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特表2022-514331多糖類と両性イオン性ポリマーをベースにしたヒドロゲル組成物およびその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-10
(54)【発明の名称】多糖類と両性イオン性ポリマーをベースにしたヒドロゲル組成物およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/20 20060101AFI20220203BHJP
   A61L 15/22 20060101ALI20220203BHJP
   A61L 15/28 20060101ALI20220203BHJP
   A61L 15/60 20060101ALI20220203BHJP
   A61L 27/14 20060101ALI20220203BHJP
   A61L 27/52 20060101ALI20220203BHJP
   A61L 27/16 20060101ALI20220203BHJP
   A61L 27/26 20060101ALI20220203BHJP
   A61L 27/60 20060101ALI20220203BHJP
   A61L 15/32 20060101ALI20220203BHJP
   A61L 27/22 20060101ALI20220203BHJP
   A61L 15/24 20060101ALI20220203BHJP
   A61L 15/26 20060101ALI20220203BHJP
   A61L 27/18 20060101ALI20220203BHJP
   A61L 15/44 20060101ALI20220203BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20220203BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20220203BHJP
   A61L 15/40 20060101ALI20220203BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20220203BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220203BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20220203BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220203BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20220203BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20220203BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20220203BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20220203BHJP
   A61K 8/04 20060101ALI20220203BHJP
   C08L 101/02 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
A61L27/20
A61L15/22 100
A61L15/28 100
A61L15/60 100
A61L27/14
A61L27/52
A61L27/16
A61L27/26
A61L27/60
A61L15/32 100
A61L27/22
A61L15/24 100
A61L15/26 100
A61L27/18
A61L15/44 100
A61L27/54
A61L27/38 100
A61L15/40 100
A61K9/06
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/42
A61K8/81
A61K8/73
A61K8/04
C08L101/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535286
(86)(22)【出願日】2019-12-11
(85)【翻訳文提出日】2021-07-19
(86)【国際出願番号】 US2019065630
(87)【国際公開番号】W WO2020131513
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】62/782,213
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521265988
【氏名又は名称】タップルート メディカル テクノロジーズ, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】シンクレア, アンドリュー ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】フジハラ, ティモシー ジェイムズ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C083
4J002
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA94
4C076AA95
4C076BB31
4C076BB32
4C076CC18
4C076CC19
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4C076EE41P
4C076EE49P
4C076FF31
4C076FF35
4C081AA02
4C081AA12
4C081AA14
4C081AB19
4C081AB36
4C081BA12
4C081BA13
4C081BB01
4C081BB06
4C081CA051
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4C081CA081
4C081CA101
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4C081CA181
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4C081CC02
4C081CD011
4C081CD021
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4C083AD041
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4C083AD212
4C083AD241
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4C083AD251
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4C083AD261
4C083AD262
4C083AD301
4C083AD302
4C083AD321
4C083AD322
4C083AD351
4C083AD352
4C083BB35
4C083CC02
4C083CC03
4C083DD22
4C083DD41
4C083EE12
4C083EE13
4J002AA00W
4J002AB00X
4J002AB01X
4J002AB04X
4J002AB05X
4J002BG04W
4J002BG05W
4J002BG07W
4J002BG131
4J002GB01
4J002GB04
(57)【要約】
多糖類ベースのコンポーネントとポリ両性イオン性コンポーネントの両方を含むヒドロゲル組成物であって、前記多糖類ベースのコンポーネントとポリ両性イオン性コンポーネントとが、組み合わされたネットワークが材料特性を示すようなやり方で、互いに架橋または混ぜ合わされている、ヒドロゲル組成物;そのような組成物の製造方法;および種々の臨床および生物医学的用途のための前記組成物の使用方法が提供される。前記ヒドロゲル組成物は、複数のポリ両性イオン性コンポーネントと、複数の多糖類ベースのコンポーネントを含有していてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のポリ両性イオン性コンポーネント(Z)と多糖類ベースのコンポーネント(C)とを含むヒドロゲル組成物であって、1つまたは複数のコンポーネントZおよびCが、1つまたは複数の種類の化学的もしくは物理的会合または結合によって連結されている、ヒドロゲル組成物。
【請求項2】
下記構造:
【化6】

(式中、Cは、多糖類コンポーネントを表し;
は、前記多糖類コンポーネントの部分であり、多糖類または多糖類塩の1つまたは複数の構成単位を天然または天然に存在する形態で含むか、またはボイドであり;
は、前記多糖類コンポーネントの部分であり、1つまたは複数の化学的もしくは構造的修飾によって修飾された多糖類または多糖類塩の1つまたは複数の構成単位を含み、連結コンポーネントXを介してポリ両性イオン性コンポーネントZに連結されており;
mは、代表する多糖類ベースのコンポーネントC(コンポーネントCは、コンポーネントCあたりm回繰り返す、構成単位CおよびCのランダムまたは構造的な組み合わせであり得る)の分子量を示す、1~約10,000の整数であり;
は、多糖類ベースのコンポーネントをポリ両性イオン性コンポーネントに連結する、化学的もしくは物理的会合または結合であり;
は、ポリ両性イオン性コンポーネントを表し;
は、前記ポリ両性イオン性コンポーネントの部分であり、ポリマーバックボーンに沿って存在してもよく、1つまたは複数のポリマー鎖末端に存在してもよく、またはポリマー側鎖中に組み込まれていてもよく、両性イオン性ポリマーまたはオリゴマーの1つまたは複数の構成単位を含み、連結コンポーネントXを介して多糖類コンポーネントCに連結されており;
は、前記ポリ両性イオン性コンポーネントの部分であり、両性イオン性ポリマーまたはオリゴマーの1つまたは複数の構成単位を含み;
nは、代表するポリ両性イオン性コンポーネントZ(コンポーネントZは、コンポーネントZあたりn回繰り返す、構成単位ZおよびZのランダムまたは構造的な組み合わせであり得る)の分子量または重合度を示す、1~約10,000の整数であり;
およびRは、ポリ両性イオン性のネイチャー(Z)、多糖類ベースのネイチャー(C)、または任意のその他のネイチャー(N)のうちのいずれかの、さらなるコンポーネントであり、連結コンポーネントXまたは連結コンポーネントXを介して、任意の代表するCまたはZに連結されていてもよいか;またはボイドである)
によって示される、請求項1の組成物。
【請求項3】
前記ポリ両性イオン性コンポーネントが、ポリ(カルボキシベタイン)、ポリ(ホスホリルコリン)、ポリ(スルホベタイン)、ポリ(ホスホベタイン)、ポリ(N-オキシド)、またはポリ(エクトイン)(それらの官能基化された誘導体、コポリマー、または薬学的に許容される塩を含む)を実質的に含む、請求項1の組成物。
【請求項4】
前記ポリ両性イオン性コンポーネントが、ポリ(カルボキシベタイン)(その官能基化またはエステル化誘導体、コポリマー、または薬学的に許容される塩を含む)を実質的に含む、請求項1の組成物。
【請求項5】
前記ポリ両性イオン性コンポーネントが、アミノ酸またはアミノ酸誘導体をベースにしたポリマーまたはコポリマー(ペプチド、ペプトイド、またはアミノ酸モノマーのアクリロイル誘導体をベースにしたポリマーを含む)を含む、請求項1の組成物。
【請求項6】
前記ポリ両性イオン性コンポーネントが、カチオン性繰り返し単位およびアニオン性繰り返し単位を有する実質的に電気的に中性なコポリマー(混合電荷コポリマー)、または同等の機能(すなわち、親水性挙動および高い生体適合性)を有するその他のポリマーを含む、請求項1の組成物。
【請求項7】
前記ポリ両性イオン性コンポーネントが、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(アクリルアミド)(PAM)、ポリメタクリレート(PMA)、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(メタクリル酸)(PMAA)、ポリ(2,3-ジヒドロキシプロピルメタクリレート)(PDHPM)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)、ポリ(オキサゾリン)(POZ)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)またはそれらの誘導体の親水性繰り返し単位に加えて、前記言及された両性イオン性繰り返し単位のいずれかを含有する、コポリマーまたは2つの混合したポリマーの組み合わせを含む、請求項1の組成物。
【請求項8】
前記ポリ両性イオン性コンポーネントの水和が、水分子との静電誘導相互作用および/または水分子との水素結合会合から生じる、請求項1の組成物。
【請求項9】
前記R、R、X、またはNコンポーネントが、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(アクリルアミド)(PAM)、ポリメタクリレート(PMA)、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(メタクリル酸)(PMAA)、ポリ(2,3-ジヒドロキシプロピルメタクリレート)(PDHPM)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)、ポリ(オキサゾリン)(POZ)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、またはそれらの誘導体の親水性繰り返し単位を実質的にベースにした、ポリマー、コポリマー、またはオリゴマーを実質的に含む、請求項1の組成物。
【請求項10】
前記多糖類コンポーネントが、天然または化学修飾された、寒天、アルギン酸塩、カラギーナンガム、セルロース、キトサン、キチン、シクロデキストリン、デキストラン、ジェランガム、グリコーゲン、グリコサミノグリカン、カラヤガム、イヌリン、ペクチン、ポリデキストロース、キサンタンガム、または任意のその他のデンプン、ガム、もしくは多糖類(官能基化された誘導体、デキストリン化デンプン、加水分解デンプン、酸化デンプン、アルキル化デンプン、ヒドロキシアルキル化デンプン、アセチル化デンプン、分画化デンプン、および物理的に修飾されたデンプン、ならびにそれらの任意の薬学的に許容される塩を含む)をベースにしている、請求項1の組成物。
【請求項11】
前記多糖類コンポーネントが、グリコサミノグリカンをベースにしている、請求項1の組成物。
【請求項12】
前記多糖類コンポーネントが、ヒアルロン酸(HA)または任意のその薬学的に許容されるヒアルロン酸塩(種々の程度の化学的修飾を有するか、または有さない)をベースにしている、請求項1の組成物。
【請求項13】
前記ポリ両性イオン性コンポーネントの部分が、前記ポリマーバックボーンに沿って存在するか、前記ポリマー末端に存在するか、または前記ポリ両性イオン性コンポーネントもしくはそのコポリマーのポリマー側鎖に組み込まれている化学的官能性を介して、多糖類ベースのコンポーネントに化学架橋されている、請求項1の組成物。
【請求項14】
前記多糖類コンポーネントが、共有架橋反応に関与することが可能な化学基で修飾されている、請求項1の組成物。
【請求項15】
前記多糖類コンポーネントが、ラジカル媒介重合反応に関与することが可能な化学基(例えば、メタクリレート基、アクリレート基、メタクリルアミド基、またはアクリルアミド基)で修飾されている、請求項1の組成物。
【請求項16】
前記多糖類コンポーネントが、「クリック」タイプの反応(例えば、アルキン-アジドまたはチオール-エン反応)に関与することが可能な化学基で修飾されている、請求項1の組成物。
【請求項17】
前記多糖類コンポーネントが、二重架橋されている、請求項1の組成物。
【請求項18】
前記多糖類またはポリ両性イオン性コンポーネントが、まず、他の多糖類コンポーネントまたはポリ両性イオン性コンポーネントと架橋され、次いで、ポリ両性イオン性コンポーネント、多糖類コンポーネント、またはその他のコンポーネントとさらに架橋されている、請求項1の組成物。
【請求項19】
前記ヒドロゲル組成物が有する、ポリ両性イオン性コンポーネントと多糖類ベースのコンポーネントの重量比が、約0.001~約1000である、請求項1の組成物。
【請求項20】
前記ヒドロゲル組成物が有する、ポリ両性イオン性コンポーネントと多糖類ベースのコンポーネントの重量比が、約0.03~約100である、請求項1の組成物。
【請求項21】
前記ヒドロゲル組成物が有する、ポリ両性イオン性コンポーネントと多糖類ベースのコンポーネントの重量比が、約0.1~約10である、請求項1の組成物。
【請求項22】
前記ヒドロゲル組成物が有する、所定の水和度における合計ポリマー濃度が、約10mg/mL~300mg/mLである、請求項1の組成物。
【請求項23】
前記ヒドロゲル組成物が有する、所定の水和度における合計ポリマー濃度が、約20mg/mL~100mg/mLである、請求項1の組成物。
【請求項24】
前記ヒドロゲル組成物が、1つまたは複数の追加の薬剤(例えば、治療用、保存料用、材料用、または化粧用の有用性をもたらす薬物または添加剤)をさらに含んでいてもよい、請求項1の組成物。
【請求項25】
前記ヒドロゲル組成物に、美容的または治療的有用性を有する1つまたは複数の添加剤(例えば、局所麻酔薬、ペプチド、核酸、タンパク質、その他の生体分子、ナノ粒子、マイクロ粒子、ミセル、リポソーム、ポリマーソーム、薬物、薬物前駆体、またはその他の薬理学的活性種もしくは生化学的活性種)が補われているか、または混ぜられていてもよい、請求項1の組成物。
【請求項26】
前記ヒドロゲル組成物が、粘度調節または局所麻酔送達促進を含む目的のために、前記ネットワークの架橋バルクと架橋していないか、またはその他の方法で化学的に結合していない、追加のポリ両性イオン性コンポーネントおよび/または多糖類コンポーネントを含む、請求項1の組成物。
【請求項27】
前記ヒドロゲル組成物が、水和形態または乾燥形態(沈殿または凍結乾燥によって得られる形態を含む)のいずれかで提供される、請求項1の組成物。
【請求項28】
前記ヒドロゲル組成物が、失われた組織もしくは損傷を受けた組織の補強または置換に適した、または別の美容的もしくは再生的機能の付与に適した、注入可能な材料を含む、請求項1の組成物。
【請求項29】
前記ヒドロゲル組成物が、細胞もしくは組織培養スキャフォールドとしての使用のために、細胞保存方法のために、細胞貯蔵方法のために、注入可能な細胞療法製剤のコンポーネントのために、または組織工学もしくは細胞ベース療法の別の態様のために適した、材料または添加剤を含む、請求項1の組成物。
【請求項30】
前記ヒドロゲル組成物が、薬物デポーの形成、または前記薬物もしくは生体分子のプログラム化された放出のためのその他の保護もしくは安定化環境の形成に適する、薬物もしくは生体分子を含有する注入可能材料製剤を含む、請求項1の組成物。
【請求項31】
前記ヒドロゲル組成物が、同じまたは異なる組成物の連続ヒドロゲルまたは重合相に加えて、上述のミクロンスケールのヒドロゲル(マイクロゲル)を含んでいてもよい、請求項1の組成物。
【請求項32】
前記組成物が、部分的または完全に、元の前記組成物を含むものよりも低分子量の種に分解されることができ;かつ
前記組成物が、前記組成物の前記多糖類ベースのコンポーネントの天然起源形態のみからなる参照ヒドロゲル材料よりも、遅延した、または低下した分解速度を示す、
請求項1の組成物。
【請求項33】
前記組成物の部分的または完全な分解が、ヒアルウロニダーゼのクラス酵素によって触媒されることができ、かつ前記組成物の前記多糖類ベースのコンポーネントが、ヒアルロン酸由来である、請求項1の組成物。
【請求項34】
(a)反応前のコンポーネントを溶液または混合物中に溶解または懸濁し、反応前溶液を形成するステップであって、前記反応前のコンポーネントが、
両性イオン性モノマーまたはポリマー(官能基化またはエステル化誘導体を含む)、コポリマー、または荷電モノマーまたはポリマーの実質的に電気的に中性な組み合わせ;および
化学的に修飾された多糖類もしくは天然多糖類、または架橋多糖類ベースのネットワーク(ヒアルロン酸をベースしたものを含む)
を含む、ステップ;および
(b)前記反応前溶液または混合物を、前記所望の組成物を形成する反応を開始させるために適した条件に曝露するステップ
を含む、請求項1のヒドロゲル組成物を製造する方法。
【請求項35】
前記反応前のコンポーネントが、(a)水性反応緩衝液のpH、浸透圧、またはその他の特性を調節するための分子または塩、(b)重合反応速度またはキネティクスを調節するための分子または塩、および(c)適切な開始条件下でフリーラジカルを生じさせることができる分子、からなる群から選択される、少なくとも1つのコンポーネントをさらに含む、請求項34のヒドロゲル組成物の製造方法。
【請求項36】
前記反応前のコンポーネントが、(a)水性反応緩衝液のpH、浸透圧、またはその他の特性を調節するための分子または塩、(b)重合反応速度またはキネティクスを調節するための分子または塩、および(c)適切な開始条件下でフリーラジカルを生じさせることができる分子、からなる群から選択される、少なくとも2つのコンポーネントをさらに含む、請求項34のヒドロゲル組成物の製造方法。
【請求項37】
前記反応前のコンポーネントが、(a)水性反応緩衝液のpH、浸透圧、またはその他の特性を調節するための分子または塩、(b)重合反応速度またはキネティクスを調節するための分子または塩、および(c)適切な開始条件下でフリーラジカルを生じさせることができる分子、のそれぞれをさらに含む、請求項34のヒドロゲル組成物の製造方法。
【請求項38】
前記反応前溶液または任意の中間体もしくは最終製剤の、pH、塩分濃度、溶媒、および緩衝化種のうちの任意の1つまたは複数が変更される、請求項34のヒドロゲル組成物の製造方法。
【請求項39】
前記反応後のヒドロゲル組成物を、約1時間~2週間の期間、所望のpH、塩分濃度、溶媒含有量、および緩衝化種含有量の水溶液中で平衡化し、ヒドロゲルを平衡状態に膨潤させる、請求項34のヒドロゲル組成物の製造方法。
【請求項40】
前記組成物または組成物コンポーネントを、約1時間~2週間の期間、所望のpH、塩分濃度、溶媒含有量、および緩衝化種の任意の溶液または一連の溶液に対して透析し、任意の未反応または小分子コンポーネントを拡散または透析させてヒドロゲル組成物から除去する、請求項34のヒドロゲル組成物の製造方法。
【請求項41】
1つまたは複数の合成または加工ステップが、無菌もしくは無菌性条件下で、または無菌の試薬、ツール、容器、もしくは緩衝剤を使用して行われる、請求項34のヒドロゲル組成物の製造方法。
【請求項42】
前記組成物が、任意の合成もしくは製造加工ステップの一部として、凍結乾燥される、請求項34のヒドロゲル組成物の製造方法。
【請求項43】
前記組成物が、任意の合成もしくは製造加工ステップの一部として、溶媒またはオイル中に沈殿される、請求項34のヒドロゲル組成物の製造方法。
【請求項44】
前記組成物が、任意の合成もしくは製造加工ステップの一部として、濃縮される、請求項34のヒドロゲル組成物の製造方法。
【請求項45】
前記組成物が、製剤化もしくはパッケージングする前、している間、またはした後に、滅菌される、請求項34のヒドロゲル組成物の製造方法。
【請求項46】
前記パッケージングされたヒドロゲル組成物が、凍結乾燥した、沈殿させた、または乾燥させた粉末もしくはマトリックスの形態を取っていてもよい、請求項34のヒドロゲル組成物の製造方法。
【請求項47】
前記パッケージングされたヒドロゲル組成物が、平衡含水量を下回る、平衡含水量と等しい、または平衡含水量を上回る含水量の、水和した高分子マトリックスの形態を取っていてもよい、請求項34のヒドロゲル組成物の製造方法。
【請求項48】
ヒトまたは動物対象における、柔組織の補強、支持、増強、または置換方法であって、
ヒドロゲル組成物を対象に注入することを含み、ここで、前記ヒドロゲル組成物が、水相および巨大分子ネットワークを含み、前記巨大分子ネットワークが、
ポリ両性イオン性コンポーネント;
多糖類ベースのコンポーネント;および前記ポリ両性イオン性と多糖類コンポーネントを連結する架橋コンポーネント
を含む、方法。
【請求項49】
前記注入された組成物が、対象に対して、美的、美容的、または再建的利益をもたらすことを意図する、請求項45の方法。
【請求項50】
治療的もしくは美容的有用性を有する薬物またはその他の添加剤を対象に送達する方法であって、
製剤を対象に導入することを含み、前記製剤が、
請求項1のヒドロゲル組成物;ならびに
局所麻酔薬、ペプチド、タンパク質、抗体、核酸、生体分子、ナノ粒子、マイクロ粒子、ミセル、リポソーム、ポリマーソーム、薬物前駆体、プロドラッグ、細胞ベースの治療剤、またはその他を含む群から選択される、薬物、添加剤、薬物の組み合わせ、薬理学的活性種、または生化学的活性種
を含む、方法。
【請求項51】
前記組成物が、注入される、請求項47の方法。
【請求項52】
細胞、組織、または器官を培養する方法であって、
請求項1のヒドロゲル組成物を含む、細胞もしくは組織培養スキャフォールド、マトリックス、または培地、および
in vitro培養が要求される細胞、組織、または器官の任意の組み合わせ、の調製
を含む、方法。
【請求項53】
細胞、組織、または器官を保管、保存、または運搬する方法であって、請求項1のヒドロゲル組成物を、任意の細胞、組織、もしくは器官と会合させる、または組み合わせることを含む、方法。
【請求項54】
人体の任意の組織、器官、もしくはその他の部分を、外科的に修復、保護、保存、または保護する方法であって、請求項1のヒドロゲル組成物を、外科的手順の一部として、外科的介入を必要とする身体部位に付与することを含む、方法。
【請求項55】
美的もしくは再建的な手順または処置のための、注入可能な皮膚フィラーまたは他の組織フィラーの製造における、請求項1のヒドロゲル組成物の使用。
【請求項56】
医学的処置のための治療剤、細胞、生物学的薬剤、またはその他の化学的種もしくは生物学的種を送達するための、注入可能な組成物の製造における、請求項1のヒドロゲル組成物の使用。
【請求項57】
細胞ベースの治療処置のための細胞または組織培養製剤の製造における、請求項1のヒドロゲル組成物の使用。
【請求項58】
がんのための免疫療法処置剤の製造における、請求項1のヒドロゲル組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2018年12月19日に出願された、米国仮出願番号62/782,213(代理人管理番号54671-703.101)(参照により、その全内容が本明細書に援用される)の利益を主張する。
【0002】
政府のライセンス権に関する陳述
本発明は、米国科学財団によって与えられたSBIR(中小企業技術革新制度)1747283の下で、政府の援助を受けてなされたものである。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
本出願は、一般に、生体適合性ヒドロゲル組成物に関し、より具体的には、臨床および生物医学製剤に有用な、ポリ両性イオン性多糖類ハイブリッドヒドロゲル組成物、ならびにその合成方法および使用方法に関する。ヒドロゲルは、天然組織と多くの性質が共通する、高度に水和したポリマーネットワークであり、美的、外科的、および再生医療的手順において、近年ますます一般的になっている。しかしながら、広範な研究および開発にもかかわらず、臨床的なインプラントまたは注入に適した、安全で機能的かつ生体適合性のポリマー材料およびヒドロゲルの開発は、難題であり続けている。現在、ヒドロゲルの最も普及している臨床適用の1つは、柔組織または皮膚フィラーとしての適用である。
【0004】
ヒドロゲルは、ねらいとする機能や意図する用途に応じて、様々な系統に分類することができる。本発明に関連するヒドロゲルの複数のクラス間の相異の1つは、1つまたは複数の生理学的、生化学的、または環境的なメカニズムによって、分解、再吸収、または代謝される能力である。これらのメカニズムには、エステル加水分解、ジスルフィド結合の切断、および酵素的またはタンパク質分解的な分解が含まれ得る。ヒドロゲルのクラス間の別の一般的な相異は、粘弾性または剪断依存的材料特性である。事実上、これらの粘弾性特性によって、ヒドロゲル組成物が、注射針を通して注入できるか否か、または表面もしくは組織に塗布できるか否かが決まるが、特に注入可能性は、薬物デポー、生物学的製剤、美容的または再建的手順を含む、多くの非侵襲的臨床用途のために望ましい。ヒドロゲルのクラス間の3つめの一般的な相異は、ヒドロゲルの合成または生物起源であり、起源は、典型的には、ヒドロゲルの巨大分子またはポリマーネットワーク構造に関係する。周知の合成ヒドロゲルとしては、例えば、架橋されたポリアクリルアミド、ポリメタクリレート、およびポリエチレングリコールがあげられる。周知の生物由来または天然に存在するヒドロゲルとしては、例えば、化学的または物理的に架橋された多糖類、例えばヒアルロン酸(一般的に、ヒアルロン酸ナトリウム塩形態で用いられる)、デキストラン、およびアルギン酸塩があげられ;タンパク質由来またはアミノ酸由来のヒドロゲル、例えばゼラチンおよびコラーゲンも一般的である。
【0005】
皮膚フィラー製剤、ならびにその他の臨床および生物医学的用途において、ヒアルロン酸(HA)は、もっとも一般的な成分の1つである。HAは、天然に存在する、生体適合性が高い水溶性の多糖類であり、具体的に言えばグリコサミノグリカンである。HAは、細胞外マトリックスの主要な成分であり、ヒトおよびその他の生物において、広く分布し、かつ豊富に存在している。成人には、平均して、約15グラムの内在性HAが存在する。ヒアルウロニダーゼとして知られる種類の酵素によって、人体は、内在性HAを一日あたり約5グラム分解し、再合成する。ヒアルウロニダーゼは、HAバックボーンを切断し、その高分子量(1000+kDa、言い換えれば1+MDa)をオリゴ糖まで減少させ、最終的にはHAを完全に代謝することになる。
【0006】
HAをベースにした多くの臨床製剤は、急速に分解しないように安定化し、かつ粘弾性特性を調節するために、ある度合いの化学的架橋を含んでいるという点で、内在性HAと異なる。架橋されたHA製剤を製造するための最も一般的な方法は、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(1,4-butandioldiglycidyl ether)(BDDE)による方法である。BDDE架橋HA皮膚フィラー組成物は、典型的には、3~6か月の寿命を有し;架橋は、酵素的な分解を遅くする、または遅らせるが、分解を完全には阻害しない。最近のHAベースの皮膚フィラーが成功している鍵となる理由は、安全性の履歴が素晴らしいことである。局所的なヒアルウロニダーゼの付与は、注入後に、必要に応じて、非侵襲的なやり方で、ゲルを急速に分解するためにも用いることができる。この酵素的な可逆性は、多くの適用において望ましいように見えるが、現在のHAベースのヒドロゲルの重大な技術的短所、すなわち乏しい生理学的寿命につながっている。
【0007】
合成起源のヒドロゲルは、種々の臨床および生物医学的用途においても用いられている。例えば、メチレンビスアクリルアミド(MBAA)または類似のもので架橋された合成ポリアクリルアミドゲルは、いくつかの当局の所管区域内において、皮膚フィラーとして承認され、用いられており、ポリエチレングリコール(PEG)ベースのヒドロゲルは、組織工学研究において一般的である。これらの合成ヒドロゲルは、典型的には生物分解性ではなく、人体内に入れられた場合、外科的介入がなければ典型的には永久的だと考えられている。批判的には、このクラスの多くのヒドロゲルは、炎症および免疫原性に関係する、より高頻度で、より重篤な急性および遅延性の有害作用を引き起こすことが示されている。にもかかわらず、その免疫原性によって人気は近年急速に下がってはいるが、その長い寿命は、多くの患者から望ましい特性だと考えられている。一般的に、合成ヒドロゲルは、生物起源のゲル(例えば、単離および精製をしなければならないHA)と比較して、典型的には、臨床用に不可欠な高純度での製造のための費用対効果がより高い。
【0008】
全ての天然および合成ヒドロゲル化学の中で、ポリ両性イオン性ヒドロゲルが、その類を見ない生体適合性の属性により、近年特に注目されている。これらのポリマーは、ポリマー鎖に沿って、カチオン性基とアニオン性基の繰り返しペアを含んでおり、細胞膜を構成するリン脂質や、多くのタンパク質の混合電荷表面によく似ている。両性イオン性ポリマーであるポリカルボキシベタイン(ポリCB)から形成されるヒドロゲルは、マウスにインプラントされた場合に、異物反応を阻害すること、およびコラーゲン性カプセルの形成に抵抗性を示すことが報告されており、これは、全ての生体材料の中で類を見ない特性である。加えて、ポリCBヒドロゲルに封入された幹細胞は、治療的多分化能を保ち、非特異的な分化を回避することができ、このことが、さらに、この合成材料の特有の高い生体適合性の支えとなっている。
【0009】
皮膚フィラーとしてのHAベースの注入可能なヒドロゲルが普及しており、かつ研究された、非常に多様な、合成および他の天然由来材料の代替物およびに添加剤があるにもかかわらず、高い安全性と長い生理学的寿命とを兼ね備える、注入可能かつ支持的なヒドロゲルの必要性が存在する。本発明は、この必要性を満足しようと努め、かつさらなる関連する利点を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、多糖類ベースのコンポーネントとポリ両性イオン性コンポーネントの両方を含むヒドロゲル組成物であって、前記多糖類ベースのコンポーネントと前記ポリ両性イオン性コンポーネントが、得られる組み合わされたネットワークが生物医学的用途のために望ましい材料特性または臨床的有用性を示すようなやり方で、互いに架橋または混ぜ合わされている、ヒドロゲル組成物を提供する。
【0011】
一態様において、本発明は、下記構造:
【化1】

(式中、
は、多糖類コンポーネントを表し;
は、前記多糖類コンポーネントの部分であり、多糖類または多糖類塩の1つまたは複数の構成単位を天然または天然に存在する形態で含むか、またはボイドであり;
は、前記多糖類コンポーネントの部分であり、1つまたは複数の化学的もしくは構造的修飾によって修飾された多糖類または多糖類塩の1つまたは複数の構成単位を含み、連結コンポーネントXを介してポリ両性イオン性コンポーネントZに連結されており;
mは、代表する多糖類ベースのコンポーネントC(コンポーネントCは、構成単位CおよびCのランダムまたは構造的な組み合わせであり得る)の分子量を示す、1~約10,000の整数であり;
は、多糖類ベースのコンポーネントをポリ両性イオン性コンポーネントに連結する、化学的もしくは物理的会合または結合であり;
は、ポリ両性イオン性コンポーネントを表し;
は、前記ポリ両性イオン性コンポーネントの部分であり、ポリマーバックボーンに沿って存在してもよく、1つまたは複数のポリマー鎖末端に存在してもよく、またはポリマー側鎖中に組み込まれていてもよく、両性イオン性ポリマーまたはオリゴマーの1つまたは複数の構成単位を含み、連結コンポーネントXを介して多糖類コンポーネントCに連結されており;
は、前記ポリ両性イオン性コンポーネントの部分であり、両性イオン性ポリマーまたはオリゴマーの1つまたは複数の構成単位を含み;
nは、代表するポリ両性イオン性コンポーネントZ(コンポーネントZは、構成単位Zと構成単位Zのランダムまたは構造的な組み合わせであり得る)の分子量または重合度を示す、1~約10,000の整数であり;
およびRは、ポリ両性イオン性のネイチャー(nature)(Z)、多糖類ベースのネイチャー(C)、またはその他のネイチャー(N)のうちのいずれかの、さらなるコンポーネントであり、連結コンポーネントXまたは連結コンポーネントXを介して、任意の代表するCまたはZに連結されていてもよいか;またはボイドである)
によって示される、複数のポリ両性イオン性コンポーネント(Z)と多糖類ベースのコンポーネント(C)とを含むヒドロゲル組成物であって、1つまたは複数のコンポーネントZとコンポーネントCが、1つまたは複数の種類の化学的もしくは物理的会合または結合によって連結されている、ヒドロゲル組成物を提供する。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記ポリ両性イオン性コンポーネントは、ポリ(カルボキシベタイン)、ポリ(ホスホコリン)、ポリ(スルホベタイン)、ポリ(ホスホベタイン)、ポリ(トリメチルアミン-N-オキシド)、またはポリ(エクトイン)(官能基化された誘導体、コポリマー、または医薬的に許容される塩を含む)をベースにしている。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記ポリ両性イオン性コンポーネントは、カチオン性繰り返し単位およびアニオン性繰り返し単位を有する実質的に電気的に中性なコポリマー、または混合電荷コポリマー(混合電荷ペプチドを含む)をベースにしている。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記多糖類コンポーネントは、グリコサミノグリカンであり、より具体的には、ヒアルロン酸(HA)または任意のその薬学的に許容されるヒアルロン酸塩をベースにしており、ヒドロゲル組成物の合成またはその他の機能のために必要であり得る追加の化学的官能性を付与するための、種々の程度の化学的修飾を有するか、または有さない。
【0015】
いくつかの実施形態において、前記組成物は、1つまたは複数の活性薬剤、例えば、治療用、保存料用、材料用、もしくは化粧用の有用性を付与する薬物、または添加剤をさらに含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記ポリ両性イオン性の多糖類ネットワーク構造には、美容的または治療的有用性を有する1つまたは複数の添加剤(例えば、局所麻酔薬、ペプチド、核酸、タンパク質、その他の生体分子、ナノ粒子(単数または複数)、マイクロ粒子(単数または複数)、ミセル(単数または複数)、リポソーム(単数または複数)、ポリマーソーム(単数または複数)、薬物(単数または複数)、薬物前駆体(単数または複数)、またはその他の薬理学的活性種もしくは生化学的活性種)が補われているか、または混ぜられていてもよい。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記組成物は、粘度調節または局所麻酔送達促進を含む目的のために、前記ネットワークの架橋バルクと架橋していないか、またはその他の方法で化学的に結合していない、ポリ両性イオン性および/または多糖類コンポーネントを含んでいてもよい。
【0018】
一実施形態において、失われた組織もしくは損傷を受けた組織の補強または置換に適した、または別の美容的もしくは再生的機能の付与に適した、注入可能な支持的材料の形態のヒドロゲル組成物を含む製品が提供される。
【0019】
例示的な実施形態において、前記提供される組成物は、美容的または再生的利益のための、患者における柔組織の補強、支持、増強、または置換のために非常に適しており、かつ、ヒアルウロニダーゼのクラスの酵素による早すぎる分解に対して安定化されているが、局所的に注入された前記と同じクラスの酵素による可逆性は維持している。
【0020】
別の実施形態において、ヒドロゲル組成物を、薬物もしくは生体分子を含有する注入可能材料製剤の形態で含む製品であって、前記薬物もしくは生体分子が、薬物デポーの形成、または前記薬物もしくは生体分子のプログラム化された放出のためのその他の保護もしくは安定化環境の形成のための薬物もしくは生体分子である、製品が提供される。
【0021】
別の実施形態において、ex vivo細胞培養に適した細胞もしくは組織培養スキャフォールド、注入可能な細胞療法製剤、または組織工学もしくは細胞ベース療法のその他の態様を形成する、水和または凍結乾燥形態のいずれかの形態のヒドロゲル組成物を含む製品が提供される。
【0022】
前記組成物は、種々のネットワーク分枝ジオメトリー、流体力学的サイズ、および分子量を有する、複数のポリ両性イオン性コンポーネントを含んでいてもよく、前記ポリ両性イオン性コンポーネントは、それら自身と化学架橋されていても、および/または物理的に絡まり合っていてもよく、またはそれらの自身と前記多糖類コンポーネントの間で化学架橋されていても、および/または物理的に絡まり合っていてもよい。
【0023】
前記組成物は、種々のネットワーク分枝ジオメトリー、流体力学的サイズ、および分子量を有する、複数の多糖類コンポーネントを含んでいてもよく、前記多糖類コンポーネントは、それら自身と化学架橋されていても、および/または物理的に絡まり合っていてもよく、またはそれら自身と前記ポリ両性イオン性コンポーネントの間で化学架橋されていても、および/または物理的に絡まり合っていてもよい。
【0024】
別の態様において、このような組成物の合成方法および使用方法が提供され、それらは、臨床または生物医学的用途のために望ましい特性を有する。
【0025】
一態様において、前記組成物は、ポリ両性イオン性ベースのコンポーネントと多糖類ベースのコンポーネントの重量比が、約0.01~約1000である。例えば、ポリ両性イオン性コンポーネントと多糖類コンポーネントの重量比は、約1:100、1:10、1:1、5:1、10:1、100:1、500:1、または1000:1であってもよい。
【0026】
いくつかの実施形態において、前記組成物は、合計ポリマー濃度が、最終製品中、設計された水和度において、約10mg/mL~300mg/mLである。例えば、前記組成物中の合計ポリマー濃度は、およそ15mg/mL、25mg/mL、75mg/mL、100mg/mL、または250mg/mLであり得る。
【0027】
一実施形態において、前記組成物は、ポリ両性イオン性コンポーネントの濃度が約20mg/mLであり、多糖類ベースのコンポーネントの濃度が約10mg/mLである。
【0028】
別の実施形態において、前記組成物は、ポリ両性イオン性コンポーネントの濃度が約40mg/mLであり、多糖類ベースのコンポーネントの濃度が約10mg/mLである。
【0029】
別の実施形態において、前記組成物は、ポリ両性イオン性コンポーネントの濃度、約400mg/mLであり、多糖類ベースのコンポーネントの濃度が約15mg/mLである。
【0030】
いくつかの実施形態において、前記ポリ両性イオン性コンポーネントの部分は、前記多糖類コンポーネントの部分と化学架橋されており、前記多糖類コンポーネントは、あらかじめ、光開始フリーラジカル媒介重合反応によって、メタクリレート基、アクリレート基、メタクリルアミド基、またはアクリルアミド基などの重合可能なペンダント部分で修飾されている。
【0031】
いくつかの実施形態において、前記組成物は、2段階架橋反応によって形成され、前記多糖類コンポーネントの一部または全部を、まず修飾、官能基化、および/または架橋し、その後、第2の合成ステップにおいて、前記ポリ両性イオン性コンポーネントを、グラフトするか、化合させるか、または付着させる。
【0032】
いくつかの実施形態において、全てのコンポーネントは、反応前溶液に、部分的または完全に溶解しており、前記反応前溶液は、両性イオン性モノマーまたはポリマー、修飾または天然多糖類(例えば、ヒアルロン酸をベースにしたもの)、架橋された多糖類、光活性フリーラジカル開始分子、およびその他の添加剤を含んでいてもよい。この溶液は、真空下で脱気するか、または窒素などの不活性ガスでパージし、紫外線または可視光線放射に曝露して、所望の組成物を形成する反応を開始させてもよい。この反応前溶液のpH、塩分濃度、および緩衝化種は、利用可能な多数の選択肢から選択し得る。
【0033】
いくつかの実施形態において、前記反応後のヒドロゲル産物は、所望のpH、塩分濃度、および緩衝化種含有量の水溶液中で、24時間~2週間、または2週間を超える期間、平衡化または透析される。典型的には、ヒドロゲルの膨潤を促進し、かつあらゆる未反応または望ましくない不純物の拡散または透析を促進して、それらをヒドロゲル組成物から除去するために、この平衡化溶液は、1日に1回またはそれを超える回数、新しいものに交換する。
【0034】
いくつかの実施形態において、前記反応後のヒドロゲル産物は、重合の後、透析もしくは精製ステップの前または後に、水和または乾燥条件のいずれかの条件で、前記バルクヒドロゲルをより小さい単位に粉砕、製粉、押出し、ミンス、切断、ペレット化、分散、ホモジナイズ、または剪断するための任意の加工方法を使用して、より小さいヒドロゲルまたはマイクロゲルに加工する。
【0035】
いくつかの実施形態において、前記組成物は、重合反応の間に(例えば、マイクロエマルション重合などのプロセスにおいて)最終的なサイズもしくはそれに近いサイズで生成されたマイクロゲルを含むか、もしくは含有してもよく、または1つもしくはそれを超えるバルクヒドロゲル組成物から誘導し、重合後に任意の加工ステップを使用して最終的な寸法に分級したマイクロゲルを含むか、もしくは含有してもよい。
【0036】
いくつかの実施形態において、前記組成物は、同じまたは異なる化学組成物の連続ヒドロゲルまたは重合相に加えて、上述のマイクロゲルを含んでいてもよい。
【0037】
いくつかの実施形態において、前記組成物は、後続の合成もしくは製造ステップを容易にするために、または使用まで脱水形態を保つために、選択した合成もしくは製造加工ステップの後に凍結乾燥される。
【0038】
いくつかの実施形態において、前記組成物は、後続の合成もしくは製造ステップを容易にするために、または使用まで乾燥、固体、もしくは粉末形態を保つために、選択した合成もしくは製造加工ステップの後に有機溶媒もしくは溶媒混合物中で沈殿させ、および乾燥させる。
【0039】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の合成もしくは加工ステップを、反応前溶液の無菌濾過、無菌操作の使用、および無菌の平衡化緩衝液の使用を含む、無菌条件下で行ってもよい。専用のフィルター、バリアー、および容器を、前記組成物の調製および加工の間(凍結乾燥または乾燥ステップの間または後を含む)に使用してもよい。
【0040】
いくつかの実施形態において、前記組成物は、最終容器中にパッケージングする前、している間、またはした後に、最終的に滅菌してもよい。前記組成物の最終的な形態は、凍結乾燥した粉末またはマトリックスの形態、または平衡含水量を下回る、平衡含水量と等しい、もしくは平衡含水量を上回る含水量の水和ゲル製剤の形態を取っていてもよい。
定義
【0041】
本明細書で使用されるある特定の用語は、以下に詳述するように、下記の定義を指すことが意図されている。この用語の定義がその用語の通常用いられている意味と異なる場合、出願人は、別段の指示がない限り、以下に示す定義を採用することを意図している。
【0042】
用語「モノマー」は、重合すると、ポリマーの構造中の1つまたは複数の構成単位をもたらす、重合可能な化合物である。
【0043】
用語「ポリマー」は、1種類だけのモノマーが重合した結果である生成物を指す。
【0044】
用語「コポリマー」は、2またはそれを超える異種のモノマーが重合した結果であるポリマーを指す。各構成単位の数、および性質は、コポリマー中で個別に制御し得る。構成単位は、明示的な別段の指定がない限り、完全ランダム構造、交互ランダム構造、規則的交互構造、規則的ブロック構造、またはランダムブロック構造に配列され得る。
【0045】
用語「構成単位」は、ポリマー中の原子または原子群を指し、ポリマー鎖の一部を、もしあれば、そのペンダント原子または原子群と共に含む。構成単位は、繰り返し単位を指し得る。構成単位は、ポリマー鎖の末端基も指し得る。
【0046】
用語「繰り返し単位」は、最小の構成単位に相当し、その繰り返し単位の繰り返しによって、巨大分子(またはオリゴマー分子もしくはブロック)が構成される。
【0047】
用語「ヒアルロン酸」または「HA」は、任意の平均分子量および分子量分布を有する、周知の多糖類およびグリコサミノグリカンを指し、その任意の薬学的に許容されるヒアルロン酸塩(ヒアルロン酸ナトリウム(NaHA)、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸マグネシウム、ヒアルロン酸カルシウム、およびそれらの組み合わせが含まれるが、それらに限定されない)も指し得る。
【0048】
用語「両性イオン性ポリマー」または「ポリ両性イオン性コンポーネント」は、両性イオン性構成単位を有するポリマーまたはコポリマーを指す。両性イオン性構成単位は、両性イオン性基を含むペンダント基(すなわち、ポリマーバックボーンからぶら下がった基)を有する。代表的な両性イオン性ペンダント基は、カルボキシベタイン基(例えば、-R-N(R)(R)-R-CO (式中、Rは、前記ポリマーバックボーンを、前記カルボキシベタイン基のカチオン性窒素中心に共有結合させるリンカー基であり、RおよびRは、窒素の置換基であり、Rは、前記カチオン性窒素中心を、前記カルボキシベタイン基のカルボキシ基に共有結合させるリンカー基である))を含む。
【0049】
用語「官能基化」は、官能基を含むモノマー、ポリマー、またはコポリマーであって、前記モノマー、ポリマー、またはコポリマーを別のモノマー、ポリマー、コポリマー、または生物学的種または薬理学的種に対する共有結合に反応性にさせる、モノマー、ポリマー、またはコポリマーを指す。本発明の実施において、本発明の官能基化モノマー、ポリマー、およびコポリマー(これらは、多糖類由来であっても、両性イオン性材料由来であっても、その他のものであってもよい)は、それらの官能基によって反応し、前記モノマー、ポリマー、またはコポリマーを共有結合する(例えば、前記ポリマーとコポリマーを架橋する)共有結合を形成する。
【0050】
用語「オートクレーブ安定」は、例えば、組成物の生成物が、有効なオートクレーブ滅菌を受けた後に、以下の特性、すなわち透明な外観、pH、押出し力および/または流動学的特性、ポリマー濃度、無菌性、浸透圧、ならびに組成物中に存在するあらゆる添加剤または追加的な種の濃度のうち、少なくとも1つ(好ましくは全て)を維持するなどの、分解に対して耐性のある組成物の生成物を説明する。
【0051】
用語「凍結乾燥安定」は、例えば、組成物の製品が、凍結乾燥またはフリーズドライ手順によって水または緩衝水溶液を完全に除去した後に、以下の特性、すなわち透明な外観、pH、押出し力および/または流動学的特性、ポリマー濃度、無菌性、浸透圧、ならびに組成物中に存在するあらゆる添加剤または追加的な種の濃度のうち、少なくとも1つ(好ましくは全て)を維持するなどの、分解に対して耐性のある組成物の製品を説明する。
【0052】
本明細書において、あらゆるポリマーまたは化学的種の「分子量」を表す全ての数値は、ダルトン表記の重量平均分子量(Mw)を指すものと理解すべきである。
【0053】
別段の指示がない限り、「高分子量」は、組成物の任意の重合コンポーネントに言及する場合、約100,000Da(0.1MDa)を超える分子量(典型的には、分子量は約3,000,000Da(3MDa)を超えない)を有する材料を説明する。
【0054】
別段の指定がない限り、「低分子量」は、組成物の任意のポリマー種、オリゴマー種、もしくはその他の化学種、または組成物の製造に関係する種、もしくは組成物の分解の結果得られる種に言及する場合、約100,000Da(0.1MDa)未満の分子量を有する材料を説明する。
【0055】
用語「架橋」は、組成物のポリ両性イオン性コンポーネントおよび/または多糖類コンポーネントの中で、または間で、個々のポリマー分子を連結する分子間結合を指す。具体的には、架橋度または修飾度は、さらに、ポリマーまたはポリマー組成物中の全構成単位に対する、架橋接合部のモル量を記述する、無次元数またはmol%と定義される。
【0056】
本明細書で使用される場合、用語「結束性」は、一般に、ある特定の手順または処置を通して、ヒドロゲル組成物がその超分子特性を維持する能力を指す。本発明のいくつかの実施形態において、結束性は、組成物が、(例えば、注射針を通して注入されている間に)様々な剪断速度に曝された後、回復できないコンポーネントゲルの断片に破断することなく、選択されたレオロジー特性(例えば、弾性率)を回復することを指す。
【0057】
用語「弾性率」、「貯蔵弾性率」、または「G’(Gプライム)」は、Pa(パスカル)で表されたドロゲル組成物の弾性変形に対する抵抗を説明するレオロジー特性を指す。強いゲルは、典型的な条件下で、弱いゲルよりも大きなG’を有する。
【0058】
用語「粘性率」、「損失弾性率」、または「G’’(Gダブルプライム)」は、Pa(パスカル)で表された、ヒドロゲル組成物の粘性変形に対する抵抗を説明するレオロジー特性を示す。G’と合わせて、G’’は、変形に対する抵抗全体を説明する。
【0059】
用語「マイクロゲル」は、ミクロンレベルの大きさを有する(すなわち、約1~約1000ミクロンの直径を有する)ヒドロゲルを指す。
【0060】
本発明の上述の態様および付随する多くの利点は、添付の図面と合わせて利用すると、以下の詳細な説明を参照することによってよりよく理解されるので、より容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1図1は、本発明の1態様の概念化を図解する。塗りつぶされていない丸は、それぞれ組成物の両性イオン性構成単位を表し、塗りつぶされた丸は、それぞれ組成物の多糖類構成単位を表す。隣り合う同じ種類の構成単位の鎖は、「コンポーネント」とみなされる。図1に示すように、前記の開示されている組成物を含む各コンポーネントの少なくとも1つの(場合により多数の)構成単位は、「架橋接合部」によって、他のコンポーネントの少なくとも1つの(場合により多数の)構成単位と共有結合されている。この図解は、本発明の理想化された概念的な実施形態の理解を促進することを意図しているだけであり、分子構造の定量的または化学的に正確な表現と理解すべきではない。
【0062】
図2図2は、本発明のいくつかの態様の代表的な概念化を図解する。図中のロープ状の描写は、ポリマーコンポーネントを表し、ポリマーの交点の丸い記号は、起こり得る架橋接合部を表す。凡例に示されているように、輪郭で描かれた、すなわち塗りつぶされていないコンポーネントは、本発明のポリ両性イオン性態様の典型であり、べた塗りの、すなわち塗りつぶされたコンポーネントは、本発明の多糖類態様の典型である。組成物の酵素的、またはタンパク質分解的な分解は、オリゴマーなどのより小さいコンポーネントを生じ得るか、またはいくつかのコンポーネントは、生理的環境において、完全に分解または代謝され得る。この概念的な図は、本発明の1つの理想化された態様の理解を促進することを意図しているだけであり、いかなる分子構造の定量的または化学的に正確な表現と理解すべきではない。
【0063】
図3図3A~3Bは、本発明の1実施形態の同じ製剤の、代表的なレオロジー特性である。図3Aは、振動歪み掃引実験によって示されたずり減粘レオロジー特性を表す。この実験において、貯蔵弾性率(G’、実線)および損失弾性率(G’’、点線)は、振動歪みを0.05%から2000%に増加させながらプロットされている。図3Bは、この同じ製剤の動的振動周波数掃引を表す。この実験において、0.1Hz~100Hzの全ての角周波数において、G’が、G’’に対して優位であり、これは、前記弾性ネットワークが、幅広い条件下で、本来の状態を保っていることを示す。
【0064】
図4図4A~4Cは、本発明の他の選択された製剤または実施形態の代表的なレオロジー特性を示す。図4Aは、振動歪みを0.05%~5000%に増加させたときの貯蔵弾性率(G’、実線)および損失弾性率(G’’、点線)を表す。図4Aに描かれている製剤は、100%歪み未満におけるG’>1000Paと、約500%という高い「クロスオーバー」歪みの両方を特徴とする。図4Bは、振動歪みを0.1%~1000%に増加させたときの貯蔵弾性率(G’、実線)および損失弾性率(G’’、点線)を表す。図4Bに描かれた製剤は、ポリ両性イオン性コンポーネントと多糖類コンポーネントの比が異なる2つの製剤を混合した組成物である。図4Cは、振動歪みを0.1%~2000%に増加させたときの貯蔵弾性率(G’、実線)および損失弾性率(G’’、点線)を表す。図4Cに描かれた製剤は、2段階架橋反応で形成された組成物である。
【0065】
図5図5は、商業的に入手できるBDDE架橋ヒアルロン酸ヒドロゲル(対照)と比較した、2つの実施例製剤(RIF-201およびRIF-088)の代表的なin vitro酵素分解を表し、これは、本発明のいくつかの実施形態の、酵素的分解に対する調整可能な安定性を実証している。本発明の多数の実施形態において、前記の組成物は、HA-BDDE組成物よりも、酵素的分解に対して高い安定性を示すが、酵素的に完全に分解可能なままである。
【0066】
図6図6は、Instron引張/圧縮試験機を用いて測定したときの、代表的な注入力または注射針押出し力特性を表す。
【0067】
図7図7は、本発明のいくつかの実施形態について重要である、代表的な分子構造、具体的には、さらなる架橋反応において使用される種々の基で修飾されたヒアルロン酸の代表的な構造を示し、これは、本発明の多糖類コンポーネントの1つの例である。示されている例示的な構造において、長さが合計x+y個の二糖単位である所定の多糖鎖中に、修飾HAのx個の二糖単位、および非修飾HAのy個の単位が存在する。
【発明を実施するための形態】
【0068】
発明の詳細な説明
本開示は、一般に、生体適合性ヒドロゲル組成物に関し、より具体的には、ポリ両性イオン性コンポーネントと多糖類コンポーネントを含むヒドロゲル組成物、その調製、およびその使用方法に関する。
【0069】
ヒドロゲルは、水または別の水相、および架橋された高分子マトリックスを含む。典型的には、前記の開示されている組成物のヒドロゲルは、下記構造(I):
【化2】

(式中、
は、多糖類コンポーネントを表し;
は、前記多糖類コンポーネントの部分であり、多糖類または多糖類塩の1つまたは複数の構成単位を天然または天然に存在する形態で含むか、またはボイドであり;
は、前記多糖類コンポーネントの部分であり、1つまたは複数の化学的もしくは構造的修飾によって修飾された多糖類または多糖類塩の1つまたは複数の構成単位を含み、連結コンポーネントXを介してポリ両性イオン性コンポーネントZに連結されており;
mは、代表する多糖類ベースのコンポーネントC(コンポーネントCは、構成単位CおよびCのランダムまたは構造的な組み合わせであり得る)の分子量を示す、1~約10,000の整数であり;
は、多糖類ベースのコンポーネントをポリ両性イオン性コンポーネントに連結する、化学的もしくは物理的会合または結合であり;
は、ポリ両性イオン性コンポーネントを表し;
は、前記ポリ両性イオン性コンポーネントの部分であり、ポリマーバックボーンに沿って存在してもよく、1つまたは複数のポリマー鎖末端に存在してもよく、またはポリマー側鎖中に組み込まれていてもよく、両性イオン性ポリマーまたはオリゴマーの1つまたは複数の構成単位を含み、連結コンポーネントXを介して多糖類コンポーネントCに連結されており;
は、前記ポリ両性イオン性コンポーネントの部分であり、両性イオン性ポリマーまたはオリゴマーの1つまたは複数の構成単位を含み;
nは、代表するポリ両性イオン性コンポーネントZ(コンポーネントZは、構成単位Zと構成単位Zのランダムまたは構造的な組み合わせであり得る)の分子量または重合度を示す、1~約10,000の整数であり;
およびRは、ポリ両性イオン性のネイチャー(Z)、多糖類ベースのネイチャー(C)、または任意のその他のネイチャー(N)のうちのいずれかの、さらなるコンポーネントであり、連結コンポーネントXまたは連結コンポーネントXを介して、任意の代表するCまたはZに連結されていてもよいか;またはボイドである)
によって示されるように、ポリ両性イオン性コンポーネント(Z)と多糖類コンポーネント(C)を含有する架橋された分子マトリックスを含み、1つまたは複数のコンポーネントZとコンポーネントCが、1つまたは複数の種類の化学的もしくは物理的会合または結合によって連結されている。
【0070】
一態様において、前記ポリ両性イオン性コンポーネント(Z*)は、複数の両性イオン性構成単位をベースにしており、この両性イオン性構成単位は、カルボキシベタイン、ホスホリルコリン、スルホベタイン、ホスホベタイン、トリメチルアミンオキシド(TMAO)、エクトイン、または重合可能なバックボーン構造に結合している別の両性イオン性部分を含み得る。いくつかの実施形態において、前記ポリ両性イオン性コンポーネントの代表的な構成単位は、下記一般式(II):
【化3】

(式中、
は、水素、フッ素、トリフルオロメチル、C1-C6アルキル、およびC6-C12アリール基から選択され;
およびRは、水素、アルキル、およびアリールから独立して選択されるか、またはそれらが結合している窒素と一緒になってカチオン性中心を形成し;
は、前記カチオン性中心[N(R)(R)]を、前記ポリマーバックボーン[-(CH-CR-]に共有結合させるリンカーであり;
は、前記アニオン性中心[A(=O)O]を、前記カチオン性中心に共有結合させるリンカーであり;
は、C、S、SO、P、またはPOであり;
nは、約5~約10,000の整数であり;
は、前記繰り返し単位または構成単位が、隣の繰り返し単位または架橋接合部のいずれかと共有結合している点を表す)
で表される式を有していてもよい。
【0071】
一実施形態において、Rは、C1-C3アルキルである。
【0072】
およびRは、水素、アルキル、およびアリールから独立して選択されるか、またはそれらが結合している窒素と一緒になってカチオン性中心を形成する。一実施形態において、RおよびRは、C1-C3アルキルである。
【0073】
ある特定の実施形態において、Lは、-C(=O)O-(CH-および-C(=O)NH-(CH-からなる群から選択され、式中、nは、1~20の整数である。Lは、-C(=O)O-(CH-であり、式中、nは、1~6である。
【0074】
ある特定の実施形態において、Lは、-(CH-であり、式中、nは、1~20の整数である。
【0075】
ある特定の実施形態において、Aは、CまたはSOである。
【0076】
ある特定の実施形態において、nは、5~約5,000の整数である。
【0077】
一実施形態において、R、R、およびRは、メチルであり、Lは、-C(=O)O-(CH-であり、Lは、-(CH)-であり、Aは、Cであり、nは、10~約1,000の整数である。
【0078】
好ましい実施形態において、前記ポリ両性イオン性コンポーネントは、重合反応において、1つまたは複数の多様なカルボキシベタインアクリルアミドモノマーまたはモノマー誘導体を反応させることによって形成される構成単位をベースにしていてもよい。カルボキシベタインアクリルアミド-1(CBAA-1)、カルボキシベタインアクリルアミド-2(CBAA-2)、および代表的なカルボキシベタインアクリルアミド-2-エステル(CBAA-2-エステルとして知られている、ある特定のカルボキシベタインアクリルアミドモノマーの代表的な構造を下記(III):
【化4】

(式中、CBAA-2-エステル中の「R」基は、任意の理由で選択される、共有結合によってCBAA-2に結合することができる、任意の基であり得る)
に示す。
【0079】
ある特定の実施形態において、前記ポリ両性イオン性コンポーネントは、ポリカルボキシベタインベースのモノマーまたはポリマーと、他のクラスのイオン性もしくは非イオン性のモノマーまたはポリマーとの混合物であってもよく、ポリカルボキシベタインと、他のクラスのイオン性もしくは非イオン性モノマーとのコポリマーであってもよく、または前記ポリ両性イオン性コンポーネントの全体的特性が、実質的に両性イオン性となるか、混合電荷となるか、もしくはタンパク質接着および非特異的な生物学的相互作用に抵抗性となるような、カチオン性もしくはアニオン性モノマー/ポリマーの混合物またはコポリマーであってもよい。
【0080】
ある特定の実施形態において、前記ポリ両性イオン性コンポーネントは、官能基化カルボキシベタイン型モノマー、オリゴマー、またはポリマーを含んでいてもよく、ある特定の実施形態において、(a)アジドとアルキンのペア、アジドとアルケンのペア、チオールとマレイミドのペア、チオールとアルケンのペア、チオールとジスルフィドのペア、チオールとノルボルネンのペア、またはあらゆる他の「クリック」、バイオ直交型、もしくはその他の反応性ペアから選択される反応性ペアの1つを含み;ここで、(b)前記官能基は、ポリマー構造の末端に配置されるか、または構成単位側鎖に官能基化されたペンダント基、もしくは別個のコモノマーとして配置される。
【0081】
ある特定の実施形態において、前記ポリ両性イオン性コンポーネントは、種々のネットワーク分枝ジオメトリー、流体力学的サイズ、および分子量を有していてもよく、前記ポリ両性イオン性コンポーネントは、それら自身と化学架橋されていても、および/または物理的に絡まり合っていてもよく、またはそれら自身と前記多糖類コンポーネントの間で化学架橋されていても、および/または物理的に絡まり合っていてもよい。
【0082】
別の態様において、前記多糖類コンポーネント(C)は、当業者が単糖類、二糖類、もしくはオリゴ糖のポリマーとして認識する一般的な配列を有する複数の構成単位、またはそれらの天然型および化学修飾型の任意の組み合わせをベースにしていてもよい。
【0083】
ある特定の実施形態において、前記多糖類コンポーネントは、天然または化学修飾された、寒天、アルギン酸塩、カラギーナンガム、セルロース、キトサン、キチン、シクロデキストリン、デキストラン、ジェランガム、グリコーゲン、カラヤガム、イヌリン、ペクチン、ポリデキストロース、キサンタンガム、または任意のその他のデンプン、ガム、もしくは多糖類(官能基化された誘導体、デキストリン化デンプン、加水分解デンプン、酸化デンプン、アルキル化デンプン、ヒドロキシアルキル化デンプン、アセチル化デンプン、分画化デンプン、および物理的に修飾されたデンプン、ならびにそれらの任意の薬学的に許容される塩を含む)をベースにしている。
【0084】
ある特定の実施形態において、前記多糖類コンポーネントは、グリコサミノグリカン(すなわち、ヒアルロン酸ナトリウムおよびヒアルロン酸のその他の塩、ならびにコンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸(heparin sulfate)、およびその他の例を含む、多糖類の特定のクラス)をベースにしていてもよい。
【0085】
好ましい実施形態において、前記多糖類コンポーネントは、ヒアルロン酸(HA)(ヒアルロン酸ナトリウムまたはヒアルロナンとも呼ばれる)をベースにしており、ヒアルロン酸(HA)は、典型的にはD-グルクロン酸(GlcUA)とN-アセチル-D-グルコサミン(GlcNAc)の二糖単位を含む非硫酸化グリコサミノグリカンであり、D-グルクロン酸(GlcUA)とN-アセチル-D-グルコサミン(GlcNAc)が交互に連結して線状ポリマーを形成している。天然に存在するHAは、保水性を高め、静水応力に耐え、非免疫原性であり、人体内に普通に存在し、かつ、必要に応じて化学修飾し得る。HAの構造を下記(IV)に示す。
【化5】
【0086】
ある特定の実施形態において、前記多糖類コンポーネント、ポリ両性イオン性コンポーネント、または架橋接合部は、酵素的、タンパク質分解的、加水分解的、もしくは他のメカニズムによる分解に対して感受性であり得る(すなわち、生物分解性である)。これらのメカニズムには、エステル加水分解、ジスルフィド結合の切断、および酵素的またはタンパク質分解的な分解の他の形態が含まれ得る。
【0087】
例示的な実施形態において、前記多糖類コンポーネントは、完全な組成物を合成するために必要とされ得る追加の官能性を付与するための、1つまたは複数の化学的修飾を有するHAをベースにしている。
【0088】
ある特定の実施形態において、前記多糖類コンポーネントの部分は、フリーラジカル媒介重合反応による架橋を可能にするために、まず、1つまたは複数の重合可能なペンダント部分、例えばメタクリレート、アクリレート、メタクリルアミド、アクリルアミド、またはその他のアクリロイル基などで修飾してもよい。
【0089】
ある特定の実施形態において、前記多糖類コンポーネントは、本発明の完全な組成物の合成に先立って、当業者に知られているHA架橋法を用いて(例えば、水性アルカリ性条件で、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(1,4-butandioldiglycidyl ether)(BDDE)によって)形成した、架橋されたHAネットワークを含む。
【0090】
ある特定の実施形態において、HA、修飾HA、または別の多糖類コンポーネントの分子量は、ばらつきがあってもよい。例えば、HAの分子量は、約10,000Da~約10,000,000Da、約50,000Da~約5,000,000Da、または約100,000Da~約3,000,000Da、もしくは約1,000,000Da(1MDa)であってもよい。
【0091】
前記組成物は、種々のネットワーク分枝ジオメトリー、流体力学的サイズ、および分子量を有する、複数の多糖類コンポーネントを含んでいてもよく、前記多糖類コンポーネントは、それら自身と化学架橋されていても、および/または物理的に絡まり合っていてもよく、またはそれら自身と前記ポリ両性イオン性コンポーネントの間で化学架橋されていても、および/または物理的に絡まり合っていてもよい。前記多糖類またはHAコンポーネントをポリ両性イオン性コンポーネントと架橋する反応が起こった後、得られる架橋された巨大分子生成物は、分子量が高い、分子量が低い、または反応前溶液中の多糖類またはHAコンポーネントと分子量が同等の、いくつかの多糖類またはHAを含有していてもよい。前記HAコンポーネントの多糖類は、架橋があるために、実際には独立または分離した分子ではないであろうが、用語「分子量」は、この状況においては、前記マトリックスの部分に適用される。
【0092】
いくつかの実施形態において、前記組成物は、粘度調節または局所麻酔送達を含む目的のために、前記ネットワークの大部分と化学結合していないポリ両性イオン性コンポーネントおよび/または多糖類コンポーネントを含んでいてもよい。
【0093】
別の態様において、前記ポリ両性イオン性コンポーネントのいくつかの部分の少なくとも1つの(場合により多数の)構成単位は、任意の化学的もしくは物理的会合または絡み合いによって、前記多糖類コンポーネントのいくつかの部分の少なくとも1つの(場合により多数の)構成単位と連結されている。
【0094】
ある特定の実施形態において、前記架橋接合部は、最終組成物を形成する反応の前、または間に、前記多糖類および/またはポリ両性イオン性コンポーネントに官能基化される化学構造を含んでいてもよい。
【0095】
いくつかの実施形態において、架橋接合部は、1つまたは複数のアクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、またはラジカル媒介重合反応において反応性の基を含むその他のアクリロイル含有基を含む、1つまたは複数の基から形成され得る。
【0096】
いくつかの実施形態において、架橋接合部は、マレイミド、ノルボルネン、アルキン、アルケン、チオール、アジド、もしくは他の反応性基を含んでいてもよく、または他のバイオ直交型架橋ケミストリーおよび「クリック」ケミストリー、例えば、アジド/アルキン(SPAACを含む)およびチオール-エンケミストリーを含んでいてもよい。
【0097】
いくつかの実施形態において、架橋接合部は、エステルまたはアミド結合形成を促進するために、カップリング剤を含んでもよく、または架橋接合部の形成はカップリング剤によって媒介されてもよく、前記カップリング剤は、例えば、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、または1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)などのカルボジイミドであり、前記カップリング剤は、前記結合の一部にならないか、または前記結合の一部になるかのいずれかである。
【0098】
ある特定の実施形態において、架橋接合部は、ジスルフィド結合、エステル、無水物、酵素的に切断できるペプチド(例えば、マトリックスメタロプロテアーゼ[MMP]が切断することができるペプチドモチーフ)、または光もしくは熱などの外的刺激に対して反応性であるケミストリーから選択される、酵素的もしくはタンパク質分解的に分解可能な基を含んでいてもよい。
【0099】
ある特定の好ましい実施形態において、前記ポリ両性イオン性コンポーネントの部分は、多糖類コンポーネントで化学架橋されており、前記多糖類コンポーネント自身は、あらかじめ、光開始または熱開始ラジカル媒介重合反応によって、メタクリレート、アクリレート、メタクリルアミド、またはアクリルアミド基などの重合可能なペンダント部分で修飾されていた。
反応条件
【0100】
架橋反応混合物は、反応して、架橋された高分子マトリックスを形成し得る。いくつかの実施形態において、全てのコンポーネントは、水性の反応前溶液に溶解される(ここで、全てのコンポーネントは可溶性である)。これらのコンポーネントは、両性イオン性モノマーまたはポリマー、修飾または天然多糖類(例えば、ヒアルロン酸をベースにしたものなど)、光活性フリーラジカル開始分子、およびその他の添加剤を含み得る。反応条件、例えば、HA、官能基化または修飾HA、両性イオン性モノマー、両性イオン性ポリマー、開始剤、触媒、または添加剤の濃度、ならびに溶液のpH、溶液の温度、および塩濃度などは、反応溶液中の多イオン性複合体の形成または任意のコンポーネントの難溶性の防止に役立つように調節してもよい。この反応前溶液のpH、塩分濃度、および緩衝化種は、利用可能な多数の選択肢から選択し得る。
【0101】
いくつかの実施形態において、HAなどの多糖類ベースのコンポーネントは、まず、当業者に知られている架橋化学を用いて(例えば、水性アルカリ性条件において、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(1,4-butandioldiglycidyl ether)(BDDE)によって)架橋され、次いで、前記ポリ両性イオン性コンポーネントとさらに架橋する前に、凍結乾燥もしくは沈殿によって処理および/または乾燥される。前記第1の反応溶液または第2の反応溶液のいずれかの有機溶媒、pH、塩分濃度、および緩衝化種は、多くの利用可能な選択肢から選択し得る。
【0102】
いくつかの実施形態において、反応前溶液は、ラジカル媒介架橋または重合反応の開始に先立って、真空下で脱気してもよく、または窒素もしくはアルゴンなどの不活性ガスでパージしてもよい。いくつかの実施形態において、反応前溶液の脱気またはパージは、必要でなくてもよい。
【0103】
いくつかの実施形態において、水性の反応前溶液または架橋反応混合物は、約1%~約50%の有機溶媒(例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノール、DMSO、または類似の溶媒など)をさらに含んでいてもよい。
【0104】
いくつかの実施形態において、光活性フリーラジカル開始剤を含む前記反応前溶液は、所望の組成物を形成する反応を開始させるために、紫外線または可視光線放射に曝露される。この光活性開始剤は、当業者に知られている、多種多様な、商業的に入手できる分子、または受注合成の分子から選択してもよい。例示的な実施形態において、この光活性開始剤は、水溶性かつ生体適合性の種である2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチルプロパン-1-オン(Irgacure 2959、Darocur 2959、または単に「2959」としても知られる)であってもよい。
【0105】
いくつかの実施形態において、熱活性フリーラジカル開始剤を含む前記反応前溶液は、所望の組成物を形成する反応を開始させるために、高温に曝露される。この熱開始剤は、当業者に知られている、多種多様な、商業的に入手できる分子、または受注合成の分子から選択してもよく、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBNとしても知られる)であってもよい。
【0106】
一態様において、前記反応前溶液中の、ポリ両性イオン性ベースのコンポーネントまたは前駆体と、多糖類ベースのコンポーネントまたは前駆体の重量比は、約0.01~約1000である。例えば、ポリ両性イオン性コンポーネントと多糖類コンポーネントの重量比は、約1:10、1:1、5:1、10:1、100:1、または500:1であってもよい。
【0107】
いくつかの実施形態において、前記組成物は、合計ポリマー濃度が、最終製品中、設計された水和含量において、約10mg/mL~300mg/mLである。例えば、前記組成物中の合計ポリマー濃度は、およそ25mg/mL、33mg/mL、50mg/mL、75mg/mL、100mg/mL、または250mg/mLであってもよい。
【0108】
ある特定の実施形態において、前記組成物は、ポリ両性イオン性コンポーネントの濃度が約90mg/mL、多糖類ベースのコンポーネントの濃度が約10mg/mLであり、またはポリ両性イオン性コンポーネントの濃度が約99mg/mL、多糖類ベースのコンポーネントの濃度が約1mg/mLであり、ポリ両性イオン性コンポーネントの濃度が約40mg/mL、多糖類ベースのコンポーネントの濃度が約15mg/mLであり、またはポリ両性イオン性コンポーネントの濃度が約20mg/mL、多糖類コンポーネントの濃度が約10mg/mLである。
【0109】
ある特定の実施形態において、架橋反応混合物は、グリシジルメタクリレート修飾HAを約10mg/mLの濃度で、カルボキシベタインアクリルアミドモノマーを約20mg/mLの濃度で、Irgacure 2959を約0.5mg/mLの濃度で、および塩化ナトリウムを約0.9wt%または約150mMの濃度で含んでいてもよい。
【0110】
ある特定の実施形態において、架橋反応混合物は、約10mg/mLの濃度で懸濁されたグリシジルメタクリレート修飾BDDE架橋HAマイクロゲル、カルボキシベタインアクリルアミドモノマーを約20mg/mLの濃度で、Irgacure 2959を約0.5mg/mLの濃度で、および塩化ナトリウムを約0.9wt%または約150mMの濃度で含んでいてもよい。
【0111】
ある特定の実施形態において、架橋反応混合物は、グリシジルメタクリレート修飾HAを約10mg/mLの濃度で、カルボキシベタインアクリルアミドモノマーを約80mg/mLの濃度で、Irgacure 2959を約0.5mg/mLの濃度で、および塩化ナトリウムを約0.9wt%または約150mMの濃度で含んでいてもよい。
【0112】
ある特定の実施形態において、架橋反応混合物は、グリシジルメタクリレート修飾HAを約3mg/mLの濃度で、カルボキシベタインアクリルアミドモノマーを約500mg/mLの濃度で、Irgacure 2959を約0.5mg/mLの濃度で、および塩化ナトリウムを約0.9wt%または約150mMの濃度で含んでいてもよい。
【0113】
ある特定の実施形態において、前記反応混合物は、ガラス鋳型またはその他の十分にUV透過性の鋳型中に移すか、または注入し、約10秒~約1時間、約30秒~約30分間、もしくは約1分~約10分間、紫外光に曝露してもよい。
【0114】
ある特定の実施形態において、前記反応混合物は、高さが約1mm~約10cmのオープントップの容器(単数または複数)に移すか、そのような容器中で調製し、「光フロンタル重合」として知られる幾何学的現象を利用するために、紫外光に曝露してもよい。
【0115】
ある特定の実施形態において、前記反応混合物は、任意の波長または複数の波長の組み合わせ、例えば約254ナノメートル(nm)、約300nm、または約365nmの紫外光に曝露してもよい。このような光の光源は、紫外線架橋オーブン、手持ち式紫外線ランプ、紫外線発光ダイオード(LED)デバイス、または任意のその他の産業的、商業的、もしくは受注生産の紫外線光源、または太陽などの自然の紫外線光源であり得る。
加工
【0116】
いくつかの実施形態において、前記反応後のヒドロゲル産物は、鋳型またはその他の容器から取り出され、所望のpH、塩分濃度、および緩衝化種含有量の水溶液中で、約24時間~約2週間、または約2週間を超える期間、平衡化される。典型的には、ヒドロゲルの平衡水和への膨潤を促進し、ならびにあらゆる未反応もしくは望ましくない不純物の拡散または透析を促進して、それらをヒドロゲル組成物から除去するために、この平衡化溶液は、1日に1回またはそれを超える回数、新しいものに交換する。
【0117】
好ましい実施形態において、前記緩衝溶液は、リン酸緩衝剤、塩化カリウム、および塩化ナトリウムを含んでいてもよく、かつpHが約7~約8であってもよい、リン酸緩衝生理食塩水溶液であってもよい。リン酸緩衝溶液は、ヒトの生理的液体に対して、実質的に等張であってもよい。
【0118】
ある特定の実施形態において、平衡化溶液中で前記反応後のヒドロゲル産物が平衡化および精製される速度または効率を促進するために、振盪、ロッキング、撹拌、または流体循環などのプロセスによる、穏やかなかき混ぜまたは流体対流が用いられる。
【0119】
ある特定の実施形態において、架橋反応および追加の加工ステップ(例えば平衡化)が行われた後、前記架橋された高分子マトリックスは、粒子化またはホモジナイズされてもよい。例えば、この粒子化またはホモジナイズプロセスは、前記バルクヒドロゲルをより小さい単位に粉砕、押出し、ミンス、切断、剪断、またはペレット化することが可能な、任意の加工ステップによって実施し得る。この粒子化ステップは、湿潤(過水和した、低水和した、または平衡水和した)、または乾燥(凍結乾燥した、脱水した、または沈殿させた)ヒドロゲル材料に対して行い得る。この粒子化ステップは、注射針を通した最終組成物の注入が可能になるように設計されていてもよい。
【0120】
例示的な実施形態において、前記架橋された高分子マトリックスをホモジナイズするために使用される前記粒子化ステップは、メッシュを通した押出しである。前記マトリックスを粒子化するために使用されるメッシュは、所望の粒子サイズに応じて、任意の適切なポアサイズを有していてもよい。いくつかの実施形態において、メッシュは、約10ミクロン~約500ミクロン、約40ミクロン~約100ミクロン、または約50~約70ミクロンのポアサイズを有していてもよい。前記組成物は、十分な力または圧力を発生することができる任意の技術を用いて、このメッシュを通して、1回または多数回、押出してもよい。
【0121】
いくつかの実施形態において、前記最終組成物は、前記重合反応の間に(例えば、マイクロエマルション重合などのプロセスにおいて)最終的なサイズまたはそれに近いサイズで生成された、マイクロゲルが凝集した集まりであってもよい。あるいは、前記マイクロゲルは、上述した任意の粒子化またはホモジナイズ方法を用いて、バルクヒドロゲルから誘導した後に、最終的な寸法に分級してもよい。
【0122】
いくつかの実施形態において、ヒドロゲル組成物または粒子化製剤は、滅菌、さらなる精製、塩またはイオン交換、またはその他の目的のために、透析によって処理してもよい。透析は、ヒドロゲルと液体が半透膜を通して分子または塩を交換することができるように、ヒドロゲルと別の液体の間に半透膜を配置することによって行ってもよい。前記透析は、緩衝溶液または無菌緩衝溶液に対して行ってもよい。
【0123】
好ましい実施形態において、前記緩衝溶液は、リン酸緩衝剤、塩化カリウム、および塩化ナトリウムを含んでいてもよい、無菌のリン酸緩衝生理食塩水溶液であってもよい。よって、透析が完了した時、ヒドロゲルの液体コンポーネントは、ヒトの生理的液体に対して、実質的に等張であり得る。
【0124】
いくつかの実施形態において、前記組成物は、貯蔵、輸送、滅菌、またはさらなる加工のために、選択した合成もしくは加工ステップの後、脱水した粉末に凍結乾燥(フリーズドライ)される。ある特定の実施形態において、前記凍結乾燥した組成物は、任意の水性液体によって再水和化される。前記水性溶液としては、それらに限定されないが、水、生理食塩水またはイオン性溶液、ヒトの生理的液体に対して等張性の溶液、ヒト血漿もしくはその他の血液成分、細胞増殖もしくは保存培地(細胞を含有するか、または含有しない)、または薬物、タンパク質療法剤、核酸療法剤、細胞、ナノ粒子、もしくはマイクロ粒子を含有していてもよい任意のその他の生理学的に妥当な溶液があげられる。
【0125】
いくつかの実施形態において、合成および/または加工ステップの1つから全ての間のいずれかは、反応前溶液の無菌濾過、無菌操作、無菌の平衡化または透析緩衝液の使用を含む、無菌条件下で行ってもよい。専用のフィルター、バリアー、および容器を、前記組成物の調製および加工の間(凍結乾燥の間または後を含む)に使用してもよい。
【0126】
いくつかの実施形態において、前記組成物は、最終容器(例えば、プレフィルド化できるシリンジ)中にパッケージングする前または後に、最終的に無菌化してもよい。前記最終組成物は、凍結乾燥した粉末またはマトリックスの形態、または平衡含水量を下回る、平衡含水量と等しい、もしくは平衡含水量を上回る含水量の水和ゲル製剤の形態を取っていてもよい。
材料特性
【0127】
粘弾性またはレオロジー特性の測定は、特定の製剤の臨床的有用性(例えば、ヒドロゲル組成物が、注射針を通して注入できるか否か、表面もしくは組織に塗布できるか否か、または人体内に注入またはインプラントした後、支持組織模倣構造を形成することが期待できるか否か)を定量化、または予測しうる。いくつかの実施形態において、注入可能な組成物は、非侵襲的臨床適用(薬物デポー、生物学的製剤もしくは賦形剤、細胞保護スキャフォールドもしくは細胞外マトリックス模倣材料、または美容的もしくは再建的手順が含まれうる)のために特に望ましい。
【0128】
ある特定の実施形態において、前記ヒドロゲル組成物は、約1Pa~約10,000Pa、約50Pa~5,000Pa、約100Pa~約1000Pa、約200Pa~約600Paの貯蔵弾性率またはG’値、またはこれらの値のいずれかによって区切られる範囲内(または、これらの値のいずれかの間)の任意の値の貯蔵弾性率またはG’値を示し得る。
【0129】
ある特定の実施形態において、前記ヒドロゲル組成物は、約1Pa~約1000Pa、約5Pa~約1000Pa、約10Pa~約200Pa、約20Pa、約50Pa、約100Paの損失弾性率またはG’’値、またはこれらの値のいずれかによって区切られる範囲内(または、これらの値のいずれかの間)の任意の値の損失弾性率またはG’’値を示し得る。
【0130】
ある特定の実施形態において、前記ヒドロゲル組成物は、約0.01~1.5、約0.05~0.5、約0.07~0.4、約0.1のtanδ値(特定の条件における特定の組成物のG’’/G’と定義される)、またはこれらの値のいずれかによって区切られる(または、これらの値のいずれかの間の)任意の値または範囲のtanδ値を示し得る。例示的な実施形態において、前記tanδ値は、典型的には、約1%の歪み、および約10rad/sの一定の角周波数において、振動歪み掃引レオロジー実験の間に記録される。
【0131】
ある特定の実施形態において、前記ヒドロゲル組成物は、約30%~約10,000%、約50%~約2000%、約70%~約1500%、または約100%、約400%、約700%、もしくは約1200%のクロスオーバー歪み値(「x歪み」またはtanδ=1(tanδ=1は、G’’=G’とさらに定義される)における歪みとしても知られる)、またはこれらの値のいずれかによって区切られる(または、これらの値のいずれかの間の)任意の値または範囲のクロスオーバー歪み値を示し得る。例示的な好ましい実施形態において、前記クロスオーバー歪み値は、振動歪み掃引レオロジー実験の間に記録したとき、100%超である。
【0132】
いくつかの実施形態において、前記ヒドロゲル組成物は、前記ヒドロゲルが入っている1mLシリンジのプランジャーを100mm/分の速度で約10mm動かすことによって30Gの注射針が付いたシリンジを通して押出し、押出し力がプラトーに達したら平均押出し力を測定する場合、約15N~40N、または約30Nの平均押出し力を有していてもよい。
【0133】
いくつかの実施形態において、前記ヒドロゲル組成物は、液体をさらに含んでいてもよい。例えば、前記組成物は、水性液を吸収して、ヒドロゲルを形成し得る。水性液は、水と、その水に溶解している塩、例えばリン酸緩衝剤、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、水性液は、水、約100mM~約200mMの濃度の塩化ナトリウム、約2mM~約3mMの濃度の塩化カリウム、および約5mM~約15mMの濃度のリン酸緩衝剤を含んでいてもよく、液体のpHが約7~約8である。
【0134】
いくつかの実施形態において、「両性イオン性融合」として知られる現象が、前記の開示されている組成物の材料またはレオロジー特性に寄与し得る。両性イオン性融合は、Jiangら、Biomaterials,35,2014,3926、およびJiangら、Advanced Materials.30,2018,1803087に記載されているように、側鎖及びバックボーンアミド間に、強い水和、分子間両性イオンペア引力、および水素結合を導入し、いくつかの両性イオン性材料において時間依存的な自己回復を促進し得る。
【0135】
いくつかの実施形態において、イオン性相互作用、水素結合、疎水性相互作用、天然もしくは合成起源の生体分子またはナノ粒子との相互作用、または任意のその他の可逆的もしくは不可逆的な物理的相互作用を含む、任意の種類の物理的相互作用は、前記の開示されている組成物の材料またはレオロジー特性に寄与し得る。
製品および適用
皮膚フィラー
【0136】
いくつかの実施形態には、柔組織フィラープロダクト;例えば、注入可能な皮膚または真皮下フィラーが含まれ得る。ヒドロゲル組成物を含むフィラーは、柔組織の美的な質を改善するためにヒト組織に注入するために適切な、任意の種類のフィラー、例えば皮膚フィラー、豊胸フィラーもしくは乳房再建フィラー、リップフィラー、またはその他の柔組織の修復もしくは再建に適したフィラーであり得る。
【0137】
いくつかの実施形態には、前記ヒドロゲル組成物が装填され、注射針が装着されたシリンジを含む、パッケージングされた製品が含まれる。シリンジは、前記ヒドロゲルを関心のある柔組織に注入するために適した、任意のサイズの注射針、例えば、約#25、約#27、または約#30ゲージの注射針と一緒にパッケージングされてもよく、そのような注射針を装着してもよい。シリンジは、人間工学的で安全、かつ適切に制御された注入技術を容易にするための、種々の付属物またはアタッチメントが組み込まれていてもよく、そのような付属物またはアタッチメントには、張り出した指掛けフランジ、延長されたプランジャーロッド、カラーコードが付けられたパッケージング、またはその他のコンポーネント(例えば、ゴム引き、曲面、もしくは溝付きの外形、またはシリンジの特徴など)が含まれ得る。
【0138】
前記ヒドロゲル組成物を含む組織フィラーは、不合理な困難を伴うことなく、関心のある柔組織に注入することができる場合、注入のために適切であり得る。このようなフィラーには、通常の指の圧力によって、滑らかな押出しプラトーで、約30Gまたは約25Gという細いゲージを有するカニューレから吐出することができるフィラーが含まれる。
薬物送達
【0139】
いくつかの実施形態において、架橋されたポリ両性イオン性コンポーネントと多糖類コンポーネントを含む前記ヒドロゲル組成物は、美容的または治療的有用性を有する1つまたは複数の添加剤(例えば、局所麻酔薬、ペプチド、核酸、タンパク質、その他の生体分子、ナノ粒子(単数または複数)、マイクロ粒子(単数または複数)、ミセル(単数または複数)、リポソーム(単数または複数)、ポリマーソーム(単数または複数)、薬物、薬物前駆体、またはその他の薬理学的活性種または生化学的活性種)が補われているか、または混ぜられていてもよい。
【0140】
いくつかの実施形態において、前記ヒドロゲル組成物は、対象に対する美容的薬剤の送達機構を提供するために用いられ得る。そのような送達機構には、前記の開示されている組成物の実施形態と対象を接触させることが含まれ、前記組成物は、架橋されたポリ両性イオン性コンポーネントおよび多糖類コンポーネントと、必要に応じて、有効量の美容的薬剤(例えば、保存料、ビタミン、ホルモン、抗炎症剤、抗生物質、モイスチャライザー、抗ニキビ薬(ベンジルペルオキシド、レチノイド、エリスロマイシンおよびその他の抗生物質、アゼライン酸、リノール酸、サリチル酸、ホルモン、フルーツ酸、酸化亜鉛)、抗アレルギー薬もしくは抗湿疹薬(コルチコイド、抗ヒスタミン薬、局所麻酔薬)、ファーミング(firming)(レチノイド、抗生物質(ミノサイクリン、ドキシサイクリン、メトロニダゾール、アゼライン酸を含む))、抗床ずれまたは褥瘡薬(D-パンテノール、抗生物質、抗炎症、リファット化クリーム基材)、または抗炎症(抗生物質、抗真菌薬(antimyocotic)、抗ヒスタミン薬、免疫抑制剤、コルチコイド、カモミール、キンセンカ、D-パンテノール)剤もしくは治療学的種)を含む。
細胞および組織工学
【0141】
別の態様において、ex vivo細胞もしくは組織培養に適した細胞もしくは組織培養スキャフォールド、注入可能な細胞療法製剤コンポーネント、またはその両方を形成する、水和または凍結乾燥形態のいずれかの形態のヒドロゲル組成物を含む製品が提供される。
【0142】
いくつかの実施形態において、提供されるヒドロゲル組成物は、例えば、小スケールまたは大スケールの設定で、任意の容器またはバイオリアクター中に、スキャフォールド、マトリックス、またはその他の増殖基材として(特に、細胞増殖または分化を制御しなければならない場合、分化または表現型の変化を伴わない増殖が望ましい場合、またはいかなる追加の試薬も用いずにサイズに基づく洗浄によって細胞およびスキャフォールドまたはマトリックス材料の調製を行わなければならない場合に)、細胞もしくは組織培養、および増殖への適用において用いられる、生体適合性材料の全てまたは一部を含む。
【0143】
いくつかの実施形態において、提供されるヒドロゲル組成物は、細胞もしくは組織の貯蔵または保存への適用において(例えば、保存添加剤、製剤、スキャフォールド、マトリックス、表面コーティング、凍結保護剤、または類似の用途として)用いられる、生体適合性材料組成物を含む。
【0144】
前記提供されるヒドロゲル組成物は、細胞、組織、もしくは器官の成長、維持、または増殖のためのスキャフォールド、マトリックス、またはその他の基材として使用することができ、前記生物学的材料およびヒドロゲル組成物の構築物は、任意の培養もしくは維持方法、または任意の種類のバイオリアクターを含む装置を用いて維持することができ、かつ、それらに限定されないが、以下の(a)~(i)を含む系統に由来してもよい:
(a)多能性および複能性の幹細胞および前駆細胞((1)胚幹細胞(ESC)、組織由来幹細胞(例えば、皮膚、血液、または眼由来)、(臍帯血もしくは骨髄に由来する、または臍帯血もしくは骨髄から精製された)造血幹細胞および前駆細胞(HSPC)、間葉系幹細胞、または誘導多能性幹細胞(iPS細胞)(iPSC);(2)遺伝子改変または遺伝子導入幹細胞および前駆細胞;および(3)がん幹細胞(CSC)を含む);
(b)典型的にはヒトの血液中を循環している造血細胞(赤血球細胞(赤血球)、白血球細胞(白血球)、および血小板(トロンボサイト)を含む);
(c)免疫細胞および前駆細胞、またはそれらの分化した系統((1)CD8表面糖タンパク質発現T細胞(特に、ナイーブ細胞傷害性Tリンパ球(CTLまたはT)およびその分化または活性化系統(セントラルメモリー(TCM)T細胞を含む)を含む);(2)CD4表面糖タンパク質発現T細胞(特に、ナイーブヘルパーTリンパ球(T0)、およびその分化または活性化系統(T1、T2、T9、T17、TFH、TREG、およびセントラルメモリー(TCM)T細胞を含む)を含む);(3)任意の起源に由来する制御性T細胞(TREG)(ナチュラルTregまたは誘導性Tregのいずれか);(4)ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞);(5)キメラ抗原レセプターT細胞(CAR-T);および(6)遺伝子改変T細胞;(6)B細胞;(7)樹状細胞、および(8)上記に具体的に列挙されていない、その他の抗原提示細胞(APC)または免疫細胞、を含む);
(d)糖尿病の処置および管理に有用な、膵島またはその他のインスリン産生細胞、およびβ-細胞;
(e)神経系細胞および前駆細胞;
(f)心血管系細胞および前駆細胞;および
(g)その他の細胞(特に、免疫療法、再生医学、血液疾患もしくは悪性腫瘍、またはがんワクチンもしくは処置の分野において重要な細胞)。
(h)組織(筋(骨格筋、平滑筋、心筋、血管を含む脈管構造)、神経組織(末梢神経組織、中枢神経組織(アストロサイトである神経膠細胞、ミクログリア細胞、上衣細胞、オリゴデンドロサイト、衛星細胞、またはシュワン細胞からなる組織を含む)、結合組織(軟骨、弾性軟骨、線維軟骨、骨組織、白色脂肪組織、褐色脂肪組織、筋膜、血液)、皮下組織、または上皮組織(扁平上皮、立方上皮、円柱上皮、重層上皮、偽重層上皮、移行上皮)を含む);
(i)器官(腎臓、心臓、脳(大脳、大脳半球、間脳(dencephalon))、脳幹(中脳、脳橋、延髄、小脳、脊髄、脳室系、脈絡叢)、食道、咽頭、唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)、胃、小腸(十二指腸、空腸、回腸)、大腸、肝臓、胆嚢、膵臓、鼻(鼻腔、咽頭、喉頭、気管、気管支、肺)、尿管、膀胱、尿道、動脈、静脈、毛細血管、リンパ管、リンパ節、骨髄、胸腺、脾臓、腸管関連リンパ組織(扁桃腺)、眼、耳、嗅上皮、舌、または皮膚を含む)。
【0145】
提供されるヒドロゲル組成物は、細胞もしくは組織を保存する任意の方法または細胞もしくは組織の臨床もしくは軍事的有用性のための生物学的機能を維持する任意の方法のための、特に、従来の方法では、室温または低温で、全血または保存溶液中で、DMSO、グリセロール、グリシンベタインもしくはその他のオスモライト、または凍結保護剤の存在下または非存在下で、長期間保存することが難しい、血液細胞(例えば、血小板および赤血球細胞)などの細胞タイプのための、生体適合性材料、スキャフォールド、製剤コンポーネント、または接触材料として使用することができる。
その他の適用
【0146】
いくつかの実施形態において、前記ヒドロゲル組成物は、非ニュートン性挙動を有する材料または製品(例えば、粘弾性、レオペクティック、チキソトロピー、ずり増粘(ダイラタント)、ずり減粘(偽塑性)、および/またはビンガムプラスチック特性を示す)を提供するために使用することができる。
【0147】
いくつかの実施形態において、前記ヒドロゲル組成物は、自然治癒材料および/または形状記憶材料、または(損傷または外的刺激の後、損傷を修復または特性を回復することができる)類似のクラスの「スマート」材料を提供するために使用することができる。
【0148】
いくつかの実施形態において、前記ヒドロゲル組成物は、タンパク質またはその他の生体分子の非特異的な吸着を防ぐための防汚材料または表面コーティングを提供するために(例えば、海洋への適用、ドラッグデリバリープラットフォーム、バイオセンサーおよびその他の医療デバイス、血管グラフト、血管内ステント、心臓弁、人工関節、ならびに生理的環境と接触するその他の材料およびデバイスのために)使用することができる。
【0149】
いくつかの実施形態において、前記ヒドロゲル組成物は、外科的手順または創傷治癒などの生物医学的用途のための、注入可能または塗布可能な材料を提供するために使用することができる。
【0150】
いくつかの実施形態において、前記ヒドロゲル組成物は、生物医学的用途のための、特に、非ニュートン性流体特性および高い生体適合性が必要とされる用途における、注入可能または塗布可能な材料(例えば、(a)機械的な支持が可能な、例えば、美容的もしくは再建的手術、血管プロステーシス、皮膚修復デバイス、人工内耳、注入可能な硝子体物質、人工軟骨、人工脂肪、コラーゲン模倣物、およびその他の柔組織模倣物または支持体において使用される材料などの、注入可能または塗布可能な材料;(b)表面もしくは組織と、(特に、非特異的な相互作用を避けるべき場合、または非特異的/特異的相互作用の望ましいバランスを実現しなければならない場合に)望ましいまたは特異的な生物学的相互作用を示す、注入可能または塗布可能な材料;および(c)外科への適用、治療への適用、創傷治癒、およびドラッグデリバリー製剤のための、薬物、生体分子(例えば、核酸、ペプチド、タンパク質、多糖類)、細胞(例えば、膵島、心血管細胞、幹細胞、免疫細胞、血液細胞)、ナノ粒子もしくはマイクロ粒子(例えば、PLGA/薬物製剤)、ミセル、リポソーム、ポリマーソーム、またはその他の治療学的種もしくはドラッグデリバリーモダリティの送達、および/または保護もしくは防護のための、注入可能または塗布可能なキャリアーなど)を提供するために使用することができる。
【実施例
【0151】
以下の実施例は例示目的で提供され、本発明を限定するものではない。
分析方法の実施例
【0152】
実施例1-組成物の合計ポリマー濃度の決定
【0153】
各ヒドロゲル組成物の合計ポリマー濃度を決定するために、既知の体積の水和ゲルの重量を、同じサンプルの乾燥または凍結乾燥後の重量と比較する。例えば、1mLのゲルのサンプルを秤量し、1)アルコールなどの有機溶媒中で沈殿させた後、真空乾燥する;または2)液体窒素中で瞬間凍結させた後、-54℃、0.04Torrで凍結乾燥する、などのプロセスによって乾燥させる。ゲル中の塩含有量を確認するために、前記組成物中に存在するその他のあらゆる添加剤を含有する、適切な緩衝剤の溶液も秤量し、同様のやり方で乾燥させる。ゲルの全固形物含有量は、乾燥重量を湿潤重量(湿潤ゲルについては、密度を1g/mLと仮定する)で除算することによって算出し、mg/mLを単位とする値を得る。次いで、得られた値から、塩固形物およびその他のあらゆる添加剤の含有量を差し引き、ヒドロゲル組成物中の合計ポリマー濃度を決定する。
【0154】
実施例2-組成物のレオロジー特性分析
【0155】
組成物のレオロジー測定は、以下のように実施する。温度調節のためのペルチエプレートを装備し、プレートジオメトリーが平行(直径が20mm、プレート間の間隙距離が800μm)であるDHR-2レオメーター(TA Instruments)を、全ての測定において使用する。全ての測定において、振動モードを使用する。各実験において、各測定点におけるG’、G’’、複素粘度(η)、およびtanδ(G’’/G’)を記録する。弾性率(G’)は、弾性変形に対する組成物の物理的抵抗に関するヒドロゲルの強度を表す。粘性率(G’’)は、粘性変形に対する組成物の物理的抵抗に関するヒドロゲルの強度を表す。
【0156】
典型的なヒドロゲルの特性分析実験において、振動周波数掃引は、2分間のサンプル平衡化時間の後、25℃、1%の一定の歪み(γ)で、0.1~100rad/sの周波数範囲にわたって、周波数を対数的に増加させて実施する。振動歪み掃引は、2分間のサンプル平衡化時間の後、25℃、10rad/sの一定の周波数で、0.1%~1000%歪みの範囲にわたって、歪みを対数的に増加させて実施する。
【0157】
いくつかの組成物の酵素的またはタンパク質分解的な分解のレオロジー追跡も実施する。これらの実験において、適切な緩衝剤中の、50μLの25mg/mL酵素溶液(すなわち、ヒアルウロニダーゼ)を、1000μLのヒドロゲル組成物に加え、穏やかな機械的撹拌を10秒間行い、酵素を組成物全体に分散させる。次いで、組成物をレオメーターに移し、30秒間にわたり、G’およびG’’を5例測定(1%歪み、10rad/s)した後、5分間の休止期間をおく。この一連の手順を、G’<(0.1)×G’初期になるまで繰り返す。この条件下で、完全な分解には、典型的には2~10時間を要する。代表的な実験によって得られたデータを図5に示す。
【0158】
実施例3-組成物の押出し試験
【0159】
シリンジと注射針の組み合わせを通してゲルを押し出すために必要な力を確認するために、組成物のいくつかの実施形態と類似の製品の代表的なゲルを、30G×1/2’’TSK注射針またはテルモルアーロック注射針を取り付けた1mLのBD Hylokカラスシリンジに詰める。次いで、Instron5543A機械試験機を使用して、シリンジプランジャーを、100mm/分の速度で、約10mmまたは明確に力がプラトーに達するまで押す。プランジャー位置ごとに、加えた力のプロファイルを記録する。典型的な製剤において、4~10mmにおいて、25~40Nの平均押出し力が観察された。
【0160】
合成および加工方法の実施例
【0161】
実施例4-グリシジルメタクリレート修飾ヒアルロン酸の作成方法
【0162】
組成物のいくつかの実施形態において、後に行うポリ両性イオン性コンポーネント(モノマーまたはポリマー)による架橋反応を促進するために、ヒアルロン酸ナトリウム(HA)をメタクリレート基で修飾または官能基化し、メタクリレート化HA(MeHA)を作成する。例示的なメタクリレート化反応において、500mgのHAを50mLの純水に溶解し、1.8グラムの臭化テトラブチルアンモニウム(TBAB)、1.8mLのトリエチルアミン(TEA)、および1.8mLのグリシジルメタクリレートを加え、撹拌して混合する。磁気撹拌下、反応を25℃で18時間進行させた後、60℃で1時間進行させる。生成物をアセトン中で3回沈殿させ、次いで無菌の生理食塩水(PBS)またはその他の水性緩衝液に対して、1日に2回透析緩衝液を交換しながら、2日間透析する。次いで、その精製したMeHA生成物を、-54℃、0.04Torrで凍結乾燥する。
【0163】
実施例5-注入可能な組成物の作成方法(ワンポット)
【0164】
例示的な組成物において、1MDaのMeHA(10mg/mL)、CBAA(20mg/mL)、および光開始剤である2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン(I2959、0.5mg/mL)を、pH7.4の0.9wt%(150mM)緩衝生理食塩水に溶解することによって、メタクリレート化ヒアルロン酸ナトリウム(MeHA)とカルボキシベタインアクリルアミド(CBAA)モノマーの反応前溶液を作製する。この反応前溶液を、暗所で、均一に混ざるまで、最大60分間平衡化する。
【0165】
次いで、この反応前溶液を、例えば、医療グレードのPDMSガスケットを備えた、厚さ1mmのホウケイ酸ガラス鋳型に流し込み、UVP CL-1000M架橋オーブン(15分、1J/cm、302nm)内で重合させる。得られたヒドロゲルを鋳型から取り出し、無菌リン酸緩衝生理食塩水(150mM)中に2~5日間入れておき、あらゆる未反応コンポーネントを取り除き、かつ膨潤させる。次いで、平衡化したゲルを、きちんと適合するピストンおよびスチールメッシュ部でキャップされたシリンダーからなる押出し装置の中に移し、このメッシュを通した押出しによって粒子化する。のメッシュ押出しまたはゲル粒子化プロセスを、典型的には、使用するメッシュのポアサイズを小さくしながら(例えば、250μm、120μm、次いで60μm)繰り返す。使用する最終的なメッシュサイズにおいて、組成物を少なくとも3回押し出して、粒子化ゲルのサイズの均一性を向上させる。粒子化ゲルは、70%エタノール/30%水中で沈殿させ、次いで、(1)真空乾燥する、または(2)水または緩衝液で再水和化し、-54℃、0.04Torrで凍結乾燥する、のいずれかを行う。次いで、乾燥した粒子化ゲルを、無菌の注射用水(WFI)で、所望のポリマー濃度に再水和化し、無菌条件下でシリンジ内に分注する。最終的な組成物は、上記したようなレオロジー分析、およびシリンジ力押出し試験によって、特性が確認される。
【0166】
下記表1に、このようなやり方で作成された実施例製剤の、合成および特性分析に関するデータを示す。この実施例において、反応前溶液中の各コンポーネントの濃度は一定に保たれ、最終組成物中の合計ポリマー濃度は、33mg/mL~100mg/mLの間で変化していた。各サンプルについて測定されたレオロジーデータを示す。
【表1】
【0167】
実施例6-二重架橋(BDDEおよびポリ両性イオン性)ヒアルロン酸組成物の作成方法
【0168】
いくつかの実施形態において、ヒアルロン酸ナトリウム(HA)またはメタクリレート化HA(MeHA)を、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(1,4-butandioldiglycidyl ether)(BDDE)またはその他のジエポキシド化合物と、いくつかの実施形態において、ポリ両性イオン性コンポーネントと架橋もしくは反応させる前、させている間、またはさせた後に、架橋させる。BDDE架橋HAまたはMeHAを作成するために、1gのHAまたはMeHAを、7gの0.25M NaOHに、完全に溶けるまで溶解させる。次いで、BDDEの0.25M NaOH溶液を0.2g(BDDE50mg)加え、撹拌しながら、50℃で2時間反応を進行させる。この反応の最後の1時間の間に、両性イオン性モノマー(例えば、CBAA)および光開始剤(例えば、2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン(I2959、0.5mg/mL)を、所望の濃度まで、前記反応混合物に加える。このBDDE架橋反応が完了したら、両性イオン性モノマーと光開始剤とを含む架橋材料を、ガラス鋳型またはその他の容器に移し、架橋オーブン(15分、1J/cm、302nm)内でUV照射に曝露する。この二重架橋材料を、粒子化のためのメッシュに通し、有機溶媒中で沈殿させるか、または凍結乾燥する。
【0169】
実施例7-組成物および中間製品の凍結乾燥方法
【0170】
凍結乾燥またはフリーズドライは、組成物を保存、輸送、および所望の水和レベルに戻すための、現実的な手段である。多糖類ベースの製剤の凍結乾燥は、ある条件下において、分子量の低下、または構造的な損傷をもたらし得ることに留意することは重要であるが、前記組成物のいくつかの実施形態のポリ両性イオン性コンポーネントは、凍結乾燥プロセスの間、何らかの保護を与え得る。この効果は、また、両性イオン性材料の特に強い水和によって増強され得る。前記組成物の製剤は、以下の特性、すなわち透明度、均一性、水和能力、およびレオロジカル(heological)属性のうちの1つ、好ましくは全てを保持している場合、「凍結乾燥安定」であると判定される。
【0171】
例示的な実施形態を示し、説明してきたが、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、種々の変更を行い得ることが理解されよう。
【0172】
別段の指示がない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用されている、成分の量、分子量などの特性、反応条件などを表す全ての数字は、全ての例において、用語「約」によって修飾されているものと理解すべきである。本明細書で使用される場合、用語「約」は、指定されている値の±5%を意味する。よって、これに反する指示がない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に記載されている数的パラメーターは、得ようとする所望の特性に応じて変わりうる概数である。最後に、かつ特許請求の範囲の範囲に対する均等論の適用を限定しようとするものではないが、各数的パラメーターは、少なくとも、記録された有効数字の数値を考慮し、かつ通常の数値の丸め方を適用することによって解釈すべきである。
【0173】
本発明を説明する文脈において(特に、以下の特許請求の範囲の文脈において)使用されている、用語「a」、「an」、「the」、および類似の指示は、本明細書において別段の指示があるか、または文脈により明確に矛盾しない限り、単数形および複数形の両方を包含するものと解釈すべきである。本明細書に記載されている全ての方法は、本明細書において別段の指示があるか、または文脈により明確に矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書において示されている、一切および全ての実施例、または例示的記載(例えば、「など(such as)」)は、本発明をより明確に示すことを意図しているにすぎず、いかなる請求項の範囲に対する限定も主張するものではない。本明細書に記載がなかったとしても、本発明を実施するために必要な、特許請求されていない任意の要素が示されているものと解釈すべきである。
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【国際調査報告】