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特表2022-5142833-(1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル)ピリジングルタレートまたはその薬学的に許容可能な溶媒和化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-10
(54)【発明の名称】3-(1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル)ピリジングルタレートまたはその薬学的に許容可能な溶媒和化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/04 20060101AFI20220203BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 25/34 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 25/32 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 25/36 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220203BHJP
   A61K 31/444 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
C07D401/04 CSP
A61P29/00
A61P25/30
A61P25/34
A61P25/32
A61P25/36
A61P25/00
A61P25/28
A61K31/444
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534811
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(85)【翻訳文提出日】2021-06-16
(86)【国際出願番号】 EP2019085598
(87)【国際公開番号】W WO2020127225
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】18213200.1
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】マズロフ アナトリー
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB01
4C063CC12
4C063DD11
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC17
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA14
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA43
4C086NA15
4C086ZA02
4C086ZA16
4C086ZB11
4C086ZC39
(57)【要約】
本発明は、3-(1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル)ピリジングルタレートまたはその薬学的に許容可能な溶媒和化合物、その結晶、およびこの結晶の多形に関する。これはさらに、特に物質嗜癖または炎症の治療または予防における、これらのそれぞれの医薬用途に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3-(1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル)ピリジングルタレートである化合物、またはその薬学的に許容可能な溶媒和化合物。
【請求項2】
前記3-(1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル)ピリジングルタレートが、3-(1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル)ピリジン対グルタレートのモル比1:1を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記3-[1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル]ピリジンが、3-[(2S)-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル]ピリジンである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
前記3-[1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル]ピリジングルタレートが、以下の式(I)を有する、請求項1に記載の化合物。
【化1】
【請求項5】
前記3-[1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル]ピリジングルタレートが、以下の式(Ia)を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【化2】
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物の結晶。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物または請求項6に記載の結晶の多形体。
【請求項8】
前記多形体が、実質的に図1に示すように、X線粉末回折パターン(CuKα)を有する、請求項7に記載の多形体。
【請求項9】
前記多形体が、8.0±0.2°2θ、11.0±0.2°2θ、13.3±0.2°2θ、16.5±0.2°2θ、18.0±0.2°2θ、20.7±0.2°2θ、21.0±0.2°2θ、21.4±0.2°2θ、22.0±0.2°2θ、22.3±0.2°2θ、23.3±0.2°2θおよび24.5±0.2°2θから選択された一つまたは複数のピークを含む、X線粉末回折パターン(CuKα)を有する、請求項7または8に記載の多形体。
【請求項10】
薬剤として使用するための、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物、請求項6に記載の結晶、または請求項7~9のいずれ一項に記載の多形体。
【請求項11】
物質嗜癖または炎症の治療または予防に使用するための、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物、請求項6に記載の結晶、または請求項7~9のいずれか一項に記載の多形体。
【請求項12】
物質嗜癖または炎症の治療または予防に使用するための医薬組成物であって、前記組成物は、薬学的に有効な量の一つまたは複数の請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物、請求項6に記載の結晶、または請求項7~9のいずれか一項に記載の多形体を、任意に一つまたは複数の薬学的に許容可能な賦形剤と共に含む、医薬組成物。
【請求項13】
それを必要とするヒトまたは非ヒト動物の患者におけるニコチン嗜癖または炎症を治療または予防するための方法であって、該患者に、治療有効量の少なくとも一つの請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物、請求項6に記載の結晶、請求項7~9のいずれか一項に記載の多形体、または請求項12に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項14】
請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物、請求項6に記載の結晶、または請求項7~9のいずれか一項に記載の多形体を調製する方法であって、
3-[1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル]ピリジン、グルタル酸、および溶媒を含む溶液を調製する工程と、
前記グルタル酸を伴う3-[1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル]ピリジンの塩の形成を可能にする工程と、
前記3-[1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル]ピリジングルタル酸塩を回収する工程と、を含む、方法。
【請求項15】
3-[1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル]ピリジン、グルタル酸、および溶媒の前記溶液の調製に使用される前記溶媒が、2-メチルテトラヒドロフラン、アセトニトリルおよび/または酢酸エチルを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記物質が、ニコチン、コカイン、へロイン、マリファナ、およびアルコールからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物、請求項6に記載の結晶、請求項11に記載の使用のための請求項7~9のいずれか一項に記載の多形体、または請求項12に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項17】
前記炎症が、アルツハイマー病、甲状腺炎、および多発性硬化症からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物、請求項6に記載の結晶、請求項11に記載の使用のための請求項7~9のいずれか一項に記載の多形体、または請求項12に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項18】
請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物、請求項6に記載の結晶、請求項11に記載の使用のための請求項7~9のいずれか一項に記載の多形体、またはドライパウダー吸入器で請求項12に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項19】
請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物、請求項6に記載の結晶、請求項11に記載の使用のための請求項7~9のいずれか一項に記載の多形体、または熱気化エアロゾル装置で請求項12に記載の使用のための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3-(1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル)ピリジングルタレートまたはその薬学的に許容可能な溶媒和化合物、その結晶、およびこの結晶の多形に関する。これはさらに、特に物質嗜癖または炎症の治療または予防における、これらのそれぞれの医薬用途に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症は、酸化ストレス、刺激物、病原体、および損傷した細胞などの有害な刺激に対する保護反応である。炎症反応は、活性酸素種を産生する薬剤の放出を直接的または間接的に産生および/またはシグナル伝達することによって、損傷した組織を治癒し、損傷した細胞を破壊する炎症調節物質の産生および放出を伴う。したがって、適切な炎症反応は、損傷した細胞の破壊と損傷した組織の治癒との間のバランスを伴う。
【0003】
見落とされた炎症反応は、酸化ストレスおよび様々な炎症性疾患の病態の発症につながる可能性がある。事実、炎症過程は、免疫疾患および自己免疫疾患、胃腸疾患、様々な種類の癌、血管障害、心疾患、および神経変性疾患を含む、幅広い病状の根底にある。不適切なレベルの炎症を低減することができる薬剤が当技術分野で必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、3-(1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル)ピリジングルタレート(本明細書では、アナタビングルタレートとも呼ばれる)またはその薬学的に許容可能な溶媒和化合物、その結晶、およびこの結晶の多形に関する。これはさらに、特に物質嗜癖または炎症の治療または予防における、これらのそれぞれの医薬用途に関する。
【0005】
治療有効用量のアナタビングルタレート、その薬学的に許容可能な溶媒和化合物、その結晶、および/または結晶の多形を含む医薬組成物は、個体に投与されて、NFKBを介した炎症性要素を含む症状または障害を軽減し、および/またはこのような障害を発症するリスクを低減することができる。NFKBを介した炎症性要素は、例えば、甲状腺炎、癌、関節炎、アルツハイマー病、および多発性硬化症で発生する慢性炎症であることが好ましい。治療有効用量のアナタビングルタレート、その薬学的に許容可能な溶媒和化合物、その結晶、および/または結晶の多形もまた、徐放性製剤で提供されてもよい。他の実施形態では、アナタビングルタレートの単離された形態、その薬学的に有効な溶媒和化合物、その結晶、および/またはその多形は、例えば、約1ml~約2,000mlの精製水、および約0.00001~約0.0001重量%のアナタビングルタレートを含む、ボトル入り水製品で提供されてもよい。請求項に記載の化合物、結晶、多形、および/または医薬組成物は、モノアミンオキシダーゼ(MAO)阻害効果を有し得る。追加的または代替的に、本発明の化合物、結晶、多形、および/または医薬組成物は、STAT3リン酸化阻害効果を有し得る。
【0006】
特に、本発明は、以下の実施形態に関する。
1.3-(1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル)ピリジングルタレートである化合物、またはその薬学的に許容可能な溶媒和化合物。
2.3-(1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル)ピリジングルタレートが、3-(1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル)ピリジン対グルタレートのモル比1:1を有する、実施形態1に記載の化合物。
3.3-[1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル]ピリジンが、3-[(2S)-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル]ピリジンである、実施形態1または2に記載の化合物。
4.3-[1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル]ピリジングルタレートが、以下の式(I)を有する、実施形態1に記載の化合物。
【化1】
5.3-[1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル]ピリジングルタレートが、以下の式(Ia)を有する、実施形態1~4のいずれか一つに記載の化合物。
【化2】
6.実施形態1~5のいずれか一つに記載の化合物の結晶。
7.実施形態1~5のいずれか一つに記載の化合物または実施形態6に記載の結晶の多形体。
8.多形体が、実質的に図1に示すように、X線粉末回折パターン(CuKα)を有する、実施形態7に記載の多形体。
9.多形体が、8.0±0.2°2θ、11.0±0.2°2θ、13.3±0.2°2θ、16.5±0.2°2θ、18.0±0.2°2θ、20.7±0.2°2θ、21.0±0.2°2θ、21.4±0.2°2θ、22.0±0.2°2θ、22.3±0.2°2θ、23.3±0.2°2θおよび24.5±0.2°2θから選択された一つまたは複数のピークを含む、X線粉末回折パターン(CuKα)を有する、実施形態7または8に記載の多形体。
10.薬剤として使用するための、実施形態1~5のいずれか一つに記載の化合物、実施形態6に記載の結晶、または実施形態7~9のいずれ一つに記載の多形体。
11.物質嗜癖または炎症の治療または予防に使用するための、実施形態1~5のいずれか一つに記載の化合物、実施形態6に記載の結晶、または実施形態7~9のいずれか一つに記載の多形体。
12.物質嗜癖または炎症の治療または予防に使用するための医薬組成物であって、該組成物は、薬学的に有効量の一つまたは複数の実施形態1~5のいずれか一つに記載の化合物、実施形態6に記載の結晶、または実施形態7~9のいずれか一つに記載の多形体を、任意に一つまたは複数の薬学的に許容可能な賦形剤と共に含む、医薬組成物。
13.それを必要とするヒトまたは非ヒト動物の患者における物質嗜癖または炎症を治療または予防するための方法であって、該患者に、治療有効量の少なくとも一つの実施形態1~5のいずれか一つに記載の化合物、実施形態6に記載の結晶、実施形態7~9のいずれか一つに記載の多形体、または実施形態12に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
14.実施形態1~5のいずれか一つに記載の化合物、実施形態6に記載の結晶、または実施形態7~9のいずれ一つに記載の多形体を調製する方法であって、
3-[1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル]ピリジン、グルタル酸、および溶媒を含む溶液を調製する工程と、
グルタル酸を伴う3-[1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル]ピリジンの塩の形成を可能にする工程と、
3-[1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル]ピリジングルタル酸塩を回収する工程と、を含む、方法。
15.3-[1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル]ピリジン、グルタル酸、および溶媒の溶液の調製に使用される溶媒が、2-メチルテトラヒドロフラン、アセトニトリル、および/または酢酸エチルを含む、実施形態14に記載の方法。
16.物質が、ニコチン、コカイン、へロイン、マリファナ、およびアルコールからなる群から選択される、実施形態11に記載の使用のための、実施形態1~5のいずれか一つに記載の化合物、実施形態6に記載の結晶、実施形態7~9のいずれか一つに記載の多形体、または実施形態12に記載の使用のための医薬組成物。
17.炎症が、アルツハイマー病、甲状腺炎、および多発性硬化症からなる群から選択される、実施形態11に記載の使用のための、実施形態1~5のいずれか一つに記載の化合物、実施形態6に記載の結晶、実施形態7~9のいずれか一つに記載の多形体、または実施形態12に記載の使用のための医薬組成物。
18.実施形態11に記載の使用のための、実施形態1~5のいずれか一つに記載の化合物、実施形態6に記載の結晶、実施形態7~9のいずれか一つに記載の多形体、または実施形態12に記載の使用のためのドライパウダー吸入器での医薬組成物。
19.実施形態11に記載の使用のための、実施形態1~5のいずれか一つに記載の化合物、実施形態6に記載の結晶、実施形態7~9のいずれか一つに記載の多形体、または実施形態12に記載の使用のための熱気化エアロゾル装置での医薬組成物。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、好ましいアナタビングルタレートの多形のX線粉末回折パターン(CuKα)である。
図2図2は、実施例1で取得されたアナタビングルタレートの1H NMRスペクトルである。
図3図3は、正イオン化モードでのアナタビングルタレートの全イオン電流クロマトグラムである。
図4図4は、正イオン化モードでのアナタビングルタレートの質量スペクトルである。
図5図5は、アナタビングルタレートのFTIRスペクトルである。
図6図6は、アナタビン遊離塩基のFTIRスペクトルである。
図7図7は、ピーク位置を有するアナタビングルタレートのX線回折図である。
図8図8は、アナタビングルタレートのTGAサーモグラムである。
図9図9は、アナタビングルタレートのDSCサーモグラムである。
図10図10は、アナタビングルタレートのDVSプロットである。
図11図11は、アナタビングルタレートのイオンクロマトグラムである。
図12図12は、T=0、3、および7日目のアナタビングルタレートの環境安定性サンプルである。
図13図13は、酒石酸アナタビンのXRPD回折パターンである。
図14図14は、クエン酸アナタビンのXRPD回折パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、慢性的な低レベルの炎症を含む、炎症性要素を含む障害を治療するためのアナタビングルタレートに関する。アナタビンは、たばこ中に存在するアルカロイドであり、低濃度では、グリーントマト、グリーンポテト、熟した赤ピーマン、トマティーヨ、およびサンドライトマトを含む様々な食品中に存在する。これは、米国特許第9,387,201号およびWO2013/032558に開示されているように、抗炎症サポートを提供する市販の栄養補助食品アナタブロックの主な有効成分である。アナタビンの単離された形態の調製は、WO2011/119722および以下の参考文献Ref-1~Ref-11に記載されている。
【0009】
Ref-1:Rossi,F.V.;Ballini,R.;Barboni,L.;Allegrini,P.;Palmieri,A.A practical and efficient synthesis of(±)-anatabine.Synthesis 2018,50(9),1921-1925.
Ref-2:Puthiaparampil,T.T.;David,T.K.;Raju,M.S.Methods of synthesizing anatabine.米国特許 第8,207,346号。
Ref-3:Puthiaparampil,T.T.;David,T.K.;Raju,M.S.Pharmaceutical,dietary supplement,and food grade salts of anatabine.米国特許第8,557,999号。
Ref-4:Saloranta,T.;Leino,R.From building block to natural products:a short synthesis and complete NMR spectroscopic characterization of(±)-anatabine and(±)-anabasine.Tetrahedron Letters 2011,52(36),4619-4621.
Ref-5:Rouchaud,A.;Kem,W.R.A convenient racemic synthesis of two isomeric tetrahydropyridyl alkaloids:isoanatabine and anatabine.Journal of Heterocyclic Chemistry 2010,47(3),569-581.
Ref-6:Ayers,J.T.;Xu,R.;Dwoskin,L.P.;Crooks,P.A.A general procedure for the enantioselective synthesis of the minor Tobacco alkaloids nornicotine,anabasine,and anatabine.AAPS Journal 2005;7(3),Article 75.
Ref-7:Felpin,F.-X.;Vo-Thanh,G.;Robins,R.J.;Villieras,J.、 Lebreton,J.Total synthesis of(S)-anabasine and(S)-anatabine.Synlett 2000,(11),1646-1648.
Ref-8:Yang,C.-M.;Tanner,D.D.A simple synthesis of(±)-1,2,3,6-tetrahydro-2,3’-bipyridine(anatabine)and(±)-3-(2-piperidinyl)pyridine(anabasine)from lithium aluminum hydride and pyridine.Canadian Journal of Chemistry 1997,75(6),616-620.
Ref-9:Deo,N.M.;Crooks,P.A.Regioselective alkylation of N-(diphenylmethylidine)-3-(aminomethyl)pyridine:a simple route to minor tobacco alkaloids and related compounds.Tetr.Lett.1996,37(8),1137-1140.
Ref-10:Genisson,Y.;Mehmandoust,M.;Marazano,C.;Das,B.C.Chiral 1,2-dihydropyridines and 2,5-dihydropyridinium salt equivalents.Synthesis of(+)-anatabine and a chiral benzomorphane.Heterocycles 1994,39(2),811-818.
Ref-11:Quan,P.M.;Karns,T.K.B.;Quin,L.D.Total synthesis of dl-anatabine.Chemistry & Industry(London,United Kingdom)1964,(36),1553.
【0010】
3-[1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル]ピリジン(アナタビン)は、二つのエナンチオマー、すなわちR-(+)-アナタビンおよびS-(-)-アナタビンとして存在する。アナタビンのS-およびR-エナンチオマーのエナンチオ選択的合成は、例えば、以下に記載されている。Ayers,J.T.;Xu,R.;Dwoskin,L.P.;Crooks,P.A.A general procedure for the enantioselective synthesis of the minor Tobacco alkaloids nornicotine,anabasine,and anatabine.The AAPS Journal 2005;7(3)Article 75.本発明において、アナタビンは、その二つのエナンチオマーのラセミ混合物として、S-(-)-アナタビンの精製形態として、またはR-(+)-アナタビンの精製形態として使用することができる。文脈から別途明確でない限り、用語「アナタビン」は、本明細書では、(1)アナタビン(R,S)のラセミ混合物(2)S-(-)-アナタビンの精製形態、または(3)R-(+)-アナタビンの精製形態のいずれかを指すために使用される。
【0011】
アナタビンの薬学的に許容可能な塩は、米国特許第8,207,346号および米国特許 第8,557,999号に記載される。特に、米国特許第8,207,346号の実施例6および米国特許第8,557,999号の実施例6は、アセトン中のアナタビン溶液に酒石酸またはクエン酸を添加することによる、酒石酸アナタビンおよびクエン酸アナタビンの調製を記載する。形成された固体を、デカンテーション、エーテルでの粉砕、および真空下での乾燥により単離したが、塩の収率は報告されていない。
【0012】
アナタビングルタレート
本発明は、一実施形態では、3-(1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル)ピリジングルタレート(本明細書では、アナタビングルタレートとも呼ばれる)である化合物、またはその薬学的に許容可能な溶媒和化合物に関する。3-(1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル)ピリジングルタレートは、グルタル酸を伴う3-(1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル)ピリジンの塩とも呼ばれ得る。3-(1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル)ピリジングルタレートは、3-(1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル)ピリジン対グルタル酸のモル比が1:1であることが好ましい。
【0013】
本明細書の「3-(1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル)ピリジングルタレート」または「アナタビングルタレート」についての任意の言及が、任意のその薬学的に許容可能な溶媒和化合物を指すものとしても理解されるべきことを理解されたい。
【0014】
3-(1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル)ピリジングルタレートは、以下の式(I)によって表される化学構造を有することがより好ましい。
【化3】
【0015】
3-[1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル]ピリジン(アナタビン)は、二つのエナンチオマー、すなわちR-(+)-アナタビンおよびS-(-)-アナタビンとして存在することに留意されたい。本発明において、3-[1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル]ピリジンは、3-[(2S)-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル]ピリジンであることが好ましい。
【0016】
好ましい実施形態では、3-[1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル]ピリジングルタレートは、したがって、以下の式(Ia)を有し得る。
【化4】
【0017】
本発明者らは、驚くべきことに、アナタビングルタレート、および驚くほど改善された程度の結晶および結晶の多形体が、高結晶性、形態、多形変換および/または脱水に対する熱的および機械的安定性、貯蔵安定性、残留溶媒の低含有量、低い吸湿性程度、流動性、ならびに有利な処理および取り扱い特性などの有利な特性を有することを見出した。さらに、本発明者らは、アナタビングルタレートが、真空下での乾燥などの適切な手段によって水分が除去された場合、水分に曝露された後も、結晶塩として再結晶することを見出した。この所見は、非常に予想外である。
【0018】
上記から分かるように、アナタビンは、異なる異性体、特に立体異性体(エナンチオマーおよびジアステレオマーを含む)または互変異性体の形態で存在する。アナタビングルタレートのこうした異性体はすべて、混合物または純粋もしくは実質的に純粋の形態のいずれかで、本発明の一部であると意図されている。立体異性体に関しては、本発明は、本発明による化合物の単離された光学異性体ならびにそれらの任意の混合物(特に、ラセミ混合物/ラセミ体を含む)を包含する。ラセミ体は、例えば、分別結晶、ジアステレオマー誘導体の分離もしくは結晶化、またはキラルカラムクロマトグラフィーによる分離などの物理的方法によって分解され得る。個別の光学異性体はまた、光学活性酸との塩形成とそれに続く結晶化を介して、ラセミ体から得ることができる。本発明は、本明細書に提供される化合物の任意の互変異性体をさらに包含する。
【0019】
本明細書の3-[1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル]ピリジングルタレートへの任意の言及は、任意のその溶媒和化合物および/または共結晶も含むことが理解されるべきである。溶媒和化合物は、例えば水和物などの例えば水との溶媒和化合物、または例えば、メタノール、エタノールもしくはアセトニトリルなどの有機溶媒との溶媒和化合物、すなわち、それぞれメタノール酸塩、エタノール酸塩、もしくはアセトニトリル酸塩としての溶媒和化合物、または任意の多形の形態での溶媒和化合物を含む、任意のタイプの溶媒和化合物を含む。
【0020】
本発明の範囲はまた、一つまたは複数の原子が対応する原子の特定の同位体によって置換される、3-[1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル]ピリジングルタレートを包含する。例えば、本発明は、一つまたは複数の水素原子(または、例えば、すべての水素原子)が重水素原子(すなわち、2H、また「D」とも呼称される)によって置換される、3-[1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル]ピリジングルタレートを包含する。したがって、本発明はまた、重水素に富む3-[1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル]ピリジングルタレートを包含する。天然由来の水素は、約99.98mol‐%の水素‐1(1H)および約0.0156mol‐%の重水素(2HまたはD)を含む同位体混合物である。3-[1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル]ピリジングルタレートの一つまたは複数の水素位置における重水素の含有量は、当技術分野で公知の重水素化技術を使用して増加させることができる。例えば、式(I)の化合物、または3-[1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル]ピリジングルタレートの合成に使用される反応物もしくは前駆体を、例えば、重水(D2O)を使用したH/D交換反応に供することができる。さらなる適切な重水素化技術は、Atzrodt J et al.,Bioorg Med Chem,20(18),5658-5667,2012;William JS et al.,Journal of Labelled Compounds and Radiopharmaceuticals,53(11-12),635-644,2010;Modvig A et al.,J Org Chem,79,5861-5868,2014に記載されている。重水素の含有量は、例えば、質量分析またはNMR分光法を使用して決定することができる。別途具体的に示されない限り、3-[1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル]ピリジングルタレートは重水素に富んでいないことが好ましい。したがって、3-[1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル]ピリジングルタレート中の天然の水素原子または1H水素原子の存在が好ましい。
【0021】
アナタビンエナンチオマーを選択的に調製する方法は、例えば、“A General Procedure for the Enantioselective Synthesis of the Minor Tobacco Alkaloids Nornicotine,Anabasine,and Anatabine,”The AAPS Journal 2005;7(3)Article 75に記載されている。本明細書に記載される方法または組成物のいずれも、アナタビンを、その二つのエナンチオマーのラセミ混合物として、S-(-)-アナタビンの精製形態として、またはR-(+)-アナタビンの精製形態として、提供することを含み得る。文脈から別途明確でない限り、用語「アナタビン」は、本明細書では、(1)アナタビン(R,S)のラセミ混合物(2)S-(-)-アナタビンの精製形態、または(3)R-(+)-アナタビンの精製形態のいずれかを指すために使用される。
【0022】
本発明はさらに、3-(1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル)ピリジングルタレートの結晶に関する。結晶は特に限定されず、任意の形態を有してもよい。
【0023】
本発明はさらに、3-(1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル)ピリジングルタレートの特定の多形(本明細書では多形体とも呼ぶ)、特に3-(1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル)ピリジングルタレートの結晶に関する。多形は、図1に実質的に示されるX線粉末回折パターン(CuKα)を有することが好ましい。多形は、8.0±0.2°2θ、11.0±0.2°2θ、13.3±0.2°2θ、16.5±0.2°2θ、18.0±0.2°2θ、20.7±0.2°2θ、21.0±0.2°2θ、21.4±0.2°2θ、22.0±0.2°2θ、22.3±0.2°2θ、23.3±0.2°2θ および24.5±0.2°2θから選択された一つまたは複数のピークを含む、X線粉末回折パターン(CuKα)を有することが好ましい。より好ましくは、多形は、8.0±0.2°2θ、13.3±0.2°2θ、16.5±0.2°2θ、21.4±0.2°2θ、22.0±0.2°2θおよび24.5±0.2°2θから選択される一つまたは複数のピークを含むX線粉末回折パターン(CuKα)を有することが好ましい。
【0024】
さらにより好ましくは、多形は、8.0±0.1°2θ、11.0±0.1°2θ、13.3±0.1°2θ、16.5±0.1°2θ、18.0±0.1°2θ、20.7±0.1°2θ、21.0±0.1°2θ、21.4±0.1°2θ、22.0±0.1°2θ、22.3±0.1°2θ、23.3±0.1°2θ および24.5±0.1°2θから選択された一つまたは複数のピークを含む、X線粉末回折パターン(CuKα)を有することが好ましい。さらにより好ましくは、多形は、8.0±0.1°2θ、13.3±0.1°2θ、16.5±0.1°2θ、21.4±0.1°2θ、22.0±0.1°2θおよび24.5±0.1°2θから選択される一つまたは複数のピークを含むX線粉末回折パターン(CuKα)を有することが好ましい。
【0025】
さらにより具体的には、多形は、7.960±0.2°2θ、10.907±0.2°2θ、13.291±0.2°2θ、14.413±0.2°2θ、15.239±0.2°2θ、16.479±0.2°2θ、17.933±0.2°2θ、20.610±0.2°2θ、20.977±0.2°2θ、21.318±0.2°2θ、21.927±0.2°2θ、22.203±0.2°2θ、22.792±0.2°2θ、23.246±0.2°2θ、24.426±0.2°2θおよび24.769±0.2°2θから選択された一つまたは複数のピークを含む、X線粉末回折パターン(CuKα)を有することが好ましい。さらにより具体的には、多形は、7.960±0.1°2θ、10.907±0.1°2θ、13.291±0.1°2θ、14.413±0.1°2θ、15.239±0.1°2θ、16.479±0.1°2θ、17.933±0.1°2θ、20.610±0.1°2θ、20.977±0.1°2θ、21.318±0.1°2θ、21.927±0.1°2θ、22.203±0.1°2θ、22.792±0.1°2θ、23.246±0.1°2θ、24.426±0.1°2θおよび24.769±0.1°2θから選択された一つまたは複数のピークを含む、X線粉末回折パターン(CuKα)を有することが好ましい。
【0026】
イオンクロマトグラフィー分析を使用して、アナタビン:グルタル酸の比率が1:1のグルタル酸の存在を確認した。実験例は、アナタビングルタレートが非常に安定しており、7日後の加速条件(40°C/75%RH)下でも分解の証拠を示さなかったことを示す。提供されるデータはさらに、アナタビングルタレートが、融点、X線回折パターン、赤外線吸収フィンガープリントなどの別個の結晶構造および物理的特性を有する単一の結晶形態で調製され得ることを示す。
【0027】
多形スクリーニングは、アナタビングルタレートの新規多形体の作製につながらなかった。これはさらに、走査型電子顕微鏡と、酢酸エチルおよびアセトニトリル中で成熟させたサンプルのDSCおよびXRPDパターンの比較とによってさらに確認された。アナタビングルタレートの熱特性を、熱重量分析(TGA)および示差走査熱量測定(DSC)により決定し、これは結晶形を区別するために使用した。
【0028】
グルタレートとは異なり、酒石酸塩(図13)およびクエン酸塩(図14)は非晶形を有する。クエン酸塩および酒石酸塩は、吸湿性が高いため、特に大規模な製造および製剤化において、その取り扱いが難しく、困難である。さらに、米国特許第8,207,346号および米国特許第8,557,999号に開示されているクエン酸塩の調製プロセスは、アセトンからの沈殿を含む。結果として、クエン酸塩の固体形態は、固体を泡/ガムに変換することなく除去することが難しい、捕捉されたアセトンを含有する。
【0029】
本発明はまた、3-(1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル)ピリジングルタレート、特に3-(1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル)ピリジングルタレートの結晶を調製する方法に関する。
【0030】
この方法は、
a)3-[1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル]ピリジン、グルタル酸、および溶媒を含む溶液を調製する工程と、
b)グルタル酸を伴う3-[1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル]ピリジンの塩の形成を可能にする工程と、
c)3-[1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル]ピリジングルタル酸塩を回収する工程と、を含む。
【0031】
3-[1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル]ピリジン、グルタル酸、および溶媒の溶液の調製に使用される溶媒は、2-メチルテトラヒドロフラン、アセトニトリルおよび/または酢酸エチルを含むことが好ましい。溶媒は2-メチルテトラヒドロフランを含むことがより好ましい。
【0032】
方法はさらに、d)3-[1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-2-イル]ピリジングルタル酸塩を再結晶する工程を含んでもよい。この再結晶に適した溶媒には、アセトニトリルが含まれる。
【0033】
工程a)では、アナタビン遊離塩基、溶媒、およびグルタル酸を組み合わせて反応混合物を生成することによって、アナタビングルタレートを調製することができる。アナタビングルタレートは、典型的には、アナタビン遊離塩基のグルタル酸との接触を介して、このような反応混合物中に形成される。アセトニトリル中の1~5質量%の溶液としてのアナタビン遊離塩基は、グルタル酸と組み合わされることが好ましい。
【0034】
好ましくは、アナタビン遊離塩基、溶媒、およびグルタル酸の溶液または懸濁液を組み合わせて反応混合物を形成し、続いて沈殿させ、混合物からアナタビングルタレート塩の回収を行う。グルタル酸は、固体として、または溶媒中の溶液もしくは懸濁液としてのいずれかで添加され得る。
【0035】
溶媒は、1~8個の炭素原子を含有するアルカノール、3~8個の炭素原子を含有する脂肪族エステル、3~8個の炭素原子を含有する脂肪族直鎖または環状エーテル、3~8個の炭素原子を含有する脂肪族ケトン、C6-12芳香族炭化水素(ベンゼンおよびナフタレンなど)、アセトニトリル、水、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択されることが好ましい。溶媒は、3~8個の炭素原子を含有する脂肪族エステル、3~8個の炭素原子を含有する脂肪族環状エーテル、アセトニトリル、およびそれらの混合物から選択されることが好ましい。溶媒は、酢酸エチル、アセトニトリル、2-メチルテトラヒドロフラン、およびそれらの任意の混合物から選択されることがより好ましい。溶媒は、アセトニトリルを含有することがさらにより好ましい。溶媒は、アセトニトリルであることがさらにより好ましい。
【0036】
アナタビン遊離塩基、グルタル酸、および少なくとも一つの溶媒を組み合わせて、ほぼ室温(すなわち、好ましくは15°C~25°Cの範囲)で反応混合物を形成することが好ましい。かかる反応混合物中に存在するグルタル酸の濃度は、飽和点に近い濃度であることが好ましい(例えば、最大達成可能濃度の少なくとも80%、好ましくは90%、より好ましくは95%)。アナタビングルタレートは、典型的には混合物から沈殿する。沈殿は、それ自体で発生してもよく、または例えば、種晶の導入によって誘発されてもよい。反応混合物は、沈殿の前、最中、または後に攪拌されてもよい。
【0037】
反応混合物を加熱し、次いで冷却して、アナタビングルタレートの沈殿を促進し得る。加熱は、室温から溶媒の煮沸温度の範囲の任意の温度(例えば、約50°C~約80°C)まで実施されうる。その後、冷却は一般に、40°C未満、好ましくは約30°C~約20°C、より好ましくは室温(すなわち、好ましくは15°C~25°Cの範囲)まで行われ、沈殿を促進する。
【0038】
得られた沈殿物は、濾過などの様々な技術によって回収され得る。沈殿物は、大気圧または減圧および/または高温下で乾燥させてもよい。
【0039】
医療用途
本発明の方法による有用な化合物は、患者の血液脳関門を通過する能力を有する。このように、こうした化合物は、患者の中枢神経系に入る能力を有する。本発明を実施するのに有用な典型的な化合物のlog P値は、概して0より大きく、多くの場合約0.1より大きく、しばしば約0.5よりも大きい。こうした典型的な化合物のlog P値は、概して約3.0未満であり、多くの場合約2.5未満であり、しばしば約2.0未満である。Log P値は、生体膜などの拡散バリアを通過する化合物の能力の尺度を提供する。Hansch,et al.,J.Med.Chem.,Vol.11,p.1(1968)を参照されたい。
【0040】
本発明の方法による有用な化合物は、患者の脳のニコチン様コリン作動性受容体に結合し、それゆえにその活性化を引き起こす能力を有する。したがって、このような化合物は、ニコチン作動薬として作用する能力を有する。本発明を実施するのに有用な典型的な化合物の受容体結合定数は、概して約1nMを超え、多くの場合約200μMを超え、しばしば約500μMを超える。こうした典型的な化合物の受容体結合定数は、概して約10μM未満であり、多くの場合約7μM未満であり、しばしば約2μM未満である。受容体結合定数は、患者の特定の脳細胞の関連受容体部位の半分に結合する化合物の能力の尺度を提供する。Cheng,et al.,Biochem.Pharmacol.,Vol.22,pp.3099-3108(1973)を参照されたい。
【0041】
本発明の方法による有用な化合物は、神経終末調製物(すなわちシナプトソーム)から神経伝達物質の分泌を効果的に引き出すことによって、ニコチン性機能を示す能力を有する。したがって、このような化合物は、関連するニューロンにアセチルコリン、ドーパミン、および他の神経伝達物質を放出または分泌させる能力を有する。概して、本発明を実施するのに有用な典型的な化合物は、等モル量の(s)-(-)-ニコチンによって誘発されるドーパミンの分泌量に対して少なくとも約3パーセント、多くの場合少なくとも約25パーセント、しばしば少なくとも約50%の量を提供する。
【0042】
したがって、本発明は、薬剤として使用するための、本明細書に記載の化合物、結晶、または多形体を包含する。薬剤は、物質嗜癖または炎症の治療または予防に使用することが好ましい。それを必要とするヒトまたは非ヒト動物の患者におけるニコチン依存症または炎症を治療または予防する方法も、本発明の一部である。本発明はさらに、物質嗜癖または炎症の治療または予防における使用のための医薬組成物に関し、該組成物は、本明細書に記載の化合物、結晶、または多形体のうちの一つまたは複数の薬学的に有効な量を、随意に一つまたは複数の薬学的に許容可能な賦形剤と共に含む。
【0043】
本明細書で使用される場合、「ヒトまたは非ヒト動物患者」は、温血動物、典型的にはヒトおよび他の霊長類を含む哺乳類を含む。一部の実施形態では、患者は、コンパニオン動物、介助動物、家畜、または動物園の動物などの動物である。かかる動物には、イヌ科(イヌ、オオカミを含む)、ネコ科(ネコ、トラ、ライオンを含む)、フェレット、ウサギ、齧歯類(例えば、ラット、マウス)、モルモット、ハムスター、アレチネズミ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、キリン、およびゾウが含まれるが、これらに限定されない。したがって、本明細書に開示されるアナタビングルタレートは、ヒト療法および獣医学用途の両方において使用され得る。
【0044】
一部の実施形態では、NFKBを介した炎症性要素(すなわち、予防的に)を含む障害を発症するリスクを減少させるために、単離された形態のアナタビングルタレートを投与することができる。そのような障害のリスクが高い個体または家族歴のある個体を容易に特定できる。特定の障害のリスクを高めると認められる他の指標は、標準的な臨床検査または既往歴によって決定され得る。
【0045】
一部の実施形態では、STAT3を介した炎症性要素(すなわち、予防的に)を含む障害を発症するリスクを減少させるために、単離された形態のアナタビングルタレートを投与することができる。そのような障害のリスクが高い個体または家族歴のある個体を容易に特定できる。特定の障害のリスクを高めると認められる他の指標は、標準的な臨床検査または既往歴によって決定され得る。
【0046】
炎症は、アルツハイマー病、甲状腺炎、および多発性硬化症からなる群から選択されることが好ましい。しかしながら、化合物、結晶、多形体、または医薬組成物で治療され得る障害の範囲は、はるかに広範であり、以下に記載される。
- 甲状腺炎、
- 免疫障害または自己免疫障害、
- 関節リウマチ、一次性および二次性変形性関節症(変性関節疾患としても知られる)などの関節炎、
- 乾癬性関節炎などの脊椎関節症、遅発性パンヌス発症を伴う若年性慢性関節炎、および腸反応性関節炎、泌尿生殖器の脊椎関節症、および未分化脊椎関節症などの腸脊椎関節症、
- 「軟組織リウマチ」などの筋症(例えば、テニス肘、凍結肩、手根管症候群、足底筋膜炎、およびアキレス腱炎)、
- I型糖尿病またはII型糖尿病のいずれかの糖尿病、
- 炎症性腸疾患、例えば、クローン病、バレット症候群、回腸炎、過敏性腸症候群、過敏性結腸症候群、潰瘍性大腸炎、偽膜性大腸炎、出血性大腸炎、溶血性尿毒症症候群大腸炎、コラーゲン性大腸炎、虚血性大腸炎、放射線大腸炎、薬物および化学的に誘発された大腸炎、便流変更性大腸炎、慢性肉芽腫性疾患、セリアック病、セリアックスプルー、食物アレルギー、胃炎、感染性胃炎、腸炎(例えば、ヘリコバクターピロリ感染慢性活動性胃炎)などの状態での腸炎、および嚢炎などの胃腸炎症性障害、
- 移植片対宿主病(GVHD)、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、アジソン病、重症筋無力症、血管炎(例えば、ウェゲナー肉芽腫症)、自己免疫性肝炎、骨粗しょう症、およびいくつかのタイプの不妊症、
- 血管炎症性疾患、関連する血管病変、 アテローム性動脈硬化症、血管障害、炎症誘発性アテローム性動脈硬化症または血栓塞栓性大血管症、冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患、虚血/再灌流などの心血管系循環疾患、末梢血管疾患、血管形成術後の再狭窄、炎症性大動脈瘤、血管炎、脳卒中、脊髄損傷、うっ血性心不全、出血性ショック、虚血性心疾患/再灌流障害、くも膜下出血後の血管攣縮、脳血管障害後の血管攣縮、胸膜炎、心膜炎、炎症誘発性心筋炎、または糖尿病の心血管系合併症、
- 脳腫脹、または多発性硬化症、アルツハイマー病、またはパーキンソン病などの神経変性疾患、
- 腎疾患、腎炎、糸球体腎炎、透析、腹膜透析、心膜炎、慢性前立腺炎、血管炎、痛風、または膵炎に関連する炎症、
- 貧血症、
- 消化性潰瘍疾患、急性膵炎、またはアフタ性潰瘍などの潰瘍関連疾患、
- アテローム性動脈硬化症、線維症、骨粗しょう症などの加齢性疾患、または網膜症、慢性肺疾患、関節炎、消化器系の問題などの未成熟に関連する障害に関するもの、
- 妊娠高血圧腎症、熱傷、酸、アルカリによる化学的または熱的外傷に関連する炎症、化学物質中毒(MPTP/コンカバリン/化学薬品/農薬中毒)、ヘビ、クモ、または他の虫刺され、薬物療法による副作用(アムホテリシンB治療による副作用を含む)、免疫抑制療法による副作用(例えば、インターロイキン-2治療)、OKT3治療による副作用、GM-CSF治療による副作用、シクロスポリン治療の副作用、アミノグリコシド治療の副作用、免疫抑制による口内炎および粘膜炎、または太陽紫外線曝露、原子力発電所または爆弾被曝などの電離放射線への曝露、または癌治療などの放射線療法曝露によるもの、
- 急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、AIDS関連リンパ腫、肛門癌、虫垂癌、グレードI(未分化)星状細胞腫、グレードII星状細胞腫、グレードIII星状細胞腫、グレードIV星状細胞腫、中枢神経系の非定型奇形腫/ラブドイド腫瘍、基底細胞癌、膀胱癌、乳癌、乳房肉腫、気管支癌、気管支肺胞癌、バーキットリンパ腫、子宮頸癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸癌、結腸直腸癌、頭蓋咽頭腫、皮膚T細胞リンパ腫、子宮内膜癌、子宮内膜子宮癌、上衣芽腫、上衣腫、食道癌、感覚神経芽腫、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、線維性組織球腫、胆嚢癌、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍、 妊娠性絨毛腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍、神経膠腫、有毛細胞白血病、頭頸部癌、心臓癌、肝細胞癌、肝門部胆管癌、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、眼内黒色腫、膵島細胞腫瘍、カポジ肉腫、ランゲルハンス細胞組織球症、大細胞未分化肺癌、喉頭癌、口唇癌、肺腺癌、リンパ腫、マクログロブリン血症、悪性線維性組織球腫、髄芽腫、髄上皮腫、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、内分泌腫瘍、多発性骨髄腫、菌状息肉症、骨髄異形成症、骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍、骨髄増殖性障害、鼻腔癌、上咽頭癌、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、口腔癌、中咽頭癌、骨肉腫、卵巣明細胞癌、卵巣上皮癌、卵巣胚細胞腫瘍、膵癌、乳頭腫症、副鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、松果体実質腫瘍、松芽細胞腫、下垂体腫瘍、形質細胞新生物、形質細胞新生物、胸膜肺芽腫、原発性中枢神経系リンパ腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、染色体15番の変化を伴う呼吸器癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、セザリー症候群、小細胞肺癌、小腸癌、軟組織肉腫、扁平上皮癌、扁平上皮非小細胞肺癌、頸部扁平上皮癌、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、精巣癌、咽頭癌、胸腺癌、胸腺腫、甲状腺癌、腎盤癌、尿道癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、またはウィルムス腫瘍などの癌、
- 例えば酸逆流などの胃および/または食道の炎症に関連する障害。
【0047】
WO 2011/119722は、アナタビンが核因子κB(NFKB)によって媒介される転写を減少させることを示している。NFKBは、炎症反応および免疫反応に関与する細胞で機能する転写因子である。NFKBを介した転写は、炎症性要素、異常な免疫反応、および/または不適切な細胞増殖を伴うものを含む、多数の障害と関連している。特許請求されるアナタビングルタレートは、特に、「NFKBを介した炎症性要素」、すなわち、NFKBを介した転写によって特徴付けられる、それによって引き起こされる、その結果として生じる、またはそれによって影響を受ける炎症を含む障害の治療に有用である。NFKBを介した転写は、様々な疾患に関与する。この重要な炎症関連活性を妨害または遮断するアナタビングルタレートの驚くべき有効性に基づき、アナタビングルタレートは、幅広い治療的有用性を有することが期待できる。したがって、本発明の化合物、結晶、多形体、および医薬組成物は、上記に記載される様々な疾患の治療または予防に有用であることが期待される。
【0048】
本発明の化合物、結晶、多形体、および/または医薬組成物は、NFKBを介した要素を有する任意の障害に対する他の療法と併せて(すなわち、前、後、または同時に)使用されてもよい。一部の実施形態では、これらの療法は、NFKBを介した炎症種の産生を阻害する他の製品を含む。これらの製品には、デキサメタゾン、グルココルチコイド(例えば、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン)、シクロスポリン、タクロリムス、デオキシスパガリン、アスピリンおよびその他のサチリル酸塩などの非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、テポキサリン、合成ペプチドプロテオソーム阻害剤、抗酸化物質(例えば、N-アセチル-L-システイン、ビタミンC、ビタミンE、ジチオカルバメート誘導体、クルクミン)、IL-10、一酸化窒素、cAMP、金含有化合物、およびグリオトキシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
本発明の化合物、結晶、多形体、および医薬組成物は、NFKBを介した転写要素を有する障害の症状を減少させるのに十分な用量で個体に投与されてもよい。
【0050】
それはまた、Paris et al.(2013)Europan Journal of Pharmacology 698,145-153に示されているが、アナタビンはSTAT3およびNFkBシグナル伝達の調節を介して末梢およびCNSの両方で抗炎症活性を有する。したがって、本発明の化合物、結晶、多形、および/または医薬組成物は、NFKBに加えて、または代替的に、STAT3を阻害し得る。特許請求されるアナタビングルタレートは、特に、「STAT3を介した炎症性要素」、すなわち、STAT3を介した転写によって特徴付けられる、それによって引き起こされる、その結果として生じる、またはそれによって影響を受ける炎症を含む障害の治療に有用である。STAT3を介した転写は、様々な疾患に関与する。この重要な炎症関連活性を妨害または遮断するアナタビングルタレートの驚くべき有効性に基づき、アナタビングルタレートは、幅広い治療的有用性を有することが期待できる。したがって、本発明の化合物、結晶、多形体、および医薬組成物は、本明細書に記載される様々な疾患の治療または予防に有用であることが期待される。
【0051】
本発明の化合物、結晶、多形体、および/または医薬組成物は、STAT3を介した要素を有する任意の障害に対する他の療法と併せて(すなわち、前、後、または同時に)使用されてもよい。一部の実施形態では、これらの療法は、STAT3を介した炎症種の産生を阻害する他の製品を含む。特定の実施形態では、本発明の化合物、結晶、多形、および/または医薬組成物は、STAT3およびNFKB阻害効果の両方を有する。
【0052】
本発明の化合物、結晶、多形体、および医薬組成物は、STAT3を介した転写要素を有する障害の症状を減少させるのに十分な用量で個体に投与されてもよい。
【0053】
本発明の別の実施形態では、アナタビングルタレートの単離された形態は、物質嗜癖を予防または治療するために投与されてもよい。アナタビングルタレートは、物質嗜癖を克服するために物質嗜癖に罹患している個体に投与されてもよい。アナタビングルタレートは、物質嗜癖を克服した個体に投与されて、再発を予防することもできる。アナタビングルタレートはさらに、物質嗜癖を予防するために物質嗜癖に罹患していない個体に投与されてもよい。物質嗜癖の物質は、ニコチン、コカイン、へロイン、マリファナ、およびアルコールからなる群から選択されることが好ましい。
【0054】
WO 2012/2005885は、アナタビンを含有する組成物が、たとえニコチンの存在がなくても、一時的に喫煙願望を低減し、ニコチン欲求を低減し、禁煙の治療、たばこ離脱症状、たばこ依存、体重減少および/または関連障害に有効であることを示している。アナタビンおよび他の小さなアルカロイドも、ニコチン性受容体に結合すると報告されている。WO2015/009500はさらに、アナタビンがヒトのニコチン性アセチルコリン受容体を活性化し得ることを示唆しているが、有意な作動薬効果を生じさせるためには、推奨用量または許容用量を超える非常に高い濃度が必要とされる可能性がある。この提案は、ニコチンを自己投与するように訓練されたげっ歯類が、アナタビンに報酬を感じないこと、およびアナタビン投与が、誘発するニコチン離脱を逆転させないことを示す行動データによって裏付けられている。本発明は、アナタビングルタレートがこの点で特に有効であるという驚くべき所見に基づく。さらに、本明細書に提供される特定の結晶/多形体は、特に有効である。
【0055】
さらなる実施形態では、本発明は、特定の医学的、精神医学的、および/または神経学的な状態または障害を治療する方法を提供する。本発明の一実施形態では、方法は、本発明の化合物、結晶、多形および/または医薬組成物のMAO阻害有効量を、医学的、精神医学的、および/または神経学的な状態または障害、例えば、限定されないが、アルツハイマー病、パーキンソン病、大うつ病、軽度うつ病、非定型うつ病、気分変調、注意欠陥障害、多動性、行動障害、ナルコレプシー、社会恐怖症、強迫性障害、非定型顔面痛、摂食障害、薬物離脱症候群およびアルコール、オピオイド、アンフェタミン、コカイン、たばこ、および大麻(マリファナ)を含む薬物依存障害、うつ病、パニック障害、過食症、アネルギー性うつ病、治療抵抗性うつ病、頭痛、慢性疼痛症候群、全般性不安障害、およびMAO活性の変化が治療効果となり得る他の状態の治療のために、哺乳動物、特にヒトに投与することを含む。
【0056】
本発明のさらなる実施形態では、方法は、本発明の化合物、結晶、多形および/または医薬組成物のMAO阻害有効量を、医学的、精神医学的、および/または神経学的な状態または障害、例えば、限定されないが、アルツハイマー病、パーキンソン病、大うつ病、軽度うつ病、非定型うつ病、気分変調、注意欠陥障害、多動性、行動障害、ナルコレプシー、社会恐怖症、強迫性障害、非定型顔面痛、摂食障害、薬物離脱症候群およびアルコール、オピオイド、アンフェタミン、コカイン、たばこ、および大麻(マリファナ)を含む薬物依存障害、うつ病、パニック障害、過食症、アネルギー性うつ病、治療抵抗性うつ病、頭痛、慢性疼痛症候群、全般性不安障害、およびMAO活性の変化が治療効果となり得る他の状態の治療のために、哺乳動物、特にヒトに投与することを含む。
【0057】
本発明のさらなる実施形態では、方法は、本発明の化合物、結晶、多形および/または医薬組成物のMAO阻害有効量を、医学的、精神医学的、および/または神経学的な状態または障害、例えば、限定されないが、アルツハイマー病、パーキンソン病、大うつ病、軽度うつ病、非定型うつ病、気分変調、注意欠陥障害、多動性、行動障害、ナルコレプシー、社会恐怖症、強迫性障害、非定型顔面痛、摂食障害、薬物離脱症候群およびアルコール、オピオイド、アンフェタミン、コカイン、たばこ、および大麻(マリファナ)を含む薬物依存障害、うつ病、パニック障害、過食症、アネルギー性うつ病、治療抵抗性うつ病、頭痛、慢性疼痛症候群、全般性不安障害、およびMAO活性の変化が治療効果となり得る他の状態の治療のために、哺乳動物、特にヒトに投与することを含む。
【0058】
本発明のさらなる実施形態では、方法は、本発明の化合物、結晶、多形および/または医薬組成物のMAO阻害有効量を、それと共に製剤化されたガムおよびトローチの形態で、医学的、精神医学的、および/または神経学的な状態または障害、例えば、限定されないが、アルツハイマー病、パーキンソン病、大うつ病、軽度うつ病、非定型うつ病、気分変調、注意欠陥障害、多動性、行動障害、ナルコレプシー、社会恐怖症、強迫性障害、非定型顔面痛、摂食障害、薬物離脱症候群およびアルコール、オピオイド、アンフェタミン、コカイン、たばこ、および大麻(マリファナ)を含む薬物依存障害、うつ病、パニック障害、過食症、アネルギー性うつ病、治療抵抗性うつ病、頭痛、慢性疼痛症候群、全般性不安障害、およびMAO活性の変化が治療効果となり得る他の状態の治療のために、哺乳動物、特にヒトに投与することを含む。
【0059】
またさらなる実施形態では、本発明の化合物、結晶、多形、および/または医薬組成物は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の群の障害または疾患を治療/予防するために投与されてもよい。自閉症スペクトラム障害(ASD)は、習得した技能が失われ、または新しい技能の習得が遅れた場合に、幼児期に診断される広範な神経発達障害である。ASDは幼児期に発症し、反復的で定型的な行動に加えて、様々な程度のコミュニケーションおよび社会的技能の機能障害と関連している。多くの場合(25%~50%)、一見正常な発達期間が、習得した技能が失われたり、新しい技能の習得が遅れたりすると、劇的に方向転換する。自閉症スペクトラム障害の例には、「古典的」自閉症、アスペルガー症候群、レット症候群、小児崩壊性障害、および特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)として知られる非定型自閉症が含まれる。
【0060】
自閉症は、乳児期に発症する小児精神病であり、年齢とともに進行する幅広い心理的症状(例えば、社会的関係における反応性の欠如、言語異常、および絶え間ない環境入力の必要性)によって特徴付けられる。これは一般的に、二歳~三歳の小児に現れ、小児が以前に得た発達の喪失を引き起こす。自閉症の個体は、てんかんなどの発作障害を発症するリスクが高くなる。
【0061】
自閉症患者の結腸、食道、および十二指腸で過剰な炎症が見出されており、死後研究でも、神経炎症のいくつかのマーカーの発現が増加していることが示されている(表1を参照)。自閉症患者の一部では、TNFαおよびIL-1を含む炎症促進性サイトカインが過剰産生されており、これらの患者が、過剰な自然免疫反応および/またはT細胞応答に対する調節性サイトカインの異常産生を有することを示している(例えば、20030148955)。 S-(-)-アナタビンを含むアナタビンの単離された形態、またはこのような単離された形態の塩は、「NFκBを介した炎症性要素」、すなわち、NFκBを介した転写によって特徴付けられる、それによって引き起こされる、その結果として生じる、またはそれに影響を受ける炎症を含む障害の治療に特に有用である。したがって、単離された形態の式Iの化合物(例えば、アナタビンもしくはS-(-)-アナタビンまたはその薬学的に許容可能な塩)は、ASDの症状を治療または低減するのに有用であり得る。本発明の化合物、結晶、多形、および/または医薬組成物の単離された形態の使用は、たばこ、たばこ抽出物、アルカロイド抽出物、およびニコチンに関連する毒性を回避する。
【0062】
神経炎症は、中枢神経系の損傷に対する十分に確立された反応である(Minghetti,Curr Opin Neurol 2005;18:315-21)。アルツハイマー病のインビトロおよびインビボでのヒトの病理学的研究は、疾患の病態生理学(Mrak & Griffin,Neurobiol Aging 26:349-54,2005)および治療標的(Hu et al.,Bioorgan Med Chem Lett 17:414-18,2007;Ralay et al.J Neurosci 26:662-70,2006;Crafl et al.,Exp Opin Therap Targets 9:887-900,2005)の両方におけるグリアを介した神経炎症反応を示唆している。IL-1の過剰発現につながるミクログリア活性化は、神経変性に至る自己増殖サイトカインサイクルを開始する極めて重要なステップとして提案されている(Mrak & Griffin,Neurobiol Aging 26:349-54,2005;Sheng el al.,Neurobiol Aging 17:761-66.1996)。IL-1βおよび炎症誘発性サイトカインは、てんかんにおいて、そのようなサイクルに依存しない痙攣誘発性シグナル伝達分子として機能する可能性があり(Vezzani et al.,Epilepsia 43:S30- S35,2002)、てんかんおよび他の発作障害における潜在的な治療標的を提供する(Vezzani & Granata,Epilepsia 46:1724-43,2005)。
【0063】
一部の実施形態では、本発明の化合物、結晶、多形、および/または医薬組成物の単離された形態は、全般発作および部分発作を含む、発作を治療するために投与される。
【0064】
The Pharmacological Basis of Therapeutics,9th ed.,(McGraw-Hill)に記載されるように、発作には部分発作と全般発作の二つのクラスがある。部分発作は、焦点発作および局所発作からなる。部分発作はさらに、単純部分発作、複雑部分発作、および二次性全般化部分発作に分類される。全般発作は、痙攣発作および非痙攣発作に分類される。これらはさらに、欠神(以前は小発作と呼ばれていた)発作、非定型欠神発作、ミオクローヌス発作、間代発作、強直発作、強直間代発作、および脱力発作として分類される。
【0065】
全般発作には、点頭てんかん、欠神発作、強直間代発作、脱力発作、およびミオクローヌス発作が含まれる。運動機能異常および意識喪失が、これらの発作の主な特徴である。患者はまた、感覚、自律神経、または精神的な感覚の前兆を経験する場合がある。前兆には、感覚異常、心窩部の上昇感、異常臭、恐怖感、または既視感が含まれ得る。全般発作に続いて、患者が深く眠ったり、混乱したり、および/または頭痛や筋肉痛を感じたりし得る、発作後状態が続くことが多い。トッド麻痺(発作焦点とは反対側の四肢の脱力)は、発作後状態に見られる可能性がある。
【0066】
点頭てんかんは、腕の頻繁な屈曲および内転、ならびに体幹の前方屈曲を特徴とし、通常は短時間である。これらは生後5年以内にのみ発生する。
【0067】
典型的な欠神発作(小発作としても知られる)は、典型的には10~30秒以上、まぶたがひくひくする状態を伴う意識消失によって特徴付けられる。体軸筋緊張の喪失がある場合とない場合がある。痙攣は起こらず、その代わりに、患者は突然活動を停止し、その後突然活動を再開し、発作が起こったことに気付かない場合が多い。欠神発作は遺伝的である。主に小児に起こり、しばしば一日を通して頻繁に起こる。
【0068】
非定型欠神発作は、重篤なてんかんであるレノックス・ガストー症候群の一部として発生する。典型的な欠神発作よりも長く続き、痙攣または自動運動がより顕著になる。
【0069】
脱力発作は、通常、レノックス・ガストー症候群の一部として、小児に最も頻繁に起こる。それらは、筋肉の緊張と意識の完全な喪失を特徴とする。
【0070】
強直発作はまた、通常、レノックス・ガストー症候群の一部として、小児に最も頻繁起こる。これらは、通常、睡眠中に体軸筋および近位筋の強直性(持続性)収縮を特徴とし、10~15秒間続く。より長い強直発作では、発作の終わりに数回の急速な間代性痙攣が起こることがある。
【0071】
強直間代発作は、大発作としても知られるが、一次性または二次性全般化され得る。一次性全般化強直間代発作を経験している患者は、多くの場合、大声を出し、その後意識を失い転倒する。その後、強直性収縮が始まり、続いて、四肢、体幹、および頭部の筋肉の間代性(収縮および弛緩が急速に入れ替わる)の動きが始まる。患者は、尿と便の排泄抑制能力を失い、舌を噛み、口から泡を吹くこともあり得る。発作は通常、1~2分間継続する。 前兆はない。二次性全般化強直間代発作は、単純部分発作または複雑部分発作から始まり、その後全般発作へと進行する。
【0072】
ミオクローヌス発作は、ひとつまたは複数の手足、または体幹の短くて急速な痙攣を特徴とする。これらは反復性であり、強直間代発作につながる可能性がある。痙攣は、両側性または片側性であり得る。発作が全身強直間代発作に進行しない限り、意識は失われない。
【0073】
若年性ミオクローヌスてんかんは、ミオクローヌス発作、強直間代発作、および欠神発作を特徴とするてんかん症候群である。患者は通常青年である。発作は典型的には、両側同期ミオクローヌス発作から始まり、90%で全般性強直間代発作が続く。朝起き上がるときによく起こる。患者の三分の一は、欠神発作を経験する場合がある。
【0074】
熱性発作は発熱と関連しているが、頭蓋内感染とは関連していない。良性熱性発作は、短時間の全般性強直間代発作を特徴とする。このような発作は小児に多く見られ、六歳未満の小児の最大4パーセントが罹患する。複雑な熱性発作は、15分超続くか、または24時間で二回以上発生する焦点発作によって特徴付けられる。熱性発作を有する小児の2パーセントが、その後発作障害を発症する。このリスクは、複雑な熱性発作、既存の神経学的異常、1歳以前に発症した、または発作障害の家族歴を持つ小児の方が高い。
【0075】
てんかん重積状態は、5~10分以上持続する強直間代発作活動、または二回以上の発作の間に患者が完全に意識を回復しないことを特徴とする発作障害である。治療しない場合、60分以上持続する発作は、脳損傷または死亡を引き起こす可能性がある。
【0076】
複雑部分てんかん重積状態および欠神てんかん重積状態は、精神状態の変化の長引くエピソードによって特徴付けられる。全般痙攣性てんかん重積状態は、抗痙攣薬の突然の離脱または頭部外傷と関連している可能性がある。
【0077】
単純部分発作は、意識喪失を伴わない運動、感覚、または精神運動の症状によって特徴付けられる。脳の異なる部分における発作は、しばしば別個の症状を生じさせる。
【0078】
前兆はしばしば複雑部分発作に先行する。患者は通常、自分の環境を認識しているが、意識障害を経験する場合がある。患者はまた、特に発作が内側前頭または眼窩前頭領域から発する場合、口のオートマティズム(不随意の咀嚼または唇鳴らし)、手足のオートマティズム(目的のない自動的な運き)、意味不明な音の発声、発作焦点と反対側の四肢の強直性またはジストニア性の姿勢、通常、発作焦点と反対側の方向への頭と目の逸脱、および脚のサイクリングまたはペダリングの動きを経験する場合がある。運動症状は1~2分後に治まり、1~2分後に混乱および見当識障害が起こることがよくある。発作後健忘症は一般的である。
【0079】
てんかんは発作障害の重要な例である。「てんかん」は、大脳皮質および脳の他の領域のニューロンの過剰なおよび/または超同期性の異常な電気的活動の外向きの症状である反復性発作によって特徴付けられる、中枢神経系障害の一群を指す。この異常な電気的活動は、運動、痙攣、感覚、自律神経、または精神症状として現れる場合がある。
【0080】
数百ものてんかん症候群が、てんかん発作を含む特定の症状によって特徴付けられる障害として定義されてきた。これらには、限定されるものではないが、欠神てんかん、精神運動てんかん、側頭葉てんかん、前頭葉てんかん、後頭葉てんかん、頭頂葉てんかん、レノックス・ガストー症候群、ラスムッセン脳炎、小児欠神てんかん、ラムゼイ・ハント症候群II型、良性てんかん症候群、良性乳児脳症、良性新生児痙攣、早期ミオクローヌス脳症、進行性てんかんおよび乳児てんかんが挙げられる。患者は、異なるタイプの発作の任意の組み合わせに罹患する場合がある。部分発作が最も一般的であり、全発作タイプの約60%を占める。
【0081】
治療され得る全般発作の例としては、点頭てんかん、典型的な欠神発作、非定型欠神発作、脱力発作、強直発作、強直間代発作、ミオクローヌス発作、および熱性発作が挙げられる。治療され得る部分発作の例としては、前頭葉、対側前頭葉、補充運動皮質、島、島-眼窩-前頭皮質、前内側側頭葉、扁桃体(弁蓋部および/または他の領域を含む)、側頭葉、後側頭葉、扁桃体、海馬、頭頂葉(感覚皮質および/または他の領域を含む)、後頭葉および/または脳の他の領域に影響を及ぼす単純部分発作が挙げられる。
【0082】
一部の実施形態では、本発明の化合物、結晶、多形、および/または医薬組成物の単離された形態は、限定されるものではないが、欠神てんかん、精神運動てんかん、側頭葉てんかん、前頭葉てんかん、後頭葉てんかん、頭頂葉てんかん、レノックス・ガストー症候群、ラスムッセン脳炎、小児欠神てんかん、ラムゼイ・ハント症候群II型、良性てんかん症候群、良性乳児脳症、良性新生児痙攣、早期ミオクローヌス脳症、進行性てんかんおよび乳児てんかんを含む、てんかん症候群を治療するために投与される。
【0083】
本発明の化合物、結晶、多形、および/または医薬組成物の単離された形態はまた、発作に付随する前兆の治療に有用でありうる。したがって、意識障害、口のオートマティズム、手足のオートマティズム、意味不明な音の発声、四肢の強直性またはジストニア性の姿勢、頭と目の逸脱、脚のサイクリングまたはペダリングの動き、および前兆を含む他の症状も治療され得る。
【0084】
新生児発作は、精神遅滞、自閉症、およびてんかんを含む、後の神経発達障害および認知障害と関連しており、自閉症の症例の最大40%がてんかんに罹患しているか、または人生の早い段階で発作の既往を有すると推定される。したがって、重要な対象患者は、乳児、特に新生児、および本人または家族が、発作、精神遅滞、または自閉症の既往を有する人である。
【0085】
本開示はまた、発作後患者を治療するための方法および組成物を提供する。一実施形態では、本発明の化合物、結晶、多形および/または医薬組成物の単離された形態は、神経伝達物質受容体阻害剤(例えば、AMPA受容体、NMDA受容体GABA受容体、塩化物共輸送体、または代謝型グルタミン酸受容体の阻害剤)、キナーゼ/ホスファターゼ阻害剤(例えば、カルモジュリンキナーゼII(CamK II)、タンパク質キナーゼA(PKA)、タンパク質キナーゼC(PKC)、MAPキナーゼ、Srcキナーゼ、ERKキナーゼ、またはホスファターゼカルシニューリンの阻害剤)、および/またはタンパク質翻訳阻害剤などの第二の治療剤と併せて投与される。
【0086】
カルモジュリンキナーゼII(CamK II)阻害剤にはKN-62、W-7、HA-1004、HA-1077およびスタウロスポリンが含まれる。タンパク質キナーゼA(PKA)阻害剤には、H-89、HA-1004、H-7、H-8、HA-100、PKI、およびスタウロスポリンが含まれる。
【0087】
タンパク質キナーゼC(PKC)阻害剤は、スタウロスポリンおよびそのビスインドリルマレイミド誘導体、Ro-31-7549、Ro-31-8220、Ro-31-8425、Ro-32-0432およびサンギバマイシン(Sangivamvcin);カルホスチンC、サフィンゴール、D-エリスロ-スフィンゴシンなどのジアシルグリセロール(diacy Iglycerol)およびホルボールエステルの結合部位で競合することによって、PKCの制御ドメインと相互作用する薬剤;塩化チェレリスリンおよびメリチンなどPKCの触媒ドメインを標的とする薬剤;塩化デカリニウムなどの紫外線への曝露時にPKCに共有結合することによってPKCを阻害する薬剤;Go6976、Go6983、Go7874および他の相同体、ポリミキシンB硫酸塩(polymy xin B sulfate)などのCa依存性PKCを特異的に阻害する薬剤;PKC配列に由来する競合ペプチドを含む薬剤;および心臓毒、エラグ酸、HBDDE、1-O-ヘキサデシ1-2- O-メチル-rac-グリセロール、ヒペリシン(Hypercin)、K-252、NGIC-1、フロレチン、ピセアタンノール、およびクエン酸タモキシフェンなどの[0056]PKC阻害剤を含む、PKC ATP結合部位に対する競合阻害剤を含む。
【0088】
MAPキナーゼ阻害剤には、SB202190およびSB203580が含まれる。SRCキナーゼ阻害剤には、PP1、PP2、Src阻害剤No.5、SU6656、およびスタウロスポリンが含まれる。ERKキナーゼ阻害剤には、PD 98059、SL327、オロモウシン、および5-ロドツベルシジン(lodotubercidin)が含まれる。カルシニューリン阻害剤には、タクロリムスおよびシクロスポリンが含まれる。
【0089】
タンパク質翻訳阻害剤には、ラパマイシン、CCI-779およびRAD001などのmTOR阻害剤が含まれる。
【0090】
本発明の化合物、結晶、多形、および/または医薬組成物の単離された形態は、自閉症スペクトラム障害の症状を減少させるのに十分な用量で、または発作障害の症状を減少させるのに十分な用量で、個体に投与される。用量は、典型的には、約1μg/kg~約7mg/kg体重(例えば、約1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、もしくは5μg/kg、または約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、もしくは5mg/kg)、約1.5μg/kg~約5μg/kg、約1μg/kg~約10μg/kg、約0.01mg/kg~約7mg/kg体重、約0.1mg/kg~約5mg/kg、約0.1mg/kg~約2mg/kg、約1mg/kg~約3mg/kg、約0.5mg/kg~約2mg/kg、約1mg/kg~約2mg/kg、約3mg/kg~約5mg/kg、約2mg/kg~約4mg/kg、約2mg/kg~約5mg/kg、または約0.5mg/kg~約1.5mg/kgの範囲である。特定の要因は、疾患または障害の重症度、以前の治療、個人の全般的な健康、年齢、および/または体重、治療の頻度、組成物からの放出速度、および存在する他の疾患を含む、障害の症状を減少させるのに十分な用量(すなわち、有効用量)に影響を与える場合がある。この用量は、対象の病態、年齢、および体重などの要因に応じて変化し得る。例えば、進行した段階および/または生命を脅かす状態を伴う治療には、より高い用量が投与されてもよい。投与レジメンはまた、最適な治療反応を提供するように調整されてもよい。
【0091】
一部の実施形態では、障害の症状を減少させるのに十分な用量は、一連の治療を含み得る。例えば、個体は、本発明の化合物、結晶、多形、および/または医薬組成物の単離された形態の1日数回(例えば、1日2~12回または4~10回)、1日1回、または週に1~6回などのより少ない頻度の用量で、治療することができる。他の実施形態では、投与される化合物は、式I、IA、またはIBの化合物であり、1日に数回(例えば、1日に2~12回または4~10回)、1日1回、または週に1~6回などより少ない頻度で投与される。治療は、約1~10週間(例えば、2~8週間、3~7週間、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10週間)にわたってもよい。また、治療に使用される用量レジメンは、特定の治療過程にわたって増加または減少し得ることも理解されるであろう。
【0092】
本発明の一実施形態では、アナタビングルタレートは、物質嗜癖または炎症を治療または予防するために患者に投与される。用量は、典型的には、約1μg/kg~約7mg/kg体重(例えば、約1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、もしくは5μg/kg、または約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、もしくは5mg/kg)、約1.5μg/kg~約5μg/kg、約1μg/kg~約10μg/kg、約0.01mg/kg~約7mg/kg体重、約0.1mg/kg~約5mg/kg、約0.1mg/kg~約2mg/kg、約1mg/kg~約3mg/kg、約0.5mg/kg~約2mg/kg、約1mg/kg~約2mg/kg、約3mg/kg~約5mg/kg、約2mg/kg~約4mg/kg、約2mg/kg~約5mg/kg、または約0.5mg/kg~約1.5mg/kgの範囲である。特定の要因は、疾患または障害の重症度、以前の治療、個人の全般的な健康、年齢、および/または体重、治療の頻度、組成物からの放出速度、および存在する他の疾患を含む、障害の症状を減少させるのに十分な用量(すなわち、有効用量)に影響を与える場合がある。この用量は、対象の病態、年齢、および体重などの要因に応じて変化し得る。例えば、進行した段階および/または生命を脅かす状態を伴う治療には、より高い用量が投与されてもよい。投与レジメンはまた、最適な治療反応を提供するように調整されてもよい。
【0093】
例えば、約600μgのアナタビングルタレートを含む錠剤は、1日1回から25回(例えば、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、12回、13回、14回、15回、16回、17回、18回、19回、20回、21回、22回、23回、24回、または25回)投与される。
【0094】
障害の症状を減少させるのに十分な用量は、一連の治療を任意に含み得る。例えば、個体は、1日に数回、1日に1回、または週に1~6回などのより少ない頻度の投与で、単離された形態のアナタビングルタレートで治療することができる。炎症の治療は、約1~10週間(例えば、2~8週間、3~7週間、約1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、または10週間)にわたってもよい。炎症を防止するためにアナタビングルタレートを投与することは、無限の時間スパンで行われてもよく、用量はそれに応じて調節されてもよい。アナタビングルタレートは、物質嗜癖を予防および治療するために、欲求を満たすために必要に応じて無限の時間スパンにわたって投与されてもよいし、またはアナタビングルタレートの量および対象の生理学的状態などの要因に応じて、1日1回、1日2回、1日3回以上などの間隔で投与されてもよい。また、治療に使用される用量レジメンは、特定の治療過程にわたって増加または減少し得ることも理解されるであろう。
【0095】
通常、本発明で使用されるアナタビングルタレートの純度のレベルは、少なくとも約95%、より一般的には少なくとも約96%、約97%、約98%、またはそれ以上である。例えば、純度のレベルは、約98.5%、99.0%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、またはそれ以上であってもよい。
【0096】
アナタビングルタレートは、例えば、エリキシル剤、溶媒和化合物、飲料、噛むもの、錠剤、ロゼンジ、ガムなどの形態で、他の成分と一緒に提供され得る。一実施形態では、例えば、飲料は、約100ml~約2,000mlの精製水、および約0.00001~約0.0001重量%のアナタビングルタレートの水溶性塩を含有するボトル入り水製品の形態であってもよい。味、色/透明度、および/または安定性などの製品特性を改善するために、さらなる不活性成分を添加してもよい。ボトル入り水製品はまた、ビタミン、タンパク質性成分など、他の有益な成分を含んでもよい。組成物は、代替的に、(例えば、エンドユーザーによって)水または他の液体と組み合わせて飲料を調製することができる、パケットに入った固体(例えば、粉末)形態で提供されてもよい。
【0097】
本発明の化合物、結晶、または多形体を含む医薬組成物は、一つまたは複数の薬学的に許容可能な賦形剤と共に製剤化されてもよい。本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容可能な賦形剤」は、非毒性で不活性な固体、半固体または液体の充填剤、希釈剤、カプセル化材料、または任意のタイプの製剤補助剤を意味する。例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖類;トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;ココアバターおよび座薬ワックスなどの賦形剤;ピーナッツオイル、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブオイル、トウモロコシ油、および大豆油などのオイル;プロピレングリコールなどのグリコール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;パイロジェンフリーの水;等張食塩水;リンゲル溶液;エチルアルコール、およびリン酸緩衝液、ならびにラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの適合性のある潤滑剤、ならびに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味料、香味料および芳香剤、防腐剤および抗酸化剤も、製剤化する人の判断によって、組成物中に存在してもよい。
【0098】
経口投与のための液体剤形としては、許容可能な医薬品または食品グレードのエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシルが挙げられる。活性化合物に加えて、液体剤形は、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤、および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)ジメチルホルムアミド、オイル(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブオイル、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物などの当技術分野で一般的に使用されている不活性希釈剤を含んでいてもよい。不活性希釈剤に加えて、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味料、香味料、および芳香剤などのアジュバントも含み得る。
【0099】
熱気化エアロゾル装置で使用するための液体医薬組成物は、典型的には、水、有機溶媒、甘味剤および/または風味剤などの他の成分を含有する。熱気化エアロゾル装置用の液体組成物で一般的に使用される溶媒の例には、1,2-プロピレングリコール(PGまたはMPG)などの多価アルコール、エタノールなどの一価アルコール、酢酸エチルおよびこれに類するものが含まれる。存在する水の量は通常約0.1~約10重量%で、普通は約0.5~約5重量%である。存在する有機溶媒の量は、通常約50~約99重量%であり、多くの場合は約75~約95重量%である。所望であれば、一つまたは複数の風味剤が組成物に添加されてもよく、その非限定的な例には、ペパーミント、メントール、ウィンターグリーン、オランダハッカ、プロポリス、ユーカリ、シナモン、またはこれに類するものが含まれる。風味剤の合計量は、組成物の総重量に基づいて、通常約0.5~約15重量%、多くの場合は約1~約10重量%の範囲である。例証として、アナタビングルタレートの量は、組成物の総グラム当たり約0.1~約25mg、約0.5~約20mg、または約1~約10mgの範囲でありうる。
【0100】
経口投与のための固形剤形には、カプセル、錠剤、トローチ剤、ピル、粉末、および顆粒が含まれる。かかる固形剤形では、活性化合物が、少なくとも一つの不活性で許容可能な医薬品または食品グレードの賦形剤、またはクエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウムなどの担体、および/またはa)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸などの充填剤もしくは増量剤、b)カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよびアカシア などの結合剤、c)グリセロールなどの保水剤、d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、e)パラフィンなどの溶解遅延剤、f)第四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、g)セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤、h)カオリンおよびベントナイト粘土などの吸収剤、i)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物などの滑剤、およびj)甘味料、風味料、芳香剤、およびそれらの混合物と混合される。カプセル、トローチ剤、錠剤、およびピルの場合、剤形はまた、緩衝剤を含んでもよい。本発明の固体剤形は、徐放用に製剤化することができる。
【0101】
本発明の化合物、結晶、多形、および/または医薬組成物の効果を延長するために、多くの場合、皮下注射または筋肉内注射からの物質の吸収を遅らせることが望ましい。これは、水溶性が乏しい結晶性または非結晶性材料の液体懸濁液の使用によって達成され得る。その場合、物質の吸収速度は、その溶解速度に依存し、溶解速度は、結晶サイズおよび結晶形態に依存し得る。あるいは、非経口投与物質形態の吸収の遅延は、油性ビヒクルに物質を溶解または懸濁させることによって達成される。注射用デポー形態は、ポリラクチド-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマーで物質のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって作製される。ポリマーに対する物質の比率、および用いられる特定のポリマーの性質に応じて、物質放出速度を制御できる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。徐放性製剤は、当技術分野で公知である。例えば、膨潤性粒子は、米国特許第5,582,837号、第5,972,389号、および第6,723,340号に記載されている。ポリマーマトリックスは、米国特許 第6,210,710号、第6,217,903号、および第6,090,411号に記載されている。徐放性製剤に使用される典型的な材料は、ポリマーポリ(エチレンオキシド)およびヒドロキシプロピルメチルセルロースである。デポー注射用製剤はまた、身体組織と適合性のあるリポソームまたはマイクロエマルジョンに物質を封入することによっても調製される。
【0102】
医薬組成物は、任意の適切な技術によって調製されてもよく、その製造のための任意の特定の方法によって限定されない。例えば、アナタビングルタレートを賦形剤および結合剤と組み合わせ、次いで造粒することができる。造粒物を、任意の残りの成分とドライブレンドし、錠剤などの固体形態に圧縮することができる。
【0103】
錠剤、カプセル、ピル、および顆粒の固形剤形は、腸溶コーティングなどのコーティングおよびシェル、ならびに医薬製剤技術において周知の他のコーティングを用いて調製することができる。それらは任意に乳白剤を含有してもよく、またそれらが、腸管の特定の部分で、または任意に、遅延または持続された様式で、有効成分のみを、または優先的に放出する組成物であってもよい。使用され得る包埋組成物の例には、高分子物質およびワックスが含まれる。徐放性の錠剤製剤も、米国特許第5,942,244号に記載されている。
【0104】
医薬組成物は、任意の従来的な非毒性の薬学的に許容可能な担体、アジュバント、またはビヒクルを含有してもよい。一部の事例では、製剤のpHは、製剤化された組成物またはその送達形態の安定性を強化するために、許容可能な医薬品または食品グレードの酸、塩基、または緩衝剤を用いて調整されてもよい。
【0105】
本発明の化合物、結晶、多形体、および医薬組成物は、任意の適切な経路で投与されてもよい。例えば、組成物は、経口的に、非経口的に、吸入により局所的に、直腸に、経鼻的に、頬に、膣に、移植されたリザーバーを介して投与されるか、または栄養補助食品または食品として摂取され得る。本明細書で使用される場合、非経口という用語は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、および頭蓋内注射または注入技術を含む。好ましい投与経路には、ドライパウダー吸入器または熱気化エアロゾル装置などの気化エアロゾル装置を介した吸入が含まれる。熱気化エアロゾル装置は、例えば、WO02/098496、WO02/098389、およびWO03/095012に記載されている。
【0106】
本発明の一態様は、本発明の化合物、結晶もしくは多形体、または熱気化エアロゾル装置で本発明に従って使用するための医薬組成物に関する。アナタビングルタレートの量は、熱気化エアロゾル装置のタイプ、および他の有効成分が存在するかどうかなどの要因に応じて変化し得る。熱気化エアロゾル装置は、様々なタイプの構成であってもよく、その詳細は本発明の一部を形成するものではない。一般に、熱気化エアロゾル装置は、単回使用もしくは使い捨てタイプであり得るか、または液体アルカロイド組成物および/もしくは液体組成物を含むカートリッジを再充填して再利用を容易にし得る。
【0107】
本発明の別の態様は、本発明の化合物、結晶もしくは多形体、またはドライパウダー吸入器で本発明に従って使用するための医薬組成物に関する。ドライパウダー吸入器技術を使用して、装置に装填されたドライパウダーアナタビングルタレート製剤のパケットは、例えば、1用量当たり0.01~10mgのアナタビングルタレート、 1用量当たり0.05~5mgのアナタビングルタレート、もしくは1用量当たり0.1~1mgのアナタビングルタレートなどの異なる量を含んでもよく、または異なる濃度のアナタビングルタレートを異なる粒子サイズで作製することができ、吸入後のアナタビングルタレートの体内への放出速度および吸収速度を調節する製剤を含有してもよい。また、味、匂い、および色に影響を及ぼすpH調節剤および添加剤を有する場合もある。アナタビングルタレート粉末製剤のエアロゾル化は、エネルギー源としてのユーザーの呼吸、または圧縮ガス、またはプロペラ付き電気モータを駆動する電池、または粉末を分散させる振動源を使用して達成することができる。
【0108】
本発明の化合物、結晶、もしくは多形体、または本発明による使用のための医薬組成物を、ドライパウダー吸入器または熱気化エアロゾル装置に提供することによって、従来のたばこ喫煙に対する欲求を低減させる一方で、ニコチンおよび他のたばこ成分に関連する毒性および他の望ましくない副作用を最小化することができる。ドライパウダー吸入器または熱気化エアロゾル装置は、欲求を満たすために必要に応じて、または有効成分の濃度および対象の生理学的状態などの要因に応じて、1日1回、1日2回、または1日3回以上などの間隔で使用され得る。
【0109】
したがって、本発明はまた、本発明の化合物、結晶、多形、および/または医薬組成物を含む無煙たばこ製品に関する。
【0110】
無煙たばこ製品は、本発明の化合物、結晶、多形、および/または医薬組成物の粉末形態を含む。一実施形態では、したがって、無煙たばこ製品は、本発明の化合物、結晶、多形、および/または医薬組成物と共にたばこを含む。
【0111】
本発明の好ましい一実施形態では、無煙たばこ製品は、粉末たばこと、本発明の化合物、結晶、多形、および/または医薬組成物とを含む固体ビットである。粉末たばこは、硬化されたたばこの茎、薄層、またはその両方(以下、総称して「たばこ材料」という)から製造することができる。無煙たばこ製品中のたばこ材料の相対的な割合は、たばこ葉の特定の組成などの要因に依存する。固体ビットは、多くの場合、約10重量%~約80重量%、より一般的には約25重量%~約55重量%の粉末たばこを有する。
【0112】
好ましくは、硬化されたたばこ材料は、粉砕され、例えば製粉されて、粉末たばこを形成する。このようにして、たばこ材料は、飲み込みやすい製品を製造するのに十分なほど微細に製粉される。あるいは、たばこ材料の抽出物を乾燥させて粉末を形成する。抽出プロセスにおいて、硬化されたたばこ材料は、溶媒、典型的には水または蒸気で抽出される。得られた溶液は、ニコチンを含むたばこの水溶性成分を含有する。次いで、溶液を乾燥させ、必要に応じて粉砕して、粉末たばこを形成する。
【0113】
次いで、粉末たばこを使用して、ビットを形成してもよい。しかしながら、ビットを形成する前に、粉末たばこは、造粒または圧延および粉砕などによって、より大きな粒子を形成するように加工される必要がある場合がある。こうしたプロセスは、より容易にビットに形成される粒子、ならびに取り扱い中およびパッケージ内で崩壊しないビットを形成する粒子を提供する。さらに、大きな粒子は、小さな粒子よりも扱いやすく、小さな粉末粒子に関連する「ダスト」を形成しない。さらに、より大きな粒子は、粉末粒子よりも容易にビット内に圧縮される。これにより、より高速なビットの配合、およびより容易なビットの加工が可能となる。さらに、造粒または圧延のいずれかを使用することで、最後のビット全体にわたって、風味剤、着色剤などの均一な分布を提供する。
【0114】
本発明の他の態様は、電子たばこ用の本発明の化合物、結晶、多形および/または医薬組成物に関し、電子たばこは、本発明の 化合物、結晶、多形および/または医薬組成物を含む異なる範囲のアルカロイド組成物を提供するように設計され、喫煙者が、従来の紙巻たばこの喫煙を通して得る快楽増強効果を、ニコチンへの曝露を回避または低減しつつ、より効果的に達成する。一実施形態では、アルカロイド組成物は、総アルカロイド重量に基づいて、本発明の化合物、結晶、多形、および/または医薬組成物の少なくとも約25重量%を含む。一部の実施例では、本発明の化合物、結晶、多形、および/または医薬組成物は、組成物中に存在する唯一のアルカロイドであり、例えば、本発明の化合物、結晶、多形、および/または医薬組成物は、総アルカロイド重量の100重量%を含む。他の実施例では、ニコチン、ノルニコチンおよび/またはアナバシンなどの一つまたは複数の他のアルカロイドの最大約75重量%が、本発明の化合物、結晶、多形、および/または医薬組成物に加えて存在し得る。例えば、本発明の化合物、結晶、多形、および/または医薬組成物と、ニコチンとは、約50:1~約1:3、または約25:1~約1:2、約10:1~約3:2、または約5:1~約1:1の重量比(アナタビン対ニコチン)で組み合わされてもよい。
【0115】
組成物中に存在する本発明の化合物、結晶、多形、および/または医薬組成物の量は、電子たばこのタイプ、およびニコチンおよび/または他のアルカロイドなどの他の有効成分が存在するかどうかなどの要因に応じて変化し得る。例証として、本発明の化合物、結晶、多形、および/または医薬組成物の量は、組成物の総グラム当たり、約0.1~約25mg、約0.5~約20mg、または約1~約10mgの範囲であり得る。
【0116】
本発明の化合物、結晶、多形、および/または医薬組成物に加えて、組成物は、総アルカロイド重量に基づいて、ニコチン、ノルニコチンおよび/またはアナバシンなどの一つまたは複数の他のアルカロイドの最大約75重量%を含有し得る。かかるアルカロイドは、たばこまたは他の植物材料から抽出され、公知の技術を使用して精製されてもよく、および/または公知の合成方法を使用して合成的に調製されてもよい。本発明の化合物、結晶、多形、および/または医薬組成物と、ニコチンなどの追加のアルカロイドとは、約50:1~約1:3、または約25:1~約1:2、約10:1~約3:2、または約5:1~約1:1の重量比(アナタビン対他のアルカロイド全て)で組み合わされてもよい。
【0117】
組成物は、典型的には、水、有機溶媒、甘味料および/または風味剤などの他の成分を含有する。電子たばこ用液体組成物で一般的に使用される溶媒の例には、1,2-プロピレングリコール(PGまたはMPG)などの多価アルコール、エタノールなどの一価アルコール、酢酸エチルおよびこれに類するものが含まれる。存在する水の量は通常約0.1~約10重量%で、普通は約0.5~約5重量%である。存在する有機溶媒の量は、通常約50~約99重量%であり、多くの場合は約75~約95重量%である。
【0118】
所望であれば、一つまたは複数の風味剤が組成物に添加されてもよく、その非限定的な例には、ペパーミント、メントール、ウィンターグリーン、オランダハッカ、プロポリス、ユーカリ、シナモン、またはこれに類するものが含まれる。風味剤の合計量は、組成物の総重量に基づいて、通常約0.5~約15重量%、多くの場合は約1~約10重量%の範囲である。
【0119】
電子たばこは、様々なタイプの構成であってもよい。一般に、電子たばこは、単回使用もしくは使い捨てタイプであり得るか、または液体アルカロイド組成物および/もしくは液体組成物を含むカートリッジを再充填して再利用を容易にし得る。電子たばこの一例が、US 15/679731の図1に示されている。空気吸込み口は、LED、セル、電子回路基板、常圧くぼみ、センサ、気液分離器、アトマイザ、液体供給ボトル、マウスピース、マイクロスイッチ、ガスベント、および空気通路を収容するシェルの外壁に設けられている。電子回路基板は、電子スイッチング回路および高周波発生器を有する。陰圧くぼみは、センサ内に設けられ、リップルフィルムによってセンサから分離される。アトマイザ内にアトマイザくぼみが設けられる。液体供給ボトルの一方の側面とシェルとの間に液体供給ボトルをロックするための保持リングが設けられ、液体供給ボトルの他方の側面にエアロゾル通路が設けられる。その他の詳細は、米国特許 第7,832,410 B2号からHonに記載され、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0120】
本発明の化合物、結晶、多形、および/または医薬組成物を含有するバランスのとれたアルカロイド組成物を、重要なアルカロイド成分として提供することによって、従来のたばこの喫煙に対する欲求を低減する電子たばこを調製することができる一方で、ニコチンおよび他のたばこ成分に関連する毒性および他の望ましくない副作用を最小化することができる。電子たばこは、欲求を満たすために必要に応じて、または有効成分の濃度および対象の生理学的状態などの要因に応じて、1日1回、1日2回、または1日3回以上などの間隔で使用され得る。
【0121】
代替的な実施形態では、非たばこ製剤は、組成物の総アルカロイド重量に基づいて、約25重量%~約95重量%のアナタビン、および約5重量%~約75重量%の第二のアルカロイドを含むアルカロイド組成物を含有する。第二のアルカロイドは、ニコチン、ノルニコチン、アナバシン、またはそれらの二つ以上の組み合わせであってもよい。非たばこ製品は、圧縮粉末、チューインガム、カプセル、ピル、トローチなどの固体ビットの形態であってもよい。「非たばこ」という用語は、非たばこ製品中に存在するアルカロイドの一部または全てがたばこから抽出され、液体クロマトグラフィーなどの従来的な技術を使用して精製され得ることを除いて、製品がたばこ葉またはたばこ抽出物を本質的に含まないことを意味する。
【0122】
味または安定性を改善するために、追加の成分を非たばこ製品に加えてもよい。かかる追加成分には、限定されるものではないが、甘味剤、天然風味剤、人工風味剤、着色剤、抗酸化剤、防腐剤、キレート剤、粘調剤、張性剤、付臭剤、乳白剤、懸濁剤、結合剤、増粘剤、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらには、限定されるものではないが、キサンサムガム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、微結晶性セルロース、デンプン、デキストリン、発酵ホエー、豆腐、マルトデキストリン、ポリオール(ソルビトールまたはマンニトールなどの糖アルコールを含む)、炭水化物(例えば、ラクトース)、 プロピレンフリコールアルギネート、ジェランガム、グアー、ペクチン、トラガカンスゴム、アカシアガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、ゼラチン、マンニトール、天然および/または人工ミント風味、スクラロース、二酸化ケイ素、ステアリン酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、二酸化チタン、天然グレーズ、メチルパラベン、プロピルパラベン、クエン酸トリエチル、クエン酸、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、モノグリセリドおよびジグリセリド、ポリソルベート80などが含まれる。
【0123】
非たばこ製品の形態は様々で、例えば、ピル、錠剤、カプセル、ソフトゲル、ゲルキャップ、液体、シロップ、懸濁液、粉末、チュー、トローチ、ガム、バーなど、経口的に摂取されてもよく、または非経口的に、吸入スプレーによって、局所的に、移植されたリザーバーを介してなど、他の経路で投与されてもよい。アルカロイド組成物はまた、食品または飲料で投与されるように調製されてもよい。例えば、使用前に、水または他の適切なビヒクル(例えば、牛乳、フルーツジュースなど)と再構成するために、乾燥または粉末化製品として供給することができる。
【0124】
化合物、結晶、多形および/もしくは医薬組成物、または本明細書に提供される任意の他の組成物は、ビタミンA(レチノール)、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンD(カルシフェロール)、ビタミンD2(エルゴカルシフェロール)、ビタミンD3(コレカルシフェロール)、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンE(トコフェロール)、ビタミンB12(コバラミン)、ビタミンK1(フィロキノン)、ビタミンB5(パントテン酸)、ビタミンB7(ビオチン)、ビタミンB6(ピリドキシン)、ビタミンB3(ナイアシン)、ビタミンB9(葉酸)などの一つまたは複数のビタミンをさらに含み得る。ビタミンを合成する方法は周知であり、ビタミンは、任意の評判の高い商業的供給源から取得することができる。一部の実施形態では、本発明の化合物、結晶、多形、および/または医薬組成物は、ビタミンAをさらに含む。一部の実施形態では、本発明の化合物、結晶、多形、および/または医薬組成物は、ビタミンD3をさらに含む。一部の実施形態では、本発明の化合物、結晶、多形、および/または医薬組成物は、ビタミンAおよびビタミンD3をさらに含む。
【0125】
本発明の組成物中のアナタビンおよびビタミンの量は、変化し得る。一部の実施形態では、化合物、結晶、多形の量は、約0.1mg~約10mg(例えば、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、または10mg)の範囲である。
【0126】
一部の実施形態では、ビタミンAの量は、約200~約500IU(例えば、約200、250、300、350、400、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、411、412、413、414、415、416、417、418、419、420、450、475、または500IU)の範囲である。ビタミンAは、例えば、酢酸レチニルとして提供され得る。
【0127】
一部の実施形態では、ビタミンD3の量は、約15IU~約50IU(例えば、約15、20、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、40、45、または50IU)の範囲である。ビタミンD3は、コレカルシフェロールとして提供され得る。
【0128】
一部の実施形態では、化合物、結晶、および/または多形、ならびにビタミンAは、等しい割合(例えば、それぞれ1mg)で提供される。一部の実施形態では、1mgの化合物、結晶、および/または多形を含有する一つまたは二つのトローチは、1日1回、2回、または3回摂取することができる。一部の実施形態では、1日の用量は、1、2、3、4、5、または6個のトローチを超えない。一部の実施形態では、1日の用量は、1、2、3、4、5、または6個のトローチを超えてもよい。一部の実施形態では、製品は、1mgの本発明の化合物、結晶、多形および/または組成物、417IUのビタミンA(酢酸レチニルとして)、33IUのビタミンD3(コレカルシフェロールとして)、ならびにマンニトール、天然および人工ミント風味、スクラロース、二酸化ケイ素、ステアリン酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、二酸化チタン、天然グレーズ、メチルパラベン、プロピルパラベン、クエン酸トリエチル、クエン酸、BHT、モノグリセリドおよびジグリセリド、およびポリソルベート80を含有するトローチの形態である。
【0129】
本明細書では、特許出願および科学文献を含む多くの文書が引用されている。これらの文書の開示は、本発明の特許性に関連があるとは考えられないが、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。より具体的には、すべての参照された文書は、個々の文書が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示された場合と同じ程度に、参照により組み込まれる。
【0130】
本発明は、次に、以下の実施例を参照することにより説明され、これらの実施例は、単に例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例
【0131】
実施例1
アナタビングルタレートの調製
アナタビン遊離塩基を、以下の方法によって1:1のアナタビングルタレートに変換した:
a)アセトニトリル(500mL)中のグルタル酸(16.5g、125mmol、1.00当量)の溶液に、アナタビン(20.0g、125mmol、1.00当量)を25°Cで滴下し、混合物を25°Cで1時間攪拌した。TLC(ジクロロメタン:メタノール=20:1)は、アナタビン(Rf=0.5)が消費されたことを示した。混合物を濾過した。濾過ケーキを回収し、濃縮乾燥して、アナタビングルタレート(30.0g、103mmol、収率82.2%、純度100%)をオフホワイトの固体として得た。
b)アセトニトリル(700ml)中のアナタビン(11.6g、72mmol)の溶液に、グルタル酸(9.6g、72mmol)を添加した。反応混合物は濁った。次いで、反応混合物を、透明な黄色溶液が得られるまで加熱した。混合物を室温(20°C)まで冷却し、2時間攪拌した。グミのような固体が現れ、それをスパチュラで引っ掻いた。混合物をさらに30分間攪拌し、得られた淡黄色固体を、アルゴン雰囲気下で濾過し、アセトニトリル(500ml)で洗浄し、45°Cで45分間減圧下で乾燥させて、淡黄色固体としてアナタビングルタレート(18.3g、87%)を得た。
【0132】
1HNMR(D2O)、δ:8.84-8.45(m、2H)、7.99(d、J=7.8Hz、1H)、7.59-7.55(m、1H)、6.08(d、J=8.4Hz、1H)、5.85(d、J=10.4Hz、1H)、4.63-4.59(m、1H)、3.97-3.87(m、1H)、3.81-3.70(m、1H)、2.80-2.53(m、2H)、2.25(t、J=7.6Hz、4H)、1.82-1.74(m、2H)。アナタビングルタレートの化学的純度を、PDA検出器およびSQD質量分析計を備えたWaters Acquity UPLC H-class、カラムBEH C18、2.1x50mm、1.7μMを使用し、261nMで検出するグラジエントを実行して評価した。アナタビングルタレートの保持時間は、1.125分、純度99.41%、[M+H]+161.0であった(図3、4)。アナタビングルタレート(図5)およびアナタビン遊離塩基(図6)のFTIRスペクトルの比較は、塩形成の確認を示唆するN-Hバンドの変化を示す。
【0133】
このようにして得られたアナタビングルタレートを、加熱還流した後、冷却しながら2.5mLのアクトニトリルから再結晶させた。固相を回収し、乾燥させた。
【0134】
アナタビングルタレート塩を、ゼロバックグラウンドのシリコンウエハ(9mmのくぼみを有する)を使用して、2-40°2θの間でX線粉末回折(XRPD)により分析した。これは、uHPLCにより99%よりも高い純度を有することが見出された。
【0135】
実施例2
アナタビングルタレートのイオンクロマトグラフィー
イオンクロマトグラフィー分析を実施して、アナタビングルタレートの化学量論を解析した(図11)。アナタビングルタレートをICグレードの水(90μg/ml)に溶解し、その溶液を、Metrohm889冷却オートサンプラー、溶離液溶液3.2mM炭酸ナトリウムおよび1mM重炭酸ナトリウム、再生溶液150mM硫酸/100mMシュウ酸、カラムA Supp 5(IC004または同等品)を用いて、Metrohm940高圧勾配イオンクロマトグラフで分析した。アナタビングルタレートを二回分析し、結果を以下の表に要約する。
【0136】
【表1】
【0137】
98.0%の理論上の回収率は、1:1のアナタビン:グルタレートの比でグルタレートの存在を確認する。イオンクロマトグラフィーの結果は、プロトンNMRスペクトルと一致する(図2)。
【0138】
実施例3
アナタビングルタレートの動的蒸気収着試験
アナタビングルタレート(20mg)を予め秤量されたサンプルパンに直接分注し、機器(DVS1 Advantage)に移した。10%RHステップの二重サイクル0-90-0-90-0%RH法を適用した。サンプルは、第一の収着サイクルで55%の質量増加を示し、質量増加の大部分は70%RH超で発生する。第一の脱着サイクルは、約50%の質量損失を示し、これは、第二のサイクルでも繰り返され、第二の収着サイクルでは約50%の質量増加にとどまる。この質量増加は、開始重量と終了重量との間で約5%の質量増加を示す等温線で確認される(図10)。
【0139】
実施例4
アナタビングルタレートのカールフィッシャー滴定
得られたアナタビングルタレート中の水の量を、100mgのサンプルを使用して、860オーブンを備えたMetrohm 852容量法/電量法カールフィッシャータイトランドで決定した。アナタビングルタレートは、0.21%w/wの水を含有することが見出された。
【0140】
実施例5
アナタビングルタレートの安定性評価
アナタビングルタレートをT=0で分析し、その後アリコートを、スクリューキャップのリッド付きガラスバイアルに加速条件(40°C/75%RH)で7日間インキュベーター内に保存した後、さらに分析した。保存されたサンプルを、T=0、3、および7日での安定性について視覚的に評価し、色の変化または潮解の何らかの証拠は観察されなかった。保存されたサンプルはまた、TGA、XRPD、およびHPLC-UVを使用して、T=0と、T=7日後に再び評価された。
【0141】
T=7日間のサンプルのTGAサーモグラムは、20~130°Cで0.5%のわずかな質量損失を示し、その後、分解が発生し、150°C~400°Cの間で80%の質量損失が発生した。T=0およびT=7日間のサーモグラムを重ね合わせても、ほとんど差を示さず、質量損失の差はわずか2%だった。したがって、アナタビングルタレートを40°C/75%RHで7日間保存した時、熱安定性に変化がなかったことが分かる。
【0142】
T=7日間のサンプルのXRPDパターンは、T=0パターンとの差を示さず、材料が同じままであり、したがって、40°C/75%RHで7日間保存した時、アナタビングルタレートの結晶形に変化がなかったことを示す。
【0143】
HPLC-UVによる安定性の評価のために、アナタビンおよびアナタビングルタレートのサンプル溶液200μg/mlを、約10mg秤量し、50mlのメスフラスコに溶解し、脱イオン水を用いて容積を調整することによって、二重に調製した。HPLC方法の最適化中、安定性分析のために、実行時間および勾配が調整された。方法最適化後、強制分解試験を実施して、アナタビングルタレートサンプル中に存在する任意の分解物または不純物を特定することにより、計画された安定性評価分析を補助した。強制分解試験は、酸、塩基、コントロール、熱、および酸化の五つの条件下でサンプルを分析し、T=0、4、および18時間で試験した。何らかの分解(ピーク面積で1%超)を示した唯一のサンプルは、3%の過酸化水素(H22)を添加した酸化サンプルであった。
【0144】
周囲安定性評価のために、アナタビングルタレート(100mg)を透明なガラスのシャーレに秤量し、ドラフト内で開放した状態で、周囲条件で7日間保持した。保存されたサンプルを、T=0、3、および7日間で視覚的に評価した。色の変化または潮解の何らかの証拠は観察されなかった(図12)。
【0145】
比較例1
アナタビンシトレートの調製
アナタビン遊離塩基(160mg、1mmol)を無水アセトン(2.5ml)に溶解した。形成された溶液に、窒素下で攪拌しながら、無水アセトン(3ml、超音波処理が必要)中の無水クエン酸(192mg、1mmol)の溶液を加えた。混合物を2時間攪拌し、次いで窒素ブランケット下で濾過した。固体を、少量の無水アセトンで洗浄し、真空で乾燥させた。340mg(96.6%)のアナタビンシトレートの収率が達成された。この塩は極めて吸湿性であることが示されているため、窒素下で保存した。化学構造および化学量論は、プロトンNMRによって確認された。クエン酸塩の固体形態は、捕捉されたアセトンを含有する。
【0146】
酒石酸塩形態を同様に調製し、酒石酸塩(図13)およびクエン酸塩(図14)(米国特許第8,207,346号および米国特許第8,557,999号に開示される)の両方が非晶形で存在することが判明した。
【0147】
一般的な手順
変調示差走査熱量測定(mDSC)を、40μLのアルミニウムパンを使用してPerkin Elmer DSC 8000で行った。各サンプル約6mgを、分析天秤を使用して、予め秤量されたアルミニウムDSCパン上に配置した。サンプルを、窒素雰囲気下で温度変調プログラムを使用して、-70~175°Cまで5°Cずつ加熱した。データは、任意の熱イベントについて調べた。
【0148】
フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)を、減衰全反射(ATR)モジュールを使用してJasco 420 FT-IRで行った。1~2mgのサンプルをATRモジュールの水晶振動子に配置し、所定の位置に固定した。Jasco Spectra Managerソフトウェアv1.51.00を使用して分析を実施した。
【0149】
粉末X線回折(XRPD)を、9mmのくぼみおよび平板サンプルホルダを使用して、Bruker D8 Advance XRPDで実施した。サンプルは、ゼロバックグラウンドのシリコンウエハ(5 1 0)と嵌合したサンプルホルダ上にコーティングすることによって準備した。分析は、40mA、40kVで動作するCu Kα-X線源およびLynx Eye TM検出器を使用して行い、すべてのサンプルを2-40°2θの範囲で分析した。
【0150】
熱重量分析(TGA)は、セラミックるつぼ内の40μLアルミニウムパン(ベント付)を使用して、Perkin Elmer PYRIS 1 TGAで行った。サンプルを、窒素ガス流下で(別段の記載がない限り)10°C/分で室温から400°Cに加熱した。
【0151】
1H核磁気共鳴分光法(NMR)は、5mmのQNPプローブを備えたBruker 400 Avance分光計で実施した。5~7mgのサンプルを重水素化メタノールまたはジメチルスルホキシドに溶解した。溶液は、分析のために、フィールドに適合した5mmのNMR管に移した。
【0152】
動的蒸気収着(DVS)は、DVS制御ソフトウェアv1.0.6.0を使用して、SMS DVS動的蒸気収着装置で実施した。30mgのサンプルをステンレス鋼のDVSバスケットで秤量し、分析のために提出した。サンプルは、湿度ステージ毎に最大6時間、0~90%RHの範囲で分析した。各サンプルを二重サイクルに曝した。分析は、0~90%RHからの重量パーセント変化として行われ、等温プロットも調査された。すべてのサンプルのXRPD分析を、DVS後に実施した。
【0153】
アナタビングルタレートの化学的完全性および化学量論は、1H-NMR分光法によって確認された。
【0154】
イオンクロマトグラフィーは、Metrohm889冷却オートサンプラー、溶離液溶液3.2mM炭酸ナトリウムおよび1mM重炭酸ナトリウム、再生溶液150mM硫酸/100mMシュウ酸を用いてMetrohm940高圧勾配イオンクロマトグラフで実施した。
【0155】
このサンプルのDVS分析では、第一の収着サイクルで0~90%RHの間に55%の質量取り込みを示し、その後、脱着中に開始質量を5%上回るまで質量損失を示した。これは水分の増加を示す。第二の収着サイクルでは、50%の質量取り込みを示し、第二の脱着後、最終質量は、開始質量よりも5%大きくなった。これは、第一の収着サイクルで得た水が保持されていることを示している。これは、このサンプルの等温線プロットによってさらに確認された。
【0156】
サンプルを一晩放置した後、固体形態に再結晶したことが判明した。DVS前後のサンプルのX線回折パターンを比較するとき、合致が観察された。これは、DVS前後の結晶形が同一であったことを示す。
【0157】
アナタビングルタレートは、高結晶性、形態、多形変換および/または脱水に対する熱的および機械的安定性、貯蔵安定性、残留溶媒の低含有量、低い吸湿性程度、流動性、ならびに有利な処理および取り扱い特性などの有利な特性を有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】