(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-10
(54)【発明の名称】(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 261/08 20060101AFI20220203BHJP
A61P 33/14 20060101ALI20220203BHJP
A61K 31/42 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
C07D261/08
A61P33/14
A61K31/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535067
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(85)【翻訳文提出日】2021-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2019086538
(87)【国際公開番号】W WO2020127878
(87)【国際公開日】2020-06-25
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510000976
【氏名又は名称】インターベット インターナショナル ベー. フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,ハラルド
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA04
4C086BC67
4C086GA16
4C086ZB37
(57)【要約】
本発明は、好ましくは(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-N-[2-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチルアミノ)エチル]-2-メチル-ベンズアミドの合成で使用可能な(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸の新規な製造方法に関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1a)による(S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸:
【化1】
の、下記式(1)による(RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル)]-2-メチル-安息香酸:
【化2】
からの製造方法であって、
(i)(RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル)]-2-メチル-安息香酸を式(2A)、(2B)若しくは(2C)の化合物:
【化3】
[式中、Rは1個若しくは2個の炭素原子を有するアルキルである。]、
【化4】
[式中、XはCl又はBrである。]
と、極性E
T(30)130~175kJ/molを有する有機溶媒中で反応させて、沈殿及び上清溶液を形成する段階、
(ii)段階(i)からの沈殿を前記上清溶液から分離する段階、
(iii)段階(ii)からの沈殿を酸性水溶液で処理する段階、及び
(iv)(S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル)]-2-メチル-安息香酸を、段階(iii)の酸性水溶液から分離する段階を含み、
但し、Rがメチルである場合に、段階(i)における溶媒が酢酸エチルではない方法。
【請求項2】
(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を、段階(i)で、式(2A)、(2B)若しくは(2C)の化合物と1:0.4~1:5のモル比で反応させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
段階(i)において、前記溶媒がメチルtert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、クロロベンゼン、トルエン、m-キシレン、メシチレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トリエチルアミン、トリクロロメタン、1,2-ジクロロエタン及びこれらの混合物から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
段階(i)において、式(2A)のRがメチルであり、前記溶媒がメチルtert-ブチルエーテルである、又は式(2A)のRがメチルであり、前記溶媒がシクロペンチルメチルエーテルである、又は式(2A)のRがメチルであり、前記溶媒がテトラヒドロフランである、又は式(2A)のRがメチルであり、前記溶媒がジオキサンである、又は式(2A)のRがメチルであり、前記溶媒がクロロベンゼンである、又は式(2A)のRがメチルであり、前記溶媒がトルエンである、又は式(2A)のRがメチルであり、前記溶媒がm-キシレンである、又は式(2A)のRがメチルであり、前記溶媒がメシチレンである、又は式(2A)のRがメチルであり、前記溶媒が酢酸ブチルである、式(2A)のRがメチルであり、前記溶媒がトリエチルアミンである、又は式(2A)のRがメチルであり、前記溶媒がトリクロロメタンである、又は式(2A)のRがメチルであり、前記溶媒が1,2-ジクロロエタンである、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
段階(i)において、式(2A)のRがエチルであり、前記溶媒がメチルtert-ブチルエーテルである、又は式(2A)のRがエチルであり、前記溶媒がシクロペンチルメチルエーテルである、又は式(2A)のRがエチルであり、前記溶媒がテトラヒドロフランである、式(2A)のRがエチルであり、前記溶媒がジオキサンである、又は式(2A)のRがエチルであり、前記溶媒がクロロベンゼンである、式(2A)のRがエチルであり、前記溶媒がトルエンである、又は式(2A)のRがエチルであり、前記溶媒がm-キシレンである、又は式(2A)のRがエチルであり、前記溶媒がメシチレンである、又は式(2A)のRがエチルであり、前記溶媒が酢酸エチルである、又は式(2A)のRがエチルであり、前記溶媒が酢酸ブチルである、式(2A)のRがエチルであり、前記溶媒がトリエチルアミンである、又は式(2A)のRがエチルであり、前記溶媒がトリクロロメタンである、又は式(2A)のRがエチルであり、前記溶媒が1,2ジクロロエタンである、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
段階(i)において、前記化合物が式(2B)の化合物であり、前記溶媒がテトラヒドロフランである;前記化合物が式(2B)の化合物であり、前記溶媒がジオキサンである;前記式(2B)の化合物及び前記溶媒がトルエンである;又は前記式(2B)の化合物及び前記溶媒が酢酸エチルである;又は前記式(2B)の化合物又は前記溶媒が1,2-ジクロロエタンである、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
段階(i)において、式(2C)のXがBrであり、前記溶媒がテトラヒドロフランである;式(2C)のXがBrであり、前記溶媒がジオキサンである;又は式(2C)のXがClであり、前記溶媒がトルエンである;又は式(2C)のXがBrであり、前記溶媒が酢酸エチルである、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
段階(i)が、溶媒中、式(2A)、(2B)若しくは(2C)の化合物とともに(RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル)]-2-メチル-安息香酸を加熱して高温とすることを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
段階(ii)において、段階(i)からの沈殿の前記上清溶液からの分離を濾過によって行う、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
段階(iii)において、前記酸性溶液水溶液が無機酸の水溶液である、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
段階(iv)において、(S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル)]-2-メチル-安息香酸の段階(iii)の酸性水溶液からの分離を,有機溶媒による抽出によって行う、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
段階(iv)における(S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル)]-2-メチル-安息香酸が少なくとも75%のエナンチオマー過剰(ee)を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法がさらに、(S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル)]-2-メチル-安息香酸の再結晶の段階(v)を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記上清溶液を第2の有機溶媒中にてアルカリ性化合物と反応させるさらなる段階(vi)を含み、好ましくは前記第2の有機溶媒が段階(i)の極性E
T(30)130~175kJ/molを有する有機溶媒と同じである、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
(S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル)]-2-メチル-安息香酸をさらに式(4)による化合物:
【化5】
と反応させて、式(3)による4-[(5S)-5-(3,5-ジクロロフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-トリフルオロメチル-1,2-オキサゾール-3-イル]-N-[2-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチルアミノ)エチル]-o-トルアミド:
【化6】
を得る、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-N-[2-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチルアミノ)エチル]-2-メチル-ベンズアミドの合成で使用可能である、(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸の新規な製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-N-[2-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチルアミノ)エチル]-2-メチル-ベンズアミド(以下、フルララネルと称される)は、下記式(A)によって表される合成殺虫剤である。
【化1】
【0003】
フルララネルは、経口投与可能な全身性有効成分である。その有効成分は、いくつかの節足動物の神経系においてγ-アミノ酪酸(GABA)及び/又はグルタミン酸受容体への結合を介してクロライドチャンネルを拮抗的に阻害すると報告されている。フルララネルは哺乳動物の神経系では同様の結合を示さないが、それは例えば、哺乳動物、例えばイヌ及びネコにおけるノミ、ダニ及びマダニ治療に好適である。
【0004】
フルララネルはラセミ体である。(S)-エナンチオマーは、有効成分の抗寄生虫活性に実質的に寄与するユートマーであると報告されている。それを考慮すると、ラセミ体のフルララネルと比較して、エナンチオピュア又はエナンチオ豊富(S)-フルララネルを使用することが有利であると考えられる。
【0005】
(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸(IOBA)が、フルララネル合成における重要な中間体であり、その化合物は、下記式(1)によって表される。
【化2】
【0006】
エナンチオピュア又はエナンチオ豊富(S)-フルララネルは有効成分として有利であると考えられ得ることから、エナンチオピュア又はエナンチオ豊富(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸(S-IOBA)の単離が望ましいものと考えられる。(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸は、下記式(1a)によって表される。
【化3】
【0007】
WO2014/090918A1には、類似の化合物のエナンチオマーへの分離を、キラルカラムクロマトグラフィーによって、又はジアステレオマー的再結晶によって行うことができると記載されている。詳細には、前記文書には、類似の化合物であるラセミ体3-メチル-5-[(5RS)-5-(3,4,5-トリクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]チオフェン-2-カルボン酸(IOTA)を、水、アセトニトリル及び2-ブタノールの三元混合物中、(R)-1-(4-メチルフェニル)エチルアミンで処理することで、相当する(S)-イソオキサゾリンチオフェンカルボン酸塩の沈殿が得られ、それは洗浄後に95%超のキラル純度を有しており、その純度はさらなる再結晶段階によって98%超まで高め得ることが記載されている。しかしながら、この方法は,結晶化に溶媒の三元混合物を用いる。さらに、WO2014/090918A1において、前記三元混合物中に残っている「副生成物」である(R)-イソオキサゾリンチオフェンカルボン酸をラセミ化したい場合、この三元溶媒混合物を別の溶媒に変える必要がある。さらに、ラセミ体IOBAを(R)-1-(4-メチルフェニル)エチルアミンで処理しても、(R)-IOBAや(S)-IOBAの沈殿は全く生じないことが認められた。
【0008】
JP05679102には、ラセミ体イソオキサゾリン安息香酸誘導体をそれのエナンチオマーに分離することができる方法があり、その方法は有機溶媒若しくはそれの混合物中で行われ、活性塩基性化合物を用いることが記載されている。特に、ラセミ体(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸及び光学活性α-フェニルエチルアミンをトルエン及び酢酸エチルの混合物又は酢酸エチルのみ中で反応させて沈殿を得て、それは比率1:1での(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸の相当するエナンチオマー塩及び(S)-α-フェニルエチルアミンであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2014/090918A1
【特許文献2】JP05679102
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、現在もなお、新たな合成経路、即ち、好ましくは簡単且つ効果的な形で適用することができる、(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸の製造方法が必要とされている。
【0011】
従って、本発明の目的は、上記方法の欠点の1以上を克服することである。特に、本発明の目的は、高エナンチオマー過剰を有する(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸の製造方法を提供することにある。別の目的は、特に大規模プロセスで用いられる場合に、有利な高収率で(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を製造する方法を提供することにある。さらに、本発明の目的は、簡単な溶媒系を用いて(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を製造する方法を提供することにある。さらに、本発明の目的は、(S)-IOBAの沈殿の場合と同じ溶媒系を、(R)-IOBAのラセミ化に用いることができる、(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、予想外に、式(1a)による化合物の製造のための新たな合成方途を提供することで、上記目的の少なくとも一つを解決した。
【0013】
従って、本発明の主題は、下記式(1a)による(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸:
【化4】
【0014】
の、下記式(1)による(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸:
【化5】
【0015】
からの製造方法であって、
(i)(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を式(2A)、(2B)若しくは(2C)の化合物:
【化6】
【0016】
[式中、Rは1個若しくは2個の炭素原子を有するアルキルである。]、
【化7】
【0017】
[式中、XはCl又はBrである。]
と、極性ET(30)130~175kJ/molを有する有機溶媒中で反応させて、沈殿及び上清溶液を形成する段階、
(ii)段階(i)からの沈殿を前記上清溶液から分離する段階、
(iii)段階(ii)からの沈殿を酸性水溶液で処理する段階、及び
(iv)(S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を、段階(iii)の酸性水溶液から分離する段階を含み、
但し、Rがメチルである場合に、段階(i)における溶媒が酢酸エチルではない方法である。
【0018】
予想外に、本発明の方法が、高エナンチオマー過剰を有する結果的化合物の有利な収率を可能とするものであることが認められた。さらに、当該方法は、複雑な装置を用いずに行うことができ、クロマトグラフィー精製の必要性が回避される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、段階(i)、(ii)、(iii)及び(iv)を含む式(1a)による化合物の製造方法に関するものである。本発明の好ましい実施形態及び/又は本発明のそれの実施形態において、上記段階(i)、(ii)、(iii)及び(iv))は連続して行うことができる。
【0020】
式(1a)による化合物は、式(1)による化合物(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸の(S)-エナンチオマーであり、式(1)による化合物は例えば、US2007/0066617の合成例3に記載の方法に従って製造することができる。
【0021】
本発明による方法の段階(i)及び/又はそれのいずれかの実施形態において、(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を、極性ET(30)130~175kJ/molを有する有機溶媒中、式(2A)、(2B)又は(2C)の化合物と反応させて、沈殿及び上清溶液を形成する。
【0022】
式(2A)において、残基Rは、1個若しくは2個の炭素原子を有するアルキルである。
【0023】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、残基Rは1個の炭素原子を有するアルキルである。即ち、残基Rはメチルである。相当する塩基性若しくはアルカリ性化合物は(S)-1-フェニルエチルアミンである。
【0024】
本発明の別の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、残基Rは2個の炭素原子を有するアルキルである。即ち、残基Rはエチルである。相当する塩基性若しくはアルカリ性化合物は(S)-1-フェニルプロピルアミンである。
【0025】
式(2B)による化合物は、(R)-1-フェニル-2-メチル-プロピルアミンである。
【0026】
式(2C)において、残基XはCl又はBrである。
【0027】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、式(2C)における残基XはClであり、相当する塩基性若しくはアルカリ性化合物は(R)-1-(4-クロロフェニル)-エチルアミンである。
【0028】
より好ましい実施形態において、式(2C)における残基XはBrであり、相当する塩基性若しくはアルカリ性化合物は(R)-1-(4-ブロモフェニル)-エチルアミンである。
【0029】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、式(2A)、(2B)又は(2C)の化合物は、(S)-1-フェニル-プロピルアミン、(R)-1-フェニル-2-メチル-プロピルアミン、(R)-1-(4-クロロフェニル)-エチルアミン及び(R)-1-(4-ブロモフェニル)-エチルアミンからなる群から選択される。
【0030】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を、段階(i)で、式(2A)、(2B)又は(2C)の化合物と1:0.4~1:5、好ましくは1:0.5~1:3、より好ましくは1:0.6~1:2、特には1:0.7~1:1のモル比で反応させる。
【0031】
有機溶媒は、物質を溶解し、好ましくは完全に溶解して溶液を形成する液体化合物である。有機溶媒の例は当業界で公知である。有機溶媒は、例えば、それの沸点(高沸点若しくは低沸点溶媒)、それらの酸性/塩基性(酸性又はアルカリ性溶媒)及び/又はそれらの極性(極性及び非極性溶媒)でカテゴリーに分類することができる。
【0032】
E
T(30)値は、異なる溶媒の極性を示すものと見なされる(例えば、Jose P. Ceron-Carrasco et al.:″Solvent polarity scales: determination of new E
T(30) values for 84 organic solvents″, Research Article; Journal of Physical Organic Chemistry, 2014, 27, pages 512-518を参照する。)。E
T(30)値は、ベタイン30又はライハルト色素とも称されるネガ型ソルバトクロミック色素2,6-ジフェニル-4-(2,4,6-トリフェニルピリジン-1-イウム-1-イル)フェノレートを用いて求める。ベタイン30は、下記式(B)による化合物によって表される。
【化8】
【0033】
より具体的には、E
T(30)値は、最長波長VIS/NIR吸着帯で相当する溶媒中、ベタイン30を用いて測定される。高E
T(30)値は高極性の溶媒に相当すると考えられ、一方、低E
T(30)値は低極性の溶媒を示す。従って、即ち、E
T(30)値が高いほど溶媒の極性が高く、その逆も言える。E
T(30)値は、モル電子励起エネルギーとも定義され、下記のように計算される。
【数1】
【0034】
式中、λmaxは25℃及び101kPaで測定した場合の相当する溶媒中でのベタイン30の可視/近IR領域における超波長吸着帯である。
【0035】
本方法の段階(i)において、有機溶媒はET(30)値130~175kJ/molを有する。
【0036】
ET(30)値130~175kJ/molを有する溶媒の例は、脂肪族、シクロ脂肪族又は芳香族エーテル類、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジ-n-ブチルエーテル、ジ-tert-ブチルエーテル、ジ-イソプロピルエーテル、n-ブチルメチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロピラン、2,2,5,5-テトラメチルテトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロ-2-メチルフラン、2,2,5,5-テトラメチルテトラヒドロフラン、ベンジルメチルエーテル、ジベンジルエーテル、アニソール、3-メチルアニソール及びフェネトール;アレン類及びピリジン類、例えばベンゼン、トルエン、m-キシレン及びメシチレン;ハロアレン類、例えばクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン及び1,3-ジブロモベンゼン及びピリジン;脂肪族エステル類、例えばギ酸メチル、酢酸メチル、プロパン酸メチル、ブタン酸メチル、ヘキサン酸メチル、ギ酸エチル、酢酸エチル、プロパン酸エチル、安息香酸エチル及び酢酸ブチル;脂肪族、シクロ脂肪族又は芳香族アミン類、例えばジエチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、モルホリン、ピペリジン;ハロアルカン類、例えばトリクロロメタン、テトラクロロメタン、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタン及び1,1,2,2-テトラクロロエタン及びこれらの混合物である。
【0037】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、有機溶媒はET(30)値132~175kJ/mol、好ましくは134~174kJ/mol、より好ましくは135~170kJ/mol、特には140~165、より詳細には134~160kJ/molを有する。
【0038】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、有機溶媒は、脂肪族又はシクロ脂肪族エーテル、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジ-n-ブチルエーテル、ジ-tert-ブチルエーテル、ジ-イソプロピルエーテル、n-ブチルメチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロ-2-メチルフラン;アレン、例えばベンゼン、トルエン、m-キシレン、メシチレン、ハロアルケン、例えばクロロベンゼン、ブロモベンゼン;脂肪族エステル、例えば酢酸メチル、プロパン酸メチル、ブタン酸メチル、酢酸エチル、プロパン酸エチル、安息香酸エチル、酢酸ブチル;脂肪族アミン、例えばジエチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン;ハロアルカン、例えばトリクロロメタン、テトラクロロメタン、1,1ジクロロエタン及び1,2-ジクロロエタン及びこれらの混合物である。
【0039】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、有機溶媒は、メチルtert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、クロロベンゼン、トルエン、m-キシレン、メシチレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トリエチルアミン、トリクロロメタン、1,2-ジクロロエタン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0040】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、有機溶媒は、メチルtert-ブチルエーテルである。本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、有機溶媒は、シクロペンチルメチルエーテルである。本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、有機溶媒は、テトラヒドロフランである。本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、有機溶媒は、ジオキサンである。本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、有機溶媒は、クロロベンゼンである。本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、有機溶媒は、トルエンである。本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、有機溶媒は、m-キシレンである。本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、有機溶媒は、メシチレンである。本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、有機溶媒は、酢酸エチルである。本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、有機溶媒は、酢酸ブチルである。本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、有機溶媒は、トリエチルアミンである。本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、有機溶媒は、トリクロロメタンである。本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、有機溶媒は、1,2-ジクロロエタンである。
【0041】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、有機溶媒は、メチルtert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、クロロベンゼン、トルエン、m-キシレン、メシチレン、酢酸ブチル、トリエチルアミン、トリクロロメタン、1,2-ジクロロエタン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0042】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(i)における式(2A)の残基Rはメチルであり、有機溶媒はメチルtert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、クロロベンゼン、トルエン、m-キシレン、メシチレン、酢酸ブチル、トリエチルアミン、トリクロロメタン、1,2-ジクロロエタン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0043】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(i)における式(2A)の残基Rはメチルであり、有機溶媒はメチルtert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジオキサン、クロロベンゼン、トルエン、m-キシレン、メシチレン、酢酸ブチル、トリエチルアミン、トリクロロメタン、1,2-ジクロロエタン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0044】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(i)における式(2A)の残基Rはメチルであり、有機溶媒はジオキサン、クロロベンゼン、トルエン、酢酸ブチル、トリエチルアミン、トリクロロメタン、1,2-ジクロロエタン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0045】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(i)における式(2A)の残基Rはメチルであり、有機溶媒はメチルtert-ブチルエーテルであり、又は段階(i)における式(2A)の残基Rはメチルであり、有機溶媒はシクロペンチルメチルエーテルであり、又は段階(i)における式(2A)の残基Rはメチルであり、有機溶媒はテトラヒドロフランであり、又は式(2A)の残基Rはメチルであり、有機溶媒はジオキサンであり、又は式(2A)の残基Rはメチルであり、有機溶媒はクロロベンゼンであり、又は式(2A)の残基Rはメチルであり、有機溶媒はトルエンであり、又は式(2A)の残基Rはメチルであり、有機溶媒はm-キシレンであり、又は式(2A)の残基Rはメチルであり、有機溶媒はメシチレンであり、又は式(2A)の残基Rはメチルであり、有機溶媒は酢酸ブチルであり、又は式(2A)の残基Rはメチルであり、有機溶媒はトリエチルアミンであり、又は式(2A)の残基Rはメチルであり、有機溶媒はトリクロロメタンであり、又は式(2A)の残基Rはメチルであり、有機溶媒は1,2-ジクロロエタンである。
【0046】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(i)における式(2A)の残基Rはエチルであり、有機溶媒はメチルtert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、クロロベンゼン、トルエン、m-キシレン、メシチレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トリエチルアミン、トリクロロメタン、1,2-ジクロロエタン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0047】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(i)における式(2A)の残基Rはエチルであり、有機溶媒はメチルtert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジオキサン、クロロベンゼン、トルエン、m-キシレン、メシチレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トリエチルアミン、トリクロロメタン、1,2-ジクロロエタン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0048】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(i)における式(2A)の残基Rはエチルであり、有機溶媒はメチルtert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジオキサン、クロロベンゼン、トルエン、m-キシレン、メシチレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トリエチルアミン、1,2-ジクロロエタン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0049】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(i)における式(2A)の残基Rはエチルであり、有機溶媒はメチルtert-ブチルエーテル,シクロペンチルメチルエーテル、クロロベンゼン、m-キシレン、メシチレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トリエチルアミン、1,2-ジクロロエタン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0050】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(i)における式(2A)の残基Rはエチルであり、有機溶媒はメチルtert-ブチルエーテルであり、又は段階(i)における式(2A)の残基Rはエチルであり、有機溶媒はシクロペンチルメチルエーテルであり、又は段階(i)における式(2A)の残基Rはエチルであり、有機溶媒はテトラヒドロフランであり、又は式(2A)の残基Rはエチルであり、有機溶媒はジオキサンであり、又は式(2A)の残基Rはエチルであり、有機溶媒はクロロベンゼンであり、又は式(2A)の残基Rはエチルであり、有機溶媒はトルエンであり、又は式(2A)の残基Rはエチルであり、有機溶媒はm-キシレンであり、又は式(2A)の残基Rはエチルであり、有機溶媒はメシチレンであり、又は式(2A)の残基Rはエチルであり、有機溶媒は酢酸エチルであり、又は式(2A)の残基Rはエチルであり、有機溶媒は酢酸ブチルであり、又は式(2A)の残基Rはエチルであり、有機溶媒はトリエチルアミンであり、又は式(2A)の残基Rはエチルであり、有機溶媒はトリクロロメタンであり、又は式(2A)の残基Rはエチルであり、有機溶媒は1,2-ジクロロエタンである。
【0051】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(i)におけるキラル塩基は、(R)-1-フェニル-2-メチル-プロピルアミン(式2B)であり、有機溶媒はテトラヒドロフランであり、又はキラル塩基は(R)-1-フェニル-2-メチル-プロピルアミン(式2B)であり、有機溶媒はジオキサンであり、又はキラル塩基は(R)-1-フェニル-2-メチル-プロピルアミン(式2B)であり、有機溶媒はトルエンであり、又はキラル塩基は(R)-1-フェニル-2-メチル-プロピルアミン(式2B)であり、有機溶媒は酢酸エチルであり、又はキラル塩基は(R)-1-フェニル-2-メチル-プロピルアミン(式2B)であり、有機溶媒は1,2-ジクロロエタンである。
【0052】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(i)におけるキラル塩基は、(R)-1-フェニル-2-メチル-プロピルアミン(式2B)であり、有機溶媒はメチルtert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、クロロベンゼン、トルエン、m-キシレン、メシチレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トリエチルアミン、トリクロロメタン、1,2-ジクロロエタン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0053】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(i)におけるキラル塩基は(R)-1-フェニル-2-メチル-プロピルアミン(式2B)であり、有機溶媒はメチルtert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、クロロベンゼン、トルエン、m-キシレン、メシチレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トリエチルアミン、トリクロロメタン、1,2-ジクロロエタン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0054】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(i)におけるキラル塩基は(R)-1-フェニル-2-メチル-プロピルアミン(式2B)であり、有機溶媒はクロロベンゼン、トルエン、m-キシレン、メシチレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トリエチルアミン、トリクロロメタン、1,2-ジクロロエタン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0055】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(i)におけるキラル塩基は(R)-1-フェニル-2-メチル-プロピルアミン(式2B)であり、有機溶媒はクロロベンゼン、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トリエチルアミン、トリクロロメタン、1,2-ジクロロエタン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0056】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(i)における式(2C)の残基XはCl(クロライド)又はBr(ブロミド)である。
【0057】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(i)における式(2C)の残基XはClであり、有機溶媒はテトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、酢酸エチル及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0058】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(i)における式(2C)の残基XはClであり、有機溶媒はメチルtert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジオキサン、クロロベンゼン、トルエン、m-キシレン、メシチレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トリエチルアミン、トリクロロメタン、1,2-ジクロロエタン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0059】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(i)における式(2C)の残基XはClであり、有機溶媒はメチルtert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、クロロベンゼン、トルエン、m-キシレン、メシチレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トリエチルアミン、トリクロロメタン、1,2-ジクロロエタン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0060】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(i)における式(2C)の残基XはClであり、有機溶媒はクロロベンゼン、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トリエチルアミン、トリクロロメタン、1,2-ジクロロエタン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0061】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(i)における式(2C)の残基XはClであり、有機溶媒はトルエン、酢酸エチル及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0062】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(i)における式(2C)の残基Rはクロライドであり、有機溶媒はテトラヒドロフランであり;式(2C)の残基Rはクロライドであり、有機溶媒はジオキサンであり;式(2C)の残基Rはクロライドであり、有機溶媒はトルエンであり;又は式(2C)の残基Rはクロライドであり、有機溶媒は酢酸エチルである。
【0063】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(i)における式(2C)の残基XはBrであり、有機溶媒はテトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、酢酸エチル及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0064】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(i)における式(2C)の残基Rはブロミドであり、有機溶媒はテトラヒドロフランであり;式(2C)の残基Rはブロミドであり、有機溶媒はジオキサンであり;式(2C)の残基Rはブロミドであり、有機溶媒はトルエンであり;又は式(2C)の残基Rはブロミドであり、有機溶媒は酢酸エチルである。
【0065】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(i)における式(2C)の残基XはBrであり、有機溶媒はメチルtert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジオキサン、クロロベンゼン、トルエン、m-キシレン、メシチレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トリエチルアミン、トリクロロメタン、1,2-ジクロロエタン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0066】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(i)における式(2C)の残基XはBrであり、有機溶媒はメチルtert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、クロロベンゼン、トルエン、m-キシレン、メシチレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トリエチルアミン、トリクロロメタン、1,2-ジクロロエタン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0067】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(i)における式(2C)の残基XはBrであり、有機溶媒はクロロベンゼン、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トリエチルアミン、トリクロロメタン、1,2-ジクロロエタン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0068】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(i)における式(2C)の残基XはBrであり、有機溶媒はトルエン、酢酸エチル及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0069】
段階(i)において、(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を、極性ET(30)130~175kJ/molを有する有機溶媒中、式(2A)、(2B)又は(2C)の化合物と反応させて、沈殿及び上清溶液を形成する。従って、有機溶媒中で、(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸、好ましくは(S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸、及び式(2A)、(2B)若しくは(2C)の化合物がお互いに対して相互に作用して、沈殿する生成物及び上清溶液を形成する。即ち、(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸、好ましくは(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸、及び式(2A)、(2B)若しくは(2C)の化合物が互いと反応して、反応混合物から、沈殿し得る、好ましくは完全に沈殿し得る固体生成物を形成し、上清溶液が残る。前記上清溶液は好ましくは、少量の未反応(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸、及び好ましくは大部分の(5R)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を含む。
【0070】
(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸の式(2A)、(2B)若しくは(2C)の化合物との反応は、溶媒が液体状態である限りいかなる温度でも行うことができる。例えば、その反応は、4~65℃、好ましくは10~55℃、やはり好ましくは15~45℃、好ましくは20~40℃、好ましくは25~35℃、最も好ましくは約23℃(室温とも称される)の温度で行うことができる。
【0071】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(i)は、(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を式(2A)、(2B)若しくは(2C)の化合物とともに高温まで加熱することを含む。高温は、23℃(室温)~有機溶媒の沸点、好ましくは30℃~有機溶媒の沸点-5℃、より好ましくは40℃~有機溶媒の沸点-20℃の温度である。それは、111℃の沸騰温度若しくは沸点を有するトルエンを有機溶媒として用いる場合、段階(i)における反応は、好ましくは30℃~105℃、より好ましくは40℃~95℃で行うことができることを意味する。本明細書で示された、そして沸騰温度若しくは沸点関連で示された温度はいずれも、101kPaの常圧で測定される温度に関するものである。
【0072】
さらに、段階(i)は好ましくは、当該段階の反応混合物を冷却することを含む。段階(i)が反応混合物を高温まで加熱することを含まない場合、その反応混合物は0℃~20℃、好ましくは約10℃まで冷却することができる。段階(i)が反応混合物を高温まで加熱することを含む場合、反応混合物は好ましくは、0℃~40℃まで、好ましくは10℃~30℃まで、特には約23℃(室温)まで冷却することができる。反応混合物を冷却することで、得られる生成物は沈殿及び上清溶液を形成し、その上清溶液は好ましくは、(5R)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を含む。
【0073】
さらに、段階(i)の反応には、好ましくは、攪拌若しくは超音波処理などの機械的運動を加えることができる。
【0074】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(i)の期間は、15分~24時間、好ましくは30分~12時間、特には1時間~6時間であることができる。
【0075】
段階(ii)において、段階(i)からの沈殿を上清溶液から分離する。段階(i)からの沈殿は固体であり、液体から固体を分離するいかなる方法によっても上清溶液から分離することができる。これらの方法の例は、任意に前段階の遠心段階を行なっての、上清溶液の傾斜法分離又は注ぎ出し、そして濾過である。
【0076】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(i)からの沈殿の上清溶液からの分離は、濾過を介して行う。本明細書で使用される濾過は、流体のみが通過し得る媒体を介して、固体、この場合は沈殿を、液体、この場合は上清溶液から分離する機械的若しくは物理的操作である。そのような媒体は、フィルター若しくは篩、好ましくはフィルターと称されるものと考えられる。好適なフィルターの例は、吸い込みフィルター、加圧フィルター又は折り畳みフィルター、好ましくは吸い込みフィルターである。
【0077】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、上清溶液から分離された段階(i)からの沈殿について、さらに、精製段階を行うことができる。そのような精製段階は好ましくは、例えば本方法の段階(i)で用いられる有機溶媒で、段階(i)からの沈殿を洗浄することを含むことができる。これを行うことで、任意の残留粘着性上清溶液を除去することができると考えられる。
【0078】
段階(ii)では、上清溶液から分離された段階(i)からの沈殿を、好ましくはさらに乾燥させて、残留溶媒を除去することができる。乾燥は、好ましくは、23℃~50℃、好ましくは約40℃の温度で、及び/又は1kPa~90kPa;好ましくは約10kPaの減圧下で行うことができる。
【0079】
段階(iii)では、段階(ii)からの沈殿を酸性水溶液で処理する。ここで、酸性水溶液は、7未満のpH値を有する溶液である。
【0080】
さらに、その酸性水溶液は好ましくは、ブレンステッド酸の水との反応によって得ることができる。
【0081】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(iii)における酸性水溶液は、3.5以下のpKa、好ましくは3.0以下のpKa、より好ましくは2.5以下のpKa、2.0以下のpKaを有する酸の溶液である。
【0082】
3.5以下のpKaを有する好適な酸の例は、塩化水素(相当する酸は塩酸である。)、臭化水素、ヨウ化水素、硝酸、硫酸、硫酸水素ナトリウム若しくはカリウム、リン酸、トリクロロ酢酸、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、クエン酸、乳酸、2-クロロ安息香酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸及びこれらの混合物である。
【0083】
ブレンステッド酸は、有機酸又は無機酸であることができる。
【0084】
ブレンステッド酸として用いることができる有機酸の例は、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、クエン酸、乳酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸及びこれらの混合物である。好ましいものは、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸及びp-トルエンスルホン酸であり、特にはメタンスルホン酸及びp-トルエンスルホン酸である。
【0085】
ブレンステッド酸として用いることができる無機酸の例は、塩化水素(相当する酸は塩酸である。)、臭化水素、ヨウ化水素、硝酸、硫酸、硫酸水素ナトリウム若しくはカリウム、リン酸及びこれらの混合物である。
【0086】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(iii)における酸性水溶液は、無機酸、好ましくは塩化水素、臭化水素、硫酸、硫酸水素ナトリウム若しくはカリウム、リン酸及びこれらの混合物、より好ましくは塩化水素、硫酸水素ナトリウム若しくはカリウム、リン酸及びこれらの混合物、特には塩化水素、硫酸水素カリウム又はリン酸、特別には硫酸水素カリウムの溶液である。
【0087】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(iii)で使用される酸性水溶液は、-3~3.5、より好ましくは-2~3、さらにより好ましくは-1~2.5、特には約2のpH値を有する。
【0088】
段階(ii)からの沈殿を酸性水溶液で処理する段階(iii)は好ましくは、冷却下で、好ましくは5℃~20℃、より好ましくは約10℃の温度で行うことができる。
【0089】
さらに、段階(iii)の反応は好ましくは、攪拌若しくは超音波処理、特には攪拌などの機械的運動下で行うことができる。
【0090】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(iii)の期間は、5分~2時間、好ましくは10分~1時間、特には約30分間であることができる。
【0091】
段階(iv)では、(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を、段階(iii)の酸性水溶液から分離する。分離は、固体有機化合物、特には固体有機酸を酸性水溶液から分離するための公知の方法を含むことができる。分離は、段階(ii)に関して記載された方法、即ち任意に前段階の遠心段階を行なっての、上記の溶液の傾斜法分離又は注ぎ出し、そして濾過を含むことができる。さらに、分離は、酸性水溶液からの所望の化合物(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4Hイソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸の抽出を介して行うことができる。
【0092】
本発明の好ましい実施形態及び/又は段階(iv)におけるそれの実施形態において、段階(iii)からの酸性水溶液からの(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4-Hイソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸の分離を、有機溶媒による抽出によって行う。有機溶媒は、当業者には公知である。
【0093】
段階(iv)において、抽出は好ましくは、非プロトン性有機溶媒中で行うことができる。本段階(iv)で使用するのに好適な有機溶媒は、例えばトルエン、ベンゼン、キシレン、酢酸エチル、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、環状及び非環状アルキルエーテル類、クロロベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロメタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン及びこれらの組み合わせである。好ましいものは酢酸エチル、トルエン、ジクロロメタン及びトリクロロメタンであり、特には酢酸エチル及びトルエン、特別には酢酸エチルである。
【0094】
抽出は好ましくは、段階(iii)からの酸性化水溶液に有機溶媒を加えること、二つの液体を混和すること、有機溶媒によって相を酸性水溶液から分離することを含む。この手順は好ましくは繰り返すことができ、好ましくは2~4回繰り返すことができる。次に、有機相を好ましくは合わせ、脱水することができる。脱水は、硫酸ナトリウム又は硫酸マグネシウムなどの公知の脱水剤を用いて行うことができる。脱水後、脱水剤を、好ましくは濾過によって有機相から分離することができる。
【0095】
さらに、段階(iv)は好ましくは、有機溶媒を有機相から、好ましくは合わせた有機相から除去することを含む。有機溶媒の除去は、好ましくは23℃~50℃、好ましくは約40℃の温度で、及び/又は1kPa~90kPa、好ましくは約10kPaの減圧下で行うことができる。
【0096】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(iv)からの(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4Hイソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸は、少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、特には少なくとも90%のエナンチオマー過剰(ee)を有する。
【0097】
エナンチオマー過剰(ee)は、各エナンチオマーのモル分率間の絶対差と定義され、エナンチオマー過剰パーセントとして表すことができ、下記等式に従って計算される。
【数2】
【0098】
式中、
FRは(R)-エナンチオマーのモル分率であり、
FSは(S)-エナンチオマーのモル分率である。
【0099】
相当するエナンチオマーの量、従ってモル分率は、当業界で公知の方法によって、例えば対象化合物のエナンチオマー過剰の数値を介して、キラルカラムクロマトグラフィー(キラルLC又はSFC)を介して、又はキラルシフト試薬存在下でのNMRスペクトル測定を介して求めることができる。本願において、相当するエナンチオマーのキラルLCモル分率は、キラルLCによって求められる(システム:Agilent Technologies 1200サンプラーを搭載したAgilent Technologies 1100。Luxアミロース-1キラル相(5μm)を有するPhenomenexカラム(250mm×4.6mm)。溶離液:i-ヘキサン:エタノール75:25;12分間かけての定組成運転.流量:1mL/分。カラムオーブン温度:35℃。220、254、265及び280nmでUV検出。)。他の可能性は、キラルアミン若しくはアルコールを有する(S)-IOBAのジアステレオマーアミド若しくはエステルへの変換、及びLCによるee%の測定である。
【0100】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、本方法はさらに、段階(iv)からの生成物(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を再結晶する段階(v)を含む。再結晶化又は再結晶は、所望の化合物及び任意の不純物を適切な溶媒に溶かす方法である。次に、所望の化合物は沈殿するが(再結晶する)、任意の不純物は溶媒中に残る。
【0101】
再結晶させる化合物を好ましくは、溶媒、好ましくは沸点の溶媒に、化合物を完全に溶かすのにほぼ十分な量で溶かす。次に、溶媒の温度を下げて、所望の生成物の沈殿が形成できるようにすることがさらに好ましい。所望の化合物(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4-H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸の分離を、例えば段階(ii)に関して上記の方法に従って行うことができる。
【0102】
再結晶に好適な有機溶媒は、例えばトルエン、ベンゼン、キシレン、酢酸エチル、ヘキサン、環状及び非環状アルキルエーテル類、クロロベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン及びこれらの組み合わせである。好ましいものは、非環状アルキルエーテル類、トルエン及び酢酸エチルである。
【0103】
本発明の好ましい実施形態及び/又は本方法のそれの実施形態において、(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸をさらに、式(4)による化合物:
【化9】
【0104】
と反応させて、式(3)による(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-N-[2-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチルアミノ)エチル]-2-メチル-ベンズアミドを得る。
【化10】
【0105】
好ましくは(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸及び式(4)によるアミンで、カップリング剤の存在下に有機溶媒中で、相当するアミド基を形成することができる。カップリング剤は好ましくは、エステル又はアミドの形成を促進する物質である。そのカップリング剤は、反応性中間体を形成することでカルボキシ基と反応し、それが次に、アルコール若しくはアミンとさらに反応して、最終生成物、即ちエステル若しくはアミドを形成する。好適なカップリング剤は、例えばN,N′-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)又はカルボニルジイミダゾール(CDI)であることができる。
【0106】
好適な有機溶媒は、例えばジオキサン、テトラヒドロフラン及びDMFであることができる。
【0107】
或いは、(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を好ましくは、塩化チオニル又はオキサリルクロライド、好ましくは塩化チオニルと反応させて、相当する酸塩化物を形成することができる。次に、相当する酸塩化物を、好ましくは有機溶媒、例えばジオキサン、テトラヒドロフラン、クロロホルム又はジクロロメタン中、式(4)によるアミンと反応させることができる。さらに、酸塩化物の式(4)によるアミンとの反応は好ましくは、補助アルカリ性化合物の存在下で行う。好適なアルカリ性化合物は、例えばピリジン及びアミン類、例えばトリエチルアミン及びジイソプロピルエチルアミン、好ましくはジイソプロピルエチルアミンである。
【0108】
本発明のさらなる主題は、下記式(1a)による(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸:
【化11】
【0109】
の、下記式(1)による(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸:
【化12】
【0110】
からの製造方法であって、
(i)(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を式(2A)、(2B)若しくは(2C)の化合物:
【化13】
【0111】
[式中、Rは1個若しくは2個の炭素原子を有するアルキルである。]、
【化14】
【0112】
[式中、XはCl又はBrである。]と、メチルtert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、クロロベンゼン、トルエン、m-キシレン、メシチレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トリエチルアミン、トリクロロメタン、1,2-ジクロロエタンから選択される有機溶媒中で反応させて、沈殿及び上清溶液を形成する段階;
(ii)段階(i)からの沈殿を上清溶液から分離する段階;
(iii)段階(ii)からの沈殿を酸性水溶液で処理する段階、及び
(iv)(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を段階(iii)の酸性水溶液から分離する段階を含み、
但し、Rがメチルである場合、段階(i)における溶媒は酢酸エチルではない方法である。
【0113】
好ましい実施形態に関する限り、上記のものと同じものが適用される。
【0114】
本発明のさらなる主題は、式(1a)による(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸:
【化15】
【0115】
を、式(1)による(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸:
【化16】
【0116】
から製造する方法であって、
(i)(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を、式(2A)、(2B)若しくは(2C)の化合物:
【化17】
【0117】
[Rは1個若しくは2個の炭素原子を有するアルキルである。]、
【化18】
【0118】
[XはCl又はBrである。]と、極性ET(30)130~175kJ/molを有する第1の有機溶媒中で反応させて、沈殿及び上清溶液を形成する段階;
(ii)段階(i)からの沈殿を上清溶液から分離する段階;
(iii)任意に、段階(ii)からの沈殿を酸性水溶液で処理する段階、及び
(iv)任意に、(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を段階(iii)の酸性水溶液から分離する段階;
(v)任意に、段階(iv)からの生成物(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を再結晶する段階;
(vi)上記上清溶液を第2の有機溶媒中にてアルカリ性化合物と反応させる段階を有し、
但し、Rがメチルである場合、段階(i)における溶媒は酢酸エチルではない方法である。
【0119】
(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸(S-IOBA)の沈殿後、上清は、式(1b)による(R)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル)]-2-メチル-安息香酸(R-IOBA)及び式(1a)による(S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル)]-2-メチル-安息香酸(S-IOBA)の混合物となる。
【化19】
【0120】
ほとんどの場合、上清は(R)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル)]-2-メチル-安息香酸(R-IOBA)が豊富となる。
【0121】
本発明による方法及び/又はそれのいずれかの実施形態の段階(vi)において、式(1a)による(R)-IOBA及び式(1b)による(S)-IOBAを含む混合物を、有機溶媒中、アルカリ性化合物と反応させる。この反応は混合物をラセミ化し、(R)-IOBAのエナンチオマー過剰をより低い値に移動させるものである。ラセミ化は、厳密に、エナンチオマー値を、ラセミ体の文字通りの意味である0に移動させることと考えられるものではない。
【0122】
アルカリ性化合物は、有機又は無機アルカリ性化合物であることができる。
【0123】
有機アルカリ性化合物の例は、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン及び2-tert-ブチルイミノ-2-ジエタル(dietal)アミノ-1,3-ジメチルペルヒドロ-1,3,2-ジアザホスホリン及びこれらの混合物である。
【0124】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(i)におけるアルカリ性化合物は、無機化合物である。
【0125】
好適な無機アルカリ性化合物の例は、リン酸アルカリ若しくはアルカリ土類塩、炭酸アルカリ若しくはアルカリ土類塩、炭酸水素アルカリ若しくはアルカリ土類塩、アルカリ若しくはアルカリ土類水酸化物、アルカリ若しくはアルカリ土類酸化物又はこれらの混合物である。
【0126】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(vi)におけるアルカリ性化合物は、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化セシウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、炭酸セシウム及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。好ましいものは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、酸化バリウム及びこれらの混合物である。
【0127】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(vi)におけるアルカリ性化合物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0128】
段階(vi)での使用に好適なさらなるアルカリ性化合物は、アルカリ若しくはアルカリ土類アルコラートである。好適な例は、ナトリウムメタノレート、カリウムメタノレート、ナトリウムエタノレート、カリウムエタノレート、ナトリウムtert-ブチレート及びカリウムtert-ブチレート及びこれらの混合物である。
【0129】
本発明の方法の段階(vi)は、第2の有機溶媒中で行う。
【0130】
好適な第2の有機溶媒は例えば、水、プロパノールなどのアルコール類、テトラヒドロフラン及びジオキサンなどの環状エーテル類、酢酸エチルなどの脂肪族エステル類、ベンゼン及びトルエンなどの置換されていない若しくは置換されているアレン類である。
【0131】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、第2の有機溶媒は、水、1~5個の炭素原子を有するアルコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、酢酸エチル及びこれらの混合物からなる群から、より好ましくは水、2~5個の炭素原子を有するアルコール、ジオキサン、トルエン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0132】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(vi)における第2の有機溶媒は、1~5個の炭素原子を有するアルコールである。そのアルコールは好ましくはモノアルコールである。即ち、有機溶媒は1個のみの水酸基を有する。第2の有機溶媒は水酸基官能基のみを有することがさらに好ましい。即ち、そのアルコールは、(1個の)水酸基を別とした他の官能基を全く持たない。さらに、第2の有機溶媒として使用される1~5個の炭素原子を有するアルコールは、水素、酸素及び炭素原子のみを含む。好適には、そのアルコールはそれ以上置換されていない。
【0133】
有機溶媒として使用される1~5個の炭素原子を有するアルコールの例は、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、シクロプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、シクロブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、シクロペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、2,2-ジメチル-1-プロパノール及びこれらの混合物である。
【0134】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、第2の有機溶媒は、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール及びこれらの混合物からなる群から選択される1~5個の炭素原子を有するアルコールである。より好ましくは、第2の有機溶媒は、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、1-ペンタノール及びこれらの混合物からなる群から選択される2~5個の炭素原子を有するアルコールである。
【0135】
本発明の特に好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(vi)での第2の有機溶媒は、段階(i)の極性ET(30)130~175kJ/molを有する第1の有機溶媒と同じである。
【0136】
本発明の特に好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(vi)での第2の有機溶媒はエタノールである。
【0137】
本発明の特に好ましい実施形態及び/又は段階(vi)におけるそれの実施形態において、有機溶媒はエタノールであり、アルカリ性化合物は水酸化ナトリウムである。
【0138】
本発明の特に好ましい実施形態及び/又は段階(vi)におけるそれの実施形態において、第2の有機溶媒はエタノールであり、アルカリ性化合物は水酸化カリウムである。
【0139】
本発明の特に好ましい実施形態及び/又は段階(vi)におけるそれの実施形態において、第2の有機溶媒はエタノールであり、アルカリ性化合物は水酸化セシウムである。
【0140】
本発明の特に好ましい実施形態及び/又は段階(vi)におけるそれの実施形態において、第2の有機溶媒はエタノールであり、アルカリ性化合物は水酸化カルシウムである。
【0141】
本発明の特に好ましい実施形態及び/又は段階(vi)におけるそれの実施形態において、第2の有機溶媒はエタノールであり、アルカリ性化合物は水酸化バリウムである。
【0142】
本発明の特に好ましい実施形態及び/又は段階(vi)におけるそれの実施形態において、第2の有機溶媒はエタノールであり、アルカリ性化合物は酸化バリウムである。
【0143】
本発明の特に好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(vi)での第2の有機溶媒は1-プロパノールである。
【0144】
本発明の特に好ましい実施形態及び/又は段階(vi)におけるそれの実施形態において、第2の有機溶媒は1-プロパノールであり、アルカリ性化合物は水酸化ナトリウムである。
【0145】
本発明の特に好ましい実施形態及び/又は段階(vi)におけるそれの実施形態において、第2の有機溶媒は1-プロパノールであり、アルカリ性化合物は水酸化カリウムである。
【0146】
本発明の特に好ましい実施形態及び/又は段階(vi)におけるそれの実施形態において、第2の有機溶媒は1-プロパノールであり、アルカリ性化合物は水酸化セシウムである。
【0147】
本発明の特に好ましい実施形態及び/又は段階(vi)におけるそれの実施形態において、第2の有機溶媒は1-プロパノールであり、アルカリ性化合物は水酸化カルシウムである。
【0148】
本発明の特に好ましい実施形態及び/又は段階(vi)におけるそれの実施形態において、第2の有機溶媒は1-プロパノールであり、アルカリ性化合物は水酸化バリウムである。
【0149】
本発明の特に好ましい実施形態及び/又は段階(vi)におけるそれの実施形態において、第2の有機溶媒は1-プロパノールであり、アルカリ性化合物は酸化バリウムである。
【0150】
本発明の特に好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(vi)での第2の有機溶媒は2-プロパノールである。
【0151】
本発明の特に好ましい実施形態及び/又は段階(vi)におけるそれの実施形態において、第2の有機溶媒は2-プロパノールであり、アルカリ性化合物は水酸化ナトリウムである。
【0152】
本発明の特に好ましい実施形態及び/又は段階(vi)におけるそれの実施形態において、第2の有機溶媒は2-プロパノールであり、アルカリ性化合物は水酸化カリウムである。
【0153】
本発明の特に好ましい実施形態及び/又は段階(vi)におけるそれの実施形態において、第2の有機溶媒は2-プロパノールであり、アルカリ性化合物は水酸化セシウムである。
【0154】
本発明の特に好ましい実施形態及び/又は段階(vi)におけるそれの実施形態において、第2の有機溶媒は2-プロパノールであり、アルカリ性化合物は水酸化カルシウムである。
【0155】
本発明の特に好ましい実施形態及び/又は段階(vi)におけるそれの実施形態において、第2の有機溶媒は2-プロパノールであり、アルカリ性化合物は水酸化バリウムである。
【0156】
本発明の特に好ましい実施形態及び/又は段階(vi)におけるそれの実施形態において、第2の有機溶媒は2-プロパノールであり、アルカリ性化合物は酸化バリウムである。
【0157】
本発明の特に好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(vi)における第2の有機溶媒はトルエンである。
【0158】
本発明の特に好ましい実施形態及び/又は段階(vi)におけるそれの実施形態において、第2の有機溶媒はトルエンであり、アルカリ性化合物は酸化ナトリウムである。
【0159】
本発明の特に好ましい実施形態及び/又は段階(vi)におけるそれの実施形態において、第2の有機溶媒はトルエンであり、アルカリ性化合物は酸化カリウムである。
【0160】
本発明の特に好ましい実施形態及び/又は段階(vi)におけるそれの実施形態において、第2の有機溶媒はトルエンであり、アルカリ性化合物は酸化セシウムである。
【0161】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、式(1b)による(R)-IOBA及び式(1a)による(S)-IOBAを含む混合物のアルカリ性化合物に対するモル比は、1:1~1:10、より好ましくは1:2~1:8、特には1:3~1:6、特別には約1:4.5である。
【0162】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(vi)は高温で行われる。高温は、23℃(室温)から有機溶媒の沸点までの温度である。本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(i)は有機溶媒の沸点で行われる。本明細書で示され、沸点若しくは複数の沸点に関係する全ての温度が、101kPaの常圧で測定された温度に関するものである。
【0163】
さらに、段階(vi)の反応には、好ましくは、攪拌若しくは超音波処理などの機械的運動を加えることができる。
【0164】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(vi)の期間は、30分~48時間、好ましくは2時間~36時間、特には4時間~24時間であることができる。
【0165】
本発明の好ましい実施形態及び/又はそれの実施形態において、段階(vi)は、相間移動触媒の非存在下で行う。相間移動触媒は、一つの相から反応が起こる別の相への反応物の移動を促進する物質と見なすことができる。相間移動触媒は、不均一触媒と見なすこともできる。相間移動触媒は反応混合物及び/又は所望の生成物から除去するのが困難である場合が多いことから、相間移動触媒を用いずに行うことができる反応が有利である。
【0166】
次に、段階(vi)後に得られた結果的な混合物を、本発明によるいずれかの方法及び/又は段階(i)におけるそれのいずれかの実施形態で再度用いることができる。このようにして、(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸の収率を高めることができる。さらに、段階(vi)により、望ましくない生成物(5R)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸のリサイクルが可能となる。
【0167】
以上、本発明の特徴を本願の実施形態で説明したが、簡潔さのため、特徴の全ての組み合わせを文字通り記載しているわけではない。しかしながら、上記の特徴の組み合わせは、本発明の一部であると明瞭に考えられる。
【0168】
以下、下記の非限定的な実施例によって本発明についてさらに説明する。収率は、原料内の(S)-IOBAの割合に基づいて計算される。(S)-IOBAのこの量は収率100%を表す。
【0169】
実験の部
I.先行技術の再現
I.1 JP05679102の実施例1
(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸(2.09g;5.0mmol)、トルエン(10g)及び酢酸エチル(5g)を入れ、54℃で攪拌した。それに、(L)-(-)-α-フェニルエチルアミン((S)-1-フェニルエチルアミン;0.304g;2.5mmol)を加えたところ、数秒以内で沈殿が開始した。反応混合物を、攪拌下で1時間以内に4℃まで冷却した。得られた固体を減圧下に濾過することで回収した。トルエン/酢酸エチル5:1(5mL)で洗浄した後、(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸及び(L)-(-)-α-フェニルエチルアミン1:1のジアステレオマー塩を白色固体として得た。
【0170】
収量:1.12g。
【0171】
エナンチオマー過剰(ee):76%
I.2 JP05679102の実施例4
上記のJP05679102の実施例1から得られた(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸及び(L)-(-)-α-フェニルエチルアミン1:1のジアステレオマー塩(0.5g)に、酢酸エチル(10mL)及びトルエン(15mL)を加えた。それに、希塩酸(精製水(3mL)及び35%塩酸(0.53g))を加え、混合物を昇温させて40℃として5分間経過させた。相を分離し、有機相を希塩酸(精製水(3mL)及び35%塩酸(0.53g))で洗浄し、次に精製水(3mL)で洗浄した。次に、有機溶媒を有機相から減圧下に蒸留し、残留物を真空乾燥して、非晶質物質4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を得た。
【0172】
収量:0.42g。
【0173】
エナンチオマー過剰(ee):77%。
【0174】
結論:
JP05679102の実施例1において、(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸及び(L)-(-)-α-フェニルエチルアミン1:1のジアステレオマー塩のエナンチオマー過剰は丁度76%であることから、先行技術で引用されたもの(90%ee)より有意に低かった。JP05679102の実施例4で得られた(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸のエナンチオマー過剰(80%ee)にも同じことが当てはまる。
【0175】
両方の実施例で得られた収率に関する限り、これらは先行技術から得られたものにほぼ相当するものである。
【0176】
I.3 WO2014/090918の実施例2
WO2014/090918によるイソオキサゾリンチオフェンカルボン酸(IOTA)に代えてラセミ体IOBAを用い、それより少量として、WO2014/090918の実施例2を再度行った。
【0177】
2-ブタノール(4.631mL)、アセトニトリル(18.881mL)及び水(0.987mL)からなる三元溶媒混合物を調製した。(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸(2g、4.78mmol)を攪拌下に溶解させた。(R)-(+)-1-(4-メチルフェニル)エチルアミン(0.358mL、2.433mmol)の2-ブタノール(0.515mL、5.63mmol)、アセトニトリル(2.110mL、40.6mmol)及び水(0.110mL、6.11mmol)からなる三元混合物中溶液を調製し、IOBAの溶液に加えた。その混合物を攪拌下に加熱して60~65℃とし、120分間経過させた。攪拌機を停止し、溶液を終夜かけて冷却して室温とした。結晶の形成は観察されなかった。
【0178】
溶媒を留去し、残留物を真空乾燥させた。材料をアセトニトリル(20mL)に懸濁させ、加熱して70℃とした。2-ブタノール(4mL)及び水(3.4mL)を連続で加え、その間反応混合物を加熱して70℃とした。水全量を加えた後、透明溶液となった。混合物を冷却し、2日間放置した。
【0179】
固体材料床が形成された。その固体を攪拌下に上清に懸濁させ、さらなる材料を沈殿させた。固体の沈殿が停止した後、その材料を回収し、アセトニトリル/水9:1で洗浄し、終夜真空乾燥した。固体の重量は610mgであった。
【0180】
硫酸水素カリウムによる酸性後処理及び酢酸エチルでの抽出後に、上清並びに固体のサンプルをキラルLCによって分析した。キラルLC分析により、両方のサンプル中に等量の(S)-IOBA及び(R)-IOBAが存在することが明らかになった。
【0181】
IOTAエナンチオマーの分離に関してWO2014/090918で適用された条件は、(S)-IOBAの生成に関するIOBAの場合には有用ではない。
【0182】
II.本発明によるスクリーニング例(より小規模)
II.1 (5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4-Hイソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸の一般的合成手順
段階(i)
(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸(92mg)の相当する溶媒A~M(1.1mL)中溶液を調製した。混合物を攪拌し、必要な場合は固体が溶解するまで緩やかに加熱した。13×2バイアル(13行、2列)に等量の溶液(500μL)A~Mを入れた反応ブロック;一種類の溶液/行。相当する無希釈キラル塩基1及び2(0.6当量)を加え(1個の塩基/列)、混合物を75℃まで加熱しながら10分間攪拌した。その後、反応混合物を攪拌下に冷却して室温とした。
【0183】
段階(ii)
沈殿を含む段階(i)の反応混合物から、上清溶液を濾過若しくは遠心によって分離した。回収した無色固体を相当する溶媒で洗浄し、懸濁液を再度濾過又は遠心した。次に、得られた固体を終夜乾燥させた。
【0184】
段階(iii)
乾燥固体材料を酢酸エチルに懸濁させ、得られた懸濁液に水及び硫酸水素カリウムを得られ、水相は約1のpHを有していた。全ての固体材料が溶解するまで、その2相を混合した。
【0185】
段階(iv)
その二相系の有機(酢酸エチル)相を分離した。二相系の水相を、酢酸エチルで2回抽出した。有機相を合わせ、溶媒を留去して、無色材料を得た。
【0186】
得られた(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸は、下記のエナンチオマー過剰を有している。
【表1】
【0187】
表から分かる通り、得られた(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸は、特に(R)-1-フェニル--プロピルアミンをキラル塩基として用いた場合に、有利なエナンチオマー過剰又は先行技術(JP05679102)より有意に高いエナンチオマー過剰を示す。
【0188】
III.作業例(より大きい規模)
III.1
冷却管及び温度計を取り付けたフラスコに、2-プロパノール(12.5mL)及び水(0.85mL)を入れた。固体水酸化カリウム(0.671g、11.96mmol)を溶媒に溶かし、87.2%eeの(5R)-4-(5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル)-2-メチル安息香酸(1g、2.391mmol)を23℃(室温)で加えた。混合物を加熱して80℃とした。
【0189】
ラセミ化度を求めるために、50μLサンプルをそれぞれ1時間後、2時間後及び16時間後に採取した。各サンプルを次のように処理した。即ち、それをKHSO4溶液(1mL、2.3M)で反応停止し、酢酸エチルで2回抽出した(2mLで1回及び1mLで1回)。合わせた有機相を減圧下に濃縮した。残留物をオイルポンプ減圧下で乾燥させ、i-ヘキサン:エタノール1:1の混合物(1mL)に溶かした。
【0190】
得られた(R)-IOBAは、1時間後で84.8%、2時間後で84.5%、16時間後で64%のエナンチオマー過剰を有している。
【0191】
III.2
冷却管及び温度計を取り付けたフラスコに、2-プロパノール(6.67mL)を入れ、86.4%eeの(5R)-4-(5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル)-2-メチル安息香酸(1g、2.391mmol)を溶かした。水酸化ナトリウム(0.393g、9.83mmol)マイクロパールを40℃で加え、混合物を加熱還流することで、黄色懸濁液を得た。
【0192】
ラセミ化度を求めるために、50μLサンプルをそれぞれ2時間後、4時間後及び20時間後に採取した。各サンプルを、実施例1に記載の方法に従って処理した。
【0193】
得られた(R)-IOBAは、2時間後で62.4%、4時間後で35.0%、20時間後で31.8%のエナンチオマー過剰を有している。
【0194】
III.3
1mL円錐形バイアル中、>99%eeの(5R)-4-(5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル)-2-メチル安息香酸(50mg、0.120mmol)の2-プロパノール(299μL)中溶液を、水酸化カリウムの2-プロパノール溶液(20.38μL、0.359mmol)とともにインキュベートした。混合物を加熱して90℃として終夜経過させた。
【0195】
反応混合物の100μLサンプルを濃縮して固体とし、KHSO4水溶液(15%)2mLで希釈し、酢酸エチル1~2mLで抽出した。有機相を分離し、濃縮した。油状物を減圧下に乾燥させ、i-ヘキサン:エタノール1:1(1mL)に溶かした。この溶液から、250μLをi-ヘキサン:エタノール1:1(1mL)で希釈し、キラルLC-DADによって分析した。得られた(R)-IOBAは、56.47%のエナンチオマー過剰を有していた。
【0196】
III.4
1mL円錐形バイアル中、>99%eeの(R)-4-(5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4,5-ジヒドロイソオキサゾール-3-イル)-2-メチル安息香酸(50mg,0.120mmol)の2-プロパノール(299μL)中溶液を、水酸化セシウムの2-プロパノール溶液(66.8μL、0.359mmol)とともにインキュベートした。混合物を加熱して90℃として終夜経過させた。
【0197】
反応混合物の100μLサンプルを濃縮して固体とし、KHSO4水溶液(15%)2mLで希釈し、酢酸エチル1~2mLで抽出した。有機相を分離し、濃縮した。油状物を減圧下に乾燥させ、i-ヘキサン:エタノール1:1(1mL)に溶かした。この溶液から、250μLをi-ヘキサン:エタノール1:1(1mL)で希釈し、キラルLC-DADによって分析した。得られた(R)-IOBAは、27.76%のエナンチオマー過剰を有している。
【0198】
III.5
フラスコに冷却管及び温度計を取り付けた。フラスコに2-プロパノール(6.67mL)を入れ、粉末水酸化カリウム(0.671g、11.96mmol)を溶媒に溶かし、87.2%eeの(5R)-4-(5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル)-2-メチル安息香酸(1g、2.391mmol)を40℃で加えた。混合物を加熱還流させた。透明橙赤色溶液が形成された。しばらくしてから、黄色固体が沈殿した。懸濁液をさらに加熱還流した。2時間後、懸濁液の50μLサンプルを実施例5に記載の方法に従って後処理した。得られた(R)-IOBAは、0.8%のエナンチオマー過剰を有していた。
【0199】
実施例1~5からわかるように、得られた生成物に含まれる(R)-IOBAの過剰が小さくなっている。従って、出発混合物をラセミ化することで、(S)-IOBAのモル比が高くなると結論付けることができる。
【0200】
III.6
50mL三頸フラスコに、(5RS)-4-(5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸(2.323g、5.0mmol)及びシクロペンチルメチルエーテル(12.5mL)を入れた。反応混合物を23℃で攪拌した。得られた黄色溶液に、(S)-1-フェニルプロパン-1-アミン(0.363mL、2.50mmol)を加えたら、白色固体が沈殿し始めた。その懸濁液を攪拌しながら加熱して20分以内で80℃とし、さらに20分間その温度に維持した。加熱を停止し、2時間以内で懸濁液をゆっくり冷却して40℃とした。加熱浴を外し、懸濁液を室温で終夜攪拌した。
【0201】
懸濁液を濾過し(フリット番号4)、フィルターケーキをシクロペンチルメチルエーテル(6mL)で2回洗浄し、次に60℃で真空乾燥した。
【0202】
得られたアンモニウム塩を酢酸エチル(30mL)に懸濁させ、硫酸水素カリウム水溶液(15重量%、20mL)で洗浄し、有機相を分離した。水相を酢酸エチル(20mL)で抽出し、合わせた有機相をブライン(10mL)で洗浄し、MgSO4で脱水した。脱水剤を濾去し、溶媒を減圧下に濃縮した。最後に、残留物を高真空乾燥して、エナンチオマー過剰95%の(S)-IOBAを得た。
【0203】
収量0.91g(84%)。
【国際調査報告】