキシ-2,4,4,6,6-ペンタメチルヘプタン;2-イソプロポキシ-2,4,4,6,6-ペンタメチルヘプタン;1-メトキシ-1-メチルエチルベンゼン;1-メトキシアダマンタン;1-メトキシエチルベンゼン;1,4-ビス(1-メトキシ-1-メチルエチル)ベンゼン;5-tert-ブチル-1,3-ビス(1-メトキシ-1-メチルエチル)ベンゼン及び1,3,5-トリス(1-クロロ-1-メチルエチル)ベンゼンが含まれる。
【0069】
本発明における開始剤として有用なスルホン酸には、脂肪族スルホン酸及び芳香族スルホン酸の両方が含まれる。好ましいスルホン酸の例としては、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリクロロメタンスルホン酸、及びp-トルエンスルホン酸が挙げられる。
【0070】
本発明において有用なスルホン酸ハライドは、構造的にはスルホン酸に類似しており、親の酸のOHをハライドで置換したものである。そのハライドは、フルオリド、クロリド、ブロミド、又はヨージドであってもよく、クロリドが好ましい。親のスルホン酸からのスルホン酸ハライドの調製は、従来技術において公知であり、当業者であれば、それらの手順について熟知しているはずである。本発明において有用な好ましいスルホン酸ハライドとしては、メタンスルホニルクロリド、メタンスルホニルブロミド、トリクロロメタンスルホニルクロリド、トリフルオロメタンスルホニルクロリド、及びp-トルエンスルホニルクロリドが挙げられる。
【0071】
本発明において有用なアルキルハライドには、2-クロロ-2,4,4-トリメチルペンタン及び2-クロロ-2-メチルプロパンが含まれる。
【0072】
本発明において有用なアルキルアリールハライドには、1-クロロ-1-メチルエチルベンゼンが含まれる。
【0073】
本発明において有用なポリマーハライドには、ポリマーの鎖末端に、又は主鎖に沿って、若しくは主鎖内に配置された少なくとも2つのハロゲン化されたターシャリー炭素を有するものが含まれる。
【0074】
使用するホウ素化合物又はアルミニウム化合物のホウ素原子及びアルミニウム原子の合計に対するターシャリーエーテルの好ましいモル比は、一般的に、0.001~0.500、好ましくは0.005~0.500、より好ましくは0.001~0.200、さらに好ましくは0.002~0.200である。
【0075】
ルイス酸及び開始剤を含む開始剤系は、使用するモノマーの質量を基準にして、0.002~5.0質量%、好ましくは0.1~0.5質量%の量で反応混合物中に存在することが好ましい。
【0076】
別の実施形態において、特に三塩化アルミニウムを使用する場合、ホウ素化合物又はアルミニウム化合物、特に三塩化アルミニウムに対する使用するモノマーの質量比は、500~20,000、好ましくは1,500~10,000の範囲内である。
【0077】
特に好ましい開始剤系においては、ホウ素化合物又はアルミニウム化合物が、エチルアルミニウムセスキクロリドであり、好ましくは等モル量のジエチルアルミニウムクロリド及びエチルアルミニウムジクロリドを、好ましくは有機希釈剤中で混合することによって生成される。有機希釈剤は、好ましくは、工程b)で重合を行うために用いられるものと同じものである。
【0078】
前述の開始剤系は、また、有機希釈剤との組み合わせられても、又はそうでなくても、本発明に含まれる。
【0079】
一実施形態において、水がさらなる活性化化合物として追加的に使用される。この実施形態において、水の量は、特に前述した式MR(m)X(3-m)の化合物が使用される場合、ホウ素化合物又はアルミニウム化合物1モル当たり0.1~4.0モルの範囲の水、好ましくはホウ素化合物又はアルミニウム化合物1モル当たり0.2~2モルの範囲の水、最も好ましくはホウ素化合物又はアルミニウム化合物1モル当たり0.5~1モルの範囲の水である。
【0080】
一実施形態において、アルミニウムハライドの場合、特に三塩化アルミニウムがホウ素化合物又はアルミニウム化合物として使用される場合、水及び/又はアルコール、好ましくは水がさらなる活性化化合物として使用される。
【0081】
反応媒体
【0082】
反応媒体中にモノマーは、0.01質量%~80質量%、好ましくは0.1質量%~65質量%、より好ましくは10.0質量%~65.0質量%、さらにより好ましくは25.0質量%~65.0質量%、又は別の実施形態においては5.0質量%~55.0質量%の量で存在してもよい。
【0083】
反応媒体中に有機希釈剤は、0.01質量%~80質量%、好ましくは0.1質量%~65質量%、より好ましくは10.0質量%~65.0質量%、さらにより好ましくは25.0質量%~65.0質量%、又は別の実施形態においては10.0質量%~40.0質量%の量で存在してもよい。
【0084】
有機希釈剤、モノマー及び開始剤系の量は、工程b)で使用される反応媒体の少なくとも95質量%、好ましくは97~100質量%、より好ましくは99~100質量%を構成するように選択される。
【0085】
100%までの残りは、存在する場合、他の有機化合物又は無機化合物を含んでもよく、好ましくは重合反応に実質的に影響を与えないものを含んでもよい。
【0086】
一実施形態において、反応媒体は、10.0質量%~65.0質量%のモノマー、20.0質量%~89.9質量%の有機希釈剤及び0.1質量%~15.0質量%の二酸化炭素を含み、有機希釈剤、モノマー、及び二酸化炭素の量は、これらが反応媒体の少なくとも95質量%、好ましく97~100質量%、より好ましくは99~100質量%を構成するように選択される。スループットや効率性の観点からは、希釈剤に対するモノマーの濃度、つまり反応媒体の反応部分と対比する比反応部分の割合を高めることが望ましい。しかしながら、これは反応器の熱負荷を増大させるという副作用を有し、反応熱を除去する能力を過剰に与える可能性があります。反応器の性能の低下に加えて、これは、限定されないがポリマーの分子量分布を含む、製品の特性に望ましくない影響を与える可能性があります。
【0087】
重合条件
【0088】
一実施形態において、用いる有機希釈剤及びモノマーは、実質的に水を含まない。本明細書で使用する場合、「実質的に水を含まない」というのは、反応媒体の全質量に基づいて、30ppm未満、好ましくは20ppm未満、より好ましくは10ppm未満、さらにより好ましくは5ppm未満、最も好ましくは1ppm未満と定義される。
【0089】
当業者であれば、たとえば、開始剤として機能させる目的で添加される以外には、水の添加量によってその開始剤系が影響を受けないようにするために、希釈剤及びモノマーの水含量は低くする必要があることを認識する。
【0090】
工程a)及び工程b)は、連続式又はバッチ式プロセスで実施してよく、連続式運転が好ましい。典型的には、工程a)での反応媒体の提供と工程b)の重合の開始は同時に行われる。
【0091】
本発明の一実施形態において、工程b)における重合は、重合反応器を使用して実施される。好適な反応器は、当業者には公知のものであり、フロースルー重合反応器、プラグフロー反応器、撹拌槽反応器、ムービングベルトもしくはドラム反応器、ジェットもしくはノズル反応器、筒型反応器、及び自己冷却ボイリングプール(autorefrigerated boiling-pool)反応器などが挙げられる。具体的に好適な例は、国際公開第2011/000922号、および国際公開第2012/089823号に開示されている。
【0092】
有機希釈剤の選択に応じて、スラリー重合として、又は溶液重合としてのいずれかで、工程b)における重合を実施する。
【0093】
スラリー重合において、モノマー、開始剤系がすべて、典型的には、希釈剤又は希釈剤混合物中に可溶性である、すなわち単一相を構成しているが、それに対して、コポリマーが生成すると、その有機希釈剤から沈降する。ポリマーのTgの低下がほとんどもしくは全くないか、及び/又は有機希釈剤物質の取り込みがほとんどもしくは全くないことによって示されるような、ポリマーの「膨潤(swelling)」が示されることが少ないかもしくは全くないのが望ましい。
【0094】
溶液重合において、モノマー、開始剤系がすべて、典型的には、希釈剤又は希釈剤混合物中に可溶性であり、すなわち単一相を構成しており、重合の間生成するコポリマーも同様である。
【0095】
前述の有機希釈剤中への所望のポリマーの溶解性、さらには、反応条件下におけるそれらの膨潤挙動は、当業者には周知である。
【0096】
溶液重合とスラリー重合とを対比させた利点及び欠点は、文献において徹底的に論じられているため、やはり当業者には公知である。
【0097】
工程b)は、好ましくはスラリープロセスで実行される。
【0098】
一実施形態において、工程b)を、-100℃~-60℃の範囲、好ましくは-98℃~-80℃の範囲、さらにより好ましくは-97℃~-90℃の範囲の温度で実施する。
【0099】
工程b)における反応圧力は、典型的には500~100,000hP、好ましくは1100~20,000hPa、より好ましくは1300~5,000hPaである。
【0100】
工程b)における重合がスラリープロセスで実行される場合、工程b)におけるスラリーの固形分含量が、好ましくは1~45質量%、より好ましくは3~40質量%、さらにより好ましくは15~40質量%の範囲である。
【0101】
本明細書で使用するとき、「固形分含量(solids content)」又は「固形分レベル(solids level)」という用語は、工程b)によって得られた、イソオレフィンポリマー、有機希釈剤及び任意選択で残留モノマーを含む生成物媒体中のイソオレフィンポリマーの質量パーセントを指している。
【0102】
一実施形態において、工程b)における反応時間が、2分~2時間、好ましくは10分~1時間、より好ましくは20~45分である。
【0103】
このプロセスは、バッチ式で実施しても、又は連続式で実施してもよい。連続反応を実施する場合、上で挙げた反応時間は、平均滞留時間を表している。
【0104】
一実施形態において、その反応は、停止剤、たとえば、水、メタノール又はエタノール中の1質量%水酸化ナトリウム溶液によって停止させる。
【0105】
別の実施形態において、その反応を、工程c)において水性媒体と接触させることによって停止させ、一実施形態において、その水性媒体は20℃、1013hPaで測定して、5~11、好ましくは6~10、より好ましくは8~9のpH値を有することができる。
【0106】
pH調節が望ましい場合には、酸、又は好ましくは多価金属イオンを含まないアルカリ性化合物を添加することにより実施することができる。より高いpH値へとpH調節するには、たとえば水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの添加を実施する。
【0107】
特に溶液重合の場合においては、典型的には、最初に用いたモノマーの5質量%~25質量%、好ましくは10質量%~20質量%のモノマー消費後、転化を停止させる。
【0108】
モノマーの転化率は、重合の際のオンライン粘度測定又は分光的モニタリングによって追跡することができる。
【0109】
一実施形態において、任意選択の工程c)において、特に工程b)がスラリープロセスで実行された場合、工程b)で得られた生成物媒体を水性媒体と接触させ少なくとも部分的に有機希釈剤を取り除き、媒体中に存在する範囲で少なくとも部分的に残留モノマー及び二酸化炭素を取り除き、通常ゴムクラム(rubber crumb)と呼ばれる微粒子の形態でイソオレフィンポリマーを含む水性スラリーを得る。その接触は、この目的に適した任意の容器内で実施することができ、バッチ式又は連続式で実行することができ、連続式プロセスで実行することが好ましい。工業的には、そのような接触は、典型的には、水蒸気ストリッパー、フラッシュドラム、又は任意のその他の液相と気相を分離するための公知の容器内で実施される。
【0110】
有機希釈剤及び任意選択でモノマーの除去には、他のタイプの蒸留を採用して、残留モノマー及び有機希釈剤を、順次又は同時に、所望の程度にまで除去してもよい。異なる沸点の液体を分離するための蒸留プロセスは、当技術分野では周知であり、たとえば、Encyclopedia of Chemical Technology, Kirk Othmer,4th Edition,p.8-311に記載がある(この文献を、参考として引用し、本明細書に組み入れるものとする)。一般的には、未反応モノマー及び希釈剤は、本発明におけるプロセスの工程a)中に別々に又は合わせてリサイクルさせてもよい。
【0111】
任意選択の工程c)において、及び一実施形態おいて、スチームストリッパー又はフラッシュドラムの圧力は、工程b)において使用された有機希釈剤及びモノマーによって決まる。
【0112】
任意選択の工程c)における温度は、少なくとも部分的に有機希釈剤を除去し、残留モノマーがまだ存在している程度にするのに十分であるように選択する。
【0113】
工程c)で除去された有機希釈剤及び/又はモノマーは、工程a)及び/又は工程b)中に再びリサイクルされてもよい。
【0114】
一実施形態において、その温度は、10~100℃、好ましくは50~100℃、より好ましくは60~95℃、さらにより好ましくは75~95℃である。
【0115】
さらなる任意選択の工程d)において、工程c)により得られた水性スラリー中に含まれるイソオレフィンポリマーを分離して、イソオレフィンポリマーを得てもよい。
【0116】
この分離は、フロテーション、遠心分離、ろ過、脱水押出機での脱水によって、又は液体から固体を分離するための当業者に知られている任意のその他の手段によって行われてもよい。
【0117】
さらなる任意選択の工程e)において、工程d)によって得られたイソオレフィンポリマー粒子は、好ましくは7,000以下、好ましくは5,000以下、さらにより好ましくは4,000以下、別の実施形態においては2,000ppm以下、好ましくは1,000pp以下の残存揮発分含量まで乾燥される。
【0118】
本明細書で使用するとき、「揮発分(volatile)」という用語は、標準圧力で250℃未満、好ましくは200℃以下の沸点を有する化合物を表し、水、さらには残留有機希釈剤を含む。
【0119】
乾燥は、当業者に公知の慣用される手段を用いて実施することができ、それには、加熱した金網コンベヤーベルト上での乾燥又は押し出し機での乾燥も含まれる。
【0120】
驚くべきことに、本発明によって調製されたイソオレフィンポリマーは、特にモノマーとしてイソブテン及びイソプレンを使用する場合、典型的にはブチルゴムと呼ばれ、特異的な微細構造を示すことが見いだされた。
【0121】
イソプレンがイソブテンの主鎖中に組み込まれる場合、この組み込みは主に2つの異なる方法で行われ、したがって2つの異なる構造をもたらす。
【0122】
一つの構造は、いわゆる1,4-イソプレン構造である。
【0123】
【0124】
別のもう一つの構造は、分岐構造である。
【0125】
【0126】
これらの構造を区別するのに好適な方法は、核磁気共鳴(NMR)分光法である。プロトンNMRスペクトルには、上記の各構造に割り当てることができるピークが含まれている。これらのピークの面積を積分すると、各構造体のモルパーセントに換算できる結果が得られる。
【0127】
イソオレフィンポリマーの硬化、又はクロロブチルゴム及びブロモブチルゴムへのハロゲン化などの他の化学修飾を容易にするため、1,4-イソプレンの最大含有量が望ましい。
【0128】
しかしながら、構造体1,4-イソプレンの、公知の市販のブチルゴムの分岐したものに対する典型的なモル比は、8.0~12.5である。驚くべきことに、前述の本方法によって得られ得るブチルゴムの前述の比は、14.0~20.0、好ましくは14.0~17.0であり、したがって、現在公知のものよりもより望ましい範囲にシフトしている。
【0129】
本発明による方法のさらに驚くべき効果は、望ましくない副生成物の形成が最小限に低減されることである。
【0130】
重合がスラリープロセスで行われているか又は溶液プロセスで行われているかに関係なく、環状オリゴマーの1-イソプロペニル-2,2,4,4-テトラメチルシクロヘキサン(以下、C13と表される)、及び1,1,5,5-テトラメチル-2-(1-メチルエテニル)-3-(2,2,4-トリメチルペンチル)-シクロヘキサン(以下、C21と表される)は、副生成物として生成され、商業的供給源に応じて1000から最大2500ppmの量でブチルゴム中に残存する。
【0131】
【0132】
これらの環状オリゴマーは、特定の用途、たとえば、医薬品のシール、縫合(closure)、血液採取ストッパー、医療機器及び食品グレードの用途において、そのような環状オリゴマーが医薬品又は食品中に/上に移動して、その後生成物と相互作用する若しくは反応する及び/又は患者に取り込まれる可能性があるため、望ましくない。したがって、ブチルゴム中の環状オリゴマーレベルの低減は、特にハロゲン化オリゴマーがそれらの反応性のためにさらに懸念されているため、その後のハロゲン化が意図される場合に、非常に望ましい。
【0133】
本発明による方法は、特に工程c)又は任意選択の工程d)を実行した後において、ブチルゴム中のC13及びC21の合計が典型的には800ppm未満、好ましくは50~800ppm、さらにより好ましくは200~700ppmである。
【0134】
ブチルゴム中のC13の含有量は、典型的には350ppm未満、好ましくは20~300ppm、さらにより好ましくは50~300ppmである。
【0135】
ブチルゴム中のC21の含有量は、典型的には450ppm未満、好ましくは30~450ppm、さらにより好ましくは50~400ppmである。
【0136】
ブチルゴム中のC21のC13に対する質量比は、典型的には0.9~2.0、好ましくは1.2~2.0であり、一方で、異なる商業的供給源の公知のブチルゴムについてのこの比は、典型的には2.3~4.0である。
【0137】
本発明による好ましいブチルゴムは、前述のプロセスセクションに既に含まれているものであり、イソブテン及びイソプレンに由来する繰り返し単位を含むcブチルゴムを含む。
【0138】
本発明による典型的なブチルゴムは、0.1mol%以上、好ましくは0.1mol%~15mol%、別の実施形態では、0.5mol%以上、好ましくは0.5mol%~10mol%、別の実施形態では、0.7mol%以上、好ましくは0.7~8.5mol%、特に0.8~2.0mol%若しくは1.5~2.5mol%、又は2.5~4.5mol%若しくは4.5~8.5mol%のイソプレン含有量を有する。
【0139】
別の実施形態において、本発明によるブチルゴムのイソプレン含有量は、0.001mol%以上、好ましくは0.001mol%~3mol%、好ましくは0.8mol%~3mol%である。
【0140】
一実施形態において、本発明によるブチルゴムの質量平均分子量は、10~2,000kg/molの範囲、好ましくは20~1,000kg/molの範囲、より好ましくは50~1,000kg/molの範囲、さらにより好ましくは200~800kg/molの範囲、その上より好ましくは375~550kg/molの範囲、最も好ましくは400~500kg/molの範囲である。分子量は、別段の記載がない限りポリスチレン分子量標準を用いたテトラヒドロフラン(THF)溶液中でのゲル浸透クロマトグラフィーを用いて得られる。
【0141】
一実施形態において、本発明によるブチルゴムの多分散性は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより決定される質量平均分子量と数平均分子量の比によって測定され、1.5~4.5の範囲であり、好ましくは2.5~3.5の範囲である。
【0142】
本発明によるブチルゴムは、たとえば、及び典型的には少なくとも10(ML1+8@125℃、ASTM D 1646)、好ましくは10~80、より好ましくは20~80、さらにより好ましくは25~60(ML1+8@125℃、ASTM D 1646)のムーニー粘度を有している。
【0143】
一実施形態において、本発明によるブチルゴムは、ASTM D5667に従って測定した灰分含量を、0.25質量%以下、好ましくは0.15質量%以下、より好ましくは0.10質量%以下、さらにより好ましくは0.05質量%以下で有する。
【0144】
ゴム製品
【0145】
一種又は複数の本発明におけるブチルゴムを、相互にブレンドするか、又は少なくとも一種の第二のゴムを追加するか、もしくはそれらで置き換えてブレンドしてもよく、それらは好ましくは、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、ポリイソプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、ポリ(スチレン-co-ブタジエン)ゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ペルフルオロエラストマー(FFKM/FFPM)、エチレン酢酸ビニル(EVA)ゴム、エチレンアクリレートゴム、ポリスルフィドゴム(TR)、ポリ(イソプレン-co-ブタジエン)ゴム(IBR)、スチレン-イソプレン-ブタジエンゴム(SIBR)、エチレン-プロピレンゴム(EPR)、エチレン-プロピレン-ジエンM-クラスゴム(EPDM)、ポリフェニレンスルフィド、ニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、水素化ニトリル-ブタジエンゴム(HNBR)、プロピレンオキシドポリマー、スター分岐状ブチルゴム及びハロゲン化スター分岐状ブチルゴム、本発明の対象とはなっていない、すなわち、多価金属イオンのレベルまたは純度のグレードが異なるブチルゴム、臭素化ブチルゴム及び塩素化ブチルゴム、スター分岐状のポリイソブチレンゴム、スター分岐状の臭素化ブチル(ポリイソブチレン/イソプレンコポリマー)ゴム、ポリ(イソブチレン-co-p-メチルスチレン)及びハロゲン化ポリ(イソブチレン-co-p-メチルスチレン)、ハロゲン化ポリ(イソブチレン-co-イソプレン-co-p-メチルスチレン)、ポリ(イソブチレン-co-イソプレン-co-スチレン)、ハロゲン化ポリ(イソブチレン-co-イソプレン-co-スチレン)、ポリ(イソブチレン-co-イソプレン-co-アルファ-メチルスチレン)、ハロゲン化ポリ(イソブチレン-co-イソプレン-co-a-メチルスチレン)、からなる群から選択される。
【0146】
本発明によるブチルゴム又は前述の第二のゴムとのそれらのブレンドの1種又は複数を、追加するか、もしくはそれらで置き換えてさらにブレンドしてもよく、たとえば同時又は別途に、好ましくはポリウレタン(PU)、ポリアクリル系エステル(ACM、PMMA)、熱可塑性ポリエステルウレタン(AU)、熱可塑性ポリエーテルウレタン(EU)、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる群から選択される少なくとも一種の熱可塑性ポリマーとさらにブレンドしてもよい。
【0147】
本発明によるブチルゴム又は第二のゴム及び/又は前述の熱可塑性ポリマーとのそれらのブレンドは、充填剤及び硬化剤等のゴム工業において典型的に使用される他の成分を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。それらは、典型的には一種又は複数の充填剤と組み合わされ、以下それらの全てはまとめてゴム製品として表される。
【0148】
用途
【0149】
本発明によるゴム製品は、多種多様な用途において非常に有用である。ガスに対する透過性の程度が低いこと、架橋、硬化、又は後重合の修飾部位として機能する可能性がある不飽和部位、及び妨害する添加剤の程度が低いことが、これらのゴム製品の最大の用途を説明する。
【0150】
したがって、本発明にはさらに、インナーライナー、ブラダー、チューブ、エアクッション、空気バネ、エアベローズ、アキュムレーターバッグ、ホース、コンベヤーベルト、及び医薬品用包装(pharamaceutical closures)のための、本発明によるゴム製品の使用も包含される。本発明にはさらに、硬化されているか、未硬化であるかに関わらず、本発明によるゴム製品を含む前述の製品も包含される。
【0151】
本発明によるゴム製品はさらに、高い減衰率を示し、温度及び振動数の両面で比類のない広い減衰及び衝撃吸収レンジを有している。
【0152】
したがって、本発明にはさらに、自動車のサスペンションバンパー、自動車のエキゾーストハンガー、ボディマウント、および靴底における、本発明によるゴム製品の使用も包含される。
【0153】
本発明のゴム製品は、タイヤのサイドウォールおよびトレッド配合物においても有用である。サイドウォールにおいては、ブチルゴムの特性により、良好な耐オゾン性、クラックカットの成長、および外観が付与される。
【0154】
本発明によるゴム製品は、所望の物品に成形してから、硬化させてもよい。本発明による硬化させたブチルゴムを含む物品には、たとえば、ベルト、ホース、靴底、ガスケット、O-リング、ワイヤ/ケーブル、膜、ローラー、ブラダー(たとえば、硬化ブラダー)、タイヤのインナーライナー、タイヤトレッド、ショックアブソーバー、機械部品取り付け具(machinery mounting)、バルーン、ボール、ゴルフボール、保護衣、医療用チューブ、貯蔵タンクのライニング、電気絶縁、ベアリング、医薬品用ストッパー、接着剤、容器、たとえば、ボトル、トート、貯蔵タンクなど;容器の栓又は蓋;シール又はシーラント、たとえば、ガスケット又はコーキング;物質ハンドリング装置、たとえば、オーガー又はコンベヤーベルト;パワーベルト、クーリングタワー;金属加工装置、又は金属加工流体と接触する任意の装置;エンジン部品、たとえば、燃料ライン、燃料フィルター、燃料貯蔵タンク、ガスケット、シールなど;流体濾過又はタンクシーリングのための膜が含まれる。
【0155】
本発明は、以下で実施例によってさらに説明されるが、これらに限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって定義される。
【実施例】
【0156】
実験セクション
X.1 バッチ重合
【0157】
重合を、ペンタン冷却浴、反応器及び浴温度レコーダーを備えたMBraun MB-200Gグローブボックス内で行った。イソプレン(>99%)は、Sigma-Aldrich社から購入し、窒素雰囲気下、CaH2上で24時間乾燥させることによってさらに精製し、窒素下、CaH2上で蒸留し、オーブンで乾燥させた受けフラスコに入れた後グローブボックス中に移し、使用するまで-2℃で保存した。メチルtert-ブチルエーテル(MTBE、無水、99.8%)を、使用する前に3Aモレキュラーシーブ上で乾燥させた。AlCl3(99.99%)をSigma-Aldrich社から購入し、受け取ったまま使用した。
【0158】
実施例1 AlCl
3
:開始剤溶液の調製
未使用のAlCl3開始剤溶液を毎日調製し、その日に行われた全ての実験に使用した。グローブボックス内で、100mL三角フラスコにAlCl3(0.30g、2.25mmol)を入れ、MeCl(100mL)に溶解し、-30℃まで冷却した。メカニカルスターラーを用いて-30℃で450rpm、30分間溶液を攪拌した。攪拌を停止し、フラスコを密封し、使用するまで溶液を-95℃まで冷却した。
【0159】
実施例2:一般的なスラリー重合手順
温度プローブを備えた500mLのステンレス鋼ビーカーを、-95℃まで冷却したペンタン浴に置き、あらかじめ冷却した塩化メチル(MeCl、180mL)を入れた。イソブテン(20mL、14.24g、25.0mmol)をあらかじめ冷却したメスシリンダーに液体として凝縮し、反応フラスコに移した。イソプレン(0.8mL、0.54g、7.92mmol)をピペットを介して反応に移した。温度が安定するまで溶液を800rpmで機械的に攪拌した。あらかじめ調製したAlCl3開始剤溶液(3mL、0.0090g、0.0675mmol)を、あらかじめ冷却したピペットを介して反応に移し、反応を開始した。別段の記載がない限り、重合を800rpmで5分間攪拌した。NaOHのエタノール溶液(1.0mL、1質量%、0.01mmol)の添加によって重合を停止した。ポリマーセメントをグローブボックスから取り除き、ヘキサン(約300mL)及び抗酸化剤(1.0mL、ヘキサン中1質量%のIrganox 1076)で希釈し、ドラフトチャンバー(fumehood)中に一晩放置して、揮発性物質を除去した。セメントをエタノール(約500~1000mL)で凝固させ、得られたポリマー(7.9800g、53.7%)を回収し、60℃の真空オーブン内で48時間乾燥させた。変換率は、重量分析方法によって決定した。開始剤効率は、887g ポリマー/g AlCl3で計算した。結果を表1に示す。
【0160】
【0161】
実施例3:MTBE溶液の調製
100mLの三角フラスコを-95℃まで冷却したペンタン浴中に保持し、あらかじめ冷却したMeCl(100mL)を入れた。メチルtert-ブチルエーテル(MTBE、5L、0.0037g、0.042mmol)をマイクロピペットを介してフラスコに移した。フラスコを攪拌し、MeCl中にMTBEを拡散し、その後密封して溶液を使用するまで-95℃で保存した。
【0162】
実施例4:反応器にMTBEを添加したスラリー重合
温度プローブを備えた500mLのステンレス鋼ビーカーを、-95℃まで冷却したペンタン浴に置き、あらかじめ冷却したMeCl(180mL)を入れた。イソブテン(20mL、14.24g、25.0mmol)をあらかじめ冷却したメスシリンダーに液体として凝縮し、反応フラスコに移した。イソプレン(0.8mL、0.54g、7.92mmol)をピペットを介して反応に移した。あらかじめ調製したMTBE溶液の一部を、あらかじめ冷却したピペットを介して反応フラスコに移した。添加したMTBEの量を表2に示す。温度が安定するまで溶液を800rpmで機械的に攪拌した。あらかじめ調製したAlCl3開始剤溶液(3mL、0.0090g、0.0675mmol)を、あらかじめ冷却したピペットを介して反応に移し、反応を開始した。別段の記載がない限り、重合を800rpmで5分間攪拌した。NaOHのエタノール溶液(1.0mL、1質量%、0.01mmol)の添加によって重合を停止した。ポリマーセメントをグローブボックスから取り除き、ヘキサン(約300mL)及び抗酸化剤(1.0mL、ヘキサン中1質量%のIrganox 1076)で希釈し、ドラフトチャンバー(fumehood)中に一晩放置して、揮発性物質を除去した。セメントをエタノール(約500~1000mL)で凝固させ、得られたポリマーを回収し、60℃の真空オーブン内で48時間乾燥させた。変換率は、重量分析方法によって決定した。結果を表2に示す。
【0163】
【0164】
実施例5:開始剤にMTBEを添加したスラリー重合
あらかじめ調製したAlCl3開始剤溶液(20mL、0.06g、0.45mmol)の一部を、新しい100mLの三角フラスコに移し、-95℃まで冷却したペンタン浴中で保持した。メチルtert-ブチルエーテル(MTBE、4L、0.0029g、0.034mmol)をマイクロピペットを介してフラスコに移した。フラスコを攪拌し、開始剤溶液中にMTBEを拡散し、その後密封して溶液を使用するまで-95℃で保存した。
【0165】
温度プローブを備えた500mLのステンレス鋼ビーカーを、-95℃まで冷却したペンタン浴に置き、あらかじめ冷却した塩化メチル(MeCl、180mL)を入れた。イソブテン(20mL、14.24g、25.0mmol)をあらかじめ冷却したメスシリンダーに液体として凝縮し、反応フラスコに移した。イソプレン(0.8mL、0.54g、7.92mmol)をピペットを介して反応に移した。温度が安定するまで溶液を800rpmで機械的に攪拌した。あらかじめ調製したMTBEを含むAlCl3開始剤溶液(3mL、AlCl3=0.0090g、0.0675mmol;MTBE=0.0004g、0.0050mm)を、あらかじめ冷却したピペットを介して反応に移し、反応を開始した。別段の記載がない限り、重合を800rpmで5分間攪拌した。NaOHのエタノール溶液(1.0mL、1質量%、0.01mmol)の添加によって重合を停止した。ポリマーセメントをグローブボックスから取り除き、ヘキサン(約300mL)及び抗酸化剤(1.0mL、ヘキサン中1質量%のIrganox 1076)で希釈し、ドラフトチャンバー(fumehood)中に一晩放置して、揮発性物質を除去した。セメントをエタノール(約500~1000mL)で凝固させ、得られたポリマー(12.3520g、83.2%)を回収し、60℃の真空オーブン内で48時間乾燥させた。変換率は、重量分析方法によって決定した。開始剤効率は、1287g ポリマー/g AlCl3で計算した。結果を表3に示す。
【0166】
【0167】
X2.ポリマー分析
重合を、温度変化を追跡するためにデジタル熱電対を用いて測定した。NMR分光分析は、Bruker 500MHz NMR分光計を用いて、CDCl3中のポリマー溶液を約5mg/mLの濃度で用いて行った。10秒の遅延時間を使用して、90°のパルス角で32個のトランジェント(transient)を集めた。化学シフトを、テトラメチルシラン(TMS)(δ=0)に対する1Hスペクトルについてppmで報告した。
【0168】
所望の利益を得るために必要な構造的特徴を実証するためにさらなる実験を行った。実験は前述のように行ったが、エーテル成分を変えて行った。ピークの開始剤効率を実現するために、tert-アルキル基が必要であることがわかった。開始剤効率の結果を表4に示す。
【0169】
【0170】
X.3 連続式重合
実施例6:
イソブチレン-イソプレンゴムの連続式カチオン重合に利益を与えるターシャリーアルキルエーテルの能力を実証するための実験において、以下の実験を行った。
【0171】
重合原料(ストリーム1)を62%の塩化メチル、37%のイソブチレン、1%のイソプレン、及び10ppmのMTBEからなるように調整し、約-100℃まで冷却した。塩化メチル中の三塩化アルミニウム(~0.2質量%)及び水(微量)の開始剤溶液(ストリーム2)を別々に調製し、~-100℃まで同様に冷却した。ストリーム1及び2を~-100℃まで冷却したスチール反応容器に連続的に供給し、前述の容器には撹拌機と温度プローブが備えられていた。攪拌された容器において2つのストリームが接触する時、モノマーが反応して、生成したポリマーの質量対導入したイソブテンの質量によって測定すると60から90%である収率を有するイソブチレン-イソプレンゴムが生成される。
【0172】
攪拌された反応容器の内容物を第二の容器内に連続的にオーバーフローさせ、ストリーム2から残存する活性開始剤種を水酸化ナトリウムで中和した。温度を-100℃から-85℃で維持する目的で、ストリーム1と2の比を、冷却された反応容器内で温度変化に応じて連続的に調節した。第二の容器は、後の分析のために定期的にサンプリングされた。ストリーム1を使い果たした後、実験を停止し、中和したサンプルを液化して分析した。
【0173】
対照(control)実験を前述のように行ったが、MTBEは省いた。
【0174】
このようにして、MTBEの存在下では、ポリマーを形成するために通常必要とされる開始剤溶液のごく少量を用いてイソプレンイソブチレンエラストマーを連続的に形成できることが実証された。これは、下の表において、生成したポリマー1グラムあたりのAlCl3のグラムとして表される:
【0175】
【0176】
MTBEの実験と対照実験の両方で回収されたサンプルの分析により、MTBEの使用によってもたらされる多くの明確な生成物の利点が明らかになった。これらの利点には、生成物の多分散性の低減、環状オリゴマー副生成物の減少、及び生成物の鎖内不飽和の非反応性「分岐」成分の減少が含まれる。その結果を表5から7に示す。
【0177】
【0178】
【0179】
【国際調査報告】