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特表2022-514284再生可能な原料から高品質な成分を製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-10
(54)【発明の名称】再生可能な原料から高品質な成分を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 3/00 20060101AFI20220203BHJP
   C10G 50/00 20060101ALI20220203BHJP
   C07C 11/08 20060101ALI20220203BHJP
   C07C 11/09 20060101ALI20220203BHJP
   C07C 11/167 20060101ALI20220203BHJP
   C07C 4/04 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
C10G3/00 Z
C10G50/00
C07C11/08
C07C11/09
C07C11/167
C07C4/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534915
(86)(22)【出願日】2019-12-16
(85)【翻訳文提出日】2021-08-11
(86)【国際出願番号】 FI2019050894
(87)【国際公開番号】W WO2020128156
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】20186098
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505081261
【氏名又は名称】ネステ オサケ ユキチュア ユルキネン
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カルヴォ、アンナ
(72)【発明者】
【氏名】レーモー、ビルピ
(72)【発明者】
【氏名】キースキ、ウッラ
(72)【発明者】
【氏名】ロウヒアイネン、マイヤ
【テーマコード(参考)】
4H006
4H129
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC26
4H129AA01
4H129BA03
4H129BA04
4H129BA11
4H129BB03
4H129BB05
4H129BC12
4H129BC15
4H129BC33
4H129CA02
4H129CA04
4H129CA25
4H129CA29
4H129DA13
4H129NA22
4H129NA30
4H129NA43
(57)【要約】
本発明は、再生可能な原料から高品質な成分を製造する方法に関する。特には、本発明は、高品質な化学薬品および/または高品質なドロップインガソリン成分として使用され得る再生可能な材料の製造に関する。さらに、本発明は、本発明の方法によって得られ得るドロップインガソリン成分およびポリマーに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能な成分を製造するための方法であって、
再生可能な資源を起源とする異性体原料を提供する供給工程であって、前記異性体原料が、少なくとも60wt.-%のイソパラフィンを含む工程、
C4オレフィンを含むバイオ炭化水素混合物を製造するために、前記異性体原料を熱分解する分解工程、および
前記再生可能な成分を製造するために、前記C4オレフィンの少なくとも一部を反応させる反応工程
を含む方法。
【請求項2】
前記再生可能な成分が、高いオクタン価を有するドロップインガソリン成分である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記再生可能な成分が、バイオモノマーまたはバイオポリマーであり、好ましくは、ブチルゴム、メチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリイソブチレン、置換フェノール、およびポリブテンからなる群より選択される少なくとも一つである請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記C4オレフィンを含む前記混合物が、少なくともイソブテンを含み、および、前記C4オレフィンの少なくとも一部を反応させる前記反応工程が、前記再生可能な成分を製造するために、イソブテンの少なくとも一部を反応させる工程である請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記異性体原料が、少なくとも70wt.-%、好ましくは少なくとも75wt.-%、少なくとも80wt.-%、少なくとも83wt.-%、少なくとも85wt.-%、少なくとも90wt.-%、または少なくとも95wt.-%のイソ-パラフィンを含む請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記イソ-パラフィンが、多分岐イソ-パラフィンを含む請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記イソ-パラフィンが、30wt.-%より多い、好ましくは40wt.-%より多い、より好ましくは50wt.-%より多い、更により好ましくは55wt.-%より多い多分岐イソ-パラフィン、または60wt.-%より多い多分岐イソ-パラフィンを含む請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記異性体原料が、50wt.-%以上のC10~C20炭化水素、好ましくは75wt.-%以上、より好ましくは90wt.-%以上のC10~C20炭化水素を含む留分である請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記供給工程が、前記異性体原料を調製するために、前記再生可能な原料を起源とする炭化水素材料中の少なくとも直鎖アルカンを異性化処理に付す異性化工程を含み、および/または
前記供給工程が、前記再生可能な原料を起源とする再生可能なフィードストックを脱酸素化する脱酸素化工程、および、任意には、前記異性体原料を調製するためのその後の異性体工程を含む請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記再生可能な資源が、植物オイル、植物性脂肪、動物オイルおよび動物性脂肪の少なくとも一つを含み、および、前記異性体原料を調製するために、水素化、および任意には、異性化に付される請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記分解工程における前記熱分解が、水蒸気分解を含み、および、前記水蒸気分解が、好ましくは、0.05~1.10である水と前記異性体原料とのあいだのフロー速度比(H2Oフロー速度[kg/h]/iso-HCフロー速度[kg/h])で行われる請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記バイオ炭化水素混合物が、全ての有機成分に対して、少なくとも8.0wt.-%のC4オレフィン、好ましくは少なくとも10.0wt.-%、好ましくは少なくとも12.0wt.-%、少なくとも14.0wt.-%、または、全ての有機成分に対して、少なくとも15.0wt.-%のC4オレフィンを含む請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記反応工程が、前記C4オレフィンの少なくとも一つ、好ましくは1-ブテン、(Z)-2-ブテンおよび(E)-2-ブテンの少なくとも一つを、アルキル化反応に付す工程を含む請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記アルキル化反応が、前記C4オレフィンの少なくとも一つとC4またはC5アルカン、好ましくはイソアルカンとのあいだの反応を含む請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記アルキル化反応が、イソオクタンを製造するために、前記C4オレフィンの少なくとも一つとイソブタンとのあいだの反応を含む請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
前記反応工程が、ブテン(モノエン)を製造するために、前記C4オレフィン中に含まれる少なくともブタジエンを選択的水素化へと付し、および、それによって製造されたブテンを、単独で、または、一またはそれ以上の他のC4オレフィン(ブタジエンを除く)との混合物で、前記少なくとも一つのC4オレフィンとして利用する工程をさらに含む請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記反応工程が、C1~C3アルキルtert-ブチルエーテルを製造するために、前記C4オレフィン中に含まれているイソブテンの少なくとも一部を、C1~C3アルコールとのエーテル化へと付す工程を含む請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記反応工程が、メチルt-ブチルエーテル(MTBE)および/またはエチルt-ブチルエーテル(ETBE)を製造するために、前記C4オレフィン中に含まれているイソブテンの少なくとも一部を、メタノールおよび/またはエタノールとのエーテル化へと付す工程を含む請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生可能な原料から高品質な成分を製造する方法に関する、特には、本発明は、高品質な化学薬品としておよび/または高品質なドロップインガソリン成分として、より特には、ガソリン燃料中のオクタン価の高い成分として使用され得る再生可能な材料の製造に関する。さらに、本発明は、本発明の方法によって得られ得るドロップインガソリン成分およびポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマスからの燃料成分の製造に関する関心は、それらが有機化合物の持続可能な資源から製造されることから、高まっている。
【0003】
しかしながら、再生可能な原料からの適度な特性を有するディーゼル成分のためのいくつかのルートが当該技術分野において入手可能であるが、高含量でブレンドされ得、かつ、燃料の特性を低下させることのない容易に利用できる再生可能なガソリン成分に対する要求が依然として存在している。例えば、現在の欧州統一規格(EN228)によれば、エタノールは、最も多くて10vol-%の量でレギュラー燃料中にブレンドされ得る。しかしながら、従来の燃料のエタノールとの混合(およそ50vol-%まで)は、蒸気圧(DVPE;乾燥蒸気圧当量(dry vapor pressure equivalent))の顕著な増加を示す。同様に、水素化および任意には異性化によって、例えば脂肪およびオイルなどの再生可能な資源から製造された生成物は、ディーゼル燃料範囲で通常沸騰し、そして、ガソリン燃料成分としては低価値である。一方、そのようなディーゼル燃料成分の製造プロセスは、ナフサ範囲にある炭化水素、特にはC5~C10の炭化水素を通常もたらすクラッキング副反応を含み得る。このナフサは沸点範囲に関してガソリンの要件を満たすものの、許容され得る混合量は、一般的にその低いオクタン価に起因してむしろ低いものである。
【0004】
同様に、他の生物学的な原料由来の炭化水素成分が、燃料中のブレンド成分として使用され得る。例えば、特許文献1は、トール油材料を精製するためのプロセスを開示し、そして、得られる留分の一つが水素化され、そして、ガソリン、ナフサ、ジェットまたはディーゼル燃料成分として使用され得ることを示している。
【0005】
特許文献2は、水蒸気分解のためのフィードとして天然のオイルおよび脂肪由来の脂肪酸またはトリグリセリドの複合混合物を用いた、水蒸気分解によるバイオモノマーおよび/またはガソリン成分の製造を開示している。ガソリン留分は、C1~C4の反応生成物の除去の後に得られる。
【0006】
しかしながら、高いオクタン価を有し、それゆえに任意の所望の量でブレンドされ得る再生可能なドロップインガソリン燃料成分のための需要が依然として存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第2643442号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2012/0142982号明細書
【発明の概要】
【0008】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、そして、本発明の目的は、再生可能なドロップインガソリン成分を製造するための改良されたプロセスを提供することである。
【0009】
端的には、本発明は、一またはそれ以上の以下の項目に関する:
【0010】
1. 再生可能な成分を製造するための方法であって、
再生可能な資源を起源とする異性体原料を提供する供給工程であって、前記異性体原料が、少なくとも60wt.-%のイソパラフィンを含む工程、
C4オレフィンを含むバイオ炭化水素混合物を製造するために、前記異性体原料を熱分解する分解工程、および
前記再生可能な成分を製造するために、前記C4オレフィンの少なくとも一部を反応させる反応工程
を含む方法。
【0011】
2. 前記再生可能な成分が、高いオクタン価を有するドロップインガソリン成分である項目1記載の方法。
【0012】
3. 前記再生可能な成分が、バイオモノマーまたはバイオポリマーである項目1記載の方法。
【0013】
4. 前記バイオモノマーまたはバイオポリマーが、ブチルゴム、メチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリイソブチレン、置換フェノール、およびポリブテンからなる群より選択される少なくとも一つである項目3記載の方法。
【0014】
5. 前記C4オレフィンを含む前記混合物が、少なくともイソブテンを含み、および、前記C4オレフィンの少なくとも一部を反応させる前記反応工程が、前記再生可能な成分を製造するために、イソブテンの少なくとも一部を反応させる工程である項目1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0015】
6. 前記異性体原料が、少なくとも70wt.-%、好ましくは少なくとも75wt.-%、少なくとも80wt.-%、少なくとも83wt.-%、少なくとも85wt.-%、少なくとも90wt.-%、または少なくとも95wt.-%のイソ-パラフィンを含む項目1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0016】
7. 前記異性体原料が、60~99wt.-%のイソ-パラフィン、または、60~98wt.-%のイソ-パラフィンを含む項目1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0017】
8. 前記分解工程の熱分解が、720℃~880℃の範囲である温度(コイル出口温度 COT)で行われる項目1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0018】
9. 前記分解工程の熱分解が、少なくとも720℃、好ましくは少なくとも740℃、少なくとも760℃、または少なくとも780℃である温度(コイル出口温度 COT)で行われる項目1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0019】
10. 前記分解工程の熱分解が、最も高くて880℃、好ましくは最も高くて860℃、最も高くて850℃、または最も高くて840℃である温度(コイル出口温度 COT)で行われる項目1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0020】
11. 前記供給工程が、前記異性体原料を調製するために、前記再生可能な原料を起源とする炭化水素材料中の少なくとも直鎖アルカンを異性化処理に付す異性化工程を含む項目1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0021】
12. 前記供給工程が、前記再生可能な原料を起源とする再生可能なフィードストックを脱酸素化する脱酸素化工程、および、任意には、前記異性体原料を調製するためのその後の異性体工程を含む項目1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0022】
13. 前記脱酸素化工程が、水素化処理工程、好ましくは、水素化脱酸素化工程である項目12記載の方法。
【0023】
14. 前記再生可能な資源が、植物オイル、植物性脂肪、動物オイルおよび動物性脂肪の少なくとも一つを含み、および、前記異性体原料を調製するために、水素化、および任意には、異性化に付される項目1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0024】
15. 前記異性体原料が、ディーゼル範囲留分およびナフサ範囲留分のうちの少なくとも一つを含み、ならびに、少なくとも前記ディーゼル範囲留分および/または前記ナフサ範囲留分が、熱分解に付される項目1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0025】
16. 前記ディーゼル範囲留分のみ、および/またはナフサ範囲留分のみ、好ましくは前記ディーゼル範囲留分のみが、熱分解に付される項目15記載の方法。
【0026】
17. 前記異性体原料が、元素分析によって測定された場合に、前記異性体原料を構成する全ての元素を基にして、多くても1wt.-%の酸素しか含まない項目1~16のいずれか1つに記載の方法。
【0027】
18. 前記分解工程における前記熱分解が、水蒸気分解を含む項目1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0028】
19. 前記水蒸気分解が、0.05~1.10である水と前記異性体原料とのあいだのフロー速度比(H2Oフロー速度[kg/h]/iso-HCフロー速度[kg/h])で行われる項目18記載の方法。
【0029】
20. 前記水と前記異性体原料との前記フロー速度比が、少なくとも0.10、好ましくは少なくとも0.15、少なくとも0.20、または少なくとも0.25である項目19記載の方法。
【0030】
21. 前記水と前記異性体原料との前記フロー速度比が、最大で1.00、好ましくは最大で0.80、最大で0.60、または最大で0.50である項目19または20記載の方法。
【0031】
22. 前記バイオ炭化水素混合物が、全ての有機成分に対して、少なくとも8.0wt.-%のC4オレフィンを含む項目1~21のいずれか1つに記載の方法。
【0032】
23. 前記バイオ炭化水素混合物が、全ての有機成分に対して、少なくとも10.0wt.-%、好ましくは少なくとも12.0wt.-%、少なくとも14.0wt.-%、または少なくとも15.0wt.-%のC4オレフィンを含む項目1~22のいずれか1つに記載の方法。
【0033】
24. 前記反応工程が、前記C4オレフィンの少なくとも一つ、好ましくは1-ブテン、(Z)-2-ブテンおよび(E)-2-ブテンの少なくとも一つを、アルキル化反応に付す工程を含む項目1~23のいずれか1つに記載の方法。
【0034】
25. 前記アルキル化反応が、前記C4オレフィンの少なくとも一つとC4またはC5アルカン、好ましくはイソアルカンとのあいだの反応を含む項目24記載の方法。
【0035】
26. 前記アルキル化反応が、イソオクタンを製造するために、前記C4オレフィンの少なくとも一つとイソブタンとのあいだの反応を含む項目24または25記載の方法。
【0036】
27. 前記反応工程が、ブテン(モノエン)を製造するために、前記C4オレフィン中に含まれる少なくともブタジエンを選択的水素化へと付し、および、それによって製造されたブテンを、単独で、または、一またはそれ以上の他のC4オレフィン(ブタジエンを除く)との混合物で、前記少なくとも一つのC4オレフィンとして利用する工程をさらに含む項目24~26のいずれか1つに記載の方法。
【0037】
28. 前記異性体原料の前記イソ-パラフィンが、多分岐イソ-パラフィンを含む項目1~27のいずれか1つに記載の方法。
【0038】
29. 前記異性体原料の前記イソ-パラフィンが、30wt.-%より多い多分岐イソ-パラフィン、好ましくは40wt.-%より多い多分岐イソ-パラフィンを含む項目1~28のいずれか1つに記載の方法。
【0039】
30. 前記異性体原料の前記イソ-パラフィンが、主として多分岐イソ-パラフィンを含む項目1~29のいずれか1つに記載の方法。
【0040】
31. 前記異性体原料の前記イソ-パラフィンが、50wt.-%より多い、好ましくは55wt.-%より多い、さらにより好ましくは60wt.-%より多い多分岐イソ-パラフィンを含む項目1~30のいずれか1つに記載の方法。
【0041】
32. 分岐が複数であるイソ-パラフィンが、少なくともジメチルで置換されたイソ-パラフィン、好ましくは、ジメチル、トリメチルまたはより多く(メチルで)置換されたイソ-パラフィンである項目28~31のいずれか1つに記載の方法。
【0042】
33. 前記異性体原料が、(有機化合物を基にして)50wt.-%以上のC10~C20炭化水素を含む留分である項目1~32のいずれか1つに記載の方法。
【0043】
34. 前記異性体原料が、(有機化合物を基にして)75wt.-%以上のC10~C20炭化水素、好ましくは、(有機化合物を基にして)90wt.-%以上のC10~C20炭化水素を含む留分である項目1~33のいずれか1つに記載の方法。
【0044】
35. 前記留分中のC10~C20範囲にある偶数の炭化水素の含有量が、50wt.-%より多い項目33または34記載の方法。
【0045】
36. 前記留分が、
1.0wt.-%以下の、好ましくは0.5wt.-%以下の、より好ましくは0.2wt.-%以下の芳香族化合物、
2.0wt.-%未満の、好ましくは1.0wt.-%以下の、より好ましくは0.5wt.-%以下のオレフィン、
5.0wt.-%以下の、好ましくは2.0wt.-%以下のナフテン、
1.0wt.-%以下の、好ましくは0.2wt.-%以下の、より好ましくは0.1wt.-%以下の酸素化された化合物、および
1.0wt.-%以下の、好ましくは0.5wt.-%以下の、より好ましくは0.2wt.-%以下のヘテロ原子含有化合物
を含む項目33~35のいずれか1つに記載の方法。
【0046】
37. 前記反応工程が、C1~C3アルキルtert-ブチルエーテルを製造するために、前記C4オレフィン中に含まれているイソブテンの少なくとも一部を、C1~C3アルコールとのエーテル化へと付す工程を含む項目1~36のいずれか1つに記載の方法。
【0047】
38. 前記反応工程が、メチルt-ブチルエーテル(MTBE)および/またはエチルt-ブチルエーテル(ETBE)を製造するために、前記C4オレフィン中に含まれているイソブテンの少なくとも一部を、メタノールおよび/またはエタノールとのエーテル化へと付す工程を含む項目1~37のいずれか1つに記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1図1は、本発明の態様を示しているいくつかの実施例において使用されている研究室スケールの水蒸気分解のセットアップの概要図を示す。
図2図2は、本発明の態様を示しているいくつかの実施例において行われる流出物分析の模式図を示す。
図3図3は、本発明の態様を示しているいくつかの実施例において行われる流出物分析の模式図を示す。
図4図4は、GC×GC分析のための参照成分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明は、再生可能な成分(特には、再生可能な資源を起源とする原料からの高品質な成分)を製造するための方法に関し、該方法は、イソパラフィンを高含量(少なくとも60wt.-%)で有するイソパラフィン組成物(以下、異性体原料)を熱分解することを含む。イソパラフィン組成物は、再生可能なフィードストック由来の炭化水素材料の異性化によって得られ得る。
【0050】
一般的に、本発明は、再生可能なフィードストック由来の高品質な成分を製造するための方法に関し、これによって、石油化学製品に依存している産業、とりわけ、ポリマー産業および燃料産業の環境持続性に寄与するものである。
【0051】
本発明は、再生可能な成分を製造するための方法であって、再生可能な資源を起源とする異性体原料を提供する供給工程であって、異性体原料が、少なくとも60wt.-%のイソ-パラフィンを含む工程と、C4オレフィンを含むバイオ炭化水素混合物を製造するために異性体原料を熱分解する分解工程と、再生可能な成分を製造するためにC4オレフィンの少なくとも一部を反応させる反応工程とを含む。
【0052】
本方法の供給工程は、再生可能なフィードストックから得られ得る炭化水素材料を調製する調製工程と、異性体原料を調製するために炭化水素材料中の少なくとも直鎖炭化水素を異性化処理に付す異性化工程とを含み得る。
【0053】
本発明の方法を使用することによって、再生可能なフィードストックを、例えば燃料またはポリマー産業でのさらなる使用のための高品質な成分を製造するためにさらに処理されるC4オレフィンを高含量で含むバイオ炭化水素混合物に変換することが可能である。もちろん、バイオ炭化水素混合物の他の成分もまた、溶媒、バインダー、改良剤として、また燃料産業において有益である。
【0054】
本明細書で使用される用語「炭化水素材料(hydrocarbon material)」とは、再生可能なフィードストック(または再生可能な資源)由来の、炭化水素化合物または炭化水素化合物の混合物を意味する。「炭化水素材料」は、通常、再生可能なフィードストック(再生可能な資源を起源とする再生可能なフィードストック)を脱酸素化することによって得られ、そして、この場合、炭化水素材料は、酸素含有化合物を不純物としてのみ、通常、3.0wt.-%以下、好ましくは2.0wt.-%以下、1.5wt.-%以下、1.0wt.-%以下、0.8wt.-%以下、0.5wt.-%以下、または0.1wt.-%以下の量で含む。一般的に、炭化水素材料が、6.0wt.-%以下、好ましくは4.0wt.-%以下、3.0wt.-%以下、2.0wt.-%以下、1.5wt.-%以下、1.0wt.%以下、0.8wt.-%以下、0.5wt.-%以下、または0.1wt.-%以下の量で酸素含有化合物を含むことが好ましい。
【0055】
本発明における用語「バイオ炭化水素混合物(biohydrocarbon mixture)」とは、分解工程から、任意には精製および/または分離の後に得られる(炭化水素)生成物を意味する。「炭化水素混合物」は、炭化水素の混合物であり、および、不純物として他の化合物(例えばオキシジェネートおよびヘテロ原子含有化合物など)を含み得る。
【0056】
本明細書において使用される「異性体原料(isomeric raw material)」は、再生可能なフィードストックまたは再生可能な資源または再生可能な複数の資源由来の組成物であって、主にパラフィンを含有し、およびイソ-パラフィンを含む組成物を意味する。本発明によれば、異性体原料中のイソ-パラフィンの含有量は、少なくとも60.0wt.-%である。
【0057】
本明細書において使用される用語「ディーゼル範囲留分(diesel range fraction)」は、EN ISO 3405:2011にしたがって測定される180~360℃の範囲の沸点を有する留分または組成物を意味する。本明細書において使用される用語「ナフサ範囲留分(naphtha range fraction)」は、EN-ISO-3405(2011)にしたがって測定される30~180℃の範囲の沸点を有する留分または組成物を意味する。
【0058】
本明細書において使用される「パラフィン含有量(paraffin content)」は、n-パラフィンおよびイソ-パラフィンを併せたwt.-%量である。本明細書において使用される「イソ-パラフィン含有量」は、分岐パラフィンのwt.-%量である。用語「分岐パラフィン(branched paraffins)」(または、「分岐イソ-パラフィン(branched iso-paraffins)」は、分岐が一つであるイソ-パラフィンおよび分岐が複数であるイソ-パラフィンの両方を意味する。
【0059】
「異性化の程度(isomerization degree)」とは、本明細書において、組成物中の総計のパラフィン含有量に対する異性化されたパラフィンの量を意味するように使用される。該含有量は、wt.-%で表され得る。
【0060】
異性体原料
本発明の異性体は、イソ-パラフィン(i-パラフィン)を含み、および、ノルマル-パラフィン(n-パラフィン)を含んでいてもよい。異性体原料は、分解工程においてC4オレフィンの高含量を達成することを確実なものとするために、少なくとも60wt.-%の高いパラフィン含有量を有する。異性体原料は、好ましくは、少なくとも90wt.-%のパラフィンを含む。より好ましくは、異性体原料は、少なくとも95wt.-%のパラフィンを含む。最も好ましくは、異性体原料は、少なくとも99wt.-%のパラフィンを含む。パラフィン以外の成分、例えば他の炭化水素(例えば芳香族化合物、ナフテン、またはオレフィン)、酸素化された有機化合物(一または複数の酸素原子を含む)、またはヘテロ原子含有有機化合物(一または複数の炭素、水素または酸素以外の原子を含む)はまた存在していてもよいが、それらの含有量は好ましくは低い。特には、酸素化された有機化合物およびヘテロ原子含有有機化合物の総計の含有量は、好ましくは、3.0wt.-%未満である。
【0061】
異性体原料のイソ-パラフィンは、分岐が複数であるイソ-パラフィンおよび分岐が一つであるイソ-パラフィンを含んでいてもよく、および、好ましくは、両方を含む。分岐が一つであるイソ-パラフィンは、一つの側鎖または枝分かれを有するパラフィン(非環状アルカン)である。分岐が複数であるイソ-パラフィン(多分岐イソ-パラフィンとも称される)は、少なくとも2つの側鎖または分岐を有するパラフィン(非環状アルカン)である。該多分岐イソ-パラフィンは、2、3、またはそれ以上の側鎖または分岐を有していてもよい。好ましい態様において、分岐が一つであるイソ-パラフィンは、モノメチルで置換されたイソ-パラフィン、すなわち一つのメチル側鎖または分岐を有するイソ-パラフィンである。分岐が複数であるイソ-パラフィンは、好ましくは、少なくともジメチルで置換されたイソ-パラフィン、好ましくは、ジメチル、トリメチルまたはより多くのメチルで置換されたイソ-パラフィン、すなわち、ジメチル、トリメチルまたはより多くのメチルで置換された非環状のアルカンである。
【0062】
熱分解工程からのC4オレフィンの総計の収率は、少なくとも60wt.-%のイソ-パラフィンを含む異性体原料を使用することによって促進される。
【0063】
本発明において、異性体原料中のイソ-パラフィンの含有量は、少なくとも60wt.-%である。高含量のイソ-パラフィンを含む異性体原料を用いることは、分解工程におけるC4オレフィンの良好な収率を確実なものとし、およびそれゆえ、本発明の高品質な化学薬品(成分)の効果的な製造を可能にする。
【0064】
本発明において、イソ-パラフィンは好ましくは、多分岐イソ-パラフィンを含む。イソ-パラフィンが、>30wt.-%、好ましくは>40wt.-%、より好ましくは>50wt.-%、さらにより好ましくは>55wt.-%、または>60wt.-%の多分岐イソ-パラフィンを含んでいることが好ましい。イソ-パラフィンが、主として(>50wt.-%、好ましくは>55wt.-%、より好ましくは>60wt.-%)多分岐イソ-パラフィンを含んでいることがさらに好ましい。多分岐イソ-パラフィンの量の増加が、熱分解工程におけるC4オレフィンの形成を促進することが発見されている。
【0065】
異性体原料中の残りのパラフィンは、n-パラフィンである。換言すると、イソ-パラフィンではない異性体原料のパラフィンは、n-パラフィンである。
【0066】
理論に縛られることを意図する訳ではなく、異性化のあいだ、置換、とりわけモノメチル置換が、直鎖の炭素鎖における第2の炭素原子におこる可能性が最も高く、そして、第3級炭素結合が最も分解を受けやすいため、第2の炭素の置換はプロペンの形成を促進する。直鎖のn-パラフィンはエテン分子へと分解される傾向があり、一方、多くの分岐をもつ、すなわち多分岐イソ-パラフィンは、プロペンの形成を促進すると同時に、イソブテンおよび他の重質成分の形成も促進する。分岐が一つであることは、プロペンの収率を促進することが観察されたが、一方、C4+炭化水素の形成は低いままである。したがって、本発明においては、異性体原料中の多分岐イソ-パラフィンの含有量が高いことが好ましい。
【0067】
本発明では、異性体原料中のパラフィンの総計の量(wt.-%)は、分解装置(cracker)に投入される全ての有機材料に対して(異性体原料中の全ての有機材料に対して)測定される。イソ-パラフィン、n-パラフィン、分岐が一つであるイソ-パラフィン、および多分岐イソ-パラフィンの量(wt.-%)が、異性体原料中の総計のパラフィン含有量に対して測定される。
【0068】
イソ-パラフィン(分岐が一つであるイソ-パラフィンおよび多分岐イソ-パラフィン)およびn-パラフィンの量(wt.-%)は、実施例に説明されているように、GC-FID分析を用いて測定されてもよく、また、他の任意の適切な方法によって測定されてもよい。一般的に、上記で規定される任意の異性体原料が本発明において使用され得る。いずれにしても、特定のパラフィン留分が注目される。この留分は、C10~C20炭化水素を(有機化合物を基にして)50wt.-%より多く、好ましくは75wt.-%以上、より好ましくは90wt.-%以上含む。C10~C20範囲にある偶数の炭化水素(すなわちC10、C12、C14、C16、C18およびC20)の含有量は、好ましくは、50wt.-%より多い。留分は、1.0wt.-%以下の、好ましくは0.5wt.-%以下の、より好ましくは0.2wt.-%以下の芳香族化合物、および、2.0wt.-%未満の、好ましくは1.0wt.-%以下の、より好ましくは0.5wt.-%以下のオレフィン、5.0wt.-%以下の、好ましくは2.0wt.-%以下のナフテン(環状アルカン)、1.0wt.-%以下の、好ましくは0.2wt.-%以下の、より好ましくは0.1wt.-%以下の酸素化された化合物、および、1.0wt.-%以下の、好ましくは0.5wt.-%以下の、より好ましくは0.2wt.-%以下のヘテロ原子含有化合物を含む。熱分解フィード中の芳香族化合物、オレフィンおよびナフテンの少ない量は、分解プロセスの生成物分布を向上させる。換言すると、熱分解フィード中の芳香族化合物、オレフィンおよびナフテンの量(wt.-%)がより少なくなると、分解プロセスにおける生成物分布がより良好になる。本明細書における「より良好な生成物分布(better product distribution)」とは、より高価値な生成物を含む生成物分布を意味する。
【0069】
いずれの場合においても、異性体原料は好ましくは、元素分析によって測定された場合に、異性体原料を構成する全ての元素を基にして、多くても1wt.-%の酸素しか含まない。異性体原料(熱分解に投入される有機材料)の低い酸素含有量は、分解をより制御された様式で行うことを可能にし、これによってより好ましい生成物分布を結果としてもたらす。
【0070】
異性体原料は、再生可能な資源を起源とする材料および例えば化石ナフサなどの化石起源の材料のブレンドであってもよいが、好ましくは、少なくとも20wt.-%の、より好ましくは少なくとも50wt.-%または少なくとも80wt.-%の再生可能な成分を含み、および、完全に(100%)再生可能な異性体原料であってもよい。
【0071】
再生可能な起源をもつ炭素原子は、化石起源の炭素原子と比較して高い値の14C同位体を含む。したがって、再生可能な(異性体)パラフィン組成物と化石資源由来のパラフィン組成物とを12Cおよび14C同位体の比を分析することによって区別することが可能である。したがって、該同位体の特定の比が、再生可能な(異性体)パラフィン組成物を同定するための「タグ」として使用することができ、そして、それを再生できないパラフィン組成物から区別することができる。同位体比は、化学反応を通じて変化するものではない。
【0072】
再生可能なフィードストック
本発明において、異性体原料は、再生可能な資源として再生可能なフィードストック由来であってもよい。異性体原料は、さらに、同様に再生可能な資源である再生可能なフィードストック由来であってもよい。
【0073】
再生可能なフィードストックは、再生可能な資源であってもよく(すなわち、両方の材料が同じであってもよい)、または、再生可能なフィードストックは、精製によって再生可能な資源から派生していてもよい。さらに、再生可能なフィードストックは、再生可能な資源由来の材料と例えば化石ナフサなどの化石起源の材料とのブレンドであってもよいが、好ましくは、少なくとも20wt.-%の、より好ましくは少なくとも50wt.-%または少なくとも80wt.-%の再生可能な成分を含み、および、完全に(100%)再生可能なフィードストックであってもよい。この点に関して、再生可能な資源は、一または複数の再生可能な資源であってもよく、すなわち、再生可能なフィードストックは、種々の再生可能な資源から派生している材料を含んでいてもよく、これらは本明細書において単に、「再生可能な資源(renewable source)」と称される。
【0074】
再生可能なフィードストックは、任意の再生可能な起源、例えば植物(例えば、木またはセルロース材料など)、または、真菌類、酵母、海藻およびバクテリアを含む動物(例えば、例えばラードなどの動物性脂肪、獣脂、または乳脂肪など)由来の材料などであり得る。該植物および微生物(酵母およびバクテリアを含む)資源は、遺伝子操作されていてもよい。好ましくは、再生可能なフィードストックは、例えば植物(plant)または植物(vegetable)の油などのオイル(特には脂肪酸オイル)、例えば、木材ベースのオイル、動物オイル、魚油、海藻オイル、および/または微生物オイルなど、または、例えば植物(plant)または植物(vegetable)の脂肪、動物性脂肪、および/または魚脂などの脂肪、食品産業のリサイクルされた脂肪、および/またはこれらの組み合わせを含む、またはそれに由来している。再生可能なフィードストックは、バイオマスガス化またはバイオマスからの液体燃料の製造(biomass to liquid、BTL)法へと付され得る、任意の他の起源のものを含んでいても、由来としていてもよい。
【0075】
再生可能なフィードストックは、炭化水素材料の調製または再生可能な異性体原料の調製の前に、任意的な前処理に付されてもよい。このような前処理は、精製、および/または、例えばけん化またはトランスエステル化などの化学的修飾を含み得る。再生可能な原料が(周囲条件で)固体材料である場合、液体の再生可能なフィードストックを得ることができるように、材料を化学的に修飾することが有用である。好ましい態様において、再生可能なフィードストックは、(周囲条件で)液体の再生可能なフィードストックである。
【0076】
好ましくは、再生可能なフィードストックは、例えばオイルおよび/または脂肪などの酸素含有フィードストックである。オイルおよび脂肪は、これらのフィードストックが極めて明確な炭素数の長さ(または分布)を有しており、そしてそれゆえ、プロセスのための条件の良好な最適化を可能とするため、特に好ましい。好ましくは、再生可能なフィードストックは、植物オイル、植物性脂肪、動物オイル、動物性脂肪のうちの少なくとも一つを含む。これらの材料は、それらが適切な選択によって、および/または天然のオイルおよび/または脂肪の混合によって、必要とされるように調整され得る予測可能な組成を有する再生可能なフィードストックを提供できることから、特に好ましい。
【0077】
炭化水素材料
本発明の異性体原料は、再生可能なフィードストックおよび/または再生可能な資源から得られる炭化水素材料を異性化することによって提供され得る。
【0078】
一般的に、炭化水素材料は、再生可能なフィードストックから任意の周知の方法を用いて製造され得る。炭化水素材料を製造するための方法の具体的な例は、欧州特許出願公開第1741768号明細書に提供されている。また、他の方法が行われてもよく、特には、別のBTL(バイオマスからの液体燃料の製造(Biomass-To-Liquid))、例えば、フィッシャー-トロプシュ法が行われるバイオマスガス化などが選ばれてもよい。
【0079】
本発明において、再生可能なフィードストックを脱酸素化処理に付すこと(脱酸素化工程)を含む供給工程によって、炭化水素材料が、再生可能なフィードストック(または資源)から調製されることが好ましい。この方法は、脂肪酸、または、例えばトリグリセリドなどの脂肪酸誘導体、またはそれらの組み合わせを含むフィードストックなどの、高い酸素含有量を有する再生可能なフィードストック(資源)に特に好ましい。
【0080】
本発明において、脱酸素化の方法は、特に制限されず、任意の適切な方法が行われ得る。適切な方法としては例えば、例えば水素化脱酸素化(HDO)などの水素化処理、接触水素化脱酸素化(接触HDO)、接触分解(CC)、またはこれらの組み合わせなどである。他の適切な方法としては、例えば、単独または水素化処理を組み合わされた脱炭酸反応および脱カルボニル反応が挙げられる。例えば、脱酸素化方法が接触分解である場合、分解条件は、異性体原料が追加の異性化工程を必要とせずに得られるように調整され得る。
【0081】
好ましくは、再生可能なフィードストックが付される脱酸素化処理は、水素化処理である。より好ましくは、再生可能なフィードストックは、好ましくはHDO触媒を用いる水素化脱酸素化(HDO)に付される。接触HDOは、酸素を除去するための最も通例な方法であり、そして、広範囲にわたって研究され、および最適化されている。しかしながら、本発明は、それらに限定される訳ではない。HDO触媒としては、担体に担持された水素化金属を含むHDO触媒が使用されてもよい。HDO触媒の例としては例えば、Pd、Pt、Ni、Co、Mo、Ru、Rh、Wまたはこれらの組み合わせからなる群より選択される水素化金属を含むHDO触媒などが挙げられる。水素化脱酸素化工程は、例えば、100~500℃の温度で、および、10~150bar(絶対単位)の圧力で行われ得る。
【0082】
再生可能なフィードストックから炭化水素材料を調製することは、(任意の水素化処理の後に)再生可能なフィードストック中の炭化水素を水素化分解する工程を含んでいてもよい。したがって、炭化水素材料の鎖長が調整され得、そして、異性体原料(任意の異性化後の炭化水素材料)を分解することによって得られるバイオ炭化水素混合物の生成物分布は、間接的に制御され得る。
【0083】
再生可能なフィードストックの場合では、炭化水素材料は、再生可能な資源を起源とする材料、または、例えば化石ナフサなどの化石起源の材料のブレンドであってもよいが、好ましくは、少なくとも20wt.-%の、より好ましくは少なくとも50wt.-%または少なくとも80wt.-%の再生可能な成分を含み、および、完全に(100%)再生可能な炭化水素材料であってもよい。
【0084】
異性化工程
本発明の(再生可能な)異性体原料は、異性体原料を調製するために、水素材料中の少なくとも直鎖のアルカンを異性化処理に付すことによって提供されてもよい。炭化水素材料は、再生可能なフィードストック(または資源)由来であり、および、好ましくは、上述の炭化水素材料である。
【0085】
異性化処理は、炭化水素材料の炭化水素鎖の枝分かれ、すなわち異性化を引き起こす。異性化処理によって形成される異性体炭化水素またはイソ-パラフィンは、一またはそれ以上の側鎖または枝分かれを有し得る。好ましい態様において、形成されたイソ-パラフィンは、一またはそれ以上のC1~C9の、好ましくは、C1~C2の分岐を有する。通常、炭化水素材料の異性化は、主にメチル分岐を生成する。
【0086】
異性化条件の厳しさおよび触媒の選択は、形成されるメチル分岐の量およびそれらのお互いの距離を制御し、したがって、熱分解の後に得られる生成物分布に影響を及ぼす。本発明の発明者らは、異性体原料中のイソ-パラフィンの含有量が、熱分解工程におけるC4オレフィンの収率に顕著に影響することを発見した。少なくとも60wt.-%のイソ-パラフィンを含む異性体原料を供給することが、分解生成物中におけるC4オレフィンの良好な収率を確実にする。加えて、一つの分岐をもつ(例えば一つのメチル基で置換された)イソ-パラフィンと多分岐のイソ-パラフィンとの量および比は、(より少ない程度でではあるが)熱分解工程におけるC4オレフィンの収率に影響する。換言すると、イソ-パラフィンの全体の高い含有量を有し、および、同時に高い程度に多分岐されたイソ-パラフィンを有する異性体原料を提供することは、C4オレフィンの収率、およびしたがって、本発明の方法の全体の効率をさらに増大させ得る。
【0087】
再生可能な異性体原料を提供することは、好ましくは、異性体原料と調製するために、炭化水素材料中の直鎖アルカン(n-パラフィン)の少なくとも一部を異性化処理に付すこと、および、任意には、分岐が一つであるおよび多分岐のイソ-パラフィンの製造を制御することを含む。直鎖のアルカン(または直鎖のアルカンの一部)は、炭化水素材料の残りから分離されてもよく、分離された直鎖アルカンは、その後、異性化処理に付され、そしてその後、任意には、炭化水素材料の残りと再統合される。供給工程の一態様において、直鎖アルカンの一部は、炭化水素材料の残りから分離され、分離された直鎖アルカンはその後、異性化処理に付され、そしてその後、炭化水素材料の残りと再統合される。代替的には、炭化水素材料の全てが異性化処理に付されてもよい。
【0088】
異性化工程は、異性化触媒の存在下で、および、任意には、異性化工程へと添加された水素の存在下で、行われてもよい。適切な異性化触媒は、モレキュラーシーブおよび/または周期表の第VIII族元素から選択される金属および任意には担体を含む。好ましくは、触媒はSAPO-11、またはSAPO-41、またはZSM-22、またはZSM-23、またはフェルネライト、および、Pt、PdまたはNi、および、Al23またはSiO2を含む。典型的な異性化触媒は、例えば、Pt/SAPO-11/Al23、Pt/ZSM-22/Al23、Pt/ZSM-23/Al23およびPt/SAPO-11/SiO2などである。触媒は、単独でまたは組み合わせて使用され得る。添加される水素の存在は、触媒不活性化を減少させるために、特に好ましい。異性化触媒は、好ましくは、水素と組み合わせて使用されるPt/SAPOおよび/またはPt/ZSM触媒などの貴金属二官能性触媒である。異性化工程は、例えば、200~500℃、好ましくは280~400℃の温度で、および、20~150bar、好ましくは30~100bar(絶対単位)の圧力で行われ得る。異性化工程は、例えば精製工程および分留工程などのさらなる中間工程を含んでいてもよい。
【0089】
なお、異性化処理は、炭化水素材料を異性化するために主に作用する工程である。すなわち、大部分の熱的または触媒的変換(例えばHDOなど)が、低い程度の異性化(通常5wt.-%未満)を結果として生じる一方、本発明において使用され得る異性化工程は、イソ-パラフィンの含有量における顕著な増加を導く工程である。異性化処理は、また、調製された異性体原料中の分岐が一つであるおよび多分岐のイソ-パラフィンの量を制御することを含む工程であってもよい。
【0090】
イソ-パラフィンの含有量(wt.-%)が、異性化工程によって、少なくとも10パーセンテージポイント(percentage points)、より好ましくは少なくとも20パーセンテージポイント、さらにより好ましくは少なくとも40パーセンテージポイント増加されることが好ましい。より特には、炭化水素材料のイソ-パラフィン含有量(液体成分中の有機材料)が1wt.-%であるとして、異性化後の中間体生成物(例えば異性体原料など)のイソ-パラフィン含有量は、最も好ましくは、少なくとも85wt.-%(84パーセンテージポイントの増加)である。
【0091】
異性化の程度は、特に限定されるものではなく、そして、100wt.-%に到達してもよいが、通常、異性化の程度を99wt.-%以下に制限することがより効率的であり、したがって、好ましい。
【0092】
イソ-パラフィンの含有量は、例えば温度、圧力、滞留時間および水素含有量などの異性化反応条件によって制御され得る。炭化水素材料の温和な異性化は、比較的低い含有量(約50wt.-%)のイソ-パラフィン、分岐が一つである多数のイソ-パラフィン、および比較的低い含有量の他の分岐パラフィンを結果としてもたらす。本発明では、より厳しい異性化条件を用いることがしたがって好ましい。
【0093】
代替的には、または、追加で、再異性化を行うこと、すなわち、第1の異性化工程の流出物の全てまたは一部(好ましくは、20wt.-%以上のn-パラフィンを含む少なくとも一部)を第2の異性化工程へと送ることが可能である。この場合、第1の異性化工程および第2の(再)異性化工程が、通常、「異性化工程」と称される。
【0094】
上述の異性化処理によって得られる異性体原料は、直接熱分解手順に投入されてもよい。n-パラフィンがn-パラフィンおよびイソ-パラフィンを含む炭化水素材料から分離されている場合、(n-パラフィン材料の)異性化処理によって得られる異性体原料は、炭化水素材料の残り(すなわち、既に高いイソ-パラフィン含有量を有している部分)と直接的に統合され、および、その後、熱分解手順に投入されてもよい。この場合、異性化工程後の精製は必要ではなく、したがって、プロセスの効率性はさらに向上され得る。
【0095】
水素化処理工程および異性化工程は、同一のリアクター中で行われてもよい。代替的には、水素化工程および異性化工程は、別々のリアクター中で行われ得る。水、および、例えば一酸化炭素、二酸化炭素、水素、メタン、エタン、およびプロパンなどの軽質ガスが、水素化処理されたまたは水素化分解された組成物から、および/または、異性体原料から、例えば、蒸留などの任意の従来の方法を用いて、熱分解の前に、分離されてもよい。水および軽質ガスの除去の後またはそれに伴って、組成物は一またはそれ以上の留分へと分留され得、それぞれが熱分解工程における異性体原料として提供され得る。分留は、例えば、蒸留などの任意の従来の方法によって行われ得る。さらに、異性体原料は、任意には精製されてもよい。精製および/または分留は、異性体原料の特性のより良好な制御を可能にし、そしてそれゆえ、熱分解工程において製造されるバイオ炭化水素混合物の特性のより良好な制御を可能にする。
【0096】
本発明において、植物オイル、植物性脂肪、動物オイル、および動物性脂肪の少なくとも一つを含む再生可能なフィードストックが水素化処理および異性化に付されることが好ましく、ここで、異性体原料を調製するために、分岐が一つであるおよび多分岐のイソ-パラフィンの生成が異性化処理のあいだで制御される。好ましくは、異性体原料は、ディーゼル範囲留分(沸点:180~360℃、EN-ISO-3405(2011)に従って測定)およびナフサ範囲留分(沸点:30~180℃、EN-ISO-3405(2011)に従って測定)のうちの少なくとも一つを含む。一態様において、異性体原料は、ディーゼル範囲留分を含む。代替的な態様において、異性体原料は、ナフサ範囲留分を含む。ディーゼル範囲留分および/またはナフサ範囲留分を含む異性体原料は、その後、熱分解、好ましくは水蒸気分解に付される。すなわち、一態様において、ディーゼル範囲留分のみが熱分解に付され、また代替的な態様は、ナフサ範囲留分のみを熱分解に付すことを含む。さらに別の態様において、ディーゼル範囲留分およびナフサ範囲留分の混合物が、熱分解に付される。最も好ましくは、ディーゼル範囲留分が熱分解に付される。
【0097】
これらの留分、特には再生可能なオイルおよび/または脂肪由来の留分を用いることにより、異性体原料の組成の良好な制御が可能となり、したがって本発明の分解工程によって製造されるバイオ炭化水素混合物の組成の良好な制御が可能となる。該留分または複数の留分を熱分解することは、熱分解工程における所望の生成物分布を与える。
【0098】
熱分解
好ましくは、本発明の方法における分解工程の熱分解は、水蒸気分解である。水蒸気分解設備は、石油化学産業において広く使用されており、プロセスのための条件は広く知られており、したがって、確立されたプロセスのわずかな改変のみが必要とされる。従来のナフサ(水蒸気)分解装置、すなわち化石ナフサを熱分解するために通常使用される分解装置が、熱分解工程を行うために好ましくは使用される。熱分解は、好ましくは、触媒無しで行われる。しかしながら、ジメチルジスルフィド(DMDS)などの添加剤が、コーク形成を減少されるために分解工程において使用されてもよい。
【0099】
良好なC4オレフィン収率は、熱分解工程を広範囲な温度範囲から選択されたCOTで行う際に得られ得る。COTは、通常、分解装置における最も高い温度である。本発明において、再生可能な異性体原料の熱分解は、好ましくは、720℃~880℃の範囲から選択されるコイル出口温度(coil outlet temperature)(COT)で行われる。C4オレフィンの収率は、より高いCOTで低下する傾向があるため、COTは、好ましくは、860℃以下、より好ましくは850℃以下、840℃以下、または830℃以下である。十分な分解を確実にするために、COTは、好ましくは、少なくとも720℃、より好ましくは少なくとも740℃、少なくとも760℃、少なくとも780℃、または少なくとも800℃である。
【0100】
好ましい態様において、COTは、780℃~840℃の範囲から選択される。COTは、さらにより好ましくは、800℃~830℃の範囲から選択される。熱分解は、約820℃であるCOTで行われてもよい。COTは、例えば、約810℃、815℃、820℃、825℃、または830℃であってもよい。上述の温度範囲の低い方の値から選択される温度、特には800℃より低い温度は、未反応の抽出物のwt.-%量を増加させるかもしれない。しかしながら、未変換の反応物を熱分解へとリサイクルすることが、プロセスの全体の非常に高い収率を可能にする。
【0101】
熱分解は好ましくは、水蒸気分解である。水蒸気分解は、好ましくは、0.05~1.20、より好ましくは0.05~1.10である水と異性体原料とのあいだのフロー速度比(H2Oフロー速度[kg/h]/iso-HCフロー速度[kg/h])で行われる。好ましい態様において、水と異性体原料とのフロー速度比は、0.10~1.00から選択される。さらに好ましい態様において、水と異性体原料とのフロー速度比は、0.20~0.80から選択される。さらにより好ましくは、水と異性体原料とのフロー速度比は、0.25~0.70から選択される。さらにより好ましくは、水と異性体原料とのフロー速度比は、0.25~0.60から選択される。所望の生成物の高い収率での製造を可能にするため、0.30~0.50から選択されるフロー速度比が特に好ましい。したがって、よりさらに好ましくは、水と異性体原料とのフロー速度比は、0.30~0.50から選択される。
【0102】
一般的に、熱分解工程におけるコイル出口圧力は、0.9~3.0bar(絶対単位)の範囲内、少なくとも1.0bar、より好ましくは少なくとも1.1barまたは1.2bar、および好ましくは最大で2.5bar、より好ましくは最大で2.2bar、または2.0barであり得る。
【0103】
好ましくは、水蒸気分解は、0.30~0.50である水と異性体原料とのあいだのフロー速度比(H2Oフロー速度[kg/h]/iso-HCフロー速度[kg/h])で、および、800~820℃の範囲から選択されるCOTで行われる。さらなる態様において、水蒸気分解は、0.30~0.50である水と異性体原料とのあいだのフロー速度比(H2Oフロー速度[kg/h]/iso-HCフロー速度[kg/h])で、および、800~840℃の範囲から選択されるCOTで行われる。
【0104】
分解生成物
用語「分解生成物(cracking products)」は、熱分解工程の後に直接的に得られる生成物、またはそれらの誘導体を意味し得、すなわち、本明細書において使用される「分解生成物」は、バイオ炭化水素混合物を意味している。分解生成物は、バイオ炭化水素混合物中に少なくともC4オレフィンを含む。用語「熱分解工程の後に直接的に得られる(obtained directly after a thermal cracking step)」は、任意の分離および/または精製工程を含む。本明細書において使用される用語「分解生成物」はまた、全体として熱分解工程の後に直接的に得られる(すなわち精製または分離なしでの)バイオ炭化水素混合物を意味していてもよい。
【0105】
分解生成物は、一またはそれ以上の以下の分解生成物を含んでいてもよい。
【0106】
本発明は、異性体原料を熱分解することによって、良好な収率のC4オレフィンを有するバイオ炭化水素混合物を得ることを可能にしている。C4オレフィン、および特にはイソブテンは、石油化学原料の製造に、特には、ポリマー産業におけるモノマーまたはモノマー前駆体として、および、高品質なドロップインガソリン成分として、良好に適している。
【0107】
分解生成物は、水素、メタン、エタン、エテン、プロパン、プロペン、プロパジエン、例えばブテン、イソブテンなどのブタンおよびブチレン、およびブタジエン、例えば芳香族化合物、ベンゼン、トルエン、キシレンなどのC5+炭化水素、およびC5~C18パラフィンおよびオレフィン、およびこれらの誘導体を含み得る。
【0108】
これら誘導体は、例えば、メタン誘導体、エテン誘導体、プロペン誘導体、ベンゼン誘導体、トルエン誘導体、およびキシレン誘導体、およびそれらの誘導体である。
【0109】
メタン誘導体としては、例えば、アンモニア、メタノール、ホスゲン、水素、オキソ化合物およびそれらの誘導体、例えば、メタノール誘導体などが挙げられる。メタノール誘導体は、例えば、メチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ホルムアルデヒドフェノール樹脂、ポリウレタン、メチル-tert-ブチルエーテル、およびそれらの誘導体などが挙げられる。
【0110】
エテン誘導体としては、例えば、エチレンオキサイド、エチレンジクロライド、アセトアルデヒド、エチルベンゼン、α-オレフィン、およびポリエチレン、およびそれらの誘導体、例えば、エチレンオキサイド誘導体、エチルベンゼン誘導体、およびアセトアルデヒド誘導体などが挙げられる。エチレンオキサイド誘導体としては、例えば、エチレングリコール、エチレングリコールエーテル、エチレングリコールエーテルアセテート、ポリエステル、エタノールアミン、エチルカルボネート、およびそれらの誘導体が挙げられる。エチルベンゼン誘導体としては、例えば、スチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、スチレン-アクリロニトリル樹脂、ポリスチレン、不飽和ポリエステル、およびスチレン-ブタジエンゴム、およびそれらの誘導体などが挙げられる。アセトアルデヒド誘導体としては、例えば、酢酸、ビニルアセテートモノマー、ポリビニルアセテートポリマー、およびそれらの誘導体などが挙げられる。エチルアルコール誘導体としては、例えば、エチルアミン、エチルアセテート、エチルアクリレート、アクリレートエラストマー、合成ゴム、およびそれらの誘導体などが挙げられる。さらに、エテン誘導体としては、例えば、例えばポリビニルクロライド、ポリビニルアルコール、例えばポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリビニルクロライド、ポリスチレンなどのポリマー、およびそれらの誘導体などが挙げられる。
【0111】
プロペン誘導体としては、例えば、イソプロパノール、アクリロニトリル、ポリプロピレン、プロピレンオキサイド、アクリル酸、アリルクロライド、オキソアルコール、クメン、アセトン、アクロレイン、ヒドロキノン、イソプロピルフェノール、4-ヘチルペンテン-1、アルキレート、ブチルアルデヒド、エチレン-プロピレンエラストマー、およびそれらの誘導体などが挙げられる。プロピレンオキサイド誘導体としては、例えば、プロピレンカーボネート、アリルアルコール、イソプロパノールアミン、プロピレングリコール、グリコールエーテル、ポリエーテルポリオール、ポリオキシプロピレンアミン、1,4-ブタンジオール、およびそれらの誘導体などが挙げられる。アリルクロライド誘導体としては、例えば、エピクロロヒドリンおよびエポキシ樹脂などが挙げられる。イソプロパノール誘導体としては、例えば、アセトン、イソプロピルアセテート、イソホロン、メチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、およびそれらの誘導体などが挙げられる。ブチルアルデヒド誘導体としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸エステル、イソブタノール、イソブチルアセテート、n-ブタノール、n-ブチルアセテート、エチルヘキサノール、およびそれらの誘導体などが挙げられる。アクリル酸誘導体としては、例えば、アクリレートエステル、ポリアクリレート、および水吸収性ポリマー、例えば超吸収剤、およびそれらの誘導体などが挙げられる。
【0112】
ブチレン誘導体としては、例えば、アルキレート、メチルtert-ブチルエーテル、エチルtert-ブチルエーテル、ポリエチレンコポリマー、ポリブテン、バレルアルデヒド、1,2-ブチレンオキサイド、プロピレン、オクテン、sec-ブチルアルコール、ブチレンゴム、メチルメタクリレート、イソブチレン、ポリイソブチレン、例えばp-tert-ブチルフェノール、di-tert-ブチル-p-クレゾール、および2,6-di-tert-ブチルフェノールなどの置換フェノール、ポリオール、およびそれらの誘導体などが挙げられる。他のブタジエン誘導体としては、スチレンブチレンゴム、ポリブタジエン、ニトリル、ポリクロロプレン、アジポニトリル、アクリロニトリルブタジエンスチレン、スチレン-ブタジエンコポリマーラテックス、スチレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジエンボムであってもよい。
【0113】
ベンゼン誘導体としては、例えば、エチルベンゼン、スチレン、クメン、フェノール、シクロヘキサン、ニトロベンゼン、アルキルベンゼン、マレイン酸無水物、クロロベンゼン、ベンゼンスルホン酸、ビフェニル、ヒドロキノン、レゾルシノール、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル樹脂、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、スチレンブロックコポリマー、ビスフェノールA、ポリカーボネート、メチルジフェニルジイソチアネート、およびそれらの誘導体などが挙げられる。シクロヘキサン誘導体としては、例えば、アジピン酸、カプロラクタムおよびそれらの誘導体などが挙げられる。ニトロベンゼン誘導体としては、例えば、アニリン、メチレンジフェニルジイソシアネート、ポリイソシアネート、およびポリウレタンなどが挙げられる。アルキルベンゼン誘導体としては、例えば、直鎖のアルキルベンゼンなどが挙げられる。クロロベンゼン誘導体としては、例えば、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、およびニトロベンゼンなどが挙げられる。フェノール誘導体としては、例えば、ビスフェノールA、フェノール型アルデヒド樹脂、シクロヘキサノン-シクロヘキサノール混合物(KA-オイル)、カプロラクタム、ポリアミド、例えばp-ノノイルフェノールおよびp-デドシルフェノールなどのアルキルフェノール、オルト-キシレノール、アリールホスフェート、o-クレゾール、およびシクロヘキサノールなどが挙げられる。トルエン誘導体としては、例えば、ベンゼン、キシレン、トルエンジイソシアネート、安息香酸、およびそれらの誘導体などが挙げられる。
【0114】
キシレン誘導体としては、例えば、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、およびフタル酸無水物などの芳香族ジカルボン酸および無水物、およびフタル酸、およびそれらの誘導体などが挙げられる。テレフタル酸の誘導体としては、例えば、例えばジメチルテレフタレートなどのテレフタル酸エステル、および、例えばポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびポリエステルポリオールなどが挙げられる。フタル酸誘導体としては、例えば、不飽和ポリエステル、およびPVC可塑剤などが挙げられる。イソフタル酸誘導体としては、例えば、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレートコポリマー、およびポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0115】
すでに上述したように、本発明の分解工程において得られるバイオ炭化水素混合物は、従来の石油化学、とりわけポリマー産業のための原料として特に適している。特には、バイオ炭化水素混合物は、従来の(化石)原料の熱(水蒸気)分解から得られる生成物分布と類似している、および、それよりもさらにより好ましい生成物分布を示す。したがって、バイオ炭化水素混合物を含むバイオ炭化水素は、いかなる顕著な製造プロセスの改変をも必要とすることなしに、公知の付加価値連鎖へと添加され得る。実質的に、したがって、例えば、再生可能な材料またはフィードストックのみから導かれるポリマーを製造することが可能である。
【0116】
本発明の分解生成物は、広範囲の応用に使用され得る。このような応用としては、例えば、家庭用電気機械器具、合成物、自動車、パッケージング、医薬機器、農業化学品、冷却材、履物、紙、コーティング、接着剤、インク、医薬品、電気および電子機器、スポーツ用器具、使い捨て用品、ペイント、織物、超吸収剤、建物および建築、燃料、洗剤、家具、スポーツウェア、溶媒、可塑剤、および界面活性剤などが挙げられる。
【0117】
反応工程
本発明の反応工程は、分解工程から得られるC4オレフィンの少なくとも一部を、再生可能な成分を製造するために反応に付す工程である。反応は、C4オレフィンを他の成分またはそれら自身と反応させることを含み得る。
【0118】
好ましい態様において、少なくとも一部のC4オレフィンが、ドロップインガソリン成分を製造するために反応される。
【0119】
代替的には、または、追加で、少なくとも一部のC4オレフィンは、ポリマー産業のためのモノマー(またはモノマー混合物)を製造するために反応されてもよく、または、ポリマーを製造するために直接的に、任意には他の(再生可能なまたは従来の)モノマーと一緒に使用されてもよい。
【0120】
反応工程は、特には、C4オレフィンの少なくとも一つ、好ましくは1-ブテン、(Z)-2-ブテンおよび(E)-2-ブテンの少なくとも一つを、アルキル化反応に付す工程を含んでいてもよい。アルキル化反応は、C4オレフィンの少なくとも一つとC4またはC5アルカン、好ましくはイソアルカンとのあいだの反応を含んでいてもよい。C4アルカンは、好ましくは、イソブタンであり得る。C5アルカンは、好ましくは、イソペンタンおよび/またはネオペンタンであり得る。
【0121】
アルキル化反応は、特には、イソオクタンを製造するために、好ましくは、C4オレフィンの少なくとも一つとイソブタンとのあいだの反応を含む。
【0122】
反応工程は、さらに、ブテン(モノエン)を製造するために、C4オレフィン中に含まれる少なくともブタジエンを選択的水素化へと付し、および、それによって製造されたブテンを、単独で、または、一またはそれ以上の他のC4オレフィン(ブタジエンを除く)との混合物で、少なくとも一つのC4オレフィンとして利用する工程を含んでいてもよい。
【0123】
反応工程は、C1~C3アルキルtert-ブチルエーテルを製造するために、C4オレフィン中に含まれているイソブテンの少なくとも一部を、C1~C3アルコールとのエーテル化へと付す工程を(代替的に、または、追加で)含んでいてもよい。
【0124】
反応工程は、メチルt-ブチルエーテル(MTBE)および/またはエチルt-ブチルエーテル(ETBE)を製造するために、C4オレフィン中に含まれているイソブテンの少なくとも一部を、メタノールおよび/またはエタノールとのエーテル化へと付す工程を含んでいてもよい。
【0125】
上述の反応は、高いオクタン価を有するドロップインガソリン成分を製造するために特に好ましい。この点において、ドロップインガソリン成分(単一の成分または成分の混合物)は、好ましくは、少なくとも90、より好ましくは少なくとも95、およびさらにより好ましくは少なくとも100であるRONを有している。
【0126】
さらに、C4オレフィン(ブタジエンを含む)は、ポリマー産業におけるモノマーまたはモノマー前駆体として使用され得る。例えば、C4オレフィン、およびとりわけイソブテンは、メチルメタクリレート、ブチルゴム、ポリイソブテン、および置換フェノールを製造するために反応されてもよい。代替的には、または追加で、これらのC4オレフィンは、石油化学において通常知られている任意の他の目的のために使用されてもよい。
【0127】
実施例
本発明のいくつかの態様を示している実施例が、図1に示される研究室スケールの器具を用いて行われた。
【0128】
図1の研究室スケールの器具において、炭化水素および水は、それぞれ、リザーバー2および3に提供される。質量流量が電子天秤1を用いて測定される。水および炭化水素は、それぞれ、ウォータポンプ5およびペリスタルティックポンプ4を用いてバルブ6を介してエバポレーター7へと注入された。蒸発乾固された材料は、ミキサー8中で混合され、そして、温度T1~T8を測定するためのセンサーを備えたリアクター9へと投入される。コイル入口圧力(CIP)およびコイル出口圧力(COP)が、適切な位置で、センサー(CIP、COP)を用いて測定される。反応生成物は、内部標準10と混合された後(その添加量は、コリオリ式質量流量コントローラー11を用いて制御される)、加熱されたサンプリングオーブンを介して、GC×GC-FID/TOF-MSにインプットされる。反応システムの内部圧力は、出口圧力制限バルブ14を用いて調整される。さらに、水冷熱交換機15、ガス/液分離器16、脱水機17、リファイナリガス分析器18、およびコンデンセイトドラム19が、生成物を分析しおよび回収するために備えられている。
【0129】
異性化の程度の測定
再生可能な異性体原料(異性体原料)中のn-パラフィンおよびi-パラフィン含有量が、ガスクロマトグラフィー(GC)によって分析された。サンプルは、そのまま、前処理なしに、分析された。方法は、C2~C36炭化水素に適切である。N-アルカンおよび(C1-、C2-、C3-置換された、および、>C3-置換された)イソアルカン群が、マススペクトロメトリーおよびC2~C36の範囲の公知のn-アルカンの混合物を用いて同定される。クロマトグラフは、積算され、そして、化合物または化合物群が、全ての炭化水素に対して1.0の相対感度を用いた正規化によって定量される。個々の化合物の定量化の限界は、0.01wt.-%であった。n-およびi-パラフィンの測定のセッティングは表1に示されている。
【0130】
【表1】
【0131】
流出物分析
研究室スケール実施例
研究室スケール実施例、すなわち、図1の研究室スケール機器を用いて行われる実施例における分解生成物の流出物分析がPylら(Pyl, S. P.; Schietekat, C. M.; Van Geem, K. M.; Reyniers, M.-F.; Vercammen, J.; Beens, J.; Marin, G. B., Rapeseed oil methyl ester pyrolysis: On-line product analysis using comprehensive two-dimensional gas chromatography. J. Chromatogr. A 2011, 1218, (21), 3217-3223)によって記載されている手順を用いて行われた。リアクター流出物の定量は、サンプリングオーブン中のリアクター流出物に添加される外部標準(N2)を用いて行われた。熱伝導度型検出器(TCD)および水素炎イオン化型検出器(FID)の両方が設けられている様々な機器のデータを統合するために、複数のリファレンス成分が使用された。これは、図4に図示されており、以下により詳細に記載されている。
【0132】
永久ガスおよびC4-炭化水素を含むリアクター流出物の留分が、リファイナリガス分析(RGA)に注入された。RGAのセッティングは、表2に示されている。N2、H2、CO、CO2、CH2、エタン、エテンおよびアセチレンがTCDで検出された。これらの種の質量流量、dm/dtが、以下の式(ここで、Aiは、検出器によって得られる表面積を示している)を用いて、外部標準のN2の公知の質量流量を基に測定された。それぞれのC4種の応答係数、fがエア・リキード社(Air Liquide、ベルギー)によって提供される較正用混合物を用いて測定された。
【数1】
【0133】
RGAのFID検出器は、C1~C4炭化水素を分析する。TCD検出器で検出されるメタンは、以下の式:
【数2】
を用いて、検出された他の分子を定量するために、第2の内部標準としての機能を果たした。
【0134】
GC×GC-FIDとして知られている包括的2次元GC(comprehensive two-dimensional GC)は、N2、H2、CO、CO2、およびH2O以外の、流出物ストリーム全体の定量を可能にする。メタンが、第2の内部標準として使用された。GC×GCのセッティングは、表3に示されている。
【0135】
【表2】
【0136】
【表3】
【0137】
異性体原料
異性体原料組成物RC1
約53wt.-%のモノメチル置換されたイソ-パラフィン、約16wt.-%の多分岐のイソ-パラフィン、および約31wt.-%のn-パラフィンを含む混合物(異性体組成物)が提供された(イソ-パラフィン含有量:69wt.-%)。混合物の組成は、GC分析によって分析され、そしてその結果が表4に示されている。組成物は、水素化処理および異性化に付される再生可能なフィードストック由来の炭化水素組成物(ディーゼル留分)に対応している。
【0138】
異性体原料組成物RC2
約38wt.-%のモノメチル置換されたイソ-パラフィン、約55wt.-%の多分岐のイソ-パラフィン、および約7wt.-%のn-パラフィンを含む混合物(異性体組成物)が提供された(イソ-パラフィン含有量:93wt.-%)。混合物の組成は、GC分析によって分析され、そしてその結果が表4に示されている。組成物は、水素化処理および異性化に付される再生可能なフィードストック由来の炭化水素組成物(ディーゼル留分)に対応しているが、組成物RC1より高いイソ-パラフィン度(wt.-%量)を有する組成物が得られた。
【0139】
異性体原料組成物RC3
約29wt.-%のモノメチル置換されたイソ-パラフィン、約66wt.-%の多分岐のイソ-パラフィン、および約5wt.-%のn-パラフィンを含む混合物(異性体組成物)が提供された(イソ-パラフィン含有量:95wt.-%)。混合物の組成は、GC分析によって分析され、そしてその結果が表4に示されている。組成物は、水素化処理および異性化に付される再生可能なフィードストック由来の炭化水素組成物(ディーゼル留分)に対応している。異性化は、組成物RC1およびRC2より高いイソ-パラフィン度(wt.-%量)を有する組成物が得られるように行われた。
【0140】
【表4】
【0141】
表4において、iP(モノ)は、分岐が一つであるイソ-パラフィンを示しており、iP(多)は、多分岐のイソ-パラフィンを示しており、および、nPは、n-パラフィンを示している。
【0142】
化石ナフサの組成分析
化石ナフササンプルの組成が、EN ISO 22854-2016(ASTM D 6839-2016)にしたがって、ガスクロマトグラフィーによって分析された。該方法は、ガソリン燃料中の、飽和の、オレフィン系の、および芳香族系の炭化水素を分析するために適切である。ナフササンプルの密度は、EN-ISO-12185(2011)法にしたがって分析された。ナフササンプルの沸点は、EN-ISO-3405(2011)法にしたがって分析された。
【0143】
ナフサN1
ナフサN1は、水蒸気分解のための典型的な化石軽質ナフサフィードストックである。フィードストックN1の特徴は、表5に示されている。
【0144】
【表5】
【0145】
化石ナフサおよび異性体原料のブレンドの組成
RC1N1、RC2N1およびRC3N1のブレンドが、化石ナフサ(N1)と異性体原料(RC1、RC2およびRC3)をブレンドすることによって調製された。表6は、調製されたブレンドの組成を示している。
【0146】
【表6】
【0147】
実施例1
水蒸気分解が、800℃の温度(コイル出口温度、COT)で、および0.5の希釈(組成物RC3に対する水のフロー速度比;水[kg/h]/RC3[kg/h])で、1.7bar(絶対単位)で、Incoloy 800HTTMスティール(30~35wt.-%Ni、19~23wt.-%Cr、>39.5wt.-%Fe)で製造された、内径が6mmである1.475mの長いチューブ状リアクター中で、組成物RC1を用いて、研究室スケールで行われた。異性体原料フロー速度は、150g/hで固定された。コイル出口温度(COT)は、リアクターの入り口の下流1.24mの位置(これはリアクター中で最も高温である領域に対応する)で測定された。
【0148】
生成物混合物(バイオ炭化水素混合物)が、上述されたようにGC×GCによって分析された。流出物分析の結果が表5に示されている。
【0149】
実施例2~9
水蒸気分解が、表7に示されているように異性体原料、COTおよび希釈を変えた以外は、実施例1と同様に行われた。生成物混合物(バイオ炭化水素混合物)が、上述されたようにGC×GCによって分析された。流出物分析の結果が表7に示されている。
【0150】
【表7】
【0151】
表7中の「C4オレフィン」は、モノエン(モノオレフィン)と共にブタジエンを含む。「t-2」および「c-2」は、それぞれ「トランス-2」および「シス-2」オレフィン、すなわち、「(E)-2」および「(Z)-2」オレフィンを意味しており、および、i-C4H8は、イソブテンを意味していることに留意。
【0152】
実施例10~18
水蒸気分解が、表8に示されているように、再生可能な異性体パラフィン原料組成物を再生可能な異性体原料と化石ナフサとのブレンドに変えたこと、COTおよび希釈を変えたこと以外は、実施例1と同様に行われた。流出物分析の結果が表8に示されている。
【0153】
【表8】
【0154】
このように生成されたブテン(およびブテンへの選択的水素化の後のブタジエン)は、特定の改変を必要とすることのない特性を有するガソリン燃料のための適切な混合材料である、例えばイソオクタン、MTBEおよびETBEなどを与えるためにアルキル化またはエーテル化に送られ得る。換言すると、これらの材料(およびブテンから得られ得る任意の他の材料)は、ドロップインガソリン成分として適切である。ブテンは、同様に、例えばメチルメタクリレートなどへの任意のさらなる修飾後に、ポリマー製造へと送られ得る。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2021-08-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能な成分を製造するための方法であって、
再生可能な資源を起源とする異性体原料を提供する供給工程であって、前記異性体原料が、少なくとも60wt.-%のイソパラフィンを含む工程、
C4オレフィンを含むバイオ炭化水素混合物を製造するために、前記異性体原料を熱分解する分解工程、および
前記再生可能な成分を製造するために、前記C4オレフィンの少なくとも一部を反応させる反応工程
を含み、
前記イソ-パラフィンが、多分岐イソ-パラフィンを含み、
前記イソ-パラフィンが、50wt.-%より多い多分岐イソ-パラフィンを含む方法。
【請求項2】
前記再生可能な成分が、高いオクタン価を有するドロップインガソリン成分である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記再生可能な成分が、バイオモノマーまたはバイオポリマーであり、好ましくは、ブチルゴム、メチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリイソブチレン、置換フェノール、およびポリブテンからなる群より選択される少なくとも一つである請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記C4オレフィンを含む前記混合物が、少なくともイソブテンを含み、および、前記C4オレフィンの少なくとも一部を反応させる前記反応工程が、前記再生可能な成分を製造するために、イソブテンの少なくとも一部を反応させる工程である請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記異性体原料が、少なくとも70wt.-%、好ましくは少なくとも75wt.-%、少なくとも80wt.-%、少なくとも83wt.-%、少なくとも85wt.-%、少なくとも90wt.-%、または少なくとも95wt.-%のイソ-パラフィンを含む請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記イソ-パラフィンが、55wt.-%より多い多分岐イソ-パラフィンを含む請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記イソ-パラフィンが、60wt.-%より多い多分岐イソ-パラフィンを含む請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記異性体原料が、50wt.-%以上のC10~C20炭化水素、好ましくは75wt.-%以上、より好ましくは90wt.-%以上のC10~C20炭化水素を含む留分である請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記供給工程が、前記異性体原料を調製するために、前記再生可能な原料を起源とする炭化水素材料中の少なくとも直鎖アルカンを異性化処理に付す異性化工程を含み、および/または
前記供給工程が、前記再生可能な原料を起源とする再生可能なフィードストックを脱酸素化する脱酸素化工程、および、任意には、前記異性体原料を調製するためのその後の異性体工程を含む請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記再生可能な資源が、植物オイル、植物性脂肪、動物オイルおよび動物性脂肪の少なくとも一つを含み、および、前記異性体原料を調製するために、水素化、および任意には、異性化に付される請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記分解工程における前記熱分解が、水蒸気分解を含み、および、前記水蒸気分解が、好ましくは、0.05~1.10である水と前記異性体原料とのあいだのフロー速度比(H2Oフロー速度[kg/h]/iso-HCフロー速度[kg/h])で行われる請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記バイオ炭化水素混合物が、全ての有機成分に対して、少なくとも8.0wt.-%のC4オレフィン、好ましくは少なくとも10.0wt.-%、好ましくは少なくとも12.0wt.-%、少なくとも14.0wt.-%、または、全ての有機成分に対して、少なくとも15.0wt.-%のC4オレフィンを含む請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記反応工程が、前記C4オレフィンの少なくとも一つ、好ましくは1-ブテン、(Z)-2-ブテンおよび(E)-2-ブテンの少なくとも一つを、アルキル化反応に付す工程を含む請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記アルキル化反応が、前記C4オレフィンの少なくとも一つとC4またはC5アルカン、好ましくはイソアルカンとのあいだの反応を含む請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記アルキル化反応が、イソオクタンを製造するために、前記C4オレフィンの少なくとも一つとイソブタンとのあいだの反応を含む請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
前記反応工程が、ブテン(モノエン)を製造するために、前記C4オレフィン中に含まれる少なくともブタジエンを選択的水素化へと付し、および、それによって製造されたブテンを、単独で、または、一またはそれ以上の他のC4オレフィン(ブタジエンを除く)との混合物で、前記少なくとも一つのC4オレフィンとして利用する工程をさらに含む請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記反応工程が、C1~C3アルキルtert-ブチルエーテルを製造するために、前記C4オレフィン中に含まれているイソブテンの少なくとも一部を、C1~C3アルコールとのエーテル化へと付す工程を含む請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記反応工程が、メチルt-ブチルエーテル(MTBE)および/またはエチルt-ブチルエーテル(ETBE)を製造するために、前記C4オレフィン中に含まれているイソブテンの少なくとも一部を、メタノールおよび/またはエタノールとのエーテル化へと付す工程を含む請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【国際調査報告】